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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20240220BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08G59/20
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552046
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 KR2022003078
(87)【国際公開番号】W WO2022186650
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0029560
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】イ、ギュヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジナ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD111
4J002CD11W
4J002CP051
4J002CP05W
4J002EB106
4J002EQ017
4J002FD097
4J002FD156
4J036AA05
4J036AJ21
4J036AK17
4J036GA24
4J036JA15
(57)【要約】
硬化性シリコーン組成物を提供する。組成物は、(A)一価芳香族炭化水素基を有するエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂と、(B)エポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーと、(C)光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤と、(D)黒色アゾ染料と、を含む。この組成物は、良好~優れた貯蔵安定性を示し、硬化して収縮及び「ムラ」欠陥を引き起こすことなく、良好~優れた遮光性を示す硬化物を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A)以下の平均単位式で表されるエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂であって、
【化1】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基、C6~10一価芳香族炭化水素基、及び一価エポキシ置換有機基から選択される、同じか又は異なる有機基であり、ただし、全Rの少なくとも約15mol%は、C6~10一価芳香族炭化水素基であり、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、0≦a<0.4、0<b<0.5、0<c<1、0≦d<0.4、0.1≦b/c≦0.6、かつa+b+c+d=1の条件を満たす数であり、全シロキサン単位の約2~約30mol%は、前記一価エポキシ置換有機基を有する、エポキシ官能性シリコーン樹脂と、
(B)以下の一般式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーであって、
【化2】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基及びC6~10一価芳香族炭化水素基から選択される、同じか又は異なる有機基であり、各Xは、同じか又は異なる一価エポキシ置換有機基であり、約0~約5の数であり、「m」は、約0~約100の数であり、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約5質量%~約80質量%の量の、エポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーと、
(C)成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.01質量%~約5質量%の量の光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤と、
(D)成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.1質量%~約5質量%の量の黒色アゾ染料と、を含む硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(A)における前記一価エポキシ置換有機基は、グリシドキシアルキル基、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル基、及びエポキシアルキル基から選択される基である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
成分(B)における前記一価エポキシ置換有機基は、グリシドキシアルキル基、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル基、及びエポキシアルキル基から選択される基である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
成分(B)が、下記の一般式によって表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーである、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【化3】

(式中、R及びXは上記のとおりである)。
【請求項5】
成分(D)が、ソルベントブラック3、ソルベントブラック27、ソルベントブラック28、ソルベントブラック29、ソルベントブラック34、ソルベントブラック43、及びソルベントブラック46から選ばれる黒色アゾ染料である、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、黒色ギャップ充填材料が、色調及び鮮明度を向上させるためにLEDディスプレイ用途に使用されている。例えば、黒色ギャップ充填材料は、典型的には、ピクセルピッチギャップ及びLEDチップ間のギャップを充填するために使用され、LEDチップと同じ高さであり、滑らかな全体的なディスプレイ表面を提供する。黒色ギャップ充填材料の主な目的は、ディスプレイパネルから垂直に放射されない光を吸収することである。側方向光は互いに干渉し、ディスプレイ用途の鮮明度及び輝度を低下させる可能性がある。この光吸収性能、すなわち遮光性は、可視域波長(360nm~740nm)からの平均光学濃度(OD)値として表される。一般に、この用途は2以上の平均OD値を必要とし、これは光が少なくとも99%以上吸収されることを意味する。
【0003】
シリコーンギャップ充填材料は、0.4mm~1.6mmの典型的な高さを有する従来のLED/LCDチップにおいて使用される。LED/LCDチップパッケージの十分な高さに起因して、これらのシリコーンギャップ充填材料は、着色剤としてカーボンブラックを使用することによって目標OD値を満たすことができた。特許文献1は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、カーボンブラック顔料、及び白金系触媒を含む硬化性シリコーン組成物について記載する。
【0004】
しかしながら、LEDがより小さく、より薄くなるにつれて、これらのシリコーンギャップ充填材料は、マイクロ/ミニLED用途のための黒色ギャップ充填材料に使用することができなかった。マイクロLEDパッケージの高さは、0.1mmの厚さまで低減され、これは、黒色ギャップ充填材料が、0.1mmの厚さで2以上のOD値を有する必要があることを意味する。更に、光観察性能(OD値>2)を満たすために、試験中に追加のカーボンブラックを配合物に導入した。しかしながら、過剰量のカーボンブラックは、貯蔵条件中に深刻な沈降及び分離の問題を引き起こし、使用中に目詰まりの問題を引き起こした。沈降/分離は、不均一な黒色外観を引き起こし、サンプル内の光透過率の変動を引き起こす。目詰まり現象は、分配ラインにおける加工性の問題をもたらす。
【0005】
特許文献1は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、アゾ染料、及び白金系触媒を含む硬化性シリコーン組成物について記載する。黒色ギャップ充填材料が薄い材料の厚さでODを必要とする場合、沈降問題を防止するために黒色染料が使用される。しかしながら、ほとんどの染料は親水性であり、有機及び無機ポリマーと相溶性でない。有機ポリマーと相溶性である疎水性アゾ染料があるが、それらはシリコーンマトリックスと相溶性ではない。多くの先行技術は、シリコーン配合物中に黒色染料を溶解するために溶媒を利用する。溶媒は、アゾ染料をシリコーンポリマーに溶解するために広く使用されている。しかしながら、溶媒は硬化プロセス中に材料の収縮を引き起こし、これは材料の不均一な厚さ及び反りを引き起こす可能性がある。溶媒の乾燥はまた、「ムラ」効果を引き起こし、硬化領域の周りに汚れた表面を作る。
【0006】
また、特許文献3は、良好な透明性を有し、エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂と、エポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーと、カチオン光開始剤と、を含む硬化性シリコーン組成物であって、紫外線の照射によって硬化され得る、硬化性シリコーン組成物を記載している。しかしながら、特許文献3は、透明性が不良であるため、黒色アゾ染料を添加することは記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:米国特許出願公開第2007/0287771(A1)号
特許文献2:米国特許出願公開第2010/0103507(A1)号
特許文献3:米国特許出願公開第2014/0154626(A1)号
【発明の概要】
【0008】
技術的問題
本発明の目的は、優れた貯蔵安定性を有し、硬化して収縮及び「ムラ」欠陥を引き起こすことなく、良好~優れた遮光性を示す硬化生成物を形成する硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0009】
問題に対する解決策
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)以下の平均単位式で表されるエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂であって、
【化1】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基、C6~10一価芳香族炭化水素基、及び一価エポキシ置換有機基から選択される、同じか又は異なる有機基であり、ただし、全Rの少なくとも約15mol%は、C6~10一価芳香族炭化水素基であり、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、0≦a<0.4、0<b<0.5、0<c<1、0≦d<0.4、0.1≦b/c≦0.6、かつa+b+c+d=1の条件を満たす数であり、全シロキサン単位の約2~約30mol%は、前記一価エポキシ置換有機基を有する、エポキシ官能性シリコーン樹脂と、
(B)以下の一般式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーであって、
【化2】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基及びC6~10一価芳香族炭化水素基から選択される、同じか又は異なる有機基であり、各Xは、同じか又は異なる一価エポキシ置換有機基であり、約0~約5の数であり、「m」は、約0~約100の数であり、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約5質量%~約80質量%の量の、エポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーと、
(C)成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.01質量%~約5質量%の量の光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤と、
(D)成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.1質量%~約5質量%の量の黒色アゾ染料と、を含む。
【0010】
様々な実施形態では、成分(A)における一価エポキシ置換有機基は、グリシドキシアルキル基、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル基、及びエポキシアルキル基から選択される基である。
【0011】
様々な実施形態では、成分(B)における一価エポキシ置換有機基は、グリシドキシアルキル基、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル基、及びエポキシアルキル基から選択される基である。
【0012】
様々な実施形態では、成分(B)は、以下の一般式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーである。
【化3】

(式中、R及びXは上記のとおりである)。
【0013】
種々の実施形態では、成分(D)は、ソルベントブラック3、ソルベントブラック27、ソルベントブラック28、ソルベントブラック29、ソルベントブラック34、ソルベントブラック43、及びソルベントブラック46から選択される。
【0014】
発明の有利な効果
本発明の硬化性シリコーン組成物は、良好~優れた貯蔵安定性を示し、硬化して収縮及び「ムラ」欠陥を引き起こすことなく、良好~優れた遮光性を示す硬化物を形成する。
【0015】
発明の形態
「含む(comprising)又は含む(comprise)」という用語は、本明細書において広義に使用され、「含む(including)又は含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」を意味し、それらの概念を包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。かかる軽微な変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、又は±0~2.5%ほどであり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。全般に、本明細書で使用するとき、「>」は「~を上回る」又は「超」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「エポキシ官能性」又は「エポキシ置換」は、エポキシ置換基である酸素原子が炭素鎖又は環系の2個の隣接する炭素原子に直接結合される官能基を指す。エポキシ置換官能基の例としては、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシロ(cylo)ヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシロヘキシル)プロピル基、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシロヘキシル)-2-メチルエチル基、2-(2,3-エポキシシロペンチル)エチル基、3-(2,3-エポキシシロペンチル)プロピル基などの(3,4-エポキシシクロアルキル)アルキル基;並びに2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される「ムラ」又は「ムラ欠陥」という用語は、1つ又は複数のピクセルが、均一な輝度を有するべきであるときに周囲のピクセルよりも明るい又は暗いコントラストタイプの欠陥を指す。例えば、意図された色の平坦領域が表示されるとき、ディスプレイ構成要素における種々の不完全性は、輝度の望ましくない変調をもたらし得る。ムラ欠陥は、一般に不均一な歪みである。一般的に、そのようなコントラストタイプの欠陥は、「染み」、「帯」、「筋」などとして識別することができる。
【0018】
本明細書で使用される「OD」又は「光学濃度」という用語は、遮光性を示すことを意味する。「OD」の値は、次式で表される。
OD=-log(I/I
ここで、Iは光学濃度変化素子への入射光の強度であり、Iは透過光の強度である。すなわち、「OD」の値が大きいほど、遮光性が良好であることを意味する。
【0019】
<硬化性シリコーン組成物>
成分(A)は、以下の平均シロキサン単位式で表されるエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂である。
【化4】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基、C6~10一価芳香族炭化水素基、及び一価エポキシ置換有機基から選択される、同じか又は異なる有機基である。
【0020】
成分(A)におけるC1~6一価脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びヘキシル基等のC1~6アルキル基;ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基等のC2~6アルケニル基;並びに3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基等のC1~6ハロゲン化アルキル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基が概して好ましい。
【0021】
成分(A)におけるC6~10一価芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基が挙げられる。それらの中でも、フェニル基が概して好ましい。
【0022】
成分(A)における一価エポキシ置換有機基の例としては、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、及び5-グリシドキシペンチル基などのグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシロヘキシル)エチル、3-(3,4-エポキシシロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシロヘキシル)-2-メチルエチル、2-(2,3-エポキシシロペンチル)エチル、及び3-(2,3-エポキシシロペンチル)プロピルなどの3,4-エポキシシクロアルキルアルキル基;並びに2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、及び4,5-エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基が挙げられる。それらの中でも、3,4-エポキシシクロアルキルアルキル基が概して好ましい。
【0023】
成分(A)において、全Rの少なくとも約15mol%、任意に少なくとも約20mol%、又は任意に少なくとも約25mol%は、C6~10一価芳香族炭化水素基である。一価芳香族炭化水素基の含有量が上記の下限以上であれば、硬化物の光透過率が向上し得、硬化物の機械的特性も向上する。
【0024】
式中、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、0≦a<0.4、0<b<0.5、0<c<1、0≦d<0.4、0.1≦b/c≦0.6、かつa+b+c+d=1、任意にa=0、0<b<0.5、0<c<1、0≦d<0.2、0.1<b/c≦0.6、かつb+c+d=1、又は任意にa=0、0<b<0.5、0<c<1、d=0、0.1<b/c≦0.6、かつb+c=1の条件を満たすモル分率及び数である。「a」は、0≦a<0.4、任意に0≦a<0.2、又は任意にa=0であり、それは、(R SiO1/2)シロキサン単位が多過ぎると、エポキシ含有オルガノポリシロキサン樹脂(A)の分子量が低下するためであり、また(SiO4/2)シロキサン単位が導入されると、エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)の硬化物の硬さが著しく増加し、硬化物が脆くなりやすくなる場合がある。この理由から、「d」は、0≦d<0.4、任意に0≦d<0.2、又は任意にd=0である。加えて、(R SiO2/2)単位と(RSiO3/2)単位とのモル比「b/c」は、約0.1以上かつ約0.6以下であり得る。いくつかの例では、エポキシ官能性シリコーン樹脂(A)の製造において、この範囲から外れると、不溶性の副生成物を生じる、強靭性の低下により生成物が亀裂しやすくなる、又は、生成物の強度及び弾性が低くなり引っかき傷がつきやすくなる恐れがある。いくつかの例では、モル比「b/c」の範囲は、約0.1より大きく、約0.6以下である。エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)は、(R SiO2/2)シロキサン単位及び(RSiO3/2)シロキサン単位を含み、その分子構造は、ほとんどの場合、網状組織構造又は三次元構造であり、それは「b/c」のモル比が約0.1より大きく、約0.6以下であるためである。したがって、エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)では、(R SiO2/2)シロキサン単位及び(RSiO3/2)シロキサン単位は存在するが、(R SiO1/2)シロキサン単位及び(SiO4/2)シロキサン単位は任意選択の構成単位である。すなわち、以下の平均単位式を含むエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂が存在し得る。
【化5】
【0025】
成分(A)において、分子中の全シロキサン単位の約2~約30mol%、任意に約10mol%~約30mol%、又は任意に約15mol%~約30mol%のシロキサン単位は、エポキシ置換有機基を有する。上記範囲の下限以上のこのようなシロキサン単位が存在すれば、硬化中の架橋密度が向上し得る。一方、この量が上記範囲の上限以下であると、硬化物の光透過率及び耐熱性を向上させることができるため、好適であり得る。エポキシ官能性一価炭化水素基中、エポキシ基は、アルキレン基を介してケイ素原子に結合することができ、これにより、エポキシ基はケイ素原子に直接結合しない。エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)は、周知の従来の製造方法によって生成することができる。
【0026】
エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)の重量平均分子量に関して特に制限はないが、硬化物の強靱性及び有機溶媒中でのその溶解度を考慮すると、いくつかの実施形態では、分子量は、約10以上かつ約10以下である。一実施形態では、エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂(A)は、異なる量及び種類のエポキシ含有有機基及び一価炭化水素基を有する、又は異なる分子量を有する、2種以上のこのようなエポキシ官能性シリコーン樹脂の組み合わせを含む。
【0027】
成分(B)は、以下の一般式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーである。
【化6】

式中、各Rは、C1~6一価脂肪族炭化水素基及びC6~10一価芳香族炭化水素基から選択される、同じか又は異なる有機基である。
【0028】
成分(B)におけるC1~6一価脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びヘキシル基等のC1~6アルキル基;ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基等のC2~6アルケニル基;並びに3-クロロプロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基等のC1~6ハロゲン化アルキル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基が概して好ましい。
【0029】
成分(B)におけるC6~10一価芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基が挙げられる。それらの中でも、フェニル基が概して好ましい。
【0030】
成分(B)において、全Rの少なくとも約10mol%、任意に少なくとも約20mol%、任意に少なくとも約30mol%、又は任意に少なくとも約40mol%は、C6~10一価芳香族炭化水素基である。一価芳香族炭化水素基の含有量が上記の下限以上であれば、硬化物の遮光性を向上させることができるだけでなく、硬化物の機械的特性も向上させることができる。
【0031】
式中、各Xは、同じか又は異なる一価エポキシ置換有機基である。Xの一価エポキシ置換有機基の例としては、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、及び5-グリシドキシペンチル基などのグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシロヘキシル)エチル、3-(3,4-エポキシシロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシロヘキシル)-2-メチルエチル、2-(2,3-エポキシシロペンチル)エチル、及び3-(2,3-エポキシシロペンチル)プロピルなどの3,4-エポキシシクロアルキルアルキル基;並びに2,3-エポキシプロピル基、3,4-エポキシブチル基、及び4,5-エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基が挙げられる。それらの中でも、3,4-エポキシシクロアルキルアルキル基が概して好ましい。
【0032】
上記の一般式中、「m」は、約0~約100、任意に約0~約20、又は任意に約0~約10の数である。「m」が上記範囲の上限以下である場合、硬化物の遮光性を向上させることができる。
【0033】
特に、本組成物の保存安定性及び硬化物の遮光性の観点から、(B)成分は、下記一般式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーであることが好ましい。
【化7】

(式中、R及びXは上記のとおりである)。
【0034】
25℃における成分(B)の状態は、限定されないが、概して液体である。成分(B)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、概ね約5~約100mPa・sの範囲内である。なお、本明細書において、粘度は、ASTM D 1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃において測定した値である。
【0035】
成分(B)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約5質量%~約80質量%の量、任意に約10質量%~約80質量%の量、任意に約10質量%~約70質量%の量、又は任意に約20質量%~約70質量%の量である。成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上であれば、硬化物の可撓性及び衝撃強度が向上し得る。一方、含有量が上記範囲の上限以下であると、硬化物の強靭性及び引張強度が向上し得る。
【0036】
成分(C)は、本組成物を硬化させる光酸発生剤及び/又は熱酸発生剤である。スルホニウム塩、ヨードニウム塩、セレノニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、パラトルエンスルホン酸塩、トリクロロメチル置換トリアジン、及びトリクロロメチル置換ベンゼンといった、当業者に既知である任意の酸発生剤を使用することができる。
【0037】
スルホニウム塩の例としては、式R で表される塩を挙げることができる。式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及び他のC1~6アルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、トリル、プロピルフェニル、デシルフェニル、ドデシルフェニル、及び他のC1~24アリール基、又は置換アリール基を表し得、式中、Xは、SbF 、AsF 、PF 、BF 、B(C 、HSO 、ClO 、CFSO 、及び他の非求核性非塩基性アニオンを表し得る。
【0038】
ヨードニウム塩の例としては、式R で表される塩を挙げることができ、セレノニウム塩の例としては、式R Seで表される塩を挙げることができ、ホスホニウム塩の例としては、式R で表される塩を挙げることができ、ジアゾニウム塩の例としては、式R で表される塩を挙げることができ、式中、R及びXは、R に関して本明細書に記載したものと同じである。
【0039】
パラトルエンスルホン酸塩の例としては、式CHSOc1で表される化合物を挙げることができ、式中、Rc1は、ベンゾイルフェニルメチル基、フタルイミド基及びこれらに類するものなどの電子吸引基を含む有機基を表す。
【0040】
トリクロロメチル置換トリアジンの例としては、[CC1c2で表される化合物を挙げることができ、式中、Rc2は、フェニル、置換又は非置換フェニルエチル、置換又は非置換フラニルエチニル、及び他の電子吸引基を表す。
【0041】
トリクロロメチル置換ベンゼンの例としては、CClc3で表される化合物を挙げることができ、式中、Rは、R に関して本明細書に記載したものと同じであり、Rc3は、ハロゲン基、ハロゲン置換アルキル基、及び他のハロゲン含有基を表す。
【0042】
酸発生剤の例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジ(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩、及びp-クロロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートを挙げることができる。
【0043】
成分(C)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.01質量%~約5質量%の量、任意に約0.01質量%~約2質量%の量、任意に約0.02質量%~約0.8質量%の量、又は任意に約0.02質量%~約0.5質量%の量である。成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上であれば、硬化性シリコーン組成物が十分に硬化される。一方、含有量が上記範囲の上限以下であると、硬化物の機械的特性を向上させることができる。
【0044】
成分(D)は、硬化物の遮光性を向上させる黒色アゾ染料である。黒色アゾ染料は、本組成物における微粒子、空隙、ピンホール、及び条線の発生を有意に低減し、本組成物の貯蔵安定性を延長する。黒色アゾ染料は、一般に、ソルベントブラック3~47の色指数によって特定される。黒色アゾ染料としては、例えば、ソルベントブラック3、ソルベントブラック27、ソルベントブラック28、ソルベントブラック29、ソルベントブラック34、ソルベントブラック43、及びソルベントブラック46が挙げられる。これらの中でも、ソルベントブラック27は、保存安定性を向上させるだけでなく、硬化物の薄膜における遮光性を向上させるため、最も好ましい。
【0045】
これらの黒色アゾ染料は市販されている。好ましい黒色アゾ染料は、Ciba-Geigyから入手可能な顔料-クロムの1:2混合物であるOrasol Black RLIである。ソルベントブラック3~ソルベントブラック47によって特定される他の染料、特に、ソルベントブラック35(ニトロセルロースワニスブラックX50、BASF)、ソルベントブラック27(ニトロセルロースワニスブラックX51、BASF)、ソルベントブラック3(ネプツニウムブラックX60、BASF)、ソルベントブラック5(アニリンブラックX12、BASF)、ソルベントブラック7(ネプツニウムブラックNB X14、BASF)、ソルベントブラック46(ネプツニウムブラックAブラックX17、BASF)、ソルベントブラック47(ネオピンブラックX58、BASF)、ソルベントブラック28(オラソルブラックCN、Ciba-Geigy)、ソルベントブラック29(オラソルブラックRL、Ciba-Geigy)、及びソルベントブラック45(サビニルブラックRLS、Sandoz Corporation)を含む。
【0046】
成分(D)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の総質量の約0.1~約5質量%の量、又は任意に約0.5~約5質量%の量である。成分(D)の含有量が上記範囲の下限以上であれば、硬化物の遮光性を向上させることができる。他方、上記範囲の上限以下であると、組成物の硬化性を向上させることができ、硬化物の機械的特性を向上させることができる。
【0047】
本組成物は上記の成分(A)~(D)を含むが、本組成物の硬化物に対してより良好な機械的強度を付与するために、光増感剤、及び/又は成分(C)以外の接着促進剤、及び/又はアルコール、及び/又は無機充填剤を含有していてもよい。
【0048】
光増感剤の例としては、イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、アントロン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル}ホスホネート、3 3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサン-tert-ブチル-4-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及びヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0049】
光増感剤の含有量は、限定されないが、概ね成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び光増感剤の総質量の約0.001~約1質量%の範囲内、任意に約0.005~約0.5質量%の範囲内、又は任意に約0.005~約0.1質量%の範囲内である。光増感剤の含有量が上記範囲の下限以上であれば、硬化物の硬化性が向上し得る。一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物の機械的特性を向上させることができる。
【0050】
接着促進剤の例としては、エポキシ官能性アルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、及びそれらの組み合わせ;不飽和アルコキシシラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びそれらの組み合わせ;ケイ素原子結合のアルコキシ基を有するエポキシ官能性シロキサン、例えば、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシラン(例えば、上述したもののいずれか)との反応生成物、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドが挙げられる。接着促進剤は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含み得る。例えば、接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物と、の混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
【0051】
接着促進剤の含有量は、限定されないが、概ね成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び接着促進剤の総質量の約0.01~約5質量%の量、又は任意に約0.1~約2質量%の量である。
【0052】
無機充填剤は、硬化物の機械的強度を高める。充填剤の例としては、微粉化処理された若しくは未処理の沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ、沈殿又は粉砕炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、微粉化カオリンなどの粘土、石英粉末、水酸化アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、珪藻土、珪灰石、葉ろう石(pyrophylate)、及びヒュームド又は沈殿二酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム粉末、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の1つ以上が挙げられる。
【0053】
充填剤の含有量は、限定されないが、概ね成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び充填剤の総質量の約1~約90質量%の量である。
【0054】
本組成物は、UV光線(すなわち、紫外線(「UV」)光)の照射及び/又は加熱によって硬化させることができる。例えば、低圧、高圧、若しくは超高圧水銀ランプ、ハロゲン化金属ランプ、(パルス)キセノンランプ、又は無電極ランプは、UVランプとして有用である。
【実施例
【0055】
ここで、本発明の硬化性シリコーン組成物及び硬化物を、実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。式中、「Me」、「Pr」、「Ph」、及び「Ep」はそれぞれ、メチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基を示すことに留意されたい。実施例において使用されるエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂の構造は、13C NMR及び29Si NMR計測を行うことにより、決定した。エポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンスタンダードとの比較に基づいてGPCを用いて計算した。エポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマー樹脂の粘度は、以下のように測定した。
【0056】
<粘度>
ASTM D 1084「Standard Test Methods for Viscosity of Adhesive」に従って、B型粘度計(Brookfield HA又はHB型回転粘度計、スピンドル#52を使用、5rpm)を使用することによって、23±2℃での粘度を測定した。
【0057】
<実施例1~7及び比較例1~5>
以下の成分を使用して、表1に示す硬化性シリコーン組成物(質量%)を調製した。
【0058】
以下のエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂を、成分(A)として使用した。
【0059】
(a1):2,000~6,000の重量平均分子量を有し、以下の平均単位式で表されるエポキシ官能性オルガノポリシロキサン樹脂:
【化8】
【0060】
以下のオルガノポリシロキサンを、成分(A)の比較のためのポリマーとして使用した。
【0061】
(a2):両方の分子鎖末端でジメチルビニルシロキシ基で末端封鎖され、粘度が3,500mPa・sのメチルフェニルポリシロキサン。
【0062】
(a3):両方の分子鎖末端でジメチルビニルシロキシ基で末端封鎖され、粘度が450mPa・sのジメチルポリシロキサン。
【0063】
以下のエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマーを、成分(B)として使用した。
【0064】
(b1):40mPa・sの粘度、382の重量平均分子量を有し、以下の式で表されるエポキシ官能性オルガノシロキサンオリゴマー:
Ep-SiMeOSiMe-Ep
【0065】
以下のカチオン性光開始剤を、成分(C)として使用した。
【0066】
(c1):下記式で表される4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩:
【化9】
【0067】
(TRONYL製TR-PAG-30408)
以下の黒色アゾ染料を成分(D)として使用した。
【0068】
(d1):以下の式で表されるソルベントブラック27:
【化10】

(d2):ソルベントブラック28
(d3):以下の式で表されるソルベントブラック29:
【化11】

(d4):以下の式で表されるソルベントブラック34:
【化12】

(d5):ソルベントブラック43
(d6):以下の式で表されるソルベントブラック3:
【化13】

(d7):以下の式で表されるソルベントブラック46
【化14】
【0069】
以下のカーボンブラック顔料を、成分(D)の比較用着色剤として使用した。
【0070】
(d8):BET比表面積が8m/gのカーボンブラック顔料(CARY社製CORAX(登録商標)N990)
以下の成分を、比較のために成分(E)として使用した。
【0071】
(e1):分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で末端封鎖され、粘度が5mPa・sであるジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンの共重合体
(e2):1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの白金錯複合体
(e3):トリス[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]メチルシラン
(e4):エタノール
【0072】
硬化性シリコーン組成物を以下の工程により調製した。
1.全ての原料を200mLのポリエチレンカップに入れる。
2.原料をミキサー(Thinky ARV-310P)により、空気を真空引きせずに1500rpmで2分間混合する。
3.ポリエチレンカップの壁及び底を削り取る。
4.上記と同じ条件下で再度混合する。
5.硬化性シリコーン組成物を取り出す。
【0073】
硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間硬化させた。硬化性シリコーン組成物及び硬化物の評価は以下のようにして行った。その特性を表1に示す。
【0074】
<沈降/分離>
硬化性シリコーン組成物の沈降/分離を目視で観察した。
【0075】
<収縮/ムラ>
硬化物の収縮は、硬化性シリコーン組成物をバイアル瓶中で硬化させた後、その高さ(レベル)を確認することによって評価した。硬化物のムラを、目視検査によって観察した。
【0076】
<平均OD>
硬化性シリコーン組成物を2つのガラス構造体の間に挟み、150℃で1時間硬化させた。硬化物の厚みは100μmであった。そして、ガラス構造体を有する硬化物の光学濃度を測定した。可視領域波長(360nm~740nm)からの光学濃度(OD)の平均値を、透過率測定(Konica Minolta製のCM-3600A分光光度計)を使用することによって計算した。
【表1】

【表2】
【0077】
産業上の利用可能性
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化されて、収縮及び「ムラ」欠陥を引き起こすことなく、良好~優れた遮光性を示す硬化物を形成することができる。したがって、本組成物は、LEDディスプレイ用途のための黒色ギャップ充填材料として有用である。
【国際調査報告】