(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】マイネルト基底核の脳深部刺激のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240219BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575688
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 US2022017739
(87)【国際公開番号】W WO2022182892
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507213592
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】508222047
【氏名又は名称】オーガスタ ユニバーシティ リサーチ インスティテュート,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】モフィット マイケル エー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク デヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB22
4C053JJ06
4C053JJ13
4C053JJ15
4C053JJ21
(57)【要約】
患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムは、電極を含む埋め込み式電気刺激リードであって、患者のNBMに隣接して又はその内部に電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された、埋め込み式電気刺激リードと、埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、を含み、埋め込み式パルス発生器は、ユーザの要求に応じて、期間が少なくとも1ヶ月であり、開始及び終了を有する初期刺激期間中に、電気刺激の持続時間又は振幅の少なくとも一方を初期刺激期間の開始時の初期値から初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加させるように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、埋め込み式パルス発生器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムであって、
複数の電極を含み、前記患者のNBMに隣接して又はその内部に前記電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された埋め込み式電気刺激リードと、
前記埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、前記埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通して前記NBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、
を備え、
前記埋め込み式パルス発生器は、ユーザの要求に応じて、期間が少なくとも1ヶ月であり開始及び終了を有する初期刺激期間中に、刺激期間の持続時間又は前記電気刺激の振幅の少なくとも一方を、前記初期刺激期間の開始時の初期値から前記初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加させるように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記電気刺激の振幅を経時的に増加させながら、前記初期刺激期間中に前記電気刺激を送達するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記電気刺激の持続時間を経時的に増加させながら、前記初期刺激期間中に前記電気刺激を送達するように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記電気刺激の振幅を経時的に増加させながら、前記初期刺激期間中に前記電気刺激を送達するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方の経時的増加は、前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方を線形ランプに従って前記初期値から前記最終値まで増加させることを含む、請求項1~4の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方の経時的増加は、前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方を非線形ランプに従って前記初期値から前記最終値まで増加させることを含む、請求項1~5の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記初期刺激期間中、前記患者の認知負荷が予想される期間中に前記電気刺激を送達しないように更に構成されている、請求項1~6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、i)電気刺激が送達されている、又はii)電気刺激が間もなく送達される、の少なくとも一方をユーザに示すように更に構成され、
前記プロセッサは、前記電気刺激の送達を延期するための制御を前記ユーザに提供し、前記制御の作動時に、前記電気刺激の送達を延期するように更に構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、又はこれらの何れかの組み合わせから選択されるセンサを更に備え、前記センサは、前記電気刺激に対する前記患者の応答をモニターするように構成され、前記プロセッサは、任意選択的に、EEGセンサ又はECoGセンサを用いて前記患者のα波脳活動をモニターするように構成される、請求項1~7の何れか1項に記載のシステム。
【請求項10】
患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムであって、
複数の電極を含み、前記患者のNBMに隣接して又はその内部に前記電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された埋め込み式電気刺激リードと、
前記埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、前記埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通して前記NBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、
を備え、
前記埋め込み式パルス発生器は、前記電極の少なくとも1つを通して前記NBMに電気刺激を送達するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、期間が少なくとも1ヶ月である初期刺激期間中に、前記患者の認知負荷が予想される期間中には前記電気刺激は送達されない、システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記初期刺激期間の後、前記患者の認知負荷が予想される期間中に前記電気刺激が送達される1日の時間量を経時的に増加させるように更に構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記初期刺激期間中に、前記電気刺激の持続時間又は振幅の少なくとも一方を、前記初期刺激期間の開始時の初期値から前記初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加させるように更に構成されている、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記増加させることが、前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方を、線形ランプに従って前記初期値から前記最終値まで経時的に増加させることを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記増加させることが、前記持続時間又は前記振幅の少なくとも一方を、非線形ランプに従って前記初期値から前記最終値まで経時的に増加させることを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムであって、
複数の電極を含み、前記患者のNBMに隣接して又はその内部に前記電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された埋め込み式電気刺激リードと、
前記埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、前記埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通して前記NBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、
を備え、
前記埋め込み式パルス発生器が、
前記電極の少なくとも1つを通じて前記NBMに電気刺激を送達し、
血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、又はこれらの組み合わせから選択されるセンサを用いて前記患者をモニターし、
前記センサのモニターに基づいて前記電気刺激を変更する、
ように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、引用により本明細書に組み込まれる、2021年2月25日に出願された米国仮特許出願第63/153,775号の米国特許法119条(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与されたRF1-AG060754に基づき政府の支援を得て為された。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本開示は、脳深部電気刺激のための方法及びシステムの領域に関する。本開示はまた、マイネルト基底核(NBM)の脳深部刺激のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
埋め込み式電気刺激システムは、様々な疾患及び障害における治療効果が証明されている。例えば、脳深部刺激システムは、パーキンソン病、本態性振戦、及びその他の治療に対する治療法として使用されている。
【0005】
刺激器は、様々な治療のための治療を提供するのに開発されてきた。刺激器は、埋め込み式パルス発生器(IPG)、1又は2以上のリード、及び各リード上の刺激器電極のアレイを含むことができる。刺激器電極は、神経、筋肉、又は刺激される他の組織と接触するか又はその近傍にある。IPGのパルス発生器は、電気パルスを発生し、電極により身体組織に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第62/030,655号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0150036号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0187222号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0276021号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0287272号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0287273号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2010/0076535号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2010/0268298号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2010/0268298号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2011/0004267号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2011/0005069号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2011/0078900号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2011/0130803号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2011/0130816号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2011/0130817号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2011/0130818号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2011/0238129号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2011/0313500号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2012/0016378号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2012/0046710号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2012/0071949号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2012/0165911号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2012/0197375号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2012/0203316号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2012/0203320号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2012/0203321号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2012/0271376号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2012/0314924号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2012/0316615号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2013/0060305号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第2013/0105071号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2013/0116744号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2013/0116748号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2013/0116929号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2013/0197424号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2013/0197602号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2013/0261684号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2013/0317573号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2013/0317587号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2013/0325091号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2014/0039587号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2014/0066999号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2014/0067022号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2014/0122379号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2014/0200633号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2014/0277284号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2014/0296953号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2014/0343647号明細書
【特許文献49】米国特許出願公開第2014/0353001号明細書
【特許文献50】米国特許出願公開第2014/0358207号明細書
【特許文献51】米国特許出願公開第2014/0358209号明細書
【特許文献52】米国特許出願公開第2014/0358210号明細書
【特許文献53】米国特許出願公開第2015/0018915号明細書
【特許文献54】米国特許出願公開第2015/0021817号明細書
【特許文献55】米国特許出願公開第2015/0021817号明細書
【特許文献56】米国特許出願公開第2015/0045864号明細書
【特許文献57】米国特許出願公開第2015/0066111号明細書
【特許文献58】米国特許出願公開第2015/0066120号明細書
【特許文献59】米国特許出願公開第2015/0151113号明細書
【特許文献60】米国特許出願公開第2016/0001080号明細書
【特許文献61】米国特許出願公開第2016/0346557号明細書
【特許文献62】米国特許出願公開第2016/0375248号明細書
【特許文献63】米国特許出願公開第2016/0375258号明細書
【特許文献64】米国特許出願公開第2017/0225007号明細書
【特許文献65】米国特許出願公開第2017/0259078号明細書
【特許文献66】米国特許出願公開第2017/0304633号明細書
【特許文献67】米国特許出願公開第2018/0064930号明細書
【特許文献68】米国特許出願公開第2018/0078776号明細書
【特許文献69】米国特許出願公開第2018/0110971号明細書
【特許文献70】米国特許出願公開第2018/0185650号明細書
【特許文献71】米国特許出願公開第2018/0193655号明細書
【特許文献72】米国特許出願公開第2018/0369606号明細書
【特許文献73】米国特許出願公開第2018/0369608号明細書
【特許文献74】米国特許出願公開第2019/0282820号明細書
【特許文献75】米国特許出願公開第2019/0329049号明細書
【特許文献76】米国特許出願公開第2019/0358458号明細書
【特許文献77】米国特許出願公開第2019/0358461号明細書
【特許文献78】米国特許出願公開第2020/0155854号明細書
【特許文献79】米国特許出願公開第2020/0289834号明細書
【特許文献80】米国特許出願公開第2020/0376262号明細書
【特許文献81】米国特許第6,181,969号明細書
【特許文献82】米国特許第6,295,944号明細書
【特許文献83】米国特許第6,391,985号明細書
【特許文献84】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献85】米国特許第6,609,029号明細書
【特許文献86】米国特許第6,609,032号明細書
【特許文献87】米国特許第6,741,892号明細書
【特許文献88】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献89】米国特許第7,244,150号明細書
【特許文献90】米国特許第7,450,997号明細書
【特許文献91】米国特許第7,672,734号明細書
【特許文献92】米国特許第7,761,165号明細書
【特許文献93】米国特許第7,783,359号明細書
【特許文献94】米国特許第7,792,590号明細書
【特許文献95】米国特許第7,809,446号明細書
【特許文献96】米国特許第7,949,395号明細書
【特許文献97】米国特許第7,974,706号明細書
【特許文献98】米国特許第8,175,710号明細書
【特許文献99】米国特許第8,224,450号明細書
【特許文献100】米国特許第8,271,094号明細書
【特許文献101】米国特許第8,295,944号明細書
【特許文献102】米国特許第8,326,433号明細書
【特許文献103】米国特許第8,364,278号明細書
【特許文献104】米国特許第8,391,985号明細書
【特許文献105】米国特許第8,483,237号明細書
【特許文献106】米国特許第8,675,945号明細書
【特許文献107】米国特許第8,688,235号明細書
【特許文献108】米国特許第8,831,731号明細書
【特許文献109】米国特許第8,831,742号明細書
【特許文献110】米国特許第8,849,632号明細書
【特許文献111】米国特許第8,958,615号明細書
【特許文献112】米国特許第9,415,154号明細書
【発明の概要】
【0007】
1つの態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムである。本システムは、電極を含む埋め込み式電気刺激リードであって、患者のNBMに隣接して又はその内部に電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された、埋め込み式電気刺激リードと;埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、を備え、埋め込み式パルス発生器は、ユーザの要求に応じて、持続期間が少なくとも1ヶ月であり開始及び終了を有する初期刺激期間中に、電気刺激の持続時間又は振幅の少なくとも一方を初期刺激期間の開始時の初期値から初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加させるように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0008】
少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは、電気刺激の振幅を経時的に増加させながら初期刺激期間中に電気刺激を送達するように構成される。少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは、初期刺激期間中に、電気刺激の持続時間を経時的に増加させながら電気刺激を送達するように構成される。少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは、電気刺激の振幅を経時的に増加させながら初期刺激期間中に電気刺激を送達するように構成される。
【0009】
少なくとも幾つかの態様において、持続時間又は振幅の少なくとも一方の経時的な増大は、持続時間又は振幅の少なくとも一方を線形ランプに従って初期値から最終値まで増大させることを含む。少なくとも幾つかの態様において、持続時間又は振幅の少なくとも一方の経時的な増加は、持続時間又は振幅の少なくとも一方を非線形ランプに従って初期値から最終値まで増加させることを含む。
【0010】
少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは、初期刺激期間中、患者の認知負荷が予想される期間中は電気刺激を送達しないように更に構成される。少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは更に、i)電気刺激が送達されている、又はii)電気刺激が間もなく送達される、の少なくとも一方をユーザに示すように構成され、プロセッサは更に、電気刺激の送達を延期するための制御をユーザに提供し、制御の作動時に、電気刺激の送達を延期するように構成される。
【0011】
少なくとも幾つかの態様において、システムは、血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、化学濃度センサ、酵素活性センサ、又はこれらの何れかの組み合わせから選択されるセンサを更に含み、センサは、電気刺激に対する患者の応答をモニターするように構成される。少なくとも幾つかの態様において、プロセッサは、EEG又はECoGセンサを用いて患者のアルファ波脳活動をモニターするように構成される。
【0012】
別の態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激する方法である。本方法は、電気刺激リードを患者の脳に埋め込むステップであって、電気刺激リードが電極を含み、電極の少なくとも1つは患者のNBMに隣接して又はその内部に配置される、ステップと、電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するステップであって、持続期間が少なくとも1ヶ月であり、開始及び終了を有する初期刺激期間中に、電気刺激の持続時間又は振幅の少なくとも一方が、初期刺激期間の開始時の初期値から初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加する、ステップと、を含む。
【0013】
更なる態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激する方法である。本方法は、患者の脳に側方から中央への軌道で電気刺激リードを埋め込むステップであって、電気刺激リードが電極を含み、電極の少なくとも1つが患者のNBMに隣接して又はその内部に配置される、ステップと、電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するステップであって、持続期間が少なくとも1ヶ月である初期刺激期間の間、患者の認知負荷が予想される期間には電気刺激が送達されない、ステップと、を含む。
【0014】
少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、電気刺激の送達前又は送達中に、電気刺激が送達されていること又は間もなく送達されることをユーザに示すステップを含む。少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、延期制御のユーザ操作に応答して、電気刺激の送達を延期するステップを含む。少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、初期刺激期間の後、患者の認知負荷が予想される期間中に電気刺激が送達される1日の時間量を経時的に増加させるステップを含む。
【0015】
少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、初期刺激期間中に、電気刺激の持続時間又は振幅の少なくとも一方を、初期刺激期間の開始時の初期値から初期刺激期間の終了時の最終値まで経時的に増加させるステップを含む。少なくとも幾つかの態様において、増加させることは、持続時間又は振幅の少なくとも一方を、線形ランプに従って初期値から最終値まで経時的に増加させることを含む。少なくとも幾つかの態様において、増加させることは、非線形ランプに従って、持続時間又は振幅の少なくとも一方を初期値から最終値まで経時的に増加させることを含む。
【0016】
少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、又はこれらの何れかの組み合わせから選択されるセンサを用いて患者をモニターするステップを含む。
【0017】
更に別の態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムである。本システムは、電極を含む埋め込み式電気刺激リードであって、患者のNBMに隣接して又はその内部に電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された埋め込み式電気刺激リードと、埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、を含み、埋め込み式パルス発生器は、ユーザの要求に応じて、持続期間が少なくとも1ヶ月であり開始及び終了を有する初期刺激期間中に、患者の認知負荷が予想される期間中は電気刺激を送達しないように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0018】
別の態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するための方法である。本方法は、電気刺激リードを患者の脳に埋め込むステップであって、電気刺激リードが電極を含み、電極の少なくとも1つが患者のNBMに隣接して又はNBM内に配置される、ステップと、電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するステップと、血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、又はこれらの何れかの組み合わせから選択されるセンサを用いて患者をモニターするステップと、センサのモニターに基づいて電気刺激を変更するステップとを含む。
【0019】
少なくとも幾つかの態様において、患者をモニターするステップは、EEG又はECoGセンサを用いて患者のアルファ波脳活動をモニターするステップを含む。
【0020】
更なる態様は、患者のマイネルト基底核(NBM)を刺激するためのシステムである。本システムは、複数の電極を含み、患者のNBMに隣接して又はその内部に電極の少なくとも1つが埋め込まれるように構成された埋め込み式電気刺激リードと、埋め込み式電気刺激リードに結合可能であり、埋め込み式電気刺激リードの電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達するように構成された埋め込み式パルス発生器と、を含む。埋め込み式パルス発生器は、電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達し、血流センサ、脳波(EEG)センサ、皮質脳波(ECoG)センサ、運動センサ、又はこれらの何れかの組み合わせから選択されるセンサを用いて患者をモニターし、センサのモニターに基づいて電気刺激を変更するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0021】
本発明の非限定的及び非網羅的な実施形態について、以下の図面を参照しながら説明する。図面において、同様の参照数字は、特に指定しない限り、様々な図全体を通して同様の要素を指す。
【0022】
本発明をより良く理解するために、添付図面と共に読むべき、以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】IPGに結合可能な1又は2以上のリードを含む電気刺激システムの一実施形態の概略図である。
【
図2】IPGに結合される経皮リードを含む電気刺激システムの別の実施形態の概略図である。
【
図3】コネクタ組立体が
図2のリードの近位部分を受けるように構成及び配置された、
図2のIPG内に配置された複数のコネクタ組立体の一実施形態の概略図である。
【
図4】リード延長部がリードをIPGに結合するように構成及び配置されている、
図2のリードの近位部分、リード延長部及び
図2のIPGの一実施形態の概略図である。
【
図5A】32個の電極を有するリードの一実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図5B】16個の電極を有するリードの一実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図5C】16個の電極を有するリードの別の実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図5D】16個の電極を有するリードの第3の実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図5E】32個の電極を有するリードの別の実施形態の一部の概略斜視図である。
【
図6】電気刺激システムの構成要素の一実施形態の概略的な概要図である。
【
図7】2つの電気刺激リードを用いてマイネルト基底核(NBM)を刺激する方法の一実施形態の概略側面図である。
【
図8】側方中央軌道にて埋め込まれた1つの電気刺激リードを用いてNBMを刺激する方法の一実施形態の概略側面図である。
【
図9】側方中央軌道にて埋め込まれた1つの光学(又は電気光学)刺激リードを用いてNBMを刺激する方法の一実施形態の概略側面図である。
【
図10】2つの光刺激リードを用いてNBMを刺激する方法の一実施形態の概略側面図である。
【
図11】NBMを刺激する方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、脳深部電気刺激のための方法及びシステムの領域に関する。本開示はまた、マイネルト基底核(NBM)の脳深部刺激のための方法及びシステムに関する。
【0025】
好適な埋め込み式電気刺激システムは、限定ではないが、リードの遠位端部に沿って配置された1又は2以上の電極及びリードの1又は2以上の近位端部に沿って配置された1又は2以上の端子を有する少なくとも1つの電気刺激リードを含む。リードを有する電気刺激システムの例は、例えば、米国特許第6,181,969号;第6,295,944号;第6,391,985号;第6,516,227号;第6,609,029号;第6,609,032号;第6,741,892号;第7,244,150号;第7,450,997号;第7,672,734号;第7,761,165号;第7,783,359号;第7,792,590号;第7,809,446号;第7,949,395号;第7,974,706号;第8,831,742号;第8,688,235号;第8,175,710号;第8,224,450号;第8,271,094号;第8,295,944号;第8,364,278号;及び第8,391,985号;米国特許出願公開第2007/0150036号;第2009/0187222号;第2009/0276021号;第2010/0076535号;第2010/0268298号;第2011/0004267号;第2011/0078900号;第2011/0130817号;第2011/0130818号;第2011/0238129号;第2011/0313500号;第2012/0016378号;第2012/0046710号;第2012/0071949号;第2012/0165911号;第2012/0197375号;第2012/0203316号;第2012/0203320号;第2012/0203321号;第2012/0316615号;第2013/0105071号;第2011/0005069号;第2010/0268298号;第2011/0130817号;第2011/0130818号;第2011/0078900号;第2011/0238129号;第2011/0313500号;第2012/0016378号;第2012/0046710号;第2012/0165911号;第2012/0197375号;第2012/0203316号;第2012/0203320号;及び第2012/0203321号に見出され、これらは引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0026】
図1に目を向けると、電気刺激システム10の一実施形態は、1又は2以上の電気刺激リード12及び埋め込み式パルス発生器(IPG)14を含む。システム10はまた、外部リモコン(RC)16、臨床医プログラマ(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、又は外部充電器22の1又は2以上を含むことができる。IPG及びETSは、電気刺激システムの制御モジュールの例である。
【0027】
IPG14は、任意選択的に、1又は2以上のリード延長部24を介して、電気刺激リード12に物理的に接続される。各電気刺激リードは、アレイ状に配置された複数の電極26を有する。IPG14は、刺激パラメータのセットに従って、アレイの1又は2以上の電極26に、例えばパルス電気波形(すなわち、時間的に一連の電気パルス)の形で電気刺激エネルギーを供給するパルス発生回路を含む。IPG14は、例えば、患者の鎖骨部の下又は患者の腹キャビティ内又は他の何れかの適切な部位で、患者の体内に埋め込むことができる。埋め込み式パルス発生器14は、各チャンネルからの電流刺激の大きさを制御するように独立してプログラム可能な複数の刺激チャンネルを有することができる。幾つかの実施形態では、埋め込み式パルス発生器14は、限定ではないが、4、6、8、12、16、32又はそれ以上の刺激チャンネルを含む何れかの適切な数の刺激チャンネルを有することができる。埋め込み式パルス発生器14は、リード及び/又はリード延長部の端子を受けるための、1、2、3、4、又はそれ以上のコネクタポートを有することができる。
【0028】
ETS20はまた、任意選択的に経皮リード延長部28及び外部ケーブル30を介して、刺激リード12に物理的に接続することができる。IPG14と同様のパルス発生回路を有することができるETS20はまた、刺激パラメータのセットに従って、例えばパルス電気波形の形で電気刺激エネルギーを電極26に供給する。ETS20とIPG14との違いの1つは、ETS20が、多くの場合、電気刺激リード12が埋め込まれた後及びIPG14の埋め込み前に、提供される刺激の応答性を試験するために試験的に使用される非埋め込み式デバイスであることである。IPG14に関して本明細書で説明した機能は、同様にETS20に関しても実行することができる。
【0029】
RC16は、一方向又は双方向無線通信リンク32を介してIPG14又はETS20と遠隔通信又はコントローラ制御するために使用することができる。IPG14及び電気刺激リード12が埋め込まれると、RC16は、一方向又は双方向通信リンク34を介してIPG14と遠隔通信又は制御するために使用することができる。このような通信又は制御により、IPG14をオン又はオフにし、及び異なる刺激パラメータセットでプログラムすることができる。IPG14はまた、IPG14によって出力される電気刺激エネルギーの特性を能動的に制御するために、プログラムされた刺激パラメータを変更するように操作することができる。CP18により、臨床医等のユーザは、手術室及びフォローアップセッションにおいて、IPG14及びETS20の刺激パラメータをプログラムすることができる。代替的に、又は追加的に、RC16(又は携帯電話、タブレット等のような携帯型電子デバイスのような外部デバイス)とIPG14との間の無線通信(例えば、ブルートゥース)を介して刺激パラメータをプログラムすることができる。
【0030】
CP18は、無線通信リンク36を介して、RC16を介して、IPG14又はETS20と間接的に通信することにより、この機能を実行することができる。或いは、CP18は、無線通信リンク(図示せず)を介してIPG14又はETS20と直接通信してもよい。CP18によって提供される刺激パラメータはまた、RC16をプログラムするために使用されるので、刺激パラメータは、その後、スタンドアロンモードで(すなわち、CP18の支援なしで)RC16の操作によって変更することができる。
【0031】
RC16、CP18、ETS20、及び外部充電器22の追加の例は、本明細書で引用した文献、並びに米国特許第6,895,280号;第6,181,969号;第6,516,227号;第6,609,029号;第6,609,032号;第6,741,892号;第7,949,395号;第7,244,150号;第7,672,734号;及び第7,761,165号;第7,974,706号;第8,175,710号;第8,224,450号;及び第8,364,278号;及び米国特許出願公開第2007/0150036号明細書に見出すことができ、これらは全て、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
図2は、電気刺激システム10の別の実施形態を概略的に示している。電気刺激システムは、IPG(例えば、制御モジュール)14及びIPG14に結合可能な少なくとも1つの電気刺激リード12を含む。電気刺激リード12は、1又は2以上のリード本体106と、電極134等の電極のアレイと、1又は2以上のリード本体106に沿って配置された端子のアレイ(例えば、
図3及び
図4の210)とを含む。少なくとも幾つかの実施形態では、リードは、リード本体106の長手方向に沿って等距離である。
図2は、IPG14に結合された1つのリード12を示している。他の実施形態は、IPG14に結合された2、3、4又はそれ以上のリード12を含むことができる。
【0033】
電気刺激リード12は、何れかの適切な方法でIPG14に結合することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激リード12はIPG14に直接結合する。少なくとも幾つかの他の実施形態では、電気刺激リード12は、1又は2以上の中間デバイスを介してIPG14に結合する。例えば、少なくとも幾つかの実施形態では、1又は2以上のリード延長部224(例えば、
図4参照)を電気刺激リード12とIPG14との間に配置して、電気刺激リード12とIPG14との間の距離を延長することができる。リード延長部はまた、関節を横断するのに有用とすることができるか、又はこのような交換がリードの遠位端部の配置に影響を与えないので、リード延長部が疲労により破損した場合に、より容易に交換することができる。他の中間デバイスは、例えば、スプリッタ、アダプタ、又はこれらの何れかの組み合わせを含む1又は2以上のリード延長部に加えて、又はその代わりに使用することができる。電気刺激システム10が、電気刺激リード12とIPG14との間に配置された複数の細長いデバイスを含む場合には、中間デバイスは、何れかの適切な配置に構成することができることは理解されるであろう。
【0034】
図2において、電気刺激システム10は、電気刺激リード12のIPG14への結合を容易にするように構成及び配置されたスプリッタ107を有することが示されている。スプリッタ107は、電気刺激リード12の近位端部に結合するように構成されたスプリッタコネクタ108と、IPG14(又は別のスプリッタ、リード延長部、アダプタ等)に結合するように構成及び配置された1又は2以上のスプリッタテール109a及び109bとを含む。
【0035】
少なくとも幾つかの実施形態では、IPG14は、コネクタハウジング112及びシールされた電子機器ハウジング114を含む。電子部分組立体110及びオプションの電源121が電子機器ハウジング114内に配置される。IPGコネクタ144がコネクタハウジング112内に配置されている。IPGコネクタ144は、電気刺激リード12とIPG14の電子部分組立体110との間の電気接続を行うように構成及び配置されている。
【0036】
電極134は、何れかの導電性の生体適合性材料を用いて形成することができる。好適な材料の例としては、金属、合金、導電性ポリマー、導電性カーボン等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも幾つかの実施形態において、電極134の1又は2以上は、白金、白金イリジウム、パラジウム、パラジウムロジウム、又はチタンの1又は2以上から形成される。各アレイ26には、何れかの数の電極134を使用することができる。例えば、2個、4個、6個、8個、10個、12個、14個、16個又はそれ以上の電極134とすることができる。認識されるように、他の数の電極134を使用することもできる。
【0037】
1又は2以上のリード本体106の電極は、典型的には、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、エポキシ等又はこれらの組み合わせのような非導電性の生体適合性材料中に配置されるか、又はこれらによって分離される。リード本体106は、例えば、成形(射出成形を含む)、鋳造及びこれらを含む何れかのプロセスによって所望の形状に形成することができる。非導電性材料は、典型的には、1又は2以上のリード本体106の遠位端部から1又は2以上のリード本体106の各々の近位端部まで延びている。
【0038】
端子(例えば、
図3及び
図4の210)は、典型的には、対応するコネクタ接点(例えば、
図3の214及び
図4の240)に電気的に接続するために、電気刺激システム10の1又は2以上のリード本体106(並びに何れかのスプリッタ、リード延長部、アダプタ等)の近位端部に沿って配置される。コネクタ接点は、コネクタ(例えば、
図2~
図4の144、及び
図4の221)に配置され、このコネクタは、例えば、IPG14(又はリード延長部、スプリッタ、アダプタ等)に配置される。導電性のワイヤ、ケーブル又はその他(図示せず)は、端子から電極134まで延びている。典型的には、1又は2以上の電極134が各端子に電気的に結合されている。少なくとも幾つかの実施形態では、各端子は1つの電極134にのみ接続される。
【0039】
導電性ワイヤ(「導電体」)は、リード本体106の非導電性材料に埋め込むことができ、又はリード本体106に沿って延びる1又は2以上の内腔(図示せず)に配置することができる。幾つかの実施形態では、各導体に対して個別の内腔がある。他の実施形態では、2又は3以上の導体が1つの内腔を通って延びている。また、例えば、患者の体内へのリード本体106の配置を容易にするためにスタイレットを挿入するために、リード本体106の近位端部又はその近傍で開口する1又は2以上の内腔(図示せず)が存在することもある。更に、例えば、1又は2以上のリード本体106の埋め込み部位に薬物又は薬剤を注入するために、リード本体106の遠位端部又はその近傍に開口する1又は2以上のルーメン(図示せず)が存在することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、1又は2以上の内腔は、遠位端部において永久的又は取り外し可能に封止可能である。
【0040】
図3は、IPGコネクタ144の一実施形態に結合するように構成及び配置された1又は2以上の細長いデバイス200の近位端部の一実施形態の概略側面図である。1又は2以上の細長いデバイスは、例えば、リード本体106、1又は2以上の中間デバイス(例えば、
図2のスプリッタ107、
図4のリード延長部224、アダプタ等、又はこれらの組み合わせ)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
図3は、IPG14に結合された2つの細長いデバイス200を示している。これらの2つの細長いデバイス200は、
図2に図示されるような2つのテール又は2つの異なるリード又は細長いデバイスの他の何れかの組み合わせとすることができる。
【0041】
IPGコネクタ144は、方向矢印212a及び212bによって示されるように、細長いデバイス200の近位端部が挿入され得る少なくとも1つのポートを規定する。
図3(及び他の図)において、コネクタハウジング112は、2つのポート204a及び204bを有するように示されている。コネクタハウジング112は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上のポートを含む何れかの適切な数のポートを規定することができる。
【0042】
IPGコネクタ144はまた、各ポート204a及び204b内に配置されたコネクタ接点214のような複数のコネクタ接点を含む。細長いデバイス200がポート204a及び204bに挿入されると、電気刺激リード12の遠位端部に配置された電極(
図2の134)にIPG14を電気的に結合するために、コネクタ接点214は、細長いデバイス200の近位端部に沿って配置された複数の端子210と整列することができる。IPGにおけるコネクタの例は、例えば、米国特許第7,244,150号及び第8,224,450号に記載されており、これらは引用によりその全体が組み込まれる。
【0043】
図4は、電気刺激システム10の別の実施形態の概略側面図である。電気刺激システム10は、1又は2以上の細長いデバイス200(例えば、リード本体106、スプリッタ107、アダプタ、別のリード延長部等又はこれらの組み合わせ)をIPG14に結合するように構成及び配置されたリード延長部224を含む。
図4では、リード延長部224はIPGコネクタ144に定義された単一のポート204に結合されて示されている。更に、リード延長部224は、単一の細長いデバイス200に結合するように構成及び配置されて示されている。代替実施形態では、リード延長部224は、IPGコネクタ144内に画定された複数のポート204に結合するように、又は複数の細長いデバイス200を受けるように、又はその両方に結合するように構成及び配置される。
【0044】
リード延長部224にはリード延長部コネクタ221が配置されている。
図4では、リード延長部コネクタ221は、リード延長部224の遠位端部226に配置されて示されている。リード延長部コネクタ221は、コネクタハウジング228を含む。コネクタハウジング228は、方向矢印238で示すように、細長いデバイス200の端子210が挿入可能な少なくとも1つのポート230を画定している。コネクタハウジング228は、コネクタ接点240のような複数のコネクタ接点も含む。細長いデバイス200がポート230に挿入されると、コネクタハウジング228に配置されたコネクタ接点240は、リード延長部224をリード(
図2の12)に沿って配置された電極(
図2の134)に電気的に結合するために、細長いデバイス200の端子210と位置合わせすることができる。
【0045】
少なくとも幾つかの実施形態では、リード延長部224の近位端は、リード12(又は他の細長いデバイス200)の近位端部と同様に構成及び配置される。リード延長部224は、遠位端部226とは反対側にあるリード延長部224の近位端部248にコネクタコンタクト240を電気的に結合する複数の導電性ワイヤ(図示せず)を含むことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、リード延長部224に配置された導電性ワイヤは、リード延長部224の近位端部248に沿って配置された複数の端子(図示せず)に電気的に結合することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、リード延長部224の近位端部248は、別のリード延長部(又は別の中間デバイス)に配置されたコネクタに挿入されるように構成及び配置される。他の実施形態では(及び
図4に示すように)、リード延長部224の近位端部248は、IPGコネクタ144に挿入するように構成及び配置される。
【0046】
図2に戻ると、少なくとも幾つかの実施形態では、刺激電極の少なくとも一部は、リードの周囲(例えば、円周)を部分的にのみ延びるセグメント電極の形態をとる。これらのセグメント電極は、電極のセットで提供することができ、各セットは、特定の長手方向位置でリードについて円周方向に分布する電極を有する。
【0047】
図2では、電極134はリング電極120及びセグメント電極122の両方を含むものとして示されている。幾つかの実施形態では、電極134は全てセグメント電極又は全てリング電極である。
図2のセグメント電極122は3つのセット(そのうちの1つは
図2では見えない)になっており、特定のセットの3つのセグメント電極は互いに電気的に絶縁され、リード12に沿って周方向にオフセットされている。何れかの適当な数のセグメント電極を、例えば、2、3、4又はそれ以上のセグメント電極を含むセットに形成することができる。
図2のリード12は、30個のセグメント電極122(それぞれ3個の電極の10セット)及び2個のリング電極120を有し、合計32個の電極134を有する。
【0048】
セグメント電極は、刺激電流をリードの片側、又は片側の一部に直流させるために使用することができる。セグメント電極が、複数の電流刺激を同時に供給する埋め込み式パルス発生器と共に使用される場合、電流ステアリングが達成されて、リードの軸の周りの位置(すなわち、リードの軸の周りの半径方向の位置決め)に刺激をより正確に供給することができる。脳深部刺激におけるターゲット構造は、一般的に遠位電極アレイの軸に対して対称ではないため、セグメント電極はリング電極よりも優れた電流ステアリングを提供する可能性がある。その代わりに、ターゲットはリードの軸を通る平面の片側に位置することができる。セグメント電極アレイを使用することで、リードの長さに沿ってだけでなく、リードの周囲にも電流を流すことができる。これにより、正確な3次元的ターゲティングと神経ターゲット組織への電流刺激の送達が可能になる一方、他の組織への刺激を回避できる可能性がある。
【0049】
図5Aは、リード本体106及びそれぞれ3個のセグメント電極122が10セットずつ配置された30個のセグメント電極122の近位に2個のリング電極120を有する32電極リード12を示す。図示の実施形態では、リング電極120はセグメント電極122の近位にある。他の実施形態では、リング電極120の1又は2以上が、セグメント電極122の1又は2以上に近位とすることができ、又はセグメント電極122の1又は2以上に遠位とすることができる。
【0050】
何れかの数のセグメント電極122が、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、24、28、30、32又はそれ以上のセグメント電極122を含むリード本体上に配置することができる。何れかの数のセグメント電極122がリード本体の長さに沿って配置できることが理解されるであろう。セグメント電極122は、典型的には、リードの円周の75%、67%、60%、50%、40%、33%、25%、20%、17%、15%又はそれ未満だけ延びる。
【0051】
セグメント電極122は、セグメント電極のセットにグループ化することができ、各セットは、電気刺激リード12の特定の長手方向部分において電気刺激リード12の円周の周りに配置される。電気刺激リード12は、所定のセグメント電極のセットにおいて何れかの数のセグメント電極122を有することができる。電気刺激リード12は、所定のセットにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上のセグメント電極122を有することができる。電気刺激リード12は、限定ではないが、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、16、20、又はそれ以上のセットを含む何れかの数のセグメント電極のセットを有することができる。セグメント電極122は、サイズ及び形状が均一であっても、又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、セグメント電極122は全て同じサイズ、形状、直径、幅又は面積、又はこれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、各周方向セットのセグメント電極122(又はリード12上に配置された全てのセグメント電極)は、サイズ及び形状が同一とすることができる。
【0052】
セグメント電極122の各セットは、リード本体の周囲に実質的に円筒形状を形成するようにリード本体の円周上に配置することができる。セグメント電極の所与のセットの個々の電極間の間隔は、電気刺激リード12上のセグメント電極の別のセットの個々の電極間の間隔と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。少なくとも幾つかの実施形態では、リード本体の円周上の各セグメント電極122間に、等しいスペース、ギャップ又は切り欠きが配置される。他の実施形態では、セグメント電極122間のスペース、ギャップ又は切り欠きは、大きさ又は形状が異なっていてもよい。他の実施形態では、セグメント電極122間のスペース、ギャップ又はカットアウトは、セグメント電極122の特定のセットに対して、又はセグメント電極122の全てのセットに対して均一とすることができる。セグメント電極122のセットは、リード本体の長さに沿って不規則又は規則的な間隔で配置することができる。
【0053】
図5B~
図5Eは、セグメント電極122を有するリードの他の実施形態を示す。
図5Bは、それぞれ3つのセグメント電極122の5つのセットの近位にある1つのリング電極120を有する16電極リード12を図示する。
図5Cは、2つのセグメント電極122の8つのセットをそれぞれ有する16電極リード12を図示する。
図5Cに示されるように、リード12の実施形態は必ずしもリング電極を含まない。
図5Dは、2つのセグメント電極122の6つのセットそれぞれに近接する4つのリング電極120を有する16電極リード12を図示する。
図5Eは、2つのセグメント電極122の16のセットをそれぞれ有する32電極リード12を示す(図示を明瞭にするため、全ての電極が示されているわけではない)。リング電極、セグメント電極、又は両方のタイプの電極の他の何れかの電極の組み合わせが使用できることが認識されるであろう。
【0054】
リード12がリング電極120及びセグメント電極122の両方を含む場合、リング電極120及びセグメント電極122は、何れかの適切な構成で配置することができる。例えば、リード12が2又は3以上のリング電極120及び1又は2以上のセグメント電極122のセットを含むとき、リング電極120は、セグメント電極122の1又は2以上のセットを側方配置することができる。或いは、2又は3以上のリング電極120は、セグメント電極122の1又は2以上のセットに近位に配置するか、又は2又は3以上のリング電極120は、セグメント電極122の1又は2以上のセットの遠位に配置するか、又はリング電極120及びセグメント電極122の他の何れかの好適な配置にすることができる。
【0055】
電極120、122は、1、1.5、2、3、4、4.5、5、又は6mmを含むがこれらに限定されない何れかの適切な長手方向の長さを有することができる。隣接する電極120、122間の長手方向間隔は、限定ではないが、0.25、0.5、0.75、1、2、又は3mmを含む何れかの適切な量とすることができ、ここで間隔は、2つの隣接する電極の最も近い端部間の距離として定義される。幾つかの実施形態では、間隔はリードの長手方向に隣接する電極間で均一である。他の実施形態では、長手方向に隣接する電極間の間隔は、リードの長さに沿って異なる又は不均一とすることができる。
【0056】
セグメント電極を有する電気刺激リードの例としては、米国特許出願公開第2010/0268298号;第2011/0005069号;第2011/0078900号;第2011/0130803号;第2011/0130816号;第2011/0130817号;第2011/0130818号;第2011/0078900号;第2011/0238129号;第2011/0313500号;第2012/0016378号;第2012/0046710号;第2012/0071949号;第2012/0165911号;第2012/0197375号;第2012/0203316号;第2012/0203320号;第2012/0203321号;第2013/0197602号;第2013/0261684号;第2013/0325091号;第2013/0317587号;第2014/0039587号;第2014/0353001号;第2014/0358209号;第2014/0358210号;第2015/0018915号;第2015/0021817号;第2015/0045864号;第2015/0021817号;第2015/0066120号;第2013/0197424号;第2015/0151113号;第2014/0358207号;及び米国特許第8,483,237号が挙げられ、その全てが引用により全体が本明細書に組み込まれる。電気刺激リードはまた、先端電極を含むことができ、先端電極を有するリードの例としては、先に引用された文献の少なくとも幾つか、並びに米国特許出願公開第2014/0296953号及び第2014/0343647号が挙げられ、これらは全て、引用により全体が本明細書に組み込まれる。セグメント電極を有するリードは、セグメント電極を用いて特定の方向に刺激を送達することができる指向性リードとすることができる。
【0057】
図6は、IPG内に配置された電子部分組立体610を含む電気刺激システム600の構成要素の一実施形態の概略的概要である。電気刺激システムは、1又は2以上の構成要素を含むことができ、本明細書で引用した刺激器参考文献に開示された構成を含む様々な異なる構成を有することができることが理解されるであろう。
【0058】
電気刺激システムの構成要素の一部(例えば、電源612、アンテナ618、受信機602、プロセッサ604、及びメモリ605)は、所望により、埋め込み式パルス発生器のシールされたハウジング内の1又は2以上の回路基板又は同様のキャリア上に配置することができる。例えば、一次電池又は充電式電池のような電池を含む何れかの電源612を使用することができる。他の電源の例としては、スーパーキャパシタ、原子力電池又は原子電池、機械的共振器、赤外線コレクタ、熱動力エネルギー源、屈曲動力エネルギー源、生体エネルギー電源、燃料電池、生体電気電池、浸透圧ポンプ、及び引用により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,437,193号に記載された電源を含む同様のものが挙げられる。
【0059】
別の代替として、電力は、オプションのアンテナ618又は2次アンテナを介した誘導結合を介して外部電源から供給することができる。外部電源は、ユーザの皮膚に装着されるデバイス内、又は恒久的又は定期的にユーザの近くに提供されるユニット内とすることができる。
【0060】
電源612が充電可能なバッテリである場合、バッテリは、必要に応じて、オプションのアンテナ618を使用して充電することができる。アンテナを介してバッテリをユーザの外部の充電ユニット616に誘導結合することにより、充電のためにバッテリに電力を供給することができる。このような配置の例は、上記で特定した文献に見出すことができる。
【0061】
一実施形態では、電気刺激システムの近くの神経線維、筋線維又は他の身体組織を刺激するために、リード本体の電極134によって電流が放出される。プロセッサ604は、一般に、電気刺激システムのタイミング及び電気特性を制御するために含まれる。例えば、プロセッサ604は、所望により、パルスのタイミング、周波数、振幅、幅及び波形の1又は2以上を制御することができる。更に、プロセッサ604は、所望により、刺激を提供するためにどの電極を使用するかを選択することができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ604は、どの電極がカソードであり、及びどの電極がアノードであるか、及びそれぞれに割り当てられたアノード電流又はカソード電流の量を選択することができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ604は、どの電極が所望の組織に最も有用な刺激を提供するかを識別するために使用することができる。プロセッサ604のための命令は、メモリ605上に記憶することができる。
【0062】
何れかのプロセッサを使用することができ、例えば、一定間隔でパルスを生成する電子デバイスのように単純なものとすることができ、又はプロセッサは、例えば、パルス特性の変更を可能にするCP/RC606(
図1のCP18又はRC16等)からの命令を受信及び解釈することができるものとすることができる。図示の実施形態では、プロセッサ604は、受信機602に結合され、この受信機は、オプションのアンテナ618に結合されている。これにより、プロセッサ604は、例えば、所望により、パルス特性及び電極の選択を指示するための指示を外部から受信することができる。
【0063】
一実施形態では、アンテナ618は、ユーザによってプログラム又は他の方法で操作されるCP/RC606(参照、
図1のCP18又はRC16)から信号(例えば、RF信号)を受信することができる。アンテナ618及び受信機602を介してプロセッサ604に送信された信号は、電気刺激システムの動作を変更又は他の方法で指示するために使用することができる。例えば、信号は、パルス幅、パルス周波数、パルス波形、及びパルス振幅の1又は2以上の変更のような電気刺激システムのパルスを変更するために使用することができる。信号はまた、電気刺激システム600に、動作の停止、動作の開始、バッテリの充電の開始、又はバッテリの充電の停止を指示することもできる。他の実施形態では、刺激システムはアンテナ618又は受信機602を含まず、プロセッサ604はプログラム通りに動作する。
【0064】
任意選択的に、電気刺激システム600は、CP/RC606又は信号を受信することができる他のユニットに信号を送り返すために、プロセッサ604及びアンテナ618に結合された送信機(図示せず)を含むことができる。例えば、電気刺激システム600は、電気刺激システム600が適切に動作しているか否かを示す信号、又は電池の充電が必要な時期若しくは電池の充電残量を示す信号を送信することができる。プロセッサ604は、ユーザ又は臨床医が特性を決定又は検証できるように、パルス特性に関する情報を送信することもできる。
【0065】
アルツハイマー病のような認知症は一般に、大脳皮質における重要な神経伝達物質であるアセチルコリン(Ach)の減少と関連している。研究によると、抗コリン薬(他の健康問題に対する)は認知症の可能性の増加と関連しており、FDAが承認した認知症治療薬のクラスの1つは抗コリンエステラーゼ薬(すなわち、AChの代謝を遅らせて、より長く/より強く作用するようにする薬)である。
【0066】
大脳皮質でAChを産生し、AChを送り出す細胞及び放出する細胞は、マイネルト基底核(NBM)に存在する。この部位を刺激すると、大脳皮質でAChの放出が誘発され、及び認知症の影響を打ち消すことができると考えられている。AChの放出は、うつ病及び神経心理学的障害の治療にも使用される可能性がある。ヒト以外の霊長類では、NBMを刺激すると記憶課題の成績が顕著に向上することが実証されている。また、断続的な刺激プロトコールは有効であるが、連続的な刺激プロトコールは有効でないことも示されている。
【0067】
NBMニューロンを刺激してAChを多く供給することに加えて、これらの細胞の神経変性を遅らせる又は止めることも望ましい。
【0068】
NBMは、曲がった楕円形のパンケーキ又は平らなバナナのような、固有の湾曲形状を有する。脳の片半球のNBM760の形状の近似値を
図7に示す。この形状は、1つの電極アレイが、各細胞のACh機械を十分に利用するために、細胞の比較的大きな部分、又は全てを刺激することが困難な場合があるため、電気刺激リードを使用してNBM760を完全に関与させることを困難にする場合がある。
【0069】
少なくとも幾つかの実施形態では、ターゲットNBM760の固有の形状に対処し、及びターゲットNBMをより多く刺激するために、複数の電気刺激リード12をターゲットNBM760の異なる部分に配置することができ、
図7に図示されるように、電気刺激リード12の電極134間で刺激を循環させて複数の刺激領域762を生成することができる。
図7の図示の実施形態では、2つの電気刺激リード12が上方から下方への軌道を使用して埋め込まれ、及び一方の電気刺激リードが2つの異なる刺激領域762を生成するために使用され、他方の電気刺激リードが別の刺激領域を提供する。
【0070】
少なくとも幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、ターゲットNBM760の固有の形状に対処するために、ターゲットのより多くを刺激するために、少なくとも1つの刺激リード12を、典型的な上方から下方ではなく、一般的に又はほぼ(例えば、10度、15度、25度、30度、又は45度以内)側方から中央に向いたリード軌道に沿って埋め込み、ターゲットNBM760の軸に沿って又はそれに隣接してリードの電極134を整列させることができる。このリード軌跡に沿って、単一の電気刺激リード12からのより多くの電極134をターゲットNBM760の一部に近接(横断を含む)させて、以下でより詳細に説明するように循環させることができる複数の刺激領域762を生成することができる。
【0071】
NBMを刺激するために、1本、2本、3本、4本又はそれ以上のリードを含むが、これらに限定されない、何れかの適切な数の電気刺激リード12を使用することができる。複数の電気刺激リード12が使用される場合、上方から下方への軌道(
図7)に埋め込まれた電気刺激リード12及び側方から中央への軌道(
図8)に埋め込まれたリードの何れかの適切な組み合わせが存在することができる。電気刺激リード12は、脳の一方又は両方の半球に埋め込んで、一方又は両方のNBM760を刺激することができる。各半球に対する電気刺激リード12の配置は、同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
電気刺激リード12は、1、2、3、4、又はそれ以上の刺激領域を含むがこれらに限定されない、何れかの適切な数の刺激領域762を生成することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、1又は2以上の電気刺激リード12はセグメント電極122を含む。セグメント電極122の使用は、刺激領域762の指向性の選択を容易にすることができる。
【0073】
刺激領域762に対する電気刺激を生成するために、1又は2以上の電極134を使用することができる。電極は、カソード又はアノード又はこれらの何れかの組み合わせとすることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、IPG14のシールされた電子機器筐体114(又はケースの他の部分)を、単極電気刺激の場合に多い戻り電極として使用することができる。多極性の電気刺激も使用できる。少なくとも幾つかの実施形態において、電気刺激はアノード刺激(例えば、活性電極がアノードである)であり、これはしばしばカソード刺激よりも細胞体の選択的刺激により効果的である。
【0074】
刺激領域762の組み合わせを生成することにより、NBM760の比較的大きな部分又は全てへの効果的な刺激を容易にすることができる。
図7及び
図8に図示した刺激領域762は、刺激パラメータの特定のセットに対する刺激の推定有効領域に対応する。刺激パラメータの例としては、電極の選択、刺激振幅(各電極について独立とすることができる)、パルス周波数、パルス持続時間又は幅等が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも幾つかの実施形態では、
図7及び
図8の刺激領域762は、アルゴリズム的又は手動で決定又は推定することができる。刺激フィールドマップ」(SFM)、「活性化体積」(VOA)、又は「活性化組織体積」(VTA)という用語は、多くの場合、特定の刺激パラメータのセットに対して刺激される組織の推定刺激領域762を指定するために使用される。VOA/SFM/VTAを決定するための何れかの好適な方法は、例えば、米国特許第8,326,433号;第8,675,945号;第8,831,731号;第8,849,632号;及び第8,958,615号;米国特許出願公開第2009/0287272号;第2009/0287273号;第2012/0314924号;第2013/0116744号;第2014/0122379号;第2015/0066111号;第2016/0346557号;第2016/0375248号;第2016/0375258号;第2017/0304633号;第2018/0064930号;第2018/0078776号;第2018/0185650号;第2018/0193655号;第2019/0282820号;第2019/0329049号;第2019/0358458号;第2019/0358461号;及び第2020/0289834号、及び米国仮特許出願第62/030,655号に記載されており、これらは全て、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
少なくとも幾つかの実施形態では、同じ又は異なる電気刺激リードの電極を使用して、これらの刺激領域の組み合わせがターゲットNBM760の多くをカバーできるように、複数の刺激領域762が選択される。何れかの適切な数の刺激領域762が、1、2、3、4、5、6、8、10、12、又はそれ以上の刺激領域を含むが、これらに限定されない刺激領域762を使用することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激領域762は、刺激領域間の重なりを制限又は回避するように選択することもできる。
【0076】
少なくとも幾つかの実施形態において、複数の刺激領域762(例えば、SFM)の選択は、術後のX線撮影、MRI、又は他のイメージング技術、又はこれらの何れかの組み合わせに基づくことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、複数の刺激領域762(例えば、SFM)の選択は、単独で又は術後イメージングと組み合わせて、手術計画に基づくことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、複数の刺激領域762(例えば、SFM)の選択は、オフラインで実行される。
【0077】
少なくとも幾つかの実施形態では、複数の刺激領域762(例えば、SFM)の選択は、複数の刺激領域の同時ディスプレイを可能にするプログラマ又は他のデバイスのユーザインタフェースを使用して手動で行うことができる。少なくとも幾つかの実施形態において、複数の刺激領域762(例えば、SFM)の選択は、例えば、バイナリサーチ、勾配降下サーチ、遺伝的サーチ又は粒子群サーチ等の技法又はこれらの何れかの組み合わせを用いてアルゴリズム的に実行することができる。
【0078】
少なくとも幾つかの実施形態において、刺激領域762は、刺激領域によってカバーされるNBM760の量に基づいて増加するか、又は刺激領域によってカバーされないターゲットNBM760の部分に対してペナルティを課すスコアリング又は他の基準に基づいて選択される。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激領域762は、スコアリング基準が刺激領域間の重なりに対してペナルティを課す。少なくとも幾つかの実施形態では、スコアリング基準は、重複又は非刺激領域に対して重み付けすることができる。スコアリング及びスコアリング基準の例は、例えば、米国特許出願公開第2016/0001080号;第2014/0277284号;第2014/0200633号;第2014/0067022号;第2014/0066999号;第2013/0116929号;第2013/0116748号;第2013/0060305号;及び第2012/0271376号に見出すことができ、これらは全て、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
刺激領域への電気刺激の送達は、振幅、パルス幅、パルス周波数等を超える追加の刺激パラメータを含むことができる。付加的な刺激パラメータの例としては、デューティサイクル比、刺激サイクルの持続時間、刺激期間におけるパルスの総数、刺激期間の持続時間、1日あたりの刺激期間の数等又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。刺激領域への刺激の供給は、周期の一部分の間は刺激し、周期の別の一部分の間は刺激しない一連の周期で説明することができる。デューティサイクル比は、刺激が提供される時間の、刺激が提供されない時間に対する比に等しくすることができる。例えば、60秒のサイクルは、20秒の刺激及び40秒の無刺激を含むことができ、その結果、刺激のデューティサイクル比は1:2となる。サイクルの持続時間は、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、若しくは45秒、又は1分、2分、5分、10分、15分、30分、若しくは60分、或いはそれ以上等を含むが、これらに限定されない何れかの適切な数とすることができる。デューティサイクル比は、1:5~5:1の範囲の比、又は1:3~3:1の範囲の比、又は1:5~1:1の範囲の比を含むが、これらに限定されない何れかの好適な比とすることができる。
【0080】
刺激期間は、複数サイクルの刺激が実行される期間として定義することができる。刺激期間の持続時間は、1、2、5、10、15、30、若しくは45分、又は1、1.25、1.5、1.75、2、2.5、若しくは3時間又はそれ以上を含むがこれらに限定されない何れかの適当な数とすることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激期間の持続時間は、期間の代わりに、又は期間に加えて、パルスの数として定義することができる。刺激期間におけるパルスの数は、何れかの適切な数とすることができ、及び少なくとも幾つかの実施形態では、1,000~100,000の範囲、又は5,000~50,000の範囲、又は10,000~30,000の範囲とすることができる。
【0081】
1日当たりの刺激期間の数は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、又はそれ以上を含むがこれらに限定されない何れかの適切な数とすることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、1日当たりの刺激期間の数又は1日当たりに送達される刺激パルスの数は、「投与量」とみなすことができる。一例として、刺激領域762の1つに対する刺激は、1日当たり1回の刺激期間(1日当たり合計24,000刺激パルス)で60分の刺激期間(すなわち、60サイクル)に対して、60秒サイクルの20秒間(デューティサイクル比が1:2の場合)、20Hzのパルスレートで送達することができる。
【0082】
少なくとも幾つかの実施形態では、刺激領域762は、1サイクル又は刺激期間中に同じ又は同様の時間だけ刺激される。他の実施形態では、異なる刺激領域762に対して異なる量の刺激時間(例えば、サイクル又は刺激期間の異なる時間量)が存在することができる。
【0083】
複数の刺激領域762が刺激される場合、少なくとも幾つかの実施形態では、刺激領域762の各々の刺激は、時間的オフセットを使用して実行することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激の送達をインターリーブすることができる。例えば、1つの刺激領域に続いて別の刺激領域を刺激することができ、及びそのように繰り返すことができる。例えば、60秒周期の間に、第1の刺激領域に20秒間刺激を与え、次に第2の刺激領域に20秒間刺激を与え、次に第3の刺激領域に20秒間刺激を送達する。このように、各刺激領域は1:2のデューティサイクル比で刺激される。この例では、3つの刺激領域間の重なりは、好ましくは比較的小さい又はゼロである。
【0084】
別の例として、サイクルは、第1の60秒サイクルの間、刺激が20秒間第1の刺激領域に送達され、次いで、第2の60秒サイクルの間、刺激が20秒間第2の刺激領域に送達され、次いで、第3の60秒サイクルの間、刺激が20秒間第3の刺激領域に送達されるように、インターリーブすることができる。この例では、各60秒周期のうち40秒は全く刺激がないので、3つの刺激領域間の重なりはあまり重要でないかもしれない。
【0085】
他の実施形態では、少なくとも幾つかの刺激領域762に対する刺激期間が順次実行される。例えば、第1の刺激期間の間、第1の刺激領域が刺激され、次に第2の刺激期間の間、第2の刺激領域が刺激され、次に第3の刺激期間の間、第3の刺激領域が刺激される。例えば、第1の刺激領域を1回の3時間の刺激期間の間刺激し、次いで第2の刺激領域を第2の3時間の刺激期間の間刺激し、次いで第3の刺激領域を第3の刺激期間の間刺激することができる。
【0086】
周期的な刺激がより有益であると考えられるので、これらの配置は、刺激領域762の継続的な刺激を回避する。少なくとも幾つかの実施形態では、1つ以上の刺激領域762を何れかの所与の期間に刺激することができ、及び好ましくは、同時に刺激される刺激領域762は重ならず、より好ましくは、少なくとも0.1~1ミリメートルだけ互いに離間している。
【0087】
少なくとも幾つかの実施形態では、臨床医又は他の介護者によってプログラムされた刺激設定を用いて、刺激の送達を自動的に行うことができる。幾つかの実施形態では、刺激の供給は、患者、臨床医、又は他の介護者によって手動で開始することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激の自動送達は、刺激の手動開始によって補完又は置換することができる。少なくとも幾つかの実施形態において、システムは、患者、臨床医、又は他の介護者による刺激の手動開始を、1日、又は1週間、又は他の定義された期間に送達可能な刺激期間の数に制限することができる。
【0088】
少なくとも幾つかの実施形態では、患者、臨床医、又は他の介護者は、都合のよい時間に外部デバイス(RC16又はCP18等)から治療刺激のボーラスを開始することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激システム10は、患者が単位時間(例えば、日又は週)当たり所定の数のボーラスを開始することのみを可能にするように構成することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激システム10は、IPG12に接続されると、患者が所定の又は適切な数の治療セッションを開始していない場合に警告を反映する外部デバイス(RC16又はCP18等)を含む。少なくとも幾つかの実施形態では、このデータ又は警告は、臨床医又は他の介護者が応答できるように、臨床医又は他の介護者に送信することができる。
【0089】
少なくとも幾つかの実施形態では、システム又は方法は、患者、臨床医又は介護者が刺激を延期する能力を可能にする。少なくとも幾つかの実施形態では、システム(例えば、IPG14、RC16、CP18、又は別のデバイス)は、外部デバイス(例えば、RC16、CP18、携帯電話等)を用いて、刺激が供給されている又は供給されようとしていることを患者、臨床医、又は介護者に警告することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、患者、臨床医又は介護者は、外部デバイスを使用して刺激を延期することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、外部デバイスは、一定期間(例えば、1、2、5、10、15、30、45、若しくは90分、又は1、2、3、4、6、9、12、若しくは18時間、又は1日若しくはそれ以上、或いは他の何れかの適切な期間)刺激を延期することを可能にする少なくとも1つのコントローラを含む。
【0090】
少なくとも幾つかの実施形態において、刺激は、刺激の期間中、患者の記憶又は認知能力に有害な影響を及ぼす可能性がある。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激システム10は、患者が眠っている可能性が高い夜間(又は他の期間)に刺激を送達するようにプログラムすることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激システム10又はIPG12は、時間帯を追跡するように構成され、及び患者が眠っている可能性が高い夜間(又は他の期間)に刺激を送達するようにプログラムすることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、電気刺激システム10又はIPG12は、患者が目覚めているか眠っているかを判定又は推定するために患者の状態に関する情報を提供することができる外部又は埋め込み式センサ40(例えば、心拍数、呼吸、姿勢、加速度計、又はバイオマーカーセンサ)又はセンサ40を含むデバイス(例えば、携帯電話又はフィットネストラッカ)に結合可能とすることができる。IPG12は、IPG又は電気刺激システム10が、患者が眠っていると判定する(又は外部センサ40又はセンサ40を含むデバイスから情報を受信する)場合にのみ刺激を提供するように構成することができる。少なくとも幾つかの実施形態において、IPG12又は電気刺激システム10は、患者の睡眠段階(例えば、レム睡眠)に関する外部デバイスからの情報を決定、推定又は受信し、1又は2以上の選択された又は指定された睡眠段階の間のみ刺激を提供することができる。
【0091】
幾つかの実施形態では、電気刺激システム10又はIPG12は、「昼間」又は「覚醒」刺激パラメータと、「夜間」又は「睡眠」刺激パラメータとで構成することができ、時計又は上述の他のアプローチの何れかを使用して、刺激の期間が開始されたときにどちらを使用すべきかを決定することができる。
【0092】
少なくとも幾つかの実施形態において、記憶又は認知能力に対する有害な影響は、刺激の停止と共に減少し、刺激の停止後、経時的に改善することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激中の患者の記憶又は認知能力に対する有害な影響は、時間の経過とともに減少する。本明細書に記載の方法及びシステムは、特定の理論に依存するものではないが、脳又はNBMは、時間の経過とともに刺激に慣れる可能性があると考えられる。少なくとも幾つかの実施形態では、刺激と同時の認知能力は、馴化期間(1、2、5、7、10、14、15、21、28、30、45、60、90、120、180日又は1、2、3、4、6、8、9、10ヶ月又は1年以上又は他の何れかの適切な期間であってよい)にわたって改善する。馴化期間は、個体間で異なる場合があり、埋め込み部位又は配置によって異なる場合があり、又は刺激パラメータ若しくは刺激量等又はこれらの組み合わせによって異なる場合がある。
【0093】
少なくとも幾つかの実施形態では、システム又は方法は、認知負荷が必要でないと予想される時間帯に最初に刺激を送達するように構成することができる。「認知負荷」という用語は、患者が仕事(専門職又は家庭)、レクリエーション、又は趣味のための作業を行っている期間、運転中、読書中、教育中、学習中、精神集中を必要とする作業の実行中、又はこれらに限定されないが、これらに限定されない期間など、患者が精神能力及びワーキングメモリを積極的に使用している期間を指す。認知負荷が必要でないと予想される場合としては、睡眠、休息、テレビ鑑賞、音楽鑑賞等が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも幾つかの実施形態では、患者、ユーザ、臨床医、プログラマ、又は他の何れかの適切な個人(又は複数の個人)は、認知的負荷を必要としないと予想される活動、又は認知的負荷を必要とする活動、又はこれらの何れかの組み合わせを定義するようにシステムをプログラムすることができる。
【0094】
少なくとも幾つかの実施形態では、システム又は方法のこの動作は、認知的負荷がかかる時間帯に刺激を送達することができるように経時的に変化させることができる。少なくとも幾つかの実施形態において、この変化は、自動的とすることができるか、又は手動で開始され得るか、又は両方のオプションが存在することができる。少なくとも幾つかの実施形態において、変化は、認知負荷の時間中に刺激が送達される時間を増加させながら漸進させることができる。
【0095】
少なくとも幾つかの実施形態において、方法又はシステムは、最初に比較的低いレベルの刺激(例えば、比較的低い振幅、比較的低い持続時間等又はこれらの何れかの組み合わせ)を送達することができる。少なくとも幾つかの実施形態において、比較的低いレベルの刺激は、刺激中の記憶又は認知能力に対する有害な影響を低減又は除去することができる。時間の経過とともに、刺激レベルを増加又は傾斜させることができる。例えば、振幅、持続時間等又はこれらの何れかの組み合わせは、経時的(例えば、1、2、5、7、10、14、15、21、28、30、45、60、90、120、180日又は1、2、3、4、6、8、9、10ヶ月又は1年以上の期間又は他の何れかの適切な期間)に増加又は傾斜させることができる。少なくとも幾つかの実施形態では、最終振幅又は最終持続時間は、初期振幅又は初期持続時間の少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、10倍、15倍又は20倍である。
【0096】
本明細書に記載される方法及びシステムは、特定の理論に依存するものではないが、刺激を増加又はランプアップするこの期間中に、脳が刺激を受けることに慣れることができると考えられる。少なくとも幾つかの実施形態では、増加又はランプのパラメータ(例えば、開始強度又は振幅、終了強度又は振幅、開始持続時間(例えば、開始デイリー持続時間)、終了持続時間(例えば、終了デイリー持続時間)、期間の持続時間、増加又はランプのタイプ-線形、非線形、段階的、指数関数的等、又は何れかの組み合わせ)は、臨床医又は他の個人によって選択又はプログラム可能である。少なくとも幾つかの実施形態において、ランプは、強度の増加、持続時間の増加(例えば、デイリー持続時間の増加)、又はこれらの何れかの組み合わせを含むことができる。
【0097】
少なくとも幾つかの実施形態において、システム又は方法は、刺激が生理学的応答を呼び起こす時を検出するために、1又は2以上のセンサ40(
図1)を含む又は利用することができる。好適なセンサ40の例としては、血流センサ(例えば、埋め込み式又は外部血流センサ)、心電図(ECoG)センサ(例えば、リードが配置された時点で例えば大脳皮質上に埋め込むことができる埋め込み式ECoGセンサ)、脳波(EEG)センサ(例えば、 外付け又は埋め込み式EEGセンサ)、運動センサ(例えば、少なくとも1つの加速度計、ジャイロスコープ、化学物質濃度センサ、酵素活性センサ等又はこれらの組み合わせ)であり、これらは内蔵又は外部デバイス(例えば、携帯電話、時計、運動モニター等)に搭載することができる。ECoG又はEEGセンサは、アルファ波脳活動(例えば、8~12Hzの範囲の脳活動)のような脳活動の変化を検出するために使用することができる。活動量の増減など、活動量の変化を検出するためには、運動センサを用いることができる。
【0098】
少なくとも幾つかの実施形態では、センサ40の測定値は、刺激パラメータを決定又は変更するため、外科的埋め込みを支援するため、又はシステムプログラミングを支援するために使用される。少なくとも幾つかの実施形態において、センサ40の測定値は、患者の治療を調節するために使用される(例えば、あるレベルで生理学的反応を誘発するため、1日当たり又は指定期間当たりある回数生理学的反応を誘発するため、適切な治療を決定又は変更するために反応速度を測定するため、又はこのようなもの又はこれらの何れかの組み合わせ)。
【0099】
少なくとも幾つかの実施形態では、埋め込み式パルス発生器(IPG14など)は、センサ40の測定値を受信し、測定値に基づいて刺激パラメータを決定又は変更し、又は測定値に基づいて療法を変調することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、外部デバイス(RC16、CP18、携帯電話、コンピュータ等、又は何れかの組み合わせ)は、センサの測定値を受信し、測定値に基づいて刺激パラメータを決定又は変更し、又は測定値に基づいて療法を変調し、次いで刺激パラメータ又は変調療法を埋め込み式パルス発生器に伝達することができる。
【0100】
追加的又は代替的に、NBMの光刺激を行うことができる。少なくとも幾つかの実施形態において、NBMへの光の送達は、神経変性を緩和する可能性がある。光又は電気光刺激リードを有する光刺激システム(その少なくとも幾つかは電気刺激も生じ、例えば、電気光刺激システム)は、例えば、米国特許第9,415,154号及び米国特許出願公開第2013/0317573号;第2017/0225007号;第2017/0259078号;第2018/0110971号;第2018/0369606号;第2018/0369608号;第2020/0155854号;及び第2020/0376262号で見出され、これらは全て、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0101】
図9及び
図10は、ターゲットNBM760を刺激する刺激光972を生成する光送達素子970を有する光刺激リード912(又はオプションの電極134を有する
図9の電気光リード)を示す。上述し、及び
図1~
図6に図示した電気刺激構成要素は、上記で引用した参考文献に更に記載されているように、光又は電気光学刺激システムで使用するために使用又は適合させることができる。
【0102】
光送達要素970の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、又は光源(LED又はレーザダイオード等)に結合された光ファイバが挙げられるが、これらに限定されない。
図9において、光送達素子970は、複数の光送達素子の組み合わせとすることができる。
【0103】
限定ではないが、1本、2本、3本、4本又はそれ以上のリードを含む、何れかの適切な数のリード912を用いて、NBMを刺激することができる。複数のリード912が使用される場合、上方から下方への軌道(
図10)に埋め込まれたリード912及び側方から中央への軌道(
図9)に埋め込まれたリードの何れかの好適な組み合わせとすることができる。リード912は、脳の半球の一方又は両方に埋め込んで、一方又は両方のNBM760を刺激することができる。各半球に対するリード912の配置は、同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
少なくとも幾つかの実施形態では、1又は2以上の光送達素子970による照明領域は、電気刺激のための刺激領域762に類似していると考えることができる。電気刺激について上述した特徴、追加パラメータ、及び他の選択肢及び考慮事項の全てを、光刺激に適用することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、光刺激は、1刺激期間当たり1分、2分、5分、10分、15分、30分、60分、又はそれ以上の持続時間(又は他の何れかの好適な持続時間)の間、1日当たり1又は2以上の刺激期間で送達することができる。
【0105】
何れかの適切な波長、波長範囲、又は波長の組み合わせが、光送達素子970によって放出することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、リード912は、異なる波長の光を放出する又は複数の波長の光を送達することができる光送達要素970を含むことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、リード912の光送達素子970の少なくとも1つは、600~850nmの範囲又は620~720nmの範囲の少なくとも1つの波長を有する光を放出することができる。
【0106】
少なくとも幾つかの実施形態では、システムは、同じ又は異なるリードを用いて光刺激及び電気刺激の両方を与えるように構成される。例えば、リード12及びリード912の何れかの組み合わせを使用することができ、及びリード軌道の何れかの組み合わせを使用することができる。
【0107】
少なくとも幾つかの実施形態では、電気光学刺激リードは、電極134及び光送達要素970の両方を含むことができる。このようなリードの例は、上で引用した文献に記載されている。少なくとも幾つかの実施形態では、電極12及び光送達要素912は共に、共通の埋め込み式電源(例えば、
図6の電源612)によって給電される。他の実施形態では、電極及び光送達要素は、異なる埋め込み可能電源に結合された異なるリードを用いて送達される。埋め込み式電源は、充電可能又は非充電可能とすることができる。
【0108】
少なくとも幾つかの実施形態において、電源、光又は複合刺激システムは、高周波エネルギー又は他の外部エネルギー源(例えば、超音波)を介して経皮的に電力供給される。
【0109】
図11は、NBMを刺激する方法の一実施形態のフローチャートである。NBMを刺激する目的は、Achの産生又は送達を増加させること、NBMのニューロンの変性を遅らせるか又は停止させること、又はこのようなこと、又はこれらの何れかの組み合わせとすることができる。ステップ1102では、1又は2以上の電気刺激リード、光刺激リード、電気-光刺激リード、又はこれらの何れかの組み合わせが、NBM内又はその近傍に埋め込まれる。例えば、少なくとも1又は2以上の電極がNBM内又はその近傍に配置されるように、電気刺激リード又は電気光学刺激リードを患者の脳に埋め込むことができる。別の例として、光送達素子の少なくとも1又は2以上がNBM内又はその近傍に配置されるように、光刺激リード又は電気光刺激リードを患者の脳に埋め込むことができる。埋め込み後、プログラミングプロセスを用いて、上述したような治療のための刺激パラメータのセットを決定することができる。IPGも埋め込むことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、IPGは、リード、又はリードに結合されたリード延長部が皮膚の下をIPGまで延びた状態で胴体に埋め込まれる。少なくとも幾つかの実施形態では、リードは代わりにETS又は他の外部刺激器に結合することができる。
【0110】
ステップ1104において、電気刺激/光刺激がリードを通して供給され、設定された刺激パラメータを用いてNBMを刺激する。電気的/光学的刺激の方法、考慮事項、及び例は上述したとおりである。
【0111】
1つの態様は、患者の脳に側方中央軌道で電気刺激リードを埋め込み、電気刺激リードが電極を含み、電極の少なくとも1つが患者のNBMに隣接して又はNBM内に配置され;及び電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達することを含む、マイネルト基底核(NBM)を刺激する方法である。
【0112】
少なくとも幾つかの態様において、本方法は、電気刺激リードの少なくとも1つの光送達要素を使用してNBMに光刺激を送達することを更に含む。少なくとも幾つかの態様において、本方法は、患者の脳に光刺激リードを埋め込むことを更に含み、光刺激リードは、患者のNBMに隣接して又はNBM内に配置された少なくとも1つの光送達要素を含み、少なくとも1つの光送達要素の少なくとも1つを通してNBMに光刺激を送達する。
【0113】
別の態様は、複数の電気刺激リードを患者の脳に埋め込み、電気刺激リードの各々が複数の電極を含み、電気刺激リードの各々の電極の少なくとも1つが患者のNBMに隣接又はその中に配置されることを含む、マイネルト基底核(NBM)を刺激する方法である; 及び、NBMの複数の異なる刺激領域の各々に対して、電極の少なくとも1つを通して電気刺激を送達し、ここで、刺激領域の少なくとも幾つかに対する電気刺激の送達は、インターリーブ又は連続的である。
【0114】
少なくとも幾つかの態様において、埋め込みは、電気刺激リードの少なくとも1つを上方から下方への軌道で埋め込むことを含む。少なくとも幾つかの態様において、埋め込みは、電気刺激リードの少なくとも1つを側方から中央軌道で埋め込むことを含む。
【0115】
更に別の態様は、a)少なくとも1つの電気-光刺激リードを患者の脳に埋め込むか、又はb)少なくとも1つの電気刺激リード及び少なくとも1つの光刺激リードの何れかを患者の脳に埋め込むことを含む、マイネルト基底核(NBM)を刺激する方法であり、ここで、各電気刺激リード又は電気光学刺激リードは、少なくとも1つの電極を含み、少なくとも1つの電極のうちの少なくとも1つは、患者のNBMに隣接して又はNBM内に配置され、各光刺激リード又は電気光学刺激リードは、少なくとも1つの光送達素子を含み、少なくとも1つの光送達素子のうちの少なくとも1つは、患者のNBMに隣接して又はNBM内に配置され、本方法は更に、電極の少なくとも1つを通してNBMに電気刺激を送達すること、及び少なくとも1つの光送達素子の少なくとも1つを通してNBMに光刺激を送達することを含む。
【0116】
少なくとも幾つかの態様において、埋め込むことは、少なくとも1つの電気-光刺激リード又は少なくとも1つの光刺激リードの少なくとも一方を上方から下方への軌道で埋め込むことを含む。少なくとも幾つかの態様において、埋め込みは、少なくとも1つの電気光学刺激リード又は少なくとも1つの光刺激リードの少なくとも一方を、側方か中央への軌道で埋め込むことを含む。
【0117】
少なくとも幾つかの態様において、電気的又は光学的刺激を送達することは、NBMのニューロンを刺激して1又は2以上のアセチルコリンを送達するため、又はNBMのニューロンが大脳皮質へのアセチルコリンの送達を含むニューロンの機能を果たすことができるようにNBMのニューロンの生存を支援するために、電気的又は光学的刺激をNBMに送達することを含む。少なくとも幾つかの態様において、電気又は電気光学刺激リードの電極は、電気又は電気光学刺激リードの外周に配置された少なくともセグメント電極のセットを含む。
【0118】
少なくとも幾つかの態様において、電気刺激を送達することは、異なる期間においてNBMの複数の刺激領域に電気刺激を送達することを含む。少なくとも幾つかの態様において、本方法は、各刺激領域がNBMの一部をカバーするように複数の刺激領域を選択することを更に含む。少なくとも幾つかの態様において、選択することは、NBMをより多くカバーすることを促進し、刺激領域の重複にペナルティを科すスコアリング基準を用いて複数の刺激領域を選択することを含む。少なくとも幾つかの態様において、本方法は更に、刺激領域の各々を、刺激パラメータの特定のセットに対する刺激の有効領域の推定体積としてアルゴリズム的に決定することを含む。
【0119】
少なくとも幾つかの態様において、電気刺激を送達することは、NBMにアノード刺激を送達することを含む。
【0120】
少なくとも幾つかの態様において、電気的又は光学的刺激を送達することは、患者が眠っていると推定されるときに電気的又は光学的刺激を送達することを含む。少なくとも幾つかの態様において、患者が眠っていると推定されるときに電気刺激又は光刺激を送達することは、電気刺激リード又は光刺激リード又は埋め込み式パルス発生器に連結された埋め込み式パルス発生器内の時計又は電気刺激リード又は光刺激リード又は埋め込み式パルス発生器と通信する外部デバイス内の時計に基づいて、患者が眠っていると推定することを含む。少なくとも幾つかの態様において、患者が眠っていると推定されるときに電気刺激又は光刺激を送達することは、電気刺激リード又は光刺激リードに結合された埋め込み式パルス発生器と通信している外部センサ又は外部デバイスからの測定値又は指示に基づいて、患者が眠っていると推定することを含む。
【0121】
少なくとも幾つかの態様において、電気刺激を送達することは、患者又は他の者が送達を指示したときに電気刺激又は光刺激を送達することを含む。
【0122】
フローチャート図の各ブロック、及び本明細書に開示されたフローチャート図及び方法のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施できることが理解されるであろう。加えて、特徴抽出エンジン、記憶エンジン、視覚化エンジン、及び記憶プログラミングエンジンは、コンピュータプログラム命令によって実施することができる。これらのプログラム命令は、プロセッサ上で実行される命令が、本明細書に開示されるフローチャートブロック又はブロック又はエンジンで指定される動作を実施するための手段を作成するように、機械又はエンジンを生成するためにプロセッサに提供することができる。コンピュータプログラム命令は、プロセッサによって実行され、一連の動作ステップをプロセッサに実行させて、コンピュータ実装プロセスを生成させることができる。また、コンピュータプログラム命令は、動作ステップの少なくとも幾つかを並行して実行させることもできる。更に、ステップの幾つかは、マルチプロセッサコンピューティングデバイスにおいて生じ得るように、1つ以上のプロセッサにまたがって実行されることもある。加えて、1又は2以上のプロセスは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のプロセスと同時に、又は図示とは異なる順序で実行することもできる。
【0123】
コンピュータプログラム命令は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(「DVD」)若しくは他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ若しくは他の磁気ストレージデバイス、又は所望の情報を格納するために使用することができ、コンピューティングデバイスによってアクセスすることができる他の媒体を含むが、これらに限定されない、何れかの適切なコンピュータ読み取り可能媒体に格納することができる。コンピュータプログラム命令は、ローカル又は非ローカル(例えば、クラウド)に格納することができる。
【0124】
上記の明細書及び実施例は、本発明の構成及び使用の説明を提供する。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの実施形態を作ることができるので、本発明はまた、添付の特許請求の範囲に存する。
【符号の説明】
【0125】
10 電気刺激システム
12 刺激リード
14 埋め込み式パルス発生器(IPG)
16 外部リモコン(RC)
20 外部試験刺激器(ETS)
22 充電器
24 リード延長部
28 経皮リード延長部
30 外部ケーブル
40 センサ
【国際調査報告】