(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】血管の止血を行うための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553658
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 US2022018804
(87)【国際公開番号】W WO2022187559
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519155550
【氏名又は名称】テルモ メディカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Terumo Medical Corporation
【住所又は居所原語表記】265 Davidson Avenue, Suite 320, Somerset, NJ 08873, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ゲッティンガー,サラ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リッジリー,ケヴィン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ブライアン デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM33
(57)【要約】
血管の止血を行うためのシステムは、組織トラック内に挿入可能なバルーンを含み、バルーンは、血管の外側で血管に形成した開口部の上に配置される。止血層は、バルーンの外面の少なくとも一部に取り外し可能に配置される。バルーンチューブが、バルーンに流体連結されており、バルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成される。バルーンは、止血層が血管の外面に配置されて開口部を閉じるように、開口部の上で膨張可能である。止血層は、バルーンから分離可能であり、バルーンを組織トラックから取り外すときに血管の外面に配置されたままとなり、バルーンの取外し後も開口部を閉じ続ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の止血を行うための装置であって、当該装置は、
組織トラック内に挿入可能な第1のバルーンであって、血管の外側で該血管に形成した開口部の上に配置される第1のバルーンと、
該第1のバルーンの外面の少なくとも一部に取り外し可能に配置される止血層と、
前記第1のバルーンに流体連結され、該第1のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第1のバルーンチューブと、を含み、
前記第1のバルーンは、前記止血層が前記血管の外面に配置されて前記開口部を閉じるように、前記開口部の上で膨張可能であり、前記第1のバルーンは、止血を達成するために前記開口部に圧力を加え、前記止血層は、前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外すときに前記血管の前記外面に配置されたままであり、前記第1のバルーンの取外し後も前記開口部を閉じ続けるように、前記第1のバルーンから分離可能である、
装置。
【請求項2】
前記第1のバルーン、前記止血層、及び前記第1のバルーンチューブが配置される少なくとも1つの管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のバルーン、前記止血層、前記第1のバルーンチューブ、及び前記キャリアチューブが配置される中央チャネルを規定するシースをさらに含み、
該シースの少なくとも一部が、前記組織トラック及び前記血管内に取り外し可能に挿入可能であるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シース又は前記キャリアチューブの少なくとも一方の先端部が複数の穿孔を含み、前記第1のバルーンが前記先端部内で膨張するときに該先端部が前記複数の穿孔で引き裂かれるようにする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記止血層は吸収性材料で形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のバルーンを通して又は該第1のバルーンに隣接して延びる第1のガイドワイヤをさらに含み、該第1のガイドワイヤの先端部が、前記第1のバルーンを前記開口部の上に配置する前に、前記血管内の前記開口部を通して取り外し可能に配置されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第2のバルーンをさらに含み、該第2のバルーンは、記第1のバルーン及び前記第2のバルーンのそれぞれを膨張させるときに、前記血管の壁及び前記止血層を前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとの間に介在させることにより、前記止血層を前記血管の前記外面に固定することが容易になるように、前記血管内の前記開口部を通して取り外し可能に配置されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のバルーンに流体連結された第2のバルーンチューブをさらに含み、該第2のバルーンチューブは、前記第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のバルーンチューブ及び前記第1のバルーンが配置される第1の管腔と、
該第1の管腔から軸方向にオフセットされる第2の管腔と、を規定するキャリアチューブをさらに含み、
前記第2のバルーンチューブ及び前記第2のバルーンは前記第2の管腔を通して配置される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のバルーンを通して又は該第2のバルーンに隣接して延びる第2のガイドワイヤをさらに含み、該第2のガイドワイヤの先端部が、前記第2のバルーンを前記血管内に配置する前に、該血管内に取り外し可能に配置されるように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記第2のバルーンに流体連結され、該第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第2のバルーンチューブをさらに含み、該第2のバルーンチューブは第1のバルーンチューブを通して配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のバルーンチューブ、前記第1のバルーン、前記第2のバルーンチューブ、及び前記第2のバルーンのそれぞれが配置される管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記開口部を通して前記血管内に配置されるように構成されたアンカーワイヤ先端部を有するアンカーワイヤをさらに含み、
前記アンカーワイヤ先端部は、該アンカーワイヤ先端部を前記血管の外側に配置するときの収縮構成と、前記アンカーワイヤ先端部を血管内に配置するときの拡張構成との間で移動可能であり、
該拡張構成において、前記アンカーワイヤ先端部は、前記第1のバルーンを膨張させるときに、前記血管の壁及び前記止血層を前記第1のバルーンとアンカーとの間に介在させることにより、前記止血層を前記血管の前記外面に固定することが容易になるように、前記アンカーを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記アンカーワイヤは形状記憶合金で形成され、前記アンカーワイヤ先端部に力が加えられないときに、前記アンカーワイヤは、前記拡張構成において弛緩した状態にある、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記アンカーワイヤは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記アンカーワイヤは、該アンカーワイヤが前記第1のバルーンを通して配置されるように、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
血管の止血を行うための方法であって、当該方法は、
第1のバルーンが血管に形成した開口部の近くに配置されるように、前記第1のバルーンに流体連結された第1のバルーンチューブを使用して、前記第1のバルーンを組織トラックを通して前記血管に形成した前記開口部に向けて挿入するステップと、
前記第1のバルーンの先端部が前記血管の壁の外面を押して前記開口部を閉じるように、前記第1のバルーンを膨張させるステップと、
前記第1のバルーンを一定期間に亘って膨張位置に維持するステップと、
前記一定期間後に第1のバルーンを収縮させるステップと、
前記第1のバルーンチューブを引き抜き、それにより前記第1のバルーンを前記血管から引き抜くステップと、を含む、
方法。
【請求項20】
止血層が、前記第1のバルーンの外面の少なくとも一部に配置され、
前記第1のバルーンを膨張させると、前記止血層が前記開口部を閉じるように、前記止血層を前記血管の前記壁の前記外面と前記膨張した第1のバルーンとの間に介在させ、
前記一定期間後に前記第1のバルーンを収縮させると、前記止血層が、前記血管の前記外面に配置されたままであり、前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外しても前記開口部を閉じ続けるように、前記止血層を前記第1のバルーンの前記外面から分離させる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のバルーンを前記組織トラックを通して挿入する前に、第1のガイドワイヤの先端部が前記開口部を通して前記血管内に配置されるまで、前記第1のガイドワイヤを前記組織トラックを通して挿入するステップであって、前記第1のバルーンは、前記第1のガイドワイヤの上に又は前記第1のガイドワイヤに隣接して前記血管に向けて挿入される、ステップと、
前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外す前に、前記組織トラックから前記第1のガイドワイヤを取り外すステップと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のバルーンを膨張させる前に、第2のバルーンチューブを使用して第2のバルーンを前記開口部を通して前記血管に挿入するステップと、
前記第1のバルーンを膨張させるときに、前記血管の前記壁が前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとの間に介在するように、前記第1のバルーンを膨張させる前に前記第2のバルーンを前記血管内で膨張させるステップと、
前記第1のバルーンが未だ膨張している間に前記第2のバルーンを収縮させるステップと、
前記血管から前記第2のバルーンを引き抜くステップと、をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入する前に、シースの一部が前記血管に形成した前記開口部を通して前記血管に挿入されるように、前記組織トラックを通して前記第1のガイドワイヤの上で前記シースを挿入するステップであって、該シースは、前記第1のバルーンを含む前記第1のバルーンチューブ、及び前記第2のバルーンを含む前記第2のバルーンチューブが前記血管に向けて挿入される中央チャネルを規定する、ステップと、
前記シースのシース先端部が前記血管の外側で前記開口部の近くに配置されるまで前記シースを引き抜くステップと、
前記第2のバルーンを膨張させた後に、前記第1のバルーンが前記中央チャネルの外側で前記開口部の近くに配置されるように、前記第1のバルーンを引き抜かずに前記シースを第2の距離だけ引き抜くステップと、をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入する前に、キャリアチューブの先端部が前記血管に形成した前記開口部に近接するように、前記キャリアチューブを前記シースによって規定された中央チャネルを通して前記血管に向けて挿入するステップをさらに含み、
前記キャリアチューブは、
前記第1のバルーンチューブ及び前記第1のバルーンが挿入される第1の管腔と、
該第1の管腔から軸方向にオフセットされた第2の管腔と、を規定し、
前記第2のバルーンチューブ及び前記第2のバルーンは前記第2の管腔を通して挿入され、
前記キャリアチューブは前記シースとともに前記血管から引き抜かれる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のバルーンはキャリアチューブによって規定される第1の管腔内に配置され、前記第2のバルーンは前記キャリアチューブによって規定される第2の管腔内に配置され、
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入するステップは、前記キャリアチューブの先端部が前記血管に形成した前記開口部に近接するように、前記キャリアチューブを前記シースによって規定された中央チャネルを通して前記血管に向けて挿入するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のバルーンを前記血管に挿入する前に、第2のガイドワイヤを前記開口部を通して前記血管に挿入するステップをさらに含み、前記第2のガイドワイヤは、前記第2のバルーンを通して又は前記第2のバルーンに隣接して延びる、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記第2のバルーンチューブは前記第1のバルーンチューブを通して配置される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入する前に、シースの一部が前記血管に形成した前記開口部を通して前記血管に挿入されるように、前記組織トラックを通して前記第1のガイドワイヤの上で前記シースを挿入するステップであって、前記シースは、前記第1のバルーンを含む前記第1のバルーンチューブ、及び前記第2のバルーンを含む第2のバルーンチューブが前記血管に向けて挿入される中央チャネルを規定する、ステップと、
前記シースのシース先端部が前記血管の外側で前記開口部の近くに配置されるまで、前記シースを引き抜くステップと、
前記第2のバルーンを膨張させた後に、前記第1のバルーンが前記中央チャネルの外側で前記開口部の近くに配置されるように、前記第1のバルーンを引き抜かずに、前記シースを第2の距離だけ引き抜くステップと、をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入する前に、キャリアチューブの先端部が前記血管に形成した前記開口部の近くに配置されるように、前記キャリアチューブを前記シースによって規定された前記中央チャネルを通して前記血管に向けて挿入するステップをさらに含み、
前記キャリアチューブは、前記第1のバルーンを含む第1のバルーンチューブと、前記第2のバルーンを含む前記第2のバルーンチューブとがそれぞれ挿入される管腔を規定する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンのそれぞれが、キャリアチューブによって規定される管腔内に配置され、
前記第1のバルーン及び前記第2のバルーンを挿入するステップは、前記キャリアチューブの先端部が前記血管に形成した前記開口部に近接するように、前記シースによって規定された前記中央チャネルを通してキャリアチューブを前記血管に向けて挿入するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第1のバルーンを膨張させる前に、アンカーワイヤのアンカーワイヤ先端部を前記開口部を通して前記血管に挿入するステップであって、前記アンカーワイヤ先端部は前記開口部を通して挿入する前に収縮構成であり、前記アンカーワイヤ先端部は、前記第1のバルーンを膨張させるときに前記血管の前記壁が前記第1のバルーンとアンカーとの間に介在するように、前記血管に挿入した後に前記アンカーを形成する拡張構成である、ステップと、
前記第1のバルーンが未だ膨張している間に、前記アンカーワイヤ先端部を前記収縮構成に移動させることによって前記アンカーワイヤを前記血管から引き抜くステップと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
止血層が、前記第1のバルーンの外面の少なくとも一部に配置され、
前記第1のバルーンを膨張させると、前記止血層が前記開口部を閉じるように、前記止血層及び前記血管の前記壁が前記膨張した第1のバルーンと前記アンカーとの間に介在し、
前記一定期間後に前記第1のバルーンを収縮させると、前記止血層は、前記止血層が前記血管の外面に配置されたままであり、前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外しても前記開口部を閉じ続けるように、前記第1のバルーンの前記外面から分離される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アンカーワイヤは形状記憶合金で形成され、前記アンカーワイヤ先端部に力が加えられないときに、前記アンカーワイヤは、前記拡張構成において弛緩した状態にある、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記アンカーワイヤは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記アンカーワイヤが前記第1のバルーンを通して配置されるように、前記アンカーワイヤは、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本開示は、2021年3月4日に出願した米国仮出願第63/156,861号の利益及び優先権を主張するものであり、この文献の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、止血を達成した後に血管内にいかなる構造も残すことなく、膨張可能なバルーンを使用して血管の止血を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動脈又は静脈の外傷等の血管の外傷は、急速な失血を引き起こす可能性があり、血管の止血、すなわち血液が流出している血管の開口部の閉鎖及び修復を行うことによって血流を迅速に止めないと致命的となる可能性があり、止血を行うことで、心臓血管系が正常な血圧で体の様々な部分に血液を供給するという通常の機能を取り戻すことができるようになる。従来、止血は患者の皮膚上の患者の体の部位を手で圧迫することによって達成していたが、開口部を閉じるのはあまり効果的ではなく、止血ができたとしても比較的長い時間がかかる可能性がある。さらに、手による圧迫では、患者が何時間も横たわる必要があり、歩行時間、つまり患者が起き上がって歩き回ることができる時点が遅くなり、一般に患者にとって不快なものである。血管閉鎖装置(VCD)が、止血を迅速に達成するために使用されてきた。このような装置は、一般に、血管内コンポーネント(すなわち、血管内に位置する)及び血管外コンポーネント(すなわち、血管の外側に位置する)を有する。血管内コンポーネント及び血管外コンポーネントを用いると迅速な止血が達成され得るが、一般に血管内コンポーネントは止血を達成した後も血管内に留まる。このような血管内コンポーネントは、血管の壁から剥がれて塞栓事象を引き起こす危険性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で説明する実施形態は、概して、血管外血管(extravascular vascular)の止血を行うための装置及び方法に関し、特に、止血を達成するために血管の開口部に対して血管外圧迫を与える膨張可能なバルーンの使用に関する。止血層は、バルーンによって止血層が血管の開口部に配置されて開口部を閉鎖し、バルーンが取り外されても血管の外面に留まるように、バルーン上に分離可能に配置することができる。2次バルーン又はアンカーは、バルーン及び止血層を血管の外面に配置するときに血管内支持を与えるために使用され得るが、止血が達成されると血管内から除去される。
【0005】
いくつかの実施形態では、血管の止血を行うための装置は、組織トラック内に挿入可能な第1のバルーンであって、血管の外側で血管に形成した開口部の上に配置される第1のバルーンと;第1のバルーンの外面の少なくとも一部に取り外し可能に配置される止血層と;第1のバルーンに流体連結され、第1のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第1のバルーンチューブと;を含み、第1のバルーンは、止血層が血管の外面に配置されて開口部を閉じるように、開口部の上で膨張可能であり、第1のバルーンは、止血を達成するために開口部に圧力を加え、止血層は、第1のバルーンから分離可能であり、第1のバルーンを組織トラックから取り外すときに血管の外面に配置されたままとなり、第1のバルーンを取り外した後に開口部を閉鎖し続ける。
【0006】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーン、止血層、及びバルーンチューブが配置される少なくとも1つの管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーン、止血層、第1のバルーンチューブ、及びキャリアチューブが配置される中央チャネルを規定するシースをさらに含み、シースの少なくとも一部が、組織トラック及び血管に取り外し可能に挿入可能である。
【0008】
いくつかの実施形態では、シース又はキャリアチューブの少なくとも一方の先端部が、第1のバルーンが先端部内で膨張するときに、先端部が穿孔で引き裂けるように穿孔される。
【0009】
いくつかの実施形態では、止血層は吸収性材料で形成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーンを通して又は第1のバルーンに隣接して延びる第1のガイドワイヤをさらに含み、第1のガイドワイヤの先端部が、第1のバルーンを開口部の上に配置する前に、開口部を通して血管内に取り外し可能に配置されるように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーン及び第2のバルーンのそれぞれを膨張させるときに、血管の壁及び止血層を第1のバルーンと第2のバルーンとの間に介在させることにより、止血層を血管の外面に固定することが容易になるように、開口部を通して血管内に取り外し可能に配置されるように構成された第2のバルーンを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンは、第1のバルーンから軸方向にオフセットされる。
【0013】
いくつかの実施形態では、装置は、第2のバルーンに流体連結された第2のバルーンチューブをさらに含み、第2のバルーンチューブは、第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーンチューブ及び第1のバルーンが配置される第1の管腔と、第1の管腔から軸方向にオフセットした第2の管腔とを規定するキャリアチューブをさらに含み、第2のバルーンチューブ及び第2のバルーンは、第2の管腔を通して配置される。
【0015】
いくつかの実施形態では、装置は、第2のバルーンを通して又は第2のバルーンに隣接して延びる第2のガイドワイヤをさらに含み、第2のガイドワイヤの先端部が、第2のバルーンを血管内に配置する前に、血管内に取り外し可能に配置されるように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンは、第1のバルーンと軸方向に整列している。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、第2のバルーンに流体連結され、第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第2のバルーンチューブをさらに含み、第2のバルーンチューブは第1のバルーンチューブを通して配置される。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンは、第1のバルーンと軸方向に整列している。
【0019】
いくつかの実施形態では、装置は、第2のバルーンに流体連結され、第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第2のバルーンチューブをさらに含み、第2のバルーンチューブは第1のバルーンチューブを通して配置される。
【0020】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のバルーンチューブ、第1のバルーン、第2のバルーンチューブ、及び第2のバルーンのそれぞれが配置される管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置は、開口部を通して血管内に配置されるように構成されたアンカーワイヤ先端部を有するアンカーワイヤをさらに含み、アンカーワイヤ先端部は、アンカーワイヤ先端部を血管の外側に配置するときの収縮構成と、アンカーワイヤ先端部を血管内に配置するときの拡張構成との間で移動可能であり、拡張構成において、アンカーワイヤ先端部は、第1のバルーンを膨張させるときに、血管の壁及び止血層を第1のバルーンとアンカーとの間に介在させることにより、止血層を血管の外面に固定することが容易になるように、アンカーを形成する。
【0022】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは形状記憶合金で形成され、アンカーワイヤ先端部に力が加えられないときに、アンカーワイヤは拡張構成において弛緩した状態にある。
【0023】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは、第1のバルーンから軸方向にオフセットされる。
【0024】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは、アンカーワイヤが第1のバルーンを通して配置されるように、第1のバルーンと軸方向に整列している。
【0025】
いくつかの実施形態では、血管の止血を行うための方法は、第1のバルーンが血管に形成した開口部の近くに配置されるように、第1のバルーンに流体連結された第1のバルーンチューブを使用して、第1のバルーンを組織トラックを通して血管に形成した開口部に向けて挿入するステップと;第1のバルーンの先端部が血管の壁の外面を押して開口部を閉じるように、第1のバルーンを膨張させるステップと;第1のバルーンを一定期間に亘って膨張位置に維持するステップと;一定期間後に第1のバルーンを収縮させるステップと;第1のバルーンチューブを引き抜き、それにより第1のバルーンを血管から引き抜くステップと;を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、止血層が第1のバルーンの外面の少なくとも一部に配置され、第1のバルーンを膨張させると、止血層が開口部を閉じるように、止血層が血管の壁の外面と膨張した第1のバルーンとの間に介在し、一定期間後に第1のバルーンを収縮させると、止血層が血管の外面に配置されたままであり、第1のバルーンを組織トラックから取り外しても開口部を閉じ続けるように、止血層を第1のバルーンの外面から分離させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーンを組織トラックを通して挿入する前に、第1のガイドワイヤの先端部が開口部を通して血管内に配置されるまで、第1のガイドワイヤを組織トラックを通して挿入するステップであって、第1のバルーンは、第1のガイドワイヤの上に又は第1のガイドワイヤに隣接して血管に向けて挿入される、ステップと;第1のバルーンを組織トラックから取り外す前に、第1のガイドワイヤを組織トラックから取り外すステップと;をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーンを膨張させる前に、第2のバルーンチューブを使用して第2のバルーンを開口部を通して血管に挿入するステップと;第1のバルーンを膨張させるときに、血管の壁が第1のバルーンと第2のバルーンとの間に介在するように、第1のバルーンを膨張させる前に第2のバルーンを血管内で膨張させるステップと;第1のバルーンが未だ膨張している間に第2のバルーンを収縮させるステップと;第2のバルーンを血管から引き抜くステップと;をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンは、第1のバルーンから軸方向にオフセットされる。
【0030】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入する前に、シースの一部が血管に形成した開口部を通して血管内に挿入されるように、組織トラックを通して第1のガイドワイヤの上でシースを挿入するステップであって、シースは、第1のバルーンを含む第1のバルーンチューブ、及び第2のバルーンを含む第2のバルーンチューブが血管に向けて挿入される中央チャネルを規定する、ステップと;シースのシース先端部が血管の外側で開口部の近くに配置されるまでシースを引き抜くステップと;第2のバルーンを膨張させた後に、第1のバルーンが中央チャネルの外側で開口部の近くに配置されるように、第1のバルーンを引き抜かずにシースを第2の距離だけ引き抜くステップと;をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入する前に、キャリアチューブの先端部が血管に形成した開口部に近接するように、キャリアチューブをシースによって規定された中央チャネルを通して血管に向けて挿入するステップをさらに含み、キャリアチューブは、第1のバルーンチューブ及び第1のバルーンが挿入される第1の管腔と、第1の管腔から軸方向にオフセットした第2の管腔とを規定し、第2のバルーンチューブ及び第2のバルーンは第2の管腔を通して挿入され、キャリアチューブがシースとともに血管から引き抜かれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のバルーンは、キャリアチューブによって規定される第1の管腔内に配置され、第2のバルーンは、キャリアチューブによって規定される第2の管腔内に配置され、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入するステップは、キャリアチューブの先端部が血管に形成した開口部に近接するように、キャリアチューブをシースによって規定された中央チャネルを通して血管に向けて挿入するステップを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、この方法は、第2のバルーンを血管に挿入する前に、第2のガイドワイヤを開口部を通して血管に挿入するステップをさらに含み、第2のガイドワイヤは、第2のバルーンを通して又は第2のバルーンに隣接して延びる。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンは第1のバルーンと軸方向に整列している。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2のバルーンチューブは、第1のバルーンチューブを通して配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入する前に、シースの一部が血管に形成した開口部を通して血管に挿入されるように、組織トラックを通して第1のガイドワイヤの上でシースを挿入するステップであって、シースは、第1のバルーンを含む第1のバルーンチューブ及び第2のバルーン(チューブ)を含む第2のバルーンチューブが血管に向けて挿入される中央チャネルを規定する、ステップと;シースのシース先端部が血管の外側で開口部の近くに配置されるまで、シースを引き抜くステップと;第2のバルーンを膨張させた後に、第1のバルーンが中央チャネルの外側で開口部の近くに配置されるように、第1のバルーンを引き抜かずにシースを第2の距離だけ引き抜くステップと;をさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入する前に、キャリアチューブの先端部が血管に形成した開口部に近接するように、キャリアチューブをシースによって規定された中央チャネルを通して血管に向けて挿入するステップをさらに含み、キャリアチューブは、第1のバルーンを含む第1のバルーンチューブと第2のバルーンを含む第2のバルーンチューブとがそれぞれ挿入される管腔を規定する。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1のバルーン及び第2のバルーンのそれぞれが、キャリアチューブによって規定された管腔内に配置され、第1のバルーン及び第2のバルーンを挿入するステップは、キャリアチューブの先端部が血管に形成した開口部に近接するように、シースによって規定された中央チャネルを通してキャリアチューブを血管に向けて挿入するステップを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のバルーンを膨張させる前に、アンカーワイヤのアンカーワイヤ先端部を開口部を通して血管に挿入するステップであって、アンカーワイヤ先端部は開口部を通して挿入する前に収縮構成であり、アンカーワイヤ先端部は、第1のバルーンを膨張させるときに血管の壁が第1のバルーンとアンカーとの間に介在するように、血管に挿入した後にアンカーを形成する拡張構成である、ステップと;第1のバルーンが未だ膨張している間に、アンカーワイヤ先端部を収縮構成に移動させることによってアンカーワイヤを血管から引き抜くステップと;をさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、止血層が、第1のバルーンの外面の少なくとも一部に配置され、第1のバルーンを膨張させると、止血層が開口部を閉じるように、止血層及び血管の壁が膨張した第1のバルーンとアンカーとの間に介在し、一定期間後に第1のバルーンを収縮させると、止血層は、止血層が血管の外面に配置されたままであり、第1のバルーンを組織トラックから取り外しても、開口部を閉じ続けるように、第1のバルーンの外面から分離される。
【0041】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは形状記憶合金で形成され、アンカーワイヤ先端部に力が加えられないときに、アンカーワイヤは、拡張構成において弛緩した状態にある。
【0042】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは、第1のバルーンから軸方向にオフセットされる。
【0043】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤは、アンカーワイヤが第1のバルーンを通して配置されるように、第1のバルーンと軸方向に整列している。
【0044】
前述の概念と、以下でより詳細に議論する追加の概念との全ての組合せ(そのような概念が互いに矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示する発明の主題の一部として企図されることを理解されたい。特に、本開示の最後に示す特許請求の範囲に記載された主題の全ての組合せは、本明細書に開示する本発明の主題の一部であると企図される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本開示の前述の特徴及び他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになろう。これらの図面は本開示によるいくつかの実施態様のみを示しており、従ってその範囲を限定するものとみすべきではないことを理解して、添付の図面を使用して本開示をさらに具体的に且つ詳細に説明する。
【
図1】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、及びバルーンを含む、血管の止血を達成するためのVCDの一部の概略図である。
【
図2】
図1に示される部分を含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図3】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、バルーン、及び止血層を含む、血管外血管の止血を達成するためのVCDの一部の概略図である。
【
図4A】
図3に示される部分を含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図4B】一実施形態による、第1の構成における複数の穿孔を先端部に有するシースの側面図である。
【
図4C】シースの先端部内でのバルーンの膨張により、先端シースが穿孔に沿って引き裂かれる第2の構成にあるシースを示す図である。
【
図5A】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、バルーン、止血層、及びガイドワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図5B】一実施形態による、シース、バルーンを含むバルーンチューブ、及び止血層を使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図5C】一実施形態による、シース、バルーン、止血層、ガイドワイヤ、及び止血層ワイヤを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図6A】一実施形態による、キャリアチューブ、第1のバルーン及び止血層を含む第1のバルーンチューブ、及び第2のバルーンを含む第2のバルーンチューブを含むVCDの側断面図であり、それぞれキャリアチューブを通して配置される。
【
図7】一実施形態による、シース、第1のバルーンチューブ、第1のバルーン、止血層、第2のバルーンチューブ、第1のバルーンから軸方向にオフセットした第2のバルーン、及び第2のガイドワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図8】一実施形態による、シース、キャリアチューブ、第1のバルーンチューブ、第1のバルーン、第1のガイドワイヤ、止血層、第2のバルーンチューブ、第1のバルーンから軸方向にオフセットした第2のバルーン、及び第2のガイドワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図9】一実施形態による、シース、キャリアチューブ、第1のバルーンチューブ、第1のバルーン、止血層、第2のバルーンチューブ、第1のバルーンと軸方向に整列した第2のバルーン、及びガイドワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図10】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、第1のバルーン、止血層、第1のバルーンと軸方向に整列した第2のバルーン、及びガイドワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図11】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、第1のバルーン、止血層、第1のバルーンと軸方向に整列した第2のバルーン、ガイドワイヤ、及びタンパーチューブを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図12】一実施形態による、シース、キャリアチューブ、バルーンチューブ、バルーン、止血層、及びバルーンから軸方向にオフセットしたアンカーワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図13】一実施形態による、シース、バルーンチューブ、バルーン、止血層、ガイドワイヤ、及び第1のバルーンから軸方向にオフセットしたアンカーワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図14】一実施形態による、シース、キャリアチューブ、バルーンチューブ、バルーン、止血層、及び第1のバルーンと軸方向に整列したアンカーワイヤを含むVCDを使用して血管の止血を行うための方法を示す図である。
【
図15A】一実施形態による、VCDで使用するための第1の構成のアンカーの側面図である。
【
図15B】第2の構成のアンカーを示す側面図である。
【
図16A1】一実施形態による、VCDで使用するための第1の構成のアンカーの側面図である。
【
図16A2】第2の構成のアンカーを示す側面図である。
【
図16B1】一実施形態による、VCDで使用するためのアンカーを形成する第1の構成のアンカーワイヤの側面図である。
【
図16B2】第2の構成のアンカーワイヤを示す側面図である。
【
図17A】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの上面図である。
【
図17B】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの側面図である。
【
図18A】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの上面図である。
【
図18B】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの側面図である。
【
図19A】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの上面図である。
【
図19B】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの側面図である。
【
図20A】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの上面図である。
【
図20B】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの側面図である。
【
図21A】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの上面図である。
【
図21B】一実施形態による、VCDとともに使用するための血管外バルーンの側面図である。
【
図22A】一実施形態による、バルーンが収縮構成にあるバルーンに流体連結されたバルーンチューブの側面斜視図である。
【
図22B】膨張した構成にあるバルーンの斜視図である。
【
図23A】一実施形態による、バルーンが収縮構成にあるバルーンに流体連結されたバルーンチューブの一部の側面図である。
【
図23B】膨張した構成のバルーンを示す側面図である。
【
図24A】一実施形態によるバルーンチューブの上部正面斜視図である。
【
図24B】一実施形態によるバルーンチューブの底部正面斜視図である。
【
図24C】一実施形態によるバルーンチューブの背部上面斜視図である。
【
図25A】一実施形態によるキャリアチューブの上部正面斜視図である。
【
図25B】一実施形態によるキャリアチューブの正面図である。
【
図26】一実施形態による、VCDとともに使用され得るハンドルアセンブリの概略ブロック図である。
【
図27】別の実施形態による、VCDとともに使用され得るハンドルアセンブリの概略ブロック図である。
【
図28A】一実施形態によるハンドルアセンブリの底部正面側部の斜視図である。
【
図28B】一実施形態による、
図28Aのハンドルアセンブリに含まれる連結部分の上部正面側部の斜視図である。
【
図29A】一実施形態による、第1の構成における、
図28の連結部分の内部容積を通して配置された第1のバルーンチューブ及び第2のバルーンチューブを示す図である。
【
図29B】第2の構成における第1のバルーンチューブ及び第2のバルーンチューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の詳細な説明全体を通して添付図面を参照する。図面において、文脈で別段の指示がない限り、同様の記号は典型的に、同様のコンポーネントを識別する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲に記載した例示的な実施態様は、限定することを意味するものではない。ここで提示する主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施態様を利用してもよく、他の変更を加えてもよい。本明細書に一般的に説明し、図に示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成に配置、置換、組み合わせ、及び設計することができ、その全てが明示的に企図され、本開示の一部を形成することが容易に理解されよう。
【0047】
本明細書で説明する実施形態は、概して、血管外血管の止血を行うための装置及び方法に関し、特に、止血を達成するために血管の開口部に対して血管外圧迫を与える膨張可能なバルーンの使用に関する。止血層は、バルーンによって止血層が血管の開口部に配置され、開口部を閉じ、バルーンを取り外しても血管の外面に留まるように、バルーン上に分離可能に配置され得る。2次バルーン又はアンカーは、バルーン及び止血層を血管の外面に配置するときに、血管内支持を与えるために使用され得るが、止血が達成されると血管内から除去される。
【0048】
本明細書で説明する装置及び方法の実施形態は、例えば、(1)血管に形成した開口部に対して血管外圧迫を行うことによって血管の閉鎖を可能にし、それにより手動圧迫及び圧迫装置と比較してより迅速に止血を達成すること、(2)血管内コンポーネントを血管内に残さずに止血及び血管閉鎖を達成すること、(3)圧迫を加えるために使用した血管外バルーンを取り外した後でも血管閉鎖を維持するために、止血層を血管の外面に位置付けできるようにすること、(4)塞栓事象のリスクを軽減し、それにより処置後の合併症又は死亡の可能性を軽減すること、を含む1つ又は複数の利点を提供することができる。
【0049】
本明細書で説明するように、「基端部」という用語は、VCDのユーザに近い端部を指し、「先端部」という用語は、VCDのユーザから先端側にあり、VCDを使用して血管閉鎖処置を行う被験者に近い端部を指す。
【0050】
図1及び
図2を参照すると、一実施形態による、血管外血管の止血を達成するためのVCD100が示される。VCD100は、バルーン102、バルーンチューブ104を含み、オプションでシース110、及びキャリアチューブ120を含み得る。
【0051】
図1は、人又は動物の組織T内に位置する血管Vを示す。血管Vは、開口部Oを有する動脈(例えば、大腿動脈、脛骨動脈、足動脈等)又は静脈を含み得る。開口部Oは、例えば外科的処置により形成されたものであり得る。止血を達成するために開口部Oを迅速に閉じれない場合に、血液が開口部Oから漏れ出て失血し、さらには死に至る可能性がある。
【0052】
組織トラックTTは、下にある血管V及びその血管に形成された開口部Oへのアクセスを提供するために、組織T内に(例えば、外科的処置によって)形成され得る。例えば、外科的処置を行う前に、医師は、針及びシースを組織Tに挿通して組織トラックTTを形成することによって、下にある血管Vにアクセスすることができる。バルーン102は、バルーン102の一部が血管Vの外側の開口部Oに近接するまで、バルーンチューブ104を介して組織トラックTTを通して血管Vに向けて挿入される。バルーンチューブ104は、バルーン102に流体連結され、バルーン102を選択的に膨張又は収縮させるように構成される。バルーン102は、気体(例えば、バルーンチューブ104を介してバルーン102内に挿入される空気、酸素、又は任意の他の適切な気体)、又は液体(例えば、水、放射線不透過性膨張流体、血液、血漿、生理食塩水、造影剤流体等)を使用して開口部Oの上で膨張され、それによってバルーン102の一部が血管Vの壁の外面に接触し、開口部Oに圧迫を加えることによって開口部Oを閉じる。このようにして、バルーン102は血管を閉鎖する。バルーン102は、止血及び血管閉鎖を得るのに十分な時間(例えば、1分、2分、5分、10分、20分(境界を含む)、又は所望に応じた他の任意の適切な時間)に亘って膨張位置に維持され得る。
【0053】
バルーン102は、任意の適切な材料、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリマー、PEBAX、又はそれらの組合せから形成され得る。バルーン102は、溶接、融着、圧着(例えば、スエージバンドを介した)、機械的結合(例えば、連結又は折畳み)、又は接着剤を介してバルーンチューブ104に結合され得る。血管V内のバルーン102の位置は、組織トラックTTを通して、例えばシース110を介して、ユーザの操作を介して、或いはバルーンチューブ104、キャリアチューブ120、シース110、又は別個のロケータ内への血液フラッシュバック(すなわち、逆流)を介して、バルーン102を挿入する前又は後に確立され得る。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ(図示せず)は、バルーン102の中心を通って又はバルーン102に隣接して延びる得る。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、トラックTT内でのバルーン102の位置を確立する、すなわち、バルーン102を開口部Oの外側の血管の壁Vの外面の近くに位置付けしているかどうかを特定するために使用できる格納可能な構造(例えば、格納可能なプレート)を含み得る。他の構成では、シース110を使用して位置を確立することができる。いくつかの実施形態では、バルーン102は、経皮経管血管形成バルーン(例えば、中央ガイドワイヤの周りに固定される)に似ていてもよい。他の実施形態では、バルーン102は、ワイヤの上で、ワイヤに隣接して、ワイヤ上に、又はワイヤの先端に配置され、送達され得る。
【0054】
様々な実施形態において、バルーン102の外面は、バルーン102が開口部Oの周りの血管Vの外面に張り付くのを防ぐために、非粘着性コーティングでコーティングしてもよい。任意の非粘着性コーティングは、(例えば、疎水性コーティング、親油性コーティング、ナノ粒子コーティング、親水性コーティング、PTFEコーティング、フルオロポリマーコーティング等)を使用してもよい。非粘着性コーティングは、止血を達成し、組織トラックTTから除去するためにバルーン102を収縮させると、血管Vの外面からバルーン102の取外しを容易にすることができる。これにより、開口部O内に形成されて開口部Oを閉鎖する血餅がバルーン102によって除去されるのを防止することができ、それにより、バルーン102の取外し中に開口部Oが再び開くのを阻止することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、バルーン102は、組織トラックTTをあまり広げないが、それでも開口部Oを閉じるのに十分な、膨張した構成の断面幅又は直径を有してもよく、膨張したバルーン102が開口部Oを通して血管V内に挿入されるのを防止するように十分な大きさであってもよい。いくつかの実施形態では、バルーン102は、バルーン102の膨張位置でシース110の直径の1X~2X(倍)の直径を有し得る。様々な実施形態では、シース110は2mm~10mmの範囲(境界を含む)の直径を有し得、バルーン102は膨張位置で2mm~20mmの範囲(境界を含む)の直径を有する。
【0056】
バルーンチューブ104は、任意の適切な材料、例えば、金属、プラスチック、ポリマー(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、Pebax、ナイロン、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン等)から形成され得る。チューブ104は、0.2mm~1mmまでの範囲(境界を含む)の内径、及び0.3mm~2mmまでの範囲(境界を含む)の外径を有し得る。いくつかの実施形態では、バルーンチューブ104は、例えば、MDX、シリコーン等の潤滑剤又は非粘着コーティングでコーティングしてもよい。いくつかの実施形態では、バルーンチューブ104の壁厚は、(例えば、バルーンチューブが単一の管腔を含む実施形態において)0.1mm~2.5mmの範囲(境界を含む)であってもよい。いくつかの実施形態では、バルーンチューブ104又は本明細書で説明する他の任意のバルーンチューブは、流体を通すことができる複数の管腔(例えば、バルーン102を膨張させるための空気チャネル)、及びガイドワイヤ(図示せず)を通過させるための別の管腔を規定し得る。ポートが、バルーンチューブ104の側壁又は軸方向端部に規定され得、そこを通って流体がバルーン102内に伝達され、バルーン102を膨張させることができる。
【0057】
シース110は、金属、プラスチック、ポリマー、又は任意の他の適切な生体適合性材料、又はそれらの組合せから形成することができ、組織トラックTTに挿入可能である。キャリアチューブ120は、シース110によって規定される中央チャネル111を通して挿入可能であってもよく、また、バルーンチューブ104、従ってバルーン102が血管Vの開口部Oに向けて挿入され得る管腔121を規定してもよい。いくつかの実施形態では、シース110は使用されず、キャリアチューブ120は組織トラックTTを直接通って配置される。いくつかの実施形態では、シース110は、組織トラックTT内に既に存在する製品(例えば、処置シース)と、製品を通して血管Vに向けて挿入されるキャリアチューブ120とを含んでもよい。様々な実施形態において、固定機構、例えばクリップ、クランプ、又はカラーがシース110に結合され、(例えば、固定機構を組織Tに結合することによって)シース110を所望の位置に配置すると、シース110を所定の位置に固定するように構成され得る。
【0058】
図2は、VCD100を使用して血管の止血を達成するための例示的な方法200を示す。方法200は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通してシース110を挿入することを含む。ステップ2において、キャリアチューブ120の管腔121内に配置されたバルーン102及びバルーンチューブ104を有するキャリアチューブ120は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに配置されるまで、シース110によって規定された中央チャネル111に挿入される。いくつかの実施形態では、キャリアチューブ120は使用されず、バルーン102は、バルーンチューブ104を介してシース110の中央チャネル111に直接挿入してもよい。他の実施形態では、シース110は使用されず、キャリアチューブ120は、組織トラックを通して直接挿入してもよい。さらに他の実施形態では、キャリアチューブ120もシース110も使用されず、バルーン102は、バルーン102に流体連結されたバルーンチューブ104を介して組織トラックを通して開口部Oに向けて挿入され得る。
【0059】
ステップ3において、シース110は、キャリアチューブ120とともに、シース先端部が血管Vの外側で開口部Oの近くに配置されるまで、キャリアチューブ120及びバルーン102とともに組織トラックから引き抜かれる。ユーザは、例えば、シース110を組織トラックから所定の距離だけ引き抜き、圧力差を感じ、シース110から触覚フィードバックを受信することによって(例えば、手動感知を介して、又はシース先端部に配置された触覚フィードバックセンサを介して、これはシース110が血管Vの外側の所望の位置に配置されることをユーザに示し得る)、又はシース110からの血液フラッシュバックを介して、シース先端部が血管Vの外側の所望の位置に配置されることを判定することができる。このようにして、シース110は、開口部Oに近接する血管Vの外側の所望の位置にバルーン102を配置するのに役立ち得る。
【0060】
ステップ4において、バルーン102を引き抜かずに、シース110をキャリアチューブ120とともに組織トラックTTから、例えば、シース110及び/又はキャリアチューブ120がもはやバルーンチューブ104、従ってバルーン102の先端部を覆わないような十分な距離だけ引き抜くか、又はバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔121の外側に配置されるように組織トラックTTの外部に引き抜く。ステップ5において、バルーン102は、バルーン102の先端部が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部の上で(例えば、生理食塩水、造影剤、又はバルーンチューブ104を介してバルーン内に送られる空気等の流体を介して)膨張する。膨張は手動で、又はコンピュータ制御のポンプを介して行うことができる。バルーン102は、一定期間(例えば、開口部Oを閉じて止血を促進する血餅を形成させるのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。ステップ6において、バルーン102は、例えば、バルーンチューブ104を介してバルーン102から流体を引き抜くことによって収縮される。次に、バルーン102は、例えば、バルーンチューブ104を引き抜き、それにより収縮したバルーン102を血管Vから離れてキャリアチューブ120内に入り、組織トラックTTから除去される。
【0061】
いくつかの実施形態では、バルーン102は、吸収性材料から形成され得る。このような実施形態では、バルーン102は、膨張位置又は収縮位置で止血を達成した後にバルーンチューブ104から分離され、バルーンチューブ104が取り除かれると開口部Oを閉じ続けるために血管Vの外面上に残してもよい。時間の経過とともに、バルーン102は組織T内に再吸収される。
【0062】
いくつかの実施形態では、VCDは止血層を含み得る。ここで
図3~
図4を参照すると、一実施形態によるVCD300が示される。VCD300は、VCD100と実質的に同様であり、バルーン102、バルーンチューブ104を含み、いずれもシース110及びキャリアチューブ120を含んでもよい。しかしながら、VCD100とは異なり、止血層106は、バルーン102の外面の少なくとも一部に取り外し可能に配置される。
【0063】
止血層106は、バルーン102が開口部Oの上で膨張すると、止血層106が血管Vの壁の外面に配置され、バルーン102によって開口部O加えられる圧力により開口部Oを閉じ、止血層106に対する血餅形成を促進するように構成される。止血層106は、バルーン102を組織トラックTTから取り外したときに止血層106が血管Vの外面に配置されたままとなるように、バルーン102から分離可能である。このようにして、組織トラックTTからバルーン102を除去した後でも、止血層106は開口部Oを閉じ続ける。
【0064】
止血層106は、生体適合性材料から形成される。いくつかの実施形態では、止血層106は、吸収性材料から形成され得る。適切な材料としては、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカプロルカトン、コラーゲン、吸収性ファブリック、ヒドロゲル、他の適切な材料、又はそれらの組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、止血層106は、堅いディスク又はペレットに、或いは柔軟な織物状の層に形成することができる。いくつかの実施形態では、止血層106は、展開前にバルーン102の外面に適合し得る。他の実施形態では、止血層106はバルーン102とは別個であってもよい。いくつかの実施形態では、止血層106は、止血粉末(例えば、キチン、カオリン、シリカ、ポリエチレングリコール、シアノアクリレート、ゼラチン、セルロース等)、ヒドロゲル、コラーゲン、吸収性接着剤、又は血管の閉鎖を促進する他の薬剤を含んでもよい。前述したように、バルーン102の外面から止血層106を分離し易くするために、バルーン102の外面を非粘着性コーティングでコーティングしてもよい。
【0065】
図4Aは、VCD300を使用して血管の止血を達成するための例示的な方法400を示す。方法200は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通してシース110を挿入することを含む。ステップ2において、バルーン102と、止血層106がその上に配置されたバルーンチューブ104とを有し、それぞれがキャリアチューブ120の管腔121内に配置されたキャリアチューブ120は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置するまで、シース110によって規定された中央チャネル111に挿入される。いくつかの実施形態では、キャリアチューブ120は使用されず、バルーン102は、バルーンチューブ104を介してシース110の中央チャネル111を通して直接挿入され得る。他の実施形態では、シース110は使用されず、キャリアチューブ120は、組織トラックを通して直接挿入され得る。さらに他の実施形態では、キャリアチューブ120もシース110も使用されず、バルーン102は、バルーンチューブ104を介して組織トラックを通して開口部Oに向けて挿入され得る。
【0066】
ステップ3において、シース110は、キャリアチューブ120とともに、シース先端部が血管Vの外側で開口部Oの近くに配置されるまで、キャリアチューブ120及びバルーン102とともに組織トラックから引き抜かれる。ステップ4において、バルーン102を引き抜かずに、シース110をキャリアチューブ120とともに組織トラックの外に引き抜き、それによってバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔121の外側に配置されるようにする。ステップ5において、バルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部の上で(例えば、バルーンチューブ104を介してバルーン内に送られる生理食塩水又は空気等の流体を介して)膨張する。バルーン102は、一定期間(例えば、止血層106を血管Vの外面で開口部Oの上に付着させるのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。
【0067】
ステップ6において、バルーン102は、例えば、バルーンチューブ104を介してバルーン102から流体を引き抜くことによって収縮される。ステップ7において、バルーン102は、例えばバルーンチューブ104を引き抜くことによって組織トラックから除去され、それにより収縮したバルーン102が血管Vから離れてキャリアチューブ120内に入り、止血層106がバルーン102の外面から分離し、血管Vの壁の外面に付着したままとなる。いくつかの実施形態では、ユーザは、血管閉鎖が行われている被験者の皮膚に軽い圧力を加えて、止血層をバルーン102から取り外すことができる。このようにして、止血層106は、バルーン102を除去した後でも開口部Oを閉じ続ける。止血層106が吸収性材料から形成される実施形態では、止血層106は、吸収性材料の自然吸収時間後に組織Tに吸収される。
【0068】
図4Bは、一実施形態による、複数の穿孔を先端部に有する第1の構成のシースの側面図である。そして
図4Bは、シースの先端部内でのバルーンの膨張により、先端シースが穿孔に沿って引き裂かれる第2の構成にあるシースを示す。
【0069】
いくつかの実施形態では、シース110のシース先端部は、バルーン102が膨張したときにシース先端部が引き裂かれる又は折れ曲がるように、穿孔されるか、又は可撓性であってもよい。例えば、
図4Aは、シース110bの先端部112bに規定された複数の穿孔114bを有するシース110bの側正面図を示す。第1のバルーン102が先端部内で膨張すると、バルーン102が膨張するときに先端部が引き裂かれる。代替的又は追加的に、穿孔はキャリアチューブ120に対して行ってもよく、バルーン102が膨張したときに引き裂く又は折れ曲がるようにキャリアチューブの先端部に穿孔又は可撓性を持たせてもよい。様々な実施形態において、シースは、0.2mm~10mmまでの範囲(境界を含む)の幅(例えば、直径)を有し得る。
【0070】
図5Aは、一実施形態による、VCD300aを使用して血管の止血を達成するための例示的な方法500aを示す。VCD300aは、VCD300と実質的に同様であるが、VCD300aが開口部Oの上でのバルーン102の位置付けを容易にし得るガイドワイヤ108aを含む点が異なる。ガイドワイヤ108aは、ユーザが血管Vを見失うことを防止し得る。すなわち、シース110bが血管Vから引き抜かれる場合、又はシース110bを使用しない場合に、ガイドワイヤ108aは血管Vへのアクセスを維持し、シース110bが組織トラックTTから除去される又はシース110bが使用されない場合にバルーンチューブ104を血管Vに向けて案内するのを可能にする。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ108は、バルーン102を通って、例えば、バルーンチューブ104を通して規定された管腔を通って延びる得る。他の実施形態では、ガイドワイヤ108は、バルーン102に隣接して延びる得る。例えば、キャリアチューブ120は、バルーンチューブ104及びバルーン102が配置される管腔121に隣接する別の管腔を規定し得、ガイドワイヤ108がその別の管腔を通して配置され得る。ガイドワイヤ108は、任意の適切な材料、例えば、ステンレス鋼、チタン、又は形状記憶合金(例えば、銅-アルミニウム-ニッケル、ニッケル-チタン等)から形成され得る。ガイドワイヤ108の先端部は、バルーン102を開口部Oの上に配置する前に、血管V内の開口部Oを通して取り外し可能に配置され、開口部Oの上でのバルーン102の位置決めを容易にし得る。ガイドワイヤ108aは、医学的に必要な限り血管V内に留まり得る。様々な実施形態において、ガイドワイヤ108は、0.2mm~0.5mmまでの範囲(境界を含む)の断面幅を有し得る。
【0071】
図5Aに示されるように、方法500aは、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)が血管Vの開口部Oを通して血管Vに挿入されるように、組織Tに形成された組織トラックを通してシース110を挿入することを含み、ガイドワイヤ108が管腔121を通って延び、ガイドワイヤ108の先端部が血管V内の開口部Oを通して配置される。ガイドワイヤ108aは、組織トラックTT内の所定の位置に既に配置され得、ガイドワイヤの先端部が開口部Oを通して血管V内にあり、シース110はガイドワイヤ108の上で組織トラックTT内に配置され、ガイドワイヤ108が組織トラックTTに対するシース110の位置を案内する。いくつかの実施形態では、シース110は、ロケータ(位置特定器)又は拡張器(図示せず)、例えば、ガイドワイヤ108の上でシース110の誘導を容易にするシース110内のテーパ付き構造を含んでもよい。
【0072】
ステップ2において、止血層106が配置されたバルーン102及びバルーンチューブ104を有するキャリアチューブ120は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置するまで、シース110によって規定された中央チャネル111に挿入される。バルーンチューブ104は、ガイドワイヤ108の上に(例えば、バルーンチューブ104内に規定されたガイドワイヤ管腔内にガイドワイヤ108を滑り込ませることによって)挿入してもよく、又はガイドワイヤ108に隣接して挿入してもよい(例えば、キャリアチューブ120は、管腔121に隣接するガイドワイヤとは別の管腔を規定してもよい)。こうして、ガイドワイヤ108は、VCD300aの様々な構成要素の変位を開口部Oに向けて案内することができる。
【0073】
ステップ3において、シース110は、シース先端部が血管Vの外側で開口部Oの近くに配置されるまで、キャリアチューブ120及びバルーン102とともに組織トラックから引き抜かれる。ステップ4において、シース110は、バルーン102又はガイドワイヤ108を引き抜かずに、キャリアチューブ120とともに組織トラックから引き抜かれ、それによってバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔121の外側に配置される。ステップ5において、バルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部の上で(例えば、バルーンチューブ104を介してバルーンに送られる生理食塩水又は空気等の流体を介して)膨張する。バルーン102は、一定期間(例えば、止血層106を開口部Oの上の血管Vの外面に付着させるのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。
【0074】
ステップ6において、バルーン102は、例えば、バルーンチューブ104を介してバルーン102から流体を引き抜くことによって収縮される。ステップ7において、バルーン102は、ガイドワイヤ108がその位置を維持している間に組織トラックから除去される。例えば、バルーンチューブ104、従って収縮したバルーン102は、止血層106がバルーン102の外面から分離され、血管Vの壁の外面に付着したままとなるように、ガイドワイヤ108に沿って、又はガイドワイヤ108によって促進されて、血管Vからキャリアチューブ120内に引き抜かれる。ステップ8において、止血層106を血管Vの外面に配置した状態で残して、ガイドワイヤ108が除去される。
【0075】
図5Bは、一実施形態による、シース110、バルーン102を含むバルーンチューブ504、及び止血層106を使用して血管の止血を行うための別の方法500bを示す。バルーンチューブ504は、ロケータとして機能し、その先端部に形成されたフラッシュバック開口506を含む。フラッシュバック開口506は、バルーンチューブ504内への血液のフラッシュバックを可能にし、これによりユーザがバルーンチューブ504の先端部の位置を決定できるようにする。
【0076】
方法500bは、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)が血管Vの開口部を通して血管Vに挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通してシース110を挿入するステップを含む。ステップ2において、バルーンチューブ504は、バルーンチューブ504の先端部がシース先端部から出て血管V内に位置するまで、シース110を通して(例えば、シース110を通して規定された専用チャネルを介して)挿入される。バルーンチューブ504の挿入により、シース110にギャップを残して、1つ、2つ、又はそれ以上のフラッシュバックチャネルが形成され得る。いくつかの実施形態では、シース110は使用されず、バルーンチューブ504は、ガイドワイヤ(例えば、ガイドワイヤ108)の上で血管V内に挿入される。
【0077】
ステップ3において、シース110は、シース先端部がバルーンチューブ504の先端部ではなく血管Vの外側で開口部Oの近くに配置されるまで、バルーンチューブ504とともに組織トラックから引き抜かれ、それによりフラッシュバック開口506は血管V内に留まる。フラッシュバック(すなわち、血液の流れ)は、血液がフラッシュバック開口506を通って逆流するため、バルーンチューブ504を介して観察され得るが、シース110内に規定された管腔を通っては観察されない。フラッシュバック開口506を通した血液フラッシュバックは、バルーン102が血管Vの外面から所望の距離にあるというフィードバックをユーザに提供するのに役立ち得る。
【0078】
ステップ4において、シース110は、バルーンチューブ504を引き抜かずに組織トラックから引き抜かれ、それによってバルーン102がシースの外側で開口部Oの近くに配置され、バルーン102が膨張して止血層106を開口部に配置する。ステップ5において、バルーン102が収縮し、バルーンチューブ502は、シース110及びバルーン102とともに血管Vの外側に及び組織トラックの外側に引き抜かれ、血管Vの外面に配置された止血層106が残される。
【0079】
いくつかの実施形態では、別個の止血層ワイヤを使用して、血管の外面に止血層を位置付けすることができる。例えば、
図5Cは、一実施形態による、シース110、バルーン102及び止血層106、ガイドワイヤ108、及び止血層ワイヤ514を使用して血管の止血を行うための方法500cを示す。
【0080】
方法500cは、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)が血管Vの開口部を通して血管Vに挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通してシース110を挿入することを含む。ステップ2において、ガイドワイヤ108は、バルーン102とともに、例えば止血層106がその上に配置されたバルーンチューブ(図示せず)を介して、シース110を通して挿入される。それと同時に又はその後に、止血層ワイヤ514は、止血層ワイヤ514の先端部が止血層106を通して血管V内に配置されるか、又はそうでなければ止血層106に接触して配置されるように、シース110を通して配置される。ステップ3において、シース110は、バルーン102が血管Vの外面の近くに配置されるまで、ガイドワイヤ108、バルーン103、及び止血層106とともに引き抜かれ、シース110が引き抜かれてバルーン102が露出し、バルーン102が膨張して、血管Vの外面に止血層106が配置され、これは止血層ワイヤ154によって容易にされる。ステップ4において、止血層ワイヤ514が血管Vから引き抜かれ、血管Vに配置された止血層106が残る(例えば、止血層ワイヤ514が引き抜かれる際に、止血層106が止血層ワイヤ514から外れる)。ステップ5において、バルーン102が収縮され、バルーン102は、ガイドワイヤ108とともに組織トラックから引き抜かれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、バルーン102は第1のバルーン102であり、バルーンチューブ104は第1のバルーンチューブ104であり、VCDは、血管V上での第1のバルーン102の位置付けを容易にする第2のバルーンを含んでもよく、第1のバルーン102を圧迫するための後方支持も与え、それにより血管に形成した開口部の上の止血層106の後方支持を与える。例えば、
図6Aは、一実施形態による、キャリアチューブ620、第1のバルーン102及び止血層106を含む第1のバルーンチューブ104、及び第2のバルーン622を含む第2のバルーンチューブ624を含むVCD600の側断面図であり、それぞれがキャリアチューブ620を通して配置される。第2のバルーン622は、第1のバルーン102及び第2のバルーン622のそれぞれが膨張したときに、血管Vの壁及び止血層106が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間に介在されるように、血管V内の開口部を通して取り外し可能に配置されるように構成される。これにより、止血層106を血管Vの外面に固定することが容易になる。
【0082】
第2のバルーン622は、第1のバルーン102及び第2のバルーン622のそれぞれが膨張したときに、第1のバルーン102に対して同様の幅(例えば、直径)を有してもよく、又は第1のバルーン102より大きくても小さくてもよい。第2のバルーンチューブ624は、第2のバルーン622に流体連結され、第2のバルーン622を選択的に膨張又は収縮させるように構成される。第2のバルーンチューブ624は、第1のバルーンチューブ104と同じ材料から作製され得る。いくつかの実施形態では、第2のバルーンチューブ624は、第1のバルーンチューブ104よりも硬くてもよい(例えば、より大きな壁厚を有する、又はより硬い材料で作製される)。
【0083】
図6Aに示されるように、第2のバルーン622及び第2のバルーンチューブ624は、第1のバルーン102及び第1のバルーンチューブ104から軸方向にオフセットされ(すなわち、非同心であり)、キャリアチューブ620の異なる管腔内に配置される。例えば、
図6Bは、
図6Aのキャリアチューブ620の正面図である。キャリアチューブ620は、第1のバルーンチューブ104及び第1のバルーン102が挿入される第1の管腔621と、第2のバルーンチューブ624及び第2のバルーン622が挿入される第1の管腔621から軸方向にオフセットした第2の管腔623とを規定する。第2の管腔623は、例えば、第2のバルーン622に加えて、第2の管腔623を通して配置される第2のガイドワイヤ626及び/又は第1のバルーン102より大きい第2のバルーン622を収容するために、第1の管腔621よりも大きな断面を有してもよい。他の実施形態では、第2のバルーン622が第1のバルーン102より大きくても、第2の管腔623は第1の管腔621より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、第1のバルーンチューブ104及び第2のバルーンチューブ624は、0.2mm~1.0mmの範囲(境界を含む)の内径と、0.3mm~2.0mmの範囲(境界を含む)の外径とを有してもよく、第1のバルーン102及び第2のバルーン622は、膨張後の直径が2mm~20mmの範囲(境界を含む)である。いくつかの実施形態では、VCD600はまた、例えば血管内での第2のバルーン622の位置付けを容易にするために、第2のバルーン622を通って又は第2のバルーン622に隣接して延びる第2のガイドワイヤ626を含んでもよい(
図7)。
【0084】
第1のバルーン102及び第2のバルーン622は、キャリアチューブ620のそれぞれの管腔621及び623を通して独立して移動可能である。例えば、
図7は、VCD600を使用して血管の止血を達成するための例示的な方法700を示す。方法700は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)及び第2のガイドワイヤ626の先端部が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織T内に形成した組織トラックを通して第2のガイドワイヤ626とともにシース110を挿入することを含む。いくつかの実施形態では、組織トラックTTを通してシース110を配置した後に、第2のガイドワイヤ626を除去することができる。他の実施形態では、第2のガイドワイヤ626又は第1のバルーンガイドワイヤを使用しなくてもよい。
【0085】
ステップ2において、第1のバルーン102と、止血層106がその上に配置された第1のバルーンチューブ104とを有する(それぞれがキャリアチューブ120の管腔621内に配置される)キャリアチューブ620は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置するまで、シース110によって規定される中央チャネル111に挿入される。また、キャリアチューブ620の挿入により、第2のバルーンチューブ624が第2のバルーン622とともにキャリアチューブ620の第2の管腔623内のシース先端部の近くに配置される。第2のバルーンチューブ624は、第2のバルーン622が血管V内に配置されるまで、第2のガイドワイヤ626によって容易に第2の管腔623を通して前進させることができる。他の実施形態では、第1のバルーン102及び第2のバルーン622をそれぞれの管腔621及び623に挿入する前に、キャリアチューブ620が中央チャネル111に挿入される。
【0086】
ステップ3において、第2のバルーン622が膨張される。ステップ4において、シース110は、キャリアチューブ620、第1のバルーン102、及び第2のバルーン622とともに、第2のバルーン622が血管Vの壁の内面に接触するまで、組織トラックから引き抜かれる。これにより、ユーザに、シース先端部が血管Vの外側で開口部Oの近くに配置されることを警告することができる。ユーザは、少なくとも第1のバルーン102が膨張するまで、第2のバルーン622が血管Vの壁の内面と接触したままであることを確実にするために、第2のバルーン622に対して血管Vに向けて張力を加え続けてもよい。
【0087】
ステップ5において、第1のバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔121の外側に配置されるように、第1のバルーン102を引き抜かずに、キャリアチューブ620とともにシース110が血管Vから引き抜かれる。いくつかの実施形態では、シース110及び/又はキャリアチューブ620を、組織トラックTTから引き抜いてもよい。ステップ6において、第1のバルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部の上で(例えば、バルーンチューブ104を介してバルーンに送られる生理食塩水又は空気等の流体を介して)膨張する。また、第1のバルーン102を膨張させることによって、止血層106及び血管Vの壁が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間に介在する。第1のバルーン102は、一定期間(例えば、止血層106が開口部O上の血管Vの外面に付着するのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。
【0088】
ステップ7において、第2のバルーン622が収縮して血管Vから引き抜かれるが、第1のバルーン102は未だ膨張しており、止血層106に圧力を加えている。ステップ8において、第1のバルーン102は、例えばバルーンチューブ104を介してバルーン102から流体を引き抜くことによって収縮される。ステップ9において、バルーン102は、例えばバルーンチューブ104を引き抜くことによって組織トラックから除去され、それにより収縮したバルーン102が血管Vから離れてキャリアチューブ120内に入り、それによって、止血層106がバルーン102の外面から分離し、血管Vの壁の外面に付着したままになる。
【0089】
いくつかの実施形態では、VCD600はまた、血管V上での第1のバルーン102の位置決めを容易にするために、第1のガイドワイヤ108を含んでもよい。例えば、
図8は、VCD600を使用して血管の止血を達成するための例示的な方法800を示す。方法800は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シースの先端部)及び第2のガイドワイヤ626の先端部が血管Vの開口部Oを介して血管V内に挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通して第2のガイドワイヤ626とともにシース110を挿入することを含む。
【0090】
ステップ2において、第1のバルーン102と、止血層106がその上に配置された第1のバルーンチューブ104とを有する(それぞれがキャリアチューブ120の管腔621内に配置される)キャリアチューブ620は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置し、第1のガイドワイヤ1の先端部が血管V内に延びるまで、シース110によって規定される中央チャネル111に挿入される。また、キャリアチューブ620の挿入により、第2のバルーンチューブ624は、第2のバルーン622とともに、キャリアチューブ620の第2の管腔623内のシースの先端部の近くに配置される。第2のバルーンチューブ624は、第2のバルーン622が血管V内に配置されるまで、第2のガイドワイヤ626によって容易に第2の管腔623を通して前進させることができる。
【0091】
ステップ3~8は、方法700のステップ3~8と実質的に同じであるが、唯一の違いは、血管V上での第1のバルーン102の位置付けが、第1のガイドワイヤ108によって容易になることである。ステップ9において、第1のバルーン102は、第1のガイドワイヤを取り外すことなく、組織トラックから取り外される。他の実施形態では、第1のバルーン102を組織トラックTTから取り外す前に、第1のガイドワイヤ108が取り外される。ステップ10において、第1のガイドワイヤ108が組織トラックから除去され、血管Vの外面上に配置された止血層106が残される。
【0092】
いくつかの実施形態では、第1のバルーン及び第2のバルーンは、互いに軸方向に整列され、互いに独立して移動するように構成され得る。例えば、
図9は、VCD900aを使用して血管の止血を達成するための例示的な方法900を示す。VCD900aは、シース110、第1のバルーンチューブ930、第1のバルーンチューブ930に流体連結され且つ止血層106がその外面の少なくとも一部に配置された第1のバルーン102、第1のガイドワイヤ108、第2のバルーンチューブ624に結合された第2のバルーン622、及びキャリアチューブ620を含む。
【0093】
VCD600とは異なり、第2のバルーン622は、第1のバルーン102と軸方向に整列している。例えば、第1のバルーンチューブ930は、第1バルーンチューブ930及び第2バルーンチューブ624が互いに同軸となるように、第2のバルーンチューブ624が配置される管腔を規定することができる。第1のバルーンチューブ930及び第2のバルーンチューブ624は、例えば入れ子式(telescopic)の構成で、互いに対して独立して移動可能であり得る。第1のバルーン102は、第1のバルーンチューブ930の外周の周りに配置され得、例えば、ドーナツ形状を有し得、第1のバルーンチューブ930は、流体が第1のバルーン102内に伝達され第1のバルーン102を膨張させるポートをその側壁に規定し得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、キャリアチューブ920は、第1のバルーンチューブ930が摺動可能に配置される単一の管腔921を規定し、第2のバルーンチューブ624が第1のバルーンチューブ930を通して配置される。第1のガイドワイヤ108は、第1のガイドワイヤ108が第1のバルーンチューブ930及び第2のバルーンチューブ624のそれぞれと同軸となるように、第2のバルーンチューブ624の管腔を通して配置され得る。他の実施形態では、第1のガイドワイヤ108は、第1及び第2のバルーンチューブ930及び624から軸方向にオフセットしてもよい(例えば、第1及び第2のバルーンチューブ930及び624に隣接する同じ管腔、又はキャリアチューブ920の管腔921と平行にキャリアチューブ920内に規定された別個の管腔を通して配置される)。
【0095】
方法900は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)及び第1のガイドワイヤ108の先端部が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織内に形成した組織トラックを通して第1のガイドワイヤ108とともにシース110を挿入することを含む。
【0096】
ステップ2において、第1のバルーンチューブ930と、止血層106がその上に配置された第1のバルーン102とを有する(それぞれがキャリアチューブ920の管腔921内に配置される)キャリアチューブ920は、キャリアチューブ920のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置するまで、シース110によって規定される中央チャネル111に挿入される。また、キャリアチューブ620の挿入により、第2のバルーンチューブ624が第2のバルーン622とともに、第1のバルーンチューブ930によって規定される管腔623内のシース先端部の近くに配置される。第2のバルーンチューブ624は、第2のバルーン622が血管V内に配置されるまで、第1のガイドワイヤ108によって容易に第2の管腔623を通して前進させることができる。他の実施形態では、第1のバルーン102及び第2のバルーン622を管腔921に挿入する前に、キャリアチューブ920が中央チャネル111に挿入される。
【0097】
ステップ3において、第2のバルーン622が膨張される。ステップ4において、シース110は、キャリアチューブ920、第1のバルーン102、及び第2のバルーン622とともに、第2のバルーン622が血管Vの壁の内面に接触するまで、組織トラックから引き抜かれる。ステップ5において、シース110は、キャリアチューブ620とともに、第1のバルーン102を引き抜かずに、組織トラックの外に引き抜かれ、それによって第1のバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔921の外側に配置される。
【0098】
ステップ6において、第1のバルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部Oの上で(例えば、第1のバルーンチューブ930を介して第1のバルーン102に送られる生理食塩水又は空気等の流体を介して)膨張される。また、第1のバルーン102を膨張させると、止血層106及び血管Vの壁が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間に介在することになり、それによって止血層106が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間で突き固める(tamp)。第1のバルーン102は、一定期間(例えば、止血層106を開口部O上の血管Vの外面に付着させるのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。
【0099】
ステップ7において、第2のバルーン622が収縮されて血管Vから引き抜かれ、いくつかの実施形態では、第2のバルーンチューブ624を介して第1のバルーンチューブ930を通してキャリアチューブ620も引き抜かれる。いくつかの実施形態では、ステップ7において、第1のガイドワイヤ108も組織トラックから引き抜かれ得る。ステップ8において、第1のバルーン102は、例えば、第1のバルーンチューブ930を介して第1のバルーン102から流体を引き抜くことによって収縮される。ステップ9において、第1のバルーン102は、例えば、バルーンチューブ930を引き抜き、それにより収縮したバルーン102を血管Vから離れてキャリアチューブ120内に入れる、或いはキャリアチューブ120及びバルーンチューブ930を組織トラックTTから同時に引き抜くことによって、組織トラックTTから除去してもよく、それによって止血層106がバルーン102の外面から分離され、血管Vの壁の外面に付着したままとなる。
【0100】
いくつかの実施形態では、第1のバルーン及び第2のバルーンは、互いに軸方向に整列されてもよく、互いに一定の距離をおいて位置付けしてもよい。例えば、
図10は、VCD1000aを使用して血管の止血を達成するための例示的な方法1000を示す。VCD1000aは、中央チャネル1011を規定するシース1010、バルーンチューブ1030、バルーンチューブ1030に流体連結され且つ止血層106がその外面の少なくとも一部に配置された第1のバルーン102、第1のガイドワイヤ108、及びバルーンチューブ1030にも結合される第2のバルーン622を含む。
【0101】
第2のバルーン622は、第1のバルーン102よりもバルーンチューブ1030の先端部により近くのバルーンチューブ1030に配置され、それによってチューブ1030の先端部を血管Vに規定された開口部Oを通して挿入するときに、第2のバルーン622は、第1のバルーン102よりも先に血管Vに入る。バルーンチューブ1030は、第1及び第2のバルーン102及び622を独立して膨張又は収縮させるように構造化され得、例えば、第1及び第2のバルーン102及び622のそれぞれへの膨張流体を選択的且つ独立して伝達するための別個の管腔を規定し得る。従って、第1及び第2のバルーン102及び622は、軸方向に整列され、所定の距離だけ軸方向に離間される。離間距離は、第1のバルーン102及び第2のバルーン622のそれぞれが膨張したときに、止血層106が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間で突き固める(tamp)か又は圧迫されるように選択され得る。図示しないが、いくつかの実施形態では、VCD1000aは、キャリアチューブ(例えば、キャリアチューブ920)を含んでもよい。
【0102】
方法1000は、ステップ1において、シース1010の一部(例えば、シース先端部)及び第1のガイドワイヤ108の先端部が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織T内に形成した組織トラックを通して第1のガイドワイヤ108とともにシース1110を挿入することを含む。
【0103】
ステップ2において、止血層106が配置された第1のバルーン102と、第2のバルーン622とを含むバルーンチューブ1030は、第2のバルーン622がシースの先端部を越えて血管V内に延びるまで、シース1010の中央チャネル1011を通して挿入される。バルーンチューブ1030の変位は、第1のガイドワイヤ108によって促進又は誘導され得る。
【0104】
ステップ3において、第2のバルーン622が膨張される。ステップ4において、シース1010は、バルーンチューブ1030とともに、第2のバルーン622が血管Vの壁の内面に接触するまで、組織トラックから引き抜かれる。ステップ5において、シース1010は、バルーンチューブ1030を引き抜かずに、組織トラックの外に引き抜かれ、それによって第1のバルーン102が中央チャネル1011の外側の開口部Oの近くに配置されるようにする。
【0105】
ステップ6において、第1のバルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部Oの上で(例えば、第1のバルーンチューブ930を介して第1のバルーン102に送られる生理食塩水又は空気等の流体を介して)膨張される。さらに、止血層106が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間に介在する。第1及び第2のバルーン102は、一定期間(例えば、止血層106を開口部O上の血管Vの外面に付着させるのに十分な期間)に亘って膨張した位置に維持される。
図10に示されるように、ステップ6において、第1のガイドワイヤ108を組織トラックから引き抜いてもよい。他の実施形態では、第1のガイドワイヤ108は、バルーンチューブ1030と同時に、又はバルーンチューブ1030を組織トラックから引き抜いた後に、組織トラックから引き抜いてもよい。
【0106】
ステップ7において、第1及び第2のバルーン102及び622のそれぞれが収縮される(例えば、同時に、又は第2のバルーン622が収縮する前又は後に第1のバルーン102が収縮される)。ステップ8において、バルーンチューブ1030が組織トラックから引き抜かれ、血管Vの外面上に配置された止血層206が残される。
【0107】
いくつかの実施形態では、VCDは、止血層106を血管の外面に位置付けするのを容易にするためのタンパーチューブを含んでもよい。例えば、
図11は、VCD1100aを使用して血管の止血を行うための方法1100を示す。VCD1100aはVCD1000aと同様であり、VCD1100aは、シース1010、バルーンチューブ1030、第1のバルーン102、止血層106、第1のバルーン102と軸方向に整列した第2のバルーン622、及び第1のガイドワイヤ108を含む。しかしながら、VCD1000aとは異なり、VCD1100aはまた、バルーンチューブ1030を組織トラックから引き抜いた後に止血層106を血管Vの外面に維持するために、止血層106を血管Vの外面で圧迫するか又は突き固めるように構成されたタンパーチューブ1040を含む。
【0108】
方法1100は、ステップ1において、シース1010の一部(例えば、シース先端部)及び第1のガイドワイヤ108の先端部が血管Vの開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織T内に形成した組織トラックを通して第1のガイドワイヤ108とともにシース1110を挿入することを含む。
【0109】
ステップ2において、止血層106が配置された第1のバルーン102と、第2のバルーン622とを含むバルーンチューブ1030は、第2のバルーン622がシース先端部を越えて血管V内に延びるまで、シース1010の中央チャネル1011を通して挿入される。さらに、タンパーチューブ1040はまた、第1のバルーン102がタンパーチューブ1040の先端部を越えて延び、第2のバルーン622が膨張するように、中央チャネル1011を通して挿入される。タンパーチューブ1040は、第1のバルーン102を組織トラックTTから引き抜くときに、止血層106による止血及び/又は第1のバルーン102の外面からの止血層106の除去を容易にするようにタンパーを適用する、すなわち、第1のバルーン102及び/又は止血層106を血管Vの壁に押し付けるように機能する。バルーンチューブ1030の変位は、第1のガイドワイヤ108によって促進又は誘導され得る。
【0110】
ステップ3において、シース1010は、バルーンチューブ1030及びタンパーチューブ1040とともに、第2のバルーン622が血管Vの壁の内面に接触するまで、組織トラックから引き抜かれる。ステップ4において、シース1010は、バルーンチューブ1030又はタンパーチューブ1040を引き抜かずに、組織トラックから引き抜かれる。
【0111】
ステップ5において、タンパーチューブ1040は、未だ収縮位置にある第1のバルーン102の上で血管Vに向けて組織トラック内で軸方向に変位される。これにより、タンパーチューブ1040の先端部が止血層106に接触し、止血層106が広がり(unfold:展開され)、その層が開口部Oの上に配置され、開口部Oを閉じる。ステップ6において、タンパーチューブ1040は、血管Vから離れるように変位され、第1のバルーン102は、止血層106及び血管Vの壁が第1のバルーン102と第2のバルーン622との間に介在するように膨張する。第1及び第2のバルーン102及び622は、前述したように、止血を達成するのに十分な期間に亘ってそれらの膨張位置に維持され得る。
【0112】
ステップ7において、第2のバルーン622が収縮される。
図11に示されるように、ステップ7において、第1のガイドワイヤ108を組織トラックから引き抜いてもよい。他の実施形態では、第1のガイドワイヤ108は、バルーンチューブ1030と同時に、又はバルーンチューブ1030を組織トラックから引き抜いた後に、組織トラックから引き抜いてもよい。
【0113】
ステップ8において、第1のバルーン102が収縮し、タンパーチューブ1040は、タンパーチューブ1040の先端部が止血層106に接触するまで、血管Vに向けて再び移動する。ステップ9において、バルーンチューブ1030は、タンパーチューブ1040を移動させることなく、組織トラックから引き抜かれ、それによってタンパーチューブ1040の先端部が止血層106と接触したままとなり、止血層106を第1のバルーン102から分離させる。これにより、バルーンチューブ1030を組織トラックから引き抜く際に、止血層106が血管Vの外面から取り除かれるのを阻止する。ステップ10において、タンパーチューブ1040が組織トラックから除去される。
【0114】
いくつかの実施形態では、VCDは、止血層106を血管Vの外面で圧迫又は突き固めるための後方支持を与えるためにアンカーを含み得る。
図12は、一実施形態による、シース110、キャリアチューブ620、第1のバルーンチューブ104、第1のバルーン102、止血層106、及びアンカーワイヤ1250を含むVCD1200aを使用して血管の止血を行うための方法1200を示す。
【0115】
アンカーワイヤ1250は、開口部Oを通して血管V内に配置されるように構成されたアンカーワイヤ先端部1251を含む。アンカーワイヤ先端部1251は、アンカーワイヤ先端部1251が血管V外に配置されるときの収縮構成と、アンカーワイヤ先端部1251が血管内に配置されるときの拡張構成との間で選択的に移動可能である。拡張構成では、アンカーワイヤ先端部1251は、第1のバルーン102を膨張させたときに血管Vの壁及び止血層106が第1のバルーン102とアンカー1252との間に介在し、止血層106を血管Vの外面に固定し易くするようにアンカー1252を形成する。アンカーワイヤ1250は、第1のバルーン102から軸方向にオフセットされる。いくつかの実施形態では、第1のバルーン102及び第1のバルーンチューブ104は、キャリアチューブ620の第1の管腔621を通して配置され、アンカーワイヤ1250は、キャリアチューブ620又は任意の他のキャリアチューブの第2の管腔623を通して配置される。アンカーワイヤ1250及び第1のバルーンチューブ104は、キャリアチューブ620のそれぞれの管腔621及び623を通して独立して移動可能である。他の実施形態では、キャリアチューブ620は単一の管腔を規定することができ、第1のバルーンチューブ104及びアンカーワイヤ1250は、互いに軸方向にオフセットしながら、同じ管腔を通して配置され得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤ1250は、形状記憶合金(例えば、銅-アルミニウム-ニッケル、ニッケル-チタン等)から形成され得る。アンカーワイヤ先端部1251は、アンカー1252を形成するために、所望の形状(例えば、8の字形状)に予め成形され得る。アンカーワイヤ1250は、アンカーワイヤ先端部1251が、それぞれの管腔(例えば、管腔623)を通ってキャリアチューブ620を通る間に、収縮し真っ直ぐになり、拡張してキャリアチューブ620から現れるアンカー1252を形成するように構成され得る。他の実施形態では、アンカー1252は、可撓性ケージ、可撓性ディスク、又はアンカーワイヤ先端部1251に結合するための他の任意の可撓性構造を含んでもよい。そのような実施形態では、アンカー1252は、キャリアチューブ620の管腔623内に配置されると、収縮又は折畳み位置に屈曲し、キャリアチューブ620から出ると拡張するように構成され得る。アンカー1252がキャリアチューブ620内に戻されると、アンカー1252は、収縮又は折畳み位置に戻る。いくつかの実施形態では、アンカーワイヤ1250は、形状記憶合金で形成される。このような実施形態では、アンカーワイヤ1250は、管腔(例えば、管腔623)の壁によってアンカーワイヤ先端部に力が加えられないとき、拡張構成において弛緩した状態にある。
【0117】
方法1200は、ステップ1において、シース110の一部(例えば、シース先端部)及びアンカーワイヤ1250のアンカーワイヤ先端部1251が、開口部Oを通して血管V内に挿入されるように、組織T内に形成した組織トラックを通してアンカーワイヤ1250とともにシース110を挿入することを含む。アンカーワイヤ先端部1251は、アンカー1252を形成するアンカーワイヤ先端部1251の一部が依然としてシース110内にあるように、所定の距離だけ挿入され得る。
【0118】
ステップ2において、第1のバルーン102と、止血層106がその上に配置された第1のバルーンチューブ104とを有する(それぞれがキャリアチューブ620の管腔621内に配置される)キャリアチューブ620は、キャリアチューブ120のキャリアチューブ先端部がシース先端部の近くに位置するまで、シース110によって規定される中央チャネル111に挿入される。キャリアチューブ620は、アンカーワイヤ1250がキャリアチューブ620によって規定されるそれぞれの管腔(例えば、管腔623)内に配置されるように、シース110内に挿入され得る。こうして、アンカーワイヤ1250は、キャリアチューブ620を血管Vに向けて誘導又は移動を促進する役割も果たし得る。キャリアチューブ620は、アンカーワイヤ1250が第1のバルーン102から軸方向にオフセットされるように挿入され、アンカーワイヤ1250から軸方向にオフセットされる。
【0119】
ステップ3において、アンカーワイヤ先端部1251は、血管V内にさらに挿入されるか、又はアンカーワイヤ先端部1251がアンカー1252を形成するように操作される。ステップ4において、シース110は、キャリアチューブ620、第1のバルーン102、及びアンカーワイヤ1250とともに、アンカー1252が血管Vの壁の内面に接触するまで、組織トラックから引き抜かれる。これにより、シースの先端部が血管Vの外側で開口部Oの近に配置されることをユーザに警告することができる。
【0120】
ステップ5において、第1のバルーン102が開口部Oに近接して中央チャネル111及び管腔121の外側に配置されるように、シース110は、第1のバルーン102を引き抜かずに、キャリアチューブ620とともに組織トラックの外に引き抜かれる。ステップ6において、第1のバルーン102は、止血層106が血管Vの壁の外面を押して開口部Oを閉じるように、血管Vの外側の開口部Oの上で膨張される。第1のバルーン102を膨張させることにより、止血層106及び血管Vの壁が第1のバルーン102とアンカー1252との間に介在される。第1のバルーン102は、一定期間(例えば、止血層106が開口部Oの上で血管Vの外面に付着するのに十分な期間)に亘って膨張位置に維持される。
【0121】
ステップ7において、第1のバルーン102が依然として膨張し圧力を止血層106に加えている間に、アンカーワイヤ1250が血管Vから引き抜かれ、いくつかの実施形態ではキャリアチューブ620も引き抜かれる。例えば、アンカーワイヤ1250は、アンカーワイヤ先端部1251を展開させるように操作してもよく、又はアンカーワイヤ1250をキャリアチューブ620内に引き込んでもよく、これにより、アンカーワイヤ先端部1251が展開して真っ直ぐになるため、アンカーワイヤ1250を血管Vから引き抜くことができる。
【0122】
ステップ8において、例えばバルーンチューブ104を介してバルーン102から流体を引き抜くことによって、第1のバルーン102が収縮される。ステップ9において、例えばバルーンチューブ104を引き抜くことによって、バルーン102が組織トラックから除去され、それにより収縮したバルーン102が血管Vから(例えば、キャリアチューブ120内に、又はキャリアチューブ120とともに)離れ、それによって止血層106がバルーン102の外面から分離し、血管Vの壁の外面に付着したままになる。
【0123】
図13は、一実施形態による、シース110、キャリアチューブ620、第1のバルーンチューブ104、第1のバルーン102、第1のガイドワイヤ108、止血層106、及びアンカーワイヤ1250を含むVCD1300aを使用して血管の止血を行うための別の方法1300を示す。方法1300は方法1200と実質的に同様であるが、ステップ2において、組織トラックを通して第1のバルーンチューブを血管Vの開口部Oに向けて挿入する前に、第1のガイドワイヤ108の先端部が血管Vに挿入される点が異なる。さらに、ステップ9において、第1のガイドワイヤ108は最後に組織トラックから引き抜かれる。
【0124】
いくつかの実施形態では、アンカーワイヤ1250は、アンカーワイヤ1250が第1のバルーン102を通して配置されるように、第1のバルーン102と軸方向に整列され得る。例えば、
図14は、VCD1400aを使用して血管の止血を達成するための例示的な方法1400を示す。VCD1400aは、シース110、第1のバルーンチューブ930、第1のバルーンチューブ1430に流体連結され且つ止血層106がその外面の少なくとも一部に配置された第1のバルーン102、第1のガイドワイヤ108、アンカーワイヤ1250、及びキャリアチューブ620を含む。方法1400は方法900と実質的に同様であるが、第2のバルーンチューブ624を第1のバルーンチューブ1430を通して挿入する代わりに、ステップ2において、第1のバルーンチューブ1430は、アンカーワイヤが第1のバルーンチューブ1430と同軸又は軸方向に整列する(例えば、第1のバルーンチューブ1430を通って規定された管腔を通して配置される)ように、アンカーワイヤ1450上に挿入される。
【0125】
図15A及び
図15Bは、一実施形態による、VCD、例えば本明細書で説明する任意のVCDで使用するためのアンカーワイヤ1550に結合された第1の構成及び第2の構成それぞれのアンカー1552の側面図である。アンカー1252は、アンカーワイヤ1550の先端部のピボットマウント1554に枢動可能に取り付けられた平板又はディスクを含むことができる。ピボットマウント1554は、アンカー1552の中央部分に配置され得る。第1の構成では、アンカー1252はアンカーワイヤ1550と平行に向き合わせされる。これにより、前述したように、アンカー1552が血管の開口部内に進入するのが容易になる。第2の構成では、アンカー1552は、アンカー1552が血管の長手方向軸に対して実質的に平行に(例えば、約0±5度の範囲の角度で)向き合わせされるように、そのピボットマウント1554の周りを枢動する。第2の構成では、アンカー1552は、前述したように止血層106を突き固める(tamping:タンピングする)ための後方支持を与える。いくつかの実施形態では、アンカー1552は、付勢部材を介して、又は外部操作を介して、第1の構成と第2の構成との間で移動し得る。いくつかの実施形態では、VCDは、アンカー1552を第1の構成と第2の構成との間で移動させ、アンカー1552を所定の位置に保持し、及び/又はアンカー1552を血管から除去するための任意の適切な手段を含み得る。
【0126】
図16A1は、一実施形態による、本明細書で説明するVCDのいずれかで使用されるアンカーワイヤ1650aに取り付けられた第1の構成のアンカー1652aの側面図であり、
図16A2は、第2の構成のアンカー1652aを示す。アンカー1652aは、可撓性材料又は形状記憶合金から形成され得る。第1の構成では、アンカー1652aは、離れる方向に曲がる、すなわち、アンカーワイヤ1650aを血管に挿入するときに、アンカー1652aの周縁が、アンカーワイヤ1650aに結合されるアンカー1652aの位置に対して血管から先端に(すなわち、ユーザに近接して)位置するように曲率を規定する。これにより、アンカー1652aの血管への挿入が容易になる。第2の構成では、アンカー1652aは血管内に位置しており、血管外バルーンと協働して止血層を突き固めるための後方支持を与えるとともに、アンカー1652aを血管から除去するのを容易にするために、第1の構成とは反対の方向に曲がっている。
【0127】
アンカー1652aは、アンカー1652a及びアンカーワイヤ1650aが配置されるキャリアチューブの管腔によって第1の構成に維持され得る。アンカー1652aがキャリアチューブから血管内に現れると、アンカー1652aは第2の構成に移動する(例えば、第2の構成に移動するように付勢される)。次に、アンカーワイヤ1650aが血管から引き抜かれる際に、アンカー1652aは、キャリアチューブを介して血管から引き抜くことができる。
【0128】
図16B1~
図16B2は、一実施形態による、アンカー1652bを形成するように構成されたアンカーワイヤ1650bを示す。アンカーワイヤ1650bは、形状記憶合金から形成され得る。アンカーワイヤ1650bの先端部は、先端部第1部分1650b1と先端部第2部分1650b2とを含む。 先端部第1部分1650b1及び先端部第2部分1650b2は、キャリアチューブ1620b内に第1の構成で配置される間に、収縮した直線状の構成であってもよい。アンカーワイヤ1650bがキャリアチューブ1620b内で直線的に変位され、アンカーワイヤ1650bの先端部がキャリアチューブ1620bの先端部から現れると、
図16B2に示されるように、先端部第1部分1652b1及び先端部第2部分1652b2は反対方向に曲がって、第2の構成にあるアンカー1652bが形成される。
【0129】
図17A~
図21Bは、様々な実施形態による、VCDとともに使用するための様々な血管外バルーンの上面図及び側面図を示す。例えば、
図17Aはドーナツ形状の血管外バルーン1702の上面図を示し、
図17Bはそのバルーン1702の側面図を示す。ドーナツ形状の血管外バルーンは、バルーンチューブが血管外バルーン1702を通して配置されるように、バルーンチューブの周囲に配置されるように構成され得る。
【0130】
図18Aはディスク形状の血管外バルーン1802の上面図を示し、
図18Bはそのバルーン1802の側面図を示す。血管外バルーン1802は、バルーンチューブの先端部又は側壁に配置され得る。
【0131】
図19Aは一実施形態による血管外バルーン1902の上面図を示し、
図19Bはそのバルーン1902の側面図を示す。バルーン1902は、一般にディスク形状であるが、バルーン1902を貫通して規定されたスロット1904をさらに含む。スロット1904は、ガイドワイヤ、又は他の実施形態では、そのスロット1904を通過するアンカーワイヤを収容するように構成される。他の実施形態では、バルーンチューブは、スロット1904を通して配置され得、スロット1904を形成するバルーンの側壁は、バルーンチューブの外面に結合され得る。
【0132】
図20Aは涙滴形状の血管外バルーン2002の上面図であり、
図20Bはそのバルーン2002の側面図である。涙滴形状の血管外バルーン2002は、血管の閉鎖を得るために血管の開口部に圧迫力を加えることを容易にすることができる。
【0133】
図21Aは別の実施形態による血管外バルーン2102の上面図であり、
図21Bはそのバルーン2102の側面図である。バルーン2102は、略円筒形の輪郭を有する。
【0134】
図22Aは、一実施形態による、バルーン2202が収縮構成にある状態でバルーン2202に流体連結されたバルーンチューブ2204の側面斜視図を示し、
図22Bは、膨張した構成のバルーン2202の斜視図を示す。バルーン2202は、バルーンチューブ2204がバルーン2202を通して配置されるように、バルーンチューブ2204の周囲に配置される。止血層2206は、バルーンチューブ2204も止血層2206を通して配置されるように、バルーンチューブ2204の先端部2207の近くに位置するバルーン2202の一部の外面に配置される。他の実施形態では、バルーン2202は、バルーンチューブ2204がバルーン2202又は止血層2206を通して配置されないように、バルーンチューブ2204の先端部に配置してもよい。ポート2205は、バルーンチューブ2204の側壁に規定され、バルーン2202の内部容積と流体連通している。バルーンチューブ2204は、ポート2205を介して流体をバルーン2202内に送ってバルーン2202を膨張させるように構成される。
【0135】
図23Aは、一実施形態による、バルーン2302が収縮構成にある状態で血管外バルーン2302に流体連結されたバルーンチューブ2304の一部の側面図を示し、
図23Bは、膨張した構成のバルーン2302を示す。バルーン2302は、ドーナツ形状の断面を有しており、バルーンチューブ2304の外面の周囲に配置される。
【0136】
図24Aは、一実施形態による、本明細書で説明する血管外(extravascular)バルーン又は血管内(intravascular)バルーンのいずれかと使用するように構成されたバルーンチューブ2404の上部正面斜視図であり、
図24Bはそのバルーンチューブ2404の底部正面斜視図であり、
図24Cはそのバルーンチューブ2404の背部上面斜視図である。バルーンチューブ2404は、バルーンチューブ2404の先端部2407に近接する側壁にポート2405を規定し、ポート2405を介して、バルーンチューブ2404に結合されたバルーン内に流体を選択的に送る、又はバルーンから流体を取り出して、バルーンを膨張又は収縮させることができる。スロット2409は、先端部2407とは反対側のバルーンチューブ2404の基端部2411に近いバルーンチューブ2404の側壁に規定され得る。作動部材は、バルーンチューブ2404を軸方向に変位させるためにスロット2409に結合され、例えば、血管外バルーンを血管の外面の近くに配置するためにバルーンチューブ2404を血管の外面に向けて移動させ、血管の壁に形成された開口部を通して先端部2407を血管に挿入し、及び/又はバルーンチューブ2404を血管又は組織トラックから引き抜くことができる。
【0137】
図25Aは、一実施形態によるキャリアチューブ2520の上部正面斜視図であり、
図25Bはキャリアチューブ2520の正面図である。
図25A~
図25Bに示されるように、キャリアチューブ2520は、第1の管腔2521と、第1の管腔2521に隣接し軸方向に貫通する第2管腔2523とを規定する略円筒形の部材である。いくつかの実施形態では、血管外バルーンを含む第1のバルーンチューブは、第1の管腔2521を通じて直線的に変位可能であり、第2のバルーンを含む第2のバルーンチューブ又はアンカーワイヤは、第2の管腔2523を通じて直線的に変位可能である。他の実施形態では、単一の管腔を有するキャリアチューブを使用してもよく、第1のバルーンを含む第1のバルーンチューブと、第2の管腔を含む第2のバルーンチューブと(例えば、軸方向に整列しているか、又は互いに軸方向にオフセットしている)が、単一の管腔を通して配置される。
【0138】
ハブ2522は、キャリアチューブ2520の基端部に結合される。ハブ2522は、ハブ2522からキャリアチューブ2520の先端部に向けて軸方向に延びる複数のアーム2525を含み得る。複数のアーム2525は、キャリアチューブ2520の外面から半径方向に間隔を空けて配置されたキャリアチューブ2520の周りに配置され得る。いくつかの実施形態では、複数のアーム2525は、シース(例えば、シース110)が結合され得るスナップ嵌合式アームとして機能し得る。いくつかの実施形態では、シースをハブ2522に結合することにより、キャリアチューブ2520が、シースとハブ2522との間でいかなる相対移動もなしにシースと同期して移動することが可能になり得る。
【0139】
連結アセンブリ2524はハブ2522に結合され、ハブ2522を結合し、それによりキャリアチューブ2520を、キャリアチューブ2520を含むVCDを操作するために使用されるハンドルに結合するように構成され得る。連結アセンブリ2524は第1の連結アーム2524a及び第2の連結アーム2524aを含むことができ、それぞれの連結アームが、キャリアチューブ2520から離れる方向にハブ2522から軸方向に延びる。第1の連結アーム2524aは、第2の連結アーム2524bから半径方向に離間している。第1の棚2526a及び第2の棚2526bが、第1の連結アーム2524a及び第2の連結アーム2524bの先端部から半径方向に延びており、連結アームをハンドル(例えば、
図28~
図29に示されるハンドルアセンブリ2860)にスナップ嵌めするために使用され得る。複数の戻止め2528が、第1及び第2の連結アーム2524a及び2524bのそれぞれの外面から突出することができ、第1及び第2の連結アーム2524a及び2524bをハンドルに固定するために、ハンドル内に規定された対応する凹みと嵌合するように構成され得る。第1の棚2526a及び第2の棚2526bはまた、連結アーム2524a/bを解放するためにユーザによって係合されて、連結アーム2524a/bが、戻止め2528の一部だけが凹みの一部と係合する第1の位置、又は戻止め2528の全てが対応する凹みと係合する位置との間で移動できるように構成してもよい。このようにして、キャリアチューブ2520がハンドルから延びる長さを調整することができる。
【0140】
図26は、一実施形態による、VCDとともに使用され得るハンドルアセンブリ2660の概略ブロック図である。ハンドルアセンブリ2660は、ハンドルアセンブリ2660の様々な構成要素が内部に配置され得るハンドル本体2661を含む。いくつかの実施形態では、ハブ2622(例えば、ハブ2522)は、ハンドル本体2661の先端部2667、例えば、ハンド本体2661に結合された(例えば、ハンドル本体2661に摺動可能に結合された)ハンドルアセンブリのハウジング部分(図示せず)に結合され得る。
【0141】
前述したように、ハブ2622は、シース(例えば、シース110)に結合されるように構成されたスナップ嵌合式アーム又は突起物(例えば、複数のアーム2525)と、ハブ2622の先端部からハンドル本体2661に向けて延び、ハンドル本体2661の先端部2667(例えば、連結部分)に連結されるように構成される連結アセンブリ(例えば、連結アセンブリ2524)とを含むことができる。他の実施形態では、ハブ2622は、ハブ2662をハンドル本体2661に結合するためのネジ山、摩擦嵌め機構、又は任意の他の適切な結合機構を含んでもよい。
【0142】
ハブ2622は、組織トラック内への挿入後にシースを後退させるために、例えば、第1のバルーン(例えば、血管外バルーン)及び/又は第2のバルーン(例えば、血管内バルーン)を露出させるために使用され得る。例えば、第1の位置では、ハブ2622、従ってシースは、ユーザによってハンドル本体2661から軸方向に移動されて(例えば、連結部分を摺動させることによって)血管に向けて組織トラック内に入る。第2の位置では、ユーザは、ハブ2622をハンドル本体2661に向けて引き込んで、シースを血管から遠ざけることができる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(例えば、切欠き、突起、ハンドル等)をハンドルアセンブリ2660(例えば、連結部分)に設けて、ユーザがハブ2622を摺動できるようにしてもよく、それによりシースを血管に近づける、又は血管から遠ざける。
【0143】
ハンドルアセンブリ2660は、ハンドル本体2661の基端部2665の近くに配置された第1のアクチュエータ2664を含むこともできる。第1のアクチュエータ2664は、第1のバルーンチューブ(例えば、血管外バルーンチューブ)に結合され、例えば、ユーザ又はロボットアクチュエータによって係合されたときに、第1のバルーンチューブを軸方向に変位させ、それにより第1のバルーンをシースを通して(例えば、シース内に配置されたキャリアチューブを通して)血管に近づける又は血管から遠ざけるように変位させるように構成され得る。さらに、ハンドルアセンブリ2660は、ハンドル本体2661の基端部2665に近接して(例えば、第1のアクチュエータ2664と平行に)配置された第2のアクチュエータ2666も含み得る。第2のアクチュエータ2666は、第2のバルーンチューブ(例えば、血管内バルーンチューブ)に結合され、例えば、ユーザ又はロボットアクチュエータによって係合されるときに、第2のバルーンチューブを軸方向に変位させ、それにより第2のバルーンをシースを通して(例えば、シース内に配置されたキャリアチューブを通して)血管に近づける、又は血管から遠ざけるように構成され得る。
【0144】
第1及び第2のアクチュエータ2664及び2666は、第1及び第2のバルーンチューブがハンドル本体2661に対して移動するのを防止しながら、ユーザがハンドルアセンブリを操作できるように、第1及び第2のアクチュエータ2664及び2666を基端位置及び先端位置にロックするように構成され得る。いくつかの実施形態では、第1のバルーンは第2のバルーンに対して固定位置にあり、それによって第1のバルーンは第2のバルーンに対して移動しない。このような実施形態では、第2のアクチュエータ2666を除外することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリ2660は、第1及び第2のバルーンそれぞれを膨張させるために選択的に作動するように構成された第1のバルーン注入器2668及び第2のバルーン注入器2670を含んでもよい。注入器アクチュエータ(例えば、ボタン、スライダ、又は任意の他の適切なアクチュエータ)は、注入器2668及び2670を作動させるためにユーザによって係合されるように、ハンドル本体に設けられ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリ2660はハンドル本体2661内に設けられた流体リザーバ2672も含み、その中に膨張流体(例えば、生理食塩水)が貯蔵され得る。このような実施形態では、ハンドルアセンブリ2660は、流体が流体リザーバ2672に挿入される流体ポート2674を含んでもよい。いくつかの実施形態では、流体ポート2674は、リザーバ2672を生理食塩水で満たすために、流体送達装置(例えば、シリンジ)のためのアタッチメントを含んでもよい。第1及び第2のバルーン注入器2668及び2670は、リザーバ2672に結合され、ユーザによって係合され、リザーバ2672から流体を吸引し、所定量の流体を第1のバルーン及び第2のバルーンに送り込むか、又は第1及び第2のバルーンそれぞれから流体を引き抜くように構成され得る。ハンドルアセンブリ2660は、ユーザがハンドル本体2661を保持することによってVCDを取り扱い、操作できるように構成された形状を有してもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリ2660はまた、血管閉鎖プロセスの初期のステップが完了していない限り、ユーザが血管閉鎖を行っている間に、後のステップを完了するのを防止することができるインターロック又は他のロック機構とも連動する。例えば、第1のインターロックは、ハンドルアセンブリに張力が加えられない限り、シーススライダが組織トラックから後退するのを防止するために使用され得る。これにより、シース及び/又はキャリアチューブを後退させることによって、外側バルーンを血管上に収縮させた状態のファブリック(fabric)で露出させるときに、血管外の第2のバルーンが血管の壁に近接していない場合に、血管外の第1のバルーンが血管内で展開されるのを防止することができる。いくつかの実施形態では、第2のインターロックは、ハンドル本体2661に張力が加えられない限り、ユーザが第1のバルーン注入器2668を係合するのを防止することができる。これにより、血管内バルーンが血管に対して引っ張られなければ、第1のバルーンが偶発的に血管内で展開及び膨張するのを防ぐように、血管外の第1のバルーンの膨張を防止することができる。いくつかの実施形態では、第3のインターロックは、ハンドルアセンブリ2660に張力が保持されない限り、ハンドルアセンブリの連結部分、従ってシース及びキャリアチューブが前進するのを防止することができる。これにより、ユーザが血管外の第1のバルーンを血管の外面に押し付けることを防止することができる。何故なら、第1のバルーンは、実際には血管内に配置され、偶発的に血管内に展開する可能性があるからである。
【0148】
図27は、別の実施形態による、VCDとともに使用され得るハンドルアセンブリ2760の概略ブロック図である。ハンドルアセンブリ2760は、ハンドルアセンブリ2660と実質的に同様であるが、ハンドルアセンブリ2760がリザーバ及び流体ポートを含まない点が異なる。このような実施形態では、膨張流体は、外部リザーバから流体連通チューブ又は導管を介してハンドルアセンブリに連通することができる。
【0149】
図28A~
図29Bは、別の実施形態によるハンドルアセンブリ2860の様々な図である。ハンドルアセンブリ2860は、ハンドル本体2861と、ハンドル本体2861内に摺動可能に配置され得る連結部分2863とを含む。
図28Aに示されるように、第1のアクチュエータ2864及び第2のアクチュエータ2866が、ハンドル本体2861の基端部2865の近くに配置される。第1及び第2のアクチュエータ2866及び第2のアクチュエータ2866は、第1のバルーンチューブ2804及び第2のチューブ2824に結合されるスライダ又は任意の他の適切なアクチュエータを含み得、スライダ又は任意の他の適切なアクチュエータは、チューブ2804及び2824(
図29A)、又は第2のチューブ2824内に配置されたアンカーワイヤ(
図29B)をそれぞれ血管に向けて又は血管から遠ざけるように移動するように構成され、第1のバルーンチューブ2804及び第2のチューブ2824は、
図29Aに示されるように第2のバルーンチューブであってもよく、又は
図29Bに示されるようなアンカーワイヤを支持するためのチューブであってもよい。
【0150】
連結部分2863は、ハンドル本体2861の先端部2867に近接するスロット2871をその端壁に規定する。スロット2871は、ハブ2522の一部を受け入れるように構成される。連結部分2863もまた、スロット2871を規定する端壁に直交する、一組のノッチ2869を対向する側壁に規定する。一組のノッチ2869は、対応する棚部2526a/bがそのノッチにスナップ嵌合して、第1及び第2の結合アーム2524a/b、従ってハブ2522、キャリアチューブ2520、及びシース(例えば、シース110)を連結部分2863に取り外し可能に結合できるように構成され得る。さらに、凹み2873が、スロット2871に近接するハンドル本体2861の側壁の一部に規定され得る。凹み2873は、連結アセンブリ2524の動き、従って連結部分2863に対するハブ2522の動きを防ぐために、連結部分2863内に連結アーム2524aを固定するための戻止め2528を受け入れるように構成され得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、第1のポート2868は第1の側壁に規定され得、第2のポート2870は連結部分の反対側の側壁に規定され得る。流体連通ライン2891及び2892は、第1のバルーンチューブ2804及び第2バルーンチューブ2824それぞれを介して第1のバルーン及び第2バルーンに流体を送り込む又は引き抜くために、第1ポート2868及び第2ポートを通して導入され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、連結部分2863はハンドル本体2861内で摺動可能であってもよい。他の実施形態では、連結部分2863はハンドル本体2861と一体的に形成され、アクチュエータ2864及び2866を含む別個のカバーをハンドル本体2861の上に配置してもよい。
【0153】
本明細書で使用する場合に、単数形「1つの(a,an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。こうして、例えば、「部材」という用語は、単一の部材又は部材の組合せを意味することを意図し、「材料」は、1つ又は複数の材料、又はそれらの組合せを意味することを意図する。
【0154】
様々な実施形態を説明するために本明細書で使用する「例示的な」という用語は、そのような実施形態が可能な実施形態の可能な例、表現、及び/又は例示であることを示すことを意図していることに留意すべきである(また、そのような用語は、そのような実施形態が必然的に例外的又は最上級の例であることを意味するものではない)。
【0155】
本明細書で使用する「連結、結合された(coupled)」、「接続された(connected)」等の用語は、2つの部材を直接的又は間接的に互いに接合することを意味する。このような接合は、固定的(例えば永久的)であっても、又は可動的(例えば取り外し可能又は解放可能)であってもよい。このような接合は、2つの部材で達成してもよく、或いは2つの部材と任意の追加の中間部材とが互いに単一の単体として一体的に形成されることによって達成してもよく、或いは2つの部材又は2つの部材と任意の追加の中間部材が互いに取り付けられることによって達成してもよい。
【0156】
「流体連結された」という用語は、互いに連結された2つの構成要素の間を流体が流れることができることを意味する。
【0157】
様々な例示的な実施形態の構造及び配置は単なる例示であることに留意することが重要である。本開示では少数の実施形態のみについて詳細に説明したが、本開示を検討する当業者であれば、本明細書で説明する主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状、及び比率の変更パラメータの値、取り付け配置、材料の使用、色、向き等)が可能であることを容易に理解するであろう。さらに、当業者には理解されるように、本明細書に開示する一実施形態の特徴は、本明細書に開示する他の実施形態の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。本実施形態の範囲から逸脱することなく、様々な例示的な実施形態の設計、動作条件、及び配置において他の置換、修正、変更、及び省略を行うこともできる。
【0158】
本明細書には多くの特定の実施態様の詳細が含まれるが、これらは、任意の実施形態の範囲又は特許請求の範囲に記載される内容の限定として解釈すべきではなく、特定の実施形態の特定の実施態様に対する特有の特徴の説明として解釈すべきである。この明細書で個別の実施態様の文脈で説明する特定の特徴は、単一の実施態様で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施態様の文脈で説明した様々な機能は、複数の実施態様で個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実施態様することもできる。さらに、特徴が特定の組合せで作用するものとして上で説明し、最初にそのように特許請求の範囲に記載される場合もあるが、場合によっては、特許請求の範囲に記載された組合せからの1つ又は複数の特徴が組合せから削除され、特許請求の範囲に記載された組合せがサブコンビネーション又はサブコンビネーションのバリエーションを対象とする場合がある。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の止血を行うための装置であって、当該装置は、
組織トラック内に挿入可能な第1のバルーンであって、血管の外側で該血管に形成した開口部の上に配置される第1のバルーンと、
該第1のバルーンの外面の少なくとも一部に取り外し可能に配置される止血層と、
前記第1のバルーンに流体連結され、該第1のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第1のバルーンチューブと、を含み、
前記第1のバルーンは、前記止血層が前記血管の外面に配置されて前記開口部を閉じるように、前記開口部の上で膨張可能であり、前記第1のバルーンは、止血を達成するために前記開口部に圧力を加え、前記止血層は、前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外すときに前記血管の前記外面に配置されたままであり、前記第1のバルーンの取外し後も前記開口部を閉じ続けるように、前記第1のバルーンから分離可能である、
装置。
【請求項2】
前記第1のバルーン、前記止血層、及び前記第1のバルーンチューブが配置される少なくとも1つの管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のバルーン、前記止血層、前記第1のバルーンチューブ、及び前記キャリアチューブが配置される中央チャネルを規定するシースをさらに含み、
該シースの少なくとも一部が、前記組織トラック及び前記血管内に取り外し可能に挿入可能であるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シース又は前記キャリアチューブの少なくとも一方の先端部が複数の穿孔を含み、前記第1のバルーンが前記先端部内で膨張するときに該先端部が前記複数の穿孔で引き裂かれるようにする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記止血層は吸収性材料で形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のバルーンを通して又は該第1のバルーンに隣接して延びる第1のガイドワイヤをさらに含み、該第1のガイドワイヤの先端部が、前記第1のバルーンを前記開口部の上に配置する前に、前記血管内の前記開口部を通して取り外し可能に配置されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第2のバルーンをさらに含み、該第2のバルーンは、記第1のバルーン及び前記第2のバルーンのそれぞれを膨張させるときに、前記血管の壁及び前記止血層を前記第1のバルーンと前記第2のバルーンとの間に介在させることにより、前記止血層を前記血管の前記外面に固定することが容易になるように、前記血管内の前記開口部を通して取り外し可能に配置されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のバルーンに流体連結された第2のバルーンチューブをさらに含み、該第2のバルーンチューブは、前記第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のバルーンチューブ及び前記第1のバルーンが配置される第1の管腔と、
該第1の管腔から軸方向にオフセットされる第2の管腔と、を規定するキャリアチューブをさらに含み、
前記第2のバルーンチューブ及び前記第2のバルーンは前記第2の管腔を通して配置される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のバルーンを通して又は該第2のバルーンに隣接して延びる第2のガイドワイヤをさらに含み、該第2のガイドワイヤの先端部が、前記第2のバルーンを前記血管内に配置する前に、該血管内に取り外し可能に配置されるように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のバルーンは、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記第2のバルーンに流体連結され、該第2のバルーンを選択的に膨張又は収縮させるように構成された第2のバルーンチューブをさらに含み、該第2のバルーンチューブは第1のバルーンチューブを通して配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のバルーンチューブ、前記第1のバルーン、前記第2のバルーンチューブ、及び前記第2のバルーンのそれぞれが配置される管腔を規定するキャリアチューブをさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記開口部を通して前記血管内に配置されるように構成されたアンカーワイヤ先端部を有するアンカーワイヤをさらに含み、
前記アンカーワイヤ先端部は、該アンカーワイヤ先端部を前記血管の外側に配置するときの収縮構成と、前記アンカーワイヤ先端部を血管内に配置するときの拡張構成との間で移動可能であり、
該拡張構成において、前記アンカーワイヤ先端部は、前記第1のバルーンを膨張させるときに、前記血管の壁及び前記止血層を前記第1のバルーンとアンカーとの間に介在させることにより、前記止血層を前記血管の前記外面に固定することが容易になるように、前記アンカーを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記アンカーワイヤは形状記憶合金で形成され、前記アンカーワイヤ先端部に力が加えられないときに、前記アンカーワイヤは、前記拡張構成において弛緩した状態にある、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記アンカーワイヤは、前記第1のバルーンから軸方向にオフセットされる、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記アンカーワイヤは、該アンカーワイヤが前記第1のバルーンを通して配置されるように、前記第1のバルーンと軸方向に整列している、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
血管の止血を行うための方法であって、当該方法は、
第1のバルーンが血管に形成した開口部の近くに配置されるように、前記第1のバルーンに流体連結された第1のバルーンチューブを使用して、前記第1のバルーンを組織トラックを通して前記血管に形成した前記開口部に向けて挿入するステップと、
前記第1のバルーンの先端部が前記血管の壁の外面を押して前記開口部を閉じるように、前記第1のバルーンを膨張させるステップと、
前記第1のバルーンを一定期間に亘って膨張位置に維持するステップと、
前記一定期間後に第1のバルーンを収縮させるステップと、
前記第1のバルーンチューブを引き抜き、それにより前記第1のバルーンを前記血管から引き抜くステップと、を含む、
方法。
【請求項20】
止血層が、前記第1のバルーンの外面の少なくとも一部に配置され、
前記第1のバルーンを膨張させると、前記止血層が前記開口部を閉じるように、前記止血層を前記血管の前記壁の前記外面と前記膨張した第1のバルーンとの間に介在させ、
前記一定期間後に前記第1のバルーンを収縮させると、前記止血層が、前記血管の前記外面に配置されたままであり、前記第1のバルーンを前記組織トラックから取り外しても前記開口部を閉じ続けるように、前記止血層を前記第1のバルーンの前記外面から分離させる、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】