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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】近視の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/34 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K33/34
A61P27/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548552
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022016205
(87)【国際公開番号】W WO2022174094
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/148,344
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513256479
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Utah Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】アンバティ、バラムラリ
(72)【発明者】
【氏名】モロキア、サラ エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA71
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF14
4C076FF15
4C076FF17
4C076FF39
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA06
4C086HA09
4C086HA15
4C086HA24
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA58
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC51
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 本発明は、近視を治療する方法であって、銅含有剤を含む組成物を、それを必要とする対象の眼に投与する工程を含む方法を提供する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視を治療する方法であって、それを必要とする対象の眼に、過塩素酸銅、過臭素酸銅、過ヨウ素酸銅、および過マンガン酸銅から選択される銅含有剤を含む組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記銅含有剤は過塩素酸銅である、方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、前記組成物は、約0.001重量%~約0.1重量%の銅含有剤を含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約0.005重量%~約0.05重量%の銅含有剤を含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約0.01mg/mL~約1.0mg/mLの銅含有剤を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約0.05mg/mL~約0.5mg/mLの銅含有剤を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約0.05mg/mL~約0.25mg/mLの銅含有剤を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか記載の方法において、前記組成物は、等張化剤、可溶化剤、増粘剤、ポリマー、緩衝剤、pH調整剤、保存剤、および水から選択される賦形剤をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか記載の方法において、前記組成物は、追加の活性成分を含まない、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約200mOsm/kg~約600mOsm/kgの張度を有する、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか記載の方法において、前記組成物は、約5.0~約7.8のpHを有する、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか記載の方法において、前記組成物は局所的に投与される、方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか記載の方法において、前記組成物は眼科用組成物である、方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか記載の方法において、前記組成物は、軟膏、ゲル、薄いフィルム、または点眼組成物である、方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1つに記載の方法において、前記組成物は、持続送達またはデポマトリックスである、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記組成物は、盲嚢、結膜、結膜下、テノン嚢、もしくはテノン嚢下の空間、または眼窩周囲に配置される、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか記載の方法において、前記組成物は、エアガン送達(air-gun delivery)またはバリスティックエア送達(ballistic air delivery)により送達される、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか記載の方法において、前記組成物は、それを必要とする眼ごとに少なくとも1週間に1回投与される、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記組成物は、それを必要とする眼ごとに少なくとも1日に1回投与される、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記組成物は、それを必要とする眼ごとに1日に1~4回の時点で投与される、方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、約5μl~約100μlの前記組成物が各時点で投与される、方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか記載の方法において、前記組成物は、少なくとも約1週間の治療期間投与される、方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか記載の方法において、前記組成物は、少なくとも約6週間の治療期間投与される、方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか記載の方法において、前記組成物は、少なくとも約6カ月の治療期間投与される、方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか記載の方法において、前記近視は進行性近視である、方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか記載の方法において、前記近視は非進行性近視である、方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか記載の方法において、前記対象は、少なくとも約3歳のヒトである、方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか記載の方法において、前記対象は、約3歳~約25歳のヒトである、方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか記載の方法において、前記対象は、少なくとも約25歳のヒトである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年2月11日に出願された米国仮特許出願第63/148,344号の利益を主張するものであり、当該出願の開示内容はこの参照により本願明細書に全体的に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
近視は、視力低下の一般的な原因である。近視の原因となる欠陥は、過度に急峻となった角膜または眼球のわずかな伸長であり、これが眼球の水晶体が遠くの物体からの光を網膜より前に集束させるのである。この近視を矯正しないことが、世界中で、遠方視力障害の主要原因の一つとなっている。重度の場合、眼球の伸長によって眼の内部の一部が引き伸ばされ薄くなり、これが網膜剥離、白内障、緑内障、および失明のリスクを高めている。近視の有病率は増加しており、2050年までに世界人口の約半数に影響を及ぼすと予測されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、近視を治療する方法であって、銅含有剤を含む組成物を、それを必要とする対象の眼に投与する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】過塩素酸銅による用量反応を示す正常角膜間質細胞におけるペルオキシダーゼ結合蛍光lox活性のグラフである。
図1B】角化性ヒト角膜間質細胞において、100nMという低濃度で過塩素酸銅が硫酸銅よりも高いLOX活性の誘導を示したことを示すグラフである。
図2】過塩素酸銅で処理した強膜が、対照の未処理の強膜よりもリシノノルロイシン(LNL)含有量が高いことを示すグラフである(各々n=5)p=0.036、対応のあるt検定(paired t-test)を使用。
図3】過塩素酸銅で処理した強膜が、未処理の強膜よりもコンプライアンスが低い(すなわち硬い)ことを示すグラフである。
図4】過塩素酸銅治療が、治療9週間以内に近視の進行を48%遅らせたことを示すグラフである(n=5)。
図5】自発的近視進行モルモットの仔(n=5)における硝子体室深度(VCD)(図A,B)および軸長(AL)(図C,D)の変化を示すグラフである。図A,Cは平均変化を示しており、図B,Dは過塩素酸銅処理眼(OD)と対照眼(OS)の間の差を示している。過塩素酸銅処理は、処理後6週間以内にALおよびVCDの伸長を遅らせる傾向を示した。エラーバー:SEM。
図6】過塩素酸銅の局所投与(0.35mg/ml)は、自発的近視モルモットの仔(n=5)において、硝子体室深度の伸長(A)、軸方向の伸長(B)、および近視の進行(C)を有意に遅らせた。*p<0.05.エラーバー:SEM。
図7】モルモット近視遺伝モデルにおける右眼(処理眼)と左眼(対照眼)の屈折異常測定値の平均対時間。
図8】過塩素酸銅による用量反応を示す正常強膜細胞におけるペルオキシダーゼ結合蛍光LOX活性。
【発明を実施するための形態】
【0005】
近視は眼を著しく衰弱させる症状である。近視の根本的な欠陥は、過度に急な角膜またはわずかに伸びた眼球のせいで、眼球の水晶体が遠くの物体からの光を網膜の前に集束させてしまうことである。そのため、近視(myopia)はしばしば近視(short-sightedness)または近視(near-sightedness)と呼ばれる。重度の場合、この眼球の伸長によって眼の内部の一部が引き伸ばされ、薄くなり、網膜剥離、白内障、緑内障、失明のリスクが高まる可能性がある。近視(myopia)は、近視(short-sightedness)よりもはるかに深刻である。
【0006】
近視の原因としては、遺伝的素因、長時間の本やスクリーンの使用、明るい光への不十分な露出など、さまざまなものが指摘され、研究されている。近視の根本的な原因(上記のうちの1つまたは複数)が何であるかにかかわらず、近視に伴う伸びた眼球は、この状態に陥ったすべての眼を衰弱させる。眼は小児期に成長するため、近視は一般的に学童期および青年期に発症し、成人期を通じて持続する可能性がある。そのため、学童期および青年期などの個人に対する治療法を改善することで、生涯にわたって生活の質を向上させることができる。
【0007】
したがって、本発明は近視を治療する方法であって、銅含有剤を含む組成物を、それを必要とする対象の眼に投与する工程を含む方法である。
【0008】
特定の実施形態では、銅含有剤を含む眼科用組成物または剤形が、本発明の方法において使用される。眼科用組成物または剤形は、近視を治療するのに有効な量の銅含有剤を含むことができる。組成物または剤形は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、剤形は、局所点眼薬として製剤化される眼科用組成物とすることができる。このような組成物は、例えば、約5μl~約100μlの滴容量で組成物を滴下方式で分配するように適合された容器に入れて運ぶことができる。いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、長期間にわたって銅含有剤を放出するように製剤化された持続放出組成物とすることができる。本発明の方法は、治療期間中に、本明細書に記載されている組成物または剤形の治療的有効量を投与する工程を含むことができる。
【0009】
特定の実施形態では、銅含有剤は銅塩である。特定の実施形態では、銅含有剤は、硫酸銅、炭酸銅、酢酸銅、塩化銅、グルコン酸銅、臭化銅、フッ化銅、硝酸銅、ヨウ化銅、過塩素酸銅、過ヨウ素酸銅、過臭素酸銅、過マンガン酸銅、ヘモシアニン、モリブデン酸銅、チオシアン酸銅、酒石酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、セレン化銅、ピロリン酸銅、GHK-銅、硫酸テトラアンミン銅、ヒスチジン銅、およびグリシン酸銅から選択される。さらなる実施形態では、銅含有剤は、過塩素酸銅、過臭素酸銅、過ヨウ素酸銅、および過マンガン酸銅、それらの水和物、またはそれらの組み合わせから選択される。特定の好ましい実施形態では、前記銅含有剤は過塩素酸銅である。本明細書に記載されている眼科用組成物の製造において、製造において使用される銅含有剤は、無水物または水和物(例えば、過塩素酸銅(II)六水和物または硫酸銅(II)五水和物)であっても良い。
【0010】
銅含有剤の眼科用組成物は、組成物中の銅の量に基づいて特徴付けることができ、これは濃度の任意の適切な尺度、例えば重量モル濃度(molality)、容積モル濃度(molarity)、または組成物中の銅含有剤の重量%として伝えることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される重量パーセントは、眼科用組成物中の無水過塩素酸銅(II)の重量パーセントに基づいて計算され、例えば、任意の関連する対イオン、錯体、またはリガンドの重量とは無関係に銅含有量を正規化する方法として計算される。したがって、別の銅含有剤を使用する場合は、銅含有剤の分子量に基づいて重量パーセントを適宜換算することができる。
【0012】
例えば、銅含有剤は、約0.00001重量%または約0.0001重量%~約5重量%、10重量%、または15重量%の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.0001重量%~約5重量%、約0.0001重量%~約4重量%、約0.0001重量%~約3重量%、約0.0001重量%~約2重量%、約0.0001重量%~約1重量%、約0.0001重量%~約0.75重量%、約0.0001重量%~約0.5重量%、約0.0001重量%~約0.25重量%、約0.0001重量%~約0.1重量%、約0.0001重量%~約0.075重量%、約0.0001重量%~約0.05重量%、約0.0001重量%~約0.025重量%、または約0.0001重量%~約0.02重量%で存在することができる。
【0013】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.0005重量%~約5重量%、約0.0005重量%~約4重量%、約0.0005重量%~約3重量%、約0.0005重量%~約2重量%、約0.0005重量%~約1重量%、0.0005重量%~約0.75重量%、約0.0005重量%~約0.5重量%、約0.0005重量%~約0.25重量%、約0.0005重量%~約0.1重量%、約0.0005重量%~約0.075重量%、約0.0005重量%~約0.05重量%、約0.0005重量%~約0.025重量%、または約0.0005重量%~約0.02重量%で存在することができる。
【0014】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.001重量%~約5重量%、約0.001重量%~約4重量%、約0.001重量%~約3重量%、約0.001重量%~約2重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.75重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、約0.001重量%~約0.25重量%、約0.001重量%~約0.1重量%、約0.001重量%~約0.075重量%、約0.001重量%~約0.05重量%、約0.001重量%~約0.025重量%、または約0.001重量%~約0.02重量%で存在することができる。
【0015】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.003重量%~約5重量%、約0.003重量%~約4重量%、約0.003重量%~約3重量%、約0.003重量%~約2重量%、約0.003重量%~約1重量%、約0.003重量%~約0.75重量%、約0.003重量%~約0.5重量%、約0.003重量%~約0.25重量%、約0.003重量%~約0.1重量%、約0.003重量%~約0.075重量%、約0.003重量%~約0.05重量%、約0.003重量%~約0.025重量%、または約0.003重量%~約0.02重量%で存在することができる。
【0016】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.005重量%~約5重量%、約0.005重量%~約4重量%、約0.005重量%~約3重量%、約0.005重量%~約2重量%、約0.005重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.75重量%、約0.005重量%~約0.5重量%、約0.005重量%~約0.25重量%、約0.005重量%~約0.1重量%、約0.005重量%~約0.075重量%、約0.005重量%~約0.05重量%、約0.005重量%~約0.025重量%、または約0.005重量%~約0.02重量%で存在することができる。
【0017】
さらなる実施形態では、銅含有剤は、約0.05重量%~約15重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.005重量%~約5重量%で存在することができる。他の実施形態では、銅含有剤は、約0.00001重量%~約0.0001重量%、約0.0001重量%~約0.0005重量%、約0.0001重量%~約0.0002重量%、約0.0002重量%~約0.0003重量%、または約0.0003重量%~約0.0004重量%の量で存在することができる。さらに他の実施形態では、銅含有剤は、約0.001重量%~約0.01重量%、または約0.003重量%~約0.008重量%の量で存在することができる。さらに他の実施形態では、銅含有剤は約0.01重量%~約0.1重量%、または約0.03重量%~約0.08重量%の量で存在することができる。
【0018】
組成物中の銅の量は、代わりに、体積当たりの重量(例えば、mg/mL)として表すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される体積当たりの重量測定値は、眼科用組成物中の体積単位当たりの総銅重量に基づいて計算される。例えば、0.0025mg/mlの量の過塩素酸銅(II)六水和物は、約0.000428mg/mlの銅含有量を有する組成物を提供する。これは、過塩素酸銅(II)六水和物の原子量は約370.54g/molであるが、薬剤の約63.5g/molまたは約17%のみが銅そのものであるためである。代替例として、0.0018mg/mlの無水酢酸銅(II)の量は、約0.00063mg/mlの銅含有量を有する組成物を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、銅含有剤の濃度は、銅含有剤自体の量ではなく、銅含有剤によって提供される総銅含有量に基づいて決定することができる。
【0019】
したがって、いくつかの実施形態では、組成物は、約0.0001mg/mLまたは約0.0005mg/mL~約5mg/mLまたは約50mg/mLの量の銅含有剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.001mg/mL~約50mg/mL、約0.001mg/mL~約40mg/mL、約0.001mg/mL~約30mg/mL、約0.001mg/mL~約20mg/mL、約0.001mg/mL~約10mg/mL、約0.001mg/mL~約7.5mg/mL、約0.001mg/mL~約5mg/mL、約0.001mg/mL~約2.5mg/mL、約0.001mg/mL~約1mg/mL、約0.001mg/mL~約0.75mg/mL、約0.001mg/mL~約0.5mg/mL、約0.001mg/mL~約0.25mg/mL、または約0.001mg/mL~約0.2mg/mLの量の銅含有剤を含む。
【0020】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.005mg/mL~約50mg/mL、約0.005mg/mL~約40mg/mL、約0.005mg/mL~約30mg/mL、約0.005mg/mL~約20mg/mL、約0.005mg/mL~約10mg/mL、約0.005mg/mL~約7.5mg/mL、約0.005mg/mL~約5mg/mL、約0.005mg/mL~約2.5mg/mL、約0.005mg/mL~約1mg/mL、約0.005mg/mL~約0.75mg/mL、約0.005mg/mL~約0.5mg/mL、約0.005mg/mL~約0.25mg/mL、または約0.005mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0021】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.01mg/mL~約50mg/mL、約0.01mg/mL~約40mg/mL、約0.01mg/mL~約30mg/mL、約0.01mg/mL~約20mg/mL、約0.01mg/mL~約10mg/mL、約0.01mg/mL~約7.5mg/mL、約0.01mg/mL~約5mg/mL、約0.01mg/mL~約2.5mg/mL、約0.01mg/mL~約1mg/mL、約0.01mg/mL~約0.75mg/mL、約0.01mg/mL~約0.5mg/mL、約0.01mg/mL~約0.25mg/mL、または約0.01mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0022】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.03mg/mL~約50mg/mL、約0.03mg/mL~約40mg/mL、約0.03mg/mL~約30mg/mL、約0.03mg/mL~約20mg/mL、約0.03mg/mL~約10mg/mL、約0.03mg/mL~約7.5mg/mL、約0.03mg/mL~約5mg/mL、約0.03mg/mL~約2.5mg/mL、約0.03mg/mL~約1mg/mL、約0.03mg/mL~約0.75mg/mL、約0.03mg/mL~約0.5mg/mL、約0.03mg/mL~約0.25mg/mL、または約0.03mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0023】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.05mg/mL~約50mg/mL、約0.05mg/mL~約40mg/mL、約0.05mg/mL~約30mg/mL、約0.05mg/mL~約20mg/mL、約0.05mg/mL~約10mg/mL、約0.05mg/mL~約7.5mg/mL、約0.05mg/mL~約5mg/mL、約0.05mg/mL~約2.5mg/mL、約0.05mg/mL~約1mg/mL、約0.05mg/mL~約0.75mg/mL、約0.05mg/mL~約0.5mg/mL、約0.05mg/mL~約0.4mg/mL、約0.05mg/mL~約0.3mg/mL、約0.05mg/mL~約0.25mg/mL、約0.05mg/mL~約0.2mg/mL、または約0.05mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0024】
あるいは、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.075mg/mL~約50mg/mL、約0.075mg/mL~約40mg/mL、約0.0.075mg/mL~約30mg/mL、約0.075mg/mL~約20mg/mL、約0.075mg/mL~約10mg/mL、約0.075mg/mL~約7.5mg/mL、約0.075mg/mL~約5mg/mL、約0.0.075mg/mL~約2.5mg/mL、約0.075mg/mL~約1mg/mL、約0.075mg/mL~約0.75mg/mL、約0.075mg/mL~約0.5mg/mL、約0.075mg/mL~約0.4mg/mL、約0.075mg/mL~約0.3mg/mL、約0.075mg/mL~約0.25mg/mL、約0.075mg/mL~約0.2mg/mL、または約0.075mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0025】
あるいはまた、いくつかの実施形態では、銅含有剤は、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約40mg/mL、約0.1mg/mL~約30mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.1mg/mL~約7.5mg/mL、約0.1mg/mL~約5mg/mL、約0.1mg/mL~約2.5mg/mL、約0.1mg/mL~約1mg/mL、約0.1mg/mL~約0.75mg/mL、約0.1mg/mL~約0.5mg/mL、約0.1mg/mL~約0.4mg/mL、約0.1mg/mL~約0.3mg/mL、約0.1mg/mL~約0.25mg/mL、または約0.1mg/mL~約0.2mg/mLで存在することができる。
【0026】
しかし、組成物中に特定の量の銅含有剤が含まれているからといって、その銅含有量のすべてが投与時に生物学的利用能を持つとは限らないし、同じ割合で生物学的利用能を持つとも限らない。銅の生物学的利用能は、ある銅含有成分から別の銅含有成分へと、ある程度変化する可能性がある。加えて、銅の生物学的利用能はpH、粘度、溶解度、およびその他の組成要因に影響される可能性がある。ある患者に対して、銅含有剤の適切な投与量は、送達担体の種類、銅含有剤の種類、望ましい送達期間などに基づいて決めることができる。このように、銅含有剤の適切な投与量は、特定の銅担体、pH、製剤などに対する銅の生物学的利用能に基づいて調整することもできる。さらに、特定の剤形からの銅含有量の放出速度は、その剤形に採用されている特定の銅含有剤に基づいて調整することができる。例えば、場合によっては、組成物からの銅含有剤の放出を長引かせるために、溶解性の低い銅含有剤(例えば、フッ化銅、水酸化銅、炭酸銅など)を用いることができる。いくつかのさらなる実施形態では、放出速度は、付加的または代替的に、特定の医薬担体または製剤タイプによって制御することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、銅含有剤は第二の活性剤または治療剤、たとえば追加の架橋剤とともに投与することができる。第二の活性剤は、銅含有剤および/または別の架橋剤によって誘導される架橋と協調して働く、別の作用機序によって作用することができる。例えば、第二の活性剤は、軸方向伸長を減少させ、調節(すなわち、眼がその屈折力を変化させて、その距離が変化する時に画像への明確な焦点を維持するプロセス)など、またはそれらの組み合わせを減少させることができる。このような追加の薬剤としては、リボフラビン、ローズベンガル、ヒドロキシリジン、カルシウム含有剤、マグネシウム含有剤、銀含有剤、アルミニウム含有剤、亜鉛含有剤、鉄含有剤、アサイー抽出物、デコリン、バイグリカン、ケラトカン、ルミカン、ミミカン、フィブロモジュリン、VI型コラーゲン、X型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、アトロピン、ホマトピン、シクロペントレート、ピレンゼピン、7-メチルキサンタニンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、追加のまたは第2の活性剤は、アトロピン、ホマトロピン、シクロペントレート、ピレンゼピン、7-メチルキサンタニンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、第2の活性剤はアトロピンを含むことができる。いくつかの追加の実施形態では、第2の活性剤はホマトロピンを含むことができる。さらに追加の実施形態では、第2の活性剤はシクロペントレートを含むことができる。さらなる実施形態では、第2の活性剤はピレンゼピンを含むことができる。さらなる実施形態では、第2の活性剤は7-メチルキサンタニンを含むことができる。第2の活性剤は、一般に、約0.001重量%~約0.1重量%の量で存在することができる。他の実施形態では、第2の活性薬剤は、約0.005重量%~約0.05重量%、または約0.007重量%~約0.02重量%の量で存在することができる。
【0028】
他の実施形態では、前記組成物は追加の活性成分を含まない、すなわち、銅含有剤が組成物の唯一の活性成分である。いくつかの実施形態では、組成物は、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、抗生物質、鎮痛剤、またはステロイドを含まない。
【0029】
特定の実施形態では、組成物はアミンを含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、アミン-銅錯体、例えば、銅カチオンが1つまたはそれ以上のアミン配位子に錯形成された配位錯体を含まない。
【0030】
銅含有剤は、薬学的に許容される担体で提供することができる。薬学的に許容される担体は、銅含有剤を送達するために様々な方法で製剤化することができる。非限定的な例としては、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ヒドロゲル、熱応答性ゲル、結膜下注射用の製剤、テノン嚢下注射用の製剤、デポ、フィルム、持続送達マトリックス、コンタクトレンズ、綿撒糸、涙点プラグ、ゲル化懸濁液など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。組成物は、眼への受動的送達のために製剤化されることができる。あるいは、組成物は、イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、ソノポレーションなどの眼への能動的送達のために製剤化することができる。特定の実施形態では、製剤は点眼薬とすることができる。いくつかの実施形態では、組成物は、ソフトレンズ、トーリックレンズ、ハードレンズ、強膜レンズなど、またはそれらの組み合わせなどの銅溶出コンタクトレンズとして配合することができる。コンタクトレンズは、毎日の使い捨てレンズまたは長期使用レンズ(例えば、2日使用~2週間使用またはそれ以上のレンズ)であっても良い。いくつかの実施形態では、前記組成物は、盲嚢、結膜、結膜下、テノン嚢、またはテノン嚢下の空間などの眼の表面と接触して配置するための持続送達またはデポマトリックスまたはデバイスとして製剤化することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、レンズ、フィルム、カプセル、涙点プラグなど、またはそれらの組み合わせなどの生分解性装置として製剤化することができる。生分解性装置は、約1週間~約6ヶ月、または約2週間~約4ヶ月、または約1ヶ月~約2ヶ月の速度で生分解するように構成することができる。
【0031】
銅含有剤を含む前記組成物は、等張化剤、可溶化剤、増粘剤、ポリマー、緩衝剤、pH調整剤、保存剤、および水から選択される賦形剤をさらに含むことができる。特定のこのような実施形態では、組成物は、前記賦形剤の2つまたはそれ以上を含む。
【0032】
可溶化剤の非限定的な例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコPBS、アルセバー溶液、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、水、HankのBSS、EarleのBSS、GreyのBSS、PuckのBSS、SimmのBSS、TyrodeのBSS、BSSプラス、リンガーの乳酸溶液、通常の生理食塩水(すなわち0.9%生理食塩水)、1/2通常の生理食塩水などの平衡塩類溶液(BSS)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。可溶化剤は、特定の製剤、治療方法などに応じて、薬学的に許容される担体中に様々な量で存在することができる。
【0033】
等張化剤の非限定的な例としては、前に列挙した可溶化剤、ならびに塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、トレハロースなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。等張化剤を使用して、製剤の適切な等張性を提供することができる。特定の実施形態では、製剤の張度は、約200~約800ミリオスモル/リットル(mOsm/L)である。他の実施形態では、製剤の張度は、約200mOsm/L~約700mOsm/Lとすることができる。他の実施形態では、製剤の張度は、約200mOsm/L~約650mOsm/Lとすることができる。さらに他の実施形態では、製剤の張度は、約200mOsm/L~約600mOsm/Lとすることができる。他の実施形態では、製剤の張度は、約250mOsm/L~約700mOsm/Lとすることができる。さらに他の実施形態では、製剤の張度は、約250mOsm/L~約650mOsm/L、約250mOsm/L~約600mOsm/L、約270mOsm/L~約700mOsm/L、約270mOsm/L~約650mOsm/L、または約270mOsm/L~約600mOsm/Lとすることができる。等張化剤は、特定の製剤、治療方法などに応じて、薬学的に許容される担体中に様々な量で存在することができる。
【0034】
pH調整剤の非限定的な例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの多くの酸、塩基、およびそれらの組み合わせを含むことができる。pH調整剤を使用して、製剤に適切なpHを提供することができる。特定の実施形態では、前記組成物のpHは約5.0~約8.5とすることができる。特定の実施形態では、pHは、約5.0~約8.0とすることができる。あるいは、pHは、約5.2~約8.0、約5.3~約8.0、約5.4~約7.9、約5.5~約7.8とすることができる。pH調整剤は、特定の製剤、治療方法などに応じて、薬学的に許容される担体中に様々な量で存在することができる。
【0035】
増粘剤の非限定的な例としては、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、エチルビニルアルコール、ヒアルロン酸など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。増粘剤は、特定の製剤、治療方法などに応じて、薬学的に許容される担体中に様々な量で存在することができる。
【0036】
フィルム、コンタクトレンズなどのためのポリマーマトリックスを調製するために使用することができるポリマーの非限定的な例としては、生分解性または非生分解性ポリマーを含むことができる。ポリマーまたはポリマーの組み合わせの非限定的な例としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオルソエステル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリシロキサン、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(乳酸とグリコリドの含有量の異なる比率、および酸またはエステル末端などの末端基)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカメロース、ポリカプロラクトン、ヒアルロン酸、アルブミン、それらの塩化ナトリウムブロックコポリマー、それらの塩など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ポリ乳酸-ポリグリコール酸ブロックコポリマー(PLGA)、ポリグリコール酸-ポリビニルアルコールブロックコポリマー(PGA/PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリカプロラクトン-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、クロスカルメロースなどの特定のコポリマーは、望ましい場合、生分解性マトリックスに特に効果的であり得る。
【0037】
特定の実施形態では、組成物は熱応答性ポリマーを含むことができる。熱応答性ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ビニルカプロラクタム)、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ABCBAタイプのペンタブロックポリマー、キトサンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。このような熱応答性ポリマーは、特定の銅含有剤を一定の温度範囲内で結合または機能化することができ、組成物を眼に接触させる、組成物の投与後に眼に熱源を適用するなど、周囲環境の温度を変化させると、銅含有剤を放出する。
【0038】
保存剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム(BAK)、セトリモニウム、過ホウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその様々な塩形態、クロロブタノールなどを含むことができる。保存剤は、特定の製剤、治療方法などに応じて、薬学的に許容される担体中に様々な量で存在することができる。
【0039】
特定の好ましい実施形態では、前記組成物は局所的に投与される。眼への局所投与のための前記組成物には、眼科用組成物が含まれる。局所投与のための前記組成物は、軟膏、ゲル、薄いフィルム、または点眼組成物として製剤化される。
【0040】
特に好ましい実施形態では、組成物は点眼薬として製剤化することができ、例えば、薬学的に許容される担体は、PBS、BSS、または他の適切な溶解性もしくは等張化剤を含むことができる。例えば、組成物は点眼薬として製剤化でき、薬学的に許容される担体は人工涙液(例えば、RefreshTears(登録商標)、Genteal(登録商標)、OasisTears(登録商標)など)を含むことができる。あるいは、組成物は、薄いフィルム、軟膏、ゲル化懸濁液、涙点プラグ、またはコンタクトレンズとして製剤化することができる。
【0041】
眼科用組成物は、治療上有効な量の銅含有剤を投与するための眼科用剤形として使用することができる。いくつかの実施形態では、組成物の約1μl~約500μlの量が、投与事象ごとに投与される。さらに他の実施形態では、約1μl~約250μl、約1μl~約200μl、約1μl~約100μl、約2μl~約250μl、約2μl~約200μl、約2μl~約100μl、約3μl~約250μl、約3μl~約200μl、約3μl~約100μl、約4μl~約250μl、約4μl~約200μl、約4μl~約100μl、または約5μl~約250μl、約5μl~約200μl、または約5μl~約100μlが、投与事象ごとに投与される。点眼薬の場合、この量は、好ましくは、例えば、1~3滴の眼科用組成物で投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、眼科用組成物は生分解するように、そうでなければ所定の期間にわたって銅含有剤の制御放出または持続放出を提供するように製剤化することができる。さらに他の実施形態では、制御された方法または持続的な方法で非生分解性マトリックスから銅含有剤を放出するように製剤化することができる。そのような特定の実施形態では、剤形は、必要に応じて、数時間、数日、または数週間にわたって銅含有剤を放出するように製剤化することができる。いくつかの具体的な実施形態では、組成物は1週間あたり約0.005mcg~約250mcgの銅を送達するように製剤化することができる。さらに他の実施形態では、剤形は、約0.008mcg~約200mcg/週、約0.01mcg~約150mcg/週、または約0.1mcg~約100mcg/週を送達するように製剤化することができる。特定の実施形態では、眼科用組成物は、ゼロ次薬物放出動態を有するように製剤化することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、剤形は、さらなる希釈または調製なしに投与する準備ができている事前混合された組成物として、容器に保持または保管することができる。いくつかの実施形態では、単一の容器は、単回投与に適切であるが、複数回投与に適切である量より少ない組成物の容量または量を保持することができる。さらに他の実施形態では、単一の容器が、複数回投与に適した容量または量の組成物を保持することができる。
【0044】
多くの適切な容器を使用することができる。容器は、例えば、琥珀色の容器とすることができる。いくつかの実施形態では、容器は、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなど、またはそれらの組み合わせで作ることができる。いくつかの実施形態では、容器は、約0.5ml~約50mlの容量を有することができる。他の実施形態では、容器は、約1ml~約30ml、約5ml~約20ml、または約3ml~約15mlの容量を有することができる。他の実施形態では、容器は、剤形の単回用量を保持することができる。あるいは、容器は、剤形の複数の用量を保持することができる。容器は、例えば、バイアル、ボトル、ブリスターパック、小袋とすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、約0.005mg~約1mgの銅含有剤を容器に含めることができる。さらに他の実施形態では、約0.01mg~約5mgの銅含有剤を容器に含めることができる。いくつかの実施形態では、約0.001mg~約5mgの銅を容器に含めることができる。いくつかの実施形態では、約0.005mg~約2mgの銅を容器に含めることができる。
【0046】
特定の実施形態では、剤形は、点眼薬として製剤化され、約5μl~約100μlの滴量で組成物を滴下方式で調剤するように適合された容器に入れられた局所眼科剤形とすることができる。あるいは、容器は、約1μl~約250μl、約1μl~約200μl、約1μl~約100μl、約2μl~約250μl、約2μl~約200μl、約2μl~約100μl、約3μl~約250μl、約3μl~約200μl、約3μl~約100μl、約4μl~約250μl、約4μl~約200μl、約4μl~約100μl、または約5μl~約250μl、約5μl~約200μl、または約5μl~約100μlの滴下量で眼科用組成物を分注するように適合させることができる。
【0047】
組成物が点眼薬として製剤化される場合、容器は、組成物を分配することができる適合したノズルまたはチップを含むことができる。このように、容器は通常、少なくとも部分的に、組成物を分配するために、可撓性または折りたたみ可能とすることができる。しかしながら、場合によっては、組成物が分配された後、空気が容器に吸い戻され、それにより組成物が汚染される可能性がある。したがって、ノズルまたはチップは、細菌および他の汚染物質の容器への導入を防止または最小化するために、バルブ機構、フィルターなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0048】
特定の実施形態では、容器または剤形は、注射器、スポイト、もしくは他の機構などの投与機構を含むか、または伴うことができる。いくつかの実施形態では、パッケージは、例えば、単一の統合システムにおいて、組成物、容器、およびその使用説明書、ならびに任意選択で投与機構を提供するように構成することができる。
【0049】
本明細書に記載の組成物を投与する多数の任意選択の様式がある。例えば、前記組成物は、エアガン送達(air-gun delivery)またはバリスティックエア送達(ballistic air delivery)によって送達される。
【0050】
特定の実施形態では、前記組成物または剤形は、治療を必要とする眼ごとに少なくとも1週間に1回、治療を必要とする眼ごとに少なくとも1日に1回、治療を必要とする眼ごとに1日に1~4回の時点、または治療を必要とする眼ごとに1日に2回の時点で投与することができる。いくつかの実施形態では、各時点で、前記組成物は、約1μl~約250μl、約1μl~約200μl、約1μl~約100μl、約2μl~約250μl、約2μl~約200μl、約2μl~約100μl、約3μl~約250μl、約3μl~約200μl、約3μl~約100μl、約4μl~約250μl、約4μl~約200μl、約4μl~約100μl、または約5μl~約250μl、約5μl~約200μl、または約5μl~約100μlの量で投与される。
【0051】
治療期間は、状態の重症度、診断時の対象の年齢など、いくつかの要因に依存する可能性がある。いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも約1週間、少なくとも約6週間、または少なくとも約6ヶ月の治療期間投与される。さらなる実施形態において、組成物は、約1週間~約5年、または約6ヶ月~約5年、または約6ヶ月?約1年の治療期間投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、眼科用組成物は点眼薬として投与することができる。あるいは、眼科用組成物は、結膜下注射として投与することができる。代替的な実施形態では、眼科用組成物は、テノン嚢下注射として投与することができる。さらなる代替的な実施形態では、眼科用組成物は、局所用フィルム、局所用ゲル、コンタクトレンズ、涙点プラグなどの形態で投与することができる。いくつかの実施形態では、局所用フィルム、局所用ゲル、コンタクトレンズ、涙点プラグなどは、経時的に生分解して、銅含有剤の制御された持続放出を提供するように構成することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記対象は、少なくとも約3歳、少なくとも約5歳、少なくとも約10歳、または少なくとも約25歳のヒトである。さらなる実施形態では、前記対象は、約3歳~約60歳、約3歳~約40歳、約3歳~約25歳、約25歳~約60歳、または25歳~約40歳のヒトである。
【0054】
特定の実施形態では、前記近視は進行性近視である。他の実施形態では、前記近視は非進行性近視である。
【0055】
本明細書に開示される方法は、近視およびその関連症状の治療に有用である。従って、本発明の方法は、患者の歪んだまたはぼやけた視力を安定化、改善、または矯正し、眼精疲労を緩和し、患者の目を細めることを減少させ、疲労を減少させ、および/または夜間視力を改善することができる。近視の重症例では、本発明の方法は、網膜剥離、白内障、緑内障、および/または失明の進行を遅らせることができる。本発明の方法は、近視に伴う頭痛または片頭痛を軽減または予防することができる。
【0056】
医薬組成物
特定の実施形態では、本発明の方法に用いられる銅含有剤は、医薬組成物中に製剤化される。例えば、医薬組成物は1つまたはそれ以上の銅含有剤および薬学的に許容される担体を含む。
【0057】
本発明の組成物および方法は、それを必要とする個体を治療するために利用される。特定の実施形態では、個体は、ヒトなどの哺乳動物、または非ヒト哺乳動物である。ヒトのような動物に投与される場合、組成物または化合物は、好ましくは、例えば、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。薬学的に許容される担体は、当該技術分野において周知であり、例えば、水もしくは生理学的に緩衝化された生理食塩水のような水溶液、または、グリコール、グリセロール、オリーブ油のような油、もしくは有機エステルのような他の溶剤もしくは溶媒を含む。
【0058】
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物のような化合物を安定化し、溶解度を増加させ、または吸収を増加させるように作用する生理学的に許容される薬剤を含むことができる。このような生理学的に許容される薬剤としては、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定剤もしくは賦形剤を含む。
【0059】
薬学的に許容される抗酸化剤のさらなる例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど、および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0060】
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」という語句は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0061】
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)」という語句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、または溶媒を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容可能(acceptable)」でなければならない。薬学的に許容される担体として機能しうる物質の例としては、(1)糖類、例えばラクトース、グルコース、スクロースなど、(2)デンプン類、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンなど、(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなど、(4)粉末トラガント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤、例えばココアバター、坐薬用ワックスなど、(9)油類、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油など、(10)グリコール類、例えばプロピレングリコールなど、(11)ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなど、(12)エステル類、例えばオレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなど、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリーの水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、および(21)医薬製剤に使用されるその他の非毒性の適合物質を含む。
【0062】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物のような活性化合物を、担体および、任意選択で、1つまたはそれ以上の付属成分と関連させる工程を含む。一般に、製剤は、活性化合物を1つまたはそれ以上の液体担体と均一かつ密接に関連させることにより調製される。
【0063】
懸濁液は、活性化合物(単数または複数)に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物のような懸濁化剤を含むことができる。
【0064】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含んでも良い。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含有させることによって確実にできる。また、糖類、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に含有させることも好ましい。
【0065】
医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療反応を達成するのに有効であり、かつ患者に毒性がない活性成分の量を得るように変化させることができる。
【0066】
選択される投与量レベルは、採用される特定の化合物または化合物の組み合わせの活性、投与経路、投与時間、採用される特定の化合物の除去または排出速度、治療の期間、採用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態、および以前の病歴、ならびに医療技術においてよく知られている要因を含む様々な要因に依存する。
【0067】
当技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる治療的有効量の医薬組成物を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで医薬組成物または化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることができる。「治療的有効量(therapeutically effective amount)」とは、所望の治療効果を引き出すのに十分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴によって異なることが一般に理解されている。有効量に影響を及ぼす他の因子としては、これに限定されるものではないが、患者の状態の重症度、治療される疾患、化合物の安定性、および所望により本発明の化合物とともに投与される別の種類の治療剤を含む。薬剤を複数回投与することにより、より多くの総投与量を送達することができる。有効性および投与量を決定する方法は、当業者に公知である(Isselbacher et al.(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814-1882は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0068】
一般に、本発明の組成物および方法において使用される活性化合物の好適な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。このような有効量は、一般に上記の要因に依存する。
【0069】
所望により、活性化合物の有効な1日用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される1回、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の小用量として、任意選択で、単位剤形として投与される。本発明の特定の実施形態では、活性化合物は、1日2回または3回投与される。特定の実施形態では、活性化合物は1日1回投与される。
【0070】
この治療を受ける患者はそれを必要とするあらゆる動物であり、霊長類、特にヒト、ならびに他の哺乳類、例えばウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジ、ならびに家禽類、およびペット全般などを含む。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、単独で使用されるか、または別のタイプの治療剤と併用投与される。本明細書で使用される場合、「併用投与(conjoint administration)」という語句は、先に投与された治療用化合物が依然として体内で有効である間に第2の化合物が投与されるような、2つまたはそれ以上の異なる治療用化合物の任意の投与形態を指す(例えば、2つの化合物が患者において同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果が含まれる可能性がある)。例えば、異なる治療用化合物は、同一の製剤中で、または別個の製剤中で、同時または逐次的に投与することができる。特定の実施形態では、異なる治療用化合物は、互いに1時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与することができる。したがって、このような治療を受ける個体は、異なる治療用化合物の複合効果から利益を得ることができる。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の化合物と1つまたはそれ以上の追加の治療剤(単数または複数)(例えば、1つまたはそれ以上の追加の化学療法剤(単数または複数))との併用投与は、本発明の化合物または1つもしくはそれ以上の追加の治療剤(単数または複数)の個別投与と比較して改善された効力をもたらす。このような特定の実施形態では、併用投与は相加的効果をもたらし、ここで相加的効果とは、本発明の化合物および1つまたはそれ以上の追加の治療剤(単数または複数)の個別投与の各効果の合計を指す。
【0073】
「治療する(treating)」という用語は、予防的および/または治療的処置を含む。「予防的または治療的(prophylactic or therapeutic)」処置という用語は、当該技術分野で認識されており、かつ対象組成物の1つまたはそれ以上を宿主に投与することを含む。望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床的発現前に投与される場合、治療は予防的(prophylactic)である(すなわち、望ましくない状態の発現に対して宿主を保護する)、一方、望ましくない状態の発現後に投与される場合、治療は治療的(therapeutic)である(すなわち、既存の望ましくない状態もしくはその副作用を減少、改善、または安定化することを意図する)。治療はまた、望ましくない状態または副作用を除去することを包含する。本明細書中で使用されるように、疾患、障害、または状態を治療することは、疾患、障害、または状態の合併症(単数または複数)を治療することを含み、例えば、疾患、障害、または状態の合併症(単数または複数)に特異的な基礎病態生理学を治療することを含む。治療剤が投与される対象は、無症状であっても有症状であっても良い。
【実施例1】
【0074】
実施例1-過塩素酸銅はヒト角膜細胞におけるリシルオキシダーゼ(LOX)活性を増加させる
過塩素酸銅を用いて正常角膜細胞のLOX活性を調べ、硫酸銅を用いた活性と比較するために、正常角膜から採取した角膜間質細胞(各n=3)を10%ウシ胎児血清(FBS)DMEM中で培養し、BSS中の硫酸銅または過塩素酸銅に暴露した後、0.25μmのフィルターで濾過した。調整培養液は、Amplex redを用いたLOXのペルオキシダーゼ結合蛍光活性測定に供した。並行して、LOX活性を完全に低下させる500uMのアミノプロピオニトリル(BAPN)を添加した。酸化されたAmplex redの蛍光は、蛍光プレートリーダーを用いて10分ごとに記録した。バックグラウンドの蛍光を差し引いた後、蛍光強度をインキュベーション時間に対してプロットした(図1)。
【0075】
その結果、過塩素酸銅は用量反応的にLOX酵素活性を劇的に上昇させることがわかった(図1a)。さらに、過塩素酸銅は100nMという低濃度では、同じモル濃度の硫酸銅よりもLOX活性を増加させた。理論に縛られることを望まないが、過塩素酸銅が活性を高めるのは、過塩素酸アニオンが酸素を放出することにより、硫酸塩のようなアニオンと共に銅イオンを投与した場合よりもLOXのオキシダーゼ活性を高めるためと考えられる。
【実施例2】
【0076】
実施例2-過塩素酸銅はモルモットの仔の強膜リシノノルロイシン(LNL)を増加させる。
リシルオキシダーゼはリシンをアリシンに変換し、それをリシンまたはヒドロキシリシンに自発的に結合させ、コラーゲン架橋の確立されたバイオマーカーであるリシノノルロイシン(LNL)になる。銅が強膜のLOX活性を増強し、強膜中のLNL量を増加させる(強膜の架橋を示す)という仮説を検証するため、モルモットの仔(生後3~7日)に6~8週間(各n=5)、0.08mg/mLの過塩素酸銅六水和物を1日2回点眼した。6週間後に強膜を解剖し、質量分析計(LC-MS)を用いてLNL含量を分析した。半定量的質量分析は、Sciex6500Q-Trap(Sciex,マサチューセッツ州Framingham)を用いて行った。
【0077】
モルモットの試験では、処理強膜で6.9×10-4ug/mgのLNL反応が見られたのに対し、未処理強膜では3.9×10-4ug/mgのLNL反応が見られた(図2)。モルモット間のベースラインのばらつきのため標準偏差は大きいが、n=5のモルモットのそれぞれにおいて、未処理眼と比較して処理眼ではLNLの増加が認められた。対応のあるサンプルのT検定では、p値0.036の統計的に有意な差が認められ、過塩素酸銅がin vivoで強膜架橋を誘導することが示された。
【実施例3】
【0078】
実施例3-過塩素酸銅は、処理したモルモットの仔における強膜の生体力学的剛性を増加させる。
過塩素酸銅が強膜のLOX活性を亢進させ、強膜の架橋および強膜の生体力学を増大させるという仮説を検証するため、モルモットの仔(生後3~7日)に8週間(各n=3)、0.08mg/mLの過塩素酸銅六水和物を1日2回点眼した。8週間後、クリープコンプライアンス試験のために強膜を剥離した。コンプライアンスは、カスタムグリップおよび5NのFutek社製ロードセルを備えたInstrong5943機械試験システムを用いて試験した。6個の試験片にそれぞれ0.005kgfの荷重をかけ、試験片の寸法によって12.0~16.6mmHgの等価圧力に対応させた。
【0079】
動物における実験的近視の研究では、近視眼の強膜組織は正常眼の強膜に比べて機械的剛性が低下し、クリープコンプライアンスも増加することが示されている。対照的に、過塩素酸銅はクリープコンプライアンスを減少させ、すなわち強膜の剛性を増加させた(図3)。コンプライアンスが小さいと、加圧した時の伸びが小さくなる(したがって、過塩素酸銅処理後の強膜はより硬くなる)。
【実施例4】
【0080】
実施例4-過塩素酸銅は忍容性が良好であり、モルモットの仔において自発的近視の進行を遅らせた。
小児近視のモデルとして、自発的近視アルビノモルモットを用いた。この種の近視はヒトの近視に非常に似ているため、自発的近視は潜在的に高い関心を集めている。小児モデルとして、アルビノモルモットの仔を4-7日齢から使用した。このn=5の仔グループにおいて、左目はすべて未処理であった(内部対照)。もう一方の眼(右眼)には0.22mg/mLの過塩素酸銅六水和物を1日2回処理した。治療は生後約1週間で開始し、約2ヵ月間継続した。測定は生後5~7日の間行い(ベースライン、未処理)、その後は隔週で行った。屈折異常は瞳孔拡張後の線条検影法(streak retinoscopy)で、軸長はLenstar biometry(Haag-Streit)で測定した。また、シクロプレジック屈折異常と角膜炎症は、匿名の小児眼科医によって測定された。予備的な臨床観察では、試験期間中、ウサギの角膜に毒性または変色は認められなかった。過塩素酸銅は、治療から9週間以内に屈折異常の近視進行を48%遅らせた(図4)。対照眼(OS)と比較して、処理眼(OD)では軸長と硝子体室深度が減少する傾向が見られた(図5)。
【実施例5】
【0081】
実施例5-過塩素酸銅は、モルモットの近視遺伝モデルにおいて、軸伸長、硝子体室伸長、および近視を抑制する。
過塩素酸銅をモルモットに0.35mg/mlで投与した。その結果(図6)、過塩素酸銅の治療(1日2回点眼)が、対照眼に対し、処理眼における軸の伸長および硝子体室深度の伸長を有意に減少させた。実験終了時、過塩素酸銅処理した眼は、対照眼に比べて近視度が有意に低下した。処理眼と対照眼で有意差のあった日は、図6に*印で示している。
【実施例6】
【0082】
実施例6-モルモットの近視遺伝モデルにおいて、低濃度の過塩素酸銅を1日1回投与すると近視が軽減する。
0.22mg/mlの過塩素酸銅を1日1回、約3ヵ月間、右眼のみに投与した。シクロプレジック屈折は匿名の小児眼科医が隔週で測定した。その結果(図7)、勾配分析(左から右の差、動物内の一対の差)により、屈折異常は右眼よりも左眼の方が1日あたり0.027(sd=0.011)多く減少することが示された(すなわち、眼間の差は負の勾配を持つ)、p値は0.0189であった。ベースラインから81日目の左目-右目の変化量は、ベースラインから2.27単位低く、つまり、左目は右目に対して平均で-2.27減少し、これは、81日間の治療で、未処理の左目は処理した右目よりも2.27ジオプトリ-近視が進行したことを示している。
【実施例7】
【0083】
実施例7-過塩素酸銅は、強膜線維芽細胞のリシルオキシダーゼ活性を増加させる。
過塩素酸銅は強膜細胞のLOX活性を増加させた。過塩素酸銅は、局所点眼薬の有効レベルと同程度の特定の濃度で、用量反応的にLOX酵素活性を劇的に増加させることがわかった(図8)。
【0084】
参照による組み込み
本明細書に記載されたすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、本明細書における定義を含め、本出願が優先される。
【0085】
均等物
対象発明の具体的な実施形態について説明してきたが、上記明細書は例示であって制限的なものではない。本発明の多くの変形例は、本明細書および以下の特許請求の範囲を検討すれば、当業者には明らかになるだろう。本発明の全範囲は、そのような変形例とともに、均等物の全範囲とともに、特許請求の範囲および明細書を参照して決定されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】