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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】マイクロ流体カセット
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240220BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548640
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 GB2022050370
(87)【国際公開番号】W WO2022172018
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2102018.5
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウィテカー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CE02
2G058DA07
(57)【要約】
本明細書では、マイクロ流体カセット本体を備えるマイクロ流体カセットが開示され、マイクロ流体カセット本体は、流体流路と、マイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第1の穿孔部材であって、壁は、流体流路と流体連通する第1の流体開口部を囲む、第1の穿孔部材と、第1の穿孔部材に隣接してマイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第2の穿孔部材であって、壁は、流体流路と流体連通する第2の流体開口部を囲む、第2の穿孔部材と、を備える。第1の穿孔部材は、第1の穿孔部材の壁の第2の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体カセット本体を備えるマイクロ流体カセットであって、
前記マイクロ流体カセット本体は、
流体流路と、
前記マイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第1の穿孔部材であって、前記壁は、前記流体流路と流体連通する第1の流体開口部を囲む、第1の穿孔部材と、
前記第1の穿孔部材に隣接して前記マイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第2の穿孔部材であって、前記壁は、前記流体流路と流体連通する第2の流体開口部を囲む、第2の穿孔部材と、を備え、
前記第1の穿孔部材は、前記第1の穿孔部材の前記壁の前記第2の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える、マイクロ流体カセット。
【請求項2】
前記更なる流体開口部は、前記第1の穿孔部材の前記壁のスロットである、請求項1に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項3】
前記スロットは、前記壁の遠位端部から前記壁の近位端部に向かう方向に前記壁を貫通して延びている、請求項2に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項4】
前記スロットは、実質的にV字形状であり、前記壁の前記遠位端部から前記壁の前記近位端部に向かう方向に幅が減少している、請求項3に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項5】
前記更なる流体開口部は、前記マイクロ流体カセット本体から最も遠くまで延在する壁の一部分、又は壁の一部分の近くにおいて前記壁上に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項6】
前記第1の穿孔部材の前記壁及び/又は前記第2の穿孔部材の前記壁は、実質的に環状である、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項7】
前記第1の穿孔部材の前記壁の遠位端部及び/又は前記第2の穿孔部材の前記壁の遠位端部が、実質的に傾斜している、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項8】
試薬収容チャンバを備える挿入体を更に備え、前記試薬収容チャンバは、前記第1の穿孔部材と前記第2の穿孔部材とによって穿孔可能なシールを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項9】
前記挿入体は、前記マイクロ流体カセット本体内に固定され、前記試薬収容チャンバの前記シールが前記第1の穿孔部材と前記第2の穿孔部材とに接触していない前記マイクロ流体カセット本体内の第1の位置から、前記シールが前記第1の穿孔部材と前記第2の穿孔部材とに接触している前記マイクロ流体カセット本体内の第2の位置まで移動可能である、請求項8に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項10】
前記マイクロ流体カセット本体は、前記第1の穿孔部材と前記第2の穿孔部材とを囲む外壁を更に備え、前記外壁は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記挿入体の移動を案内するように成形されている、請求項9に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項11】
前記第1の穿孔部材と前記第2の穿孔部材と前記挿入体とを囲む密封チャンバを提供するように配置されたカバー要素を更に備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項12】
前記挿入体は、前記カバー要素の内面に固定されている、請求項11に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項13】
前記第2の穿孔部材は、前記第2の穿孔部材の前記壁の前記第1の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセットと、
前記マイクロ流体カセットを受け取るように適合されたマイクロ流体診断装置と、を備えるマイクロ流体診断システムであって、
前記マイクロ流体診断装置は、前記マイクロ流体カセットの挿入体の試薬収容チャンバのシールを破壊するように適合された1つ以上のアクチュエータを備える、マイクロ流体診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体カセット、及びそのようなカセットを使用する関連マイクロ流体診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体診断装置は、患者から提供される流体試料に基づいて、健康状態の迅速なポイントオブケア診断を提供するために使用される。マイクロ流体診断装置は、マイクロ流体カセット内に収容された流体試料と相互作用し、診断テストを行うことを可能にする構成要素を備える。
【0003】
マイクロ流体カセットは、一般的には、患者から提供された流体試料がカセットを通過し、カセット内に収容された様々な試薬と相互作用できるようにする複数の流体流路を含む。このようなマイクロ流体カセットは、一般的には、マイクロ流体診断装置がカセット内の流体試料に対して撮像及び/又は感知を行うことができる撮像/感知領域を含む。
【0004】
マイクロ流体診断装置から正確で信頼できる結果を確実に得ることを助けるために、カセット内の試薬は、水分及び他の汚染物質から離れた良好な状態に維持されていることが望ましい。乾燥試薬又は湿潤試薬を使用するとき、水分が問題となることがある。しかし、凍結乾燥試薬を使用する場合には、このような試薬は親水性であるため、水分が特に問題となる。つまり、少量の水分であっても、このような試薬と相互作用し、その有効性を潜在的に低下させる可能性があることを意味する。
【0005】
カセットの製造中に、マイクロ流体カセットの流体流路の上に試薬を直接堆積させることが知られている。しかし、この構成では、とたえマイクロ流体カセットが製造中に密封されていても、大気からの水分又はカセットに意図的に保存された流体から生じる蒸気が時間の経過とともに試薬に接触し、劣化させる可能性がある。これにより、カセットを使用して行われる診断試験の有効性が低下し、及び/又はカセットの保管寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
特許文献1は、試薬収容チャンバを備える挿入体を含むマイクロ流体カセット構成を開示している。試薬収容チャンバは、箔の層で密封されている。このシールは、挿入体がマイクロ流体カセットのシール破壊構造に強制的に接触することで、カセット内でその場で破壊可能である。シール破壊構造に隣接するカセットの一部はカセットの流体流路と流体連通しており、試薬収容チャンバのシールが破壊されると、流体はカセットの流体流路から試薬収容チャンバに流れることができる。
【0007】
この構成により、試薬は使用されるまで密封チャンバに留まり、したがって外部材料が試薬に接触して潜在的に劣化させるのを防ぐことができる。
【0008】
しかし、特定の使用条件では、この構成により、マイクロ流体カセットを通る流体試料の流れが不規則かつ制御不可能となり、流体試料と試薬との混合が不完全になる場合がある。
【0009】
例えば、特定の条件下では、カセット内でその場で破壊された後、試薬収容チャンバの箔シールがシール破壊構造を部分的に塞ぐ可能性がある。これは、チャンバ内の試薬が箔シールの後ろで圧縮されることによって引き起こされる可能性がある。箔シールがシール破壊構造を部分的に塞ぐと、これによりカセットを通る流体の流れの速度が低下し、流体試料と試薬との混合度が低下する可能性がある。このように流体の速度が低下すると、流体試料がカセットを強制的に通過する際に流体試料の背後で圧力が上昇する可能性がある。乾燥試薬をチャンバで使用する場合、試薬が再水和されるときに、この上昇した圧力が突然解放される可能性がある。この急激な圧力解放により、制御が失われ、流体試料が壊れる可能性がある。
【0010】
本発明の特定の実施形態の目的は、上述の課題のうちの1つ以上を回避又は軽減するマイクロ流体カセット構成を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2020109797号
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ流体カセット本体を備えるマイクロ流体カセットが提供される。マイクロ流体カセット本体は、流体流路と、マイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第1の穿孔部材であって、壁は、流体流路と流体連通する第1の流体開口部を囲む、第1の穿孔部材と、第1の穿孔部材に隣接してマイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第2の穿孔部材であって、壁は、流体流路と流体連通する第2の流体開口部を囲む、第2の穿孔部材と、を備える。第1の穿孔部材は、第1の穿孔部材の壁の第2の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える。
【0013】
任意に、更なる流体開口部は、第1の穿孔部材の壁のスロットである。
【0014】
任意に、スロットは、壁の遠位端部から壁の近位端部に向かう方向に壁を貫通して延びている。
【0015】
任意に、スロットは実質的にV字形状であり、壁の遠位端部から壁の近位端部に向かう方向に幅が減少している。
【0016】
任意に、更なる流体開口部は、マイクロ流体カセット本体から最も遠くまで延在する壁の一部分、又は壁の一部分の近くにおいて壁上に位置する。
【0017】
任意に、第1の穿孔部材の壁及び/又は第2の穿孔部材の壁は、実質的に環状である。
【0018】
任意に、第1の穿孔部材の壁の遠位端部及び/又は第2の穿孔部材の壁の遠位端部は、実質的に傾斜している。
【0019】
任意に、マイクロ流体カセットは、試薬収容チャンバを備える挿入体を更に備え、試薬収容チャンバは、第1の穿孔部材と第2の穿孔部材とによって穿孔可能なシールを備える。
【0020】
任意に、挿入体は、マイクロ流体カセット本体内に固定され、試薬収容チャンバのシールが第1の穿孔部材と第2の穿孔部材とに接触していないマイクロ流体カセット本体内の第1の位置から、シールが第1の穿孔部材と第2の穿孔部材とに接触しているマイクロ流体カセット本体内の第2の位置まで移動可能である。
【0021】
任意に、マイクロ流体カセット本体は、第1の穿孔部材と第2の穿孔部材とを囲む外壁を更に備え、外壁は、第1の位置と第2の位置との間の挿入体の移動を案内するように成形されている。
【0022】
任意に、マイクロ流体カセットは、第1の穿孔部材と第2の穿孔部材と挿入体とを囲む密封チャンバを提供するように配置されたカバー要素を更に備える。
【0023】
任意に、挿入体は、カバー要素の内面に固定されている。
【0024】
任意に、第2の穿孔部材は、第2の穿孔部材の壁の第1の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるマイクロ流体カセットと、マイクロ流体カセットを受け取るように適合されたマイクロ流体診断装置と、を備えるマイクロ流体診断システムが提供され、マイクロ流体診断装置は、マイクロ流体カセットの挿入体の試薬収容チャンバのシールを破壊するように適合された1つ以上のアクチュエータを備える。
【0026】
有利には、本発明の実施形態によれば、使用前に試薬を密封チャンバ内で保護することを可能にし、それによって外部物質が試薬に接触して潜在的に劣化させるのを防ぐ一方で、診断試験中に、流体試料が規則的かつ制御可能な方法でチャンバを通って流れ、流体試料とチャンバ内に収容された試薬とを適切に混合することを確実にする、マイクロ流体カセット構成が提供される。
【0027】
マイクロ流体カセットは、各々がマイクロ流体カセット本体から外に延在する壁を備える第1の穿孔部材と第2の穿孔部材とを含み、壁は、マイクロ流体カセットの流体流路と流体連通するそれぞれの流体開口部を囲む。第1の穿孔部材は、第1の穿孔部材の壁の第2の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置する更なる流体開口部を備える。このようにして、第2の穿孔部材に対して、更なる流体開口部は、第1の穿孔部材の背面に位置する。更なる流体開口部を通過する流体は、第2の穿孔部材から離れる方向に進む。
【0028】
特定の実施形態では、更なる流体開口部は、第1の穿孔部材の壁の遠位端部に直接隣接して位置する。このような実施形態では、更なる流体開口部と、第1の穿孔部材の遠位端部における第1の穿孔部材の壁によって形成される開口部とが一緒になって、より大きな開口部を形成する。
【0029】
第1の穿孔部材の更なる流体開口部は、第1の穿孔部材に材料が存在しない領域を提供する。使用時に、第1の穿孔部材が試薬収容チャンバと係合するとき、更なる流体開口部は、流体が試薬収容チャンバに流入出するための更なる経路を提供する。これにより、例えば試薬チャンバのシールが穿孔部材の遠位端部に部分的に又は完全に重なることによって、穿孔部材の端部が部分的に又は完全に塞がれた場合であっても、流体が試薬収容チャンバを通って流れることを可能にする。
【0030】
更に、更なる流体開口部が第1の穿孔部材の壁の第2の穿孔部材から離れた方向を向いた部分上に位置することにより、流体試料と試薬収容チャンバ内に収容された試薬との混合が改善される。更なる流体開口部の位置により、流体試料が試薬収容チャンバを通る経路を確実に辿り、その結果、流体試料と試薬との混合が改善される。
【0031】
これは、流体が、例えばチャンバ内の試薬と完全に混合することなく、マイクロ流体カセットの表面に沿ってチャンバの最も浅い部分を通過することによって、試薬の一部又は全部を迂回するのを回避するのに役立つ。
【0032】
特定の実施形態では、第1の穿孔部材と第2の穿孔部材との両方が、本明細書に記載されるように構成された更なる開口部を含むことができる。両方の穿孔部材に更なる開口部を設けることにより、流体の流れと試薬の混合を更に改善することができる。
【0033】
有利には、特定の実施形態では、穿孔部材の遠位端部は傾斜させることができる。このようにして、使用時に、穿孔部材の遠位端部の一部は、試薬収容チャンバに更に延在する。このような実施形態では、更なる開口部は、穿孔部材の一方又は両方の傾斜した遠位端部の「先端部」上に、又は「先端部」の近くに位置することができる。有利には、傾斜した遠位端部と、傾斜の先端部に位置する別の開口部とを組み合わせることにより、チャンバのシールを効果的に穿孔する環状壁の能力を更に高めるとともに、チャンバを通る望ましい流体の流れ特性を提供することができる。
【0034】
本発明の様々な更なる構成及び態様は、特許請求の範囲に定められている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体診断システムの簡略概略図である。
図2a】本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体カセットの一部分の外面を示す。
図2b図2aのマイクロ流体カセットの更なる図である。
図3】本発明の特定の実施形態による挿入体の断面図である。
図4】本発明の特定の実施形態によるカバー要素の断面図である。
図5a】マイクロ流体診断装置内の組み立てられたカセット構成の断面図である。
図5b】マイクロ流体診断装置内の組み立てられたカセット構成の断面図である。
図5c】マイクロ流体診断装置内の組み立てられたカセット構成の断面図である。
図5d】マイクロ流体診断装置内の組み立てられたカセット構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して単なる例として説明するが、同様の部分には対応する符号が付されている。
【0037】
図1は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体診断システム100の簡略概略図である。システム100は、マイクロ流体カセット101を備え、マイクロ流体カセット101は、マイクロ流体カセット本体102と、少なくとも1つのチャンバ103と、を備える。マイクロ流体カセット101は、本明細書でより詳細に説明するタイプのものとすることができる。
【0038】
システム100は、カセット101を受け取るように適合されたマイクロ流体診断装置104を更に備える。診断装置104は、カセット101を診断装置104に挿入できるようにするカセット受取領域を備える。診断装置104は、構成要素を更に備え、この構成要素は、カセット101と相互作用して、カセット101内に収容された流体試料に対して診断テストを実行することができる。例えば、診断装置104は、カセット101内に収容された流体試料に対して診断感知及び/又は撮像を行うための1つ以上の診断感知及び/又は撮像構成要素を備えることができる。また、診断装置104は、流体試料を加熱及び/又は冷却するための構成要素を備えてもよい。
【0039】
診断装置104は、1つ以上のアクチュエータ105を備える。1つ以上のアクチュエータ105は、以下でより詳細に説明するように、カセット101のチャンバのシールをその場で(in situ)破壊するように適合されている。
【0040】
使用時に、カセット101は、診断装置104に挿入される(大きな矢印で示す)。カセット101が診断装置104に挿入された後、チャンバ103のシールは、1つ以上のアクチュエータ105を介してその場で破壊される。次いで、カセット101の流体流路に流体試料が導入され、試料に対して診断試験が行われる。
【0041】
1つ以上のアクチュエータ105は、1つ以上の可動作動部材を備えることができる。作動部材は、マイクロ流体カセット101と接触していない位置から、マイクロ流体カセット101と接触している位置まで移動可能である。作動部材は、カセット101が診断装置104に挿入された後、カセット101の一部に力を加えて、チャンバ103のシールをその場で破壊することができる。
【0042】
図2aは、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体カセット200の一部分の外面を示す。マイクロ流体カセット200は、図1を参照して説明したタイプのものとすることができる。マイクロ流体カセット200は、マイクロ流体カセット本体201を含む。理解されるように、マイクロ流体カセット本体201は1つ以上の流体流路を含み、この流体流路は、一般的には患者によって提供される液体流体試料が、試料に対して診断検査が実行される際にマイクロ流体カセット200を通過することを可能にする。
【0043】
マイクロ流体カセット本体201は、第1の穿孔部材202を含む。第1の穿孔部材202は中空である。この実施形態では、第1の穿孔部材202は、マイクロ流体カセット本体201の表面203から外に延在する環状壁である。第1の穿孔部材202は、表面203に直接隣接して位置する近位端部204と、表面203から離れて位置する遠位端部205と、を含む。
【0044】
第1の穿孔部材202は、マイクロ流体カセット本体201の表面203の開口部(図示せず)を囲んでいる。開口部は、マイクロ流体カセット200の流体流路と流体連通している。このようにして、カセットの流体流路から第1の穿孔部材202の中空内部領域への流体流路が形成される。
【0045】
使用時、遠位端部205は、試薬収容チャンバの破壊可能なシールを穿刺するように配置される。
【0046】
より詳細には、マイクロ流体カセット本体201は、図3を参照して説明したタイプの挿入体のような挿入体とのインターフェースを提供するように配置される。このような挿入体は、密封された試薬収容チャンバを含む。挿入体が第1の穿孔部材202に向かって移動すると、第1の穿孔部材202は、試薬収容チャンバのシールを穿孔する。続いて、第1の穿孔部材202の中空内部領域と第1の穿孔部材202が囲む開口部とを介して、試薬収容チャンバとカセットの流体流路との間に流体流路が形成される。これにより、流体試料が試薬収容チャンバを通って流れ、チャンバ内に収容された試薬と混合することができる。
【0047】
この実施形態では、第1の穿孔部材202の遠位端部205は、遠位端部205の一部が表面203から更に延在するように傾斜している。傾斜は、遠位端部205の周囲で連続しており、マイクロ流体カセット本体201の表面203からオフセットした平面に従っている。遠位端部205の傾斜によって、第1の穿孔部材202がシールを穿孔する能力が高まる。
【0048】
第1の穿孔部材202は、更なる流体開口部206を含む。更なる流体開口部206は、流体が第1の穿孔部材202から流出する(すなわち、遠位端部205から流出することに加えて)ための更なる経路を提供する。これにより、例えばシールが穿孔された後にシールの一部が穿孔部材202の遠位端部205の上に部分的に又は完全に重なることによって、第1の穿孔部材202の端部が部分的に又は完全に塞がれた場合であっても、流体が試薬収容チャンバを通って流れることを可能にする。
【0049】
この実施形態では、流体開口部206はスロットである。スロットは、材料が存在しない第1の環状壁202の細長い領域である。スロットは、遠位端部205から始まり、近位端部204の方向に穿孔部材を部分的に貫通して延びている。スロットは、実質的にV字形状である。スロットは、遠位端部205でより広く、近位端部204の方向に狭くなっている。
【0050】
この実施形態では、更なる流体開口部206は、マイクロ流体カセット本体201の表面203から最も遠い第1の穿孔部材202の一部上に、又は一部の近くに位置する。この実施形態では、マイクロ流体カセット本体201の表面203から最も遠い第1の穿孔部材202の一部は、傾斜した遠位端部205の先端部である。更なる流体開口部206をこの位置に配置することにより、更なる流体開口部206は、使用時に試薬収容チャンバの最も遠くまで延在する第1の穿孔部材202の一部上に位置する。これにより、試薬収容チャンバを通る流体の流れが改善される。
【0051】
更なる流体開口部206を第1の穿孔部材202の傾斜した遠位端部の先端部に配置することにより、チャンバのシールを効果的に穿孔する第1の穿孔部材202の能力を更に高めるとともに、チャンバを通る望ましい流体の流れ特性を確保することができる。
【0052】
この実施形態では、更なる流体開口部206は、第1の穿孔部材202の壁の遠位端部205に直接隣接して位置する。このような実施形態では、更なる流体開口部と、第1の穿孔部材の遠位端部における第1の穿孔部材の壁によって形成される開口部とが一緒になって、より大きな開口部を形成する。
【0053】
図2bは、図2aのマイクロ流体カセット200の更なる図である。第1の穿孔部材202に加えて、マイクロ流体カセット本体201は、第2の穿孔部材207を含む。第2の穿孔部材207は、第1の穿孔部材202に実質的に対応し、第1の穿孔部材202の更なる流体開口部206に実質的に対応する更なる流体開口部を含む。
【0054】
図2bに最もよく示すように、第1の穿孔部材202の更なる流体開口部206は、第1の穿孔部材202の壁の第2の穿孔部材207から離れた方向を向いた一部上に位置する。このようにして、第2の穿孔部材207に対して、更なる流体開口部206は、第1の穿孔部材202の背面に位置する。
【0055】
更なる流体開口部206は、第2の穿孔部材207から離れる方向を向くように位置する。このようにして、更なる流体開口部206は、第2の穿孔部材207から最も遠い距離の第1の穿孔部材202の一部又は一部の近くにある点で第1の穿孔部材202上に位置する。更なる流体開口部206を通過する流体は、第2の穿孔部材207から離れる方向に進む。
【0056】
同様に、第2の穿孔部材207は、第2の穿孔部材207の壁の第1の穿孔部材202から離れた方向を向いた一部上に位置する更なる流体開口部(図示せず)を含む。第1の穿孔部材202に対して、第2の穿孔部材207の更なる流体開口部は、第2の穿孔部材207の背面に位置する。
【0057】
更なる流体開口部の位置によって、流体試料と試薬収容チャンバ内に収容された試薬との混合が改善される。これは、更なる流体開口部の位置により、流体試料が試薬収容チャンバを通る経路を確実に辿り、その結果、流体試料と試薬との混合が改善されるからである。特に、この構成は、流体試料が、チャンバ内の試薬と完全に混合することなく、チャンバの最も浅い部分(すなわちカセット本体201の表面203に最も近い部分)を通過することによって、チャンバ内の試薬の一部又は全部を迂回することを回避するのに役立つ。
【0058】
また、マイクロ流体カセット本体201は、外壁208を含む。外壁208は、第1の穿孔部材202と第2の穿孔部材207とを囲み、第1の穿孔部材202と第2の穿孔部材207とに向かう、及び第1の穿孔部材202と第2の穿孔部材207とから離れる挿入体の移動のためのガイドとして作用する。
【0059】
特定の実施形態では、第1の穿孔部材202若しくは第2の穿孔部材207のいずれか、又は第1の穿孔部材202と第2の穿孔部材207との両方が、本明細書に記載されるように構成された更なる流体開口部を含むことができることが理解されよう。
【0060】
この実施形態では、第1の穿孔部材202と第2の穿孔部材207は実質的に環状の形状である。しかし、他の実施形態では、他の適切な形状を使用できることが理解されよう。
【0061】
この実施形態では、両穿孔部材202、207の遠位端部は実質的に傾斜している。しかし、他の実施形態では、穿孔部材のいずれか又は両方の遠位端部205を実質的に平坦にすることができる。
【0062】
この実施形態では、更なる開口部はスロットである。しかし、他の実施形態では、更なる開口部は、貫通孔のような別の適切な形態を取ることができることが理解されよう。
【0063】
図3及び図4は、図2a及び図2bを参照して説明したマイクロ流体カセットを含むマイクロ流体カセット構成の一部として提供することができる更なる構成要素を示す。
【0064】
図3は、本発明の特定の実施形態による挿入体の断面図である。
【0065】
挿入体300は、本体301を含む。本体301は、第1の閉領域302を含む。使用前に、第1の閉領域302は試薬で満たされ、密封されて試薬収容チャンバを提供する。
【0066】
試薬という用語は、本明細書では化学分析又は他の反応に使用される物質又は混合物を指すために使用される。特定の実施形態では、試薬は乾燥又は凍結乾燥された物質であってもよい。特定の実施形態では、試薬は液体又は気体であってもよい。
【0067】
また、本体301は、第2の閉領域303を含む。この実施形態では、第2の閉領域303は、本体301が実質的にH字形状の断面を有するように、第1の閉領域302の反対側に位置し、第1の閉領域302と実質的に形状が一致する。第2の閉領域303を使用して、図4を参照して説明したカバーのような別の構造に挿入体300を固定することができる。
【0068】
第1の閉領域302が試薬で満たされて試薬収容チャンバを提供した後、チャンバ内の試薬を密封するシール(図示せず)が提供される。
【0069】
特定の実施形態では、シールは、箔(例えばアルミニウムを含む)、熱可塑性又はポリプロピレン(PP)箔複合材料からなる。一般的には、シールは、熱かしめ、レーザ溶接によって、又は薄い接着剤のような適切な接着剤を使用して固定(すなわち密封)される。特定の実施形態では、シールの厚さは約20ミクロンである。シールは、機械的な穿孔力がシールに加えられたときに破壊可能である。
【0070】
図4は、本発明の特定の実施形態によるカバー要素の断面図である。
【0071】
カバー要素400は、流体不透過性シールを介して固定されて、マイクロ流体カセット本体の一部を形成するように配置される。カバー要素400は、一般的には、端部分401で密封されて内部チャンバ402を提供する。カバー要素400は、カセット本体の領域と、図3を参照して説明したタイプの挿入体のような挿入体とを囲むことができるように成形されている。
【0072】
カバー要素400は、弾性的に変形可能である。一般的には、カバー要素400は、熱可塑性エラストマーのような材料で構成される。
【0073】
カバー要素400は、挿入体をカバー要素400の内面に固定できるように配置される。この実施形態では、カバー要素400は、挿入体の一部の形状に対応するように成形されてカバー要素400と挿入体との間に摩擦嵌合を提供する領域403を含む。
【0074】
ここで、本発明の実施形態による図5a~5dを参照して、マイクロ流体カセット構成501の使用について説明する。
【0075】
図5a~図5dは、使用時における組み立てられたカセット構成501の、マイクロ流体診断装置に挿入された後の断面図である。カセット構成501は、図2図3及び図4をそれぞれ参照して説明した、マイクロ流体カセット200と、挿入体300と、カバー要素400と、を含む。明確にするために、図5a~図5dから符号を省略している。
【0076】
図5aは、使用前のカセット構成501を示す。マイクロ流体診断装置の可動作動部材500も図5aに示す。
【0077】
挿入体300は、カバー要素400の内面に固定されており、カバー要素400は、カセット本体200の残りの部分に密封されている。
【0078】
挿入体300は、最初は、図5aに示すように、穿孔部材と接触していない、シールが破壊される前の第1の位置にある。
【0079】
次に、可動作動部材500は、カバー要素400に向かって移動する。作動部材500は、カバー要素400と挿入体300に接触し、カセット本体200に向かって変位させ始める。カセット本体200に向かうカバー要素400と挿入体300の移動方向は、挿入体300と接触するカセット本体200の外壁によって案内される。
【0080】
挿入体300が移動すると、カセット本体200の穿孔部材が挿入体300のシールに接触し、シールを穿孔する。これを図5bに示す。
【0081】
作動部材500は、挿入体300がカセット本体200と接触する第2の位置に到達するまで、カバー要素400と挿入体300をカセット本体200に向かって変位させ続ける。これを図5cに示す。
【0082】
この構成では、挿入体300は、カセット本体200に対して密封され、挿入体300の試薬収容チャンバは、カセット本体200の流体開口部を介してマイクロ流体カセットの流体流路と流体連通している。
【0083】
この構成では、流体が挿入体300を通って流れるとともにそこに収容された試薬と相互作用するマイクロ流体診断装置によって、マイクロ流体試験を行うことができる。
【0084】
図5cは、マイクロ流体試験中に挿入体300のチャンバに出入りする流体試料の例示的な流体の流れを表す矢印を含む。特定の実施形態では、診断試験の異なる段階において、流体は、チャンバを通ってどちらの方向にも流れることができる。
【0085】
本明細書で説明するように、特定の実施形態では、シールが穿孔部材によって穿孔されるとき、シールは多くの場合、穿孔部材の端部を部分的に又は完全に塞いでしまう。本明細書で説明するように、穿孔部材の一方又は両方の側部に更なる開口部が存在することで、流体試料が穿孔部材の端部を迂回してチャンバに入るための更なる流体流路が提供される。これにより、穿孔部材の端部が塞がれた場合であっても、流体試料が挿入体を通過することが可能になる。更に、更なる開口部の位置により、流体が第1の穿孔部材と第2の穿孔部材との間を移動するのに必要な距離が増加することによって、かつ流体試料が、試薬の大部分が通常存在するカセット本体の表面(すなわちチャンバの「より深い」部分)から更に離れたチャンバの部分を迂回するのを防ぐことによって、流体試料とチャンバ内の試薬との混合を改善することができる。
【0086】
診断試験が終了した後、図10dに示すように、作動部材500はカセット本体200から離れるように移動する。カバー要素400の弾性により、カバー要素400は元の形状に戻り、それにより挿入体300もカセット本体200から離れるように移動する。
【0087】
カバー要素400とカセット本体300との間の流体不透過性シールにより、カセットは全体にわたって密封されたままであり、流体がカセット内部から漏出するのを防ぐ。
【0088】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される全ての構成、及び/又はこのように開示される任意の方法若しくはプロセスの全てのステップは、このような構成及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される各構成は、明示的に別段の記載がない限り、同じ、同等の又は類似の目的を果たす代替的構成に置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各構成は、同等の又は類似の構成の一般的な一連の一例に過ぎない。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される構成の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せ、又はこのように開示される任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに及ぶ。
【0089】
本明細書における実質的に任意の複数及び/又は単数の用語の使用に関しては、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数/複数の置換を本明細書に明確に定めてもよい。
【0090】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープンな」用語として意図されていることが当業者には理解されるだろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は「含んでいるがこれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである)。更に、導入された請求項の記載の具体的な数字が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に記載され、このような記載がない場合にはこのような意図が存在しないということが当業者には理解されるだろう。例えば理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、特許請求の範囲の記載を導入する導入句「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」の使用を含むことができる。しかし、このような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、このように導入された請求項の記載を含むいかなる特定の請求項を、1つのこのような記載のみを含む実施形態に限定することを示すものと解釈されるべきではない。これは、たとえ同じ請求項が「1つ以上」又は「少なくとも1つ」の導入句及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても然りであり(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の導入に使用される定冠詞の使用にも同様のことが当てはまる。加えて、たとえ導入された請求項の記載の具体的な数字が明示的に記載される場合であっても、当業者であれば、このような記載が少なくともその記載された数字を意味すると解釈されるべきであると認めるであろう(例えば、他の修飾語句がなく「2つの記載」とだけある記載は、少なくとも2つの記載又は2つ以上の記載を意味する)。
【0091】
本開示の様々な実施形態が説明の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われ得ることが理解されよう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は限定を意図するものではなく、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
【国際調査報告】