(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】CAR T細胞療法に対する反応の予測マーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240219BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/02
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552246
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022054803
(87)【国際公開番号】W WO2022180216
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522357323
【氏名又は名称】フンダシオ インスティテュート デ レセルカ コントラ ラ レウセミア ジュゼップ カレラス
(71)【出願人】
【識別番号】513231100
【氏名又は名称】バルセロナ スーパーコンピューティング センター - セントロ ナシオナル デ スーパーコンピュータシオン
(71)【出願人】
【識別番号】521196752
【氏名又は名称】インステテューシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストディス アヴァンサッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】マネル エステラー バドサ
(72)【発明者】
【氏名】ロレア ヴィヤノエヴァ レガルダ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス アントニオ ガルシア プリエト
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ08
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4B063QQ89
4B063QR08
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4B063QS14
4B063QS25
4B063QS28
4B063QS38
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
この発明は、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法に関し、本方法は、CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることを含む。また、本方法を行うための手段およびキットも開示する。CpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることで、特にB細胞悪性腫瘍を有する対象に対するCAR T細胞療法の成果として、再発がない完全奏功および長い全生存を予測することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法であって、以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンは次の:
ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン:ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;ヒト染色体6の79780164位でのシトシン;およびヒト染色体8の28725934位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が、前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一つ以上のCpG部位のものである場合、対象がCAR T細胞療法に反応することを定めること
を含む、方法。
【請求項2】
CAR T細胞の以下のCpG部位の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;およびヒト染色体10の22634199位でのシトシンのメチル化状態を定める、請求項1に従ったインビトロ方法。
【請求項3】
CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体10の95139986位でのシトシン;ヒト染色体6の127612751位でのシトシン;ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;のヒト染色体12の123944014位でのシトシン;ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体10の46993515位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体2の122144477位でのシトシン;ヒト染色体6の6643814位でのシトシン;ヒト染色体18の60877850位でのシトシン;およびヒト染色体19の42299379位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項1-2のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項4】
CAR T細胞の次の18個のCpG部位の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン;ヒト染色体10の95139986位でのシトシン;ヒト染色体6の127612751位でのシトシン;ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;ヒト染色体12の123944014位でのシトシン;ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体10の46993515位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体2の122144477位でのシトシン;ヒト染色体6の6643814位でのシトシン;ヒト染色体18の60877850位でのシトシン;およびヒト染色体19の42299379位でのシトシンのメチル化状態を定める、請求項1-3のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項5】
方法は以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンは次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;ヒト染色体6の79780164位でのシトシン;およびヒト染色体8の28725934位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が、前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一つ以上のCpG部位のものである場合、対象がCAR T細胞療法に反応することを定めること
を含む、請求項1に従ったインビトロ方法。
【請求項6】
CAR T細胞の次のCpG部位の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;およびヒト染色体6の79780164位でのシトシンのメチル化状態を定める、請求項5に従ったインビトロ方法。
【請求項7】
CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体6の127612751位でのシトシン、ヒト染色体6の6643814位でのシトシン;ヒト染色体19の42299379位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン;ヒト染色体15の95870440位でのシトシン;ヒト染色体10の104470719位でのシトシン;ヒト染色体22の43253559位でのシトシン;ヒト染色体2の122144477位でのシトシン;ヒト染色体12の131166906位でのシトシン;ヒト染色体16の68481342位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体10の95139986位でのシトシン;ヒト染色体4の183063459位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体10の134571377位でのシトシン;ヒト染色体12の3600764位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;ヒト染色体12の133000178位でのシトシン;ヒト染色体10の46993515位でのシトシン;ヒト染色体9の19229767位でのシトシン;およびヒト染色体1の24229300位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項5-6に従ったインビトロ方法。
【請求項8】
CAR T細胞の次の32個のCpG部位の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;ヒト染色体6の79780164位でのシトシン;ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体6の127612751位でのシトシン、ヒト染色体6の6643814位でのシトシン;ヒト染色体19の42299379位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン;ヒト染色体15の95870440位でのシトシン;ヒト染色体10の104470719位でのシトシン;ヒト染色体22の43253559位でのシトシン;ヒト染色体2の122144477位でのシトシン;ヒト染色体12の131166906位でのシトシン;ヒト染色体16の68481342位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体10の95139986位でのシトシン;ヒト染色体4の183063459位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体10の134571377位でのシトシン;ヒト染色体12の3600764位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;ヒト染色体12の133000178位でのシトシン;ヒト染色体10の46993515位でのシトシン;ヒト染色体9の19229767位でのシトシン;およびヒト染色体1の24229300位でのシトシンのメチル化状態を定める、請求項5-7のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項9】
分離サンプルはリンパ球T細胞を含む生体液から選ばれる、請求項1-8のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項10】
CARはBリンパ球抗原CD19(UNIPROT P15391)を標的とするものである、請求項1-9のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項11】
CpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態は、各CpGのシトシンを含み、および定められた位置におけるシトシンがメチル化または非メチル化である場合に差示的シグナルを生成する配列に相補的である一つ以上のオリゴヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチドのセットを用いて定め;またはCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態は、各CpG部位のメチル化シトシンを含む配列に相補的である一つ以上のオリゴヌクレオチド、および各CpG部位の非メチル化シトシンを含む配列に相補的である一つ以上のオリゴヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチドのセットを用いて定める、請求項1-10のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項12】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法反応に対する対象の反応は治療後に観察される疾患の寛解がないことを意味する完全奏功である、請求項1-11のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項13】
対象はB細胞悪性腫瘍を患っている、請求項1-12のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項14】
分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体21の36259383位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体19の18899483位でのシトシン;ヒト染色体1の190448126位でのシトシン;ヒト染色体1の201123894位でのシトシン;ヒト染色体3の45505849位でのシトシン;ヒト染色体8の2075777位でのシトシン;ヒト染色体2の218340518位でのシトシン;ヒト染色体2の85637673位でのシトシン;ヒト染色体6の10415636位でのシトシン;ヒト染色体14の29990921位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体10の105648138位でのシトシン;ヒト染色体8の637813位でのシトシン;ヒト染色体6の110721138位でのシトシン;およびヒト染色体12の130516192位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項1-13のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項15】
CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体21の36259383位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体19の18899483位でのシトシン;ヒト染色体1の190448126位でのシトシン;ヒト染色体8の2075777位でのシトシン;ヒト染色体2の218340518位でのシトシン;およびヒト染色体6の10415636位でのシトシンからなる群より選ばれる、請求項14に従ったインビトロ方法。
【請求項16】
分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体10の102242535位でのシトシン;ヒト染色体20の23015936位でのシトシン;ヒト染色体10の134571377位でのシトシン;ヒト染色体8の65294635位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体9の124132919位でのシトシン;ヒト染色体19の42299379位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン;ヒト染色体17の686450位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;ヒト染色体8の127568850位でのシトシン;ヒト染色体1の94057587位でのシトシン;ヒト染色体10の134149184位でのシトシン、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン;ヒト染色体21の36258423位でのシトシン;ヒト染色体2の132481826位でのシトシン、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン;およびヒト染色体1の190448126位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項1-15のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項17】
CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン;ヒト染色体10の102242535位でのシトシン;ヒト染色体20の23015936位でのシトシン;ヒト染色体10の134571377位でのシトシン;およびヒト染色体8の65294635位でのシトシンからなる群より選ばれる、請求項16に従ったインビトロ方法。
【請求項18】
分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体1の201123894位でのシトシン;ヒト染色体3の45505849位でのシトシン;ヒト染色体8の2075777位でのシトシン;ヒト染色体2の218340518位でのシトシン;ヒト染色体2の85637673位でのシトシン;ヒト染色体6の10415636位でのシトシン;ヒト染色体14の29990921位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体10の105648138位でのシトシン;ヒト染色体8の637813位でのシトシン;ヒト染色体6の110721138位でのシトシン;およびヒト染色体12の130516192位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項5-14のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項19】
分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体8の65294635位でのシトシン;ヒト染色体15の100879199位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体9の124132919位でのシトシン;ヒト染色体19の42299379位でのシトシン;ヒト染色体5の180614858位でのシトシン;ヒト染色体10の134457731位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン;ヒト染色体17の686450位でのシトシン;ヒト染色体14の90081872位でのシトシン;ヒト染色体8の127568850位でのシトシン;ヒト染色体1の94057587位でのシトシン;ヒト染色体10の134149184位でのシトシン、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン;ヒト染色体21の36258423位でのシトシン;ヒト染色体2の132481826位でのシトシン、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン;およびヒト染色体1の190448126位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、請求項5-14および18のいずれか一項に従ったインビトロ方法。
【請求項20】
B細胞悪性腫瘍を患う対象に対して自己CAR T細胞療法を開始するかどうかを決定および/または推奨する方法であって、請求項1-19のいずれかに規定するインビトロ方法を行うことを含み;および対象がCAR T細胞療法に反応すると定められる場合、そのときこの療法が推奨される、方法。
【請求項21】
分離された候補CAR T細胞またはその集団を得るために、識別された候補CAR T細胞またはその集団を分離すること、および増加した候補CAR T細胞またはその集団を得るために、分離された候補CAR T細胞を随意に増やすことをさらに含む、請求項1-20のいずれか一項に従った方法。
【請求項22】
CAR T細胞のCpG部位におけるメチル化状態を修飾する方法であって、請求項1-20のいずれかに規定する方法を最初に行うこと;およびメチル化状態をさらに修飾することを含む、方法。
【請求項23】
自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するために、請求項1-20もしくは21または22のいずれかの方法における一つ以上のCpG部位シトシンのDNAメチル化状態を定めるのに適したDNAオリゴヌクレオチドを含む手段の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年2月26日提出の欧州特許出願EP21382168.9の、および2021年9月10日提出の欧州特許出願EP21382815.5の利益を主張する。
【0002】
本発明は、CAR T細胞のシグネチャーおよびこれらの細胞を用いた療法の最も起こりそうな成果を定めるためのマーカーの分野に関する。本発明はまた、診断およびコンパニオン診断の方法、ならびにその方法を行うためのデバイス(キット)にも関する。
【背景技術】
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、さもなければ治療の選択肢がほとんど残っていない、例えば、再発性/難治性(R/R)B細胞悪性腫瘍などのような、患者に対して有効であることが証明されている。小児B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)におけるCD19抗原(CART19)を標的とする自己の、遺伝子改変T細胞の使用は、症例全体の80%前後で完全奏効率を生じさせ、その割合は高齢患者ではより一層低く、頻繁な長期寛解が導かれる。B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのようなものでは、養子細胞移入療法はあまり成功せず、症例のおよそ30-40%が長期寛解を経験する。これらの結果は、最終的に、チサゲンレクルユーセル(Kymriah(キムリア))、アキシカブタゲンシロルユーセル(Yescarta(イエスカルタ))およびブレクスカブタジェンアウトルーセル(Tecartus(テカルタス))による商業上の治療の臨床承認につながった。CART19細胞の使用には大きな期待が寄せられたにもかかわらず、治療が失敗することは珍しいことではない。これらの療法は高価であり、およびそれらの成功を保証することは医療システムにとって非常に重要なものであることが注目される。CART19治療に対する反応および成果の予測バイオマーカーの発見は、リスク層別化、耐性/ノンレスポンダー患者に対する代替アプローチの選定のため、および新しく開発されたCART T細胞アプローチを改善することにとって非常に重要であろう。初期臨床反応の欠如またはCART19治療後の再発の出現は、CART構築物、注入細胞の調製、形質導入細胞のデリバリー、および標的形質転換細胞の生物学的特長に関連する多くの考えられる原因に起因する可能性がある。しかし、CART19の無効力に関係する欠陥は少数しか確認されておらず、最も広く研究されているのはCD19タンパク質の喪失による腫瘍抗原エスケープである(Majzner(マズナー)RG、Mackall(マッコール)CL.、「Tumor antigen escape from CAR T-cell therapy(CAR T細胞療法からの腫瘍抗原エスケープ)」、Cancer Discov(キャンサー・ディスカバリー)2018;8:1219-26)参照)。事前注入された細胞におけるCART19臨床反応を予測するための他の候補分子バイオマーカーはほとんど提案されていない。
【0004】
いくらかの例には、Fraietta(フレイエッタ)らによって「Determinants of response and resistance to CD19 chimeric antigen receptor (CAR) T cell therapy of chronic lymphocytic leukemia(慢性リンパ性白血病のCD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法に対する反応および耐性の決定要因)」、Nat Med(ネイチャー・メディシン)2018;24:563-71において;またはFraiettaらによって「Disruption of TET2 promotes the therapeutic efficacy of CD19-targeted T cells(TET2の破壊はCD19標的T細胞の治療効果を促進する)」、Nature(ネイチャー)2018;558:307-12において;またはNobles(ノーブルズ)らによって「CD19-targeting CART cell immunotherapy outcomes correlate with genomic modification by vector integration(CD19を標的とするCAR T細胞免疫療法の成果はベクター統合によってゲノム修飾と相関する)」J Clin Invest(ジャーナル・オブ・クリニカル・インヴェスティゲーション)2020;130:673-85において開示されるように、CARゲノム組込み部位が含まれる。他の候補分子バイオマーカーは、Rossi(ロッシ)らによって「Preinfusion polyfunctional anti-CD19 chimeric antigen receptor T cells are associated with clinical outcomes in NHL(事前注入多機能抗CD19キメラ抗原受容体T細胞はNHLでの臨床転帰と関係する)」、Blood(ブラッド)2018;132:804-14において開示されるように、CAR T細胞におけるサイトカインの発現に関連する。
【0005】
国際特許出願の国際公開第WO2020092455号(The Broad Inst. Inc.(ザ・ブロード・インスティテュート・インコーポレイテッド)ら)は、遺伝子発現のシグネチャーを使用して候補CAR T細胞を選定するための方法を開示する。文書はまた、がんを治療するためにこれらの選定された細胞を使用すること、および遺伝子発現シグネチャーにより治療の成果を予測するモードを開示する。同様の方法において、国際特許出願のWO2018209324(The Broad Inst. Inc.ら)は、T細胞における遺伝子発現の別のシグネチャー(例は、CAR T細胞)をそれによる治療の成果、ならびに予想される全生存の予測のために提案する。
【0006】
これらすべての以前の方法は、遺伝子発現出力として遺伝子および/またはポリペプチドを検出するための遺伝子シグネチャーに主として基づき、複数のタイプの試薬手段、例えば、特異的なハイブリダイゼーションプローブ、増幅および/または配列決定用のプライマー、抗体またはフラグメント、アプタマー、各反応用の特定の溶媒または緩衝剤および付随する検出可能な標識、および定められる各マーカーの対応するコントロールなどのようなものを必要とするという欠点を意味する。この複雑さは概して、テストがクリニックに適用されるとき高価であり、および時間がかかるテストを誘導する。さらに、クリニックにおいて求められる手頃な価格で比較的速い時間による望ましい感度を確保するには、高品質の試薬が必要であり、またこれもテストのコストが増加する一因である。
【0007】
このように、CAR T細胞治療に対する反応を予測するためのいくらかの方法およびバイオマーカーはあるが、十分に信頼性があり、遺伝子シグネチャー(即ち、遺伝子発現)を定めることでの欠点を意味しない他の方法の必要性が依然として存在する。また、反応だけでなく、この反応の他の重要な態様、例えば、反応のタイプ(最も可能性の高い成果)などのようなものを、例えば、寛解の確率を含めて予測する、より一層有益な情報を与える方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、驚くべきことに、事前注入されたCAR T細胞(特にCD19(CART19)に対して向けられるもの)において、およびDNAメチル化マイクロアレイに基づいて観察された特定のエピジェネティックプロファイルが、完全臨床反応(CR)および改善されたイベントフリーの生存(EFS)および養子細胞治療を受けたB細胞悪性腫瘍の患者の全生存(OS)と関係したことを発見した。CAR T細胞のDNAメチル化研究(例は、CART19細胞)はまた、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の一般的な副作用に関係するエピジェネティックな遺伝子座も識別した。シグネチャーは、CAR T細胞(特にCART19)療法の臨床的利益が、ナイーブ様または初期メモリー表現型T細胞における豊富な注入生産物において主に生じることを示唆する。本発明者は、有利なことに、タンパク質レベルの調節と関係する単一遺伝子のDNAメチル化状態が、容易に定められ得、タンパク質レベルを調節するために治療の臨床的利益の予測因子としても価値があることを見出した。
【0009】
本発明者の知る限りでは、注入される細胞のメチル化プロファイルが治療の成功に関連する情報を与えるというのはこれが初めてである。
【0010】
このように、本質において、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法がここで共に開示され、本方法は以下の:
(a)CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られること、および(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、および一つ以上のCpG部位のメチル化状態が、前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内である場合に対象がCAR T細胞療法に反応すると定めること
を含む。
【0011】
このように、第1の態様では、本発明は、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法に関し、本方法は以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンは次の:
ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体6の105907265位でのシトシン;ヒト染色体1の234087867位でのシトシン;ヒト染色体11の32353565位でのシトシン;ヒト染色体10の22634199位でのシトシン:ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;ヒト染色体6の79780164位でのシトシン;およびヒト染色体8の28725934位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一つ以上のCpG部位のものである場合、対象がCAR T細胞療法に対して反応する(即ち、それはこの自己細胞療法への候補である)ことを定めること
を含む。
【0012】
また、ここで共に、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法も開示し、本方法は以下の:
(a)CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:
ヒト染色体2の86332162位でのシトシン、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン;ヒト染色体2の45028225位でのシトシン;ヒト染色体1の220414164位でのシトシン;ヒト染色体6の209809位でのシトシン;ヒト染色体1の62905816位でのシトシン;ヒト染色体6の79780164位でのシトシン;およびヒト染色体8の28725934位でのシトシンからなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、および一つ以上のCpG部位のメチル化状態が、前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内である場合、対象がCAR T細胞療法に対して反応する(即ち、それはこの自己細胞療法への候補である)ことを定めること
を含む。
【0013】
これらのDNAメチル化遺伝子座(CpG部位でのシトシン)と関係する遺伝子のほとんどは、次のセクションで詳しく説明するように、タンパク質レベルの調節に関与する。
【0014】
以下の例で説明するように、この方法を行うことは、治療に対する反応の最も可能性の高い成果、つまり、寛解が起こらないことを意味する完全奏功(CR)に関する貴重な情報を与える。主な研究成果は、治療の成功を確実にするパラメーターである改善されたイベントフリー生存(EFS)および全生存(OS)であった。このように、CRにリンクされたこれらの部位を使用して、特定のシグネチャー(この説明では、EPICARTおよびEPICART18と呼ばれる)が確立され、それらはCRおよび強化されたEFSおよびOSに関係した。
【0015】
有利には、これらの一つ以上のCpG部位のメチル化の決定は、メチル化決定のための特定の試薬および技術を用いて均等に実行される。このように、提案された方法は、他のシグネチャー、例えば、遺伝子発現などのようなものを定める他の方法に関してより一層単純な方法論がメチル化の決定に関与するという利点を意味する。
【0016】
さらに、動作特性(ROC)曲線による精度は高かった(EPICARTについて、曲線下面積[AUC]平均=0.91、95%CI=0.85-0.97、およびEPICART18について、約0.8のAUC値)。
【0017】
CAR T細胞療法に対する反応を予測する新しい方法のこれらすべての利益はその適用を促進し、それはそれを必要とする対象(例は、B細胞悪性腫瘍を患う対象)でのその成功が確実にされるからである。
【0018】
可能性がある治療の成果が定められると、その特定の対象について同じ治療が推奨されるかどうかを決定することができる。このように、本発明の別の態様(第2)は、B細胞悪性腫瘍を患う対象についてCAR T細胞療法を開始するかどうかを決定および/または推奨する方法であり、その方法は、第一の態様において規定するインビトロ方法を行うことを含み;およびそこで対象がCAR T細胞療法に反応すると定められる場合、そのときこの療法が推奨される。このように、本発明は、B細胞悪性腫瘍を患う対象についてCAR T細胞療法を開始するかどうかを決定および/または推奨する方法に関し、本方法は、(a)対象から分離した後あらかじめ形質導入されたCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることであり、前記CpG部位は第1の態様について示されたリストから選ばれること、および(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態を基準値または範囲と比較することを含む。
【0019】
養子細胞療法において使用するときに増大された治療効果により最終的に変換される改善された分化能を有するT細胞を得るための方法が本分野で提案されている。増大された治療効果は、反応の予測とは異なり、ましてや非常に良好な成果をもたらす完全奏功の予測とは異なる。改善された分化能を有するT細胞を得るための方法の一例は、国際特許出願WO2020170231(St. Jude's Children Research Institute(セント・ジュード・チルドレン研究所))に開示される。この分化の状態の決定は一定のCpG部位のメチル化状態の分析を使って行われる。治療効果を規定するこのメチル化シグネチャーに基づいて、本発明者らは、WO2020170231において、治療に使用される調節されたメチル化プロファイルを有するT細胞集団(例えば、CAR T細胞)を提案する。この「調節されたメチル化プロファイル」は、独立して測定された各々の集団のメチル化状態によって定められる多分化能スコアに基づいて増加した分化能を有する少なくとも2つの集団を組み合わせた結果である。
【0020】
CAR T細胞のケースにおいて増加した分化プロフィールを有する集団のこの組合せを調製する前に、それらがさらにレスポンデントのシグネチャーに対応するかどうかを調べるためにテストされる場合、改善された治療効果さえも提供される。
【0021】
このように、第3の態様では、本発明はさらに、CAR T細胞のCpG部位におけるメチル化プロファイルを調節する方法に関し、本方法は、第1の態様において規定されるような方法を最初に行うステップ;ならびに分化および/または治療の有効性に関連するメチル化プロファイルをさらに調節することを含み、前記調節することは、以前の著者によって開示され、および当技術における熟練の人によって知られるような方法を使って行われる。
【0022】
本発明者はまた、CAR T細胞のCpG部位におけるメチル化状態を直接修飾する方法を提案し、方法は第1の態様において規定される方法を最初に行うステップ;およびCAR T細胞による治療に対する反応に対応するメチル化プロファイルを得ためにメチル化状態をさらに修飾することを含む。
【0023】
次いでこれらすべての方法によって得られ得るT細胞集団は、それらおよび一つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む製剤組成物に含まれる。
【0024】
本発明の別の態様はまた、キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するための、第1および第2の態様のいずれかの方法における一つ以上のCpG部位シトシンのDNAメチル化状態を定めるのに適したDNAオリゴヌクレオチドを含む手段の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】CAR形質導入の際の患者でのT細胞におけるDNAメチル化の変化を検出するために開発された実験計画を伴うグラフスキームを示す。
【
図2】CART19療法で治療されたB細胞悪性腫瘍を有する患者における完全奏効およびイベント-フリー生存(EFS)と全生存(OS)とのDNAメチル化予測シグネチャー(EPICART)関連を示す。(A)完全奏効の存在またはその不存在に応じた34人のB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)とOS(右)のカプラン-マイヤー分析(部分応答[PR]+安定疾患[SD]+疾患の進行[PD])。(B)CRに関連する32のCpG部位のメチル化状態によって規定される、事前注入されたCART19細胞におけるEPICARTシグネチャーの存在に従った同じB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)およびOS(右)のカプラン-マイヤー分析(EPICART陽性[+]シグネチャー)。すべてのケースについて、Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。イベント数も表示する。
【
図3】(A-G)は、養子細胞療法で治療されたB細胞悪性腫瘍患者における完全な臨床反応と関係する7つの単一CpG遺伝子座のCART19細胞事前注入メチル化状態に関するEFSのカプラン-マイヤー推定値を示す。Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【
図4】(A-G)は、養子細胞療法で治療されたB細胞悪性腫瘍患者における
図3の7つの単一CpG遺伝子座のCART19細胞事前注入メチル化状態に関してOSのカプラン-マイヤー推定値を描く。Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【
図5】例2と関連して、CART19療法で治療されたB細胞悪性腫瘍を有する患者の発見コホートにおけるイベント-フリー生存(EFS)および全生存(OS)と関係する完全奏効およびDNAメチル化シグネチャー(EPICART18)を示す。(A)完全奏効の存在またはその不存在に従った79人のB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)とOS(右)のカプラン-マイヤー分析(部分応答[PR]+安定疾患[SD]+疾患の進行[PD])。(B)CRに関係する18個のCpG部位のメチル化状態によって規定される、事前注入されたCART19細胞におけるEPICART18シグネチャーの存在に基づく、同じB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)とOS(右)のカプラン-マイヤー分析(EPICART18陽性[+]シグネチャー、図では簡略化し、およびEPICARTとして指し示す)。すべてのケースについて、Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【
図6】例2と関連して、CART19療法で治療されたB細胞悪性腫瘍を有する患者の検証コホートにおけるEFSおよびOSと関係する完全奏効およびEPICART18シグネチャーを示す(図ではEPICARTと略記)。(A)完全奏効の存在またはその不存在に従った35人のB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)とOS(右)のカプラン-マイヤー分析(部分応答[PR]+安定疾患[SD]+疾患の進行[PD])。(B)CRに関係する18個のCpG部位のメチル化状態によって規定される、事前注入されたCART19細胞におけるEPICART18シグネチャーの存在に従った同じB細胞悪性腫瘍患者におけるEFS(左)とOS(右)のカプラン-マイヤー分析(EPICART陽性[+]シグネチャー)。すべてのケースについて、Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【
図7】(A-F)は、例2と関連して、養子細胞療法で治療されたB細胞悪性腫瘍患者における6つの候補の単一CpG遺伝子座のCART19細胞事前注入メチル化状態に関するEFSのカプラン-マイヤー推定値を描く。Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【
図8】(A-F)は、例2と関連して、養子細胞療法で治療されたB細胞悪性腫瘍を有する患者における6つの候補の単一CpG遺伝子座のCART19細胞事前注入メチル化状態に関してOSのカプラン-マイヤー推定値を示す。Pはログランク関数を使用して計算した。単変量コックス回帰分析は95%信頼区間(95%CI)のハザード比(HR)として表す。P<0.05の値は統計的に有意であると考えた。
【0026】
本発明の詳細説明
ここで使用されるすべての用語は、別の記載がない限り、当技術で知られているそれらの通常の意味で理解されるべきである。本出願で使用される一定の用語についての他のより一層具体的な定義は以下に記載するとおりであり、別途明示的に定められた定義がより一層広い規定を提供しない限り、明細および請求の範囲全体に均一に適用されることが意図される。
【0027】
ここで使用されるように、不定冠詞「a」および「an」は、「少なくとも一つ」または「一つ以上」と同義である。特に明記しない限り、ここで使用される定冠詞、例えば、「the」などのようなものにはまた、名詞の複数形も含まれる。
【0028】
本発明の意味において、「DNAメチル化シグネチャー」または「DNAメチル化状態」という表現(ここで共に同義の表現として使用される)は、特定のヌクレオチド、ヌクレオチド配列または配列セット(配列の群)における定性的および定量的メチル化に関する。DNAメチル化は、シトシンまたはアデニンDNAヌクレオチドにメチル基が付加される生化学的プロセスである。最も具体的には、メチル化はCpGアイランドで通常見られ、それはCpG部位が高頻度で存在する領域である。CpG部位またはCG部位はまた、その長さに沿った塩基の線形配列においてシトシンヌクレオチドがグアニンヌクレオチドの隣に生じるDNA(またはDNAゲノム配列)の領域である。CpGジヌクレオチドでのシトシンは5-メチルシトシンを形成するためにメチル化することができる。CpG部位は明確に規定されたゲノム領域であり、およびそれらはIllumina(R)(イルミナ)((R)は米国等での登録商標表示)のCpG Loci Identification(CpG遺伝子座識別)に従って、前記領域にcg_ナンバーとして識別番号(ID)が与えられるデータベースにおいてインデックス付けされ、そこでCpGジヌクレオチドの前後の隣接配列領域は独特なCpGクラスターIDs(cg_ナンバー)を生成するために使用される。このように、特定のモードでは、「一以上のCpG部位のメチル化状態」という用語は、識別された各CpG部位の一定のシトシンにおけるメチル化の存在、不存在、および/または量に関する。DNAの、および特に任意のCpG部位のメチル化状態は随意に、「メチル化値」または「メチル化レベル」によって表すか、または指し示すことができる。メチル化値、スコアまたはレベルは、例えば、次の式(I):
β値Cyt=max(ymethCyt, 0)/[max(yunmethCyt, 0)+max(ymethCyt, 0)](I)
を使って、例えば、0から1までの範囲のβ値を使用してシトシンでのメチル化を定量化することによって生成することができ、そこで、max ymethCytはCpG部位セットにおけるメチル化シトシンについて検出された最大シグナル強度であり、およびmax yunmethCytはCpG部位またはPcP部位のセットでの非メチル化シトシンについて検出された最大シグナルである。各CpG部位について、この部位において差示的メチル化が存在するかどうかを決定するために、特定のカットオフを固定することができる。加えて、メチル化の指標を取得するために、メチル化スコア、または2つ以上のCpG部位のレベルを複雑な式またはアルゴリズムにおいてコンピュータ化することができ、それはまた、サンプルのメチル化状態に関する決定をし、および次いで調査した相関関係、例えば、治療に対する反応の確率などのようなものを安定化させるために使用することもできる。例えば、レスポンデントのシグネチャーまたはインデックスを計算するために1つ以上のCpG部位を機械学習アルゴリズムへの入力として使用することができる。例えば、一定の例では、レスポンデントのインデックスを取得するために1クラス-ロジスティック回帰を使用することができる。ここで適用することができる広く使用される機械学習方法、アルゴリズム、コンピュータプログラム、またはシステムのさらなる例には、制限されないが、ニューラルネットワーク(多層パーセプトロン)、サポートベクターマシン、k最近接、混合ガウスモデル、ガウス、単純ベイズ(naive Bayes)、デシジョンツリー、RBF分類子が含まれる。いくつかの実施形態では、レスポンデントのインデックスは、線形分類子(例として、部分的最小二乗行列式分析(PLS-DA)、フィッシャーの線形判別式、ロジスティック回帰(例は、1クラスロジスティック回帰)、ナイーブベイズ分類子(Naive Bayes classifier)、パーセプトロン)、サポートベクターマシン(例として、最小二乗サポートベクターマシン)、二次分類子、カーネル推定(例として、k最近接)、ブースティング、デシジョンツリー(例として、ランダムフォレスト)、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、隠れマルコフモデル、または学習ベクトル量子化を使用して生成される。
【0029】
「測定すること」および「定めること」という用語は全体を通じて交換可能に使用され、および対象サンプルを取得すること、および/またはサンプルにおいてバイオマーカーのメチル化状態またはレベル(即ち、CpG部位のシトシンメチル化)を検出することを含む方法に言及する。この説明において、一つ以上のCpG部位のメチル化状態が決定されることが指し示されるとき、CpG部位の指し示されたシトシンにおけるメチル化が決定されると理解される。したがって、「CpG部位でのシトシン」または「CpG部位」という表現もまた交換可能に使用される。
【0030】
ここで使用される「基準値」または「基準間隔(reference interval)」という用語は、対象から収集されたサンプルから得られ、およびこの特定の場合にはCAR形質導入されたT細胞から得られた値またはデータを評価するための基準として使用されるあらかじめ定められる基準に関する。基準値または基準レベルは絶対値;相対値;上限または下限を有する値;値の範囲(基準間隔);平均値;中央値、平均値、または特定のコントロールまたはベースライン値と比較した値であることができる。基準値は、例えば、検査される対象からのサンプルからであるが、より一層早い時点で得られる値などのような、個々のサンプル値に基づくことができる。基準値は、歴齢が一致するグループの対象の集団からなどのような多数のサンプルに基づき、または検査されるサンプルを含むか、または除外するサンプルのプールに基づくことができる。1つ以上のCpG部位のメチル化状態について基準値が決定された。各CpG部位の値の範囲、および異なるCpG部位での値の特定の組合せは、高い感度および特異性により対象の正確な分類を提供する。
【0031】
「完全奏効(CR)」という用語は、CAR T細胞療法が十分に機能することに関し、それは臨床用語では、治療が施された疾患の寛解がないとして変換される(is translated with no remission)。それは、「部分応答(PR)」に、「安定疾患(SD)」に、または「疾患の進行(PD)」に対立するとして規定される。部分応答は、疾患の完全奏効に達することなく、治療に応じてがんの程度が減少することを意味し、安定した疾患には、対象が依然として疾患に苦しんでいるものの、より一層悪い転帰には発展しないタイプの反応が含まれる。疾患の進行は、病気が治療前の初期よりもさらに悪いシナリオに発展することを意味するが、この悪化は治療と直接関係しない(即ち、治療が単にはたらかなかった)。
【0032】
「全生存(OS)」という用語は、がんなどのような疾患についての診断日または治療開始日のいずれもからの、その疾患と診断された患者がまだ生存している時間の長さに言及する。臨床試験では、全生存期間を測定することは、新しい治療がどの程度うまくはたらくかを見る1つのやり方である。
【0033】
がんにおける「イベントフリー生存(EFS)」という用語は、がんの一次治療終了後、治療によって予防または遅延が意図された一定の合併症またはイベントが患者に生じていないままである時間の長さに対応する。これらのイベントには、がんの戻り、または一定の症状、例えば、骨に広がるがんによる骨の痛みなどのようなものの発症が含まれ得る。臨床試験では、イベント-フリー生存期間を測定することは、新しい治療法がどの程度うまくはたらくかを見る1つのやり方である。
【0034】
この明細の特定のケースでは、CD19抗原(CART19)に対するCAR T細胞療法と関連するとき、EFSは、CART19治療の開始から最初の進行、再発、または死亡の発生までの時間として規定された。全生存(OS)はCART19治療の開始から死亡までの時間として規定した。
【0035】
前に指し示したように、本発明の第1の態様は、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法であり、本方法には以下の:
(a)CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は、ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471):ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一つ以上のCpG部位のものである場合、対象がCAR T細胞療法に対して反応する(即ち、それはこの自己細胞療法への候補である)ことを定めること
が含まれる。
【0036】
本発明の第1の態様の特定の実施形態の、自己キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するためのインビトロ方法では、本方法には以下の:
(a)CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:
ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、および一以上のCpG部位のメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内である場合、対象がCAR T細胞療法に反応することを定めること
が含まれる。
【0037】
前の段落における括弧内にcg_ナンバーとして指し示された識別情報は、前に示したように、データベース内のプローブ配列のインデックス付けされた一意の識別番号(ID)に対応し、それにより、CpG部位における興味あるシトシンの識別が、Illumina(R)のCpG遺伝子座識別に従って可能になる。このCpG遺伝子座識別により、興味あるシトシンを含むCpGジヌクレオチドの周囲の隣接配列領域は一意のCpGクラスターIDs(cg_ナンバー)を生成するために使用される。括弧内のこれらのcg_ナンバーはまた、この説明全体を通して次の段落にてCpG遺伝子座において列挙されたシトシンについても示す。
【0038】
第1の態様の特定の実施形態では、メチル化状態は、1、2、3、4、5、6、7または8つの示されたシトシンにおいて決定される。
【0039】
2つ以上のCpG部位の組合せにより、反応を定める方法の精度を調整することができる。いずれの場合も、CpG部位の前記シトシンのメチル化状態の1つだけが前記基準値に等しいか、またはレスポンダープロファイルの基準値の範囲内にある場合、対象から分離され、およびさらにCARで形質導入されたサンプルはレスポンデント対象と考えられる。
【0040】
第1の態様のより一層詳細な実施形態では、CAR T細胞の以下のCpG部位のメチル化状態が決定される:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);およびヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)。
【0041】
これら6つのマーカーはそれぞれ、有意な拡張EFSおよび長期OSの両方に個別に関係する。このように、本発明者らは、単独で分析した場合、より一層良好なEFSおよびOSと関係するこれら6つのエピゲノム遺伝子座を提案する。さらに、これらの6つの遺伝子座も個別に完全奏功に関係した。このように、これらの6つのシトシン(即ち、6つの遺伝子座のパネル)のメチル化状態の決定は、対象が自己CAR T細胞療法に反応するかどうかを迅速に知るために簡略化された方法を想定している。
【0042】
より一層詳細な実施形態では、CAR T細胞療法に対する完全奏功が定められ、および以下の:一つ以上のヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216)がメチル化されていることが見出され;および/またはヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)がメチル化されていないことが見出されるとき、高い/拡張されたEFSおよびOSが得られる。
【0043】
以下のテーブルAは、識別された遺伝子内のこれら6つの遺伝子座を相関/関連付け、またはそうでない。これら6つのDNAメチル化遺伝子座と関係する4つの遺伝子はPTCD3およびPOLR1Aであり、リボソームでのタンパク質生成制御;SLC35F3、T細胞浸潤に関与するチアミントランスフェラーゼ;TRAILシグナル伝達を通じて細胞のアポトーシスを制御するSPAG6に関与する。CAR-T耐性および転写開始部位でのCpG位置を克服するためにTRAIL変異体の使用が提案されていることを考慮して、SPAG6をさらに研究した。過剰メチル化に関連したサイレンシングはまた、そのプロモーター領域において差示的にメチル化された識別CpG部位を有する別の候補遺伝子であるPTCD3でも見出された。
【0044】
【0045】
より一層詳細な実施形態では、随意に上記または下記の実施形態のいずれかと組み合わせて、前に列挙した6つのシトシンの一つ以上(即ち、1、2、3、4、5または6)が決定されるとき、インビトロ方法は、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の123944014位でのシトシン(cg10236435);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体18の60877850位でのシトシン(cg11416737);およびヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0046】
より一層詳細な実施形態では、方法は、前の段落で示されたサイトカインのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12におけるメチル化状態を定めることを含む。
【0047】
これら12個のシトシンのメチル化状態のいずれか一つは、示された最初の6個に追加すると、方法の精度を向上させることができた。
【0048】
実際、第1の態様のさらに別のより一層詳細な実施形態では、CAR T細胞の以下の18個のCpG部位におけるシトシンのメチル化状態を決定する:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の123944014位でのシトシン(cg10236435);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体18の60877850位でのシトシン(cg11416737);およびヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358)。
【0049】
実際、これら18個のマーカーのパネルには、メチル化状態(メチル化または非メチル化)が完全奏功と相関するすべてのシトシンが含まれる。興味深いことに、分類モデルを取得するために、この18CpG部位パネルを使用すると、以下の例および図で説明するように臨床的価値を有するエピジェネティックなシグネチャー(以下、EPICART18シグネチャーと称する)が得られる。陽性シグネチャー(EPICART18+と名付けられる)は、細胞の形質導入の前後でこれらのCpG部位に差示的メチル化が存在することを意味し、改善されたまたは高いイベントフリー生存(EFS)および全生存(OS)と関係する。
【0050】
次のテーブルBは、6つのパネルについて前にコメントしたように、CpG部位での各々の18のシトシンが関連遺伝子と相関するか、またはそうでない。
【0051】
【0052】
6または18のCpG部位でのパネルに由来する陽性シグネチャーが確立されるとき、対象は治療に完全に反応すると考えられる。
【0053】
第1の態様の特定の実施形態では、インビトロ方法は、自己CAR T細胞療法に対する対象の反応が完全奏功である場合を定めることを可能にし、それは治療後に疾患の寛解が観察されないことを意味する。
【0054】
また、前に指し示したように、第1の態様の特定の実施形態では、本方法は、以下の:
ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれる一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることを含む。
【0055】
第1の態様の前述の実施形態のさらに別のより具体的な実施形態では、CAR T細胞の以下のCpG部位のメチル化状態を定める:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)。
【0056】
これら7つのマーカーはそれぞれ、有意な拡張EFSおよび長期OSの両方に個別に関連付けられる。このように、本発明者らは、単独で分析して、より良好なEFSおよびOSと関連するこれらの7つのエピゲノム遺伝子座を提案する。さらに、これら7つの遺伝子座も個別に完全奏功に関連した。このように、これらの7つのシトシン(即ち、7つの遺伝子座のパネル)のメチル化状態の決定は、対象が自己CAR T細胞療法に反応するかどうかを迅速に知るための簡略化された方法を想定する。
【0057】
より一層詳細な実施形態では、CAR T細胞療法に対する完全奏功が定められ、および以下の:
一つ以上のヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941)、ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055)、およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)がメチル化されていることが見出され;および/またはヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578)がメチル化されていないことが見出されるとき、高い/拡張されたEFSおよびOSが得られる。
【0058】
以下のテーブル3は、識別された遺伝子内のこれら7つの遺伝子座を相関/関連付け、またはそうでない。太字のシトシンはこれらの7つに関連する。これら7つのシトシンには、5つの遺伝子が含まれる。これら7つのDNAメチル化遺伝子座と関係する5つの遺伝子がタンパク質レベルの調節に関与していることに注目される。このように、遺伝子と関係する少なくとも一つ以上のCpG部位は、タンパク質レベルを調節する遺伝子から選ばれるCpG部位におけるシトシンである。このように、例えば、USP1、RAB3GAP2、およびPHIPはユビキチン経路によるタンパク質分解に関与し、ならびにPTCD3およびPOLR1Aはリボソームでのタンパク質生成において役割を果たした。USP1の場合は、完全な臨床反応を達成していないCART19注入患者のCD8 T細胞において過剰発現する遺伝子であるDNA結合のインヒビター2(ID2)、30のタンパク質発現レベルをそれが制御するため、特に関連することができた。
【0059】
第1の態様の別のより具体的な実施形態では、7つのセットにおける前のCpG遺伝子座の一つ以上が定められるとき、および随意に上記または下記の実施形態のいずれかと組み合わせて、本インビトロ方法は、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136)、ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体15の95870440位でのシトシン(cg18739950);ヒト染色体10の104470719位でのシトシン(cg12700402);ヒト染色体22の43253559位でのシトシン(cg01029450);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体12の131166906位でのシトシン(cg26098972);ヒト染色体16の68481342位でのシトシン(cg05948940);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体4の183063459位でのシトシン(cg19759671);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体12の3600764位でのシトシン(cg11596580);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の133000178位でのシトシン(cg09698465);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体9の19229767位でのシトシン(cg13469590);およびヒト染色体1の24229300位でのシトシン(cg24452347)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0060】
より一層詳細な実施形態では、本方法は、指示されたサイトカインの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、19、20、21、22、23、24、または25におけるメチル化状態を定めることを含む。
【0061】
指し示された最初の8個に、特に前の実施形態で特定した7個のパネルに、これら25個のシトシンのメチル化状態を追加すると、本方法の精度を向上させることができた。
【0062】
実際、第1の態様のより一層詳細な実施形態では、インビトロ方法は、対象からの分離サンプルに由来するCAR T細胞の以下の32個のCpG部位:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136)、ヒト染色体6の6643814位シトシン(cg09367268);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体15の95870440位でのシトシン(cg18739950);ヒト染色体10の104470719位でのシトシン(cg12700402);ヒト染色体22の43253559位でのシトシン(cg01029450);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体12の131166906位でのシトシン(cg26098972);ヒト染色体16の68481342位でのシトシン(cg05948940);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体4の183063459位でのシトシン(cg19759671);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体12の3600764位でのシトシン(cg11596580);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の133000178位でのシトシン(cg09698465);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体9の19229767位でのシトシン(cg13469590);およびヒト染色体1の24229300位でのシトシン(cg24452347)のメチル化状態を定めることを含む。
【0063】
実際、これらの32のマーカーのパネルには、メチル化状態(メチル化または非メチル化)が完全奏功と相関するすべてのシトシンが含まれる。興味深いことに、我々が分類モデルを取得するためにこの32のCpG部位を使用するとき、以下の例および図で説明するように、それは臨床的価値を有するエピジェネティックなシグネチャー(以下、EPICARTシグネチャーと称する)を提供する。陽性シグネチャー(EPICART+と呼ばれる)は、細胞の形質導入の前後でこれらのCpG部位に差示的メチル化が存在することを意味し、向上したまたは高いイベントフリー生存(EFS)および全生存(OS)と関係する。
【0064】
次のテーブル3は、前にコメントしたように、CpG部位での32のシトシンのそれぞれが関連遺伝子と相関するか否かを示す。
【0065】
【0066】
7または32のCpG部位でのパネルに由来する陽性シグネチャーが確立されるとき、対象は治療に完全に反応すると考えられる。
【0067】
第1の態様の特定の実施形態では、インビトロ方法は、自己CAR T細胞療法に対する対象の反応が完全奏功であることを定めることを可能にし、それは治療後に疾患の寛解が観察されないことを意味する。
【0068】
以下の例に説明するように、18のCpG部位のパネル、および従ってそこに含まれる前の実施形態で特定された6つのシトシンのパネル(即ち、6つのCpG部位)、ならびにCpG部位での32のシトシンのパネル、および従ってそこに含まれる前の実施形態で特定された7つのシトシン(即ち、7つのCpG部位)は、サンプルが分離された対象が由来するB細胞悪性腫瘍とは無関係に有利に適用可能であった。このように、一つ以上のCpG部位、特にこれらの6または7、およびさらには18または32は信頼性があり、および任意のB悪性腫瘍に罹患している対象からの分離サンプルに由来するCAR T細胞に適用可能である。
【0069】
「B細胞悪性腫瘍」(または同義語としてB細胞リンパ腫)は、B細胞で形成され、制御不能に増殖するがんである。B細胞リンパ腫は、緩徐進行性(増殖が遅い)または進行性(増殖が速い)のいずれかでもあり得る。B細胞悪性腫瘍の存在を診断するために、医師は患者のサンプル中のB細胞の数が閾値を超えているかどうかをいくつかの手段によって決定する。当技術における熟練した人は、B細胞悪性腫瘍の診断のための、およびいくつかの既存のサブタイプ間のサブ分類のためのサンプリングおよび分析について知っているであろう。特定の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発性B細胞リンパ腫(PMBCL);濾胞性リンパ腫(FL);マントル細胞リンパ腫慢性リンパ性白血病(MCL)、多発性骨髄腫、神経芽腫、膠芽腫、および進行性神経膠腫からなる群より選ばれる。より一層詳細な実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選ばれる。
【0070】
T細胞を含む対象の分離サンプルは、T細胞が直接得られ、または細胞、特に適切な細胞培地中での活性化後にT細胞に誘導されることができる単核細胞を含む任意の組織(例は、組織生検)または生体液(例は、末梢血)として理解されるべきであることは、熟練した人には分かるであろう。取得されたこれらのT細胞は、一旦細胞膜において発現されると腫瘍抗原を認識する、CARで形質導入されたものである。
【0071】
第1の態様の別の特定の実施形態では、随意に上記または下記の実施形態と組み合わせて、分離サンプルはリンパ球T細胞を含む生体液から選ばれる。より具体的には、それは、血液、末梢血単核球を含む白血球除去流体、およびそれらの組合せから選ばれる。特定の実施形態では、分離サンプルは、CAR形質導入されるT細胞の集団を得るためにT細胞培地中で活性化される末梢血単核細胞を含む白血球除去流体である。
【0072】
第1の態様の別の特定の実施形態では、CARは、抗原関連腫瘍を標的とするものであり、およびBリンパ球抗原CD19(UNIPROT P15391、標準配列としてのアイソフォーム1、2007年11月13日の配列のバージョン6、UniprotKBデータベースのバージョン215)からなる群より選ばれる。他のCARsは一よりも多くの抗原関連腫瘍を標的とする(つまり、CD19、CD5、CD20)。これらの多重標的CARsは、複数の抗原関連腫瘍の標的化を可能にするタンパク質(通常は融合タンパク質)である。
【0073】
第1の態様のより一層詳細な実施形態では、CARはBリンパ球抗原CD19である。このように、CARは、Bリンパ球抗原CD19に特異的に結合する細胞外抗原結合要素、細胞外領域および膜貫通領域を含む。なおより一層詳細な実施形態では、抗原結合要素は抗CD19 scFvであり、さらにより好ましくはマウスまたはヒト抗CD19 scFvである。これらの抗原結合要素は、例えば、国際特許出願WO2015187528に開示されている。さらにより一層詳細な実施形態では、CARは、CD28共刺激ドメインに、およびCD3ゼータ鎖に融合された抗CD19モノクローナル抗体FMC63、またはその断片を含む。より具体的には、この融合タンパク質において、scFvは、ヒトCD19に結合するmAbクローンFMC63に由来し、および「Whitlow(ホイットロー)」リンカーペプチドを介してVLおよびVH領域を融合することによって生成され;次いで、このscFVは、修飾されたヒトIgG4ヒンジおよびCH2-CH3領域に付着され、およびCD28(膜貫通および細胞質)ドメインおよびCD3ゼータ鎖(細胞質)ドメインに融合される。
【0074】
メチル化状態の決定は、当技術における熟練した人に知られているいくつかの方法および技術によって行うことができる。
【0075】
最も普通な方法の1つはメチル化部位に特異的なプローブの使用である。したがって、第1の態様のインビトロ方法の別の特定の実施形態では、CpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態は、各CpGのシトシンを含む配列に相補的な、および決定された位置でのシトシンがメチル化されているか、またはメチル化されていない場合に差示的シグナルを生成する一つ以上のオリゴヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチドのセットにより定める。より一層詳細な実施形態では、差示的シグナルは、蛍光シグナル、化学発光シグナルおよびそれらの組合せから選ばれる。このシグナルは主に、検出される配列に相補的なオリゴヌクレオチドに関係した、特に共有結合した化合物による蛍光または化学発光のいずれかの放射の結果である。
【0076】
あるいはまた、別の実施形態では、CpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態は、各CpG部位のメチル化シトシンを含む配列に相補的な一つ以上のオリゴヌクレオチド、および各CpG部位の非メチル化シトシンを含む配列に相補的な一つ以上のオリゴヌクレオチドを含むDNAオリゴヌクレオチドのセットにより定める。
【0077】
一例では、CAR T細胞(例は、CD8 T細胞)のゲノムにおける任意の個々のシトシンまたはシトシンのグループのメチル化状態は、中でもインフィニウム・メチル化EPICアレイ(Infinium MethylationEPIC Array)(およそ850,000のCpG部位)およびリキッドハンドラーによるアレイの自動処理(イルミナインフィニウムHDメチル化アッセイ経験があるユーザーカード(Illumina Infinium HD Methylation Assay Experienced User Card)を含め、標準化された方法論を使用して定めることができる。他の例には、Illumina(R)HumanMethylation 450 Bead ChiP(イルミナ・ヒューマンメチル化450ビーズチップ)キットが含まれる。Illumina(R) HumanMethylation 450 Bead ChiPキットは、亜硫酸水素塩変換されたゲノムDNAの高度に多重化されたジェノタイピングに基づく方法である。亜硫酸水素塩で処理すると、非メチル化シトシン塩基はウラシルに変換され、その一方でメチル化シトシン塩基は変化しないままである。これらの化学的に分化した遺伝子座は、2つの部位特異的プローブ(DNAオリゴヌクレオチド)を使用して調べられ、1つは特定のゲノム領域のメチル化遺伝子座用に設計され、およびもう1つは非メチル化遺伝子座用に設計される。プローブには標識されたddNTPが組み込まれており、それはその後蛍光試薬で染色される。調べられた遺伝子座についてのメチル化レベルは、メチル化部位対非メチル化部位からの蛍光シグナルの比を計算することによって決定することができる。DNAメチル化シグネチャーを確立するための他の方法論は専門家に知られており、およびメチル化特異的PCR(Methylation-Specific PCR、MSP)、ChIP-on-chip(チップ-オン-チップ)アッセイ、亜硫酸水素塩処理DNAのパイロシークエンシング、および高分解能融解分析(HRMまたはHRMA)、制限酵素ランドマークゲノムスキャニング、COBRA、Ms-SNuPE、メチル化DNA免疫沈降(MeDip)、亜硫酸水素塩処理DNAのパイロシークエンシング、DNAアデニンメチルトランスフェラーゼ活性のための分子ブレイクライトアッセイ、メチル感受性サザンブロット、メチルCpG結合タンパク質、質量分析、HPLC、および縮小表現亜硫酸水素塩シークエンシング(reduced representation bisulfite sequencing)が含まれる。いくらかの実施形態では、メチル化は、亜硫酸水素塩処理後に、および随意にメチル化部位の増幅後にパイロシークエンシングを用いてDNAメチル化の特定の部位にて検出する。パイロシークエンシング技術はリアルタイムでのシークエンシング-バイ-シンセシス(sequencing-by-synthesis)の方法である。いくらかの実施形態では、DNAメチル化は、次世代配列決定を利用したメチル化アッセイにおいて検出される。例えば、DNAメチル化は、亜硫酸水素塩変換、例は、全ゲノム亜硫酸水素塩シークエンシングまたは縮小表現亜硫酸水素塩シークエンシングによる大規模並列シークエンシング(massive parallel sequencing)によって検出され得る。随意に、DNAメチル化は、マイクロアレイ、例えば、ゲノムワイドマイクロアレイなどのようなものによって検出される。特定の実施形態では、DNAメチル化の検出は、非メチル化シトシンがウラシルに変換されるように分析されるDNAを最初に変換することによって実行することができる。一実施形態では、CpGジヌクレオチドモチーフのメチル化形態または非メチル化形態のいずれかを選択的に修飾する化学試薬が使用され得る。適切な化学試薬には、ヒドラジンおよび重亜硫酸塩イオンおよびその他同種類のものなどが含まれる。例えば、分離されたDNAは亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理することができ、それはメチル化されていないシトシンをウラシルに変換し、その一方でメチル化されたシトシンは維持される。理論に束縛されるのは望まないが、亜硫酸水素ナトリウムはシトシンの5,6-二重結合とは容易に反応するが、メチル化シトシンとは反応しにくいことが理解される。シトシンは、脱アミノ化されやすいスルホン化シトシン反応中間体を形成するように亜硫酸水素塩イオンと反応し、スルホン化ウラシルが生成される。スルホン化基はアルカリ条件下で除去することができ、その結果ウラシルの形成がもたらされる。ヌクレオチドの変換は元のDNAの配列における変化をまねく。結果として得られるウラシルが、シトシンの塩基対形成挙動とは異なるチミンの塩基対形成挙動を有することは常識的知識である。そのために、ウラシルはDNAポリメラーゼによってチミンとして認識される。したがって、PCRまたは配列決定後、得られた産物には、出発鋳型DNAにおいて5-メチルシトシンが存在する位置にだけシトシンが含まれる。これにより、非メチル化シトシンおよびメチル化シトシン間の区別が可能になる。
【0078】
第1の態様の別の特定の実施形態では、自己CAR T細胞療法に対する反応を定めるための方法は、識別された候補CAR T細胞またはその集団を分離すること、および増加した候補CAR T細胞またはその集団を得るために分離された候補CAR T細胞またはその集団を随意に増やすことをさらに含む。
【0079】
この特定の実施形態により、CAR T細胞の増大が達成され、および細胞はそれを必要とする対象に投与されるように調製される。熟練した人は、これらのタイプの細胞を増殖させるためのさまざまな方法、ならびに一つ以上の担体および賦形剤を含む承認された製剤上組成物においてそれらを調剤する方法を知っているであろう。
【0080】
本発明者らは、CpG部位での他のシトシンの分析を追加することにより、細胞養子療法と関係する副作用の出現に関する重要な情報を提供することができたことも見出した。特に、サイトカイン放出症候群(CRS);および/または免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の出現の決定である。
【0081】
したがって、第1の態様によるインビトロ方法の別の特定の実施形態では、本方法は、分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体21の36259383位でのシトシン(cg00994804);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体19の18899483位でのシトシン(cg26669806);ヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464);ヒト染色体1の201123894位でのシトシン(cg09554300);ヒト染色体3の45505849位でのシトシン(cg14416782);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);ヒト染色体2の85637673位でのシトシン(cg19627006);ヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400);ヒト染色体14の29990921位でのシトシン(cg20017856);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の105648138位でのシトシン(cg11005552);ヒト染色体8の637813位でのシトシン(cg14755254);ヒト染色体6の110721138位でのシトシン(cg19196401);およびヒト染色体12の130516192位でのシトシン(cg15612205)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0082】
第1の態様のインビトロ方法のより一層詳細な実施形態では、それは次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体21の36259383位でのシトシン(cg00994804);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体19の18899483位でのシトシン(cg26669806);ヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464)ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);およびヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400)からなる群より選ばれるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含む。
【0083】
CpG部位でのこれらの追加の8つのシトシンは、特にCRSの出現に関する非常に正確な情報を提供する。特定の実施形態では、8つすべてが、前に列挙された一つ以上と組み合わせて決定され、およびCAR T細胞療法に対する完全奏功に関する情報が与えられる。このように、第1の態様の方法は、別のさらに特定の実施形態において、CAR T細胞の次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体21の36259383位でのシトシン(cg00994804);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体19の18899483位でのシトシン(cg26669806);ヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);およびヒト染色体6の10415636位でのシトシン,(cg22836400)のCpG部位のメチル化状態を定めることを含む。
【0084】
別の特定の実施形態では、メチル化状態は、1、2、3、4、5、6または7個のシトシンにおいて決定され、CRSの出現の正確な情報が提供される。
【0085】
第1の態様によるインビトロ方法の別の代替の特定の実施形態では、本方法は、分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は、以下の:ヒト染色体1の201123894位でのシトシン(cg09554300);ヒト染色体3の45505849位でのシトシン(cg14416782);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);ヒト染色体2の85637673位でのシトシン(cg19627006);ヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400);ヒト染色体14の29990921位でのシトシン(cg20017856);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の105648138位でのシトシン(cg11005552);ヒト染色体8の637813位でのシトシン(cg14755254);ヒト染色体6の110721138位でのシトシン(cg19196401);およびヒト染色体12の130516192位でのシトシン(cg15612205)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0086】
CpG部位でのこれらの追加の12個のシトシンもまた、特にCRSの出現に関する情報を提供する。特定の実施形態では、12個すべてが、先に列挙した一つ以上と組み合わせて決定され、およびCAR T細胞療法に対する完全奏功についての情報が得られる。別の特定の実施形態では、メチル化状態は、これら12個のシトシンのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11で決定され、CRSの出現の情報が提供される。
【0087】
実際、自己CAR T細胞療法によるCRSの出現は、完全奏効、および特に高いEFSおよびOSの情報を与えるものとは異なる一以上のCpG部位の分析によって効果的に定められる。このように、ここでは、自己CAR T細胞療法によるCRSの出現を予測するためのインビトロ方法も開示され、この方法には、以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体21の36259383位でのシトシン(cg00994804);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体19の18899483位でのシトシン(cg26669806);ヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464);ヒト染色体1の201123894位でのシトシン(cg09554300);ヒト染色体3の45505849位でのシトシン(cg14416782);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);ヒト染色体2の85637673位でのシトシン(cg19627006);ヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400);ヒト染色体14の29990921位でのシトシン(cg20017856);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の105648138位でのシトシン(cg11005552);ヒト染色体8の637813位でのシトシン(cg14755254);ヒト染色体6の110721138位でのシトシン(cg19196401);およびヒト染色体12の130516192位でのシトシン(cg15612205)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態を自己CAR T細胞療法に応じたCRSの出現の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一以上のCpG部位のものである場合、対象におけるCRSの出現を定めること
が含まれる。
【0088】
CRSの出現を予測する方法の特定の例では、すべてのCpG部位(即ち、17のCpG部位)のメチル化状態を定める。より具体的な例では、次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体21の36259383位でのシトシン(cg00994804);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体19の18899483位でのシトシン(cg26669806);ヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);およびヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400)からなる群より選ばれるCAR T細胞の一以上のCpG部位のメチル化状態である。より具体的な例では、8つのCpG部位でのメチル化を定める。別の例では、これらの8つのCpG部位のうちの1、2、3、4、5、6または7つだけが、CRSの出現を予測する方法において定められる。
【0089】
ここでは、自己CAR T細胞療法によるCRSの出現を予測するためのインビトロ方法の代替例も開示し、この方法には、以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位の一つ以上のシトシンは次の:ヒト染色体1のシトシンa1位置201123894(cg09554300);ヒト染色体3の45505849位でのシトシン(cg14416782);ヒト染色体8の2075777位でのシトシン(cg21847720);ヒト染色体2の218340518位でのシトシン(cg14538944);ヒト染色体2の85637673位でのシトシン(cg19627006);ヒト染色体6の10415636位でのシトシン(cg22836400);ヒト染色体14の29990921位でのシトシン(cg20017856);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の105648138位でのシトシン(cg11005552);ヒト染色体8の637813位でのシトシン(cg14755254);ヒト染色体6の110721138位でのシトシン(cg19196401);およびヒト染色体12の130516192位でのシトシン(cg15612205)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態を自己CAR T細胞療法に応じたCRSの出現の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一以上のCpG部位のものである場合、対象におけるCRSの出現を定めること
が含まれる。
【0090】
CRSの出現を予測する方法の特定の例では、CRSの出現を予測するために12のCpG部位のメチル化状態を定める。別の特定の実施形態では、メチル化状態は、これら12個のシトシンのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11で決定され、CRSの出現の情報が提供される。
【0091】
第1の態様によるインビトロ方法(即ち、CAR T細胞療法に対する反応を予測するための方法)のさらに別の特定の実施形態では、本方法は、分離サンプル中のT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は、次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体10の102242535位でのシトシン(cg26195366);ヒト染色体20の23015936位でのシトシン(cg22534145);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体9の124132919位でのシトシン(cg14215970);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体17の686450位でのシトシン(cg12197459);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体8の127568850位でのシトシン(cg21390512);ヒト染色体1の94057587位でのシトシン(cg02978297);ヒト染色体10の134149184位でのシトシン(cg14683065)、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン(cg01412970);ヒト染色体21の36258423位でのシトシン(cg01664727);ヒト染色体2の132481826位でのシトシン(cg14161159)、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン(cg15227982);およびヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0092】
第1の態様のインビトロ方法のより一層詳細な実施形態では、それは次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体10の102242535位でのシトシン(cg26195366);ヒト染色体20の23015936位でのシトシン(cg22534145);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);およびヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679)からなる群より選ばれるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含む。これらの、特にCpG部位での追加の5つのシトシンは、ICANSの出現に関する非常に正確な情報を与える。特定の実施形態では、5つすべてを前に列挙した一つ以上と組み合わせて定め、CAR T細胞療法に対する完全奏功についての情報を与える。別の特定の実施形態では、メチル化状態は、これら5つのシトシンのうちの1、2、3、または4つだけで定め、ICANSの出現の情報を提供する。
【0093】
第1の態様によるインビトロ方法(即ち、CAR T細胞療法に対する反応を予測するための方法)のさらに別の特定の実施形態では、本方法は、分離サンプルにおけるT細胞の形質導入によって得られるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を定めることをさらに含み、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位は、次の:ヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体9の124132919位でのシトシン(cg14215970);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体17の686450位でのシトシン(cg12197459);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体8の127568850位でのシトシン(cg21390512);ヒト染色体1の94057587位でのシトシン(cg02978297);ヒト染色体10の134149184位でのシトシン(cg14683065)、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン(cg01412970);ヒト染色体21の36258423位でのシトシン(cg01664727);ヒト染色体2の132481826位でのシトシン(cg14161159)、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン(cg15227982);およびヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0094】
CpG部位でのこれらの追加の18個のシトシンも、特にICANSの出現に関する情報を与える。特定の実施形態では、18個のすべてを前に列挙した一つ以上と組み合わせて定め、およびCAR T細胞療法に対する完全奏功についての情報を与える。別の特定の実施形態では、メチル化状態は、これら18のシトシンのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17において定められ、ICANSの出現の情報が提供される。
【0095】
実際、自己CAR T細胞療法によるICANSの出現は、完全奏効、特に高EFSおよびOSの情報を与えるものとは異なる一以上のCpG部位の分析によって効果的に定める。このように、ここでは、自己CAR T細胞療法によるICANSの出現を予測するためのインビトロ方法も開示し、この方法には、以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンは次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体10の102242535位でのシトシン(cg26195366);ヒト染色体20の23015936位でのシトシン(cg22534145);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体9の124132919位でのシトシン(cg14215970);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体17の686450位でのシトシン(cg12197459);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体8の127568850位でのシトシン(cg21390512);ヒト染色体1の94057587位でのシトシン(cg02978297);ヒト染色体10の134149184位でのシトシン(cg14683065)、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン(cg01412970);ヒト染色体21の36258423位でのシトシン(cg01664727);ヒト染色体2の132481826位でのシトシン(cg14161159)、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン(cg15227982);およびヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態を自己CAR T細胞療法に応じたICANSの出現の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一以上のCpG部位のものである場合、対象におけるICANSの出現を定めること
が含まれる。
【0096】
ICANSの出現を予測する方法の特定の例では、すべてのCpG部位(即ち、22のCpG部位)のメチル化状態を定める。より具体的な例では、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態は、次の:ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体10の102242535位でのシトシン(cg26195366);ヒト染色体20の23015936位でのシトシン(cg22534145);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);およびヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679)からなる群より選ばれる。より具体的な例では、5つのCpG部位でのメチル化が決定される。別の例では、ICANSの出現を予測する方法において、これら5つのCpG部位のうちの1、2、3、または4つだけが決定される。
【0097】
ここでは、自己CAR T細胞療法によるICANSの出現を予測するためのインビトロ方法の代替例も開示し、この方法には、以下の:
(a)CAR T細胞のCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を決定することであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られ、CAR T細胞のCpG部位の一つ以上のシトシンは次の:ヒト染色体8の65294635位でのシトシン(cg27272679);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体9の124132919位でのシトシン(cg14215970);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体17の686450位でのシトシン(cg12197459);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体8の127568850位でのシトシン(cg21390512);ヒト染色体1の94057587位でのシトシン(cg02978297);ヒト染色体10の134149184位でのシトシン(cg14683065)、ヒト染色体17の17109239位でのシトシン(cg01412970);ヒト染色体21の36258423位でのシトシン(cg01664727);ヒト染色体2の132481826位でのシトシン(cg14161159)、ヒト染色体10の104535854位でのシトシン(cg15227982);およびヒト染色体1の190448126位でのシトシン(cg24365464)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従うこと;および
(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態を自己CAR T細胞療法に応じたICANSの出現の基準値または値の範囲と比較すること、およびメチル化状態が、前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内の一つ以上のCpG部位のものである場合、対象におけるICANSの出現を定めること
が含まれる。
【0098】
特に、ICANSの出現を予測するために18個のCpG部位でのメチル化状態を定める。別の特定の実施形態では、メチル化状態は、これら18個のシトシンの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17において定め、ICANSの出現の情報が提供される。
【0099】
本発明の別の態様は、B細胞悪性腫瘍に罹患している対象に対してCAR T細胞療法を開始するかどうかを決定および/または推奨する方法であり、その方法は、第1の態様で規定されるインビトロ方法を行うことを含み;および対象がCAR T細胞療法に反応すると決定される場合、そのときこの療法が決定および/または推奨される。
【0100】
第1の態様のすべての特定の実施形態はこの第2の態様に適用される。このように、サンプルのタイプおよびその処理、決定される一つ以上のシトシンの追加、細胞における形質導入されたCARのタイプ、B細胞悪性腫瘍、ならびに第1の態様の任意の他の特性である。
【0101】
第3の態様では、本発明はCAR T細胞のCpG部位におけるメチル化プロファイルを調節する方法に関し、本方法は第一の態様において規定する方法をまず行うステップ;および分化と関連するメチル化プロファイルおよび/または治療の効率を調節することを含み、前記調節は、前の著者によって開示され、および当技術における熟練した人に知られる方法によって行われる。
【0102】
この態様の特定の実施形態では、この有効性の調節は、血液悪性腫瘍における臨床使用が承認されているDNA低メチル化剤、より具体的にはデシタビンまたはビダーザ;ヒストンデアセチラーゼインヒビター、より具体的にはボリノスタット;およびヒストンメチルトランスフェラーゼインヒビター、より具体的にはEZH2インヒビタータズベリク、リンパ腫および肉腫のサブタイプの治療に使用することが承認されているものから選ばれるものを使って行われる。
【0103】
本発明はまた、ヒト対象から採取したサンプルにおいて、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471):ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位での(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、CAR T細胞の一以上のCpG部位におけるメチル化の有無を識別するインビトロ方法にも関する。
【0104】
この識別方法の特定の例では、本方法は、ヒト対象から採取したサンプルにおいて、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)の6つのシトシンすべてにおけるメチル化を定めることを含む。
【0105】
ヒト対象から採取したサンプルにおいて、CAR T細胞の一つ以上のCpG部位におけるメチル化の有無を識別するこの方法の別の特定の例では、インビトロ方法は、次の:ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の123944014位でのシトシン(cg10236435);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体18の60877850位でのシトシン(cg11416737);およびヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、CAR T細胞の一以上のCpG部位におけるメチル化を定めることをさらに含む。
【0106】
別のより具体的な例では、メチル化の有無を識別する方法は、次の18個のシトシンすべてにおけるメチル化を決定することを含む:ヒト染色体2の位置86332162のシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の位置188676237のシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体10の95139986(cg10039734);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の123944014位でのシトシン(cg10236435);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体18の60877850位でのシトシン(cg11416737);およびヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358)。
【0107】
この方法の別の特定の例では、ヒト対象から採取したサンプルにおいて、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)ヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う、CAR T細胞の一以上のCpG部位におけるメチル化の有無を識別し、およびそこでメチル化の有無は遺伝子型法(genotype methods)によって実行する。
【0108】
この識別方法の特定の例では、本方法は、ヒト対象から採取したサンプルにおいて、以下の7つのシトシンすべてにおけるメチル化を定めることを含む:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)。
【0109】
CAR T細胞の一つ以上のCpG部位におけるメチル化の有無を識別するこの方法の別の特定の例では、本インビトロ方法は、ヒト対象から採取したサンプルにおいて、次の:ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体15の95870440位でのシトシン(cg18739950);ヒト染色体10の104470719位でのシトシン(cg12700402);ヒト染色体22の43253559位でのシトシン(cg01029450);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体12の131166906位でのシトシン(cg26098972);ヒト染色体16の68481342位でのシトシン(cg05948940);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体4の183063459位でのシトシン(cg19759671);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体12の3600764位でのシトシン(cg11596580);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の133000178位でのシトシン(cg09698465);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体9の19229767位でのシトシン(cg13469590);およびヒト染色体1の24229300位でのシトシン(cg24452347)の一つ以上におけるメチル化を定めることをさらに含み、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0110】
別のより具体的な例では、メチル化の有無を識別する方法は、次の32個のシトシンすべてにおけるメチル化を決定することを含む:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136)、ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体15の95870440位でのシトシン(cg18739950);ヒト染色体10の104470719位でのシトシン(cg12700402);ヒト染色体22の43253559位でのシトシン(cg01029450);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体12の131166906位でのシトシン(cg26098972);ヒト染色体16の68481342位でのシトシン(cg05948940);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体4の183063459位でのシトシン(cg19759671);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体12の3600764位でのシトシン(cg11596580);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の133000178位でのシトシン(cg09698465);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体9の19229767位でのシトシン(cg13469590);およびヒト染色体1の24229300位でのシトシン(cg24452347)。
【0111】
これに添えて、B細胞悪性腫瘍に罹患している対象を治療する方法も開示し、本方法は、前記対象に自己CAR T細胞療法を施すことを含み、およびそこでまた、本方法には以下の:
(a)CAR T細胞の一つ以上のCpG部位のメチル化状態を決定することによって、対象が前記自己CAR T細胞療法に反応するかどうかを最初に定めることであり、前記CAR T細胞は、一旦分離され、CARで形質導入されたT細胞を含む対象の分離サンプルから得られるステップ;(b)一つ以上のCpG部位のメチル化状態をCAR T細胞療法に対する反応の基準値または値の範囲と比較すること、および一つ以上のCpG部位のメチル化状態が前記基準値に等しいか、または基準値の範囲内にある場合に対象がCAR T細胞療法に反応すると定めることのステップ;および(c)前記療法に対するレスポンダーと定められる場合に対象を自己CAR T細胞療法により治療すること
が含まれる。
【0112】
したがって、対象が自己療法に対するレスポンデントと定められる場合、特定の実施形態では、分離された候補CAR T細胞もしくはその集団、または増大された候補CAR T細胞もしくはその集団をそれが必要な対象に投与する。
【0113】
特定の実施形態では、分離された候補CAR T細胞もしくはその集団、または拡大された候補CAR T細胞もしくはその集団は、対象への注入前に、CAR T細胞を次の、血液悪性腫瘍における臨床使用が承認されているDNA低メチル化剤、より具体的にはデシタビンまたはビダーザ;ヒストンデアセチラーゼインヒビター、より具体的にはボリノスタット;およびヒストンメチルトランスフェラーゼインヒビター、より具体的にはEZH2インヒビタータズベリクから選ばれる薬剤と接触させることによってその有効性を調節するためのエクスビボ介入を受ける。
【0114】
この治療方法の特定の例では、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)、ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位が定められ、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザの染色体マップおよび配列エントリに従う。
【0115】
別の特定の例では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のシトシンのメチル化を定める。さらに別の例では、次の6つのシトシンのメチル化状態を定める:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);およびヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)。
【0116】
この治療方法の別の特定の例では、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)からなる群より選ばれるCAR T細胞の一つ以上のCpG部位を定め、ヒト染色体におけるすべてのシトシン位置は2009年2月の、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(the University of California Santa Cruz)(UCSC)のGRCh37/hg19アセンブリのデータベースのヒトでのUCSCゲノムブラウザ(database UCSC Genome Browser on Human)の染色体マップおよび配列エントリに従う。別の特定の例では、1、2、3、4、5、6、7または8個のシトシンのメチル化を定める。さらに別の例では、次の7つのシトシンのメチル化状態を定める:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)。
【0117】
対象から分離され、およびそこからT細胞を得ることができる特定のサンプルタイプ、一つ以上のシトシンの追加のメチル化状態との特定の組合せ、および特定のB細胞悪性腫瘍も、すべて第1および第2の態様の特定の実施形態に示されているが、B細胞悪性腫瘍に罹患している対象を治療するこの方法に適用される。
【0118】
本発明はまた、別の態様として、第1および第2の態様の任意の方法におけるキメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法に対する対象の反応を予測するための、一つ以上のCpG部位のシトシンのDNAメチル化状態を決定するのに適したDNAオリゴヌクレオチドを含む手段の使用を含む。
【0119】
これらの手段は、特定の実施形態では、各CpGのシトシンを含む配列に相補的であり、および定められた位置でのシトシンがメチル化されるか、またはメチル化されてない場合に差示的シグナルを生成するDNAオリゴヌクレオチドである。より一層詳細な実施形態では、差示的シグナルは、蛍光シグナル、化学発光シグナルおよびそれらの組合せから選ばれる。このシグナルは主に、検出される配列に相補的なオリゴヌクレオチドに結合した、特に共有結合した化合物による蛍光または化学発光のいずれかの放射の結果である。あるいはまた、別の実施形態では、それらの手段は、各CpG部位のメチル化シトシンを含む配列に相補的な一つ以上のDNAオリゴヌクレオチド、および各CpG部位の非メチル化シトシンを含む配列に相補的な一つ以上のDNAオリゴヌクレオチドを含む。
【0120】
これらの手段の使用の別の特定の実施形態では、DNAオリゴヌクレオチドは、例えば、緩衝剤、蛍光標識または化学発光標識などのような他の試薬、および興味があるCpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態の決定においてそれらを使用するための使用説明とともに提供される。このように、別の特定の実施形態では、これらの手段はすべて、一つ以上のCpG部位のシトシンのDNAメチル化状態を決定するための一つ以上の試薬手段;およびメチル化状態を決定するための使用説明を含むキットの一部を形成する。
【0121】
実際、ここでは、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)、ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)およびヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)から選ばれる一つ以上のCpG部位のシトシンのDNAメチル化状態を定めるための試薬手段;およびDNAメチル化状態を定めるための手段の使用のための使用説明を含むキットも提案する。
【0122】
特定の実施形態では、キットは、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)から選ばれる一つ以上のCpG部位のシトシンのDNAメチル化状態を定めるための試薬手段を含む。
【0123】
キットの別の特定の代替実施形態では、それらは、次の:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体245028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177)から選ばれる一つ以上のCpG部位シトシンのDNAメチル化状態を定めるための試薬手段;およびDNAメチル化状態を定めるための手段の使用のための使用説明を含む。
【0124】
ここで使用する「キット」という用語は、本発明の方法を行うために必要な様々な試薬(または試薬手段)を輸送および保管できるように梱包された生産物に言及する。キットの構成要素の梱包に適した材料には、クリスタル、プラスチック(例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボナート)、ボトル、バイアル、紙、または封筒が含まれる。
【0125】
特定の実施形態では、キットにおける使用説明は、キット内の異なる構成要素を同時に、逐次的に、または別々に使用するためのものである。前記使用説明は、印刷物の形態、または、例えば、電子記憶媒体(例は、磁気ディスク、テープ)、または光学媒体(例は、磁気ディスク、テープ)または光学媒体(例えば
CD-ROM、DVD)、または音声資料などのような読み取り、または理解することが可能な使用説明を貯蔵する能力がある電子支援の形態であることができる。さらに、またはその代わりに、媒体には、前記使用説明を提供するインターネットアドレスを含めることができる。
【0126】
好ましい実施形態において、CpG部位における一つ以上のシトシンのメチル化状態を定めるための試薬手段は、キットを形成するメチル化状態を測定するための試薬の合計量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%が含まれる。したがって、これらのキットは、CpG部位での指示されたシトシンのメチル化状態を定めるための試薬手段を主に含む簡易化したキットである。
【0127】
キットの特定の例では、それは6つのシトシン:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);およびヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471)のメチル化状態を定めるための手段を含む。別のより具体的な例では、キットに含まれる手段はCpG部位での7つのシトシンのメチル化状態だけを定めるための手段からなる。
【0128】
キットの特定の例では、それは、CpG部位における7つのシトシン:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);およびヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177のメチル化状態を定めるための手段を含む。別のより具体的な例では、キットに含まれる手段はCpG部位の7つのシトシンのメチル化状態のみを定めるための手段からなる。
【0129】
キットの特定の実施形態では、それは、CpG部位における以下の18個のシトシン:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体10の95139986(cg10039734);ヒト染色体6の127612751位でのシトシン(cg25571136);ヒト染色体2の131058184位でのシトシン(cg01311063);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の123944014位でのシトシン(cg10236435);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体6の6643814位でのシトシン(cg09367268);ヒト染色体18の60877850位でのシトシン(cg11416737);およびヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358)のメチル化状態を定めるための手段を含む。
【0130】
キットの特定の実施形態では、それは、CpG部位における以下の32個のシトシン:32個のシトシン:ヒト染色体2の86332162位でのシトシン(cg12260379)、ヒト染色体;ヒト染色体1の188676237位でのシトシン(cg12012941);ヒト染色体2の45028225位でのシトシン(cg03593578);ヒト染色体1の220414164位でのシトシン(cg04458195);ヒト染色体6の209809位でのシトシン(cg15253304);ヒト染色体1の62905816位でのシトシン(cg22171055);ヒト染色体6の79780164位でのシトシン(cg13554177);ヒト染色体10の134457731位でのシトシン(cg25268100);ヒト染色体6127612751位でのシトシン(cg25571136)、ヒト染色体66643814位シトシン(cg09367268);ヒト染色体19の42299379位でのシトシン(cg24267358);ヒト染色体11の32353565位でのシトシン(cg09992216);ヒト染色体1の234087867位でのシトシン(cg25534076);ヒト染色体6の105907265位でのシトシン(cg04267686);ヒト染色体10の22634199位でのシトシン(cg12610471);ヒト染色体15の95870440位でのシトシン(cg18739950);ヒト染色体10の104470719位でのシトシン(cg12700402);ヒト染色体22の43253559位でのシトシン(cg01029450);ヒト染色体2の122144477位でのシトシン(cg17511575);ヒト染色体12の131166906位でのシトシン(cg26098972);ヒト染色体16の68481342位でのシトシン(cg05948940);ヒト染色体15の100879199位でのシトシン(cg07199183);ヒト染色体10の95139986位でのシトシン(cg10039734);ヒト染色体4の183063459位でのシトシン(cg19759671);ヒト染色体5の180614858位でのシトシン(cg25606201);ヒト染色体10の134571377位でのシトシン(cg27196695);ヒト染色体12の3600764位でのシトシン(cg11596580);ヒト染色体14の90081872位でのシトシン(cg12504912);ヒト染色体12の133000178位でのシトシン(cg09698465);ヒト染色体10の46993515位でのシトシン(cg25995980);ヒト染色体9の19229767位でのシトシン(cg13469590);およびヒト染色体1の24229300位でのシトシン(cg24452347)のメチル化状態を定めるための手段を含む。別のより具体的な例では、キットに含まれる手段は、CpG部位の32個のシトシンのメチル化状態のみを定めるための手段からなる。
【0131】
別の態様では、本発明は第1および第2の態様のインビトロ方法のいずれかを行うための本発明のキットの使用、およびそれらの対応する特定の実施形態に関する。
【0132】
本発明のインビトロ方法はCAR T細胞療法に対する反応のタイプおよび成果に関する情報を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、(i)反応および結果に関する前記情報を収集すること、および(ii)データキャリアにおいて情報を蓄えることのステップをさらに含む。
【0133】
本発明の意味において、「データキャリア」は、CAR T細胞療法に対する反応およびその成果の予測のための有意義な情報データを含む任意の手段、例えば、紙などのようなものとして理解されるべきである。キャリアはまた、予測データを搬送できる任意のエンティティまたはデバイスであってもよい。例えば、キャリアには、ROM、例えば、CD ROMまたは半導体ROM、または磁気記録媒体、例えば、フロッピーディスクまたはハードディスクなどのような記憶媒体が含まれ得る。さらに、キャリアは、電気信号または光信号などの伝達可能なキャリアであってもよく、それは電気または光ケーブルを介して、または無線もしくは他の手段によって伝達され得る。予測/成果データが、ケーブルもしくは他のデバイスまたは手段によって直接伝達され得る信号において具体化されるとき、キャリアはそのようなケーブルもしくは他のデバイスまたは手段によって構成され得る。他のキャリアはUSBデバイスおよびコンピュータアーカイブに関連する。適切なデータキャリアの例は、紙、CDs、USB、PCsにおけるコンピュータアーカイブ、または同じ情報を有するサウンド登録(sound registration)である。
【0134】
説明および請求の範囲全体を通して、「含む」という語およびその語の変形は、他の技術的特長、付加物、構成要素、またはステップを排除することを意図するものではない。さらに、「含む」という用語には、「からなる」の場合も含まれる。本発明の追加の目的、利益および特長は、説明を検討すれば当業者には明らかになるであろうし、あるいは本発明を実践することによって知り得る。以下の例は例示のために提供され、および本発明を制限することを意図するものではない。さらに、本発明はここに記載する特定の、および好ましい実施形態の組合せの可能なすべてをカバーする。
【実施例】
【0135】
例1.自己CAR T細胞療法に対する完全奏功を示すDNAメチル化マーカーの決定。最初の発見コホートによるアッセイ(n=43)
以下の節では、B細胞悪性腫瘍を患う対象が自己CART19療法(CARが腫瘍内の抗原CD19を認識するCAR T細胞を用いた療法)の良好な候補であるかどうかを定めるための本発明の方法を行うための手段を開示する。
【0136】
方法
患者およびサンプル:
新鮮な白血球除去生成物からの末梢血単核細胞(PBMCs)をCD19 CAR T細胞療法(CART19療法)が推奨されている再発または難治性(R/R)B細胞悪性腫瘍の患者から分離した。患者材料は以前に報告された臨床試験(シェバ・メディカル・センター(the Sheba Medical Center)IRBおよびイスラエル保健省(the Israeli Ministry of Health)によって承認されたNCT02772198(Jacoby(ジャコビー)ら、Locally produced CD19 CART-cells leading to clinical remissions in medullary and extramedullary relapsed acute lymphoblastic leukemia.(局所生成されたCD19 CAR T細胞は髄質および髄外で再発した急性リンパ芽球性白血病での臨床的寛解をもたらす。)Am J Hematol(アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー);93:1485-92;およびItzhaki(イツハキ)ら、Head-to-head comparison of in-house produced CD19 CAR-T cell in ALL and NHL patients.(ALLおよびNHL患者における自家生産されたCD19 CAR-T細胞の直接比較。)J Immunother Cancer(ジャーナル・フォー・イムノセラピー・オブ・キャンサー)2020;8:e000148)の一部として入手した。研究したB細胞悪性腫瘍を有する患者の臨床的特徴をテーブル1にまとめる。分離された末梢血単核細胞(PBMC)はT細胞培地において活性化した。培養2日目に、活性化細胞にCD19 CARレトロウイルスを形質導入した。この構築物はCD28同時刺激ドメインに、およびCD3ゼータ鎖に融合した抗CD19モノクローナル抗体FMC63(scFV)の可変領域を含み、それはマウス幹細胞ウイルスガンマ-レトロウイルス(MSGV)バックボーンにクローン化された。次いでCAR-T細胞はIL-2含有T細胞培地中で9-10日目までさらに増殖させた。高分子量DNAは患者に注入する前に、CART19非形質導入T細胞および形質導入T細胞からなるペアのT細胞サンプルから抽出した。
【0137】
【0138】
DNAメチル化手順および分析:
各患者からのCART19非形質導入および形質導入T細胞のDNAメチル化状態は、リキッドハンドラーによるアレイの自動処理に関する製造元の使用説明に従って、以前に記載されているように(Moran(モーラン)ら、Validation of a DNA methylation microarray for 850,000 CpG sites of the human genome enriched in enhancer sequences.(エンハンサー配列において豊富なヒトゲノムの850,000のCpG部位についてのDNAメチル化マイクロアレイの検証。)Epigenomics(エピゲノミクス)2016;8:389-99)、インフィニウム・メチル化EPICアレイ(Infinium MethylationEPIC Array)(およそ850,000 CpG部位)を使用して確立した(イルミナ・インフィニウムHDメチル化アッセイ経験があるユーザーカード(Illumina Infinium HD Methylation Assay Experienced User Card)、自動化プロトコル(Automated Protocol)15019521 v01)。CART19非形質導入細胞および形質導入細胞におけるDNAメチル化を比較した。各CpGのメチル化スコアは差示的CpGベータ値>0.33をカットオフとして使用して、ベータ値として表わした。遺伝子セット濃縮分析(GSEA)による遺伝子機能アノテーションは、ジーンオントロジー(GO)生物学的プロセス(BP)、リアクトーム(Reactome)およびKEGG経路を使用して実行した。差示的DNAメチル化状態および臨床的特徴間の関連性の重要性は、フィッシャーの直接検定によって推定した。サンプルは、CpGメチル化ベータ値およびユークリッド距離をアグロメレートするための完全な方法による階層的クラスタリングプロトコルを使用し、監視されていない様式でクラスター化した。EPICART DNAメチル化シグネチャー(以前に開示されたCpG部位での32のシトシン)は、臨床反応を予測するためのランダムフォレストに基づき訓練された監視された分類モデルを使用して取得した。分類モデルは、10倍のクロス検証を3回繰り返してパラメーターを調整することによって最適化した(各スプリットで候補としてランダムにサンプリングされた4つの変数を使用し、500個のツリーを成長させる最良のモデル)。モデルのパフォーマンスは、リサンプルのレシーバー動作特性(ROC)曲線を使用して評価した(曲線下面積[AUC]平均=0.91、95%CI=0.85-0.97)。さまざまなT細胞サブタイプにおけるEPICARTシグネチャーの濃縮を評価するために、これらの集団のBLUEPRINT(ブループリント)DNAメチル化データをダウンロードし(http://blueprint-epigenome.eu)、および監視されていない階層的クラスター分析およびフィッシャーの直接検定を使用してシグナル値をEPICARTと比較した。レトロウイルスCARベクターのDNAメチル化状態は、PyroMark(パイロマーク)Q96システムを使用したパイロシークエンシングによって決定した。PrePCR(プレPCR)は、タッチダウンPCR反応においてIMMOLASE(Bioline(バイオライン)、USA)ホットスタートDNAポリメラーゼを使用して行った。品質管理のために、サンプルは、余分なバックグラウンド増幅産物の存在を伴わない、予想されるサイズの単一の鋭いバンドの存在を検証するためにアガロースゲル上で泳動した。プライマーは、Qiagen(キアゲン)のPyromark Assay Design(パイロマーク・アッセイ・デザイン)2.0ソフトウェアを使用して設計した。
【0139】
臨床統計分析:
アッセイ結果は二重盲検法において患者の成果と比較した。グループの分布間の差異の有意性は、フィッシャーの直接検定を使用して推定した。イベント-フリー生存(EFS)は、CART19治療の開始から最初の進行、再発、または死亡が発生するまでの時間として規定した。全生存(OS)はCART19治療の開始から死亡までの時間として規定した。Kaplan-Meier(カプラン-マイヤー)法もEFSとOSの推定に使用され、グループ間の差異はログランク検定で計算した。単変量コックス回帰からのハザード比(HRs)は、臨床病理学的特長と生存との間の関連性を決定するために使用した。
【0140】
結果
B細胞悪性腫瘍を患う43人の患者におけるCD19 CARレトロウイルスの非形質導入および形質導入事前注入T細胞のDNAメチル化状況を研究した(
図1)。このようにして、エピゲノムプロファイルを取得することができた。B細胞悪性腫瘍を有する43人の患者において、DNAメチル化レベルは、CART19非形質導入細胞と形質導入細胞との間で1,005のCpG部位にて異なっていた。CAR陽性およびCAR陰性T細胞において明確にメチル化されたCpG部位をテーブルS1(この説明の例の最後)に示す。ヒトゲノムにおけるこれらのCpG部位での分布は次のとおりである。それらは症例の74.7%(1,005件中751件)で既知の遺伝子と関係し、およびそれらのうち、差示的エピジェネティック部位は症例の45.9%(751件中345件)で規定された制御領域内に位置した。CAR形質導入の際にDNAメチル化変化を受ける発見された751遺伝子のグループをよりよく特徴付けるために、ジーンオントロジー(Gene Ontology)(GOシグネチャー)コレクションを使用したGSEAによる遺伝子機能アノテーションを実行した。最も多く存在するGO生物学的プロセスとKEGGおよびリアクトーム経路は、それぞれ「T細胞受容体シグナル伝達経路」、「がんにおける経路」、および「有糸分裂中期および分裂後期」であることが判明した。これらのプロセスは、潜在的なCART19抗B悪性細胞活性において非常に重要であり、それらがT細胞生物学、細胞形質転換ネットワーク、および増殖能力に関連しているためである。フィッシャーの直接検定は、患者への注入前にCART19形質導入細胞において識別された1,005個のCpG部位でのDNAメチル化状態と、次の3つの成果イベントのそれぞれとの間の関連性を識別するために使用した:臨床反応;サイトカイン放出症候群(CRS)の副作用の出現;および/または免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)。分割表について、臨床反応は完全奏功(CR)対非完全奏功(部分応答[PR]+安定疾患[SD]+疾患の進行[PD])として分類され;CRSはグレード0対グレード1-4に分け;ICANSはグレード0対グレード1-4に分離した。研究されたエピゲノム遺伝子座のうち、DNAメチル化レベルが評価された臨床変数と有意に関係する54のCpG部位(識別された1,005部位での5.3%)が見出された。32、12および18個のCpG部位でのDNAメチル化状態は、それぞれ、完全な臨床反応(テーブル3、上記参照)、CRSの発生(テーブル4)、およびICANSの存在(テーブル5)と関連した。CART19を発現するように操作された患者のT細胞において識別されたエピジェネティックなイベントの潜在的な翻訳的価値を強化するために、各臨床転帰と関係するCpGsの各セットのDNAメチル化状態も監視されていない様式においてプロットした(データを示していない)。各変数について、階層的クラスタリングは、各条件:完全奏功(フィッシャーの直接検定、P=0.0003)、CRS(フィッシャーの直接検定、P=0.001)、およびICANS(フィッシャーの直接検定、P)=0.005)に関して有意に濃縮された2つの分岐を区別し、記載された臨床イベントにおけるこれらのマーカーの重要性のさらなる証拠が提供された。
【0141】
【0142】
【0143】
32個のエピゲノム遺伝子座のセットがB細胞悪性腫瘍患者におけるCART19治療に対する完全な臨床反応を区別することができたことが確立されると、得られたDNAメチル化マーカーがまたこれらの症例においてEFSおよびOSを予測することができたかどうかを検討した。初期セットの43例のうち、追跡不能(N=3)またはCART19療法後に造血幹細胞移植(HSCT)を受けたことによる9例(N=3)を除いて、これらの臨床パラメーターは34人の患者において研究した(N=6)。EFSおよびOSについて評価された患者の臨床病理学的特徴もテーブル1にリストする。これに関して、このコホートにおける完全な臨床反応の存在は、EFSの向上(HR=0.15、P=0.002、95%Cl=0.034-0.651;ログランクP=0.0035)およびOSの改善(HR=0.06、P=0.002;95%Cl=0.001-0.44;ログランクP=0.0038)と関係した(
図2A)。完全奏功と相関する32のメチル化部位がランダムフォレストに基づく監視された分類モデルをトレーニングするために選ばれたとき(テーブル3)、エピジェネティックシグネチャー(以下、EPICARTシグネチャーと称する)が取得され、それはEFS(HR=0.18、P=0.002;95%Cl=0.052-0.634;ログランクP=0.0032)(
図2B)およびOS(HR=0.05、P=0.0008;95%Cl=0.0004-0.386;ログランクP=0.002)と著しく関係した(
図2B)ことは特に注目に値する。注目すべきことに、CART19で治療を受けたB細胞悪性腫瘍を有する患者がB急性リンパ芽球性白血病またはBリンパ腫に細分化されたときでも、EPICART陽性シグネチャーは臨床的価値を維持し;どちらのグループもEFSおよびOSの改善を示した(データを示していない)。EPICARTシグネチャーは、B細胞悪性腫瘍のタイプ(ALL対NHL)(フィッシャーの直接検定、P=0.641)または患者の齢(小児対成人)(フィッシャーの直接検定、P=0.6015)とは関連しなかった。
【0144】
国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(the International Human Epigenome Consortium)(IHEC)から入手可能なさまざまなT細胞集団の注意深く精査されたDNAメチル化パターンを利用して、我々のEPICARTシグネチャーにおけるT細胞クラスの分子精査を行った。EPICART陽性シグネチャーは臨床転帰の改善と関係し、CD4およびCD8のナイーブ様T細胞または初期メモリー表現型T細胞が豊富なCART19細胞を識別した(P=0.0001)。逆に、EPICART陰性CART19細胞には、エフェクターメモリーCD4およびCD8 T細胞、最終分化したエフェクターメモリーCD8 T細胞などのような、より関与した、および分化した系統が豊富であった(P=0.01)。これらの結果は、ナイーブ様または初期メモリーT細胞(T幹細胞メモリーサブクラスなど)がエフェクターT細胞よりも優れた性能を発揮できるという養子細胞療法の概念と一致する。
【0145】
拡張されたEFSおよびOSを予測するCART19注入済みT細胞についてのEPICART DNAメチル化(32CpG部位)シグネチャーを取得することは、非常に役立つ。本発明者らはまた、分析をさらに簡素化する、より小さなセットのDNAメチル化バイオマーカーを識別し、および開発した。改善したEFSおよび一層長いOSの両方に個別に関係したEPICARTシグネチャーを規定する32個のそれらのDNAメチル化部位をテストした。検出された7つのエピゲノム遺伝子座は、単独で分析した場合でも、より一層良好なEFSおよびOSと関係した。これらのCpG部位の特長をテーブル2にまとめ(テーブル3では太字のCpG部位である)、ならびにEFSおよびOSについての対応するカプラン-マイヤー曲線を
図3(A-G)および
図4(A-G)にそれぞれ示す。
【0146】
【0147】
これらの7つのDNAメチル化遺伝子座と関係する5つの遺伝子がタンパク質レベルの調節に関与していることに注目される。したがって、例えば、ユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素1の遺伝子(USP1;UniprotKB094782)、Rab3 GTPアーゼ活性化タンパク質の非触媒サブユニットの遺伝子(RAB3GAP2;UniprotKB Q9H2M9)およびPH相互作用タンパク質の遺伝子(PHIP;UniprotKB Q8WWQ0)はユビキチン経路によるタンパク質分解に関与し、およびペンタトリコペプチドリピートドメイン含有タンパク質3、ミトコンドリア(PTCD3;UniprotKB Q96EY7)の遺伝子、およびDNA指向性RNAポリメラーゼIサブユニットRPA1(POLR1A; UniprotKB 095602)の遺伝子はリボソームでのタンパク質の生成において役割を果たした。USP1の場合は、完全な臨床反応を達成していないCART19注入患者のCD8 T細胞で過剰発現する遺伝子であるDNA結合インヒビター2(ID2)のタンパク質発現レベルをそれが制御するため、特に適切であることができた(Deng(デン)ら、Characteristics of anti-CD19 CAR T cell infusion products associated with efficacy and toxicity in patients with large B cell lymphomas.(大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者における有効性および毒性と関係する抗CD19 CAR T細胞注入生成物の特徴。)Nat Med 2020;10月5日にオンラインで公開された。https://doi.org/10.1038/s41591-020-1061-7)。
【0148】
さらに2つのDNAメチル化分析を実行した。マウス幹細胞ウイルスガンマ-レトロウイルス(MSGV)モデルに基づいて、T細胞にCD19 CARレトロウイルスを形質導入した。このタイプのレトロウイルスベクターは、それ自体DNAメチル化によるエピジェネティックサイレンシングに対して脆弱である。本発明者らは、形質導入されたT細胞におけるレトロウイルスの別個のDNAメチル化状態も臨床結転帰に影響を与える可能性があるかどうかを調べた。5'長ターミナルリピート(LTR)プロモーター領域を含め、レトロウイルスベクターの複数の部位でのパイロシークエンシング分析は、コホート全体(n=43)において、すべてのCART19事前注入された細胞におけるMSGVの非メチル化状態を示した(データを示していない)。このため、それは差示的臨床転帰を説明することはできなかったと結論した。
【0149】
本発明者らはまた、ここで追加のCpG部位、良好な(即ち、高い)EFSおよびOSならびにCRと相関する7部位での一部分、ならびにCRと相関し、かつEFSおよびOSと有意に関係する32部位を提案する。この追加の遺伝子座は、ヒト染色体8の28725934位でのシトシン(cg08544307)に対応する。このシトシンでのメチル化は増強されたEFSおよび一層長いOSの両方に関係した。DNAメチル化遺伝子座は、造血および白血病形成を調節するインテグレーターファミリーのメンバーである、INTS9遺伝子内にあった。したがって、それは、CART19治療に対する完全な臨床反応と直接的な関連がなくても、養子細胞療法の長期効果を部分的に定めるバイオマーカーのユニークな例である。
【0150】
したがって、本発明者らにより、治療に対する副作用の可能性の指標に加えて、血液学者および腫瘍学者にとって、CART19完全奏功および臨床転帰の予測バイオマーカーに頼ることが可能である有用なツールを提供した。さらに、この発明は、特にCART19治療、および概して養子細胞療法の全分野がこのタイプのバイオマーカーとして分類することができる分子因子をほぼ完全に欠如しているため、対数実感の必要性(log-felt need)を想定する。ここで提供されるすべての結果は、CART19形質導入Tリンパ球におけるDNAメチル化プロファイリングの使用により、このクラスの細胞療法を受けた再発/難治性(R/R)B細胞悪性腫瘍を有する患者での臨床反応イベント、望ましくない副作用、EFS、およびOSと関係する一貫した読み取り値も提供されることを示す。これらの結果は、それが腫瘍と宿主患者の分子背景とについてもたらす知識に加えて、養子細胞療法において使用される細胞の特定のDNAおよびRNAプロファイルと成分に関する研究が、治療の成功およびその潜在的な副作用を定める上で非常に価値があるという考えをさらに強化する。アキシカブタゲンシロロイセル(Yescarta(イエスカルタ))を用いるFDAが承認したCART19治療もレトロウイルスを使用し、およびこの発明で例示されるCART19もレトロウイルスベクターであることも注目に値する。形質導入された事前注入細胞の構築物においてDNAメチル化の痕跡は検出されなかった。
【0151】
上記に示したように、B細胞悪性腫瘍におけるCART19の臨床効果の予測因子として提案されているこれらすべてのDNAメチル化部位は、より高い治療能力を有する再設計された細胞の生産を最適化するために、T細胞のエクスビボ増殖およびCARによるそれらの形質導入へのさらなる外部介入についての関連した情報を与える。これらの介入の例には、デシタビンまたはビダーザなどのような、血液悪性腫瘍での臨床使用が承認されているDNA低メチル化剤の使用が含まれる。デシタビンは、前臨床モデルにおいてCD123標的化CAR T細胞の抗白血病効力を高めることが報告された(You(ユー)ら、Decitabine-mediated epigenetic reprogramming helps anti-leukemia infection of CD123-targeted chimeric antigen receptor T-cells.(デシタビンを介したエピジェネティックな再プログラミングは、CD123を標的とするキメラ抗原受容体T細胞の抗白血病感染に役立つ。)Front Immunol(フロンティアーズ・イン・イムノロジー)2020;11:1787)。DNAメチル化イベントは普通にヒストン修飾でのシフトと関係し;およびCAR-T形質導入の際のクロマチンアクセス可能部位での変化も報告されているため、これらの薬物は、特定の例では、エピジェネティック設定の他の要素を標的とする化合物で補完することができる。したがって、ヒストン脱アセチラーゼインヒビター、例えば、リンパ腫および肉腫のサブタイプの治療に使用することが承認されているボリノスタットなどのようなもの、およびヒストンメチルトランスフェラーゼインヒビター、例えば、EZH2インヒビターのタズベリクなどのようなものも、CART19の製造に関連して、細胞が生成される活性を増強するために提案される。
【0152】
例2.自己CAR T細胞療法に対する完全な反応を示すDNAメチル化マーカーの決定。大規模な発見コホート(n=79)および検証コホート(n=35)を用いたアッセイ
ローバストな結果を得る目的で、例1に示した分析を大規模な検証コホート(n=79)を用いて繰り返した。追加的に、検証コホートもテストした(n=35)。
【0153】
研究設計
CART19療法が推奨される再発性または難治性(R/R)B細胞悪性腫瘍を患っている患者であった場合、彼らは研究に参加する資格があった。114例からの患者CD19で工学的に作り出されたT細胞は、次の:NCT03144583(Ortiz-Maldonado(オルティス・マルドナド)V、Rives(リーブズ)S、Castella(カステラ)Mら、CART19-BE-01:A Multicenter Trial of ARI-0001 Cell Therapy in Patients with CD19+ Relapsed/Refractory Malignancies.(CART19-BE-01:CD19+再発/難治性悪性腫瘍を有する患者におけるARI-0001細胞療法の多施設治験。)Mol Ther.(モレキュラー・セラピー)2021;29(2):636-644)、NCT02772198(例1の参考文献)およびNCT03373071(Quintarelli(クインタレッリ)C、Guercio(ギュルツィオ)M、Manni(マンニ)Sら、Strategy to prevent epitope masking in CAR.CD19+ B-cell leukemia blasts.(CAR.CD19+B細胞白血病芽球におけるエピトープマスキングを防止する戦略。)J. Immunother. Cancer.(ジャーナル・フォー・イムノセラピー・オブ・キャンサー)2021;9(6):e001514.)の3つの学術臨床試験から得られた。書面によるインフォームドコンセントを得、およびシェバ・メディカル・センター(the Sheba Medical Center)IRBおよびイスラエル保健省(the Israeli Ministry of Health)、the Research Ethics Comitee (Celm) of the Hospital Clinic(病院診療所の研究倫理委員会(Celm))、およびthe IRB of Bambino Gesu Children Hospital(バンビーノ・ジェス小児病院の治験審査委員会)がそれぞれ研究の承認を提供した。研究した114人の患者の臨床的特徴を以下のテーブルCにまとめる。患者にCART19を注入する前に、すべての症例から高分子量DNAを抽出した。
【0154】
【0155】
DNAメチル化の手順および分析:
各患者からのCART19細胞のDNAメチル化状態は、インフィニウム・メチル化EPICアレイ(Infinium MethylationEPIC Array)(Morat(モラト)ら、前出)を使用して確立した。DNAメチル化データはGEOリポジトリ(GSE179414、レビューアートークン:wbkdquweltcvdgj https://www.ncbi. nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE179414)にて入手可能である。EPICART18 DNAメチル化シグネチャーは、臨床反応を予測するためのリッジ正則化ロジスティック回帰に基づくトレーニングされた監視された分類モデルを使用して取得した。分類モデルは、10分割相互検証を3回繰り返してパラメーターを調整することによって最適化した(リッジ回帰からのアルファ=0および正則化パラメーターラムダ=0.03で最良の性能)。モデルの性能は、リサンプルの受信者動作特性(ROC)曲線を使用して評価した(曲線下面積[AUC]平均=0.83、95%CI =0.75-0.91)。フローサイトメトリー分析を検証に使用した。特定のCpG部位のDNAメチル化状態は、複数のクローンのパイロシークエンシングおよび亜硫酸水素塩ゲノムシークエンシングによって検証した。遺伝子発現を評価するためにリアルタイム定量(qRT-PCR)およびウェスタンブロットを使用した。
【0156】
臨床統計分析
アッセイ結果は二重盲検法において患者の転帰と比較した。グループの分布間の差異の有意性はフィッシャーの直接検定を使用して推定した。イベント-フリー生存(EFS)は、CART19治療の開始から最初の進行、再発、または死亡が発生するまでの時間として規定した。全生存(OS)はCART19治療の開始から死亡までの時間として規定した。カプラン-マイヤー法もまたEFSおよびOSを推定するために使用し、グループ間の差異はログランク検定で計算した。単変量コックス回帰からのハザード比(HR)は、臨床病理学的特徴と生存の間の関連性を決定するために使用した。
【0157】
結果
CART19細胞のエピゲノム状況:
CART19治療から臨床的利益が得られるB細胞悪性腫瘍症例と関係するエピゲノムプロファイルを発見するために、NCT02772198臨床試験からの患者43人におけるCD19 CARレトロウイルスについての非形質導入および形質導入された事前注入T細胞のDNAメチル化状況を研究した(例1)。この一連の症例には、30人のNHL(28人の成人患者および2人の小児患者)および13人のALL(8人の小児患者および5人の成人患者)が含まれた。この初期のセットでは、およそ850,000のCpG部位のメチル化状態を調査した。B細胞悪性腫瘍を有する患者43人では、CART19非形質導入細胞および形質導入細胞間で984個のCpG部位にてDNAメチル化レベルが異なった(すべてが以下のテーブルS1に含まれた)。これらの差示的CpG部位のうち、CART19形質導入細胞対非形質導入細胞にて53%(984個中519個)が過剰メチル化イベントであり、それに対し、47%(984個中465個)は低メチル化変化であった。これら984部位でのCpGメチル化含量は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞間で区別されなかった(Wilcoxon-Mann-Whitney(ウィルコクソン-マン-ホイットニー)検定分析、p=0.73)。これらのCpG部位でのゲノム分布は次のとおりであった:それらは75.1%(984個中739個)の症例において既知の遺伝子と関係し、およびこれらのうち45.9%(739個中339個)の症例において規定の制御領域内に位置した。遺伝子オントロジーコレクションを使用した遺伝子セットエンリッチメント解析により、最も過剰に存在する生物学的プロセスおよびKEGGならびにリアクトーム経路は、それぞれ、「T細胞受容体シグナル伝達経路」、「がんにおける経路」および「姉妹染色分体の分離」であることが示された。制御領域としてCpG部位だけを使用すると、最も多く表示されたカテゴリーは「T細胞受容体シグナル伝達経路」および「Runx3による転写制御」であり;その一方、遺伝子本体部位のみを使用すると、最も多く表示されたカテゴリーは「細胞膜接着分子を介した同種細胞接着」および「姉妹染色分体の分離」であった。
【0158】
CD19 CARレトロウイルスで形質導入されたT細胞は、それら自体がDNAメチル化サイレンシングに対して脆弱である可能性がある(20)。このように、形質導入されたT細胞におけるレトロウイルスの別個のDNAメチル化状態もまた臨床転帰に影響を与える可能性があるかどうかを調べた。レトロウイルスベクターのパイロシークエンシング分析により、CART19細胞におけるレトロウイルスベクターの非メチル化状態を示した。
【0159】
臨床転帰におけるCART19エピジェネティクスの影響:EPICART18シグネチャー:
CART19形質導入細胞において識別された984個のCpG部位のDNAメチル化状態とこのタイプの細胞療法で治療され114人のB細胞悪性腫瘍患者における臨床転帰との間の任意の関連性を識別するために、偽発見率(FDR)を使用した多重仮説検定についての補正を伴うフィッシャーの直接検定を適用した(テーブルC)。分割表では、臨床反応は完全奏功(CR)対非完全奏功(部分応答[PR]+安定疾患[SD]+疾患の進行[PD])として分類した。副作用については、米国移植細胞療法学会(the American Society for Transplantation and Cellular Therapy)のガイドラインに従った(wer followed)(Lee(リー)DW、Santomasso(サントマッソ)BD、Locke(ロック)FLら、ASTCT Consensus Grading for Cytokine Release Syndrome and Neurologic Toxicity Associated with Immune Effector Cells.(免疫エフェクター細胞に関係するサイトカイン放出症候群および神経毒性のASTCTコンセンサスグレーディング。)Biol Blood Marrow Transplant.(バイオロジー・オブ・ブラッド・アンド・マロー・トランスプランテーション)2019;25(4):625-638):サイトカイン放出症候群(CRS)をグレード0対グレード1-5に分け;および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はグレード0対グレード1-5に分離した。これらの症例は、79人の患者の発見コホートおよび35人の患者の検証コホートに分けた(テーブルC)。2つのコホートは、齢(小児対成人、フィッシャーの直接検定、P=0.29)、サンプルの起源(NCT03144583、NCT02772198およびNCT03373071、フィッシャーの直接検定、P=1)、B細胞悪性腫瘍のタイプ(ALL対NHL、フィッシャーの直接検定、P=1)、臨床反応(CR対PR/SD/PD、フィッシャーの直接検定、P=0.67)およびCRSの出現(0対1-5、フィッシャーの直接検定、P=1)またはICANS(0 v 1-5、フィッシャーの直接検定、P=0.64)と関係する有意差を示さなかった。各患者において注入されたCART19形質導入細胞からのDNAは、記載されたDNAメチル化マイクロアレイにハイブリダイゼーションさせた。
【0160】
発見コホート(n=79)では、フィッシャーの直接検定による初期のスクリーニングにてDNAメチル化レベルが臨床変数と有意に関係する54のCpG部位(984部位での5.5%)を見出した。45、8および5個のCpG部位でのDNAメチル化状態は、それぞれCR、CRS(以下のテーブルDを参照)、およびICANS(以下のテーブルEを参照)と関係した。次に、それはフィッシャーの直接検定、多重比較を補正するために多重仮説検定において使用されるFDR統計的アプローチから導き出される潜在的な臨床的価値を有する、識別されたすべてのCpG部位に適用した。CRSおよびICANSと関係するエピジェネティック遺伝子座はこのテストに合格しなかったが、CRと関係するCpG部位の40%(45個中18個)が複数のテストにおいてFDRに合格したことが見出された。
【0161】
【0162】
【0163】
一度確立されると、複数の検査によって調整された18個のエピゲノム遺伝子座のセットにより、CART19治療後のCR結果を識別でき(この文書における上記の
テーブルBを参照)、これらの部位が発見コホート(n=79)でのEFSおよびOSも予測できたかどうかを検討した。この点において、CRの存在はEFSの増強およびOSの改善と関係した(
図5)。リッジ正則化ロジスティック回帰に基づいて監視された分類モデルをトレーニングするために、CRと相関する18個のメチル化部位が選ばれるとき、エピジェネティックなシグネチャー、以下にEPICART18シグネチャーと称するものが得られた。CAR-T症例の発見コホートについての監視された階層的クラスタリングにおけるEPICART18シグネチャーを使用すると、患者はCRまたは非CRを示す患者に分類された(フィッシャーの直接検定、P=3.3e-13)。最も重要なことに、EPICART18シグネチャーはEFS(
図5B))およびOS(
図5(B))と関連した。
【0164】
国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(IHEC)(22)からのさまざまなT細胞集団の精査されたDNAメチル化パターンを利用して、我々のEPICART18シグネチャーにおけるT細胞クラスの分子精査を行った。EPICART18陽性シグネチャーにより、CD4およびCD8ナイーブ様または初期メモリー表現型T細胞が豊富なCART19細胞が識別されたことを見出した(フィッシャーの直接検定、P=0.034)。逆に、EPICART18陰性のCART19細胞には、エフェクターメモリーCD4およびCD8 T細胞、および最終分化したエフェクターメモリーCD8 T細胞などのような、より深く関わって、および分化した系統が豊富に含まれた(フィッシャーの直接検定、P=0.0001)。コンピュータによる投影によって割り当てられる記載された集団の表現型は、これらのデータが利用可能な発見コホートの43例におけるフローサイトメトリー分析によって検証した。ナイーブT細胞(TN:CD3+CD45RA+CCR7+)、セントラルメモリーT細胞(TCM:CD3+CD45RA-CCR7+)、エフェクターメモリーT細胞(TEM:CD3+CD45RA-CCR7-)およびエフェクターT細胞(TEMRA:CD3+CD45RA+CCR7-)の集団状態を規定するためのマーカーCD3、CD45RAおよびCCR7の使用は、EPICART陽性CART19細胞がナイーブT細胞/セントラルメモリーT細胞に富んでいることを確認し(スチューデントのt検定、P=0.04)、その一方で、EPICART(エピックアート)陰性細胞では、エフェクターメモリーT細胞/エフェクターT細胞集団が過剰に存在した(スチューデントのt検定、P=0.027)。重要なことに、ナイーブおよびセントラルメモリーT細胞が豊富なCAR-T(TN+TCM)を受けたB細胞悪性腫瘍患者は、エフェクターメモリーおよびエフェクターT細胞(TEM+TEMRA)が豊富な養子細胞療法を受けた患者と比較して、改善されたEFSおよびOSをしめした(データを示していない)。これらの結果は、エフェクター細胞の限られたニッチホーミング、生存および自己複製能力のため、関与度が低く、およびより未熟なT細胞に比べて、ナイーブ様または初期メモリーT細胞がエフェクターT細胞よりも優れたパフォーマンスを発揮できるという養子細胞療法の概念と一致する。
EPICART 18シグネチャーを規定する18個のCpG部位での遺伝子発現に対する任意の明らかな影響に関連して、CART 19細胞についてのRNAおよび/またはタンパク質は入手可能でなく、このようにDNAメチル化および発現について分析された105の血液細胞系をデータ分析した(were datamined)。遺伝子本体において位置するこれらのCpGの過剰メチル化は、転写物の上方制御と関連していることが観察された(マン-ホイットニー-ウィルコクソン検定、P=1.2e-14 5.8e-15)。遺伝子上方制御を伴う遺伝子本体の過剰メチル化の存在が報告された。重要なことには、これらの分析からのT細胞由来株を使用して、INPP5AおよびECHDC1遺伝子本体の過剰メチル化が決定された発現の上昇と関係していることが検証され(itwas);その一方で、遺伝子本体の低メチル化は遺伝子の下方制御と関係した。一致して、過剰メチル化細胞系におけるDNAメチル化インヒビター5-アザ-2'-デオキシシチジンの使用は、INPP5AおよびECHDC1の発現を下方制御した。さらに、それはEPICART18陽性患者および陰性患者におけるこれらのCpG部位のDNAメチル化状態を複数のクローンのパイロシークエンシングおよび亜硫酸水素塩ゲノムシークエンシングによって実験的に検証した。またT細胞由来株のさらなるデータマイニング(data-mining)は、5'末端CpG部位の過剰メチル化が転写物の下方制御と主に関係していることを示した。説明に役立つ例は、T細胞急性リンパ芽球性白血病のための候補腫瘍抑制因子であるFOXN3の5'-UTRCpG過剰メチル化である。
【0165】
EPICART18検証および臨床経過と関係する単一遺伝子座:
EPICART18シグネチャーは、CART19で治療されたB細胞悪性腫瘍の発見コホートにおけるCR、EFSおよびOSの予測因子であると特徴付けられ、識別されたDNAメチル化ランドスケープが検証コホートにおける臨床転帰も区別できるかどうかが調べられた(
テーブルC)。臨床的観点から、CRは検証セットにおけるEFSの増強およびOSの改善と関係した(
図6(A))。
【0166】
重要なことに、EPICART18シグネチャーは、検証コホートにおいてCAR-T細胞療法に対するCRを83%の精度(95%CI=66-93;カッパ=0.6)、88%の感度および73%の特異性で予測した。ROC曲線を使用してモデルのパフォーマンスをさらに評価し、AUC値0.8を取得した。CAR-T症例の検証コホートについての監視された階層的クラスタリングにおけるEPICART18シグネチャーの使用は、CRまたは非CRも区別した(フィッシャーの直接検定、P=0.0001)。注目すべきことに、EPICART18陽性シグネチャーは検証コホートにおけるOSの改善と関係した(HR=0.31、95%CI=0.112-0.837、P=0.021;ログランクP=0.017)(
図6(B))。また、EPICART18陽性シグネチャーおよびEFS間に有意でない傾向を見出した(HR=0.52、95%CI=0.204-1.349、P=0.181;ログランクP=0.19)(
図6(B))。
【0167】
最後に、コホート全体について、CRはEFSおよびOSと関係した。利用可能なケースの完全なセットについて監視された階層的クラスタリングにおけるEPICART18シグネチャー(発見+検証、n=114)はまた、患者がCRまたは非CRを見せるものに分類した(フィッシャーの直接検定、P=3.5e-15)。重要なことには、コホート全体において、EPICART18陽性シグネチャーはEFSおよびOSの改善と関係した。各コホートから得られたEFSおよびOSのHRsおよびp値を次のテーブルF1よりF4までにまとめる。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
分析を簡素化することができる小規模なバイオマーカーのセットを識別するために、EPICART18シグネチャーからの6つのエピゲノム遺伝子座が単独で分析した場合も、EFSおよびOSの改善と関係したことを見出した。これらのCpG部位は、この説明で上に示した
テーブルAにまとめ、およびEFSおよびOSについての対応するカプラン-マイヤー曲線を
図7(A-F)および
図8(A-F)にそれぞれ示す。
【0173】
例2における結果の要約および考察として、小発見コホートによる例1のデータを裏付けることにより、CAR19形質導入Tリンパ球におけるエピジェネティックプロファイリングが臨床転帰と関係する一貫した読み取り値を提供することが裏付けられる。この知見は、事前注入細胞の固有の分子的特長が養子細胞療法の成功を定めるという証拠を提供する。この点に関して、事前注入されたT細胞のグローバルRNA発現パターンはCR患者および非CR患者間で異なり、観察はCAR統合部位での結果への影響を加えた。これらすべての知見は、事前注入されたCART19細胞の「適合性」が治療効果に寄与していることを支持する。この点において、特定のT細胞サブセットを保有するCART19細胞産物は臨床的により効果的である。商業上利用可能な治療との製造プロセスの条件での違い、および各患者の形質導入されたT細胞の独特な機能的背景により、事前注入された細胞の「オミクス」状況を修飾することができ、それらの活性に直接影響が与えられる。重要なことに、エピジェネティックなリモデリングにより、消耗したCAR-T細胞での機能を回復できることが最近報告され(Weber(ウェーバー)EW、Parker(パーカー)KR、Sotillo(ソチロ)Eら、Transient rest restores functionality in exhausted CAR-T cells through epigenetic remodeling.(一時的な休息は、エピジェネティックなリモデリングを通して、消耗したCAR-T細胞での機能を回復する。)Science.(サイエンス)2021;372(6537):eaba1786)、これらの変化の影響がさらに支持された。
【0174】
これらの結果は、養子細胞療法において使用される細胞の分子プロファイルが治療の成功を定めるのに非常に価値があるという概念を強固にする。このアプローチはまた、先行技術において免疫チェックポイントインヒビターについても提案されている(Duruisseaux(デュルソー)M、Martinez-Cardus(マルティネス-カルダス)A、Calleja-Cervantes(カジェハ-セルバンテス)MEら、Epigenetic prediction of response to anti-PD-1 treatment in non-small-cell lung cancer: a multicentre, retrospective analysis.(非小細胞肺癌における抗PD-1治療に対する反応のエピジェネティック予測:多施設の遡及的分析。)Lancet Respir Med.(ザ・ランセット.レスピラトリー・メディシン)2018;6(10):771-781.)。このように、ここで引用したものと同様の養子細胞療法の有効性のバイオマーカー、およびこの発明によって提案されるDNAメチル化マーカーはほぼ確実に発見を待ちうける。2つの例は、この領域における研究の可能性を強調する。
【0175】
全体として、事前注入されたCART19細胞のDNAメチル化状況は、B細胞悪性腫瘍を有するどの患者が臨床的利益を獲得するかを予測することができる。その提案された臨床用途にとって重要なことは、この発明で開示するエピゲノムシグネチャー内で識別された最良の候補部位もまた、指し示されるように、単一のPCRベースのアッセイを使用して評価することができることである。この点において、CAR19形質導入され事前注入されたT細胞のエピジェネティックプロファイルを評価することは、CAR T細胞療法の利益を最大限に受けられる患者を識別するというまだ満たされていない医療ニーズの解決に役立つ可能性がある。
【0176】
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【表15-4】
【表15-5】
【表15-6】
【表15-7】
【表15-8】
【表15-9】
【表15-10】
【表15-11】
【表15-12】
【表15-13】
【表15-14】
【表15-15】
【表15-16】
【表15-17】
【表15-18】
【表15-19】
【表15-20】
【表15-21】
【表15-22】
【表15-23】
【表15-24】
【表15-25】
【表15-26】
【表15-27】
【表15-28】
【表15-29】
【表15-30】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0177】
-WO2020092455(The Broad Inst. Inc.他)
-WO2018209324((The Broad Inst. Inc.他)
-WO2020170231(St. Jude's Children Research Institute)
【非特許文献】
【0178】
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【国際調査報告】