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特表2024-508725RAS G13D変異体のエピトープペプチド及びRAS G13D変異体を認識するT細胞受容体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】RAS G13D変異体のエピトープペプチド及びRAS G13D変異体を認識するT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240220BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 14/82 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240220BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240220BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240220BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
C07K14/47
C07K14/82
C07K14/74
C07K14/725
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/86 P
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/078
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/02
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K35/15
A61K45/00
A61K39/00 H
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548729
(86)(22)【出願日】2022-01-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 CN2022075005
(87)【国際公開番号】W WO2022171032
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/076432
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518220671
【氏名又は名称】上海吉倍生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai GenBase Biotechnology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】101-7 Room,No.332,Aidisheng Road,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】牟 男
(72)【発明者】
【氏名】于 ▲躍▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲紀▼▲軍▼
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG20
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA03
4C085BB11
4C085CC01
4C085CC07
4C085CC08
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、RAS G13D変異体のエピトープペプチド、エピトープペプチドを発現する抗原提示細胞、抗原提示細胞を含有する腫瘍ワクチン、及びRAS G13D変異を有する腫瘍の防止又は処置における腫瘍ワクチンの使用を提供する。本発明は、RAS G13D変異体を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)、TCRを含有するコンジュゲート及び融合タンパク質、TCRを発現する免疫細胞、免疫細胞を含有するT細胞薬物、並びにRAS G13D変異を有する腫瘍の防止又は処置におけるT細胞薬物の使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたエピトープペプチド又はそのバリアントであって、エピトープペプチドが、RAS G13D変異体の11~30個(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、又は11個)の連続したアミノ酸残基からなり、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基を含み;
バリアントが、それが由来するエピトープペプチドと、1個又はいくつか(例えば、1、2又は3個)のアミノ酸残基の置換によってのみ異なり、RAS G13D変異体のアミノ酸8、10、13、14及び16位に対応する位置にアミノ酸置換を含まず、それが由来するエピトープペプチドの生物学的機能を保持しており;
好ましくは、エピトープペプチドが、RAS G13D変異体の11~25個(例えば、11~20、11~19、又は11~16個)の連続したアミノ酸残基からなる、エピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項2】
RAS G13D変異体のアミノ酸8、9、10、11、13、14及び16位に対応する位置にアミノ酸置換を含まず、それが由来するエピトープペプチドの生物学的機能を保持している、請求項1に規定のバリアント。
【請求項3】
エピトープペプチド又はそのバリアントが、MHC-II分子によって提示され得、MHC-II分子と会合するエピトープペプチド又はそのバリアントが、T細胞によって認識でき、例えば、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識でき;
好ましくは、MHC-II分子が、HLA-DQであり;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む、請求項1又は2に記載のエピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項4】
RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基が、配列番号14に示される配列を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項5】
エピトープペプチドが、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基、5~23位のアミノ酸残基、5~22位のアミノ酸残基、5~21位のアミノ酸残基、4~20位のアミノ酸残基、5~20位のアミノ酸残基、4~19位のアミノ酸残基、5~19位のアミノ酸残基、6~19位のアミノ酸残基、7~19位のアミノ酸残基、5~18位のアミノ酸残基、又は5~17位のアミノ酸残基を含み;
好ましくは、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基、5~23位のアミノ酸残基、5~22位のアミノ酸残基、5~21位のアミノ酸残基、4~20位のアミノ酸残基、5~20位のアミノ酸残基、4~19位のアミノ酸残基、5~19位のアミノ酸残基、6~19位のアミノ酸残基、7~19位のアミノ酸残基、5~18位のアミノ酸残基、及び5~17位のアミノ酸残基が、それぞれ、配列番号14~23、26~27に示される配列を有し;
好ましくは、エピトープペプチドが、RAS G13D変異体の4~19位のアミノ酸残基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項6】
RAS G13D変異体が、配列番号51に示される配列を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項7】
エピトープペプチドが、配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列を含み;バリアントが、以下:(i)配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;(ii)配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアント。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントを含むMHC-ペプチド複合体であって、MHC-II分子が、エピトープペプチド又はそのバリアントに結合し;
好ましくは、MHC-II分子が、HLA-DQであり;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む、MHC-ペプチド複合体。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント又は請求項8に記載のMHC-ペプチド複合体を特異的に認識することができる単離されたT細胞受容体又はその抗原結合性断片であって、
好ましくは、T細胞受容体又はその抗原結合性断片が、MHC-II分子によって提示されるエピトープペプチド又はそのバリアントを認識することができ;
好ましくは、MHC-II分子が、HLA-DQであり;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含み;
好ましくは、TCRが、可溶性又は膜結合性であり;
好ましくは、TCRが、全長TCR、可溶性TCR又は単鎖TCRである、T細胞受容体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
RAS G13D変異体を特異的に認識することができる単離されたT細胞受容体(TCR)又はその抗原結合性断片であって、TCR又はその抗原結合性断片が、α鎖可変領域(Vα)及び/又はβ鎖可変領域(Vβ)を含み、
(a)Vαが、CDR1α、CDR2α及びCDR3αを含み、CDR3αが、配列番号8に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
並びに/或いは、
(b)Vβが、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含み、CDR3βが、配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、CDR3αが、配列番号8のアミノ酸5位に対応する位置にアミノ酸置換及び欠失を含まず;
好ましくは、CDR1αが、配列番号6に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、CDR2αが、配列番号7に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、CDR1βが、配列番号9に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、CDR2βが、配列番号10に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、置換が、保存的置換であり;
好ましくは、TCRが、可溶性又は膜結合性であり;
好ましくは、TCRが、全長TCR、可溶性TCR又は単鎖TCRである、TCR又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
CDR3βが、ASSX1X2X3X4PQH(配列番号92)に示される配列を有し;
ここで、X1が、Q、A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYからなる群から選択され;X2が、T、A、C、H、K、N、S、V又はWからなる群から選択され;X3が、V、I、S又はTからなる群から選択され;X4が、P、C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWからなる群から選択され;
好ましくは、X1が、Q、A、C、E、G、M、W又はYからなる群から選択され;X2が、T、H、K、N、S又はVからなる群から選択され;X3が、V又はTからなる群から選択され;X4が、P、C、D、E、F、M、S又はWからなる群から選択される、請求項10に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
CDR3βが、配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列を有し;
好ましくは、CDR3βが、配列番号11、54~55、57~58、62、67~68、71~75、79~83、87、89、91のいずれか1つに示される配列を有する、請求項10又は11に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
(a)Vαが、FR1α、FR2α、FR3α及びFR4αを更に含み、
FR1αが、配列番号93に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR2αが、配列番号94に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR3αが、配列番号95に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR4αが、配列番号96に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
並びに/或いは
(b)Vβが、FR1β、FR2β、FR3β及びFR4βを更に含み、
FR1βが、配列番号97に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR2βが、配列番号98に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR3βが、配列番号99に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR4βが、配列番号100に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
好ましくは、置換が、保存的置換である、請求項10から12のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項14】
TCR又はその抗原結合性断片のVαが、配列番号4に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントが、以下のアミノ酸配列:
(i)配列番号4に示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;又は
(ii)配列番号4に示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択され;
好ましくは、(i)に記載される置換が、保存的置換であり;
好ましくは、バリアントが、97位にアミノ酸置換及び欠失を含まず、アミノ酸位置が、IMGT TCR番号付けシステムに従って決定される、請求項10から13のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項15】
TCR又はその抗原結合性断片のVβが、配列番号5に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントが、以下のアミノ酸配列:
(i)配列番号5に示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;又は
(ii)配列番号5に示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択され;
好ましくは、(i)に記載される置換が、保存的置換であり;
好ましくは、バリアントが、以下:(1)A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYによる95位のアミノ酸の置換;(2)A、C、H、K、N、S、V又はWによる96位のアミノ酸の置換;(3)I、S又はTによる97位のアミノ酸の置換;(4)C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWによる98位のアミノ酸の置換からなる群から選択される1個又はいくつか(例えば、1、2、3又は4個)のアミノ酸置換を含み、アミノ酸位置がIMGT TCR番号付けシステムに従って決定され;
好ましくは、バリアントが、以下:(1)A、C、E、G、M、W又はYによる95位のアミノ酸の置換;(2)H、K、N、S又はVによる96位のアミノ酸の置換;(3)Tによる97位のアミノ酸の置換;(4)C、D、E、F、M、S又はWによる98位のアミノ酸の置換からなる群から選択される1個又はいくつか(例えば、1、2、3又は4個)のアミノ酸置換を含み、アミノ酸位置がIMGT TCR番号付けシステムに従って決定される、請求項10から14のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項16】
TCR又はその抗原結合性断片が、請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント又は請求項8に記載のMHC-ペプチド複合体を特異的に認識することができ、
好ましくは、TCR又はその抗原結合性断片が、MHC-II分子によって提示されるエピトープペプチド又はそのバリアントを認識することができ;
好ましくは、MHC-II分子が、HLA-DQであり;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、HLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、HLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含み;好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含み;
好ましくは、HLA-DQが、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含み;
好ましくは、その表面上でTCR又はその抗原結合性断片を発現するT細胞が、請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する第2の細胞(例えば、APC)との共培養下で活性化される、請求項10から15のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片。
【請求項17】
請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片、及びそれにコンジュゲートされたエフェクター部分を含むコンジュゲートであって;
好ましくは、エフェクター部分が、治療用部分、免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域)、又は検出可能な標識からなる群から選択され;
好ましくは、治療用部分が、免疫賦活薬又は細胞傷害性剤からなる群から選択され;
好ましくは、免疫賦活薬が、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)、又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)からなる群から選択され;
好ましくは、細胞傷害性剤が、アルキル化剤、微小管阻害剤、抗がん抗生物質又は代謝拮抗薬からなる群から選択され;
好ましくは、TCR又はその抗原結合性断片が、可溶性である、コンジュゲート。
【請求項18】
請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片、及び追加のペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質であって;
好ましくは、追加のペプチド又はタンパク質が、治療用ペプチド若しくはタンパク質、免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域)、検出可能なタンパク質マーカー又はタンパク質タグからなる群から選択され;
好ましくは、治療用ペプチド又はタンパク質が、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)、又は細胞に対して毒性であるか、細胞増殖を阻害することができるか、若しくは細胞のアポトーシスを誘導することができるペプチド若しくはタンパク質(例えば、チミジンキナーゼTK(TK/GCV)、TRAIL、又はFasL)からなる群から選択され;
好ましくは、TCR又はその抗原結合性断片が、可溶性である、融合タンパク質。
【請求項19】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含むか、或いは請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR若しくはその抗原結合性断片、又はそのα鎖可変領域及び/若しくはβ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むか、或いは請求項18に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の単離された核酸分子を含むベクターであって;
好ましくは、請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR若しくはその抗原結合性断片、又はそのα鎖可変領域及び/若しくはβ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、請求項18に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はバキュロウイルスベクターである、ベクター。
【請求項21】
請求項19に記載の単離された核酸分子又は請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞であって;
好ましくは、請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR若しくはその抗原結合性断片、又はそのα鎖可変領域及び/若しくはβ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、請求項18に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞を含む、宿主細胞。
【請求項22】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、又は請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR若しくはその抗原結合性断片、又は請求項18に記載の融合タンパク質を調製するための方法であって、タンパク質発現を可能にする条件下で請求項21に記載の宿主細胞を培養する工程、及びエピトープペプチド若しくはそのバリアント、又はTCR若しくはその抗原結合性断片、又は融合タンパク質を培養された宿主細胞の培養物から回収する工程を含む、方法。
【請求項23】
その表面上で請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する操作された抗原提示細胞(APC)であって;
好ましくは、樹状細胞、単球、マクロファージ、リンパ芽球様細胞(LCL)、又はその任意の組み合わせからなる群から選択され;
好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、APCが、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;
好ましくは、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性又はHLA-DQB1*0303に陽性であり、更にHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性である、操作されたAPC。
【請求項24】
請求項23に記載の操作されたAPCを調製するための方法であって、(1)対象由来のAPCを用意する工程;(2)インビトロでAPCを請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアントと接触させるか、又は請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターをAPCに導入して、その表面上でエピトープペプチド又はそのバリアントを提示するAPCを得る工程を含む、方法。
【請求項25】
その表面上で請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片を発現する操作された免疫細胞であって;
好ましくは、操作された免疫細胞が、請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、免疫細胞がリンパ球であり;
好ましくは、免疫細胞が、T細胞(例えば、αβT細胞、γδT細胞又はiPSC由来T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される、操作された免疫細胞。
【請求項26】
請求項25に記載の操作された免疫細胞を調製するための方法であって、(1)対象由来の免疫細胞を用意する工程;(2)請求項19に記載の単離された核酸分子又は請求項20に記載のベクターを、工程(1)の免疫細胞に導入し、前記核酸分子又はベクターは、請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含み、TCR又はその抗原結合性断片を発現する免疫細胞を得る工程を含み;
好ましくは、工程(1)において、免疫細胞が前処理に付され;前処理が、免疫細胞の選別、活性化及び/又は増殖を含み;
好ましくは、前処理が、免疫細胞を、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2及びIL-15からなる群から選択される1つ又は複数と接触させ、それによって、免疫細胞を刺激すること、及びその増殖を誘導し、それによって、前処理された免疫細胞を生成することを含む、方法。
【請求項27】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、請求項8に記載のMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は請求項23に記載の操作された抗原提示細胞(APC);並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物であって;
好ましくは、医薬組成物が、腫瘍ワクチンであり;
好ましくは、医薬組成物が、アジュバントを含み;
好ましくは、医薬組成物が、追加の治療剤、例えば、抗新生物剤又は免疫賦活薬を更に含み;
好ましくは、抗新生物剤が、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、抗血管新生剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG-3抗体、又はTIM3抗体)からなる群から選択され;
好ましくは、免疫賦活薬が、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項28】
請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片、請求項17に記載のコンジュゲート、請求項18に記載の融合タンパク質、TCR又はその抗原結合性断片若しくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは請求項25に記載の操作された免疫細胞;並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物であって;
好ましくは、医薬組成物が、追加の治療剤、例えば、抗新生物剤又は免疫賦活薬を更に含み;
好ましくは、抗新生物剤が、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤、抗血管新生剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG-3抗体、又はTIM3抗体)からなる群から選択され;
好ましくは、免疫賦活薬が、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項29】
医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、請求項8に記載のMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は請求項23に記載の操作された抗原提示細胞(APC)、又は請求項27に記載の医薬組成物の使用であって、医薬が、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するために使用され;
好ましくは、RAS G13D変異を有する腫瘍が、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択され;
好ましくは、対象がヒトであり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性又はHLA-DQB1*0303に陽性であり、更にHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、エピトープペプチド若しくはそのバリアント、MHC-ペプチド複合体、核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、操作された抗原提示細胞(APC)、又は医薬組成物が、例えば、同時に、別々に又は逐次的に、追加の治療剤と組み合わせて投与され;好ましくは、追加の治療剤が、免疫賦活薬又は抗新生物剤である、使用。
【請求項30】
医薬の製造における、請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片、請求項17に記載のコンジュゲート、請求項18に記載の融合タンパク質、TCR又はその抗原結合性断片若しくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは請求項25に記載の操作された免疫細胞、或いは請求項27に記載の医薬組成物の使用であって、医薬が、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するために使用され;核酸分子、ベクター又は宿主細胞が、TCR又はその抗原結合性断片若しくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み;
好ましくは、RAS G13D変異を有する腫瘍が、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択され;
好ましくは、対象がヒトであり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性又はHLA-DQB1*0303に陽性であり、更にHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、TCR若しくはその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、操作された免疫細胞、又は医薬組成物が、例えば、同時に、別々に又は逐次的に、追加の治療剤と組み合わせて投与され;好ましくは、追加の治療剤が、免疫賦活薬又は抗新生物剤である、使用。
【請求項31】
RAS G13D変異を有する腫瘍に対する対象における免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための方法であって、有効量の請求項1から7のいずれか一項に記載のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、請求項8に記載のMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は請求項23に記載の操作された抗原提示細胞(APC)、又は請求項27に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み;
好ましくは、RAS G13D変異を有する腫瘍が、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択され;
好ましくは、対象がヒトであり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性又はHLA-DQB1*0303に陽性であり、更にHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、方法が、追加の治療剤、例えば、免疫賦活薬又は抗新生物剤を対象に投与する工程を更に含む、方法。
【請求項32】
対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための方法であって、有効量の請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片、請求項17に記載のコンジュゲート、請求項18に記載の融合タンパク質、TCR又はその抗原結合性断片若しくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは請求項25に記載の操作された免疫細胞、或いは請求項28に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み;
好ましくは、RAS G13D変異を有する腫瘍が、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択され;
好ましくは、対象がヒトであり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象が、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、対象が、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性又はHLA-DQB1*0303に陽性であり、更にHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性であり;
好ましくは、方法が、追加の治療剤、例えば、免疫賦活薬又は抗新生物剤を対象に投与する工程を更に含み;
好ましくは、方法が、(1)対象に必要とされる免疫細胞を用意する工程;(2)請求項9から16のいずれか一項に記載のTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を、工程(1)の免疫細胞に導入し、その表面上でTCR又はその抗原結合性断片を発現する免疫細胞を得る工程;(3)工程(2)において得られた免疫細胞を対象に投与する工程を含み;
好ましくは、免疫細胞がリンパ球であり;
好ましくは、免疫細胞が、T細胞(例えば、αβT細胞、γδT細胞又はiPSC由来T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学及び腫瘍療法の分野に関する。具体的には、本発明は、RAS G13D変異体エピトープペプチド、エピトープペプチドを発現する抗原提示細胞、それを含有する腫瘍ワクチン、及びRAS G13D変異を有する腫瘍を防止又は処置するためのその使用に関する。本発明は、RAS G13D変異体を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)、TCRを含むコンジュゲート及び融合タンパク質、TCRを発現する免疫細胞、それを含有するT細胞薬物、並びにRAS G13D変異を有する腫瘍を防止又は処置するためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
RASは、GTPase活性を有し、細胞の増殖、分化及びアポトーシスを調節する多くのシグナル伝達経路、例えば、MAPK、PI3K、及びSTATシグナル伝達経路等に関与する癌原遺伝子である。1982年に、Der CJらは、RAS遺伝子変異が、がんの駆動因子であることを最初に確認した(Der CJら、1982)。ヒト遺伝子において3つのRASコード遺伝子、即ち、HRAS(GeneID:3265)、NRAS(GeneID:4893)及びKRAS(GeneID:3845)が存在する。3つのRAS遺伝子は、高度の配列相同性(>90%)を有する。ヒト腫瘍の約33%が、RAS遺伝子変異を持ち、RAS遺伝子変異は、最も頻繁な癌原遺伝子変異になっている(Karnoub AE、2008)。ヒト腫瘍におけるRAS遺伝子変異のうち、KRAS遺伝子変異は、最も発生率が高く、約22%を占め、NRAS遺伝子変異は、約8.0%を占め、HRAS遺伝子変異は、約3.3%を占める。
【0003】
KRAS遺伝子変異は、固形腫瘍における発生率が最も高く(3つのRAS変異のうちで約86%)、例えば、結腸直腸がん(30%~50%)、膵臓がん(約85%)及び非小細胞肺がん(15%~25%)である。KRAS変異の97%超が、エクソン2及びエクソン3に集中しており、エクソン2は、最も高い変異頻度を有し(例えば、G12C、G12V、G12D、G13D等)、G12D及びG13D変異は、結腸直腸がんの約20%~30%、膵臓がんの60%~70%、及び非小細胞肺がんの38%を占める。KRAS変異は、腫瘍の薬物抵抗性の駆動遺伝子である。例えば、EGFR TKI及びEGFRモノクローナル抗体薬(セツキシマブ等)の薬物について、腫瘍患者のKRAS変異状態を検出することが必要であり、KRAS変異を有する患者は、EGFR阻害剤に対する非常に低い応答を有し、これは、約0~5%(Jackman DMら、2009)である。KRAS変異を有する腫瘍患者は、KRAS野生型腫瘍を有する患者よりも短い無増悪生存期間及び全生存期間を有し、その一方で、KRAS変異を有する患者は、手術後の再発及び転移のより高い可能性も有する。
【0004】
最近数十年で、KRASの構造及び生物学に対する科学者の研究は、GTPが、極めて高い親和性(pMレベル)でKRASタンパク質に結合し、低分子阻害剤がKRAS活性を阻害することは、GTPと競合することによって困難であること;細胞においてKRASと相互作用する他のタンパク質が、シグナル伝達に関与し、低分子化合物が、タンパク質間相互作用の競合的阻害によりKRASの下流のシグナル伝達を阻害することも困難であること;同時に、KRASタンパク質の構造が、比較的平らな構造を有し、低分子阻害剤が結合するための「ポケット」を欠き、その結果、KRASタンパク質自体及びその関連タンパク質に対する低分子阻害剤を開発することが極めて困難であることを示している。KRAS阻害剤の開発は、KRAS修飾の妨害及びKRAS変異体を有する腫瘍の処置のための合成致死性、例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の開発に主に集中しているが、それらの全てが失敗に終わった(Heidi Ledford、2015)。近年、KRAS変異体に対する薬物開発は、KRAS G12C変異体に主に集中している。G12C変異におけるシステイン残基に不可逆的に結合し得る化合物を設計することによって、KRAS G12C変異体は、非活性状態にロックされ、それによって、KRAS変異体のG12C活性を阻害するが、現在、他のKRAS変異体(例えば、G12V及びG13D)に対する開発中の薬物はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】PCT公開番号第WO2003/020763号
【特許文献2】PCT公開番号第WO2004/033685号
【特許文献3】PCT公開番号第WO2011/044186号
【特許文献4】米国特許第8,361,794号
【特許文献5】米国特許第8,906,383号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Front Oncol., 2014;4:378頁
【非特許文献2】Lefranc、(1999)「The Immunologist」、7:132~136頁
【非特許文献3】Lefrancら、(1999)「Nucleic Acids Res」27:209~212頁
【非特許文献4】LeFranc (2001)「T Cell Receptor Facts Book」、Academic Press社、ISBN 0-12-441352-8
【非特許文献5】Lefrancら、(2003) Dev Comp Immunol 27(1):55~77頁
【非特許文献6】Kabatら、(1991)「Sequences of proteins of immunological interest」
【非特許文献7】Malmqvist M、Nature、1993、361:186~187頁
【非特許文献8】Daviesら、Annual Rev Biochem、1990; 59: 439~473頁
【非特許文献9】Needlemanら(1970) J. Mol. Biol. 48:443~453頁
【非特許文献10】E. Meyers及びW. Miller (Comput. Appl. Biosci.、4:11~17頁(1988))
【非特許文献11】Brummellら、Biochem. 32:1180~1187頁(1993)
【非特許文献12】Kobayashiら、Protein Eng. 12(10):879~884頁(1999)
【非特許文献13】Burksら、Proc. Natl Acad. Set USA 94: 412~417頁(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
世界保健機関(WHO)からの統計は、中国において高頻度のRAS変異を有するがん(例えば、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、及び前立腺がん)のうち、年間の発生数は160万人に達し、その449,000人がRAS変異を有する(部位G12、G13、Q61等のものを含む)。RAS変異を有する患者は、より高い腫瘍再発、薬物抵抗性、不良な予後、及びより短い全生存期間を有する。これらの患者群は、新たな処置方法を緊急に必要としている。
【0008】
T細胞受容体(TCR)は、HLAによって提示されるウイルスタンパク質及び変異型遺伝子転写産物のペプチド配列を認識し、TCRは、変異したペプチドを特異的に認識することができ、その結果、KRAS遺伝子変異は、理想的なTCRの標的である。T細胞受容体は、VDJ遺伝子再構成から生じ、天然に存在するT細胞受容体のレパートリー能力は、約1016~20であり(Harlan S. Robins、2009);T細胞受容体のレパートリー能力は、B細胞受容体の約1000~10,000倍、例えば、ヒト白血球抗原系に相当する巨大なレパートリー能力である。HLAは、異なる長さ(8~16mer)のペプチドをそれぞれ提示するI型(A、B、C等)及びII型(DP、DR、DQ等)に分けられる。抗KRAS変異型TCRの発見は、米国国立がん研究センターによって主に行われた。現在発見されているRAS変異型TCRは、KRAS G12Vに対するHLA-A*11:01拘束的認識、及びKRAS G12Dに対するHLA-C*08:02拘束的認識のものであり、HLA対立遺伝子が強い領域性遺伝子分布で半分遺伝されているので、KRAS G13Dに対するTCRは存在していない。従って、KRAS G13Dを認識し、より多くの領域の患者集団を包含するT細胞受容体を発見することは緊急性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、RAS G13D変異体のエピトープペプチド、並びにエピトープペプチドを特異的に認識するT細胞受容体(TCR)、エピトープペプチド又はTCRを含む細胞及び医薬組成物、並びにエピトープペプチド又はTCRをコードする核酸、エピトープペプチド又はTCRを調製するためのベクター及び宿主細胞、並びにエピトープペプチド又はTCRで対象を処置するための方法を提供する。本発明によって提供されるエピトープペプチド及びTCRを使用して、RAS G13D変異を含む腫瘍に対する免疫応答を誘導し、このようにして、対象における上記腫瘍を処置することができる。加えて、本発明によって提供されるエピトープペプチド及びTCRは、MHC-II拘束のものであり、MHC-II拘束は、アジア太平洋集団において高い頻度を優先的に示す対立遺伝子であり、そのため、これは、アジア太平洋領域における患者に好適である。加えて、MHC-II拘束はまた、欧州人、アメリカ人及びオセアニア人の集団にも広く分布しており、そのため、これは、幅広い適用展望を有する。
【0010】
エピトープペプチド
従って、第1の態様において、本発明は、単離されたエピトープペプチド又はそのバリアントであって、エピトープペプチドが、RAS G13D変異体の11~30個(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、又は11個)の連続したアミノ酸残基からなり、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基を含有し;
バリアントが、それが由来するエピトープペプチドと、1個又はいくつか(例えば、1、2又は3個)のアミノ酸残基の置換によってのみ異なり、RAS G13D変異体のアミノ酸8、10、13、14及び16位に対応する位置にアミノ酸置換を含まず、それが由来するエピトープペプチドの生物学的機能を保持している、エピトープペプチド又はそのバリアントを提供する。ある特定の実施形態において、バリアントは、それが由来するエピトープペプチドと、1個又はいくつか(例えば、1、2又は3個)のアミノ酸残基の置換によってのみ異なり、RAS G13D変異体のアミノ酸8、9、10、11、13、14及び16位に対応する位置にアミノ酸置換を含まず、それが由来するエピトープペプチドの生物学的機能を保持している。生物学的機能は、MHC-II分子によって提示され、その後、T細胞によって認識される、例えば、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識される能力を含む。
【0011】
ある特定の実施形態において、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントは、MHC-II拘束抗原であり、即ち、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントは、細胞の表面上で発現されるMHC-II分子を示し、又は提示し、又はその骨格と複合体を形成することができる。ある特定の実施形態において、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントは、MHC-II分子によって提示でき、MHC-II分子と会合するエピトープペプチド又はそのバリアントが、T細胞によって認識できる、例えば、T細胞上の抗原特異的T細胞受容体によって認識できる。
【0012】
ある特定の実施形態において、MHC-II分子は、HLA-DQである。
【0013】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含む。より好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301を含む。
【0014】
一部の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303(好ましくは、HLA-DQB1*0301)からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0505を含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の11~25個(例えば、11~20、11~19、又は11~16個)の連続したアミノ酸残基からなる。
【0018】
ある特定の実施形態において、RAS G13D変異体は、KRAS G13D変異体である。ある特定の実施形態において、RAS G13D変異体は、配列番号51に示される配列を有するか、又はそれと比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する。
【0019】
ある特定の実施形態において、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基は、配列番号14に示される配列を有する。
【0020】
一部の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基(例えば、配列番号14に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~23位のアミノ酸残基(例えば、配列番号15に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~22位のアミノ酸残基(例えば、配列番号16に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~21位のアミノ酸残基(例えば、配列番号17に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の4~20位のアミノ酸残基(例えば、配列番号18に示される通り)を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~20位のアミノ酸残基(例えば、配列番号19に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の4~19位のアミノ酸残基(例えば、配列番号20に示される通り)を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~19位のアミノ酸残基(例えば、配列番号21に示される通り)を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の6~19位のアミノ酸残基(例えば、配列番号22に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の7~19位のアミノ酸残基(例えば、配列番号23に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~18位のアミノ酸残基(例えば、配列番号26に示される通り)を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の5~17位のアミノ酸残基(例えば、配列番号27に示される通り)を含むか、又はそれからなる。
【0021】
ある特定の実施形態において、エピトープペプチドは、RAS G13D変異体の4~19位のアミノ酸残基(例えば、配列番号20に示される通り)からなる。
【0022】
一部の実施形態において、エピトープペプチドは、配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、バリアントは、(i)配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;(ii)配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むか、又はそれからなる。
【0023】
別の態様において、本発明は、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアント、及びそれに結合したMHC-II分子を含む、MHC-ペプチド複合体を提供する。ある特定の実施形態において、MHC-II分子は、HLA-DQである。
【0024】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含む。より好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301を含む。
【0025】
一部の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含む。
【0026】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303(好ましくは、HLA-DQB1*0301)からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む。
【0027】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0505を含む。
【0028】
ある特定の実施形態において、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在する。そのため、本発明は、MHC-ペプチド複合体を発現する細胞も包含する。
【0029】
T細胞受容体
第2の態様において、本発明は、本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、又はMHC-ペプチド複合体を特異的に認識することができる単離されたT細胞受容体又はその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態において、エピトープペプチド又はそのバリアントは、MHC-II分子によって提示される。ある特定の実施形態において、MHC-II分子は、HLA-DQである。
【0030】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含む。より好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301を含む。
【0031】
一部の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含む。
【0032】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303(好ましくは、HLA-DQB1*0301)からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む。
【0033】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0505を含む。
【0034】
第3の態様において、本発明は、RAS G13D変異体を特異的に認識することができる単離されたT細胞受容体又はその抗原結合性断片であって、TCR又はその抗原結合性断片が、α鎖可変領域(Vα)及び/又はβ鎖可変領域(Vβ)を含み、
(a)Vαが、CDR1α、CDR2α及びCDR3αを含み、CDR3αが、配列番号8に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
並びに/或いは、
(b)Vβが、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含み、CDR3βが、配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、T細胞受容体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0035】
ある特定の実施形態において、CDR3αは、配列番号8のアミノ酸5位に対応する位置にアミノ酸置換及び欠失を含まない。
【0036】
一部の実施形態において、CDR3βは、ASSX1X2X3X4PQH(配列番号92)に示される配列を有し;
ここで、X1は、Q、A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、A、C、H、K、N、S、V又はWからなる群から選択され;X3は、V、I、S又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X1は、Q、A、C、E、G、M、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、H、K、N、S又はVからなる群から選択され;X3は、V又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、M、S又はWからなる群から選択される。
【0037】
ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列を有する。一部の実施形態において、CDR3βは、配列番号11、54~55、57~58、62、67~68、71~75、79~83、87、89、91のいずれか1つに示される配列を有する。
【0038】
一部の好ましい実施形態において、CDR1αは、配列番号6に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する。
【0039】
一部の好ましい実施形態において、CDR2αは、配列番号7に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する。
【0040】
ある特定の好ましい実施形態において、CDR1βは、配列番号9に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する。
【0041】
一部の好ましい実施形態において、CDR2βは、配列番号10に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する。
【0042】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片は、α鎖可変領域(Vα)及び/又はβ鎖可変領域(Vβ)を含み、
(a)Vαは、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(i)配列番号6に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR1α、
(ii)配列番号7に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR2α、
(iii)配列番号8に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR3α
を含み;
並びに/或いは
(b)Vβは、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(iv)配列番号9に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR1β、
(v)配列番号10に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR2β、及び
(vi)配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する、CDR3β
を含む。
【0043】
ある特定の実施形態において、CDR3αは、配列番号8のアミノ酸5位に対応する位置にアミノ酸置換及び欠失を含まない。
【0044】
一部の実施形態において、CDR3βは、ASSX1X2X3X4PQH(配列番号92)に示される配列を有し;
ここで、X1は、Q、A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、A、C、H、K、N、S、V又はWからなる群から選択され;X3は、V、I、S又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X1は、Q、A、C、E、G、M、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、H、K、N、S又はVからなる群から選択され;X3は、V又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、M、S又はWからなる群から選択される。
【0045】
ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号11、54~91のいずれか1つに示される配列を有する。一部の実施形態において、CDR3βは、配列番号11、54~55、57~58、62、67~68、71~75、79~83、87、89、91のいずれか1つに示される配列を有する。
【0046】
ある特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれかに記載される置換は、保存的置換である。
【0047】
ある特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれかに記載されるCDRは、IMGT番号付けシステムに従って定義される。
【0048】
第2又は第3の態様のTCRは、任意のTCR構造で使用され得る。
【0049】
ある特定の実施形態において、TCRは、全長α鎖及び全長β鎖を含む全長TCRであってもよい。
【0050】
ある特定の実施形態において、TCRは、1つ又は複数の膜貫通領域及び/又は細胞質領域を欠いている可溶性TCRである。ある特定の実施形態において、可溶性TCRは、本発明のTCRの細胞外ドメインを他のタンパク質ドメイン(例えば、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン、ヒト定常κドメイン、又はロイシンジッパー)と融合することによって生成され、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Front Oncol., 2014;4:378頁を参照されたい。
【0051】
ある特定の実施形態において、本発明のTCRはまた、ペプチドリンカーによって連結されたVα及びVβを含む単鎖TCR(scTCR)であってもよい。そのようなscTCRは、Vα及びVβを含んでいてもよく、Vα及びVβのそれぞれは、TCR定常領域に連結されている。或いは、scTCRは、Vα及びVβを含んでいてもよく、Vα、Vβ、又はVα及びVβの両方が、TCR定常領域に連結されていない。例示的なscTCRは、PCT公開番号第WO2003/020763号、同第WO2004/033685号、及び同第WO2011/044186号に記載されており、そのそれぞれの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
ある特定の実施形態において、本発明のTCRは、2個のポリペプチド鎖(例えば、α鎖及びβ鎖)を含んでいてもよく、鎖のそれぞれは、鎖間ジスルフィド結合を形成し得るシステイン残基を有するように操作されている。そのため、本発明のTCRは、操作されたジスルフィド結合によって連結された2個のポリペプチド鎖を含んでいてもよい。操作されたジスルフィド結合を有する例示的なTCRは、米国特許第8,361,794号及び同第8,906,383号に記載されており、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
ある特定の実施形態において、第2又は第3の態様のT細胞受容体は、膜結合性又は可溶性T細胞受容体である。ある特定の実施形態において、第2又は第3の態様のT細胞受容体は、全長TCR、可溶性TCR又は単鎖TCRである。
【0054】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片は、α鎖可変領域(Vα)及び/又はβ鎖可変領域(Vβ)を含み、Vαは、配列番号8に示されるCDR3αを含み、Vβは、ASSX1X2X3X4PQH(配列番号92)に示されるCDR3βを含み、ここで、X1は、Q、A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、A、C、H、K、N、S、V又はWからなる群から選択され;X3は、V、I、S又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X1は、Q、A、C、E、G、M、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、H、K、N、S又はVからなる群から選択され;X3は、V又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、M、S又はWからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片は、α鎖可変領域(Vα)及び/又はβ鎖可変領域(Vβ)を含み、Vαは、配列番号8に示されるCDR3αを含み、Vβは、配列番号11、54~92のいずれか1つに示されるCDR3βを含む。
【0055】
一部の実施形態において、Vαは、それぞれ、配列番号6~8に示されるCDR1α、CDR2α及びCDR3αを含み、Vβは、配列番号9に示されるCDR1β、配列番号10に示されるCDR2β、及びASSX1X2X3X4PQH(配列番号92)に示されるCDR3βを含み、ここで、X1は、Q、A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、A、C、H、K、N、S、V又はWからなる群から選択され;X3は、V、I、S又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X1は、Q、A、C、E、G、M、W又はYからなる群から選択され;X2は、T、H、K、N、S又はVからなる群から選択され;X3は、V又はTからなる群から選択され;X4は、P、C、D、E、F、M、S又はWからなる群から選択される。
【0056】
一部の実施形態において、Vαは、それぞれ、配列番号6~8に示されるCDR1α、CDR2α及びCDR3αを含み、Vβは、配列番号9に示されるCDR1β、配列番号10に示されるCDR2β、及び配列番号11、54~92のいずれか1つに示されるCDR3βを含む。一部の実施形態において、Vαは、それぞれ、配列番号6~8に示されるCDR1α、CDR2α及びCDR3αを含み、Vβは、配列番号9に示されるCDR1β、配列番号10に示されるCDR2β、及び配列番号11、54~55、57~58、62、67~68、71~75、79~83、87、89、91のいずれか1つに示されるCDR3βを含む。
【0057】
ある特定の実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つにおけるVα及び/又はVβは、以下の特徴:
(a)Vαが、FR1α、FR2α、FR3α及びFR4αも含み、
FR1αが、配列番号93に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR2αが、配列番号94に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR3αが、配列番号95に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR4αが、配列番号96に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有する;
並びに/或いは
(b)Vβが、FR1β、FR2β、FR3β及びFR4βも含み、
FR1βが、配列番号97に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR2βが、配列番号98に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR3βが、配列番号99に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有し;
FR4βが、配列番号100に示される配列、又はそれと比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2若しくは3個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列を有すること
を有する。
【0058】
ある特定の実施形態において、置換は、保存的置換である。
【0059】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片のVαは、配列番号4に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントは、以下のアミノ酸配列:
(i)配列番号4に示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;又は
(ii)配列番号4に示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択される。
【0060】
ある特定の実施形態において、(i)に記載される置換は、保存的置換である。
【0061】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片のVαは、配列番号4に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントは、97位にアミノ酸置換及び欠失を含まず、アミノ酸位置は、IMGT TCR番号付けシステムに従って決定される。
【0062】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片のVβは、配列番号5に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントは、以下のアミノ酸配列:
(i)配列番号5に示される配列と比較して、1個若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば、1、2、3、4若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加)を有する配列;又は
(ii)配列番号5に示される配列と比較して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択される。
【0063】
ある特定の実施形態において、(i)に記載される置換は、保存的置換である。
【0064】
ある特定の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片のVβは、配列番号5に示される配列又はそのバリアントを含み、バリアントは、以下:(1)A、C、D、E、G、H、I、L、M、N、S、T、V、W又はYによる95位のアミノ酸の置換;(2)A、C、H、K、N、S、V又はWによる96位のアミノ酸の置換;(3)I、S又はTによる97位のアミノ酸の置換;(4)C、D、E、F、G、H、L、M、R、S、V又はWによる98位のアミノ酸の置換からなる群から選択される1個又は複数(例えば、1、2、3又は4個)のアミノ酸置換を含み、アミノ酸位置は、IMGT TCR番号付けシステムに従って決定される。
【0065】
ある特定の実施形態において、バリアントは、以下:(1)A、C、E、G、M、W又はYによる95位のアミノ酸の置換;(2)H、K、N、S又はVによる96位のアミノ酸の置換;(3)Tによる97位のアミノ酸の置換;(4)C、D、E、F、M、S又はWによる98位のアミノ酸の置換からなる群から選択される1個又は複数(例えば、1、2、3又は4個)のアミノ酸置換を含み、アミノ酸位置は、IMGT TCR番号付けシステムに従って決定される。
【0066】
ある特定の実施形態において、本発明のTCR又はその抗原結合性断片は、配列番号4によって表されるVα及び/又は配列番号5によって表されるVβを含む。
【0067】
一部の実施形態において、TCR又はその抗原結合性断片は、本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント(例えば、配列番号14~23、26~27のいずれか1つに示される配列)又はMHC-ペプチド複合体を特異的に認識することができる。ある特定の実施形態において、エピトープペプチド又はそのバリアントは、MHC-II分子によって提示される。
【0068】
ある特定の実施形態において、MHC-II分子は、HLA-DQである。
【0069】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含む。より好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301を含む。
【0070】
一部の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含む。
【0071】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303(好ましくは、HLA-DQB1*0301)からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む。
【0072】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0505を含む。
【0073】
ある特定の実施形態において、その表面上でTCR又はその抗原結合性断片を発現するT細胞は、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する(例えば、MHC-IIの文脈において)第2の細胞との共培養下で活性化される。ある特定の実施形態において、T細胞の活性化は、当技術分野において公知の任意の好適な指標を使用して測定することができる。そのような好適な指標の非限定的な例としては、サイトカイン(例えば、IL-2、IFN-γ等)の増加した分泌レベル、増加した増殖活性、及び/又は活性化マーカー(例えば、CD25、CD69、CD107a等)の増加した発現レベルが挙げられる。ある特定の実施形態において、T細胞の活性化は、T細胞により誘導された本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する(例えば、MHC-IIの文脈において)第2の細胞のアポトーシス又は死も含む。
【0074】
コンジュゲート及び融合タンパク質
第4の態様において、本発明は、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片、及びそれにコンジュゲートされたエフェクター部分を含むコンジュゲートを提供する。
【0075】
この文脈において、「エフェクター部分」という用語は、それに連結された分子の天然の活性をモジュレートする(例えば、増加させる又は減少させる)ことができるか、又は分子に対して新規の活性を付与することができる、成分又は官能基を指す。一部の実施形態において、エフェクター部分は、TCRによって標的にされる細胞に対する効果を有する化合物である。
【0076】
この文脈において、「コンジュゲーション」という用語は、タンパク質ドメインを機能的に連結するための当技術分野において公知の任意の方法を指し、限定されるものではないが、リンカーあり又はなしの組換え融合、インテイン媒介融合、非共有結合及び共有結合、例えば、ジスルフィド結合、ペプチド結合、水素結合、静電結合、及び立体構造的結合、例えば、ビオチン-アビジン結合を含む。ある特定の実施形態において、コンジュゲーションは、化学的様式又は組換え様式によって行うことができ、化学的様式は、2個の分子間で共有結合を形成して、1個の分子を形成することを含む。
【0077】
ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、治療用部分であってもよい。治療用部分は、治療剤として使用され得る化合物を指す。コンジュゲートは、治療用部分がTCRによって標的にされる細胞に対して治療効果を発揮するのを可能にするTCRの標的化特性を活用する。
【0078】
ある特定の実施形態において、治療用部分は、免疫賦活薬、例えば、免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性抗体からなる群から選択される。ある特定の例示的な実施形態において、免疫刺激性サイトカインは、例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせから選択される。リストされた様々なサイトカインは、サイトカインの天然の生物学的活性を有するポリペプチドを指し、例えば、全長タンパク質、その活性断片又は変異体を含む。例えば、IL-2は、IL-2活性を有するポリペプチドを指し、これは、全長IL-2、IL-2の活性断片又は変異体であってもよい。ある特定の例示的な実施形態において、免疫刺激性抗体は、例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせから選択される。一部の実施形態において、免疫賦活薬は、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2、IL-15、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0079】
ある特定の実施形態において、治療用部分は、細胞傷害性剤からなる群から選択される。ここで、細胞傷害性剤は、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)任意の剤を含む。
【0080】
ある特定の実施形態において、細胞傷害性剤は、アルキル化剤、微小管阻害剤又は有糸分裂阻害剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、及びその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
本発明のコンジュゲートにおいて有用なアルキル化剤の例としては、限定されるものではないが、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド等)、エチレンイミン(例えば、チオテパ等)、硫酸エステル及びポリオール(例えば、ブスルファン、ジブロモマンニトール)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン等)、白金抗新生物剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン等)等が挙げられる。
【0082】
本発明のコンジュゲートにおいて有用な有糸分裂阻害剤又は微小管阻害剤の例としては、限定されるものではないが、メイタンシノイド(例えば、メイタンシン、メイタンシノール、メイタンシノールのC3エステル等)、タキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、又はナノ粒子パクリタキセル等)、ビンカアルカロイド(例えば、硫酸ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、又はビノレルビン等)が挙げられる。
【0083】
本発明のコンジュゲートにおいて有用な抗腫瘍抗生物質の例としては、限定されるものではないが、アクチノマイシン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン等)、カリケアマイシン、デュオカルマイシン等が挙げられる。
【0084】
本発明のコンジュゲートにおいて有用な代謝拮抗薬の例としては、限定されるものではないが、葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキサート等)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、カペシタビン、ゲムシタビン等)、プリンアンタゴニスト(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン等)、アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、クラドリビン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン等)が挙げられる。
【0085】
本発明のコンジュゲートにおいて有用なトポイソメラーゼ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、カンプトテシン及びその誘導体(例えば、イリノテカン、トポテカン等)、アムサクリン、ダウノマイシン、アドリアマイシン、エピポドフィロトキシン、エリプチシン、エピルビシン、エトポシド、プロピルイミン、テニポシド等が挙げられる。
【0086】
本発明のコンジュゲートにおいて有用なチロシンキナーゼ阻害剤の例としては、限定されるものではないが、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、ニロチニブ、セマキシニブ、スニチニブ、バンデタニブ等が挙げられる。
【0087】
本発明のコンジュゲートにおいて有用な放射性核種剤の例としては、限定されるものではないが、131I、111In、90Y、177Lu等が挙げられる。
【0088】
ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、TCRの溶解性を増加させることができる。ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、免疫グロブリンの様々なサブクラス(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE)の重鎖及び軽鎖定常領域の様々な部分からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、ヒト免疫グロブリンの定常領域、例えば、重鎖定常領域又は軽鎖定常領域からなる群から選択される。
【0089】
ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、検出可能な標識からなる群から選択される。本発明の検出可能な標識は、蛍光、分光学的、光化学的、生化学的、免疫学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能な任意の物質であり得る。そのような標識は、当技術分野において周知であり、その例としては、限定されるものではないが、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C、又は32P)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット又はシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750))、発光物質(例えば、化学発光物質、例えば、アクリジニウムエステル化合物)、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、測熱法的標識、例えば、コロイド金又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズ、及び前述の標識で修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)に結合するためのビオチンが挙げられる。上記に記載される検出可能な標識は、当技術分野において公知の方法によって検出することができる。例えば、放射性標識は、写真用フィルム又はシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光標識は、放射された光を検出するための光検出器を使用して検出することができる。酵素標識は、一般に、基質を酵素に提供すること、及び基質に対する酵素の作用によって生成した反応生成物を検出することによって検出され、測熱法的標識は、着色した標識の単純な可視化によって検出される。ある特定の例示的な実施形態において、検出可能な標識は、酵素、放射性核種、蛍光色素、発光物質(例えば、化学発光物質)、又はビオチンからなる群から選択される。
【0090】
ある特定の実施形態において、本発明のTCR又はその抗原結合性断片は、任意選択でリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介して、エフェクター部分にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、本発明のTCR又はその抗原結合性断片のN末端又はC末端に連結される。
【0091】
ある特定の実施形態において、エフェクター部分がペプチド又はタンパク質である場合、コンジュゲートは、好ましくは、融合タンパク質である。
【0092】
従って、第5の態様において、本発明は、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片、及び追加のペプチド又はタンパク質を含む融合タンパク質も提供する。
【0093】
ある特定の実施形態において、本発明のTCR又はその抗原結合性断片は、任意選択でペプチドリンカーを介して、追加のペプチド又はタンパク質に融合される。ある特定の実施形態において、エフェクター部分は、本発明のTCR又はその抗原結合性断片のN末端又はC末端に連結される。
【0094】
ある特定の実施形態において、追加のペプチド又はタンパク質は、第4の態様に記載される様々なペプチド又はタンパク質のエフェクター部分からなる群から選択されてもよい。
【0095】
ある特定の実施形態において、追加のペプチド又はタンパク質は、治療用ペプチド若しくはタンパク質、免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域)、検出可能なタンパク質標識、又はタンパク質タグからなる群から選択される。
【0096】
ある特定の実施形態において、治療用ペプチド又はタンパク質は、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)、又は細胞に対して毒性であるか、細胞増殖を阻害することができるか、若しくはアポトーシスを誘導することができるペプチド若しくはタンパク質(例えば、チミジンキナーゼTK(TK/GCV)、TRAIL、又はFasL)からなる群から選択される。
【0097】
ある特定の実施形態において、検出可能なタンパク質標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等)、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP))又はビオチン等からなる群から選択される。
【0098】
一部の実施形態において、タンパク質タグは、His、Flag、GST、MBP、HA、又はMyc等からなる群から選択され、当業者には、所望の目的(例えば、精製、検出又は追跡)に従って好適なタンパク質タグを選択する方法は公知である。
【0099】
エピトープペプチド、TCR及び融合タンパク質の調製
本発明のエピトープペプチド、TCR又はTCRを含有する融合タンパク質は、当技術分野において公知の様々な方法によって、例えば、遺伝子工学組換え技術によって調製することができる。例えば、それらをコードするDNA分子は、化学合成又はPCR増幅によって得られ;得られたDNA分子は、発現ベクターに挿入され、次いで、宿主細胞にトランスフェクトされ;次いで、トランスフェクトされた宿主細胞を特定の条件下で培養し、本発明のエピトープペプチド、TCR又はTCRを含有する融合タンパク質を発現させる。
【0100】
従って、第6の態様において、本発明は、
(i)第1の態様に記載されるエピトープペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列;
(ii)第2又は第3の態様に記載されるTCR若しくはその抗原結合性断片、又はそのα鎖可変領域及び/若しくはβ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列;
(iii)第5の態様に記載される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む単離された核酸分子を提供する。
【0101】
ある特定の実施形態において、単離された核酸分子は、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片のα鎖可変領域をコードする第1のヌクレオチド配列、及びそのβ鎖可変領域をコードする第2のヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列は、自己切断ペプチド(例えば、P2A、E2A、F2A又はT2A)をコードするヌクレオチド配列によって任意選択で連結されている。ある特定の実施形態において、自己切断ペプチドは、P2Aである。
【0102】
第7の態様において、本発明は、第6の態様の単離された核酸分子を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)を提供する。ある特定の実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ等である。
【0103】
第8の態様において、本発明は、第6の態様の単離された核酸分子又は第7の態様のベクターを含む宿主細胞を提供する。そのような宿主細胞としては、限定されるものではないが、原核細胞、例えば、大腸菌(E. coli)細胞、並びに真核細胞、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び動物細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、マウス細胞、ヒト細胞等)が挙げられる。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、微生物である。
【0104】
別の態様において、本発明のエピトープペプチド、TCR又はTCRを含む融合タンパク質を調製するための方法であって、タンパク質発現を可能にする条件下で第8の態様に記載される宿主細胞を培養する工程、及びエピトープペプチド、TCR又はTCRを含む融合タンパク質を宿主細胞の培養物から回収する工程を含む、方法も提供される。
【0105】
操作された抗原提示細胞(APC)
本発明のエピトープペプチド及びそのバリアントは、T細胞に基づく免疫療法において使用することができる。一部の場合において、T細胞は、RAS変異へのMHC拘束免疫応答を誘導するそのTCRにより、APCの表面上で提示されるMHC-ペプチド複合体を認識することができる。
【0106】
従って、第9の態様において、本発明は、その表面上で第1の態様のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する操作された抗原提示細胞(APC)を提供する。
【0107】
ある特定の実施形態において、エピトープペプチド又はそのバリアントは、MHC-II分子によって提示される。
【0108】
ある特定の実施形態において、MHC-II分子は、HLA-DQである。
【0109】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、HLA-DQB1*0319、HLA-DQB1*0201、HLA-DQB1*0603、HLA-DQB1*0604、及びHLA-DQB1*0302からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0303、及びHLA-DQB1*0319からなる群から選択される1つを含む。より好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301を含む。
【0110】
一部の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501、HLA-DQA1*0505、HLA-DQA1*0102、HLA-DQA1*0103、及びHLA-DQA1*0301からなる群から選択される1つを含む。好ましくは、HLA-DQは、HLA-DQA1*0501及びHLA-DQA1*0505からなる群から選択される1つを含む。
【0111】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301、HLA-DQB1*0319又はHLA-DQB1*0303(好ましくは、HLA-DQB1*0301)からなる群から選択される1つを含み、HLA-DQA1*0501又はDQA1*0505からなる群から選択される1つを更に含む。
【0112】
ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0301及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0303及びHLA-DQA1*0505を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0501を含む。ある特定の実施形態において、HLA-DQは、HLA-DQB1*0319及びHLA-DQA1*0505を含む。
【0113】
ある特定の実施形態において、APCは、樹状細胞、単球、マクロファージ、リンパ芽球様細胞(LCL)、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1* 0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;より好ましくは、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性である。
【0115】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性、又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、APCは、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性である。
【0116】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、又はHLA-DQB1*0303に陽性(好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性)であり、HLA-DQA1*0501にも陽性又はHLA-DQA1*0505にも陽性である。
【0117】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DP型のHLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0505又はHLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501を有する。
【0118】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1* 0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性の対象から単離され;好ましくは、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性;より好ましくは、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性の対象から単離される。
【0119】
一部の実施形態において、APCは、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性、又はHLA-DQA1*0301に陽性の対象から単離され;好ましくは、APCは、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性の対象から単離される。
【0120】
ある特定の実施形態において、APCは、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、又はHLA-DQB1*0303に陽性(好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性)、及びHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性の対象から単離される。
【0121】
ある特定の実施形態において、APCは、以下のHLA-DP型:HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501又はHLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501を有する対象から単離される。
【0122】
ある特定の実施形態において、操作されたAPCは、インビトロでAPCを第1の態様に記載されるエピトープペプチド又はそのバリアントと接触させること(即ち、APCを、十分な量のエピトープペプチド又はそのバリアントに曝露すること)によって得られる。一部の実施形態において、操作されたAPCは、インビトロで第1の態様に記載されるエピトープペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターをAPCに導入することによって得られる。
【0123】
第9の態様のAPCは、自己/自家(「自己」)又は非自己(「非自己」、例えば、同種)であってもよい。「自家」は、細胞が、同じ対象由来であることを指し、「同種」は、細胞が、比較される細胞のものと遺伝的に区別される同じ種の対象由来であることを指す。
【0124】
第9の態様のAPCは、そのような細胞が見出される任意の組織から単離又は得られ得るか、又はそうでなければ培養若しくは提供され得る。例えば、APCは、哺乳動物の骨髄又は末梢血単核細胞(PBMC)において、哺乳動物の脾臓において、又は哺乳動物の皮膚において見出され得(即ち、ランゲルハンス細胞は、皮膚において見出され得、これは、DCのものと類似する一部の特性を持つ)、次いで、APCは、適切なサイトカインを含有する培地中で培養を行い、それに続いて選別することによって得られる。
【0125】
別の態様において、本発明は、上記で述べた操作されたAPCを調製するための方法であって、(1)対象由来のAPCを用意する工程;(2)インビトロでAPCを第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアントと接触させるか、又は第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターをAPCに導入して、その表面上でエピトープペプチド又はそのバリアントを提示するAPCを得る工程を含む、方法を提供する。
【0126】
操作された免疫細胞
本発明のTCR又はその抗原結合性断片は、T細胞に基づく免疫療法において使用することができる。一部の例において、本発明のTCRを発現するT細胞は、MHC-ペプチド複合体を認識することによって、RAS変異体に対するMHC拘束免疫応答を誘導する。
【0127】
従って、第10の態様において、本発明は、その表面上で第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片を発現する操作された免疫細胞を提供する。本発明の操作された免疫細胞は、RAS G13D変異体に対して抗原特異的である。ある特定の実施形態において、本発明の操作された免疫細胞は、以下:
(i)RAS G13D変異体に特異的に結合し、他のRASタンパク質(野生型RASタンパク質又は他の変異体を含む)に結合しないか、又はより低い親和性で結合すること;
(ii)第1の態様に記載されるエピトープペプチド又はそのバリアント(例えば、配列番号14~23、26~27のいずれか1つ、特に、配列番号20に示される配列)に特異的に結合すること;
(iii)本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する(例えば、MHC-IIの文脈において)APCとの共培養の際に活性化されること
から選択される1つ又は複数の特徴を有し、ここで、活性化の非限定的な例としては、サイトカイン(例えば、IL-2、IFN-γ等)の増加した分泌レベル、増加した増殖活性、及び/又は活性化マーカー(例えば、CD25、CD69、CD107a等)の増加した発現レベルだけでなく、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアントを提示する(例えば、MHC-IIの文脈において)第2の細胞に対する増加した死滅活性が挙げられる。
【0128】
ある特定の実施形態において、操作された免疫細胞は、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0129】
第10の態様の免疫細胞は、そのような細胞が見出される任意の組織から単離又は得られ得る。例えば、APCは、哺乳動物の末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸水、脾臓組織又は腫瘍において見出され得、その結果、これは、任意選択で、所望の免疫細胞を得るために、適切なサイトカインを含有する培養培地中で培養及び選別される。或いは、免疫細胞はまた、他の方法で培養及び提供され得、例えば、誘導及び分化により免疫細胞の前駆体細胞(例えば、Tリンパ球の前駆体)から得られ得、前駆体細胞は、例えば、多能性幹細胞(例えば、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞)、造血幹細胞又はリンパ球前駆細胞、並びに例えば、骨髄、臍帯血若しくは末梢血から単離及び/若しくは富化された造血幹細胞又はリンパ球前駆細胞であり得る。
【0130】
ある特定の実施形態において、免疫細胞はリンパ球である。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される。本発明のTCRを発現させるために使用され得る例示的な免疫細胞としては、PBMC、TIL及び/又はT細胞が挙げられる。ある特定の実施形態において、T細胞は、αβT細胞、γδT細胞、iPSC由来T細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、CD4+細胞傷害性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1又はTh2細胞)、CD4/CD8二重陽性T細胞、腫瘍浸潤性T細胞、胸腺細胞、メモリーT細胞、ナチュラルキラーT細胞、例えば、インバリアントナチュラルキラーT細胞からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、CD4+ T細胞を含む。当業者は、免疫細胞が、免疫細胞の前駆細胞(前駆体細胞)も含み得ることを理解し、ここで、前駆細胞は、インビボ又はインビトロで誘導されて、免疫細胞に分化し得る。従って、ある特定の実施形態において、免疫細胞は、対象への投与の際に成熟免疫細胞に分化するか、又はインビトロで誘導されて、成熟免疫細胞に分化し得る、免疫細胞前駆体、例えば、臍帯血、骨髄、又は流れる末梢血に由来するCD34+細胞の集団内に含有される造血幹細胞(HSC)を含む。
【0131】
第10の態様の免疫細胞は、自己/自家(「自己」)又は非自己(「非自己」、例えば、同種)であってもよい。「自家」は、細胞が、同じ対象由来であることを指し、「同種」は、細胞が、比較される細胞のものと遺伝的に区別される同じ種の対象由来であることを指す。
【0132】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、DQB1* 0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性の対象から単離され;好ましくは、免疫細胞は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性;より好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性の対象から単離される。
【0133】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性、又はHLA-DQA1*0301に陽性の対象から単離され;好ましくは、免疫細胞は、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性の対象から単離される。
【0134】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、又はHLA-DQB1*0303に陽性(好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性)、及びHLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性の対象から単離される。
【0135】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、以下のHLA-DP型:HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0505又はHLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501を有する対象から単離される。
【0136】
本発明の操作された免疫細胞が、単離された細胞の集団に含有されていてもよいことが理解されるべきである。細胞の集団は、異種集団であってもよく、例えば、細胞の集団は、本発明の操作された免疫細胞に加えて、少なくとも1種の追加の細胞を更に含んでいてもよく、追加の細胞は、RAS G13D変異体について抗原特異的ではないか、又は例えば、細胞の集団は、1種よりも多くの免疫細胞を含有するが、これらの種類の免疫細胞は全て、RAS G13D変異体に対する抗原特異性を有するように、本発明のTCRを発現する。更にまた、細胞の集団は、実質的に同種の集団でもあり得、例えば、集団は、RAS G13D変異体に対する抗原特異性を有するT細胞を主に含む(例えば、それから本質的になる)。
【0137】
別の態様において、本発明は、上記で述べた操作された免疫細胞を調製するための方法であって、(1)対象由来の免疫細胞を用意する工程;(2)本発明のTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクターを、工程(1)の免疫細胞に導入し、TCR又はその抗原結合性断片を発現する免疫細胞を得る工程を含む、方法を提供する。
【0138】
一部の実施形態において、工程(1)において、免疫細胞は、前処理に付され;前処理は、免疫細胞の選別、活性化及び/又は増殖を含む。ある特定の実施形態において、前処理は、免疫細胞を、抗CD3抗体、抗CD28抗体、IL-2及びIL-15からなる群から選択される1つ又は複数と接触させ、それによって、免疫細胞を刺激すること、及びその増殖を誘導し、それによって、前処理された免疫細胞を生じさせることを含む。
【0139】
一部の実施形態において、工程(2)において、核酸分子又はベクターは、様々な好適な方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、TALEN法、ZFN法、非ウイルスベクター媒介トランスフェクション(例えば、リポソーム)又はウイルスベクター媒介トランスフェクション(例えば、レンチウイルス感染、レトロウイルス感染、アデノウイルス感染)、並びに宿主細胞にトランスフェクトするための他の物理的、化学的又は生物学的手段、例えば、トランスポゾン技術、CRISPR-Cas9及び他の技術によって、免疫細胞に導入され得る。
【0140】
一部の実施形態において、工程(2)の後、方法は、工程(2)において得られた免疫細胞を拡大増殖する工程を更に含む。
【0141】
エピトープペプチドに基づく療法
本発明のエピトープペプチド又はエピトープペプチドを提示するAPCは、T細胞に基づく免疫療法において使用して、抗腫瘍免疫応答を誘導することができる。
【0142】
従って、第11の態様において、本発明は、第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアント、又は上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、ペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は第9の態様に記載される操作された抗原提示細胞(APC);並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0143】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、腫瘍ワクチンである。
【0144】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、アジュバントを含む。アジュバントは、非特異的な様式で免疫応答を増強することができる物質、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、Toll受容体リガンド、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)、又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)等である。
【0145】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、追加の治療剤、例えば、抗新生物剤又は免疫賦活薬を更に含む。
【0146】
ある特定の実施形態において、抗新生物剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗新生物抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤(例えば、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、タキサン、シスプラチン等)、抗血管新生剤、サイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21等)、腫瘍細胞に特異的な抗体(例えば、CD20抗体、例えば、リツキシマブ、Her2抗体、例えば、トラスツズマブ、VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ、EGFR抗体、例えばセツキシマブ等)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG-3抗体、又はTIM3抗体)からなる群から選択される。
【0147】
ある特定の実施形態において、免疫賦活薬は、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)からなる群から選択される。
【0148】
ある特定の実施形態において、医薬組成物中に、本発明のエピトープペプチド又はそのバリアント、MHC-ペプチド複合体、操作されたAPC、及び追加の治療剤は、別々の成分として、又は混合された成分として供給され得る。
【0149】
第12の態様において、本発明は、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための方法であって、有効量の第1の態様のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は第9の態様の操作された抗原提示細胞(APC)、又は第11の態様の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0150】
ある特定の実施形態において、RAS G13D変異を有する腫瘍は、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択される。
【0151】
ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0152】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;より好ましくは、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性である。
【0153】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性、又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象は、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性である。
【0154】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、又はHLA-DQB1*0303に陽性(好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性)であり、HLA-DQA1*0501にも陽性又はHLA-DQA1*0505にも陽性である。
【0155】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0505又はHLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501からなる群から選択されるHLA-DP型を有する。
【0156】
ある特定の実施形態において、第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は第9の態様に記載される操作された抗原提示細胞(APC)、又は第11の態様に記載される医薬組成物は、別の治療剤(例えば、免疫賦活薬又は抗新生物剤)と組み合わせて投与され得る。従って、ある特定の実施形態において、方法は、追加の治療剤(例えば、免疫賦活薬又は抗新生物剤)を、例えば、同時に、別々に、又は逐次的に、対象に投与する工程を更に含む。
【0157】
ある特定の実施形態において、第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は第9の態様の操作された抗原提示細胞(APC)、又は第11の態様の医薬組成物は、例えば、同時に、別々に又は逐次的に、追加の療法と組み合わせて投与されてもよい。この追加の療法は、腫瘍に対して使用することが公知の任意の療法、例えば、手術、化学療法、放射線療法、標的化療法、免疫療法、ホルモン療法、遺伝子療法、又は緩和ケアであり得る。
【0158】
本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、操作された抗原提示細胞(APC)、又はそれを含有する医薬組成物は、医療分野において公知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤、坐剤、注射剤(注射液、注射用滅菌粉末、及び注射用濃縮液を含む)、吸入剤、スプレー剤等に製剤化することができる。好ましい剤形は、投与及び治療的使用の意図される方法に依存する。本発明の医薬品は、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。好ましい剤形は、注射剤である。そのような注射剤は、注射用無菌溶液であり得る。例えば、注射用無菌溶液は、以下の方法:必要な量の本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、操作された抗原提示細胞(APC)、又はそれを含む医薬組成物を適切な溶媒に組み込む工程、及び任意選択で、他の所望の成分(限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤、又はその任意の組み合わせ)を組み込む工程、それに続く濾過滅菌によって調製され得る。加えて、注射用無菌溶液は、保管及び使用の容易さのために、無菌凍結乾燥粉末として(例えば、真空乾燥又は凍結乾燥によって)調製することができる。そのような無菌凍結乾燥粉末は、使用前に、好適な媒体、例えば、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、デキストロース溶液(例えば、5%のデキストロース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液、及びその任意の組み合わせに分散させることができる。
【0159】
従って、ある特定の例示的な実施形態において、第11の態様の医薬組成物は、無菌の注射可能な液体(例えば、水性又非水性の懸濁液又は溶液)を含む。ある特定の例示的な実施形態において、そのような無菌の注射可能な液体は、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、デキストロース溶液(例えば、5%のデキストロース)、界面活性剤を含有する溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液、及びその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0160】
本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、操作された抗原提示細胞(APC)、又はそれを含む医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、頬側、舌下、眼、局部、非経口、直腸、くも膜下腔内、槽内、鼠径、膀胱内、局所(例えば、散剤、軟膏、又は点滴剤)、又は経鼻経路を含む、当技術分野において公知の任意の好適な方法によって投与され得る。しかしながら、多くの治療的使用のために、好ましい投与の経路/方法は、非経口(例えば、静脈内又はボーラス注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。当業者は、投与の経路/方法が意図される目的に応じて変更されることを理解するであろう。ある特定の実施形態において、本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、操作された抗原提示細胞(APC)、又はそれを含む医薬組成物は、静脈内注射又はボーラス注射によって投与される。
【0161】
第11の態様に記載される医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明のエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、ペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は操作された抗原提示細胞(APC)を含み得る。この文脈において、「治療有効量」は、処置された対象において免疫応答を発生することができる量であり、免疫応答は、腫瘍細胞の増殖を低減若しくは阻害すること及び/又は腫瘍細胞を排除することができ;「予防有効量」は、処置された対象において標的細胞(例えば、RAS変異を含有する腫瘍細胞)に対する免疫応答を発生することができる量を指し、免疫応答は、対象における腫瘍の形成を防止することができるか、又は対象において、腫瘍を発生する機会若しくは腫瘍の発生の継続を実質的に低減することができる。
【0162】
別の態様において、本発明は、RAS G13D変異を有する腫瘍に対する対象における免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための医薬の製造における、第1の態様に記載されるエピトープペプチド若しくはそのバリアント、上記に記載されるMHC-ペプチド複合体、エピトープペプチド若しくはそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子若しくはベクター若しくは宿主細胞、又は第9の態様に記載される操作された抗原提示細胞(APC)、又は第11の態様に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0163】
TCRに基づく療法
本発明のTCR又はTCRを発現する免疫細胞は、T細胞に基づく免疫療法において使用して、RAS G13D変異を含有する腫瘍を死滅させることができる。
【0164】
従って、第13の態様において、本発明は、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片、第4の態様に記載されるコンジュゲート、或いは第5の態様に記載される融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは第10の態様に記載される操作された免疫細胞;並びに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0165】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、追加の治療剤、例えば、抗新生物剤又は免疫賦活薬を更に含む。
【0166】
ある特定の実施形態において、抗新生物剤は、アルキル化剤、有糸分裂阻害剤、抗新生物抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種剤、放射線増感剤(例えば、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、タキサン、シスプラチン等)、抗血管新生剤、サイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21等)、腫瘍細胞に特異的な抗体(例えば、CD20抗体、例えば、リツキシマブ、Her2抗体、例えば、トラスツズマブ、VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ、EGFR抗体、例えばセツキシマブ等)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA-4抗体、LAG-3抗体、又はTIM3抗体)からなる群から選択される。
【0167】
ある特定の実施形態において、免疫賦活薬は、免疫刺激性抗体(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD40L(CD154)抗体、抗41BB(CD137)抗体、抗OX40抗体、抗GITR抗体、又はその任意の組み合わせ)又は免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-γ、IL-10、TGF-β、GM-CSF、又はその任意の組み合わせ)からなる群から選択される。
【0168】
ある特定の実施形態において、医薬組成物中で、本発明のTCR若しくはその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質又は操作された免疫細胞、及び追加の治療剤は、別々の成分として、又は混合された成分として使用され得る。
【0169】
第14の態様において、本発明は、RAS G13D変異を有する腫瘍に対する対象における免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための方法であって、有効量の第2又は第3の態様のTCR又はその抗原結合性断片、第4の態様のコンジュゲート、或いは第5の態様の融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは第10の態様に記載される操作された免疫細胞、或いは第13の態様の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0170】
ある特定の実施形態において、RAS G13D変異を有する腫瘍は、結腸直腸がん、膵臓がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫、黒色腫、甲状腺がん、膀胱がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、又は急性骨髄性白血病からなる群から選択される。
【0171】
ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0172】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、HLA-DQB1*0201に陽性、HLA-DQB1*0603に陽性、HLA-DQB1*0604に陽性又はHLA-DQB1*0302に陽性であり;好ましくは、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0303に陽性又はHLA-DQB1*0319に陽性であり;より好ましくは、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性である。
【0173】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQA1*0501に陽性、HLA-DQA1*0505に陽性、HLA-DQA1*0102に陽性、HLA-DQA1*0103に陽性、又はHLA-DQA1*0301に陽性であり;好ましくは、対象は、HLA-DQA1*0501に陽性又はHLA-DQA1*0505に陽性である。
【0174】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301に陽性、HLA-DQB1*0319に陽性、又はHLA-DQB1*0303に陽性(好ましくは、HLA-DQB1*0301に陽性)であり、HLA-DQA1*0501にも陽性又はHLA-DQA1*0505にも陽性である。
【0175】
ある特定の実施形態において、対象は、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0301/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0303/HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0505又はHLA-DQB1*0319/HLA-DQA1*0501からなる群から選択されるHLA-DP型を有する。
【0176】
ある特定の実施形態において、方法は、(1)対象に必要とされる免疫細胞を用意する工程;(2)第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片をコードするヌクレオチド配列を、工程(1)に記載される免疫細胞に導入して、その表面上でTCR又はその抗原結合性断片を発現する免疫細胞を得る工程;(3)工程(2)において得られた免疫細胞を対象に投与する工程を含む。
【0177】
ある特定の実施形態において、対象由来の免疫細胞を得る工程は、工程(1)の前に含まれる。免疫細胞は、そのような細胞が見出される任意の組織(例えば、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍)から単離若しくは得られ得るか、又は他の方法によって培養及び提供され得、例えば、免疫細胞の前駆体細胞(例えば、Tリンパ球の前駆体)からの分化を誘導することによって得られ得る。
【0178】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、リンパ球からなる群から選択される。一部の実施形態において、免疫細胞は、T細胞(例えば、αβT細胞、γδT細胞又はiPSC由来T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、CD4+ T細胞を含む。
【0179】
ある特定の例示的な実施形態において、末梢血単核細胞(PBMC)及び/又はTILは、対象から得られ、TCRを発現するように、直接、遺伝子操作される。
【0180】
ある特定の例示的な実施形態において、T細胞は、対象から得られ、TCRを発現するように、遺伝子操作される。T細胞は、各種の供給源から得ることができ、例えば、T細胞は、当業者に公知の様々な技法(例えば、沈殿、例えば、FICOLL(商標)単離)を使用して対象から収集された血液単位から得ることができる。一実施形態において、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシスの生成物は、通常、リンパ球を含有し、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む。一実施形態において、アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄して、血漿画分を除去することができ、細胞は、その後の処理のために好適な緩衝液又は媒体に入れられる。当業者に理解されるように、洗浄工程は、当業者に公知の方法によって、例えば、半自動フロースルー遠心分離を使用することによって、達成することができる。洗浄後、細胞を、各種の生体適合性緩衝液、又は緩衝液あり若しくはなしの他の生理食塩水溶液に再懸濁させることができる。ある特定の実施形態において、アフェレーシス試料の望まない成分は、細胞が直接再懸濁される媒体中で除去することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解すること、及び単球を枯渇させること(例えば、PERCOLL(商標)による勾配遠心分離によって)によって、末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。以下のマーカー:CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA及びCD45ROの1つ又は複数を発現する特異的T細胞の下位集団を、陽性又は陰性選択技法によって更に単離することができる。一実施形態において、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA及びCD45ROを発現する特異的T細胞の下位集団は、陽性又は陰性選択技法によって更に単離される。例えば、T細胞集団の富化は、陰性選択される細胞に特異的な表面マーカーに対する抗体の組み合わせによる陰性選択によって達成され得る。例示的な方法は、陰性磁気免疫接着又はフローサイトメトリーを介した細胞選別及び/又は選択を行うことであり、ここで、陰性磁気免疫接着又はフローサイトメトリーは、陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体の混合物を利用する。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体の混合物は、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含有する。フローサイトメトリー及び細胞選別は、本発明における使用のための目的の細胞集団を単離するために使用することもできる。
【0181】
ある特定の実施形態において、免疫細胞(例えば、T細胞)は、免疫細胞の遺伝子改変の前に、インビトロで活性化及び拡大増殖(又は、前駆細胞の場合において、分化)することができる。
【0182】
一部の実施形態において、第2又は第3の態様のTCR又はその抗原結合性断片、第4の態様のコンジュゲート、或いは第5の態様の融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは第10の態様に記載される操作された免疫細胞、或いは第13の態様に記載される医薬組成物は、追加の治療剤(例えば、免疫賦活薬又は抗新生物剤)と組み合わせて投与され得る。従って、ある特定の実施形態において、方法は、追加の治療剤(例えば、免疫賦活剤又は抗新生物剤)を、例えば、同時に、別々に、又は逐次的に対象に投与する工程を更に含む。
【0183】
一部の実施形態において、第2又は第3の態様のTCR又はその抗原結合性断片、第4の態様のコンジュゲート、或いは第5の態様の融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質を含んでコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは第10の態様に記載される操作された免疫細胞、或いは第13の態様に記載される医薬組成物は、追加の療法と組み合わせて、例えば、同時に、別々に、又は逐次的に投与することができる。追加の療法は、腫瘍に対して使用することが公知の任意の療法、例えば、手術、化学療法、放射線療法、標的化療法、免疫療法、ホルモン療法、遺伝子療法、又は緩和ケアであり得る。
【0184】
本発明による、TCR又はその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、操作された免疫細胞、或いはそれを含む医薬組成物は、医療分野において公知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤、坐剤、注射剤(注射用溶液、注射用滅菌粉末、及び注射用濃縮液を含む)、吸入剤、スプレー剤等に製剤化することができる。好ましい剤形は、投与及び治療的使用の意図される方法に依存する。本発明の医薬品は、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。好ましい剤形は、注射剤である。そのような注射剤は、注射用無菌溶液であり得る。例えば、注射用無菌溶液は、必要な用量の、本発明による、TCR若しくはその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、又は操作された免疫細胞、又はそれを含む医薬組成物を適切な溶媒に組み込む工程、及び任意選択で、他の所望の成分(限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤、又はその任意の組み合わせ)を同時に組み込む工程、それに続く濾過滅菌によって調製され得る。加えて、注射用無菌溶液は、保管及び使用の容易さのために、無菌凍結乾燥粉末として(例えば、真空乾燥又は凍結乾燥によって)調製することができる。そのような無菌凍結乾燥粉末は、使用前に、好適な媒体、例えば、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、デキストロース溶液(例えば、5%のデキストロース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液、及びその任意の組み合わせに分散させることができる。
【0185】
従って、ある特定の例示的な実施形態において、第13の態様の医薬組成物は、無菌の注射可能な液体(例えば、水性又非水性の懸濁液又は溶液)を含む。ある特定の例示的な実施形態において、そのような無菌の注射可能な液体は、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、デキストロース溶液(例えば、5%のデキストロース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液、及びその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0186】
本発明による、TCR又はその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、操作された免疫細胞、或いはそれを含む医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、頬側、舌下、眼、局部、非経口、直腸、くも膜下腔内、槽内、鼠径部、膀胱内、局所(例えば、散剤、軟膏、又は点滴剤)、又は経鼻経路を含む、当技術分野において公知の任意の好適な方法によって投与され得る。しかしながら、多くの治療的使用のために、好ましい投与の経路/方法は、非経口(例えば、静脈内又はボーラス注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。当業者は、投与の経路及び/又は方法が意図される目的に応じて変更されることを理解するであろう。ある特定の実施形態において、本発明による、TCR又はその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、操作された免疫細胞、或いはそれを含む医薬組成物は、静脈内注射又はボーラス注射によって投与される。
【0187】
第13の態様に記載される医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明による、TCR又はその抗原結合性断片、コンジュゲート、融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、操作された免疫細胞、或いはそれを含む医薬組成物を含み得る。この文脈において、「治療有効量」は、処置された対象において腫瘍細胞の増殖を低減若しくは阻害すること及び/又は腫瘍細胞を排除することができる免疫応答を発生することができる量であり;「予防有効量」は、処置された対象において標的細胞(例えば、RAS変異を含有する腫瘍細胞)に対する免疫応答を発生することができる量を指し、免疫応答は、対象における腫瘍の形成を防止することができるか、又は対象において、腫瘍を発生する機会若しくは腫瘍の発生の継続を実質的に低減することができる。
【0188】
別の態様において、本発明は、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための医薬の製造における、第2又は第3の態様に記載されるTCR又はその抗原結合性断片、第4の態様に記載されるコンジュゲート、或いは第5の態様に記載される融合タンパク質、TCR若しくはその抗原結合性断片又はコンジュゲート又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又はベクター又は宿主細胞、或いは第10の態様に記載される操作された免疫細胞、或いは第13の態様に記載される医薬組成物の使用を提供する。
【0189】
エピトープペプチド及びTCRに基づく併用療法
一部の場合において、本発明のエピトープペプチド又はエピトープペプチドを提示するAPC、及び本発明のTCR又はTCRを発現する免疫細胞はまた、組み合わせて投与して、RAS G13D変異を含有する腫瘍のための併用療法を達成することができる。従って、本発明の別の態様は、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するための方法であって、有効量の第1の治療剤及び第2の治療剤を組み合わせてそれを必要とする対象に投与する工程を含み、第1の治療剤が、本発明のエピトープペプチド又はエピトープペプチドを提示するAPCから選択され、第2の治療剤が、本発明のTCR又はTCRを発現する免疫細胞から選択される、方法も提供する。第1及び第2の治療剤は、同時に、別々に又は逐次的に投与され得る。本発明の別の態様は、医薬の製造における、本発明のエピトープペプチド又はエピトープペプチドを提示するAPC、本発明のTCR又はTCRを発現する免疫細胞の使用も提供し、医薬は、対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導するため、及び/又は対象におけるRAS G13D変異を有する腫瘍を防止若しくは処置するために使用される。エピトープペプチドに基づく療法及びTCRに基づく療法についての上記に記載される剤形、投与経路、効能、併用療法等は、エピトープペプチド及びTCRの併用療法に適用され得る。
【0190】
用語の定義
本出願において、他に述べられない限り、本明細書において使用される科学技術用語は、当業者に通常理解される意味を有する。また、本明細書において使用される核酸化学の実験室操作工程は全て、対応する分野において広く使用されているルーチンの工程である。その一方で、本発明をより良く理解するために、関連用語の定義及び説明を下記に提供する。本明細書の他の箇所で具体的に定義又は別に記載されない限り、本発明に関連する以下の用語及び記載は、下記に与えられる定義に従って理解されるべきである。
【0191】
本明細書において使用される場合、「RAS」という用語は、GTPase活性を有し、細胞の増殖、分化及びアポトーシスを調節する多くのシグナル伝達経路、例えば、MAPK、PI3K、及びSTATシグナル伝達経路等に関与する癌原遺伝子、及びそれによってコードされるRASタンパク質を指す。ヒト遺伝子において3つのRAS遺伝子、即ち、HRAS(GeneID:3265)、NRAS(GeneID:4893)及びKRAS(GeneID:3845)が存在し、3つのRAS遺伝子は、高度の配列相同性(>90%)を有する。RAS遺伝子変異は、がんの駆動因子であり、RAS遺伝子変異は、最も頻繁な癌原遺伝子変異である。RAS遺伝子によってコードされるRASタンパク質の配列は、当業者に周知であり、様々な公開データベースにおいて見ることができる。例えば、KRASタンパク質の配列は、NCBI: NP_001356715.1に見ることができ、NRASタンパク質の配列は、NCBI: NP_002515.1に見ることができ、HRASタンパク質の配列は、NCBI: NP_001123914.1に見ることができる。
【0192】
本明細書において使用される場合、「RAS G13D変異体」という用語は、13位のアミノ酸残基GlyがAspに変異しているRAS変異体を指す。一部の実施形態において、RAS G13D変異体は、KRAS G13D変異体を指す。本明細書において、RAS G13D変異体のアミノ酸配列に言及する場合、配列番号51に示される配列が、記載のために使用される。例えば、「RAS G13D変異体タンパク質の7~17位のアミノ酸残基」という表現は、配列番号51に示される配列の7~17位のアミノ酸残基、又は他のRAS G13D変異体アミノ酸配列の対応する断片を指す。「対応する断片」は、配列が最適に整列される場合に、即ち、配列が最も高い同一性パーセントのために整列される場合に、比較される配列中の同じ位置の断片を指す。
【0193】
本明細書において使用される場合、「主要組織適合遺伝子複合体」及び「MHC」という用語は、互換的に使用され、移植された組織が同一であるか、免疫応答に密接に関連するか、並びに近接して連結されているか、並びにMHC-I分子及びMHC-II分子を主に含むかどうかを決定する遺伝子の群を指す。「MHC-I分子」は、MHC-I α鎖及びβ2ミクログロブリン鎖の二量体を指し、「MHC-II分子」は、MHC-II α鎖及びMHC-II β鎖の二量体を指す。ヒトMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)複合体と呼ばれる。
【0194】
本明細書において使用される場合、「MHC-ペプチド複合体」という用語は、当技術分野において周知のMHCペプチド結合ポケットに結合したペプチドを含むMHC分子(MHC-I又はMHC-II)を指す。一部の場合において、MHC分子は、細胞表面上で発現した膜結合性タンパク質であり得る。他の場合において、MHC分子は、膜貫通領域又は細胞質領域を欠いている可溶性タンパク質であってもよい。
【0195】
本明細書において使用される場合、TCRへの言及における「エピトープ」という用語は、TCRが結合することができる抗原(例えば、ペプチド又はペプチド-MHC複合体)の局在化領域を指す。ある特定の実施形態において、TCRが結合したエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学的研究、ELISAアッセイ、水素/重水素交換質量分析(例えば、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレー質量分析)、フローサイトメトリー、変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)及び/又は構造モデリングによって検出することができる。一部の例示的な実施形態において、抗原のエピトープは、アラニンスキャニング変異研究を使用することによって決定することができる。ある特定の実施形態において、抗原は、MHC-II分子によって提示されるペプチド-MHC複合体又はペプチドである。
【0196】
本明細書において使用される場合、「T細胞受容体」及び「TCR」という用語は、互換的に使用され、αβ又はγδT細胞受容体由来のCDR又は可変領域を含む分子を指す。TCRの例としては、限定されるものではないが、全長TCR、TCRの抗原結合性断片、膜貫通領域及び細胞質領域を欠いている可溶性TCR、可撓性リンカーによって結合したTCR可変領域を含有する単鎖TCR、操作されたジスルフィド結合を介して連結されたTCR鎖が挙げられる。
【0197】
本明細書において使用される場合、「全長TCR」という用語は、第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖の二量体を含むTCRを指し、ポリペプチド鎖のそれぞれは、膜貫通領域及びTCR細胞質領域を含むTCR可変領域及びTCR定常領域を含む。ある特定の実施形態において、全長TCRは、成熟全長TCR α鎖及び成熟全長TCR β鎖を含む。ある特定の実施形態において、全長TCRは、成熟全長TCR γ鎖及び成熟全長TCR δ鎖を含む。
【0198】
本明細書において使用される場合、「TCR可変領域」という用語は、成熟TCRポリペプチド鎖(例えば、TCR α鎖又はβ鎖)の一部分を指し、その部分は、TCR α鎖のTRAC遺伝子、TCR β鎖のTRBC1遺伝子若しくはTRBC2遺伝子、TCR δ鎖のTRDC遺伝子、又はTCR γ鎖をコードするTRGC1遺伝子若しくはTRGC2遺伝子によってコードされない。ある特定の実施形態において、TCR α鎖のTCR可変領域は、TRAV遺伝子及び/又はTRAJ遺伝子によってコードされる成熟TCR α鎖ポリペプチドの全てのアミノ酸を包含し、TCR β鎖のTCR可変領域は、TRBV遺伝子、TRBD遺伝子及び/又はTRBJ遺伝子によってコードされる成熟TCR β鎖ポリペプチドの全てのアミノ酸を包含する(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「T Cell Receptor Facts Book」、(2001)、LeFranc and LeFranc、Academic Press、ISBN0-12-441352-8を参照されたい)。TCR可変領域は、典型的には、フレームワーク領域(FR)1、2、3及び4、並びに相補性決定領域(CDR)1、2及び3を含む。本明細書において、「α鎖可変領域」及び「Vα」という用語は、互換的に使用され、TCR α鎖の可変領域を指す。「β鎖可変領域」及び「Vβ」という用語は、互換的に使用され、TCR β鎖の可変領域を指す。
【0199】
本明細書において使用される場合、TCRへの言及における「CDR」又は「相補性決定領域」という用語は、TCR鎖(例えば、α鎖又はβ鎖)の可変領域内で見出される連続していない抗原結合部位を指す。これらの領域は、Lefranc、(1999)「The Immunologist」、7:132~136頁;Lefrancら、(1999)「Nucleic Acids Res」27:209~212頁;LeFranc (2001)「T Cell Receptor Facts Book」、Academic Press社、ISBN 0-12-441352-8;Lefrancら、(2003) Dev Comp Immunol 27(1):55~77頁;及びKabatら、(1991)「Sequences of proteins of immunological interest」に記載されており、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、CDRは、上記のLefranc (1999)に記載されるIMGT番号付けシステムに従って定義される。ある特定の実施形態において、CDRは、上記のKabatに記載されるKabat番号付けシステムに従って定義される。
【0200】
本明細書において使用される場合、TCRへの言及における「FR」又は「フレームワーク領域」という用語は、上記に定義されたCDR以外のTCR鎖(例えば、α鎖又はβ鎖)の可変領域中のアミノ酸残基を指す。
【0201】
本明細書において使用される場合、TCRへの言及における「定常領域」という用語は、TRAC遺伝子(TCR α鎖について)、TRBC1若しくはTRBC2遺伝子(TCR β鎖について)、TRDC遺伝子(TCR δ鎖について)、又はTRGC1若しくはTRGC2遺伝子(TCR γ鎖について)によってコードされるTCR部分を指し、任意選択で、膜貫通領域の全部若しくは一部分及び/又は細胞質領域の全部若しくは一部分を欠く。ある特定の実施形態において、TCR定常領域は、膜貫通領域及び細胞質領域を欠く。TCR定常領域は、TRAV、TRAJ、TRBV、TRBD、TRBJ、TRDV、TRDD、TRDJ、TRGV、又はTRGJ遺伝子によってコードされるアミノ酸を含有しない(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、T Cell Receptor Facts Book、(2001)、LeFranc及びLeFranc、Academic Press社、ISBN 0-12-441352-8を参照されたい)。
【0202】
TCRの文脈において、「細胞外」という用語は、細胞の外側に位置するTCR鎖の1つ又は複数の部分を指し、「膜貫通」という用語は、細胞の細胞膜に埋め込まれたTCR鎖の1つ又は複数の部分を指し、「細胞質」という用語は、細胞の細胞質中に位置するTCR鎖の1つ又は複数の部分を指す。
【0203】
本明細書において使用される場合、TCRへの言及における「抗原結合性部分」という用語は、TCRの任意の部分又は断片を指し、ここで、TCRの一部としての部分又は断片は、TCR(親TCR)の生物学的活性を保持している。生物学的活性としては、親TCRが結合する同じ抗原(例えば、RAS G13D変異体)又はMHC-抗原複合体に特異的に結合する能力が挙げられ得る。
【0204】
本明細書において使用される場合、「特異的結合」という用語は、2個の分子間の無作為でない結合反応、例えば、抗体とその抗原との間の反応を指す。特異的結合相互作用の強さ又は親和性は、その相互作用についての平衡解離定数(KD)の用語で表すことができる。本発明において、「KD」という用語は、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、これは、抗体と抗原との間の結合親和性を記載するために使用される。平衡解離定数が小さくなるほど、抗体-抗原結合が緊密になり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。2個の分子間の特異的結合特性は、当技術分野において周知の方法を使用して決定することができる。1つの方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度を測定することを含む。「会合速度定数」(ka又はkon)及び「解離速度定数」(kdis又はkoff)は両方とも、濃度並びに実際の会合及び解離の速度から算出することができる(Malmqvist M、Nature、1993、361:186~187頁を参照されたい)。kdis/konの比は、解離定数KDに等しい(Daviesら、Annual Rev Biochem、1990; 59: 439~473頁を参照されたい)。KD、kon及びkdisの値は、任意の有効な方法によって測定することができ、例えば、Biacoreにおける表面プラズモン共鳴(SPR)によって、又は生物発光干渉分光法若しくはKinexaによって測定することもできる。
【0205】
TCRの文脈において、「特異的結合」又は「特異的認識」という用語は、TCRが特異的抗原(例えば、特異的ペプチド又は特異的ペプチド-MHC複合体)に優先的に結合する能力を指す。典型的には、抗原に特異的に結合するTCRは、他の抗原に結合しないか、又はより低い親和性で他の抗原に結合する。例えば、抗原特異的TCRは、非特異的抗原についての会合定数(Ka)の少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍、又は10,000倍のKaで標的抗原に結合する。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるTCR又はその抗原結合性断片は、RAS G13D変異体に特異的に結合する。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるTCR又はその抗原結合性断片は、第1の態様のエピトープペプチド又はそのバリアントに特異的に結合する。ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるTCR又はその抗原結合性断片は、配列番号14~23、26~17のいずれか1つ(特に、配列番号20)に示される配列に特異的に結合する。
【0206】
本明細書において使用される場合、「抗原提示細胞」又は「APC」という用語は、その細胞表面上で主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に会合するタンパク質のペプチド断片を提示することができる任意の細胞を指す。そのような細胞は、当業者に周知であり、限定されるものではないが、例えば、樹状細胞、単球、マクロファージ、リンパ芽球様細胞(LCL)等が挙げられる。
【0207】
本明細書において使用される場合、「免疫細胞」という用語は、1つ又は複数のエフェクター機能を有する免疫系の任意の細胞を指す。免疫細胞は、典型的には、免疫応答において役割を果たす細胞を含み、それらは、通常、造血系起源の細胞である。「エフェクター機能」という用語は、免疫細胞の特別の機能、例えば、標的細胞に対する免疫攻撃を増強又は促進する機能又は応答(例えば、標的細胞を死滅させること、又はその成長若しくは増殖を阻害すること)を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性、又はサイトカインの分泌を助ける又は含む活性であり得る。免疫細胞の例としては、数ある中でも、T細胞(例えば、α/βT細胞及びγ/δT細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、肥満細胞、及び骨髄由来マクロファージが挙げられる。
【0208】
本発明の免疫細胞は、自己/自家(「自己」)又は非自己(「非自己」、例えば、同種、同系又は異種)であってもよい。本明細書において使用される場合、「自家」は、細胞が、同じ対象由来であることを指し、「同種」は、細胞が、比較される細胞のものと遺伝的に異なる同じ種の対象由来であることを指し、「同系」は、細胞が、比較される細胞のものと遺伝的に同一である異なる対象由来であることを指し、「異種」は、細胞が、比較される細胞のものと異なる種由来であることを指す。ある特定の実施形態において、本発明の免疫細胞は、自家又は同種である。
【0209】
本明細書において使用される場合、「細胞傷害性剤」という用語は、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)任意の薬剤、例えば、数ある中でも、化学療法薬、細菌毒素、植物毒素、又は放射性同位元素を含む。
【0210】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を達成することができる場合、ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入、又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができ、その結果、それが運ぶ遺伝子材料エレメントは、宿主細胞中で発現することができる。ベクターは、当業者に周知であり、限定されるものではないが、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC);ファージ、例えば、ラムダファージ又はM13ファージ、及び動物ウイルスが挙げられる。ベクターとして使用することができる動物ウイルスとしては、限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子を含む発現を制御する各種のエレメントを含有し得る。加えて、ベクターはまた、複製開始点を含有し得る。
【0211】
本明細書において使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクターが導入され得る細胞を指し、これは、限定されるものではないが、原核細胞、例えば、大腸菌(Escherichia coli)若しくは枯草菌(Bacillus subtilis)、真菌細胞、例えば、酵母細胞若しくはアスペルギルス(Aspergillus)、昆虫細胞、例えば、S2ドロソフィラ(Drosophila)細胞若しくはSf9、又は動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、若しくはヒト細胞、免疫細胞(例えば、Tリンパ球、NK細胞、単球、マクロファージ、又は樹状細胞等)を含む。宿主細胞は、単一細胞又は細胞の集団を含み得る。
【0212】
本明細書において使用される場合、「単離された」という用語は、それが天然で付随する成分(例えば、核酸、タンパク質、又は他の天然に存在する生物学的分子若しくは有機分子)から分離又は精製されていることを意味する。
【0213】
本明細書において使用される場合、「同一性」という用語は、2個のポリペプチド間、又は2個の核酸間の配列の一致を指すために使用される。比較される両配列の位置が、同じ塩基又はアミノ酸のモノマーサブユニットで占有される(例えば、2個のDNA分子のそれぞれの位置が、アデニンによって占有されるか、又は2個のポリペプチドのそれぞれの位置が、リジンによって占有される)場合、その分子は、その位置において同一である。2個の配列間の「同一性パーセント」は、比較される位置の数で割った、2個の配列によって共有される一致している位置の数の100倍の関数である。例えば、2個の配列は、10個のうち6個の位置が一致する場合、60%の同一性を有する。例えば、DNA配列のCTGACT及びCAGGTTは、50%の同一性を有する(合計で6個のうち3個の位置が一致する)。一般に、比較は、2個の配列が最大の同一性のために整列される場合に行われる。そのようなアライメントは、例えば、Alignプログラム(DNAstar, Inc.社)等のコンピュータープログラムによって好都合に行うことができる、Needlemanら(1970) J. Mol. Biol. 48:443~453頁の方法を使用して達成することができる。ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers及びW. Miller (Comput. Appl. Biosci.、4:11~17頁(1988))のアルゴリズムを使用して、PAM120ウェイト残基テーブル、12のギャップ長さペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することによって、2個のアミノ酸配列の間の同一性パーセントを決定することもできる。加えて、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch (J. Mol. Biol. 48:444~453頁(1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスと、16、14、12、10、8、6、若しくは4のギャップウェイト、及び1、2、3、4、5、若しくは6の長さウェイトを使用することによって、2個のアミノ酸配列の間の同一性パーセントを決定することができる。
【0214】
本明細書において使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの予想される特性に不利な影響を及ぼさない又は変化させないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、当技術分野において公知の標準的な技法、例えば、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発によって導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基の、類似の側鎖を有するアミノ酸残基による置換、例えば、対応するアミノ酸残基と物理的又は機能的に類似の(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合又は水素結合を形成する能力を含む化学的特性等)残基による置換を含む。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。従って、対応するアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置き換えることが好ましい。アミノ酸の保存的置換を特定するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Brummellら、Biochem. 32:1180~1187頁(1993); Kobayashiら、Protein Eng. 12(10):879~884頁(1999);及びBurksら、Proc. Natl Acad. Set USA 94: 412~417頁(1997)を参照されたい)。
【0215】
本明細書に言及される20個の従来のアミノ酸の記述は、従来の使用法に従う。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Immunology-A Synthesis(第2版、E. S. Golub及びD. R. Gren編、Sinauer Associates社、Sunderland、Mass. (1991))を参照されたい。本発明において、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用される。また、本発明において、アミノ酸は、一般に、当技術分野において公知の一文字略称及び三文字略称によって表わされる。例えば、アラニンは、A又はAlaによって表され得る。
【0216】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤」という用語は、対象及び活性成分と薬理学的及び/又は生理学的に適合する担体及び/又は賦形剤を指し、これは、当技術分野において周知であり(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences. Gennaro AR編、第19版、Pennsylvania: Mack Publishing Company社、1995)を参照されたい)、限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧維持剤、吸収遅延剤、保存剤を含む。例えば、pH調整剤としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝液が挙げられる。界面活性剤としては、限定されるものではないが、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-80が挙げられる。イオン強度増強剤としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウムが挙げられる。保存剤としては、限定されるものではないが、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等が挙げられる。浸透圧維持剤としては、限定されるものではないが、糖、NaCl等が挙げられる。吸収遅延剤としては、限定されるものではないが、モノステアレート及びゼラチンが挙げられる。希釈剤としては、限定されるものではないが、水、水性緩衝液(例えば、緩衝食塩水)、アルコール及びポリオール(例えば、グリセロール)等が挙げられる。保存剤としては、限定されるものではないが、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等が挙げられる。安定剤は、当業者によって一般に理解される意味を有し、医薬中の活性成分の所望の活性を安定化することができ、限定されるものではないが、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、サッカリド(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、ラクトース、デキストラン、又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエイ、アルブミン、又はカゼイン)、又はそれらの分解産物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)等を含む。ある特定の例示的な実施形態において、薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無菌の注射可能な液体(例えば、水性又非水性の懸濁液又は溶液)を含む。ある特定の例示的な実施形態において、そのような無菌の注射可能な液体は、注射用水(WFI)、注射用静菌水(BWFI)、塩化ナトリウム溶液(例えば、0.9%(w/v)のNaCl)、デキストロース溶液(例えば、5%のデキストロース)、界面活性剤含有溶液(例えば、0.01%のポリソルベート20)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、リンゲル液、及びその任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0217】
本明細書において使用される場合、「防止」という用語は、対象における疾患又は障害又は症状(例えば、腫瘍)の出現を防止又は遅延させるために行われる方法を指す。本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、有益な又は所望の臨床転帰を得るために行われる方法を指す。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床転帰としては、限定されるものではないが、検出可能又は検出不能にかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の低減、疾患状態の安定化(即ち、もはや悪化しない)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は軽減、及び症状の緩和(部分的又は全体的にかかわらず)が挙げられる。加えて、「処置」はまた、処置を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、延長された生存期間を指し得る。
【0218】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を達成するか、又は少なくとも部分的に達成するために十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍)を防止するための有効量は、疾患(例えば、腫瘍)の出現を防止、停止又は遅延させるために十分な量を指し;疾患を処置するための有効量は、患者における既存の疾患又はその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に防止するために十分な量を指す。そのような有効量の決定は、十分に当業者の能力内である。例えば、治療的使用のために有効な量は、処置される疾患の重症度、患者自身の免疫系の一般的状態、患者の年齢、体重、及び性別等の一般的状態、薬物の投与の方法、及び同時的に投与される他の処置等に依存するであろう。
【0219】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、霊長類哺乳動物、例えば、ヒトを指す。ある特定の実施形態において、「対象」という用語は、そこで免疫応答を誘発することができる生命体を指す。ある特定の実施形態において、対象(例えば、ヒト)は、RAS G13D変異陽性腫瘍を有するか、又は上記で述べた疾患を患うリスクがある。
【0220】
「例えば(for example)」、「例えば(such as)」、「例えば(e.g.)」、「含む(including)」、「含む(comprising)」という用語、又は類似の表現が本明細書において使用される場合、これらの用語は、限定的な用語として見なされないが、「それに限定されない(not limiting to)」又は「及び限定されない(and without limitation)」を意味するとして解釈される。
【0221】
本発明の有益な効果
本発明は、RAS G13D変異体のエピトープペプチド、並びにエピトープペプチドを特異的に認識するT細胞受容体(TCR)、エピトープペプチド又はTCRを含む細胞及び医薬組成物、エピトープペプチド又はTCRをコードする核酸、エピトープペプチド又はTCRを調製するためのベクター及び宿主細胞、並びにエピトープペプチド又はTCRを使用して対象を処置する方法を提供する。本発明によって提供されるエピトープペプチド及びTCRは、RAS G13D変異を含有する腫瘍に対する免疫応答を誘導し、このようにして、対象における上記で述べた腫瘍を処置することができる。加えて、本発明によって提供されるエピトープペプチド及びTCRは、MHC-II拘束のものであり、MHC-II拘束は、アジア太平洋集団において高い頻度を優先的に示す対立遺伝子であり、そのため、これは、特に、アジア太平洋領域における患者に好適である。加えて、MHC-II拘束はまた、欧州人、アメリカ人及びオセアニア人の集団にも広く分布しており、そのため、これは、幅広い適用展望を有する。従って、本発明は、RAS G13D変異陽性腫瘍の処置のための新規なT細胞に基づく免疫療法を提供し、これは、大きな臨床的価値を有する。
【0222】
本発明の実施形態を、図面及び実施例を参照して下記に詳細に記載するが、当業者であれば、以下の図面及び実施例が本発明の範囲を限定するよりもむしろ、本発明を説明するためだけのものであることを理解するであろう。本発明の様々な目的及び利点は、添付の図面及び以下の好ましい実施形態の詳細な記載から、当業者に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0223】
図1】実施例5における異なるTILクローンのIFNγの特異的放出の結果を示す図である。
図2】異なるHLA-DQ型を有するHCT116細胞によって提示されるG13Dペプチドによって誘導されるIL2のB8.2.4 TCR-T特異的放出の検出結果を示す図である。
図3】異なるHLA-DQ型を有するLovo細胞によって提示されるG13Dペプチドによって誘導されるIL2のB8.2.4 TCR-T特異的放出の検出結果を示す図である。
図4】NCI-H1944細胞によって提示されるG13Dペプチドによって誘導されるIL2のB8.2.4 TCR-T特異的放出の検出結果を示す図である。
図5】NCI-H1944細胞によって提示されるG13Dペプチドによって誘導されるIL2のB8.2.4 TCR-T特異的放出の検出結果を示す図である。
図6】実施例7における異なる長さのG13Dペプチドをロードされた抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-T細胞の共培養後のIL2放出の結果を示す図である。
図7】実施例8における異なる部位にアラニン置換を含むG13Dペプチドをロードされた抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-T細胞の共培養後のIL2放出の結果を示す図である。
図8】実施例9におけるB8.2.4 TCR-TによるLovo-CIITA-DQA1*05:01/DQB1*0301-Luc細胞の選択的死滅の結果を示す図である。
図9A】実施例10におけるRAS G13D変異体に対するB8.2.4 TCR-Tの親和性の検出結果を示す図である。
図9B】実施例10におけるRAS G13D変異体に対するB8.2.4 TCR-Tの親和性の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0224】
配列情報
本発明に関与する配列に対する情報を、下記のTable 1(表1)に提供する。
【0225】
【表1A】
【0226】
【表1B】
【0227】
【表1C】
【0228】
【表1D】
【0229】
【表1E】
【0230】
【表1F】
【0231】
【表1G】
【0232】
【表1H】
【0233】
【表1I】
【実施例
【0234】
本発明を、ここに、以下の実施例を参照して本発明を記載し、実施例は、本発明を説明することを意図するものであって、それを限定することを意図するものではない。
【0235】
他に規定されない限り、本発明において使用された分子生物学の実験法及びイムノアッセイ法は、基本的に、J. Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、1989、及びF. M. Ausubelら、Short protocols in Molecular Biology、第3版、John Wiley & Sons, Inc.社、1995に記載される方法を参照し;制限酵素は、製品の製造業者によって推奨される条件に従って使用した。当業者であれば、実施例は、例として本発明を記載するものであり、特許請求の範囲に係る発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解する。
【0236】
(実施例1)
腫瘍浸潤性T細胞の培養及び拡大増殖
RAS変異G13Dを含有する結腸直腸がんを有する患者由来の外科的に切除された腫瘍試料を、シェルメスを用いて刻み2mm~4mmの腫瘍塊にし、DPBS溶液で2回洗浄し、24ウェルプレートにおいて培養し、IL2(6000IU/ml)、ヒトAB血清(2%)、Hepes(25mM)、Xvivo15を含有するTIL培地中で培養した。2~3日ごとに、培地の半分を交換し、腫瘍浸潤性Tリンパ球(TIL)がプレートの60~80%を覆うまで成長したら(約0.5~3.0×106個のTILを含有する)、TILを、採取し、CS10凍結溶液中で保管した。
【0237】
TIL細胞を、γ線によって照射された、異なるドナーに由来する末梢血単核細胞(プールされたPBMC、ドナー>3人)と1:30~1:200の比で共培養することによって拡大増殖し、T175培養フラスコ中で培養し、培養フラスコのそれぞれは、細胞1×108個以下を含有した(培養培地は、10ng/mlのOKT3が補充されたTIL培地であった)。培養3日後、培地の半分を交換し(3000IU/mlのIL2、2%のヒトAB血清を含有するXvivo15培地);培養7日後、細胞を1回洗浄し、次いで、培地を交換し、1.0×106個/mlで継代し;細胞を、培養の10~14日後に、採取及び凍結した。
【0238】
(実施例2)
RAS G13D抗原mRNAの調製
RAS G13D変異を含有する配列について、ベクターUTR-LAMP3 Lumenal-KRASG13D-LMP3 Sorting-UTRを、以下の設計に従って構築し、配列を、Table 1(表1)中の配列番号1に示し、ここで、KRASは、一重下線でマークし、G13D変異は、二重下線でマークした。上記の配列を、合成し、pcDNA3.1ベクターにクローニングし、mRNA転写物を、T7プロモーター(mMESSAGE mMACHINE T7転写キット、Thermofisher社)を使用してインビトロで調製し、mRNAを、-80℃で保管した。
【0239】
(実施例3)
抗原提示細胞によるスクリーニング
DC(樹状細胞)成熟: 患者由来の自家末梢血CD14陽性細胞を、MACS CD14単離キットで単離し、IL4(1000IU/ml)、GM-CSF(1000IU/ml)及び1%のヒトAB血清を含有するAIM-V培地中で培養した。培養培地を、3日目に新鮮な培地と交換し、CS10凍結溶液中での凍結保存を、培養の5~6日後に行った。
【0240】
LCL(リンパ芽球様細胞株)誘導: 患者由来の5×106個の末梢血単核細胞を、10%のウシ胎仔血清を含有するRPMI1640培地に再懸濁させ、EBVを含有する細胞培養培地のB95.8上清を添加し、誘導は、一般に、14~30日以内に終了し、培地の半分を、誘導期間の間、7日ごとに交換し、誘導されたLCL細胞を、拡大増殖及び凍結保存した。
【0241】
回収後、TIL細胞を、スクリーニングのために、少なくとも48時間培養した。抗原提示細胞(APC)と称されるDC細胞又はLCL細胞を、Neonエレクトロポレーターを使用して、KRAS G13D mRNAでトランスフェクトし、ここで、APCを、1×107個/mlに、エレクトロポレーション溶液に再懸濁させ、100μlの細胞に、それぞれのエレクトロポレーション(1500V、30ms、1パルス)について5~8μgのmRNAを添加した。トランスフェクトされたAPCは、培養の翌日に使用することができる。96ウェルU底プレートにおいて、エレクトロポレーションされた1~2×105個のTIL細胞及び0.5×105個のDC細胞又は4×105個のLCL細胞を添加し、Xvivo15培地中で培養し、細胞培養上清を、培養16時間後に収集し、上清におけるIFNγ放出を、ヒトIFNγ Flexセットによって決定した。患者B8は、転移性結腸直腸がんを有し、腫瘍は、KRASG13D変異を有し、TILスクリーニング結果は以下の通りであった。
【0242】
【表2】
【0243】
(実施例4)
TILの選別及び拡大増殖
APCによって刺激されたTIL細胞を、フローサイトメトリーによって選別し、1×106個のTIL細胞を、フロー緩衝液(DPBS溶液中、1%のヒトAB血清、2mMのEDTA)に再懸濁させ、CD3/CD137抗体及びPI(ヨウ化プロピジウム溶液)を添加し、4℃で1時間インキュベートし、次いで、フロー緩衝液で2回洗浄し、BD FACSAiraIIフローソーターで選別した。保管された集団は、PI陰性、CD3陽性及びCD137陽性細胞集団であった。選別された細胞を、10%のヒトAB血清を含有するRPMI1640培地中で保管し、氷上に置いた。収集された選別された細胞(CD3及びCD137+)を、4℃で、300gで10分間遠心分離して、保存溶液の80%を除去し、DPBS溶液で2回洗浄し、次いで、DPBSに再懸濁させ、10×Genomics単一細胞シークエンシングに付した。
【0244】
(実施例5)
KRASG13Dを認識することができるTCRのスクリーニング
単一細胞シークエンシングにおけるTCRクローンを、TRAVmCa-P2A-TRBVmCbの配列に従って遺伝子合成に付し、ここで、TRAVは、TCRのα鎖可変領域であり、mCaは、マウスTCRα定常領域であり(そのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号45及び46に示された)、TRBVは、TCRのβ鎖可変領域であり、mCbは、マウスTCRβ定常領域であり(そのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号47及び48に示された)、P2Aは、自己切断ペプチドであり(そのヌクレオチド配列は、配列番号53に示された);上記の配列を、レンチウイルスシャトルベクター(GV401)にクローニングし;移入及びパッケージベクターを、標準的なレンチウイルスベクターパッケージング法に従って、293T細胞に一過性にトランスフェクトし、培養上清を収集し、その結果、培養上清は、TCRを発現するレンチウイルスベクターを含有していた。健康なドナー由来のT細胞を、OKT3/15E8抗体コーティング6ウェルプレートにおいて、24時間活性化し、TCR含有レンチウイルスベクターで形質導入し、TCRスクリーニングのために6~8日間培養し(形質導入されたT細胞を収集し、FACS緩衝液で洗浄し、1×106個の操作されたT細胞を、マウスTCRβ定常領域を認識する抗体を添加することによって染色して、組換えTCRの発現を検出した)、このようにして、組換えTCRによって操作されたT細胞を得た。
【0245】
「実施例3」におけるエレクトロポレーション法に従って、患者B8由来の自家LCL細胞を、KRASG13D mRNAで一過性にトランスフェクトし、終夜培養し;組換えTCRによって操作されたT細胞及びエレクトロポレーションされたLCL細胞を、1×105:1×105の比で接種し、96ウェルU底プレート中で共培養し、上清におけるIFNγの特異的放出を検出し、結果を図1に示した。スクリーニング結果は、B8.2.4TCRと番号付けられたクローンが、KRAS G13D点変異を特異的に認識することができたが、野生型RASを認識しなかったことを示した。B8.2.4 TCRの配列を、下記の表に示した。
【0246】
【表3】
【0247】
(実施例6)
B8.2.4 TCR HLA拘束の検出
組換えB8.2.4 TCRを発現するT細胞(本明細書の以下で、B8.2.4 TCR-Tと称する)を、実施例5に記載される方法に従って調製し、これは、組換えTCRをコードするヌクレオチド配列を含有するレンチウイルスベクターを健康なドナー由来のT細胞に形質導入することを含み、ここで、組換えTCRのα鎖(TRAVmCa)及びβ鎖(TRBVmCb)のヌクレオチド配列を、それぞれ、配列番号49及び50に示した。B8.2.4 TCRのHLA拘束を、下記に記載される方法によって決定した。
【0248】
HCT116細胞株及びLovo細胞株(結腸直腸がん)は、KRAS G13Dヘテロ接合性変異を含有し;NCI-H1944細胞株(肺がん)は、KRAS G13Dヘテロ接合性変異を含有し;それらのHLA-DQ型を、下記のTable 4(表4)に示した。
【0249】
【表4】
【0250】
CIITA遺伝子(Genebank ID:4261)を、HCT116細胞、Lovo細胞、NCI-H1944細胞において過剰発現させて、SW620-CIITA細胞株又はCFPAC1-CIITA細胞株を構築し、HLA-DQA1*05:01/05:05及びHLA-DQB1*03:01/03:03/03:19を過剰発現させて、HLA-DQ遺伝子型細胞株を構築した(HLA-DQの組み合わせについてTable 5(表5)を参照されたい)。上記の細胞を、収集し、RPMI1640培地に再懸濁させ、10μg/mlのRAS WT 23mer(その配列は、配列番号12に示された)又はG13D 23mer(その配列は、配列番号13に示された)ペプチド(合成され、溶解するためにDMSOが添加された)を添加した。37℃で2時間インキュベートし、DPBS溶液で2回洗浄した後、2×104:2×104の比の、ペプチドがロードされた抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-T細胞を、2%のウシ胎仔血清を含有するRPMI1640培地中で終夜共培養し、上清におけるIL2又はIFNγの放出を測定し、結果を図2図5に示した。
【0251】
【表5】
【0252】
結果は、B8.2.4 TCRが、HCT116細胞によって外因的に提示されるRAS G13Dペプチド(HLA-DQA1*05:01又はHLA-DQA1*05:05/DQB1*03:19、及びHCT116-DQ(Table 5(表5)に示されるように、DQA1/DQB1の組み合わせの上位4つを過剰発現する)を認識することができたが、内因的に提示されたRAS G13Dエピトープを認識しなかったことを示した。B8.2.4 TCRは、HLA-DQ遺伝子の組み合わせを過剰発現するLovo細胞によって外因的に提示されたRAS G13Dペプチドを認識することができ(Table 5(表5)を参照されたい)、同時に、HLA-DQの組み合わせHLA-DQA1*05:01/05:05及びHLA-DQB1*0301によって内因的に提示されたRAS G13Dエピトープを認識することができた。B8.2.4 TCRは、NCI-H1944細胞によって内因的に提示されたRAS G13Dエピトープを認識することができた(HLA-DQについてTable 4(表4)を参照されたい)。
【0253】
HCT116結腸直腸がん細胞は、抗原プロセシング及び提示経路において欠失又は変異を有することができ、その結果、内因性RAS G13DエピトープをHLA-DQ複合体にロードすることができなかった。Lovo結腸直腸がん細胞において、HLA-DQB1*0301と組み合わされたHLA-DQA1*05:01/05:05の過剰発現は、内因性RAS G13Dエピトープを効率的に提示することができたが;HLA-DQB1*0303と組み合わされたHLA-DQA1*05:01/05:05は、RAS G13Dエピトープの内因性提示の低い効率を示したが、高い効率でRAS G13Dを外因的に提示することができた。
【0254】
要約すると、結果は、B8.2.4 TCRが、HLA-DQB1*03:01と組み合わされたHLA-DQA1*05:01又はDQA1*05:05によって提示されるRAS G13Dエピトープを効率的に認識することができ、相対的により低い効率で、HLA-DQB1*03:03と組み合わされたHLA-DQA1*05:01又はDQA1*05:05によって提示されるRAS G13Dエピトープも認識することができたことを示した。
【0255】
(実施例7)
RAS G13Dのエピトープの提示の決定
以下の表に示されるペプチドを、G13D変異部位を含有し、自家LCL細胞によって提示される、23の長さを有するペプチド(配列番号13)に基づいて合成し、IFNγの放出を測定して、B8.2.4 TCRによって認識されるRAS G13Dエピトープをスクリーニングした。
【0256】
【表6】
【0257】
上記のペプチドを合成した後、DMSOを添加して、それらを溶解し、患者B8由来の自家LCL細胞を、RPMI1640培地に再懸濁させ、1μg/mlの最終濃度まで上記のペプチドを添加し、2時間インキュベートし、DPBS溶液で2回洗浄し、2%のウシ胎仔血清を有するRPMI1640培地に、2×105個/mlで再懸濁させ;2×104:2×104の比の、ペプチドがロードされた抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-T細胞を、終夜共培養し、上清におけるIFNγの放出を測定し;結果を、図6に示した。
【0258】
上記の結果は、G13D-RT6ペプチド(配列番号20)が、B8.2.4 TCR-TのIL2の放出を最も効率的に誘導することができ、その結果、HLA-DQの組み合わせによって提示されるRAS G13Dエピトープ(Table 5(表5)を参照されたい)が、G13D-RT6ペプチドであったことを示し、ここで、RAS G13Dエピトープのコア配列は、VVVGAGDVGKS(配列番号14)であった。上記の結果は、RAS G13D変異体の7~17位のアミノ酸残基を含むペプチドが、Tリンパ球を効率的に活性化し、それによって、RAS G13D変異を有する腫瘍に対する免疫応答を誘導することができたことも示した。
【0259】
(実施例8)
アラニンスキャニングを介したRAS G13Dエピトープにおけるエピトープ提示に関与する重要なアミノ酸の決定
RAS G13Dエピトープペプチドにおける1個ずつのアラニンの置き換えを行うことによって、RAS G13Dエピトープにおける抗原提示に関与する重要なアミノ酸をスクリーニングすることができた。アラニン変異後のペプチド(変異したアミノ酸に下線を付けた)を以下の表に示した。
【0260】
【表7】
【0261】
上記のペプチドを合成した後、抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-Tの共培養後の上清におけるIFNγ又はIL2を、実施例7における方法に従って測定し、結果を図7に示した。上記の結果は、RAS G13Dペプチドにおける位置p8V、p10G、p14V、及びp16Kのアミノ酸が、B8.2.4 TCRの認識のために最も重要であった一方で、位置p9V及びp11Gのアミノ酸が、B8.2.4 TCRの認識のためにあまり重要ではなかったことを示した。
【0262】
(実施例9)
B8.2.4 TCR-Tの腫瘍細胞溶解の決定
Lovo-CIITA-DQA1*05:01/DQB1*0301-Luc(ホタルルシフェラーゼを発現する)細胞を、2%のFBSを含有するRPMI1640培地に再懸濁させ、96ウェルプレートにおいて2×104個/ウェルで接種し、モック-T及びB8.2.4 TCR-CD4+Tを10、3、1、0.3及び0.1のE:T比で添加し;T細胞なしの対照(陰性対照ウェルRLU)を設定し;24時間共培養した後、100μlのOne-Gloルシフェラーゼ基質をそれぞれのウェルに添加し、発光(相対光単位、RLU)を読み取った。
死滅率=1-(試験ウェルのRLU/陰性対照ウェルのRLU)
【0263】
結果を図8に示す。結果は、B8.2.4 TCR-Tが、用量依存的な様式で腫瘍細胞を死滅させることができ、CD4依存性であったことを示した。
【0264】
(実施例10)
B8.2.4 TCRの機能的アビディティーの決定
患者B8由来の自家LCL細胞に、RAS G13D-RT6ペプチド(配列番号20)をロードし、それぞれ、異なる濃度(10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/ml、0.01μg/ml、0.001μg/ml)の対応する野生型ペプチド(配列番号52)を、37℃で2時間培養し、DPBS溶液で2回洗浄し、2×104:2×104の比の抗原提示細胞及びB8.2.4 TCR-T細胞を、2%のウシ胎仔血清を含有するRPMI1640培地中で終夜共培養し、上清におけるIL2及びIFNγの放出を測定した。結果を図9A図9Bに示した。結果は、B8.2.4 TCR-Tが、試験された濃度範囲内でRAS G13D変異体ペプチドを特異的に認識することができ、IFNγ及びIL2を放出することができ、ここで、抗原ペプチド濃度が0.01μg/mlであった場合に、それが、RAS G13D変異体ペプチドを、依然として効率的に認識することができたことを示し、TCRを発現するT細胞が、RAS G13D変異体について高親和性及び高特異性を有していたことを示した。
【0265】
(実施例11)
B8.2.4 TCRの親和性成熟
下記の表に従って、点変異を、B8.2.4TCR Vα及びVβに対して行い、TCR変異体をコードするレンチウイルスベクターシャトルプラスミドを構築し、これを、293T細胞における標準的なレンチウイルスベクターパッケージに付し、次いで、B8.2.4TCR変異体の機能スクリーニングを行った。変異される対応する位置をTable 8(表8)に示し、ここで、アミノ酸部位は、IMGT TCR番号付けに従って決定した。
【0266】
【表8】
【0267】
TCR CDR3変異体スクリーニング
TCR変異体(CDR3領域に存在する変異を有する)レンチウイルスベクターを、ジャーカット-NFAT-Luc細胞株に形質導入し、KRAS G13D抗原(G13D-RT6、配列番号20)がロードされたLovo-DPA0301:DPB0501細胞を、抗原提示細胞(APCと称される)として使用し、2×104個のTCR-T及び2×104個の、抗原がロードされたAPCを、16~24時間共培養し、ONE Gloルシフェラーゼを添加して、蛍光シグナル発現を検出し、次いで、TCR Mut RLU/WT RLU(TCR変異体のRLUシグナル値の野生型B8.2.4TCRのRLUシグナル値に対する比)を算出し、結果をTable 9(表9)に示した。
【0268】
【表9A】
【0269】
【表9B】
【0270】
【表9C】
【0271】
上記の結果は以下を示した:
1)mTCRβ発現検出の結果は、全てのTCR変異体が、ジャーカット-NFAT-Luc細胞の表面上で発現され得ることを示した;
2)B8.2.4TCR CDRα3及びCDRβ3変異領域において、TCRの特異性に重要な影響を有していたアミノ酸位置は、CDRα3-97Rであり;その位置のアミノ酸が変異された後、ほとんどの変異体は、抗原提示細胞によって提示されるKRAS G13D抗原ペプチドを効率的に認識することができなかった;
3)活性を有するTCR CDRα3及びCDRβ3変異体(野生型B8.2.4 TCRのRLUシグナル値の約60%以上を維持した変異体)をTable 10(表10)に示し、ここで、好ましいTCR変異体(野生型B8.2.4 TCRのRLUシグナル値の≧80%を維持した変異体)に下線を付けた。
【0272】
【表10】
【0273】
本発明の特定のモデルを詳細に記載したが、当業者であれば、開示されている全ての教示に従って、様々な改変及び変更を細部に対して行うことができること、並びにこれらの変更が全て、本発明の保護範囲内であることを理解するであろう。本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物によって与えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【配列表】
2024508725000001.app
【国際調査報告】