(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電磁遮蔽織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/533 20210101AFI20240220BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240220BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20240220BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
D03D15/533
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
H05K9/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548770
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 IB2022050711
(87)【国際公開番号】W WO2022172113
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523304216
【氏名又は名称】バックハウゼン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Backhausen GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】キースリング,ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,マリオ
【テーマコード(参考)】
4L048
5E321
【Fターム(参考)】
4L048AA04
4L048AA34
4L048AA52
4L048AB11
4L048AC13
4L048BA09
4L048CA00
4L048CA05
4L048DA24
5E321BB41
5E321BB44
5E321GG05
(57)【要約】
本発明は電磁遮蔽織物(1、2、3)を開示する。電磁遮蔽織物(1、2、3)は非導電性織物層(101)と導電性織物層(111)とを含む。非導電性織物層(101)は、複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)を含み、複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)が非導電性材料によって作られたものである。導電性織物層(111)は、複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)を含み、複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)が少なくとも部分的に導電性材料によって作られたものである。非導電性織物層(101)は電磁遮蔽織物(1、2、3)の模様面(10)を規定し、導電性織物層(111)は格子状構造(11)を規定し、非導電性織物層(101)と導電性織物層(111)とは互いに織り込まれる。電磁遮蔽織物(1、2、3)は複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を含み、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、結束点(B1、B2、B3)をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁遮蔽織物(1、2、3)であって、
複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)を含み、前記複数の非導電性経糸(22、32)および前記複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層(101)と、
複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)を含み、前記複数の導電性経糸(21、31)および前記複数の導電性緯糸(23、33)が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層(111)と、
を含み、
前記非導電性織物層(101)は前記電磁遮蔽織物(1、2、3)の模様面(10)を規定し、前記導電性織物層(111)は格子状構造(11)を規定し、前記非導電性織物層(101)と前記導電性織物層(111)とは互いに織り込まれ、
前記電磁遮蔽織物(1、2、3)は、経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を含み、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸(22、32)のグループおよび1つの導電性経糸(21、31)、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)および1つの導電性緯糸(23、33)を含み、
前記非導電性経糸(22、32)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34e)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、
前記電磁遮蔽織物の前記模様面において、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、
前記導電性経糸(21、31)が前記導電性緯糸(23、33)の下に沈む、第1結束点(B
1、binding point)と、
前記非導電性経糸(22、32)のグループ内の非導電性経糸のそれぞれに対して、前記非導電性経糸(22、32)が前記導電性緯糸(23、33)の上に浮く、第2結束点(B
2)と、
をさらに含み、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)は、
前記導電性経糸(21、31)が前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮く第3結束点(B
3)であって、前記導電性経糸(21、31)が前記導電性緯糸(23、33)の下に沈む前記第1結束点(B
1)に隣接する、前記第3結束点(B
3)、
を含む、
電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項2】
前記非導電性経糸(22)のグループは3つの非導電性緯糸を含み、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)は、単一の、前記導電性経糸(21)が前記少なくとも1つの非導電性緯糸(24a)の上に浮く前記第3結束点(B
3)を含む、
請求項1に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項3】
前記非導電性緯糸(34a~34f)のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含み、
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、前記導電性経糸(31)が前記少なくとも1つの前記非導電性緯糸(34c、34e)の上に浮く更なる第3結束点(B
3)を含み、前記更なる第3結束点(B
3)のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸(34a~34f)で、前記経方向に前の第3結束点(B
3)から離れて配置されている、
請求項1に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項4】
第1結束点(B
1)のそれぞれは、1.5mmから3.5mmまでの距離範囲で、好ましくは2mmで、前記経方向および/または前記緯方向に、好ましくは前記経方向および前記緯方向に、別のセクタ(25a、25b、35a、35b)の前記第1結束点(B
1)から離れて配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項5】
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、1対3、1対5、1対7および1対9のうちから選択された割合で、導電性経糸(21、31)および非導電性経糸(22、32)を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項6】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、金属繊維で、好ましくはステンレス鋼繊維で紡糸して得たヤーン、および、天然繊維で、好ましくはウール繊維で紡糸して得たヤーンによって、金属繊維が5%から50%までの範囲の割合で、好ましくは20%の割合で、作られたものである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項7】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、12.5g/kmから125g/kmまでの範囲の糸番手を有する、
請求項6に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項8】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、8m/gから50m/gまでの範囲の繊度を有するヤーンによって作られたものであり、好ましくは、前記導電性経糸(21、31)のそれぞれおよび前記導電性緯糸(23、33)のそれぞれは、50m/gの繊度を有するヤーンを2つ含む、
請求項6または7に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項9】
前記非導電性経糸(22、32)はウールによって作られ、前記非導電性経糸(22、32)のそれぞれは、60m/gの繊度を有するヤーンを2つ含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)はウールによって作られ、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のそれぞれは、28m/gの繊度を有するヤーンを2つ含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項10】
少なくとも2つの、請求項1から9のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)を含み、前記少なくとも2つの電磁遮蔽織物(1、2、3)は縫い合わされている、
多層織物。
【請求項11】
電磁遮蔽織物(1、2、3)を製造する方法であって、
前記電磁遮蔽織物(1、2、3)は、
複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)を含み、前記複数の非導電性経糸(22、32)および前記複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層(101、non-conductive woven layer)と、
複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)を含み、前記複数の導電性経糸(21、31)および前記複数の導電性緯糸(23、33)が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層(111、conductive woven layer)と、
を含み、
前記非導電性織物層(101)は前記電磁遮蔽織物(1、2、3)の模様面(10)を規定し、前記導電性織物層(111)は格子状構造(11)を規定し、前記非導電性織物層(101)と前記導電性織物層(111)とは互いに織り込まれ、
前記方法は、
経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を規定することによって前記電磁遮蔽織物(1、2、3)を織るステップであって、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸(22、32)のグループおよび1つの導電性経糸(21、31)、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)および1つの導電性緯糸(23、33)を含む、ステップ
を含み、
前記非導電性経糸(22、32)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34e)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、
前記複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を規定することによって前記電磁遮蔽織物(1、2、3)を織るステップは、
第1結束点(B
1)において、前記導電性経糸(21、31)を前記導電性緯糸(23、33)の下に沈ませるステップと、
それぞれの第2結束点(B
2)において、前記非導電性経糸(22、32)のグループ内の非導電性経糸のそれぞれを、前記導電性緯糸(23、33)の上に浮かせるステップと、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)の中で、第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップであって、前記第3結束点(B
3)を前記第1結束点(B
1)に隣接するように織る、ステップと、
を含む、
方法。
【請求項12】
前記非導電性経糸(22)のグループは3つの非導電性緯糸を含み、
第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップは、
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれの中で、単一の第3結束点(B
3)において前記導電性経糸(21、31)を浮かせるステップ
を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非導電性緯糸(34a~34f)のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含み、
第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップは、
第3結束点(B
3)のそれぞれにおいて、前記導電性経糸(21、31)を複数の非導電性緯糸(24a、34a)の上に浮かばせるステップであって、第3結束点(B
3)のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸(34a~34f)で、前記経方向に前の第3結束点(B
3)から離れて配置されている、ステップ
を含む、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布地に関する。特には、本発明は電磁遮蔽織物(electromagnetic shielding fabric)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を介してデータを交換できる電子装置は普及している。特には、GSM、UMTS、LTE/LTE-A、5G、WiFi(登録商標)、WIMAX通信ネットワークなどのワイヤレスワイドエリアネットワーク(Wireless Wide Area Networks、WWANs)およびワイヤレスローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Networks、WLANs)の場合、データは、様々な周波数帯域および様々なエネルギによる無線伝送を介して常に伝送されている。また、ブルートゥース(登録商標)やZigBee(登録商標)などの短距離の通信標準も様々な装置を無線に接続するために広く使用される。
【0003】
特に都市環境の場合、人間環境の隅々まで、大きな周波数スペクトルに広がる大量のエネルギを持つ電磁波が絶えず浸透している。
【0004】
この無線周波数の混雑は干渉問題を引き起こし、通信効率を低下させる。また、電磁波への継続的な被曝が人体に及ぼす長期的な影響については、まだ十分に解明されていない。
【0005】
また、無線接続は、データへの不正アクセスや、無線装置やコンピュータネットワーク全体への侵入/ハイジャックを、遠隔的に、すなわち、無線信号が目標装置によって正常に送受信される範囲内(例えば、WiFi信号の場合は数十メートル内、GSM信号の場合は数百メートル内)で行う機会を与える。
【0006】
以上から、簡単かつ効果的な方法で、人や空間(例えば、窓、建物の部屋、車両室内など)を電磁放射線から少なくとも部分的に守れる対策の必要性が明らかである。
【0007】
このため、いわゆるファラデーケージ効果に基づく電磁放射遮蔽を提供するように配置された金属糸を含む織物または布地は、当技術分野で提案されている。
【0008】
例えば、中国特許第105483906号明細書では、様々な材料を組み合わせることによって形成された複合織物が開示されている。経方向には、竹繊維および綿/ステンレス鋼繊維が使われる。竹繊維および綿/ステンレス鋼繊維は5対1の割合で配置されている。緯方向では、表面層は綿/ステンレス鋼繊維を含み、ライニング層はモダール繊維を使用する。表面層とライニング層は1対1の割合で配置される。表面層では、経方向のツーアップ・ワンダウン織り(two-up one-down twill)が表面として採用され、ふんわり柔らかなタオル構造がライニング層のベースとして使用される。表面層の綿/ステンレス鋼繊維は経方向および緯方向にネット状を形成するように織り込まれ、電磁波遮蔽と帯電防止性能を持たせる。
【0009】
中国特許出願公開第201704490号明細書に二重抗菌抗放射性織物が開示されており、この織物は複数の経撚糸と緯撚糸を含み、経撚糸は交互に配置された竹繊維と金属繊維との撚糸を含む。緯撚糸のそれぞれは、金属繊維撚糸と、金属繊維撚糸の上表面に配置された竹繊維撚糸とからなり、緯撚糸は、並びに配置された4本の経撚糸のグループのうちの1つ目の経撚糸の下に沈み、そして他の3つの経撚糸の上に浮くように順に案内される。
【0010】
独国特許出願公開第60216062号明細書に強化織物が開示されている。強化織物は、その表側に経糸と緯糸の結合体を含み、または、その裏側にメッシュ状結束体を含み、メッシュ状結束体は、経糸および緯糸の強化格子を含む。強化織物の経糸と緯糸は、表側の経糸と緯糸よりも高い機械的特性を持つ材料によって作られたものである。強化格子はその経糸およびその緯糸によって表側に接続され、経糸および緯糸は、表側の異なる位置に取り付けられ、表側を形成する基布の外側で互いに交差する。
【0011】
出願人は、これらの織物の導電糸が不均一な格子状構造を有することを見出した。特には、緯糸と経糸との交差点が非規則的に離れ、および/または、緯糸および経糸が緩く重なっただけで、確実な接触が保証されない。また、導電性を有する経糸と緯糸との接触は、織物が覆う表面の形状や、使用中に生じ得る折り目から影響を受ける。
【0012】
これらの欠点によって、織物において導電糸の格子状構造の規則性が崩され、そのため、織物は一定かつ均質な遮蔽効果を発揮できなくなる。
【0013】
また、出願人は、当該技術分野で知られた電磁遮蔽織物では、規則的な格子状構造を維持しながら複雑な模様を織ることができないことを見出した。言い換えれば、当該技術分野で知られた生地は「機能的」な織物であり、ファッションやインテリアデザイン業界の需要も満たす製品の製造には適していない。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。
【0015】
特には、本発明は、機能性とデザイン性とが相対しない織物を提供することを図る。言い換えれば、本発明は、効果的な電磁放射線遮蔽を提供しながら、多種多様なデザインを織ることを可能にするように、視覚的および物理的な制限を最小限にする織物を目指す。
【0016】
本発明の更なる目的は、効果的な電磁遮蔽格子を含みながら、電磁遮蔽格子を形成する導電糸がユーザに知覚されないか、または実質的に知覚されない美的模様面(aesthetic patterned surface)を含む織物を提供することである。
【0017】
本発明のこれらの目的および更なる目的は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0018】
第1の態様に基づいて、本発明は織物に関する。当該織物は、
複数の非導電性経糸および複数の非導電性緯糸を含み、複数の非導電性経糸および複数の非導電性緯糸が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層(non-conductive woven layer)と、
複数の導電性経糸および複数の導電性緯糸を含み、複数の導電性経糸および複数の導電性緯糸が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層(conductive woven layer)と、
を含む。
【0019】
詳細に言うと、非導電性織物層は電磁遮蔽織物の模様面を規定し、導電性織物層は格子状構造を規定し、非導電性織物層と導電性織物層とは互いに織り込まれる、また、電磁遮蔽織物は、経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタを含む。セクタのそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸のグループおよび1つの導電性経糸、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸および1つの導電性緯糸を含む。導電性経糸のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、非導電性緯糸のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含む。
【0020】
有利なことに、セクタのそれぞれは、
導電性経糸が導電性緯糸の下に沈む、第1結束点(binding point)と、
非導電性経糸のグループ内の非導電性経糸のそれぞれに対して、非導電性経糸が導電性緯糸の上に浮く、第2結束点と、
をさらに含む。
【0021】
また、経方向および/または緯方向に沿って交互に配置されたセクタは、
導電性経糸が非導電性緯糸のグループ内の少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮く第3結束点であって、導電性経糸が導電性緯糸の下に沈む第1結束点(B1)に隣接する、第3結束点(B3)、
を含む。
【0022】
本開示の範囲および特許請求の範囲において、「導電性」という用語は、材料において電流の流れが通過する特性を指し、一方、「非導電性」という用語は、材料において電流の流れが妨げられる特性を指す。特には、「導電性糸」は、その電気抵抗が「非導電性糸」の電気抵抗より著しく低いという特徴を有する。例えば、非導電性糸は、導電性糸よりも3桁以上の電気抵抗を有する。
【0023】
本出願人は、上述したように規制された、本発明に係る織物が、非常に大きな周波数スペクトルにわたって優れた電磁遮蔽効果を提供することを理解している。「優れた電磁遮蔽効果」とは、織物の下流で測定された電磁放射に関連するエネルギを、織物の上流で測定されたエネルギの1%以下の数値に低減する効果を指す。
【0024】
換言すれば、本発明に係る織物で覆われた身体は、人間にとって有害と証明されたレベルのエネルギを有する電磁放射、および/または、無線通信の実行に十分なレベルのエネルギを有する電磁放射から保護される。
【0025】
特に、上述したように規制された、本発明に係る織物は、セルラーネットワーク(例えば、GSM、UMTS、LTE/LTE-A、5G)、WLAN(例えば、WiFi、WIMAX)、近距離通信システムおよびパーソナルエリアネットワーク(例えば、Bluetooth、Zigbee)などのすべての無線通信システムによって実質的に使用される周波数帯を構成する周波数の電磁放射を、効果的に遮蔽する。より一般的に言うと、上述したように規制された、本発明に係る織物は、超短波(Very high frequency、VHF)、極超短波(Ultra high frequency、UHF)、マイクロ波(Super high frequency、SHF)の範囲、および少なくとも部分的にミリ波(Extremely high frequency、EHF)の範囲の電磁放射を効果的に遮蔽する。
【0026】
国際電気通信連合(ITU)の規定によると、VHFは30MHzから300MHzまでの無線周波数に対応し、UHFは300MHzから3GHzまでの無線周波数に対応し、SHFは3GHzから30GHzまでの無線周波数に対応し、EHFは30GHzから300GHzまでの無線周波数に対応する。
【0027】
同時に、非導電性織物層は、複雑な美的模様(aesthetic pattern)を得るように織られ得る。実際、非導電性織物層における導電性経糸および導電性緯糸は知覚されないとともに、導電性織物層は均一的かつ規則的な格子状構造に形成されている。
【0028】
特には、出願人によって開発されて結合された発明は、2つの織り込まれた層を有する織物を提供する。同時に、導電性経糸と導電性緯糸は、織物の緯方向および経方向に沿って、機械的にも電気的にも、規則的に常に接触している。これによれば、格子状構造は、使用中に織物が折り畳まれたり伸ばされたりしても実質的に変化しない。そのため、多くの用途や条件下で信頼性の高い電磁遮蔽を提供することができる。
【0029】
また、本発明に係る織物の具体構造は、織物のセクタのそれぞれにおいて、少なくとも2つの非導電性糸を含む非導電性経糸のグループと、少なくとも1つの非導電性糸を含む非導電性緯糸のグループと、を有する。これによれば、様々な美的模様、例えば、ジャカード機の製織技術を使用する模様が実現可能になる。
【0030】
1つの実施例において、非導電性経糸のグループは3つの非導電性緯糸を含む。好ましくは、経方向および/または緯方向に沿って交互に配置されたセクタは、単一の、前記導電性経糸が少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮く前記第3結束点を含む。
【0031】
出願人は、導電性および非導電性の経糸および緯糸の間の特定の結束によれば、非導電性織物層において任意の所望の模様が実質的に得られるとともに、導電性織物層における非常に細かくて信頼性の高い格子状構造によれば、上述した周波数スペクトルにわたって優れた電磁遮蔽効果を提供できることを見出した。
【0032】
1つの実施例において、非導電性緯糸のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含む。好ましくは、セクタのそれぞれは、導電性経糸が少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮く更なる第3結束点を含む。有利なことに、更なる第3結束点のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸で、経方向に前の第3結束点から離れて配置されている。
【0033】
このような結束の配置によれば、大量の非導電性経糸および/または非導電性緯糸を含む織物に対しても、織物の使用中に、導電性織物層の構造を非導電性織物層および規則的な格子状構造に強固に維持することができる。
【0034】
1つの実施例において、第1結束点のそれぞれは、1.5mmから3.5mmまでの距離範囲で、好ましくは2mmで、経方向および/または緯方向に、好ましくは経方向および緯方向に、別のセクタの第1結束点から離れて配置されている。
【0035】
好ましくは、セクタのそれぞれは、1対3、1対5、1対7および1対9のうちから選択された割合で、導電性経糸および非導電性経糸を含む。
【0036】
出願人は、経糸と緯糸との間の特定の割合によれば、模様デザインと電磁遮蔽とも最良の結果が得られることを見出した。
【0037】
1つの実施例において、導電性経糸および導電性緯糸は、金属繊維で、好ましくはステンレス鋼繊維で紡糸して得たヤーン、および、天然繊維で紡糸して得たヤーンによって、金属繊維(例えば、ステンレス鋼繊維)が5%から50%までの範囲の割合で、好ましくは金属繊維(例えば、ステンレス鋼繊維)が20%の割合で、作られたものである。
【0038】
好ましい実施例において、導電性経糸および導電性緯糸は、ステンレス鋼繊維とウール繊維とともに紡糸して得たヤーンによって作られたものである。
【0039】
この組成の導電性経糸および導電性緯糸によれば、効果的なファラデーケージと、糸の染色との両方が実現可能になる。したがって、多種多様な美的模様を織ることができる。また、上述した組成は、本発明に係る織物中の金属繊維の存在を隠すのに最適であることが明らかになった。言い換えれば、上述した組成によれば、一般的に織物中の金属繊維の存在に関連する色の変化(灰色化)および/または金属のきらめきを最小限に抑えることが可能になる。
【0040】
また、出願人は、ステンレス鋼で作られた導電糸が、銀や銅のような他の導電性材料よりも優れていることを見出した。特には、ステンレス鋼は皮膚科学的に安全であり、耐腐食性でもある。したがって、糸はネガティブな反応を引き起こすことなく人間の皮膚と相互作用でき、摩耗や化学処理に耐えることができる。こうして出来上がった糸は、人間が使っても安全で、長い耐用年数を通して安定した外観を保つ。
【0041】
本発明の1つの実施例において、導電性経糸および導電性緯糸は、12.5tex(g/km)から125tex(g/km)までの範囲の糸番手または線密度を有する。
【0042】
特に、糸番手(「ウェイトナンバリング(weight numbering)」とも呼ばれる)は、ヤーンまたは糸の長さあたりの重量を示す。詳細に言うと、糸番手の単位は「tex」であり、これは国際計量システムの単位で、1000メートルあたり1グラムに相当し、すなわち、1texが1g/1kmである。
【0043】
好ましくは、導電性経糸および導電性緯糸のそれぞれは、業界では8Nmで示された8m/gから、業界では50Nmで示された50m/gまでの範囲の繊度を有するヤーンによって作られたものである。
【0044】
特には、「繊度」は糸の特性の1つであり、単位重量あたりの糸の長さとして定義される。繊度の単位は「ナンバリング」(Numbering、Nm)であり、これは国際標準尺度の単位で、1グラムあたり1メートルに相当し、すなわち、1Nmが1m/1gである。
【0045】
さらに好ましくは、導電性経糸および導電性緯糸のそれぞれは、50m/g(業界では50/2Nmで示されている)の繊度を有するヤーンを2つ含む。
【0046】
出願人は、この構造によれば、導電糸の機械的特性および電気的特性に対する信頼性を保証でき、非導電糸との組み合わせによって製織を容易にできることを見出した。
【0047】
1つの実施例において、非導電性経糸のそれぞれは2つのヤーンを含み、それぞれのヤーンは、ウールによって作られ、60m/g(業界では60/2Nmで示される)の繊度を有する。また、非導電性緯糸のそれぞれは2つのヤーンを含み、それぞれのヤーンは、ウールによって作られ、28m/g(業界では28/2Nmで示される)の繊度を有する。
【0048】
このような糸の特徴によれば、ファッションやインテリアデザインの業界の需要を満たす製品の製造に適した、高品質の織物を得ることができる。
【0049】
本発明の異なる実施の形態は多層織物に関する。当該多層織物は、前述した実施例のいずれか1つに係る織物を少なくとも2層含む。有利なことに、当該2層の織物は縫い合わされている。
【0050】
多層織物は、単層織物よりも大きな電磁遮蔽効果を発揮する。また、多層織物の最も外側の2層の織物とも模様面が外部環境に面するように縫い合わされた場合、格子状構造は視覚的に完全に隠される。
【0051】
本発明のさらに異なる実施の形態は、電磁遮蔽織物を製造する方法に関する。当該電磁遮蔽織物は、
複数の非導電性経糸および複数の非導電性緯糸を含み、複数の非導電性経糸および複数の非導電性緯糸が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層と、
複数の導電性経糸および複数の導電性緯糸を含み、複数の導電性経糸および複数の導電性緯糸が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層と、
を含む。
【0052】
非導電性織物層は電磁遮蔽織物の模様面を規定し、導電性織物層は格子状構造を規定し、非導電性織物層と導電性織物層とは互いに織り込まれる。
【0053】
方法は、
経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタを規定することによって電磁遮蔽織物を織るステップであって、セクタのそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸のグループおよび1つの導電性経糸、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸および1つの導電性緯糸を含む、ステップ
を含む。
非導電性経糸のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、非導電性緯糸のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含む。
【0054】
有利なことに、複数のセクタを規定することによって電磁遮蔽織物を織るステップは、セクタのそれぞれにおいて、
第1結束点において、導電性経糸を導電性緯糸の下に沈ませるステップと、
それぞれの第2結束点において、非導電性経糸のグループ内の非導電性経糸のそれぞれを、導電性緯糸の上に浮かせるステップと、
経方向および/または緯方向に沿って交互に配置されたセクタの中で、第3結束点において、導電性経糸を非導電性緯糸のグループ内の少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮かせるステップであって、第3結束点を第1結束点(B1)に隣接するように織る、ステップと、
を含む。
【0055】
1つの実施例において、非導電性経糸のグループは3つの非導電性緯糸を含む。
【0056】
この場合、第3結束点において、導電性経糸を非導電性緯糸のグループ内の少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮かせるステップは、
セクタのそれぞれの中で、単一の第3結束点において導電性経糸を浮かせるステップ
を含む。
【0057】
異なる実施例において、非導電性緯糸のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含む。この場合、第3結束点において、導電性経糸を非導電性緯糸のグループ内の少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮かせるステップは、
第3結束点のそれぞれにおいて、導電性経糸を複数の非導電性緯糸の上に浮かばせるステップ
を含む。
特には、第3結束点のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸で、経方向に前の第3結束点から離れて配置されている。
【0058】
本発明の更なる特徴および利点は、添付された図面に示された、いくつかの好ましい実施例に対する以下の詳細な説明により、明らかになるであろう。
【0059】
以下、本発明の異なる態様に関連する添付図面に示された、いくつかの例示的かつ非限定的な実施形態を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の一実施例に係る、両面を見せるために部分的に折り畳まれた、織物の一部を示す図
【
図2a】本発明の第1実施例に係る織物の結束模様(結束パターン)の一部を示す図
【
図2b】織物の導電性経糸および導電性緯糸の第1結束スキームに注目する、
図2aの織物の第1セクタの詳細を示す図
【
図2c】織物の導電性経糸および導電性緯糸の第2結束スキームに注目する、
図2aの織物の第2セクタの詳細を示す図
【
図3a】本発明の第2実施例に係る織物の結束模様の一部を示す図
【
図3b】織物の導電性経糸および導電性緯糸の第1結束スキームに注目する、
図3aの織物の第1セクタの詳細を示す図
【
図3c】織物の導電性経糸および導電性緯糸の第2結束スキームに注目する、
図3aの織物の第2セクタの詳細を示す図
【
図4a】本発明の一実施例に係る織物の第1サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【
図4b】本発明の一実施例に係る織物の第1サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【
図5a】本発明の実施例でない遮蔽織物の第2サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【
図5b】本発明の実施例でない遮蔽織物の第2サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【
図6a】本発明の実施例でない、かつ別の遮蔽織物の第3サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【
図6b】本発明の実施例でない、かつ別の遮蔽織物の第3サンプルによって提供され、電磁放射の周波数の関数としての電磁遮蔽効果のプロット図
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明はいくつかの代替的な方法で実施できるが、いくつかの好ましい実施形態を図面に示し、以下に詳細に説明する。しかしながら、本発明を開示された特定の実施形態に限定する意図はなく、むしろ、本発明は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲に入るすべての変更例、代替例、および均等物を含む意図があることを理解されたい。
【0062】
「例えば」、「など」、「または」という用語の使用は、特に定義しない限り、制限のない非排他的な代替案を示す。「含む」という用語は、特に定義しない限り、「含むがそれに限らない」を指す。
【0063】
図1は、本発明の一実施例に係る布地または織物1の一部を示し、当該布地または織物1は美的模様面10と、反対側の第2面の遮蔽面11とを含む。詳細に言うと、非導電性織物層は、模様面10を形成し、導電性織物層が形成する遮蔽面11に織り込まれる。
【0064】
非導電性織物層は、模様(パターン)に織り込まれた複数の経糸および緯糸を含み、当該模様は、模様面10に所望の図案(figure)101を再現するようにデザインされる。一般的には、図案101は、模様面10において経方向wAおよび/または緯方向wEに沿って周期的に繰り返される。
【0065】
非導電性織物層の経糸および緯糸は非導電性材料によって作られたものである。以下、非導電性織物層の経糸および緯糸をそれぞれに「非導電性」経糸および「非導電性」緯糸と呼ぶ。
【0066】
好ましくは、非導電性層の非導電性経糸および非導電性緯糸は、天然繊維によって、より好ましくはウールによって作られたものである。
【0067】
布地の分野では、糸は、単位重量あたりの糸の長さを指す「繊度」に基づいて分類できる。繊度の単位は「ナンバリング」(Nm)であり、これは国際標準尺度の単位で、1グラムあたり1メートルに相当し、すなわち、1Nmが1m/1gである。
【0068】
本発明に係る実施例において、非導電性経糸は繊度が60/2Nmである(すなわち、糸のそれぞれが2つのヤーンを含み、2つのヤーンのそれぞれの繊度が60m/gである)ウール糸である一方、非導電性緯糸は繊度が28/2Nmである(すなわち、糸のそれぞれが2つのヤーンを含み、2つのヤーンのそれぞれの繊度が28m/gである)ウール糸である一方、さらに一般的に言うと、非導電性経糸および非導電性緯糸は、8/1Nmから50/1Nmまでの範囲の繊度を有する。
【0069】
導電性織物層は格子状模様111に織り込まれた複数の経糸および緯糸を含み、当該格子状模様111はいわゆるファラデーケージ効果を生じるようにデザインされる。特には、導電性層の格子状模様111は、遮蔽面11において経方向wAと緯方向wEともに沿って規則的かつ均一的な形式で、互いに離れて配置された経糸および緯糸を含む。
【0070】
導電性織物層の経糸および緯糸は導電性材料によって作られたものである。以下、導電性織物層の経糸および緯糸をそれぞれに「導電性」経糸および「導電性」緯糸と呼ぶ。
【0071】
導電性層の導電性経糸および導電性緯糸は、天然繊維、より好ましくはウール繊維と、金属繊維、より好ましくはステンレス鋼繊維との混合物によって作られたものである。有利なことに、導電性層の導電性経糸および導電性緯糸は、ステンレス鋼繊維とウール繊維とともに紡糸して得たヤーンによって作られたものである。好ましくは、有利なことに、導電性層の導電性経糸および導電性緯糸は、金属繊維が5%から50%までの範囲の割合で、好ましくは金属繊維が20%の割合で、金属繊維および天然繊維で紡糸したヤーンによって作られたものである。ここの例示において、金属繊維はステンレス鋼繊維である。
【0072】
例えば、導電性経糸および導電性緯糸は、12.5tex(すなわち、12.5g/km)から125tex(125g/km)までの範囲の糸番手を有する。
【0073】
好ましくは、導電性経糸および導電性緯糸は、ウール繊維とステンレス鋼繊維との混合体によって作られ、50/2Nmの繊度を有し、すなわち、糸のそれぞれは2つのヤーンを含み、ヤーンのそれぞれは50m/gの繊度を有する。
【0074】
織物1は、非導電性織物層と導電性織物層とが互いに強固に織り込まれた形式で織られる。格子状模様111は連続的に均質かつ規則的な構造を有するとともに、導電性経糸および導電性緯糸は、模様面10から観察者には、見えないか、実質的に視覚的に認識できない。
【0075】
図2aを参照すると、本発明の第1実施例に係る結束模様(binding pattern)2の一部が示されている。特には、結束模様2は、織物の模様面10から見える織り模様に対応する。
【0076】
結束模様2は、規則的なスキームに基づいて緯方向wEと交差して配置された、複数の導電性経糸21および非導電性経糸22を含む。特には、導電性経糸21と非導電性経糸22は、1つの導電性経糸21および3つの非導電性経糸22という周期的な構造、すなわち、導電性経糸および非導電性経糸の割合が1対3であるという構造に基づいて配置されている。
【0077】
同様に、結束模様2は、規則的なスキームに基づいて経方向wAと交差して配置された、複数の導電性緯糸23および非導電性緯糸24a、24bを含む。特には、導電性緯糸23と非導電性緯糸24a、24bは、1つの導電性緯糸23および2つの非導電性緯糸24a、24bという周期的な構造、すなわち、導電性緯糸および非導電性緯糸の割合が1対2であるという構造に基づいて配置されている。有利なことに、非導電性緯糸24a、24bは大体異なる色に染められる。
【0078】
結束模様2は複数のセクタ25a、25bに分割可能であり、セクタ25a、25bのそれぞれは複数の結束点を含む。ここで、「結束点」は、経糸が、緯糸の上または下を通過するように、緯糸と交差する点を指す。ここの例示において、セクタ25a、25bのそれぞれは、4つの経糸のセットと3つの緯糸のセットとの間の12個の結合点のセットを含む。特には、経糸のセットのそれぞれは1つの導電性経糸21および3つの非導電性経糸22を含むとともに、緯糸のセットのそれぞれは1つの導電性緯糸23および2つの非導電性緯糸24a、24bを含む。
【0079】
セクタ25a、25bは経方向wAおよび緯方向wEに沿って互いに隣接して配置される。ここの例示において、複数のセクタ25a、25bは2つのセクタグループに分割可能である。特には、第1セクタグループに属するセクタ25a内の導電性経糸21および導電性緯糸23は、第1結束スキームに基づいて織られるとともに、第2セクタグループに属するセクタ25b内の導電性経糸21および導電性緯糸23は、第2結束スキームに基づいて織られる。
【0080】
また、第1セクタグループに属するセクタ25aと第2セクタグループに属するセクタ25bとは、経方向wAおよび緯方向wEと交差して相互に配置される。すなわち、各方向に沿って、1つのセクタグループに属するセクタが、もう1つのセクタグループに属するセクタと交互に配置される。
【0081】
図2bは、第1セクタグループのセクタ25aにおいて導電性経糸21および導電性緯糸23を織るのに使用される第1結束スキームを示す。第1結束スキームは、単一の第1結束点B
1(黒いブロック)を含み、第1結束点B
1において、導電性経糸21が導電性緯糸23の下に沈む。さらに、第1結束スキームは、非導電性経糸22のそれぞれに対して1つの第2結束点B
2(白いブロック)を含み、第2結束点B
2において、非導電性経糸22が導電性緯糸23の上に浮く。また、第1結束スキームは、単一の第3結束点B
3(濃くハッチングされたブロック)を含み、第3結束点B
3において、導電性経糸21が1つの非導電性緯糸24aの上に浮くとともに、第4結束点B
4(淡くハッチングされたブロック)のそれぞれにおいて、導電性経糸21がもう1つの非導電性緯糸24bの下に沈む。セクタ25aの単一の第3結束点B
3は単一の第1結束点B
1に隣接する。
【0082】
残りの第5結束点B5(斜線でハッチングされたブロック)において、非導電性経糸22は、模様面10で所望の美的デザインを再現するように浮いてもよく沈んでもよい。
【0083】
図2cに示された第2結束スキームは、第3結束点B
3がないことを除いて第1スキームに対応する。言い換えれば、第2結束スキームは、単一の第1結束点B
1(黒いブロック)を含み、第1結束点B
1において、導電性経糸21が導電性緯糸23の下に沈む。さらに、第2結束スキームは、非導電性経糸22のそれぞれに対して1つの第2結束点B
2(白いブロック)を含み、第2結束点B
2において、非導電性経糸22が導電性緯糸23の上に浮く。また、第4結束点B
4(淡くハッチングされたブロック)のそれぞれにおいて、導電性経糸21は非導電性緯糸24a、24bの下に沈む。残りの第5結束点B
5(斜線でハッチングされたブロック)において、非導電性経糸22は、模様面10で所望の美的デザインを再現するように浮いてもよく沈んでもよい。
【0084】
出願人は、このような特別な結束模様によれば、すなわち、経方向wAおよび緯方向wEに沿って交互に配置する第1結束スキームおよび第2結束スキームによれば、複雑性の高い模様に対しても、多種多様な美的模様を模様面10で織ることが可能になることを見出した。また、導電性経糸21および導電性緯糸23は、模様面10上では見えないか、実質的に認識できないため、模様面10上のデザインの質に影響を与えない。同時に、格子状模様111は、導電性経糸21および導電性緯糸23を含む均一かつ規則的な構造を有し、当該導電性経糸21および導電性緯糸23は、織物の緯方向および経方向に沿って、機械的および電気的な両方において規則的かつ均一な接触点を含む。
【0085】
さらに、本発明に係る織物1の模様面10と遮蔽面11は、織物の緯方向と経方向に沿って、互いに織り込まれることによって強固に結合されている。これにより、格子状構造は、使用中に布が折り畳まれたり伸ばされたりしても実質的に変化しないため、多くの用途で信頼性の高い電磁遮蔽を提供することができる。
【0086】
図3aを参照すると、本発明の第2実施例に係る結合模様3の一部が示されている。特には、結合模様3は、織物1の模様面10で観察できる織り模様に対応する。
【0087】
結合模様3は、規則的なスキームに従って緯方向wEと交差して配置された、複数の導電性経糸31および非導電性経糸32を含む。特には、導電性経糸31と非導電性経糸32は、1つの導電性経糸31および9つの非導電性経糸32という周期的な構造、すなわち、導電性経糸および非導電性経糸の割合が1対9であるという構造に基づいて配置されている。
【0088】
同様に、結束模様3は、規則的なスキームに基づいて経方向wAと交差して配置された、複数の導電性緯糸33および非導電性緯糸34a~34gを含む。特には、導電性緯糸33と非導電性緯糸34a~34gは、1つの導電性緯糸33および6つの非導電性緯糸34a~34fという周期的な構造、すなわち、導電性緯糸および非導電性緯糸の割合が1対6であるという構造に基づいて配置されている。有利なことに、模様面10で多色の美的デザインを提供するために、非導電性緯糸34a~34fは大体2つ以上の色に染められる。
【0089】
結束模様3は、経糸と緯糸との間にあり得る結束点の複数のセクタ35a、35bに分割可能である。そのため、セクタ35a、35bのそれぞれは、10つの経糸のセットと7つの緯糸のセットとの間の70個の結合点のセットを含む。特には、経糸のセットのそれぞれは1つの導電性経糸31および9つの非導電性経糸32を含むとともに、緯糸のセットのそれぞれは1つの導電性緯糸33および6つの非導電性緯糸34a~34fを含む。
【0090】
セクタ35a、35bは経方向wAおよび緯方向wEに沿って互いに隣接して配置される。ここの例示において、複数のセクタ35a、35bは2つのセクタグループに分割可能である。特には、第1セクタグループに属するセクタ35a内の導電性経糸31および導電性緯糸33は、第1結束スキームに基づいて織られるとともに、第2セクタグループに属するセクタ35b内の導電性経糸31および導電性緯糸33は、第2結束スキームに基づいて織られる。
【0091】
また、第1セクタグループに属するセクタ35aと第2セクタグループに属するセクタ35bとは、経方向wAおよび緯方向wEと交差して相互に配置される。
【0092】
図3bで最もよく示されたように、第1結束スキームは、単一の第1結束点B
1(黒いブロック)を含み、第1結束点B
1において、導電性経糸31が導電性緯糸33の下に沈む。さらに、第1結束スキームは、非導電性経糸32のそれぞれに対して1つの第2結束点B
2(白いブロック)を含み、第2結束点B
2において、非導電性経糸32が導電性緯糸33の上に浮く。また、第1結束スキームは、1つの第3結束点B
3(濃くハッチングされたブロック)を含み、第3結束点B
3において、導電性経糸31が1つの非導電性緯糸34aの上に浮く。好ましくは、セクタ35aの1つ目の第3結束点B
3は単一の第1結束点B
1に隣接する。
【0093】
また、第1結束スキームは、更なるの第3結束点B3(濃くハッチングされたブロック)を含み、更なる第3結束点B3において、導電性経糸31が1つの非導電性緯糸34aの上に浮くとともに、第4結束点B4(淡くハッチングされたブロック)のそれぞれにおいて、導電性経糸31が別の非導電性緯糸34b~34dおよび34fの下に沈む。
【0094】
残りの第5結束点B5(斜線でハッチングされたブロック)において、非導電性経糸は、模様面10で所望の美的デザインを再現するように浮いてもよく沈んでもよい。
【0095】
図3cに示された第2結束スキームは、単一の第1結束点B
1(黒いブロック)を含み、第1結束点B
1において、導電性経糸31が導電性緯糸33の下に沈む。第2結束スキームは、非導電性経糸32のそれぞれに対して1つの第2結束点B
2(白いブロック)を含み、第2結束点B
2において、非導電性経糸32が導電性緯糸31の上に浮く。
【0096】
また、第2結束スキームは、単一の第3結束点B3(濃くハッチングされたブロック)を含み、第3結束点B3において、導電性経糸31が1つの非導電性緯糸34cの上に浮くとともに、第4結束点B4(淡くハッチングされたブロック)のそれぞれにおいて、導電性経糸31が他の非導電性緯糸34a、34b、34d~34fの下に沈む。
【0097】
残りの第5結束点B5(斜線でハッチングされたブロック)において、非導電性経糸は、模様面10で所望の美的デザインを再現するように浮いてもよく沈んでもよい。
【0098】
図3aに示されたように、経方向w
Aに沿って、導電性経糸31は、織物1の全長にわたって、3つまたは4つの緯糸ごとに、緯糸34a~34fのうちの1つの上に浮く。ここの例示において、導電性経糸31の2つの連続の浮きは、3つの緯糸34a~34fによって離されており、そして、導電性経糸31の次の2つの連続の浮きは、4つの緯糸33、34a~34fによって離されており、このシーケンスは、好ましくは、経方向w
Aに沿って周期的に繰り返される。
【0099】
出願人は、本発明の実施例に係る織物サンプルと、および本発明の実施例に係る織物と異なる特徴を有する比較用織物サンプルと、の電磁遮蔽特性を評価することを目的とした試験を実施した。
【0100】
特には、この試験は、既知のパワーを持つ電磁放射線を織物サンプルに向けて照射し、織物サンプルの反対側で電磁放射線のパワーを測定するステップを含む。特には、織物サンプルは、試験で使用される電磁波が通過できない素材によって作られた箱の開口部の上に置かれた。箱の中において、受信機が織物サンプルの後ろに置かれ、受信機は、箱の中のいかなる電磁放射のパワーも測定するように構成されている。最後に、アンテナは、アンテナと織物サンプルとの間に障害物がないように、織物サンプルから1メートルの位置に置かれた。
【0101】
<試験1>
第一試験において、本発明の実施例に基づいて製造された第一織物サンプルS1が使用された。第1の織物サンプルS1は、95%のウール繊維と5%のステンレス鋼繊維とを混紡して作られた導電糸を含む。特には、導電性の経糸と緯糸とも50/2Nmの繊度を有する。また、非導電性経糸には60/2Nmの繊度を有し、非導電性緯糸には28/2Nmの繊度を有する。第1織物サンプルS1では、導電性経糸対非導電性経糸の割合が3対1であり、導電性緯糸対非導電性緯糸の割合が2対1である。
【0102】
図4aおよび
図4bに示されたように、第1織物サンプルS
1は、電磁放射からの実質的な遮蔽効果、すなわち、110MHz以上の周波数に対して20dB以上の減衰量を提供する。詳細に言うと、400MHzから1GHzの無線周波数範囲では、電磁放射の平均減衰量は40dB以上である。また、1GHzから20GHzまでの高周波範囲では、電磁波の平均減衰量は25dBから35dBである。
【0103】
すなわち、平均的には、第1織物サンプルS1を用いて製造された布地は、110MHzから20GHzまでの範囲の周波数を有するあらゆる入射電磁放射線に関連するエネルギを、100から104までの範囲内の減衰係数で低減する。言い換えれば、上述した周波数範囲に関して、布地の下流で測定された電磁放射線に関連するエネルギは、布地の上流で測定された電磁放射線のエネルギの1%から0.01%までの範囲の値を有する。
【0104】
注意すべきことに、考慮される全体的な無線周波数範囲、すなわち、110MHzから20GHzまでの範囲は、無線通信システムで使用される周波数帯域の大半を含み、特には、GSM、UMTS、LTE/LTE-A、5G、Wi-Fiなどの規格で使用される周波数帯域の大半を含む。
【0105】
特には、表1は、セルラーネットワークおよびWLANネットワークで使用される主な周波数帯を含む周波数に対して、第1織物サンプルS1が提供する減衰量を示す。
【0106】
【0107】
また、第1織物サンプルS1の電磁遮蔽特性は、さらに高い周波数(例えば、5Gネットワークで使用される周波数)で試験され、その結果は以下の表2に示されている。
【0108】
【0109】
以上から、第1織物サンプルS1は、周波数範囲20GHzから40GHzまでの範囲、すなわち、5Gで使用されるミリ波(mmWave)の波長で動作する装置によって生じる電磁放射に対しても、実質的な減衰(すなわち、少なくとも50倍の減衰)を提供することが明らかである。
【0110】
結論として、本発明の第1織物サンプルS1を用いて製造された布地は、無線通信システムによって使用される周波数帯域、すなわち、110MHzから40GHzにかける帯域における電磁放射に関連するエネルギを、無視できるレベル(少なくとも3%よりも低いレベル)まで減衰させることができ、それにより、有害なレベルのエネルギが布地によって覆われた身体に到達すること、または、布地の両側の間で有効な無線通信が行われることを防止することができる。
【0111】
<比較試験1>
第2織物サンプルS2は、98%のウール繊維と2%の鋼繊維とを混紡して作られた導電糸を含む。特には、導電性経糸と導電性緯糸とも50/2Nmの繊度を有する。また、非導電性経糸には60/2Nmの繊度を有し、非導電性緯糸には28/2Nmの繊度を有する。第2織物サンプルS2は、導電性経糸対非導電性経糸の割合が9対1であり、導電性緯糸対非導電性緯糸の割合が7対1である。
【0112】
言い換えれば、第2織物サンプルS2を織るのに利用される導電性糸は、本発明に基づく割合の最小値よりも低い割合で非導電性材料/導電性材料によって作られたものである。
【0113】
図5aおよび
図5bに示されたように、第2織物サンプルS
2は、第1織物サンプルS
1と比べて、電磁放射からの遮蔽性が非常に低い。
【0114】
特には、第2織物サンプルS2が提供する減数量は、700MHzから1GHzまでの範囲においてのみ、その平均値が最も高くなり、すなわち、約25dBになる。また、平均減衰効果は、1GHzから20GHzまでの周波数範囲に対しては減少傾向にあり、1GHzから5GHzまでの範囲に対しては約25dBの平均減衰量を提供し、5GHzから20GHzまでの周波数範囲に対しては、急遽に著しく低い平均値(例えば、10dBと5dBとの間)まで減少する。
【0115】
表3は、第1織物サンプルS1に関して表1で考慮したのと同じ周波数に対して、第2織物サンプルS2が提供する減衰量を示す。
【0116】
【0117】
第2織物サンプルS2の電磁遮蔽特性は、さらに高い周波数(例えば、5Gネットワークで使用される周波数)に対しても試験され、その結果は以下の表4に示されている。
【0118】
【0119】
以上より、第2織物サンプルS2は、考慮された周波数範囲の全てに対しては、第1サンプルS1よりも非常に低い電磁遮蔽性能を有することが分かった。
【0120】
<比較試験2>
第3織物サンプルS3は、51%のコットンビスコース(cotton-viscose、CV)と、25%のウール繊維と、17%のセルロース由来繊維(例えば、テンセル(登録商標)という商品名を持つ繊維)と、6%の鋼繊維とを混紡して作られた導電糸を含む。特には、導電性経糸と導電性緯糸とも50/2Nmの繊度を有する。また、非導電性経糸には70/2Nmの繊度を有し、非導電性緯糸には50/2Nmの繊度を有する。第3織物サンプルS3は、導電性経糸対非導電性経糸の割合が5対1であり、導電性緯糸対非導電性緯糸の割合が5対1である。第3織物サンプルS3は、中国特許第105483906号明細書などの従来技術に基づいて織られたものである。
【0121】
図6aおよび
図6bに示されたように、第3織物サンプルS
3は、第1織物サンプルS
1と比べて、電磁放射からの遮蔽性が非常に低い。
【0122】
特には、第3織物サンプルS3が提供する減数量は、300MHzから1GHzまでの範囲においてのみ、その平均値が最も高くなり、すなわち、約30dBになる。また、平均減衰効果は、1GHzから20GHzまでの周波数範囲に対しては減少傾向にあり、1GHzから5GHzまでの範囲に対しては約30dBの平均減衰量を提供し、8GHzから20GHzまでの周波数範囲に対しては、20dBよりも低い平均値まで減少する。
【0123】
表5は、第1織物サンプルS1に関して表1で考慮したのと同じ周波数に対して、第3織物サンプルS3が提供する減衰量を示す。
【0124】
【0125】
第3織物サンプルS3の電磁遮蔽特性は、さらに高い周波数(例えば、5Gネットワークで使用される周波数)に対しても試験され、その結果は以下の表6に示されている。
【0126】
【0127】
以上より、第3織物サンプルS3は、考慮された周波数範囲の全てに対しては、第1サンプルS1よりも非常に低い電磁遮蔽性能を有することが分かった。このことは20GHzから40GHzまでの範囲ではよく表れる。
【0128】
以下の表7は、本発明に基づいて織られた第1織物サンプルS1織物と、第3織物サンプルS3とが特定の周波数に対する減衰データ(単位がdBである)を示す。表7内のデータを比較すると容易に理解できるように、第3織物サンプルS3が比較的高い割合の導電性材料を有する導電性糸によって作られたにもかかわらず、本発明に係る第1織物サンプルS1は、第3織物サンプルS3と比べて全体的に比較的高く、かつ、比較的均一的な電磁遮蔽特性を提供する。
【0129】
【0130】
このように考案された本発明から数多くの変化例や変形例が得られて、変化例や変形例のすべてが本発明に係る発明概念の範囲内にある。
【0131】
例えば、本発明の実施例において、導電糸は、6μmから12μmまでの範囲の長さ、好ましくは8μmの長さを有するステンレス鋼繊維から紡糸される。また、導電糸内のヤーンのそれぞれは、8Nmから50Nmまでの範囲内の繊度で紡糸される。
【0132】
また、本発明の他の実施例において、糸は異なる布地繊維および/またはヤーンを含む。特には、ウールのみ含むヤーンの代わりに、導電糸および/または非導電糸は、ウール、ポリアミド(polyamide、PA)ポリマー、綿、絹および/または麻の混合物から紡糸されたヤーンによって作られ得る。
【0133】
導電性経糸と非導電性経糸との間の好ましい割合は、上述したように1対3および1対9であるが、導電性経糸と非導電性経糸との間の割合が異なっても、例えば、割合が1対2、1対5、または1対7であっても、本発明の実施を妨げることではない。
【0134】
代替的な実施例(図面には示されていない)において、上述した2枚以上の遮蔽織物を含む多層織物の提供を妨げるものは何もない。例えば、多層織物の1層の織物は、他の層の織物に重ね合わせて縫製可能である。好ましくは、複数層の織物は、それぞれの遮蔽面が内側になるように縫い合わされる。
【0135】
他に技術上均等な詳細および材料が使用可能であり、また、さまざまな構成要素の形状、寸法および距離も、需要に応じて任意のものとしてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁遮蔽織物(1、2、3)であって、
複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)を含み、前記複数の非導電性経糸(22、32)および前記複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層(101)と、
複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)を含み、前記複数の導電性経糸(21、31)および前記複数の導電性緯糸(23、33)が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層(111)と、
を含み、
前記非導電性織物層(101)は前記電磁遮蔽織物(1、2、3)の模様面(10)を規定し、前記導電性織物層(111)は格子状構造(11)を規定し、前記非導電性織物層(101)と前記導電性織物層(111)とは互いに織り込まれ、
前記電磁遮蔽織物(1、2、3)は、経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を含み、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸(22、32)のグループおよび1つの導電性経糸(21、31)、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)および1つの導電性緯糸(23、33)を含み、
前記非導電性経糸(22、32)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34e)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、
前記電磁遮蔽織物の前記模様面において、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、
前記導電性経糸(21、31)が前記導電性緯糸(23、33)の下に沈む、第1結束点(B
1、binding point)と、
前記非導電性経糸(22、32)のグループ内の非導電性経糸のそれぞれに対して、前記非導電性経糸(22、32)が前記導電性緯糸(23、33)の上に浮く、第2結束点(B
2)と、
をさらに含み、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)は、
前記導電性経糸(21、31)が前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮く第3結束点(B
3)であって、前記導電性経糸(21、31)が前記導電性緯糸(23、33)の下に沈む前記第1結束点(B
1)に隣接する、前記第3結束点(B
3)、
を含む、
電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項2】
前記非導電性経糸(22)のグループは3つの非導電性
経糸を含み、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)は、単一の、前記導電性経糸(21)が前記少なくとも1つの非導電性緯糸(24a)の上に浮く前記第3結束点(B
3)を含む、
請求項1に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項3】
前記非導電性緯糸(34a~34f)のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含み、
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、前記導電性経糸(31)が前記少なくとも1つの前記非導電性緯糸(34c、34e)の上に浮く更なる第3結束点(B
3)を含み、前記更なる第3結束点(B
3)のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸(34a~34f)で、前記経方向に前の第3結束点(B
3)から離れて配置されている、
請求項1に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項4】
第1結束点(B
1)のそれぞれは、1.5mmから3.5mmまでの距離範囲で、好ましくは2mmで、前記経方向および/または前記緯方向に、好ましくは前記経方向および前記緯方向に、別のセクタ(25a、25b、35a、35b)の前記第1結束点(B
1)から離れて配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項5】
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、1対3、1対5、1対7および1対9のうちから選択された割合で、導電性経糸(21、31)および非導電性経糸(22、32)を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項6】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、金属繊維で、好ましくはステンレス鋼繊維で紡糸して得たヤーン、および、天然繊維で、好ましくはウール繊維で紡糸して得たヤーンによって、金属繊維が5%から50%までの範囲の割合で、好ましくは20%の割合で、作られたものである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項7】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、12.5g/kmから125g/kmまでの範囲の糸番手を有する、
請求項6に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項8】
前記導電性経糸(21、31)および前記導電性緯糸(23、33)は、8m/gから50m/gまでの範囲の繊度を有するヤーンによって作られたものであり、好ましくは、前記導電性経糸(21、31)のそれぞれおよび前記導電性緯糸(23、33)のそれぞれは、50m/gの繊度を有するヤーンを2つ含む、
請求項6または7に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項9】
前記非導電性経糸(22、32)はウールによって作られ、前記非導電性経糸(22、32)のそれぞれは、60m/gの繊度を有するヤーンを2つ含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)はウールによって作られ、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のそれぞれは、28m/gの繊度を有するヤーンを2つ含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)。
【請求項10】
少なくとも2つの、請求項1から9のいずれか1項に記載の電磁遮蔽織物(1、2、3)を含み、前記少なくとも2つの電磁遮蔽織物(1、2、3)は縫い合わされている、
多層織物。
【請求項11】
電磁遮蔽織物(1、2、3)を製造する方法であって、
前記電磁遮蔽織物(1、2、3)は、
複数の非導電性経糸(22、32)および複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)を含み、前記複数の非導電性経糸(22、32)および前記複数の非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)が非導電性材料によって作られた、非導電性織物層(101、non-conductive woven layer)と、
複数の導電性経糸(21、31)および複数の導電性緯糸(23、33)を含み、前記複数の導電性経糸(21、31)および前記複数の導電性緯糸(23、33)が少なくとも部分的に導電性材料によって作られた、導電性織物層(111、conductive woven layer)と、
を含み、
前記非導電性織物層(101)は前記電磁遮蔽織物(1、2、3)の模様面(10)を規定し、前記導電性織物層(111)は格子状構造(11)を規定し、前記非導電性織物層(101)と前記導電性織物層(111)とは互いに織り込まれ、
前記方法は、
経方向および/または緯方向に互いに隣接して配置された複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を規定することによって前記電磁遮蔽織物(1、2、3)を織るステップであって、セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれは、少なくとも1つの非導電性経糸(22、32)のグループおよび1つの導電性経糸(21、31)、ならびに、少なくとも1つの非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)および1つの導電性緯糸(23、33)を含む、ステップ
を含み、
前記非導電性経糸(22、32)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34e)のグループは少なくとも2つの非導電性糸を含み、
前記複数のセクタ(25a、25b、35a、35b)を規定することによって前記電磁遮蔽織物(1、2、3)を織るステップは、
第1結束点(B
1)において、前記導電性経糸(21、31)を前記導電性緯糸(23、33)の下に沈ませるステップと、
それぞれの第2結束点(B
2)において、前記非導電性経糸(22、32)のグループ内の非導電性経糸のそれぞれを、前記導電性緯糸(23、33)の上に浮かせるステップと、
前記経方向および/または前記緯方向に沿って交互に配置されたセクタ(25a、25b、35a、35b)の中で、第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップであって、前記第3結束点(B
3)を前記第1結束点(B
1)に隣接するように織る、ステップと、
を含む、
方法。
【請求項12】
前記非導電性経糸(22)のグループは3つの非導電性
経糸を含み、
第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップは、
セクタ(25a、25b、35a、35b)のそれぞれの中で、単一の第3結束点(B
3)において前記導電性経糸(21、31)を浮かせるステップ
を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非導電性緯糸(34a~34f)のグループは少なくとも4つの非導電性緯糸を含み、
第3結束点(B
3)において、前記導電性経糸(21、31)を前記非導電性緯糸(24a、24b、34a~34f)のグループ内の少なくとも1つの前記非導電性緯糸(24a、24b)の上に浮かせるステップは、
第3結束点(B
3)のそれぞれにおいて、前記導電性経糸(21、31)を複数の非導電性緯糸(24a、34a)の上に浮かばせるステップであって、第3結束点(B
3)のそれぞれは、少なくとも3つの非導電性緯糸(34a~34f)で、前記経方向に前の第3結束点(B
3)から離れて配置されている、ステップ
を含む、
請求項11に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
1つの実施例において、非導電性経糸のグループは3つの非導電性経糸を含む。好ましくは、経方向および/または緯方向に沿って交互に配置されたセクタは、単一の、前記導電性経糸が少なくとも1つの非導電性緯糸の上に浮く前記第3結束点を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】