IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コオペラティ・アヴェベ・ユー・エイの特許一覧

<>
  • 特表-パタチン乳化結合剤 図1a
  • 特表-パタチン乳化結合剤 図1b
  • 特表-パタチン乳化結合剤 図2a
  • 特表-パタチン乳化結合剤 図2b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】パタチン乳化結合剤
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20240219BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240219BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20240219BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240219BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L13/00 Z
A23L13/60 A
A23L17/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553365
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 NL2022050116
(87)【国際公開番号】W WO2022186691
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160302.2
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500561528
【氏名又は名称】コオペラティ・コーニンクレッカ・アヴェベ・ユー・エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・スタニシッチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンホン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ロールフィナ・ヴィレミーナ・アントニア・テュルコー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァニ・バスカラン
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AC10
4B042AD03
4B042AD21
4B042AD24
4B042AD36
4B042AK01
4B042AK04
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP21
(57)【要約】
本発明は、a)水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションを調製することと、b)結合エマルションを変性タンパク質及び任意選択の成分と組み合わせることと、c)肉代替品を整形することと、を含む、肉代替品を調製するための方法、並びに当該方法を使用して得られる肉代替品を提供する。本方法に従うことによって、接着性及び硬度の増加した肉代替品を得ることができることを見出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉代替品を調製するための方法であって、
a.水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションを調製することであって、脂質対水の重量比が、3:1~1:3である、調製することと、
b.前記結合エマルションを変性タンパク質及び任意選択の成分と組み合わせることと、
c.前記肉代替品を整形することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、整形後に前記肉代替品を包装するステップを更に含み、前記肉代替品が、包装前に60℃を超える温度に加熱されない肉代替品として定義される生タイプの肉代替品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合エマルションが、15~30重量%の天然パタチンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質対水の重量比が、2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合剤が、全タンパク質の重量%として、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも75重量%の天然パタチンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質が、1つ以上の脂肪酸で置換されたグリセロール部分として定義され、前記脂肪酸の総重量に対して、少なくとも94重量%、好ましくは少なくとも95重量%の前記脂肪酸が、C16以上の脂肪酸鎖長を有し、かつ/又は前記C12~C16脂肪酸の合計が、前記脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質が、液体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質が、好ましくは、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、カカオバター、及び米ぬか油からなる群から選択される植物油であり、任意選択的に水素化されていてもよい、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質が、脂質1kg当たり18mmol未満の遊離脂肪酸を含み、かつ/又はジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの合計が、脂質の合計に対して10重量%未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記変性タンパク質が、塊茎、穀類、ナッツ、又は豆類に由来する1つ以上のタイプのタンパク質を含む変性植物タンパク質であり、前記タンパク質が、好ましくは、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ファバ豆タンパク質、緑豆タンパク質、ヘンプシードタンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、レンチルタンパク質、オーツタンパク質、及びスペルトタンパク質からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変性タンパク質が、テクスチャ化植物タンパク質、好ましくは、水和テクスチャ化植物タンパク質である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記整形が、ハンバーガー、ミートボール、ソーセージ、ミンチ肉、シュニッツェル、串刺し、ナゲット、リブ、切身、フィッシュボール、又は塊肉をもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記肉代替品が、繊維を含まず、かつ/又は前記肉代替品が、ヒドロコロイドを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
先行請求項のいずれかにより得られる肉代替品であって、56~66重量%の水と、2~7重量%の脂質と、1~9重量%、好ましくは1~6重量%、より好ましくは1~4重量%、1.5~3.5重量%の天然パタチンと、22~28重量%の変性タンパク質と、を含む、肉代替品。
【請求項15】
前記脂質が、1つ以上の脂肪酸で置換されたグリセロール部分として定義され、前記脂肪酸の総重量に対して、少なくとも94重量%、好ましくは少なくとも95重量%の前記脂肪酸が、C16以上の脂肪酸鎖長を有し、かつ/又は前記C12~C16脂肪酸の合計が、前記脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である、請求項14に記載の肉代替品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉代替品の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
肉製品は、タンパク質の重要な供給源であるが、多くの欠点に関連している。それらは、環境に大きな負担をもたらし、動物福祉を損ない、ヒトに負の健康影響(例えば、高コレステロール、飽和脂肪)を引き起こす可能性がある。したがって、ビーガンとベジタリアンの食事はますます人気が高まっており、この傾向は肉の更なる代替品を開発するための研究を後押ししている。
【0003】
今日では、本物の肉製品のための、適切なベジタリアン及びビーガン代替品が利用可能であり、これらは典型的には、テクスチャ加工された植物性タンパク質(TVP)などの植物タンパク質及び植物性脂質で構成され、適切な結合剤と一緒に結合される。結合剤は、製品が所望の形態に整形され得るように、成分を一緒に効果的に結合させるべきであるため、結合剤は重要な役割を果たす。更に、結合剤は、輸送及び保管することができ、製品を調理することを可能にする製品の形成を可能にするべきである。
【0004】
肉代替品は、2つの一般的なタイプに区別され得る。肉代替品の1つは、製造プロセス中に調理され、すぐに食べられるタイプである。このタイプの製品は、消費者がそのままで、又は再加熱した後に消費することができる。
【0005】
2つ目の肉代替品は、「生」肉代替品である。生肉代替品は、生産中に調理されていないという点で動物由来の肉を模倣している。消費前の加熱ステップが必要である。通常、生肉代替品は、調理中に外観が変化し、WO2017/070303に記載されているように「ブリード」する可能性があり、動物由来の肉と同様に、動物由来の肉を用いた調理を模倣して、褐色になり、メイラード型の反応を示す。
【0006】
生肉代替品は、肉食者が生肉代替品に切り替えるための障壁が低いと考えられるため、即食型の肉代替品よりも魅力的であると考えられる。加えて、生肉代替品の風味、食感、外観は、より魅力的であると考えられる。しかしながら、生肉代替品は、風味、組成、及び貯蔵寿命の点で、製品に更なる課題を生じさせる。
【0007】
肉代替品のための様々な結合剤が知られている。結合剤は、とりわけ、デンプンベース、タンパク質ベース、又はガム若しくはヒドロコロイドに基づくものであり得る。結合剤の種類の中で、タンパク質の存在がタンパク質含有量を増加させ、比較的自然な風味及び口当たりをもたらすため、タンパク質による結合は魅力的であると考えられる。加えて、調理中、タンパク質は、動物由来の肉の調理中に発生するタンパク質変性と非常によく似たプロセスで変性する。
【0008】
結合剤として好適な様々な種類のタンパク質が存在することが周知である。パタチンは、比較的低い濃度で高いゲル強度を有するため、非常に魅力的な潜在的なタンパク質結合剤の1つは、パタチンである。パタチンは、ジャガイモ塊茎(Solanum tuberosum)中のタンパク質の約40%を占め、自然に貯蔵タンパク質として機能する。パタチンは、良好なゲル化及び乳化特性を有することが知られており、一般的に、食品のパタチンとの結合が知られている。例えば、WO2008/069650は、ジャガイモからの天然パタチンの単離、及び様々な食品中のゲル化タンパク質及び/又は乳化剤としてのその使用を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パタチンとの結合は、従来、溶液又は乾燥粉末としてのパタチンを、結合を必要とする成分と混合することによって達成されてきた。しかしながら、これは、いくつかの場合において、最適に満たない接着性をもたらすものであった。他の成分の量及び種類、並びに成分を組み合わせる方法もまた、接着性に影響し、接着性がゲル強度と100%は相関しないことがわかっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】COMP1と比較した、肉代替品M.S.1、M.S.2及びM.S.3の接着性。
図1b】COMP1と比較した、肉代替品M.S.1、M.S.2及びM.S.3の硬度。
図2a】COMP2及びCOMP3と比較した、肉代替品M.S.4、M.S.5及びM.S.6の接着性。
図2b】COMP2及びCOMP3と比較した、肉代替品M.S.4、M.S.5及びM.S.6の硬度。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションを調製することと、b)結合エマルションを変性タンパク質及び任意の成分と組み合わせることと、c)肉代替品を整形することと、を含む、肉代替品を調製するための方法を開示する。
【0012】
パタチン結合肉代替品において、結合は、成分を、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションと組み合わせることによって最もよく達成されることが見出されている。最初に、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合エマルションを調製し、その後、このエマルションを他の成分、特に変性タンパク質と組み合わせることによって、同じ組成を有するが、結合エマルションの事前の形成なしに、成分を全て同時に組み合わせることによって調製される肉製品と比較して、肉代替品の接着性が改善される。本方法に従うことで、調理後の肉代替品の硬度も向上する。
【0013】
この知見は、同じ量の結合剤で、肉代替品中の脂肪の量を減らし、変性タンパク質の量を増加させることを可能にする。これは、消費者が一般的に脂肪含有量が低い製品を好むため、一般的に好ましいと考えられる。
【0014】
代替的に、当業者は、結合剤の量が減少し得ることを理解する。これは、生産コストの観点から好ましいとも考えられ得るが、比較的高いタンパク質含有量を有する肉代替品が消費者によって好まれるため、それはまた、それほど好ましくないとも考えられ得る。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、肉代替品は、脂質として植物油を使用して調製される(他の箇所を参照されたい)。本発明の更なる利点は、脂質として1つ以上の植物油を使用して本方法によって調製される肉代替品が、より高い油保持能力を有し、かつ/又はより少ない油滴りを示すことである。理論に縛られることを望まないが、この有益な更なる効果は、整形された肉代替品の接着性の増加、及び/又は調理後の肉代替品の硬度の増加に関連し得る。
【0016】
本明細書では、肉代替品は、動物由来の肉に似ているが、主に植物由来の成分を使用して調製される製品である。したがって、肉代替品はベジタリアンに適しており、実際に使用される成分に応じて、ビーガンのライフスタイルにも適している可能性がある。
【0017】
ベジタリアン肉代替品は、哺乳動物又は鳥に由来する肉を含まないが、魚又はエビ又は貝類などの甲殻類に由来する肉を含み得、更に、ミルク、クリーム又は卵などの非肉動物由来製品(動物の生贄を必要としない製品)を含み得る肉代替品である。好ましい実施形態では、ベジタリアン肉代替品は、哺乳動物、鳥、魚又は甲殻類に由来する肉を含まないが、牛乳、クリーム又は卵などの動物由来の非肉製品を含み得る。
【0018】
ビーガン肉代替品は、動物由来の製品を含まない肉代替品である。ビーガン肉代替品は、植物由来の成分のみで構成されている。
【0019】
好ましくは、肉代替品は、ハンバーガー、ミートボール、ソーセージ、ミンチ肉、シュニッツェル、串焼き、ナゲット、リブ、切身又は塊肉の非肉類似体である。
【0020】
更に好ましくは、方法は、整形後に肉代替品を包装するステップを更に含み、肉代替品は、包装前に60℃を超える温度に加熱されない肉代替品として定義される生タイプの肉代替品である。
【0021】
変性タンパク質
本発明によれば、肉代替品は、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションによって結合される変性タンパク質から調製される。
【0022】
変性タンパク質は、(特定のベジタリアン製品の場合)魚又は甲殻類由来タンパク質を含む任意の非肉タンパク質であり得る。しかしながら、好ましくは、変性タンパク質は、変性植物タンパク質である。
【0023】
変性植物タンパク質は、好ましくは、塊茎、穀類、ナッツ又は豆類に由来するタンパク質である。特に好ましい実施形態では、変性植物タンパク質は、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質/グルテン、ジャガイモタンパク質、ファバ豆タンパク質、緑豆タンパク質、ヘンプシードタンパク質、キノコタンパク質、ゴマ種子タンパク質、サツマイモタンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、レンチルタンパク質、オーツタンパク質、及びスペルトタンパク質、最も好ましくは大豆タンパク質又はエンドウ豆タンパク質からなる群から選択される1つ以上のタイプのタンパク質を含む。
【0024】
変性植物タンパク質は、酸又は熱凝固によって得られるタンパク質などの凝固タンパク質であることが好ましい。当業者は、一般に知られている方法によって、変性植物タンパク質を得ることができる。
【0025】
非常に好ましい実施形態では、変性植物タンパク質は、テクスチャ化植物タンパク質である。テクスチャ化植物タンパク質は既知であり、市販されている。テクスチャ化された植物タンパク質は、押出ステップに供された植物ベースのタンパク質であり、これは、タンパク質に肉様繊維構造を提供する。非常に好ましい実施形態において、テクスチャ化植物タンパク質は、テクスチャ化エンドウ豆タンパク質、テクスチャ化大豆タンパク質、テクスチャ化ジャガイモタンパク質、又はテクスチャ化グルテンである。
【0026】
変性タンパク質がテクスチャ化された植物タンパク質である場合、テクスチャ化されたタンパク質は、結合エマルションと組み合わせる前に水和されることが好ましい。かかる実施形態では、テクスチャ化された植物タンパク質を最初に水と混合して水和をもたらし、その後、結合エマルション及び任意の他の任意の成分と組み合わせる。
【0027】
変性タンパク質がテクスチャ化された植物タンパク質である場合、テクスチャ化された植物タンパク質は、単一のタイプのテクスチャ化された植物タンパク質、又は2つ以上のタイプのテクスチャ化された植物タンパク質の混合物であり得る。好ましい実施形態では、変性タンパク質は、テクスチャ化大豆タンパク質とテクスチャ化グルテンタンパク質の組み合わせである。かかる実施形態では、テクスチャ化大豆タンパク質とテクスチャ化グルテンタンパク質との間の重量比は、好ましくは1:1~10:1、好ましくは1:2~1:8、好ましくは1:3~1:6である。
【0028】
結合エマルション
結合エマルションは、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む。水は一般的に入手可能であり、人間の消費に適している必要がある。水道水が好ましい。
【0029】
脂質は、1つ以上の脂肪酸で置換されたグリセロール部分として定義される。脂質は、好ましくはトリグリセリドであり、グリセロール部分の少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%が3つの脂肪酸で置換されている。
【0030】
混合物に提供される脂質は、可能な限り純粋であることが好ましい。すなわち、脂質中の遊離脂肪酸(「FFA」)の量は、好ましくは1kg脂質当たり18mmol未満、より好ましくは1kg脂質当たり9mmol未満、更により好ましくは1kg脂質当たり3mmol未満である。脂質中の遊離脂肪酸の量は、以下に記載されるように、化学滴定法によって決定することができる。
【0031】
追加的又は代替的に、混合物に提供される脂質中のジアシルグリセロール(「DAG」)及びモノアシルグリセロール(「MAG」)の総量は、好ましくは、総脂質に対して10重量%未満、より好ましくは6重量%未満、更により好ましくは4重量%未満である。脂質中のDAG及びMAGの量は、「Standard Methods for the Analysis of Oils,Fats and Derivatives」、第7版の第1の補足(IUPAC、1987)に記載されるように、カラムクロマトグラフィー又はキャピラリーガスクロマトグラフィーによって決定することができる。
【0032】
この脂質は、固体又は液体であり得るが、好ましくは、この脂質は、液体である。一般的な用語として、液体の脂質は油と呼ばれ、固体の脂質は脂肪と呼ばれる。好ましくは、脂質は、油、好ましくは植物油、例えば、種子油、ナッツ油、又は果実油である。
【0033】
油は、20℃(大気圧下)で液体又は粘性である脂質である。液体又は粘性とは、重力の影響下で流れる能力を反映する用語である。したがって、液体脂質は、「自由流動性」と記載されてもよく、これは、脂質を室温(20℃)付近の温度で容器から注ぐことができることを意味する。
【0034】
脂肪は、室温(20℃)で(大気圧下で)固体である脂質である。この文脈では、固体は、支持なしで少なくとも24時間特定の形状を維持する能力として定義される。圧力が大気圧を超えて印加される場合、固体脂質は形状を変化させることができ、その変化した形状は、支持体なしで、圧力が印加された後少なくとも24時間維持することができる。
【0035】
特に好ましい脂質は、トウモロコシ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、グレープシード油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、シアバター、カカオバター、及び米ぬか油、最も好ましくはヒマワリ油などの植物油の群における1つ以上の脂質を含む。任意の実施形態では、脂質は、部分的に水素化されてもよい。
【0036】
非常に好ましい実施形態では、脂質の脂肪酸の、脂肪酸の総重量に対して少なくとも94重量%、好ましくは少なくとも95重量%が、C16以上の脂肪酸鎖長を有する。
【0037】
更に非常に好ましい実施形態では、脂質中のC12~C16脂肪酸の合計は、脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である。
【0038】
これらの脂肪酸プロファイルは、パタチンによる加水分解の感受性が低いという利点を有する。この脂肪酸プロファイルの明確な利点は、貯蔵中のオフフレーバーの形成が大幅に減少し、本発明の肉代替品が許容される貯蔵寿命を有することを確実にすることである。
【0039】
結合剤は更に、天然パタチンを含む。天然パタチンは、塊茎、特にジャガイモ(Solanum tuberosum)の塊茎に存在するタンパク質である。当業者は、塊茎中のどのタンパク質がパタチンと見なすことができるかを知っている。
【0040】
パタチンは、貯蔵タンパク質として塊茎に天然に存在するタンパク質である。貯蔵タンパク質は、窒素、硫黄及び/又は炭素の貯蔵部として機能するタンパク質であり、植物が不利な成長条件の期間又は成長季節の間に生存することを可能にする。
【0041】
本文脈でパタチンと同じである貯蔵タンパク質は、一般に、塊茎中の全てのタンパク質の40~50重量%の量で存在する。貯蔵タンパク質は、一般に、35~50kDaの分子量、好ましくは38~45kDa、及び/又は4.8~5.6の等電点によって特徴付けることができる。分子量は、SDS pageなどの一般的に知られている方法によって決定することができる。等電点はまた、例えば等電点電気泳動などの一般的に知られている方法によって決定することができる。
【0042】
本文脈では、結合剤は、天然パタチンを含む。天然とは、タンパク質がその天然の機能及び3次元構造を有することを意味する。天然タンパク質は、凝固などによって変性されておらず、溶解性及び反応性を維持する。
【0043】
天然パタチンは、ジャガイモ塊茎、又はジャガイモジュース(例えば、ジャガイモデンプン製造の副産物として得られるジュース)、又はジャガイモ切断水(例えば、フライドポテト又はチップスなどの消費のためにジャガイモが整形されているときに得られる処理水)などの他のジャガイモ由来の処理流から単離することができる。天然パタチンを単離するための1つの特に便利な方法は、WO2008/069650に記載されているが、当業者は他の方法によって天然パタチンを得ることができる。加えて、天然パタチンは、市販されている。
【0044】
結合剤は、全タンパク質の重量%に対して、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%のパタチンを含む。全タンパク質に対して35~60重量%のパタチンが存在する実施形態では、結合剤は、全塊茎タンパク質単離物と呼ばれ得る。
【0045】
更に好ましい実施形態では、結合剤は、全タンパク質の重量%に対して、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%のパタチンを含む。全タンパク質に対して60重量%以上、最大85重量%のジャガイモ貯蔵タンパク質が存在する実施形態では、結合剤は、パタチンを含む高分子量(HMW)単離物と呼ばれ得る。
【0046】
更に好ましい実施形態では、結合剤は、全タンパク質の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のパタチンを含む。全タンパク質に対して最大100重量%のパタチンを含む90重量%以上が存在する実施形態では、結合剤は、パタチン単離物と呼ばれ得る。
【0047】
非常に好ましい実施形態では、結合剤は、唯一の天然タンパク質としての天然パタチンからなる。更なる好ましい実施形態では、結合エマルションは、唯一の結合剤として天然パタチンを含む。好ましい実施形態では、結合エマルションは、ヒドロコロイドを含まない。他の好ましい実施形態では、結合エマルションは、非ジャガイモ由来の結合タンパク質を含まない。
【0048】
結合剤は、天然パタチンを含むタンパク質単離物の形態で結合エマルションに提供される。当該タンパク質分離物は、好ましくは、天然タンパク質の粉末である。結合剤は、乾燥物質に対して、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%の天然タンパク質の総量を含む。
【0049】
好ましくは、結合エマルションは、15~30重量%の結合剤を含む。好ましくは、結合エマルションは、15~30重量%、好ましくは16~26重量%の天然パタチンを含む。更に好ましくは、結合エマルション中の脂質対水の重量比は、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5である。
【0050】
より好ましい実施形態では、結合エマルションは、1:(1~4):(1~4)、好ましくは1:(1.5~3.5):(1.5~3.5)の重量比で、パタチン、脂質及び水を含む。非常に好ましい実施形態では、結合エマルション中の脂質の重量は、水の重量に約等しく、ここで、約等しくとは、80~120%、好ましくは90~110%、より好ましくは95~105%として定義される。
【0051】
更なる成分
好ましい実施形態では、肉代替品は、味、外観の食感、口当たりなどを向上させるために、様々な他の任意の成分を追加的に含み得る。好ましくは、肉代替品は、ナトリウム、カリウム又は塩化カルシウム、グルタミン酸ナトリウム又はグルタミン酸カリウム、及び硫酸カルシウムからなる群から選択される塩などの1つ以上の塩を含む。塩は、例えば、肉代替品の総重量に対して、0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%の量で存在し得る。より好ましい実施形態では、肉代替品は、肉代替品の総重量に対して、0.1~3重量%、好ましくは0.5~2重量%の塩化ナトリウムを含む。
【0052】
また、肉代替品は、ヘム様色素、赤ビート色素、カロチン、キャラメル、ビートジュース抽出物、トマト色素、大根色素、パプリカ色素及び/又はアマランスなどの色素を含んでもよい。顔料の量は、使用する顔料の種類によって変化し、ルーチン実験によって決定することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、肉代替品は更に、1つ以上の繊維、特に、ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ豆繊維、緑豆繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維、セルロース、耐性デンプン、耐性デキストリン、イヌリン、リグニン、キチン、ペクチン、β-グルカン、及びオリゴ糖からなる群から選択される食物繊維を含む。繊維の量は、存在する場合、肉代替品の総重量に対して、0.1~10重量%、好ましくは0.5~7.5重量%、より好ましくは1~5重量%であり得る。非常に好ましい実施形態では、繊維は、ジャガイモ繊維、サツマイモ繊維、ニンジン繊維、サイリウム繊維、竹繊維、大豆繊維、エンドウ豆繊維、緑豆繊維、タピオカ繊維、ココナッツ繊維、バナナ繊維又はセルロースなどの植物由来の食物繊維である。更に好ましい実施形態では、肉代替品は繊維を含まない。
【0054】
また、天然デンプン、修飾デンプン、セルロース誘導体、カラギーナン、アルギン酸塩、寒天、コンニャク、キサンタン、及びペクチン等のテクスチャライザーは、好ましくは、肉代替品の総重量に対して1~10重量%、好ましくは1.5~5重量%の量で、任意選択的に肉代替品に含まれ得る。他の好ましい実施形態では、テクスチャライザーは存在しない。
【0055】
更に好ましいのは、例えば、デキストロース、リボース、及びマルトデキストリンを含む、かかるメイラード活性成分のような風味増強助剤を含むことである。風味増強助剤は、肉代替品の総重量に対して、0.1~5重量%、好ましくは0.2~2重量%の量で存在し得る。
【0056】
また、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、シロップ、及び人工甘味料からなる群から選択される甘味料などの他の調味料が、混合物中に存在し得る。
【0057】
好ましい実施形態では、肉代替品は、アルギネート、寒天、コンニャク、キサンタン、ペクチン、又はカラギーナンなどのヒドロコロイドを含まない。更に好ましい実施形態では、肉代替品は、セルロース誘導体、特にメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースなどのゲル化非デンプン炭水化物を含まない。更に好ましい実施形態では、肉代替品は修飾デンプンを含まない。
【0058】
肉代替品の調製
本肉代替品は、水、脂質、及び天然パタチンを含む結合剤を含む結合エマルションを調製することによって調製される。結合エマルションは、乳化をもたらす条件下で、適切な量の結合剤、水及び脂質を混合することによって調製される。かかる方法は一般に知られており、例えば、サーモミックス、ステファンカッター、ボウルチョッパー、又はブレンダーを装備した適切な容器内での高剪断混合を含む。
【0059】
次いで、結合エマルションを、変性タンパク質と組み合わせる。変性タンパク質がテクスチャ化された植物タンパク質である実施形態では、テクスチャ化された植物タンパク質は、好ましくは、結合エマルションとの組み合わせの前に水和される。当該組み合わせは、混合及び均質化、タンブリング、又は結合エマルションと変性タンパク質の適切な混合をもたらす任意の他の好適な手段などの一般的に知られている手段によって達成することができる。
【0060】
更なる任意の成分は、いつでも含めることができる。結合エマルションは、変性タンパク質及び任意の成分の混合物と組み合わせてもよく、又は結合エマルションは、最初に変性タンパク質と組み合わせ、その後、任意の順序で更なる任意の成分と組み合わせてもよい。より好ましい実施形態では、結合エマルションを変性タンパク質及び任意の成分と組み合わせるステップは、全ての成分の均質な混合物をもたらす。
【0061】
上記の均質な混合物は、その後、所望の形状に整形される。形状は、肉代替品の種類によって決まる。任意の形状を使用することができるが、消費者の好みを引き付けるために、選択される形状は、その肉代替品のタイプに対して好ましくは慣習的な形状である。例えば、ハンバーガーは、円盤状の形状であり得、ソーセージは、円筒状の形状であり得、ミートボールは、球状の形状であり得る。
【0062】
整形は、任意の従来の手段によって達成され得る。しかしながら、好ましくは、整形は、混合物を選択された形状の金型に導入することによって達成される。好ましくは、混合物は、選択された金型に導入され、その後、動物由来の肉と同様の高密度構造を達成するために押される。
【0063】
肉代替品を整形することは、好ましくは、肉代替品を-35℃~20℃、好ましくは-18~15℃、より好ましくは0℃~10℃、より好ましくは0~5℃の温度に冷却することを含む。冷却は粘度の増加をもたらし、これは代替肉の接着性に影響する。したがって、冷却は、代替肉の形状を金型なしでも維持できる効果を有する。
【0064】
冷却は、任意の従来の手段によって達成され得る。冷蔵が好ましい。冷却が0℃未満の温度に実施される場合、冷却は2つのステップで実施されることが好ましく、まず、パタチンのゲル化を達成するために0~20℃の温度にし、続いてより低い温度とする。
【0065】
整形された肉代替品は、整形後に包装されることが好ましい。肉代替品のための好適な包装は一般に知られており、個々の包装又はバルク包装、又は食品を包装する他の従来の方法を含み得る。
【0066】
より好ましい実施形態では、本発明の方法は、生タイプの肉代替品をもたらす。この実施形態では、肉代替品は、包装前に60℃を超える温度に加熱されない。代わりに、肉代替品を冷却し、一般に、肉代替品を調理するまでの期間を通して、-35℃~20℃、好ましくは-18℃~15℃、より好ましくは0℃~10℃、より好ましくは0~5℃の温度で維持する。この期間は、肉代替品の生産とその消費との間の期間である。この期間に、肉代替品は、生産場所から、様々な小売店に、また最終消費者に輸送される。この期間は、1~14日であることが好ましい。これは、冷却が一般的に0℃~15℃の温度で維持される実施形態において特に当てはまる。
【0067】
冷却がより長い時間0℃未満の温度で維持される実施形態では、調理までの期間は、温度が0℃未満であった時間まで延長され得る。温度が0℃未満に維持される時間を凍結時間と呼び、凍結時間は、1日~3年、好ましくは1週間~1年などの任意の時間であり得る。
【0068】
肉代替品が最終消費者に到着したときにのみ、少なくとも1分間、少なくとも75℃の温度で、生タイプの肉代替品が調理される。
【0069】
すぐに食べられるタイプの肉代替品を得るために方法を実施する場合、肉代替品は、整形後、包装前に調理される。この場合、調理とは、少なくとも1分間、少なくとも75℃の温度に加熱することを意味する。
【0070】
肉代替品
本発明は更に、56~66重量%の水、2~7重量%の脂質、1~9重量%、好ましくは1~6重量%、より好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~3.5重量%、更により好ましくは1.5~2.4重量%の天然パタチン、及び22~28重量%の変性タンパク質、を含む肉代替品を提供する。肉代替品の成分は、他の箇所で定義されており、当業者は、肉代替品を調製するときに適用される成分の量及び種類が、得られた肉代替品も識別することを理解する。
【0071】
本発明の肉代替品は、他の箇所で説明される方法によって入手可能である。肉代替品は、より高い接着性及びより高い硬度、並びにより高い油保持能力を有するという点で、既知の肉代替品に勝る利点を有する。加えて、本発明の肉代替品は、既知の肉製品よりも概して低い脂肪含有量、及び概して高いタンパク質含有量を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、肉代替品中の脂質は、植物油である。好ましくは、脂質は、1つ以上の脂肪酸で置換されたグリセロール部分として定義され、脂質中の脂肪酸の総重量に対して、少なくとも94重量%、好ましくは少なくとも95重量%の脂肪酸が、C16以上の脂肪酸鎖長を有する。更に好ましくは、C12~C16脂肪酸の合計は、脂質中の脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である。かかる肉代替品は、貯蔵寿命が延びる。
【0073】
示された鎖長の脂質は、肉代替品が製造から調理までの期間中に保管時に風味を失わないという利点をもたらすことが見出された。天然パタチンはおそらく、C12以上の鎖長を有する脂肪酸を含むいくつかの脂質に対して少なくともいくらかの活性を有し、少なくとも十分な程度まで、オフフレーバーを引き起こす。この活性は、C14以上の鎖長を有する脂肪酸を含むいくつかの脂質に対しても生じる。C16以上の鎖長を有する脂肪酸を含む脂質であっても、パタチンによって、風味異常を引き起こすのに十分な程度まで、加水分解されることができる。したがって、パタチンは、C12~C16の鎖長を有するトリグリセリドに対して、オフフレーバーを引き起こす程度の活性を発揮する。
【0074】
本明細書の文脈におけるオフフレーバーとは、摂取時の長引く苦い感覚として定義され、これは「塗料」又は「嘔吐物」として記述することができる不快な臭いを伴う。オフフレーバーは、好ましくは、官能評価によって決定され得る。オフフレーバーはまた、遊離脂肪酸の放出を測定することによって、かつ/又はパラアニシジン値を測定することによって、モデルシステムにおいて決定することができる。かかる場合、脂質のpAVが2以下、好ましくは1.5以下、更により好ましくは1以下に維持され、かつ/又は脂質からの遊離脂肪酸の放出が50mmol/kg未満、好ましくは40mmol/kg未満であることを条件に、オフフレーバーは存在しないと定義され得る。好ましくは、本発明の肉代替品中に存在する脂質は、異臭の形成を回避する。
【実施例
【0075】
結合エマルションの調製
結合エマルションを、Thermomixを使用して調製した。代替的に、IKAのT18N(10又は19g)分散ツールを備えたT18 Ultraturrax又はT25N(8g)分散ツールを備えたT25 Ultraturraxも使用され得る。これらのタイプの機器の結果は同じである。計量には、Satorius製のBP3100Sバランスを使用した。
【0076】
水、脂質及び結合剤を示される量で混合し、乳化に供して、結合エマルションを得た。以下の5つの結合エマルション(B.E.)を、実験に使用した。
【表1】
【0077】
実施例1:結合エマルションを用いて調製した肉代替品の接着性及び硬度
肉代替品の調製
本方法を使用して(M.S.)、又は結合エマルションを事前に形成することなく全ての成分を組み合わせることによって(COMP)、同じ成分を使用して肉代替品を調製した。COMP3を除く全ての肉代替品において、結合剤(純粋な天然パタチン、Solanic 200(登録商標)、Avebe)の量は、肉代替品の総重量に対して2重量%であった。存在する場合、繊維はAvebeのPaselli FPである。
【0078】
肉代替品を、テクスチャ化植物タンパク質(大豆TVP「Tradcon T」、大豆タンパク質a.d.,Serbia)及びグルテンTVP(「Unitex S2030」、Vitablend Nederland)を、「TVP水和水」として列挙される量の水で1時間水和させることによって調製した。
【0079】
任意の残留TVP水和水を含む水和テクスチャ化植物タンパク質を、以下の表に列挙される脂質、パタチン及び水の量を提供するように、ある量の結合エマルションと組み合わせた。任意の更なる成分(例えば、塩化ナトリウム、追加の水及び脂質)を、結合エマルションと水和TVPとの組み合わせの後に添加した。
【0080】
比較実験のために、粉末形態の同じ種類及び量の純粋な天然パタチン、並びに、リストされた量の塩、脂質、及び水を、結合エマルションを事前に形成することなく組み合わせて混合した。組み合わせ及び混合を、ホバートミキサーで行った。その後、肉代替品をハンバーガーパティに整形し、4℃の温度に24時間冷却した。肉代替品は、必要に応じて保管のために包装した。
【0081】
該当する場合、整形及び包装後、肉代替品を、フライパンで75~80℃の温度で焼くことによって調理した。
【0082】
以下の肉代替品を調製した:
グループA:結合エマルションを使用して調製しない、比較肉代替品(COMP)。
【表2】
グループB:結合エマルションを使用して調製された肉代替品(M.S.)。結合エマルションを示される量で使用し、示される量の脂質、水、及びパタチンを得た。更なる脂質及び水を更なる任意の成分と別個に添加し、COMP1と同一の成分を有するM.S.1、M.S.2及びM.S.3のレシピを作製したが、全ての成分の個々の添加及び混合によってではなく、特定の結合エマルションを使用して調製した。
【表3】
#1:40gのB.E.1は、10g(2重量%)のパタチン、15g(3重量%)のヒマワリ油、及び15g(3重量%)の水に対応する。
#2:50gのB.E.2は、10g(2重量%)のパタチン、20g(4重量%)のヒマワリ油、及び20g(4重量%)の水に対応する。
#3:60gのB.E.3は、10g(2重量%)のパタチン、25g(5重量%)のヒマワリ油、及び25g(5重量%)の水に対応する。

グループC:結合エマルションを使用して調製された肉代替品(M.S.)。結合エマルションを示される量で使用し、示される量の脂質、水、及びパタチンを得た。更なる脂質及び水を更なる任意の成分と別個に添加し、COMP2と同一の成分を有するM.S.4及びM.S.5のレシピを作製したが、全ての成分の個々の添加及び混合によってではなく、特定の結合エマルションを使用して調製した。同様に、M.S.6は、COMP3と比較する。
【表4】
#4:40gのB.E.1は、10g(2重量%)のパタチン、15g(3重量%)のヒマワリ油、及び15g(3重量%)の水に対応する。
#5:50gのB.E.2は、10g(2重量%)のパタチン、20g(4重量%)のヒマワリ油、及び20g(4重量%)の水に対応する。
#6:65gのB.E.5は、15g(3重量%)のパタチン、25g(5重量%)のヒマワリ油、及び25g(5重量%)の水に対応する。
【0083】
接着性及び硬度の決定
肉代替品の接着性及び硬度は、Shimatzu EZ-SX Food Texture Analyzer(Schimatzu Corporation,Kyoto,Japan)を使用して決定した。両方の決定のための機械的圧縮試験は、直径75mmの円筒形プローブ(SMS P/75)を適用した。肉代替品を、1mm/秒の一定の速度で60%に圧縮した。
【0084】
接着性(J)は、生の未調理の肉代替品で測定される。接着性は、最初のピーク(最初の圧縮後)の曲線下の負の面積として定義される。
【0085】
硬度(N)は、調理された肉代替品で測定される。硬度は、最初の圧縮中に測定された最高のピーク力として定義される。
【0086】
結果
ハンバーガーの接着性及び硬度を以下の表に示す:
【表5】
【表6】
【0087】
結果は、脂質及びパタチン結合剤が最初に結合エマルション中で組み合わされ、続いて追加の成分と組み合わされるとき、肉代替品の接着性及び硬度が改善されることを示す。結果を図1及び2に図示する。
【0088】
実施例2:異なる脂質に基づく肉代替品におけるオフフレーバー形成。
脂質のパラアニシジン値(pAV)の決定
二次酸化生成物を、米国油化学協会の方法に従ってパラアニシジン値(pAV)を測定することによって決定した(AOCS,2004,Official method Cd.18-90,Official methods and recommended practices of the American Oil Chemists Society)。この方法は、脂肪アルデヒド、特に不飽和アルデヒドを検出する。P-アニシジン値は、溶媒及びパラアニシジン試薬(20mMパラアニシジン、SigmaAldrich A88255)の混合物100mL中に1.00gの油を含有する溶液の1cmキュベット中で350nmで測定した光学密度の100倍として定義される。
【0089】
ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成物の決定
脂質の脂肪酸組成は、完全な脂質加水分解及び脂肪酸のメチルエステルへの変換に基づいて、GCによって決定した。
【0090】
約5mgの脂質試料を20mlのガラス管中で量り、そこに50MのNaOHを含有する2mlのメタノールを添加した。チューブを閉じ、ブロックヒーターで70℃で30分間インキュベートした。室温まで冷却した後、MeOH中の3mlの20% BF試薬をチューブに添加し、脂肪酸のメチル化をもたらして、脂肪酸メチルエステル(FAME’s)を得た。
【0091】
試料を室温まで冷却し、そこで5mlの飽和NaCl水溶液及び2.5mlのn-ヘキサンを添加した。試験管を閉じ、1分間ボルテックスし、試験管ローテーターで15分間混合した。最上部のヘキサン層から、2mlを採取し、これをGCに移した。
【表7】
【0092】
遊離脂肪酸含有量の測定
Titrimetryを使用して、脂質の遊離脂肪酸含有量を判定することができる。この方法は、Cyberlipid Center(Leray)によって公開された化学滴定法に基づく。
【0093】
溶媒混合物(エタノール/tert-ブチルメチルエーテル、1/1、v/v)を調製し、10mlのフェノールフタレイン溶液を添加した。滴定剤として、エタノール溶液中の10mM KOHを調製した。
【0094】
脂質をヘキサンを使用して抽出した。ヘキサン層をガラスピペットによってキャップを備えた100mlのエーレンマイヤーに移した。溶媒混合物を添加して、約30~50mlの溶液を得た。溶液を磁気撹拌器でインジケータの終点まで撹拌しながら滴定剤を添加した(淡紫色が数秒間持続する)。滴定剤の添加量は、滴定剤の添加の前後のエーレンマイヤーを秤量することによって決定した。その重量を使用して、mmolアルカリ/kgの油を使用した。値をブランクで補正した。
【数1】
式中、m滴定剤は、gでの試料に添加される滴定剤の質量であり、M滴定剤は、mmol KOH/g滴定剤でのモル質量であり、mは、gでの試料中の油の質量である。
【0095】
実験
オフフレーバー形成は、2つの肉代替品についてモデル化した。1つはココナッツ脂肪をベースとし、もう1つはヒマワリ油をベースとする。これらの2つの脂質の脂肪酸(FA)組成を以下の表に提供する。
【表8】
【0096】
モデリングは、パタチン(Solanic 200(登録商標)、Avebe)の33g/lのデミウォーター溶液及び重量による等量の脂質からモデルエマルションを調製することによって行った。脂質及び水を、10krpmで1分間Ultraturrax(T18N分散ツールを用いたT18 Ultraturrax)を操作するによって乳化し、これらのエマルションを、周囲温度(20℃±0.2℃)又は40℃のいずれかで、穏やかな撹拌下で1日間インキュベートした。ブランクを室温で測定した。
【0097】
放出された脂肪酸の量(mmol FFA/kg油)、並びにエマルションのpAVを、20℃又は40℃でインキュベーションした後に決定した。
【0098】
脂質ヒマワリ油及びココナッツ脂肪を使用して調製されたモデルハンバーガーを官能評価した。官能試験は、訓練を受けた官能試験者のパネルによって実施された。試験は、調製直後、及び室温での2日間の保管後に、加速された冷却保管期間を模倣して実施した。
【0099】
感覚試験によって比較されたモデルハンバーガーは、以下を含む:
【表9】
#7:40gのB.E.4は、10g(2重量%)のパタチン、15g(3重量%)のココナッツ脂肪、及び15g(3重量%)の水に対応する。
#8:40gのB.E.1は、10g(2重量%)のパタチン、15g(3重量%)のヒマワリ油、及び15g(3重量%)の水に対応する。
【0100】
結果
モデルエマルションで放出される脂肪酸の量、及びpAVを、以下の表に示す。
【表10】
【0101】
モデルエマルションから得られた結果は、より高いインキュベーション温度がより高い遊離脂肪酸含有量をもたらすことを示し、これは、肉代替品における遊離脂肪酸発達を確立するための加速試験として機能する。高い遊離脂肪酸含有量は、例えば、遊離脂肪酸の存在によって、又は遊離脂肪酸の更なる酸化(pAVに反映される)によってオフテイストを引き起こす。
【0102】
結果から、遊離脂肪酸の形成は、脂肪酸の総重量に対して、少なくとも94重量%が、C16以上の脂肪酸鎖長を有し、かつ/又はC12~C16脂肪酸の合計が、脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である、脂質を使用することによって最小化される。
【0103】
モデルハンバーガーの感覚試験は、ココナッツ脂肪(脂肪酸の総重量に対して94重量%未満の脂肪酸が、C16以上の脂肪酸鎖長を有し、かつ、C12~C16脂肪酸の合計が、脂肪酸の総重量に対して15重量%を超える、脂質)に基づく肉代替品が、調製後に既にかなりのオフフレーバーがあったことを示した。貯蔵中にオフフレーバーは強くなった。
【0104】
対照的に、ヒマワリ油(脂肪酸の総重量に対して94重量%を超える脂肪酸が、C16以上の脂肪酸鎖長を有し、かつ、C12~C16脂肪酸の合計が、脂肪酸の総重量に対して15重量%未満である、脂質)に基づくモデルハンバーガーは、調製後又は貯蔵後のいずれかで、風味が悪くならなかった。
【0105】
実施例3:様々なエマルションを使用して調製された肉代替品
肉代替品を、様々な質量比の結合エマルション成分で調製した。最終的なハンバーガーレシピは、実施例1のM.S.4、M.S.5及びCOMP2と同一であり、結合エマルションの組成が変化し、別個に添加された成分の量が同様に変化して同じ最終レシピに到達したことを除いて、ハンバーガーは同じプロセスステップを使用して調製された。
【表11】
【0106】
本実験で使用したエマルションは、ヒマワリ油を脂質として使用し、以下の表に基づいて調製した。
【表12】
【0107】
結合エマルションは、以下の特徴を有した:
【表13】
【0108】
調製された肉代替品は、以下の特徴を有していた:
【表14】
【0109】
得られた肉代替品は、以下の硬度及び接着性を有した(M.S.4、M.S.5及びCOMP2のデータは、実施例1から取られている):
【表15】
【0110】
結果は、請求項1に定義される結合エマルションを塗布することによって好ましい硬度及び接着性が得られることを示す。
【0111】
実施例4(比較):
結合エマルションを、タンパク質:脂質:水=5.5:8:40(1:1.5:7と同じである)を使用して調製した。使用されたタンパク質はSolanic 200(Avebe)であり、脂質はヒマワリ油であり、水は通常の水道水であった。
【0112】
しかし、このエマルションは、(COMP2に基づいて)本明細書に記載される成分を他の方法で含有するハンバーガーに「接着剤」として適用するにはあまりにも流動的であることがわかった。接着性及び硬度の測定はできなかった。したがって、この結合エマルションは、ハンバーガーを整形するのに好適ではなかった。
図1a
図1b
図2a
図2b
【国際調査報告】