IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リニューアブル メタルス プロプライエトリー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-金属の回収 図1
  • 特表-金属の回収 図2
  • 特表-金属の回収 図3
  • 特表-金属の回収 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】金属の回収
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240220BHJP
   C22B 3/14 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20240220BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240220BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240220BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20240220BHJP
   C01D 15/08 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/14
C22B3/26
C22B15/00 106
C22B23/00 102
C22B26/12
C22B21/00
C22B47/00
H01M10/54
C01G53/00 B
C01G51/00 Z
C01D15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548764
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 AU2022050092
(87)【国際公開番号】W WO2022170399
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2021900358
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523304168
【氏名又は名称】リニューアブル メタルス プロプライエトリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RENEWABLE METALS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】23 Belmont Avenue, Belmont, Perth, Western Australia, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルバーニ マーク ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ゲーリー ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインズ ニコラス ジョン
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4G048AA01
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC06
4G048AE01
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001DB08
4K001DB09
4K001DB22
4K001DB26
4K001DB34
5H031RR02
(57)【要約】
1種以上の有価金属を含有する供給流(1)から金属を回収するための方法であって、(i)供給流(1)をアルカリ浸出(20)に通して、可溶性金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリー(5)を形成することと、(ii)ステップ(i)の浸出貴液(8)と固体残留物(7)とを分離することと、(iii)ステップ(ii)の分離された浸出貴液(8)を溶媒抽出ステップ(42)に通すことであって、銅及びニッケルを含有する充填された抽出剤(9)と、コバルト及びリチウムを含有するラフィネート(19)とが生成される、通すことと、(iv)ステップ(iii)のラフィネート(19)からコバルト(24)を回収することと、(v)ステップ(iv)のコバルトが除去された溶液(21)からリチウム(38)、アンモニア(28)、及び塩化アンモニウム(39)を回収することと、を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の有価金属を含有する供給流から金属を回収するための方法であって、
(i)前記供給流をアルカリ浸出に通して、可溶性金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリーを形成することと、
(ii)ステップ(i)の前記浸出貴液と前記固体残留物とを分離することと、
(iii)ステップ(ii)の分離された前記浸出貴液を溶媒抽出ステップに通すことであって、銅及びニッケルを含有する充填された抽出剤と、コバルト及びリチウムを含有するラフィネートとが生成される、前記通すことと、
(iv)ステップ(iii)の前記ラフィネートからコバルトを回収することと、
(v)ステップ(iv)のコバルトが除去された溶液からリチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを回収することと、を含む前記方法。
【請求項2】
前記供給流は、銅、鉄、マンガン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、及びリチウムのうちの1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記浸出は、
a)高温で行い、
b)大気圧で行い、
c)酸化浸出であり、及び/または、
d)1つ以上の浸出反応器内で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記浸出はアンモニア/塩化アンモニウム中の浸出である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記浸出中に存在する陰イオンは混合塩化物/硫酸塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記浸出は、大気圧で、及び、
(i)約60℃以下、または、
(ii)約40℃の温度で行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記浸出中に存在するアンモニア及び塩化アンモニウムの濃度は、
(i)飽和まで、
(ii)約5g/Lを超えるNHCI及び約10g/L~280g/LのNH、または、
(iii)約5g/Lを超えるNHCI及び約100g/Lを超えるNHである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記浸出中の前記供給流の滞留時間は、
(i)約1~4時間、または、
(ii)約1~2時間の範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法はさらに、ステップ(i)の前に前処理プロセスを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記前処理プロセスは1つ以上の機械的処理ステップを含み、前記機械的処理ステップは、1つ以上のサイズリダクションステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のサイズリダクションステップは、粉砕ステップ、細断ステップ、造粒及び研磨ステップのうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理プロセスは、ステップ(i)用の供給流として、
(i)P100が約5mm、または、
(ii)P100が約1mmである供給流を生成する、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記供給流はLiイオン電池を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記Liイオン電池中の任意の含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が、前記浸出スラリーの前記浸出液に可溶化され、前記Liイオン電池中の任意の含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合が、前記浸出スラリーの前記固体分に属する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
可溶化される前記含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムの前記かなりの割合は、約90%を超えるニッケル、銅、及びコバルト、ならびに約70%を超えるリチウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記浸出スラリーの前記固体分に属する前記電池に含有される前記含有鉄、マンガン、及びアルミニウムの前記かなりの割合は、約99%を超えるアルミニウム及び鉄、ならびに約95%を超えるマンガンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記前処理ステップを、プラスチック及びアルミニウムのケーシング材料を事前に除去することなく行う、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
酸化剤を前記アルカリ浸出に添加し、前記酸化剤は、
(i)空気、過酸化水素、及び次亜塩素酸素塩の群から選択されるか、または、
(ii)空気である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒抽出ステップは、前記浸出貴液から銅及びニッケルを回収するように適合され、前記浸出貴液を銅/ニッケル抽出剤と接触させて、銅及びニッケルが除去された浸出貴液またはラフィネートと、充填された抽出剤とを生成する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
銅及びニッケルを、前記充填された銅抽出剤から、硫酸によるストリッピングによって回収し、それによって、ニッケルを、低側の残留酸濃度によって選択的にストリッピングし、銅を、高側の酸濃度によってストリッピングして、銅及びニッケルを分離することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記低側の残留酸濃度は約1~4のpH範囲であり、前記高側の酸濃度は、約50g/Lを超えるH2S04である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
銅及びニッケルを硫酸塩として回収する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記銅及びニッケルが除去された溶媒抽出ラフィネートの一部を、前記アルカリ浸出に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ラフィネートは、リチウム、コバルト、塩化アンモニウム、及びアンモニアを含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
硫化物含有沈殿剤を添加して比較的不溶性の硫化コバルトの沈殿を強制することによって、前記銅及びニッケルが除去されたラフィネートから、コバルトを硫化物として沈殿させる、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
硫化コバルトの沈殿によって生成されたスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム、塩化アンモニウム、及びアンモニアを含有する濾液とを生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
塩化アンモニウム及びアンモニアを含有する前記コバルトが除去された濾液の一部を、前記アルカリ浸出に再循環させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ニッケル及び銅が除去されたラフィネートから、コバルトを炭酸塩として沈殿させる、請求項19~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
コバルトの沈殿を、二酸化炭素の化学量論的な添加及び過剰なアンモニアの水蒸気ストリッピングによって、炭酸コバルトの結晶化を強制することによって達成する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
コバルトの前記沈殿から生じるスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム及び塩化アンモニウム及びアンモニアを含有する濾液とを生成する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
塩化アンモニウムと前記蒸気ストリップからの前記回収したアンモニアとを含有する前記コバルトが除去された濾液の一部を、前記浸出段階に再循環させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
リチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを含む前記コバルトが除去された濾液の一部を処理して成分を回収する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
アンモニアを最初に蒸気ストリッピングし、回収したアンモニアを前記浸出に送ってさらに金属を回収する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アンモニアを含まない溶液中に存在する前記塩化アンモニウムを、強制蒸発によって結晶化し、固液分離に付して、塩化アンモニウムを含有する固体と濃縮塩化リチウムを含有する溶液とを生成する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記固体を前記アルカリ浸出に送ってさらに金属を回収し、前記濃縮塩化リチウム溶液をリチウム回収に付する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記濃縮溶液からのリチウムの前記回収には、リチウム化合物を沈殿させて、その後に前記溶液から回収することが含まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記濃縮溶液を、炭酸アンモニウムまたはアンモニア及び二酸化炭素と接触させて、炭酸リチウムを沈殿させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
沈殿スラリーを固液分離に付して、炭酸リチウムを含有する固体と塩化アンモニウムを含有する溶液とを生成し、前記溶液を前記アルカリ浸出に送ってさらに金属を回収する、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の回収方法に関する。より詳細には、本発明の方法は、金属を含有する供給材料からの金属の回収に関する。
【0002】
一実施形態では、本発明は、使用済みのリチウム系(Liイオン)電池からの金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0003】
世界中で使用される充電式Liイオン電池の数量は、近年急速に増加しており、電気自動車及び大容量電力貯蔵の新興市場によりさらに拡大する予定である。Liイオン電池の需要が高まるにつれて、これらの電池に使用される金属/金属酸化物成分の需要も高まる。コバルトなど、これらの金属の一部の需要が急速に高まることで、このような資源の維持可能な供給に圧力がかかっている。この結果、このような金属の価格が急速に上昇した。
【0004】
現代の電池における種々の成分を回収及び再利用するためのプロセスの開発にはほとんど関心がなかった。これは主に、再利用に利用できるLiイオン電池の数量が比較的低いこと、回収を達成する典型的な乾式冶金及び湿式冶金プロセスのコストが比較的高いことによる。Liイオン電池の需要が増加し続けるにつれて、再利用に利用できる使用済みLiイオン電池の数量も増加している。特に、より複雑な金属/金属酸化物成分に関して、低コストで効率的な再利用プロセスが求められている。
【0005】
Liイオン電池の組成は、近年かなり進化した。いくつかの電池再利用プロセスが開発されているが、これらは主に、ある特定のタイプの電池または供給源からある特定の金属を回収することに限定されている。たとえば、初期の電池は主にリチウムコバルトであり、回収方法の焦点はコバルトを回収することにあった。リチウムの需要が高まるにつれ、回収方法は、コバルト及びリチウムの両方を回収することに移行した。電池技術がさらなる発展を遂げるにつれ、正極には、マンガン、ニッケル、アルミニウム、鉄、及びリンなどの他の金属が組み込まれた。リチウム及びコバルトの回収に使用される方法は、他の金属の回収には適しておらず、異なる電池化学的性質にもそれほど適していない。
【0006】
Liイオン電池の使用法の取り込みにより、再利用に利用できる使用済みLiイオン電池の数量が増加する。しかし、使用済みLiイオン電池の供給には、多くの異なるタイプの電池が含まれる。回収方法が単一の電池タイプのみに適するということは、そのようなプロセスの商業化にとって重大な問題となる。具体的には、このような方法は、1つ以上の分類ステップが必要になる。様々な異なるLiイオン電池タイプから様々な金属を回収するためのプロセスの開発が求められている。
【0007】
電池再利用処理におけるほとんどの開発は、酸性媒体中での金属成分の溶解を伴う。これは、非選択的浸出プロセスであり、電池に含有されるほとんどの金属が溶解される。電池には、鉄、マンガン、及びアルミニウムなどの非有価金属が、かなりの量で含有されている。これらの非有価金属が浸出前に除去されない場合、酸の消費量が多い。結果として、有価金属成分であるコバルト、ニッケル、銅、及びリチウムから鉄及びアルミニウムを分離する前処理プロセスが必要である。その際、これらの前処理プロセスにおいて達成される分離は100%効率的ではないため、これらの有価金属の回収率は低下する。
【0008】
本発明の方法の1つの目的は、従来技術に関連する前述した問題のうちの1つ以上を実質的に打開するか、または少なくともそれに対する有用な代替物を提供することである。
【0009】
背景技術についての前述の説明は、本発明の理解を容易にすることだけを目的としている。この議論は、言及された資料のいずれかが、出願の優先日にオーストラリアまたは他の場所において、共通の一般知識であるかまたはその一部であったことを承認または認めるものではない。
【0010】
本明細書の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、提示した整数または整数の群が含まれることを意味するが、任意の他の整数または整数の群を排除することは意味しないと理解される。
【発明の概要】
【0011】
本発明によれば、1種以上の有価金属を含有する供給流から金属を回収するための方法であって、(i)供給流をアルカリ浸出に通して、可溶性金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリーを形成することと、(ii)ステップ(i)の浸出貴液と固体残留物とを分離することと、(iii)ステップ(ii)の分離された浸出貴液を溶媒抽出ステップに通すことであって、銅及びニッケルを含有する充填された抽出剤と、コバルト及びリチウムを含有するラフィネートとが生成される、通すことと、(iv)ステップ(iii)のラフィネートからコバルトを回収することと、(v)ステップ(iv)のコバルトが除去された溶液からリチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを回収することと、を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の好ましい形態では、供給流は、銅、鉄、マンガン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、及びリチウムのうちの1種以上を含む。
【0013】
好ましくは、アルカリ浸出は、a)高温で行い、b)大気圧で行い、c)酸化浸出であり、及び/またはd)1つ以上の浸出反応器内で行う。
【0014】
アルカリ浸出は、好ましくはアンモニア/塩化アンモニウム中の浸出である。
【0015】
好ましくは、浸出は、大気圧で、及び(i)約60℃以下または(ii)約40℃の温度で行う。
【0016】
好ましくは、浸出中に存在するアンモニア及び塩化アンモニウムの濃度は、(i)飽和まで、(ii)約5g/Lを超えるNHCI及び約10g/L~280g/LのNH、または(iii)約5g/Lを超えるNHCI及び約100g/Lを超えるNHである。
【0017】
浸出中の供給流の滞留時間は、好ましくは、(i)約1~4時間、または(ii)約1~2時間の範囲である。
【0018】
本明細書の一実施形態では、本方法はさらに、ステップ(i)の前に前処理プロセスを含む。
【0019】
好ましくは、前処理プロセスは1つ以上の機械的処理ステップを含む。機械的処理ステップ(単数)またはステップ(複数)は、好ましくは、1つ以上のサイズリダクションステップ、たとえば、粉砕ステップ及び細断ステップのうちの1つ以上を含む。
【0020】
本発明の一形態では、1つ以上のサイズリダクションステップはさらに、造粒及び/または研磨ステップを含む。
【0021】
好ましくは、前処理プロセスは、ステップ(i)用の供給流として、P100が約5mmである供給流を生成する。さらに好ましくは、ステップ(i)用の供給流は、P100が約1mmである。
【0022】
好ましくは、供給流はLiイオン電池を含む。
【0023】
さらに好ましくは、Liイオン電池中の任意の含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が、浸出スラリーの浸出液に可溶化され、Liイオン電池中の任意の含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合が、浸出スラリーの固体分に属する。
【0024】
可溶化される含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が好ましくは、約90%を超えるニッケル、銅、及びコバルト、ならびに約70%を超えるリチウムである。
【0025】
浸出スラリーの固体分に属する電池に含有される含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合が好ましくは、約99%を超えるアルミニウム及び鉄、ならびに約95%を超えるマンガンである。
【0026】
本発明の一形態では、前処理ステップ(単数)またはステップ(複数)を、プラスチック及びアルミニウムのケーシング材料を事前に除去することなく行う。
【0027】
好ましくは、アルカリ浸出は、浸出セクション、増粘剤セクション、及びフィルターセクションを含む浸出回路内で行う。
【0028】
本発明の一形態では、存在する陰イオンは混合塩化物/硫酸塩である。
【0029】
酸化剤は任意の好適な酸化剤とすることができるが、好ましくは、空気、過酸化水素、次亜塩素酸素塩などの群から選択される。好ましくは、空気を酸化剤として使用する。
【0030】
好ましくは、鉄、アルミニウム、及びマンガンは著しい量では抽出されず、したがって浸出は、ニッケル、コバルト、銅、及びリチウムに対して選択的である。
【0031】
本発明の一形態では、溶媒抽出ステップは、浸出貴液を抽出剤と接触させて1種以上の金属を抽出し、1種以上の抽出金属を含有する充填された抽出剤を生成することを含む。好ましくは、溶媒抽出ステップはさらに、充填された抽出剤を浸出貴液から分離することを含む。より好ましくは、溶媒抽出ステップはさらに、充填された抽出剤から金属を回収することを含む。
【0032】
本発明の一形態では、溶媒抽出ステップは、浸出貴液から銅及びニッケルを回収するように適合される。好ましくは、浸出貴液を銅/ニッケル抽出剤と接触させて、銅及びニッケルが除去された浸出貴液またはラフィネートと、充填された銅抽出剤とを生成する。より好ましくは、銅及びニッケルを、充填された銅抽出剤から、硫酸によるストリッピングによって回収する。ニッケルを、低側の残留酸濃度(好ましくは約1~4のpH範囲である)によって選択的にストリッピングし、銅を、高側の酸濃度(好ましくは約50g/Lを超えるHSO)によってストリッピングする。この2段階のストリッピングによって、銅及びニッケルを分離することができる。さらに好ましくは、銅及びニッケルを硫酸塩として回収する。
【0033】
本発明の一形態では、銅及びニッケルが除去された溶媒抽出ラフィネートの一部を、アルカリ浸出に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する。好ましくは、銅及びニッケルが除去されたラフィネートは、リチウム、コバルト、塩化アンモニウム、及びアンモニアを含有する。
【0034】
本発明の一形態では、銅及びニッケルが除去されたラフィネートから、コバルトを硫化物として沈殿させる。これは、硫化物含有沈殿剤(たとえば、硫化水素ガスまたは硫化アンモニウム)を添加して、比較的不溶性の硫化コバルトの沈殿を強制することによって行う。結果として得られるスラリーを好ましくは固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム、塩化アンモニウム、及びアンモニアを含有する濾液とを生成する。
【0035】
本発明の一形態では、塩化アンモニウム及びアンモニアを含有するコバルトが除去された濾液の一部を、アルカリ浸出に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する。
【0036】
本発明の一形態では、ニッケル及び銅が除去されたラフィネートから、コバルトを炭酸塩として沈殿させる。これは、たとえば、二酸化炭素の化学量論的な添加及び過剰なアンモニアの水蒸気ストリッピングによって、炭酸コバルトの結晶化を強制することによって行う。結果として得られるスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム及び塩化アンモニウム及びアンモニアを含有する濾液とを生成する。
【0037】
本発明の一形態では、塩化アンモニウムと蒸気ストリップからの回収したアンモニアとを含有するコバルトが除去された濾液の一部を、浸出段階に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する。
【0038】
本発明の一形態では、リチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを含むコバルトが除去された濾液の一部を処理して、再利用及びまたは販売用の成分を回収する。アンモニアを最初に蒸気ストリッピングして、回収したアンモニアを浸出に送ってさらに金属を回収するアンモニアを含まない溶液中に存在する塩化アンモニウムを、強制蒸発によって結晶化し、固液分離に付して、塩化アンモニウムを含有する固体と濃縮塩化リチウムを含有する溶液とを生成する。固体を浸出に送ってさらに金属を回収する。濃縮溶液をリチウム回収に付する。
【0039】
本発明の一形態では、濃縮溶液からのリチウムの回収は、より具体的には、リチウム化合物の沈殿を含む。好ましくは、リチウム化合物はその後に、溶液から回収する。一実施形態では、リチウム化合物は炭酸リチウムである。好ましくは、濃縮溶液を、炭酸アンモニウムまたはアンモニア及び二酸化炭素と接触させて、炭酸リチウムを沈殿させる。沈殿スラリーを固液分離に付して、炭酸リチウムを含有する固体と塩化アンモニウムを含有する溶液とを生成し、溶液を浸出に送ってさらに金属を回収する。
【0040】
次に本発明を、添付図面を参照して、単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による金属を回収するための方法を示すフローシートである。
図2図1の方法のアルカリ浸出において達成される種々の金属の抽出のレベルの経時的なグラフ表示である。
図3図1の方法の溶媒抽出ステップにおける水性銅レベルと有機銅レベルとの間の関係を実証する銅溶媒抽出等温線である。
図4図1の方法の溶媒抽出ステップにおける水性ニッケルレベルと有機ニッケルレベルとの間の関係を実証するニッケル溶媒抽出等温線である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明によって、1種以上の有価金属を含有する供給流から金属を回収するための方法であって、(i)供給流をアルカリ浸出に通して、可溶性金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリーを形成することと、(ii)ステップ(i)の浸出貴液と固体残留物とを分離することと、(iii)ステップ(ii)の浸出貴液溶媒抽出ステップに通すことであって、銅及びニッケルを含有する充填された抽出剤と、コバルト及びリチウムを含有するラフィネートとが生成される、通すことと、(iv)ステップ(iii)のラフィネートからコバルトを回収することと、(v)ステップ(iv)のコバルトが除去された溶液からリチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを回収することと、を含む方法が提供される。
【0043】
供給流は、銅、鉄、マンガン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、及びリチウムのうちの1種以上を含む。
【0044】
アルカリ浸出は、a)高温で行い、b)大気圧で行い、c)酸化浸出であり、及び/またはd)1つ以上の浸出反応器内で行う。
【0045】
アルカリ浸出は、塩化物イオンの存在下でのアンモニウム塩またはアンモニア中での浸出である。
【0046】
浸出は、大気圧で、及び(i)約60℃以下または(ii)約40℃の温度で行う。
【0047】
浸出中に存在するアンモニア及び塩化アンモニウムの濃度は、(i)飽和まで、(ii)約5g/Lを超えるNHCI及び約10g/L~280g/LのNH、または(iii)約5g/Lを超えるNHCI及び約100g/Lを超えるNHである。
【0048】
浸出中の供給流2の滞留時間は、(i)約1~4時間、または(ii)約1~2時間の範囲である。
【0049】
本発明の方法は、使用済みLiイオン電池からのすべての有価金属の少なくともかなりの部分を、好ましくは高純度の硫酸塩として回収するのに特に有用であると理解される。プロセスは、単一または混合の供給源として種々のLiイオン電池の化学的性質に適応できるという点で、特に頑強である。浸出プロセスは、電池中の含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が、浸出スラリーの浸出液に可溶化され、電池に含有される含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合が、浸出スラリーの固体分に属するという点で、選択的である。
【0050】
可溶化される含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合は、たとえば、約90%を超えるニッケル、銅、及びコバルト、ならびに約70%を超えるリチウムである。
【0051】
浸出スラリーの固体分に属する電池に含有される含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合は、たとえば、約99%を超えるアルミニウム及び鉄、及び約95%を超えるマンガンである。
【0052】
これは、大気圧において、塩化物イオンの存在下で、アンモニア、アンモニウムイオン、及び空気を用いた酸化アルカリ浸出によって達成される。これに続いて、溶媒抽出及び沈殿技法を用いた段階的な連続した金属回収を行う。これは、異なる電池タイプを分類する必要がほとんどないため、特に有利であることが本出願人によって見出された。
【0053】
本発明の好ましい形態では、供給流は、銅、鉄、マンガン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、及びリチウムのうちの1種以上を含む。
【0054】
一実施形態では、本方法はさらに、ステップ(i)の前に前処理プロセスを含む。
【0055】
前処理プロセスは、1つ以上の機械的処理ステップを含む。たとえば、機械的処理ステップは、粉砕ステップ及び細断ステップのうちの1つ以上を含む。
【0056】
前処理プロセスは、1つ以上のサイズリダクションステップを含む。たとえば、1つ以上のサイズリダクションステップは、造粒及び/または研磨ステップを含む。
【0057】
浸出回路は、浸出セクション、増粘剤セクション、及びフィルターセクションを含む。
【0058】
本発明の一形態では、供給流をアルカリ浸出に付して、可溶性金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリーを形成するステップは、より具体的には、供給流を1つ以上の浸出反応器内で塩化アンモニウム/アンモニア浸出に付することを含む。
【0059】
供給流を塩化アンモニウム/アンモニア浸出に付するステップは、大気圧で行う。
【0060】
供給流を塩化アンモニウム/アンモニア浸出に付するステップは、高温で行う。
【0061】
本発明の一形態では、存在する陰イオンは混合塩化物/硫酸塩である。
【0062】
空気、過酸化水素、次亜塩素酸素塩などの任意の好適な酸化剤を浸出において使用する。しかし、空気が、その入手のしやすさ及び低コストの点で好ましい。
【0063】
鉄、アルミニウム、及びマンガンは著しい量では抽出されず、したがって浸出は、ニッケル、コバルト、銅、及びリチウムに対して選択的である。
【0064】
本発明の一形態では、溶媒抽出ステップは、浸出貴液を抽出剤と接触させて1種以上の金属を抽出し、1種以上の抽出金属を含有する充填された抽出剤を生成することを含む。好ましくは、溶媒抽出ステップはさらに、充填された抽出剤を浸出貴液から分離することを含む。より好ましくは、溶媒抽出ステップはさらに、充填された抽出剤から金属を回収することを含む。
【0065】
本発明の一形態では、別個の溶媒抽出ステップは、浸出貴液から銅及びニッケルを回収するように適合される。好ましくは、浸出貴液を銅/ニッケル抽出剤と接触させて、銅及びニッケル除去された浸出貴液と、充填された銅抽出剤とを生成する。より好ましくは、銅及びニッケルを、充填された銅抽出剤から、硫酸によるストリッピングによって回収する。ニッケルを、低側の残留酸濃度(好ましくは1~4のpH範囲である)によって選択的にストリッピングし、銅を、高側の酸濃度(好ましくは約50g/Lを超えるHSOで)によってストリッピングする。2段階のストリッピングによって、銅及びニッケルを分離することができる。さらに好ましくは、銅及びニッケルを硫酸塩として回収する。
【0066】
本発明の一形態では、ニッケル及び銅が除去されたラフィネートから、コバルトを硫化物として沈殿させる。これは、硫化物含有沈殿剤(硫化水素ガスまたは硫化アンモニウムなど)を添加して、比較的不溶性の硫化コバルトの沈殿を強制することによって行う。結果として得られるスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム、塩化アンモニウム、及びアンモニアを含有する濾液とを生成する。
【0067】
本発明の一形態では、塩化アンモニウム及びアンモニアを含有するコバルトが除去された濾液の一部を、浸出段階に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する。
【0068】
本発明の一形態では、ニッケル及び銅が除去されたラフィネートから、コバルトを炭酸塩として沈殿させる。これは、二酸化炭素の化学量論的な添加及び水蒸気ストリッピング過剰なアンモニアによって、炭酸コバルトの結晶化を強制することによって行う。結果として得られるスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム及び塩化アンモニウム及びアンモニアを含有する濾液とを生成する。
【0069】
本発明の一形態では、塩化アンモニウムと蒸気ストリップからの回収されたアンモニアとを含有するコバルトが除去された濾液の一部を、浸出段階に再循環させて、そこからさらに金属を抽出する。
【0070】
本発明の一形態では、リチウム、アンモニア、及び塩化アンモニウムを含むコバルトが除去された濾液の一部を処理して、再利用及びまたは販売用の成分を回収する。アンモニアを最初に蒸気ストリッピングして、回収したアンモニアを浸出に送ってさらに金属を回収する。アンモニアを含まない溶液中に存在する塩化アンモニウムを、強制蒸発によって結晶化し、固液分離に付して、塩化アンモニウムを含有する固体と濃縮塩化リチウムを含有する溶液とを生成する。固体を浸出に送ってさらに金属を回収する。濃縮溶液をリチウム回収に付する。
【0071】
本発明の一形態では、濃縮溶液からのリチウムの回収は、より具体的には、リチウム化合物の沈殿を含む。より好ましくは、リチウム化合物はその後に、溶液から回収する。一実施形態では、リチウム化合物は炭酸リチウムである。好ましくは、濃縮溶液を、炭酸アンモニウムまたはアンモニア及び二酸化炭素と接触させて、炭酸リチウムを沈殿させる。沈殿スラリーを固液分離に付して、炭酸リチウムを含有する固体と塩化アンモニウムを含有する溶液とを生成し、溶液を浸出に送ってさらに金属を回収する。
【0072】
図1において、本発明の一実施形態による方法を示す。本方法は、1種以上の有価金属を含有する供給流から金属を回収するためのものである。図1の方法は、ニッケル生成物17及び銅生成物18、コバルト生成物24、及びリチウム生成物38の回収について説明する。この実施形態では、供給流1を前処理プロセス(たとえば、細断10)に付して、供給流1をさらなる処理に適したものにする。結果として得られる供給流2を次に、浸出(たとえば、浸出回路20)に送り、そこで、空気40、アンモニア及び塩化アンモニウムを含有する溶液、随意の塩化アンモニウム補充3、アンモニア補充4、アンモニア/塩化アンモニウム溶液39再利用、さらに随意の硫酸アンモニウム39と接触させて、金属種を可溶化する。補充の必要性は、以下で言及するアンモニア及び塩化アンモニウムの濃度によって決まる。
【0073】
浸出は、大気圧、及び約60℃以下(たとえば約40℃)の温度で行う。浸出回路20内に存在するアンモニア及び塩化アンモニウムの濃度は、飽和まで、たとえば、約5g/Lを超えるNHCI、約10g/L~280g/LのNH、たとえば約100g/Lを超えるNHである。浸出回路内での供給流2の滞留時間は、約1~4時間、たとえば約1~2時間の範囲である。
【0074】
結果として得られる浸出されたスラリー5を、固液分離ステップ(たとえば、フィルター30)に付し、固形物を水6で洗浄して、固形物から有価金属を回収する。未溶解固形物7(または浸出残渣)を除去して、浸出液8を金属回収に送る。
【0075】
図2に、最大22時間の期間にわたって本発明の浸出回路20内で達成された結果を示す。90%を超えるニッケル、コバルト、及び銅の抽出が、1~2時間の浸出回路20内での滞留時間によって達成される。
【0076】
浸出貴液8を、銅及びニッケル溶媒抽出回路42に送って、そこで、接銅及びニッケル抽出剤、たとえば、オキシムベースの抽出剤(たとえば、限定することなく、ACORGA(登録商標)M5640またはLIX(登録商標)抽出剤)と接触させる。銅及びニッケルが銅抽出剤上に充填され、充填された抽出剤9がラフィネート19から分離される。銅及びニッケルの溶媒抽出等温線を、図3及び4にそれぞれ示す。詳細には、図3は、浸出液8からの銅の高い抽出を示し、図4は、より多くの銅が抽出されるにつれて有機物から押し出されるニッケルの抽出が弱くなることを示す。
【0077】
充填された抽出剤9を、ニッケルストリップ段階50において希硫酸11と接触させて、ニッケル13を含有する充填されたストリップ溶液とニッケルが除去された抽出剤10とを生成する。希硫酸11の具体的な濃度は、充填されたストリップ溶液中で約3のpHを得るのに十分である。さらに、希硫酸濃度は、充填されたストリップ溶液中のニッケルの所望の濃度によって決まる。たとえば、50g/LのNiを目標とする場合は、83g/Lの硫酸濃度が必要であり、一方で80g/LのNiを目標とする場合は、132g/Lの硫酸濃度が必要である。
【0078】
ニッケルが除去された抽出剤10を、銅ストリップ段階60において希硫酸溶液12と接触させて、銅を含有する充填されたストリップ溶液14を生成する。ストリッピングされた有機物(図示せず)を抽出回路40に再循環させて(図示せず)、さらに銅及びニッケルを抽出する。ニッケル生成物17を、ニッケル結晶化段階70においてニッケルが充填されたストリップ溶液13から回収する。銅生成物18を、銅結晶化段階80において銅が充填されたストリップ溶液14から回収する。
【0079】
銅及びニッケルが除去されたラフィネート19をコバルト回収回路90に送り、そこで、沈殿剤(たとえば、硫化水素ガス20)を添加して、硫化コバルトの沈殿を強制する。結果として得られるスラリー21を、たとえばフィルター100によって固液分離に付し、水22で洗浄して、コバルト生成物24を生成する。
【0080】
アンモニア及び塩化アンモニウムを含有する結果として得られる濾液25の大部分を浸出回路20に送って、さらに金属を回収する。残りの濾液26をアンモニア回収回路110に送り、そこでは蒸気27を使用して、そこからアンモニア28をストリップする。それによって回収したアンモニア28を、プロセス(具体的には浸出20)で再利用する。
【0081】
アンモニアを含まない溶液29を蒸発器120に送り、そこで水30を強制蒸発によって除去する。結果として得られる濃縮溶液32は、塩化リチウムを含有し、炭酸リチウム沈殿段階140に送って、そこで炭酸アンモニウム34と接触させる。結果として得られるスラリー35を、たとえばフィルター150において固液分離に付し、固形物を水36で洗浄して、リチウム生成物38を生成する。塩化アンモニウムを含有する濾液39を浸出段階20に送る。
【0082】
前述の説明を参照して分かるように、本発明の方法は、使用済みLiイオン電池からのすべての有価金属の少なくともかなりの部分を、好ましくは高純度の硫酸塩として回収するのに特に有用であると理解される。プロセスは、単一または混合の供給源として種々のLiイオン電池の化学的性質に適応できるという点で、特に頑強であると考えられる。
【0083】
本発明で使用する浸出は、電池中の含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が、浸出スラリーの浸出液に可溶化され、電池に含有される含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合が、浸出スラリーの固体分に属するという点で、選択的である。可溶化される含有コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合は、たとえば、約90%を超えるニッケル、銅、及びコバルト、ならびに約70%を超えるリチウムである。浸出スラリーの固体分に属する電池に含有される含有鉄、マンガン、及びアルミニウムのかなりの割合は、たとえば、約99%を超えるアルミニウム及び鉄、ならびに約95%を超えるマンガンである。
【0084】
本発明の範囲から逸脱することなく、塩化物以外の陰イオンも浸出中に存在し得ることが考えられる。たとえば、硫酸塩イオンが前述したように存在し得て、同様に炭酸塩、重炭酸塩、及び硝酸塩イオンが単独でまたは組み合わせで存在し得る。たとえば、炭酸アンモニウムが、炭酸リチウムの沈殿に対して使用されると前述したように、炭酸イオンが浸出中に存在することが予想される。
【0085】
これは、大気圧において、塩化物イオンの存在下で、アンモニア、アンモニウムイオン、及び空気を用いた酸化アルカリ浸出、続いて溶媒抽出及び沈殿技法を用いた段階的な連続した金属回収によって達成される。本発明の方法は、異なる電池タイプを分類する必要がほとんどないため、特に有利であることが見出されている。
【0086】
本明細書で提供される範囲には、提示範囲及び提示範囲内の任意の値または部分範囲が含まれることを理解されたい。たとえば、約1マイクロメートル(μm)~約2μmの範囲は、明示的に記載された範囲である約1μm~約2μmだけでなく、約1.2μm、約1.5μm、約1.8μmなどの個々の値、及び約1.1μm~約1.9μm、約1.25μm~約1.75μmなどの部分範囲も含むと解釈すべきである。さらに、値を説明するために「約」及び/または「実質的に」が利用される場合、それらは、記載値からのわずかな変動(最大で+/-10%)を包含することが意図されることを理解されたい。
【0087】
前述の説明は、非限定的であると考えるべきである。当業者には明らかな変更及び変形は、本発明の範囲に含まれると考えられる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の有価金属を含有する供給流から金属を回収するための方法であって、前記有価金属は少なくともリチウムを含み、
前記供給流を、アンモニアを含むアルカリ浸出液を用いてアルカリ浸出に通して、少なくともリチウムイオンを含む可溶性有価金属塩の浸出貴液と固体残留物とを含むスラリーを形成することと、
前記固体残留物から前記浸出貴液を分離することと、を含む前記方法。
【請求項2】
前記浸出貴液から、アンモニア、アンモニア塩、及びリチウムを回収することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有価金属は、コバルト、銅、及びニッケルをさらに含み、前記浸出貴液からリチウムを回収することは、
前記浸出貴液を溶媒抽出ステップに通すことであって、銅及びニッケルを含有する充填された抽出剤と、コバルト及びリチウムを含有するラフィネートとが生成される、前記通すことと、
前記ラフィネートからコバルトを回収することと、
コバルトが除去された前記ラフィネートからリチウムを回収することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ浸出は酸化アルカリ浸出であり、前記アルカリ浸出液はアンモニウムイオンをさらに含み、前記浸出は塩化陰イオンの存在下で行われ、前記浸出中に酸化剤が添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、空気、過酸化水素、次亜塩素酸素塩、及びそれらの混合物の群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記浸出は、硫酸陰イオンの存在下で行われる、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ浸出液は、塩化アンモニウム及び/または硫酸アンモニウムを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記浸出は、a)高温で行い、及び/または、b)大気圧で行い、及び/または、d)1つ以上の浸出反応器内で行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記浸出は、大気圧で、及び(i)約60℃以下、または、(ii)約40℃の温度で行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ浸出液は、前記浸出中に存在するアンモニア及び塩化アンモニウムの以下の濃度で塩化アンモニウムをさらに含み、前記濃度は、
(i)飽和まで、
(ii)約5g/Lを超えるNHCI及び約10g/L~280g/LのNH、または、
(iii)約5g/Lを超えるNHCI及び約100g/Lを超えるNHである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記浸出の滞留時間は、
(i)約1~4時間、または、
(ii)約1~2時間の範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記供給流をアルカリ浸出に通すステップの前に前処理プロセスをさらに含み、前記前処理プロセスは、粉砕ステップ、細断ステップ、造粒及び研磨ステップの群から選択される1つ以上のサイズリダクションステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記供給流はLiイオン電池を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記供給流は、アルミニウム、鉄、及びマンガンをさらに含み、コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムのかなりの割合が、前記浸出貴液に可溶化され、アルミニウム、鉄、及びマンガン、のかなりの割合が、浸出スラリーの固体分に属する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
可溶化される前記コバルト、ニッケル、銅、及びリチウムの前記かなりの割合は、前記供給流の約90%を超えるニッケル、銅、及びコバルト、ならびに約70%を超えるリチウムであり、
前記浸出スラリーの前記固体分に属する含有された前記アルミニウム、鉄、及びマンガン、の前記かなりの割合は、前記供給流の約99%を超えるアルミニウム及び鉄、ならびに約95%を超えるマンガンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒抽出ステップは、前記浸出貴液から銅及びニッケルを回収するように適合され、前記浸出貴液を銅/ニッケル抽出剤と接触させて、銅及びニッケルが除去されたラフィネートと、充填された抽出剤とを生成する、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
銅及びニッケルを、前記充填された銅抽出剤から、硫酸によるストリッピングによって回収し、それによって、ニッケルを、低側の酸濃度によって選択的にストリッピングし、銅を、高側の酸濃度によってストリッピングして、銅及びニッケルを分離することができる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
硫化物含有沈殿剤を添加して硫化コバルトの沈殿を生成することによって、前記銅及びニッケルが除去されたラフィネートから、コバルトを硫化物として沈殿させる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
硫化コバルトの沈殿によって生成されたスラリーを固液分離段階に付して、コバルト生成物と、リチウム、アンモニウム塩、及びアンモニアを含有する濾液とを生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ニッケル及び銅が除去されたラフィネートから、コバルトを炭酸塩として沈殿させる、請求項16または17に記載の方法。
【国際調査報告】