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2024-508749クローンT細胞増殖を処置するための方法および材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】クローンT細胞増殖を処置するための方法および材料
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549562
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022016423
(87)【国際公開番号】W WO2022177889
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,232
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ワン マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】キンズラー ケネス ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】モグ ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パパドポウロス ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】パードール アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ポール スマン
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルシュタイン バート
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シビン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、T細胞癌を処置するための方法および材料に関する。例えば、T細胞受容体£鎖定常領域(TRBC)を標的とする1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物が、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、哺乳動物へ投与され得る。例えば、本明細書は、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、1つまたは複数の二重特異性分子を使用するための方法および材料を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体β鎖定常領域(TRBC)ポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む、二重特異性分子。
【請求項2】
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチド、およびTRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドが、各々独立に、一本鎖可変断片(scFv)、抗原結合断片(Fab)、F(ab')2断片、およびそれらの生物学的活性断片からなる群より選択される、請求項1記載の二重特異性分子。
【請求項3】
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインの結合親和性が、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインの結合親和性より低い、請求項1記載の二重特異性分子。
【請求項4】
TRBCポリペプチドがTRBC1ポリペプチドまたはTRBC2ポリペプチドである、請求項1~3のいずれか一項記載の二重特異性分子。
【請求項5】
TRBCポリペプチドがTRBC1ポリペプチドである、請求項4記載の二重特異性分子。
【請求項6】
TRBC1ポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメイン、またはTRBC1ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインが、
SEQ ID NO:1に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR1と、SEQ ID NO:2に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR2と、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR3とを含む軽鎖;および
SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR1と、SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR2と、SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR3とを含む重鎖
を含む、請求項5記載の二重特異性分子。
【請求項7】
前記軽鎖がSEQ ID NO:7に記載されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖がSEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の二重特異性分子。
【請求項8】
前記軽鎖がSEQ ID NO:48に記載されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖がSEQ ID NO:49に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の二重特異性分子。
【請求項9】
前記二重特異性分子の安定性を改善することができる分子をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載の二重特異性分子。
【請求項10】
以下の工程を含む、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法:
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む二重特異性分子を、該哺乳動物へ投与する工程。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
T細胞癌がクローンT細胞癌である、請求項10~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
T細胞癌が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)、濾胞性T細胞リンパ腫(FTCL)、節性末梢性T細胞リンパ腫(節性PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、T細胞大顆粒リンパ球性白血病(T-LGL)、節外性NK/T細胞リンパ腫(NKTL)、および肝脾T細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物の体内の前記癌の細胞が少なくとも50%低下する、請求項10~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物の生存を改善するのに有効である、請求項10~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記二重特異性分子の投与後に、
TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む第2の二重特異性分子を、前記哺乳動物へ投与する工程をさらに含む、請求項10~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
CD3ポリペプチドが、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、およびCD3εポリペプチドからなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記二重特異性分子の投与後に、
TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
抗癌剤と
を含む分子を、前記哺乳動物へ投与する工程をさらに含む、請求項10~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法:
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む第1の二重特異性分子を、該哺乳動物へ投与する工程;および
TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む第2の二重特異性分子を、該哺乳動物へ投与する工程。
【請求項20】
CD3ポリペプチドが、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、およびCD3εポリペプチドからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
以下の工程を含む、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法:
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む第1の二重特異性分子を、該哺乳動物へ投与する工程;および
TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
抗癌剤と
を含む分子を、該哺乳動物へ投与する工程。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
T細胞癌がクローンT細胞癌である、請求項19~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
T細胞癌が、ALL、PTCL、AITL、T-PLL、ATLL、EATL、MEITL、FTCL、節性PTCL、CTCL、ALCL、T-LGL、節外性NKTL、および肝脾T細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項19~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物の体内の前記癌の細胞が少なくとも50%低下する、請求項19~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物の生存を改善するのに有効である、請求項19~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
以下の工程を含む、クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、または状態を有する哺乳動物を処置するための方法:
TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む二重特異性分子を、該哺乳動物へ投与する工程。
【請求項28】
前記哺乳動物がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、または状態が、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、フェルティ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性粘液水腫、筋炎、多発性硬化症、ラスムッセン脳炎、自己免疫性甲状腺疾患、視神経脊髄炎、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、アルツハイマー病、ナルコレプシー、および老化からなる群より選択される、請求項27~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記二重特異性分子の投与後に、
TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、
CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドと
を含む第2の二重特異性分子を、前記哺乳動物へ投与する工程をさらに含む、請求項27~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
CD3ポリペプチドが、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、およびCD3εポリペプチドからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月17日に出願された米国特許出願第63/150,232号の恩典を主張する。その先行出願の開示は、本願の開示の一部と見なされる(参照により組み入れられる)。
【0002】
連邦政府による資金提供に関する記載
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたグラントAR048522、CA006973、CA009071、CA06292、CA230400、およびGM007309の下で、政府の支援を受けて作成された。政府は、発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本明細書は、44807-0386WO1_ST25.txtという名前のASCIIテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含有する。2022年2月10日に作成されたASCIIテキストファイルのサイズは、24KBである。ASCIIテキストファイル内のデータは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0004】
1. 技術分野
本明細書は、クローンT細胞増殖(例えば、病原性クローンT細胞増殖、例えば、T細胞癌)を処置するための方法および材料に関する。例えば、1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物が、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、哺乳動物へ投与され得る。例えば、本明細書は、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、1つまたは複数の二重特異性分子を使用するための方法および材料を提供する。
【背景技術】
【0005】
2. 背景情報
T細胞癌は、非ホジキンリンパ腫(Swerdlow et al.,Blood 127:2375-2390(2016)(非特許文献1))の約15%および急性リンパ芽球性白血病(ALL;Han et al.,Cancer Causes & Control 19:841-858(2008)(非特許文献2);およびDores et al.,Blood 119:34-43(2012)(非特許文献3))の20%を構成する悪性腫瘍の不均一な群である。T細胞リンパ腫および再発T細胞ALL(T-ALL)の転帰は、対応するB細胞悪性腫瘍より悪く、推定されている5年生存率は、T細胞リンパ腫においては、32%(Weisenburger et al.,Blood 117:3402-3408(2011)(非特許文献4))、再発T-ALLにおいては、7%(Fielding et al.,Blood 109:944-950(2007)(非特許文献5))のみである。
【0006】
悪性のB細胞またはT細胞は、非癌性カウンターパートと異なる細胞表面抗原を発現しない。汎B細胞抗原、例えば、CD19またはCD20を標的とする、B細胞悪性腫瘍に対するいくつかの標的型免疫療法剤が存在し、それらは、関連する正常B細胞の形成不全が臨床的に耐容性が良いため、実現可能である。しかしながら、汎T細胞抗原を標的とする類似の戦略は、結果として生じるT細胞の枯渇が、臨床的に許容されないレベルの免疫抑制をもたらすため、実現可能ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Swerdlow et al.,Blood 127:2375-2390(2016)
【非特許文献2】Han et al.,Cancer Causes & Control 19:841-858(2008)
【非特許文献3】Dores et al.,Blood 119:34-43(2012)
【非特許文献4】Weisenburger et al.,Blood 117:3402-3408(2011)
【非特許文献5】Fielding et al.,Blood 109:944-950(2007)
【発明の概要】
【0008】
概要
対立遺伝子排除と組み合わされたVDJ組換えは、各T細胞の表面上に、2種のTRBCポリペプチドのうちの1種(即ち、TRBC1ポリペプチドまたはTRBC2ポリペプチド)のみの発現をもたらす。正常な健常T細胞での発現は、TRBC1およびTRBC2の両方の混合である。対照的に、クローンT細胞癌は、2種のTCRβ鎖定常領域のうちの1種のみを発現する(例えば、TRBC1またはTRBC2のみを発現する)。本明細書に記載されるように、TRBCポリペプチドを標的とする二重特異性分子は、2種のTRBCポリペプチドのうちの1種を温存しながら、2種のTRBCポリペプチドのうちのもう1種のみを選択的に枯渇させることができる。例えば、TRBC1ポリペプチドを標的とする二重特異性分子は、残存する健常TRBC2+ T細胞が機能性の免疫系を維持するのに十分であるよう、TRBC2+健常ヒトT細胞を温存しながら、TRBC1+ T細胞(例えば、癌性TRBC1+ T細胞および健常TRBC1+ T細胞)を選択的に枯渇させることができる(例えば、図1Aを参照すること)。
【0009】
本明細書は、クローンT細胞増殖(例えば、病原性クローンT細胞増殖、例えば、T細胞癌)を処置するための方法および材料を提供する。いくつかの場合において、本明細書は、T細胞癌を処置するために使用され得る二重特異性分子を提供する。例えば、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1の一本鎖可変断片(scFv))が、T細胞受容体(TCR)β鎖定常領域(TRBC)ポリペプチドに結合することができ、第2の抗原結合ドメイン(例えば、第2のscFv)が、同一のTRBCポリペプチドに結合することができるか、またはT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するために使用され得る。いくつかの場合において、本明細書は、T細胞癌を処置するための方法を提供する。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物)が、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、哺乳動物へ投与され得る。
【0010】
本明細書に記載されるように、クローンT細胞増殖(例えば、病原性クローンT細胞増殖、例えば、T細胞癌)は、TCR抗原の特定のサブセットを標的とすることによって処置され得る。例えば、TRBC1+ T細胞の悪性増殖を有するT細胞癌は、TRBC1ポリペプチドを標的とする二重特異性抗体(BsAb)(例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、同一のTRBC1ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含むBsAb)を使用して処置され得る。TRBC1を標的とするBsAbは、哺乳動物の体内のTRBC2+ T細胞(例えば、正常T細胞のおよそ半分)を保存しながら、(悪性TRBC1+ T細胞を含む)TRBC1+ T細胞を特異的に溶解するよう、健常T細胞を刺激することができる(例えば、図1Aを参照すること)。本明細書において証明されるように、TRBC1ポリペプチドを標的とするBsAbによる処置の後に、依然として残存している可能性のある残留悪性TRBC1+ T細胞を標的とするための処置が行われ得る。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができ、かつCD3ポリペプチドに結合することができるBsAbが、残存する悪性TRBC1+ T細胞を標的とする(例えば、標的とし、破壊する)ためのエフェクターT細胞として、健常TRBC2+ T細胞を動員するため、使用され得る(例えば、図1Bを参照すること)。例えば、TRBC1を標的とする1つまたは複数の抗体薬物コンジュゲート(TRBC1-ADC)が、残存する悪性TRBC1+ T細胞を標的とする(例えば、標的とし、破壊する)ため、使用されてもよい(例えば、図1Cを参照すること)。
【0011】
同様に、TRBC2+ T細胞の悪性増殖を有するT細胞癌は、TRBC2ポリペプチドを標的とするBsAb(例えば、TRBC2ポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、同一のTRBC2ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含むBsAb)を使用して処置され得、TRBC2ポリペプチドを標的とするBsAbによるそのような処置の後に、TRBC2ポリペプチドに結合することができ、かつCD3ポリペプチドに結合することができるBsAbによる処置、および/または1つもしくは複数のTRBC2-ADCによる処置が、任意で行われ得る。
【0012】
(例えば、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、同一のTRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与することによって)本明細書に記載されるクローンT細胞増殖(例えば、T細胞癌)を処置する能力を有することは、正常T細胞のおよそ半分(例えば、適切なT細胞免疫および機能性の免疫系を維持するのに十分な健常T細胞)を保持しながら、クローンT細胞癌を選択的に枯渇させるための、独特の未だ実現されていない機会を提供する。さらに、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、同一のTRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、T細胞癌に対する対費用効果の高い既製の標的型治療薬として使用され得る。
【0013】
一般に、本明細書の1つの局面は、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む二重特異性分子を特徴とする。TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチド、およびTRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドは、各々独立に、一本鎖可変断片(scFv)、抗原結合断片(Fab)、F(ab')2断片、またはそれらの任意の生物学的活性断片であり得る。TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインの結合親和性は、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインの結合親和性より低くてよい。TRBCポリペプチドは、TRBC1ポリペプチドまたはTRBC2ポリペプチドであり得る。TRBCポリペプチドは、TRBC1ポリペプチドであり得る。TRBC1ポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメイン、またはTRBC1ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR1と、SEQ ID NO:2に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR2と、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を有するVL CDR3とを含む軽鎖を含むことができ;SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR1と、SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR2と、SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を有するVH CDR3とを含む重鎖を含むことができる。軽鎖は、SEQ ID NO:7に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になることができ、重鎖は、SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になることができる。軽鎖は、SEQ ID NO:48に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になることができ、重鎖は、SEQ ID NO:49に記載されるアミノ酸配列を含むか、またはそれから本質的になることができる。二重特異性分子は、二重特異性分子の安定性を改善することができる分子も含むことができる。
【0014】
もう1つの局面において、本明細書は、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法を特徴とする。方法は、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、を含む二重特異性分子を、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与する工程を含むか、またはそれから本質的になることができる。哺乳動物は、ヒトであり得る。T細胞癌は、クローンT細胞癌であり得る。T細胞癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)、濾胞性T細胞リンパ腫(FTCL)、節性末梢性T細胞リンパ腫(節性PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、T細胞大顆粒リンパ球性白血病(T-LGL)、節外性NK/T細胞リンパ腫(NKTL)、または肝脾T細胞リンパ腫であり得る。哺乳動物の体内の癌細胞は、少なくとも50%低下し得る。方法は、哺乳動物の生存を改善するのに有効であり得る。方法は、二重特異性分子の投与後に、TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、を含む第2の二重特異性分子を、哺乳動物へ投与する工程も含むことができる。CD3ポリペプチドは、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、またはCD3εポリペプチドであり得る。方法は、二重特異性分子の投与後に、TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、抗癌剤と、を含む分子を、哺乳動物へ投与する工程も含むことができる。
【0015】
もう1つの局面において、本明細書は、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法を特徴とする。方法は、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む第1の二重特異性分子を、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与する工程;およびTRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む第2の二重特異性分子を、哺乳動物へ投与する工程を含むか、またはそれから本質的になることができる。CD3ポリペプチドは、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、またはCD3εポリペプチドであり得る。哺乳動物は、ヒトであり得る。T細胞癌は、クローンT細胞癌であり得る。T細胞癌は、ALL、PTCL、AITL、T-PLL、ATLL、EATL、MEITL、FTCL、節性PTCL、CTCL、ALCL、T-LGL、NKTL、または肝脾T細胞リンパ腫であり得る。哺乳動物の体内の癌細胞は、少なくとも50%低下し得る。方法は、哺乳動物の生存を改善するのに有効であり得る。
【0016】
もう1つの局面において、本明細書は、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するための方法を特徴とする。方法は、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む第1の二重特異性分子を、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与する工程;およびTRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、抗癌剤とを含む分子を、哺乳動物へ投与する工程を含むか、またはそれから本質的になることができる。哺乳動物は、ヒトであり得る。T細胞癌は、クローンT細胞癌であり得る。T細胞癌は、ALL、PTCL、AITL、T-PLL、ATLL、EATL、MEITL、FTCL、節性PTCL、CTCL、ALCL、T-LGL、NKTL、または肝脾T細胞リンパ腫であり得る。哺乳動物の体内の癌細胞は、少なくとも50%低下し得る。方法は、哺乳動物の生存を改善するのに有効であり得る。
【0017】
もう1つの局面において、本明細書は、クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、または状態を有する哺乳動物を処置するための方法を特徴とする。方法は、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、TRBCポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む二重特異性分子を、クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、または状態を有する哺乳動物へ投与する工程を含むか、またはそれから本質的になることができる。哺乳動物は、ヒトであり得る。クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、または状態は、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、フェルティ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性粘液水腫、筋炎、多発性硬化症、ラスムッセン脳炎、自己免疫性甲状腺疾患、視神経脊髄炎、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、アルツハイマー病、ナルコレプシー、または老化であり得る。方法は、二重特異性分子の投与後に、TRBCポリペプチドに結合することができる第3の抗原結合ドメインを含むポリペプチドと、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含むポリペプチドとを含む第2の二重特異性分子を、哺乳動物へ投与する工程も含むことができる。CD3ポリペプチドは、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、またはCD3εポリペプチドであり得る。
【0018】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または等価な方法および材料が、本発明を実施するために使用され得るが、適当な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。
【0019】
本発明の1つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および以下の説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1A~1C:提唱された選択的TRBC1枯渇戦略を示す図。(図1A)健常ヒトT細胞は、TRBC1+およびTRBC2+という2種のTRBCファミリーを含む。同様に、悪性クローンT細胞は、TRBC1+である。TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、健常TRBC1+ T細胞を悪性TRBC1+細胞と連結し、健常TRBC1+ T細胞を他の健常TRBC1+ T細胞とも連結し、健常TRBC2+ T細胞を温存しながら、悪性TRBC1+集団および健常TRBC1+集団の選択的な死滅をもたらす。
図1B図1A~1C:提唱された選択的TRBC1枯渇戦略を示す図。(図1B)TRBC1-TRBC1二重特異性抗体による処置後、残留悪性TRBC1+ T細胞が持続する一方で、健常TRBC1+エフェクター細胞は枯渇している可能性がある。「モップアップ」戦略は、残留悪性TRBC1+ T細胞を死滅させるための、健常TRBC2+エフェクターT細胞をリダイレクトするその後のTRBC1-CD3二重特異性抗体処置を含む。
図1C図1A~1C:提唱された選択的TRBC1枯渇戦略を示す図。(図1C)TRBC1-TRBC1二重特異性抗体による処置後、残留悪性TRBC1+ T細胞が持続する一方で、健常TRBC1+エフェクター細胞は枯渇している可能性がある。第2の「モップアップ」戦略は、TRBC1を標的とするADCが残留悪性TRBC1+ T細胞に結合してそれを死滅させることができる一方で、健常TRBC2+細胞は持続する、その後のTRBC1-抗体薬物コンジュゲート(ADC)分子による処置を含む。
図2図2A図2C:抗TRBC抗体の構造。(図2A~2B)二重特異性抗体の構造。(図2A)αCD3 scFvと連結されたαTRBC1 scFvから構成される例示的なTRBC1-CD3二重特異性抗体。(図2B)第2のαTRBC1 scFvと連結されたαTRBC1 scFvから構成される例示的なTRBC1-TRBC1二重特異性抗体。(図2C)例示的なαTRBC1-ADC。
図3図3:4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体構築物における、緑色で示される可変軽(VL)鎖、オレンジ色で示される可変重(VH)鎖、短鎖ペプチドリンカー(G4S)、長鎖ペプチドリンカー((G4S)3)、および黄色で示されるポリヒスチジンテール(H)の配置を示す図。scDb:一本鎖ダイアボディ。BITE:二重特異性T細胞エンゲージャー。
図4図4A~4B:4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体構築物の発現。4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体を、無染色ポリアクリルアミドゲル電気泳動(図4A)またはウサギ抗6×His抗体およびHRPにコンジュゲートされた抗ウサギ抗体によるウエスタンブロット(図4B)を使用して精製し、分析した。
図5図5A~5B:TRBC1-TRBC1二重特異性抗体の結合。(図5A)4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体(#1、#2、#3、および#4)の、Jurkat細胞(TRBC1発現)、HPB-ALL細胞(TRBC2発現)、T細胞受容体ノックアウトを有するJurkat細胞(TCR-KO)、ならびに健常ヒトT細胞(ABO4ドナー、TRBC1およびTRBC2の両方を発現)との結合を示すヒストグラム。(図5B)TRBC1-CD3二重特異性抗体(αC1-CD3)と併用された4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体の、Jurkat細胞、HPB-ALL細胞、Jurkat TCR-KO細胞、およびAB04健常ヒトT細胞との結合を示すヒストグラム。
図6図6:TRBC1-TRBC1二重特異性抗体およびTRBC-CD3二重特異性抗体は、インビトロでT細胞癌細胞株に対するT細胞インターフェロンγ(IFNγ)放出を誘導する。5ng/mLまたは50ng/mLのTRBC1-TRBC1#3(抗C1#3)またはTRBC1-TRBC1#4(抗C1#4)またはTRBC1-CD3(抗C1-CD3)の存在下で、5×104個の正常ヒトT細胞(ヒトドナーAB04由来)を、5×104個の示された標的T細胞癌細胞株(Jurkat細胞またはHPB-ALL細胞)と共に17時間インキュベートした。次いで、IFNγ ELISAによって、T細胞サイトカイン放出を査定した。
図7図7:5×104個の正常ヒトT細胞を、二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3またはTRBC1-TRBC1#4またはTRBC-CD3(50ng/ml)と共に17時間インキュベートした。10μLの精密計数ビーズを添加し、フローサイトメトリーを使用して、TRBC1-PE発現細胞およびGFP発現細胞の数を査定した。各条件で500個のビーズを収集した。ドットプロットの横の数は、生存細胞の数を示す。
図8図8:二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3またはTRBC1-TRBC1#4またはTRBC-CD3(50ng/ml)の存在下で、5×104個の正常ヒトT細胞を、5×104個の野生型Jurkat-GFP細胞と共に17時間インキュベートした。10μLの精密計数ビーズを添加し、フローサイトメトリーを使用して、TRBC1-PE発現細胞およびGFP発現細胞の数を査定した。各条件で500個のビーズを収集した。ドットプロットの横の数は、生存細胞の数を示す。
図9図9:二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3、TRBC1-TRBC1#4、またはTRBC-CD3(50ng/ml)の存在下で、5×104個の正常ヒトT細胞を、5×104個の野生型HPB-ALL-GFP細胞と共に17時間インキュベートした。10μLの精密計数ビーズを添加し、フローサイトメトリーを使用して、TRBC1-PE発現細胞およびGFP発現細胞の数を査定した。各条件で500個のビーズを収集した。ドットプロットの横の数は、生存細胞の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本明細書は、クローンT細胞増殖(例えば、病原性クローンT細胞増殖、例えば、T細胞癌)を処置するための方法および材料を提供する。いくつかの場合において、本明細書は、T細胞癌を処置するために使用され得る二重特異性分子を提供する。例えば、本明細書は、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)および第2の抗原結合ドメイン(例えば、第2のscFv)が各々TRBCポリペプチドに結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む二重特異性分子を提供する。例えば、本明細書は、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)がTRBCポリペプチドに結合することができ、第2の抗原結合ドメイン(例えば、第2のscFv)がT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む二重特異性分子を提供する。本明細書は、T細胞癌を処置するための方法も提供する。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物)が、T細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、哺乳動物へ投与され得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)が、二重特異性分子によって標的とされ得るTRBCポリペプチドを発現するT細胞を標的とする(例えば、標的とし、破壊する)よう、哺乳動物の体内のT細胞を活性化するため、哺乳動物へ投与され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、TRBCポリペプチドを発現するT細胞(例えば、癌性T細胞)を標的とする(例えば、標的とし、破壊する)よう、T細胞を活性化するため、哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与され得、任意で、その後、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子が、TRBCポリペプチドを発現する残存T細胞(例えば、癌性T細胞)を標的とする(例えば、標的とし、破壊する)よう、T細胞を活性化するため、哺乳動物へ投与され得る。
【0022】
任意の適切な哺乳動物(例えば、クローンT細胞増殖、例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)が、本明細書に記載されるように処置され得る。例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、ウマ、ウシ種、ブタ種、イヌ、ネコ、マウス、およびラットが、本明細書に記載されるように処置され得る。いくつかの場合において、T細胞癌を有するヒトは、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を投与され得る。
【0023】
本明細書に記載される材料および方法は、任意の種類のT細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するため、使用され得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌には、1つまたは複数の固形腫瘍が含まれ得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、血液がんであり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、原発癌であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、再発癌であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、転移性癌であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、難治性癌であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載されるように処置されるT細胞癌は、非ホジキンリンパ腫であり得る。本明細書に記載されるように処置され得るT細胞癌の例には、非限定的に、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)、単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(MEITL)、濾胞性T細胞リンパ腫(FTCL)、節性末梢性T細胞リンパ腫(節性PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、T細胞大顆粒リンパ球性白血病(T-LGL)、節外性NK/T細胞リンパ腫(NKTL)、および肝脾T細胞リンパ腫が含まれる。
【0024】
いくつかの場合において、本明細書において提供される材料および方法は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)の体内に存在する癌細胞の数を低下させるか、または排除するため、使用され得る。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、哺乳動物の体内に存在する癌細胞の数を低下させるか、または排除するため、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)を投与され得る。例えば、本明細書に記載される材料および方法は、癌を有する哺乳動物の体内に存在する癌細胞の数を、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上、低下させるため、使用され得る。例えば、本明細書に記載される材料および方法は、癌を有する哺乳動物の体内に存在する1つまたは複数の腫瘍のサイズ(例えば、体積)を、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上、低下させるために使用され得る。いくつかの場合において、処置される哺乳動物の体内に存在する癌細胞の数が、モニタリングされ得る。任意の適切な方法が、哺乳動物の体内に存在する癌細胞の数が低下するか否かを決定するため、使用され得る。例えば、画像化技術が、哺乳動物の体内に存在する癌細胞の数を査定するため、使用され得る。
【0025】
いくつかの場合において、本明細書において提供される材料および方法は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)の生存を改善するため使用され得る。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、哺乳動物の生存を改善するため、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)を投与され得る。例えば、本明細書に記載される材料および方法は、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上、癌を有する哺乳動物の生存を改善するため、使用され得る。例えば、本明細書に記載される材料および方法は、例えば、少なくとも6ヶ月(例えば、約6ヶ月、約8ヶ月、約10ヶ月、約1年、約1.5年、約2年、約2.5年、約3年、約4年、約5年、またはそれ以上)、癌を有する哺乳動物の生存を改善するため、使用され得る。
【0026】
いくつかの場合において、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)が、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を投与される時、哺乳動物の体内の正常T細胞の大部分(例えば、適切なT細胞免疫を維持するのに十分な数の正常T細胞)が保存され得る。例えば、本明細書に記載される材料および方法は、哺乳動物の体内の正常(例えば、非癌性)T細胞の、例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上を保存しながら、本明細書に記載されるT細胞癌を有する哺乳動物を処置するため、使用され得る。いくつかの場合において、哺乳動物が、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を投与される時、哺乳動物の体内の正常(例えば、非癌性)T細胞の約20%~約75%(例えば、約20%~約65%、約20%~約55%、約20%~約45%、約25%~約75%、約35%~約75%、約45%~約75%、約55%~約75%、約65%~約75%、約35%~約65%、約45%~約55%、約30%~約50%、約40%~約60%、または約50%~約70%)が保存され得る。
【0027】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法は、哺乳動物をT細胞癌を有すると同定する工程も含み得る。哺乳動物をT細胞癌を有すると同定する方法の例には、非限定的に、理学的検査、臨床検査(例えば、血液および/もしくは尿)、生検、画像検査(例えば、X線、PET/CT、MRI、および/もしくは超音波)、核医学スキャン(例えば、骨スキャン)、内視鏡検査、ならびに/または遺伝子検査が含まれる。T細胞癌を有すると同定された後、哺乳動物は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)を投与されるか、または自己投与するよう指示され得る。
【0028】
任意の適切な二重特異性分子が、本明細書に記載されるように、哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与され得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される分子は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の抗原結合ドメインを含み得る。例えば、二重特異性分子は、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)および第2の抗原結合ドメイン(例えば、第2のscFv)が各々TRBCポリペプチドに結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含むことができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、各々、TRBCポリペプチド上の同一のエピトープに結合することができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、TRBCポリペプチドに対して異なる親和性を有し得る。例えば、二重特異性分子は、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)が、第2の抗原結合ドメインが同一のTRBCポリペプチドに結合することができる親和性より低い親和性で、TRBCポリペプチドに結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含むことができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、TRBCポリペプチド上の異なるエピトープに結合することができる。例えば、二重特異性分子は、第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)がTRBCポリペプチドに結合することができ、第2の抗原結合ドメインがT細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含むことができる。第1の抗原結合ドメイン(例えば、第1のscFv)および第2の抗原結合ドメイン(例えば、第2のscFv)が各々TRBCポリペプチドに結合することができる、少なくとも2つの抗原結合ドメインを含むことができる分子(例えば、二重特異性分子)の例には、非限定的に、一本鎖ダイアボディ(scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)、二重親和性リターゲティング分子(DART)、二価scFv-Fc、および三価scFv-Fcが含まれる。
【0029】
本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の抗原結合ドメインは、任意の適切な種類の抗原結合ドメインであり得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインは、免疫グロブリン軽鎖の可変領域(VL)と、免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)とを含むことができる。例えば、本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインは、免疫グロブリン軽鎖に由来する第1の相補性決定領域(CDR)(VL CDR1)と、免疫グロブリン軽鎖に由来する第2のCDR(VL CDR2)と、免疫グロブリン軽鎖に由来する第3のCDR(VL CDR3)と、免疫グロブリン重鎖に由来する第1のCDR(VH CDR1)と、免疫グロブリン重鎖に由来する第2のCDR(VH CDR2)と、免疫グロブリン重鎖に由来する第3のCDR(VH CDR2)を含み得る。本明細書において提供される二重特異性分子において抗原結合ドメインとして使用され得る抗原結合ドメインの例には、非限定的に、一本鎖可変断片(scFv)、抗原結合断片(Fab)、F(ab')2断片、およびそれらの生物学的活性断片(例えば、標的分子、例えば、TRBCポリペプチドまたはT細胞共受容体ポリペプチド、例えば、CD3ポリペプチドに結合する能力を保持する断片)が含まれる。いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子において抗原結合ドメインとして使用され得る抗原結合ドメインは、scFvであり得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子の2つの抗原結合ドメインは、同一の種類の抗原結合ドメインであり得る。例えば、本明細書において提供される二重特異性分子の2つの抗原結合ドメインの各々は、scFvであり得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子の2つの抗原結合ドメインは、異なる種類の抗原結合ドメインであり得る。
【0030】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメインであり得る。
【0031】
TRBCポリペプチドに結合することができる本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の抗原結合ドメインは、任意の適切なTRBCポリペプチドに結合することができる。本明細書において提供される二重特異性分子の抗原結合ドメインによって標的とされ得るTRBCポリペプチドの例には、非限定的に、TRBC1ポリペプチドおよびTRBC2ポリペプチドが含まれる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、そのTRBCポリペプチドに特異的である。例えば、TRBCポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、約0.01nM~約400nM(例えば、約0.01nM~約350nM、約0.01nM~約300nM、約0.01nM~約250nM、約0.01nM~約200nM、約0.01nM~約150nM、約0.01nM~約100nM、約0.01nM~約80nM、約0.01nM~約50nM、約0.01nM~約30nM、約0.01nM~約10nM、約0.01nM~約5nM、約0.01nM~約1nM、約0.01nM~約0.5nM、約0.4nM~約400nM、約1nM~約400nM、約5nM~約400nM、約10nM~約400nM、約50nM~約400nM、約100nM~約400nM、約200nM~約400nM、約300nM~約400nM、約0.05nM~約200nM、約0.1nM~約100nM、約0.03nM~約50nM、約0.04nM~約30nM、約0.05nM~約10nM、約0.1nM~約20nM、約0.2nM~約30nM、約0.3nM~約40nM、約0.4nM~約50nM、または約0.5nM~約100nM)の解離定数(KD)を有する親和性で、そのTRBCポリペプチドに結合することができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに特異的に結合する抗原結合ドメインは、異なるTRBCポリペプチドに結合しない(または実質的に結合しない)。
【0032】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)において使用され得る抗原結合ドメインは、TRBC1ポリペプチドに結合することができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、以下に記載されるCDRの各々を含むことができる。
【0033】
(表1)
【0034】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)において使用され得る抗原結合ドメインは、表1に記載されるCDRと100%同一ではないが、TRBC1ポリペプチドに結合する能力を保持する1つまたは複数のCDRを有することができる。例えば、表1に記載されるCDRに対して1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)のアミノ酸置換を含むCDRは、本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインにおいて使用され得る。アミノ酸置換は、いくつかの場合において、(a)置換の区域におけるペプチド骨格の構造、(b)特定の部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ、の維持に対する効果が有意に異ならない置換を選択することによって行われ得る。例えば、天然に存在する残基は、側鎖の特性に基づき、以下の群に分類され得る:(1)疎水性アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン);(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリン、およびスレオニン);(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸);(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン);(5)鎖の方向に影響を与えるアミノ酸(グリシンおよびプロリン);ならびに(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニン)。これらの群内で行われた置換は、保存的置換と見なされ得る。本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインのCDRにおいて行われ得る保存的置換の非限定的な例には、非限定的に、アラニンからバリン、アルギニンからリジン、アスパラギンからグルタミン、アスパラギン酸からグルタミン酸、システインからセリン、グルタミンからアスパラギン、グルタミン酸からアスパラギン酸、グリシンからプロリン、ヒスチジンからアルギニン、イソロイシンからロイシン、ロイシンからイソロイシン、リジンからアルギニン、メチオニンからロイシン、フェニアラニンからロイシン、プロリンからグリシン、セリンからスレオニン、スレオニンからセリン、トリプトファンからチロシン、チロシンからフェニルアラニン、および/またはバリンからロイシンの置換が含まれる。
【0035】
いくつかの場合において、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:2に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:48に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。いくつかの場合において、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:49に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。いくつかの場合において、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:2に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。例えば、TRBC1ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:48に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:49に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0036】
いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに結合することができる本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の抗原結合ドメインは、他の場所に記載されているようなものであり得る(例えば、Maciocia et al.,Nat.Med.,23:1416-1423(2017);および米国特許出願公開第2017/0066827号を参照すること)。
【0037】
本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)が、T細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含む場合において、T細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、任意の適切なT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる。本明細書において提供される二重特異性分子の第2の抗原結合ドメインによって標的とされ得るT細胞共受容体ポリペプチドの例には、非限定的に、CD3ポリペプチド、例えば、CD3γポリペプチド、CD3δポリペプチド、およびCD3εポリペプチドが含まれる。
【0038】
本明細書において提供される二重特異性分子が、T細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含む場合において、二重特異性分子は、CD3ポリペプチドに結合することができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、以下に記載されるCDRの各々のうちの1つを含むことができる。
【0039】
(表2)
【0040】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)において使用され得る抗原結合ドメインは、表2に記載されるCDRと100%同一ではないが、TRBC1ポリペプチドに結合する能力を保持する1つまたは複数のCDRを有することができる。例えば、表2に記載されるCDRに対して1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)のアミノ酸置換を含むCDRが、本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインにおいて使用され得る。アミノ酸置換は、いくつかの場合において、(a)置換の区域におけるペプチド骨格の構造、(b)特定の部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ、の維持に対する効果が有意に異ならない置換を選択することによって行われ得る。例えば、天然に存在する残基は、側鎖の特性に基づき、以下の群に分類され得る:(1)疎水性アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン);(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリン、およびスレオニン);(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸);(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、およびアルギニン);(5)鎖の方向に影響を与えるアミノ酸(グリシンおよびプロリン);ならびに(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニン)。これらの群内で行われた置換は、保存的置換と見なされ得る。本明細書において提供される二重特異性分子において使用され得る抗原結合ドメインのCDRにおいて行われ得る保存的置換の非限定的な例には、非限定的に、アラニンからバリン、アルギニンからリジン、アスパラギンからグルタミン、アスパラギン酸からグルタミン酸、システインからセリン、グルタミンからアスパラギン、グルタミン酸からアスパラギン酸、グリシンからプロリン、ヒスチジンからアルギニン、イソロイシンからロイシン、ロイシンからイソロイシン、リジンからアルギニン、メチオニンからロイシン、フェニアラニンからロイシン、プロリンからグリシン、セリンからスレオニン、スレオニンからセリン、トリプトファンからチロシン、チロシンからフェニルアラニン、および/またはバリンからロイシンの置換が含まれる。
【0041】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:10に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:11に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:15に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0042】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:19に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:23に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:26に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:36に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0043】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:20に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:24に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:27に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:38に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0044】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:21に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:25に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:28に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:40に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0045】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:22に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:23に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:26に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0046】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:12に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:13に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:14に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:16に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0047】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:31に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:37に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0048】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:31に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:39に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0049】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:30に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:32に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:35に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:41に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0050】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:33に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:43に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0051】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:10に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:11に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:12に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:13に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:14に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:15に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:16に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:17に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0052】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:22に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:23に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:26に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:33に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:43に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0053】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:20に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:24に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:27に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:31に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:38に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:39に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0054】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:21に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:25に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:28に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:30に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:32に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:35に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:40に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:41に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0055】
いくつかの場合において、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:22に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR1と、SEQ ID NO:23に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR2と、SEQ ID NO:26に記載されるアミノ酸配列を含むVL CDR3とを有する軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:29に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR1と、SEQ ID NO:33に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR2と、SEQ ID NO:34に記載されるアミノ酸配列を含むVH CDR3とを有する重鎖を含むことができる。例えば、CD3ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができ、SEQ ID NO:43に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。
【0056】
本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)が、T細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインを含む場合において、T細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、他の場所に記載されているようなものであり得る(例えば、Zhu et al.,Journal of Immunology,1551903-1910(1995);Junttila et al.,Cancer Research,74:5561-5571(2014);およびRodrigues et al.,Int.J.Cancer.Suppl.,7:45-50(1992)を参照すること)。
【0057】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとは、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー)を介して接続されていてよい。リンカーは、任意の適切な数のアミノ酸を含むことができる。例えば、リンカーは、約5アミノ酸~約20アミノ酸(例えば、約5アミノ酸~約20アミノ酸、約5アミノ酸~約17アミノ酸、約5アミノ酸~約15アミノ酸、約5アミノ酸~約12アミノ酸、約5アミノ酸~約10アミノ酸、約5アミノ酸~約8アミノ酸、約7アミノ酸~約20アミノ酸、約10アミノ酸~約20アミノ酸、約13アミノ酸~約20アミノ酸、約15アミノ酸~約18アミノ酸、約7アミノ酸~約18アミノ酸、約10アミノ酸~約15アミノ酸、約7アミノ酸~約12アミノ酸、約10アミノ酸~約16アミノ酸、または約12アミノ酸~約18アミノ酸)を含み得る。いくつかの場合において、リンカーは、二重特異性分子の可動性を変化させることができる。いくつかの場合において、リンカーは、二重特異性分子の可溶性を変化させることができる。リンカーは、任意の適切なアミノ酸を含むことができる。いくつかの場合において、リンカーは、グリシンリッチリンカーであり得る。いくつかの場合において、リンカーは、セリンリッチかつ/またはスレオニンリッチなリンカーであり得る。リンカーは、本明細書において提供される二重特異性分子の第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを、任意の順序で接続することができる。例えば、リンカーは、本明細書において提供される二重特異性分子の第1の抗原結合ドメインのN末端を、二重特異性分子の第2の抗原結合ドメインのC末端と接続することができ、またはその逆を接続することもできる。本明細書において提供される二重特異性分子の第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを接続するために使用され得るリンカーの例には、非限定的に、GGGGSリンカー(SEQ ID NO:44)、(GGGGS)3リンカー(SEQ ID NO:45)、および
が含まれる。いくつかの場合において、本明細書に記載されるリンカーは、本明細書に記載される抗原結合ドメインのVHとVLとを接続するためにも使用され得る。
【0058】
いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、1つまたは複数の付加的な分子(例えば、1つもしくは複数の付加的なポリペプチドおよび/または1つもしくは複数の付加的なナノ粒子)を含むことができる。いくつかの場合において、付加的な分子は、二重特異性分子の安定性を変化させる(例えば、改善する)ことができる。例えば、付加的な分子は、(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物、例えば、ヒトへの投与後の)本明細書において提供される二重特異性分子の半減期を増加させることができる。いくつかの場合において、付加的な分子は、(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物、例えば、ヒトへの投与後の)二重特異性分子を検出(例えば、可視化)するために使用され得る。いくつかの場合において、二重特異性分子を結合させる(例えば、単離し、かつ/または精製する)ための付加的な分子が使用され得る。付加的な分子がポリペプチドである時、ポリペプチドは、任意の適切なアミノ酸を含むことができる。付加的な分子がポリペプチドである時、ポリペプチドは、任意の適切な数のアミノ酸を含むことができる。例えば、付加的なポリペプチドは、約2アミノ酸~約10アミノ酸(例えば、約2アミノ酸~約8アミノ酸、約2アミノ酸~約6アミノ酸、約4アミノ酸~約10アミノ酸、約6アミノ酸~約10アミノ酸、または約4アミノ酸~約8アミノ酸)を含み得る。いくつかの場合において、付加的なポリペプチドは、ポリヒスチジンポリペプチド(例えば、ポリヒスチジンテールまたはポリヒスチジンタグ)であり得る。付加的な分子は、本明細書において提供される二重特異性分子内の任意の適切な位置にあり得る。例えば、付加的な分子は、二重特異性分子のN末端、二重特異性分子のC末端、または二重特異性分子のN末端およびC末端の両方にあり得る。本明細書において提供される二重特異性分子に含められ得る付加的な分子の例には、非限定的に、アルブミンを標的とすることができる結合ドメイン、アルブミンポリペプチド(またはその断片)、結晶化可能断片(Fc)領域、およびポリヒスチジンポリペプチド、例えば、アミノ酸配列HHHHHH(SEQ ID NO:47)を含むポリヒスチジンポリペプチドが含まれる。いくつかの場合において、本明細書において提供される二重特異性分子に含められ得る付加的な分子は、他の場所に記載されているようなものであり得る(例えば、Dave et al.,MAbs,8(7):1319-1335(2016);Muller et al.,J.Biol.Chem.,282(17):12650-12660(2007);およびLiu et al.,Front.Immunol.,8:38(2017)を参照すること)。
【0059】
いくつかの場合において、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、またはTRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与するための組成物(例えば、薬学的組成物)に製剤化され得る。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)への投与のための薬学的に許容される組成物に製剤化され得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(添加剤)、賦形剤、保存剤、安定剤、および/または希釈剤と共に製剤化され得る。本明細書に記載される組成物において使用され得る薬学的に許容される担体、賦形剤、保存剤、安定剤、および希釈剤の例には、非限定的に、ショ糖、乳糖、デンプン(例えば、デンプングリコール酸)、セルロース、セルロース誘導体(例えば、修飾型セルロース、例えば、結晶セルロースおよびセルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびセルロースエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム))、酸化チタン、アゾ色素、シリカゲル、フュームドシリカ、タルク、炭酸マグネシウム、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、抗酸化剤(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、およびセレン)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、パラベン類(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、ワセリン、ジメチルスルホキシド、鉱物油、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、水、塩または電解質(例えば、生理食塩水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、亜鉛塩、および塩化ナトリウム、例えば、静菌性0.9%塩化ナトリウム)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリアクリレート、ロウ、羊毛脂、ならびにレシチンが含まれる。
【0060】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)は、任意の適切な剤形に製剤化され得る。剤形の例には、非限定的に、丸剤、カプセル、錠剤、ゲル、液体、懸濁液、溶液(例えば、無菌溶液)、徐放性製剤、および遅延放出製剤を含む、固体または液体の形態が含まれる。
【0061】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)は、経口投与用または非経口(例えば、局所、皮下、静脈内、腹腔内、くも膜下腔内、および脳室内)投与用に設計され得る。経口投与される時、組成物は、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態であり得る。非経口投与に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性および非水性の無菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、ユニットドーズ容器またはマルチドーズ容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで提供され得、使用直前の無菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されてもよい。即時調製の(Extemporaneous)注射溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0062】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)は、局所投与されてもよいし、全身投与されてもよい。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)の体内の1つまたは複数のリンパ節へのセンチネルリンパ節注射によって局所投与され得る。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)への静脈内注射によって局所投与され得る。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)への腹腔内注射によって局所投与され得る。
【0063】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)の有効量(例えば、有効用量)は、T細胞癌の重症度、投与経路、対象の年齢および一般的な健康状態、賦形剤の使用、他の治療的処置、例えば、他の薬剤の使用との同時使用の可能性、ならびに/または処置を行う医師の判断によって変動し得る。
【0064】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)の有効量は、合理的な治療指数で、かつ/または哺乳動物に対する重大な毒性を生じることなく、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置することができる任意の量であり得る。本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子の有効量は、任意の適切な量であり得る。有効量は、一定のままであってもよいし、スライディングスケールまたは処置に対する哺乳動物の応答に応じた可変用量として調整されてもよい。様々な要因が、特定の適用のために使用される実際の有効量に影響を与え得る。例えば、投与頻度、処置期間、複数の処置剤の使用、投与経路、および状態(例えば、T細胞癌)の重症度が、投与される実際の有効量の増加または減少を必要とし得る。
【0065】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)の投与の頻度は、合理的な治療指数で、かつ/または哺乳動物に対する重大な毒性を生じることなく、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置することができる任意の頻度であり得る。例えば、投与頻度は、約1日2回~約週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、または4ヶ月に1回であり得る。いくつかの場合において、投与は、継続投与(例えば、継続注入)であり得る。投与頻度は、処置期間中、一定のままであってもよいし、可変であってもよい。本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を含有する組成物による処置のコースは、休薬期間を含むことができる。有効量と同様に、様々な要因が、特定の適用のために使用される実際の投与頻度に影響を与え得る。例えば、有効量、処置期間、複数の処置剤の使用、投与経路、および状態(例えば、T細胞癌)の重症度が、投与頻度の増加または減少を必要とし得る。
【0066】
本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、または、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)を含有する組成物(例えば、薬学的組成物)を投与するための有効期間は、合理的な治療指数で、かつ/または哺乳動物に対する重大な毒性を生じることなく、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置する任意の期間であり得る。例えば、有効期間は、数日から、数週間、数ヶ月、または数年まで変動し得る。いくつかの場合において、哺乳動物の処置のための有効期間は、約1ヶ月から約10年までの範囲であり得る。複数の要因が、特定の処置のために使用される実際の有効期間に影響を与え得る。例えば、有効期間は、投与頻度、有効量、複数の処置剤の使用、投与経路、および処置される状態(例えば、T細胞癌)の重症度によって変動し得る。
【0067】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法および材料は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与する工程を含むことができる。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与され得るが、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子を投与されない。
【0068】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法および材料は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の両方を投与する工程を含むことができる。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与され得、その後、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与され得る。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子の両方を投与する工程を含む方法は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の投与と、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の投与との間に、休薬期間を含むことができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与され得、T細胞癌の再発が哺乳動物において観察された場合/時に、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、同一の哺乳動物へ投与され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与され得、哺乳動物においてT細胞癌の再発が観察された直後から、哺乳動物におけるT細胞癌の再発観察の数年後までに、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、同一の哺乳動物へ投与され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の哺乳動物への投与と、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の同一の哺乳動物への投与とは、約30日~約10年の投与間隔で投与され得る。
【0069】
いくつかの場合において、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するため、唯一の活性薬剤として使用され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するため、唯一の活性薬剤として使用され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、T細胞共受容体ポリペプチド(例えば、CD3ポリペプチド)に結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するため、唯一の活性薬剤として使用され得る。
【0070】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法および材料は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するために使用される1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)の付加的な治療剤を含むことができる。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)を、1つまたは複数の抗癌剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて、投与され得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、アルキル化剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、白金化合物であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、タキサンであり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストであり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、抗エストロゲン薬であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、アロマターゼ阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、血管新生阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、チェックポイント阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、免疫療法剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、ポリ(ADP)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、PD/PD-L1シグナル伝達の阻害剤であり得る。いくつかの場合において、抗癌剤は、1つまたは複数のエピジェネティック変化(例えば、DNAメチル化およびヒストン修飾)を標的とするものであり得る。抗癌剤の例には、非限定的に、ビンクリスチン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、nab-パクリタキセル、アルトレタミン、カペシタビン、シクロホスファミド、エトポシド(vp-16)、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン(cpt-11)、リポソームドキソルビシン、メルファラン、ペメトレキセド、トポテカン、ビノレルビン、ゴセレリン、リュープロリド、タモキシフェン、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、ベバシズマブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、放射性同位元素、モノメチルオーリスタチンE(MMAE;例えば、ベドチン)、カリケアマイシン、デルクステカン(deruxtecan)、DM1、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの場合において、抗癌剤は、他の場所に記載されているようなものであり得る(例えば、Zhang et al.,Clin.Epigenet.,12:169(2020)、例えば、表3および表5;ならびにGhione et al.,Curr.Hematol.Malig.Rep.,13(6):494-506(2018)、例えば、セクションII、セクションIII、および表1を参照すること)。いくつかの場合において、1つまたは複数の付加的な治療剤は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子と共に(例えば、単一の組成物で)投与され得る。例えば、本明細書に記載される、TRBCポリペプチドに結合することができる抗原結合ドメインは、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされ得る(例えば、ADCの形態であり得る)。いくつかの場合において、1つまたは複数の付加的な治療剤は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子とは独立に投与され得る。1つまたは複数の付加的な治療剤が、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子とは独立に投与される時、本明細書において提供される1つもしくは複数の二重特異性分子が最初に投与され、1つもしくは複数の付加的な治療剤が2番目に投与されてもよいし、またはその逆であってもよい。
【0071】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法および材料は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子の両方を投与する工程を含むことができる。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子を投与され得、続いて、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子を投与され得る。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子の両方を投与する工程を含む方法は、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の投与と、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子の投与との間に、休薬期間を含むことができる。いくつかの場合において、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与され得、哺乳動物においてT細胞癌の再発が観察された場合/時に、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子が、同一の哺乳動物へ投与され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子が、T細胞癌を有する哺乳動物へ投与され得、哺乳動物においてT細胞癌の再発が観察された直後から、哺乳動物におけるT細胞癌の再発観察の数年後までに、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子が、同一の哺乳動物へ投与され得る。例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子の哺乳動物への投与と、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子の同一の哺乳動物への投与とは、約30日~約10年の投与間隔で投与され得る。
【0072】
いくつかの場合において、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子(例えば、TRBC-ADC)は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)とは独立に、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与され得る。例えば、1つまたは複数の抗癌剤にコンジュゲートされた、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインを含む1つまたは複数の分子は、T細胞癌を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するため、唯一の活性薬剤として使用され得る。
【0073】
いくつかの場合において、本明細書に記載される方法および材料は、T細胞癌を処置するのに有効である1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)の付加的な処置(例えば、治療的介入)を含むことができる。例えば、その必要のある哺乳動物(例えば、T細胞癌を有する哺乳動物)は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む1つまたは複数の二重特異性分子)を、1つまたは複数の治療的介入と組み合わせて、投与され得る。T細胞癌を処置するため、本明細書に記載されるように使用され得る治療的介入の例には、非限定的に、癌手術、放射線療法、血液移植(例えば、自己血移植および同種血移植)、骨髄移植(例えば、自家骨髄移植および同種骨髄移植)、ならびにそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの場合において、T細胞癌を処置するのに有効である1つまたは複数の付加的な処置は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子の投与と同時に実施され得る。いくつかの場合において、T細胞癌を処置するのに有効である1つまたは複数の付加的な処置は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子の投与の前および/または後に実施され得る。
【0074】
いくつかの場合において、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、癌以外のクローンT細胞増殖(例えば、病原性クローンT細胞増殖)を有する哺乳動物を処置するため、使用され得る。例えば、クローンT細胞増殖に関連する、T細胞癌以外の疾患、障害、または状態を有する哺乳動物は、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を投与され得る。いくつかの場合において、クローンT細胞増殖に関連する、T細胞癌以外の疾患、障害、または状態は、自己免疫疾患であり得る。いくつかの場合において、クローンT細胞増殖に関連する、T細胞癌以外の疾患、障害、または状態は、移植片拒絶に関連するものであり得る。本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子を使用して標的とされ得る、クローンT細胞増殖に関連する疾患、障害、および状態の例には、非限定的に、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、フェルティ症候群、シェーグレン症候群、強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性粘液水腫、筋炎、多発性硬化症、ラスムッセン脳炎、自己免疫性甲状腺疾患、視神経脊髄炎、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、アルツハイマー病、ナルコレプシー、および老化が含まれる。例えば、本明細書において提供される1つまたは複数の二重特異性分子(例えば、TRBCポリペプチドに各々結合することができる第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子、および任意で、TRBCポリペプチドに結合することができる第1の抗原結合ドメインと、CD3ポリペプチドなどのT細胞共受容体ポリペプチドに結合することができる第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性分子)は、健常T細胞の一部(例えば、適切なT細胞免疫を維持するのに十分な数の健常T細胞)を温存しながら、クローン増殖したT細胞を選択的に枯渇させるために使用され得る。
【0075】
以下の実施例において本発明をさらに説明するが、実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0076】
実施例1:T細胞悪性腫瘍の処置のための、TCRβ鎖定常領域を標的とする抗体
汎B細胞マーカーCD19またはCD20に対する抗体は、B細胞悪性腫瘍の処置において成功を示している。そのような治療は、健常B細胞の損失をもたらすが、この枯渇は、通常、患者における耐容性が良い。汎T細胞マーカーの類似の標的化は、T細胞悪性腫瘍のコントロールを補助し得るが、それに伴う健常T細胞の枯渇は、重度の許容されない免疫抑制をもたらす。
【0077】
この実施例は、T細胞癌の処置のための、TRBCを標的とするBsAbの生成および評価を記載する。TRBCを標的とするBsAbは、癌性T細胞を選択的に標的とし、枯渇させることができる。TRBC1を標的とする二重特異性抗体は、TRBC2+健常ヒトT細胞を温存しながら、TRBC1+ T細胞癌およびTRBC1+健常ヒトT細胞を選択的に枯渇させることができる(図1A)。残存するTRBC2+健常T細胞は、機能性の免疫系を維持するのに十分である。
【0078】
TRBC1+悪性T細胞を選択的に標的とするための二重特異性抗体の生成
抗TRBC1 scFvを抗CD3 scFvと連結することによって、TRBC1-CD3二重特異性抗体を生成した(図2A)。TRBC1-CD3二重特異性抗体は、TRBC1+ T細胞サブセットを、CD3を発現する全ての他のT細胞と接続する。2つの抗TRBC1 scFvを連結することによって、TRBC1-TRBC1二重特異性抗体の第2のセットを生成した(図2B)。TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、TRBC1+ T細胞を、もう1つのTRBC1+ T細胞とのみ接続する。TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、4つの異なるフォーマットを使用して作製された(図3)。全ての二重特異性抗体が、HEK293F細胞トランスフェクションによって作製され、続いて、ニッケルアフィニティクロマトグラフィを使用して精製された。二重特異性抗体の発現は、SDS-PAGEゲル電気泳動によって検出された(図4A、4B)。
【0079】
ScFv配列
【0080】
TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、TRBC1+ JurkatT細胞に結合し、TRBC2+ HPB-ALL細胞には結合しない
ヒトT細胞癌由来細胞株は、再編成されたTCRβ遺伝子を有し、TRBC1またはTRBC2のいずれかを発現する。T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)患者に由来するJurkat細胞株は、TRBC1を発現する。異なるT-ALL患者に由来するHPB-ALL細胞株は、TRBC2を発現する。4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体の、Jurkat細胞株およびHPB-ALL細胞株とのインキュベーションは、TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4が、Jurkat細胞には結合するが、HPB-ALL細胞には結合しないことを示した(図5A)。TCR遺伝子ノックアウトを有するJurkat細胞(TCR-KO)を、陰性対照として使用したところ、それは、4つのTRBC1-TRBC1二重特異性抗体のいずれとの結合も示さなかった。従って、TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4二重特異性抗体は、TRBC1結合能を保持したが、TRBC1-TRBC1#1およびTRBC1-TRBC1#2二重特異性抗体は、保持しなかった。ヒトドナー(AB04)から得られた健常ポリクローナルT細胞は、TRBC1サブセットおよびTRBC2サブセットの両方からなる。TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4は、健常ヒトT細胞のサブセットに結合することができた(図5A)。TRBC1-CD3二重特異性抗体の、Jurkat細胞、HPB-ALL細胞、およびAB04ドナーから得られた健常ヒトT細胞との結合も試験した。TRBC1-CD3二重特異性抗体は、Jurkat細胞(抗TRBC1 scFvおよび抗CD3 scFvを使用)およびHPB-ALL細胞(抗CD3 scFvを使用)の両方に結合することができた(図5B)。Jurkat TCR-KO細胞は、細胞表面にTRBC1およびCD3の両方を欠いているため、TRBC1-CD3は、Jurkat TCR-KO細胞には結合しなかった。TRBC1-CD3は、2つの異なる強度(ピーク1およびピーク2)で、AB04ドナーから得られた健常ヒトT細胞との結合も示した。これは、TRBC1-CD3が、TRBC1抗原およびCD3抗原の両方を使用してTRBC1+健常ヒトT細胞に結合し、より高い強度のピーク1染色を引き起こすためである可能性が高い。TRBC1-CD3は、CD3抗原のみを使用してTRBC2+健常ヒトT細胞に結合し、従って、より低い強度のピーク2も引き起こした。
【0081】
TRBC1-TRBC1二重特異性抗体はTRBC1+ T細胞癌細胞株に対して健常ヒトT細胞を活性化する
二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4は、Jurkat細胞との結合を示したため、これらの二重特異性抗体の、T細胞癌細胞株に対して健常ヒトT細胞活性化を誘導する能力を研究した。TRBC1-TRBC1二重特異性抗体およびTRBC1-CD3二重特異性抗体のT細胞悪性腫瘍に対する活性を査定するため、健常ヒトT細胞を、異なる抗体の存在下または非存在下で、T細胞癌細胞株と共培養した。二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4は、Jurkat細胞の存在下で、IFNγ産生の増加を示したが、HPB-ALL細胞の存在下では示さなかった(図6)。対照的に、TRBC1-CD3二重特異性抗体は、Jurkat細胞およびHPB-ALL細胞の両方の存在下で、IFNγ分泌を誘導した。
【0082】
TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、TRBC1+ T細胞を選択的に死滅させ、TRBC2+ T細胞を温存するよう、健常ヒトT細胞を誘導する
健常ヒトT細胞に対する二重特異性抗体の細胞傷害性を査定するため、健常ヒトT細胞(AB04)を、二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3、TRBC1-TRBC1#4、またはTRBC1-CD3二重特異性抗体の存在下で培養した。TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4への曝露は、TRBC2+ T細胞サブセットに影響することなく、健常ヒトTRBC1+ T細胞サブセットの選択的損失をもたらした(図7)。逆に、TRBC1-CD3二重特異性抗体への曝露は、TRBC1+およびTRBC2+の両方の健常ヒトT細胞サブセットの枯渇をもたらす(図7)。TRBC1+ T細胞癌細胞株に対する二重特異性抗体の細胞傷害性を試験するため、健常ヒトT細胞を、GFPを発現するJurkat細胞と共培養した。二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3またはTRBC1-TRBC1#4の存在下で、Jurkat細胞およびTRBC1+健常T細胞の枯渇が観察されたが、TRBC2+健常ヒトT細胞は保存された(図8)。TRBC1-CD3の存在下での類似の共培養は、TRBC1+およびTRBC2+の両方の健常ヒトT細胞の枯渇と共に、Jurkat細胞の枯渇を示した(図8)。これは、二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4が、TRBC2+健常ヒトT細胞を温存しながら、TRBC1+ Jurkat細胞を死滅させ得ることを証明した。逆に、TRBC1-CD3二重特異性抗体による処理は、TRBC1+健常T細胞が存在する時、TRBC1+およびTRBC2+の両方の健常T細胞の損失と共に、TRBC1+ Jurkat細胞の根絶をもたらす。TRBC2+ T細胞癌細胞株に対する二重特異性抗体の細胞傷害性を試験するため、健常ヒトT細胞をGFP発現HPB-ALL細胞と共培養した。二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3またはTRBC1-TRBC1#4への曝露は、HPB-ALL細胞を根絶できなかった。TRBC1-CD3二重特異性抗体の存在下での類似の共培養は、HPB-ALL細胞の枯渇を示した(図9)。
【0083】
残留TRBC1+癌細胞の排除
TRBC1-TRBC1二重特異性抗体は、兄弟殺し(fratricide)による健常TRBC1+ T細胞の死滅をもたらし得る。TRBC1+健常T細胞は、TRBC1+癌細胞が完全に排除される前に、その任務を完了するのに不十分な数にまで低下し得る(図1Bおよび図8)。そのようなシナリオにおいては、TRBC1-CD3二重特異性抗体による「モップアップ」治療が使用され得る(図1B)。TRBC1+健常T細胞は、存在しないか、または極めて少ないため、TRBC1-CD3二重特異性抗体の抗TRBC1部分によって媒介されるT細胞活性化は、存在しないか、または最小であり、従って、TRBC2+ T細胞集団は、大部分が無傷のままとなり、残留TRBC1+癌細胞を完全に排除するという残存する任務を実施することができる。
【0084】
毒素にコンジュゲートされたTRBC1 scFvまたはTRBC1抗体(TRBC1-ADC)による治療が、エフェクターT細胞集団を必要とすることなくTRBC1+悪性細胞を排除する、第2の「モップアップ」戦略が提供され得る(図1C)。この戦略も、健常TRBC2+ T細胞集団を無傷のままにすることができ、健常TRBC2+ T細胞集団は細胞性免疫を維持することができる。
【0085】
要約
二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4は、TRBC1+ T細胞とのみ結合し、TRBC1+ T細胞癌に対して健常TRBC1+ヒトT細胞を活性化し、健常TRBC2+ T細胞を保存しながら、TRBC1+細胞の選択的な枯渇をもたらす。一方、TRBC1-CD3二重特異性抗体は、TRBC1+ T細胞およびTRBC2+ T細胞の両方に結合し、全てのT細胞のほぼ完全な損失をもたらす。これは、二重特異性抗体TRBC1-TRBC1#3およびTRBC1-TRBC1#4が、T細胞癌に対する免疫療法のための実行可能な候補であることを証明している。さらに、兄弟殺しを通して、TRBC1-TRBC1二重特異性抗体によってTRBC1+健常T細胞が不十分な数にまで低下した時に、残留TRBC1+癌細胞を完全に排除するため、TRBC2+健常T細胞を動員するためにTRBC1-CD3二重特異性抗体が使用される「モップアップ」戦略が提唱される。あるいは、TRBC1-ADC分子が、残留TRBC1+悪性細胞を死滅させるため、使用されてもよい。
【0086】
配列表
【0087】
他の態様
本発明を、その詳細な説明と共に記載したが、上記の説明は、本発明の範囲を例示するためのものであって、限定するためのものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。他の局面、利点、および修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024508749000001.app
【国際調査報告】