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特表2024-508543癌の分子イメージング及び免疫療法及びのためのデルタオピオイド受容体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】癌の分子イメージング及び免疫療法及びのためのデルタオピオイド受容体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240219BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240219BHJP
   C07D 489/08 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240219BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/485
A61K49/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/06
C07D489/08 CSP
A61P35/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P35/04
C07K16/00
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553657
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022070894
(87)【国際公開番号】W WO2022187813
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/154,928
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523335162
【氏名又は名称】ウエスト バージニア ユニバーシティー ボード オブ ガバナーズ オン ビハーフ オブ ウエスト バージニア ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】523331957
【氏名又は名称】ツフラ バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ホセ ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ビアンコ,ジェームス エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA75
4C084ZB26
4C084ZC20
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085HH03
4C085HH11
4C085JJ01
4C085KA03
4C085KA09
4C085KA27
4C085KA29
4C085KA36
4C085KA40
4C085KB12
4C085KB56
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB23
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC20
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、標的細胞に特異的なデルタオピオイド受容体のような細胞表面オピオイド受容体のアンタゴニストと、イメージング剤と、オピオイド受容体アンタゴニストと結合したT細胞モジュレーターのような免疫調節分子とを含む抗癌化合物とイメージング剤との分子複合体を、一般に、癌治療として提供する。標的細胞は、例えば、癌細胞など、対象の疾患の発症を担う細胞であり得る。特定の実施形態において、免疫調節分子は、免疫エフェクター抗体である。治療有効量の本発明の化合物又は組成物を患者に投与することを含む、疾患を処置する方法が提供される。疾患は、癌の処置であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド及び免疫調節分子を含む組成物であって、前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アンタゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アンタゴニストを含み、前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、前記免疫調節分子に共有結合している、組成物。
【請求項2】
前記デルタオピオイド受容体アンタゴニストは、ナルトリンドール又はナルトリンドールの類似体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記希土類化合物は、周期表の第IIIB族のランタニド系列の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記希土類化合物は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選択されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ドデカン四酢酸(DOTA)は、前記希土類化合物と結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物-抗PD1である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫調節分子は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又は抗体のフラグメントからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫調節分子は、抗PD1チェックポイント阻害剤抗体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、抗PD1抗体と結合した蛍光部分タグ付きナルトリンドールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫調節分子は、細胞外ジャクスタクリン受容体を標的とするものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記免疫調節分子は、scFv抗TGIT、抗TGFb、又はTFGbシグナル阻害剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド及び免疫調節分子を含む組成物であって、前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アゴニストを含み、前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、前記免疫調節分子に共有結合している、組成物。
【請求項15】
式Iの化合物であって、
【化1】
式中、
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは、抗体であり、
前記リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのいずれか1つ以上の誘導体又は組み合わせからなる群から選択される複数の原子の群である、化合物。
【請求項16】
X対Abの比は、約4対1である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記Ab部分は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、前記抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体の1つ以上の群から選択されるものである、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
前記Xは(X)であり、nは4、9又は12である、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
式IIの化合物であって、
【化2】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
Abは抗体であり、
前記補助リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である、化合物。
【請求項20】
Y対Abの比は、約4対1である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記Yは、(Y)であり、前記nは4、9、又は12である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
前記Ab部分は、免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、前記抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである、請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
式IIIの化合物であって、
【化3】
式中、
Zは、リンカーフラグメントであり、前記リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは無置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アルキレン、置換もしくは無置換アルキン鎖、置換もしくは無置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選択される複数の原子の群である、化合物。
【請求項24】
式IVの化合物であって、
【化4】
式中、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、ランタニド系列のいずれかの金属であり、
前記リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である、化合物。
【請求項25】
Abは、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である、請求項15に記載の化合物。
【請求項26】
Abは、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である、請求項19に記載の化合物。
【請求項27】
Abは、PD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体である、請求項15に記載の化合物。
【請求項28】
Abは、PD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体である、請求項19に記載の化合物。
【請求項29】
前記化合物は、式Iを有し、式中、Abは抗体であり、Xは(X)であり、nは1~50の整数である、請求項15に記載の化合物。
【請求項30】
前記化合物は、式IIを有し、式中、Abは、抗体であり、Yは(Y)であり、nは1~50の整数である、請求項19に記載の化合物。
【請求項31】
Xの1つ以上の部分と結合した抗体であって、
【化5】
式中、
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは、抗体であり、
式中、前記リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのいずれか1つ以上の誘導体又はそれらの組合せからなる群から選択される複数の原子の群であり、
Xは(X)であり、nは1~50の整数である、抗体。
【請求項32】
プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である、請求項31に記載の抗体。
【請求項33】
Yの1つ以上の部分と結合した抗体であって、
【化6】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
前記リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選択される複数の原子の群であり、
Yは(Y)n であり、nは1~50の整数であり、Abは抗体である、抗体。
【請求項34】
プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である、請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である、請求項31に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である、請求項33に記載の抗体。
【請求項37】
患者の癌を処置する方法であって、前記患者を処置するために、治療有効量の請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物又は化合物を患者に投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記癌は、結腸癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記癌は、肺癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記癌は、肝臓癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項41】
前記肺癌は、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
治療的有効量の請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物を患者に投与することを含む、患者における腹膜転移形成を減少させる方法。
【請求項43】
前記転移は、遠隔転移である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、キナーゼ阻害剤又はJAK/STAT3阻害剤である薬剤で置き換えられている、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2021年3月1日出願の米国仮出願第63/154,928号の優先権を主張する。米国仮出願第63/154,928号の全内容が、この実用仮特許出願に、完全にここに書き換えたように、参照することにより援用される。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
該当なし
【0003】
本発明は、概して、標的細胞に特異的なデルタオピオイド受容体等の細胞表面オピオイド受容体のアンタゴニスト、イメージング剤、及びオピオイド受容体アンタゴニストと結合した免疫細胞モジュレーター等の免疫エフェクターを含む癌治療(therapy)としての、抗癌化合物及びイメージング剤の分子複合体(conjugate)に関する。標的細胞は、対象における疾患の発症を担う細胞、例えば、癌細胞であり得る。特定の実施形態において、免疫エフェクターは、免疫エフェクター抗体である。本発明はまた、対象における疾患を処置(treat)する方法であって、薬学的有効量の本発明の分子複合体を対象に投与することを含む方法に関する。本発明の方法は、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、前癌状態又は造血器の癌等の癌を処置するために使用することができる。本明細書に開示された構成要件は、概して、癌治療、抗癌化合物及びイメージング剤に関する。より具体的には、本明細書に開示された構成要件は、デルタオピオイド受容体(DOR)を対象とする薬剤及び癌の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫抑制は、現在、癌の10の特徴の1つとして認識されている。ほとんどの腫瘍は、発癌性であるが、免疫応答を積極的に認識しないように、又は、低減もしくは抑制することによって、免疫媒介性の破壊を回避する。
【0005】
近年、癌に使用するための抗CTLA4、抗PD1及び抗LAG3等の免疫療法剤が承認されており、さらに多くのものが臨床試験においてテストされている。これらの承認された薬剤のいくつかは、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0006】
これらの標的化されていない、全身的に投与される免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍免疫抑制機構を打ち消す有効な免疫療法剤である。阻害シグナルを遮断することによって、これらの薬剤は、腫瘍に対する免疫系の活性化をもたらす。現在の免疫チェックポイント阻害剤は、腫瘍標的ではない。免疫療法剤を腫瘍細胞上の特異的受容体に標的化することは、複合体を腫瘍微小環境に集中させ、腫瘍における免疫応答を増強する一方で、必要とされる全身投与量を低減し、結果として非特異的標的外毒性を低下させるはずである。必要とされているのは、癌の免疫療法及び分子イメージングのための新規の標的薬剤である。本明細書に開示された組成物及び方法は、これら及び他の必要性に取り組むものである。
【0007】
オピオイドは、主に癌と関連のある鎮痛薬である。しかし、オピオイド及びその受容体は、腫瘍微小環境の不可欠な部分であることがますます明らかになってきている。さらに、ミュー、カッパ、侵害受容及びゼータ受容体は、微小環境中の重要な構成細胞において発現される。オピオイド受容体及び内因性オピオイドペプチドは、様々なヒト腫瘍において実証されている。オピオイドは、腫瘍微小環境における白血球の浸潤又は神経終末及び前立腺神経内分泌細胞によって生じる全身循環によって供給され得る。DORは、腫瘍関連骨髄由来抑制細胞と、他の骨髄細胞サブセットとで差次的に発現されることが示されている。MDSCは、腫瘍微小環境の免疫抑制(腫瘍形成)表現型に直接寄与する複数の免疫抑制化合物(Arg-1、iNOS、COX2)の生成に関与する。MDSC上のDORの阻害は、これらの化合物の生成を下方制御及び防止し、同様に、主要な免疫抑制剤サブセットである単球由来MDSCの増殖を阻害する。
【0008】
このように、DOR活性化lは、腫瘍が、免疫モジュレーター、特に、T細胞活性剤又はチェックポイント阻害剤、特に、T細胞消耗の潜在的な抗腫瘍効果を回避する複数の機構をもたらす。
【0009】
このように、チェックポイント阻害されたT細胞を放出しながら、DORを阻害することは、チェックポイント阻害剤への全身曝露及び関連する標的外毒性を単に低減することを超える二機能性多価アプローチを提供する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、本明細書に記載されるように、CAR-Tを含む分子的に改変された細胞療法、又はNK細胞、TILS等の同種又は自家細胞療法の使用を含む。これらの全ての有効性は、re:MDSCと記載される機構の結果として、DOR活性化/シグナリングを拮抗することによって正の影響を受けるはずである。
【0011】
イン・ビトロ及びイン・ビボ研究の両方から、かなりの証拠が蓄積されており、オピオイドが腫瘍進行に影響を及ぼすことが示されている。オピオイドは、増殖及び生存、運動性及び遊走、細胞-基質接着及び浸潤等の癌細胞浸潤関連活動に直接影響を及ぼし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,960,648号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0032594号
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0120100号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0035243号
【特許文献5】米国特許第5,167,649号
【特許文献6】米国特許第4,608,392号
【特許文献7】米国特許第4,992,478号
【特許文献8】米国特許第4,559,157号
【特許文献9】米国特許第4,820,508号
【特許文献10】米国特許第4,938,949号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Remington's Pharmaceutical Science by E. W. Martin (1995)
【非特許文献2】Toyoizumi, et al., "Combined therapy with chemotherapeutic agents and herpes simplex virus type IICP34.5 mutant (HSV-1716) in human non-small cell lung cancer," Human Gene Therapy, 1999, 10(18):17
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書に具体化され、広く記載される通り、開示された材料及び方法の目的に従って、開示された主題は、一態様において、化合物、組成物、ならびに化合物及び組成物を作製及び使用する方法に関する。特定の態様において、開示された主題は、癌治療、ならびに抗癌化合物及びイメージング剤に関する。より具体的には、本明細書に開示された主題は、デルタオピオイド受容体(DOR)を標的とする薬剤及び癌の処置におけるそれらの使用に関する。癌は、例えば、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、又は黒色腫であり得るが、これらに限定されず、前悪性状態(骨髄異形成、骨髄線維症等)及び悪性-急性及び慢性白血病、リンパ腫等の両方の造血系を含む。
【0015】
DORを標的とする新しい薬剤をスクリーニングする方法も開示される。PETコンパニオンエージェント及び開示された化合物とのその使用も開示される。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド又はキナーゼ阻害剤、又はJAK/STAT3阻害剤、又は分子操作(molecular manipulation)、及び免疫調節分子を含む組成物を提供し、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アンタゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アンタゴニストを含み、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、免疫調節分子に共有結合している。本発明によれば、「デルタオピオイド受容体標的化リガンド」は、キナーゼ阻害剤、JAK/STAT3阻害剤である薬剤又は分子操作で置き換えられてもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態における組成物において、デルタオピオイド受容体アンタゴニストは、ナルトリンドール又はナルトリンドールの類似体又はエンケファリンなどの他の類似体を含む。エンケファリンは、DOR親和性に関与する推定上の「アドレス」配列であるそのフェニルアラニン上の芳香族フェニル基からモデル化された天然リガンドであるナルトリンドールである。ナルトリンドールの類似体は、DORに対する高い受容体親和性及び排他性を生じさせるナルトレキソンのモルフィナン塩基のC環へのフェニル含有インドール分子の結合を含み得る。特定の他の実施形態における組成物において、希土類化合物は、周期表の第IIIB族のランタニド系列の化合物である。希土類化合物は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選択されるものである。
【0018】
他の実施形態における組成物において、上述のように、ドデカン四酢酸(DOTA)は、希土類化合物と結合していることを含む。本発明の特定の実施形態の提供する組成物において、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物である。本発明の特定の他の実施形態において、組成物は、ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物-抗PD1であることを含む。
【0019】
本発明の組成物において、免疫調節分子は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する二官能性抗体を含む抗体又は抗体のフラグメント又は可溶性受容体からなる群から選択されるものを含む。抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)又はその配位子PD-L1、又はリンパ球活性化遺伝子3(抗LAG3)、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)又はToll様受容体(TLR)、例えばTLR-3、9のようなPD-1軸外の他のチェックポイント阻害剤に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体等のチェックポイント阻害剤の群から選択されるものである。本発明の特定の実施形態において、組成物は、抗PD1チェックポイント阻害剤抗体である免疫調節分子を含む。本発明の他の実施形態において、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、抗PD1抗体に結合した蛍光部分タグ付きナルトリンドールである。
【0020】
本発明の他の実施形態における組成物において、免疫調節分子は、細胞外ジャクスタクリン受容体を標的とするものであることを含む。免疫調節分子は、例えば、scFv抗TGIT、抗TGFb、又はTFGbシグナル阻害剤であり得るが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の他の実施形態は少、なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド及び免疫調節分子を含む組成物を提供し、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アゴニストを含み、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、免疫調節分子に共有結合している。
【0022】
本発明の他の実施形態は、式Iの化合物を提供する。
【化1】
式中、
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは、抗体であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのいずれか1つ以上の誘導体又は組み合わせからなる群より選択される複数の原子の群である。化合物において、X対Abの比は、約4:1であることを含む。Ab部分は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである。化合物において、Xは(X)であり、nは4、9又は12であることを含む。本発明の特定の実施形態において、Abはプログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。他の実施形態において、Abは、PD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40もしくはCD40アゴニスト抗体である。本発明の他の実施形態において、化合物は、式Iを有し、Abは抗体であり、Xは(X)、nは1~50の整数である。
【0023】
本発明の他の実施形態は、式IIの化合物を提供する。
【化2】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
Abは抗体であり、
補助リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組み合わせからなる群から選択される複数の原子の群である。化合物において、Y対Abの比は、約4:1であることを含む。化合物において、Yは(Y)であり、nは4、9、又は12であることを含む。Ab部分は、免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである。本発明の特定の実施形態において、Abは、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。他の実施形態において、Abは、PD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体である。本発明の他の実施形態において、化合物は式IIを有し、Abは抗体であり、Yは(Y)、nは1~50の整数である。
【0024】
本発明の他の実施形態は、式IIIの化合物を提供する。
【化3】
式中、
Zは、リンカーフラグメントであり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは無置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アルキレン、置換もしくは無置換アルキン鎖、置換もしくは無置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である。
【0025】
本発明の他の実施形態は、式IVの化合物を提供する。
【化4】
式中、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、ランタニド系列のいずれかの金属であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である。
【0026】
本発明の他の実施形態は、Xの1つ以上の部分と結合した抗体を提供する。
【化5】
式中
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは、抗体であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群であり、Xは(X)であり、nは1~50の整数である。本発明の特定の実施形態において、この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である。
【0027】
本発明の他の実施形態は、Yの1つ以上の部分と結合した抗体を提供する。
【化6】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群であり、Yは(Y)であり、nは1~50の整数であり、Abは抗体である。本発明の特定の実施形態において、この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である。
【0028】
本発明の他の実施形態は、患者に、治療有効量の上述した化合物又は化合物のいずれか1つの組成物を投与することを含む、患者の癌を処置する方法、及び患者を処置するための組成物を提供する。本方法において、癌は、結腸癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群から選択されることを含む。肺癌には、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌が含まれる。
【0029】
本発明の他の実施形態は、腹膜転移を減少させるための、上述したような化合物又は組成物の治療有効量を患者に投与することを含む、患者の腹膜転移形成を減少させる方法を提供する。本方法において、転移は、遠隔転移であることを含む。
【0030】
さらなる利点は、以下の説明に部分的に記載されるか、又は以下に記載される態様の実施によって学び得る。以下に記載される利点は、添付の請求項において特に指摘される要素及び組合せによって実現され、達成される。上記の一般的な記載及び以下の詳細な説明は両者共、例示的かつ説明のためのみのものであり、限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書に記載された材料、化合物、組成物、及び方法は、開示された主題の特定の態様の以下の詳細な説明及びここに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0032】
本発明の材料、化合物、組成物、及び方法が開示され、記載される前に、以下に記載される態様は、特定の合成方法又は特定の試薬に限定されず、従って、当然、可変であることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、態様を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0033】
また、本明細書を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、それらの全体が開示された事項が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照により本明細書に援用される。開示された参考文献はまた、それらが依拠する文において論じられている、それらに含まれる内容について、個々に及び具体的に参照により本明細書に援用される。
【0034】
本明細書及び以下の請求項において、以下の意味を有すると定義されるいくつかの用語が参照される。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」及び単語の他の形態、例えば、「含む(comprising)及び(comprises)」は、限定されないが、例えば、他の添加剤、成分、整数、又はステップを含むことを意味し、排除することを意図しない。
【0036】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「組成物」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「阻害剤」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物を含み、「キナーゼ」への言及は、2つ以上のそのようなキナーゼの混合物を含む、等である。「任意の(optional、optionally)」は、後に記載された事象又は状況が生じ得る、又は生じ得ないことを意味し、説明に、そのような事象又は状況が生じる場合、あるいは生じない場合が含まれることを意味している。
【0037】
本開示の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に規定される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、本質的に、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。さらに、様々な範囲の数値範囲が本明細書に規定される場合、列挙された値を含むこれらの値の任意の組み合わせが使用され得るものと想定される。さらに、範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、他の態様は1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、「約」等の用語の後に数値が近似で表される場合、特定の値が他の態様を形成すると理解される。さらに、範囲の各終点は、他の終点に関連と、他の終点とは独立した両方において重要な意味を持つと理解される。
【0038】
特に明記しない限り、「約」という用語は、「約」という用語によって修飾された特定の値の5%以内(例えば、2%又は1%以内)を意味する。
【0039】
「低減」又は単語の他の形態、例えば、「低減する」は、事象又は特性(例えば、腫瘍増殖、転移)の低下を意味する。これは典型的には何らかの標準値又は期待値に関連しており、言い換えれば、相対的であるが、標準値又は相対値が参照される必要性は必ずしもないと理解される。例えば、「腫瘍増殖を低減させる」とは、標準又は対照と比較して腫瘍細胞の量を減少させることを意味する。
【0040】
「防止」又は単語の他の形態、例えば、「防止する」は、特定の事象又は特性を停止させること、特定の事象又は特性の発生もしくは進行を安定化もしくは遅延させること、又は特定の事象又は特性が起こる可能性を最小限にすることを意味する。防止は、典型的には、例えば、低減よりも絶対的であるので、対照との比較を必要としない。本明細書で使用される場合、何かを低減することができるが、防止することはできない、しかし、低減される何かを防止することもできる。同様に、何かを防止することができるが、低減することはできない、しかし、防止することができる何かを削減することもできる。特に明記しない限り、低減又は防止が使用される場合、他の単語の使用も明示的に開示されていると理解される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「処置」は、有益な又は所望の臨床結果を得ることを指す。有益な又は所望の臨床結果には、これらに限定されるものではないが、以下のうちのいずれか1つ以上が含まれる。すなわち、1つ以上の症状(腫瘍増殖又は転移等)の緩和、癌の範囲の縮小、癌の安定した(すなわち悪化しない)状態、癌の広がり(例えば、転移)の遅延、癌の発生又は再発の遅延、癌の進行の遅延又は鈍化、癌の状態の改善、及び寛解(部分又は全体)。
【0042】
「患者」という用語は、好ましくは、抗癌剤による処置又は任意の目的のための処置を必要とするヒト、より好ましくは、癌又は前癌状態もしくは病変部を処置するためのそのような処置を必要とするヒトを指す。しかしながら、「患者」という用語はまた、非ヒト動物、好ましくは、とりわけ、抗癌剤処置による又は処置を必要とする、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及び非ヒト霊長類等の哺乳動物も指し得る。
【0043】
明細書において、「第1の」及び「第2の」という識別子は、開示された主題の様々な構成要素及びステップを区別するのを助けるためにのみ使用されると理解される。「第1の」及び「第2の」という識別子は、これらの用語によって修飾された構成要素又はステップに対する任意の特定の順序、量、優先順位、又は重要度を暗示することを意図するものではない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含む生成物、同様に、特定の量の特定の成分の組み合わせから、直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。
【0045】
組成物中の特定の元素又は成分の重量部に対する本明細書及び末尾の請求項における参照は、その重量部が表される組成物又は物品中のその元素又は成分と任意の他の元素又は成分との間の重量関係を示す。従って、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yとを含む混合物において、X及びYは2:5の重量比で存在し、混合物中に追加の成分が含まれるかどうかにかかわらず、そのような比で存在する。
【0046】
成分の重量パーセント(重量%)は、特に反対の記載がない限り、成分が含まれる製剤又は組成物の総重量に基づく。
【0047】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを意図する。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、ならびに芳香族及び非芳香族置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上とすることができ、適切な有機化合物に対して同一であっても、異なっていてもよい。本開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、有機化合物の許容される置換基によって決して限定されるものではない。また、「置換」又は「で置換された」という用語は、そのような置換が、置換された原子及び置換基の許容される原子価に従い、置換が安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離等による変換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含む。
【0048】
組成物、化合物、抗体、及び方法
デルタオピオイド受容体(DOR)は、肺癌の中には過剰発現されるものがあり、正常な肺においてはそうでないことが報告されている(1-6)。組織マイクロアレイの免疫組織化学的染色による肺癌患者試料におけるDORの発現は検証されている。さらに、合成ペプチドアンタゴニスト(Dmt-Tic)に基づく蛍光標識DOR標的化イメージング剤(DORL-Cy5及びDORL800)の合成は、以前から報告されている。これらの薬剤は、イン・ビトロで高いDOR結合親和性(binding affinity)を有し、イン・ビトロ及びイン・ビボでDORに対する選択性を示し、イン・ビボで良好な薬物動態及び生体分布プロファイルを示す。従って、非ペプチドDORLアンタゴニストを、合成ペプチドを模倣する免疫調節分子と結合することによって、DORを標的とする肺癌特異的免疫療法剤を開発することが決定されている(7)。本発明の特定の実施形態は、例えば、限定されるものではないが、Nal-FT-抗PD1もしくは他の免疫エフェクター、又はNal-DOTA-抗PD1もしくは他の免疫エフェクター等の免疫調節分子に共有結合した、機能化されたナルトリンドールに基づく蛍光標識又は希土類標識DOR標的化リガンドを含む組成物を提供し、ここで、Nalは、ナルトリンドール又はナルトリンドールの類似体を表し、DORアンタゴニスト活性及びデルタオピオイド受容体への高い親和性結合を維持する。FTは、小動物におけるイン・ビトロ及びイン・ビボイメージング、ならびに抗体又は他の免疫エフェクタータンパク質に対するNal標的化リガンド比の測定を可能にする蛍光タグを指す。DOTAは、ドデカン四酢酸であり、有機化合物である。DOTAは、特に、DOTA-希土類複合体を形成するランタニド系列イオン(すなわち希土類元素)との錯化剤である。DOTA複合体は、ICP-MS分析を用いて、免疫エフェクターに結合したNal標的化リガンドの数を測定することができるように、Nal免疫エフェクター複合体の希土類ラベルを可能にする。あるいは、DOTA複合体は、小動物やヒトにおけるPET、SPECT、又は他の放射線検出及びイメージングとして使用するための放射性核種キレート化を可能にする。
【0049】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド又はキナーゼ阻害剤、又はJAK/STAT3阻害剤、又は分子操作、及び免疫調節分子を含む組成物を提供し、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アンタゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アンタゴニストを含み、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、免疫調節分子に共有結合している。本発明において、「デルタオピオイド受容体標的化リガンド」は、キナーゼ阻害剤、JAK/STAT3阻害剤である薬剤又は分子操作で置き換えられてもよい。
【0050】
本発明の他の実施形態における組成物において、デルタオピオイド受容体アンタゴニストは、ナルトリンドール又はナルトリンドールの類似体、又はエンケファリンなどの他の類似体であることを含む。エンケファリンは、DOR親和性に関与する推定上の「アドレス」配列であるそのフェニルアラニン上の芳香族フェニル基からモデル化された天然リガンドであるナルトリンドールである。ナルトリンドールの類似体は、DORに対する高い受容体親和性及び排他性を生じさせるナルトレキソンのモルフィナン塩基のC環へのフェニル含有インドール分子の結合を含み得る。特定の他の実施形態におけるこの組成物において、希土類化合物は、周期表の第IIIB族のランタニド系列の化合物であることを含む。希土類化合物は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選択されるものである。
本発明において、「デルタオピオイド受容体標的化リガンド」は、キナーゼ阻害剤、JAK/STAT3阻害剤である薬剤又は分子操作で置き換えられてもよい。
【0051】
下記の式Aは、ナルトリンドール及びナルトリンドールの様々なR-置換類似体の構造を示す。
【化7】
式Aに関して、化合物1は、ナルトリンドール(「NTI」)であり、Rが水素である場合、式Aで表される。当業者であれば、式Aの化合物2~17がナルトリンドールのR-置換類似体の例であることが分かるであろう。本明細書で使用される場合、「ナルトリンドールの1つの類似体」又は「ナルトリンドールの複数の類似体」は、式Aによって表される類似体化合物に限定されず、ナルトリンドールの化学構造への元素、基、又は部分の多くの結合又は置換を含み得る。本明細書で使用される場合、「ナルトリンドールの1つの類似体」又は「ナルトリンドールの複数の類似体」という用語は、エンケファリンなどの他の類似体をさらに含む。エンケファリンは、DOR親和性に関与する推定上の「アドレス」配列であるそのフェニルアラニン上の芳香族フェニル基からモデル化された天然リガンドであるナルトリンドールである。ナルトリンドールの類似体は、DORに対する高い受容体親和性及び排他性を生じさせるナルトレキソンのモルフィナン塩基のC環へのフェニル含有インドール分子の結合を含み得る。
【0052】
免疫複合体は、いくつかの標的化リガンド対抗体比(TAR)で合成される。これらの免疫複合体を、結合親和性の差について評価する。344及びLKRマウス肺癌細胞を、マウスDORを構成的に発現するように操作した。肺癌細胞株のクローンを、qRT-PCRを用いて、DOR遺伝子の発現についてスクリーニングする。共焦点顕微鏡法及びLTRF競合結合アッセイを用いて、DORタンパク質の発現を分析する。DORL4-PD1の結合親和性を、344/DOR細胞において、LTRF競合結合アッセイを用いて評価する。イン・ビトロでのDORL4-PD1の結合及び取り込みは、生細胞蛍光顕微鏡を用いて特定される。
【0053】
特定の態様において、以下の式I及びIIの標的化合物を構築するのに必要な「フラグメント」化合物が開示される。
【化8】
【化9】
【化10】
及び、
【化11】
【0054】
本発明の特定の実施形態は、結合した抗体の活性の効力を最大にするために、異なるリンカーを介して抗体に結合したナルトリンドール及び蛍光タグ又は希土類金属DOTAキレートを提供する。
【0055】
本明細書に記載の式において使用される場合、Zはリンカーフラグメントであり、Mはランタニド系列のいずれかの金属であり、Abは抗体、例えば、抗プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)等の適応免疫応答を増強し得る抗体である。本明細書に記載の標的化合物は、DOR標的化ナルトリンドールを、様々な鎖長を介して抗体部分に連結するリンカーを含有する。
【0056】
「リンカーフラグメント」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の多官能性、例えば、二官能性又は三官能性分子を指す。リンカーフラグメント「Z」は、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、又は置換もしくは非置換アルコキシル鎖等の、複数の原子の群とすることができる。適切なリンカーとしては、これらに限定されるものではないが、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、誘導体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
Ab部分は、免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントである。PD-1抗体は、ヒト、ウサギ、又はマウス抗PD-1について市販されている。CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体等の他の抗体を他の実施形態で使用することができる。
【0058】
具体例において、本明細書に開示されるのは、フラグメント化合物X及びYが約4、9又は12である式I及びIIの化合物である。すなわち、抗体Abに対する、検出可能な部分を有するDORリガンドの比は、約4対1である。
【0059】
具体例において、開示されるのは、異なる標的化リガンド対抗体比(TAR)を有する蛍光デルタオピオイド受容体(DOR)標的化免疫療法剤である。これらの薬剤は、イン・ビトロでDORに対して高い親和性を有し、より高いTARは、より高い結合親和性をもたらす。今後の研究では、DORL-PD1をイン・ビボで免疫応答性マウスにおいて評価するであろう。これらの薬剤は、肺癌の分子イメージング及び免疫療法に有用であり得る。
【0060】
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書に開示された有効量の化合物又は組成物を対象に投与することを含む、対象において癌を処置又は防止する方法である。方法は、例えば、抗癌剤又は抗炎症剤等の第2の化合物又は組成物を投与することをさらに含むことができる。さらに、本方法は、有効量の電離放射線を対象に投与することをさらに含むことができる。
【0061】
腫瘍細胞を死滅させる方法もまた、本明細書において提供される。本方法は、腫瘍細胞を、有効量の本明細書に開示された化合物又は組成物と接触させることを含む。方法は、第2の化合物又は組成物(例えば、抗癌剤又は抗炎症剤)を投与すること、又は有効量の電離放射線を対象に投与することをさらに含むことができる。
【0062】
また、本明細書で提供されるのは、腫瘍を有効量の本明細書に開示された化合物又は組成物と接触させ、腫瘍に有効量の電離放射線を照射することを含む、腫瘍の放射線療法の方法である。
【0063】
また、患者の腫瘍性障害を処置する方法も開示される。一実施形態において、有効量の本明細書に開示された1つ以上の化合物又は組成物が、腫瘍性障害を有し、その処置を必要とする患者に投与される。開示された方法は、腫瘍性障害の処置を必要としているか、又は必要とする可能性がある患者を識別することを任意で含むことができる。患者は、ヒト又は他の哺乳動物、例えば、霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくは馬、又は腫瘍性障害を有する他の動物であり得る。本明細書に開示された化合物は、肺癌を有する患者に特に適している。しかしながら、DORの発現を特徴とする他の腫瘍性疾患を処置することができる。このような腫瘍性障害の具体例としては、これらに限定されるものではないが、肛門、胆管、膀胱、骨、骨髄、腸(結腸及び直腸を含む)、乳、眼、胆嚢、腎臓、口腔、喉頭、食道、胃、精巣、子宮頸部、頭部、頸部、卵巣、中皮腫、神経内分泌腫、陰茎、皮膚、脊髄、甲状腺、膣、外陰部、子宮、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血球(リンパ球及び他の免疫系細胞を含む)、及び脳の癌及び/又は腫瘍が挙げられる。処置に想定される具体的な癌には、癌腫、カポシ肉腫、黒色腫、中皮腫、軟部組織肉腫、膵臓癌、肺癌、白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、及びその他)、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、及び多発性骨髄腫が含まれる。
【0064】
本明細書に開示された方法に従って処置できる癌の他の例は、副腎皮質癌、副腎皮質癌、小脳星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、胆嚢癌、胃(消化器)癌、消化管カルチノイド腫瘍、胚細胞腫瘍、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞(8)癌、下咽頭癌、視床下部及び視覚路神経膠腫、眼内黒色腫、網膜芽腫、膵島細胞癌(膵臓癌)、咽頭癌、口唇及び口腔癌、肝臓癌、髄芽腫、メルケル細胞、不顕性の菌状息肉腫より生じた扁平上皮癌、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、松果体及び未分化神経外胚葉性細胞腫瘍、下垂体癌、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫、軟部組織肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、小脳テント未分化神経外胚葉性細胞腫瘍、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂と尿管の移行上皮癌、栄養膜腫瘍、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍である。
【0065】
具体例において、癌は、DORを過剰発現することが知られている非小細胞肺癌又は小細胞肺癌である。他の癌は、肝臓癌等のDORを過剰発現し、肺癌について記載されているとおり、標的化することができる(6)。
【0066】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド及び免疫調節分子を含む組成物を提供し、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アンタゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アンタゴニストを含み、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、免疫調節分子に共有結合している。本発明の他の実施形態における組成物において、デルタオピオイド受容体アンタゴニストは、ナルトリンドール又はナルトリンドールの類似体であることを含む。特定の他の実施形態における組成物において、希土類化合物は、周期表の第IIIB族のランタニド系列の化合物であることを含む。希土類化合物は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選択されるものである。
【0067】
他の実施形態における組成物において、上述のとおり、ドデカン四酢酸(DOTA)は、希土類化合物と結合していることを含む。本発明の特定の実施形態の提供する組成物において、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物であることを含む。本発明の特定の他の実施形態において、組成物は、ナルトリンドール-DOTA-希土類化合物-抗PD1であることを提供する。
【0068】
本発明の組成物において、免疫調節分子は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又は抗体のフラグメントからなる群から選択されるものを含む。抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである。本発明の特定の実施形態において、組成物は、抗PD1チェックポイント阻害剤抗体である免疫調節分子を含む。本発明の他の実施形態において、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、抗PD1抗体と結合した蛍光部分タグ付きナルトリンドールである。
【0069】
本発明の他の実施形態における組成物において、免疫調節分子は、細胞外ジャクスタクリン受容体を標的とするものであることを含む。免疫調節分子は、例えば、scFv抗TGIT、抗TGFb、又はTFGbシグナル阻害剤であり得るが、これらに限定されない。
【0070】
本発明の他の実施形態は、少なくとも1つのデルタオピオイド受容体標的化リガンド及び免疫調節分子を含む組成物を提供し、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、蛍光部分タグ付きデルタオピオイド受容体アゴニスト又は希土類化合物標識デルタオピオイド受容体アゴニストを含み、デルタオピオイド受容体標的化リガンドは、免疫調節分子に共有結合している。
【0071】
本発明の他の実施形態は、式Iの化合物を提供する。
【化12】
式中、
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは抗体であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのいずれか1つ以上の誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である。化合物において、X対Abの比は、約4:1であることを含む。Ab部分は、適応免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである。化合物において、Xは(X)であり、nは4、9又は12であることを含む。本発明の特定の実施形態において、Abは、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。他の実施形態において、AbはPD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体である。本発明の他の実施形態において、化合物は式Iを有し、式中、Abは抗体であり、Xは(X)であり、nは1~50の整数である。
【0072】
本発明の他の実施形態は、式IIの化合物である。
【化13】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
Abは抗体であり、
補助リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組み合わせからなる群から選択される複数の原子の群である。化合物において、Y対Abの比は、約4:1であることを含む。化合物において、Yは(Y)であり、nは4、9、又は12であることを含む。Ab部分は、免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントであり、抗体は、(i)ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1のPD-1抗体、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的な抗体、及び(iii)CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体のうちの1つ以上の群から選択されるものである。本発明の特定の実施形態において、Abは、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。他の実施形態において、Abは、PD-L1アンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体である。本発明の他の実施形態において、化合物は式IIを有し、Abは抗体であり、Yは(Y)であり、nは1~50の整数である。
【0073】
【化14】
式中、
Zはリンカーフラグメントであり、リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは無置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アルキレン、置換もしくは無置換アルキン鎖、置換もしくは無置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である。
【0074】
本発明の他の実施形態は、式IVの化合物である。
【化15】
式中、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、ランタニド系列のいずれかの金属であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群である。
【0075】
本発明の他の実施形態は、Xの1つ以上の部分と結合した抗体を提供する。
【化16】
式中、
Xは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Abは、抗体であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらのいずれか1つ以上の誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群であり、Xは(X)であり、nは1~50の整数である。本発明の特定の実施形態において、この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である。
【0076】
本発明の他の実施形態は、Yの1つ以上の部分と結合した抗体を提供する。
【化17】
式中、
Yは、デルタオピオイド受容体標的化リガンドであり、
Zは、リンカーフラグメントであり、
Mは、周期表のランタニド系列のいずれかの金属であり、
リンカーフラグメントZは、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、置換もしくは非置換アルコキシル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体又は組合せからなる群から選択される複数の原子の群であり、Yは(Y)であり、nは1~50の整数であり、Abは抗体である。本発明の特定の実施形態において、この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(抗PD1)に特異的である。この抗体は、プログラム細胞死タンパク質1(PDl)、PD-Llアンタゴニスト、又はCD137、OX40、もしくはCD40アゴニスト抗体に特異的である。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、本明細書で使用される場合、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖、アルキン鎖、アルキレン、アルキルアミン、及びアルコキシル鎖という用語は、1個以上の炭素原子、又は2~10個の炭素原子、又は2~20個の炭素原子を有する炭素長を含み得る。
【0078】
本発明の他の実施形態は、患者の癌を処置する方法であって、患者を処置するために、上述した化合物及び組成物のいずれか1つの治療有効量の化合物又は組成物を、患者に投与することを含む方法を提供する。この方法において、癌は、結腸癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群から選択されることを含む。肺癌には、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌が含まれる。
【0079】
本発明の他の実施形態は、腹膜転移を減少させるために、本明細書で上述したような治療有効量の化合物又は組成物を患者に投与することを含む、患者の腹膜転移形成を減少させる方法を提供する。この方法において、転移は遠隔転移であることを含む。
【0080】
いくつかの態様において、本明細書に開示された少なくとも1つの化合物又は組成物と、少なくとも1つの癌免疫療法剤との組み合わせを、対象に投与することによって、対象における腫瘍又は腫瘍転移を処置する方法が開示される。開示された化合物は、単独で、又は癌免疫療法剤と組み合わせて投与することができる。対象は、腫瘍の全部又は一部を除去するための外科的介入の前、間、又は後に、治療組成物を受けることができる。投与は、全身又は局所静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、又は腫瘍塊への直接注射を介して達成され得る。
【0081】
本明細書に開示された方法における使用に適した癌免疫療法剤は、低分子腫瘍標的化リガンド成分に接合した適応エフェクター成分を含む免疫療法剤である。適切な細胞エフェクター成分には、細胞毒性化学物質、細胞毒性放射性同位体、及びサイトカイン等の細胞シグナル伝達剤が含まれ得る。
【0082】
免疫エフェクター活性を有する抗体は、DORアンタゴニスト活性及び高親和性>10nM DOR結合親和性を有する1つ以上の非ペプチドナルトリンドール類似体を有するであろう。ナルトリンドール標的化リガンドの数は、少なくとも1で、抗体又は抗体フラグメント上のリジン側鎖の数未満でなければならない。F(ab')2、Fab、Fv又は操作されたFv一本鎖抗体タンパク質等の抗体タンパク質のフラグメントを使用することができる。抗体又は抗体サブユニットの抗原性をさらに低減させるために、抗体アミノ酸配列の修正は、タンパク質を患者の正常な抗体成分のように見えるようにすることを低減させるためになされ得る。例えば、モノクローナルマウス抗体アミノ酸配列は、抗体のヒト化のための様々なプロセスにより、ヒト患者への投与のために、ヒト化され得る。
【0083】
癌免疫療法剤の具体例としては、CLTA-4に特異的に結合する抗体、例えば、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)、抗PD-1、抗PDL1が挙げられる。
【0084】
開示された化合物はまた、toll様受容体(TLR)アゴニストと共に投与され得る。TLRアゴニストは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、及びTLR9からなる群から選択されるTLRに対するリガンドである。例えば、TLRアゴニストは、Pam3CSK4、Pam3CSK4、ポリI:C、リボムニル、及びCpG ODNからなる群から選択されるリガンドとすることができる。
【0085】
投与
開示された化合物は、別々の又は組み合わされた医薬製剤で、連続的又は同時に投与することができる。開示された化合物の1つ以上が第2の治療薬と組み合わせて使用される場合、各化合物の用量は、化合物が単独で使用される場合と同じであるか、又は異なるかのいずれかであり得る。適切な用量は、当業者であれば容易に認識されよう。
【0086】
本明細書に記載の化合物に関して、「投与」及びその変化形(例えば、化合物を「投与する」)という用語は、処置を必要とする動物の系に、化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本明細書に記載の化合物又はそのプロドラッグが1つ以上の他の活性薬剤(例えば、細胞傷害性薬剤等)と組み合わせて提供される場合、「投与」及びその変化形は、それぞれ、化合物又はそのプロドラッグ及び他の薬剤の同時及び順次導入を含むと理解される。
【0087】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、限定されるものではないが、ヒトを含む、動物界の一員を意味する。本明細書で使用される場合、「癌を有する」という用語は、患者が癌と診断されたことを意味する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、患者に所望の効果をもたらすために必要とされる、本発明の化合物もしくは組成物、又はその薬学的に許容される塩のいずれかの量を指す。所望の効果は、疾患に応じて変化する。例えば、所望の効果は、
腫瘍サイズを低減させること、癌性細胞を破壊すること、及び/又は転移を防止することであり得、そのうちのいずれか1つは所望の治療応答であり得る。その最も基本的なレベルでは、治療有効量は、癌性細胞の有糸分裂を阻害するのに必要な量である。
【0089】
開示された化合物及びそれらを含有する組成物のイン・ビボ適用は、当業者に現在知られた、又は将来的に知られる任意の適切な方法及び技術によって達成することができる。例えば、開示された化合物は、生理学的又は薬学的に許容される形態で製剤化され得、例えば、経口、経鼻、直腸、局所、及び非経口投与経路を含む、当技術分野で公知の任意の適切な経路によって投与され得る。本明細書で使用される場合、非経口的という用語は、例えば、注射等、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腹腔内、及び胸骨内投与を含む。開示された化合物又は組成物の投与は、当業者によって容易に決定され得るように、単回投与、又は連続的もしくは明確な間隔とすることができる。
【0090】
本明細書に開示された化合物及びそれらを含む組成物は、リポソーム技術、徐放性カプセル、埋込ポンプ、及び生分解性容器を利用して投与することもできる。これらの送達方法は、有利には、長期間にわたって均一な投与量を提供することができる。化合物は、それらの塩誘導体形態又は結晶形態で投与することもできる。
【0091】
本明細書に開示された化合物は、薬学的に許容される組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。製剤化は、当業者に周知されており、容易に利用可能な多数の出典に詳細に記載されている。例えば、非特許文献1は、開示された方法に関連して使用することができる製剤を記載している。一般に、本明細書に開示された化合物は、化合物の有効投与を促進するために、有効量の化合物を適切な担体と組み合せるように製剤化することができる。使用される組成物は、様々な形態とすることもできる。これらには、例えば、固体、半固体、及び液体剤形、例えば、錠剤、丸剤、粉末、液体溶液又は懸濁剤、坐剤、注射用及び注入用溶液、ならびに噴霧が含まれる。好ましい形態は、意図する投与様式及び治療適用に応じて異なる。組成物はまた、好ましくは、当業者に公知の従来の薬学的に許容される担体及び希釈剤も含む。化合物と共に使用するための担体又は希釈剤の例としては、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルミナ、澱粉、生理食塩水、ならびに同等の担体及び希釈剤が挙げられる。所望の治療処置のためのそのような用量の投与を提供するために、本明細書に開示された組成物は、担体又は希釈剤を含む合計組成物の重量に基づいて、1つ以上の本化合物の合計の約0.1重量%~99重量%、特に1重量%~15重量%を有利に含むことができる。
【0092】
投与に適した製剤には、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有することができる水性無菌注射溶液;ならびに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供することができ、使用前に、滅菌液体担体の条件、例えば、注射用の水のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即席注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤等から調製することができる。特に、上述した成分に加えて、本明細書に開示された組成物は、当該製剤のタイプを考慮して、当該技術分野で通常の他の薬剤を含むことができることを理解されたい。
【0093】
本明細書に開示された化合物及びそれらを含む組成物は、細胞との直接接触を通して、又は担体手段を介して、細胞に送達され得る。化合物及び組成物を細胞に送達するための担体手段は当技術分野で公知であり、例えば、組成物をリポソーム部分に封入することを含む。本明細書に開示された化合物及び組成物を、細胞に送達するための他の手段は、標的細胞への送達のために標的化されるタンパク質又は核酸に化合物を付着させることを含む。特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、他の組成物にカップリングすることができ、組成物が生体膜を通って移動することを可能にするアミノ酸配列を開示している。特許文献4はまた、細胞内送達のために細胞膜を通って生物学的部分を輸送するための組成物を記載している。化合物はまた、ポリマーに組み込むこともでき、その例として、頭蓋内腫瘍のための、ポリ(D-Lラクチド-コ-グリコリド)ポリマー;20:80モル比(GLIADELで使用される)のポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン:セバシン酸];コンドロイチン;キチン;及びキトサンが挙げられる。
【0094】
腫瘍学的障害の処置のために、本明細書に開示された化合物は、他の抗腫瘍物質もしくは抗癌物質と組み合わせて、及び/又は放射線及び/又は光線力学的療法と組み合わせて、及び/又は腫瘍を除去するための外科的処置と組み合わせて、処置を必要とする患者に投与することができる。これらの他の物質又は処置は、本明細書に開示された化合物と同じ時点又は異なる時点で与えることができる。例えば、本明細書に開示された化合物は、有糸分裂阻害剤、例えば、タキソール又はビンブラスチン、アルキル化剤、例えば、シクロホスアミド又はイホスファミド、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル又はヒドロキシ尿素、DNAインターカレーター、例えば、アドリアマイシン又はブレオマイシン、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エトポシド又はカンプトテシン、抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン、抗エストロゲン剤、例えば、タモキシフェン、及び/又は他の抗癌剤又は抗体、例えば、それぞれGLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation)及びHERCEPTIN(Genentech、Inc.)と組み合わせて使用することができる。
【0095】
多くの腫瘍及び癌は、腫瘍又は癌細胞に存在するウイルスゲノムを有する。例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)は、多くの哺乳動物悪性腫瘍と関連している。本明細書に開示された化合物はまた、単独で、又はガンシクロビル、アジドチミジン(AZT)、ラミブジン(3TC)等の抗癌剤もしくは抗ウイルス剤と組み合わせて、細胞形質転換を引き起こす可能性のあるウイルスに感染した患者を処置するために、及び/又は細胞中のウイルスゲノムの存在に関連する腫瘍もしくは癌を有する患者を処置するために使用することができる。本明細書に開示された化合物は、腫瘍性疾患のウイルスベースの処置と組み合わせて使用することもできる。例えば、当該化合物は、非小細胞肺癌の処置において、変異体の単純ヘルペスウイルスに用いることができる(非特許文献2)。
【0096】
化合物及び/又はそれらを含有する組成物の治療適用は、当業者に現在知られた、又は将来知られる任意の適切な治療方法及び技術によって達成することができる。さらに、本明細書に開示された化合物及び組成物は、他の有用な化合物及び組成物の作製のための出発原料又は中間体として使用される。
【0097】
本明細書に開示された化合物及び組成物は、1つ以上の解剖学的部位、例えば、望ましくない細胞増殖の部位(例えば、腫瘍部位又は良性皮膚増殖、例えば、腫瘍又は皮膚増殖に注射又は局所適用される)に、任意で、不活性希釈剤等の薬学的に許容される担体と組み合わせて、局所的に投与することができる。本明細書に開示された化合物及び組成物は、静脈内又は経口等の全身に投与でき、任意で、不活性希釈剤等の薬学的に許容される担体、又は経口送達のための吸収可能な可食担体と組み合わせることができる。それらは、硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入することができ、錠剤に圧縮することができ、又は患者の食事の食品に直接混ぜ込むことができる。経口治療投与のために、活性化合物は、1つ以上の賦形剤と組み合わせることができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、エアゾール噴霧器等の形態で使用することができる。
【0098】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等はまた、以下のものを含有することができる。結合剤、例えば、トラガントゴム、アカシア、トウモロコシ澱粉又はゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム;崩壊剤、例えば、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、アルギン酸等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えば、スクロース、果糖、ラクトース又はアスパルテーム、又は着香剤、例えば、ペパーミント、冬緑油、又はサクランボ香味料を添加することができる。
【0099】
単位剤形がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、植物油又はポリエチレングリコール等の液体担体を含有することができる。コーティングとして、又は固体単位剤形の物理的形態を改変するために、様々な他の材料を存在させることができる。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、ゼラチン、ろう、シェラック、又は糖等でコーティングすることができる。シロップ又はエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてのスクロース又はフルクトース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素、及びチェリー又はオレンジフレーバー等の香味料を含有することができる。当然のことながら、任意の単位剤形の調製に使用される任意の材料は、その使用量で薬学的に許容されかつ実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性化合物は、徐放性調製物及びデバイスに混ぜ込むことができる。薬学的に許容される塩、水和物、又はそれらの類似体を含む、本明細書に開示された化合物及び組成物は、注入又は注射によって、静脈内、筋肉内、又は腹腔内に投与することができる。活性剤又はその塩の溶液は、水中で調製することができ、任意で、非毒性界面活性剤と混合することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、それらの混合物、及び油において調製することもできる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含むことができる。
【0100】
注射又は注入に適した薬学的投薬形態は、活性成分を含む滅菌水溶液又は分散液又は滅菌粉末を含むことができ、これは、任意で、リポソーム中に封入された、滅菌注射可能又は注入可能な溶液又は分散液の即時調製に適合される。最終的な剤形は、滅菌の流体であり、製造及び保存の条件下で安定であるべきである。液体坦体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成により、分散液の場合には、必要とされる粒子サイズの維持により、又は界面活性剤の使用により維持することができる。任意で、微生物の作用の防止は、種々の他の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝液、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることによって行うことができる。
【0101】
滅菌注射用溶液は、本明細書に開示された化合物及び/又は薬剤を、必要に応じて、上記で列挙された様々な他の成分と共に適当な溶媒中に必要量で組み込み、続いて、濾過滅菌することによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライ技術であり、これにより、活性成分と、予め滅菌濾過された溶液中に存在する任意の追加の所望の成分との粉末が得られる。
【0102】
局所投与のために、本明細書に開示された化合物及び薬剤は、液体又は固体として適用することができる。しかしながら、それらを、固体又は液体とすることのできる皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて、組成物として皮膚に局所的に投与することが一般に望ましい。本明細書に開示された化合物及び薬剤及び組成物は、対象の皮膚に局所的に適用して、悪性又は良性腫瘍のサイズを低減する(及び完全な除去を含むことができる)か、又は感染部位を処置することができる。本明細書に開示された化合物及び薬剤は、増殖又は感染部位に直接適用することができる。好ましくは、化合物及び薬剤は、軟膏、クリーム、ローション、溶液、チンキ剤等製剤で、増殖又は感染部位に適用される。特許文献5に記載されているような、皮膚病変への薬理学的物質の送達のための薬物送達システムも使用することができる。
【0103】
有用な固体担体としては、タルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉化固体が挙げられる。有用な液体担体としては、水、アルコール、グリセロール、又は水アルコール/グリコールブレンドが挙げられ、任意で、非毒性界面活性剤を利用して、組成物は有効なレベルで溶解又は分散される。香料及び追加の抗菌剤等のアジュバントを添加して、所与の用途のための特性を最適化することができる。得られた液体組成物は、吸収性パッドから適用することができ、包帯及び他のドレッシングに含浸させるために使用することができ、例えば、ポンプ型又はエアゾール噴霧器を使用して患部に噴霧することができる。
【0104】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及び脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性鉱物材料等の増粘剤もまた、使用者の皮膚に直接適用するための展延性のペースト、ゲル、軟膏、せっけん等を形成するために、液体坦体と共に用いることができる。化合物を皮膚に送達するために使用することができる有用な皮膚用組成物の例は、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9に開示されている。
【0105】
本明細書に開示された化合物及び薬剤及び医薬組成物の有用な用量は、動物モデルにおけるそれらのイン・ビトロ活性及びイン・ビボ活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物における有効用量をヒトに外挿するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、特許文献10を参照されたい。
【0106】
薬学的に許容される担体と組み合わせて本明細書に開示された化合物を含む医薬組成物も開示される。ある量の化合物を含む、経口、局所又は非経口投与に適合した医薬組成物は、好ましい態様を構成する。患者、特にヒトに投与される用量は、致死的な毒性を伴わず、好ましくは、許容可能なレベルを超える副作用又は病的状態を引き起こすことなく、妥当な時間枠にわたって患者において治療応答を達成するのに十分であるべきである。当業者であれば、用量が、対象の状態(健康状態)、対象の体重、併用する処置の種類、状況によっては、処置の頻度、治療可能比、病理学的状態の重篤度及びステージを含む数多くの要因に応じて異なることが認識されるはずである。
【0107】
腫瘍学的障害の処置のために、本明細書に開示された化合物及び薬剤及び組成物は、患者は、他の抗腫瘍剤又は抗癌剤又は物質(例えば、化学療法剤、免疫療法剤、放射性治療剤、細胞傷害剤等)の前、後、又はそれらと組み合わせて、及び/又は放射線療法及び/又は腫瘍を除去するための外科的処置を用いて、処置を必要とする患者に投与することができる。例えば、本明細書に開示された化合物及び薬剤及び組成物は、癌を処置する方法に用いることができ、患者は、タキソール又はビンブラスチン等の有糸分裂阻害剤、シクロホスアミド又はイホスファミド等のアルキル化剤、5フルオロウラシル又はヒドロキシ尿素等の代謝拮抗剤、アドリアマイシン又はブレオマイシン等のDNAインターカレーター、エトポシド又はカンプトテシン等のトポイソメラーゼ阻害剤、アンジオスタチン等の血管新生阻害剤、タモキシフェン等の抗エストロゲン剤、及び/又は、例えば、GLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation;East Hanover、NJ)及びHERCEPTIN(Genentech、Inc.;South San Francisco、CA)等の他の抗癌剤又は抗体でそれぞれ、処置すべきか、又は処置されている。これらの他の物質又は放射線処置は、本明細書に開示された化合物と同じ又は異なる時に施すことができる。他の好適な化学療法剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルトレタミン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ(VELCADE)、ブスルファン、カルシウムホリナート、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲフェチニブ(IRESSA)、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ(GLEEVEC)、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフル-ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンが挙げられる。例示的な実施形態において、化学療法剤は、メルファランである。
【0108】
好適な免疫療法剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アレムツズマブ、セツキシマブ(ERBITUX)、ゲムツズマブ、ヨウ素131トシツモマブ、リツキシマブ、トラスツザマブ(HERCEPTIN)が挙げられる。細胞毒性剤としては、例えば、放射性同位元素(例えば、1131、1125、Y90、P32等)、ならびに細菌、真菌、植物、又は動物起源の毒素(例えば、リシン、ボツリヌス毒素、炭疽毒素、アフラトキシン、クラゲ毒素(例えば、ボックスゼリーフィッシュ等))が挙げられる。化学療法剤、免疫療法剤、放射線療法剤、又は放射線療法の投与の前、後、及び/又は投与と組み合わせて、本明細書に開示された有効量の化合物及び/又は薬剤を投与することを含む、腫瘍性障害を処置する方法も開示される。
【0109】
キット
本明細書に記載の方法を実施するためのキットがさらに提供される。「キット」とは、少なくとも1つの試薬、例えば、本明細書に記載の化合物のいずれか1つを含む任意の製造(例えば、パッケージ又は容器)を意図している。キットは、本明細書に記載の方法を実施するためのユニットとして、促進、流通、又は販売することができる。さらに、キットには、キット及びその使用方法を記載する添付文書を含めることができる。キット試薬のいずれか又は全ては、密封容器又はパウチ等の外部環境からそれらを保護する容器内に提供することができる。
【0110】
所望の治療処置のためのそのような用量の投与を提供するために、いくつかの実施形態において、本明細書に開示された薬学的組成物は、担体又は希釈剤を含む組成物全体の重量に基づいて、1つ以上の化合物の合計の約0.1重量%~45重量%、特に、1重量%~15重量%含むことができる。
【0111】
詳細には、投与される活性成分の用量レベルは、動物重量(体重)あたり、静脈内0.01~約20mg/kg;腹腔内0.01~約100mg/kg;皮下0.01~約100mg/kg;筋肉内0.01~約100mg/kg;経口0.01~約200mg/kg、好ましくは、約1~100mg/kg;鼻腔内滴下0.01~約20mg/kg;及びエアゾール0.01~約20mg/kgとすることができる。
【0112】
本明細書に開示された化合物を含む組成物を、1つ以上の容器中に含むキットも開示される。開示されたキットは、薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を、任意で、含むことができる。一実施形態において、キットは、本明細書に記載の1つ以上の他の成分、補助剤、又はアジュバントを含む。他の実施形態において、キットは、本明細書に記載の薬剤等の1つ以上の抗癌剤を含む。一実施形態において、キットは、キットの化合物又は組成物を投与する方法を記載する説明書又は梱包材を含む。キットの容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属等、及び任意の適切なサイズ、形状、又は構成のものとすることができる。一実施形態において、本明細書に開示された化合物及び/又は薬剤は、錠剤、丸剤、又は粉末形態等の固体としてキットに提供される。他の実施形態において、本明細書に開示された化合物及び/又は薬剤は、液体又は溶液としてキットに提供される。一実施形態において、キットは、本明細書に開示された化合物及び/又は薬剤を液体又は溶液形態で含有するアンプル又はシリンジを含む。
【0113】
添付の請求項の方法及び組成物は、本明細書に記載された特定の方法及び組成物によって範囲が限定されず、これらは請求項のいくつかの態様の例示として意図され、機能的に等価である任意の方法及び組成物は本開示の範囲内である。本明細書に示され、記載されたものに加えて、方法及び組成物の種々の変更は、添付の請求項の範囲内であることが意図される。さらに、これらの方法及び組成物のある代表的な方法、組成物、及び態様のみが具体的に記載されているが、他の方法及び組成物、ならびに方法及び組成物の様々な特徴の組み合わせは具体的に記載されていなくても、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。従って、ステップ、要素、成分、又は構成の組合せは、本明細書で明示的に言及され得るが、明示的に述べられていなくても、ステップ、要素、成分、及び構成の他の全ての組合せが含まれる。
【0114】
実施例
以下の実施例は、開示された主題による方法及び結果を例示するために以下に記載される。これらの実施例は、本明細書に開示された主題の全ての態様を含むことを意図するものではなく、代表的な方法及び結果を例示することを意図するものである。これらの実施例は、当業者に明らかな本発明の等価物及び変形を排除することを意図するものではない。
【0115】
数(例えば、量、温度等)に関して正確性を保証するための努力がなされてきたが、いくつかの誤差及び偏差は考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃又は周囲温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力、ならびに記載されたプロセスから得られる生成物純度及び収率を最適化するために使用することができる他の反応範囲及び条件の多数の変形及び組み合わせが存在する。このようなプロセス条件を最適化するためには、合理的かつ日常的な実験のみが必要とされる。
【0116】
複合体合成:
PD-1抗体(Ab)は、スキーム1及び2に示されるように、文献の方法に従って分子の残部にカップリングすることができる。
【0117】
式IIにおいて、mはリンカーフラグメントであり、Mはランタニド系列のいずれかの金属であり、Abは抗体、例えば、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的な抗体である。本明細書に記載の標的化合物は、異なる鎖長を介してDORナルトリンドールを抗体部分に連結するリンカーを含有する。
【0118】
「リンカーフラグメント」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の多官能性、例えば、二官能性又は三官能性分子を指す。リンカーフラグメント「Z」は、単一原子、あるいは、置換炭素、酸素、置換もしくは非置換硫黄、置換窒素、置換リン、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルキレン、置換もしくは非置換アルキン鎖、又は置換もしくは非置換アルコキシル鎖等の、複数の原子の群とすることができる。適切なリンカーとしては、これらに限定されるものではないが、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル鎖、エーテル、アミン、アミド、スルホンアミド、アルキルアミン、チオエーテル、カルボキシレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの誘導体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0119】
Ab部分は、免疫エフェクターとして特異的に作用する抗体又はそのフラグメントである。PD-1抗体は、ヒト、ウサギ、又はマウスPD-1について市販されている。CD28、CD137、OX40、及びCD40アゴニスト抗体等の他の抗体を他の実施形態で使用することができる。
スキーム1:
【化18】
【化19】
【0120】
引用文献
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【0121】
本明細書に記載された本発明の実施形態に対して、その広範な発明概念から逸脱することなく変更を加え得ることは、当業者には理解されるであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態によって限定されるものではなく、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲内にある変更をカバーすることが意図されることが理解される。
【国際調査報告】