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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】添加剤含有ビトリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20240219BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240219BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240219BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240219BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240219BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C08L79/00 Z
B29C70/06
C08L63/00 Z
C08K3/016
C08K3/013
C08L101/02
C08G59/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552519
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022018655
(87)【国際公開番号】W WO2022187451
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,257
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521087623
【氏名又は名称】マリンダ
【氏名又は名称原語表記】MALLINDA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】テイントン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルビン, ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー, サラ
(72)【発明者】
【氏名】トビー, マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ログネルド, エリック
(72)【発明者】
【氏名】サドウスキー, サラ
【テーマコード(参考)】
4F205
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F205AA39
4F205AD16
4F205HA05
4F205HA19
4F205HA37
4F205HB02
4F205HF01
4J002AA021
4J002AA071
4J002AE043
4J002BD153
4J002BD154
4J002CD002
4J002CD052
4J002CM051
4J002DA039
4J002DE148
4J002DE168
4J002DE237
4J002DE239
4J002DG047
4J002DJ007
4J002DJ008
4J002DJ009
4J002DJ017
4J002DJ019
4J002DJ037
4J002DJ039
4J002DJ047
4J002DJ049
4J002DJ059
4J002DL007
4J002DL009
4J002DM009
4J002EC036
4J002EF057
4J002EF126
4J002EG037
4J002EH036
4J002EL136
4J002EL146
4J002EU116
4J002FA089
4J002FA107
4J002FA109
4J002FD015
4J002FD019
4J002FD134
4J002FD138
4J002FD142
4J002FD156
4J002FD203
4J002FD207
4J002GT00
4J036AA01
4J036AD08
4J036DB01
4J036DB16
4J036DB20
4J036DC41
4J036FA02
4J036FA03
4J036FA04
4J036FA05
4J036FA12
4J036FB01
4J036FB14
4J036JA11
(57)【要約】
硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種を含む共有結合ネットワークポリマーは、最終ビトリマーの機械的特性又は再加工性を犠牲にすることなく、化学混合物及び生成物の粘度、可使時間、粘着性、及び安全性の調整を可能にする。添加剤の使用により、これまで実現不可能であった製造技術も可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミン連結型オリゴマーと、架橋剤と、硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種とから調製される、共有結合ネットワークポリマー。
【請求項2】
前記架橋剤が、多官能性エポキシドである、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項3】
前記CRM添加剤が、ルイス塩基である、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項4】
前記CRM添加剤が、イミダゾール、無水物、アセテート、ジケトン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項5】
前記CRM添加剤が、1-メチルイミダゾール、無水酢酸、酢酸t-ブチル、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ベンジル、イミダゾール、無水マレイン酸、無水コハク酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項6】
前記粘着性調整添加剤が、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ステアリン酸、ラノリン、パラフィンワックス、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムシリカ、シリカ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラスバブル、ケイ酸カルシウム、珪藻土、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項7】
前記難燃添加剤が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、有機臭素化化合物、アルミニウム三水和物、モリブデン酸塩/水酸化物錯体、リン系塩、有機リン、アルミノケイ酸塩、ハロイサイト粘土、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項8】
前記物理的添加剤が、セラミック微小球、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪灰石、エラスチナイト、シリカ、カーボンブラック、ガラスバブル、コアシェルゴム、粘土、カオリン、炭酸マグネシウム、ホウケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、石灰石、珪藻土、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項9】
スリップ剤をさらに含む、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項10】
前記共有結合ネットワークポリマーが、ビトリマー及び熱硬化性ポリマーである、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項11】
前記共有結合ネットワークポリマーが、少なくとも60℃のガラス転移温度を特徴とする、請求項1に記載の共有結合ネットワークポリマー。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の共有結合ネットワークポリマーと、織布、不織布、一方向、チョップド又は細断繊維材料とを含む複合体。
【請求項13】
共有結合ネットワークポリマーを形成するための化学混合物であって、
各々が1種又は複数種の第一級及び/又は第二級及び/又は第三級アミンを含むイミン連結型オリゴマーの混合物と;
多官能性エポキシド架橋剤と;
イミダゾール、無水物、アセテート、ジケトン、及びそれらの組合せからなる群から選択される硬化速度調整(CRM)添加剤と
を含む、化学混合物。
【請求項14】
前記CRM添加剤が、1-メチルイミダゾール、無水酢酸、酢酸t-ブチル、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ベンジル、イミダゾール、無水マレイン酸、無水コハク酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の化学混合物。
【請求項15】
粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種をさらに含む、請求項13に記載の化学混合物。
【請求項16】
織布、不織布、一方向、チョップド又は細断繊維材料に加えられる、請求項13に記載の化学混合物。
【請求項17】
前記化学混合物の粘度が、5,000cP~100,000cPである、請求項13に記載の化学混合物。
【請求項18】
共有結合ネットワークポリマーを形成する方法であって、
イミン連結型オリゴマーと、架橋剤と、硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種とを合わせるステップ
を含む、方法。
【請求項19】
前記共有結合ネットワークポリマーを使用して、
(i)織布、不織布、一方向、チョップド又は細断繊維材料に含浸させるステップ、
(ii)フィルムを形成するステップ、又は
(iii)三次元物体を形成するステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維材料が、トウプレグウェットワインディングプロセス、引抜成形プロセス、プリプレグプロセス、注入プロセス、及び/又は樹脂トランスファー成形プロセスによって含浸される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2021年3月3日出願の米国仮特許出願第63/156,257号の利益及び優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究に関する陳述]
[0002]なし。
【0003】
[背景]
[0003]材料の物理的性質を化学的に変化させる能力は、実用的及び商業的観点の両方から有益である。例えば、粘着性が高すぎたり又は粘度が低すぎたりして加工できない材料は実用的ではないが、材料の粘着性又は粘稠性を変化させる能力は、材料を加工しやすくし、したがって、商業的に実行可能なものにすることができる。同様に、時には、化学的操作によって危険性物質をより安全に、ひいてはより実用的にすることができる。最後に、触媒作用などによって化学反応を促進させることで、より高速な処理が可能になり、したがって、処理量が向上して、商業的な利点がもたらされる。
【0004】
[0004]もちろん、ある性質を良い方に変化させる化学的操作は、別の材料性質に意図しない悪い影響を及ぼす可能性があるため、有益な結果を得るには、操作する材料のクラスについての深い理解が必要である。
【0005】
[概要]
[0005]本発明は、一般に、自己修復性、溶接性、及び展性を促進する動的結合を形成/切断することができる共有結合ネットワークポリマーに関する。本明細書に開示の共有結合ネットワークポリマーは、以下の添加剤、即ち、(i)系の極限ガラス転移温度(T)を変化させることなく、イミン連結型オリゴマー及びエポキシドが架橋又は硬化する速度を変更する添加剤、(ii)イミン連結型ビトリマー系の硬化における温度感性の可逆性(ビトリマーの結合交換反応の吸熱性に起因する現象)を止める添加剤、(iii)温度依存性硬化を促進させる添加剤、並びに(iv)硬化した材料内のイミン連結型結合交換によって提供される溶接可能且つリサイクル可能な性質を維持する添加剤を含む。
【0006】
[0006]開示する共有結合ネットワークポリマーは、最終ビトリマーの機械的特性又は再加工性を犠牲にすることなく化学混合物及び生成物の粘度、可使時間、粘着性、及び安全性の調整を可能にする硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種を含む。また、本明細書に開示する添加剤の使用により、ウェットワインディングやトウプレグ(towpreg)製造など、これまで実現不可能であった製造技術も可能になる。
【0007】
[0007]一態様では、共有結合ネットワークポリマーは、イミン連結型オリゴマーと、架橋剤と、硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種とから調製される。
【0008】
[0008]一実施形態では、架橋剤は、単官能性エポキシド、二官能性エポキシド、多官能性エポキシド、又はそれらの組合せ若しくは混合物である。
【0009】
[0009]一実施形態では、CRM添加剤は、ルイス塩基である。例えば、CRM添加剤は、イミダゾール、無水物、アセテート、ジケトン、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。より詳細には、CRM添加剤は、1-メチルイミダゾール、無水酢酸、酢酸t-ブチル、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ベンジル、イミダゾール、無水マレイン酸、無水コハク酸、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0010】
[0010]一実施形態では、粘着性調整添加剤は、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ステアリン酸、ラノリン、パラフィンワックス、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムシリカ(barium sulfate silica)、シリカ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ガラスバブル、ケイ酸カルシウム、珪藻土、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0011】
[0011]一実施形態では、難燃添加剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、有機臭素化化合物、アルミニウム三水和物、モリブデン酸塩/水酸化物錯体、リン系塩、有機リン、アルミノケイ酸塩、ハロイサイト粘土、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0012】
[0012]一実施形態では、物理的添加剤は、セラミック微小球、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪灰石、エラスチナイト(elastinite)、シリカ、カーボンブラック、ガラスバブル、コアシェルゴム、粘土、カオリン、炭酸マグネシウム、ホウケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、石灰石、珪藻土、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0013】
[0013]一実施形態では、共有結合ネットワークポリマーは、スリップ剤、例えば、PTFE、イソプロパノール、グリコール、シリコン流体(silicon fluid)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるスリップ剤などをさらに含む。
【0014】
[0014]一実施形態では、共有結合ネットワークポリマーは、ビトリマー及び熱硬化性ポリマーであり、少なくとも60℃のガラス転移温度を特徴とすることができる。
【0015】
[0015]一実施形態では、複合体は、本明細書に開示する共有結合ネットワークポリマーと、織布、不織布、一方向、チョップド又は細断繊維材料とを含む。
【0016】
[0016]一態様では、共有結合ネットワークポリマーを形成するための化学混合物は、各々が1種又は複数種の第一級及び/又は第二級及び/又は第三級アミンを含むイミン連結型オリゴマーの混合物と;多官能性エポキシド架橋剤と;イミダゾール、無水物、アセテート、ジケトン、及びそれらの組合せからなる群から選択される硬化速度調整(CRM)添加剤とを含む。
【0017】
[0017]一実施形態では、化学混合物は、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種をさらに含む。
【0018】
[0018]一実施形態では、化学混合物は、織布、不織布、一方向、チョップド、又は細断繊維材料に加えられる。
【0019】
[0019]一実施形態では、化学混合物の粘度は、5,000cP~100,000cP、又は5,000cP~80,000cP、又は5,000cP~50,000cPである。一実施形態では、化学混合物の粘度は、125,000cP未満、又は100,000cP未満、又は80,000cP未満、又は50,000cP未満、又は30,000cP未満、又は20,000cP未満、又は10,000cP未満である。
【0020】
[0020]一態様では、共有結合ネットワークポリマーを形成する方法は、イミン連結型オリゴマーと、架橋剤と、硬化速度調整(CRM)添加剤、粘着性調整添加剤、難燃添加剤、物理的添加剤、及び粘度調整添加剤のうちの1種又は複数種とを合わせるステップを含む。
【0021】
[0021]一実施形態では、方法は、共有結合ネットワークポリマーを使用して、(i)織布、不織布、一方向、チョップド若しくは細断繊維材料に含浸させるステップ、(ii)フィルムを形成するステップ、又は(iii)三次元物体を形成するステップをさらに含む。
【0022】
[0022]一実施形態では、繊維材料は、トウプレグウェットワインディングプロセス、引抜成形プロセス、プリプレグプロセス、注入プロセス、及び/又は樹脂トランスファー成形プロセスによって含浸される。一実施形態では、繊維材料は、押出成形に続いて、圧縮、引抜成形、スロットダイコーティング、溶媒浸漬含浸、及び/又はホットメルト含浸よって含浸させる。
【0023】
[0023]一実施形態では、フィルムは独立型フィルムであるか、又はフィルムは剥離ライナー上に支持されているか、又はフィルムは多層デバイス内の層である。一実施形態では、フィルムは、押出成形、スロットダイコーティング、グラビア、マイヤーロッド、スライド、研磨ロッド、及び/又はリソグラフィによって形成される。
【0024】
[0024]一実施形態では、三次元物体は、射出成形、付加製造、レーザ切断法、及び/又はCNC機械加工によって形成される。
【0025】
[0025]一実施形態では、共有結合ネットワークポリマーを形成する方法は、共有結合ネットワークポリマー又は化学混合物を、例えば、加熱、UV処理、IR処理、及び/又はマイクロ波処理によって硬化させることをさらに含む。
【0026】
[0026]本発明の例示的な実施形態を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】60℃で実施した様々な重量パーセンテージのいくつかの促進剤の時間に対する粘度(エポキシが系に添加されたときとの比較)のグラフを示す図である。
図2】無水酢酸の1、5、15、及び45分における動的機械分析(DMA)スペクトルにより、どのように追加の硬化が起こっているか、タンデルタのピークが収束しているかを示す図である。
図3】対照の1、5、15、及び45分におけるDMAスペクトルにより、どのように追加の硬化が起こっているか、タンデルタのピークが収束しているかを示す図である。
図4】温度を上昇させたときの、従来の熱硬化性樹脂の硬化(左)とポリイミン(イミン連結型)ビトリマーの硬化(右)の独特の違いを示すグラフである。従来の熱硬化性樹脂では、架橋が始まった後、温度が上昇すると、粘度は上がり続けるだけである。逆に、ポリイミンビトリマー系では、加熱が急激に上昇すると、粘度が低下する。
図5】イミダゾール促進添加剤の存在下及び不存在下において架橋剤で硬化した2種のポリイミン(イミン連結型)ビトリマー樹脂系の粘度プロファイルの変化を示すグラフである。どちらの場合も、材料の可使時間は短くなり、さらに急激に加熱しても、イミダゾールを含む材料はイミダゾールを含まない材料ほど粘度が低下しない。
【0028】
[詳細な説明]
[0032]一般に、本明細書で使用する用語及び語句は、当業者に公知の標準的なテキスト、ジャーナル参考文献、及び文脈を参照することによって見出すことができる、当技術分野で認識されている意味を有する。以下の定義は、本記載の文脈における特定の使用を明確にするために提供される。
【0029】
[0033]本明細書で使用する場合、「イミン連結型オリゴマー」又は「イミン連結型ポリマー」は、それぞれ、少なくとも1個の非末端イミン部分を含み、イミンのC=N部分がオリゴマー又はポリマー骨格内にあるようなオリゴマー又はポリマーである。一実施形態では、イミン連結型オリゴマー又はポリマー中のイミン部分のC=N部分は、骨格の非環状部分内にある。
【0030】
[0034]本明細書で使用する場合、「部分」は、分子の一部である。
【0031】
[0035]本明細書で使用する場合、「多官能性」は、少なくとも2個の指定した部分を含む分子を表すのに使用される。例えば、多官能性アミンは、少なくとも2個のアミン部分を含み、多官能性アルデヒド又はカルボニルは、それぞれ少なくとも2個のアルデヒド又はカルボニル部分を含む。指定した部分に加えて、多官能性分子は、いくつかの実施形態では、追加の異なる部分を含有してもよい。
【0032】
[0036]本明細書で使用する場合、「架橋剤」は、オリゴマー及び/又はポリマーと化学的に反応し、共有結合する分子である。
【0033】
[0037]本明細書で使用する場合、「複合体」は、異種構成で一緒された複数の部分又は物質を含む。本明細書で開示する複合体は、共有結合ネットワークポリマー及び少なくとも1種の他の材料を含む。例えば、共有結合ネットワークポリマーは、他の材料と層状にされてもよく、又は他の材料を含浸及び/若しくはカプセル化するのに使用されてもよく、又は他の材料によってカプセル化されてもよく、又は他の材料と混ぜ合わされてもよい。
【0034】
[0038]本明細書で使用する場合、「重量パーセント」又は「重量%」は、混合物中の成分の重量を硬化又は乾燥前の混合物の総重量で割ったものに100を乗じて計算される。
【0035】
[0039]本明細書で使用する場合、「スリップ剤」は、混合物の表面に移動して、摩擦を低減し、スリップ性を向上させる内部潤滑剤として作用する化合物である。高いスリップ特性を有する表面は、一般に、引っ掻き、汚れ、及びブロッキングに耐性がある。
【0036】
[0040]「近位」及び「遠位」は、2つ以上の物体、面、又は表面の相対的な位置を指す。例えば、他の物体の位置に対して基準点に空間的に近い物体は、基準点に対して近位と考えられ、他の物体の位置に対して基準点から空間的に遠い物体は、基準点に対して遠位と考えられる。
【0037】
[0041]用語「直接的及び間接的」は、ある物体の別の物体に対する作用又は物理的位置を表す。例えば、他の物体に「直接的に」作用又は接触する物体は、仲介物の介入なしにそれを行う。反対に、他の物体に「間接的に」作用又は接触する物体は、仲介物(例えば、第3の成分)を介してそれを行う。
【0038】
[0042]例示的なイミン連結型共有結合ネットワークポリマー及びイミン連結型共有結合ネットワークポリマーを製造する方法は、国際公開第2020/051506号に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。要約すると、イミン連結型共有結合ネットワークポリマーは、テレフタルアルデヒド(terephthaldehyde)などの多官能性アルデヒドを1種又は複数種の多官能性アミンと非化学量論比で混合して、アミン末端イミン連結型オリゴマーを生成し、続いて、それをモレキュラーシーブで精製し、乾燥させ、多官能性エポキシドなどの多官能性架橋剤と反応させて、イミン連結型共有結合ネットワークポリマーを生成することによって製造することができる。一般に、反応は撹拌しながら60℃で行われ、硬化は100℃を超える温度で達成される。
【0039】
(硬化速度調整添加剤)
[0043]従来から、イミン連結型ビトリマーは、イミン連結型オリゴマーを含む混合物又は溶液(パートA)を調製し、1種又は複数種の架橋剤を含む別個の混合物又は溶液(パートB)を調製し、製造プロセス(例えば、プリプレグ、ハンドレイアップ、フィルム成形など)の前に、パートA及びパートBを一緒に混合してパートCを作製することによって合成される。
【0040】
[0044]本開示によれば、オリゴマー及び架橋剤が遭遇してイミン連結型ビトリマーを形成するときに起こる架橋反応の速度は、硬化速度調整添加剤がパートA又はパートCに存在する場合に変更される(例えば、促進される)。熱硬化性樹脂の液体状態から固体状態への硬化を促進する能力は、経済的及び加工的観点から商業上重要である。例えば、プリプレグ材料の型内硬化の促進は、開示する組成物及び方法を使用して達成することができる。
【0041】
[0045]重要なことに、硬化速度調整添加剤は、中間体として作用し、且つ反応中に再生される触媒ではない。その代わりに、硬化速度調整添加剤は、反応で消費され、且つ反応生成物に変換される試薬である。例示的な硬化速度調整添加剤としては、限定するものではないが、イミダゾール、酢酸t-ブチル、無水物、ジケトン(ベンジル)、及びその他のルイス塩基が挙げられ、これらは、エポキシ-アミン架橋を促進して、硬化の促進をもたらす。
【0042】
[0046]開示する系内では、硬化挙動は、実質上直線的に比較的ゆっくりと起こる傾向があるビトリマー様の硬化から、時間の経過とともに実質上指数関数的に増加する、より従来の不可逆的な硬化へと変化する。しかし、図4及び図5に示すように、硬化速度調整添加剤によって誘発されるビトリマーの硬化の促進は、オリゴマー、架橋剤、及び硬化速度調整添加剤の混合物を加熱することによって減速又は逆転させることができる。これにより、例えば、温度を上昇させ、粘度を低下させることによって、活発な硬化プロセスが進行する速度を調整することができる。理論に拘泥するものではないが、温度を上昇させることで共有結合の交換が促進され、それによって、ゲル化点が効果的に遅延され、再流動が可能になると考えられる。
【0043】
[0047]開示するビトリマーは、加熱すると再加工可能であり、ジアミンに曝すとリサイクル可能であり、その結果、得られるポリマー又はポリマー複合体を反応物の混合物に解重合することができ、所望により当技術分野で既知の化学技術によって精製することができる。
【0044】
[0048]硬化速度調整添加剤としてイミダゾールを使用したいくつかの試料を生成した。0.05~5wt%では、160℃で40分後に硬い材料が得られることが判明した。注目すべきことに、イミダゾールを添加すると、硬化速度調整添加剤を含まない組成物と比較して、限られた時間(型内で40分)でより完全な硬化が可能になった。
【0045】
[0049]比較のために、EPON(商標)828として販売されているビスフェノールA/エピクロロヒドリン液体樹脂などの標準的なエポキシ樹脂系では、アミンによる硬化は約15分で始まり、ポリアミドのゲル化は約50分である。標準的なエポキシ系においてイミダゾールを硬化剤として使用した場合、温度が57℃未満の場合、硬化が始まるまでに約70分かかる。
【0046】
[0050]プリプレグの硬化条件を変えるために、ホットメルト2液型エポキシ樹脂系において様々な硬化速度調整添加剤を試験した。試験により、樹脂系(イミン連結型オリゴマー及びエポキシ)の硬化を促進する添加剤、及び樹脂系の可使時間を低下させることなく硬化を促進する添加剤が特定された。
【0047】
[0051]試験した硬化速度調整添加剤は、以下のようなイミダゾール(求核性アミン)、無水物、熱ラジカル開始剤、及びイオン性求核試薬(nucleoplile)であった:
・ 2-エチル-4-メチルイミダゾール CAS番号931-36-2
・ 1-メチルイミダゾール CAS番号616-47-7
・ イミダゾール CAS番号288-32-4
・ 無水マレイン酸 CAS番号108-31-6
・ 無水コハク酸 CAS番号108-30-5
・ 無水酢酸 CAS番号108-24-7
・ 酢酸t-ブチル CAS番号540-88-5
・ ベンジル CAS番号134-81-6
【0048】
(粘度研究)
[0052]使用粘度を決定し、可使時間、及び100,000cPに達するまでに必要な時間を報告した。各CRM添加剤の粘度を、少なくとも2種の異なる重量パーセンテージを使用して求め、対照の、添加剤を含有しないエポキシ樹脂系と比較した。この粘度データを収集するための一般的な手順及びパラメータは以下のとおりである:
1.(イミン連結型オリゴマー)樹脂及びエポキシを別々に70℃で1~3時間加熱した。
2.所望の重量パーセンテージの硬化速度調整剤を樹脂と混合し、70℃で3~5分間加熱した。
3.イミン連結型オリゴマー:エポキシの比を2.5:1として、エポキシ(DER331)を樹脂及び硬化速度調整剤と混合した。
4.粘度を100,000cPに達するまで60℃で監視した。
【0049】
[0053]この粘度データの表形式は表1に、グラフ表示は図1に見ることができる。添加剤を以下の3つの一般的なグループのいずれかに分類した。
・グループ1:60℃において可使時間を延長させる試薬
○ 例:1-メチルイミダゾール、無水酢酸、及び酢酸t-ブチル
・グループ2:60℃において可使時間にほとんど効果を及ぼさない試薬
○ 例:2-エチル-4-メチルイミダゾール及びベンジル
・グループ3:60℃において可使時間を短縮させる試薬
○ 例:イミダゾール、無水マレイン酸、及び無水コハク酸
【0050】
[0054]グループ1の試薬はすべて室温で液体であり、それらはすべて初期粘度を低下させ、全体の可使時間を延長させた。グループ1に見られた別の傾向として、硬化速度調整添加剤の重量パーセンテージが高いほど初期粘度が低く、且つ可使時間が長くなったが、グループ3の添加剤では逆の傾向が観察された。
【0051】
[0055]
【表1】
【0052】
(硬化促進研究)
[0056]これらのCRM添加剤の硬化ダイナミクスを理解するために、各化合物がそれぞれのCRM添加剤を5重量%含有し、並びに樹脂:エポキシ比が2.5:1であるプリプレグを作製した。次いで、プリプレグの小片を130℃で15分間隔で最大60分硬化させた。次いで、ガラス転移温度(T)を、動的機械分析(DMA)を使用して決定した。これを実施するための一般的な手順は以下のとおりである:
1.(イミン連結型オリゴマー)樹脂及びエポキシを別々に70℃で1~3時間加熱した。
2.CRM添加剤を樹脂に5重量%で添加し、混合し、ガラス製シンチレーションバイアル中で70℃で3~5分間加熱した。
3.樹脂:エポキシの比を2.5:1として、エポキシ(DER331)を樹脂及びCRM添加剤と混合した。
4.折り畳んだ剥離ライナーに内容物10~14gを注ぎ入れ、80~100℃に加熱したプラテンプレス間で2分間プレスすることによって樹脂フィルムを作製した。
5.樹脂が熱い間に剥離ライナーを開き、樹脂が両側にコーティングされるようにした。
6.12インチ×12インチの一方向炭素繊維4オンスを、折り畳んだ剥離ライナーに入れて、上下とも樹脂と接触するようにした。
7.次いで、炭素繊維を80~100℃に加熱したプラテンプレスで4分間プレスした。
8.含浸させた炭素繊維を、硬化の準備ができるまで冷蔵庫で保管した。
9.硬化の準備ができたら、含浸させた炭素繊維の小片(約2インチ×2インチ)を4つ切断し、130℃で15、30、45、及び60分硬化させた。
10.各時点における炭素繊維複合材料のTを、5℃/分で0.003mmのひずみで185℃まで昇温するDMAを使用して収集した。
【0053】
[0057]一般に、硬化時間が長くなるにつれて、Tも上昇する。対照と比較して、硬化時間を短縮させたCRM添加剤は、イミダゾール、無水マレイン酸、及び無水酢酸であった。これらは表2で観察されるTの一般的な傾向である。DMAで収集したスペクトルでは、場合によってはタンデルタ曲線上に複数のピークがあった。これらの複数のピークは、複数の熱事象を示しており、この場合、実際のTは、ピークの平均値にあると考えられる。これらの試料では硬化時間が長くなるにつれて、さらに架橋が進み、より均質なポリマーネットワークが得られるため、ピークは大抵の場合収束し、その結果、報告されるTの値は1つになる。該当する場合、表2には複数のT値が示されているが、これは、硬化時間が長くなるにつれてピークの数が大抵減少し、硬化が完了に近づいていることを意味している。
【0054】
[0058]15、30、45、及び60分の時点に加えて、1分及び5分の硬化時間を対照及び無水酢酸において試験した。対照のTは15分間隔が長くなるほど値の幅が狭くなったため、初期硬化は予想よりも早く起こったという仮説が立てられた。対照における1分及び5分の硬化の結果は、タンデルタに2個のはっきりと異なるピークを示し、ここでは、エポキシ樹脂系が完全に架橋及び均質化されていない。硬化時間が長くなるにつれてピークは収束し、図2に示すように、1つの明確なピーク及びT値が存在する。無水酢酸では、より長い硬化時間と比較して、1分及び5分の間隔で同様の傾向が観察された。より短い硬化サイクルでは複数のピークが見られるが、タンデルタのピークは対照と同じように収束する(図3)。無水酢酸試料に見られるピークの平均Tは、より代表的なT値を示しており、時間が長くなるにつれて起こるピークの合併は、硬化が完了に近づいていることを示唆している。所与の温度で最大Tに達するまでに15~45分かかった対照と比較して、イミダゾール及び無水物の場合、CRM添加剤を含む試料は、1~15分で最大T(ほぼ完全な硬化を示す)に達した。したがって、これらの添加剤は硬化時間を短縮させた。
【0055】
[0059]
【表2】

【0056】
(結論)
[0060]実験は、CRM添加剤がエポキシ樹脂系の硬化速度に影響を及ぼすことを示している。粘度に関して、対照に比べて可使時間を延長させた3種の薬剤は、1-メチルイミダゾール、無水酢酸、及び酢酸t-ブチルであった。硬化研究において、より速い硬化サイクルを示した添加剤は、イミダゾール、無水マレイン酸、及び無水酢酸であった。無水酢酸は、可使時間を延長させ、硬化時間を短縮させる能力において際立っていた。しかし、試験したすべての化合物は、対照と比較して、異なる温度レジームで硬化速度が増大した。試験した化合物は、多くの用途にとって重要なパラメータである可使時間に対して様々な影響を及ぼした(可使時間を延長するものもあれば、短縮するものもあった)。
【0057】
[0061]引抜成形複合プロセスにおいて、イミン連結型オリゴマーをエポキシ及びCRM添加剤(複数可)と合わせて、樹脂をガラス繊維に注入し、3分の型内滞留時間ひいては硬化時間を実現した。最終的なTを表3に報告する。非対照試料に0.2%のイミダゾールを含有させて、型内での硬化をまさに1~3分に加速させた。
【0058】
[0062]
【表3】
【0059】
[0063]「端部」試料は、部品の外側1~3mmから採取した。「内部」試料は、部品の4~6mmから採取した。
【0060】
[0064]イミダゾールのデータは、CRM添加剤の使用が粘度に予期せぬ影響を与えることを示唆している。さらに、CRM添加剤を使用した材料は、リサイクル性を保持することが示された。最後に、促進された試料が共有結合交換を起こして複合部品の圧密化及び継続的なポリマー修復を可能にする能力は、予測できず、実験で証明された。
【0061】
[0065]いくつかの実施形態では、本明細書に開示する化学混合物は、ウェットワインディングによって共有結合ネットワークポリマー複合材料を形成することができ、この場合、繊維状物は、化学混合物の浴に通され、次いで、マンドレルに連続的に巻き取られて、剥離ライナーなしでトウプレグ又はプリプレグが製造される。CRM添加剤の導入により共有結合ネットワークポリマーを迅速に硬化できるため、以前は共有結合ネットワークポリマーでは実現できなかったこの加工技術が可能になった。
【0062】
[0066]いくつかの実施形態では、本明細書に開示する化学混合物は、引抜成形で共有結合ネットワークポリマー複合材料を形成することができ、この場合、複合ネットワークポリマーは、連続プロセスにおいて実質上硬化され、引抜成形された材料(別名、リニアル(lineal))は、製造される際にサイズに合わせて切断される。一実施形態では、強化繊維は、ガラス繊維又は炭素繊維である。
【0063】
(粘着性調整添加剤)
[0067]ビトリマー、特にイミン連結型ビトリマー用の粘着性調整添加剤は、即時粘着性を低減し、粘度30,000cP未満で40分超の可使時間を維持する。いくつかの実施形態では、混合物を150℃で最大8分間保持した場合、130℃超の硬化Tが達成される。
【0064】
[0068]例示的な粘着性調整添加剤としては、Metastar501(メタカオリン)、タルク、HAR TALC T-77、HAR TALC H-92、アトマイト(炭酸カルシウム)、ステアリン酸、ラノリン、パラフィンワックス、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムシリカ、シリカ、ケイ酸塩、マイカ100K(炭酸カルシウム)、PTFE(サーフロン)、ガラスバブル(ホウケイ酸ソーダ石灰)、珪灰石(CaSiO-ケイ酸塩)、珪藻土が挙げられるが、それらだけに限らない。粘着性調整添加剤は、最大27重量%まで、又は1.5重量%~5重量%の間、又は2重量%~3重量%の間で存在してもよい。
【0065】
[0069]いくつかの実施形態では、スリップ試薬は、粘着性調整添加剤とともに使用することができる。
【0066】
[0070]いくつかの実施形態では、重量又はモル過剰のアミンを反応混合物に添加することができる。
【0067】
[0071]T130オリゴマー(T130は、ジアミン、テレフタルアルデヒド、及びベンズアルデヒドの混合物から形成されたイミン連結型オリゴマーを含む、15~20g)を、1:1、2:1、又は3:1(オリゴマー:エポキシ)の比で、1.5重量%、2.5重量%、又は5重量%の固体添加剤及び0.3重量%~3重量%のCRM添加剤と混合した。試料を約3分間混合し、次いで、剥離ライナー上に広げ、冷凍庫(0℃)又はオーブン(80℃)で約5分間保管した。フィルムを触り、温度を記録し、粘着性を0~5で評価した。0は、手袋をフィルムから離すときにくっつかず、音がしないことを表し、5は、樹脂が手袋に付着するほど粘着性があることを表す。
【0068】
[0072]5重量%のタルクを含む場合、オリゴマー(T130):エポキシ(DER330)の比が1:1では、比が3:1のものよりも粘着性が低くなった。ベビーパウダー、珪灰石、及びガラスバブルは、粘着性を著しく減少させたが、粘度を増加させ、一方、CRM添加剤は、3,5-ジメチルピロゾール(dimethylpyrozole)<無水マレイン酸<無水酢酸の順で硬化を促進した。
【0069】
(難燃添加剤)
[0073]イミン連結型ビトリマーと、火炎、煙、及び毒性(FST)添加剤とを含む複合マトリックスを開発した。FST添加剤は、UL94垂直燃焼試験によって評価される難燃性(FR)を向上させ、UL94-V0等級を達成する。追加の試験には、水平燃焼試験、煙濃度、及び放熱がある。
【0070】
[0074]様々なT130樹脂系に1~60重量%、又は10~60重量%、又は20~60重量%、又は30~60重量%の濃度で組み込んだ様々なFST添加剤について、いくつかのスクリーニング実験を行った。次いで、完成した(硬化した)複合体又は樹脂を、UL94垂直燃焼試験を使用して試験した。以下のクラスのFST添加剤、及び添加剤の組合せを評価した。
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
・有機臭素化化合物(Br)
・アルミニウム三水和物(ATH)
・モリブデン酸塩/水酸化物複合体(MH)
・リン系塩(PS)
・有機リン(OP)
・アルミノケイ酸塩(AlSi)
・ハロイサイト(HS)
以下の特性も評価した。
・Tg(DMA)
・吸湿性(ASTM D570)
・曲げ強度(ASTM D790)
・層間せん断(ASTM D2344)
・粘度(ASTM D2556)
【0071】
[0075]配合物:ポリイミン+エポキシを用いて60種超の配合物を合成した。次いで、メチルエチルケトン(MEK)中に含まれる特定のFST添加剤(複数可)を添加した。次いで、樹脂を、3k 2×2の綾織炭素繊維、4.0オンス/平方ヤードの一方向炭素繊維に含浸させ、及び/又はその後の試験のために樹脂棒型に流し込んだ。次いで、添加剤を含まない樹脂に使用される典型的な硬化サイクルを用いて、すべての材料を硬化させた。評価した配合物及び添加剤及び混合物のいくつかの簡単な概要を表4に示す。
【0072】
[0076]
【表4】
【0073】
[0077]難燃性:対照の、いずれの添加剤も含まないT130樹脂は、UL94-V0試験に不合格であった。試験中、樹脂及び複合体は2回目の炎への曝露中に炎に包まれ、10秒以上燃え続けた。材料は炭化し、黒煙を生じたが、滴下も溶融もしなかった。
【0074】
[0078]ハイスループットデータの収集のために、UL94試験は、複合体棒と樹脂棒の両方の配合物につき1~3個の試料に対してのみ実施した。行われた観察から、FST有効性を「優良」(V0~V1で合格)、「中程度」(V1~V2で合格)、又は「不合格」(垂直燃焼試験で不合格)としてまとめた。結果を表5にまとめる。
【0075】
[0079]
【表5】
【0076】
[0080]
【表6】
【0077】
[0081]樹脂を約100gsmの樹脂にフィルム化し、次いで、4.3オンス/平方ヤードの一方向炭素繊維に含浸させることができるパイロットスケールのプリプレグプロセスを使用して、プリプレグを作製し、次いで、それを加熱油圧プレスで硬化し、圧密化した。ダイヤモンド鋸でクーポンを切断し、試験した。
【0078】
[0082]難燃(FR)添加剤を含有するイミン連結型ビトリマーは、樹脂と複合体の両方の形態において、標準的な試験に基づいて効果的な難燃性能を示した。樹脂及び複合体は、機械的(曲げ)安定性を示し、溶媒浸漬又はホットメルト法で加工可能であった。
【0079】
[0083]ビトリマー系からの複合材料(例えば、繊維)の分離及び回収は、ケミカルリサイクル時に可能であり、結合交換-溶接及び再成形により硬化後の再加工性が維持された。
【0080】
(物理的添加剤)
[0084]物理的添加剤又は充填剤をイミン連結型ビトリマーに組み込んで、リサイクル可能な材料を形成した。物理的添加剤としては、セラミック微小球、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪灰石、エラスチナイト、シリカ、カーボンブラック、ガラスバブル、コアシェルゴム、粘土、カオリン、炭酸マグネシウム、ホウケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、白色方解石(石灰石)、珪藻土、及びそれらの組合せが挙げられるが、それらだけに限らない。
【0081】
[0085]物理的添加剤は、ビトリマーの加工ダイナミクス及び機械的特性(曲げ強度、靭性、耐衝撃性、圧縮性、引張強度、UV耐性、熱伝導率、及び熱容量)を向上させる。
【0082】
[0086]物理的添加剤(複数可)を含むビトリマー系は、ホットメルト法又は溶媒浸漬法によって加工可能であり、物理的添加剤は(ビトリマーリサイクル溶液中で実質上不溶性であるため)ケミカルリサイクル時にビトリマー系から分離し、回収することができる。
【0083】
[0087]
【表7】
【0084】
[0088]
【表8】
【0085】
(粘度調整添加剤)
[0089]粘度調整添加剤は、ビトリマー及びビトリマー複合体のニート無水合成用の溶融可能なイミン連結型オリゴマーを作製するのに使用された。交換可能な単官能性芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒドやトランス-シンナムアルデヒドなど)、単官能化ケトン(メチルエチルケトン(MEK)やアセトンなど)、及びポリマーの成長を許容しない他のキャッピング基を使用して、イミン連結型オリゴマーの極性及び分子量(MW)を低下させ、それによって粘度を低下させ、可使時間を延長させ、優れた機械的特性を維持した。アミン官能化シリコーン油、エポキシ官能化シリコーン油、及び非官能化シリコーン油などのシリコーン油も粘度調整添加剤として使用し、可使時間の延長にはキシレンを使用した。
【0086】
[0090]アルデヒドを様々な比(2~40重量%)及び様々な合成ステップにおいて使用すると、溶融温度がより低くなり、ビトリマー系と架橋剤との硬化速度に影響を及ぼした。これらの添加剤は、最終的なTgに影響を及ぼす可能性があるが、系の水分安定性を低下させることはなく(材料は加水分解に対して安定なまま)、低温で簡単に溶融流動して、グラムとキログラムの両スケールで好ましい複合加工条件(例えば、100~1,000,000cPの粘度、及び5分~6時間の可使時間)を可能にする。
【0087】
[0091]
【表9】
【0088】
[0092]粘度変化は、芳香族アルデヒドのベンズアルデヒド及びシンナムアルデヒド、並びに以下のシリコン油(silicon oil)で実証された:KF-353、KF-868、KF-859、X-22-2516、X-22-343、及びKP306。KF-353A-ポリエーテル;KF-868-モノアミノ;X-22-2516-イオン鎖アルキルを有するポリエーテル;KF-859-ジアミノ;X-22-343-エポキシ;KP-306-40~45%のキシレン、40~45%のエチルベンゼン、その他20~10%は摩擦低減剤。
【0089】
[0093]溶媒希釈剤の選択に関して有意な粘度変化も示された(例えば、1重量%及び5重量%のキシレンを評価した)。
【0090】
[0094]シリコン添加剤を、T130配合物の可使時間を延長させるのに使用した。Si添加は10:1(樹脂:Si添加剤)の比に基づき、DER331添加は2.5:1(オリゴマー:エポキシ)の比に基づいた。
【0091】
[0095]
【表10】
【0092】
[0096]
【表11】
【0093】
[0097]
【表12】
【0094】
[0098]
【表13】
【0095】
(参照による援用及び変更に関する陳述)
[0099]本出願全体にわたって引用したすべての参考文献、例えば、発行済み又は登録済み特許又は均等物を含む特許文書;特許出願公開;及び非特許文献文書又は他の原資料は、各引用文献が本出願の開示と少なくとも部分的に矛盾しない範囲で、参照により個々に援用されるかのように、その全体が参照により本明細書に援用される(例えば、部分的に矛盾する引用文献は、その引用文献の部分的に矛盾する部分を除いて参照により援用される)。
【0096】
[00100]本明細書において使用している用語及び表現は、説明の用語として使用されており、限定するものではなく、このような用語及び表現の使用において、図示及び説明した特徴又はその一部のどんな均等物も除外する意図はないが、特許請求する本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されよう。したがって、本発明を、好ましい諸実施形態、例示的な諸実施形態、及び任意選択される特徴によって詳細に開示しているが、本明細書に開示される概念の修正及び変形は、当業者によって実施され得、このような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。本明細書において提供する特定の諸実施形態は、本発明の有用な諸実施形態の例であり、本発明の説明に記載のデバイス、デバイス構成要素、及び方法ステップの多数の変形を使用して、本発明を実施できることは当業者には明らかであろう。当業者には明らかなように、本発明の方法及びデバイスに有用な方法及びデバイスは、多数の任意選択の組成物及び処理要素及びステップを含むことができる。材料及び方法の当技術分野で既知の機能的均等物はすべて、本開示に含まれることを意図している。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈すべきではない。
【0097】
[00101]本明細書において置換基の群を開示する場合、その群及びすべての下位群のすべての個々の要素が個別に開示されることが理解されよう。マーカッシュ群又は他の群分けを本明細書で使用する場合、その群のすべての個々の要素並びにその群の可能なすべての組合せ及び下位の組合せは、本開示に個々に含まれることを意図している。
【0098】
[00102]本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「1つの(a、an)」、及び「その(the)」は、文脈上そうでないとする明白な指示がない限り、複数形の言及を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「分子」への言及は、複数のそのような分子及び当業者に既知のその均等物などを含む。同様に、用語「1つの(a又はan)」、「1つ又は複数の(one or more)」、及び「少なくとも1つの(at least one)」は、本明細書において互換的に使用することができる。また、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、互換的に使用できることに留意されたい。表現「請求項XX~YYのいずれか一項に記載の(of any of claims XX-YY)」(ここで、XX及びYYは請求項番号を指す)は、代替形態において複数の従属請求項を提供することを意図しており、いくつかの実施形態では、表現「請求項XX~YYのいずれか一項に記載の(as in any one of claims XX-YY)」と交換可能である。
【0099】
[00103]別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を使用することができるが、好ましい方法及び材料について説明する。
【0100】
[00104]本明細書において範囲、例えば、整数の範囲、温度範囲、時間範囲、組成範囲、又は濃度範囲を示す場合は常に、すべての中間範囲及び部分範囲、並びに示した範囲に含まれるすべての個々の値が、本開示に含まれることを意図している。本明細書で使用する場合、範囲は、詳細には、範囲の終点値として提供される値を含む。本明細書で使用する場合、範囲は、詳細には、範囲のすべての整数値を含む。例えば、1~100の範囲は、詳細には、終点値の1及び100を含む。本明細書の説明に含まれる範囲又は部分範囲内の任意の部分範囲又は個々の値は、本明細書の特許請求の範囲から除外できることが理解されるであろう。
【0101】
[00105]明細書で使用する場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義語であり、互換的に使用することができ、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で使用する場合、「からなる(consisting of)」は、請求項の要素において特定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分も除外する。本明細書で使用する場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的且つ新規な特性に重大な影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。本明細書における各例において、用語「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」のいずれも、他の2つの用語のいずれかと置き換えることができる。本明細書に例示的に記載する本発明は、適切には、本明細書に詳細に開示していない1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制限がない場合に実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】