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特表2024-508605直接還元プロセスにおける抽出ガス回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】直接還元プロセスにおける抽出ガス回収
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
C21B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023543097
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 SE2022050105
(87)【国際公開番号】W WO2022169392
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】2150126-7
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522429011
【氏名又は名称】ハイブリット ディベロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モフセニ-モーナー,ファルザード
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ライモン ペレア
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC06
(57)【要約】
本開示は、鉄鉱石から海綿鉄を生産するプロセスであって、直接還元シャフト(211)内に鉄鉱石を仕込むステップと、鉄鉱石を還元し、及び海綿鉄(209)を生産するために、直接還元シャフト内に水素リッチ還元性ガス(215)を導入するステップと、- 直接還元シャフトからトップガス(216)を除去するステップと、トップガスを再循環ストリーム(218)と抽出ストリーム(256)とに分割するステップと、水素富化オフストリーム(258)及び不活性成分富化オフストリーム(259)を提供するために、分離ユニット(257)を通して抽出ストリームを処理するステップと、- 水素リッチ還元性ガスの成分部分として再循環ストリーム及び水素富化オフストリームを直接還元シャフトに導入するステップとを含むプロセスに関する。本開示は、海綿鉄を生産するためのシステムに更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石から海綿鉄を生産するプロセスであって、
- 直接還元シャフト(211)内に鉄鉱石(207)を仕込むステップ(s303)と、
- 前記鉄鉱石を還元し、及び海綿鉄(209)を生産するために、70体積%超の水素ガスを含む水素リッチ還元性ガス(215)を前記直接還元シャフト内に導入するステップ(s305)と、
- 前記直接還元シャフトからトップガス(216)を除去するステップ(s307)と、
- 前記トップガスを再循環ストリーム(218)と抽出ストリーム(256)とに分割するステップ(s309)と、
- 水素富化オフストリーム(258)及び不活性成分富化オフストリーム(259)を提供するために、分離ユニット(257)を通して前記抽出ストリームを処理するステップ(s311)と、
- 前記水素リッチ還元性ガスの成分部分として前記再循環ストリーム及び前記水素富化オフストリームを前記直接還元シャフトに導入するステップ(s311)と
を含むプロセス。
【請求項2】
前記分離ユニット(257)は、深冷分離ユニット、膜分離ユニット又は圧力スイング吸着ユニットである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガス(219)を前記直接還元シャフトに導入するステップを更に含み、前記メイクアップガスは、水電解によって得られた水素ガスを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガス(219)を前記直接還元シャフトに導入するステップを更に含み、前記メイクアップガスは、炭素質成分を本質的に含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
- 別個の浸炭反応器(213)又はゾーンで浸炭性ガスを使用して前記海綿鉄を浸炭し、結果として浸炭海綿鉄及び使用済み浸炭性ガス(248)を得るステップと、
- 前記使用済み浸炭性ガスを浸炭再循環ストリーム(267)と浸炭抽出ストリーム(266)とに分割するステップと、
- 前記浸炭抽出ストリームから炭素質成分を除去するステップと、
- 分離ユニットで前記浸炭抽出ストリームを処理するステップと
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記不活性成分富化オフストリームは、補助水素富化オフストリームを提供するために補助分離ユニットで処理され、前記補助分離ユニットは、好ましくは、膜分離ユニットである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
海綿鉄を生産するためのシステムであって、
- 還元性ガス入口及びトップガス出口を含む直接還元シャフト(211)、
- 前記還元性ガス入口と流体接続して配置された水素ガス源(220)、
- 前記トップガス出口と流体接続して配置され、及び再循環ストリーム出口と抽出ストリーム出口との間でトップガスを分割するように配置された抽出バルブ(254)、
- 前記抽出ストリーム出口と流体接続して配置され、及び抽出ストリームを水素富化ストリームと不活性成分富化ストリームとに分離するように配置された分離ユニット(257)
を含むシステム。
【請求項8】
前記分離ユニットは、深冷分離ユニット、膜分離ユニット又は圧力スイング吸着ユニットである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記水素ガス源は、水電解槽ユニットである、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記直接還元シャフトは、還元ゾーン及び浸炭ゾーンを含み、前記直接還元シャフトは、前記浸炭ゾーンから前記還元ゾーンへのガスの通過を防止するように配置される、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
浸炭反応器(213)を更に含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記浸炭ゾーン又は浸炭反応器は、浸炭性ガス入口及び使用済み浸炭性ガス出口を含み、前記システムは、
- 前記浸炭性ガス入口と流体接続して配置された浸炭性ガス源(245)、
- 前記使用済み浸炭性ガス出口と流体接続して配置され、及び浸炭再循環ストリーム出口と浸炭抽出ストリーム出口との間で使用済み浸炭性ガスを分割するように配置された浸炭抽出バルブ(264)
を更に含み、前記浸炭抽出ストリーム出口は、分離ユニットと流体接続して配置される、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
1つ以上の炭素分離ユニットを更に含み、前記浸炭抽出ストリーム出口は、前記1つ以上の炭素分離ユニットを介して前記分離ユニットと流体接続して配置される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
CO分離ユニットを含まない、請求項7~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記分離ユニットの不活性成分富化ストリーム出口と流体接続して配置された補助分離ユニットを更に含み、前記補助分離ユニットは、膜分離ユニットである、請求項7~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄鉱石から海綿鉄を生産するプロセスに関する。本開示は、海綿鉄を生産するためのシステムに更に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼は、世界で最も重要な工学材料及び建設材料である。現代の世界において、鋼を含有しない、又はその生産及び/若しくは輸送を鋼に依存しない物体を見つけることは困難である。このように、鋼は我々の現代の生活のほぼすべての側面に複雑に関与している。
【0003】
2018年には、粗鋼の世界の総生産量は18億1000万トンであって、他のどの金属をもはるかに超えており、2050年には28億トンに達することが予想されており、そのうちの50%はバージン鉄源に由来することが予想されている。鋼はまた、一次エネルギー源として電気を使用して、再溶融後に繰り返し使用できる金属の能力により、非常に高い再利用グレードで世界で最も再利用される材料である。
【0004】
このように、鋼は、将来的に更により重要な役割を果たす現代社会の基礎である。
【0005】
鋼は、以下の3つの経路で主に生産される。
i)高炉(BF)内でバージン鉄鉱石を使用し、鉱石中の酸化鉄を炭素で還元して鉄を製造する一貫生産。鉄は、鋼を生産するために、塩基性酸素転炉(BOF)内の酸素吹き込みと、それに続く精錬とにより、製鉄所内で更に処理される。このプロセスは、一般に「酸素製鋼」とも呼ばれる。
ii)一次エネルギー源として電気を使用する電気アーク炉(EAF)で溶融された再利用鋼を使用するスクラップベースの生産。このプロセスは、一般に「電気製鋼」とも呼ばれる。
iii)炭素質(carbonaceous)還元性ガスによる直接還元(DR)プロセスにおいて還元されて海綿鉄を生産する、バージン鉄鉱石に基づく直接還元生産。海綿鉄は、続いて、鋼を生産するために、EAFにおいてスクラップと一緒に溶融される。
【0006】
粗鉄という用語は、本明細書では、高炉から得られる(すなわち銑鉄)か、又は直接還元シャフトから得られる(すなわち海綿鉄)かにかかわらず、鋼への更なる処理のために生産されるすべての鉄を意味するために用いられる。
【0007】
上に挙げたプロセスは、数十年にわたって改良され、理論上の最小エネルギー消費量に近づきつつあるが、未解決の根本的な問題が1つ存在する。炭素質還元剤を使用して鉄鉱石を還元すると、副産物としてCOが生成される。2018年に生産された鋼1トン当たり、平均1.83トンのCOが生成された。鉄鋼業は、最も多くCOを排出する産業の1つであり、世界のCO排出量の約7%を占める。炭素質還元剤が使用される限り、鋼生産プロセスにおいて、過剰なCO生成は避けられない。
【0008】
HYBRITイニシアチブは、この課題に対処するために設立された。水素による画期的な製鉄技術(HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technology)の略であるHYBRITは、SSAB、LKAB、及びVattenfall間のジョイントベンチャーであり、スウェーデンエネルギー庁が一部出資しており、CO排出量の削減及び鉄鋼業における脱炭素化を目指している。
【0009】
HYBRIT構想の中心にあるのは、バージン鉄鉱石からの海綿鉄の直接還元ベースの生産である。しかしながら、現在の商用直接還元プロセスのように、天然ガスなどの炭素質還元剤ガスを使用する代わりに、HYBRITは、水素直接還元(H-DR)と称する、還元剤として水素ガスを使用することを提案している。水素ガスは、例えば、スウェーデンの電力生産の場合のように、化石フリー及び/又は再生可能な一次エネルギー源を主に使用した水の電気分解によって生産され得る。したがって、鉄鉱石を還元する重要なステップは、入力として化石燃料を必要とすることなく、副産物としてCOの代わりに水を伴って達成され得る。
【0010】
直接還元プロセスを実施するとき、例えば直接還元シャフト入口及び/又は出口のシーリングを併用しても、窒素などの不活性ガスがプロセスガスに導入されることは、ほとんど不可避である。その不活性な性質に起因して、不活性ガスは、プロセスガス中に受動的に循環され、追加の不活性ガスは、例えば、鉄鉱石を仕込むときに常にプロセスガスに追加される。しかしながら、プロセスガスの他の成分は、典型的には、反応により消費されるか(例えば、H、CO、CH)、又は循環から除去されるか(例えば、HO)のいずれかである。これは、すなわち、措置を講じなければ、不活性ガスは、プロセスガスに含まれる割合が徐々に増え続け、プロセスガスは、「還元強度」(reducing strength)を徐々に失うことを意味する。そのような状況を回避するために、プロセスガスの一部は、典型的には、プロセスガス回路から抽出され、プロセスガス中の不活性成分の好適なバランスを維持するためにプロセスガスヒーターで燃やされる。そのような抽出は、プロセスガス回路の圧力を制御するためにも実施され得る。
【0011】
国際公開第2019/238720号は、水素ベース直接還元によって浸炭海綿鉄(carburized sponge iron)を生産する方法を記載している。使用される還元性ガスは、トップガスとして取り出される。トップガスの第1の部分量は、還元性ガス及び/又は浸炭性ガス(carburizing gas)を加熱するために燃料ガスとして使用される。トップガスのこの第1の部分量の大きさは、トップガス中の窒素、及び/又は二酸化炭素、及び/又は一酸化炭素、及び/又はメタンの含有量の関数として調整される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水素ベース直接還元を使用して海綿鉄を生産するための改善された手段が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
従来の直接還元プロセスでは、還元性ガスは、典型的には、天然ガスに由来し、プロセスガスヒーターは、典型的には、天然ガスで発火される。したがって、プロセスガスヒーターの発火に使用される天然ガスの一部を、天然ガスに由来する抽出ガスに置き換えることが単に関与するのみであるため、プロセスガスの上述した抽出及び燃焼は、経済的に正当化できる。
【0014】
しかしながら、本発明の発明者らは、還元性ガスが水素ベースであるとき、プロセスガス中のバランスのとれた不活性成分含有量を確保する、このような手段にいくつかの短所を特定した。短所の1つは、水素が典型的にはより高い局所火炎温度で燃えて、NOxの過剰生成をもたらすことである。排出低減技術を用いてNOx排出の制御が実現可能であるが、これは、プロセスに複雑さ及び費用を追加する。別の短所は、特に、水素が、化石燃料のCO排出及び消費を回避するために再生可能エネルギーから水電解により生成されるとき、水素が、従来使用されている還元性ガスよりも経費が顕著にかかることである。したがって、得られる熱がプロセスガスの加熱に利用されるとしても、単に抽出ガスを燃やすのみでは経済的に有害である。
【0015】
以上に挙げた短所の少なくともいくつかを克服するか又は少なくとも軽減する手段を達成することが有利であろう。特に、還元性ガスとして水素を使用する、より経済的に実現可能な海綿鉄の生産プロセスを可能にすることが望ましいであろう。これらの懸念の1つ以上により良好に対処するために、添付の独立請求項に定義される特徴を有するプロセス及びシステムが提供される。
【0016】
第1の態様によれば、添付の独立請求項に係る鉄鉱石から海綿鉄を生産するプロセスが提供される。このプロセスは、
- 直接還元シャフト内に鉄鉱石を仕込むステップと、
- 鉄鉱石を還元し、及び海綿鉄を生産するために、水素リッチ還元性ガスを直接還元シャフト内に導入するステップと、
- 直接還元シャフトからトップガスを除去するステップと、
- トップガスを再循環ストリームと抽出ストリーム(bleed-off stream)とに分割するステップと、
- 水素富化オフストリーム(hydrogen-enriched off-stream)及び不活性成分富化オフストリームを提供するために、分離ユニットを通して抽出ストリームを処理するステップと、
- 水素リッチ還元性ガスの成分部分として再循環ストリーム及び水素富化オフストリームを直接還元シャフトに導入するステップと
を含む。
【0017】
そのようなプロセスは、先行技術の方法と同様に、トップガスの一部を抽出することにより、プロセスガス中の不活性成分のバランスを制御する。しかしながら、抽出水素ガスは、プロセスで不活性ガス(例えば、窒素)から後続的に分離されるため、水素は、失われるか又は加熱用燃料などとして浪費されることがなく、代わりに、抽出水素の大部分は、還元性ガスとして回収され、再利用される。これにより、そのようなプロセスの運転コストが顕著に減少する。そのうえ、抽出水素の大部分は、もはや燃やされないため、過剰のNOx排出のリスクは、顕著に小さくなるか又は完全に回避される。
【0018】
特定された短所に対する代替的な解決策は、不活性ガスを除去するためにトップガスの全ストリームを処理することであろう。そのような方法は、トップガスを再循環ストリームと抽出ストリームとに分離する必要性を回避するであろう。しかしながら、本開示のプロセスと比較して、そのような解決策は、膨大な量のトップガスの処理を必要とし、資本コスト及び運転コストの莫大な増加をもたらすであろう。本開示のプロセスは、全トップガスストリームの処理を必要とする方法と比較して顕著により低い資本コスト及び運転コストで、プロセスガス中の不活性成分のバランスの制御という利益を達成する。
【0019】
シールガスは、直接還元シャフト内に鉄鉱石を仕込むステップと連動して導入され得る。それにより、このシールガスは、トップガスの成分部分を形成し得る。シールガスは、窒素及び/又は二酸化炭素であり得る。それに対応して、不活性ガスは、本質的に窒素及び/又は二酸化炭素であり得る。
【0020】
分離ユニットは、深冷分離ユニット、膜分離ユニット、圧力スイング吸着ユニット又はアミンCOスクラバー(scrubber)であり得る。いくつかの十分に確立されたガス分離手段は、不活性ガス(例えば、窒素及び/又は二酸化炭素)から水素を分離するのに好適であり得る。例えば、窒素(-195.8℃)と水素(-252.9℃)との沸点の大きい差に起因して、深冷分離は、技術的及び/又は経済的観点から好適な技術であり得る。
【0021】
水素リッチ還元性ガスは、水電解によって得られた水素ガスを含み得る。例えば、プロセスは、水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガス(make-up gas)を直接還元シャフトに導入するステップを更に含み得、メイクアップガスは、水電解によって得られた水素ガスを含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。電解水素の使用により、より少ない化石燃料が海綿鉄の生産に必要とされることが確保される。しかしながら、電解水素は、現時点では、化石源に由来する還元性ガスよりも経費がかかる。すなわち、本開示のプロセスの利益は、還元性ガスが水電解に少なくとも部分的に由来するときに常により顕在化される。
【0022】
プロセスは、水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガスを直接還元シャフトに導入するステップを更に含み得、メイクアップガスは、炭素質成分を本質的に含まない。メイクアップガスが本質的に炭素フリーであることを確保することにより、得られるトップガスも本質的に炭素フリーにし得、他の手段、例えばシールガス中、又はトップガス中への浸炭性ガスのリークにより、炭素質ガスがトップガス中に導入されないと推測される。トップガスが本質的に炭素フリーである場合、二酸化炭素のアミン吸収などにより炭素質成分を除去するためにトップガスを処理する必要性がなく、したがってプロセス及びプロセス装置がかなり単純化され得る。トップガスが、シールガスとして使用される二酸化炭素などからのごく小部分の炭素質成分を含んでいたとしても、これは、抽出を用いて制御され得、炭素質成分を除去するためにトップガスの全ストリームを処理する必要性が依然として潜在的に回避される。
【0023】
プロセスは、
- 別個の浸炭反応器又はゾーンで浸炭性ガスを使用して海綿鉄を浸炭し、結果として浸炭海綿鉄及び使用済み浸炭性ガスを得るステップ
を更に含み得る。
【0024】
今日の商用高炉又は直接還元経路により生産された鉄は、典型的には、鉄鉱石の還元時の炭素取込みに起因して有意量の炭素(典型的には5重量%まで)を含む。還元剤としての使用以外に、炭素は、製鋼プロセスで更なる重要な役割を果たすため、いくつかの理由で海綿鉄の浸炭を提供することが望ましいであろう。海綿鉄中にそれが存在すると、鉄の融点が低下する。海綿鉄の後続処理時、炭化鉄の発熱解離(exothermic dissociation)及びCOへの炭素の酸化は、プロセスに熱を供給する。このCO生成に起因する電気アーク炉でのガス発生は、鉄溶融物の断熱を支援し、EAF電極の消耗を減らすことを支援する泡状スラグを提供する。少なくともこれらの理由のため、鋼への処理時、海綿鉄中の炭素の存在は、エネルギー消費の低減を支援し得る。
【0025】
別個の浸炭反応器又はゾーンで海綿鉄を浸炭することにより、依然として浸炭海綿鉄を得ることができ得ると同時に、トップガス中の炭素質成分の存在が回避され得る。このため、二酸化炭素のアミン吸収などにより、炭素質成分を除去するためにトップガスを処理する必要性がなくなるため、プロセス及びシステム設計をかなり単純化し得る。
【0026】
プロセスは、
- 使用済み浸炭性ガスを浸炭再循環ストリームと浸炭抽出ストリームとに分割するステップと、
- 浸炭抽出ストリームから炭素質成分を除去するステップと、
- 分離ユニットで浸炭抽出ストリームを処理するステップと
を更に含み得る。分離ユニットは、トップガス抽出ストリームが処理されるのと同一の分離ユニットであり得るか、又はそれは、異なる分離ユニットであり得る。
【0027】
抽出は、通常、不活性ガスの蓄積を防止するために浸炭ガス回路でも必要とされる。そのうえ、別個の還元段階及び浸炭段階を実施することにより、浸炭段階でほとんど又はまったく還元が起こらないため、浸炭性ガス中に存在する水素のほとんどは、消費されないことが確保される。したがって、この水素を回収し、還元段階で利用することが望ましい。以上に記載のプロセスステップを用いて、浸炭抽出において存在する水素は、トップガス抽出の場合と同様に回収され得る。すなわち、より少ない電解水素が還元段階で必要とされ得る。
【0028】
不活性成分富化オフストリームは、補助水素富化オフストリームを提供するために補助分離ユニットで処理され得る。補助分離ユニットは、膜分離ユニットであり得る。例えば、(一次)分離ユニットは、深冷分離ユニットであり得、及び補助分離ユニットは、膜分離ユニットであり得る。プロセス及び経済的制約に起因して、初期分離後の不活性成分富化オフストリームは、依然として顕著な量の水素、例えば30体積%までの水素を含み得る(体積%は、1atm及び0℃の基準状態で決定される)。補助分離ステップを実施することにより、この水素の損失が回避され得る。膜分離は、補助分離ステップに特に好適であり、なぜなら、このような技術は、不活性成分富化オフストリームに見られるように窒素が水素よりも圧倒的に多いガス混合物の分離に特に有効であり得るためである。
【0029】
第2の態様によれば、添付の独立請求項に係る海綿鉄を生産するためのシステムが提供される。このシステムは、
- 還元性ガス入口及びトップガス出口を含む直接還元シャフトと、
- 還元性ガス入口と流体接続して配置された水素ガス源と、
- トップガス出口と流体接続して配置され、及び再循環ストリーム出口と抽出ストリーム出口との間でトップガスを分割するように配置された抽出バルブと、
- 抽出ストリーム出口と流体接続して配置され、及び抽出ストリームを水素富化ストリームと不活性成分富化ストリームとに分離するように配置された分離ユニットと
を含む。
【0030】
第2の態様の効果及び特徴は、第1の態様との関連で以上に記載のものにかなりの程度類似している。第1の態様に関連して挙げられた実施形態は、おおむね第2の態様に適合可能である。
【0031】
分離ユニットは、深冷分離ユニット、膜分離ユニット、圧力スイング吸着ユニット又はアミンCOスクラバーであり得る。いくつかの十分に確立されたガス分離手段は、不活性ガス(例えば、窒素及び/又は二酸化炭素)から水素を分離するのに好適であり得る。例えば、窒素(-195.8℃)と水素(-252.9℃)との沸点の大きい差に起因して、深冷分離は、技術的及び/又は経済的観点から好適な技術であり得る。
【0032】
水素ガス源は、水電解槽ユニットであり得る。電解水素の使用により、より少ない化石燃料が海綿鉄の生産に必要とされることが確保される。しかしながら、電解水素は、現時点では、化石源に由来する還元性ガスよりも経費がかかる。すなわち、本開示のプロセスの利益は、還元性ガスが水電解に少なくとも部分的に由来するときに常により顕在化される。
【0033】
直接還元シャフトは、還元ゾーン及び浸炭ゾーンを含み得る。直接還元シャフトは、浸炭ゾーンから還元ゾーンへのガスの通過を防止するように配置され得る。そのため、還元及び浸炭は、還元回路及び浸炭回路を有する共通反応器において、分離した別個の段階として実施され得る。
【0034】
代替的又は追加的に、システムは、浸炭反応器を含み得る。これは、別々の反応器での浸炭の実施を可能にし、還元段階のプロセスガス中への浸炭性ガスの偶発的導入のリスクを減少させる。
【0035】
浸炭ゾーン又は浸炭反応器は、浸炭性ガス入口及び使用済み浸炭性ガス出口を含み得る。そのような場合、システムは、
- 浸炭性ガス入口と流体接続して配置された浸炭性ガス源と、
- 使用済み浸炭性ガス出口と流体接続して配置され、及び浸炭再循環ストリーム出口と浸炭抽出ストリーム出口との間で使用済み浸炭性ガスを分割するように配置された浸炭抽出バルブと
を更に含み得る。
【0036】
浸炭抽出ストリーム出口は、分離ユニットと流体接続して配置され得る。分離ユニットは、トップガス抽出ストリームが処理されるのと同一の分離ユニットであり得るか、又はそれは、異なる分離ユニットであり得る。
【0037】
そのような配置は、以上に記載の浸炭抽出ガスからの水素の回収を可能にするため、電解水素の消費の減少を支援する。
【0038】
システムは、1つ以上の炭素分離ユニットを含み得、浸炭抽出ストリーム出口は、1つ以上の炭素分離ユニットを介して分離ユニットと流体接続して配置される。炭素分離ユニットは、炭化水素、CO及び/又はCOなどの未反応炭素質成分を浸炭抽出ストリームから除去した後、このストリームをHとNとに分離するために分離ユニットに搬送することを可能にする。炭素分離ユニットは、例えば、炭化水素分離ユニット(例えば、深冷炭化水素分離ユニット)及び/又はCO分離ユニットを含む。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、システムは、CO分離ユニットを含まない。例えば、海綿鉄が浸炭段階の開始前に十分に還元され、及び浸炭性ガスが顕著な量の酸素質成分を含まない場合、浸炭抽出ガスは、顕著な量のCOを含まず、CO分離ユニットは、必要ないであろう。
【0039】
システムは、分離ユニットの不活性成分富化ストリーム出口と流体接続して配置された補助分離ユニットを含み得る。補助分離ユニットは、膜分離ユニットであり得る。例えば、(一次)分離ユニットは、膜分離ユニット又は深冷分離ユニットであり得、及び補助分離ユニットは、膜分離ユニットであり得る。
【0040】
本発明の更なる目的、利点及び新規の特徴は、下記の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【0041】
図面の簡単な説明
本発明並びにその更なる目的及び利点のより十分な理解のために、以下に示される詳細な説明は、添付図面と一緒に読まれるべきであり、同一の参照記号は、様々な図中の類似の項目を表す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】Hybrit構想に係る鉄鉱石ベース製鋼のバリューチェーン(value chain)を概略的に例示する。
図2a】本明細書に開示されるプロセスを実施するのに好適なシステムのある例示的実施形態を概略的に例示する。
図2b】本明細書に開示されるプロセスを実施するのに好適なシステムの他の例示的一実施形態を概略的に例示する。
図2c】本明細書に開示されるプロセスを実施するのに好適なシステムの更なる例示的実施形態を概略的に例示する。
図3】本明細書に開示されるプロセスのある例示的実施形態を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明は、様々な理由のため、還元性ガスとして水素を使用するとき、トップガスの一部を燃焼させることにより、プロセスガス回路中の不活性ガス含有量及び/又は圧力を制御する先行技術の手段が望ましくないという本発明者らによる洞察に基づく。従来の還元性ガス(例えば、合成ガス)の燃焼と比較して、水素の燃焼は、より大量のNOxの生成をもたらす。そのうえ、水素は、典型的には、合成ガスと比較して、より生産に費用がかかるため、プロセス熱を発生したとしても、水素の燃焼は、経済的に有害である。水素リッチ還元性ガスが相対的に費用のかかる手段、例えば水電解により生成されるとき、これがとりわけ当てはまる。
【0044】
本開示のプロセスは、抽出ガスを水素富化画分と不活性成分富化画分とに分離することにより、そのような欠点を回避する。次いで、水素富化画分は、再循環されて直接還元シャフトに戻される。
【0045】
定義
プロセスガスという用語は、本明細書では、プロセスの段階にかかわらず、直接還元プロセスでのガス混合物を表すために用いられる。すなわち、プロセスガスは、直接還元シャフトに導入され、それを通過し、それを離れ、再循環されてそれに戻されるガスを意味する。プロセスガスは、還元段階で使用される場合には還元プロセスガスであり得、又はプロセスが浸炭段階を必要とする場合には浸炭プロセスガスであり得る。より具体的な用語は、プロセスにおける様々な点でのプロセスガスを表すか、又はプロセスガスの一部を形成するためにプロセスガスに添加される成分ガスを表すために用いられる。
【0046】
還元性ガスは、鉄鉱石を金属鉄に還元する能力のあるガスである。従来の直接還元プロセスでの還元性成分は、典型的には、水素及び一酸化炭素であり、本開示のプロセスでの還元性成分は、主に又は排他的に水素である。還元性ガスは、直接還元シャフトの入口よりも低い点で導入され、鉱石を還元するために鉄鉱石の移動床とは反対に上方に流れる。
【0047】
トップガスは、鉱石入口に近接して直接還元シャフトの上端から除去されるプロセスガスである。トップガスは、典型的には、還元性成分の酸化生成物(例えば、HO)を含む部分的使用済み還元性ガスと、プロセスガスに導入されたシールガスなどの不活性成分との混合物を含む。処理後、トップガスは、再循環されて、還元性ガスの成分として直接還元シャフトに戻され得る。
【0048】
抽出は、プロセスガスの含有量を制御するため、特にプロセスガス中の不活性成分の蓄積を防止するためにトップガスから分離されるストリームである。抽出は、直接還元システムで支配的な圧力を制御するためにも使用され得る。
【0049】
浸炭性ガスは、浸炭(炭素含有)海綿鉄を提供するために任意の浸炭段階で使用されるガスである。浸炭性ガスは、浸炭を提供することが当技術分野で知られるか又は予想されるいずれかのガスであり得る。この点でのガスは、浸炭反応器で支配的な高温でガス状の物質を意味するが、それは、室温で液状又は固形であり得る。好適な浸炭ガスは、炭化水素、例えばメタン、天然ガス、LPG若しくは石油又は他の炭素質物質、例えば合成ガス、低級(C1~C6)アルコール、エステル及びエーテルを含む。浸炭性ガスは、化石起源であり得るが、正味CO排出を低減するために再生可能源から部分的又は全体的に得られることが好ましい。
【0050】
浸炭プロセスガス中の不活性成分の蓄積を防止するために使用済み浸炭ガスから除去される抽出ストリームは、浸炭抽出ストリームと称される。
【0051】
メイクアップガスは、還元能力を維持するためにプロセスガスに添加される新鮮なガスである。典型的には、メイクアップガスは、直接還元シャフト内への再導入前に再循環トップガスに添加される。そのため、還元性ガスは、典型的には、再循環トップガスと一緒にメイクアップガスを含む。メイクアップガス及び再循環トップガスは、直接還元シャフトへの導入前に一緒に混合され得るか、又はシャフトに別々に導入され、混合され得る。
【0052】
シールガスは、直接還元シャフトの入口の鉱石仕込み設備から直接還元シャフトに入るガスである。直接還元シャフトの出口端もシールガスを用いてシールされ得るため、シールガスは、直接還元シャフトの出口の排出設備からDRシャフトに入り得る。シールガスは、典型的には、シャフト入口及び出口での爆発性ガス混合物の形成を回避するための不活性ガスである。不活性ガスは、空気又はプロセスガスのいずれとも潜在的に引火性混合物も爆発性混合物も形成しないガス、すなわちプロセスで支配的な条件下における燃焼反応で酸化剤としても燃料としても作用し得ないガスである。シールガスは、窒素及び/又は二酸化炭素から本質的になり得る。したがって、抽出物から除去される不活性ガスも窒素及び/又は二酸化炭素から本質的になり得る。二酸化炭素は、本明細書で不活性ガスと称されるが、それは、システムで支配的な条件下において水性ガスシフト反応で水素と反応して、一酸化炭素及び蒸気を提供し得ることに留意されたい。
【0053】
還元
直接還元シャフトは、当技術分野で広く知られているいずれかの種類であり得る。シャフトとは、固気向流移動床反応器(solid-gas countercurrent moving bed reactor)を意味し、その場合、鉄鉱石装入原料が反応器の上部の入口に導入され、反応器の下部に配置された出口に向かって重力で下降する。還元性ガスは、反応器の入口よりも低い点で導入され、鉱石を金属鉄に還元するために、鉱石の移動床とは反対に上方に流れる。還元は、典型的には、約900℃~約1100℃で実施される。必要とされる温度は、典型的には、例えば電気予熱器などの予熱器を用いて、反応器に導入されるプロセスガスの予熱により維持される。ガスの更なる加熱は、予熱器を離れた後及び反応器への導入前に酸素又は空気によるガスの発熱部分酸化によって得ることができる。還元は、DRシャフト内において約1バール~約10バール、好ましくは約3バール~約8バールの圧力で実施され得る。反応器は、出口からの排出前に海綿鉄の冷却を可能にするように下部に配置された冷却及び排出コーンを有し得る。
【0054】
鉄鉱石装入原料は、典型的には、主に鉄鉱石ペレットからなるが、いくらかの塊状鉄鉱石も導入され得る。鉄鉱石ペレットは、典型的には、脈石、フラックス(flux)、バインダーなどの更なる添加物又は不純物と一緒に主にヘマタイト(hematite)を含む。しかしながら、ペレットは、いくつかの他の金属及びマグネタイト(magnetite)などの他の鉱石を含み得る。直接還元プロセスについて具体的に示された鉄鉱石ペレットは、市販されており、このようなペレットは、本プロセスで使用され得る。代替的に、ペレットは、本プロセスのように、水素リッチ還元ステップに特別に適合され得る。
【0055】
還元性ガスは、水素リッチである。還元性ガスとは、直接還元シャフト内に導入される新鮮なメイクアップガスと再循環プロセスガスとの総和を意味する。水素リッチとは、直接還元シャフトに入る還元性ガスが70体積%超の水素ガス、例えば80体積%超の水素ガス又は90体積%超の水素ガスを含み得るか又はそれからなり得ることを意味する(体積%は、1atm及び0℃の基準状態で決定される)。好ましくは、還元は、別個の段階として実施される。すなわち、浸炭は、実施されないか、又は浸炭が実施される予定の場合、それは、還元とは別々に、すなわち別々の反応器又は直接還元シャフトの分離した別個のゾーンで実施される。これにより、炭素質成分の除去及びこのような除去に関連する費用の必要性が回避されるため、トップガスの処理がかなり単純化される。そのような場合、メイクアップガスは、水素ガスから本質的になり得るか又はそれからなり得る。メイクアップガスが排他的に水素であるとしても、いくらかの量の炭素含有ガスが還元性ガス中に存在し得ることに留意されたい。例えば、直接還元シャフトの出口が浸炭反応器の入口に結合される場合、相対的に小量の炭素含有ガスは、浸炭反応器から直接還元シャフト内に偶発的に浸透し得る。他の一例として、鉄鉱石ペレット中に存在する炭酸塩は、揮発して、DRシャフトのトップガス中にCOとして出現し得るため、再循環されてDRシャフトに戻され得る多量のCOをもたらす。還元性ガス回路中の水素ガスの優位性に起因して、存在するいくらかのCOは、逆水性ガスシフト反応(reverse water-gas shift reaction)によりCOに変換され得る。
【0056】
いくつかの場合、単一段階として、還元の実施と連動してある程度の浸炭を達成することが望ましいであろう。そのような場合、還元性ガスは、約30体積%まで、例えば約20体積%まで又は約10体積%までの炭素含有ガスを含み得る(1atm及び0℃の基準状態で決定される)。好適な炭素含有ガスは、浸炭性ガスとして以下に開示される。
【0057】
水素ガスは、好ましくは、少なくとも部分的に水の電解によって得てもよい。水電解が再生可能エネルギーを用いて実施される場合、これにより再生可能源からの還元性ガスの提供が可能になる。電解水素は、電解槽からDRシャフトに導管により直接搬送され得るか、又は水素は、生成時に貯蔵され、必要に応じてDRシャフトに搬送され得る。
【0058】
トップガスは、直接還元シャフトから出る際、典型的には未反応水素、水(水素の酸化生成物)及び不活性ガスを含むであろう。浸炭が還元と一緒に実施される場合、トップガスは、いくらかの炭素質成分、例えばメタン、一酸化炭素及び二酸化炭素を含み得る。トップガスは、直接還元シャフトから出る際、最初に、調整、例えば同伴固体の除去のための脱塵及び/又はトップガスの冷却及び還元性ガスの加熱のための熱交換に付され得る。熱交換時、水は、トップガスから凝縮され得る。好ましくは、この段階のトップガスは、水素、不活性ガス及び残留水から本質的になるであろう。しかしながら、トップガス中に炭素質成分が存在する場合、このような炭素質成分も例えば改質及び/又はCO吸収によってトップガスから除去され得る。
【0059】
適切な調整後、トップガスは、抽出バルブを通して再循環ストリームと抽出ストリームとに分配される。再循環ストリームに対する抽出ストリームの厳密な割合は、例えば、トップガス中の不活性ガスの割合に依存して変動し得、必要に応じてプロセス全体を通して変動され得る。例えば、トップガス再循環ストリームと抽出ストリームとの比(体積流量として表わされる)は、約99:1~約60:40、好ましくは約98:2~約80:20、より好ましくは約96:4~約90:10であり得る。典型的には、先行技術のプロセスでは、抽出物は、燃焼により処分される。しかしながら、本開示のプロセスでは、抽出ストリームは、代わりに、水素富化オフストリームと不活性成分富化オフストリームとに分離される。この分離は、限定されないが、深冷分離、膜分離、圧力スイング吸着及びアミンCOスクラビングを含む、当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて実施され得る。例えば、窒素の沸点(-195.8℃)と水素の沸点(-252.9℃)との相対的に大きい差に起因して、窒素がシールガスとして使用される場合、深冷分離は、適切な分離手段であり得る。調整された全トップガスストリームを処理せずに抽出物のみを分離することにより、全トップガスストリームの処理に伴うであろう大きい資本費用及び運転費用を必要とすることなく、不活性成分バランスが維持され得、水素損失が減少され得る。
【0060】
「水素富化」とは、オフストリームが入力抽出ストリームと比較してより高い割合の水素を含有することを意味する。「不活性成分富化」とは、オフストリームが入力抽出ストリームと比較してより高い割合の不活性ガスを含有することを意味する。水素富化オフストリームは、少なくとも70体積%の水素、例えば少なくとも80体積%の水素、少なくとも90体積%の水素、又は少なくとも95体積%の水素を含み得る。不活性成分富化オフストリームは、少なくとも50体積%の不活性ガス、例えば少なくとも70体積%の不活性ガスを含み得る。
【0061】
水素富化オフストリームは、トップガス再循環ストリーム及びメイクアップガスと一緒になって、還元性ガスとして後続的に直接還元シャフトに導入される。このように、水素の経済的使用が行われる。
【0062】
不活性成分富化オフストリームは、適切な方式で処分される。不活性成分富化オフストリームが顕著な量の水素を含む場合、それは、処分前に更なる水素を回収するために補助分離に付され得る。この補助分離は、限定されないが、深冷分離、膜分離及び圧力スイング吸着を含む、当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて実施され得る。膜分離は、窒素が水素よりも圧倒的に多い混合物を分離するのに特に有効であり得るため、シールガスが窒素を含むとき、膜分離は、補助分離の好ましい手段である。
【0063】
浸炭
いくつかの場合、浸炭海綿鉄を生産することが望ましいであろう。そのような場合、浸炭は、プロセスで別個の段階として実施され得る。別個の段階とは、還元プロセスガス及び浸炭プロセスガスが別々に取り扱われ得、非意図的な混合が2つのプロセスガス回路間で起こらないことを意味する。これは、別々の反応器で浸炭を実施することにより達成するのが最も容易であるが、還元ゾーン及び浸炭ゾーン間のガスの混合を回避するために適切な対策を講じる限り、直接還元シャフトの分離した別個の浸炭ゾーンで浸炭を実施することによっても達成され得る。
【0064】
別々の浸炭反応器が使用される場合、このような反応器は、好ましくは、シャフト反応器であり得る。以上に記載したように、シャフトとは、固気向流移動床反応器を意味する。この場合、海綿鉄は、反応器の入口で導入され、浸炭性ガスは、海綿鉄を浸炭し、及び任意選択的に更に還元するために、移動海綿鉄床(moving sponge iron bed)に対して向流で流れる。浸炭海綿鉄は、反応器の出口で得られる。
【0065】
代替的に、浸炭反応器は、コンベアユニット又はバッチ反応器であり得る。しかしながら、浸炭シャフトなどの連続反応器が好ましい。
【0066】
DRシャフト及び浸炭反応器は、いずれかの顕著な程度までDRシャフト内に浸炭ガスが浸透することを防止するために設備が提供される限り、DRシャフトの出口が浸炭反応器の入口に直接結合されるように結合され得る。かかる設備は、直接還元シャフト内への浸炭ガスの浸透を防止する反応器間の圧力差及び/又は直接還元シャフト内へのガス輸送に対する物理的バリアを提供するロック又は排出デバイスを含み得る。代替的に、DRシャフト及び浸炭ユニットは、シャフト若しくはシュート(chute)により結合され得るか、又は海綿鉄中間体を輸送する更なる手段、例えば1つ以上の輸送用るつぼを利用し得る。
【0067】
浸炭性ガスは、浸炭を提供することが当技術分野で知られるか又は予想されるいずれかのガスであり得る。この点でのガスは、浸炭反応器で支配的な高温でガス状の物質を意味するが、それは、室温で液状又は固形であり得る。好適な浸炭ガスは、炭化水素、例えばメタン、天然ガス、LPG若しくは石油又は他の炭素質物質、例えば合成ガス、低級(C1~C6)アルコール、エステル及びエーテルを含む。浸炭性ガスは、化石起源であり得るが、正味CO排出を低減するために再生可能源から部分的又は全体的に得られることが好ましい。再生可能とは、ヒト時間スケールにおいて自然に補充される資源を意味する。浸炭性ガス中に存在する炭素の高度利用は、化石均等物と比較してその相対的な希少性及び高コストにもかかわらず、再生可能浸炭性ガスの使用を可能にする。好適な再生可能浸炭性ガスとしては、バイオメタン、バイオガス、バイオマスの熱分解若しくは部分燃焼から得られるガス、再生可能供給原料に由来するメタノール、DME、若しくはエタノールなどの低級アルコール若しくはエーテル、又はそれらの組合せが挙げられる。硫黄は、グラファイトの核形成を防止すること及び浸炭海綿鉄生成物を不動態化することが知られているため、硫黄含有浸炭ガスを使用し得る。
【0068】
浸炭段階は、いずれかの所望の炭素含有量を有する海綿鉄生成物を提供するために進行するように配置され得る。望ましい炭素含有量は、典型的には、約1重量%~約3重量%の範囲内であり得る。これは、限定されないが、反応器での滞留時間、反応温度、反応圧力、浸炭性ガスの流量及び浸炭性ガスの組成を含む浸炭プロセスパラメーターの合理的な選択により調整され得る。必要とされる温度は、典型的には、例えば電気予熱器などの予熱器を用いて、反応器に導入されるプロセスガスの予熱により維持される。ガスの更なる加熱は、予熱器を離れた後及び反応器への導入前に、酸素又は空気によるガスの発熱部分酸化によって得られ得る。しかしながら、供給物として熱間海綿鉄中間体(hot sponge iron intermediate)が浸炭反応器中に導入され、及び冷間海綿鉄生成物が望まれる場合、予熱器も部分酸化も必要としなくてよい。浸炭反応器は、出口からの排出前に浸炭海綿鉄の冷却を可能にするように下部に配置された冷却及び排出コーンを有し得る。
【0069】
使用済み浸炭ガスは、望ましくない成分を除去するために処理され得、再循環されて浸炭反応器及び/又は還元反応器に戻され得る。例えば、水素は、浸炭オフガスから分離され得、還元性ガスとしての使用のために貯蔵されるか、又はDRシャフトに直接搬送されるかのいずれかであり得る。そのような分離は、例えば、膜分離技術又は圧力スイング吸着を用いて実施され得る。オフガスは、浸炭時に形成されたいずれのCOもCOに改質する改質ステップにかけられ得る。代替的に、浸炭時に形成されたいずれのCOも捕捉され得、貯蔵(CCS)、改質、放出又は他の目的での利用(CCU)のいずれかが行われ得る。浸炭ガス中のいずれの水及び/又は塵埃も除去され得る。主に未反応浸炭ガス及びCOを含む残留ガスは、再循環されて浸炭反応器に戻され得る。
【0070】
浸炭プロセスガス中の不活性ガスの適切なバランスを維持するために、浸炭抽出物を提供することが必要であり得る。そのような場合、この抽出物は、還元性ガスとしての使用のための更により多くの水素を回収するために、還元抽出物の場合と同様に分離に付され得る。浸炭抽出物は、還元抽出物と同一の分離ユニットで処理され得るか、又は別個の分離ユニットで処理され得る。
【0071】
浸炭段階及び還元段階は、プロセスで使用される資源の利用を改善するために様々な方式で統合され得る。例えば、浸炭段階で形成された水素は、以上に記載の還元段階で使用され得るか、又は浸炭段階で形成されたCOは、更なる浸炭のためにCOに改質され得る。浸炭段階からのオフガス及び/又は還元段階からのトップガスは、反応器に導入されるガスを予熱するために1つ以上の熱交換器を介して供給され得る。
【0072】
海綿鉄
本明細書に記載のプロセスの海綿鉄生成物は、典型的には、直接還元鉄(DRI)と呼ばれる。プロセスパラメーターに依存して、それは、熱間(HDRI)又は冷間(CDRI)として提供され得る。冷間DRIは、(B)型DRIとしても知られ得る。DRIは、再酸化を起こす傾向があり得、いくつかの場合に自然発火性である。しかしながら、DRIを不動態化するいくつかの公知の手段が存在する。生成物の海外輸送を促進するために通常使用される、そのような不動態化手段の1つは、熱間DRIをプレスしてブリケット(briquette)にすることである。そのようなブリケットは、通常、熱間ブリケット化鉄(HBI)と称され、(A)型DRIとしても知られる。
【0073】
本明細書のプロセスにより得られる海綿鉄生成物は、本質的に十分に金属化された海綿鉄、すなわち約90%超、例えば約94%超又は約96%超の還元度(DoR)を有する海綿鉄であり得る。還元度は、酸化鉄から除去された酸素の量として定義され、酸化鉄中に存在する酸素の初期量に対するパーセンテージとして表される。約96%超のDoRを有する海綿鉄を得ることは、多くの場合、反応速度に起因して商業的に有利ではないが、このような海綿鉄は、必要に応じて生産され得る。
【0074】
浸炭が実施される場合、約0~約7重量パーセントのいずれかの所望の炭素含有量を有する海綿鉄は、本明細書に記載のプロセスにより生産され得る。しかしながら、典型的には、更なる処理のために、海綿鉄は、約0.5~約5重量パーセント、好ましくは約1~約4重量パーセント、例えば約3重量パーセントの炭素含有量を有することが望ましいが、これは、後続のEAF処理ステップで使用されるスクラップに対する界面鉄の比に依存し得る。
【0075】
実施形態
次に、特定の例示的実施形態及び図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、本明細書で考察され、及び/又は図面に示される例示的実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内で変動し得る。更に、特定の特徴をより明確に例示するために、いくつかの特徴が誇張されていることもあり得るため、図面は、原寸通り描かれているとみなされないものとする。
【0076】
図1は、Hybrit構想に係る鉄鉱石ベース製鋼のバリューチェーンを概略的に例示する。鉄鉱石ベース製鋼のバリューチェーンは、鉄鉱石採掘所101から開始する。採掘後、鉄鉱石103は、ペレット化工場105で濃縮及び処理され、鉄鉱石ペレット107が生産される。これらのペレットは、プロセスで使用されるいずれかの塊状鉱石と一緒になって、主要還元剤として水素ガス115を使用し、及び主要副産物として水117aを生成する直接還元シャフト111での還元により海綿鉄109に変換される。海綿鉄109は、直接還元シャフト111又は別々の浸炭反応器(例示されていない)のいずれかで任意選択的に浸炭され得る。水素ガス115は、好ましくは、主に化石フリー源又は再生可能源122に由来する電気121を用いた電解槽119での水の電解117bにより生成される。水素ガス115は、直接還元シャフト111への導入前に水素貯蔵庫120で貯蔵され得る。海綿鉄109は、溶融物127を提供するために、電気アーク炉123を用いて、任意選択的にスクラップ鉄の一部125又は他の鉄源と一緒に溶融される。溶融物127は、更なる下流の二次冶金プロセス129に付され、鋼131が生産される。鉱石から鋼までの全バリューチェーンは、化石フリーであり得、ごくわずかな炭素排出を生じるか又は炭素排出をまったく生じないことが意図される。
【0077】
図2aは、本明細書に開示されるプロセスを実施するのに好適なシステムのある例示的実施形態を概略的に例示する。
【0078】
鉄鉱石207は、直接還元シャフト211に導入される。鉱石207がシャフト211を通過する際、それは、還元性ガス215により海綿鉄209に漸次還元される。トップガス216、すなわち部分的使用済み還元性ガスは、直接還元シャフト211を出て、還元性ガス215を予熱するために使用される熱交換器251を通過する。水は、熱交換器251を通してトップガス216から凝縮される。次いで、トップガス216は、塵埃及び残留水などの更なる不純物を除去するために浄化ユニット253で浄化される。浄化後、トップガス216は、トップガスを再循環トップガスストリーム218と抽出ストリーム256とに分離するために抽出バルブ254を通過する。抽出ストリーム256は、分離ユニット257を通過して、水素富化オフストリーム258と窒素富化オフストリーム259とに分割される。水素富化オフストリーム258は、再循環トップガス218と再び組み合わされ、コンプレッサー255を通過し、メイクアップガス219と組み合わされ、還元性ガス215を形成する。還元性ガス215は、熱交換器251及び予熱器241を通過して、直接還元シャフト211への導入前に適切な温度に加熱される。予熱器241は、バイオ燃料の燃焼などの燃焼を利用し得るか、又は電気ガス加熱を利用し得る。還元性ガス215の温度は、直接還元シャフト211への導入前に部分酸化により更に上昇され得る。
【0079】
抽出バルブ254及び再循環トップガス218への水素富化オフストリーム258の後続の再導入点は、両方ともコンプレッサーの上流にあるとして例示されているが、これらの点の一方又は両方は、コンプレッサーの下流にあり得ることに留意されたい。
【0080】
図2bは、図2aのものに類似したシステムを概略的に例示するが、直接還元シャフト211は、浸炭海綿鉄209を得るために浸炭ゾーンを備える。海綿鉄209は、浸炭海綿鉄209が直接還元シャフト211の排出出口で得られるように、向流フローで浸炭性ガス214により浸炭される。浸炭ゾーンを出る使用済み浸炭ガス248は、浄化ユニット260、水素分離ユニット261(分離された水素は、還元性ガス215として使用される)及びCO吸収ユニット263を通過する。次いで、使用済み浸炭ガス248は、抽出バルブ264を通過し、使用済み浸炭ガス248は、再循環ストリーム267と抽出ストリーム266とに分割される。抽出ストリーム266は、予熱器での燃焼などにより従来の方式で処分される。再循環ストリーム267は、新鮮な浸炭性ガス212と組み合わされ、浸炭性ガス214を提供する。新鮮な浸炭性ガス212は、バイオマスガス化器などの浸炭性ガス源245から供給される。浸炭性ガス214は、直接還元シャフト211の浸炭ゾーンへの導入前に、コンプレッサー265及び任意選択的に予熱器247を通過する。直接還元シャフト211に入る浸炭性ガスの温度は、部分酸化により更に上昇され得る。そのような場合、酸素の供給(図示せず)は、予熱器247及びシャフト211間に配置されるであろう。
【0081】
図2cは、図2bのものに類似したシステムを概略的に例示する。しかしながら、図2cのシステムでは、直接還元シャフト211内の別個の浸炭ゾーンの代わりに、浸炭は、浸炭シャフト213として例示される別々の反応器で実施される。そのうえ、浸炭抽出ストリーム266は、分離ユニット269で処理され、還元性ガス215の成分部分として利用される更なる水素富化ストリーム270と、慣用的方式で処分され得る更なる不活性成分富化ストリーム271とを提供する。
【0082】
図3は、本明細書に開示されるプロセスのある例示的実施形態を概略的に例示するフローチャートである。ステップs301は、プロセスの開始を表す。ステップs303では、鉄鉱石が直接還元シャフト内に仕込まれる。ステップs305では、鉄鉱石を還元し、及び海綿鉄を生産するために、水素富化還元性ガスが直接還元シャフト内に導入される。ステップs307では、直接還元シャフトからトップガスが除去される。ステップs309では、トップガスは、再循環ストリームと抽出ストリームとに分割される。ステップs311では、抽出ストリームは、分離ユニットを介して処理され、水素富化オフストリーム及び不活性成分富化オフストリームが提供される。ステップs313では、再循環ストリーム及び水素富化オフストリームは、直接還元シャフトへの水素リッチ還元性ガスの成分部分として導入される。ステップs315は、プロセスの終了を表す。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石から海綿鉄を生産するプロセスであって、
- 直接還元シャフト(211)内に鉄鉱石(207)を仕込むステップ(s303)と、
- 前記鉄鉱石を還元し、及び海綿鉄(209)を生産するために、80体積%超の水素ガスを含む水素リッチ還元性ガス(215)を前記直接還元シャフト内に導入するステップ(s305)と、
- 前記直接還元シャフトからトップガス(216)を除去するステップ(s307)と、
- 前記トップガスを冷却し、及び前記水素リッチ還元性ガスを加熱するために、前記トップガスを熱交換に付すステップと、
- 前記トップガスを再循環ストリーム(218)と抽出ストリーム(256)とに分割するステップ(s309)と、
- 水素富化オフストリーム(258)及び不活性成分富化オフストリーム(259)を提供するために、分離ユニット(257)を通して前記抽出ストリームを処理するステップ(s311)と、
- 前記水素リッチ還元性ガスの成分部分として前記再循環ストリーム及び前記水素富化オフストリームを前記直接還元シャフトに導入するステップ(s311)と
を含むプロセス。
【請求項2】
前記分離ユニット(257)は、深冷分離ユニット、膜分離ユニット又は圧力スイング吸着ユニットである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガス(219)を前記直接還元シャフトに導入するステップを更に含み、前記メイクアップガスは、水電解によって得られた水素ガスを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水素リッチ還元性ガスの成分部分としてメイクアップガス(219)を前記直接還元シャフトに導入するステップを更に含み、前記メイクアップガスは、炭素質成分を本質的に含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
- 別個の浸炭反応器(213)又はゾーンで浸炭性ガスを使用して前記海綿鉄を浸炭し、結果として浸炭海綿鉄及び使用済み浸炭性ガス(248)を得るステップと、
- 前記使用済み浸炭性ガスを浸炭再循環ストリーム(267)と浸炭抽出ストリーム(266)とに分割するステップと、
- 前記浸炭抽出ストリームから炭素質成分を除去するステップと、
- 分離ユニットで前記浸炭抽出ストリームを処理するステップと
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記不活性成分富化オフストリームは、補助水素富化オフストリームを提供するために補助分離ユニットで処理され、前記補助分離ユニットは、好ましくは、膜分離ユニットである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
海綿鉄を生産するためのシステムであって、
- 還元性ガス入口及びトップガス出口を含む直接還元シャフト(211)、
- メイクアップガス源(220)であって、前記メイクアップガスは、水素ガス(219)から本質的になり、前記メイクアップガス源は、前記還元性ガス入口と流体接続して配置されたメイクアップガス源(220)、
- 前記トップガス出口と流体接続して配置された熱交換器(251)、
- 前記トップガス出口と流体接続して配置され、及び再循環ストリーム出口と抽出ストリーム出口との間でトップガスを分割するように配置された抽出バルブ(254)、
- 前記抽出ストリーム出口と流体接続して配置され、及び抽出ストリームを水素富化ストリームと不活性成分富化ストリームとに分離するように配置された分離ユニット(257)
を含むシステム。
【請求項8】
前記分離ユニットは、深冷分離ユニット、膜分離ユニット又は圧力スイング吸着ユニットである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記メイクアップガス源は、水電解槽ユニットである、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記直接還元シャフトは、還元ゾーン及び浸炭ゾーンを含み、前記直接還元シャフトは、前記浸炭ゾーンから前記還元ゾーンへのガスの通過を防止するように配置される、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
浸炭反応器(213)を更に含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記浸炭ゾーン又は浸炭反応器は、浸炭性ガス入口及び使用済み浸炭性ガス出口を含み、前記システムは、
- 前記浸炭性ガス入口と流体接続して配置された浸炭性ガス源(245)、
- 前記使用済み浸炭性ガス出口と流体接続して配置され、及び浸炭再循環ストリーム出口と浸炭抽出ストリーム出口との間で使用済み浸炭性ガスを分割するように配置された浸炭抽出バルブ(264)
を更に含み、前記浸炭抽出ストリーム出口は、分離ユニットと流体接続して配置される、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
1つ以上の炭素分離ユニットを更に含み、前記浸炭抽出ストリーム出口は、前記1つ以上の炭素分離ユニットを介して前記分離ユニットと流体接続して配置される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
CO分離ユニットを含まない、請求項7~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記分離ユニットの不活性成分富化ストリーム出口と流体接続して配置された補助分離ユニットを更に含み、前記補助分離ユニットは、膜分離ユニットである、請求項7~14のいずれか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】