(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】血管の流動抵抗を測定する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61B5/02 A
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553281
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 FI2022050117
(87)【国際公開番号】W WO2022184974
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513323128
【氏名又は名称】トゥルン イリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】マッティ カイスティ
(72)【発明者】
【氏名】トゥーッカ パヌラ
(72)【発明者】
【氏名】ユッカ-ペッカ シルキア
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA07
4C017AA09
4C017AB03
4C017AC03
4C017AC28
4C017BC11
(57)【要約】
血管の流動抵抗を測定する装置は、様々な波長を有する電磁放射線を血管に放出する光電式容積脈波記録法センサ(101)と、制御可能な機械的圧力を血管に印加する圧力機器(102)と、血管で反射される電磁放射線に基づいて血管のコンプライアンスを推定する制御システム(103)と、を備える。電磁放射線のより短い波長は、より長い波長に比べて、より小さい血管で反射される。制御システムは、回路モデルのノード電圧の波形と、様々な波長を反映している血管において支配的な測定血圧の波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗器値を最適化する。回路モデルのコンデンサ値は、血管の推定されたコンプライアンスに基づいており、回路モデルの最適化された抵抗器値は、血管の流動抵抗を示す。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の流動抵抗を測定する装置であって、
電磁放射線を前記血管に放出して、前記血管で反射される前記電磁放射線の一部を受信して、前記電磁放射線の前記受信された一部を示す測定信号(122)を生成するように構成された、光電式容積脈波記録法センサ(101、201)であって、前記電磁放射線は、様々な波長を有し、前記測定信号は、前記血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号(117~121)を備え、前記波長のうちのより短い波長は、前記波長のうちのより長い波長に比べて、前記血管のうちのより小さい血管で反射される、光電式容積脈波記録法センサ(101、201)と、
前記血管に印加される制御可能な機械的圧力を生成するように構成された圧力機器(102、202)と、
前記波長固有の構成要素信号の各々から、前記機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間(t)に対する指数関数的変化(~e
αYt)を有する部分を見つけて、前記指数関数的変化に関する時間の係数(α
IR、α
R、α
Y、α
G、α
B)についての推定値を前記波長固有の構成要素信号の各々について生成するように構成された制御システム(103、203)であって、時間の前記係数は、考慮中の前記波長を反映している前記血管のコンプライアンスを示す、制御システム(103、203)と、を備える装置において、
前記制御システムは、回路モデルのノード電圧の波形と、前記波長のうちの様々な波長を反映している前記血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化するように構成されており、前記回路モデルのコンデンサ値は、前記血管の前記コンプライアンスに基づいており、前記最適化された抵抗値は、前記血管の前記流動抵抗を示すことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記光電式容積脈波記録法センサ(101)は、前記電磁放射線が以下の範囲、625nmから1000nmまで、565nmから590nmまで、500nmから565nmまで、及び450nmから485nmまでから選択される前記波長を有するように、前記電磁放射線を前記血管に放出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御システム(103)は、前記波長固有の構成要素信号を対数スケールに変換して、各々の変換された波長固有の構成要素信号から、包絡線が時間に対する直線的変化を有する部分を見つけて、前記直線的変化に関する前記変換された波長固有の構成要素信号の前記包絡線の傾き(α
IR、α
R、α
Y、α
G、α
B)についての推定値を生成するように構成されており、前記傾きは、考慮中の前記波長固有の構成要素信号の前記指数関数的変化に関する時間の前記係数である、請求項1又は2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記圧力機器(102)は、力生成器(104)と、前記制御システム(103)によって生成される制御信号に従って前記機械的圧力を指先又はつま先に向けるように構成された加圧要素(105)と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力機器(202)は、カフ(241)と、前記カフ内側のガス圧力を制御して、前記機械的圧力を腕に向けるように構成された、ポンプシステム(242)と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御システム(103)は、前記ノード電圧の前記波形と、血圧の前記測定波形との間の差の2乗の時間積分の和が減少している限り、前記抵抗値を変えるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
血管の流動抵抗を測定する方法であって、
電磁放射線が様々な波長を有するように、電磁放射線を前記血管に放出すること(301)と、
前記血管で反射される前記電磁放射線の一部を受信すること(302)と、
前記電磁放射線の前記受信された一部を示す測定信号を生成することであって、前記測定信号は、前記血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備え、前記波長のうちのより短い波長は、前記波長のうちのより長い波長に比べて、前記血管のうちのより小さい血管で反射される、ということ(303)と、
前記血管に印加される機械的圧力を生成すること(304)と、
前記波長固有の構成要素信号の各々から、前記機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化(~e
αYt)を有する部分を見つけること(305)と、
前記指数関数的変化に関する時間の係数(α
IR、α
R、α
Y、α
G、α
B)についての推定値を前記波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の前記係数は、考慮中の前記波長を反映している前記血管のコンプライアンスを示す、ということ(306)と、を含む方法において、
前記方法は、回路モデルのノード電圧の波形と、前記波長のうちの様々な波長を反映している前記血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、前記回路モデルのコンデンサ値は、前記血管の前記コンプライアンスに基づいており、前記最適化された抵抗値は、前記血管の前記流動抵抗を示す、ということ(307)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記電磁放射線は、以下の範囲、625nmから1000nmまで、565nmから590nmまで、500nmから565nmまで、及び450nmから485nmまでから選択される波長を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記波長固有の構成要素信号を対数スケールに変換することと、各々の変換された波長固有の構成要素信号から、包絡線が時間に対する直線的変化を有する部分を見つけることと、前記直線的変化に関する前記変換された波長固有の構成要素信号の前記包絡線の傾き(α
IR、α
R、α
Y、α
G、α
B)についての推定値を生成することと、を含み、前記傾きは、考慮中の前記波長固有の構成要素信号の前記指数関数的変化に関する時間の前記係数である、請求項7又は8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記機械的圧力は、指先又はつま先に向けられる、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記ノード電圧の前記波形と、前記血圧の前記測定波形との間の差の2乗の時間積分の和が減少している限り、前記抵抗値を変えることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
血管の流動抵抗を測定するコンピュータプログラムであって、
光電式容積脈波記録法センサを制御して電磁放射線を前記血管に放出して、前記血管で反射される前記電磁放射線の一部を受信して、前記電磁放射線の前記受信された一部を示す測定信号を生成することであって、前記電磁放射線は、様々な波長を有し、前記測定信号は、前記血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備え、前記波長のうちのより短い波長は、前記波長のうちのより長い波長に比べて、前記血管のうちのより小さい血管で反射される、ということと、
圧力機器を制御して、前記血管に印加される機械的圧力を生成することと、
プログラム可能な処理システムを制御して、前記波長固有の構成要素信号の各々から、前記機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間(t)に対する指数関数的変化(~e
αYt)を有する部分を見つけて、前記指数関数的変化に関する時間の係数(α
IR、α
R、α
Y、α
G、α
B)についての推定値を前記波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の前記係数は、考慮中の前記波長を反映している前記血管のコンプライアンスを示す、ということと、を行うようにプログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータプログラムは、回路モデルのノード電圧の波形と、前記波長のうちの様々な波長を反映している前記血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、前記回路モデルのコンデンサ値は、前記血管の前記コンプライアンスに基づいており、前記最適化された抵抗値は、前記血管の前記流動抵抗を示す、ということを行うように前記プログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備えることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムで符号化される非一時的なコンピュータ可読媒体を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血管の流動抵抗を測定する装置及び方法に関する。更に、本開示は、血管の流動抵抗を測定するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、血管病状及びその進行の定量的評価は、例えば、血圧、血管断面積、血管平均直径、血管硬度、及び血管流動抵抗などの様々な定量的基準の測定及び推定を伴う。例えば、異常な血管硬度及び流動抵抗は、先進国世界において2大死因である心筋梗塞及び脳卒中などの心血管事象のリスクの増加に関連付けられている。心臓は、必要とされる血流量を維持するためにより多くの仕事を行う必要があるため、動脈硬度及び流動抵抗の増加は、心臓の負荷を増加させ得る。時間の経過と共に、この仕事量の増加は、心不全につながり得る左室肥大及び左室リモデリングをもたらし得る。仕事量の増加は、より高い心拍数、比例的に長い収縮期間、及び拡張期間の減少にも関連付けられ得る。これは、主に拡張期に生じる心組織の灌流に利用可能な時間量を減少させる。したがって、より多くの酸素需要がある肥大心は、酸素及び栄養の供給を低下させ得る。
【0003】
上述した種類の理由により、血管に関する様々な定量的基準を測定及び/又は推定するためのいくつかの技術が開発されている。Jukka-Pekka Sirkiaら:皮膚微小血管系における脈波伝播時間を測定するための複数波長の光電式容積脈波記録法デバイス、Computing in Cardiology、2020年09月16日の文献は、皮膚微小血管系を研究するための複数波長の光電式容積脈波記録法「NWPPG」デバイスを記載している。当該デバイスは、皮膚内への光の侵入深度が光波長に依存しているということを利用する。したがって、当該デバイスにより、様々な深度の血管を研究することが可能になる。
【0004】
米国特許出願公開第2017172430号明細書の公報は、カフレス血圧測定の方法を記載している。当該方法は、所定の身体部分からの生理的信号及び複数波長の光電式容積脈波記録法「PPG」信号を記録することと、生理的信号を参照して動脈血液量を反映した深度固有のPPG信号を導出することと、生理的信号及び導出された動脈血液PPG信号から脈波伝播時間「PTT」を計算することと、計算されたPTT及び血圧の関係から血圧を計算することと、を含む。
【0005】
米国特許出願公開第2019336016号明細書の公報は、非侵襲的な毛細管血圧測定のデバイスを記載している。当該デバイスは、身体に接触して組織内の毛細管を加圧及び減圧する前端と、前端と組織との間の接触圧を調節する圧力制御モジュールと、接触圧を測定するために前端に接続された圧力トランスデューサと、接触圧調整下で毛細管拍動を検出する毛細管検知モジュールと、毛細管拍動及び接触圧調整に基づいて毛細管圧力を決定するためのアルゴリズムを実行する計算システムと、を備える。
【0006】
しかしながら、血管の流動抵抗を迅速に且つ費用効果的に測定する技術に対する必要性が依然存在している。
【発明の概要】
【0007】
以下は、様々な発明の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化した概要を提示する。概要は、本発明の広範囲にわたる概略ではない。当該概要は、本発明の主要な要素又は重要な要素を識別することも意図しておらず、本発明の範囲を描写することも意図していない。以下の概要は単に、本発明の例示的な実施形態のより詳細な説明に対する前置きとして、簡略化した形態で本発明のいくつかの概念を提示する。
【0008】
本発明によると、血管の流動抵抗を測定する新しい装置が提供される。本発明に係る装置は、
-電磁放射線を血管に放出して、血管で反射される電磁放射線の一部を受信して、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成するように構成された、光電式容積脈波記録法「PPG」センサであって、電磁放射線は、様々な波長を有し、測定信号は、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備え、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される、光電式容積脈波記録法「PPG」センサと、
-血管に印加される制御可能な機械的圧力を生成するように構成された圧力機器と、
-波長固有の構成要素信号の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化している、すなわち、減少又は増加しているときに包絡線、すなわち、波長固有の構成要素信号の極値の輪郭を描いた曲線が時間に対する指数関数的変化、すなわち、指数関数的成長又は指数関数的減少を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を波長固有の構成要素信号の各々について生成するように構成された制御システムであって、時間の係数は、様々な波長を反映している血管のコンプライアンスを示す、制御システムと、
を備える。
【0009】
制御システムは、回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化するように構成されており、回路モデルのコンデンサ値は、様々な波長を反映している血管の上述のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、様々な波長を反映している血管の流動抵抗を示す。
【0010】
上述の圧力機器は、例えば、機械的圧力を指先若しくはつま先に向けるデバイス、又はカフと、カフ内側のガス圧力を制御して機械的圧力を腕に向けるポンプシステムと、を備えるデバイスであり得る。
【0011】
光電式容積脈波記録法「PPG」センサは、皮下組織に位置する動脈の流動抵抗を測定するために、625nmから1000nmまでの範囲の波長を有する電磁放射線、すなわち、赤色又は赤外光を放出し、皮下組織の上方部分に位置する血管の流動抵抗を測定するために、565nmから590nmまでの範囲の波長を有する電磁放射線、すなわち、黄色光を放出し、真皮に位置する小動脈の流動抵抗を測定するために、500nmから565nmまでの範囲の波長を有する電磁放射線、すなわち、緑色光を放出し、真皮の上方部分に位置する毛細管の流動抵抗を測定するために、450nmから485nmまでの範囲の波長を有する電磁放射線、すなわち、青色光を放出するように構成され得る。
【0012】
本発明によると、血管の流動抵抗を測定する新しい方法も提供される。本発明に係る方法は、
-電磁放射線が様々な波長を有するように電磁放射線を血管に放出することと、
-血管で反射される電磁放射線の一部を受信することと、
-測定信号が、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備えるように、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成することであって、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される、ということと、
-血管に印加される機械的圧力を生成することと、
-波長固有の構成要素信号の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化を有する部分を見つけることと、
-指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の係数は、考慮中の波長を反映している血管のコンプライアンスを示す、ということと、
-回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、回路モデルのコンデンサ値は、血管のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す、ということと、
を含む。
【0013】
本発明によると、血管の流動抵抗を測定する新しいコンピュータプログラムも提供される。本発明に係るコンピュータプログラムは、
-光電式容積脈波記録法センサを制御して電磁放射線を血管に放出して、血管で反射される電磁放射線の一部を受信して、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成することであって、電磁放射線は、様々な波長を有し、測定信号は、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備え、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される、ということと、
-圧力機器を制御して、血管に印加される機械的圧力を生成することと、
-プログラム可能な処理システムを制御して、波長固有の構成要素信号の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の係数は、考慮中の波長を反映している血管のコンプライアンスを示す、ということと、
-回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、回路モデルのコンデンサ値は、血管のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す、ということと、
を行うようにプログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備える。
【0014】
本発明によると、新しいコンピュータプログラム製品も提供される。本発明に係るコンピュータプログラム製品は、本発明に係るコンピュータプログラムで符号化される不揮発性コンピュータ可読媒体、例えば、コンパクトディスク「CD」を備える。
【0015】
例示的且つ非限定的な実施形態は、添付の従属請求項に記載されている。
【0016】
構造及び動作方法の両方に関する様々な例示的且つ非限定的な実施形態はその追加の目的及び利点と共に、特定の例示的な実施形態の以下の説明から、添付の図面と関連して読むと最もよく理解されるであろう。
【0017】
「備える」及び「含む」という動詞は、列挙もされていない特徴の存在を除外せず当該存在を必要ともしないオープンな限定として本明細書で使用される。
【0018】
添付の従属請求項で列挙される特徴は相互に、特に明示的に述べない限り自由に組合せ可能である。
【0019】
更に、本明細書全体を通して、「a」又は「an」、すなわち単数形態の使用は複数を除外しないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
例示的且つ非限定的な実施形態及びその利点は、以下で、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【
図1a】血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置を示す。
【
図1b】様々な波長を有し指先の血管で反射される電磁放射線を時間の関数として示す例示的なグラフを示す。
【
図1c】
図1bを対数縦スケールに変換した例示的なグラフを示す。
【
図1d】血管の流動抵抗を推定するために使用される例示的な回路モデルを示す。
【
図2】血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置を示す。
【
図3】血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明で提供される特定の例は、添付の請求項の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。説明で提供される例のリスト及びグループは、特に明示的に述べない限り網羅的ではない。
【0022】
図1aは、血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置の概略図を示す。装置は、人の指先108に電磁放射線を放出して、指先108の血管で反射される電磁放射線の一部を受信する、光電式容積脈波記録法「PPG」センサ101を備える。PPGセンサ101は、放射線エミッタ106及び光検出器107を備える。放射線エミッタ106は、例えば、1つ以上の発光ダイオード「LED」を備えてもよく、光検出器107は、例えば、1つ以上のフォトダイオード又はフォトトランジスタを備えてもよい。
図1aは、指先の拡大概略断面
図110も示す。断面は、座標系199のyz平面に平行である。
【0023】
図1aに示された例示的な装置において、PPGセンサ101は、電磁放射線が5つの異なる波長を有する放射線構成要素を含むように、電磁放射線を放出するように構成されている。断面
図110において、放射線構成要素は、ポリライン矢印127、128、129、130、及び131で描写されている。第1の放射線構成要素127は、例えば、700nmから1000nmまでの範囲の波長を有する赤外放射線であってもよく、第2の放射線構成要素128は、例えば、625nmから700nmまでの範囲の波長を有する赤色放射線であってもよく、第3の放射線構成要素129は、例えば、565nmから590nmまでの範囲の波長を有する黄色放射線であってもよく、第4の放射線構成要素130は、例えば、500nmから565nmまでの範囲の波長を有する緑色放射線であってもよく、第5の放射線構成要素131は、例えば、450nmから485nmまでの範囲の波長を有する青色放射線であってもよい。別の例について、第1の放射線構成要素127は、800nmから900nmまでの範囲の波長を有する赤外放射線であってもよく、第2の放射線構成要素128は、650nmから675nmまでの範囲の波長を有する赤色放射線であってもよく、第3の放射線構成要素129は、575nmから580nmまでの範囲の波長を有する黄色放射線であってもよく、第4の放射線構成要素130は、530nmから545nmまでの範囲の波長を有する緑色放射線であってもよく、第5の放射線構成要素131は、460nmから475nmまでの範囲の波長を有する青色放射線であってもよい。
【0024】
断面
図130で示されるように、赤色及び赤外放射線構成要素127及び128は、皮下組織114に位置する動脈111に達し、黄色放射線構成要素129は、真皮115に隣接する皮下組織114の一部に位置する血管に達し、緑色放射線構成要素130は、真皮115に位置する小動脈112に達し、青色放射線構成要素131は、表皮116に隣接する真皮115の一部に位置する毛細管112に達する。したがって、より短い波長は、より長い波長に比べて、より小さい血管、すなわち、皮膚面により近い血管で反射される。PPGセンサ101の光検出器107は、測定信号を生成するように構成されており、当該測定信号は、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備える。
図1bは、例示的な測定信号122の例示的な波長固有の構成要素信号117、118、119、120、及び121を示すグラフを示している。波長固有の構成要素信号117は、赤外放射線に対応し、波長固有の構成要素信号118は、赤色放射線に対応し、波長固有の構成要素信号119は、黄色放射線に対応し、波長固有の構成要素信号120は、緑色放射線に対応し、波長固有の構成要素信号121は、青色放射線に対応する。光検出器107は、例えば、様々な波長に反応する多くのフォトダイオード若しくはフォトトランジスタを備え得るか、又は光検出器107は、波長分離を実施するためのフィルタを備え得る。
【0025】
装置は、血管に印加される制御可能な機械的圧力Pを生成するように構成された圧力機器102を備える。装置は、制御システム103を備え、制御システム103は、圧力機器102を制御して、電磁放射線が血管に放出されて電磁放射線の反射された一部が血管から受信されているときに、時間tに対して直線的に機械的圧力を変更する、すなわち、減少又は増加させるように構成されている。
図1bは、線132を示し、線132は、機械的圧力が直線的に減少しており上述の波長固有の構成要素信号117~121が測定されている例示的な状況における、機械的圧力の時間依存性を示す。
【0026】
図1aに示された例示的な装置において、圧力機器102は、指先108によって圧力センサ108に向けられる機械的圧力Pを測定する圧力センサ109と、PPGセンサ101及び圧力センサ109に対して指先108を制御可能に加圧する加圧手段と、を備える。この例示的な装置において、加圧手段は、加圧要素105と、加圧要素105に力を向ける力生成器104と、を備える。力生成器104は、例えば、電気ステッピングモータ及びねじ付きロッド又は力を生成するのに好適な何らかの他の要素を備え得る。
【0027】
制御システム103は、波長固有の構成要素信号117~121の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に減少しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化、すなわち、指数関数的成長又は指数関数的減少を有する部分を見つけるように構成されている。制御システム103は、波長固有の構成要素信号117~121の各々について、上述の指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を生成するように構成されている。時間の係数は、考慮中の波長固有の構成要素信号に対応する波長を反映している血管のコンプライアンスを示し、それによって、当該血管の硬度も示す。
【0028】
上述のように、
図1bに示された例示的な場合では、機械的圧力は直線的に減少し、したがって、波長固有の構成要素信号117~121の各々は、包絡線が指数関数的成長を有する部分を有する。
図1bは、波長固有の構成要素信号119の一部の拡大図を示す。
図1bでは、波長固有の構成要素信号117~121の包絡線は、太線で描写されている。波長固有の構成要素信号119の包絡線の一部における指数関数的成長~e
αYtは、破線で描写されている。この場合、指数関数的成長に関する時間の係数は、α
Yである。したがって、時間の係数α
Yは、黄色光が反射される血管のコンプライアンスを示し、それによって、黄色光が反射される血管の硬度も示す。
【0029】
機械的圧力が直線的に減少しているときに、包絡線が指数関数的変化を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数について推定値を生成する、多くの方法が存在する。例えば、最小平均2乗「LMS」法に基づいた、例えば、カーブフィッティングが使用され得る。したがって、本発明の実施形態に係る装置は、包絡線が指数関数的変化を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を生成する、任意の特定の方法に限定されない。例えば、例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置において、制御システム103は、測定信号の波長固有の構成要素117~121を対数スケールに変換するように構成されている。
図1cは、
図1bに示された波長固有の構成要素信号117、118、119、120、及び121にそれぞれ対応する、変換された波長固有の構成要素信号117’、118’、119’、120’、及び121’を示すグラフを示している。対数変換により、指数関数的変化は、
図1cに示された線117’’、118’’、119’’、120’’、及び121’’で描写された直線的変化に変換される。制御システム103は、変換された各波長固有の構成要素信号の包絡線に関する直線的変化の傾きを推定するように構成されている。傾きは、指数関数的変化に関する時間の係数である。
図1b及び
図1cに示された例示的な場合では、赤外光に関する傾き、すなわち、時間の係数はα
IRであって、赤色光に関する時間の係数はα
Rであって、黄色光に関する時間の係数はα
Yであって、緑色光に関する時間の係数はα
Gであって、青色光に関する時間の係数はα
Bである。したがって、例えば、α
Rは、動脈のコンプライアンスを示し、それによって、動脈の硬度も示し、α
Gは、小動脈のコンプライアンスを示し、それによって、小動脈の硬度も示し、α
Bは、毛細管のコンプライアンスを示し、それによって、毛細管の硬度も示す。
【0030】
制御システム103は、回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化するように構成されている。回路モデルのコンデンサ値は、血管の上述のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す。
図1dは、血管の流動抵抗を推定するために使用される例示的な回路モデルを示す。この例示的な場合では、回路モデルは、3つの回路セグメント150、151、及び152を備える。回路セグメント150は、例えば、皮下組織に位置する動脈をモデル化してもよく、回路セグメント151は、例えば、真皮に位置する小動脈をモデル化してもよく、回路セグメント152は、例えば、真皮の上方部分に位置する毛細管をモデル化してもよい。ノード電圧U1は、赤外及び赤色光を反映している血管において支配的な血圧をモデル化してもよく、ノード電圧U2は、緑色光を反映している血管において支配的な血圧をモデル化してもよく、ノード電圧U3は、青色光を反映している血管において支配的な血圧をモデル化してもよい。ノード電圧U0は、最大値が収縮期測定血圧であり、且つ最小値が拡張期測定血圧である波形を有し得る。ノード電圧U0の波形の形状は、例えば、U0=V1_AC+V2_AC+V1_DCとしてモデル化されてもよく、ここで、V1_AC=V1sin(2π×HR/60×t)、V2_AC=V2sin(2π×2HR/60×t)であり、ここで、tは、秒単位の時間であって、HRは、分ごとの心拍としての心拍数であって、V1、V2及びV1_DCは、U0の最大値が収縮期測定血圧であり、且つU0の最小値が拡張期測定血圧であるように選択される。回路モデルの電圧レベルは好ましくは、ボルトが水銀柱ミリメートル「mmHg」に直接対応するように選択される。例示的な場合では、HR=60/分、V1=10ボルト、V2=10ボルト、V1_DC=80ボルト~120ボルト、例えば、100ボルトである。この例示的な場合では、U0のピークツーピークは、25ボルト~40ボルト、例えば、約35Vである。電圧V2_DCは、毛細管の後の血圧をモデル化し、当該血圧は、0ボルトから10ボルトまでの範囲、又は3ボルトから8ボルトまでの範囲にあり得る。上述のように、回路モデルのコンデンサ値は、血管の上述のコンプライアンスに基づいている。この例示的な場合では、回路モデルのコンデンサ値は、例えば、C1,1=C1,2=α
IR/2又はα
R/2、C2,1=C2,2=α
G/2、C3=α
Bであり得る。
【0031】
回路モデルの入力電圧U0をモデル化する上述の方法は単なる例であることに留意されたい。回路モデルによってモデル化される最初の最も大きい血管、例えば、動脈での血圧の波形を測定又は推定し、その後、測定又は推定血圧波形を回路モデルの入力電圧U0として使用することも可能である。更に、入力電圧U0の様々な正弦波AC成分及びDC成分の特性値、例えば、振幅及び位相は、回路モデルの抵抗値と共に最適化されるパラメータであり得る。更に、入力電圧U0の波形を形成する瞬時値は、回路モデルの抵抗値と共に最適化されるパラメータであり得る。したがって、本発明は、回路モデルの入力電圧U0を取得する任意の特定の方法に限定されない。測定値は好ましくは、例えば、測定圧力値が回路モデルの電圧値に直接対応するように較正される。
【0032】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置において、制御システム103は、ノード電圧U1、U2、及びU3の波形と、血圧の測定波形との間の差の2乗の時間積分の和が減少している限り、抵抗値R1,1、R1,2、R2,1、R2,2、R3,1、及びR3,2を変えるように構成されている。最適化された抵抗値は、様々な波形を反映している血管の流動抵抗を示す。上述の例示的な場合では、R1,1+R1,2は、動脈の流動抵抗であって、R2,1+R2,2は、小動脈の流動抵抗であって、R3,1+R3,2は、毛細管の流動抵抗である。抵抗値は、例えば、推計学的に変更されてもよく、その場合、最適化プロセスは、シミュレートされる進化プロセスである。任意の好適な多変数最適化技術が使用されてもよく、本発明は、任意の特定の多変数最適化技術に限定されないことに留意されたい。更に、
図1dに示された回路モデルは単なる非限定的な例であって、様々な回路モデルが本発明の様々な実施形態と関連して使用されてもよいことに留意されたい。例えば、所与の波長を反映している血管、例えば、動脈などは、1つの抵抗器-コンデンサ「RC」ループのみを用いて、又は3つ以上続いて接続されたRCループを用いてモデル化され得る。
【0033】
様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の波形は、例えば、以下の方法で測定され得る。所与の波長を反映している血管において支配的な血圧の最大値は、対応する波長固有の構成要素信号117、118、119、120、又は121がその最大ピークツーピーク値の50%を有する、減少圧力、例えば、
図1bの圧力132の値である。例えば、
図1bに示された例示的な場合では、赤外及び赤色光を反映している血管において支配的な血圧の最大値はP1であって、黄色光を反映している血管において支配的な血圧の最大値はP2であって、緑色光を反映している血管において支配的な血圧の最大値はP3である。圧力値P1、P2、及びP3はそれぞれ、例えば、127mmHg(約16.9kPa)、100mmHg(約13.3kPa)、及び81mmHg(約10.8kPa)であり得る。所与の波長を反映している血管において支配的な血圧の平均値は、対応する波長固有の構成要素信号117、118、119、120、又は121がその最大ピークツーピーク値を有する減少圧力132の値である。所与の波長を反映している血管において支配的な血圧の波形の形状は、機械的圧力が一定に、好ましくはゼロに維持されているときの対応する波長固有の構成要素信号117、118、119、120、又は121の形状である。次いで、各波長固有の構成要素信号の波形は、その最大値が上述の最大値であり、且つその平均値が上述の平均値であるように拡大縮小及びシフトされ得る。様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の波形を測定する方法に関するより多くの情報は、例えば、Panula,T.ら:「指先から血圧を測定して心血管の健康状態を評価する機器」、Biosensors and Bioelectronics、167巻、2020年11月1日、112483の文献から分かり得る。本発明は、様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の波形を測定する任意の特定の方法に限定されないことに留意されたい。
【0034】
図1aに示された例示的な装置において、PPGセンサ101は、様々な波長を同時に放出及び受信するように構成されている。しかしながら、例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置の制御システムは、PPGセンサを制御して電磁放射線の波長を変え、様々な波長、及び様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の波形についてのα
IR、α
R、α
Y、α
G、及びα
Bなどの時間の係数を連続的に生成するように構成されることも可能である。
【0035】
図2は、血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置の概略図を示す。装置は、様々な波長を有する電磁放射線を腕の血管に放出して、血管で反射される電磁放射線の一部を受信する、光電式容積脈波記録法「PPG」センサ201を備える。PPGセンサ201は、測定信号が、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備えるように、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成するように構成されており、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される。
【0036】
装置は、血管に印加される制御可能な機械的圧力を生成するように構成された圧力機器202を備える。装置は、制御システム203を備え、制御システム203は、圧力機器202を制御して、電磁放射線が血管に放出されて反射電磁放射線が血管から受信されているときに、時間に対して直線的に機械的圧力を減少させるように構成されている。制御システム203は、各波長固有の構成要素信号から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を各波長固有の構成要素信号について生成するように構成されている。時間の係数は、考慮中の波長を反映している血管のコンプライアンスを示し、それによって、時間の係数は、血管の硬度を示す。制御システム203は、回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化するように構成されている。回路モデルのコンデンサ値は、血管の上述のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す。
【0037】
図2に示された例示的な装置において、圧力機器202は、カフ241と、カフ内側のガス圧力を制御して、それによって、PPGセンサ201が電磁放射線を腕に放出して電磁放射線を腕から受信しているときに、血管に向けられる機械的圧力を制御するように構成された、ポンプシステム242と、を備える。PPGセンサは、カフの内面に配置されている。
【0038】
図1a及び
図2に示された制御システム103及び203の各々は、例えば、1つ以上のプロセッサ回路で実装されてもよく、その各々は、プログラム可能なプロセッサ回路であってもよく、当該プログラム可能なプロセッサ回路には、適切なソフトウェア、専用ハードウェアプロセッサ、例えば特定用途向け集積回路「ASIC」など、又は構成可能なハードウェアプロセッサ、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」などが設けられる。制御システム103及び203の各々は、例えば、1つ以上のメモリ回路で実装されたメモリを更に備えてもよく、当該メモリ回路の各々は、例えばランダムアクセスメモリ「RAM」デバイスであってもよい。
【0039】
血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る装置は、制御システムを備え、当該制御システムは、
a)Rcrが、動脈血圧波形の自己相関であって、τminが、自己相関におけるゼロシフトでの値Rcr(0)と同等である、自己相関におけるピークを与える自己相関における最小の時間シフトであって、αCが、例えば、実験的に決定され得る較正定数である、式CO=1回拍出量「SV」×心拍数「HR」×αC×(√(Rcr(0))+√(-Rcr(τmin)))に従って、心拍出量「CO」を推定して、
b)好適な既知の方法を用いて平均動脈圧「MAP」を推定して、
c)全身血管抵抗「SVR」=MAP/COを計算して、
d)管を通る血流F=動脈での血圧/SVRを計算して、
e)血管構造内の所与のポイント、例えば、動脈、小動脈、又は毛細管における流動抵抗R=所与のポイントにおける血圧/Fを計算するように構成されている。
【0040】
図3は、血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法のフローチャートを示す。当該方法は、以下の動作、すなわち、
-動作301:電磁放射線が様々な波長を有するように電磁放射線を血管に放出することと、
-動作302:血管で反射される電磁放射線の一部を受信することと、
-動作303:測定信号が、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備えるように、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成することであって、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される、ということと、
-動作304:血管に印加される機械的圧力を生成することと、
-動作305:波長固有の構成要素信号の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化を有する部分を見つけることと、
-動作306:指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の係数は、考慮中の波長を反映している血管のコンプライアンスを示す、ということと、
-動作307:回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管において支配的な血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、回路モデルのコンデンサ値は、血管のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す、ということと、
を含む。
【0041】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法において、電磁放射線は、以下の範囲、すなわち、625nmから1000nmまで、565nmから590nmまで、500nmから565nmまで、及び450nmから485nmまでから選択される波長を有する。
【0042】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法は、測定信号を対数スケールに変換することと、変換された測定信号から、包絡線が時間に対する直線的変化を有する部分を見つけることと、直線的変化に関する変換された測定信号の包絡線の傾きについての推定値を生成することと、を含む。直線的変化の傾きは、指数関数的変化に関する時間の係数である。
【0043】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法において、機械的圧力は、人の指先又はつま先に向けられる。
【0044】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法において、機械的圧力は、カフ、及びカフ内側のガス圧力を制御するように構成されたポンプシステムを用いて、人の腕に向けられる。この例示的な場合では、光電式容積脈波記録法センサは、カフの内面に配置されている。
【0045】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法において、回路モデルの抵抗値は、ノード電圧の波形と、血圧の測定波形との間の差の2乗の時間積分の和が減少している限り、抵抗値を変えるように最適化される。
【0046】
血管の流動抵抗を測定する例示的且つ非限定的な実施形態に係る方法は、以下のこと、すなわち、
a)Rcrが、動脈血圧波形の自己相関であって、τminが、自己相関におけるゼロシフトでの値Rcr(0)と同等である、自己相関におけるピークを与える自己相関における最小の時間シフトであって、αCが、例えば、実験的に決定され得る較正定数である、式CO=1回拍出量「SV」×心拍数「HR」×αC×(√(Rcr(0))+√(-Rcr(τmin)))に従って、心拍出量「CO」を推定することと、
b)好適な既知の方法を用いて平均動脈圧「MAP」を推定することと、
c)全身血管抵抗「SVR」=MAP/COを計算することと、
d)管を通る血流F=動脈での血圧/SVRを計算することと、
e)血管構造内の所与のポイント、例えば、動脈、小動脈、又は毛細管における流動抵抗R=所与のポイントにおける血圧/Fを計算することと、
を含む。
【0047】
例示的且つ非限定的な実施形態に係るコンピュータプログラムは、上述の例示的且つ非限定的な実施形態のうちのいずれかに係る方法に関する動作を実行するようにプログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備える。
【0048】
例示的且つ非限定的な実施形態に係るコンピュータプログラムは、血管の流動抵抗を測定するソフトウェアモジュールを備える。ソフトウェアモジュールは、
-光電式容積脈波記録法センサを制御して電磁放射線を血管に放出して、血管で反射される電磁放射線の一部を受信して、電磁放射線の受信された一部を示す測定信号を生成することであって、電磁放射線は、様々な波長を有し、測定信号は、血管で反射されて受信される波長を示す波長固有の構成要素信号を備え、波長のうちのより短い波長は、波長のうちのより長い波長に比べて、血管のうちのより小さい血管で反射される、ということと、
-圧力機器を制御して、血管に印加される機械的圧力を生成することと、
-プログラム可能な処理システムを制御して、波長固有の構成要素信号の各々から、機械的圧力が時間に対して直線的に変化しているときに包絡線が時間に対する指数関数的変化を有する部分を見つけて、指数関数的変化に関する時間の係数についての推定値を波長固有の構成要素信号の各々について生成することであって、時間の係数は、考慮中の波長を反映している血管のコンプライアンスを示す、ということと、
-回路モデルのノード電圧の波形と、波長のうちの様々な波長を反映している血管における血圧の測定波形との間の差を最小化するように、回路モデルの抵抗値を最適化することであって、回路モデルのコンデンサ値は、血管のコンプライアンスに基づいており、最適化された抵抗値は、血管の流動抵抗を示す、ということと、
を行うようにプログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備える。
【0049】
ソフトウェアモジュールは、例えば、プログラム可能な処理システムに好適なプログラミングツールで実装されるサブルーチン又は機能であり得る。
【0050】
例示的且つ非限定的な実施形態に係るコンピュータプログラム製品は、例示的な実施形態に係るコンピュータプログラムで符号化されるコンピュータ可読媒体、例えば、コンパクトディスク「CD」を備える。
【0051】
例示的且つ非限定的な実施形態に係る信号は、例示的な実施形態に係るコンピュータプログラムを定める情報を搬送するように符号化される。
【0052】
例示的且つ非限定的な実施形態に係るコンピュータプログラムは、例えば、モバイルデバイス、例えば、スマートフォン又はウェアラブルデバイスのソフトウェアの一部を構成し得る。
【0053】
例示的且つ非限定的な実施形態に係るコンピュータプログラムは、
a)Rcrが、動脈血圧波形の自己相関であって、τminが、自己相関におけるゼロシフトでの値Rcr(0)と同等である、自己相関におけるピークを与える自己相関における最小の時間シフトであって、αCが、例えば、実験的に決定され得る較正定数である、式CO=1回拍出量「SV」×心拍数「HR」×αC×(√(Rcr(0))+√(-Rcr(τmin)))に従って、心拍出量「CO」を推定して、
b)MAPが、好適な既知の方法を用いて決定される平均動脈圧である、全身血管抵抗「SVR」=MAP/COを計算して、
c)管を通る血流F=動脈での血圧/SVRを計算して、
d)血管構造内の所与のポイント、例えば、動脈、小動脈、又は毛細管における流動抵抗R=所与のポイントにおける血圧/Fを計算するように、プログラム可能な処理システムを制御するコンピュータ実行可能命令を備える。
【0054】
上記で与えられた説明で提供される特定の例は、添付の請求項の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。上記で与えられた説明で提供される例のリスト及びグループは、特に明示的に述べない限り網羅的ではない。
【国際調査報告】