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特表2024-508584熱安定化導電性ポリマーコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】熱安定化導電性ポリマーコーティング
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20240220BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20240220BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 73/00 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 179/00 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240220BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240220BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L79/00 A
C08K3/105
C08K3/22
C08K5/00
C08G73/00
C09D5/24
C09D179/00
C09D7/63
C09D201/00
C09D183/04
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537661
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 AU2021051531
(87)【国際公開番号】W WO2022133526
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,660
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】511307096
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コール, トーマス マシュー
(72)【発明者】
【氏名】キンレン, パトリック ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルートン, エリック アラン
(72)【発明者】
【氏名】エスピリトゥ, マリア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM011
4J002DE046
4J002DE077
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE226
4J002DE236
4J002DH036
4J002DJ006
4J002DJ007
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002EG026
4J002EJ018
4J002EV068
4J002EW048
4J002EW068
4J002FD078
4J002FD206
4J002FD207
4J002GH00
4J038DJ002
4J038DL021
4J038HA176
4J038JA05
4J038KA06
4J038KA09
4J038KA12
4J038MA09
4J038NA20
4J038PC08
4J043PA02
4J043QB02
4J043RA08
4J043SA05
4J043SB01
4J043UA121
4J043XA19
4J043ZB47
(57)【要約】
本開示は、概して、導電性ポリマーを含むコーティング及び組成物に関する。本開示はまた、溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマー及び熱安定剤を含む熱的に安定なコーティング及び組成物、並びにコーティング及び組成物を調製するためのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体配合物であって、
- 有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、
- アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、
- 酸化防止剤から選択される第2の熱安定剤のうちの1つ又は複数と、
を含み、
1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、
ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する、
液体配合物。
【請求項2】
1つ又は複数の膜形成剤をさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
液体配合物であって、
- 有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、
- アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、
- 酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤と、
- 1つ又は複数の膜形成剤とからなり、
1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、
ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する、
液体配合物。
【請求項4】
アルカリ金属塩が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)のうちの1つ又は複数から選択される金属と、水酸化物、炭酸塩、ステアリン酸塩、ホウケイ酸塩、重炭酸塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、及びリン酸水素のうちの1つ又は複数から選択される金属の対イオンとを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アルカリ金属塩の金属の対イオンが、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、及びリン酸水素から選択される、請求項4に記載の配合物。
【請求項6】
アルカリ金属塩の金属がカルシウム(Ca)である、請求項4又は5に記載の配合物。
【請求項7】
アルカリ金属が約2μm未満の平均粒径を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
両性金属酸化物が、亜鉛、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、イットリウム、アルミニウム、又はケイ素の酸化物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
両性金属酸化物が亜鉛の酸化物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
両性金属酸化物が、任意選択的にポリマー分散剤で、表面処理されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が、約5wt%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
両性金属酸化物の量(配合物全体の重量%)が、配合物中に存在する場合、約3wt%未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項13】
1つ又は複数の第2の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が、約0.5wt%と約3wt%の間である、請求項1から12のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項14】
1つ又は複数の第2の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が、約1wt%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
酸化防止剤が、1つ又は複数のヒンダードフェノールから選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
1つ又は複数の酸化防止剤が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、n-オクタデシル(3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項17】
1つ又は複数の酸化防止剤が、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジドデシル3,3’-チオジプロピオネート、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項18】
ポリアニリン導電性ポリマーが、アニリンモノマーとプロトン酸とを重合することによりin-situで作製された有機溶媒可溶性ポリアニリン導電性ポリマー塩である、請求項1から17のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
ポリアニリン導電性ポリマーがポリアニリンスルホン酸塩である、請求項1から18のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項20】
ポリアニリンスル導電性ポリマーが、ポリアニリンメタンスルホン酸、ポリアニリンカンファースルホン酸、ポリアニリンp-トルエンスルホン酸、ポリアニリンドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から19のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項21】
ポリアニリン導電性ポリマーがポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩である、請求項1から20のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項22】
ドライフィルムコーティングである、請求項1から21のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項23】
ポリアニリン導電性ポリマーの量(配合物全体の重量%)が、約80wt%から約90wt%の間である、請求項1から22のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項24】
ポリアニリン導電性ポリマーの量(配合物全体の重量%)が、約80wt%から約85wt%の間である、請求項1から23のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項25】
ポリアニリン導電性ポリマーの量(有機溶媒中の重量%)が、約30wt%から約40wt%の間である、請求項1から24のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項26】
ポリアニリン導電性ポリマーの量(有機溶媒中の重量%)が約35wt%である、請求項1から25のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項27】
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が約5μm未満の粒径で提供される、請求項1から26のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項28】
ポリアニリン導電性ポリマーが有機溶媒中に溶解している、請求項1から27のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項29】
有機溶媒が芳香族有機溶媒から選択される、請求項1から28のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項30】
有機溶媒がトルエンである、請求項1から29のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項31】
有機溶媒が、約35から約99、約50から約90、又は約35から約60の間の量(配合物全体の重量%)で存在する、請求項1から30のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項32】
液体配合物中に存在する第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤のうちの1つ又は複数が、懸濁液又は固体として液体配合物に提供される、請求項1から33のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項33】
配合物中に存在する膜形成剤の量(配合物全体の重量%)が、約5wt%から約15wt%の間である、請求項2から32のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項34】
配合物中に存在する膜形成剤の量(配合物全体の重量%)が、約10wt%である、請求項2から33のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項35】
膜形成剤が、シリコーン又はポリシロキサンのうちの1つ又は複数から選択される、請求項33又は34に記載の配合物。
【請求項36】
有機溶媒中のポリアニリン導電性ポリマー塩からなる配合物を使用して形成されるコーティングよりも少なくとも5倍導電率の高い導電性コーティングを形成するために使用される、請求項1から35のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項37】
約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ、又は約5MΩ未満の抵抗を有するコーティングの形態である、請求項1から36のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項38】
1つ又は複数の分散剤をさらに含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項39】
約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、又は約300℃の温度で安定している、請求項1から38のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項40】
液体配合物を調製するための方法であって、
(i)アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、(ii)酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを、(iii)有機溶媒中に溶解したポリアニリン導電性ポリマーと混合して、液体配合物を形成する工程を含み、
ポリアニリン導電性ポリマーが、有機溶媒中でアニリンモノマーとプロトン酸を重合させることによりin-situで作製される有機溶媒可溶性ポリアニリン導電性ポリマー塩であり、
1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、
ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する、
方法。
【請求項41】
(iv)液体配合物中に1つ又は複数の膜形成剤を混合することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
有機溶媒に溶解したポリアニリン導電性ポリマーが、熱安定剤を添加する前に、約1μm未満の孔径のフィルタに通される、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
有機溶媒に溶解したポリアニリン導電性ポリマーが、熱安定剤を添加する前に、約0.005μmから約1μmの間の孔径のフィルタに通される、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
1つ又は複数のコーティング層を含む基材であって、コーティング層のうちの少なくとも1つが、請求項1から439のいずれか一項に記載の配合物を含む、基材。
【請求項45】
コーティングされていてもよい基材に適用されるコーティングであって、ポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される第2の熱安定剤のうちの1つ又は複数とを含み、
1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(固体膜の重量%)が約4wt%から約15wt%であり、
第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(固体膜の重量%)が約20wt%未満である、
コーティング。
【請求項46】
帯電防止コーティングである、請求項45に記載のコーティング。
【請求項47】
ポリシロキサンを含む、請求項45又は46に記載のコーティング。
【請求項48】
約1から約10μmの範囲の厚さを有する、請求項45から47のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項49】
有機溶媒中のポリアニリン導電性ポリマーからなる配合物を使用して形成されるコーティングよりも少なくとも5倍導電率の高い、請求項45から48のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項50】
(i)コーティングされていてもよい基材;
(ii)1つ又は複数の任意選択的な後塗り層;及び
(iii)請求項1から39のいずれか一項に記載の配合物又は請求項45から47のいずれか一項に記載のコーティングを含む、(i)と(ii)の間に位置する1つ又は複数の層
を含む、コーティング系。
【請求項51】
帯電防止コーティングである、請求項50に記載のコーティング系。
【請求項52】
ポリシロキサンを含む、請求項50又は51に記載のコーティング。
【請求項53】
基材が、金属、金属合金、ポリマー、複合材料、炭素繊維、ガラス繊維、又はケイ素ベースの材料から選択される、請求項45から49のいずれか一項に記載のコーティング、又は請求項50から52のいずれか一項に記載のコーティング系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、導電性ポリマーを含むコーティング及び組成物に関する。本開示はまた、溶液処理可能な導電性ポリマーを含む熱安定化コーティング及び組成物、並びにコーティング及び組成物を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンのような導電性ポリマーは、他の潜在的な用途の中でも特に、帯電防止コーティング及び腐食防止など、さまざまな用途の材料として近年大きな注目を集めている。現在、より高い熱安定性を有する導電性ポリマーコーティングなど、さまざまな用途でパフォーマンスを向上させた導電性ポリマーコーティングが求められている。
【0003】
一例として、非導電性ポリアニリンのエメラルジンベース(すなわちドープされていないもの)は450℃付近まで熱安定性があるが、導電性ポリアニリン(すなわちドープされたもの)の熱安定性は著しく低い。導電性ポリマーの熱安定性に対処し得る既存の技術は、限られており、いくつかの例では、ポリマーの自己ドーピングを含むドーパントの修飾を伴う。ドーパントを変更することの難しさは、導電性ポリマー処理可能な溶液を形成しなくなる可能性があることである。このため、この技術の用途は著しく限定される。
【0004】
ドーパントの使用によってもたらされるポリアニリン導電性ポリマーの物理的及び/又は電子的な改良を得るために、そして、高温で少なくとも一定期間導電性を保持するために、新規且つ代替的なポリアニリン導電性ポリマー組成物、コーティング、及びそのプロセスを提供する必要がある。
【0005】
本明細書に記載されている文書、行為、材料、装置、物品等に関する考察は、本開示の文脈を提供する目的のみのためのものである。これらの事項のいずれか又はすべてが、先行技術基盤の一部を形成するか、又は本願の各請求項の優先日より前に存在していたとして本開示に関連する分野における一般常識であったことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、コーティングの熱安定性を改善するために、ポリアニリン導電性ポリマーを含むコーティング組成物に適合する特定の薬剤を提供する。本開示はまた、さまざまな基材上のコーティングの調製のために容易に処理可能な、ポリアニリン導電性ポリマーと熱安定剤とを含む組成物を提供する。
【0007】
一態様では、溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、若しくはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤とを含む組成物が提供される。
【0008】
別の態様では、溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、若しくはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤と、任意選択的に膜形成剤と、任意選択的に1つ又は複数の添加剤とからなる組成物が提供される。
【0009】
別の態様では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを含む液体配合物であって、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する液体配合物が提供される。
【0010】
別の態様では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤と、1つ又は複数の膜形成剤とからなる液体配合物であって、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する液体配合物が提供される。
【0011】
別の態様では、液体配合物を調製するための方法であって、i)アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、(ii)酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤を、(ii)有機溶媒中に溶解した溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと混合する工程であって、ポリアニリン導電性ポリマーが、有機溶媒中でアニリンモノマーとプロトン酸を重合させることによりin-situで作製される有機溶媒可溶性ポリアニリン導電性ポリマー塩であり、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する、混合する工程を含む方法が提供される。
【0012】
別の態様では、1つ又は複数のコーティング層を含む基材が提供され、コーティング層の少なくとも1つは、本明細書に記載される任意の態様、態様、又はそれらの実施例による配合物を含む。
【0013】
別の態様では、コーティングされていてもよい基材に適用されるコーティングが提供され、コーティングは、本明細書に記載される任意の態様、態様、又はそれらの実施例による配合物を含む。
【0014】
別の態様では、以下を含むコーティング系が提供される:
(i)コーティングされていてもよい基材;
(ii)1つ又は複数の任意選択的な後塗り層;及び
(iii)本明細書に記載される態様、実施態様、又はその実施例による配合物を含む、i)と(ii)との間に位置する1つ又は複数の層。
【0015】
一実施態様では、上記の方法のポリアニリン導電性ポリマーコーティング又は使用は、本明細書に記載される任意の態様、実施態様、又はそれらの実施例によるコーティング組成物によって提供され得る。
【0016】
ここに記載されたいかなる態様も、別途明記しない限り、他の態様に準用されるものとする。
【0017】
本開示は、例示のみを目的としている本明細書に記載の特定の態様によって限定されるものではい。機能的に等価な製品、組成物及び方法は、明らかに、本明細書に記載されている開示の範囲内にある。
【0018】
本明細書を通じて、別途明記しない限り、また文脈上特に必要でない限り、単一の工程、物質の組成、工程の群、又は物質の組成の群への言及は、これらの1つ及び複数(つまり1つ以上)を包含するものとする。
【0019】
本開示の好ましい態様を、添付の図面を参照して、単なる例示として、さらに説明及び例示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一例による導電性ポリマーを調製するための連続フロープロセスの概略図である。
図2】本開示の一例による熱安定化導電性ポリマーコーティングを調製するためのプロセスを示すフロー図である。
図3】本開示のいくつかの実施例による熱安定剤を含む導電性ポリマーコーティングから形成された薄膜の写真画像を示す。
図4】150℃での加熱中に経時的にマルチメータで収集した、本開示のいくつかの実施例による熱安定剤を含有するPANI膜の抵抗測定値を提供する。
図5】本開示のいくつかの実施例によるTGAデータを提供する。
図6】本開示の実施例によるDNNSA(m/z 64、48、及び80)の熱脱スルホン化を示す代表的なTGA-MS曲線を提供する。
図7】S3(m/z 18)のTGA-MS曲線である。
図8】本開示の一実施例による空気及びN雰囲気下で加熱されたO2Tを含有するPANI-DNNSA膜の導電率データを示す。
図9】本開示のいくつかの例による、硬化雰囲気及び加熱雰囲気がその後の膜の熱安定性に及ぼす影響を示す。
図10】本開示のいくつかの実施例による破壊時間(マルチメータで確認)に基づくデータサマリを提供する。
図11】本開示の実施例によるZnO濃度による加熱下でのPANI薄膜破壊時間の変化を提供する。
図12】本開示のいくつかの実施例による熱安定剤を含む異なる量のシリコーン分散液(R-1009)を含有するサンプルについての膜抵抗の連続ロギングを示すグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、代替的で改良されたポリアニリン導電性ポリマー組成物を同定するために実施された調査、並びに任意の配合物、コーティング、及びそれらの製造方法及び使用方法に関する、以下のさまざまな非限定的な例を説明する。
【0022】
一般的な定義と用語
以下の記載中で添付の図面を参照するが、添付の図面は本書の一部を形成するものであり、例示のため、いくつかの態様で示される。他の態様を利用することができ、本開示の範囲を逸脱しない限り、構造的な変更を加えてよいことが理解される。
【0023】
本明細書で提供される定義に関して、別途記載がない限り、又は文脈から暗示されない限り、定義された用語及び語句は提供された意味を含む。さらに、別途明示的に記載がない限り、又は文脈から明らかな場合を除き、以下の用語及び語句は、当該技術分野の当業者によって獲得された意味を排除するものではない。定義は、特定の態様の説明を助けるために提供されるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、文脈により別途定められていない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0024】
本明細書で議論及び/又は参照されるすべての刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0025】
本開示を通じて、別途明記しない限り、また文脈上特に必要でない限り、単一の工程、物質の組成、工程の群、又は物質の組成の群への言及は、これらの1つ及び複数(つまり1つ以上)を包含するものとする。したがって、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の態様を含む。例えば、「a」への言及には、1つだけでなく2つ以上も含まれ;「an」への言及には、1つだけでなく2つ以上も含まれ;「the」への言及には、1つだけでなく2つ以上なども含まれる。
【0026】
当業者は、本明細書の開示が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、そのようなすべての変形及び修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書で個別に又は集合的に言及又は示されるすべての例、工程、特徴、方法、組成物、コーティング、プロセス、及びコーティングされた基材、並びに前記工程又は特徴のありとあらゆる組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。
【0027】
「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味に対する明示的なサポートを提供すると解釈されるものとする。
【0028】
別途指示されない限り、「第1の(first)」、「第2の(second)」などの用語は、本明細書では単に符号として使用されており、順序的、位置的、又は序列的な要件をこれらの用語が指し示す項目に課すことを意図するものではない。さらに、「第2」のアイテムに言及することは、より小さい数が振られたアイテム(例えば、「第1」のアイテム)及び/又はより大きい数が振られたアイテム(例えば、「第3」のアイテム)の存在を必要とするわけでもなく、除外するわけでもない。
【0029】
本明細書において、列挙されたアイテムと共に使用される「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、列挙されたアイテムのうちの1つ又は複数の種々の組み合わせが使用可能であり、必要とされ得るのは列挙されたアイテムのうちの1つだけであることを意味している。アイテムとは、特定の対象物、物品、又はカテゴリのことであり得る。言い換えると、「~のうちの少なくとも1つ」は、アイテムの任意の組み合わせ、又は任意の数のアイテムが列挙された中から使用され得ることを意味するが、列挙されたアイテムの全てが必要とされるわけではない。例えば、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、「アイテムA」、「アイテムAとアイテムB」、「アイテムB」、「アイテムAとアイテムBとアイテムC」、又は「アイテムBとアイテムC」を意味し得る。いくつかの場合には、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、「2個のアイテムAと1個のアイテムBと10個のアイテムC」、「4個のアイテムBと7個のアイテムC」、又は他の何らかの好適な組み合わせを意味し得る。
【0030】
明確にするために本明細書において別々の態様の文脈で説明されている特定の特徴も、単一の態様において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の態様の文脈で説明されているさまざまな特徴も、別々に又は任意の下位組み合わせで提供され得る。
【0031】
本明細書を通じて、本開示のさまざまな態様及び構成要素を範囲形式で示すことができる。範囲形式は、利便を目的として含められ、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。したがって、範囲の記載は、具体的に指示されない限り、その範囲内にある全ての可能な部分範囲(subrange)と、個々の数値とを具体的に開示しているものとみなすべきである。例えば、1から5といった範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から5、3から5などといった部分範囲と、整数が必要とされるか又は文脈から暗示される場合を除いて、例えば、1、2、3、4、5、5.5、及び6などといったこの範囲内の個別の及び部分的な数字とを、具体的に開示しているものとみなされるべきである。このことは、開示範囲の幅に関わらず当てはまる。具体的な数値が必要な場合は、明細書に記載される。
【0032】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含んでいる/含むこと(comprising)」などの変形例は、記載された要素、整数又は工程、又は要素、整数又は工程の群を含むが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0033】
本明細書を通じて、「本質的に~からなる」という用語は、特許請求される組成物の特性に重大な影響を及ぼし得る要素を除外することを意図している。
【0034】
本明細書における「~を含んでいる/含むこと(comprising)」、「~を含む(comprise)」、「~を含む(comprises)」という用語は、あらゆる例において、それぞれ「本質的に~からなっている(consisting essentially of)」、「本質的に~からなる(consist essentially of)」、「本質的に~からなる(consists essentially of)」、「~からなっている(consisting of)」、「~からなる(consist of)」、及び「~からなる(consists of)」という用語と任意に置換可能であることを意図している。
【0035】
ここで「約」という用語は、その用語に関連するあらゆる値又は値の10%の許容誤差を包含する。
【0036】
本明細書で使用される「硬化性」又は「硬化した」は、重合及び/又は架橋を誘導するために加熱すること;重合及び/又は架橋を誘導するために光照射すること;及び/又は重合及び/又は架橋を誘導するために1つ又は複数の成分を混合することによって、硬化した又は硬化し得る(例えば、重合又は架橋)材料又は組成物を表す。「混合は、例えば、2つ以上の部品を組み合わせ、均質な組成物を形成するために混合することによって行うことができる。あるいは、2つ以上の部分を別々の層として提供し、界面で(例えば、自発的に、あるいはせん断応力を加えることによって)相互混合させて重合を開始させることもできる。
【0037】
「実質的に含まない」とは、概して、存在し得る微量の不純物を除き、組成物中にその化合物又は成分が存在しないことを指し、例えば、これは、組成物全体の重量%で、約1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、又は0.0001%未満の量であり得る。本明細書に記載の組成物はまた、例えば、組成物全体中のwt%で、約2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、又は0.001%未満、又は0.0001%未満の量の不純物を含み得る。
【0038】
ここで「重量%」は「wt%」と略記されることがある。
【0039】
導電性ポリマー組成物
本開示は、改善された安定性、特に高温での安定性を含む導電性コーティングの改良を提供することを対象とする。本開示は、ポリアニリン導電性ポリマーを含むコーティング組成物に適合し、コーティングに優れた熱安定性も提供する薬剤を同定することを対象とするさまざまな研究開発を対象とする。また、さまざまな基材に効果的なコーティングを調製するための容易に処理可能な組成物、例えば電子回路基板に使用するための溶液処理可能な帯電防止コーティングの開発にも取り組んだ。
【0040】
熱安定剤は、少なくとも本明細書に記載のいくつかの例によれば、ポリアニリン導電性ポリマーを含む溶液処理可能なコーティング組成物との使用に効果的な適合性を提供することもできる。熱安定剤は、少なくとも本明細書に記載のいくつかの例によれば、特にコーティングが高温の環境に存在する場合に、コーティング中に存在するポリアニリン導電性ポリマーの劣化を引き起こすプロセスを抑制することもできる。
【0041】
また、少なくとも本明細書に記載のいくつかの例によれば、1つ又は複数のポリアニリン導電性ポリマーを含むコーティング又は組成物への1つ又は複数の熱安定剤の添加は、以下のために使用され得ることが見出された:
(a)ドーパントの有害な劣化及び/又は損失を制限又は低減すること、及び/又は
(b)導電性ポリマー中のポリマー鎖の酸化を限定すること。
【0042】
例えば、ポリアニリンスルホン酸塩(例えば、PANI-DNNSA)に関しては、本明細書に記載されるような1つ又は複数の熱安定剤を導入することにより、以下を抑制、制限、又は低減できることが見出されている:
(i)スルホン酸塩(例えばDNNSAドーパント)の脱スルホン化;及び/又は
(ii)PANIポリマー鎖の酸化。
【0043】
例えば、ポリアニリンスルホン酸塩(例えば、PANI-DNNSA)に関しては、アルカリ金属塩、及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、本明細書に記載の酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを導入することにより、以下を抑制、制限、又は低減できることが見出されている:
(i)スルホン酸塩(例えばDNNSAドーパント)の脱スルホン化;及び/又は
(ii)PANIポリマー鎖の酸化。
【0044】
また、本明細書に記載の少なくともいくつかの実施例による1つ又は複数の熱安定剤は、1つ又は複数の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、任意選択的に1つ又は複数の膜形成剤(例えば、シリコーン分散液中のPANI-DNNSA)とを含むコーティングに使用されて、優れた熱安定性及び望ましい機械的特性を有する容易に処理可能なコーティングを形成できることが見出された。
【0045】
本明細書に記載の熱安定剤と、その組成物及びコーティングとの少なくともいくつかの態様又は実施例によれば、約150℃の温度で、1つ又は複数の導電性ポリマー(例えば、PANIスルホン酸塩)を含む組成物又はコーティングの電気抵抗が、少なくとも1週間にわたって約100MΩ未満のままであるような熱安定性が提供され得る。熱安定性は、空気、真空、又は不活性雰囲気(窒素など)の環境下で提供され得る。組成物及びコーティングは、少なくとも本明細書に記載されるいくつかの態様又はその実施例によれば、約150℃以下でも安定であり得る。
【0046】
一態様、実施態様、又は実施例では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、若しくはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤とを含む組成物が提供される。
【0047】
別の態様、実施態様、又は実施例では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、若しくはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤と、任意選択的に膜形成剤と、任意選択的に1つ又は複数の添加剤とからなる組成物が提供される。
【0048】
組成物は、液体組成物(例えば液体配合物)又はドライフィルムコーティングである。一例では、組成物は液体組成物である。
【0049】
別の態様、実施態様、又は実施例では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを含む液体配合物であって、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する液体配合物が提供される。
【0050】
液体配合物は、1つ又は複数の膜形成剤をさらに含み得る。
【0051】
別の態様、実施態様、又は実施例では、有機溶媒中の溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤と、1つ又は複数の膜形成剤とからなる液体配合物であって、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤が有機溶媒中に存在し、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する液体配合物が提供される。熱安定剤を添加した後でも、ポリアニリン塩は有機溶媒に溶解したままである。
【0052】
導電性組成物及びコーティング
導電性コーティングは従来、銀又はカーボンブラックなどの固体の導電性フィラーに依存しており、導電性粒子が接触して電子がコーティング全体に流れることができるように、固体の浸透、又は十分な体積のコーティングのフィラーによる取り込みが必要である。浸透に達しない場合、樹脂(多くの場合、絶縁体又は誘電体)が導電性粒子間の空間を占め、電子はコーティング全体を流れなくなる。球状粒子の場合、コーティングの体積は>28%必要である。固体形態の導電性ポリマーも、導電性コーティングを作製するための基準を満たす必要がある。導電性ポリマーが可溶性であるコーティングの樹脂系に可溶性導電性ポリマーが分散すると、(ポリマーがコイル状に巻かれた目立たないボールとは対照的に)得られる溶液は、極めて高いアスペクト比で浸透に達する導電性材料の体積をはるかに少なくすることができる。
【0053】
さまざまな添加剤の添加前に、アニリンモノマーをポリアニリン(PANI)に重合させ、その後、水/アルコール溶媒系に溶解させて導電性塩を作成できることが、従来技術から知られている。PANIの溶解中に均一な粒子径を達成することは非常に困難であることが理解されよう。PANIのかなりの部分が凝集体を形成し(つまり、ポリマーが目立たないボール状に巻かれる)、その結果、導電性が低下する。そのため、得られたPANI-DNNSA溶液は、PANI-DNNSAと未溶解のPANI凝集体の混合物を有することになる。このような溶液に添加剤を含めると、さらに大きな凝集物及び/又は均一でない分散が生じる。この種のプロセスは、特に導電性フィルム/コーティングの形成中には、工業的に信頼性が低い。さらに、かなりの試行錯誤をしなければ、必要な添加物の量を予測することも難しくなる。
【0054】
本発明者らは、有機溶媒中で、アニリンとドーパントを重合させることによってin-situで形成されるPANI-DNNSAが、高導電性のPANI-DNNSA溶液を提供することを有利に発見した。より高い導電性は、有機溶媒へのポリマー塩の均一な分布及びより良い溶解の結果であることが予想外に発見された。いくつかの実施態様又は実施例では、ポリアニリン導電性ポリマー溶液は、有機溶媒中に溶解したポリアニリン塩を95%超有する。言い換えれば、95wt%超のPANI-DNNSAは有機溶媒に溶解しており、粒子や凝集体として存在したり、ポリマーの目立たないボール状に巻かれたりしていない。
【0055】
予め形成されたPANI-DNNSA塩、すなわち、最初に形成され、後に有機溶媒系に溶解される塩の欠点の少なくとも1つは、過剰な塩(例えば、DNNSA)がポリマー骨格と反応して熱不安定性をもたらす可能性があることであることが理解されよう。本発明者らは、驚くべきことに、ポリマー(例えば、PANI)又はポリマー塩(例えば、PANI-DNNSA)を最初に単離する必要なく、熱的に安定なPANI-DNNSA溶液を調製する組成物及びプロセスを見出し、ここで、ポリアニリン導電性ポリマー溶液は、有機溶媒中に溶解したポリアニリン塩の95%超を有する。
【0056】
熱安定剤
熱安定剤は、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。本発明者らは、アルカリ金属塩、及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、本明細書に記載される酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを導入することにより、スルホン酸塩(例えば、DNNSAドーパント)の脱スルホン化;及び/又はPANIポリマー鎖の酸化を抑制、制限、又は低減することができ、また、ポリアニリン導電性ポリマーが溶解している有機溶媒からのポリアニリン導電性ポリマーの沈殿を抑制、制限、又は低減することができる。本明細書に記載される少なくともいくつかの実施態様又は実施例による本開示の1つ又は複数の利点は、ポリアニリン導電性ポリマーが有機溶媒に溶解し、1つ又は複数の熱安定剤、任意選択的な膜形成剤、及び任意選択的な分散剤及び/又は添加剤を添加した後でも、有機溶媒中に溶解したままであることである。
【0057】
一例では、組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤、少なくとも1つのアルカリ金属塩、及び少なくとも1つの両性金属酸化物から選択される熱安定剤を含む。別の例では、組成物は少なくとも1つのアルカリ金属塩と少なくとも1つの酸化防止剤とを含む。別の例では、組成物は少なくとも1つのアルカリ金属塩を含む。
【0058】
一例では、1つ又は複数の熱安定剤は、約0.1から約9wt%;約0.5から約7wt%;又は約1から約6wt%の範囲の量(組成物全体のwt%)で組成物中に存在する。別の例では、熱安定剤の合計量(組成物全体のwt%)は、約0.5から約7wt%;約1から約7wt%;又は約2から約7wt%の範囲で提供される。熱安定剤の記載された量について、導電性ポリマー組成物は、任意選択的に、液体配合物の形態又はドライフィルムコーティングの形態である。
【0059】
一例では、配合物は、1つ又は複数の第1の安定剤を含む。別の例では、配合物は、1つ又は複数の第1の安定剤と、1つ又は複数の第2の安定剤とを含む。例えば、配合物は、アルカリ金属塩、及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤とを含む。
【0060】
一例では、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)は、約2wt%から約7wt%である。例えば、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)は、約5wt%である。
【0061】
一例では、1つ又は複数の第2の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)は、約0.5wt%と約3wt%の間である。一例では、1つ又は複数の第2の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)は、約1wt%である。
【0062】
一例では、両性金属酸化物の量(配合物全体の重量%)は、配合物中に存在する場合、約3wt%未満である。
【0063】
他の例では、熱安定剤のうちの1つ又は複数(又はすべての熱安定剤)は、少なくとも約0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%、5.5wt%、6wt%、6.5wt%、7wt%、7.5wt%、8wt%、8.5wt%、若しくは9wt%の量;又は0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、3.5wt%、4wt%、4.5wt%、5wt%、5.5wt%、6wt%、6.5wt%、7wt%、7.5wt%、8wt%、8.5wt%、若しくは9wt%未満の量で;及びその任意の2つの上限及び/又は下限の量の組み合わせによって提供される任意の範囲の量(配合物全体の重量%)で存在する。一例では、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量量(配合物全体の重量%)は、約9wt%である。
【0064】
別の例では、組成物は、本明細書に記載される任意の態様又はその実施例によると、1つ又は複数の導電性ポリマーと、1つ又は複数の熱安定剤とを含む液体配合物である。別の例では、1つ又は複数の熱安定剤は、懸濁液又は固体として液体配合物に添加される。別の例では、液体配合物中に存在する第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤のうちの1つ又は複数は、懸濁液又は固体として液体配合物に提供される。
【0065】
アルカリ金属塩
一例では、少なくとも1つのアルカリ金属塩が、本明細書に記載される組成物中に存在する。
【0066】
一例では、アルカリ金属塩は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、又はカリウム(K)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、及び/又はカルシウム(Ca)のカチオンを含む。
【0067】
一例では、少なくとも1つのアルカリ金属塩中の金属カチオンの対イオンは、水酸化物、炭酸塩、ステアリン酸塩、ホウケイ酸塩、炭酸水素、メタケイ酸塩、リン酸塩、及び/又はリン酸水素を含む。別の例では、アルカリ金属塩中の金属カチオンの対イオンは、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、及び/又はリン酸水素を含む。さらに別の例では、アルカリ金属塩中の金属カチオンの対イオンは、炭酸塩を含む。アルカリ金属塩の例としては、限定されないが、炭酸カルシウム(例えば、Omyacarb(登録商標)1μm)(表面処理されていてもよい(例えば、Omyacarb(登録商標)1T 1μm));ホウケイ酸カルシウム(例えば、Halox(登録商標));ステアリン酸カルシウム;及び/又はケイ酸カルシウムCaSiO4又はウォラストナイトが含まれる。
【0068】
一例では、アルカリ金属塩は、約0.5μmから約5μm;約0.5μmから約4μm;約0.5μmから約3μm;約0.5μmから約2μm;又は約0.5μmから約1μmの範囲の平均粒径を有する。別の例では、アルカリ金属塩は、約5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、又は0.5μm未満の平均粒径を有する。例えば、アルカリ金属塩は、約2μm未満の平均粒径を有する。好ましい例では、アルカリ金属塩は、約1μm未満の平均粒径を有する。
【0069】
例えば、炭酸カルシウムである少なくとも1つのアルカリ金属塩は、本明細書に記載される液体配合物である組成物中に存在し、炭酸カルシウムは1μmの平均粒径を有する。
【0070】
両性金属酸化物
一例では、少なくとも1つの両性金属酸化物が、本明細書に記載される導電性ポリマー組成物中に存在する。
【0071】
別の例では、導電性ポリマー組成物は、亜鉛、セリウム、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、イットリウム、アルミニウム、及び/又はケイ素の酸化物である少なくとも1つの両性金属酸化物を含む。例には、ジルコニア(ZrO)、酸化チタン(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、カルボシルフュームドシリカ、酸化ケイ素(例えば、TS-720)、酸化亜鉛及び/又は酸化セリウムが含まれるが、これらに限定されない。別の例では、組成物は、酸化亜鉛(ZnO)及び/又は酸化セリウム(CeO)を含む。さらに別の例では、組成物は酸化亜鉛を含む。
【0072】
別の例では、両性金属酸化物は、約5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、950nm、900nm、850nm、800nm、750nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、50nm、40nm、30nm、20nm、又は10nm未満である平均粒径を有する。あるいは、両性金属酸化物は、約10nmから約100nm;約20nmから約90nm;約30から約80nm;又は約60から約70nmの範囲の平均粒径を有する。例えば、両性金属酸化物は、約30nmから約50nmの範囲の平均粒径を有する。
【0073】
一例では、両性金属酸化物の1つ又は複数は表面処理され、例えば、ポリマー分散剤を含む表面処理が施される。本明細書に記載される少なくともいくつかの実施態様又は実施例による本開示の1つ又は複数の利点は、表面処理が金属酸化物の表面を疎水性にし、分散を助けることができることであることが理解されよう。
【0074】
酸化防止剤
一例では、少なくとも1つの酸化防止剤が、本明細書に記載される導電性ポリマー組成物中に存在する。別の例では、少なくとも2つの酸化防止剤(例えば、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤)が、本明細書に記載される導電性ポリマー組成物中に存在する。1つ又は複数の一次酸化防止剤が、ペルオキシラジカルのようなラジカルを除去するラジカルスカベンジャーとして作用するために、添加され得る。一次酸化防止剤は犠牲的なものであり得、部分的又は完全に消費されると、導電性ポリマー組成物中に存在する1つ又は複数のポリマーが分解し始める場合がある。一次酸化防止剤の作用によって形成され得る有機過酸化物のような有害な種を除去するために、1つ又は複数の二次酸化防止剤が添加され得る。
【0075】
酸化防止剤の例には、プロピオネート基を含んでいてもよい置換(ヒンダード)フェノール、ホスファイトP(OR)(各Rは独立してアリール基又はフェニル基である)チオエーテル、チオール、ジスルフィド及びそれらの組み合わせを含む有機硫黄などが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
一例では、導電性ポリマー組成物は、少なくとも1つの3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基を含む少なくとも1つのヒンダードフェノール酸化防止剤を含む。
【0077】
別の例では、導電性ポリマー組成物は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(例えば、Irganox 1010)、n-オクタデシル(3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート)(例えば、Irganox 1076)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート)(例えば、Irganox 245)及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の化合物を含む。
【0078】
さらに別の例では、組成物は、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート(例えば、Doverphos 9228)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、Doverphos S-682)、ジドデシル3,3’-チオジプロピオネート、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、Irganox 168)、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の化合物を含む。
【0079】
溶媒
本明細書で開示される導電性ポリマー組成物は、1つ又は複数の溶媒中に存在する。1つ又は複数の溶媒は、本明細書に記載される組成物中の1つ又は複数の導電性ポリマーのための流動性担体を提供するように選択され得る。
【0080】
本明細書に記載される導電性ポリマーは、溶液処理可能な導電性ポリマーを提供することが理解されよう。「溶液処理可能な」導電性ポリマーとは、1つ又は複数の溶媒に溶解する導電性ポリマーを指し、例えば、導電性ポリマーの少なくとも約95wt%が1つ又は複数の溶媒に溶解する。例えば、ポリアニリン導電性ポリマー溶液は、1つ又は複数の溶媒(例えば、トルエンなどの有機溶媒)に溶解したポリアニリン塩を95%超有する。溶媒は、本明細書に記載される1つ又は複数の有機溶媒によって提供され得る。別の例では、有機溶媒は、芳香族有機溶媒である。別の例では、有機溶媒は、非水性有機溶媒である。
【0081】
有機溶媒は、芳香族、ハロゲン化芳香族(例えば塩素化芳香族)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、塩素化脂肪族炭化水素)、脂肪族炭化水素、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、エステル、アルコール、ケトン、及びそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。アルコールは、少なくとも中級アルキル鎖又はアリール基を有する水非混和性アルコールであり得ることが理解されよう。水非混和性アルコールは、n-ブタノール又はより大きなアルキル鎖アルコールであり得る。ケトンは、メチルエチルケトン又はより大きなアルキル鎖を有するケトン等の、少なくとも中鎖のケトンを有する水非混和性ケトンであり得ることが理解されよう。
【0082】
有機溶媒は、芳香族、ハロゲン化芳香族、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、エステル、アルコール、ケトン、及びそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。別の例では、有機溶媒は、脂肪族又は芳香族炭化水素(例えばトルエン及び/又はナフサ)から選択される。
【0083】
別の例では、有機溶媒は、トルエン、キシレン、メシチレン、シメン、テルペン、及びそれらの組み合わせから選択される非水性有機溶媒である。別の例では、有機溶媒は、芳香族炭化水素、例えばトルエン及びキシレンから選択される非水性有機溶媒である。別の例では、有機溶媒は、環状アミド、例えばn-メチル-2-ピロリドンである。
【0084】
有機溶媒はまた、酸ドーパント(すなわち、プロトン酸)を溶解するように選択することができ、例えばDNNSAのプロトン酸は、グリコールエーテル(例えば、2-ブトキシエタノール)、炭化水素(例えばヘプタン)、又は芳香族炭化水素(例えばトルエン及び/又はキシレン)などの有機溶媒中に提供され得る。一例では、酸ドーパントはトルエンに溶解する。
【0085】
適切な例示的な液体溶媒には、キシレン、トルエン又はアルキルナフタレン等の芳香族;クロロベンゼン、クロロエチレン又は塩化メチレン等の塩素化芳香族又は塩素化脂肪族炭化水素;シクロヘキサン又はパラフィン(例えば鉱油留分)等の脂肪族炭化水素;ブタノール、イソブタノール又はグリコール等のアルコール、並びにこれらのエーテル及びエステル、例えば2-ブトキシエタノール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン等のケトンが含まれる。例えば、有機溶媒はトルエンである。ポリアニリン又はポリアニリン塩は、有機溶媒、すなわちトルエンに溶解することが理解されよう。例えば、ポリアニリン導電性ポリマー溶液は、有機溶媒中に溶解したポリアニリン塩を95%超有する。
【0086】
いくつかの例では、有機溶媒は、約800ppm未満の水、例えば約700ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、約400ppm未満、約300ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の水を含有し得る。無水溶媒を使用することもできる。例えば、有機溶媒は、実質的に水を含まない。
【0087】
溶媒は、偶発的な不純物を含んでいてもよく、例えばその量(配合物全体のwt%)は約2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.001wt%未満である。
【0088】
溶媒は、(配合物又はその成分の総重量を基準として)約99wt%、98wt%、95wt%、90wt%、85wt%、80wt%、75wt%、70wt%、65wt%、60wt%、55wt%、50wt%、45wt%、又は40wt%未満の量で存在し得る。一例では、組成物は、1つ又は複数の有機溶媒を含み、ここで、有機溶媒の量は、約35から約99wt%;約50から約90wt%;又は約35から約60wt%の範囲の量(配合物全体のwt%)で存在する。別の例では、有機溶媒の量は、少なくとも約5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%;又は95wt%の量(配合物全体のwt%)で存在する。溶媒は、これらの上限及び/又は下限値のうちの任意の2つの値によって規定される範囲内にすることができる。
【0089】
導電性ポリマー
本明細書に記載される組成物は、1つ又は複数の導電性ポリマーを含む。導電性ポリマーは、溶液処理可能な導電性ポリマーを提供し得ることが理解されよう。「溶液処理可能な」導電性ポリマーとは、1つ又は複数の溶媒に可溶な導電性ポリマーを指す。例えば、導電性ポリマー塩が提供され得、ここで、少なくとも約0.1.0.5、1、5、10、25、30、35、40、45、又は50グラムの導電性ポリマー塩が、標準室温及び圧力で測定した場合、100mLの有機溶媒に可溶である。
【0090】
導電性ポリマーは共役鎖構造を有する持つポリマーであることが理解されよう。別途定義されない限り、導電性ポリマーは、電気を伝導することができる任意の有機ポリマー又は有機コポリマーを指し、例えば、半導体であるポリマーを含み得ることが理解されよう。導電性ポリマーは、所望のコンダクタンス特性を提供するためにさらなる処理を必要とし得る。導電性ポリマーの一例はポリアニリン塩である。
【0091】
導電性ポリアニリンには、プロトン酸がドープされているとともにポリアニリン塩の形態である高分子ポリアニリンが含まれることが理解されよう。
【0092】
ポリアニリン導電性ポリマーは、例えば、ポリアニリンエメラルジン塩であり得る。一例では、溶液処理可能な導電性ポリマー塩は、溶液処理可能な導電性ポリマースルホン酸塩である。塩は、ジノニルナフタレンスルホネート(DNNSA)、メタンスルホネート(MSA)、カンファースルホネート(CSA)、p-トルエンスルホネート(TSA)、ドデシルベンゼンスルホネート(DBSA)、ジノニルナフタレンスルホネート(DNNSA)、ポリスチレンスルホネート、又はそれらの組み合わせであり得る。一例では、導電性ポリマー塩はジノニルナフタレンスルホン酸塩(DNNSA)である。別の例では、導電性ポリマー塩は有機溶媒可溶性の導電性ポリマー塩である。有機溶媒可溶性の導電性ポリマー塩が提供され得、ここで、少なくとも約0.1.0.5、1、5、10、25、30、35、40、45、又は50グラムの導電性ポリマー塩が、標準室温及び圧力で測定した場合、100mLの有機溶媒(例えばトルエン)に可溶である。
【0093】
本明細書に記載されるいくつかの態様又は実施例によれば、導電性ポリマーは溶液処理可能なポリアニリンエメラルジン塩である。溶液処理可能なポリアニリン塩は、溶液処理可能なポリアニリンスルホン酸塩であり得る。ある態様又は実施例では、ポリアニリン塩はスルホネートであり得、スルホン酸は、メタンスルホン酸(MSA)、カンファースルホン酸(CSA)、p-トルエンスルホン酸(TSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、又はそれらの組み合わせであり得る。導電性ポリマーは、ポリアニリンメタンスルホン酸塩(PANI-MSA)であり得る。導電性ポリマーは、ポリアニリンカンファースルホン酸塩(PANI-CSA)であり得る。導電性ポリマーは、ポリアニリン-p-トルエンスルホン酸塩(PANI-TSA)であり得る。導電性ポリマーは、ポリアニリンドデシルベンゼンスルホン酸塩(PANI-DBSA)であり得る。導電性ポリマーは、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩(PANI-DNNSA)であり得る。
【0094】
ポリアニリンは、ロイコエメラルジン(白)、エメラルジン(緑)及びペルニグラニリン(青/紫)の3つの酸化状態になる可能性がある。以下の式1の繰り返し単位は、xを重合度の半分として提供する。
【0095】
ロイコエメラルジンは、完全に還元された状態ある(例:n=1、m=0)。ペルニグラニリンは、完全に酸化された状態で、アミン結合ではなくイミン結合を有する(n=0、m=1)。ポリアニリンは、これらの3つの状態の1つ又はそれらの混合物であり得る。ポリアニリンのエメラルジン形態(n=m=0.5)は、中性の場合はエメラルジン塩基(EB)と称されるが、プロトン化された場合は、酸によってプロトン化されたイミン窒素を含むエメラルジン塩(ES)と称される。プロトン化は、そうでなければトラップされたジイミノキノン-ジアミノベンゼン状態の非局在化を促進する。
【0096】
一例では、導電性ポリマーは、導電性ポリマー塩、例えばスルホン酸塩又はホスホン酸塩である。一例では、導電性ポリマーはポリアニリンスルホン酸塩である。塩の例には、メタンスルホン酸の塩、カンファースルホン酸の塩、p-トルエンスルホン酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネート、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0097】
別の例では、組成物は、ポリアニリンメタンスルホン酸、ポリアニリンカンファースルホン酸、ポリアニリンp-トルエンスルホン酸、ポリアニリンドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホネート、及びそれらの組み合わせから選択されるポリアニリンスルホン酸塩を含む。
【0098】
さらに別の例では、導電性ポリマーは、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩であるポリアニリンスルホン酸塩である。
【0099】
ポリアニリン導電性ポリマーは、有機溶媒中で、アニリンモノマーをプロトン酸と重合させることにより、in-situで作製される有機溶媒可溶性のポリアニリン塩である。
【0100】
本明細書に記載される組成物はポリアニリン塩を含むことが、理解されよう。ポリマー(例えば、ポリアニリン(PANI))は、一般に、塩の形態(例えば、PANI-DNNSA)に変換されるまで導電性ではない。
【0101】
いくつかの態様又は実施例では、ポリアニリン又はその任意の塩の各個々の重合鎖は、独立して、約100から1500の間の個々のモノマー単位から構成され得る。個々のモノマー単位の数は、少なくとも約:100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、又は1200であり得る。個々のモノマー単位の数は、約:1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600又は500未満であり得る。個々のモノマー単位の数は、約:300から1400、500から1300、600から1200、又は700から1100の間であり得る。個々の重合鎖における個々のモノマー単位の数は、前述のように、任意の下限及び/上限によって規定される範囲内であり得る。
【0102】
ポリアニリン又はポリアニリン塩は、少なくとも10000の数平均分子量を有し得る。例えば、数平均分子量は、少なくとも約20000、30000、40000、50000、60000、70000、又は80000であり得る。数平均分子量は、約1,000~120000、20000~115000、30000~110000、40000~105000、50000~100000、又は60000~100000の範囲であり得る。数平均分子量は、約120000、110000、100000、90000、80000、70000、60000、50000又は40000未満であり得る。数平均分子量は、前述のように、任意の下限及び/又は上限によって規定される範囲であり得る。
【0103】
少なくとも、導電性ポリマーが導電性ポリマースルホン酸塩(例えばPANIスルホン酸塩)であるいくつかの態様又は実施例によれば、コーティングの導電性ポリマー成分の硫黄対窒素の比(S/N比)は、約:0.1から0.5、0.15から0.45、又は0.2から0.4の範囲内であり得る。S/N比は、約:0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、又は0.25未満であり得る。S/N比は、少なくとも約:0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45又は0.5であり得る。S/N比は、前述のように、任意の下限及び/又は上限によって規定される範囲内であり得る。例えば、ポリアニリンスルホン酸塩のS/N比は、約:0.1から0.5、0.15から0.45、又は0.2から0.4の範囲内であり得る。ポリアニリンスルホン酸塩のS/N比は、約:0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、又は0.25未満であり得る。ポリアニリンスルホン酸塩のS/N比は、少なくとも約:0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45又は0.5であり得る。ポリアニリンスルホン酸塩のS/N比は、前述のように、任意の下限及び/又は上限によって規定される範囲であり得る。これらの比は、析出した固体導電性ポリマーに関するものであり、導電性ポリマーからなるキャスト薄膜に関するものではないことが理解されよう。
【0104】
本開示の導電性ポリマーは、高純度で、有機溶媒に溶解して、提供され得ることが理解されよう。ある態様又は実施例では、導電性ポリマーの純度は、約(wt%で):約70から約99wt%、約75から約98wt%、約80から約97wt%、約85から約96wt%、又は約90から95wt%の範囲内であり得る。導電性ポリマーの純度は、少なくとも(wt%で)約:70、75、80、85、90、95又は99wt%であり得る。導電性ポリマーの純度は、(wt%で)約:99、98、97、96、95、90、85、80、又は75wt%未満であり得る。導電性ポリマーの純度は、前述のように、任意の下限及び/又は上限によって規定される範囲内であり得る。導電性ポリマーは、基材にコーティングするために有機溶媒に溶解又は分散され得ることが理解されよう。言い換えれば、導電性ポリマーは、少なくともいくつかの態様又は実施例によれば、固相に存在し、導電性ポリマーを足場又は基材上に塗布又はコーティングできるように、有機溶媒に溶解又は分散することができる。
【0105】
一例では、本明細書に記載される組成物(任意選択的に液体配合物又はドライフィルム組成物の形態)は、約1から約75wt%;約5から約70wt%;約10から約65約wt%;約15から約50wt%;約10から約40wt%;約40wt%から約80wt%;約74から約85wt%;又は約45から約55wt%の範囲内の量(組成物全体のwt%)で導電性ポリマーを含む。別の例では、本明細書に記載される導電性ポリマー組成物(任意選択的に液体配合物又はドライフィルム組成物の形態)は、少なくとも約:1wt%、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、50wt%、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%;又は約:80wt%、75wt%、70wt%、65wt%、60wt%、55wt%、50wt%、45wt%、40wt%、35wt%、30wt%、25wt%、20wt%、15wt%、10wt%、若しくは5wt%未満の量(組成物全体のwt%)で導電性ポリマーを含む。導電性ポリマーは、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。
【0106】
一例では、液体配合物又はドライフィルム組成物は、約80wt%から約90wt%の間の量(配合物全体の重量%)で導電性ポリマーを含む。例えば、液体配合物又はドライフィルム組成物は、約80wt%から約85wt%の間の量(配合物全体の重量%)で導電性ポリマーを含む。
【0107】
ポリアニリン導電性ポリマーは、有機溶媒(例えばトルエン)中で、アニリンモノマーをプロトン酸と重合させることにより、in-situで作製される有機溶媒可溶性のポリアニリン導電性ポリマー塩であり、有機溶媒中に溶解したままであることが、理解されよう。言い換えれば、ポリアニリン導電性ポリマーは、少なくとも、いくつかの態様又は実施例によれば、液体相に存在し、ポリアニリン導電性ポリマーが足場又は基材上に塗布又はコーティングできるように、有機溶媒中に溶解される。有利には、有機溶媒中でin-situで形成されるポリアニリン導電性ポリマー又はポリアニリン導電性ポリマー塩(例えば、PANI-DNNSA)は、高導電性ポリマー又はポリマー塩溶液を提供し、したがって、望ましくない未溶解ポリマー凝集体の形成を回避及び/又は防止する。例えば、ポリアニリン導電性ポリマー溶液は、有機溶媒中に溶解したポリアニリン塩を95%超有する。言い換えれば、少なくとも95wt%のPANI-DNNSAは有機溶媒に溶解しており、粒子や凝集体として存在したり、ポリマーの目立たないボール状に巻かれたりしていない。
【0108】
一例では、液体配合物又はドライフィルム組成物は、約30wt%から約40wt%の間の量(有機溶媒中の重量%)で導電性ポリマーを含む。例えば、液体配合物又はドライフィルム組成物は、約35wt%の量(有機溶媒中の重量%)で導電性ポリマーを含む。
【0109】
膜形成剤
本明細書に記載される組成物は、1つ又は複数の膜形成剤をさらに含み得る。例えば、導電性ポリマー組成物は、膜形成剤と、任意選択的に1つ又は複数の分散剤とを含み得るか、又はそれらからなり得る。一例では、組成物は、本明細書に記載される任意の態様又はその実施例によれば、1つ又は複数の導電性ポリマー、1つ又は複数の熱安定剤、膜形成剤、1つ又は複数の溶媒、及び任意選択的に1つ又は複数の分散剤を含むか、又はそれらからなる、硬化性コーティング組成物である。
【0110】
膜形成剤は、導電性ポリマー及び熱安定剤が導入されたポリマーマトリックス又は分散液を提供できることが理解されよう。膜形成剤(例えばシリコーン)は、さまざまな機械的特性、熱的特性、及び安定性など、コーティングにさらなる特性を提供することができる。
【0111】
一例では、膜形成剤は、ポリマー、任意選択的に開始剤、任意選択的に鎖延長剤、及び任意選択的に重合性モノマー、コモノマー、又はコポリマーを含む。膜形成剤は、シリコーン又はポリシロキサンであり得る。
【0112】
膜形成剤は、任意のポリマー(例えば、コポリマー)又は重合性成分、例えば、コーティング中でポリマーを形成し得る反応性モノマー(例えば、樹脂)を含み得る。ポリマー構成要素は、ポリマー、コポリマー、樹脂、モノマー、及びコモノマーからなり得る。ポリマー構成要素のいくつかの例には、ポリシロキサン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリケチド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリシラザン、又はそれらの任意のコポリマーのうちの1つ又は複数が含まれる。一例では、膜形成剤は、シロキサン(例えばシリコーン)から選択されるポリマー、又はシロキサンを形成する成分を含む。シロキサンはポリシロキサンであってもよい。
【0113】
シロキサン又はポリシロキサンの例には、水素又はアルキル基で置換されたものがあり得る。その他の例には、シラナミン、1,1,1-トリメチルN-(トリメチルシリル)-、シリカとの加水分解生成物、ポリジメチルシロキサン、メチルトリメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ジメチルジメトキシシランが含まれる。
【0114】
他の例では、膜形成剤は、NusilTM(R-1009)RTVシリコーン分散コーティングから選択され得る。シリコーン分散コーティングは、VM&P Naphthaに分散した高強度で流動性の1液型RTVシリコーンゴムであってもよい。シリコーン分散コーティングは、2-ブタノン、O,O’,O’’-(メチルシリリジン)トリオキシム及びジブチルスズジラウレート触媒をベースとするオキシム硬化系を含むことができる。別の例には、白金硬化系でキシレン中に分散した2液型シリコーンエラストマーとしてNusilTM(R-2180)があり得る。別の例には、DowsilTM(3145)RTV MIL-A-46146があり、これは接着密封剤特性を提供することができる。
【0115】
「膜形成剤」は、任意の膜形成剤成分、例えば、膜形成剤を提供するために使用される任意のモノマー、コモノマー、樹脂、コポリマー、ポリマー、鎖延長剤、及び開始剤を網羅し得ることが理解されよう。
【0116】
膜形成剤(例えばシリコーン)は、ドライフィルム組成物又はコーティング中に、約1から15、5から15、1から10、又は5から10の量(組成物又はコーティング全体のwt%)で提供され得る。膜形成剤は、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15;又は約15、10、5、4、3、2、若しくは1未満の量(組成物全体のwt%)で、ドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。膜形成剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。
【0117】
分散剤
本明細書に記載される組成物は、1つ又は複数の膜形成剤を任意選択的に含み得る。
【0118】
分散剤には、第一級アルコールをベースとする非イオン性界面活性剤(例えば、Merpol 4481, DuPont)及びアルキルフェノール-ホルムアルデヒド-二硫化物縮合物(例えば、Clariants 1494)が含まれ得る。
【0119】
一例では、分散剤は、DisperbykTM分散剤、例えば、Disperbyk 2050のような、湿潤及び分散添加剤であり得る。分散剤は、塩基性親和性基を有するアクリレートコポリマーの溶液として提供され得る。
【0120】
別の例では、分散剤は、DisperbykTM 2155であってもよく、これは、湿潤分散添加剤である。分散剤は、顔料親和性基を有するブロックコポリマーの溶液として提供され得る。
【0121】
別の例では、分散剤は、TegomerTM(例えば、M-Si 2650)であってもよく、これは、非反応性芳香族基を含有する櫛状構造の有機変性シロキサンである。
【0122】
別の例では、分散剤は、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどのポリグリセリン変性シリコーンであり得る。
【0123】
別の例では、分散剤は、アクリレート/エチルヘキシルアクリレート/ジメチコンメタクリレートコポリマーのようなシリコーンアクリレートであってもよい。
【0124】
別の例では、分散剤は、モノカルビノール末端ポリジメチルシロキサンであってもよい。
【0125】
分散剤(例えば有機シロキサン)は、ドライフィルム組成物又はコーティング中に、約0.1から15、2から15、又は5から15の量(組成物又はコーティング全体のwt%)で提供され得る。分散剤は、少なくとも約0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10;又は約15、10、9、8、7、6、5、4、3、若しくは2未満の量(溶媒又は組成物全体のwt%)でドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。膜形成剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。
【0126】
添加剤
一例では、導電性ポリマー組成物、コーティング、又はコーティング組成物は、1つ又は複数の追加の添加剤をさらに含むか又はさらにそれらからなる。
【0127】
一例では、添加剤は、組成物の重量に基づいて約10%未満の量で存在する。例えば、すべての添加剤を合わせた量は、存在する場合、約:2%、1%、0.1%、又は0.05%の量で提供され得る。すべての添加剤の量は、存在する場合、上記の値のいずれか2つの間、例えば約0.01%から約2%の間、約0.05%から約1%の間、約0.1%から約2%の間、又は約0.5%から約2%の間の範囲の量(組成物の総重量に基づいて)で提供され得る。
【0128】
「実質的に含まない」についての任意の言及は、概して、存在し得る微量の不純物を除き、組成物中にその化合物成分が存在しないことを指し、例えば、これは、組成物全体のwt%で、約:1wt%、0.1wt%、0.01wt%、0.001wt%、0.0001wt%未満の量であり得る。本明細書に記載の組成物はまた、例えば、組成物全体中のwt%で、約:2wt%、1wt%、0.5wt%、0.1wt%、0.01wt%、又は0.001wt%、又は0.0001wt%未満の量の不純物を含み得る。
【0129】
膜形成剤、分散剤、又は他の添加剤は、存在する場合、本開示に記載される熱安定剤とは異なる化学成分であることが理解されよう。
【0130】
液体配合物
組成物は、液体配合物の形態である。液体製剤は、本明細書に記載される任意の態様又はその実施例によれば、有機溶媒中の1つ又は複数のポリアニリン導電性ポリマーと、1つ又は複数の熱安定剤とを含み得る。
【0131】
導電性ポリマーは、本明細書に記載されているような1つ又は複数の溶媒に可溶であるような良好な溶液処理性を提供し得ることが理解されよう。
【0132】
一例では、1つ又は複数の溶媒は、本明細書に記載される任意の態様又はその実施例による有機溶媒である。例えば、有機溶媒は、芳香族有機溶媒から選択される。別の例では、有機溶媒はトルエンである。一例では、導電性ポリマーは、有機溶媒(例えばトルエン)中でアニリンモノマーとプロトン酸とを重合させることにより、in-situで作製される有機溶媒可溶性の導電性ポリマー塩である。
【0133】
熱安定剤(第1の熱安定剤及び/又は第2の熱安定剤)は、有機溶媒中で導電性ポリアニリンに添加されて、有機溶媒中で分散液を形成することができる。
【0134】
本発明者らは、有機溶媒(例えばトルエン)中のポリアニリン導電性ポリマー(例えばPANI-DNNSA)と1つ又は複数の熱安定剤とを含む本明細書に記載の配合物が、有機溶媒(例えばトルエン)中のポリアニリン導電性ポリマー(例えばPANI-DNNSA)単独からなる配合物と比較して、コーティングの導電性を有意に改善し得ることを予想外に見出した。
【0135】
一例では、本明細書に記載の液体配合物を使用して、有機溶媒中のポリアニリン導電性ポリマーからなる配合物を用いて形成されるコーティングよりも、少なくとも5倍導電率の高い導電性コーティング(ドライフィルムコーティング)を形成することができる。例えば、本明細書に記載の液体配合物を使用して、有機溶媒中のポリアニリン導電性ポリマーからなる配合物を使用して形成されるコーティングよりも、少なくとも10倍導電率の高いポリアニリン導電性コーティング(ドライフィルムコーティング)を形成することができる。
【0136】
別の例では、液体配合物は、(配合物全体のwt%に基づいて)以下を含む:
有機溶媒中の約80から93wt%の合計量の任意の1つ又は複数の導電性ポリマー;
約2から7wt%の合計量の熱安定剤の任意の1つ又は複数;
任意選択的に、約1から10wt%の合計量の1つ又は複数の膜形成剤;及び
任意選択的に、約0.1から15wt%の合計量の1つ又は複数の分散剤。
【0137】
別の例では、以下のうちの1つ又は複数を含む(配合物全体のwt%)液体配合物が提供される:
有機溶媒中、約80から90wt%の量の導電性ポリアニリン塩;
約2から7wt%の合計量の第1の熱安定剤のうちの1つ又は複数;
約0.5から3wt%の合計量の第2の熱安定剤のうちの1つ又は複数;
任意選択的に、約5から15wt%の合計量のシリコーン膜形成剤;及び
任意選択的に、約0.1から25wt%の合計量の有機シロキサン分散剤。
【0138】
導電性ポリマーは、約1から93、5から85、10から80、15から60、又は20から50の量(有機溶媒中の配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。導電性ポリマーは、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、若しくは90;又は約90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、若しくは5未満の量(配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。導電性ポリマーは、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。例えば、有機溶媒中に提供されるポリアニリン導電性ポリマーの量(配合物全体の重量%)は、約80wt%から約90wt%の間であり得る。好ましい例では、有機溶媒中に提供されるポリアニリン導電性ポリマー(配合物全体の重量%)の量は、約80wt%から約85wt%の間であり得る。
【0139】
熱安定剤は、約1から7、又は2から7の量(配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。熱安定剤は、少なくとも約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9;又は約9、8、7、6、5、4、3、2、1、若しくは0.5未満の量(配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。熱安定剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。
【0140】
一例では、1つ又は複数の第1の熱安定剤は、約2wt%から約7wt%の間の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、1つ又は複数の第1の熱安定剤は、約5wt%の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0141】
一例において、1つ又は複数の第2の熱安定剤は、約0.5wt%から約3wt%の間の量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、1つ又は複数の第2の熱安定剤は、約1wt%の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0142】
一例では、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤は、約9wt%未満の総量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0143】
膜形成剤は、約1から15、1から14、又は1から10の量(配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。膜形成剤は、少なくとも約2、5、10、若しくは15;又は約20、15、若しくは10未満の量(配合物又は組成物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。膜形成剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。例えば、膜形成剤(例えばシリコーン)は、約5wt%から約15wt%の量(配合物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、膜形成剤(例えばシリコーン)は、約10wt%の量(配合物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。
【0144】
分散剤及び/又は添加剤は、存在するとき、上で開示された量となる。
【0145】
膜及びコーティング
本明細書に記載の組成物は、ドライフィルム組成物又はコーティングなどの膜の形態で提供され得る。
【0146】
一例では、ドライフィルム組成物は、(組成物全体のwt%に基づいて)以下を含む:
約80から93wt%の合計量の導電性ポリマーのうちの任意の1つ又は複数;
約4から20wt%の合計量の熱安定剤のうちの任意の1つ又は複数;
任意選択的に、約5から20wt%の合計量の1つ又は複数の膜形成剤;及び
任意選択的に、約0.1から15wt%の合計量の1つ又は複数の分散剤。
【0147】
導電性ポリマーは、ドライフィルム組成物又はコーティング中に、約1から90、5から80、10から70、15から60、又は20から50の量(組成物又はコーティング全体のwt%)で提供され得る。導電性ポリマーは、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、若しくは90;又は約90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、若しくは5未満の量(組成物全体のwt%)でドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。導電性ポリマーは、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。例えば、液体配合物中に提供される導電性ポリマーの量(配合物全体の重量%)は、約80wt%から約90wt%の間であり得る。好ましい例では、液体配合物中に提供される導電性ポリマー(配合物全体の重量%)の量は、約80wt%から約85wt%の間であり得る。
【0148】
熱安定剤は、約4から約20、又は約4から約20の量(組成物又はコーティング全体のwt%)でドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。熱安定剤は、少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20;又は約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、若しくは4の量(組成物全体のwt%)でドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。熱安定剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。
【0149】
一例では、1つ又は複数の第1の熱安定剤は、約4wt%から約15wt%の間の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、1つ又は複数の第1の熱安定剤は、約15wt%の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0150】
一例において、1つ又は複数の第2の熱安定剤は、約4wt%から約15wt%の間の量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、1つ又は複数の第2の熱安定剤は、約15wt%未満の合計量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0151】
一例では、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤は、約20wt%未満の総量(配合物全体の重量%)で液体配合物中に提供され得る。
【0152】
膜形成剤(例えばシリコーン)は、ドライフィルム組成物中に、約1から20、5から20、又は10から20の量(組成物又はコーティング全体のwt%)で提供され得る。膜形成剤は、少なくとも約5、10、15、20;又は約20、15、若しくは10未満の量(組成物全体のwt%)で、ドライフィルム組成物又はコーティング中に提供され得る。膜形成剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。膜形成剤は、これらの上限及び/又は下限量のうちの任意の2つの値によって提供される範囲内であり得る。例えば、膜形成剤(例えばシリコーン)は、約10wt%から約20wt%の量(配合物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。一例では、膜形成剤(例えばシリコーン)は、約20wt%の量(配合物全体のwt%)で液体配合物中に提供され得る。
【0153】
分散剤及び/又は添加剤は、存在するとき、上で開示された量となる。
【0154】
ドライフィルム組成物又はコーティングは、比較的少量の残留溶媒又は不純物、例えば、約:1、0.5、又は0.1wt%未満の量(組成物又はコーティング全体のwt%)の溶媒を含み得る。
【0155】
本明細書に記載のコーティング組成物は、商業用及び工業用のコーティング配合物として提供され得る。コーティング製剤は、ポリアニリン導電性ポリマー塩を溶媒に溶解する必要がないが、これは、ポリアニリン塩が既に有機溶媒中で調製され、調製された有機溶媒(例えばトルエン)中で使用されるためである。上記のような液体配合物は、ポリアニリン導電性ポリマー塩が溶解している有機溶媒に、熱安定剤、膜形成剤、任意選択的な分散剤及び/又は添加剤を添加することにより、さらなる溶解や追加の溶媒を使用することなく、調製することができる。本明細書に記載されている液体配合物の主な利点は、コーティング配合物としてさらなる溶解又は操作なしに使用できることである。
【0156】
一例では、本明細書に記載の液体配合物を使用して、有機溶媒中の導電性ポリマーからなる配合物を用いて形成されるコーティングよりも、少なくとも5倍導電率の高い導電性コーティング(ドライフィルムコーティング)を形成することができる。例えば、本明細書に記載の液体配合物を使用して、有機溶媒中の導電性ポリマーからなる配合物を使用して形成されるコーティングよりも、少なくとも10倍導電率の高い導電性コーティング(ドライフィルムコーティング)を形成することができる。
【0157】
コーティング系
本明細書に開示されるのは、本明細書に記載の組成物によって提供されるコーティング層であり、これはコーティング系の一部を形成し得る。
【0158】
本明細書にまた開示されるのは、1つ又は複数のコーティング層を含む基材であり、コーティング層の少なくとも1つは、本明細書に記載される組成物を含む。
【0159】
本明細書にまた開示されるのは、コーティングされていてもよい基材に適用されるコーティングであり、コーティングは、本明細書に記載される任意の組成物又はそのコーティングを含む。
【0160】
また、本明細書では、以下を含むコーティング系も開示される:
(i)コーティングされていてもよい基材;
(ii)1つ又は複数の任意選択的な後塗り層;及び
(iii)本明細書に記載される組成物を含む、i)と(ii)との間に位置する1つ又は複数の層。
【0161】
コーティングは、本明細書に記載されるような任意の態様又は実施例によれば、そのコーティング組成物を含み得るか又はそれからなり得る。
【0162】
一例として、本明細書に記載のコーティング又はコーティング層は帯電防止コーティングである。
【0163】
別の例では、本明細書に記載のコーティング又はコーティング層は、ポリマー、例えばポリシロキサンを含む。
【0164】
別の例では、本明細書に記載のコーティング又はコーティング層は、約1から約10μmの範囲、又は:少なくとも約:1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、若しくは10μmの厚さを有する。
【0165】
適切な基材には、金属及び金属合金(例えばスチール又はアルミニウム)、並びにエポキシ繊維ガラスシート、炭素繊維強化複合材、テフロン、又はガラスなどの複合材が含まれる。
【0166】
例えば、コーティングは、コーティングされていてもよい基材に適用されてもよく、コーティングは、本明細書に記載される任意の態様、実施態様、又は実施例による組成物を含むか又はそれからなる。
【0167】
一例では、組成物は、約200MΩ、約150MΩ、約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ、又は約5MΩ未満の抵抗を有するコーティングの形態である。
【0168】
一例では、抵抗は、例えば、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約1週間の期間にわたって実質的に同じである。
【0169】
別の例では、組成物は、以下を有するコーティングの形態である:
(a)約200MΩ、約150MΩ、約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ、又は約5MΩ未満の抵抗を有するコーティング;
(b)温度範囲内又は選択された温度;
(c)一定期間であって、
任意選択的に:
(i)温度範囲又は選択された温度が:約70℃から約300℃、約70℃から約250℃、約70℃から約200℃、約70℃から約150℃、約70℃から約100℃、約70℃から約300℃、約100℃から約300℃、約150℃から約300℃、約200℃から約300℃、約250℃から約300℃の範囲内であるか;又は少なくとも約:70℃、90℃、110℃、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃、230℃、250℃、270℃;若しくは290℃の温度である;
(ii)一定期間が、少なくとも:約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約1週間である;及び/又は
(iii)任意の分析が空気中で行われる。
【0170】
コーティングを調製及び適用するための方法
本明細書に記載のコーティング組成物は、商業用及び工業用のコーティング配合物として提供され得る。
【0171】
別の態様、実施態様、又は実施例では、液体配合物を調製するための方法であって、i)アルカリ金属塩及び任意選択的に両性金属酸化物から選択される1つ又は複数の第1の熱安定剤と、(ii)酸化防止剤から選択される1つ又は複数の第2の熱安定剤を、(iii)有機溶媒中に溶解した溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと混合して、液体配合物を形成する工程であって、ポリアニリン導電性ポリマーが、有機溶媒中でアニリンモノマーとプロトン酸を重合させることによりin-situで作製される有機溶媒可溶性ポリアニリン導電性ポリマー塩であり、1つ又は複数の第1の熱安定剤の合計量(配合物全体の重量%)が約2wt%から約7wt%であり、第1の熱安定剤及び第2の熱安定剤の総量(配合物全体の重量%)が約9wt%未満であり、ポリアニリン導電性ポリマー溶液が、有機溶媒中に溶解した95%超のポリアニリン塩を有する、混合する工程を含む方法が提供される。熱安定剤を添加した後でも、ポリアニリン塩は有機溶媒に溶解したままである。一例では、この方法はさらに、(iv)液体配合物中に1つ又は複数の膜形成剤を混合することを含む。任意の1つ又は複数の態様、実施態様、又は実施例に記載の液体配合物を調製するための方法は、導電性コーティング組成物を形成するために使用され得ることが理解されよう。一例では、有機溶媒に溶解したポリアニリン導電性ポリマーは、熱安定剤を添加する前に、約1μm未満の孔径のフィルタに通される。別の例では、有機溶媒に溶解したポリアニリン導電性ポリマーは、熱安定剤を添加する前に、約0.005μmから約1μm間の孔径のフィルタに通される。
【0172】
コーティング組成物は、さまざまな物理的形態で適用され得る。
【0173】
一例では、コーティング系を調製するための方法は、以下を含む:
(i)本明細書に記載のコーティング組成物を、コーティングされていてもよい基材に適用すること;及び
(ii)コーティングされていてもよい基材上に存在するコーティングに、任意選択的に1つ又は複数の後塗り層を適用すること。
【0174】
図3は、1つ又は複数の熱安定剤で熱安定化された導電性ポリマーを含むコーティングを調製するための方法の別の例を提供する。任意選択的な膜形成剤溶液を調製し、任意選択的に溶媒に溶解することができる。膜形成剤溶液中には、1つ又は複数の熱安定剤を導入することができる。導電性ポリマーを含む溶液は、存在する場合、膜形成剤溶液中に導入することができる。膜形成剤が使用されない場合、1つ又は複数の熱安定剤を含む溶液を、導電性ポリマーを含む溶液に導入することができる(逆も同様)。成分を混合し、基材上(又はコーティングされた基材上)にコーティングすることができる。コーティング中に存在する溶媒は、必要であれば(例えば、存在する膜形成剤が硬化を必要とする場合)、任意の硬化工程の前に除去する(例えば、熱を用いてフラッシュオフする)ことができる。任意の硬化コーティングは、存在する場合、アニール処理されてもよい。
【0175】
本明細書に記載のコーティング組成物は、スプレー、滴下、浸漬、ローラー、ブラシ又はカーテンコーティング、特にスプレーを含むがこれらに限定されない、コーティング業界で知られている任意の方法により、コーティング層を形成するためにコーティング基材上に適用することができる。
【0176】
コーティングの乾燥厚さは用途によって異なる。いくつかの態様では、コーティング層の乾燥厚さ(ミクロン)は、約300、250、200、150、100、75、50、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1未満である。乾燥厚さは、これらの値うちの任意の2つの値によって規定される範囲内にすることができる。
【0177】
コーティング層は、コーティングされた基材上と、コーティング上に存在する場合は下塗り層、中間層、又は後塗り層の間とに効果的な接着性を提供する。一例では、コーティング層は下塗りコーティングである。コーティング層は、本明細書に記載又は例示したような追加の接着促進剤を含んでもよい。
【0178】
コーティング層と他の層(例えば、コーティングされた基材又は後塗り層)との間の接着結合の有無を評価するために、当業者に知られているの任意の適切な方法を使用することができる。例えば、クロスハッチテストを用いることができる。
【0179】
コーティングの特性は、成分及び/又は追加の添加材の種類及び濃度によって調整することができる。例えば、一例では、最終コーティングは帯電防止コーティングであってもよい。あるいは、又は帯電防止特性に加えて、コーティングは、熱安定性、低毒性、環境に優しい、良好な処理可能性、コーティング系との混和性、及び/又は高安定性を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の追加の特性を示すことができる。
【0180】
用途
本明細書において開示されるのは、導電性ポリマーコーティングに少なくとも1つの熱安定剤を提供することを含む、導電性ポリマーコーティングの安定性を改善するための方法であって、熱安定剤が、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、及びそれらの組み合わせから選択される、方法である。
【0181】
また、コーティング、例えば導電性ポリマーコーティングの熱安定性を改善するために、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の化合物の使用も開示される。
【0182】
一例では、導電性ポリマーコーティングは帯電防止コーティングである。
【0183】
一例では、導電性ポリマーコーティングは、約70℃から約300℃、約70℃から約250℃、約70℃から約200℃、約70℃から約150℃、約70℃から約100℃、約70℃から約300℃、約100℃から約300℃、約150℃から約300℃、約200℃から約300℃、約250℃から約300℃の範囲内の温度;又は少なくとも約:70℃、90℃、110℃、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃、230℃、250℃、270℃;若しくは290℃の温度で使用される。
【0184】
別の例では、組成物又は導電性ポリマーコーティングは、任意選択的に固定翼航空機の、ロータブレードの電気的除氷に使用される。
【0185】
さらに別の例では、組成物又は導電性ポリマーコーティングは、レーダー吸収、落雷保護、エネルギー捕捉及び貯蔵、電磁干渉(EMI)シールド、アンテナ、バッテリ、キャパシタ、ソーラーコントロール、及び/又は防食コーティングに使用される。
【0186】
さらに別の例では、組成物又は導電性ポリマーコーティングは、発電用風力タービンのコーティングに使用される。
【0187】
追加の態様
本開示は、とりわけ、以下の態様を提供する。各態様は、任意の代替的な態様を任意選択的に含むとみなされ得る。
【0188】
条項1.溶液処理可能なポリアニリン導電性ポリマーと、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、若しくはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤とを含む組成物。
【0189】
条項2.アルカリ金属塩が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)のうちの1つ又は複数から選択される金属と、水酸化物、炭酸塩、ステアリン酸塩、ホウケイ酸塩、重炭酸塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、及びリン酸水素のうちの1つ又は複数から選択される金属の対イオンとを含む、条項1に記載の組成物。
【0190】
条項3.アルカリ金属塩の金属の対イオンが、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、及びリン酸水素から選択される、条項2に記載の組成物。
【0191】
条項4.アルカリ金属塩の金属がカルシウム(Ca)である、条項2又は条項3に記載の組成物。
【0192】
条項5.両性金属酸化物が、亜鉛、セリウム、ジルコニウム、チタン、マグネシウム、イットリウム、アルミニウム、又はケイ素の酸化物である、条項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0193】
条項6.両性金属酸化物が亜鉛又はセリウムの酸化物である、条項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【0194】
条項7.両性金属酸化物が、任意選択的にポリマー分散剤で、表面処理されている、条項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0195】
条項8.ヒンダードフェノールである酸化防止剤を含む、条項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【0196】
条項9.1つ又は複数の酸化防止剤が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、n-オクタデシル(3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート)、又はそれらの組み合わせから選択される、条項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【0197】
条項10.1つ又は複数の酸化防止剤が、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジドデシル3,3’-チオジプロピオネート、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、及びそれらの組み合わせから選択される、条項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【0198】
条項11.ポリアニリン導電性ポリマーが、導電性ポリマースルホン酸塩又は導電性ポリマーホスホン酸塩である、条項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【0199】
条項12.導電性ポリマーがポリアニリンスルホン酸塩である、条項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【0200】
条項13.ポリアニリンスルホン酸塩が、ポリアニリンメタンスルホン酸、ポリアニリンカンファースルホン酸、ポリアニリンp-トルエンスルホン酸、ポリアニリンドデシルベンゼンスルホン酸、ポリアニリンジノニルナフタレンスルホネート、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、条項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【0201】
条項14.ポリアニリンスルホン酸塩がポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩である、条項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【0202】
条項15.液体配合物又はドライフィルムコーティングである、条項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【0203】
条項16.熱安定剤の合計量(組成物全体の重量%)が、約0.1から約9、約0.5から約9、又は約1から約8の間である、条項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【0204】
条項17.導電性ポリマーの量(組成物全体の重量%)が、約1から約85;約5から約80;約10から約75;又は約15から約70の間である、条項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【0205】
条項18.導電性ポリマーの量(組成物全体の重量%)が、約80から約85の間である、条項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【0206】
条項19.導電性ポリマーの量(その液体配合物の重量%)が、約1から約85、約2から約80、又は約3から約75の間である、条項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【0207】
条項20.導電性ポリマーの量(ドライフィルム組成物の重量%)が、約1から約85、約5から約80、又は約10から約75の間である、条項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【0208】
条項21.熱安定剤が約5μm未満の粒径で提供される、条項1に記載の組成物。
【0209】
条項22.熱安定剤が約1から100nmの間の粒径で提供される、条項1に記載の組成物。
【0210】
条項23.液体配合物である、条項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【0211】
条項24.有機溶媒が、芳香族、ハロゲン化芳香族、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、グリコール、エーテル、グリコールエーテル、エステル、アルコール、ケトン、又はそれらの組み合わせから選択される、溶媒を含む、条項23に記載の組成物。
【0212】
条項25.有機溶媒が、炭化水素ベースの溶媒、任意選択的に芳香族炭化水素、及び任意選択的にトルエン、キシレン、又はそれらの混合物を含む、条項23に記載の組成物。
【0213】
条項26.液体配合物中に存在する熱安定剤のうちの1つ又は複数が、液体配合物中の懸濁液として提供される、条項23から25のいずれか一項に記載の組成物。
【0214】
条項27.少なくとも1つの膜形成剤を含む、条項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【0215】
条項28.約1から約20wt%、約1から約15wt%、又は約1から約10wt%の間の量(ドライフィルム重量全体の重量%)で存在する膜形成剤を含む、条項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【0216】
条項29.膜形成剤がシリコーン又はポリシロキサンを含む、条項39に記載の組成物。
【0217】
条項30.分散剤をさらに含む、条項1から29のいずれか一項に記載の組成物。
【0218】
条項31.約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ又は約5MΩ未満の抵抗を有するコーティングの形態である、条項1から30のいずれか一項に記載の組成物。
【0219】
条項32.少なくとも:約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約1週間にわたって、約70℃から約300℃の範囲の温度で、約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ又は約5MΩ未満の抵抗を有するコーティングの形態である、条項1から31のいずれか一項に記載の組成物。
【0220】
条項33.1つ又は複数のコーティング層を含む基材であって、コーティング層のうちの少なくとも1つが、条項1から32のいずれか一項に記載の組成物を含む、基材。
【0221】
条項34.コーティングされていてもよい基材に適用されたコーティングであって、
(i)条項1から32のいずれか一項に記載の組成物
を含む、コーティング。
【0222】
条項35.帯電防止コーティングである、条項34に記載のコーティング。
【0223】
条項36.ポリシロキサンを含む、条項34又は条項35に記載のコーティング。
【0224】
条項37.約1から約10μmの範囲の厚さを有する、条項34から36のいずれか一項に記載のコーティング。
【0225】
条項38.
(i)コーティングされていてもよい基材;
(ii)1つ又は複数の任意選択的な後塗り層;及び
(iii)条項1から32のいずれか一項に記載の組成物を含む、i)と(ii)との間に位置する1つ又は複数の層
を含むコーティング系。
【0226】
条項39.帯電防止コーティングである、条項38に記載のコーティング系。
【0227】
条項40.ポリシロキサンを含む、条項38又は条項39に記載のコーティング。
【0228】
条項41.基材が、金属、金属合金、ポリマー、複合材料、炭素繊維、ガラス繊維、又はケイ素ベースの材料から選択される、条項34から37のいずれか一項に記載のコーティング、又は条項38から40のいずれか一項に記載のコーティング系。
【0229】
条項42.導電性ポリマーコーティングの安定性を改善するための方法であって、導電性ポリマーコーティングに少なくとも1つの熱安定剤を提供することを含み、熱安定剤が、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、酸化防止剤、及びそれらの組み合わせから選択される、方法。
【0230】
条項43.導電性ポリマーコーティングが、条項1から32のいずれか一項に記載の組成物である、条項42に記載の方法。
【0231】
条項44.導電性ポリマーコーティングの熱安定性を改善するための、アルカリ金属塩、両性金属酸化物、両性金属水酸化物、両性金属鉱物又は粘土、酸化防止剤、及びそれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の熱安定剤の使用。
【0232】
条項45.導電性ポリマーコーティングが、条項1から32のいずれか一項に記載の組成物である、請求項46に記載の使用。
【0233】
条項46.導電性ポリマーコーティングが帯電防止コーティングである、条項44又は条項45に記載の使用。
【0234】
条項47.導電性ポリマーコーティングが、少なくとも:約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、又は約300℃の温度で使用される、条項44から46のいずれか一項に記載の使用。
【0235】
条項48.導電性ポリマーコーティングの抵抗が、少なくとも:約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、又は約1週間にわたって、約70℃から約300℃の範囲の温度で、約100MΩ、約50MΩ、約10MΩ又は約5MΩ未満の抵抗を有する、条項44から47のいずれか一項に記載の使用。
【0236】
条項49.導電性ポリマーコーティングが、電気的除氷、レーダー吸収、落雷保護、エネルギー捕捉及び貯蔵、電磁干渉(EMI)シールド、アンテナ、バッテリ、キャパシタ、ソーラーコントロール、又は防食コーティングに使用される、条項44から47のいずれか一項に記載の使用。
【実施例
【0237】
ここから、本開示を、以下の非限定的な実施例を参照し、添付の図面を参照して説明する。
【0238】
1.導電性ポリマーの調製
ポリアニリンジノニルナフタレンスルホン酸塩(PANI-DNNSA)の導電性ポリマーを連続フロープロセスにより調製して、トルエン溶液中にPANI-DNNSAの溶液を提供した。
【0239】
PANI合成のための連続制御されたフロープロセスの構成は、2つのステージからなっていた。第1のステージでは、アニリン試薬とプロトン酸(図1のA1及びA2)を室温で混合して有機流A3を形成してから、この合わせた有機流A3をBからの酸化剤流と混合して、加圧ゾーンでエマルジョン生成物流Cを生成する。その後、このエマルジョンCは、加圧ゾーンの下流の温度制御されたフロー反応器Dに供給され、そこで積極的な温度制御と反応モニタリングで反応を進行させることができた。
【0240】
ステージ1:3つのポンプ構成を使用して、試薬の送達を達成した(図1参照)。ポンプP-1はアニリン溶液A1の送達に使用され、ポンプP-2はDNNSA溶液A2の送達に使用され、ポンプP-3は過硫酸アンモニウム溶液A3の送達に使用された。アニリンとDNNSAの双方とも、Knauer社のポンプ80P(ポンプは(P-1とP-2)最大100mL/minの流量と最大400barの圧力で運転可能)で送達される。ポンプP-3は、最大100mL/分の流量と276barの圧力を送達可能なSSI社製PRクラス デュアルピストン容積式ポンプである。試薬流は、VICIから入手したPFAチューブ(1/8”OD、1/16”ID)を使用して移送され、SS Swagelok Tピースで混合される。この初期混合に続いて、試薬はその後、PP高剪断静的ミキサー(Cambridge Reactor Design)が取り付けられた15cm SSチューブ(3/16”OD、3.4mm ID)、SM-1を通過する。その後、アニリンとDNNSAの溶液は、P-3からのAPS溶液と組み合わされ、PP高剪断静的ミキサー(Cambridge Reactor Design)が取り付けられた30cm SSチューブ(3/16” OD、3.4mm ID)、SM-2を通過する。ステージ1を加圧するために、Swagelok R3A-A圧力逃し弁を使用した。これは、システム圧力を3.4から24.1barの範囲に調整することができる。反応器ラインの他の配管は全て、標準的なSwagelok社製継手を使用して行われた。
【0241】
ステージ2:1Lシェルアンドチューブ式連続反応器(Cambridge Reactor Design)は、反応器シェル内で蛇行状に接続された一連のHastelloy C276合金管(8mm OD、6mm Id)からなる。反応器は、その長さに沿って静的ミキサーが取り付けられており、総内容積は1Lである。使用される補助装置に応じて、反応器は-10℃から200℃の温度範囲にわたり、25barの圧力まで運転可能である。今回の実験では、反応器の温度制御は、-40℃から250℃で運転可能なJulabo Presto A40サーモスタットで行った。反応器チューブ内部の温度のモニタリングは、OM-DAQPRO-5300ポータブルデータ収集及びロギングシステムを使用して記録された5×5アレイの1、8、15、及び24の位置に接続された4つのPT-100温度プローブを使用して行われた。反応器のこのセクションには背圧調整器(BPR)は使用しなかった。
【0242】
1L反応器システムを0℃に冷却してから、アニリン(1.0当量、ニート、99.5%)を0.56ml/minでポンピング(P-1)し、DNNSA(1.5当量、2-ブトキシエタノール中50%w/w)を8.71ml/minで1分間静的ミキサー1(SM-1)を通じてポンピング(P-2)し、有機流を形成した。その後、過硫酸アンモニウム(1.2当量、1.0M水溶液)を7.4ml/minで導入した(P-3)。合わせた試薬流を、次にエマルジョン生成物流を形成するために静的ミキサー2(SM-2)を通じて導き、次に予冷された1LのSalamander Jacketed Flow Reactorに、合計滞留時間が1時間になるように16.67ml/分の合わせた流速で入れた。定常状態生成物の収集を、1時間16分後に開始した。定常状態運転終了後、P-3を水洗浄に切り替え、続いてP-1とP-2をトルエンに切り替えた。3時間28分後に回収を停止し、粗生成物溶液をトルエン(2.45L)で希釈した。その後水性層を排出し、有機物を0.1MのHSO(3×k1.25L)、続いてHO(3×1.25L)で洗浄した。その後、洗浄した有機物を減圧下で濃縮して、有機物を共沸させてさらに乾燥させるために、トルエン(2.25L)を再度加えた。この乾燥プロセスをもう一度繰り返した後、溶液を所望の濃度(50%w/w)に戻すために、トルエンをもう一度加えた。
【0243】
PANI-DNNSA濃縮物の少量から、トルエン中で70%w/v溶液を作製し、薄膜キャストした。その膜を、100℃のオーブンで一晩乾燥させた後、2-プロパノールで洗浄し、空気乾燥させた。得られた薄膜は、厚さ8.25μm、導電率10.6S/cmであった。
【0244】
熱分解
PANIの熱安定性を改善させるために、さまざまな薬剤が検討された。熱重量分析-質量分析(TGA-MS)を用いて、PANI-DNNSAが3つの主要なステージにわたって熱分解を起こすことが確認された。第1は、ポリマーから捕捉又は吸着された水が失われることである(35-155℃)。次に、DNNSAは、水と三酸化硫黄を除去する脱スルホン化を受ける(155-322℃)。高温になると、三酸化硫黄はさらに分解して二酸化硫黄になる。最後に、PANI骨格はアニリン断片を失って分解し始め(322-650℃)、650℃超の温度では100%の質量損失が記録された。DNNSAの脱スルホン化は平衡反応であり、それにより、水/希酸の存在が脱スルホン化を促進する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ステアリン酸カルシウム及びCaCO(Omyacarb 2)を含む薬剤は、遊離DNNSA及び分解中に形成される他の酸種の両方と反応して、導電性ポリマーの熱安定性を改善する可能性があることが理解される。Al(AL-15-25)及びCarbosilフュームドシリカ(TS-700)を含む他の薬剤も、熱安定性の改善を提供すると同定された。
【0245】
薬剤の添加量は、PANI溶液中のDNNSAの量(eq)と重量%(wt%)とに基づいて計算した。薬剤の添加量は、未修飾PANIのパフォーマンスにプラスの効果があるかどうかをスクリーニングするため、当初は非常に高く設定した。
【0246】
トルエン中のPANI-DNNSA(4.00g、35wt%)と所望の薬剤とをバイアルに加え、室温で一晩撹拌して、サンプルを調製した。その後、得られた溶液からスピンコーティングを用いて膜をキャストし、150℃のオーブンに直接入れ、膜抵抗のすべての比較の基準点である最初の0.5時間にわたって置いた(表1及び図3)。
【0247】
【0248】
溶液1及び2(表1)から調製したコーティングは、薬剤が固体微粒子としてよく分散した透明な膜を提供し、凝集物のないマットな外観を与えた(図3参照)。サンプル1及び2は、肉眼では粒子が見えず透明であったが、薬剤無添加のPANI膜と比較するとマットな外観であった。サンプル3、4、及び5(アミン)はPANI溶液と即座に反応した。それぞれの場合において、溶液が濃くなり、程度は異なるが青色に変化することが観察された。キャスト時、これらの膜は大きなポリマー凝集体を含有していた(エラー!参照元が見つかりません。3)。CaCOを含有する膜(粒径<2μm、表面処理済)は、150℃で24時間の期間、安定した抵抗で、非常に良好なパフォーマンスを示した。初期の抵抗低下は、おそらくトルエンの損失及び過剰のDNNSAとCaCOとの反応によるものであろう。0.5時間後の膜抵抗は2.2MΩであったのに対して、150℃で24時間後の膜抵抗は1.5MΩで、膜のいくらかの黒ずみが観察された。参考実験では、未処理のPANI膜は、概して、150℃で24時間にわたって抵抗が20-200倍増加する。ジイソプロイルアミン及びジエタノールアミンを含有する膜も、外観が悪いにもかかわらず良好な結果を示した(エラー!参照元が見つかりません。3)。これらの初期の実験から、PANI-DNNSAに炭酸カルシウムなどのいくつかの薬剤を添加することで、未修飾のポリマーについて記録された4時間ではなく、24時間にわたってポリマーの導電性をさらに安定化させるのに役立ち得ることが示された。この安定化効果のメカニズムをさらに調べるため、炭酸カルシウムの薬剤(O2T)を含有するサンプルの質量損失及び分子断片の変化をTGA-MSで分析した。
【0249】
PANI-DNNSA 40wt%に5wt%のO2Tを添加して、サンプルを下表のように調製した(エラー!参照元が見つかりません。2、図4及び5)。その後、サンプルをホモジナイズし、空気中又はN下、150℃で30分間硬化させた。その後、得られた薄膜を、ガラス基板から除去し、空気中又はアルゴン下でTGA-MSにより分析した。TGA-MSは、サンプルを5℃/分で60分間加熱し、その後300℃でさらに4時間保持するように設定した。
【0250】
【0251】
すべてのサンプルは、動的加熱サイクル(30-300℃)中に著しい質量損失を示した(図5)。等温ステージでは、質量損失がはるかに少なかったことから、熱脱ドーピングのほとんどは300℃までに完了し得ることが示唆される(表2)。300℃まで加熱したときの質量損失は、N下で硬化させたサンプルでより大きくなったことが観察された(S2対S4、及びS3対S5)。PANI-DNNSAの導電性は、N下で著しくより安定であることが以前に示されている。したがって、サンプルを空気又はNのいずれかの下で150℃に30分間加熱する硬化工程が、この結果に影響したと考えられる。サンプルが空気下で硬化された場合、TGAによる分析の前に、揮発性材料の多くがすでにサンプルから損失されたと考えられる。反対に、Nサンプルは硬化中により安定で、揮発性物質はサンプル中に存在したままであった。空気中の高温に曝露されると、Nサンプルは空気サンプルよりも多くの材料を損損失し、上に示した結果が得られる。本質的に、Nサンプルはテスト開始時により多くの質量を損失していた。O2Tを使用したサンプルは、O2Tを使用していないサンプルよりも質量損失がはるかに少なかった(S1対S2)。S1の動的質量変化は62wt%であったのに対し、S2は同じ温度で43wt%の質量変化しか示さなかった。S2はまた、等温加熱中ももう少し安定していた(10wt%対14wt%)。これは、O2TがPANI-DNNSAの熱分解を低減しているという、導電性の観察に基づく我々の仮説を支持するものである。TGAデータは、O2Tが脱スルホン化を遅らせるか又は別のメカニズムによってPANIを安定化させるという知見を支持しているが、MSデータによってさらなる支持が得られた。すべてのサンプルは、150-300℃で大きな質量損失を起こした。最大の質量損失は、HOで、次いでSO(m/z64)、SO(m/z48)、SO(m/z80)である。これらの種はすべて、DNNSAの熱脱スルホン化に関連している(エラー!参照元が見つかりません。6)。
【0252】
S3及びS5を含むすべてのサンプルは、2つの明確な水のシグナルを示した。1つ目は、T=30-150℃で生じ、T=50℃でピークに達する。これは、ポリマーに吸着した水の除去によるものと考えられる(エラー!参照元が見つかりません。7)。2つ目は、T=175-300℃で生じ、T=250℃でピークに達する。これは、DNNSAの脱スルホン化と、O2Tを含有するサンプル中の過剰な酸とCaCOとの反応とによるものと考えられる。2番目のピークは、SO、SO、及びSOの損失を含む他のほとんどのピークと一致している。
【0253】
TGA-MSデータは、熱脱ドープと並んで、酸化がPANIの分解に役割を果たしていることを実証している。酸化がPANIの導電性に及ぼす影響を評価するため、さまざまな量のO2Tを含有するサンプルを真空オーブンに入れ、150℃まで加熱する前にオーブンをNでパージした。空気中では24時間後に膜抵抗が急速に上昇したが、N下では5日以上にわたって抵抗は安定したままであった(図8)。
【0254】
さまざまなレベルのO2Tで調製した新鮮なサンプルのバッチを調製し、N下、150℃で最長7.9日間加熱したところ、>5wt%のO2Tの膜ではパフォーマンスは損失しなかった。このことは、O2TがPANIを酸分解に対して安定化させることができるが、酸素もPANI骨格の攻撃と最終的な電気的パフォーマンスの損失に重要な役割を果たしていることを示している。窒素下で7.9日後、O2Tの濃度を変えた同じ膜を、空気の存在下、150℃でさらに6.8日間加熱した。ここで、これらの膜は、抵抗の増加が測定されるまでの最長3日間、比較的安定していることが観察された。酸化環境に直接置かれた膜についての安定性の増加は、膜を完全に硬化させることで酸化に対するある程度の保護が提供できることを示唆し得る。O2Tの濃度を上げると、膜の安定性は10wt%の添加量まで増加した。10wt%サンプルと15wt%サンプルとの間には名目上の差異が観察された。PANI膜の観察でも、O2Tの安定化効果が指摘されている。10wt%のサンプル及び15wt%のサンプルは、O2Tの添加量が少ない膜ほど早く黒くならなかった。1-5Wt%の膜は、概して、150℃で80時間経過すると、黒く変色し、亀裂が入った。PANI-O2T膜に対する酸素の影響を、5wt%のO2T添加量の新しい膜を調製することによりさらに調べた。その後、これを硬化させてN下で加熱した(図9)。N下で硬化させたサンプルは、良好な熱安定性を示したが、7日の期間にわたる抵抗ではわずかな増加を示しただけであった(当初は、4.5×10Ωで、6.0×10Ωに増加)。
【0255】
CaCO及びZnOの両方が遊離DNNSAと反応して、それぞれのCa塩及びZn塩を形成することが理解されている。必要な化学量論と、それが観察された膜の破壊時間にどのように関係しているかとをよりよく理解するために、CaCO(O1)及びZnOの濃度を重量パーセントからモル当量に換算した。遊離DNNSAの量は、35wt%のPANI溶液で予想される量に基づいて計算した。10の未処理の膜のXPSデータに基づくと、アニリンに対して平均1.37eqのDNNSAが存在し、エメラルジン塩のポリマーには0.491eqが結合している(表3)。
【0256】
【0257】
さまざまな添加量のCaCOについて得られた以前のデータに基づき、1.40eq(5wt%)を超える添加量では、破壊時間が著しく増加した。0.54eq(2wt%)以下の添加量では、膜のパフォーマンスは非常に悪かった。ZnOを含有する配合物の結果は、0.67eq(2wt%)未満の添加量では破壊時間が短く、0.67eq以上の添加量では1.73eq(5wt%)まで破壊時間が長くなった。極端に多量のZnOを添加すると悪影響が生じる可能性があるが、その利点は1.73eqで見られたものを超えて継続するようである。観察されたCaCOとZnOの挙動の違いは、CaCOがアルカリ塩であるのに対してZnOは両性酸化物であるという事実に起因し得る。これは、反応性、溶解性、又はその両方によるものであり得る。
【0258】
2.熱安定化導電性ポリマーコーティングの調製
DNNSAドーパントの脱スルホン化を遅らせ、分解副生成物とPANI骨格との副反応を防止するため、さまざまな薬剤をさらに検討した。Chemspeedロボットシステムを用いて、濃度及び薬剤を変えた配合物を調製した。PANI-DNNSAに対する重量パーセントを変えた粉末又は液体薬剤を各バイアルに手動で秤量してから、Chemspeedロボットの粘性液体重量分注ユニットツールを用いて、4.0グラムのPANI溶液(41wt%)を自動的に充填した。その後、得られた溶液を、Chemspeedロボット(ダイヤル設定30)内の直径12mmのホモジナイザーツールを用いて3分間ホモジナイズした。その後、コーティング配合物を2.5cmのスライドグラス上に3時間以内にスピンコーティング(40秒@2000rpm)し、150℃のオーブンで30分間乾燥させた。その後、150℃の温度に耐えるカスタム設計の連続測定デバイスを用いて、各サンプルの抵抗値を経時的に記録した。
【0259】
このさらなる研究で調査された薬剤を以下に挙げる。
1.O2T-Omyacarb 2 (CaCO3)
2.DEA-ジエタノールアミン
3.DIPA-ジイソプロパノールアミン
4.SA-コハク酸
5.CBS-重亜硫酸ナトリウム
6.Ci-カーボンフィラー(Intelliparticle 7284)
7.Cg-カーボンフィラー(CSIRO)
8.Al-15-25-酸化アルミニウム(15-25nm)
【0260】
薄膜の外観は、使用する薬剤によって大きく変化した。DEA及びDIPAを含むPANI膜は粒子の凝集が大きく、溶液は濃度が高くなるにつれて液体成分及びドロドロした成分が混在し、非常に粘性が高くなった。これらの観察に基づき、このクラスのアミン薬剤は適さないことが判明した。カーボンフィラー(Ci)を含む膜は均一であったが、PANI-DNNSA溶液に対して1wt%から10wt%まで濃度を上げると表面に粒子が見られた。すべてのサンプル(O2Tを除く)は、150℃で24時間後、著しい抵抗の増加を示した。アミン(DEA及びDIPA)のパフォーマンスは低く、PANI配合物には考慮されなかった。特に効果的であると判明したのは、炭酸カルシウム(O2T)である。O2Tの濃度は、1から15wt%で検討された。5、10、及び15wt%のサンプルは、150℃で24時間にわたって特に効果的な安定した耐性を提供することがわかった。
【0261】
PANIの熱分解を防止するための一連のさまざまな薬剤についても検討した(表4及び図10表42).PANI-DNNSA(41wt%)4gをガラスバイアルに秤量し、さまざまな量の各薬剤を添加して、サンプルを調製した。得られた溶液をボルテックススターラーを使用して混合し、以下のパラメータ(2000rpm、40秒)で2.5cmのスライドガラス上にスピンコーティングし、その後オーブンで150℃で30分間硬化させた。その後、各サンプルの抵抗値をマルチプレート導電率リーダーを用いて測定した。サンプルは、抵抗値が100MΩを超えた時点で破壊と判定され、これが破壊時間(h)となった。
【0262】
【0263】
特に効果的な薬剤としては、ホウケイ酸カルシウムCW-291(Halox)、Micronisers nano酸化亜鉛、及びさまざまな炭酸カルシウムも効果的で、特にOmyacarb 1が有効であることがわかった。これらの薬剤では、破壊時間は95時間(~4日間)まで延長されたのに対し、未修飾のPANIは4.5時間しか安定ではなかった。未修飾のPANIは(11.9MΩ)と高い抵抗値でスタートしたのに対し、O1(5wt%)は0.3MΩでスタートしたことに留意されたい。
【0264】
3.熱安定化導電性ポリマーコーティングの調製
シリコーンコーティングの適合性とスクリーニング
高温用途向けに、以下のさまざまなシリコーンベースのコーティングでPANI-DNNSAの溶解度を試験するために、一連の配合物を調製した:
1.RTVシリコーン分散コーティング(Nusil、R-1009、1パックシステム)
2.低粘度、熱伝導性シリコーン(Nusil、R-2939、2パックシステム、1:1比率)
3.RFI及びEMIシールドRTVシリコンエラストマー(Nusil、R-2631、2パックシステム、15:1比率)
4.アイスフォビックコーティング(Nusil、R-2180)。
【0265】
各シリコーンを用いて、以下の一般的な手順に従って試験配合物を調製した。R-2631の場合、パートA(5g)とパートB(5g)を等量ずつガラス瓶に秤量し、十分に混合した。その後、徐々にトルエンを加えて溶解性を確認したが、混合物が濃く粘性のままであったため、スピンコーティングには使用しなかった。R-2939をパートA(3g)とパートB(0.2g)を15:1の割合で十分に混合してから、PANI-DNNSAを添加した。その結果、いくつかの相分離が生じた。シリコーンコーティング(R-2180)を含有する配合物は、破壊時間が短く、概して高い初期膜抵抗性を示した。R-2180の推奨硬化スケジュールは、室温で30分、次に75℃で45分、最後に150℃で135分である。この硬化スケジュールは、熱安定剤を含まないPANIには過酷すぎることが判明した。そのため、75℃で1時間、次に50℃で17時間、最後に150℃で30分間加熱する修正硬化スケジュールを使用した。サンプルは室温で5時間平衡化した後、オーブンに入れた。初期膜抵抗は高く、その結果、安定剤を添加しなくても破壊時間は短い(~5時間)傾向にあった。このシリコーン配合物は、より低い添加量が好ましいが、機械的特性がPANIに対してより多くのシリコーンを必要とする場合には、依然として有用であり得る。次に、PANIとシリコーンR-1009の適合性をシリコーン濃度1から15wt%で試験した。10wt%までのサンプルは均一な溶液を形成したが、15wt%のサンプルではいくらかの相分離を示した。その後、PANI-シリコーンサンプルを150℃のオーブンに入れ、導電率を経時的にモニターした。マルチプレート導電率ロガーは、最大抵抗値~100MΩを読み取ることができる。この値を膜の破壊点として選択し、オフラインのマルチメータを用いて確認した。異なる量のシリコーン分散液(R-1009)を含有するサンプルの膜抵抗の連続ロギングを提供するサンプルS1からS5に関する図12を参照のこと。
【0266】
異なるシリコーン添加量間で破壊時間にほとんど差はなかった。この結果に基づき、シリコーンの配合量を最大化する一方で、より高い添加量で見られる相分離を避けるために、10wt%の添加量を選択した。
【0267】
CaCO及びZnOは、PANIの熱分解を低減する効果的な熱安定剤であることが示されたが、ポリマー骨格の酸化は残っている。このプロセスに対処するため、酸化防止剤を調べる一連の実験を行った。これらの薬剤は、概して、その作用機序に応じて一次的又は二次的であると考えられた。ヒンダードフェノール(例えば、Irganox 1010及びIrganox 1076)などの一次酸化防止剤は、ペルオキシラジカルを除去するラジカル捕捉剤として作用し得る。結局のところ、一次酸化防止剤は犠牲的であり、完全に消費されるとポリマーの分解が始まる。二次酸化防止剤は、一次酸化防止剤の作用によって形成される有機過酸化物を除去することによって働く。これらは亜リン酸塩でもよいが、チオエーテルを使うこともでき、長期の熱老化の防止に効果的であり得る。PANI-DNNSA(4.0g)、R-1009(10wt%)、及びO2(5wt%)から、以下の表5に記載されているように、酸化防止剤とともにいくつかの配合物を調製した。得られた溶液を5日間撹拌してから、スライドガラスにスピンコートし、60℃、70%RHで硬化させた。膜は、緑色で透明で、光沢があり、目立つ粒子はなかった。サンプルは、抵抗値が100MΩを超えた時点で破壊と考えられ、これが破壊時間(h)となった。
【0268】
【0269】
Irganoxを含むすべてのサンプルは、非含有のサンプル(Irganoxなしの5wt% O2=55.6時間)よりも著しくパフォーマンスが優れていた。Irganoxのサンプルは、103時間まで持続した。サンプルA及びサンプルBは、C及びDよりも良好な結果を示したことから、ドライフィルム中の5wt%のシリコーンは、ドライフィルム中の10wt%のシリコーンよりも優れていることが示唆された。0.5wt%と1.0wt%のIrganox添加量に有意な差は見られなかった。
【0270】
PANI-DNNSA配合物において、一連の異なるZnO濃度も検討した。サンプルはPANI-DNNSA(35wt%)から調製した。ZnOの添加量が0、0.1、0.5、1、2、及び5wt%のサンプルは、特に添加量が2wt%を超えると熱安定性が増加した(図11)。PANIを含むサンプルの破壊時間は10.8時間であった。これは、10wt%のシリコーン(R-1009)を添加すると12.8時間に増加した。その後、ZnOの量を増やすと熱安定性が著しく向上し、5wt%の添加量で破壊時間が96.7時間に延長された。ZnOを使用した場合、2つの異なるIrganox剤のパフォーマンスが異なることがわかった。Irganox 1010はIrganox 1076よりも高いパフォーマンスを示し、以下の結果に示すようにZnO単独よりも有意に高いパフォーマンスを示した:
・ZnO 1wt%=28.2時間の破壊時間
・ZnO 1wt%+Irganox 1076 1wt%=67.2時間の破壊時間
・ZnO 1wt%+Irganox 1010 1wt%=79.2時間の破壊時間。
【0271】
O1(5wt%)は、薬剤無添加に比べて、破壊時間がわずかに改善された(破壊時間=20.5時間)。O1とIrganox 1076の組み合わせは、Irganox 1010が67.0時間でしかなかったのに対し、良好なパフォーマンス(破壊時間=92.5時間)を示した。
【0272】
本開示の様々な態様の説明は、例示を目的として提示されているものであり、網羅的であること、又は開示された態様に限定されることを意図していない。記載した態様の範囲から逸脱することのない多数の修正及び変形が、当業者には明らかであろう。本明細書で使用されている用語は、例えば、諸態様の原理や、市場に見られる技術に関する実際的応用若しくは技術的改善を最もよく解説するため、又は本明細書に開示した諸態様を他の当業者にも理解可能にするために、選ばれたものである。
図1
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【国際調査報告】