(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】(ポリ)ペプチド及びオリゴヌクレオチドのライゲーション方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20240220BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240220BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240220BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20240220BHJP
C07K 5/06 20060101ALN20240220BHJP
C07K 5/08 20060101ALN20240220BHJP
C07K 5/10 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12P21/02 B
C12N15/11 Z
C07K14/00
C07K7/06 ZNA
C07K5/06
C07K5/08
C07K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550641
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 SG2022050088
(87)【国際公開番号】W WO2022182294
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10202101791Y
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン、アン トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】タン、デリック ジン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リム、カー ワイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヴィー ヴィー
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA33
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、酵素的(ポリ)ペプチドライゲーションの技術分野に属し、特に、(ポリ)ペプチドとオリゴヌクレオチドのライゲーションを可能にする方法に関する。本方法は、ペプチドタグで修飾された少なくとも1つのカーゴ分子、及びカーゴ分子にライゲーションされる少なくとも1つのポリ(ペプチド)を提供することを含み、ペプチドタグ及び/又は(ポリ)ペプチドは、ペプチドリガーゼのためのライゲーションモチーフ、好ましくはソルターゼ及びペプチジルアスパラギニルリガーゼ(PAL)、例えばブテラーゼ-1、VyPAL2又はOaAEP1bを含む。本発明はまた、得られるコンジュゲート及び対応する使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)ペプチドとカーゴ分子との酵素的ライゲーションのための方法であって、
(i)ペプチドタグで修飾された少なくとも1つのカーゴ分子、及び前記カーゴ分子にライゲーションされる少なくとも1つのポリ(ペプチド)を提供する工程であって、前記ペプチドタグ及び/又は前記(ポリ)ペプチドはペプチドリガーゼのライゲーションモチーフを含む、前記提供する工程;及び
(ii)前記カーゴ分子及び前記ポリ(ペプチド)を、前記ペプチドタグと前記(ポリ)ペプチドとを前記ライゲーションモチーフを介してライゲーションするペプチドリガーゼと接触させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記カーゴ分子は、1つ以上のペプチドタグを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドタグは、最大10アミノ酸の長さ、好ましくは2~7アミノ酸の長さである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドタグは、足場部分を介して前記カーゴ分子に結合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドリガーゼの前記ライゲーションモチーフは、ライゲーションされる前記(ポリ)ペプチドのC末端に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドリガーゼは、ソルターゼ及びペプチジルアスパラギニルリガーゼ(PAL)、任意選択でブテラーゼ-1、VyPAL2又はOaAEP1bから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カーゴ分子は、色素、薬物、アプタマー、及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カーゴ分子はオリゴヌクレオチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドタグは、5’末端、3’末端に結合されるか、又は前記オリゴヌクレオチドのヌクレオチド鎖に組み込まれるか、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドタグは、前記オリゴヌクレオチドの骨格、糖部分又は塩基部分に結合されるか、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドは、修飾塩基、修飾糖、ホスホロチオアート結合、ホスホロジアミダートモルホリノユニット、ロック核酸モノマー、又はそれらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチドアナログである、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ペプチドタグで修飾された前記オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ、好ましくはホスホロアミダイト基又はホスホロアミダート基に結合することができる反応性基を含む足場に結合した前記ペプチドタグを、前記反応性基と前記オリゴヌクレオチドとのカップリングを可能にする条件下で前記オリゴヌクレオチドと反応させることで、ペプチドタグで修飾された前記オリゴヌクレオチドを生成することによって得られる、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記足場は、アミノ酸アナログ、好ましくは4-ヒドロキシプロリノール、セリノール、スレオニノール、N-メチル-セリノール、又はN-メチルスレオニノールであり、それぞれホスホロアミダイト基又はホスホロアミダート基を含むものであるか、
(A)「Y」で表される前記ペプチドタグがカルボニル基を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され:
(A1)
【表1】
式中、Rは
【表2】
から選択され、式中、Xは反応性基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表すか、
(A2)
【表3】
式中、「塩基」は核酸塩基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表し、Xは反応性基を表すか、
(A3)
【表4】
式中、「塩基」は核酸塩基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表し、前記ホスホロアミダイト基が前記反応性基であるか、
(A4)
【表5】
式中、Xは反応性基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表すか、
(A5)
【表6】
式中、前記ホスホロアミダイト基が前記反応性基であり、
(A1)~(A5)において、Yは任意選択で
【表7】
から選択され、式中、Fmocはアミノ基及びイミノ基の保護基を表す、
あるいは
(B)「Z」で表される前記ペプチドタグがアミノ基を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され:
(B1)
【表8】
式中、Rは
【表9】
から選択され、式中、Xは反応性基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表すか、
(B2)
【表10】
式中、「塩基」は核酸塩基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表し、Xは反応性基を表すか、
(B3)
【表11】
式中、「塩基」は核酸塩基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表し、前記ホスホロアミダイト基が前記反応性基であるか、
(B4)
【表12】
式中、Xは反応性基を表し、「DMT」はヒドロキシルの保護基を表すか、
(B5)
【表13】
式中、前記ホスホロアミダイト基が前記反応性基であり、
(B1)~(B5)において、Zは任意選択で
【表14】
から選択され、式中、RはNH
2又はO-P
6であり、P
6はカルボン酸保護基であり、
(A1)~(A5)及び(B1)~(B5)において、
mは0~8であり、
nは0~8であり、
P
1は、SPOSでの使用に適したシトシンのN4上の保護基であり、
P
2は、SPOSでの使用に適したアデニンのN6上の保護基であり、
P
3は、SPOSでの使用に適したグアニンのN2上の保護基であり、
P
4は、RNAのSPOSでの使用に適したペントース糖の2’-O上の保護基であり、
P
5は、UNAのSPOSでの使用に適した保護基である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カーゴ分子とペプチドリガーゼを有する前記ポリ(ペプチド)とのライゲーションは、同じであっても異なっていてもよいペプチドリガーゼに対する少なくとも2つのライゲーションモチーフを含む二機能性アダプターを介するものである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法に従って得られるコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素的(ポリ)ペプチドライゲーションの技術分野に属し、特に、(ポリ)ペプチドとオリゴヌクレオチドのライゲーションを可能にする方法に関する。本発明はまた、得られるコンジュゲート及び対応する使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド及びオリゴヌクレオチド(オリゴ)は、化学的及び分子生物学的ツールとして広く利用されており、近年、実行可能で効果的な薬剤クラスとして浮上している。2つの方式を結合することで、両方の利点を活用して組み合わせ、これらの活性の範囲を拡大する機会が得られる。例えば、ペプチドはオリゴを運ぶことができ、逆に、アプタマーはペプチドを生体内又は細胞内の所望の作用部位に運ぶことで、治療薬又はイメージングツールとして機能することができる。しかし、ペプチドとオリゴの固相合成の間の化学的適合性が限られているため、ペプチド-オリゴコンジュゲート(POC)の生成は依然として場当たり的で手間のかかる方法のままである。したがって、ペプチドとオリゴのライゲーションに向けた合理化された方法は、ケミカルバイオロジーのツールボックスを拡張し、治療薬開発のためのPOCの生産を促進する手段を提供するであろう。
【0003】
現在までに、POCの合成には2つの一般的な戦略が利用可能である(非特許文献1~4)。1つ目は、同じ固体支持体上へのアミノ酸及びヌクレオチドモノマーの連続添加によるインライン合成を伴う(非特許文献5~13)。単純ではあるものの、この戦略は、2つの実体の段階的なカップリングと全体的な脱保護に対照的な化学反応が使用されることを考慮すると、適合する保護基の選択肢が限られているため制約を受ける。一方、合成後の結合には、結合前にペプチドとオリゴヌクレオチドを別々に合成、脱保護、及び精製することが含まれる(非特許文献14~19)。これにより適合性の問題は回避されるが、多くの場合、複数の合成と精製のステップはこのアプローチを面倒かつ収量が制限されたものにする。さらに、選択される結合化学は、ペプチドの反応性側鎖との副反応を防ぐために、もっぱら直交している必要がある。
【0004】
ペプチドリガーゼは、マッチング配列又は化学モチーフを含む2つのペプチド末端の結合を触媒する。それらは、タンパク質工学に広く応用されている(非特許文献20)。それは、大環状化(非特許文献21~24)やペプチドの部位特異的標識(非特許文献25~29)から、分子間ペプチド及びタンパク質ライゲーション(非特許文献30~32)まで多岐にわたる。
【0005】
高い位置選択性を示す酵素の使用により、クリーンな反応が確実に行われると同時に、ほとんどのフォールディングされたペプチド及びタンパク質と適合する穏やかな水性条件下でライゲーションを進行させることができる。したがって、このような酵素的アプローチをPOCの合成後の生成に適応させることは、非常に望ましいことである。しかし、このアプローチを利用したPOC作成の報告はほとんどなく(非特許文献33、34)、多様なPOCを作成するための合理化された方法の必要性が残っている。
【0006】
本発明は、POCの調製を大幅に簡素化する、ペプチド及びオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対するホスホロアミダイトタグに基づくアプローチを提供するという点で、既存のニーズを満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tung&Stein Bioconjug Chem 2000,11(5),605-18
【非特許文献2】MacCulloch et al.Org Biomol Chem 2019,17(7),1668-1682
【非特許文献3】Venkatesan&Kim Chem.Rev.2006,106(9),3712-61
【非特許文献4】Lu et.al.Bioconjug Chem 2010,21(2),187-202
【非特許文献5】Haralambidis et al.Tetrahedron Lett.1987,28,5199-5202
【非特許文献6】Bergmann et al.Tetrahedron Lett.1995,36,1839-1842
【非特許文献7】Soukchareun et al.Bioconjug Chem 1995,6(1),43-53
【非特許文献8】Truffert et al.Tetrahedron Lett.1994,35,2353-2356
【非特許文献9】de la Torre et al.Tetrahedron Lett.1994,35,2733-2736
【非特許文献10】Zaramella et al.J.Am.Chem.Soc.2004,126(43),14029-35
【非特許文献11】Ocampo et al.Org Lett 2005,7(20),4349-52
【非特許文献12】Stetsenko et al.Org Lett 2002,4(19),3259-62
【非特許文献13】Antopolsky et al.Tetrahedron Lett 2002,43(3),527-530
【非特許文献14】Eritja et al.Tetrahedron 1991,47,4113-4120
【非特許文献15】Corey Methods Mol Biol 2004,283,197-206
【非特許文献16】Astakhova et al.Org Biomol Chem 2013,11(25),4240-9
【非特許文献17】Sanchez et al.Bioconjugate Chem.2012,23(2),300-7
【非特許文献18】Taskova et al.Bioconjug Chem 2017,28(3),768-774
【非特許文献19】Bongartz et al.Nucleic Acids Res.1994,22(22),4681-8
【非特許文献20】Schmidt et al.Curr Opin Chem Biol 2017,38,1-7
【非特許文献21】Harris et al.Sci.Rep.2019,9(1),10820
【非特許文献22】Nguyen et al.Nat.Chem.Biol.2014,10(9),732-8
【非特許文献23】Wu et al.Chem Commun(Camb)2011,47(32),9218-20
【非特許文献24】Schmidt et al.ChemBioChem 2019,20(12),1524-1529
【非特許文献25】Schumacher et al.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2015,54(46),13787-91
【非特許文献26】Rehm et al.J.Am.Chem.Soc.2019,141(43),17388-17393
【非特許文献27】Antos et al.J.Am.Chem.Soc.2009,131(31),10800-10801
【非特許文献28】Weeks&Wells Nat Chem Biol 2018,14(1),50-57
【非特許文献29】Chen et al.Sci.Rep.2016,6,31899
【非特許文献30】Nguyen et al.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2015,54(52),15694-8
【非特許文献31】Tan et al.Org Lett2018,20(21),6691-6694
【非特許文献32】Henager Nat Methods 2016,13(11),925-927
【非特許文献33】Koussa et al.Methods 2014,67(2),134-41
【非特許文献34】Harmand et al.Bioconjug Chem 2018,29(10),3245-3249
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、(ポリ)ペプチドとカーゴ分子との酵素的ライゲーションのための方法を対象とし、この方法は:
(i)ペプチドタグで修飾された少なくとも1つのカーゴ分子、及び前記カーゴ分子にライゲーションされる少なくとも1つのポリ(ペプチド)を提供する工程であって、前記ペプチドタグ及び/又は前記(ポリ)ペプチドはペプチドリガーゼのライゲーションモチーフを含む、前記提供する工程;及び
(ii)前記カーゴ分子及び前記ポリ(ペプチド)を、前記ペプチドタグと前記(ポリ)ペプチドとを前記ライゲーションモチーフを介してライゲーションするペプチドリガーゼと接触させる工程
を含む。
【0009】
様々な実施形態において、前記カーゴ分子は、1つ以上のペプチドタグを含む。前記ペプチドタグは、最大10アミノ酸の長さ、好ましくは2~7アミノ酸の長さであり得る。前記ペプチドタグは、足場部分を介して前記カーゴ分子に結合され得る。
【0010】
様々な実施形態において、ペプチドリガーゼの前記ライゲーションモチーフは、ライゲーションされる前記(ポリ)ペプチドのC末端に位置する。
様々な実施形態において、前記ペプチドリガーゼは、ソルターゼ及びペプチジルアスパラギニルリガーゼ(PAL)から選択される。適切なPALには、ブテラーゼ-1、VyPAL2及びOaAEP1bが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
前記カーゴ分子は、色素、薬物、アプタマー、及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択され得る。
様々な実施形態において、前記カーゴ分子はオリゴヌクレオチドである。そのような実施形態では、前記ペプチドタグは、5’末端、3’末端に結合することができ、又は前記オリゴヌクレオチドのヌクレオチド鎖に組み込まれることができ、あるいは複数のペプチドタグが使用される場合には、それらの任意の組み合わせである。前記ペプチドタグは、前記オリゴヌクレオチドの骨格、糖部分又は塩基部分に結合され得、又は複数のペプチドタグが使用される場合にはそれらの任意の組み合わせである。
【0012】
様々な実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾塩基、少なくとも1つの修飾糖、少なくとも1つのホスホロチオアート結合、少なくとも1つのホスホロジアミダートモルホリノユニット、少なくとも1つのロック核酸(locked nucleic acid)モノマー、又はそれらの組み合わせを含むオリゴヌクレオチドアナログである。
【0013】
様々な実施形態において、ペプチドタグで修飾された前記オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ、好ましくはホスホロアミダイト基又はホスホロアミダート基に結合することができる反応性基を含む足場に結合した前記ペプチドタグを、前記反応性基と前記オリゴヌクレオチドとのカップリングを可能にする条件下で前記オリゴヌクレオチドと反応させることで、ペプチドタグで修飾された前記オリゴヌクレオチドを生成することによって得られる。前記足場は、アミノ酸アナログ、好ましくは4-ヒドロキシプロリノール、セリノール、スレオニノール、N-メチル-セリノール、又はN-メチルスレオニノールであってもよく、それぞれホスホロアミダイト基又はホスホロアミダート基を含む。
【0014】
様々な実施形態において、前記ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0015】
【0016】
このような実施形態では、Rは以下から選択され得る。
【0017】
【0018】
他の様々な実施形態において、前記ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0019】
【0020】
さらに他の実施形態では、前記ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0021】
【0022】
さらに他の実施形態では、前記ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は前記オリゴヌクレオチドの任意の位置を標識するためのものであり、以下からなる群から選択され得る。
【0023】
【0024】
さらに他の実施形態では、前記ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は前記オリゴヌクレオチドの末端の位置を標識するためのものであり、以下からなる群から選択され得る。
【0025】
【0026】
上記の構造では、前記リンカーは保護基としてのDMT(ジメトキシトリチル)と共に示されており、これは、MMT(モノメトキシトリチル)、Trt(トリチル)、及び2-Cl-Trt(2-クロロ-トリチル)を含むがこれらに限定されない他の適切な保護基と交換することができる。これらの構造において、Xは、固相オリゴヌクレオチド合成(SPOS)でヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ、例えば、モルホリノ)鎖に効果的に結合できる任意の適合性基(例えば、ホスホロアミダイト及びホスホロアミダート基)、あるいは、固体支持体(例えば、SPOSの固体支持体-C(=O)-(CH2)2-C(=O)-)を表す。Yは、以下に示すものを含むがこれらに限定されない、任意のタグモチーフを表す。
【0027】
上記の構造において
mは0~8
nは0~8
P1は、SPOSでの使用に適したシトシンのN4上の任意の保護基(例えば、dmf(N,N-ジメチルホルムアミド)、Bz(ベンジル)、Ac(アセチル));
P2は、SPOSでの使用に適したアデニンのN6上の任意の保護基(例えば、Bz、Pac(フェノキシアセチル));
P3は、SPOSでの使用に適したグアニンのN2上の任意の保護基(例えば、iBu(イソブチリル)、dmf、iPr-Pac(イソプロピルフェノキシアセチル));
P4は、RNAのSPOSでの使用に適したペントース糖の2’-O上の任意の保護基(例えば、TOM(2-O-トリイソプロピルシリルオキシメチル)、TBDMS(2’-O-tert-ブチルジメチルシリル)、Ac);
P5は、UNAのSPOSでの使用に適した任意の保護基(例えばBz)である。
【0028】
これらの構造では、YはC末端を介して結合されたペプチドタグであり、以下から選択され得る。
【0029】
【0030】
【0031】
様々な実施形態において、前記ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0032】
【0033】
そのような実施形態では、Rは以下から選択され得る。
【0034】
【0035】
他の様々な実施形態において、前記ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0036】
【0037】
さらに他の実施形態において、前記ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は以下からなる群から選択され得る。
【0038】
【0039】
さらに他の実施形態において、前記ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は前記オリゴヌクレオチドの任意の位置を標識するためのものであり、以下からなる群から選択され得る。
【0040】
【0041】
さらに他の実施形態では、前記ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して前記足場に結合される場合、前記足場は前記オリゴヌクレオチドの末端位置を標識するためのものであり、以下からなる群から選択され得る。
【0042】
【0043】
上記の構造では、前記リンカーは保護基としてのDMT(ジメトキシトリチル)と共に示されており、これは、MMT(モノメトキシトリチル)、Trt(トリチル)、及び2-Cl-Trt(2-クロロ-トリチル)を含むがこれらに限定されない他の適切な保護基と交換することができる。これらの構造において、Xは、固相オリゴヌクレオチド合成(SPOS)でヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ、例えば、モルホリノ)鎖に効果的に結合できる任意の適合性基(例えば、ホスホロアミダイト及びホスホロアミダート)、あるいは、固体支持体(例えば、SPOSの固体支持体-C(=O)-(CH2)2-C(=O)-)を表す。Yは、以下に示すものを含むがこれらに限定されない、任意のタグモチーフを表す。
【0044】
上記の構造において
mは0~8
nは0~8
P1は、SPOSでの使用に適したシトシンのN4上の任意の保護基(例えば、dmf(N,N-ジメチルホルムアミド)、Bz(ベンジル)、Ac(アセチル));
P2は、SPOSでの使用に適したアデニンのN6上の任意の保護基(例えば、Bz、Pac(フェノキシアセチル));
P3は、SPOSでの使用に適したグアニンのN2上の任意の保護基(例えば、iBu(イソブチリル)、dmf、iPr-Pac(イソプロピルフェノキシアセチル));
P4は、RNAのSPOSでの使用に適したペントース糖の2’-O上の任意の保護基(例えば、TOM(2-O-トリイソプロピルシリルオキシメチル)、TBDMS(2’-O-tert-ブチルジメチルシリル)、Ac);
P5は、UNAのSPOSでの使用に適した任意の保護基(例えばBz)である。
【0045】
これらの構造において、ZはそのN末端を介して連結されたペプチドタグであり、以下から選択され得る。
【0046】
【0047】
【0048】
これらの構造において、RはNH2(アミド化されたC末端)又はO-P6であり、P6は、SPOSでの使用に適した任意の適切なカルボン酸保護基、例えば、OMe(メトキシ)、OtBu(tert-ブトキシ)、及びOTrt(トリチルオキシ)である。
【0049】
本明細書に記載の方法の様々な実施形態では、前記カーゴ分子とペプチドリガーゼを有する前記ポリ(ペプチド)とのライゲーションは、ペプチドリガーゼに対する少なくとも2つのライゲーションモチーフ(同じであっても異なっていてもよい)を含む二機能性アダプターを介する。様々な実施形態において、これらの少なくとも2つの結合部位及びライゲーション部位は異なり、異なるリガーゼによって結合される。二機能性アダプターは、それらの側鎖及び/又はN末端を介して連結された遊離C末端を有する2つのペプチドを含み得る。適切なアダプターは、以下のスキームS5の化合物(4)である。
【0050】
別の態様では、本発明は、本発明の方法のいずれか1つに従って得られるコンジュゲートにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】単一又は複数のペプチドとオリゴヌクレオチドとの酵素的ライゲーションに対するホスホロアミダイトタグベースのアプローチの概略図。(a)固相オリゴヌクレオチド合成によるホスホロアミダイトタグのオリゴヌクレオチド鎖(灰色のリボン)へのカップリング、それに続く、同族ライゲーションハンドルを含むペプチド対応物(薄い灰色のリボン)のタグ標識オリゴヌクレオチドとの酵素的ライゲーションにより所望のペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが生成される。(b)2つの異なるホスホロアミダイトタグ(1及び2)をオリゴヌクレオチド上にモジュラーカップリングすると、その後の同族リガーゼによるマッチングライゲーションハンドルを含む2つのペプチドのライゲーションの位置制御が可能になる。
【
図2】a)タグ標識オリゴヌクレオチドと同族ライゲーションハンドルを含むタンパク質との間のリガーゼ補助ライゲーションの概略図。b)ODN1とCFP
SORTのソルターゼ補助ライゲーションのための粗製ライゲーション混合物のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動。CFP
SORTをODN1とライゲーションすることで、同族酵素ソルターゼの存在下でPOCを生成した。
【
図3】ホスホロアミダイトタグ1及び2は両方とも、末端又は内部の位置に組み込まれることができる。複数のホスホロアミダイトタグ又はホスホロアミダイトタグの混合物の組み込みも可能である。
【
図4】(a)ソルターゼ又は(b)OaAEP1を使用した、ペプチドのN末端へのタグの組み込み及びカーゴ分子とのライゲーション反応の簡略図。カーゴ分子は、色素、薬物、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、タンパク質、又は抗体であり得る。
【
図5】二機能性アダプターの概略図。アダプターは、N末端結合タンパク質-オリゴヌクレオチドコンジュゲートなどの困難なキメラ生体分子へのアクセスを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
本発明は、ペプチドタグの付いたホスホロアミダイトユニットがオリゴヌクレオチドに容易に組み込まれ、したがって選択した(ポリ)ペプチドへのライゲーションを可能にする機能的部分(ペプチドタグ)を与えることができるという本発明者らの発見に基づいている。この原理は、このようなライゲーションモチーフ又はライゲーションハンドルとして機能する短いペプチドをタグ付けできる他の非ペプチドカーゴ分子にも使用できる。
【0053】
本明細書で使用される「ライゲーションモチーフ」という用語は、リガーゼによって認識され切断されるペプチド配列、例えば、NGL、NAL、NSL又はNHLを含む、PAL用のN/D含有ペプチドモチーフ、あるいはソルターゼ用のLPXTG含有モチーフに関する。N/D含有モチーフはPALによって切断されることにより、C末端からN/Dまでのすべてのアミノ酸が切断され、次いでN/D残基のC末端が別の(ポリ)ペプチドのN末端にライゲーションされる。LPXTGモチーフは、C末端からT残基まで切断され、次いでC末端にG残基を有する(ポリ)ペプチドのN末端にライゲーションされる。したがって、ソルターゼやPALなどのリガーゼに関して本明細書で使用される「ライゲーションモチーフ」という用語は、典型的には、ライゲーション反応においてそのC末端が別の(ポリ)ペプチドのN末端にライゲーションされるペプチド配列に関する。
【0054】
「ライゲーションハンドル」という用語は、切断されたライゲーションモチーフのC末端に連結される所与の(ポリ)ペプチドのN末端上のペプチド配列に関する。したがって、ソルターゼやPALなどのリガーゼに関して本明細書で使用される「ライゲーションハンドル」という用語は、典型的には、そのN末端によって別の(ポリ)ペプチドのC末端にライゲーションされる遊離N末端を有するペプチド配列に関する。
【0055】
本明細書で使用される「(ポリ)ペプチド」という用語は、ペプチド及びポリペプチドを指す。本明細書で使用される「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から作られたポリマーに関する。本明細書で定義されるポリペプチドは、50個を超えるアミノ酸、好ましくは100個以上のアミノ酸を含むことができる。本明細書で使用される「ペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸から作られたポリマーに関する。本明細書で定義されるペプチドは、2個以上のアミノ酸、好ましくは5個以上のアミノ酸、より好ましくは10個以上のアミノ酸、例えば10~50個のアミノ酸を含むことができる。様々な実施形態において、「ペプチド」という用語は、最大50個のアミノ酸を有するペプチドに関し、「ポリペプチド」という用語は、50個を超えるアミノ酸を有するペプチドに関する。
【0056】
本明細書に記載の方法により、(ポリ)ペプチドとカーゴ分子との酵素的ライゲーションが可能になる。カーゴ分子は、任意の非ペプチド部分であってもよく、色素、様々な薬学的に活性な有機化合物、特に小分子、アプタマー、及びオリゴヌクレオチドを含む。この方法は、本明細書ではカーゴ分子としてのオリゴヌクレオチドの使用を参照して記載されているが、それらの用途に限定されず、他のカーゴ分子タイプのライゲーションにも容易に使用できることが理解される。
【0057】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド及びそのアナログのオリゴマー及びポリマーを指す。したがって、様々な実施形態において、「オリゴヌクレオチド」という用語は、「ポリヌクレオチド」及びその任意のアナログ又はバリアント、特に本明細書に記載されたものも包含する。このようなオリゴヌクレオチドは、3個以上のヌクレオチド、典型的には10~100個のヌクレオチドを含み得る。ただし、長さは使用目的によって異なる。ヌクレオチドを識別タグとして使用する場合、通常は最大100ヌクレオチドの長さで十分である。長さは、通常、10~1000ヌクレオチド、好ましくは10~500又は10~100ヌクレオチドの範囲であり得る。様々な実施形態において、長さは、10~50、10~30、又は10~25、又は12~20ヌクレオチドである。実施例では、長さ10~18ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。オリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、又はそれらの任意のバリアントであり得る。DNA及びRNAは両方ともヌクレオチドのバリアント及びアナログを含み得る。RNAヌクレオチド及びDNAヌクレオチドの両方を含むオリゴヌクレオチドを有することも可能である。ヌクレオチドバリアント/アナログは、修飾塩基、修飾糖、ホスホロチオアート結合、ホスホロジアミダートモルホリノユニット、ロック核酸モノマー、又はそれらの任意の組み合わせを有し得る。具体的な例は、A、G、T、U、Cなどのすべての一般的なヌクレオチドに利用できるロック核酸モノマーである。さらに修飾ヌクレオチド(糖修飾)には、2’-O-メチル修飾又は2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、拘束エチル(cEt)ヌクレオチド、トリシクロDNA(tcDNA)ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾を有するヌクレオチド、及び修飾塩基/糖を有するヌクレオチド、例えば、限定するものではないが、2-アミノプリン、5-ブロモdU、2’-デオキシウリジン、2,6-ジアミノプリン、ジデオキシシチジン、2’-デオキシイノシン、ヒドロキシメチルdC、逆(inverted)dT、iso-dG、iso-dC、逆(inverted)ジデオキシT、5-メチルdC、5-ニトロインドール、5-ヒドロキシブチル-2’-デオキシウリジン、8-アザ-7-デアザグアノシン、又は8-アザ-7-デアザ-アデノシンなどが含まれる。
【0058】
本発明の方法は、(i)ペプチドタグで修飾された少なくとも1つのカーゴ分子、及び前記カーゴ分子にライゲーションされる少なくとも1つのポリ(ペプチド)を提供する工程を含み、前記ペプチドタグ及び/又は前記(ポリ)ペプチドは、ペプチドリガーゼのライゲーションモチーフを含む。
【0059】
前記ペプチドタグは、上記で定義したようなライゲーションモチーフ又はライゲーションハンドルを含むか、あるいはそれらからなるものであってもよい。ライゲーションを容易にするためにペプチドタグをできるだけ短く保つことは、その合成の労力を節約し、ライゲーションされた(ポリ)ペプチド-カーゴ分子/オリゴヌクレオチドコンジュゲートに存在し得る不必要な追加配列も防ぐため、有利であり得る。したがって、ペプチドタグは、様々な実施形態において、20アミノ酸まで、好ましくは18アミノ酸まで、16アミノ酸まで、14アミノ酸まで、12アミノ酸まで、又は10アミノ酸までの長さであり得る。いくつかの実施形態では、それは2~7アミノ酸の長さである。ペプチドタグがライゲーションハンドルである場合、それは通常さらに短く、わずか2~4個、例えば2又は3個のアミノ酸を含む。それがライゲーションモチーフの場合、それはもう少し長く、通常、PALの場合は3アミノ酸、ソルターゼの場合は5アミノ酸である。したがって、ライゲーションモチーフペプチドタグの長さは、典型的には3~7アミノ酸又は3~5アミノ酸である。
【0060】
ライゲーションされる(ポリ)ペプチドは、典型的には、特定の、例えば生物学的機能を有するペプチド又はポリペプチドであり、したがって、様々な実施形態において、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20アミノ酸の長さを有する。通常、その長さは、1000アミノ酸など、数千アミノ酸までとすることができるが、様々な実施形態では、約15~500アミノ酸の長さを有する。
【0061】
(ポリ)ペプチドは、任意の種類のペプチド又はポリペプチドであってよく、ペプチドホルモン、酵素、細胞傷害性ペプチド、抗体、抗体様ポリペプチド(抗体模倣物)及び抗体フラグメント、マーカータンパク質、例えば蛍光タンパク質、ペプチドアプタマー、及びその他の治療用タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な例としては、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)及びRGD含有ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書に記載の方法において、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドはさらに有機部分に結合されてもよい。この目的のために、(ポリ)ペプチドは、典型的にはライゲーションされる末端ではないところに反応性基を含み得る。アミノ酸の側鎖であってもよい前記反応性基は、次いで、本方法のさらなる工程において対象の有機部分に結合され得る。有機部分は、任意の分子又は基であってもよく、薬学的に活性な薬剤及び蛍光マーカーやビオチンなどの検出可能なマーカーを含む。様々な実施形態において、活性薬剤は、ドキソルビシンなどのアントラサイクリンを含むがこれに限定されない、がん治療薬などの小有機分子医薬品であり得る。
【0063】
本明細書に開示される方法及び使用に従ってライゲーション又は環化される(ポリ)ペプチドは、Asx含有タグがライゲーション又は融合しようとする対象の(ポリ)ペプチドにC末端で融合されている融合ペプチド又はポリペプチドであり得る。Asx含有タグは、好ましくは、本明細書で定義されるアスパラギニルリガーゼの結合及びライゲーション部位のアミノ酸配列を有する。通常、シグナル伝達部分又は検出可能部分も担持するカーゴ分子のペプチドタグなどのペプチドタグにライゲーションされ得るポリペプチド及びタンパク質には、限定されないが、上記のものが含まれる。
【0064】
様々な実施形態において、リガーゼ活性は、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)などのフルオレセイン、又は7-アミノ-4-メチルクマリンなどのクマリンを含む蛍光基などの検出可能な部分を有するペプチドを、ポリペプチド又はタンパク質、例えば上記のものに融合するために使用される。様々な実施形態において、タンパク質は、抗体フラグメント又は抗体模倣物であり得る。
【0065】
本発明の方法及び使用において有用な検出可能なマーカーには、フルオレセインもしくはその誘導体、及び/又は元素I-125もしくはI-131で容易に放射性標識できるペプチドが含まれる。これにより、臓器切片又は生検で、PET又はSPECTとそれに続く蛍光検出を使用した生体内腫瘍の単一試薬の画像化を使用することが可能になる。
【0066】
ライゲーションモチーフが、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドに含まれる場合、オリゴヌクレオチド上のペプチドタグにより、それへのライゲーションが可能になり、またその逆も同様である。様々な実施形態において、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドは、切断部位に対するC末端の部分が切断されるため、典型的にはC末端又はC末端の近くにライゲーションモチーフを含む。そのような実施形態では、オリゴヌクレオチド上のペプチドタグは、対応するライゲーションハンドルを含むか、又はそれからなる。このような実施形態では、オリゴヌクレオチド上のペプチドタグは、(ポリ)ペプチドのC末端へのライゲーションに使用されるため、遊離かつアクセス可能なN末端を有し得る。これは、ペプチドタグがそのC末端を介してオリゴヌクレオチドに結合することを意味し得る。あるいは、ライゲーションモチーフはペプチドタグに含まれ得る。このような実施形態では、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドは、切断されたライゲーションモチーフのC末端へのライゲーションを可能にする末端、典型的にはN末端を有する。これは、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドがそのN末端にライゲーションハンドルを含むことを意味し得る。前記ライゲーションハンドルは、その天然配列の一部であり得る。そのような実施形態では、ペプチドタグは典型的には、そのN末端を介してオリゴヌクレオチドに結合されることで、遊離かつアクセス可能なC末端を提供する。
【0067】
ペプチドタグのオリゴヌクレオチドへの結合は、ペプチドタグ上に提供され、オリゴヌクレオチドへの、そのオリゴヌクレオチドのいずれかの末端、すなわち、その3’末端又は5’末端、又は内部での組み込みを、例えば、新生オリゴヌクレオチドへの組み込みによって可能にする足場によって促進され得る。通常、ペプチドタグはオリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、又は内部に位置し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、単一のオリゴヌクレオチドは複数のペプチドタグを含み得、これらは両端、片端及び内部、又はすべて内部に位置し得る。
オリゴヌクレオチドの末端又は内部のいずれかへの容易な組み込みを促進する、本明細書で使用される非常に適切な足場の1つは、ホスホロアミダイト基含有足場である。足場は、ヒドロキシ基を介してホスホロアミダイト基に結合した、スレオニノール、セリノール、4-ヒドロキシプロリノール、N-メチルセリノール、及びN-メチルスレオニノールなどの還元アミノ酸であり得る。好ましくは、2つのヒドロキシル基を含み、一方は好ましくは第一級ヒドロキシル基(典型的には還元されたカルボキシル基)であり、他方は第二級ヒドロキシル基であるアミノ酸バリアントである。これら2種類のヒドロキシル基により、特に第一級ヒドロキシル基を優先するDMT(4,4’-ジメトキシトリチル)基を使用して第一級ヒドロキシル基を選択的に保護できる。
【0069】
通常、本発明の方法で使用される好ましいホスホロアミダイト基は、式:
【0070】
【0071】
を有する。
塩基に不安定であり、ホスファイト基を保護する2-エチルシアノエチル基は、他の任意の適切な保護基で置換され得ることが理解される。同様に、イソプロピル基は他の適切なアルキル基で置換され得る。
【0072】
このようなホスホロアミダイトの可能な代替物には、式:
【0073】
【0074】
を有するホスホロアミダートが含まれる。
どちらの式でも、波線は足場又はペプチドタグの残りの部分への結合点を示す。上記の基の両方は、例えばヒドロキシル基に由来する-O-基によって足場又はペプチドタグの残りの部分に結合され得る。結合が足場の残りの部分に対するものである場合、足場はさらに、ペプチドタグのC末端又はN末端と反応してペプチド結合を形成するアミノ基又はカルボキシル基を含み得る。
【0075】
適切なホスホロアミダイト基含有足場には、限定するものではないが、
【0076】
【0077】
が含まれ、ここでDMTは保護基であり、波線はペプチドタグのC末端への結合を示し、配列GGG、AAA、GL、GG、RL、AL、PL、HVを有し得る。これらの実施形態では、前述のペプチドタグのすべてがそのC末端を介してオリゴヌクレオチドに連結され、従って遊離N末端を有するため、ペプチドタグはライゲーションハンドルであることが好ましい。GGG及びAAAはソルターゼの好ましいライゲーションハンドルであり、一方、GL、RL、PL、HV、及びGGはPALの好ましいライゲーションハンドルである。
【0078】
適切な足場のより具体的な例は実施例に記載されており、以下に開示される例示的な化合物をさらに含む。
様々な実施形態において、ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して足場に結合される場合、足場は以下からなる群から選択され得る:
【0079】
【0080】
これらの実施形態において、Yは、そのC末端又は側鎖カルボキシル基を介して前記核酸塩基に連結されるペプチドタグを表し、また、上記のものなどの1つのリンカーアミノ酸アナログを含み得る。これらの式において、Rはヌクレオチドの糖-リン酸部分、好ましくは糖-ホスホロアミダイト又は-ホスホロアミダート部分を表す。そのような実施形態では、Rは以下から選択され得る
【0081】
【0082】
これらの実施形態において、Xは、好ましくは、ホスホロアミダイト又はホスホロアミダート基であり、好ましくは上に示した構造のものである。通常、Xは、任意選択で固相オリゴヌクレオチド合成(SPOS)を介して、あるいは固体支持体(例えば、SPOSの固体支持体-C(=O)-(CH2)2-C(=O)-)を介して、オリゴヌクレオチド(又はオリゴヌクレオチドアナログ、例えばモルホリノ)鎖の末端に効果的に結合できるか、又は新生鎖に組み込むことができる、任意の適合性基を表す。
【0083】
前述の化合物では、ペプチドタグは核酸塩基を介してヌクレオチド構成ブロックに結合される。しかし、次の構造に例示されるように、同様に糖に結合されることもある。
他の様々な実施形態において、ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して足場に結合される場合、足場は、以下からなる群から選択され得る:
【0084】
【0085】
これらの式において、Xは上記と同じ意味を有する。
さらに他の実施形態において、ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して足場に結合される場合、結合は骨格を介したものであってもよく、足場は以下からなる群から選択され得る:
【0086】
【0087】
さらに他の実施形態では、ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して足場に結合される場合、足場は、塩基、糖及び骨格部分を含むヌクレオチドアナログではなく、むしろ化学的に異なる部分である。これらのコンジュゲートは、オリゴヌクレオチドの任意の位置を標識するのに適しており、すなわち、末端に結合されるか、又は新生オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれることができ、以下からなる群から選択され得る:
【0088】
【0089】
これらの式において、Xは上記と同じ意味を有する。
さらに他の実施形態では、ペプチドタグがカルボニル基、例えばそのC末端を介して足場に結合される場合、足場は、塩基、糖及び骨格部分を含むヌクレオチドアナログではなく、むしろ、ホスホロアミダイトリンカー部分などの化学的に異なる部分である。これらのコンジュゲートは、オリゴヌクレオチドの末端の標識に適しており、以下からなる群から選択され得る:
【0090】
【0091】
上記の構造において、YはそのC末端又は側鎖のカルボン酸/カルボキシラート基を介して結合されたペプチドタグであり、以下から選択され得る(波線は構造の残りの部分への結合を示す):
【0092】
【0093】
これらは、Yがライゲーションハンドルを表す、すなわち、そのN末端を介してライゲーションされたライゲーションのC末端部分である実施形態である。
様々な代替実施形態において、ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して足場に結合される場合、足場は、アミノ基への結合を可能にするように設計され得る。そのような場合、結合に適した核酸塩基構造は以下からなる群から選択され得る:
【0094】
【0095】
これらすべての構造において、Zは、そのN末端又は側鎖アミノ基を介して前記核酸塩基に連結されるペプチドタグを表し、また、上記のものなどの1つのリンカーアミノ酸アナログを含み得る。これらの式において、Rはヌクレオチドの糖-リン酸部分、好ましくは糖-ホスホロアミダイト又は-ホスホロアミダート部分を表す。そのような実施形態において、Rは、上で既に開示されたものから選択され得る。
【0096】
他の様々な実施形態において、ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して足場に結合される場合、それは糖部分に結合され得る。そのような様々な実施形態では、足場は以下からなる群から選択され得る:
【0097】
【0098】
Zは、上で定義したような意味を有する。「塩基」は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどの任意の核酸塩基を示す。Xは上記と同じ意味を有する。
さらに他の実施形態では、ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して足場に、具体的にはホスホロアミダイトに結合されている場合、足場は以下からなる群から選択され得る:
【0099】
【0100】
「塩基」及びZは、上記の意味を有する。
さらに他の実施形態では、ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して足場に結合される場合、足場は、塩基、糖及び骨格部分を含むヌクレオチドアナログではなく、むしろ化学的に異なる部分である。これらのコンジュゲートは、オリゴヌクレオチドの任意の位置を標識するのに適しており、すなわち、末端に結合されるか、又は新生オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれることができ、以下からなる群から選択することができる:
【0101】
【0102】
ここで、Z及びXは上記のとおりの意味を有する。
さらに他の実施形態では、ペプチドタグがアミノ基、例えばそのN末端を介して足場に結合される場合、足場はオリゴヌクレオチドの末端位置を標識するためのものであり、以下からなる群から選択され得る:
【0103】
【0104】
ここで、Zは上記の意味を有する。
これらの構造において、ZはそのN末端又は側鎖アミノ基を介して連結されたペプチドタグであり、以下から選択され得る:
【0105】
【0106】
あるいは、ソルターゼペプチドタグは、LPETG(配列番号6)であり得る。
【0107】
【0108】
これらの構造において、RはNH2(アミド化C末端)又はO-P6であり、P6は、OMe(メトキシ)、OtBu(tert-ブトキシ)及びOTrt(トリチルオキシ)などの、SPOSでの使用に適した任意の適切なカルボン酸保護基である。
【0109】
上記の構造では、-OH基を望ましくない修飾から保護するDMT(ジメトキシトリチル)保護基を有するいくつかの化合物が示されている。これらの保護基は、MMT(モノメトキシトリチル)、Trt(トリチル)、及び2-Cl-Trt(2-クロロ-トリチル)を含むがこれらに限定されない他の適切な保護基と容易に交換することができる。これらすべての構造において、Yは、以下に示す特定のペプチドタグを含むがこれらに限定されない、任意のペプチドタグを表す。
【0110】
上記の構造において、
mは0~8、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7又は8、例えば、0又は1~4、又は0~2であり;
nは0~8、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7又は8、例えば、0又は1~4、又は0~2である。
【0111】
P1からP5は、ペプチドタグを有するオリゴヌクレオチドの合成中に望ましくない副反応から保護されるべき不安定な基の保護基である。P1は、SPOSでの使用に適したシトシンのN4上の任意の保護基(例えば、dmf(N,N-ジメチルホルムアミド)、Bz(ベンジル)、Ac(アセチル))である。P2は、SPOSでの使用に適したアデニンのN6上の任意の保護基(例えば、Bz、Pac(フェノキシアセチル))である。P3は、SPOSでの使用に適したグアニンのN2上の任意の保護基(例えば、iBu(イソブチリル)、dmf、iPr-Pac(イソプロピルフェノキシアセチル))である。P4は、RNAのSPOSでの使用に適した、ペントース糖の2’-O上の任意の保護基(例えば、TOM(2-O-トリイソプロピルシリルオキシメチル)、TBDMS(2’-O-tert-ブチルジメチルシリル)、Ac)である。P5は、UNA(アンロック核酸、RNAの非環式アナログ)のSPOSでの使用に適した任意の保護基(例えば、Bz)である。
【0112】
本発明の方法で使用されるペプチドタグで修飾されたオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログ、好ましくはホスホロアミダイト又はホスホロアミダート基に結合することができる反応性基を含む足場に結合したペプチドタグを、前記反応性基とオリゴヌクレオチドとのカップリングを可能にする条件下でオリゴヌクレオチドと反応させることで、ペプチドタグで修飾されたオリゴヌクレオチドを生成することによって得られる。オリゴヌクレオチドに組み込むか連結することができるヌクレオチド又は基にカップリングするのに適した前記ペプチドタグ足場分子の具体例は、上に開示されている。
【0113】
本発明の方法において、本方法の第2の工程は、(ii)カーゴ分子及びポリ(ペプチド)を、ライゲーションモチーフを介してペプチドタグと(ポリ)ペプチドとをライゲーションするペプチドリガーゼと接触させることである。上述したように、ペプチドタグは、ライゲーションハンドル及びライゲーションモチーフにライゲーションされる(ポリ)ペプチドを含んでもよく、又はその逆でもよい。そのようなモチーフの例は本明細書に記載されている。
【0114】
ペプチドリガーゼのライゲーションモチーフは、ライゲーションされる(ポリ)ペプチドのC末端又はその近くに位置し得る。これは、通常はライゲーションハンドルよりも長いため、組換え手段によってライゲーションされる(ポリ)ペプチドに付加でき、それに応じて修飾された(ポリ)ペプチドが宿主細胞内で組換え発現されるため、有利であり得る。これにより、効果的にライゲーションハンドルとなるペプチドタグを可能な限り短く保つことができ、合成の労力を最小限に抑えることができる。
【0115】
様々な実施形態において、ペプチドリガーゼは、ソルターゼ及びペプチジルアスパラギニルリガーゼ(PAL;本明細書では「アスパラギニルリガーゼ」とも呼ばれる)から選択される。適切なPALは、例えば国際公開第2020/226572号などの当技術分野で記載されており、当業者には一般的に知られている。このようなPALの例としては、ブテラーゼ-1、VyPAL2、及びOaAEP1bが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
本発明に従う有用なリガーゼは、タンパク質ライゲーション活性を示す、すなわち、2つのアミノ酸残基間にペプチド結合を形成することができ、これらの2つのアミノ酸残基はペプチドタグ上、及びライゲーションされる(ポリ)ペプチド上に位置する。様々な実施形態において、このタンパク質ライゲーション活性は、エンドペプチダーゼ活性を含む。すなわち、2つのアミノ酸残基間のペプチド結合は、既存のペプチド結合の切断後に生じる。
【0117】
アスパラギニルリガーゼは、ライゲーションが起こるアミノ酸のC末端、すなわちライゲーションされるペプチドのC末端がアスパラギン(Asn又はN)又はアスパラギン酸(Asp又はD)であるという点で「Asx特異的」であり得る。
【0118】
リガーゼは天然に存在する酵素であってもよく、単離された形態で提供されてもよい。本明細書で使用される「単離された」とは、天然に存在するか会合する他の細胞成分から少なくとも部分的に分離された形態のポリペプチドに関する。リガーゼは、組換えポリペプチド、すなわち、前記ポリペプチドを天然には産生しない遺伝子操作された生物において産生されるポリペプチドであってもよい。天然ポリペプチド及び組換えポリペプチドはどちらも、N結合型グリコシル化によって翻訳後修飾され得る。
【0119】
様々な実施形態において、アスパラギニルリガーゼは、ブテラーゼ-1(配列番号2及び5)、VyPAL2(配列番号1及び4)、及びOaAEP1b(配列番号3)から選択され、配列番号1~5のいずれか1つ又はその任意の機能的断片もしくはバリアントのアミノ酸配列を有し得る。
【0120】
このようなバリアントは、参照アミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも80%、好ましくは少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.25%、又は少なくとも99.5%同一である。バリアントは、それぞれの参照配列の活性を保持するその断片であってもよい。そのような断片は、典型的には参照配列のC末端及び/又はN末端トランケート型であり、好ましくは、例えば国際公開第2020/226572号に記載されている酵素活性の決定基を含む。
【0121】
核酸配列又はアミノ酸配列の同一性は、通常、配列比較によって決定される。この配列比較は、既存技術で確立され、一般的に使用されているBLASTアルゴリズムに基づいており(例えば、Altschul et al.(1990)“Basic local alignment search tool”,J.Mol.Biol.215:403-410、及びAltschul et al.(1997):“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”;Nucleic Acids Res.,25,p.3389-3402参照)、原理的には、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸の類似の連続を相互に関連させることによってもたらされる。関連する位置の表形式の関連付けは、「アライメント」と呼ばれる。配列比較(アライメント)、特に多重配列比較は、一般に、利用可能であり当業者に知られているコンピュータプログラムを使用して準備される。
【0122】
この種の比較では、比較されている配列の相互の類似性に関するステートメントも可能になる。これは通常、同一性のパーセンテージ、すなわち、アライメントにおいて同じ位置又は互いに対応する位置にある同一のアミノ酸残基の割合として示される。同一性の表示は、ポリペプチド全体にわたって、又は個々の領域にわたってのみ生じることがある。したがって、様々なアミノ酸配列の同一領域は、配列内の一致によって定義される。そのような領域は、多くの場合、同一の機能を示す。それらは小さい場合があり、少数のアミノ酸のみを含む場合がある。この種の小さな領域は、タンパク質の全体的な活性に不可欠な機能を発揮することが多い。そのため、個々の、場合によっては小さい領域のみに一致する配列を参照することが有用であり得る。しかしながら、別段の指示がない限り、本明細書における同一性の指標は、それぞれ示された核酸配列又はアミノ酸配列の全長を指す。
【0123】
全てのアミノ酸残基は、本明細書では通常、その一文字コード、場合によっては三文字コードを参照することによって言及される。この命名法は当業者にはよく知られており、本明細書では当分野で理解されているとおりに使用される。
【0124】
本明細書に記載の方法及び使用において、一方では酵素、すなわちリガーゼ、そして他方では基質、すなわちペプチドタグ及びライゲーションされる(ポリ)ペプチドを有するカーゴ分子は、1:100以上、好ましくは1:400以上、より好ましくは少なくとも1:1000のモル比で使用することができる。反応は通常、適切な緩衝系中、最適な酵素活性を可能にする温度、通常は周囲温度(20℃)から40℃の間で行われる。
【0125】
本発明の方法において、リガーゼは固体支持体上に固定化され得る。固体支持体上での固定化の主な利点は、部位分離と擬似希釈を提供することで、トランス自己分解による分解を防止し、安定性を向上させることである。固定化酵素の部位分離により、高濃度の酵素を使用してライゲーション反応を加速することで、ワンポット条件又は連続フローリアクターでのライゲーション反応などを数分で完了させることができる。適切な支持体材料には、クロマトグラフィーカラムなどに使用される様々な樹脂及びポリマーが含まれる。支持体はビーズの形態を有していてもよく、又はマイクロタイタープレートなどのより大きい構造の表面であってもよい。固定化により、基質との接触が非常に容易かつ簡素になるだけでなく、合成後の酵素と基質の分離も容易になる。酵素機能を有するポリペプチドが固体カラム材料に固定化されている場合、ライゲーション/環化を連続プロセスとし、かつ/又は基質/生成物溶液をカラム上で循環させてもよい。
【0126】
様々な実施形態において、リガーゼはグリコシル化され、固定化は、固体支持体に共有結合した炭水化物結合部分、好ましくはコンカナバリンA部分又はそのバリアントとの相互作用によって促進される。そのような実施形態では、固体支持体はアガロースビーズであり得る。
【0127】
他の様々な実施形態において、リガーゼはビオチン化され、固定化は、固体支持体に共有結合したビオチン結合部分、好ましくはストレプトアビジン、アビジンもしくはニュートラアビジン部分又はそのバリアントとの相互作用によって促進される。ビオチンによる酵素の機能化は、スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノアートなどのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とのビオチンエステルによる機能化などの当技術分野で公知の方法を使用して達成することができる。そのような実施形態では、固体支持体はアガロースビーズであってもよく、ビオチン結合部分はニュートラアビジン(脱グリコシル化アビジン)などのアビジンバリアントであってもよい。
【0128】
他の様々な実施形態において、リガーゼは、例えばリジン側鎖からのポリペプチド中の遊離アミノ基と固体支持体の表面上のN-ヒドロキシスクシンイミド官能基との反応によって固体支持体上に固定化される。固体支持体はアガロースビーズであり得る。
【0129】
本明細書に記載の方法の様々な実施形態では、カーゴ分子とポリ(ペプチド)とのペプチドリガーゼでのライゲーションは、同じであっても異なっていてもよいペプチドリガーゼに対する少なくとも2つのライゲーションモチーフを含む二機能性アダプターを介する。様々な実施形態において、これらの少なくとも2つのライゲーションモチーフ部位は異なり、異なるリガーゼによって結合される。二機能性アダプターは、その側鎖及び/又はN末端を介して、任意選択でアダプター足場に連結される遊離C末端を有する2つのペプチド又はライゲーションモチーフを含み得る。一方のライゲーションモチーフは、本明細書に記載されるPAKLライゲーションモチーフを含むか、又はそれから構成され得、他方は、異なるPALライゲーションモチーフ又はソルターゼライゲーションモチーフを含むか、又はそれから構成され得、すべて本明細書に記載されている。そのような実施形態では、ライゲーションされるオリゴヌクレオチド及び(ポリ)ペプチドの両方は、ライゲーションハンドルに対応するペプチドモチーフを含み、そのN末端がアダプター中に存在するライゲーションモチーフのC末端に結合することを可能にする。適切なアダプターは、以下のスキームS5の化合物(4)である。原理は
図5に大まかに示されている。
【0130】
本発明はさらに、入手可能な、又は本明細書に記載の方法に従って得られる特定のライゲーション産物に関する。
本発明の別の態様は、本明細書に開示される特定のペプチドタグ足場、例えば特定のホスホロアミダイトタグ、及び記載される修飾オリゴヌクレオチドに関する。
【0131】
本発明は、以下の非限定的な実施例及び添付の特許請求の範囲によってさらに説明される。
実施例
全般的な方法
試薬及び溶媒を商業供給元(Sigma Aldrich、Acros、Merck、Alfa Aesar)から購入した。DNAホスホロアミダイトモノマー及びチオ修飾剤C6S-Sホスホロアミダイトを、Glen Researchから購入した。Fmoc保護アミノ酸をGL Biochemから購入した。すべての試薬をさらに精製せずに使用した。フラッシュカラムクロマトグラフィーを、Grace Davisilクロマトグラフィーシリカ媒体(40~63μm)を使用して実施した。反応を、Merck TLCシリカゲル60F254アルミニウムプレートを使用してモニタリングした。TLCを、UV光、p-アニスアルデヒド染色又はニンヒドリン染色によって視覚化した。NMRスペクトルをBruker Avance300分光計で記録した。HRMS分析を、Waters Q-tof Premier MSで実行した。
【0132】
実施例1:(Gly-Gly-Gly)ホスホロアミダイトタグの合成手順
【0133】
【0134】
(2R,3R)-3-アミノ-4-(ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)ブタン-2-オール(S2)
Fmoc-スレオニノールS1(300mg、916μmol)を無水ピリジン(4.00mL)に溶解し、DMTr-Cl(342mg、1.01mmol)を10分間隔で3回に分けて加えた。得られた溶液を窒素下で5時間撹拌した。溶媒を減圧下で半分の体積まで除去し、酢酸エチルで希釈した。混合物を飽和NaHCO3溶液で2回、続いてブラインで抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、無水DMF(1.44mL)を加えて油を溶解した。ピペリジン(312.1mg、0.36mL、3.665mmol)をゆっくりと加え、得られた溶液を窒素下、室温で2時間撹拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、飽和NaHCO3溶液で2回、続いてブラインで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~2%MeOH/DCM)によって精製して、S2(366.4mg、98.1%)を黄色がかった油として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ1.07(3H,d,J6.27,スレオニノール CH3),2.60-2.68(1H,m,スレオニノール Hα),3.08(1H,dd,J5.85 9.41 スレオニノール CH2),3.24(1H,dd,J4.17 9.41 スレオニノール CH2),3.65(1H,クインテット,スレオニノール Hβ),3.77(6H,s,2×OCH3),6.82(4H,d,J8.82,H-Ar),7.15-7.35(7H,m,H-Ar),7.38-7.46(2H,m,H-Ar)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ19.96,55.26,57.16,65.97,68.04,86.20,113.21,126.88,127.91,128.16,130.08,136.01,136.10,144.90,158.57。C25H30NO4のHRMS計算:408.2175;実測:408.2174。
【0135】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((R)-4-((R)-1-ヒドロキシエチル)-1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-6,9,12-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-イル)カルバマート(S3)
無水DMF(3.5mL)に溶解したFmoc-Gly-Gly-Gly-OH(505mg、1.23mmol)、DIPEA(476mg、0.64mL、3.68mmol)、HoBt(166mg、1.23mmol)及びHBTU(512mg、1.35mmol)の溶液を、S2(500mg、1.23mmol)の無水DMF(3mL)溶液にゆっくりと加えた。得られた溶液を窒素下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を水、続いてブラインで洗浄した。次いで、有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~6%MeOH/DCM)で精製して、生成物S3(899.1mg、91.5%)を淡黄色固体として得た。1H NMR(300MHz;MeOD):δ1.08(3H,d,J6.38,スレオニノール-CH3),3.06-3.18(1H,m,スレオニノール CH2),3.24-3.33(1H,m,スレオニノール CH2),3.73(6H,s,2×OCH3),3.82(2H,s,Gly-CH2)3.87-4.03(5H,m,スレオニノール Hα及び2×Gly-CH2)4.03-4.13(1H,m,スレオニノール Hβ),4.17(1H,t,J6.45,Fmoc-CH),4.36(2H,d,J6.76,Fmoc-CH2),6.83(4H,d,J8.84,H-Ar),7.14-7.48(13H,m,H-Ar),7.57-7.69(2H,m,H-Ar),7.79(2H,d,J7.50,H-Ar)。13C NMR(75MHz,MeOD):δ20.33,43.46,43.88,45.15,48.29,55.67,56.57,87.32,114.06,120.90,126.18,127.70,128.15,128.73,128.78,129.28,131.24,137.21,137.29,142.53,145.16,145.19,146.42,159.29,159.99,171.62,172.09,173.14。C46H49N4O9のHRMS計算:801.3500;実測:801.3503。
【0136】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((4R)-4-((1R)-1-(((2-シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル)オキシ)エチル)-1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-6,9,12-トリオキソ-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-イル)カルバマート(1)
無水DCM(3.34mL)に懸濁したS3(346.8mg、433.0μmol)にDIPEA(139.9mg、0.19mL、1.083mmol)を加えた。次いで、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(123.0mg、115.9μL、519.6μmol)を数分間かけて滴下し、得られた溶液を窒素下、室温で30分間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、飽和KCl溶液で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(0~5%MeOH/DCM)によって精製して、1(306.9mg、70.8%)を白色泡状物として得た。31P NMR(162MHz;CDCl3):δ148.13,148.82。
【0137】
実施例2:(Gly-Leu)ホスホロアミダイトタグの合成手順
【0138】
【0139】
(3R,5S)-5-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)ピロリジン-3-オール(S4)
化合物(S4)を、Prakashらによって報告された手順に従って合成した。(Prakash et al.Nucleic Acid Res.2014,42(13),8796-807)。
【0140】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-((2S,4R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバマート(S5)
S4(200mg、477μmol)の無水DMF(1mL)溶液を、Fmoc-L-Leu-OH(168mg、477μmol)、DIPEA(185mg、0.25mL、1.43mmol)、HBTU(199mg、524μmol)及びHoBt(64.4mg、477μmol)の無水DMF(1.8mL)の撹拌溶液に加えた。得られた混合物を窒素下、室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を水、続いてブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む30~50%EA/Hex)で精製して、S5(304.7mg、84.7%)を白色泡状物として得た。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ0.81-1.05(6H,m,Leu2×CH3),1.49-1.60(2H,m,Leu Hβ),1.70-1.80(1H,m,Leu Hγ),1.91-2.23(2H,m,プロリノールH3’/H3”),3.07-3.16(1H,m,プロリノールH1’),3.45-3.60(1H,m,プロリノールH1”),3.65-3.73(1H,m,プロリノールH5’),3.78(6H,s,2×OCH3),388-4.10(1H,m,プロリノールH5”),4.14-4.25(1H,m,FmocCH),4.27-4.40(2H,m,FmocCH2),4.40-4.67(3H,m,プロリノールH2,H4,Leu Hα),5.52(1H,d,J8.52,NH),6.64-6.88(4H,m,H-Ar),7.17-7.43(13H,m,H-Ar),7.52-7.63(2H,m,H-Ar),7.76(2H,d,J7.35,H-Ar)。13C NMR(75MHz;CDCl3):δ8.53,22.11,23.26,24.65,36.45,42.06,42.51,45.63,47.16,50.87,55.20,55.73,56.02,59.97,63.01,67.16,70.49,86.01,113.08,119.95,125.17,126.79,127.08,127.69,127.77,128.09,129.14,130.01,135.95,136.13,141.29,143.74,143.78,143.91,144.96,158.46,171.60。C47H50N2O7のHRMS計算:755.3696;実測:755.3687。
【0141】
(S)-2-アミノ-1-((2S,4R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-4-メチルペンタン-1-オン(S6)
S5(369.4mg、489.3μmol)の無水DMF(1.7mL)溶液にピペリジン(166.7mg、193μL、1.957mmol)を加えた。得られた溶液を窒素下、室温で2時間撹拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で2回、続いてブラインで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む0~5%MeOH/DCM)によって精製して、S6(183.7mg、70.5%)を白色泡状物として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ0.80-0.97(6H,m,Leu2×CH3),1.41-1.61(2H,m,Leu Hβ),1.67-1.87(1H,m,Leu Hγ),1.89-2.04(1H,m,プロリノールH3’),2.05-2.20(1H,m,プロリノールH3”),2.96-3.15(1H,m,プロリノールH1’),3.46-3.64(2H,m,プロリノールH1”,Leu Hα),3.67-3.82(8H,m,2×OCH3,H5’,H5”,),3.82-3.96(2H,m,NH2),4.39-4.48(1H,m,プロリノールH2),4.51(1H,s,プロリノールH4),6.74-6.86(4H,m,H-Ar),7.13-7.30(7H,m,H-Ar),7.30-7.38(2H,d,J7.68,H-Ar)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ22.08,23.29,24.67,36.10,43.79,44.76,50.79,55.22,55.28,55.84,56.16,62.87,70.42,85.94,113.10,126.78,127.78,128.11,130.02,135.98,136.19,145.00,158.46。C32H40N2O5のHRMS計算:533.3015;実測:533.3016。
【0142】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(((S)-1-((2S,4R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバマート(S7)
無水DMF(1.6mL)中のS6(293.5mg、551.0μmol)の撹拌溶液に、Fmoc-Gly-OH(163.8mg、551.0μmol)、DIPEA(284.9mg、0.38mL、2.204mmol)及びHBTU(229.9mg、606.1μmol)の無水DMF(1.5mL)溶液を添加した。得られた混合物を窒素下、室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を水、続いてブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む50~100%EA/Hex)によって精製して、S7(321.7mg、71.9%)を淡黄色の泡状物として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ0.78-1.02(6H,m,Leu2×CH3),1.46-1.73(3H,m,Leu Hβ,Leu Hγ),1.84-2.24(2H,m,プロリノールH3’/H3”),2.93-3.11(1H,m,プロリノールH1’),3.51-3.67(2H,m,プロリノールH1”,プロリノールH5’),3.60-3.69(1H,m,プロリノールH5”),3.71(6H,s,2×OCH3),3.79-3.91(2H,m,Gly Hα),3.96-4.08(1H,m,プロリノールH5”),4.09-4.24(1H,m,FmocCH),4.33(2H,d,J6.54,FmocCH2),4.52-4.40(2H,m,プロリノールH2’,プロリノールH4’),4.72-4.92(1H,m,Leu Hα),6.18(1H,s,Gly NH),6.75(4H,d,J8.49,H-Ar)7.09-7.28(10H,m,H-Ar及びLeuNH),7.29-7.43(4H,m,H-Ar),7.56(2H,d,J7.17,H-Ar),7.72(2H,d,J7.53,H-Ar)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ22.19,23.12,24.66,35.98,42.05,44.15,47.06,49.49,55.13,56.04,56.22,62.60,67.20,70.36,85.85,113.02,119.89,125.15,126.73,127.09,127.67,127.72,128.03,129.95,129.99,135.85,136.13,141.22,143.81,144.93,158.40,169.50,171.43。C49H53N3O8のHRMS計算:812.3909;実測:812.3911。
【0143】
(2S,4R)-1-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)グリシル-L-ロイシル)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-(((2-シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル)オキシ)ピロリジン-3-イリウム(2)
DIPEA(119.1mg、0.16mL、921.2μmol)を、窒素下で無水DCM(2.85mL)中のS7(299.2mg、368.5μmol)の撹拌溶液に添加した。次いで、N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(104.7mg、98.64μL、442.2μmol)を反応混合物に数分間かけて滴下し、得られた溶液を窒素下、室温で30分間撹拌した。反応混合物を無水DCMで希釈し、飽和KCl溶液で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む50~65%EA/Hex)によって精製して、2(333.2mg、89.4%)を白色泡状物として得た。31P NMR(162MHz;CDCl3):δ147.45,147.96,148.16,148.57。
【0144】
実施例3:(Pro-Leu)ホスホロアミダイトタグの合成手順
【0145】
【0146】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-2-(((S)-1-((2S,4R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-ヒドロキシピロリジン-1-イル)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボキシラート(S8)
無水DMF(1.7mL)中のS6(259.4mg、487.0μmol)の溶液を、無水DMF(1.2mL)中のFmoc-Pro-OH(164.3mg、487.0μmol)、DIPEA(188.8mg、0.26mL、1.461mmol)、HBTU(203.2mg、535.8μmol)及びHoBt(65.8mg、486.9μmol)の撹拌溶液に滴下した。得られた溶液を窒素下、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を水、続いてブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む50~90%EA/Hex)によって精製して、S8(228.0mg、55.0%)を黄色泡状物として得た。
【0147】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2S)-2-(((2S)-1-((2S,4R)-2-((ビス(4-メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)-4-(((2-シアノエトキシ)(ジイソプロピルアミノ)ホスファニル)オキシ)ピロリジン-1-イル)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボキシラート(S9)
DIPEA(86.5mg、0.12mL、669.0μmol)を、アルゴン下、無水DCM(2.07mL)中のS8(228.0mg、268.0μmol)の撹拌溶液に添加した。次いで、N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(76.0mg、71.6μL、321.0μmol)を反応混合物に数分間かけて滴下し、得られた溶液をアルゴン下室温で30分間撹拌した。反応混合物を無水DCMで希釈し、飽和KCl溶液で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィー(1%TEAを含む40~60%EA/Hex)によって精製して、S9(217.8mg、77.3%)を淡黄色泡状物として得た。31P NMR(162MHz;CDCl3):δ147.52,147.75,147.85,147.99,148.03,148.39。
【0148】
実施例4:Asn(Trt)-Gly-Leu-OtBuタグの合成手順
【0149】
【0150】
tert-ブチル(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)グリシル-L-ロイシナート(S11)
無水DMF(1.35mL)に溶解したFmoc-Gly-OH(476mg、1当量、1.60mmol)、DIPEA(621mg、0.84mL、3当量、4.81mmol)、HoBt(216mg、1当量、1.60mmol)及びHBTU(668mg、1.1当量、1.76mmol)の溶液を、無水DMF(1mL)に溶解したtert-ブチルL-ロイシナートS10(300mg、1当量、1.60mmol)の撹拌溶液に加えた。得られた溶液を窒素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。次いで、合わせた有機層をブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、S11(684.4mg、91.6%)を白色泡状物として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ0.85-0.97(6H,m,2×CH3-Leu),1.44(9H,s,3×CH3-tBu),1.46-1.75(3H,m,Hγ-Leu及びHβ-Leu),3.94(2H,d,J5.16,CH2-Gly),4.17(1H,t,U7.11,CH-Fmoc),4.37(2H,d,J6.95,CH2-Fmoc),4.47-4.63(1H,m,Hα-Leu),5.83(1H,t,J5.16,NH-Gly),6.76(1H,d,J7.91,NH-Leu),7.27(2H,t,J7.27,H-Ar),7.37(2H,t,J7.40,H-Ar),7.57(2H,d,J7.38,H-Ar),7.73(2H,d,J7.47,H-Ar)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ22.11,22.81,24.97,28.03,41.77,44.42,47.11,51.48,67.35,82.11,120.02,125.17,127.13,127.76,141.32,143.85,156.6,18.79,172.18。C27H35N2O5のHRMS計算:467.2546;実測:467.2565。
【0151】
tert-ブチルグリシル-L-ロイシナート(S12)
S11(684.4mg、1当量、1.467mmol)のDMF(2.32mL)溶液にピペリジン(499.6mg、0.58mL、4当量、5.867mmol)を加えた。得られた溶液を窒素下で1時間撹拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、続いてブラインで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、S12(239.0mg、66.68%)を無色の油として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ0.95(6H,d,J6.05,2×CH3-Leu),1.47(9H,s,3×CH3-tBu),1.50-1.77(3H,m,Hγ-Leu及びHβ-Leu),1.83(2H,NH2-Gly),3.39(2H,s,CH2-Gly),4.45-4.62(1H,m,Hα-Leu),7.54(1H,d,J8.06,NH-Leu)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ22.11,22.88,25.01,28.03,41.91,44.64,50.92,81.79,172.34。C12H25N2O3のHRMS計算値:245.1865;実測:245.1855。
【0152】
tert-ブチルN2-(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-N4-トリチル-L-アスパラギニルグリシル-L-ロイシナート(S13)
無水DMF(2mL)に溶解したS12(221.5mg、1当量、906.5μmol)及びDIPEA(351.5mg、0.48mL、3当量、2.720mmol)の溶液に、無水DMF(2.8mL)に溶解したFmoc-Asn(Trt)-OH(540.9mg、1当量、906.5μmol)、HoBt(122.5mg、1当量、906.5μmol)及びHBTU(378.2mg、1.1当量、997.2μmol)の溶液を加えた。得られた黄色の溶液を窒素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。次いで、合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、S13(703mg、94.2%)を白色固体として得た。1H NMR(300MHz;CDCl3):δ0.85(6H,dd,J6.08 2.00,2×CH3-Leu),1.30-1.67(12H,m,3×CH3-tBu,Hγ-Leu及びHβ-Leu),2.56-2.75(1H,m,Hβ-Asn),2.94-3.11(1H,m,Hβ-Asn),3.70-3.99(2H,m,CH2-Gly),4.05-4.23(1H,m,CH-Fmoc),4.30-4.57(4H,m,CH2-Fmoc,Hα-Leu及びHα-Asn),6.36(1H,d,J6.60,NH-Asn),6.82(1H,d,J7.44,NH-Leu),7.10-7.32(19H,m,H-Ar,NH-Gly及びNH-Asn側鎖),7.36(2H,t,J7.35,H-Ar),7.56(2H,d,J7.35,H-Ar),7.72(2H,dd,J7.38 3.21,H-Ar)。13C NMR(75MHz,CDCl3):δ20.20,22.64,24.90,28.30,38.53,41.26,43.17,47.16,51.53,52.19,67.32,70.89,81.81,120.05,125.19,127.18,127.79,128.03,128.71,141.34,143.77,144.28,168.30,170.13,171.29,172.22。
【0153】
tert-ブチルN4-トリチル-L-アスパラギニルグリシル-L-ロイシナート(3)
S13(703mg、1当量、854μmol)をDMF(1.50mL)に溶解した。溶液にピペリジン(291mg、0.34mL、4当量、3.42mmol)を加え、得られた溶液を窒素下で1時間撹拌した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液、続いてブラインで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、3(308.8mg、60.2%)を白色泡状物として得た。1H NMR(400MHz;CDCl3):δ0.88(6H,dd,J6.44 2.56,2×CH3-Leu),1.32-1.67(3H,m,Hγ-Leu及びHβ-Leu),1.41(9H,s,3×CH3-tBu),1.91(2H,s,NH2),2.62(2H,d,J5.88,Hβ-Asn),3.60(1H,t,J5.86,Hα-Asn),3.74-3.96(2H,m,CH2-Gly),4.36-4.45(1H,m,Hα-Leu),7.00(1H,d,J8.01,NH-Leu),7.13-7.28(15H,m,H-Ar),7.90-8.05(2H,m,NH-Gly及びNH-Asn側鎖)。13C NMR(101MHz,CDCl3):δ22.19,22.67,24.88,28.01,41.40,41.51,42.93,51.47,52.36,70.49,81.76,126.92,127.87,128.69,144.65,168.60,170.32,172.15,174.80。C35H45N4O5のHRMS計算:601.3390;実測:601.3392。
【0154】
実施例5:オリゴヌクレオチドの合成
すべてのDNAオリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems Inc.(ABI)394DNA/RNA合成装置で、標準的なホスホロアミダイト化学を使用して化学合成された。ホスホロアミダイト1の無水DCM溶液(0.12M)又は2の無水ACN溶液(0.12M)をカップリングに使用し、カップリング時間を10分間延長した。プレパックされた1μmol官能化制御細孔ガラスカラム(Glen Research)を、5’又は内部タグ付きオリゴヌクレオチド用に使用し、1μmol UnyLinker(Chemgenes)を3’タグ付きオリゴヌクレオチド用に使用した。オリゴヌクレオチドを支持体から切断し、NH3濃水溶液により55℃で16時間脱保護した。次いで、オリゴヌクレオチドを、逆相HPLC(250×10mm、Waters、XBridge BEH C18)により、ACN/TEAA移動相混合物を使用して、8分間かけて5%~35%ACNの勾配、続いて12分間で35%~100%ACNの勾配を用いて精製した。DMTを、PolyPakカートリッジ(Glen Research)上で、POオリゴヌクレオチド又はPSオリゴヌクレオチドに対してそれぞれ2%又は3%のTFA溶液を使用して除去した。次いで、精製されたオリゴヌクレオチドを、Glen Pak2.5脱塩カラム(Glen Research)を使用して脱塩した。次いで、脱塩されたオリゴヌクレオチドを凍結乾燥し、脱イオン水に溶解し、260nmでのUV吸光度によって定量した。
【0155】
実施例6:ペプチドの調製
すべてのペプチドはChempeptide Limitedから購入した。ペプチドをDI水に溶解して、Pep1及びPep3については5mM、Pep2については9.95mM、Pep4については0.72mMのストック溶液を作製した。
【0156】
実施例7:アダプターAc-E(NGL)LPETGGW-NH2(配列番号7)の合成
【0157】
【0158】
ペプチドS14、Ac-E(OAII)LPETGGW(配列番号8)を、Fmoc化学を使用する10mLリアクターで、Biotage Initiator+Alstraマイクロ波ペプチド合成装置を使用して、Rink Amide樹脂(GL-biochem、0.65mmol/g)上で0.2mmolスケールで自動的に合成した。樹脂を70℃で20分間膨潤させた。Fmoc脱保護は室温で2段階で行われ、最初に樹脂をDMF中20%ピペリジンで3分間処理し、続いてDMF中20%ピペリジンで10分間処理した。カップリングは、5当量のFmoc-アミノ酸モノマー、5当量のオキシマ及び5当量のDMF中のDICを使用して75℃で5分間実施した。N末端を5当量の無水酢酸、6当量のピリジンを使用して室温で20分間キャッピングした。OAII保護基を、DCM:DMF(3:1、4mL)に溶解したPd(PPh3)4(24mg)、DMBA(310mg)を用いて窒素雰囲気下で2時間除去した。脱保護カクテルを排出し、樹脂をDMF中の0.8M LiClで洗浄して、樹脂に結合したS15を得た。各カップリングにつき5当量のトリペプチド3、5当量のオキシマ及び5当量のDICを使用して、トリペプチド3をS15に75℃で5分間ダブルカップリングさせた。合成が完了した後、樹脂をDCMで洗浄し、真空下で乾燥させた。TFA-フェノール-H2O-TIPS(88:5:5:2)のカクテルを用いて、室温で3.5時間、固体支持体からペプチドを切断した。切断カクテルを窒素流により蒸発させ、粗生成物を冷エーテルから沈殿させ、真空下で乾燥させた。次いで生成物を、逆相分取カラム(10mm×250mm、XBridge Peptide BEH C18 OBD)を使用し、0.1%TFAを含むACN/H2O移動相混合物を使用した25分間にわたる10%~70%ACNの直線勾配でHPLCによって精製した。溶媒を凍結乾燥により除去し、アダプターペプチド4を得た。次に、生成物を脱イオン水で再構成し、280nmでのUV吸光度によって定量した。MALDI-TOF MS計算値:1212.6;実測[M+3Na]+:1280.9。
【0159】
実施例8:ソルターゼAの発現
ソルターゼA変異体であるソルターゼ-7M(配列番号19にC末端6×Hisタグを有するもの)をコードする遺伝子断片を含むプラスミドをAddgeneから購入し、Rosetta T1R細胞に形質転換した。細胞を、抗生物質を含むLB中でOD6000.6~0.8まで増殖させ、0.5mM IPTGを添加して18℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離によって回収し、細胞ペレットを50mMトリス-HCl、pH7.5、150mM NaCl、10%(v/v)グリセロールを含む溶解緩衝液に再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解し、粗溶解物を21,000rpm、4℃で1時間の遠心分離によって清澄化した。可溶性タンパク質を、Niアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap、GE Healthcare)、続いて50mMトリス-HCl、pH7.5、150mM NaCl、10%(v/v)グリセロールで予め平衡化したサイズ排除クロマトグラフィー(GE Healthcare)によって精製した。ソルターゼ-7Mタンパク質を、10kDa MWCOセントリコン(Millipore)を使用して濃縮し、濃度はビシンコニン酸タンパク質アッセイ(Pierce)を使用して決定し、-80℃で保存した。
【0160】
実施例9:OaAEP1bの発現
ヒトユビキチン(1~76aa)及びC247A変異を有するOaAEP1b(24~474aa)を有するN末端ヒスチジンタグをコードする遺伝子断片(配列番号20)を合成し(IDT)、pET-28bベクター(Novagen)にクローニングし、Rosetta T1R細胞に形質転換した。細胞を、Yangらによって記載されている手順(Yang et al.J.Am.Chem.Soc.2017,139(15),5351-5358)に若干の変更を加えて発現させ、精製した。簡単に説明すると、細胞を抗生物質を含むLB中でOD6000.6~0.8まで増殖させ、0.5mM IPTGを添加し、220rpm、16℃で一晩振盪して誘導した。細胞を10,000rpm、4℃で10分間遠心分離して回収し、細胞ペレットを50mMトリス-HCl pH7.5、150mM NaCl、10%(v/v)グリセロール及び0.05%(v/v)ノニデットP-40を含む溶解緩衝液に再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解し、粗溶解物を21,000rpm、4℃で20分間の遠心分離によって清澄化した。可溶性タンパク質を、Niアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap、GE Healthcare)及び陰イオン交換クロマトグラフィー(HiTrapQ、GE Healthcare)によって精製した。精製したタンパク質画分を、20mM HEPES pH7.0、2mM DTT、10%(v/v)グリセロールを含む緩衝液中で混合した。OaAEP1bタンパク質を、サンプルのpH4.0を達成するために氷酢酸を添加してOaAEP1bのキャップドメインを除去することにより活性化した。タンパク質を室温で一晩放置し、反応の完全性をSDS-PAGEによってモニタリングした。活性化されたOaAEP1bタンパク質を10kDa MWCOセントリコン(Millipore)を使用して濃縮し、タンパク質濃度をビシンコニン酸タンパク質アッセイ(Pierce)を使用して決定し、-80℃で保存した。
【0161】
実施例10:シアン蛍光タンパク質(CFP)のクローニング及び発現。
シアン蛍光タンパク質(CFPPAL)(配列番号9)
MGSSHHHHHHSQDPMVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTWGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYISHNVYITADKQKNGIKANFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYKNGL
CFPPALをコードする遺伝子断片をpETDuet-1ベクター(Novagen)にクローニングし、Rosetta T1R細胞に形質転換した。細胞を抗生物質を含むLB中でOD6000.6~0.8まで増殖させ、0.5mM IPTGを添加して220rpm、18℃で一晩振盪して誘導した。10,000rpm、4℃で7分間の遠心分離によって細胞を回収し、細胞ペレットを20mM Kpi pH7.0、500mM KCl、2mM DTT、10%(w/v)グリセロール、20mMイミダゾールを含む溶解緩衝液に再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解し、粗溶解物を21,000rpm、4℃で1時間の遠心分離によって清澄化した。粗溶解物を濾過した後、アフィニティー精製のためにNi-NTAカラム(Qiagen)にロードした。精製したタンパク質画分を合わせ、20mM Kpi pH7.0、150mM KClを含む緩衝液中で10kDa MWCOセントリコン(Millipore)を使用して濃縮した。
【0162】
シアン蛍光タンパク質(CFPSORT)(配列番号10)
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTWGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYISHNVYITADKQKNGIKANFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYKLPETGLEHHHHHH
CFPSORTをコードする遺伝子断片をpET-28bベクター(Novagen)にクローニングし、Rosetta T1R細胞に形質転換した。細胞を抗生物質を含むLB中でOD6000.6~0.8まで増殖させ、0.5mM IPTGを添加して220rpm、18℃で一晩振盪して誘導した。10,000rpm、4℃で7分間の遠心分離によって細胞を回収し、細胞ペレットを20mM Kpi pH7.0、500mM KCl、2mM DTT、10%(v/v)グリセロール、20mMイミダゾールを含む溶解緩衝液に再懸濁した。細胞を超音波処理によって溶解し、粗溶解物を21,000rpm、4℃で1時間の遠心分離によって清澄化した。粗溶解物を濾過した後、アフィニティー精製のためにNi-NTAカラム(Qiagen)にロードした。精製したタンパク質画分を合わせ、50mMトリスHCl、pH7.5、150mM NaClを含む緩衝液中で、10kDa MWCOセントリコン(Millipore)を使用して濃縮した。
【0163】
実施例11:ペプチドとのライゲーション反応
OaAEP1bを使用するライゲーション反応を、別段の定めがない限り、20mMリン酸緩衝液、OaAEP1bリガーゼ(0.01~0.3当量)、ペプチド基質(200μM)及びオリゴヌクレオチド基質(500uM~1mM)を含む20μLの反応混合物中で37℃で実施した。
【0164】
ソルターゼAを使用するライゲーション反応を、別段の定めがない限り、50mMトリスHCl、150mM NaCl(pH7.5)緩衝液、ソルターゼAリガーゼ(1~3当量)、ペプチド基質(200μM)及びオリゴヌクレオチド基質(1mM)を含む20μLの反応混合物中で4℃で実施した。
【0165】
コンジュゲートキメラ生成物を、Nexera UHPLCシステム(島津製作所)にて35分間かけて5%~40%アセトニトリル/TEAAの直線勾配で、逆相分析カラム(250×4.6mm、YMC-Triart C18)を使用して精製した。濃度(10、50、100、150、及び200μM)に対する260nmでのODNrefピーク面積の直線フィットをキャリブレーションプロットとして使用した。コンジュゲートキメラ生成物に対応する260nmのピークを積分し、線形校正プロットから収率を導き出した。HPLCピークの同一性を、MALDI-TOF MS(JEOL JMS-S3000)分析によって確認した。
【0166】
実施例12:CFPとのライゲーション反応
OaAEP1bを使用したライゲーション反応を、20mMリン酸緩衝液pH7.4、タンパク質基質(100μM)、オリゴヌクレオチド基質(1mM)及びOaAEP1bリガーゼ(0.02当量)を含む5μLの反応混合物中で37℃で1時間実施した。反応はSDS-PAGEでモニタリングした。
【0167】
ソルターゼAを使用するライゲーション反応を、50mMトリスHCl、150mM NaCl(pH7.5)緩衝液、タンパク質基質(50μM)、オリゴヌクレオチド基質(500μM)及びソルターゼAリガーゼ(1当量)を含む5μLの反応混合物中で4℃で16時間実施した。反応はSDS-PAGEでモニタリングした。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
本明細書では、POCの調製を大幅に簡素化する、ペプチド及びオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対するホスホロアミダイトタグに基づくアプローチを開示する(
図1)。短いペプチド認識モチーフ(≦3アミノ酸)は、自動合成中にオリゴに容易に組み込まれることができるタグホスホロアミダイトに変換され(
図1a、上)、続いて、マッチングライゲーションハンドルを含む対応するペプチドと、同族リガーゼによりライゲーションされる(
図1a、下)。この方法の有用性は、ソルターゼを用いて(Mazmanian et al.Science 1999,285(5428),760-3;Mao et al.J.Am.Chem.Soc.2004,126(9),2670-1;Chen et al.Proc Natl Acad Sci USA 2011,108(28),11399-404;Popp&Ploegh,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2011,50(22),5024-32)及びペプチドアスパラギニルリガーゼ(PAL)を用いて(Nguyen et al.Nat.Chem.Biol.2014,10(9),732-8;Harris et al.Nat Commun 2015,6,10199;Yang et al.J.Am.Chem.Soc.2017,139(15),5351-5358;Jackson et al.Nat Commun 2018,9(1),2411;Hemu et al.Proc Natl Acad Sci USA 2019,116(24),11737-11746)実証されており、これらはタンパク質工学で広く使用されている2つの異なるクラスのリガーゼである。このライゲーション戦略は、様々な範囲のオリゴ及びペプチド構築物に適用することに成功し、さらにタンパク質とオリゴのライゲーションにも拡張された。タグの組み込みのモジュール性により、制御可能な方法で複数のペプチド/タンパク質をオリゴにコンジュゲートする機会がさらに提供される。したがって、我々のアプローチは、POCの合理化された開発と生産に向けた直接的な道を提供する。
【0173】
ソルターゼは、タンパク質を細菌の細胞壁に固定するトランスペプチダーゼのファミリーである。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のソルターゼAは、コンセンサス選別モチーフLPXTGを含むC末端にN末端ポリグリシンをライゲーションする。したがって、スレオニノール(S1)足場から開始して、Gly-Gly-Glyライゲーションモチーフを含むホスホロアミダイトタグ(1)(
図1b、赤色)を合成した(スキームS1)。化合物1はホスホロアミダイトベースの固相オリゴヌクレオチド合成と十分に適合するため、Gly-Gly-Glyタグをオリゴヌクレオチドに直接組み込むことができる(
図1a、上)。
【0174】
同族ライゲーションハンドルを含むモデルペプチド(Pep1、表2)に対して、組換えソルターゼAを使用して5’-(Gly-Gly-Gly)タグ付き16ヌクレオチド(nt)オリゴ配列(Hong et al.,Sci.Transl.Med.2015,7(314),314ra185)(ODN1、表1)のライゲーションが進められた(Wuethrich et al.PLoS One 2014,9(10),e109883;Witte et al.Nature Protocols 2015,10,508)。ライゲーション反応を、150mM NaClを含む50mMトリス-HCl(pH7.5)緩衝液中、4℃で16時間、ペプチド:オリゴヌクレオチドの比1:5で実施した。ライゲーション産物を逆相(RP)-HPLCで単離し、その質量をMALDI-TOFで確認した(表3)。陰性対照として、ソルターゼAを反応混合物から除外した場合、及びタグのない参照オリゴ(ODNref)を反応に使用した場合、ライゲーション産物は観察されなかった(表3)。同じ配列の5’-(Gly-Gly-Gly)タグ付き完全ホスホロチオアート(PS)修飾オリゴ(ODN2、表1)とPep1のライゲーションも同様に成功したため(表3)、ヌクレアーゼ耐性を向上させるためにPS骨格化学が広く使用されている治療用オリゴとのコンジュゲートに対するこのアプローチの適用可能性が検証された。加えて、POCライゲーションは、オリゴの3’末端(ODN3)又は内部位置(ODN4)のいずれかでのタグの交互の配置に関係なく達成された(表3)。さらに、ODN2は、C末端に選別モチーフを含む38アミノ酸(aa)長のグルカゴン様ペプチド1(GLP1)バリアントへのライゲーションにも成功した(Pep2、表2、表3)。
【0175】
次に、PALを用いたPOCライゲーションを行った。PALは、シクロチド生成植物に見出されるアスパラギニル特異的リガーゼのファミリーであり、その中には、ブテラーゼ1(Nguyenら、前出)及びOaAEP1b(Harrisら、前出;Yangら、前出)が含まれる。OaAEP1bの天然基質は、N末端とC末端にそれぞれペプチド配列GLとNGLを含む。この例では、我々はヒドロキシプロリノール(S4)足場から開始して、固相オリゴヌクレオチド合成と十分に適合性のある(Gly-Leu)ライゲーションモチーフ(
図1b)を含むホスホロアミダイトタグ(2)を合成した(スキームS2)。(Gly-Leu)での5’タグ付きODNrefの天然型、PS修飾型、及びロック核酸(LNA)ギャップマーバージョン(それぞれODN5、ODN6、及びODN7、表1)はすべて、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)中の組換えOaAEP1bをペプチド:オリゴヌクレオチド比1:2.5で使用する同族ライゲーションハンドルを含む(表3)モデルペプチド(Pep3、表2)へのコンジュゲートに成功した。PALファミリーの高い効率のおかげで、OaAEP1bとのわずか30分のインキュベーション後にライゲーション産物が得られた。Pep3と他の様々なオリゴ構築物(ライゲーションタグの異なる配置(ODN8及びODN9)からなるか、又は追加のオリゴ修飾(ジスルフィド修飾剤を含むODN S8、表S1)を含むもの)とのライゲーションも同様に成功した。一方、C末端にライゲーションハンドルを含む34aaのGLP1バリアント(Pep4、表2)とODN5及びODN6とのライゲーションも、リガーゼと16時間インキュベートした後に成功した(表3)。
【0176】
様々なペプチド及びオリゴヌクレオチドのライゲーションに対するタグベースのアプローチの適応性を実証したので、次に、タンパク質とオリゴヌクレオチドとのライゲーションに対するその応用を調査した。この目的のために、C末端にLPETG(配列番号6)(ソルターゼA用;CFP
SORT)又はNGL(OaAEP1b用;CFP
PAL)ライゲーションハンドルを保持するようにシアン蛍光タンパク質(CFP)バリアントを操作した(
図2a)。両方のタンパク質を、ソルターゼA及びOaAEP1bを使用して、異なるオリゴ構築物のパネルに対してライゲーションした。ソルターゼAでは、総じてすべての構築物でCFPライゲーションの成功が観察され(
図2b)、ODN1、ODN2、及びポリdTオリゴ(ODN S1、表S1)では、特に高い収率が得られた。OaAEP1bでも、総じて試験した構築物のCFPライゲーションの成功が、わずか1時間のインキュベーション時間であっても観察された(データは不掲載)。これらの例は、タンパク質とオリゴヌクレオチドのライゲーションに対するタグベースのアプローチを実証しており、オリゴヌクレオチドと他のタンパク質の対応物とのライゲーションに容易に適応できるはずである。
【0177】
化学的コンジュゲーションは、適合性のある直列型ペプチド及びオリゴ合成の設計から、合成後のコンジュゲーションのためのペプチド及びオリゴフラグメントの官能化に至るまで、POCの開発に対する一般的なアプローチである。本発明は、POC生成に酵素的次元をもたらす。カスタムホスホロアミダイトタグの設計を通じてライゲーションモチーフをオリゴに直列で組み込むことにより、オリゴは、同族リガーゼによってマッチングライゲーションハンドルを含むペプチド/タンパク質の対応物と容易に結合できる。具体的には、このアプローチの有用性は、ペプチド及びタンパク質工学で広く使用されている2つの異なるリガーゼクラスであるソルターゼとPALを使用して実証された。
【0178】
タンパク質工学においてリガーゼは広く採用されているにもかかわらず、POC生成へのリガーゼの適応に関する報告はほとんどなかった。Koussaらは、ソルターゼを使用したDNA-タンパク質ハイブリッドの構築について報告した(Koussa et al.Methods 2014,67(2),134-41)。一方、Harmandらは、ソルターゼAとブテラーゼ1を組み合わせることで、DNAリンカーを介してC-to-C融合タンパク質を生成した(Harmand et al.Bioconjug Chem 2018,29(10),3245-3249)。どちらの場合も、タンパク質コンジュゲーションはオリゴの5’末端に局在しており、ライゲーション用のオリゴを調製するために中間工程が必要であった。本発明では、ホスホロアミダイトタグは自動固相合成中にオリゴ鎖に直接結合され、標準的な切断、脱保護、及び精製プロトコール後にライゲーションの準備が整った。さらに、5’末端/3’末端であろうと内部位置であろうと、オリゴへのタグの組み込みのポイントに関係なく、POCが問題なく生成されることが示された。原理的には、同じホスホロアミダイトタグの複数のコピーを、同じペプチド/タンパク質の複数のコピーとコンジュゲートさせるために、オリゴ上にタンデムに又は別々の遺伝子座で結合させることができる(
図3)。異なるホスホロアミダイトタグを組み合わせて、アドレス指定可能な方法で2つ以上の異なるペプチド/タンパク質を単一のオリゴにコンジュゲートさせることもできる(
図1b及び
図3)。
【0179】
ホスホロアミダイトタグベースのアプローチを、様々なオリゴ、様々なペプチド、及びタンパク質のパネルに対して検証した。使用したオリゴ構築物の多様な性質(表S1)は、タグ付けの部位(例えば、5’末端:ODN1/ODN2/ODN5/ODN6/ODN7、3’末端:ODN3/ODN8;内部:ODN4/ODN9)から、追加の修飾剤の存在(例えば、ジスルフィド修飾剤:ODN S8)又は完全に骨格修飾されている(例えば、PS:ODN2/ODN6、PS LNAギャップマー:ODN7)まで、非標準的な構造形式(例えば、G四重鎖形成モチーフ:ODN S3/ODN S4/ODN S9)の採用まで、提案された方法論の多用途性を裏付けた。さらに、コンジュゲーションにリガーゼを利用することで、酵素ライゲーションの高い効率と特異性を活用することが可能になった。ペプチドと、対応するライゲーションハンドルを含む対応するオリゴとを同族リガーゼと単純にインキュベートするだけで、副生成物を最小限にして望ましいPOCが得られる。PALの場合、POCはリガーゼとのインキュベーションの開始からわずか30分で生成できる。ペプチド及びオリゴ対応物の標準的な固相合成及び精製以外に、追加の活性化や準備工程は必要ない。賢明な実験設計(例えば、CFPSORTのように、ライゲーションハンドル後のペプチド/タンパク質C末端にHis×6ラベルを組み込むなど)を使用すると、POC精製をさらに簡素化できる。未反応のペプチド/タンパク質は、脱離基及びリガーゼとともに、そのすべてにHis×6標識が含まれており、ニッケルカラムを通過させることで反応混合物から容易に除去できるため、液体クロマトグラフィーによって過剰なオリゴ基質からPOCを直接分離できる。
【0180】
近年、標的送達又は有効性の増強を達成するために、RNA治療薬とペプチド及びタンパク質のコンジュゲーションに対する関心が高まっている。使用されるペプチド/タンパク質部分は、短いペプチドモチーフ(例えば、インテグリン結合RGD)から中間の長さのオリゴペプチド(例えば、GLP1)又は高分子抗体までの範囲に及ぶ。本明細書では、GLP1バリアントを最小限のステップでPSオリゴと高収率でライゲーションできることが示され、この戦略はより大きいタンパク質成分の状況で問題なく適用された。ライゲーションアプローチは、治療薬としての追加のペプチド-/タンパク質-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの開発及び生産を促進するために容易に適応できるはずである。
【0181】
さらに、異なる構成からなるオリゴとペプチド及びタンパク質のC末端とのライゲーションが実証された。ペプチド又はタンパク質のN末端へのライゲーションを実現するには、少なくとも2つの可能な代替戦略が考えられる。1つ目は、ペプチドとオリゴのライゲーションハンドルを直接交換することである(つまり、オリゴ上のLPETGタグ、ソルターゼAのペプチド上のGGGハンドル;オリゴ上のNGLタグ、OaAEP1bのペプチド上のGLハンドル)。したがって、LPETG(配列番号6)又はNGLホスホロアミダイトタグは、その後のライゲーションのためにオリゴ末端上にライゲーションハンドルの組み込みをもたらすであろう。2つ目の戦略は、オリゴ末端にGGG又はGLタグを保持しつつ、ペプチドのN末端からNGL及びLPETG(配列番号6)ライゲーションハンドルを突き出させるものである。ペプチドに対する後者の戦略の実装は、固相ペプチド合成中にLPETG又はNGL(3、スキームS4)ペプチドモチーフをN末端又はN末端残基の側鎖にカップリングすることで比較的簡単である(
図4)。このようにして、側鎖残基から突き出たマッチングライゲーションハンドルでのライゲーションを通じて、オリゴをペプチドの内部残基にコンジュゲートさせることもできる。一方、タンパク質のN末端でのLPETG又はNGLペプチドモチーフのカップリングは、カスタムリンカー又はアダプター、例えばLPETG及びNGLモチーフの両方を突き出させる二機能性タグ(4、スキームS5)の助けを借りて達成できる(
図5)。原則として、化合物3及び4の使用はPOC自体に限定されるものではなく、むしろペプチド/タンパク質を別の実体、例えばタンパク質のN対N融合及びタンパク質と小分子とのN末端コンジュゲーションと結合させるためにより広い範囲で適用できる。
【0182】
2つのホスホロアミダイトタグの設計において、タグモチーフ(GGG及びGL)が組み込まれたaa様リンカー(ソルターゼA用のスレオニノール(S1)、OaAEP1b用のヒドロキシプロリン(S4))を選択した。これらの部分は、(i)コンパクトな足場、(ii)ペプチド合成との十分な適合性、したがってタグ生成中のアミノ酸残基の連続結合、及び(iii)異なる反応性を有する2つのヒドロキシル基の存在、中でも、(iiia)一方はオリゴへのカップリングのためにアミダイト官能基に変換され、(iiib)他方はオリゴ鎖を延長するために保護基(例えば、4,4’-ジメトキシトリチル;DMT)に結合されることにより、リンカーとしてよく適している。他の様々な足場をリンカーとして、例えば、タグモチーフが糖、リン酸、又は核酸塩基の構成要素のいずれかに直接標識されているヌクレオチドホスホロアミダイト、又はさらに本明細書に記載のようなヌクレオチドアナログの他の化学修飾基として適所に使用できる可能性がある。
【0183】
ここでは、Gly-Gly-Gly(ソルターゼA)及びGly-Leu(PAL)をホスホロアミダイトタグのライゲーションモチーフとして利用した。本明細書に記載されているように、このアプローチはライゲーションモチーフの変化に影響を受けやすいことが判明した。前者の場合、ポリアラニンモチーフが、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)由来のソルターゼAとのペプチド-タンパク質ライゲーションに以前に使用された(Raeeszadeh-Sarmazdeh et al.Colloids Surf.B.Biointerfaces 2015,128,457-463)。PALの場合、米国特許出願第2019/0218586号に示されているように、(Arg-Leu)及び(Pro-Leu;S9、スキームS3)を含むバリアントは、OaAEP1bとのライゲーション効率がより優れているとは言わないまでも、同様の結果につながると予想される。さらに、PAL及びAEPのファミリーのメンバーは異なる配列優先性を示すため、使用できる追加の潜在的なタグモチーフが提供される。モチーフ選択空間は、追加のリガーゼファミリー、例えばサブチリガーゼを考慮してさらに拡張することができる(Weeks et al.Chem.Rev.2020,120(6),3127-3160)。選択したリガーゼに関係なく、POCのタグ補助酵素ライゲーションの中心原理が適用される。
【0184】
結論として、各リガーゼに合わせたホスホロアミダイトタグの開発による、POG生成のための2つの別個のリガーゼの使用が、本明細書で成功することが実証された。多様なオリゴ及びペプチド/タンパク質構築物が高効率で問題なくライゲーションされた。ライゲーションアプローチは、POCの合理化された開発と生産への直接的な道を提供する。
【0185】
本明細書で参照されるすべての文書は、その全体が参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】