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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】尿道カテーテルキット
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/06 20060101AFI20240220BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20240220BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240220BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61L29/06
A61L29/12 100
A61L29/14 300
A61L29/08 100
A61M25/00 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545799
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2022053272
(87)【国際公開番号】W WO2022171749
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2101386
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515143739
【氏名又は名称】ビー.ブラウン アビタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】Schwarzenberger Weg 73-79, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オジェ,カミール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ローク,ハーウィグ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC08
4C081CA18
4C081CA21
4C081DA03
4C081DA12
4C081DC04
4C267AA03
4C267AA38
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC26
4C267GG02
4C267GG05
4C267GG06
4C267HH08
4C267HH14
(57)【要約】
本発明は、尿道カテーテルキットを対象とするものである。当該尿道カテーテルキットは、水及び少なくとも一種のポリエーテル-ポリウレタン感熱ゲル化性コポリマーP1を含んでなる水系潤滑剤組成物、並びに、少なくともエーテル単位を含む感熱ゲル化性コポリマーP2の外面コーティングを有する尿道カテーテル(又は導尿カテーテル)を備えている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道カテーテルキットであって、
- 水及び少なくとも一種のポリエーテル-ポリウレタン感熱ゲル化性コポリマーP1を含む、水系潤滑剤組成物と、
- 少なくともエーテル単位を含む感熱ゲル化性コポリマーP2の外面コーティングを有する、尿道カテーテルと、
を備えてなる尿道カテーテルキット。
【請求項2】
前記尿道カテーテルが、前記水系潤滑済組成物に浸漬されている、請求項1に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項3】
前記感熱ゲル化性コポリマーP2が、少なくともエーテル単位と、
ウレタン単位、エステル単位、及びそれらの混合物から選択される、好ましくはウレタン単位から選択される単位とを含む、請求項1又は2に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項4】
前記感熱ゲル化性コポリマーP1及び前記感熱ゲル化性コポリマーP2が、25℃で、5~100mPa・s、好ましくは10~80mPa・sの粘度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項5】
前記感熱ゲル化性コポリマーP1及び前記感熱ゲル化性コポリマーP2が、ポリエチレンオキシド単位及びポリプロピレンオキシド単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項6】
前記感熱ゲル化性コポリマーP1が、当該コポリマーの総重量に基づいて、50~99重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは75~90重量%のポリエチレンオキシド含有量を有する、請求項5に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項7】
前記水系潤滑剤組成物が、当該水系潤滑済組成物の総重量に基づいて、1~20乾燥重量%、好ましくは2~15乾燥重量%、より好ましくは3~10乾燥重量%の感熱ゲル化性コポリマーP1を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項8】
前記水系潤滑剤組成物が、当該水系潤滑済組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の量のグリセリンを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項9】
前記コポリマーコーティングが、前記感熱ゲル化性コポリマーP2を含む組成物中にカテーテルを液浸し、乾燥させることによって適用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項10】
前記感熱ゲル化性コポリマーP2コーティングが、前記感熱ゲル化性コポリマーP2を含む組成物の押出しによって適用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項11】
前記カテーテルが、感熱ゲル化性コポリマーP2コーティングの、二つの層、好ましくは同一である二つの層を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項12】
前記カテーテルが、オレフィン系熱可塑性材料で作られており、当該オレフィン系熱可塑性材料が、前記感熱ゲル化性コポリマーP2でコーティングされる前に、予めプラズマによって活性化されるか、又は予めプライマコートでコーティングされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の尿道カテーテルキット。
【請求項13】
カテーテルの摩擦係数を低下させるべく、尿道カテーテルキットにおいて、
- 水系潤滑剤組成物中における少なくとも一種のポリエーテル-ポリウレタン感熱ゲル化性コポリマーP1の使用、並びに、
- 尿道カテーテル用のコーティング層としての、少なくともエーテル単位を含む少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマーP2の使用、
の併用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道カテーテル(又は導尿カテーテル)の分野、特に、包装された尿道カテーテルの分野に関係する。
【背景技術】
【0002】
尿道カテーテルは様々な構成で市販されている。尿道カテーテルは、日常生活及び非滅菌環境において臨床現場及び患者自身の両方で使用される。包装は、これまで利用可能であった尿道カテーテルが部分的にしか満たさなかった様々な要求に供される。
【0003】
カテーテルは、例えば手術の場合には臨床用途において長期間にわたって、又は対麻痺患者の場合のように排尿のため1日に数回断続的に、のいずれかで配置される。
【0004】
カテーテルは、通常、薄く柔軟で、丸みを帯びた端部を有し、ほとんどの場合ではカテーテルの端部が尿道を介して膀胱へと挿入され得るように壁に側方開口部を有する管状部品からなり、ここで、側方開口部は尿がカテーテルを通過して身体から出ることを可能にする。反対側の端部には、通常、尿道へのカテーテルの挿入中及び排液バッグへのカテーテルの接続中のカテーテルの操作を容易にするために、通常はカテーテルの端部にハンドルを有する、排液バッグ又は排液バッグへの接続を可能にするコネクタがある。
【0005】
カテーテルは尿道への挿入を容易にするために潤滑剤でコーティングされてもよい。
【0006】
概して2種類のカテーテルが存在する:(即ち)
- 活性化するため水に浸すことだけを必要とする乾燥潤滑剤でコーティングされた、カテーテル(この水は、包装(これは耐水でなければならない)中に、又はそれ自体が包装中に収容される小さな耐水袋内に直接含まれてもよい)、
- 潤滑剤組成物を収容するパッケージ中に保存された(コーティングされていない)カテーテル、である。
【0007】
潤滑剤コーティングカテーテルは、乾燥状態でパッケージングされてもよく、使用するまで水分から離して保存しなければならない。活性化のための水を含むこの種類のキットは、パッケージ(又はパッケージに含まれる水袋)がユーザによって開封されたときに飛散を引き起こし得る。
【0008】
加えて、現在のカテーテルコーティングは概してポリビニルピロリドン(PVP)で作られており、これは、UVコーティング方法を必要とし、製造プロセスを煩雑にする。
【0009】
第2のカテゴリのカテーテル(コーティングされていないカテーテル)は、この活性化及び飛散の問題を回避するが、カテーテルは概して、水で活性化されるコーティングを有するカテーテルほど滑らかには移動しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】(国際調査報告を参照)
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、1回の使用で、準備が容易であり、且つ、よりスムーズに動かすことができる、即時使用型の尿道カテーテルキットを提供することにある。
【0012】
より具体的には、本発明は、
- 水及び少なくとも一種のポリエーテル-ポリウレタン感熱ゲル化性コポリマーP1を含む、水系潤滑剤組成物と、
- 少なくともエーテル単位を含む感熱ゲル化性コポリマーP2の外面コーティングを有する尿道カテーテルと、
を備えてなる、尿道カテーテルキットに関する。
【0013】
好ましくは、尿道カテーテルは水系潤滑剤組成物に浸漬されている。
【0014】
一実施形態では、感熱ゲル化性コポリマーP2は、少なくともいくつかのエーテル単位と、ウレタン単位、エステル単位、及びそれらの混合物、好ましくはウレタン単位から選択される単位とを含む。
【0015】
好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP1及び感熱ゲル化性コポリマーP2は、25℃で、5~100mPa・sの粘度、好ましくは10~80mPa・sの粘度を有する。
【0016】
好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP1及び感熱ゲル化性コポリマーP2は、ポリ(エチレンオキシド)単位及びポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
【0017】
好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP1は、コポリマーの総重量に基づいて、50~99重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは75~90重量%のポリ(エチレンオキシド)含有量を有する。
【0018】
好ましくは、水系潤滑剤組成物は、水系潤滑性組成物の総重量に基づいて、1~20乾燥重量%、好ましくは2~15乾燥重量%、より好ましくは3~10乾燥重量%の感熱ゲル化性コポリマー(複数可)P1を含む。
【0019】
本発明の別の実施形態では、水系潤滑剤組成物は、水系潤滑性組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の量のグリセリンを更に含む。
【0020】
一実施形態では、コポリマーコーティングは、感熱ゲル化性コポリマーP2を含む組成物中にカテーテルを液浸し、乾燥させることによって適用される。
【0021】
一実施形態では、感熱ゲル化性コポリマーコーティングP2は、感熱ゲル化性コポリマーP2を含む組成物を押し出すことによって適用される。
【0022】
一実施形態では、カテーテルは、感熱ゲル化性コポリマーコーティングP2の2つの層(好ましくは同一の二層)を有する。
【0023】
一実施形態では、カテーテルは、オレフィン系熱可塑性材料からなり、このオレフィン系熱可塑性材料は、感熱ゲル化性コポリマーでコーティングされる前に、予めプラズマによって活性化されるか、又は予めプライマコートでコーティングされる。
【0024】
本発明はまた、カテーテルの摩擦係数を低下させるための、尿道カテーテルキットにおける、
- 水系潤滑剤組成物中の少なくとも一種の感熱ゲル化性ポリエーテル-ポリウレタンコポリマー(の使用)と、
- 尿道カテーテル用のコーティング層としての、少なくともいくつかのエーテル単位を含む少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマーP2(の使用)と、
の併用(組合せでの使用)に関する。
【0025】
本発明の実装形態の他の特徴、変形、及び利点は、例としてのみ提供される以下の説明及び事例を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[発明の詳細な説明]
【0027】
本発明は、
- 水及び少なくとも1つ(一種)の感熱ゲル化性ポリエーテル-ポリウレタンコポリマーP1を含む、水系潤滑剤組成物と、
- 少なくともいくつかのエーテル単位を含む外面感熱ゲル化性コポリマーコーティングP2を有する、尿道カテーテルと、
を備える、尿道カテーテルキットに関係する。
【0028】
キットが提供される形態では、尿道カテーテルは水系潤滑剤組成物に浸漬される。典型的には、キットは、水系潤滑剤組成物に浸漬された尿道カテーテルを含むパッケージで提供される。
【0029】
2つのコポリマーP1及びP2は、2つ(二種)の感熱ゲル化性コポリマーである。2つのコポリマーP1及びP2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
「感熱ゲル化性ポリマー」とは、典型的には室温(およそ22℃)で液体であり、温度が上昇する場合はゲル状態へと移行することができる、ポリマーを指す。
【0031】
典型的には、本発明で使用される感熱ゲル化性コポリマーP1及びP2は、25℃でよりも、37℃で少なくとも10倍大きい粘度を有する。
【0032】
好ましくは、本発明で使用される感熱ゲル化性コポリマーの最大粘度は、37℃で達成される。
【0033】
2つのコポリマーP1及びP2は、同一の粘度又は異なる粘度を有し得る。
【0034】
好ましくは、本発明で使用される少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマー、特にコポリマーP1は、Lamy RM100デバイス及びそのBV1ロータを用いて50s-1の勾配で測定した場合に、(25℃での)5~100mPa・sの粘度、好ましくは10~80mPa・sの粘度を有する。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマー、特にコポリマーP1は、BV1ロータを備えたLamy RM100装置により50s-1の勾配で測定した場合に、(45℃での)20~90Pa・sの粘度、好ましくは25~75Pa・sの粘度を有する。
【0036】
感熱ゲル化性コポリマーP1は、ポリエーテル-ポリウレタン感熱ゲル化性ポリマー、すなわちエーテル単位及びウレタン単位を含むポリマーである。
【0037】
感熱ゲル化性コポリマーP2は、エーテル単位、及び、好ましくは、ウレタン若しくはエステル単位又はそれらの混合物から選択される単位を含むコポリマーである。好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP2は、エーテル単位及びウレタン単位を含むコポリマーである。
【0038】
一実施形態では、感熱ゲル化性コポリマーP1及び感熱ゲル化性コポリマーP2は、エーテル単位を含む少なくとも1つの直鎖を含む。
【0039】
一実施形態では、感熱ゲル化性コポリマーP1及び感熱ゲル化性コポリマーP2は、ポリ(エチレンオキシド)単位及びポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
【0040】
好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP1は、ウレタン部分によって連結(リンク)されたポリ(エチレンオキシド)単位及びポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
【0041】
好ましくは、感熱ゲル化性コポリマーP2は、ウレタン部分及び/又はエステル部分、好ましくは少なくともいくつかのウレタン部分によって連結(リンク)された、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
【0042】
一実施形態では、本発明で使用される少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマー、特にコポリマーP1は、コポリマーの総重量に対して、50~99重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは75~90重量%の(エチレンオキシド)含有量を有する。
【0043】
本発明で使用される感熱ゲル化性コポリマー(P1及びP2)は、文献FR2840907に記載されている通りであってもよい。感熱ゲル化性コポリマー(P1及びP2)は、例えば、PolymerExpertで商業的に入手可能である。
【0044】
水系潤滑剤組成物は、水系潤滑性組成物の総重量に基づいて、1~20乾燥重量%、好ましくは2~15乾燥重量%、より好ましくは3~10乾燥重量%の感熱ゲル化性コポリマー(複数可)P1を含む。
【0045】
一実施形態では、水系潤滑剤組成物は、水系潤滑性組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%の量のグリセリンを更に含む。
【0046】
一実施形態では、水系潤滑剤組成物は、水系潤滑剤組成物の総重量に対して、好ましくは0.01~10重量%の量、好ましくは0.1~5重量%の量、より好ましくは0.2~3重量%の量の一種以上の防腐剤を更に含んでもよい。好ましくは、防腐剤は、フェノキシエタノール、塩(salt)、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0047】
典型的には、水系潤滑剤組成物は、(25℃での)100~300mPa・s、好ましくは110~250mPa・s、より好ましくは120~200mPaの粘度を有する。
【0048】
本発明による水系潤滑剤組成物は、好ましくは室温(RT、25℃)で原材料を混合することによって調製してもよい。一実施形態では、コポリマー、水、及び任意の防腐剤を同時に添加し、次いで撹拌する。存在する場合にはグリセリンを、次いで好ましくはポリマー水溶液に添加する。次いで、水系潤滑剤組成物を得るために、混合物を撹拌する。
【0049】
本発明により使用されるカテーテルは、感熱ゲル化性コポリマーP2で外側がコーティングされている。感熱ゲル化性コポリマーP2は、感熱ゲル化性コポリマーP1と同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
一実施形態では、カテーテルは感熱ゲル化性コポリマーP2の2つの層を含み、この実施形態では、2つの層は本質的に同一(両方の層について同じ感熱ゲル化性コポリマーP2)であることが好ましい。
【0051】
感熱ゲル化性コポリマーコーティングは、感熱ゲル化性コポリマー溶液に液浸し、続いて乾燥するサイクルによって得てもよい。乾燥は、風乾であってもよく、又は層流によって、若しくは焼成、IR加熱などの熱的手段などによって加速されてもよい。
【0052】
別の実施形態では、感熱ゲル化性コポリマーコーティングは、押出によって適用される。
【0053】
カテーテルが感熱ゲル化性コポリマーコーティングのいくつかの層を含む場合、各層は、感熱ゲル化性コポリマー溶液に液浸し、続いて乾燥するサイクルを実施することによって適用されてもよく、そのサイクルは、コーティング層が適用される回数と同じ回数繰り返される。
【0054】
一実施形態では、初期のコーティングされていないカテーテルは、熱可塑性オレフィン系(thermoplastic olefinic:TPO)材料で作られる。
【0055】
一実施形態では、初期のコーティングされていないカテーテルは、特にTPOで作られている場合、感熱ゲル化性コポリマーでコーティングされる前に、例えばプラズマによって予め活性化される、及び/又はプライマでコーティングされる。プライマは、典型的には、コーティングされていないカテーテルの材料、例えばTPOとの化学的親和性を有し、これは、カテーテルへの感熱ゲル化性コポリマーの定着を促進する。単なる例示としては、プライマは、ポリ(メタ)アクリレートコポリマーを含んでもよい。
【0056】
特定の一実施形態では、カテーテルはプラズマ処理によって活性化され、次いで、このように活性化されたカテーテルはプライマ溶液に液浸され、その後、層流下又は加熱環境において、乾燥、好ましくは風乾される。
【0057】
本発明はまた、カテーテルのスムーズな移動を改善するための、本発明に従う潤滑剤組成物と本発明に従うカテーテルコーティングとの併用(組合せでの使用)に関係する。特に、摩擦係数は、本発明に従って定義される潤滑剤組成物と、本発明に従って定義される外側カテーテルコーティングとの組合せに起因して減少する。
【0058】
したがって、本発明は、カテーテルの摩擦係数を低下させるために、水系潤滑剤組成物及びコーティングカテーテルを含む尿道カテーテルキットにおける少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマーの使用に関係する。この水系潤滑剤組成物は少なくとも1つの感熱ゲル化性コポリマーP1を含み、かつコーティングされたカテーテルが感熱ゲル化性コポリマーP2の少なくとも1つの(外側)層を有することが理解される。
【0059】
感熱ゲル化性コポリマー(複数可)は、本発明によるキットに関して、コポリマーP1及びP2について本明細書で定義される特徴の1つ以上を有し得る。
【0060】
本発明による尿道カテーテルキットにより、尿道カテーテルの摩擦係数を0.1未満とすることができる。
【0061】
典型的には、本発明によるキットは、(コーティングとして又は潤滑剤組成物においてのいずれかで)感熱ゲル化性コポリマーを一切含まないカテーテルキットと比較して、摩擦係数を少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、又は少なくとも2.5倍減少させることを可能にする。
【実施例
【0062】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示するものである。
【0063】
[実施例1:潤滑剤組成物の解説]
実施例では、本発明による潤滑剤組成物及び先行技術の潤滑剤組成物を使用した。
【0064】
本発明に従う潤滑剤組成物(CLinv)の調製:
- 水と感熱ゲル化性コポリマーP1(PolymerExpert製のEG230(登録商標)(エーテル単位及びウレタン単位を含む))とを、RT未満の温度、好ましくは2~10℃からの温度で混合すること、
- 所望により撹拌すること、
- 室温でグリセリンを添加すること、並びに、
- 撹拌すること。
【0065】
本発明に従う水系潤滑剤組成物を調製した。これを以下の表1に記載し、当該表は水系潤滑剤組成物の総重量に対する重量パーセントを示す。
【表1】
【0066】
先行技術の潤滑剤組成物(CLcomp)を調製した。これは主に、80重量%のグリセリン及び20重量%の水を含む。
【0067】
潤滑剤組成物CLinvは、135~175mPa・sほどの粘度(25℃における)を有し、これにより、ユーザが尿道カテーテルキットを開くときに濡れ(又は液体飛散)を回避することができる。
【0068】
[実施例2:カテーテルの解説]
実施例では、コーティングされていないカテーテル(Cat-Comp)、及び本発明に従ってコーティングされたカテーテル(Cat-inv)を使用した。
【0069】
本発明に従うコーティングされたカテーテル(Cat-lnv)の調製:
- コーティングされていないTPOカテーテルを提供すること、
- エタノールでカテーテルを清掃すること、
- このように清掃されたカテーテルのプラズマ処理、
- プライマバス(プライマ浴)におよそ5秒間液浸すること、
- 15~24時間、風乾すること又は層流により乾燥すること、
- 感熱ゲル化性コポリマーP2バスにおよそ5秒間液浸すること、
- 24時間、風乾すること又は層流により乾燥すること、
- 感熱ゲル化性コポリマーP2バスにおよそ5秒間液浸すること、並びに、
- 24時間、風乾すること又は層流により乾燥すること。
【0070】
この非限定的な例では、コーティングされたカテーテルは、2層の感熱ゲル化性コポリマーP2を含む。
【0071】
この例では、感熱ゲル化性コポリマーP2は、ポリ(エチレンオキシド)単位及びポリ(プロピレンオキシド)単位を含み、PolymerExpert製のEG230(登録商標)ポリマーと同じファミリーである。
【0072】
[実施例3:滑り試験]
実施例1に記載の潤滑剤組成物に浸漬した(又は浸漬しなかった)後の実施例2に記載のカテーテルの摩擦係数を測定するために、滑り試験を行った。
【0073】
Harland Medical Systems製のFTS 600 REF UTMを下記の条件下において使用した。
サンプルを顎状部の間に配置し、牽引部に取り付ける。
顎状部を所定の力Fnで閉じ、牽引部を上方に移動させる。
積載部は牽引に対抗する力Ftを測定する。
【0074】
滑り挙動は以下のように計算されるCOFによって特徴付けられる:
なお、式中、
Fnとは、試験用顎状部によって加えられる力である。
Ftとは、顎状部からサンプルを引き出すべく積載部によって測定される力である。
【数1】
【0075】
COFが上昇している場合、これは、顎状部からサンプルを引き出するためにかなりの力が必要であり、これがかなりの摩擦をもたらすことを意味する。逆に、COFが低い場合、これは、顎状部からサンプルを引き出するためにほとんど力を必要としなかったことを意味し、すなわち低摩擦を意味する。
【0076】
滑り試験の摩擦係数(Friction coefficient:COF)は、サンプルの滑り挙動を特徴付ける。
【0077】
表2は試験プロトコルの特徴について記載している。
【表2】
【0078】
各キットについて、試験プロトコルは以下の通りである:
- (取り付けシステムのねじを緩めることなく)カテーテルを取り付けシステムに取り付ける、
- 移動するクロスバー上にカテーテルを配置する、
- 移動するクロスバー及びブロックが、目盛り付き分度器に正しく配置されていることを確認する、
- 表2に記載のプロトコルに従って試験を開始する、
- 抵抗試験の最後にカテーテルを取り外す。
【0079】
試験した様々なキットを表3に記載する。
【表3】
【0080】
以下の表4は、試験した各キットの摩擦係数を示す。
【表4】
【0081】
表4に示すように、本発明によるキット4はかなり低い摩擦係数を有し、これは、本発明によるキット4の方が良好な滑り挙動を有することを示している。より具体的には、キットが水系潤滑剤組成物中及びカテーテルコーティング中の両方で感熱ゲル化性コポリマーを使用する場合、COFは特に低い。本発明に従う水系潤滑剤組成物と、本発明に従ってコーティングされたカテーテルとの間の相乗効果が観察された。
【国際調査報告】