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特表2024-508703拡張フローデバイスを用いた超吸収性繊維のリサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】拡張フローデバイスを用いた超吸収性繊維のリサイクル
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20240220BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20240220BHJP
   C08J 11/14 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
B29B17/04
C08J11/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548357
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022017196
(87)【国際公開番号】W WO2022178373
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/151,911
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン、カンフス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ、ヨハネス、エールンスペルガー
(72)【発明者】
【氏名】アルセン、アルセノフ、シモニャン
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリス、イオアンニス、コリアス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、アンドリュー、マクダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、イアン、ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリー、ウェイン、ギルバートソン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、カロロス、ガルシア-ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン、ベシナイズ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イーピン、スン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA17
4F401BA06
4F401CA04
4F401CA13
4F401CA14
4F401CA66
4F401CA75
4F401EA40
4F401EA46
4F401FA05Y
4F401FA06Z
4F401FA07Z
4F401FA10Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
供給流中の超吸収性繊維(SAF)は、拡張フローデバイスにおいて可溶性ポリマーに変換される。SAFを可溶性ポリマーに分解するために使用される総エネルギーは、約50MJ/kg SAF未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法であって、前記可溶性ポリマーが、前記可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含み、前記方法が、前記SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、前記拡張フローデバイスの出口で前記可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、前記供給流が、前記SAFを約1重量%超の濃度で含み、前記供給流が、約120秒未満の前記拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、前記SAFの前記可溶性ポリマーへの前記分解が、約50MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とする、方法。
【請求項2】
前記滞留時間が、約60秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記総エネルギーが、約16MJ/kg SAF未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給流が、SAF及び水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記供給流が、SAF及び過酸化水素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
前記SAFが、Naの量として8重量%超のナトリウムレベルを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記SAFが、Naの量として約10重量%~約20重量%のナトリウムレベルを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。前記供給流が、粘度を有し、前記生成物流が、粘度を有し、前記生成物流の前記粘度と、前記供給流の前記粘度との比が、粘度比であり、前記粘度比の負の10進対数が、約6未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記供給流が、粘度を有し、前記生成物流が、粘度を有し、前記生成物流の前記粘度と、前記供給流の前記粘度との比が、粘度比であり、前記粘度比の負の10進対数が、約4未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給流が、粘度を有し、前記生成物流が、粘度を有し、前記生成物流の前記粘度と、前記供給流の前記粘度との比が、粘度比であり、前記粘度比の負の10進対数が、約2未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記可溶性ポリマーが、約2,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記可溶性ポリマーが、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記可溶性ポリマーが、約4未満の多分散性指数(PDI)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記SAFが、本明細書に記載のCRC試験方法を用いて測定される場合、少なくとも15g/gの遠心保持容量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法であって、前記可溶性ポリマーが、前記可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含み、前記方法が、前記SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、前記拡張フローデバイスの出口で前記可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、前記供給流が、水及びSAFを約1重量%超の濃度で含み、前記供給流が、約120秒未満の前記拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、前記SAFの前記可溶性ポリマーへの前記分解が、約16MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とし、前記可溶性ポリマーが、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する、方法。
【請求項14】
超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法であって、前記可溶性ポリマーが、前記可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含み、前記方法が、前記SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、前記拡張フローデバイスの出口で前記可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、前記供給流が、水及びSAFを約5重量%超の濃度で含み、前記供給流が、約120秒未満の前記拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、前記SAFの前記可溶性ポリマーへの前記分解が、約16MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とし、前記可溶性ポリマーが、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する、方法。
【請求項15】
前記供給流が、粘度を有し、前記生成物流が、粘度を有し、前記生成物流の前記粘度と、前記供給流の前記粘度との比が、粘度比であり、前記粘度比の負の10進対数が、約4未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SAFが、Naの量として約10重量%~約20重量%のナトリウムレベルを有する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記供給流が、SAF及び過酸化水素を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記SAFが、ばら繊維として提供される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記SAFが、不織ウェブの形態で提供され、前記不織ウェブが、SAFを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記不織ウェブが、前記方法に提供される前に、又は前記方法を実施する間に、切断、細断、又は粉砕される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、拡張フローデバイスを使用して短い滞留時間での任意選択かつ追加のキャビテーションによる、超吸収性繊維(superabsorbent fiber、SAF)のリサイクルに関する。より具体的には、SAFを含む供給流が拡張フローデバイスに供給され、本質的に可溶性ポリマーを含む生成物流が生成される。供給流中のSAFの濃度は約1重量%より大きく、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは約50MJ/kg SAF未満である。
【背景技術】
【0002】
吸収性衛生製品(absorbent hygiene product、AHP)(すなわち、乳児用おむつ、女性用保護パッド、及び成人用失禁パッド)のリサイクルは、環境にとって良好であり、多くの消費者企業の持続可能性目標を達成するために必要とされる。これらの目標は、リサイクルされた材料を100%使用して、消費者廃棄物及び製造廃棄物の埋め立てをゼロにすることである。これらの目標に加えて、リサイクルを成功させることは、環境、経済の活性化、人々の健康及び水質の改善、並びに世界の発展途上地域の消費者が必要とするエネルギーの生成に役立つ。
【0003】
AHPの主成分は、典型的には、超吸収性ポリマー(superabsorbent polymer、SAP)であるが、他の成分は、接着剤、セルロース繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルである。SAPは、氷アクリル酸の、架橋され部分的に中和されたホモポリマーである、吸水性、水膨潤性、及び水不溶性の粉末状固体である。SAPは、混入された水又は尿などの水性液体を吸収する例外的に高い能力を有する。ポリ(アクリル酸)ベースのSAPの代替物は、超吸収性繊維(SAF)である。これらの繊維は、一般に、(超吸収性ポリマー粒子と比較して)比較的多量のコモノマーを含む。したがって、SAFと同様に、AHPで使用されるSAFをリサイクルする必要もある。
【0004】
AHPのリサイクルは、それらの使用中に蓄積された汚れからAHPを洗浄すること、及び様々な成分をリサイクルされた材料流に分離することを伴う。より具体的には、リサイクルされたSAF材料流は、AHPよりも要求の少ない用途において使用することができ(リサイクルされたSAFは、未使用SAFと比較して特性が劣るため;例えば、農業用又は園芸用保水剤、及び工業用防水剤)、かつ/又は本質的に非架橋の、わずかに分岐しているか若しくは直鎖状の可溶性ポリマーに変換することができる。これらの可溶性ポリマーは、様々な用途への供給材料として使用することができる。例えば、可溶性ポリマーは、1)水処理又は腐食防止などの用途において、そのままで使用することができるか、又は2)エステル化されて、次いで、接着剤、コーティングなどに使用することができるか、又は3)SAF繊維紡糸などのSAF作製においてそのまま使用することができるか、又は4)SAFに変換されて(項目3を参照されたい)、未使用SAFとブレンドすることができる。最初の2組の用途は、未使用化合物をリサイクルされたSAFから誘導される化合物で置き換えることによってSAFを他の製品にリサイクルする試みの一部であり、一方、最後の2組の用途は、SAFの循環経済の一部、すなわち、SAFをSAFにリサイクルして戻すことである。全ての場合において、目的は、未使用材料と同じ特性を達成することである。
【0005】
アクリル酸に純粋に基づかないSAFの分解に対処するための参考文献は特定されていないが、リサイクルされたAHPから使用済みSAFの精製及び分離された材料流を生成するプロセスの非限定的な例は、2015年8月4日に発行された米国特許第9,095,853(B2)号、及び2015年10月13日に発行された同第9,156,034(B2)号に開示及び特許請求されている。いずれも、Fater S.p.A(Pescara,Italy)に付与された。
【0006】
ほとんどのSAPは、ポリ(アクリル酸)に基づくものであり、架橋された網状組織材料である。氷アクリル酸及び架橋剤からSAPを製造するために使用される手順の非限定的な例は、2013年2月26日に発行され、Nippon Shokubai Co.,Ltd(Osaka,Japan)に付与された米国特許第8,383,746(B2)号、及び2017年11月21日に発行され、BASF SE(Ludwigshafen,Germany)に付与された米国特許第9,822,203(B2)号に開示されている。
【0007】
SAPの超音波分解は、(1)Ebrahimi,R.,et al.,Organic Chemistry Intl,2012(文献ID 343768、5ページ)、及び(2)Shukla,N.B.,and Madras,G.,J.Appl.Polym.Sci.,125(2012),630-639に記載されている。PAAの超音波分解は、(1)Shukla,N.B.,et al.,J.Appl.Polym.Sci.,112(2009),991-997、及び(2)Prajapat,A.L.,and Gogate,P.R.,Ultrason.Sonochem.,32(2016),290-299に記載されている。また、溶液中のポリマーの超音波分解の一般的な説明が、Basedow,A.M.,and Ebert,K.H.,Adv.Polym.Sci.,22(1977),83-148に与えられている。
【0008】
SAPの分解に関して、両方の参考文献は、分解レベルの尺度として粘度を使用し、粘度を1桁、例えば、10Pa・sから1Pa・sに低下させるのに約5~10分かかることを見出し、これは、そのレベルの分解を達成するのに多くのエネルギーが必要であることを示す。直鎖状ポリマーの分解について、これらの参考文献(並びにUV、熱、及び他の形態のエネルギーの使用について報告する他の参考文献)からの主なテーマは、(1)優先的な切断がポリマー鎖の中間点であり、(2)高分子量鎖が低分子量鎖よりも速い速度で分解され、(3)それ未満では分解又は脱重合が起こらない最小分子量が存在することである。全ての場合において、ポリマーの超音波分解は、キャビテーション、並びに得られる微小気泡の急速な成長及び崩壊に起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,095,853(B2)号
【特許文献2】米国特許第9,156,034(B2)号
【特許文献3】米国特許第8,383,746(B2)号
【特許文献4】米国特許第9,822,203(B2)号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ebrahimi,R.,et al.,Organic Chemistry Intl,2012(文献ID 343768、5ページ)
【非特許文献2】Shukla,N.B.,and Madras,G.,J.Appl.Polym.Sci.,125(2012),630-639
【非特許文献3】Shukla,N.B.,et al.,J.Appl.Polym.Sci.,112(2009),991-997
【非特許文献4】Prajapat,A.L.,and Gogate,P.R.,Ultrason.Sonochem.,32(2016),290-299
【非特許文献5】Basedow,A.M.,and Ebert,K.H.,Adv.Polym.Sci.,22(1977),83-148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、AHP及びそれらの主成分(これは、SAFであり得る)をリサイクルする必要がある。SAFのリサイクルのために、短時間スケールで、SAFの単位質量当たりのエネルギー及び出力が低く、室温などの穏やかな条件で、SAFを可溶性ポリマーに分解する必要があり、したがって、分解されたSAFの脱炭酸などの化学分解が回避される。SAFの単位質量当たりの低エネルギーに対する要求は、SAFの可溶性ポリマーへの変換中に消費されるエネルギーが、例えば、同種の化石由来の可溶性ポリマーを作製するために使用されるエネルギーよりも少ない場合のみ、使用済みSAFのリサイクル及びその可溶性ポリマーへの分解が有益であるという事実から生じる。プロピレンからのアクリル酸(petro-AA)の場合、必要なエネルギーは、約50MJ/kg AAである。SAFから製造された可溶性ポリマーは、次いで、未使用SAFに戻して組み込むことができ(したがって、そのリサイクルされた含有量を増加させ、SAFの循環経済を支持する)、及び/又は接着剤、コーティング、水処理、布地ケアなどの他の用途のための材料に誘導体化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態では、超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法が提示され、可溶性ポリマーは、可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%、好ましくは10重量%~75重量%、又は10重量%~70重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含む。本明細書で使用する場合、用語「アクリル酸モノマー単位」は、エステル及びアミドなどのアクリル酸モノマーの誘導体を除外し、かつまた、メタクリル酸モノマー単位及びその塩も除外する。
【0013】
本方法は、当該SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、当該拡張フローデバイスの出口で当該可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、当該供給流は、当該SAFを約1重量%超の濃度で含み、当該供給流は、約120秒未満の当該拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、当該SAFの当該可溶性ポリマーへの当該分解は、約50MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とする。
【0014】
更に、超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法が提示され、可溶性ポリマーは、可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%、好ましくは10重量%~75重量%、又は10重量%~70重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含む。本方法は、当該SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、当該拡張フローデバイスの出口で当該可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、当該供給流は、水及び当該SAFを約1重量%超の濃度で含み、当該供給流は、約120秒未満の当該拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、当該SAFの当該可溶性ポリマーへの当該分解は、約16MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とし、当該可溶性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。
【0015】
なお更に、超吸収性繊維(SAF)を可溶性ポリマーに分解するための方法が提示され、可溶性ポリマーは、可溶性ポリマーの総重量に基づいて、5重量%~75重量%、好ましくは10重量%~70重量%の重合アクリル酸モノマー単位を含む。本方法は、当該SAFを含む供給流を拡張フローデバイスの入口に流すことと、当該拡張フローデバイスの出口で当該可溶性ポリマーを含む生成物流を生成することと、を含み、当該供給流は、水及び当該SAFを約5重量%超の濃度で含み、当該供給流は、約120秒未満の当該拡張フローデバイスにおける滞留時間を有し、当該SAFの当該可溶性ポリマーへの当該分解は、約16MJ/kg SAF未満の総エネルギーを必要とし、当該可溶性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。
【0016】
可溶性ポリマーは、水溶性であり得る。可溶性ポリマーは、好ましくは、25℃の水中で、水100g当たり5g超の可溶性ポリマー、又は水100g当たり15g超の可溶性ポリマー、又は水100g当たり20g~120gの可溶性ポリマー、又は水100g当たり35g~100gの可溶性ポリマーの溶解度を有する。
【0017】
本発明の方法によって得られる可溶性ポリマーは、以下に示すNMR含有量法に供することができる。NMR含有量法は、アルケン末端部分、アルコキシ基(-O-CHR1-、ここで、R1は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、又はハロゲン基のうちの1つである)、脂肪族基(-CHR1-、ここで、R1は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はハロゲン基のうちの1つである)、及び/又は他の1H-NMR活性基などの、異なるNMR信号を有する官能基のプロトンのモル基準での比を決定するために使用することができる。NMR含有量法によって得られるスペクトルが、それらの異なるNMRシグナルによって様々な官能基の決定を可能にすることを考慮すると、NMR含有量法はまた、可溶性ポリマー中に含まれるアクリル酸モノマー単位以外の多くのモノマー単位の決定も可能にする。
【0018】
本発明の方法によって得られる可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、少なくとも0.04の比3.6:CHを有し得る。可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、少なくとも0.1、又は少なくとも0.2の比3.6:CHを有し得る。可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、0.7以下の比3.6:CHを有し得る。
【0019】
本発明によって得られる可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、少なくとも5%の含有量「%3.6ppm」を有し得る。可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、少なくとも10%、又は少なくとも15%の含有量「%3.6ppm」を有し得る。可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、75%以下の含有量「%3.6ppm」を有し得る。
【0020】
本発明の方法によって得られる可溶性ポリマーは、本明細書に記載のNMR含有量法によって測定される場合、0.31%以下のアルケン含有量「%アルケン」を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
I 定義
本明細書で使用する場合、用語「SAF」は、超吸収性繊維を指す。本発明のSAFは、25℃での0.9重量%の生理食塩水を、本明細書に記載の遠心保持容量(Centrifuge Retention Capacity、CRC)試験方法を用いて測定される場合、それらの乾燥重量の少なくとも7倍、好ましくはそれらの乾燥重量の少なくとも10倍、吸収することができる。典型的な吸収機構は、浸透圧である。水又は水溶液を吸収するSAFは、より柔らかく、かつゲル状になる。
【0022】
「超吸収性繊維」(「SAF」)は、本明細書において、繊維形態である超吸収性ポリマー材料を指すために使用される。超吸収性繊維は、長さ及び断面を有する。長さは、繊維中の湾曲又は捲縮が消失し、かつ繊維が略棒状形態になるように、繊維が表面上に平坦かつ真っ直ぐに置かれるか又はそのように置かれるであろうときの、繊維の最大寸法である。断面は、長さに直交する。本明細書の目的において、繊維は、最大寸法及び最小寸法を有する材料であり、最大寸法と最小寸法との比は、少なくとも10:1、好ましくは少なくとも15:1、更により好ましくは少なくとも20:1であり、すなわち、超吸収性繊維の最大寸法(長さとも呼ばれる)は、繊維の最小寸法(幅とも呼ばれる)の少なくとも10倍、又は少なくとも15倍、又は少なくとも20倍である。超吸収性繊維が、繊維の長さによって異なる断面を有する場合、断面の最大寸法(繊維の長さによって決定される)は、最大寸法と最小寸法との比を計算するとき、繊維の幅として取られる。本明細書で使用する場合、用語「可溶性ポリマー」は、本質的に非架橋の、わずかに分岐しているか又は直鎖状のいずれかのポリマーを指し、このポリマーは、モノマー単位として5重量%~75重量%、又は10重量%~75重量%、又は10重量%~70重量%のアクリル酸を含み、重合度は2以上であり得る。本発明の目的において、可溶性ポリマーについては、ポリマーとオリゴマーとの間に差異はない。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「分解」は、部分的な脱重合、脱架橋、分子骨格破壊の作用、又は上記の作用の任意の組み合わせを介するSAFの可溶性ポリマーへの変換を指す。本発明の目的において、分解、リサイクル、及び変換という用語は、それらがSAFの可溶性ポリマーへの変換を指す限り、互換的に使用される。また、分解は、SAFのカルボキシル基を本質的に保存し、したがって、生成物の可溶性ポリマーは、これらのカルボキシル基を含有する。SAFの完全な脱重合は、SAFに含まれていたモノマーをもたらすはずであることに留意されたい。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「未使用SAF」は、SAFを作製するために今日使用される供給原料である、未使用モノマーから製造されるSAFを指す。未使用モノマーは、化石由来の材料又は生物由来の材料(生物材料の非限定的な例は、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン、バイオプロピレン、二酸化炭素、及び糖である)のいずれかから生成することができる。未使用SAFは、約1重量%超のいかなるリサイクルされたSAFも含まない。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「使用済みSAF」は、例えば、乳児用おむつ、女性用パッド、成人用失禁パッド、又は他の物品及び/若しくは用途において、既に工業的に製造されている及び/又は商業的に使用されているSAFを指す。使用済みSAFは、(消費者使用後の)ポストコンシューマSAF、(製造工程で出た)ポストインダストリアルSAF、又はその両方の組み合わせであり得る。本発明において特に明記しない限り、SAFは、「使用済みSAF」又は「未使用SAF」のいずれかを指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「分解済みSAF」は、可溶性ポリマーに分解されたSAFを指す。本発明の目的において、用語「分解済みSAF」及び「可溶性ポリマー」は、互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「リサイクルされたSAF」は、SAFが典型的な製造方法を用いてアクリル酸及びコモノマーから製造されている間にSAFに組み込まれた少なくとも1重量%の分解済みSAF(又は同等の可溶性ポリマー)を含有するSAFを指す。したがって、リサイクルされたSAFは、未使用SAFと少なくとも1重量%の分解済みSAFとのブレンドである。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「供給流」は、特定の方向に流れ、かつ拡張フローデバイスの入口に供給される、流体の本体を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「生成物流」は、供給流が拡張フローデバイスの入口に供給されるときに同じデバイスの出口で生成される、流体の本体を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「液体ホイッスル」は、流れ方向に、入口チャンバ、オリフィス、及びオリフィスの前にブレードを有する混合チャンバを用いる、Sonolator型の機器(Sonic Corporation(Stratford,CT)製)を指す。材料がオリフィスを通って流れ、生成されたジェットがブレードに衝突し、次いでこのブレードがその共振周波数で振動させられ、オリフィスから離れてオリフィスの水力直径の7~8倍以内に位置する場合(すなわち、ブレードが係合している場合)、キャビテーション場が更に強化される。ブレードがオリフィスから離れてオリフィスの水力直径の7~8倍の範囲の外側に位置する場合、ブレードは係合していないと考えられる。ブレードがオリフィスに近いほど、また供給流の粘度が低いほど、キャビテーションは強くなる。液体ホイッスル(Liquid Whistle、LW)の主な用途は、家庭、パーソナルケア、及び精密化学産業における混合、乳化、解凝集、及び消毒である(米国特許第8,517,595(B2)号及びRyan,D.J.et al.,Chem.Engng Sci.,189(2018),369-379)。本発明の目的において、LWは、使用することができる拡張フローデバイスのうちの1つである。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「拡張フローデバイス」は、拡張フロー、歪み、及び応力を発生させるフローデバイスを指す。拡張フローデバイスの非限定的な例は、収束及び/又は発散チャネル、オリフィス、衝突ジェット、4ロールミル、スクリーン、ダイなどを有するデバイスである。用語「拡張」及び「伸長」は、本発明の目的において互換的に使用される。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「粘度比」又は「粘度減少比」は、生成物流の粘度と供給物流の粘度との比を指す。供給流の粘度は、典型的には振動モードで平行板固定具を用いて測定され、報告される複素粘度は、典型的には1rad/秒の周波数に対応する。複素粘度の実数部及び虚数部は、それぞれ、動的粘度及び貯蔵粘度を表す。粘度比を計算するために、本出願人らは、動的粘度、すなわち複素粘度の実数部を使用する。生成物流の粘度は、定常モードのカップ及びボブ固定具又は振動モードの平行板固定具のいずれかを用いて測定される。粘度がカップ及びボブ固定具を用いて定常モードで測定される場合、報告される粘度は、典型的には、4s-1の剪断速度に対応する。これらの粘度測定技術は、当業者に周知である。本発明の目的において、可溶性ポリマー溶液の粘度が低いほど、一定の濃度で可溶性ポリマーの分子量が低いことが当業者によって受け入れられているように、粘度比の負の10進対数は、可溶性ポリマーへのSAF分解の程度を数桁で示す。
【0033】
本明細書で使用する場合、Mは、g/mol又は同等にDaで表される数平均分子量であり、Mは、g/mol又は同等にDaで表される重量平均分子量であり、Mは、g/mol又は同等にDaで表されるz平均分子量であり、PDIは、M/Mとして定義される多分散性指数である。
【0034】
「使い捨て」は、通常の意味では、異なる期間にわたって、限定された使用回数、例えば、20回未満の使用、10回未満の使用、5回未満の使用、又は2回未満の使用の後に、処分又は廃棄される物品を意味するのに使用される。使い捨て吸収性物品が、個人衛生用途のためのおむつ、パンツ、生理用ナプキン、生理用パッド、又はウェットワイプである場合、使い捨て吸収性物品は、(ほとんどの場合)1回の使用後に処分されることが意図され得る。
【0035】
II 供給流
予期せぬことに、SAF供給流(ゲルの形態である)が拡張フローデバイス(例えば、LW)内を流れ、かつ短い滞留時間で拡張フローを経験するとき、SAFは可溶性ポリマーに分解する(すなわち、本質的に脱炭酸なしで)ことが見出された。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本出願人らは、SAF供給流/ゲルがオリフィスを通って流れるときにSAF供給流/ゲル中に発生する拡張応力が、架橋剤、架橋剤の骨格への付着、及び骨格結合の伸張及び破壊を引き起こすと考える。本出願人らは、ゲルが入口チャンバ及びオリフィスの壁でスリップを発生させ、したがって、(当業者に周知であるように)ゲルが入口チャンバ及びオリフィス内で栓流で流れるときに拡張応力を発生させないと予想した。
【0036】
SAFの典型的な特性は、機械的特性、膨潤能、及び本明細書に示す試験方法に従って測定される遠心保持容量(CRC)である。また、SAFは、25重量%超~95重量%未満の他のコモノマー(すなわち、アクリル酸以外)を含む。好適なコモノマーは、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、ポリビニルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルモルホリノン、並びにビニルスルホン酸、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなどのポリマー及びコポリマーを含む/それらからなる、モノマー基である。SAF中の他の好適なポリマーとしては、加水分解アクリルニトリルグラフトデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、及びイソブチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。SAFは、材料を実質的に水不溶性にするために架橋される。好ましいモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル基を含むモノマー、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、5グリセリルモノアクリレートなどである。SAFは、2種類のモノマー(アクリル酸を含む)又はより好ましくは3種類以上のモノマーから形成されたポリマーを含み得る/それらからなり得る。
【0037】
SAFは、重量%でのNaの量として約8重量%超のナトリウムレベル、又は重量%でのNaの量として10重量%~20重量%、若しくは15重量%~18重量%のナトリウムレベルを有し得る。本発明の更に別の実施形態では、SAFは、重量%でのNaの量として12重量%未満のナトリウムレベルを有する。
【0038】
本方法で提供されるSAFは、i)ばら繊維の形態であり得るかく、又はii)不織ウェブの形態であり得るか、又はi)及びii)の組み合わせであり得る。SAFが不織ウェブの形態である場合、不織ウェブはSAFからなり得るか、又はSAFを含み得る。SAFを含み、本方法において提供される不織ウェブは、不織ウェブの総重量に基づいて、少なくとも50重量%のSAFを含み得るか、又は不織ウェブの総重量に基づいて、少なくとも60重量%、若しくは少なくとも70重量%、若しくは少なくとも80重量%、若しくは少なくとも90重量%のSAFを含み得る。
【0039】
不織布ウェブは、合成繊維、天然繊維(例えば、セルロース繊維)、又はこれらの組み合わせなどの更なる成分を更に含み得る。このような不織ウェブに含まれ得る合成繊維は、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせ)、又はPET繊維、又はポリオレフィン及びPET繊維の組み合わせであり得る。
【0040】
不織ウェブの非SAF成分は、SAFを本発明の方法に供する前に除去され得るが、必ずしもそうである必要はない。その代わりに、SAFを含む不織ウェブは、不織ウェブの非SAF成分と一緒に、(完全な不織ウェブ、切断、細断、又は粉砕されたものとして)本発明の方法に供され得る。
【0041】
本発明の方法の前又は方法中に、不織ウェブを小片に切断するか、又は粉砕若しくは他の方法で細断して、SAFを、酸化した水溶性塩によりアクセスし易くしてもよい。代替的には、不織ウェブは、「そのままで」本方法に供される。
【0042】
不織ウェブの非SAF成分は、SAFを本発明の方法に供する前に除去され得るが、必ずしもそうである必要はない。その代わりに、SAFを含む不織ウェブは、不織ウェブの非SAF成分と一緒に、(完全な不織ウェブ、切断、細断、又は粉砕されたものとして)本発明の方法に供され得る。
【0043】
本発明の一実施形態では、供給流は、SAFを含む。本発明の別の実施形態では、供給流は、SAF及び水を含む。本発明の更に別の実施形態では、供給流は、SAF及びエチレングリコール(ethylene glycol、EG)を含む。本発明のなお更に別の実施形態では、供給流は、SAF、水、及びエチレングリコールを含む。供給流中の水は、RO水、通常の水道水、又は様々な塩濃度で溶解した無機塩を含有する水であり得る。塩を含む水の非限定的な例は、塩化ナトリウムの0.9重量%溶液である。一価カチオンを有するがイオン強度がより高い他の塩を使用して、供給流の粘度を低下させるか、代替的には、より高いSAF濃度を使用できるようにすることができる。粘度低下性塩の非限定的な例は、硫酸ナトリウムである。
【0044】
供給流はまた、任意のフリーラジカル生成化合物を含むことができる。このような化合物の非限定的な例は、過酸化水素(H)、過硫酸塩(例えば、過硫酸ナトリウム又は過硫酸カリウム)、過ホウ酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、ジアゾ化合物、オゾン、有機フリーラジカル開始剤(例えば、過酸化ジ-ter-ブチル(di-ter-butyl peroxide、DTBP))、これらの組み合わせなどである。
【0045】
本発明の一実施形態では、供給流は、SAF及びHを含む。本発明の別の実施形態では、供給流は、SAF及びH溶液を含む。
【0046】
本発明の一実施形態では、供給流は、SAFを約1重量%超の濃度で含む。本発明の別の実施形態では、供給流は、SAFを約5重量%超の濃度で含む。本発明の更に別の実施形態では、供給流は、SAFを約10重量%超の濃度で含む。本発明のなお更に別の実施形態では、供給流は、SAFを約2.5重量%の濃度で含む。本発明の一実施形態では、供給流は、SAFを約5重量%の濃度で含む。
【0047】
本発明の一実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、SAFの濃度は、約2.5重量%であり、H溶液の濃度は、97.5重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約3重量%未満である。本発明の別の実施形態では、供給物は、SAF及びHを含み、SAFの濃度は、約5重量%であり、H溶液の濃度は、約95重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約3重量%未満である。本発明の更に別の実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、SAFの濃度は、約2.5重量%であり、H溶液の濃度は、97.5重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約3重量%である。本発明の別の実施形態では、供給物は、SAF及びHを含み、SAFの濃度は、約5重量%であり、H溶液の濃度は、約95重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約3重量%である。
【0048】
本発明の一実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、SAFの濃度は、約2.5重量%であり、H溶液の濃度は、97.5重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約0.3重量%である。本発明の別の実施形態では、供給物は、SAF及びHを含み、SAFの濃度は、約5重量%であり、H溶液の濃度は、約95重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約0.3重量%である。本発明の更に別の実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、SAFの濃度は、約2.5重量%であり、H溶液の濃度は、97.5重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約0.03重量%である。本発明の別の実施形態では、供給物は、SAF及びHを含み、SAFの濃度は、約5重量%であり、H溶液の濃度は、約95重量%であり、H溶液中のHの濃度は、約0.03重量%である。
【0049】
本発明の一実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、H溶液中のHの濃度は、約3重量%未満である。本発明の別の実施形態では、供給物は、SAF及びHを含み、H溶液中のHの濃度は、約0.3重量%未満である。本発明の更に別の実施形態では、供給物は、SAF及びH溶液を含み、H溶液中のHの濃度は、約0.03重量%未満である。
【0050】
供給流の粘度は、典型的には振動モードで平行板固定具を用いて測定され、報告される複素粘度は、典型的には1rad/秒の周波数に対応する。SAF濃度に依存して、供給流の複素粘度は、200Pa.s(又は同等に200,000cP)より高くなり得る。供給流は、SAFの濃度に依存して、溶液又はゲルの形態であり得る。
【0051】
化石由来のプロピレンからアクリル酸(acrylic acid、AA)を作製するための再生不可能なエネルギー使用(non-renewable energy use、NREU)は、約50MJ/kg AAであると推定される。したがって、SAFの任意の成功したリサイクルの試みは、望ましくは、AAを作製するためにNREUよりもエネルギー消費が少なく、すなわち、化石由来の未使用材料と環境に優しく商業的に競合するために約50MJ/kg SAF未満である。NREUの目的において、SAFは完全に中和されていない(DN=0)と仮定する。
【0052】
III 拡張フローデバイス及びキャビテーション
典型的には、供給流は、管又はチャネル、及びポンプを介して、拡張フローデバイスと流体連通している。管又はチャネルの非限定的な例は、ガラス管、金属管、合金管(ステンレス鋼管など)、及びポリマー管である。管又はチャネルは、円形、長方形、楕円形、菱形などの任意の断面形状を有し得る。また、管又はチャネルの断面積のサイズは、同じであり得るか、又は流れ方向によって異なり得る。管の異なる断面形状の非限定的な例は、供給流が管を流下するときに供給流に拡張応力を受けさせることができる波状管である。これらの拡張応力は、供給流の一部であるSAFの分解に有益であり得る。また、供給流は、供給流が流れる管及び/又はチャネルの内側に配置されたスタティックミキサ又は他の混合要素を通過することができる。
【0053】
ポンプの非限定的な例は、遠心ポンプ(軸流ポンプ、ラジアルポンプ、及び混合流ポンプなど)及び容積式ポンプ(往復ポンプ、ロータリーポンプ、ピストンポンプ、隔壁ポンプ、ギアポンプ、蠕動ポンプ、スクリューポンプ、及びベーンポンプなど)である。拡張フローデバイスは、1つ以上のポンプを用いることができる。
【0054】
本発明の一実施形態では、拡張フローデバイスは、液体ホイッスル(LW)である。典型的には、LWは、流れ方向に、入口チャンバ、オリフィス、及び混合チャンバを含み、混合チャンバにおいて、ブレードは、オリフィスの前に、かつオリフィスから距離を置いて位置する。また、典型的には、拡張フローデバイスは、入口及び出口を含む。供給流は入口で拡張フローデバイスに入り、生成物流は出口で拡張フローデバイスを出る。拡張フローデバイスの非限定的な例は、Sonic Corp.製のSONOLATOR(登録商標)及びMicrofluidics Corp(Newton,MA)製のMICROFLUIDIZER(登録商標)である。本発明の一実施形態では、LW内のオリフィスの下流にはブレードが存在しない。
【0055】
オリフィスの非限定的な構成は、スロット形状、目形状、楕円形状、円形、三角形、正方形、長方形、及び多角形である。オリフィスの幅は、最大1インチ(2.541cm)以上であり得る。オリフィスの高さは、最大0.5インチ(1.27cm)以上であり得る。本発明の別の実施形態では、オリフィスは、楕円形状である。本発明の更に別の実施形態では、オリフィスの幅は約1.9mmであり、オリフィスの高さは約0.6mmである。オリフィスハウジングを作製するために使用される材料の非限定的な例は、ステンレス鋼、チタン、セラミック、超硬合金タングステン、様々なホウ化物、様々な炭素、様々な炭化物、及び様々な二ホウ化物である。オリフィスのランド長さは最大10mmであり得る。本発明の一実施形態では、オリフィスのランド長さは、約0.5mm~約5mmである。本発明の別の実施形態では、オリフィスのランド長さは、約1mmである。
【0056】
LWのブレードがその固有振動数で振動するとき、それは強いキャビテーションを発生させ、形成された気泡は成長し、非常に速く崩壊する。ブレードを作製するために使用される材料の非限定的な例は、ステンレス鋼、チタン、セラミック、超硬合金タングステン、様々なホウ化物、様々な炭素、様々な炭化物、及び様々な二ホウ化物である。LWのブレードは、好適な構成を有することができ、例えば、テーパー状、鋭利なエッジ、長方形又は正方形の断面などを含むが、これらに限定されない。LWのブレードは、任意の好適な寸法を有することができる。本発明の一実施形態では、LWのブレードの長さは、約1mm~約100mmである。本発明の別の実施形態では、LWのブレードの長さは、約10mm~約50mmである。本発明の更に別の実施形態では、LWのブレードの厚さは、約7μm~約100mmである。本発明の別の実施形態では、LWのブレードの厚さは、約0.2mm~約50mmである。
【0057】
LWの振動ブレードによって導入されるキャビテーションは、流体力学的、音響的(例えば、20Hz~20kHz)、又は超音波的(例えば、20kHz超)であり得る。本発明の一実施形態では、LWのブレードは、約20kHz~約100kHzの周波数で超音波振動を受ける。
【0058】
ブレードとLWのオリフィスとの間の距離は、約0.1mm~約25mmで異なり得る。本発明の一実施形態では、ブレードとLWのオリフィスとの間の距離は、約0.5mmである。本発明の別の実施形態では、ブレードとLWのオリフィスとの間の距離は、約0.5mm~約13mmである。本発明の更に別の実施形態では、ブレードとLWのオリフィスとの間の距離は、約1mm~約10mmである。本発明のなお更に別の実施形態では、ブレードとLWのオリフィスとの間の距離は、約3mm~約6mmである。
【0059】
本発明の一実施形態では、ブレードは、流体ジェットがオリフィスから出てブレードに衝突するときにキャビテーションが達成されないように、LWのオリフィスから一定の距離にある。本発明の別の実施形態では、ブレードは、流体ジェットがオリフィスから出てブレードに衝突するときにキャビテーションが達成されるように、LWのオリフィスから一定の距離にある。本発明の更に別の実施形態では、拡張フローデバイス内で達成されるキャビテーションは、流体力学的である。本発明のなお更に別の実施形態では、拡張フローデバイス内で達成されるキャビテーションは、超音波的である。本発明の一実施形態では、拡張フローデバイス内で達成されるキャビテーションは、音響的である。
【0060】
本発明の一実施形態では、LWのオリフィスからのブレードの距離は、オリフィスの水力直径の少なくとも約7倍である。本発明の別の実施形態では、LWのオリフィスからのブレードの距離は、オリフィスの水力直径の約7倍未満である。本発明の更に別の実施形態では、LWのオリフィスからのブレードの距離は、オリフィスの水力直径の約6倍である。本発明のなお更に別の実施形態では、LWのオリフィスからのブレードの距離は、オリフィスの水力直径の約0.3倍である。
【0061】
本プロセスは、供給流及びオリフィスの上流で測定される任意の好適な圧力で実施することができる。本発明の一実施形態では、圧力は、約500psi(34.5バール)~約20,000psi(1379バール)である。本発明の別の実施形態では、圧力は、約20,000psi(1379バール)より高い。本発明の更に別の実施形態では、圧力は、約1000psi(68.9バール)~約10,000psi(689.5バール)である。本発明のなお更に別の実施形態では、圧力は、約2,000psi(137.9バール)~約7,000psi(482.6バール)である。本発明の一実施形態では、圧力は、約5,000psi(344.7バール)である。
【0062】
拡張フローデバイスへの供給流の流量は、任意の好適な値であり得る。本発明の一実施形態では、拡張フローデバイスへの供給流の流量は、約1L/分~約1,000L/分である。本発明の別の実施形態では、拡張フローデバイスへの供給流の流量は、約2L/分~約500L/分である。本発明の更に別の実施形態では、拡張フローデバイスへの供給流の流量は、約3L/分~約200L/分である。本発明のなお更に別の実施形態では、拡張フローデバイスへの供給流の流量は、約4L/分~約100L/分である。本発明の一実施形態では、拡張フローデバイスへの供給流の流量は、約5L/分である。
【0063】
拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、任意の好適な値であり得る。滞留時間は、供給流が、オリフィス内だけでなく、また入口及び混合チャンバ内だけでなく、拡張フローデバイス内全体で費やす平均時間として定義される。本発明の一実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約120秒未満である。本発明の別の実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約60秒未満である。本発明の更に別の実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約15秒未満である。本発明の一実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約1.5秒~約50秒である。本発明の別の実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約2秒~約20秒である。本発明の更に別の実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約2.5秒~約10秒である。本発明のなお更に別の実施形態では、拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間は、約3秒~5秒である。
【0064】
拡張フローデバイスのオリフィスにおける供給流の滞留時間は、任意の好適な値であり得る。本発明の一実施形態では、オリフィスにおける供給流の滞留時間は、約1ms~約100msである。本発明の別の実施形態では、オリフィスにおける供給流の滞留時間は、約2ms~約50msである。本発明の更に別の実施形態では、オリフィスにおける供給流の滞留時間は、約5ms~約20msである。本発明のなお更に別の実施形態では、オリフィスにおける供給流の滞留時間は、約7ms~約15msである。本発明の一実施形態では、オリフィスにおける供給流の滞留時間は、約11msである。
【0065】
総エネルギーは、拡張フローデバイスに供給される電気エネルギーであり、デバイスの電圧及びアンペア数、並びに供給流の滞留時間に基づく。比エネルギーは、拡張フローデバイス内部の供給流中で放散されるエネルギーであり、これは、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用され、かつ供給流が拡張フローシステムを通って流れる際の供給流中の圧力降下に基づく。総エネルギー及び比エネルギーの計算は、方法セクションVIIに例示されている(それらは当業者に周知である)。
【0066】
本発明の一実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される比エネルギーは、約30MJ/kg SAF未満である。本発明の別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される比エネルギーは、約20MJ/kg SAF未満である。本発明の更に別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される比エネルギーは、約10MJ/kg SAF未満である。本発明のなお更に別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される比エネルギーは、約5MJ/kg SAF未満である。本発明の一実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される比エネルギーは、約1MJ/kg SAF未満である。
【0067】
本発明の一実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは、約50MJ/kg SAF未満である。本発明の別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは、約32MJ/kg SAF未満である。本発明の更に別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは、約16MJ/kg SAF未満である。本発明のなお更に別の実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは、約10MJ/kg SAF未満である。本発明の一実施形態では、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用される総エネルギーは、約2MJ/kg SAF未満である。
【0068】
拡張フローは、室温又は任意の他の温度で起こり得る。更に、拡張フローは、他のプロセス、例えば、マイクロ波加熱、UV照射、IR加熱、超音波/キャビテーション、押出、拡張延伸などの後又は前に起こり得る。
【0069】
拡張フローはまた、酸化的、酵素的、又は生物学的分解と同時に起こり得る。
【0070】
酸化的分解方法
予期せぬことに、SAFは、SAFを酸化性水溶性塩(以下、「塩」と称する)と混合することによって、特にアクリル酸を含むポリマーの形態で、可溶性ポリマーに分解され得ることが見出されている。塩は、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含む。SAF及び塩は、水又は生理的食塩水などの水性担体と混合される。
【0071】
混合物を30℃~200℃の温度に加熱することにより、おそらくは酸化性塩のラジカル及び/又はラジカルイオンへの分解によって引き起こされるラジカル分解を介して、SAFの分解が始まる。高温は、少なくとも35℃、又は少なくとも40℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも60℃、又は少なくとも70℃、又は少なくとも80℃であり得る。高温は、190℃未満、又は180℃未満、又は150℃未満であり得る。一般に、200℃を超える高温では、SAFは、制御されていない様式で分解及び崩壊を始めるが、これは、本発明にとって望ましくない。
【0072】
理論に拘束されることを望むものではないが、加熱すると、酸化性塩は分解を介してラジカル又はラジカルイオンを形成すると考えられる。ラジカル又はラジカルイオンは、水、若しくは水性担体からの水素引き抜きをもたらし、ヒドロキシルラジカルを生じるか、又は直接、SAFからの水素引き抜きをもたらす。ヒドロキシルラジカルは、SAFから水素を引き抜くことができる。SAFから水素を引き抜いた後、SAFのポリマーネットワークは、鎖切断により切断され得る。例示的な機構を、以下の略図に示す。混合物が加熱される高温は、(ラジカル若しくはラジカルイオン形成、又はラジカルイオンの形成につながる)塩の分解温度よりも少なくとも10℃低くなり得るか、又は混合物は、少なくとも分解温度である高温に加熱され得るか、又は塩の分解温度よりも少なくとも10℃高い高温に加熱され得る。
【0073】
本明細書で使用する場合、「分解温度」は、水中での10時間の半減期温度のことで、例えば、過硫酸アンモニウムでは69℃、過硫酸カリウムでは60℃である。
【0074】
したがって、異なる塩(具体的には、異なるアニオン)は、異なる分解温度を有するため、最適な温度範囲の選択は、とりわけ塩の選択に依存する。形成されたラジカル又はラジカルイオンは、例えば、SAFのポリマー鎖に含まれる脂肪族C-H基と反応することによって、SAFと反応し得る。このラジカル反応の結果として、SAFのポリマー鎖は分解され、分解されたSAFポリマー鎖において、炭素中心ラジカルが形成される。反応はまた、SAFのカルボキシル基においても行われ得、炭素中心ラジカルももたらされる。更に代替的又は追加的には、反応は、窒素原子において起こり得、これは、SAFを最初に作製するために使用された架橋剤によって含まれ得る。窒素原子において反応が起こる場合、炭素中心ラジカルの代わりに窒素中心ラジカルが形成される。
【0075】
理論に拘束されることを望むものではないが、以下の反応スキームは、SAFの可溶性ポリマー(すなわち、以下の「脱架橋ポリマー生成物」)への分解プロセスを例示的に示すと考えられ、
【0076】
【化1】
式中、Rは、H、又はアルカリカチオン、アンモニウムカチオン、又は架橋残基、又はカルボキシル基の他の誘導体、例えば、エステル、ヒドロキシエステルなどである。
【0077】
混合物は、高温で10分~10時間、好ましくは10分~5時間、より好ましくは10分~4時間維持され得る。経済的観点から、より短い時間が好ましい。より短いプロセス時間は、例えば、より高い塩濃度、より高い温度(しかしながら、200℃未満)、及び/又はSAFと塩との最適化混合によって得ることができる。混合物が高温に保たれる時間はまた、望ましい分解の程度(すなわち、プロセスによって得られる可溶性ポリマーの平均分子量)に依存する。一般に、不溶性SAFが存在しないか、又はわずかな量しか存在しないほどにSAFが分解(degraded)されると、大部分のSAFが可溶性ポリマーに分解(decomposed)されていることを示し、混合物は、もはや高温で維持される必要がなくなり、温度は、室温(25℃)以下に下げられ得る。
【0078】
SAF、塩、及び水性担体は、塩が部分的又は完全に水性担体に溶解されるように、例えば、塩と水性担体とを予備混合することによって、混合され得る。次いで、中に溶解した塩を含む水性担体は、例えば、溶解した塩を含む水性担体をSAF上に噴霧することよって、SAFと混合され得る。SAF上に溶解した塩を含む水性担体を噴霧した後、例えば、SAFの量、すなわちSAFの層の厚さに応じて、混合物は更に混合され得るか、又は混合されない場合がある。SAFが水性担体及び溶解した塩と適切に接触するように、溶解した塩を含む水性担体が、SAFの薄層上に噴霧される場合、更なる混合は、必要ない場合がある。
【0079】
水性担体を塩と予備混合して、塩を水性担体に溶解させることの代替として、水性担体と塩とを別々にSAFに提供して、塩が、SAFと混合された後にのみ、水性担体に溶解するようにすることも可能である。重要なことに、塩は、SAFとの接触後、又は好ましくはSAFとの接触前のいずれかで、水性担体に溶解し得る必要がある。
【0080】
水性担体は、水性担体を塩及びSAFと混合する前に、高温に予熱され得る。そのような予熱は、分解方法を加速させ得る。代替的には、水性担体は、塩とSAFとを混合する前に、高温未満の温度に予熱され得る。なお更に代替的には、水性担体は、塩及びSAFとの混合前に予熱されない場合があり、水性担体、塩、及びSAFが混合された後に、高温への加熱が行われる。
【0081】
SAFは、例えばパドルミキサ、プラウシェアミキサ若しくはニーダ、又はスタティックロータミキサを使用して、水性担体及び塩と混合され得る。好ましくは、SAF、水性担体、及び塩の混合物は、高剪断混合を介して混合される。
【0082】
塩がSAFとの混合前に水性担体に溶解される場合、アニオンが早期にラジカル又はラジカルイオンを形成して、その結果、酸化性塩が自己分解によって分解し、その後、SAFとの混合後にSAFの分解にもはや利用できなくなることを回避するために、水性担体が高温未満の温度に予熱され得る。しかしながら、塩が水性担体に短時間しか溶解されない場合、又はSAFと混合する直前に溶解される場合は、SAFと混合する前に、水性担体は、高温に予熱され得る。予熱は、塩が水性担体に溶解する時間を速め得る。
【0083】
代替的又は追加的には、SAFは、水性担体と塩とを混合する前に、高温又は高温未満の温度に予熱され得る。予熱されたSAFは、SAFのより短い膨潤時間をもたらし得、したがって、水性担体及び溶解した塩のSAFへの吸収を促進し、より速い分解を可能にする。溶解した塩のSAFへのより速い吸収はまた、SAF内の溶解した塩の均質な分散を改善し得、これは、より均質な分解を助け得、したがって、SAFの分解されていない細片が混合物中に残ることを回避する。
【0084】
更に代替的には、方法工程d)において得られた混合物は、中に溶解した塩を含む水性担体の少なくとも50重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも90重量%、又は全てが、SAFに吸収された後にのみ、高温に加熱され得る。それにもかかわらず、高温未満の温度までの何らかの予熱は、既に行われている場合がある。
【0085】
塩とSAFとの比は、SAF 1g当たり0.001gの塩~0.05gの塩であり得るか、又はSAF 1g当たり0.005gの塩~0.03gの塩であり得るか、又はSAF 1g当たり0.01gの塩~0.03gの塩であり得る。
【0086】
水性担体とSAFとの比は、SAF 1g当たり2g~30gの水性担体であり得るか、又はSAF 1g当たり2g~20gの水性担体であり得るか、又はSAF 1g当たり5g~15gの水性担体であり得る。SAFは、方法工程a)において、乾燥状態、又はSAF 1g当たり20g未満、若しくは15g未満、若しくは10g未満、若しくは5g未満の液体(水又は生理的食塩水など)に膨潤した状態で提供され得る。
【0087】
(SAFが乾燥SAFとして提供されない場合、)方法工程a)において提供されるような膨潤SAFに含まれる液体を含む、方法工程e)においてSAFに吸収される(すなわち、含まれる)液体の総量、及び方法工程e)においてSAFに吸収され、したがってSAFによって含まれる水性担体の量は、SAF 1g当たり2g~25gであり得るか、又はSAF 1g当たり2g~20gであり得るか、又はSAF 1g当たり5g~15gであり得るか、又はSAF 1g当たり8g~13gであり得る。本明細書で使用する場合、「乾燥SAF」は、SAFが、SAF 1g当たり0.20g未満、好ましくはSAF 1g当たり0.15g未満の液体含有量(「水分含有量」と称される)を有することを意味する。SAFの水分含有量は、EDANA水分含有量試験方法NWSP 230.0.R2(15)に従って測定される。
【0088】
SAFを効率的に分解するために塩が使用され得ることを確実にするために、方法工程d)及びe)において、中に溶解した塩を含む水性担体の有意な量が、SAFに吸収されることが望ましい。中に溶解した塩を含む、工程c)において提供される水性担体の少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも90重量%、又は100重量%が、SAFに吸収され得る。方法工程d)及びe)における、中に溶解した塩を含む水性担体の吸収は、中に溶解した塩を含む水性担体が、方法工程d)においてのみ吸収され得る(これは、特に100重量%が吸収される場合である)か、又は方法工程e)において優勢的に吸収され得る(これは、SAF、塩、及び水性担体が混合される間に、加熱が既に開始している場合であり得る)か、又は方法工程d)において、中に溶解した塩を含む水性担体の一部がSAFに吸収され、方法工程e)において、中に溶解した塩を含む水性担体の別の一部がSAFに吸収されることを意味する。
【0089】
方法工程a)において提供されるSAFは、7g/g~40g/g、又は10g/g~35g/g、又は15g/g~35g/gの遠心保持容量(CRC)値を有し得る。リサイクルされたSAFの場合は、乾燥させた後に、本明細書に記載のCRC試験方法に従って測定されるCRCを測定する必要がある。
【0090】
方法工程a)において提供されるSAFが、ポストコンシューマのリサイクルされたSAFである場合、SAF(の試料)を最初に乾燥させた後、この試料についてCRCを測定して、SAFのCRCを決定する必要がある。
【0091】
塩の少なくとも1つのアニオンは、ペルオキシジスルフェート、ペルオキシモノスルフェート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシジホスフェート、ペルオキシジボレート、又はこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0092】
塩の少なくとも1つのカチオンは、典型的には、カチオンがラジカルに解離しないという点で重要ではない。少なくとも1つのカチオンは、水性担体に十分な溶解度を有するように選択され得、比較的低コストで利用可能であるべきである。少なくとも1つのカチオンは、Li、Na、K、Rb、Cs、NH 、有機置換アンモニウム、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、Al3+、1+~3+の酸化状態の遷移金属カチオン、又はこれらの混合物(例えば、異なるカチオンを有する異なる塩の組み合わせ)からなる群から選択され得る。最も好ましいのは、1つ以上のアルカリ性カチオン及びNH カチオンである。
【0093】
塩の総重量で少なくとも50%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は100重量%は、アルカリ性過硫酸塩であり得る。
【0094】
過酸化水素が、本方法において添加され得る。過酸化水素は、可溶性ポリマーの時間当たりの収率、すなわち、分解速度を増加させるのに役立ち得る。過酸化水素はまた、分解された混入物質を脱色するのに役立ち得る。過酸化水素は、SAFと混合する前に、塩を水性担体に溶解した状態で、又は溶解しない状態で、別個の水溶液としてSAFに添加され得るか、又は水性担体中に添加され得る。本発明の方法において使用される過酸化水素の量は、塩の重量に基づいて、10重量%~200重量%であり得るか、又は塩の重量で20重量%~100重量%であり得るか、又は塩の重量で30重量%~80重量%であり得る。
【0095】
方法工程e)は、3~7のpHで実施され得る。典型的には、この範囲のpHを得るために、更に特別な手段は必要ではない。過硫酸ラジカルは、例えば、7超のpHで安定性が低い。
【0096】
添加剤が、本発明の方法において使用され得る。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、又はこれらの混合物などの低分子量アルコールは、方法工程c)において提供される水性担体に添加され得るか、又は方法工程d)の混合物に添加され得る。これらの添加剤は、水性担体及びその中に溶解した塩とともに、SAFの初期湿潤性をサポートし得る。それらはまた、細菌混入に対する水性担体の安定性を改善し得る。抗菌添加剤などの他の添加剤も添加され得る。添加剤の総量は、水性担体の重量に基づいて、10重量%以下、又は8重量%以下、又は5重量%以下、又は3重量%以下であり得る。別の実施形態では、方法ステップd)の分解混合物は、添加剤を含まず、かつメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、又はこれらの混合物などの低分子量アルコールを含まない。
【0097】
本発明の方法は、連続プロセスにおいて又はバッチプロセスとして実施され得る。概して、連続プロセスは、多くの場合、商業的/コスト的観点から好ましい。連続プロセスでは、SAFは、例えば、担体ベルトなど連続流で、例えば、提供され得、水性担体及び塩は、例えば、水性担体及び塩(及び任意選択で過酸化水素)をSAF上に噴霧することによって、SAFと混合される。SAF、塩、及び水性担体の混合物は、方法工程d)の後に(例えば、中に溶解した塩を含む水性担体が、部分的又は完全にSAFに吸収された後に)ベルト上に移され、連続的又はバッチ様式で加熱され得る。
【0098】
代替的には、(水性担体を槽内に提供する前後に、中に溶解した塩を含む)水性担体は、バッチ槽又は同様の容器内に提供され得る。次いで、SAFは、既に水性担体及び溶解した塩で満たされている槽内に添加され得、SAFは、水性担体及びその中に溶解した塩を吸収するために放置され得、同時に又は続いて、混合物は、高温に加熱され得る。
【0099】
SAFの場合、特に乾燥SAFとして提供される場合、空気は、SAF間に、すなわち、SAFが液体を吸収して膨潤する際にSAF間の隙間に「閉じ込められる」傾向がある傾向がある。したがって、膨潤SAFは、液体中で「浮遊する」傾向がある。SAFが分解されるにつれて、可溶性ポリマーは、槽内に沈み得、そこで、それは(連続的に)除去され得る。分解されていないSAF又は部分的に分解されたSAFが(一部のSAFが槽内に沈み得るために)可溶性ポリマーとともに除去されることを回避するために、メッシュなどを槽内に設置して、分解されていないか又は完全に分解されたSAFが槽の底部に更に沈むことを防止し得る。なぜなら、SAFは、より完全に分解されてメッシュを通過できるようになるまで、メッシュに捕捉されるためである。
【0100】
代替的には、SAF、塩、及び水性担体の混合物はまた、膨潤SAFが槽の底部に向かって沈み、可溶性ポリマー、すなわち本方法の生成物が槽の上部から除去され得るように、撹拌され得る。
【0101】
中に可溶化した可溶性ポリマーを含む得られた溶液は、溶液に所望され得る任意の後処理のために、例えば、ポンプを介して、異なる槽に、パイプ、又は任意の他の適切なデバイスに移送され得る。可能性のある後処理は、濾過、脱塩、蒸発による濃縮、又は多数の他の処理である。
【0102】
分解プロセスのエネルギー消費は、とりわけ高温に依存する。高温が高いほど、時間当たりのエネルギー消費が高い(すなわち、より高い高温での短いプロセス時間は、比較的長いプロセス時間を有する比較的低い高温よりも少ないエネルギーを全体的に必要とし得る)。例えば、エネルギー消費量は、断熱槽内のバッチプロセスについて、約100℃の高温で、約3.5MJ/kgの乾燥SAFである、すなわち、高温への加熱が1回のみ行われるプロセスである。
【0103】
方法工程a)において提供されるSAFは、粒子形態であり得る。本方法において提供されるSAFは、未使用SAF、ポストコンシューマのリサイクルされたSAF(post-consumer recycled SAF、PCR SAF)、ポストインダストリアルのリサイクルされたSAF(post-industrial recycled SAF、PIR SAF)、又はこれらの材料の組み合わせであり得る。「ポストコンシューマSAF」及び「ポストコンシューマのリサイクルされたSAF」(PCR SAF)は、本明細書では互換的に使用され、本明細書で使用される場合、AHPに含まれているSAFを指し、このAHPは、消費者によって使用されている(例えば、失禁ユーザによって着用されている)。使用後、AHPは、リサイクルされ、PCR SAFは、AHPから単離される。しかしながら、本発明の方法においては、ポストコンシューマAHPの他の成分が、本発明の方法に提供されるポストコンシューマSAFに含まれないように、SAFを精製する必要はない。
【0104】
「ポストインダストリアルSAF」及び「ポストインダストリアルのリサイクルされたSAF」(PIR SAF)は、本明細書では互換的に使用され、本明細書で使用される場合、AHPに含まれている場合があるか又は含まれていない場合があるSAFを指す。PIR SAFは、以前に使用されておらず、例えば、消費者によって使用されているAHPに含まれていなかった。その代わりに、PIR SAFは、例えば、それらに欠陥があるために、製造中に選り分けされているAHPに由来する場合がある。PIR SAFはまた、例えば、それらが必要な性能目標(容量、白色度など)を満たさないために、SAF製造中に選り分けされている場合もある。したがって、後者のシナリオの場合、PIR SAFは、以前にAHPに含まれていなかった。
【0105】
SAFの典型的な特性は、機械的特性、膨潤能、及び本明細書に示す試験方法に従って測定される遠心保持容量(CRC)である。
【0106】
また、SAFは、25重量%超~95重量%未満の他のコモノマー(すなわち、アクリル酸以外)を含む。好適なコモノマーは、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、ポリビニルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルモルホリノン、並びにビニルスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジンなどのポリマー及びコポリマーを含む/それらからなる、モノマー基である。SAF中の他の好適なポリマーとしては、加水分解アクリルニトリルグラフトデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、及びイソブチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。SAFは、材料を実質的に水不溶性にするために架橋される。好ましいモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、及び/又はヒドロキシル基を含むモノマー、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、5グリセリルモノアクリレートなどである。SAFは、2種類のモノマー(アクリル酸を含む)又はより好ましくは3種類以上のモノマーから形成されたポリマーを含み得る/それらからなり得る。
【0107】
SAFは、重量%でのNaの量として約8重量%超のナトリウムレベル、又は重量%でのNaの量として10重量%~20重量%、若しくは15重量%~18重量%のナトリウムレベルを有し得る。本発明の更に別の実施形態では、SAFは、重量%でのNaの量として12重量%未満のナトリウムレベルを有する(疑義を避けるために、重量%(weight-%)、重量%(wt-%)、及び重量%(wt%)は、本明細書では互換的に使用される)。また、又は代替的には、SAFは、重量%でのKの量として約13.5重量%超のカリウムレベル、又は重量%でのKの量として17重量%~34重量%、若しくは25.5重量%~30.6重量%のカリウムレベルを有し得る。SAFは、重量%でのKの量として20.4重量%未満のカリウムレベルを有し得る。Na含有量並びにK含有量は、例えば、当業者に周知であるように、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)分析技術を用いて測定することができる。
【0108】
代替的には、SAFは、重量%でのNH の量として約6.3重量%超のアンモニウムレベル、又は重量%でのNH の量として7.8重量%~15.7重量%、若しくは11.7重量%~14.1重量%のアンモニウムレベルを有し得る。SAFは、重量%でのNH の量として9.4重量%未満のアンモニウムレベルを有し得る。
【0109】
本発明の方法に提供されるSAFは、乾燥形態であり得るか、又は水、食塩水、又は尿(例えば、PCR SAF中の尿)で部分的に膨潤されている場合がある。したがって、SAFは、水、食塩水、又は尿で、0.05g/g~20g/g、好ましくは0.05g/g~15g/g、より好ましくは0.10g/g~10g/g、より好ましくは0.20g/g~5g/g、更により好ましくは0.50g/g~2g/gに膨潤され得る。完全乾燥(すなわち、水、食塩水、又は尿1g当たり0g)は、完全乾燥SAFが、中に溶解した塩を含む水性担体を吸収するのにより長い時間がかかることから、本発明の方法にとって有利ではない場合がある。一方、本方法に提供される場合、過度に膨潤されている(又は更に完全に膨潤されている)SAFはまた、水性担体中に溶解した塩がSAFに吸収されるまでの時間の増加につながり得る。本方法に提供されるSAFは、(本明細書に記載の遠心保持容量「CRC」として測定される場合、)70g/g~40g/gの吸収容量CRCを有し得る。
【0110】
方法工程c)において提供される水性担体の量は、工程a)において提供されるSAFが、提供される全ての水性担体の吸収時に、そのCRCの少なくとも20%、又は少なくとも30%、50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%に膨潤し得るような量であり得る。SAFが乾燥した状態ではなく、予備膨潤している状態で提供される場合(以下の更なる詳細を参照)、所望の程度のSAF充填、すなわち所望のCRCを得るために必要な水性担体が少なくなる。
【0111】
液体が吸収されると、SAFのポリマー網状組織内のポリマー鎖は、脱絡み合いが始まる。そのような脱絡み合いによって、ポリマー網状組織は、塩から形成されたラジカル又はラジカルイオンによりアクセスし易くなる。したがって、分解が改善される。工程c)において提供される水性担体の量が、水性担体の吸収時にSAFがそのCRCの少なくとも20%まで膨潤し得ない場合、SAFのポリマー網状組織内のポリマー鎖が、十分に脱絡み合いができず、分解がより遅くなるか又は全体的に効果が薄れる。
【0112】
本発明の分解方法の場合、ポストコンシューマSAFの使用は、未使用SAFの使用よりも有益であり得る。先に膨潤したポリマー網状組織中のポリマー鎖、次いで少なくとも部分的に再乾燥させたSAFは、既に脱絡み合いが行われている。再膨潤、ひいては新たな脱絡み合いは、未使用SAFの膨潤に対してより速いと考えられている。
【0113】
ポストコンシューマSAFが、本発明の方法に部分的に膨潤した形態で提供される場合、ポストコンシューマSAFの乾燥には時間とエネルギーがかかることを考慮すると、本方法で使用するためにSAFを完全に乾燥させる必要がないことも有利な点である。しかしながら、ポストコンシューマSAFは、本発明の方法に提供する前に、滅菌され得る。
【0114】
ポストコンシューマSAF又はポストインダストリアルSAFが、AHPから単離されて、本発明の方法に提供される場合、SAFは、AHPの他の成分が存在しないように、精製される必要は必ずしもない。SAFには、例えば、合成繊維材料又はフィルム(例えば、繊維、シート、フィルム、及び繊維層)、セルロース繊維、接着剤、インク、染料、界面活性剤などの、AHPの他の成分が混入し得る。これらの混入物質の量は、SAFと混入物質との混合物の20重量%以下であり得るか、又は15重量%以下であり得るか、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下であり得る。
【0115】
ポストコンシューマSAFが、依然として、例えば、尿又は他の液体で膨潤されている場合、SAFと混入物質との混合物の重量によって混入物質の量を計算するとき、SAFによって含まれるこの尿又は他の液体は、考慮されない。
【0116】
SAFが本発明の乾燥SAFとして提供される場合、ポストコンシューマ又はポストインダストリアルSAFの繊維サイズは、例えば、切断、粉砕、研削、又は他の好適な手段によって、任意選択的に低減され得る。これは、非減少繊維長の約50%以下の長さ、又は非減少繊維長の約10%~約70%の長さの、減少繊維長をもたらし得る。
【0117】
SAFが、例えば、リサイクル後に乾燥されていないか、又は一部しか乾燥されていないポストコンシューマSAFのように、事前に膨潤した形状で提供される場合、SAFは、粉砕に供されて、SAFの表面積を増加させ得、それによって、中に溶解した塩を含む水性担体のより速い吸収を可能にし得る。そのようなより速い吸収は、次に、SAFのより速い分解をもたらし得る。粉砕は、例えば、湿式研削、乾式粉砕、又は切断によって行われ得る。
【0118】
繊維サイズが小さいほど、溶解した塩のSAFへの速く、均質な吸収に役立ち得、SAFのより速く、より完全な分解をもたらす。更に、より小さい繊維サイズは、特に不織布などの絡み合った繊維において、SAFと塩及び水性担体との混合を助けることができる。
【0119】
水溶液中の可溶性ポリマーを、混合物中の他の化合物及び成分から分離する任意選択の方法工程f):
SAFが可溶性ポリマーに分解されると、可溶性ポリマーは、(場合によっては残りの未分解の)SAF、塩、水性担体、及び任意選択の更なる成分(例えば、過酸化水素、及び/又は低分子量アルコール)の混合物から分離され得る。混合物は、固体の不溶性成分として、混合物中に存在し得る一定量の未分解SAFを依然として含み得る。
【0120】
可溶性ポリマーは、多数のプロセスを介して混合物から抽出され得る。これらのプロセスの非限定的な例は、水蒸発、可溶性ポリマーの濾過、水抽出などである。また、塩は、当業者に既知の任意の脱塩技術によって除去することができる。脱塩プロセスの非限定的な例は、膜プロセス(例えば、逆浸透、順浸透、電気透析の逆転(electrodialysis reversal、EDR)、ナノ濾過など)、凍結脱塩、太陽熱脱塩、地熱脱塩、イオン交換、波力脱塩などである。同じ技術はまた、一般に、混合物中の他の低分子量化合物、例えば、接着剤、インク、染料、界面活性剤、及びこれらの化合物の分解生成物など、ポストコンシューマAHPの他の典型的な化合物を除去するためにも適用され得る。
【0121】
例えば、混合物から固体化合物及び成分を排除するために、すなわち、水溶液中の可溶性ポリマーを、工程c)によって得られた混合物中の他の化合物及び成分から分離する方法工程d)のために、濾過が使用され得る。固体化合物及び成分は、合成繊維素材又はフィルム(繊維、シート/フィルム/繊維層)及びセルロースなどの、ポストコンシューマAHPに残存する不溶性SAF及び他の成分であり得る。特に、合成繊維材料又はフィルムなどの、ポストコンシューマAHPの他の成分によって含まれるポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)は、水性担体に可溶性又は膨潤性ではない。それらは、塩と無視できる程度にしか反応し得ない、すなわち、ポリオレフィンは、本発明の方法では、分解されないか又は軽微にしか分解されない。同じことがPETにも当てはまり、これはまた、合成繊維材料又はフィルムによって含まれ得る。したがって、これらの材料は、混合物中の固体成分として残り、濾過され得る。
【0122】
PEG、例えば、界面活性剤に含まれる、ポストコンシューマAHP中の別の典型的な構成要素は、本発明の方法によって分解される。しかしながら、PEGは、典型的には、比較的低分子量の分子に分解され、これは、可溶性ポリマーの分子量よりも有意に小さい。したがって、PEGの低分子量反応生成物は、例えば上記の技術によって、可溶性ポリマーから分離され得る。
【0123】
代替的又は追加的には、ポストコンシューマAHPの化合物を含み得る、可溶性ポリマー、(場合によっては残りの部分の)SAF、塩、及び水性担体の混合物はまた、可溶性ポリマーが沈殿して混合物から分離するような、可溶性ポリマーが溶解しない共溶媒中でも混合され得る。共溶媒中でのそのような混合の前に、混合物中の固体化合物は、濾過によって除去され得る。
【0124】
本発明の分解方法によって得られた可溶性ポリマーは、異なる分子量を有し得る。可溶性ポリマーは、オリゴマーを含み得るか、又は含まない場合がある。好ましくは、可溶性ポリマーは、オリゴマーを含まない、すなわち、可溶性ポリマーは、ポリマーのみに関する。可溶性ポリマーの平均分子量Mwは、最大10MDa、又は最大5MDaであり得る。可溶性ポリマーの平均分子量Mwは、少なくとも10kDa、又は少なくとも20kDa、又は30kDa~1MDaであり得る。可溶性ポリマーは、直鎖状又は分岐鎖状であり得る。しかしながら、可溶性ポリマーは、架橋されておらず、したがって可溶性ポリマーは、可溶性、好ましくは水溶性である。
【0125】
本発明の方法によって得られる可溶性ポリマーは、例えば、接着剤、コーティング、水処理などの他の用途のための材料に使用され得るか、又は誘導体化され得る。本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、接着剤において使用される。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、織物ケア用途において使用される。本発明のなお更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、水処理用途において使用される。
【0126】
本発明の一実施形態では、供給流は、SAF及び酸化性水溶性塩を含み、当該塩は、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含む。本発明の別の実施形態では、供給流は、SAF及び酸化性水溶性塩を含み、当該塩は、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含み、当該アニオンは、ペルオキシジスルフェート、ペルオキシモノスルフェート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシジホスフェート、ペルオキシジボレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の更に別の実施形態では、供給流は、SAF及び酸化性水溶性塩を含み、当該塩は、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つのアニオンを含み、当該アニオンは、ペルオキシジスルフェート、ペルオキシモノスルフェート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシジホスフェート、ペルオキシジボレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、当該カチオンは、Li、Na、K、Rb、Cs、NH 、有機置換アンモニウム、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、Al3+、1+~3+の酸化状態の遷移金属カチオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0127】
本発明の一実施形態では、供給流は、生物学的プロセスに供され、この結果、供給流と生成物流との間の粘度比の負の10進対数は、約2超である。生物学的方法は、可溶性ポリマーをポリ(エチレングリコール)(poly(ethylene glycol)、PEG)架橋剤に連結するカルボキシルエステル結合、又はPEG架橋剤に存在するエーテル結合などの、SAFに存在する結合を切断する酵素又は微生物を伴い得る。このような結合の分解は、供給流の粘度の低下をもたらし得、供給流が拡張フローデバイス内を流れる際の流量の増加及び/又は圧力の低下を可能にし得る。
【0128】
本発明の一実施形態では、供給流は、SAF及び酵素を含み、当該酵素は、当該SAFに対する活性を有する。酵素の非限定的な例は、ヒドロラーゼ及びオキシダーゼである。ヒドロラーゼの非限定的な例は、エステルヒドロラーゼ、カルボキシルエステルヒドロラーゼ、エーテルヒドロラーゼ、クチナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、及びカルボイルエステラーゼである。本発明の別の実施形態では、供給流は、SAF及びエステルヒドロラーゼを含む。本発明の更に別の実施形態では、供給流は、SAF及びエーテルヒドロラーゼを含む。オキシダーゼの非限定的な例は、ペルオキシダーゼ、ペルオキシゲナーゼ、ラッカーゼ、リポキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、ペルオキシゲナーゼ、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、及びヒドロキシラーゼである。本発明のなお更に別の実施形態では、酵素は、酵素カクテルを含む。本発明の一実施形態では、供給流は、SAFと、酵素と、補因子、補基質、及び補足物質のうちの1つ以上と、を含む。
【0129】
本発明の別の実施形態では、供給流は、SAF及び酵素カクテルを含む。本発明の更に別の実施形態では、供給流は、SAF及び酵素を含み、当該酵素は、複数の触媒活性を含み、当該活性は、カルボキシルエステラーゼ、エーテルヒドロラーゼ、及びオキシダーゼからなる群から選択される。酵素は、天然に存在し得るか、又は基質特異性、ターンオーバー、温度安定性、及びpH安定性などの特性を改善するように操作され得る。例えば、過酸化水素は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT、合成グレード)、N-ヒドロキシナフタルイミド(IMD-4、99%)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(NHND、97%)、N-ヒドロキシフタルイミド(NPI、97%)、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、ABTS、又はN,N’-ジヒドロキシ-1,4,5,8-ナフタルジイミド、IMD-8などであるが、これらに限定されない、ペルオキシダーゼファミリー酵素又はエレクトロンシャトル化合物に添加され得る。
【0130】
供給流中のSAFを分解する細菌性微生物の非限定的な例は、Bacillus cereus、Pseudomonas aureginosa、P.fluorescens、P.stutzeri、及びAlcaligenes glycovoransである。SAFを分解する真菌微生物の非限定的な例は、Phanerochaete chrysosporiumである。本発明の別の実施形態では、本明細書に列挙されるものなどの生物の組み合わせ又は共同体を利用して、供給流中のポリマーを分解する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本出願人らは、生物学的処理において使用される微生物が、供給流中のSAFの特異的結合に作用する、本明細書に列挙される酵素例などの少なくとも1つの酵素を発現及び産生すると考える。生物はまた、酵素活性を強化する補因子、補基質、及び/又はアロステリックモジュレーターを産生し得る。
【0131】
IV 生成物流
供給流は、拡張デバイスの入口に流入し、拡張フローデバイスの出口で生成物流を生成する。本発明の一実施形態では、生成物流は、可溶性ポリマーを含む。本発明の別の実施形態では、生成物流は、可溶性ポリマー及びSAFを含む。
【0132】
本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、約5,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明の別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約2,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明のなお更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約500,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、約300,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明の別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約200,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約100,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。本発明のなお更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約30,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。
【0133】
本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、約1,000,000g/mol~約5,000,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明の別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約500,000g/mol~約2,000,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約100,000g/mol~約1,000,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明のなお更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約150,000g/mol~約500,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、約90,000g/mol~約300,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明の別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約20,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量を有する。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約10,000g/mol~約100,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0134】
本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、約10未満の多分散性指数(PDI)を有する。本発明の別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約6未満のPDIを有する。本発明の更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約4未満のPDIを有する。本発明のなお更に別の実施形態では、可溶性ポリマーは、約2未満のPDIを有する。PDIは、重量平均分子量と数平均分子量との比であり、これらの分子量は、当業者に既知であるように、GPC(方法セクションVIIに記載)によって測定される。
【0135】
生成物流の粘度は、典型的には、振動モードの平行板固定具又は定常モードのカップ及びボブ固定具のいずれかを用いて測定される。報告された振動粘度は典型的には1rad/秒に対応し、報告された定常粘度は典型的には4s-1の剪断速度に対応する。可溶性ポリマーの濃度及び分子量に依存して、生成物流の粘度は、1mPa.s(又は同等に、1cP;すなわち、水の粘度)程度の低さであり得る。
【0136】
生成物流の粘度と供給流の粘度との比は、粘度減少比(又は単に粘度比)である。それは、UVフローシステムによる可溶性ポリマーへのSAF分解の程度を示す。粘度比の負の10進対数は、供給流と生成物流との間の粘度変化の桁を測定する。本発明の一実施形態では、供給流が、粘度を有し、生成物流が、粘度を有し、生成物流の粘度と供給流の粘度との比が、粘度比であり、当該粘度比の負の10進対数が、約6未満である。本発明の別の実施形態では、供給流が、粘度を有し、生成物流が、粘度を有し、生成物流の粘度と供給流の粘度との比が、粘度比であり、当該粘度比の負の10進対数が、約4未満である。本発明の更に別の実施形態では、供給流が、粘度を有し、生成物流が、粘度を有し、生成物流の粘度と供給流の粘度との比が、粘度比であり、当該粘度比の負の10進対数が、約2未満である。
【0137】
生成物流からの可溶性ポリマーは、例えば、接着剤、コーティング、水処理などの様々な用途のための材料に誘導体化され得る。本発明の一実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、接着剤として使用される。本発明の更に別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、織物ケア用途において使用される。本発明のなお更に別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、そのままで、又は誘導体化されて、のいずれかで、水処理用途において使用される。
【0138】
本発明の一実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、紙製品におけるプライ糊として使用される。本発明の別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、ペーパータオル製品におけるプライ糊として使用される。本発明の更に別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、トイレットペーパー製品におけるプライ糊として使用される。本発明のなお更に別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、約350kDaより大きいMを有する、紙製品におけるプライ糊として使用される。本発明の一実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、約400kDa~約500kDaのMを有する、紙製品におけるプライ糊として使用される。
【0139】
本発明の別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、ペーパーコアとペーパータオル製品との間の糊として使用される。本発明の更に別の実施形態では、生成物流からの可溶性ポリマーは、ペーパーコアとトイレットペーパー製品との間の糊として使用される。
【0140】
可溶性ポリマーは、多数のプロセスを介して生成物流から抽出され得る。これらのプロセスの非限定的な例は、水蒸発、可溶性ポリマー濾過、水抽出などである。また、AHPにおけるSAFの使用からの生成物流中に存在する塩は、当業者に既知の任意の脱塩技術によって除去することができる。脱塩プロセスの非限定的な例は、膜プロセス(例えば、逆浸透、正浸透、逆電気透析(EDR)、ナノ濾過など)、凍結脱塩、太陽光脱塩、地熱脱塩、イオン交換、波力脱塩などである。
【0141】
V リサイクルされたSAF
生成物流からの可溶性ポリマーをプロセスに供給して、アクリル酸を使用してSAFを作製することができ、したがって、リサイクルされたSAFが製造される。本発明の一実施形態では、可溶性ポリマーは、リサイクルされたSAFを製造するために使用される。
【0142】
本発明の一実施形態では、リサイクルされたSAFは、本明細書に記載のCRC試験方法を用いて測定されるCRCを有し、CRCは、約7g/g~約45g/gである。本発明の別の実施形態では、リサイクルされたSAFは、CRCを有し、CRCは、約10g/g~約35g/gである。本発明の更に別の実施形態では、リサイクルされたSAFは、CRCを有し、CRCは、約15g/g~約35g/gである。
【0143】
VII 方法
NMR含有量法
NMR含有量法は、アルケン末端部分、アルコキシ基(-O-CHR-、ここで、Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、又はハロゲン基のうちの1つである)、脂肪族基(-CHR-、ここで、Rは、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はハロゲン基のうちの1つである)、及び/又は他のH-NMR活性基などの、異なるNMR信号を有する官能基のモル基準での比を決定するために使用される。
【0144】
この方法では、プロトンNMR分光法を用いて、重水素化水中の可溶性材料の試料を分析し、異なるH-NMRドメインのピークを積分し、比を取って、官能基又は異なるH-NMRドメインのプロトンのモルパーセントをそれぞれ決定する。
【0145】
可溶性ポリマーを、真空オーブン(Heraeus Vacutherm型、Thermo Scientific(商標))で、40℃及び10~50mbarの圧力で、3時間乾燥させる。任意の低分子量アルコール、エステル、又はエーテルが可溶性ポリマーから除去される。
【0146】
試料の10重量%未満をDOに溶解し、pHを5.5~6.5に調整した流動性溶液を調製する。溶液をNMRガラスグレード管に移し、プロトンNMR装置の試料ホルダー(ボア)に入れる。好適な装置の例は、400MHzの磁場強度を有するBruker NMRデバイスである。60MHz程度の低さで動作する「低磁場」装置を含む他のメーカー及び他の磁場強度の装置であっても、この方法を実行するために首尾よく使用することができる。データを取得し、残留水信号を抑制するために、noesy-presatシーケンスが使用される。当業者は、他の特定のデータ収集パラメータの適切な選択に精通しているであろう。上記の例示的な400MHzのBruker装置とともに使用される適切なパラメータは、4.1秒の取得時間(FID長)、8秒の緩和時間、90度のパルス幅、20ppmのスペクトル幅、FIDにおいて64kポイント、及び使用される64回の繰り返し走査である。フーリエ変換ステップでは、指数関数的アポディゼーションが0.3Hz線幅拡大とともに使用され、スペクトルは段階的に吸収される。スプライン基線補正を使用して、積分されるピークの両側で平坦なベースラインを確実にする。
【0147】
以下のピーク領域が、典型的には、含有量決定のために使用され、統合される:
1)約5~6ppmの範囲の化学シフトにある2つの末端アルケンプロトンのうちの1つ、典型的には、1つの末端アルケンプロトンは約5.35ppm+/-0.5ppm。(末端アルケンプロトンとしてのそのようなプロトンピークの同定を確認するために、標準的な編集されたH-13C HSQC配列を(例えば、W.Willker,D.Leibfritz,R.Kerssebaum & W.Bermel,Magn.Reson.Chem.31,287-292(1993)に従って)使用して、1D-1Hスペクトルに見られるアルケンシグナルが両方とも同じメチレン(二級)炭素(-CH)に結合していることを決定することができる)。得られた積分は、「integral_alkene」と呼ばれる。
2)約3.2~3.8ppmの、典型的には約3.6ppmの範囲の化学シフトにあるアルコキシプロトン。得られた積分は、「integral_3.6」と呼ばれる。複数の信号が約3.6ppm、すなわち、約3.2~3.8ppmの範囲で現れる場合、最大の積分値を有する信号が、「integral_3.6」を得るために選択される。
3)典型的には約1.5ppm及び2.1ppm、又は約1.8ppmの脂肪族CH基のメチレンプロトン。得られた積分は、「integral_CH」と呼ばれる。
4)約1.0~2.6ppmの範囲の化学シフトにある他の脂肪族基。
5)以下の条件で、異なるH-NMRドメインの他の群又はピークも同様に分析することができる。
a)分離された信号である、
b)少なくとも0.5ppmの距離にピーク最大値を有する。
6)クラス1)、2)、3)、及び/又は4)に対応するNMRスペクトル中のピークを同定し、存在する場合は積分する。そのようなピークが存在しない場合、これは、それぞれクラス1)、2)、3)、又は4)の測定可能な含量がないと報告した。当業者に既知であるように、積分は、ベースライン(信号の開始)からベースライン(信号の終了)までの範囲であり、又は、広い及び/若しくは複雑な場合、積分の境界は、次の隣接する信号の開始から生じる。
【0148】
比「比3.6:CH」は、以下の式によって計算される。
比3.6:CH=integral_3.6/integral_CH
比3.6:CHは、無単位数であり、約3.6ppmでのプロトンの比を表す
【0149】
アルケンの含有量「%アルケン」は、以下の式によって計算される。
%アルケン=[integral_alkene/(integral_alkene+integral_3.6+integral_CH)]100%
【0150】
メチレンの含有量「%CH」は、以下の式によって計算される。
%CH=[integral_CH/(integral_alkene+integral_3.6+integral_CH)]100%
【0151】
約3.6ppmのプロトン(例えばアルコキシプロトン)の含有量「%3.6ppm」は、以下の式によって計算される。
%3.6=[integral_3.6/(integral_alkene+integral_3.6+integral_CH)]100%
【0152】
比「比3.6:CH」は、四捨五入して0.001の位までの近似値として報告される。
【0153】
約3.6ppmでのアルケン、メチレン、及びプロトンの含有量は、0.01%単位で、%で報告される。
【0154】
遠心保持容量(CRC)試験方法
超吸収性繊維の容量は、EDANA NWSP 241.0.R2(19)に示される遠心保持容量(CRC)試験方法に従って決定される。EDANA NWSP 241.0.R2(19)から逸脱して、超吸収性繊維、超吸収性不織布、及び/又は超吸収性コアのサンプリング(EDANA NWSP 241.0.R2(19)の第8章)は、以下のとおりである。
【0155】
超吸収性繊維、超吸収性不織布、及び/又は超吸収性コアは、最大寸法が約5mmの小片に切断される。切断は、例えば、ハサミを用いて手動で行うことができる。繊維構造体(コア、不織布、又は繊維のバルク)が切断プロセス前又は切断プロセス中に大幅に圧縮されないように注意する。これにより、超吸収性繊維間に十分な空隙空間が確保され、したがって、超吸収性繊維は、表面領域全体で膨潤媒体によって主に湿潤され得る。
【0156】
超吸収性繊維、超吸収性不織布、及び/又は超吸収性コアについての手順(EDANA NWSP 241.0.R2(19)の第9.1~9.5章)におけるEDANA NWSP 241.0.R2(19)からの更なる逸脱又は追加は、以下のとおりである。
【0157】
測定のための試料を、例えば、実験室用ピンセットを用いて慎重に採取し、ティーバッグに入れる。実験室用ピンセットを用いて、繊維は、塊を避けるためにティーバッグに注意深く分配され、繊維塊は、もしあれば、注意深く開かれる。
【0158】
ティーバッグを密封する際には、密封領域に超吸収性繊維、超吸収性不織布、及び/又は超吸収性コアの材料が存在しないように注意する。これにより、ティーバッグの完全で十分に強い密封が保証される。
【0159】
試験方法の他の全ての項目は、EDANA NWSP 241.0.R2(19)に記載されているように実行される。
【0160】
総エネルギー計算
総エネルギーは、拡張フローデバイスに供給される電気エネルギーであり、デバイスの電圧及びアンペア数、並びに供給流の滞留時間に基づく。拡張フローデバイスは、典型的には、モータートルク及び速度、並びに拡張フローデバイスにおける供給流の滞留時間から総エネルギーを計算する。次いで、SAFの単位質量当たりの総エネルギーが、総エネルギー及び供給流中にあるSAFの量から計算される。
【0161】
比エネルギー計算
比エネルギーは、供給流中で放散されるエネルギーであり、SAFを可溶性ポリマーに変換するために使用され、供給流が拡張フローシステムを通って流れる際の供給流中の圧力降下に基づく。一例として、供給流における圧力低下が4945psi(341バール)であり、供給流の体積が400mLであり、供給流密度が1g/mLである場合、比エネルギーは、次のように計算される:(341(バール)×0.4(L))/(400(mL)×0.025(g SAF/g)×1(g/mL))=1.36MJ/kg SAF。
【0162】
分子量分布(Molecular Weight Distribution、MWD)分析
これは、多角度光散乱(Multi-Angle Light Scattering、MALS)及び屈折率(Refractive Index、RI)検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)を使用して行われる。試料を0.1M NaNO/0.02重量%アジ化ナトリウム(NaN)中1mg/mLの濃度で作製し、室温で穏やかに混合して一晩水和させる。次いで、GPC-MALS/RI分析の前に0.8μmフィルタを通して試料を濾過する。絶対MWD分布は、0.15のdn/dc値を使用して計算される。
【0163】
上述の記載は、理解を明確にするためにのみ与えられているものであり、当業者にとって本発明の範囲内の変更は自明のことであるので、上述の記載によって不必要な限定が行われるものではないことが理解されるべきである。
【0164】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示されない限り、そのような寸法は各々、列挙された値と、その値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0165】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは関連出願を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいずれの発明に対する先行技術であるともみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないずれの発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語のいずれの意味又は定義も、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0166】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【国際調査報告】