(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】環状テトラペプチドおよびそれらの金属錯体
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20240220BHJP
C07K 5/12 20060101ALI20240220BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240220BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20240220BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20240220BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240220BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240220BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20240220BHJP
C07D 403/06 20060101ALI20240220BHJP
C07F 7/24 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C07D257/02
C07K5/12 ZNA
A61K49/00
A61K51/04 200
A61K49/10
A61K31/395
A61P39/02
C09K3/00 108D
C07D403/14
C07D403/06
C07F7/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533353
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2021084278
(87)【国際公開番号】W WO2022117877
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショシャン、ミカル
(72)【発明者】
【氏名】タグワ、モハメド
【テーマコード(参考)】
4C063
4C085
4C086
4H045
4H049
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063AA03
4C063BB03
4C063CC47
4C063DD25
4C063EE01
4C085HH03
4C085HH07
4C085HH13
4C085KA09
4C085KA28
4C085KA29
4C085KB56
4C085LL20
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC58
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC37
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA35
4H045BA50
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA10
4H049VN04
4H049VP01
4H049VQ59
4H049VU31
4H049VW02
(57)【要約】
本発明は、交互にα-アミノ酸およびβ-アミノ酸からなる環状テトラペプチドならびにその金属錯体を提供する。環状テトラペプチドは、特にPb、Cd、HgおよびAsから選択される金属に配位するために有用である。さらに、本発明は、疾患、特に金属中毒、を治療することにおける環状テトラペプチドの使用、汚染された水および土壌のレメディエーションにおける使用を包含する。また、種々の基質における上記金属を検出するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、特に式Ia:
【化1】
(式中、
任意の他のRから独立して各Rは、-CH
3および-Hから独立して選択され、
R
A1およびR
A2は、互いに独立して、C
1-4-アルキルまたはフェニルであり、ここで、C
1-4-アルキルまたはフェニルは、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2、-NH-C(=NH)(NH
2)、5~10員複素環、3~10個、特に3~6個、の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数の置換基により置換されており、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、(=O)、-COOH、-NH
2、-CONH
2から選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され得る、
R
B1およびR
B2は、互いに独立して
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される、または
・検出マーカーまたは固体支持体に結合するために適切なリンカー、
・任意にはリンカーにより連結される、検出マーカー、または
・固体支持体に結合したリンカー
である)
の化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式2、3、4、5、6または7、特に式2、5、6または7、より特には式2
【化2】
の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
A1およびR
A2は、互いに独立して、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2、5~10員複素環、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数、特に1つまたは2つ、の置換基により置換された、C
1-4-アルキル、特にC
1-3アルキル、より特にはC
1-2アルキルであり、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、C
1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、(=O)、-COOH、-NH
2、-CONH
2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R
A1およびR
A2での環状炭化水素部分が、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから選択され、特にフェニルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
A1およびR
A2は、互いに独立して、-SH、-S-CH
3、-SeH、-Se-CH
3、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、インドリルおよびフェニルから独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C
1-3アルキル、特にC
1-2アルキルであり、ここで、該フェニルは、-SHおよび-SeH、特に-SHから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R
A1およびR
A2は、-CH
2-SH、-(CH
2)
2-SH、-CH
2-S-CH
3、-(CH
2)
2-S-CH
3、-CH(SH)(-CH
2-SH)、-CH
2-CH(SH)(-CH
2-SH)、-CH(SH)(-COOH)、-CH(SH)-CH
2-COOH、-CH
2-CH(SH)(-COOH)、-フェニル-SH、-CH
2-SO
3H、-(CH
2)
2-SO
3H-CH
2-COOH、-(CH
2)
2-COOH、-CH
2-NH
2、-(CH
2)
2-NH
2、-CH
2-CONH
2、-(CH
2)
2-CONH
2、-CH
2-イミダゾリル、-CH
2-メルカプトイミダゾリルおよび-CH
2-フェニルから独立して選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
B1およびR
B2は、
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分であって、ここで、該5~10員複素環または該炭化水素部分は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される、部分
から独立して選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R
B1およびR
B2は、
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3H、5~10員複素環、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはC
1-8アルキルから選択される部分であって、ここで、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはC
1-8アルキルは、-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される、部分
から独立して選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R
B1およびR
B2は、-H、-C
3-6-アルキル、特に-CH
2-CH(CH
3)
2、-CH
2-フェニル、-SH、-(CH
2)
m-SH、-(CH
2)
m-COOHおよび-(CH
2)
r-CONHから独立して選択され、mおよびrは0、1、2または3である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R
A1およびR
A2でのおよび/またはR
B1およびR
B2でのヘテロシクリルが、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、特にイミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、オキサゾロニル、インドリル、メルカプトプリニル、ベンゾチオフェニルから選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R
A1およびR
A2が同じであり、および/またはR
B1およびR
B2が同じである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
検出可能マーカーが、染料、アフィニティタグ、磁気ビーズおよび放射性同位体を含む部分から選択され、および/または
リンカーが、最大50個のC原子を含む炭化水素部分であり、ここで1個または複数個のC原子がO、SまたはNにより任意に置き換えられ得る、および/または
固体支持体が、樹脂、ビーズ、電極表面または反応容器の底/壁である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
配位子および金属、特にPb、As、CdおよびHgから選択される金属、からなる金属錯体であって、配位子が請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物である金属錯体。
【請求項14】
疾患の治療、特に金属中毒の治療、より特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒の治療、における、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
基質、特に土壌または水溶液もしくは水性懸濁液から/基質、特に土壌または水溶液もしくは水性懸濁液中の、金属、特にPb、As、CdおよびHgから選択される金属、より特にPb、を除去および/または検出する方法であって、方法が請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物を用いることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状テトラペプチドおよびそれらの金属錯体に関する。環状テトラペプチドは、Pb、As、CdおよびHg等の金属を配位するのに適している。本発明はさらに、疾患、特に金属中毒、の治療における、および該疾患の診断における、環状テトラペプチドの使用に関する。また、汚染された土壌や水などの物質に環状テトラペプチド適用することにより上記金属を除去または検出するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
鉛(Pb)、ヒ素(As)、水銀(Hg)およびカドミウム(Cd)などの有毒金属は、生存生物の生態系および健康に危険を及ぼす汚染された土壌または水において見出すことができる。例えば、有毒金属は、汚染された飲料水を介して人体に入る可能性がある。さらに、金属は食物連鎖において農作物や動物に蓄積され得、したがって、ヒトにより摂取され得る。
【0003】
鉛(Pb)は、非必須要素であり、ヒトの健康に最も有害であるとみなされる有毒金属である。Pb中毒は、世界中で年間100万件もの死者を出している。驚くべきことに、子どもの3人に1人はPb中毒であり、アメリカ合衆国でさえ、3%を超える子どもが危険なPb血中濃度であることが分かっている。
【0004】
Pbの毒性の分子的機序は様々であり、かつ細胞過程および臓器機能の両方への干渉を含む。生理学的条件のもと、Pbは、種々のタンパク質、主にシステイン(Cys)のチオールおよびアスパラギン酸(Asp)またはグルタミン酸(Glu)のと相互作用するPb2+としてそのカチオン性の状態で優先的に見出される。この強固な金属結合は、酵素のコンフォメーションを変えて機能を低下させる。Pb2+はまた、金属タンパク質におけるいくつかの必須金属イオン、主にカルシウム(Ca)および亜鉛(Zn)イオン、を置換し、タンパク質の機能障害を引き起こす。
【0005】
取り込み後、Pb2+は軟組織に分布し、肝臓および腎臓で最も高い蓄積レベルを示す。そのCa2+と同様のイオン半径により、Pb2+は血液脳関門を通過することができ、結果として脳に蓄積する。最終的には、Pbの相当なフラクションが石灰化組織に貯蔵され、そして妊娠期間中血液に放出され、胎盤を横切る間の胎児への暴露源となる。
【0006】
キレート療法は、Pb中毒に対する最新の治療である。それはキレート化剤(CA)と呼ばれる薬物を投与することに基づくものであり、そのキレート化剤は、理想的にはいくつかの必須の特徴:(a)CAおよび形成される錯体の低い毒性、(b)個々の金属イオンに対する選択性、(c)水溶性、(d)除去可能な錯体の形成、および(e)細胞および組織を透過する能力、を有すべきである。Pb中毒に対して使用されるCAは、優先的にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびジメルカプトコハク酸(DMSA;
図1)である。
【0007】
これらの低分子薬は、上述した要件のいくつかを達成する。だが、Pb中毒に対する一時治療であるにもかかわらず、それらは重大な欠点、主に必須金属を治療中に体内から枯渇させる結果となる低い金属選択性を有し、これは薬物毒性を増加させる。さらに、EDTAは細胞膜を横切ることができず、その用途は細胞外の標的に限定される。それらは、Pb2+イオンを脳に再分配する疑いもある。結果として、これらのキレーターは、証明済みの極端に高い毒性金属レベルにおける医療用としてのみ承認されている。しかしながら、批判的に、それらは妊婦への使用は承認されておらず、まれな小児の症例のみに承認されている、たとえこれらのセグメントが最も影響を受ける集団の一つであるにもかかわらず。
【0008】
上記の先端技術に基づき、本発明の目的は、金属中毒の治療、およびその診断における手段および方法、ならびに汚染された水または土壌などの基質から金属を検出および除去するための手段および方法を提供することである。この目的は、本出願の独立請求項の構成要件により、また従属請求項、実施例、図面および本明細書の一般的な記載に説明されたさらなる有利な態様で達成される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様は、式I、特に式Ia:
【化1】
(式中、
任意の他のRから独立して各Rは、-CH
3および-Hから独立して選択され、
R
A1およびR
A2は、互いに独立して、C
1-4-アルキルまたはフェニルであり、ここで、C
1-4-アルキルまたはフェニルは、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2、-NHC(=NH)(NH
2)、5~10員複素環、3~10個、特に3~6個、の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数の置換基により置換されており、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、C
1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、(=O)、-COOH、-NH
2、-CONH
2から選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され得る、
R
B1およびR
B2は、互いに独立して
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される、または
・検出マーカーまたは固体支持体に結合するために適切なリンカー、
・任意にはリンカーにより連結される、検出マーカー、または
・固体支持体に結合したリンカー
である)
の化合物に関する。
【0010】
式1の化合物は、2つのα-アミノ酸および2つのβ-アミノ酸からなる環状テトラペプチドである。アミノ酸は、頭尾環化を形成し、代替的には、環状-[Xaa-βXaa-Xaa-βXaa](配列番号012)(式中、Xaaはα-アミノ酸を示し、βXaaはβ-アミノ酸を示す)により表され得る。
【0011】
環状テトラペプチドは金属と結合するのに適している。Pb2+などの毒性金属と人間にとって必須である他のイオンとの間の区別は、形成されるキャビティーとRAおよびRBでの金属結合基の数と選択の組み合わせによって達成される。
【0012】
α-アミノ酸のRA1およびRA2は金属結合に寄与する。特に、Pbの結合については、RA1およびRA2は各々、ソフトまたは中間の結合部分を含む。そのような部分の非限定的な例は、チオールまたはカルボン酸部分、例えばシステインのチオール部分またはアスパラギン酸のβ-カルボン酸部分である。
【0013】
β-アミノ酸のRB1およびRB2は、金属結合に寄与する、水溶性を媒介する、合成において環化を促進する、および環構造と金属錯体を安定化するなどの様々な機能を満たし得る。
【0014】
β-アラニンがβXaaとして使用される、すなわちRBがHである場合、合成中の分子内環化が促進され、環状テトラペプチドの環構造の安定性が強化される。
【0015】
環状テトラペプチドの水溶性は、アルコール、アミド、カルボン酸または一級アミンなどの官能基を含む部分RBを使用することにより増大され得る。
【0016】
金属結合アフィニティーの増強は、追加の配位部位により、または好適なRBにより提供される第二配位圏により達成され得る。また、選択性は、立体制御により改善され得る。例えば、RB1および/またはRB2での脂肪族または芳香族残基によりHgなどのより小さな金属イオンとの錯体形成が可能となる。
【0017】
環状テトラペプチドのさらなる機能化は、RB1および/またはRB2での、リンカー、固体支持体に結合されたリンカー、または検出可能なマーカーにより達成され得る。そのような環状テトラペプチドは、金属中毒の診断、水または土壌などの基質の汚染の度合いを決定すること、または金属汚染された土壌または水のレメディエーションに使用され得る。
【0018】
本発明の第2の態様は、配位子および金属からなる金属錯体であって、配位子が本発明の第1の態様に係る化合物である金属錯体に関する。
【0019】
上述したように、本発明の第1の態様に係る化合物は、RAおよびRBでの好適な部分を介して金属に結合し得る。例えば、チオールおよび/またはカルボン酸部分がその脱プロトン化された形態でPb2+と錯体を形成し得る。金属錯体は、ただ1つの配位子(単量体錯体)または2つの配位子(二量体錯体)を含み得る。
【0020】
本発明の第3の態様は、疾患の治療における本発明の第1の態様に係る化合物の使用に関する。
【0021】
本発明の第4の態様は、金属中毒の治療における本発明の第1の態様に係る化合物の使用に関する。
【0022】
別の実施態様では、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の少なくとも1つ、および少なくとも1つの、薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の第5の態様は、患者が金属中毒であるか、または金属中毒を発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
a.患者から採取されたエクソビボの血液、血漿または血清試料において本発明の第1の態様に係る化合物を用いて金属のレベルを決定すること、および
b.金属の濃度の統計学的有意性を立証すること
を含む方法に関する。
【0024】
特に、RBで、任意にはリンカーによって結合された、検出可能なマーカーを含む本発明の第1の態様に係る化合物は、試料中の金属の量を決定するために適している。
【0025】
本発明の第6の態様は、基質から金属を除去する方法であって、本発明の第1の態様に係る化合物を用いることを含む、方法に関する。
【0026】
上述のように、Pbなどの金属によって汚染されている土壌および水をレメディエートする一定の需要がある。
【0027】
本発明の第7の態様は、基質中の金属を検出する方法であって、本発明の第1の態様に係る化合物を用いることを含む、方法に関する。
【0028】
特に、RBで、任意にはリンカーによって結合された、検出可能なマーカーを含む本発明の第1の態様に係る化合物は、汚染された水または土壌などの基質中の金属、例えばPbの検出に適している。
【0029】
用語および定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、適切である限り、単数で使用される用語は、複数も含むものであり、逆もまたしかりである。下記に設定されるあらゆる定義は、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合は、その設定された定義は制御される。
【0030】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」および「包含する(including)」、および他の同様の形態、およびそれらの文法的等価物は、本明細書において使用される場合、意味において等価であるべきこと、およびこれらの単語の先にある項目または複数の項目は、そのような項目または複数の項目の限定列挙であることを意味するものではなく、挙げられた項目または複数の項目のみに限定されるべきことを意味するものでもないという点において非限定的であるべきことを意図される。例えば、成分A、B、およびCを「含む」項目は、成分A、B、およびCからなる(すなわち、のみを含有する)ことができ、または成分A、B、およびCのみならず1つまたは複数の他の成分も含有することができる。そのため、「含む」およびその同様の形態、およびそれらの文法的等価物は、「本質的にからなる」または「からなる」の態様の開示を包含することが意図されかつ理解される。
【0031】
値の範囲が与えられる場合、文脈により明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限および下限と、その他の定められた値または間にある値との間の、下限の単位の10分の1までの間にある各値は、定められた範囲内で具体的に除外される制限にしたがって、本開示に包含されることが理解される。定められた範囲が限界の1つまたは両方を包含する場合、限界に含まれるそれらのいずれかまたは両方を排除する範囲も本開示に包含される。
【0032】
本明細書における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータそれ自体に向けられるバリエーションを包含する(および説明する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を包含する。
【0033】
「a」、「or」、および「the」は、文脈により明確に別段の指示がない限り、複数の指示物を含む。
【0034】
特段の断りがない限り、本明細書に使用されるすべての技術的および科学的用語は、本技術分野における(例えば、細胞培養物、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学における)当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技術は、分子学的、遺伝学的および生化学的手法(通常、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed. (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. および Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (2002) 5th Ed, John Wiley & Sons, Inc. 参照)および科学的手法のために使用される。
【0035】
用語「テトラペプチド」は、本明細書の文脈において、アミノ酸がペプチド結合によって結合されている直鎖を形成する4つのアミノ酸からなる分子を示す。テトラペプチドは、2つのα-アミノ酸および2つのβ-アミノ酸を含む。
【0036】
用語「環状テトラペプチド」は、上述のテトラペプチドであって、アミノ酸が式1に表される頭尾環状を形成するテトラペプチドを示す。
【0037】
アミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシル末端へ与えられる。配列位置に対して大文字が1文字コードでL-アミノ酸に向けられる(Stryer, Biochemistry, 3rd ed. p. 21)。アミノ酸配列位置に対する小文字はまたはアミノ酸名またはアミノ酸コードの前に記載された「D」は、対応するD-または(2R)-アミノ酸を指す。配列は左から右へとアミノ末端からカルボキシル末端への方向で書かれる。標準的な命名法にしたがい、α-アミノ酸残基配列は、以下に示すように、3文字または1文字コードのいずれかで命名される。アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、およびバリン(Val、V)。3文字または1文字コードはまた、対応するα-アミノ酸の残基と同一のβ-炭素の残基を含むβアミノ酸については、ギリシャ文字「β」の後に使用され、例えば「β-Ala」または「βAla」はβ-アミノ酸、β-アラニンを示す。側鎖における追加のメチレン橋(-CH2-)により相違するα-アミノ酸またはβ-アミノ酸のホモログは、「ホモ」アミノ酸、例えばホモシステインと称される。「ホモ」はまた、「h」と略され、例えばhCysはα-アミノ酸ホモシステインを示し、「βhGlu」はβ-ホモグルタミン酸を示す。
【0038】
本発明の文脈において、用語「5~10員ヘテロシクリル」は、5~10個の炭素原子からなり、1個または複数個の炭素原子がヘテロ原子N、SまたはO、特にNにより置換されている化合物に関する。同様に、「5~6員ヘテロシクリル」は5~6個の炭素原子からなり、1個または複数個の炭素原子がヘテロ原子N、SまたはO、特にNにより置換されている。炭素原子および1個または複数個のヘテロ原子は、単結合および/または二重結合により結合し、環構造を形成する。環構造は単環または二環であり得る。
【0039】
用語「3~10個の炭素原子を含む炭化水素部分」は、炭素-炭素単結合、二重結合および/または三重結合、特に炭素-炭素単結合および/または炭素-炭素二重結合を含む炭化水素部分に関する。炭素原子は、直鎖、分岐鎖または環状構造またはその組み合わせを形成し得る。
【0040】
用語、アルキルは、直鎖または分岐鎖炭化水素部分に関する。本明細書の文脈においてC1-4-アルキルは、1、2、3または4個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐鎖炭化水素に関する。同様に、C1-3-アルキルは、3個までの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖炭化水素に関する。C1-4-アルキルの非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、2-メチルプロピル、tert-ブチルを含む。ある実施態様においては、C1-4-アルキルは、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル(iPr)、n-ブチル(Bu)およびtertブチル(tBu)を指す。
【0041】
用語、環状炭化水素部分は、炭素-炭素単結合、二重結合および/または三重結合、特に炭素-炭素単結合および/または炭素-炭素二重結合を含む、単環式または多環式炭化水素部分に関する。多環式炭化水素部分の環構造は、架橋、融合またはスピロ環であり得る。環状炭化水素部分の非限定的な例は、アリル、例えばフェニル、およびシクロアルキル、例えばシクロヘキシルである。
【0042】
本明細書の文脈において、用語、C5-6-シクロアルキルは、5または6個の炭素原子を有する飽和炭化水素環に関する。
【0043】
本明細書の文脈において、用語、蛍光染料は、可視または近赤外線スペクトルにおいて蛍光発光可能な低分子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】Pb中毒に対するベンチマーク薬としてのDMSAおよびEDTAを示す図である。
【
図2a】120mMのDH 5α細胞(10当量)におけるインビボでの最も高い投与濃度でベンチマーク薬およびグルタチオン(GSH)と比較した試験ペプチドの解毒能力を示す図である。値は、各三重で行われた3回より多くの繰り返しの平均+SDである。
【
図2b】10mMのHT-29細胞(5当量)におけるインビトロでの最も高い投与濃度でベンチマーク薬およびグルタチオン(GSH)と比較した試験ペプチドの解毒能力を示す図である。値は、各三重で行われた3回より多くの繰り返しの平均+SDである。
【
図2c】8および2つの薬物のHT-29細胞における濃度依存的解毒能力を示す図である。値は、各三重で行われた3回より多くの繰り返しの平均+SDである。
【
図2d】Ca塩対Na塩として、EDTAおよび8のHT-29細胞における濃度依存的解毒能力を示す図である。値は、各三重で行われた3回より多くの繰り返しの平均+SDである。
【
図2e】8および2つの薬物のHT-29細胞における毒性を示す図である。値は、各三重で行われた3回より多くの繰り返しの平均+SDである。
【
図3a】Pbおよび単量体配位子として環状[Cys-βAla-Asp-βAla]からなる金属錯体を示す図である。
【
図3b】Pbおよび二量体配位子として環状[Cys-βAla-Asp-βAla]からなる金属錯体を示す図である。
【
図4】Pb(NO
3)
2(2mM)、その後Na
28a、CaNa
2EDTA、およびNa
2DMSAで処置した(Pb
2+イオンの添加の1時間後;値は、陰性対照としてPb
2+イオンで中毒とした細胞に対して計算した。)HT-29細胞の用量依存的回復を示す図である。
【
図5a】試験終了日(18日目)に採取し、ICP-MSで分析した、1グループ8匹のマウスの平均血中鉛濃度(BLL)を示す図である。
【
図5b】試験終了日(18日目)に採取し、ICP-MSで分析した、1グループ8匹のマウス(40匹のうち34匹のみ)の尿中Pbを示す図である。
【
図6】ポリスチレンテンタゲル樹脂(polystyrene tentagel resin)に連結されたペプチド1f(R=SH)および8f(R=COOH)を示す図である。
【
図7】ICP-MSにより検出され、陰性対照0fと2つの固定化ペプチド1fおよび8fとの間において、2つのろ過ラウンド(暗いグレー)およびEDTAによる1つの再生ラウンド(明るいグレー)の、元の溶液と比較して計算されたPb濃度を示す図である。
【
図8】ICP-MSにより検出され、0f(黒色棒)、1f(明るいグレー棒)および8f(中間グレー棒)(すべての塩溶液は25mMである。)の、等モルのZnCl
2+Pb(NO
3)
2溶液およびCaCl
2+Pb(NO
3)
2溶液ならびにPb(NO
3)
2を打ち込んだヒト血清の元の溶液と比較して計算したPb濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の第1の態様は、式I、特に式Ia:
【化2】
(式中、
任意の他のRから独立して各Rは、-CH
3および-Hから独立して選択され、
R
A1およびR
A2は、互いに独立して、C
1-4-アルキルまたはフェニルであり、ここで、C
1-4-アルキルまたはフェニルは、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2、-NHC(=NH)(NH
2)、5~10員複素環、3~10個、特に3~6個、の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数の置換基により置換されており、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、-C
1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、(=O)、-COOH、-NH
2、-CONH
2、特に-C
1-4-アルキル、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-SO
3H、-COOH、-NH
2、-CONH
2から選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され得る、
R
B1およびR
B2は、互いに独立して
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C
1-4-アルキル、-SeH、-Se-C
1-4-アルキル、-COOH、-NH
2、-NH-C
1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH
2)、-CONH
2、-SO
3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される、または
・検出マーカーまたは固体支持体に結合するために適切なリンカー、
・任意にはリンカーにより連結される、検出マーカー、または
・固体支持体に結合したリンカー
である)
の化合物に関する。
【0046】
ある実施態様においては、少なくとも1つのRがHであり、かつ他のRが-CH3である。
【0047】
ある実施態様においては、少なくとも2つのRがHであり、かつ他のRが-CH3である。
【0048】
ある実施態様においては、少なくとも3つのRがHであり、かつ他のRが-CH3である。
【0049】
ある実施態様においては、部分RA1およびRA2の少なくとも1つは、ヘテロ原子S、NまたはO、特にSを含む。式1の化合物が金属を結合するために使用される場合、RAのヘテロ原子が、Pb、Hg、AsおよびCdなどの金属、特にPbとの結合を形成する。Pb、Hg、AsおよびCd、特にPb、の結合は、セリンの側鎖におけるようなヒドロキシル部分によっては達成されない可能性がある。したがって、α-セリンは好適なRAを提供するための好適なアミノ酸ではない。しかしながら、β-セリンはまだ、環状テトラペプチドの水溶性を増強させる部分RBを提供するために使用される可能性がある。
【0050】
ある実施態様においては、化合物は、式2、3、4、5、6または7、特に式2a、3a、4a、5a、6aまたは7aの化合物である。
【化3】
【0051】
環状テトラペプチドは、L-またはD-アミノ酸またはその混合物から形成され得る。経済的な理由から、特にL-アミノ酸が、それらが対応するD-アミノ酸よりも通常安いため使用される。
【0052】
安定な金属錯体形成のため、金属結合部分RA1およびRA2は、特に、その好ましい固有の片側に向けられた配置(hemidirected geometry)でPb2+を捕捉するために、同じ方向に向けるべきである。
【0053】
ある実施態様においては、環状テトラペプチドのα-アミノ酸は、両方ともL-アミノ酸であるか、または両方ともD-アミノ酸であり、特に両方ともL-アミノ酸である。これは、RA1およびRA2が両方ともにアップウェッジボンド(up-wedge bond)によりα-炭素原子と結合されるか、またはRA1およびRA2が両方ともにダウンウェッジボンドによりα-炭素原子と結合される。
【0054】
ある実施態様においては、化合物は、式2、5、6または7、特に式2a、5a、6aまたは7aの化合物である。
【0055】
ある実施態様においては、化合物は、式2または5、特に式2aまたは5aの化合物である。
【0056】
ある実施態様においては、化合物は、式2、特に式2aの化合物である。
【0057】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、互いに独立して、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、5~10員複素環、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数、特に1つまたは2つ、の置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルであり、ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、C1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、(=O)、-COOH、-NH2、-CONH2、特にC1-4-アルキル、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る。
【0058】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、互いに独立して、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、5~10員複素環、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数、特に1つまたは2つ、の置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルであり、ここで、該環状炭化水素部分は、C1-4-アルキル、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る。
【0059】
ある実施態様においては、RA1およびRA2の複素環は、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、オキサゾロニル、インドリル、メルカプトプリニル、ベンゾチオフェニル、特にイミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、インドリル、より特にメルカプトイミダゾリルから選択される。
【0060】
チオフランはチオフェンとも称される。
【0061】
ベンゾチオフェンは、ベンゾチオフランとも称される。
【0062】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、オキサゾロニルから選択される。
【0063】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、オキサゾロニルから選択される。
【0064】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニルから選択される。
【0065】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリルから選択される。
【0066】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、イミダゾリル、インドリルから選択される。
【0067】
ある実施態様においては、RA1およびRA2でのヘテロシクリルが、イミダゾリルから選択される。
【0068】
ある実施態様においては、イミダゾリルは、1H-イミダゾル-4-イルである。例えば、RAは、ヒスチジンがα-アミノ酸として使用される場合、1H-イミダゾル-4-イルである。
【0069】
ある実施態様においては、インドリルは、1H-インドル-3-イルである。例えば、RAは、トリプトファンがα-アミノ酸として使用される場合、1H-インドル-3-イルである。
【0070】
ある実施態様においては、RA1およびRA2での環状炭化水素部分は、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから選択される。
【0071】
ある実施態様においては、RA1およびRA2での環状炭化水素部分はフェニルである。
【0072】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、互いに独立して、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、イミダゾリル、インドリルおよびフェニルから独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルであり、ここで、該フェニルは、-SHおよび-SeH、特に-SHから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る。
【0073】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、互いに独立して、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルである。
【0074】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、互いに独立して、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、イミダゾリル、インドリルおよびフェニルから独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルであり、ここで、該フェニルは、-SHおよび-SeH、特に-SHから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得る。
【0075】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、-CH2-SH、-(CH2)2-SH、-CH2-S-CH3、-(CH2)2-S-CH3、-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH2-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH(SH)(-COOH)、-CH(SH)-CH2-COOH、-CH2-CH(SH)(-COOH)、-フェニル-SH、-CH2-SO3H、-(CH2)2-SO3H-CH2-COOH、-(CH2)2-COOH、-CH2-NH2、-(CH2)2-NH2、-CH2-CONH2、-(CH2)2-CONH2、-CH2-イミダゾリル、-CH2-メルカプトイミダゾリルおよび-CH2-フェニルから独立して選択される。
【0076】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、-CH2-SH、-(CH2)2-SH、-CH2-S-CH3、-(CH2)2-S-CH3、-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH2-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH(SH)(-COOH)、-CH(SH)-CH2-COOH、-CH2-CH(SH)(-COOH)、-フェニル-SH、-CH2-SO3H、-(CH2)2-SO3H-CH2-COOH、-(CH2)2-COOH、-CH2-NH2、-(CH2)2-NH2、-CH2-CONH2、-(CH2)2-CONH2から独立して選択される。
【0077】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、-CH2-SH、-(CH2)2-SH、-(CH2)2-S-CH3、-CH2-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH(SH)(-COOH)、-フェニル-SH、-CH2-SO3H、-CH2-COOH、-CH2-NH2、-CH2-CONH2、-CH2-イミダゾリル、および-CH-フェニルから独立して選択される。
【0078】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は、-CH2-SH、-(CH2)2-S-CH3、-CH2-COOHから独立して選択される。
【0079】
ある実施態様においては、
-RA1およびRA2は、同一かつ、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、5~10員複素環、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数、特に1つまたは2つ、の置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルから選択され、
ここで、該環状炭化水素部分は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で置換され、かつ
ここで、該5~10員複素環は、C1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、(=O)、-COOH、-NH2、-CONH2、特にC1-4-アルキル、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され、および/または
-RA1は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、および-COOH、特に-SH、-S-C1-4-アルキルおよび-COOHから選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルから選択され、かつ
RA2は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、5~10員複素環、3~6個の炭素原子を含む環状炭化水素部分から独立して選択される1つまたは複数、特に1つまたは2つ、の置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルから選択され、
ここで、該5~10員複素環または該環状炭化水素部分は、C1-4-アルキル、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、(=O)、-COOH、-NH2、-CONH2、特にC1-4-アルキル、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2から選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換され得え、
特に、RA2は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-CONH2、5~6員複素環、特にイミダゾリル、メルカプトイミダゾリルまたはチオフラニル、フェニル、特に置換されていないフェニルから独立して選択される1つまたは2つ、特に1つ、の置換基により置換された、C1-4-アルキル、特にC1-3アルキル、より特にはC1-2アルキルから選択され、
ここで、該フェニルは、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキルから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換されていてもよく、
RA2は、RA1と異なるように選択される。
【0080】
ある実施態様においては、
-RA1およびRA2は、同一かつ、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、インドリルおよびフェニルから独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルから選択され、ここで、フェニルは、-SHおよび-SeHから、特に-SHから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で置換され、および/または
-RA1は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキルおよび-COOH、特に-SH、-S-C1-4-アルキルおよび-COOHから選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルから選択され、かつ
RA2は、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-SO3H、-COOH、-NH2、-CONH2、イミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、インドリルおよびフェニルから独立して選択される1つまたは2つの置換基により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルから選択され、
ここで、フェニルは、-SHおよび-SeH、特に-SHから選択される1つまたは複数、特に1つ、の置換基で任意に置換されていてもよく、
特に、RA2は、-SH、-S-CH3、-SeH、-Se-CH3、-COOH、-NH2、-CONH2、イミダゾリルおよびフェニル、特に置換されていない、フェニルまたはイミダゾリルから独立して選択される1つまたは2つの置換基、特に1つの置換基、により置換された、C1-3アルキル、特にC1-2アルキルから選択され、
ここで、該フェニルは、-SHおよび-SeH、特に-SHから選択される1つまたは複数の置換基、特に1つの置換基、で任意に置換されていてもよく、
RA2は、RA1と異なるように選択される。
【0081】
ある実施態様においては、
-RA1およびRA2は、同一かつ、-CH2-SH、-(CH2)2-SH、-(CH2)2-S-CH3、-CH2-CH(SH)(-CH2-SH)、-CH(SH)(-COOH)、-フェニル-SH、-CH2-SO3H、-CH2-COOHおよび-CH2-イミダゾリルから選択され、および/または
-RA1は、-CH2-SHおよび-CH(SH)(-COOH)から選択され、かつ
RA2は、-CH2-SH、-(CH2)2-SH、-(CH2)2-S-CH3、-CH2-COOH、-CH2-NH2、-CH2-CONH2、-CH2-イミダゾリルおよび-CH2-フェニルから選択され、
RA2は、RA1と異なるように選択される。
【0082】
ある実施態様においては、RA1およびRA2は同一である。
【0083】
本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、RA1のまたはRA2のアルキル部分は5-~6-員複素環または環状炭化水素部分により置換されていない。
【0084】
本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、RA1のまたはRA2のアルキル部分は環状炭化水素部分により置換されていない。
【0085】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分であって、
ここで、該5~10員複素環または該炭化水素部分は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている、部分
から互いに独立している。
【0086】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択される部分であって、
ここで、該環状炭化水素部分は、-OH、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている、部分
から互いに独立して選択される。
【0087】
本発明に係る環状テトラペプチドの水溶性を増強させるため、1つまたは両方の部分RB1およびRB2は、親水性部分を含み得る。ある実施態様においては、少なくとも1つのRB1およびRB2は、-OH、-COOH、-NH2、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択され、ここで、-OH、-COOH、-NH2、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基により任意に置換されている、部分から独立して選択される。
【0088】
金属結合アフィニティーを増強させるため、RB1およびRB2は、追加の配位部位および/または第2配位圏を提供する部分を含み得る。ある実施態様においては、RB1およびRB2は、互いに独立して、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択され、ここで、該5~10員複素環または炭化水素部分は、(=O)、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている、部分である。ある実施態様においては、RB1およびRB2の少なくとも1つは、独立して、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環または1~12個のC原子を含む炭化水素部分から選択され、ここで、該炭化水素部分は、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている。
【0089】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、
・-H、または
・-OH、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3H、5~10員複素環、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはC1-8アルキル、特にC1-4アルキル、から選択される部分であって、
ここで、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはC1-8アルキル、特にC1-4アルキルは、-OH、-SH、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hおよび5~10員複素環から独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、かつ
5~10員複素環は、-OH、(=O)、-SH、(=S)、-S-C1-4-アルキル、-SeH、-Se-C1-4-アルキル、-COOH、-NH2、-NH-C1-4-アルキル、-NH-C(=NH)(NH2)、-CONH2、-SO3Hから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されている、部分
から独立して選択される。
【0090】
ある実施態様においては、RBのシクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルは置換されていない。
【0091】
ある実施態様においては、RB1およびRB2のヘテロシクリルは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、特にイミダゾリル、メルカプトイミダゾリル、チオフラニル、オキサゾロニル、インドリル、メルカプトプリニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、ジアザナフタレニルから選択される。
【0092】
ある実施態様においては、RB1およびRB2のヘテロシクリルは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、特にイミダゾリル、インドリルから選択される。
【0093】
ある実施態様においては、RB1および/またはRB2のヘテロシクリルは、RA1およびRA2について定義されたように定義される。RA1およびRA2に関する個々の実施態様を引用する。
【0094】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、H、-C3-6アルキル、特に、-CH2-CH(CH3)2、-CH2-フェニル、-SH、-(CH2)m-SH、-(CH2)m-COOHおよび-(CH2)r-CONH2から独立して選択され、mおよびrは0、1、2または3である。
【0095】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、H、-SH、-(CH2)m-SH、-(CH2)m-COOHおよび-(CH2)r-CONH2から独立して選択され、mおよびrは0、1、2または3である。
【0096】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、H、-(CH2)m-COOHおよび-(CH2)r-CONH2から独立して選択され、mおよびrは0、1、2または3である。
【0097】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、H、-(CH2)m-COOHおよび-CONH2から独立して選択され、mは1、2または3である。
【0098】
ある実施態様においては、mは1、2または3である。
【0099】
ある実施態様においては、rは0または1、特に1である。
【0100】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は、-Hである。
【0101】
ある実施態様においては、RB1およびRB2は同一である。
【0102】
本発明に係る環状テトラペプチドおよび/または本発明に係る環状テトラペプチドを含む金属錯体による検出を促進するために、環状テトラペプチドは検出可能なマーカーを含み得る。
【0103】
ある実施態様においては、検出可能なマーカーは、染料、アフィニティタグ、磁気ビーズおよび放射性同位体を含む部分から選択される。
【0104】
好適な染料は、例えば当業者に既知の蛍光染料である。
【0105】
アフィニティタグによる環状テトラペプチドの検出については、一般に知られたタグを使用することができる。アフィニティタグの非限定的な例は、ストレプ-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ、ポリ(His)タグである。
【0106】
ある実施態様においては、リンカーは、最大50個のC原子、特に最大20個のC原子を含む炭化水素部分であり、ここで1個または複数個のC原子がO、SまたはNにより任意に置き換えられていてもよい。
【0107】
ある実施態様においては、固体支持体は、樹脂、ビーズ、電極表面または反応容器の底/壁、特に電極表面、樹脂またはビーズ、より特に樹脂またはビーズである。
【0108】
本発明の第1の態様に係る化合物は、96ウェルプレートなどの反応容器にまたはフロースルー装置にリンカーを介して結合され得る。これは、診断/検出方法における化合物の使用、および汚染された水および土壌のレメディエーションにおける化合物の使用のそれぞれを促進することになる。
【0109】
ある実施態様においては、本発明の第1の態様に係る化合物は、式X1~X22、特に式X1~11またはX14~22の化合物である。
【化4】
【0110】
本明細書に記載された本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、RA1およびRA2は-CH2-イミダゾリルではなく、かつRA1およびRA2は-CH2-フェニルではない。
【0111】
本明細書に記載された本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、RA1およびRA2は-CH2-イミダゾリルではない。
【0112】
本明細書に記載された本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、RA1およびRA2は-CH2-フェニルではない。
【0113】
本明細書に記載された本発明のいずれかの態様のある実施態様においては、式1の化合物は、式D1またはD2の化合物ではない。
【化5】
【0114】
本発明の第2の態様は、配位子および金属からなる金属錯体であって、配位子が本発明の第1の態様に係る化合物である金属錯体に関する。
【0115】
上述したように、本発明の第1の態様に係る化合物は、RAおよびRBでの好適な部分を介して金属に結合し得る。
【0116】
ある実施態様においては、本発明の第1の態様に係る化合物の結合部分が、その脱プロトン化された形態で金属に結合する。例えば、チオールおよび/またはカルボン酸部分がその脱プロトン化された形態で、以下に示すようにPb
2+との錯体を形成し得る(
図3も参照)。
【化6】
【0117】
ある実施態様においては、リガンドはアニオンである。
【0118】
通常、金属対ペプチドの比は、1:1または1:2であり、すなわち錯体は単量体または二量体である。
【0119】
ある実施態様においては、錯体は二量体、特にホモ二量体である。
【0120】
ある実施態様においては、金属はPb、As、CdおよびHgから選択され、特に金属はPbである。
【0121】
リガンドについては、本発明の第1の態様の実施形態を引用する。
【0122】
本発明の第3の態様は、疾患の治療における本発明の第1の態様に係る化合物の使用に関する。
【0123】
ある実施態様においては、本発明の第1の態様に係る化合物は、疾患の治療における使用のためのものである。
【0124】
化合物については、本発明の第1の態様の実施態様を引用する。
【0125】
本発明の第4の態様は、金属中毒の治療における本発明の第1の態様に係る化合物の使用に関する。
【0126】
ある実施態様においては、本発明の第1の態様に係る化合物は、金属中毒の治療における使用のためのものである。
【0127】
ある実施態様においては、金属中毒は、Pb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒から選択される。
【0128】
ある実施態様においては、金属中毒はPb中毒である。
【0129】
医学的文脈において、本発明の第1の態様に係る化合物は、Sears,M.E.(2003)に記載される標準方法によって適用され得る。
【0130】
化合物については、本発明の第1の態様の実施態様を引用する。
【0131】
本発明の第5の態様は、患者が金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にPb中毒であるか、または金属中毒を発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、
a.患者から採取されたエクソビボの血液、血漿または血清試料において本発明の第1の態様に係る化合物を用いて金属、特にPb、As、Cdおよび/またはHgのレベルを決定すること、および
b.金属の濃度の統計学的有意性を立証すること
を含む方法に関する。
【0132】
特に、RBで、任意にはリンカーによって結合された、検出可能なマーカーを含む本発明の第1の態様に係る化合物は、試料中の金属の量を決定するために適している。
【0133】
統計学的有意性は、遊離のリガンド、すなわち本発明の第1の態様に係る化合物、の金属錯体に対する比率を決定することにより立証され得る。マーカーが検出される場合に得られる信号は、標準と比較され得る。
【0134】
化合物について、本発明の第1の態様の実施態様を引用する。
【0135】
本発明はさらに、金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にはPb中毒の発症の検出のためのキットの製造における使用のための本発明の第1の態様に係る化合物の使用を包含する。
【0136】
単一の分離可能な特徴についての代替は、本明細書に「実施態様」としてどこで説明されていても、そのような代替は、本明細書に開示された発明の個別の実施態様を形成するために自由に組み合わせることができるということは理解されるべきである。したがって、検出可能なラベルについての代替的な実施態様のいずれかは、本発明の第1の態様に係るリガンド/化合物の代替的な実施態様のいずれかと組み合わせることができ、これらの組み合わせは、本明細書に記載された任意の医薬的適用または診断方法と組み合わせることができる。
【0137】
本発明の第6の態様は、基質、特に土壌または水溶液または水懸濁液、から金属、特にPb、As、CdおよびHgから選択される金属、より特にPb、を除去する方法であって、本発明の第1の態様に係る化合物を用いることを含む、方法に関する。
【0138】
特に、検出可能なマーカー、例えばアフィニティタグ、を含むかまたは固体支持体にリンカーを介して結合されている本発明の第1の態様に係る化合物がこの方法に好適である。
【0139】
化合物については、本発明の第1の態様の実施態様を引用する。
【0140】
本発明の第7の態様は、基質、特に土壌または水溶液または水懸濁液、のなかの金属、特にPb、As、CdおよびHgから選択される金属、より特にPb、を検出する方法であって、本発明の第1の態様に係る化合物を用いることを含む、方法に関する。
【0141】
特に、RBで、任意にはリンカーによって結合された、検出可能なマーカーを含む本発明の第1の態様に係る化合物は、試料中の金属の量を決定するために適している。
【0142】
化合物については、本発明の第1の態様の実施態様を引用する。
【0143】
本発明の別の態様は、本発明の第1の態様に係る化合物の製造に関する。製造は、次の工程:
-2つのα-アミノ酸Xaaおよび2つのβ-アミノ酸βXaaからなるテトラペプチドであって、N末端からC末端への配列βXaa-Xaa-βXaa-Xaa(配列番号013)またはXaa-βXaa-Xaa-βXaa(配列番号014)、特にβXaa-Xaa-βXaa-Xaa(配列番号013)により特徴づけられるテトラペプチドを提供する工程、
-カップリング試薬および塩基を添加して反応混合物を得る工程、
-希釈工程において、反応混合物を有機溶媒、特にCH2Cl2またはDMF、より特にCH2Cl2に希釈する工程
を含む。
【0144】
ある実施態様においては、カップリング剤は、PyBOP、HATU(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート、CAS番号148893-10-1)、HCTU(O-(1H-6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート、CAS番号330645-87-9)、HOBt/DIC(ベンゾトリアゾル-1-オール、CAS番号2592-95-2)およびN,N’-ジ(プロパン-2-イル)メタンジイミン、CAS番号693-13-0)、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルメタンジイミン、CAS番号538-75-0)、DPPA(ジフェニルリン酸アジド、CAS番号26386-88-9)から選択される。
【0145】
ある実施態様においては、カップリング剤はPyBOPである。用語「PyBOP」は、ベンゾトリアゾル-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(CAS番号128625-52-5)に関わる。
【0146】
ある実施態様においては、テトラペプチドのモル量に関して1~2モル当量のカップリング剤が使用される。
【0147】
ある実施態様においては、テトラペプチドのモル量に関して1.5モル当量が使用される。
【0148】
ある実施態様においては、塩基はヒューニッヒ塩基である。用語「ヒューニッヒ塩基」は、N-エチル-N-(プロパン-2-イル)プロパン-2-アミン(CAS番号7087-68-5)に関する。
【0149】
ある実施態様においては、テトラペプチドのモル量に対して2~6モル当量の塩基が使用される。
【0150】
ある実施態様においては、テトラペプチドのモル量に対して3モル当量の塩基が使用される。
【0151】
ある実施態様においては、希釈工程におけるテトラペプチドの濃度は、0.01mM~10mM、特に0.05mM~2mMである。
【0152】
ある実施態様においては、希釈工程におけるテトラペプチドの濃度は、0.1mMである。
【0153】
ある実施態様においては、希釈工程は、12時間~72時間、特に16時間~48時間行われる。
【0154】
ある実施態様においては、希釈工程は、蒸発工程に追随される。速い蒸発を可能とするために、CH2Cl2などの低沸点溶媒が使用され得る。溶媒、例えばDMFの沸点がより高い場合、蒸発が面倒となり得る。
【0155】
ある実施態様においては、本方法は、15℃~40℃の範囲、特に20℃~25℃の範囲の温度で行われる。本方法は、周囲温度で行われてもよい。反応混合物を加熱または冷却する必要はない。
【0156】
テトラペプチドは保護基を含み得る。好適な保護基ならびに脱保護の方法は、当業者に公知である。
【0157】
医学的処置、剤形および塩
同様に、必要とする患者に本発明の第1の態様に係る化合物を投与することを含む、その患者における、金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にPb中毒、の治療方法は、本発明の範囲内である。
【0158】
同様に、金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にPb中毒、の予防または治療のための剤形が提供され、本発明の上記態様または実施態様のいずれかに係る化合物を含む。
【0159】
当業者は、本明細書に言及された任意の具体的に記載された薬物化合物が、上記薬物の薬学的に許容され得る塩として存在し得ることが分かっている。薬学的に許容され得る塩は、イオン化された薬物と反対の電荷を帯びた対イオンを含む。薬学的に許容され得る陰イオン塩の形態の非限定的な例は、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、酸性酒石酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エンボン酸塩、エストラート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、サリチル酸塩、二サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエトヨウ化物および吉草酸塩を含む。薬学的に許容され得る陽イオン塩の形態の非限定的な例は、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛を含む。
【0160】
剤形は、鼻、口腔、直腸、経皮または経口投与などの経腸投与、または吸入形態のためのもの、または座薬であってもよい。あるいは、非経口投与も使用することができ、皮下、静脈内、肝内または筋肉内注射形態などである。任意には、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤が存在してもよい。
【0161】
局所投与もまた本発明の有益な使用の範囲内である。当業者は、Benson and Watkinson(Eds.), Topical and Transdermal Drug Delivery:Principles and Practice(1st Edition, Wiley 2011, ISBN-13: 978-0470450291);およびGuy and Handcraft:Transdermal Drug Delivery Systems: Revised and Expanded(2nd Ed., CRC Press 2002, ISBN-13: 978-0824708610);Osborne and Amann(Eds.):Topical Drug Delivery Formulations(1st Ed. CRC Press 1989; ISBN-13: 978-0824781835)の内容により例示されるように、局所製剤を提供する可能なレシピの広い範囲を承知している。
【0162】
医薬組成物および投与
本発明の別の態様は、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。さらなる実施態様においては、組成物は、本明細書に記載されているものなどの少なくとも2つの薬学的に許容され得る担体を含む。
【0163】
本発明のある実施態様においては、本発明の化合物は、典型的には、薬物の容易に制御可能な投薬を提供するためおよび滑らかかつ容易に取り扱い可能な製品を患者に与えるため医薬投与形態に製剤化される。
【0164】
本発明の化合物の局所使用に関連する本発明の実施態様においては、医薬組成物は、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲルまたはスプレー可能な製剤、例えばエアロゾルなどによる送達のためのもの、など局所投与に適するような方法で製剤化され、活性剤を当業者に知られている可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤および保存料の1つまたは複数と一緒に含む。
【0165】
医薬組成物は、経腸投与、特に経口投与または直腸投与のために製剤化することができる。加えて、本発明の医薬組成物は、固体形態(カプセル、錠剤、ピル、顆粒、粉末または座薬を含むがこれらに限定されない)、または液体形態(溶液、懸濁液またはエマルジョンを含むがこれらに限定されない)に作ることができる。
【0166】
医薬組成物は、例えば、i.v.注入、皮内、皮下または筋肉内投与による、非経口投与のために製剤化することができる。
【0167】
本発明の化合物の投薬レジメンは、特定の薬剤の薬力学的特徴およびその投与モードおよび経路;レシピエントの、種、年齢、性別、健康状態、医学的状態および体重;症状の特質および程度;併用療法の種類;治療の頻度;投与経路;患者の腎および肝機能;および所望の効果などの公知の因子により変化する。ある実施態様においては、本発明の化合物は、毎日1回の服用で投与されてもよく、または1日当たりの総投薬量が1日に2回、3回または4回の分割用量で投与されてもよい。
【0168】
ある実施態様においては、本発明の医薬組成物または組み合わせは、約50~70kgの対象に約1~1000mgの活性成分の単位投薬量である。化合物、医薬組成物またはその組み合わせの治療に効果的な投薬量は、対象の種、体重、年齢および個人の状態、障害または疾患または処置されるその重症度による。当業者である医師、臨床医または獣医は、障害または疾患の進行を予防する、治療するまたは阻害するために必要な各活性成分の有効量を容易に決定することができる。
【0169】
本発明の医薬組成物は、滅菌などの従来の製薬工程に付すことができ、および/または従来の不活性な希釈剤、潤滑剤、または緩衝剤、ならびに保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤およびバッファーなどのアジュバントを含有することができる。それらは、標準的なプロセスにより、例えば従来の混合、造粒、溶解または凍結乾燥プロセスにより製造してもよい。多くのそのような医薬組成物を製造するための手順および方法は、本技術分野で公知であり、例えば、L. Lachman et al. The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 4th Ed, 2013(ISBN 8123922892)参照。
【0170】
本発明に係る製造方法および治療方法
本発明は、追加的な態様として、上記に詳細に定めた、本発明の第1の態様に係る化合物またはその薬学的に許容され得る塩の、金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にはPb中毒の治療または予防のための医薬の製造方法における使用のための使用をさらに包含する。
【0171】
同様に、本発明は、金属中毒、特にPb中毒、As中毒、Cd中毒およびHg中毒、より特にはPb中毒、と関連する疾患と診断されている患者の治療方法を包含する。この方法は、患者に、本明細書に詳細に定めた、本発明の第1の態様に係る化合物またはその薬学的に許容され得る塩を投与することを必然的に伴う。
【0172】
本発明は、以下の実施例および図面によりさらに説明され、そこからさらなる実施態様および利益が導き出される。これらの実施例は、本発明を説明することを意図しており、その範囲を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0173】
実施例1:環状テトラペプチドの合成
この実施例において説明される化合物のために、配列、環状-[Xaa-βAla-Xaa-βAla](配列番号015)(Xaaは任意のα-AAを描写する;スキーム1)から構成されるスキャフォールドが選択され、安定性の増強に加え、βAlaがテトラペプチドの難しい分子内環化を促進することが期待された。
【化7】
【0174】
ここで、本発明者らは、Pb2+イオンを解毒するために設計された環状テトラペプチドのファミリーを提示する。ペプチドは、Pb暴露バクテリアおよびヒト細胞を回復するそれらの能力について調べられ、そこで1つの特別なペプチド(8)が、ベンチマークキレート剤(CA)よりも大いに優れていた。成功したペプチドの機構研究は、その生物学的結果および医学的可能性に光を当てた。
【0175】
本発明者らは、9つの側鎖保護線状ペプチド(表1、1-9)を合成することにより、彼らの研究を開始した。典型的には、頭尾環化は溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)中で生じ、5量体よりも短いペプチドでは極めてまれである(White et a;, 2011)。本発明者らは、DMFのような高沸点溶媒の不存在下でテトラペプチドを環化することを目指した。条件スクリーニングに際し、本発明者らは、次の理想的な条件:それぞれカップリング試薬および塩基として、PyBOPおよびヒューニッヒ塩基(それぞれ1.5および3.0当量)、および完全変換が得られるまで16~48時間、CH2Cl2中の超高度希釈ペプチド(0.1mM)、を見出した。環状ペプチドは、次いで、側鎖を脱保護され、HPLCを必要とせずに精製され、2工程(環化および脱保護)にわたり62~87%の収率で、95%超の純度を達成した。HR-ESI-MSおよび1Hおよび13C NMRは、所望のテトラマーを形成するための排他的な分子内環化を示した。
【0176】
【0177】
実施例2:インビボおよびインビトロ解毒
その後、脱塩ペプチドは、Pbを解毒するそれらの能力について評価された(
図2a-d)。本発明者らは、細菌でのインビボとその後のヒト細胞でのインビトロの両方で潜在的なCAの迅速かつ信頼できるスクリーニングのための2つのアッセイを設計した。簡単に説明すると、DH5αまたはHT-29細胞をまずPb(NO
3)
2にわずかに最小阻害濃度未満で暴露し、その後、調査されるCAの0.1~10当量の範囲の種々の濃度で処置した。細胞の生存率は、コロニー計数によりまたはクリスタルバイオレットにより(Feoktistova et al., 2016)、細菌およびヒト細胞についてそれぞれ決定し、陰性対照としていずれのCAでも処置しなかった中毒細胞と比較した。主に、インビボアッセイは固化培地上のCAを検査し、化合物の低い溶解性に由来する制限を排除するため、両アッセイを行うことは非常に価値があることが判明した。他方、化合物をヒト細胞で試験することは、不溶性化合物では行うことができないが、医療目的により関連する。
【0178】
9つのペプチドのうち、4つがベンチマーク化合物と比較して中毒E.coliを解毒するのに傑出した結果を発揮した(
図2a)。それら4つは全て、少なくとも1つのCysおよびPb
2+に結合することができる追加的な残基;ペプチド1、2、6および8それぞれにCys、DCys、MetおよびAspを含有する。1での処置は回復を8倍より多く増加させ、一方LCysの1つのDCysでの置換は、ペプチド2の解毒能力を減少させた。これは、その好ましい固有の片側に向けられた配置においてPb
2+を捕捉する結合部分が同じ方向を向くべきであるという要件を指摘する。驚くべきことに、ホモ-機能化ペプチド3~5は、不十分な活性を示し、乏しい金属選択性または低いPb親和性を示した。特筆すべきは、ペプチド1~8の線状アナログもインビボで試験され、全てのケースでほとんど解毒能力がないことが示された。本発明者らは、予期された増強されたタンパク質分解安定性に加え、環化はまた、配位特性を向上させることによりその金属親和性を与える配位子のプレ組織化を育成すると結論付けた。
【0179】
インビボでの高い活性にもかかわらず、ペプチド1、2および6は、低い水溶性を示し、潜在的なCAとしてのそれらの有効性を減じた。種々のpH条件、PEGとの製剤化、またはDMSOとの共溶媒系などのそれらを溶解させようとする試みは失敗した。したがって、βAlaはβAspまたはβhGluに置き換えられて、ペプチド1aおよび1bをそれぞれ形成している1の2つのアナログが合成された。これらのペプチドは、NaまたはCa塩として高い溶解性を示したが、バクテリアにおけるそれらの解毒能力は満足できるものではなかった(
図2a)。それらの低い活性は、(a)Pb
2+との配位における2つのカルボキシレートによる競争、これが錯体形成を不安定化する、または(b)それらの金属選択性および配位アルカリまたはアルカリ土塁金属イオンの減少、のいずれかに関係すると考えられる。
【0180】
それにもかかわらず、本発明者らは、インビトロで1aおよび他の可溶性ペプチドを、中毒化されたヒト細胞を回復させるそれらの能力について試験した(
図2b)。全ての化合物の中でも、ペプチド8が、回復率334±42%で、DMSAの110±10%およびNa
2CaEDTAの95±16%と比較して、非常に優れた程度でPb
2+を解毒した。このペプチドは、天然の参照ペプチドとしてのベンチマーク薬およびグルタチオン(GSH)と比較して高濃度で劇的に優れていた(
図2b、2c)。本発明者らは、細胞レベルに対するPb
2+の効果およびキレート機序は、両方の系において同様であるということを示唆する、2つのアッセイ間でほとんどの化合物において同様のパターンも観察した。
【0181】
CAとしてのEDTAの投与は、Ca
2+イオンの望まれない枯渇を減少するために、そのNa塩からNa
2CaEDTAへと変化させた。したがって、8の場合でも、対陽イオンがその活性に影響を与えるかどうかが試験された(
図2d)。Ca-塩として高い活性を示すEDTAとは異なり、8は対陽イオンによりほとんど影響を受けない(
図2d)。これらの相違点は、8のPb
2+に対する能力は、EDTAの場合とは異なり、CAに結合しないCa
2+イオンよりも高いことを暗示している。高濃度でのCa8のより低い活性は、Na
28と比較してこの塩のわずかに低い溶解性と関連付けられる。
【0182】
8の有効性を結論付けるために、本発明者らは、母集団のたった15±5%の生存率を阻害する、DMSAおよびNa
2CaEDTAのものよりも劇的に低いそのインビトロでの毒性(
図2e)を評価した。
【0183】
材料および方法
本明細書に記載されたペプチドは、スキーム2に示される反応にしたがい合成される。Rはα-またはβ-アミノ酸の側鎖を示す。側鎖は適切な保護基(R’)により保護され得る。テトラペプチドは、塩化クロロトリチル樹脂上で標準的なFmocに基づくプロトコルを用いて標準的な固相ペプチド合成(SPPS)により得られる。切断(1%TFA)は、各1分の5ラウンドでCH2Cl2中のTFAを用いて達成される。環化は、側鎖保護ペプチドをPyBOP(カップリング試薬として)およびヒューニッヒ塩基(DIPEA;塩基として)と、ペプチドに対してPyBOPについて1.5当量、塩基について3当量の比率で反応させることにより得られる。ペプチドは、二量化を避けるために高度に希釈され(0.1mM)、溶媒はCH2Cl2単独である。反応混合物は一晩(16~48時間)インキュベートされる。側鎖は、個々のアミノ酸組成に対して調整されているTFAカクテルで脱保護される。典型的には、TFA:TIPS:EDT:H2O(87.5:2.5:7.5:2.5)の混合物が1時間適用される。最終的には、環状テトラペプチドが、HPLCを必要とすることなく水溶液中での沈殿により精製される。純度95%以上および収率62%~87%(精製後)の範囲が達成される。最終工程において、ペプチドは、TFAが毒であるためCl-イオンがTFAアニオンに置き換えられるようにHClと反応される。TFAの完全な除去は、19F NMRでモニターされる。
【0184】
【0185】
以下の環状テトラペプチドは上述のように合成した。
Cys-βAla-Cys-βAla(配列番号001)
HRMS(ESI)m/z:C12H21N4O4S2
+[M+H]+についての計算値:349.09987;測定値:349.09946
Cys-βAla-Met-βAla(配列番号006)
HRMS(ESI)m/z:C14H25N4O4S2
+[M+H]+についての計算値:377.13117;測定値:377.13120
His-βAla-His-βAla(配列番号004)
HRMS(ESI)m/z:C18H26N8O4
2+[M+2H]2+についての計算値:209.10330;測定値:209.10341
Cys-βAla-His-βAla(配列番号007)
HRMS(ESI)m/z:C15H23N6O4S+[M+H]+についての計算値:383.14960;測定値:383.14971
Asp-βAla-Asp-βAla(配列番号005)
HRMS(ESI)m/z:C14H19N4O8
-[M-H]-についての計算値:371.12084;測定値:371.12065
Cys-βAla-Asp-βAla(配列番号008)
HRMS(ESI)m/z:C13H21N4O6S+[M+H]+についての計算値:361.11763;測定値:361.11771
Cys-βAla-DCys-βAla(配列番号002)
HRMS(ESI)m/z:C12H21N4O4S2
+[M+H]+についての計算値:349.09987;測定値:349.09978
Cys-βAsp-Cys-βAsp(配列番号010)
HRMS(ESI)m/z:C14H19N4O8S2
-[M-H]-についての計算値:435.06498;測定値:435.06564
Cys-βAla-Phe-βAla(配列番号009)
HRMS(ESI)m/z:C18H25N4O4S+[M+H]+についての計算値:393.15910;測定値:393.15888
Met-βAla-Met-βAla(配列番号003)
HRMS(ESI)m/z:C16H28N4O4SNa+[M+Na]+についての計算値:427.14442;測定値:427.14447
【0186】
インビボ回収試験
DH5α E.coli WT細胞の単コロニーを、抗生物質なしのトリス最小培地(TMM、pH6.0;5mL)中、37℃および220rpmで一晩増殖させた。その後、培養物を、総容量5mLまでの追加のTMMでOD600が0.03まで希釈し、そのOD600をモニターした。細胞密度が0.25となったら、1mLの培養物を細胞培養管に移し、陽性対照として標識化した。さらなる3mLの培養物に、36μLのPb(NO3)2 1Mを添加した(最終濃度12mM)。両培養物を37℃および220rpmでさらに5時間振とうした。
【0187】
各CAの水性の原液を、各化合物の最終濃度が、50μLの毒を入れる前の培地中のPb(NO3)2の量と比較して、0.5、1、2、5および10当量と等しくなるように新しく調製したアガーLBプレート上に置いた。原液は、各溶液の30μLをプレーティングおよび均一拡散がCAの所望の量を提供するように調製された。追加の2つのプレートに、30μLのH2Oを加えた。
【0188】
50μLの毒を入れる前の培養物を、培養物に金属を添加する5時間前に、各CA含有プレートに均一に拡散させた。Pb含有培養物も2つのH
2O含有プレートの1つに置き、陰性対照として標識した。最後に、50μLの毒を入れていない培養物を、第2のH
2O含有プレートに置き、陽性対照として標識した。その後、全てのプレート(陽性対照および陰性対照および各試験化合物に対する5つのプレート)を、37℃で一晩インキュベートした。その後プレートを撮影し、コロニーを計数した(Vilber Quantum Visualization Systemで)。CAの各濃度の回復は、等式1にしたがい計算した。
【数1】
#CAx-CAをXmM含有するプレートにおける毒を入れる前の培養物のコロニー数
#NEG-CAを含有するプレートにおける毒を入れる前位の培養物のコロニー数
【0189】
各実験は、3つの独立した場合について行った。値は、三重に行われた各3回より多くの繰り返しの平均±SDである。
【0190】
インビトロ回復試験
HT-29細胞(ATCCから購入)を、1%のL-グルタミン、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)スーパー(規格)を補充した25mM HEPES RPMI-1640培地中で37℃および5%CO
2で増殖させた。96ウェルプレートを、各ウェルが100μLの培地に10,000細胞を含むように準備し、細胞を一晩接着させた。陽性対照以外の全てのウェルに、10μLの22mM Pb(NO
3)
2を加えた(最終濃度2mM)。10μLのH
2Oを陽性対照のウェルに加えた。金属の添加60分後に、試験CA(2.4、6、12、24、48および120mM)の各溶液10μLを、最終濃度0.2、0.5、1、2、4および10mM(それぞれ0.1、0.25、0.5、1、2および5当量)に到達するまで加えた。金属を含まない陽性対照ウェルおよび金属を含むがCAを含まない陰性対照ウェルに10μLのH
2Oを加えた。各条件は三重で行った。プレートを37℃および5%CO
2でさらに23時間インキュベートし、その後培地を除去し、各ウェルに新鮮な培地および50μLのクリスタルバイオレット溶液(20mL MeOHおよび80mL H
2O中0.5%クリスタルバイオレット粉末)で洗浄し、そしてプレートを20分間、穏やかに(60rpm)振とうした。その後、プレートをH
2Oで結合していない染料が観察されなくなるまで洗浄し、一晩乾燥した。200μLのMeOHを各ウェルに加え、プレートを20分間、穏やかに(60rpm)振とうし、その後それらの560nmでの吸光度をプレートリーダーで読んだ。CAの各濃度の回復率を等式2にしがたって計算した。
【数2】
A[CAx]-XmMのCAの存在下での毒を入れる前のウェルの吸光度
A[ブランク]-(なにも含まない)ブランクウェルの吸光度
A[NEG]-CAを含まない毒を入れる前のウェルの吸光度
【0191】
各実験は、3つの独立した場合について行った。値は、三重に行われた各3回より多くの繰り返しの平均±SDである。
【0192】
インビトロ毒性試験
HT-29細胞(ATCCから購入)を、1%のL-グルタミン、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)スーパー(規格)を補充した25mM HEPES RPMI-1640培地中で37℃および5%CO
2で増殖させた。96ウェルプレートを、各ウェルが100μLの培地に10,000細胞を含むように準備し、細胞を一晩接着させた。陽性対照以外の全てのウェルに、試験CA(2.4、6、12、24、48および120mM)の各溶液10μLを、最終濃度0.2、0.5、1、2、4および10mMに到達するまで加えた。陽性対照ウェルに10μLのH
2Oを加えた。各条件は三重で行った。プレートを37℃および5%CO
2で24時間インキュベートし、その後培地を除去し、各ウェルに新鮮な培地および50μLのクリスタルバイオレット溶液(20mL MeOHおよび80mL H
2O中0.5%クリスタルバイオレット粉末)で洗浄し、そしてプレートを20分間、穏やかに(60rpm)振とうした。その後、プレートをH
2Oで結合していない染料が観察されなくなるまで洗浄し、一晩乾燥した。200μLのMeOHを各ウェルに加え、プレートを20分間、穏やかに(60rpm)振とうし、その後それらの560nmでの吸光度をプレートリーダーで読んだ。CAの各濃度の毒性を等式3にしがたって計算した。
【数3】
A[CAx]-XmMのCAの存在下での毒を入れる前のウェルの吸光度
A[ブランク]-(なにも含まない)ブランクウェルの吸光度
A[POS]-CAを含まないウェルの吸光度
【0193】
各実験は、3つの独立した場合について行った。値は、三重に行われた各3回より多くの繰り返しの平均±SDである。
【0194】
Pb解毒能の決定のためのインビトロおよびインビボアッセイの設定は表2に示される。
【0195】
【0196】
実施例3:ペプチド8a
インビトロおよびインビボの解毒結果
すべての調査したペプチド内で最良の結果が明らかになり、かつ標準医療(SOC)をも打ち負かすペプチド(
図4)は、配列環状[SAsp-βAla-Asp-βAla](8a;配列番号16)を有する。
【化9】
【0197】
その後、ペプチド8aをマウスで試験した。6~8週齢の40匹の雄性マウス(C57BL/6)に、7日間(1日目~7日目)、唯一の水分供給として20mMのPb(OAc)2溶液を与えた。この中毒化経路は、ヒトにおける慢性暴露を模倣している。きれいな水に戻してから2日後(9日目)、それらを無作為に8匹のマウスの5つのグループに分けた。それらは、陰性対照として供されたグループ1以外、7日間、1日1回、30mgkg-1の濃度でCaNa2EDTA、DMSAまたは8aのいずれかの治療を受けた(表3)。
【0198】
血液試料(100μL)を、10~15日目のマウスに投薬する前および最後の投薬の2日後である18日目に採取し、その日に実験は終結された。尿も18日目に34匹のマウスから採取し、分析まで凍結維持した。
【0199】
【0200】
最終日の血液試料は、8aは、経口およびIVで投与された両方の場合に、2つのSOCよりもより有効であるということを明らかに示す(表3、
図5A)。具体的には、IVで投与された場合、8aは平均血中鉛レベル(BLL)を未処置と比べて2.1倍、CaNa
2EDTA(IV投与)と比べて1.6倍減少させた。経口で投与された場合、そのペプチドは、BLLを未処置と比べて1.9倍、DMSAと比べて1.3倍減少した。
【0201】
実験の最終日に採取された34匹(40匹中;
図5B)のマウスの尿中のPb含有量は、8aの作用機序がキレート化と尿を介した有毒金属の排出によるものであることを示す。グループ4および5の尿中の高いPbレベルは、グループ1~3と比較したこれらのグループの減少されたBLLと一致する。ペプチドのIVおよび経口投与を比較すると、Pbは未処置グループと比べてそれぞれ2.9および2.8倍排出された。そのペプチドはまた、1.3~2.2倍の範囲でSOCと比べてPbの上昇された除去を可能とした。
【0202】
固定化ペプチドによる水のレメディエーション
堅く選択的にPb
2+イオンに結合することが予期される2つのペプチドを、長く柔軟なリンカー((PEG2)
2)および光開裂可能な部分で固体支持体に固定化した(
図6)。
【0203】
加えて、第2のPEG2がアセチル化されている陰性対照(0f)を合成した。その後、3つの装置すべては、25mMのPb(NO
3)
2溶液からのPb
2+イオンの捕捉のためのそれらの能力について試験した。金属溶液の装置への添加の1時間後、溶液をろ過し、それらの各々におけるPb濃度をICP-MSにより定量した。有効性は、100%のPb含有量として元の溶液で検出された濃度で各溶液の濃度を割ることにより算出した(
図7)。
【0204】
0fが汚染された溶液のPb濃度を減少させることができない一方、1fおよび8fはPb濃度をそれぞれ62±4%および36±7%減少させ(
図7、左暗いグレー棒)、水溶液からPb
2+イオンを除去するそれらの有効性を示した。
【0205】
その後、樹脂を100mMのNa
2EDTA溶液で10分間処理し、有効な樹脂再生を示すためにそれらのPb濃度を定量した(
図7の明るいグレー棒)。その後、ろ過実験を繰り返し(
図7、暗いグレー右棒)、最初のラウンドと同様の結果を示し、費用効率の高いEDTA溶液でPbを良く洗浄することにより樹脂を元に戻すことが可能であることは明らかとなった。
【0206】
我々の装置の金属選択性を検出するために、同様のろ過実験を、ZnCl
2+Pb(NO
3)
2およびCaCl
2+Pb(NO
3)
2の等モル混合物と25mMのPb(NO
3)
2を打ち込んだヒト血清(HBS)で行った(
図8)。Pb濃度、ならびに最初の2つの実験のCaまたはZn濃度は、ろ液中で検出されたZnおよびCaの量が最低限であったため、1fおよび8fがこれらの必須金属を捕捉しないことを明らかにした。特筆すべきは、これらの装置は、追加の金属塩が存在しない最初の実験におけるのと同程度にPbを除去したということであり、我々の装置の金属選択性を示した。同様の結果はPb打ち込みHBSにおいても達成された(
図8)。
【0207】
[参考文献]
Sears, Margaret E. Chelation: Harnessing and Enhancing Heavy Metal Detoxification - A Review. 2013. The Scientific World Journal, Volume 2013, Article ID 219840, 13 pages
White, C. J.; Yudin, A. K. Contemporary Strategies for Peptide Macrocyclization. Nat. Chem. 2011, 3 (7), 509-524. https://doi.org/10.1038/nchem.1062.
Feoktistova, M.; Geserick, P.; Leverkus, M. Crystal Violet Assay for Determining Viability of Cultured Cells. Cold Spring Harb. Protoc. 2016, 2016 (4), 343-346. https://doi.org/10.1101/pdb.prot087379.
【配列表】
【国際調査報告】