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特表2024-508773HIF2α阻害剤としての三環式化合物及びその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】HIF2α阻害剤としての三環式化合物及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 333/78 20060101AFI20240220BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/4436 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07D333/78
C07D409/12
A61K31/381
A61K31/4436
A61P1/04
A61P9/12
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550130
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2022077454
(87)【国際公開番号】W WO2022179524
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202110203800.3
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210095335.0
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210135655.4
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521155852
【氏名又は名称】シャンハイ ジェミンケア ファーマシューティカル カンパニー,リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】521155863
【氏名又は名称】チアンシー ジェミンケア グループ カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピエ、ピンイェン
(72)【発明者】
【氏名】モウ、チエンフォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チエンミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、チンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チョー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホンイェー
(72)【発明者】
【氏名】ポン、チエンピャオ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC92
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BB03
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA68
4C086ZB26
(57)【要約】
式(I)で表される三環式化合物及びその製造方法、並びにHIF2α阻害剤としての使用を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

(ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
環Bは、C5-6シクロアルキル、5~6員複素環基及び5~6員シクロアルケニルから選択され、前記C5-6シクロアルキル、5~6員複素環基又は5~6員シクロアルケニルは、任意選択で1、2、3又は4つのRにより置換され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、O、=NR及び空白から選択され、
は、=NR10及びOから選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
10は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化2】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル、5~6員複素環基又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。)
【請求項2】
式(II)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化3】

(ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、O、=NR及び空白から選択され、
は、=NR10及びOから選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
【化4】

である場合、D及びDは、それぞれ独立して単結合、-O-、-N(R)-、-C(R)-、-C(=R)-、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化5】

である場合、D及びDは、それぞれ独立して-C(R)-及びNであり、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化6】

である場合、Dは独立して-C(R)-及びNであり、Dは、独立して単結合、-O-、-N(R)-、-C(R)-、-C(=R)-、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、Rは、独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
10は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化7】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。)
【請求項3】
構造が式(II-A)又は式(II-B)で表される通りである、請求項1に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化8】

(ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
【化9】

である場合、Dは、-O-、-N(R)-、-C(R)-、-C(=R)-、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化10】

である場合、Dは、-C(R)-及びNから選択され、Rは、H、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化11】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。)
【請求項4】
構造は式(III-A)で表される通りである、請求項1に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化12】

(ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
、R10は、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化13】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。)
【請求項5】
は、H、F、Cl、Br、I及びCNから選択され、
任意選択で、環Aは、フェニル、ピリジル、ピリダジニル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
構造単位
【化14】

から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R、R、RD1、R、R8aは、独立してH、CH、F、Cl、Br、I、CN、OH、
【化15】

から選択される、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
環Bは、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルケトン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、ピペリジン-2-オン、テトラヒドロ-2H-ピラニル及びピペリジニルから選択され、前記シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルケトン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、ピペリジン-2-オン、テトラヒドロ-2H-ピラニル又はピペリジニルは、任意選択で1、2、3又は4つのRにより置換される、請求項1に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
環Bは、
【化16】

から選択され、
好ましくは、環Bは、
【化17】

から選択される、請求項1に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
構造単位
【化18】

から選択される、請求項1又は2に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
構造単位
【化19】

から選択される、請求項1に記載の化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
下記の式から選択される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化20】

【化21】

【化22】
【請求項13】
下記の式から選択される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩。
【化23】
【請求項14】
HIF2αによって媒介される疾患を予防又は治療するための医薬の製造における、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項15】
前記HIF2αによって媒介される疾患は、腎臓癌、神経膠腫、Von Hippel-Lindau症候群、肺癌、結直腸癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、甲状腺癌、多発性骨髄腫、膵管癌、肺扁平上皮癌、結腸癌、血管腫、肺高血圧症及び炎症性腸疾患から選択される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で表される化合物、その光学異性体及びその薬学的に許容される塩に関し、ならびにHIF2α阻害剤としての化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は下記の優先権を主張する:
CN202110203800.3、出願日は:2021年02月23日であり、
CN202210095335.0、出願日は:2022年01月26日であり、
CN202210135655.4、出願日は:2022年02月14日である。
【0003】
腎癌は成人悪性腫瘍の約2%~3%を占め、成人腎悪性腫瘍の80%~90%を占めている。統計によると、2018年に世界で新たに腎臓癌と診断された患者数は40.3万人であり、17.5万人は腎臓癌により死亡した。中国における腎臓癌の発生率は約4.0/10万人である一方、都市部の罹患率は約6.0/10万人である。これに基づいて、中国では毎年約5.2~7.8万人の新たな腎臓癌患者が発生していると計算され、腎臓癌患者の総数は46万人以上と推定される。神経膠腫は脳腫瘍の40~50%を占め、最も一般的な頭蓋内悪性腫瘍である。悪性神経膠腫はグリアに由来し、組織学的に不均一及び侵襲性を有し、予後が不良である。腎細胞癌は放射線療法、化学療法に対して感受性が低いため、近年では標的治療が進行性腎細胞癌の主な治療法となっており、これにより腎細胞癌患者、特に転移性進行腎細胞癌患者の生存期間が大幅に延長されている。しかし、標的治療を受けたほぼすべての患者は薬剤耐性及び腫瘍再発を発症し、明らかな副作用もあった。従って、薬剤の順序及び組み合わせにおける臨床選択のために、異なるシグナル伝達経路、異なる薬剤耐性メカニズムに対して異なる腫瘍形成遺伝子を標的とする薬剤を開発する必要がある。異なる患者、異なる疾病のサブタイプ及び疾病の進行段階に応じて正確な投薬を段階的に実現し、病気を最大限に制御し、副作用を軽減し、患者の生活の質を向上させる。
【0004】
VHL/HIF2α経路は、大部分の腎発癌の発生を支配している。VHLは、タンパク質分解を担うE3リガーゼ標的タンパク質結合サブユニットである。VHL遺伝子は代表的な腫瘍抑制遺伝子であり、その機能不全は中枢神経系血管腫、腎癌/腎嚢胞、網膜血管腫、褐色細胞腫、膵臓腫瘍などを引き起こす可能性がある。VHL/HIF2αシグナル伝達経路の異常は、腎細胞癌、特に明細胞癌の90%以上を占める。VHL遺伝子の突然変異、染色体欠失及び遺伝子レベルのメチル化修飾はいずれもVHL遺伝子の不活化又は活性低下を引き起こす可能性があり、HIF2αは適時に分解できず、蓄積して核に入り、HIF1βと複合体を形成し、その結果、血管新生因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、サイクリンD(Cyclin D)、グルコーストランスポーター1(GLUT1)、酸素輸送及び代謝、細胞増殖と移動などの一連の下流遺伝子の転写を引き起こし、最終的に腫瘍の発生及び転移につながる。従って、VHL/HIF2α経路を標的とする薬剤の開発は、腎臓癌患者に新しい効果的な治療法を提供する可能性がある。その中で、Peloton社のHIF2a阻害剤PT2977は既に腎臓癌治療のための第III相臨床試験に入った。その作用機序により、HIF2a阻害剤は希少疾患VHL症候群の治療にも大いに期待されている。
【0005】
神経膠腫は脳のグリア細胞に由来する腫瘍であり、脳腫瘍の40~50%を占め、最も一般的な原発性頭蓋内腫瘍である。中国における神経膠腫の年間発生率は5~8/10万であり、5年死亡率は全身腫瘍の中で膵臓癌と肺癌に次いで3番目であり、その中で神経膠芽腫(GBM)は成人において最も一般的で致死率の高い原発性悪性脳腫瘍である。現在、主な治療法は手術であり、術後に放射線療法及び化学療法を補助するが、全体的な治療効果は理想的ではない。標準治療を受けた後の新規診断患者の生存期間中央値はわずか15か月であり、再発率が高く、再発後の生存期間中央値はわずか5~7か月である。神経膠芽腫においてHIF2αが高発現している患者は予後が更に不良であることが臨床的に判明されている。体外の細胞学実験により、HIF2αの発現が神経膠腫細胞の腫瘍形成性に密接に関連していることが判明された。PT2977による神経膠芽腫の治療は現在臨床第II相の段階にあり、HIF2a阻害剤がこのタイプの腫瘍患者に対して所定の効果を発揮することが証明されており、この部分の治療手段と限られた患者に新たな治療戦略を提供できる可能性がある。
【0006】
HIF2α阻害剤は、他の腫瘍の治療にも使用することができる。HIF-2aタンパク質を阻害することにより、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)などの血管新生に関連する因子の転写と発現を低下させ、腫瘍新生血管の形成を阻害することができ、抗血管新生薬の作用機序を有することから、単独使用又は免疫チェックポイント阻害薬との併用により、肺癌、結直腸癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、甲状腺癌及び多発性骨髄腫などを含む腎臓癌を除く、既存の血管新生阻害薬の複数の適応症にも拡張できる。更に、研究によるとHIF2α阻害剤は腫瘍微小環境の免疫細胞集団に作用し、腫瘍に対するT細胞の殺傷効果を高めるか、又は免疫阻害機能を持つ細胞の効果を低減させることで、腫瘍の増殖を阻害する役割を果たしている。HIF2α阻害剤を単独使用又は他の薬物と組み合わせて使用することにより、肝臓癌、膵管癌、肺扁平上皮癌、結腸癌に治療効果がある可能性があることが示唆されている。また、血管腫の治療におけるHIF2α阻害剤の使用も注目する価値がある。
【0007】
最後に、HIF2αは、肺高血圧症、逆流性食道炎、炎症性腸疾患などの非腫瘍疾患の発症にも重要な役割を果たしており、HIF2a阻害剤の開発が成功すれば、これらの患者にも新たな治療選択肢を提供することができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、一連の新しい三環式化合物を提供し、本発明の化合物は、ルシフェラーゼ実験及びVEGF ELISA実験において優れた阻害効果を示し、腎臓癌、悪性神経膠腫などの様々なHIF2α関連疾患に使用することができる。
【0009】
本発明は、式(I)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】

ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
環Bは、C5-6シクロアルキル、5~6員複素環基及び5~6員シクロアルケニルから選択され、前記C5-6シクロアルキル、5~6員複素環基又は5~6員シクロアルケニルは、任意選択で1、2、3又は4つのRにより置換され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、O、=NR及び空白から選択され、
は、=NR10及びOから選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
10は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化2】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル、5~6員複素環基又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。
【0010】
本発明はまた、式(II)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化3】

ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、O、=NR及び空白から選択され、
は、=NR10及びOから選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
【化4】

である場合、D及びDは、それぞれ独立して単結合、-O-、-N(R)-、-C(R)2-、-C(=R)、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化5】

である場合、D及びDは、それぞれ独立して-C(R)-及びNであり、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化6】

である場合、Dは、独立して-C(R)-及びNであり、Dは、独立して単結合、-O-、-N(R)-、-C(R)-、-C(=R)-、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、Rは、独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
10は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化7】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。
【0011】
本発明はまた、式(II-A)又は式(II-B)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化8】

ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
は、独立して-C(RD1-及び-N(RD1)-から選択され、
【化9】

である場合、Dは、-O-、-N(R)-、-C(R)-、-C(=R)-、-C(=O)-及び-C(=NR)-から選択され、R、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
【化10】

である場合、Dは、-C(R)-及びNから選択され、Rは、H、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
は、H、CN、OH、C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルから選択され、前記C1-6アルキル及びC3-6シクロアルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
R、R、RD1、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化11】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
nは、独立して0、1、2又は3であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。
【0012】
本発明の一部の形態において、式(I)で表される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩は、その構造が式(III-A)で表される通りである。
【化12】

ただし、環Aは、C4-6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、フェニル及び5~6員ヘテロアリールから選択され、
は、単結合、-O-、-S-及び-N(R)-から選択され、
は、-C(R)-及び-N-から選択され、
、R10は、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
、Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
は、H、OH、F及びNHから選択され、
は、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、前記C1-6アルキル又はC1-6アルコキシは、任意選択で1、2又は3つのR8aにより置換され、
、R、R8aは、それぞれ独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN、
【化13】

、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ及びC2-6アルケニルから選択され、前記C1-6アルキル、C1-6アルコキシ又はC2-6アルケニルは、任意選択で1、2又は3つのR’により置換され、
R’は、独立してH、ハロゲン、OH、NH、CN及びC1-6アルキルから選択され、
mは、独立して0、1、2、3又は4であり、
前記4~6員ヘテロシクロアルキル又は5~6員ヘテロアリールは、1、2又は3つの独立して-O-、-NH-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-S(=O)-、-S(=O)-及びNから選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子団を含む。
本発明の一部の形態において、上記Rは、H、F、Cl、Br、I及びCNから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
本発明の一部の形態において、上記Rは、H、CN、OH、Me、Et、
【化14】

から選択され、前記Me、Et、
【化15】

は、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0013】
本発明の一部の形態において、上記Rは、H、CN、OH、Me、Et、
【化16】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0014】
本発明の一部の形態において、上記R10は、H、CN、OH、Me、Et、
【化17】

から選択され、前記Me、Et、
【化18】

は、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0015】
本発明の一部の形態において、上記R10は、H、CN、OH、Me、Et、
【化19】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0016】
本発明の一部の形態において、上記環Aは、フェニル、ピリジル、ピリダジニル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0017】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化20】

は、
【化21】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0018】
本発明の一部の形態において、上記R、R、RD1、R、R8aは、独立してH、F、Cl、Br、I、CN、OH、
【化22】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0019】
本発明の一部の形態において、上記環Bは、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルケトン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、ピペリジン-2-オン、テトラヒドロ-2H-ピラニル及びピペリジニルから選択され、前記シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルケトン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、ピペリジン-2-オン、テトラヒドロ-2H-ピラニル又はピペリジニルは、任意選択で1、2、3又は4つのRにより置換され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0020】
本発明の一部の形態において、上記環Bは、
【化23】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0021】
本発明の一部の形態において、上記環Bは、
【化24】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0022】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化25】

は、
【化26】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0023】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化27】

は、
【化28】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0024】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化29】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0025】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化30】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0026】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化31】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0027】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化32】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0028】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化33】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0029】
本発明の一部の形態において、上記構造単位
【化34】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0030】
本発明はまた、下記の式から選択される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化35】

【化36】

【化37】
【0031】
本発明はまた、下記の式から選択される化合物、その光学異性体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化38】
【0032】
本発明はまた、HIF2αが媒介する疾患を予防又は治療するための医薬の製造における、上記化合物又はその薬学的に許容される塩又は上記医薬組成物の使用を提供する。
本発明の一部の形態において、上記HIF2αが媒介する疾患は、腎臓癌、神経膠腫、Von Hippel-Lindau(VHL)症候群、肺癌、結直腸癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、胃癌、肝臓癌、甲状腺癌、多発性骨髄腫、膵管癌、肺扁平上皮癌、結腸癌、血管腫、肺高血圧症及び炎症性腸疾患(IBD)から選択される。
【0033】
<定義及び説明>
別途に定義しない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び連語は以下の意味を含む。一つの特定の用語又は連語は、特別に定義されない場合、不確定又は不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品又はその活性成分を指す。
【0034】
本明細書で用いられる「薬学的許容される」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織との接触に適し、毒性、刺激性、アレルギー反応又はほかの問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合う。
【0035】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の塩で、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的に無毒の酸又は塩基とで製造される。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の塩基でこれらの化合物の中性の形態と接触することで塩基付加塩を得ることができる。薬学的許容される塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン又はマグネシウム塩あるいは類似の塩を含む。本発明で化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の酸でこれらの化合物の中性の形態と接触することで酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の実例は、無機酸塩及び有機酸塩、更にアミノ酸(例えばアルギニンなど)の塩、及びグルクロン酸のような有機酸の塩を含み、上記無機酸は、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含み、上記有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸やメタンスルホン酸などの類似の酸を含む。本発明の一部の特定的の化合物は、塩基性及び酸性の官能基を含有するため、任意の塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。
【0036】
本発明の薬学的許容される塩は、酸基又は塩基性基を含む母体化合物から通常の方法で合成することができる。通常の場合、このような塩の製造方法は、水又は有機溶媒あるいは両者の混合物において、遊離酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させて製造する。
【0037】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態が存在してもよい。本発明は、全てのこのような化合物を想定し、シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物並びに他の混合物、例えばエナンチオマー又は非エナンチオマーを多く含有する混合物を含み、全てのこれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。アルキル等の置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。全てのこれらの異性体及びこれらの混合物はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本発明の化合物は、特定に存在することができる。別途に定義しない限り、用語「互変異性体」又は「互変異性体の形態」とは室温において、異なる官能基の異性体が動的平衡にあり、かつ快速に互いに変換できることを指す。互変異性体は可能であれば(例えば、溶液において)、互変異性体の化学的平衡に達することが可能である。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピー互変異性体(prototropic tautomer)とも呼ばれる)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えばケト-エノール異性化やイミン-エナミン異性化を含む。原子価互変異性体(valence tautomer)は、一部の結合電子の再構成による相互変換を含む。中では、ケト-エノール互変異性化の具体的な実例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシ-3-ペンテン-2-オンの二つの互変異性体の間の相互変換である。
【0039】
本発明の化合物は、化合物を構成する一つまた複数の原子には、非天然の原子同位元素が含まれてもよい。例えば三重水素(H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)のような放射性同位元素で化合物を標識することができる。又、例えば重水素を水素に置換して重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素で形成された結合は、通常の水素と炭素で形成された結合よりも強く、重水素化されていない薬物と比較して、重水素化された薬物には、毒性の副作用が軽減され、薬物の安定性が増し、治療効果が向上され、薬物の生物学的半減期が延ばされるという利点がある。本発明の化合物の同位体組成の変換は、放射性であるかいやかに関わらず、本発明の範囲に含まれる。「任意」また「任意に」は後記の事項又は状況によって可能であるが必ずしも現れるわけではなく、かつ当該記述はそれに記載される事項又は状況が生じる場合によってその事項又は状況が乗じない場合を含むことを意味する。
【0040】
用語「置換された」は特定の原子における任意の一つ又は複数の水素原子が置換基で置換されたことで、特定の原子価状態が正常でかつ置換後の化合物が安定していれば、重水素及び水素の変形体を含むことができる。用語「任意選択で置換される」は、置換されてもよく、置換されなくてもよく、別途に定義しない限り、置換基の種類と数は化学的に安定して実現できれば任意である。
【0041】
用語「空白」は、置換が存在しないことを指し、例如Tが、空白から選択される場合、
【化39】

である。
【0042】
変量(例えばR)のいずれかが化合物の組成又は構造に1回以上現れた場合、その定義はいずれの場合においても独立である。そのため、例えば、一つの基が0~2個のRで置換された場合、上記基は任意に2個以下のRで置換され、かついずれの場合においてもRは独立して選択肢を有する。また、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。例えば、
【化40】

などから選択できる。
【0043】
2つの文字又は記号の間にではないハイフン(「-」)は、置換基の結合点を示す。例えば、C1-6アルキルカルボニル-とは、カルボニルを介して分子の残りの部分に結合したC1-6アルキルを指す。ただし、置換基の結合部位が当業者に明らかな場合、例えばハロゲン置換基の場合には、「-」を省略してもよい。
【0044】
別途に定義しない限り、基の原子価結合に点線「
【化41】

」がある場合、例えば、「
【化42】

」において、点線は当該基と分子の残りの部分との結合点を示す。また、本発明において、
【化43】

では、基の原子価結合
【化44】

を表し、
【化45】

の存在又はR基の不存在を表す。
【0045】
そのうち一つの変量が単結合から選択される場合、それで連結された2つの基が直接に連結され、例えば
【化46】

におけるDが単結合を表す場合、この構造は実際には
【化47】

になる。
【0046】
挙げられた置換基に対してどの原子を通して置換された置換基に連結されているかが明示されていない場合、このような置換基はその任意の原子を通して結合することができ、例えば、置換基としてのピリジルは、ピリジン環の任意の炭素原子を通して置換基に結合してもよい。
【0047】
挙げられた連結基がその連結方向を明示しない場合、その連結方向は任意であり、例えば、
【化48】

における連結基Lは
【化49】

であり、この時
【化50】

は左から右への読み取る順序と同じ方向にフェニルとシクロペンチルを連結して
【化51】

を構成することができ、また、左から右への読み取る順序と逆方向にフェニルとシクロペンチルと連結されて
【化52】

を構成することもできる。上記連結基、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。
【0048】
別途に定義しない限り、環内の原子数は一般に環員数として定義され、例えば、「4~6員環」とは、その周囲に4~6個の原子が配置された「環」を指す。
別途に定義しない限り、用語「C1-6アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~6個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-6アルキルにはC1-5、C1-4、C2-6アルキルなどが含まれ、それは1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)、多価(例えばメチン)であってもよい。C1-5アルキルの実例は、包括但不限于メチル(「Me」)、エチル(「Et」)、n-プロピル(「n-Pr」)又はイソプロピル(「i-Pr」)などのプロピル、n-ブチル(「n-Bu」)、イソブチル(「i-Bu」)、s-ブチル(「s-Bu」)又はt-ブチル(「t-Bu」)、ペンチル、ヘキシルなどのブチルを含むが、これらに限定されない。
【0049】
別途に定義しない限り、用語「C1-3アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~3個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-3アルキルにはC1-2とC2-3アルキルなどが含まれ、それは1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)及び多価(例えばメチン)であってもよい。C1-3アルキルの実例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
別途に定義しない限り、用語「C1-6アルコキシ」は酸素原子を介して分子の残り部分に連結した1~6個の炭素原子を含むアルキルを表す。上記C1-6アルコキシは、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-4、C、C、C及びCアルコキシなどが含まれる。C1-6アルキルの実例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ(n-プロポキシおよびイソプロポキシを含む)、ブトキシ(n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシおよびt-ブトキシ基を含む)、ペンチルオキシ(n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシおよびネオペンチルオキシを含む)、ヘキシルオキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0051】
別途に定義しない限り、用語「C1-3アルコキシ」は酸素原子を介して分子の残り部分に連結した1~3個の炭素原子を含むアルキル基を表す。前記C1-3アルコキシは、C1-2、C2-3、C及びCアルコキシなどが含まれる。C1-3アルコキシの実例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ(n―プロポキシ又はイソプロポキシを含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0052】
別途に定義しない限り、「C2-6アルケニル」は直鎖又は分枝鎖の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む2~6個の炭素原子で構成された炭化水素基を表し、炭素-炭素二重結合は基中の任意の位置にあってもよい。前記C2-6アルケニルにはC2-4、C2-3、C、C及びCアルケニルなどが含まれ、それは1価、2価及び多価であってもよい。C2-6アルケニルの実例はビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサマジエニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0053】
別途に定義しない限り、「C2-3アルケニル」は直鎖又は分枝鎖の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む2~3個の炭素原子で構成された炭化水素基を表し、炭素-炭素二重結合は基中の任意の位置にあってもよい。前記C2-3アルケニルにはC及びCアルケニルなどが含まれ、前記C2-3アルケニルは一価、二価及び多価であってもよい。C2-3シクロアルキルの実例はビニル、プロペニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0054】
別途に定義しない限り、「C4-6シクロアルキル」は4~6個の炭素原子から構成された飽和炭化水素基を表し、それは単環式及び二環式環系であり、前記C4-6シクロアルキルにはC4-5、C5-6、C、C及びCシクロアルキルなどが含まれ、それは一価、二価又は多価であってもよい。C4-6シクロアルキルの実例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0055】
別途に定義しない限り、用語、「4~6員のヘテロシクロアルキル」自体又は他の用語と組み合わせて4~6個の環原子で構成された飽和環状基であり、その1、2、3及び4個の環原子は独立してO、S及びNから選ばれるヘテロ原子であり、残りは炭素原子である。ここで、窒素原子が任意に四級化されており、窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意に酸化される(即ち、NO及びS(O)、pは1又は2である)。それは、単環式及び二環式環系を含み、ここで、二環式環系にはスピロ環、縮合環及び架橋環が含まれる。更に、「4~6員のヘテロシクロアルキル」に関して、ヘテロ原子はヘテロシクロアルキルと分子他の部分の連結されるの位置を占めることができる。前記4~6員のヘテロシクロアルキルは5~6員、4員、5員及び6員のヘテロシクロアルキルなどを含む。4~6員のヘテロシクロアルキルの実例は、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロチエニル(テトラヒドロチエン-2-イル及びテトラヒドロチエン-3-イルなどを含む)、テトラヒドロフラニル(テトラヒドロフランー2―イルなどを含む)、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル(1-ピペリジニル、2-ピペリジニル及び3-ピペリジニルなどを含む)、ピペラジニル(1-ピペラジニル及び2-ピペラジニルなどを含む)、モルホリニル(3-モルホリニル及び4-モルホリニルなどを含む)、ジオキサニル、ジチアニル、イソキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,2-オキサジニル、1,2-チアジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ホモピペラジニル又はホモピペリジニルを含むが、これらに限定されない。
【0056】
別途に定義しない限り、用語、「5~6員の複素環基」自体又は他の用語と組み合わせて4~6個の環原子で構成された飽和又は不飽和環状基であり、その1、2、3及び4個の環原子は独立してO、S及びNのヘテロ原子から選ばれ、残りは炭素原子である。窒素原子が任意に四級化されており、窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意に酸化される(即ち、NO及びS(O)、pは1又は2である)。それは、単環式及び二環式環系を含み、ここで、二環式環系にはスピロ環、縮合環及び架橋環が含まれる。前記「5~6員複素環基」の実例は、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサノニル、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オニル、ピペリジン-2-オニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル及びピペリジニルなどを含むがこれらに限定されない。
【0057】
別途に定義しない限り、本発明の用語「5~6員ヘテロ芳香環」と「5~6員ヘテロアリール」は交換的に使用することができ、用語「5~6員ヘテロアリール」は5~6個の環原子で構成された共役π電子系を持つ単環式基であり、その1、2、3及び4個の環原子は独立してO、S及びNのヘテロ原子から選ばれ、残りは炭素原子である。ここで、窒素原子が任意に四級化されており、窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意に酸化される(即ち、NO及びS(O)、pは1又は2である)。5~6員ヘテロアリールは、ヘテロ原子又は炭素原子を通して分子の他の部分に連結される。前記5~6員ヘテロアリールは5員又は6員ヘテロアリールを含む。5~6員ヘテロアリールの実例は、ピロリル(N-ピロリル、2-ピロリル、及び3-ピロリルなどを含む)、ピラゾリル(2-ピラゾリル及び3-ピラゾリルなどを含む)、イミダゾリル(N-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリルな及び5-イミダゾリルなどを含む)、オキザゾリル(2-オキサゾリル、4-オキサゾリル及び5-オキザゾリルなどを含む)、トリアゾリル(1H-1、2、3-トリアゾリル、2H-1、2、3-トリアゾリル、1H-1、2、4-トリアゾリル及び4H-1、2、4-トリアゾリルなど)、テトラゾリル、イソキサゾリル(3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル及び5-イソキサゾリルなど)、チアゾリル(2-チアゾリル、4-チアゾリル及び5-チアゾリルなどを含む)、フラニル(2-フラニル及び3―フラニルなどを含む)、チエニル(2-チエニル及び3-チエニルなどを含む)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジルなどを含む)、ピラジニル又はピリミジニル(2-ピリミジニル又は4-ピリミジニルなどを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0058】
別途に定義しない限り、本発明の用語「シクロアルケニル」とは環状アルケニルを指す。「C5-6シクロアルケニル」にはC、Cシクロアルケニルが含まれる。シクロアルケニルの実例は、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルを含むが、これらに限定されない。
【0059】
別途に定義しない限り、Cn-n+m又はC-Cn+mはn~n+m個の炭素の任意の一つの具体的な様態を含み、例えば、C1-12はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、及びC12を含み、n~n+mのうちの任意の一つの範囲も含み、例えば、C1-12はC1-3、C1-6、C1-9、C3-6、C3-9、C3-12、C6-9、C6-12、及びC9-12などを含む。同様に、n員~n+m員は環における原子数がn~n+m個であることを表し、例えば、3~12員環は3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環、11員環、及び12員環を含み、n~n+mのうちの任意の一つの範囲も含み、例えば、3~12員環は3~6員環、3~9員環、5~6員環、5~7員環、6~7員環、6~8員環、及び6~10員環等を含む。
【0060】
当業者は、一部の式(I)で表される化合物は1つ又は複数のキラル中心を含むことができ、従って2つ以上の立体異性体が存在することを理解すべきである。従って、本発明の化合物は、個々の立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)及びラセミ体などのそれらの任意比率の混合物の形態で存在することができ、また、必要に応じて、その互変異性体及び幾何異性体の形態で存在することもできる。
【0061】
本明細書で使用する用語「立体異性体」とは、同じ化学構造を有するが、空間内の原子又は基の配置が異なる化合物を指す。立体異性体は、鏡像異性体、ジアステレオマー、コンフォメーション異性体などを含む。
【0062】
本明細書で使用する用語「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の2つの立体異性体を指す。
用語「ジアステレオマー」とは分子が二つ又は複数のキラル中心を有し、且つその分子同士は非鏡像の関係にある立体異性体を指す。ジアステレオマーは、融点、沸点、スペクトル特性、生物活性などの様々な物理的特性を持っている。ジアステレオマー混合物は、電気泳動及びHPLCなどのクロマトグラフィーなどの高分解能分析方法によって分離できる。
【0063】
立体化学の定義と規則は、S. P. Parker編、 McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York;及びEliel, E.及びWilen, S., “Stereochemistry of Organic Compounds”, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994に従う。多くの有機化合物は光学活性な形で存在し、即ち、それらは平面偏光の面を回転させる能力を持っている。光学活性化合物を説明する際、接頭辞DとL、又はRとSは、キラル中心に関する分子の絶対配置を示すために使用される。接頭辞dと1、又は(+)と(-)は、化合物の回転平面偏光の表記を示すために使用され、(-)又は1は化合物が左旋性であることを示す。(+)又はdの接頭辞が付いている化合物は右旋性である。特定の化学構造では、これらの立体異性体は、互いの鏡像であることを除けば同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーと呼ばれることもあり、そのような異性体の混合物はしばしばエナンチオマー混合物と呼ばれている。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物又はラセミ化合物として称され、化学反応又はプロセスにおいて立体選択性又は立体特異性がない場合に生じる可能性がある。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」とは、光学活性ではない2つのエナンチオマーの等モル混合物を指す。
【0064】
ラセミ混合物は、そのまま使用する又は個々の異性体に分割して使用することもできる。分割により、立体化学的に純粋な化合物又は1つ又は複数の異性体が豊富な混合物が得られることができる。異性体を分離する方法はよく知られており(Allinger N. L.及びEliel E. L., 「Topics in Stereochemistry」、第6巻、Wiley Interscience、1971を参照)、キラル吸着剤を使用するクロマトグラフィーなどの物理的方法が含まれる。キラル前駆体から単一の異性体を製造することができる。或いは、キラル酸(例えば、10-カンファースルホン酸、カンファン酸、α-ブロモカンホウ酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、ピロリドン-5-カルボン酸などの単一のエナンチオマー)を用いてジアステレオマー塩の形成による混合物から化学的分離して単一の異性体を得、前記塩を分級結晶化し、次に分割された塩基の1つ又は複数を遊離し、このプロセスを任意に繰り返すことにより、1つ又は複数の他方の異性体を含まない異性体を得、即ち、例えば重量基準で少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%の光学純度を有する所望の立体異性体を得る。或いは、当業者には公知のように、ラセミ化合物をキラル化合物(補助)に共有結合させて、ジアステレオマーを得ることができる。
【0065】
本明細書で使用する用語「互変異性体」又は「互変異性型」とは、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体とも呼ばれる)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えばケト-エノール異性化やイミン-エナミン異性化を含む。結合互変異性体には、結合電子の一部の再結合による相互変換が含まれている。
【0066】
本発明で使用される用語「治療」とは、疾患又は疾患の症状を治癒、緩和、軽減、改変、治療、改善、改進又は影響するために、前記疾患に罹患している又は前記疾患の症状を有する個体に、1つ又は複数の薬物、特に本明細書に記載の式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を投与することを指す。本明細書で使用される用語「予防」とは、個体が疾患に罹患することを防止するために、前記疾患に罹患しやすい体質を有する個体に、1つ又は複数の薬物、特に本明細書に記載の式(I)で表される化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を投与することを指す。化学反応に関与する場合、「処理」、「接触」及び「反応」という用語は、示された及び/又は所望の生成物を生成するために、適切な条件下で2つ以上の試薬を添加・混合することを指す。理解すべきであることは、示された及び/又は所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加した2つの試薬の組み合わせから直接生じるとは限らず、即ち、混合物には、生成された1つ又は複数の、最後に示された及び/又は所望の生成物を形成させる中間体が存在する可能性がある。
【0067】
本明細書で使用する用語「有效量」とは、個体に有益な効果を生み出すための通常の十分な量を指す。従来の方法(例えば、モデリング、用量漸増研究又は臨床試験など)を従来の影響因子(例えば、投与方法、化合物の薬物動態、疾患の重症度及び経過、個体の病歴、個体の健康状態、薬物に対する個体の反応程度など)と組み合わせることによって、本発明の化合物の有效量を決定することができる。
【0068】
本発明の化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造することができ、以下に挙げられた具体的な実施形態、他の化学合成方法と合わせた実施形態及び当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書で具体的に定義されていない技術及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に具体的な実施の形態を参照しながら本発明を更に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、この種の反応の従来の条件に従うか、或いは製造業者が推奨する条件に従う。別途に定義しない限り、比率及び部は、重量比及び重量部である。別途に定義しない限り、液体の比率は体積比である。
【0071】
以下の実施例で使用される実験材料及び試薬は、特に明記しない限り、市販品から得ることができる。
本発明は以下の略語を使用する。DASTは三フッ化ジエチルアミノ硫黄を表し、DCMはジクロロメタンを表し、DCEは1,2-ジクロロエタンを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、Oxoneはペルオキシ一硫酸カリウムを表し、Selectfluorは1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート)を表し、Pd(dba)はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を表す。
【0072】
実施例1:化合物1の合成
【0073】
【化53】
【0074】
ステップ1:化合物1-2の製造
化合物1-1(2.5g、11.4mmol)、酢酸パラジウム(128mg、0.57mmol)、ヨード(2.9g、11.4mmol)及びヨードベンゼン二酢酸(3.68g、11.4mmol)の混合物にDMF(55mL)を加えた。反応溶液をアルゴンガスで3回置換し、反応溶液を100℃で24時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させ、減圧濃縮して大部分のDMFを除去し、粗生成物を希塩酸(100mL、0.1M)に注ぎ、400mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、1Mのチオ硫酸ナトリウムで洗浄した後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮して化合物1-2を得、粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0075】
ステップ2:化合物1-3の製造
化合物1-2(0.81g、2.3mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、炭酸カリウム(970mg、7.0mmol)及びヨードメタン(0.44mL、7.0mmol)を加えた。反応溶液を室温で18時間撹拌した。反応溶液に水(30mL)を加えた後、60mLの酢酸エチルで2回に分けて抽出し、有機相を合わせて水で5回洗浄した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮して化合物1-3を得た。粗生成物を直接に次のステップに使用した。LCMS m/z = 358.9/360.9 [M+1]
【0076】
ステップ3:化合物1-4の製造
化合物1-3(1.26g、3.5mmol)及び4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos、243mg、0.42mmol)をトルエン:アセトン(17mL、v/v=2:1)に分散させ、Pd(dba)(192mg、0.21mmol)及びチオ酢酸カリウム(500mg、4.4mmol)を加え、反応溶液をアルゴンガスで置換した後密閉し、70℃に昇温させ2時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させ、ジクロロメタンで希釈した後濾過し、ケーキをジクロロメタンで2回洗浄した。濾液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-4を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.44-7.41 (m, 1H), 7.25-7.21 (m, 1H), 3.95 (s, 3H), 2.42 (s, 3H);LCMS m/z = 306.9/308.9 [M+1]
【0077】
ステップ4:化合物1-5の製造
化合物1-4(1.21g、3.9mmol)を12mLのメタノールに溶解させ、アルゴンガスで置換した後炭酸セシウム(1.66g、5.1mmol)を加え、反応溶液を室温で1時間撹拌した。反応溶液にヨードメタン(1.22mL、20mmol)を加えた後16時間撹拌を続けた。反応溶液を減圧濃縮した後30mLの水に分散させ、90mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-5を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.38-7.35 (m, 1H), 7.16-7.11 (m, 1H), 3.99 (s, 3H), 2.45 (s, 3H);LCMS m/z = 247.0/249.0 [M+1-MeOH]
【0078】
ステップ5:化合物1-6の製造
化合物1-5(5.9g、21.1mmol)、トリフルオロアセトアミド(11.9g、106mmol)、酸化マグネシウム(11.9g、296mmol)及び二酢酸ヨードベンゼン(35.4g、110mmol)の混合物にジクロロメタン(150mL)及びオクタン酸ロジウム(II)二量体(140mg、0.2mmol)を加え、反応溶液をアルゴンガスで置換した後、40℃で16時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させ、ジクロロメタンで希釈した後濾過し、ケーキをジクロロメタンで2回洗浄した。濾液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-6を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.07-8.04 (m, 1H), 7.49-7.45 (m, 1H), 4.07 (s, 3H), 3.05 (s, 3H)。
【0079】
ステップ6:化合物1-7の製造
化合物1-6(5.0g、12.8mmol)の四塩化炭素/アセトニトリル(60mL、1:1)溶液に過ヨウ素酸ナトリウム(8.22g、38.4mmol)の水(15mL)溶液及び塩化ルテニウム(III)(80mg、0.38mmol)を加え、反応溶液を室温で16時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して四塩化炭素及びアセトニトリルを除去した。残りの水相に水(50mL)を加えた後、210mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-7を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.17-8.14 (m, 1H), 7.47-7.43 (m, 1H), 4.01 (s, 3H), 3.61 (s, 3H); LCMS m/z = 406.0/408.0 [M+1]
【0080】
ステップ7:化合物1-8の製造
化合物1-7(1.0g、2.46mmol)、3-クロロ-5-フルオロフェノール(1.08g、7.39mmol)及び炭酸カリウム(510mg、3.69mmol)をDMF(10mL)にそれぞれ加えた。反応溶液をマイクロ波で加熱して130℃に昇温させて10分間反応させた。反応溶液を室温に冷却させ、30mLの水を加え、100mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせて水で3回洗浄した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-8を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.30 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.07-7.04 (m, 1H), 6.90-6.88 (m, 1H), 6.74 (dt, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 4.69 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 4.41 (d, J = 17.6 Hz, 1H);LCMS m/z = 500.0/501.9 [M+1]
【0081】
ステップ8:化合物1-9の製造
化合物1-8(350mg、4.26mmol)を20mLのアセトニトリルに加え、NaCO(222mg、2.1mmol)を加え、アルゴンガスの保護下で、室温で10分間撹拌し、Selectfluor(743mg、2.1mmol)を加えた。反応溶液を室温で4時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後50mLの水を加え、120mLの酢酸エチルで4回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-9を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.08 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.05-7.02 (m, 1H), 6.86-6.84 (m, 1H), 6.72 (dt, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 5.30 (s, 1H);LCMS m/z = 439.8/401.8 [M+1]
【0082】
ステップ9:化合物1-10の製造
酢酸エチル(180mg、2.04mmol)をテトラヒドロフラン(4mL)に溶解させ、溶液をアルゴンガスで3回置換した後、-70℃に冷却させ、LDA(1.02mL、2.04mmol、2Mのテトラヒドロフラン溶液)をゆっくりと加え、反応溶液を30分間撹拌した後、化合物1-9(300mg、0.68mmol)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液をゆっくりと加えた。反応溶液を-70℃で1時間撹拌した。反応溶液を10mLの飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチングさせた後室温に昇温させ、40mLのジクロロメタンで4回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-10を得た。LCMS m/z = 528.0/530.0 [M+1]
【0083】
ステップ10:化合物1-11の製造
化合物1-10(100mg、0.19mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解させ、溶液をアルゴンガスで3回置換した後、-70℃に冷却させ、n-ブチルリチウム(0.38mL、0.95mmol、2.5Mのn-ヘキサン溶液)をゆっくりと加え、添加完了後、反応溶液を-70℃で30分間撹拌した。反応溶液を希塩酸(0.5mL、0.5M)でクエンチングさせた後、室温に昇温させ、10mLの水を加えた後40mLのジクロロメタンで4回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-11を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.99-7.93 (m, 1H), 7.11-7.05 (m, 2H), 6.98-6.97 (m, 1H), 6.83-6.80 (m, 1H), 3.26-3.20 (m, 1H), 3.07-3.01 (m, 1H);LCMS m/z = 404.0/406.0 [M+1]
【0084】
ステップ11:化合物1-12の製造
化合物1-11(50mg、0.12mmol)をエタノール(2mL)に溶解させ、反応溶液を-70℃に冷却させた後、水素化ホウ素ナトリウム(7mg、0.19mmol)を加え、添加完了後、反応溶液を-70℃で15分間撹拌した。反応溶液を希塩酸(0.5mL、0.5M)でクエンチングさせた後、室温に昇温させ、3mLの水を加えて12mLのジクロロメタンで4回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後、HPLCで精製して化合物1-12を得た。
【0085】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.73 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.10 (dd, J = 8.4, 1.6 Hz, 1H), 7.00 (dt, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 6.93-6.92 (m, 1H), 6.76 (dt, J = 8.4, 2.0 Hz, 1H), 5.94 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.11 (brs, 1H), 3.01-2.89 (m, 1H), 2.53-2.48 (m, 1H), 2.33 (brs, 1H);LCMS m/z = 406.0/408.0 [M+1]
ステップ12:化合物1の製造
化合物1-12(80mg、0.20mmol)をDCE(2mL)に溶解させ、反応溶液を0℃に冷却させた後、DAST(38mg、0.24mmol)を加え、添加完了後、反応溶液を0℃で1時間撹拌した。反応溶液を水(3mL)でクエンチングさせた後室温に昇温させ、12mLのジクロロメタンで4回に分けて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後、HPLCで精製して化合物1を得た。
【0086】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.79 (dd, J = 8.4, 2.0 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H), 7.03 (dt, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 6.96-6.95 (m, 1H), 6.79 (dt, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 6.03 (dd, J = 52.8, 5.2 Hz, 1H), 3.75 (brs, 1H), 2.96-2.64 (m, 2H);LCMS m/z = 408.0/410.0 [M+1]
【0087】
実施例2:化合物2の合成
【化54】
【0088】
ステップ1:化合物2-2の製造
氷浴中で、化合物1-5(15.0g、53.7mmol)のメタノール(110mL)溶液にOxone(16.52g、26.9mmol)の水(55mL)の懸濁液を滴下した。添加完了後、反応を室温に自然に昇温させ、反応溶液を室温で16時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して大部分のメタノールを除去し、酢酸エチル(200mL)及び水(200mL)に分散させ、水相を300mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、1Mのチオ硫酸ナトリウムで洗浄した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮した後の粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-2を得た。LCMS m/z = 295.0/297.0 [M+1]
【0089】
ステップ2:化合物2-3の製造
室温で、化合物2-2(7.0g、23.7mmol)をDMF(120mL)に溶解させ、炭酸カリウム(4.92g、35.6mmol)及び3-シアノ-5-フルオロフェノール(4.88g、35.6mmol)を加えた。反応溶液をアルゴンガスで置換した後、90℃で8時間撹拌した。反応溶液が室温に冷却された後、減圧濃縮して大部分のDMFを除去し、粗生成物を酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)に分散させ、水相を100mLの酢酸エチルで2回に分けて抽出し、有機相を合わせて、水で洗浄した後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後の粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-3を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.18 (ddd, J = 7.6, 2.4, 1.2 Hz, 1H), 7.03-7.02 (m, 1H), 6.96 (dt, J = 9.2, 2.4 Hz, 1H), 4.01 (s, 3H), 2.88 (s, 3H), LCMS m/z = 412.0/414.0 [M+1]
【0090】
ステップ3:化合物2-4の製造
化合物2-3(3.0g、7.28mmol)、トリフルオロアセトアミド(2.88g、25.5mmol)、酸化マグネシウム(2.35g、58.2mmol)及び二酢酸ヨードベンゼン(8.2g、25.5mmol)の混合物にジクロロメタン(30mL)及びオクタン酸ロジウム(II)二量体(113mg、0.15mmol)を加え、反応溶液をアルゴンガスで置換した後、40℃で16時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させ、ジクロロメタンで希釈した後濾過し、ケーキをジクロロメタンで2回洗浄した。濾液を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-4を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.12 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 7.6, 2.4, 1.2 Hz, 1H), 7.19-7.15 (m, 2H), 7.07 (dt, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 4.02 (s, 3H), 3.63 (s, 3H), LCMS m/z = 523.0/525.0 [M+1]
【0091】
ステップ4:化合物2-5の製造
化合物2-4(2.03g、3.9mmol)をTHF(20mL)に溶解させ、炭酸セシウム(1.52g、4.7mmol)を加えて密閉し、反応溶液を90℃で1時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させ、30mLの水を加え、90mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-5を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.37 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.29 (ddd, J = 7.6, 2.4, 1.2 Hz, 1H), 7.13-7.12 (m, 1H), 7.05 (dt, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 4.70 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 4.43 (d, J = 17.6 Hz, 1H), LCMS m/z = 491.0/493.0 [M+1]
【0092】
ステップ5:化合物2-6の製造
化合物2-5(1.00g、2.04mmol)を20mLのアセトニトリルに溶解させ、NaCO(647mg、6.1mmol)及びSelectfluor(2.16g、6.1mmol)を加えた。反応溶液を室温で3時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後50mLの水を加え、120mLの酢酸エチルで4回に分けて抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、濾液を濃縮した後粗生成物化合物2-6を得た。LCMS m/z = 449.0/451.0 [M+HO+1]
【0093】
ステップ6:化合物2-7の製造
化合物2-6(1.0g、2.32mmol、粗生成物)をDMF(20mL)に溶解させ、インジウム(532mg、4.64mmol)及びヨウ化アリル(1.17g、6.96mmol)を加え、反応溶液を室温で2時間撹拌した。反応溶液に1Mの希塩酸(15mL)を加えた後、30mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-7を得た。LCMS m/z = 473.0/475.0 [M+1]
【0094】
ステップ7:化合物2-8の製造
化合物2-7(380mg、0.80mmol)、トリエチルアミン(0.33mL、2.41mmol)、トリメシチルホスフィン(31mg、0.08mmol)及びPd(dba)(74mg、0.08mmol)にDMF(8mL)を加えた。反応溶液を窒素ガスで置換した後、90℃に加熱させて3時間反応させた。反応溶液を室温に冷却させ、30mLの水を加え、100mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、水で3回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮した後カラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-8を得た。LCMS m/z = 393.0 [M+1]
【0095】
ステップ8:化合物2-9の製造
化合物2-8(100mg、0.25mmol)をアセトニトリル(6mL)及び水(1mL)に溶解させ、NaIO(136mg、0.64mmol)及びRuCl(5mg、0.02mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後、NaIO(68mg、0.32mmol)及びRuCl(3mg、0.01mmol)を加えた。室温で16時間撹拌を続けた。反応溶液を飽和チオ硫酸ナトリウム(3mL)でクエンチングさせ、反応溶液を濃縮して大部分のアセトニトリルを除去し、次に、10mLの酢酸エチル及び10mLの水に分散させ、水相を20mLの酢酸エチルで4回に分けて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮して粗生成物化合物2-9を得た。LCMS m/z = 395.0 [M+1]
【0096】
ステップ9:化合物2-10の製造
化合物2-9(78mg、0.20mmol)をエタノール(1mL)に溶解させ、反応溶液を-70℃に冷却させた後、水素化ホウ素ナトリウム(14mg、0.38mmol)を加え、添加完了後、反応溶液を-70℃で15分間撹拌した。反応溶液を希塩酸(0.5mL、0.5M)でクエンチングさせ、室温に昇温させ、3mLの水を加えた後、12mLのジクロロメタンで4回に分けて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過し、濾液を濃縮した後粗生成物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-10を得た。LCMS m/z = 397.0 [M+1]
【0097】
ステップ10:化合物2の製造
化合物2-10(80mg、0.20mmol)をDCM(5mL)に溶解させ、反応溶液を-70℃に冷却させた後、DAST(39mg、0.24mmol)を加え、添加完了後、反応溶液を-70℃で0.5時間撹拌した。反応溶液にDAST(18mg、0.12mmol)を加え、添加完了後、反応溶液を-70℃で0.5時間撹拌した。反応溶液を-70℃でメタノール(1mL)でクエンチングさせ、室温に昇温させ、反応溶液を濃縮した後SFC(1回目:カラムDAICELCHIRALPAK(登録商標)AS(250×25mm、10μm);移動相[0.1%のジエチルアミン、メタノール];B%:20%~20%。2回目:カラムDAICELCHIRALPAK(登録商標)IG(250×25mm、10μm);移動相[0.1%のジエチルアミン、メタノール];B%:30%~30)で製造して化合物2を得、保持時間:3.445分であった。保持時間は下記の分析カラムで測定した:カラム:Dr.maish Reprosil Chiral-MIC (DAICELCHIRALPAK(登録商標)IC)100×3.0mm 3μm、移動相:A:二酸化炭素B:メタノール(0.1%のジエチルアミン)、40%のB、流速:1.5mL/分、カラム温度:35℃。
【0098】
化合物2:H NMR (400 MHz, CDOD) δ = 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.54-7.46 (m, 1H), 7.45-7.44 (m, 1H), 7.38 (dd, J = 9.2, 2.4 Hz, 1H), 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.05 (dd, J = 53.2, 5.2 Hz, 1H), 2.93-2.80 (m, 1H), 2.65-2.58 (m, 1H),LCMS m/z = 399.0 [M+1]
【0099】
実施例3:化合物3-P1、化合物3-P2、化合物3-P3及び化合物3-P4の合成
【化55】
【0100】
ステップ1:化合物3-2の製造
化合物3-1(1.00g、2.64mmol)、3-メトキシプロピルアミン(470mg、5.28mmol)、p-トルエンスルホン酸(45.5mg、0.264mmol)及び硫酸マグネシウム(636mg、5.28mmol)をトルエン(10mL)に加え、反応溶液を室温で16時間撹拌した。LCMSは反応が完了したことを示した。反応混合物を減圧濃縮して化合物3-2粗生成物(2.11g)を得、直接に次のステップに使用した。LCMS m/z = 450.01 [M+1]
【0101】
ステップ2:化合物3-3の製造
化合物3-2粗生成物(1.00g)をアセトニトリル(10mL)に溶解させ、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(1.57g、4.44mmol)、無水炭酸ナトリウム(468mg、4.44mmol)を加え、室温で2時間撹拌を続けた。TLCは反応が完了したことを示した。反応混合物を1MのHCl溶液(100mL)でpH=5に調節し、室温で1時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(100mL)を加えて溶解させ、水(50mL×3)及び飽和食塩水(50mL×3)で順次に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物3-3(700mg、二段階合計収率:70.8%)を得た。LCMS m/z =397.30 [M+1]H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.05 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 8.94 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.63 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.50 - 8.39 (m, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.67 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.87 (d, J = 48.7 Hz, 1H)。
【0102】
ステップ3:化合物3-4の製造
-78℃の条件で、水素化ホウ素ナトリウム(134mg、2.54mmol)を化合物3-3(700mg、1.77mmol)のエタノール(10mL)溶液に加え、当該温度を維持させながら1時間反応させた。TLCは反応が完了したことを示した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)に注ぎ、10分間撹拌した。酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した後残余物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物3-4(540mg、收率:76.8%)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.01 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.95 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 8.48 (dd, J = 2.7, 1.7 Hz, 1H), 8.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.00 (s, 2H), 7.46 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.21 (dd, J = 49.0, 13.5 Hz, 1H), 5.87 (d, J = 3.3 Hz, 1H)。
【0103】
ステップ4:化合物3の製造
0℃で、化合物3-4(550mg、1.38mmol)を2-メチルテトラヒドロフラン(5mL)の溶液に溶解させ、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(445mg、2.76mmol)を滴下して2-メチルテトラヒドロフラン(5mL)の溶液に溶解させた。当該温度を維持して1時間撹拌を続けた。TLCは反応が完了したことを示した。反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、得られた残余物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物3(200mg、收率:36.2%)を得た。LCMS m/z = 401.01 [M+1]
【0104】
ステップ5:化合物3-P1、3-P2、3-P3及び3-P4の製造
化合物3(450mg、1.12mmol)を分取HPLC(FA系)で精製して化合物3-P1及び化合物3-P2混合物(300mg、第2流出液)、化合物3-P3及び化合物3-P4混合物(30mg、第1流出液)を得た。
【0105】
化合物3-P1及び化合物3-P2の混合物(300mg)をSFC(カラムDAICELCHIRALPAK(登録商標)ID (250×25mm、10μm));移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%の7.0mol/Lアンモニア水)];B%:0%~30%で化合物3-P1(保持時間:2.495分)及び化合物3-P2(保持時間:3.108分)を得た。保持時間は下記の分析方法で測定した:カラム:DAICELCHIRALPAK(登録商標)IB、250×25mm、10μm、移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%の7.0mol/Lアンモニア水)]、30%のB、流速:70mL/分、カラム温度:35℃。SFCで分離して化合物3-P1(80.0mg、回收率:17.8%)及び化合物3-P2粗生成物(60.0mg)を得た。化合物3-P2粗生成物を分取HPLC(FA系)で精製して化合物3-P2(49.1mg、回收率:10.9%)を得た。化合物3-P1、H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.01 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.95 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.48 (dd, J = 2.7, 1.7 Hz, 1H), 8.31 (dd, J = 8.6, 2.0 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.21 (dd, J = 49.0, 13.5 Hz, 1H), 5.80 (dd, J = 46.9, 5.9 Hz, 1H)。化合物3-P2,H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.01 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.95 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.48 (dd, J = 2.7, 1.7 Hz, 1H), 8.31 (dd, J = 8.6, 2.0 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.21 (dd, J = 49.0, 13.5 Hz, 1H), 5.80 (dd, J = 46.9, 5.9 Hz, 1H)。
【0106】
化合物3-P3及び化合物3-P4の混合物(30mg)をSFC(カラムDAICELCHIRALPAK(登録商標)IB(250×25mm、10μm));移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(含0.1%の7.0mol/Lアンモニア水)];B%:0%~30%で化合物3-P3(保持時間3.325分)及び化合物3-P4(保持時間3.544分)を得た。保持時間を下記の分析方法で測定した:カラム:DAICELCHIRALPAK(登録商標)IB、250×25mm、10μm、移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%の7.0mol/Lアンモニア水を含む)]、30%のB、流速:70mL/分、カラム温度:35℃。SFCで分離して化合物3-P3(4.44mg、回收率:0.99%)及び化合物3-P4(4.26mg、回收率:0.95%)を得た。化合物3-P3、H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.00 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.90 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.39 (dd, J = 2.6, 1.7 Hz, 1H), 8.32 (dd, J = 8.6, 1.9 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.51 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.09 (dd, J = 54.6, 4.6 Hz, 1H), 5.39 (ddd, J = 46.7, 16.7, 4.4 Hz, 1H)。化合物3-P4,H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 9.00 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.90 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 8.39 (dd, J = 2.6, 1.7 Hz, 1H), 8.32 (dd, J = 8.6, 1.9 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.51 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.09 (dd, J = 54.6, 4.6 Hz, 1H), 5.39 (ddd, J = 46.7, 16.7, 4.4 Hz, 1H)。
【0107】
実施例4:化合物4、化合物4-P1、化合物4-P2、化合物4-P3及び化合物4-P4の合成
【化56】
【0108】
ステップ1:化合物4-2の製造
化合物4-1(2.50g、6.32mmol)、3-メトキシプロピルアミン(3.70g、41.1mmol)、p-トルエンスルホン酸(109mg、0.632mmol)及び硫酸マグネシウム(1.50g、12.6mmol)をトルエン(50mL)に加えた。反応溶液を室温で、16時間攪拌した。LCMSは反応が完了したことを示した。反応混合物を減圧濃縮して化合物4-2粗生成物(7.70g)を得、直接に次のステップに使用した。LCMS m/z = 467.0 [M+1]
【0109】
ステップ2:化合物4-3の製造
化合物4-2粗生成物(7.70g)をアセトニトリル(100mL)で溶解させ、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(7.50g、21.4mmol)及び炭酸ナトリウム(2.27g、21.4mmol)を加えた。反応溶液を室温で、1時間攪拌した。LCMSは反応が完了したことを示した。反応溶液を1Nの塩酸溶液(100mL)に注ぎ、室温で10分間撹拌した。酢酸エチル(100mL×3)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮し、得られた残余物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物4-3(1.50g、二段階収率:57.4%)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 8.55 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.24 (s, 1H), 7.90 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.84 - 7.78 (m, 1H), 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.54 (d, J = 49.9 Hz, 1H)。
【0110】
ステップ3:化合物4-4の製造
化合物4-3(1.00g、2.42mmol)をエタノール(20mL)に溶解させた。-78℃の条件下で、水素化ホウ素ナトリウム(184mg、4.84mmol)を加えた。当該温度を維持して1時間反応を続けた。TLCは反応が完了したことを示した。反応溶液を飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)に注ぎ、10分間撹拌した。酢酸エチル(50mL×3)抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮し、得られた残余物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物4-4(670mg、収率:66.7%)を得た。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 8.12 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.52 (s, 1H), 7.50 - 7.44 (m, 2H), 6.08 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 5.51 - 5.27 (m, 2H)。
【0111】
ステップ4:化合物4の製造
0℃で、化合物4-4(900mg、2.16mmol)を2-メチルテトラヒドロフラン(20mL)の溶液に溶解させ、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(720mg、4.32mmol)を滴下して2-メチルテトラヒドロフラン(10mL)の溶液に溶解させた。当該温度を維持して1時間撹拌を続けた。TLCは反応が完了したことを示した。反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL×3)抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製して化合物4(350mg、収率:38.8%)を得た。
【0112】
ステップ5:化合物4-P1、4-P2、4-P3及び4-P4の製造
化合物4(350mg、0.839mmol)を分取SFC(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標)IB(250×25mm、10μm));移動相[A:二酸化炭素、B:MeOH(0.1%のジエチルアミンを含む)];B%:30%~30%で化合物4-P1(保持時間:2.217分)、化合物4-P2及び化合物4-P3の混合物、及び化合物4-P4(保持時間:2.604分)を得た。保持時間を下記の分析方法で測定した:カラム:DAICEL CHIRALPAK(登録商標)IB 100×3.0mm、3μm、移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%のジエチルアミンを含む)]、40%のB、流速:1.5mL/分、カラム温度:35℃。
【0113】
化合物4-P2及び化合物4-P3の混合物を分取SFC(カラムDAICELCHIRALCEL(登録商標)OJ(250×25mm、10μm));移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%のジエチルアミンを含む)];B%:30%~30%)で製造して化合物4-P2(保持時間:2.443分)及び化合物4-P3(保持時間:2.537分)を得た。保持時間を下記の分析方法で測定した:カラム:DAICEL CHIRALPAK(登録商標)IB 100×3.0mm、3μm、移動相[A:二酸化炭素、B:メタノール(0.1%のジエチルアミンを含む)]、40%のB、流速:1.5mL/分、カラム温度:35℃。
化合物4-P1(7.32mg、回收率:2.09%),H NMR (400 MHz, MeOD) δ = 8.02 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.52 - 7.48 (m, 1H), 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.37 (dt, J = 9.5, 2.3 Hz, 1H), 6.36 (ddd, J = 54.5, 10.2, 5.1 Hz, 1H), 5.47 (ddd, J = 50.7, 17.9, 5.1 Hz, 1H)。化合物4-P2(4.88mg、回收率:1.39%),H NMR (400 MHz, MeOD) δ = 8.02 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.52 - 7.48 (m, 1H), 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.37 (dt, J = 9.5, 2.3 Hz, 1H), 6.36 (ddd, J = 54.5, 10.2, 5.1 Hz, 1H), 5.47 (ddd, J = 50.7, 17.9, 5.1 Hz, 1H)。化合物4-P3(117mg、回收率:33.4%),H NMR (400 MHz, MeOD) δ = 8.06 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 7.57 - 7.51 (m, 2H), 7.45 (dt, J = 9.3, 2.3 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.04 (dd, J = 49.4, 13.3 Hz, 1H), 5.63 (dd, J = 47.5, 5.8 Hz, 1H)。化合物4-P4(119mg、回收率:34.0%),H NMR (400 MHz, MeOD) δ = 8.06 (dd, J = 8.5, 2.0 Hz, 1H), 7.57 - 7.51 (m, 2H), 7.45 (dt, J = 9.3, 2.3 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.04 (dd, J = 49.4, 13.3 Hz, 1H), 5.63 (dd, J = 47.5, 5.8 Hz, 1H)。
【0114】
実験例1:ルシフェラーゼ実験
市販のレンチウイルスで感染させることによってATCCから購入した786-O(ATCC(登録商標)CRL-1932TM)細胞で786-O-HRE-Luc細胞を得た。適切な786-O-HRE-Luc単一細胞クローンをスクリーニングし、増殖させ、その後のルシフェラーゼ実験に使用した。ルシフェラーゼ実験では、薬物を溶解させた100×DMSOストック溶液を実験培地(2%のFBSを含むRPMI-1640;FBS:10099141C、Gibco;RPMI-1640:12440053、Gibco)で10×化合物の勾配希釈液に調製し、20μLの10×化合物希釈液を透明な平底96ウェルプレート(3599、Corning)に加えた。次に、180μLの培地における約100000個の786-O-HRE-Luc細胞を上記の96ウェルプレートに接種した。各ウェルにおけるDMSO(D2650、Sigma)の最終濃度は0.1%であった。インキュベーターで約24時間培養した後、メーカーの推奨方法に従って、Dual-Luciferase(登録商標) Reporter Assay System(E1960、Promega)試薬でルシフェラーゼ活性を測定した。投与量-反応-阻害(4パラメーター)などの式を使用してGraphPadPrismソフトウェアでEC50値を計算した。実験結果は表1に示された通りである。
【0115】
【表1】

表1の実験結果から分かるように、本発明の化合物は優れた体外活性を有し、HIF応答エレメント(HRE)依存性ルシフェラーゼの発現レベルを阻害できる。
【0116】
実験例2:VEGF ELISA実験
薬物を溶解させた100×DMSOストック溶液を実験培地(2%のFBSを含むRPMI-1640;FBS:10099141C、Gibco;RPMI-1640:12440053、Gibco)で10×化合物の勾配希釈液に調製し、20μLの10×化合物希釈液を透明な平底96ウェルプレート(3599、Corning)に加えた。次に、180μLの培地における約40000個の786-O細胞(ATCC(登録商標)CRL-1932TM)を上記の96ウェルプレートに接種した。ウェルあたりにおけるDMSO(D2650、Sigma)の最終濃度は0.1%であった。インキュベーターで約48時間培養した後、ウェルあたり100μLの上部培地を吸引し、96ウェルプレート(3799、Corning)に加えた。ELISAキット(DY293B、R&D Systems)を使用して、マイクロプレートリーダーで各ウェルの450nMでのOD値に従ってVEGF濃度を決定した。投与量-反応-阻害(4パラメーター)などの式を使用してGraphPadPrismソフトウェアでEC50値を計算した。実験結果は表2に示された通りである。
【0117】
【表2】


表2の実験結果から分かるように、本発明の化合物は、有意なVEGF発現を阻害する活性を有している。
【0118】
実験例3:薬物動態試験
1.実験目的:
【0119】
SDラットを試験動物として使用し、化合物3-P3と比較例PT2385を胃内投与し、LC-MS/MS法で異なる時間における血漿中の薬物濃度をを測定して、ラット体内における本発明の化合物と比較例化合物の薬物動態特徴を研究することである。
【0120】
2.実験スキーム
2.1 実験医薬と動物
実験医薬:化合物3-P3と比較例PT2385;
動物:SDラット、オス、200~220g、Shanghai Jiesijie Laboratory Animal Co.,Ltd.、から購入した。
【0121】
2.2 薬物の製造
適量の化合物3-P3を秤量し、適量の10%のエタノール+30%のポリエチレングリコール400+60%(0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム+0.5%のTween80)を加え、ボルテックスし、超音波して1mg/mLの懸濁液を製造した。適量の化合物3-P3を秤量し、適量の10%のエタノール+30%のポリエチレングリコール400+60%(0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム+0.5%のTween80)を加え、ボルテックスし、超音波で0.5mg/mLの懸濁液を製造した。
【0122】
2.3 投与
各試験化合物の胃内投与群(3匹/群)のSDラットを一晩絶食させた後、胃内投与(PO、投与量:10mg/kg又は5mg/kg、投与体積:10mL/kg)し、投与4時間後摂食させた。
【0123】
3.操作
投与前と投与後の0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間に0.2mLの血液を頸静脈から採取し、ヘパリンナトリウムで抗凝固処理した。血液試料を収集した後氷上に置き、遠心分離により血漿(遠心分離条件:1500g、10分)を分離した。収集した血漿は分析前に-40~-20℃に保存した。
LC-MS/MSで胃内投与後のラット血漿における試験化合物の含有量を測定した。
【0124】
4.薬物動態パラメータの結果
本発明の化合物3-P3と比較例PT2385の薬物動態パラメータは表3に示される通りである。
【表3】

【0125】
結論:化合物3-P3は比較例PT2385と比較して、血中薬物濃度及び曲線下の面積はいずれも有意な改善された。
【0126】
本発明で言及されるすべての文書は各文書が個別に参照文献として引用されているように、本出願において参照文献として引用される。更に、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更又は修正を加えることができ、これらの等価な形態も添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内に含まれることを理解されたい。
【国際調査報告】