(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】半固体塊押し出し3D印刷のプラットフォームのための圧力計プランジャー
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20240220BHJP
G01L 9/04 20060101ALI20240220BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240220BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240220BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
G01L9/04
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536577
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 ES2021070900
(87)【国際公開番号】W WO2022136710
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220112
【氏名又は名称】ユニバーシダッド デ ラ ラグーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ホセ ブルーノ ファリーニャ エスピノーサ,ペペ
(72)【発明者】
【氏名】サントベナ エステベス,アナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド ディアス トーレス,エドゥアルド
【テーマコード(参考)】
2F055
4C047
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE11
4C047CC15
4C047JJ32
4C047LL10
(57)【要約】
3D印刷プラットフォームのための圧力計プランジャーは、各種3D印刷分野(組織のバイオプリンティングならびに食品、製薬およびセラミック産業)に適用可能である。その有用性は、プランジャー機構のおかげで印刷プロセス全体を通して印加される圧力を連続的に制御するその能力に基づいている。従ってそれは改良された品質およびその場での誤差の検出を可能にし、補正動作を当該プロセス中に適用するのを可能にする。応力ゲージを使用して、印刷プラットフォーム構成要素が本プランジャー(ひいては押し出される塊)に及ぼす圧力値が得られる。この連続的な制御は、印刷される半固体塊のプロファイリングを可能にし、最も適当な印刷パラメータをその場で設定するのを可能にし、さらに当該プロセスを完全に自動化させるのを可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動シリンダーと、中央シリンダーと、両部材を一緒に維持するが結合させない前記シリンダー間の固定システムと、圧力センサーと、押し出される材料を含むレセプタクルに固定された底端とを特徴とする、半固体塊押し出しにおける3Dプリンターのための圧力ゲージプランジャー。
【請求項2】
前記シリンダー間の固定システムは、異なる形状の2つの開口部および固定ネジを介すか、あるいはその間で1cmの最大変位範囲で前記シリンダー間の変位を可能にするネジ山のあるセットタブのシステムを介して実装される、請求項1に記載のプランジャー。
【請求項3】
前記圧力センサーは、前記押し出し圧力データの連続的な記録を可能にする前記可動シリンダーと前記中央シリンダーとの間に位置する歪みゲージである、請求項2に記載のプランジャー。
【請求項4】
1セットの6~10個のネジおよびシリンジまたは予め負荷されたカートリッジが挿入される1セットの溝に基づく固定システムを介して、従来のシリンジ用プランジャーおよび予め負荷された印刷カートリッジの両方の底端を介して取り付け可能である、請求項3に記載のプランジャー。
【請求項5】
前記押し出し圧力を連続的に記録し、かつ前記印刷される塊の品質制御を監視する、請求項1~4のいずれか1項に記載のプランジャー圧力計を特徴とする医薬用錠剤のための3D印刷プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半固体塊の3D印刷の領域に含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在3D印刷は、製薬技術および医薬品剤形の生産などの各種分野の小規模工業生産におけるその汎用性により、非常に重要な役割を担っている。この技術は、薬物の開発および製造における長い期間および莫大なコストを減らすという目標と共に発展してきた(Jamrozら、2018)。製薬技術の分野では、3D印刷のための3つの技術、すなわち熱溶解積層法(FDM)、直接押し出し、およびゲル押し出し(半固体押し出しすなわちSSE)が傑出している。後者では、半固体材料(ゲルまたはペースト)は圧縮空気圧により開口部、シリンジ用プランジャーまたはウォームネジを通り抜ける。製薬産業では、生産される全ての医薬品剤形の質量均一性(モノグラフ2.9.5.、Royal Spanish Pharmacopeia)および含量均一性(モノグラフ2.9.6.、Royal Spanish Pharmacopeia)を保証し、それにより異なる監督官庁(AEMPS、EMA、FDAなど)の薬局方の要件に応じることが重要である。3D印刷技術では有効成分の量は、印刷圧力の制御と共に各生産バッチの医薬品剤形のそれぞれの生産において正確な量の材料、ひいてはそれらの中の有効成分の用量を分注することを保証する押し出し体積によって決定される(Zidanら、2019)。固体材料による3D印刷の技術の中には、印刷装置内の圧力を監視することができる医薬組成物を調製するためのシステムが存在する(米国特許出願公開第2020338009号)。
【0003】
現在のところ、半固体塊押し出しの最先端技術ではこの制御を行うことができず、圧力は印刷プロセスにおいて重大なパラメータであるため、これは重要な課題とみなされている(Zidanら、2019)。
【0004】
参考文献
Jamroz W,Szafraniec J,Kurek M,Jachowicz R.「製薬および医療用途における3D印刷(3D printing in pharmaceutical and medical applications).Pharm Res.2018;35(9):1-22.
Zidan A,Alayoubi A,Coburn J,Asfari S,Ghammraoui B,Cruz CNら.「修正放出錠剤の3D印刷のための薬物が添加されたペーストの押し出し性分析(Extrudability analysis of drug loaded pastes for 3D printing of modified release tablets).Int J Pharm[インターネット].2019;554(2018年11月):292-301.https://doi.org/10.1016/j.ijpharm.2018.11.025から入手可能.
Agencia Espanola de Medicamentos y Productos Sanitarios[スペインの薬物および健康製品局(Spanish Drug and Health Products Agency)].モノグラフ2.9.5.UNIFORMIDAD DE MASA DE LAS PREPARACIONES UNIDOSIS[単回用量製剤の質量均一性(Uniformity of mass of single-dose preparations)].Royal Spanish Pharmacopeia.2008
Agencia Espanola de Medicamentos y Productos Sanitarios.[スペインの薬物および健康製品局(Spanish Drug and Health Products Agency)].モノグラフ2.9.6.UNIFORMIDAD DE CONTENIDO DE LAS PREPARACIONES UNIDOSIS[単回用量製剤の含量均一性(Uniformity of content of single-dose preparations)].Royal Spanish Pharmacopeia.2008
【発明の概要】
【0005】
製薬産業および剤形の製造では、印刷される剤形のそれぞれにおける主要な有効成分の用量の均一性を保証する質量の単一性は基本である。
【0006】
SSE技術による3D印刷において使用される半固体塊はノズルを通り抜け、その流体力学的特性に応じて特定の挙動を示し、所与の圧力範囲のみにおいて直線的な流れを与える。剤形の印刷の場合、流れが直線的でない場合には用量誤差が生じる。
【0007】
この問題を解決するために、3D印刷プラットフォームにおいて正しい量の半固体材料がマイクロ押し出しまたは半固体押し出し(SSE)によって分注されることを保証するために、異なる体積のシリンジ型のシリンダー形ディスペンサーに適応可能であり、かつ印刷プロセス全体を通して印加される圧力を測定することができるプランジャーを設計した。
【0008】
本発明の主題であるプランジャーには、所望の3次元の形態を得るために印刷プラットフォームエンジンがそこに印加する圧力、ひいてはプロセス全体を通して押し出される塊に印加される圧力を連続的に測定することができる歪みゲージが備えられている。
【0009】
本発明すなわちプランジャーの測定機器化により、以下に概説されている一連の利点が得られる。
・使用される塊のぞれぞれの連続的な流体力学的プロファイリングを可能にし、結果として印刷が開始する前に印刷パラメータを調整することを可能にする
・分注シリンダーのシリンジ型ノズルを通る半固体塊の流れが一貫しており、従って押し出し体積、ひいては用量が正確であることを保証する
・印刷プラットフォームの個別化されたファームウェアを用いて、当該プロセスの連続的な制御を達成することができ、かつ当該プロセス中に補正を行うことができる
・当該流れにおける誤差(印刷圧力の突然の低下)またはノズル内部での凝固(印刷圧力の突然の上昇)を生じさせる場合がある塊の内部の空気の存在などの生じ得る印刷誤差を検出することが可能になる。これにより、これらの誤差のいくつかが記録された3次元の形態を破棄し、かつ生産される全てのバッチにおける各剤形の印刷プロセス中に設計品質を保証することができる
【0010】
上で説明した全ての理由のために、本発明は、製薬産業だけではなく組織バイオプリンティングならびに特に食品、製薬(sic)およびセラミック産業においても、半固体塊が使用される場合に各バッチおよび生産バッチ間で均一な用量を必要とする3D印刷の分野において直接的な用途を有する。
【0011】
本明細書において提供されている説明を補完するため、および本発明の特性のより深い理解を達成するのを助けるために、単に例示を目的とするものであってどんな限界も示さない前記説明の必須部分として一連の図が添付されており、それらは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】3D印刷プラットフォームのための圧力計プランジャーの斜視図。前記測定機器化されたプランジャーの異なるパーツ、すなわち可動シリンダー(1)、中央シリンダー(2)、3Dプラットフォームに固定するためのフラップ(3)、本発明を任意のシリンジ用プランジャーまたは分注シリンダーに適合させるためのネジ(4)、可動シリンダー(1)と中央シリンダー(2)との間の固定システムのための円形開口部(5)、圧力センサーコネクター(6)、可動シリンダー(1)と中央シリンダー(2)との間の固定システムのための楕円形開口部(12)が示されている。
【
図2】3D印刷プラットフォームにおいて使用されるシリンジに適応させるように作り出された本発明の好ましい実施形態の斜視図。この図に示されている要素は、可動シリンダー(1)、中央シリンダー(2)、3Dプラットフォームに固定するためのフラップ(3)、圧力センサーコネクター(6)、可動シリンダー(1)と中央シリンダー(2)との間の固定システムのためのネジ(7)、3D印刷プラットフォームにおいて使用されるシリンジ(8)。
【
図3】中央シリンダーの縦断面。この図に示されている要素は、中央シリンダー(2)、可動シリンダー(1)と中央シリンダー(2)との間の固定システムのための円形開口部(5)、圧力センサーコネクター(6)、伸び計との接続ケーブル(9)、可動シリンダーのための中央シリンダーのレセプタクル(10)、伸び計(11)である。
【
図4】100個超の医薬品剤形の3D印刷中に本発明を使用して得られたデータ点の分散のグラフ表示。検出された圧力(N.cm
-2)(sic)は、X軸上の時間(秒)に対してY軸上に示されている。押し出し始点(13)、供給速度補正および圧力上昇点(14)、空気検出および突然の圧力降下点(15)ならびに押し出し停止点(16)。
【
図5】Royal Spanish Pharmacopeiaの要件に従った、2バッチの剤形の印刷についての比較試験の結果。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の主題であるプランジャー(
図1)は、4つの必須パーツ、すなわち可動シリンダー(1)、中央シリンダー(2)、圧力センサー(11)およびネジ式固定領域(4)からなる。
【0014】
好ましい実施形態(
図2)では、中央シリンダー(2)および可動シリンダー(1)は、ネジ(7)を用いて固定システムを介して接続されている。可動シリンダーは、そこに圧力をかけるプランジャーを3D印刷プラットフォームのレールに接続するのを可能にするタブ(3)を有する。中央シリンダーの端部に、本発明を主要な有効主成分または他の物質が予め充填されたカートリッジなどの任意のシリンジ用プランジャーまたは分注シリンダーに適合させるのを可能にする1セットの6~10個のネジ(4)が存在する。
【0015】
好ましい実施形態では、本プランジャーは印刷プロセス中に押し出される半固体塊(ゲルまたはペースト)を含むシリンジ(8)に適合されている。本実施形態では、本発明の2つの主要パーツ(1)および(2)はネジ(7)を用いて結合されている。中央シリンダーの開口部(5)は円形であり、ネジ(7)と同じ直径を有し、可動シリンダーの開口部(12)は楕円形の形状を有し、どちらのパーツも取り付けられているが固定されていないままであり、印刷プラットフォームがシリンダーに圧力をかけた際に可動シリンダー(1)が中央シリンダー(10)のレセプタクル内を下降するのを可能にする。この接続は0.1~0.95mmの範囲で両パーツ間での動きを可能にし、これにより押し出される塊に加えられる圧力を変えることが可能になる。
【0016】
中央シリンダー(2)の最下部において、使い捨てシリンジ用プランジャー(7)をネジ(4)としっかりと接続させると、このプランジャーはシリンジ内部にある押し出される塊と接触する。可動シリンダーが中央シリンダーのレセプタクル(10)内を下降する間に、圧力がその基部に印加され、これは前記基部に取り付けられた応力ゲージ(11)によって検出される。
【0017】
このセンサーは、特定の圧力に曝された場合にそれらの通常の抵抗値を変化させる特定の材料が有する性質である圧抵抗効果に基づいており、従って、より大きい圧力はより小さい電気抵抗を意味する。記録された電圧と印加された圧力との関係を確立するために、この較正は重量および反復測定値の標準セットを用いて、線形応答が得られる圧力範囲に補正される。
【0018】
当該センサーはオス型2ピン引掛コネクター(6)を介して電気抵抗回路に接続されており、これはArduino(登録商標)型マイクロコントローラを有するプレートと共に、そのような目的のために作り出されたウェブソフトウェアのおかげで後で解釈するために記憶することができるデータの連続的な記録を可能にする。このソフトウェアは、特定の予め確立された圧力限界を克服し、コマンドを送信して印刷プラットフォームに一体化されたサーバのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して供給速度を変えることにより調整を適用することができる。これにより一定の圧力および線形の印刷フローが得られる。
【0019】
本発明により、非常に減少したサイズ(4.0mm×1.5mm)であって、たった25mgの重量で、Royal Spanish Pharmacopeiaによって提案されている要件、すなわち単回用量製剤の質量の均一性(モノグラフ2.9.5.、Royal Spanish Pharmacopeia)および単回用量製剤の含量均一性(モノグラフ2.9.6.,Royal Spanish Pharmacopeia)を満たす口腔内崩壊性医薬品剤形を調製することが可能である。
【0020】
標準的印刷プロセス(圧力計プランジャーを使用しない)を、圧力計プランジャーを用いた改良された印刷プロセスと比較する質量均一性試験により、第2の事例において必要な要件が満たされることが実証され、これは押し出しプロセスにおいて圧力の制御が存在しない場合には生じない(
図5)。
【0021】
本発明の別の実施形態では、可動シリンダー(1)と中心部分(2)との調整は、両方の部分が一緒に留まるが取り付けられない状態であるのを可能にするネジ山のあるセットタブを介して行われる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、圧力に対する直接フィードバックを行わせ、後で自己調節を行い、印刷プロセス中の供給速度を修正するプリンターのファームウェアを直接修正することができる。
【国際調査報告】