(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】好酸球性食道炎を検出するための免疫アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240220BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240220BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 545A
G01N33/543 541B
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545984
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2022053900
(87)【国際公開番号】W WO2022175368
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522403778
【氏名又は名称】ノルディック バイオサイエンス エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ホーグ モルテンセン,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ペアソン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル,モルテン アッサー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
患者からの生体液試料を、VI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させるステップを含む、患者の食道線維症および/または嚥下障害を検出および/または監視するための、および/または患者の食道線維症および/または嚥下障害の可能性または重症度を評価するための免疫アッセイ法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の食道線維症および/または嚥下障害を検出および/または監視するための、および/または患者の食道線維症および/または嚥下障害の可能性または重症度を評価するための免疫アッセイ法であって、
(i)患者からの生体液を、VI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用した前記モノクローナル抗体と、1種または複数の試料中のペプチドとの間の結合量を検出し、決定するステップ、および
(iii)ステップ(ii)で決定した各モノクローナル抗体の前記結合量を、健康な対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値および/または以前の時点で前記患者から得られた値および/または所定のカットオフ値と関連付けるステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、C末端アミノ酸配列KPGVISVMGT(配列番号1)に特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体が、前記C末端アミノ酸配列の伸長バージョンKPGVISVMGTA(配列番号2)、または前記C末端アミノ酸配列の短縮化バージョンKPGVISVMG(配列番号3)を認識せず、またはそれらに特異的に結合しない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体液が、血清または血漿である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記免疫アッセイが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記免疫アッセイが、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着アッセイである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好酸球性食道炎のマーカーであるコラーゲンVI型α3鎖のC末端に存在するエピトープに対して免疫アッセイを使用することによる食道線維症および嚥下障害の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
好酸球性食道炎(EoE)は、食道のアレルゲン/免疫介在性線維狭窄性疾患である。時間と共に引き続いて生じる食道狭窄のリスクを伴う進行性上皮下線維症が存在する場合があり、これは、表在性粘膜好酸球性炎症の回復がある場合であっても、嚥下障害および食物圧入をもたらす可能性がある。
【0003】
コラーゲンVI型は、ユニークな細胞外コラーゲンであり、これは、細胞の基底膜中に独立したミクロフィブリルネットワークを形成し得る。それは、コラーゲン、バイグリカン、およびプロテオグリカンなどの他のマトリックスタンパク質と相互作用し得る。筋肉では、VI型コラーゲンは、筋線維膜の一部であり、筋肉繊維の筋肉内細胞外マトリックスへの固着に関与し、従って、力伝達に関与する。さらに、VI型コラーゲン中の変異は、ベスレムミオパチーおよびウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーの原因となることがある。VI型コラーゲンα3鎖のC末端アミノ酸配列は、分泌後に成熟VI型ミクロフィブリルから切断されることが報告されている。しかし、VI型コラーゲンは、筋肉や筋力低下に関与するだけではない。
【0004】
構成要素の鎖α1(VI)、α2(VI)、およびα3(VI)から構成される三重ヘリカル分子である微小線維状の隙間VI型コラーゲンは、ほとんどの結合組織、主に脂肪組織中で発現され、そこで、その相互接続を介して細胞を他のECMタンパク質と接着させる。微小線維の形成の間に、VI型コラーゲンの三重ヘリカルコアは、タンパク分解性にプロペプチドから放出され、α3(VI)鎖のC末端プロペプチドの切断は、アディポカインの一種であるエンドトロフィンを生成する。
【0005】
PRO-C6は、新規コラーゲンVI型分子が細胞外マトリックスとして集合する際に切断されるVI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープを含むコラーゲンVI型の形成およびエンドトロフィン放出のバイオマーカーであり、このC末端エピトープは、生理活性フラグメントエンドトロフィンのC末端エピトープでもある。PRO-C6バイオマーカー、およびPRO-C6アッセイ(特に、PRO-C6 ELISA)は、国際公開第2016/156526号に記載されている。アッセイは、コラーゲンVI型のα3鎖のC5ドメインのC末端の10アミノ酸配列に特異的に結合するモノクローナル抗体を利用する。線維化促進性、炎症促進性および腫瘍形成促進性分子としてのエンドトロフィンの役割は、乳癌および肝線維症の前臨床モデルで観察された1-5。PRO-C6は、慢性腎疾患および糖尿病腎疾患患者における死亡率および疾患進行の予後バイオマーカーとして6-8、および糖尿病患者におけるグルコース低下療法に対する応答の予測マーカーとして9、確立された。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、これまでに、食道線維症および嚥下障害を検出するためのマーカーEoEとしてPRO-C6を特定した。
従って、本発明の第1の態様では、患者の食道線維症および/または嚥下障害を検出および/または監視するための、および/または患者の食道線維症および/または嚥下障害の可能性または重症度を評価するための免疫アッセイ法を提供し、前記方法は、下記ステップを含む。
(i)患者からの生体液を、VI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)で使用したモノクローナル抗体と、1種または複数の試料中のペプチドとの間の結合量を検出し、決定するステップ、および
(iii)ステップ(ii)で決定した各モノクローナル抗体の前記結合量を、健康な対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値および/または以前の時点で前記患者から得られた値および/または所定のカットオフ値と関連付けるステップ。
【0007】
免疫アッセイは、限定されないが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイであってよい。免疫アッセイは、例えば、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)であってよい。このようなアッセイは、当業者に既知の技術である。
【0008】
患者生体液試料は、限定されないが、血液、血清、血漿、尿または羊水であってよい。好ましくは、生体液は血清または血漿である。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、全長抗体、および全長抗体の結合特異性を保持するFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖Fvフラグメント、または当業者に既知の他のこのようなフラグメントなどのそのフラグメントの両方を意味する。よく知られているように、全長抗体は、典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖の対の”Y形状”構造を有し、各対は1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖から構成される。各軽鎖および重鎖のN末端領域は、可変領域を含み、それぞれの重鎖および軽鎖のC末端部分は、定常領域を構成する。可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これは、主に、抗原認識に関与する。定常領域は、抗体が免疫系の細胞および分子を動員することを可能にする。結合特異性を保持する抗体フラグメントは、少なくともCDR、および前記結合特異性を保持するために十分な可変領域の残りの部分を含む。
【0009】
本発明の方法では、当該技術分野において既知のいずれかの定常領域を含むモノクローナル抗体を使用できる。ヒト定常軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖に分類される。重鎖定常鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、およびIgEと定義する。IgGアイソタイプはいくつかのサブクラスを有し、これらには、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が含まれる。モノクローナル抗体は、好ましくは、IgGアイソタイプから構成され、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれか1種を含み得る。
【0010】
抗体のCDRは、Kabatらにより記載のものなどの当該技術分野において既知の方法を使用して決定できる。抗体は、実施例で記載のように、B細胞クローンから生成できる。抗体のアイソタイプは、ヒトIgM、IgGまたはIgAアイソタイプ、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスに特異的なELISAにより決定できる。生成された抗体のアミノ酸配列は、標準的な技術を用いて決定できる。例えば、RNAは、細胞から単離して、逆転写によりcDNAを生成するために使用できる。その後、cDNAは、抗体の重鎖および軽鎖を増幅するプライマーを用いてPCRに供される。例えば、全てのVH(可変重鎖)配列に対するリーダー配列に特異的なプライマーは、以前に決定したアイソタイプの定常領域中に位置する配列に結合するプライマーと一緒に使用できる。軽鎖は、VカッパまたはVラムダリーダー配列にアニールするプライマーと一緒に、カッパまたはラムダ鎖の3’末端に結合するプライマーを用いて増幅できる。完全長重鎖および軽鎖を生成および配列決定できる。
【0011】
本発明の第1の態様による方法のいくつかの実施形態では、生体液は、VI型コラーゲンのα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させられる。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、C末端アミノ酸配列KPGVISVMGT(配列番号1)(本明細書では、「PRO-C6配列」または単に「PRO-C6」とも呼ばれる)に特異的に結合する。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、前記C末端アミノ酸配列の伸長バージョン(KPGVISVMGTA;配列番号2)、または前記C末端アミノ酸配列の短縮化バージョン(KPGVISVMG;配列番号3)を認識せず、またはそれらに特異的に結合しない。
【0012】
前記抗体のC末端アミノ酸配列KPGVISVMGT(配列番号1)に対する親和性と、前記抗体の伸長C末端アミノ酸配列KPGVISVMGTA(配列番号2)、および/または短縮C末端アミノ酸配列KPGVISVMG(配列番号3)に対する親和性との比率は、好ましくは少なくとも10:1、およびより好ましくは少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1、少なくとも1,000:1、少なくとも10,000:1、少なくとも100,000:1、または少なくとも1,000,000:1である。
【0013】
本明細書で使用される場合、「C末端」という用語は、ポリペプチドの末端、すなわち、ポリペプチドのC末端でのC末端ペプチド配列を意味し、その一般的方向での意味と解釈されるべきではない。
【0014】
PRO-C6配列に特異的に結合するモノクローナル抗体は、好ましくは、下記から選択される1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含み得る:
CDR-L1:RSSQRIVHSNGITFLE (配列番号4)
CDR-L2:RVSNRFS (配列番号5)
CDR-L3:FQGSHVPLT (配列番号6)
CDR-H1:DFNMN (配列番号7)
CDR-H2:AINPHNGATSYNQKFSG (配列番号8)
CDR-H3:WGNGKNS (配列番号9)。
好ましくは、抗体は、上記したCDR配列の少なくとも2、3、4、5または6つを含む。
【0015】
好ましくは、モノクローナル抗体軽鎖可変領域は、下記CDR配列を含む:
CDR-L1:RSSQRIVHSNGITFLE (配列番号4)
CDR-L2:RVSNRFS (配列番号5)および
CDR-L3:FQGSHVPLT (配列番号6)。
【0016】
好ましくは、モノクローナル抗体軽鎖は、CDR間にフレームワーク配列を含み、前記フレームワーク配列は、下記の軽鎖配列(そこでは、CDRは太字かつ下線で示され、フレームワーク配列はイタリック体で示される)中のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一であるか、またはそれらに実質的に類似である。
【化1】
【0017】
好ましくは、モノクローナル抗体重鎖可変領域は、下記CDR配列を含む:
CDR-H1:DFNMN (配列番号7)
CDR-H2:AINPHNGATSYNQKFSG (配列番号8)
CDR-H3:WGNGKNS (配列番号9)。
【0018】
好ましくは、モノクローナル抗体重鎖は、CDR間にフレームワーク配列を含み、前記フレームワーク配列は、下記の重鎖配列(そこでは、CDRは太字かつ下線で示され、フレームワーク配列はイタリック体で示される)中のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一であるか、またはそれらに実質的に類似である。
【化2】
【0019】
本明細書で使用される場合、抗体のCDR間のフレームワークアミノ酸配列は、別の抗体のCDR間のフレームワークアミノ酸配列が少なくとも70%、80%、90%または少なくとも95%の類似性または同一性を有する場合、それらに実質的に同一であるか、またはそれらに実質的に類似である。類似または同一アミノ酸は、隣接または非隣接であってよい。
【0020】
フレームワーク配列は、1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。アミノ酸置換は、保存的であってよいが、これは、置換アミノ酸が元のアミノ酸に対し類似の化学的特性を有することを意味する。当業者なら、どのアミノ酸が類似の化学的特性を共有するかを理解するであろう。例えば、次のアミノ酸群は、サイズ、電荷および極性などの類似の化学的特性を共有する;群1:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;群2:Asp、Asn、Glu、Gln;群3:His、Arg、Lys;群4:Met、Leu、Ile、Val、Cys;群5:Phe、Thy、Trp。
【0021】
CLUSTALプログラムなどのプログラムは、アミノ酸配列を比較するために使用できる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較し、必要に応じて一方の配列中にスペースを挿入することにより、最適整列を見つけ出す。最適整列のためのアミノ酸同一性または類似性(アミノ酸タイプの同一性+保存性)を計算できる。BLASTxなどのプログラムは、最大長の一続きの類似の配列を整列させ、一致度に対し値を割り付ける。従って、いくつかの類似性の領域が見つかり、それぞれが異なるスコアを有する場合に、比較を得ることが可能である。本発明では、両タイプの分析が意図されている。同一性または類似性は、フレームワーク配列の全長にわたって計算されるのが好ましい。
【0022】
特定の好ましい実施形態では、PRO-C6配列に特異的に結合するモノクローナル抗体は、軽鎖可変領域配列:
【化3】
および/または重鎖可変領域配列:
【化4】
を含み得る(CDRは太字かつ下線;フレームワーク配列はイタリック体)。
【0023】
本発明の第1の態様による方法のいくつかの実施形態では、コラーゲンVI型のα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合量は、健康な対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値および/または以前の時点で患者から得た値と相関付けられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「健康な対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値」という用語は、健康であると考えられる、すなわち、心臓血管疾患でない対象に対する前出で記載の方法により決定される規格化量、および/または既知の重症度のEoEを有することが既知の対象に対して前出で記載の方法により決定される規格化量を意味する。
【0025】
第1の態様による方法のいくつかの実施形態では、コラーゲンVI型のα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合量は、1つまたは複数の所定のカットオフ値と比較される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「カットオフ値」は、患者のEoE、または特定のレベルの重症度のEoEの高い可能性を示すことが統計的に決定される結合量を意味し、患者試料中のバイオマーカー結合の測定値は、EoEの存在または可能性またはその疾患の特定の重症度レベルの、少なくとも70%の確率、好ましくは少なくとも80%の確率、好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、および最も好ましくは少なくとも95%の確率に相当する統計学的カットオフ値であるか、またはそれを超える。
【0027】
コラーゲンVI型のα3鎖のC5ドメインのC末端エピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合量に対する所定のカットオフ値は、好ましくは、少なくとも9.0ng/mL、より好ましくは、少なくとも12.0ng/mLである。少なくとも9.0ng/mL、およびより好ましくは、少なくとも12.0ng/mLの統計学的カットオフ値を有することにより、本発明の方法を利用して、EoEの予後を高い信頼度で与えることができる。このような統計学的カットオフ値の適用は、それが独立型診断アッセイを生ずる、すなわち、それは、診断の結論にいたるために、健康な個体および/または既知の疾患重症度の患者との直接比較を全く必要としないので、特に有利である。これは、初期予後を確証するための迅速で確定的ツールとして機能し、従って、場合によっては、より侵襲的手順の必要性を除き、好適な治療レジメンの開始を容易にし得るので、EoEを一般的に示す(例えば、身体検査および/または医療従事者との診察により判断して)医学的徴候または症状を既に有する患者を評価するためにこのアッセイを利用する場合にも、特に有利であり得る。それは、長い入院の必要性も回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)シャッキー輪/線維性狭窄および(b)EREF線維化スコアに従って層別化されたEoE患者におけるPRO-C6血清レベルを示す。
【
図2】EoE患者および嚥下障害に従って層別化されたEoE患者におけるPRO-C6血清レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例
実施例1-PRO-C6のための抗体開発
Pro-C6に特異的なモノクローナル抗体を、VI型コラーゲンα3鎖の最後の10アミノ酸(すなわち、C末端配列3168’KPGVISVMGT’3177(配列番号1))を免疫原性ペプチドとして用いて、国際公開第2016/156526号(Nordic Bioscience、参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように開発した。手短に説明すると、60μgの免疫原性ペプチドを含む200μlの乳化抗原を用いて、4~6週齢のBalb/cマウスの皮下に免疫した。安定な血清力価レベルに到達するまで、フロイント不完全アジュバント中で、連続した免疫化を2週間隔で実施し、2回目の免疫化からマウスの採血を行った。各採血で、血清力価を検出し、最高の抗血清力価および最良の天然の反応性を有するマウスを融合のために選択した。選択マウスを1か月間休息させ、その後、100μlの0.9%塩化ナトリウム溶液中の50μgの免疫原性ペプチドで静脈内追加免疫を実施し、3日後に細胞融合のために脾臓を分離した。
【0030】
マウスの脾臓細胞をSP2/0骨髄腫融合パートナー細胞と融合した。96ウェルプレート中で融合細胞を培養し、CO2インキュベーター中でインキュベートした。ここで、標準限界希釈を用いてモノクローナル増殖を促進した。選択ペプチドに特異的で、伸長ペプチド(KPGVISVMGTA(配列番号2)、Chinese Peptide Company,China)または短縮ペプチド(KPGVISVMG(配列番号3、American Peptide Company,USA)に対し交差反応性のない細胞株を選択し、サブクローニングした。最後に、IgGカラムを用いて抗体を精製した。
【0031】
生成した抗体の配列を決定し、CDRを特定した。
鎖の配列は、以下の通り(CDRは下線かつ太字):
重鎖配列(マウスIgG1アイソタイプ)
【化5】
軽鎖配列(マウスカッパアイソタイプ)
【化6】
【0032】
実施例2.PRO-C6免疫アッセイ法
PRO-C6は、国際公開第2016/156526号に記載されるように、および他の刊行物39でも詳述されているように、Nordic Bioscienceで開発された酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて測定された。手短に説明すると、これらの手順は以下の通りであった:
アッセイ開発で用いられたELISAプレートは、Rocheのストレプトアビジンを被覆したものであった(カタログ番号:11940279)。全てのELISAプレートは、Molecular Devices,Spectramax M、(CA,USA)のELISA読み取り装置で分析した。我々は、選択モノクローナル抗体をLightning link HRP標識キットを用いて、製造業者(Innovabioscience,Babraham,Cambridge,UK)の説明書に従って、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した。96ウェルストレプトアビジンプレートを、コーティングバッファー(40mMのNa2HPO4、7mMのKH2PO4、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、0.1%のツイーン20、1%のBSA、pH7.4)中に溶解したビオチン化合成ペプチドビオチン-KPGVISVMGT(配列番号16)(Chinese Peptide Company,China)でコートし、20℃で30分間インキュベートした。インキュベーションバッファー(40mMのNa2HPO4、7mMのKH2PO4、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、0.1%のツイーン20、1%のBSA、5%のリキッドII、pH7.4)中で希釈した20μLの標準ペプチドまたは試料を適切なウェルに加え、続いて、100μLのHRP標識モノクローナル抗体10A3を加え、4℃で21時間インキュベートした。最後に、100μLのテトラメチルベンジニジン(TMB)(Kem-En-Tec、カタログ番号:438OH)を加え、暗所中、プレートを20℃で15分間インキュベートした。上記全てのインキュベーションステップには、300rpmでの振盪を含めた。各インキュベーションステップ後、プレートを洗浄バッファー(20mMのトリス、50mMのNaCl)中で5回洗浄した。100μLの反応停止液(1%H2SO4)を加えることにより、TMB反応を停止し、650nmを基準として、450nmで測定した。
【0033】
実施例3.
除外食の30人の成人EoE患者(男性60%、年齢中央値36.5才、中央値疾患持続期間8.0年)からの血清試料をベースラインおよび介入の30日後の分析に含めた。診断またはサンプリング時に併存症と診断された患者はいなかった。PRO-C6の血清レベルをEoE患者および年齢/性別一致健康ドナー(n=-30)で評価した。線維症に対するシャッキー輪、線維性狭窄およびEREFサブスコアを用いて、ベースラインおよび介入後での線維症の存在を評価した。加えて、EoE患者の嚥下障害も評価した。EoE患者を、シャッキー輪/線維性狭窄(リグレッサー:n=4、プログレッサー:n=11)およびEREF線維症(リグレッサー:n=14、プログレッサー:n=12)に対する、線維症のリグレッサー(ベースラインからの介入後の線維化スコアの減少)またはプログレッサー(ベースラインからの介入後の線維化スコアの増大)として層別化した。EoE患者は、健康なドナーに比べて、有意に高いPRO-C6血清レベルを有した。加えて、我々は、両方の時点で進行性線維化表現型を示す患者において、有意に高い血清レベルVI型コラーゲン形成PRO-C6を観察した(
図1)。さらに、嚥下障害のない患者(n=11)はまた、嚥下障害を有する患者(n=3)に比べて、ベースラインおよび介入後に、数値的に低いレベルのPRO-C6を示した(
図2)。
【0034】
この明細書では、明示的に別義が示されない限り、語句「論理和(or)」は、条件の1つのみが一致することが必要な演算子「排他的論理和(exclusive or)」ではなく、示した条件の片方または両方が合致する場合に、真値を返す演算子の意味で使用される。語句「を含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」の意味ではなく、「を含む(including)」の意味で使用される。上記で認められる全ての先行教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書でのいずれの先行発表文献の認識も、その教示が本明細書の時点で、オーストラリアまたは他の場所で共通の一般常識であることを認めるまたは表すものと解釈されるべきではない。
【0035】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】