(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】PPTCアクチュエータヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240220BHJP
H01B 1/04 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
H05B3/14 A
H05B3/14 F
H05B3/14 Z
H01B1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548361
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022016528
(87)【国際公開番号】W WO2022177937
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジアンフア
(72)【発明者】
【氏名】ラジーズ、リマンタス
【テーマコード(参考)】
3K092
5G301
【Fターム(参考)】
3K092QA02
3K092QB14
3K092QB15
3K092QB17
3K092QB21
3K092QB31
5G301BA01
5G301BA02
5G301BA03
5G301BA10
(57)【要約】
温度感知アクチュエータ用の新規なヒータが開示される。ヒータは、導電性フィラ及び半結晶性高分子からなる高分子正温度係数(PPTC)デバイスである。PPTCヒータは、ヒータを利用するあらゆる用途に適した予め決められた自動調節温度を有するように戦略的に設計されている。間隙幅及び厚みなどのPPTCヒータの物理的特徴により、ヒータを通る電流の流れを戦略的に制御できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子正温度係数(PPTC)ヒータであって、
第1の電線に結合された第1の電極;
PPTC高分子マトリックスを有するヒータ本体、前記PPTC高分子マトリックスは、導電性フィラ及び半結晶性高分子を含む;
第2の電線に結合された第2の電極、前記PPTC高分子マトリックスは、前記第1の電極及び前記第2の電極の間にサンドイッチを形成するように配置され、前記ヒータ本体は円環状に配置される
を備えるPPTCヒータ。
【請求項2】
曲げ工程は、前記サンドイッチを前記円環状に形成するために使用される、請求項1に記載のPPTCヒータ。
【請求項3】
前記第1の電線は、前記円環状の内面上にあり、前記第2の電線は、前記円環状の外面上にある、請求項1又は2に記載のPPTCヒータ。
【請求項4】
前記PPTC高分子マトリックスは、導電性フィラ及び半結晶性高分子をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のPPTCヒータ。
【請求項5】
第3の電極をさらに備え、前記第1の電極及び前記第3の電極は、前記円環状の内面上にあり、前記第2の電極は前記円環状の外面上にある、請求項1又は2に記載のPPTCヒータ。
【請求項6】
前記第1の電線及び前記第2の電線は、前記円環状の前記内面上にある、請求項5に記載のPPTCヒータ。
【請求項7】
前記第1の電極及び前記第3の電極は、第1の予め決められた厚みの間隙によって分離され、前記間隙は前記ヒータ本体の前記PPTC高分子マトリックスを露出する、請求項6に記載のPPTCヒータ。
【請求項8】
前記ヒータ本体は、前記第1の電極及び前記第3の電極の間で測定された第2の予め決められた厚みを有する、請求項7に記載のPPTCヒータ。
【請求項9】
前記第2の予め決められた厚みは、前記第1の予め決められた厚みよりも、はるかに薄い、請求項8に記載のPPTCヒータ。
【請求項10】
前記第2の予め決められた厚みは、3ミル(0.076ミリメートル)及び120ミル(3.0ミリメートル)の間である、請求項8又は9に記載のPPTCヒータ。
【請求項11】
前記導電性フィラが、カーボン、グラフェン、カーボン及びグラフェン、導電性セラミック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブを有するカーボン、及びカーボンナノチューブを有するグラフェンからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のPPTCヒータ。
【請求項12】
前記半結晶性高分子が、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、及びポリパーフルオロアルコキシからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のPPTCヒータ。
【請求項13】
高分子正温度係数(PPTC)ヒータであって、
導電性フィラ及び半結晶性高分子を有するヒータ本体、前記ヒータ本体は、予め決められた厚みの長方形のシートに構成されている;
第1の端部で前記ヒータ本体の第1の側面上に配置された第1の電極、ここで、前記第1の電極は、第1の電線に結合されている;
第2の端部で前記ヒータ本体の前記第1の側面上に配置された第2の電極、ここで、前記第2の電極は、第2の電線に結合されている;及び
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置された間隙、前記間隙は、前記第1の電線及び前記第2の電線に対して水平であり、前記間隙は、第2の予め決められた厚みを有し、ここで、前記間隙は、前記第1の電極及び前記第2の電極の間の前記ヒータ本体を露出させる
を備え、前記PPTCヒータは、円環状に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極は内面上に配置される、PPTCヒータ。
【請求項14】
前記ヒータ本体の第2の側面上に配置された第3の電極をさらに備え、前記第2の側面は前記第1の側面の反対側にある、請求項13に記載のPPTCヒータ。
【請求項15】
前記予め決められた厚みは、前記第2の予め決められた厚みよりも、はるかに薄い、請求項13又は14に記載のPPTCヒータ。
【請求項16】
前記ヒータ本体は、125℃の自動調節温度を有する、請求項13から15のいずれか一項に記載のPPTCヒータ。
【請求項17】
高分子正温度係数(PPTC)ヒータであって、
高分子マトリックスを有するヒータ本体、前記ヒータ本体は、予め決められた厚みの長方形のシートに構成されている;
第1の端部で前記ヒータ本体の第1の側面上に配置された第1の電極、ここで、前記第1の電極は、第1の電線に結合されている;
第2の端部で前記ヒータ本体の前記第1の側面上に配置された第2の電極、ここで、前記第2の電極は、第2の電線に結合されている;及び
前記第1の電極及び前記第2の電極の間に配置された間隙、前記間隙は、前記第1の電線及び前記第2の電線に対して垂直であり、前記間隙は、第2の予め決められた厚みを有し、ここで、前記間隙は、前記第1の電極及び前記第2の電極の間の前記ヒータ本体を露出させる
を備え、前記PPTCヒータは、円環状に形成され、前記第1の電極及び前記第2の電極は内面上に配置される、PPTCヒータ。
【請求項18】
前記ヒータ本体の第2の側面上に配置された第3の電極をさらに備え、前記第2の側面は前記第1の側面の反対側にある、請求項17に記載のPPTCヒータ。
【請求項19】
前記予め決められた厚みは10ミル(0.25ミリメートル)であり、前記第2の予め決められた厚みは50ミル(1.3ミリメートル)である、請求項17又は18に記載のPPTCヒータ。
【請求項20】
前記ヒータ本体は、125℃の自動調節温度を有する、請求項17から19のいずれか一項に記載のPPTCヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、PPTCデバイスに関し、より詳細には、ヒータとして動作するPPTCデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
正温度係数(Positive Temperature Coefficient:PTC)デバイス及び高分子PTC(Polymer PTC:PPTC)デバイスは、電子システム内の高価な回路に損傷を与え得る過電流及び過電圧状態を遮断するために回路で利用される。PTCには、加熱すると物理的特性が変化する材料が含まれている。PTCは、電流の流れの増加により、温度が上昇すると、抵抗が増加する。障害状態が解除されると、PTCデバイスは元の設定まで冷却される。したがって、PTC及びPPTCは、再設定可能なヒューズと考えられる。
【0003】
最近では、PTC技術がヒータ用途に使用されている。しかし、PTCデバイスは、そのサイズ及び形状のために、加熱用途で効果を発揮するために必要な電力密度よりも、はるかに高い電力密度を持たなければならないように、一部の用途によっては使いにくい。
【0004】
本改良が有用であり得るのは、これら及びその他の考慮事項に関してである。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求される主題の範囲を決定するのを助けることを意図したものでもない。
【0006】
本開示による高分子正温度係数(PPTC)ヒータの例示的な実施形態は、第1の電線に接続された第1の電極、PPTC高分子マトリックスから構成されるヒータ本体を含み得、ここで、PPTC高分子マトリックスは、導電性フィラ及び半結晶性高分子の両方を含む。PPTCヒータはまた、第2の電線に接続された第2の電極を含み、PPTC高分子マトリックスが第1の電極及び第2の電極の間にあり、サンドイッチを形成する。サンドイッチを円環状に形成するには、曲げ工程が使用される。
【0007】
本開示によるPPTCヒータの別の例示的な実施形態は、導電性フィラ及び半結晶性高分子を含むヒータ本体、ヒータ本体は、予め決められた厚みの長方形のシートに構成され、第1の端部でヒータ本体の側面上に配置された第1の電極、第1の電極は第1の電線に接続され、第2の端部でヒータ本体の同じ側面上に配置された第2の電極、第2の電極は第2の電線に接続されている、を含み得る。第1の電極及び第2の電極の間には間隙があり、この間隙は第1及び第2の電線に対して水平である。間隙は第2の予め決められた厚みを有し、第1の電極及び第2の電極の間のヒータ本体は間隙によって露出される。PPTCヒータは、第1の電極及び第2の電極が内面となるように円環状に形成されている。
【0008】
本開示によるPPTCヒータの別の例示的な実施形態は、高分子マトリックスを含むヒータ本体、ヒータ本体は、予め決められた厚みの長方形のシートに構成され、第1の端部でヒータ本体の側面上に配置された第1の電極、第1の電極は第1の電線に接続され、第2の端部でヒータ本体の同じ側面上に配置された第2の電極、第2の電極は第2の電線に接続されている、を含み得る。第1の電極及び第2の電極の間には間隙があり、この間隙は第1及び第2の電線に対して垂直である。間隙は第2の予め決められた厚みを有し、第1の電極及び第2の電極の間のヒータ本体は間隙によって露出される。PPTCヒータは、第1の電極及び第2の電極が内面となるように円環状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【
図1B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【
図1C】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【0010】
【
図2A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【
図2B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【
図2C】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【0011】
【0012】
【
図4A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【
図4B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの等価回路である。
【0013】
【
図5】例示的な実施形態による、PPTCヒータの図である。
【0014】
【
図6A】例示的な実施形態による、PPTCヒータを示す図である。
【
図6B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの等価回路を示す図である。
【
図6C】例示的な実施形態による、等価回路を含む、PPTCヒータを示す図である。
【
図6D】例示的な実施形態による、等価回路を含む、PPTCヒータを示す図である。
【0015】
【
図7A】例示的な実施形態による、PPTCヒータによって作動されるアクチュエータの図である。
【
図7B】例示的な実施形態による、PPTCヒータによって作動されるアクチュエータの図である。
【
図7C】例示的な実施形態による、PPTCヒータによって作動されるアクチュエータの図である。
【
図7D】例示的な実施形態による、PPTCヒータによって作動されるアクチュエータの図である。
【0016】
【
図8】例示的な実施形態による、開示されたPPTCヒータのいずれかのヒータ本体の図である。
【0017】
【
図9A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連する試験回路である。
【
図9B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連するグラフである。
【
図9C】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連するグラフである。
【0018】
【
図10A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連する試験回路である。
【
図10B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連するグラフである。
【
図10C】例示的な実施形態による、PPTCヒータの試験に関連するグラフである。
【0019】
【
図11A】例示的な実施形態による、PPTCヒータの曲げの効果を示す図である。
【
図11B】例示的な実施形態による、PPTCヒータの曲げの効果を示す図である。
【0020】
【
図12】例示的な実施形態による、PPTCヒータの製造のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載の実施形態によれば、排熱回収システムなどの温度感知アクチュエータ用の新規なヒータが開示される。ヒータは、導電性フィラ及び半結晶性高分子からなる高分子正温度係数(PPTC)デバイスである。導電性フィラは、一例として、カーボン/グラフェンの組み合わせであり得るが、PPTCヒータは、様々な導電性フィラから作製され得る。PPTCヒータは、ヒータを利用するあらゆる用途に適した予め決められた自動調節温度を有するように戦略的に設計されている。間隙幅及び厚みなどのPPTCヒータの物理的特徴により、電流の流れを戦略的に制御できる。
【0022】
図1A~
図1Cは、例示的な実施形態による、アクチュエータを動作させるための新規なPPTCヒータ100、又はPPTCアクチュエータヒータ100の代表的な図面及び例示である。
図1A及び
図1Bは、それぞれ、PPTCヒータ100の側面図及び上面断面図を示す。PPTCヒータ100は、PTC材料からなるヒータ本体104を含む。ヒータ本体104は、2つの対向する表面を有する、実質的に平板状である。例示的な実施形態では、ヒータ本体104の厚みは1mm未満である。ヒータ本体については、以下の
図8にさらに説明及び例示される。
【0023】
PPTCヒータ100は、第1の電極106及び第2の電極102を含み、その両方がヒータ本体104の第1の対向面上に配置される。電極102/106は、間隙116によって分離された導電層であり、間隙116では、導電層が存在せず、ヒータ本体104が間隙で露出している。
図1Aの側面図では、間隙116は水平に配置されており、第1の電極106は間隙116の下にあり、第2の電極102は間隙の上にある。第1の導線(電線)108は第1の電極106に接続され、一方、第2の導線110は第2の電極102に接続されている。
【0024】
図1Bはさらに、ヒータ本体104の第2の対向面上に配置された第3の電極118を示し、第2の面は、第1及び第2の電極106及び102が配置される第1の面の反対側であり、第3の電極118は
図1Aでは見えない。ヒータ本体104は厚み120を有する。したがって、ヒータ本体104は、一方の側面の電極102/106及び他方の側面の電極118の間に挟まれ、間隙116が電極102及び電極106の間のヒータ本体を露出させる。
【0025】
図1Cは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ100の図である。PPTCヒータ100は、加熱される円筒形のデバイスの周囲に配置されるのに適した円環(リング)状である。例示的な実施形態では、加熱されるデバイスはアクチュエータである。アクチュエータは、何かを移動させたり動作させたりするデバイスである。アクチュエータは、エネルギー源(電気、油圧、又は空気圧)を物理的な機械的な動きに変換する。アクチュエータは、直線(リニア)又は円(回転)方向に移動できる。例示的な実施形態では、PPTCヒータ100によるアクチュエータの加熱によりアクチュエータを作動させ、アクチュエータが直線方向又は回転方向に移動する。
【0026】
図1Cの例示では、電極102及び106がPPTCヒータ100の円環状の内面に配置され、一方、電極118が外面に配置されている。ヒータ本体104のPPTC材料は、電極102及び106の間(水平に配置された開口部として)及びリングの上縁に沿った両方に示されている。電線108及び110は、それぞれ内部電極102及び106上に配置されている。
【0027】
例示的な実施形態では、PPTCヒータ100の円環状は、円筒形のアクチュエータの熱電素子の周囲に巻き付けられる。したがって、PPTCヒータ100はアクチュエータの熱電素子と接触し、アクチュエータが急速に加熱され、作動して移動することが可能になる。このようにして、PPTCアクチュエータヒータ100は、アクチュエータによってピストンが作動して直線移動(前進及び後退)する排熱回収システムの応用において利点を提供する。さらに、PPTCヒータ100の円環状は、ヒータが熱の配置を正確な位置(アクチュエータの熱電素子)に制限するため、温度制限の特徴である。したがって、PPTCヒータは熱電素子への加熱を制限することによって、ピストンの直線運動の安定した出力を保証する。
【0028】
例示的な実施形態では、PPTCアクチュエータヒータ100は、薄く(厚み1mm未満)、小さい(直径1cm未満)ものである。この小さなサイズにより、いくつかの実施形態では、PPTCアクチュエータヒータ100がアクチュエータの熱電素子と直接接触することが可能になり、その結果、高い熱効率が得られる。したがって、円筒形のPPTCヒータ100は、アクチュエータの加熱対象領域に取り付けられ得る。
【0029】
熱損失を低減することに加えて、例示的な実施形態では、PPTCヒータ100の設計は一部の従来のPPTCデバイスよりも単純であり、製造コストを節約し得る。現在入手可能な従来のPPTC又はセラミックPTC(cPTC)デバイスは、一般に、平らな長方形又は丸い形状で、厚みが1mmを超える。空間及び/又は電気絶縁要件が限定されている用途では、これらのPTC加熱素子を対象領域の近くに配置できない。従来のPTCデバイスの配置の結果として、対象面の加熱の鈍化及び高い熱損失が生じる。一例では、対象面の加熱に使用される従来のPTCデバイスを使用した結果では、PTCデバイスの表面温度は約200℃に達するが、対象面は100℃までにしか達せず、極めて非効率である。
【0030】
厚みが1mm未満の薄膜PPTCデバイスがいくつか存在するが、これらのデバイスの電力密度は非常に低くなる。したがって、そのような薄膜PPTCデバイスは、短時間で十分な熱を発生させるのに十分な大きさである必要がある。1つの実施形態では、PPTCヒータ100は、既存の薄膜PPTCデバイスよりも、はるかに高い電力密度を有する。
【0031】
図2A~
図2Cは、例示的な実施形態による、アクチュエータを動作させるためのPPTCヒータに関連する代表的な図面である。
図2A及び
図2Bは、それぞれ、例示的な実施形態による、PPTCヒータ200の側面図及び上面断面図を示す。PPTCヒータ200は、PTC材料からなるヒータ本体204を含む。ヒータ本体104は、2つの対向する表面を有する、実質的に平板状である。例示的な実施形態では、ヒータ本体204の厚みは1mm未満である。ヒータ本体については、以下の
図8にさらに説明及び例示される。
【0032】
PPTCヒータ200は、第1の電極206及び第2の電極202を含み、その両方がヒータ本体204の第1の対向面上に配置される。これらの電極202/206は、間隙216によって分離された導電層であり、間隙216では、導電層が存在せず、ヒータ本体204が間隙で露出している。
図2Aの側面図では、間隙216は垂直に配置されており、第1の電極206は間隙の左側にあり、第2の電極202は間隙の右側にある。第1の導線(電線)208は第1の電極206に接続され、一方、第2の導線210は第2の電極202に接続されている。
【0033】
図2Bは、ヒータ本体204の第2の対向面上に配置された第3の電極218をさらに示し、第2の面は、第1及び第2の電極206及び202が配置される第1の面の反対側であり、第3の電極218は
図2Aでは見えない。ヒータ本体204は厚み220を有する。したがって、ヒータ本体204は、一方の側面の電極202/206及び他方の側面の電極218の間に挟まれ、間隙216が電極202及び電極206の間のヒータ本体を露出させる。
【0034】
図2Cは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ200の図である。PPTCヒータ200は、加熱される円筒形のデバイスの周囲に配置されるのに適した円環(リング)状である。例示的な実施形態では、加熱されるデバイスはアクチュエータである。例示的な実施形態では、PPTCヒータ200によるアクチュエータの加熱によりアクチュエータを作動させ、アクチュエータが直線方向又は回転方向に移動する。
【0035】
図2Cの例示では、電極202及び206がPPTCヒータ200の円環状の内面に配置され、一方、電極218が外面に配置されている。ヒータ本体204のPPTC材料は、電極202及び206の間(垂直に配置された開口部として)及びリングの上縁に沿った両方に示されている。電線208及び210は、それぞれ内部電極206及び202上に配置されている。PPTCヒータ100及び200は、N=1(ここで、Nはヒータ電極の両側面の溝の総数を表す)で同じ一般的な電力設計を示す。
【0036】
図3A~
図3Cは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ100及び200の特性を示す代表的な図面である。
図3Aは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ100(
図1A~
図1C)及び200(
図2A~
図2C)の等価回路を示す。R
0及びR
7はそれぞれ電線108/208及び110/210の抵抗を表し(その逆も同様)、R
1及びR
6はそれぞれ電極102/202及び106/206の抵抗を表し(その逆も同様)、R
3は電極118/218の抵抗を表し、R
2、R
4、及びR
5はヒータ本体104/204(PTC材料)を表す。例示的な実施形態では、抵抗R
4は抵抗R
2又はR
5よりも、はるかに大きい。
【0037】
PTC材料の単一のヒータ本体104/204があるが、ヒータ100/200を通る電流の流れは、R
2、R
4、及びR
5によって与えられるように、ヒータ本体104/204のPTC材料を通る3つの可能な経路を取り得る。
図3Bは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ100及び200の両方で発生し得るヒータ本体を通る3つの可能な電流経路を示す。矢印302、304、及び306は、PPTC材料を通る電流の流れの方向を示す。
図3Aは、電流の流れに2つの可能な経路があることを示す。第1の電流経路は、R
0、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、及びR
7を通過する。したがって、矢印302及び304は、第1の電流経路のサブ経路である。第2の電流経路はR
0、R
1、R
4、R
6、及びR
7を通過する。したがって、矢印306は第2の電流経路の一部である。
【0038】
抵抗R2(矢印302で示す)において、電流は、電極106/206(R1)及び電極118/218(R3)の間のPPTC材料を通って流れる。抵抗R5(矢印304で示す)において、電流は、電極118/218(R3)及び電極102/202(R6)の間のPPTC材料を通って流れる。抵抗R4(矢印306で示す)において、電流は、電極106/206(R1)及び電極102/202(R6)の間のPPTC材料を通って流れる。抵抗R4は、抵抗R2又はR5よりもかなり大きいため、例示的な実施形態では、第3の電流の流れの方向(R4)は、抵抗R2又はR5によって与えられる他の電流の流れの方向よりも発生する可能性が低い。
【0039】
図3Cは、例示的な実施形態による、円環状のPPTCヒータ100又は200の代表的な図面である。
図3Cは、円環状PPTCヒータ100及び200を通る可能な電流の流れの方向を示すために使用される。円環状リングは、中央のヒータ本体104/204、リングの外面を囲む第3の電極118/218及びリングの内面に配置された第1の電極106/206及び第2の電極102/202からなる。PPTCヒータ100の場合、第2の電極102は、リングの内面の第1の電極106の上に配置される(
図1A及び
図1Cも参照)。PPTCヒータ200の場合、第1の電極206はリングの内面の一方の側面に配置され、一方、第2の電極202はリングの内面の他方の側面に配置される(
図2A及び
図2Cも参照)。
【0040】
図3Bと同様、矢印は電流が流れる可能性のある方向を示す。導線108/208(矢印308及び抵抗R
2で示す)から始まり、電流は、電極106/206からヒータ本体104/204のPPTC材料を横断して、ヒータ本体の対向側面に配置された電極118/218まで流れる。電流は電極118/218に沿って流れる(矢印310及び抵抗R
3で示す)。次に電流は、電極118/218からヒータ本体104/204のPPTC材料を横断して導線110/210に流れる(矢印312及び抵抗R
5で示す)。あるいは、電流は、矢印314及び316(その逆も同様)によって示されるように、抵抗R
4によっても示されるように、電極106/206及び電極102/202の間に流れ得る。
【0041】
様々な実施形態では、PPTCヒータ100及び200のヒータ本体及び電極の設計は、R
4の値がR
2又はR
5の値よりも、はるかに大きくなるようにし得る(
図3A)。この状況は、PPTCヒータ100(
図1A及び
図1B)及びPPTCヒータ200(
図2A及び
図2B)では、ヒータ本体104の厚み120/220を間隙116/216よりも相対的に小さく構成することによって達成され得る。例示的な実施形態では、ヒータ本体104の厚み120(
図1B)又はヒータ本体204の厚み220(
図2B)は、様々な非限定的な実施形態では3ミル(0.076ミリメートル)及び120ミル(3.0ミリメートル)の間であり、いくつかの実施形態では5ミル(0.13ミリメートル)及び10ミル(0.25ミリメートル)の間であり、一方、電極102及び電極106の間に水平に配置された間隙116(
図1A)、又は電極202及び電極206の間に垂直に配置された間隙216(
図2A)のいずれかの間隙の値は、それぞれのヒータ本体104/204の厚み116/216よりも相対的に大きい。例えば、ヒータ本体104の厚み120が10ミル(0.25ミリメートル)である場合、間隙116又は216の値は50ミル(1.3ミリメートル)以上になり得、R
4がR
2又はR
5よりも、はるかに大きくなることが保証される。
【0042】
例示的な実施形態では、等価回路(
図3A)によって表されるPPTCヒータ100及び200の抵抗は、ほぼ初期抵抗に4を乗じた値(R
2=R
5でヒータが非トリップ状態の場合、R≒4R
i)になる。これらの実施形態の変形によれば、溝(間隙116又は間隙216)位置の設計により、上部及び下部(PPTCヒータ100)又は左側面及び右側面(PPTCヒータ200)での加熱効果(各PPTCセグメントの抵抗を制御することによって、一方の側面を高く;もう一方の側面を低くする)が決定され得る。1つの実施形態では、PPTCヒータ100の設計は、ヒータ全体が円環状に曲げられる例では、PPTCヒータ200よりも優れた機械的強度を有する。
【0043】
図4Aは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ400の側面図を特徴とする。前述の実施形態と同様に、PPTCヒータ400の設計も、デバイスの同じ側面に配置された外部電線に接続された2つの電極を特徴とする。電極406は電線408に接続され、電極402は電線410に接続される。電極402は、溝420及び溝412によって電極406から分離されており、それらの溝では導電層が存在せず、PPTC材料のヒータ本体404が露出している。さらに、導電性領域422が溝412及び溝420の間に配置され、その領域には、電極402及び電極406の材料などの材料が存在する。したがって、溝420、412は、電極402、406及び導電性領域422の材料の抵抗と比較して、比較的高い抵抗であるPPTCヒータ400の表面に沿った領域を画定する。
図4Aの側面図では、溝412、420は、電線408及び電線410の概略方向に対して垂直に延在するように配置されている。電極402、406及び導電性領域422に加えて、PPTCヒータ400は、いずれの場合もヒータ本体404の対向側面に配置され、溝416によって分離された導電性領域414及び導電性領域418を含む。
溝416は、ヒータ本体の対向側面にあるため、より薄い色調で示されている。
【0044】
したがって、PPTCヒータ400は、
図4Bに示す等価回路によって特徴付けされ得、ここで、R
0及びR
12は電線408、410の抵抗を表し、R
1、R
3、R
6、R
8、R
11は電極の抵抗を表し、R
2、R
5、R
7、及びR
10は、ヒータ本体404の厚みを通って(すなわち、電線408、410、及び溝412、416、及び420の両方に対して垂直、又はZ方向に)流れる電流に対するヒータ本体404の抵抗を表し、及びR
4、R
9、及びR
13は、ヒータ本体404の表面に沿って(すなわち、電線408、410に対して平行であるが、溝412、416、及び420に対して垂直、又はY方向に)流れる電流に対するヒータ本体404の抵抗を表す。特に、トリップ温度未満での動作中、PPTCヒータ400の電流は、主に電線408(R
0)を通り、電極406(R
1)を通り、(Z方向に)ヒータ本体404の厚み(R
2)を通り;ヒータ本体の裏側に沿った導電性領域414(R
3)の表面に沿って、ヒータ本体404(R
5)の厚みを通ってZ方向に戻り、デバイスの前面に戻り;導電性領域422(R
6)の表面に沿って;デバイスの背面までヒータ本体404(R
7)の厚みをZ方向に通り;導電性領域418(R
8)の表面に沿って;再びデバイスの前面までヒータ本体404(R
10)の厚みをZ方向に通り;電極402(R
11)及び電線410(R
12)を通って流れることによって、電線408及び電線410の間を流れ得る。換言すれば、トリップ温度未満での動作中、電流は、デバイスの前面の溝412又は420を横断して、あるいは、デバイスの背面の溝416を横断してY方向に跳ね上がることはない。一般に、溝416、412、420(間隙)のサイズはヒータ本体404の厚みよりも、はるかに大きくなり得るため、電流は通常、抵抗R
4、R
9、R
13で示すように、(Y方向に)ヒータ本体の平面内の経路に沿って流れない。
【0045】
図5は、例示的な実施形態による、PPTCヒータ500の側面図を特徴とする。
図5では、ヒータ構成は、一対の溝520、512が電線508及び電線510の概略方向に対して概して平行に延在するように配置されることを除いて、PPTCヒータ400(
図4A)の場合と概して同じである。具体的には、電極502は電線508に接続され、電極506は電線510に接続される。電極502は、溝512及び溝520によって電極506から分離されており、それらの溝には導電層が存在せず、ヒータ本体504が露出している。さらに、導電性領域522が溝512及び溝520の間に配置され、その領域には、電極502及び電極506の材料などの材料が存在する。したがって、溝512、520は、電極502、506及び導電性領域522の材料の抵抗と比較して、比較的高い抵抗であるPPTCヒータ500の表面に沿った領域を画定する。電極502、506及び導電性領域522に加えて、PPTCヒータ500は、ヒータ本体504の対向側面に配置され、溝516によって分離された導電性領域514及び導電性領域518を含む。溝416は、ヒータ本体の対向側面にあるため、より薄い色調で示されている。
【0046】
PPTCヒータ400(
図4A)と同様に、PPTCヒータ500は、
図4Bの等価回路によって特徴付け得、ここで、R
0及びR
12は電線508、510の抵抗を表し、R
1、R
3、R
6、R
8、R
11は、電極の抵抗を表し、R
2、R
5、R
7、及びR
10は、ヒータ本体504の厚みを通って(すなわち、電線508、510及び溝512、516、及び520の両方に対して垂直、又はZ方向に)流れる電流に対するヒータ本体504の抵抗を表し、R
4、R
9、及びR
13は、ヒータ本体504の表面に沿って(すなわち、電線508、510、及び溝512、516、及び520の両方に対して垂直、又はX方向に)流れる電流に対するヒータ本体504の抵抗を表す。特に、トリップ温度未満での動作中、PPTCヒータ500の電流は、主に電線510(R
0)を通って電極502(R
1)を通り、デバイス(R
2)の背面までヒータ本体504の厚みをZ方向に通り;導電性領域514(R
3)の表面に沿って、ヒータ本体504(R
5)の厚みを通ってZ方向に導電性領域522(R
6)の表面に沿ってデバイスの前面に戻り;ヒータ本体504(R
7)の厚みを通り;導電性領域518(R
8)の表面に沿って;再びデバイスの前面の方向にヒータ本体504(R
10)の厚みを通り;電極506及び電線510(R
12)を通って流れることにより、電線508及び電線510の間を流れ得る。一般に、溝516、512、520(間隙)のサイズはヒータ本体504の厚みよりも、はるかに大きくなり得るため、電流は、抵抗R
4、R
9、R
13で示すように、ヒータ本体の平面内の経路に沿って流れ得ない。
【0047】
要約すると、PPTCヒータ400及び500の構成は、同じ電力設計(N=3)を提供する。所定のヒータ抵抗の抵抗は、初期抵抗にほぼ16を乗じたものになる(R2=R5=R7=R10、PPTCヒータが非トリップ状態の場合、R≒16Ri)。
【0048】
図6A~6Dは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ600に関連する代表的な図面である。
図6Aは、PPTCヒータ600の側面図を示し、
図6Bは、PPTCヒータ600の等価回路を示し、
図6Cは、PPTCヒータ600の写真を示し、
図6Dは、アクチュエータと共に使用され得るような、円環状のPPTCヒータ600を示す。
図6A及び
図6Dでは、PPTCヒータ600は、第1の電極602(
図6Dの円環状の外面に示されている)及び第2の電極606(
図6Dの円環状の内面に示されている)の間に挟まれたヒータ本体604(
図6Aでは見えない)を含む。第1の電線608はPPTCヒータ600の前面(円環状面の外側)に配置され、一方、第2の電線610は背面(円環状面の内側)に配置される。この例では、第1の電極602は電線608に接続され、一方、第2の電極606は電線610に接続される。したがって、電流はPPTCヒータ本体の厚みをZ方向に通過する。
図6Bの等価回路では、R
0及びR
4は電線608、610の抵抗を表し、R
1及びR
3は電極602、606の抵抗を表し、R
2はヒータ本体の厚みを通って流れる電流に対するヒータ本体604の抵抗を表す。
【0049】
PPTCヒータ100、200と同様に、PPTCヒータ400、500、600は、アクチュエータを有効/作動させる際に使用するために円環(リング状)状に形成され得る。開示されたPPTCヒータのいずれも、デバイスのヒータ本体がアクチュエータの熱電素子に対して配置され、PPTCヒータによる加熱に応答してアクチュエータを直線方向又は回転方向に移動させるように位置決めされ得る。
【0050】
図7A~
図7Dは、例示的な実施形態による、PPTCヒータ700の側面図である。PPTCヒータ700はアクチュエータ702上に配置される。
図7A~
図7Dの側面図では長方形に見えるが、PPTCヒータ700は、実際には、
図1C、
図2C、
図3C、
図6C、又は
図6Dのように、円環状であり、アクチュエータ702の上部又は熱素子704の上に配置されている。1つの実施形態では、アクチュエータ702の熱素子704は、金属材料と混合されたパラフィンワックスなどのワックス状マトリックス706を含み、その結果、PPTCヒータがそれらの上に配置されたときに、ワックス状マトリックスが、PPTCヒータ700及びアクチュエータ702の間にある。ワックス状マトリックス706は、アクチュエータ702の開閉弁(図示せず)の制御を容易にするために存在する。様々な実施形態によれば、PPTCヒータ700は、熱素子704の周囲を囲むように薄い円環状の形態で配置されることに留意されたい(例えば、
図1Cを参照)。したがって、PPTCヒータ700はワックス状マトリックス706を加熱し、最終的には融解し、その後、熱素子704を加熱してアクチュエータ702を作動させ、次いで、アクチュエータを直線方向又は回転方向に移動させる。PPTCヒータ700の温度が下がると、融解したワックス状マトリックス706が再び固まり、アクチュエータを保護する。
【0051】
ワックス状マトリックス706を備えたアクチュエータ702Aの全体図を
図7Aに示し;ワックス状マトリックス706を備えたスクイーズプッシュ型アクチュエータ702Bの全体図を
図7Bに示し;ワックス状マトリックス706を備えたダイアフラム型アクチュエータ702Cの全体図を
図7Cに示し;ワックス状マトリックス706を備えたプランジャピストン型アクチュエータ702Dの全体図を
図7Dに示す(集合的に「アクチュエータ702」)。例示的な実施形態では、ワックス状マトリックスは、加熱されると、アクチュエータのスイッチをオン又はオフにするため、ワックス状マトリックス706はサーモアクチュエータ機能の重要な要素である。加熱されたワックス状マトリックス706は、アクチュエータ702のエラストマバッグ708(
図7B)又は膜712(
図7C)を圧迫し、ピストン710を移動させる。あるいは、加熱されたワックス状マトリックスがピストン710を圧迫して移動させる。例示的な実施形態では、アクチュエータ702の熱電素子は一般にワックス状マトリックス内の金属粒子からなるため、PPTCヒータ700は、短絡を避けるために化学蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)又は他のコーティングによってパリレンで絶縁される。
【0052】
例示的な実施形態では、PPTCヒータ700は、任意の他のPPTCヒータ100、200、400、500、及び600と同様に、自動調節ヒータであり、自動調節温度は特定の用途に依存する。例示的な実施形態では、PPTCヒータ700は約125℃の自動調節温度を有する。したがって、自動調節温度はPPTCヒータの上限温度となる。したがって、PPTCヒータ700の温度は約125℃まで上昇し得るが、その温度を超えることはなく、温度が125℃より高い場合、アクチュエータの過熱を防ぐためにその加熱電力が下げられる。したがって、
図7A~
図7DのようにPPTCヒータがアクチュエータと組み合わされている場合、PPTCヒータの温度が約125℃まで上昇すると、アクチュエータ内の関連するワックスが完全に融解して、アクチュエータの弁を動かし、その後、PPTCヒータの温度は125℃を超えなくなる。
【0053】
図8は、例示的な実施形態による、PPTCヒータのヒータ本体の側面図である。本明細書に開示されるPPTCヒータは、PPTC材料(例えば、
図1A~
図1Cのヒータ本体104を参照)からなるヒータ本体を含み、ここで、PPTC材料は、1)導電性フィラ(カーボン及び/又はグラフェンなど)及び2)半結晶性高分子からなる高分子マトリックスからなることを想起されたい。
図8に示すように、ヒータ本体804は、高分子808内に配置された導電性フィラ806からなるPPTC高分子マトリックス802からなり、高分子マトリックスは、2つの金属箔810の間に挟まれている。例示的な実施形態では、金属箔810はそれぞれ、PPTC高分子マトリックス802と接する片側面に粒子状構造体(突起)を含み、これにより、箔及びマトリックスの間の結合が強化される。
【0054】
ヒータ本体804は、ヒータ本体を含むPPTCヒータが予め定められた自動調節温度を有するように製造され得る。例示的な実施形態では、自動調節温度は125℃であるが、PPTCヒータ、具体的には、導電性フィラ及び高分子からなる高分子マトリックスを含むヒータ本体は、顧客の幅広い温度の好みを満たすように設計し得る。具体的には、導電性フィラ及び高分子のタイプ、並びにそれぞれの組み合わせの割合を調整して、特定の自動調節温度プロファイルを達成し得る。したがって、導電性フィラ806及びPPTC高分子マトリックス802の高分子808の両方を構成するために使用し得る多くの異なる材料が存在する。
【0055】
例示的な実施形態では、高分子808は、半結晶性高分子、例えば、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリパーフルオロアルコキシ、又はこれらの材料の1つ又は複数の何らかの組み合わせを含む。さらに、例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802内の導電性フィラ806に対する高分子808の体積百分率は、50%及び99%の間、好ましくは、60%及び95%の間である。したがって、例えば、スペクトルの一方の端では、高分子マトリックスは、50%の高分子及び50%の導電性フィラからなり得る。スペクトルのもう一方の端では、高分子マトリックスは、99%の高分子及び1%の導電性フィラからなり得る。好ましくは、高分子マトリックスは、一方の端で60%の高分子及び40%の導電性フィラ、もう一方の端で95%の高分子及び5%の導電性フィラからなり得、これらの好みの間には、好ましい自動調節温度プロファイルをもたらし得る他の多くの組み合わせが存在する。
【0056】
例示的な実施形態では、高分子マトリックスの導電性フィラ806は、カーボン、グラフェン、カーボン及びグラフェン、導電性セラミック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブを有するカーボン、又はカーボンナノチューブを有するグラフェンから構成される。例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802の導電性フィラ806は、10nm及び100nmの間の一次粒子径を有し、さらに、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のフタル酸ジブチル(Di-Butyl Phthalate:DBP)値を有するカーボンから構成される。好ましくは、DBP値は8cm3/100g及び200cm3/100gの間の範囲である。さらに、例示的な実施形態では、カーボン充填は20%及び65%の間、好ましくは、25%及び30%の間である。
【0057】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802の導電性フィラ806はグラフェンで構成され、グラフェンは、機械的方法又は化学的方法によって調製され、グラフェン層の数は1~数百、好ましくは、1及び30層の間である。例示的な実施形態では、各グラフェン層の厚みは、20nm未満、好ましくは、0.34nm及び10.2nmの間である。さらに、例示的な実施形態では、グラフェンの粒径は0.1μm及び100μmの間、好ましくは、5μm及び30μmの間の範囲である。グラフェン充填は1%及び50%の間、好ましくは、4%及び30%の間である。
【0058】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802の導電性フィラ806は、カーボン又は導電性セラミックで構成され、カーボンの一次粒子径は、10nm及び100nmの間であり、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のDBP値、好ましくは、8cm3/100g及び200cm3/100gの間のDBP値の範囲である。カーボン又は導電性セラミックとグラフェンの比率は、0%/100%(カーボン/導電性セラミックなし、100%グラフェン)及び100%/0%(100%カーボン又は導電性セラミック、グラフェンなし)の間、又はその間の任意の値にし得る。好ましい実施形態では、グラフェンに対するカーボン又は導電性セラミックの比率は、1%及び90%の間、好ましくは、30%及び60%の間である。
【0059】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802の導電性フィラ806は、カーボンナノチューブ(Carbon NanoTube:CNT)又はカーボンを含むグラフェンで構成され、カーボンの一次粒子径は、10nm及び100nmの間であり、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のDBP値、好ましくは、8cm3/100g及び200cm3/100gの間のDBP値の範囲である。例示的な実施形態では、導電性フィラ806のナノチューブの長さは10nm及び10μmの間であり、直径は2nm及び50nmの間であり、CNTの長さ/直径は5及び5000の間、好ましくは、100及び1000の間である。例示的な実施形態では、カーボン対グラフェン、又はカーボン対ナノチューブの比率は、1%及び90%の間、好ましくは、30%及び60%の間である。
【0060】
さらに、例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス802の高分子808又は導電性フィラ806のいずれか、又はその両方には、限定されないが、酸化防止剤、分散剤、カップリング剤、架橋剤、アーク抑制剤などを含む材料が補充される。したがって、ヒータ本体804は、多種多様な材料を使用して製造し得、
図8のヒータ本体は、本明細書に開示及び説明される任意のPPTCヒータの一部であり得る。
【0061】
【0062】
図9Aは、回路に12Vが供給され、最大電流が20A、チャンバ温度が-40℃である試験回路を示す。電流及び電圧の両方がPPTCヒータ全体で測定される。さらに、PPTCヒータは、0.38Ωの初期抵抗を有すること、PPTCヒータの高さは9.7mm(例えば、
図1Aの電極106+間隙116+電極102)であること、PPTCヒータの厚みは0.55mm(例えば、
図1Bの電極102+厚み120+電極118)であること、円環状PPTCヒータの直径は9.5mmであり、間隙は約0.4mm(例えば、
図1Cを参照すると、電線108及び110の間の空間が間隙である)を有すること、及びPPTCヒータの面積(すなわち、PPTCヒータの円環状によって形成される円の面積)は2.5cm
2であることを特徴としている。さらに、PPTCヒータの内面(例えば、
図1Cの電極102及び106)には2つの水平電極があり、外面には1つのフルサイズ電極(例えば、
図1Cの電極118)がある。
【0063】
図9Bは、PPTCヒータの温度(℃)対時間(分)をプロットしたグラフである。温度はチャンバ温度である-40℃から開始され、非常に急速に約120℃まで上昇する。この120℃の温度は、試験の期間中(100分間)維持される。
図9Cは、PPTCヒータの抵抗(Ω)対温度(℃)をプロットしたグラフである。温度が上昇しても、PPTCヒータの抵抗は非常に低いままであるが、その後、温度が約100℃に達した後、抵抗がいくらか増加し、温度が約125℃に達すると、抵抗は非常に急速に上昇する。さらに、温度は125℃を超えると大幅には上昇せず、これは、PPTCヒータが約125℃で自動調節されていることを示している。
【0064】
図10A~
図10Cは、例示的な実施形態による、PPTCヒータの第2の試験例を特徴とする。
図10Aは、回路に12Vが供給され、最大電流が20A、チャンバ温度が-40℃である試験回路を示す。電流及び電圧の両方がPPTCヒータ全体で測定される。さらに、PPTCヒータは、2.27Ωの初期抵抗を有すること、PPTCヒータの高さは8.6cm(例えば、
図2Aの電極206+間隙216+電極202)であること、PPTCヒータの厚みは0.34mm(例えば、
図2Bの電極202+厚み220+電極218)であること、円環状PPTCヒータの直径は1.2cmであり、間隙は約0.4mm(例えば、
図2Cを参照)を有すること、PPTCヒータの面積は2.5cm
2であることを特徴としている。さらに、PPTCヒータの内面(例えば、
図2Cの電極202及び206)には2つの垂直電極があり、外面には1つのフルサイズ電極(例えば、
図2Cの電極218)がある。
【0065】
図10Bは、PPTCヒータの温度(℃)対時間(分)をプロットしたグラフである。温度はチャンバ温度である-40℃から開始され、非常に急速に約120℃まで上昇する。この120℃の温度は、試験の期間中(100分間)維持される。
図10Cは、PPTCヒータの抵抗(Ω)対温度(℃)をプロットしたグラフである。温度が上昇しても、PPTCヒータの抵抗は非常に低いまま(例1、
図9Cよりもさらに低い)であるが、その後、温度が約125℃に達した後、抵抗は非常に急速に上昇する。さらに、温度は125℃を超えると大幅には上昇せず、これは、PPTCヒータが約125℃で自動調節されていることを示している。
【0066】
図11A及び
図11Bは、例示的な実施形態による、本明細書に開示されるPPTCヒータのいずれかのようなPPTCヒータに対する、具体的には、PPTC高分子マトリックスを含むヒータ本体のPPTC材料に対する曲げ工程の効果を示す代表的な図である。本明細書に例示及び説明されるPPTCヒータのいずれかのヒータ本体804が、PPTC高分子マトリックス802からなることを
図8から想起されたい。PPTC高分子マトリックス802は、導電性材料(充填材)806及び高分子808の両方からなり、PPTC高分子マトリックスは2つの金属箔810のシートの間に挟まれている。同様に、
図11Aでは、PPTCヒータのヒータ本体1104(PPTCヒータ本体1104)は、高分子マトリックスの両側に金属箔1110が配置されたPPTC高分子マトリックス1102からなる。本明細書に開示されるPPTCヒータは、アクチュエータ又は他の円筒形デバイスと共に使用するためなど、円環状に曲げられるため、従来のPPTCデバイスの特徴ではない、新しい曲げ工程を受ける。
【0067】
例示的な実施形態では、その材料組成に基づいて、PPTC高分子マトリックス1102は、弾塑性の範囲で、すなわち、塑性変形は非常に小さいが、あたかも弾性変形及び塑性変形の両方が起こったかのように曲げることができる。仮想中立線1120は、PPTC高分子マトリックス1102がかなり曲げることができることを示している。金属箔1110は、2つの接触面の間の結合を改善するために、PPTC高分子マトリックス1102に隣接する側面に配置された粒子状構造体を含み得ることを想起されたい。いくつかの実施形態では、金属箔1110の弾性率は、曲げ中に弾性域内で移動するのに十分に高い。それにもかかわらず、この曲げは、外側の金属箔1110及びPPTC高分子マトリックス1102の半分に引張を生じさせると同時に、内側の金属箔及びPPTC高分子マトリックス1102のもう一方の半分に圧縮を生じさせる。さらに、PPTC高分子マトリックス1102の半分及びPTC高分子マトリックス1102のもう一方の半分の間に仮想中立線1120がある。
【0068】
曲げ動作中のPPTCヒータの加熱は不要である。1つの実施形態では、曲げ動作中にPPTCヒータにいくらかの熱が加えられる。しかし、加熱温度は半結晶性高分子の融解温度未満に維持される。そうでなければ、PPTC高分子マトリックス内の導電性粒子の特性が変化し、PPTCヒータの製造工程が中断される可能性がある。ヒータ本体1104が曲げ後に所望の円環状になると、曲げ応力を解放するためにアニール工程を使用し得る。
【0069】
図11Bは、例示的な実施形態による、
図11AのPPTCヒータ本体1104の応力及び張力の特徴を示す図である。σによって与えられる応力は、外側の金属箔1110(σ
foil)及びPPTC高分子マトリックス1102(σ
pPTC)の両方について示されている。Eによって与えられる弾性率は、外側の金属箔1110(E
foil)及びPPTC高分子マトリックス1102(E
pPTC)についても与えられる。この情報から、各材料の張力εは、式σ=Eεを使用して計算され得る。
【0070】
図12は、例示的な実施形態による、PPTCヒータ100、200、400、500、及び600のいずれか1つのようなPPTCヒータを製造するための工程段階を示すフロー図である。製造工程は、高分子及び導電性フィラが上述の高分子マトリックスを構成するため、これらの混合動作から始まる(ブロック1202)。次いで、加熱融解押出工程が高分子マトリックスに対して行われる(ブロック1204)。加熱融解押出(Hot Melt Extrusion:HME)は、熱及び圧力を加えて高分子を融解し、連続工程で開口部に押し通す工程である。これにより、高分子マトリックスが予め定められた均一な形状及び密度をとることができる。次いで、高分子マトリックスをシートに押し出す(ブロック1206)。次いで、高分子マトリックスの押出シートの両側面を金属箔で積層し(ブロック1208)、前述のPPTCヒータで説明したように、高分子マトリックスを間に挟んだ金属箔(電極)のサンドイッチを形成する。
【0071】
金属箔の積層に続いて、PPTC架橋動作が高分子マトリックス上で実行される(ブロック1210)。高分子化学では、架橋結合では高分子の物理的特性の変化を促進するために架橋が使用される。ここでは、高分子マトリックスが架橋され、その結果、所望の特性を備えたPPTCが出現する。例示的な実施形態では、PPTC架橋は、電子線照射、ガンマ線照射、又は化学的架橋によって達成される。次いで、箔-PPTC-箔サンドイッチシートが形成される(ブロック1212)。次いで、サンドイッチシートは、設計されたチップサイズまで片側面(N=1の場合)でエッチングされるか、又は両側面(N=3の場合)でエッチングされる(ブロック1214)。次いで、サンドイッチシートは、エッチングに基づいて個々のチップに切断され(ブロック1216)、各チップは、PPTCヒータに所望されるように、金属箔-PPTC-金属箔のサンドイッチである。
【0072】
次いで、個々のチップをそれぞれ曲げて、指定された直径の円環状を形成する(ブロック1218)。本明細書に記載の実施形態は、円筒形アクチュエータに適合するようにリング形状であったが、代わりに個々のチップは、所望の用途に適した他の形状に曲げられてもよい。例えば、チップは、立方体又は直方体のような形状のアクチュエータ又は他のデバイスと結合するために、長方形の形状を形成するように曲げられてもよい。又は、チップは、三角形、角錐形、角柱形、台形、六角形、八角形、五角形、又は他の様々な幾何学的形状のいずれかであるアクチュエータとの結合に適した別の幾何学的形状に曲げられてもよい。又は、チップは、非幾何学的形状を有するアクチュエータ又は他のデバイスに結合するのに適した長方形の形状に曲げられてもよい。例示的な実施形態では、PPTCヒータの形状は、加熱されるデバイスの形状に適合するように、この段階で曲げられる。
【0073】
チップを所望の形状に曲げた後、挟まれたチップに電線(例えば、
図1Aの電線108及び110)を取り付ける電線組立が実行される(ブロック1220)。次いで、内部応力を除去して材料を強化するために、挟まれたチップが加熱され、ゆっくりと冷却することができるアニール工程が実行される。次いで、挟まれたチップは、デバイスを保護するため、又はデバイスに他の機能を追加するために、適切な材料でコーティングされる(ブロック1222)。例えば、1つの実施形態では、異なる温度でデバイスの色を変化させる温度感受性コーティングが追加される。次いで、デバイスのR試験が実行され(ブロック1226)、デバイスは適切な包装材料で包装される(ブロック1228)。これにより、PPTCヒータの製造工程が完了する。
【0074】
図12のPPTC処理工程の1つ又は複数は、示されている以外の順序で実行されてもよい。例えば、ブロック1224の動作は、ブロック1218の動作の前に実行されてもよい。当業者であれば、これらの製造作業を実行し得る、いくつかの方法を認識するであろう。
【0075】
本明細書で使用する場合、単数形で記載され、「a」又は「an」という単語で始まる要素又は工程は、そのような除外が明示的に記載されていない限り、複数の要素又は工程を除外しないものとして理解されるべきである。さらに、本開示の「1つの実施形態」への言及は、記載された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではない。
【0076】
本開示は特定の実施形態を言及するが、添付の特許請求の範囲で定義されるような、本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する多くの修正、改変、及び変更が可能である。したがって、本開示は、記載された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲及びその均等物の文言によって定義される全範囲を有することが意図される。
【国際調査報告】