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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/591 20210101AFI20240220BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240220BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240220BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240220BHJP
   H01M 6/10 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20240220BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240220BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/058
H01M50/586
H01M6/10 Z
H01M6/16 D
H01G11/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548322
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021076725
(87)【国際公開番号】W WO2022174369
(87)【国際公開日】2022-08-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杜昌朝
【テーマコード(参考)】
5E078
5H024
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA06
5E078AB01
5E078BA09
5E078BA75
5E078ZA01
5H024BB08
5H024BB09
5H024CC12
5H024CC20
5H024EE06
5H024EE09
5H024HH01
5H024HH13
5H024HH15
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC12
5H028EE05
5H028EE06
5H028EE10
5H028HH01
5H028HH05
5H028HH10
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ14
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ03
5H029HJ04
5H029HJ12
5H029HJ20
5H043AA04
5H043AA19
5H043BA01
5H043BA11
5H043BA19
5H043BA20
5H043BA22
5H043BA26
5H043CA12
5H043GA22
5H043GA29
5H043HA22
5H043KA13
5H043KA22
5H043KA26
5H043KA29
5H043KA30
5H043KA35
5H043LA01
5H043LA02
5H043LA14
5H043LA21
5H043LA32
(57)【要約】
【課題】打ち抜きに使用される金型が使用頻度の増加に伴い、そのエッジのバリ及び材料の脱落が発生するリスクを低減することができる電気化学装置及び電子装置を提供する。
【課題解決】
本発明は、負極と、正極と、セパレータとを具備し、負極は、負極集電体の一方側の表面に負極活物質層が設けられており、正極は、正極集電体の少なくとも一方側の表面に正極活物質層が設けられており、正極集電体のタブ部に近い側の表面に絶縁層が設けられており、セパレータは、負極と正極との間に設けられており、正極活物質層と負極活物質層はセパレータを介して対向しており、負極活物質層の外端縁は、負極活物質層に対向する正極活物質層の外端縁よりも外側に位置し、絶縁層の内端縁は正極活物質層の外端縁に接し又は部分的に重なり合い、絶縁層の外端縁と負極活物質層の外端縁とは揃っており、又は負極活物質層の外端縁よりも外側に位置する、電気化学装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と、正極と、セパレータとを含む電気化学装置であって、
前記負極は、負極集電体を含み、前記負極集電体の少なくとも一方側の表面に負極活物質層が設けられており、
前記正極は、正極集電体を含み、前記正極集電体の少なくとも一方側の表面に正極活物質層が設けられており、前記正極集電体のタブ部に近い側の表面に絶縁層が設けられており、
前記セパレータは、前記負極と前記正極との間に設けられており、前記正極活物質層と前記負極活物質層は前記セパレータを介して対向しており、
前記負極活物質層の外端縁は、前記負極活物質層に対向する前記正極活物質層の外端縁よりも外側に位置し、
前記絶縁層の内端縁は前記正極活物質層の外端縁に接し又は部分的に重なり合い、前記絶縁層の外端縁と前記負極活物質層の外端縁とは揃っており、又は前記負極活物質層の外端縁よりも外側に位置する、電気化学装置。
【請求項2】
前記正極集電体の前記タブ部から離れる側の表面に前記絶縁層が設けられている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記絶縁層の外端縁が前記負極活物質層の外端縁を超える部分の幅をAとしたとき、Aは、A≦3mmを満たす、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記絶縁層の幅をA'としたとき、A'は、0.2mm≦A'≦10mmを満たす、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記負極活物質層の外端縁が前記正極活物質層の外端縁を超える部分の幅をBとしたとき、Bは、0.2mm≦B≦5mmを満たす、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記絶縁層の厚さをTとし、前記正極活物質層の厚さをTとしたとき、TとTは、0μm≦T-T≦10μmを満たす、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記絶縁層の厚さをTとし、前記正極活物質層の厚さをTとしたとき、TとTは、10μm≦T≦Tを満たす、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記絶縁層は無機材料及び接着剤を含み、
前記無機材料は、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、およびオルトケイ酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含み、
前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアクリル酸塩、スチレンブタジエンゴム、ポリエーテルイミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記絶縁層の全重量に対して、前記無機材料の重量分率は60%~93%であり、前記接着剤の重量分率は7%~40%である、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記絶縁層の抵抗は1KΩ以上である、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの電気化学装置は、比エネルギーが高く、メモリー効果がなく、環境に優しい等の特性を有し、通信機器、ノートパソコン、デジタルカメラ等の電子製品及び電動自動車に広く用いられている。技術の急速な発展と市場需要の多様性に伴い、安全性能などの電気化学装置の性能に対する要求が高まっている。
【0003】
リチウムイオン電池の安全性能に影響を与える要因はたくさんあり、一例として、巻回型リチウムイオン電池の製造工程において、極片の打ち抜き工程が行われる場合、打ち抜きに使用される金型が使用頻度の増加に伴い、そのエッジのバリ及び材料の脱落が発生するリスクが高まっている。打ち抜きの過程で極片にバリ又は材料の脱落が発生すると、セパレータを突き破って短絡を引き起こし、安全上のリスクを招く可能性がある。別の例として、電池のリチウムの析出は電池の発火又は爆発の確率の増加を引き起こし、安全上のリスクを招く可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施例では、本発明は、負極と、正極と、セパレータとを含む電気化学装置であって、前記負極は、負極集電体を含み、前記負極集電体の少なくとも一方側の表面に負極活物質層が設けられており、前記正極は、正極集電体を含み、前記正極集電体の少なくとも一方側の表面に正極活物質層が設けられており、前記正極集電体のタブ部に近い側の表面に絶縁層が設けられており、前記セパレータは、前記負極と前記正極との間に設けられており、前記正極活物質層と前記負極活物質層は前記セパレータを介して対向しており、前記負極活物質層の外端縁は、前記負極活物質層に対向する前記正極活物質層の外端縁よりも外側に位置し、前記絶縁層の内端縁は前記正極活物質層の外端縁に接し又は部分的に重なり合い、前記絶縁層の外端縁と前記負極活物質層の外端縁とは揃っており、又は前記負極活物質層の外端縁よりも外側に位置する電気化学装置を提供する。
【0005】
いくつかの実施例では、前記タブ部は前記正極集電体から突き出ている。
【0006】
いくつかの実施例では、前記正極集電体の前記タブ部から離れる側の表面に前記絶縁層が設けられている。
【0007】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の外端縁が前記負極活物質層の外端縁を超える部分の幅をAとしたとき、Aは、A≦3mmを満たす。
【0008】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の幅をA'としたとき、A'は、0.2mm≦A'≦10mmを満たす。
【0009】
いくつかの実施例では、前記負極活物質層の外端縁が前記正極活物質層の外端縁を超える部分の幅をBとしたとき、Bは、0.2mm≦B≦5mmを満たす。
【0010】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の厚さをTとし、前記正極活物質層の厚さをTとしたとき、TとTは、0μm≦T-T≦10μmを満たす。
【0011】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の厚さをTとしたとき、Tは、10μm≦T≦Tを満たす。
【0012】
いくつかの実施例では、前記絶縁層は、無機材料及び接着剤を含み、前記無機材料は、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、およびオルトケイ酸カルシウムのうちの少なくとも1種を含み、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアクリル酸塩、スチレンブタジエンゴム、ポリエーテルイミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種を含む。
【0013】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の全重量に対して、前記無機材料の重量分率は60%~93%であり、前記接着剤の重量分率は7%~40%である。
【0014】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の抵抗は1KΩ以上である。
【0015】
本発明は、本発明の前記電気化学装置を含む電子装置をさらにを提供する。本発明の技術的解決策は、少なくとも以下の有益な効果を有する。本発明の電気化学装置に設けられる絶縁層は、打ち抜きで発生するバリ及び材料の脱落を低減するとともに、負極活物質層のエッジ領域に対する支持を提供することができ、それにより、負極活物質層のエッジ領域とセパレータとの間をより緊密に結合させ、負極エッジ領域の抵抗を低減し、負極エッジの動力学を改良し、負極エッジのリチウムの析出を改良し、電気化学装置の発火又は爆発の確率を低減し、電気化学装置の安全性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は本発明の一実施形態における電極体の断面図の一部であり、図1(b)は図1(a)の分解図であり、図1(c)は、本実施形態の電極体の一部を正極側から見た模式図である。
図2図2(a)は本発明の別の一実施形態における電極体の断面図の一部であり、図2(b)は図2(a)の分解図であり、図2(c)は、本実施形態の電極体の一部を正極側から見た模式図である。
図3図3(a)は本発明の別の一実施形態における電極体の断面図の一部であり、図3(b)は図3(a)の分解図であり、図3(c)は、本実施形態の電極体の一部を正極側から見た模式図である。
図4図4(a)は本発明の別の一実施形態における電極体の断面図の一部であり、図4(b)は図4(a)の分解図であり、図4(c)は、本実施形態の電極体の一部を正極側から見た模式図である。
図5図5(a)は本発明の別の一実施形態における電極体の断面図の一部であり、図5(b)は図5(a)の分解図であり、図5(c)は、本実施形態の電極体の一部を正極側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
開示された実施例は本発明の例にすぎず、本発明は様々な形で実施することができるので、本開示における具体的な詳細は限定的なものと解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、かつ表示的な基礎として、当業者に様々な形態で本発明を実施するように教示するために用いられることが理解されるべきである。
【0018】
本発明の説明において、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「内」、「外」などの用語で示される方位または位置関係は、図面に基づいて示される方位または位置関係であり、本発明を説明し、説明を簡略化する便宜のためのみであり、言及される装置または要素が特定の方位を持っていなければならない、特定の方位で構成され、動作しなければならないことを指示または示唆するものではないことを理解すべきである。
(電気化学装置)
【0019】
本発明の電気化学装置は、例えば一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタである。二次電池は、例えばリチウム二次電池であり、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むが、これらに限定されるものではない。
【0020】
いくつかの実施例では、電気化学装置は、負極、正極及びセパレータを含む。
【0021】
図1(a)~図5(c)を参照し、負極20は負極集電体21を含み、負極集電体21の少なくとも一方側の表面に負極活物質層22が設けられており、正極10は正極集電体11を含み、正極集電体11の少なくとも一方側の表面に正極活物質層12が設けられており、セパレータ30は負極20と正極10との間に設けられており、正極活物質層12と負極活物質層22がセパレータ30を介して対向しており、負極活物質層の外端縁22aは前記負極活物質層に対向する正極活物質層の外端縁12aよりも外側に位置する。
【0022】
各方位を明確に説明するために、図1(a)~図5(c)に幅方向(図面にWで示す)及び厚さ方向(図面にTで示す)を示し、幅方向は長さ方向に対するものであり、巻回型電池の帯状正極を例として、長尺矩形の正極集電体の長辺の延在方向を長さ方向とみなし、幅方向は長さ方向と直交する方向とする。図1(a)~図5(c)に示すように、幅方向の両端において、正極活物質層12の正極集電体のエッジに近い端縁が正極活物質層の外端縁12aであり、負極活物質層22の負極集電体のエッジに近い端縁が負極活物質層の外端縁22aである。
【0023】
電池の短絡を防止し、正極活物質層12から脱離されるリチウムイオンが完全に負極活物質層22によって受け入れることを確保して正極活物質層12の負極活物質層22を超える部分でのリチウム析出という安全上のリスクを回避するために、負極活物質層22の幅は、正極活物質層12よりも広く設計されており、それにより、負極片にオーバーハング(overhang)領域が存在している。本発明では、負極活物質層の外端縁22aは、前記負極活物質層に対向する正極活物質層の外端縁12aよりも外側に位置するように設計される。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の外端縁22aが前記正極活物質層の外端縁12aを超える部分の幅をBとしたとき、Bは、0.2mm≦B≦5mmを満たす。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の外端縁22aが前記正極活物質層の外端縁12aを超える部分の幅をBとしたとき、Bは、0.5mm≦B≦5mmを満たす。いくつかの実施例では、前記負極活物質層の外端縁22aが前記正極活物質層の外端縁12aを超える部分の幅をBとしたとき、Bは、0.8mm≦B≦2mmを満たす。
【0024】
しかし、発明者は、負極活物質層22の幅が正極活物質層12より大きいと、正極活物質層の外端縁12aと対応する負極活物質層22の近傍の抵抗が大きく、負極エッジ領域の動力学が低下し、リチウムの析出が発生しやすくなり、安全上のリスクが生じる、ことを発見した。充電レートを下げる方法で負極の充電過程での分極による抵抗を下げる場合、負極エッジでのリチウムの析出は回避できるが、充電レートを下げると充電時間が長くなり、顧客の使用体験と製品競争力が大幅に低下する。負極活物質の動力学を向上させ、負極活物質の割合を増加させ、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)の代わりにCMC-Li(カルボキシメチルセルロースリチウム)を使用し、又は、負極エッジ領域の動力学を向上させるためにスチレンブタジエンゴム系接着剤の代わりにスチレンアクリル系接着剤を使用するなど、より優れた動力学を持つ接着剤を使用する場合、一定の効果はあるものの、これらの方法による動力学の向上はすでにボトルネック期にまで発展しており、現状のままで向上を続けることは困難である。
【0025】
本発明では、正極集電体11に絶縁層13を設置し、かつ、絶縁層13と正極活物質層12と負極活物質層22との位置及び寸法関係を設置することによって、負極エッジ領域の抵抗を低減することができ、負極エッジの動力学を改良し、負極エッジのリチウムの析出を改良し、電気化学装置の発火又は爆発の確率を低減することができる。
【0026】
絶縁層13は、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面のみに設けられてもよく、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面及び正極集電体11のタブ部40から離れる側の表面の両方に設けられてもよい。
【0027】
本発明では、タブ部40とは、極片の塗布時に取り分けられた集電体エッジの空の箔領域であり、いくつかの実施例では、タブ部40は集電体から突き出ている。ロールプレス及びスリットした後、巻回する前に集電体のエッジの空の箔領域を裁断処理して、タブを形成することができる。
【0028】
いくつかの実施例では、図1(a)~図1(c)における電極体の一部に示すように、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面に絶縁層13が設けられており、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aに接し、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aよりも外側に位置する。いくつかの実施例では、図2(a)~図2(c)における電極体の一部に示すように、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面に絶縁層13が設けられており、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aに接し、絶縁層の外端縁13aと負極活物質層の外端縁22aとは揃っている。
【0029】
この時、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面に絶縁層13が設けられているため、絶縁層13が設けられている極片に対して打ち抜きを行う際に、打ち抜きで発生するバリ及び材料の脱落を低減することができ、電気化学装置の安全性能を改良することができる。同時に、タブ部13に近い一端側において、正極10に絶縁層13が設けられており、かつ、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aに接し、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aよりも外側に位置し、又は絶縁層の外端縁13aと負極活物質層の外端縁22aとは揃っているため、電池を加圧してフォーメーションする際に、この端側の正極の絶縁層13が負極活物質層のエッジ領域を支持することができるため、負極活物質層のエッジ領域とセパレータとの間をより緊密に結合させ、それにより、負極エッジ領域の抵抗を低減し、負極エッジの動力学を改良することができる。絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aよりも内側に位置すると、負極活物質層22のエッジの絶縁層を超える部分が支持されない状態になり、電池を加圧してフォーメーションする際に、この超える部分とセパレータとの間の結合は緊密ではなく、電子輸送距離が大きく、抵抗が大きく、リチウムが析出しやすい。
【0030】
スラリーを塗布する工程では、絶縁層13のスラリー及び正極活物質層12のスラリーを正極集電体11の表面に塗布する際に、絶縁層のスラリーが正極活物質層のスラリーのエッジに沿って塗布される。そのため、絶縁層のスラリーが正極活物質層のスラリーと部分的に重なり合う可能性があり、正極活物質層12と絶縁層13との重なり合う部14が形成される。いくつかの実施例では、図3(a)~図3(c)における電極体の一部に示すように、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面に絶縁層13が設けられており、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aと部分的に重なり合い、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aよりも外側に位置する。いくつかの実施例では、図4(a)~図4(c)における電極体の一部に示すように、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面に絶縁層13が設けられており、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aと部分的に重なり合い、絶縁層の外端縁13aと負極活物質層の外端縁22aとは揃っている。
【0031】
いくつかの実施例では、図5(a)~図5(c)における電極体の一部に示すように、正極集電体11のタブ部40に近い側の表面及びタブ部40から離れる側の表面には、絶縁層13が設けられており、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aに接し、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aよりも外側に位置する。
【0032】
正極集電体11のタブ部40に近い側の表面及び正極集電体11のタブ部40から離れる側の表面の両方に絶縁層13が設けられると、絶縁層の内端縁13bが正極活物質層の外端縁12aと部分的に重なり合ってもよく、絶縁層の外端縁13aと負極活物質層の外端縁22aとは揃ってもよい。具体的には、絶縁層12が正極集電体11のタブ部40に近い側の表面にのみ設けられる場合と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
この時、正極集電体11のタブ部40から離れる側の表面にも絶縁層13が設けられるため、正極活物質層12と絶縁層13との合計の幅が負極活物質層22の幅より大きくなる。そのため、電池を加圧してフォーメーションする際に、負極片のオーバーハング領域が全部に絶縁層によって支持されることができ、負極活物質層のエッジ領域とセパレータとの間をより緊密に結合させることができる。
【0034】
いくつかの実施例では、前記絶縁層は無機材料を含む。本発明では、当分野で公知の一般的に使用されている無機材料を使用することができる。いくつかの実施例では、前記無機材料は、硫酸バリウム(BaSO)、ケイ酸カルシウム(CaSiO)、酸化アルミニウム(Al)、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、およびオルトケイ酸カルシウム(CaSiO)のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例では、前記絶縁層の全重量に対して、前記無機材料の重量分率は60%~93%である。いくつかの実施例では、前記絶縁層の全重量に対して、前記無機材料の重量分率は80%~93%である。
【0035】
いくつかの実施例では、前記絶縁層は接着剤も含む。前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアクリル酸塩、スチレンブタジエンゴム、ポリエーテルイミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例では、前記絶縁層の全重量に対して、前記接着剤の重量分率は7%~40%である。
【0036】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の抵抗は1KΩ以上であり、それにより、正極集電体の打ち抜き中のバリの発生及び絶縁層の電子輸送の発生を防止することができ、それより、正極集電体のバリとセパレータとを隔離する役割を果たすことができる。絶縁層の抵抗のテストについては、内部抵抗計でテストを行うことができる。内部抵抗計の接触子をアルコールに浸した無塵紙で拭き、テスト治具の電源をオンにし、接触子の圧力を0.5MPaに調整し、テスト極片を下部接触子に置き、デバイスを起動し、上部接触子で極片を3-5s押し下げ、極片の抵抗値を絶縁層の抵抗として記録する。
【0037】
いくつかの実施例では、図1(a)~図5(c)に示すように、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aを超える部分の幅をAとしたとき、Aは、A≦3mmを満たす。絶縁層の外端縁が負極活物質層の外端縁を超える部分の幅Aが大きすぎると、それに対応してセパレータの幅を増加することが必要であり、電気化学装置のエネルギー密度の損失を招き、かつAが3mmを超えても、負極エッジのリチウムの析出に対して更なる改良効果がなく、又は負極エッジのリチウムの析出に対して更なる改良効果が弱い。いくつかの実施例では、絶縁層の外端縁13aが負極活物質層の外端縁22aを超える部分の幅をAとしたとき、Aは、1.5mm≦A≦3mmを満たす。
【0038】
いくつかの実施例では、図1(a)~図5(c)に示すように、絶縁層13の幅をA'としたとき、A'は、0.2mm≦A'≦10mmを満たす。本発明では、絶縁層の幅は、正極活物質層の一方側にある絶縁層の幅を指し、即ち、絶縁層の外端縁が正極活物質層の外端縁を超える部分の幅を指す。絶縁層の幅A'が大きすぎると、それに対応してセパレータの幅を増加することが必要であり、電気化学装置のエネルギー密度の損失を招き、かつAが10mmを超えても、負極エッジのリチウムの析出に対して更なる改良効果がなく、又は負極エッジのリチウムの析出に対して更なる改良効果が弱い。絶縁層の幅A'が小さすぎると、効果的に打ち抜きで発生するバリ及び材料の脱落を低減することができず、安全性能に対する改良効果に影響を与える。いくつかの実施例では、前記絶縁層13の幅をA'としたとき、A'は、1mm≦A'≦5mmを満たす。いくつかの実施例では、前記絶縁層13の幅をA'としたとき、A'は、3mm≦A'≦5mmを満たす。
【0039】
本発明の実施形態では、電池の幅に対する影響を低減し、電気化学装置のエネルギー密度の損失を避けるために、正極活物質層12及び絶縁層13の合計の幅はセパレータ30の幅以下である。
【0040】
絶縁層の厚さは、負極活物質層のエッジ領域に対する絶縁層の支持効果に影響を与える。いくつかの実施例では、前記絶縁層の厚さをTとし、前記正極活物質層の厚さをTとしたとき、TとTは、0μm≦T-T≦10μmを満たす。絶縁層の厚さが正極活物質層の厚さに対して小さすぎると、負極活物質層のエッジ領域に対する絶縁層の支持効果が弱くなり、負極エッジのリチウムの析出の改良効果に影響を与える。絶縁層の厚さが正極活物質層の厚さよりも大きいと、コールドプレスの時に所定の圧縮密度(compacted density)を達成することが困難になり、更に、電気化学装置のエネルギー密度に影響を与える。いくつかの実施例では、前記絶縁層の厚さをTとし、前記正極活物質層の厚さをTとしたとき、TとTは、0μm≦T-T≦2μmを満たす。
【0041】
いくつかの実施例では、前記絶縁層の厚さをTとしたとき、Tは、10μm≦T≦Tを満たす。
【0042】
なお、本発明では、絶縁層の厚さTとは、正極集電体の片側の表面に設けられる絶縁層の厚さであり、正極活物質層の厚さTとは、正極集電体の片側の表面に設けられる正極活物質層の厚さである。
【0043】
いくつかの実施例では、負極集電体は金属であり、例えば銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、導電性金属によって被覆されるポリマー基板またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質としては、電気化学装置に使用可能な、活性イオンを吸蔵・放出できる材料や、活性イオンをドープ・脱ドープできる材料から選択して使用することができる。いくつかの実施例では、負極活物質は炭素材料、金属合金、リチウム含有酸化物及びケイ素含有材料のうちの少なくとも1種を含む。負極の製造方法は、電気化学装置に使用できる負極の製造方法を採用することができる。いくつかの実施例では、負極スラリーの調製では、通常、溶媒、負極活物質、負極結着剤を添加し、必要に応じて導電材料及び増粘剤を添加した後、溶媒に溶解または分散させて、負極スラリーを作制する。溶媒は乾燥過程で揮発除去される。溶媒は負極活物質層に使用できる溶媒であり、溶媒は例えば水であるが、これに限定されるものではない。増粘剤は負極活物質層に使用できる増粘剤であり、増粘剤は例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略称する)であるが、これに限定されるものではない。本発明では、負極活物質層における負極活物質、負極結着剤及び増粘剤の混合割合は、特に制限されなく、所望の電気化学装置の性能に応じて制御することができる。
【0045】
いくつかの実施例では、正極集電体は金属であり、例えば銅箔、アルミ箔であるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
正極活物質層は正極活物質を含み、正極活物質としては、電気化学装置の正極活物質として使用でき、活性イオンを可逆的に吸蔵・放出できる材料から選択して使用することができる。いくつかの実施例では、正極活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn2-y、LiNiCoMn1-x-y-zのうちの少なくとも1種を含み、ここで、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、Sr、V、Tiからなる群から選ばれる1種又は複種であり、かつ、0≦y≦1、0≦x≦1、0≦z≦1、x+y+z≦1を満たす。正極の製造方法は、電気化学装置に使用できる正極の製造方法を採用することができる。いくつかの実施例では、正極スラリーの調製では、通常、溶媒、正極活物質、結着剤を添加し、必要に応じて導電剤及び増粘剤を添加した後、溶媒に溶解または分散させて、正極スラリーを作制する。溶媒は乾燥過程で揮発除去される。溶媒は正極活物質層に使用できる溶媒であり、溶媒は例えばN-メチルピロリドン(NMP)であるが、これに限定されるものではない。結着剤は正極活物質層に使用できる結着剤であり、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)であるが、これに限定されるものではない。導電剤は正極活物質層に使用できる導電剤であり、例えばSuper Pであるが、これに限定されるものではない。本発明では、正極活物質における正極活物質、正極結着剤及び正極導電剤の混合割合は、特に制限されなく、所望の電気化学装置の性能に応じて制御することができる。
【0047】
セパレータは、当分野で電気化学装置に使用できるセパレータである。本発明では、セパレータの材料及び形状は、特に制限されない。
【0048】
電気化学装置は、電解液も含む。電解液は当分野で電気化学装置に使用できる電解液である。いくつかの実施例では、電解液は有機溶媒、電解質塩及び添加剤を含む。いくつかの実施例では、電解質塩はリチウム塩から選ぶものである。いくつかの実施例では、リチウム塩はLiPFから選ぶものである。
【0049】
いくつかの実施例では、電気化学装置は、外装ケースも含む。外装ケースは当分野で電気化学装置に使用でき、かつ使用する電解液に対して安定な外装ケースであり、例えば金属系外装ケースであるが、これに限定されるものではない。
【0050】
いくつかの実施例では、タブ部は、複数の正極タブ及び複数の負極タブを含む。複数のタブは、電気化学装置の充放電時の電子チャンネルを増加させ、分極とセル発熱を小さくすることができる。いくつかの実施例では、正極タブ及び負極タブの数はそれぞれセル層の数と等しく、又は正極タブ及び負極タブの数はそれぞれセル層の数の1/2である。正極タブと負極タブはセルを巻回した後に重ねられ、それぞれニッケル・アルミ金属シートと溶接接続する。
(電子装置)
【0051】
本発明にかかる電子装置は、例えば、ノートパソコン、ペン入力型パソコン、モバイルパソコン、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス、ポータブル複写機、ポータブルプリンター、ヘッドマウントステレオヘッドホン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュランプ、カメラ、家庭用大型蓄電池、リチウムイオンキャパシタのような任意の電子装置であるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明の電気化学装置は、上記に挙げた電子装置のほか、エネルギー貯蔵発電所、海上運送工具、航空運送工具にも適用される。航空運送装置は、大気圏内の航空運送装置と大気圏外の航空運送装置を含む。
【0052】
いくつかの実施例では、電子装置は本発明の上記の電気化学装置を含む。
【0053】
以下、実施例と合わせて、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するためのものではないことが理解されるべきである。本発明の下記の具体的な実施例では、電池がリチウムイオン電池である実施例のみを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。下記の実施例、比較例において、使用した試薬、材料および機器は、特に断りのない限り、市販または合成して入手することができる。
実施例1
【0054】
ステップS1:正極活物質であるコバルト酸リチウム、導電剤であるSuper P、結着剤であるPVDFを98:1:1の重量比で適量のNMP中で十分に攪拌し混合して、均一に混合された正極スラリーを得た。無機材料であるBaSO4と接着剤であるPVDFとを93:7の重量比で適量のNMP中で十分に攪拌し混合して、均一に混合された絶縁スラリーを得た。
【0055】
ステップS2:作製した正極スラリーを押出コーターで正極集電体であるアルミ箔の片面に塗布し、塗布の厚さは30μmであり、絶縁スラリーを正極スラリーのエッジに沿って正極スラリーのタブ部に近い側に塗布し、絶縁スラリーの塗布の幅は3.5mmであり、塗布の厚さは30μmであり、乾燥後、正極集電体であるアルミ箔の反対面にも同様に塗布し、乾燥し、コールドプレスして正極片を得た。
【0056】
ステップS3:負極活物質である黒鉛、結着剤であるスチレンブタジエンゴム、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースリチウムを97.5:1.3:1.2の重量比で適量の脱イオン水中で十分に攪拌し混合して、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを押出コーターで負極集電体である銅箔の片面に塗布し、乾燥後、負極集電体である銅箔の反対面にも同様に塗布し、乾燥し、コールドプレスして負極片を得た。
【0057】
ステップS4:PE多孔質高分子フィルムをセパレータとして使用し、セパレータを負極片と正極片との間に配置し、正極活物質層と負極活物質層とをセパレータを介して対向させ、負極活物質層の外端縁が正極活物質層の外端縁を2mm超えており、絶縁層の外端縁が負極活物質層の外端縁を1.5mm超えた。
【0058】
ステップS5:積層したセパレータ、負極片及び正極片を巻回して電子組立体を制作し、パッケージして、電解液を注入して静置して、十分に含浸されていない電子組立体を得た。そして、フォーメーションおよび容量工程を経てリチウムイオン電池を得た。
実施例2~21
【0059】
実施例2~21は、絶縁層、正極活物質層、負極活物質層のパラメータを調整した点以外は、実施例1の製造方法と同じであった。
実施例22
【0060】
実施例22は、絶縁スラリーを正極スラリーのエッジに沿って正極スラリーの両側(タブ部に近い側及びタブ部から離れる側)に塗布し、絶縁スラリーの各側の塗布幅は8mmであり、かつ、実施例22ではほかの絶縁層、正極活物質層、負極活物質層のパラメータを調整した点以外は、実施例1の製造方法と同じであった。
実施例23
【0061】
実施例23は、絶縁層、正極活物質層、負極活物質層のパラメータを調整した点以外は、実施例22の製造方法と同じであった。
実施例24
【0062】
実施例24は、絶縁層、正極活物質層、負極活物質層のパラメータを調整した点以外は、実施例5の製造方法と同じであった。
比較例1~2
【0063】
比較例1~2は、絶縁層、正極活物質層、負極活物質層のパラメータを調整した点以外は、実施例1の製造方法と同じであった。比較例1~2では、負極活物質層の外端縁は絶縁層の外端縁よりも外側に位置した。
【0064】
実施例1~24及び比較例1~2におけるパラメータは、表1に示す通りであった。
リチウムイオン電池の性能テスト:
【0065】
熱破壊(Hotbox)テスト:
1)20±5℃で、電池を0.5Cで3.0Vまで放電し、5min放置し、
2)0.5Cで4.45Vまで充電し、0.05C(4.45Vシステム)まで定電圧充電し、
3)20±5℃で60min静置し、
4)5℃/min±2℃/minのレートで130℃±2℃まで昇温し、60min保持し、
5)テスト終了後に、セル外観を検査し、電池が発火すると、テストが不合格になった。
【0066】
25℃ 3Cリチウム析出テスト:
テストは25℃の環境で行い、
1)電池を30min放置し、
2)0.5Cで4.45Vまで充電し、0.05Cまで定電圧充電し、
3)5min放置し、
4)0.5Cで3Vまで放電し、
5)60min放置し、
6)3Cで4.45Vまで充電し、0.05Cまで定電圧充電し、
7)5min放置し、
8)1Cで3Vまで放電し、
9)5min放置し、
10)ステップ6)~ステップ9)を10回繰り返し、
11)120min放置し、
12)3Cで4.45Vまで充電し、0.05Cまで定電圧充電し
13)5min放置し、リチウムイオン電池のリチウム析出の状態を観察し、以下の基準に従って分類した。
【0067】
リチウムイオン電池を分解して負極片が得られ、黄金色が正常領域であり、白色がリチウム析出領域であった。高倍率(20倍以上)の顕微鏡で写真を撮影し、異なる領域を分析した。全面積に占める白色領域の割合nが0<n<1%を満たす場合、「リチウム析出なし」と記録された。全面積に占める白色領域の割合nが1%<n<10%を満たす場合、「軽度のリチウム析出」と記録された。全面積に占める白色領域の割合nが10%<n<100%を満たす場合、「重度のリチウム析出」と記録された。
【0068】
【表1】
【0069】
表1のデータ解析からわかるように、負極活物質層の外端縁が前記負極活物質層に対向する正極活物質層の外端縁よりも外側に位置し、正極集電体のタブ部に近い側に絶縁層が設けられており、かつ絶縁層の内端縁が正極活物質層の外端縁に接し又は部分的に重なり合い、絶縁層の外端縁と負極活物質層の外端縁とは揃っており、又は負極活物質層の外端縁よりも外側に位置する場合、リチウムイオン電池の負極のリチウム析出状態を改良でき、かつ熱破壊テストの合格率を向上させることができる。比較例1及び比較例2では、正極集電体のタブ部に近い側に絶縁層が設けられているが、セルを制作した後に、負極活物質層の外端縁が絶縁層の外端縁よりも外側に位置するため、絶縁層が負極活物質層のエッジ領域を支持できず、負極のリチウム析出が発生しやすくなり、かつ熱破壊テストの合格率が低くなる。
【0070】
絶縁層の厚さは、負極のリチウム析出及びリチウムイオン電池の熱破壊テストの合格率の改良効果に影響を与える。実施例8~12のデータからわかるように、絶縁層の厚さが小さすぎると、負極のリチウム析出及びリチウムイオン電池の熱破壊テストの合格率の改良効果が悪くなる。
【0071】
絶縁層の組成及び抵抗は、リチウムイオン電池の熱破壊テストの合格率の改良効果に影響を与える。実施例9、14~21のデータからわかるように、絶縁層中の無機材料の質量割合が小さすぎると、絶縁層の抵抗が低くなり、リチウムイオン電池の熱破壊テストの合格率の改良効果が悪くなる。
【0072】
上記の詳細な説明は、複数の例示的な実施形態を説明したが、本明細書では明示的に開示された組み合わせに限定することを意図するものではない。したがって、特に断らない限り、本明細書において開示される様々な特徴を組み合わせて、簡明化のために示されていない複数の追加の組み合わせを形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
正極:10、正極集電体:11、正極活物質層:12、正極活物質層の外端縁:12a、絶縁層:13、絶縁層の外端縁:13a、絶縁層の内端縁:13b、正極活物質層と絶縁層との重なり合う部:14、負極:20、負極集電体:21、負極活物質層:22、負極活物質層の外端縁:22a、セパレータ:30、タブ部:40。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】