(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】一酸化窒素放出組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61L 33/06 20060101AFI20240220BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20240220BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240220BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20240220BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20240220BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20240220BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20240220BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20240220BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240220BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61L33/06 300
A61L29/04
A61L29/16
A61L29/08 100
A61L31/04
A61L31/10
A61L31/12 100
A61L29/12 100
A61L31/16
A61L15/26 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546410
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2022014689
(87)【国際公開番号】W WO2022169741
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522219098
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ジョージア リサーチ ファンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンダ,ハイテシュ
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス,ショーン ピー.
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA14
4C081AB13
4C081AB16
4C081AB17
4C081AC07
4C081AC08
4C081BA05
4C081BA14
4C081BB06
4C081CA272
4C081CC05
4C081CE02
4C081DA03
4C081DA05
4C081DC03
4C081DC04
4C081DC06
4C081EA06
(57)【要約】
(i)ポリシロキサンネットワーク及び(ii)ポリシロキサンネットワークに共有結合した複数の一酸化窒素供与部分を含む一酸化窒素放出材料と、(b)シリコーン油と、を含む組成物が本明細書に記載される。また、本明細書に記載の組成物から構成される物品、及びそれを使用するための方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の組成物は、非常に持続的で長期的な一酸化窒素放出を提供し、これは、例えば、局所的な血小板活性化、フィブリノーゲン付着、及びバイオフィルム形成を長期間にわたって防止するなど、多数の生物学的活性を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)(i)ポリシロキサンネットワーク、及び(ii)前記ポリシロキサンネットワークに共有結合した複数の一酸化窒素供与部分を含む一酸化窒素放出材料と、
(b)シリコーン油と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソチオールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、メチルS-ニトロソチオグリコレート、及びそれらの誘導体の残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンネットワークが、アミン官能化架橋剤で架橋されたポリシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、又はポリジフェニルシロキサンを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、約2,500cSt~約4,000cStの動粘度を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記一酸化窒素放出材料が生成され、方法が、
ポリシロキサンをアミン官能化架橋剤で架橋させて、ポリシロキサンネットワークを生成することと、
チオラクトンを前記ポリシロキサンネットワークに共有結合させて、チオール官能化ポリシロキサンネットワークを生成することと、
有機酸の存在下で、前記チオール官能化ポリシロキサンネットワーク内のチオール基をニトロソ化して、前記一酸化窒素放出材料を生成することと、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機酸が、有機スルホン酸を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、4-オクチルベンゼンスルホン酸、酢酸、ギ酸、又は乳酸を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機酸が、前記ポリシロキサンネットワークの約0.1重量パーセント~約2重量パーセントの量である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリシロキサンが、ヒドロキシ末端ポリシロキサンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記アミン官能化架橋剤が、以下の構造を有し、
【化1】
式中、R
1が、置換若しくは非置換C
1-C
20アルキル、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C
2-C
20アルケニル、置換若しくは非置換C
2-C
20ヘテロアルケニル、置換若しくは非置換C
1-C
20アルコキシ、又は置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルコキシから選択され、
R
2の各出現が、ヒドロキシ又はアルコキシである、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
R
2の各出現が、ヒドロキシ、メトキシ、又はエトキシである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
R
1が、置換若しくは非置換C
1-C
12アルキル、又は置換若しくは非置換C
1-C
12アミノアルキルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
R
1が、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記チオラクトンが、以下の構造を有し、
【化2】
式中、R
4が、置換若しくは非置換C
1-C
12アルキルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項18】
前記チオラクトンが、以下の構造を有し、
【化3】
式中、R
5の各出現が、独立して、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
6が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
7が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基、又は式-NHC(O)R
8のアミド基であり、式中、R
8が、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基である、請求項7に記載の組成物。
【請求項19】
前記チオラクトンが、N-アセチルシステインチオラクトン、N-アセチル-ホモシステインチオラクトン、ホモシステインチオラクトン、及びブチリル-ホモシステインチオラクトンからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項20】
前記一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、又はメチルS-ニトロソチオグリコレートの残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記一酸化窒素供与部分が、ポリマーマトリックス1ミリグラム当たり約0.15マイクロモル~前記ポリシロキサンネットワーク1ミリグラム当たり約0.80マイクロモルの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記シリコーン油が、約10cSt~約500cStの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
一酸化窒素放出材料及びシリコーン油が、前記組成物が約0.5~約3の膨潤比を有するのに十分な量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
一酸化窒素が、37℃で少なくとも30日間、前記組成物から放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、前記一酸化窒素放出材料とシリコーン油との混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記一酸化窒素放出材料に、前記シリコーン油が含浸される、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1つの表面を含む物品であって、前記少なくとも1つの表面が、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされる、物品。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物で製造された1つ以上の構成要素を含む、物品。
【請求項29】
前記物品が、医療デバイスを含む、請求項27に記載の物品。
【請求項30】
前記デバイスが、埋め込み型デバイスである、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記デバイスが、血管カテーテル、導尿カテーテル、他のカテーテル、冠動脈ステント、創傷被覆材、及び血管グラフトからなる群から選択される、請求項29に記載の物品。
【請求項32】
物品を作製する方法であって、前記方法が、
(a)一酸化窒素放出材料を、前記物品の少なくとも1つの表面に塗布して、第1のコーティングされた物品を生成することと、
(b)前記第1のコーティングされた物品にシリコーン油を塗布することと、を含む、方法。
【請求項33】
前記一酸化窒素放出材料が、約0.1mm~約5mmの厚さを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1のコーティングされた物品が、約1時間~約12時間、前記シリコーン油に浸される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
物品の表面上での細菌増殖を防止する方法であって、前記方法が、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物を前記表面に塗布することを含む、方法。
【請求項36】
物品の表面上のバイオフィルム形成を防止する方法であって、前記方法が、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物を前記表面に塗布することを含む、方法。
【請求項37】
物品の表面上のフィブリノーゲン形成を防止する方法であって、前記方法が、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物を前記表面に塗布することを含む、方法。
【請求項38】
物品の表面上のフィブリノーゲン形成を防止する方法であって、前記方法が、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物を前記表面に塗布することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援の研究又は開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された賞R01HL134899及び疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)によって授与された賞75D3011P06553の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において、特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月4日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第63/145,760号に対する利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
血管カテーテル、胸部ポート、ステント、及びペースメーカーなどの長期留置医療デバイスは、相当数の疾患及び病気の診断、緩和、及び治療に不可欠である。しかしながら、現在利用可能なデバイスは、感染症、バイオファウリング、及びデバイス誘発性血栓症を含む医療デバイスの使用に一般的に関連する破滅的な事象のために頻繁に故障する。医療デバイス関連の感染症は、相当数の院内感染症を意味する。重症患者では、血管カテーテルの使用が血流感染症の87%を占め、導尿カテーテルの使用が尿路感染症の95%を占め、機械的換気が肺炎感染症の86%を占めている(非特許文献1)。静脈内療法、抗生物質治療、及び輸血を施すために使用される血管アクセスは、外部環境と血流との間の障壁を破壊し、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)、敗血症性血栓性静脈炎、心内膜炎、及び他の転移性感染症を含む局所感染症及び全身感染症のリスクを更に増加させる。(非特許文献2)感染症を制御するための現在の標準は抗生物質治療であるが、抗生物質耐性の出現と微生物バイオフィルム(異物表面上に容易に形成され、抗生物質の浸透、限られた栄養素の取り込み、及び適応ストレス応答を含む防御メカニズムを示す)の持続的な存在との組み合わせに起因して(非特許文献3)、感染症を予防し、かつそれに対抗するための代替手段が必要である。
【0004】
感染症の問題の他に、医療デバイスが血液に曝露されると、タンパク質が急速に吸着し、複雑な一連の生化学反応が引き起こされ、最終的には血栓が形成される。表面上に形成された凝血塊が、デバイスを完全に閉塞させ、デバイスの機能を妨害し、剥がれて、更に下流へと移動し、肺塞栓症又は心筋梗塞を引き起こす可能性がある(非特許文献4)。静脈血栓塞栓症は、留置血管アクセスデバイスに関連する最も一般的な合併症のうちの1つであり、中心静脈カテーテルを有する重症患者の11~25%で発生すると報告されている(非特許文献5)。このような合併症は、医療費の増加、入院の延長、又は罹患率の増加をもたらす可能性がある(非特許文献6)。デバイスの開存性を維持するために、臨床医は現在、血栓症を予防するべく抗凝固療法を施しているが、全身性抗凝固療法は、出血を避けながら凝固を予防するために過剰投与と投与不足とのバランスを慎重に取る必要がある(非特許文献7)。留置血管アクセスデバイスの場合、ヘパリンベースのロック溶液療法は、デバイスの閉塞を予防するために定期的に使用されているが、低血小板数、内出血、及び血小板減少症などの合併症を引き起こす可能性がある(非特許文献8,9)。全身抗凝固療法もまた、緻密なフィブリンネットワークの形成における中心物質であり、かつ、付着及びバイオフィルム発達を増やすために細菌によって利用されるアンカーであるフィブリノーゲンなどの血漿タンパク質の吸着を防ぐことができない(非特許文献10-12)。
【0005】
医療デバイス関連感染症の頻度を減らすために、研究者らは、細菌のコロニー形成に対抗するための様々な抗菌表面修飾(例えば、抗生物質放出表面、銀ベースのコーティング)を開発し始めている(非特許文献13,14)。しかしながら、抗生物質耐性の開発は依然として、抗生物質溶出表面の重大な制限要因となっている。14更に、抗生物質及び防腐剤を含浸させた市販のカテーテル(例えば、銀コーティングされた)は、感染症に対する様々な臨床的有効性を示している(非特許文献15-19)。実際、銀ナノ粒子が含浸された中心静脈カテーテルは、対照と比較して、後天性CRBSIの割合に変化がないことを実証した(非特許文献20)。更に、銀溶出中心静脈カテーテルは、急速なトロンビン生成の結果として血栓誘発性応答を誘発し、血液接触医療デバイスへの適用を制限している(非特許文献21)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面誘発血栓症を防止するために、血液適合性表面修飾は、タンパク質の吸着を防止するか、血小板の付着及び活性化を阻害するか、又はトロンビン媒介反応を阻害することによって、凝固カスケードを破壊することを目的とする。抗血栓性表面修飾は、血液適合性を増加させる方法に基づいて、2つのカテゴリに分類することができる。(1)血液成分との接触を最小限に抑える受動的な表面戦略、及び(2)凝固を直接中断する抗血栓剤又は線維素溶解剤を保存及び放出する能動的な表面戦略(非特許文献22)。しかしながら、医療デバイス誘発性血栓症を引き起こす生理学的成分及びメカニズムが複雑であるために、医療デバイス用の長期抗血栓溶液は、戦略の組み合わせを必要とする可能性が高い(非特許文献23)。血液接触デバイスの日常的な故障は、その材料が周囲の血管系の多機能抗血栓機能を再現することができないことに起因する可能性がある(非特許文献24)。これまでに行われた多大な努力にもかかわらず、包括的な血液適合性を示す単一のプラットフォームはまだ製造されていない(非特許文献25)。2
【課題を解決するための手段】
【0007】
(i)ポリシロキサンネットワーク及び(ii)ポリシロキサンネットワークに共有結合した複数の一酸化窒素供与部分を含む一酸化窒素放出材料と、(b)シリコーン油と、を含む組成物が本明細書に記載される。また、本明細書に記載の組成物から構成される物品、及びそれを使用するための方法が本明細書に記載される。本明細書に記載の組成物は、非常に持続的で長期的な一酸化窒素放出を提供し、これは、例えば、局所的な血小板活性化、フィブリノーゲン付着、及びバイオフィルム形成を長期間にわたって防止するなど、多数の生物学的活性を有する。
【0008】
他の組成物、装置、方法、特質、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討すると、当業者に明らかであるか、又は明らかになるであろう。このような追加の組成物、装置、方法、特質、及び利点は全て、本説明に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に記載されるその様々な実施形態の詳細な説明を、添付の図面と併せて検討すると、本開示の更なる態様が容易に理解されるであろう。
【0010】
【
図1】カテーテル関連感染症が血管内カテーテル内でどのように発生し得るかを示す。バイオフィルムは、デバイス挿入界面で形成されて、従来の抗生物質療法では治療できない感染症を引き起こす可能性がある。また、血栓の形成は、分離して身体の他の部分に移動する凝血塊を形成する可能性がある細菌を捕捉し得る。
【
図3】28日間にわたる材料の抗菌活性を評価するために使用されるCDCバイオリアクタの設定を示す。
【
図4】SNAP固定化され、シリコーン油注入されたPDMS(LI-NO-PDMS)の製造を示す。シリコーン油(50cst)を注入する前に、NO供与体SNAPをヒドロキシ末端PDMSに共有結合させた。
【
図5A】NO-PDMS材料の液体注入最適化を示す。(A)シリコーン油中のNO-PDMS材料の膨潤比。最適化された膨潤時間は8時間であり、膨潤比は2.0であると判明した。
【
図5B】NO-PDMS材料の液体注入最適化を示す。(B)37℃で7日間、PBS中で保存した場合のNO-PDMS及びLI-NO-PDMS表面の滑り角。LI-NO-PDMSは、インキュベーション期間全体にわたって、NO-PDMSと比較して有意に低い滑り角測定値を示す(p<0.001)。
【
図6A】(A)30日の過程にわたって37℃で0.01MのEDTAを含有するPBS内に配置されたときのLI-NO-PDMS及びNO-PDMS材料のNO放出特徴を示す。
【
図6B】(B)37℃で48時間、PBS中のNO-PDMS及びLI-NO-PDMSポリマーの両方からのSNAP浸出(ポリマー1mg当たりのSNAPのmg)。
【
図7】24時間の付着アッセイ及びCDCバイオフィルムリアクタ(24時間超の研究用)を使用した、24時間(A)、7日(B)、14日(C)、及び28日(D)後の、MRSAに対するLI-NO-PDMS表面の抗菌性結果を示す。群間の細菌減少の有意性は、ANOVA統計解析に従って示した(*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001)。
【
図8】24時間の付着アッセイ及びCDCバイオフィルムリアクタ(24時間超の研究用)を使用した、24時間(A)、7日(B)、14日(C)、及び28日(D)後の、P.aeruginosaに対するLI-NO-PDMS表面の抗菌性結果を示す。群間の細菌減少の有意性は、ANOVA統計解析に従って示した(*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001)。
【
図9】(A)PDMS及びLI-NO-PDMSポリマー表面へ吸着されたフィブリノーゲンの定量、並びに(B)インビトロでのブタ血小板リッチ血漿曝露の2時間後の血小板付着測定値を示す。蛍光標識されたフィブリノーゲン(C~F)の画像は、NO-PDMS試料が増加したタンパク質吸着レベルを示す一方で、LI-PDMS及びLI-NO-PDMS表面は、減少したタンパク質吸着レベルを示したことを示す。(G~N)SEM画像は、60秒間のブタ全血曝露後にも撮影され、対照PDMS表面と比較して、LI-NO-PDMS表面上の活性化血小板及びフィブリン形成の顕著な減少を示した。赤色の矢印は活性化された血小板を示し、緑色の矢印は不活性化された血小板を示す。
【
図10】生理学的条件で24時間後に調製されたフィルムから集められた浸出液で処理されたBJ線維芽細胞及びHUVECの相対細胞生存率を示す。データを、平均値±SDで表した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有する、開示される組成物及び方法が関連する技術分野の当業者には、本明細書に開示される多くの修正及び他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本開示が開示される特定の実施形態に限定されず、修正及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。当業者は、本明細書に記載の態様の多くの変形及び適応を認識するであろう。これらの変形及び適応は、本開示の教示に含まれ、本明細書の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0012】
特定の用語が本明細書で採用されるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0013】
本開示を読むと当業者には明らかであろうように、本明細書に記載及び例証される個々の実施形態の各々は、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の様々な実施形態のいずれかの特質から容易に分離され得るか、又はこれらと組み合わされ得る別個の構成要素及び特質を有する。
【0014】
任意の列挙された方法は、列挙されたイベントの順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。すなわち、特に明記されない限り、本明細書に示される任意の方法又は態様が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されない。したがって、方法請求項は、特許請求の範囲又は説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであると具体的に記述しない場合、いかなる点においても、順序が推論されることは決して意図されない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的な構成若しくは句読点に由来する明白な意味、又は明細書に記載される態様の数若しくはタイプに関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非明示的根拠について保持される。
【0015】
本明細書で言及される全ての刊行物は、引用された刊行物に関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書で提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立して確認することができる。
【0016】
本開示の態様は、システム法定クラス(system statutory class)などの特定の法定クラスで説明及び特許請求され得るが、これは、便宜上のみのものであり、当業者は、本開示の各態様が任意の法定クラスで説明及び特許請求され得ることを理解するであろう。
【0017】
本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが更に理解されるであろう。
【0018】
本開示の様々な態様を説明する前に、以下の定義が提供され、特に指示しない限り、使用されるべきである。追加の用語は、本開示の他の場所で定義され得る。
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、言及されるような記載された特質、整数、ステップ、又は構成要素の存在を指定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の特質、整数、ステップ、若しくは構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、各用語「によって(by)」、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、「から構成される(comprised of)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「伴う(involving)」、「伴う(involves)」、「伴われる(involved)」、「有する(having)」、「有する(has)」、及び「など(such as)」は、オープンで非限定的な意味で使用され、互換的に使用され得る。更に、「含む(comprising)」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語によって包含される例及び態様を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語に包含される例を含むことが意図されている。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段明らかに指示されない限り、複数の指示対象を含む。このように、例えば、「ポリシロキサン」への言及は、2つ以上のそのようなポリシロキサンの混合物又は組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。
【0021】
比、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では、範囲の形式で表すことができることに留意されたい。更に、範囲の各終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。同様に、値が先行詞「約」の使用により近似値として表される場合、特定の値が更なる態様を形成することを理解されたい。例えば、値「約10」が開示される場合、「10」もまた開示される。
【0022】
範囲が表される場合、更なる態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。例えば、記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界の一方又は両方を除く範囲も本開示に含まれ、例えば、句「x~y」は、「x」から「y」までの範囲、並びに「x」よりも大きく、「y」よりも小さい範囲を含む。範囲はまた、上限、例えば、「約x、y、z、又はそれ以下」として表すことができ、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲並びに「x未満」、y未満」、及び「z未満」の範囲を含むと解釈されるべきである。同様に、句「約x、y、z、又はそれ以上」は、「約x」、「約y」、及び「約z」の特定の範囲、並びに「xより大きい」、「yより大きい」、及び「zより大きい」の範囲を含むと解釈されるべきである。加えて、フレーズ「約『x』~『y』」(ここで、「x」及び「」‘は数値である)は、「約『x』~約『y』」を含む。
【0023】
このような範囲形式は、利便性及び簡潔性のために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及びサブ範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又はサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示すると、「約0.1%~5%」の数値範囲は、約0.1%~約5%の明示的に列挙された値だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、約1%、約2%、約3%、及び約4%)並びにサブ範囲(例えば、約0.5%~約1.1%、約5%~約2.4%、約0.5%~約3.2%、及び約0.5%~約4.4%、及び他の可能なサブ範囲)も含むように解釈されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「約」、「おおよそ」、「で又は約(at or about)」、及び「実質的に」という用語は、問題となる量又は値が、正確なその値、又は特許請求の範囲に記載されているか、若しくは本明細書で教示されているような同等の結果若しくは効果を提供する値であり得ることを意味する。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の量及び特徴は、正確ではなく、かつ正確である必要はないが、所望に応じて、同等の結果又は効果が得られるように、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に既知の他の因子を反映して、近似及び/又はより大きい若しくはより小さい場合があることが理解される。状況によっては、同等の結果又は効果を提供する値を合理的に決定することができない場合がある。そのような場合には、本明細書で使用される場合、別段の指示又は推測がない限り、「約」及び「で又は約」は±10%の変動を示す公称値を意味することが一般に理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の量若しくは特徴は、そのようであると明示されているか否かにかかわらず、「約」、「おおよそ」、又は「で又は約」である。定量的値の前に「約」、「おおよそ」、又は「で又は約」が使用される場合、パラメータはまた、特に明記されない限り、特定の定量的値自体を含むことが理解される。
【0025】
化学種の残基は、本明細書及び結びの請求項で使用される場合、その部分が実際に化学種から得られるかどうかにかかわらず、特定の反応スキームにおける化学種の結果として得られる生成物、又はその後の製剤若しくは化学製品である部分を指す。したがって、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されるかどうかにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-OCH2CH2O-単位を指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、その残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はそのエステルを反応させることによって得られるかどうかにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、後述するものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物に対して同じであっても異なってもよい。本開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容される置換基によって制限されることを意図しない。また、「置換」又は「で置換された」という用語は、そのような置換が、置換された原子及び置換基の許容される原子価に従うものであり、置換が安定な化合物、例えば、再配列、環化、消失等による形質変換を自発的に受けない化合物をもたらすという黙示的な条件を含む。特定の態様では、明示的に反対の指示がない限り、個々の置換基は更に任意選択的に置換(すなわち、更に置換又は非置換)され得ることも企図される。
【0027】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルを指す。「アルキル」という用語は、一般式-(CHR)n-で表されるアルクリレン(alklylene)基も指し、式中、Rは、上記で定義されるアルキ(alky)基(例えば、メチル、エチルなど)であり、nは、1~20の整数である。アルクリレン基の例には、メチレン、エチレン、プロピレンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格に30個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖の場合はC1-C30、分岐鎖の場合はC3-C30)、20個以下、12個以下、又は7個以下である。同様に、いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、それらの環構造に3~10個の炭素原子を有し、例えば、環構造に5、6又は7個の炭素を有する。本明細書、実施例、及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「アルキル」(又は「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含むことを意図しており、後者は、炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置換する1つ以上の置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基には、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、若しくはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、若しくはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸塩、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
炭素の数が別途指定されない限り、本明細書で使用される場合、「低級アルキル」とは、その骨格構造に1~10個の炭素、又は1~6個の炭素原子を有する、上記で定義されるアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、同様の鎖長を有する。本出願に記載される実施形態では、好ましいアルキル基は、低級アルキルである。いくつかの実施形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は、低級アルキルである。
【0030】
炭化水素鎖上で置換された部分自体が、適切であれば置換され得ることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(硫酸塩、スルホンアミド、スルファモイル、及びスルホネートを含む)、及びシリル基、並びにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、及びエステルを含む)、-CF3、-CNなどを含み得る。シクロアルキルは、同じように置換することができる。
【0031】
「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する直鎖若しくは分岐鎖、若しくは環状炭素含有ラジカル、又はそれらの組み合わせを指す。好適なヘテロ原子には、O、N、Si、P、Se、B、及びSが含まれるが、これらに限定されず、リン原子及び硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化される。ヘテロアルキルは、アルキル基について上記で定義したように置換することができる。
【0032】
「アルキルチオ」という用語は、硫黄ラジカルが結合した、上記で定義されたアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、「アルキルチオ」部分は、-S-アルキル、-S-アルケニル、及び-S-アルキニルのうちの1つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、及びエチルチオが挙げられる。「アルキルチオ」という用語はまた、シクロアルキル基、アルケン及びシクロアルケン基、並びにアルキン基を包含する。「アリールチオ」は、アリール又はヘテロアリール基を指す。アルキルチオ基は、アルキル基について上記で定義したように置換することができる。
【0033】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、長さ及び上記のアルキルへの置換が類似するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含有する、不飽和脂肪族基を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルコキシル」又は「アルコキシ」という用語は、酸素ラジカルが結合した、上記で定義されるようなアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、及びtert-ブトキシが含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合した2つの炭化水素である。したがって、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、及び-O-アルキニルのうちの1つによって表すことができるようなアルコキシルであるか、又はアルコキシルに似ている。アロキシは、-O-アリール又はO-ヘテロアリールで表すことができ、アリール及びヘテロアリールは、以下に定義されるとおりである。アルコキシ及びアロキシ基は、アルキルについて上述したように置換することができる。
【0035】
「アミン」及び「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、非置換アミン及び置換アミンの両方、例えば、以下の一般式で表すことができる部分を指す:
【化1】
式中、R
9、R
10、及びR’
10は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、-(CH
2)
m-R
8を表すか、又はR
9及びR
10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成し、R
8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、又は多環を表し、mは、0又は1~8の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、R
9又はR
10のうちの1つのみがカルボニルであり得、例えば、R
9、R
10、及び窒素は、一緒になって、イミドを形成しない。更に他の実施形態では、「アミン」という用語は、例えば、R
9及びR
10のうちの1つがカルボニルを表すアミドを包含しない。追加の実施形態では、R
9及びR
10(並びに任意選択的にR’
10)は、それぞれ独立して、水素、アルキル若しくはシクロアルキル、アルケニル若しくはシクロアルケニル、又はアルキニルを表す。したがって、本明細書で使用される場合、「アルキルアミン」という用語は、上記で定義されるように、それに結合された置換(アルキルについて上記で説明されるように)又は非置換アルキルを有する、すなわち、R
9及びR
10のうちの少なくとも1つがアルキル基である、アミン基を意味する。
【0036】
「アミド」という用語は、当技術分野では、アミノ置換カルボニルとして認識されており、以下の一般式で表すことができる部分を含む:
【化2】
式中、R
9及びR
10は、上記で定義されるとおりである。
【0037】
「アリール」は、本明細書で使用される場合、C5-C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、又は二ヘテレオ環式(bihetereocyclic)環系を指す。広く定義される「アリール」は、本明細書で使用される場合、0~4個のヘテロ原子、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどを含み得る5員、6員、7員、8員、9員、及び10員の単環芳香族基を含む。環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールヘテロ環」又は「ヘテロ芳香族」とも呼ばれ得る。芳香族環は、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(又は四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、-CF3、-CN、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つ以上の置換基で1つ以上の環位置において置換され得る。
【0038】
「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環(すなわち、「縮合環」)に共通である2つ以上の環式環を有する多環式環系を含み、環のうちの少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/又は複素環であり得る。複素環式環の例としては、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、及びキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。環のうちの1つ以上は、「アリール」について上記で定義されたように置換することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語は、アリール基(例えば、芳香族又はヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「炭素環」という用語は、環の各原子が炭素である芳香族又は非芳香族環を指す。
【0041】
「複素環」又は「複素環式」は、本明細書で使用される場合、3~10個の環原子、好ましくは5~6個の環原子を含有する単環式環又は二環式環の環炭素又は窒素を介して結合した環状ラジカルであって、炭素、並びに非過酸化物酸素、硫黄、及びN(Y)(式中、Yは、H、O、(C1-C10)アルキル、フェニル、又はベンジルである)からなる群からそれぞれ選択される1~4個のヘテロ原子からなり、任意選択的に、1~3個の二重結合を含有し、任意選択的に、1つ以上の置換基で置換されている、環状ラジカルを指す。複素環式環の例としては、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、及びキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。複素環式基は、任意選択的に、アルキル及びアリールについて上記で定義された1つ以上の位置において、1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、-CF3、及び-CNで置換され得る。
【0042】
「カルボニル」という用語は、当技術分野で認識されており、以下の一般式で表すことができるような部分を含む:
【化3】
式中、Xは、結合であるか、又は酸素若しくは硫黄を表し、R
11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表し、R’
11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表す。Xが酸素であり、R
11又はR’
11が水素ではない場合、当該式は、「エステル」を表す。Xが酸素であり、R
11が上記で定義されるようなものである場合、当該部分は、本明細書でカルボキシル基と称され、特にR
11が水素である場合、当該式は、「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R’
11が水素である場合、当該式は、「ホルメート」を表す。一般に、上記式の酸素原子が硫黄に置き換えられている場合、当該式は、「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R
11又はR’
11が水素ではない場合、当該式は、「チオエステル」を表す。Xが硫黄であり、R
11が水素である場合、当該式は、「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であり、R’
11が水素である場合、当該式は、「チオホルメート」を表す。他方、Xが結合であり、R
11が水素でない場合、上記式は、「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R
11が水素である場合、上記式は、「アルデヒド」基を表す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「モノエステル」という用語は、カルボン酸のうちの一方がエステルとして官能化され、他方のカルボン酸が遊離カルボン酸又はカルボン酸の塩である、ジカルボン酸の類似体を指す。モノエステルの例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、及びマレイン酸のモノエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、及びセレンが挙げられるが、これらに限定されない。他のヘテロ原子としては、ケイ素及びヒ素が挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ニトロ」という用語は、-NO2を意味し、「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br、又は-Iを意味し、「スルフヒドリル」という用語は、-SHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は、-OHを意味し、「スルホニル」という用語は、-SO2-を意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、本明細書に記載される化合物の全ての許容される置換基を指す。最も広い意味において、許容される置換基は、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子(例えば、1~14個の炭素原子)を含有する任意の他の有機基が挙げられるが、これらに限定されず、任意選択的に、線形、分岐、又は環状構造形態の酸素、硫黄、又は窒素基などの1つ以上のヘテロ原子が挙げられる。代表的な置換基としては、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C3-C20環状、置換C3-C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、及びポリペプチド基が挙げられる。
【0047】
窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。「置換」又は「置換された」は、そのような置換が、置換された原子及び置換基の許容される原子価に従うものであり、置換が安定な化合物、例えば、再配列、環化、消失等による形質変換を自発的に受けない化合物をもたらすという黙示的な条件を含むことが理解される。
【0048】
広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環状及び環状、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、本明細書に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物に対して同じであっても異なってもよい。窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。
【0049】
様々な態様では、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、これらの各々は、任意選択的に、1つ以上の好適な置換基で置換される。いくつかの実施形態では、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンの各々は、1つ以上の好適な置換基で更に置換され得る。
【0050】
置換基の例としては、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、-CN、アリール、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、及びニトロから選択される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、一般に、2つ以上の異なるモノマーから構成される単一のポリマー材料を指す。共重合体は、ランダム、ブロック、グラフトなどの任意の形態であり得る。コポリマーは、キャップされた末端基又は酸末端基を含む、任意の末端基を有することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「予防(防止)する」又は「予防(防止)する」という用語は、本明細書に記載の組成物を使用するときに、組成物が使用されない対照と比較して、疾患又は障害の1つ以上の症状(例えば、バイオフィルム形成)の発生の可能性を排除又は低減することとして定義される。
【0053】
一酸化窒素放出材料及び物品、並びにそれらの作製方法及び使用
一酸化窒素放出組成物を本明細書に記載する。一態様では、組成物は、(a)(i)ポリシロキサンネットワーク及び(ii)ポリシロキサンネットワークに共有結合した複数の一酸化窒素供与部分を含む一酸化窒素放出材料と、(b)シリコーン油と、を含む。本明細書に記載の組成物は、多数の生物学的活性を有する非常に持続的な長期一酸化窒素放出を提供する。
【0054】
一態様では、一酸化窒素放出材料中のポリシロキサンネットワークは、ポリシロキサンとアミン官能化架橋剤との反応生成物である。一態様では、ポリシロキサンは、アミン官能化架橋剤と反応することができる1つ以上の官能基を含む。一態様では、ポリシロキサンは、2つ以上のヒドロキシル基及び/又はアミノ基を含む。別の態様では、ポリシロキサンは、ヒドロキシル基で終端しており、本明細書では「ヒドロキシ末端ポリシロキサン」と称される。例えば、ポリシロキサンが直鎖である場合、ポリシロキサンの各末端は、ヒドロキシル基で終端する。他の態様では、ポリシロキサンが分岐鎖である場合、ポリシロキサンの各分岐は、ヒドロキシル基で終端する。
【0055】
一態様では、ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、又はポリジフェニルシロキサンである。別の態様では、ポリシロキサンネットワークを作製するために使用されるポリシロキサンは、ヒドロキシル基で終端したポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、又はポリジフェニルシロキサンである。一態様では、ポリシロキサンは、約2,500cSt~約4000cSt、又は約2,500cSt、2,550cSt、2,600cSt、2,650cSt、2,700cSt、2,750cSt、2,800cSt、2,850cSt、2,900cSt、2,950cSt、3,050cSt、3,100cSt、3,150cSt、3,200cSt、3,250cSt、3,300cSt、3,350cSt、3,400cSt、3,450cSt、3,500cSt、3,550cSt、3,600cSt、3,650cSt、3,700cSt、3,750cSt、3,800cSt、3,850cSt、3,900cSt、3,950cSt、若しくは4,000cStの動粘度を有し、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、2,550cSt~3,600cSt)。
【0056】
一態様では、アミン官能化架橋剤は、ポリシロキサンと反応してポリシロキサンネットワークを形成する1つ以上の基を含む。一態様では、アミン官能化架橋剤は、アミノシラン化合物である。一態様では、ポリシロキサンがヒドロキシル基で終端する場合、ヒドロキシル基は、アミノシラン化合物のシラン基と反応する。一態様では、アミノシラン化合物は、以下の構造を有する:
【化4】
式中、R
1は、置換若しくは非置換C
1-C
20アルキル、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C
2-C
20アルケニル、置換若しくは非置換C
2-C
20ヘテロアルケニル、置換若しくは非置換C
1-C
20アルコキシ、又は置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルコキシから選択され、R
2の各出現は、ヒドロキシ又はアルコキシである。一態様では、R
1は、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのC
1-C
10アルキル基である。
【0057】
複数の一酸化窒素供与部分は、ポリシロキサンネットワークに共有結合している。理論に束縛されることを望まないが、ポリシロキサンネットワークは、アミン官能化架橋剤に由来する複数のアミノ基を含む。アミノ基は更に、一酸化窒素供与部分又はその前駆体を共有結合させてポリシロキサンネットワークを生成する追加の化合物と反応させることができる。一態様では、1つ以上の一酸化窒素基を有する化合物をポリシロキサンネットワークと直接反応させて、一酸化窒素放出材料を生成することができる。
【0058】
他の態様では、ポリシロキサンネットワークは、一酸化窒素放出材料の前駆体である1つ以上の基を有する化合物と反応させることができる。一態様では、化合物は、続いてニトロシル化され得る1つ以上の硫黄基を有する。一態様では、ポリシロキサンネットワークは、チオラクトンと反応する。理論に束縛されることを望まないが、ポリシロキサンネットワークに存在するアミノ基は、チオラクトンと反応し、チオラクトン環が開環し、遊離チオール基又はイオンを生成する。一態様では。一態様では、チオラクトンは、以下の構造を有する:
【化5】
式中、R
4は、置換若しくは非置換C
1-C
12アルキル(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン)である。
【0059】
別の態様では、チオラクトンは、以下の構造を有する:
【化6】
式中、R
5の各出現が、独立して、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
6が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
7が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基、又は式-NHC(O)R
8のアミド基であり、式中、R
8が、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基である。
【0060】
一態様では、チオラクトンは、N-アセチルシステインチオラクトン、N-アセチル-ホモシステインチオラクトン、ホモシステインチオラクトン、ブチリル-ホモシステインチオラクトン、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0061】
一態様では、一酸化窒素放出材料は、複数の-S-NO基を含む。例えば、ポリシロキサンネットワークを上述のチオラクトンと反応させると、複数のチオール基が生成される。次いで、遊離チオール基をニトロシル化剤と反応させることによって、チオール基をニトロシル化することができる。一態様では、ニトロシル化剤は、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸イソペンチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸アミル、又は亜硝酸シクロヘキシルである。
【0062】
特定の態様では、チオール基のニトロシル化は、酸触媒の存在下で実行することができる。一態様では、有機酸は、式RS(O)2OHを有する有機スルホン酸であり、式中、Rは、本明細書で定義されるアルキル基又はアリール基である。一態様では、Rは、C1-C20アルキル基で置換されたアリール基である。一態様では、スルホン酸としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、又は4-オクチルベンゼンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されることはない。他の態様では、有機酸は、酢酸、ギ酸、又は乳酸であり得る。一態様では、使用される有機酸は、ポリシロキサンネットワークの約0.1重量パーセント~約2重量パーセント、又は約0.1重量パーセント、0.1重量パーセント、0.2重量パーセント、0.3重量パーセント、0.4重量パーセント、0.5重量パーセント、0.6重量パーセント、0.7重量パーセント、0.8重量パーセント、0.9重量パーセント、1.0重量パーセント、1.1重量パーセント、1.2重量パーセント、1.3重量パーセント、1.4重量パーセント、1.5重量パーセント、1.6重量パーセント、1.7重量パーセント、1.8重量パーセント、1.9重量パーセント、若しくは2.0重量パーセントであり、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、0.8重量パーセント~1.2重量パーセント)。
【0063】
ポリシロキサンネットワークに共有結合した一酸化窒素供与部分は、一酸化窒素放出材料を生成するために使用される出発材料の選択に応じて変化し得る。一態様では、一酸化窒素供与部分は、S-ニトロソチオールである。別の態様では、S-ニトロソチオールは、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、メチルS-ニトロソチオグリコレート、及びそれらの誘導体の残基である。別の態様では、一酸化窒素供与部分は、ジアゼニウムジオレートである。一態様では、ジアゼニウムジオレートは、ジアゼニウムジオール化ジブチルヘキサンジアミン又はその誘導体である。
【0064】
一態様では、一酸化窒素供与部分は、以下の構造による構造を有する:
【化7】
式中、Aは、一酸化窒素供与体であり、R
1は、置換若しくは非置換C
1-C
20アルキル、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C
2-C
20アルケニル、置換若しくは非置換C
2-C
20ヘテロアルケニル、置換若しくは非置換C
1-C
20アルコキシ、又は置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルコキシから選択され、R
2の各出現は、独立して、置換若しくは非置換C
1-C
20アルキル、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C
2-C
20アルケニル、置換若しくは非置換C
2-C
20ヘテロアルケニル、置換若しくは非置換C
1-C
20アルコキシ、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルコキシ、又は複数のポリシロキサン中のポリシロキサンへの結合であり、少なくとも2つのR
2の出現は、シロキサンを介したポリシロキサンネットワークへの結合(例えば、-O-Si-O-)である。一態様では、Aは、S-ニトロソチオール基である。別の態様では、Aは、以下の構造を有し、
【化8】
式中、R
5、R
6、及びR
7は、上記で定義されるとおりである。
【0065】
一態様では、一酸化窒素放出材料は、以下の構造を有することができる:
【化9】
式中、PSNは、ポリシロキサンネットワークであり、R
4は、一酸化窒素供与部分である。一態様では、R
4は、S-ニトロソチオール基である。別の態様では、R
4は、残基S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、メチルS-ニトロソチオグリコレート、又はそれらの誘導体である。この態様では、アミン官能化架橋剤に由来する複数のアミノ基は、一酸化窒素供与部分に共有結合している。
【0066】
一酸化窒素放出材料中に存在する一酸化窒素供与部分の量は、変動し得る。一態様では、一酸化窒素供与部分は、ポリシロキサンネットワーク1ミリグラム当たり約0.15マイクロモル~ポリシロキサンネットワーク1ミリグラム当たり約0.80マイクロモル、又は約0.15マイクロモル/ミリグラム、0.20マイクロモル/ミリグラム、0.25マイクロモル/ミリグラム、0.30マイクロモル/ミリグラム、0.35マイクロモル/ミリグラム、0.40マイクロモル/ミリグラム、0.45マイクロモル/ミリグラム、0.50マイクロモル/ミリグラム、0.55マイクロモル/ミリグラム、0.60マイクロモル/ミリグラム、0.65マイクロモル/ミリグラム、0.70マイクロモル/ミリグラム、0.75マイクロモル/ミリグラム、又は0.80マイクロモル/ミリグラムの量で存在し、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、0.30マイクロモル/ミリグラム~0.70マイクロモル/ミリグラム)。
【0067】
本明細書に記載の組成物は、シリコーン油を含む。理論に拘束されることを望まないが、シリコーン油の量を変化させると、一酸化窒素放出材料からの一酸化窒素の放出を調節することができる。一態様では、一酸化窒素放出材料及びシリコーン油は、組成物が約0.5~約3の膨潤比を有するのに十分な量であり、膨潤比は、膨潤する前に、油で膨潤したシリコーンの測定部分の質量を、その元の質量で割ることによって定義される。別の態様では、膨潤比は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0であり、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、1.8~2.2)。シリコーン油の粘度はまた、組成物の用途に応じて変化し得る。一態様では、シリコーン油は、約10cSt~約500cSt、又は約10cSt、25cSt、50cSt、75cSt、100cSt、125cSt、150cSt、175cSt、200cSt、225cSt、250cSt、275cSt、300cSt、350cSt、375cSt、400cSt、425cSt、450cSt、475cSt、若しくは500cStの粘度を有し、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、25cSt~100cSt)。
【0068】
本明細書に記載の組成物は、滑りやすい材料であり、これにより、組成物は、例えば、カテーテルなどの医療デバイスを留置するのに有用かつ効果的になる。本明細書に記載の組成物は、生理学的条件下で長期間にわたって滑り角を有する。一態様では、PBS中、37℃で保存された本明細書に記載の組成物の滑り角は、7日間にわたって15度~30度であった。
【0069】
本明細書に記載の組成物は、組成物の用途に応じて、様々な方法で製剤化することができる。一態様では、組成物は、一酸化窒素放出材料とシリコーン油との混合物である。この態様では、一酸化窒素放出材料とシリコーン油は、一酸化窒素放出材料がシリコーン油全体に均一に(すなわち、均質に)分散されるように密接に混合される。他の態様では、一酸化窒素放出材料にシリコーン油が含浸される。一態様では、シリコーン油のコーティングは、一酸化窒素放出材料のコーティングに適用され、シリコーン油は、一酸化窒素放出材料に浸透する(すなわち、含浸する)。
【0070】
一酸化窒素放出材料及びシリコーン油の相対量を変化させることによって、組成物からの一酸化窒素放出材料の放出速度を変更することができる。特定の用途では、生理学的条件下で組成物からの一酸化窒素の持続的な放出を有することが望ましい。一態様では、一酸化窒素は、37℃で少なくとも30日間、少なくとも45日間、少なくとも60日間、少なくとも75日間、又は少なくとも90日間、組成物から放出される。別の態様では、組成物から放出される一酸化窒素の量は、5日、10日、15日、20日、25日、又は30日の期間にわたって、少なくとも0.5×1010mol cm-2分-1である。別の態様において、組成物から放出される一酸化窒素の量は、5日間、10日間、15日間、20日間、25日間、又は30日間にわたって、約0.5×1010mol cm-2分-1~約2.0×1010mol cm-2分-1である。
【0071】
病院ベースのケアでは、生物医療デバイスの使用は避けられない。残念ながら、これは、院内感染症の主な原因のうちの1つでもある。カテーテル留置の方法及び期間、カテーテルケアの質、宿主感受性など、感染症のリスクの原因となる要因は複数ある。細菌のコロニー形成は、いくつかの経路(
図1)を介して感染症を引き起こす可能性があり、最も一般的な2つは、カテーテルを囲む真皮トンネルの経皮部分を通って移動する微生物による挿入部位でのコロニー形成及び管腔内表面でのコロニー形成である。血管内カテーテルの表面上に結合する血漿タンパク質は、細菌の付着を促進する可能性があるため、この問題を悪化させる。フィブリノーゲンは、血液感染症、炎症性疾患、及び組織損傷に関連する陽性急性期タンパク質であり、最終的に外傷性凝固障害を介して患者の死亡を引き起こす。
【0072】
本明細書に記載の組成物は、埋め込み型医療デバイスのバイオファウリング(例えば、細菌付着、血小板形成など)を低減するか、又は防止することが望ましい用途で有用である。埋め込み型医療デバイスは、院内感染症などの感染症の主な原因である。本明細書に記載の組成物でコーティング又は構築された埋め込み型デバイスは、デバイスが対象に導入されたときに、対象におけるバイオファウリングを低減するか、又は防止することができる。一態様では、本明細書に記載の組成物は、埋め込み型デバイスの表面上での細菌増殖を低減するか、又は防止することができる。別の態様では、本明細書に記載の組成物は、埋め込み型デバイスの表面上でのバイオフィルム形成を低減するか、又は防止することができる。
【0073】
別の態様では、本明細書に記載の組成物は、埋め込み型デバイスの表面上でのフィブリノーゲン形成を低減するか、又は防止することができる。重要な凝固タンパク質であるフィブリノーゲンは、異物に迅速に吸着し、血小板を活性化させる。フィブリノーゲンは、血小板インテグリンαIIbβ3(GPIIbIIIa)の複数の結合部位を含む。これらのフィブリノーゲン-αIIbβ3相互作用は、最終的に血栓形成につながる血小板の付着、活性化、及び凝集において重要な役割を果たす。血栓症を予防するために、フィブリノーゲン結合及び血小板活性化の両方に抵抗することができる表面が非常に望ましいが、これまでに報告された表面はこれを達成することができない。
【0074】
血液接触生体材料の血液適合性は、接触凝固経路(すなわち、フィブリン形成)及び循環血小板の活性化の両方の抑制に大きく依存する(
図2)。現在利用可能な非血栓性表面は、フィブリン形成を阻害するように設計されているが、これらの表面は、血小板付着/活性化の平行止血経路を妨げず、したがって、最小限の有効性である。血栓及びバイオフィルムの形成は非常に関連しており、これらのデバイスの汚損は、血栓形成につながるタンパク質吸着又は感染症を引き起こす細菌付着のいずれかによる最も一般的な臨床合併症である。本明細書に記載の組成物は、物品の表面上の血小板付着を防止することができる。
【0075】
一態様では、埋め込み型デバイスは、導尿カテーテル、人工心臓弁、血管カテーテル、グラフト、又はステントである。他の態様では、デバイスは、ヒトの血液又は組織に接触することが意図される。一態様では、装置は、血液透析デバイス又はその構成要素である。
【0076】
本明細書に記載の組成物は、いくつかの異なる方法でデバイスに組み込むことができる。一態様では、デバイスは、本明細書に記載の組成物でコーティングすることができる。一態様では、コーティング組成物は、一酸化窒素放出材料とシリコーン油との混合物を含むことができる。別の態様では、一酸化窒素放出材料のコーティングをデバイスの表面に適用して、第1のコーティングを生成し、続いて第1のコーティングにシリコーン油のコーティングを適用することができる。デバイスのコーティングは、例えば、一酸化窒素放出材料及びシリコーン油でデバイスを噴霧又は浸漬するなどの当技術分野で知られている技術を使用して実行することができる。コーティング厚さは、選択されたデバイス及び用途に応じて変化する可能性がある。一態様では、一酸化窒素放出材料コーティングは、約0.1mm~約5mm、又は約0.1mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、若しくは5.0mmの厚さを有し、任意の値が、範囲の下限及び上限の終点であり得る(例えば、0.5mm~3.0mm)。
【0077】
他の態様では、本明細書に記載の組成物は、デバイスを製造するために使用することができる。例えば、デバイスがゴムで構成されているか、又はゴム成分を含む場合、本明細書に記載の組成物がゴム全体に分散して、一酸化窒素放出ゴムを生成するように、ゴムを調製することができる。一酸化窒素放出ゴムは、生成されると、デバイス(例えば、医療用埋め込み型デバイス)を製造するために使用され得る。
【0078】
態様
態様1.組成物であって、
(a)(i)ポリシロキサンネットワーク及び(ii)ポリシロキサンネットワークに共有結合した複数の一酸化窒素供与部分を含む一酸化窒素放出材料と、
(b)シリコーン油と、を含む、組成物。
【0079】
態様2.一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソチオールを含む、態様1に記載の組成物。
態様3.一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、メチルS-ニトロソチオグリコレート、及びそれらの誘導体の残基である、態様1に記載の組成物。
【0080】
態様4.ポリシロキサンネットワークが、アミン官能化架橋剤で架橋されたポリシロキサンを含む、態様1~3のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0081】
態様5.ポリシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、又はポリジフェニルシロキサンを含む、態様4に記載の組成物。
【0082】
態様6.ポリシロキサンが、約2,500cSt~約4,000cStの動粘度を有する、態様4又は5に記載の組成物。
【0083】
態様7.一酸化窒素放出材料が生成され、方法が、
ポリシロキサンをアミン官能化架橋剤で架橋させて、ポリシロキサンネットワークを生成することと、
チオラクトンをポリシロキサンネットワークに共有結合させて、チオール官能化ポリシロキサンネットワークを生成することと、
有機酸の存在下で、チオール官能化ポリシロキサンネットワーク内のチオール基をニトロソ化して、一酸化窒素放出材料を生成することと、を含む、態様1~6のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0084】
態様8.有機酸が、有機スルホン酸を含む、態様7に記載の組成物。
【0085】
態様9.有機酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、4-オクチルベンゼンスルホン酸、酢酸、ギ酸、又は乳酸を含む、態様7に記載の組成物。
【0086】
態様10.有機酸が、ドデシルベンゼンスルホン酸である、態様7に記載の組成物。
【0087】
態様11.有機酸が、ポリシロキサンネットワークの約0.1重量パーセント~約2重量パーセントの量である、態様7に記載の組成物。
【0088】
態様12.ポリシロキサンが、ヒドロキシ末端ポリシロキサンを含む、態様7に記載の組成物。
【0089】
態様13.アミン官能化架橋剤が、以下の構造を有する、態様7に記載の組成物:
【化10】
式中、R
1が、置換若しくは非置換C
1-C
20アルキル、置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C
2-C
20アルケニル、置換若しくは非置換C
2-C
20ヘテロアルケニル、置換若しくは非置換C
1-C
20アルコキシ、又は置換若しくは非置換C
1-C
20ヘテロアルコキシから選択され、
R
2の各出現が、ヒドロキシ又はアルコキシである。
【0090】
態様14.R2の各出現が、ヒドロキシ、メトキシ、又はエトキシである、態様13に記載の組成物。
【0091】
態様15.R1が、置換若しくは非置換C1-C12アルキル、又は置換若しくは非置換C1-C12アミノアルキルである、態様13に記載の組成物。
【0092】
態様16.R1が、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレンである、態様13又は14に記載の組成物。
【0093】
態様17.チオラクトンが、以下の構造を有する、態様7に記載の組成物:
【化11】
式中、R
4が、置換若しくは非置換C
1-C
12アルキルである。
【0094】
態様18.チオラクトンが、以下の構造を有する、態様7に記載の組成物:
【化12】
式中、R
5の各出現が、独立して、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
6が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基であり、
R
7が、水素、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基、置換若しくは非置換C
2-C
6アルケニル基、置換若しくは非置換C
2-C
6ヘテロアルケニル基、置換若しくは非置換C
1-C
6アルコキシ基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルコキシ基、又は式-NHC(O)R
8のアミド基であり、式中、R
8が、置換若しくは非置換C
1-C
6アルキル基、置換若しくは非置換C
1-C
6ヘテロアルキル基である。
【0095】
態様19.チオラクトンが、N-アセチルシステインチオラクトン、N-アセチル-ホモシステインチオラクトン、ホモシステインチオラクトン、及びブチリル-ホモシステインチオラクトンからなる群から選択される、態様7に記載の組成物。
【0096】
態様20.一酸化窒素供与部分が、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソ-N-アセチルシステアミン、S-ニトロソグルタチオン、又はメチルS-ニトロソチオグリコレートの残基である、態様1~19のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0097】
態様21.一酸化窒素供与部分が、ポリマーマトリックス1ミリグラム当たり約0.15マイクロモル~ポリシロキサンネットワーク1ミリグラム当たり約0.80マイクロモルの量で存在する、態様1~20のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0098】
態様22.シリコーン油が、約10cSt~約500cStの粘度を有する、態様1~21のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0099】
態様23.一酸化窒素放出材料及びシリコーン油が、組成物が約0.5~約3の膨潤比を有するのに十分な量である、態様1~21のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0100】
態様24.一酸化窒素が、37℃で少なくとも30日間、組成物から放出される、態様1~23のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0101】
態様25.組成物が、一酸化窒素放出材料とシリコーン油との混合物を含む、態様1~23のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0102】
態様26.一酸化窒素放出材料に、シリコーン油が含浸される、態様1~23のうちのいずれか1つに記載の組成物。
【0103】
態様27.少なくとも1つの表面を含む物品であって、少なくとも1つの表面が、態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物でコーティングされる、物品。
【0104】
態様28.態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物で製造された1つ以上の構成要素を含む、物品。
【0105】
態様29.物品が、医療デバイスを含む、態様27又は28に記載の物品。
【0106】
態様30.デバイスが、埋め込み型デバイスである、態様29に記載の物品。
【0107】
態様31.デバイスが、血管カテーテル、導尿カテーテル、他のカテーテル、冠動脈ステント、創傷被覆材、及び血管グラフトからなる群から選択される、態様29に記載の物品。
【0108】
態様32.物品を作製する方法であって、方法が、
(a)一酸化窒素放出材料を、物品の少なくとも1つの表面に塗布して、第1のコーティングされた物品を生成することと、
(b)第1のコーティングされた物品にシリコーン油を塗布することと、を含む、方法。
【0109】
態様33.一酸化窒素放出材料が、約0.1mm~約5mmの厚さを有する、態様32に記載の方法。
【0110】
態様34.第1のコーティングされた物品が、約1時間~約12時間、シリコーン油に浸される、態様32に記載の方法。
【0111】
態様35.物品の表面上での細菌増殖を低減するか、又は防止する方法であって、方法が、態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物を表面に塗布することを含む、方法。
【0112】
態様36.物品の表面上でのバイオフィルム形成を低減するか、又は防止する方法であって、方法が、態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物を表面に塗布することを含む、方法。
【0113】
態様37.物品の表面上でのフィブリノーゲン形成を低減するか、又は防止する方法であって、方法が、態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物を表面に塗布することを含む、方法。
【0114】
態様38.物品の表面上での血小板付着を低減するか、又は防止する方法であって、方法が、態様1~26のうちのいずれか1つに記載の組成物を表面に塗布することを含む、方法。
【実施例】
【0115】
本開示の実施形態を説明してきたが、一般に、以下の実施例は、本開示のいくつかの追加の実施形態を説明する。本開示の実施形態は、以下の実施例及び対応するテキスト及び図面に関連して説明されるが、本開示の実施形態を本説明に限定する意図はない。対照的に、本開示の実施形態の趣旨及び範囲内に含まれる全ての代替物、修正物、及び同等物を網羅することが意図される。
【0116】
材料及び方法
材料
N-アセチル-D-ペニシラミン(NAP)、ヒドロキシ末端PDMS(2550~3570cSt)、トルエン、ジブチルスズジラウレート、亜硝酸tert-ブチル、ピリジン、酢酸無水物、クロロホルム、無水硫酸マグネシウム、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(シクラム)、ヘキサン、ドデシルベンゼンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid、EDTA)、及び塩酸をSigma-Aldrichから購入した。シリコーン油(50cSt)をFisher Scientificから購入した。138mMのNaCl、2.7mMのKCl、及び10mMのリン酸ナトリウムを含有した、PH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline、PBS)を、インビトロ実験に使用した。MRSA(ATCC BA41)、P.aeruginosa(ATCC9027)、及びヒト線維芽細胞(CRL2522)は、American Type Culture Collectionから購入した。HUVECは、ThermoFisher Scientificから購入した(C0035C)。LBブロスは、Fisher Bioreagentsから得た。LB寒天は、Difco Laboratoriesから購入した。EGM-2内皮細胞増殖培地-2 BulletKitは、Lonzaから購入した。トリプシン-EDTAは、Corning(Manassas,VA20109)から購入した。Cell Counting Kit-8(CCK-8)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO63103)から購入した。Eagle最小必須培地(EMEM)は、American Type Culture Collection(USA)から購入した。ウシ胎児血清は、VWR(USA)から調達した。他の全ての細胞培養関連用品は、Thermo Fisher Scientificから購入した。
【0117】
NAP-チオラクトンの合成
NAP-チオラクトンの合成を、以前に最適化された手順に従って実行した。48、55簡潔に述べると、5gのNAPを、丸底フラスコ中の10mLのピリジンに溶解させ、氷の上で1時間冷却した。別に、酢酸無水物(10mL)をピリジン(10mL)と混合し、また、氷上で1時間冷却した。次いで、溶液をアルゴン下で24時間一緒に撹拌し、その後、ピリジンの全て及び酢酸無水物の大部分が蒸発するまで60℃で回転蒸発させた。その後、クロロホルム(20mL)を残留溶液に添加し、1MのHClで洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、クロロホルムを室温に維持された乾燥器を使用して蒸発させた。得られた沈殿物をヘキサン中で再構成し、覆った状態で一晩-20℃で保持した後に濾過し、追加のヘキサンを用いて洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0118】
NO-PDMSの製造
NO-PDMSの製造を、わずかに修正された、以前に確立された手順に従って実行した(非特許文献48,56)。簡潔に述べると、ヒドロキシ末端処理PDMS(1.6g)をトルエン(8mL)に室温で溶解した。別に、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン(0.3g、1.67mmol)及びジブチルスズジラウレート(2.4mg)をトルエン(2mL)に添加した。次いで、溶液を24時間一緒に撹拌し、次いで、NAP-チオラクトン(300mg、1.73mmol)を溶液に48時間撹拌した。20mMのシクラム溶液で3回ボルテックスすることによって最初にキレート化された亜硝酸tert-ブチル(500μL)を添加して、NAP-PDMS溶液(3mL)をニトロソ化し、緑色の溶液を形成した。更に、ニトロソ化及び架橋効率を高めるために、ドデシルベンゼンスルホン酸(溶液中のポリマー質量の0.5重量%)を添加した。フィルムを製造するために、NO-PDMS溶液を長方形のテフロン型に添加し、室温で暗闇の中で一晩乾燥させた。
【0119】
NO-PDMS(LI-NO-PDMS)材料の液体注入
製造されたNO-PDMSの液体注入は、以前に確立された手順に基づいて達成された(非特許文献27)。簡単に言えば、NO-PDMS試料を室温で暗い条件下で保持したシリコーン油(50cSt)に浸漬して膨潤させた。シリコーン油で膨潤させた試料(LI-NO-PDMS)の経時的な膨潤比を測定するために、試料を注入の前(M
0)及び後(M
1)に塊化し、次の式を使用した(式1):
【数1】
【0120】
材料の特徴付け
滑り角の特徴付け
測定の前に、各試料をDI水で洗浄し、窒素流で乾燥させて、表面が汚損物質のないことを確認した。試料の表面上の水滴が滑り落ちるまで、スライドガラス上に取り付けられたLI-NO-PDMS及びNO-PDMS試料の角度をゆっくりと増加させることによって、10μLの水滴の滑り角測定値を定量した。各試料タイプについて、別々の位置で3つの異なるコーティングされたスライドガラス上で15回の測定を行った。滑り角をデジタルプロトラクタで求めた。試料を、7日間にわたる測定の間、インキュベータ内のPBS中、37℃で保存した。
【0121】
SNAP浸出測定
累積SNAP浸出を、4mLのPBS中、37℃で測定した。浸出液をLI-NO-PDMS試料とNO-PDMS試料の両方から48時間にわたって回収した。PBSの光学密度は、340nmのThermo Scientific Genysis 10SUV-Vis分光光度計(SNAP分子内に存在するS-NO結合の吸光度最大値)を使用して定期的に測定して、試料から浸出したSNAPの濃度を求めた(非特許文献44)。試料は、測定と測定の間、37℃に維持されたインキュベータ内に保存した。対照としてブランクPBSを使用し、SNAP-PBS溶液の既知の濃度から生成された標準曲線を使用して、収集した浸出液中に存在するSNAPの量を求めた。
【0122】
NO放出測定
LI-NO-PDMS及びNO-PDMS試料のNO放出動態を、30日間にわたってSievers Chemiluminescence NOA280iを使用して測定した。試料を、加熱された水浴を使用して、37℃で維持された琥珀色の反応容器内のPBS中に浸漬した。PBS中に存在する金属イオンからの任意の不要なNO触媒作用を防止するために、PBSを100mMのEDTAで補充した。試料から放出されたNOを、バブラー及び窒素スイープガス(200mL分-1)を使用して、PBS溶液から化学発光検出チャンバー内にパージした。次に、パージされたNOは、チャンバー内に存在するオゾンと反応し、励起形態の二酸化窒素NO2*をもたらし、これは、試料から最初に放出されたNOの量を検出するために使用される光子を迅速に放出する。試料のNOA定数(mol ppb-1秒-1)及び表面積を使用して、各試料タイプの平均NOフラックス(×10-10mol cm-2分-1)を求めた。
【0123】
28日間にわたるインビトロ抗菌効力測定
グラム陽性及びグラム陰性細菌株に対する製造材料の抗菌効力を、曝露の24時間、7日、14日、及び28日後に分析した。最初の抗菌効力(例えば、医療デバイスの挿入直後)を求めるために、24時間の細菌付着アッセイを行った。MRSA及びP.aeruginosaの単離された株を、15mLのLBブロスに、120rpmで15時間、インキュベータシェーカー内で、37℃で別々に接種した。接種期間後、培養物を2500rpmで7.5分間遠心分離し、滅菌PBSで洗浄し、再び2500rpmで遠心分離した。遠心分離後、試料をPBS中に再懸濁し、希釈して、約108CFU/mLの最終濃度を達成した。試料(対照PDMS、NO-PDMS、LI-PDMS、及びLI-NO-PDMS)を24ウェルプレート(n=4)のウェルに入れ、それぞれ1mLの細菌溶液を37℃及び120rpmで24時間インキュベートした。
【0124】
インキュベーション後、付着した細菌の生存率を、インキュベーション後の各試料を1mLの滅菌PBS中で25000rpmで60秒間超音波処理し、続いて更に30秒間ボルテックスすることによって評価した。超音波処理の前に、各試料を滅菌PBSで穏やかに洗浄して、ゆるく付着した細菌を除去した。得られた細菌-PBS溶液を連続希釈し、LB寒天プレート上にプレーティングし、37℃で24時間保持した。コロニー形成単位(CFU)を測定して、各材料の表面積に正規化された生存可能な付着細菌の数を求めた。付着した細菌の生存率の低下は、以下の式(式2)に従って計算した。
【数2】
【0125】
長期間(7、14、及び28日)後の材料の抗菌効力を決定するために、CDCバイオフィルムバイオリアクタ(
図3)を使用してバイオフィルム形成をモデル化した。
57これを行うために、MRSA及びP.aeruginosaを、120rpmのインキュベータシェーカー内においてLBブロス中、37℃で15時間接種した。その後、光学密度を測定し、細菌培養物を希釈して、約10
8CFU/mLの最終濃度を達成し、バイオリアクタ内での試料とのインキュベーションに使用した。試料を1時間インキュベートし、200rpmで撹拌した。1時間後、試料を120rpmで撹拌し、追加の栄養培地(2g L
-1のLBブロス)を約1.6mL分
-1の速度で供給した。全てのバイオリアクタには、廃棄物容器につながる出口が装備されていた。フローは、所定のエンドポイントに到達するまで、試験を通して維持された。終了時に、試料を除去し、滅菌PBSで穏やかに洗浄した。各試料を、1mLの滅菌PBS中で25000rpmで60秒間超音波処理し、続いて更に30秒間ボルテックスした。得られた溶液を連続希釈し、LB寒天プレートにプレーティングし、37℃で24時間保持した。コロニー形成単位(CFU)を測定して、各材料の表面積に正規化された付着細菌の生存率を求めた。付着した細菌の生存率の低下を、上記の式(式2)に従って計算した。
【0126】
インビトロフィブリノーゲン吸着アッセイ
フィブリノーゲン吸着レベルを、FITC標識ヒトフィブリノーゲンを使用して定量した。標識されたフィブリノーゲンを、4mg mL-1の総フィブリノーゲン濃度で、PBS(pH7.4)中の標識されていないフィブリノーゲンで1:10の比で希釈した。試料をPBS中で37℃で30分間インキュベートして、表面を平衡化させた。次いで、標識されていないフィブリノーゲン溶液を溶液に添加し、2mg mL-1の生理学的濃度を得た。試料をフィブリノーゲンに90分間、37℃で曝露した。90分後、試料をPBSで穏やかに洗浄して、いかなる非結合フィブリノーゲンも除去した。次いで、表面に吸着されたフィブリノーゲンを、495nm及び519nmでの励起/放出を測定することによって、プレートリーダー(Biotek、Winooski,Vermont)で定量し、収集したデータを標準曲線を使用して補間した。更に、緑色蛍光フィルターを備えた顕微鏡(AMG、Mill Creek,Washington)を使用して、試料表面に吸着した標識フィブリノーゲンを画像化した。
【0127】
インビトロ血小板付着アッセイ
試料の抗血小板活性を求めるために、以前の研究に基づいてインビトロ血小板付着アッセイを実施した。
32、47簡潔に述べると、ブタ全血(3.8%クエン酸ナトリウム)を300RCFで13分間遠心分離して、血小板リッチ血漿(PRP)を分離及び収集し、再び4000RCFで20分間遠心分離して、血小板欠乏血漿(PPP)を分離及び収集した。PRPをPPPで希釈し、1mL当たり2×10
8の血小板の最終濃度を達成した。材料曝露の前に、2mMの最終濃度でCaCl
2溶液を添加した。試料を3mLの最終血小板溶液に浸漬し、37℃でロッカーに2時間保持した。その後、試料を除去し、緩衝生理食塩水で洗浄した。次いで、試料を2v/v%のTriton-PBS(500μL)中で30分間保持して、付着した血小板を溶解した。得られた溶液を96ウェルプレートに分注し、Roche Cytotoxicity Detection Kitを調製して、付着した血小板の数を求めた。BioTek Cytation 5プレートリーダーを用いて、492nmで吸光度を測定した。血小板付着の減少は、以下の式(式3)を使用して求めた。式中、P
cは、対照試料上の1cm
2当たりの付着した血小板の数であり、P
tは、試験試料上の1cm
2当たりの付着した血小板の数である:
【数3】
【0128】
インビトロ全血曝露
試料をブタ全血に60秒間曝露し、続いてPBSで穏やかにすすぎ、走査型電子顕微鏡(SEM、FEI Teneo)用に固定した。10.00kVの加速電圧を使用して試料を分析した。SEM撮像の前に、試料を10nm厚の金-パラジウムでスパッターコーティングした。
【0129】
インビトロ細胞毒性測定
培養方法
HUVECとヒト線維芽細胞の両方を、液体窒素蒸気相に保存されたクライオストックから復活させた。線維芽細胞を、10%のFBSを補充したEMEM中で培養した。HUVEC細胞を、EGM-2 BulletKitからの以下の成分を補充したEGM-2中で培養した:FBS、ヒドロコルチゾン、hFGF-B、VEGF、R3-IGF-1、アスコルビン酸、hEGF、GA-1000、及びヘパリン。両方の細胞株を、5%CO2湿潤雰囲気下、37℃でインキュベートした。細胞を70~80%コンフルエンシーに成長させた後、5mMのEDTAを用いて0.05%トリプシンを介して分離した。細胞計数は、トリパンブルー細胞染色を伴うEVE(商標)Cell Counter(NanoEnTek、Waltham,MA USA)を使用して行った。細胞計数後、細胞を再懸濁し、96ウェルの組織培養処理ポリスチレンプレートに播種して、5,000細胞/ウェルの初期播種密度を達成した。各実験について、フィルム浸出液に曝露する前に、細胞を24時間増殖させた。
【0130】
フィルム浸出液の細胞毒性評価
各フィルムタイプから直径3/8インチの円形クーポンを、各試料タイプにわたって表面積を正規化して調製した。クーポンをUV曝露により、各側で15分間滅菌した。次いで、各クーポンを、密封されたガラスバイアル内のそれぞれの細胞株について、2mLの培養培地中に個々に浸し、37℃で24時間インキュベートした。いかなるフィルムも含まない対照培地の別個の試料も、これらの条件でインキュベートした。24時間のインキュベーションの後、播種プレート上の培地を吸引し、フィルム試料からの浸出液を含む等体積の培地と置き換えた。各フィルムクーポンについて、合計5つのウェルをフィルム浸出液で処理した。各実験実行について、フィルムタイプごとに合計3つのクーポンを試験した。各プレートは、培地を有する播種されていないウェル、及び浸出液を含まないインキュベートされた培地で処理された播種されたウェルを含む実験対照を含んだ。
【0131】
フィルム浸出液を用いた培地下での24時間のインキュベーションに続いて、10μLのCell Counting Kit-8(CCK-8、Enzo Life Sciences)試薬を個々のウェルに添加した。次いで、CCK-8処理プレートを更に1時間インキュベートした。CCK-8アッセイキットは、細胞デヒドロゲナーゼ活性によって容易に還元され、450nmで検出可能な可溶性黄色塩を形成するテトラゾリウム塩であるWST-8を含有する。650nmの参照読み取り値を使用して、ノイズを補正した。次いで、未処理細胞に対して正規化された浸出液処理細胞の相対生存率を以下のように計算した(式4)。
【数4】
【0132】
統計分析
全てのデータは、平均±SDで報告される。スチューデントのt検定を使用して、材料特徴付け中の材料タイプ間の有意性を比較し、p値<0.05を有意とみなした。4つの群の平均を全て比較したインビトロ抗菌効力、細胞毒性、タンパク質吸着、及び血小板付着試験については、ポストホック・テューキーを用いたANOVA試験を使用して、有意性を決定し、p値<0.05を有意性とみなした。
【0133】
結果及び検討
材料の最適化及び特徴付け
NO-PDMSのシリコーン油注入の最適化
安定したNO放出プラットフォームを作製して、シリコーン油注入を介して液体注入された防汚界面を達成した(
図4)。製造されたNO-PDMSのシリコーン油注入プロセスを最適化するために、膨潤比を経時的に測定して、滑りやすい表面特徴を最大化した(
図5A)。約2.0の膨潤比を有する液体注入されたシリコーンベースの表面は、細菌の付着及びタンパク質の吸着を長時間(>7日間)低減することができる滑りやすい表面特徴を保持することが以前に示されている(非特許文献27)。したがって、本研究では、2.0の膨潤比を達成するためのNO-PDMS材料の膨潤時間を求めた。
図5Aに示されるように、シリコーン油溶液中で8時間の膨潤後、材料は、2.0±0.1の膨潤比を有した。達成された滑りやすい界面が生理学的条件下で長期間維持され得ることを確実にするために、PBS中で37℃で保存されたLI-NO-PDMS及びNO-PDMSの滑り角を7日間にわたって比較した(
図5B)。7日間にわたって、LI-NO-PDMSは、19~25の滑り角を維持した。対照的に、NO-PDMS表面は、同じ7日間にわたって90°を超える滑り角を示した。これは、生理学的に適切な温度で水性環境に保存されている場合でも、滑りやすい界面を保持するLI-NOの能力を実証する。保存前(7.1±3.3°)及び保存24時間後(19.1±1.9°)のLI-NO表面間の滑り角がわずかに増加したことに留意されたい(p<0.05)。これは、ポリマー内に完全には注入されなかった界面に最初に存在する過剰な表面油に起因し得る。しかしながら、24時間のインキュベーション後、LI-NO表面の滑り角は一定のままであり、したがって、長期の医療デバイス用途のために血液適合性及び抗菌特性を向上させるために望ましい防汚機能を保持することに大きな有望性を示す。
【0134】
NO放出測定及びSNAP浸出測定
NOは、心血管止血、免疫応答、及び創傷治癒を媒介するための、十分に文書化された重要な内因性ガス状フリーラジカルである(非特許文献37,60-62)。しかしながら、NO放出の濃度、速度、及び寿命は、NOが血小板機能、細菌生存率、及び周囲組織に及ぼすであろう生理学的効果を決定する上で重要である。健康な内皮は、0.5-4×10
-10mol cm
-2分
-1の推定フラックスでNOを生成する(非特許文献61)。したがって、本研究では、開発されたNO放出材料を、潜在的な血栓形成を最小限に抑え、長期的な留置医療デバイス界面に関する感染症に対抗するために、0.5×10
-10mol cm
-2分
-1を超える長期的なNOフラックスを維持する能力に基づいて評価した。
図6Aは、30日の期間にわたるNO-PDMS及びLI-NO-PDMSの両方のNO放出を示す。LI-NO-PDMS及びNO-PDMSの両方について測定されたNOフラックスは、30日間にわたって>0.5×10
-10mol cm
-2分
-1フラックスのままであり、生理学的条件下で長期間にわたっても材料の安定性を実証した。以前の報告は、他のSNAP固定化ポリマーについて同様のNO放出動態を示している(非特許文献48,63)。興味深いことに、LI-NO-PDMS材料は、初期(5.5±0.2×10
-10mol cm
-2分
-1)及び24時間後(4.1±0.2×10
-10mol cm
-2分
-1)の両方のNO-PDMSと比較して、初期(8.7±0.2×10
-10mol cm
-2分
-1)及び24時間後(5.7±0.2×10
-10mol cm
-2分
-1)に有意に(p<0.001)高いNO放出プロファイルを有した。シリコーン油はポリマー鎖間のスペーサとして作用するため、材料中のSNAP基とのイオン相互作用の増加は、NO放出の増加をもたらす可能性がある。しかしながら、3日後、試料間の差は最小であった。30日目の研究の終了時までに、LI-NO-PDMS及びNO-PDMS材料の両方が、約0.5×10
-10mol cm
-2分
-1のNOフラックスを示し、2つの試料タイプ間に統計的有意性はなかった(LI-NO-PDMS-0.589±0.002×10
-10mol cm
-2分
-1、NO-PDMS-0.55±0.08×10
-10mol cm
-2分
-1)。したがって、シリコーン油でNO-PDMS試料を膨潤させても、長期的なNO放出特性には影響しなかった。
【0135】
活性剤が組み込まれた材料の寿命は、水性環境に浸した場合の浸出によって深刻な影響を受ける可能性がある。いくつかのコーティング技術は、細菌感染症に対抗する手段として抗菌(例えば、抗生物質、塩素、銀イオン)浸出を利用しているが、この方法は、抗菌放出が長続きするために著しく妨げられ、利用可能な供給をすぐに使い果たし、材料を感染しやすくする(非特許文献64)。NO放出材料の場合、NO供与体浸出の結果としての制御されていない高用量のNOは、哺乳類細胞に対する潜在的な細胞毒性をもたらす可能性がある(非特許文献65,66)。したがって、37℃でPBS(pH7.4)中に浸したLI-NO-PDMS及びNO-PDMS材料のSNAP浸出動態を48時間にわたって測定して、生理学的条件をシミュレートした。これは歴史的に、NO供与体が組み込まれた材料で最も浸出が発生したときである(非特許文献47,67)。
図6Bに示すように、NO-PDMSとLI-NO-PDMSの両方が48時間後に最小限の浸出を示し、互いに有意に異なることはなかった(P>0.05)。48時間後、NO-PDMS及びLI-NO-PDMSは、それぞれ、基材1mg当たり0.0351±0.0001及び0.0339±0.0009mgのSNAPのみを浸出し、これは、元々取り付けられた総SNAPの1%未満である。これは、NO供与体基がPDMSの骨格に共有結合し、実質的にSNAP浸出損失のリスクを排除するという事実に起因し得る。したがって、浸出液の欠如は、SNAPの共有結合が、有意なNO供与体浸出で生じ得る潜在的な細胞毒性事象を最小限に抑える安定したNO放出プラットフォームをもたらすことを確認する。
【0136】
インビトロ短期(24時間)及び長期(7~28日)抗菌効力
医療デバイスに関連する感染症を低減することを目的として、研究者らは細菌の付着及びコロニー形成に対抗するための能動的(殺菌性)及び受動的(防汚性)抗菌表面修飾の両方を開発した(非特許文献68)。しかしながら、受動的及び能動的表面戦略の両方には、長期的用途のための抗菌挙動の成功を妨げる大きな欠点がある。受動的表面戦略は、表面への微生物の付着を大幅に低減することができるが、侵入病原体の生存率には影響しない。更に、活性表面は、侵入する細菌病原体を動的に攻撃する抗菌剤を貯蔵及び放出するが、表面汚損にほとんど影響を与えず、一般に、限られた量の抗菌剤しか貯蔵していない。しかしながら、殺菌性及び付着防止性の両方を示す二重の受動的-能動的抗菌表面戦略を含むプラットフォームは、材料の長期的な抗菌効力を改善することができる。この研究では、NO供与体SNAPを医学的に関連するPDMSに共有結合させて、安定したNO放出特性(能動的戦略)を達成し、続いて生体適合性シリコーン油の液体注入(受動的戦略)を達成した。短期(24時間)及び長期(7~28日)の抗菌効力を、グラム陽性MRSA及びグラム陰性P.aeruginosaに対して評価した。
【0137】
製造された材料の初期の抗菌活性を理解するために、試料を、生理学的条件下で24時間、一般的な院内感染症を引き起こす病原体であるMRSA及びP.aeruginosaに曝露した(
図7A及び
図8A)。単独で、LI-PDMSは、生存可能なMRSA及びP.aeruginosaの数を67.8±13.7及び56.9±3.2%適度に減少させ、これは、液体注入が、他の群によって以前に示された細菌付着の減少をもたらしたことを示唆した(非特許文献51,69)。同様に、NO-PDMSはまた、生存可能な付着したMRSA及びP.aeruginosaの数を98.3±1.2%及び85.1±2.5%有意に減少させた。これは、NO放出材料が、制限された耐性を有する強力な抗菌特性及びバイオフィルム分散特性を歴史的に実証してきたために予想される。
70、71しかしながら、LI-NO-PDMSは、24時間の曝露後の対照PDMSと比較して、付着したMRSAの生存率を99.3±0.3%、P.aeruginosaの生存率を94.8±0.3%最も良く低下させた。これは、液体注入されたNO放出プラットフォームの短期(24時間)抗菌効力を評価する以前の報告と一致しており、液体注入(受動的)及びNO放出(能動的)抗菌表面修飾の組み合わせが、付着した細菌生存率の低下を最も良くもたらすことが分かった(非特許文献54)。
【0138】
今日まで、NO放出性材料の2つの主要な欠点は、NO供与体浸出と相まって、初期破裂放出が高く、材料中に貯蔵されたNOリザーバを急速に枯渇させ、材料が長期用途のために感染症に対抗することができる程度を制限することである。同様に、超疎水性表面は、生物医学的用途のための防汚活性を達成するための一般的な手段であったが、閉じ込められた空気ポケットの耐久性及び不安定性の限界により、長期留置医療デバイス用途のためのデバイスの血液適合性を改善することができなかった(非特許文献52,72)。本研究では、長期用途のための抗菌表面特性を拡張するために、SNAPの共有結合及びシリコーン油の液体注入によって達成された安定したNO放出及びロバストな防汚技術を展開した。長期的な抗菌効力を決定するために、LI-NO-PDMS及び対照物質を、CDCバイオリアクタ内で7、14、及び28日間、MRSA及びP.aeruginosaに対して試験した。CDCバイオリアクタは、血管系内で見られる剪断環境を模倣することによって、活発な抗菌試験を可能にし、細菌のコロニー形成及びバイオフィルム形成を防止する上でのNO放出、液体注入表面の有効性を最も良く示す。LI-NO-PDMSは、未処理材料と比較して、生存可能な付着したMRSA及びP.aeruginosaの数を、測定された全ての時点で最大28日間減少させるのに有意に有効であり、全ての時点で、LI-PDMS及びNO-PDMS材料と比較して、付着した生存可能な細菌の数の大幅な減少を示した。表1は、LI、NO、及びLI-NO-PDMS試料についての、対照PDMSと比較した、生存可能な付着細菌の正確な%減少を列挙する。液体注入表面は、以前は細菌の付着力の低下によってバイオフィルムの形成を低減させていた。
73しかしながら、液体注入表面は細菌の生存率に影響を及ぼすことができない。前述のように、NO放出材料は、脂質酸化、酵素変性、及びDNA脱アミノ化を含む複数の抗菌メカニズムを介して耐性の発達が限られた抗菌能力及びバイオフィルム分散能力を以前に実証している(非特許文献28,70,71)。したがって、これらの結果は、安定したNO放出プラットフォームが液体注入された滑りやすい界面と組み合わされて、短期的な用途だけでなく長期的な用途にも相乗的な抗菌活性をもたらすことを強く示唆する。
【表1】
【0139】
防汚及び血液適合性評価
インビトロフィブリノーゲン吸着
以前の研究では、医療デバイス表面上へのフィブリノーゲンの吸着が、望ましくない血小板の付着を伝播し、細菌付着のためのアンカーを提供し、医療デバイス用途のために防汚表面を必要とすることが示されている(非特許文献10-12)。液体注入表面(LI-PDMS及びLI-NO-PDMS)が改善された防汚特性を示すかどうかを判断するために、試料を生理学的濃度(2mg/mL)でフィブリノーゲンとともに90分間インキュベートした。
図9Aに示されるように、シリコーン油の液体注入は、フィブリノーゲン吸着の有意な低下をもたらした(p<0.05、n=3)。LI-PDMS(
図9D)及びLI-NO-PDMS(
図9F)試料中のフィブリノーゲンの吸着は、対照PDMS(
図9C)と比較して、それぞれ46.5±8.4%及び30.3±10.2%減少した。以前の報告でも同様に、液体注入されたシリコーンは、低付着表面の作製によって、細菌及びタンパク質を含む汚損物質の付着を低減することが示されている(非特許文献27,51)。他方、SNAP試料(
図9E)は、PDMSと比較して、フィブリノーゲン吸着が107.9±71.6%有意に増加した。NO放出性表面上でのタンパク質吸着の増加現象が過去に観察されている(非特許文献74)。しかしながら、NO放出性表面上で吸着されたフィブリノーゲンは、非NO放出性表面上で吸着されたフィブリノーゲンと比較して血栓性が低いことが示されており、これは、NOの存在がフィブリノーゲンの構造を変化させることを示唆している(非特許文献49)。NO放出がフィブリノーゲンのコンフォメーションにどのように影響するかを正確に確認するために、更なる研究を行う必要がある。
【0140】
インビトロ血小板付着測定
物質的改善と全身的抗凝固介入にもかかわらず、デバイス誘発性血栓症は依然として、デバイスの故障、塞栓、入院の延長、並びに罹患率及び死亡率の増加を含む結果的な副作用をしばしばもたらす、留置血液接触医療デバイスによる主要な有害事象のうちの1つである(非特許文献75)。したがって、これらのデバイスの血液適合性を改善するために、研究者らは自然に触発された受動的及び能動的な表面修飾を開発し始めている(非特許文献22)。NO放出表面、表面での一酸化窒素の局所的な生成をもたらす能動的な戦略は、血小板の静止におけるNOの役割の結果として、異なる材料の抗血栓特徴を改善するために絶大な人気を博している(非特許文献29,30,76,77)。更に、血小板及び血漿タンパク質のバイオファウリングを最小限に抑える液体注入された超滑りやすい表面を含む防汚戦略は、血液適合性の有望な改善を示している(非特許文献27,58,78)。したがって、本研究では、NO供与体SNAPを、長期留置医療デバイス用途に一般的に利用される医学的関連ポリマーであるPDMSに共有結合させ、続いてシリコーン油の液体注入に供し、その結果として、防汚界面を有する持続的なNO放出プラットフォームが得られた。得られた材料の抗血栓特徴を評価するために、血小板リッチなブタ血漿を2時間曝露し、付着した血小板の数を定量した。
図9Bに示されるように、LI-NO-PDMSは、表面に付着した血小板の数を66.5±11.2%有意に減少させた。LI-PDMS及びNO-PDMS試料は、それぞれ、付着した血小板の数を46.7±27.9%及び45.2±11.2%減少させた。したがって、得られた局所的なNO放出及びシリコーン油注入は、一緒になって、血液適合性の複合改善をもたらした。NO放出性表面及び/又は液体注入表面からの血小板付着の減少の同様の傾向は、以前に特徴付けられている(非特許文献27,50,59,79-81)。これらの知見を支持して、ブタ全血に曝露した材料のSEM画像は、血漿タンパク質及び血小板が急速に吸着し、未処理のPDMS表面の表面に付着することを示した(
図9G、H)。しかしながら、LI-PDMS(
図9I、J)、NO-PDMS(
図9K、L)、及びLI-NO-PDMS(
図9M、N)試料は、表面上に存在する血小板の顕著な減少を示した。更に、LI-PDMS試料は、表面に付着した血小板の活性化を最小限に抑えることはできなかったが、NO-PDMS及びLI-NO-PDMS試料の両方が、血小板活性化の低下を示した。これは、GPIIb/IIIa発現を阻害し、タンパク質キナーゼGのcGMP活性化を増加させ、調節されたCa
2+流入を増加させることによって、血小板の凝集及び活性化を低減するために以前に確立されたNOの特徴である(非特許文献32,82)。
【0141】
LI-NO材料の細胞適合性
効力を評価することに加えて、医療デバイス用途に使用される材料は、安全性を確保するために、哺乳類細胞と細胞適合性であるべきである。この研究では、CCK-8アッセイを実施して、ヒト初代細胞における共有結合型NO-PDMS及び液体注入フィルムから開発された浸出液に対する任意の毒性応答を決定した。この目的のために、ヒトBJ線維芽細胞及びHUVECの両方を、生理学的条件下で培養培地中で24時間インキュベーションした後、フィルムから得られた浸出液に対して培養した。これらの条件は、細胞毒性のインビトロ試験を通じた医療デバイスの生物学的評価のための国際標準化機構(ISO)10993-5に準拠している(非特許文献83)。
【0142】
LI-NO基質の場合、BJ線維芽細胞及びHUVECの24時間の浸出及びその後のインキュベーションにわたって、顕著な細胞傷害効果は観察されなかった(
図10)。BJ線維芽細胞及びHUVECは、PDMS対照浸出液に曝露した後、生存率を105±9.2%及び104±6.1%高めた。これらの結果は、以前の結果と一致し、対照フィルムからの微量の一次アミン含有APTMS浸出液から生じる可能性がある(非特許文献48)。これらのフィルムへ固定化SNAPを導入しても、細胞生存率に統計的に有意な差を示さなかった(P>0.05)。液体注入は、BJ線維芽細胞における生存率のわずかな低下(92.6±3.5%)をもたらしたが、これらの結果は、PDMS対照(P>0.05)に関しては有意ではなかった。不揮発性医療グレードのシリコーン油は文献で広範囲に評価されており、注入量を調整することによって慎重に加減(moderation)すれば、留置用途における細胞毒性は予想されない(非特許文献87)。最後に、NO-PDMS及びLI-NO-PDMSの両方が、両方の細胞株におけるPDMS対照に対して細胞生存率に顕著な効果を示さなかった(P>0.05)。NAP(すなわちSNAPの前駆体)が、重金属中毒及びシスチン尿症の治療についてFDAに承認されているので、これらの結果は予想される(非特許文献88,89)。まとめると、共有結合型SNAP及び液体注入基質の細胞適合性は、特に細菌感染症に対抗するための、留置医療デバイスへのそれらの適用への関心を動機付け、凝血塊の形成によるデバイス閉塞からの故障の発生率を低減する可能性がある。
【0143】
結論
本研究では、長期の留置医療デバイス用途のための抗菌特性及び防汚特性を改善するために、共有結合型SNAP固定及びシリコーン油注入により、安定したNO放出液体注入PDMS(LI-NO-PDMS)プラットフォームを製造した。液体注入プロトコルの作製及び最適化により、血栓症及び感染症を低減することができる超滑りやすい特性が得られた。LI-NO-PDMS表面は、1%未満のSNAP浸出で30日間、安定した、生理学的に関連するNOフラックス(>0.5×10-10mol cm-2分-1)を維持した。その結果、LI-NO-PDMS材料は、7、14、及び28日間にわたる一連のCDCバイオフィルムリアクタ研究においてロバストに試験したところ、相乗的な抗菌効果が実証され、結果として、付着したMRSAとP.aeruginosaの両方の生存率が最大99.9%低下し、任意の時点での付着した細菌生存率が92%超低下した。本明細書において、CDCバイオフィルムバイオリアクタを使用して、28日間にわたってNO放出材料のインビトロ抗菌効力を求める、これまでで最も徹底的な研究を実行した。防汚特性の改善は、改変されていない対照と比較して、フィブリノーゲン吸着(30.3±10.2%減少)及び表面への血小板付着(66.5±11.2%減少)の実質的な減少によって実証された。最後に、材料から抽出された浸出液は、ヒト線維芽細胞及び内皮細胞株に対して細胞毒性応答を示さなかった。結論として、これらの結果は、医療デバイス誘発性凝固及びバイオフィルム形成の予防に実質的に有望である。現在、安定したNO放出プラットフォーム(30日以上の間、>0.5×10-10mol cm-2分-1)と滑りやすい表面特性を組み合わせた研究はなく、この技術は医療デバイス関連合併症に関連する広範な問題に対処するユニークな立場にある。
【0144】
本開示の上述の実施形態は、単なる可能な実施の例にすぎず、本開示の原理の明確な理解のためにのみ記載されることを強調されるべきである。本開示の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上記の実施形態に対して多くの変更及び修正がなされてもよい。そのような修正及び変形は全て、本開示の範囲内の本明細書に含まれることが意図される。
【0145】
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非特許文献26.Ergene,C.;Yasuhara,K.;Palermo,E.F.,Biomimetic antimicrobial polymers:recent advances in molecular design.Polym Chem-Uk 2018,9(18),2407-2427.
非特許文献27.Goudie,M.J.;Pant,J.;Handa,H.,Liquid-infused nitric oxide-releasing(LINORel)silicone for decreased fouling,thrombosis,and infection of medical devices.Sci Rep 2017,7(1),13623.
非特許文献28.May,R.M.;Magin,C.M.;Mann,E.E.;Drinker,M.C.;Fraser,J.C.;Siedlecki,C.A.;Brennan,A.B.;Reddy,S.T.,An engineered micropattern to reduce bacterial colonization,platelet adhesion and fibrin sheath formation for improved biocompatibility of central venous catheters.Clin Transl Med 2015,4.
非特許文献29.Brisbois,E.J.;Kim,M.;Wang,X.;Mohammed,A.;Major,T.C.;Wu,J.;Brownstein,J.;Xi,C.;Handa,H.;Bartlett,R.H.;Meyerhoff,M.E.,Improved Hemocompatibility of Multilumen Catheters via Nitric Oxide(NO)Release from S-Nitroso-N-acetylpenicillamine(SNAP)Composite Filled Lumen.ACS Appl Mater Interfaces 2016,8(43),29270-29279.
非特許文献30.Brisbois,E.J.;Major,T.C.;Goudie,M.J.;Bartlett,R.H.;Meyerhoff,M.E.;Handa,H.,Improved hemocompatibility of silicone rubber extracorporeal tubing via solvent swelling-impregnation of S-nitroso-N-acetylpenicillamine(SNAP)and evaluation in rabbit thrombogenicity model.Acta Biomater 2016,37,111-9.
非特許文献31.Devine,R.;Goudie,M.J.;Singha,P.;Schmiedt,C.;Douglass,M.;Brisbois,E.J.;Handa,H.,Mimicking the Endothelium:Dual Action Heparinized Nitric Oxide Releasing Surface.ACS Appl Mater Interfaces 2020,12(18),20158-20171.
非特許文献32.Douglass,M.;Hopkins,S.;Pandey,R.;Singha,P.;Norman,M.;Handa,H.,S-Nitrosoglutathione-Based Nitric Oxide-Releasing Nanofibers Exhibit Dual Antimicrobial and Antithrombotic Activity for Biomedical Applications.Macromol Biosci 2020,e2000248.
非特許文献33.Estes,L.M.;Singha,P.;Singh,S.;Sakthivel,T.S.;Garren,M.;Devine,R.;Brisbois,E.J.;Seal,S.;Handa,H.,Characterization of a nitric oxide(NO)donor molecule and cerium oxide nanoparticle(CNP)interactions and their synergistic antimicrobial potential for biomedical applications.J Colloid Interface Sci 2020.
非特許文献34.Hibbard,H.A.J.;Reynolds,M.M.,Synthesis of novel nitroreductase enzyme-activated nitric oxide prodrugs to site-specifically kill bacteria.Bioorg Chem 2019,93,103318.
非特許文献35.Maloney,S.E.;McGrath,K.V.;Ahonen,M.J.R.;Soliman,D.S.;Feura,E.S.;Hall,H.R.;Wallet,S.M.;Maile,R.;Schoenfisch,M.H.,Nitric Oxide-Releasing Hyaluronic Acid as an Antibacterial Agent for Wound Therapy.Biomacromolecules 2020.
非特許文献36.Tuteja,N.;Chandra,M.;Tuteja,R.;Misra,M.K.,Nitric Oxide as a Unique Bioactive Signaling Messenger in Physiology and Pathophysiology.J Biomed Biotechnol 2004,2004(4),227-237.
非特許文献37.Garren,M.R.;Ashcraft,M.;Qian,Y.;Douglass,M.;Brisbois,E.J.;Handa,H.,Nitric oxide and viral infection:Recent developments in antiviral therapies and platforms.Appl Mater Today 2021,22.
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非特許文献40.Ghalei,S.;Mondal,A.;Hopkins,S.;Singha,P.;Devine,R.;Handa,H.,Silk Nanoparticles:A Natural Polymeric Platform for Nitric Oxide Delivery in Biomedical Applications.ACS Appl Mater Interfaces 2020.
非特許文献41.Feura,E.S.;Yang,L.;Schoenfisch,M.H.,Antibacterial activity of nitric oxide-releasing carboxymethylcellulose against periodontal pathogens.J Biomed Mater Res A 2020.
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非特許文献43.Mondal,A.;Devine,R.;Estes,L.;Manuel,J.;Singha,P.;Mancha,J.;Palmer,M.;Handa,H.,Highly hydrophobic polytetrafluoroethylene particle immobilization via polydopamine anchor layer on nitric oxide releasing polymer for biomedical applications.J Colloid Interface Sci 2020.
非特許文献44.Douglass,M.E.;Goudie,M.J.;Pant,J.;Singha,P.;Hopkins,S.;Devine,R.;Schmiedt,C.W.;Handa,H.,Catalyzed nitric oxide release via Cu nanoparticles leads to an increase in antimicrobial effects and hemocompatibility for short-term extracorporeal circulation.ACS Appl.Bio Mater.2019,2(6),2539-2548.
非特許文献45.Frost,M.C.;Meyerhoff,M.E.,Synthesis,characterization,and controlled nitric oxide release from S-nitrosothiol-derivatized fumed silica polymer filler particles.J Biomed Mater Res A 2005,72(4),409-19.
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非特許文献47.Mondal,A.;Douglass,M.;Hopkins,S.P.;Singha,P.;Tran,M.;Handa,H.;Brisbois,E.J.,Multifunctional S-Nitroso-N-acetylpenicillamine-Incorporated Medical-Grade Polymer with Selenium Interface for Biomedical Applications.ACS Appl Mater Interfaces 2019,11(38),34652-34662.
非特許文献48.Hopkins,S.P.;Pant,J.;Goudie,M.J.;Schmiedt,C.;Handa,H.,Achieving Long-Term Biocompatible Silicone via Covalently Immobilized S-Nitroso-N-acetylpenicillamine(SNAP)That Exhibits 4Months of Sustained Nitric Oxide Release.ACS Appl Mater Interfaces 2018,10(32),27316-27325.
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非特許文献82.Simon-Walker,R.;Romero,R.;Staver,J.M.;Zang,Y.;Reynolds,M.M.;Popat,K.C.;Kipper,M.J.,Glycocalyx-Inspired Nitric Oxide-Releasing Surfaces Reduce Platelet Adhesion and Activation on Titanium.Acs Biomater Sci Eng 2017,3(1),68-77.
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【国際調査報告】