(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/24 20060101AFI20240220BHJP
B64G 1/10 20060101ALI20240220BHJP
B64G 1/42 20060101ALI20240220BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B64G1/24 200
B64G1/10 328
B64G1/42 300
B64G1/66 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550562
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2021103428
(87)【国際公開番号】W WO2023272559
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523315289
【氏名又は名称】中国科学院微小衛星創新研究院
(71)【出願人】
【識別番号】523315290
【氏名又は名称】上海微小衛星工程中心
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 龍飛
(72)【発明者】
【氏名】尹 増山
(72)【発明者】
【氏名】劉 国華
(72)【発明者】
【氏名】胡 登輝
(72)【発明者】
【氏名】董 沢迎
(72)【発明者】
【氏名】顧 文娟
(72)【発明者】
【氏名】高 爽
(72)【発明者】
【氏名】万 志強
(72)【発明者】
【氏名】劉 洋
(57)【要約】
本発明によれば、中軌道楕円軌道で全地球炭素インベントリ衛星が動作し、かつ、全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置するように構成された北半球長期常駐ユニットを含む全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中軌道楕円軌道で全地球炭素インベントリ衛星が動作し、かつ、全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置するように構成された北半球長期常駐ユニットを含む、
ことを特徴とする全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項2】
遠地点が人間活動密集地域の緯度の上空に凍結される凍結軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように特別な軌道傾斜角を設定するように構成された凍結軌道ユニットと、
太陽同期軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作することで全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに常に光照射領域に位置するように同期パラメータを設定するように構成された太陽同期軌道ユニットと、
前の回帰周期と一致する観測条件が得られるように回帰軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように構成された回帰軌道ユニットと、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項3】
前記人間活動密集地域の緯度は、北緯20°~北緯45°であり、
前記同期パラメータは、軌道傾斜角、軌道半長軸及び軌道偏心率を含み、
前記観測条件は、観測点の衛星仰角及び太陽高度角を含み、
全地球炭素インベントリ衛星の軌道パラメータは、
近地点軌道高度の範囲350km~1000km、遠地点軌道高度の範囲6800km~8300km、近地点振幅角の範囲215°~235°を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項4】
臨界傾斜角の大きさに基づいて、中軌道楕円軌道を順行楕円凍結軌道と逆行楕円凍結軌道とに区分し、順行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は63.4°であり、逆行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は116.565°であり、
太陽同期軌道昇交点が1日あたり約0.9856°東に進むという要求に基づいて、全地球炭素インベントリ衛星の軌道傾斜角を116.565°に選択する、
ことを特徴とする請求項3に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項5】
太陽同期軌道昇交点の値、軌道傾斜角の値、第1関数及び第2関数に基づいて、近地点軌道高度と遠地点軌道高度との関係を取得し、
第1関数は、軌道半長軸と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表し、
第2関数は、軌道偏心率と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表す、
ことを特徴とする請求項4に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項6】
軌道面の歳差運動角速度は、
【数1】
であり、
ここで、R
eは、地球の半径であり、aは、軌道半長軸であり、eは、軌道偏心率であり、iは、軌道傾斜角であり、
太陽同期軌道昇交点の値は、次の条件を満たし、
【数2】
ここで、軌道傾斜角は116.565°であり、
第1関数は、
【数3】
であり、
第2関数は、
【数4】
であり、
ここで、h
pは、近地点軌道高度であり、h
aは、遠地点軌道高度であり、R
Eは地球の半径であり、
近地点軌道高度h
pと、遠地点軌道高度h
aの組み合わせ方程式が得られるように軌道傾斜角、第1関数及び第2関数を代入し、
組み合わせ方程式に基づいて軌道高度関係曲線が得られる、
ことを特徴とする請求項5に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項7】
前記回帰軌道は、一つの回帰周期を経た後に、衛星直下点軌跡が前の回帰周期の衛星直下点軌跡と重なり合い、
D*・2π=N・Δλ
ここで、Nは、一つの回帰周期で衛星が地球の周りを飛行する軌道数であり、D*は、回帰周期での昇交日数であり、Δλは、横変位角であり、
近地点軌道高度と遠地点軌道高度を同期的に調整し、太陽同期軌道拘束を保証すると同時に、回帰軌道が得られるように軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度をマッチングして設計し、
Q値に基づいて軌道高度関係曲線上の点を選択し、近地点軌道高度350km~1000km、遠地点軌道高度6800km~8300km、軌道傾斜角116.565°の中軌道楕円軌道の範囲内で回帰軌道のパラメータを繰り返し計算する、
ことを特徴とする請求項6に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項8】
近地点振幅角を調整することにより、北半球をより長時間で観測するために北半球の人間活動密集地域での全地球炭素インベントリ衛星の通過時間がより長くなるように全地球炭素インベントリ衛星の遠地点を北半球の特定の緯度の上空に設定し、
近地点振幅角と遠地点緯度との正比例関係に基づいて、近地点振幅角を特定し、遠地点位置として北緯35°を選択し、全地球炭素インベントリ衛星の近地点振幅角を220°に選択する、
ことを特徴とする請求項7に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項9】
全地球炭素インベントリ衛星の動作特性によれば、全地球炭素インベントリ衛星負荷の動作アークは北半球の遠地点にあるため、光照射領域での衛星の飛行方向は軌道上昇であり、それにより、以下が実現され、
衛星は、地球の陰影領域において太陽による光照射がなく、バッテリ電力を消費し、光照射領域に入った後に南半球に位置し、観測ミッションを行うと同時にソーラーアレイが充電され、北半球での長時間観測のために準備し、
衛星が光照射領域に入った後、外部の熱流は温度平衡に達し、衛星は、赤外線チャネルのデータ品質を向上させるために北半球での集中観測の前に安定した熱平衡状態に達する、
ことを特徴とする請求項8に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【請求項10】
衛星が異なる緯度に位置するとき、衛星直下点は変化し、対応する太陽仰角はそれに応じて変化し、
降交点地方時が0時である場合、異なる緯度の衛星直下点地方時曲線がプロットされ、横軸は緯度であり、南緯は負であり、北緯は正であり、左から右は一回の軌道上昇プロセスであり、縦軸は衛星直下点地方時であり、
衛星が南緯に位置するとき、地方時は午後であり、赤道を横切るときに地方時は正午12時であり、北半球で観測するときに地方時は午前であり、典型的な軌道では遠地点の北緯35°付近の地方時は約午前10:45であり、
実際、必要に応じて昇交点赤経を平行移動させる場合、地方時はそれに応じて平行移動し、調整方法は、昇交点赤経が15°増加するごとに、対応する衛星直下点地方時が1時間増加することである、
ことを特徴とする請求項5に記載の全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素排出の技術分野に関し、特に全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素排出の定量的監視と評価は、温室効果ガス排出削減を実現するための重要な基盤である。大気中の二酸化炭素濃度の変化は、人為的な炭素排出と炭素吸収の二重の情報を反映することができる。世界中の国々は、全地球炭素インベントリチェックの重要なニーズを満たすために、宇宙ベースの温室効果ガス監視システムの開発を競っている。現在、人為的な炭素排出の監視にはより高い要求が提唱されており、全地球の人間活動密集地域に対して適時性の高い炭素監視を行う必要がある。
【0003】
現在、炭素監視衛星は、主に低軌道太陽同期軌道を採用している。そのような衛星は、全地球カバレッジを実現することができるが、軌道位置が低く、幅が限られており、対象の再訪周期が長い。全地球カバレッジは、比較的均一であり、重要な人間活動密集地域を暗号化して観測することは不可能であり、全地球炭素インベントリによって必要とされる人間活動密集地域の高精度かつ適時性の高い監視を実現することは不可能である。また、高軌道炭素監視衛星は、地球同期静止軌道を採用しており、ある領域の上空に固定されるが、単一の星は全地球カバレッジを実現できず、全地球カバレッジ機能を具備せず、固定位置を中心として、経度、緯度スパン±50°範囲内でしか観測できない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、従来の単一炭素監視衛星の軌道設計では全地球炭素インベントリの高精度かつ適時性の高い監視を実現することが困難であるという問題を解決するために、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムを提供することにある。
【0005】
上記技術的問題を解決するために、本発明によれば、中軌道楕円軌道で全地球炭素インベントリ衛星が動作し、かつ、全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置するように構成された北半球長期常駐ユニットを含む全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムが提供される。
【0006】
任意選択的に、遠地点が人間活動密集地域の緯度の上空に凍結される凍結軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように特別な軌道傾斜角を設定するように構成された凍結軌道ユニットと、
太陽同期軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作することで全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに常に光照射領域に位置するように同期パラメータを設定するように構成された太陽同期軌道ユニットと、
前の回帰周期と一致する観測条件が得られるように回帰軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように構成された回帰軌道ユニットと、をさらに含む。
【0007】
任意選択的に、前記人間活動密集地域の緯度は、北緯20°~北緯45°であり、
前記同期パラメータは、軌道傾斜角、軌道半長軸及び軌道偏心率を含み、
前記観測条件は、観測点の衛星仰角及び太陽高度角を含み、
全地球炭素インベントリ衛星の軌道パラメータは、
近地点軌道高度の範囲350km~1000km、遠地点軌道高度の範囲6800km~8300km、近地点振幅角の範囲215°~235°を含む。
【0008】
任意選択的に、臨界傾斜角の大きさに基づいて、中軌道楕円軌道を順行楕円凍結軌道と逆行楕円凍結軌道とに区分し、順行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は63.4°であり、逆行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は116.565°であり、
太陽同期軌道昇交点が1日あたり約0.9856°東に進むという要求に基づいて、全地球炭素インベントリ衛星の軌道傾斜角を116.565°に選択する。
【0009】
任意選択的に、太陽同期軌道昇交点の値、軌道傾斜角の値、第1関数及び第2関数に基づいて、近地点軌道高度と遠地点軌道高度との関係を取得し、
第1関数は、軌道半長軸と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表し、
第2関数は、軌道偏心率と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表す。
【0010】
任意選択的に、軌道面の歳差運動角速度は、
【数1】
であり、
ここで、R
eは、地球の半径であり、aは、軌道半長軸であり、eは、軌道偏心率であり、iは、軌道傾斜角であり、太陽同期軌道昇交点の値は、次の条件を満たし、
【数2】
ここで、軌道傾斜角は116.565°であり、
第1関数は、
【数3】
であり、
第2関数は、
【数4】
であり、
ここで、h
pは、近地点軌道高度であり、h
aは、遠地点軌道高度であり、R
Eは地球の半径であり、
近地点軌道高度h
pと、遠地点軌道高度h
aの組み合わせ方程式が得られるように軌道傾斜角、第1関数及び第2関数を代入し、
組み合わせ方程式に基づいて軌道高度関係曲線が得られる。
【0011】
任意選択的に、前記回帰軌道は、一つの回帰周期を経た後に、衛星直下点軌跡が前の回帰周期の衛星直下点軌跡と重なり合い、
D*・2π=N・Δλ
ここで、Nは、一つの回帰周期で衛星が地球の周りを飛行する軌道数であり、D*は、回帰周期での昇交日数であり、Δλは、横変位角であり、
近地点軌道高度と遠地点軌道高度を同期的に調整し、太陽同期軌道拘束を保証すると同時に、回帰軌道が得られるように軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度をマッチングして設計し、
Q値に基づいて軌道高度関係曲線上の点を選択し、近地点軌道高度350km~1000km、遠地点軌道高度6800km~8300km、軌道傾斜角116.565°の中軌道楕円軌道の範囲内で回帰軌道のパラメータを繰り返し計算する。
【0012】
任意選択的に、近地点振幅角を調整することにより、北半球をより長時間で観測するために北半球の人間活動密集地域での全地球炭素インベントリ衛星の通過時間がより長くなるように全地球炭素インベントリ衛星の遠地点を北半球の特定の緯度の上空に設定し、
近地点振幅角と遠地点緯度との正比例関係に基づいて、近地点振幅角を特定し、遠地点位置として北緯35°を選択し、全地球炭素インベントリ衛星の近地点振幅角を220°に選択する。
【0013】
任意選択的に、全地球炭素インベントリ衛星の動作特性によれば、全地球炭素インベントリ衛星負荷の動作アークは北半球の遠地点にあるため、光照射領域での衛星の飛行方向は軌道上昇であり、それにより、以下が実現され、
衛星は、地球の陰影領域において太陽による光照射がなく、バッテリ電力を消費し、光照射領域に入った後に南半球に位置し、観測ミッションを行うと同時にソーラーアレイが充電され、北半球での長時間観測のために準備し、
衛星が光照射領域に入った後、外部の熱流は温度平衡に達し、衛星は、赤外線チャネルのデータ品質を向上させるために北半球での集中観測の前に安定した熱平衡状態に達する。
【0014】
任意選択的に、衛星が異なる緯度に位置するとき、衛星直下点は変化し、対応する太陽仰角はそれに応じて変化し、
降交点地方時が0時である場合、異なる緯度の衛星直下点地方時曲線がプロットされ、横軸は緯度であり、南緯は負であり、北緯は正であり、左から右は一回の軌道上昇プロセスであり、縦軸は衛星直下点地方時であり、
衛星が南緯に位置するとき、地方時は午後であり、赤道を横切るときに地方時は正午12時であり、北半球で観測するときに地方時は午前であり、典型的な軌道では遠地点の北緯35°付近の地方時は約午前10:45であり、
実際、必要に応じて昇交点赤経を平行移動させる場合、地方時はそれに応じて平行移動し、調整方法は、昇交点赤経が15°増加するごとに、対応する衛星直下点地方時が1時間増加することである。
【0015】
本発明に係る全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムにおいて、全地球炭素インベントリ衛星は、中軌道楕円軌道で動作し、遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置する。遠地点の高度が高く、かつ、遠地点付近での飛行速度が遅いため、全地球炭素インベントリ衛星は、北緯の人間活動密集地域(アジア、北米、ヨーロッパを含む)に対する長時間の常駐観察を実現することができる。
【0016】
本発明の全地球炭素インベントリ衛星の遠地点は、人間活動密集地域の緯度の上空に凍結されており、北半球に対する観測時間長の最大化を保証することができる。遠地点に位置するときに常に光照射領域に位置するため、観察する光照射条件が相対的に一致することが保証され、高精度の二酸化炭素カラム濃度の逆解析を実現するのに有利である。
【0017】
本発明は、結合設計により、軌道の近地点、遠地点高度を同期的に調整し、軌道の太陽同期特性を保証すると同時に、軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度などをマッチングして設計し、回帰軌道を探求する。軌道の回帰特性は、地上軌道の周期的な再現性を保証することができるため、観測点の衛星仰角や太陽の高度角などの一致した観測条件が得られ、衛星作業モードの設計を簡素化するのに有利である。
【0018】
本発明の全地球炭素インベントリ衛星は、中軌道楕円凍結太陽同期回帰軌道で動作し、全地球カバレッジ、軌道位置が高く、幅が大きく、対象の再訪周期が短いことを実現することができ、通過中に重要な人間活動密集地域に対する高い時間周波数走査暗号化観測を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例における全地球炭素インベントリ衛星の軌道を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施例における全地球炭素インベントリ衛星の楕円凍結太陽同期軌道の近地点と遠地点との対応関係を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施例における全地球炭素インベントリ衛星の楕円凍結太陽同期回帰軌道の衛星直下点軌跡を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施例における全地球炭素インベントリ衛星の近地点振幅角と遠地点緯度との対応関係を示す概略図である。
【
図5】本発明の一実施例における全地球炭素インベントリ衛星の異なる緯度における衛星直下点地方時の差の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、各実施例は、本発明の手段を説明するためのものであり、限定的なものとして理解されるべきではない。
【0021】
ここでは、本発明の範囲内において、「同じ」、「相等しい」、「等しい」などの言葉は、二つの数値が絶対的に等しいことを意味するのではなく、一定の合理的な誤差を許容すること、すなわち、前記言葉は「基本的に同じ」、「基本的に相等しい」、「基本的に等しい」もカバーすることに留意すべきである。
【0022】
また、本発明の各方法のステップ番号は、当該方法のステップが実行される順序を制限するものではない。特に断りのない限り、各方法のステップは異なる順序で実行することができる。
【0023】
以下では、図面及び具体的な実施例と併せて本発明に係る全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムについてさらに説明する。以下の説明及び特許請求の範囲によれば、本発明の利点及び特徴はより明確になる。なお、図面は、いずれも非常に簡素化された形態を採用しており、かつ、いずれも不正確な比率を用いており、本発明の実施例を便利、明確に補助説明する目的にのみ用いられる。
【0024】
本発明の目的は、従来の単一炭素監視衛星の軌道設計では全地球炭素インベントリの高精度かつ適時性の高い監視を実現することが困難であるという問題を解決するために、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムを提供することにある。
【0025】
上記目的を実現するために、本発明によれば、中軌道楕円軌道で全地球炭素インベントリ衛星が動作し、かつ、全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置するように構成された北半球長期常駐ユニットと、遠地点が人間活動密集地域の緯度の上空に凍結される凍結軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように特別な軌道傾斜角を設定するように構成された凍結軌道ユニットと、太陽同期軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作することで全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに常に光照射領域に位置するように同期パラメータを設定するように構成された太陽同期軌道ユニットと、を含む全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムが提供される。
【0026】
本発明の実施例によれば、中軌道楕円軌道で全地球炭素インベントリ衛星が動作し、かつ、全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置するように構成された北半球長期常駐ユニットを含む全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムが提供される。通常の低軌道太陽同期軌道は一般に円軌道を採用しており、軌道高度は500km~1000kmであり、飛行速度は7.3km/s~7.6km/sであり、対応する衛星直下点の対地速度は6.4km/s~7.1km/sである。飛行高度が低く、速度が速いため、地上の特定地域への通過時間が短く、広範囲に亘る走査監視はできない。本実施例における全地球炭素インベントリ衛星は、中軌道楕円軌道で動作し、遠地点高度が高く、かつ、遠地点付近での飛行速度が遅いため、遠地点を特定の緯度(北緯30°など)の上空に設定することにより、北緯の人間活動密集地域(アジア、北米、欧州を含む)の長時間常駐観測を実現することができる。
【0027】
本発明の一実施例において、前記全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムは、遠地点が人間活動密集地域の緯度の上空に凍結される凍結軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように特別な軌道傾斜角を設定するように構成された凍結軌道ユニットをさらに含む。一般に、楕円軌道の近地点振幅角は時間とともに変化し、すなわち、歳差運動が発生し、近地点及び遠地点の緯度が不断に変化することになり、陸地及び人口が集中する北半球地域の長時間常駐観測を保証することはできない。本発明に係る炭素インベントリ軌道は、特別な傾斜角設計を採用することで、遠地点が北半球の上空に凍結されるようにし、北半球に対する観測時間長の最大化を保証することができる。
【0028】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムは、太陽同期軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作することで全地球炭素インベントリ衛星が遠地点に動作するときに常に光照射領域に位置するように同期パラメータを設定するように構成された太陽同期軌道ユニットをさらに含む。軌道傾斜角、軌道半長軸、偏心率の共同設計により、軌道面の昇交点赤経(RAAN)の歳差運動速度が1日あたり約0.98°東に歳差運動するようにし、太陽に対する同期「追跡」が実現される。当該軌道は、遠地点が常に光照射領域に位置し、かつ、異なる軌道数で通過する地域の地方時が一致する(一軌道内の衛星直下点地方時に小さな変化があることに注意されたい)ことを保証することができるため、観測する光照射条件が相対的に一致することが保証され、高精度の二酸化炭素カラム濃度の逆解析を実現するのに有利である。
【0029】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムは、前の回帰周期と一致する観測条件が得られるように回帰軌道で全地球炭素インベントリ衛星がさらに動作するように構成された回帰軌道ユニットと、をさらに含む。結合設計により、軌道の近地点、遠地点高度を同期的に調整し、軌道の太陽同期特性を保証すると同時に、軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度などをマッチングして設計し、回帰軌道を探求する。軌道の回帰特性は、地上軌道の周期的な再現性を保証することができるため、観測点の衛星仰角や太陽の高度角などの一致した観測条件が得られ、衛星作業モードの設計を簡素化するのに有利である。
【0030】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、前記人間活動密集地域の緯度は、北緯20°~北緯45°であり、前記同期パラメータは、軌道傾斜角、軌道半長軸及び軌道偏心率を含み、前記観測条件は、観測点の衛星仰角及び太陽高度角を含み、全地球炭素インベントリ衛星の軌道パラメータは、近地点軌道高度の範囲350km~1000km、遠地点軌道高度の範囲6800km~8300km、近地点振幅角の範囲215°~235°を含み、軌道周期は3hである。
【0031】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、楕円凍結軌道傾斜角は、以下のように選択される。地球の偏平率の影響を受け、楕円軌道のアーチ点は時間とともに歳差運動し、軌道傾斜角が特定の条件を満たす場合、アーチ点の歳差運動率を0にすることができ、すなわち、軌道アーチ点の「凍結」が実現されることが知られている。そのような軌道は凍結軌道と呼ばれ、対応する傾斜角は臨界傾斜角である。臨界軌道の大きさに基づいて、中軌道楕円軌道を順行楕円凍結軌道と逆行楕円凍結軌道とに区分し、順行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は63.4°であり、逆行楕円凍結軌道の軌道傾斜角は116.565°である。昇交点の歳差運動状況を考慮して、順行軌道昇交点は1日あたり一定の角度西に歳差運動し、逆行軌道昇交点は1日あたり一定の角度東に歳差運動するが、太陽同期では昇交点が1日あたり約0.9856°東に進むことが要求されるため、太陽同期軌道昇交点の要求に基づいて、全地球炭素インベントリ衛星の軌道傾斜角は116.565°と特定される。
【0032】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、太陽同期軌道昇交点の値、軌道傾斜角の値、第1関数及び第2関数に基づいて、近地点軌道高度と遠地点軌道高度との関係を取得し、第1関数は、軌道半長軸と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表し、第2関数は、軌道偏心率と近地点軌道高度及び遠地点軌道高度との関係を表す。
【0033】
本発明の一実施例において、全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、楕円軌道の凍結特性により軌道傾斜角が拘束されており、特定の軌道傾斜角条件下で、軌道半長軸と軌道偏心率の共同設計が必要となる。地球の非球面重力摂動の影響により、衛星の軌道面は常に慣性空間で不断に歳差運動しており、調和項J
2項による長期摂動のみを考慮して、軌道面の歳差運動角速度は、
【数5】
である。
ここで、R
eは、地球の半径であり、aは、軌道半長軸であり、
eは、軌道偏心率であり、iは、軌道傾斜角である。
【0034】
太陽同期軌道昇交点の値は、次の条件を満たす。
ここで、軌道傾斜角は116.565°である。
【0035】
第1関数は、
【数7】
である。
第2関数は、
【数8】
である。
ここで、h
pは、近地点軌道高度であり、h
aは、遠地点軌道高度であり、R
Eは地球の半径である。
【0036】
近地点軌道高度h
pと遠地点軌道高度h
aの組み合わせ方程式が得られるように軌道傾斜角、第1関数及び第2関数を代入する。
図2に示すように、組み合わせ方程式に基づいて軌道高度関係曲線が得られる。350km~1000kmの近地点高度範囲h
pを横断することで、対応する遠地点軌道高度をそれぞれ得ることができ、両者の関係は
図2に示される。これは楕円凍結太陽同期軌道の設計基準であり、近地点高度が高いほど遠地点高度が低くなることがわかる。
【0037】
回帰軌道の設計は、地球リモートセンシング衛星で一般的であり、当該軌道の衛星直下点軌跡は周期的に重なり合うため、通過中の衛星仰角条件が一致することを保証することができる。軌道の太陽同期特性により、一致した観測光照射角度を実現することができ、衛星の動作モードの設計を簡素化することができる。本発明の一実施例において、前記全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、衛星直下点軌跡は、衛星飛行、軌道面歳差運動、地球自転の三つの運動の合成である。回帰軌道は、一つの回帰周期を経た後に、衛星直下点軌跡が前の回帰周期の衛星直下点軌跡と重なり合う。
D*・2π=N・Δλ
ここで、Nは、一つの回帰周期で衛星が地球の周りを飛行する軌道数であり、D*は、回帰周期での昇交日数であり、Δλは、赤道における連続した、隣接する軌跡の経度間隔、すなわち横変位角である。近地点軌道高度と遠地点軌道高度を同期的に調整し、太陽同期軌道拘束を保証すると同時に、回帰軌道が得られるように軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度をマッチングして設計する。
【0038】
Q値に基づいて軌道高度関係曲線上の点を選択し、近地点軌道高度350km~1000km、遠地点軌道高度6800km~8300km、軌道傾斜角116.565°の中軌道楕円軌道の範囲内で回帰軌道のパラメータを繰り返し計算する。分析を経て、当該範囲内で楕円+凍結+太陽同期+回帰特性を満たす軌道は合計14組あり、表1に示される。
【0039】
【0040】
表中の第8組の軌道を回帰周期が5日である典型的な炭素インベントリ軌道として選択し、5日以上の衛星直下点軌跡は
図3に示される。
【0041】
本発明の一実施例において、前記全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、近地点振幅角の調整は、軌道周期及び軌道面の歳差運動速度に影響を及ぼすことがないため、軌道の太陽同期特性及び回帰特性に影響を及ぼすことはない。近地点振幅角を調整することにより、北半球をより長時間で観測するために北半球の人間活動密集地域での全地球炭素インベントリ衛星の通過時間がより長くなるように全地球炭素インベントリ衛星の遠地点を北半球の特定の緯度の上空に設定する。近地点高度818.15km、遠地点高度7199.32の5日間回帰楕円凍結太陽同期軌道を例として、異なる近地点振幅角に対応する遠地点緯度は
図4に示される。
図4からわかるように、近地点振幅角が大きいほど、対応する遠地点緯度が高くなる。中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本、インドなどの主要国の緯度分布を総合的に考慮し、遠地点位置として北緯35°を選択することで、これらの主要国に対する長時間常駐観測を実現することができる。したがって、全地球炭素インベントリ衛星の近地点振幅角を220°に選択する。
【0042】
本発明の一実施例において、前記全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、全地球炭素インベントリ衛星の動作特性によれば、全地球炭素インベントリ衛星負荷の動作アークは北半球の遠地点にあるため、光照射領域での衛星の飛行方向は軌道上昇(南から北へ飛行)であり、それにより、以下が実現される。
【0043】
衛星は、地球の陰影領域において太陽による光照射がなく、バッテリ電力を消費し、光照射領域に入った後に南半球に位置し、観測ミッションを行うと同時にソーラーアレイが充電され、北半球での長時間観測のために準備する。
【0044】
衛星が光照射領域に入った後、外部の熱流は変化し、温度平衡に達するまでに時間がかかる。光照射領域の軌道上昇により、衛星は、赤外線チャネルのデータ品質を向上させるために北半球での集中観測の前に安定した熱平衡状態に達することを保証することができる。
【0045】
任意選択的に、前記全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムにおいて、衛星が異なる緯度に位置するとき、衛星直下点は変化し、対応する太陽仰角はそれに応じて変化する。
【0046】
降交点地方時が0時である場合、異なる緯度の衛星直下点地方時曲線がプロットされる。
図5に示すように、横軸は緯度であり、南緯は負であり、北緯は正であり、左から右は一回の軌道上昇プロセスであり、縦軸は衛星直下点地方時(24h制)である。
【0047】
衛星が南緯に位置するとき、地方時は午後であり、赤道を横切るときに地方時は正午12時であり、北半球で観測するときに地方時は午前である。典型的な軌道では遠地点の北緯35°付近の地方時は約午前10:45である。
【0048】
実際、必要に応じて昇交点赤経を平行移動させる場合、地方時はそれに応じて平行移動する。調整方法は、昇交点赤経が15°増加するごとに、対応する衛星直下点地方時が1時間増加することである。
【0049】
上記の設計ステップを経て、全地球炭素インベントリに適した一組の衛星軌道設計結果が得られ、それらの軌道パラメータと軌道特性は表2に示される。
【0050】
表2 炭素インベントリに適した衛星軌道設計
【表2】
【0051】
軌道の再訪及びカバレッジ能力を分析し、低軌道太陽同期軌道衛星及び地球同期静止軌道衛星と比較して、本発明に係る全地球炭素インベントリ衛星の軌道設計システムでは、全地球炭素インベントリ衛星は、中軌道楕円軌道で動作し、遠地点に動作するときに人間活動密集地域の緯度の上空に位置する。遠地点の高度が高く、かつ、遠地点付近での飛行速度が遅いため、全地球炭素インベントリ衛星は、北緯の人間活動密集地域(アジア、北米、ヨーロッパを含む)に対する長時間の常駐観察を実現することができる。
【0052】
本発明の全地球炭素インベントリ衛星の遠地点は、人間活動密集地域の緯度の上空に凍結されており、北半球に対する観測時間長の最大化を保証することができる。遠地点に位置するときに常に光照射領域に位置するため、観察する光照射条件が相対的に一致することが保証され、高精度の二酸化炭素カラム濃度の逆解析を実現するのに有利である。
【0053】
本発明は、結合設計により、軌道の近地点、遠地点高度を同期的に調整し、軌道の太陽同期特性を保証すると同時に、軌道周期、軌道歳差運動、地球自転速度などをマッチングして設計し、回帰軌道を探求する。軌道の回帰特性は、地上軌道の周期的な再現性を保証することができるため、観測点の衛星仰角や太陽の高度角などの一致した観測条件が得られ、衛星作業モードの設計を簡素化するのに有利である。
【0054】
本発明の全地球炭素インベントリ衛星は、中軌道楕円凍結太陽同期回帰軌道で動作し、全地球カバレッジ、軌道位置が高く、幅が大きく、対象の再訪周期が短いことを実現することができ、通過中に重要な人間活動密集地域に対する高い時間周波数走査暗号化観測を実現することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態が本出願書類に記載されているが、当業者は、これらの実施形態が例としてのみ示されていることを理解するであろう。当業者は、本発明の教示の下で多数の変形、代替及び改良を本発明の範囲を超えることなく考え得る。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を限定し、それによって、これらの請求項自体及びそれらの等価変換の範囲内での方法及び構造を網羅することを意図する。
【国際調査報告】