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特表2024-508498睡眠時無呼吸の治療における使用のためのレボキセチン及びムスカリン受容体拮抗薬(MRA)の組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸の治療における使用のためのレボキセチン及びムスカリン受容体拮抗薬(MRA)の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5375 20060101AFI20240219BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K31/5375
A61K31/216
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
A61P11/00
A61P11/04
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552525
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022018604
(87)【国際公開番号】W WO2022187420
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,463
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】タラント-モンテムッロ,ルイージ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC15
4C076FF68
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書には、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩とムスカリン受容体拮抗薬(MRA)とを含む医薬組成物、及びレボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩とMRAを投与することを含む睡眠時無呼吸の治療に使用するための該組成物が記載されている。いくつかの実施形態では、MRAがオキシブチニン若しくは(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者を治療する方法であって、前記方法は、それを必要とする被験者に対して、(i)レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及び(ii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩を約1mg~約8mgの用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩を約2mg~約6mgの用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MRA及びレボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩がそれぞれ毎日投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記MRAおよびレボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩は、単一の組成物として投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記単一の組成物は、経口投与形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記経口投与形態は、シロップ、丸薬、タブレット、トローチ、カプセル、またはパッチである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メチスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、およびトリヘキシフェニジルまたはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記MRAは、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約1mg~約25mgの用量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約2mg~約15mgの用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約1mg~約25mgの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約2mg~約15mgの用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩は、(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、睡眠時無呼吸である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、いびきである、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、単純いびきである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被験者は、意識が完全ではない状態である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記意識が完全ではない状態は、睡眠である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
医薬組成物であって、(i)レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩、(ii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)、及び(iii)薬理学的に許容される担体を含む、前記医薬組成物。
【請求項24】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩は、約1mg~約8mgの量で存在する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩は、約2mg~約6mgの量で存在する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記MRAは、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、およびオキシブチニン、またはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記MRAは、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メチスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、およびトリヘキシフェニジル、またはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記MRAは、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約1mg~約25mgの量で存在する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約2mg~約15mgの量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約1mg~約25mgの量で存在する、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩は、約2mg~約15mgの量で存在する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩は、(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項23~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物は、経口投与形態である、請求項23~34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記経口投与形態は、シロップ、丸薬、タブレット、トローチ、カプセル、またはパッチである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に使用するための、請求項23~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、睡眠時無呼吸である、請求項37に記載の使用のための組成物。
【請求項39】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項38に記載の使用のための組成物。
【請求項40】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、いびきである、請求項37に記載の使用のための組成物。
【請求項41】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、単純いびきである、請求項40に記載の使用のための組成物。
【請求項42】
前記被験者は、意識が完全ではない状態である、請求項37~41のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項43】
前記意識が完全ではない状態は、睡眠である、請求項42に記載の使用のための組成物。
【請求項44】
キットであって、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩と、ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)とを含む、前記キット。
【請求項45】
前記MRAは、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記MRAは、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に使用するための、請求項44~46のいずれか1項に記載のキット。
【請求項48】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、睡眠時無呼吸である、請求項47に記載の使用のためのキット。
【請求項49】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、請求項48に記載の使用のためのキット。
【請求項50】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、いびきである、請求項47に記載の使用のためのキット。
【請求項51】
前記咽頭気道閉塞に関連する状態は、単純いびきである、請求項50に記載の使用のためのキット。
【請求項52】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に使用するための、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及びムスカリン受容体拮抗薬(MRA)。
【請求項53】
睡眠時無呼吸の治療に使用するための、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及びオキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項54】
いびきの治療に使用するための、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及びオキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項55】
咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に使用するための、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩とムスカリン受容体拮抗薬(MRA)との治療組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年3月4日に提出された米国仮出願63/156,463の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩と、ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含む医薬組成物及び、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩とMRAを投与することを含む睡眠時無呼吸の治療法を提供する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中の咽頭気道閉塞によって引き起こされる一般的な障害である。OSAは、重大な健康上の問題を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者を治療する方法を提供し、該方法は、(i)レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及び(ii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)の有効量をそれを必要とする被験者に投与することを含む。
【0005】
本発明のこの態様の実施形態は、以下のオプション機能の1つ以上を含むことがある。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が、約1mg~約8mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が、約2mg~約6mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MRA及びレボキセチンがそれぞれ毎日投与される。いくつかの実施形態では、MRA及びレボキセチンが単一の組成物中で投与される。いくつかの実施形態では、単一の組成物が経口投与形である。いくつかの実施形態では、経口投与形がシロップ、丸薬、タブレット、トローチ、カプセル、またはパッチである。いくつかの実施形態では、MRAが、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム及び、オキシブチニンまたはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAが、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メチスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル及び、トリヘキシフェニジルまたはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAがオキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約1mg~約25mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約2mg~約15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MRAが(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約1mg~約25mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約2mg~約15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、MRAがフェソテロジンである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、MRAが毎日投与される。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態が睡眠時無呼吸であり、例えば、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態がいびきであり、例えば、単純いびきである。いくつかの実施形態では、被験者が意識が完全ではない状態にある。いくつかの実施形態では、意識が完全ではない状態は睡眠である。
【0006】
本発明の別の態様は、(i)レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及び(ii)ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)、及び(iii)薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明のこの態様の実施形態は、以下のオプション機能の1つ以上を含むことがある。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が、約1mg~約8mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が、約2mg~約6mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、MRAが、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム及び、オキシブチニンまたはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAが、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メチスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル及び、トリヘキシフェニジルまたはそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MRAがオキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約1mg~約25mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約2mg~約15mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、MRAが(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約1mg~約25mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩が約2mg~約15mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、MRAがフェソテロジンである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、組成物が経口投与形である。いくつかの実施形態では、経口投与形がシロップ、丸薬、タブレット、トローチ、カプセル、またはパッチである。いくつかの実施形態では、組成物は、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態が睡眠時無呼吸であり、例えば、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。いくつかの実施形態では、咽頭気道閉塞に関連する状態がいびきであり、例えば、単純いびきである。いくつかの実施形態では、被験者が意識が完全ではない状態にある。いくつかの実施形態では、意識が完全ではない状態は睡眠である。
【0008】
本発明の別の態様は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及びムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者を治療するために使用することを提供する。
【0009】
本発明の他の態様は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩と、ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、このキットは、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に用いるためのものである。
【0010】
本発明の他の態様は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩と、ムスカリン受容体拮抗薬(MRA)との治療的組み合わせを、咽頭気道閉塞に関連する状態を有する被験者の治療に用いるためのものとして提供する。
【0011】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野において通常理解される意味と同じ意味を有する。本発明で使用される方法及び材料が記載されているが、当該技術分野で知られている他の適切な方法及び材料も使用することができる。材料、方法、及び実施例は、説明的であり、限定的であることを意図したものではない。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及びその他の参照は、それらの全体が参照によって組み込まれる。矛盾がある場合は、本明細書(定義を含む)が優先される。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかになる。
【0013】
以下の図は、例示的であり、本発明の請求される範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】閉塞性無呼吸のグラフィック図解である。最上部のチャネルは、睡眠時の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは、空気流れを表す。次の3つのチャネルは、肋骨と腹部の動き及び食道圧の変化による換気努力を示し、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映している。最後のチャネルは、オキシヘモグロビン飽和度を示す。
図2】実施例1の試験におけるプラセボ後及びリボキシ治療後の個々の被験者の無呼吸-低呼吸指数(AHI)を示すプロットである。
図3】実施例1の試験におけるプラセボ群及び治療群(reb4-oxy5)の基準からのAHI減少を示す棒グラフである。
図4】実施例1の試験におけるプラセボ後及びリボキシ治療後の個々の被験者の低酸素負荷(HB)を示すプロットである。
図5】実施例1の試験におけるプラセボ群及び治療群(reb4-oxy5)の基準からのHB減少を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ヒトでは、咽頭気道領域には骨や軟骨の支持がなく、筋肉によって開かれている。これらの筋肉が睡眠中に弛緩すると、咽頭が閉塞する可能性があり、空気の流れが止まる。図1に示すように、閉塞を克服しようとする試みとして食道圧の変化が増加することに見られるように、換気努力が続き増加する。肋骨と腹部の動きは、閉塞した気道に対して収縮する横隔膜の結果として逆方向であり、それによって腹壁が外側に膨らみ、胸壁が内側に凹む。
【0016】
呼吸をしようとする努力の増加は、脳波により視覚化(図1参照)可能である睡眠からの覚醒につながり、気道の開放及び正常な呼吸の再開をもたらす。無呼吸中の空気流れの欠如は、オキシヘモグロビン飽和度の低下(図1参照)によって示される低酸素症をも引き起こす。重症度は、一般的に無呼吸-低呼吸指数(AHI)を使用して測定され、これは睡眠1時間あたりの無呼吸(呼吸停止が少なくとも10秒続く)及び低呼吸(空気流れ及び酸素飽和度の低下)の平均回数の合計である(Ruehland et al.,The new AASM criteria for scoring hypopneas: Impact on the apnea hypopnea index.SLEEP 2009;32(2):150-157)。
【0017】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフィック図解である。最上部のチャネルは、睡眠時の脳波(EEG)パターンを示す。次のチャネルは、空気流れを表す。次の3つのチャネルは、肋骨と腹部の動き及び食道圧の変化による換気努力を示し、これらはすべて閉塞した上気道に対する呼吸努力を反映する。最後のチャネルは、オキシヘモグロビン飽和度を示す。
【0018】
厳密なOSAの定義が用いられる場合(1時間あたりのAHIが15件以上、または昼間の眠気とともに1時間あたりのAHIが5件以上)、推定有病率は男性で約15%、女性で約5%である。アメリカ合衆国では、約3,000万人がOSAを有し、そのうち約600万人が診断されている。アメリカ合衆国におけるOSAの有病率は、高齢化及び肥満率の増加により増加していると考えられる。OSAは、高血圧、糖尿病、心血管疾患、自動車事故、職場事故、疲労/生産性喪失などの主要な合併症及び経済的費用と関連している(Young et al., WMJ 2009;108:246;Peppard et al., Am J Epidemiol 2013;177:1006)。
【0019】
現在の主要な治療法は、連続陽圧呼吸療法(CPAP)である。CPAPはほぼすべての患者に有効であり、診断された患者の約85%にCPAPが処方されるが、コンプライアンスは低い。患者はCPAPを不快であり、しばしば耐えがたいと感じる。少なくとも30%の患者(最大80%)が定期的に非遵守であり、その結果、未治療である(Weaver, Proc Am Thorac Soc. 2008 Feb 15;5(2): 173-178)。成功率の異なる他の治療法には、口腔内装置(10%)及び手術(5%)が含まれるが、いずれも一般的な人口全体で効果的である可能性は低い。
【0020】
睡眠中の人間の咽頭筋を活性化する薬剤を探索する試みは、がっかりするものであった。セロトニン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ薬、鎮静剤などの薬剤はすべて、人間で試験され、OSAの重症度を減少させる効果がないことが示された。例えば、Proia and Hudgel,Chest. 1991 Aug;100(2):416-21;Brownell et al.,N Engl J Med 1982,307:1037-1042;Sangal et al.,Sleep Med. 2008 Jul;9(5):506-10。Epub 2007 Sep 27;Marshall et al. p. 2008 Jun;31(6):824-31;Eckert et al.,Clin Sci(Lond). 2011 Jun;120(12);505-14;Taranto-Montemurro et al.,Sleep. 2017 Feb 1;40(2)。
【0021】
治療方法
【0022】
本明細書で説明される方法は、睡眠中の咽頭気道筋の崩壊に関連する障害の治療方法を含む。いくつかの実施形態では、障害は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)または単純いびきである。一般的に、方法は、当技術分野にて周知である及び/または本明細書に記載されるレボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩及びムスカリン受容体拮抗薬(MRA)を、治療が必要であると判断された被験者に対して、治療的に有効な量を投与することを含む。
【0023】
この文脈で使用されるように、「治療する」とは、咽頭気道閉塞に関連する障害の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。しばしば、睡眠中の咽頭気道閉塞はいびき及び/または呼吸の中断(無呼吸または低呼吸)、睡眠からの覚醒、及び酸素化の低下(低酸素血症)を引き起こす。したがって、治療はいびき、無呼吸/低呼吸、睡眠の断片化、及び低酸素血症の減少をもたらすことができる。本明細書で説明される化合物の治療効果のある量をOSAを有する被験者に投与することで、AHIの減少が得られることがある。OSA疾患及び症状の測定は、例えば、多チャンネル睡眠検査(PSG)によって行うことができる。
【0024】
一般的に、化合物の「効果的な量」とは、例えば、咽頭気道閉塞に関連する状態を治療するために、例えば、睡眠時無呼吸またはいびきを治療するために所望の生物学的反応を引き起こすのに十分な量を指す。本技術分野の通常の技術者は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態学、治療される疾患、投与方法、及び被験者の年齢、体重、健康状態、及び状態などの要因によって、本発明の化合物の効果的な量が変化することがあることを理解するであろう。効果的な量は、治療及び予防的治療を含む。
【0025】
効果的な量は、1回または複数回の投与、適用、または投与量で投与することができる。組成物は、1日に1回以上から1週間に1回以上まで投与することができる。これには、1日おきに1回投与することも含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は毎日投与される。いくつかの実施形態では、組成物は睡眠時間前に毎日投与される。例えば、睡眠時間直前または睡眠時間の15~60分前に投与される。熟練した技術者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、被験者の健康全般及び/または年齢、及び他の存在する疾患などを含むがこれに限定されない、被験者を効果的に治療するために必要な投与量とタイミングに影響を与える特定の要因があることを理解するであろう。さらに、本明細書で説明される治療化合物の治療効果のある量を用いた被験者の治療は、単一の治療または一連の治療を含むことができる。
【0026】
本明細書で使用されるように、特に指定がない限り、化合物の「治療効果のある量」とは、疾患、障害、または状態の治療において治療効果を提供するのに十分な量であり、または、疾患、障害、または状態に関連する1つ以上の症状の発生を遅らせるか、最小限に抑えるのに十分な量である。化合物の治療効果のある量、単独または他の療法と併用して、疾患、障害、または状態の治療において治療効果を提供する治療剤の量を意味する。「治療効果のある量」という用語は、全体的な治療を改善し、疾患または状態の原因または症状を減少または回避し、または他の治療剤の治療効果を向上させる量を含む。
【0027】
本明細書で使用される「被験者」と「患者」という用語は、互換的に使用される。用語「被験者」及び「患者」は、動物(例:鳥類(鶏、うずら、七面鳥など)、または哺乳類)を指し、特に「哺乳類」は、非霊長類(例:牛、豚、馬、羊、ウサギ、モルモット、ラット、猫、犬、及びマウス)及び霊長類(例:サル、チンパンジー、及びヒト)を含み、さらに特にヒトを指す。一つの実施形態では、被験者はヒト以外の動物であり、例えば家畜(例:馬、牛、豚、または羊)またはペット(例:犬、猫、モルモット、またはウサギ)である。好ましい実施形態では、被験者はヒトである。
【0028】
本明細書で使用されるように、「薬理学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制機関、または米国以外の国の対応する機関によって承認されるか、または承認可能であること、または、米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に動物、特にヒトでの使用が記載されていることを意味する。
【0029】
本明細書で使用されるように、「単位投与形態」とは、化合物が被験者に投与される形態を指す。具体的には、単位投与形態は、例えば、丸薬、カプセル、またはタブレットであることができる。いくつかの実施形態では、単位投与形態はカプセルである。
【0030】
本明細書で使用されるように、「固形投与形態」とは、固形の医薬品投与量(複数可)を意味し、例えば、タブレット、カプセル、顆粒、粉末、小袋、再構成可能な粉末、ドライパウダー吸入器及び噛み砕き可能なものである。
【0031】
本明細書で開示される化合物については、単一の立体化学的異性体、及びエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス立体配座異性体、及び回転異性体、及びそれらのラセミ混合物及び非ラセミ混合物が、本発明の範囲内にある。特に指定がない限り、本明細書で開示される化合物のすべての互変異性体が本発明の範囲内にある。
【0032】
レボキセチンは、2-((2-エトキシフェノキシ)(フェニル)メチル)モルホリンまたは2-[α-(2-エトキシフェノキシ)ベンジル]-モルホリンという化学名の医薬品物質の一般名であり、その薬理学的に許容される塩である。いろいろな実施形態では、レボキセチンは、R,R-及びS,S-エナンチオマーのラセミ混合物であるか、または単離されたエナンチオマー、例えば、S,S-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、レボキセチンはレボキセチン塩酸塩であることがある。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の約0.2mg~約12mgの投与量を投与することを含む。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約1mg~約8mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約0.5mg~約6mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約2mg~約6mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約4mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約6mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約2mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は約3mgである。いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である。
【0034】
オキシブチニンまたは(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩(または別のMRA)を投与する方法において、オキシブチニンまたは(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は、約1mg~約25mg(または別のMRAの同等の投与量)であり、またはいくつかの実施形態では、約2mg~約15mgである。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は、約2.5mg~約10mgであり、例えば5mgである。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は、約1mg~約10mgであり、例えば2.5mgである。いくつかの実施形態では、オキシブチニンまたは(R)-オキシブチニンまたはその薬理学的に許容される塩の投与量は、約1mg~約5mgである。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、4mgの塩酸レボキセチン及び5mgのオキシブチニンクロリドを投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は4mgのレボキセチン塩酸塩と5mgの(R)-オキシブチニン塩化物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は4mgのレボキセチン塩酸塩と2.5mgの(R)-オキシブチニン塩化物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、6mgの塩酸レボキセチン及び5mgのオキシブチニンクロリドを投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は6mgのレボキセチン塩酸塩と5mgの(R)-オキシブチニン塩化物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は6mgのレボキセチン塩酸塩と2.5mgの(R)-オキシブチニン塩化物を投与することを含む。
【0036】
医薬組成物
【0037】
また、本発明は、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩と、MRAを活性成分として含む医薬組成物を提供する。MRAとレボキセチンは、単一の組成物または別々の組成物に含まれていることができる。
【0038】
例示的なムスカリン受容体拮抗薬(MRA)には、アトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウム、及びオキシブチニン、またはそれらの薬理学的に許容される塩が含まれ、これらはM2受容体に作用する。他の例示的な抗ムスカリン剤には、アニソトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン、ジシクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロレート、ヘキソシクリウム、イソプロパミド、メペンゾレート、メチキセン、メチスコポラミン、オキシフェンシクリミン、オキシフェノニウム、プロシクリジン、スコポラミン、トリジヘキセチル、及びトリヘキシフェニジルまたはそれらの薬理学的に許容される塩が含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体拮抗薬はオキシブチニンまたは(R)-オキシブチニン、またはその薬理学的に許容される塩である。本明細書で使用されるように、「(R)-オキシブチニン」とは、オキシブチニンの他の立体異性体を実質的に含まない(R)-オキシブチニン立体異性体を指す。いくつかの実施形態では、ムスカリン受容体拮抗薬はフェソテロジンである。
【0040】
いくつかの実施形態では、レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩が(S,S)-レボキセチンまたはその薬理学的に許容される塩である。本明細書で使用されるように、「(S,S)-レボキセチン」とは、レボキセチンの他の立体異性体を実質的に含まない(S,S)-レボキセチン立体異性体を指す。
【0041】
医薬組成物は通常、薬理学的に許容される担体を含む。本明細書で使用されるように、「薬理学的に許容される担体」という言葉は、生理食塩水、溶媒、分散媒、希釈剤、充填剤、被覆剤、抗菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤など、医薬品投与と互換性のあるものを含む。
【0042】
本発明で使用される活性医薬成分(API)は、薬理学的に許容される塩として提供されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、オキシブチニンはオキシブチニン塩化物である。いくつかの実施形態では、(R)-オキシブチニンは(R)-オキシブチニン塩化物である。いくつかの実施形態では、レボキセチンはレボキセチン塩酸塩である。
【0043】
オキシブチニンは、化学名4-ジエチルアミノ-2-ブチニルフェニルシクロヘキシルグリコレートまたは4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-イニル2-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸エステルの医薬品物質の一般名であり、その薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、オキシブチニンはR-及びS-エナンチオマーのラセミ混合物または単離されたエナンチオマーであることができ、例えばR-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、オキシブチニンはオキシブチニン塩化物または(R)-オキシブチニン塩化物であることができる。
【0044】
医薬組成物は、通常、その投与経路に適合するように調製される。投与経路の例としては、全身性の経口または経皮投与が挙げられる。
【0045】
適切な医薬組成物を調製する方法は、技術分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;及びDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs(Dekker, NY)シリーズの書籍を参照。例えば、経口組成物は一般的に不活性な希釈剤または食用キャリアを含む。経口投与の目的で、活性化合物(複数可)は賦形剤と共に配合され、丸薬、タブレット、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形で使用される。経口組成物は、液体キャリアを使用して調製することもできる。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は単位投与形態であることができる。いくつかの実施形態では、本発明による組成物は固形投与形態であり、例えば、タブレットまたはカプセルである。
【0046】
薬理学的に適合する結合剤及び/または補助材料が組成物の一部として含まれていることができる。タブレット、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分または同様の性質を持つ化合物を含むことができる:結合剤としての微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン;賦形剤としてのデンプンまたは乳糖;崩壊剤としてのアルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムまたはステローツ;滑剤としてのコロイダル二酸化ケイ素;甘味剤としてのスクロースまたはサッカリン;または香料剤としてのペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー。
【0047】
本明細書で説明される化合物の全身投与は、例えば、パッチ、ゲル、またはローションを皮膚に塗布することによって、経皮投与によっても行うことができる。経皮投与のためには、表皮障壁の浸透に適した浸透剤を配合物に使用することができる。このような浸透剤は一般的に技術分野で知られている。例えば、経皮投与のために、活性化合物は、技術分野で一般的に知られているように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに配合されることができる。ゲル及び/またはローションは、個々の小袋または1日1回使用される定量ポンプを介して提供されることができる。例えば、Cohn et al.,Ther Adv Urol. 2016 Apr;8(2): 83-90を参照。
【0048】
一実施形態では、治療化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む制御放出製剤のような、治療化合物が体内から迅速に排除されるのを防ぐキャリアと共に調製される。生分解性で生体適合性のあるポリマーが使用されることができ、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸が含まれる。このような製剤は、標準的な技術を使用して調製することができるか、商業的に入手可能であり、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から入手可能である。リポソーム懸濁液も薬理学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらは、技術を熟知した者に知られている方法で調製することができ、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている方法に従って調製することができる。
【0049】
医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサーに含まれており、本明細書に記載された方法での投与または使用に関する指示と一緒に提供される。
【実施例
【0050】
本発明は、特許請求の範囲で記載された発明の範囲を限定しない以下の実施例によりさらに説明される。
【0051】
実施例1:ランダム化プラセボ対照二重盲検交差1週間試験
【0052】
方法:ランダム化プラセボ対照二重盲検交差試験が実施され、OSA患者に対して睡眠前に経口投与される4mgレボキセチン及び5mgオキシブチニン(リボ-オキシ)とプラセボを比較した。中等度~重度のOSAと以前に診断された患者は、プラセボ7日間とリボ-オキシ7日間の後のAHI及び睡眠特性を比較するためにベースラインの実験室内多チャンネル睡眠検査(PSG)を実施した。精神運動性警戒テスト(PVT)及び眠気及び生活の質に関するアンケートも治療7日後に実施された。全自宅期間にわたりホームオキシメーターが提供され、酸素飽和度低下(ODI)が4%以上の頻度を評価した。リボ-オキシの特定のOSA病態生理学的特性に対する効果も分析された。
【0053】
試験デザインは次のとおりであった:スクリーニング及びベースラインPSGを実施するための最大28日、その後7日間ランダム化された自宅での試験治療、次に実験室内PSGの夜、その後7日間のウォッシュアウト(必要に応じて最大10日まで、スケジューリングのため)、その後7日間他の治療腕へのクロスオーバー、最後に実験室内PSGの夜。
【0054】
試験治療期間中の毎晩、2つのブラインドカプセルが服用された。試験治療期間中の夜には、レボキセチン1カプセルとオキシブチニン1カプセル、または対応するプラセボが、参加者の就寝時(QHS)に服用された。
【表1】
【0055】
結果:年齢57[51~61]歳、体格指数30[26~36]kg/mの16名の被験者が試験を完了した。AHIは、基準値での49[35~57]回/時から、reb-oxyでの18[13~21]回/時(中央値で59%の減少)及びプラセボでの39[29~48]回/時(中央値で6%の減少)に変化した(p<0.001)。reb-oxyでは、被験者の81%がAHIを50%以上減少させたのに対し、プラセボでは13%であった。AHIが15/時未満だった被験者は、reb-oxyでは37%で、プラセボでは6%であった。PVTは、基準値の250[239~312]ミリ秒からreb-oxyで223[172~244]ミリ秒に減少し、プラセボでは264[217~284]ミリ秒であった(p<0.001)。主観的な生活の質と眠気は、治療群間で差がなかった。自宅でのODI及び実験室内でのODIは、reb-oxyとプラセボとを比較して改善した(それぞれp<0.001及びp=0.021)。病態生理学的特性の解析では、プラセボと比較して、reb-oxyは筋肉補償を増加させ、覚醒閾値を低下させた(それぞれp=0.012及びp=0.01)。
【0056】
図2は、プラセボ及びreb-oxy治療後の個々の被験者の総AHIを示す。図3は、reb-oxyとプラセボとを比較した場合の、基準値からのAHI減少の改善を示す。低酸素負荷(HB)も試験中に測定及び計算された。低酸素負荷は、A. Azarbarzinらによって記述されているように、測定及び計算された(The hypoxic burden of sleep apnoea predicts cardiovascular disease-related mortality: the Osteoporotic Fractures in Men Study and the Sleep Heart Health Study, Eur Heart J.,2019 Apr 7;40(14):1149-1157)。図4は、プラセボ及びreb-oxy治療後の個々の被験者の低酸素負荷を示す。図5は、reb-oxyとプラセボとを比較した場合の、基準値からのHB減少の改善を示す。
【0057】
結論:レボキセチンとオキシブチニンを就寝前に投与することで、1週間の治療期間中にOSAの重症度が大幅に低下し、客観的な警戒性が向上した。
【0058】
他の実施形態
本発明がその詳細な説明と共に説明されていることは理解されるが、前述の説明は、本発明の範囲を説明し、限定するものではなく、添付クレームの範囲で定義される。他の態様、利点、及び変更は、以下の請求項の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】