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特表2024-508676磁性粒子を使用する質量分析法ワークフローによる親和性選択
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】磁性粒子を使用する質量分析法ワークフローによる親和性選択
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240220BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240220BHJP
   H01J 49/04 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N1/10 C
H01J49/04 540
H01J49/04 040
H01J49/04 450
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547632
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2022051214
(87)【国際公開番号】W WO2022172199
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/147,827
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, チャン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA03
2G041EA11
2G041FA12
2G041GA19
2G041JA09
2G041JA12
2G041JA13
2G052AB16
2G052AD26
2G052BA24
2G052GA24
2G052JA07
(57)【要約】
高スループットアッセイにおいて質量分析法によって親和性選択を行う方法およびシステムが、本明細書に開示される。方法は、磁性粒子上に不動化された結合標的に対する選択された親和性を有するヒット化合物の組を識別することを含むことができる。方法は、複数の薬物候補と、磁性粒子上に不動化された結合標的とを備えているアッセイ容器内のアッセイ混合物を形成することを含むことができる。方法は、質量分析のためにアッセイ混合物の少なくとも一部を調製し、ヒット化合物の組を含むサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに移送することを含むこともできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合標的に対する選択された親和性を有するヒット化合物の組を識別する方法であって、前記方法は、
アッセイ容器内にアッセイ混合物を形成することであって、前記アッセイ混合物は、複数の薬物候補と、複数の磁性粒子上に不動化された少なくとも1つの結合標的とを備えている、ことと、
質量分析のために前記アッセイ混合物の少なくとも一部を調製することと、
前記ヒット化合物の組を含む前記アッセイ混合物のサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに移送することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アッセイ混合物を形成することは、
化合物ライブラリから個々の化合物を逐次添加することによって、前記複数の薬物候補を前記アッセイ容器の中に導入することと、
前記磁性粒子を前記アッセイ容器の中に導入することと、
前記複数の薬物候補および前記磁性粒子をアッセイ条件下でインキュベートすることと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アッセイ混合物の少なくとも一部を調製することは、
前記ヒット化合物の組から前記アッセイ混合物の1つ以上の成分を分離することと、
前記ヒット化合物の組と前記結合標的との間の結合相互作用を中断させることと
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルを移送することは、質量分析のために前記アッセイ混合物を調製することに先立って、部分的または完全に行われる、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒット化合物の組を含む前記サンプルは、前記アッセイ混合物内の結合された化合物-磁性粒子成分を備えている、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
磁力を選択的に活性にすることによって、前記質量分析計の搬送流動内の前記磁性粒子を捕獲し、続いて、前記磁力を選択的に非活性にすることによって、前記磁性粒子を廃棄流動に解放することをさらに含む、請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
イオン化に先立って、前記開放ポートサンプリングインターフェース内または前記開放ポートサンプリングインターフェースの下流コンポーネント内の前記磁性粒子を捕獲することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記磁性粒子は、前記質量分析計のサンプル気化チャンバからの排気を介して破棄される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒット化合物の組を含むサンプルを移送することは、直接、前記アッセイ容器から前記開放ポートサンプリングインターフェースに前記アッセイ混合物のサンプルを移送することを含む、請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイ混合物を調製することは、
前記アッセイ混合物の中に磁石を挿入し、前記磁石に隣接して前記磁性粒子を保持することと、
前記アッセイ混合物から前記磁石および保持された磁性粒子を除去することと、
随意に、洗浄溶液を用いて、前記磁石に隣接して保持された前記磁性粒子を洗浄することと、
前記磁性粒子が前記磁石に隣接して保持されている間に前記磁性粒子を剥離剤と接触させ、それによって、前記結合標的からヒット化合物を分離し、前記開放ポートサンプリングインターフェースに移送されるべきヒット化合物の組を含む前記サンプルを形成することと
から成る、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記結合相互作用を中断させることは、結合解除溶媒を前記アッセイ混合物に導入し、前記結合標的から前記ヒット化合物の組を分離することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
振動する磁力を前記磁性粒子に印加し、前記アッセイ混合物を撹拌すること、
一定の磁力を前記磁性粒子に印加し、前記アッセイ混合物内のある位置に磁性粒子を保持すること、または
両方、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アッセイ混合物を調製することは、
前記アッセイ容器に隣接して磁力を印加し、前記アッセイ容器内に前記磁性粒子を保持することと、
前記アッセイ容器から前記アッセイ混合物の少なくとも一部を吸引することと、
随意に、前記アッセイ容器内の前記磁性粒子を洗浄することと、
前記アッセイ容器に分離剤を添加し、前記結合標的からヒット化合物を分離することと
から成る、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒット化合物の組を含む前記サンプルを前記開放ポートサンプリングインターフェースに移送することは、音響射出を含む、請求項1-13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
液体クロマトグラフィを用いることなく、質量分析法によって前記ヒット化合物の組を分析することをさらに含む、請求項1-14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アッセイ混合物を形成することは、前記アッセイ容器の中に磁性粒子を導入することを含み、各磁性粒子は、少なくとも1つの標的化合物に結合するための少なくとも1つの結合部位を含む、請求項1-15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記アッセイ混合物のためのサンプル情報を発生させることをさらに含み、前記サンプル情報は、前記1つ以上の化合物、試薬、または前記サンプルウェルの分析に関連する他の情報の各々を示す識別子を含む、請求項1-16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
各アッセイ混合物からの質量分析結果をそのサンプルウェルに関連付けられた前記サンプル情報に関係づけることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、複数のアッセイ容器に対して行われる高スループットスクリーニング方法である、請求項1-18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のアッセイ容器の各々は、24ウェルアッセイプレート、96ウェルアッセイプレート、384ウェルアッセイプレート、または1,536ウェルアッセイプレート内のウェルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
自動化された高スループットスクリーニングシステムであって、前記システムは、
化合物ライブラリから複数の化合物をアッセイ容器の中に導入するように構成されたアッセイ容器調製モジュールと、
前記アッセイ容器の中に磁性粒子を導入することを含む結合アッセイを行うように構成されたアッセイモジュールであって、各磁性粒子は、少なくとも1つの標的化合物に結合するための少なくとも1つの結合部位を含む、アッセイモジュールと、
前記アッセイ容器から質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースの中にサンプルを逐次移送し、前記移送されたサンプルの質量分析を行うように構成された分析モジュールと
を備えている、システム。
【請求項22】
前記分析モジュールは、サンプルの1つ以上の液滴を前記アッセイ容器から前記開放ポートインターフェースの中に射出するための音響液滴射出器を備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記音響液滴射出器は、秒あたりサンプル約1個の率で、複数のアッセイ容器からサンプルを移送するように構成されている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記アッセイ容器の中に導入された前記複数の化合物を示す前記アッセイ容器に関連付けられたサンプル情報をさらに含み、前記分析モジュールは、前記磁性粒子に結合された任意のヒット化合物を識別するために、前記サンプル情報を前記アッセイ容器から発生させられた前記質量分析に関係づける、請求項21-23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記開放ポートサンプリングインターフェースと流体連通して位置付けられた磁気トラップをさらに備え、前記磁気トラップは、前記質量分析計の入口への導入の前、前記開放サンプリングインターフェースからの移送中に磁性粒子を捕獲するために据え付けられている、請求項21-24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記アッセイ容器に関連付けられた識別子と、前記アッセイ容器の中に導入された前記複数の化合物に対応するサンプル情報とをさらに備えている、請求項21-25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記アッセイ容器は、マルチウェルマイクロタイタウェルプレートのサンプルウェルを備え、前記識別子は、前記ウェルプレートに物理的に取り付けられたウェルプレート識別子と、前記ウェルプレート内の前記サンプルウェルの場所とを備えている、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2022年2月10日にPCT特許国際出願として出願されており、その出願が参照することによって本明細書に組み込まれる2021年2月10日に出願された米国仮特許出願第63/147,827号の利益および優先権を主張する。
【0002】
質量分析法による親和性選択(ASMS)は、不動化または可溶性受容体への候補分子の結合を伴い、時間および費用効果的様式において大化合物ライブラリをスクリーニングするために使用されている。従来のASMSワークフローは、溶相インキュベーションに基づき、結合標的が、薬物分子の混合物に添加される。薬物分子の混合物を用いて結合標的をインキュベートした後、結合されていない薬物分子は、混合物から洗浄され、薬物-タンパク質複合体として標的タンパク質に関する親和性を有するそれらの化合物のみを残すことができる。この親和性による選択の後、質量分析法による識別に先立って、予備的精密検査中の標的タンパク質からの結合された化合物の溶出が、続くことができる。
【0003】
後続のクロマトグラフィ方法も、標的タンパク質および他のリガンド結合アッセイ成分から溶出された薬物分子を分離するために採用されている。限外濾過、スピンカラム、およびサイズ除外クロマトグラフィが、従来、アッセイ混合物中の結合されていない化合物および他の成分から標的タンパク質に結合されたヒット化合物を単離するために採用されている。そのようなクロマトグラフィステップは、多くの場合、2次元クロマトグラフィ方法の第1のクロマトグラフィステップとして採用されており、第2の次元は、質量スペクトル分析に先立った、標的タンパク質からの結合されたヒット化合物の分離を成す。
【0004】
多次元クロマトグラフィ動作は、典型的に、逐次的様式において実施されなければならない。高スループットスクリーニング方法の文脈において、数百または数千個のサンプルが、所与のウェルプレート内で分析され、時間を要する予備的な分析手順が、スクリーニングを完了するために要求される時間を大幅に延長するか、または、代替として、スクリーニングされ得る化合物の数を制限し得る。高スループットスクリーニングの予備および分析段階中のそのような障害を回避することが可能である方法が、所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本概要は、詳細な説明において下記にさらに説明される一連の概念を単純化された形態で導入するために提供される。本概要は、請求される主題の要求されること、または本質的な特徴を識別することを意図していない。本概要は、請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0006】
本明細書に説明される技術は、大化合物ライブラリ内の化合物の結合親和性を効率的にスクリーニングするためのシステムおよび方法を対象とする。そのようなプロセス中、化合物は、結合標的に対する選択された親和性に基づいて、アッセイ混合物から分離され、続いて、質量分析法によって識別され得る。システムおよび方法は、結合標的に対する親和性に関する、化合物の自動化された高スループットスクリーニングと適合性があるASMS方法であり得、準備的および分析クロマトグラフィ動作の両方を除外し得る。クロマトグラフィ動作は、典型的に、高密度マイクロタイタプレート等において、複数のアッセイ混合物の分析に関して、逐次的様式において実施されなければならないので、本開示されるシステムおよび方法は、HTSプロセスの容量に対して重要な恩恵を提供する。本明細書に開示される方法は、質量分析法による分析のために、個々のスクリーニングアッセイから結果として生じる混合物の直接サンプリングを組み込み得る。
【0007】
複数の薬物候補からの結合標的に対する選択された親和性を有するヒット化合物の組を識別する方法が、本明細書において開示される。概して、本明細書に開示される方法は、アッセイ容器内にアッセイ混合物を形成することであって、アッセイ混合物は、複数の薬物候補と、磁性粒子上に不動化された結合標的とを含む、ことと、質量分析のためにアッセイ混合物の少なくとも一部を調製することと、ヒット化合物の組を含むサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに移送することとを含むことができる。ある側面において、ヒット化合物の組を移送することは、結合標的からのヒット化合物の溶出に先立って生じることができる。代替として、ヒット化合物の組が、開放ポートサンプリングインターフェースへの移送の前、結合標的から溶出され得る。本明細書に開示される方法は、特に、特定の結合標的に関する選択された親和性を有する化合物を識別することが、最小限の介入を伴って大規模に行われ得る自動化された高スループットアプリケーションのために好適であり得る。本明細書に開示される方法は、概して、本明細書に提供されるいくつかの実施形態および例によって実証されるように、部分的または完全に、任意の順序において、上記の動作を含むことができる。
【0008】
ある側面において、アッセイ混合物を形成することは、化合物ライブラリから個々の化合物をアッセイ容器に逐次添加することによって、複数の薬物候補をアッセイ容器の中に導入することと、磁性粒子をアッセイ容器の中に導入することと、随意に、複数の薬物候補および磁性粒子をアッセイ条件下でインキュベートすることとを含むことができる。磁性粒子は、1つ以上の標的化合物と結合するように動作する結合部位を含む。
【0009】
ある側面において、アッセイ混合物の少なくとも一部を調製することは、ヒット化合物の組からアッセイ混合物の1つ以上の成分を分離すること、すなわち、結合された化合物-磁性粒子成分から結合されていない化合物を分離することと、磁性粒子上の結合標的からヒット化合物を分離することとを含むことができる。
【0010】
ある側面において、サンプルを移送することは、質量分析のためにアッセイ混合物を調製することに先立って、部分的または完全に行われることができる。
【0011】
ある側面において、ヒット化合物の組を含むサンプルは、アッセイ混合物内の結合された化合物-磁性粒子成分の形態にある磁性粒子を含む。
【0012】
ある側面は、磁力を選択的に活性にすることによって、質量分析計の搬送流動内の磁性粒子を捕獲し、続いて、磁力を選択的に非活性にすることによって、磁性粒子を廃棄流動に解放することをさらに含むことができる。そのような側面は、イオン化のために搬送流動をイオン源に向かわせることに先立って、開放ポートサンプリングインターフェース内または開放ポートサンプリングインターフェースの下流コンポーネント内の磁性粒子を捕獲することを含むことができる。
【0013】
ある側面において、磁性粒子は、質量分析計の入口から磁性粒子を単離するためのトラップを含む、質量分析計のサンプル気化チャンバからの排気を介して破棄されることができる。
【0014】
ある側面において、ヒット化合物の組を含むサンプルを移送することは、直接、アッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェースにアッセイ混合物のサンプルを移送することと、結合された化合物-磁性粒子成分を開放ポートサンプリングインターフェースと流体連通する磁気トラップ内に捕獲することと、トラップを通して流動する捕捉液体を磁性粒子上の結合部位から結合された化合物を解放するように動作する溶媒に切り替えることとを含むことができる。
【0015】
アッセイ混合物を調製することは、アッセイ混合物の中に磁石を挿入し、磁石に隣接して磁性粒子を保持することと、アッセイ混合物から磁石および保持された磁性粒子を除去することと、随意に、洗浄溶液を用いて、磁石に隣接して保持された磁性粒子を洗浄することと、磁性粒子が磁石に隣接して保持される間に随意に、磁性粒子と溶離液を接触させ、それによって、磁性粒子上の結合標的からヒット化合物を分離し、溶出されたヒット化合物を開放ポートサンプリングインターフェースに移送することとから成ることができる。
【0016】
代替として、アッセイ混合物を調製することは、アッセイ容器に隣接して磁力を印加し、アッセイ容器内に磁性粒子を保持することと、アッセイ容器からアッセイ混合物の少なくとも一部を吸引することと、随意に、アッセイ容器内の磁性粒子を洗浄することと、溶離液をアッセイ容器に添加し、結合標的からヒット化合物を溶出させることと、ヒット化合物をアッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェースの中に移送することとから成ることができる。いくつかの側面において、移送することは、磁性粒子およびヒット化合物をアッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェースの中に移送することを含み得る。これらの側面において、磁気トラップが、ヒット化合物がイオン化され、質量分析計の入口の中に引き込まれる前、ヒット化合物から磁性粒子を捕獲し、単離するように位置する。他の側面において、磁性粒子は、印加された磁力を使用して、アッセイ容器内で単離され得、ヒット化合物は、ヒット化合物をアッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェースの中に射出することによって、磁性粒子から分離される。
【0017】
ある側面において、ヒット化合物の組を含むサンプルを開放ポートサンプリングインターフェースに移送することは、音響射出を含むことができる。
【0018】
ある側面はさらに、液体クロマトグラフィを用いることなく、質量分析法によってヒット化合物の組を分析することを含むことができる。
【0019】
自動化された高スループットスクリーニング(HTS)システムも、本明細書に開示され、概して、上記に開示される方法に従う。本明細書に開示されるHTSシステムは、ある実施形態において、化合物ライブラリから複数の化合物をアッセイ容器の中に導入するように構成されたアッセイ容器調製モジュールと、アッセイ容器の中に磁性粒子を導入することを含む結合アッセイを行うように構成されたアッセイモジュールであって、磁性粒子は、少なくとも1つの標的化合物と結合するための少なくとも1つの結合部位を含む、アッセイモジュールと、分析のためにサンプルをアッセイ容器から移送するように構成された分析モジュールとを備えていることができる。アッセイ容器がマイクロタイタウェルプレートのサンプルウェルを備えている実施形態において、分析モジュールは、サンプルをウェルプレートの各ウェルから質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースの中に移送し、各サンプルの質量分析を行うように動作し得る。
【0020】
各アッセイ容器に関連付けられたサンプル調製情報が、そのウェルに導入される化合物、および磁性粒子結合標的、サンプル調製方法、インキュベーション時間等の任意の他の関連のあるサンプル調製情報に対応するように発生させられる。いくつかの側面において、バーコード等の識別子が、複数のサンプルウェル(アッセイ容器)を含むサンプルウェルプレートに関連付けられ得る。モジュールのうちのいくつかまたは全てが、サンプルウェルプレートを識別し、サンプルウェルプレート内の各サンプルウェルの位置を特定し、そのサンプルウェルをそのサンプルウェルに関連付けられた対応するサンプル調製情報に関連付けるように動作するバーコードリーダを含み得る。
【0021】
サンプル調製情報は、各サンプルウェルに関して発生させられる質量分析結果をそのサンプルウェルに関連付けられたサンプル情報に関係づけるために、分析モジュールによって使用され得る。相関は、関連付けられたサンプルウェル情報およびそのサンプルウェルに関するサンプル情報に基づいて、質量分析結果から各質量スペクトル内に出現する化合物(すなわち、ヒット化合物)を識別し得る。サンプル情報は、例えば、サンプルウェルに関連付けられたそのアッセイ容器の中に導入された1つ以上の化合物に対応する識別情報を含み得る。サンプル情報は、例えば、サンプルウェルの分析に関連する1つ以上の化合物、試薬、または他の情報の各々を示す識別子を含み得る。
【0022】
故に、システムは、特定のサンプルウェルの中に導入された化合物組、および質量分析によって識別された化合物、すなわち、結合された化合物を識別するように動作する。
【0023】
いくつかの実施形態において、自動化された高スループットスクリーニングシステムが、提供される。システムは、化合物ライブラリから複数の化合物をアッセイ容器の中に導入するように構成されたアッセイ容器調製モジュールと、複数の化合物と、アッセイ容器の中に少なくとも1つの標的化合物と結合するための少なくとも1つの結合部位を含む磁性粒子とを備えている結合アッセイを行うように構成されたアッセイモジュールと、移送されたサンプルに対して質量分析を行う質量分析計に、捕捉し、移送するためにサンプルをアッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェースの中に移送するように構成された分析モジュールとを備えている。いくつかの実施形態において、アッセイ容器は、マイクロタイタウェルプレートのサンプルウェルを備え、アッセイ容器調製モジュールは、化合物をウェルプレートの各サンプルウェルの中に選択的に導入するように動作する。これらの実施形態において、サンプル識別子が、典型的に、各ウェルプレートのために提供され得、各サンプルウェルは、ウェルプレート上のそのサンプルウェルのウェルプレート識別子および場所、または座標位置に基づいて識別される。いくつかの実施形態において、アッセイ容器は、アリコート管またはバイアルを備え得、アッセイ容器調製モジュールは、各アリコート管またはバイアルの中に化合物を選択的に導入するように動作する。これらの実施形態において、サンプル識別子が、典型的に、各アリコート管またはバイアル上に提供され得る。サンプル識別子は、例えば、そのアッセイ容器に関連付けられたサンプル情報と互いに関係する容器識別子の形態にあり得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、分析モジュールは、イオン化のためのイオン化源への移送のために、アッセイ容器を用いてサンプルを開放ポートインターフェースの中に射出するように動作する音響液滴射出器を含み得る。音響液滴射出器は、例えば、サンプルを複数のアッセイ容器から約1Hzの率において移送するように構成され得る。
【0025】
いくつかの側面において、アッセイ容器調製モジュールは、識別子をそのアッセイ容器の中に導入された各化合物の識別に関連付けるように構成される。いくつかの側面において、アッセイ容器調製モジュールは、アッセイ容器に導入するための1つ以上の化合物のリストを受信し、そのアッセイ容器に関する識別子を関連付けること、またはリスト化された1つ以上の化合物を受け取るために使用されるための対応するアッセイ容器の識別子を受信することのいずれかを行う。
【0026】
いくつかの実施形態において、分析モジュールは、アッセイ容器から移送されたサンプルから発生させられた質量分析結果をそのサンプルウェルに関連付けられたサンプル情報に関係づけるように構成される。
【0027】
システムの各モジュールが、特定のエンドポイントを達成するだけではなく、各々が任意の数の他のモジュールとの使用のために普遍的に適合され得るように、他のモジュールとの通信も行うように独立して動作させられ得ることが想定される。
【0028】
ある側面において、アッセイ容器調製モジュールは、自動化された液体分注器を備えていることができる。ある側面において、アッセイ容器調製モジュールは、音響分注器を備えていることができる。
【0029】
ある側面において、磁性結合粒子は、磁性ビーズを備えていることができ、磁性ビーズは、タンパク質結合標的を伴うストレプトアビジン-ビオチン複合体を備えている。
【0030】
ある側面において、分析モジュールは、音響液滴射出器を備えていることができる。そのような側面は、秒あたり少なくとも1つのサンプルをウェルプレートから開放ポートサンプリングインターフェースに移送するように構成されることができる。
【0031】
質量分析計のための開放ポートサンプリングインターフェースも、本明細書において開示される。開放ポートサンプリングインターフェースは、概して、質量分析計のイオン化チャンバと流体接続する内側チャネルと、溶媒源と流体接続する外側チャネルであって、内側チャネルおよび外側チャネルは、溶媒源からイオン化チャンバまでの溶媒流路を画定する、外側チャネルと;外側チャネルと内側チャネルとの間の接合部の近傍に位置付けられた開放ポートと;溶媒流路内および開放ポートの下流に位置付けられた電磁気トラップであって、電磁気トラップは、動作状態において開放ポートにおける内側チャネルに入射する磁性粒子を選択的に保持するように構成されている、電磁気トラップと;電磁気トラップの下流に位置付けられ、電磁気トラップが非動作状態にあるときに溶媒流動を分析流路から廃棄流路に選択的に迂回させるように構成された溶媒流路迂回器とを備えていることができる。
【0032】
前述の概要および以下の詳細な説明の両方は、例を提供し、説明的にすぎない。故に、前述の概要および以下の詳細な説明は、制限的であると見なされるべきではない。さらに、特徴または変形例が、本明細書に述べられるものに加えて、提供され得る。例えば、ある側面および実施形態は、詳細な説明に説明される種々の特徴の組み合わせおよび副次的組み合わせを対象とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、タンパク質結合親和性を伴う薬物分子を捕捉するために磁性粒子を使用するMagMASS方法を示す。
【0034】
図2図2は、実施形態において使用される開放ポートサンプリングインターフェース(OPI)の略図である。
【0035】
図3図3は、選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法のある実施形態を描写する。
【0036】
図4図4は、ある実施形態による選択された親和性に基づいて、化合物を識別および分離する方法を描写する。
【0037】
図5図5は、図4の方法を実装するための可能なシステムを描写する。
【0038】
図6図6は、さらなる実施形態による選択された親和性に基づいて、化合物を識別および分離する方法を描写する。
【0039】
図7図7は、図6の方法を実装するための可能なシステムを描写する。
【0040】
図8図8は、追加の実施形態による選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法を描写する。
【0041】
図9図9は、図8の方法を実装するための可能なシステムを描写する。
【0042】
図10図10は、図9のシステムの可能な変形例を描写する。
【0043】
図11図11は、選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法を描写する。
図12A】説明なし。
図12B】説明なし。
図13A】説明なし。
図13B】説明なし。
【発明を実施するための形態】
【0044】
概して上で記載されるように、本明細書に開示される方法は、アッセイ容器内にアッセイ混合物を形成することを含むことができ、アッセイ容器は、複数の薬物候補と、磁性結合粒子とを含む。複数の薬物候補を構成するために利用可能な化合物は、概して、結合アッセイの条件下で可溶性かつ安定している任意のものであることができ、化合物のいかなる特定の構造、タイプ、源、または部類にも限定されない。
【0045】
ある側面において、複数の薬物候補が、親和性アッセイと適合性がある任意の源から導出されることができる。ある側面において、複数の薬物候補は、個々にかつ逐次的に、小分子等の化合物の大合成ライブラリから選択されることができる。小分子は、多くの場合、結合アッセイ緩衝液内での希釈を対象とするような有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))中の高濃縮溶液として貯蔵されることができる。ペプチド、核酸、脂質等の生体化合物も、本明細書に開示されるスクリーニング方法のために好適である結合標的に対する薬物候補として、想定される。
【0046】
化合物の物理的特性は、結合標的に対するそれらの潜在的親和性以外に、必ずしも、いかなる特定の化合物も開示される方法に適用可能であることから制限するわけではない。ある側面において、水溶液中でのある程度の溶解性を有する化合物は、一般的なアッセイ緩衝液およびスクリーニングアッセイ条件とのそれらの適合性に従って、有利であることを証明することができる。そのような側面において、導入化合物が、DMSO等の有機溶媒中の少量の高濃縮溶液として添加され得る。液体分注器(例えば、SPT Labtech Ltd.製Mosquito(登録商標)分注器)が、この目的のために当技術分野において公知であり、アッセイ緩衝液によって後に希釈されるべきナノリットルスケール量の化合物溶液をアッセイ容器に迅速かつ精密に提供することができる。音響分注方法(例えば、Labcyte Inc.製Echo(登録商標)音響分注器)も、類似の結果を達成することが当技術分野において公知である。当然ながら、化合物は、当技術分野において公知であり、親和性選択アッセイの目的のために好適である任意の機構によっても移送され得る。
【0047】
ある側面において、薬物候補は、天然または合成源から導出され得る。実際に、薬物候補は、単一の天然物またはその抽出物のサンプルとして選択され得る。例えば、溶媒の存在下における天然発生種の浸軟が、マイクロリットル量においてアッセイ容器に直接添加され得る複合化合物混合物を提供することができる。そのような側面はまた、混合物中に存在する十分な量の微量天然物が、適正に表されることを確実にするための物理的分離と還元とも含み得る。
【0048】
ある側面において、アッセイ混合物は、20~20,000個、50~10,000個、100~5,000個、250~4,000個、または400~2,500個の範囲内の複数の化合物を含むことができる。他の側面において、アッセイ混合物は、10~1,000個、25~800個、50~500個、または100~250個の範囲内の数の独特な化合物を含むことができる。選択性アッセイ混合物を調製するために好適である代替的方法、濃度、化合物組み合わせ、および装置も、本明細書において想定される。
【0049】
別個に、アッセイ混合物を形成することは、磁性粒子をアッセイ容器に導入することを含むことができる。本明細書において用語を参照して使用されるように、例えば、「a magnetic particle(ある磁性粒子)」の直前に適用されるように、用語「a」、「an」、および「the(前記)」は、複数の代替物、例えば、「at least one(少なくとも1つ)」を含むことを意図している。例えば、「a magnetic particle(ある磁性粒子)」の開示は、別様に規定されない限り、1つの磁性粒子を包含すること、または2つ以上の磁性粒子の混合物または組み合わせを意味する。本明細書において想定される磁性粒子は、特に、それらのサイズ、形状、または組成によって限定されない。したがって、ある側面において、「a magnetic particle(ある磁性粒子)」は、任意の量のナノ微粒子強磁性粒子を含み、磁性ビーズは、磁性コアと、ポリマーコーティングと、それらの組み合わせとを含むことができる。
【0050】
ある側面において、磁性粒子の各々は、1つ以上の結合標的を含むことができ、1つ以上の結合標的は、アッセイ混合物中の化合物にアクセス可能な粒子の表面上で不動化される。結合標的は、磁性粒子上に共有結合的または非共有結合的に不動化されることができる。結合標的は、結合標的に対する選択された親和性を決定することが望ましい任意の部類の材料または構造であることができる。ある側面において、結合標的は、抗体または抗原、タンパク質断片、核酸、核酸断片、脂質、炭水化物、ポリマー、小分子、またはそれらの任意の組み合わせ等のタンパク質であることができる。同様に、本明細書に開示される方法は、結合標的が固相粒子上に不動化される様式によって限定されず、好都合かつアッセイ混合物と適合性がありながら、不動化された結合標的の結合特性を有意な程度において保持する任意の技法が、概して、本明細書において想定される。この方式において、標的化合物は、標的化合物の予期される活性度に対応する結合標的を磁性ビーズ上に提供することによって、混合物から単離され得る。結合すると、結合された化合物-磁性粒子は、磁場の影響下で物理的に操作され得、結合された化合物は、剥離剤の適用時、選択的に解放され得る。
【0051】
例えば、ある側面において、方法は、アミノシラン試薬を用いて磁性粒子の表面上のSi-OHを処理し、続いて、グルタルアルデヒド(GA)(GAの遊離端は、リジンのアミノ基と反応し、タンパク質結合標的を捕捉することが可能である)との反応によって、またはストレプトアビジン-ビオチン相互作用またはヒスチジン標識を介して、固相素子の表面にタンパク質を不動化することを含み得る。磁性粒子上に結合標的を不動化するための他の機構も、当業者によって理解されるであろうように、公知であり、本明細書において想定される。識別のためにMSに依拠するHTS方法中の磁性粒子およびそれらの処理および取り扱いが、本明細書に開示される。本明細書に開示されるある側面との組み合わせにおける他の親和性プローブの使用も、当業者によって理解されるであろうように、想定される。そのようなプローブは、固相微量抽出(SPME)ファイバと、(米国仮特許出願第62/692,274号(その内容は本明細書に組み込まれる)において述べられているような)REEDと、磁性ビーズとを含むことができる。
【0052】
本開示の方法およびシステムに関するアッセイ成分の物理的調製に関連するような、アッセイ混合物を形成することは、いかなる特定の方法論または機械にも限定されず、概して、一連の化合物の選択された親和性をスクリーニングするために必要に応じてアッセイ混合物を提供し、それを行うために好適である任意のものであることができる。したがって、アッセイ混合物の形成は、概して、本明細書に明示的に開示される成分(例えば、磁性粒子、複数の薬物候補、結合標的)および親和性アッセイを行うために必要である任意の数の追加のアッセイ成分の導入を含むことができる。ある側面において、追加のアッセイ成分は、アッセイ溶媒、緩衝塩、安定剤等を含むことができる。結合アッセイに対して一般的である代替のアッセイ成分も、当業者によって理解されるであろうように、本明細書において想定される。
【0053】
本明細書に開示されるようなアッセイ容器は、アッセイ成分を保持するために、アッセイ混合物を形成することにおいてアッセイ混合物に、およびそれからアッセイ成分をサンプリングまたは移送するために、および本明細書に開示される方法の任意のさらなる動作を可能にするために好適である任意のものであり得る。ある側面において、アッセイ容器は、任意の適切な寸法を有するウェルプレートアレイ(例えば、24、48、96、384、または1,536ウェルプレートアレイ)のウェルを備えていることができる。同様に、容器は、上で記載されるウェルプレートの一般的寸法に関連するような、アッセイ混合物を含むための任意の適切な容積を有し得、したがって、本明細書において想定される容器は、約10μL~1mLの総容積を有し得る。したがって、本明細書に開示されるようなアッセイ混合物の調製が、ある側面において、高スループット親和性スクリーニングアッセイに関して一般的に実施されるように、逐次または並行分析のための複数のアッセイ混合物の調製を含み得ることを理解されたい。
【0054】
同様に、アッセイ成分を導入することは、アッセイ、特に、高スループットアッセイのために好適である任意の方法によって実施されることができる。例えば、アッセイ混合物への複数の独特な化合物の導入は、逐次、液体分注器によって、化合物ライブラリから複数の化合物の各々を移送することを含むことができる。液体分注方法(例えば、Mosquito(登録商標)分注器)および音響分注器は、この目的に関して公知であり、化合物の各々を高濃縮源からナノリットルスケールの体積において導入することができる。このように、アッセイ混合物の中への数千個もの独特な化合物の導入が、数分程度で調整されることができる。続いて、したがって、各ウェルが独特な化合物から成る非変性的組み合わせを含む384ウェルプレート等にわたる一連の数百個のアッセイ混合物が、数時間または数日程度で調整されることができる。
【0055】
アッセイ容器へのアッセイ成分の導入は、任意の順序において、およびアッセイを行うために適切である任意の手段によって生じることができる。ある側面において、アッセイ成分を導入することは、アッセイ容器に複数の独特な化合物を導入することと、アッセイ緩衝液を用いて複数の化合物を希釈することと、親和性プローブを容器に導入することとを含むことができる。
【0056】
複数の薬物候補に関連するように、ある側面において、アッセイ混合物を形成することは、空のウェルプレートの中への化合物ライブラリからの個々の化合物の逐次的添加によって、複数の薬物候補をアッセイ容器の中に導入することを含むことができる。当業者によって理解されるであろうように、ライブラリ化合物リザーバから化合物を導入する方法は、自動化されることができ、それによって、各々が100~2,500個の独特な化合物の組み合わせを有する数百個のウェルを含むウェルプレートが、化合物ライブラリの選択によって生成されることができる。
【0057】
アッセイ混合物を形成することは、磁性粒子をアッセイ容器の中に導入することも含むことができる。ある側面において、粒子は、他のアッセイ成分から独立して、かつ複数の薬物候補または他のアッセイ成分に先立って、アッセイ容器に導入され得る。代替として、磁性粒子は、アッセイ緩衝液内の磁性粒子の均質な懸濁液として、アッセイ容器の中に導入され、アッセイ混合物を完成させ得る。磁性粒子の均質な懸濁液は、機械的撹拌によって、または磁気的かき混ぜによって達成されることができる。複数の薬物候補をアッセイ容器の中に導入することに関して、磁性粒子を導入することは、均質な懸濁液を吸引することを含むこと、または音響移送等の無接触方法によることができる。このように、アッセイ条件は、複数の薬物候補の存在下でアッセイ条件を瞬時に提供することによって、慎重に制御される一方、単一のアッセイプレート内に数千個または数百万個もの薬物候補を有する複数の独特な化合物プレートの調製のための多大な時間を可能にし得る。
【0058】
アッセイ混合物を形成することは、μLの規模の個々の化合物の最終濃度を検討することもできる。DMSO等の有機溶媒の濃度は、典型的に、アッセイ適合性を確実にするために小さい割合に限定され得るので、本明細書に想定されるようなアッセイ混合物を形成することは、アッセイ緩衝液を使用してアッセイ混合物を希釈することを含むことができる。例えば、化合物が、DMSO中の高濃縮溶液(例えば、10mM~10M)として化合物ライブラリ内に貯蔵されている場合、各化合物は、ナノリットルの規模の量において移送され、水またはアッセイ緩衝液を用いて希釈され、各ウェル内で、ウェルに添加される各個々の化合物に対して0.1μM~100μMの範囲内の濃度を達成し得る。このように、アッセイ混合物中のDMSOの総濃度は、5%未満、3%未満、2%未満、または1%未満に限定されることができる。
【0059】
同様に、アッセイ混合物は、並行して、または逐次的に、または組み合わせにおいて調製されることができる。例えば、ウェルプレートの各ウェルは、各ウェル内の数百個または数千個の化合物の単一の濃度で調製されることができる。本明細書において想定されるようなアッセイ混合物の形成は、したがって、当業者によって理解されるであろうように、任意のサイズのウェルプレートのウェル内で一連のアッセイ混合物を形成することを含むことができる。したがって、ある側面において、24個、48個、96個、384個、または1,536個のウェルを備えているプレートが、各ウェルが本明細書に開示されるように調製されたアッセイ混合物を含み、各ウェルが親和性に関してアッセイされるべき数百個または数千個の化合物の組み合わせを有するように、調製されることができる。
【0060】
アッセイ混合物の全ての成分が存在すると、アッセイ混合物を形成することは、適切なアッセイ条件下で複数の薬物候補および磁性粒子をインキュベートすることをさらに含むことができ、適切なアッセイ条件は、結合相互作用が、複数の薬物候補内のヒット化合物の組と結合標的(例えば、磁性粒子上に保持されるタンパク質断片)との間で生じることを可能にする。概して、結合平衡に到達するためのインキュベーション時間、温度、塩分濃度、薬物候補濃度等の適切な条件は、具体的なアッセイに依存し、当業者によって理解される範囲内にある。ある側面において、複数の薬物候補および磁性粒子をインキュベートすることは、質量分析法および質量分析のためにサンプルを調製することに先立って、アッセイ混合物を少なくとも15分にわたって37℃まで加熱することを含むことができる。ある側面において、機械的撹拌が、ある側面において、アッセイ混合物内に磁性粒子の均質な懸濁液を提供し、結合平衡がアッセイ混合物内の結合標的と薬物候補との間に達成されることを確実にするために採用されることができる。機械的撹拌は、所望の効果を達成するために好適な任意の方法を含むことができる。薬物候補と磁性粒子との間の結合相互作用が、アッセイ混合物内で平衡に到達すると、ヒット化合物の組が、実証された結合に基づいて、アッセイ成分から分離されることができる(下で詳細に説明されるように、アッセイ容器を渦巻状に動かすこと、機械的振動をアッセイ容器に結合させること、機械的または磁気的かき混ぜること、またはアッセイ混合物内に振動する磁場を誘発すること等によって)。複数の薬物候補からヒット化合物の組を識別する方法は、したがって、アッセイ混合物を形成することに続いて、予備的精密検査動作も含むこともできる。一般的意味において、本明細書に開示されるように、質量分析(例えば、サンプル調製)のためにアッセイ混合物を調製することは、1つ以上のアッセイ成分と、磁性粒子に結合されたヒット化合物の組とを分離することを含むことができる。磁性粒子に結合されていないアッセイ混合物内の薬物候補は、アッセイ混合物から分離されることができる一方、ヒット化合物-磁性粒子複合体は、例えば、下で説明されるように、アッセイ混合物内に磁場を誘発することによって、保持される。
【0061】
ある側面において、質量分析のためのアッセイ混合物の調製は、複数の薬物候補内のヒット化合物の組間の結合相互作用を中断させることも含むことができる。
【0062】
本明細書において想定される磁性粒子は、概して、本明細書において想定される結合ステップおよび分離ステップを実施および補助するために好適である任意の磁性材料または磁性材料と非磁性材料との組み合わせを含むことができる。ある側面において、磁性粒子は、上記に述べられるように、アッセイ混合物に隣接する電磁石等による、外部磁場を能動的に印加することなく、磁性を保持することが可能である強磁性粒子を含むことができる。鉄と、ニッケルとを含む、強磁性粒子は、粒子が、外部的に印加された磁場がない状態においても、より大きい群の粒子に凝集するであろうから、有利に、磁性粒子からのヒット化合物の物理的分離に適用されることができる。そのような凝集は、結合相互作用を中断させた後、結合されていないヒット化合物がサンプルから吸引または射出される間に、磁性粒子を保持することを補助することができる。本明細書において想定される磁性粒子のために適切である強磁性材料は、当業者によって公知である方法に従って、鉄と、ニッケルとを含む。代替として、または加えて、本明細書において想定される磁性粒子は、外部的に印加された磁場なしで磁性を保持しない常磁性材料を備えていることができる。常磁性材料は、白金と、スズとを含むことができる。
【0063】
ある側面において、磁性粒子は、非磁性材料によってコーティングされた磁性コアを含むことができ、非磁性材料は、結合標的への付着を提供する。磁性ビーズをポリマー表面でコーティングし、続いて、コーティングされた粒子の表面を結合標的で処理する方法が、当技術分野において公知である。結合標的は、磁性粒子の表面に共有結合的または非共有結合的に結合されることができる。本明細書において想定される磁性粒子のサイズは、いかなる特定のサイズにも限定されず、本明細書に説明される移送および結合ステップを促進するために好都合である任意のものであることができる。磁性粒子は、したがって、本明細書では、微小粒子、ナノ粒子、または両方であるものとして想定される。磁性粒子は、500μm未満、100μm未満、1μm未満、500nm未満、100nm未満、または10nm未満の粒子を含むことができる。
【0064】
ある側面において、ヒット化合物と結合標的との間の結合相互作用を中断させることは、結合解除溶媒をアッセイ混合物の中に導入することによって、結合標的からヒット化合物を分離することを含むことができる。ある側面において、結合標的からヒット化合物を分離することは、アッセイ中に磁性粒子および粒子に結合された化合物を分離容器内の結合解除溶媒の中に挿入し、1つ以上の化合物を粒子から結合解除することを含むことができる。ある側面において、結合されていないヒット化合物の組と、粒子と、結合解除溶媒とを含む分離容器内に結果として生じる混合物が、開放ポートサンプリングインターフェースの開放端において、流動する溶媒の中に注入されることができる。
【0065】
質量分析のためにアッセイ混合物を調製することは、質量分析のために適切な様式においてヒット化合物の組を提供するために好適である任意の順序において行われ得る任意の数の動作を含むことができる。ある側面において、ヒット化合物-標的複合体(すなわち、溶液内の結合された化合物-磁性粒子成分)は、結合標的において磁性粒子に結合されたヒット化合物を分離することに先立って、アッセイ混合物から分離され、水性緩衝液を用いて洗浄されることができる。別の側面において、アッセイ混合物を調製することは、アッセイ容器内の磁性粒子からヒット化合物を分離し、次いで、サンプルが吸い込みを使用して吸引除去されることを要求しないプロセスを使用して、磁性粒子を伴って、または磁性粒子を伴わずに、溶出された化合物を開放ポートサンプリングインターフェースの中に導入することを含むことができる。磁性粒子がサンプル容器内の定位置に保持される(ヒット化合物に加えて、開放ポートインターフェースにサンプリングされない)側面において、アッセイ混合物は、アッセイ容器の内側またはそれに隣接して位置付けられる磁力を使用して、アッセイ容器内に磁性粒子を保持しながら、アッセイ容器から吸引されることができる。洗浄溶液が、磁性粒子に添加され、続いて、除去されることができる。随意に、磁力は、選択的にオフにされ、磁力をオンに戻し、洗浄溶液を吸引することに先立って、結合された化合物-磁性粒子成分と洗浄溶液の混合を可能にすることができる。磁性粒子を伴う他の動作に関して、洗浄溶液の混合は、他の混合物から磁性粒子を均質に懸濁させるために、本明細書に開示されるように、機械的または磁気的手段によって達成されることができる。アッセイ混合物を調製するためのワークフローのさらなる例が、図3-10および下記のいくつかの実施形態に関して説明される。
【0066】
ある側面において、アッセイ混合物を形成することおよび質量分析のためにアッセイ混合物を調製することの各々は、独立して、アッセイ混合物を撹拌することを含むことができる。例えば、撹拌は、完全な溶解または均質な懸濁液を確実にするようにアッセイ混合物を形成しながら、アッセイ成分の混合を補助し得る。同様に、試薬は、結合アッセイを形成し、それを行った後、混合物の分離成分の調製において、アッセイ混合物に添加され得る。例えば、沈殿助剤が、混合物からある成分を固相に分離するために、アッセイ混合物に添加され得る。アッセイ混合物の撹拌が所望される側面において、撹拌は、アッセイ混合物内の機械的または磁気的かき混ぜ器、アッセイ混合物に隣接する(または、その中に挿入された)超音波処理プローブによって、または機械的振動をアッセイ混合物を含むアッセイウェル自体に印加することによって達成されることができる。しかしながら、これらの方法は、アッセイ混合物の中にかき混ぜ器またはプローブを挿入することを伴う撹拌方法のために、1つのアッセイ混合物から別のものへの相互汚染と、アッセイ容器に外部振動を印加することを通して、アッセイ混合物の一部をこぼすこととを含む関連付けられた欠点を有する。
【0067】
代替として、アッセイ混合物の攪拌は、振動する磁力をアッセイ混合物内の磁性粒子に印加することによって、達成されることができる。振動する磁力は、磁性粒子に振動させ、それによって、アッセイ混合物を撹拌する。図13Aは、そのような磁力をアッセイ容器、例えば、試験管1310内の磁性粒子に印加するように構成された模範実施形態を実証する。図13Aに示されるように、複数の電磁石1320a-1320dが、試験管の外部の周りに位置付けられることができる。交流電流が、次いで、複数の電磁石に印加され、磁性粒子1330に結合し、アッセイ混合物の攪拌を誘発するために十分に強い振動する磁場を生成することができる。図13Aの例では、磁石のN-S軸が、x-y平面内にあり、サンプルウェルの垂直軸に対して直角である。本出願人の米国特許公開第2018/0369831号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている実施形態等の磁石のN-S軸をサンプルウェルの垂直軸と平行であるように整列させること等の電磁石の代替配置が、提供され得る。
【0068】
磁場の強度が、磁性粒子への磁力の適正な結合および適正な攪拌を達成するために、必要に応じて調節され得る。ある側面において、磁場の強度は、1mT~1T、10mT~500mT、または25mT~250mTの範囲内であることができる。適切な磁場強度を達成するために必要な電流および電圧は、当業者によって理解されるであろうように、アッセイ混合物に対する電磁石の特性および位置付けに従って変動し得る。ある側面において、アッセイ混合物の撹拌は、50Hzまたは60Hz、または10~400Hzまたは20~100Hzの範囲内の周波数を有する交流電流を印加することによって達成されることができる。ある側面において、電磁石に印加される交流電流の周波数および大きさの各々は、独立して可変であり得る。ある側面において、撹拌の持続時間は、少なくとも2秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、または少なくとも30秒であることができる。
【0069】
上記に説明されるようなデバイスはまた、アッセイ混合物内に一定の磁力を誘発することによって、アッセイ混合物の他の成分から磁性粒子を隔離するためにも適用され得る。図13Bは、電磁石に直流を印加することおよびアッセイ混合物内に一定の磁力を印加することの結果を実証し、一定の磁力は、試験管1310の縁に対して磁性粒子1320を移動させる。アッセイの非磁性成分(例えば、磁性粒子に結合されていない溶媒および薬物候補)が、アッセイ容器の中心部分内に浮遊物1340として留まり、本明細書に説明される任意の方法、例えば、吸引または音響液滴射出によってアッセイ容器から除去されることができる。ある側面において、分離の持続時間は、10秒未満、5秒未満、3秒未満、または1秒未満であることができる。
【0070】
上記に説明され、かつ図13A-13Bに示される実施形態によって例示されるように適用される電磁石が、アッセイ混合物が撹拌を介して均質化され、続いて、アッセイ混合物内の磁性粒子を隔離することによって、質量分析のために調製されることを可能にすることがさらに想定される。磁力は、交流または直流電流のいずれかを印加し、それぞれ、アッセイ混合物内での磁性粒子の撹拌または隔離を達成することによって、振動させられること、または一定に保持されることができる。そのような側面は、特に、有利に、無接触様式においてアッセイ容器の中心からアッセイ混合物の一部をサンプリングし得る本明細書に説明されるような音響射出移送方法と組み合わせられることができる。この意味において、アッセイ全体が、アッセイ混合物の中に無関係な成分または機械を導入することなく、かつアッセイまたは後続のサンプルを汚染するリスクを伴うことなく、行われ、質量分析計の開放ポートインターフェースに移送されることができる。
【0071】
アッセイ混合物から磁性粒子を隔離することが、磁性粒子に付着させられたヒット化合物の組と結合標的との間に存在する結合相互作用を中断させることに先立って、または、その後に行われることができる。したがって、連続的攪拌および隔離の上記に説明されるプロセスが、結合標的に対する親和性を有していないアッセイ混合物中に存在する溶媒、塩類、緩衝剤、および他の薬物候補等の他のアッセイ成分から磁性粒子に結合されたヒット化合物を単離するために適用されることができる。そのような側面において、保持された磁性粒子は、保持された粒子を洗浄するための洗浄溶液を伴う混合物中に再び構成されることができる。加えて、分離剤が、結合相互作用を中断させるために添加され、ヒット化合物の組が磁性粒子から解離することを可能にし得る。磁性粒子は、次いで、一定の磁場を印加することによって隔離されることができ、溶媒和されたヒット化合物が、磁性粒子を伴わないアッセイ混合物から移送されることができる。
【0072】
図13によって具現化されたデバイスに対する代替物も、本明細書において想定される。例えば、図13の電磁石は、単一の試験管の壁と、その中に含まれるアッセイ混合物とに対して平面状配置において位置付けられる。しかしながら、本明細書において想定されるデバイスのある側面は、アッセイ混合物の平面の上方に位置付けられた電磁石を備えていることができる。そのような側面は、種々の形状およびサイズのアッセイ容器、例えば、上記に説明されるようなウェルプレートのアッセイウェル内の振動する磁場と、一定の磁場との誘発を可能にし得る。流体を処理するための磁気および電磁気アセンブリの代替配置が、米国公開第2020/360879号、米国公開第2018/0369831号、および米国特許第10,656,147号(それらの各々は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0073】
ある側面において、本明細書に開示される方法は、1つ以上のアッセイ混合物の準備の動作に先立って、サンプルを移送することを含むことができる。実際に、ある側面は、ヒット化合物の組を含むサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに直接移送した後、部分的または完全に、質量分析のためにアッセイ混合物を調製することを含むことができる。図8は、そのような側面のある例を提供し、アッセイ混合物を調製することは、磁性粒子を保持し、磁性粒子を横切って洗浄溶液および溶離液を流動させ、ヒット化合物を質量分析計の搬送流動の中に溶出させることによって、開放ポートサンプリングインターフェース内で行われる。
【0074】
代替として、アッセイ混合物を調製することは、ヒット化合物のサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに移送することに先立って完了されることができる。そのような側面において、アッセイ混合物は、化合物の組を溶離液中に、質量スペクトル分析のために好適な濃度において提供するように操作されることができる。そのような側面において、サンプリングインターフェースが、ヒット化合物を含むサンプルが調製される容器と適合性がある限り、いかなる特別な器具類も、質量分析計およびサンプリングインターフェース内に必要とされないことを理解されたい。したがって、適合性が、アッセイ混合物の調製中に維持されることを確実にするために、処置が、講じられることができる。
【0075】
アッセイ混合物を調製することは、アッセイ容器内、別個のサンプル容器内、移送導管内、質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェース内、またはそれらの任意の組み合わせにおいて行われ得る。ある側面において、結合または結合されていないヒット化合物が、MSへのイオンの導入前、固相素子を濾過して取り除くプロセスに従って、OPIの中に導入されることができる。一実施形態において、質量分析のためにアッセイ混合物を調製することは、OPIの中に単離されたヒット化合物および磁性粒子を射出することに先立って、アッセイ容器内で行われることができ、サンプルは、溶媒ベースの捕捉流体を使用して磁性粒子から分離される。磁性粒子は、次いで、MSに入射する前に捕獲されることができる。ある側面は、MSイオン源にサンプルを送達する前に固相素子を捕獲するための外部磁場を備えていることができる。別の実施形態において、トラップが、OPIのエレクトロスプレーイオン化の前に提供されるか、または、移送導管と直列であり得る。
【0076】
ある側面において、磁性粒子に結合されたヒット化合物が、ヒット化合物のサンプルをMSに移送することに先立って、粒子から溶出されることができる。例えば、ヒット化合物を含むサンプルは、メタノールおよびアセトニトリル等の高濃度の有機溶媒を伴う有機溶離液または溶離液、またはそれらの組み合わせおよび水性混合物で処理することができる。溶離液は、質量分析計内に存在する搬送溶媒または捕捉溶媒と同じであるか、または、それと異なることができる。溶出されると、ヒット化合物の組を含むサンプルは、質量分析のためにナノリットルからマイクロリットルの量のサンプルを導入するために、音響液滴射出と、流動注入と、自動化された検査室システムとを含む任意の適切な方法論によって、直接、開放ポートサンプリングインターフェースにサンプリングされることができる。音響液滴射出移送は、高スループット自動化システムにおいて1つのサンプルから別のものへの汚染を回避すること等のために、無接触であることの追加の利点を有する。例えば、移送中にサンプルウェルからサンプルを吸引することは、あるサンプルが吸引デバイス上に保持され、最終的に、後続のサンプルに移送されることを可能にすることができる。音響射出は、移送方法が、開放ポートインターフェースを介してサンプルウェルと質量分析計の流体流動との間で完全に無接触であるので、サンプル間のそのような汚染の可能性を排除する。
【0077】
さらに、さらなる側面において、質量分析のためにアッセイ混合物を調製することが、OPIおよび/または移送導管内で部分的に実施され、より少ない動作が、アッセイ容器内で実施され得る。例えば、第1の捕捉流体が、サンプルおよび磁性粒子を捕捉するために使用され得、第1の捕捉流体は、磁性粒子がサンプルとともに捕獲されるにつれて、洗浄作用を提供し、第2の分離流体(すなわち、溶媒)が、次いで、捕獲された磁性粒子からヒット化合物の組を含むサンプルを分離するために使用され得る。ある実施形態において、第2の分離流体は、可変濃度勾配を伴って流動し得、濃度は、事前に定義された傾斜または一続きの濃度増加に従って0~100%増加する。さらに、ある実施形態において、MS信号が、第1の捕捉流体から第2の分離流体に切り替えをトリガするために使用され得る。本実施形態において、第1の捕捉流体は、MSに向かわせられ、それは、洗浄成分がMS適合性である場合、有用である。別の実施形態において、捕捉流体は、廃棄導管に向かわせられ得、タイマが、第1の捕捉流体から第2の分離流体に切り替えをトリガし、イオン源に分離流体を向かわせるために使用され得、それは、洗浄成分が、MS適合性でない場合、有用である。
【0078】
ヒット化合物の組を含むサンプルを移送することは、物理的移送および操作の任意の特定の配置も含み得る。ある側面に関して、ヒット化合物の組を含むサンプルは、磁性粒子を含むこともできる。例として、アッセイ混合物は、直接、開放ポートサンプリングインターフェースにサンプリングされることができ、それによって、ヒット化合物は、アッセイ緩衝液内に移送され、磁性粒子上の結合標的に結合される。代替として、ヒット化合物は、磁性粒子から溶出されることができるが、サンプルを開放ポートインターフェースに移送することに先立って、分離を伴わずに共通の懸濁液中に留まることができる。なおもさらに、ヒット化合物-磁性粒子複合体は、複合体を洗浄することを介して、水性アッセイ成分から分離されることができ、単離された複合体は、次いで、開放ポートインターフェースに移送されることができる。
【0079】
磁性粒子がヒット化合物の組を含む開放ポートインターフェースに移送されるサンプル内に存在する側面において、質量分析計への損傷を防止するために、イオン化に先立って、磁性粒子がヒット化合物の組から確実に分離され、分析流動から除去されることが、有利である。さらに、質量分析計の搬送流動内の磁性粒子を捕獲し、続いて、磁性粒子を廃棄流動に解放することを含み得る方法が、本明細書において想定される。このように、磁性粒子に付随するヒット化合物は、廃棄流動の方に向かわせられることができる時間まで、磁性粒子を保持しながら、質量分析計の分析流動の中に注入されることができる。代替として、磁性粒子は、ヒット化合物の組に加えて、エレクトロスプレーイオン化を受け、排気から収集されることができる。
【0080】
本明細書に開示される方法は、ヒット化合物が分析のために分離され、搬送流動に入射され得るまで、磁性粒子を搬送流動内に保持する目的のために、電磁石を使用し得る。ある側面において、磁性粒子は、ヒット化合物の組を含むサンプルおよび磁性粒子を開放ポートに移送すると、(例えば、動作状態にある電磁石によって)開放ポートインターフェース内に選択的に保持され得る。アッセイ成分は、ヒット化合物を磁性粒子から搬送流動の中に分離することに先立って、磁性粒子を保持し続けながら磁性粒子-ヒット化合物複合体から廃棄流動に洗浄されることができる。磁性粒子は、次いで、磁気的保持を非活性にすることによって、廃棄流動に対して制限されていない、開放ポートを通して移動することを可能にされ得る。ある側面は、質量分析計の流動を搬送流動から廃棄流動に切り替え、上記に説明される実施形態に適応することを含むことができる。磁性粒子は、類似の様式において、イオン化に先立って、質量分析計の下流コンポーネント内にも選択的に保持され得る。
【0081】
別個に、磁性粒子は、ヒット化合物の組に結合または結合解除されて(例えば、化合物を分離し、または分離せず)、搬送流動内で進行し、サンプル気化中に破棄される質量分析流動から単に出て行くことを可能にされ得る。そのような側面は、合理化されたプロセスを可能にし、所望の成果を達成するためのいかなる追加の機構も要求しないが、質量分析計から磁性粒子を確実に除去しないこともある。
【0082】
上記に詳細に説明されるこれらの方法によって、従来のクロマトグラフィ動作が、手順から除去され得ることが、想定される。液体クロマトグラフィは、上記に説明されるように、結合標的からのヒット化合物の分離を達成するために採用されることができる。液体クロマトグラフィは、典型的に、サンプルに対して連続的に実施され、完了するために15分~1時間の工程を要求する。本明細書に説明されるそれら等の非常に逐次的なプロセスでは、この時間を要する動作の除去は、スクリーニングプロセス全体に対して大きな時間の節約をもたらすことができる。
【0083】
アッセイウェルの連続的分析は、したがって、素早い連続で達成されることができ、多くの場合、10分以上毎ではなく、約1~10秒で達成されることができる。連続的分析は、したがって、サンプルを開放ポートサンプリングインターフェースに移送するための音響液滴射出方法のサンプリング限界に近づく。
【0084】
さらに、クロマトグラフィステップを排除することによる動作時間の短縮が、アッセイウェルあたりの化合物の数の低減を可能にすることができる。ある側面において、本明細書に開示される方法は、高スループット親和性スクリーニングを行うことが可能であり得、そこでは、各アッセイウェル内の複数の薬物候補は、500個未満の化合物、300個未満の化合物、200個未満の化合物、100個未満の化合物、または50個未満の化合物である。
【0085】
本明細書に開示される方法は、サイズ除外クロマトグラフィに依拠しないこともある。混ぜなら、不動化された結合標的を伴う大磁性粒子が、方法論における任意の数の動作において、時間集約的クロマトグラフィなしで、アッセイ混合物から選択的に除去されることが可能であるからである。下で説明される実施形態は、上記に説明および開示される概念を例証する。
【0086】
本本明細書に開示される方法のある側面は、溶液中に複数の薬物候補を一緒に導入することと:選択された親和性に基づいて、1つ以上の化合物と結合するように動作する表面処理を含む粒子を挿入することと;粒子に複数の薬物候補からの1つ以上の化合物を結合させることと;溶液から粒子および結合された1つ以上の化合物を除去することと;粒子から1つ以上の化合物を分離することと;開放ポートサンプリングインターフェースの開放端において、流動する溶媒を用いて分離された1つ以上の化合物を捕捉することと;溶媒および捕捉された1つ以上の化合物をイオン化デバイスに輸送することと;1つ以上の化合物をイオン化することとを含むことができる。
【0087】
ある実施形態において、方法は、質量分析計内のイオン化された1つ以上の化合物を分析することをさらに含み得る。ある実施形態において、方法は、1つ以上の化合物をイオン化した後であるが、分析することの前、微分移動度分光計によって提供される、高場イオン移動度と低場イオン移動度との差に基づいて、イオン化された1つ以上の化合物を分離することをさらに含み得る。
【0088】
ある実施形態において、サンプルを開放ポートインターフェースに移送することは、分離容器から結合解除溶媒および結合されていない1つ以上の化合物を注入または吸引することと、イオン化デバイスに圧送される溶媒流の中に吸引された結合解除溶媒(すなわち、溶離液)および結合されていない1つ以上の化合物を注入することとを含むことができる。ある実施形態において、注入することは、開放ポートサンプリングインターフェースの開放端において、流動する溶媒の中に分離容器から結合解除溶媒および結合されていない1つ以上の化合物の液滴を射出することを含み得る。ある実施形態において、サンプルを移送することは、サンプルの液滴を音響的または空気圧的に射出することを含むことができる。
【0089】
ある実施形態において、方法は、アッセイ容器から開放ポートサンプリングインターフェース内の捕捉流体の中に選択された薬物候補を音響的に射出することによって、選択された薬物候補をサンプリングすることをさらに含み得る。ある実施形態において、方法は、洗浄後、アッセイ容器から選択された薬物候補を射出することをさらに含み得る。
【0090】
ある実施形態において、方法は、選択された薬物候補がサンプルウェルから射出される前、磁性粒子から結合された薬物候補を分離することと、粒子から選択された薬物候補を単離することと、開放ポートサンプリングインターフェースの捕捉流体の中に固相素子を用いずに、選択された薬物候補を射出することとをさらに含み得る。代替として、ヒット化合物(すなわち、選択された薬物候補)は、粒子と結合された状態において射出されることができる。ある側面において、選択された薬物候補は、捕捉流体によって粒子から溶出(すなわち、結合解除)されることができる。代替として、ヒット化合物は、洗浄溶液または溶離液を捕捉流体の中に導入することによって、捕獲された固相素子から解放されることができる。ある側面において、溶離液は、質量分析計内の搬送溶媒と同じであることも、異なることもできる。
【0091】
いくつかの実施形態において、粒子は、粒子がヒット化合物と別個である状態でOPIに移送されることができる一方、他の実施形態において、粒子は、ヒット粒子複合体として、粒子がヒット化合物に結合された状態で移送される。
【0092】
これらは、続いて明白となるであろう他の側面および利点とともに、以降においてより完全に説明および請求されるような構造および動作の詳細に存在し、その一部を形成する付随の図面(同様の番号は、全体を通して同様の部分を指す)が、参照される。概して、上で記載されるように、本明細書に開示される方法は、アッセイ混合物を形成することと、アッセイ混合物を調製することと、ヒット化合物の組を含むサンプルを質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースに移送することとを含むことができる。これらの動作は、任意の順次順序における任意の数のさらなる動作を含み得るので、具体的な実施形態が、本明細書に開示される方法のある側面を例証するために、本明細書に開示される。本明細書に提供される実施形態は、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0093】
高度に自動化された様式において本明細書に開示される方法を実施する目的のために、高スループット親和性スクリーニングシステムも、想定される。概して、システムは、方法の各動作を実施するための別個のモジュールを備えていることができる。ある側面において、本明細書において想定されるシステムは、化合物ライブラリからアッセイ容器の中に複数の化合物を導入するように構成されたアッセイ容器調製モジュールを備えていることができる。上記のように、複数の化合物は、任意の数の化合物であり、ある側面において、10~10,000個の化合物、500~5,000個の化合物、または1,000~2,500個の化合物の範囲内にあることができる。システムは、各選択された化合物の一部をコンテナからアッセイ容器に移送するために、化合物貯蔵コンテナに可変的に結合された音響分注器を備えていることができる。
【0094】
本明細書において想定されるシステムは、ウェルプレート内の任意の数のアッセイ容器に対して結合アッセイを行うように構成されたアッセイモジュールも備えていることができる。ある側面において、アッセイモジュールは、質量分析のためにアッセイ混合物を調製するための磁気的または機械的撹拌器と、アッセイ成分の貯蔵部と、温度制御部と、自動化された吸引器と等を備えていることができる。アッセイモジュールは、アッセイ中に任意の点において磁性粒子を保持するために、可動式アームに取り付けられ、任意の数のアッセイ容器内に、またはそれに隣接して可変的に位置付け可能である磁石(例えば、電磁石)を備え得る。
【0095】
システムは、サンプルをウェルプレートの各ウェルから質量分析計の開放ポートサンプリングインターフェースの中に逐次移送し、各サンプルの質量分析を行うように構成された分析モジュールを備えていることができる。ある側面において、分析モジュールは、分析のために、アッセイモジュールからのサンプルを含むウェルプレートからのサンプルの逐次的移送を促進するためにウェルプレートの任意のウェルと結合されることが可能である音響液滴射出器を備えていることができる。分析モジュールは、サンプルのイオン化に先立って、モジュール内の任意の点に磁石粒子を選択的に保持するための磁石(例えば、電磁石)も備え得る。分析モジュールは、質量分析計と、サンプル気化チャンバと、イオン化デバイスと、質量断片検出器と、質量スペクトル分析を行うために必要である任意の追加のコンポーネントとを備えていることができる。分析モジュールは、サンプル中の化合物を識別するために、分析中に検出された質量断片をサンプル内のある化合物から予期されるそれらを自動的に関係づけるように構成され得る。
【0096】
図1に示されるように、本発明者らは、従来術MagMASS方法が、タンパク質結合親和性を用いて薬物分子を捕捉するために、磁性粒子を使用することを見出している。最初に、磁性ビーズ(B)が、溶液中に薬物分子候補(UおよびD)を含むサンプル容器100に導入される。親和性を伴う薬物分子候補(D)は、次いで、磁性ビーズに結合する。結合されていない薬物分子(U)が、次いで、洗浄容器110内で除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、磁石115からの磁場を介して、容器内に保持される。洗浄されたビーズは、洗浄容器から除去され、分離容器120の中に導入され、薬物分子候補(D)が、溶媒を使用してビーズから単離される。単離された薬物分子候補(d)は、次いで、分離容器120から吸引される一方、磁性ビーズは、磁石125からの磁場を介して、定位置に保持される。吸引された薬物分子候補は、次いで、分析のためにLC-MS/MS130の中に経時的に溶出される。磁性ビーズは、次いで、分離容器120から磁気で除去されることができる。
【0097】
上で議論されるように、本明細書に開示される側面は、固相素子として磁性ビーズを用い、OPIを使用して候補分子を移送するための改良された方法および装置と、精密かつ制御された様式におけるOPIへのサンプルの非接触導入のための音響液滴射出技術とを含むことができる。
【0098】
図2を参照すると、内側チャネル205と、開口ポート215とを備えているOPI200が、示され、内側チャネル205は、第1の円筒形部材として、第2の円筒形部材としての外側チャネル210内に配置され、第2の円筒形部材は、内側チャネル205と同軸配置で配置される。OPI200の追加の詳細が、種々の実施形態を参照して、下記に提供される。
【0099】
図3は、選択された親和性に基づいて、薬物候補を識別および分離するためのある実施形態を開示する。300において、複数の薬物候補が、溶液としてアッセイ容器内に導入される。310において、粒子が、溶液の中に挿入され、粒子は、選択された親和性に基づいて、1つ以上の化合物と結合するように動作する表面処理を含む。化合物のうちの1つ以上のものが、次いで、320において、粒子に結合される。ある実施形態において、基材表面は、結合親和性を伴う埋め込まれたタンパク質を含み得る固相微量抽出(SPME)ファイバを備え得る。基材表面は、タンパク質を保持するように構成された任意の材料であり得、メッシュ材料またはブレード様表面またはREED等の種々の例を含むことができる。他の実施形態において、下記に議論されるように、表面処理は、ビーズ等の磁気材料を含むことができる。
【0100】
結合された1つ以上の化合物を伴う粒子は、次いで、330において、溶液から除去される。340において、1つ以上の化合物が、粒子から分離される。350において、分離された1つ以上の化合物が、OPI200の開口ポート215において、流動する有機溶媒を用いて捕捉される。360において、溶媒およびOPI200の開口ポート215における捕捉された1つ以上の化合物が、MS/MS130等のイオン化デバイスに輸送される。次いで、370において、1つ以上の化合物が、当技術分野において公知であるように、MS/MS130内でイオン化される。他の側面において、クロマトグラフィは、MS/MS分析に先立って除外されることができ、それによって、ヒット化合物の組は、アッセイ混合物を調製した直後にMSによって分析される。
【0101】
ある実施形態において、図5に示されるシステムを参照して図4に記載されるように、選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法が、提供される。400において、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁性ビーズ(B)が、サンプル容器100に導入される(例えば、親和性を伴う薬物分子候補(D)が磁性ビーズに結合されるようにビーズが磁気で付着させられる電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して)。410において、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)が、サンプル容器100から洗浄容器110に移送され(例えば、電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して)、それに応じて、結合されていない薬物分子(U)は、洗浄を介して除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、磁石115からの磁場を介して、容器内に保持される。420において、洗浄された結合された薬物分子候補を伴うビーズが、洗浄容器から除去され、分離容器120の中に導入され(例えば、電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して)、薬物分子候補(D)は、有機溶媒を使用して、ビーズから解放される。430において、薬物分子候補(D)が、磁石125を介して、磁性ビーズ(B)から単離される。440において、薬物分子候補(D)が、分離容器120からOPI200の中に音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体が、図における矢印において描写されるように、2つの円筒形部材の間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する内側円筒を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体は、サンプルを清浄する必要性を事実上排除する。450において、溶媒および射出された薬物候補(D)が、先端部215からMSイオン化源530に流動する。随意に、または必要である場合、薬物分子候補(D)は、微分移動度分光法(DMS)またはMS技法(例えば、MS-MS等における分裂パターン)を使用して、結合されていない薬物分子(U)から分離されることができる。
【0102】
さらなる実施形態において、図7に示されるシステムを参照して図6に記載されるように、選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法が、提供される。600において、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁性ビーズ(B)が、サンプル容器100に導入される(例えば、親和性を伴う薬物分子候補(D)が磁性ビーズに結合されるように、ビーズが磁気で付着させられる電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して)。610において、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)が、例えば、電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して、サンプル容器100から洗浄容器110に移送され、それに応じて、結合されていない薬物分子(U)が洗浄を介して除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)が、磁石115からの磁場を介して、容器内に保持される。620において、結合された薬物分子候補を伴う洗浄されたビーズが、洗浄容器から除去され、例えば、電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して、分離容器120の中に導入され、薬物分子候補(D)が、有機溶媒を使用して、ビーズから解放される。630において、薬物分子候補(D)およびビーズ(B)が、分離容器120からOPI200の中に音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体が、流体経路を画定する図における矢印において描写されるように、2つの円筒形部材の間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、内側円筒を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体は、サンプルを清浄する必要性を事実上排除する。640において、溶媒、ビーズ(B)、および薬物候補(D)が、先端部215から、ビーズ(B)が捕獲される直列トラップ730に流動する(640)。650において、溶媒および射出された薬物候補(D)が、トラップ730からMSイオン化源530に流動する。代替として、薬物分子候補(D)を分離容器120内でビーズから分離するのではなく、薬物分子候補(D)は、OPI200内でビーズから分離され得、捕捉流体は、薬物分子候補(D)とビーズとの間の接合を解放するように動作する溶媒である。
【0103】
630における音響射出に関して、薬物分子候補(D)が、例えば、分注前に分離容器120を機械的に攪拌することによって、または音響分注システム内で電磁気ミキサを統合することによって、分離容器120内のサンプル溶液中で均一に懸濁されることが好ましい。
【0104】
追加の実施形態において、図9に示されるシステムを参照して図8に記載されるように、選択された親和性に基づいて化合物を識別および分離する方法が、提供される。800において、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁性ビーズ(B)が、親和性を伴う薬物分子候補(D)が磁性ビーズに結合されるように、例えば、ビーズが磁気で付着させられる電磁気サンプリングデバイスまたはプローブを使用して、サンプル容器100に導入される。810において、洗浄されていない薬物分子候補(D)およびビーズ(B)が、サンプル容器100からOPI200の中に音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体が、図における矢印で描写されるように、2つの円筒形部材間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する内側円筒を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体(例えば、水)は、サンプルを清浄する必要性を事実上排除する。820において、溶媒、ビーズ(B)、および洗浄されていない薬物候補(D)が、先端部215から直列トラップ730に流動し(640)、ビーズ(B)が、捕獲される、薬物候補(D)が、結合されていない薬物分子(U)を除去するために洗浄される。830において、捕捉流体(水)の流動が、ビーズ(B)から薬物分子候補(D)を分離するために、弁900を介した有機溶媒流動に切り替えられる。840において、溶媒および選択された薬物候補(D)が、トラップ730からMSイオン化源530に、輸送ライン910を介して、流動する。
【0105】
トラップ730の異なる実施形態(フィルタまたはサイズトラップ、または随時置換され得る永久磁石、または磁性ビーズ(B)を捕獲するために励磁され、次いで、例えば、清浄サイクル中に消磁され得る電磁石を含む)が、任意の捕捉された磁性ビーズを解放するために、想定される。図10に示されるように、移送ライン900が、廃棄容器に捕捉流体の流動を方向転換するための弁920を含み、それによって、電磁石が捕捉されたビーズを解放するために消磁されると、清掃サイクル中にイオン化源530の中に磁性ビーズを解放することを回避し得る。
【0106】
図7のシステムでは、トラップ730は、OPI200の先端部215における磁気トラップ(すなわち、第1の円筒形部材205および/または第2の円筒形部材210の一方または両方を包囲する電磁石)であり得、清掃サイクルが、洗浄された薬物候補が、MSイオン化源530に運搬された後、トラップからビーズを解放するように、溶媒ベースの捕捉流体を用いて実施され得る。
【0107】
別の実施形態において、図5および9に示されるシステムとの使用のために、トラップ730は、イオン化源530に配置され得、ビーズ軌道は、イオンよりはるかに重いビーズに起因して、MSイオン化源530への入口において、イオンから分離される。
【0108】
さらなる実施形態において、トラップ730は、図9に示されるシステムの輸送ライン900上の直列の磁気トラップであり得る。直列の磁気トラップが輸送ライン内の磁性ビーズ(B)を捕捉するために十分な磁場を有する輸送ライン900の置換可能区分であり得ることが、想定される。
【0109】
ビーズ(B)から単離された薬物分子候補(D)の音響射出を採用する、図5のシステムでは、永久磁石保護トラップが、イオン化源530および容器120からの磁性ビーズのMS形態の非意図的射出を保護するために含まれ得ることも、想定される。
【0110】
図5および7に描写されるシステムは、別個のサンプル、洗浄および分離容器100、110、および120の使用を議論するが、サンプル調製が、単一容器または複数の容器において実施され得ることも、想定される。
【0111】
図4-10に記載される実施形態の各々では、磁性粒子(B)の固相表面に対する親和性を伴う化合物薬物分子を導入することの代替として、粒子(B)が、遊離溶液中でのタンパク質-薬物統合後(例えば、400、600、800後)に添加され、磁性粒子(B)上に予め不動化されたタンパク質ではなく、タンパク質-薬物複合体を取り出すために使用され得ることも、想定される。
【0112】
図11は、図3のものと同様に、一般的な実施形態として提供される。図11の実施形態は、順次的動作が、一般的な様式において一緒に群化され、各動作が、任意の順序において実施される1つ以上の動作を表し得る方法を提供する。特に、アッセイ混合物を調製し、サンプルを移送することが、単一の動作として示され、ここでは、ヒット化合物の組が、あるアッセイ成分から分離され、いくつかの異なる配置のうちのいずれかにおいて質量分析計に移送される。したがって、アッセイ内で識別されたヒット化合物の組の調製および移送が、本明細書に開示されるように、親和性アッセイに続いて、かつ質量分析に先立って、多くの異なる順次的配置および場所において実施され得ることが、図11に示される。したがって、図11によって示される実施形態は、図3-10によって開示される実施形態の各々を包含することができる。
【0113】
結合アッセイが、1つ以上の選択された化合物および磁性ビーズをサンプルウェルの中に導入することによって、生成され得る。磁性ビーズは、所望の結合活性を示す標的化合物のための結合部位を含む。アッセイ容器調製モジュールが、選択された1つ以上の化合物をサンプルプレートの各サンプルウェルの中に導入するように動作し得る。アッセイモジュールが、磁性ビーズにさらされた化合物の所望の結合活性に対応する結合部位を含む磁性ビーズを導入し得る。いくつかの実施形態において、アッセイ容器調製モジュールおよびアッセイモジュールは、別個の機構を備え得る。いくつかの実施形態において、アッセイ容器調製モジュールおよびアッセイモジュールは、単一化されたシステムを備え得る。
【0114】
サンプルウェルの中に導入される1つ以上の化合物に対応するサンプル情報が、サンプルウェルに関連付けられる。サンプル情報は、例えば、サンプルウェルの分析に関連する1つ以上の化合物、試薬、または他の情報の各々を示す識別子を含み得る。関連付けは、アッセイ容器調製モジュールおよび/またはアッセイモジュールと通信するコントローラによって発生させられ得るか、または、アッセイ容器調製モジュールおよび/またはアッセイモジュールから生じ、システムの他のモジューによってアクセス可能なメモリ場所に記憶され得る。
【0115】
各サンプルウェル中の溶液は、溶液中の残りの結合されていない化合物から任意の結合された化合物-磁性ビーズ成分を分離するように操作され得る。例えば、アッセイモジュールは、磁力を印加し、サンプルウェル内で結合された化合物-磁性ビーズ成分を単離し、保持し、溶液中の任意の結合されていない成分を外に移送し得る。移送は、例えば、重力流動、吸い込み、吐き出し、または他の公知の手段等の吸引または他の液体移送動作によって生じ得る。代替として、例えば、アッセイモジュールは、磁力を印加し、任意の結合されていない成分を含む溶液から結合された化合物-磁性ビーズ成分を捕捉し、引き出し得る。この場合、移送は、例えば、磁力を印加し、磁性ビーズを捕捉し、プローブがサンプルウェル内の溶液から引き抜かれている間に捕捉された磁性ビーズをプローブに保持するように動作するプローブを溶液の中に導入することによって、生じ得る。
【0116】
いずれの場合でも、単離された結合された化合物-ビーズ成分が、結合された化合物がビーズ化合物から解放され、分析を受ける前、いかなる結合されていない成分もない状態である洗浄された結合化合物-磁性ビーズ成分を作り出すように、任意の結合されていない成分を遊離させ、処分する洗浄ステップを受ける。
【0117】
例として、上記に説明されるようなものを含む、いくつかの異なる洗浄ステップが、適用され得る。ビーズが、サンプルウェル内で単離される場合、アッセイモジュールは、任意の残存する結合されていない成分を除去するために、洗浄溶液を導入し、抽出し得る。ビーズがサンプルウェルから引き出される場合、アッセイモジュールは、洗浄された結合化合物-磁性ビーズ成分を清潔なサンプルウェルに導入する前、結合された化合物-磁性ビーズ成分を任意の結合されていない成分を洗浄して除去する洗浄ステップに移送し得る。洗浄された結合化合物-磁性ビーズ成分は、開放ポートインターフェースの中への導入の前、サンプルウェル内で分離され得るか、または、開放ポートインターフェースを通して流動する捕捉液体による分離のためにサンプルウェルから開放ポートインターフェースの中に射出され得る。
【0118】
上記に説明される解放機構にかかわらず、結合された化合物は、質量分析計によるイオン化および後続の質量分析のために、開放ポートインターフェースから質量分析計のイオン源に移送される。このように、マイクロタイタサンプルウェルプレートが、アッセイ容器調製モジュールおよび/またはアッセイモジュールによって調製され得、磁性ビーズの結合部位に結合するサンプルウェルに導入される化合物が、質量分析のために質量分析計の中に選択的に導入され、そのサンプルウェルに関連付けられた質量分析結果を作り出し得る。
【0119】
説明されるようなシステムは、各サンプルウェルからの質量分析結果をそのサンプルウェルに関連付けられたサンプル情報に関係づける分析モジュールによって、磁性ビーズの結合部位に結合する化合物の識別をさらに提供する。相関は、関連付けられたサンプルウェル情報およびそのサンプルウェルに関するサンプル情報に基づいて、質量分析結果からの各質量スペクトル内に出現する化合物を識別し得る。故に、システムは、特定のサンプルウェルの中に導入された化合物組および質量分析によって識別された化合物、すなわち、結合された化合物を識別するように動作する。
【0120】
本発明の代表的なシステムが、図12Aに図示される。同様の部分が、同様の番号によって参照される、本明細書において参照される全ての図と同様に、図12Aは、正確な縮尺率ではなく、ある寸法は、表現の明確化のために誇張される。図12Aでは、音響液滴射出(ADE)デバイスが、概して、11に示され、ADEデバイスは、概して、51に示される連続的流動サンプリングプローブ(本明細書では、開放ポートインターフェース(OPI)と称される)に向かってそのサンプリング先端53の中に入るように射出することが示される。
【0121】
音響液滴射出デバイス11は、13に示される第1のリザーバと、随意の第2のリザーバ31とを伴う少なくとも1つのリザーバを含む。いくつかの実施形態において、さらなる複数のリザーバが、提供され得る。各リザーバは、流体表面を有する流体サンプル、例えば、それぞれ、17および19に示される流体表面を有する第1の流体サンプル14と第2の流体サンプル16とを格納するように構成される。2つ以上のリザーバが、図12Aに図示されるように使用されるとき、リザーバは、両方、好ましくは、実質的に同じであり、実質的に音響的に区別不可能であるが、同じ構成は、要件ではない。
【0122】
ADEは、音響射出器33を備え、それは、音響放射発生器35と、流体表面の近傍の流体サンプル内の焦点47において発生させられる、音響放射を集束させるための集束手段37とを含む。図12Aに示されるように、集束手段37は、音響放射を集束させるための凹面39を有する単一の固体部品備え得るが、集束手段は、下記に議論されるような他の方法においても構築され得る。音響射出器33は、リザーバ13および15(したがって、流体14および16)に音響的に結合されると、流体表面17および19の各々から流体の液滴をそれぞれ射出するように、音響放射を発生させ、集束させるように適合される。音響放射発生器35および集束手段37は、単一のコントローラによって制御される単一のユニットとして機能し得るか、または、それらは、デバイスの所望の性能に応じて、独立して制御され得る。
【0123】
音響液滴射出器33は、各リザーバの外部表面と直接接触し得るか、または間接接触し得る。直接接触の場合、射出器をリザーバに音響的に結合するために、直接接触が、効率的な音響エネルギー伝達を確実にするように完全に形状適合であることが好ましい。すなわち、射出器とリザーバとは、篏合接触のために適合された対応する表面を有するべきである。したがって、音響結合が、集束手段を通して射出器とリザーバとの間に達成される場合、リザーバが、集束手段の表面外形に対応する外側表面を有することが望ましい。形状適合接触がなければ、音響エネルギー伝達の効率および精度は、損なわれ得る。加えて、多くの集束手段が、湾曲表面を有するので、直接接触アプローチは、特別に形成された逆表面を有するリザーバの使用を必要とし得る。
【0124】
最適に、音響結合が、図12Aに図示されるように、間接接触を通して射出器とリザーバの各々との間に達成される。図では、音響結合媒体41が、射出器33とリザーバ13の基部25との間に設置され、射出器およびリザーバが、互いから所定の距離に位置する。音響結合媒体は、音響結合流体、好ましくは、音響集束手段37とリザーバの下側との両方と形状適合接触する音響的に均質な材料であり得る。加えて、流体媒体が、流体媒体自体と異なる音響特性を有する材料が実質的に存在しないことを確実にすることが、重要である。示されるように、第1のリザーバ13は、音響集束手段37に音響的に結合され、音響放射発生器によって発生させられる音響波は、集束手段37によって音響結合媒体41の中に向かわせられ、音響結合媒体41は、次いで、音響放射をリザーバ13の中に伝送する。
【0125】
動作時、デバイスのリザーバ13および随意のリザーバ15が、それぞれ、図12Aに示されるように、第1および第2の流体サンプル14および16で充填される。音響射出器33は、リザーバ13の真下に位置付けられ、射出器とリザーバとの間の音響結合が、音響結合媒体41を用いて提供される。最初に、音響射出器は、サンプリング先端がリザーバ13内の流体サンプル14の表面17に面するように、OPI51のサンプリング先端53の真下に位置付けられる。射出器33およびリザーバ13が、サンプリング先端53の下方において適切に整列させられると、音響放射発生器35が、アクティブにされ、集束手段37によって、第1のリザーバの流体表面17の近傍の焦点47に向かわせられる音響放射を作り出す。結果として、液滴49が、流体表面17から、OPI51のサンプリング先端53における液体境界50に向かって、その中に射出され、それは、流動プローブ53内の溶媒と組み合わせられる。
【0126】
サンプリング先端53における液体境界50の外形は、図2に関連して下記により詳細に説明されるように、サンプリング先端53を越えて延びることから、OPI51の中に内向きに突出することまで、変動し得る。複数リザーバシステムでは、リザーバユニット(図示せず)、例えば、マルチウェルプレートまたは管ラックが、次いで、別のリザーバが射出器と整列するようにもたらされ、次の流体サンプルの液滴が射出され得るように、音響射出器に対して位置変更されることができる。流動プローブ内の溶媒が、連続的にプローブ通して循環し、液滴射出事象中の「飛沫同伴」を最小化し、または排除さえする。流体サンプル14および16は、そのために分析器具への移送が所望される任意の流体のサンプルであり、用語「流体」は、本明細書の前述に定義される。
【0127】
OPI51の構造も、図12Aに示される。任意の数の商業的に利用可能な連続的流動サンプリングプローブが、現状のままで、または修正された形態において使用されることができ、その全ては、当技術分野において周知であるように、実質的に同一の原理に従って動作する。図12Aに見られ得るように、OPI51のサンプリング先端53が、リザーバ13内の流体表面17から間隔を置かれ、それらの間に間隙55を伴う。間隙55は、空隙、または不活性ガスの間隙であり得るか、または、これは、ある他のガス状材料を含み得、リザーバ13内に、サンプリング先端53を流体14に接続する液体ブリッジは、存在しない。OPI51は、溶媒源から溶媒を受け取るための溶媒入口57と、溶媒入口57からサンプリング先端53に溶媒流動を輸送するための溶媒輸送毛細管59とを含み、検体を含む流体サンプル14の射出された液滴49が、溶媒と組み合わせられ、検体-溶媒希釈物を形成する。溶媒ポンプ(図示せず)が、溶媒輸送毛細管の中への溶媒流動の率、したがって、溶媒輸送毛細管59内の溶媒流動の率も同様に制御するために、溶媒入口57に動作可能に接続され、それと流体連通する。
【0128】
OPI51内の流体流動は、検体-溶媒希釈物を内側毛細管73によって提供される、サンプル輸送毛細管61を通して、分析器具への後続の移送のためのサンプル出口63に向かって搬送する。サンプル輸送毛細管61に動作可能に接続され、それと流体連通し、出口63からの出力率を制御するサンプリングポンプ(図示せず)が、提供されることができる。好ましい実施形態において、容量型ポンプが、溶媒ポンプ、例えば、蠕動ポンプとして使用され、サンプリングポンプの代わりに、吸引噴霧システムが、検体-溶媒希釈物が、サンプル出口63の外側を覆って流動するとき、ガス入口67(図12Aに簡略化された形態に示され、吸引噴霧器の特徴が、当技術分野において周知である限りにおいて)を介して噴霧ガス源65から導入される噴霧ガスの流動によって引き起こされるベンチュリ効果によってサンプル出口63から引き出されるように、使用される。検体-溶媒希釈物流動は、次いで、噴霧ガスがサンプル出口63を通過し、サンプル輸送毛細管61から出て行く流体と組み合わせられるときに発生させられる圧力降下によって、サンプル輸送毛細管61を通して上向きに引き上げられる。ガス圧力調整器が、ガス入口67を介してシステムの中へのガス流量を制御するために使用される。
好ましい様式において、噴霧ガスが、シース流動タイプの様式において、サンプル出口63またはその近傍において、サンプル輸送毛細管61の外側の上を覆って流動し、それは、検体-溶媒希釈物がサンプル出口63を横断して流動するようにサンプル輸送毛細管61を通して検体-溶媒希釈物を引き出す(サンプル出口63は、噴霧ガスとの混合時、サンプル出口における吸引を引き起こす)。
【0129】
溶媒輸送毛細管59およびサンプル輸送毛細管61は、外側毛細管71と、外側毛細管71の中に実質的に同軸方向に配置された内側毛細管73とによって提供され、内側毛細管73は、サンプル輸送毛細管を画定し、内側毛細管73と外側毛細管71との間の環状空間は、溶媒輸送毛細管59を画定する。
【0130】
システムは、外側毛細管71および内側毛細管73に結合された調節器75も含むことができる。調節器75は、互いに対して長手方向に外側毛細管先端77および内側毛細管先端79を移動するために適合されることができる。調節器75は、内側毛細管73に対して外側毛細管71を移動させることが可能である任意のデバイスであることができる。例示的調節器75は、限定ではないが、電動モータ(例えば、ACモータ、DCモータ、静電モータ、サーボモータ等)、油圧モータ、空気圧モータ、並進ステージ、およびそれらの組み合わせを含むモータであることができる。本明細書で使用されるように、「長手方向に」は、プローブ51の長さに沿って伸びる軸を指し、内側および外側毛細管73、71は、図1に示されるように、プローブ51の長手方向軸の周囲に同軸方向に配置されることができる。
【0131】
加えて、図12Aに図示されるように、OPI51は、概して、安定性および取り扱いのし易さのために、ほぼ円筒形の保持器81内に取り付けられ得る。
【0132】
図12Bは、サンプリングプローブ51の開放端内で受け取られる検体をイオン化し、質量分析するための本出願人の教示の種々の側面による例示的システム110のある実施形態を図式的に描写し、システム110は、液滴49をリザーバからサンプリングプローブ51の開放端の中に注入するように構成された音響液滴注入デバイス11を含む。図12Bに示されるように、例示的システム110は、概して、(例えば、エレクトロスプレー電極164を介して)1つ以上のサンプル検体を含む液体をイオン化チャンバ112の中に放出するための噴霧器補助イオン源160と流体連通するサンプリングプローブ51(例えば、開放ポートプローブ)と、イオン源160によって発生させられるイオンの下流処理および/または検出のためのイオン化チャンバ112と流体連通する質量分析器170とを含む。流体取り扱いシステム140(例えば、1つ以上のポンプ143と、1つ以上の導管とを含む)が、溶媒リザーバ150からサンプリングプローブ51への液体の流動、およびサンプリングプローブ51からイオン源160への液体の流動を提供する。例えば、図12Bに示されるように、溶媒リザーバ150(例えば、液体、脱離溶媒を含む)は、全て非限定的な例として、液体がポンプ143(例えば、往復ポンプ、ロータリ、歯車、プランジャ、ピストン、蠕動、隔膜ポンプ等の容量型ポンプ、または重力、インパルス、空気圧、電気運動、および遠心ポンプ等の他のポンプ)によって選択された体積率において送達され得る供給導管を介してサンプリングプローブ51に流体的に結合されることができる。下で詳細に議論されるように、サンプリングプローブ51の中への液体の流動、およびそれから外への液体の流動は、1つ以上の液滴が、サンプル先端53における液体境界50の中に導入され、続いて、イオン源160に送達され得るように、開放端においてアクセス可能なサンプル空間内で生じる。示されるように、システム110は、音響エネルギーを発生させるように構成された音響液滴注入デバイス11を含み、音響エネルギーは、(図12Aに描写されるような)リザーバ内に含まれる液体に印加され、1つ以上の液滴49がリザーバからサンプリングプローブ51の開放端の中に射出されることを引き起こす。コントローラ180が、音響液滴注入デバイス11に動作可能に結合されることができ、液滴をサンプリングプローブ51の中に注入するように、音響液滴注入デバイス11(例えば、集束手段、音響放射発生器、1つ以上のリザーバを音響放射発生器と整列するように位置付けるための自動化手段等)の任意の側面を動作させるように、または、非限定的例として、実質的に連続的に、または実験的プロトコルの選択された部分に関して本明細書に別様に議論されるように構成されることができる。
【0133】
図12Bに示されるように、例示的イオン源160は、高速噴霧ガス流動を供給する加圧ガス(例えば、窒素、空気、または希ガス)源65を含むことができ、高速噴霧ガス流動は、エレクトロスプレー電極164の出口端部を包囲し、出口端部から放出される流体と相互作用することによって、例えば、液体サンプル(例えば、検体-溶媒希釈物)の高速噴霧流動と噴射との相互作用をするサンプルプルームの形成および、114bおよび116bによるサンプリングのためのプルーム内のイオン解放を向上させる。噴霧ガスは、様々な流量、約0.1L/分~約20L/分の範囲内において供給されることができ、流量も、コントローラ180の影響下で(例えば、弁163の開放および/または閉鎖を介して)制御され得る。本教示の種々の側面によると、噴霧ガスの流量が、(例えば、コントローラ180の影響下で)調節され得、それによって、サンプリングプローブ51内での液体の流量が、例えば、噴霧ガスおよび検体-溶媒希釈物がエレクトロスプレー電極164から放出されているときの相互作用によって(例えば、ベンチュリ効果に起因して)発生させられる吸い込み/吸引力に基づいて調節され得ることを理解されたい。
【0134】
描写される実施形態において、イオン化チャンバ112は、大気圧に維持されることができるが、いくつかの実施形態において、イオン化チャンバ112は、大気圧より低い圧力まで排出されることもできる。検体が検体-溶媒希釈物がエレクトロスプレー電極164から放出されるにつれてイオン化され得るイオン化チャンバ112は、カーテンプレート開口114bを有するプレート114aによって、ガスカーテンチャンバ114から分離される。示されるように、質量分析器170を格納する真空チャンバ116が、真空チャンバサンプリングオリフィス116bを有するプレート116aによって、カーテンチャンバ114から分離される。カーテンチャンバ114および真空チャンバ116は、1つ以上の真空ポンプポート118を通した排出によって、選択される圧力(例えば、同一または異なる亜大気圧、イオン化チャンバより低い圧力)に維持されることができる。
【0135】
質量分析器170が、様々な構成を有し得ることがまた、当業者によって、本明細書の教示に照らして理解されるであろう。概して、質量分析器170は、イオン源160によって発生させられるサンプルイオンを処理(例えば、濾過、選別、解離、検出等)するように構成される。非限定的な例として、質量分析器170は、当技術分野において公知であり、本明細書における教示に従って修正される、三連四重極質量分析計または任意の他の質量分析器であることができる。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の種々の側面に従って修正され得る他の非限定的な例示的質量分析計システムは、例えば、James W. HagerおよびJ. C. Yves Le Blancによって執筆され、Rapid Communications in Mass Spectrometry(2003;17:1056-1064)において公開された、「Product ion scanning using a Q-q-Qlinear ion trap(Q TRAP(登録商標))mass spectrometer」と題された論説、および「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された、米国特許第7,923,681号(参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる)において見出されることができる。限定ではないが、本明細書に説明されるものと、当業者に公知である他のものとを含む、他の構成も、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法と併せて利用されることができる。例えば、他の好適な質量分析計は、単一四重極、三連四重極、ToF、トラップ、およびハイブリッド分析器を含む。例えば、イオン化チャンバ112と質量分析器170との間に配置され、それらの質量/電荷比ではなく、高場および低場におけるドリフトガスを通したそれらの移動度に基づいて、イオンを分離するように構成されたイオン移動度分析計(例えば、微分移動度分光計)を含む任意の数の追加の要素が、システム110内に含まれ得ることをさらに理解されたい。加えて、質量分析器170が、分析器170を通過するイオンを検出し得、例えば、検出される秒あたりのイオンの数を示す信号を供給し得る検出器を備え得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
【国際調査報告】