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特表2024-508615腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物
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  • 特表-腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物 図1
  • 特表-腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物 図2
  • 特表-腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物 図3
  • 特表-腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物 図4A
  • 特表-腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20240220BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240220BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20240220BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240220BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240220BHJP
   C08F 222/12 20060101ALI20240220BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240220BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J9/02
C09J11/06
C09J133/02
C09J7/38
C09J133/04
C08F222/12
C09J133/14
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544412
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2022014620
(87)【国際公開番号】W WO2022165375
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,140
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー ユイフェン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュウォル スタニスラフ
(72)【発明者】
【氏名】アギレ エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ワン ポン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF011
4J040DF041
4J040HC02
4J040HC10
4J040HC23
4J040HC25
4J040HD13
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040MA02
4J040NA19
4J040PA20
4J040PA42
4J100AJ02Q
4J100AL03P
4J100AL08R
4J100BA05R
4J100CA05
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA03
(57)【要約】
本願は、接着剤層を形成するための腐食耐性の高電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を提供する。これはそれが取り付けられる基材に対する高い接着性、縮減された腐食作用を有し、かつこれは短時間に渡って40V超の電圧を印加することによって取り付けられた基材から容易に脱接合され得る。電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、イオン性液体と、水溶性ポリマーを含む腐食抑制剤とを含み得る。接着剤シートおよび調製のための方法もまた本願に記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー、イオン性液体、および腐食抑制剤を含み;
腐食抑制剤が水溶性ポリマーを含む、
電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項2】
腐食抑制剤が、液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、セバシン酸二ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項3】
アクリル系ポリマーが、ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、アクリル酸、またはそれらの組み合わせに由来するモノマー単位を含む、請求項1または2に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項4】
水溶性ポリマーが、ポリアクリレートモノマーサブユニットにカップリングされた電解質を含むアニオン性高分子電解質を含む、請求項1、2、または3に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項5】
電解質がアルカリ金属カチオンを含む、請求項4に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項6】
水溶性ポリマーがポリアクリル酸ナトリウムを含む、請求項1、2、3、4、または5に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項7】
水溶性ポリマーがアクリル系ポリマーの約0.1wt%から約2wt%である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項8】
液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、セバシン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせがアクリル系ポリマーの約0.1wt%から約3wt%である、請求項7に記載の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項9】
イオン性液体がイミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項10】
イミダゾリウムカチオンが一般式:
【化1】

によって表され、
式中、RおよびRがC~Cアルキルであり;
、R、およびRが水素である、
請求項9に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項11】
イミダゾリウムカチオンが:
【化2】

である、請求項9または10に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項12】
アンモニウムカチオンが一般式:
【化3】

によって表され、式中、R、R、R、R、およびR10が独立してC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、またはC~Cアルコキシ-C~Cアルキルであり、nが1または2に等しい、請求項9に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項13】
アンモニウムカチオンが:
【化4】

である、請求項9または12に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項14】
イオン性液体がスルホニルイミドアニオンを含む、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項15】
スルホニルイミドアニオンが:
【化5】

である、請求項14に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項16】
イオン性液体が:
【化6】

またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項17】
イオン性液体が、アクリル系ポリマーの約0.1wt%から約10wt%の範囲である量で存在する、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項18】
イオン性液体が、アクリル系ポリマーの約0.5wt%から約5wt%の範囲である量で存在する、請求項17に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項19】
さらにポリカルボジイミド架橋剤を含む、請求項1に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物。
【請求項20】
シートが、基材が起電力の不在下においては互いに対して固定された関係に留まるようにして2つの電気伝導性基材に接合され、かつシートが40V超の起電力の存在下においては2つの電気伝導性基材から脱接合される、請求項1~19のいずれか1項に記載の電気的に脱接合可能な接着剤組成物を含む接着剤シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:フー ユイフェン(Yufen Hu)、ラシュウォル スタニスラフ(Stanislaw Rachwal)、アギレ エドゥアルド(Eduardo Aguirre)、およびワン ポン(Peng Wang)
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照によって本願に組み込まれる2021年1月29日出願の米国仮出願No.63/143,140の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクスの分野においては、組み立てのためにコンポーネントを繋ぎ合わせること、および寿命の終わりには同じコンポーネントの分解の必要がある。典型的には、エレクトロニクス・コンシューマー・グッズのための加工されたコンポーネントの繋ぎ合わせおよび取り外しのために、感圧接着剤が広く組み込まれる。これらの感圧接着剤は分解後の種々のコンポーネント上に接着剤残渣を残し、コンポーネントのリサイクルに先立って高価なかつ時間消費的なクリーニングプロセスを要求する。
【0003】
近年では、イオン性組成物を含有する接着剤の商業用途が関わる報告があった。より具体的には、低電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤への使用のためのイオン性液体組成物1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの報告がある。イオン性組成物を含有するリワーク型接着剤は、現在の感圧接着剤の費用対効果が良い代替を提供し、金属化された基材上のいかなる接着剤残渣も生じないという追加される利点を有する。しかしながら、接着剤含有イオン性組成物は金属系表面に対して腐食性であり得る。さらに、これらの接着剤を含有するイオン性組成物は脱接合のためには一般的に低電圧を要求する。多くの場合に、今日のエレクトロニクスデバイスは寿命の終わりに順次の分離を要求する多数のコンポーネントを有する。
【0004】
それゆえに、高電圧の印加によって金属表面から脱接合され得る新たな接着剤コーティングであって、現行で利用可能な低電圧で電気化学的に脱接合可能な接着剤と利用されるときには寿命の終わりのリサイクルプロセスの間に被着体の順次の分離を許し、被着体に対する低い腐食を有するであろう新たな接着剤コーティングの必要が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、一般的に、強い基材接着性および非腐食性の特性を有する接着剤組成物に関する。これらの接着剤は、40V超の起電力の印加によって低および高湿度環境両方において基材から脱接合され得る。
【0006】
いくつかの実施形態は:ポリマーマトリックスと;イオン性液体と;腐食抑制剤とを含む電気的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する。腐食抑制剤は水溶性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、セバシン酸二ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体は少なくとも1つの塩基性イオン性液体を含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態は、本願に記載される電気的に脱接合可能な接着剤組成物を含む接着剤シートを包含し、シートは、基材が起電力の不在下においては互いに対して固定された関係に留まるようにして2つの電気伝導性基材に接合され、かつシートは起電力の存在下においては2つの電気伝導性基材から脱接合される。
【0008】
これらのおよび他の実施形態は下でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本願に記載される化合物のある実施形態を組み込むデバイスの概略図である。
図2図2は、本願に記載される組成物の90°接着試験強さに用いられるデバイスの概略図である。
図3図3は、本願に記載される組成物の180°接着試験強さに用いられるデバイスの概略図である。
図4A図4Aおよび図4Bは、腐食性試験方法への使用のための本願において開示される実施形態の写真の例である。
図4B図4Aおよび図4Bは、腐食性試験方法への使用のための本願において開示される実施形態の写真の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、40V超の起電力の印加によって、その表面に対する害なしに、それらが接合される表面から脱接合され得る腐食耐性のコーティングおよび接着剤としての使用のための化合物および組成物に関する。本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物はイオン性液体を包含する。
【0011】
いくつかの実施形態は、アクリル系ポリマーを含む電気的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する。いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物はイオン性液体を含み得る。イオン性液体は塩基性イオン性液体であり得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体は高分子量イオン性液体であり得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体は低分子量イオン性液体であり得る。いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は腐食抑制剤を含み得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は水溶性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は少なくとも1つの追加の化合物を含み得る。いくつかの例において、追加の化合物は液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物はさらに架橋剤を含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーはブチルアクリレートモノマー、2-メトキシエチルアクリル系モノマー、アクリル酸モノマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、イオン性液体は次の式のカチオンを含み得る:
【0014】
【化1】
【0015】
式1について、いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)であり得る。いくつかの実施形態において、R、R、およびRは水素である。いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)であり得る。
【0016】
さらに他の実施形態において、イオン性液体は次の式のカチオンを含み得る:
【0017】
【化2】
【0018】
式2について、いくつかの実施形態において、RおよびRはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)であり得る。いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)またはC~Cアルコキシ(例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、またはエトキシメチル)であり得る。いくつかの実施形態において、RおよびR10はC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)であり得る。いくつかの実施形態において、nは1または2であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、イオン性化合物はイミド含有アニオンを含有し得る。いくつかの実施形態において、イミド含有アニオンはスルホニルイミドアニオンを含み得る。いくつかの実施形態において、イミド含有アニオンは
【0020】
【化3】
【0021】
である。
【0022】
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は接着剤シートを形成し得る。いくつかの例において、接着剤シートは高電圧において被着体を脱接合することができ得る。本願において用いられる用語「高電圧」は40V超の電位を言う。いくつかの実施形態において、接着剤シートは高湿度環境において被着体を脱接合することができ得る。他の実施形態において、接着剤シートは低湿度環境において被着体を脱接合することができ得る。
【0023】
本願において用いられる用語「電気的に脱接合可能な接着剤組成物」は、起電力(40V超の電流)が組成物上に印加されるときに脱接合され得るかまたはいかなる接着も有さないかもしくは縮減された接着を有する接着剤組成物を言う。本開示の電気的に脱接合可能な接着剤組成物は、組成物を通る40V超の電位の印加によって、それらが接着される基材から脱接合され得る。
【0024】
本願において用いられる用語「塩基性イオン性液体」および「イオン性液体」は同等の用語であると見なされる。イオン性液体は、室温(約25°C)で液体状態を見せ得る溶融塩を言う。塩基性イオン性液体はアミノ(-NR)基などのルイス塩基部分を含む。
【0025】
本願において用いられる用語「低湿度」は、空気中に存在する水蒸気の量が、所与の温度における飽和に必要とされる量の50%未満である環境を言う。
【0026】
本願において用いられる用語「高湿度」は、空気中に存在する水蒸気の量が、所与の温度における飽和に必要とされる量の50%以上である環境を言う。
【0027】
100%湿度においては、空気は水によって飽和する。
【0028】
本願において用いられる用語「高分子量」は、290g/mol超の分子量を有する化合物を言う。
【0029】
本願において用いられる用語「低分子量」は、290g/mol以下である分子量を有する化合物を言う。
【0030】
本開示は、40V超の電位が接着剤上に印加されるときに被着体から分離することができる電気的に脱接合可能な接着剤組成物を記載し、これはアクリル系ポリマー、イオン性液体、および腐食抑制剤を含み得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は、接着剤上に印加される40V超の電位の印加によって被着体から分離され得る。いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は高湿度環境において被着体から分離され得る。他の実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は低湿度環境において被着体から分離され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物はアクリル系ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物はイオン性液体を含み得る。イオン性液体は、イオン性液体のカチオン性化合物が塩基性窒素原子を含む塩基性イオン性液体であり得る。イオン性液体は高分子量化合物を含み得る。いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は腐食抑制剤を含み得る。いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物はさらに架橋剤を含み得る。腐食抑制剤は水溶性ポリマーおよび追加の化合物を含み得、追加の化合物は液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、セバシン酸二ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は(例えば50~100%湿度の範囲内の)高湿度環境において被着体を分離することができ得る。さらに他の実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は(例えば0~50%湿度の範囲内の)低湿度環境において被着体を分離することができ得る。いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は被着体基材に対する縮減された腐食作用を有し得る。
【0032】
アクリル系ポリマー
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物はアクリル系ポリマーを含み得る。アクリル系ポリマーは、C~C14アルキル基を含むアルキルアクリレートエステル、C~C14アルキル基を含むアルコキシアルキルアクリレートエステル、C~C14アルキル基を含むアルキルメタクリレートエステル、C~C14アルキル基を含むアルコキシアルキルメタクリレートエステル、カルボキシル含有不飽和モノマー(例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸)、またはそれらの組み合わせなどのモノマーに由来し得る。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーは、C~C14アルキルまたはC~Cアルコキシアルキル基に由来するモノマー単位を含有し得る。いくつかの実施形態において、アルキルアクリレートエステルはブチルアクリレートである。いくつかの実施形態において、アルコキシアルキルアクリレートエステルは2-メトキシエチルアクリレートである。いくつかの実施形態において、カルボキシル含有不飽和モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、および同類、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、カルボキシル含有不飽和モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの例において、アクリル系ポリマーは、原料モノマーとしてのブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、および/またはアクリル酸から組成され得るかまたはその重合生成物であり得る。アクリル系ポリマーは単独でまたは2つ以上の組み合わせで用いられ得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、ブチルアクリレートは主モノマーコンポーネントとして組成物に用いられ得る。ブチルアクリレートは粘着性を提供し得る。これは電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物の接着特性に重要な役割を演ずる。2-メトキシエチルアクリレートは接着を増大させることを助け、脱接合を容易化する。カルボキシル含有不飽和モノマー(例えば、アクリル酸)は、金属表面に対する結合を改善することを助ける。
【0034】
いくつかの実施形態において、ブチルアクリレートの量は、本開示のアクリル系ポリマーを構成する原料モノマーの総量(100wt%)の80wt%から97wt%であり得る。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーを構成する原料モノマー中のブチルアクリレートの量は、約80~82wt%、約82~84wt%、約84~86wt%、約86~88wt%、約88~90wt%、約90~92wt%、約92~94wt%、約94~96wt%、約96~97wt%、約85~97wt%、約90~95wt%、もしくは約87wt%、約90wt%、約93wt%、約97wt%、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、2-メトキシエチルアクリレートの量は、本開示に存在するアクリル系ポリマーを構成する原料モノマーの総量の約5wt%から約20wt%であり得る。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーを構成する原料モノマー中の2-メトキシエチルアクリレートの量は、約5~7.5wt%、約7.5~10wt%、約10~15wt%、約15~20wt%、もしくは約7.5wt%、約10wt%、約12.5wt%、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、アクリル酸の量は、本開示のアクリル系ポリマーを構成する原料モノマーの総量(重量で100%)の重量で約0wt%から10wt%であり得る。いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーを構成する原料モノマー中のアクリル酸の量は、約0~0.5wt%、約0.5~1wt%、約1~1.5wt%、約1.5~2wt%、約2~3wt%、約3~5wt%、約3~3.5wt%、約3.5~4wt%、約4~4.5wt%、約4.5~5wt%、約4.2~4.4wt%、約4.4~4.6wt%、約4.6~4.8wt%、約4.8~5wt%、約4.4~4.5wt%、約4.5~5wt%、約4.5~5wt%、約5~10wt%、約5~6wt%、約6~7wt%、約7~8wt%、約8~9wt%、約9~10%、または約0.5wt%、約3wt%、約5wt%、約7.5wt%、もしくは約10wt%、あるいはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、アクリル系ポリマーは0°Cのまたはより低いガラス転移温度Tを有し得る。
【0038】
アクリル系ポリマーに追加される追加のコンポーネント
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は、アクリル系ポリマーに加えて、他のコンポーネント、例えばイオン性液体、耐腐食化合物(すなわち腐食抑制剤)、および架橋剤を含み得る。いくつかの例において、追加のコンポーネントは、アクリル系ポリマーの量に対して相対的なある量で追加され得る。それゆえに、本願に記載される組成物のいずれかのコンポーネントの量またはパーセンテージについて、いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物はアクリル系ポリマー(100wt%と言われる)を含み、追加の化合物(イオン性液体、腐食抑制剤、および架橋剤)は、アクリル系ポリマーの量に対して相対的に、重量パーセンテージに対して相対的に、重量パーセンテージで追加される。
【0039】
イオン性化合物
本願において用いられる用語「イミダゾリウムカチオン」は一般的な化学基:
【0040】
【化4】
【0041】
を言う。
【0042】
本願において用いられる用語「アミノアンモニウムカチオン」は一般的な化学基:
【0043】
【化5】
【0044】
を言う。
【0045】
本願において用いられる用語「アミノ」は、非荷電の化学基NRを言う:
【0046】
【化6】
【0047】
本願において用いられる用語「アンモニウム」は、総体的に荷電したまたは正味に荷電した化学的な化合物:NR を言う。NR 基を含有する塩は「アンモニウム塩」と呼ばれる。
【0048】
本願において用いられる用語「オニウム」は、プニクトゲン、カルコゲン、またはハロゲン基のプロトン化またはアルキル化によって形成される総体的に荷電したまたは正味に荷電したカチオンを言う。最も古い公知のオニウムカチオンはアンモニウムカチオンNH である。
【0049】
本願において用いられる用語ビス(フルオロスルホニル)イミドおよび/または「スルホニルイミド」は、荷電したまたは正味に非荷電の化学基:
【0050】
【化7】
【0051】
を言う。
【0052】
いくつかの実施形態において、イオン性液体は窒素含有オニウム塩を含み得る。電気化学的な脱接合可能性は本開示における好ましい特性であるので、有機カチオンコンポーネントとアニオンコンポーネントとを含む窒素含有オニウム塩は特に重要性がある。いくつかの実施形態において、オニウムカチオンはイミダゾリウムカチオンを含み得る。いくつかの実施形態において、イオン性化合物は式1によって表されるカチオンを含み得る:
【0053】
【化8】
【0054】
いくつかの実施形態において、式1のRはC~Cアルキルであり得、R、R、およびRは水素またはC1~3アルキルであり得、RはC~Cアルキルを表し得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、式1のRおよびRは独立してC1~3アルキル、例えばメチル(-CHまたは
【0056】
【化9】
【0057】
としてもまた記述される)、エチル(-CHCHまたは
【0058】
【化10】
【0059】
としてもまた記述される)、プロピル(-CHCHCHまたは
【0060】
【化11】
【0061】
としてもまた記述される)であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、イミダゾリウムカチオンは1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMIM)である:
【0063】
【化12】
【0064】
いくつかの実施形態において、オニウムカチオンはアミノアンモニウムカチオンを含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、イオン性液体は式2によって表されるカチオンを含み得る:
【0066】
【化13】
【0067】
いくつかの実施形態において、式2のR、R、R、R、およびR10はC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、またはC~Cアルコキシ-C~Cアルキルであり得;nは1または2に等しい。
【0068】
いくつかの実施形態において、式2のRおよびRは独立してC1~3アルキル、例えばメチル(-CHまたは
【0069】
【化14】
【0070】
としてもまた記述される)、エチル(-CHCHまたは
【0071】
【化15】
【0072】
としてもまた記述される)であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、式2のRはCアルキル、例えばメチル(-CHまたは
【0074】
【化16】
【0075】
としてもまた記述される)、エチル(-CHCHまたは
【0076】
【化17】
【0077】
としてもまた記述される)、Cアルコキシ-Cアルキル(-CHCHOCHCHまたは
【0078】
【化18】
【0079】
としてもまた記述される)、またはCアルコキシ(-CHCHOHまたは
【0080】
【化19】
【0081】
としてもまた記述される)であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、式2のRおよびR10は独立してC1~2アルキル、例えばメチル(-CHまたは
【0083】
【化20】
【0084】
としてもまた記述される)、エチル(-CHCHまたは
【0085】
【化21】
【0086】
としてもまた記述される)であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、アミノアンモニウムカチオンは2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウムである:
【0088】
【化22】
【0089】
いくつかの実施形態において、オニウムカチオンは式1および式2のカチオンの組み合わせを含み得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、上に記載されたイオン性液体はスルホニルイミドアニオンなどのアニオンを含む。いくつかの実施形態において、スルホニルイミドアニオンは:
【0091】
【化23】
【0092】
であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は、縮減されたルイス酸性を有するイオン性液体を含み得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体のカチオンは、縮減された分子量、例えば160g/モル未満を有し得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体の量は、アクリル系ポリマーマトリックスを構成する原料モノマーのwt%に対して相対的に、約0.01wt%から10wt%であり得る。いくつかの実施形態において、イオン性液体の量は、約0.01~0.1wt%、約0.1~0.5wt%、約0.5~1wt%、約1~2.5wt%、約1~1.5wt%、約1.5~2wt%、約2~2.5wt%、約2.5~5wt%、約2.5~3wt%、約5~7.5wt%、約7.5~10wt%、%、約3~3.5wt%、約3.5~4wt%、約4~4.5wt%、約4.5~5wt%、約5~5.5wt%、約5.5~6wt%、約4.2~4.4wt%、約4.4~4.6wt%、約4.6~4.8wt%、約4.8~5wt%、約4.4~4.5wt%、約4.5~4.6wt%、約4.6~4.7wt%、もしくは約1wt%、約1.5wt%、約2wt%、約2.5wt%、約3wt%、約3.5wt%、約4wt%、約4.5wt%、約5wt%、約5.5wt%、約7wt%、約8.5wt%、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態においては、市販で利用可能なイオン性液体、例えば1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMIM-FSIまたはAS-110としてもまた公知)が用いられ得る。他の実施形態においては、T3としてもまた公知のイオン性液体2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウムカチオンおよびスルホニルイミドアニオンが採用され得る。式2のカチオンを採用する先述のイオン性液体は、同時係属中の国際特許出願No.PCT/US2018/061945に記載されている通り合成され得る。しかしながら、イオン性液体はいずれかの好適な方法によって合成され得る。
【0095】
腐食抑制剤
いくつかの実施形態において、電気的に脱接合可能な接着剤組成物は腐食抑制剤を含み得る。腐食抑制剤(「金属不活性化剤」としてもまた公知)は、金属系表面の酸化を抑制するいずれかの単一の化合物または化合物の組み合わせであり得る。
【0096】
本願において用いられる用語「腐食」は、通常は電解質の助けによって金属系基材の酸化に至る電気化学的プロセスを言い、典型的には大気中酸素または水の還元を伴う。耐腐食化合物は、さもなければ化合物の不在下において起こるであろう活性な腐食プロセス、すなわち金属酸化を抑制または妨害するものである。
【0097】
いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は水溶性ポリマーを含み得る。水溶性ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEGME)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの官能基は金属イオンとの錯体を形成し、これらの形成された錯体の覆いを含む金属表面をもたらし、それによって金属表面を腐食から保護すると考えられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリアクリレートモノマーサブユニットに取り付けられた電解質を含むアニオン性高分子電解質であり得る。いくつかの実施形態において、電解質はアルカリ金属であり得る。いくつかの実施形態において、アルカリ金属カチオンはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、または他のアルカリ金属カチオンのいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーはポリアクリル酸ナトリウムである。
【0099】
いくつかの実施形態において、耐腐食化合物はチアゾール、トリアゾール、ベンゾジアゾール、ベンゾトリアゾール、チオジアゾール、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、耐腐食化合物は液体トルトリアゾール誘導体を含み得る。いくつかの実施形態において、耐腐食化合物はイミダゾリン誘導体を含み得る。いくつかの実施形態において、耐腐食化合物はアミノコハク酸を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノコハク酸はn-アシルアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、n-アシルアミノ酸は両親媒性のオレイン酸誘導体を含み得る。いくつかの実施形態において、両親媒性のオレイン酸誘導体はn-オレイルサルコシンを含み得る。
【0100】
耐腐食化合物はそれが本開示の可溶性要件を満たす限り、いずれかの従来の材料であり得る。例として、耐腐食化合物は、イルガメット(商標)30(液体トリアゾール誘導体、BASF)、イルガメット(商標)39(トルトリアゾール)、イルガメット(商標)SBT(テトラヒドロベンゾトリアゾール、BASF)、イルガメット(商標)42(トルトリアゾール、BASF)、イルガメット(商標)L190(ポリカルボン酸)、イルガルーブ(商標)349、イルガメット(商標)NPA(4-ノニルフェノキシ酢酸)、イルガメット(商標)BTZ(ベンゾトリアゾール)、イルガコア(商標)DSSG(セバシン酸二ナトリウム、BASF)、サルコシル(Sarkosykl)O(両親媒性オレイン酸、BASF)、アミンO(BASF)、M-138、M-415、M-238、およびM-5365(コーテック・コーポレーション、セントポール、MN、USA)を包含し得るが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態において、腐食抑制剤は水溶性ポリマーおよび液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤はポリアクリル酸ナトリウムおよび液体トリアゾール誘導体であり得る。他の実施形態において、腐食抑制剤はポリビニルアルコール(PVA)および液体トリアゾール誘導体であり得る。いくつかの例において、腐食抑制剤はポリエチレングリコール(PEG)および液体トリアゾール誘導体であり得る。いくつかの実施形態において、腐食抑制剤はポリアクリル酸ナトリウム、セバシン酸二ナトリウム、および液体トリアゾール誘導体であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、耐腐食化合物(単数または複数)の量は、アクリル系ポリマーマトリックスを構成する原料モノマーの総重量に対して相対的に、約0wt%から約5wt%であり得る。いくつかの実施形態において、耐腐食化合物の量は約0.01wt%から約5wt%であり得る。いくつかの実施形態において、耐腐食化合物の量は、約0.01~0.05wt%、0.05~0.1wt%、0.1~0.2wt%、約0.2~0.3wt%、約0.3~0.4wt%、約0.4~0.5wt%、約0.5~0.6wt%、約0.6~0.7wt%、約0.7~0.8wt%、約0.8~0.9wt%、約0.9~1wt%、約1~1.2wt%、約1.2~1.4wt%、約1.3~1.4wt%、約1.4~1.6wt%、約1.6~1.8wt%、約1.8~2wt%、約2~2.2wt%、約2.2~2.4wt%、約2.4~2.6wt%、約2.6~2.8wt%、約2.8~3wt%、約3~3.2wt%、約3.2~3.4wt%、約3.4~3.6wt%、約3.6~3.8wt%、約3.8~4wt%、約4~4.2wt%、約4.2~4.4wt%、約4.4~4.6wt%、約4.6~4.8wt%、約4.8~5wt%、約0.3wt%、約0.4wt%、約0.5wt%、約0.6wt%、約0.7wt%、約0.8wt%、約0.85wt%、約0.9wt%、約1wt%、約1.35wt%、約1.6wt%、約2wt%、約3wt%、約3.5wt%、もしくは約3.7wt%、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0103】
架橋剤
いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は架橋剤を含み得る。いくつかの実施形態において、架橋剤は高分子量ポリカルボジイミド架橋剤であり得る。ポリカルボジイミド架橋剤はアクリレートコポリマーマトリックスのヒドロキシル基および/またはカルボキシル基と反応およびカップリングし、それによって架橋された構造を形成し得る。別の実施形態においては、架橋剤はイソシアネートを含み得る。さらに別の実施形態において、架橋剤はエポキシ系架橋剤を含み得る。
【0104】
ポリカルボジイミド架橋剤はいずれかの好適なカルボジイミド架橋剤を包含し得る。いくつかの実施形態においては、少なくとも2つのカルボジイミド基(-N=C=N-を有する架橋剤が用いられ得、いずれかの好適なポリカルボジイミドが用いられ得る。
【0105】
ポリカルボジイミドを生ずる方法または手段は本開示に限定されない。例えば、高分子量ポリカルボジイミドはカルボジイミド触媒の存在下におけるジイソシアネートの脱炭酸(decarbonation)縮合反応によって調製され得る。いくつかの実施形態において、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3.3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびテトラメチルキシレンジイソシアネート、またはそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態において、カルボジイミド触媒は、ホスホレンオキシド、例えば1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-ホスホレン、およびそれらの異性体を包含し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、高分子量ポリカルボジイミドは、カルボジライト(登録商標)(日清紡ケミカル株式会社、東京、日本)を包含する市販製品、具体的には、カルボジライトV-01、V-03、V-05、V-07、およびV-09であり得る。これらは有機溶媒との優良な適合性を有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物はさらにエポキシ系架橋剤を含み得る。用語「エポキシ系架橋剤」は、分子あたり2つ以上のエポキシ基を有する多官能性エポキシ化合物を言う。エポキシ系架橋剤はグリシジルアミノ系架橋剤を包含し得る。
【0109】
エポキシ系架橋剤のいくつかの例は、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジル(digclycidyl)アミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールトリメチロールプロパン、ポリグリシジルエーテル、ジグリシジルアジペート、o-ジグリシジルフタレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシノールジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-Sジグリシジルエーテル;ならびに分子あたり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系樹脂を包含し得る。架橋剤は単独でまたは2つ以上の組み合わせで用いられ得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、エポキシ系架橋剤は、「TETRAD-C(商標)」(1,3-ビス(N,N-ジグリシジル(digclycidyl)アミノメチル)シクロヘキサン)および/または「TETRAD-X(商標)」(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)(三菱ガス化学株式会社、東京、日本)を包含する市販製品であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、架橋剤の量は、アクリル系ポリマーマトリックスを構成する原料モノマーのwt%に対して相対的に、約0.01wt%から約1wt%であり得る。いくつかの実施形態において、高分子量架橋剤の量は、約0.01から約0.05wt%、約0.05~0.1wt%、約0.1~0.15wt%、約0.15~0.2wt%、約0.2~0.25wt%、約0.25~0.4wt%、約0.4~0.55wt%、約0.55~0.7wt%、約0.7~0.85wt%、約0.85~1wt%、約0.8~0.9wt%、もしくは約0.25wt%、約0.35wt%、約0.5wt%、約0.75wt%、約1wt%、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかのwt%であり得る。
【0112】
接着剤シート
いくつかの実施形態において、本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は接着剤シート、フィルム、または層を含み得る。本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物によって接着剤シート、フィルム、または層を形成するための方法は限定されず、いずれかの好適な方法が採用され得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、電気伝導性層の厚さは様々であり得る。いくつかの実施形態において、電気伝導性層は、約2nmから約200μm、約2~25nm、約25~50nm、約50~100nm、約100~250nm、約250~500nm、約500nmから約1μm、約1~10μm、約10~20μm、約10~50μm、約20~30μm、約20~150μm、約30~40μm、約40~50μm、約50~60μm、約60~70μm、約70~80μm、約80~90μm、約90~100μm、約110~120μm、約120~130μm、約130~140μm、約140~150μm、約150~160μm、約160~170μm、約170~180μm、約180~190μm、約190~200μm、もしくは約10μm、約50μm、約20μm、約150μmの厚さ、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかの厚さを有する。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は、上に記載されたもの以外の追加の添加剤を含み得る。いくつかの例において、添加剤は顔料、フィラー、レベリング剤、分散剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、抗酸化剤、および/もしくは保存料、または同類を含み得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、本願に記載される選択的に接着性の組成物は、長時間の高湿度および高温の条件において上に記載された電気伝導性基材の腐食を最小化するように処方され得る。いくつかの例において、本願において開示される化合物を含む選択的な接着剤の分離層は、本願において提供される手引きによって知られる通りいずれかの好適な方法を用いて作製され得る。
【0116】
図1を参照して、本願に記載される電気的に脱接合可能な接着剤組成物を用いる被着体の接合および脱接合についての追加の詳細が提供される。装置200などの装置が接着剤材料203などの接着剤材料からなり、これは本願に記載される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する。接着剤材料は、基材202などの基材の表面206などの電気伝導性表面と基材201などの基材の表面207などの電気伝導性表面との間に挟まれた層またはコーティングを提供する。1つの形態では、電気伝導性表面の1つまたは両方が基材の残りと同じ材料から形成されるようにして、1つまたは両方の基材がある電気伝導性材料から形成され得る。しかしながら、他の形態では、基材(単数または複数)を形成する材料(単数または複数)とは異なる電気伝導性表面のための1つ以上の電気伝導性材料を用いることが可能である。類似に、表面が電気伝導性であるならば、1つまたは両方の基材が、電気伝導性ではない1つ以上の材料から形成され得るということは了解されるはずである。これらの形態では、電気伝導性表面は基材上のコーティングまたは層として提供され得る。
【0117】
例解されている形態では、電気伝導性表面は、スイッチ205などの介在するスイッチを包含する閉じられる電気回路上において、電力源204などの電力源と電気的に接続されるかまたは電気的連通をする。1つの形態では、電力源は約3Vから100Vの範囲のDC電圧を提供する直流電源であり得るが、他の変形が企図される。図1では開として図示されている介在するスイッチが閉じられるときには(示されていない)、電気伝導性表面の1つまたは両方から接着剤材料を脱接合し、結果として基材が互いから物理的に分離されることを許すために、電位が電気伝導性表面の間に印加される。
【0118】
1つの形態において、基材の1つまたは両方は電気伝導性炭素質材料または電気伝導性金属を包含し得る。いくつかの実施形態において、基材の1つまたは両方は、アルミニウムなどだがこれに限定されない金属系材料から形成され得る電気伝導性層をもまた包含し得る。いくつかの実施形態において、電気伝導性層は従来の材料、例えば金属、混合金属、合金、金属酸化物、および/もしくはコンポジット金属酸化物を包含し得るか、またはそれは導電性ポリマーを包含し得る。電気伝導性層のための好適な金属の例は、第4、5、6族の金属および第8~10族遷移金属を包含する。他の例では、電気伝導性層のための好適な金属は、ステンレス鋼、Al、Ag、Mg、Ca、Cu、Mg/Ag、LiF/Al、CsF、CsF/Al、もしくはそれらの合金、またはそれらの組み合わせを包含する。
【0119】
いくつかの実施形態は電気伝導性層を包含する。いくつかの実施形態において、電気伝導性層は、約1nmから約1000μm、約1~10nm、約10~20nm、約20~30nm、約30~40nm、約40~50nm、約50~60nm、約60~70nm、約70~80nm、約80~90nm、約90~100nm、約100~110nm、約110~120nm、約120~130nm、約130~140nm、約140~150nm、約150~160nm、約160~170nm、約170~180nm、約180~190nm、約190~200nm、約200~300nm、約300~400nm、約400~500nm、約500~600nm、約600~700nm、約700~800nm、約800~900nm、約900~1000nm、約1~10μm、約10~20μm、約20~30μm、約30~40μm、約40~50μm、約50~60μm、約60~70μm、約70~80μm、約80~90μm、約90~100μm、約100~110μm、約110~120μm、約120~130μm、約130~140μm、約140~150μm、約150~160μm、約160~170μm、約170~180μm、約180~190μm、約190~200μm、約200~300μm、約300~400μm、約400~500μm、約500~600μm、約600~700μm、約700~800μm、約800~900μm、約900~1000μm、約20nmから約200μm、約20nmから約200nmの範囲の厚さ、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内の約いずれかの厚さを有し得る。
【0120】
本願に記載される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物が、ある種の用途にとって望ましい種々の特性を提供し得るということは了解されるはずである。いくつかの実施形態において、本願において開示される組成物は、それらが位置する電気伝導性表面の腐食を排除または縮減し得る。いくつかの例において、本願において開示される組成物は、電気伝導性表面に直ちに隣接する環境について、より低い酸性度を有する組成物を包含する。1つの態様において、接着剤材料は、カチオン性およびアニオン性化合物それら自体に加えて、電気伝導性表面に直ちに隣接するイオン性カチオンおよび/またはアニオンの腐食性を縮減するために用いられ得る1つ以上の材料を包含し得る。接着剤材料の腐食作用はASTMのG69-12(アルミニウム合金の腐食電位の測定のための標準試験方法)に記載されている手続きに従って評価され得る。電気伝導性表面に対する接着剤材料の腐食作用を評価するための追加の手続きは本開示の実施例に記載されている。
【0121】
いくつかの実施形態において、本願において開示される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する接着剤材料は、電気伝導性電極または電気伝導性材料に対して相対的に、化学的に不活性であり得る;すなわち、金属電極および接着剤材料の間の望まれない反応の欠如(または最小限の存在)がある。望まれない反応は、例えば、金属電極の腐食性の劣化、選択的に接着性の接着剤による金属の溶解、および/または金属電極のピッチングを包含し得る。ほんの数例を提供すると、いくつかの例において、本願において開示される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する接着剤材料は、アルミニウム、銅、青銅、亜鉛、鉛、ステンレス鋼、炭素質材料、および/またはそれらの混合物に対して相対的に、化学的に不活性であり得る。いくつかの実施形態において、電気伝導性表面上の本願において開示される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する接着剤材料の接触は、少なくとも15分、30分、1時間、3時間、5時間、7時間、24時間、50時間、100時間、125時間、200時間、300時間、400時間、500時間、600時間、700時間、800時間、900時間、1,000時間、またはこれらの値のいずれかによって区切られる範囲内のいずれかの量の時間、またはそれ超の期間に渡って、表面のいずれかの腐食性の劣化の不在または最小化をもたらし得る。
【0122】
いくつかの例においては、電気伝導性表面上の本願において開示される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する接着剤材料の直接的接触は、60°から90°Cおよび60%から90%相対湿度の環境において、上で特定されている時期の1つに渡って、表面のいかなる腐食性の劣化も本質的に有さずにあり得るかまたは縮減された腐食性の劣化を有し得る。いくつかの実施形態において、いずれかの腐食性の劣化の不在は、上で特定されている時期の1つに渡っておよび/または上で特定されている環境条件において、アルミニウム箔の電気伝導性の10nmから50nm厚のシートのトータルの侵食の欠如によって実証され得る。
【0123】
他の実施形態においては、本願に記載される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物を包含する接着剤材料は、長時間の高湿度および高温の条件において電気伝導性表面の腐食を最小化するように処方され得る。例えば、接着剤組成物は、加速劣化試験方法IIに付された間におよび後に(好ましくは、上で特定されている時期の1つに渡る65°Cおよび90%相対湿度に対する暴露後に)、2つの基材を互いに対して固定された関係に維持することができ得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、本願に記載される電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は低湿度環境において優良な脱接合を示し得る。いくつかの形態では、本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は、脱接合によって、それらが繋ぎ合わせられていた基材上にいかなる残渣も残さないかまたはほとんど残さない。他の実施形態において、本開示の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物は、高湿度および/または高温環境において、脱接合によって、それらが繋ぎ合わせられていた基材上にいかなる残渣も残さないかまたはほとんど残さない。
【0125】
実施形態:
次の具体的な実施形態が具体的に企図される。
【0126】
実施形態1.電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって:
a.アクリル系ポリマー;
b.イオン性液体;および
c.腐食抑制剤;
を含み、腐食抑制剤が水溶性ポリマーを含み、イオン性液体が塩基性イオン性液体を含む。
【0127】
実施形態2.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、腐食抑制剤が、さらに、液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、またはそれらの組み合わせを含む追加の化合物を含む。
【0128】
実施形態3.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、アクリル系ポリマーがブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、アクリル酸、および/またはそれらの組み合わせもしくは混合物を含む。
【0129】
実施形態4.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、水溶性ポリマーが、ポリアクリレートモノマーサブユニットに取り付けられた電解質を含むアニオン性高分子電解質を含む。
【0130】
実施形態5.実施形態4の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、電解質がアルカリ金属カチオンを含む。
【0131】
実施形態6.実施形態1、2、3、4、または5の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物であって、水溶性ポリマーが、アクリル系ポリマーの重量あたり約0.01wt%から約5wt%または約0.1wt%から約2wt%の範囲である量で存在する。
【0132】
実施形態7.実施形態2の電気化学的に脱接合可能な接着剤組成物であって、液体トリアゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、アミノコハク酸、およびそれらの組み合わせまたは混合物が、アクリル系ポリマーの重量あたり約0.01wt%から約5wt%または約0.1wt%から約3wt%の範囲である量で存在する。
【0133】
実施形態8.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、塩基性イオン性液体がイミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0134】
実施形態9.実施形態8の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、イミダゾリウムカチオンが一般式:
【0135】
【化24】
【0136】
によって表され、
式中、RがC~Cアルキルであり;
式中、R、R、およびRが水素であり;
式中、RがC~Cアルキルである。
【0137】
実施形態10.実施形態8の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、イミダゾリウムカチオンが:
【0138】
【化25】
【0139】
である。
【0140】
実施形態11.実施形態8の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、アンモニウムカチオンが一般式:
【0141】
【化26】
【0142】
によって表され、式中、R、R、R、R、およびR10は独立してC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、またはC~Cアルコキシ-C~Cアルキルであり;nは1または2に等しい。
【0143】
実施形態12.実施形態11のアンモニウムカチオンであって、RおよびRがCアルキルであり、RがCアルキル、Cアルコキシ-Cアルキル、またはCアルコキシを含み、RおよびR10がCアルキルまたはCアルキルを含む。
【0144】
実施形態13.実施形態11のアンモニウムカチオンであって、R、R、R、R、およびR10がCアルキルであり、nが1である。
【0145】
実施形態14.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、塩基性イオン性液体がスルホニルイミドアニオンを含む。
【0146】
実施形態15.実施形態14の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、スルホニルイミドアニオンが:
【0147】
【化27】
【0148】
である。
【0149】
実施形態16.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、イオン性液体が、アクリル系ポリマーの重量あたり約0.1wt%から約10wt%または約0.5wt%から約5wt%の範囲である量で存在する。
【0150】
実施形態17.実施形態1の電気的に脱接合可能な接着剤組成物であって、さらに高分子量ポリカルボジイミド架橋剤を含む。
【実施例
【0151】
次の実施例は例解の目的のためであり、この文書において開示される主題をこれらの例において開示される実施形態のみに限定すると解釈されることは意図されないということは了解されるはずである。
【0152】
本願に記載されるコンポジットイオン性組成物および要素の実施形態は、本願に記載される導電性金属層の劣悪化および/または腐食を縮減するということが発見された。これらの利益は次の例によってさらに示され、これらは本開示の実施形態の例解であることが意図されるが、範囲または根底にある原理を限定することは決して意図されない。
【0153】
ポリマー溶液の調製(NP5-5)
87質量部のブチルアクリレート、3質量部のアクリル酸、および10質量部の2-メトキシエチルアクリレート、ならびに250mlの酢酸エチルをフラスコに導入した。混合物を窒素ガスを導入しながら約1時間に渡って室温で撹拌して、反応系から酸素を取り除いた。約1時間後に、10mlの酢酸エチルに溶解した開始剤としての0.2質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を追加し、もたらされた混合物の温度を約63°±2°Cまで増大させ、重合のために約5~6時間に渡って混合/撹拌した。反応を止めた後に、アクリル系ポリマー含有溶液がもたらされ、溶媒の取り除き後に約29%の固形分を有した。
【0154】
電気的に脱接合可能な接着剤組成物の調製(サンプル16)
添加剤のそれぞれの10%ストック溶液を前もって調製した。1gの添加剤を9gの溶媒に溶解することによってストック溶液を調製した。例えば1gのT3(本願において用いられるT3は、2-(ジエチルアミノ)-N,N,N-トリエチルエタン-1-アミニウムカチオンおよびスルホニルイミドアニオンを含むアミノアンモニウム塩を言う)を9gのアセトニトリルに溶解した。他の添加剤については、イルガメット30およびカルボジライトV-05を9gの酢酸エチルに溶解し、Naポリアクリレートおよびイルガコア(Irgacore)DSSGを9gのHOに溶解した。
【0155】
20mLガラスバイアルを秤の上に置き、秤を風袋引きして0.00gにした。風袋引きした20mLガラスバイアルに、0.098gのAS-110、0.42gのT-3溶液、0.056gのNaポリアクリレート溶液、0.14gのイルガメット30溶液(上に記載された通り調製された10%ストック溶液)、および0.056gのイルガコア(Irgacore)DSSG溶液(上に記載された通り調製された10%ストック溶液)を追加し、均一な溶液が得られるまでボルテックスした。次に、10gのNP5-5ポリマー溶液(上に記載された通り調製された10%ストック溶液)、0.112gの架橋剤(カルボジライトV-05)溶液(上に記載された通り調製された10%ストック溶液)、および約0.1gの酢酸エチルを追加し、均一な溶液が得られるまでボルテックスした。
【0156】
各コンポーネントの量を表1に示される通り変更した以外は、電気的に脱接合可能な接着剤組成物の溶液(サンプル1~15および17~25)をサンプル16と同じ様式で調製した(where prepared is)。
【0157】
【表1】
【0158】
接着剤シートの調製
上に記載されたポリマー溶液を混合して電気的に脱接合可能な接着剤組成物を得ることによって、接着剤シートを調製した。上からの電気的に脱接合可能な接着剤組成物溶液を、表面処理されたPETセパレータ(リリースライナー)(MRE#38またはMRF#38、三菱樹脂、日本製)上にコーティング/積層し、接着剤コンポジット層を約20μmから約150μm(ミクロン)の厚さで形成した。それから、コーティングされたフィルムを150°Cで約3分に渡って熱乾燥して、厚さ約10μmから約50μmを有する接着剤層/シートを得た。それから、別の表面処理されたPETセパレータ(リリースライナー)(MRE#38、三菱樹脂、日本製)を接着剤コンポジット層に貼着して、接着剤コンポジットの両側を2つのPETセパレータの間にラミネートした。
【0159】
接着試験
90°および180°接着試験を、JP2015-228951および/またはJP2015-204998に記載されるならびに図2および3に示される様式で行った。
【0160】
図2に示される通り、電気的に脱接合可能な接着剤組成物303を、基材301などの50mm幅のかつ100mm長の導電性基材上にコーティングし、10mmから25mm幅のかつ導電性基材301よりも100mm長い層302(アルミニウム箔および/または金属化されたプラスチックフィルム、例えばPETを含む)などの別のフレキシブルな導電性層上に、かつ2kgのローラーおよびロール圧力による圧延圧力の負荷によってラミネートした。
【0161】
接合/脱接合試験機(オートグラフAGS-Xモデル、北米島津、カールスバッド、CA、USA)。導電性基材301を下のクランプに固定し、それから、電源304(プロテックDC電源3006B)の正極に電気的に接続した。図2の上側層302を、同じDC電源の負極に接続されている上のクランプに固定した。電源は0から100VDCの出力範囲を有した。移動/剥離速度は300mm/minにセットした。
【0162】
動的試験において、剥離または分離が始まった後に、電圧をスイッチ305によって数秒に渡って印加した。フォースゲージからの時間および剥離強さの読み取りを、例解されていないデータ取得システムによって記録する(島津オートグラフソフトウェア、トラペジウムX、北米島津、カールスバッド、CA、USA)。図3は、50VDCが接着剤材料に印加されたときの経時的な180度剥離強さの変化を示す。
【0163】
結果は下の表2にまとめられている。
【0164】
腐食性試験方法
サンプル調製:
ナノAlコーティング層に対する接着剤シートの貼着にすぐに先立って、先述のリリースライナーを取り外した。先に上に記載された接着剤シートをアルミニウムフィルム(50nm厚アルミニウムコーティングPETフィルム[メタルミーTS#50、東レフィルム加工、東京、日本])の金属系表面に貼着した。次に、第2のPETセパレータ(リリースライナー)を接着剤シートから取り外し、接着剤側がプレートとの物理的接触をするようにしてSUS316プレート上に置いた。サンプル調製はサンプル2から24と同じであった。
【0165】
試験:
調製されたサンプルを、65°C/90%RHにセットされた温度&湿度ベンチトップチャンバー(エスペック北米[ハドソンビル、MI、USA]、クライテリオン温度&湿度ベンチトップモデルBTL-433)内に置き、サンプルを200Hr.、500Hr.、および800Hr.で試験した(結果は表2に示されている)。サンプルの映像を撮った。図4Aおよび図4Bの代表例を参照。ImageJソフトウェア(国立衛生研究所および光学・計算機器研究室[LOCI、ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン、USAにおいて開発されたJavaに基づく画像処理プログラム[ImageJは、それが色に基づいてエリアを識別し得る画像分析を提供するソフトウェアである])を用いて、腐食および非腐食エリアの間の異なる色に基づいて腐食の面積を見積もった。次に、腐食していない金属基材のパーセンテージを式[1-(腐食面積/総面積)]×100%を用いて計算した。結果は表2にまとめられている。腐食耐性の数は表面の何パーセントが腐食されていないのかを言うことに注意。そのため、より高い数がより良好である。加えて、「5.2N/cm[初期の接着/剥離強さ]->0[残り]」は、次を指示するとしてさらに説明または明確化され得る。「5.2N/cm」は初期の力を言う。「0」は負荷された力のどのくらい多くが30秒後に残っているかを言う。
【0166】
【表2A】
【0167】
【表2B】
【0168】
別様に指示されない限り、本明細書および実施形態において用いられる成分の数量、分子量などの特性、反応条件などを表現する全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。従って、反対に指示されない限り、本明細書および付属の実施形態において提出される数的パラメータは概算であり、これらは得られようとする所望の特性に依存して様々であり得る。最低限、かつ実施形態の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数的パラメータは、少なくとも、報告されている有効数字の数に照らしてかつ普通の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0169】
開示されるプロセスおよび/または方法では、プロセスおよび方法において果たされる機能は、文脈によって指示され得る異なる順序で実装され得る。さらにその上、概説されているステップおよび工程は例としてのみ提供され、ステップおよび工程のいくつかは任意であり得るか、より少数のステップおよび工程へと組み合わせられ得るか、または追加のステップおよび工程へと拡張され得る。
【0170】
本開示は、場合によっては、異なる他のコンポーネントに含有されるかまたはそれらと接続される異なるコンポーネントを例解し得る。かかる記述されるアーキテクチャは単に例であり、同じまたは類似の機能性を達成する多くの他のアーキテクチャが実装され得る。
【0171】
本開示および添えられている実施形態(例えば、添えられている実施形態の本文)において用いられる用語は、一般的に「開放的な」用語として意図される(例えば、用語「~を包含する(including)」は「~を包含するが、これらに限定されない」として解釈されるべきであり、用語「有する」は「少なくとも~を有する」として解釈されるべきであり、用語「~を包含する(includes)」は「~を包含するが、これらに限定されない」として解釈されるべきであるなど)。加えて、具体的な数の要素が導入される場合には、これは、文脈によって指示され得る通りに、少なくとも記載されている数を意味すると解釈され得る(例えば、他の修飾語句なしの「2つの記載」のそのままの記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。本開示において用いられるときに、2つ以上の選択肢の用語を提示するいずれかの離接的な単語および/または言い回しは、用語の1つ、用語のどちらか、または両方の用語を包含する可能性を企図すると理解されるべきである。例えば、言い回し「AまたはB」は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を包含すると理解されるであろう。
【0172】
本開示を記載する文脈において(とりわけ次の実施形態の文脈において)用いられる用語「a」、「an」、「the」、および類似の指示対象は、本願において別様に指示されないかまたは文脈によって明瞭に否定されない限り、単数および複数両方をカバーすると解釈されるべきである。本願に記載される全ての方法は、本願において別様に指示されないかまたは文脈によって明瞭に否定されない限り、いずれかの好適な順序で行われ得る。本願において提供されるいずれかのおよび全ての例または記述的な文言(例えば「~などの」)の使用は、単に本開示をより良好に解き明かすことを意図され、いずれかの実施形態の範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、本開示の実施に必須のいずれかの具体化されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0173】
本願において開示される選択肢の要素または実施形態の群分けは限定として解釈されるべきではない。各群構成員は、個々に、または群の他の構成員もしくは本願に見出される他の要素とのいずれかの組み合わせで、参照および具体化され得る。ある群の1つ以上の構成員は、便宜および/または特許性の理由で、ある群においては包含または削除され得るということが予期される。いずれかのかかる包含または削除が起こるときには、本明細書は改変された通りの群を含有すると見なされ、それゆえに、添えられている実施形態において用いられる全てのマーカッシュ群の記載要件を満たす。
【0174】
本開示を実施するための本発明者に既知のベストモードを包含するある種の実施形態が本願に記載される。当然のことながら、これらの記載される実施形態の変形は、前述の記載を読むことによって当業者には明らかになるであろう。本発明者は当業者がかかる変形を適宜採用することを予想し、本発明者は本開示が具体的に本願に記載されるものとは別様に実施されることを意図する。従って、実施形態は、適用法によって許容される実施形態に記載される主題の全ての改変および同等物を包含する。その上、本願において別様に指示されないかまたは文脈によって明瞭に否定されない限り、上に記載された要素のいずれかの組み合わせはそれらの全ての可能な変形で企図される。終わりに、本願において開示される実施形態は実施形態の原理の例解であるということは理解されるはずである。採用され得る他の改変は実施形態の範囲内である。それゆえに、限定としてではなく例として、代替的な実施形態が本願の教示に従って利用され得る。従って、実施形態は、まさに示されているおよび記載されている実施形態に限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0175】
200 装置
201 基材
202 基材
203 接着剤材料
204 電力源
205 閉じられる電気回路スイッチ
206 基材の電気伝導性表面
207 基材の電気伝導性表面
301 導電性基材
302 フレキシブルな導電性層
303 電気的に脱接合可能な接着剤組成物
304 電源
305 スイッチ
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】