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特表2024-508644老化関連分泌表現型を下方制御する抗老化植物ポリフェノール薬およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】老化関連分泌表現型を下方制御する抗老化植物ポリフェノール薬およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A61K31/353 ZNA
A61K31/136
A61K45/00
A61K31/704
A61P43/00 121
A61P43/00 123
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P9/00
A61P25/00
A61P19/10
A61P19/02
A61P3/00
A61P25/28
A61P13/08
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547195
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2021077495
(87)【国際公開番号】W WO2022165868
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110156372.3
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521165585
【氏名又は名称】バイヘルス・カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】スン,ユー
(72)【発明者】
【氏名】シュー,キシア
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,シュウグワーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ルイクン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZA021
4C084ZA151
4C084ZA361
4C084ZA811
4C084ZA961
4C084ZA971
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC211
4C084ZC411
4C084ZC521
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA36
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC41
4C086ZC52
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA05
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA05
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA36
4C206ZA81
4C206ZA96
4C206ZA97
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZC21
4C206ZC41
4C206ZC52
4C206ZC75
(57)【要約】
(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)対象物が老化細胞を生成させるように誘導することができる試薬、および場合により薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が開示される。老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現または活性を低下させること、細胞老化のマーカー因子の発現または活性を低下させること、非増殖性細胞アポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかまたは排除すること、老化を遅延させること、対象物の寿命を延ばすこと、老化関連疾患の負担を減少させること、非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患を予防、軽減、または治療すること、がん療法に対する薬物耐性を低下させること、細胞老化を誘導することができる試薬の有効性を高めること、腫瘍退縮を促進すること、腫瘍体積を減少させること、がんを予防または治療すること、あるいはとりわけ前立腺がんまたは腫瘍に対するがん生存を延ばすことにおける使用のための薬物または調合物の調製における、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび医薬組成物の使用が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含む医薬組成物であって、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
医薬組成物。
【請求項2】
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、医薬組成物中において少なくとも1μMの最終濃度を有し、ならびに/または
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬または調合物の製造における、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグの使用であって、医薬または調合物は、老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、加齢を遅らせるため、対象の寿命を延ばすため、対象の加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除からの恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する耐性を低下させるため、細胞老化を引き起こすことができる薬剤の有効性を高めるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍体積を減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
使用。
【請求項4】
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
SASP因子は、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含み、ならびに/または
非増殖細胞は、老化細胞であり、好ましくは、天然の老化細胞もしくは損傷細胞であり、ならびに/または
非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患は、加齢関連疾患、好ましくは、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病、代謝性疾患、神経変性疾患であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、ならびに/または
対象は、高齢の対象であり、ならびに/または
がん療法は、化学療法もしくは放射線療法を含む、
請求項3に記載の使用。
【請求項5】
腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
医薬または調合物の製造における物質の使用であって、物質は、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤を含み、医薬または調合物は、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、
好ましくは、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/または細胞アポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、
使用。
【請求項7】
腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1または2に記載の医薬組成物を含む医薬品ボックスまたはキットであって、
好ましくは、それぞれ、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび任意の薬学的に許容される補助物質、ならびに(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含有する容器1および容器2を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1である、
医薬品ボックスまたはキット。
【請求項9】
非増殖細胞における変化を引き起こすための方法であって、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグによって非増殖細胞を治療する工程を含み、変化は、以下:老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現もしくは活性を低下させること、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させること、非増殖細胞のアポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除すること、またはがん治療処置に対する細胞の耐性を下げることから選択される1つまたは複数を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、および/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μMの最終濃度を有する、
方法。
【請求項10】
細胞老化を誘導することができる薬剤の細胞毒性を高めるための方法であって、細胞を治療するために、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)細胞老化を誘導することができる薬剤を使用することを含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができ、ならびに/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも10μMの最終濃度を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医学の分野に属し、より詳細には、本願は、老化細胞を下方制御または除去するための抗老化薬およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞老化は、通常は安定して本質的には不可逆の、真核生物細胞における細胞周期停止状態を意味し、この場合、増殖細胞は、ほとんどがDNA損傷などのストレスシグナルによって誘導される、増殖促進性刺激に対して抵抗性となる。老化細胞は、異常形態、代謝活性の変更、クロマチンリモデリング、異常な遺伝子発現、リポフスチンの増加、粒状度の増強、激しい空胞化、および老化関連分泌表現型(SASP)炎症促進性表現型によって特徴付けられる。老化の生物学的役割は、非常に複雑であり、老化細胞の防御効果および有害効果の両方は、主に病態生理学的環境に従って説明されてきた。例えば、老化は、損傷細胞の悪性形質転換を避けるためのメカニズムとして進化したのかもしれないが、老化の発生は、例えば、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、関節炎、代謝性疾患、神経系退化症状などの一連の臨床に関する問題を含む多くの加齢関連病理を引き起こし得る。
【0003】
細胞老化は、核膜の陥入、クロマチン濃縮、細胞体積の増大、p53、p16INK4A/Rb、PI3K/Aktを含む複数の下流シグナル伝達経路の活性化、FoxO転写因子、およびミトコンドリア性SIRT1によって特徴付けられる。永久的な増殖停止に入ることに加えて、老化細胞は、多くの場合、局所炎症および組織分解を含む多くの病理学的特徴に関連する。細胞老化は、損傷細胞において生じ、それらが生物体において増殖するのを防ぐ。様々な外部刺激と内部要因との影響下において、細胞損傷は、細胞老化の明白な兆候に通じ得る。損傷の蓄積がある限界に達すると、様々な組織変性変化および生理的な老化表現型を、組織レベルで認識することができる。
【0004】
特に、最も注目に値する特徴は、老化関連分泌表現型(SASP)として知られている現象である、老化細胞による炎症性サイトカインの著しく増加した発現である。SASPの概念は、最初、2008年にCoppeらによって提案された。彼らは、老化細胞は、隣接している前癌細胞の増殖を促進し得るか、あるいは、集合的に「SASP因子」と呼ばれる、細胞外マトリックスタンパク質、炎症関連因子、およびがん細胞増殖因子を分泌することによってがん細胞の悪性度を増加させ得ることを見出した。
【0005】
国際的に知られている様々なSASP阻害剤は、SASPを著しく弱めることができるが、それらは、本質的に老化細胞を殺すことができない。薬理学的に老化細胞の負担を減少させるために、科学者らは、老化細胞を選択的に殺すために、総称して「セノリティクス(senolytics)」(老化細胞除去薬)として知られる小分子、ペプチド、および抗体を開発している。2015年のセノリティック薬の発見以来、研究者らは、他の小分子のセノリティック薬の特定およびそれらの作用の明瞭化においてかなりの進展を為した。多くの研究は、ほとんどのセノリティクスが限られた数の老化細胞タイプに対してのみ有効であることを示した。例えば、ナビトクラックスは、HUVECを標的にすることができるが、老化ヒト前脂肪細胞は標的にすることができない。証拠は、セノリティクスの有効性が、1つの特定の細胞タイプ内においてさえ変り得ることを示唆している。例えば、ヒト肺繊維芽細胞において、ナビトクラックスは、培養適合IMR90胎児肺線維芽細胞様細胞系を標的にし、殺すことができるが、老化初代ヒト肺繊維芽細胞においてはあまり有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この分野においてより広い範囲の応用を有するより効果的な抗老化薬を見出すことが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の態様は、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグと、任意の薬学的に許容される補助物質とを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンは、好ましくはプロシアニジンC1を含む、オリゴマープロシアニジンである。1つまたは複数の実施形態において、医薬組成物において、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μM、例えば、少なくとも1μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも200μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、または上記の任意の2つの値の間の範囲の最終濃度を有する。
【0009】
1つまたは複数の実施形態において、医薬組成物は、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤をさらに含む。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、腫瘍組織における老化細胞の産生を誘導することができる。
【0010】
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、DNA損傷および/またはアポトーシス、例えば、DNA二本鎖破壊を引き起こすことができる。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、MITまたはDOXである。
【0011】
本願は、医薬または調合物の製造におけるプロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグの使用も提供し、医薬または調合物は、老化関連の分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、老化を遅延させるため、対象の寿命を延ばすため、対象における加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除から恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する抵抗性を低下させるため、細胞老化を誘導することができる薬剤の有効性を高めるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用される。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンは、好ましくはプロシアニジンC1を含む、オリゴマープロシアニジンである。
1つまたは複数の実施形態において、SASP因子は、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含む。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、SASP因子は、図6に示される因子を含む。
1つまたは複数の実施形態において、SASP因子は、IL6、CXCL8、MCP2、CXCL1、GM-CSF、MMP3、AREG、SFRP2、ANGPTL4、IL1aからなる分子の群から選択される。
【0014】
1つまたは複数の実施形態において、細胞老化マーカー因子は、p16INK4a、p21CIP1からなる群から選択される。
1つまたは複数の実施形態において、非増殖細胞は、老化細胞、例えば、天然の老化細胞または損傷細胞などである。損傷細胞は、組織微小環境における損傷細胞、好ましくは化学療法または放射線療法によって生じた損傷細胞を含む。1つまたは複数の実施形態において、放射線療法は、イオン化放射線、α放射線療法、β放射線療法、またはγ放射線療法を含む。
【0015】
1つまたは複数の実施形態において、非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患は、これらに限定されるわけではないが、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病(例えば、関節炎)、代謝性疾患、神経変性疾患を含む、加齢関連疾患である。好ましくは、がんは、前立腺癌であり;腫瘍は、前立腺腫瘍である。
【0016】
1つまたは複数の実施形態において、細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/またはアポトーシスを引き起こす薬剤、例えば、化学療法剤または放射線などを含む。好ましくは、試薬は,MITまたはDOXを含む。
【0017】
1つまたは複数の実施形態において、対象は、高齢の対象である。特定の実施形態において、高齢の対象は、少なくとも20月齢のマウスまたは少なくとも60歳のヒトに相当する対象である。好ましくは、高齢の対象は、少なくとも24月齢のマウスまたは少なくとも75歳のヒトに相当する対象である。より好ましくは、高齢の対象は、24~27月齢のマウスまたは75~90歳のヒトに相当する対象である。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、がん療法は、化学療法または放射線療法、例えば、MIT療法、DOX療法、イオン化放射線、α放射線療法、β放射線療法、またはγ放射線療法を含む。
【0019】
本願は、医薬または調合物の製造における、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤の使用も提供し、医薬または調合物は、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍体積を減少させるため、がんを予防または治療するため、がん生存を延ばすために使用される。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンは、好ましくはプロシアニジンC1を含む、オリゴマープロシアニジンである。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、腫瘍組織における老化細胞の生成を誘導することができる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態において、当該薬剤は、DNA損傷および/またはアポトーシス、例えば、DNA二本鎖破壊を引き起こすことができる。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、MITまたはDOXである。
【0022】
1つまたは複数の実施形態において、(a)は、老化細胞を排除することができる。
1つまたは複数の実施形態において、腫瘍は、前立腺腫瘍;がんは、前立腺がんである。
【0023】
本願の別の態様は、本明細書の第一態様において説明される医薬組成物と対象による老化細胞の産生を誘導することができる随意の薬剤とを含む医薬品ボックスまたはキットを提供する。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、医薬品ボックスまたはキットは、それぞれ、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび任意の薬学的に許容される補助物質、ならびに(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤および任意の薬学的に許容される補助物質を含有する容器1および容器2を含む。
【0025】
1つまたは複数の実施形態において、医薬組成物、医薬品ボックスもしくはキットにおいて、(a)および随意の(b)は有効成分として使用され、ならびに他の成分は、薬学的に許容される補助物質および同様のものである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、医薬組成物の剤形は、経口剤、注射、輸液、錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸薬を含み;好ましい剤形は経口剤である。
本願の別の態様において、非増殖細胞または対象において変化を引き起こすための方法であって、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグによって非増殖細胞を治療する工程あるいはそれを対象に投与する工程を含み、変化は、以下:老化関連の分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現もしくは活性を低下させること、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させること、非増殖細胞のアポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除すること、老化を遅延させること、対象の寿命を延ばすこと、対象における加齢関連疾患の負担を減少させること、非増殖細胞の減少もしくは排除から恩恵を受けることができる疾患を予防、軽減、および治療すること、細胞老化を誘導することができる薬剤の細胞毒性を高めること、またはがん療法に対する耐性を低下させることから選択される1つまたは複数を含む、方法が提供される。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μM、例えば、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも200μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、または上記の任意の2つの値の間の範囲の最終濃度を有する。
【0028】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンは、好ましくはプロシアニジンC1を含む、オリゴマープロシアニジンである。
本願の別の態様は、細胞の老化を誘導する、腫瘍退縮を促進する、腫瘍体積を減少させる、がんを予防もしくは治療する、またはがん生存を延ばすことができる薬剤の細胞毒性を高めるための方法であって、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)細胞の治療において対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤を使用する工程、またはそれを対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0029】
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンは、好ましくはプロシアニジンC1を含む、オリゴマープロシアニジンである。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、腫瘍組織における老化細胞の生成を誘導することができる。
【0030】
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、DNA損傷および/またはアポトーシス、例えば、DNA二本鎖破壊を引き起こすことができる。
1つまたは複数の実施形態において、薬剤は、MITまたはDOXである。
【0031】
1つまたは複数の実施形態において、腫瘍は、前立腺腫瘍であり;がんは、前立腺がんである。
1つまたは複数の実施形態において、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも10μM、例えば、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも100μM、少なくとも200μM、少なくとも500μM、少なくとも1mM、または上記の任意の2つの値の間の範囲の最終濃度を有する。
【0032】
1つまたは複数の実施形態において、本明細書における実施形態のうちのいずれかにおいて説明される使用または方法は、臨床疾患の治療を直接の目的としない。
本願の他の態様は、本明細書における開示から当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、50μg/mlの濃度において化学療法薬ブレオマイシン(BLEO)によってインビトロ処理された7~10日後の、増殖性ヒト間質細胞PSC27(早期継代:例えば、p10~20など)のSA-β-Gal染色の結果を示し、上部は、代表的な画像を示し、下部は、統計的データを示すグラフである。CTRL、コントロール細胞;BLEO、ブレオマイシンによって処理された細胞。**、P<0.01。
図2図2は、化学療法薬ブレオマイシン(BLEOオ)で処理されたPSC27細胞のBrdU染色の結果を示し、上部は、代表的な画像を示し、下部は、統計的データを示グラフである。CTRL、コントロール細胞;BLEO、ブレオマイシンによって処理された細胞。***、P<0.001。
図3図3は、PSC27細胞を化学療法薬ブレオマイシン(BLEO)で処理した後の、γH2AX使用した免疫蛍光染色の結果を示すグラフである。CTRL、コントロール細胞;BLEO、ブレオマイシンによって処理された細胞。***、P<0.001。核における蛍光スポットの数に従って、それらを、0フォーカス、1~3フォーカス、4~10フォーカス、および>10フォーカスを有する単細胞を含む4つのカテゴリに分けた。
図4図4は、抗老化活性を有する植物原料を得るために、天然産物薬物ライブラリをスクリーニングするための実験フローチャートを示す。
図5図5は、RNA-seqデータがソフトウェアおよび生物情報科学分析によって処理された後、PCC1は、増殖細胞と比較して老化細胞において著しく上方制御される遺伝子を著しく減少させることができることが見出されることを示すグラフである。BLEOグループと比較して、BLEO/PCC1グループにおいて、4406遺伝子は著しく下方制御され、2766遺伝子は著しく上方制御される(>2倍の変化、P<0.01)。
図6図6は、ヒートマップにおいて、BLEO損傷によって引き起こされた老化細胞における多くの因子の発現は上方制御されるが、それらの多くは、PCC1処理の後に著しく戻る。赤い星のマークは、典型的なSASP外分泌因子である。
図7図7は、GSEA分析の結果において、SASPまたはNF-κB分子マーカー関連因子の発現は、BLEO誘導老化細胞においての強く上方制御されるが、老化細胞のPCC1処理の後に著しく減少することを示すグラフである。左側、SASP分子マーカー;右側、NF-κB分子マーカー。
図8図8は、タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)バイオインフォマティクス分析の結果において、老化細胞分子を著しく下方制御するPCC1は、ネットワークを形成し、それらの間において、多重相互作用が存在することを示す図である。
図9図9は、KEGG経路解析に従って、老化細胞においてPCC1によって著しい下方制御が引き起こされた100個の分子に対する生物学的プロセスの代表的経路を示すグラフであ。左のY軸、パーセンテージ。右のY軸、log10(p値)。
図10図10は、KEGG経路解析に従って、老化細胞においてPCC1によって著しい下方制御が引き起こされた100個の分子に対する細胞成分の代表的経路を示すグラフである。左のY軸、パーセンテージ。右のY軸、log10(p値)。
図11図11は、蛍光定量的PCR(qRT-PCR)の検出および分析に従って、BLEOによって誘導され異なる濃度のPCC1によって処理された老化細胞における典型的なSASP分子の群の相対的発現レベルを示すグラフである。全てのデータは、CTRLグループと比較して正規化された結果である。、P<0.05;**、P<0.01。
図12図12は、漸増PCC1濃度の条件下でのSA-β-Gal染色による特定に従って、PSC27は老化であるか否かを示す。^、P<0.05;**、P<0.01;****、P<0.0001、この場合、1μM、10μM、20μM、50μM、100μM、150μM、および200μMの濃度におけるPCC1に対するP値は、0μMでのデータによるこれらの実験群における細胞の陽性比を比較することによって得られた統計的有意性である。
図13図13は、SA-β-Gal染色後の様々な濃度でのPSC27の代表的な写真を表す。1グループあたり3回の反復が上下に配置される。スケールバー、30μm。
図14図14は、CCK8が、PCC1の漸増濃度下での老化グループにおける増殖細胞および細胞の生存率を検出することを示すグラフである。各PCC1濃度でのP値は、CTRLグループとBLEOグループとの間の比較の後の有意差である。**、P<0.01;***、P<0.001;****、P<0.0001。
図15図15は、PSC27の集団倍加試験を示すグラフである。細胞は、継代10(p10)においてBLEOによって損傷を受け、次いで、8日目にPCC1を培地に加えた。細胞増殖の可能性に対するPCC1の効果は、CTRLグループ、BLEOグループ、PCC1グループ、およびBLEO/PCC1グループの集団倍加(PD)の比較分析によって決定される。^、P>0.05;***、P<0.001。
図16図16は、カスパーゼ3/7活性が、老化細胞のPCC1処理の間に誘導されたことを示すグラフである。PSC27細胞は、培養条件下において12時間にわたってBLEOで処理された後、徐々に老化段階に入った。50μMのPCC1を、7日目から開始して老化細胞の培地に加え、細胞を標識するために、NucLight Rapid Red試薬を使用し、アポトーシス検出ために、カスパーゼ3/7試薬(IncuCyte)を使用した。カスパーゼ3/7活性を4時間毎に検出した(n=3)。
図17図17は、汎カスパーゼ阻害剤(20 cM QVD-OPh)によって逆転されたセノリティック活性を示す(この実験において50μMのPCC1を使用し、200μMのABT263をポジティブコントロールとして使用し;後者は、近年に報告された老化細胞アポトーシス誘発物質である)。統計学的差異は、二元配置分散分析(Turkey試験)によって得られる。
図18図18は、フローサイトメトリーで測定された、いくつかの条件下でのPSC27のアポトーシスを示すグラフである。Q2、早期アポトーシス細胞の配分エリア;Q3、晩期アポトーシス細胞の配分エリアである。
図19図19は、BLEOおよび/またはPCC1で処理された生存細胞とアポトーシス細胞の数の比較分析を示すグラフである。***、P<0.001;****、P<0.0001。
図20図20は、前臨床試験におけるマウスの投与の概略図を示す。ヒト間質細胞PSC27とがん細胞PC3とをインビトロにおいて混合し(1:4)、次いで、移植腫瘍を形成するために皮下においてマウスに移植した。単一薬または混合薬の投与の条件下での複数の治療サイクルの後に、最終的にマウスを犠牲にし、腫瘍組織における関連分子の発現変化を病理学的に分析した。
図21図21は、移植腫瘍を形成するために、CTRLグループまたはBLEO損傷グループのPSC27細胞と混合したPC3、またはPC3細胞のみを、マウスの皮下組織に移植した。第8週の終了時に、マウスを解剖し、腫瘍を採取し、各グループの条件下での腫瘍の体積を検出して比較した。**、P<0.01;***、P<0.001;****、P<0.0001。
図22図22は、臨床前試験におけるマウスに対する投与時間および投与方法の概略図を示す。2週間毎が投薬サイクルであり、第3週/第5週/第7週の最初の日にMIT(ミトキサントロン)をマウスに腹腔内投与した。第5週の初日から、1週間に1回、マウスにPCC1を腹腔内投与した。8週間の一連の治療の後、病理学的な特定および発現分析のためにマウスを解剖した。
図23図23は、腫瘍端末体積統計分析を示すグラフである。マウスに投与するために、化学療法薬MITを単独でまたは抗老化薬PCC1と一緒に使用し、第8週の後に、各グループの腫瘍サイズを比較し分析した。
図24図24は、臨床前実験でのPC3/PSC27担腫瘍動物病巣における細胞の老化の比較を示す写真である。SA-β-Gal染色後の代表的な写真。スケールバー、100μm。
図25図25は、マウスの腫瘍組織における、SA-β-Galによって染色された陽性細胞のパーセンテージの並行分析を示すグラフである。^、P>0.05;**、P<0.01;***、P<0.001。
図26図26は、蛍光定量的PCR(qRT-PCR)によって検出および分析された、マウス病巣の上皮がん細胞および間質細胞におけるSASP典型的因子の発現を示すグラフである。間質細胞およびがん細胞は、詳細には、LCM技術によって分離され、全RNAが、SASP発現検出のために調製され使用された。^、P>0.05;、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001。
図27図27は、蛍光定量的PCR(qRT-PCR)によって検出および分析される、ビヒクル、MIT、およびMIT/PCC1を投与したマウス病巣の間質細胞におけるSASP因子の発現を示す図である。、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001。
図28図28は、LCM技術による病巣におけるがん細胞の特定の分離の後に、各グループのマウスにおけるDNA損傷およびアポトーシスの比率を分析したことを示すグラフである。^、P>0.05;、P<0.05;**、P<0.01。
図29図29は、免疫組織化学染色の後の画像解析を示す写真である。マウスの各グループの病巣における切断されたカスパーゼ3(CCL3)のシグナルが際立ったコントラストである。スケールバー、200μm。
図30図30は、様々な薬物治療の後のNOD/SCIDマウスにおける無病生存率に関するカプラン・マイヤーデータの比較を示すグラフである。ビヒクル、MIT、PCC1、およびMIT/PCC1グループの腫瘍体積が2000mmを超える場合、重度の疾患が生じていると考えられ、やがてマウスを殺す必要があり、担腫瘍状態が検出されるはずである。^、P>0.05;**、P<0.01。
図31図31は、様々な投与条件下での治療過程の終了時のマウスの体重データの比較分析を示すグラフである。^、P>0.05。
図32図32は、上記の様々な投与条件下での治療過程の終了時のマウスの血清学的データの比較分析を示すグラフである。クレアチニン、尿素(腎臓インディケーター)、ALP、およびALT(肝臓インディケーター)データが同時に比較された。^、P>0.05。
図33図33は、様々な投与条件下での治療過程の終了時の免疫無傷のマウス(C57BL/6J)の体重データの比較分析を示すグラフである。^、P>0.05。
図34図34は、前臨床試験における様々な投与条件下での治療過程の終了時のマウス血球数の比較分析を示すグラフである。WBC、リンパ球、および好中球を同時に比較した。^、P>0.05。
図35図35は、腫瘍端末体積統計分析を示すグラフである。化学療法薬DOXを単独でまたは抗老化薬PCC1と一緒にマウスに投与し、第8週の終了時の後に、各グループの腫瘍サイズを比較し分析した。
図36図36は、腫瘍端末体積統計分析を示すグラフである。化学療法薬DOCを単独でまたは抗老化薬PCC1と一緒にマウスに投与し、第8週の終了時の後に、各グループの腫瘍サイズを比較し分析した。
図37図37は、腫瘍端末体積統計分析を示すグラフである。化学療法薬VINを単独でまたは抗老化薬PCC1と一緒に、マウスに投与し、第8週の終了時の後に、各グループの腫瘍サイズを比較し分析した。
図38図38は、発症前段階のマウスの治療後生存曲線を示すグラフである。C57BL/6マウスに、24~27月齢で開始して、2週間毎にビヒクルまたはPCC1の腹腔内投与を受けさせた(ビヒクルグループはn=80;PCC1グループはn=91)。各グループにおける動物の中央値生存率を計算して示した。****、P<0.0001。
図39図39は、発症前段階のマウスの全生存曲線(寿命、または総丈)を示すグラフである。C57BL/6マウスに、24~27月齢で開始して、2週間毎にビヒクルまたはPCC1の腹腔内投与を受けさせた(ビヒクルグループはn=80;PCC1グループはn=91)。各グループにおける動物の中央値寿命を計算して示した。****、P<0.0001。
図40図40は、グループの中での、最も速い歩行速度、持久力、および総合的な寿命の比較分析のために、各グループの動物の中で最も高い範囲にある寿命の長さの雌のマウスを選択したことを示すグラフである。N=5。^、P>0.05;**、P<0.01。
図41図41は、グループの中での、最も速い歩行速度、持久力、および総合的な寿命の比較分析のために、各グループの動物の中で最も高い範囲にある寿命の長さの雄のマウスを選択したことを示すグラフである。N=5/グループ。^、P>0.05;***、P<0.001。
図42図42は、2つのグループの動物の寿命の終了時における、各マウスが受けた疾患負担の比較分析を示すグラフである。N=60/グループ。統計結果は箱髭図として示され、各ボックスは、四分位範囲での中央値を示す。^、P>0.05。
図43図43は、2つのグループの動物の寿命の終了時における各マウスにおいて発生した腫瘍の数の比較分析を示すグラフである。N=60/グループ。統計結果は箱髭図として示され、各ボックスは、四分位範囲での中央値を示す。^、P>0.05。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、プロシアニジンが身体における老化細胞の下方制御または除去に対して素晴らしい効果を有することを見出し、そのため、プロシアニジンは、組織微小環境における損傷細胞を除去するために適用することができ、加齢によって自然に老化する細胞を除去するためにも使用することができる。
【0035】
本願において使用される場合、「増殖細胞」は、連続した活発な分裂および連続した増殖の状態を維持できる細胞を意味する。「非増殖細胞」は、狭い意味において、老化細胞、例えば、天然の老化細胞または損傷細胞などを意味し、損傷細胞は、組織微小環境における損傷細胞、好ましくは化学療法または放射線療法によって生じた損傷細胞を包含する。本願において使用される場合、「老化細胞」は、増殖および分裂の能力が減少し、生理学的機能が低下した細胞を意味する。
【0036】
本明細書において言及される「プロシアニジン」は、オリゴマープロシアニジンを含むポリフェノール化合物に対する一般用語である。プロシアニジンは、植物ポリフェノールファミリーにおける重要なクラスである。このフラバノール化合物の大部分は、フラバン結合のC4~C6およびC4~C8を介してカテキンまたはエピカテキンを連結することによって形成され、化合物のいくつかは、ガレートであり;それらの共通点は、それらが、本質的にはアントシアニンモノマーで構成されたオリゴマー、ほとんどの場合二量体および三量体である。例示的オリゴマープロシアニジンは、式Iで表される単位を有し、単位の数は1超から6であり、波線は他の単位との接続を表す。
【0037】
【化1】
【0038】
いくつの実施形態において、プロシアニジンは、下記の式:
【0039】
【化2】
【0040】
によって表されるプロシアニジンC1(PCC1)である。
PCC1は、植物ポリフェノールファミリーにおける三量体であり、それは、抗酸化、抗炎症、抗癌効果を有するだけでなく、老化細胞を標的にし、除去する機能も有する。
【0041】
本願において、「化合物」(プロシアニジン、その塩またはプロドラッグなどを含む)は、純粋な形態の化合物、または85%超(好ましくは90%超、例えば、95%、98%、99%など)の純度を有する化合物であり得る。
【0042】
当業者は、本願の化合物の構造を知った後、本願の化合物は、当技術分野における公知の原材料を使用することにより、当技術分野において周知の様々な方法、例えば、生物体(例えば、微生物)からの化学合成または抽出の方法などによって得ることができることを理解するはずであり、なお、これらの方法は全て、本願に含まれる。さらに、プロシアニジンは、商業的薬物でもあり、そのため、その最終製品は、当業者によって容易に入手可能である。
【0043】
本願において、プロシアニジンの薬学的に許容される塩も含まれ、それも、プロシアニジンの化学活性を維持する。本願において、「薬学的に許容される」成分は、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、およびアレルギー反応)を伴わない、ヒトおよび/または動物における使用にとって好適な物質であり、それは、妥当なベネフィットリスク比を有する物質である。「薬学的に許容される塩」は、プロシアニジンの酸性塩または塩基性塩であり得る。
【0044】
「薬学的に許容される酸性塩」は、遊離塩基の生物活性および特性を維持することができる塩を意味し、そのような塩は、望ましくない生物活性または他の変化を有さないであろう。そのような塩は、無機酸、例えば、これらに限定されるわけではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、および同様のものから形成され得る。そのような塩は、有機酸、例えば、これらに限定されるわけではないが、酢酸、ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファスルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1-ナフトール-2-カルボン酸、ナイアシン、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸、および同様の酸からも形成され得る。
【0045】
「薬学的に許容される塩基性塩」は、遊離酸の生物活性および特性を維持することができる塩を意味し、そのような塩は、望ましくない生物活性または他の変化を有さないであろう。そのような塩は、遊離酸に無機塩基または有機塩基を加えることによって調製される。無機塩基から得られる塩としては、これらに限定されるわけではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩、および同様のものが挙げられる。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。有機塩基から得られる塩としては、これらに限定されるわけではないが、第一級、第二級、および第三級アンモニウム塩が挙げられ、置換アミンは、天然の置換アミン、環状アミン、および塩基イオン交換樹脂、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、N-ベンジル-2-フェニルエチルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルコサミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミド樹脂、および類似構造体などを含む。好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
【0046】
本発明において開示される化合物は、水和物、例えば、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物、および類似構造体などとして存在し得る。本願において、プロシアニジンプロドラッグも含まれ、「プロドラッグ」は、適切な経路において取り込まれた後に、対象の身体において新陳代謝または化学反応を受けて、所望のプロシアニジンへと変換されるである化合物を意味する。
【0047】
プロシアニジン
発明者は、プロシアニジン(本明細書ではPCC1と呼ばれる)が、SASPの発現を効果的に阻害することができ、老化細胞の生存率を著しく低下させることができることを見出した。
【0048】
したがって、本願は、医薬または調合物の製造におけるプロシアニジンの使用であって、医薬または調合物は、老化関連の分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化のマーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、老化を遅延させるため、対象の寿命を延ばすため、対象における加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除から恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する耐性を低下させるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用される、使用を提供する。本明細書において、「個体」「対象」または「患者」は、哺乳動物、特にヒトを意味する。
【0049】
この論文では、「排除(elimination)」と「除去(clearance)」は、相互互換的に使用され、その物質が、細胞死および除去の効果を達成するために選択的に非増殖細胞(老化細胞)を破壊するために、細胞自身のメカニズムを使用することを示す。例示的実施形態において、物質(例えば、PCC1)は、アポトーシスを誘導することによって非増殖細胞を排除または除去することができる。
【0050】
「SASP因子」は、本明細書に使用される場合、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含む。SASP因子は、図6に示される因子または、IL6、CXCL8、MCP2、CXCL1、GM-CSF、MMP3、AREG、SFRP2、ANGPTL4、IL1aから選択される1つまたは複数を包含し得る。
【0051】
本明細書において説明される「非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患」は、概して、加齢関連疾患であり、例えば、これらに限定されるわけではないが、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病(例えば、関節炎)、代謝性疾患、神経変性疾患が挙げられる。好ましくは、がんは、前立腺がんである。
【0052】
本明細書において、プロシアニジン(例えば、PCC1)は、対象の寿命を延ばし、対象における加齢関連疾患の負担を減少させるためにも使用することができる。いくつの実施形態において、対象は、高齢の対象、例えば、少なくとも20月齢のマウスまたは少なくとも60歳のヒトに相当する対象である。好ましくは、高齢の対象は、少なくとも24月齢のマウスまたは少なくとも75歳のヒトに相当する対象である。より好ましくは、高齢の対象は、少なくとも24~27月齢のマウスまたは少なくとも75~90歳のヒトに相当する対象である。高齢の対象は、特定の実施形態における調査対象として使用されるが、これは、結果分析の都合のための例にすぎない(例えば、高齢の対象は、より一層の加齢関連疾患を有する)。本願に見出される老化細胞の排除におけるプロシアニジンの有効性に基づいて、それは、老化細胞を排除し、寿命を延ばし、および加齢関連疾患の負担を減少させるために任意の年齢の対象において使用することができることを当業者は知るはずである。
【0053】
本明細書において、プロシアニジン(例えば、PCC1)は、患者におけるがん療法に対する抵抗性を減少させるためにも使用することができる。がん療法は、化学療法または
放射線療法を含み、化学療法の例としては、細胞傷害性療法、例えば、MITまたはDOXなどが挙げられ、放射線療法の例としては、イオン化放射線が挙げられ、主に、α光線、β光線、γ光線、およびX線、ならびに陽子および中性子流による療法を含む。
【0054】
さらに、本発明者らは、ある特定の薬剤と組み合わせて使用した場合に、プロシアニジン(例えば、PCC1)は、細胞老化を誘導するために薬剤の細胞毒性を高めることができることを見出した。細胞の老化を誘導するための薬剤は、DNA損傷および/またはアポトーシスを引き起こすことによって老化細胞を産生するように誘導するである薬剤であり得、ならびに、その例としては、化学療法剤または放射線が挙げられる。
【0055】
したがって、本願は、細胞の老化を誘導する薬剤の有効性を高めることにおけるプロシアニジンの使用、ならびに、腫瘍退縮を促進する、腫瘍体積を減少させる、がんを予防または治療する、およびがん生存を延ばすことにおいて細胞の老化を誘導する薬剤と組み合わせたプロシアニジンの使用も提供する。例示的には、細胞は、腫瘍細胞であり;腫瘍は、前立腺腫瘍であり;がんは、前立腺がんである。
【0056】
本願の別の態様において、上記の使用を達成するための方法であって、老化細胞を治療するためまたはそれを必要とする対象にそれらを投与するために、(a)本明細書において説明されるプロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および場合により(b)対象において老化細胞を誘導することができる薬剤を使用する工程を含む、方法が提供される。用語「投与すること(administering)」または「与えること(giving)」は、本明細書に使用される場合、治療または予防される疾患もしくは状態を患うかあるいは疾患または状態のリスクにある対象に本願の化合物または医薬組成物を提供することを意味する。
【0057】
組成物
本願の組成物は、活性成分としてプロシアニジンまたはその塩などの物質を使用する。上記において言及されるように、プロシアニジン(例えば、PCC1)を含有する組成物は、老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御する、SASP因子の発現または活性を低下させる、細胞老化マーカー因子の発現または活性を低下させる、非増殖細胞(老化細胞)のアポトーシスを誘導する、非増殖細胞(老化細胞)を減少させるかまたは排除する、加齢を遅らせる、対象の寿命を延ばす、対象における加齢関連疾患の負担を減少させる、非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療する、がん療法に対する耐性を低下させることができる。
【0058】
組成物が、活性成分として細胞老化誘導性薬剤(例えば、化学療法剤または放射線)をさらに含む場合、組成物は、腫瘍退縮を促進する、腫瘍体積を減少させる、がんを予防または治療する、およびがん生存を延ばすことができる。
【0059】
本明細書において説明される組成物が医薬品として使用される場合、それは、薬学的に許容される補助物質も含む。「薬学的に許容される補助物質」は、本願の組成物中の活性成分(例えば、プロシアニジンおよび随意の老化誘導性薬剤)を動物またはヒトに送達するために使用することができる、薬学的に許容されるまたは食品許容可能な、担体、溶媒、懸濁化剤、または賦形剤である。例示的補助物質は、液体または固体であり得、これらに限定されるわけではないが、pH調整剤、界面活性剤、炭水化物、助剤、酸化防止剤、キレート化剤、イオン強度エンハンサー、保存料、担体、滑沢剤、甘味料、染料/着色剤、調味料、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、等張剤、溶媒、乳化剤、散布剤、圧縮空気または他の好適な気体、または医薬化合物と組み合わせて使用される他の好適な不活性成分が挙げられる。より詳細には、好適な補助物質は、小分子化合物の投与のために当技術分野において一般的に使用されるものであり得る。補助物質の例としては、種々なラクトース、マンニトール、オイル、例えば、トウモロコシ油など、緩衝剤、例えば、PBSなど、生理食塩水、ポリエチレングリコールグリセロール、ポリプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、アミド、例えば、ジメチルアセトアミドなど、タンパク質、例えば、卵白タンパク質など、および界面活性剤、例えば、Tween 80など、単糖およびオリゴ多糖、例えば、グルコース、ラクトース、シクロデキストリン、ならびにデンプンなどが挙げられる。
【0060】
概して、組成物は、本明細書において説明される有効成分の治療有効量を含有するであろう。治療有効量は、対象における疾患または状態の治療、予防、緩和、および/または除去を達成することができる用量を意味する。治療有効量は、例えば、患者の年齢、性別、疾患およびその重症度、ならびに患者の他の身体的状態などの因子に従って決定することができる。治療有効量は、単回用量として投与され得るか、または効果的な治療レジメンに従って複数回用量において投与され得る。本明細書において、対象または患者は、概して、哺乳動物、とりわけヒトを意味する。例示的には、組成物は、例えば、0.001~50重量%、好ましくは0.01~30重量%、より好ましくは0.05~10重量%の有効成分(例えば、プロシアニジンおよび場合により細胞老化誘導性薬剤)を含む。
【0061】
本願の医薬組成物または混合物は、在来法によって任意の従来の調合形態へと調製することができる。投薬形態は、多様であり得、投薬形態は、有効成分が哺乳動物の身体に効果的に達することができる限り、許容可能である。例えば、それは、注射、点滴、錠剤、カプセル剤、丸薬から選択することができる。活性成分(例えば、プロシアニジンおよび随意の細胞老化誘導性試薬)は、好適な固体または液体の担体または希釈剤中に存在し得る。活性成分の混合物または本願の医薬組成物は、注射または注入に対して好適な無菌装置に貯蔵してもよい。
【0062】
組成物中の活性成分(例えば、プロシアニジンおよび随意の細胞老化誘導薬)の有効用量は、投与様式および治療される疾患の重症度によって変り得、経験および臨床医の推奨に基づき得る。
【0063】
本願の特定の実施形態において、異なるモル比または質量比に従って、プロシアニジンおよび随意の細胞老化誘導剤のための一連の投薬レジメンが提供される。本願において、マウスは、実験動物としても使用される。当業者にとって、マウスに対する投薬量をヒトに対して好適な投薬量に変換するのは容易である。例えば、Meeh-Rubner式:
A=k×(W2/3)/10000
に従って計算することができる。
【0064】
式において、Aは、mで表現される体表面積を表し;Wは、gで表現される体重を表し;Kは、動物種によって変る定数を表し、すなわち、マウスおよびラットに対して9.1、モルモットに対しては9.8、ウサギに対しては10.1、ネコに対しては9.9、犬に対しては11.2、サルに対しては11.8、およびヒトに対しては10.6である。
【0065】
プロシアニジンおよび随意の細胞老化誘導剤または医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、または皮下などにおいて投与することができる。経口投与は、好ましくあり得る。経口投与にとって好適な医薬品形態としては、これらに限定されるわけではないが、錠剤、粉末剤、カプセル剤、徐放性製剤などが挙げられる。注射にとって好適な医薬品形態としては、無菌水溶液もしくは分散液および無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、これらの形態は、無菌でなければならず、ならびに、注射器から容易に排出するために流体でなければならない。
【0066】
必要であれば、プロシアニジンおよび随意の細胞老化誘導剤は、追加の有効成分または薬物と組み合わせて投与することもできる。
本願は、老化細胞を下方制御もしくは除去するための、または生物体の寿命を延ばすための医薬品ボックスまたはキットも提供し、医薬品ボックスまたはキットは、本明細書のいずれかの実施形態において説明される医薬組成物を含む。あるいは、医薬品ボックスまたはキットは、本明細書において説明されるプロシアニジンと随意の細胞老化誘導剤との混合物を含む。あるいは、医薬品ボックスまたはキットは、容器1および容器1に入れられた、本明細書において説明されるプロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ;ならびに容器2および容器2に入れられた細胞老化誘導性試薬を含む。
【0067】
医薬品ボックスまたはキットは、様々な剤形において組成物を使用または投与するために必要ないくつかの補助材料、例えば、測定器および容器、例えば、注射器なども含み得る。医薬品ボックスまたはキットは、老化細胞を治療、下方制御、もしくは除去する方法または身体の生存期間を延ばす方法を説明する、使用のための取扱説明書も含むことができる。
【0068】
例示的実施形態
1(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および場合により薬学的に許容される補助物質を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、医薬組成物。
【0069】
2.プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、医薬組成物中において少なくとも1μMの最終濃度を有し、および/または
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、
項目1において記載される医薬組成物。
【0070】
3.医薬または調合物の製造における、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグの使用であって、医薬または調合物は、老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、加齢を遅らせるため、対象の寿命を延ばすため、対象の加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除からの恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する耐性を低下させるため、細胞老化を引き起こすことができる薬剤の有効性を高めるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、使用。
【0071】
4.プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
SASP因子は、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含み、ならびに/または
非増殖細胞は、老化細胞、好ましくは、天然の老化細胞もしくは損傷細胞であり、ならびに/または
非増殖細胞の減少もしくは排除から恩恵を受ける疾患は、加齢関連疾患、好ましくは、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病、代謝性疾患、神経変性疾患であり、ならびに/または
細胞の老化を引き起こすことができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、ならびに/または
対象は、高齢の対象であり、ならびに/または
がん療法は、化学療法または放射線療法を含む、項目3において記載される使用。
【0072】
5.腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、項目3または4において記載される使用。
医薬または調合物の製造における物質の使用であって、物質は、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグならびに、(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤を含み、医薬または調合物は、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンより好ましくはプロシアニジンC1であり、
好ましくは、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/または細胞アポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、使用。
【0073】
7.腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、項目6において記載される使用。
8.項目1または2に記載される医薬組成物を含む医薬品ボックスまたはキットであって、
好ましくは、それぞれ、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および任意の薬学的に許容される補助物質、ならびに(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含有する容器1および容器2を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1である、医薬品ボックスまたはキット。
【0074】
9.非増殖細胞を変更するための方法であって、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグによって非増殖細胞を治療する工程を含み、ならびに、変更することが、以下:老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現もしくは活性を低下させること、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させること、非増殖細胞のアポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除すること、またはがん治療処置に対する細胞の耐性を下げることから選択される1つまたは複数を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、および/または
プロシアニジンもしくはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μMの最終濃度を有する、方法。
【0075】
10.細胞の老化を誘導することができる薬剤の細胞毒性を高めるための方法であって、細胞を治療するために、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)細胞老化を誘導することができる薬剤を使用する工程を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができ、ならびに/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも10μMの最終濃度を有する、方法。
【0076】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等な全ての方法および材料は、本願の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料は、ここで説明される。本願に関して使用することができる刊行物において報告された化学物質、装置、統計分析、および方法論を説明および開示することを含む全ての目的のために、本明細書において明確に言及された全ての刊行物および特許は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。この説明において引用される全ての参考文献は、技術水準を示していると見なされるべきである。本明細書のいかなる記載も、本願が任意の先行出願によるそのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。
【0077】
本願は、特定の実施例に関連して下記においてさらに説明される。これらの実施例は、本願を説明するためにのみ使用され、本願の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。下記の実施例における特定の条件を示さない実験方法は、通常、例えば、J. Sambrookら、Molecular Cloning Experiment Guide、第3版Science Press、2002に記載されるものなどの従来の条件に従うか、または製造元によって推奨される条件に従う。
【実施例
【0078】
材料および方法
1.細胞培養
(1)細胞系維持
初代正常ヒト前立腺間質細胞系PSC27(フレッド・ハッチンソン・ガン研究センター、米国から入手)を、37℃および5%のCOでインキュベーターにおいて培養し、PSCC完全培養培地において増殖および継代した。
【0079】
(2)細胞の凍結保存および回復
a.細胞の凍結保存
対数増殖期の細胞を、0.25%のトリプシンによって収集し、1000rpmで2分間遠心分離し、上清を破棄して、細胞を、新たに調製した凍結溶液に再懸濁させた。細胞を、標識された無菌冷結保存バイアルにサブパッケージした。次いでそれらを、徐々に温度を下げることによって冷却し、最終的に、長期貯蔵のために液体窒素に移した。
【0080】
b.細胞の回復
液体窒素において凍結された細胞を取り出し、即座に、37℃の水浴に入れることにより、それらを迅速に解凍させる。2mLの細胞培養培地を直接加えることにより、細胞を均一に懸濁させた。細胞が壁に付着した後、置き換えのために新鮮な培養培地を使用した。
【0081】
(3)インビボ実験処理
細胞損傷を引き起こすために、PSC27細胞が80%まで増殖したときに、50μg/mLのブレオマイシン(BLEO)を培養培地に加えた(PSC27-CTRLと略する)。薬物処理の12時間後、細胞をPBSで単純に3回洗浄して、7~10日間細胞培地に放置し、次いで、続きの実験を実施した。
【0082】
2.天然物ライブラリのスクリーニング
そのほとんどが薬用植物抽出物であり抗老化能力を有する、合計41個の成分を伴う天然物ライブラリ(BY-HEALTH)に対して、薬力学的解析を行った。ある特定の濃度勾配に従って、各天然物を96ウェルプレートにおいて希釈し、密度は、ウェル1つあたり5000個細胞であった。培地はDMEMを使用し、天然物(または化合物)の作用濃度は、概して、1μMから1mMに制御される。薬物処理の3~7日後、細胞増殖を、CCK-8Cell Counting Kit(WST-8原理に基づく、Vazyme)によって測定し、細胞アポトーシス活性を、Caspase 3/7 Activity Kit(Promega)によって判定した。
【0083】
最初に特定された薬物候補を、30日間さらにスクリーニングした。2回目ラウンドの候補範囲に入る薬物を、6ウェルプレートにおいて、ウェル1つあたり20,000個細胞に希釈した。培地および薬物候補を、1日おきに変えた。細胞表現型および生存率などに対する各薬物の効果を判定するために、薬物の異なる濃度に従って確認分析を実施した。
【0084】
3.ウェスタンブロット法および免疫蛍光検出
NuPAGEの4~12%Bis-Trisゲルを使用して、細胞溶解物誘導タンパク質を分離し、ニトロセルロース膜 (Life Technologies)に移した。ブロットを、室温で1時間、5%のスキムミルクでブロックし、製造元のプロトコール濃度において所望の一次抗体を用いて4℃で一晩インキュベートし、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート標識二次抗体(Santa Cruz)を用いて1時間インキュベートし、製造元のプロトコールに従って、増強化学発光(ECL)検出試薬(Millipore)を用いてブロットシグナル検出を行い、ならびにImageQuant LAS 400 Phospho-Imager(GE Healthcare)を使用した。標準的タンパク質マーカーとして、発明者らは、Thermo Fisher Scientific製のPageRuler Plus Prestained Protein Ladder(no.26619)を使用した。
【0085】
免疫蛍光染色のために、皿での培養の少なくとも24時間後にカバーガラス上に標的細胞を予備播種した。簡潔な洗浄の後、PBS中4%のパラホルムアルデヒドによって8分間かけて細胞を固定し、5%の通常のヤギ血清(NGS、Thermo Fisher)によって30分間かけてブロックした。マウスモノクローナル抗体-抗ホスホ-ヒストンH2A.X(Ser139)(クローンJBW301、Millipore)およびマウスモノクローナル抗体-抗BrdU(カタログ# 347580、BD Biosciences)、ならびに二次抗体Alexa Fluor(登録商標)488(または594)-EurolinkのF(ab‘)2を、固定した細胞でコーティングされたスライドに連続的に加えた。核を2μg/mのDAPIによって対比染色した。データ分析および結果表示のために、3つの観察フィールから最も代表的な画像を選択した。細胞の共焦点蛍光画像を取得するために、FV1000レーザー走査共焦点顕微鏡(Olympus)を使用した。
【0086】
4.全トランスクリプトーム配列解析(RNA配列決定)
異なる治療条件の下、初代ヒト前立腺間質細胞系PSC27に対して全トランスクリプトーム配列決定を実施した。全てのRNA試料は、間質細胞から得た。それらの完全性をBioanalyzer 2100(Agilent)によって検証し、RNAをIllumina HiSeq X10によって配列決定し、遺伝子発現レベルをソフトウェアパッケージrsem(https://deweylab.github.io/rsem/)によって定量化した。簡潔に説明すると、RiboMinus Eukaryote Kit (Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州、米国)によってRNA試料のrRNAを枯渇させならびに、製造元の取扱説明書に従って、ディープシークエンシングの前に、TruSeq Stranded Total RNA Preparation Kits(Illumina、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して、鎖特異的RNA-seqライブラリを構築した。
【0087】
ペアエンドトランスクリプトームリードをレファレンスゲノム(GRCh38/hg38)にマッピングし、Bowtieツールを使用してGencode v27からレファレンスアノテーションを実施した。デュプリケートをマークするためにpicard Tools(1.98)スクリプトを使用して、デュプリケートリードを特定し(https://github.com/broadinstitute/picard)、非デュプリケートリードのみを保持した。レファレンストランスクリプトーム(Ensemblビルド73)によってレファレンススプライスジャンクションを提供した。CufflinksによってFPKM値を計算し、Cufflinks最尤推定(maximum likelihood estimation)関数を使用して、示差的遺伝子発現をコールした。発現における著しい変化を伴う遺伝子を、偽発見率(FDR)修正P値<0.05によって定義し、状態「Known」およびバイオタイプ「coding」のEnsembl遺伝子73のみを、下流分析に使用した。
【0088】
次に、Trim Galore(v0.3.0)(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/trim_galore/)を使用して、リードをトリムし、その一方で、FastQC(v0.10.0)(http://www.bioinformatics.bbsrc.ac.uk/projects/fastqc/)を使用することによって品質評価を行った。次に、DAVIDバイオインフォマティクスプラットホーム(https://david.ncifcrf.gov/)およびIngenuity Pathways Analysis(IPA)プログラム(http://www.ingenuity.com/index.html)を使用することによって、フリーオンラインプラットフォームのMajorbio I-Sanger Cloud Platform(www.i-sanger.com)に対して、生データの予備解析を実施し、生データを、アクセスコードGSE156448によってNCBI Gene Expression Omnibus(GEO)データベースに蓄積した。
【0089】
5.タンパク質-タンパク質相互作用ネットワーク解析
タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)解析を、STRING3.0によって実施した。評価基準を満たした特定のタンパク質を、オンライン解析ソフトウェア(http://www.networkanalyst.ca)にインポートし、さらなるハブおよびモジュール解析を、最小相互作用ネットワークを選択することによって実施した。
6.遺伝子セット濃縮分析(GSEA)
RNA-seqの予備解析から得られたデータに基づいて、それぞれ異なって発現された重要な遺伝子を解析および比較して、遺伝子を、DESeq2から得られた「wald統計」を使用してソートし、MSigDB(http://software.broadinstitute.org/gsea/msigdb)において利用可能な全てのプランニング遺伝子セットのソートしたリストに対して、GSEAを実施した。DESeq2非依存性フィルタリングは、非常に低い発現レベルの遺伝子を選択するために、正規化されたリードカウントの平均に基づいた。SASPのGSEA署名は、発明者らの以前の刊行物(Zhangら、2018a)に記載される通りであった。
【0090】
7.定量的PCR(RT-PCR)による遺伝子発現の測定
(1)総細胞内RNAの抽出
増殖期または静止期の細胞の全RNAを、トリゾール試薬によって抽出し、1mLのトリゾールを各T25培養フラスコに加え、細胞層を細胞スクレーパーで擦り取り、遠心分離管に移し、粘性でなくなるまで十分に混合した。トリゾール1mL毎に対して0.2mLクロロホルムを加え、15秒間激しく振盪し、室温で5~10分間インキュベートし;4℃で15分間、11,000gで遠心分離処理し;無色の上清を新しい遠心分離管に移し、トリゾール1mLあたり0.5mLのイソプロピルアルコールを加え、室温で10分間インキュベートし、4℃で10分間、11,000gで遠心分離し;上清を破棄し、75%のエタノールによって洗浄を実施し(トリゾール1mLあたり少なくとも1mLの75%エタノールを使用した)、4℃で5分間、7,500gで遠心分離し;RNAペレットを室温で5~10分間乾燥させ(RNAは乾燥できなかった)、そのペレットはDEPC-HOで溶解させた。分光光度計によってRNAを定量化した後、1%のアガロース電気泳動のために少量の全RNAを取り、RNAの状態および品質をチェックした。
【0091】
(2)逆転写反応
Oligo-dT23 VN(50μM)、1μl;全RNA、1~2μg;無RNase ddHOを、8μlに加え、65℃で5分間加熱し、迅速に氷上に置いてクエンチし、2分間静置した。
【0092】
第一鎖cDNA合成溶液の調製:2xRT Mix、10μl;HiScript II Enzyme Mix、2μl。以下の条件に従って第一鎖cDNA合成を実施した:25℃で5分、50℃で45分、および85℃で5分。
【0093】
(3)リアルタイム定量的PCR反応
逆転写反応生成物cDNAをテンプレートとして50倍に希釈した。PCR反応溶液を以下のように調製した:AceQ SYBR Green Master Mix、10μl;プライマー1(10μM)、0.4μl;プライマー2(10μM)、0.4μl;ロックスレファレンス染料、0.4μl;テンプレート、2μlをddHOと共に20μlに加えた。
【0094】
上記の規格に従って、試料をロードし、反応条件は、95℃で15秒間のプレ変性、次いで、95℃で5秒間、60℃で31秒秒間、40サイクルであり;溶融曲線の条件は、95℃で15秒間、60℃で30秒間、95℃で15秒間であった。試料を、ABI ViiA7(ABI)機器において反応させた。内部標準としてβアクチンの発現を使用した。反応が完了した後、各遺伝子の増幅を、ソフトウェア解析によってチェックし、対応する閾値サイクル数を導出し、各遺伝子の相対的発現を、2-ΔΔCt法を使用して計算した。得られた増幅生成物が特定の単一の標的断片であるか否かを決定するために、溶融曲線のピークおよび波形を解析した。
【0095】
使用した検出プライマー配列は以下の通りであり、Fは、フォワードプライマーを表し、
Rは、リバーズプライマーを表した:
IL6(F:配列番号1、R:配列番号2);CXCL8(F:配列番号3、R:配列番号4);SPINK1(F:配列番号5、R:配列番号6);WNT16B(F:配列番号7、R:配列番号8);GM-CSF(F:配列番号9、R:配列番号10);MMP3(F:配列番号11、R:配列番号12);IL-1α(F:配列番号13、R:配列番号14);p16INK4a(F:配列番号15、R:配列番号16);IL-1β(F:配列番号17、R:配列番号18);AREG(F:配列番号19、R:配列番号20);CXCL1(F:配列番号21、R:配列番号22);CXCL3(F:配列番号23、R:配列番号24);p21CIP1(F:配列番号25、R:配列番号26);BMP6(F:配列番号27、R:配列番号28)。
【0096】
8.SA-β-Gal染色
以前に報告された手順(Debacq-Chainiauxら、2009)に従って、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)染色を実施した。簡潔に説明すると、培養皿の細胞をPBSで洗浄し、室温で固定した。細胞を、2%のホルムアルデヒドおよび0.2%のグルタルアルデヒドにおいて3分間かけて固定した。新たに調製した染色溶液による37℃で一晩の染色のためにSA-β-Galを使用した。翌日、画像を撮影し、単位面積あたりの陽性細胞の割合を計算した。
【0097】
9.クローン増殖実験
以前に説明したように、単細胞クローン増殖実験を実施した(Duanら、2015; Wuら、2018)。簡潔に説明すると、ゼラチンをコーティングした12ウェルプレートに2000個細胞/ウェルの密度で細胞をプレーティングした。クリスタルバイオレット染色の後に、細胞クローンをカウントした。
【0098】
10.老化細胞における薬物誘導性アポトーシス
96ウェル皿にPSC27細胞をプレーティングし、50μg/mLのBLEOによる処理下において細胞が老化するように誘導した。それぞれ50μMおよび1.0μMの濃度において、PCC1およびABT263を加えた。細胞培養培地にIncucyte Nuclight fast Red Reagent(Essen Bioscience)およびIncucyte C-3/7 Apoptosis Reagent(Essen Bioscience)を補充した。写真を撮影するために代表的視野を選択した。
【0099】
11.マウス異種移植片植菌および臨床前治療試験
全ての実験用マウス実験を、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)、上海生物科学研究所(Shanghai Institutes for Biological Sciences)、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の関連規則に厳密に従って実施した。本特許に関連する動物実験のために、6~8週齢の免疫不全マウス(NOD-SCIDマウス、ICR)(約25gの体重)を使用した。間質細胞PSC27および上皮細胞PC3を1:4の所定の比において混合し、各移植片は、組織リモデリングのために1.25×10個の細胞を含んだ。皮下移植によって異種移植腫瘍をマウスに移植し、移植手術の終了後8週間目に動物を安楽死させた。以下の式に従って腫瘍体積を計算した:V=(π/6)x((l+w)/2)(V、体積;l、長さ;w、幅)。
【0100】
臨床前治療試験において、皮下移植したマウスに、標準的実験食を給餌し、2週間後、腹腔内投与によって化学療法薬ミトキサントロン(MIT、用量:0.2mg/kg)および/またはプロシアニジンC1(PCC1)(500μl、用量:10mg/kg)を与えた。その時点は以下の通りであった:前者は、第3週、第5週、および第7週の初日に投与し、後者は、第5週および第7週の初日に投与した。治療の過程を通じて合計3サイクルのMIT投与を行い、各サイクルは2週間継続させた。治療過程の後、体積測定および組織学的分析のためにマウス腫瘍を採取した。各マウスは、累積して0.6mg/kg体重のMITおよび30mg/kg体重のPCC1を受けた。化学療法によって誘導されたSASP因子の全身性発現を生じさせるために、上記の工程および順序に従って、静脈内注入によってMITをマウスに投与したが、薬物関連毒性を減らすために、用量は、0.1mg/kg体重/回に減らした(治療の全過程において受けたMITの累積用量は0.3mg/kg体重であった)。化学療法実験は、第8週の終了時に終了し、マウスを犠牲にした後すぐに解剖して、異種移植腫瘍を回収し、病理学的システム解析のために使用した。
【0101】
12.マウス寿命に関する研究
細胞移植研究のために、発明者らは、1ケージあたり4~5匹の動物による、SPF動物プラットホームでの一連の飼育によって、16月齢の雄のC57BL/6マウスを得た。発明者らは最初に、体重の軽い方から重い方へとマウスをソートし、次いで、同様の体重のマウスを選択した。次に、マウスを、乱数発生器を使用して各間隔において、老化(SEN)またはコントロール(CTRL)移植治療に割り当て、その一方で、中程度のマウスを他の治療に割り当て、それにより、老化およびコントロール移植マウスの体重を一致させた。細胞移植の1か月後、マウスが18月齢になったときに、身体的機能試験を行った。その後、それらのケージをチェックする以外に、マウスに対してさらなる試験を行わなかった。最も早い死亡は、最後の身体機能試験の約2カ月後に生じた。19~21月齢のC57BL/6マウスは、1ケージあたり3~5匹の動物で収容した。移植されたマウスと同様に、マウスを体重によってソートし、各グループにランダムに割り当て、前臨床試験のデザインに対して知らされていない人によってコントロール(ビヒクル)または薬物(PCC1)グループのどちらかにおいて処置した。24~27月齢から、マウスを、2週間毎にビヒクルまたはPCC1で処置し、その都度、連続した3日間にわたって経口強制飼養した。研究過程中、単一のケージでの長期間の収容によって生じる動物飼育ストレスを最小化するために、何匹かのマウスをそれらの元のケージから除去した。RotaRodおよびハンギング試験を毎月実施したが、その理由は、これらの試験が感度が良く非観血的であったからである。実験の終了時に、発明者らはマウスを安楽死させ;発明者らは、それらが以下症状のうちの1つを示した場合、それらが死亡していると見なした:(i)飲むまたは食べることができない;(ii)刺激を与えても動こうとしない;(iii)急激な体重の減少;(iv)重度のバランス障害;または(v)身体出血または潰瘍化した腫瘍。実験の間、闘争行動、偶発死、または皮膚炎に起因してマウスが排除されることはなかった。生物統計学のために、発明者らは、生存率分析のためにコックス比例ハザードモデルを使用した。
【0102】
13.臨床前動物の死後病理学検査
研究者らは毎日ケージをチェックし、死亡したマウスをケージから除去した。動物の死亡から24時間以内に、死体(腹腔、胸腔、および頭蓋骨)を開き、少なくとも7日間、10%のホルマリンに別々に維持した。分解または崩壊した身体は排除した。保存された死体を、病理学検査のために、専用剖検場に移した。腫瘍負担(マウスあたりの腫瘍の異なるタイプの合計)、疾患負担(マウスあたりの主要器官における異なる組織病理学的変化の合計)、各病巣および炎症の重症度(リンパ球浸潤)を評価した。
【0103】
14.生物発光撮影
マウスに、3mgのフルオレセイン(BioVision、ミルピタス、カリフォルニア州)を腹腔内注射して、PBS中の200μlの体積において送達させた。マウスをイソフルランで麻酔し、Xenogen IVIS 200 System(Caliper Life Sciences、ホプキントン、マサチューセッツ州)を使用して生物発光画像を取得した。
【0104】
15.身体能力試験
全ての試験は、最後のプラセボまたは薬物治療の後の5日目に開始した。加速度的RotaRod System(TSE System、チェスターフィールド、ミズーリ州)を使用して、最大歩行速度を評価した。マウスを、RotaRodにおいて、4、6、および8r.p.mの速度で3日間訓練し、1日目、2日目、および3日目に200秒継続した。試験日に、マウスをRotaRodに乗せ、4r.p.mの速度で開始して試験を実施した。5分の間隔で、回転速度を4r.p.mから40r.p.mまで加速した。マウスがRotaRodから落ちた時に、その速度を記録した。最終結果を、3または4回の試験から平均して、ベースライン速度に対して正規化した。前の2カ月以内に訓練を受けたマウスには、もう訓練を行わなかった。
【0105】
Grip Strength Meter(Columbus Instruments、コロンブス、オハイオ州)を使用して、前肢握力(N)を測定し、結果を、10回超の試験から平均した。ハンギング耐久試験のために、マウスを、マットの35cm上にある2mm厚の金属ワイヤー上に乗せた。マウスを、前肢のみでワイヤーに掴まらせ、ハンギング時間を体重に対して正規化し、ハンギング持続時間(秒)×体重(g)として表した。結果を、マウスあたり2~3回の試験に対して平均した。それらの毎日の活動および摂食を、Comprehensive Laboratory Animal Monitoring System(CLAMS)によって、24時間(明所での12時間および暗所での12時間)モニターした。このCLAMSシステムは、Oxymax Open Circuit Calorimeter System(Columbus Instruments)を備えた。トレッドミル性能のために、3日間のトレーニングで、毎日5分間継続し、5m/分の速度で開始して2分間、次いで、7m/分に加速して2分間、次いで、9m/分に加速して1分間行うことによって、マウスを5°の傾斜面の電気走行マシン(Columbus Instruments)上を走ることに慣れさせた。試験の日、マウスを、5m/分の初期速度において2分間トレッドミル上を走らせ、次いで、マウスが疲れるまで、2分毎に2m/分だけ速度を増した。疲労感は、軽い電気的および機械的刺激にもかかわらずトレッドミルへ戻ることに対するマウスの不能性として定義した。試験後に距離を記録し、以下の式によって総仕事量(KJ)を計算した:質量(kg)×g(9.8m/s)×距離(m)×sin(5°)。
【0106】
16.生物統計学的方法
本願において、細胞増殖速度、生存率、およびSA-β-Gal染色に関与するインビトロ実験、ならびにマウス異種移植腫瘍および臨床前薬物治療に関する全てのインビボ実験は、4回以上繰り返し、データは、平均±標準誤差の形態において表した。統計的解析は、生データに基づいて確立され、一元配置分散分析(ANOVA)または両側スチューデントt-検定によって計算し、その一方で、P<0.05の結果は、有意に異なると見なした。
【0107】
因子間の相関を、ピアソン相関係数によって検定した。マウスがいくつかのコホートで得られ、ケージにおいてグループ分けされたときの生存率分析のために、コックス比例ハザードモデルを使用した。このモデルにおいて、固定効果として、治療における性別および年齢を使用し、その一方で、コホートおよび初期ケージ割り当てを、無作為効果として使用した。研究中、単一のケージ包囲からのストレスを最小化するために、何匹かのマウスをそれらの初期ケージから移動させたため、本発明者らは、ケージ効果を伴わない解析も実施した。2つの解析の結果は、指向性または統計的有意性において有意には異ならず、それは、本発明者らの結果における信頼性を増大させた。統計的ソフトウェアR(バージョン3.4.1;ライブラリ「coxme」)を使用して、生存率分析を実施した。ほとんどの実験および結果評価において、研究者らは、アサインメントのために盲目選択を行った。本発明者らは、マウスを実験グループに割り当てるために(グループ間において同様の体重を実現するために)、ベースライン体重を使用し、そのため、体重を一致させたグループ内においてのみランダム化を実施した。本発明者らは、以前の実験に基づいて試料サイズを決定し、したがって、統計的検出力分析を使用しなかった。この研究におけるすべてのレプリケートは、異なる試料から得ており、ならびに各試料は、異なる実験動物から得た。
【0108】
実施例1
PCC1は低濃度で使用した場合にSASPの発現を効果的に阻害することができる
老化細胞の表現型を強力に調整することができる革新的な化合物を特定するために、本発明者らは、41の植物誘導体の植物化学物質ライブラリを使用して、先入観のないスクリーニングを実施した。これらの薬物の有効性および潜在的な生物価を調べるために、本発明者らは、インビトロ細胞モデルとして初代正常ヒト前立腺間質細胞系PSC27の使用を選択した。PSC27は、主に繊維芽細胞で構成され、非線維芽細胞系(内皮細胞および平滑筋細胞を含む)も存在するが、より小さい比率においてであり;PSC27は、本質的にヒト初代間質細胞系であり、遺伝毒性化学療法またはイオン化放射線などのストレス因子に曝露後に典型的なSASPを形成する。本発明者らは、予備実験において最適化されている、特定の用量のブレオマイシン(BLEO)によってこれらの細胞を治療し、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)染色の陽性率におおける著しい増加が観察され、BrdU組込み率は著しく減少し、DNA損傷修復フォーカス(DDRフォーカス)は、薬物損傷の後の数日中に著しく増加した(図1から図3)。本発明者らは、並行モードにおける老化細胞の発現プロファイルに対するこれらの天然薬物産物の効果を比較するために、系統的スクリーニングを実施した(図4)。
【0109】
本発明者らは、これらの細胞に対してRNA-seqを実施した。次に、得られたハイスループットデータは、植物原料プロシアニジンC1(PCC1)が老化細胞の発現プロファイルを著しく変更することを示した。中でも、4406個の遺伝子は、著しく下方制御され、その一方で、2766個の遺伝子は、上方制御され、ヒートマップにおける各遺伝子の倍率変化は2.0であった(P<0.01)(図5)。重要なことに、SASP因子の発現は、概して、PCC1治療後に老化細胞において減少し、その一方で、これらのSASP因子は、概して、老化細胞において著しく上方制御された(図6)。いくつかのSASP非関連遺伝子の発現プロファイルは、典型的なSASP因子と同様の傾向を示したが、GSEA解析からのデータはさらに、炎症誘発性SASPの発症を媒介する主要な転写現像である、SASP発現またはNF-κB活性化を特徴付ける分子署名の著しい抑制を明らかにした(図7)。タンパク質-タンパク質相互作用に基づくバイオインフォマティクス解析の結果は、細胞老化の際に著しく上方制御されるが、細胞がPCC1の作用下にあると下方制御される、複数の因子を伴う高活性ネットワークを明らかにした(図8)。さらなるGOバイオインフォマティクスデータは、これらの分子が、例えば、シグナル形質導入、細胞間情報伝達、エネルギー調整、細胞代謝、および炎症反応などの一連の重要な生物学的プロセスに機能的に関与することを明らかにした(図9)。これらの下方制御された遺伝子のほとんどは本質的に、発現の後に細胞外空間に放出されるか、または小胞体またはゴルジ体に位置され、概して、これらの分子の分泌特性に特徴的に対応する生体タンパク質であった(図10)。
【0110】
インビトロ条件下でのSASP発現に対するPCC1の効果をさらに確認するために、一連のインビトロ濃度勾配下おいてPSC27細胞を処理した。データは、10μMの作用濃度のPCC1が最大効率でSASP発症を阻害することを示した(図11)。しかしながら、より低いまたはより高い薬物濃度は、あまり効果的ではないが、後者は、増加した薬物の細胞毒性によって引き起こされる細胞ストレス応答に関連し得た(図11)。したがって、植物系天然産物のPCC1は、とりわけ比較的低い濃度において、老化細胞の炎症促進性表現型、すなわちSASPを制御するために使用することができた。
【0111】
実施例2
高濃度で使用される場合の新規のセノリティック薬剤としてのPCC1
SASP発現の制御におけるPCC1の顕著な有効性を仮定して、本発明者らは、次に、この天然産物が高濃度において老化細胞を殺す可能性について探求した。このために、本発明者らは、PCC1の能増を漸増させるインビトロ条件下での、処理された老化細胞の生存パーセンテージを測定した。SA-β-Gal染色データは、PCC1濃度が50μMに達するまで老化細胞が排除されないことを示した(図12)。濃度の増加に伴って、老化細胞(80%染色陽性)に対するPCC1の致死効果はさらに増強され、PCC1が150μMのときに閾値に達し(老化細胞の20%がこの時点で残っていた);濃度が200μMに増加したとき、PCC1の致死効果はさらには増強されなかった(図12図13)。
【0112】
これらの問題をさらに分析ために、本発明者らは、確認実験を行った。細胞生存率アッセイは、PCC1が、対応するコントロール増殖細胞と比較して、50μM濃度から始まる老化細胞の著しい致死を誘導することを示した(図14)。PCC1の濃度が200μMまで増加したとき、生き残っている老化細胞の割合はおよそ10%まで減少した。しかしながら、PCC1の200μMでさえ、増殖細胞は、あまり減少しなかった。これらの結果は、老化細胞に対するPCC1の高い選択性および傑出した特異性を裏付け、ならびにこの特徴は、実際に、世界の抗老化薬の独特なクラスとしてのセノリティクスに対する基本的な技術的要件であった。
【0113】
本発明者らは、次に、遺伝毒性治療後の間質細胞の集団倍加(PD)の可能性を調査した。損傷治療の後に急速に増殖停止の状態に入ったBLEOグループの細胞と比較して、BLEOおよびPCC1混合治療グループのものは、著しく増加したPD能力を示した(図15)。しかしながら興味深いことに、PCC1自体は増殖細胞のPDに影響を及ぼすようには思われず、データはさらに、老化細胞と正常細胞との間のPCC1の選択性を示した。
【0114】
PCC1がアポトーシスを誘導することよって老化細胞にそれらの生存力を失わせたか否かを調査するために、本発明者らは、培養条件下においてそれぞれ増殖グループの細胞および老化グループの細胞を処理するためにPCC1を使用した。カスパーゼ-3/7活性において続いて観察された変化は、PCC1が老化細胞のアポトーシスを引き起こし;PCC1の添加の16時間後から、加齢グループとコントロールグループとの間に統計学的差異が存在することを示した(図16)。さらに、汎カスパーゼ阻害剤QVDは、PCC1による老化細胞の致死を防ぐことができ、このプロセスにおける実際の効果は、老化細胞に対するABT263(現在知られている老化細胞のアポトーシスの非常に効果的な誘発物質)の効果に非常に似ていた(図17)。上記の一連の結果は、PCC1はアポトーシスを誘導することによって老化細胞が死亡プログラムに入るのを促進するが、増殖細胞は基本的に、この天然薬物によって標的にされることも影響を受けることもないことを裏付けた。
【0115】
老化細胞に対するPCC1の見かけ上の効果を仮定して、本発明者らは、次いで、アポトーシスを誘導するPCC1の可能性について分析した。フローサイトメトリーのデータは、老化細胞PSC27の生存率は著しく減少し、その一方で、アポトーシスの割合は著しく増加するが、増殖細胞の変化は明白でないことを示した(図18図19)。したがって、本発明者らのデータの一貫性は、PCC1は、インビトロにおいてアポトーシスを誘導することによって老化細胞の排除を引き起こすこと、およびこの天然産物は、老化細胞の標的化において傑出した可能性を有することを支持した。
【0116】
実施例3
腫瘍退縮を促進するためおよび化学療法耐性を効果的に減少させるために老化細胞を治療的に標的にするPCC1の使用
インビトロでの高濃度において老化細胞を除去することにおけPCC1の傑出した選択性を考慮して、本発明者らは、次に、この薬物をインビボでの様々な加齢関連疾患に干渉するために使用することができるか否かを検討した。がんは、深刻に人間の生命を脅かし、健康を危険にさらす、主要な慢性病の1つである。さらに、がん細胞の薬物耐性は、クリニックでのほとんどの抗ガン性治療の効果を制限し、老化細胞は、しばしば、損傷した腫瘍フォーカスにおいてSASPを発生させることによってがん細胞周囲の治療薬耐性の発生を促進する。たとえそうであっても、がんの治療係数を促進するために原発性腫瘍から老化細胞を除去することの実行可能性および安全は、これまでほとんど調査されていなかった。
【0117】
最初に、本発明者らは、PSC27間質細胞をPC3上皮細胞と混合することによって組織組換え体を構築し、後者は、典型的な高度悪性前立腺がん細胞系である。組換え体を、皮下において非肥満性糖尿病および重症複合免疫不全症(NOD/SCID)マウスの大腿後部に移植する前に、間質細胞の上皮細胞に対する比は、1:4であった。動物への組換え体移植の後の8週間の終了時に、腫瘍サイズ(体積)を測定した(図20)。PC3がん細胞および初代PSC27間質細胞で構成される腫瘍と比較して、PC3細胞および老化PSC27細胞で構成される異種移植片の体積は、著しく増加し(P<0.001)、この違いはさらに、腫瘍進行における老化細胞の重要な促進性の役割を裏付けた(図21)。
【0118】
臨床症状をより密接に近似するために、本発明者らは、遺伝毒性化学療法薬物治療および/または老化薬介入を伴う臨床前プロトコールを詳細に設計した(図22)。皮下移植の2週間後、インビボでの安定な腫瘍取り込みが観察された場合、本発明者らは、8週間のレジメンの終了時までに第3週、第5週、第7週の初日にMIT(ミトキサントロン、化学療法剤)またはプラセボの単回用量を与えた実験動物を提供した。MIT投与は、プラセボ治療グループと比較して、腫瘍増殖を著しく遅延させ、これは、化学療法剤としてのMITの有効性を裏付けた(腫瘍サイズの44.0%の減少、P<0.0001)(図23)。とりわけ、PCC1自体は腫瘍の縮小を生じなかったが、PCC1の投与は、MITで治療されたマウスの腫瘍サイズを著しく減少させた(MITと比較して腫瘍体積の55.9%の減少、P<0.001;プラセボ治療と比較して腫瘍体積の74.9%の減少、P<0.0001)(図23)。
【0119】
本発明者らは、次に、細胞老化がこれらの動物の腫瘍病巣において生じるか否かを推察した。試験結果は、MIT投与プロセスが腫瘍組織における多数の老化細胞の発生を誘導することを証明したが、これは驚くことではなかった。しかしながら、PCC1投与は、これらの化学療法動物の病巣内のほとんどの老化細胞を実質的に枯渇させた(図24図25)。レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)およびその後の定量的PCRの結果は、例えば、IL6、CXCL8、SPINK1、WNT16B、GM-CSF、MMP3、IL1αのSASP因子の著しく高められた発現を明らかにし、この傾向は、化学療法動物における老化マーカーp16INK4Aの上方制御を伴った(図26)。興味深いことに、これらの変化は、主に間質細胞において生じたが、それらの隣接するがん細胞においては生じず、これは、残存するがん細胞の再増殖の可能性を意味し、この残存するがん細胞は、治療損傷腫瘍内微小環境(TME)における獲得性耐性を生じた。しかしながら、この変化は、転写レベルデータの分析によって実証されるように、PCC1が投与されたときに大いに逆転された(図27)。
【0120】
MIT投与されたマウスにおけるSASPの発現および逆転を伴うこの老化関連パターンを直接支持するメカニズムを調査するために、本発明者らは、最初のPCC1投与のの7日後に両方の薬物で治療した動物の腫瘍を解剖したが、主に、薬物耐性クローンがまだこの時点で病巣のがん細胞において形成されていなかったため、投与の7日後の時点を選択した。MIT投与は、結果として、プラセボと比較してDNA損傷の程度およびアポトーシスの著しい増加を生じた。PCC1単独では、DNA損傷を誘導できずまたはアポトーシスを引き起こせなかったが、化学療法薬MITは、これら2つの指標を非常に上方制御することができた(図28)。しかしながら、MIT治療動物にPCC1を投与した場合、DNA損傷またはアポトーシスの指標は、著しく高められ、これは、これらの老化薬治療動物の腫瘍部位において細胞毒性が高められたことを意味する。証拠を支持するように、PCC1が治療の際に適用された場合、カスパーゼ3切断活性は増加し、それは、アポトーシスの典型的な顕著な特徴であった(図29)。
【0121】
本発明者らは、次に、腫瘍進行の結果を評価するために、異なる薬投与グループにおける動物の生存を、主に時間延長される方式において比較した。この臨床前コホートにおいて、前立腺腫瘍増殖について動物をモニターし、マウスにおけるエンドソーム腫瘍負担が際立った場合(サイズ≧2000mm)、深刻な疾患が生じたと判断し、これは、ある特定の状態において腫瘍および他の疾患の進行を評価するために使用される方法であった。MIT/PCC1併用で治療されたマウスは、最も長い中央値生存を示し、MIT単独で治療したグループと比較して少なくとも48.1%生存を延長した(図30、緑色対青色)。しかしながら、担腫瘍マウスをPCC1単独で治療することは、大きな恩恵をもたらさず、生存のわずかな延長のみであった。
【0122】
驚くべきことに、これらの研究において投与された治療は、実験マウスによって十分に許容されるように思われた。本発明者らは、尿素、クレアチニン、アルカリ性ホスファターゼ、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ、または体重における著しい変動を観察しなかった(図31図32)。より重要なことに、この研究のために設計された各薬物用量において使用した化学療法および抗老化薬は、免疫応答性野生型マウスにおいてさえ、免疫システムの完全性および主要器官の組織ホメオスタシスにあまり干渉しなかった(図33図34)。これらの結果は一貫して、抗老化剤と従来の化学療法剤との併用が、重症の全身性毒性を引き起こすことなく、一般的な意味において、腫瘍の応答を増強させる可能性を有することを実証した。
【0123】
PCC1が化学療法の効果の改善において薬物依存性かそれとも特異的であるかを判定するために、本発明者らは、次いで、前臨床試験のためにそれぞれPCC1と組み合わせるために、ドキソルビシン(DOX)、ドセタキセル(DOC)、およびビンクリスチン(VIN)を使用することを選択した。結果は、これらの化学療法薬の中で、DOXおよびPCC1の併用のみが、MITおよびPCC1の併用治療によって生じる有意な効果をおよそ繰り返すことができたことを示した(図35)。しかしながら、DOCおよびVINは、単独で使用した場合、腫瘍体積を減らすことができるが、DOCおよびVINのいずれか一方がPCC1と一緒に投与された場合、さらなる腫瘍の縮小は実現されず、すなわち、それ以上の恩恵は実現され得ない(図36図37)。MITおよびDOXの両方は、遺伝毒性薬物であり、典型的なDNA二本鎖破壊を引き起こすことができ、次いで、細胞老化を引き起こすことができる。VINの作用のメカニズムは、微小細管に付着することであり、有糸分裂のプロセスを阻害することである。したがって、インビボ条件下において化学療法の治療効果を向上させるPCC1の特徴は、身体に老化細胞を産生するように誘導する薬物と組み合わせて使用することができ、それは、薬物タイプ依存を示す。
【0124】
実施例4
晩年段階において罹患率を増加させることなく加齢マウスの晩年生存を長引かせるPCC1治療による老化細胞の除去
PCC1は、腫瘍マウスの微細環境における、老化細胞の除去、腫瘍薬物抵抗性の低下、および全治療効果の向上の驚くべき有効性を有するため、自然に歳を取った動物にも、健康の促進または疾患の遅延にいくつかの重要な恩恵が存在するだろうか?この問いに答えるために、本発明者らは、最初に、老化細胞を排除するために潜在的翻訳アプローチを使用することができるか否か、すなわち、非常に古い時点からの断続的な治療がWTマウスの残りの寿命を延ばすか否か?を検討した。これに関して、一連のインビボ実験を適切に実施した。2週間毎に薬物を摂取するレジメン下での24~27月齢(ヒトの75~90歳と同等)から投与されたPCC1グループにおいて、治療後の中央値生存期間は、ビヒクルグループのものより64.2%長く、それは、より低い死亡リスクを有した(HR=0.35、PCC1グループ/ビヒクルグループ;P<0.0001)ことは注目すべきであり、非常におどろくべきことであった(図38図39)。この知見は、老化細胞のPCC1媒介性除去は、加齢マウスにおける死亡リスクを低下させることができ、それらの生存を効果的に延ばすことができることを示唆する。
【0125】
この治療レジメンが増加する晩期罹患率を犠牲にして加齢マウスの死亡率を低下させるか否かをさらに調べるために、本発明者らは、これらのマウスの身体機能を評価した。PCC1グループのマウスの残りの寿命はより長かったが、隔週においてPCC1で治療したマウスは、ビヒクル治療グループのマウスと比較して、雄および雌の両方において、人生の最後の2カ月の間、身体機能の顕著な低下を示さなかった(図40図41)。さらに、マウス剖検において、いくつかの加齢関連疾患および腫瘍の負担の罹患率は、2つのグループ間において統計学的差異を示さなかった(図42図43)。したがって、生物学的に活性な抗老化薬PCC1の断続的な供給は、微細環境における老化細胞を除去することによって、加齢身体の疾患負担を著しく減少させることができ、治療後段階の間に身体の寿命を増加させることができた。すなわち、PCC1投与の対象は、疾患の発生において著しい変化を有さず;身体がある特定の老化関連疾患(例えば、腫瘍)を表した後、PCC1は、著しい腫瘍治療の有効性を向上させることができるか、または腫瘍退縮を加速することができた。この治療方法は、身体の罹患率の著しい増加を引き起こさず、実際に、人生の晩年段階において安全に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
【配列表】
2024508644000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含む医薬組成物であって、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
医薬組成物。
【請求項2】
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、医薬組成物中において少なくとも1μMの最終濃度を有し、ならびに/または
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、好ましくは薬剤がMIT又はDOXである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬または調合物の製造における、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグの使用であって、医薬または調合物は、老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、加齢を遅らせるため、対象の寿命を延ばすため、対象の加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除からの恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する耐性を低下させるため、細胞老化を引き起こすことができる薬剤の有効性を高めるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍体積を減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
使用。
【請求項4】
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
SASP因子は、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含み、ならびに/または
非増殖細胞は、老化細胞であり、好ましくは、天然の老化細胞もしくは損傷細胞であり、ならびに/または
非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患は、加齢関連疾患、好ましくは、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病、代謝性疾患、神経変性疾患であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、好ましくは、細胞老化を誘導することができる薬剤は、MIT又はDOXである、ならびに/または
対象は、高齢の対象であり、ならびに/または
がん療法は、化学療法もしくは放射線療法を含む、
請求項3に記載の使用。
【請求項5】
腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすための物質であって、物質は、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、
好ましくは、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/または細胞アポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、より好ましくは、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤は、MIT又はDOXである、物質
【請求項7】
腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、請求項6に記載の物質
【請求項8】
請求項1または2に記載の医薬組成物を含む医薬品ボックスまたはキットであって、
好ましくは、それぞれ、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび任意の薬学的に許容される補助物質、ならびに(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含有する容器1および容器2を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1である、
医薬品ボックスまたはキット。
【請求項9】
非増殖細胞における変化を引き起こすためのプロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグであって、変化は、以下:老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現もしくは活性を低下させること、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させること、非増殖細胞のアポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除すること、またはがん治療処置に対する細胞の耐性を下げることから選択される1つまたは複数を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、および/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μMの最終濃度を有する、
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ
【請求項10】
細胞老化を誘導することができる薬剤の細胞毒性を高めるための組成物であって、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)細胞老化を誘導することができる薬剤を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができ、より好ましくは、細胞老化を誘導することができる薬剤は、MIT又はDOXであり、ならびに/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも10μMの最終濃度を有する、
組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0125
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0125】
この治療レジメンが増加する晩期罹患率を犠牲にして加齢マウスの死亡率を低下させるか否かをさらに調べるために、本発明者らは、これらのマウスの身体機能を評価した。PCC1グループのマウスの残りの寿命はより長かったが、隔週においてPCC1で治療したマウスは、ビヒクル治療グループのマウスと比較して、雄および雌の両方において、人生の最後の2カ月の間、身体機能の顕著な低下を示さなかった(図40図41)。さらに、マウス剖検において、いくつかの加齢関連疾患および腫瘍の負担の罹患率は、2つのグループ間において統計学的差異を示さなかった(図42図43)。したがって、生物学的に活性な抗老化薬PCC1の断続的な供給は、微細環境における老化細胞を除去することによって、加齢身体の疾患負担を著しく減少させることができ、治療後段階の間に身体の寿命を増加させることができた。すなわち、PCC1投与の対象は、疾患の発生において著しい変化を有さず;身体がある特定の老化関連疾患(例えば、腫瘍)を表した後、PCC1は、著しい腫瘍治療の有効性を向上させることができるか、または腫瘍退縮を加速することができた。この治療方法は、身体の罹患率の著しい増加を引き起こさず、実際に、人生の晩年段階において安全に使用することができる。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[項目1] (a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含む医薬組成物であって、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
医薬組成物。
[項目2] プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、医薬組成物中において少なくとも1μMの最終濃度を有し、ならびに/または
プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、項目1に記載の医薬組成物。
[項目3] 医薬または調合物の製造における、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグの使用であって、医薬または調合物は、老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御するため、SASP因子の発現もしくは活性を低下させるため、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させるため、非増殖細胞のアポトーシスを誘導するため、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除するため、加齢を遅らせるため、対象の寿命を延ばすため、対象の加齢関連疾患の負担を減少させるため、非増殖細胞の減少もしくは排除からの恩恵を受ける疾患を予防、軽減、および治療するため、がん療法に対する耐性を低下させるため、細胞老化を引き起こすことができる薬剤の有効性を高めるため、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍体積を減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジンである、
使用。
[項目4] プロシアニジンは、プロシアニジンC1であり、ならびに/または
SASP因子は、細胞外マトリックスタンパク質、炎症性サイトカイン、およびがん細胞増殖因子を含み、ならびに/または
非増殖細胞は、老化細胞であり、好ましくは、天然の老化細胞もしくは損傷細胞であり、ならびに/または
非増殖細胞の減少または排除から恩恵を受ける疾患は、加齢関連疾患、好ましくは、がん、心血管疾患および脳血管疾患、骨粗鬆症、加齢関連変性関節病、代謝性疾患、神経変性疾患であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含み、ならびに/または
対象は、高齢の対象であり、ならびに/または
がん療法は、化学療法もしくは放射線療法を含む、
項目3に記載の使用。
[項目5] 腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、項目3または4に記載の使用。
[項目6] 医薬または調合物の製造における物質の使用であって、物質は、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤を含み、医薬または調合物は、腫瘍退縮を促進するため、腫瘍サイズを減少させるため、がんを予防もしくは治療するため、またはがん生存を延ばすために使用され、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、
好ましくは、対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/または細胞アポトーシスを引き起こすことができる薬剤を含む、
使用。
[項目7] 腫瘍は、前立腺腫瘍であり、および/またはがんは、前立腺がんである、項目6に記載の使用。
[項目8] 項目1または2に記載の医薬組成物を含む医薬品ボックスまたはキットであって、
好ましくは、それぞれ、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグおよび任意の薬学的に許容される補助物質、ならびに(b)対象による老化細胞の産生を誘導することができる薬剤、および任意の薬学的に許容される補助物質を含有する容器1および容器2を含み、
好ましくは、プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1である、
医薬品ボックスまたはキット。
[項目9] 非増殖細胞における変化を引き起こすための方法であって、プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグによって非増殖細胞を治療する工程を含み、変化は、以下:老化関連分泌表現型(SASP)を下方制御すること、SASP因子の発現もしくは活性を低下させること、細胞老化マーカー因子の発現もしくは活性を低下させること、非増殖細胞のアポトーシスを誘導すること、非増殖細胞を減少させるかもしくは排除すること、またはがん治療処置に対する細胞の耐性を下げることから選択される1つまたは複数を含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、および/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも1μMの最終濃度を有する、
方法。
[項目10] 細胞老化を誘導することができる薬剤の細胞毒性を高めるための方法であって、細胞を治療するために、(a)プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグ、および、(b)細胞老化を誘導することができる薬剤を使用することを含み、
好ましくは、
プロシアニジンは、オリゴマープロシアニジン、より好ましくはプロシアニジンC1であり、ならびに/または
細胞老化を誘導することができる薬剤は、DNA損傷および/もしくはアポトーシスを引き起こすことができ、ならびに/あるいは
プロシアニジンまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくはプロドラッグは、少なくとも10μMの最終濃度を有する、
方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
臨床症状をより密接に近似するために、本発明者らは、遺伝毒性化学療法薬物治療および/または老化薬介入を伴う臨床前プロトコールを詳細に設計した(図22)。皮下移植の2週間後、インビボでの安定な腫瘍取り込みが観察された場合、本発明者らは、8週間のレジメンの終了時までに第3週、第5週、第7週の初日にMIT(ミトキサントロン、化学療法剤)またはプラセボの単回用量を与えた実験動物を提供した。MIT投与は、プラセボ治療グループと比較して、腫瘍増殖を著しく遅延させ、これは、化学療法剤としてのMITの有効性を裏付けた(腫瘍サイズの44.0%の減少、P<0.0001)(図23)。とりわけ、PCC1自体は腫瘍の縮小を生じなかったが、PCC1の投与は、MITで治療されたマウスの腫瘍サイズを著しく減少させた(MITと比較して腫瘍体積の55.2%の減少、P<0.001;プラセボ治療と比較して腫瘍体積の74.9%の減少、P<0.0001)(図23)。
【国際調査報告】