(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨て電気化学バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20240220BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240220BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N27/327 353T
G01N27/416 338
G01N27/416 336G
G01N27/30 311Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545328
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021019515
(87)【国際公開番号】W WO2022182344
(87)【国際公開日】2022-09-01
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501464761
【氏名又は名称】ノヴァ バイオメディカル コーポレイション
【住所又は居所原語表記】200 Prospect Street Waltham MA 02454(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペイ ジェンホン
(72)【発明者】
【氏名】ビダード ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トラム アーロン
(72)【発明者】
【氏名】モスリー サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュン チャン
(57)【要約】
作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面と、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含み、作用電極部上に配置されて作用電極を形成する第1試薬と、参照電極部上に配置されて参照電極を形成する参照電極材料と、を有する、使い捨てバイオセンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨てバイオセンサであって、
作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面と、
NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含み、前記作用電極部上に配置されて作用電極を形成する第1試薬と、
前記参照電極部上に配置されて参照電極を形成する参照電極材料と、
を有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記検出表面は、
ブランク電極部と、
NAD(P)+、ジアホラーゼ、酸化型レドックスメディエータを含み、デヒドロゲナーゼを含まない、前記ブランク電極部上に配置されてブランク電極を形成する第2試薬と、
をさらに有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
参照材料は、銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照マトリックスと、の何れかである、使い捨てバイオセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼは、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、D-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、及び、ロイシンデヒドロゲナーゼのうちの1つである、使い捨てバイオセンサ。
【請求項5】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記酸化型レドックスメディエータは、金属化合物、又は、有機レドックス化合物を含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記酸化型レドックスメディエータは、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウム、フェロセン及びその誘導体、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)などのルテニウム化合物及びその誘導体、オスミウム錯体、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、メルドラブルー、テトラチアフルバレン7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、ヒドロキノン、ジクロロフェノールインドフェノール、p-ベンゾキノン、o-フェニレンジアミン、及び、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのうちの少なくとも1つを含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第1試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第1試薬は、増量試薬をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項9】
請求項2に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第2試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項10】
請求項9に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第2試薬は、増量試薬をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項11】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
絶縁材料で作成され、少なくとも2つの電気回路がその上に描画されるベース層であって、前記少なくとも2つの電気回路のそれぞれが、前記ベース層に沿って長手方向に延び、前記少なくとも2つの回路のそれぞれが、ベース層近位端部及びベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、前記ベース層近位端部における前記導電性接点パッドと、前記ベース層遠位端部における対応する前記導電性接点パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有し、前記ベース層遠位端部における1つの導電性パッドが、前記作用電極を形成し、前記ベース層遠位端部における他の導電性パッドが、前記参照電極を形成する、前記ベース層と、
絶縁材料で作成され、前記ベース層上に配置されるチャネル形成層であって、前記ベース層遠位端部におけるそれぞれの導電性パッドを露出させるために十分な予め定められた距離だけチャネル層遠位端から延びるスロットを有し、前記ベース近位端部におけるそれぞれの導電性パッドが露出するように前記ベース層の長さよりも短い長さを有する、前記チャネル形成層と、
絶縁材料で作成され、前記チャネル形成層の上に配置されて前記チャネル形成層の前記スロットと共にサンプル室を形成するカバー層であって、カバー層遠位端から間隔が空けられた通気開口を有し、前記通気開口が前記サンプル室と少なくとも部分的に連通する、前記カバー層と、
をさらに有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項12】
請求項11に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記ベース層と前記チャネル形成層との間に試薬保持層をさらに有し、
前記試薬保持層は、試薬保持層遠位端に少なくとも2つの貫通開口を有し、
前記少なくとも2つの貫通開口のうちの一方が、前記作用電極と重なり、前記少なくとも2つの貫通開口のうちの他方が、前記参照電極と重なる、使い捨てバイオセンサ。
【請求項13】
請求項11に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記ベース層は、前記ベース層に沿って長手方向に延びる第3電気回路を有し、
前記第3電気回路は、前記ベース層近位端部及び前記ベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、前記ベース層近位端部における前記導電性接点パッドと、ブランク電極を形成する、前記ベース層遠位端部における対応する前記導電性パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有し、
前記ブランク電極は、前記チャネル形成層の前記スロット内にある、使い捨てバイオセンサ。
【請求項14】
請求項13に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記試薬保持層は、第3貫通開口を有し、
前記第3貫通開口は、ブランク電極と重なる、使い捨てバイオセンサ。
【請求項15】
NADP依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨てバイオセンサを作成する方法であって、
作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面を設けることと、
NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NADP+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含む第1試薬を前記作用電極部上に配置し、作用電極となる第1電極マトリックスを形成する前記第1試薬を乾燥させることと、
銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照電極試薬と、の何れかである参照電極材料を、参照電極を形成する前記参照電極部上に配置して、参照電極マトリックスを形成する前記参照電極試薬を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記第1試薬を調製することをさらに含み、その方法は、予め定められた量の前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、予め定められた量のNADP+、予め定められた量のジアホラーゼ、及び、予め定められた量の酸化型レドックスメディエータを合わせて、予め定められた量の水に共に加えることを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
0.1グラムから0.5グラムの前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、
0.02グラムから0.1グラムの前記NAD(P)+を秤量することと、
0.02グラムから0.5グラムの前記ジアホラーゼを秤量することと、
0.1グラムから0.5グラムの前記酸化型レドックスメディエータを秤量することと、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、前記NAD(P)+、前記ジアホラーゼ、及び、前記レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、
をさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
0.2グラムから0.4グラムの前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、
0.05グラムの前記NAD(P)+を秤量することと、
0.05グラムから0.2グラムの前記ジアホラーゼを秤量することと、
0.3グラムの前記酸化型レドックスメディエータを秤量することと、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、前記NAD(P)+、前記ジアホラーゼ、及び、前記レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、
をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
1.発明の分野
本発明は、概して、電気化学バイオセンサに関する。詳細には、本発明は、様々な検体を定量するために触媒としてデヒドロゲナーゼを用いる電気化学バイオセンサに関する。
【0002】
2.従来技術の説明
限定するものではないが、グルコース、グルタミン酸塩、乳酸塩、コレステロール、d-ヒドロキシ酪酸塩、グリセロール、リンゴ酸塩、ロイシン、アルコールなどを含む様々な検体を測定する多くの電気化学センサがある。電気化学センサのいくつかは液体測定用に設計され、いくつかは気体測定用に設計される。
【0003】
液体測定用に設計されるものは、典型的には、作用電極、参照電極及び任意の対向電極を含み、さらに、分析を実施するための触媒としてそれぞれの酸化酵素の使用を伴う。例えば、グルコースオキシダーゼは、グルコースを測定するときに用いられ、グルタミン酸オキシダーゼは、グルタミン酸塩を測定するときに用いられる、などである。加えて、還元状態にあるレドックスメディエータは、測定される検体の量に比例する電流を生じさせるために、レドックスメディエータを酸化状態に変化させる化学反応に関わる。
【0004】
気体測定用に設計されるものは、典型的には、作用(又は検出)電極、対向電極、及び、通常は参照電極を含む。これらの電極は、電解液と接触してセンサハウジング内に封止される。作用電極は、気体は透過するが電解液は浸透しないテフロン(登録商標)膜の内面にある。電気化学センサによって検出可能なあらゆる気体について、気体は電気的に活性でなければならない。気体は、センサ内に拡散し、膜を通って作用電極へ拡散する。気体が作用電極に到達するとき、気体の種類に応じて、酸化又は還元の何れかの電気化学反応が生じる。例えば、一酸化炭素が二酸化炭素に酸化されてもよく、あるいは、酸素が水に還元されてもよい。酸化反応は、外部回路を通る、作用電極から対向電極への電子の流れをもたらす。
【0005】
逆に、還元反応は、対向電極から作用電極への電子の流れをもたらす。この電子の流れは、電流を構成し、これは気体の濃度に比例する。関連する装置内の電子機器は、電流を検出して増幅し、キャリブレーションに従って出力をスケーリングする。装置は、その後、例えば有毒ガスセンサについては百万分率(ppm)で、酸素センサについては体積百分率で、気体の濃度を表示する。大抵のアルコールもまた電気的に活性であり、それは、電荷移動ステップにおいて、酸化状態が変化するか、あるいは化学結合の切断又は形成が起こることを意味する。アルコール燃料電池の開発においてかなりの研究が行われ、警察機関によって用いられるいくつかのアルコール呼気メータ(つまり、ブレサライザ)は、電気化学センサに基づいている。
【0006】
大抵のブレサライザは、人の血液中の血中アルコール濃度(BAC)を測定するために、燃料電池センサ技術及び半導体酸化物センサ技術の何れかを用いる。燃料電池センサは、呼気サンプル中のアルコールを酸化する電気化学プロセスに依存する。酸化は、ブレサライザがBACを定量するために測定する電流を生成する。電流の強さは、サンプル中のアルコールの量に対応する。半導体酸化物センサは、BACを測定するために酸化スズ物質を用いる。二酸化スズセンサは、加熱コイルでスチールメッシュフィルムを加熱し、吐出されたアルコールが加熱されたフィルムに接触するとき、抵抗が変化する。センサ抵抗の変化は、固定又は可変抵抗器の両端の出力電圧の変化として測定される。センサ抵抗とアルコール濃度との間には、直接的な関係がある。半導体センサ技術を用いるブレサライザは、燃料電池センサを用いるものよりも精度が低く、また、それらはより安価である。
【0007】
[発明の概要]
全血中のアルコール濃度を測定するために、従来、研究はほとんど行われてこなかった。先に述べたように、最も一般的なアルコール測定技術は、ブレサライザ業界にあった。血中アルコール濃度を測定するためにアルコールデヒドロゲナーゼを用いることは、従来技術において言及されてきたが、そのようなセンサの様々な欠点が原因で、アルコールセンサは、使い捨てセンサで用いるには実用的でない。これらの欠点は、センサ保存安定性、応答感度、濃度範囲、及び、使用可能な還元型レドックスメディエータの数を含む。センサ保存安定性は、より複雑な保存要件を用いなければ、市販品として十分には長くない。応答感度はより低く、そのため精度は低下する。濃度範囲の下限もまた損なわれる。
【0008】
本発明は、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨て電気化学バイオセンサである。ジアホラーゼは、ジホスホピリジンヌクレオチド及びトリホスホピリジンヌクレオチドなどの還元型のNAD及びNADPを酸化することが可能なフラボタンパク質酵素である。ジアホラーゼ酵素が含まれるため、酸化型レドックスメディエータが用いられ得る。レドックスメディエータをその酸化型で用いることにより、様々な利点がもたらされる。レドックスメディエータのその酸化型での使用は、周囲環境においてその対応する還元型よりも安定し、それゆえに使い捨てバイオセンサの保存安定性に利益をもたらす。別の利点は、使い捨てバイオセンサがより高感度な応答を引き起こすであろうことである。さらなる利点は、使い捨てバイオセンサが、測定される検体の非常に低い濃度を測定できることである。さらに別の利点は、還元型レドックスメディエータよりも酸化型レドックスメディエータの方が、より多くの選択肢があることである。別の利点は、酸化型レドックスメディエータは、周囲環境において、同じ環境にある還元型レドックスメディエータよりも安定的であることである。この利点は、還元型レドックスメディエータを用いる使い捨てバイオセンサのような特別な保存要件を、同様の保存安定性を示すために必要としない、使い捨てバイオセンサに変換できる。
【0009】
本発明の目的は、特別な保存条件を必要とすることなく良好な保存安定性を有する全血用の使い捨てバイオセンサを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、従来の使い捨てバイオセンサよりもより高感度に応答する全血用の使い捨てバイオセンサを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、関心のある種/検体の非常に低い濃度を測定可能な全血用の使い捨てバイオセンサを提供することである。
【0012】
本発明は、より長期間の保存安定性、より高感度な応答、及び、関心のある種/検体の非常に低い濃度を測定する能力を有する使い捨てバイオセンサを提供することによって、これらの目的及び他の目的を達成する。
【0013】
本発明の一実施形態において、使い捨てバイオセンサは、作用電極及び参照電極を少なくとも有する検出表面と、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含み、作用電極部上に配置されて作用電極を形成する第1試薬と、参照電極部上に配置されて参照電極を形成する参照電極材料と、を有する。
【0014】
本発明の別の実施形態において、使い捨てバイオセンサは、ブランク電極と、NAD(P)+、ジアホラーゼ、酸化型レドックスメディエータを含み、デヒドロゲナーゼを含まない、ブランク電極部上に配置されてブランク電極を形成する第2試薬と、をさらに有する。
【0015】
本発明の一実施形態において、参照電極を形成するための参照材料は、銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照マトリックスと、の何れかである。
【0016】
一実施形態において、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼは、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、D-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、及び、ロイシンデヒドロゲナーゼのうちの1つである。
【0017】
一実施形態において、酸化型レドックスメディエータは、金属化合物、又は、有機レドックス化合物を含む。
【0018】
一実施形態において、酸化型レドックスメディエータは、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウム、フェロセン及びその誘導体、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)などのルテニウム化合物及びその誘導体、オスミウム錯体、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、メルドラブルー、テトラチアフルバレン7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、ヒドロキノン、ジクロロフェノールインドフェノール、p-ベンゾキノン、o-フェニレンジアミン、及び、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
一実施形態において、第1試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む。さらなる実施形態において、第1試薬は、任意の増量試薬(bulking reagent)をさらに含む。
【0020】
一実施形態において、第2試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む。さらなる実施形態において、第2試薬は、任意の増量試薬をさらに含む。
【0021】
本発明の別の実施形態において、使い捨てバイオセンサは、絶縁材料で作成され、少なくとも2つの電気回路がその上に描画されるベース層と、絶縁材料で作成され、ベース層上に配置されるチャネル形成層と、絶縁材料で作成され、チャネル形成層上に配置されるカバー層と、をさらに有する。少なくとも2つの電気回路のそれぞれは、ベース層に沿って長手方向に延び、少なくとも2つの回路のそれぞれは、ベース層近位端部及びベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、ベース層近位端部における導電性接点パッドと、ベース層遠位端部における対応する導電性接点パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有する。ベース層遠位端部における1つの導電性パッドは、作用電極を形成し、ベース層遠位端部における他の導電性パッドは、参照電極を形成する。チャネル形成層は、ベース層遠位端部におけるそれぞれの導電性パッドを露出させるために十分な予め定められた距離だけチャネル層遠位端から延びるスロットを有する。チャネル形成層は、ベース近位端部におけるそれぞれの導電性パッドが露出するようにベース層の長さよりも短い長さを有する。チャネル形成層の上に配置されるカバー層は、チャネル形成層のスロットによって画定されるサンプル室を形成する。カバー層は、カバー層遠位端から間隔が空けられた通気開口を有し、通気開口は、サンプル室と少なくとも部分的に連通する。
【0022】
一実施形態において、使い捨てバイオセンサは、ベース層とチャネル形成層との間に試薬保持層をさらに有する。試薬保持層は、試薬保持層遠位端に少なくとも2つの貫通開口を有し、少なくとも2つの貫通開口のうちの一方が、作用電極と重なり、少なくとも2つの貫通開口のうちの他方が、参照電極と重なる。
【0023】
一実施形態において、ベース層は、ベース層に沿って長手方向に延びる第3電気回路を有する。第3電気回路は、ベース層近位端部及びベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、ベース層近位端部における導電性接点パッドと、ブランク電極を形成する、ベース層遠位端部における対応する導電性パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有する。ブランク電極は、チャネル形成層のスロット内にある。
【0024】
一実施形態において、試薬保持層は、第3貫通開口を有し、第3貫通開口は、ブランク電極と重なる。
【0025】
一実施形態において、NADP依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨てバイオセンサを作成する方法が開示される。本方法は、作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面を設けることと、作用電極部上に第1試薬を配置し、作用電極となる第1電極マトリックスを形成する第1試薬を乾燥させることと、参照電極を形成する参照電極部上に参照電極材料を配置することと、を含む。第1試薬は、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含む。参照電極材料は、銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照電極試薬と、の何れかであり、参照電極マトリックスを形成する参照電極試薬を乾燥させる。
【0026】
別の実施形態において、第1試薬を調製することは、予め定められた量のNAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、予め定められた量のNAD(P)+、予め定められた量のジアホラーゼ、及び、予め定められた量の酸化型レドックスメディエータを、予め定められた量の水に共に加えることを含む。
【0027】
別の実施形態において、本方法は、0.1グラムから0.5グラムのNAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、0.02グラムから0.1グラムのNADP+を秤量することと、0.02グラムから0.5グラムのジアホラーゼを秤量することと、0.1グラムから0.5グラムの酸化型レドックスメディエータを秤量することと、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、を含む。
【0028】
一実施形態において、本方法は、0.2グラムから0.4グラムのNAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、0.05グラムのNADP+を秤量することと、0.05グラムから0.2グラムのジアホラーゼを秤量することと、0.3グラムの酸化型レドックスメディエータを秤量することと、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の使い捨てバイオセンサの一実施形態の拡大正面斜視図である。
【
図2】
図1に示される使い捨てバイオセンサの分解斜視図である。
【
図3】本発明の使い捨てバイオセンサの別の実施形態の拡大正面斜視図である。
【
図4】
図3に示される使い捨てバイオセンサの分解斜視図である。
【
図5】本発明の使い捨てバイオセンサの別の実施形態の拡大正面斜視図である。
【
図6】
図5に示される使い捨てバイオセンサの拡大上面図である。
【
図7】ヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータのフェリシアン化カリウムを内蔵するアルコールバイオセンサを用いた、アルコール濃度に対するアルコールバイオセンサの電流の結果を示す表1のデータをグラフで表したものである。
【
図8】ヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータの塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)を内蔵するアルコールバイオセンサを用いた、アルコール濃度に対するアルコールバイオセンサの電流の結果を示す表2のデータをグラフで表したものである。
【
図9】ヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータのフェリシアン化カリウムを内蔵するアルコールバイオセンサの精密試験結果を示す表3のデータをグラフで表したものである。
【
図10】ヒドロゲナーゼ及び還元型レドックスメディエータの1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサの結果に対する、ヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータのフェリシアン化カリウムを含むアルコールバイオセンサの結果の比較を示す表4のデータをグラフで表したものである。
【
図11】ヒドロゲナーゼ及び還元型レドックスメディエータの1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサに対する、ヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエーションのフェリシアン化カリウムを含むアルコールバイオセンサの長期保存安定性を示す表5のデータをグラフで表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[発明の詳細な説明]
本発明の好適な実施形態が、
図1~11に示される。
図1は、本発明の一実施形態を示す。使い捨てバイオセンサ10は、積層体12、電極端部14、電極端14a、電気接点端部16、電気接点端16a及び通気開口52を有する、多層一体型バイオセンサである。電極端部14は、電極端14aのサンプル注入口18と、通気開口52と、の間にサンプル室17を有する。電気接点端部16は、サンプル試験室17内に位置するそれぞれの電極と電気的に接続する、少なくとも3つの電気接点パッド16b、16c及び16dを有する。この実施形態において、使い捨てバイオセンサ10は、30mm(1.2インチ)の長さ及び5.5mm(0.22インチ)の幅を有するが、このような寸法に限定されない。
【0031】
次に
図2を見てみると、積層体12は、ベース層20、試薬保持層30、チャネル形成層40、及び、カバー50を有する。積層体12の全ての層は、誘電材料で作成され、好ましくはプラスチックで作成される。好適な誘電材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、ポリウレタン、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、ポリスチレンが挙げられる。
【0032】
ベース層20は、その上に3つの導電経路22、24及び26が描画される導電層21を有する。導電経路22、24、26は、導電層21をスクライビング(scribing)又はスコアリング(scoring)することによって形成されてもよい。代替として、ベース層20は、その上に導電経路22、24、26がシルクスクリーン(silk screened)された誘電材料であってもよい。金色ポリエステルフィルムの一片が用いられ、
図2に示される形状に切断されて、使い捨てバイオセンサ10のベース層20が形成されてもよい。
【0033】
導電層21のスクライビング又はスコアリングは、3つの独立した導電経路22、24、26を形成するのに十分な導電層21の機械的なスクライビングによってなされてもよい。本発明の好適なスクライビング又はスコアリング方法は、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ又はエキシマレーザを用いることによって行われる。スコアリング線は、非常に細いけれども、3つの個別の電気経路を生成するには十分である。導電層21は、例えば、金、酸化スズ/金、パラジウム、他の貴金属又はそれらの酸化物、又は、カーボンフィルム組成物(carbon film composition)などのあらゆる導電性材料で作成されてもよい。好適な導電性材料は、金、又は、酸化スズ/金である。さらなるスコアリング線28(説明のみを目的とするために拡大されており、実際の縮尺ではない)が、雑音を含む信号を生じさせる可能性のある、起こり得る静電気の問題を回避するために導電層が取り除かれるベース層20の外縁に沿って形成されてもよい。しかしながら、スコアリング線28は、使い捨てバイオセンサ10の機能に必要ではないと理解されるべきである。ベース層20のための好適な導電性材料は、金又は酸化スズ/金で被覆されたポリエステルフィルムである。
【0034】
試薬保持層30は、第1導電経路22の一部を露出させる第1電極開口32、第2導電経路24の一部を露出させる第2電極開口34、及び、第3導電経路26の一部を露出させる第3電極開口36を有する。試薬保持層30は、プラスチック材料で作成され、好ましくは、ペンシルベニア州グレンロックのアドヒーシブリサーチ社(Adhesive Research,Inc.)、又は、グローバルインスツルメントコーポレーション(Global Instrument Corporation)(GIC)(台湾)から入手可能な医療用の片面粘着テープで作成される。本発明の使用のために許容可能なテープの厚さは、約0.001インチ(0.025mm)から約0.005インチ(0.13mm)の範囲内である。好適な厚さは、約0.003インチ(0.075mm)である。テープの使用は必要でないと理解されるべきである。試薬保持層30は、プラスチックシートで作成されてもよく、上述のポリエステルテープを用いるのと同一の結果を得るために、感圧接着剤、感光性樹脂で被覆されてもよく、ベース層20に超音波接合されてもよく、ベース層20上にシルクスクリーンされてもよく、又は、ベース層20上に3Dプリント(3D printed)されてもよい。
【0035】
3つの電極開口32、34、及び36は、それぞれ作用電極部20W、参照電極部20R及びブランク電極部20Bを規定する、それぞれの導電経路22、24、26の一部を露出させ、それは順番に電極ウェルW、R、及びBをそれぞれ規定し、作用電極(W)、参照電極(R)及びブランク電極(B)を形成する化学試薬を保持する。好ましくは、電極ウェルWには、酵素の基質又は酵素と触媒反応する基質に関わる反応に対して触媒作用を及ぼすことが可能なNAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ、及び、酵素触媒反応と作用電極との間で移動する電子を移動可能にする酸化型メディエータが、酵素又は基質(開示される例において測定されるアルコールを表す)の活性を表す電流を生成するために充填され、且つ、ポリマー結合剤が少なくとも充填される。ブランク電極ウェルBには、電極ウェルWと類似の化学的性質が充填されるが、デヒドロゲナーゼは含まない。追加のポリマー、安定剤及び増量剤(bulking agents)などの1つ以上の化学成分が、必要に応じて試薬マトリックスに含まれてもよい。参照試薬マトリックスは、電極ウェルRに充填される。
【0036】
好ましくは、参照マトリックスは、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、又は、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物などの化学的酸化剤を少なくとも含む。例えば、好適な導電性被覆材料を用いるときに参照電極を機能させるために、フェリシアン化カリウム、又はフェロシアン化カリウム、又はフェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムとの混合物が充填されてもよい。フェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムとの混合物は、フェロシアン化カリウム濃度が最大約5%の範囲である一方、フェリシアン化カリウム濃度が最大約10%の範囲となるように調製されてもよい。代替として、参照電極(電極ウェルR)には、(例えば、銀/塩化銀インクを塗布することによって、又は(a)銀層をスパッタコーティングした後で銀を塩素化することによって、又は(b)銀層の上に塩化銀層をスパッタコーティングすることによって)銀/塩化銀層が充填されてもよく、又は、適切に機能するためにレドックスメディエータを必要としない他の参照電極材料が充填されてもよい。チャネル内の作用電極、参照電極及びブランク電極の配置は、センサから使用に適した結果を得るために重要ではないことに留意すべきである。
【0037】
試薬保持開口の大きさは、それぞれの試験測定のために必要とされるサンプルの量を最小限にするために、使い捨てバイオセンサのサンプル室を可能な限り短くするよう、可能な限り小さくされることが好ましい。3つの試薬保持/電極開口32、34及び36は、互いに一直線に整列され、約0.02インチ(0.508mm)から約0.05インチ(1.27mm)の間隔が互いに空けられる。円形の試薬保持開口は、例示のみを目的としている。試薬保持開口の形状、及び、それぞれの電極間の距離は、重要でないと理解すべきである。実際、表面積の比率がセンサ毎に実質的に一定のままである限りは、試薬保持開口は、その表面積が互いに異なってもよい。
【0038】
チャネル内の作用電極、基板電極及び参照電極の配置は、使い捨てバイオセンサから使用に適した結果を得るためには重要でない。サンプル流体チャネル内の可能性のある電極配置は、積層体12のサンプル注入口18から通気開口52に見えるであろう電極としての配置を列挙して、W-B-R、W-R-B、R-W-B、B-W-R、B-R-W、又は、R-B-Wであってもよい。好適な位置は、W-R-Bであることが判明し、つまり、流体サンプルが積層体12のサンプリング端14に入ると、流体サンプルは、最初に作用電極、その次に参照電極、さらに次にブランク電極に広がるであろう。
【0039】
3つの電極は、それぞれ、個別の対応する電気接点パッドと電気的に接続する。個別の対応する電気接点パッドは、読み取り装置との電気的な接続を形成するために露出される。
【0040】
チャネル形成層40は、電極端部14に位置するチャネルノッチ42を有する。チャネルノッチ42の長さは、チャネル形成層40が試薬保持層30に積層されるときに、電極領域W、R及びBが、チャネルノッチ42よって規定される空間内にあるようにされる。チャネルノッチ42の長さ、幅及び厚さは、キャピラリー室の容積を規定する。チャネル形成層40は、試薬保持層30に積層される。試薬保持層30のように、チャネル形成層40は、プラスチックシートで作成されてもよく、感圧接着剤、感光性樹脂で被覆されてもよく、試薬保持層30に超音波接合されてもよく、試薬保持層30上にシルクスクリーンされてもよく、又は、試薬保持層30上に3Dプリントされてもよい。
【0041】
チャネル形成層40は、プラスチック材料で作成され、好ましくは、ペンシルベニア州グレンロックのアドヒーシブリサーチ社、又は、グローバルインスツルメントコーポレーション(台湾)から入手可能な医療用の両面感圧粘着テープで作成される。テープの厚さは、好ましくは、約0.001インチ(0.025mm)から約0.010インチ(0.25mm)の範囲内である。チャネルノッチ42は、レーザで又はダイカット(die-cutting)(より好適な方法)によって作成され得る。チャネルノッチ42の長さは、約0.22インチ(5.7mm)から約0.250インチ(6.4mm)であり、幅は、約0.05インチ(1.3mm)から約0.07インチ(1.8mm)であり、厚さは、約0.0039(0.1mm)から約0.009インチ(0.225mm)である。チャネルノッチ42の厚さ及び大きさは、重要でないと理解されるべきである。
【0042】
チャネル形成層40に積層されるカバー50は、サンプル室17内のサンプルが電極領域W、R、及びBを完全に覆うことを確実にするために、使い捨てバイオセンサ10の電極端14aから間隔が空けられた通気開口52を有する。通気開口52は、チャネルノッチ42の閉塞端で又はその近傍でチャネルノッチ42の一部を露出させ、チャネルノッチ42に部分的に重なり合うように、カバー50内に配置される。通気開口52は、いかなる形状であってもよいが、約0.08インチ(2mm)×約0.035インチ(0.9mm)の寸法を有する矩形として示される。カバー50に好適な材料は、ポリエステルフィルムである。サンプル室17内のサンプル流体の毛細管現象を促進するために、ポリエステルフィルムは、キャピラリー室を形成するポリエステルフィルムの一部の上に、親水性の高い表面を有することが好ましい。3M又はGICの透明フィルムが用いられ得る。カバー50は、血液サンプルをサンプル室17に適用するときに、(サンプル流体の電極への適切な移動を妨げ得る)サンプル注入口18の意図しない閉塞を回避するために、必要に応じて注入口ノッチ54を有してもよい。
【0043】
図3は、3層使い捨てバイオセンサ10’を示す。4層の実施形態のように、使い捨てバイオセンサ10’は、積層体12、電極端部14、電気接点端部16、及び、通気開口52を有する。電極端部14は、サンプル注入口18と通気開口52との間にサンプル室17を有する。電気接点端部16は、3つの個別の電気接点パッド16b、16c及び16dを有する。
【0044】
図4に見られるように、積層体12は、ベース層20、チャネル形成層40、及び、カバー50を有する。先に述べたように、積層体12の全ての層は、誘電材料で作成され、好ましくはプラスチックで作成される。4層の実施形態とは異なり、3層の実施形態には、独立した試薬保持層はない。チャネル形成層40はまた、予め定められた量の試薬混合物が、作用電極、参照電極及び任意のブランク電極のそれぞれへの3つの異なる試薬マトリックス被覆として導電経路上に配置される領域を画定する。
【0045】
次に
図5を見ると、使い捨てバイオセンサ430を示す本発明の別の実施形態が示される。使い捨てバイオセンサ430は、積層体432、サンプル受入ウェル434、及び、電気接点端436を有する。積層体432は、ベース層450、及び、カバー460を有する。カバー460は、ベース層450と組み合わされたときにサンプル受入ウェル434を形成するサンプル開口462を有する。ベース層450は、少なくとも3つの電気経路452、454及び456を有し、これらは、メータ装置(図示無し)に接続するために電気接点端436で露出する第1部分と、サンプル受入ウェル434によって露出される第2部分と、を有する。
【0046】
サンプル受入ウェル434によって露出される電気経路452、454及び456の第2部分は、少なくとも、作用電極W、ブランク電極B、及び、少なくとも参照/対向電極Rを形成する。第1試薬混合物470は、作用電極W上に配置される、作用電極として先に説明された混合物を含む。第2試薬混合物472は、ブランク電極B上に配置される、ブランク電極として先に説明された混合物を含む。参照/対向電極Rは、先に開示されたあらゆる参照材料474を含んでもよい。本発明のこの実施形態において、サンプル受入ウェル434は、血液サンプル中の検体の定量のための血液などの流体サンプルを受け入れるためのサンプル注入口及びサンプル室の両方として機能する。
【0047】
本明細書にて開示される何れかの実施形態の導管経路は、あらゆる非腐食性の金属で作成されてもよいと理解されるべきである。例えばカーボンペースト又はカーボンインクなどのカーボンデポジットはまた、全て当業者にとって周知のように、導管経路として用いられてもよい。
【0048】
<化学試薬>
[酵素]
本発明の使い捨てバイオセンサは、試薬マトリックス中で用いられるデヒドロゲナーゼに応じて測定される検体を消費する作用電極Wの試薬マトリックス中に、少なくとも1つの化学物質を含む。限定されない例として、アルコールデヒドロゲナーゼは、測定される検体がエタノールの場合に用いられるであろう。別の限定されない例は、測定される検体がグルタミン酸塩の場合、グルタミン酸デヒドロゲナーゼであろう。血液サンプルが干渉物質を含む場合、ブランク電極は、体液内のアルコール濃度を正確に定量するために本発明において不可欠であろう。先に説明したように、このようなブランク電極の使用は、エタノールに起因する酸化電流を、サンプル流体中の他の酸化可能な種に起因する酸化電流と区別するのに役立つ。アルコールの例を続けると、ミズーリ州セントルイスのシグマケミカルカンパニー(Sigma Chemical Company)、又は、ニュージャージー州レイクウッドのワージントンバイオケミカルコーポレーション(Worthington Biochemical Corporation)からの市販のアルコールデヒドロゲナーゼが、アルコール作用電極の調製に用いられる。例えば、試薬混合物内のアルコールデヒドロゲナーゼの濃度は、5mg/mlから100mg/mlの範囲内、好ましくは10mg/mlから50mg/mlの範囲内、より好ましくは20mg/mlから40mg/mlの範囲内である。
【0049】
[ジアホラーゼ]
ジアホラーゼは、作用電極のための試薬マトリックスの不可欠な部分である。ジアホラーゼは、フラボプロテイン型の酵素であり、還元型の補酵素NADを酸化することが可能である。試薬マトリックス内のジアホラーゼの濃度は、2mg/mlから50mg/mlの範囲内、好ましくは5mg/mlから20mg/mlの範囲内である。
【0050】
[化学的酸化剤]
レドックスメディエータなどの化学的酸化剤が使い捨てバイオセンサに含まれる。レドックスメディエータは、その酸化型で用いられることが好ましい。還元型メディエータが、印加電位において電極表面で電気化学的に酸化可能であることも、また望ましい。メディエータが試薬マトリックス中で安定であることは、さらに望ましい。参照電極内で用いられるときに、メディエータが参照電極を適切に機能させ得ることは、またさらに望ましい。レドックスメディエータは、限定されるものではないが、様々な金属化合物及び有機レドックス化合物から選択され得る。許容可能なレドックスメディエータの例は、フェリシアン化カリウム(又はナトリウム)、フェロセン及びその誘導体、第二銅化合物、亜硝酸化合物、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)などのルテニウム化合物及びその誘導体、及びオスミウム錯体、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、メルドラブルー、テトラチアフルバレン7,7.8.8-テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン、TCNQ、ヒドロキノン、ジクロロフェノールインドフェノール、p-ベンゾキノン、o-フェニレンジアミン、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドなどを含む。好適なメディエータは、フェリシアン化カリウム又は塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)である。試薬混合物中のフェリシアン化カリウムの濃度は、試薬混合物の好ましくは0.5%から10%の範囲内、好ましくは1%から5%の範囲内、より好ましくは3(w/w)%の量である。試薬混合物中の塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)の濃度は、好ましくは0.5%から5%の範囲内、より好ましくは1%から2%の範囲内である。
【0051】
[酵素補因子]
使い捨てバイオセンサ10、10’、430の試薬マトリックス中に含まれる酵素補因子は、有機補因子ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸塩(NAD)であり、これは、デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼの使用に起因して用いられる。試薬マトリックス中の補因子の濃度は、0.1%から2%の範囲内、好ましくは0.2から1%の範囲内、より好ましくは0.5(w/w)%と等しい。
【0052】
[ポリマー]
試薬マトリックス中で結合剤として用いられるポリマーは、十分に水に可溶であるべきであり、また、試薬中の全ての他の化学物質を、安定化させ、電極領域における導電面層に結合できるべきである。適切なポリマーは、限定されるものではないが、低及び高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及び、ポリアミノ酸を含む。試薬結合剤は、約0.02(w/w)%から約7.0(w/w)%の濃度範囲内であることが好ましい、単一のポリマー又はポリマーの組み合わせであってもよい。本発明の試薬マトリックスにおける好適な結合剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)とメチルセルロースとの組み合わせである。PEOの分子量は、数千から数百万であり、米国ニューヨーク州のサイエンティフィックポリマープロダクツ(Scientific Polymer Products)から入手可能である。試薬マトリックス中のPEOの濃度は、好ましくは約0.04(w/w)%から約2(w/w)%である。Methocel 60HG(米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのフルカケミカルズ(Fluka Chemicals)のカタログ番号64655)のブランド名で入手可能なメチルセルロースは、試薬マトリックス中、好ましくは約0.02(w/w)%から約5(w/w)%の範囲内の濃度を有する。
【0053】
[界面活性剤]
界面活性剤は、試薬混合物の電極領域への分注を容易にするために、必要に応じて試薬混合物に含まれてもよい。界面活性剤はまた、サンプル流体が使い捨てバイオセンサのサンプルチャネルに入るときに、乾燥化学試薬を迅速に溶解するのにも役立つ。界面活性剤の量及び種類は、上述の機能を確保し、酵素への変性効果を回避するよう選択される。界面活性剤は、限定されるものではないが、様々な陰イオン性、陽イオン性、非イオン性及び両イオン性界面活性剤から選択され得る。許容可能な界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンエーテル、Tween 20、コール酸ナトリウム水和物、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物、及び、CHAPSが挙げられる。好適な界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。より好ましくは、それはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノールであり、Triton X-100のブランド名で入手可能である。試薬混合物中のTriton X-100の濃度は、好ましくは約0.01(w/w)%から約2%である。
【0054】
[緩衝液]
必要に応じて、本発明のセンサストリップ内には、緩衝液が、乾燥状態のレドックスメディエータと共に存在してもよい。緩衝液は、試薬混合物のpHを実質的に維持するために十分な量で存在する。適切な緩衝液の例としては、クエン酸、リン酸塩、トリスなどが挙げられる。本発明において、緩衝液のpHは、好ましくは、約5.0から約8.5の範囲内である。
【0055】
[増量試薬]
水溶性且つ不活性成分である任意の増量剤が、好ましくは、試薬混合物/マトリックスに添加される。増量剤の使用は、電極形成層が試薬マトリックスを収容するために用いられるときに有利であり、それにより、サンプル流体がキャピラリーチャネルを満たすときに、電極形成層の電極開口は気泡を捕捉しないであろう。例えば、トレハロース、ガラクトース、グルコース、スクロース、ラクトース、マンニトール、マンノース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、ニコチンアミド、マルトースなどの様々な糖が、それらが他の成分と反応せず、電極表面で不活性である限り、試薬混合物に添加され得る。増量剤は、1つの化学物質又は化学物質の組み合わせであってもよい。試薬混合物中の増量剤の量は、約1%から約15(w/w)%の範囲内である。
【0056】
<バイオセンサの作成>
上の説明から推測されるように、NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨て電気化学バイオセンサは、次のように作成される。
【0057】
導電層21を有するベース層20が形成され、先に説明したようにスクライビングされる。チャネル形成層40は、上で説明したように形成され、ベース層20に積層される。予め定められた量の第1試薬が、作用電極Wを形成するために、作用電極部20W上に配置され、乾燥される。予め定められた参照材料が、参照電極部20R上に配置されて、参照電極Rを形成する。参照が参照電極試薬を用いる場合、予め定められた量の参照試薬が参照電極部20Rに配置され、乾燥される。作用電極W及び参照電極Rが形成された後、作用電極W及び参照電極Rがチャネルノッチ42内に配置されるようにチャネルノッチ42が配置され、通気開口52がチャネルノッチ42の一部に少なくとも部分的に重ね合わさるように通気開口52が配置されるように、カバー層50が、その後チャネル形成層40に積層される。
【0058】
試薬保持層30が含まれる実施形態において、貫通開口32、34及び必要に応じて36が、作用電極部20W、参照電極部20R及び必要に応じてブランク電極部20Bを露出させるように、試薬保持層30が、ベース層20の導電層21上に直接配置される。予め定められた量の第1試薬が、作用電極Wを形成するために、貫通開口32内に配置され、乾燥される。予め定められた参照材料が、貫通開口34内に配置されて、参照電極Rを形成する。参照が参照電極試薬を用いる場合、予め定められた量の参照試薬が貫通開口34内に配置され、乾燥される。その後、貫通開口32、34及び必要に応じて36がチャネルノッチ42内に存在するように、チャネル形成層40が、試薬保持層30に積層される。カバー層50は、その後、先に説明したように、チャネル形成層40に積層される。
【0059】
<血液サンプル中のアルコールの定量>
以下の例が血液サンプル中のアルコールを定量するためのデータを提供するとしても、先に開示したように、グルタミン酸塩、グルコース、乳酸塩、コレステロール、ヒドロキシ酪酸塩、グリセロール、リンゴ酸塩、ロイシンなどの血液中の他の検体もまた、適切なデヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼを用いて定量することができ、その結果、これらの使い捨てバイオセンサもまた、先に開示された利点を有するであろうと当業者によって理解されるべきである。
【0060】
アルコールバイオセンサに関して、血液サンプルがアルコール(実際の事例において、アルコールはエタノール)を含む場合に生じる基本的な化学反応は、以下のとおりである。
【0061】
【0062】
ここで、Medoxは、酸化型メディエータであり、Medredは、還元型メディエータであり、eは、電極表面で電流を生じさせる電子を表す。
【0063】
アルコールバイオセンサのための作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、100mvから500mvの範囲内、好ましくは300mVから400mVの範囲内である。その範囲内の電圧値は、重要ではないが一定でなければならない。作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、メディエータを電極表面上で還元状態から酸化状態へ変化させ(式3参照)、それにより血液中のアルコール濃度に基づいて電流を生成する。
【0064】
アルコールに関する血液サンプルの濃度値は、ニューヨーク州タリータウンのシーメンスヘルスケアダイアグノスティクス社(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.)によって販売されているディメンションRxL化学分析装置(Dimension RxL Chemistry Analyzer)として周知の血液分析装置を用いて得られた。検体試験ストリップの試験データは、モデル番号CHI812B又はモデル番号CHI660AのCH装置ポテンショスタット(CH Instruments Potentiostat)を用いて得られた。
【0065】
<試薬マトリックス中にメディエータとしてジアホラーゼ及びK3Fe(CN)6を含むアルコールバイオセンサを用いるアルコール定量のための試験データ>
血中アルコール濃度とアルコールバイオセンサに基づく応答との間の線形性の応答を確認するために、試験は、9つの異なる濃度レベルのエタノールを用いた。レベルは、0%、0.01%、0.02%、0.04%、0.08%、0.12%、0.16%、0.2%、及び、0.25%である。サンプルは、これらのエタノールレベルに対応するように調製され、電流測定がそれぞれのエタノール濃度について実施された。それぞれの測定のために、新しいアルコールバイオセンサストリップが用いられた。表1は、エタノールバイオセンサが、エタノールデヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータを含む作用電極試薬マトリックスを有する場合に、アルコールの定量のために得られた試験データを示す。酸化型レドックスメディエータは、フェリシアン化カリウムメディエータである。
【0066】
【0067】
図7は、様々なアルコール濃度に対して測定された作用電極(つまり、エタノールデヒドロゲナーゼに基づく電極)の電流応答を示す。電流応答は、試験されたアルコール濃度の範囲を通してエタノール濃度に対して線形である。
【0068】
<試薬マトリックス中にメディエータとしてジアホラーゼ及び塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)を含むアルコールバイオセンサを用いるアルコール定量のための試験データ>
この例においても、1つのより高い濃度レベルを除いて、先の例と同一のレベル及び数のアルコール濃度が用いられた。つまり、レベルは、0%、0.01%、0.02%、0.04%、0.08%、0.12%、0.16%、0.2%、0.25%、及び、0.35%である。サンプルは、これらのエタノールレベルに対応するように調製され、電流測定がそれぞれのエタノール濃度について実施された。それぞれの測定のために、新しいアルコールバイオセンサストリップが用いられた。表1は、エタノールバイオセンサが塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)メディエータを用いる場合に、アルコールの定量のために得られた試験データを示す。
【0069】
【0070】
図8は、様々なアルコール濃度に対して測定された作用電極(つまり、エタノールデヒドロゲナーゼに基づく電極)の電流応答を示す。電流応答は、試験されたアルコール濃度の範囲を通してエタノール濃度に対して線形である。
【0071】
<試薬マトリックス中のメディエータとしてK3Fe(CN)6と共にジアホラーゼを用いるエタノールバイオセンサに関する精密試験結果>
エタノールバイオセンサの精密な応答を確認するために、この試験は、2つの異なる濃度レベルのエタノールを用いた。レベルは、0.05%及び0.18%である。サンプルは、これらのエタノールレベルに対応するように調製され、電流測定がそれぞれのエタノール濃度について実施された。それぞれの濃度レベルの測定のために、20個の新しいアルコールバイオセンサストリップが用いられた。表3は、エタノールバイオセンサがジアホラーゼ及びフェリシアン化カリウムメディエータを用いる場合に、アルコールの定量のために得られた試験データを示す。
【0072】
【0073】
図9は、2つのアルコール濃度に対して測定された作用電極(つまり、エタノールデヒドロゲナーゼに基づく電極)の電流応答を示す。それぞれのアルコール濃度についての20個のエタノールバイオセンサの平均は、それぞれ0.543及び1.721である。パーセントでの変動係数は、それぞれ1.55及び1.81である。試験データは、アルコールバイオセンサ毎の応答が、比較的正確であることを示す。
【0074】
<酸化型メディエータと還元型メディエータとの間のアルコールバイオセンサの応答比較>
血中アルコール濃度と、(1)ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータを用いるアルコールバイオセンサ、及び、(2)還元型レドックスメディエータを用い、ジアホラーゼを用いないアルコールバイオセンサに基づく応答と、の間の感度応答を確認するために、試験は、9つの異なる濃度レベルのエタノールを用いた。レベルは、0%、0.01%、0.02%、0.04%、0.08%、0.12%、0.16%、0.2%、及び、0.25%である。上述と同様に、アルコールバイオセンサの1つのセットで用いられた酸化型メディエータは、フェリシアン化カリウムであった。アルコールバイオセンサの比較セットの還元型メディエータは、還元型の1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンであった。
【0075】
還元型レドックスメディエータの1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサに関して、血液サンプルがアルコール(実際の事例において、アルコールはエタノール)を含む場合に生じる基本的な化学反応は、以下のとおりである。
【0076】
【0077】
ここで、Medoxは、酸化型メディエータであり、Medredは、還元型メディエータである。
【0078】
このジアホラーゼを含まない還元型レドックスメディエータのアルコールバイオセンサのための作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、-50mvから-300mvの範囲内、好ましくは-100mVから-200mVの範囲内である。その範囲内の電圧値は、重要ではないが一定でなければならない。作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、比較セットのメディエータを、電極表面上で酸化状態から還元状態へ変化させ(式3a参照)、それにより血液中のアルコール濃度に基づいて電流を生成する。
【0079】
サンプルは、上記のエタノールレベルに調製され、電流測定がそれぞれのバイオセンサセットに関するそれぞれのエタノール濃度について実施された。それぞれの測定のために、新しいアルコールバイオセンサが用いられた。表4は、上述のエタノールバイオセンサの異なるセットを用いて、アルコールの定量のために得られた応答比較試験データを示す。
【0080】
【0081】
図10は、それぞれのアルコールバイオセンサセットについての様々なアルコール濃度に対して測定された作用電極(つまり、エタノールデヒドロゲナーゼに基づく電極)の電流応答を示す。電流応答は、それぞれのアルコールバイオセンサセットについて試験されたアルコール濃度の範囲を通してエタノール濃度に対して線形である。しかしながら、感度は、酸化型メディエータ及び還元型メディエータと共にアルコールデヒドロゲナーゼを用いる場合に、重要な差異を示す。グラフに示されるように、還元型メディエータを含みジアホラーゼを含まないものについての0から0.8マイクロアンペアに対し、酸化型メディエータ及びジアホラーゼを含むアルコールバイオセンサは、0から2.6マイクロアンペアという、より一層高い感度応答を有する。応答の感度がより高いので、測定の正確性もまた改善される。上述の式から、還元型メディエータを用いる場合、還元型メディエータは、電子をNAD(P)Hに奪われ、NAD(P)及び酸化型メディエータを形成するため、ジアホラーゼの存在は、反応に影響を与えないであろうことを当業者は認識するであろう。
【0082】
<アルコールバイオセンサ保存安定性>
NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、ジアホラーゼ及び酸化型レドックスメディエータを含むアルコールバイオセンサと、還元型レドックスメディエータを用い、ジアホラーゼを用いないアルコールバイオセンサと、の安定性を確認するために、12か月の期間にわたり、アルコールバイオセンサについて比較が実施された。それぞれの測定値は、0.15%のエタノール濃度を有するサンプルについて、新しいアルコールセンサで取得された。上述と同様に、アルコールバイオセンサの1つのセットにおいて用いられる酸化型メディエータは、フェリシアン化カリウムであった。アルコールバイオセンサの比較セットにおける還元型メディエータは、還元型の1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンであった。
【0083】
ジアホラーゼ及び電子メディエータとしてのフェリシアン化カリウムを含むアルコールバイオセンサのための作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、100mvから500mvの範囲内、好ましくは300mVから400mVの範囲内である。還元型レドックスメディエータの1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサのための作用電極と参照電極との間のバイアス電位は、-50mVから-300mVの範囲内、好ましくは-100mVから-200mVの範囲内である。
【0084】
サンプルは、上述のエタノールレベルで調製され、電流測定は、それぞれのバイオセンサセットについて0.15%の濃度に対して実施された。それぞれの測定のために、新しいアルコールバイオセンサが用いられた。表5は、上述のエタノールバイオセンサの異なるセットを用いて、アルコールの定量のために得られた応答比較試験データを示す。
【0085】
【0086】
図11は、それぞれのアルコールバイオセンサセットについて、常温保存条件下で測定された作用電極(つまり、エタノールデヒドロゲナーゼに基づく電極)の電流応答を示す。NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、酸化型レドックスメディエータ及びジアホラーゼを含むアルコールバイオセンサセットについて、電流応答は、12か月の期間を通してそのエタノール濃度に対して安定である。グラフ及び上記の表5に見られるように、還元型レドックスメディエータを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサセットについて、電流応答は、12か月の期間を通して減少する。実際、還元型レドックスメディエータを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサの4か月の保存後、電流応答は減少し始め、バイオセンサが古くなるにつれてより速く減少する。グラフに示されるように、還元型レドックスメディエータを含み、ジアホラーゼを含まないアルコールバイオセンサは、保存期間4カ月における0.571マイクロアンペア(又は平均の0.574マイクロアンペア)から保存期間12か月における0.398マイクロアンペアに応答が減少する。要約すると、アルコールバイオセンサの応答は、経年的に減少する。
【0087】
本発明の好適な実施形態が本明細書にて説明されてきたが、上記の説明は単なる例示に過ぎない。本明細書に開示された発明のさらなる変更が当業者には想到され、全てのそのような変更は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内であると見なされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨てバイオセンサであって、
作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面と、
NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NAD(P)+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含み、前記作用電極部上に配置されて作用電極を形成する第1試薬と、
前記参照電極部上に配置されて参照電極を形成する参照電極材料と、
を有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記検出表面は、
ブランク電極部と、
NAD(P)+、ジアホラーゼ、酸化型レドックスメディエータを含み、デヒドロゲナーゼを含まない、前記ブランク電極部上に配置されてブランク電極を形成する第2試薬と、
をさらに有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記参照
電極材料は、銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照マトリックスと、の何れかである、使い捨てバイオセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼは、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、D-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、及び、ロイシンデヒドロゲナーゼのうちの1つである、使い捨てバイオセンサ。
【請求項5】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記酸化型レドックスメディエータは、金属化合物、又は、有機レドックス化合物を含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記酸化型レドックスメディエータは、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウム、フェロセン及びその誘導体、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)などのルテニウム化合物及びその誘導体、オスミウム錯体、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、メルドラブルー、テトラチアフルバレン7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、ヒドロキノン、ジクロロフェノールインドフェノール、p-ベンゾキノン、o-フェニレンジアミン、及び、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのうちの少なくとも1つを含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第1試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第1試薬は、増量試薬をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項9】
請求項2に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第2試薬は、ポリマー、界面活性剤、及び、緩衝液をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項10】
請求項9に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記第2試薬は、増量試薬をさらに含む、使い捨てバイオセンサ。
【請求項11】
請求項1に記載の使い捨てバイオセンサであって、
絶縁材料で作成され、少なくとも2つの電気回路がその上に描画されるベース層であって、前記少なくとも2つの電気回路のそれぞれが、前記ベース層に沿って長手方向に延び、前記少なくとも2つの
電気回路のそれぞれが、ベース層近位端部及びベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、前記ベース層近位端部における前記導電性接点パッドと、前記ベース層遠位端部における対応する前記導電性接点パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有し、前記ベース層遠位端部における1つの導電性
接点パッドが、前記作用電極を形成し、前記ベース層遠位端部における他の導電性
接点パッドが、前記参照電極を形成する、前記ベース層と、
絶縁材料で作成され、前記ベース層上に配置されるチャネル形成層であって、前記ベース層遠位端部におけるそれぞれの導電性
接点パッドを露出させるために十分な予め定められた距離だけチャネル層遠位端から延びるスロットを有し、前記ベース
層近位端部におけるそれぞれの導電性
接点パッドが露出するように前記ベース層の長さよりも短い長さを有する、前記チャネル形成層と、
絶縁材料で作成され、前記チャネル形成層の上に配置されて前記チャネル形成層の前記スロットと共にサンプル室を形成するカバー層であって、カバー層遠位端から間隔が空けられた通気開口を有し、前記通気開口が前記サンプル室と少なくとも部分的に連通する、前記カバー層と、
をさらに有する、使い捨てバイオセンサ。
【請求項12】
請求項11に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記ベース層と前記チャネル形成層との間に試薬保持層をさらに有し、
前記試薬保持層は、試薬保持層遠位端に少なくとも2つの貫通開口を有し、
前記少なくとも2つの貫通開口のうちの一方が、前記作用電極と重なり、前記少なくとも2つの貫通開口のうちの他方が、前記参照電極と重なる、使い捨てバイオセンサ。
【請求項13】
請求項11に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記ベース層は、前記ベース層に沿って長手方向に延びる第3電気回路を有し、
前記第3電気回路は、前記ベース層近位端部及び前記ベース層遠位端部のそれぞれに形成される導電性接点パッドを、前記ベース層近位端部における前記導電性接点パッドと、ブランク電極を形成する、前記ベース層遠位端部における対応する前記導電性
接点パッドと、を電気的に接続する導電性トレースと共に有し、
前記ブランク電極は、前記チャネル形成層の前記スロット内にある、使い捨てバイオセンサ。
【請求項14】
請求項1
2に記載の使い捨てバイオセンサであって、
前記試薬保持層は、第3貫通開口を有し、
前記第3貫通開口は、ブランク電極と重なる、使い捨てバイオセンサ。
【請求項15】
NADP依存性デヒドロゲナーゼ及びジアホラーゼに基づく使い捨てバイオセンサを作成する方法であって、
作用電極部及び参照電極部を少なくとも有する検出表面を設けることと、
NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、NADP+、ジアホラーゼ、及び、酸化型レドックスメディエータを含む第1試薬を前記作用電極部上に配置し、作用電極となる第1電極マトリックスを形成する前記第1試薬を乾燥させることと、
銀-塩化銀と、還元型レドックスメディエータ、酸化型レドックスメディエータ、及び、還元型レドックスメディエータと酸化型レドックスメディエータとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化学的酸化剤を含む参照電極試薬と、の何れかである参照電極材料を、参照電極を形成する前記参照電極部上に配置して、参照電極マトリックスを形成する前記参照電極試薬を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記第1試薬を調製することをさらに含み、その方法は、予め定められた量の前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、予め定められた量のNADP+、予め定められた量のジアホラーゼ、及び、予め定められた量の酸化型レドックスメディエータを合わせて、予め定められた量の水に共に加えることを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
0.1グラムから0.5グラムの前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、
0.02グラムから0.1グラムの前記NAD(P)+を秤量することと、
0.02グラムから0.5グラムの前記ジアホラーゼを秤量することと、
0.1グラムから0.5グラムの前記酸化型レドックスメディエータを秤量することと、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、前記NAD(P)+、前記ジアホラーゼ、及び、前記
酸化型レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、
をさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
0.2グラムから0.4グラムの前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼを秤量することと、
0.05グラムの前記NAD(P)+を秤量することと、
0.05グラムから0.2グラムの前記ジアホラーゼを秤量することと、
0.3グラムの前記酸化型レドックスメディエータを秤量することと、
前記NAD(P)依存性デヒドロゲナーゼ、前記NAD(P)+、前記ジアホラーゼ、及び、前記
酸化型レドックスメディエータを、10ミリリットルの水に加えることと、
をさらに含む、方法。
【国際調査報告】