(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電気加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27D 11/02 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F27D11/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548324
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022052971
(87)【国際公開番号】W WO2022171603
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・プルーフ,ホーバート・ゲラルドゥス・ピーター
【テーマコード(参考)】
4K063
【Fターム(参考)】
4K063AA05
4K063AA12
4K063BA01
4K063CA06
4K063FA07
4K063FA18
4K063FA27
(57)【要約】
本発明は、空間(3)を画定する壁(2A、2B)を有する電気加熱炉(2)と、空間(3)を通って延びる管(10)の第1の列(4)であって、管(10)が、空間(3)の外側に入口(11)及び出口(12)を有する、第1の列(4)と、空間(3)を通って延びる管(10)の第2の列(14)であって、管(10)が、空間(3)の外側に入口(11)及び出口(12)を有する、第2の列(14)と、空間(3)内に配置された電気放射加熱要素(20)の第1の組(5)であって、第1の組(5)が、管(10)の第1の列(4)と第2の列(14)との間に配置された電気放射加熱要素(20)を備える、第1の組(5)と、を少なくとも備える、電気加熱装置(1)を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱装置(1)であって、
-空間(3)を画定する壁(2A、2B)を有する電気加熱炉(2)と、
-前記空間(3)を通って延びる管(10)の第1の列(4)であって、前記管(10)が、前記空間(3)の外側に入口(11)及び出口(12)を有する、第1の列(4)と、
-前記空間(3)を通って延びる管(10)の第2の列(14)であって、前記管(10)が、前記空間(3)の外側に入口(11)及び出口(12)を有する、第2の列(14)と、
-前記空間(3)内に配置された電気放射加熱要素(20)の第1の組(5)であって、前記第1の組(5)が、管(10)の前記第1の列(4)と前記第2の列(14)との間に配置された電気放射加熱要素(20)を備える、第1の組(5)と、を少なくとも備える、電気加熱装置(1)。
【請求項2】
電気放射加熱要素(20)の前記第1の組(5)が、前記空間(3)の側壁(2A)と管(10)の前記第1の列(4)との間の電気放射加熱要素(20)を備える、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記装置(1)が、管(10)の第3の列(24)及び更なる列を備え、電気放射加熱要素(20)が前記列(4、14、24)の間に位置付けられる、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
管(10)の各列(4、14、24)が、少なくとも10本の管(10)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記管(10)が、実質的に垂直方向に延在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)が、前記空間(3)内に配置された電気放射加熱要素(20)の第2の組(6)を更に備え、前記第2の組(6)の前記加熱要素(20)が、前記第1の組(5)の前記加熱要素(20)に対して実質的に垂直に延びる、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記電気放射加熱要素(20)が、実質的に水平方向に延在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記電気放射加熱要素(20)が、前記管(10)と直接接触していない、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記電気放射加熱要素(20)が管状加熱要素である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電気加熱装置を使用して流体変換反応又は加熱を実施するための方法であって、前記方法が、少なくとも、
a)前記管の前記入口を介して供給流を供給する工程と、b)前記管を通って流れる前記供給流を、前記電気放射加熱要素によって生成されるような熱を使用して前記装置の前記空間内で流体変換反応又は加熱に供し、それによって、1種以上の反応生成物又は加熱供給流を得る工程と、c)前記1種以上の反応生成物又は加熱供給流を、前記管の前記出口を介して前記装置から除去する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ガス変換反応を行うための、又は高温で流体を加熱するための、電気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電気加熱反応器が、当該技術分野において周知である。
【0003】
一例として、国際公開第2020/002326(A1)号は、空間を画定する少なくとも1つの電気加熱炉を備え、少なくとも1つの反応管が炉空間内に位置付けられた、反応器構成を開示している。反応管は、少なくとも1つの電気放射加熱要素を使用して加熱される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記又はその他の周知の電気反応器に関連する問題は、周知の電気反応器が、電気放射加熱要素を支持するために炉壁を使用することである。
【0005】
別の問題は、少なくとも1つの電気放射加熱要素の局所的な過熱が生じる場合があることである。
【0006】
更なる問題は、電気放射加熱要素の早期故障又は経年劣化の場合に、炉のシャットダウンが必要とされることである。
【0007】
本発明の目的は、上記若しくはその他の問題の1つ以上を克服又は最小化することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、特に、(400℃超などの)高温反応、高温での流体加熱、及び(多数の管を使用する)大規模用途のための、代替的な電気加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記又はその他の目的のうちの1つ以上は、少なくとも、
-空間を画定する壁を有する電気加熱炉と、
-空間を通って延びる第1の列の管であって、管が空間の外側に入口及び出口を有する、第1の列と、
-空間を通って延びる第2の列の管であって、管が空間の外側に入口及び出口を有する、第2の列と、
-空間内に配置された第1の組の電気放射加熱要素であって、第1の組が、第1の管列と第2の管列との間に電気放射加熱要素を備える、第1の組の電気放射加熱要素と、を備える、電気加熱装置を提供することによって、達成され得る。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、本発明によれば、本発明による装置は、大規模用途(多数の管が使用される場合)を意図した装置において、管及び管を通って流れる流体の正確な温度制御を提供し得ることが見出された。その結果、望ましくない副生成物(コークス形成など)の発生が少なくなり、装置の稼働時間をより長くすることができる。
【0011】
本発明の更なる利点は、多数の管が存在する場合であっても、装置が(所与の数の管に対して)驚くほど簡素かつコンパクトな設計を有することである。コンパクトな設計を考慮すると、より少ない電気放射加熱要素が必要とされる場合がある。そのコンパクトな設計により、外部周囲条件に曝される炉空間が少なくなり、その結果、熱損失が少なくなり、したがって、より経済的な稼働が可能になる。
【0012】
また、電気放射加熱要素の早期故障又は経年劣化の場合には、装置のシャットダウンを必要とすることなく、電気放射加熱要素を比較的容易な方法で交換し得る。
【0013】
以下、本発明を以下の非限定的な図面によって更に説明する。
【0014】
以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による装置の第1の実施形態の概略的な側面図である。
【
図3】本発明による装置の第2の実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
当業者は、電気加熱装置が広く変化し得ること、及びいくつかの追加の要素を含み得ることを、容易に理解するであろう。当業者は電気加熱装置を設計する方法に精通しているので、これはここでは詳細に説明しない。
【0017】
上述したように、装置は、(炉)空間を画定する壁を有する電気加熱炉を備える。この炉の壁は、典型的には、炉の外側への過度の熱漏れを回避するために、いくらかの耐火材料及び断熱材を含む。電気加熱炉は、いくらかの(発熱反応の結果として提供される以外の)非電気加熱を備えていてもよいが、好ましくは、加熱の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは全てが電気加熱によって提供される。
【0018】
空間を通る第1の管列及び第2の管列は、管が空間の外側に入口及び出口を有するという条件で、広く変更されてもよい。単なる例として、管は、(好ましいが)直線である必要はなく、例えば、S字型又はU字型を有してもよい。U字型管が使用される場合、管の入口及び出口の両方は、片側(例えば、上部)にあってもよい。好ましくは、第1の管列及び第2の管列は、実質的に平行に延びる。装置が反応器の形態である(したがって、単に加熱のために使用されない)場合、管は「反応器管」と称され得る。
【0019】
電気放射加熱要素の第1の組(炉空間内に配置される)は、特に限定されるものではない。典型的には、電気放射加熱要素の加熱のために、電気抵抗加熱が使用される(「ジュール効果」を利用する)。一般に、電気放射加熱要素は、300℃を超える温度まで加熱されるのに適している。好ましくは、電気放射加熱要素は、400~1600℃の範囲の温度に加熱されるのに適している。好ましくは、電気放射加熱要素は、NiCr、SiC、MoSi2又はFeCrAl系抵抗加熱要素を含む。好ましくは、電気放射加熱要素はSiCから作製されるが、なぜなら、この材料は高温条件下でその強度を維持するからである(したがって、炉空間内に支持壁が存在する必要がない)。
【0020】
当業者であれば、電気放射加熱要素が、ロッド、プレート、シート、グリッド、加熱ワイヤがロッドの周りに巻き付けられた(例えばセラミック)ロッドなどの多くの異なる形状をとり得ることを、容易に理解するであろう。
【0021】
本発明によれば、電気放射加熱要素の第1の組は、第1の管列と第2の管列との間に少なくとも電気放射加熱要素を備える。第1の管列と第2の管列との間の第1の組のこれらの加熱要素は、装置の設定に応じて、互いの上又は隣に位置付けられてもよいが、好ましくは、互いの上に位置付けられる。第1の管列と第2の管列との間の加熱要素に加えて、第1の組は、更なる電気放射加熱要素を備えてもよい。
【0022】
本発明による装置の好ましい実施形態によれば、電気放射加熱要素の第1の組は、空間の側壁と第1の管列との間の電気放射加熱要素を備える。複数の管列が存在する場合、次に、好ましくは、加熱要素は、空間の側壁と側壁に最も近い管列との間に存在する。空間の側壁と側壁に最も近い管列との間の加熱要素の存在は、外側の冷たい表面によって引き起こされる(管の表面上の)熱流束の不均一性を最小限にすることを可能にする。
【0023】
更に、装置は、第3の管列及び更なる管列を備え、電気放射加熱要素が列の間に位置付けられることが好ましい。したがって、後者の場合、電気放射加熱要素の第1の組は、管列のそれぞれ間に電気放射加熱要素を備える。この場合も、加熱要素の第1の組は、各管列の間にいくつかの加熱要素を含んでもよく、好ましくは、このような加熱要素は、各管列の間で互いの上に位置付けられている。
【0024】
好ましい実施形態によれば、各管列は、少なくとも10本の管を備える。好ましくは、特定の列における管は、実質的に平行に延びる。
【0025】
更に、管は、実質的に垂直方向に延在することが好ましい。このような管の垂直設定では、管を通って流れる流体が下向きに流れることが好ましい。したがって、この場合、管の入口は頂部にあり、出口は底部にある。
【0026】
本発明による装置の特に好ましい実施形態によれば、装置は、空間内に配置された電気放射加熱要素の第2の組を更に備え、第2の組の加熱要素は、第1の組の加熱要素に対して実質的に垂直に延びる。
【0027】
このようにして、第1の組及び第2の組(及び更なる組)の加熱要素は、「グリッド状」パターンを形成し、それによって、加熱要素から管(の周囲)への熱伝達の均一性を増大させる。第2の組の電気放射加熱要素は、第1の組の加熱要素と同一又は類似であってもよい。
【0028】
更に、電気放射加熱要素は、実質的に水平方向に延在することが好ましい。
【0029】
管の過度の過熱を回避するために、電気放射加熱要素は管と直接接触しないことが好ましい。換言すれば、加熱要素及び管は、少なくとも炉空間内では互いに接触しない。
【0030】
加熱要素は多くの形態を有し得るが、電気放射加熱要素は管状加熱要素、すなわち、ロッドの形態であることが特に好ましい。好適な管状加熱要素の実施例は、市販されている炭化ケイ素(SiC)ロッドである。
【0031】
このような管状SiC加熱要素はまた、管状加熱要素が自己支持型であるので、炉空間のコンパクトな設計が達成されることを可能にする。結果として、炉空間内の加熱要素のための支持壁は必要とされない。好ましくは、炉空間は、管状加熱要素を支持するための壁が実際にない。
【0032】
更なる態様では、本発明は、本発明による電気加熱装置を使用して流体変換反応又は加熱を実施するための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法を提供する。
【0033】
a)管の入口を介して供給流を供給する工程と、b)管を通って流れる供給流を、電気放射加熱要素によって生成されるような熱を使用して装置の空間内で流体変換反応又は加熱に供し、それによって、1種以上の反応生成物又は加熱供給流を得る工程と、c)1種以上の反応生成物又は加熱供給流を、管の出口を介して装置から除去する工程。
【0034】
本説明の目的のために、同じ参照番号は同一又は類似の構成要素を指す。
【0035】
図1(及び
図3)の実施形態では、
図1の電気加熱装置は、一般に、参照番号1で示され、反応器として示される。しかしながら、当業者であれば、装置が流体を加熱するために、すなわち反応が起こらないように使用され得ることもまた、容易に理解するであろう。
【0036】
図1の反応器1は、その内部に炉空間3を画定する壁を有する電気加熱炉2と、反応管10の第1の列4、第2の列14、及び第3の列24と、電気放射加熱要素20の第1の組5と、を備える。
図1では、側壁2A及び2Bのみが示されている。しかしながら、当業者であれば、長方形の反応器の場合に、4つの側壁、頂部及び底部が存在することを、理解するであろう。
【0037】
電気放射加熱要素20の第1の組5は、空間3内に配置されている。第1の組5は、反応管10の第1の列4と第2の列14との間に互いに上下に位置付けられたいくつかの電気放射加熱要素20を備える。更に、第1の組5は、空間3の側壁2Aと反応管10の第1の列4との間、並びに側壁2Bと反応管10の第3の列24との間に更なる電気放射加熱要素20を備える。
【0038】
図1に見られるように、反応管10は空間3を通って延び、空間3の外側に入口11及び出口12を有する。更に、反応管10は、実質的に垂直の様式で延在する。
【0039】
図1に更に見られるように、電気放射加熱要素20は管状であり、実質的に水平方向に延在する。更に、電気放射加熱要素20は、反応管10と直接接触していない。
【0040】
炉2の壁2A、2Bは、典型的には、耐熱構造材料から作製され、炉2の内側からその外側への熱の過度の漏れを回避するために断熱されてもよい。
【0041】
図1及び
図2の反応器の使用中、流体流(典型的にはガス)が反応器管10の入口11を介して供給される。次に、反応管10を通って流れる供給流は、電気放射加熱要素20によって生成されるような加熱を使用して、(反応器管10において、及び)反応器1の空間3において流体変換反応に供され、それによって、1種以上の反応生成物を得る。
【0042】
続いて、1種以上の反応生成物は、反応器管10の出口12を介して反応器1から除去される。
【0043】
図3及び
図4は、本発明による装置の第2の実施形態(この場合も反応器の形態)の側面図及び上面図を示し、反応器1は、空間3内に配置された電気放射加熱要素20の第2の組6を更に備える。第2の組6の加熱要素20は、第1の組5の加熱要素20に対して実質的に垂直に延び、それによって、(上から見た場合に)加熱要素のグリッド状パターンを得る。
【0044】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正がなされ得ることを、容易に理解するであろう。
【国際調査報告】