(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シングルユース使い捨て酸素センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G01N27/416 323
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545323
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 US2021019508
(87)【国際公開番号】W WO2022182342
(87)【国際公開日】2022-09-01
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501464761
【氏名又は名称】ノヴァ バイオメディカル コーポレイション
【住所又は居所原語表記】200 Prospect Street Waltham MA 02454(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オー ボン
(57)【要約】
電気化学酸素センサは、作用電極及び参照電極を有するセンシング表面、酸素拡散制限層エマルションから形成され、作用電極に重なっている、親水性層、並びに、親水性層の上方に配設された疎水性溶液から形成された疎水性膜、を含んでいる。親水性層は、エポキシネットワーク及び親水性ポリマーを含有している。疎水性層は、アセテートコポリマーと、親水性層中の液体エポキシ樹脂と反応してエポキシネットワークを形成する架橋剤と、を含有しており、疎水性部材は、水蒸気透過性及び酸素透過性である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極及び参照電極を有するセンシング表面、
酸素拡散制限層エマルションから形成された親水性層であって、前記親水性層が、前記作用電極に重なっており、前記拡散制限層が、エポキシネットワーク及び親水性ポリマーを含有している、親水性層、並びに、
前記親水性層の上方に配設された疎水性溶液から形成された疎水性膜であって、前記疎水性溶液が、アセテートコポリマーと、前記エポキシネットワークと反応する架橋剤と、を含有しており、前記疎水性部材が、水蒸気透過性及び酸素透過性である、疎水性膜、
を備えている、電気化学酸素センサ。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項1の電気化学酸素センサ。
【請求項3】
前記疎水性膜の前記アセテートコポリマーが、エチレンビニルアセテートコポリマーである、請求項1の電気化学酸素センサ。
【請求項4】
前記エポキシネットワークが、前記親水性層エマルション中の液体エポキシと、前記疎水性層からの前記架橋剤との間の反応によって形成されている、請求項1の電気化学酸素センサ。
【請求項5】
シングルユース酸素センサである、請求項1の電気化学酸素センサ。
【請求項6】
前記アセテートコポリマーが、エチレンビニルアセテートであり、前記エチレンビニルアセテートの50パーセントが、エチレンビニルポリマー骨格中に重合されている、請求項3の電気化学酸素センサ。
【請求項7】
電気化学酸素センサを形成する方法であって、
少なくとも2つの独立した導電性経路を備えた基層と、前記基層上に配設された絶縁及び試薬保持層と、を有するセンサ本体を提供することであって、前記絶縁及び試薬保持層が、少なくとも2つの試薬保持開口部を有し、前記少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの1つが、前記少なくとも2つの独立した導電性経路のうちの1つの一部分を露出させており、前記少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの他の試薬保持開口部が、前記少なくとも2つの独立した導電性経路のうちの別の導電性経路の一部分を露出させている、センサ本体を提供すること、
前記少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの1つの中に、液体エポキシ及び親水性ポリマーを含有している酸素拡散制限エマルションを配設すること、
前記酸素拡散制限エマルションを乾燥させて親水性層を形成すること、
前記親水性層の上方に、アセテートコポリマー及びエポキシ硬化剤を含有しているカバー膜溶液を配設すること、並びに、
前記カバー膜溶液を乾燥させて疎水性層を形成すること、
を含み、
前記親水性層及び前記疎水性層を含有している前記少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの前記1つが、作用電極を形成している、
方法。
【請求項8】
前記酸素拡散制限エマルションを形成することをさらに含み、
前記酸素拡散制限エマルションを形成することが、
予め規定された量の液体エポキシ樹脂と、予め規定された量のポリビニルアルコールと、予め規定された量の界面活性剤と、予め規定された量の蒸留水と、を含む複数の成分を共に添加すること、及び、
前記複数の成分を混合してエマルションを形成すること、
を含む、請求項7の方法。
【請求項9】
1.6グラムの前記液体エポキシ樹脂を測定すること、
1.4グラムの10%ポリビニルアルコールを測定すること、及び、
1ミリリットルの体積の蒸留水を測定すること、
をさらに含む、請求項8の方法。
【請求項10】
前記親水性エマルションに、予め規定された量の消泡剤を添加することをさらに含む、請求項8の方法。
【請求項11】
前記カバー膜溶液を形成することをさらに含み、
前記カバー膜溶液を形成することが、
アセテートコポリマーを50wt%と、エポキシ硬化剤を3wt%と、ペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネートを1wt%と、を含む複数のカバー膜成分を共に添加すること、及び、
前記複数のカバー膜成分を、前記予め規定された量のTHF/シクロヘキサノン中において混合して、前記カバー膜溶液を形成すること、
を含む、請求項7の方法。
【請求項12】
前記エポキシ硬化剤として、2%2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを選択することをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの別の試薬保持開口部内に参照電極を形成することをさらに含む、請求項7の方法。
【請求項14】
作用電極を酸素センサにするための多層試薬マトリックスであって、
液体エポキシ樹脂を含有する酸素拡散制限層エマルションから形成された親水性層であって、前記親水性層が、前記作用電極に重なっており、前記拡散制限層が、エポキシネットワーク及び親水性ポリマーを含有している、親水性層、並びに、
前記親水性層の上方に配設されたカバー膜溶液から形成された疎水性膜であって、前記カバー膜溶液が、アセテートコポリマーと、前記親水性層中の前記液体エポキシ樹脂と反応して前記エポキシネットワークを形成する架橋剤と、を含有しており、前記疎水性部材が、水蒸気透過性及び酸素透過性である、疎水性膜、
を備えている、多層試薬マトリックス。
【請求項15】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項14の試薬マトリックス。
【請求項16】
前記疎水性膜の前記アセテートコポリマーが、エチレンビニルアセテートコポリマーである、請求項14の試薬マトリックス。
【請求項17】
作用電極を酸素センサに変える多層試薬マトリックスを作製する方法であって、
作用電極表面上に堆積するための酸素拡散制限エマルションを形成することであって、前記酸素拡散制限エマルションが、予め規定された量の液体エポキシ樹脂と、予め規定された量のポリビニルアルコールと、予め規定された量の界面活性剤と、予め規定された量の蒸留水と、を含む複数の成分を共に添加すること、及び、前記複数の成分を混合してエマルションを形成すること、を含む、酸素拡散制限エマルションを形成すること、並びに、
前記酸素拡散制限エマルションを乾燥させた後に前記酸素拡散制限エマルション上に堆積するためのカバー膜溶液を形成することであって、前記カバー膜溶液が、予め規定された量のアセテートコポリマーと、予め規定された量のエポキシ硬化剤と、予め規定された量のペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネートと、を含む複数のカバー膜成分を共に添加すること、及び、前記複数のカバー膜成分を、予め規定された量のTHF/シクロヘキサノン中において混合して、前記カバー膜溶液を形成すること、を含む、カバー膜溶液を形成すること、
を含み、
前記酸素拡散制限エマルションが、前記作用電極上に親水性層を製作するために使用されており、前記カバー膜溶液が、前記親水性層上に疎水性層を製作するために使用されている、多層試薬マトリックスを作製する方法。
【請求項18】
前記酸素拡散制限エマルションを形成するステップが、1.6グラムの前記液体エポキシ樹脂を選択することと、1.4グラムの前記10%ポリビニルアルコールを選択することと、1ミリリットルの蒸留水を選択することと、を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記カバー膜溶液を形成するステップが、前記アセテートコポリマーを50wt%選択することと、前記エポキシ硬化剤を3wt%選択することと、ペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネートを1wt%選択することと、を含む、請求項17の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[1.発明の分野]
【0002】
本発明は概して、化学分析を実施するために使用される、膜コーティングを備えた平板型電気化学センサに関する。本発明は特に、使い捨て酸素センサに関する。
【0003】
[2.先行技術の説明]
【0004】
シングルユースセンサにおける最大の難題のうちの1つが、電気化学平板型酸素センサの作製である。シングルユースセンサ基板は、絶縁層で被覆された、金属コーティングプラスチック基板から成る。電極寸法は、この層の開口部寸法により決定される。このフォーマットにおける酸素作用電極の寸法は通常、典型的な電気化学酸素センサよりも大きく、サンプルとの接触時に、サンプル枯渇を引き起こすとともに不規則な値を生じる、高電流を生じる。作用電極の寸法は、生じる電流の量に比例し、このことは、コットレル方程式に基づく。コットレル方程式は、電位のステップの関数としての、時間における電流の応答を記述している。コットレル方程式は以下の通りである。
【数1】
式中、i(t)は電流、nは半反応において移動した電子の数、Fはファラデー定数(96,485C/mol)、Aは電極の面積、D
Oは拡散係数、C
Oは初期濃度、tは時間である。この方程式から認められることとして、電極の面積Aが増大すると、電流iも増大する。
【0005】
「小電極」の作製は、技術的に可能ではあるものの、シングルユース使い捨てセンサとしては、費用対効果が高くはない。
【0006】
シングルユース酸素センサの、いくつかの異なる技術が報告されている。1つのアプローチが、Abbott Diagnosticsによるi-Stat Systemsに由来している。酸素センサは、微細加工技術を使用して、窒化ケイ素基板内に小電極を作製する。マルチステッププロセスは、マスキング、エッチング、及び、リフティングを伴って、代表的な酸素作用電極に寸法の点で類似する、小寸法の酸素作用電極を制作する。窒化ケイ素ベースの基板は、高価であるとともに、上述の酸素センサの制作に複雑なプロセスを必要とする。
【0007】
別のアプローチが、カナダ、オンタリオ州オタワのEpocal,Inc.(Siemens Healthineersの関連会社)に由来しており、不均一膜が導入されている。この膜は、油分画及び水分画の混合物から成る。この混合物は、架橋可能なポリビニルアルコール水性媒体を、塩及びレドックス対と、架橋可能な疎水性ポリマーとで乳化して、定量供給又はプリンティングのいずれかを使用する製造プロセスを促進する。次のステップは、堆積層の沈降と、脱気と、最終的なUV硬化と、を必要として、全ての分画を固定化する。この手順は、不均一膜の相分離特性のため、複雑で、時間に依拠したプロセスであり、このことは、センサ間のばらつきを招き得る。
【0008】
別の関連するアプローチでは、生体サンプル中の酸素濃度を求める方法が開示されている。米国特許第7,648,624号(Cai他、2010年)においては、作用電極と、参照電極と、少なくとも作用電極上に配設された試薬マトリックスと、を含む酸素センサが開示されており、試薬マトリックスは、初期酸素測定値を得るために、レドックスメディエータの還元型と、オキシダーゼと、ペルオキシダーゼと、を含有しており、当該酸素センサは、酸素と予め規定された検体との間の既知の相関性を有しており、当該相関性は、酸素及び予め規定された検体の両方に対する酸素センサの応答の関数として表現される。この酸素センサを製造するプロセスは、負担が大きく時間がかかり、このことは、試薬と、作用電極上へ定量供給して試薬マトリックスを形成するために使用可能な溶液を提供するための混合時間と、に相関する。
【0009】
[発明の概要]
シングルユースの動脈血液ガス(ABG)センサは、メンテナンス不要、手に入れ易さ、使用し易さ、汚染の低減、費用対効果が高いこと、迅速な分析、簡便性といった、従来の血液ガス分析器に優る多くの利点を有している。
【0010】
使い捨て酸素センサが、従来の血液ガス分析器において見受けられる酸素電極と比較して、比較的大きな電流を生じる比較的大きな電極表面を使用する傾向があるため、大きな電極上に十分な「小電流」を生じるための代替的方法は、サンプルから電極への酸素拡散を制限する拡散層を開発することである。拡散制限層についての要件は、水和時における固定経路長、電気伝導性、及び、線形の酸素透過性である。
【0011】
本発明においては、多層試薬マトリックスが作用電極の上方に形成されて、酸素センサを製作する。試薬マトリックスは、親水性ポリマー層及び疎水性ポリマー層を含む。親水性ポリマー層は、液体エポキシ樹脂及び親水性ポリマーエマルションの組み合わせによって形成され、当該組み合わせは、酸素拡散制限層として使用される。エポキシ硬化剤を含有する疎水性ポリマー層は、カバー膜用に使用されるとともに、親水性ポリマー層中の液体エポキシを固化させるために使用される。
【0012】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、即ち、エピクロロヒドリン及びビスフェノールA、を含む液体エポキシ樹脂は、それをPVA、PVP等といった親水性ポリマーと混合することにより、水性エポキシエマルションにすることができる。エポキシは、酸素拡散を限定する物質である一方で、水溶性の親水性ポリマーは、酸素分散を可能にするとともに、電気化学センサの機構において、電気的接続部を作製することができる。このエポキシ/水性親水性ポリマーの混合物は、定量供給し易い均一なエマルションとなり、均一なフィルムを作製する。しかしながら、この層は、水性溶液に一旦直接的に接触すると、洗い流される恐れがある。疎水性カバー膜は、この層が洗い流されることを防止するとともに、膜を横断する水蒸気及び酸素の拡散を許容もする。不幸にして、液体エポキシが硬化されないままである場合、拡散した水蒸気が、この層中の親水性部分を溶解(即ち、水和)させ始め、遂には経路長(即ち、層厚さ)を増大させ、それにより、センサ性能を低下させてしまう。
【0013】
液体エポキシは、水混和性エポキシを非水溶性の硬質ポリマーネットワークにする硬化剤(例えば、アミン)と反応することによって硬化することが可能である。ただし、エポキシ-アミンは、液体エポキシとの接触時に極めて高速の硬化反応を示す。エポキシ-アミンが液体エポキシと一旦混合されると、反応が直ちに開始する。その結果、定量供給プロセスの前に、硬化剤をエポキシ/親水性ポリマーのエマルションに添加することが極めて難しい。
【0014】
本発明は、エポキシ-アミン硬化剤を疎水性カバー膜溶液中に混入させることにより、この問題を回避する。疎水性カバー膜溶液は、アミン硬化剤とともに、アセテートコポリマーも含有する。エポキシ-アミン硬化反応は、カバー膜溶液をエポキシ/親水性ポリマーの層の頂部上に定量供給した直後に始まる。エポキシ-アミン硬化剤を含有する疎水性カバー膜溶液を定量供給した結果、親水性層エマルション中に埋設された液体エポキシは、この層の親水性部分を含有する硬質エポキシネットワークとなる。拡散層の上方に形成された疎水性カバー膜と結合されている拡散層内に形成された硬質エポキシネットワークは、水和時における多層試薬マトリックスの経路長(即ち、厚さ)のいかなる変化をも防止する。
【0015】
本発明の目的は、少量の流体サンプル中の溶解酸素を高確度で測定する電気化学酸素センサを提供することである。本発明の別の目的は、使い捨てであるとともに、酸素を高い確度及び精度で測定する、アンペロメトリック酸素センサを提供することである。
【0016】
本発明は、これらの及び他の目的を、1つの実施形態において、電気化学酸素センサを提供することによって達成しており、電気化学酸素センサは、作用電極及び参照電極を有するセンシング表面、酸素拡散制限層エマルションから形成された親水性層であって、親水性層が、作用電極に重なっており、拡散制限層が、エポキシネットワーク及び親水性ポリマーを含有している、親水性層、並びに、親水性層の上方に配設された疎水性溶液から形成された疎水性膜であって、疎水性溶液が、アセテートコポリマーと、親水性層中の液体エポキシ樹脂と反応してエポキシネットワークを形成する架橋剤と、を含有しており、疎水性部材が、水蒸気透過性及び酸素透過性である、疎水性膜、を有する。
【0017】
本発明の別の実施形態において、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0018】
本発明の別の実施形態において、疎水性膜のアセテートコポリマーは、エチレンビニルアセテートコポリマーである。
【0019】
1つの実施形態において、エポキシネットワークは、親水性層エマルション中の液体エポキシと、疎水性層からの架橋剤との間の反応によって形成されている。
【0020】
1つの実施形態において、電気化学酸素センサは、シングルユース酸素センサである。
【0021】
1つの実施形態において、アセテートコポリマーは、エチレンビニルアセテートであり、エチレンビニルアセテートの50パーセント(50%)は、エチレンビニルポリマー骨格中に重合されている。
【0022】
別の実施形態においては、電気化学酸素センシングデバイスを形成する方法を開示している。この方法は、少なくとも2つの独立した電気伝導性経路を備えた基層と、基層上に配設された絶縁及び試薬保持層と、を有するセンサ本体を提供することであって、絶縁及び試薬保持層が、少なくとも2つの試薬保持開口部を有し、少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの1つが、少なくとも2つの独立した電気伝導性経路のうちの1つの一部分を露出させており、少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの他の試薬保持開口部が、少なくとも2つの独立した導電性経路のうちの別の導電性経路の一部分を露出させている、センサ本体を提供すること、少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの1つの中に、液体エポキシ及び親水性ポリマーを含有している酸素拡散制限エマルションを配設すること、酸素拡散制限エマルションを乾燥させて親水性層を形成すること、親水性層の上方に、アセテートコポリマー及びエポキシ硬化剤を含有しているカバー膜溶液を配設すること、並びに、カバー膜溶液を乾燥させて疎水性層を形成すること、を含む。
【0023】
この方法の1つの実施形態において、酸素拡散制限エマルションは、予め規定された量の液体エポキシ樹脂と、予め規定された量のポリビニルアルコールと、予め規定された量の界面活性剤と、予め規定された量の蒸留水と、を含む複数の成分を共に添加すること、及び、複数の成分を混合してエマルションを形成すること、を含む。
【0024】
この方法の別の実施形態において、この方法は、1.6グラムの液体エポキシ樹脂を測定すること、1.4グラムの10%ポリビニルアルコールを測定すること、及び、1ミリリットルの体積の蒸留水を測定すること、を含む。
【0025】
1つの実施形態において、この方法はさらに、予め規定された量の消泡剤を測定すること、及び、親水性エマルションに、消泡剤を添加すること、を含む。
【0026】
1つの実施形態において、この方法は、カバー膜溶液を形成することを含み、カバー膜溶液を形成することは、アセテートコポリマーを50wt%と、エポキシ硬化剤を3wt%と、ペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネートを1wt%と、を含む複数のカバー膜成分を共に添加すること、及び、複数のカバー膜成分を、予め規定された量のTHF/シクロヘキサノン中において混合して、カバー膜溶液を形成すること、を含む。
【0027】
1つの実施形態において、この方法は、エポキシ硬化剤として、2%2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを選択することを含む。
【0028】
1つの実施形態において、この方法はさらに、少なくとも2つの試薬保持開口部のうちの別の試薬保持開口部内に参照電極を形成することを含む。
【0029】
別の実施形態においては、作用電極を酸素センサにするための試薬マトリックスを開示している。試薬マトリックスは、酸素拡散制限層エマルションから形成された親水性層であって、親水性層が、作用電極に重なっており、拡散制限層が、エポキシネットワーク及び親水性ポリマーを含有している、親水性層、並びに、親水性層の上方に配設された疎水性溶液から形成された疎水性膜であって、疎水性溶液が、アセテートコポリマーと、親水性層中の液体エポキシ樹脂と反応してエポキシネットワークを形成する架橋剤と、を含有しており、疎水性部材が、水蒸気透過性及び酸素透過性である、疎水性膜、を含む。
【0030】
1つの実施形態において、エポキシネットワークは、親水性層エマルション中の液体エポキシと、疎水性層からの架橋剤との間の反応によって形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[図面の簡単な説明]
【
図1】酸素センサを示す本発明の1つの実施形態の斜視図である。
【
図2】酸素センサの2つのコンポーネント層を示す、
図1の実施形態の分解組立図である。
【
図5】
図1の線5-5に沿った酸素センサの拡大断面図である。
【
図6】親水性層及び疎水性層を示す、作用電極の多層試薬マトリックスの拡大図である。
【
図7】フローセルに接続された酸素センサの例示的上面図である。
【
図8】トノメータで測定した血液サンプルを使用した、本発明の酸素センサの読み取り値と血液ガス分析器からの読み取り値との間の相関性を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明の詳細な説明]
図1~
図8に、本発明のいくつかの実施形態を例示する。1つの実施形態において、本発明の酸素センサ10は、2層構造(
図1~
図4を参照)を使用して作製されている。2層構造は、電極端部14と、電気的接触端部16と、電極端部14における、少なくとも対電極17、作用電極18、及び、参照電極19と、電気的接触端部16における電気的接触パッド16a、16b、及び、16cと、を含む積層体12を有する。積層体12は、基層20と、絶縁及び電極境界画定層30と、も含む。積層体12の全ての層は、誘電材料、好ましくはプラスチックで作製されている。好ましい誘電材料の例は、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、ポリウレタン、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、ポリスチレン等である。
【0033】
基層20は電気伝導性層21を有し、その上に少なくとも3つの電気伝導性経路22、24、及び、26が境界画定されている。電気伝導性経路22、24、及び、26は、電気伝導性層21をスクライビング又はスコアリングすることにより、或いは、電気伝導性経路22、24、及び、26を基層20上にシルクスクリーニングすることにより、形成され得る。導電性層21のスクライビング又はスコアリングは、電気伝導性層21を機械的にスクライビングして、少なくとも3つの独立した導電性経路22、24、及び、26を製作するのに十分な非電気伝導性スコアリング線28を製作することにより、行われ得る。本発明の好ましいスクライビング又はスコアリング方法は、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、又は、エキシマレーザ、を使用することにより行われる。導電性層21は、例えば、銅、金、酸化スズ/金、パラジウム、他の貴金属、又は、それらの酸化物、或いは、炭素膜組成物、といった任意の電気伝導性材料で作製され得る。この実施形態で使用される電気伝導性材料は、パラジウムである。基層20についての許容可能な厚さは、0.002インチ(0.05mm)から0.010インチ(0.25mm)の範囲内にある。基層20についての、1つのこのような使用可能な材料は、インディアナ州インディアナポリスのMarian,Inc.が販売する0.005インチ(0.125mm)のパラジウムポリエステルフィルム(在庫番号:Melinex 329)である。
【0034】
絶縁及び電極境界画定層30は、少なくとも3つの開口部32、34、及び、36を有する。開口部32は、導電性経路22の一部分を露出して、開口部34は、導電性経路24の一部分を露出して、試薬保持井戸を製作しており、開口部36は、導電性経路26の一部分を露出している。この実施形態において、絶縁及び電極境界画定層30は、イリノイ州フランクリンパークのTranscendia,Inc.から入手可能な、医療用片面粘着テープ/フィルムである。本発明における使用についての、このテープの許容可能な厚さは、約0.001インチ(0.025mm)から約0.005インチ(0.13mm)の範囲内にある。1つのこのようなテープ/フィルムである、在庫番号:PE31280(約0.002インチ(0.045mm))は、その取り扱い易さと、十分な分量の化学試薬の保持能、及びセンサの流体サンプル流路を経由した毛管作用の促進能の点での良好な性能を理由として、使用される。理解されるべきこととして、テープの使用は必要とされない。絶縁及び電極境界画定層30は、プラスチックシートから作製されて、感圧接着剤、フォトポリマーでコーティングされるか、基層20に超音波接合されるか、基層20上にシルクスクリーニングされるか、又は、基層20上に3Dプリンティングされて、言及したポリエステルテープの使用と同じ結果を達成してもよい。
【0035】
3つの開口部32、34、及び、36は、電極エリアC、W、及び、Rをそれぞれ規定し、対電極C、作用電極W、及び、参照電極Rを形成する。概して、作用電極Wには、電極エリアW内において露出された導電性層21の一部分上に直接的に堆積された親水性ポリマー層と、当該親水性ポリマー層の頂部上における疎水性ポリマー層と、が装填されており、疎水性ポリマー層がカバー膜を形成している。
【0036】
対電極、作用電極、及び、参照電極の各々は、それぞれ、別個の導電性経路22、24、及び、26と電気接触している。別個の導電性経路は、積層体12の電極端部14とは反対側の端部上において、終端をなすとともに、読み取りデバイスへの電気接続部を作製するために露出されている。
【0037】
十分な化学試薬を保持して適正に機能するようにしつつ、酸素センサの流体サンプル流路をできるだけ短くすることを可能にするために、試薬保持開口部の寸法は、好ましくは、できるだけ小さくされる。この実施形態における試薬保持開口部の形状は、丸く、約0.03インチ(0.75mm)の直径を有する。2つの試薬保持開口部32及び34は、互いにアライメントされており、互いから約0.0256インチ(0.65mm)間隔をあけて配置されている。これらの円形の試薬保持開口部は、例示的目的のためだけのものである。理解されるべきこととして、試薬保持開口部の形状は決定的なものではなく、且つ、開口部の寸法は、試薬マトリックス混合物を開口部内へ定量供給する技術的実現性と、他の製造上の制約と、によって、より左右される。
【0038】
対電極、作用電極、及び、参照電極の位置的配列は、酸素センサから使用可能な結果を得るために決定的なものではない。酸素センサの、フローセルとの結合時における、考え得る電極配列は、3つの電極の、C-W-Rか、W-C-Rか、又は、任意の配列であってもよく、電極の配列として列挙された配列は、対電極C、作用電極W、及び、参照電極Rを横切るサンプルの流れの方向に基づいて現れる。好ましい位置は、C-W-Rであることが判明した。つまり、流体サンプルがフローセル70に進入するのに伴い、流体サンプルは、まず対電極Cを、次に作用電極Wを、次に参照電極Rを覆う。
【0039】
好ましくは、参照電極19(電極井戸36)には、Ag/AgCl層(例えば、Ag/AgClインクを適用することにより、又は、(a)Ag層をスパッタコーティングして、その後、当該Agを塩素化することにより、若しくは、(b)Ag/AgCl層をスパッタコーティングすることにより)、或いは、適正に機能し得るためにレドックスメディエータを必要としない他の参照電極材料が装填される。注記されるべきこととして、流路内における作用電極、参照電極、及び、対電極の位置的配列は、センサから使用可能な結果を得るために決定的なものではない。
【0040】
次に
図3及び
図4を見ると、基層20及び絶縁及び試薬保持層30の上面図が例示されている。
図3に例示されるように、導電性経路の対称性は、基層20に対する絶縁及び試薬保持層30の向きと、組み付けプロセスと、に依存して、基層20の一方の長手方向端部が電極端部14又は電気的接触端部16のいずれかとして指定され得るものである。この実施形態において、基層20は、導電性層21内に、3つの別個の導電性経路を境界画定するスクライブマークを有する。理解されるべきこととして、基層は、2つ以上の導電性経路を有してよく、追加的な導電性経路は、類似するか又は他の検体センサ試薬用に指定され得、この酸素センサを多検体センサにする。
【0041】
図4は、絶縁及び試薬保持層30の上面図である。絶縁及び試薬保持層30は、互いから間隔をあけて配置された3つ以上の開口部を有しており、当該配置は、各開口部が、基層20上に境界画定された導電性経路のうちの1つと一致するような配置である。理解されるべきこととして、本明細書に開示された電気伝導性経路は、任意の非腐食性金属から作製されてよい。電気伝導性経路としては、例えば、カーボンペースト又はカーボンインクといったカーボン堆積物も使用されてよく、全てが当業者に周知である。さらに理解されることとして、対電極Cは、電流を作用電極Wから対電極Cへ流す目的で使用されている。2電極系(即ち、作用電極及び参照電極)が使用され得るが、比較的大きな作用電極使用する場合には、この場合、従来の酸素センサと比較して、短所がある。その課題とは、アンペロメトリック系における参照電極が、高い電荷密度を維持するよう求められる点である。2電極系において、作用電極から参照電極へ高電流の流れが存在する場合には、変化する電流密度を理由として、Ag-AgCl参照電極が劣化し得る。このことは、今度は、バイアス電位窓のシフトと、求められる酸素濃度レベルの精度低下と、を引き起こす。
【0042】
次に
図5を見ると、
図1の線5-5に沿って取った酸素センサ10の拡大断面図が例示されている。理解されるべきこととして、層20及び30、並びに、電極井戸32、34、及び、36の相対寸法と、作用電極試薬マトリックス及び参照電極試薬マトリックスの厚さと、は、寸法どおりに描かれたものではなく、単に、酸素センサ10の様々な構成要素を例示するためのものである。
図5において認められるように、基層20には、その上に電気伝導性層21が配設されており、スコアリング線28が、導電性層21において非電気伝導性開路を生じている。絶縁及び試薬保持層30は、作用電極酸素拡散制限多層試薬マトリックス34aを含有する試薬保持開口部34と、参照電極試薬マトリックス60を含有する試薬保持開口部36と、を有する。
【0043】
図6は、多層試薬マトリックス32aの拡大図である。多層試薬マトリックス32aは、親水性ポリマー層50と、疎水性ポリマー層40と、を含む。親水性層50は、エポキシネットワーク52と、親水性部分54と、を含む。疎水性層40は、その名称が示唆するように、水溶性ではないものの、水蒸気透過性及び酸素透過性である。
【0044】
親水性層内の親水性部分として使用されるポリマーは、十分に水溶性であるべきであり、電極エリア内の導電性表面層に対し、試薬中の全ての他の化学物質を安定化させることが可能でもあるべきである。好適なポリマーには、低分子量及び高分子量ポリエチレン酸化物(PEO)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及び、ポリアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。親水性部分は、好ましくは約0.02%(w/w)から約7.0%(w/w)の濃度範囲内にある単一ポリマーか、又は、ポリマーの組み合わせであり得る。本発明の親水性層内の好ましい親水性部分は、PVAである。PVAは、米国ニューヨーク州のScientific Polymer Productsから入手可能である。
【0045】
親水性層は、水溶性ではないエポキシネットワークも含有している。しかしながら、エポキシネットワークは、水溶性の液体エポキシ樹脂を含有する親水性エマルションから製作されている。
【0046】
疎水性層内において使用されているポリマーは、エチレンビニルアセテートコポリマーである。これは、米国ニューヨーク州のScientific Polymer Productsから入手可能な、50wt%ビニルアセテートである。
【0047】
(親水性層の製作に使用される)親水性エマルション中に、界面活性剤をオプションで含んで、親水性エマルションの、作用電極エリアW内への定量供給を容易にしてもよい。界面活性剤は、流体が酸素センサ10、430のサンプルチャンバ17に進入する際における、乾燥化学試薬(即ち、PVA)の迅速な溶解も助ける。界面活性剤の量及びタイプは、これまでに言及した機能を確保するように選択される。界面活性剤は、様々な、アニオン系、カチオン系、非イオン性、及び、双性イオン性の洗剤から選択することができるが、これらに限定されない。許容可能な界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンエーテル、Tween20、コール酸ナトリウム水和物、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物、及び、CHAPsである。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。より好ましくは、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノールであり、Sigma-Aldrichから、ブランド名TritonX-100の下で入手可能である。試薬マトリックス中の界面活性剤の濃度は、好ましくは約0.01%(w/w)から約2%である。
【0048】
図7は、フローセル70に接続された酸素センサ10を示す上面図表示である。フローセル70は、作用電極18及び参照電極19が配設されているテストチャンバ74を有する。テストチャンバ74は、校正物質供給ライン90及び血液サンプル供給ライン100に接続されたテストチャンバ入口72を有する。予め規定された量の校正物質が、一点校正用に、テストチャンバ74に供給される。校正後に、校正物質をテストチャンバ74から外へ移動させ、その後、予め規定された量の血液サンプルが続く。血液サンプルは、当該血液サンプル中の酸素の量(即ち、酸素濃度)について測定される。理解されることとして、酸素センサ10は、クロノアンペロメトリック測定を実施するために、適正な電子機器回路に電気的に接続されている。
【0049】
[親水性層組成物及び疎水性層組成物の調製]
【0050】
親水性層の製作に使用される親水性エマルションについての好ましい試薬層組成物は、1つのステップで調製されてもよいが、好ましくは2つのステップで調製される。
【0051】
ステップ1:The Dow Chemical Companyによる商標D.E.R.331(DER331)の下で入手可能な液体エポキシ樹脂1.6gm、10%ポリビニルアルコール(Mw.130K)1.4g、1%TritonX-100及び蒸留水1ml、並びに、消泡剤100mg、を共に添加する。
【0052】
ステップ2:上記のステップ1における全ての成分の混合を、ホモジナイザーを使用して1分間につき9,000rpmにおいて行う。調製した親水性エマルションは、室温で保管されると数日間にわたって安定性を有する。
【0053】
疎水性層の製作に使用されるカバー膜溶液についての試薬層組成物も、1つのステップで調製されてもよいが、好ましくは2つのステップで調製される。
【0054】
ステップ1:エチレンビニルアセテートコポリマーであって、当該コポリマーが、エチレンビニルアセテートであり、50%のアセテートが、エチレンビニルポリマー骨格中に共重合されている、エチレンビニルアセテートコポリマー、を2wt%と、エポキシ硬化剤を3%(2%2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールと、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))を1%と、をTHF/シクロヘキサノン中に添加する。
【0055】
ステップ2:ステップ1における原材料を共に混合して、カバー膜溶液を形成する。調製したカバー膜溶液は、室温で保管されると数週間にわたって安定性を有する。
【0056】
[センサ構造]
【0057】
本発明の様々な実施形態の組み付けは、比較的単純である。概して、基層と絶縁及び試薬保持層とを互いに積層し、その後、試薬保持開口部の各々の中に、適切な試薬混合物を定量供給する。
【0058】
図1に示される2層構成について、より詳細には、一片のパラジウムフィルムを
図2に例示される形状に切断して、センサ10の基層20を形成する。機械的スクライビングがオプションであるものの、好ましくはレーザを使用して、導電性パラジウムポリエステルフィルムをスコアリングする。
図2に例示されるように、フィルムは、3つの電極エリアがサンプル流体端14において形成され、且つ、3つの接触点22、24、及び、26が電気的接触端16において形成されるように、レーザによりスコアリングされる。スコアリング線は、極めて細いものの、別個であって且つ明瞭な3つの電気伝導性経路を製作するのに十分なものである。その後、一片の片面接着性テープを所定の寸法及び形状に切断して、当該テープが
図1において参照番号16により例示される小さな電気的接触エリアを露出することを除いて基層20の導電性層21の大部分を被覆するように、絶縁及び電極境界画定層30を形成する。
【0059】
絶縁及び電極境界画定層30を基層20に取り付ける前に、実質的に等しい寸法を有する少なくとも3つの開口部32、34、及び、36を、レーザにより、又は、ダイパンチアセンブリといった機械的手段により、パンチングして、絶縁及び電極境界画定層30に電極開口部32、34、及び、36を製作する。電極開口部の形状は、いかなる形状であってもよい。例示された実施形態において、開口部は円形である。開口部32及び34についての好ましい穴寸法は、約0.030インチ(0.75mm)という典型的な直径を有するが、いかなる寸法であってもよい。
図2に例示されるように、電極開口部32及び34(並びに、含まれる場合にはオプションの電極開口部36)は、互いにアライメントされており、隣接する開口部間において約0.020インチ(0.508mm)から約0.050インチ(1.27mm)の間隔を有する。円形の開口部は、例示的目的のためだけのものである。理解されるべきこととして、開口部の形状及び寸法、又は、開口部間の距離は、決定的なものではない。これらの円形の開口部は、表面積の比率が実質的に一定のままである限り、寸法が実質的に等しい必要はない。電極の配列は、いかなる組み合わせであってもよいが、開口部32、34、及び、36内に形成される電極の好ましい配列は、テストチャンバ入口72からの配置として、C(対電極)、W(作用電極)、及び、R(参照電極)である。その後、対電極C、作用電極W、及び、参照電極Rを製作するための電極井戸を規定する態様で、絶縁及び電極境界画定層30を基層20に取り付ける。
【0060】
作用電極井戸内に、予め規定された量の親水性エマルションを定量供給して乾燥させる。当該親水性エマルションは、例えば、室温において数分間空気乾燥させるか、又は、37℃において30秒間乾燥させることで、親水性層を形成してもよい。室温を上回る温度において短い時間期間で乾燥させるほど、より効率的な製造プロセスが可能になる。親水性エマルション及びその組成物については、上記の通りである。
【0061】
次に、親水性層上にカバー膜溶液を定量供給し、溶液が親水性層を完全に被覆するようにし、室温における一夜空気乾燥、又は、37℃における30秒間以上の乾燥のいずれかを行う。このプロセスの間に、カバー膜溶液中のエポキシ硬化剤が、親水性層中の液体エポキシ樹脂と反応して、当該層の親水性部分(即ち、ポリビニルアルコール)を含有する硬質のエポキシネットワークを形成し、当該エポキシネットワークは、親水性層が校正物質により水和されるときに、親水性層の予め規定された経路長(即ち、厚さ)を維持する。これまでに論じたように、疎水性層は、カバー膜を横断する水蒸気及び酸素の拡散を許容し、一方、親水性層は、酸素分散を可能にするとともに、作用電極への電気的接続部を作製する水溶性の親水性ポリマーを含有する酸素拡散制限層である。
【0062】
試薬の乾燥に必要とされる時間の長さは、乾燥プロセスが実施される温度に依存している。
【0063】
[酸素センサのテスト]
【0064】
図7に例示されるように、酸素センサ10をフローセルに接続した。
図1に示される本発明の実施形態の酸素センサに流体サンプルを適用すると、流体サンプルは、フローセル70に進入するとともに、電極C、W、及び、Rの上方を流れて、予め規定された時間期間にわたり、留め置かれる。時間の長さは、流体が校正物質であるのか、それとも血液サンプルであるのか、に依存する。
【0065】
Nova Biomedicalの血液ガス分析器を使用して、酸素センサ10の電流応答をクロノアンペロメトリーにより測定したが、ポテンショスタットを使用してもよい。
図1に示されるとともに上述のように作製された酸素センサを使用して、本発明の酸素センサ10の、サンプル中の酸素の濃度に対する応答をテストした。作用電極と参照電極との間に、-0.10Vから-0.70ボルト(使用される参照電極に依存)の電位を印加する間、予め規定された量の酸素を含有する血液サンプルが、センサストリップのサンプル入口18に適用され、センサストリップに進入する。ここに記載する特定の実施例において、印加された電位は、Ag-AgCl参照電極に対して-0.65Vであった。出力応答電流は、血液サンプル中の濃度に比例する。Nova Biomedicalの血液ガス分析器を使用すると、測定値が、酸素の分圧としてmmHg単位で与えられた。
【0066】
[実施例1]
【0067】
[異なるレベルのpO2において測定された、参照pO2対センサpO2の例証]
【0068】
異なるpO2を有する血液サンプルを、Nova BiomedicalのpHOx血液ガス分析器を使用して、本発明の酸素センサによりテストした。代替例においては、電気化学分析器(米国テキサス州オースティン、CH InstrumentsのModel812)を使用して、酸素センサストリップ10から直接的に電流応答を測定してもよい。酸素濃度(pO2)は、Tonometer(米国ユタ州ソルトレイクシティ、Medicor,Inc.のPrecision Gas Mixer,PGM-3)を使用して制御した。血液サンプル2ミリリットルを、温度制御された(37℃)円筒形回転キュベット内に入れて、トノメータで15分間測定した。
【0069】
親水性層の水和と、酸素センサ10のための参照点の確立と、のために、血液サンプルの測定前における一点校正が必要とされる。使用された一点校正物質は、110mmHgのpO2溶液であった。この一点校正物質を、フローセルを経由して各酸素センサに流し、フローセル内に90秒間留まらせて親水性層を水和した。90秒間の水和期間の終了時に、一点校正測定を実施する。校正に続き、トノメータで測定した血液サンプルを、酸素センサに導入して校正物質と置換し、血液サンプルを導入して30秒後に読み取り値を取った。濃度計算は、一点校正に基づくとともに、コットレル方程式を使用した。この様態で行ったところ、pO2測定応答が、作用電極において50mmHgから170mmHgのpO2の範囲にわたって線形であることが判明した。トノメータで測定した酸素レベルが49mmHgから243mmHgの範囲内にある6つの血液サンプルをテストした。トノメータで測定したこれらの血液サンプルは、Nova BiomedicalのpHOx血液ガス分析器を用いても測定し、本発明の酸素センサから得られた読み取り値と比較するための、各血液サンプルについての参照読み取り値を得た。
【0070】
この実施例では、酸素センサの応答をテストするために、パラジウム基板を使用した複数個のバイオセンサを作製した。表1に結果を示す。
【0071】
【0072】
各血中濃度を、少なくとも10回テストした(即ち、各酸素濃度レベルについて10個の使い捨て酸素センサ10を使用し、平均値を計算して表1に表示した。)。テストされた各濃度レベルについて、標準偏差値も提示している。
【0073】
図8は、本発明の作用電極(即ち、親水性層/カバー膜層の電極)の、49mmHg、82mmHg、103mmHg、122mmHg、167mmHg、及び、243mmHgの様々なpO
2レベルに対する、測定されたpO
2応答を示している。これらの応答(即ち、電流応答)は、上述の最初の5つのpO
2範囲の全体にわたり、酸素濃度に対して線形である。
【0074】
従来の血液ガス分析器に優る本発明の利点には、メンテナンス不要、手に入れ易さ、使用し易さ、汚染の低減、費用対効果が高いこと、迅速な分析、簡便性等が含まれる。
【0075】
本明細書において本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、上記の説明は、単に例示的なものである。本明細書に開示されたこの発明のさらなる変更が、それぞれの当該技術の当業者に生じるであろうし、全てのそのような変更は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に入るものと見なされる。
【国際調査報告】