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  • 特表-複合プロトン伝導性膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】複合プロトン伝導性膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1048 20160101AFI20240220BHJP
   H01M 8/106 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1032 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1027 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1034 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1025 20160101ALI20240220BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 8/1081 20160101ALI20240220BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240220BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240220BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240220BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20240220BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240220BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240220BHJP
【FI】
H01M8/1048
H01M8/106
H01M8/1039
H01M8/1032
H01M8/1027
H01M8/1034
H01M8/1025
H01M8/18
H01M8/1081
H01B1/06 A
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B13/08 302
C25B9/23
H01M8/12 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546071
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022070312
(87)【国際公開番号】W WO2022165477
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】17/162,421
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】リュー、チュンチン
(72)【発明者】
【氏名】ドン、シュエリャン
(72)【発明者】
【氏名】バー、チャオイー
【テーマコード(参考)】
4K021
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB05
4K021DB31
4K021DB43
4K021DC01
4K021DC03
5G301CD01
5G301CE01
5H126AA05
5H126BB06
5H126BB10
5H126GG12
5H126GG13
5H126GG18
5H126GG19
5H126HH03
5H126HH04
5H126HH08
5H126JJ02
5H126RR01
(57)【要約】
複合プロトン伝導性膜であって、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む、複合プロトン伝導性膜。この膜は、レドックスフローバッテリ、燃料電池、及び電解用途のための従来のポリマープロトン伝導性膜を上回る利点を提供し、1)プロトン伝導のための追加のナノチャネルの形成による、プロトン伝導性/浸透の増強、2)レドックスフローバッテリ用途のためのプロトン/電解質選択性の改善、3)膜膨潤及びガス又は電解質クロスオーバーの低減、4)化学的安定性の改善、5)安定した性能でのセル作動時間の増加、並びに6)膜コストの低減を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合プロトン伝導性膜であって、
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、
水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む、複合プロトン伝導性膜。
【請求項2】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸から調製されたポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせから選択されるポリマーから調製された微孔性支持膜を更に含む、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜。
【請求項3】
シリカゲル、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、酸化ジルコニウム、モレキュラーシーブ、金属有機骨格、ゼオライトイミダゾレート骨格、共有結合有機骨格、又はそれらの組み合わせから選択され、前記無機充填剤が、共有結合した酸性官能基を含む、請求項1に記載の無機充填剤。
【請求項4】
前記水不溶性イオン伝導性ポリマーが、過フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜。
【請求項5】
前記水不溶性イオン伝導性ポリマーが、水不溶性親水性ポリマー、又は電気的に中性の繰り返し単位と、-SO 、-COO、-PO 2-、-PO、-C、若しくは-Oなどのイオン化官能基の画分との両方の繰り返し単位を含む水不溶性親水性ポリマー複合体である、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜。
【請求項6】
前記水不溶性イオン伝導性ポリマーが、多糖ポリマー、架橋多糖ポリマー、金属イオン錯化多糖ポリマー、酸錯化多糖ポリマー、架橋ポリビニルアルコールポリマー、酸錯化ポリビニルアルコールポリマー、金属イオン錯化ポリビニルアルコールポリマー、架橋ポリ(アクリル酸)ポリマー、金属イオン錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、酸錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、架橋ポリ(メタクリル酸)、金属イオン錯化ポリ(メタクリル酸)、酸錯化ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜。
【請求項7】
前記多糖ポリマーが、アルギン酸、架橋アルギン酸、キトサン、架橋キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の複合プロトン伝導性膜。
【請求項8】
レドックスフローバッテリシステムであって、
正の電解質と、負の電解質と、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜と、を含む少なくとも1つの再充電可能セルであって、前記複合プロトン伝導性膜が前記正の電解質と前記負の電解質との間に配置されており、前記正の電解質が正極と接触し、前記負の電解質が負極と接触する、少なくとも1つの再充電可能セルを含む、レドックスフローバッテリシステム。
【請求項9】
膜電極アセンブリであって、
請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜と、
前記複合プロトン伝導性膜の一方の表面上にアノード触媒を含むアノードと、
アノードガス拡散層と、
前記複合プロトン伝導性膜の他方の表面上にカソード触媒を含むカソードと、
カソードガス拡散層と、を含み、
前記複合プロトン伝導性膜が、
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、
水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む、膜電極アセンブリ。
【請求項10】
複合プロトン伝導性膜を作製する方法であって、
a.水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液を調製することと、
b.前記水不溶性イオン伝導性ポリマー及び無機充填剤を含む混合分散液を、前記無機充填剤、又は水、有機溶媒、若しくは水/有機溶媒混合物中の前記無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で前記水不溶性イオン伝導性ポリマーの前記分散液に添加することによって調製することであって、前記無機充填剤が、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する、調製することと、
前記混合分散液の層を無孔性基材上又は微孔性支持膜上に流延し、続いて乾燥させることによって、複合プロトン伝導性膜を調製することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の記載
本出願は、2021年1月29日に出願された米国出願第17/162,421号の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵システムは、様々な供給源からエネルギーを収集する際に重要な役割を果たしてきた。これらのエネルギー貯蔵システムは、エネルギーを貯蔵し、建物、輸送、ユーティリティ、及び産業などの多くの異なる用途で使用するためにエネルギーを変換するのに使用することができる。様々なエネルギー貯蔵システムが商業的に使用されており、新たなシステムが現在開発されている。エネルギー貯蔵システムのタイプは、電気化学及びバッテリ、熱、熱化学、フライホイール、圧縮空気、揚水発電、磁気、生物学、化学、及び水素エネルギー貯蔵として分類することができる。エネルギー危機を解決し、発電と最終用途との間の不一致を克服するために、費用効率が高く、かつ環境に優しいエネルギー貯蔵システムの開発が必要である。
【0003】
風力及び太陽光電力などの再生可能エネルギー源は、エネルギー貯蔵を必要とする過渡特性を有する。レドックスフローバッテリ(redox flow battery、RFB)などの再生可能エネルギー貯蔵システムは、電力網、電気自動車、及び他の大規模な定置用途に大きな注目を集めている。RFBは、化学エネルギーを直接電気に可逆的に変換する電気化学エネルギー貯蔵システムである。副生成物として一酸化炭素又は二酸化炭素を生成することなく、水電解を介して電気をエネルギー担体としての水素に変換することにより、電気、化学、移動度、及び加熱の分野を結びつけることが可能になる。グリッドバランシング又はパワーツーガス及びパワーツーリキッドプロセスのためのエネルギーベクトルとしての水素は、環境に優しい低炭素エネルギー構造への経路において重要な役割を果たす。水電解は、水を水素及び酸素に電気化学的に分解することによって高品質の水素を生成し、反応は、以下の式1によって生じる。水電解プロセスが吸熱プロセスであり、電気がエネルギー源である。プロセスが風力、太陽光、又は地熱エネルギーなどの再生可能な電力源によって作動される場合、水電解のカーボンフットプリントはゼロである。主な水電解技術としては、アルカリ電解、プロトン交換膜(proton exchange membrane、PEM)電解、アニオン交換膜(anion exchange membrane、AEM)電解、及び固体酸化物電解が挙げられる。PEM水電解システムにおいて、アノード及びカソードは、Chemours社によって商標名Nafion(登録商標)で販売されているスルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマーなどの固体PEM電解質によって分離される。アノード触媒及びカソード触媒は、典型的には、それぞれIrO及びPtを含む。正に帯電したアノードでは、純水が酸化されて、酸素ガス、電子(e)、及びプロトンが生成され、反応は、以下の式2によって生じる。プロトンは、プロトンを伝導するPEMを通ってアノードからカソードに輸送される。負に帯電したカソードでは、還元反応が起こり、カソードからの電子がプロトンに与えられて、水素ガスが形成され、反応は、以下の式3によって生じる。PEMは、アノードからカソードへプロトンを伝導するだけでなく、水電解反応で生成されたH及びOを分離する。PEM水電解は、再生可能エネルギーを高純度水素に変換するための好ましい方法のうちの1つであり、高差圧、高電流密度、高効率、高速応答、低フットプリント、低温(20~90℃)作動、及び高純度酸素副生成物でのコンパクトなシステム設計という利点を有する。しかしながら、PEM水電解の主要な課題のうちの1つは、高価な耐酸性スタックハードウェア、電極に必要とされる高価な貴金属触媒、並びに高価なPEMを含むセルスタックの高い資本コストである。
【数1】
【0004】
燃料電池は、次世代のクリーンエネルギー資源として、水素と酸素の酸化/還元レドックス反応などの化学反応のエネルギーを電気エネルギーに変換する。燃料電池の3つの主なタイプは、アルカリ電解質燃料電池、高分子電解質膜燃料電池、及び固体酸化物燃料電池である。高分子電解質膜燃料電池は、プロトン交換膜燃料電池(proton exchange membrane fuel cell、PEMFC)、アニオン交換膜燃料電池(anion exchange membrane fuel cell、AEMFC)、及び直接メタノール燃料電池を含み得る。
【0005】
電気化学セルにおけるアノードは、主な反応が酸化である電極である(例えば、水又はCO電解槽のための水酸化/酸素発生反応電極、又は燃料電池のための水素酸化電極)。
【0006】
再生可能なエネルギーシステムでの広範囲の用途を有するPEM水電解及びPEMFCのための費用効率の高い触媒、膜材料、並びに他のセルスタック構成要素において、著しい進歩が必要とされている。
【0007】
RFBは、異なる原子価状態にあり得る金属イオンを含む活性物質で充填された2つの外部貯蔵タンク、2つの循環ポンプ、及び分離膜を有するフローセルから構成される。分離膜は、アノードとカソードとの間に配置され、アノード液とカソード液とを分離するために使用されるとともに、平衡イオンの移動を可能にすることによって電流回路を利用するために使用される。アノード液、カソード液、アノード、及びカソードは、それぞれ、めっき電解質又は負の電解質、レドックス電解質又は正の電解質、めっき電極又は負極、及びレドックス電極又は正極とも呼ばれることもある。現在までに開発された全てのレドックスフローバッテリの中で、全てのバナジウムレドックスフローバッテリ(vanadium redox flow battery、VRFB)が最も広く研究されている。VRFBは、両方の半電池において同じバナジウム元素を使用し、一方の半電池から他方の半電池への電解質のクロスオーバー汚染を防止する。しかしながら、VRFBは、高コストのバナジウム及び高価な膜を使用するため、本質的に高価である。全鉄レドックスフローバッテリ(iron redox flow battery、IFB)は、低コストで豊富に入手可能な鉄、塩、及び水を電解質として使用し、システムが無毒性であるため、グリッド規模の貯蔵用途に特に魅力的である。IFBは、それぞれ正極及び負極のための正の電解質及び負の電解質の両方として、異なる原子価状態の鉄を有する。外部貯蔵タンクに貯蔵された鉄ベースの正及び負の電解質溶液は、バッテリのスタックを通って流れる。カソード側の半電池の反応は、固体プレートの形態の鉄の析出及び溶解を伴い、反応は、以下の式4によって生じる。アノード側の半電池の反応は、充電中にFe2+が電子を失ってFe3+を形成し、放電中にFe3+が電子を得てFe2+を形成することを伴い、反応は、以下の式5によって生じる。全体の反応を式6に示す。
【数2】
【0008】
膜は、安全性及び性能のための重要な要因としてバッテリ又は電解セルを構成する重要な材料のうちの1つである。フローバッテリ、燃料電池、及び膜電解のための膜についてのいくつかの重要な特性としては、高い伝導性、高いイオン透過性(多孔度、細孔径、及び細孔径分布)、高いイオン交換能(イオン交換膜の場合)、高いイオン/電解質選択性(電解質に対する低透過性/クロスオーバー)、低い価格(150~200ドル/m未満)、オーム分極に起因する効率性損失を最小限に抑えるための低い面積抵抗、酸化及び還元条件に対する高い抵抗、広いpH範囲に対する化学的不活性、高いプロトン伝導性とともに高い熱的安定性(燃料電池の場合、120℃以上)、HOを使用しない高Tでの高いプロトン伝導性、高いRHを維持しながら高Tでの高いプロトン伝導性、及び高い機械的強度(厚さ、低膨潤性)が挙げられる。
【0009】
レドックスフローバッテリ、燃料電池、及び電解用途のための膜の2つの主要なタイプは、ポリマーイオン交換膜及び微孔性セパレータである。ポリマーイオン交換膜は、-SO 、-COO、-PO 2-.、-PO、若しくは-Cカチオン交換官能基を含むカチオン交換膜、-NH 、-NRH 、-NR、-NR 、若しくは-SR アニオン交換官能基を含むアニオン交換膜、又はカチオン交換ポリマー及びアニオン交換ポリマーの両方を含むバイポーラ膜であり得る。イオン交換膜の調製のためのポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、及びNEOSEPTA(登録商標)-Fなどの過フッ素化アイオノマー、部分フッ素化ポリマー、非フッ素化炭化水素ポリマー、芳香族骨格を有する非フッ素化ポリマー、又は酸-塩基ブレンドであり得る。一般に、Nafion(登録商標)及びFlemion(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic acid、PFSA)系膜は、それらの酸化安定性、良好なイオン伝導性、独特の形態、機械的強度、及び高い電気化学的性能のために、バナジウムレドックスフローバッテリ(vanadium redox flow battery、VRFB)システムにおいて使用される。しかしながら、これらの膜は、平衡イオン/電解質イオン選択性が低く、かつ電解質金属イオンのクロスオーバーが高く、VRFB中での能力低下を引き起こし、高価である。
【0010】
微孔性及びナノ多孔性膜セパレータは、不活性微孔性/ナノ多孔性ポリマー膜セパレータ、不活性不織多孔性フィルム、又はポリマー/無機材料コーティング/含浸セパレータであり得る。不活性微孔性/ナノ多孔性ポリマー膜セパレータは、微孔性ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、PE/PP、若しくは複合無機/PE/PP膜、不活性不織多孔性フィルム、不織PE、PP、ポリアミド(polyamide、PA)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephalate、PET)、又はポリエステル多孔性フィルムであり得る。例えば、PE、PP、又はPEポリマーとPPポリマーのブレンドから作製された微孔性Daramic(登録商標)及びCelgard(登録商標)膜セパレータが市販されている。それらは通常、高いイオン伝導性を有するが、RFB用途のための高い電解質クロスオーバーも有する。
【0011】
多大な研究努力にもかかわらず、レドックスフローバッテリ、燃料電池、及び電解用途などの電気化学的変換及び貯蔵用途のための、信頼性があり、高性能(低いガスクロスオーバー及び優れた伝導性)で低コストの膜が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】80℃、大気圧での5AMPA-D2021及びNafion(登録商標)212 MEAの水電解性能を示す。
図2】5AMPA-D2021 MEAの分極電圧は、作動温度が80℃から100℃に上昇するにつれて減少した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電解槽、燃料電池、及びレドックスフローバッテリなどのほとんどの電気化学変換及び貯蔵システムは、イオン伝導性膜の安定した高性能に依存している。これらのシステムは、膜が、電気化学的活性種(例えば、電極、電解質)並びに生成物及び副生成物(例えば、酸素及び水素)を効率的に分離することができず、並びに特定のイオン(例えば、プロトン及び支持非電気化学的活性電解質カチオン)を伝導して、アノード及びカソードで起こる電気化学反応を媒介することができない場合、所望の長期性能を有することができない。
【0014】
本発明は、新たなタイプの複合プロトン伝導性膜を提供し、より詳細には、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、任意選択的に微孔性支持膜と、を含む、新たな複合プロトン伝導性膜を提供する。新たな複合プロトン伝導性膜は、電解槽などの電気化学エネルギーシステム、燃料電池、及びレドックスフローバッテリにおいて使用することができる。他の態様は、膜を作製する方法、及び水電解又は燃料電池システムのための膜電極アセンブリ、並びに複合プロトン伝導性膜を組み込むレドックスフローバッテリシステムを含む。
【0015】
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤を水不溶性イオン伝導性ポリマーに組み込むことにより、プロトン伝導のための酸性プロトン伝導性官能基を有するいくつかの追加のナノチャネル及び無機充填剤と水不溶性イオン伝導性ポリマーマトリックスとの間の良好な接着を有する新たなタイプの複合プロトン伝導性膜が提供された。複合プロトン伝導性膜の厚さは、典型的には、5マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲、又は20マイクロメートル~300マイクロメートルの範囲、又は20マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲にある。無機充填剤は、水不溶性イオン伝導性ポリマーマトリックス中に分散されて、複合プロトン伝導性緻密非多孔性膜を形成する。
【0016】
レドックスフローバッテリ、燃料電池、及び電解用途のための、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤を含む新たな複合プロトン伝導性膜の、Nafion(登録商標)及びFlemion(登録商標)などの従来のポリマープロトン伝導性膜を超える利点としては、1)プロトン伝導のための追加のナノチャネルの形成による、プロトン伝導性/透過性の増強、2)レドックスフローバッテリのためのプロトン/電解質選択性の改善、3)膜膨潤及びガス又は電解質クロスオーバーの低減、4)化学的安定性の改善、5)安定した性能でのセル作動時間の増加、並びに6)膜コストの低減が挙げられる。
【0017】
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、任意選択的に、レドックスフローバッテリ、燃料電池、及び電解用途のための微孔性支持膜と、を含む、新たな複合プロトン伝導性膜は、高いイオン伝導性を有し、プロトン又は/及びカリウムカチオン(K)などの電荷担持イオン(charge-carrying ion)を膜の一方の側から膜の他方の側に輸送して、電気回路を維持することができる。電気的バランスは、電気化学セルの作動中に複合プロトン伝導性膜を横切る電荷担持イオン(PEM水電解におけるプロトン、全鉄レドックスフローバッテリシステムにおけるプロトン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、又はナトリウムカチオンなど)の輸送によって達成される。膜のイオン伝導率(σ)は、電荷担持イオンを伝導するその能力の尺度であり、伝導率の測定単位は、ジーメンス毎メートル(S/m)である。複合プロトン伝導性膜のイオン伝導率(σ)は、固定距離分だけ隔てられた2つの電極間の膜の抵抗(R)を求めることによって測定することができる。抵抗は、電気化学インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)によって求めることができ、抵抗の測定単位は、オーム(Ω)である。膜面積比抵抗(membrane area specific resistance)(RA)は、膜の抵抗(R)と膜活性面積(A)との積であり、膜面積比抵抗の測定単位は、(Ω・cm)である。膜イオン伝導率(σ、S/cm)は、膜厚(L、cm)に比例し、膜面積比抵抗(RA、Ω・cm)に反比例する。
【0018】
RFB用途のための複合プロトン伝導性膜の性能は、RFBセルの、電解質中の膜溶解度及び安定性、面積比抵抗、バッテリ充電/放電サイクル数、膜を通る電解質クロスオーバー、電圧効率(voltage efficiency、VE)、クーロン効率(coulombic efficiency、CE)、及びエネルギー効率(energy efficiency、EE)を含むいくつかのパラメータによって評価することができる。CEは、セルの放電容量をその充電容量で割った比である。より低い容量損失を示すより高いCEは、主に、鉄レドックスフローバッテリシステムにおける、第二鉄イオン及び第一鉄イオンなどの電解質イオンのクロスオーバー率がより低いことに起因する。VEは、セルの平均放電電圧をその平均充電電圧で割った比として定義される(M.Skyllas-Kazacos,C.Menictas,and T.Lim,Chapter 12 on Redox Flow Batteries for Medium-to Large-Scale Energy Storage in Electricity Transmission,Distribution and Storage Systems,A volume in Woodhead Publishing Series in Energy,2013を参照されたい)。より高いイオン伝導率を示すより高いVEは、主に、膜の面積比抵抗が低いことに起因する。EEは、VEとCEとの積であり、充電-放電プロセスにおけるエネルギー損失の指標である。EEは、エネルギー貯蔵システムを評価するための重要なパラメータである。
【0019】
水電解用途のための複合プロトン伝導性膜の性能は、分極電圧(全電解セル電圧)、高周波抵抗(high frequency resistance、HFR)、及びガスクロスオーバーによって評価される。分極電圧(Ecell)は、式7で与えられ、式中、Erevは、温度及び圧力の関数である可逆セル電圧であり、iは、電流である。Rmemb、R及びRH+は、それぞれ、膜のオーム抵抗、電気接触抵抗、及び電極内の有効プロトン輸送抵抗である。ηHER及びηOERは、水素発生反応(hydrogen evolution reaction、HER)及び酸素発生反応(oxygen evolution reaction、OER)についての速度論的過電圧であり、ηmtは、物質輸送に関連する追加の抵抗を表すJ Electrochem.Soc.2016,163,F3179)。高周波抵抗(HFR)は、Rmemb+R+RH+に等しく、したがって、より低いHFRは、通常、膜の導電率がより高いことを示す。ガス(例えば、水電解槽用の水素及び酸素)クロスオーバーは、水電解条件下での膜の水素及び酸素透過性を評価するためのパラメータである。エネルギー効率及び安全性を考慮すると、低いガスクロスオーバー(特に水素クロスオーバー)が好ましい。複合プロトン伝導性膜及び市販のプロトン交換膜をそれぞれ含むPEM電解槽セル又はPEMFCの性能は、電流密度に対して分極電圧をプロットすることによって得られるそれらの分極曲線によって比較することができる。PEM燃料電池とは逆に、PEM電解槽が良好であればあるほど、分極曲線における所与の電流密度でのセル電圧は低くなる。
【数3】
【0020】
新たな複合プロトン伝導性膜複合における、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する無機充填剤は、シリカゲル、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、酸化ジルコニウム、モレキュラーシーブ、金属有機骨格、ゼオライトイミダゾレート骨格、共有結合有機骨格、又はそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されず、充填剤は、共有結合した酸性官能基及び150m/g以上、又は300m/g以上、又は400m/g以上の高表面積の両方を含む。モレキュラーシーブは、特有の広角X線回折パターンによって特徴付けられ得る骨格構造を有する。ゼオライトは、アルミノシリケート組成物をベースとするモレキュラーシーブのサブクラスである。非ゼオライト系モレキュラーシーブは、アルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート、及びシリカなどの他の組成物をベースとする。モレキュラーシーブは、様々な化学組成及び様々な骨格構造を有し得る。モレキュラーシーブは、微孔性又はメソ多孔性モレキュラーシーブであってもよく、6未満のpHの水溶液中で安定である必要がある。無機充填剤に共有結合した酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択されてもよいが、これらに限定されず、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。無機充填剤は、粒子、微細ビーズ、薄板、ロッド、又は繊維の形態にあってもよいが、これらに限定されない。無機充填剤のサイズは、2nm~200μmの範囲、又は10nm~100μmの範囲、又は50nm~80μmの範囲にある。複合プロトン伝導性膜中の無機充填剤の水不溶性イオン伝導性ポリマーに対する重量比は、1/400~40/100の範囲、又は1/200~25/100の範囲、又は1/100~10/100の範囲にある。
【0021】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0022】
新たな複合プロトン伝導性膜中の水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されない過フッ素化アイオノマーから選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0024】
新たな複合プロトン伝導性膜中の水不溶性イオン伝導性ポリマーはまた、水不溶性親水性ポリマー、又は電気的に中性の繰り返し単位と、-SO 、-COO、-PO 2-、-PO、-C、若しくは-Oなどのイオン化官能基の画分との両方の繰り返し単位を含む水不溶性親水性ポリマー複合体から選択されてもよいが、これらに限定されない。非水溶性親水性ポリマーは、水に不溶であるが、-SO 、-COO、-PO 2-、又は-PO基などの高い水親和性極性又は荷電官能基を含有する。水不溶性親水性ポリマー錯体は、ポリリン酸、ホウ酸、金属イオン、又はそれらの混合物などの錯化剤で錯化された水不溶性親水性ポリマーを含む。水不溶性親水性アイオノマーポリマーは、その水不溶性のために水溶液中で高い安定性を有するだけでなく、ポリマーの親水性及びアイオノマー特性のために水及びH又はKなどの電荷担持イオンに対して高い親和性を有し、したがって高いイオン伝導性及び低い膜比面積抵抗を有する。
【0025】
好適な水不溶性親水性イオン伝導性ポリマーとしては、多糖ポリマー、架橋多糖ポリマー、金属イオン錯化多糖ポリマー、酸錯化多糖ポリマー、架橋ポリビニルアルコールポリマー、酸錯化ポリビニルアルコールポリマー、金属イオン錯化ポリビニルアルコールポリマー、架橋ポリ(アクリル酸)ポリマー、金属イオン錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、酸錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、架橋ポリ(メタクリル酸)、金属イオン錯化ポリ(メタクリル酸)、酸錯化ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
キトサン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸、カラギーナンナトリウム、カラギーナンカリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルカードラン、ペクチン酸、キチン、コンドロイチン、キサンタンガム、ペクチン酸、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々なタイプの多糖ポリマーを使用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、水不溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、アルギン酸、架橋アルギン酸、キトサン、架橋キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又はそれらの組み合わせである。架橋された水不溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、任意の好適な架橋方法(例えば、化学的架橋方法若しくは物理的架橋方法、又はそれらの組み合わせ)によって形成され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、金属イオン錯化親水性イオン伝導性ポリマーの形成のための金属イオン錯化剤は、第二鉄イオン、第一鉄イオン、銀イオン、又はバナジウムイオンである。
【0029】
新たな複合プロトン伝導性膜は、微孔性支持膜を含み得、無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーは、微孔性支持膜の上面にコーティングされる。無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーは、微孔性支持膜の微孔内に存在してもよい。微孔性支持膜は、良好な熱的安定性(少なくとも100℃まで安定)、低pH条件下(例えば、6未満のpH)での高い水性及び有機溶液耐性(水性及び有機溶液中で不溶性)、酸化及び還元条件に対する高い抵抗性(酸化及び還元条件下での不溶性及び性能低下がないこと)、高い機械的強度(システム作動条件下で寸法変化がないこと)、並びに水電解槽、燃料電池、及びレドックスフローバッテリなどの電気化学的エネルギー変換及び貯蔵用途のための作動条件によって決定される他の要因を有するべきである。微孔性支持膜は、セル化学に適合しなければならず、セルの積層又は巻回アセンブリ操作の機械的要求を満たさなければならない。微孔性支持膜は、高いイオン伝導率を有するが、プロトン、水和プロトン、カリウムイオン、水和カリウムイオン、ナトリウムイオン、水和ナトリウムイオン、又はアンモニウムイオンなどの電荷担持イオンの、第二鉄イオン、水和第二鉄イオン、第一鉄イオン、及び水和第一鉄イオンなどの電解質に対する低い選択性を有する。
【0030】
微孔性支持膜の調製に適したポリマーは、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。これらのポリマーは、低いコスト、広範囲のpH下での水及び電解質中での高い安定性、良好な機械的安定性、及び成膜のための加工性の容易さなどの一連の特性を提供する。
【0031】
微孔性支持膜は、対称多孔性構造又は非対称多孔性構造のいずれかを有することができる。非対称微孔性支持膜は、転相成膜アプローチとそれに続く直接空気乾燥によって、又は転相とそれに続く溶媒交換法によって形成することができる。微孔性支持膜はまた、熱可塑性ポリオレフィンの乾式加工又は熱可塑性オレフィンの湿式加工によって製造することもできる。熱可塑性ポリオレフィンの乾式加工は、ポリマーをその融点より高くし、それを所望の形状に成形するために押出を利用する。微孔の結晶化度及び配向及び寸法を増加させるために、その後のアニーリング及び延伸プロセスを行ってもよい。ポリオレフィンセパレータの湿式加工は、溶融相中のポリマー樹脂又はポリマー樹脂と無機ナノ粒子との混合物と混合された炭化水素液体又は低分子量油の助けを活用して行われる。溶融混合物は、乾式加工されたセパレータと同様のダイを通して押出される。微孔性支持膜の厚さは、10~1000マイクロメートルの範囲、又は10~900マイクロメートルの範囲、又は10~800マイクロメートルの範囲、又は10~700マイクロメートルの範囲、又は10~600マイクロメートルの範囲、又は10~500マイクロメートルの範囲、又は20~500マイクロメートルの範囲にあり得る。微多孔膜の孔径は、10ナノメートル~50マイクロメートルの範囲、又は50ナノメートル~10マイクロメートルの範囲、又は0.2マイクロメートル~1マイクロメートルの範囲にあり得る。
【0032】
微孔性支持膜の上面の無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを含むコーティング層は、緻密な非多孔性層であり、典型的には1マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲、又は5マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0033】
本発明の別の態様は、複合プロトン伝導性膜を作製する方法である。一実施形態では、本方法は、a)水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液を調製するステップと、b)水不溶性イオン伝導性ポリマー及び無機充填剤を含む混合分散液を、無機充填剤、又は水、有機溶媒、若しくは水/有機溶媒混合物中の無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液に添加することによって調製するステップと、c)混合分散液の層をガラス板又はTeflonシートなどの無孔性基材上上に流延し、続いて混合分散液の層を乾燥させ、基板から層を剥離して、緻密な非多孔性複合プロトン伝導性膜を形成することによって、複合プロトン伝導性膜を調製するステップと、を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、酢酸、又はそれらの混合物から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、共有結合した酸性官能基、及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0037】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0038】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、過フッ素化アイオノマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0039】
0037]いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0040】
いくつかの実施形態では、膜は、5分~72時間、又は1時間~56時間、又は12~52時間、又は10分~2時間、又は30分~1時間の範囲の時間、40℃~150℃、又は40℃~120℃、又は80℃~110℃の範囲の温度で乾燥させてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、複合プロトン伝導性膜の厚さは、5マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲、又は20マイクロメートル~300マイクロメートルの範囲、又は20マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲にある。
【0042】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、粒子、微細ビーズ、薄板、ロッド、又は繊維の形態にある。
【0043】
いくつかの実施形態では、無機充填剤のサイズは、2nm~200μmの範囲、又は10nm~100μmの範囲、又は50nm~80μmの範囲にある。
【0044】
いくつかの実施形態では、複合プロトン伝導性膜中の無機充填剤の水不溶性イオン伝導性ポリマーに対する重量比は、1/400~40/100の範囲、又は1/200~25/100の範囲、又は1/100~10/100の範囲にある。
【0045】
いくつかの実施形態では、水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの濃度は、5重量%~35重量%の範囲、又は10重量%~25重量%の範囲にある。有機溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、酢酸、又はそれらの混合物から選択される。別の実施形態では、本方法は、a)水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液を調製するステップと、b)水不溶性イオン伝導性ポリマー及び無機充填剤を含む混合分散液を、無機充填剤、又は水、有機溶媒、若しくは水/有機溶媒混合物中の無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液に添加することによって調製するステップと、c)混合分散液の層を微孔性支持膜上に流延し、続いて無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを有する緻密な非多孔性層と、微孔性支持膜層と、を含む複合プロトン伝導性膜を乾燥させることによって、複合プロトン伝導性膜を調製するステップと、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、共有結合した酸性官能基、及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0048】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0049】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、過フッ素化アイオノマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0051】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、膜は、5分~72時間、又は1時間~56時間、又は12~52時間、又は10分~2時間、又は30分~1時間の範囲の時間、40℃~150℃、又は40℃~120℃、又は80℃~110℃の範囲の温度で乾燥させてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜の上面の無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを含むコーティング層は、1マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲、又は5マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、粒子、微細ビーズ、薄板、ロッド、又は繊維の形態にある。
【0055】
いくつかの実施形態では、無機充填剤のサイズは、2nm~200μmの範囲、又は10nm~100μmの範囲、又は50nm~80μmの範囲にある。
【0056】
いくつかの実施形態では、複合プロトン伝導性膜中の無機充填剤の水不溶性イオン伝導性ポリマーに対する重量比は、1/400~40/100の範囲、又は1/200~25/100の範囲、又は1/100~10/100の範囲にある。
【0057】
更に別の実施形態では、本方法は、a)水又は水/有機溶媒混合物中の水溶性親水性イオン伝導性ポリマーの均質溶液を調製するステップと、b)無機充填剤又は水若しくは水/有機溶媒混合物中の無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で水溶性親水性イオン伝導性ポリマーの溶液に添加することによって、水溶性親水性イオン伝導性ポリマー及び分散された無機充填剤を含む分散液を調製するステップと、c)水溶性親水性イオン伝導性ポリマー及び分散された無機充填剤を含む分散液の層を微孔性支持膜上に流延し、続いて分散液の層を乾燥させるステップと、d)乾燥させたコーティング層中の水溶性親水性イオン伝導性ポリマーを水不溶性イオン伝導性ポリマーに変換して、無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを有する緻密な非多孔性層と、微孔性支持膜層と、を含む複合プロトン伝導性膜を形成することによって、複合プロトン伝導性膜を調製するステップと、を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、共有結合した酸性官能基、及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0060】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0061】
いくつかの実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、多糖ポリマーは、キトサン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸、カラギーナンナトリウム、カラギーナンカリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルカードラン、ペクチン酸、キチン、コンドロイチン、キサンタンガム、ペクチン酸、又はそれらの組み合わせを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、膜は、5分~24時間、又は5分~5時間、又は5分~3時間、又は10分~2時間、又は30分~1時間の範囲の時間、40℃~150℃、又は40℃~120℃、又は55℃~65℃の範囲の温度で乾燥させてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜の上面の無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを含むコーティング層は、1マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲、又は5マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、粒子、微細ビーズ、薄板、ロッド、又は繊維の形態にある。
【0067】
いくつかの実施形態では、無機充填剤のサイズは、2nm~200μmの範囲、又は10nm~100μmの範囲、又は50nm~80μmの範囲にある。
【0068】
いくつかの実施形態では、複合プロトン伝導性膜中の無機充填剤の水不溶性イオン伝導性ポリマーに対する重量比は、1/400~40/100の範囲、又は1/200~25/100の範囲、又は1/100~10/100の範囲にある。
【0069】
いくつかの実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、錯化剤を使用して水溶性親水性イオン伝導性ポリマーを錯化させることによって水不溶性イオン伝導性ポリマーに変換される。
【0070】
いくつかの実施形態では、錯化剤は、ポリリン酸、ホウ酸、金属イオン、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、金属イオン錯化親水性イオン伝導性ポリマーの形成のための金属イオン錯化剤は、第二鉄イオン、第一鉄イオン、銀イオン、又はバナジウムイオンである。
【0072】
いくつかの実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、水溶性親水性ポリマーを放射線架橋することによって水不溶性イオン伝導性ポリマーに変換される。
【0073】
いくつかの実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、化学架橋剤を使用して水溶性親水性イオン伝導性ポリマーを化学架橋することによって、水不溶性イオン伝導性ポリマーに変換される。
【0074】
いくつかの実施形態では、化学架橋剤は、グリオキサール、グルタルアルデヒド、スルホコハク酸、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサメチレンジイソシネート(hexamethylenediisocynate)、ジビニルスルホン、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、水溶性イオン伝導性イオン伝導性ポリマーの均質溶液は、酢酸又は他の無機酸若しくは有機酸を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、乾燥させた膜をポリリン酸、ホウ酸、金属塩、塩酸、又はそれらの組み合わせの水溶液中に浸漬することによって、水不溶性親水性イオン伝導性ポリマーに変換される。
【0077】
いくつかの実施形態では、膜上の水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、ポリリン酸、ホウ酸、金属塩、塩酸、又はそれらの組み合わせの水溶液中に、5分~24時間、又は5分~12時間、又は5分~8時間、又は10分~5時間、又は30分~1時間の範囲の時間浸漬される。
【0078】
他の実施形態では、水溶性親水性イオン伝導性ポリマーは、レドックスフローバッテリセル内の負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方において、錯化剤とインサイチュで錯化される。
【0079】
本発明の別の態様は、レドックスフローバッテリシステムである。一実施形態では、レドックスフローバッテリシステムは、正の電解質と、負の電解質と、正の電解質と負の電解質との間に配置された複合プロトン伝導性膜と、を含む、少なくとも1つの再充電可能セルであって、正の電解質が正極と接触し、負の電解質が負極と接触する、少なくとも1つの再充電可能セルを含み、複合プロトン伝導性膜は、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、任意選択的に微孔性支持膜と、を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、無機充填剤に共有結合した酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0081】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0082】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、過フッ素化アイオノマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせである。
【0083】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0084】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、多糖ポリマー、架橋多糖ポリマー、金属イオン錯化多糖ポリマー、酸錯化多糖ポリマー、架橋ポリビニルアルコールポリマー、酸錯化ポリビニルアルコールポリマー、金属イオン錯化ポリビニルアルコールポリマー、架橋ポリ(アクリル酸)ポリマー、金属イオン錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、酸錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、架橋ポリ(メタクリル酸)、金属イオン錯化ポリ(メタクリル酸)、酸錯化ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせである。
【0085】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、アルギン酸、架橋アルギン酸、キトサン、架橋キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又はそれらの組み合わせである。
【0086】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方は、複合プロトン伝導性膜上のイオン伝導性ポリマーと錯化することができるホウ酸添加剤を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方は、塩化第一鉄を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方は、支持電解質を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、支持電解質は、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、正の電解質は、塩化第一鉄、支持電解質、及び塩酸を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方は、グリシンを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、負の電解質、正の電解質、又は負の電解質及び正の電解質の両方において、水溶性イオン伝導性ポリマーを錯化剤で錯化させることによってインサイチュで形成される。
【0094】
本発明の更に別の態様は、膜電極アセンブリである。一実施形態では、膜電極アセンブリは、複合プロトン伝導性膜と、複合プロトン伝導性膜の一方の表面上にアノード触媒を含むアノードと、アノードガス拡散層と、複合プロトン伝導性膜の他方の表面上にカソード触媒を含むカソードと、カソードガス拡散層と、を含み、複合プロトン伝導性膜は、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、任意選択的に微孔性支持膜と、を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、無機充填剤に共有結合した酸性官能基は、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rは、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0096】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、SilicaMetS(登録商標)AMPAなどのアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、SilicaBond(登録商標)トシル酸などの4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである。
【0097】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、過フッ素化アイオノマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせである。
【0098】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0099】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、多糖ポリマー、架橋多糖ポリマー、金属イオン錯化多糖ポリマー、酸錯化多糖ポリマー、架橋ポリビニルアルコールポリマー、酸錯化ポリビニルアルコールポリマー、金属イオン錯化ポリビニルアルコールポリマー、架橋ポリ(アクリル酸)ポリマー、金属イオン錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、酸錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、架橋ポリ(メタクリル酸)、金属イオン錯化ポリ(メタクリル酸)、酸錯化ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせである。
【0100】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、アルギン酸、架橋アルギン酸、キトサン、架橋キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又はそれらの組み合わせである。
【0101】
いくつかの実施形態では、微孔性支持膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、アノード触媒は、金属イリジウム、酸化イリジウム、イリジウムと非貴金属との二元金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、アノード触媒は、金属イリジウム、酸化イリジウム、イリジウムルテニウム合金、イリジウムルテニウム酸化物の合金、又はそれらの組み合わせを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、カソード触媒は、金属白金、酸化白金、又はそれらの組み合わせを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、アノード触媒及びカソード触媒は、プロトン伝導性アイオノマーを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、プロトン伝導性アイオノマーは、過フッ素化アイオノマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0107】
いくつかの実施形態では、水不溶性イオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)、Aquivion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、NEOSEPTA(登録商標)-F、Fumapem(登録商標)、BAM(登録商標)、スルホン化ポリスルホン、架橋スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリ(フェニレンスルホン)、スルホン化フェニル化ポリ(フェニレン)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化トリフルオロスチレン-トリフルオロスチレンコポリマー、スルホン化ポリスチレン-ポリ(フッ化ビニリデン)コポリマー、スルホン化ポリエーテルスルホン、架橋スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、架橋スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、又はそれらの組み合わせである。
【0108】
いくつかの実施形態では、アノード触媒及びカソード触媒は、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/g、又は少なくとも300m/g、又は少なくとも400m/gの高表面積を有する無機充填剤を含む。
【実施例
【0109】
以下の実施例は、本発明の1つ以上の実施形態を例示するために提供されるが、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されない。本発明の範囲内にある以下の実施例に対して多数の変形を行うことができる。
【0110】
比較例1:アルギン酸(Alginic Acid、AA)/Daramic(登録商標)膜(AA/Daramic(登録商標)と略記)の調製
6.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を、アルギン酸ナトリウムポリマーをDI水に溶解することによって調製した。Daramic,LLCから購入したDaramic(登録商標)175微孔性支持膜の一方の表面を、6.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液の薄層でコーティングし、60℃で2時間オーブン中で乾燥させて、Daramic(登録商標)支持膜の表面上に15マイクロメートルの厚さを有する薄い非多孔性のアルギン酸ナトリウム層を形成した。乾燥させた膜を、1.0M塩酸水溶液で30分間処理して、水溶性アルギン酸ナトリウムコーティング層を水不溶性アルギン酸コーティング層に変換した。
【0111】
実施例1:SilicaMetS(登録商標)AMPA-アルギン酸(AA)/Daramic(登録商標)複合膜(AMPA-SiO-AA/Daramic(登録商標)と略記)
水中の、480~550m/gの高表面積を有するアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル(Silicycleから購入したSilicaMetS(登録商標)AMPA;AMPA-SiOと略記)及びアルギン酸ナトリウムの分散液を、0.5gのAMPA-SiO及び10.0gのアルギン酸ナトリウムを150.0mLのDI水に添加し、混合物を8時間撹拌することによって調製した。Daramic,LLCから購入したDaramic(登録商標)175微孔性支持膜を分散液の薄層でコーティングし、60℃で2時間オーブン中で乾燥させて、Daramic(登録商標)支持膜の一方の表面に15マイクロメートルの厚さを有するAMPA-SiO及びアルギン酸ナトリウムを含む薄い非多孔性層を形成した。乾燥させた膜を、1.0M塩酸水溶液で30分間処理して、水溶性アルギン酸ナトリウムコーティング層を水不溶性アルギン酸に変換した。
【0112】
実施例2:AA/Daramic及びAMPA-SiO-AA/Daramic(登録商標)膜についての全鉄レドックスフローバッテリ性能試験
比較例1で調製されたAA/Daramic膜及び実施例1で調製されたAMPA-SiO-AA/Daramic(登録商標)複合膜のイオン伝導率、バッテリ充電/放電サイクル数、VE、CE、及びEEを、BCS-810バッテリサイクリングシステム(Biologic,FRANCE)を備えたEISを用いて室温で測定し、結果を表1に示した。表1から、AMPA-SiO無機充填剤を含む新たなAMPA-SiO-AA/Daramic(登録商標)膜は、AMPA-SiO無機充填剤を含まないAA/Daramic膜よりも低い面積比抵抗、長いバッテリサイクル、高いCE、及び高いEEを示した。
【表1】

負の電解質溶液:1.5M FeCl、3.5M NHCl、0.2Mホウ酸;正の電解質:1.5M FeCl、3.5M NHCl、0.4M HCl;充電電流密度:30mA/cm;充電時間:4時間;放電電流密度:30mA/cm;放電時間:4時間;サイクル数を70%以上のCEで計数した。
【0113】
実施例3:SilicaMetS(登録商標)AMPA/Nafion(登録商標)複合膜(AMPA-SiO/Nafion(登録商標)と略記)
AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合材膜を調製するために、Silicycleから購入した480~550m/g(SilicaMetS(登録商標)AMPA;AMPA-SiOと略記)の高表面積を有するアミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル及びNafion(登録商標)を含む分散液を、AMPA-SiOをNafion(登録商標)分散液D2021(1100 EW、アルコール中20重量%)に超音波処理及び撹拌下で添加することによって調製した。AMPA-SiOとNafion(登録商標)ポリマーとの重量比は、1:20である。分散液の薄層を、流延ナイフを使用して清浄なガラス板上に分散液を流延することによって形成し、ホットプレート上で30℃で12時間乾燥させて、AMPA-SiO/Nafion(登録商標)膜を形成した。膜を80℃で9時間更に乾燥させた。乾燥させた膜をガラス板から剥がし、更に100℃で9時間加熱した。膜の最終的な厚さは、60μmであった。
【0114】
実施例4:SilicaBond(登録商標)トシル酸/Nafion(登録商標)複合膜(TA-SiO/Nafion(登録商標)と略記)の調製
TA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜を調製するために、Silicycleから購入した4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカ(SilicaBond(登録商標)トシル酸;TA-SiOと略記)及びNafion(登録商標)を含む分散液を、超音波処理及び撹拌下でTA-SiOをNafion(登録商標)分散液D2021(1100 EW、アルコール中20重量%)に添加することによって調製した。TA-SiOとNafion(登録商標)ポリマーとの重量比は、1:20である。分散液の薄層を、流延ナイフを使用して清浄なガラス板上に分散液を流延することによって形成し、ホットプレート上で30℃で12時間乾燥させて、TA-SiO/Nafion(登録商標)膜を形成した。膜を80℃で9時間更に乾燥させた。乾燥させた膜をガラス板から剥がし、更に100℃で9時間加熱した。膜の最終的な厚さは、60μmであった。
【0115】
実施例5:水電解用の、AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜(5AMPA-D2021と略記)を含む膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)の調製
AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜を含む5AMPA-D2021 MEAを、アノード用にIrO酸素発生反応(OER)触媒を、カソード用にPt/C水素発生反応(HER)触媒を使用して、ガス拡散層上コーティング触媒(catalyst coated on gas diffusion layer、CCG)法によって調製した。噴霧用の触媒インクは、DI水及びアルコール中で触媒及びNafion(登録商標)アイオノマー(アルコール中5重量%)を混合することによって調製した。混合物を、超音波浴中で微細に分散させた。アノード及びカソードの両方におけるNafion(登録商標)アイオノマー含有量を、触媒及びNafion(登録商標)アイオノマーの総含有量において30重量%に制御した。Pt/Cインクを、カソードガス拡散層として使用されるカーボン紙上に噴霧した。Pt担持量は、0.3mg/cmであった。IrOインクを、アノードガス拡散層として使用されるPt-Tiフェルト上に噴霧した)。IrO担持量は、1.0mg/cmであった。AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜を、2つの触媒コーティングガス拡散層の間に挟んだ。次に、5AMPA-D2021 MEAを用いて試験セルを設置した。
【0116】
比較例2:水電解用の、市販のNafion(登録商標)212膜(Nafion(登録商標)212と略記)を含む電極アセンブリ(MEA)の調製
AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜の代わりに市販のNafion(登録商標)212膜を使用したことを除いて、実施例5で使用したものと同じガス拡散層上コーティング触媒(CCG)法によって、市販のNafion(登録商標)212膜を含むNafion(登録商標)212MEAを調製した。
【0117】
実施例6:5AMPA-D2021 MEA及びNafion(登録商標)212 MEAを用いた水電解性能評価
PEM水電解試験ステーション(Scribner 600電解槽試験システム)を使用して、5cmの活性膜面積を有する単一電解槽セルにおける5AMPA-D2021 MEA及びNafion(登録商標)212 MEAそれぞれの水電解性能を評価した。試験ステーションは、統合された電源、ポテンシオスタット、電気化学インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)及び高周波抵抗(HFR)のためのインピーダンス分析器、並びに生成物流量及びクロスオーバー監視のためのリアルタイムセンサーを含んだ。試験は、80~100℃及び大気圧で実施した。超純水を、100mL/分の流量でMEAのアノードに供給した。試験前に、セルをプレコンディショニングプロセスに供した。セルを60℃に加熱し、200mA/cmで1時間、1A/cmで1時間、続いて1.7Vで4時間保持した。次いで、セルを80℃に加熱し、200mA/cmで1時間、1A/cmで1時間保持した。これらのステップは、1つのコンディショニングサイクルとして一緒に数えられた。コンディショニング後、分極曲線を調製した(1分間保持の各データポイント端)。2回のコンディショニングサイクル後の分極結果を図1に示した。5AMPA-D2021 MEAは、Nafion(登録商標)212 MEAよりも低い分極電圧を示し、これは、新たなAMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜を含む5AMPA-D2021 MEAが、市販のNafion(登録商標)212膜を含むNafion(登録商標)212 MEAよりも高いプロトン伝導性を有することを示した。図1は、80℃、大気圧での5AMPA-D2021及びNafion(登録商標)212 MEAの水電解性能を示す。
【0118】
より高い温度で水電解槽を作動させると、熱力学的及び動力学的観点から利点が得られる。図2に示すように、5AMPA-D2021 MEAの分極電圧は、作動温度が80℃から100℃に上昇するにつれて減少した。100℃では、5AMPA-D2021 MEAを含む水電解槽の電流密度は、1.75Vの分極電圧で2.7A/cmに達した。図2は、5AMPA-D2021 MEAの水電解性能に対する温度の影響を示す。
【0119】
実施例7:触媒コーティングAMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜(5AMPA-D2021-Cと略記)を含む電極アセンブリ(MEA)の調製
AMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜を含む5AMPA-D2021-C MEAを、アノード用にIrO酸素発生反応(OER)触媒を、カソード用にPt/C水素発生反応(HER)触媒を使用して、膜上コーティング触媒法によって調製した。噴霧用の触媒インクは、DI水及びアルコール中で触媒及びNafion(登録商標)アイオノマー(アルコール中5重量%)を混合することによって調製した。混合物を、超音波浴中で微細に分散させた。アノード及びカソードの両方におけるNafion(登録商標)アイオノマー含有量を、触媒及びNafion(登録商標)アイオノマーの総含有量において30重量%に制御した。Pt/Cインクを、前処理したAMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜の一方の表面上に噴霧した。Pt担持量は、0.3mg/cmであった。IrOインクを、前処理したAMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合膜の他方の表面上に噴霧した。IrO担持量は、1.0mg/cmであった。触媒コーティングAMPA-SiO/Nafion(登録商標)複合体膜を、カソードガス拡散層としてのカーボン紙とアノードガス拡散層としてのPt-Tiフェルトとの間に挟んで、5AMPA-D2021-C MEAを形成した。
【0120】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0121】
本発明の第1の実施形態は、複合プロトン伝導性膜であって、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む、複合プロトン伝導性膜である。本発明の実施形態は、微孔性支持膜を更に含む、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、無機充填剤が、シリカゲル、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、酸化ジルコニウム、モレキュラーシーブ、金属有機構造体、ゼオライトイミダゾレート構造体、共有結合有機構造体、又はそれらの組み合わせから選択され、無機充填剤が、共有結合した酸性官能基を含む、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、酸性官能基が、-HPO、-R-HPO、-SOH、-R-SOH、-COOH、-R-COOH、-COH、-R-COH、又はそれらの組み合わせから選択され、式中、Rが、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基、有機アミノ基、酸基置換有機アミノ基、又はアリール基を表し、これらの基の炭素原子の数が、1~20の範囲にある、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、無機充填剤が、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化シリカゲル、アミノプロピル-N,N-ビス(メチルホスホン酸)官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルホスホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルホスホン酸官能化ヒュームドシリカ、p-トルエンスルホン酸官能化シリカゲル、p-トルエンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化シリカゲル、4-エチルベンゼンスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、n-プロピルスルホン酸官能化シリカゲル、n-プロピルスルホン酸官能化ヒュームドシリカ、又はそれらの組み合わせである、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、水不溶性イオン伝導性ポリマーが、過フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋過フッ素化カチオン交換ポリマー、部分フッ素化カチオン交換ポリマー、架橋部分フッ素化カチオン交換ポリマー、非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、架橋非フッ素化炭化水素カチオン交換ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、水不溶性イオン伝導性ポリマーが、水不溶性親水性ポリマー、又は電気的に中性の繰り返し単位と、-SO 、-COO、-PO 2-、-PO、-C、若しくは-Oなどのイオン化官能基の画分との両方の繰り返し単位を含む水不溶性親水性ポリマー複合体である、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、水不溶性親水性ポリマー錯体が、ポリリン酸、ホウ酸、金属イオン、又はそれらの混合物から選択される錯化剤で錯化された水不溶性親水性ポリマーを含む、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、水不溶性イオン伝導性ポリマーが、多糖ポリマー、架橋多糖ポリマー、金属イオン錯化多糖ポリマー、酸錯化多糖ポリマー、架橋ポリビニルアルコールポリマー、酸錯化ポリビニルアルコールポリマー、金属イオン錯化ポリビニルアルコールポリマー、架橋ポリ(アクリル酸)ポリマー、金属イオン錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、酸錯化ポリ(アクリル酸)ポリマー、架橋ポリ(メタクリル酸)、金属イオン錯化ポリ(メタクリル酸)、酸錯化ポリ(メタクリル酸)、又はそれらの組み合わせから選択される、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、多糖ポリマーが、アルギン酸、架橋アルギン酸、キトサン、架橋キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、又はそれらの組み合わせから選択される、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、金属イオン錯化親水性イオン伝導性ポリマーの形成のための金属イオン錯化剤が、第二鉄イオン、第一鉄イオン、銀イオン、又はバナジウムイオンである、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、微孔性支持膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸から調製されたポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリエステル、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロース、フェノール樹脂、ポリベンズイミダゾール、又はそれらの組み合わせから選択されるポリマーから調製される、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、微孔性支持膜が、10~1000マイクロメートルの厚さを有し、10ナノメートル~50マイクロメートルの範囲の孔径を有する孔を含む、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、微孔性支持膜が、無機充填剤及び水不溶性イオン伝導性ポリマーを含むコーティング層でコーティングされており、コーティング層が、1~100マイクロメートルの厚さを有する、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、無機充填剤が、粒子、微細ビーズ、薄板、ロッド、又は繊維の形態であり、2nm~80μmのサイズを有する、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の実施形態は、複合プロトン伝導性膜中の無機充填剤と水不溶性イオン伝導性ポリマーとの重量比が、1/400~40/100の範囲にある、本段落の先の実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0122】
本発明の第2の実施形態は、複合プロトン伝導性膜を作製する方法であって、水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液を調製することと、水不溶性イオン伝導性ポリマー及び無機充填剤を含む混合分散液を、無機充填剤、又は水、有機溶媒、若しくは水/有機溶媒混合物中の無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液に添加することによって調製することであって、無機充填剤が、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する、調製することと、混合分散液の層を無孔性基材上又は微孔性支持膜上に流延し、続いて乾燥させることによって、複合プロトン伝導性膜を調製することと、を含む、方法である。
【0123】
本発明の第3の実施形態は、レドックスフローバッテリシステムであって、正の電解質と、負の電解質と、上記の複合プロトン伝導性膜と、を含む、少なくとも1つの再充電可能セルであって、複合プロトン伝導性膜が正の電解質と負の電解質との間に配置されており、正の電解質が正極と接触し、負の電解質が負極と接触する、少なくとも1つの再充電可能セルを含む、レドックスフローバッテリシステムである。
【0124】
本発明の膜電極アセンブリの第4の実施形態は、
上記の複合プロトン伝導性膜と、複合プロトン伝導性膜の一方の表面上にアノード触媒を含むアノードと、
アノードガス拡散層と、複合プロトン伝導性膜の他方の表面上にカソード触媒を含むカソードと、
カソードガス拡散層と、を含み、複合プロトン伝導性膜は、
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合プロトン伝導性膜であって、
共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する無機充填剤と、
水不溶性イオン伝導性ポリマーと、を含む、複合プロトン伝導性膜。
【請求項2】
レドックスフローバッテリシステムであって、
正の電解質と、負の電解質と、請求項1に記載の複合プロトン伝導性膜と、を含む少なくとも1つの再充電可能セルであって、前記複合プロトン伝導性膜が前記正の電解質と前記負の電解質との間に配置されており、前記正の電解質が正極と接触し、前記負の電解質が負極と接触する、少なくとも1つの再充電可能セルを含む、レドックスフローバッテリシステム。
【請求項3】
複合プロトン伝導性膜を作製する方法であって、
a.水、有機溶媒、又は水/有機溶媒混合物中の水不溶性イオン伝導性ポリマーの分散液を調製することと、
b.前記水不溶性イオン伝導性ポリマー及び無機充填剤を含む混合分散液を、前記無機充填剤、又は水、有機溶媒、若しくは水/有機溶媒混合物中の前記無機充填剤の分散液を、撹拌及び/又は超音波処理下で前記水不溶性イオン伝導性ポリマーの前記分散液に添加することによって調製することであって、前記無機充填剤が、共有結合した酸性官能基及び少なくとも150m/gの高表面積を有する、調製することと、
前記混合分散液の層を無孔性基材上又は微孔性支持膜上に流延し、続いて乾燥させることによって、複合プロトン伝導性膜を調製することと、を含む、方法。
【国際調査報告】