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特表2024-508520合成繊維と半合成繊維又は天然繊維との混合物からの合成繊維の化学的分離
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  • 特表-合成繊維と半合成繊維又は天然繊維との混合物からの合成繊維の化学的分離 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】合成繊維と半合成繊維又は天然繊維との混合物からの合成繊維の化学的分離
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/36 20060101AFI20240219BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20240219BHJP
【FI】
G01N33/36 B
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553364
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 NZ2022050023
(87)【国際公開番号】W WO2022186705
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】773526
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521218490
【氏名又は名称】オリテイン・グローバル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル・デヴィッド・フルー
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA03
2G041EA06
2G041EA12
2G041FA18
2G041FA22
2G041FA23
2G041FA25
2G041GA03
2G041HA01
2G041JA13
2G041JA17
2G041LA08
(57)【要約】
安定同位体分析若しくは微量元素濃度の測定、又は両者によって繊維の原産地を特定するための分析のために、半合成繊維材料又は天然繊維材料の完全性を維持しながら、合成繊維と半合成繊維又は天然繊維との混合物から合成繊維を分離し、そのデータを原産地が公知の繊維に関するデータと比較する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維と天然繊維又は半合成繊維との混合物を含む材料の原産地を特定するための方法であって、以下の工程:
a.材料の試料を抽出剤溶液と接触させて、i)合成繊維及び合成繊維の断片と、ii)天然繊維又は半合成繊維を含む固形残留物と、を含む溶液又は懸濁液を形成する工程と、
b.工程aで形成された溶液又は懸濁液を固形残留物から分離する工程と、
c.固形残留物を乾燥させる工程と、
d.固形残留物中の炭素、酸素、水素、窒素、硫黄及びストロンチウムの元素のうちの1つ又は複数の同位体比を測定する工程、及び/又は、固形残留物中の1つ又は複数の微量元素の濃度を測定する工程と、
e.材料の原産地を特定するために、工程dで測定された同位体比及び/又は濃度を原産地が公知の天然繊維又は半合成繊維のデータと比較する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
天然繊維が、綿、羊毛、毛皮、絹、麻、リネン又はジュートの繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
羊毛がヒツジ、ヤギ又はアルパカに由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
毛皮がウサギ又はポッサムに由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
半合成繊維がビスコース、モダール、レーヨン、アセテート、リヨセル又はキュプラの繊維である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
合成繊維がポリエステル、ナイロン、エラスタン又はアクリルの繊維である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
材料の試料が約50~250ミクロンの平均粒径まで粉砕されてから工程aで抽出剤溶液と接触する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抽出剤溶液がアセトン、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、フェノール、ジクロロメタン(DCM)、ギ酸、水性塩化水素酸、水性水酸化ナトリウム又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程aが、i)抽出剤溶液中の試料を撹拌する工程と、ii)抽出剤溶液中の試料を遠心分離する工程と、iii)固形残留物から溶液を分離する工程の1つ又は複数のサイクルとを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
試料を50~90℃の範囲の温度で加熱する1つ又は複数の工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程aで形成された溶液が、デカント、濾過、又は吸引によって固形残留物から分離される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
合成繊維がポリエステルであり、抽出剤溶液が、DCM中のフェノール(20%v/v)又は水性水酸化ナトリウム(10%w/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
合成繊維がエラスタンであり、抽出剤溶液がDMF中のエタノール(10%v/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
合成繊維がナイロンであり、抽出剤溶液が、水性塩化水素酸(18%w/v)又はギ酸(98%v/v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
合成繊維がポリエステルであり、抽出剤溶液が水性水酸化ナトリウム(10%w/v)である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に半合成繊維又は天然繊維を有する合成繊維の混合物から合成繊維を分離する方法に関する。特に、本発明は、半合成繊維又は天然繊維の原産地を特定するための分析のために、半合成繊維材料又は天然繊維材料の完全性を維持しながら、混合物から合成繊維材料を除去する化学的手法を提供する。
【背景技術】
【0002】
製品の原産地を特定することの重要性は世界中でますます高まっている。特に、食品の原産地に対する消費者の意識は、多くの市場にとって重要になっている。メーカー及びサプライヤーにとって、原材料や素材の原産地を知り、科学的に信頼できるトレーサビリティ技術を通じて原産地を証明できるようにする必要性が高まっている。
【0003】
衣料品及び繊維産業で使用される繊維の原産地の検証もますます重要になっている。特定の種類の繊維の持続可能性と倫理的な生産は、製品、ブランド、メーカー及びサプライヤーの評判に大きな影響を与える。そのため、法科学を活用して繊維製品や原材料の原産地を検証する必要がある。
【0004】
綿は、化学分析してその原産地を特定できる天然繊維の1つである。法化学と統計学を組み合わせて、綿に含まれる天然に存在する化学元素及びその同位体、更に場合によっては土壌組成及びその他の環境要因に基づいて固有の「指紋」を証明することができる。通常、綿は洗浄され、微量金属分析のために試料が酸で蒸解されるか、又は安定同位体測定のために燃焼/熱分解されて関連するガスが生成される。次いで、試験された試料のデータは、原産地が認証された試料に対して行われた同様の測定値のデータベースと比較される。この方法は、未加工の試料又は単一原産地の試料に適している。
【0005】
しかしながら、綿(又はその他の天然繊維又は半合成繊維)と、ポリエステル、エラスタン等のポリエーテル-ポリ尿素コポリマー、又はナイロン等の合成繊維と、から製造された材料の原産地を証明するか、又は検証する必要がある場合に、困難が生じる。合成繊維の存在は、綿成分の指紋を証明することを妨げる。材料中の合成繊維と天然繊維を化学的に分離する技術は公知である。しかしながら、使用される化学プロセスは、一般に合成繊維成分のリサイクルを目的とするものであり、トレーサビリティを決定するための天然繊維の完全性が失われるような天然繊維の変質を引き起こす。困難は、天然繊維と合成繊維との混合物だけでなく、天然繊維とビスコース、モダール、レーヨン、アセテート、リヨセル、キュプラ等の半合成繊維との混合物にも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、天然繊維又は半合成繊維を確実に分析して原産地を特定できるように、合成繊維から天然繊維又は半合成繊維を分離することができる、安全で信頼性の高い化学処理方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載され、特許請求される本発明は、本発明の概要で説明されるか、又は記載されるか、又は参照されるものを含むが、これらに限定されるわけではない、多くの特性及び実施例を有する。全てが含有されることは意図されておらず、本明細書に記載され、特許請求される本発明は、本発明の概要において確認される特徴又は実施例に限定されるものではなく、又は確認される特徴又は実施例によって限定されるものではなく、この確認される特徴又は実施例は、例証を目的として含まれるにすぎず、限定するために含まれているわけではない。
【0008】
本発明の一態様では、合成繊維と天然繊維又は半合成繊維との混合物を含む材料の原産地を特定するための方法であって、以下の工程:
a.材料の試料を抽出剤溶液と接触させて、i)合成繊維及び合成繊維の断片と、ii)天然繊維又は半合成繊維を含む固形残留物と、を含む溶液又は懸濁液を形成する工程と、
b.工程aで形成された溶液を固形残留物から分離する工程と、
c.固形残留物を乾燥させる工程と、
d.固形残留物中の炭素、酸素、水素、窒素、硫黄及びストロンチウムの元素のうちの1つ又は複数の同位体比を測定する工程、及び/又は、固形残留物中の1つ又は複数の微量元素の濃度を測定する工程と、
e.材料の原産地を特定するために、工程dで測定された同位体比及び/又は濃度を原産地が公知の天然繊維又は半合成繊維のデータと比較する工程と
を含む、方法が提供される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、天然繊維は、綿、羊毛、毛皮、絹、麻、リネン又はジュートの繊維である。羊毛は、ヒツジ、ヤギ(例えばカシミア、アンゴラ、モヘア)、アルパカ、及びラマを含む任意の羊毛を生産する動物に由来し得る。毛皮は、ウサギ及びポッサムを含む、任意の毛皮を生産する動物に由来し得る。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、半合成繊維は、ビスコース、モダール、レーヨン、アセテート、リヨセル又はキュプラの繊維である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、合成繊維は、ポリエステル、ナイロン、エラスタン又はアクリルの繊維である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、材料の試料は、約50~250ミクロンの平均粒径まで粉砕されてから工程aで抽出剤溶液と接触する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、抽出剤溶液は、エタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、フェノール、ジクロロメタン(DCM)、水性塩化水素酸、水性水酸化ナトリウム、又はギ酸、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、工程aは、i)抽出剤溶液中の試料を撹拌する工程と、ii)抽出剤溶液中の試料を遠心分離する工程と、iii)固形残留物から溶液を分離する工程の1つ又は複数のサイクルを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、50~90℃の範囲の温度、例えば、70℃で試料を加熱する1つ又は複数の工程を更に含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、工程aで形成された溶液は、デカント、濾過、又は吸引によって固形残留物から分離される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、合成繊維は、ポリエステルであり、抽出剤溶液は、DCM中のフェノール(20%w/v)、又は水性水酸化ナトリウム(10%w/v)である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、合成繊維は、エラスタンであり、抽出剤溶液はDMF中のエタノール(10%v/v)である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、合成繊維は、ナイロンであり、抽出剤溶液は、水性塩化水素酸(18%w/v)又はギ酸(98%v/v)である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、合成繊維は、ポリエステルであり、抽出剤溶液は、水性水酸化ナトリウム(10%w/v)である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、材料は布帛又は布地である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、原産地は、天然繊維又は半合成繊維が栽培又は生産された国又は国の地域である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】多変量空間における微量金属と安定同位体のデータの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書に開示される本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有するものとする。
【0025】
「原産地」という用語は、繊維が栽培又は生産された地理的位置を意味する。
【0026】
「天然繊維」という用語は、植物又は動物によって生成される繊維を意味し、これに限定されるものではないが、綿、絹、麻、リネン、ジュート、羊毛及び毛皮を挙げることができる。
【0027】
「半合成繊維」という用語は、植物又は動物によって生産され、化学的に修飾又は部分的に分解された繊維を意味し、これに限定されるものではないが、ビスコース、モダール、レーヨン、アセテート、リヨセル、及びキュプラを挙げることができる。
【0028】
「合成繊維」という用語は、小さな分子から化学的に合成され、繊維に紡がれるポリマーを意味し、これに限定されるものではないが、ポリエステル、ナイロン、エラスタン、及びアクリルを挙げることができる。
【0029】
「抽出剤溶液」という用語は、溶解、分解、又は懸濁によって混合物の構成要素を化学的に分離するために使用される液体を意味する。
【0030】
「同位体比」という用語は、同じ化学元素の2つ以上の同位体の原子存在量の比を意味する。
【0031】
「微量元素」という用語は、濃度が非常に低い化学元素を意味し、これに限定されるものではないが、100ppm未満又は100μg/g未満の濃度を有する元素を挙げることができる。「微量金属」という用語には、対応する意味がある。
【0032】
他に特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するものと解釈されるものとする。
【0033】
本明細書に開示される数値範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内の全ての関連する数値(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)への言及も組み込むことが意図されており、その範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5及び3.1~4.7)、したがって、本明細書に明示的に開示される全ての範囲の全ての部分範囲も明示的に開示される。これらは、具体的に意図されたものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値の間の数値の可能な全ての組み合わせは、同様の方法で本出願に明示的に記載されていると理解される。
【0034】
「及び/又は」という用語、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味を明示的にサポートすると解釈されるものとする。
【0035】
「a」又は「an」という用語は、指定された1つ又は複数の実体を指すことができる。したがって、用語「a」又は「an」、「1つ又は複数」、及び「少なくとも1つ」は、互換的に使用することができる。
【0036】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記載された要素、整数若しくは工程、又は一群の要素、整数若しくは工程の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は一群の要素、整数若しくは工程の除外を意味するものではないことが理解される。
【0037】
本明細書全体を通して、特に別段の明言がない限り、又は文脈上別の意味を必要としない限り、単一の工程、単一の物質の組成物、一群の工程、又は一群の物質の組成物への言及は、1つ及び複数の(すなわち、1つ以上の)そのような工程、物質の組成物、一群の工程又は一群の物質の組成物を包含すると解釈すべきである。
【0038】
本発明は、合成繊維と天然繊維又は半合成繊維との混合物を含む材料の原産地を特定する方法に関する。合成繊維は、天然繊維又は半合成繊維を有する混合物から分離することができるが、既に公知の技術では、化学分析及びトレーサビリティ、又は原産地や信ぴょう性の調査を目的として、天然繊維又は半合成繊維の完全性を維持しながらこれを達成することは困難であった。繊維混合物の化学処理の公知の形式のほとんどは、天然繊維及び半合成繊維の化学元素の安定同位体の比率を変化させ、このことは、同位体値を使用して繊維の原産地を確実に特定することができないことを意味する。出願人は、この分離を達成し、材料の原産地を確実に特定する方法を発見した。
【0039】
本発明の方法は、以下の工程:
a.材料の試料を抽出剤溶液と接触させて、i)合成繊維及び合成繊維の断片と、ii)天然繊維又は半合成繊維を含む固形残留物とを、含む溶液又は懸濁液を形成する工程と、
b.工程aで形成された溶液又は懸濁液を固形残留物から分離する工程と、
c.固形残留物を乾燥させる工程と、
d.固形残留物中の炭素、酸素、水素、窒素、硫黄及びストロンチウムの元素のうちの1つ又は複数の同位体比を測定する工程、及び/又は、固形残留物中の1つ又は複数の微量元素の濃度を測定する工程と、
e. 材料の原産地を特定するために、工程dで測定された同位体比及び/又は濃度を原産地が公知の天然繊維又は半合成繊維のデータと比較する工程と
を含む。
【0040】
抽出剤溶液と、試料を抽出剤溶液にさらす条件(例えば、温度や時間)とは、混合物から除去する必要がある合成繊維の種類に基づいて選択される。例えば、本発明の一実施形態では、出願人は、合成繊維がポリエステルである場合、フェノールのジクロロメタン溶液(DCM)が効果的であることを発見した。別の実施形態では、出願人は、合成繊維がエラスタンである場合、エタノールのジメチルホルムアミド(DMF)溶液が効果的であることを発見した。さらなる実施形態では、出願人は、合成繊維がナイロンである場合、水性塩化水素酸が効果的であることを発見した。各実施形態では、手がかりとなる元素の同位体値は、独立した実験によって検証されたように保存されていた。
【0041】
除去される合成繊維と、トレーサビリティ分析のために保存される天然繊維又は半合成繊維とに応じて、広範囲の有機又は無機の液体若しくは溶媒、又は液体若しくは溶媒の組み合わせのいずれかを使用することができることが理解されよう。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、接触時間及び温度も重要である。例えば、試料と抽出剤溶液は、50~90℃の温度、例えば、70℃で1~2時間以上撹拌され得る。
【0043】
工程aの間に、全てではないにしても大部分の合成繊維が抽出剤溶液に溶解するか、又は抽出剤溶液中に懸濁されるか、又は合成繊維の少なくとも一部は抽出剤溶液に溶解するか、又は抽出剤溶液中に懸濁される小さな断片に分割される。
【0044】
工程aで形成された溶液又は懸濁液は、次いで、残存している固形材料から分離される。これを行う1つの方法は、遠心分離し、溶液をデカントして固形残留物を残し、固形残留物は化学分析の前に乾燥される。濾過等の他の分離技術を使用してもよい。
【0045】
分離プロセスには、フェノール又はDMF等の抽出剤溶液成分の痕跡を全て除去するために、エタノール等の揮発性溶媒で洗浄する1つ又は複数の段階が含まれる場合もある。
【0046】
固形残留物が乾燥されると、固形残留物中の1つ又は複数の化学元素の同位体比を測定し、且つ/又は、固形残留物中の1つ又は複数の化学元素の濃度を測定するための化学分析の準備が整ったことになる。
【0047】
安定同位体比は、試料をガスに変換し、同位体比質量分析計(IRMS)又はキャビティリングダウン分光法(CRDS)で質量比を測定することによって決定できる。通常、試料は乾燥され、次いでヘリウム等の不活性雰囲気下に高温で分解され、水素と一酸化炭素のガスが生成される。これらはクロマトグラフィーにかけられ、同位体質量の比率が測定される。高温において酸素中で試料が燃焼すると、炭素、窒素、硫黄のガスが生成される。これらのガスはガスクロマトグラフィーによって分離され、IRMSの供給源に掃引され、そこで同位体質量の相対存在量が測定される。
【0048】
ストロンチウム同位体比は、試料をカラムクロマトグラフィーにかけてルビジウム等の他の元素の存在によって生じる干渉を除去した後、マルチコレクター誘導結合質量分析計を使用して測定できる。
【0049】
Mg、Al、K、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Se、As、Rb、Sr、Cd、Cs、Ba、Pb及びU等の微量金属の濃度は、加熱した状態で濃鉱酸中での試料の分解によって測定できる。清澄な溶液が得られたら、試料をホットプレート上で乾燥させ、残留物を希HNO3(2M)に再溶解する。公知量の内部標準(例えば、Rh)を添加し、四重極誘導結合質量分析法を使用して希釈溶液中の微量金属を定量する。
【0050】
試料の原産地の検証は、安定同位体比及び/又は微量元素濃度データを、原産地を認証された繊維のデータベース情報に結び付けることによって実現される。多数のパラメータが測定されるため、データの解釈には単変量統計及び多変量統計の両方が使用される。単変量探索(例えば、箱ひげ図、X-Yプロット)は、グループ分けと外れ値を確認し、多変量モデルがデータに必要とする仮説(例えば、正規分布)を試すために使用される。必要に応じて、変換(例えば、ログ)手順が適用される。解釈にはいくつかの異なるモデル(通常は8つ)が適用される。これらとしては、データ探索のための主成分分析、いくつかの識別モデル(線形判別分析、二次判別分析、ランダムフォレスト、人工ニューラルネットワーク)等を挙げることができる。
【0051】
本発明を、実施例を参照して更に説明する。特許請求される本発明は、実施例によっていかなる方法でも限定されることを意図されることはないことが理解されよう。
【0052】
実施例1及び2は、試料中の化学元素の安定同位体比及び微量金属の濃度を測定する方法について説明する。
【0053】
実施例3は、フェノールのDCM20%(w/v)抽出剤溶液を使用して、綿との混合物からポリエステル繊維をどのように抽出することができるかを説明する。同一又は同様の手順を使用して、羊毛繊維等の他の種類の天然繊維との混合物からポリエステル繊維を抽出できることが理解されよう。実施例3は、綿/ポリエステル混合物の処理がポリエステルを除去するのに効果的であり、処理後のC、O、及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された綿の安定同位体測定値が綿の元の同位体値を確実に表しており、したがって綿の原産地を特定する際に使用できることを意味する。
【0054】
実施例4は、綿との混合物からどのようにナイロンを抽出することができるかを説明する。Table 2(表2)に示された結果は、記載の条件下での水性HCl(18%w/v)による綿の処理が、綿のC、O、又はHの安定同位体値に影響を及ぼさないことを示している。綿との混合物にナイロンが存在すると、その安定値に影響が生じ、原産地の特定に使用できなくなる。実施例4は、綿/ナイロン混合物の処理が、ナイロンを除去するのに効果的であり、そのため処理後のC、O、及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された綿の安定同位体測定値が綿の元の同位体値を確実に表しており、したがって綿の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0055】
この結果は、実施例5に示されるように、綿との混合物からのエラスタンの抽出に対しても同じである。Table 3(表3)に示された結果は、記載された条件下でのDMFによる綿の処理が、綿のC、O、又はHの安定同位体値に影響を及ぼさないことを示している。綿との混合物にエラスタンが存在すると、その安定値に影響が生じ、原産地の特定に使用できなくなる。したがって、実施例5は、綿/エラスタン混合物の処理が、エラスタンを除去するのに効果的であり、そのため処理後のC、O、及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された綿の安定同位体測定値が綿の元の同位体値を確実に表しており、したがって綿の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0056】
実施例6は、綿との混合物から2つの合成繊維を抽出することを説明する。Table 4(表4)に示された結果は、綿の安定同位体値に影響を与えることなく、エラスタンとポリエステルの両方を除去することができることを示している。綿/ポリエステル/エラスタン混合物の処理は、ポリエステルとエラスタンを除去するのに効果的であり、処理後のC、O及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。繰り返しになるが、綿の安定同位体測定値は綿の元の同位体値を確実に表しており、綿の原産地を特定する際に使用することができる。
【0057】
実施例7は、綿との混合物から2つの合成繊維を抽出することも説明する。Table 5(表5)の結果は、綿とエラスタン及びナイロンとの混合物を処理して、両方のタイプの合成繊維を除去し、綿の安定同位体値に影響を与えないことができることを示している。処理された綿の安定同位体測定値は、綿の元の同位体値を表しており、綿の原産地を特定するために使用することができる。
【0058】
実施例8は、羊毛との混合物からのポリエステルの抽出を説明する。この方法では、羊毛はジクロロメタンを含む懸濁液中に残存するが、ポリエステルはより高密度であり、遠心分離によって分離される。遠心分離後のデカンテーションを繰り返すことで、羊毛からポリエステルが効果的に除去される。Table 6及び7(表6及び7)の結果は、羊毛とポリエステルの混合物を処理してポリエステルを除去し、羊毛の安定同位体値に影響を与えないことができることを示している。処理された羊毛の安定同位体測定値は、羊毛の元の同位体値を表しており、羊毛の原産地を特定する際に使用することができる。
【0059】
実施例9は、羊毛との混合物からどのようにナイロンを抽出することができるかを説明する。Table 8及び9(表8及び9)に示された結果は、記載された条件下でのギ酸(98%)による羊毛の処理が、羊毛のN、C、S、O又はHの安定同位体値に影響を及ぼさないことを示している。実施例9は、羊毛/ナイロン混合物の処理がナイロンを除去するのに効果的であり、処理後のN、C、S、O及びHの安定同位体値が元の羊毛と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された羊毛の安定同位体測定値が羊毛の元の同位体値を確実に表しており、したがって羊毛の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0060】
実施例10は、羊毛との混合物からどのようにエラスタンを抽出することができるかを説明する。実施例5に示されるように、綿との混合物からのエラスタンの抽出に対しても同じである。Table 10及び11(表10及び11)に示された結果は、記載された条件下でのDMFによる羊毛の処理が羊毛のN、C、S、O又はHの安定同位体値に影響を及ぼさないことを示している。羊毛との混合物にエラスタンが存在すると、その安定値に影響が生じ、原産地の特定に使用できなくなる。したがって、実施例10は、羊毛/エラスタン混合物の処理がエラスタンを除去するのに効果的であり、そのため処理後のN、C、S、O及びHの安定同位体値が元の羊毛と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された羊毛の安定同位体測定値が羊毛の元の同位体値を確実に表しており、したがって羊毛の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0061】
実施例11はまた、綿との混合物からどのようにアクリルを抽出することができるかを説明する。綿との混合物にアクリルが存在すると、その安定値に影響が生じ、原産地の特定に使用できなくなる。したがって、実施例11は、DMFによる綿/アクリル混合物の処理が、アクリルを除去するのに効果的であり、そのため処理後のC、O及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された綿の安定同位体測定値が綿の元の同位体値を確実に表しており、したがって綿の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0062】
実施例12は、水酸化ナトリウムの抽出剤溶液(10%w/v)を使用して綿との混合物からどのようにポリエステル繊維を抽出することができるかを説明する。実施例12は、綿/ポリエステル混合物の処理がポリエステルを除去するのに効果的であり、そのため処理後のC、O及びHの安定同位体値が元の綿と区別不能、すなわちそれらが測定値に関する分析的不確実性の範囲内にあったことを示している。このことは、処理された綿の安定同位体測定値が綿の元の同位体値を確実に表しており、したがって綿の原産地を特定する際に使用することができることを意味する。
【0063】
実施例13は、試料から得られたデータを標準試料からのデータと比較して、試験された試料の原産地を特定する方法を示している。
【実施例
【0064】
(実施例1:安定同位体分析)
試料中の安定同位体比の測定は、試料を適切なガスに変換し、同位体比質量分析計(IRMS)で質量比を測定することによって行われる。酸素と水素の同位体比を測定するために、少量のアリコート(約500μg)を秤量して銀のカプセルに入れた。試料を、真空下で4日間乾燥させた後、ヘリウム雰囲気中で熱分解によって分解した。得られたH2ガスとCOガスをクロマトグラフィーカラムで時間的に分離し、関連する質量比(HD:H2については3:2、COの180:160については30:28、COの13C:12Cについては29:28)を測定した。C、N及びSに使用したプロセスは、試料の分解を1020℃での酸素中での燃焼によって行ったことを除けば同様であった。ストロンチウム同位体比測定用の試料を、微量金属試料と同様に蒸解した。乾燥した残留物をHNO3(8M)に再溶解し、Sr特異的樹脂のカラムに添加した。試料内の他の元素は、樹脂を通して洗浄され、Srのみが保持された。洗浄後、希HNO3(0.1M)を用いてSrを樹脂から溶出させた。Srを含む溶離液を乾燥させ、残留物をHNO3(2M)に再溶解した。88Sr、87Sr及び86Srの比率を、マルチコレクター誘導結合質量分析計で測定した。
【0065】
(実施例2:微量金属分析)
試料中の微量金属濃度を、加熱しながら濃鉱酸(HNO3及び/又はHCl)中で試料を分解した後に測定した。清澄な溶液が形成されたら、酸を乾固し、残留物を2%のHNO3に再融解した。公知量の内部標準(例えば、Rh)を添加し、溶液を超純水で所定の体積まで希釈した。希釈溶液中の微量金属を、四重極誘導結合質量分析法を使用して定量した。
【0066】
(実施例3:フェノール/DCMを使用した綿との混合物からのポリエステルの抽出)
一片の布帛(綿と混合されたポリエステル)を粉砕することによって均質化し、おおよその粒径が50~250μmの試料となった。試料(100mg)を15mLのポリプロピレンの遠心分離管に加え、フェノール/DCM(20%w/v、5mL)を加えてから、管にしっかりと蓋をした。この管を、2分間ボルテックスし、70℃の水浴中に2時間設置した。次いで、この管を2000×gで5分間遠心分離した。上澄みをデカントした後に、DCM(2mL)を加えて固形残留物をすすいだ。2分間ボルテックスし、2000×gで5分間遠心分離し、デカントした後、エタノール(2mL)を加えて固形残留物をすすいだ。デカント、ボルテックス、遠心分離、デカントのサイクルを繰り返した後、固形残留物を60℃で12時間オーブン乾燥させた。安定同位体測定値の比較結果と、標準の原産地試料のデータベース情報とを、Table 1(表1)に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例4:HClを使用した綿との混合物からのナイロンの抽出)
一片の布帛(綿と混合されたナイロン)を粉砕することによって均質化し、おおよその粒径が50~250μmの試料となった。試料(100mg)を、15mLのポリプロピレン遠心分離管に加え、HCl(18%w/v、5mL)を加えてから、管にしっかりと蓋をした。この管を、2分間ボルテックスし、直ちに2000×gで5分間遠心分離した。上澄みをデカントした後に、HCl(9%w/v、5mL)を加えて固形残留物をすすいだ。2分間ボルテックスし、2000×gで5分間遠心分離し、デカントした後、エタノール(10mL)を加えて固形残留物をすすいだ。デカント、ボルテックス、遠心分離、デカントを更に2回繰り返した後、固形残留物を60℃で12時間オーブン乾燥させた。安定同位体測定値の比較結果と、標準の原産地試料のデータベース情報とを、Table 2(表2)に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例5:DMFを使用した綿との混合物からのエラスタンの抽出)
一片の布帛(綿と混合されたエラスタン)を粉砕することによって均質化し、おおよその粒径が50~250μmの試料となった。試料(100mg)を15mLのポリプロピレン遠心分離管に加え、ジメチルホルムアミド(DMF)5mLを加えてから、管にしっかりと蓋をした。この管を、2分間ボルテックスし、70℃の水浴中に2時間設置した。次いで、この管を2000×gで5分間遠心分離した。上澄みをデカントした後に、DMF:エタノール(9:1v/v、5mL)の溶液を加えて固形残留物をすすいだ。2分間ボルテックスし、2000×gで5分間遠心分離し、デカントした後、DMF:エタノールですすぎを繰り返した。エタノール(5mL)で更に2回すすいで、固形残留物からエラスタン及びDMFを完全に除去した。デカント、ボルテックス、遠心分離、デカントのサイクルを繰り返した後に、固形残留物を60℃で少なくとも12時間オーブン乾燥させた。安定同位体測定値の比較結果と、標準の原産地試料のデータベース情報とを、Table 3(表3)に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
(実施例6:フェノール/DCMを使用した綿との混合物からのポリエステル及びエラスタンの抽出)
一片の布帛(綿と混合されたエラスタンとポリエステル)を粉砕することによって均質化し、おおよその粒径が50~250μmの試料となった。上記実施例3の手順に従ってポリエステルを抽出した。上記実施例5の手順に従ってエラスタンを抽出した。結果をTable 4(表4)に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
(実施例7:HClを使用した綿との混合物からのナイロン及びエラスタンの抽出)
一片の布帛(綿と混合されたナイロンとエラスタン)を粉砕することによって均質化し、おおよその粒径が50~250μmの試料となった。上記実施例4の手順に従ってナイロンを抽出した。上記実施例5の手順に従ってエラスタンを抽出した。結果をTable 5(表5)に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
(実施例8:DCMを使用した羊毛との混合物からのポリエステルの抽出)
3つの混合物(95%/5%羊毛/ポリエステル、80%/20%羊毛/ポリエステル、50%/50%羊毛/ポリエステル[w/w])を、粉末の羊毛とポリエステルから作成した。混合物を、Retsch MM400(周波数:30/s、ボール無し)を使用して、3分間均質化した。ジクロロメタン(DCM、5mL)を、遠心分離管内の各混合物及び原毛の100mg試料(三連で)に加え、5分間ボルテックスし、続いて超音波処理を(5分間)した。試料を4000×gで5分間遠心分離した。上澄み(DCM中に懸濁した羊毛)を第2の遠心分離管にデカントし、2分間ボルテックスして、残留ポリエステルの分離を促進した。試料を再度4000×gで5分間遠心分離し、上澄み(DCM及び羊毛)を第3の遠心分離管にデカントした(残留物3)。DCMが蒸発するまで、蓋を緩めた状態で管を70℃の水浴中に設置した。残留物3を、エタノール(5mL)で2度すすいだ。繊維を、IRMS分析の前に60℃において終夜で乾燥させた。結果をTable 6及び7(表6及び7)に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
(実施例9:ギ酸を使用した羊毛との混合物からのナイロンの抽出)
羊毛50%とナイロン50%(w/w)の混合物を、粉末の羊毛とナイロンから作成した。混合物を、Retsch MM400を使用して、3分間均質化した。混合物と原毛の3つのアリコート(100mg)をギ酸(98%、5mL)で処理し、2分間ボルテックスした。試料を2000×gで5分間遠心分離し、上澄みをデカントして除去し、ギ酸(5mL)の新鮮アリコートを残留物に加えた。試料を2分間ボルテックスしてから、遠心分離を繰り返した。上澄みをデカントして除去し、残留物をエタノール(5mL)で3回すすいだ。繊維を、IRMS分析の前に60℃において終夜で乾燥させた。結果をTable 8及び9(表8及び9)に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
(実施例10:DMFを使用した羊毛との混合物からのエラスタンの抽出)
羊毛80%とエラスタン20%(w/w)の混合物を、粉末の羊毛及びエラスタンから作成した。混合物を、Retsch MM400を使用して、3分間均質化した。混合物と原毛の3つのアリコート(100mg)をDMF(5mL)で処理し、5分間ボルテックスし、超音波処理(70℃で5分間)してから、70℃の水浴中に2時間設置した。試料を2000×gで5分間遠心分離し、上澄みをデカントして除去し、10%エタノールのDMF溶液(5mL)を加えた。試料を、ボルテックスして超音波処理した後、水浴中70℃で更に2時間加熱した。遠心分離を繰り返し、残留物を10%エタノールのDMF溶液(5mL)で洗浄し、5分間ボルテックスした。試料を再度2000×gで5分間遠心分離し、残留物をエタノール(95%、5mL)で2回すすいだ。繊維を、IRMS分析の前に60℃において終夜で乾燥させた。結果をTable 10及び11(表10及び11)に示す。
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
(実施例11:DMFを使用した綿との混合物からのアクリルの抽出)
約50%w/wの混合物を、粉末の綿とアクリルから作成した。混合物を更に粉砕することにより均質化した。混合物及び原料出発物質の3つのアリコート(100mg)を、DMF(5mL)で処理し、2分間ボルテックスしてから、70℃の水浴中に2時間設置した。試料を2000×gで5分間遠心分離した。上澄みをデカントして除去し、10%エタノールのDMF溶液(v/v、5mL)を加えた。試料をボルテックスしてから、水浴中70℃で2時間加熱した。試料を再度2000×gで5分間遠心分離した。上澄みをデカントして除去し、残留物を新鮮なDMF/エタノール溶液で洗浄し、1分間ボルテックスした。洗浄した試料を再度2000×gで5分間遠心分離し、残留物をエタノール(95%、5mL)で更に2回すすいだ。繊維を、60℃において終夜で乾燥させてから、IRMSの準備を行った。結果をTable 12(表12)に示す。
【0086】
【表12】
【0087】
(実施例12:NaOHを使用した綿との混合物からのポリエステルの抽出)
約50%w/wの混合物を、粉末の綿とポリエステルから作成した。混合物を更に粉砕しておおよその粒径が50~250μmとなった。3つのアリコート(100mg)を、それぞれ、NaOH(10%w/v、5mL)と共に15mLのポリプロピレン遠心分離管に入れた。遠心分離管を5分間ボルテックスし、90℃の水浴中に4時間設置した。2000×gで5分間遠心分離した後、上澄みをデカントして除去し、蒸留水(5mL)を加えてすすいだ。5分間ボルテックスした後、2000×gで5分間遠心分離し、上澄みをデカントして除去し、酢酸(2%v/v、5mL)を加えて過剰の塩基を中和した。5分間ボルテックスしてよく混合した後、2000×gで5分間遠心分離し、上澄みをデカントして除去し、エタノール(10%v/v、5mL)を加えた。2分間ボルテックスし、2000×gで5分間遠心分離した後、上澄みをデカントして除去し、残留物を、60℃で少なくとも48時間乾燥させてから、IRMSの準備を行った。結果をTable 13(表13)に示す。
【0088】
【表13】
【0089】
(実施例13:原産地の検証)
米国由来であると主張される3つの試料についての上記の実施例1及び2による分析から得られたデータを、標準の試料からのデータと比較して試料の原産地を検証した。データ監査の結果を図1に示す。微量金属及び安定同位体データを多変量空間に示す。様々な影付きの球の雲は、様々な原産地からの試料を表す。大きな暗い球(上)は監査に不合格となった試料、つまり主張されている原産地と一致しないものであり、一方大きな明るい球(右下)は主張されている原産地と一致している、つまり、オーストラリアのクラスター内にある。
【0090】
本発明は例として記載されているが、特許請求の範囲に定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく、変形及び改変を行ってもよいことを理解されたい。更に、特定の特徴に対して公知の等価物が存在する場合には、このような等価物は、あたかも本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0091】
本明細書で参照されるか、又は言及される全ての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、並びにその他の文書及び資料は、本発明が属する当業者の技術レベルを示すものであり、そのような参照される文書及び資料のそれぞれは、あたかもそれが参照によりその全体が個別に組み込まれており、又は本明細書にその全体が記載されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、任意のそのような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手できる情報、及びその他の参照される資料又は文書に由来するあらゆる資料及び情報を、本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
【0092】
使用されている用語及び表現は、限定の用語ではなく記述の用語として使用されているのであり、このような用語及び表現の使用において、示され、記述されている特徴のあらゆる等価物又はそれらの一部を排除する意図はなく、様々な改変が、特許請求されたように本発明の範囲内で可能であることが認識されるべきである。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示されている概念の改変及び変形は、当該技術分野における当業者によって訴えることができ、そしてこのような改変及び変形は、本明細書において記述され、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の範囲内にあると考えられるものと理解されるべきである。
【0093】
本発明は、本明細書において広範に、かつ一般的に説明されている。一般的な開示に属する下位の種及び亜属群のそれぞれもまた、本発明の一部を形成する。これには、切り取られた材料が本明細書において具体的に列挙されているか否かにかかわらず、その属から任意の対象を取り除くという但し書き又は否定的な限定を有する本発明の一般的な記述が含まれる。
図1
【国際調査報告】