(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】MSI癌を診断する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6886 20180101AFI20240220BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240220BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546091
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022052080
(87)【国際公開番号】W WO2022162162
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518390284
【氏名又は名称】アシスタンス パブリック-オピトークス ド パリ
(71)【出願人】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】520504471
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デ リール
(71)【出願人】
【識別番号】523286059
【氏名又は名称】セントレ ホスピタリエール リージョナル ウニベルシテール デ リール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュヴァル,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ラトヴォマナナ,トキ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー,フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】コルーラ,アダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンチェレ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ブハード,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クーレット,フローレンス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
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4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、MSI癌の診断の分野に関する。本研究において、本発明者らは、ICIでの臨床試験に関与する多施設前向き患者からのdMMR/MSI mCRCにおけるMSIの検出のためのMSISensorの性能を評価した。本発明の分析は、mCRCおよびnmCRCにおいてMSIを同定するためのFDA認可のあるNGSに基づく診断テストが、ゴールドスタンダード参照法に比較した場合に、不正確な結果を与えることを実証した。結果として、全試料からの全エクソームシークエンシング(WES)データがさらに、CRCおよび他の原発腫瘍の型におけるMSIゲノムシグナルの検出を改善するために解析された。これにより、MSISensorの弱点および限界を同定することができ、新たに最適化されたアルゴリズム、即ちMSICareを設計および検証することができた。CRCおよび非CRC腫瘍におけるMSIの検出のためのMSICareの高い正確性が、汎癌におけるMSIを評定するための将来の参照テストになることが可能なはずである。このため本発明は、とりわけ、腫瘍試料と、入手可能なら正常試料と、からDNAを抽出してシークエンシングすること、およびMNRの解析を操作すること、を含む、必要とする患者においてMSIを診断する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料と、入手可能ならば正常試料と、からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、または対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する前記腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)前記正常試料が入手可能であるか否かに応じて各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)前記MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびvii)ステップvi)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法。
【請求項2】
i)前記患者から得られた腫瘍試料および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、ならびにvii)ステップvi)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、請求項1に記載の必要とする患者においてMSI癌を診断する方法。
【請求項3】
i)前記患者から得られた腫瘍試料からDNAを抽出すること、ii)前記対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する前記腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)前記MNRのための正常な多型ゾーンを評価すること、iv)各MNRの前記正常な多型ゾーンの外部のみの前記腫瘍試料中に出現した変異型MNRを評価すること、v)前記腫瘍試料から得られた各MNRのΔ比を計算すること、vi)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、vii)調整Δ比を計算すること、viii)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびix)ステップviii)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、請求項1に記載の必要とする患者においてMSI癌を診断する方法。
【請求項4】
前記癌が、転移性であるか、または転移性でない、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、大腸癌、胃癌または子宮内膜癌である、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記結果を前記患者に伝達する更なるステップが追加される、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
必要とする患者においてMSIの変異を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、ならびにvi)前記調整Δ比が<50%であれば前記MNRが野生型であると結論づけて、前記調整Δ比が≧50%であれば前記MNRが変異していると結論づけること、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~6に記載の方法によりMSI癌を有すると同定された患者において癌を処置するための方法であって、前記患者に、治療有効量の放射線療法、化学療法、免疫療法、またはそれらの組合わせを施すことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、腫瘍試料と、入手可能なら正常試料と、からDNAを抽出してシークエンシングすること、およびMNRの解析を操作すること、を含む、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロサテライト不安定性(MSI)と称されるヒト腫瘍表現型は、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子内の改変を不活性化することに関連する。MSIは最初、リンチ症候群に関連する遺伝性腫瘍において報告された。これは、ヒトにおいて最も多い癌素因性症候群の1つであり、特異的な治療および遺伝的カウンセリングを必要とする。MSIは、後に散発性大腸癌(CRC)において観察され、より希少であるが他の原発腫瘍において観察された(1~4)。MSIを有する腫瘍は一般に、細胞障害性T細胞リンパ球を有する高密度浸透を示す(5)。近年になり、MSI腫瘍およびとりわけMSI CRCが、免疫チェックポイント(ICK)関連タンパク質を過剰発現して、免疫エスケープを可能にすることにより、この敵対する免疫微小環境に抵抗することが、報告された(6、7)。さらに、MSI状態が、転移性CRC(mCRC)の患者におけるICK阻害剤(ICI)からの臨床的利益を予測することが示された(8~11)。これらの観察は、全ての新しく診断されたCRCの汎用性MSI/dMMRスクリーニングを推奨する国際ガイドラインにつながった(12)。発生部位の起源組織にかかわらず、全てのヒト腫瘍におけるMSI状態の評価を裏づける証拠も増えつつある。
【0003】
本発明者らの施設をはじめとする複数の特化された癌施設は、CRCにおいてMSIおよびdMMRをテストするための許容された参照方法、即ち、MSIのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく方法(13~15)およびdMMRのための免疫組織化学的検査(IHC)(レビューについて16も参照)を標準化および検証することを目的とする。mCRCにおいて、本発明者らは近年になり、これらのゴールドスタンダート法を使用したMSIおよび/またはMMRテストの結果の間違った解釈が、ICIへの一次耐性を示したほとんどの症例の原因である可能性があることを強調した(17)。その間、次世代シークエンシング(NGS)技術に基づく別のFDA認可された方法が、CRCをはじめとする汎癌のMSIスクリーニングのために報告された(18)。これは、腫瘍および対の正常試料における指定されたマイクロサテライト領域の配列のリードを分析し、腫瘍における累積スコアとしての不安定な座位の割合%を報告するアルゴリズム、即ちMSISensorに基づくものであった(19)。しかし、MSISensorの診断性能は依然として、MSI/dMMR状態が参照IHCおよびMSI-PCR法を用いて既に確立された患者コホートにおいて、とりわけICIで処置されたmCRC患者の前向き設定においては、まだ評価されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の研究において、本発明者らの目的は、ICIによる臨床試験(NCT02840604およびNCT033501260)に関与する多施設前向き患者からのdMMR/MSI mCRCにおけるMSIの検出のための、MSISensorの性能を評価することであった。誤診を回避するために、発明者らは、IHCおよびMSI-PCRを使用して専門施設において全てのCRC試料中のdMMRおよびMSI状態をあらかじめ再評価した。ヒトの癌においてMSISensorで得られた結果をさらに評価するために、発明者らは、後ろ向き多施設試験シリーズのmCRCおよび非転移性CRC(nmCRC)に加え、公開され入手可能な一連のCRCシリーズおよびMSIを頻繁に示す他の原発腫瘍の型も分析した。本発明の知見から、mCRCおよびnmCRCにおいてMSIを同定するためのFDA認可のNGSを基にした診断テストは、ゴールドスタンダードの参照法と比較された場合に不正確な結果を示すことが実証される。重要なこととして、この誤診には、ICIに対して陽性反応を示したが、IHCおよびMSI PCR法を参照せずにMSISensorのみがMSIスクリーニングに用いられた場合は処置されなかったであろう、mCRC患者3名が含まれていた。結論として、全ての試料からの全エクソームシークエンシング(WES)データが、CRCおよび他の原発腫瘍の型におけるMSIゲノムシグナルの検出を改善するためにさらに分析された。これにより発明者らは、MSISensorの弱点および限界を同定することができ、その後、新たに最適化されたアルゴリズム、即ちMSICareを設計および検証することができた。CRCおよび非CRC腫瘍におけるMSI検出のためのMSICareの高い正確度が、汎癌においてMSIを評定するための将来の参照テストになることを可能にするはずである。
【0005】
このように本発明は、特に、腫瘍試料と、入手可能なら正常試料と、からDNAを抽出してシークエンシングすること、およびMNRの解析を操作すること、を含む、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法に関する。詳細には本発明は、特許請求の範囲により定義される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って本発明者らは、患者からの腫瘍試料が入手可能な場合に、そして任意選択で前記患者からの正常試料もまた入手可能な場合に、用いられ得る方法を開発した。
【0007】
このため本発明は、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料と、入手可能ならば正常試料と、からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、または対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する、腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)正常試料が入手可能であるか否かに応じて各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびvii)ステップvi)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0008】
特別な態様において、本発明は、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料と、入手可能ならば正常試料と、からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、または対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する、腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)正常試料が入手可能であるか否かに応じて各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)iv)で計算されたTPを加味して調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびvii)ステップvi)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0009】
腫瘍試料および正常試料が、患者から入手可能である場合、本発明の方法は、以下のとおり記載される。
【0010】
このため本発明の第一の実施形態は、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、ならびにvii)ステップvi)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0011】
この特別な実施形態において、本発明は、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)iv)で計算されたTPを加味して調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、ならびにvii)ステップvi)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0012】
本発明の第一の実施形態によれば、「前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること」は、この方法では、患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するMNRのみが考慮されるが、腫瘍試料では、対応するMNRが、どんなサイズであってもシークエンシングされることを表す。例えば特定の座位で、正常試料中の12核酸のMNRがシークエンシングされ、腫瘍試料では、同じくシークエンシングされる対応するMNRは、例えば変異に応じて、11核酸または10核酸の長さを有し得る。
【0013】
本発明の第一の実施形態によれば、正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列の数(N)は、これらの反復が正常試料および腫瘍試料の両方で少なくとも20のマッピングリードによりカバーされる場合には、本発明による方法において考慮される。
【0014】
本明細書で用いられる用語「Δ比」は、正常試料と比較した腫瘍試料におけるリードの数の推定を表し、以下のとおり計算される:各MNRについて、正常組織での正規化リード数が、各MNRでの腫瘍組織での正規化リード数から差し引かれる[Δ比=%腫瘍-%正常]。例えば特定の座位について、正常試料において20AのMNRのリードが98、および19AのMNRのリードが2であり、腫瘍試料において20AのMNRのリードが90、および19AのMNRのリードが10である場合、Δ比は、MNR 19Aで10-2=8となる。
【0015】
その場合、座位の全てで、MSI指数は、各MNRのΔ比の合計となる。
【0016】
本明細書で用いられる、「MSI指数」または「MSIシグナル」または「MSIg」は、全ての候補MNRのΔ比の値の合計に対応する。
【0017】
本明細書で用いられる用語「腫瘍試料の腫瘍純度(TP)」は、正常組織による腫瘍への混入の割合%の推定値を表し、以下のとおり本発明の第一の実施形態により計算される:前記患者の正常試料において14以上(=14核酸の長さ以上;Jonchere et al.2018参照)のMNRおよび腫瘍試料のDNA中の対応するMNRであって、正常組織で少なくとも20リード、腫瘍試料で少なくとも30リードによりカバーされるMNRで得られるMSI指数の中央値をとること。
【0018】
幾つかの実施形態において、14または13のMNRから、前記MNRの変異頻度は高く、それゆえスコアの決定が、より精密になる。特にTPは、14のMNRで充分に効果的である。
【0019】
本発明によれば、14以上のMNRが、この座位の中にあり得る:
chr7:121099908-121099923、chr2:119647053-119647067、chr2:44318095-44318110、chr1:100267651-100267665、chr1:214653467-214653482。
【0020】
本明細書で用いられる用語「調整Δ比」は、TPを加味したΔ比の正規化を意味し、以下のとおり計算される:調整Δ比=特定のMNRでのΔ比×腫瘍試料の推定TP。該MNRでの調整Δ比が<50%である場合、NMRが野生型であることを意味し、調整Δ比が≧50%である場合、MNRが変異されていることを意味する。
【0021】
本明細書で用いられる用語「MSIcareスコア」は、MNRのΔ比の総数(=変異のある調整Δ比+変異のない調整Δ比)に対する、変異のある調整Δ比のMNR数の比を表す。結果は、0~100(%)の間の数である。解析の数に応じて、MSI大腸癌のMSIcareカットオフは、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%および25%であり得、より具体的には20%または21%である。本発明により、大腸癌では、MSIcareスコアが、21未満、特に20未満である場合、大腸癌は、MSI大腸癌ではなく、MSIcareスコアが、21を超える、特に20を超える場合、大腸癌は、MSI大腸癌である。
【0022】
幾つかの実施形態において、純粋なMSIシグナルは、この長いMNRにおいて少なくとも2bp以上の体細胞欠失を考慮することのみによって捕捉され得る。特に腫瘍試料からのMNRと正常試料からのMNRとの少なくとも2bpの差。
【0023】
本発明の第二の実施形態において、MSI癌の診断では、医療専門家が、本発明の方法を実施するために患者から入手可能な正常試料を有していない、という事実に直面する場合がある。彼らは、MSI癌を有する疑いのある患者からの腫瘍試料を有し得るに過ぎない。この場合、反復の正常な多型ゾーンの同定は、各反復のフリーデータベースの助けを借りて実行され得る。その場合、腫瘍試料からは、この正常な多型ゾーンの外部で観察された変異型反復のみが考慮される。この多型ゾーンの外部では、正常試料中のリードの数は、零と見なされる。これに関連して、本発明の方法の複数のステップが、これを考慮して実行され得る。
【0024】
こうして幾つかの実施形態において、MSICareは、腫瘍試料のみにより実現され得る。
【0025】
こうして第二の実施形態において、本発明はまた、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料からDNAを抽出すること、ii)対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する、腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)MNRのための正常な多型ゾーンを評価すること、iv)各MNRの正常な多型ゾーンの外部のみの腫瘍試料中に出現した変異型MNRを評価すること、v)腫瘍試料から得られた各MNRのΔ比を計算すること、vi)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、vii)調整Δ比を計算すること、viii)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびix)ステップviii)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する(結果の「CRCの正常試料不含の固形腫瘍におけるMSIcare診断」参照)。
【0026】
この特別な実施形態において、本発明はまた、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料からDNAを抽出すること、ii)対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する、腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)MNRのための正常な多型ゾーンを評価すること、iv)各MNRの正常な多型ゾーンの外部のみの腫瘍試料中に出現した変異型MNRを評価すること、v)正常組織中のリードの正規化数が各多型ゾーンの外部で零になることを考慮して、腫瘍試料から得られた各MNRのΔ比を計算すること、vi)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、vii)調整Δ比を計算すること、viii)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびix)ステップviii)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0027】
この特別な実施形態において、本発明はまた、必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料からDNAを抽出すること、ii)対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する、腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)MNRのための正常な多型ゾーンを評価すること、iv)各MNRの正常な多型ゾーンの外部のみの腫瘍試料中に出現した変異型MNRを評価すること、v)正常組織中のリードの正規化数が各多型ゾーンの外部で零になることを考慮して、腫瘍試料から得られた各MNRのΔ比を計算すること、vi)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、vii)vi)で計算されたTPを加味して調整Δ比を計算すること、viii)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびix)ステップviii)で得られたMSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0028】
本明細書で用いられる「対応する正常試料」または「類似の正常試料」に関係する情報は、ゲノムの反復を参照するデータベース、特にフリーデータベースから得られる。
【0029】
本明細書で用いられる用語「反復」は、特定の座位の反復された核酸(または核酸塩基)の数を表す。そのため用語「反復」は、核酸の長さを表す。例えば反復が、核酸A(アデニン)で12である場合、これは、核酸Aが特定の座位で連続して12回反復されていることを意味する。本発明によれば、本明細書で用いられるとおり、用語「反復」は「マイクロサテライト」と同じ意味である。
【0030】
本明細書で用いられる用語「変異型反復」(または「変異型MNR」)は、反復が正常反復(正常試料中に見出される)と比較して変異されていること(1つまたは複数の核酸の欠失または付加)を表す。反復は、例えばMSI癌に関連して変異されている。
【0031】
本明細書で用いられる用語「非変異型反復」(または「非変異型MMR」)は、反復が正常反復(正常試料中で見出される)と比較して変異(1つまたは複数の核酸の欠失または付加)を有さないことを表す。
【0032】
本明細書で用いられる用語「多型」または「多型反復」は、本発明者らが試料中で見出し得る異なる反復サイズを表す。このため「多型ゾーン」は、本発明者らが試料中で見出し得る異なる反復を表し、「正常多型ゾーン」は、本発明者らが正常試料(変異していない)中で見出し得る異なる反復を表す。例えば、所与の反復での正常な状況(またはMSSの状況)では、前記反復は、15または16核酸のサイズを有し得る。MSIの状況では、同じ反復が、13、14、15または16核酸のサイズを有し得る。このため、この例において、正常試料での正常多型ゾーンは、15~16の間であり、13または14核酸の反復全てが、変異型反復と見なされ、このため本発明の第二の態様により考慮される。このため、そして第二の実施形態により、Δ比は、上記と同じ方法を利用して計算される。例えば、多型ゾーンの外部で同定される変異では、%正常率が、零(0)と等しくなり得て、このためΔ比は、先に記載された%腫瘍率と等しくなり得る。
【0033】
本発明の第二の実施形態によれば、正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列の数(N)は、これらの反復が腫瘍試料のみで少なくとも20のマッピングリードによりカバーされていれば、本発明による方法において考慮される。
【0034】
本発明の第二の実施形態によれば、腫瘍純度は、以下のとおり計算される:(例えばデータベースの助けを借りて得られた)正常試料中の14以上(=14核酸の長さ以上)のMNRと、前記患者の腫瘍試料のDNA中にあり腫瘍試料で少なくとも30リードによりカバーされる、対応するMNRと、で得られたMSI指数の中央値をとること。
【0035】
本明細書で用いられる用語「モノヌクレオチド反復」(MNR)は、反復が特有の核酸の繰返しのみを有することを表す。例えば核酸Aでの12の長さを有するモノヌクレオチド反復は、核酸Aを連続で12回繰り返すことことを意味する。
【0036】
本明細書で用いられる用語「座位」は、特定の遺伝子または遺伝子マーカが置かれた染色体上の特定の固定位置に関する。座位という用語は、用語「MNR」または「マーカ」を包含する。
【0037】
本明細書で用いられる用語「反復の数」は、特定の座位の特定の長さ(例えば、14の連続した核酸A)の「反復」が反復される場合の回数を表す。このため、「反復の数」はまた、所与の反復を含有する座位の数を表す。
【0038】
用いられる用語「リード」は、シークエンシングされる座位(またはMNRまたはマーカ)の部分的、または厳密なコピーであり、核酸の含有量および配列順序を決定するために用いられる、シークエンサ装置により生成されるDNA断片を表す。
【0039】
特別な実施形態において、シークエンシング後の座位あたりのリード数は、10~5000の間、10~4000の間、特に100~4000の間、特に1000~3000の間、より具体的には1500~2500の間である。特にシークエンシング後の座位あたりのリード数は、20、30、40、50、100、150、200、250;300、350または400である。
【0040】
本明細書で用いられる用語「N」は、1つの特定のシークエンシングアッセイの反復の最大数を表し、テストされた座位(またはマーカ)の数にも対応する。この数は、1から始まり、より多数までであり得る。
【0041】
特別な実施形態において、本発明によるシークエンシングは、10~1000000の間、10~10000の間、特に100~10000の間、より具体的には100~1000の間の座位の数まで実行される。
【0042】
幾つかの実施形態において、この数は、1~1000の間、特に1~441の間、より具体的には21以上である。特にこの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441である。
【0043】
幾つかの実施形態において、該方法のより良好なロバスト性のために、シークエンシングされた反復の数は、少なくとも21である。
【0044】
幾つかの実施形態において、存在するマーカが多いほど、テストがより最適かつロバストになる。
【0045】
本発明の方法によれば、モノヌクレオチド反復(MNR)のシークエンシングは、全エクソーム(WE)または特に座位で実行され得る。
【0046】
幾つかの実施形態において、N反復の数が、試験され、腫瘍により影響された臓器に応じて、変異したNの数が変動し得る。
【0047】
本明細書で用いられる用語「試料」は、DNA、特に胚性DNA、特に癌性DNA(癌細胞からのDNA)を含有するおそれのある、患者から得られた任意の生体試料を指す。典型的には試料としては、固形試料(例えば、生検)または血液、血漿もしくは血清などの体液試料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
特別な実施形態において、試料は、正常試料または腫瘍試料である。
【0049】
本明細書で用いられる用語「正常試料」は、健常組織からのDNAを指す。特に、正常試料は、末梢血単核細胞(PBMC)または粘液である。
【0050】
本発明によれば、「正常試料」はまた、変異(MSI癌)を含有する腫瘍試料と比較して、非癌性細胞または癌性細胞(MSS癌)から得られた、「健常試料」または「野生型試料」、即ち、変異を含まない試料を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる用語「腫瘍試料」は、腫瘍DNA、特に循環腫瘍DNA初代血液細胞(PBC)を含有する任意の生体試料を指す。特別な実施形態において、試料は、腫瘍循環細胞であるか、または腫瘍塊である。特別な実施形態において、PBMCまたはPBCから得られた胚性DNAは、MSI癌を診断するために用いられる。特別な実施形態において、試料は、凍結され得るか、または凍結され得ず、試料は、原発腫瘍または転移腫瘍から生成され得る。
【0052】
幾つかの実施形態において、腫瘍試料は、固形腫瘍に対応する。
【0053】
本明細書で用いられる用語「固形腫瘍」は、当該技術分野における一般的意味を有し、通常は嚢胞または液体領域(例えば、生検)を含有しない組織の異常な塊に関する。固形腫瘍は、良性(癌でない)または悪性(癌)であり得る。固形腫瘍の異なる型は、それらを形成する細胞の型について命名される。固形腫瘍の例は、肉腫および癌腫である。
【0054】
幾つかの実施形態において、腫瘍試料は、液体腫瘍に対応する。
【0055】
本明細書で用いられる用語「液体腫瘍」は、当該技術分野における一般的意味を有し、血液、骨髄またはリンパ節中に生じる腫瘍に関する。異なる液体腫瘍としては、白血病、リンパ腫および骨髄腫の型が挙げられる。
【0056】
本明細書で用いられる用語「MSI癌」は、不安定性が少なくとも2種のマイクロサテライトマーカで検出されることを表す。対照的に、不安定性が、1種のマイクロサテライトマーカで検出される、または全く検出されない場合、前記癌は、「MSS癌」である。この定義は、診断がペンタプレックス法により実行された場合に限り、価値がある(例えば、Suraweera N et al., Evaluation of tumor microsatellite instability using five quasimonomorphic mononucleotide repeats and pentaplex PCR. Gastroenterology. 2002、またはBuhard O et al., Multipopulation analysis of polymorphisms in five mononucleotide repeats used to determine the microsatellite instabyity status of human tumors. J Clin Oncol.2006を参照)。「MSS癌」は、安定したマイクロサテライトを有する癌を表す。「MSI癌」は、マイクロサテライトを不安定にさせる癌を指す。
【0057】
特に本発明の方法は、MSS癌よりMSI癌を区別するのに有用である。
【0058】
幾つかの実施形態において、MSIcareは、欠損タンパク質にかかわらず、MSI診断のために実行され得る。
【0059】
特にMSIcareは、MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2のような遺伝子が欠損している(例えば、変異または非機能的である)状況で用いられ得る。
【0060】
本明細書で用いられる用語「患者」または「対象」は、哺乳動物を表す。典型的には、本発明による患者は、MSI癌に罹った任意の対象(特にヒト)を指す。
【0061】
本明細書で用いられる用語「核酸」または「核酸塩基」は、当該技術分野における一般的意味を有し、コーディングまたは非コーディング核酸配列を指す。核酸としては、DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)の核酸を含む。このため核酸の例としては、DNA、mRNA、tRNA、rRNA、tmRNA、miRNA、piRNA、snoRNA、およびsnRNAが挙げられるが、これらに限定されない。このため核酸は、ゲノム(即ち、核ゲノムまたはミトコンドリアゲノム)のコーディングおよび非コーディング領域を包含する。
【0062】
特別な実施形態において、特定の反復内の核酸の長さ(x)(または数)は、12~30の間、特に12~18の間である。本発明によれば、特定の反復内の核酸の長さ(x)(または数)は、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30であり得る。
【0063】
本明細書で用いられる用語「癌」は、当該技術分野における一般的意味を有し、固形腫瘍および血液由来の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。癌という用語は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液および血管の疾患を包含する。用語「癌」はさらに、原発癌および転移癌の両方を包含する。癌の例としては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮の癌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。加えて癌は、具体的には以下の組織学的型のものであってもよいが、これらに限定されない:新生物、悪性;癌腫;未分化癌;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛質性上皮癌;移行細胞癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝癌;柱状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープにおける腺癌;家族性腺癌性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性癌;好酸性細胞癌;酸親和性腺癌;好塩基性細胞癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞性腺癌;乳頭濾胞性腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭漿液嚢胞腺癌;ムチン様嚢胞腺癌;ムチン様腺癌;印環体細胞癌;浸潤管癌;髄質癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性神経芽腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性パラガングリオーマ;悪性乳腺外パラガングリオーマ;褐色細胞腫;血球管血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素母斑における悪性黒色腫;上皮様細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;肺胞性横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミューラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;始原神経外胚葉;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅覚神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;大細胞型びまん性悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増加症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ様白血病;プラズマ細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリーセル白血病;リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)症候群として知られる)およびCMMRD(体質性ミスマッチ修復機能欠損)症候群。幾つかの実施形態において、患者は、大腸癌、より具体的には転移性大腸癌に罹患している。
【0064】
特別な実施形態において、癌は、転移癌である。
【0065】
特別な実施形態において、癌は、大腸癌、胃癌または子宮内膜癌である。
【0066】
特別な実施形態において、癌は、転移性大腸癌、転移性胃癌または転移性子宮内膜癌である。
【0067】
一実施形態において、結果を患者に伝達する更なるステップが、本発明の方法に追加されてもよい。
【0068】
特別な実施形態において、先に記載された方法は、MSS癌をMSI癌と区別することを可能にする。
【0069】
本発明によれば、該方法は、エクスビボ法またはインビトロ法である。
【0070】
本発明のMSICareは、入力データを操作して出力を作成することにより機能を実施する1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサにより実行され得る。アルゴリズムもまた、特別な目的の論理回路、例えばFPGA(現場でプログラム可能なゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)により実施され得て、装置もまた該論理回路として実装され得る。コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサとしては、例えば一般目的および特定目的の両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサが挙げられる。一般にプロセッサは、リードオンリーメモリもしくはランダムアクセスメモリ、またはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータの本質的要素が、命令を実施するためのプロセッサと、命令およびデータを保存するための1つまたは複数のメモリデバイスと、になる。一般にコンピュータはまた、データを保存するために1つまたは複数の大量保存デバイス、例えば磁気、光磁気ディスク、または光ディスクを含む、あるいはそれらの保存デバイスからデータを受け取る、もしくはそれかにデータを送信する、またはその両方のために動作可能に連結される。しかし、コンピュータは、そのようなデバイスを有する必要はない。その上コンピュータは、別のデバイスに埋め込まれる可能性がある。コンピュータプログラムの命令およびデータを保存するのに適したコンピュータ可読媒体としては、例えば半導体メモリデバイス、例えばEPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば内部ハードディスクまたはリムーバブルディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクをはじめとする不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイスの全ての形態が挙げられる。プロセッサおよびメモリは、特定目的の論理回路により補足され得る、または該回路の中に組み込まれ得る。ユーザとの対話を提供するために、本発明の実施形態は、情報をユーザに提示するためのディスプレイデバイス、例えば非限定的例として、CRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザが入力情報をコンピュータに提供し得るキーボードおよびポインティングデバイス、例えばマウスまたはトラックボールと、を有するコンピュータに実装され得る。デバイスの他の種類もまた、ユーザとの対話を提供するために用いられ得て、例えばユーザに提供されるフィードバックが、感覚フィードバック、例えば視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、または触覚フィードバックの任意の形態であり得て、ユーザからの入力情報が、音響、言語、触覚の入力情報をはじめとする任意の形態で受け取られ得る。したがって幾つかの実施形態において、アルゴリズムは、バックエンドコンポーネントを、例えばデータサーバとして、含む、またはミドルウェアコンポーネント、例えばアプリケーションサーバを含む、またはフロントエンドコンポーネント、例えばユーザが本発明の実装と対話し得るグラフィカルユーザインターフェースもしくはWebブラウザを有するクライアントコンピュータを含む、または1つもしくは複数のそのようなバックエンド、ミドルウエア、もしくはフロントエンドコンポーネントの任意の組合わせを含む、コンピュータシステムに実装され得る。該システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信、例えば通信網の任意の形態または媒体により相互に接続され得る。通信網の例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えばインターネットが挙げられる。コンピューティングシステムは、クライアントおよびサーバを含み得る。クライアントおよびサーバは一般に、互いに遠隔であり、典型的には通信網を通して対話する。クライアントおよびサーバの関連性は、各コンピュータで実行し、互いにクライアント-サーバ関連性を有するコンピュータプログラムのおかげで成り立つ。
【0071】
本発明の別の目的は、コンピュータにより実装された場合に先に記載された方法を実行するためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品である。
【0072】
MSIcareスコアの比較に用いられる所定の参照値は、本明細書に記載されたとおり決定され得る「カットオフ」値または「閾」値を含んでもよい。MSIcareスコアレベルの各参照(「カットオフ」)値は、例えば
a)癌に罹患した患者からの試料の採取物を提供するステップと;
b)ステップa)で提供された採取物中に含有される各試料のMSIcareを決定するステップと;
c)腫瘍組織試料を前記レベルに従ってランクづけするステップと;
d)前記試料を、発現レベルに従ってランクづけされたメンバーの数を増加させるか、または減少させるサブセットの対に分類するステップと;
e)ステップa)で提供された各試料について、対応する癌患者の実際の臨床転帰に関係する情報を提供するステップと;
f)試料のサブセットの各対について、カプラン・マイヤーの生存率%曲線を得るステップと;
g)試料のサブセットの各対について、両方のサブセットの間の統計学的有意性(p値)を計算するステップと;
h)レベルの参照値として、p値が最小となるレベルの値を選択するステップと、
を含む方法を実行することにより予め決定されてもよい。
【0073】
例えばMSIcareスコアは、患者100名の膵臓癌試料100例について評定されている。100例の試料は、それらの発現レベルに従ってランクづけされる。試料1は、最良の発現レベルを有し、試料100は、最低の発現レベルを有する。最初の群分けは、2つのサブセット、つまり一方の側で試料番号1を、そして他方の側で他の99の試料を提供する。次の群分けは、一方の側で試料1および2を、そして他方の側で残り98の試料を提供し、最後の群分けが一方の側で試料1~99を、そして他方の側で試料番号100を提供するまで行われる。対応する膵臓癌患者の実際の臨床転帰に関係する情報に従って、カプラン・マイヤー曲線が、2つのサブセットの99群それぞれについて作成される。99群のそれぞれについても、両方のサブセットの間のp値が、計算された。
【0074】
最小p値の基準に基づく識別が最強になるように、参照値が選択される。言い換えれば、p値が最小になる両方のサブセットの間の境界に対応する発現レベルが、参照値と見なされる。参照値が必ずしも発現レベルの中央値でないことが、留意されなければならない。
【0075】
日常の作業において、参照値(カットオフ値)は、膵臓癌試料を、つまり対応する患者を識別するために本発明の方法で用いられてもよい。
【0076】
時間の関数としての生存率%のカプラン・マイヤー曲線が、処置後の特定量の時間にわたり生存した患者の割合を測定するために一般に用いられ、当業者に周知である。
【0077】
当業者はまた、タンパク質の発現レベルの同じ評価技術が当然ながら、参照値を得るために使用され、そしてその後に本発明の方法に供される患者のタンパク質の発現レベルの評定に使用されなければならないことを理解している。
【0078】
本発明によれば、MSICareカットオフは、最初のコホートにおいて、感度と特異度の合計の最大値が得られる丸め値を選択することにより決定された(受信者動作特性(ROC)解析)。解析の数に応じて、MSI大腸癌のMSIcareカットオフは、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%および25%の間であり得て、より具体的には20%または21%である。これを実行するために、本発明者らは、異なる使用可能な方法のうちで、バイナリ分類タスクにおいて特定のメトリクスを最適化するカットポイントを推定して、ブーストラッピングを利用して性能を検証する、「cutpointr」パッケージ(https://github.com/thie1e/cutpointr) を適用した。本明細書で用いられる、≪特定のメトリクス≫は、感度と特異度の合計を表す。
【0079】
本発明の別の態様は、必要とする患者においてMNRの変異を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、ならびにvi)調整Δ比が<50%であればMNRが野生型であると結論づけて、調整Δ比が≧50%であればMNRが変異していると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0080】
この特別な態様によれば、本発明はまた、必要とする患者においてMNRの変異を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の正常試料のDNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の腫瘍試料のDNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)iv)で計算されたTPを加味して調整Δ比を計算すること、ならびにvi)調整Δ比が<50%であればMNRが野生型であると結論づけて、調整Δ比が≧50%であればMNRが変異していると結論づけること、を含む、方法に関する。
【0081】
本発明の方法によれば、変異は、癌細胞の出現に関与する。
【0082】
一実施形態において、変異は、MSI癌の出現に関与する反復またはマイクロサテライトである。
【0083】
シークエンシング法:
本発明によれば、シークエンシングステップは、非限定的にマキサム・ギルバート法(Methods in Enzymology 65, 499-560 (1980))を用いた化学的シークエンシング;サンガー法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74, 5463-67 (1977))を用いた酵素的シークエンシング;質量分析シークエンシング;チップを基にした技術を用いたシークエンシング;およびリアルタイム定量PCRをはじめとする任意の方法により遂行されてもよい。
【0084】
化学的シークエンシングにおいて、塩基特異性修飾が、放射性標識または蛍光標識されたDNA断片の塩基特異性切断をもたらす。4種の異なる塩基特異的切断反応を利用して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により長さに従って分離されたネスト化断片の4セットが、生成される。ゲル内の各バンド(断片)は、塩基特異的切断事象に由来するため、オートラジオグラフィーの後、配列が直接読み出され得る。こうして4つの「ラダー」の中の断片の長さが、DNA配列内の特定の位置に直接変換される。
【0085】
酵素シークエンシングでは、プライマー/テンプレート系で開始してプライマーを未知のDNA配列エリア内に延長し、それによりテンプレートをコピーして、連鎖停止試薬の存在下で、大腸菌DNAポリメラーゼI、Thermus aquaticusからのDNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、または改変T7 DNAポリメラーゼ、Sequenase(Tabor et al., Proc. Natl. Acad. Scl. USA 84, 4767-4771 (1987))などのDNAポリメラーゼにより相補鎖を合成することにより、4つの塩基特異的なDNA断片のセットが形成される。
【0086】
DNAシークエンシングのための複数の新しい方法(ハイスループットシークエンシング(HTS)法)が、1990年代中期~後期に開発され、2000年までに市販のDNAシークエンサに実装された。これらはひとまとめに、「次世代」または「第二世代」シークエンシング法と呼ばれた。これらのHTSとして、一分子リアルタイムシークエンシング、イオン半導体、パイロシークエンシング、合成によるシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、ナノポアシークエンシング、連鎖停止およびハイブリダイゼーションによるシークエンシングが挙げられるが、これに限定されない。これらの方法の幾つかは、全遺伝子シークエンシング(WGS)、全エクソームシークエンシング(WES)またはターゲットシークエンシングを可能にする。
【0087】
特別な実施形態において、本発明の方法によるシークエンシングは、ゲノム内の特定の領域パネル、本明細書ではモノヌクレオチドマイクロサテライト、がシークエンシングされる手段により、ターゲットの多量並行シークエンシングアプローチを利用して実施される第二世代シークエンシング(NGS)のようなウルトラディープシークエンシングである(例えば、Goodwin, S and all, 2016. Coming of age: Ten years of next-generation sequencing technologies. Nature Reviews Genetics参照)。
【0088】
処置の方法
別の態様において、本発明はまた、本発明の方法によりMSI癌を有すると同定された患者において癌を処置するための方法であって、前記患者に、治療有効量の放射線療法、化学療法、免疫療法、またはそれらの組合わせを施すことを含む、方法に関する。
【0089】
本明細書で用いられる用語「処置」または「処置する」は、疾患に罹るリスクがある、または該疾患に罹っている疑いがある対象、および病気である、または疾患もしくは医学的状態に罹患していると診断された対象の処置をはじめとする防護的または予防的処置、および治癒的処置または疾患修飾処置の両方を指し、臨床的再燃の抑制を含む。処置は、障害または再発した障害を予防する、治癒する、発病を遅延させる、重症度を低減する、または1つもしくは複数の症状を好転させるため、あるいはそのような処置の非存在下で予測を超えて対象の生存を延長させるために、医学的障害を有する対象、または該障害を最終的に獲得し得る対象に施されてもよい。「治療レジメン」は、病気の処置パターン、例えば治療中に用いられる投薬パターンを意味する。治療レジメンは、誘導レジメンおよび維持レジメンを含んでもよい。語句「誘導レジメン」または「誘導期間」は、疾患の初回処置に用いられる治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの一般的ゴールは、処置レジメンの初回期間に高レベルの薬物を対象に提供することである。誘導レジメンは、「負荷レジメン」を用いてもよく(一部または全体)、負荷レジメンは、維持レジメンの間に医師が用いるより大容量の薬物を投与すること、維持レジメンの間に医師が投与するより頻繁に薬物を投与すること、またはそれらの両方を含んでもよい。語句「維持レジメン」または「維持期間」は、病気の処置の間、対象の維持のために、例えば対象を長期間(数か月または数年)の寛解を保持するために、用いられる治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、連続治療(例えば、薬物を規則的間隔で、例えば週1回、月1回、年1回などで投与すること)または間欠的治療(例えば、断続的処置、間欠的処置、再燃時の処置、特別な所定の基準へ[例えば、疾患の発現など]の到達時の処置)を利用してもよい。
【0090】
用語「化学療法薬」は、腫瘍成長を阻害するのに効果的である化合物を指す。化学療法薬の例としては、チオテパおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾデパ、カルボコン、メツレデパおよびウレデパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンをはじめとするエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189およびCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロルエタミン、メクロルエタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシン(11およびカリケアマイシン211;例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)参照)などの抗生物質;ダイネマイシンAなどのダイネマイシン;エスペラマイシン;およびネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナール;フロリン酸などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトザントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベルラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,ニュージャージー州プリンストン)およびドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer,フランス アントニー);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸または誘導体が挙げられる。同じくこの定義に含まれるのは、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびトレミフェン(Fareston)をはじめとする抗エストロゲン;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲンなどの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;ならびに上記のいずれかの医薬的に許容できる塩、酸または誘導体である。
【0091】
患者がMSI癌を有すると結論づけられる場合、医師は、患者に標的療法を施すことを選択することができる。
【0092】
標的癌治療は、癌の成長、進行、および伝播に関与する特異的分子(「分子ターゲット」)で妨害することにより、癌の成長および伝播を遮断する薬物または他の物質である。標的癌治療は、「分子標的薬」、「分子標的療法」、「精密医療」、または類似の名称で呼ばれる場合がある。
【0093】
幾つかの実施形態において、標的治療は、患者にチロシンキナーゼ阻害剤を投与することからなる。用語「チロシンキナーゼ阻害剤」は、受容体および/または非受容体チロシンキナーゼの選択的または非選択的阻害剤として作用する種々の治療薬または薬物のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤および関連の化合物は、当該技術分野で周知であり、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2007/0254295号に記載される。チロシンキナーゼ阻害剤に関係する化合物がチロシンキナーゼ阻害剤の効果を反復すること、例えば関連の化合物が、チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ阻害剤と同じ効果を生じるためにチロシンキナーゼシグナル伝達経路の異なるメンバーに作用することは、当業者に認識されよう。本発明の実施形態の方法での使用に適したチロシンキナーゼ阻害剤および関連の化合物の例としてはダサチニブ(BMS-354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ、ゲフィチニブ(Iressa)、スニチニブ(Sutent;SU11248)、エルロチニブ(Tarceva;OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(Gleevec;STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(Zactima;ZD6474)、MK-2206(8-[4-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン塩酸)、それらの誘導体、それらの類似物、およびそれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用に適した追加のチロシンキナーゼ阻害剤およびの関連の化合物は、例えば、米国特許出願公開第2007/0254295号、米国特許第5,618,829号、同第5,639,757号、同第5,728,868号、同第5,804,396号、同第6,100,254号、同第6,127,374号、同第6,245,759号、同第6,306,874号、同第6,313,138号、同第6,316,444号、同第6,329,380号、同第6,344,459号、同第6,420,382号、同第6,479,512号、同第6,498,165号、同第6,544,988号、同第6,562,818号、同第6,586,423号、同第6,586,424号、同第6,740,665号、同第6,794,393号、同第6,875,767号、同第6,927,293号、および同第6,958,340号に記載されており、それらの全てが、全体として参照により本明細書に組み入れられる。特定の実施態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与されていて、少なくとも1つの第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1つの第II相臨床試験、更により好ましくは少なくとも1つの第III相臨床試験の対象であり、最も好ましくは少なくとも1種の血液学的または腫瘍学的適応症のためにFDAにより認可されている、低分子キナーゼ阻害剤である。そのような阻害剤の例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、BMS-599626(AC-480)、ネラチニブ、KRN-633、CEP-11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM-475271、CP-724714、TAK-165、スニチニブ、バタラニブ、CP-547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンズチニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE-788、パゾパニブ、アキシチニブ、モタセニブ、OSI-930、セディラニブ、KRN-951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS-032、PD-0332991、MKC-I(Ro-317453;R-440)、ソラフェニブ、ABT-869、ブリバニブ(BMS-582664)、SU-14813、テラチニブ、SU-6668、(TSU-68)、L-21649、MLN-8054、AEW-541、およびPD-0325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
患者がMSI癌を有すると結論づけられる場合、医師は、患者に免疫療法薬を投与することを選択することができる。
【0095】
本明細書で用いられる用語「免疫療法薬」は、直接的または間接的に、癌細胞に対する身体の免疫反応を増強する、刺激する、もしくは増加させる、および/または他の抗癌療法の副作用を減少させる、化合物、組成物、または処置を指す。このため、免疫療法は、直接的にまたは間接的に、癌細胞に対する免疫系の反応を刺激する、もしくは増強する、および/または他の抗癌剤により起こり得る副作用を減少させる治療である。免疫療法はまた、当該技術分野において、免疫療法、生物学的治療、生物学的応答修飾療法、および生物療法と称される。当該技術分野において公知の一般的な免疫療法薬の例としては、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、および非サイトカインアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは免疫療法処置は、患者に一定量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞など)を投与することからなってもよい。
【0096】
免疫療法薬は、非特異的であり得て、即ち、ヒトの身体が癌細胞の成長および/もしくは伝播と戦うのにより効果的になるように、全体的に免疫系をブーストすることができ、または免疫療法薬は、特異的であり得て、即ち、癌細胞自体を標的化することができ、免疫療法レジメンは、非特異的免疫療法薬と特異的免疫療法薬との使用を組み合わせ得る。
【0097】
非特異的免疫療法薬は、免疫系を刺激する、または間接的に改善する物質である。非特異的免疫療法薬は、癌の処置のための主な治療として単独で、および主な治療に加えて使用されてきており、後者の場合、非特異的免疫療法薬は、他の治療(例えば、癌ワクチン)の有効性を増強するアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法薬は、この後者の状況において、他の治療、例えば特定の化学療法薬により誘導される骨髄抑制の副作用を低減するのにも機能し得る。非特異的免疫療法薬は、重要な免疫系細胞に作用することができ、サイトカインおよび免疫グロブリンの生成増加などの二次反応を引き起こすことができる。あるいは、該薬剤はそれ自体が、サイトカインを含むことができる。非特異的免疫療法薬は、一般的にはサイトカインまたは非サイトカインアジュバントとして分類される。
【0098】
複数のサイトカインは、免疫系をブーストするように設計された一般的な非特異的免疫療法、または他の治療と共に提供されるアジュバントのどちらかとして、癌処置における用途を見出してきた。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、およびコロニー刺激因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明により企図されるインターフェロン(IFN)としては、一般的な型のIFN、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)、およびIFN-ガンマ(IFN-γ)が挙げられる。IFNは、例えばその成長を緩徐化すること、より正常な挙動の細胞への発達を促進すること、および/または抗原の生成を増加させることにより、免疫系に癌細胞をより容易に認識させ、破壊させること、により、癌細胞に直接作用し得る。IFNはまた、例えば、血管新生を緩徐化すること、免疫系をブーストすること、ならびに/またはナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、およびマクロファージを刺激すること、により、癌細胞に間接的に作用し得る。組換えIFN-アルファは、Roferon(Roche Pharmaceuticals)およびIntron A(Schering Corporation)として市販される。単独または他の免疫療法薬もしくは化学療法薬と併用でのINF-アルファの使用は、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、乳癌、前立腺癌、および子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)をはじめとする様々な癌の処置に有効性を示している。
【0100】
本発明により企図されるインターロイキンとしては、IL-2、IL-4、IL-11、およびIL-12が挙げられる。市販の組換えインターロイキンの例としては、Proleukin(登録商標)(IL-2;Chiron Corporation)およびNeumega(登録商標)(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals)が挙げられる。Zymogenetics, Inc.(Seattle, Wash.)は現在、同じく本発明の組合わせにおける使用に企図されるIL-21の組換え形態をテストしている。インターロイキンは、単独で、または他の免疫療法薬もしくは化学療法薬と併用で、腎臓癌(転移性腎臓癌を含む)、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、卵巣癌(再発性卵巣癌を含む)、子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)、乳癌、大腸癌、肺癌、脳癌、および前立腺癌をはじめとする様々な癌の処置に有効性を示している。
【0101】
インターロイキンはまた、様々な癌の処置においてIFN-アルファとの併用で良好な活性を示している(Negrier et al., Ann Oncol. 2002 13(9):1460-8; Touranietal, J. Clin. Oncol. 2003 21(21):398794)。
【0102】
本発明により企図されるコロニー刺激因子(CSF)としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSFまたはフィルグラスチム)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFまたはサルグラモスチム)、およびエリスロポイエチン(エポエチンアルファ、ダルベポイエチン)が挙げられる。1種または複数の成長因子による処置は、伝統的な化学療法を受けている対象において新たな血液細胞の生成を刺激するのに役立ち得る。したがって、CSFによる処置は、化学療法に関連する副作用を減少させるのに有用になり得て、より高い用量の化学療法薬を使用し得る。様々な組換えコロニー刺激因子、例えば、Neupogen(登録商標)(G-CSF;Amgen)、Neulasta(ペルフィルグラスチム;Amgen)、Leukine(GM-CSF;Berlex)、Procrit(エリスロポイエチン;Ortho Biotech)、Epogen(エリスロポイエチン;Amgen)、Arnesp(エリスロポイエチン)が、市販されている。コロニー刺激因子は、黒色腫、大腸癌(転移性大腸癌を含む)、および肺癌の処置において有効性を示している。
【0103】
本発明の組合わせにおける使用に適した非サイトカインアジュバントとしては、レビマソール、水酸化アルミニウム(alum)、カルメット・ゲラン桿菌(ACG)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS-21、DETOX、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびジニトロフェニル(DNP)が挙げられるが、これらに限定されない。他の免疫療法薬および/または化学療法薬と併用での非サイトカインアジュバントは、例えば結腸癌および大腸癌(レビマソール(Levimasole));黒色腫(BCGおよびQS-21);腎臓癌および膀胱癌(BCG)をはじめとする様々な癌への有効性を実証している。
【0104】
免疫療法薬は、特異的または非特異的ターゲットを有することに加え、能動的であり得る、即ち、身体自身の免疫応答を刺激し得る、またはそれらは、受動的であり得る、即ち身体の外部で作製された免疫系成分を含み得る。
【0105】
受動的な特異的免疫療法は典型的には、癌細胞の表面に見出される特別な抗原に特異的である、または特別な細胞増殖因子に特異的である、1種または複数のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体は、例えば、化学療法薬、放射性粒子または毒素などの薬剤に連結またはコンジュゲートされた場合に、特異的な癌の型への対象の免疫反応を増強するために、血管新生に関与する因子などの特異的細胞増殖因子を標的とすることにより、または癌細胞への他の抗癌剤の送達を増強することにより、癌細胞の成長を妨害するために、複数の方法で癌の処置に用いられてもよい。
【0106】
本発明の組合わせに包含させるのに適した癌免疫療法薬として現在使用されているモノクローナル抗体としては、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、セツキシマブ(C-225、Erbitux(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ゲムツズマブ・オゾガミシン(Mylotarg(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、およびBL22が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体は、乳癌(進行転移性乳癌を含む)、大腸癌(進行および/または転移性大腸癌を含む)、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、子宮頸癌、黒色腫および脳腫瘍をはじめとする広範囲の癌の処置に用いられる。他の例としては、抗CTLA4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、または抗B7H6抗体が挙げられる。
【0107】
本発明によりCMMRDまたはMSI白血病/リンパ腫を有すると診断された患者は、単独もしくは併用で抗CTLA-4、抗PD1、抗PD-L1を含む免疫チェックポイント遮断のような免疫療法、または腫瘍特異性抗原を基にした抗癌ワクチンもしくは樹状細胞ワクチンにより処置され得る。
【0108】
活性特異性免疫療法は、典型的には癌ワクチンの使用を含む。全癌細胞、癌細胞の一部または癌細胞に由来する1種もしくは複数の抗原を含む癌ワクチンが、開発された。単独での、または1種もしくは複数のさらなる免疫もしくは化学療法薬と併用の癌ワクチンは、黒色腫、腎臓癌、卵巣癌、乳癌、大腸癌および肺癌をはじめとする複数の型の癌の処置において調査されている。非特異性免疫療法薬は、身体の免疫反応を増強するための癌ワクチンとの併用において有用である。
【0109】
免疫療法での処置は、Nicholas P. Restifo, Mark E. Dudley and Steven A. Rosenberg “Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response, Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012により記載されたとおり、養子免疫療法からなってもよい。養子免疫療法では、対象の循環リンパ球または腫瘍浸潤リンパ球が、インビトロで単離され、IL-2などのリンフォカインにより活性化されるか、または腫瘍壊死のための遺伝子を導入され(transuded)、再投与される(Rosenberg et al., 1988;1989)。活性化リンパ球は、最も好ましくはより早期に血液または腫瘍試料から単離されてインビトロで活性化された(または「増殖された」)対象自身の細胞である。この形態の免疫療法は、黒色腫および腎臓癌の複数の退縮例を生じた。
【0110】
患者がMSI癌を有すると結論づけられる場合、医師は、患者に放射線療法薬を投与することを選択することができる。
【0111】
本明細書で用いられる用語「放射線療法薬」は、非限定的に癌を処置する、または好転させるのに効果的である、当業者に公知の任意の放射線療法薬を指すものとする。例えば放射線療法薬は、小線源療法または放射性核種療法で投与される薬物などの薬物であり得る。そのような方法は、場合によりさらに、非限定的に化学療法薬および/または別の放射線療法などの1種または複数の追加的癌治療の実施を含み得る。
【0112】
本発明のキットまたはデバイス:
本発明の更なる目的は、試料からDNAを抽出してシークエンシングするための手段を含む、本発明の方法を実施するためのキットまたはデバイスに関する。
【0113】
幾つかの実施形態において、キットまたはデバイスは、座位あたり少なくとも1組のプライマーを含む。
【0114】
本発明はさらに、以下の図および実施例により示される。しかしこれらの実施例および図は、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】背景および試験計画。FDA 食品医薬品局;MSI マイクロサテライト不安定;CRC 大腸癌;mCRC 転移性大腸癌;nmCRC 非転移性大腸癌;WES 全エクソームシークエンシング;ICI 免疫チェックポイント阻害剤;IHC 免疫組織化学的検査。
【
図2A】MSI/dMMRまたはMSS/pMMR状態が過去にゴールドスタンダード参照法で評定されている、転移性および非転移性CRCの前向きおよび後向きコホートにおけるMSISensorを用いたMSIの再評定。ボックスプロットは、前向きコホート(コホート1、C1)からの転移性CRCのMSI(赤色)患者25名およびMSS(青色)患者77名のWESから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコア)を示す。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(緑色の点線)。非転移性試料が円形で表され、転移性試料が菱形で表される。水平のバープロットは、各コホートの真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)、および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図2B】MSI/dMMRまたはMSS/pMMR状態が過去にゴールドスタンダード参照法で評定されている転移性および非転移性CRCの前向きおよび後向きコホートにおけるMSISensorを用いたMSIの再評定。ボックスプロットは、後向きコホート(コホート2、C2)からの非転移性CRCのMSI患者88名(左)および転移性CRCのMSI(右)患者25名のWESから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコア)を示す。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(緑色の点線)。非転移性試料が円形で表され、転移性試料が菱形で表される。水平のバープロットは、各コホートの真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)、および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図2C】MSI/dMMRまたはMSS/pMMR状態が過去にゴールドスタンダード参照法で評定されている転移性および非転移性CRCの前向きおよび後向きコホートにおけるMSISensorを用いたMSIの再評定。ボックスプロットは、MSI患者51名、MSI-L患者14名およびMSS患者53名(コホート3、C3)を含むTCGA患者118名のWESから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコア)を示す。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(緑色の点線)。非転移性試料が円形で表され、転移性試料が菱形で表される。水平のバープロットは、各コホートの真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)、および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図3】MSISensorの弱点および限界を同定することによりCRCにおけるMSIのコンピュータ援助検出を改善する。C1+C2(左)およびC3(右)コホートにおけるMSISensorスコアの密度プロット。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から分別するために用いられた(緑色の点線)。隣接するヒストグラムは、MSISensorスコアによる腫瘍試料の分布を表す。
【
図4A】MSICareの診断性能をテストする。C1およびC2コホートにおけるMSICareスコアの密度プロット。
【
図4B】MSICareの診断性能をテストする。C3コホートにおけるMSICareスコアの密度プロット。
【
図5A】TCGAからの胃腫瘍および子宮内膜腫瘍におけるMSIの同定のためのMSISensorおよびMSICareの性能比較。ボックスプロットは、コホート3のTCGA GC患者104名(MSI 55名、MSI-L 9名およびMSS 42名を含む)およびTCGA EC患者278名(MSI 159名、MSI-L 17名およびMSS 102名を含む)のWESから得られたMSISensorスコアを示す。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(緑色の点線)。
【
図5B】TCGAからの胃腫瘍および子宮内膜腫瘍におけるMSIの同定のためのMSISensorおよびMSICareの性能比較。ボックスプロットは、CRC、GCまたはECを有する同じTCGA患者のWESから得られたMSICareスコアを示す。20のカットオフMSICareスコアが、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(緑色の点線)。
【
図6A】MSIを検出するためのMSISensorの弱点および限界の同定(感度の欠如)。マイクロサテライトの各カテゴリー(モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-ヌクレオチド反復)についてのWESデータ(C1およびC2)からのMSISensorで同定された体細胞変異の総数の分布。モノヌクレオチド反復(MNR)配列が、dMMR結腸癌において群を抜いて最も不安定なカテゴリーであり、それゆえMSISensor(たとえば、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-)により用いられた他の反復形態よりも、MSIをMSS CRCから識別するのに良好である。
【
図6B】MSIを検出するためのMSISensorの弱点および限界の同定(感度の欠如)。サイズによる変異型MNRの割合%(5~12の範囲。MSICareスコア)(C1およびC2)。5+ 5bp以上の長さのモノヌクレオチド反復全てを含む;6+ 6bp以上の長さのモノヌクレオチド反復全てを含む、など。12bp以上の長いMNRは、2つの表現型を識別するのに最良であった(青色の長方形)。
【
図7】MSISensorスコアによるゲノム不安定性指数。コホートC1およびC2のMSISensorスコア(x軸)による腫瘍のゲノム不安定性指数の分布(モノヌクレオチド反復不安定性に基づく。詳細は材料と方法を参照)。
【
図8A】MSIを検出するためのMSISensorの弱点および限界の同定(特異度の欠如)。MSISensorにより変異型マイクロサテライトを有すると同定された3種の腫瘍におけるヘテロ接合性喪失(LOH)の3例についての反復長によるリードの密度プロット。
【
図8B】MSIを検出するためのMSISensorの弱点および限界の同定(特異度の欠如)。T16マイクロサテライトの野生型および変異型プロファイルが示される(正常DNA、野生型 緑色;MSI腫瘍DNA、変異型 黄色)。これは、スタッタリング(T15)のために、純粋なMSIシグナルが、この長いMNRにおける2bp以上の体細胞欠失を考慮することのみによって捕捉され得ることを示している。
【
図9A】ターゲットパネルシークエンシングデータを用いたMSIの同定のためのMSISensorおよびMSICareの性能比較。ボックスプロットは、C1およびC2コホートからの患者のMSK-IMPACTから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコア)を示す(全患者 右パネル;MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2のいずれかが欠損したCRCの同患者 左パネル)。10のカットオフMSISensorスコア(FDA推奨)が、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(点線)。水平なバープロットは、真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図9B】ターゲットパネルシークエンシングデータを用いたMSIの同定のためのMSISensorおよびMSICareの性能比較。ボックスプロットは、C1およびC2コホートからの患者のMSK-IMPACT(商標)から得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSICareスコア)を示す(全患者 右パネル;MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2のいずれかが欠損したCRCの同患者 左パネル)。20のカットオフMSICareスコアが、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた(点線)。水平なバープロットは、真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図9C】ターゲットパネルシークエンシングデータを用いたMSIの同定のためのMSISensorおよびMSICareの性能比較。ボックスプロットは、C4コホートからの患者のターゲットシークエンシングに続いて得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコアおよび/またはMSICareスコア)を示す(全患者 右パネル;MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2のいずれかが欠損したCRCの同患者 左パネル)。唯一の誤診例のペンタプレックスプロファイルが、ボックス内に示される。水平なバープロットは、真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図10】MSIDIAGでのターゲットシークエンシングに続くMSISensorの評定。ボックスプロットは、C4コホートからの患者のターゲットシークエンシングに続いて得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSISensorスコア)を示す(全患者 左パネル;MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2のいずれかが欠損したCRCの同患者 右パネル)。水平なバープロットは、真陰性(TN)、真陽性(TP)、偽陰性(FN)および偽陽性(FP)の割合%を示す。
【
図11】脳腫瘍におけるMSIレベル評価。脳腫瘍であるMMRp(IHCによる)患者8名およびdMMR(IHCによる)患者24名のWESからのパネルシークエンシングから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(MSICareスコア)のバープロット。dMMR患者のうち4名は、体質性ミスマッチ修復欠損CMMRDを呈し、3名は、リンチ症候群を有し、17名は、テモゾロミド処置後にdMMR腫瘍を有する(post_TMZ)。y軸は、log10スケールを有する。
【
図12】WIND-MSICareを利用したCRC正常試料不含の固形腫瘍におけるMSI状態の診断。ボックスプロットは、ターゲットシークエンシングに続いて腫瘍のみの試料から得られた変異型マイクロサテライトの割合%(WIND-MSICareスコア)を示す。試料は、IHCによりMMRdまたはMMRpのどちらかであった。
【
図13】WIND-MSICareを用いた腫瘍循環DNAにおけるMSI状態の診断。バープロットは、任意の正常比較を用いずに患者4名の循環DNAからのパネルシークエンシングから得られた変異型マイクロサテライトの割合%(WIND-MSICareスコア)を示す。「T1」試料は、最初の免疫療法処置の当日に抽出された。「T2」試料は、最初の免疫療法処置の3か月後に抽出された。患者MS-CIRC-041は、IHCによりpMMRであることが分かっている。患者MS-CIRC-005、MS-CIRC-012およびMS-CIRC-045は、IHCによりdMMRであることが分かる。20のカットオフMSICareスコアが、MSS腫瘍をMSI腫瘍から識別するために用いられた。
【発明を実施するための形態】
【0116】
【0117】
実施例:
材料と方法
試験集団
この試験の臨床的根拠および設計が、
図1に提示されている。mCRCの患者102名(コホートC1、
図1)は、2015年5月~2019年11月の間に患者が発生した2つの多施設フランス臨床試験(NCT02840604およびNCT033501260)を起源とした。
【0118】
NCT02840604は、エクソーム解析が患者の日常的ケアで実行可能であり、それにより標的治療へのアクセスを改善し、遺伝性癌の素因の検出を改善することを示すことを目的とした。ゲノムシークエンシング(WES)は、フランス ディジョンのGeorges-Francois Leclerc Cancer Center, Genomic and Immunotherapy Medical Instituteで実施された。患者は、少なくとも1ラインの全身治療の間に進行した局所進行性の手術不能または転移性の癌を呈した場合に、適格とされた。NIPICOL治験(NCT033501260)は、ニボルマブ(抗PD-1)およびイピリムマブ(抗CTLA-4)でのMSI/dMMR mCRC患者の処置を含む。ICIへのmCRCの応答は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)に従って決定された(20)。NCT033501260コホートからの26例が、ICIで処置された。これらのうち、23例は、MSI/dMMRであることが確認され、3例は、中央判定によるMSIおよびMMR状態の再評定に続いてMSS/pMMRとして後に同定された。ゲノムシークエンシング(WES)は、IntegraGen SA(フランス エブリー)により実施された。全ての患者が、この治験およびゲノム解析のためのインフォームドコンセントの署名を提供した。患者は、同意を与えた後、体質性遺伝子検査の結果を説明する遺伝学者との協議を受けた。この協議に続いて、患者は、体質性エクソーム解析のために血液試料を提供することを容認または拒絶することができた。この治験プロトコルは、治験審査委員会により認可され、ヘルシンキ宣言に従って実施された。
【0119】
歴史的な後向きコホートもまた、解析された(コホートC2、
図1)。これは、フランスの病院6施設において1998年~2016年の間にMSIまたはdMMRと診断されたmCRC患者25名(17)、および1998~2007年の間にMSI/dMMR nmCRCを有すると診断されたパリのSaint Antoine Hospitalからの患者88名を含んだ(21)。mCRCの原発および/または転移腫瘍組織が、WESを用いてIntegraGen SA(フランス エブリー)により解析された。患者は全て、記入された同意書を提供し、試験は、参加施設の施設内治験審査委員会/倫理委員会により認可された。
【0120】
本発明者らはさらに、第3の独立した腫瘍コホート(C3)においてMSICareおよびMSISensorの性能を評価および比較した。これは、MSI状態が過去にベセスダマイクロサテライトパネルを用いてPCRにより評定されていて、WESデータがTCGAから公開されているCRC患者118名を含んだ。MSI-H(n=51)またはMSI-L(n=14)を有するCRC患者全て、および同様の割合のMSS患者(n=53)が含まれた(22)。C3もまた、相対的に高い発生率のMSI、即ち胃癌(MSI-H 53名、MSI-L 9名、MSS 42名)および子宮内膜癌(MSI-H 159名、MSI-L 17名、MSS 102名)を有するTCGAからの結腸外腫瘍382名を含んだ。
【0121】
WESは臨床ケアで日常的に用いられないため、標的NGSを用いて新しい後向きコホートが検査された(コホートC4)(詳細は以下参照)。C4は、後向きの非連続性であり、過去にMSI PCRおよびIHCを用いてMSI/dMMRまたはMSS/pMMR CRC(MSI 137名、MSS 15名)を有すると診断されたパリのSaint Antoine HospitalおよびLille University Hospitalからの新しい患者152名を招集した。Saint Antoine HospitalからのdMMR/MSI CRC症例は、腫瘍中で検出されたMMR欠陥にかかわらず、1998~2021年の間にdMMR/MSIであると過去に診断された。腫瘍および非腫瘍の両方のDNA材料が、これらの症例について入手でき、それらは、過去にWESにより解析されなかった(C2コホートと重複しない)。2016~2021年に入手可能な材料を有するLille University HospitalからのdMMR/MSI CRC症例は、単離されたMSH6またはPMS2発現の損失を呈した。それらは、これらの希少なdMMR/MSI CRC環境において、特により診断が困難であることが知られるMSH6欠乏CRCにおいてMSIを同定するためのMSICareの性能をさらに評価するために選択された21。
【0122】
汎癌においてMSI表現型を調査するために、非CRC患者の追加的な公的後向きコホート(コホートC5)もまた、WESを用いて解析された。このコホートは、WESがTCGAから公開されている患者34名を含む。このコホートは、浸潤性乳癌(BRCA、n=8)子宮頸扁平上皮癌および子宮内膜腺癌(CESC、n=7)、食道癌(ESCA、n=3)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC、n=3)、急性骨髄性白血病(LAML、n=4)、肺扁平上皮癌(LUSC、n=4)および皮膚黒色腫(SKCM、n=5)を含む。これらの患者は、DNA修復欠損を示唆する変異の特徴、より具体的にはMMR、MMR/POLEまたはPOLEの特徴を有する場合に、選択された。その後、MSICareおよびMSIsensorが、正常組織および腫瘍組織の両方を考慮してシークエンシングデータで比較しながら用いられた。
【0123】
さらに、非CRC試料中のMSIcareの性能を調査するために、脳腫瘍患者32名のコホート(C6)もまた試験された。このコホートは、パリのInstitut du Cerveau - ICMからの患者を含み、患者は、4群、つまり先天性ミスマッチ修復欠損(CMMRD、n=4)、リンチ症候群(Lynch、n=3)、テモゾロミド処置後の神経膠芽腫再発(post_TMZ、n=17)およびMMRプロフィシェント神経膠芽腫(n=8)に層別された。MSICareが、診断が困難であることが知られるこの腫瘍部位において適用された。
【0124】
最後に、液体生検を使用したMSI診断の実行可能性を評定するために、転移性CRCの患者4名のパイロットの血液試料が分析された(コホート7)。これらの患者は最初、NIPCOL治験(C1、NCT033501260)に含まれ、それぞれ参照法IHCおよびMSI-PCRを用いて、4名のうち3名が、dMMR/MSIであり、1名がpMMR/MSSであった。腫瘍循環DNA(ctDNA)のシークエンシングデータが、MSIcare正常試料不含を用いて解析された(WIND-MSIcare、以下参照)。
【0125】
患者は全て、記入された同意書を提供し、試験は、参加施設の施設内治験審査委員会/倫理委員会により認可された。
【0126】
試料
前向きコホート(C1、臨床試験NCT02840604およびNCT033501260)では、mCRC試料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋され(FEPE)、原発または転移のどちらかの腫瘍組織で構成された。後向きコホート(C2)では、nmCRC試料は全て(n=88)が、DNA抽出まで-80℃で貯蔵された。mCRC患者(n=25)では、FFPEに保持された原発腫瘍および転移の両方が(n=45;原発腫瘍25例および転移20例)が、この希少なCRCサブタイプのより完全な記載を提供するために、いつでも可能な時に回収および解析された。公的な後向きコホート(C3)では、凍結された組織試料が、記載されたとおり原発腫瘍部位(大腸、胃、子宮内膜)から回収された(22)。C4後向きコホートでは、CRC試料(N=152;原発または転移)および適合する非腫瘍試料は、DNAの様々な技術条件および性質の下でMSICare法の実行可能性を認識するために、FFPE(N=87)または凍結された(N=65)。全てのコホートにおいて、NGSに基づくMSIを実施するために、適合した正常結腸粘膜試料が、考慮された。
【0127】
この試験におけるC4からの全てのCRC試料は、免疫組織学的検査(IHC)を用いてdMMR状態について、そして過去に記載されたとおり14-16ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてMSIについて、この試験に関与する専門施設(フランス パリのSaint Antoine HospitalおよびフランスのLille University Hospital)において、中央判定により再評定された。
【0128】
公的な後向き非CRCコホート(C5)では、凍結組織試料が、記載されたとおり24原発腫瘍部位から回収された。同じく脳腫瘍コホート(C6)では、全ての試料がFFPEされ、MMR状態が、IHCを用いて評定された。このコホートでは、正常粘膜または血液DNAが、適合した正常試料として用いられた。
【0129】
最後に、液体生検試料(C7)では、血液DNAが、免疫チェックポイント阻害剤で処置された転移性CRC患者の血漿から抽出された。それぞれ処置前および処置の3か月後に、2つのタイムポイントT1およびT2が実施された。
【0130】
免疫組織化学的検査およびMSI-PCR
この事後試験で用いられたC1およびC2からの全てのCRC試料が、過去に記載されたとおり(13~15)免疫組織化学的検査(IHC)を用いてdMMR状態について、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてMSIについて、本発明者らの専門施設(フランス パリのSaint Antoine Hospital)において中央判定により再評定された。
【0131】
MSISensorのエンドポイント
C1およびC2からの偽陰性が、それぞれMSI-PCRおよびIHCを用いて最初はMSIまたはdMMRと診断されたが完全エクソームデータを考慮すると陰性MSISensorスコア(10%以下)を示した試料として定義された(18、19)。これは、ディジョンのGeorges-Francois Leclerc Cancer Center、およびパリのSaint-Antoine Hospitalでの中央判定により実行された。MSISensorの感度は、真陽性および偽陰性例全体のうちの真陽性例の割合%として計算された。
【0132】
ImPact(商標)遺伝子パネル(C1、C2、C3)19、20;(ii)または腫瘍のターゲットシークエンシングに続くマーカのMSIDIAGマイクロサテライトパネル(C4)(以下参照)。これは、パリのSaint-Antoine Hospital(C1、C2、C3、C4)、ディジョンのGeorges-Francois Leclerc Cancer Center(C1)、またはLille University Hospital(C4)での中央判定により実行された。MSISensorの感度は、真陽性および偽陰性例全体のうち真陽性例の割合%として計算された。
【0133】
MSISensorを用いた全エクソームシークエンシングおよびNGSに基づくMSI診断
前向き(C1)および後向き(C2)コホートでは、WES手順が、製造業者により推奨されたとおり(SureSelect Human Exon Kit v5, 75 MB;Agilent,フランス レ・ジュリス)、そして過去に記載されたとおり(23)実施された。転移腫瘍試料では、作成されたリードが、参照ゲノムhg38(GRCh38)にマッピングされ、後向き非転移試料では、リードが、hg19(GRC37)にマッピングされた。MSISensorは、WESデータからのマイクロサテライトの変異状態を評価するためにデフォルト設定で用いられた(19)。
【0134】
CRCおよび他の腫瘍におけるMSI検出の感度を上昇させるための最適化されたNGSに基づくMSICare法の実装
新しい方法(MSICare)は、WESデータからの正常試料と腫瘍試料の間のリード分布の比較に基づいてMSIの検出を最適化するために開発された。12ベースペア(bp)以上のモノヌクレオチド反復(MNR)が、正常試料と腫瘍試料の両方で少なくとも20マッピングリードによりカバーされている場合のみ、解析のために考慮された。その後、各候補MNRをカバーするリードの総数が、腫瘍および適合する健常組織において正規化された(100の任意の値)。各MNRでは、全ての候補MNRのΔ比値の合計に対応するMSI指数(MSIシグナル、MSIg)を作成するために、健常組織での正規化リード数が、腫瘍組織での正規化リード数から差し引かれた[Δ比=%腫瘍-%正常]。その後、各腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を推定することにより、Δ比の値が調整され、推定されたTPは、腫瘍での少なくとも30リードおよび正常組織での20リードによりカバーされる14bp以上の長さの全てのMNRのためのMSIシグナルの中央値に対応した。その後、Δ比の調整値が、所与のMNRを野生型(調整Δ比=Δ比×推定TP<50%)または変異型(調整Δ比=Δ比×推定TP≧50%)として分類するために用いられたが、但し、観察されたマイクロサテライト変異が、原発腫瘍試料においてヘテロ接合性またはホモ接合性のどちらかであり得ることを条件とした。最後に、腫瘍試料のMSICareスコアは、このアプローチを用いて解析されたマイクロサテライトの総数のうちの変異されたマイクロサテライトの割合%に対応する。このシナリオおよび傍証は、Githubのhttps://github.com/MSI.CRSA/MSICareを通して入手され得る。
【0135】
MSICareカットオフ決定
MSICareのカットオフ値が、異なるコホートのMSS試料からのMSI試料の識別を最適化するために推定された。これは、バイナリ分類タスクにおいてる最適なカットオフポイントを推定し、ブートストラッピングを利用してそれらの性能を検証する、cutpointrパッケージ(バージョン1.0.32)を用いて実行された。20のカットオフポイントが、77のMSSと138のMSIとの発見セットを用いて決定され(C1+C2;CRC;発見セット)、その後、公的TCGAデータからのMSIの検証セット(C3;CRCおよび非CRC、検証セット)に適用された(さらなる詳細について結果の節を参照)。MSK-Impact(商標)遺伝子パネルに制限された一部のWESデータのみを考慮した場合に、CRC患者の同じコホートにおけるMSIを同定するためのMSICareをテストするために、同じカットオフが再度テストされた。
【0136】
マイクロサテライトマーカの最適化パネルでの一対の腫瘍および正常粘膜試料のターゲットシークエンシングに続いてCRC中のMSIをMSICareで診断する
臨床適用の観点から、MSIテストが、全エクソームシークエンシングのみならず、パネルテストにおいても重要である。MSISensorに比較されたMSICareの性能が再度、同じカットオフを用いて追加の独立した多施設CRCコホート(C4)で評定された。一対の腫瘍および正常粘膜試料でのこのコホートのシークエンシングが、マイクロサテライトマーカの最適化された標的化パネル、即ちMSIDIAGを用いて実施された。このパネルは、不安定性がWESに続いてもっぱらC1、C2およびC3からのMSI腫瘍試料中で観察された12bp以上のサイズを収容するMNRの中から選択された441モノヌクレオチド反復を含む(MSS CRCにおいて低頻度の体細胞変異;p値<0.05でのカイ二乗検定)。捕捉およびシークエンシングの後、リードは、含まれるカバレッジデプスが100X~500Xの間であるヒトゲノム構築物(hg38)にマッピングされた。MSIの診断は、過去にC1、C2およびC3のWESデータから実施されたため、MSISensorまたはMSICare手順を用いて厳密に評定された(上記参照)。
【0137】
固形および液体生検の両方の正常試料不含(腫瘍のみ)のDNAシークエンシングデータを用いてCRC中のMSI状態を検出するためのWIND-MSICareの実装
正常試料と適合させることなくMSIを検出するために、正常多型ゾーンが、764の正常試料のデータベースを用いて各反復について同定された。12ベースペア(bp)以上の長さのモノヌクレオチド反復(MNR)が、腫瘍試料中で少なくとも20のマッピングリードによりカバーされている場合のみ、解析のために考慮された。その後、各候補MNRをカバーするリードの総数が、正規化された(100の任意の値)。その後、腫瘍試料から、この正常多型ゾーンの外部で観察された変異型反復のみが、考慮された。この多型ゾーンの外部では、正常試料中のリード数が、各NMRについて零と見なされた[Δ比=多型ゾーン外部の腫瘍%]。この状況では、MSICare法の複数のステップ(上記参照)が、このことを考慮して実行された。
【0138】
MSI指数(MSIシグナル、MSIg)が作製され、全ての候補MNRのΔ比の値の合計に対応させた。その後、各腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を推定することにより、Δ比の値が調整され、推定されたTPは、腫瘍での少なくとも30リードによりカバーされた14bp以上の長さの全てのMNRのためのMSIシグナルの中央値に対応した。その後、Δ比の調整された値が、所与のMNRを野生型(調整Δ比=Δ比×推定TP<50%)または変異型(調整Δ比=Δ比×推定TP≧50%)として分類するために用いられたが、但し、観察されたマイクロサテライト変異が、原発腫瘍試料においてヘテロ接合性またはホモ接合性のどちらかであり得ることを条件とした。最後に、腫瘍試料のWIND-MSICare(Without Including Normal DNA(正常DNAを含まない))スコアは、このアプローチを用いて解析されたマイクロサテライトの総数のうちの変異されたマイクロサテライトの割合%に対応する。
【0139】
この方法は、C4コホートからの患者の腫瘍(固形試料)に適用され、転移CRCを呈した患者4名のパイロット(C7)の液体生検(ctDNA)にも適用された。この最後のコホートは、MSIDIAGパネルを用いてシークエンシングされ、解析に最大の感度を持たせるために、リードが、含まれるカバレッジデプスが3000X~5000Xの間であるヒトゲノム構築物(hg38)にマッピングされた。
【0140】
結果
mCRCとnmCRCの両方におけるMSISensorでのMSIの頻繁な誤診
C1およびC2からの全てのCRC試料が、ペンタプレックスPCRおよびIHCのゴールドスタンダード参照法を用いてMSIおよびdMNR状態について中央判定により再評定された(
図1)。MSISensorは、前向きC1コホートから77のMSS/pMMR mCRCの状態を確認した(
図1および
図2A;MSISensorスコア≦10%)。しかし、MSI/dMMR mCRC試料25例のうちの4例の状態を確認することができなかった(
図2A;MSISensorスコア≦10%)。C1における誤診の頻度は、それゆえ16%となった(N=4/25;感度84%、95%CI:69~99%)。
【0141】
MSISensorの感度がさらに、後向きC2コホートからのMSI/dMMRのmCRC患者25名において評定された(
図1)。mCRCにおいて、誤診の頻度は、32%でさらに高かった(N=8/25、32%;感度68%、95%CI:49.3~86.7%)(
図2B)。C2コホートからのMSI/dMNRのnmCRC患者88名において、誤診が9%で起こった(N=8/88、9%;感度91%、95%CI:85%~97%)(
図2B)。MSISensorと類似の性能が、MSK-IMPACT(商標)で観察された(詳細については材料と方法を参照)。MSI/dMMR CRCの中で検出された偽陰性例の全数は、MSISensorスコアを決定するために用いられたMSKパネルの全3バージョンと非常に類似していた(データは示さない)。MSISensorの感度は、nmCRCとmCRCの両方を含むCRC患者の公的C3コホートでも評定された(
図1)。誤診の頻度は同じく、9.8%(N=5/51)で非常に類似しており、MSI/dMMR CRCの患者において90%(95%CI:82%~98%)の感度を与えた。これは、1つのmCRC誤診例を含んだ(1/3、33%)(
図2C)。MSISensorは、C3からのMSS/pMMR mCRC 2例以外の全ての状態を確認し、このためこの方法の主な限界が感度の欠如であることが示された。C2およびC3コホートに比較したC1コホートにおけるMSISensorの全体的性能が、表1Aに示される。
【0142】
CRCにおけるDNA反復のMSIゲノムシグナルを解読することによりMSISensorの弱点および限界を同定する
密度プロットが、この試験で解析された3つの患者コホートでのMSISensorスコアの変動を示すために作成された(
図3)。コホートC1およびC2における全ての試料のMSI/dMMRおよびMSS/pMMR状態は、過去に中央判定で検証されているため、プールされた。本発明者らは、IHCおよびMSI-PCRを用いてこれらの腫瘍の状態を独立して確認することができなかったため、公的コホートC3からのCRC試料は、別個に考慮された。密度プロファイルから、既に3つのコホートについて先に示されたとおり、dMMR CRCにおけるMSIの検出のためのMSISensorの感度の欠如が明確に強調された(
図2および表1)。
【0143】
本発明者らは次に、NGSデータの解析において特定のパラメータを修飾することにより、CRCにおけるMSIの検出を改善することができるはずであると仮定した。これの裏づけとして、(i)MNR配列がdMMR結腸腫瘍におけるマイクロサテライトの中で群を抜いて最も不安定なカテゴリーであり、それゆえMSISensorにより用いられた他のタイプの反復(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-)よりも、MSIをMSS CRCから識別する点でより良好であったこと(
図6A);(ii)MSS結腸腫瘍とMSI結腸腫瘍とを識別するNMRの能力が長さに依存し、12bp以上の長いMNRがMSISensorにより用いられた他のマイクロサテライトに比較して最も識別していることが見出されたこと(
図6B);(iii)MSISensorが30~40%未満の推定TPでCRC試料中のMSIを検出するのに適さなかったこと、を理由に、MSISensorの感度が欠如することが、WES解析で明らかとなった。このことは、非腫瘍および炎症pMMR/MSS細胞が高レベルで混入することが多いため、原発性MSI CRCにおけるMSISensorの感度への重要な限界である(
図7)(本発明者らのレビュー(24)およびさらなる詳細についての元となる発表14、15、21、23、25も参照)。WES解析から、MSISensorが2つの理由で特異度が欠如することも明らかとなった。第一に、MSISensorのコンピュテーショナルツールは、MNRの幾つかで、真のMSIシグナルをアレル欠失(LOH)と混同した。LOHは、高レベルの染色体不安定性を有するMSS結腸腫瘍において起こることが多い(
図8A)。第二に、PCR反応の間のDNAポリメラーゼによるスタッタリングが、マイクロサテライトで、特に長いMNRで起こることが多い。それゆえ、これらのマイクロサテライトにおける小さな1bpの欠失が、MSISensorによりMSIを表すと見なされる場合に、MSIの誤診が起こり得る(
図8B)。
【0144】
CRCにおいてMSIのNGSを基にした検出を改善するためにMSICareを設計および検証する
MSISensorの上述の落とし穴を回避するために、本発明者らは次に、MSICareと称される新しいコンピュテーショナルツールを設計して、WESプロファイルの解析に基づくCRCのMSIを正確に検出した。MSISensorと対照的に、MSICareは、dMMR癌からのDNAにおいて長いMNR(≧12bp)で起こり、対の正常組織からのDNAでは起こらない少なくとも2bp長の体細胞欠失として定義された真のMSIシグナルを同定する(さらなる詳細については材料と方法を参照)。受信者動作特性(ROC)曲線が構築されて、MSICareスコアのバイナリ分類を推定した。これにより、20%のカットオフ値を用いた場合に100%の感度および100%特異度を有するC1およびC2におけるdMMRとpMMR CRCとの完璧な識別が明らかとなった(
図4A。データは示さない)。dMMR/MSI試料は、80%を超える平均MSICareスコアを示し、この値の前後にほとんど分散がないが、pMMR/MSS試料の平均MSICareスコアは、10%未満であることが示された。このため、MSICareは、MSIをMSS CRC例と識別するのに非常に効果的であると思われる。20%のカットオフ値を用いて実現された高レベルの識別が、公的なC3コホートにおいて検証され(
図4B右パネル)、MSISensorで偽陰性状態を示した真のMSIである5例のうち3例を本発明者らに修正させた。興味深いこととして、過去にTCGAに従ってPCRによりMSIと分類された陰性MSISensor状態の残り2例のCRC試料は、MSICareで依然として明確にMSSであった。これらの両方の腫瘍のエクソームプロファイルの詳細な解析から、公知のMSIターゲット遺伝子のコーディング領域内に存在するマイクロサテライト中に非常にわずかな変異が明らかとなった(データは示さない)。さらに、試料の1つから、TCGAによるpMMRが示され、このため解釈が不確実なMSI状態が示唆された。C2およびC3コホートに比較したC1コホートにおけるMSICareの全体的性能が、表1Bに示される。
【0145】
本発明者らは、腫瘍におけるdMMR欠陥の性質を考慮したMSICareの性能を解析している。結果から、このテストの感度が、このコホートからMSH6欠損またはPMS2欠損の結腸腫瘍において依然として最適であることが示される(感度100%)。
【0146】
MSICareは胃および子宮内膜腫瘍におけるMSIの検出についてMSISensorより良好な性能を有する可能性がある
MSIの検出のためのMSISensorの性能が、MSI表現型を示すことの多い2種の他の原発癌の型、即ち胃癌(GC)および子宮内膜癌(EC)において評定された。TCGAからのGCおよびECの入手できるWESデータの調査から、MSISensorに比較して、MSIの検出におけるMSICareのかなり良好な性能が明らかとなった(
図5AおよびB、ならびに表1B)。
【0147】
ターゲットNGSを用いたCRCにおいてMSIを検出することにおけるMSICareの性能の確認
WESは、臨床ケアで日常的に用いられないため、本発明者らは最後に、対の正常粘膜試料に比較したCRC試料のターゲットシークエンシングに続いてMSIを検出するためのMSICareの高い性能を確認することを目的とした。これは最初、C1およびC2において実行され、制限されたMSK-IMPACT(商標)遺伝子パネルに含まれるマイクロサテライトのみを考慮した(詳細については材料と方法を参照)。これらの条件下でこれらのコホートからのMSI/dMMRのうちで検出された偽陰性例の全数が、特にMSH6およびPMS2欠損状況では、MSK-IMPACTの3バージョン全てのMSISensorにとって重要であった(
図9A)(感度28.6%、95%CI;4.9%~62%)(
図9A)。対照的に、MSICareの性能は、同条件下で依然として最適であった(感度100%)(
図9B)。
【0148】
次に本発明者らは、MSIDIAGと呼ばれる441のモノヌクレオチド反復(長さ≧12bpおよびMSI腫瘍における不安定性;詳細は方法を参照)の最適に設計されたパネルを作成した。このパネルを用いて、本発明者らは、患者152名(MSI 137名およびMSS 15名)を含み、MSH6(患者35名)またはPMS2(患者9名)が欠損したCRCの多いC4コホートにおいて、MMR欠陥にかかわらず、MSICareがCRCにおいてなおも最適にMSIを検出するが(感度99.3%、95%CI:97.8%~100.7%;特異度100%)(
図9C)、MSISensorが予測では非特異的であったが依然としてより低い感度であること(感度97.1%、95%CI:92.7%~99.2%;特異度73.3%、95%CI:44.9%~92.2%)(
図10)を確認した。
【0149】
汎癌におけるDNA修復欠損の特徴を呈した患者におけるMSICareとMSISensorの分析比較
MMR、MMR/POLEまたはPOLEに関連する変異の特徴を呈するTCGA汎癌患者34名のうち、22/34が、MSICareでMSIとして同定されたが(データは示さない)、14/34は、MSISensorでMSIと同定された(データは示さない)。侵襲性乳癌(BRCA)および食道癌(CESC)において、MMR変異の特徴を有する患者全員が、MSICareによりMSIに分類され、POLEの特徴を有する患者は、MSSと同定される(データは示さない)。MSIsensorを用いると、これらの2つの癌の型では、MSSと同定された(MSIsensorスコア<10)患者の5/7が、MMR変異の特徴を呈し、2/7が、POLEの特徴を呈する(データは示さない)。これは、MSICareの結果が侵襲性乳癌および食道癌におけるMMR変異の特徴と充分に相関するようであることを示唆している。
【0150】
MSICareを用いた脳腫瘍におけるMSIレベルの評定
脳腫瘍患者では、マイクロサテライト不安定性レベルがMSICareを用いたMMRプロフィシェント脳腫瘍試料(n=8)よりもCMMRD(n=4)、LYNCH(n=3)およびpost_TMZ(n=17)MMRデフィシエント脳腫瘍試料で高いが、これがMSISensorには当てはまらないことを、本発明者らは観察した(
図11)。これらの結果は、MSIcareが脳腫瘍においてMSI癌を診断するのに用いられ得ることを示唆している。しかし、予想どおり、MSI/dMMR脳腫瘍試料は、例えばMSI CRCに比較して軽度のMSI表現型を呈したため、最適なカットオフ値を定義するには、追加の実験が必要となる(MSI PCRが脳腫瘍においてMSIを検出できないことを思い出させる)。
【0151】
CRCの正常試料不含の固形腫瘍におけるMSICare診断
それぞれIHCおよびPCR MSIを用いて、108例がMMRd/MSIで、20例がMMRp/MSSであったC4コホートからの一連の128例の大腸試料において、適合する正常DNAを参照しないMSICare法が、MSIを検出するために適用された。全試料が、このアプローチを用いて正しく分類され(
図12)、この新しいMSICareバージョン、即ちWIND-MSICareが、CRCにおいてMSIを検出するのにMSICareと同様に感度がある可能性があることが強調された。追加的実験が、汎癌においてWIND-MSICareの性能を調査するために進行中である。
【0152】
腫瘍循環DNAにおけるMSICare診断
WIND-MSICareは、転移性CRCの患者(MSI 3名、MSS 1名)の血液から抽出された循環腫瘍DNAにおいてMSIを検出するために再度テストされた。このパイロット試験では、このアルゴリズムが、ICI療法を受ける前のMSI CRC患者からの3つの試料においてMSIを検出することができた(
図13)。対照的に、予測どおりMSS CRC患者において、そしてICI療法を受けた後のMSI CRC患者からの3つの試料においても、MSIを検出することができなかった(
図13)。それらが、小さな患者群のみで得られたとしても、これらの結果は、WIND-MSICareがMSI CRC患者の血漿中のMSIを検出するのに利用できる可能性を示している。非転移性MSI CRCの患者および/または転移性もしくは非転移性非大腸癌の患者において性能を調査するには、追加の結果が必要となる。
【0153】
結論
複数の発表が、近年になり、全く別のコンピュテーショナルアルゴリズムを利用することによりヒト癌におけるMSIの検出のためのNGSの潜在性を強調した(18、19、26~29)。これらのうち、MSISensorは、FDA認可を受けており、腫瘍の原発部位にかかわらず、転移癌患者のICI治療の処方を案内するのに用いられる。MSISensorが、多数のCRCをはじめとする進行固形癌でテストされた。しかし、このNGSを元にしたテストの性能は、参照PCRおよびIHC法を用いて過去にMSI/dMMR状態を評定された大きなCRC群ではまだ評価されていない。MSISensorの正確性は、MSI/dMMR mCRCと思われて次にICIで処置される患者にとって、特に重要である。この試験において、本発明者らは、MSISensorがMSIの検出のための感度が欠如しているという明確な証拠を提供する。これは、大規模な特化されたテスト施設で実施されたIHCおよびMSI-PCR法により過去にMSI/dMMRまたはMSS/pMMRとして確認されたmCRCおよびnmCRC試料の大規模コホートで示された。これらの結果は、ICI治療に特別な臨床関連性がある。それらの結果は、MSI mCRC患者の前向きコホートにおいて、MSI-PCRおよびIHCテストを行わないMSISensorのみからの結果の考察が、およそ16%(4/15)の患者がICI処置を提供されないことにつながった。MSISensorにより検出されなかった4名のうち、3名は、処置に応答することが見出された。大規模な後向き患者コホートにおいて本明細書で示されたnmCRCにおけるMSIの検出のための感度の欠如は、リンチ症候群の検出不能などの他の有害な臨床結果も有する可能性がある。これらの知見から、それらは、CRCにおけるMSIの同定のためのNGSに基づく基準を緊急に変更する必要があると結論づけている。CRC患者における本発明の結果は、見出されたNGSが、ICK遮断療法に対して長期の陽性反応を呈した前立腺患者2名からのdMMR腫瘍においてMSIを検出することができなかった別の試験の結果と一致する(30)。両方の腫瘍が、多量の変異量および高密度の腫瘍内CD3細胞浸潤を示した。それゆえそれらは、TCGAからの胃および子宮内膜腫瘍の本試験における解析によっても示唆されたとおり、MSIの検出のためのMSISensorの低感度が、全ての腫瘍の型に適用される可能性を推定している。
【0154】
MSIの検出のために本明細書で提案された新しいMSICareバイオインフォマティクスツールは、MSISensorに比較してかなり良好な性能を示す。それは、本明細書でテストされたCRCコホートにおいてPCR-MSIに比較して100%の感度および特異度を有し、こうしてゴールドスタンダートのIHCおよびMSI-PCR法の性能に一致する。重要なこととして、それは、最初にMSISensorにより検出されなかった4例のmCRCにおいてMSIを検出し、そのうち3例は、免疫療法に陽性反応を示した。臨床腫瘍学におけるMSIの解析のための専門施設として、それらは、腫瘍DNA中のMSI検出が特異度を有しながら高い感度になるように、このバイオアナリシスツールを最適化した。MSICareの使用により、MSI原発腫瘍で当てはまることの多い、間質組織が多量に混入されたCRCにおいてMSI癌を診断することを可能にした。注目すべきこととして、この新しいアルゴリズムは、MLH1、MSH2、MSH6またはPMS2における原発MMR欠陥にかかわらず、FFPEおよび凍結した原発または転移組織試料の両方で同じ性能を示し、各々の組織材料が解析に適することが示唆される。
【0155】
とりわけMSICareは、MSI癌を診断することがより困難であるMSH6欠損のCRCと、希少なPMS2欠損のCRCと、においてMSIを同定するのに、MSISensorと対照的に適していることが照合された。重要なこととして、同じくMSISensorと対照的に、MSIの評定の性能は、マーカのMSK-Impact(商標)パネルに制限された全体的または部分的エクソームデータで検定された場合に、依然として最適であった。MSICareはまた、腫瘍試料のターゲットシークエンシングに続いて最適に設計されたマイクロサテライトマーカセット(MSIDIAG)と共に活用した場合に、素晴らしい性能を示した。独立したCRC群で異なるシークエンシング方策によりMSIを検出するMSICareの並外れた診断性能が、CRCにおいてMSIを検出するこの方法の関連性を高レベルの証拠で検証する。MSIDIAGパネルは、腫瘍DNA中のMSIを検出するための特に興味深いモノヌクレオチド反復を含み、それゆえこのアッセイの最適感度のために、ターゲットシークエンシング解析においてこのパネルをMSICareと共に使用することが、推奨される。要約すると、これらのデータは、MSICareが、自家製またはFDA認可のパネルを用いてWESまたはターゲットNGSからのCRCにおけるMSI表現型の決定のための新しいNGSに基づく国際参照法になる潜在性を有することを確定している。特にMSIは、転移環境で不可欠のセラノスティックバイオマーカになりつつあるため、CRC患者の管理におけるトランスレーショナル・リサーチ、臨床試験および日常的臨床実技において非常に有用になるはずである。
【0156】
要約すると、特にMSIは、転移環境で不可欠のセラノスティックバイオマーカになりつつあるため、MSICareは、CRC患者および他の癌の管理において日常的臨床実技に非常に有用となろう。
【0157】
参考資料:
本出願全体を通して、様々な参考資料が、本発明が属する当該技術分野の先端技術を記載している。これらの参考資料の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
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【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする患者においてMSI癌を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍試料と、入手可能ならば正常試料と、からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、または対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する前記腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)前記正常試料が入手可能であるか否かに応じて各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)前記MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびvii)ステップvi)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、方法。
【請求項2】
i)前記患者から得られた腫瘍試料および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、vi)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、ならびにvii)ステップvi)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、請求項1に記載の必要とする患者においてMSI癌を診断する方法。
【請求項3】
i)前記患者から得られた腫瘍試料からDNAを抽出すること、ii)前記対応する正常試料中で少なくとも12核酸の長さを有する前記腫瘍試料中のモノヌクレオチド反復(MNR)の数(N)をシークエンシングすること、iii)前記MNRのための正常な多型ゾーンを評価すること、iv)各MNRの前記正常な多型ゾーンの外部のみの前記腫瘍試料中に出現した変異型MNRを評価すること、v)前記腫瘍試料から得られた各MNRのΔ比を計算すること、vi)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、vii)調整Δ比を計算すること、viii)MNRのΔ比の総数に対する変異調整Δ比でのMNRの数の比をとることによりMSICareスコアを得ること、およびix)ステップviii)で得られた前記MSICareスコアが、計算された閾値より大きい場合に、前記必要とする患者がMSI癌を有すると結論づけること、を含む、請求項1に記載の必要とする患者においてMSI癌を診断する方法。
【請求項4】
前記癌が、転移性であるか、または転移性でない、請求項1~3
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、大腸癌、胃癌または子宮内膜癌である、請求項1~4
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記結果を前記患者に伝達する更なるステップが追加される、請求項1~5
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
必要とする患者においてMSIの変異を診断する方法であって、i)前記患者から得られた腫瘍および正常試料からDNAを抽出すること、ii)前記患者の前記正常試料の前記DNA中の少なくとも12核酸の長さを有するモノヌクレオチド反復(MNR)配列と、前記患者の前記腫瘍試料の前記DNA中の対応するMNRと、の数(N)をシークエンシングすること、iii)各MNRのΔ比を計算すること、iv)前記腫瘍試料の腫瘍純度(TP)を計算すること、v)調整Δ比を計算すること、ならびにvi)前記調整Δ比が<50%であれば前記MNRが野生型であると結論づけて、前記調整Δ比が≧50%であれば前記MNRが変異していると結論づけること、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~6
のいずれか一項に記載の
MSI癌を診断するための方法によりMSI癌を有すると同定された患者において癌を処置するための方法であって、前記患者に、治療有効量の放射線療法、化学療法、免疫療法、またはそれらの組合わせを施すことを含む、方法。
【国際調査報告】