(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】CCDC112に基づく腫瘍細胞の増殖を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/32 20060101AFI20240220BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240220BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240220BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240220BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240220BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C07K16/32
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547608
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2022073951
(87)【国際公開番号】W WO2022166700
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110172875.X
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522290617
【氏名又は名称】上海柏全生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Biotroy Biotechnique Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Building 10, No. 860 Xinyang Road, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Lin-gang Special Area, Shanghai 200131, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジェ
(72)【発明者】
【氏名】スン ユーファン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ シューファ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA05
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
【課題】CCDC112に基づく腫瘍細胞の増殖を抑制する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】腫瘍抑制におけるCCDC112の使用は、CCDC112の機能又は活性を抑制することにより、腫瘍細胞に対する免疫細胞の殺傷作用を促進する。CCDC112は、抗腫瘍薬及びコンパニオン診断マーカーの調製において応用価値がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ又はインビボで腫瘍細胞を調節する方法であって、
CCDC112を発現する腫瘍細胞について、CCDC112の機能又は活性を変化するステップa)を含み、
好ましくは、前記調節は抑制、前記変化は抑制である
ことを特徴とする、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞を調節する方法。
【請求項2】
腫瘍細胞を免疫細胞と接触させるステップb)も含み、
前記ステップb)は、ステップa)の前でも後でもよい
ことを特徴とする、請求項1に記載のインビトロ又はインビボで腫瘍細胞を抑制する方法。
【請求項3】
前記CCDC112の機能又は活性を抑制が、タンパク質又は遺伝子レベルでの抑制であり、
好ましくは、
i.CCDC112遺伝子を編集すること、
ii.CCDC112遺伝子発現を干渉すること、
iii.抗体によってCCDC112タンパク質の機能又は活性を抑制する
方法のいずれかを含むが、これらに限定されない
ことを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載のインビトロ又はインビボで腫瘍細胞を抑制する方法。
【請求項4】
前記CCDC112の機能又は活性の抑制により、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との間の結合を抑制又は阻害することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のインビトロ又はインビボで腫瘍細胞を抑制する方法。
【請求項5】
腫瘍細胞内のCCDC112の機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とする、インビトロ又はインビボでMDSC又はTreg細胞の比率を調節する方法。
【請求項6】
腫瘍細胞内のCCDC112機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とする、インビトロ又はインビボで細胞内のLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30の活性を調節する方法。
【請求項7】
CCDC112と受容体LILRB2、LILRB4、LTBR又はCD30との相互作用を抑制する抑制剤又は抗体をスクリーニングすることによって、候補薬剤又は試薬を得ることを特徴とする、腫瘍を予防又は治療するための薬剤又は試薬をスクリーニングする方法。
【請求項8】
a)CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合に対する候補分子の影響を分析するステップ、
b)骨髄由来抑制細胞(MDSC)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
c)制御性T細胞(Treg)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
d)腫瘍細胞を殺す免疫細胞に対する候補分子の影響を分析するステップ、
上記のいずれか1つ又は複数のステップを含み、
前記候補分子は、CCDC112の抑制性分子であり、
好ましくは、CCDC112の抑制剤は、抗体又は抗原結合性断片である
ことを特徴とする抑制剤のスクリーニング又は同定方法。
【請求項9】
a)CCDC112に対する抗体を調製するステップ、及び、
b)CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合を阻害又は抑制に影響を与える抗体をスクリーニングするステップ
を含むことを特徴とする抗体の調製方法。
【請求項10】
アゴニスト又はアンタゴニスト化合物であって、
CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR又はCD30との間の相互作用を調節でき、
前記化合物は、小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体又は抗原結合性断片である
ことを特徴とするアゴニスト又はアンタゴニスト化合物。
【請求項11】
次のいずれかのCCDC112抑制剤の使用:
a)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用
前記抑制剤は、CCDC112とその受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合を抑制又は阻害することができ、好ましくは、前記抑制剤は小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体又は抗原結合性断片である、使用。
【請求項12】
被験体の免疫細胞又は腫瘍細胞をCCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合を抑制できる有効量のCCDC112抗体と接触させるステップを含み、
好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定であり、
より好ましくは、前記追加の抗がん療法としては手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法が挙げられる、
腫瘍を予防又は治療する方法。
【請求項13】
免疫療法の前/後の被験体の腫瘍細胞のCCDC112タンパク質発現量又は機能を検出するステップを含む、腫瘍免疫療法のためのコンパニオン診断方法。
【請求項14】
単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
a)前記抗体又はその抗原結合断片は、高い親和性でCCDC112タンパク質に特異的に結合し、
b)前記抗体は、CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30のいずれかとの間の相互作用を抑制又は阻害することができ、
前記抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つをさらに含み、
i.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるMDSC細胞比率を減少させること、
ii.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるTreg細胞比率を減少させること、又は、
iii.前記抗体は、腫瘍細胞に対する免疫細胞(PBMC)の殺傷作用を強化する
ことを特徴とする単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
抗体又はその抗原結合性断片であって、
SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR及びSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR、又は上記の6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体を含み、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片のCDRは、以下のCDR配列を含み、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15、21、26、38、30のいずれかで示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16、22、27、29、31のいずれかで示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17、23、32のいずれかで示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18、24、33のいずれかで示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19、25、34のいずれかで示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20、35のいずれかで示され、
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体、
より好ましくは、IMGTに従い定義されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域であり、ならびにIMGTに従い定義されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域であり、配列は以下の通りであり、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15に示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16に示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体、
より好ましくは、前記抗体又はその抗原結合性断片とCCDC112との結合KDは、<2×10
-8であり、
さらにより好ましくは、前記KDは、<2×10
-8、<1×10
-8、<9×10
-9、<8×10
-9、<7×10
-9、<6×10
-9、<5×10
-9、<4×10
-9、<3×10
-9、<2×10
-9、<1×10
-9、<1×10
-10である
ことを特徴とする、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項16】
前記抗体又は抗原結合性断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、配列は次から選択され、
a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有し、
b)前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有する
ことを特徴とする、請求項15に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項17】
前記抗体は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、キャリアタンパク質、脂質、及びビオチンのうちの1種以上から選択されるポリペプチドに連結されたコンジュゲート部分をさらに含み得、前記ポリペプチド又は抗体と前記コンジュゲート部分は選択的にリンカーを介して連結でき、好ましくは、前記リンカーは、ペプチド又はポリペプチドであり、
より好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体から選択され、より好ましくは、前記抗体は多重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)及びイントラボディから選択される
ことを特徴とする、請求項16に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項18】
単離されたポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドは、請求項14~17のいずれかい一項に記載の抗体又は抗原結合性断片をコードすることを特徴とする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリヌクレオチド、及び任意の調節配列を含む、組換えベクターであって、
好ましくは、前記組換えベクターはクローニングベクター又は発現ベクターであり、
より好ましくは、前記調節配列はリーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、又はこれらの任意の組み合わせから選択される
ことを特徴とする、組換えベクター。
【請求項20】
請求項19に記載の組換えベクターを含む宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は原核細胞又は真核細胞である
ことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項21】
請求項14~20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物のうち1種以上を含み、
好ましくは、前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞、及び医薬組成物のうち1種以上を含み、適切な容器に収納されることを特徴とするキット。
【請求項23】
請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物の以下のいずれかの使用:
a)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の刺激又は拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を刺激又は拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【請求項24】
被験体の免疫細胞及び腫瘍細胞を有効量の請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物と接触させるステップを含み、
好ましくは、有効量の化合物を使用して被験体の免疫細胞及び/又は腫瘍細胞と接触させる前、腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を検出し、
好ましくは、前記免疫細胞はリンパ球、より好ましくはTリンパ球であり、
好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定であり、
より好ましくは、前記追加の抗がん療法としては、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法が挙げられる
ことを特徴とする腫瘍を予防又は治療するための方法。
【請求項25】
生体試料を請求項14~21のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物と接触させることを特徴とする、生体試料中のCCDC112の有無をインビボとインビトロで検出する方法。
【請求項26】
A)腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を分析するステップ、
B)CCDC112を認識できる抗体を使用して腫瘍細胞に接触させるステップ、及び、
C)Tリンパ球、前記抗体及び腫瘍細胞を接触させるステップ
を含み、
好ましくは、前記抗体とCCDC112との結合KDは、<2×10
-8であり、好ましくは、前記KDは<2×10
-8、<1×10
-8、<9×10
-9、<8×10
-9、<7×10
-9、<6×10
-9、<5×10
-9、<4×10
-9、<3×10
-9、<2×10
-9、<1×10
-9、<1×10
-10であり、
又は、好ましくは、前記抗体は、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合作用を抑制又は阻害する
腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項27】
前記腫瘍は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌、及び卵巣癌から選択されることを特徴とする、請求項1~26のいずれかに記載の腫瘍。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「CCDC112に基づく腫瘍細胞の増殖を抑制する方法」と題し、2021年2月8日に出願された中国特許出願番号第202110172875.X号の優先権を主張し、全内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物医学の分野に関し、特に、CCDC112に基づく腫瘍抑制方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
晩期再発腫瘍(advanced recurrent tumors)の治療には、効果的な方法が欠けており、この技術分野ではより効果の高い代替案又は改良案が必要とされている。腫瘍の免疫療法は、近年重要な発展を遂げている。免疫ネガティブチェックポイント調節薬(NCR)の経路は、ヒトの免疫関連疾患の治療における優れた臨床標的であることが証明されている。モノクローナル抗体(mAb)を使用して2種のNCR、つまりCTLA-4とPD-1を阻害して腫瘍免疫を強化することは、がんの治療に革命的な変化をもたらし、これらの経路はヒトの疾患に関して臨床的に検証された標的として特定されている。最近では、NCR経路を誘発する可溶型NCRリガンドが、自己免疫治療用の免疫抑制薬(つまり、関節リウマチに対するAMP-110/B7-H4-Ig)として臨床試験に入っている。免疫チェックポイント阻害療法の奏効率が比較的低く、最初は、効果があった患者でも長期の治療後に効果が失われることは注目に値する。これは、腫瘍免疫逃避に重要な代替メカニズムと経路が存在する可能性を示唆している。がんをより効果的に治療するには、新しい腫瘍免疫分子標的及び治療法を同定する必要がある。
【0004】
最近の研究では、抑制性白血球免疫グロブリン様受容体(LILRB)及び関連する免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)含有受容体LAIR1が、様々な造血細胞及び固形がん細胞において腫瘍促進機能を持っていることを見出した。ITIM含有受容体は、様々な免疫細胞上で発現し、ホスファターゼSHP-1、SHP-2、又はSHIPの動員を通じてシグナルを伝達することにより免疫細胞の活性化を負に制御している。CTLA4及びPD-1と同様にLILRBは、免疫チェックポイント因子であると考えられている。LILRB2は、単核細胞、マクロファージ及び樹状細胞上に発現し、細胞自律的な方法で自然免疫を抑制し、間接的なメカニズムを通じてT細胞の活性化を抑制することができる。以前の研究では、LILRB2のアンタゴニストが骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び制御性T細胞(Treg)の腫瘍の局所浸潤を軽減し、抗腫瘍免疫応答を促進できることが報告されている(非特許文献1)。これは、LILRB2がリガンドと結合した後、MDSC及びTregを介して免疫細胞抑制作用を発揮し、腫瘍免疫逃避の過程に関与できることを示している。LILRB4の構造及び機能は、LILRB2と類似しており、LILRB4はMDSC細胞の表面で発現されることが報告されている(非特許文献2)。このリガンドには、APOE(非特許文献3)が含まれ、かつAPOEとLILRB4の結合ペアを阻害する。
【0005】
リンホトキシンベータ受容体(LTBR)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー3(TNFRSF3)、腫瘍壊死因子受容体III型(TNF-RIII)とも呼ばれ、4つのTNFR-Cysリピート領域を含む1回(single-pass)I型膜貫通タンパク質である。HCVコアタンパク質と相互作用する以外にLTBRは、自体と結合するだけでなく、TRAF3、TRAF4及びTRAF5にも結合する。以前の研究では、マウス体内におけるLTBRのノックアウトがMDSCの減少を引き起こしたと報告されており、LTBRがMDSCの誘導と維持に重要な役割を果たしている可能性があることが示唆されている(非特許文献4)。現在LTBRのリガンドとして知られているのは、リンホトキシン(lymphotoxin)であり、他のリガンドはまだ報告されていない。
【0006】
コイルドコイルドメイン(CCDC)タンパク質は、様々な天然タンパク質に存在するタンパク質ドメインであり、これまでに少なくとも200種のCCDCタンパク質が発見され、異なるCCDCタンパク質は細胞間膜貫通シグナル伝達、遺伝シグナル転写、細胞増殖とアポトーシスの促進、悪性腫瘍細胞の浸潤と転移の制御などの様々な生物学的挙動への関与を含む多様な生物学的機能を持っている。CCDC112遺伝子の正式名称は、「コイルドコイルドメイン含有タンパク質112」(Coiled-coil Domain-containing Protein 112)であり、機能が明らかにされておらず、またCCDC112遺伝子に基づく腫瘍抑制に関する報告もないため、腫瘍又は腫瘍細胞の抑制に使用できる新しいマーカーをさらに探索することについて、この分野において継続的に求められている。
【0007】
上記の点に鑑みて本発明がなされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許出願第WO 03/048731号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hui-Ming Chenら,J Clin Invest. 2018;128(12):5647-5662
【非特許文献2】Pauline de Goejeら,Oncoimmunology, 19 Mar 2015, 4(7):e1014242
【非特許文献3】Cancer Immunol Res. 2019 Aug;7(8):1244-1257
【非特許文献4】Anja K Wegeら,Innate Immun. 2014 Jul;20(5):461-70
【非特許文献5】Chothiaら.(1989)Nature 342:877-883
【非特許文献6】Al-Lazikaniら,“Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”, Journal of Molecular Biology, 273,927-948(1997)
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【非特許文献8】Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)
【非特許文献9】Remington’s Pharmaceutical Sciences.Edited by Gennaro AR,19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995
【非特許文献10】Shieldら(2002)JBC277:26733
【非特許文献11】Kohler and Milstein (1975)Nature 256:495
【非特許文献12】Handbook of Pharmaceutical Excipients”,第五版,R.C.Rowe,P.J.Seskey及びS.C.Owen,Pharmaceutical Press,London, Chicago
【非特許文献13】Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.編集(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、新しい腫瘍免疫分子標的及び治療方法を探索することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、次のような技術的手段を採用する。
【0012】
一態様において、本発明は、CCDC112を発現する腫瘍細胞についてCCDC112の機能又は活性を変化するステップa)を含む、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞を調節する方法を提供し、
好ましくは、前記調節は抑制、前記変化は抑制である。
【0013】
さらに前記方法は、腫瘍細胞を免疫細胞と接触させるステップb)も含み得、
前記ステップb)は、ステップa)の前でも後でもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記抑制は、タンパク質レベル又は遺伝子レベルであり得る。
【0015】
好ましくは前記抑制には、以下の方法のいずれかが含まれるが、これらに限定されない、
i.CCDC112遺伝子の遺伝子編集をすること、
ii.CCDC112遺伝子発現を干渉すること、
iii.抗体を介してCCDC112タンパク質の機能又は活性を抑制すること。
【0016】
上述の抑制によりCCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4及びCD30のいずれかとの間の結合に影響を及ぼし、好ましくは、前記影響がCCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4及びCD30のいずれかとの間の結合を抑制又は阻害することであり、好ましくは前記CCDC112が腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される。
【0017】
さらに前記腫瘍細胞及び免疫細胞は、インビトロで単離された腫瘍細胞及び免疫細胞であり得、生体内に存在する腫瘍細胞及び免疫細胞であってもよい。
【0018】
一態様において本発明は、細胞内のCCDC112機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とするインビトロ又はインビボでMDSC又はTreg細胞の比率を調節する方法も提供する。
【0019】
一態様において本発明は、細胞内のCCDC112機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とするインビトロ又はインビボで細胞内のLILRB2,LTBR,LILRB4又はCD30の活性を調節する方法も提供する。
【0020】
一態様において本発明は、CCDC112と受容体LILRB2、LILRB4、LTBR又はCD30との相互作用を抑制する抑制剤又は抗体をスクリーニングすることによって、候補薬剤又は試薬を得ることを特徴とする腫瘍を予防又は治療するための薬剤又は試薬をスクリーニングする方法も提供する。
【0021】
一態様において本発明は、
a)CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合に対する候補分子の影響を分析するステップ、
b)骨髄由来抑制細胞(MDSC)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
c)制御性T細胞(Treg)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
d)腫瘍細胞を殺す免疫細胞に対する候補分子の影響を分析するステップ、
上記のいずれか1つ又は複数のステップを含み、
前記候補分子は、CCDC112の抑制性分子であり、
好ましくは、前記抑制分子又は抑制剤は、腫瘍抑制分子又は抑制剤であり、
より好ましくは、前記抑制分子又は抑制剤は、抗体又は抗原結合性断片である
ことを特徴とする抑制分子又は抑制剤のスクリーニング又は同定方法も提供する。
【0022】
一態様において本発明は、
a)CCDC112に対する抗体を調製するステップ、及び、
b)CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合に影響を与える抗体をスクリーニングするステップを含むことを特徴とする抗体の調製方法も提供する。
【0023】
好ましくは、前記ステップa)において、抗体は、CCDC112タンパク質を免疫原として被験体(例:マウス)に注射すること、又は天然物ライブラリーをスクリーニングすることにより調製され、例えばCCDC112タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO.10に示される。
【0024】
一態様において本発明は、CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30のいずれかとの間の相互作用を調節できることを特徴とするアゴニスト又はアンタゴニスト化合物も提供する。
【0025】
好ましくは、前記化合物は、小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体又は抗原結合性断片である。
【0026】
一態様において本発明は、CCDC112抑制剤の以下の使用(用途)のいずれかを提供する、
a)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【0027】
前記抑制剤は、CCDC112とその受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合を抑制又は阻害することができ、好ましくは、前記抑制剤は小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体又は抗原結合性断片である。
【0028】
一態様において本発明は、
被験体の免疫細胞又は腫瘍細胞をCCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合を抑制できる有効量のCCDC112抗体と接触させるステップを含む腫瘍を予防又は治療する方法も提供し、
好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定であり、
より好ましくは、前記追加の抗がん療法としては手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法が挙げられる。
【0029】
一態様において本発明は、免疫療法の前/後の被験体の腫瘍細胞のCCDC112タンパク質発現量又は機能を検出するステップを含む、腫瘍免疫療法のためのコンパニオン診断方法も提供する。
【0030】
一態様において本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、
a)前記抗体は、高い親和性でCCDC112タンパク質に特異的に結合し、
b)前記抗体は、CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30のいずれかとの間の相互作用を抑制又は阻害することができる
ことを特徴とする単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つをさらに含み、
i.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるMDSC細胞比率を減少させること、
ii.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるTreg細胞比率を減少させること、及び、
iii.前記抗体は、腫瘍細胞に対する免疫細胞(例:PBMC)の殺傷作用を強化すること。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記抗体又はその抗原結合性断片は、SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR及びSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR、又は上記の6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記抗体のCDRは、以下のCDR配列を含み、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15、21、26、38、30のいずれかで示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16、22、27、29、31のいずれかで示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17、23、32のいずれかで示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18、24、33のいずれかで示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19、25、34のいずれかで示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20、35のいずれかで示される。
【0034】
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体を含む。
【0035】
いくつかの具体的実施形態において、前記CDR配列は、IMGTに従い定義されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域であり、ならびにIMGTに従い定義されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域であり、配列は以下の通りであり、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15に示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16に示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示される。
【0036】
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体である。
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合性断片とCCDC112との結合KDは、<2×10-8であり、
より好ましくは、前記KDは、<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、<1×10-10である。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記抗体又は抗原結合性断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、配列は次から選択され、
a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有し、
b)前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、キャリアタンパク質、脂質、及びビオチンのうちの1種以上から選択されるポリペプチドに連結された連結部分(conjugation moiety)をさらに含み得、前記ポリペプチド又は抗体と前記連結部分は選択的にリンカーを介して連結できる。
【0039】
好ましくは、前記リンカーは、ペプチド又はポリペプチドである。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体から選択され、より好ましくは、前記抗体は多重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)及びイントラボディから選択される。
【0041】
一態様において本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片をコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチドも提供する。
【0042】
一態様において本発明は、前記ポリヌクレオチド、及び任意の調節配列を含む組換えベクターも提供し、
好ましくは、前記組換えベクターはクローニングベクター又は発現ベクターであり、より好ましくは、前記調節配列はリーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、又はこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0043】
一態様において本発明は、前記組換えベクターを含むことを特徴とする宿主細胞も提供し、好ましくは、前記宿主細胞は原核細胞又は真核細胞である。
【0044】
一態様において本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物のうち1種以上を含むことを特徴とする医薬組成物も提供し、
好ましくは、前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む。
【0045】
一態様において、本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞、及び医薬組成物のうち1種以上を含み、適切な容器に収納されることを特徴とする、キットも提供する。
【0046】
一態様において、本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物の以下の使用のいずれかも提供する、
a)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の刺激(agonizing)又は拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を刺激又は拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【0047】
一態様において本発明は、
被験体の免疫細胞及び腫瘍細胞を有効量の上記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物と接触させるステップを含むことを特徴とする腫瘍を予防又は治療するための方法も提供し、
任意選択で、有効量の化合物を使用して被験体の免疫細胞及び/又は腫瘍細胞と接触させる前、腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を検出し、
好ましくは、前記免疫細胞はリンパ球、より好ましくはTリンパ球であり、
より好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定である。
【0048】
さらに好ましくは、前記追加の抗がん療法としては、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法が挙げられる。
【0049】
一態様において本発明は、生体試料を有効量の前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物と接触させることを特徴とする生体試料中のCCDC112の有無をインビボとインビトロで検出する方法も提供する。
【0050】
一態様において本発明は、
A)腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を分析するステップ、
B)CCDC112を認識できる抗体を使用して腫瘍細胞に接触させるステップ、及び、
C)Tリンパ球、前記抗体及び腫瘍細胞を接触させるステップ
を含む腫瘍細胞の増殖を抑制する方法も提供する。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記抗体とCCDC112との結合KDは、<2×10-8であり、好ましくは、前記KDは<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、<1×10-10である。
【0052】
他の実施形態において、前記抗体は、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合作用を抑制又は阻害する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、結腸直腸癌(大腸癌)、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌、及び卵巣癌から選択される。
【発明の効果】
【0054】
従来技術と比較して、本発明の有利な技術的効果には、少なくとも以下の側面が含まれる、
1)本発明は、腫瘍細胞におけるCCDC112の広範な発現を定義し、腫瘍診断のためのバイオマーカーとすることができる。
2)本発明は、新規CCDC112結合分子、LILBR2、LIRB4、LTBR及びCD30を発見した。免疫制御及び腫瘍進行における上記分子の重要な役割に鑑み、CCDC112分子は、腫瘍進行中で骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び制御性T細胞(Treg)等を増加することにより役割を果たすことができる。
3)本発明は、CCDC112の抗体分子が、LILBR2、LIRB4、LTBR及びCD30とCCDC112との結合を阻害できることを見出した。
4)本発明で発見された抗体分子は、CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するPBMC細胞の殺傷作用を促進することができる。
5)本発明は、CCDC112を発現する腫瘍の治療のため新しい標的アプローチを提供する。
【0055】
以上の内容は、概括的な説明であり、必要に応じて詳細の簡略化、概括及び省略が含まれる場合がある。したがって、この概括的な説明は単なる例示であり、決して限定することを意図したものではないことは当業者によって理解されるだろう。本明細書に記載される方法、組成物及び/又は装置及び/又は他の主題の他の態様、特徴及び利点は、本明細書に示される教示から明らかになるであろう。いくつかの選択された概念を簡略化して紹介するため、概括的な説明を提供し、これらの概括的な説明は以下の詳細な説明でさらに説明される。上記の概括的な説明は、保護を請求する主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、保護を請求する主題の範囲を特定する補助手段として使用されることも意図したものではない。なお、本出願を通じて引用されるすべての参考文献、特許、及び公開された特許出願の内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
以下、本発明の具体的実施形態又は従来技術内の技術的手段を明確に説明するため、具体実施形態又は従来技術の描写に使用する図面を簡単に説明する。以下に記載する図面は、本発明のいくつかの実施形態というのみであり、当業者にとって創造性の活動をしない前提で、これら図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】共培養細胞に対するPBMCの殺傷作用を示すグラフである(CCDC112を発現するMCF7ヒト乳がん細胞(左)及び結腸直腸がん細胞HCT116(右)の腫瘍細胞を、活性化ヒト末梢血単核細胞(PBMC)と共培養した。この結果CCDC112の過剰発現は、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を抑制するが、CCDC112遺伝子をノックアウトした場合、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用が増加することを示している)。
【
図2】共培養PBMCにおけるMDSC(A)とTreg(B)の比率に対する腫瘍細胞の影響を示すグラフ(正常なHCT116細胞と比較して、CCDC112を発現するHCT116細胞とヒト末梢血単核細胞を共培養した場合、MDSC細胞(HLA-DR-CD11b+CD33+)とTreg(CD4+CD25+Foxp3+)の比率が増加したが、CCDC112をノックアウトした腫瘍細胞はMDSC細胞とTreg細胞の比率が減少した)。
【
図3】LILRB2及びLILRB4に結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図4】異なるpH値でのLTBRに結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図5】異なるpH値でのCD30に結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図6】異なる腫瘍細胞におけるCCDC112の発現レベルを示すグラフである。(RLリンパ腫細胞は陰性、A375黒色腫及びRAJIリンパ腫は低発現で、MCF7乳癌、A549肺癌、HCT116、LOVO及びSW1116結腸直腸癌は陽性発現、SW48結腸直腸癌は強い陽性発現を示す。)である。
【
図7】ELISAによって検出された、CCDC112全長タンパク質及びCCDC112(73~227)断片に結合するCCDC112抗体の濃度依存性効果を示すグラフである。
【
図8】フローサイトメトリーにより抗体がCCDC112をノックアウトしたHCT116腫瘍細胞ではなく、HCT116腫瘍細胞に結合することを示すグラフである。
【
図9】CCDC112とその受容体LILRB2/LTBRとの結合に対する、異なる濃度のCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフである。
【
図10】フローサイトメトリーにより、CCDC112抗体がCCDC112受容体(LILRB2)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示すグラフである。
【
図11】フローサイトメトリーにより、CCDC112抗体がCCDC112受容体(LTBR)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示すグラフである。
【
図12】生体膜干渉法によって測定されたS-78-02及びCCDC112の親和性定数の決定を示すグラフである。
【
図13】PBMCによる異なる腫瘍細胞の殺傷に対する抗体の促進作用を示すグラフである。
【
図14】マクロファージによるHCT116腫瘍細胞の貪食に対するCCDC112抗体の促進作用を示すグラフである。
【
図15】PBMCヒト化マウス体内のSW48結腸直腸癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフである。
【
図16】PBMCヒト化マウス体内のHCT116結腸直腸癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフであるである。
【
図17】PBMCヒト化マウス体内のA549肺癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフであるである。
【
図18】CCDC112抗体は、PBMCヒト化マウス体内のMCF7リンパ腫細胞に対して顕著な抑制作用を欠いていることを示すグラフである。
【
図19】CCDC112抗体は、PBMCヒト化マウス体内のRLリンパ腫細胞に対して顕著な抑制作用を欠いていることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
発明の詳細な説明
本発明は多くの異なる形態で実施することができるが、本明細書では、本発明の原理を実証する具体の例示的な実施形態を開示する。本発明は例を挙げた具体的実施形態に限定されないことを強調すべきである。なお、本明細書使用されるセクションの見出しは、説明の便宜上のものであり、説明されている主題に対する限定と理解してはいけない。
【0059】
以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためにのみ提供される。これらの定義は、当業者が理解する範囲よりも狭い範囲を有すると理理解してはいけない。
【0060】
以下で別途定義されない限り、本発明の詳細な説明で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の用語は、当業者にはよく理解されていると考えられるが、本発明をより良く説明するため以下の定義を記載する。
【0061】
「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、又は「関与する」という用語は包括的(inclusive)又は開放型の用語であり、挙げられていない他の要素又は方法ステップを排除するものではない。「からなる」という用語は、「含む」という用語の好ましい実施形態として考えられる。以下において、特定の群が少なくとも一定の数の実施形態を含むものとして定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するものとも理解されるべきである。
【0062】
単数形の名詞に言及するときの不定冠詞又は定冠詞(「1個」又は「1種」)の使用には、該名詞の複数形も含まれる。
【0063】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「第1」、「第2」、「第3」、又は、「(a)」、「(b)」、「(c)」等の用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番又は時系列順を記述するために使用されているのではない。このように使用されている用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書において記述されている本発明の実施形態は、本明細書に記述又は例示された順序以外の順序で操作できるということが理解されたい。
【0064】
「及び/又は」という用語は、指定された2つの特徴又はコンポーネントの各々が他方の特徴又はコンポーネントの有無にかかわらず、具体的な開示であると考えられる。したがって、本明細書で「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A及びB、A又はB、A(単独)、及びB(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A、B、及びC、A、B又はC、A又はC、A又はB、B又はC、A及びC、A及びB、B及びC、A(単独)、B(単独)、及びC(単独)をカバーする。
【0065】
「例えば」及び「すなわち」という用語は、例としてのみ使用され、限定を意図するものではなく、明細書に明示的に記載された項目のみを指すものと理解してはいけない。
【0066】
「又はこれ以上」、「少なくとも」、「超える」などの用語、例えば「少なくとも1種」は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100又は200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000を含むが、これらに限定されない又は前記値を超えること理解されるべきである。この間のより大きな数値又は分数も含まれる。
【0067】
逆に「超えない」という用語には、前記値より小さいあらゆる値が含まれる。例えば、「100ヌクレオチドを超えない」には、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1及び0ヌクレオチドが含まれる。この間のより小さな数値又は分数も含まれる。
【0068】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2つ以上」、「少なくとも2つ目」などの用語は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100又は200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000又はこれ以上を含むが、これらに限定されないものと理解されるべきである。この間のより大きな数値又は分数も含まれる。
【0069】
「約」及び「ほぼ」という用語は、当業者が理解することができ、また、言及された特徴の技術的効果を依然として保証する精度の範囲を示している。この用語は、典型的に、±10%、好ましくは±5%の示された数値からの偏差を示している。
【0070】
本明細書に記載されるように、別段の指示がない限り、濃度範囲、百分率範囲、比率範囲、又は整数範囲は、記載された範囲内の任意の整数値、かつ適切な場合にはその端数(例えば整数の10分の1及び100分の1)を含むものと理解されるべきである。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」(Ab)には、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンが含まれるが、これに限定されない。通常、抗体は、ジスルフィド結合によって接続されている少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はその抗原結合分子を含み得る。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、すなわちCLを含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域と、超可変領域が散在する、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域とにさらに細区画できる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRを含み、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4で、アミノ末端からカルボキシ末端へ配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有している。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含めた、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0072】
VH及びVLは、それぞれ3つの超可変領域(「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる)が散在する「フレームワーク」領域を含む。「相補性決定領域」又は「CDR」又は「超可変領域」(本明細書では超可変領域「HVR」と互換的に使用される)は、抗体可変ドメインにおける配列において超可変であり、構造上明確なループ(「超可変ループ」)を形成し及び/又は抗原接触残基(「抗原接触部位」)を含有する領域である。CDRは、主に抗原エピトープへの結合に関与する。重鎖及び軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、N末端から順番に番号が付けられる。抗体のVHに位置するCDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と呼ばれ、抗体のVLに位置するCDRはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と呼ばれる。与えられたVL又はVHのアミノ酸配列において、各CDRの正確なアミノ酸配列境界は、いくつかの公知抗体CDR割り当てシステムのいずれか1つ又はこの組み合わせを使用して決定できる。前記割り当てシステムには、例えば抗体の三次元構造及びCDRループのトポロジーに基づくChothia(非特許文献5、非特許文献6)、抗体配列の可変性に基づくKabat(非特許文献7)、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際ImMunoGeneTics database(IMGT)及び多数の結晶構造を使用したアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0073】
ただし、異なる割り当てシステムに基づいて得られた同じ抗体の可変領域のCDRの境界は異なる場合があることに留意されたい。すなわち、異なる割り当てシステムの下で定義される同じ抗体の可変領域のCDR配列は異なる。例えばKabat及びChothia番号付けを使用するCDR領域の異なる割り当てシステムによって定義される残基範囲を以下の表Aに示す。
【0074】
【0075】
したがって、本発明で定義される特定のCDR配列で抗体を限定することに言及する場合、抗体の範囲は、可変領域配列が前記特定のCDR配列を含むが、異なるプロトコル(例えば異なる割り当てシステムルール又は組み合わせ)の適用により、宣言されるCDR境界が、本発明で定義される具体的CDR境界と異なる抗体をカバーする。
【0076】
本発明の抗体のCDRは、当技術分野の任意のプロトコル又はこれらの組み合わせに従い手動で評価して境界を決定することができる。特に明記しない限り、本発明において、用語「CDR」又は「CDR配列」は、上記の方法のいずれかによって決定されたCDR配列をカバーする。
【0077】
抗体としては、例えば、モノクローナル抗体、組換え生産された抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、人工抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖と2つの軽鎖を含む四量体抗体、抗体軽鎖モノマー、抗体重鎖モノマー、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖ペア、イントラボディ、抗体融合体(本明細書では「抗体複合体」と呼ばれることもある)、ヘテロ複合体抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体又は単鎖Fv(scFv)断片、ラクダ化抗体、アフィボディ、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば抗-抗Id抗体を含む)、マイクロ抗体、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では、「抗体模倣物」と呼ばれることもある)、及び上記のいずれかの抗原結合性断片が挙げられ得る。
【0078】
用語「ヒト化抗体」は、マウスのような別の哺乳種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に融合させた抗体を意味することを意図する。ヒトフレームワーク配列において別のフレームワーク領域の修飾を実施することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合分子」、「抗原結合性断片」又は「抗体断片」は、該分子が由来する抗体の抗原結合性断片(例えばCDR)を含む任意の分子を意味する。抗原結合分子は、相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体断片の例としては、抗原結合分子から形成されるFab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、dAb、線状抗体、scFv抗体、及び多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗原結合分子は、CCDC112タンパク質に結合し、いくつかの実施形態において、抗原結合分子は、中和活性を有し、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合を抑制することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、免疫応答を誘発又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることができる任意の分子を意味する。免疫応答には、抗体の産生又は特異的免疫担当細胞の活性化、又は両方が関与する場合がある。当業者の場合、あらゆる巨大分子(事実上あらゆるタンパク質又はペプチドを含む)が抗原として機能し得ることを容易に理解するであろう。抗原は、内因的にすなわちゲノムDNAから発現されてもよく、若しくは組換えによって発現されてもよい。抗原は、がん細胞などの特定の組織に特異的な場合もあれば、広範囲に発現する場合もある。なおより大きな分子の断片は、抗原作用を発揮できる。いくつかの実施形態において、抗原はCCDC112タンパク質抗原である。
【0081】
本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態において、抗原結合分子、scFv、抗体又はその断片は、リガンド上の結合部位を直接阻害するか、もしくは間接的手段(リガンドの構造的又はエネルギー的変化など)を通じてリガンドの結合能力を変化させる。いくつかの実施形態において、抗原結合分子、scFv、抗体又はその断片は、それが結合するタンパク質の生物学的機能を妨げる。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質又はペプチドには少なくとも2つのアミノ酸が含まれ、タンパク質又はペプチドの配列に含むことができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書で使用される際に、この用語は、短鎖(当技術分野では通常、例えばペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも呼ばれる)及び長鎖(当技術分野では通常タンパク質と呼ばれ、多くの種類がある)の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ(類似体)、融合タンパク質などが挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する」又は「に特異的に結合する」は、抗体と抗原の間など、2つの分子間の非ランダムな結合反応を意味する。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「結合を抑制する」、「結合を阻害する」、又は「同じエピトープに対して競合する」能力とは、2つの分子の結合を検出可能な程度まで抑制する抗体の能力を意味する。いくつかの実施形態において、2つの分子間の結合を阻害する抗体は、2つの分子間の結合相互作用を少なくとも50%抑制する。いくつかの実施形態において、該抑制は60%を超える、70%を超える、80%を超える、又は90%を超えることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「Ka」は、特定抗体-抗原相互作用の結合速度(association rate)を意味し、一方、用語「Kd」は、本明細書で使用される場合、特定抗体-抗原相互作用の解離速度を意味する。本明細書で使用する際、用語「KD」又は「KD値」は、特定抗体-抗原相互作用の解離定数を意味し、これはKaに対するKdの比率(すなわち、Kd/Ka)から算出され、モル濃度(M)で表される。抗体のKD値は、当技術分野で確立された手法により決定できる。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「高親和性」抗体とは、KDが1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、さらにより好ましくは1×10-8M以下、さらにより好ましくは5×10-9M以下、及びさらにより好ましくは1×10-9M以下の標的抗原に対するKDを有する抗体を意味する。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原の部分を意味する。「エピトープ」は「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープ又は抗原決定基は通常、アミノ酸、炭水化物、若しくは糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基で構成され、通常は特定の三次元構造と特定の電荷特性を持っている。例えば、エピトープは典型的には、独特の三次元立体構造で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15個の連続又は不連続なアミノ酸を含み、「線状エピトープ」又は「立体構造エピトープ(conformational epitope)」であり得る。例えば非特許文献8を参照されたい。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(抗体など)間の全ての相互作用部位が、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。立体構造エピトープでは、相互作用部位はタンパク質内で互いに分離されているアミノ酸残基にまたがる。当業者に知られている従来技術で検出されるものと同じエピトープへの結合に対する競合に応じて抗体をスクリーニングすることができる。例えば、競合又は交差競合研究を実施して、抗原(例えば、CLDN18.2)への結合に関して互いに競合又は交差競合する抗体を得ることができる。特許文献1において同じエピトープに結合する抗体をそれらの交差競合に基づいて取得するためのハイスループットな方法が記載されている。
【0088】
本発明において、用語「核酸」又は「核酸配列」は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又はこれらの類似体単位を含む任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。前記核酸は、一本鎖でも二本鎖でもよい。一本鎖核酸は、変性二本鎖DNAの一方の鎖の核酸であり得る。又は一本鎖核酸は、二本鎖DNAに由来しない一本鎖核酸であってもよい。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」は、2つの所定のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列が互いにアニールするとき、DNA中でAがTと対になり、GはCと対になり、RNA中でGはCと対になり、AはUと対になるように、ヌクレオチド塩基G、A、T、C及びU間の水素結合塩基対を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「癌」は、体内の異常細胞の制御されない増殖を特徴とする様々な疾患の大きなグループを意味する。調節されていない細胞の分裂と増殖は、隣り合う組織に侵入し、リンパ系又は血流を介して体の遠隔部分に転移することもできる悪性腫瘍を形成する。用語「癌」又は「癌性組織」には腫瘍が含まれ得る。癌又は癌性組織の例として骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚癌又は目の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、消化管癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、管癌、陰茎癌、慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病を含む)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ性腫瘍、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物/腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸(spinal axis)腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ(Kaposi)肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発癌(アスベスト誘発癌を含む)、及び上記を組み合わせた癌を含み得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「CCDC112に関する癌」は、CCDC112の異常な発現が存在する腫瘍タイプ、又はCCDC112の発現若しくは活性の増減によって引き起こされるか、増悪するか、又はそれに関連する任意の癌を意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌、及び卵巣癌から選択される癌に使用することができる。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「有効用量」、「有効量」又は「治療有効量」は、単独で又は別の治療薬と組み合わせて使用した場合、被験体を疾患の発症から保護するか、疾患の退行を促進する任意の量である。疾患退行の証拠は、疾患の症状の重症度の減少、疾患の無症候性期間の頻度及び期間の増加、又は疾患で苦しみによる損傷又は障害の予防である。当業者に知られる様々な方法で疾患退行を促進する治療薬の能力を評価でき、例えば臨床試験期間のヒト被験体での評価、ヒトにおける有効性を予測するための動物モデル系での評価、又はインビトロアッセイで試薬の活性を測定することによる評価である。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「個体」又は「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物には、霊長類(例えばヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特定の実施形態において、個体又は被験体はヒトである。「被験体」は治療を必要とするヒト被験体である「患者」であってもよく、結腸直腸癌などのCCDC112関連癌に罹患している個体、結腸直腸癌などのCCDC112関連癌を発症するリスクのある被験体であり得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「インビトロ細胞」は、エクスビボで培養された任意の細胞を指す。特に、インビトロ細胞にはT細胞が含まれ得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、担体、希釈剤、賦形剤及び/又はそれらの塩が、製剤中の他の成分と化学的及び/又は物理的に適合し、受容者(recipient)と生理学的に適合することを意味する。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤」は、被験体及び活性薬剤と薬理学的及び/又は生理学的に適合する担体及び/又は賦形剤を指し、これは当技術分野で周知(例えば非特許文献9を参照)であり、これにはpH調整剤、界面活性剤、アジュバント及びイオン強度増強剤が含まれるが、これらに限定されない。例えばpH調整剤としては、リン酸緩衝剤が挙げられるが、これに限定されない。界面活性剤としては、Tween-80などのカチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。イオン強度増強剤としては、塩化ナトリウムが挙げられるがこれに限定されない。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「調節」は、一般的に2つの異なる方向における上方調節又は下方調節の意味を含む。場合によっては、抑制又は増強として理解することができ、また場合によっては、低下又は向上として理解され得、場合によっては、減少又は増加などとして理解され得、具体的な解釈は限定されず、実際の応用の状況に従い理解及び解釈する。例示的に、いくつかの実施形態において腫瘍細胞増殖を「調節する」ことは、腫瘍細胞増殖を抑制又は増強することとして理解され得る。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「減少」及び「低下」は、互換的に使用され、元(original)からの任意の変化を意味する。「減少」と「低下」は相対的な用語であり、測定前と測定後の比較が必要である。「減少」と「低下」には完全に消費することが含まれ、同様に用語「増加」と「向上」は逆に解釈される。
【0099】
被験体の「治療」又は「処置」とは、症状、合併症、又は状態、又は疾患に関連する生化学的指標の発症、進行、成長、重症度又は再発を逆転、緩和、改善、抑制、減速、若しくは予防するという目的を達成するため、被験体に任意の種類の介入又は処置を行うこと、又は該被験体に活性薬剤を投与することを意味する。いくつかの実施形態において、「治療」又は「処置」には、部分寛解が含まれる。別の実施形態において、「治療」又は「処置」には完全寛解が含まれる。
【0100】
本開示の様々な態様をさらに詳細に説明する。
1.CCDC112タンパク質及び腫瘍抑制における作用
CCDC112タンパク質は、コイルドコイルドメイン(CCDC)ファミリーメンバーに属する「コイルドコイルドメイン含有タンパク質112」(Coiled-coil domain-containing protein 112)である。コイルドコイルドメイン(CCDC)タンパク質は、様々な天然タンパク質に存在するタンパク質ドメインであり、これまでに少なくとも200種のCCDCタンパク質が発見され、異なるCCDCタンパク質は細胞間膜貫通シグナル伝達、遺伝シグナル転写、細胞増殖とアポトーシスの促進、悪性腫瘍細胞の浸潤と転移の制御、その他の生物学的挙動の制御を含む、多様な生物学的機能を持っている。次の表に、いくつかの既知のCCDCタンパク質を示す。
【0101】
【0102】
しかしながら、CCDC112タンパク質の機能は明らかにされておらず、CCDC112に基づく腫瘍の抑制に関する報告もなく、本発明者らは、遺伝子サイレンシングノックアウト及び免疫学などの実験を通じて、CCDC112の機能又は活性を抑制することにより、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30間の相互作用を阻害し、腫瘍細胞に対する免疫細胞の殺傷作用を促進できることで、がん治療の分野で使用できることが確認された。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記癌は、CCDC112に関連する癌である。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「CCDC112に関する癌」は、CCDC112の異常な発現が存在する腫瘍タイプ、又はCCDC112の発現若しくは活性の増減によって引き起こされるか、増悪するか、又はそれに関連する任意の癌を意味する。
【0105】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌、及び卵巣癌から選択される癌に使用することができる。
【0106】
2.CCDC112に基づく腫瘍細胞調節の方法
本発明の上記見出しに基づいて、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞を調節する方法を提供する。前記方法は、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30のいずれか1つとの間の結合作用を変化させることによって免疫抑制性細胞であるMDSC又はTreg細胞の比率を変化させ、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を調節する。
【0107】
当業者は、このような調節が腫瘍細胞の細胞活性、又は腫瘍細胞の増殖、又は腫瘍細胞の移動などを調節することであり得ることは、理解することができ、ここに制限はない。本分野において、このような調節は多岐にわたる可能性があると合理的に予想できる。「調節」には、増強と抑制の2つの側面が含まれ、より多くの実施形態において、この調節は抑制の側面であり、すなわち、病巣除去又は治療の目的を達成するため、腫瘍細胞の活性、増殖又は遊走の抑制作用である。
【0108】
いくつかの具体的抑制実施形態において、前記方法は以下のステップを含み得、
a)CCDC112を発現する腫瘍細胞について、CCDC112の発現、機能又は活性を抑制することによって上記目的を達成する。任意に、上記の方法をより良く実現するため、ステップa)の前に腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を検出するステップも含まれ得る。
【0109】
さらに、前記方法は、腫瘍細胞を免疫細胞と接触させるステップb)も含み得、
ステップb)は、前記方法の実施に影響を与えることなく、ステップa)の前又は後に実施することができることが理解される。
【0110】
当技術分野で理解できるように、特定タンパク質の発現、機能又は活性の抑制には多くの方法があり、これらの方法はタンパク質レベル又は遺伝子レベルで実施することができ、これらは当技術分野で周知である。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記の抑制方法は、以下のいずれかであり得、
a.CCDC112遺伝子に対して遺伝子編集を実施して、該遺伝子の完全性を破壊することで、該遺伝子の発現量及び活性などを低下させる、
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の遺伝子編集システムはCRISPR/Cas9遺伝子編集システムであり、
いくつかのより好ましい実施形態において、前記CRISPR/Cas9遺伝子編集システムのsgRNAをコードするためのオリゴマーDNA配列は、SEQ ID NO:1~8から選択される、
b.CCDC112遺伝子の発現量又は活性を低下させるために、RNAi方式などによってCCDC112遺伝子発現を妨害する、
c、免疫学的手段により抑制する。、例えば抗体によりCCDC112タンパク質の機能又は活性を抑制することによって。
【0112】
別の態様において、本発明は、例えばインビボ及びインビトロで細胞中のLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30の活性を調節する方法、例えばインビボ及びインビトロで免疫抑制性細胞であるMDSC又はTreg細胞の比率を調節する方法、さらに例えばインビボ及びインビトロで腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を調節する方法といった他の調節方法も提供できる。これらの方法はいずれも腫瘍細胞におけるCCDC112の機能又は活性を変化させるステップを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、上記調節方法は、LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30の活性を抑制する方法、免疫抑制性細胞であるMDSC又はTreg細胞の比率を減少させる方法、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を増強する方法である。これらの方法はそれぞれ、腫瘍細胞におけるCCDC112の機能又は活性を抑制するステップを含む。
【0114】
3.本発明の抑制剤及びそのスクリーニング又は同定方法
本発明に基づいて、CCDC112タンパク質は、LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30などの受容体に結合できること、及び腫瘍細胞におけるCCDC112タンパク質の発現が、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)及び免疫細胞に影響を与え得ることを見出した。
【0115】
本発明は、CCDC112抑制剤を提供する。本発明における「抑制剤」は、タンパク質レベルの抑制剤であっても遺伝子レベルの抑制剤であってもよいが、遺伝子の生成、転写、活性、機能など、及びタンパク質の発現、活性、機能などを含むがこれらに限定されない、CCDC112遺伝子又はタンパク質を抑制できるものは全て「抑制剤」の範囲に属する。
【0116】
例として、
抑制剤がタンパク質レベルの場合、CCDC112タンパク質に結合することができ、CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30のいずれかとの間の相互作用を抑制又は阻害できる物質である。
【0117】
いくつかの実施形態において、該タンパク質レベルのCCDC112抑制剤は、CCDC112タンパク質に特異的に結合する。
【0118】
いくつかの実施形態において、該タンパク質レベルのCCDC112抑制剤は、CCDC112タンパク質に特異的にかつ高い親和性で結合する。
【0119】
いくつかの実施形態において、該タンパク質レベル抑制剤は、CCDC112と、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を働かせる(agonize)又は拮抗する(antagonize)化合物である。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記タンパク質レベルの抑制剤には、小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体又は抗原結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
抑制剤は遺伝子レベルの場合、それは、CCDC112遺伝子の活性又は機能を変化させることにより、CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30のいずれか1つとの間の相互作用を抑制又は阻害することができる物質である。
【0122】
いくつかの実施形態において、該遺伝子レベルのCCDC112抑制剤には、CCDC112遺伝子に特異的な小分子物質、DNA様物質又はRNA様物質など(プライマー、プローブ、sgRNAなどの物質)が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明は、上記抑制剤のスクリーニング又は同定方法も提供し、該方法は、まずCCDC112抑制性分子を取得し、次にCCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合に対する候補分子の影響を分析するステップを含み、
好ましくは、候補分子に拮抗活性があるかどうかを分析する。
【0124】
いくつかの実施形態において、該方法は以下ステップ
まずCCDC112抑制性分子を取得し、次に骨髄由来抑制細胞(MDSC)に対する候補分子の影響を分析するステップを含み得、
好ましくは、候補分子が抑制性細胞(MDSC)の含有量又は比率を減少させることができるかどうかを分析する。
【0125】
いくつかの実施形態において、該方法は、まずCCDC112抑制性分子を取得し、次に制御性T細胞(Treg)に対する候補分子の影響を分析するステップを含み得、好ましくは、候補分子がTregの含有量又は比率を減少させることができるかどうかを分析する。
【0126】
いくつかの実施形態において、該方法は、まずCCDC112抑制性分子を取得し、次に腫瘍細胞を殺す免疫細胞に対する候補分子の影響を分析するステップを含み得、好ましくは、候補分子が腫瘍細胞に対する免疫細胞の殺傷又は抑制作用を促進できるどうかを分析する。
【0127】
いくつかの実施形態において、該方法は、上記ステップの組み合わせ又は全部を含み得る。
【0128】
上記方法を通じて、当業者の場合、価値のあるCCDC112抑制性分子をスクリーニング及び/又は同定できることを予期できる。
【0129】
4.本発明の抗体及びその調製方法
本発明の抗体
「CCDC112に対する抗体」、「抗CCDC112抗体」、「抗CCDC112タンパク質抗体」、「CCDC112タンパク質抗体」、又は「CCDC112に結合する抗体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、CCDC112タンパク質に十分な親和性で結合することができる本発明の抗体を指し、これにより前記抗体はCCDC112タンパク質を標的とする診断薬、予防薬及び/又は治療薬として使用することができる。
【0130】
以下の特性を有する抗体又はその抗原結合性断片は、理論的には本発明の技術的思想又は権利範囲に属し、具体的には、単離された抗体又はその抗原結合性断片は、次の特性を有し、
a)CCDC112タンパク質に高親和性で特異的に結合することができ;且つ、
b)CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30のいずれか1つとの間の相互作用を抑制又は阻害することができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記抗体は、免疫抑制性細胞であるMDSC細胞の比率を減少させ、
前記抗体は、免疫抑制性細胞であるTreg的細胞の比率を減少させ、若しくは
前記抗体は、腫瘍細胞に対する免疫細胞(PBMC等)の殺傷作用を強化する。
【0132】
さらに/代替的に、前記抗体は、上記の他の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0133】
いくつかの具体的実施形態において、本発明の単離された抗体又はその抗原結合性断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、具体的には以下を含む、
SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列における3つのCDR及びSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列における3つのCDR、又はは上記6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一又は複数のCDRを有する変異体。
【0134】
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換であり、好ましくは、前記アミノ酸変化は保存的アミノ酸置換である。
【0135】
いくつかの実施形態において、抗体は、以下の異なるように定義されたCDR配列を含む。
【0136】
【0137】
したがって、いくつかの実施形態において、前記抗体のCDRは、以下のCDR配列を含む、
i.前記HCDR1は、SEQ ID NO.15、21、26、38、30のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、
ii.前記HCDR2は、SEQ ID NO.16、22、27、29、31のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、
iii.前記HCDR3は、SEQ ID NO.17、23、32のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、
iv.前記LCDR1は、SEQ ID NO.18、24、33のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、
v.前記LCDR2は、SEQ ID NO.19、25、34のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、
vi.前記LCDR3は、SEQ ID NO.20、35のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する。
【0138】
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一又は複数のCDRを有する変異体。
いくつかの具体的実施形態において、抗体は、IMGTに従い定義されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の配列を含む重鎖可変領域であり、ならびにIMGTに従い定義されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列を含む軽鎖可変領域であり、配列は以下の通りである、
i.前記HCDR1は、SEQ ID NO.15に示されるアミノ酸配列を有する、
ii.前記HCDR2は、SEQ ID NO.16に示されるアミノ酸配列を有する、
iii.前記HCDR3は、SEQ ID NO.17に示されるアミノ酸配列を有する、
iv.前記LCDR1は、SEQ ID NO.18に示されるアミノ酸配列を有する、
v.前記LCDR2は、SEQ ID NO.19に示されるアミノ酸配列を有する、
vi.前記LCDR3は、SEQ ID NO.20に示されるアミノ酸配列を有する。
【0139】
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一又は複数のCDRを有する変異体。
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換であり、好ましくは、前記アミノ酸変化は保存的アミノ酸置換である。
【0140】
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合性断片とCCDC112との結合KDは、<2×10-8であり、
より好ましくは、前記KDは、<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、<1×10-10である。
【0141】
いくつかの実施形態において、前記抗体又は抗原結合性断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、配列は次から選択され、
a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有し、
b)前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有する。
【0142】
保存的置換とは、あるアミノ酸を同じクラス内の別のアミノ酸に置換することを指し、例えばある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸に、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸に、又はある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸に置換する。例示的な置換を以下の表に示す。
【0143】
【0144】
好ましい実施形態において、本発明に記載のアミノ酸変化は、CDR外側の領域(例えば、FR)で起こる。より好ましくは、本発明に記載のアミノ酸変化はFc領域で起こる。いくつかの実施形態において、例えば中性pHと比較して酸性pHにおいて、FcRn受容体への抗体の結合を増強又は低減する1つ以上の変異を含有するFcドメインを含む抗CCDC112タンパク質抗体を提供する。このようなFc改変の非限定的な例としては、例えば位置250(例えばE若しくはQ)、位置250及び位置428(例えばL若しくはF)、位置252(例えばL/Y/F/W若しくはT)、位置254(例えば、S若しくはT)及び位置256(例えば、S/R/Q/E/D若しくはT)の改変;又は位置428及び/若しくは位置433(例えば、H/L/R/S/P/Q若しくはK)及び/若しくは位置434(A、W、H、F若しくはY[N434A、N434W、N434H、N434F若しくはN434Y]の改変;又は位置250及び/若しくは位置428の改変;又は位置307若しくは位置308(例えば308F、V308F)及び位置434の改変である。一実施形態において、該改変は、428L(例えばM428L)及び434S(例えばN434S)改変;428L、259I(例えばV259I)及び308F(例えばV308F)の改変、433K(例えばH433K)及び434(例えば434Yの改変;252、254、及び256(例えば252Y、254T、及び256E)の改変;250Q及び428L(例えばT250Q及びM428L)の改変;ならびに307及び/若しくはは308(例えば308F又は308P)にける改変を含む。さらに別の実施形態において、該改変は265A及び/又は297A(例えばN297A)修飾を含む。
【0145】
例えば本発明は、Fcドメインを含有する抗CCDC112タンパク質抗体を含み、該Fcドメインは252Y、254T及び256E(例えばM252Y、S254T及びT256E)の変異;428L及び434S(例えばM428L及びN434S)の変異;257I及び311I(例えばP257I及びQ311I)の変異;257I及び434H(例えばP257I及びN434H)の変異;376V及び434H(例えばD376V及びN434H)の変異;307A、380A及び434A(例えばT307A、E380A及びN434A)の変異;ならびに433K及び434F(例えばH433K及びN434F)の変異から選択される1対(群)又は複数対(群)の変異を含む。一実施形態において、本発明は、Fcドメインを含有する抗CCDC112タンパク質抗体を含み、該Fcドメインは二量体の安定化を促進するために、IgG4ヒンジ領域内のS108P変異を含む。前述のFcドメイン変異と、本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異とのあらゆる可能な組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0146】
他の実施形態において、本明細書で提供されるCCDC112タンパク質抗体を改変することで、グリコシル化の程度を増減させることができる。CCDC112タンパク質抗体のグリコシル化部位の付加又は欠失は、アミノ酸配列を変更して1つ以上のグリコシル化部位を生成又は除去することによって容易に達成できる。CCDC112タンパク質抗体がFc領域を含む場合、Fc領域に結合するグリコシル化のタイプを変更することができる。いくつかの応用において、不要なグリコシル化部位を除去するための改変が有用であり、例えばフコース部分を除去して抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を向上することが挙げられる(非特許文献10を参照)。他の応用において、補体依存性細胞傷害(CDC)を調節するためガラクトシド化改変を行うことができる。いくつかの実施形態において、例えばコロナウイルス感染症の治療における本発明のコロナウイルスSタンパク質抗体の予防及び/又は有効性を強化するため、本明細書に提供されるコロナウイルスSタンパク質抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸改変を導入して、Fc領域の変異体を産生することができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗体はIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であり、好ましくはIgG1又はIgG4抗体であり、より好ましくはヒト又はマウスのIgG1又はIgG4抗体である。
【0148】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、キャリアタンパク質、脂質、及びビオチンのうちの1種以上から選択されるポリペプチドに連結されたコンジュゲーション部分をさらに含み得、前記ポリペプチド又は抗体と前記カップリング部分は選択的にリンカーを介して連結できる。好ましくは、前記リンカーは、ペプチド又はポリペプチドである。
【0149】
抗体のコア機能領域を変更することなく、前記抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体として作製でき、又はこれらから選択でき、より好ましくは、抗体は多重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗-Id)抗体、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)及びイントラボディとして作製できる又はこれらから選択されることは、当業者によって理解されるだろう。
【0150】
本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片をコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチドも提供する。
【0151】
本発明は、前記ポリヌクレオチド及び任意の調節配列を含む組換えベクターも提供し、
好ましくは、前記組換えベクターはクローニングベクター又は発現ベクターであり、より好ましくは、前記調節配列はリーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、又はこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0152】
本発明は、前記組換えベクターを含むことを特徴とする宿主細胞も提供し、好ましくは、前記宿主細胞は原核細胞又は真核細胞である。
【0153】
本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物のうち1種以上を含むことを特徴とする医薬組成物も提供し、好ましくは、前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む。
【0154】
本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞、及び医薬組成物のうち1種以上を含み、適切な容器に収納されることを特徴とするキットも提供する。
【0155】
本発明の抗体作製方法
非特許文献11の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術などの従来のモノクローナル抗体方法論を含む様々な技術によって本発明の抗CCDC112のモノクローナル抗体(mAb)及びヒト配列抗体を産生することができる。Bリンパ球のウィルス形質転換又は発がん性形質転換などのモノクローナル抗体を産生するための任意の技術を用いることができる。ハイブリドーマを調製するための動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマの産生は十分に確立された方法である。融合用の免疫化された脾臓細胞を単離するための免疫スキーム及び技術は、本分野で公知である。いくつかの実施形態において、本発明は、マウスを組換えCCDC112タンパク質で複数回免疫することによって得られる。
【0156】
本発明の抗体の活性アッセイ
本明細書で提供されるCCDC112タンパク質抗体について、当技術分野の公知の様々なアッセイによって、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性を同定、スクリーニング又は特徴付けすることができる。一態様において、本発明のCCDC112タンパク質抗体の抗原結合活性は、例えばELISA、ウェスタンブロッティングなどの公知の方法によって試験する。CCDC112タンパク質への結合は、当技術分野の公知の方法でアッセイでき、例示的な方法が本明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、本発明のCCDC112タンパク質抗体のCCDC112タンパク質への結合は、バイオレイヤー干渉(biofilm layer interference)を用いて決定され、ELISA実験によりCCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR、及びCD30との結合を更に分析する。
【0157】
5.本発明の医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される化合物、CCDC112タンパク質抑制剤、アンタゴニスト、抗体、抗原ペプチド、タンパク質などのいずれかを含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物である。
【0158】
一実施形態において、組成物は、本発明の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は免疫複合体、又は二重特異性分子、及び薬学的に許容される担体を含む。
【0159】
一実施形態において、医薬組成物は、本発明のCCDC112タンパク質抗体及び1つ以上の他の治療薬の組み合わせを含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物又は医薬製剤は、当技術分野で公知の医薬担体、医薬賦形剤(緩衝剤を含む)などの適切な医薬品添加物を含む。
【0161】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。本発明での使用に適した医薬担体は、水と油などの滅菌液体であり得、これには、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物は合成由来のものを含む。医薬組成物を静脈内投与する場合、水は好ましい担体である。生理食塩水、デキストロース及びグリセロール水溶液を特に注射用溶液の液体担体として使用することもできる。適切な賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。賦形剤の使用及び用途については、非特許文献12も参照できる。必要に応じて、前記組成物は、少量の湿潤剤、乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンなどの標準的な薬学的担体及び/又は賦形剤を含み得る。
【0162】
所望の純度を有する本発明のCCDC112タンパク質抗体を1種以上の任意の医薬品添加物(非特許文献13)と混合することによって本明細書に記載のCCDC112タンパク質抗体を含む医薬製剤を調製でき、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態であることが好ましい。
【0163】
本発明の医薬組成物又は製剤は、治療される特定の適応症に必要な1種以上の有効成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する有効成分を含有してもよい。例えばCTLA4及びPD-1抑制剤などを含むが、これらに限定されない他の有効成分も提供することが望ましい。前記有効成分は、意図された用途に有効な量で適切に組み合わせて存在する。
【0164】
6.本発明の予防又は治療の用途
予防又は治療の方法
本発明は、本発明の抑制剤、抗体又は医薬組成物を被験体に投与することを含む、被験体内のCCDC112に関する癌を予防する方法を提供する。予防薬は、疾患の発症を予防するため、又は代替的に疾患の進行を遅らせるため、症状が現れる前に投与することができる。
【0165】
好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定であり、
より好ましくは、前記追加の抗がん療法としては、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法を含む。
【0166】
本発明は、本発明の抑制剤、抗体又は医薬組成物を被験体に投与することを含む、被験体内のCCDC112に関する癌を治療する方法を提供する。治療薬は、症状が現れた後に投与することができる。
【0167】
好ましくは、前記被験体は追加の抗がん療法を受けていた、又は受けている、又は受ける予定であり、
より好ましくは、前記追加の抗がん療法としては、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法又はホルモン療法を含む。
【0168】
CCDC112に関する癌としては、一般的な結腸直腸癌、肺癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌、及び卵巣癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明により提供される治療方法は、被験体由来の免疫細胞及び腫瘍細胞を有効量の本発明に記載の抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物と接触させることにより実施してもよい。任意に、有効量の化合物を使用して被験体由来の免疫細胞及び/又は腫瘍細胞に接触させる前に腫瘍細胞におけるCCDC112の発現を検出し、
好ましくは、前記免疫細胞は、リンパ球であり、
より好ましくは、前記リンパ球は、Tリンパ球である。
【0170】
予防又は治療の用途
本発明に記載の抑制剤、抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物の使用には、少なくとも以下の予防及び治療の用途又は対応する医薬品の調製の用途を含み得ることが理解され得る、
a)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の刺激又は拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を刺激又は拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【0171】
7.本発明の診断用途
用語「コンパニオン診断」は一般的に、特定の治療薬に対する患者の反応に関する情報の提供を指し、治療製品から恩恵を受ける可能性のある患者集団を特定することに役立ち、それによって、治療成績を改善し、保健支出を削減する。更に、「コンパニオン診断」は、治療薬に最も反応する可能性が高い患者集団を特定するのに役立つ。
【0172】
本発明は、CCDC112タンパク質がCCDC112に関する癌の治療標的として使用できること、すなわち、CCDC112タンパク質が腫瘍細胞内で発現している場合、CCDC112タンパク質抑制剤(例えば抗体)を導入することによって腫瘍を効果的に抑制できる。したがって、対応する腫瘍患者の治療中(治療前後を含む)に、腫瘍細胞のCCDC112タンパク質発現を検出することにより、治療薬に最も反応する可能性が高い患者集団を特定できる。このため本発明は、免疫療法の前後で被験体の腫瘍細胞のCCDC112タンパク質の発現量又は機能を検出することによって達成されるコンパニオン診断方法を提供する。
【0173】
8.本発明のキット
本発明の抗体又は抗体組成物(例えばヒト抗体、二重特異性若しくは多重特異性分子、若しくは免疫複合体)及び使用説明書を含むキットも本発明の範囲内に収まる。キットは、少なくとも1つの他の薬剤、又は1種以上の他の抗体などをさらに含み得る。キットには通常、キット内容の使用目的を示すラベルが含まれる。「ラベル」という用語には、キット上又はキットとともに提供される、又はキットに付属する、あらゆる書面又は記録された資料が含まれる。
【0174】
なお本発明の診断用途の場合、本発明のキットは、腫瘍細胞のCCDC112タンパク質発現量又は活性を検出できる成分を含み得る。したがって、上記抗体組成物以外に、本発明のキット成分は例えばプライマー、プローブなど、又はタンパク質発現又は活性を検出できる他の材料を含み得るが、これらに限定されない。
【実施例】
【0175】
下記実施例における実験方法は、特に断りのない限り常法である。本発明は、下記の非限定的な実験例を参照してさらに理解されるであろう。
【0176】
実施例1:CCDC112は腫瘍細胞に対する免疫細胞の殺傷を抑制する
CCDC112を中等度に発現する腫瘍細胞HCT116及びMCF7を選択して、CCDC112のノックアウト又は過剰発現を行い、CD3及びCD28によって活性化されたPBMCと共培養し、Annexin-Vで標識されたフローサイトメトリーでCD45-腫瘍細胞のアポトーシス率を分析した。
【0177】
CCDC112遺伝子編集は、具体的に次のステップで実施した。
【0178】
1.CRISPR/Cas9遺伝子編集システム、すなわちCCDC112を特異的に切断するsgRNAを含むピューロマイシン耐性レンチウイルスの構築
実験の全体的なプロセス:まずgRNA配列の一本鎖DNAオリゴを合成し、次にアニーリングとペアリングによって二本鎖DNAオリゴを生成し、次に両端の制限部位を介してCRISPR/Cas9ベクターに二本鎖DNAオリゴを直接ライゲーションし、ライゲーションされた生成物を調製された細菌コンピテントセルに移し、増殖したモノクローナルコロニーをシーケンシング及び同定のためにシーケンシング会社に送付した。正しく整列されたクローンが正常に構築されたCRISPR/Cas9ベクターとなる。標的遺伝子の標的遺伝子配列については、公開ウェブサイトで提供されているgRNA配列設計原則を利用し、遺伝子配列に従いgRNAオリゴマー一本鎖DNAを設計及び合成し、オリゴ配列をSEQ ID NO.1~8に示す。対応する二本鎖配列を設計し、オリゴマー一本鎖DNAを二本鎖gRNAオリゴにアニーリングし、二本鎖gRNAオリゴをCRISPR/Cas9ベクターに挿入してCRISPR/Cas9組換えプラスミドを構築し、コンピテントセルStbl3に形質転換した。担体の構築には、次の具体的なステップが含まれる。
【0179】
【0180】
1)gRNAのアニーリング:プライマーを滅菌済TEバッファーで希釈して、最終濃度を100μMolにした。10μlのフォワードプライマー及びリバースプライマーを混合し、PCRチューブに入れてアニーリングし、完了後、氷上に数分間置いてから直接ライゲーションするか、-20℃のフリーザーに保存した。
【0181】
2)CRISPR/Cas9ベクターの酵素切断及び回収
酵素切断系を次に示す:CRISPR/Cas9ベクター5μg、10×バッファー5μl、BsmBI 4μl、50μlになるようddH2Oを加えた。37℃で30分程度酵素切断を行った。この間に0.8%アガロースゲルを調製し、酵素切断が完了した後に核酸電気泳動を行った。電気泳動終了後、目的断片を含むゲルストリップを切り出した。天秤で総重量を量り、空のチューブの重量を差し引いて、ゲルの重量を計算した。100mgを100μlとしてゲルの体積を計算し、ゲルの体積の3倍量のQGバッファーを加え、ゲルストリップを50℃の湯浴に入れてゲルを完全溶解させた。溶解中はEPチューブを適切に振ってゲルの溶解を加速させた。ゲルが完全溶解された後、ゲルと同量のイソプロパノールを加え、よく混ぜた。上記の液体を全てフィルターカラムに移し、13000rpmで30秒間遠心分離した。チューブ内の液体を捨て、PEバッファー750μlをカラムに加え、1分間遠心分離した。チューブ内の液体を捨て、再度1分間遠心分離した。新しい1.5mlEPチューブにカラムを移し、EBバッファー50μlをカラムに加え、1分間遠心分離し、回収したベクターを遠心チューブ内に残した。
【0182】
3)CRISPR/Cas9ベクターとプライマーのライゲーション
ライゲーション系は次の通りとした:回収したベクター3μl(50ng)、オリゴプライマー1μl(0.5μM)、T4 DNAリガーゼバッファー1.5μl、T4 DNAリガーゼ1μl、15μlになるようにddH2Oを加えた。25℃の水浴中で30分間インキュベートした。
【0183】
4)形質転換:コンピテントセルを氷上に置き、自然に解凍してから全てのライゲーション生成物をコンピテントセルに加え、氷上に20分間置き、その後42℃の水浴で90秒間ヒートショックし、すぐに氷の上に2~3分間置いた。抗生物質を含まないLB培地1000μlを菌液に加え、37℃、150rpmで45分間振盪培養した。菌液を3000rpmで2分間遠心分離し、上清850μl程度を捨て、チューブ底の菌液を吹き飛ばして分散させ、対応する耐性を有する培養シャーレに加え、滅菌スプレッダーで均一に広げ、37℃の恒温器内で逆さまに置き、一晩培養した。
【0184】
5)組換えプラスミドの調製:シングルコロニーを数個採取し、少量の振盪培養を行った。
【0185】
6)シーケンシングにより陽性クローンを同定し、比較した結果、組換えクローンの挿入断片の配列は設計したオリゴ配列と完全に一致したため、ベクターの構築に成功した。
【0186】
2.CRISPR/Cas9遺伝子編集システムを使用して遺伝子を編集し、HCT116-CCDC112ノックアウト細胞株を構築
HCT116細胞とMCF7細胞(ATCC社製、バージニア州、米国)を24ウェルプレート(コーニング社製、ニューヨーク州、米国)に適切な密度(2日目には30~40%程度の密度まで増殖した)で播種し、翌日消化して計数した。まず、細胞をGFPコントロールレンチウイルス(吉満社製、上海、中国)の量勾配で感染させ、48時間後に培地を交換し、72時間後に顕微鏡下でGFP蛍光を観察して、感染を受ける細胞に対するウィルスの最適な比率を決定してMOI値を調べた。MOI値を決定した後、細胞をプレートに再度播種し、ブラストサイジン耐性を含むCas9システムレンチウイルス(吉満社製、上海、中国)をMOI値でHCT116細胞に感染させ、48時間後に培地を交換し、濃度勾配のブラストサイジン(Invivogen社製、カリフォルニア州、米国)を加えて10~14日間スクリーニングし、最終スクリーニングから得られた細胞株はCas9システムを含むHCT116細胞であった。次に、Cas9システムを含むHCT116細胞を24ウェルプレートに播種して計数し、ピューロマイシン耐性であってCCDC112を特異的に切断するsgRNAを含むレンチウイルスをMOI値で細胞に感染させた。48時間後に培地を交換し、ピューロマイシン(Invivogen社製、カリフォルニア州、米国)の濃度勾配を用いて10~14日間スクリーニングした後でHCT116-CCDC112ノックアウト細胞株を得た。
【0187】
3.CCDC112遺伝子的過剰発現:CCDC112の全長タンパク質をコードするヌクレオチド配列(実施例3の終わりを参照:SEQ ID NO.9に示す)の両端をBamHI及びKpnIクローニング部位に接続し、インビトロでcDNA配列を完全に合成し、BamHIとKpnIで切断した後、pcDNA3.1ベクターに挿入した。ライゲーションに成功したクローンを選択し、シーケンシングによって検証した。HCT116細胞とMCF7細胞を別々にトランスフェクトし、安定細胞をG418でスクリーニングして、HCT116-CCDC112及びMCF7-CCDC112の安定過剰発現細胞株を得た。
【0188】
CCDC112のヌクレオチド配列(SEQ ID NO.9):
ATGGAAAAAGATAAACACAGTCATTTCTACAACCAAAAAAGTGACTTCAGAATTGAGCATAGTATGCTAGAAGAATTGGAAAATAAATTGATTCACAGCAGGAAAACAGAAAGAGCAAAAATCCAGCAACAATTGGCCAAAATACATAATAATGTAAAGAAACTTCAGCATCAATTAAAAGATGTGAAGCCTACACCTGATTTTGTTGAGAAGCTCAGAGAAATGATGGAAGAAATTGAAAATGCAATTAACACTTTTAAAGAAGAGCAGAGGTTGATATATGAAGAGCTAATTAAAGAAGAGAAGACAACTAATAATGAGTTGAGTGCCATATCAAGAAAAATTGACACATGGGCTTTGGGTAATTCAGAAACAGAGAAAGCTTTCAGAGCAATCTCAAGCAAAGTTCCTGTAGACAAAGTAACACCAAGTACTCTTCCAGAAGAGGTACTAGATTTTGAAAAATTCCTTCAGCAAACAGGAGGGCGACAAGGTGCCTGGGATGATTATGATCACCAGAACTTTGTAAAGGTGAGAAACAAACATAAAGGGAAGCCAACATTTATGGAAGAAGTTCTAGAACACCTTCCTGGAAAAACACAAGATGAAGTTCAACAGCATGAAAAATGGTATCAAAAGTTTCTGGCTCTAGAAGAAAGAAAAAAAGAGTCAATTCAGATTTGGAAAACTAAAAAGCAGCAAAAAAGGGAGGAAATTTTCAAGTTAAAGGAAAAGGCAGACAACACACCTGTGCTTTTTCATAATAAACAAGAGGATAATCAAAAGCAAAAAGAGGAACAAAGAAAGAAACAGAAATTGGCAGTTGAAGCTTGGAAGAAACAGAAAAGTATAGAAATGTCAATGAAATGTGCTTCCCAGTTAAAAGAAGAAGAAGAGAAAGAGAAAAAACATCAGAAAGAACGCCAGCGCCAGTTTAAGTTAAAATTACTACTAGAAAGTTATACCCAGCAGAAGAAAGAACAGGAAGAATTTTTGAGGCTTGAAAAGGAGATAAGGGAAAAGGCAGAAAAGGCAGAAAAAAGGAAAAATGCTGCTGATGAAATTTCCAGATTTCAAGAAAGAGATTTACATAAACTTGAACTGAAAATTCTAGATAGACAGGCAAAGGAAGATGAAAAGTCACAAAAACAAAGAAGACTGGCAAAATTAAAAGAAAAGGTTGAAAACAATGTTAGTAGAGATCCCTCTAGGCTTTACAAACCCACCAAAGGTTGGGAAGAACGAACCAAAAAGATAGGACCAACAGGCTCTGGGCCACTTCTACATATCCCACATAGGGCTATTCCAACCTGGAGACAAGGAATACAGAGAAGAGTATGA
【0189】
4.フローサイトメトリーにより、腫瘍細胞によって発現されるCCDC112をノックアウトした場合、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)による腫瘍細胞の殺傷効果を明らかに増加できることを証明した
CD3及びCD28抗体(インビトロジェン社製、カリフォルニア州、米国)をPBMC(ATCC社製、バージニア州、米国)と混合し、最終濃度が1ミリリットルあたり1マイクログラムになるように希釈してT細胞を活性化し、一晩培養した。翌日、PBMC及び上記のHCT116細胞又はMCF7細胞(CCDC112をノックアウト又は過剰発現している細胞株を含む)を計数し、PBMC及びHCT116又はMCF7の細胞数をそれぞれ1ミリリットルあたり1x106個に調整し、100マイクロリットルのPBMC及び100マイクロリットルのMCF7を96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、マサチューセッツ州フィッシャー、米国)に播種し、インキュベーター内に入れて6時間インキュベートした。96ウェルプレートを取り出し、各ウェルの細胞をEPチューブ(Axygen社製、カリフォルニア州、米国)に入れ、400rcfで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を500マイクロリットルの細胞染色バッファー(インビトロジェン社製、カリフォルニア州、米国)で再懸濁及び洗浄し、遠心分離と洗浄を繰り返した。CD45-APC抗体(インビトロジェン社製、カリフォルニア州、米国)を細胞染色バッファーで割合1:20に希釈し、混合物200マイクロリットルを各EPチューブに加えて再懸濁し、ゆっくりと振盪しながら室温で30分間インキュベートした。400rcfで5分間遠心分離した後、上清を捨て、1mlの結合バッファーで細胞(美侖社製、上海、中国)で再懸濁及び洗浄し、遠心分離と洗浄を繰り返した。各種実験群及び対照群を設け、それぞれ条件に応じて結合バッファー100マイクロリットル、アネキシンV-FITC(美侖社製、上海、中国)5マイクロリットル、及びPI(美侖社製、上海、中国)10マイクロリットルを加え、ゆっくりと振盪しながら室温で15分間インキュベートした。次いで、それぞれに結合バッファー400マイクロリットルを加え、細胞をフローチューブ(ファルコン社製、ニューヨーク州、米国)に移し、フローサイトメーター(ミルテニーバイオテ社製、ケルン、ドイツ)にセットして測定した。
【0190】
結果は、CCDC112の過剰発現が腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を抑制し、一方、CCDC112の遺伝子のノックアウトが腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を高めることが示された。結果を
図1に示す。
【0191】
実施例2:CCDC112は骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び制御性T細胞(Treg)を増加させる
Treg/MDSCに対するCCDC112の影響を解明するため、まず細胞を以下のように調製した:ウェルあたり1.5+10E5PBMCを異なる実験群に使用し、24時間(Tregの比率を検出する場合)又は3日間(MDSCの比率を検出する場合)培養した。フローサイトメトリーにより表現型CD4+CD25+Foxp3+、HLA-DR-CD11b+CD33+の比率及び数を分析した。
【0192】
分析の結果、CCDC112を発現するHCT116細胞とヒトPBMCを共培養した場合、正常なHCT116細胞に比べて、MDSC細胞(HLA-DR-CD11b+CD33+)及びTreg細胞(CD4+CD25+Foxp3+)の比率が増加したが、CCDC112遺伝子をノックアウトした腫瘍細胞はMDSC細胞及びTreg細胞の比率が減少した。その結果を
図2に示す。
【0193】
実施例3:CCDC112と受容体との結合
ELISA実験を使用してCCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR、CD30との結合及び結合強度を分析した。
【0194】
具体的には、ELISA用プレート(コスター社製、メイン州、米国)を使用した。まず異なる濃度のCCDC112組換えタンパク質を100マイクロリットルのELISAコーティング溶液(Solarbio社製、北京、中国)に溶解してプレートをコーティングし、陰性対照はタンパク質を含まない100マイクロリットルのコーティング溶液でプレートをコーティングした。プレートは4℃で一晩コーティングした。PBSTで洗浄した後、PBSに溶解した5%BSA(VWR社製、PA、米国)100マイクロリットルを用い、37℃のインキュベーター内で90分間ブロッキングした。PBSTで洗浄した後、1ミリリットルあたり1マイクログラムの受容体タンパク質(LILRB2、LILRB4、LTBR、CD30)細胞外領域タンパク質断片(百普賽斯又は義翹神州、北京、中国)を含むPBS溶液中でインキュベートし、結合させた(LTBR及びCD30はより良い結合条件を探索するため、異なるpH値に調整したPBSに添加した)。上記受容体タンパク質をhFc(P-Fc)で標識し、37℃のインキュベーター内で60分間結合した。PBSTで洗浄した後、PBSで希釈した特異的抗ヒトFcフラグメント抗体(アブカム社製、マサチューセッツ州、米国)を用いて、37℃で30分間インキュベートして結合させた。PBSTで洗浄した後、発色液(生工社製、上海、中国)を1ウェルあたり100マイクロリットルを加えて発色させ、インキュベーターに入れて5~30分間反応させてから50マイクロリットルの停止液(生工社製、上海、中国)を加え、マイクロプレートリーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、マサチューセッツ州、米国)に置き、450nmで発色を読み取った。
【0195】
結果:CCDC112がLILRB2、LILRB4、LTBR、及びCD30に結合でき、LILRB2、LILRB4、LTBR、及びCD30は全てCCDC112の結合受容体であることを証明した。ここで、LILRB2及びLILRB4に結合したCCDC112の濃度勾配効果を
図3に示し、異なるpH値でのLTBRに結合したCCDC112の濃度勾配効果を
図4に、異なるpH値でのCD30に結合したCCDC112の濃度勾配効果を
図5に示した。
【0196】
実施例4:異なる腫瘍細胞におけるCCDC112の発現レベルの検出
RLリンパ腫細胞、A375黒色腫、RAJIリンパ腫、MCF7乳癌、A549肺癌、HCT116、LOVO、SW1116、SW48結腸直腸癌(大腸癌)の細胞を含む様々な腫瘍細胞株を分析した。具体的には、培養した上記細胞を計数し、4x106個の細胞を15ml遠沈管(コーニング社製、ニューヨーク州、米国)に採取し、800rpmで4分間遠心分離した後、上清を捨てた。10%子牛血清(calf serum)を含むRPMI1640培地(美侖社製、大連、中国)で再懸濁し、12ウェルプレート(コーニング社製、ニューヨーク州、米国)の各ウェルに1mlずつ細胞を加え、よく混ぜた後、インキュベーターに10分間入れてから取り出した。細胞を1.5mlのEPチューブ(Axygen社製、カリフォルニア州、米国)に移し、800rpmで4分間遠心分離し、PBSで再懸濁させ、洗浄及び遠心分離し、繰り返し洗浄した。遠心分離が完了した後、上清を捨て、RIPAライセート(碧雲天社製、上海、中国)をプロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、及びPMSF(康臣社製、上海、中国)と1:100の比率で混合し、80μlの混合ライセートを細胞の各チューブに加えた。各EPチューブを液体窒素-氷上で3回凍結し、3回解凍し、最後の解凍後、温度4℃条件下において12000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後、上清を採取した。遠心分離済みの上清:5xローディングバッファー(碧雲天社製、上海、中国)を4:1の比率で各細胞サンプルに調製し、タンパク質サンプルは100℃の金属浴に10分間入れて変性させて得た。次に説明書に従いゲルプレート(バイオ・ラッド社製、カリフォルニア洲、米国)に10%PAGEゲル(雅酵素社製、上海、中国)を調製し、調製したゲルを電気泳動槽(バイオ・ラッド社製、カリフォルニア洲、米国)に入れ、電源(バイオ・ラッド社製、カリフォルニア洲、米国)に接続し、ストリップを80ボルトの定電圧で濃縮ゲルに通過させ、120ボルトの定電圧で分離ゲルに通過させた。ストリップが分離ゲルの底に到達したら、転写タンク(バイオ・ラッド社製、カリフォルニア洲、米国)内で350mAの定電流で90分間湿式転写を行った。転写が完了した後、CCDC112及びGAPDHタンパク質の質量に応じて膜を剪断した。高速ブロッキング溶液(雅酵素社製、上海、中国)で10分間ブロックし、対応するストリップをCCDC112抗体(その調製法は以下の実施例に記載)、GAPDH抗体(康臣社製、上海、中国)のそれぞれで4℃で一晩インキュベートした。翌日、TBSTで洗浄した後、TBSに溶解した5%脱脂粉乳(生工社製、上海、中国)で希釈した特異的抗ウサギ二次抗体(康臣社製、上海、中国)で室温にて1時間インキュベートし、TBSTで洗浄した後、ストリップを混合発光溶液(聖爾、上海、中国)に1分間置き、ゲルイメージャー(バイオ・ラッド社製,カリフォルニア洲,米国)に曝露した。
【0197】
結果は、
図6に示されるように、RLリンパ腫細胞がCCDC112を発現しない(陰性)、A375黒色腫及びRAJIリンパ腫はわずかに低いレベルのCCDC112を発現し、MCF7乳癌、肺癌、HCT116、LOVO、SW1116結腸直腸癌はCCDC112を陽性に発現し、SW48結腸直腸癌はCCDC112を強い陽性に発現する。
【0198】
実施例5:CCDC112モノクローナル抗体の調製
CCDC112タンパク質を酵母で発現させ、純度が92%に達するように精製し、ELISA実験を使用してCCDC112タンパク質が受容体LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30に結合する活性を有することを確認した。CCDC112タンパク質(SEQ ID NO.10に示すアミノ酸配列)を用いて10匹のマウスを免疫し、効果を増強するために複数回免疫を行った。(1)初回免疫、フロイント完全アジュバントを添加した抗原50μg/マウスを、3週間の間隔で複数回皮下注射した、(2)2回目の免疫、上記と同じ用量及び経路であるがフロイントの不完全アジュバントを添加し、投与間隔は3週間とした、(3)3回目の免疫、上記と同じ用量、アジュバント無添加、腹腔内注射、注射間隔は3週間、(4)ブースター免疫、投与量は50μg、腹腔内注射。最後の注射から3日後、力価及び免疫効果を測定するために採血し、力価がより高いマウスをハイブリドーマ融合スクリーニングのために選択した。サブクローニング後、モノクローナル抗体の標的抗原への結合をELISAで検出し、異なるモノクローナル抗体がCCDC112と受容体との結合を阻害する機能をELISA実験によって検出した。
【0199】
CCDC112タンパク質のアミノ酸配列は、次の通りであり(SEQ ID NO.10):
MEKDKHSHFYNQKSDFRIEHSMLEELENKLIHSRKTERAKIQQQLAKIHNNVKKLQHQLKDVKPTPDFVEKLREMMEEIENAINTFKEEQRLIYEELIKEEKTTNNELSAISRKIDTWALGNSETEKAFRAISSKVPVDKVTPSTLPEEVLDFEKFLQQTGGRQGAWDDYDHQNFVKVRNKHKGKPTFMEEVLEHLPGKTQDEVQQHEKWYQKFLALEERKKESIQIWKTKKQQKREEIFKLKEKADNTPVLFHNKQEDNQKQKEEQRKKQKLAVEAWKKQKSIEMSMKCASQLKEEEEKEKKHQKERQRQFKLKLLLESYTQQKKEQEEFLRLEKEIREKAEKAEKRKNAADEISRFQERDLHKLELKILDRQAKEDEKSQKQRRLAKLKEKVENNVSRDPSRLYKPTKGWEERTKKIGPTGSGPLLHIPHRAIPTWRQGIQRRV
【0200】
実施例6:抗原に特異的に結合するCCDC112モノクローナル抗体のスクリーニング
抗原に特異的に結合するCCDC112モノクローナル抗体をスクリーニングするため、ELISA を使用して、CCDC112全長タンパク質及びCCDC112(73-227)断片に結合するCCDC112抗体の濃度依存性効果を検出し、後者は、抗体がCCDC112に結合する部位(つまりエピトープ)を分析するために用いた。
【0201】
図7に示すように、CCDC112抗体の濃度の増加に伴い、CCDC112全長タンパク質コーティングの条件下でのELISA検出結果の値は大幅に増加したが、CCDC112(73-227)断片コーティングの条件下での値は低レベルのままであった。該実験は、抗体が(73-227)断片を除くCCDC112の部分に特異的に結合することを示している。
【0202】
さらに、CCDC112抗体の抗原への特異的結合をフローサイトメトリーにより検証した。CCDC112を過剰発現するHCT116細胞株をリポソーム安定トランスフェクションにより構築し、細胞をCCDC112抗体とともにインキュベートし、未結合の抗体を洗い流した後、抗マウス二次抗体(FITC修飾)を使用してフローサイトメトリー検出を実行し、陽性に染色された細胞の割合を分析した。
【0203】
図8に示す通り、フローサイトメトリーの結果は、抗体は、CCDC112をノックアウトしたHCT116腫瘍細胞ではなく、HCT116腫瘍細胞に結合したことを示した。
【0204】
実施例7:CCDC112と受容体との結合を抑制できるCCDC112モノクローナル抗体のスクリーニング
CCDC112の機能を阻害できる抗体をスクリーニングし同定するため、CCDC112とその受容体との組み合わせに対する抗体の影響をELISA実験により分析した。具体的には、CCDC112組換えタンパク質をELISAプレートにコーティングし、異なる濃度(0、1.1、3.3、10.0マイクログラム/ミリリットル)の抗体を加え、LILRB2-hFc又はLTBR-hFc受容体(ヒト抗体Fcフラグメントを含む)を添加し、次に西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗ヒト二次抗体を添加し、最後に基質で発色し、CCDC112と受容体との結合程度を示すため450nmでの吸光度を検出した。
【0205】
図9に示すように、抗体はCCDC112とその受容体LILRB2/LTBRの結合に抑制作用があり、抑制の程度は抗体の濃度に関連し、濃度が高いほどその程度はより顕著であった。
【0206】
さらに、腫瘍細胞表面上のCCDC112とその受容体(LILRB2、LTBR)の結合に対する抗体の影響を検出するため、CCDC112を安定的に過剰発現するHCT116細胞をLILRB2-hFcと結合させてから異なる濃度のCCDC112抗体又は対照マウスIgG抗体とインキュベートし、最後にFITC結合抗ヒト二次抗体で検出した。フローサイトメトリーは、
図10に示すように、CCDC112抗体がCCDC112受容体(LILRB2)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示した。
図11に示すように、CCDC112抗体は、CCDC112受容体(LTBR)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示した。
【0207】
スクリーニングされたモノクローナル抗体に対して、モノクローナル抗体分子の超可変領域のルーチンの遺伝子シーケンシングを実施した。得られたLVとHVのヌクレオチド配列、対応するコードされたアミノ酸配列、、クローニングしたS-78-02のヌクレオチドを表1に、アミノ酸配列を表2に、オンラインソフトウェアによるモノクローナル抗体のCDRを解析に基づくCDRのアミノ酸配列を表3に示す。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
実施例8: バイオレイヤー干渉法によるモノクローナル抗体と抗原の結合の動力学的測定
バイオレイヤー干渉法(ProbeLife GatorK機器)を用いて本発明の抗体のヒトCCDC112への結合に関する平衡解離定数(KD)を従来の手順により測定した。200nMの抗体をCM5 チップに固定化し、結合と解離試験のために抗原を15nMから1.875nMまで段階的に希釈した。ソフトウェア分析後、測定された親和性定数は4.68*10
-10Mであった。S-78-02モノクローナル抗体とCCDC112の間の親和性解離曲線を
図12に示す。
【0212】
実施例9:腫瘍細胞に対するCCDC112モノクローナル抗体のインビトロでの抑制作用
CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するCCDC112抗体(S-78-02)の抑制作用を同定するため、以下のインビトロ実験を実施した。異なる腫瘍細胞(RLリンパ腫細胞、A375黒色腫細胞、RAJIリンパ腫、MCF7乳癌、A549肺癌、HCT116、LOVO、SW1116、SW48結腸直腸癌の細胞)を選択し、まずCCDC112抗体又は対照マウスIgGとインキュベートしてから事前にCD3及びCD28によって活性化されたPBMCと12時間共培養し、アネキシン-V標識フローサイトメトリーによりCD45-の腫瘍細胞アポトーシス率を分析した。
【0213】
結果は
図13に示されように、抗体は異なる程度でPBMCによる腫瘍細胞の殺傷を促進することができ、CCDC112発現レベルが高くなるほど促進作用も強くなる。さらに、抗体の作用をマクロファージ貪食アッセイによって分析した。THP1誘導マクロファージ (APC標識)をHCT116細胞(緑色蛍光標識)と共培養し、12時間後の貪食の程度をフローサイトメトリーにより分析した。結果は
図14に示されており、CCDC112抗体はマクロファージによる腫瘍細胞の貪食を増加させた。
【0214】
上記の結果は、CCDC112の発現が腫瘍細胞を抑制するためのCCDC112抗体投与の重要な選択指標であり、CCDC112抗体がCCDC112の機能を特異的に抑制することにより作用を発揮することを示した。
【0215】
実施例10:腫瘍細胞に対するCCDC112モノクローナル抗体のインビボでの抑制作用
CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するCCDC112抗体の抑制作用を同定するため、次のような異なるインビボ実験を実施した。
30匹の6~8週齢の雄NPSGマウスモデルの体重を測定した。HCT116細胞(中等度発現)、SW48 (高発現)、A549肺癌(中等度及び低発現)、MCF7(中等度発現)、RL細胞(陰性)を含む、異なるレベルのCCDC112 を発現する腫瘍細胞をインビトロで培養して1.8×10
8の細胞を得た。30匹のマウスにPBMCを接種し、3日目に腫瘍細胞を接種し、マウスの血液中のhCD45+細胞の割合と体重を週に1回測定した。接種後、腫瘍体積を週に1回測定し、平均腫瘍体積が40~80mm
3程度に達したときのマウス血液中のhCD45+細胞の割合を測定した。マウスの腫瘍体積と血液中のhCD45+細胞の割合に従いマウスをランダムに群分けし、投薬を開始した。投薬開始日を0日目とみなした。投薬計画:CCDC112抗体を5mg/kgで週3回腹腔内注射した。投薬開始後、マウスの腫瘍増殖状況を週1回観察し、腫瘍増殖後は体重と腫瘍体積を週3回測定し、マウスの血液中のhCD45+細胞の相対数をフローサイトメトリーによって週に3回モニタリングした。腫瘍体積がエンドポイント標準に達したときに、上記と同じ指標を検出するために採血し、実験を終了した。マウスの観察には、日常の観察が含まれ、接種後、全てのワーキングデーに動物の理罹患率及び死亡状況を観察した。腫瘍体積測定:接種後、群分け前に、腫瘍が確認された場合、実験動物の腫瘍体積を週に1回測定した。群接種後、群分け後、実験中の動物の腫瘍体積を週に2回測定した。腫瘍体積測定は双方向測定法を用った。まずノギスで腫瘍の長径と短径を測定し、次にTV=0.5×a×b
2の式で腫瘍体積を算出した。ここでaは、腫瘍の長径で、bは腫瘍の短径である。結果:CCDC112を高発現するSW48結腸直腸癌細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して顕著な抑制作用を有し、効果は全群の中で最も強かった(
図15)。CCDC112を中等度に発現するHCT116、A549、MCF7腫瘍細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して顕著な抑制作用を有した(
図16~
図18)。CCDC112が検出されなかったRLリンパ腫細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して明らかな抑制作用を有さなかった(
図19)。
【0216】
上記の結果は、CCDC112発現の分析がCCDC112抗体の投与について重要な意味を持ち、CCDC112を発現する腫瘍細胞がCCDC112抗体に対してより反応性が高かったことを示した。
【0217】
本発明の具体的な例示的な実施形態に関する前述の記載は、説明及び例示の目的で提示するものである。これらの記載は、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図したものではなく、明らかに、上記の教示に従い多くの改変及び変形を行うことができる。例示的な実施形態は、本発明の特定の原理及びその実際の応用を説明するために選択され及び記載されることで、当業者が本発明の様々な異なる例示的な実施形態及び様々な異なる選択と改変を実現し、利用できるようにする。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることが意図される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ又はインビボで腫瘍細胞を調節する方法であって、
CCDC112を発現する腫瘍細胞について、CCDC112の機能
若しくは活性を変化するステップa)
、及び/又は
CCDC112を発現する腫瘍細胞を抑制することについて、CCDC112の機能若しくは活性を抑制するステップb)
含
む、方法。
【請求項2】
CCDC112を発現する腫瘍細胞を抑制することについて、更に、腫瘍細胞を免疫細胞と接触させるステップ
c)を含み、
前記ステップ
c)は、ステップa)
及び/又はb)の前でも後でもよい
ことを特徴とする、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
CCDC112を発現する腫瘍細胞を抑制することについて、前記CCDC112の機能
若しくは活性
の抑制が、タンパク質
若しくは遺伝子レベルでの抑制であり、
及び/又は
前記抑制する方法が、次のいずれかを含む、
i.CCDC112遺伝子を編集すること、
ii.CCDC112遺伝子発現を干渉すること、
iii.抗体によってCCDC112タンパク質の機能
若しくは活性を抑制するこ
と
ことを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項4】
CCDC112を発現する腫瘍細胞を抑制することについて、前記CCDC112の機能又は活性の抑制により、CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との間の結合を抑制又は阻害することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項5】
腫瘍細胞内のCCDC112の機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とする、インビトロ又はインビボでMDSC又はTreg細胞の比率を調節する方法。
【請求項6】
腫瘍細胞内のCCDC112機能又は活性を変化させるステップを含むことを特徴とする、インビトロ又はインビボで細胞内のLILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30の活性を調節する方法。
【請求項7】
CCDC112と受容体LILRB2、LILRB4、LTBR又はCD30との相互作用を抑制する抑制剤又は抗体をスクリーニングすることによって、候補薬剤又は試薬を得ることを特徴とする、腫瘍を予防又は治療するための薬剤又は試薬をスクリーニングする方法。
【請求項8】
a)CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4又はCD30との結合に対する候補分子の影響を分析するステップ、
b)骨髄由来抑制細胞(MDSC)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
c)制御性T細胞(Treg)に対する候補分子の影響を分析するステップ、
d)腫瘍細胞を殺す免疫細胞に対する候補分子の影響を分析するステップ、
上記のいずれか1つ又は複数のステップを含み、
前記候補分子は、CCDC112の抑制
剤であり、
及び/又は
CCDC112の抑制剤は、抗体又は抗原結合性断片である
ことを特徴とする抑制剤のスクリーニング又は同定方法。
【請求項9】
a)CCDC112に対する抗体を調製するステップ、及び、
b)CCDC112と受容体LILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30との結合
の阻害又は抑制に影響を与える抗体をスクリーニングするステップ
を含むことを特徴とする抗体の調製方法。
【請求項10】
次のいずれか
に使用するためのCCDC112抑制剤
を含む医薬組成物:
a)
CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の拮抗における使用、
ならびに/又は、腫瘍細胞で発現されるCCDC112
と免疫細胞で発現されるLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30
との間の相互作用の拮抗における使用、
b)
CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を拮抗するための産物の調製における使用、
ならびに/又は、
腫瘍細胞で発現されるCCDC112
と免疫細胞で発現されるLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30
との間の相互作用を拮抗するための産物の調製における使用、
c)腫瘍の予防又は治療における使用
、
d)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
ならびに
e)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用
、
前記抑制剤は、CCDC112とその受容体LILRB2、LTBR、LILRB4
若しくはCD30との結合を抑制
若しくは阻害することができ、
及び/又は、前記抑制剤は小分子抑制剤、ポリペプチド、抗体
若しくは抗原結合性断片であ
る。
【請求項11】
単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
a)前記抗体又はその抗原結合断片は、高い親和性でCCDC112タンパク質に特異的に結合し、
b)前記抗体は、CCDC112とLILRB2、LTBR、LILRB4、又はCD30のいずれかとの間の相互作用を抑制又は阻害することができ、
前記抗体は、以下の特性のうちの少なくとも1つをさらに含
む、
i.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるMDSC細胞比率を減少させること、
ii.前記抗体は、免疫抑制性細胞であるTreg細胞比率を減少させること、又は、
iii.前記抗体は、腫瘍細胞に対する免疫細胞(PBMC)の殺傷作用を強化する
こと
ことを特徴とする単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
抗体又はその抗原結合性断片であって、
SEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR及びSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列中の3つのCDR、又は上記の6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体を含み、
ならびに/又は、
前記抗体又はその抗原結合断片のCDRは、以下のCDR配列を含み、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15、21、26、
28、30のいずれかで示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16、22、27、29、31のいずれかで示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17、23、32のいずれかで示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18、24、33のいずれかで示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19、25、34のいずれかで示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20、35のいずれかで示され、
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体、
ならびに/又は、
IMGTに従い定義されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領
域、ならびにIMGTに従い定義されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域
を含み、配列は以下の通りであり、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15に示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16に示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体、
ならびに/又は、
CCDC112に結合する前記抗体
若しくはその抗原結合性断
片の解離定数K
D
は、<2×10
-8であり、
ならびに/又は、
CCDC112に結合する前記抗体若しくはその抗原結合性断片の解離定数K
D
は、<2×10
-8、<1×10
-8、<9×10
-9、<8×10
-9、<7×10
-9、<6×10
-9、<5×10
-9、<4×10
-9、<3×10
-9、<2×10
-9、<1×10
-9、
又は<1×10
-10である
ことを特徴とする、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
前記抗体又は抗原結合性断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、配列は次から選択され、
a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有し、
b)前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14からなる群から選択されるアミノ酸配列又は群内の配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有する
ことを特徴とする、請求項
12に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項14】
前記抗体は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、キャリアタンパク質、脂質、及びビオチンのうちの1種以上から選択されるポリペプチドに連結されたコンジュゲート部分をさらに含み得、前記ポリペプチド
若しくは抗体と前記コンジュゲート部分は選択的にリンカーを介して連結でき、
ならびに/又は、前記リンカー
はペプチド
若しくはポリペプチドであり、
ならびに/又は、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体から選択され、
ならびに/又は、前記抗体は多重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab′)断片、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)及びイントラボディから選択される
ことを特徴とする、請求項
13に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項15】
単離されたポリヌクレオチドであって、
前記ポリヌクレオチドは、請求項
11~14のいずれ
か一項に記載の抗体又は抗原結合性断片をコードすることを特徴とする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項
15に記載のポリヌクレオチド、及び任意の調節配列を含む、組換えベクターであって、
ならびに/又は、前記組換えベクターはクローニングベクター
若しくは発現ベクターであり、
ならびに/又は、前記調節配列はリーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、
若しくはこれらの任意の組み合わせから選択される
ことを特徴とする、組換えベクター。
【請求項17】
請求項
16に記載の組換えベクターを含む宿主細胞であって、
及び
/又は、
前記宿主細胞は原核細胞又は真核細胞である
ことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項18】
医薬組成物であって、
請求項
11~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、
請求項15に記載のポリヌクレオチド、
請求項16に記載の組換えベクター
及び請求項17に記載の宿主細
胞のうち1種以上を含み、
ならびに/又は、
前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
請求項
11~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、
請求項15に記載のポリヌクレオチド、
請求項16に記載の組換えベクター、
請求項17に記載の宿主細胞、及び
請求項18に記載の医薬組成物のうち1種以上を含み、適切な容器に収納されることを特徴とするキット。
【請求項20】
生体試料を
、請求項
11~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合性断片、
請求項15に記載のポリヌクレオチド、
請求項16に記載の組換えベクター、
請求項17に記載の宿主細胞及び
請求項18に記載の医薬組成物の
うち1種以上と有効量で接触させることを
含む、生体試料中のCCDC112の有無をインビボとインビトロで検出する方法。
【請求項21】
前記腫瘍が、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜
癌及び卵巣癌から選択されることを特徴とする、
前記請求項のいずれか一つ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
最近の研究では、抑制性白血球免疫グロブリン様受容体(LILRB)及び関連する免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)含有受容体LAIR1が、様々な造血細胞及び固形がん細胞において腫瘍促進機能を持っていることを見出した。ITIM含有受容体は、様々な免疫細胞上で発現し、ホスファターゼSHP-1、SHP-2、又はSHIPの動員を通じてシグナルを伝達することにより免疫細胞の活性化を負に制御している。CTLA4及びPD-1と同様にLILRBは、免疫チェックポイント因子であると考えられている。LILRB2は、単核細胞、マクロファージ及び樹状細胞上に発現し、細胞自律的な方法で自然免疫を抑制し、間接的なメカニズムを通じてT細胞の活性化を抑制することができる。以前の研究では、LILRB2のアンタゴニストが骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び制御性T細胞(Treg)の腫瘍の局所浸潤を軽減し、抗腫瘍免疫応答を促進できることが報告されている(非特許文献1)。これは、LILRB2がリガンドと結合した後、MDSC及びTregを介して免疫細胞抑制作用を発揮し、腫瘍免疫逃避の過程に関与できることを示している。LILRB4の構造及び機能は、LILRB2と類似しており、LILRB4はMDSC細胞の表面で発現されることが報告されている(非特許文献2)。このリガンドには、APOE(非特許文献3)が含まれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
一態様において本発明は、CCDC112抑制剤の以下の使用(用途)のいずれかを提供する、
a)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
いくつかの実施形態において、前記抗体のCDRは、以下のCDR配列を含み、
i.前記HCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.15、21、26、28、30のいずれかで示され、
ii.前記HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.16、22、27、29、31のいずれかで示され、
iii.前記HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17、23、32のいずれかで示され、
iv.前記LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18、24、33のいずれかで示され、
v.前記LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19、25、34のいずれかで示され、
vi.前記LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20、35のいずれかで示される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
又は上記i~viの6つのCDR領域に対して各CDR領域で2つ以下のアミノ酸変化を伴う単一若しくは複数のCDRを有する変異体である。
好ましくは、CCDC112に結合する前記抗体又はその抗原結合性断片の解離定数(K
D
)は、<2×10-8であり、
より好ましくは、前記K
D
は、<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、又は<1×10-10である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
一態様において本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、及び宿主細胞のうち1種以上を含むことを特徴とする医薬組成物も提供し、
好ましくは、前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
一態様において、本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物の以下の使用のいずれかも提供する、
a)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の刺激(agonizing)又は拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を刺激又は拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
いくつかの実施形態において、CCDC112に結合する前記抗体の解離定数(K
D
)は、<2×10-8であり、好ましくは、前記K
D
は<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、又は<1×10-10である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、結腸直腸癌(大腸癌)、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、及び卵巣癌から選択される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
従来技術と比較して、本発明の有利な技術的効果には、少なくとも以下の側面が含まれる、
1)本発明は、腫瘍細胞におけるCCDC112の広範な発現を定義し、腫瘍診断のためのバイオマーカーとすることができる。
2)本発明は、新規CCDC112結合分子、LILBR2、LILRB4、LTBR及びCD30を発見した。免疫制御及び腫瘍進行における上記分子の重要な役割に鑑み、CCDC112分子は、腫瘍進行中で骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び制御性T細胞(Treg)等を増加することにより役割を果たすことができる。
3)本発明は、CCDC112の抗体分子が、LILBR2、LILRB4、LTBR及びCD30とCCDC112との結合を阻害できることを見出した。
4)本発明で発見された抗体分子は、CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するPBMC細胞の殺傷作用を促進することができる。
5)本発明は、CCDC112を発現する腫瘍の治療のため新しい標的アプローチを提
供する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
【
図1】共培養細胞に対するPBMCの殺傷作用を示すグラフである(CCDC112を発現するMCF7ヒト乳がん細胞(
図1A)及び結腸直腸がん細胞HCT116(
図1B)の腫瘍細胞を、活性化ヒト末梢血単核細胞(PBMC)と共培養した。この結果CCDC112の過剰発現は、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用を抑制するが、CCDC112遺伝子をノックアウトした場合、腫瘍細胞に対するPBMCの殺傷作用が増加することを示している)。
【
図2】共培養PBMCにおけるMDSC(
図2A)とTreg(
図2B)の比率に対する腫瘍細胞の影響を示すグラフ(正常なHCT116細胞と比較して、CCDC112を
過剰発現するHCT116細胞とヒト末梢血単核細胞を共培養した場合、MDSC細胞(HLA-DR-CD11b+CD33+)とTreg(CD4+CD25+Foxp3+)の比率が増加したが、CCDC112をノックアウトした腫瘍細胞はMDSC細胞とTreg細胞の比率が減少した)。
【
図3】LILRB2及びLILRB4に結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図4】異なるpH値でのLTBRに結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図5】異なるpH値でのCD30に結合するCCDC112の濃度勾配効果を示すグラフである。
【
図6】異なる腫瘍細胞におけるCCDC112の発現レベルを示すグラフである。(RLリンパ腫細胞は陰性、A375黒色腫及びRAJIリンパ腫は低発現で、MCF7乳癌、A549肺癌、HCT116、LOVO及びSW1116結腸直腸癌は陽性発現、SW48結腸直腸癌は強い陽性発現を示す。)である。
【
図7】ELISAによって検出された、CCDC112全長タンパク
質に結合するCCDC112抗体の濃度依存性効果を示すグラフである。
【
図8】フローサイトメトリーにより抗体がCCDC112をノックアウトしたHCT116腫瘍細胞ではなく、HCT116腫瘍細胞に結合することを示すグラフである。
【
図9】CCDC112とその受容体LILRB2/LTBRとの結合に対する、異なる濃度のCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフである。
【
図10】フローサイトメトリーにより、CCDC112抗体がCCDC112受容体(LILRB2)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示すグラフである。
【
図11】フローサイトメトリーにより、CCDC112抗体がCCDC112受容体(LTBR)への腫瘍細胞の結合を抑制することを示すグラフである。
【
図12】生体膜干渉法によって測定されたS-78-02及びCCDC112の親和性定数の決定を示すグラフである。
【
図13】PBMCによる異なる腫瘍細胞の殺傷に対する抗体の促進作用を示すグラフである。
【
図14】マクロファージによるHCT116腫瘍細胞の貪食に対するCCDC112抗体の促進作用を示すグラフである。
【
図15】PBMCヒト化マウス体内のSW48結腸直腸癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフである。
【
図16】PBMCヒト化マウス体内のHCT116結腸直腸癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフであるである。
【
図17】PBMCヒト化マウス体内のA549肺癌に対するCCDC112抗体の抑制作用を示すグラフであるである。
【
図18】CCDC112抗体は、PBMCヒト化マウス体内のMCF7リンパ腫細胞に対して顕著な抑制作用を欠いていることを示すグラフである。
【
図19】CCDC112抗体は、PBMCヒト化マウス体内のRLリンパ腫細胞に対して顕著な抑制作用を欠いていることを示すグラフである。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「K
a
」は、特定抗体-抗原相互作用の結合速度(association rate)を意味し、一方、用語「K
d
」は、本明細書で使用される場合、特定抗体-抗原相互作用の解離速度を意味する。本明細書で使用する際、用語「K
D
」又は「K
D
値」は、特定抗体-抗原相互作用の解離定数を意味し、これはK
a
に対するK
d
の比率(すなわち、K
d
/K
a
)から算出され、モル濃度(M)で表される。抗体のK
D
値は、当技術分野で確立された手法により決定できる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「高親和性」抗体とは、K
D
が1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、さらにより好ましくは1×10-8M以下、さらにより好ましくは5×10-9M以下、及びさらにより好ましくは1×10-9M以下の標的抗原に対するK
D
を有する抗体を意味する。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「CCDC112に関する癌」は、CCDC112の異常な発現が存在する腫瘍タイプ、又はCCDC112の発現若しくは活性の増減によって引き起こされるか、増悪するか、又はそれに関連する任意の癌を意味する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、及び卵巣癌から選択される癌に使用することができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
好ましくは、CCDC112に結合する前記抗体又はその抗原結合性断片の解離定数(K
D
)は、<2×10-8であり、より好ましくは、前記K
D
は、<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、又は<1×10-10である。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0153】
本発明は、前記抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、及び宿主細胞のうち1種以上を含むことを特徴とする医薬組成物も提供し、好ましくは、前記組成物は薬学的に許容される担体又は添加物をさらに含む。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0170
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0170】
予防又は治療の用途
本発明に記載の抑制剤、抗体又は抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、組換えベクター、宿主細胞及び医薬組成物の使用には、少なくとも以下の予防及び治療の用途又は対応する医薬品の調製の用途を含み得ることが理解され得る、
a)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用の刺激又は拮抗における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
b)CCDC112とLILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30との間の相互作用を刺激又は拮抗するための産物の調製における使用、好ましくは、CCDC112は、腫瘍細胞で発現され、LILRB2、LILRB4、LTBR及びCD30は免疫細胞で発現される、
c)腫瘍の予防又は治療における使用、
d)腫瘍の予防又は治療のための薬剤の調製における使用、
e)腫瘍によって引き起こされる免疫応答の調節における使用、
f)腫瘍によって引き起こされる免疫応答を調節するための薬剤の調製における使用、
g)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖の抑制における使用、
h)インビトロとインビボでの腫瘍細胞増殖を抑制するための試薬の調製における使用。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0176
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0176】
実施例1:CCDC112は腫瘍細胞に対する免疫細胞の殺傷を抑制する
CCDC112を中等度に発現する腫瘍細胞HCT116及びMCF7を選択して、CCDC112のノックアウト又は過剰発現を行い、抗CD3及び抗CD28抗体によって活性化されたPBMCと共培養し、Annexin-Vで標識されたフローサイトメトリーでCD45-腫瘍細胞のアポトーシス率を分析した。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0192
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0192】
分析の結果、CCDC112を
過剰発現するHCT116細胞とヒトPBMCを共培養した場合、正常なHCT116細胞に比べて、MDSC細胞(HLA-DR-CD11b+CD33+)及びTreg細胞(CD4+CD25+Foxp3+)の比率が増加したが、CCDC112遺伝子をノックアウトした腫瘍細胞はMDSC細胞及びTreg細胞の比率が減少した。その結果を
図2に示す。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0200
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0200】
実施例6:抗原に特異的に結合するCCDC112モノクローナル抗体のスクリーニング
抗原に特異的に結合するCCDC112モノクローナル抗体をスクリーニングするため、ELISA を使用して、CCDC112タンパク質に結合するCCDC112抗体の濃度依存性効果を検出した。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0201
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0201】
図7に示すように、CCDC112抗体の濃度の増加に伴い、CCDC11
2タンパク質コーティングの条件下でのELISA検出結果の値は大幅に増加
した。該実験は、抗体
がCCDC11
2に特異的に結合することを示している。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0211
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0211】
実施例8:バイオレイヤー干渉法によるモノクローナル抗体と抗原の結合の動力学的測定
バイオレイヤー干渉法(ProbeLife GatorK機器)を用いて本発明の抗体のヒトCCDC112への結合に関す
る解離定数(K
D
)を従来の手順により測定した。200nMの抗体をCM5 チップに固定化し、結合と解離試験のために抗原を15nMから1.875nMまで段階的に希釈した。ソフトウェア分析後、測定された
解離定数は4.68*10
-10Mであった。S-78-02モノクローナル抗体とCCDC112の間の親和性解離曲線を
図12に示す。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0212
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0212】
実施例9:腫瘍細胞に対するCCDC112モノクローナル抗体のインビトロでの抑制作用
CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するCCDC112抗体(S-78-02)の抑制作用を同定するため、以下のインビトロ実験を実施した。異なる腫瘍細胞(RLリンパ腫細胞、A375黒色腫細胞、RAJIリンパ腫、MCF7乳癌、A549肺癌、HCT116、LOVO、SW1116、SW48結腸直腸癌の細胞)を選択し、まずCCDC112抗体又は対照マウスIgGとインキュベートしてから事前に抗CD3及び抗CD28抗体によって活性化されたPBMCと12時間共培養し、アネキシン-V標識フローサイトメトリーによりCD45-の腫瘍細胞アポトーシス率を分析した。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0215
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0215】
実施例10:腫瘍細胞に対するCCDC112モノクローナル抗体のインビボでの抑制作用
CCDC112を発現する腫瘍細胞に対するCCDC112抗体の抑制作用を同定するため、次のような異なるインビボ実験を実施した。
30匹の6~8週齢の雄NPSGマウスモデルの体重を測定した。HCT116細胞(中等度発現)、SW48(高発現)、A549肺癌(中等度及び低発現)、MCF7(中等度発現)、RL細胞(陰性)を含む、異なるレベルのCCDC112 を発現する腫瘍細胞をインビトロで培養して1.8×10
8の細胞を得た。30匹のマウスにPBMCを接種し、3日目に腫瘍細胞を接種し、マウスの血液中のhCD45+細胞の割合と体重を週に1回測定した。接種後、腫瘍体積を週に1回測定し、平均腫瘍体積が40~80mm
3程度に達したときのマウス血液中のhCD45+細胞の割合を測定した。マウスの腫瘍体積と血液中のhCD45+細胞の割合に従いマウスをランダムに群分けし、投薬を開始した。投薬開始日を0日目とみなした。投薬計画:CCDC112抗体を5mg/kgで週3回腹腔内注射した。投薬開始後、マウスの腫瘍増殖状況を週1回観察し、腫瘍増殖後は体重と腫瘍体積を週3回測定し、マウスの血液中のhCD45+細胞の相対数をフローサイトメトリーによって週に3回モニタリングした。腫瘍体積がエンドポイント標準に達したときに、上記と同じ指標を検出するために採血し、実験を終了した。マウスの観察には、日常の観察が含まれ、接種後、全てのワーキングデーに動物の理罹患率及び死亡状況を観察した。腫瘍体積測定:接種後、群分け前に、腫瘍が確認された場合、実験動物の腫瘍体積を週に1回測定した
。腫瘍体積測定は双方向測定法を用った。まずノギスで腫瘍の長径と短径を測定し、次にTV=0.5×a×b2の式で腫瘍体積を算出した。ここでaは、腫瘍の長径で、bは腫瘍の短径である。結果:CCDC112を高発現するSW48結腸直腸癌細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して顕著な抑制作用を有し、効果は全群の中で最も強かった(
図15)。CCDC112を中等度に発現するHCT116、A549、MCF7腫瘍細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して顕著な抑制作用を有した(
図16~
図18)。CCDC112が検出されなかったRLリンパ腫細胞の場合、CCDC112抗体はマウス体内の腫瘍に対して明らかな抑制作用を有さなかった(
図19)。
【国際調査報告】