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特表2024-508501車両の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム及び方法
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  • 特表-車両の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム及び方法 図1
  • 特表-車両の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】車両の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240219BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20240219BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240219BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20240219BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240219BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W10/20
B60W30/10
B60W40/114
B60W50/08
B62D119:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552538
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 DE2022200037
(87)【国際公開番号】W WO2022199761
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021202740.7
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ファイク・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー・フィリップ
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC03
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA27
3D232DA33
3D232DA46
3D232DA62
3D232DA64
3D232DA84
3D232DC12
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC36
3D232DD03
3D232DD06
3D232DD17
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC23
3D232EC34
3D232GG01
3D241AA71
3D241AB01
3D241AF01
3D241BA11
3D241BA18
3D241BA51
3D241BC04
3D241CC17
3D241CD12
3D241DA52Z
3D241DA58Z
(57)【要約】
車両の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム及び方法
本発明は、一つの第一操舵制御情報(L1)を生成する用に構成された走行アシストシステム(3)、及び、少なくとも一つの第一帰還制御ユニット(5)を備えた一つの制御ユニット(4)を包含している車両用の電動機械式操舵手段(2)を制御するためのシステムに関する、但し、該制御ユニット(4)は、ドライバーモーメント情報(M)を受信できる様に構成された第一インターフェース(S1)、及び、走行状態及び/或いは走行状況の内の少なくとも一つに依存する調整情報(A1,A2)を受信できる様に構成された少なくとも一つの第二インターフェース(S2)を有し、但し、制御ユニット(4)は、ドライバーモーメント情報(M)及び調整情報(A1,A2)の内の少なくとも一つに依存する第二操舵制御情報(L2)を提供できるように構成されており、且つ、該システム(1)は、車両の操舵システム(2)に、第一及び第二操舵制御情報(L1,L2)を基にして、これを基に電動機械式操舵システム(2)の操舵動作が実施される一つの変更された操舵制御情報(L3)を提供できるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの第一操舵制御情報(L1)を生成する用に構成された走行アシストシステム(3)、及び、少なくとも一つの第一帰還制御ユニット(5)を備えた一つの制御ユニット(4)を包含している車両用の電動機械式操舵手段(2)を制御するためのシステムであって、
該制御ユニット(4)が、ドライバーモーメント情報(M)を受信できる様に構成された第一インターフェース(S1)、及び、走行状態及び/或いは走行状況の内の少なくとも一つに依存する調整情報(A1,A2)を受信できる様に構成された少なくとも一つの第二インターフェース(S2)を有し、
該制御ユニット(4)が、ドライバーモーメント情報(M)及び調整情報(A1,A2)の内の少なくとも一つに依存する第二操舵制御情報(L2)を提供できるように構成されており、且つ、
該システム(1)が、車両の操舵システム(2)に、第一及び第二操舵制御情報(L1,L2)を基にして、これを基に電動機械式操舵システム(2)の操舵動作が実施される一つの変更された操舵制御情報(L3)を提供できるように構成されている、
システム。
【請求項2】
該第一操舵制御情報(L1)が、角度情報、電動機械式操舵システム(2)のサーボモータ用のトルク情報、或いは、電動機械式操舵システム(2)のサーボモータのトルクに比例する情報であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
一つの第一調整情報(A1)が、ドライバーモーメント閾値であり、且つ、該制御ユニット(4)が、ドライバーモーメント情報(M)の絶対値がドライバーモーメント閾値を超えた場合に、走行アシストシステムから提供された第一操舵制御情報(L1)の変更に寄与する第二ドライバーモーメント情報(L2)を生成することができる様に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
第二調整情報(A2)が、操舵装置を上書操舵するために、ドライバーが、走行アシストシステム(3)が設定した操舵挙動を克服しなければならない操舵抵抗の尺度である上書操舵タフネス・情報であることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
該制御ユニット(4)が、制御ユニット(4)の第一帰還制御ユニット(5)の帰還制御挙動を、第二調整情報(A2)に基づいて調整させることができる様に構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
該制御ユニット(4)が、一つの第一、及び、一つの第二調整情報(A1,A2)を受信するために構成されている、但し、双方の調整情報(A1,A2)のうちの一つを、定まった値、もう一方の調整情報を、走行状態乃至走行状況に依存する値とする、或いは、第一及び第二調整情報(A1,A2)の双方を、走行状態乃至走行状況に依存する値とすることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
該制御ユニット(4)が、第一帰還制御ユニット(5)が、ドライバーモーメント情報(M)の絶対値が、ドライバーモーメント閾値より小さい、乃至、それと同じ場合には、ゼロであり、ドライバーモーメント情報が、ドライバーモーメント閾値を超えた時からは、ドライバーモーメント閾値分減った絶対値を有するモーメント差(DM)を受信できる様に構成されていることを特徴とする請求項3から6のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
該第一帰還制御ユニット(5)が、カットオフ周波数より上において単調減少する絶対値特性曲線を有していることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
該第一帰還制御ユニット(5)が、PT1コントローラに係る帰還制御挙動を有していることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
該第一帰還制御ユニット(5)が、第二操舵制御情報(L2)による第一操舵制御情報(L1)の変更によって、第一帰還制御ユニット(5)に入力値として供給されるモーメント差(DM)が低減される様な帰還制御挙動を有していることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
該第一操舵制御情報(L1)が、角度情報、ヨーレート情報乃至曲率値情報である様なケースのために、電動機械式操舵システム(2)のサーボモータ用の操舵角帰還制御手段の設定モーメント情報を、乃至、設定モーメント情報に比例する情報を、操舵角情報として、ヨーレート情報乃至曲率値情報を第二操舵制御情報(L2)とすることができる様に構成された第二帰還制御ユニット(6)が、設けられていることを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
該第二帰還制御ユニット(6)が、電動機械式操舵システム(2)のサーボモータ用の操舵角帰還制御手段の活性化ファクタ(AF)によって加重された設定モーメント情報を受信できる様に構成されている、但し、該活性化ファクタ(AF)は、第一帰還制御ユニット(5)から提供されることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
該第二帰還制御ユニット(6)が、第二調整情報(A2)を受信し、第二帰還制御ユニット(6)の帰還制御挙動を第二調整情報(A2)に基づいて調整できる様に構成されていることを特徴とする請求項11乃至12のうち何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
該第二帰還制御ユニット(6)が、カットオフ周波数より上において単調減少する絶対値特性曲線、及び/或いは、PT1コントローラに係る帰還制御挙動を有していることを特徴とする請求項11から13のうち何れか一項に記載のシステム
【請求項15】
一つの第一操舵制御情報(L1)を提供する走行アシストシステム(3)、及び、第一帰還制御ユニット(5)を備えた一つの制御ユニット(4)を包含している車両用の電動機械式操舵手段(2)を制御するための方法であって、
該運転ユニット(4)が、ヒューマンドライバーが、ステアリングにかけるドライバーモーメント情報(M)を受信する、並びに、少なくとも一つの走行状態及び/或いは走行状況に依存する調整情報(A1,A2)を受信する、但し、該制御ユニット(4)は、ドライバーモーメント情報(M)及び少なくとも一つの調整情報(A1,A2)に依存する第二操舵制御情報(L2)を提供する、但し、該システム(1)は、車両の操舵システム(2)に、第一及び第二操舵制御情報(L1,L2)を基にして、一つの、これを基に電動機械式操舵システム(2)の操舵動作が実施される変更された操舵制御情報(L3)を提供する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電動機械式操舵手段を制御するためのシステム、並びに、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電動機械式操舵手段(EPS:Electric Power Steeringとも呼ばれる)は、本質的に既知である。ここでは、プログラムによって制御されている電動アクチュエータが、操舵メカニズムに、力を伝達することによって、ドライバーの操舵動作をサポートし、干渉する。
【0003】
レーンガイド付きドライバーアシストシステムは、該車両を計画された軌道に沿って、横方向及び縦方向に帰還制御するために、捕捉された周辺データを用いる。横方向車両操縦用のアクチュエータとしては、多くの場合、ドライバーアシストシステムの制御ユニットから適した制御シグナルを受ける電動機械式操舵手段が用いられる。
【0004】
その一つとしては、電動機械式操舵手段の制御モータのモータモーメントに対してモーメント値を加減的に重ね合わせることによって、車両・ラテラルダイナミクスに影響を与える様に構成された第一インターフェースバリエーションを備えたシステムが既知である。他には、目標操舵角を与えることによって車両・ラテラルダイナミクスが制御される様に構成された第二インターフェースバリエーションを備えたシステムも既知である。このケースでは、操舵角帰還制御手段は、電動機械式操舵手段の制御装置内に実装されている。
【0005】
ドライバーアシストシステムにおける主要な設計目標は、レーンガイドにおける高い制御クオリティである。ドライバーによる上書操舵時において、高い操舵快適性も同時に追求することは、頻繁に、目標矛盾を生じさせる。ここで言う「上書操舵」とは、ドライバーアシストシステムが設定した操舵動作とは異なる操舵装置を握るドライバーによってなされる操舵動作であると解釈される。
【0006】
いずれのインターフェースバリエーションにおいても、既知の実装には、ドライバーによる上書操舵の際の操舵モーメントの大きさ、推移及び方向が、それらの効果がそれぞれの走行状況に合わせて細分化されていないこと、並びに、ドライバーによるステアリング操作とは常に逆方向であることから、限定的にしか理に適っているとは受け入れられない、或いは、不自然であると感じられると言った短所がある。
【0007】
これら既知の実装では、例えば、以下、ドライバーモーメントと呼ぶドライバーが操舵装置にかけなければならないモーメントは、例え僅かな上書操舵であっても、確実にドライバーによる上書操舵の実施を可能にするための電動機械式操舵手段のサーボモータのモータモーメントの制限であるセーフティバリアの高さに対応するある一定の値までは連続的に上昇する。このドライバーモーメントの上昇は、ドライバーによる能動的操作が、帰還制御的観点から角度帰還制御系に直接的に作用する外乱モーメントとしてのみならず、これによって変化した車両の向きが、軌道追従帰還制御系に対する外乱値としても解釈されることに起因している。ドライバーによるこれらの妨害は、横方向帰還制御の総合的外乱伝達機能のダイナミクスとして補正制御される。総合的外乱伝達機能のダイナミクスが大きければ大きいほど、ドライバーに対するカウンターモーメントもより早く上昇する。更に、ドライバーに対するカウンターモーメントは、総合的外乱伝達機能のDCゲインが高ければ高いほど、より高い絶対値に達する。
【0008】
前記の効果には、ドライバーアシストシステムは、極端なケースにおいて、例えば、緊急操舵マヌーバの際、走行状況を考慮することなく、ドライバーに対抗し、その時点において、異なるガイド目標を目指しているドライバーアシストシステムの設定を上書するために、ドライバーがより強い操舵モーメントをかけなければならない様にすることでドライバーを邪魔してしまうと言った短所が秘められている。
【0009】
一般的に、上記の効果は、協力的走行時、即ち、ドライバーと走行アシストシステムが互いに影響している場合、走行快適性を低下させ、それに基づいて、走行アシスト機能への信頼も低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これを起点とした本発明の課題は、走行機能のパフォーマンスを大幅に損なうことなく、ドライバーにとって理に適っていると受け入れることができ、より自然な協力的走行挙動を可能にする車両用の電動機械式操舵手段を制御するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項1記載の特徴を持つシステムによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。車両用の電動機械式操舵手段を制御するための方法は、並列独立請求項15の対象である。
【0012】
第一アスペクトによれば本発明は、車両用の電動機械式操舵手段を制御するためのシステムに関する。該車両は、第一操舵制御情報を生成できるように構成されている走行アシストシステムを包含している。そのために該システムは、少なくとも一つの第一帰還制御ユニットを備えた制御ユニットを有している。該制御ユニットは、ドライバーモーメント情報を受信できる様に構成されている第一インターフェースを包含している。そのため該制御ユニットは、少なくとも一つの少なくとも一つの走行状態及び/或いは走行状況に依存する調整情報を受信できる様に構成されている第二インターフェースを包含している。尚、一つの第一及び一つの第二調整情報は、第二インターフェースを介して提供されることが好ましい。その際、調整情報の少なくとも一方は、走行状態乃至走行状況に依存している。該制御ユニットは、ドライバーモーメント情報及び少なくとも一つの調整情報に依存する第二操舵制御情報を提供できるように構成されている。更に該システムは、第一及び第二操舵制御情報を基に車両の操舵システムに、それを基にして電動機械式操舵システムの操舵動作が実施される変更された操舵制御情報を提供することができる様にも構成されている。この際、「変更された操舵制御情報を基にして電動機械式操舵システムの操舵動作が実施される」とは、変更された操舵制御情報自体が、或いは、それから導かれる値、例えば、セーフティバリアの伝達関数によって得られる値が、電動機械式操舵システムの操舵動作をイニシャライズするために用いられることを意味している。
【0013】
本発明に係るシステムの技術的長所は、ドライバーが、協力的走行時に、操舵装置から感じるドライバーモーメントを、走行状態乃至走行状況に応じて設定でき、それによりドライバーにとって自然に思える走行挙動を得られることができると言うことにある。尚、走行アシストシステムの設定の上書操舵は、極端なケース、例えば、緊急操舵マヌーバ時においてのみ、ドライバーに対して、走行状況から走行アシストシステムの設定に従った方が良いことを伝える様に難しくされることが好ましい。
【0014】
ある実施例によれば、該第一操舵制御情報は、角度情報、電動機械式操舵システムのサーボモータ用のトルク情報、或いは、電動機械式操舵システムのサーボモータのトルクに比例する情報である。これを用いて走行アシストシステムは、電動機械式操舵手段を、設定操舵角度情報、乃至、デフォルト設定モーメントに対して制御し、これら設定操舵角度情報、乃至、デフォルト設定モーメントは、ドライバー関与に応じて、第二操舵制御情報によって、変更操舵制御情報へと変更される。これにより、該システムは、角度インターフェースを備えたインターフェースバリエーション、及び、モーメント・インターフェースを備えたインターフェースバリエーションのいずれにおいても、採用されることが可能である。
【0015】
ある実施例によれば、第一調整情報は、ドライバーモーメント閾値である。制御ユニットは、ドライバーモーメント情報の絶対値がドライバーモーメント閾値を超えた場合に、走行アシストシステムから提供された第一操舵制御情報の変更に寄与する第二ドライバーモーメント情報を生成することができる様に構成されている。これにより走行アシストシステムの設定は、ドライバーモーメント閾値を超えた場合に初めて、上書操舵をしているドライバーによって変更されることになる。即ち、例えば、意図的でない弱いドライバーの操舵動作は、走行アシストシステムの設定に影響を与えない。
【0016】
ある実施例によれば、第二調整情報は、操舵装置を上書操舵するために、ドライバーが、走行アシストシステムが設定した操舵挙動を克服しなければならない操舵抵抗の尺度である上書操舵タフネス・情報である。該上書操舵タフネス・情報は、例えば、スプリングを圧縮するために克服しなければならない力によって設定できる変更可能なスプリングのばね定数に類似する情報の体を成している。そして該上書操舵タフネス・情報は、走行アシストシステムによって設定された操舵挙動に、ドライバーが影響を与えるのがどの程度困難であるかを定めている。該上書操舵タフネス・情報を変更することにより、状況に応じて、予め定められている電動機械式操舵システムの操舵動作に影響を与えるには、操舵装置におけるドライバーのトルクがどの程度でなければならないかを設定できる。
【0017】
ある実施例によれば、制御ユニットは、制御ユニットの第一帰還制御ユニットの帰還制御挙動を、上書操舵タフネス・情報に基づいて調整させることができる様に構成されている。尚、第一帰還制御ユニットの少なくとも一つのゲインファクタは、上書操舵タフネス・情報に応じて調整されることが好ましい。要求される上書操舵タフネスの程度を、少なくとも一つのゲインファクタとして表現する関数を採用することも可能である。その際、高い上書操舵タフネスが、低い帰還制御ループゲインとして、及び、その逆として実装される相互依存関係が成り立っていることが好ましい。付加的に、第一帰還制御ユニットの少なくとも一つのカットオフ周波数の調整が、安定性基準を満たすために実施されることも好ましい。該カットオフ周波数の調整は、例えば、上書操舵タフネス・情報に応じて実施可能である。ここでも、要求される上書操舵タフネスの程度を、少なくとも一つのカットオフ周波数として表現する関数を採用することも可能である。
【0018】
ある実施例によれば、該制御ユニットは、一つの第一、及び、一つの第二調整情報を受信するために構成されているが、双方の調整情報のうちの一つを、定まった値、もう一方の調整情報を、走行状態乃至走行状況に依存する値とする、或いは、第一及び第二調整情報の双方を、走行状態乃至走行状況に依存する値とすることのいずれもが可能である。これにより、可能な限り自然な協力的走行挙動を達成できる様に、走行アシスト機能の操舵挙動を走行状態及び走行状況に依存させることができる。
【0019】
ある実施例によれば、該制御ユニットは、第一帰還制御ユニットが、ドライバーモーメント情報の絶対値が、ドライバーモーメント閾値より小さい、乃至、それと同じ場合には、ゼロであり、ドライバーモーメント情報が、ドライバーモーメント閾値を超えた時からは、ドライバーモーメント閾値分減った絶対値を有するモーメント差を受信できる様に構成されている。この様にすることで、ドライバーが、操舵装置に対して有意なモーメントをかけた場合に初めて、操舵アシスタントシステムの設定が影響を受ける様にすることができる。
【0020】
ある実施例によれば、第一帰還制御ユニットは、カットオフ周波数より上において単調減少する絶対値特性曲線を有している。この様な帰還制御挙動は、これによって、例えば、ドライバーモーメントのネガティブ・フィードバックによって発生する帰還制御ループの結果としてのステアリングの振動を有効に回避できるため、協力的走行挙動にとって有利である。
【0021】
ある実施例によれば、第一帰還制御ユニットは、PT1コントローラに係る帰還制御挙動を有している。このコントローラタイプは、車両のドライバーと走行アシストシステムの影響による対話方式制御において有利である。
【0022】
ある実施例によれば、第一帰還制御ユニットは、第二操舵制御情報による第一操舵制御情報の変更によって、第一帰還制御ユニットに入力値として供給されるモーメント差が低減される様な帰還制御挙動を有している。これにより、走行アシスト機能が、ドライバーの操舵設定側に徐々に調整され、そのため、走行アシストシステムが、ドライバーに対してかけるカウンターモーメントも減少していく様なシステムの帰還制御挙動が達成される。
【0023】
ある実施例によれば、第一操舵制御情報が、角度情報、ヨーレート情報乃至曲率値情報である様なケースのために、電動機械式操舵システムのサーボモータ用の操舵角帰還制御手段の設定モーメント情報を、乃至、設定モーメント情報に比例する情報を、操舵角情報として、ヨーレート情報乃至曲率値情報を第二操舵制御情報とすることができる様に構成された第二帰還制御ユニットが、設けられている。これにより、ドライバーモーメント情報から影響を受けた出力情報を第二帰還制御ユニットによって、システムから提供される第二操舵制御情報を、例えば、和または差の算術演算による、第一操舵制御情報の直接的な変更に用いることができる様に、変換することが可能になる。
【0024】
ある実施例によれば、第二帰還制御ユニットは、電動機械式操舵システムのサーボモータ用の操舵角帰還制御手段の活性化ファクタによって加重された設定モーメント情報を受信できる様に構成されているが、該活性化ファクタは、第一帰還制御ユニットから提供される。尚、第二帰還制御ユニットの帰還制御ループは、モーメント情報を受信し、且つ、設定値との算術演算を実施することが好ましい。該モーメント情報は、例えば、電動機械式操舵システムの操舵角帰還制御手段から提供される。例えば、該モーメント情報は、設定値から差し引かれ、これにより生成された帰還制御差は、活性化ファクタと乗算される。続いて、この乗算の結果は、第二帰還制御ユニットに、入力情報として入力される。サーボモータのトルクの大きさは、ドライバーによって上書操舵される場合、主に、ドライバーに対してかけられるモーメントの程度である。第二帰還制御ユニットは、活性化ファクタと乗算された帰還制御差を下げるように試みることにより、走行アシスト機能が、ドライバーに対抗することを有効に低減する。低減の程度は、活性化ファクタの大きさによって設定される。
【0025】
ある実施例によれば、該第二帰還制御ユニットは、上書操舵タフネス・情報を受信し、第二帰還制御ユニットの帰還制御挙動を上書操舵タフネス・情報に基づいて調整できる様に構成されている。尚、第二帰還制御ユニットの少なくとも一つのゲインファクタは、上書操舵タフネス・情報に応じて調整されることが好ましい。要求される上書操舵タフネスの程度を、少なくとも一つのゲインファクタとして表現する関数を採用することも可能である。その際、高い上書操舵タフネスが、低い帰還制御ループゲインとして、及び、その逆として実装される相互依存関係が成り立っていることが好ましい。付加的に、第二帰還制御ユニットの少なくとも一つのカットオフ周波数の調整が、安定性基準を満たすために実施されることも好ましい。該カットオフ周波数の調整は、例えば、上書操舵タフネス・情報に応じて実施可能である。ここでも、要求される上書操舵タフネスの程度を、少なくとも一つのカットオフ周波数として表現する関数を採用することも可能である。
【0026】
ある実施例によれば、該第二帰還制御ユニットは、カットオフ周波数より上において単調減少する絶対値特性曲線、及び/或いは、PT1コントローラに係る帰還制御挙動を有している。この様な帰還制御挙動、乃至、このコントローラタイプは、車両のドライバーと走行アシストシステムの影響による対話方式制御において有利である。
【0027】
ある更なるアスペクトによれば、本発明は、一つの第一操舵制御情報を提供する走行アシストシステム、及び、第一帰還制御ユニットを備えた一つの制御ユニットを包含している車両用の電動機械式操舵手段を制御するための方法に関する、但し、該運転ユニットは、ヒューマンドライバーが、ステアリングにかけるドライバーモーメント情報を受信する、並びに、少なくとも一つの走行状態及び/或いは走行状況に依存する調整情報を受信する、但し、該制御ユニットは、ドライバーモーメント情報及び少なくとも一つの調整情報に依存する第二操舵制御情報を提供する、尚、該システムは、車両の操舵システムに、第一及び第二操舵制御情報を基にして、一つの、これを基に電動機械式操舵システムの操舵動作が実施される変更された操舵制御情報を提供する。
【0028】
本発明における「近似的に」、「実質的に」、或いは、「略」と言う様な表現は、正確な値から、それぞれ+/-10%、好ましくは、+/-5%以内の誤差、及び/或いは、機能に対して有意性のない誤差であると解釈される。
【0029】
本発明の発展形態、長所、及び、応用範囲は、実施例と図面に関する以下の説明によって示される。その際、全ての記述されている、及び/或いは、図示されている特徴は、それぞれにおいて、並びに、任意な組み合わせにおいて、各請求項、或いは、その参照元との組み合わせからは独立して、本発明の対象である。尚、請求項の内容も明細書の構成要素とする。
【0030】
以下本発明を、図面と実施例に基づいて詳しく説明する。図の説明:
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】車両用の電動機械式操舵手段を制御するためのシステムの第一実施形態の模式的な描写を例示しているが、電動機械式操舵手段の制御は、モーメント情報を用いて、走行アシストシステムによって実施される;そして、
図2】車両用の電動機械式操舵手段を制御するためのシステムの第二実施形態の模式的な描写を例示しているが、電動機械式操舵手段の制御は、操舵角設定情報を用いて、走行アシストシステムによって実施される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、例として、且つ、模式的に、電気力学的駆動系(EPS: electric power steering)を有する操舵システム2を制御するために用いられるシステム1の第一実施例のブロック図を示している。この様な操舵システム2の場合、プログラム制御された電動サーボモータが、ドライバーの操舵動作のサポートする、或いは、自律走行乃至部分自律的走行では、少なくとも部分的に自ら操舵動作を実施する。
【0033】
第一実施例に係る操舵システム2は、モーメント・インターフェースを有している、言い換えれば、該操舵システム2は、入力情報として、操舵システム2のサーボモータ用のトルク情報、或いは、トルクに比例する情報、例えば、操舵システム2のサーボモータを流れる電流に関する情報を受信できる様に構成されている。
【0034】
システム1は、出力インターフェースに第一操舵制御情報L1を提供する走行アシストシステム3を有している。該走行アシストシステムは、例えば、センサを用いて車両領域の周辺モデルを作成する周辺認識ユニット3.1を有していることができる。更に該走行アシストシステム3.は、軌道計画ユニット3.2を有していることもできる。該軌道計画ユニット3.2は、周辺認識ユニット3.1と、少なくとも間接的に接続されており、周辺認識ユニット3.1の情報を受信し、これを基に走行軌道を計画できる様に構成されている。
【0035】
加えて、該走行アシストシステム3は、軌道トレース帰還制御3.3も有していることが好ましい。これは、少なくとも間接的に軌道計画ユニット3.2と接続されており、車両を算出され選択された走行軌道上を動かすために、車両用の制御情報を算出できる様に構成されている。尚、軌道トレース帰還制御3.3の出力情報は、選択された走行軌道を走行するための設定操舵角度φ設定であることが好ましい。
【0036】
走行アシストシステム3は、加えて、操舵角帰還制御手段3.4も有していることが好ましい。該操舵角帰還制御手段3.4少なくとも間接的に軌道トレース帰還制御3.3と接続されており、この軌道トレース帰還制御3.3の制御情報を、特に好ましくは、設定操舵角度を受信する。尚、該操舵角帰還制御手段3.4は、デフォルト設定値として、操舵システム2のサーボモータ用のトルク情報、或いは、トルクに比例する情報、例えば、操舵システム2のサーボモータを流れる電流に関する情報を提供できる様に構成されていることが好ましい。また、該操舵角帰還制御手段3.4は、邪魔となる効果、例えば、振動する操舵挙動を低減する様にも構成されていることができる。尚、該操舵角帰還制御手段3.4は、第一操舵制御情報L1を提供することが好ましい。
【0037】
加えて、上記の走行アシストシステム3のユニット3.1から3.4のうちの幾つかは、図1の鉛直な矢印によって示唆されている如く、走行状態認識、乃至、走行状況認識を提供するユニット7と、接続されていることができる。該ユニット7は、例えば、走行アシストシステム3の機能的な構成部品であることができる、即ち、走行アシストシステム3の制御ユニット内に設けられている、しかしながら、走行アシストシステム3から独立した制御ユニット内に設けられることも可能である。加えて、該ユニット7は、ドライバーがこれから出すであろう運転命令を推定するために、ドライバーの挙動、視線方向、及び/或いは、アクションを捕捉し、処理するための、ドライバー観察手段を有していることもできる。
【0038】
更に、該システム1は、第二操舵制御情報L2を提供することができる様に構成されている制御ユニット4も有している。ここでは、該システム1は、第二操舵制御情報L2を用いて、第一操舵制御情報L1を、該変更によって生成する第三の変更された操舵制御情報L3を用いることにより、車両の横方向制御に作用する走行アシスト機能が作動中であっても、走行挙動が他人に強要されている印象を走行状態に応じて、及び/或いは、走行状況に応じて低減できる様、ヒューマンドライバーに車両の運転に関与できるより大きな自由度を走行状態に応じて、及び/或いは、走行状況に応じて与え、改善され協力的走行が得られる様に変更する。
【0039】
該制御ユニット4は、ドライバーモーメント情報Mを受信できる様に構成されている第一インターフェースS1を包含している。該ドライバーモーメント情報Mは、ここでは、トルク情報、或いは、このトルク情報に比例し、車両の操舵装置にどの程度ドライバーのトルクがかけられているかを示す値である。
【0040】
尚、ドライバーモーメント情報Mは、先ず、絶対値ユニット4.1を用いて絶対値とすることが好ましい。該絶対値ユニット4.1の出力には、ドライバーの操舵方向に関係なく、符号に依存しないドライバーモーメント情報|M|が用意される。
【0041】
尚、示されている実施例では、正のドライバーモーメントが、電動機械式操舵システム2の正のモータモーメント、乃至、通常左カーブ走行となる正の操舵角と同じ効果となると定義されたカウンティングアローシステムが採用されていることは特記しておく。
加えて、該制御ユニット4は、そこに一つの第一及び一つの第二調整情報A1,A2が用意される第二インターフェースS2も有している。尚、第一及び第二調整情報A1,A2は、ユニット7から提供されることが好ましい。第一及び第二調整情報A1,A2のうちの少なくとも一つは、走行状態に応じた及び/或いは走行状況に応じた値である、即ち、ユニット7が認識した走行状態及び/或いは走行状況に依存して第一及び/或いは第二調整情報A1,A2は、変更される。尚第一及び第二調整情報A1,A2は、走行状態に応じて及び/或いは走行状況に応じて調整される。
【0042】
第一調整情報A1は、ドライバーモーメント閾値、即ち、トルク情報乃至トルク情報に比例する値用の閾値であることが好ましい。第一調整情報A1は、制御ユニット4において、その値を超えた場合に、走行アシストシステム3が設定した操舵挙動に対してドライバーの介入が可能になるべき閾を決定するために用いられる。これには、絶対値ユニット4.1が提供する符号に依存しないドライバーモーメント情報|M|、並びに、第一調整情報A1が、その出力側においてモーメント差情報DMを提供する減算ポイント4.2に供給される。
【0043】
該モーメント差情報DMは、第一帰還制御ユニット5の入力情報として供給される。これは、更なる入力情報として、第二調整情報A2も受け取る。該帰還制御ユニット5は、リミットコントローラとして作用する、即ち、第二調整情報A2を用いて帰第一帰還制御ユニット5の還制御挙動を調整することにより、走行アシストシステムが設定した操舵挙動をドライバーによって上書操舵できる強さを定める。言い換えれば、第一帰還制御ユニット5によって、ドライバーがステアリングにかけなければならない、それを超えた時点から、走行アシストシステムが、ドライバーの逸脱した方向要望に対して徐々に譲歩していくトルクが、与えられる。この譲歩の度合いは、調整情報によって定義される。更に言い換えれば、これにより、走行アシストシステムの操舵設定を上書操舵する際に感じる操舵抵抗の強さが可変に設定される。よって、第二調整情報A2は、以下、「上書操舵・タフネス」とも呼ばれる。
【0044】
該第二調整情報A2に基づいて第一帰還制御ユニット5の帰還制御挙動が変更される。特に、第二調整情報A2は、第一帰還制御ユニット5内の帰還制御ゲインに影響を与える。その際、第一帰還制御ユニット5の一つ乃至複数のゲインファクタは、望まれる上書操舵タフネスが得られるように影響を受ける。
【0045】
例えば、第二調整情報A2と第一帰還制御ユニット5内の帰還制御ループゲインとの間には、相互依存関係がある、即ち、より大きな第二調整情報A2、乃至、上書操舵タフネスは、帰還制御ゲインが小さいことに起因し、その逆も成り立つ。言い換えれば、要求されるより弱い上書操舵タフネスは、第一帰還制御ユニット5の高い帰還制御ゲインによって表現可能であり、その逆も成り立つ。第二調整情報A2が最大、乃至、上書操舵タフネスが最大となる第一窮極事象においては、帰還制御ループゲインは、ゼロとなる、即ち、これにより制御ユニット4は、謂わば、停止しており、上書操舵・タフネスは、操舵角帰還制御手段3.4の外乱低減特性によってのみ、或いは、略それだけに依存して決定される。
【0046】
第二調整情報A2が最小、乃至、上書操舵タフネスが最小となる第一窮極事象においては、帰還制御ゲインは、大きな値となる。この値は、例えば、安定化対策をデザインし実装するためになされた投資によってのみ限定される。
【0047】
上書操舵タフネスが低い場合、該アシスタントシステムは、協力的走行時、譲歩し、強制的ではないとドライバーに感じられるであろう。特に、設定されている上書操舵タフネスが低い場合、ループゲインの高さから、場合によっては、安定性基準を満たすために、第一帰還制御ユニット5のカットオフ周波数の調整が必要となる。第一帰還制御ユニット5の(複数あり得る)フィルターカットオフ周波数の調整も、好ましくは、第二調整情報A2に基づいて実施される。
【0048】
尚、制御ユニット4、特に、第一帰還制御ユニット5は、飽和関数を有している。飽和関数は、例えば、第一帰還制御ユニット5の出力情報の最高値、乃至、第二操舵制御情報L2の最高値が制限される様に選択される。
【0049】
これにより、第一帰還制御ユニット5の出力情報の絶対値が、飽和関数によって、予め定めることができる閾値内に限定される。この閾値の定義は、上書操舵挙動をデザインする更なる自由度でもある。この閾は、定義された一定の値を捕ることもできるが、同様に、走行状況に依存するようにデザインすることも可能である。閾を低くすることにより、ドライバーに対するカウンターモーメントが、上書操舵があるレベルに達すると再上昇する様に設定できる。その理由は、閾が比較的低い場合、第一操舵制御情報L1が、上書操舵がある特定のレベルに達すると、第二操舵制御情報L2を、絶対値比較において超え、これにより、合計ポイント8によって形成され変更された操舵制御情報L3が、ドライバーを帰還制御ループの外乱として補正制御する走行アシストシステムの要望を強化する。これにより、ドライバーに対するカウンターモーメントが再上昇する。一つの用途としては、ドライバーモーメントは、走行アシストシステムの設定からの望まれる逸脱が小さい場合、初めのうちは比較的小さいが、望まれる逸脱が大きくなってから上昇し、これにより、ドライバーに、上書操舵用の許容ゾーンが、触覚的に伝達される例が挙げられる。
【0050】
第二操舵制御情報L2用のリミット閾が高いことは、第一操舵制御情報L1が、上書きされることにつながる。よって、変更された操舵制御情報L3は、ドライバーの上書操舵の要望を益々代弁し、走行アシストシステムの帰還制御目標は、徐々に排除されていく。その結果、操舵マヌーバに必要となる操舵モーメントは、走行アシスト機能無しの場合に必要なそれよりも小さくなる。一つの用途としては、例えば、緊急回避操舵マヌーバが挙げられ、ここでは、該方法は、ドライバーに対してのカウンターモーメントを低減するのみならず、それをサポートする。
【0051】
続いて、第一帰還制御ユニット5から提供された出力情報は、図1のブロック「sign」によって示されている如く、ドライバーモーメントの符号によって乗算される。「sign」関数は、ドライバーモーメント情報Mの符号を割出し、第一帰還制御ユニット5の出力情報と乗算することにより、ドライバーモーメント情報Mの符号が、第二ドライバーモーメント情報L2に反映される。これにより、制御ユニット4は、ステアリング装置に依存せず、ドライバーモーメントを低減する向きに合わせられた操舵制御情報L2を提供することが可能になる。
【0052】
第二操舵制御情報L2は、加算ポイント8へ伝達される。そこでは、第二操舵制御情報L2と第一操舵制御情報L1が加算され、第三操舵制御情報L3が提供される。尚、加算ポイント8のカウンティングアローシステムが逆の場合は、当然のことながら、減算ポイントによって置き換えられることができ、その結果、機能的に同じシステムが得られることは言うまでも無い。
【0053】
該第三操舵制御情報L3は、その出力側に第四操舵制御情報L4を提供するセーフティバリアSBへ、供給される。該セーフティバリアSBは、絶対値及び傾きに関して、物理的な考慮から制御量を監視し、且つ、能動的に制限するユニットである。
【0054】
セーフティバリアSBは、例えば、変更された操舵制御情報L3が、安全目標厳守の観点から監視され、必要に応じて、安全目標を満たせない場合、それを変更する用に構成されている。この様にすることで、例えば、変更された操舵制御情報L3の絶対値と傾きを監視し、必要に応じて、能動的に制限できる。
【0055】
第四操舵制御情報L4は、電動機械式操舵システム2の入力値を生成する。ドライバーモーメント情報M、第一及び第二調整情報A1,A2に依存して、第一帰還制御ユニット5は、走行アシストシステム3によって生成された操舵制御情報L1を変更し、車両の操舵システム2に、第一及び第二調整情報A1,A2に依存したドライバーの影響を与える様に第二操舵制御情報L2を生成する。
【0056】
走行アシストシステム3及び操舵システム2から、上のユニット7へとつながっている矢印が示唆する如く、走行アシストシステム3と電動機械式操舵手段2の機能ユニット3.1から3.4の情報は、走行状態乃至走行状況を捕捉するために用いられる。
【0057】
図2は、例として、且つ、模式的に、電気力学的駆動系を有する操舵システム2を制御するために用いられるシステム1の第二実施例のブロック図を示している。
第二実施例に係る操舵システム2は、角度インターフェースを有している、即ち、該操舵システム2は、入力情報として、角度情報、特に、設定操舵角度情報φ設定を受信できる様に構成されている。その際、操舵角帰還制御手段は、操舵システム2内に内蔵されていることが好ましい。走行アシストシステム3は、設定操舵角度情報φ設定を、第一操舵制御情報L1として出力インターフェースに提供する。
【0058】
また、該走行アシストシステムも、例えば、センサを用いて車両領域の周辺モデルを作成する周辺認識ユニット3.1を有している。更に該走行アシストシステム3は、軌道計画ユニット3.2を有していることもできる。該軌道計画ユニット3.2は、周辺認識ユニット3.1と、少なくとも間接的に接続されており、周辺認識ユニット3.1の情報を受信し、これを基に走行軌道を計画できる様に構成されている。
【0059】
加えて、該走行アシストシステム3は、軌道トレース帰還制御3.3も有していることが好ましい。これは、少なくとも間接的に軌道計画ユニット3.2と接続されており、車両を算出され選択された走行軌道上を動かすために、車両用の制御情報を算出できる様に構成されている。軌道トレース帰還制御3.3の出力情報は、示されている実施例では、それに基づいて選択した走行軌道を走行できる設定操舵角度情報φ設定の形を取った第一操舵制御情報L1である。
【0060】
加えて、上記の走行アシストシステム3のユニット3.1から3.3のうちの幾つかは、図2の鉛直な矢印によって示唆されている如く、走行状態認識、乃至、走行状況認識を提供するユニット7と、接続されていることができる。該ユニット7は、例えば、走行アシストシステム3の機能的な構成部品であることができる、即ち、走行アシストシステム3の制御ユニット内に設けられている、しかしながら、走行アシストシステム3から独立した制御ユニット内に設けられることも可能である。加えて、該ユニット7は、ドライバーがこれから出すであろう運転命令を推定するために、ドライバーの挙動、視線方向、及び/或いは、アクションを捕捉し、処理するための、ドライバー観察手段を有していることもできる。
【0061】
ここでも、該システム1は、第二操舵制御情報L2を提供することができる様に構成されている制御ユニット4も有している。ここでは、該システム1は、第二操舵制御情報L2を用いて、第一操舵制御情報L1を、該変更によって生成する変更された操舵制御情報L3を用いることにより、車両の横方向制御に作用する走行アシスト機能が作動中であっても、走行挙動が他人に強要されている印象を走行状態に応じて、及び/或いは、走行状況に応じて低減できる様、ヒューマンドライバーに車両の運転に関与できるより大きな自由度を走行状態に応じて、及び/或いは、走行状況に応じて与え、改善され協力的走行が得られる様に変更する。
【0062】
制御ユニット4のインターフェースS1及びS2、並びに、絶対値ユニット4.1によるインターフェースS1及びS2において受信された情報の処理、並びに、第一帰還制御ユニット5は、図1に係る第一実施例と同じであるため、上記説明を参照されたい。これらは、図2の実施例でも同様に有効である。
【0063】
図1に係る実施形態との実質的な相違は、図2に係る実施例では、第二操舵制御情報L2が、第一帰還制御ユニット5によって直接的に提供されるのではなく、第一帰還制御ユニット5が、活性化ファクタAFを提供することにある。
【0064】
更に、制御ユニット4は、減算ポイント4.2を有している。該減算ポイント4.2は、先ずは、示されている実施例では、設定値は「0」であるが、設定値、並びに、電動機械式操舵システム2のトルク情報DIが、供給される。トルク情報DIは、例えば、要求された電動機械式操舵システム2の操舵角帰還制御手段の作動モーメントに相当するが、サーボモータが要求した電流にも直接的に比例している。これには、結果として得られる実測モータ電流から導き出される総トルクを、電動機械式操舵システム2の運転ユニットの他の機能からのモーメント要求乃至電流要求を差し引いた後に用いることもできる。
【0065】
該減算ポイント4.2では、設定値からトルク情報DIが差し引かれる。この差の結果は、活性化ファクタAFを基にして変更される。特に、減算ポイント4.2の出力情報は、活性化ファクタAFと乗算され、その乗算結果が、第二帰還制御ユニット6に、入力情報として供給される。尚、該活性化ファクタは、0と1の間の有理数であることが好ましい(AF∈[0,1])。活性化ファクタは、ドライバーモーメント情報Mと第一及び第二調整情報A1,A2の影響を受ける。「0」と言う値は、ドライバーが、ハードなステアリングを知覚する、即ち、協力的走行が、非常に抑制されることを意味する。逆に「1」と言う値は、操舵システム2が、ドライバーの協力を高いレベルで容認し、ドライバーアシストシステム3の操舵要求は、少なめに加重されることを意味する。
【0066】
第二帰還制御ユニット6は、活性化ファクタAFによって加重された差を受信する。第二帰還制御ユニット6は、例えば、モーメント帰還制御ループとして構成されている。尚、第二帰還制御ユニット6は、PT1コントローラとして構成されていることが好ましい。
【0067】
第二帰還制御ユニット6と第一帰還制御ユニット5との接続は、ある好ましい実施形態においては、第一帰還制御ユニット5が、その出力インターフェースにおいて、0と1との間の値を有し、それにより第二帰還制御ユニット6がスケーリングされる帰還制御差が活性化ファクタAFを生成することによって実施される。ドライバー相互作用無しに第一帰還制御ユニットは、値0の活性化ファクタを生成し、これにより、操舵システム2、特に操舵システム2の操舵角帰還制御手段のトルク情報は、フィードバックされない。ドライバー相互作用がある場合は、第一帰還制御ユニット5は、第一及び第二調整情報A1,A2に依存して、0よりも大きな値の活性化ファクタAFを生成する。活性化ファクタAFに対する第二調整情報A2(即ち、上書操舵タフネス)の寄与は、より高い第二調整情報A2、即ち、より強い上書操舵タフネスが、第一帰還制御ユニット5の出力インターフェースにおいてより小さな活性化ファクタAFとなる様に作用するものであることが好ましい。
【0068】
第一調整情報A1(即ち、ドライバモーメント閾値)のドライバーモーメント情報Mの差異の活性化ファクタAFに対する寄与は、活性化ファクタAFが、ドライバーモーメント情報Mが、第一調整情報A1を大きく超えれば超えるほど大きくなる様に、即ち、活性化ファクタAFが、ドライバーモーメント残留が大きくなればなる程、大きくなる様に作用するものであることが好ましい。
【0069】
尚、望まれる結果を得るために調整情報が担う寄与は、加重され、特に、ミニマム・オペレーションを施したものであることが、好ましい。
【0070】
その際、第一帰還制御ユニットの設計の際に自由度を与える加重ファクタk1,k2が使用される。尚、第二調整情報A2は、0と1との範囲内の値をとることが好ましい。
【0071】
以下の様に表される割り当てから、
DM=min(1,max(0,(|M|-A1)))
式DMは、(第一帰還制御ユニット5の入力情報としての)モーメント差、|M|は、ドライバーモーメント情報の絶対値、A1は、第一調整情報(ドライバーモーメント閾値)であり、
第一帰還制御ユニット5のインパルス応答g(t)は、モーメント差DMと畳み込まれる(畳み込み演算子*)
調整ファクタAF用に以下の関係が得られる:
AF(t)=min(1,max(0,(min(k1・(DM(t)*g(t)),k2・(1-A2(t))))))
図2に示されている如く、第二調整情報A2は、第二帰還制御ユニット6の帰還制御挙動に影響を与えるために用いられることができる。例えば、第二調整情報A2は、第二帰還制御ユニット6の帰還制御ゲインを、第二調整情報A2が低減した際に、高めるために用いられることができる。安定性予備力の程度によっては、同時に、周波数レスポンスを定める第二帰還制御ユニット6のパラメータを、例えば、ポールロケーション(極)及び/或いはゼロロケーション(零点)をシフトすることによって、相応に適応させることも有利であり得る。
【0072】
図2に係る実施例においても、その時点の走行状況に依存したドライバー相互作用の適応は、第一調整情報A1によってのみ、第二調整情報A2によってのみ、或いは、双方の調整情報A1,A2の組み合わせによって実施されることができる。双方の調整情報A1,A2の一方のみが、走行状態、乃至、走行状況に動的に依存して変更される場合、それぞれ他方の調整情報には、固定した値が与えられる。尚、この値は、個別に見た場合でも、活性化ファクタAF=1に帰着する、即ち、最も動的なドライバー介入を容認する様に選択されることが好ましい。
【0073】
第二帰還制御ユニット6によって提供された第二操舵制御情報L2は、加算ポイント9へ伝達される。そこでは、第二操舵制御情報L2と第一操舵制御情報L1が加算され、それにより変更された操舵制御情報L3が提供される。
【0074】
尚、該第三操舵制御情報L3も、その出力側に第四操舵制御情報L4を提供するセーフティバリアSBへ、供給されることが好ましい。該セーフティバリアSBは、絶対値及び傾きに関して、物理的な考慮から制御量を監視し、且つ、能動的に制限するユニットである。
【0075】
セーフティバリアSBは、例えば、変更された操舵制御情報L3が、安全目標厳守の観点から監視され、必要に応じて、安全目標を満たせない場合、それを変更する用に構成されている。この様にすることで、例えば、変更された操舵制御情報L3の絶対値と傾きを監視し、必要に応じて、能動的に制限できる。
【0076】
第四操舵制御情報L4は、電動機械式操舵システム2の入力値を生成する。ドライバーモーメント情報M、第一及び第二調整情報A1,A2に依存して、第二帰還制御ユニット6は、走行アシストシステム3によって生成された操舵制御情報L1を変更し、車両の操舵システム2に、第一及び第二調整情報A1,A2に依存したドライバーの動的な影響を与えることが可能な様に第二操舵制御情報L2を生成する。
【0077】
制御ユニット4は、該制御ユニット4が、例えば、電動機械式操舵システム2の角度コントローラのトルク情報DIの設定値を受信し、モーメント差ΔMの大きさと第二調整情報A2に依存して、このモーメント差ΔMが、第二帰還制御ユニット6の助けを借りて低減される様に作用する。この際、第二帰還制御ユニット6は、軌道トレース帰還制御3.3から提供される第一操舵制御情報L1に加算される第二操舵制御情報L2(操舵角バイアス信号)を生成する。これにより、モーメント差ΔMが徐々に低減されていく帰還制御ループが形成される。
【0078】
操舵システム2からユニット7へと上方に向かっている矢印によって示唆される如く、電動機械式操舵手段2の情報も、走行状態、乃至、走行状況を捕捉するために使用されることができる。
【0079】
上述の如く、ユニット7は、走行状況、乃至、走行状態を認識し、評価することができる様に構成されている。該ユニット7は、ドライバーの観察も、例えば、カメラを用いて実施でき、これに基づいて、ドライバー挙動を割り出すことも可能である。該ユニットは、特に、ドライバーの操舵が、ドライバーアシストシステムの設定と同じ方向になされているか否か、或いは、ドライバーがドライバーアシストシステムの設定とは逆方向に操舵しているか否かに関する情報を提供することができる。
【0080】
該ユニット7は、走行状況、乃至、走行状態、乃至、ドライバー挙動に対して、例えば、以下の様に反応することができる:
-ドライバーが、危険領域へと操舵した場合は、走行アシストシステム3のカウンターモーメントは、有意に認識でき、且つ、安全な走行レーンの方向に向いている方が良い第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値が、より高い値を取る;
-ドライバーが、安全な走行レーンの方向に操舵している場合、ドライバーがこのマヌーバを実施することは、阻害されない方が良い。第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値が、より低い値を取る。
-ドライバーが、例えば、走行アシストシステム3に、手のモーメントによって、協力を要望すると示した場合、より少ない操舵コスト、即ち、より低い強度でそれを可能にするべきである。その例としては、障害物の左の代わりに右側を通過するルートを選択したい、或いは、正確にレーン中央をガイドするのではなく、横方向に一定のオフセットが欲しいと言う、ドライバーが、相応にハンドルを切ることによって走行アシストシステム3に対して伝え得るドライバーの要望を挙げることができる。第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値は、これらのケースでは、より低い値を取る。
-走行アシストシステム3が、カーブ走行時、電動機械式操舵システムの限界に達し、ドライバーが、横方向側方誘導を、車両がカーブから逸脱することを回避するために、サポートしたい場合、これは、ドライバーに、ステアリングにおける高いカウンターモーメントの結果としてのカウンターステアとしてではなく、サポートステアとして感じられるべきである。この様なサポートステアの場合、ドライバーは、電動機械式操舵システムの限界に依存した最大操舵力を差し引いて残った操舵力の一部のみをかければよい。制御ユニット4が、第一操舵制御情報L1を変えず、これが、変更されることなく、或いは、略変更されずに(即ち、第二操舵制御情報が、ゼロ、乃至、非常に小さい)、セーフティバリアSBを介して、電動機械式操舵システム2へと伝達される様に、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値が、より高い値を取る。』
-緊急操舵アシスタント機能によってまだトリガーされていない(或いは、アシスタント機能の範疇に含まれていない)回避・緊急操舵マヌーバをドライバーが実施した場合(例えば、操舵角速度が早いことによって示される)、電動機械式操舵手段の操舵角帰還制御手段からドライバーに向けられる操舵モーメントは、ドライバーの回避マヌーバを邪魔しない様に、非常に小さくした方が良い。第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値は、このケースでは、より低い値を取る。
-緊急操舵アシスタント機能によってまだトリガーされていない(或いは、アシスタント機能の範疇に含まれていない)回避・緊急操舵マヌーバを、ドライバーが実施した場合(例えば、操舵角速度が早いことによって示される)、ドライバーは、帰還制御ユニット5が、制限を設けない、或いは、出力シグナルが高くなってから初めて制限を実施することにより、能動的な操舵サポートを得る。
-緊急操舵アシスタント機能の作動中(即ち、回避・緊急操舵マヌーバが、走行アシストシステムによって実施された場合)は、ドライバーの操舵が、最適な回避軌道の設定と比較して弱い間中、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)に大きな絶対値が与えられる。最適な回避軌道とは、タイヤのパワー伝達ポテンシャルに高負荷をかけることなく、且つ、車両が不安定になることもなく、安全車間をもって車両が、障害物の横を通過できる特徴を有する軌道である。
-緊急操舵アシスタント機能の作動中は、ドライバーの操舵が、限界的回避軌道の設定と比較してよりダイナミックな場合、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)に大きな絶対値が与えられる。限界的回避軌道とは、車両は、この軌道上において障害物に対して大きな間隔を有するが、同時に、高い確率で、パワー伝達を失い、不安定になる軌道である。
-緊急操舵アシスタント機能の作動中は、ドライバーが、その操舵マヌーバによって、最適回避軌道と限界的回避軌道の間にある軌道を選択した場合、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)に小さな絶対値が与えられる。この際、最適な回避軌道と限界的回避軌道は、逐次新しく割り出され、それぞれ、ドライバー反応の再評価が実施される。
-特に工事現場における車線推移の場合、走行している軌道をドライバーの介入によって補正する必要がある確率は、現場に存在している路面標示の品質の低さなどに起因して、高くなる。ドライバーによる修正が、少ない操舵コストでできることを確実にするため、レーン幅が狭い場合や工事現場が認識された場合、第一調整情報A1(ドライバーモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)に小さな絶対値が与えられる。
-路面標示の品質が低い場合、一般的に、ドライバーの介入による走行中の走行レーンの修正が必要となる確率は、高くなる。この場合も、ドライバーによる修正が、できるだけ少ない操舵コストでできることを確実にするため、同様に、第一調整情報A1(ドライバーモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)に小さな絶対値が与えられる。
-車両が、ドライバーの不注意によって、走行レーンから逸脱した場合、アシスタントシステムは、先ず、介入し、続いて、車両を安全な車線領域内への誘導を開始しするが、ドライバーが、全コントロールを請け負った場合、感じられる操舵モーメントは、前提としてドライバーが選択した軌道において車両が不安定になることはないと予測されている間は、いかなる時点においても、ドライバーの操舵要望と逆方向には、ならない方が良い。この条件下においては、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値は、小さい値に設定される。
-ドライバーが、スポーティな走行モードを選択した場合(このオプションが、車両装備含まれている場合)、操舵は、より強いフィードバックを提供するべきである。また、これに合わせて、ドライバーがカウンターステアするときの指令モーメントも高くするべきである。第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)と第二調整情報A2(上書操舵タフネス)の絶対値は、より高い値に設定される。
【0081】
尚、第一調整情報A1(ドライバモーメント閾値)は、横方向帰還制御の内部帰還制御エラー値に依存することが好ましく、例えば、以下の様に設定される:
-第一調整情報A1は、設定軌道からの車両の横方向の間隔が大きければ多きいほど、高く設定される;
-第一調整情報A1は、実測ステアリングホイール角と設定ステアリングホイール角の差が大きければ多きいほど、高く設定される;
-第一調整情報A1は、実測ヨーレートと設定ヨーレートの差が大きければ多きいほど、高く設定される;
尚、第二調整情報A2(上書操舵タフネス)も、横方向帰還制御の内部帰還制御エラー値に依存することが好ましく、例えば、以下の様に設定される:
-第二調整情報A2は、設定軌道からの車両の横方向の間隔が大きければ多きいほど、高く設定される;
-第二調整情報A2は、実測ステアリングホイール角と設定ステアリングホイール角の差が大きければ多きいほど、高く設定される;
-第二調整情報A2は、実測ヨーレートと設定ヨーレートの差が大きければ多きいほど、高く設定される;
加えて、第一及び第二調整情報A1,A2としては、ドライバーが、ドライバーアシストシステムの設定に対抗して操舵し代替ルートを、但し、走行安全性の低下にはつながらない代替ルートを選択した場合は、小さい値が選択されることが好ましい。
【0082】
それとは逆のケース、即ち、ドライバーが、ドライバーアシストシステムのものと同じ車両操縦目標を有している場合、或いは、ドライバーの代替ルートが、走行安全性の低下につながる、乃至、つながりかねない場合は、第一及び第二調整情報A1,A2としては、大きな値が選択されることが好ましい。この際、走行安全性は、予測される衝突確率、並びに、タイヤの予測されるパワー伝達ポテンシャルの損失を基にしてエキスパートシステムによって評価されることができる。
【0083】
制御ユニット4とユニット7も、例えば、走行アシストシステム3の制御装置上に実装されていることができる。代案としては、制御ユニット4は、電動機械式操舵システム2の制御装置上に実装されていることができる。そのために例えば、走行アシストシステム3の制御装置と電動機械式操舵システム2の制御装置の間のインターフェースが、第一及び第二調整情報A1,A2の伝達用に拡張される。
【0084】
加えて、システム1は、以下の機能の一つの、或いは、複数を有していることが有利である:
第一及び第二調整情報A1,A2用の不連続の値間におけるスイッチングが想定されている場合、これらの値は、制御ユニット4によって実行される前に、必要に応じて、ステアリングの望まれないカクカクした動きを避けるために、平滑化/補間される。尚、第一及び第二調整情報A1,A2は、連続的なキャラクターを有し、例えば、ファジーロジック演算によって割り出されることが好ましい。
【0085】
例えば、一個所の、原則的には低い第一調整情報A1が選択されるべきである、工事現場領域内において、緊急回避アシスタントの作動と第一調整情報A1用に高い値と言った影響ルールの矛盾する要求がドライバーモーメントの値に求められている場合、走行状態認識において、例えば、仲裁ユニットによって、解決されることが可能である。
【0086】
ドライバーモーメントに対する影響は、例えば、制御ユニット4によって上述の制限帰還制御を実施する代わりに、設定軌道をドライバーの操舵活動に応じて、適宜、再計画されることによって取り除くことが可能である。例えば、ドライバーが選択した走行レーンに正確に沿う軌道の計画は、帰還制御手段・イニシャル状態を無視し、ドライバーに対するカウンターモーメントを0Nmとすることで得られる。
【0087】
現在走行している軌道の右側乃至左側の軌道の計画は、右側乃至左側への操舵推奨を伴う。
【0088】
このような手順の短所は、再計画を実施中に、帰還制御手段イニシャル状態(例えば、操舵角帰還制御手段のI成分)を計画的に低減しなければならない、即ち、計画レベル上の対策のみでは終わらないことである。加えて、このアプローチにおいては、シームレスな移行、並びに、そのために必要な連続的な操舵モーメントの推移を達成するためのコストは高い。
【0089】
ドライバー操舵モーメントが減る方向へのドライバーの操舵による新しい軌道は、内潜的に帰還制御ループの構成要素であり、特に、トリガーされた再計画とドライバーモーメントの影響との間の、一般的に、長い潜在的応答時間を考慮すると、軌道計画側において、安定性を確保するための付加的な予防処置が必要である。ドライバーが邪魔されてはならない緊急操舵マヌーバの場合、走査ステップ(例えば、10ms)毎に、軌道は、ドライバーによる現在アクティブな車両挙動を基にして、新しく計画されなければならない。これには高い計算コストが伴うが、とはいえ、減衰特性を持つ角度帰還制御成分をなくすことはできない。一方、第一乃至第二調整情報A1,A2の値として「0」を選択したならば、電動機械式操舵システム2へのモーメント・インターフェースにおいて、角度帰還制御による阻害的貢寄与をゼロにすることが達成し得る。電動機械式操舵システム2へのモーメント・インターフェースにおいて、僅かな残留モーメント以外値ゼロの両調整情報A1,A2により、角度帰還制御手段による阻害は、実質的に大きく削減できる。ドライバーモーメント制限と軌道再計画との相互作用によって初めて、調整された総合的挙動を達成できる。
【0090】
第二調整情報A2(上書操舵タフネス)には、第一調整情報A1(ドライバーモーメント閾値)をステアリング操舵に応じて制御することによっても、内在的に影響を与えることができる。安定性を確保するなどのためのコストは、この場合も高いものである。
【0091】
上述の方法は、操舵システム2への操舵角設定の代わりに、ヨーレート設定乃至曲率値設定によって実施される場合であっても応用可能である。そして、この制御ユニット4は、操舵角バイアスの代わりに設定ヨーレート乃至設定曲率値用の補正値を生成する。
【0092】
電動機械式操舵システム2への角度インターフェースを基にした走行アシストシステム2は、第一制御ユニット4内においては、上書操舵の際のドライバーモーメントの制限を、より動的に構成するために付加的に実測ステアリングホイール角も用いられる。そのために中間ステップにおいて、ドライバーモーメントが、第一調整情報A1を超えた場合、設定操舵角は、割合的に実測操舵角と、ドライバーモーメント情報Mが上昇しているケースでは最終的に設定操舵角と実測操舵角とが一致するまで、混合される。これにより電動機械式操舵システム2の操舵角帰還制御手段の帰還制御差は、ゼロになり、操舵システム2のサーボモータ用のモーメント要求も、当面、これ以上は上昇しない。しかしながら、電動機械式操舵システム2の操舵角帰還制御手段内の帰還制御手段積分部を排除するためには、更に、第二帰還制御ユニットによるモーメント情報のネガティブ・フィードバックが必要となる。
【0093】
電動機械式操舵システム2への角度インターフェースを基にした走行アシストシステム2は、制御ユニット4内において、操舵角帰還制御手段の全設定モーメント情報をフィードバックする代わりに、固定値帰還制御において、定められた割合を引いた後の操舵角帰還制御手段の設定モーメント情報を考慮することができる。但し、この割合は、第一及び第二調整情報A1,A2を基にして定義される。第二調整情報(上書操舵タフネス)が高い場合、或いは、ドライバーモーメント情報Mがまだ少ない場合、この割合は高く選択される。ドライバーモーメント情報Mが増す、或いは、より少ない調整情報A2(上書操舵タフネス)が要求された場合、この割合は、最終値を0として、小さい値が選択される。この手順は、操舵角帰還制御手段実装において、高いダイナミクスを有する操舵システム2を必要とする可能性を有しているが、その理由は、そうでなければ、ドライバーに対抗して作動する操舵角設定値モーメントがゼロになるまでの低減が早すぎて、第二調整情報A2(上書操舵タフネス)が、少なすぎると感じられるかもしれないためである。操舵角設定値モーメントの割合の減算は、代案的に、第二帰還制御ユニットの対応する設定値に換算されることができる。
【0094】
本発明は、上記実施例によって説明された。しかしながら、特許請求項に定義されている請求範囲を逸脱することなく、数多くの変更やバリエーションが可能であることは、言うまでも無いことである。
【符号の説明】
【0095】
1 システム
2 操舵システム
3 走行アシストシステム
3,1 周辺認識ユニット
3.2 軌道計画ユニット
3.3 軌道トレース帰還制御
3.4 操舵角帰還制御手段
4 制御ユニット
4.1 絶対値ユニット
4.2 減算ポイント
5 第一帰還制御ユニット
6 第二帰還制御ユニット
7 ユニット
8 加算ポイント
9 加算ポイント
A1 第一調整情報
A2 第二調整情報
AF 活性化ファクタ
DI トルク情報
L1 第一操舵制御情報
L2 第二操舵制御情報
L3 第三/変更された操舵制御情報
L4 第四操舵制御情報
M ドライバーモーメント情報
DM モーメント差
S1 第一インターフェース
S2 第二インターフェース
SB セーフティバリア
φ設定 設定操舵角情報
図1
図2
【国際調査報告】