IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピュア・バッテリー・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】金属の沈殿
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240219BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240219BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20240219BHJP
   C22B 3/42 20060101ALI20240219BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240219BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C01G53/00 A
C22B3/44 101A
C22B3/24
C22B3/42
C22B23/00 102
C22B47/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553490
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 AU2022050167
(87)【国際公開番号】W WO2022183243
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2021900570
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2021900571
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523333641
【氏名又は名称】ピュア・バッテリー・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Pure Battery Technologies Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ホーカー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ボーン,ジェイムズ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ホッジ,ハリソン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】マン,デイビッド アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AA07
4G048AB08
4G048AC06
4G048AE02
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
(57)【要約】
本発明は、特に、ニッケル、マンガンおよび/またはコバルトを含む共沈物を製造する方法、ならびにその方法によって製造された共沈物に関する。方法は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を製造する方法で有り得、(i)前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供する工程;および(ii)(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供するように、供給溶液のpHを約6.2~約11に調整する工程を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共沈物を製造する方法であって、前記共沈物がニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含み、方法が:
(i)前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供する工程であって、前記少なくとも1つの不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウムおよびニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択される、工程;ならびに
(ii)(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供するように、前記水性供給溶液のpHを約6.2~10未満に調整する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つの金属-対-総不純物の前記水性供給溶液中のモル比が、200,000:1未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの金属-対-総不純物の前記水性供給溶液中のモル比が、200:1未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水性供給溶液中の前記少なくとも2つの金属-対-アルカリ土類金属不純物のモル比が、200:1未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの金属-対-金属不純物およびメタロイド不純物のモル比が500,000:1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)において、前記水性供給溶液のpHを約6.2~約9.2に調整する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)に先立ち、方法が:
ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物が、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つである、工程と、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有する;
還元供給物は、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも1つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも1つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも1つの金属を実質的に有しない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも1つの金属を含む浸出物を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出物が約-1~約6のpHを有するものである、工程と、
前記供給混合物が酸化供給物である場合、前記処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
前記供給混合物が還元供給物である場合、前記処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、前記浸出物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を含む、
前記浸出物が前記水性供給溶液を供給するために使用される、工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性供給溶液が、Co(II)、Mn(II)およびNi(II)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)の前記水性供給溶液のpHが2.0~4.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)が、デカンテーション、遠心分離、ろ過、セメンテーションおよび沈降、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、前記水性供給溶液から固体不純物を分離することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)が、イオン交換、沈殿、吸着および吸収、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、前記水性供給溶液から溶解不純物を除去することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ニッケル、コバルトおよびマンガンの比率を調整して前記共沈物中の所望のモル比を提供するために、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの1つ以上を前記水性供給溶液に加えることをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
所望の比率が、約1:1:1のニッケル:コバルト:マンガンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
所望の比率が、約6:2:2のニッケル:コバルト:マンガンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
共沈物を単離するためにデカンテーションおよび/またはろ過を付加的に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記共沈物を洗浄する少なくとも1つの工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄する少なくとも1つの工程が、アルカリ洗浄、水洗浄、酸洗浄またはアンモニア洗浄である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記共沈物にリチウムを加えることを付加的に含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記共沈物を乾燥することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥が約80℃~約150℃の温度で行われ、および/または前記乾燥が少なくとも5時間行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法により製造された、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属の共沈物。
【請求項22】
共沈物を製造する方法であって、前記共沈物がニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含み、前記方法が:
(i)前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供する工程;および
(ii)(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供するように、前記水性供給溶液のpHを約6.2~約11に調整する工程を含む、前記方法。
【請求項23】
ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む浸出物を製造する方法であって、前記方法が:
A.前記少なくとも2つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つである、工程、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有する;
還元供給物が、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも2つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも2つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも2つの金属を実質的に有しない;
B.前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも2つの金属を含む浸出物を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出物が約1~約7のpHを有するものである、工程と、
前記供給混合物が酸化供給物である場合、前記処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
前記供給混合物が還元供給物である場合、前記処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、前記浸出物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を含む、工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態において、本発明は、ニッケル、マンガンおよび/またはコバルトを含む共沈物の製造方法、およびその方法によって製造された共沈物に関する。もう一つの実施形態において、本発明は、共沈物の製造における引き続いての使用のために混合物から金属を溶解する方法に関する。
【0002】
(相互参照)
本出願は、2021年3月2日付けで出願された豪州仮特許出願第2021900570号および2021年3月2日付けで出願された豪州仮特許出願第2021900571号の優先権を主張し、それらの全体の参照により、これらの出願の内容は本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本明細書において先行技術文献が参照されているならば、この参照は、その文献が豪州またはいずれかの他の国における当該技術分野における一般的な知識の一部を構成することを認めるものではないことを明確に理解されるであろう。
【0004】
リチウムイオン電池(または、バッテリー:battery)は、世界の全ての携帯用電池、より一般的には、電池につきかなりの割合を構成する。それらの高いエネルギー密度、長寿命および軽量は、電気自動車、電動自転車およびその他の電動パワートレイン、電動工具を含めた多様な用途で頻繁に使用されている。かかる電池において、特に一般的な活物質の組合せは、ッケル-ンガン-バルトであり、NMC(またはNCM)材料とも呼ばれる。ニッケル、マンガン、コバルトの異なる比率(または、比:ratio)が、種々のタイプのリチウムイオン電池に用いられる。また、電池は、これらの元素のうちの1つだけを使用することも、これら3つの元素のうちのいずれかの2つの組合せや、アルミニウムおよびマグネシウムのごとき1つ以上のさらなる元素とこれらの元素のうちの1つ、2つまたは3つとの組合せを使用することもできる。種々のタイプのリチウムイオン電池において、これらすべての元素の種々の比率が使用される。
【0005】
電池用NMC材料は、典型的には、ニッケル、コバルトおよびマンガンの高純度な個々の塩を別々に取り、特定の比率および純度でそれらをすべて溶液に溶解することによって製造される。次いで、その溶液に沈殿処理(または、プロセス:process)を行い、3種類の金属を水酸化物、炭酸塩またはヒドロキシ炭酸塩として共沈させる。これは、許容可能な電気化学的性能に必要な高純度の前駆体生成物組成を達成するための唯一の方法であると広く考えられている。しかしながら、この方法の不利(または、欠点:disadvantage)は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを電池材料の製造に使用するために、ニッケル、コバルトおよびマンガンの供給材料から不純物元素を除去しなければならないことである。例えば、NMC材料は、不純物元素1モルに対してNMC150,000モルのオーダーの純度を必要とし得る。電池に使用される例示的な硫酸ニッケルは、例えば、銅、鉄、カドミウム、亜鉛、鉛のごとき不純物の5ppm以下を有する。したがって、ニッケル、コバルトおよびマンガンの純粋な塩を製造するためには、複数の分離および精製工程(または、ステップ:step)が必要となり、時間と材料(したがって、コストも)がかさむ(intensive))ことになる。
【0006】
ニッケル鉱床は、典型的には、10:1~100:1の範囲の天然のニッケル:コバルト比を有し、したがって、かかる鉱床中のニッケル、コバルトおよびマンガンの相対比率は、一般的に、NMC材料を製造する前に修正を必要とする。ニッケル鉱床は、典型的には、例えば、鉄、マグネシウム、ケイ酸塩鉱物を含めたさまざまな他の鉱物も含み、したがって、NMC材料を製造するために用いる前に、かなりの処理を必要とするであろう。
【0007】
ニッケル、コバルトおよびマンガンのもう一つの潜在的な源(または、供給源:source)は、使用済みのリチウムイオン電池からのものである。リチウムイオン電池の市場が拡大するにつれて、リチウムイオン電池の廃棄は経済的および環境的な観点からますます懸念されるようになっている。環境的には、使用済みバッテリーは、高濃度のニッケル、コバルトおよびマンガンのごとき金属、ならびに揮発性フッ素含有電解液を含む。リチウムイオン電池の需要が増加し、材料のリサイクルを推進する動きが強まると、使用済みリチウムイオン電池のカソード活物質(CAMまたは黒色塊(または、黒い塊:black mass)))からNMC材料を十分な純度で回収し、新しいリチウムイオン電池にリサイクルできるようにするための、より優れた方法を見出すための絶えず(ever)増加する必要性が存在している。
【0008】
リチウムイオン電池は典型的には、ケーシング(または、覆いもしくは筐体:casing)、電解質、セパレーター、負極、正極の5つの主要な部品(または、構成要素:component)を有する。ケーシングは典型的には、他のすべての構成部品を収納する鋼鉄製のシェルであり、経済的価値は低い。電解質は、電池を通して電荷を運ぶために使用され、非プロトン性有機溶媒に溶解したリチウム含有塩(典型的には、六フッ化リン酸リチウムまたは四フッ化ホウ酸リチウム)でできている。セパレーターは典型的には、電池のアノードとカソードのハーフセルを分離するポリマー膜である。リチウムイオン電池は典型的には、グラファイト製のアノードを有し、このアノードは銅製の集電体(または、カレントコレクタ:current collector)に接続されている。電池の価値の大部分はカソードに由来する。近代のリチウムイオン電池は、酸化コバルトまたはニッケル、コバルトおよびマンガン(NMC)の混合物を含有する電気化学的に活性なリチウム化合物でコーティングされたカソードを有する。このカソード材料は典型的には、グラファイトと混合され、バインダーを用いてアルミニウム集電体に接着される。
【0009】
カソード活物質からNMC材料を回収するために種々の条件が試みられてきたが、相当量の望ましくない不純物を回収することなく、ニッケル、コバルトおよびマンガンを回収することは難しい。今日までのNMC材料のリサイクルの試みの大半は、さらなる使用のためにニッケル、コバルトおよびマンガンの個別の塩を生成する、またはさらなる使用のために高度に精製された溶液を生成するという目的を有してきた。
【0010】
また、いくつかの電池の用途は、例えば、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち2つのみを含む材料の使用を必要とし得、前記の考慮はまた、かかる材料に適用されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
一実施形態において、本発明は、ニッケル、マンガンおよびコバルトのうちの少なくとも2つを含む共沈物(または、共沈殿物:co-precipitate)を製造する方法を提供しようとするものであり、この方法は、前記の不利の少なくとも1つを少なくとも部分的に克服するか、または実質的に改善し、あるいは消費者に有用または商業的な選択肢を提供し得る。前記共沈物は、リチウムイオン電池の調製に適し得る。もう一つの実施形態において、本発明は、リチウムイオン電池の調製に使用するための前駆体、例えば、ニッケル、マンガンおよびコバルトのうちの1つまたは2つまたは3つすべての沈殿物を提供しようとするものであり、これは、NMC材料(特に、カソード活(または、活性:active)NMC材料)またはニッケル、マンガンおよびコバルトのうちの少なくとも2つを含む材料(特に、カソード活物質)の調製におけるその後の使用に適し得る。もう一つの実施形態において、本発明は、ニッケル、マンガンおよびコバルトを含む共沈物の生成に使用するために(潜在的に、さらなる処理の後に)適し得る、または前記の不利の少なくとも1つを少なくとも部分的に克服もしくは実質的に改善し得る、または消費者に有用もしくは商業的な選択肢を提供し得る溶液の製造方法を提供しようとするものである。
【0012】
本発明の第1態様によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を製造する方法が提供され、前記方法は:
(i) 前記少なくとも2つの金属を含む水性供給溶液を提供すること;および
(ii) 供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、供給溶液から前記少なくとも2つの金属を共沈殿させることを含む。
【0013】
以下の選択肢および実施形態は、個別に、またはいずれかの適切な組合せで、第1態様と組合せて使用し得る。
【0014】
水性供給物(aqueous feed)は、少なくとも1つの不純物を含み得る。したがって、供給溶液のpHを調整する工程は、前記少なくとも1つの不純物を含む上澄み(または、上澄み液、上清液もしくは上清:supernatant)を提供し得る。したがって、第1態様の一実施形態において、共沈物を製造する方法が提供され、ここで、共沈物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含み、この方法は:
(i) 前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供すること;および
(ii) 供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供すること、を含む。
【0015】
一実施形態において、方法は、共沈物を製造する方法であって、共沈物がニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む方法であり、方法は:
(i) 前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液(aqueous feed solution)を提供すること、前記少なくとも1つの不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウムおよびニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択され;ならびに
(ii) 前記水性供給溶液のpHを約6.2以上10未満に調整して、
(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供すること、を含む。
【0016】
一実施形態において、供給溶液のpHは、約6.2~11、または約6.2~11未満、または約6.2~10、または約6.2~10未満、または約6.2~9.2、または約6.2~8.5、または約6.2~7.5に調整される。
【0017】
一実施形態において、水溶液(または、水性溶液:aqueous solution)中の少なくとも2つの金属の総量(または、ニッケル、コバルトおよびマンガンの総量)は、水溶液(特に、水溶液中の乾燥固体(または、固形物もしくは固形分:solid))の総重量の95%未満、特に、90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満、または55%未満、または50%未満である。一実施形態において、水溶液中の少なくとも2つの金属を含む金属錯体の総量(またはニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属錯体の総量)は、水溶液中の乾燥固体の総重量の95%未満、特に、90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満、または55%未満、または50%未満である。本明細書に用いた「金属錯体」なる用語は、例えば、ニッケル、コバルトおよびマンガンの硫酸塩が含む。一実施形態において、水溶液中の少なくとも2つの金属の合計量(またはニッケル、コバルトおよびマンガンの総量)は、水溶液の1ppb以上、特に、1ppm以上、または10ppm以上、または100ppm以上、または1,000ppm以上、または2,000ppm以上、または5,000ppm以上、または10,000ppm以上、または20,000ppm以上、または50,000ppm以上である。
【0018】
本明細書において、「金属」または特定の金属(例えば、ニッケル、コバルトまたはマンガン)への参照は、必ずしもそれらが金属(すなわち、酸化状態0)の形態であることを意味するものではない。かかる参照は、文脈からそうでないことが示されない限り、金属の塩を含めたすべての可能な酸化状態の金属を含む。
【0019】
本明細書に用いた「少なくとも1つの不純物」(「少なくとも1つの沈殿不純物」で有り得る)は、ニッケル、コバルト、マンガン、水、OH、H、H、硫酸塩または炭酸塩ではない。しかしながら、一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、アニオン(硫酸イオン、炭酸イオン、ヒドロキシ炭酸イオンのごとき)を有するニッケル、コバルトまたはマンガン錯体ではない。一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、ナトリウム、リチウム、カリウム、リン、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、バナジウム、ランタン、アンモニウム、亜硫酸塩、フッ素、塩化物、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、およびジルコニウム、またはそれらの組合せよりなる群から選択される。一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、ナトリウム、リチウム、カリウム、リン、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、アンモニウム、亜硫酸塩、フッ素、フッ化物、塩化物、スカンジウム、鉄、亜鉛およびジルコニウム、銀、タングステン、バナジウム、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウム、鉛、ニオブ、またはそれらの組合せ;特に、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウム、ニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択される。一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、(i)カルシウムおよび/またはマグネシウム;(ii)アルカリ土類金属;(iii)金属またはメタロイド種(アルカリ金属を含まない);(iv)アルカリ金属またはアニオン種(硫酸イオン、亜硫酸イオン、塩化イオン、フッ化イオン、硝酸イオン、リン酸イオンのごとき)を含まない金属またはメタロイド種;または(v)アニオン種(硫酸イオン、亜硫酸イオン、塩化イオン、フッ化イオン、硝酸イオン、リン酸イオンのごとき)を含まない金属またはメタロイド種を含か、またはそれらである。
【0020】
一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、少なくとも2つの不純物、または少なくとも3つの不純物、または少なくとも4つの不純物、または少なくとも5つの不純物、または少なくとも6つの不純物である。かかる不純物は、本明細書で言及し得る。
【0021】
一実施形態において、工程(i)または工程(ii)の水性供給溶液中の前記少なくとも1つの不純物の少なくとも1%、または前記少なくとも1つの不純物の少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、特に、前記少なくとも1つの不純物の少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%は、共沈殿後の上澄み中に、または共沈物を洗浄した後の洗浄溶液中に、または上澄みおよび洗浄溶液の双方の組合せ中に存在し得る。少なくとも1つの不純物は、不純物の組合せで有り得る。上澄みに通過し得る水性供給溶液中の各不純物の量は、各不純物について異なることができる。
【0022】
一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-少なくとも1つの不純物の水性供給溶液中のモル比(または質量比)(または少なくとも2つの金属-対-総不純物の水性供給溶液中のモル比(または質量比))は、300,000,000:1未満、または200,000,000:1未満、または100,000,000:1未満、または10,000,000:1未満、または1,000,000:1未満、または500,000:1未満、または250,000:1未満、または200,000:1未満、または100,000:1未満、または50,000:1未満、または10,000:1未満、または5,000:1未満、または1,000:1未満、または500:1未満、または200:1未満、または100:1未満、または50:1未満、または25:1未満、または10:1未満、または1:1未満、または1:10未満である。少なくとも2つの金属-対-少なくとも1つの不純物の水性供給溶液中のモル比(または質量比)(または少なくとも2つの金属-対-総不純物の水性供給溶液中のモル比(または質量比))は、少なくとも約2,000,000:1、または少なくとも約1,000,000:少なくとも約100,000:1、または少なくとも約100,000:1、または少なくとも約60,000:1、または少なくとも約30,000:1、または少なくとも約20,000:1、または少なくとも約10,000:1、または少なくとも約5,000:1、または少なくとも約1,000:1、または少なくとも約500:1、または少なくとも約200:1、または少なくとも約100:1、または少なくとも約50:1、または少なくとも約10:1で有り得る。これは、少なくとも2つの金属のモル量(または質量量)の合計を指すが、少なくとも1つの不純物のいずれかを指すこともでき、かかる不純物すべてのモル量(または質量量)の合計を指し得る。不純物の少なくとも1つ、所望により1つ以上、場合により全ては、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムよりなる群から選択し得る。一実施形態において、水性供給物中の少なくとも1つの不純物は、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、硫黄、ナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびリチウムよりなる群から選択される。
【0023】
本明細書における金属に対する参照は、文脈上そのように示されない限りは、その金属が0酸化状態であることを意味するものではないことが理解されるべきである。例えば、ニッケルに対する参照は、文脈に依存して、Ni(0)、Ni(II)およびNi(III)のいずれかまたはすべてを指し得る。一実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのすべてである。ニッケル、コバルトおよびマンガンは、適切な酸化状態に有り得る。一実施形態において、少なくとも2つの金属はNi(II)、Co(II)およびMn(II)から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、工程(i)の供給溶液は、7.0未満、または6.75未満、または6.5未満、または6.25未満、または6.2未満、または6.0未満、または5.75、5.50、5.25、5.0、4.75、4.50、4.25、4.0、3.75、3.50、3.25、3.0、2.75、2.50、または2.0未満のpHで有り得る。工程(i)の供給溶液は、2.0超、または2.25、2.50、2.75、3.0、3.25、3.50、3.75、4.0、4.25、4.50、4.75、5.0、5.25、5.50、5.75、6.0、または6.2超のpHで有り得る。ある種の実施形態において、工程(i)の供給溶液は、1.0~4.0、2.0~4.0、4.0~6.0、2.0~3.0、3.0~4.0、4.0~5.0、または5.0~6.0、または6.0~7.0のpHで有り得る。いくつかの実施形態において、工程(i)の供給溶液は、1.0~1.5、1.5~2.0、2.0~2.5、2.5~3.0、3.0~3.5、3.5~4.0、4.0~4.5、4.5~5.0、5.0~5.5、または5.5~6.0、または6.0~6.5、または6.5~7.0のpHで有り得る。工程(i)の供給溶液のpHは、約2.5~3.5で有り得る。それは約3.0で有り得る。
【0025】
水性供給溶液は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む浸出物(または、浸出液:leachate)で有り得る。工程(i)は、供給溶液を製造することを含む。それは、本明細書の方法によって浸出物を製造することを含む。一実施形態において、供給溶液は浸出物で有り得るか、または浸出物を用いて水性供給溶液を提供し得る。本実施形態において、「を用いて水性供給溶液を提供する」なる用語は、浸出物が水性供給溶液として直接的に使用されることを意味し得るか、または浸出物がさらに加工(processed)または処理され、その後に加工または処理された溶液が工程(i)の水性供給溶液であることを意味し得る。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態において、工程(i)に先立ち、方法は以下の工程:
A.ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物(または、非酸化供給物:unoxidized feed)のうちの1つである、工程と、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも1つの金属の多くを有し;
還元供給物は、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも1つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも1つの金属の少なくとも一部(または、少なくともいくらか)とを有し;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも1つの金属を実質的に有しない;
B.前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも1つの金属を含む浸出物を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出物が約-1~約7(または約-1~約6、または約1~約7、または約1~約6)のpHを有するものである、工程と
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、浸出物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を含む、
を含み得る(または工程(i)は前記の工程を含み得る)。
【0027】
この実施形態において、「より多く有する」という語句(例えば、「酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有する」という語句)は、「より大きなモル濃度を有する」と解釈されるべきである。「の実質的にすべて」なる用語は、少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99%を指すことができ、各々は、モル基準である。後記する種々のオプション(または、選択肢:option)および実施形態は、個別に、またはいずれかの適切な組合せで用い得る。
【0028】
一実施形態において、少なくとも1つの金属は、少なくとも2つの金属で有り得る。
【0029】
一実施形態において、工程(i)は:
少なくとも2つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つである、工程と、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有する;
還元供給物が、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも2つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも2つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも2つの金属を実質的に有しない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも2つの金属を含む浸出物を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出物が約-1~約6(または約1~約6)のpHを有するものである、工程と
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、浸出物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を含み、
前記水性供給溶液を提供し、前記水性供給溶液は浸出液である、
を含む。
【0030】
上記で定義した酸化供給物の例は、Ni(II)、Co(III)およびMn(0)のモル比5:2:1、またはNi(III)、Co(II)およびMn(III)のモル比2:1:1、またはCoを含まないNi(II)およびMn(III)のモル比の混合物を含み得る。上記で定義した還元供給物の例は、いずれかの比率のNi(II)、Co(II)およびMn(II)Sの混合物、または5:2:1のモル比のNi(0)、Mn(II)およびCo(II)の混合物を含み得る。本明細書において、酸化状態(II)は、2または+2の酸化状態ということもでき、これらは互換的に使用されることに留意すべきである。一実施形態において、浸出液はCo(II)、Mn(II)およびNi(II)を含む。
【0031】
一実施形態において、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンのラテライト鉱石は、典型的には、酸化供給物とみなされる。もう一つの実施形態において、混合水酸化物沈殿物、混合炭酸塩沈殿物、またはニッケル、コバルトおよび/もしくはマンガンの酸化物もしくは炭酸塩は、典型的には、酸化供給物または未酸化供給物であるとみなされる。一実施形態において、ニッケルおよび/またはコバルトの硫化鉱または濃縮物(または、精鉱:concentrate)は、典型的には、還元供給物とみなされる。もう一つの実施形態において、混合硫化物沈殿物は典型的には、還元供給物とみなされる。もう一つの実施形態において、フェロニッケル、ニッケル銑鉄、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの金属合金は、典型的には、還元供給物とみなされる。さらなる実施形態において、リチウムイオン電池からのリサイクル材料は、典型的には、酸化供給物とみなされる。
【0032】
ある実施形態において、混合物はニッケル、コバルトおよびマンガンを含み、それによって水溶液はニッケル、コバルトおよびマンガンを含む。もう一つの実施形態において、これらの金属のうちの1つは混合物中に存在せず、それによって水溶液はニッケル、コバルトおよびマンガンのうちの2つを含み、他を含まない。
【0033】
一実施形態において、供給混合物は酸化供給物であり、試薬は還元剤を含む。もう一つの実施形態において、供給混合物は還元供給であり、試薬は酸化剤を含む。さらなる実施形態において、混合供給物は未酸化供給物であり、還元剤も酸化剤も使用されない。
【0034】
従前に発表されたプロセスは、pHが0以下の非常に強い酸である4M硫酸溶液を浸出工程に使用している。これは非常に腐食性の強い酸であり、鉄、アルミニウム、銅を含めた不純物元素のかなりの溶解に導くであろう。鉄およびアルミニウムのごとき元素が溶解しているならば、これは浸出(leaching)段階にてより多くの酸を消費し、沈殿もしくは他の不純物分離、ならびに/または除去段階におけるそれらの分離および/もしくは除去は、より多くの塩基または他の試薬を消費するであろう。
【0035】
対照的に、前記の浸出工程は、混合物をpH約1~約7または約1~約6の水溶液(硫酸のpH1溶液は約0.05M硫酸に相当する)中で処理することを含む。鉄、アルミニウム、および比較的程度は低いが(to a lesser extent)銅のこの小さな酸性pH溶解は、あまり好ましくない。逆に、ニッケル、コバルトおよびマンガンはすべて、酸化状態が+2にある場合、pH約6未満で溶解する。この工程の使用は、より酸性条件を利用する先行技術のアプローチと比較した場合、Ni、Mn、Coの少なくとも2つを改善した純度で共沈させるのに適した溶液を調製するために、驚くべきことに効果的でコスト効率のよい(cost effective)方法を提供する。当業者は、日常的な実験および/または理論によって、標的pHを達成するために必要な特定の酸の量および濃度を容易に決定できることに留意すべきである。
【0036】
混合物は固体混合物で有り得る。ニッケル、マンガン、コバルトの少なくとも一部が固体形態(例えば、スラリー状)の混合物で有り得る。一実施形態において、混合物は混合水酸化物沈殿物(または「MHP」)である。MHPは、ニッケル含有鉱石の商業的処理において知られた中間生成物である固体のニッケル・コバルト混合水酸化物沈殿物である。MHPは、硫化ニッケル鉱石またはラテライトニッケル鉱石に由来し得る。かかるMHPは、酸化供給物を供給し得る。これは、MHPに含まれるマンガンおよびコバルトの少なくとも一部が酸化形態に有り得るためである。MHPは、粗リサイクルプロセス(crude recycling process)から、またはいずれかのニッケルおよびコバルト含有水溶液から由来し得る。
【0037】
一実施形態において、混合物は、PCT/AU2012/000058に開示されている選択的酸浸出(SAL)プロセスから得られた生成物(一般的に固体残渣)であり、このプロセスでは、酸化剤のpHおよび量が制御されて、溶液中のニッケルの少なくとも一部が選択的に溶解される。このプロセスにおいて、酸化剤の量は典型的には、コバルトおよび/またはマンガンの少なくとも一部をCo(III)に酸化するためのものである。したがって、このプロセスの使用は、典型的には、酸化された原料(または、供給原料:feed)を提供するであろう。SALプロセスにおいて、MHPは、前記のごとく使用される。
【0038】
したがって、一実施形態において、処理に先立ち、方法は、以下の工程:
(a)少なくとも2つの金属を含むMHPを、前記金属の1つ(特に、コバルト)を固相で安定化させ、前記金属のもう1つを酸性溶液に溶解させるpHで、酸性溶液(酸化剤を含み得る)と接触させる工程;および
(b)酸性溶液から固相を分離する工程であって、固相が前記少なくとも2つの金属を含み、固相が供給混合物の少なくとも一部を形成する、工程を含む。
【0039】
本実施形態の具体的な形態において、これらの工程は:
(a)少なくともニッケルおよびコバルト、および所望によりマンガンも含むMHPを、コバルトを固相で安定化させ、ニッケルを酸性溶液に溶解させるpHの酸性溶液(酸化剤を含み得る)と接触させる工程;および
(b)固相を酸性溶液から分離する工程であって、固相が少なくとも2つの金属(そのうちの1つはコバルト)を含み、固相が供給混合物の少なくとも一部を形成する、工程を含む。
この実施形態において、前記少なくとも2つの金属を含む固相は、供給混合物で有り得る。
【0040】
一実施形態において、工程(a)に先立ちMHPを洗浄する。MHPは洗浄工程において酸化剤で処理し得る。
【0041】
一実施形態において、供給混合物はコバルトおよびニッケルを含み、工程Aは:
(a)少なくともコバルトおよびニッケルを含む混合水酸化物沈殿物および/または混合炭酸塩沈殿物を、コバルトを固相で安定化させ、ニッケルを酸性溶液に溶解させるpHの酸化剤を含む酸性溶液と接触させる工程;および
(b)固相を酸性溶液から分離する工程であって、固相が少なくとも2つの金属(そのうちの1つはコバルト)を含み、固相が供給混合物の少なくとも一部を形成する、工程を含む。
【0042】
一実施形態において、コバルトは固相でCo(III)の形態で安定化される。一実施形態において、マンガンは工程(a)の固相でMn(III)の形態で安定化される。
【0043】
工程(a)の酸性溶液、または水溶液、または浸出液のpHは、約1~約6、または約2~6、2~5、2~4、2~3、3~5、3~6、4~6、または4~5、例えば、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、または6で有り得る。工程(a)のpHは、工程(a)の終了時の終点(または、最終)pHで有り得る。工程(a)のpHは、工程(a)全体のpHで有り得る。
【0044】
工程(a)または工程Bにおける酸化剤は、過硫酸塩、過酸化物、過マンガン酸塩、過塩素酸塩、オゾン、酸素および二酸化硫黄を含む混合物、酸化物および塩素;例えば、過硫酸ナトリウムまたはカリウム、過マンガン酸ナトリウムまたはカリウム、オゾン、マグネシウムまたは過酸化水素、塩素ガスまたは過塩素酸ナトリウムまたはカリウムよりなる群から選択し得る。それは、過硫酸塩または過マンガン酸塩で有り得る。それは、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸カリウム、ペルオキシヒドロゲンジ硫酸ナトリウムまたはペルオキシヒドロゲンジ硫酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムまたは過マンガン酸カリウムで有り得る。
【0045】
工程(a)の一実施形態において、固相で安定化される金属、例えば、コバルトおよびマンガンの合計モル数に対して約70%~約500%の化学量論当量の酸化剤が添加され;例えば、約80%~約400%;約80%~約200%、または100%~約150%、例えば、化学量論当量は、約70、80、90、100、110、120、125、130、140、150、200、250、300、350、400、450または500%である。
【0046】
工程(a)の温度は、約20℃を超え約120℃未満、または約50℃を超え約100℃未満、または約60℃~約90℃で有り得る。その温度は、約25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃または115℃で有り得る。
【0047】
工程(b)において、分離工程はろ過の工程で有り得る。
【0048】
一実施形態において、この方法は、前記処理に先立ち、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む供給混合物から不純物を除去する工程を含み得る。方法は、前記少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)を含む混合物(または前駆体)を弱酸浸出液(混合供給物の少なくとも一部を供給するためのもので有り得る)と接触させることを含み得る。弱酸浸出液は、約0.005M~約0.5M酸、または約0.01M~0.3M、約0.01M~0.1M、約0.02M~0.08M、約0.03M~0.07M、約0.04M~0.06M、または約0.05M~0.1M酸、例えば、約0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4または0.5M酸の濃度で有り得る。弱酸浸出液中の酸は、無機酸または有機酸で有り得る。無機酸は、硫酸、塩酸および硝酸よりなる群から選択し得る。有機酸は、酢酸またはギ酸から選択し得る。また、他の酸も適している。弱酸浸出液中の酸は硫酸で有り得る。
【0049】
工程(a)は、いずれかの適切な圧力、通常は大気圧で行い得る。工程(a)は、スラリーを提供し得る。スラリーは、約1重量%固体~約40重量%固体、または約5重量%固体~約40重量%固体、または約10重量%固体~約30重量%固体、例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35または40重量%固体を有し得る。
【0050】
工程(a)の後、固体は、例えば、ろ過によって液体から分離し得る。固体は、工程(b)の供給混合物として使用し得る。工程(a)は、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛のうちの1つ以上よりなる群から選択される不純物を除去および/または分離するために有用である。追加的または代替的に、他の不純物を除去および/または分離し得る。
【0051】
もう一つの実施形態において、供給混合物は、リチウムイオン電池、特に、リチウムイオン電池のカソード材料に由来する、またはそれから得られる生成物(または、製品:product)である。それは、リサイクルされたNMC材料からのもので有り得る。生成物は、乾燥ベースで約1重量%を超える、または約2、3、4、5、10、20、30、40、50、60重量%を超える、ニッケル、コバルトおよびマンガンの総量を有し得る。生成物は、乾燥ベースで約0.1重量%を超える、または約0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、20、30もしくは35重量%を超えるニッケルを含み得る。それは、乾燥ベースで約0.1重量%を超える、または約0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5もしくは10重量%を超えるコバルトを含み得る。生成物は、乾燥ベースで約0.1重量%を超える、または約0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10もしくは15重量%を超えるマンガンを含み得る。
【0052】
したがって、もう一つの実施形態において、前記処理に先立ち、方法は、放電したリチウムイオン電池(または、バッテリー:battery)からカソード材料を分離する工程を含み得る。分離工程は、電池を破砕または粉砕する(shredding or crushing)ことを含み得る。分離工程は、リチウムイオン電池のケーシング(または、筐体:casing)を取り外すことを含み得る。分離工程は、ケーシング、電解質、アノードおよびカソードを分離することを含み得る。分離されたカソード材料は、処理される混合物を形成でき、処理される混合物は、第1態様の方法において分離されたカソード材料から由来し得る。
【0053】
カソード材料が作製される場合、カソードは焼成(calcined)され、ニッケル、コバルトおよびマンガンが酸化される。したがって、一旦、カソードが使用されリサイクルされると、使用済み(spent)カソード材料はSALプロセス残渣と非常に類似する化学状態になる。したがって、使用済みカソード材料は、本発明の第1態様の方法に使用し得る。
【0054】
一実施形態において、処理される混合物は、PCT/AU2012/000058(前記される)に開示された選択的酸浸出(SAL)プロセスから得られる生成物(特に、固体残渣);リサイクルされたリチウムイオン電池からの生成物;リサイクルされたNMC材料からの生成物;またはそれらの組合せで有り得る。
【0055】
一実施形態において、供給物は混合物である。もう一つの実施形態において、供給物はフィルターケーキ、例えば、湿潤フィルターケーキである。もう一つの実施形態において、スラリーである。スラリーは、約1重量%~約40重量%の固体、または約5重量%~約40重量%の固体、または約10重量%~約30重量%の固体、例えば、約5、10、15、20、25、30、35または40重量%の固体を有し得る。
【0056】
工程Aおよび工程Bを有する上記実施形態の方法において、供給混合物中のニッケル、コバルトおよび/またはマンガンから選択される少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)の少なくとも一部は、酸化状態、すなわち、2を超える酸化状態で有り得る。前記のごとく、SALプロセスから得られる固体残渣に含まれるニッケル、マンガン、コバルトの大部分は、酸化状態に有り得る。これらの酸化された金属成分と関連した貧弱な溶解性のため、還元剤での処理を介して、pH約1~約6の水溶液中でのこれらの金属の溶解性を著しくかなり改善することができる。それによって、酸化状態2に還元されたコバルト、マンガン、ニッケルは、水溶液中の1つ以上の不純物(または浸出不純物)に対して、水溶液中で選択的に溶解し得る。
【0057】
一実施形態において、処理される供給混合物中のコバルト、マンガンおよびニッケルから選択される少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%または60%は、酸化状態にある。
【0058】
酸化形態のコバルトは、Co(III)および/またはCo(IV);特に、Co(III)を含み得る。酸化形態のマンガンは、Mn(III)、Mn(IV)、Mn(V)のうち1つ以上;一般的にはMn(III)を含み得る。酸化形態のニッケルは、Ni(III)および/またはNi(IV)、一般的にはNi(III)を含み得る。また、混合物は、所望の(II)状態のコバルト、マンガンおよび/またはニッケルの相当量を含み得る。
【0059】
しかしながら、固形残渣中の主要な浸出不純物の一部、特に、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、および比較的程度は低いが(to a lesser extent)銅(Cu)の溶解度(または、溶解)プロフィールは、所望のニッケル、マンガン、コバルト成分の溶解度プロフィールとある程度重複している。例えば、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄(Fe(II))の所望の+2酸化状態形態はすべて、約pH3~約7で比較的溶解性であるが、これらの金属の酸化形態は、約pH3未満の水溶液でのみ有意に溶解性になり始める。アルミニウムおよび銅の場合において、これらの溶出不純物はいずれもニッケル、マンガン、コバルトと同じ酸化/還元挙動を示さないが、それらは、それぞれ約pH3および約4未満の水溶液にかなり溶解性である。
【0060】
一実施形態において、供給混合物は、1つ以上の浸出不純物を含み得る。1つ以上の浸出不純物は、鉄、アルミニウム、銅、バリウム、カドミウム、カルシウム、炭素、クロム、鉛、リチウム、マグネシウム、カリウム、フッ化物、リン、ナトリウム、ケイ素、スカンジウム、硫黄、チタン、亜鉛、ヒ素およびジルコニウムよりなる群から選択し得る。
【0061】
大部分の場合、これらの浸出不純物のタイプおよび量は、この方法を行う前に固体残渣がどの程度の処理に付されたか、およびどのような材料を出発材料として使用したかに大きく依存するであろうことが理解されるであろう。例えば、固体残渣がSALプロセスから直接的に得られたならば、残渣は、カソード活物質(CAM)自体から直接的に得られた場合、特に、CAMが最初にリサイクルプロセスを介して部分的に処理された場合よりも、かなり多くの鉄(Fe)およびアルミニウム(Al)を含有する可能性が高い。
【0062】
一実施形態において、処理に使用される水溶液は浸出剤を含む。浸出剤は酸で有り得る。酸は、約1~約7、または約1~約6のpHを提供するために使用し得る。浸出剤は無機酸または有機酸で有り得る。無機酸は、硫酸、塩酸および硝酸よりなる群から選択し得る。有機酸は、酢酸またはギ酸から選択し得る。また、他の酸も適している。浸出剤は硫酸で有り得る。
【0063】
水溶液のpHは、7.0未満、または6.75、6.50、6.25、6.0、5.75、5.50、5.25、5.0、4.75、4.50、4.25、4.0、3.75、3.50、3.25、3.0、2.75、2.50または2.0未満で有り得る。水溶液は、2.0を超える、または2.25、2.50、2.75、3.0、3.25、3.50、3.75、4.0、4.25、4.50、4.75、5.0、5.25、5.50または5.75を超えるpHで有り得る(または浸出液がそれらのpHを有するようなもので有り得る)。ある種の実施形態において、水溶液は、1.0~4.0、2.0~4.0、4.0~6.0、2.0~3.0、3.0~4.0、4.0~5.0、または5.0~6.0、または6.0~7.0のpHで有り得る(または浸出液がそれらのpHを有するようにし得る)。いくつかの実施形態において、水溶液は、pHが1.0~1.5、1.5~2.0、2.0~2.5、2.5~3.0、3.0~3.5、3.5~4.0、4.0~4.5、4.5~5.0、5.0~5.5、または5.5~6.0、または6.0~6.5、または6.5~7.0で有り得る。水溶液のpHは約2.5~3.5で有り得る。それは、約3.0で有り得る。本発明者らは、pHが1未満であれば、より多くの浸出不純物が水溶液中に溶解することを見出した。しかしながら、pHが6または7を超えるならば、ニッケル、コバルトおよびマンガンの所望の+2酸化状態の形態を溶解するための水溶液の能力が低下する。工程BのpHは、その工程終了時の溶液の終点pH、すなわち、工程B終了時の浸出液のpHで有り得る。
【0064】
一実施形態において、方法は、浸出剤を水溶液に添加する工程を含み得る。もう一つの実施形態において、水溶液のpHを制御する工程を含み得る。一実施形態において、水溶液のpHは、前記に定義したごとく、酸性浸出剤の添加を介して制御し得る。もう一つの実施形態において、水溶液のpHは塩基の添加を介して制御し得る。塩基の例は、水酸化ナトリウムのごときアルカリまたはアルカリ土類水酸化物を含み得る。しかしながら、塩基はニッケル、コバルトまたはマンガン含有材料、例えば、新鮮な固体物(処理される混合物、またはニッケル、コバルトおよびマンガンの沈殿物、例えば、水酸化物沈殿物のごとき)または水酸化物化合物または炭酸塩化合物またはヒドロキシル炭酸塩化合物で有り得る。ニッケル、コバルトまたはマンガン含有材料、特に、少なくとも酸化された部分を含むニッケル、コバルトまたはマンガン含有材料を使用する有利さは、この材料の添加が溶液中に残存する還元剤も消費し、Fe2+をFe3+に酸化するために条件を酸化に変換し、Fe3+はNiまたはCoよりも有利に沈殿することである。
【0065】
一実施形態において、浸出剤は、制御された速度で水溶液(または「浸出溶液(もしくは、浸出液:leach solution)」)に添加される。一実施形態において、浸出剤は、溶液が所望の終点pH(所望の終点pHは、前記の水溶液のpHについて記載したごとくで有り得る)に達するまで段階的に添加できる。もう一つの実施形態において、浸出剤のすべてを一工程において水溶液に添加し得る。もう一つの実施形態において、浸出剤は、処理の過程で(すなわち、本明細書の他の箇所で論じた所定時間)徐々に添加し得る。いくつかの実施形態において、試薬は水溶液と組み合せ、次いで、供給混合物に添加される。他の実施形態において、水溶液を所望のpHを達成するように供給混合物に添加し、次いで試薬を添加する。もう一つの実施形態において、水溶液を供給混合物と組み合わせた後に、試薬を水溶液と組み合わせる。
【0066】
浸出剤は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物1トン当たり約10,000モル~約20,000モルの浸出剤;例えば、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物1トン当たり約12,000モル~約17,000モルの浸出剤;またはニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物1トン当たり14,000モル~14,500モルの浸出剤の割合で水溶液に添加し得る。硫酸は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物1トン当たり約1.0~約2.0トンのHSOの割合でもしくは約1.2~約1.7トンのHSOの割合で;またはニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物1トン当たり約1.4トンのHSOの割合にて、水溶液に添加し得る。
【0067】
還元剤は、水素ガス、SOガス、亜硫酸塩(メタ重亜硫酸ナトリウムのごとき)、有機酸、硫化物(硫化ニッケル、ナトリウム、カリウム、コバルト、もしくはマンガン、または水硫化ナトリウム、カリウム、コバルト、もしくはマンガンのごとき)、および過酸化水素、またはそれらの組合せよりなる群から選択し得る。還元剤は、SOガス、メタ重亜硫酸ナトリウム、またはそれらの組合せで有り得る。還元剤は、SOガスで有り得る。還元剤の組合せを使用し得る。一実施形態において、還元剤は、水素ガスおよびSOガスよりなる群からを選択し得る。有利なことに、水素ガスおよびSOガスは、いずれもコバルト、マンガン、ニッケルを還元するのに十分に強く、浸出溶液に不純物を導入しない。適切な還元剤を選択する場合、溶液中に不純物を導入しないか、あるいは別法として容易に除去および/または分離し得る不純物のみを導入するであろう剤を選択することが好ましい。一実施形態において、還元剤はSOガスである。また、溶液中に存在するSOガスは、その場で(in situ)(例えば、溶液または酸化物質との反応を介して)酸を生成し得る。一実施形態において、還元剤は大気圧および大気温度にて気体(または、ガス:gas)である。もう一つの実施形態において、還元剤は大気圧および大気温度にて液体である。さらなる実施形態において、還元剤は大気圧および大気温度にて固体である。
【0068】
水溶液および、使用される場合、試薬は、独立して、約0.25~約5時間、または約0.25~1、0.25~05、0.5~1、0.5~2時間、1~4時間、1~3時間、1~2時間、2~5時間、3~5時間または3~4時間、例えば、約0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5 3、3.5、4、4.5または5時間の期間にわたり添加でき、状況によってはこれらの一方または双方を5時間より長くにわたって添加し得る。それらは、独立して添加できるか、または一緒に添加し得る。それらは同時に添加し得るし、順次添加し得るし、(バッチ式または半連続的に添加する場合は)交互に添加し得る。各々は独立して、バッチ式または連続的に添加でき、半連続的(すなわち、連続的に添加するが、添加しない期間を含む)に添加し得る。試薬は、酸化または還元される2種または複数の金属に対して約70~約500%、または約100~500%、200~500%、300~500%、100~300%、70~200%、70~100%または70~150%、例えば、約70、80、90、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450または500%の化学量論比で添加し得るが、ある種の場合にはこれらの範囲外の比率も適し得る。
【0069】
一実施形態において、還元剤は過酸化水素ではない。過酸化水素を使用する従前に記載されたプロセスは、存在する鉄を酸化し、リサイクルカソード材料中のニッケル、コバルトおよびマンガンを還元し得る。これらのプロセスにおいて、大量(bulk amount)の過酸化水素が使用されるため(過酸化水素はニッケル、コバルトおよびマンガンに対して比較的弱い還元剤である)、還元反応に関してほとんど制御が存在しない。さらに、過酸化水素は比較的高価な試薬であり、さらなる酸の添加を必要とし、また、過酸化水素は、会合した水(associated water)によりかなりの希釈を生じる。
【0070】
本発明者らは、ニッケル、マンガンおよびコバルトの酸化形態を、混合物中の種々の浸出不純物に対して選択的に溶解させるためには、混合物中のニッケル、マンガンおよびコバルトのこれらの酸化形態を所望の+2酸化状態の形態に変換して、それらを約1~約6のpHで可溶化することが必要であることを有利に見出した。
【0071】
一実施形態において、方法は、還元剤を水溶液に添加する工程を含み得る。もう一つの実施形態において、水溶液への還元剤の添加を制御する工程を含み得る。水溶液への還元剤の添加は、還元されたFe(II)形態での溶解度のより広いpH範囲を有する鉄(Fe)のごとき主要な浸出不純物の還元を最小化しつつ、酸化されたコバルト、マンガンおよび/またはニッケル成分が所望の+2酸化状態まで実質的に還元されるように制御し得る。一実施形態において、第1態様の方法は、混合物中の浸出不純物(leach impurities)に対して、酸化コバルト、マンガンおよび/またはニッケルを優先的に還元する条件下で行い得る。かかる浸出不純物は、鉄、アルミニウム、銅、鉄、バリウム、カドミウム、カルシウム、炭素、クロム、鉛、リチウム、マグネシウム、カリウム、リン、ナトリウム、ケイ素、フッ素、硫黄、チタン、亜鉛、およびジルコニウム;特に、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、フッ素、チタン、亜鉛、およびジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1つ(特に、それらよりなる群のすべて)で有り得る。
【0072】
本発明者らは、還元反応の観点から、酸化されたニッケルが最初に還元され、次いでコバルト、マンガン、鉄の順に還元されるべきであることを有利に発見した。したがって、一実施形態において、混合物に添加される還元剤の量は、酸化されたニッケル、コバルトおよびマンガンを還元するが、鉄は実質的に酸化されないように選択される。
【0073】
一実施形態において、酸化コバルト、酸化マンガンおよび酸化ニッケル(これらの酸化金属のいくつかは存在しなくてもよい)の合計モルに対して約0.5~約2化学量論当量の還元剤を水溶液に添加する;または約0.7~1.5、0.8~1.2、または0.9~1.1化学量論当量の還元剤を添加する。約1化学量論当量を添加し得るか、または約0.5、0.75、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5化学量論当量を添加し得る。本発明者らは、1当量の還元剤が、ニッケル、マンガンまたはコバルトの酸化体1当量を還元するのに典型的には十分であることを有利に発見した。還元剤は、供給混合物1トン当たり約3,000モル~約10,000モルの還元剤;または供給混合物1トン当たり約5,000モル~8,000モルもしくは約6,000モル~6,500モルの還元剤の割合で水溶液に添加し得る。SOは、供給混合物1トン当たり約0.2~約0.6トンのSOの割合で;または供給混合物1トン当たり0.3~0.5トンのSOの割合で;例えば、供給混合物1トン当たり約0.3、0.4または0.5トンのSOの割合で、水溶液に添加し得る。
【0074】
一実施形態において、還元コバルト、還元マンガン、還元ニッケル(これらの還元金属のいくつかは存在しなくてもよい)の合計モル数に対して約0.5~約5化学量論当量の酸化剤が水溶液に添加される;または約0.5~2、0.7~1.5、0.8~1.2、または0.9~1.1化学量論当量の酸化剤が添加される。約1化学量論当量を添加し得るし、約0.5、0.75、1.25、1.5、1.75、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5化学量論当量を添加し得る。工程Bの一実施形態において、還元コバルト、還元マンガンおよび還元ニッケル(これらの還元金属の一部は存在しなくてもよい)の合計モル数に対して約70%~約500%の化学量論当量の酸化剤が添加され;例えば、約80%~約400%;80%~200%、または100%~150%、例えば、約70、80、90、100、110、120、125、130、140、150、200、250、300、350、400、450または500%の化学量論当量の酸化剤が添加される。
【0075】
一実施形態において、試薬(特に、還元剤)は水溶液(または「浸出液」)に制御された速度で添加される。試薬(特に、還元剤)は、特定の時間にわたって連続的に添加し得る。適切な時間は、約15分~約3時間;または約30分~約2時間;または約30分~約1時間;または約1時間~約3時間;または約1時間~約2時間で有り得る。本発明者らは、添加速度が遅いほど浸出不純物に対する選択性が高くなるが、添加速度が速いほど処理能力が改善することを見出した。
【0076】
一実施形態において、処理は密閉容器内で行われる。有利なことには、密閉容器の使用は、ガスの損失が抑制され、還元反応または酸化反応(適宜)のより大きな制御が可能になり、(特に、還元剤または酸化剤がガスである場合に)還元剤または酸化剤のより緩やかな添加が可能になる。一実施形態において、処理は大気圧で行われる。もう一つの実施形態において、0.9~2.0気圧、または1.0~1.5気圧、例えば、約1、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5気圧で行われる。わずかな過圧で処理を行うことは、過剰なガスを抑制するのに有用である。
【0077】
本発明者らは、少なくともいくつかの試薬(いくつかの還元剤のごとき)について、試薬の添加が水溶液のpHに影響し得ることを見出した。したがって、いくつかの実施形態において、溶液のpHを、例えば、酸または塩基の添加を介して制御する必要が有り得る。
【0078】
還元剤が使用される場合のいくつかの実施形態において、pHおよび還元反応の制御は、鉄、アルミニウムおよび銅の浸出(leaching)をそれぞれ約40重量%まで、または約30重量%、20重量%、15重量%、12重量%までに制限しつつ、ニッケル、コバルトおよびマンガンの選択的溶解を可能にする。有利なことには、このプロセスを用いると、いくつかの浸出不純物のかなりの部分が固相に残り得る。
【0079】
もう一つの実施形態において、処理は、溶解(または、溶解した:dissolved)ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む浸出液ならびに、鉄、アルミニウム、銅、バリウム、カドミウム、カルシウム、炭素、クロム、鉛、リチウム、マグネシウム、カリウム、リン、ナトリウム、ケイ素、フッ素、硫黄、チタン、亜鉛、およびジルコニウム;またはアルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、フッ素、チタン、亜鉛、およびジルコニウムよりなる群の少なくとも1つ(またはそれらよりなる群のすべて)を含む固体を提供する。
【0080】
一実施形態において、工程Bは、水溶液が液体状態を維持する温度で行われる。一実施形態において、約0℃~約100℃;または約10℃~約100℃;または約20℃~約100℃;または約40℃~約100℃;より詳細には、約50℃~約100℃;または約60℃~約100℃の温度で行われる。もう一つの実施形態において、約60℃~約95℃(または約60℃~約90℃);または約70℃~約95℃;または約75℃~約95℃;または約80℃~約95℃の温度で行われる。一実施形態において、約0℃~約100℃;または約10℃~約100℃;または約20℃~約100℃;または約30℃~約80℃;または約40℃~約70℃;または約45℃~約65℃;または約45℃~約80℃;または約50℃~約60℃の温度で行われる。約0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃、あるいは約55℃で行い得る。水溶液の温度は、反応/プロセスが典型的に発熱性であるため、経時的に増大し得る。
【0081】
一実施形態において、工程Bは、80~81.0、81.0~82.0、82.0~83.0、83~84.0、84.0~85.0、85.0~86.0、86.0~87.0、87.0~88.0、88.0~89.0、89.0~90.0、90.0~91.0、91.0~92.0、92.0~93.0、93.0~94.0、または94.0~95.0℃の温度で行い得る。
【0082】
一実施形態において、工程Bは所定時間行い得る。前記に概説のごとく、第1態様の処理に必要な時間は、反応が行われる温度、溶液のpH、試薬のごとき要因により影響され得る。しかしながら、一実施形態において、処理は少なくとも約10分間、または少なくとも約30分間、または少なくとも約1時間、または少なくとも約2時間行い得る。一実施形態において、約30分~約6時間、または約30分~約4時間、1時間~4時間、1時間~3時間、または2時間~3時間、例えば、約2時間または約2.5時間行い得る。
【0083】
一実施形態において、処理は混合または撹拌しつつ、例えば、撹拌しつつ行われる。
【0084】
一実施形態において、処理は少なくとも1つの容器を用いて行い得る。少なくとも1つの容器は、1つの容器で有り得るし、2つの容器で有り得る。前記容器は混合容器(または、混合用容器:mixing vessel)で有り得、その中で液体(または、混入(もしくは同伴:entrained)固体を含み得る)を混合するように構成し得る。前記容器は撹拌し得る。容器は、撹拌機(または、撹拌棒もしくはスターラー:stirrer)を含み得る。
【0085】
処理は、液体-対-固体の適切な比率で行い得る。一実施形態において、固液混合物は、少なくとも約1%の固体(重量(または、重量比))、または少なくとも約2%、3%、4%、5%、10%、15%もしくは20%の固体(重量)を含み得る。一実施形態において、固液混合物は、約3~約25%の固体(重量)、または約4~20%、1~10%、3~7%もしくは4~6%の固体(重量)を含み得る。一実施形態において、供給混合物および水溶液は一緒にスラリーを形成する。
【0086】
方法は、供給混合物を水溶液と組み合わせた後、試薬(酸化剤または還元剤のごとき)を水溶液に添加する工程を含み得る。酸化剤は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうち少なくとも2つを含む混合物(すなわち、処理される出発材料)で有り得る。また、マンガン塩、炭酸塩または水酸化物塩(一般的には炭酸塩または水酸化物塩)をこの工程で添加し得る。適切なマンガン塩は、MnCOで有り得る。適切な炭酸塩は、MnCO、Ni(OH)(CO0.5、NiCO、CoCO、Co(OH)、NaCOおよびCaCOよりなる群から選択し得る。適切な水酸化物塩は、Ni(OH)、Ni(OH)(CO0.5、NaOHおよびCa(OH)よりなる群から選択し得る。この工程は、いずれかの適切な温度で行うこともでき、一般的には、処理につき従前に記載のものと同様である。この工程は、例えば、約30分~約10時間、または約3時間~約10時間、または約4時間~約8時間のごときいずれの時間でも行い得る。この工程は、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、亜鉛のごとき不純物を除去または分離する必要性を回避し得る。この工程は、溶液中に残存するいずれの還元剤も消費し得る。
【0087】
一実施形態において、方法は、溶液中の過剰な還元剤および/または酸化剤を中和するために、酸化剤および/または還元剤を添加することを含み得る。もう一つの実施形態において、方法は、溶液に塩基を添加して、pHを、例えば、工程Bを超えるが、pH7未満(例えば、pH6)のpHに増加させることを含み得る。方法は、過剰な還元剤および/または酸化剤を中和する前に溶液をろ過する工程、またはpHを増加させる工程を含み得る。
【0088】
処理後、不純物(または「浸出不純物」)は、いずれかの適切な方法で浸出液から除去および/または分離し得る。この文脈において、「不純物」または「浸出不純物」または「浸出不純物」)なる用語は、ニッケル、コバルト、マンガン、水、OH、H、H、硫酸塩または炭酸塩ではない金属、錯体、化合物または元素をいう。不純物を除去する適切な技術は、不純物の性質に基づいて当業者が選択し得る。例えば、浸出不純物の少なくとも一部は固体形態で有り得る。一実施形態において、デカンテーション、ろ過、セメンテーション(cementation)、遠心分離および沈降よりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術、またはそれらのいずれかの2つ以上の組合せを用いて、固体浸出不純物を水溶液から除去および/または分離し得る。例示的な固体浸出不純物は、鉄、アルミニウム、銅、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、鉛、ケイ素、硫黄、チタン、亜鉛、およびジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0089】
浸出液は、少なくとも1つの液体浸出不純物を含み得る。浸出液中の例示的な液体浸出不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、ナトリウム、リチウム、カリウム、リン、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、バナジウム、ランタン、アンモニウム、亜硫酸塩、フッ素、フッ化物、塩化物、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛およびジルコニウム、銀、タングステン、バナジウム、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウム、鉛、ニオブ、またはそれらの組合せ;特に、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウム、ニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの浸出不純物である。
【0090】
一実施形態において、少なくとも1つの金属(ニッケル、コバルトおよびマンガン、特に、少なくとも2つの金属または3種の金属よりなる群から選択される):少なくとも1つの液体浸出不純物の質量比は、重量比で1:50未満または1:20未満、または10:1未満、または1:1未満、または10:1未満、または100:1未満、または500:1未満、または1000:1未満、または5000:1未満、または10,000:1未満、または50,000:1未満、または200,000:1未満、または500,000:1未満である。
【0091】
もう一つの例において、浸出不純物の少なくとも一部は、液体(または溶解)形態で有り得る。一実施形態において、液体(または溶存)浸出不純物は、イオン交換、沈殿、吸収/吸着、電気化学的還元および蒸留、またはそれらのいずれかの2つ以上の組合せ、一般的にはイオン交換、沈殿(または、析出:precipitation)および吸着、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、水溶液から除去および/または分離し得る。この文脈において、「不純物」または「浸出不純物」なる用語は、コバルト、ニッケル、マンガンではない金属をいうが、不要な非金属または半金属を含み得る。例示的な液体浸出不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、ナトリウム、リチウム、カリウム、リン、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、バナジウム、ランタン、アンモニウム、亜硫酸塩、フッ素、フッ化物、塩化物、チタン、鉄、スカンジウム、亜鉛およびジルコニウム、またはそれらの組合せを含む。
【0092】
一実施形態において、浸出液中のアルカリ金属(Na、Li、Kのごとき)(または少なくとも1つのアルカリ金属)液体浸出不純物の濃度は、100,000ppm以下、または80,000ppm以下、または60,000ppm以下、または50,000ppm以下、または40,000ppm以下、または30,000ppm以下、または20,000ppm以下、または15,000ppm以下、または10,000ppm以下、または7,000ppm以下、または5,000ppm以下、または4,000ppm以下、または3,000ppm以下、または2,500ppm以下、または2,000ppm以下である。もう一つの実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アルカリ金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:10より大きく、または約1:5より大きく、または約1:1より大きく、または約5:1より大きく、または約10:1より大きく、または約20:1より大きく、または約50:1より大きく、または約80:1より大きく、または約100:1より大きく、または約120:1より大きく、または約150:1より大きく、または約180:1より大きく、または約200:1より大きくてもよい。もう一つの実施形態において、浸出液中のアルカリ金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)に対する少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)のモル比は、約1:1未満、または約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満で有り得る。もう一つの実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アルカリ金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:10~23,000:1、または約1:10~100,000:1、または約1:10~300,000:1で有り得る。
【0093】
一実施形態において、浸出液中のアニオン種液体浸出不純物(FおよびClのごとき(但し、酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩を除く)(または少なくとも1つのアニオン種液体不純物)の濃度は、100,000ppm以下、または80,000ppm以下、または60,000ppm以下、または50,000ppm以下、または40,000ppm以下、または30,000ppm以下、または20,000ppm以下、または10,000ppm以下、または5,000ppm以下、または4,000ppm以下、特に、3,000ppm以下、または2,500ppm以下、または2,000ppm以下である。もう一つの実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アニオン種液体浸出不純物(または少なくとも1つのアニオン種液体不純物)のモル比は、約1:10より大きく、または約1:5より大きく、または約1:1より大きく、または約5:1より大きく、または約10:1より大きく、または約20:1より大きく、または約50:1より大きく、または約80:1より大きく、または約100:1より大きく、または約120:1より大きく、または約150:1より大きく、または約180:1より大きく、または約200:1より大きくてもよい。もう一つの実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アニオン種液体浸出不純物(または少なくとも1つのアニオン性種不純物)のモル比(または質量比)は、約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満で有り得る。
【0094】
もう一つの実施形態において、浸出液中のアルカリ土類金属液体浸出不純物(CaおよびMgのごとき)(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)の濃度は、50,000ppm未満、または40,000ppm未満、または30,000ppm未満、または20,000ppm未満、または10,000ppm未満、または5,000ppm未満、または1,000ppm未満、または800ppm未満、または600ppm未満、または500ppm未満、または400ppm未満、または300ppm未満、または250ppm未満、または200ppm未満である。さらなる実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アルカリ土類金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属液体不純物)のモル比は、約500:1より大きい、または約1000:1より大きい、または約1500:1より大きい、または約2000:1より大きい。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アルカリ土類金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属液体不純物)のモル比は、約300,000,000:1~約1:10;または約1:10より大きい、または1:1より大きい。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-アルカリ土類金属液体浸出不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属液体不純物)のモル比は、1:10未満、または1:5未満、または1:1未満、または約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満である。
【0095】
さらなる実施形態において、浸出液中の金属およびメタロイド液体浸出不純物(または少なくとも1つの金属不純物またはメタロイド不純物)の濃度は250ppm未満、特に、50ppm未満である。例示的な金属およびメタロイド溶出不純物は、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、カドミウム、クロム、ケイ素、鉛、スカンジウム、ジルコニウムおよびチタンよりなる群から選択し得る。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-金属およびメタロイド液体浸出不純物(または少なくとも1つの金属またはメタロイド液体不純物)のモル比は、10,000:1未満、または20,000:1未満、または40,000:1未満、または60,000:1未満、または80,000:1未満、または100,000:1未満、または500,000:1未満である。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-Fe不純物のモル比は、約300,000,000:1~約10,000:1;または約10,000:1より大きい、または12,000:1より大きい。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-Fe不純物のモル比は、10,000:1未満、または20,000:1未満、または100,000:1未満、または500,000:1未満、または1,000,000:1未満である。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-Al不純物のモル比は、約300,000,000:1~約10,000:1;または約10,000:1より大きい、または12,000:1より大きい。一実施形態において、浸出液中の少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)-対-Al不純物のモル比は、10,000:1未満、または20,000:1未満、または100,000:1未満である。
【0096】
本発明の一実施形態において、共沈物を製造する方法が提供され、共沈物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含み、方法は、
(i)少なくとも1つの金属および少なくとも1つの不純物を含む供給混合物を提供すること、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物の1つである、工程と、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有する;
還元供給物は、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも1つの金属の多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも1つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも1つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも1つの金属を実質的に含まない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも1つの金属を含む浸出液を形成する工程であって、前記水溶液は、前記浸出液が約1~約7のpHを有するものである、工程と
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、浸出液は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を含み、
前記少なくとも1つの金属を含む水性供給溶液を提供し、前記水性供給溶液は浸出液である;ならびに
(ii)供給溶液のpHを、約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、(a)前記少なくとも1つの金属を含む沈殿物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供する、工程を
を含む。
この実施形態において、方法は、工程(ii)がニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む(または3つの金属を含む)共沈物を提供するように、少なくとも1つの金属と水性供給溶液とを混合する工程をさらに含み得る。
【0097】
一実施形態において、工程(ii)の供給溶液中の前記少なくとも1つの不純物の少なくとも1%、または前記少なくとも1つの不純物の少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、特に、前記少なくとも1つの不純物の少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%が、共沈殿後の上澄み中に、または共沈物を洗浄した後の洗浄溶液中に、または上澄みおよび洗浄溶液の双方の組合せに存在し得る。また、少なくとも1つの不純物は、複数の不純物で有り得る。上澄み、洗浄溶液、またはその双方に含まれ得る水性供給溶液中の各不純物の量は、各不純物について異なり得る。
【0098】
本発明の一実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を製造する方法が提供され、該方法は、
(i)少なくとも2つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つである、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有する;
還元供給物が、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも2つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも2つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも2つの金属を実質的に有しない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも2つの金属を含む浸出液を形成する工程であって、前記水溶液は、前記浸出液が約1~約7のpHを有するものである、工程と
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、浸出液は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を含む、
前記少なくとも2つの金属を含む水性供給溶液を提供するように、前記水性供給溶液は浸出液である;ならびに
(ii)供給溶液から前記少なくとも2つの金属を共沈させるように、供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整する工程
を含む。
【0099】
一実施形態において、共沈物中の少なくとも一つの不純物は、選択的沈殿を介して制御し得る。共沈物に沈殿する水性供給溶液中に、少なくとも1つの不純物の初期量の100%未満、または90%未満、または80%未満、または70%未満、または50%未満、または30%未満、または10%未満、または5%未満、または1%未満が存在し得る。これは特に、CaおよびMgのごときアルカリ土類金属の場合であろう。
【0100】
一実施形態において、少なくとも1つの不純物は、吸着、吸収、置換、原子置換、相形成、二次相形成、混合相形成、共沈、または液混入(または、同伴:entrainment)のごとき現象によって沈殿(または、析出:precipitate)し得る。アルカリ金属(Li、Na、Kごとき)、アンモニア/アンモニウム、硫黄(硫酸塩または亜硫酸塩の形態の)、およびより少ない程度のアルカリ土類金属、Zn、Cuは、高純度水洗浄、酸洗浄、苛性(または、腐食:caustic)洗浄、炭酸ナトリウム洗浄、アンモニア洗浄、またはそれらの組合せを用いて除去できる。洗浄後、供給水溶液中の量に対して100%未満、99%未満、90%未満、70%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満のこれらの種が、最終共沈物中に存在し得る。
【0101】
工程(i)において、例えば、本願の他の箇所に記載のごとく、いずれかの好適な方法で、前記少なくとも2つの金属(特に、ニッケル、コバルトおよびマンガン)を含む水溶液から1つ以上の不純物を少なくとも部分的に(特に、部分的に)分離および/または除去し得る。
【0102】
したがって、さらなる実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を製造する方法が提供され、方法は、
(i)前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供し、所望により、前記水性供給溶液から1つ以上の不純物を除去および/または分離する工程;ならびに
(ii)供給溶液から前記少なくとも2つの金属を共沈させるように、供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整する工程を含む。
【0103】
さらにもう一つの実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を製造する方法が提供され、方法は、
(i)少なくとも2つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つである、工程、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有する;
還元供給物が、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも2つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも2つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも2つの金属を実質的に有しない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも2つの金属を含む浸出液を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出液が約1~約7のpHを有するものである、工程と
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、浸出液は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を含む、
前記少なくとも2つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供するように、前記水性供給溶液が浸出液であり、所望により、供給溶液から1つ以上の不純物(または前記少なくとも1つの不純物の少なくとも一部)を除去および/または分離する;ならびに
(ii)供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、供給溶液から前記少なくとも2つの金属を共沈殿させること(または(a)前記少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物の少なくとも一部を含む上澄みを提供すること)を含む。
【0104】
1つ以上の不純物を除去および/または分離する工程は、浸出液から1つ以上の不純物を除去および/または分離する工程で有り得る。
【0105】
不純物を所望の程度(または、範囲)まで分離および/または除去する適切な技術は、不純物の性質に基づいて当業者により選択し得る。例えば、不純物の少なくとも一部は固体形態で有り得る。一実施形態において、デカンテーション、ろ過、遠心分離、セメンテーションおよび沈殿、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの技術を用いて、供給溶液(または浸出液)から固体不純物を分離および/または除去し得る。例示的な固体不純物は、鉄、アルミニウム、銅、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、鉛、ケイ素、硫黄、チタン、亜鉛、およびジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0106】
もう一つの例において、不純物の少なくとも一部は液体(または溶解)形態で有り得る。一実施形態において、液体(または溶解)不純物は、イオン交換、沈殿、吸収/吸着、電気化学的還元および蒸留、またはそれらの組合せ;特に、イオン交換、沈殿および吸着、またはそれらの組合せ;または溶媒抽出、イオン交換、沈殿、吸着および吸収、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、供給溶液(または浸出液)から除去し得る。例示的な液体不純物は、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、クロム、フッ素、鉛、カドミウム、ケイ素およびアルミニウム;特に、鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ケイ素およびアルミニウムを含む。
【0107】
イオン交換は、少なくとも1つの不純物、特に、少なくとも1つのメタロイドまたは金属(液体)不純物、またはアルカリ土類金属(液体)不純物を除去するために使用し得る。イオン交換を用いて除去し得る例示的な不純物は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、クロム、カドミウムおよびスカンジウムよりなる群から選択される少なくとも1つ、特に、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅、クロム、カドミウムおよびスカンジウムよりなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。イオン交換は、少なくとも一部の亜鉛を除去するために使用し得る。イオン交換は、少なくとも2回の洗浄工程、特に、2回の洗浄工程で行い得る。イオン交換は、20℃~60℃、または約30℃~50℃、または20℃~40℃、または40℃~60℃;例えば、20、30、40、50または60℃の温度で行い得る。イオン交換のpHは、約2~約7、または約3~約7、または約3~約4、例えば、約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5または7で有り得る。
【0108】
不純物の除去および/または分離は、固体および/または液体および/または気体状の不純物を除去する技術の組合せを用いて行い得る。かくして、不純物の除去および/または分離は、固体の不純物除去および/または分離工程と、液体の不純物除去および/または分離工程とを含み得る。不純物の除去および/または分離は、ガス状不純物の除去および/または分離工程を含み得る。
【0109】
一実施形態において、不純物の除去および/または分離は、少なくとも1つの容器を用いて行い得る。少なくとも1つの容器は、1つまたは2つの容器で有り得る。前記容器は沈降容器(または、沈降用容器:settling vessel)で有り得、その中で液体(混入固体(entrained solid)を含み得る)を沈降させるように構成し得る。前記容器は、少なくとも2つの排出口(または、出口:outlet)を含み得る。前記容器は、液体の排出口を提供するための容器の上部の上部排出口および、沈殿した固体の排出口を提供するための容器の下部の下部排出口を含み得る。
【0110】
一実施形態において、工程(i)は複数の容器を用いて行い得る。一実施形態において、工程(i)は、少なくとも2つの容器(または混合容器);特に、2つの容器(または混合容器)を用いて行われる。一実施形態において、不純物の除去および/または分離は、少なくとも2つの容器(または沈降容器)、特に、2つの容器(または沈降容器)を用いて行われる。
【0111】
一実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンの少なくとも1つまたは2つを含む混合物(または前記の供給混合物)は、特に、撹拌されている第1混合容器中の水溶液に添加する。溶液(混入固体を含む)は、第1沈降容器液体排出口を介して第1混合容器から出て、第1沈降容器液体入口(または、注入口:inlet)を介して第1沈降容器に入る。第1沈降容器は、液体の排出口を提供するための容器の上部の上部排出口および、沈殿した固体の排出口を提供するための容器の下部の下部排出口を少なくとも含む。上部排出口を介して第1沈降容器を出る液体は、第1態様の方法の工程(ii)に進むか、または溶液中の液体不純物を除去する(第1態様の方法の工程(i)のさらなる部分として)ために進み得る。下部排出口を介して第1沈降容器を出た液体/固体は、第2混合容器入口を介して第2混合容器に流れ得る。還元剤または酸化剤および浸出剤を第2混合容器に添加し得る。いくつかの例において、沈降容器は存在しなく、溶液は直接的にフィルターにかけ得る。第2混合容器は撹拌し得る。溶液(混入固体を含む)は、第2混合容器液体排出口を介して第2混合容器から出て、第2沈降容器液体入口を介して第2沈降容器に入る。第2沈降容器は、液体の排出口を提供するための容器の上部の上部排出口と、沈殿した(または、沈降した:settled)固体の排出口を提供するための容器の下部の下部排出口とを少なくとも含む。上部排出口を介して第2沈降容器を出た液体は、第1混合容器の入口に流れ得る。下部排出口を介して第2沈降容器から出た液体/固体は、例えば、スクリュープレスを通過した後、廃棄し得る。この配置の有利さは、これがニッケル、コバルトおよびマンガンが共沈した溶液に残存する酸および還元剤または酸化剤の量を最小化することである。さらに、適切な条件を維持することにより、第1混合容器内の鉄(および銅およびアルミニウムのごとき他の不純物)の量を最小化し得る。いくつかの実施形態において、方法は、3つ以上の混合容器(または反応器)の使用を含み得る。方法は、前記混合容器のいずれかに添加された試薬の量を制御する工程を含み得る。
【0112】
方法は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのモル比を所望のモル比に調整するために、コバルト、マンガン、ニッケルのうちの1つ以上を供給溶液または浸出液に添加する工程を含み得る。適切な所望のモル比は、1:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、または6:2:2のニッケル:コバルト:マンガン、または8:1:1のニッケル:コバルト:マンガンを含み得る。いくつかの実施態様において、所望のモル比は、1:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、2:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、3:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、4:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、5:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、6:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、7:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、8:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、9:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、10:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、5:3:2のニッケル:コバルト:マンガン、9:0.5:0.5のニッケル:コバルト:マンガン、または83:5:12のニッケル:コバルト:マンガンを含み得る。ニッケル:マンガンの所望のモル比は、1:1のニッケル:マンガン、6:2のニッケル:マンガン、または8:1のニッケル:マンガンを含み得る。いくつかの実施形態において、所望のモル比は、1:1のニッケル:マンガン、2:1のニッケル:マンガン、3:1のニッケル:マンガン、4:1のニッケル:マンガン、5:1のニッケル:マンガン、6:1のニッケル:マンガン、7:1のニッケル:マンガン、8:1のニッケル:マンガン、9:1のニッケル:マンガン、10:1ニッケル:マンガン、5:3のニッケル:マンガンまたは9:0.5のニッケル:マンガンを含み得る。コバルト:マンガンの所望のモル比は、1:1のコバルト:マンガン、または6:2のコバルト:マンガン、または8:1のコバルト:マンガンを含み得る。いくつかの実施形態において、所望のモル比は、1:1のコバルト:マンガン、2:1のコバルト:マンガン、3:1のコバルト:マンガン、4:1のコバルト:マンガン、5:1のコバルト:マンガン、6:1のコバルト:マンガン、7:1のコバルト:マンガン、8:1のコバルト:マンガン、9:1のコバルト:マンガン、10:1のコバルト:マンガン、5:3のコバルト:マンガン、または9:0.5のコバルト:マンガンを含み得る。ニッケル:コバルトの所望のモル比は、1:1のニッケル:コバルト、または6:2ニッケル:コバルト、または8:1のニッケル:コバルトを含み得る。いくつかの実施形態において、所望のモル比は、1:1のニッケル:コバルト、2:1のニッケル:コバルト、3:1のニッケル:コバルト、4:1のニッケル:コバルト、5:1のニッケル:コバルト、6:1のニッケル:コバルト、7:1のニッケル:コバルト、8:1のニッケル:コバルト、9:1のニッケル:コバルト、10:1のニッケル:コバルト、5:3のニッケル:コバルトまたは9:0.5のニッケル:コバルトを含み得る。一実施形態において、前記のモル比は、共沈物中のニッケル:コバルト:マンガン比またはニッケル:コバルト比またはニッケル:マンガン比またはコバルト:マンガン比で有り得る。供給溶液中のニッケル、コバルトまたはマンガンのすべてが沈殿するとは限らない。当業者であれば、所望の用途と、最終材料(例えば、カソード材料)中のニッケル:コバルト:マンガンの所望の比率に基づいて、適切な比率を選択できるであろう。
【0113】
溶液に添加されるコバルト、マンガン、ニッケルの1つ以上は、いずれかの適切な形態で有り得る。1つ以上のコバルト含有化合物、マンガン含有化合物またはニッケル含有化合物を添加し得る。例えば、添加されるコバルト、マンガンおよびニッケルは、1つ以上の硫酸塩、水酸化物塩もしくは炭酸塩、またはそれらの混合物、特に、CoSO、NiSOおよび/またはMnSOの形態で有り得る。いくつかの実施態様において、供給物混合物は、各々が独立に、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物である別々の供給物混合物を組合せることによって製造(または、生成:produced)でき、それによって、現在記載されている方法で使用するための複合供給物を製造できる。他の実施態様において、各々が独立して、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物である1を超える供給物混合物を用いて、本明細書に記載の方法により1を超える浸出液を生成でき、次いで、1を超える浸出液をいずれかの適切な比率で、複合浸出液(composite leachate)を提供するように組み合わせ得る。一実施形態において、Ni、CoおよびMn以外の金属(いずれかの適切な形態の)を浸出液または水性供給溶液に添加し得る。これは、存在する他の金属との共沈物の生成を助ける。
【0114】
方法の工程(ii)は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物を生成する。一実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのすべてである。
【0115】
一実施形態において、共沈物中の少なくとも1つの金属(特に、少なくとも2つの金属、より詳細にはニッケル、コバルトおよびマンガンの全て)の1%以上、または10%以上、または20%以上、または50%以上、または60%以上、または80%以上、または90%以上、または99%以上が(浸出される)供給混合物に由来する。一実施形態において、供給物混合物は、組み合わせた複数の供給物混合物で有り得る。一実施形態において、前記複数の供給物混合物の各々は、異なる供給源に由来し得る。
【0116】
共沈工程のpHは、約6.2~約11、または約6.2~約10.5、または約6.2~約9.2、6.2~9、6.2~8、6.2~7、6.2~6.5、6.5~9.2、7~9.2、8~9.2、9~9.2、6.5~9、6.5~8、7~9または7~8、例えば、約6.2、6.3、6.4、6.5、7、7.5、8、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10のpHである。少なくとも2つの金属が共沈する供給溶液が比較的純粋であるならば、pHは約9~9.2が有利で有り得る。
【0117】
本発明者らは、約7.0~約8.6、または6.2と8.6のpH範囲の結果、より高いpH範囲を使用した場合よりも、例えば、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩のごとき不要な不純物の共沈殿または包含が少なくなり得ることを有利に見出したが、pHの選択は、どのような不純物が存在するかおよびそれらの濃度に依存し得る。例えば、マグネシウムは一般的にpH約8.5を超えると水酸化物または酸化物として溶液から沈殿し始め、カルシウムは一般的にpH約10.0を超えると水酸化物または酸化物として溶液から沈殿し始める(しかしながら、これらの不純物の完全な沈殿は、より高いpHが達成されまで達成されず、これらの元素の部分的な沈殿は沈殿の方法に依存してより低いpHで達成し得る)。したがって、共沈は、いくらかの不純物が沈殿(または析出)し始めるpHでさえ行い得る。しかしながら、電池材料の性能に悪影響しないように、または共沈された不純物の所望の量を達成するように、または所望の電池材料の性能を達成するように、不純物の相対的な沈殿量を制御し得る。
【0118】
適当な試薬(塩基のごとき)は、pHを調整するのに使用し得る。試薬(または塩基)の例は、水酸化ナトリウムのごときアルカリまたはアルカリ土類水酸化物を含み得る。しかしながら、塩基は、新鮮な固体(例えば、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシル炭酸塩)のごときニッケル、コバルトおよび/またはマンガン含有材料、またはニッケル、コバルトおよびマンガン沈殿物(工程(ii)によって生成されるごとき、特に、水酸化物沈殿物)で有り得る。
【0119】
工程(ii)は、いずれかの適切な温度または圧力で行い得る。工程(ii)は供給溶液が液体形態である温度および圧力で行い得る。一実施形態において、工程(ii)は約15℃~約25℃、例えば、ほぼ室温で行われる。一実施形態において、工程(ii)は約100℃未満、または約90、85、80、70、60または50℃未満の温度で行われる。もう一つの実施形態において、工程(ii)は約30℃を超える、または約35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃または80℃を超える温度で行われる。一実施形態において、工程(ii)は約25℃~約100℃、または約40℃~95℃、50℃~95℃、60℃~90℃、または70℃~90℃の温度で行われる。一実施形態において、工程(ii)は約80℃の温度で行われる。もう一つの実施形態において、工程(ii)は大気圧で行われる。
【0120】
工程(ii)は、いずれかの適切な塩基を用いて行い得る。一実施形態において、塩基は炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、アンモニア、またはそれらの混合物で有り得る。それは、アンモニアで有り得る。適切な炭酸塩は、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、またはそれらの混合物よりなる群から選択される炭酸塩を含み得る。適切な炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、またはそれらの混合物よりなる群から選択し得る。適切な炭酸水素塩は炭酸水素アンモニウムである。適切な水酸化物は、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムである。
【0121】
少なくとも2つの金属は、酸化物、水酸化物、炭酸塩および/またはヒドロキシル炭酸塩の形態のごとき、いずれかの適切な形態で共沈し得る。
【0122】
少なくとも2つの金属は、ニッケル、コバルトおよびマンガンの3つすべてで有り得る。これらはいずれかの適当なモル比で共沈させることができる。例示的なモル比は、1:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、または6:2:2のニッケル:コバルト:マンガン、または8:1:1のニッケル:コバルト:マンガンを含み得る。いくつかの実施態様において、モル比は、1:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、2:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、3:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、4:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、5:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、6:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、7:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、8:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、9:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、10:1:1のニッケル:コバルト:マンガンまたは9:0.5:0.5ニッケル:コバルト:マンガンを含み得る。
【0123】
工程(ii)は、上澄みから共沈物を分離することを含み得る。かかる分離は、デカンテーションまたはろ過の1つ以上を含み得る。分離は、デカントまたはろ過した共沈物を溶液に再懸濁することを含み得る。分離は、デカントまたはろ過した固体を溶液で洗浄することを含み得る。
【0124】
第1態様の方法の一実施形態において、工程(ii)に続いて、共沈物(特に、ニッケル、コバルトおよびマンガン)を洗浄し得る。これは、初期(または最初)に形成された共沈物中に存在する不純物を溶解および/または除去し得る。洗浄は、少なくとも1回の洗浄工程(または少なくとも2回の洗浄工程)、例えば、少なくとも1回の再懸濁洗浄工程において行い得る。最初に形成された共沈物中の不純物は、会合(associate)または吸着によって存在でき、実質的に沈殿していなくても、洗浄がかかる不純物を除去するために必要とされ得る。一実施形態において、洗浄は、水溶液(特に、蒸留水のごとき比較的純度の高い水溶液)であるか、または塩基、酸もしくはアルカリ試薬(これは、不純物元素の所望の除去を達成し得る)を含む溶液(特に、水溶液)で有り得る。洗浄工程は、複数の洗浄工程を含み得る。前記複数の洗浄工程は、異なる洗浄溶液を利用し得る。これは、種々の不純物の除去を助け得る。これらの洗浄溶液は、固体が混入した汚染溶液を除去し得るし、固体と反応して部分的に共沈した不純物を除去し得るし、その双方で有り得る。
【0125】
方法の一実施形態において、工程(ii)に続いて、共沈物(または沈殿したニッケル、コバルトおよびマンガン)をリチウムと混合し得る。この後、リチウムと共沈物(またはニッケル、コバルトおよびマンガン)を焼成し得る。これはカソード活物質(CAM)を形成し得る。共沈物は、新しい電池(または、バッテリー:battery)のカソード活物質(CAM)として使用するNMC材料を提供するためで有り得る。
【0126】
一実施形態において、焼成リチウム化共沈物は、10mAh/gを超える、または20、50、70、100、120、130、140、150、160、170、180、190、200mAh/gを超える電池性能を提供し得る。この実施形態において、電気化学的性能は、3.0~4.4Vの電圧範囲で0.2Cの充放電速度で行われるコイン型ハーフセル電池試験で測定された場合の第1サイクル容量によって定義される。
【0127】
第1態様の方法のもう一つの実施形態において、工程(ii)に続いて、沈殿および/またはイオン交換によって、上澄みに残存するニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはマンガンを掃去(または、除去もしくはスカベンジ:scavenge)し得る。
【0128】
供給溶液は、1つ以上の不純物を除去する工程の前または後のいずれにおいても、1つ以上の不純物を含み得る。これらの不純物は、Ca2+、Mg2+、Li、Na、K、NH 、S、FおよびClから選択でき;特に、Ca2+、Mg2+、Li、Na、K、S、FおよびClから選択し得る。鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、カドミウム、クロム、ケイ素、鉛、ジルコニウム、チタンのごとき他の不純物は、追加的にまたは代替的に存在し得る。不純物は、最終的な共沈物に含まれる場合、そこから製造されるCAMの性能に悪影響するであろうレベルで供給溶液に含まれ得る。
【0129】
一実施形態において、本明細書に記載の方法は、必要に応じて、Ni、CoおよびMnから選択される少なくとも2つの金属を含む供給溶液を処理して、いくつかの不純物を除去し、所望により、得られた溶液を、溶液中の必要なNi:Mn:Co比(またはNi:Co、Ni:Mn、またはCo:Mn比)を達成するのに十分な量の他のNiおよび/またはCoおよび/またはMn含有溶液と混合することを含み得る。共沈物は、ろ過され、洗浄され、清浄化された共沈物が、不純物に関して好適に純粋で有り得るように、所望により、いずれかの残存する不純物の存在下で溶液から選択的に沈殿され、さらなる処理後に、電池材料としての十分な性能が達成され得るような適切な特性を有する。
【0130】
一実施形態において、共沈物の沈殿は、いくつかの不純物の存在下で行われる。すなわち、供給溶液(または供給溶液を生成するために使用された固体材料)中に存在するいくつかの不純物は、沈殿工程に先立ちその溶液から除去されない場合がある。共沈物中に出現するこれらの不純物の量は、これらの不純物が最初に形成された共沈物中に出現しないか、または最初に形成された共沈物中に出現するが、引き続いての洗浄または除去されるか、またはそれらが電池カソード材料として意図された使用において前駆体材料の十分な性能が達成される濃度および形態で最終共沈物中に出現するように、上流の不純物除去または分離工程の制御、ならびに沈殿工程および引き続いての前駆体洗浄および清浄化工程の制御を介して制御し得る。この文脈において、「最初に形成された共沈物」とは、本明細書ではpH調整後に水性供給溶液から最初に沈殿した物質をいい、「最終共沈物」とは、本明細書に記載されるごときいずれかのその後の精製工程(例えば、洗浄、乾燥)を経て、最初に形成された共沈物から生成された固体材料をいうと理解すべきである。次いで、最終的な共沈物は、リチウムイオン電池製造の前駆材料として使用し得る。一実施形態において、本明細書に記載の共沈物は、最初に形成された共沈物である。
【0131】
前駆材料(または、物質)を製造するための従来または標準的なアプローチは、硫酸塩、金属塩、水酸化物、酸化物、炭酸塩のごとき非常に高純度のNiまたはCoまたはMn材料から出発し、この材料を硫酸塩溶液に溶解することである。次いで、Ni:Co:Mnの必要な比を達成するように3元素の溶液を一緒に混合する。得られた溶液は、不純物元素を全く含有しないか、またはわずかな量で含有する。このNiMnCo溶液は、アンモニアが沈殿反応を好ましく媒介する錯化剤として働くことができるので、アンモニア含有溶液と混合し得る。次いで、水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム、または前記の水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムおよび炭酸塩の組合せを用いて前駆体を沈殿させる。これは、混合Ni/Co/Mn含有酸化物もしくは炭酸塩、または酸化物および炭酸塩の混合物の沈殿を引き起す。次いで、沈殿材料をろ過し、水で洗浄する。また、いずれかの残存する硫酸イオンを抽出させるためのさらな炭酸ナトリウム溶液で時には再度洗浄または混合し得る。このようにして、非常に高純度の供給材料から、適切な電池性能を有する典型的な前駆体材料が製造される。
【0132】
かかる標準的なアプローチについての主な理由は、電池前駆材料の製造が、電池の性能に悪影響しかねないいずれかの不純物元素での電池材料の汚染を回避するため、非常に高純度の供給材料が必要であると考えられているためである。
【0133】
しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、電池材料の性能に悪影響することなく、前駆体の製造工程中にいくらかの元素が存在できることを発見した。これは、前駆体生成物を汚染するか、またはそれらに悪影響することなく、これらの元素を溶液に導入する供給材料およびプロセスを使用することが可能であることを意味する。いくつかの実施形態において、共沈に先立ち、少なくとも1つの不純物を水性供給溶液に添加し得る。これは、(例えば、少なくとも1つの不純物がナトリウム塩およびカリウム塩を含む場合に)共沈工程を支援し得る。
【0134】
本発明の方法において使用される水性供給溶液を調製するために使用される材料は、前記で参照された同時係属出願で議論されているものを含み得る。また、それらは、1以上の不純物も含み得るが、1を超えるNiまたはCoまたはMnのかなりの量を含まないNiまたはCoまたはMn材料も含み得る。一実施形態において、Ni、CoまたはMn材料の少なくとも1つは、少なくとも1つの不純物を含み得る。したがって、前記の同時係属出願について議論された選択的浸出条件も、使用される個々の材料にも本明細書で適用される。これらの不純物は、電池材料として十分な性能が最終的な共沈物によって達成されるような濃度へのpH調整工程に先立ち、水性供給溶液から除去すればよい。これらの不純物のいくつかの存在は、いくつかの例において電池材料の性能を実際に改善し得る。
【0135】
Li(I)、Na(I)およびK(I)のごときアルカリ金属は、一般的に酸性溶液に高度に溶解性(または、可溶性)であり、安定化または酸化沈殿挙動を示さないため、水性供給溶液の調製に使用される浸出条件では典型的に溶解する。Mg(II)のごときアルカリ土類金属は一般的に同様の挙動を示す。また、Ca(II)のごときアルカリ土類金属も一般的に溶解性であるが、しかしながら、硫酸中では種々の硫酸化合物の溶解度によって比較的低濃度に限定できる。したがって、これらの元素は供給溶液中に存在し得る。しかしながら、Li、Na、Kのごときアルカリ金属は、一般的にpH12を超えるまで水溶液に溶解性であり、したがって一般的に有意な沈殿または共沈しない。Mgのごときアルカリ土類金属は、水酸化物または炭酸塩として約pH8~9で沈殿し得る。Caのごときアルカリ土類金属は、炭酸塩として約pH8~9で、水酸化物として約pH9~10で沈殿し得る。したがって、pH、状況によっては塩基の添加、溶液中の元素の初期濃度、共沈工程中の溶液中の元素の最終濃度(およびこの沈殿挙動に影響し得る他の変数、それは、例えば、温度、試薬添加速度、試薬濃度および洗浄条件を含む)のごとき変数の注意深い制御および、状況によっては沈殿試薬の選択は、共沈物(または、複数の沈殿工程および/または複数の洗浄工程を使用するならば、最終共沈物の)形成中のこれらの元素の挙動の制御を可能にし得る。Li、Na、Kは、共沈物が沈殿するpH値よりも高いpH値まで溶解性であるにもかかわらず、これらの元素は、選択的沈殿および洗浄が行われないならば、特に、共沈物沈殿後の上澄み中のこれらの元素の量が、共沈物自体の沈殿のためだけに試薬を添加した場合よりも多い場合に、固体生成物を実質的に汚染し得る。
【0136】
これは、供給溶液を調製するための供給材料として、かなりのLi、Na、K、Mg、またはCaの不純物も含有するいずれかのNiまたはCoまたはMn含有材料を使用でき、選択的溶解および不純物除去および/または分離工程によってのみこれらの不純物を除去するよりむしろ、前駆体の沈殿、洗浄および洗浄工程の制御を含み得る本明細書に記載の方法によって、電池性能に対するこれらの元素のいずれの悪影響も回避し得ることを意味する。
【0137】
本明細書に記載の方法の工程(ii)は、例えば、沈殿試薬として(例えば、供給溶液のpHを調整するために)、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウムのいずれか1つ以上を用いて実施し得る。
【0138】
本明細書に記載の方法の工程(ii)は、いずれかの適切な時間行い得る。例えば、工程(ii)は、少なくとも1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間、36時間または48時間行い得る。
【0139】
供給溶液中のNi、Coおよび/またはMnの濃度、Ni、CoおよびMn溶液の添加速度、pHの調整速度、温度、反応時間、エージング時間、ならびにアンモニアのごとき錯形成イオンの存在のごとき他の多くの因子の注意深い制御を用いて、Ni:Mn:Coの目標比率で前駆体材料の沈殿を実施し、初期共沈物を生成し、次いで、これをろ過および洗浄して、十分な性能を有する電池前駆体材料を達成し得る。最初の共沈物が形成された後、少なくとも2つの金属が存在する環境は、少なくとも2つの金属の酸化を最小化もしくは改善するように、または少なくとも2つの金属の酸化を最大化するように制御し得る。かかる制御は、少なくとも2つの金属もしくは共沈物、または初期共沈物もしくは最終共沈物を取り囲む雰囲気(または、大気:atmosphere)を制御することを含み得る。雰囲気の制御は、雰囲気またはいずれかの気相中の酸素濃度、雰囲気またはいずれかの気相の圧力を制御することを含み得る。
【0140】
水酸化物の形態の適切な共沈物カソード活物質(前駆材料)について、共沈物中のニッケル、マンガンおよび/またはコバルトの量は、好ましくは乾燥固体ベースで少なくとも約60%であるべきであると考えられてきた。その他の約40%は酸化物、または水酸化物、または炭酸塩で有り得る。この60%の材料において、不純物の上限は一般的に、SO 2-、F、Clのごときアニオン種(但し、前記の酸化物、水酸化物、炭酸塩を除く)については3000~4000ppm、アルカリ金属およびアルカリ土類金属(リチウムを除く)(またはアルカリ土類金属)については300ppm、金属およびメタロイドについては50ppmにて規定される。かくして、アニオン(特に、水酸化物、酸化物および炭酸塩を除く)は、約200:1のNMC-対-不純物のモル比(または質量比)を有し得る。300ppmでのCaおよびMg(またはCa、Mg、NaおよびK)は、約2000:1の固体中のNMC-対-不純物のモル比(または質量比)を提供し、例えば、50ppmでのFeは、約12,000:1のNMC-対-不純物のモル比(または質量比)を与える。
【0141】
水性供給溶液中のニッケル、マンガンおよび/またはコバルトの総量は、少なくとも1g/L、または少なくとも5g/L、または少なくとも8g/L、または少なくとも10g/L、または少なくとも15g/L、または少なくとも20g/L、または少なくとも30g/L、または少なくとも50g/L、または少なくとも70g/L、または少なくとも90g/L、または少なくとも120g/L、または少なくとも150g/L、または少なくとも200g/Lで有り得る。
【0142】
一実施形態において、共沈物中の少なくとも2つの金属の量は、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属の100%未満となるように制御される。一実施形態において、共沈物中の少なくとも2つの金属の量は、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属の99%未満、95%未満、90%未満、80%未満、または70%未満、または50%未満、または20%未満となるように制御される。水溶液中の量に対する共沈物中のニッケル、マンガン、コバルトの量は、互いに異なるパーセンテージで有り得るか、または同じで有り得る。
【0143】
一実施形態において、工程(ii)の上澄みは、1mg/L未満、または1mg/Lを超える、または5、10、100、200、500、または1000mg/Lを超えるNi、Co、またはMnを含む。
【0144】
一実施形態において、水性供給溶液中のアルカリ金属(Na、Li、Kのごとき)(または少なくとも1つのアルカリ金属)の濃度は、100,000ppm以下、または80,000ppm以下、または60,000ppm以下、または50,000ppm以下、または40,000ppm以下、または30,000ppm以下、または20,000ppm以下、または15,000ppm以下、または10,000ppm以下、または7,000ppm以下、または5,000ppm以下、または4,000ppm以下、または3,000ppm以下、または2,500ppm以下、または2,000ppm以下である。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:50より大きく、または約1:10より大きく、または約1:5より大きく、または約1:1より大きく、または約5:1より大きく、または約10:1より大きく、または約20:1より大きく、または約50:1より大きく、または約80:1より大きく、または約100:1より大きく、または約120:1より大きく、または約150:1より大きく、または約180:1より大きく、または約200:1より大きくてもよい。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:1未満、または約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満で有り得る。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:10~23,000:1、または約1:10~100,000:1、または約1:10~300,000:1で有り得る。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ金属不純物)のモル比は、約1:50~23,000:1、または約1:50~100,000:1、または約1:50~300,000:1で有り得る。一実施形態において、アルカリ金属不純物は沈殿試薬に由来しない。
【0145】
一実施形態において、共沈物を生じる水性供給溶液中に存在するアルカリ金属のパーセンテージは、100%未満、または99%未満、または90%未満、または50%未満、または20%未満、または1%未満である。
【0146】
もう一つの実施形態において、共沈物は、乾燥固体中の10ppm未満、または250ppm未満、または500ppm未満、または1000ppm未満、または2000ppm未満、または5000ppm未満、または20000ppm未満のアルカリ金属を含む。
【0147】
一実施形態において、水性供給溶液中のアニオン種不純物(FおよびCl(但し、特に、前記の酸化物、水酸化物、硫酸塩または炭酸塩を除く)(または少なくとも1つのアニオン性種不純物)のごとき)の濃度は、100,000ppm以下、または80,000ppm以下、または60,000ppm以下、または50,000ppm以下、または40,000ppm以下、または30,000ppm以下、または20,000ppm以下、または10,000ppm以下、または5,000ppm以下、または4,000ppm以下、特に、3,000ppm以下、または2,500ppm以下、または2,000ppm以下である。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アニオン種不純物(または少なくとも1つのアニオン種不純物)のモル比は、約1:10より大きく、または約1:5より大きく、または約1:1より大きく、または約5:1より大きく、または約10:1より大きく、または約20:1より大きく、または約50:1より大きく、または約80:1より大きく、または約100:1より大きく、または約120:1より大きく、または約150:1より大きく、または約180:1より大きく、または約200:1より大きくてもよい。もう一つの実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アニオン種不純物(または少なくとも1つのアニオン種不純物)のモル比は、約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満で有り得る。
【0148】
一実施形態において、共沈物を生じる水性供給溶液中に存在するアニオン種のパーセンテージは、100%未満、または99%未満、または90%未満、または50%未満、または20%未満、または1%未満である。
【0149】
もう一つの実施形態において、共沈物は、乾燥固体中の10ppm未満、または250ppm未満、または500ppm未満、または1000ppm未満、または2000ppm未満、または5000ppm未満、または20000ppm未満のアニオン(水酸化物、酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩アニオンを除く)を含み得る。
【0150】
理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、リッカー・エントレインメント(liquor entrainment)および原子置換のごとき現象により、いくつかのアニオン(特に、F、PO 3-、Cl、SO 2-およびNO )が、物理的分離が実施された後の共沈物または上澄み中にそれ自体存在し得ると考える。本発明者らは、これらのアニオン性不純物が、特定の方法を用いて大きく制御し得ることを有利に見出した。かかるアニオンは、共沈物を必要な程度まで洗浄または再スラリー化することによって、あるいは洗浄溶液または再スラリー液との反応によって除去し得る。
【0151】
もう一つの実施形態において、水性供給溶液中のアルカリ土類金属不純物(CaおよびMgごとき)(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)の濃度は、900,000ppm未満、または700,000ppm未満、または500,000ppm未満、または200,000ppm未満、または100,000ppm未満、または50,000ppm未満、または40,000ppm未満、または30,000ppm未満、または20,000ppm未満である、または10,000ppm未満、または5,000ppm未満、または1,000ppm未満、または800ppm未満、または600ppm未満、または500ppm未満、または400ppm未満、または300ppm未満、または250ppm未満、または200ppm未満、または150ppm未満、または100ppm未満、または50ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、または5ppm未満、または1ppm未満、または100ppb未満、または10ppb未満である。さらなる実施形態において、水性供給溶液中のアルカリ土類金属不純物(CaおよびMgごとき)(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)の濃度は、900,000ppmを超える、または700,000ppmを超える、または500,000ppmを超える、または200,000ppmを超える、または100,000ppmを超える、または50,000ppmを超える、または40,000ppmを超える、または30,000ppmを超える、または20,000ppm以上である、または10,000ppmを超える、または5,000ppmを超える、または1,000ppmを超える、または800ppmを超える、または600ppmを超える、または500ppmを超える、または400ppmを超える、または300ppmを超える、または250ppmを超える、または200ppmを超える、または150ppmを超える、または100ppmを超える、または50ppmを超える、または20ppmを超える、または10ppmを超える、または5ppmを超える、または1ppmを超える、または100ppbを超える、または10ppbを超える。さらなる実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ土類金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)のモル比は、約1:50より大きい、または約1:20より大きい、または約1:10より大きい、または約1:1より大きい、または約10:1より大きい、または約50:1より大きい、または約100:1より大きい、または約200:1より大きい、または約500:1より大きい、または約1000:1より大きい、または約1500:1より大きい、または約2000:1より大きい、または約5000:1より大きい、または約10000:1より大きい。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ土類金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)のモル比は、約300,000,000:1~約1:10であり;または約1:10より大きい、または1:1より大きい。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属-対-アルカリ土類金属不純物(または少なくとも1つのアルカリ土類金属不純物)のモル比は、1:50未満、または1:20未満、または1:10未満、または1:5未満、または1:1未満、または約5:1未満、または約10:1未満、または約20:1未満、または約50:1未満、または約80:1未満、または約100:1未満、または約120:1未満、または約150:1未満、または約180:1未満、または約200:1未満、または約500:1未満、または約1000:1未満、または約2000:1未満、または約5000:1未満、または約10000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:アルカリ土類金属の(重量)比は、10,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:カルシウムの(重量)比は、10,000:1未満である。さらなる実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:マグネシウムの(重量)比は、10,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:ニッケル、コバルト、マンガンおよびアルカリ土類金属および/またはアルカリ金属以外の金属の比率(重量)比は、6,000:1未満である。
【0152】
一実施形態において、共沈物中に報告する水性供給溶液中に存在するアルカリ土類金属種のパーセンテージは、100%未満、または99%未満、または90%未満、または70%未満、または50%未満、または10%未満、または1%未満、または0.1未満である。
【0153】
もう一つの実施形態において、共沈物は、乾燥固体中のアルカリ土類金属の10ppm未満、または250ppm未満、または500ppm未満、または1000ppm未満、または2000ppm未満、または5000ppm未満、または10000ppm未満を含む。
【0154】
さらなる実施形態において、水性供給溶液中の金属不純物およびメタロイド不純物(または少なくとも1つの金属もしくはメタロイド不純物)の濃度は、250ppm未満、特に、50ppm未満である。さらなる実施形態において、水性供給溶液中の金属不純物およびメタロイド不純物(または少なくとも1つの金属もしくはメタロイド不純物)の濃度は、1ppbを超える、特に、100ppbを超える、または1mg/Lを超える、または5mg/Lを超える、または10mg/Lを超える、または20mg/Lを超える、または50mg/Lを超える。例示的な金属不純物およびメタロイド不純物は、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、カドミウム、クロム、ケイ素、鉛、ジルコニウム、スカンジウム、チタンなどよりなる群から選択し得る。一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-金属不純物およびメタロイド不純物(または少なくとも1つの金属不純物またはメタロイド不純物)のモル比は、50:1未満、または100:1未満、または500:1未満、または1,000:1未満、または5,000:1未満、または10,000:1未満、または20,000:1未満、または40,000:1未満、または60,000:1未満、または80,000:1未満、または100,000:1未満、または500,000:1未満である。一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-Fe不純物のモル比は、約300,000,000:1~約10,000:1;または約10,000:1より大きい、または12,000:1より大きい。一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-Fe不純物のモル比は、10,000:1未満、または20,000:1未満、または100,000:1未満、または500,000:1未満、または1,000,000:1未満である。一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-Al不純物のモル比は、約300,000,000:1~約10,000:1;または約10,000:1より大きい、または12,000:1より大きい。一実施形態において、少なくとも2つの金属-対-Al不純物のモル比は、10,000:1未満、または20,000:1未満、または100,000:1未満である。
【0155】
一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:鉄の(重量)比は16,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:銅の比(重量)比は6,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:アルミニウムの比(重量)比は、10,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:ニオブの(重量)比は、500,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:タングステンの(重量)比は、500,000:1未満である。一実施形態において、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:ジルコニウムの(重量)比は、500,000:1未満である。
【0156】
一実施形態において、共沈物を生じる水性供給溶液中に存在する金属およびメタロイド種のパーセンテージは、90%未満、または10%未満、または1%未満である。
【0157】
もう一つの実施形態において、共沈物は、乾燥固体中の金属およびメタロイド種の10ppm未満、または250ppm未満、または500ppm未満、または1000ppm未満、または2000ppm未満、または5000ppm未満、または10000ppm未満を含む。
【0158】
しかしながら、本発明者らは、いくらかの場合には前記の仕様(specification)がやや任意になり得ることを発見した。例えば、500ppmまたは1000ppmまでの最終的な共沈物中のCaおよびMgは、電池材料の性能に大きな影響を有しないようである。したがって、これらの要素については、より低い比率が許容できるようである。1000:1までの少なくとも2つの金属:Caのカルシウムレベルが、悪影響なくして共沈物中に存在できると考えられる。
【0159】
本明細書の他の箇所に記載のごとく、本発明の方法を用いて最終的な共沈物を製造する場合、これらの元素の多くの沈殿を大きく回避することが可能であるが、他の元素についてはある程度の共沈は比較的回避できない。しかしながら、後者の場合において、不純物の共沈は、最終的な共沈物の性能にほとんど影響しないか、または電池材料に使用した場合に最終的な共沈物の許容できる性能を提供し得る。
【0160】
例としてMgを用いると、100%、100%付近、100%未満、50%未満、実質的には10%未満でMgの共沈を達成することが可能できた。溶液からの1%のMg沈殿、およびNi、Co、Mnの沈殿を仮定すると、供給溶液中の少なくとも2つの金属:Mgの10:1の比は、共沈物中の少なくとも2つの金属:Mgの1000:1の比が達成されるのを可能にするであろう。
【0161】
本発明者らは、さらに少ないMgの共沈が可能であることを見出し、1:17の2つの金属:Mgを含む供給溶液が許容できる共沈物を創成するのに実行可能であることを示した。したがって、1:10または1:50さえまでの少なくとも2つの金属:Mgを有する供給溶液は、所望のMg比で許容可能な共沈物を提供し得る。また、1:1または1:10さえまでの少なくとも2つの金属:Mgを有する供給溶液は、許容可能な共沈物を提供し得る。また、Caについても同様の比率が達成可能であろう。
【0162】
Feのごとき他の元素については、共沈は100%、100%付近、または100%未満で有り得る。Feの100%共沈および少なくとも2つの金属の100%沈殿にて、最終共沈物中の濃度目標50ppmにほぼ相当する12000:1の初期共沈物中の少なくとも2つの金属:Feを達成するためには、12000:1の溶液中の少なくとも2つの金属:Feの比が上限であろう。この場合において、方法は、共沈物を生成するためにこの水性供給溶液を依然として処理し得る。しかしながら、100%未満のFeの共沈が実施されるならば、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属:Feの比率は12,000:1より低くなり得、50ppm未満のFeが共沈物中で達成し得る。また、50ppmを超える鉄またはその他の元素は、電池材料の性能にかなりの影響なくして最終的な共沈物中に許容し得る。
【0163】
逆に、不純物を有しない供給物溶液が容易に入手できるか、または本発明で使用される可能性は極めて低い。存在する各不純物、または組み合わせた不純物の実用的な最小値は、約(またはほぼ)2ppb、または約3、5、10、50、100、200もしくは500ppb、または約1、2、5、10、50、100、200、500、1000、2000、5000もしくは10000ppmであり得る。
【0164】
一実施形態において、共沈物中の少なくとも2つの金属に対する少なくとも1つの不純物の量は、水性供給溶液中の少なくとも2つの金属に対する少なくとも1つの不純物の量よりも少ない。一実施形態において、共沈物は、水性供給溶液中の少なくとも1つの不純物の100%未満、特に、90%未満、または80%未満、または70%未満、または60%未満、または50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満を含み得る。一実施形態において、共沈物は、水性供給溶液中のアルカリ金属およびアニオンの100%未満、特に、水性供給溶液中のアルカリ金属およびアニオンの90%未満、または80%未満、または70%未満、または60%未満、または50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満を含み得る。一実施形態において、共沈物は、水性供給溶液中のアルカリ土類金属の100%未満、特に、水性供給溶液中のアルカリ土類金属の90%未満、または80%未満、または70%未満、または60%未満、または50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満を含み得る。一実施形態において、共沈物は、水性供給溶液中のアルカリ金属およびイオン種の100%未満を含み;上澄みは、水性供給溶液中のアルカリ土類金属の少なくとも0.1%、アルカリ金属およびイオン種の100%未満およびアルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属の100%未満を含む。
【0165】
一実施形態において、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの少なくとも1%~最大100%は、不純物供給源(ここに、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガン:不純物の比率は、0.01:1未満、0.1:1未満、1:1未満、10:1未満、100:1未満、500:1未満、1000:1未満、5000:1未満、10,000:1未満、50,000:1未満、200,00:1未満、または500,000:1未満である)に由来する。
【0166】
本発明者らは、不純物溶液を処理することにより、最終生成物中の有益な不純物のレベルを制御できることを有利に見出した。先行技術のプロセスにおいて、かかる有益な不純物(MgまたはAlごとき)は、ドーパントとして別々に添加し得る。本発明の方法は、許容できる共沈物を依然として製造しつつ、このコストを回避するのを可能にし得る。これは、多種多様(wide variety)の供給物が使用されるのを可能にする。また、これは、例えば、アルミニウムおよびマグネシウムのごとき、ドーパントとしても使用し得る不純物を含むいくつかの特定の供給材料の場合、あるいはドーパントとしても使用することができる不純物を含有し得るため、および記載された方法の使用が、それらが上澄みにおよび所望の濃度の共沈物に報告するかかる方法で制御される点でこれらの不純物が存在するのを可能にし得る、再生電池供給材料を使用する場合に特に、重要である。これらすべての場合において、所望のドーパント元素の実質的な部分は、少なくとも1つの金属および少なくとも1つの不純物を含む供給材料に由来し得る。
【0167】
従前に言及のごとく、典型的な先行プロセスは、高度に精製された個々のニッケル、コバルトおよびマンガン硫酸塩原料を特定の比率および純度で溶液に溶解し、その溶液で共沈を行うことであった。かかるプロセスにおいて、かかる塩の供給材料は、例えば、5ppm以下の不純物を有し得る。NMC材料の調製における硫酸ニッケル六水和物塩の使用に必要な仕様の2つの例を下表に示す。NMC材料の製造についてのこれらの塩の非常に低い許容不純物濃度が与えられると、NMC沈殿に使用される溶液は、第2表に示されるごとく、同等に低いNMC:不純物比を有したであろう。不純物のこの非常に低い濃度まで供給材料を精製するコストを回避することは、本発明が、NMC製造に先立ち溶液から前記不純物を除去する高価な工程を実施する必要なく、より多くの不純物を含有する材料からNMC材料を製造できるので、本発明の大きな有利さである。
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【0170】
いくつかの先行技術文献において、NMC共沈用の溶液を調製するために使用される供給材料は、Ni、CoおよびMn元素の少なくとも1つを含むだけでなく、いくつかの不純物元素を含み得る、ならびにNi、CoおよびMn元素の少なくとも1つを含む電池カソードとして従前にまたは使用することができた、NMC様材料または材料である。かかる場合、供給材料中に不純物がほとんど存在しないか、または供給材料中に存在する不純物が低濃度であるため、標準的な高純度供給材料と同等となであろう。かかる場合、共沈は非選択的条件下で行い得る。
【0171】
方法で使用するための供給材料(または工程Aにおける供給混合物)は、リサイクル材料、鉱石生成物(または、製品)、中間鉱石生成物、および/または不純物を含むNMC塩を含み得る。
【0172】
リサイクル材料は、限定されるものではないが、使用済みリチウムイオン電池(黒色塊)、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンを含む使用済み触媒を含み得る。リサイクル材料は、Co/Mn/Niの少なくとも1つおよび、少なくとも1つの不純物を含み得る。多数の先行技術プロセスは、黒色塊について以下のごとき不純物:Zn、Cr、W、P、Ti、S、Pb、K、Mo、Nb、Ba、Cd、V、Rb、Y、Zr、Pt、Sb、Sc、Siおよび/またはSnの存在を考慮していない。かかる不純物は、本出願の方法によって形成された共沈物から実質的にまたは完全に除去し得る。いくらかの場合には、いくらかのリサイクル材料において、不純物元素が汚染を介して存在するか、または初期のリチウムイオン電池の組成における変動を介して存在し得る。
【0173】
ニッケル、コバルトおよびマンガンの1つ以上を含む鉱石および鉱石中間生成物は、共沈に適した水性供給溶液を作成するために浸出し得る。かかる供給物は、本来的に不純物を含有でき、ラテライトおよび硫化物(およびその浮遊濃縮物)、ならびに、MHPおよびMSPのごとき、より処理された供給物を含み得る。本発明者らの知る限り、かかる鉱石および鉱石中間生成物に存在するタイプおよび濃度の不純物を含むかかる供給材料からの共沈物の製造は、従来技術において考慮されていない。
【0174】
不純物を含むNMC塩は、例えば、純粋なCo塩およびMn塩と、少なくとも1つの不純物を含有するNi塩との組合せ、または純粋な塩と不純塩との他の組合せで有り得る。
【0175】
一実施形態において、工程(ii)は、より低いpHで共沈殿を行うこと、塩基の投与方法を変更すること、塩基のタイプを変更すること、沈殿剤を加えること、または水性供給溶液中の少なくとも2つの金属の濃度を調整する工程の工程を含み得る。かかる工程は、共沈の選択性を制御するのを支援し得る。例として、炭酸塩基(炭酸ナトリウムごとき)は、安定なCaCOを形成するため、高濃度のCaを含む水溶液には余り適し得ない。この場合、水酸化物塩基が選択性を高め得る。塩基(またはベース:base)の投与方法は、連続投与、半連続投与、セミバッチ投与、バッチ投与、またはそれらの組合せを含み得る。また、本発明の方法は、共沈物の物理的特性の制御も支援し得る。かかる物理的特性は、粒子径、嵩密度、タップ密度、形態、形状、結晶化度を含み得る。
【0176】
一実施形態において、共沈工程(工程(ii))は、供給溶液に沈殿剤を加えることを含み得る。沈殿剤は、酸化剤、塩基、または有機アニオン化合物で有り得る。酸化剤および還元剤は、本明細書の他の箇所で定義した通りで有り得る。有機アニオン化合物は、シュウ酸塩を含み得る。沈殿剤は、少なくとも2つの金属に対して化学量論的量(例えば、少なくとも1、1.5、2、2.5または3当量の沈殿剤)で添加し得る。沈殿剤は、少なくとも2つの金属に対してサブ化学量論的(sub-stoichiometric)量(例えば、1、0.9、0.8、0.7または0.6当量未満の沈殿剤)で添加し得る。サブ化学量論的量の沈殿剤の使用の結果、供給溶液からの少なくとも2つの金属の回収率が100%未満になり得る。
【0177】
共沈工程(工程(ii))に続いて、方法は、リチウムとの混合を付加的に含み得る。それは焼成を含み得る。これらの工程の結果、カソード活物質(CAM)の製造を生じ得る。
【0178】
また、固体中のこれらの元素のある比率を調整または達成するために、工程(ii)に先立ちMn、CoおよびNiの1つ以上の酸化を生じさせ、共沈工程中に不純物元素に関してこれらの元素の選択性を可能とするように、供給溶液への酸化試薬の添加(ガス形態の酸化剤の制御または添加を含み得る)によって酸化を制御することもできる。
【0179】
一旦、共沈物が形成されると、それを単離(または、分離:isolate)するためにいずれかの適切な手段により分離し得る。これらは、沈殿(または、沈降:settling)、遠心分離、ろ過、デカンテーション、およびこれらのいずれかの組合せを含む。方法は、共沈物を単離するために、デカンテーションおよび/またはろ過を含み得る。次いで、単離された共沈物は、洗浄し得る。いずれかの不要な不純物を除去するために、それは適切な洗浄剤で洗浄し得る。適切な洗浄は、アルカリ洗浄、水洗浄、酸洗浄またはアンモニア洗浄である。アルカリ性洗浄は、約9より大きい、または約10、11、12より大きいpHにてで有り得る。
【0180】
共沈物は、所望により洗浄後、リチウムを補足し得る。したがって、方法は、共沈物にリチウムを加えることを含み得る。リチウムは、例えば、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムの形態で有り得る。これは、共沈物をリチウムと物理的に混合するという形態を取り得る。リチウムは、Ni、Co、Mnの合計に対して約1:1を超えるモル比で添加し得る。
【0181】
共沈物は乾燥し得る。いずれかの適切な温度、例えば、約80~約150℃、または約80~100℃、100~150℃、100~130℃、130~150℃または90~120℃、例えば、約80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃または150℃でそれを乾燥し得るか、それは、指定された温度で共沈物に空気または他のガスを通すことによって行い得るし、またはそれは共沈物をその温度で静止させることを含み得る。乾燥時間は、重量基準で約10%未満、または約5、2、1、0.5、0.2または0.1%未満の水分レベルを達成するのに十分で有り得る。乾燥時間は、少なくとも約5時間、または少なくとも約6、7、8、9もしくは10時間、または約5~約20時間、または約5~15時間、5~10時間、10~15時間、15~20時間または7~12時間、例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15時間で有り得る。
【0182】
一実施形態において、第1態様の方法の工程(i)および(ii)を繰り返し得る。すなわち、方法は以下の工程:
(i)前記少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供すること;および
(ii)供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、(a)前記少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供すること;
(iii)上澄みから共沈物を分離すること;
(iv)共沈物を溶液に溶解して、少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)が少なくとも部分的に溶解した溶液を提供すること;および
(v)工程(iv)の溶液のpHを、約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整して、(a)前記少なくとも1つの金属(または少なくとも2つの金属)少なくとも2つの金属を含む共沈物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供すること
を含み得る。
一実施形態において、工程(iv)は、共沈物を酸性溶液に溶解することを含み得る。工程(v)の特徴は、工程(ii)について前記の通りである。この方法は、不純物の容易な分離を有利に可能にする。例えば、工程(v)の溶液のpHは、工程(ii)の溶液のpHよりも高くてもよい。
【0183】
一実施形態において、方法は、共沈物を用いてリチウムイオン電池を製造する工程をさらに含み得る。
【0184】
本発明の第2態様によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含む沈殿物を製造する方法が提供され、該方法は:
(i)前記少なくとも1つの金属を含む水性供給溶液を提供すること;および
(ii)供給溶液から前記少なくとも1つの金属を沈殿させるように、供給溶液のpHを約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整する工程を含む。
【0185】
水性供給物は、少なくとも1つの不純物を含み得る。したがって、供給溶液のpHを調整する工程は、前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供し得る。したがって、第2態様の一実施形態において、沈殿物を製造する方法が提供され、沈殿物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含み、方法は:
(i)前記少なくとも1つの金属および少なくとも1つの不純物を含む水性供給溶液を提供すること;および
(ii)(a)前記少なくとも1つの金属を含む沈殿物;および(b)前記少なくとも1つの不純物を含む上澄みを提供するように、供給溶液のpHを、約6.2~約11、所望により約6.2~約10、または約6.2~約9.2に調整する工程を含む。
【0186】
第2態様の特徴は、第1態様について前記の通りである。文脈が許す場合、第1態様における「少なくとも2つの金属」への参照は、第2態様における「少なくとも1つの金属」への参照になり得る。同様に、文脈が許す場合、第1態様における「共沈物」への参照は、第2態様における「沈殿物」への参照になり得る。
【0187】
第3態様において、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む共沈物(または沈殿物)が提供され、前記共沈物(または沈殿物)は、第1または第2態様の方法によって製造される。
【0188】
本発明は、リチウムイオン電池を製造するための前駆材料としての使用に適した、ニッケル、マンガンおよび/またはコバルトを含む共沈物の形成に指向される。いくつかのレベルの不純物を含むNi、Coおよび/またはMn含有材料の混合物は、例えば、本出願に記載のプロセスを用いて、少なくとも部分的に選択的に溶解し得る。得られた溶液は、必要に応じて、いくつかの不純物を除去するために処理でき、必要なNi:Mn:Co比を達成するために、十分な量の他のNiおよび/またはCoおよび/またはMn含有溶液と混合し得る。ろ過、洗浄、清浄化された生成物は、不純物に関して適切に純粋であり、さらなる処理後に電池材料として十分な性能を達成できるような適切な特性を有する。
【0189】
一実施形態において、共沈物は、約1000ppm未満の鉄、または約500ppm未満の鉄、または約200ppm未満の鉄、または約100ppm未満の鉄、または約50ppm未満の鉄、または約40ppm未満の鉄、または約20ppm未満の鉄、または約10ppm未満の鉄、または約5ppm未満の鉄、または約2.5ppm未満の鉄、または約1ppm未満の鉄を有するか、またはそれらを含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、50,000ppm未満、または20,000ppm未満、10,000ppm未満、5,000ppm未満、2,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、または5ppm未満のマグネシウムを含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、50,000ppm未満、または20,000ppm未満、10,000ppm未満、5,000ppm未満、2,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、または5ppm未満のカルシウムを含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、50,000ppm未満、または20,000ppm未満、10,000ppm未満、5,000ppm未満、2,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、または5ppm未満のアルカリ土類金属を含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、2,000ppm未満、1,500ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満のアルカリ金属を含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、2,000ppm未満、1,500ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満のアルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属を含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、2,000ppm未満、1,500ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満のメタロイドを含む。もう一つの実施形態において、共沈物は、10,000ppm未満、5,000ppm未満、3,000ppm未満、2,000ppm未満、1,500ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、または5ppm未満の水酸化物または炭酸塩以外のアニオン種を含む。
【0190】
第4態様において、本発明は、リチウムイオン電池を製造するための第3態様の共沈物の使用を提供する。
【0191】
本発明の第3および第4態様の特徴は、本発明の第1態様について記載した通りであり得る。
【0192】
本発明の第5態様によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む浸出液を製造する方法が提供され、該方法は:
A.少なくとも2つの金属を含む供給混合物を提供することであって、前記供給混合物は、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つであり:
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有する;
還元供給物が、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも2つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも2つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも2つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも2つの金属を実質的に有しない;
B.前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも2つの金属を含む浸出液を形成することであって、前記水溶液のpHは、前記浸出液が約-1~約7(または約-1~約6、または約1~約7、または約1~約6)のpHを有するものであり、
供給混合物が酸化供給物である場合、処理は、さらに、還元剤を含む試薬の添加を含み;および
供給混合物が還元供給物である場合、処理は、酸化剤を含む試薬の添加を含み;
これにより、浸出液は、酸化状態2の少なくとも2つの金属を含む、ことを含む。
【0193】
第5態様の特徴は、第1または第2態様について前記の通りであり得る。
【0194】
本発明の第6態様によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属を含む浸出液を製造する方法が提供され、方法は、少なくとも2つの金属を含む混合物を、浸出液が約1~約7(または約1~約6)のpHを有するようなpHの水溶液と接触させ、それによって、溶液中の前記少なくとも2つの金属を含む前記浸出液を提供し;ここで、供給混合物中の前記少なくとも2つの金属の少なくとも一部は、2の酸化状態を有する、ことを含む。
【0195】
第6態様の方法は、混合物を還元剤で処理する工程を含み得る。一実施形態において、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの少なくとも一部は酸化状態であり得、処理は、酸化したニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの少なくとも一部を還元し得る。この実施形態は、本発明の第5態様に似ていることに留意されたい。一実施形態において、第6態様の方法は、浸出液から1つ以上の不純物を除去する工程を含み得る。
【0196】
本発明の第6態様の特徴は、本発明の第5態様について記載した通りである。
【0197】
第7態様において、本発明は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属、所望により3種の金属すべてを含む浸出液を提供し、前記浸出液は第5態様の方法によって製造される。
【0198】
第8態様において、本発明は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも2つの金属、所望により3種の金属すべてを含む浸出液を提供し、前記浸出液は第6態様の方法によって製造される。
【0199】
本明細書に記載された特徴のいずれも、本発明の範囲内で本明細書に記載された他の特徴のいずれか1つ以上とのいずれかの組合せで組み合せることができる。
【0200】
一実施形態において、本明細書は特定の金属の溶解、特に、ニッケル、コバルトおよびマンガンの2つまたは3つの溶解に指向される。溶解は、少なくとも部分的に選択的な方法で実施し得る。これは、Ni+Mn、Ni+CoもしくはMn+Co、または実際にNi+Mn+Coを、最小の不純物の溶解および/またはNi、CoもしくはMnの最小の損失と一緒に維持する目的で、約1~約7、または約1~約6の最終pHの制御を使用し、酸化反応および還元反応の制御を使用し、電池前駆材料の沈殿のためにほぼ正確な比率を有する溶液を生成し得る。次いで、プロセスは、得られた溶液を電池前駆体材料の製造に使用できるように、得られた溶液からいくつかの不純物を除去および/または分離する。最初の固体材料に依存して、これは、還元剤、酸化剤、その双方の使用、またはそのいずれでもない使用を必要とし得る。また、材料は、最終生成物に必要なNi、Mn、Coのすべて、またはNi、Mn、Coのすべてを必ずしも含む必要はない。このプロセスは、前駆材料の製造に使用する溶液を製造することを意図している。
【0201】
このプロセスの一態様は、得られる浸出液中のNi:Mn:Coの比率を調整し、NMCタイプの材料の沈殿に使用できるように、選択された金属のかなりの(または、実質的な:substantial)部分が、浸出および不純物除去または分離工程を介して一緒に維持されることである。
【0202】
ある実施形態における本プロセスのための供給混合物は、SALプロセスからの残渣、本プロセスからの生成物、電池からの材料、酸化ニッケル鉱石、MHP(混合水酸化物沈殿物)、MCP(混合炭酸塩沈殿物)またはMSP(混合硫化物沈殿物)のごとき中間ニッケル生成物のごとき他の酸化物材料、硫化ニッケル鉱石、硫化ニッケル濃縮物または硫化ニッケルマットのごとき他の硫化物材料、または金属材料を含むことができ、これらの材料は、Ni、CoおよびMnのうちの少なくとも2つをかなりの量を含む限り、金属材料を含み得る。
【0203】
これらの材料は、含有されたNi、CoおよびMnの酸化状態により一般的に分類できる。ニッケルおよびコバルトは、Ni(0)またはCo(0)と呼ぶことができる、しばしば金属形態で存在する。これらは、Ni(II)またはNi(III)、Co(II)またはCo(III)のイオン形態に酸化し得る。MnはMn(0)、Mn(II)、Mn(III)、Mn(IV)、Mn(VII)の形態で存在できる。これらの元素の他の酸化状態は存在できるが、あまり一般的ではない。本発明者らは、これらの金属を比較的選択的な方法で溶解するために、元素の酸化状態を(II)状態に変化させることが便利であることを見出した。したがって、Ni、Co、Mnの酸化状態が(II)より高いいずれの材料も、所望の(II)形態と比較して酸化されていると考えられ、(II)より低い酸化状態を有するいずれの材料も、所望の(II)形態と比較して還元されていると考えられる。(II)の状態のこれらの元素を得る理由は、その形態において、これら3種の金属がすべて、pH約1~pH約6または7までの硫酸、硝酸または塩酸の酸性溶液にかなり溶解することである。比較的に、Mnの場合の(III)または(IV)はpH3未満のこれらの酸性溶液にだけかなり溶解する。したがって、(II)状態の元素の獲得は、より酸性度の低い条件でそれらを溶解させることが可能である。これは、多数の不純物に対する選択性を提供する。
【0204】
SALプロセスからの残渣は、Ni(II)としてのNiの大部分、Co(III)または固体の混合Co(II)/Co(III)形態としてCoの大部分、およびMn(III)またはMn(IV)としてのMnの大部分を有する。これは酸化供給物に分類される。電池カソード材料は、Ni(III)としてNiの大部分、Co(III)としてCoの大部分、Mn(III)およびMn(IV)としてMnの大部分を有する。これは酸化供給物として分類される。酸化ニッケル鉱石は、Ni(II)またはNi(III)としてNi、Co(II)またはCo(III)としてCo、Mn(II)、Mn(III)およびMn(IV)としてMnを有する。これらは酸化供給物として分類できる。MHPおよびMCPの中間体は、Ni(II)としてNiの大部分、Co(II)としてCoの大部分、Mn(II)としてMnの大部分を有する。これらは未酸化供給物として分類される。
【0205】
MSPおよび他の硫化物材料は、Ni(II)としてNiの大部分、Co(II)としてCoを有する。典型的には、硫化物に関連するMnはほとんど含まれていない。これらの硫化物材料中のNiおよびCoは硫黄と結合しているため、それらを溶解させるためにはNiまたはCoを酸化または還元する必要はないが、NiおよびCoを硫化物形態から遊離させるためには硫黄を酸化させる必要がある。かくして、硫化物源は還元供給物として分類される。
【0206】
金属形態は、Ni(0)としてNiの大部分、Co(0)としてCoの大部分、Mn(0)としてMnの大部分を有するであろうが、金属と関連もする(II)状態のこれらの元素の少量の酸化物形態が存在し得る。したがって、これらは還元供給物として分類される。
【0207】
一般的に、酸化供給物は、適切な還元剤によって還元され、それらが溶解して浸出液を形成するのを可能にする必要があるであろう。未酸化供給物は、浸出液を形成するようにNi、Coおよび/またはMnが溶解するのを可能にするために、かなりの還元剤または酸化剤を必要としないであろう。還元された供給材料は、適切な酸化剤によって酸化され、それらが浸出液を形成するように溶解するのを可能にする必要があるであろう。
【0208】
一実施形態における本アプローチの特徴は、酸化供給において、酸化ニッケルが典型的には還元される第1の元素であり、続いて酸化コバルト、さらに次いで酸化マンガンであろう。これら3つの元素は、所望の+2酸化状態まで還元でき、したがって、浸出液に寄与する各元素の量を制御するような方法で溶解できる。また、還元剤の選択、または還元剤後の酸化剤の使用でさえ、これらの金属の溶解の程度を制御し得る。
【0209】
さらに、この挙動は、還元試薬が還元剤を消費し、かつ/または還元反応によって溶解できる他の元素の多量と反応する前に、かなりの量のNi/Co/Mn金属を還元し、溶解するのを可能にする。Feは、NiおよびCoと同様の挙動を示す元素の一例である。すなわち、FeはFe(II)およびFe(III)の状態で存在でき、Fe(II)がpH約7未満の酸にかなり溶解するが、Fe(III)はpH約3未満でのみかなり溶解する。しかしながら、試薬の添加速度、添加量、試薬の選択、温度、その他のパラメーターの注意深い制御による還元の制御を用いて、Ni、Co、Mnの大部分がそれらの(II)形態に反応した後まで、Fe(III)からFe(II)への還元を停止または最小化し得る。別法として、Ni(II) Co(II)またはMn(II)ではなくFe(II)と反応するか、少なくともNi(II) Co(II)および/またはMn(II)に先立ちFe(II)と反応し、Fe(II)を酸化してFe(III)に戻し、固相に戻す酸化剤の添加を、還元反応の後に行うこともできる。したがって、Ni/Co/Mn含有材料中のNi/Co/MnをFeから離して選択的に溶解を達成できる。次いで、選択的溶解工程に続いて、例えば、デカンテーション、遠心分離、沈降および/またはろ過のごとき固液分離工程を行い得る。
【0210】
還元および酸化を制御するこのアプローチは、硫化物やNi、Co、Mnの金属源のごとき還元物質にも適用できる。硫化物材料を酸化剤と反応させて硫化部分を酸化させ、Ni、Co、Mnを溶解させることができる。酸化剤および溶解は、材料の他の不純物部分が酸化および/または溶解される前に、材料のNi、CoおよびMn部分がかなり酸化および溶解され、それによってNi、CoおよびMnを含有する比較的清浄な溶液を生成するように制御し得る。また、供給材料または溶液は、Mn、Co、Niのかなりの量が酸化および沈殿する前に、Feのごとき不純物元素を酸化および沈殿させるためにさらに酸化し得る。
【0211】
同様に、Ni、Co、Mnの後に、貴金属および白金族金属、または銅、鉛、スズを含むより貴金属でさえの金属を酸化する他の金属材料の溶解を回避するために、酸化範囲を制御しながら、金属を酸化剤と反応させて(例えば、前記のように)、含有されるNi/Co/Mn部分を(II)状態に酸化させて溶解させ得る。また、酸化を用いて、Feのごとき不純物金属を酸化および沈殿でき、Mnを酸化および沈殿させて溶液中のNi:Co:Mnの比率を制御することさえもできる。
【0212】
これらの材料と一般的に関連する(または、会合する:associated)主要な溶出不純物は、アルカリ元素(主な考慮は、Li、Na、Kである)、アルカリ土類元素(主な考慮は、Mg、Caである)、遷移金属(主な考慮は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Cdである)、その他の金属(主な考慮は、Al、Sn、Pbである)、メタロイド(主な考慮は、Si、As、Sbである)である。
【0213】
Li(I)、Na(I)およびK(I)のごとき金属は、酸性溶液に高度に溶解性であり、安定化または酸化沈殿の挙動を示さないため、本明細書に記載のプロセスで使用される浸出条件では典型的には溶解するであろう。Mg(II)は同様の挙動を示す。また、Ca(II)も一般的に溶解性であるが、硫酸中では種々の硫酸カルシウム化合物の溶解度によって比較的低濃度に制限される。一般的に、これらの元素は約8または9より高いpHまで溶液に溶解性であるため、大きな懸念はなく、したがって、それらは、Ni、Coおよび/またはMnを回収するために使用されるいずれかの引き続いての沈殿プロセス中に溶液中に残存するため、電池前駆体生成物を汚染しないであろう。
【0214】
その他の重要な不純物元素については、鉄の溶解は、前記の酸化および還元ならびにpH挙動によって制御できる。Sc(III)、Ti(IV)、V(V)、Cr(III)、Al(III)、Sn(IV)、As(III)、Sb(III)、およびいくらかの範囲のCu(II)、Zn(II)、Cd(II)の溶解は、これらの元素が、より低いpH値にてかなり溶解性であり、約1~7または1~6のpH範囲においてより高いpH値でかなり溶解性ではないので、浸出pHによって制御できる。また、鉛(II)は一般的に溶解性であるが、硫酸中では硫酸鉛化合物の溶解度によって制限されるであろう。Siは一般的に、pH約1~7または1~6の範囲ではかなり溶解性ではない。
【0215】
Cr、Sn、AsおよびSbはすべて、それらの溶解度に影響する他の酸化状態になることができる。一般的に、これらの元素の酸化状態が高い程、より溶解性になり、したがって、前記の酸化状態を達成するようにそれらの酸化または還元を制御でき、今度は、これらの元素に対するNi/Co/Mnの所望の選択性を達成するであろう。
【0216】
前記のごとく、本明細書の一実施形態に記載されるプロセスの目的は、酸化および還元反応ならびに溶液pHの制御によって、最小限の不純物と一緒に溶液中のNi、Coおよび/またはMnを得ることである。
【0217】
pH調整、イオン交換、溶媒抽出、沈殿および/またはセメンテーション反応のごとき引き続いての不純物除去工程は、この溶液からさらに不純物を除去および/または分離するように行い得る。例えば、Cu、ZnおよびCdは、種々のイオン交換または溶媒抽出プロセスによって溶液から除去し得る。別法としてまたは加えて、Ni、CoおよびMnのいずれか2つまたはすべてを、これらが一緒に残存するようにイオン交換または溶媒抽出によって浸出液中の不純物から分離し得る。
【0218】
最終浸出液中のNi:Co:Mnの所望の比率を目的にするように、浸出プロセスにおいて使用する種々の材料の比率を調整し得る。
【0219】
また、さらなるNiまたはCoまたはMnは、必要に応じてNi:Co:Mnの比率を調整するように、不純物除去工程の前または後のいずれかに、浸出液に添加し得る。
【0220】
一実施形態において、最終目的は、電池カソード前駆材料をその溶液から製造できるような必要なNi:Co:Mn比を有し、十分な純度を有する溶液で有り得る。
【0221】
NMCなる用語は、電池の活物質として使用できるNi、Co、Mnを含有するいずれかの材料をいうことに留意すべきである。
【0222】
本発明の好ましい特徴、実施形態および変形は、当業者が本発明を行うのに十分な情報を提供する以下の詳細な説明から理解し得る。詳細な説明は、先の発明の概要の範囲を何ら限定するとはみなされるものではない。
【0223】
本発明の範囲に含まれ得るいずれの他の形態に拘わらず、本発明の好ましい実施形態は、例示のためにのみ、以下の添付図面を参照して今や説明される。
【図面の簡単な説明】
【0224】
図1図1は、本発明の実施形態を含む方法による、固体残渣から得られるニッケル、マンガンおよびコバルトを含む共沈物を製造する方法の流れ図を示す。
図2図2は、本発明の第2実施形態を含む方法による、ニッケル、マンガンおよびコバルトを含む共沈物を製造する第2方法の概略図である。
図3図3は、ろ液量に基づく、酸の予備洗浄工程を用いたコバルト濃縮物からの望ましくない金属の除去を示す。
図4図4aおよび4bは、還元条件下で予備洗浄したコバルト濃縮物を浸出する過程における、pHと比較した各種金属の溶液への回収率のプロットを示す。
図5図5a、図5bおよび図5cは、還元反応を終了する過程における各種金属の溶液相濃度の変化のプロットを示す。
図6図6a~6dは、反応器温度55℃、初期固体5%、SOの化学量論的100%添加で固体を2.5時間で処理した場合の、反応時間およびpHに対する主要元素の溶液への回収率のプロットを示す。使用した固体は、図6a-BMJ-A;図6b-BMJ-B;図6c-BMC;図6d-BMKであった。
図7図7a~7dは、さまざまな条件で酸を添加した、BMK固体を反応器温度55℃、初期固体5%、SOの化学量論的100%添加で処理した場合の、反応時間およびpHに対する主要元素の溶液への回収率のプロットを示す。酸を以下により添加した:図7a-HSOをサンプリングポイントで段階的に添加してpHを4.5に低下させ、SOを2.5時間にわたって添加(31mL/分);図7b-HSOを連続的に添加して200分で化学量論的必要量の100%を与え(1mL/分)、SOを2.5時間にわたって添加(31mL/分);図7c-HSOを連続的に添加して化学量論的必要量の100%を与え(2.2mL/分)、SOを2.5時間にわたって添加(31mL/分);図7c-HSOを連続的に添加し、1.5時間で化学量論的必要量の100%(2.2mL/分)を与え、SOを1.5時間にわたって添加(52mL/分);図7d-反応開始時に化学量論的必要量の100%のHSOを送達し、SOを0.5時間で添加(220mL/分)。図7eは、反応時間およびpHに対する主要元素の溶液への回収率の比較プロットを示し、BMK固体は、反応器温度55℃で、5%の初期固体およびSOなしで処理され、HSOは、連続的に添加して、200分で化学量論的必要量(1mL/分)の100%を得た。
図8図8は、反応時間およびpHに対する主要元素の溶液への回収率のプロットを示し、BMK固体は、反応器温度55℃で、20%の初期固体と100%の化学量論的添加(290mL/分)のSOを1.5時間で処理し、50%のHSOは、連続的に添加して、1.5時間で化学量論的必要量の100%(2.9mL/分)を得た。
図9図9aおよび図9bは、反応時間およびpHに対する主要元素の溶液への回収率のプロットを示し、BMK固体は、5%の初期固体を有する反応器温度で処理され、1.5時間でSOの100%化学量論的添加(52mL/分)、およびHSOを連続的に添加して、1.5時間で化学量論的必要量の100%(2.2mL/分)を得た。反応器の温度は、次の通りである:図9a- 75℃、図9b- 35℃であった。
図10図10は、本発明の一実施形態の方法の流れ図を示す。
図11図11は、本発明のもう一つの実施形態の方法の流れ図を示す。
図12図12は、2.5M NaOHの自動滴定により調整したpHでの75℃、50ml/分の空気でのpH-対-目的金属沈殿量のグラフを示す。
図13図13は、2.5M NaOHの自動滴定により調整したpHでの75℃、50ml/分の空気でのpH-対-不純物元素沈殿量のグラフを示す。
図14図14は、200g/lのNaCOの自動滴定により調整したpHで75℃、50ml/分の空気でのpH-対-目的金属沈殿量のグラフを示す。
図15図15は、200g/lのNaCOの自動滴定で調整したpHで、75℃、50ml/分の空気でのpH-対-不純物元素沈殿量のグラフを示す。
図16図16は、75℃、50ml/分の空気で、固体のMnCOとBNCを添加した後に200g/lのNaCOの自動滴定により初期調整したpHでのpH-対-目的金属沈殿量のグラフを示す。
図17図17は、75℃、50ml/分の空気で、固体のMnCOとBNCを添加した後に200g/lのNaCOの自動滴定により初期調整したpHでのpH-対-不純物元素沈殿量のグラフを示す。
図18図18は、75℃、50ml/分の空気で、200g/lのNaCOの自動滴定により調整したpHでのpH-対-目的金属沈殿量のグラフを示す。塩基添加での150分で固液分離は、180分で生じた。
図19図19は、75℃、50ml/分の空気で、200g/lのNaCOの自動滴定により調整したpHでのpH-対-不純物元素沈殿量のグラフを示す。塩基添加での150分で固液分離は、180分で生じた。
図20図20は、最終NMC組成に対する共沈最終pHおよび初期NMC比率の影響を示す。
図21図21は、異なるNMC最終沈殿pHでのCa2+およびMg2+の沈殿の程度を示す。溶液中の初期の50mg/L Ca+ 200mg/L Mg。NMC比を6:2:2から6:3:2および6:4:2に変更するための、溶液中の初期0.12モル/L Ni、0.02モル/L Co、およびxモル/L Mn(x=0.02,0.04および0.06)。
図22図22は、異なるNMC最終沈殿pHにおけるNi2+、Co2+およびMn2+の沈殿パーセントを示す。NMC比を6:2:2(赤色実線(solid red dot))~6:3:2(赤色丸)、6:4:2(赤色四角)に変化させるための溶液中の初期0.12モル/L Ni、0.02モル/L Co、xモル/LMn(x=0.02,0.04,0.06)。
図23図23は、本発明の一実施形態によるラテライト鉱石試料からの浸出回収率を示す。
図24図24は、本発明の実施形態による調整されたラテライト鉱石浸出液のNMC沈殿からの固体への回収率を示す。
図25図25は、本発明の実施形態によるMSPの硫酸浸出からの溶液への浸出回収率を示す。
図26図26は、本発明の実施形態による、調整された硫化物濃縮物浸出溶液のNMC沈殿からの固体への回収率を示す。
図27図27は、本発明の実施形態による、混合コバルト濃縮物/黒塊の硫酸浸出による溶液への浸出回収率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0225】
(実施形態の説明)
本発明の例示的な方法を今や図1図27を参照して言及する。
【0226】
本発明のニッケル、マンガンおよびコバルトを含む共沈物を製造する第1の例示的方法10を図1に示す。沈殿方法は、主に工程25以降に関する。
【0227】
方法は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物15を、pH約1~6(20℃)の水溶液中で還元剤で処理する工程を含み得る。混合物15において、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの一部は酸化状態にあり、還元剤で処理は、酸化されたニッケル、コバルトおよび/またはマンガンの少なくとも一部を還元し、それにより、溶解したニッケル、コバルトおよびマンガンを含む水溶液を提供する。
【0228】
混合物は、特に、PCT/AU2012/000058に開示されている選択的酸浸出(SAL)プロセスから得られる湿潤フィルターケーキである(但し、リチウムイオン電池からのニッケル、コバルトおよびマンガンを含むカソード材料も使用し得る)。大まかには、湿潤フィルターケーキは、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合水酸化物沈殿物を、ニッケルが酸性溶液に溶解する一方でコバルトを固相で安定化させるpHの酸化剤を含む酸性溶液と接触させ、次いで、引き続いて固相を酸性溶液から分離することによって得られ、固相は少なくともニッケル、コバルトおよびマンガンを含む。この例示的な実施形態において、固相は湿潤フィルターケーキである。
【0229】
浸出剤および還元剤での処理工程において、湿潤フィルターケーキは、酸化形態のコバルト、ニッケルおよび/またはマンガン、すなわち、Co(III)、Co(IV)、Mn(III)、Mn(IV)、Mn(VII)、Ni(III)またはNi(IV)を含み得る。しかしながら、この材料はまた、例えば、Co(II)、Mn(II)またはNi(II)の形態で、未酸化または還元コバルト、マンガンまたはニッケルの相当量を含有し得る。還元コバルト、マンガン、ニッケルは、酸化形態よりもpH1~6の水溶液にはるかにより溶解性である。
【0230】
処理工程が行われる場合、pHは経時的に低下し得る。処理工程を行うための好ましいpHは、約3~4の終点pHであり(但し、より攻撃的な条件下では約2~3の終点pHが適し得る)、処理工程を介してpHは、さらなる浸出剤または塩基の添加を介してこのpHに制御された。好ましい浸出剤は硫酸であるが、塩酸、硝酸、有機酸も適し得る。処理工程中の還元剤は、好ましくは二酸化硫黄ガスであり、これは、コバルト、マンガン、ニッケルを還元するのに十分な強度があるので、水溶液にいずれのさらなる不純物を導入しないためである。処理工程における還元剤の添加は、コバルト、ニッケル、マンガンの還元を制御するために制御された。処理工程は、ガスの損失を制御するために密閉容器内で行われた。還元剤は、混合物中の酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケルの合計モル数に対して約1の化学量論当量の還元剤を用いて、制御された方法で添加された。処理工程は、撹拌しつつ約80℃~約95℃で約2時間、または撹拌しつつ約55℃で約1~5時間行った。
【0231】
処理工程20の後、本発明の水性供給溶液を表す水溶液は、溶解したニッケル、コバルトおよびマンガン、ならびにヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、アンモニウム、亜硫酸塩、フッ素、塩化物、チタン、亜鉛、スカンジウムおよびジルコニウムのごとき不純物;特に、アルミニウム、銅、鉄(例えば、ブラックマス由来の材料から始めるならば)または亜鉛、カルシウム、マグネシウム(鉄およびアルミニウムも)(例えば、MHP由来の材料から始めるならば)を含んだ。また、水溶液は、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、フッ素、チタン、亜鉛、ジルコニウムのごとき不純物を含む混入固体も含んだ。
【0232】
処理工程20の完了後、溶解したニッケル、コバルトおよびマンガンを含む水溶液から1つ以上の不純物を除去した。固体は、処理工程20から混入固体を液体をデカンテーション/ろ過25のための沈降容器に流すことによって液体から除去された。沈降容器から除去された固体は、処理工程20に戻された。沈降容器から除去された液体は、35にて不純物を除去するためにさらに処理された。液体から除去される例示的な不純物は、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムを含みこともでき、これは沈殿および/またはイオン交換分離技術を用いて達成し得る。イオン交換は、例えば、少なくともいくらかの亜鉛の除去を支援し得る。
【0233】
不純物の除去および/または分離後、ニッケル、コバルトおよび/またはマンガンを40にて水溶液から共沈させた。しかしながら、共沈前に、ニッケル、コバルトおよびマンガンの比率を所望の比率に調整するため、または共沈物中に所望の比率を提供するために、さらなるコバルト、ニッケル、マンガンを添加し得る。例示的な比率は、ニッケル:コバルト:マンガンが1:1:1である。添加されるコバルト、マンガンおよびニッケルは、CoSO、NiSOおよび/またはMnSOまたは他のコバルト、マンガンおよびニッケル含有化合物の形態で有り得る。
【0234】
40での共沈工程は、溶解したニッケル、コバルトおよびマンガンを含む溶液のpHを調整することによって行うこともでき、好ましくは、溶液のpHを約7.5~約8.6に調整することによって行い得る。このpH範囲の結果、より高いpH範囲を使用した場合よりも、例えば、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩のごとき不要な不純物のより少ない共沈または混入を生じることが判明した。この工程は80℃、雰囲気圧で行われた。ニッケル、コバルトおよびマンガンは水酸化物の形態で共沈した。0.5%NH溶液を用いた2段階の再懸濁洗浄を使用し得る。
【0235】
次いで、沈殿物は、例えば、45でのデカンティングまたはろ過を介して液体から分離された。有利なことには、さらなる不純物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、硫酸塩のごときいくらかの不純物が溶液中に残存したため、共沈工程を介して除去された。さらに、液体は55にてニッケル、マンガンまたはコバルト回収のために処理され(例えば、沈殿またはイオン交換)、固体はさらに不純物を除去するために洗浄し、リチウムと混合して50にて焼成した。この焼成生成物は、新しい電池のカソード活物質(CAM)としての使用のためにNMC材料として使用し得る。
【0236】
同様の方法110を図2に示す。同様の数字は同様の特徴をいう。しかしながら、図2に示した方法は、オプションの予備洗浄を含む。これは、約3.5の開始pHにて(洗浄が進むにつれてpHは上昇する)弱酸浸出液による洗浄で洗浄でき、その結果、約10%の固体を含む溶液を生じる。かかる予備洗浄は、少なくとも亜鉛、マグネシウム、カルシウムを除去できる得る。
【0237】
図1に示されたものとは対照的に、図2に示された方法は、さらに後述するごとく、向流(counter-current)セットアップも使用する。図2において、2つの混合容器120a、120bおよび2つの沈降容器125a、125bが使用される。図2に示すごとく、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合物は、撹拌されている第1混合容器120a内の水溶液に添加される。溶液(混入固体を含む)は、第1沈降容器液体排出口を介して第1沈降容器120aを出て、第1沈降容器液体入口を介して第1沈降容器125aに入る。第1沈降容器125aは、液体の排出口を提供するための容器の上部の上部排出口と、沈殿した固体の排出口を提供するための容器の下部の下部排出口とを少なくとも含み得る。上部排出口を介して第1沈降容器から出た液体は、溶液中の液体不純物を135で分離する工程に進んだ。下部排出口を介して第1沈降容器125aを出た液体/固体は、第2混合容器入口を介して第2混合容器120bに流入する。還元剤105および浸出剤108が、撹拌されている第2混合容器120bに添加された。溶液(混入固体を含む)は、第2混合容器液体排出口を介して第2混合容器120bを出て、第2沈降容器液体入口を介して第2沈降容器125bに入る。第2沈降容器125bは、液体の排出口を提供するための容器の上部の上部排出口と、沈殿した固体の排出口を提供するための容器の下部の下部排出口とを少なくとも含む。上部排出口を介して第2沈降容器を出た液体は、第1混合容器120aの入口に流れる。下部排出口を介して第2沈降容器を出た液体/固体は、例えば、スクリュープレスを通過した後、130で廃棄される。この配置の有利さは、ニッケル、コバルトおよびマンガンが共沈した溶液に残存する酸および還元剤の量を最小化することである。さらに、第1沈降容器内の鉄の量は、正確な条件を維持することにより最小化された。
【0238】
図1と同様に、115の混合物は、特に、PCT/AU2012/000058に開示された選択的酸浸出(SAL)プロセスから得られた湿潤フィルターケーキである(但し、リチウムイオン電池からのニッケル、コバルトおよびマンガンを含むカソード材料も使用し得る)。SALプロセスは、コバルト、マンガンおよびニッケルの酸化状態と同様、前記で言及されている。
【0239】
再度、処理工程を実行するための好ましいpHは、約3のpHであり、混合容器120a、120bおよび沈降容器125a、125bにおける処理工程を介して、pHは、さらなる浸出剤または塩基の添加を介して、このpHに制御された。好ましい浸出剤は硫酸であるが、塩酸および硝酸も適し得る。処理工程中の還元剤は、好ましくは二酸化硫黄であり、これは、コバルト、マンガン、ニッケルを還元するのに十分な強度があり、水溶液にいずれのさらなる不純物も導入しないためである。コバルト、ニッケルおよび/またはマンガンの還元を制御し、還元剤の利用を最適化するため、処理工程における還元剤の添加を制御した。処理工程は、ガスの損失を制御するために密閉容器で行われた(これはベントされ、オフガスのスクラビングする必要があるであろう)。還元剤は、酸化コバルト、酸化マンガンおよび酸化ニッケルの合計モル数に対して約1化学量論当量の還元剤を用いて、制御された方法で添加された。処理工程は、撹拌しつつ約55℃の温度で約1~5時間行った。
【0240】
処理工程120a、120bの後、水溶液は、溶解したニッケル、コバルトおよびマンガンおよび、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、フッ素、チタン、亜鉛およびジルコニウムのごとき不純物も含んだ。また、水溶液は、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、クロム、銅、鉛、ケイ素、フッ素、チタン、亜鉛およびジルコニウムのごとき不純物を含む混入固体も含んだ。
【0241】
第1沈降容器125aから除去された液体は、135で不純物を除去するためにさらに処理された。液体から除去される例示的な不純物は、鉄、銅、亜鉛およびアルミニウムを含むこともでき、これは沈殿および/またはイオン交換分離技術を用いて達成し得る。
【0242】
不純物の除去および/または分離後、ニッケル、コバルトおよびマンガンを140で水溶液から共沈させた。しかしながら、共沈前に、図1について前記のごとく、ニッケル、コバルトおよびマンガンの比率を所望の比率に調整するために、さらなるコバルト、ニッケルおよび/またはマンガンを添加し得る。140での共沈工程は、図1について前記の通りであった。
【0243】
次いで、沈殿物をデカンテーションまたはフィルターを介して液体から分離した。液体は155でニッケル、マンガンまたはコバルト回収のためにさらに処理(例えば、沈殿またはイオン交換)され、固体はさらなる不純物を除去するために洗浄し、次いで、150でリチウムと混合され、焼成された。この焼成生成物は、新型電池のカソード活物質(CAM)として使用のためのNMC材料を提供するために使用し得る。
【0244】
さらなる実施形態において、不純物分離/共沈殿工程前に、図10または図11に概説された方法を図1および図2に概説された方法において使用し得る。これらの方法において、酸化されたニッケル、コバルト、マンガン材料201(図10)または還元ニッケル、コバルト、マンガン材料251(図11)を、pHを約1~約6または約1~約7にするための酸203/253、所望により水205/255、および酸化剤(207)または還元剤(257)(出発材料に依存する)で処理する。得られた溶液を浸出容器210/260で浸出した後、浸出液をろ過215/265し、不純物固体218/268を除去し得る。この後、浸出液は処理容器220/270(注:浸出容器210/260は、処理容器220/270と同じで有り得る)に送られ、酸化剤222(酸化したNMC材料201から出発する場合)または還元剤272(還元したNMC材料251から開始する場合)が添加され、浸出液中に残存する過剰な還元剤207または酸化剤257を中和する。また、塩基224/274は、pHを増大させるために添加し得る(例えば、浸出容器内の溶液は約3のpHで有り得、処理容器内の溶液は約6のpHで有り得る)。したがって、いくらかの材料は、処理容器220/270内で沈殿でき、次いで、これをろ過230/280して不純物固体232/282およびNMC溶液234/284を提供し得る。
【0245】
方法の例示的結果を以下に提供する。
【0246】
浸出
実施例1:MHP由来の出発材料
酸による予備洗浄
【0247】
この実験において、パイロットプラント(Brisbane Metallurgy Laboratories)に由来するコバルト濃縮物を使用した。コバルト濃縮物は、全溶解および溶液アッセイに基づき、以下の元素組成を有した:61.5 Ni、18.3 Mn、15.0 Co、1.6 Na、0.9 Zn、0.9 Mg、0.7 Fe、0.4 Cu、0.4 Al、0.2 CA。このコバルト濃縮物は、混合水酸化物沈殿物(MHP-固体のニッケル・コバルト混合水酸化物沈殿物)を利用したSALプロセスから調製された。MHPは、コバルトが固相中で安定化し、ニッケルが酸性溶液中に溶解するようなpHの酸化剤を含む酸性溶液と接触させ、次いで、固相を酸性溶液から分離し、固相はニッケル、コバルトおよびマンガンを含み得る。
【0248】
コバルト濃縮物を弱酸で洗浄して、混入溶液および残留水酸化ニッケルに関連する(または、と会合する:associated with)不純物含有量を低下させた。ろ過における固体の高い溶液保持率のため、この実施例において、再スラリー洗浄および圧力フィルターを使用した置換洗浄の組合せが使用された。
【0249】
このプロセスにおいて、最初にコバルト濃縮物(乾燥固体180g)を室温で5g/LのHSOと混合して、20重量%固体を含むスラリーを製造した。次に、スラリーを圧力フィルターに洗浄し、(i)約200mLの溶液が回収された後にろ過を停止し、次いで、(ii)フィルターを減圧し、200mLの1g/LのHSOをフィルターに添加し、ろ過を再開した。1g/LのHSOを合計1Lフィルターに添加するまで、工程(i)および(ii)を繰り返した。残存する溶液をろ過し、約200mLのバッチで収集した。最後の溶液を回収した後、空気をフィルターに30分間吹き込んだ。
【0250】
表1および表2ならびに図3に示すごとく、このプロセスは、浸出される固体のCa(93%)およびMg(93%)の含有量を低下させるのに効果的であり、NiおよびZn(60%)については中程度の効果であった。CoおよびMnの溶液への損失は無視できるものであった(180gの乾燥固体のうち<10mgの損失)。Feおよび最小限のCuは洗い流されなかった。1Lの酸洗浄溶液の最後の500mLは、溶解した金属はほとんど含有されなかった。
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
【0253】
還元剤および酸での処理
洗浄したコバルト濃縮物を5重量%でスラリー化し、加熱し、SOを反応器にバブリングして、実験エンドポイントとしてpH4で固体を減少させた。このエンドポイントは、不純物元素に対するいくらかの選択性を有する従前の試験において、良好な回収率を示したので、選択された。計算ミスにより、初期のSO流量が少なすぎたため、実験を完了させるためには流量を増やさなければならなかった。
【0254】
このプロセスにおいて、最初に、洗浄したコバルト濃縮物を脱イオン水中の5%固体でスラリー化し、55℃に加熱した。次に、12mL/分のSOをスラリーに5時間バブリングした。次いで、SOの流量は、溶液のpHが4を達成するまで、さらに110分間、36mL/分に増加させた。最後に、スラリーをろ過して溶液(ろ液)を回収した。
【0255】
表3および図4a、図4bに示すごとく、還元剤および酸での処理は、目的金属(Ni、MnおよびCo)の>90%を回収した。SOの徐々の添加は、エンドポイント付近までAl、CuおよびFeに対して選択しつつ目的金属の溶出を可能にした。CaおよびMgは目的元素よりも早く溶出したが、最終溶液濃度は、供給固体の効果的な酸洗浄により、低かった(<30mg/L)。
【0256】
【0257】
理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、初期に、SOと水との酸生成反応が、Co3+およびMn4+水酸化物の還元によって圧倒され(overwhelmed)、pHの増大に導びいたと考えている。一旦、大部分の還元が大抵完了すると、pHはpH5付近の2価の水酸化物の溶解によって緩衝されるまで低下し、次いで、溶液への回収が最大に近づくにつれてさらに低下する。
【0258】
還元の終了
従前の項からのろ液を、酸洗浄したコバルト濃縮液(酸化剤として)と80℃で接触させて、溶液中に溶解して残存するいずれかのSOを消費し、鉄を沈殿させた。MnCOを添加して、イオン交換(IX)において予想されるMnの損失を相殺しつつ、pHを増大させ、不純物沈殿を支援したが、不純物沈殿反応に起因する緩衝効果により、pHは(pH約4.8にて)安定したままであった。
【0259】
このプロセスにおいて、最初にろ液を固体5%の洗浄済みコバルト濃縮液(50g)とスラリー化し、80℃に加熱した。1時間後、13.8gのMnCOをスラリーに添加し、8時間後にスラリーをろ過した。この工程のpHは5.1~4.6の範囲であった。
【0260】
表4ならびに図5a、図5bおよび図5cに示すごとく、MnCOを添加した浸出液を80℃で未浸出の固体と接触させた結果、Al、CuおよびFeが迅速に(固体との接触後数分以内に)除去された。NiおよびCoの濃度は比較的安定したままであり、Mnは最初に沈殿(または、析出)し、MnCO添加後に徐々に増加した。
【0261】
【表5】
【0262】
MnCOを添加しなかった従前の酸化試験において、溶液中のCo、NiおよびZn濃度はすべて増加し、最終的なMn濃度は非常に低くなった(この実験で見られた沈殿と同様に、その後の溶解なくして)。pHは、MnCO添加にも拘らず、比較的安定したままであった(固体の添加直後は5.04、残りの試験では4.67~4.87)。
【0263】
イオン交換(IX)
前項かたのろ液を、Lewatit(登録商標)VP OC 1026マクロポーラスイオン交換樹脂(ジ-2-エチルヘキシルホスフェート(D2EHPA)を含有するスチレンジビニルベンゾールコポリマーに基づく;この樹脂はCologneのLanxess社から入手可能)と接触させた。イオン交換樹脂との接触は40℃で2段階で行った。pH制御は、IX接触前に0.1M HSOおよび1M NaOHを使用し、目標pHを3.8~3.9として行った。樹脂を10% HSOで酸洗浄し、次いで、使用前にpH3.5に調整した。以下の段落の添加は、洗浄中の質量変化を考慮し、受入時の樹脂量で示されている。
1.ろ液250mLをボトルに加え、pHを3.9に制御した。
2.120mLの樹脂を加え、ボトルを密閉し、40℃で24時間ボトルローラーに配置した。
3.樹脂をろ去し、溶液を清潔なボトルに加えた。
4.pHを3.8まで調整した。
5.120mLの樹脂を加え、ボトルを密閉し、40℃で4時間ボトルローラーに配置した。
6.樹脂をろ去し、溶液を回収した。
【0264】
従前のイオン交換(IX)試験に基づき、Znの除去を最大化し、Mnの損失を最小化するために、最小限のpH制御で40℃の順次の2接触を選択した。表5および表6は、それぞれの接触前後の溶液アッセイの結果を示す。希釈補正アッセイ(dilution corrected assay)は、洗浄およびコンディショニングから樹脂に保持された溶液を考慮している。双方の接触は、従前の試験と比較して優れたZn除去率(87%および91%)を示したが、Mnの損失は完全には軽減されなかった(15%および16%)。また、いくらかのAlおよびCaも除去され(それぞれ累積的29%および32%)、IXまでFeは、<1mg/Lであった。
【0265】
【表6】
【0266】
【表7】
【0267】
実施例2:リチウムイオン電池由来の出発材料(黒色塊)
材料および装置
この作業に用いた試薬は、食品グレードのSOおよび試薬グレードの98%HSOであった。使用した黒色塊試料の組成を表7に提供する。これらの試料は、破砕され化学洗浄を受けたリチウムイオン電池から得た。
【0268】
【表8】
【0269】
すべての反応は、1.1Lのバッフル付きガラス製反応器中で完了した。温度は熱電対フィードバック制御を有するホットプレートで維持した。撹拌は、高剪断テフロン製インペラーを使用し、800RPMに設定したオーバーヘッドスターラーにより達成した。ガスは、ガス流量計に接続されたガラス製スパージングロッドを用いてスパージングし(または、スパージし:sparged)、ガス添加率を制御した。反応中に最大限のガス分散を確保するため、注意は、スパージャーがインペラーのブレードと一直線上にある一定レベルまで浸漬されることを保証するために行った。
【0270】
方法
必要量の黒色塊を最初に反応器に直接的に秤量した。次いで、必要量の水を加え、反応器を反応温度まで加熱した。一旦、反応温度にて最初の試料をピペットを介して取り、密封したシリンジ中で室温まで冷却した。冷却後、試料はシリンジフィルターでろ過し、硝酸で希釈し、過剰な試料を反応器に戻した。必要に応じて、SOスパージおよび酸ポンプからのホースを反応器に挿入し、タイミングを開始した。試料は、初回試料の概要としての試料方法に従い、実験によって所定の時間間隔で採取した。
【0271】
一旦、反応時間が経過したら、反応器を質量バランス目的のために計量(weighed)し、スラリーを真空ろ過した。次いで、湿潤固体を105℃で一晩乾燥させ、溶液をガラス瓶に保存した。
【0272】
SOおよびHSOの添加率は、化学量論的用量の100%を投与し、すべてのLi、Ni、MnおよびCoを必要な時間でそれらの2価の状態に反応させるのに必要な流量に基づいて計算した。これは、NiおよびCoがすべて3価で存在し、Mnが4価で存在すると仮定している。
【0273】
結果-試料タイプの効果
還元剤としてSOガスのみを使用し、55℃でさらなる酸を添加することなく、4種の黒色塊を処理した。この条件は、コバルト濃縮物で実施された従前に完了した還元浸出試験に対する比較ポイントを提供するので、最初のベースラインとして選定した。すべての試験は固体濃度5%で行った。固体5%は、試料の質量を節約し、最終溶液中の約0.2Mの総金属濃度を目的とするために選択した。0.2Mの金属濃度をその後のNMC沈殿操作の目標(または、標的もしくは目的:target)として選択した。実施した試験の全実験の詳細は、表8に提供される。
【0274】
【表9】
【0275】
表7に要約した試験についての時間の関数としての溶出範囲およびpHプロフィールを図6a~6dに示す。これらの結果を比較すると、BMJ-Bが他の試験試料を上回っていることは明らかである。BMJ-Bは高度に非晶質(または、アモルファス:amorphous)であり、その結果、より結晶性の試料に比較して非常に高い反応性を生じるであろう。本発明者らは、これは試料からのリチウムの除去により生じるようであると考えている。この材料は、結晶構造を破壊し、試料を非晶質化させる脱リチウム化したものである。したがって、必須のより速い速度論を生じ、5時間で90%以上のコバルトを回収できた。カナダ試料(BMC)は最も多くの不純物を含有し、全試料中で最も少ない前処理であった。BMCはコバルトの回収率では同様に行ったが、ニッケルの75%回収率のみを達成できた。本発明者らは、この試料の性能向上は、還元剤として作用し、回収率を改善させる金属不純物(Al、Cu、Fe金属)のより高い濃度に起因すると考えている。BMJ-Aおよび韓国試料(BMK)は、いずれも純粋で高度に結晶性の試料であり、双方は5時間でNi、CoおよびMnの50%回収率だけを達成した。このことから、BMKは十分な試料質量を有し、最も浸出しにくい試料と同等であったため、すべてのさらなる試験の代表試料として選定した。もしこの物質が浸出できるのであれば、すべての黒色塊試料は同様の条件下で浸出可能であるはずなので、最も困難なものを選択した。
【0276】
結果-試薬投与率の影響
試薬添加速度の影響を調べるため、5回の実験を行った。すべての試料は、55℃、固体濃度5%のBMK固体を使用した。SOおよび酸(20%HSO)を表9に従って反応器に加えた。連続酸試験について、酸を蠕動ポンプで添加した。
【0277】
【表10】
【0278】
表9にまとめた試験の溶液回収率を図7a~7dに示す。図7a~7dを図6dと比較すると、いずれの容量のHSOの添加も、かなり改善した回収率および速度論を生じた。
【0279】
2.5時間で100%の化学量論的SOでの酸の段階的添加(図7a)の結果、回収率は5時間で50%から5時間で80%を超えて改善した。この実験について、6時間を含め、その後、pHを3未満にするために大量の酸を添加した。したがって、CoおよびNi回収率の双方において直ちに急上昇した(5%)。この最後の時間で、回収率はすべての目標金属で90%まで増加し、この系が依然として酸によって制限されていることを示した。
【0280】
遅い連続酸試験(図7b)において、化学量論的酸要求量の100%を200分で送達し、100%化学量論的SOを2.5時間で送達するように、酸を蠕動ポンプで供給した。この試験の結果、180分で90%を超える回収率の目標金属を生じた。終了した反応を示すこの時点後に回収率はかなりは変化しなかった。この回収率の値は溶液アッセイに基づき、また、固体の分析は、実際にはこの試験での回収率が98%を超えたことを示したことに留意すべきである。したがって、最終溶液および最終固体アッセイから計算されるヘッド(head)はより正確なはずなので、グラフ中の溶出範囲は低く偏っている。
【0281】
速い連続試験(図7c)において、酸流量およびSO添加量の双方を増加させ、90分で化学量論的必要量の100%を供給した。これらの条件下、90分で全目標金属の約100%が抽出されることが判明した。この時点(または、ポイント)後、目標金属の回収率にはほとんど変化は存在しなかったが、不純物元素は回収され続けた。90分にて、40%のアルミニウムおよび10%の鉄が溶液に回収され、2.5時間後にはそれぞれ60%および15%に増加した。これは、試薬の100%を得るのに必要な時間を超えて反応時間をさらに増加する利益が存在しないことを示す。この試験(図7c)における不純物の回収率を遅い酸試験(図7b)と比較すると、より遅い添加速度での選択性においていくらかの向上が存在することを明らかにした。遅い速度では150分で最大回収率を達成した。この時点にて、10%のAlおよび2%のFeだけを回収した。これと90分での速い添加との比較は、不純物回収率における約6倍増加を示す。
【0282】
図7dは即時酸(immediate acid)試験の結果を示す。この実験において、化学量論的酸要求量の100%が実験開始時に添加され、SOの化学量論的添加は30分で達成された。まさに酸の全量添加は、Ni、MnおよびCoの35~40%、ならびにLiの90%を回収するのに十分であった。これらの回収率は、30分以内にすべての金属について90%を超えてまで増加した。30分後、すべての目標金属は、2.5時間の反応時間にわたり85~90%の回収率に至るまでゆっくりと減少する。60分の時点でニッケルの急降下が存在した。この点は希釈における誤差により生じた外れ値(または、異常値:outlier)であると考えられる。アルミニウムは、酸の添加後60%まで迅速に回収され、この値は経時的に最大78%まで緩やかに増加した。鉄の回収率は、酸回収後10~11%に一貫していた。これは、早い連続酸試験とほぼ同等の選択性を示すが、速度論はかなり増加した。
【0283】
SOを使用せず、酸のみで最終試験(参考例)を行った(図7e)。5時間後、Ni、MnおよびCoの30~40%だけが回収され、Liは80%回収であった。これらの結果は、SOを添加する前の即時酸試験で達成された回収率と一致する。これは、BMK試料について、還元剤なくして、Ni、MnおよびCoの約40%が溶解性であることを示す。
【0284】
結果-固体濃度の影響
が高くなると、反応の程度および速度論に対するより高い固体濃度の影響を調べるために、1つの実験を行った。より高い固体濃度は、より濃縮された浸出液を生じであろうため、調べるために選定した。これは、下流の不純物分離の効率を増加させ、ならびに設定されたスループットを与える必要なリアクター容積を減らすであろう。この試験において、BMK固体を20%固体濃度で55℃で反応させた。酸は、速い連続酸試験と同等の条件(2.9ml/分 50%HSO、290ml/分 SO)で連続的に添加した。この実験において、反応器からのオーバーフローを防止するため、50%HSOを使用した。このより高い酸強度は、溶液の過度の加熱を引き起こし、最初の半時間で温度を約75℃まで増加させた。この後、反応器は冷却水槽に移され、温度は約45℃で一定に保たれた。このため、固体濃度および温度の影響を完全に排除する(deconvoluted)ことはできず、これは、結果を解釈する場合にこの点に留意しなければならない。
【0285】
図8は、20%固体の速い連続試薬条件で実施した実験結果を示す。したがって、5%固体での同等の試験と比較して、全体的な回収率および反応速度が低下し、2時間後には80%の回収率を達成した。しかしながら、実験を終了せざるを得なかった場合に回収率は上昇傾向にあり、かくして、20%固体での完全溶解は可能であると期待される。
【0286】
結果-反応温度の影響
反応範囲および反応速度に対する温度の影響を調べるため、2つの実験を行った。溶解速度を増加させることにより反応速度をさらに改善する試みにおいて、より高い温度を調べた。BMK固体は固体濃度5%で75℃で反応させた。酸は、速い連続酸試験と同等の条件(2.2ml/分 20%HSO、52ml/分 SO)で連続的に添加した。100%を超える値が図9aでは表示されているが、蒸発によるものである可能性が高いことに留意すべきである。実験を介する質量の記録における誤りにより、蒸発による質量損失の推定は可能ではなかった。
【0287】
SOガスの溶液への溶解度を増加させることによって反応速度をさらに改善させる試みにおいて、より低い温度を調べた。BMK固体は5%固体濃度で室温にて反応させた。実験の経過にわたり、温度は自然に30℃~35℃に上昇した。酸は、速い連続酸試験と同等の条件(2.2ml/分 20%HSO、52ml/分 SO)で連続的に添加した。図9bにおいて100%を超える値が表示されているが、蒸発による可能性が高いことに留意すべきである。実験を介して質量の記録に誤りがあったため、蒸発による質量損失の推定は可能ではなかった。
【0288】
図9aに見られるごとく、反応温度の増大の結果、55℃での同等試験と比較して性能が低下した。75℃では、回収率、選択性、速度論はすべて反応温度の増大によって悪影響を受けた。本発明者らは、これはSOの溶解度が低下した結果、金属の還元がより遅くなったためであろうと考えている。同様に、反応温度の低下も、回収率および速度論に悪影響を有した。35℃では、すべての目標金属について90%を超える回収率を達成するためには、120~150分の反応時間を必要とした。
【0289】
沈殿
イオン交換(IX)による不純物の除去
【0290】
以下に示す組成の供給溶液を、Lewatit(登録商標)VP OC 1026マクロポーラスイオン交換樹脂(ジ-2-エチルヘキシルホスフェート(D2EHPA)を含むスチレンジビニルベンゾールコポリマーに基づく)と接触させた。
【0291】
【表11】
【0292】
イオン交換樹脂との接触は40℃で2段階で行った。pH制御は、IX接触前に0.1M HSOおよび1M NaOHを使用し、目標pHを3.8~3.9として行った。樹脂を10% HSOで酸洗浄し、使用前にpH3.5に調整した。以下の段落の添加は、洗浄中の質量変化を考慮し、受入時の樹脂量で示されている。
7.ろ液250mLをボトルに加え、pHを3.9に制御した。
8.120mLの樹脂を加え、ボトルを密閉し、40℃で24時間ボトルローラーに入れた。
9.樹脂をろ過し、溶液を清潔なボトルに加えた。
10.pHを3.8まで調整した。
11.120mLの樹脂を加え、ボトルを密閉し、40℃で4時間ボトルローラーに入れた。
12.樹脂をろ去し、溶液を回収した。
【0293】
従前のイオン交換(IX)試験に基づき、Zn除去を最大化し、Mnの損失を最小化するために、最小限のpH制御で40℃の順次の2接触(two contacts in series)を選択した。表10および表11は、それぞれの接触前後の溶液アッセイの結果を示す。希釈補正アッセイは、洗浄とコンディショニングによって樹脂に保持された溶液を考慮に入れている。双方の接触は、従前の試験と比較して優れたZn除去率(87%および91%)を示したが、Mnの損失は完全には軽減されなかった(15%および16%)。いくらかのAlおよびCaも除去され(それぞれ累積的29%および32%)、FeはIXに入り1mg/L未満となった。
【0294】
【表12】
【0295】
【表13】
【0296】
供給溶液からの不純物の除去
この実験は、合成溶液からの不純物除去に関する調査を要約する。再現性および十分な試料数を確保するため、合成溶液を使用した。この溶液は、浸出時に生成される溶液濃度およびpHを模倣するために創生された。この報告書で調査された主なパラメーターは、pHおよび塩基タイプである。
【0297】
pHを6.2に増加させることにより、アルミニウム、銅、クロム、鉄、亜鉛の不純物の100%を溶液から除去できることが示された。pH5~5.5までで、アルミニウム、クロム、鉄はすべてならびに、銅の大部分が除去されたことが判明した。亜鉛はpH6までかなりには沈殿することはなく、亜鉛の95%および残存する銅はすべて失われた。pHの6.2への増加は、残存する亜鉛が除去され、不純物(CaおよびMgを除く)のない溶液を生じた。計算された溶液仕様に達するために、pH6.2が必要であった。pHの6.2への増加は、約25%のNi、15%のCo、10%のMnの損失を生じた。
【0298】
3つの異なる塩基タイプが試された。水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムはほとんど同一の結果を生成した。すべての不純物は同じpHで沈殿し、目標金属の損失は双方の塩基で一致していた。しかしながら、炭酸ナトリウムの使用の結果、生成した固体のかなり良好な特性を生じた。炭酸マンガンおよび塩基性炭酸ニッケルの組合せの使用は、炭酸ナトリウムと同様の結果を生じた。しかしながら、炭酸マンガンが完全に溶解しなかったため、無駄なマンガンを生じた。この理由のため、不純物除去のための塩基として炭酸ナトリウムを使用することが推奨される。
【0299】
不純物除去を2段階で実施する明確な機会が存在した。最初に、pH5.5にて、溶液中の不純物の大部分を除去できた。この固体は溶液から分離され、廃棄物として処理できた。炭酸塩固体の良好なろ過特性は、固体の迅速かつ容易な分離を可能にする。この段階後、部分的に精製された溶液は、不純物として微量の銅および亜鉛しか含まないであろう。pHの6を超える(理想的には6.2)までの増加は、残存する銅および亜鉛を溶液から取り除くことができるであろう。この結果、このニッケル、コバルトおよびマンガンが失われ、この固体の流れは高い価値を有するであろう。この物質を回収してSAL浸出液に戻し、銅を回収し、亜鉛の不純物を系から除去できた。この概念は、2つの所望のpHレベル(5.5および6.2)の間に固/液分離を含めることで、実験室スケールで実証された。固液分離を含めることで、コバルト、ニッケルおよびマンガンの損失をそれぞれ5%、10%、0%に抑えられることが判明した。
【0300】
ここに示した結果は、プロセスからイオン交換を取り除く可能性を強調するものである。この実験結果は、高価なイオン交換プロセスを必要とせず、沈殿だけで高純度の溶液を製造できることを示す。
【0301】
序論
金属水酸化物の溶解度に対する既知のpH依存性に基づき、水酸化物を溶液から選択的に除去することが可能であると考えられた。考慮された不純物は、鉄、アルミニウム、銅およびカルシウムである。しかしながら、黒色塊試料のアッセイは、マグネシウムおよび亜鉛を含み得ることを示したこの研究で試験されたパラメーターは、pHおよび塩基のタイプである。
【0302】
材料および方法
材料
この研究で使用した試薬は、食品グレードのSOを除き、すべて試薬グレードであった。使用した化学薬品およびストック溶液中の目標濃度を表12に示す。
【0303】
【表14】
【0304】
溶液濃度は、黒色塊の浸出を介して生成される溶液を代表するように選定された。不純物元素は、より高い期待される不純物濃度をシミュレートするために投入された。pHは当初、1の目標値まで下げられた。これはpH約0.5まで超えた(または、オーバーシュート:overshot)した。しかしながら、この開始pHは低すぎたため、沈殿試験中に体積の問題を生じた。これに対抗するため、NaOHを使ってpHを2.6まで増加させた。次いで、溶液が浸出中に生成された溶液をより模倣するように飽和するまで、SOを反応器に散布(または、スパージ)した。この後、pHは再び2.6まで増加した。
【0305】
装置
すべての反応は、1.1Lのバッフル付きガラス製リアクターで完了した。温度は熱電対供給物バック制御付きのホットプレートにより維持した。撹拌は、高剪断テフロン製インペラーで、毎分800回転に設定したオーバーヘッドスターラーにより達成した。ガスは、ガス流量計に接続されたガラス製スパージングロッドを用いてスパージングし、ガス添加速度を制御した。反応中に最大限のガス分散を確保するため、スパージャーがインペラーのブレードと一直線上にある一定レベルまで浸漬されるように注意した。pHは、高温pHプローブに接続されたMethrohm自動滴定装置および、接続されたラップトップを介して実行されるPIDプログラムを用いて制御された。
【0306】
方法論
必要量のストック合成溶液をまず反応器に直接秤量し、反応器を反応温度まで加熱した。反応温度後、最初の試料を採取し、密封したシリンジで室温まで冷却した。冷却後、試料をシリンジフィルターでろ過し、硝酸で希釈し、余分な試料は反応器に戻した。次いで、エアースパージと滴定装置からのホースがリアクターに挿入され、試薬の注入とタイミングが開始された。試料は、同じ試料採取方法にしたがって、実験によって事前決定された時間間隔で採取された。
【0307】
実験終了後、反応器の重量を測定し、水酸化物試料についてはスラリーを遠心分離し、炭酸塩試料については真空ろ過した。次いで、湿潤固体を105℃で一晩乾燥させ、溶液をガラス瓶に保存した。密度測定は反応前と反応後に行った。
【0308】
実験が必要な溶液純度を達成できたかを判断するために、一連の溶液目標濃度を計算した。これらの目標は表13に示され、最終的に沈殿したNMC製品に100%移行すると仮定して計算された。
【0309】
【表15】
【0310】
結果
pHの効果
試験条件と正当性
pHは、目標金属からの不純物元素の分離効率を決定する重要なパラメーターである。pHの影響を調べるため、自動滴定装置を使い、塩基(2.5M NaOH)をストック溶液に投与し、溶液を目標pHに維持した。この目標pHに達した後、このpHを1時間保持した後に試料を採取した。2回目の試料の後、pHコントローラーを次のレベルに調整し、このプロセスを繰り返した。温度は各実験を通じて一定の75℃に保たれた。このようにして3つの実験が行われ、最も決定的な試験結果が本レポートに示され、他は特定のポイントにつき参照した。
【0311】
結果および考察
目視観察と塩基投与量とpHの傾向から、最初の沈殿はpH3.6~4で発生し始めた。溶液をpH4で1時間保持した後、鉄の90%を超えて、AlとCrのほとんどすべてが溶液から除去された。さらにpHの5への増加の結果、Fe、AlおよびCrは完全に除去され、Cu不純物は65%除去された。Cuを完全に除去するためには、溶液をpH6まで上げる必要があり、その時点でZnの94%も除去された。表11の亜鉛溶液の仕様概要を満たすためには、pHを6.2に上げる必要があった。しかしながら、pH6.2において、11%のコバルト、21%のニッケル、7%のマンガンが損失された。pHをこのポイントを超えて上げると、ニッケルの90%以上、コバルトの80%、マンガンの40%が損失された。主要なpH緩衝はpH6.4付近で起こることがわかった。したがって、これは目標金属の損失を減らすために、決して超えてはならない上限を表す。
【0312】
加えて、pH5まで急激に塩基を添加すると、より低いpHにてニッケルの損失が増加することが明らかになった。速い塩基添加により、ニッケルの15%が不純物元素と共沈した。したがって、2時間の期間にわたるゆっくりとpHをpH5.5に上げることを推奨する。銅沈殿を最大にするため、これを1時間保持すべきである。次いで、溶液をpH6.2まで上げ、直ちに溶液から分離する。これは、亜鉛と銅の仕様はこの時点で満たされており、pH6.2でさらに保持してもニッケル、コバルトおよびマンガンの損失が増えるだけだという観察に基づいている。
【0313】
塩基タイプの効果
試験条件と正当性
前節で説明したのと同様の方法を用いて、代替塩基を調査するために2つのさらなる試験を行った。炭酸ナトリウムは、同等に利用可能であるが、ソースに対して典型的により安価であるので、不純物除去に使用される塩基として、NaOHに代わる理想的な候補である。さらに、炭酸アニオンは、水酸化物と比較した、さらなる不純物除去の有利さを可能にし得る。
【0314】
調査された第2の代替塩基は、炭酸ナトリウムと固体の炭酸マンガンおよび塩基性炭酸ニッケル(BNC)との組合せである。これらの化学薬品は安価であり、現場で入手できる可能性があるため、試薬コストを削減する機械を示す。この試験において、不純物除去後の最終溶液のNi:Mn:Co比が6:4:2になり、NMC沈殿における進行中の開発を反映するように、炭酸マンガンとBNCを固体として添加した。これは、高価なコバルト塩の投与が必要となるため、これらの化合物を添加すべき理論的な最大量を示す。金属塩は時間0で添加し、1時間反応させた。この時点後、他の実験と同様に炭酸ナトリウムを加えてpHをさらに調整した。
【0315】
結果および考察
図14および図15に示した結果をNaOHの結果と比較すると、2つの塩基の間に有意差はないことを示す。表14は、両塩基の主な考慮点の比較を示す。これは、NaCOを使用した場合、NaOHと比較して同じ段階で不純物元素が除去されたことを示す。沈殿後に失われた目標金属の量も一致した。したがって、沈殿はpH上昇の結果として起こっており、炭酸アニオンは沈殿を改善しないと結論づけることができる。しかしながら、NaCOが材料ハンドリングにおいて強い有利さを有することは重要である。炭酸塩沈殿中に生成される固体は、水酸化物沈殿で生成される固体よりも沈殿しやすく、ろ過しやすい。
【0316】
【表16】
【0317】
MnCOおよびBNCの添加は、NaCOのみの試験と比較して、有利さは生じなかった(図16および17参照)。不純物除去は同じpHで同じレベルまで達成された。しかしながら、MnCOが完全に溶解しなかったことは、この状況で塩基として作用する能力に限界があることを示すことに注意すべきである。BNCを溶解した結果、ニッケルの回収率は100%より大きく、BNCが4水和物で存在するという仮定が誤りであったことが示された。BNCはすべて溶解し、理論的には、モル比がさらなるニッケルがNMCの沈殿に先立ち系に添加されるのを可能にしたならば、塩基として使用できる。
【0318】
2段階沈殿の効果
NaCOおよびNaOHの沈殿実験の結果に基づいて、このユニットを2つのpHレベルで2つの操作に分割する機会が存在するようである。最初にpH5.5で沈殿させることで、すべてのAl、CrおよびFeを、それぞれ約90%および10%のCuおよびZnとともに除去できる。これは、目標金属の損失を最小限に抑えながら達成できる。これに続いて、固液分離を用いて、不要な低価の廃棄物を除去できた。次いで、溶液をpH6.2まで上昇させ、残存するCuおよびZnを除去できる。これは、Niの約30%の損失、Coの20%の損失、Mnの10%の損失を伴っていた。この材料は価値が高く、回収してプロセスの早期の段階にリサイクルできた。
【0319】
この概念を試験するため、200g/lのNaCO溶液を使用し、約1.5時間かけてゆっくりとpHを5.5まで上昇させる実験が行われた。このpHで1時間保持した後、真空ろ過した。次いで、清浄溶液を再加熱し、pHが6.2になるように塩基投与を再開した。これを1時間保持した後、最終的な固/液分離を行った。
【0320】
結果および考察
期待された結果とは対照的に、固液分離が2段階間で完了した場合、かなり少ない材料がpH6.2で沈殿することが観察された。この観察は、図18および図19に示された結果によって裏付けられた。これらの結果から、固液分離を含めることで、不純物の除去を損なうことなく、Ni、CoおよびMnの保持率が著しく良好になっことは明らかである。NaCOの1段試験に対するこの試験の結果を表15に示す。
【0321】
【表17】
【0322】
共沈物の形成
この実験の目的は、pH試験の関数としてNMC沈殿-不純物沈殿を探求することである。この目的は、不純物CaおよびMgに対して選択的でありつつ、適切な主元素化学(Ni/Co/Mn)を達成するためにNMC前駆体を沈殿させることができる適切なpH範囲および溶液条件を特定することである。弱アルカリ性のpH範囲pH7.6~8.0)において、不純物イオンの大部分(Ca2+およびMg2+)はNMC前駆体と共沈しないことが判明した。この結果は、溶液中の初期NMC組成、アルカリタイプおよび量を調整することにより、このアプローチがNMC前駆体の製造に実行可能であることを示唆する。
【0323】
実験的
500mLのNMC初期溶液(0.2~0.24Mの総NMC、特定の試料については図20を参照)を、200mLのアンモニウム溶液(0.1M)を含む1L反応器に、8mL/分の速度で蠕動ポンプで供給した。3分後、480mLのアルカリ溶液(0.20~0.24M)を同じ流速で同じ反応器に送液する。60分後、残存する液体をすべて反応器に送り込んだ。不活性ガス(N)雰囲気下、ホットプレートを用いてこの反応器を80℃に加熱した。遷移金属およびアルカリ溶液を送液する間(1時間)、800rpmのオーバーヘッド・メカニカル・スターラーを用いて、1L反応器内で激しく混合した。次いで、午後5時まで4時間、撹拌速度は800rpmに留めた。安全上の理由のため、数時間後の間での撹拌速度は600rpmで15~16時間に設定した。総沈殿時間は20~21時間の範囲である。その後、反応器を80℃から室温に冷却した。最終スラリーを真空ろ過でろ過し、沈殿物を得た。異なる試料の最終溶液pHを図20に示す。得られた沈殿物を2段階で洗浄した。第1洗浄において、沈殿物を0.1M NaOH溶液(固体5%程度)に80℃で60分間磁気撹拌を用いて再沈殿させ、その後真空フィルターで固液分離した。第2洗浄は、第1洗浄からの沈殿物を、80℃で60分間磁気撹拌しつつ、2%NHO溶液(固体含有量5%程度)に再沈殿させ、その後、真空フィルターで固液分離し、最終的なNMC前駆体固体を得た。次いで、NMC前駆体を105℃のオーブンで8~10時間乾燥させ、遊離水分を分離した。乾燥後、沈殿物はリチエーションの後、コイン電池の調製に送られる。前駆体中の最終的なNMC比を図20に示す。
【0324】
真の浸出溶液によって調製された試料8を除き、NMC 44~52の試料はすべて、分析グレードのニッケル、コバルトおよびマンガン硫酸塩をDI水に溶かした合成初期NMC溶液によって調製された。これらの合成初期NMC溶液のいくつかは、20mg/LのCaおよび200mg/LのMgを含有する。
【0325】
NMC初期溶液の化学組成は、0.2~0.24MのNi+Co+Mn(NMC)を含有した。NMC初期溶液のNMCモル比は、図20のY軸標識で特定される。例えば、図20の「NMC44(初期6.1:1.8:2.1) pH 9.20」は、このNMC初期溶液(NMC44試料)のNMC初期比率が6.1:1.8:2.1であることを示す。加えて、沈殿が終了した場合、図20の「NMC44(初期6.1:1.8:2.1) pH 9.20」の最終溶液pHは9.20に等しかった。
【0326】
結果および考察
図21は、Ca2+およびMg2+の沈殿範囲(それぞれ50mg/Lおよび200mg/Lの初期供給溶液濃度から)がアルカリ性pH領域(8.1-9.3)で急速に増加し、pH9.3では最大のCaの88.6%、Mgの71.4%に増加するが、Ca2+(5~18%)およびMg2+(1~3%)の沈殿率はpH<8.3では低く留まる。
【0327】
図22は、最終pH>8.6である場合、Ni2+、Co2+およびMn2+の沈殿パーセンテージがかなり高くなることを示す(98~100%)。弱アルカリ性pH領域(8~8.2)において、Ni2+およびCo2+の沈殿パーセンテージは90~100%の範囲でまだかなり類似しているが、Mn2+の沈殿パーセントはNi2+およびCo2+の沈殿パーセンテージよりも相対的に低く、NMC622の適切な化学組成を沈殿させることを複雑にしている。具体的には、初期Mn2+濃度がCMn=0.02M(初期6:2:2)からCMn=0.04M(初期6:3:2)および0.06M(初期6:4:2)に増加する場合、Mn2+の沈殿パーセンテージは~80%から~70%に減少した。弱アルカリ性のpH領域(7.6~8.0)において、Ni2+およびCo2+の沈殿パーセンテージは80~90%の範囲でほぼ同じであるが、Mn2+の沈殿パーセンテージは初期CMn=0.06M(初期6:4:2)で約70%である。Mnの初期濃度が、沈殿物中の正確な最終Mn濃度を試み達成するため、試験中変化させたことに注目されたい。
【0328】
図22に示したMn沈殿パーセンテージには、いくつかの外れ値データが存在する。例えば、pH=7.9(NMC52試料)において、Mn2+の沈殿パーセンテージは94%に達し、これはNi2+およびCo2+の値と同様である。この外れ値は、Nガスで保護されていない(Nガスボンベの枯渇)NMC沈殿プロセス中に、空気による+2から+4へのMn酸化と考える。NMC沈殿中にNガスで保護した別の繰り返し試験(NMC52-R試料、表10参照)において、pH=7.87でMn2+の沈殿パーセンテージが約70%になった。結果はこの仮説を裏付けた。NMC52およびNMC52-Rのさらなる電池性能試験は、NMC沈殿中のN保護が電池性能に不可欠かどうかが明らかにし得る。文献によれば、NMC沈殿中のN保護が必要であることが示唆されているからである。pH=7.7における他の外れ値データは、沈殿反応器における漏れに起因する。
【0329】
図21および図22の結果は、Ca2+およびMg2+の沈殿パーセンテージが低いままである弱アルカリ性pH領域(7.6~8.0)で、市販製品の適切な組成を有する共沈NMC前駆体を最終的に達成するために、より高いMn2+濃度で初期NMC溶液を調製する方法に関する指針を提供する。
【0330】
図20は、異なる沈殿pHにおける、初期溶液中のNMC比および最終固体中のNMC比の関係を示す。図22で議論したように、わずかにアルカリ性および弱アルカリ性のpH領域(pH 7.6~8.0)において、Mn2+の沈殿パーセンテージがNi2+およびCo2+の値よりも低いので、初期溶液中のNMC比は、NMC 6:2:2から6:3:2、6:4:2まで変化した。実験プラクティスについて、水和価数の異なる分析的硫酸金属塩を使用することにより、当初正確なNMC比を維持することは困難である。したがって、図20のY軸は、NMC 6:2:2、6:3:2および6:4:2に対応する正確な初期NMC比、試料名および対応する最終沈殿pHを示し、図20のX軸は、固体NMC前駆体中の最終NMC比を示す。その結果は、試料8(pH 9.32)、NMC44(pH 9.2)、NMC47(pH 8.63)、NMC37-4(pH 8.08)、NMC49(pH 7.7)を含む、市販のNMC622組成に一致するいくつかのNMC前駆体が生成された。また、NMC37-2(pH8.06)、NMC52(pH=7.9)、NMC50(pH7.77)を含む、市販のNMC532と最終的なNMC比が一致する多数のNMC前駆体が存在するる。
【0331】
電池材料の調製
浸出プロセスから精製された溶液は、NMC622前駆体の沈殿に使用された。具体的なNMC共沈条件は、以下の実験セクションに記載される。その後、得られた前駆体をリチウム化して焼成し、NMC622カソード材料を製造した。このNMC622カソード材の電池性能は、市販のNMC622カソード材に匹敵できる。
【0332】
実験-NMC沈殿手順
具体的には、浸出プロセスの浸出溶液(試料8-浸出)、精製溶液(試料8-精製)、最終溶液(試料8-最終)を表16に示す。NMC622前駆体の化学組成を満たすために、余分なNiおよびMn硫酸塩を精製溶液(試料8-精製)に添加し、NMC沈殿に直接的に使用される試料8-最終溶液を生成した。
【0333】
【表18】
【0334】
500mLのNMC初期溶液(0.2Mの総NMC)を、200mLのアンモニウム溶液(0.1M)を含む1L反応器に8mL/分の速度で蠕動ポンプで供給した。3分後、480mLのアルカリ溶液(0.208M)を同じ流速で同じ反応器に送液し始めた。60分後、すべての液体を反応器に送液した。800rpmのオーバーヘッド・メカニカル・スターラーを使用し、1Lの反応器内で混合した。この反応器を不活性N雰囲気下で80℃に加熱するためにホットプレートを使用した。沈殿の滞留時間は8~10時間の範囲である。
【0335】
その後、反応器を80℃から室温まで冷却した。最終スラリーを真空ろ過でろ過し、沈殿物を得た。最終的溶液のpH(または終点pH)は9.32である。得られた沈殿物は2段階の洗浄を介した。第1洗浄は、沈殿物を0.1M NaOH水溶液(固体~5%)に80℃で60分間磁気撹拌しつつ再沈殿させ、その後真空フィルターで固液分離した。第2洗浄は、第1洗浄からの沈殿物を、80℃で60分間磁気撹拌しつつ、2%NHO溶液(固体5%程度)に再沈殿させ、その後、真空フィルターで固液分離し、最終的なNMC前駆体固体を得た。次いで、NMC前駆体を105℃のオーブンで8~10時間乾燥させ、電池調製に送ることができる。前駆体中の最終的なNMC比は5.8:2.2:2.1で、6:2:2の範囲内である。分析は表17に提供する。
【0336】
【表19】
【0337】
結果-バッテリー性能
次いで、前記の方法で得られたNMC前駆体をリチウム化し、NMC活性体を調製する。前駆体はまず、リチウム源としてLiCOの5重量%-超過の化学量論比と混合される。焼成工程については、まず混合物を400~500°Cの低温で1時間予備焼成し、再度粉砕した後、空気雰囲気下で850~900°Cの高温で10時間焼成する。カソードは、N-メチル-2-ピロリジノンにNMC活性(80重量%)、カーボンブラック(10重量%)、ポリフッ化ビニリデン(10重量%)を分散させることにより調製する。次いで、スラリーをアルミホイル上に貼り付け、続いて100℃で24時間乾燥させる。電解質は、EC/DMC(質量比1:1)中のLiPF(1M)を使用した。次いで、リチウム金属アノードを用いてアルゴン充填グローブボックス内で、セルをパッケージし、3.0~4.4Vの電圧範囲でこれらのセルの電気化学的性能を試験した。
【0338】
0.2Cでの試料8カソードの電池性能は、試料の初期比容量が約163mAh/g(ベースライン:170mAh/g)であり、表18の6サイクル後も163mAh/gを超える容量が維持された。バッテリー性能は市販のNMC622バッテリーに匹敵し、その容量は同じ充放電速度で165~170mAh/gの範囲である。また、試料カソードも、六方晶系の良好な結晶構造を示し、Ni-Liの混合が少ない。
【0339】
【表20】
【0340】
実施例3:不純物存在下での沈殿
ニッケル、マンガンおよびコバルト(NMC)を含む混合沈殿物が、広範囲の不純物の存在下で、種々の溶液から生成された。利用した方法論は、不純物の一部または全部の沈殿を回避でき、初期溶液中にこれらの不純物が存在するにも拘らず、電気化学的特性を有する共沈物を生成できた。
【0341】
表19~図32は、一連のNMC沈殿試験から得られた共沈比率の水溶液供給液および上澄みを含む。これらの値の解釈において、NMC:不純物の比率であり、数字が小さいほどNMCに対する不純物のレベルが高いことに留意すべきである。したがって、沈殿後に比率が低下するのは、選択性の証拠である。したがって、表に示した結果は、それぞれの元素に対する選択性を示す。
【0342】
【表21】
【0343】
【表22】
【0344】
【表23】
【0345】
【表24】
【0346】
【表25】
【0347】
【表26】
【0348】
【表27】
【0349】
【表28】
【0350】
【表29】
【0351】
【表30】
【0352】
【表31】
【0353】
【表32】
【0354】
【表33】
【0355】
【表34】
【0356】
表33は、広範囲の元素の水性供給溶液(すなわち、共沈に先立つ)中の濃度(NMC:元素の比率として)を示す。また、この表は電池試験も含み、これらの溶液が電気化学的性能を備えた許容可能な共沈物を生成できることが証明されている。
【0357】
【表35】
【0358】
実施例4:商業規模
共沈プロセスは商業規模で実証された。表34は、各元素のニッケルに対する出発溶液濃度(水性供給溶液濃度)と関連する比率を詳述する詳細を示す。
【0359】
【表36】
【0360】
この溶液を、サブ化学量論的量の炭酸ナトリウムを沈殿剤として用いて共沈させた。サブ化学量論的塩基の使用は、このプロセスでCaおよびMgの大部分が沈殿するのを防ぐために用いられた。この方法の結果、Ni、MnおよびCoの沈殿範囲はそれぞれ95%、80%、95%となった。したがって、規格どおりの材料を製造するためには、出発溶液にさらなる量のMnを含める必要があった。
【0361】
このプロセスから得られた共沈物は、NaおよびSを除去するために、一連の水およびアルカリ洗浄工程に付された。最終的に得られた母液と洗浄固体アッセイを表35に示す。
【0362】
【表37】
【0363】
これらの最終的な溶液と固体組成に基づいて、NMCならびにCa、Mg、Al、Cu、Cr、Fe、K、Na、PおよびSのごとき不純物元素との間に明確な分離が見ることができる。工業的規模で実証されたこの結果は、不純物元素の一部またはすべてよりもNMCを選択的に、不純物元素の存在下でNMCを沈殿させるための、特許で詳述されている1つの方法論を強調している。この材料をリチウム化し、焼成して電池に形成した。この電池は電気化学的性能を示し、初期容量として163mAh/gを達成した。
【0364】
実施例5:商業規模
実施例4に記載したプロセスを、NMC沈殿中にエージングプロセスを含めて繰り返した。表36は、開始濃度とニッケルに関連する比率を詳述する。
【0365】
【表38】
【0366】
この溶液は化学量論的塩基と共沈し、過剰のMnとは共沈しなかった。共沈終了後、溶液をタンクで48時間ねかせた。これは、沈殿したMgの一部を再溶解させ、MgおよびNiの分離効率を高める利益を有した。加えて、かかる方法は、サイクル安定性を向上させるためにドーパントとしてNMC製品に添加されることの多いMgの沈殿範囲をより高度の制御も可能にする。このプロセスにおいて製造される生成物の組成を表37に示す。この材料をリチウム化、焼成し、電気化学試験用の電池に形成した。電池試験の結果、初期容量は170mAh/gを生じた。
【0367】
【表39】
【0368】
実施例6:Ni-ラテライト鉱を加工して直接的にNMCを作成する
浸出:
ニッケルラテライト鉱石試料を硫酸で浸出し、NMC前駆材料の直接的製造に適した溶液を製造した。使用した材料のアッセイを表38に示す。浸出条件は、モル比で1:1のMg:HSO、10%乾燥固体負荷、80℃で6時間であった。浸出後、ニッケルの90%、マグネシウムの80%、および種々の量の不純物元素が溶液に回収された。すべての主要元素の回収率を図23に、浸出溶液の組成を表39に示す。
【0369】
【表40】
【0370】
【表41】
【0371】
不純物除去:
次いで、溶液のpHを用いて、選択的共沈を使用するのに必要なレベルまで不純物を除去した。これは、従前の浸出工程から得られたろ液を加熱し、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを上昇させることにより達成された。鉄を酸化して第二鉄としての沈殿を促進するため、反応器に空気を送り込んだ。そのため、酸化剤として30%のHを用いた第2工程を実施した。この後、固体は精製溶液から分離した。使用した実験条件は、75℃、pH5.5、1時間保持、塩基として200g/L NaCO、空気、第2段階で酸化剤として30% Hの添加であった。最終精製溶液の組成を表40に示す。
【0372】
【表42】
【0373】
NMC共沈:
NMC沈殿に先立ち、Ni濃度を2g/Lに上げ、コバルトおよびマンガンは、溶液が6:4:2 Ni:Mn:Coモル比を有するように調整した。この比率調整は硫酸塩を用いて行われた。NMC沈殿は以下の手順:15%NaCOを6時間投与した後、一晩保持した。75℃、最終pH7.39を2回繰り返した。このプロセス前後の主要元素の溶液濃度を表41に示す。
【0374】
【表43】
【0375】
この共沈物は、水置換洗浄、水リパルプ洗浄、水酸化ナトリウムリパルプ洗浄、弱アンモニア洗浄の3段階の洗浄プロセスを用いて洗浄された。プロセス完了後の各主要元素の全体的な回収率を図24に示す。製造された最終固体の組成を表42に示す。これらの結果は、Mg濃度がNMC金属よりもかなり大きい場合でさえ、Ca/MgのNMCに対する高い選択性を明確に示す。これにより、ラテライトのごとき低品位のNMC金属資源をNMC製造に直接的に使用できるであろう。
【0376】
【表44】
【0377】
バッテリー試験結果:
NMC共沈物から3つのカソードを調製した。得られた初期容量は75mAh/gであり、20サイクル後の容量保持率は84%であった。
【0378】
実施例7:直接的にNMCを製造するための混合された硫化物鉱を処理。
浸出:
硫化物濃縮物試料を硫酸および空気を用いて浸出し、NMC前駆材料の直接製造に適した溶液を製造した。使用した材料のアッセイを表43に示す。使用した実験条件は、80℃、4日間、10%乾燥固体負荷、HSOはpHを2に維持するように投与、空気流量は0.5L/分であった。浸出後、30%のニッケルおよび種々の量の不純物元素が回収された。すべての主要元素の回収率を図25に、浸出液の組成を表44に示す。
【0379】
【表45】
【0380】
【表46】
【0381】
不純物除去:
次いで、溶液のpHを用いて、選択的共沈を使用するのに必要なレベルまで不純物を除去した。これは、従前の浸出工程から得られたろ液を加熱し、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを上昇させることにより達成された。鉄を酸化して第二鉄としての沈殿を促進するため、反応器に空気を送り込んだ。使用した実験条件は、75℃、pHは3→4→5.3→6へと順次上昇、塩基として200g/L NaCO、酸化剤として空気スパージであった。
【0382】
NMC沈殿:
NMC沈殿に先立ち、Ni濃度を高め、コバルトおよびマンガンの濃度を、溶液が6:3:2のNi:Mn:Coモル比を有するように調整した。この比率調整は、高純度の硫酸塩を用いて行われた。NMCの沈殿は以下の手順:5%NaCOの投与6時間、続いて一晩保持、75℃、最終pH7.85で行った。このプロセスの前後の溶液濃度を表45に示す。
【0383】
【表47】
【0384】
この後、水置換洗浄、水リパルプ洗浄、水酸化ナトリウムリパルプ洗浄、弱アンモニア洗浄の3段階洗浄で共沈物を洗浄した。プロセス完了後の各主要元素の全体的な回収率を図26に示す。製造された最終固体の組成を表46に示す。
【0385】
【表48】
【0386】
実施例8:コバルト濃縮物と黒色塊の混合物の浸出例
コバルト濃縮物および黒色塊の50%ブレンドをSOを用いて浸出し、NMCの直接敵製造に適した溶液を製造した。使用した材料のアッセイを表47に示す。実験条件は、55℃、2時間40分、乾燥固体5%負荷、2時間かけて化学量論量の200%になるようなSOスパージであった。浸出後、30%のニッケルおよび種々の量の不純物元素が回収された。すべての主要元素の回収率を図27に、浸出液の組成を表48に示す。
【0387】
【表49】
【0388】
【表50】
【0389】
この後、空気をスパージングしつつ溶液のpHを5.5まで上げる。この条件は、Feが沈殿するのに十分な時間を可能にするため、少なくとも1時間保持する必要がある。このプロセスを用いて、選択的沈殿が使用できるように、Al、Fe、Cu、CrおよびZnのごとき不純物を十分に除去する必要がある。次いで、この溶液は、NMCの製造に適する6:2:2に調整したNi、MnおよびCoのモル比を有するであろう。
【0390】
実施例9:共沈物の洗浄
共沈の直後に、形成された固体は、水、塩基性(炭酸塩、水酸化物またはアンモニア)洗浄または酸洗浄を含むことができる逐次洗浄手順に付される。選択される正確な洗浄方法は、存在する不純物に依存する。この例において、約1トンのバッチの湿式NMCが商業規模で製造された。次いで、これを水:乾燥固体=60:1質量比で水洗浄、続いて10%水酸化ナトリウム水溶液を使用する固体7%の苛性ソーダ再スラリー洗浄を行い、続いて最後に水:乾燥固体=40:1質量比の最終的水洗浄に付した。この一連の手順のアッセイを表49に示す。洗浄工程は、いくつかの不純物元素を除去し、Ca、Cu、K、Mg、Na、SおよびZnのごとき不純物元素のNMC:不純物比を改善することに成功している。
【0391】
【表51】
【0392】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0393】
本明細書および特許請求の範囲(もしあれば)において、「comprises」および「comprising」および「comprising」を含むその派生語は、記載された整数のそれぞれを含むが、1つ以上のさらなる整数の包含を排除するものではない。
【0394】
本明細書全体を介した「一実施形態」または「ある実施形態」への参照は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。かくして、本明細書を通じて種々の箇所での「一実施形態において」または「ある実施形態において」という表現の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態をいうわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つ以上の組合せで、いずれかの適切な方法で組み合せ得る。
【0395】
法令に従い、本発明は構造的または方法的特徴に多かれ少なかれ特化した言語で記載されている。本明細書に記載された手段は、本発明を実施するための好ましい形態を含むため、本発明は図示または記載された特定の特徴に限定されるものではないことが理解されるべきである。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される(もしあれば)添付の特許請求の範囲の適切な範囲内で、そのいずれの形態または変更において特許請求される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共沈物を製造する方法であって、方法が:
共沈物および上澄みを提供するために、少なくとも2つの金属および不純物を含む水性供給溶液のpHを約6.2~10未満に調整する工程;および
前記上澄みから前記共沈物を分離する工程を含み
前記少なくとも2つの金属が、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択され;
前記不純物は、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、フッ素、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウムおよびニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記水性供給溶液において、前記少なくとも2つの金属-対-前記不純物の質量比は50,000:1未満であり;
前記共沈物が:
-前記水性供給溶液中に存在する場合にニッケル;
-前記水性供給溶液中に存在する場合にコバルト;および
-前記水性供給溶液中に存在する場合にマンガン
を含み;ならびに
前記上澄みが前記不純物の少なくとも1つを含み;前記上澄みが10mg/Lを超えるニッケル、コバルトまたはマンガンを含む、方法。
【請求項2】
前記不純物が、ヒ素、アルミニウム、バリウム、カドミウム、炭素、カルシウム、マグネシウム、クロム、銅、鉛、ケイ素、バナジウム、ランタン、ランタニド、アクチニウム、アクチニド、チタン、スカンジウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、モリブデン、白金、ルビジウム、スズ、アンチモン、セレン、ビスマス、ホウ素、イットリウムおよびニオブ、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記少なくとも2つの金属-対-前記不純物の水性供給溶液中の質量比が、5,000:1未満である、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
前記水性供給溶液中の前記少なくとも2つの金属-対-アルカリ土類金属不純物のモル比が、200:1未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの金属-対-金属不純物およびメタロイド不純物のモル比が500,000:1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
記水性供給溶液のpHを約6.2~約9.2に調整する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性供給溶液が、コバルト、マンガンおよびニッケルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性供給溶液のpHを調整する工程に先立ち、前記方法が:
ニッケル、コバルトおよびマンガンから選択される少なくとも1つの金属を含む供給混合物を提供する工程であって、前記供給混合物が、酸化供給物、還元供給物または未酸化供給物のうちの1つとして規定される、工程と、
酸化供給物は、2未満の酸化状態よりも2を超える酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有する;
還元供給物は、2を超える酸化状態よりも2未満の酸化状態の少なくとも1つの金属をより多く有するか、または2の酸化状態の少なくとも1つの金属の実質的に全てと、硫化物形態の少なくとも1つの金属の少なくとも一部とを有する;および
未酸化供給物は、酸化状態2の少なくとも1つの金属を実質的に全て有し、硫化物形態の少なくとも1つの金属を実質的に有しない;
前記供給混合物を水溶液で処理して、前記少なくとも1つの金属を含む浸出物を形成する工程であって、前記水溶液のpHは、前記浸出物が約1~約6の終点pHを有するものである、工程と、
前記供給混合物が酸化供給物である場合、前記処理は、還元剤を含む試薬の添加を付加的に含み;および
前記供給混合物が還元供給物である場合、前記処理は、酸化剤を含む試薬の添加を付加的に含み;
これにより、前記浸出物は、酸化状態2のニッケル、コバルトおよびマンガンの少なくとも1つを含む、
前記浸出物が前記水性供給溶液を供給するために使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法
【請求項9】
前記上澄みが、1000mgを超えるニッケル、コバルトまたはマンガンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水性供給溶液のpHを調整する工程に先立ち、前記方法が:デカンテーション、遠心分離、ろ過、セメンテーションおよび沈降、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、前記水性供給溶液から固体不純物を分離することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性供給溶液のpHを調整する工程に先立ち、前記方法が、イオン交換、沈殿、吸着および吸収、またはそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの分離技術を用いて、前記水性供給溶液から溶解不純物を除去することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水性供給溶液のpHを調整する工程に先立ち、前記方法が、ニッケル、コバルトおよびマンガンの比率を調整して前記共沈物中の所望のモル比を提供するために、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの1つ以上を供給溶液に加えることをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
所望の比率が、1:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、6:2:2のニッケル:コバルト:マンガン、2:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、3:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、4:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、5:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、6:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、7:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、8:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、9:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、10:1:1のニッケル:コバルト:マンガン、5:3:2のニッケル:コバルト:マンガン、9:0.5:0.5のニッケル:コバルト:マンガン、または83:5:12のニッケル:コバルト:マンガンである、請求項12に記載の方法
【請求項14】
前記上澄みから共沈物を分離する工程が、前記共沈物を単離するためにデカンテーションおよび/またはろ過を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記共沈物を洗浄する少なくとも1つの工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄する少なくとも1つの工程が、アルカリ洗浄、水洗浄、酸洗浄またはアンモニア洗浄である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
混合物を提供するために前記共沈物をリチウムと混合することを付加的に含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物を焼成する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
焼成されたリチウム化共沈物が、10mAh/gを超える電池性能を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記共沈物が、
(a)乾燥固体で算出された10,000ppm未満のアルカリ土類金属、または
(b)乾燥固体で算出された10,000ppm未満の金属不純物およびメタロイド不純物
を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、沈殿および/またはイオン交換によって、前記上澄みに残存するニッケルおよび/またはコバルトおよび/またはマンガンを掃去することをさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記水性供給溶液のpHを調整する工程が、前記水性供給溶液に沈殿剤を加えることを含み、前記沈殿剤が、少なくとも2つの金属に対してサブ化学量論的量で加えられる、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記共沈物を洗浄することをさらに含み、前記水性供給溶液からの前記不純物の少なくとも1つの少なくとも1%が、前記共沈物が洗浄された後の洗浄溶液中に存在する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】