(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】がん幹細胞を標的とするための方法及びソルチリン結合コンジュゲート化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20240220BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240220BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240220BHJP
C07K 7/50 20060101ALI20240220BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240220BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K47/64
C07K7/08 ZNA
C07K14/00
C07K7/50
C07K19/00
A61K45/00
A61K31/337
A61K51/08 100
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552236
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CA2022050263
(87)【国際公開番号】W WO2022178634
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325222
【氏名又は名称】トランスフェール プリュ ソシエテ アン コマンディット
(71)【出願人】
【識別番号】522222124
【氏名又は名称】ゼラテクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ベリヴォー リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥムル ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】アナビー ボラーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャルフィー シンディア
(72)【発明者】
【氏名】ラロック アラン
(72)【発明者】
【氏名】キュリー ジャン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ズゲーブ アラン
(72)【発明者】
【氏名】マルソレ クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZB27
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA30
4H045BA41
4H045EA20
(57)【要約】
本出願は、ソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を標的とするペプチド化合物にコンジュゲートされた抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)を含むコンジュゲートの方法及び使用、ソルチリン発現CSCの存在に関連する標準的な抗腫瘍療法に抵抗性の予後不良のがんの治療のための実施形態における方法及び使用、並びにがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための方法及び使用に関する。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんを治療するための方法であって、前記対象に、有効量のコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記コンジュゲート化合物が、A-(B)
nの式を有し、式中、
Aは、30残基以下のペプチド化合物であり、前記ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つと少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
【表1】
式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
18、及びX
19は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
X
16、X
17、X
20、及びX
21は、独立して、Q、P、Y、I、及びLから選択され、
nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
X
9が2回以上存在する場合、前記X
9の各々は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
X
19が2回以上存在する場合、前記X
9の各々は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
任意選択的に、前記ペプチド化合物は、環状であり、
Bは、少なくとも1つの抗がん剤であり、Bが、Aに直接又はリンカーを介して接続されている、方法。
【請求項2】
前記ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つを含み、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に1~3個の追加のアミノ酸を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチド化合物が、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端にシステイン残基を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチド化合物が、式(I)によって表され、配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチド化合物が、式(III)によって表され、配列番号3又は4のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチド化合物が、式(V)によって表され、配列番号5のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチド化合物が、式(VI)によって表され、配列番号6のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチド化合物が、式(VII)によって表され、配列番号7のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチド化合物が、式(VIII)によって表され、配列番号8のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチド化合物が、式(IX)によって表され、配列番号9のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチド化合物が、式(X)によって表され、配列番号10のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチド化合物が、式(XI)によって表され、配列番号11のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチド化合物が、式(XII)によって表され、配列番号12のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチド化合物が、式(XIII)によって表され、配列番号13のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチド化合物が、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に少なくとも1つの修飾基を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの修飾基が、アセチル又はスクシニルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチド化合物が、式(XXXVIII)、(XXXIX)、(XL)、(XLI)、又は(XLII)によって表される、請求項1に記載の方法。
【表2】
【請求項19】
Bが、前記ペプチド化合物の遊離アミンにおいて、前記ペプチド化合物のN末端位置において、前記ペプチド化合物の遊離-SHにおいて、及び/又は前記ペプチド化合物の遊離カルボキシルにおいて、Aに接続されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
Bが、リンカーを介してAに接続されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コンジュゲートが、式(LIII)又は(LIV)によって表され、
GVRAK(Z
1)AGVRN(Nle)FK(Z
2)SESY(LIII)(配列番号 23)、
アセチル-GVRAK(Z
1)AGVRN(Nle)FK(Z
2)SESY(LIV)( 配列番号24)
式中、Z
1及びZ
2は、各々独立して、リジン(K)残基に結合した抗腫瘍剤である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗腫瘍剤が、放射性核種又は化学療法剤である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記化学療法剤が、タキサンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化学療法剤が、ドセタキセルである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【請求項26】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【請求項27】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、神経芽腫、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記胃腸管がんが、大腸がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記皮膚がんが、黒色腫である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記脳がんが、神経膠腫である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、膵臓がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記コンジュゲート又はその塩の前記投与が、前記対象における前記CSCの遊走を阻害する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、前記対象に、1つ以上の追加の活性剤又は療法を投与することを更に含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんを治療するための医薬品の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【請求項43】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための医薬品の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【請求項44】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための医薬品の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【請求項45】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための医薬品の調製のための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【請求項46】
前記CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、請求項42~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
前記CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、神経芽腫、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、請求項42~47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
前記腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
前記胃腸管がんが、大腸がんである、請求項48に記載の使用。
【請求項53】
前記皮膚がんが、黒色腫である、請求項48に記載の使用。
【請求項54】
前記脳がんが、神経膠腫である、請求項48に記載の使用。
【請求項55】
前記白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、請求項48に記載の使用。
【請求項56】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、膵臓がんである、請求項48に記載の使用。
【請求項57】
前記医薬品が、前記対象における前記CSCの遊走を阻害する、請求項42~56のいずれか一項に記載の使用。
【請求項58】
前記医薬品が、1つ以上の追加の活性剤又は療法とともに使用するためのものである、請求項42~57のいずれか一項に記載の使用。
【請求項59】
前記1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんの治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩。
【請求項61】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがん再発(relapse)又は再発(recurrence)の予防又は治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩。
【請求項62】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんの治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩。
【請求項63】
対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんの治療に使用するための、請求項1~24のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその塩。
【請求項64】
前記CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、請求項60~63のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項65】
前記CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、請求項64に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項66】
前記がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、神経芽腫、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、請求項61~65のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項67】
前記泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項68】
前記乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項69】
前記腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項70】
前記胃腸管がんが、大腸がんである、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項71】
前記皮膚がんが、黒色腫である、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項72】
前記脳がんが、神経膠腫である、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項73】
前記白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項74】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、又は膵臓がんである、請求項66に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項75】
前記コンジュゲート又はその塩が、前記対象における前記CSCの遊走を阻害する、請求項60~74のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項76】
前記コンジュゲート又はその塩が、1つ以上の追加の活性剤又は療法とともに使用するためのものである、請求項60~75のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【請求項77】
前記1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、請求項76に記載のコンジュゲート又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2021年2月26日に出願された米国仮特許出願第63/200,284号及び2021年11月16日に出願された米国仮特許出願第63/264,105号の利益を主張し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2022年2月24日に作成され、約17kBのサイズを有する「G11718-00423_SeqList_ST25.txt」と題するコンピュータ可読形式の配列表を含む。コンピュータ可読形式は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、概して、腫瘍学の分野に関し、より具体的には、がん幹細胞(CSC)を標的とするための化合物、方法、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
最近の世界保健機関の報告によれば、2012年に820万人の患者が、がんで亡くなった。したがって、がんは、発展途上国及び先進国の両方で継続して増えつつある健康上の問題である。また、今後20年以内に、年間のがん症例数が増加すると推定されている。がんに対する一般的な全身治療は、手術、内分泌療法、化学療法、免疫療法、及び放射線療法である。
【0005】
これら全ての治療により、近年(2006~2015年)、がんの発生率は、女性では安定しており、男性ではわずかに減少しており、がんの死亡率(2007~2016年)も減少している。しかしながら、従来のがん治療法は、いくつかの悪性腫瘍に対してのみ有効である。がん治療の失敗の主な理由は、転移、再発、不均一性、化学療法及び放射線療法に対する耐性、及び免疫学的監視の回避である。現在のほぼ全てのがん治療は、がん幹細胞(CSC)という腫瘍において最も危険な細胞を標的とすることなく、腫瘍を減量することに焦点を当てている。CSCは、特にG0期で停止して、新しい腫瘍を生じさせるそれらの能力により、全身へのがん細胞の拡散、腫瘍の増殖、化学療法に対するがんの耐性、及び治療又は外科的除去後の腫瘍の再発に関与する。現在の治療は、CSC集団を標的としないので、それらは、しばしば、耐性腫瘍の発生及びがんの継続的な拡散をもたらす。したがって、CSCは、がん治療のための最も有望な標的とみなされ得る。
【0006】
したがって、例えば、がん療法に対する腫瘍の耐性を克服し、がん患者におけるがん再発を予防/治療し、生存率を改善するために、がん(より具体的にはCSCに関連するがん)の治療のための戦略の開発が必要である。
【0007】
本記載は、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、がん幹細胞を標的とするための生成物(例えば、化合物)、並びにそれらの方法及び使用、並びに関連する使用に関する。
【0009】
様々な態様及び実施形態において、本開示は、以下の項目を提供する:
1. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんを治療するための方法であって、対象に、有効量のコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、コンジュゲート化合物が、A-(B)
nの式を有し、式中、
Aは、30残基以下のペプチド化合物であり、ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つと少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
【表1】
式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
18、及びX
19は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
X
16、X
17、X
20、及びX
21は、独立して、Q、P、Y、I、及びLから選択され、
nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
X
9が2回以上存在する場合、当該X
9の各々は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
X
19が2回以上存在する場合、当該X
9の各々は、独立して、任意のアミノ酸から選択され、
任意選択的に、ペプチド化合物は、環状であり、
Bは、少なくとも1つの抗がん剤であり、Bが、Aに直接又はリンカーを介して接続されている、方法。
【0010】
2. ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0011】
3. ペプチド化合物が、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つを含み、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に1~3個の追加のアミノ酸を更に含む、項目1又は2に記載の方法。
【0012】
4. ペプチド化合物が、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端にシステイン残基を含む、項目3に記載の方法。
【0013】
5. ペプチド化合物が、式(I)によって表され、配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0014】
6. ペプチド化合物が、式(III)によって表され、配列番号3又は4のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0015】
7. ペプチド化合物が、式(V)によって表され、配列番号5のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0016】
8. ペプチド化合物が、式(VI)によって表され、配列番号6のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0017】
9. ペプチド化合物が、式(VII)によって表され、配列番号7のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0018】
10. ペプチド化合物が、式(VIII)によって表され、配列番号8のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0019】
11. ペプチド化合物が、式(IX)によって表され、配列番号9のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0020】
12. ペプチド化合物が、式(X)によって表され、配列番号10のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0021】
13. ペプチド化合物が、式(XI)によって表され、配列番号11のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0022】
14. ペプチド化合物が、式(XII)によって表され、配列番号12のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0023】
15. ペプチド化合物が、式(XIII)によって表され、配列番号13のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、項目1に記載の方法。
【0024】
16. ペプチド化合物が、そのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に少なくとも1つの修飾基を含む、項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
17. 少なくとも1つの修飾基が、アセチル又はスクシニルである、項目16に記載の方法。
【0026】
18. ペプチド化合物が、式(XXXVIII)、(XXXIX)、(XL)、(XLI)、又は(XLII)によって表される、項目1に記載の方法。
【表2】
【0027】
19. Bが、当該ペプチド化合物の遊離アミンにおいて、当該ペプチド化合物のN末端位置において、当該ペプチド化合物の遊離-SHにおいて、及び/又は当該ペプチド化合物の遊離カルボキシルにおいて、Aに接続されている、項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
20. Bが、リンカーを介してAに接続されている、項目1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
21. コンジュゲートが、式(LIII)又は(LIV)によって表され、
GVRAK(Z1)AGVRN(Nle)FK(Z2)SESY(LIII)(配列番号23)、
アセチル-GVRAK(Z1)AGVRN(Nle)FK(Z2)SESY(LIV)(配列番号24)
式中、Z1及びZ2は、各々独立して、リジン(K)残基に結合した抗腫瘍剤である、項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
22. 抗腫瘍剤が、放射性核種又は化学療法剤である、項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
23. 化学療法剤が、タキサンである、項目22に記載の方法。
【0032】
24. 化学療法剤が、ドセタキセルである、項目23に記載の方法。
【0033】
25. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための方法であって、対象に、有効量の項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【0034】
26. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための方法であって、対象に、有効量の項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【0035】
27. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための方法であって、対象に、有効量の項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩を投与することを含む、方法。
【0036】
28. CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、項目1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
29. CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、項目28に記載の方法。
【0038】
30. がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、項目1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
31. 泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、項目30に記載の方法。
【0040】
32. 乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、項目30に記載の方法。
【0041】
33. 腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、項目30に記載の方法。
【0042】
34. 胃腸管がんが、大腸がんである、項目30に記載の方法。
【0043】
35. 皮膚がんが、黒色腫である、項目30に記載の方法。
【0044】
36. 脳がんが、神経膠腫である、項目30に記載の方法。
【0045】
37. 白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、項目30に記載の方法。
【0046】
38. がんが、乳がん、卵巣がん、膵臓がんである、項目30に記載の方法。
【0047】
39. コンジュゲート又はその塩の投与が、対象におけるCSCの遊走を阻害する、項目1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
40. 方法が、対象に、1つ以上の追加の活性剤又は療法を投与することを更に含む、項目1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
41. 1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、項目40に記載の方法。
【0050】
42. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんを治療するための医薬品の調製のための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0051】
43. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための医薬品の調製のための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0052】
44. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための医薬品の調製のための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0053】
45. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための医薬品の調製のための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0054】
46. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんを治療するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0055】
47. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがん再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0056】
48. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0057】
49. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩の使用。
【0058】
50. CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、項目42~49のいずれか1つに記載の使用。
【0059】
51. CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、項目50に記載の使用。
【0060】
52. がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、項目42~51のいずれか1つに記載の使用。
【0061】
53. 泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、項目52に記載の使用。
【0062】
54. 乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、項目52に記載の使用。
【0063】
55. 腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、項目52に記載の使用。
【0064】
56. 胃腸管がんが、大腸がんである、項目52に記載の使用。
【0065】
57. 皮膚がんが、黒色腫である、項目52に記載の使用。
【0066】
58. 脳がんが、神経膠腫である、項目52に記載の使用。
【0067】
59. 白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、項目52に記載の使用。
【0068】
60. がんが、乳がん、卵巣がん、膵臓がんである、項目52に記載の使用。
【0069】
61. 医薬品が、対象におけるCSCの遊走を阻害する、項目42~60のいずれか1つに記載の使用。
【0070】
62. 医薬品が、1つ以上の追加の活性剤又は療法とともに使用するためのものである、項目42~61のいずれか1つに記載の使用。
【0071】
63. 1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、項目62に記載の使用。
【0072】
64. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含むがんの治療に使用するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩。
【0073】
65. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連するがん再発(relapse)又は再発(recurrence)の予防又は治療に使用するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩。
【0074】
66. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんの治療に使用するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩。
【0075】
67. 対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんの治療に使用するための、項目1~24のいずれか1つに記載のコンジュゲート又はその塩。
【0076】
68. CSCが、少なくとも1つの多剤耐性(MDR)タンパク質を発現する、項目64~67のいずれか1つに記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0077】
69. CSCが、MDR1及び/又はABCB5を発現する、項目68に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0078】
70. がんが、乳がん、泌尿生殖器がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん、胃腸管がん、神経内分泌腫瘍、皮膚がん、脳がん、及び白血病である、項目65~69のいずれか1つに記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0079】
71. 泌尿生殖器がんが、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、又は精巣がんである、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0080】
72. 乳がんが、浸潤性乳管がん(IDC)又はトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0081】
73. 腎臓がんが、腎細胞がん(RCC)である、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0082】
74. 胃腸管がんが、大腸がんである、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0083】
75. 皮膚がんが、黒色腫である、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0084】
76. 脳がんが、神経膠腫である、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0085】
77. 白血病が、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)である、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0086】
78. がんが、乳がん、卵巣がん、又は膵臓がんである、項目70に記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0087】
79. コンジュゲート又はその塩が、対象におけるCSCの遊走を阻害する、項目64~78のいずれか1つに記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0088】
380. コンジュゲート又はその塩が、1つ以上の追加の活性剤又は療法とともに使用するためのものである、項目64~79のいずれか1つに記載の使用のためのコンジュゲート又はその塩。
【0089】
81. 1つ以上の追加の活性剤又は療法が、放射線療法、手術、化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、及び/又は細胞ベースの療法を含む、項目80に記載のコンジュゲート又はその塩。
【0090】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して実施例としてのみ与えられる、その特定の実施形態の以下の非制限的な説明を読めばより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0091】
添付図面において、
【0092】
【
図1A】ヒト乳房トリプルネガティブMDA-MB-231腫瘍細胞及び乳がん幹細胞(hBCSC)によるソルチリン(SORT1)の発現を示すウエスタンブロットの画像を示す。ヒトトリプルネガティブBCSC及びMDA-MB-231/luc細胞ホモジネート(20μgのタンパク質)をポリアクリルアミドゲル上で分離し、PVDF膜に電気転写した。ウエスタンブロッティングによって、膜上のソルチリンを、2つの異なる抗体で検出した(SORT1#1:BD Biosciences、SORT1#2:Abcam)。
【
図1B】hBCSCによるTH19P01-Alexa Fluor488の内在化を示すグラフである。hBCSCを、200nMの蛍光標識TH19P01又はビヒクル単独を添加した培地に曝露した。細胞を2時間インキュベートし、洗浄し、トリプシン処理した後、細胞内に含まれる蛍光を、フローサイトメトリーによって測定した。示されるデータは、各々2回行われた、平均値±SEM(n=3)を表す。統計的比較は、t検定によって行われ、有意性をp<0.05と仮定した。三重のアスタリスクは、p<0.001を示す。
【
図2A-2B】ソルチリンリガンドの存在下での(
図2A)及びsiRNA媒介性SORT1サイレンシング時の(
図2B)、hBCSCによるTH19P01-Alexa Fluor488の内在化を示すグラフである。
図2A: 対照データとは、競合リガンドなしで、TH19P01-Alexa Fluor488の存在下でインキュベートした細胞を指す。また、蛍光標識TH19P01の取り込みは、ソルチリンリガンド:10μMのニューロテンシン(NT)、50μMの非蛍光TH19P01、又は1nMのプログラニュリン(PGRN)の追加の存在下でも行った。データは、一元配置ANOVA、続いて対照蛍光に対するTukeyの多重比較検定によって比較した。有意性をp<0.05と仮定した。示されるデータは、2回行われた、平均値±SEM(n=3アッセイ)を表す。二重のアスタリスクは、p<0.01を示し、三重のアスタリスクは、p<0.001を示す。
図2B:蛍光ペプチドとのインキュベーションの前に、細胞をsiRNAとプレインキュベートした。使用した2つのsiRNAは、スクランブルした対照siRNA(siScr)及びヒトソルチリンmRNAに対するsiRNA(siSORT1)であった。統計的有意性は、両側t検定で評価し、有意性をp<0.05に事前に設定した。二重のアスタリスクは、p<0.01を示す。示されるデータは、平均値±SD(n=2)を表す。
【
図2C】TH19P01、プログラニュリン(PGRN)、KBP201、ニューロテンシン(NT)、及びシステインペプチド(N末端又はC末端システインを付加したTH19P01)の存在下でのhOvCSCによるTH19P01-Alexa488の取り込みを示すグラフである。hOvCSCを、競合リガンド(10μMのニューロテンシン[NT]、50μMの非蛍光TH19P01、50μMのTH20P01、又は1nMのプログラニュリン[PGRN])とともに、DMSO中200nMの蛍光標識されたTH19P01、DMSO単独(ビヒクル)、又はDMSO中200nMのTH19P01のいずれかを添加した培地に曝露した。細胞を2時間インキュベートし、洗浄し、トリプシン処理した後、細胞内に含まれる蛍光を、フローサイトメトリーによって測定した。ビヒクル単独に関連する蛍光は、システムのバックグラウンド蛍光を反映する。示されるデータは、各々2回行われた、平均値±SEM(n=2)を表す。示されるように、TH19P01-Alexa(商標)488単独とインキュベートした細胞と比較した取り込み阻害。
【
図2D】蛍光ペプチドとのインキュベーションの前に、細胞をsiRNAとプレインキュベートした。使用した2つのsiRNAは、スクランブルした対照siRNA(siScr)及びヒトソルチリンmRNAに対するsiRNA(siSORT1)であった。示されるデータは、平均値±SEM(n=1)を表す。
【
図3】ビヒクル(対照、DMSO)、ドセタキセル、又はTH1902による処理後のhBCSCを有するスライドの画像を示す。hBCSCの遊走能力を評価するために、スクラッチ(創傷治癒)アッセイを行った。細胞を有するスライドをスクラッチし、ビヒクル(DMSO)、2μMのドセタキセル、又は1μMのTH1902(ドセタキセル含有量はドセタキセル処理と同等)で2時間処理した。次いで、細胞をリンスし、新鮮な完全な培地中でインキュベートした。スクラッチ後、40倍の倍率で、0、24及び48時間での画像を取得した。1つの代表的な実験が示されている(n=3)。
【
図4A】ビヒクル(対照、DMSO)、ドセタキセル、又はTH1902による処理後のhBCSCにおける経時的な総アポトーシスを示すグラフである。hBCSCを、ビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902を含有する培地中で2時間処理し、次いで、完全培地中で22時間、48時間、又は72時間インキュベートした。アポトーシスの程度は、細胞を回収した、次いで、アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した後、フローサイトメトリーを行うことによって決定した。データは、3つの異なる実験から得られ、平均値+/-SEMとして表した。統計分析は、Dunnettの多重比較検定を伴う一元配置分散分析を使用して行った(*は、p<0.05を意味し、***は、TH1902と対照条件との間の差についてp<0.001を意味する)。
【
図4B】ビヒクル(対照、DMSO)、ドセタキセル、又はTH1902で処理した後のhBCSCの共焦点顕微鏡画像を示す。hBCSCを、ビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902を含有する培地中で2時間処理し、次いで、完全培地中で48時間インキュベートした。処理した細胞を固定し、DNAをDAPIで染色した後、共焦点顕微鏡によって撮像した。矢印は、核の断片化の例を示す。
【
図4C-4D】ビヒクル(対照、DMSO)、ドセタキセル、又はTH1902による処理後、抗α-チューブリン抗体で染色したhBCSCの共焦点顕微鏡画像である。hBCSCを、
図4Bについて記載したように処理した。チューブリンに対するドセタキセル及びTH1902の効果を、固定及び抗α-チューブリン抗体による免疫染色の後、処理された細胞において評価した。次いで、細胞を、共焦点顕微鏡を使用して可視化した。各条件からの代表的な画像は、積層した平面(n=1)として表示されている。
図4Dは、
図4Cに示されるが、単一の焦点面(細胞の中央)に表示されている試料に対応する。
【
図5A-5D】hBCSC及びMDA-MB-231/luc腫瘍細胞のG2/M細胞周期停止に対するドセタキセル又はTH1902の効果を示すフローサイトメトリープロット(
図5A及び
図5C)並びにグラフ(
図5B及び
図5D)である。hBCSC及びMDA-MB-231/luc細胞をビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902で2時間処理し、次いで、新鮮な完全培地中で22時間又は48時間インキュベートした。各細胞株のDNA含有量を、FxCycle(商標)PI/RNase染色液を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。実験を少なくとも3回繰り返し、代表的なデータを、hBCSCについて
図5Aに示し、MDA-MB-231/luc細胞について
図5Cに示す。
図5A:異なる処理下のG2/M期におけるhBCSCのパーセンテージを示す代表的なフローサイトメトリー取得プロット。
図5B:様々な処理(対照のx倍)の後のG2/M細胞周期におけるhBCSCの相対頻度を示すグラフ。データは、3つの異なる実験からの平均値+/-SEMとして表されている。統計分析は、Dunnettの多重比較検定を伴う一元配置分散分析を使用して行った(***は、TH1902と対照条件との間の差についてp<0.001を意味する)。
図5C:異なる処理下でのG2/M期におけるMDA-MB-231/luc細胞のパーセンテージを示す代表的なフローサイトメトリー取得プロット。
図5D:様々な処理(対照のx倍)の後のG2/M細胞周期におけるMDA-MB-231/luc細胞の相対頻度を示すグラフ。データは、2つの異なる実験からの平均値+/-SEMとして表されている。
【
図6A】MDA-MB-231/Luc、hBCSC、及びイヌMDCK-MDR1細胞におけるMDR1(別名、P-gp、ABCB1)及びABCB5タンパク質のレベルの発現を示すウエスタンブロットの画像を示す。MDA-MB-231/Luc、hBCSC、及びイヌMDCK-MDR1細胞からのホモジネート(20μgのタンパク質)を、ポリアクリルアミドゲル上で分離し、PVDF膜に電気転写した。ウエスタンブロッティングによって膜上の特異的抗体でMDR1及びABCB5を検出した。
図6B~
図6Dについて、hBCSC細胞を、±10μMのCsA(n=4)又は10μMのPSC-833(n=3)と30分間プレインキュベートした。次いで、細胞を、ビヒクル(対照、DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902と2時間インキュベートした。次いで、培地を、10μMのCsA又はPSC-833を含有又は欠損する新鮮な培地に交換した。細胞を22時間インキュベートした後、FxCycle(商標)PI/RNase染色液で染色し、続いて、フローサイトメトリーによって分析した。示される値は、少なくとも3つの異なる実験からの平均値±SEMを表す。統計分析は、Bonferroniの多重比較検定を使用して行った(**p<0.01、***p<0.001)。
図6B:各条件についての代表的なフローサイトメトリー取得プロット。
図6C:ドセタキセルによる治療後のG2/M期におけるhBCSCの相対頻度を表すグラフ。
図6D:TH1902での処理後のG2/M期におけるhBCSCの相対頻度を表すグラフ。
【
図7A】(Matrigelあり又はなしで)hBCSCの移植後のマウスにおける経時的な腫瘍進行を示すグラフである。10
3個のヒトTNBC由来のがん幹細胞様細胞(cancer stem-like cell)を免疫不全マウスに皮下注射し、腫瘍体積を最大23~28日間監視した。
【
図7B】Matrigel(商標)を用いたヒト卵巣がん幹細胞(hOvCSC)の移植後のマウスにおける経時的な腫瘍進行を示すグラフである。10
3個のヒト卵巣がん由来のがん幹細胞様細胞を免疫不全マウスに皮下注射し、腫瘍体積を最大23~28日間監視した。
【
図7C】Matrigel(商標)を用いたヒト膵臓がん幹細胞(hPCSC)の移植後のマウスにおける経時的な腫瘍進行を示すグラフである。10
3個のヒト膵臓がん由来のがん幹細胞様細胞を免疫不全マウスに皮下注射し、腫瘍体積を最大23~28日間監視した。
【
図7D】ヒト乳房CSC、ヒト膵臓CSC、及びヒト卵巣CSCによる、多剤タンパク質ABCB5及びPgp、並びにソルチリン(細胞内)の発現を示すウエスタンブロットである。
【
図7E】ヒト膵臓CSC及び卵巣CSCによるPgp及びソルチリンの発現を示すウエスタンブロットである。β-アクチンの発現を、対照として使用した。
【
図8A-8C】ドセタキセル又はTH1902の投与後のマウス内のhBCSC異種移植片の増殖を示す。
図8A:免疫不全マウス内のhBCSC異種移植片の皮下移植後2日目に、動物に、ビヒクル、又は3.75mg/kg(最大耐容用量(MTD)の1/4に対応する)のドセタキセル、15mg/kg(MTDに対応する)のドセタキセル、8.75mg/kgのTH1902(ドセタキセルMTDの1/4に等しい)(TH1902 1/4)、及び35mg/kgのTH1902(ドセタキセルMTDに等しい)(TH1902)を含有するビヒクルを、毎週投与し始めた。試験物品の投与が腫瘍増殖に及ぼす影響を監視するために、腫瘍サイズを定期的に手動で測定した。記号は、平均値±標準誤差を表す(n=6)。15mg/kgのドセタキセル曲線と8.75mg/kgのTH1902曲線との間に事実上の重複があることに留意されたい。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。また、ドセタキセル(15mg/kg)は、組み合わせた量がマウスにおけるドセタキセルのMTDと一致するため、3回のみ投与されたことに留意されたい。
図8B:ドセタキセル又はTH1902による処置後の腫瘍体積の比較。hBCSCの異なる処置間の統計的比較は、処置の最初の日と実験の最後の日との間の腫瘍サイズの変化を計算することによって行われた。サイズを、一元配置ANOVAによって比較し、各治療に関連する腫瘍サイズの平均値を、Dunnettの多重比較試験を使用して、ビヒクル処置動物の腫瘍サイズと比較した。有意水準をp<0.05に事前に設定した。横軸に沿って列挙された処置は、括弧内に列挙された使用した濃度(mg/kg)とともに処置を特定する。ns:有意差なし、*P<0.05、****P<0.0001、n=6。
図8Cは、
図8Aに記載される研究における、経時的なマウス体重の変化を示すグラフである。マウスの体重を日常的に記録し、罹患率の大まかな推定値として考慮した。データは、処置開始時の動物の体重のパーセンテージとしてここに示されている。記号は、平均値±標準誤差を表す(n=6マウス/群)。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。
【
図9A-9C】マウスにおけるhBCSC異種移植片の増殖に対するドセタキセル及びTH1902用量の増加の効果を示す。
図9A:免疫不全マウス(1群当たりn=6匹のマウス)内のhBCSC異種移植片の皮下移植後3日目に、動物に、ビヒクル、又は15mg/kg(MTDに対応する)のドセタキセル(ドセタキセル)、35mg/kg(ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1当量のTH1902)、43.75mg/kg(1.25ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1.25当量のTH1902)、及び52.5mg/kg(1.5ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1.5当量のTH1902)を含有するビヒクルを、毎週投与し始めた。試験物品の投与が腫瘍増殖に及ぼす影響を監視するために、腫瘍サイズを定期的に手動で測定した。記号は、平均値±SEMを表す。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。
図9B:ドセタキセル又はTH1902による処置後の腫瘍体積の比較。hBCSCの異なる処置間の統計的比較は、処置の最初の日と実験の最後の日との間の腫瘍サイズの変化を計算することによって行われた。サイズを、一元配置ANOVAによって比較し、各治療に関連する腫瘍サイズの平均値を、Dunnettの多重比較試験を使用して、ビヒクル処置動物の腫瘍サイズと比較した。有意水準をp<0.05に事前に設定した。横軸に沿って列挙された処置は、カッコに列挙された使用した濃度(mg/kg)とともに処置を特定する。一元配置ANOVA、turkeyの多重比較検定分析。ns:有意差なし、*P<0.05、**P<0.01、****P<0.0001、TH1902 52.5mg/kg(n=5)を除いて1群当たりn=6。
図9Cは、
図9Aに記載される研究における、経時的なマウス体重の変化を示すグラフである。マウスの体重を日常的に記録し、罹患率の大まかな推定値として考慮した。データは、処置開始時の動物の体重のパーセンテージとしてここに示されている。記号は、平均値±標準誤差を表す(n=6マウス/群)。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。
【
図10A-10C】マウスにおけるhOvCSC異種移植片の増殖に対するドセタキセル及びTH1902用量の増加の効果を示す。
図10A:ヌードマウス(1群当たりn=5~6匹のマウス)内のhOvCSC異種移植片の皮下移植後3日目に、動物に、ビヒクル、又は15mg/kg(MTDに対応する)のドセタキセル(ドセタキセル)、35mg/kg(ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1当量のTH1902)、43.75mg/kg(1.25ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1.25当量のTH1902)、及び52.5mg/kg(1.5ドセタキセルMTDに等しい)のTH1902(1.5当量のTH1902)を含有するビヒクルを毎週投与し始めた。試験物品の投与が腫瘍増殖に及ぼす影響を監視するために、腫瘍サイズを定期的に手動で測定した。記号は、平均値±SEMを表す。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。
図10B:ドセタキセル又はTH1902による処置後の腫瘍体積の比較。hOvCSCの異なる処置間の統計的比較は、処置の最初の日と実験の最後の日との間の腫瘍サイズの変化を計算することによって行われた。サイズを、一元配置ANOVAによって比較し、各治療に関連する腫瘍サイズの平均値を、Dunnettの多重比較試験を使用して、ビヒクル処置動物の腫瘍サイズと比較した。有意水準をp<0.05に事前に設定した。横軸に沿って列挙された処置は、カッコに列挙された使用した濃度(mg/kg)とともに処置を特定する。一元配置ANOVA、turkeyの多重比較検定分析。***P<0.001、****P<0.0001。
図10Cは、
図10Aに記載される研究における、経時的なマウス体重の変化を示すグラフである。マウスの体重を日常的に記録し、罹患率の大まかな推定値として考慮した。データは、処置開始時の動物の体重のパーセンテージとしてここに示されている。記号は、平均値±標準誤差を表す(n=5又は6マウス/群)。横軸の下に表示されている記号は、処置が行われた日を示す。
【
図11A-11B】マウスにおけるhOvCSC異種移植片の増殖に対する、単独又は組み合わせて使用したドセタキセル、パクリタキセル、TH1902、又はカルボプラチンの効果を示す。hOCSC異種移植片を有するマウス群に、カルボプラチンの腹腔内注射の有無で、ドセタキセル、TH1902、又はパクリタキセルを静脈内に投与した。
図11Aは、経時的な腫瘍増殖を示すグラフである。横軸の下に示される丸は、処置が投与された日を示す。記号は、平均値±SEMを表す(全ての群についてn=6)。
図11Bは、処置後の腫瘍サイズの比較を示すグラフである。18日目(実験の最終日)に、全ての動物について腫瘍サイズを測定し、これらのサイズを、異なる処置を受けた群間で比較した。統計的比較は、一元配置ANOVA、続いて、Tukeyの多重比較検定を使用して行った。統計的有意性をp<0.05に事前に設定した。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示し、****はp<0.0001を示す(全ての群についてn=6)。ボックスの端は、データセットの下半分と上半分の中央値を表し、ひげは、各セットの最小値と最大値を示す。ボックス内の垂直線は、そのセットについての中央値を示す。図でマークされていない対比較は、統計的に有意ではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0093】
技術を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書において別段示されないか、又は文脈に明らか矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるものである。
【0094】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0095】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0096】
本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(「例えば」、「など」)の使用は、単に特許請求される技術の実施形態をより良好に例示することを意図しており、別段特許請求されない限り、範囲の限定を提起するものではない。
【0097】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を特許請求される技術の実施形態の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0098】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、値が、値を判定するために用いられるデバイス若しくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、又は列挙された値に近い値、例えば、列挙された値(又は値の範囲)の10%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0099】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み込まれる。範囲内の値の全てのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0100】
開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群又は代替物の一覧の観点から説明される場合、当業者は、開示がまた、それによってマーカッシュ群又は代替物の一覧の任意の個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するであろう。
【0101】
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)と同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0102】
別段示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(編),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(編),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(編),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在に至るまでの全ての改訂版を含む)、Ed Harlow and David Lane(編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(編)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在に至るまでの全ての改訂版を含む)などの情報源における文献全体を通じて記載及び説明されている。
【0103】
本明細書に記載されるものは、がん幹細胞(CSC)を標的とするための生成物、方法、及びそれらの使用である。CSCは、G0期で停止し、新たな腫瘍を生じさせる能力を通して、がんの再発、転移、多剤耐性、及び放射線耐性と関連している。固形腫瘍は、発生の異なる段階で異なる表現型の特徴を有し、様々な増殖能力を有する、不均一な細胞集団から構成されている。CSCは、自己再生し、腫瘍を構成するがん細胞の不均一な系統を形成する排他的能力を有する自立細胞のリザーバを確立する、がんの微小環境及びニッチ内のがん細胞の小さな亜集団として定義されている。高レベルの循環がん幹細胞様細胞(circulating cancer stem-like cell)(cCSC)は、化学療法に対するより低い腫瘍応答率、及び乳がん患者におけるより低い全生存率及び無増悪生存率と関連している(Lee,CH et al.,BMC Cancer 19,1167(2019))。同様に、診断時の高い幹細胞頻度は、急性骨髄性白血病(AML)患者において、化学療法に対するより低い応答及び再発、ひいてはより低い生存率と相関する(van Rhenen et al.,Clin Cancer Res.2005 Sep 15;11(18):6520-7、Witte KE et al.,Pediatr Hematol Oncol.2011 Mar;28(2):91-9)。高頻度のCSCは、黒色腫におけるより高い転移可能性及びより悪い予後と相関する(Civenni et al.,Cancer Res.2011 Apr 15;71(8):3098-109)。
【0104】
本明細書で提示される結果は、トリプルネガティブヒト乳がん幹細胞(hBCSC)が、ソルチリン受容体を発現し、そのような細胞は、MDR1及びABCB5などの多剤耐性タンパク質の発現に起因して、ドセタキセル単独による処置に耐性であるが、hBCSCによるドセタキセルのソルチリン媒介性取り込みを可能にするペプチド化合物にコンジュゲートされたドセタキセルに感受性であることを示す。このコンジュゲートは、侵襲性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)のマウスモデルにおいて、がんの再発を予防することも示された。CSCは、がんの再発、転移、多剤耐性、及び放射線耐性に関連しているため、これらの結果は、ソルチリン発現CSCを標的とするペプチド化合物にコンジュゲートされた抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)を含むコンジュゲートが、標準的な抗腫瘍療法に抵抗性の予後不良のがんの治療に使用され得、がんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療し得るという証拠を提供する。
【0105】
したがって、ある態様において、本開示は、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)を含む、がんを治療するための方法を提供し、本方法は、対象に、有効量の本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現CSCを含むがんを治療するための、又は対象におけるソルチリン発現CSCを含むがんを治療するための医薬品の製造若しくは調製のための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現CSCを含むがんの治療に使用するための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0106】
別の態様において、本開示は、がん患者におけるソルチリン発現CSCを低減又は除去するための方法を提供し、本方法は、対象に、有効量の本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本開示はまた、がん患者におけるソルチリン発現CSCを低減若しくは除去するための、又はがん患者におけるソルチリン発現CSCを低減若しくは除去するための医薬品の製造若しくは調製のための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本開示はまた、がん患者におけるソルチリン発現CSCの低減又は除去に使用するための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0107】
別の態様において、本開示は、対象におけるソルチリン発現CSCの存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防又は治療する方法を提供し、本方法は、対象に、有効量の本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現CSCの存在に関連するがん再発若しくは再発を予防若しくは治療するための、又は対象におけるソルチリン発現CSCの存在に関連するがんの再発若しくは再発を予防若しくは治療するための医薬品の製造若しくは調製のための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現CSCの存在に関連するがんの再発(relapse)又は再発(recurrence)の予防又は治療に使用するための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。ある実施形態において、コンジュゲート化合物又はその塩は、がんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を予防する。ある実施形態において、コンジュゲート化合物又はその塩は、がんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を低減する。ある実施形態において、コンジュゲート化合物又はその塩は、がんの再発(relapse)又は再発(recurrence)を治療する(すなわち、再発がんを治療する)。
【0108】
本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための方法を提供し、本方法は、対象に、有効量の本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための、又は対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんを治療するための医薬品の製造若しくは調製のための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する予後不良のがんの治療に使用するための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0109】
別の態様において、本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための方法を提供し、本方法は、対象に、有効量の本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための、又は対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんを治療するための医薬品の製造若しくは調製のための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。本開示はまた、対象におけるソルチリン発現がん幹細胞(CSC)の存在に関連する切除不能な化学療法及び放射線療法に耐性のがんの治療に使用するための、本明細書に定義されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0110】
本明細書で使用される「ソルチリン」又は「ソルチリン受容体」という用語は、Vacuolar Protein Sorting 10タンパク質(Vps10)受容体ファミリー二属する、SORT1遺伝子によってコードされるニューロン1型膜糖タンパク質を指す。ソルチリン(ニューロテンシン受容体3としても知られている、UniProtKB受入番号Q99523)は、例えば、卵巣がん、乳がん、結腸がん、及び前立腺がんを含むいくつかのがんにおいて発現又は過剰発現される。コードされたプレプロタンパク質(残基34~831、シグナルペプチドに対応する残基1~33)は、アミノ酸77の後、フーリン(又は他の相同プロテアーゼ)によってタンパク質分解的にプロセシングされ、約100~110kDaの分子量を有する成熟受容体(残基78~831)を生成する。本明細書で参照されるソルチリンのアミノ酸残基は、全長形態(すなわち、UniProtKB受入番号Q99523)における位置に対応する。
【0111】
本明細書で使用される「がん幹細胞」(CSC)という用語は、固形腫瘍又は血液がん内に見出されるがん細胞の亜集団を指し、腫瘍形成を駆動し、正常な幹細胞に関連する特徴(具体的には、自己再生及び複数の腫瘍細胞型への分化の能力)を有する。CSCは、化学療法(多剤耐性)及び放射線療法に対する耐性を示し、がんの再発及び転移に関連していることが示されている。がん幹細胞は、特定のマーカーを発現する細胞を包含する。様々な種類のがんにおけるCSCのマーカーの例は、以下の表1に示されている(例えば、Walcher et al.,「Cancer Stem Cells-Origins and Biomarkers:Perspectives for Targeted Personalized Therapies”」,Front Immunol.2020;11:1280、Suster et al.,「Presence and role of stem cells in ovarian cancer」,World J Stem Cells.2019 Jul 26;11(7):383-397を参照されたい)。
【表3】
【0112】
CSCは、多剤耐性(MDR)タンパク質(MRP)を発現又は過剰発現することも知られている。MRPは、ATP駆動エネルギーを使用して濃度勾配に対して広範囲の抗がん薬を流出させるATP結合カセット(ABC)トランスポーターと呼ばれるタンパク質群のCファミリーのメンバーである。最も一般的なMRPは、ABCサブファミリーCメンバー1(ABCC1/MRP1)、ABCサブファミリーCメンバー2(ABCC2/MRP2)、ABCサブファミリーCメンバー3(ABCC3/MRP3)、ABCサブファミリーCメンバー4(ABCC4/MRP4)、ABCサブファミリーCメンバー5(ABCC5/MRP5)、ABCサブファミリーCメンバー6(ABCC6/MRP6)、ABCサブファミリーCメンバー10(ABCC10/MRP7)、ABCサブファミリーCメンバー11(ABCC11/MRP8)、ABCサブファミリーCメンバー12(ABCC12/MRP9)、ABCサブファミリーBメンバー1(ABCB1、P-糖タンパク質(P-gp)としても知られる)、ABCサブファミリーBメンバー5(ABCB5)、及びABCサブファミリーGメンバー2(ABCG2)である。
【0113】
したがって、ある実施形態において、本明細書に定義される方法及び使用は、表1に列挙された1つ以上のマーカー及び/又は1つ以上のMRP(例えば、上に列挙された1つ以上のMRP)を発現するCSCの増殖及び/又は死滅を阻害することを目的とする。ある実施形態において、CSCは、以下のマーカーのうちの少なくとも1つを発現する:CD133、CD44、SSEA3/4、ALDH、及びOct4。ある実施形態において、CSCは、CD133及び/又はCD44を発現する。ある実施形態において、CSCは、CD133、CD44、SSEA3/4、及びOct4を発現する。ある実施形態において、CSCは、Nestin、Sox2、Nanog、cKit、及び/又はLin28を発現する。別の実施形態において、CSCは、ABCB5を発現する。別の実施形態において、CSCは、ABCB5及びP-gpを発現する。更なる実施形態において、CSCは、CD133及びABCB5を発現する。
【0114】
本明細書で使用される「ソルチリン陽性がん幹細胞」(又は「ソルチリン発現がん幹細胞」)という用語は、CSCの少なくとも一部(例えば、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%)が、天然のソルチリン受容体を発現又は過剰発現するCSCの集団を指す。ある実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、乳房CSC(例えば、浸潤性乳管がん(IDC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)からのCSC)、泌尿生殖器CSC(例えば、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、精巣がん、尿路上皮がん、又は子宮頸がんからのCSC)、頭頸部CSC、膵臓CSC、肺CSC、甲状腺CSC、腎臓CSC(例えば、腎細胞がん(RCC)からのCSC)、胃腸管CSC(例えば、大腸がん、胃がんからのCSC)、神経内分泌CSC(カルチノイドなどのNETからのCSC)、皮膚CSC(黒色腫からのCSC)、脳CSC(例えば、神経膠腫CSC)、神経芽腫CSC、及び白血病CSC(例えば、B細胞慢性リンパ性白血病からのCSC、B-CLL)である(例えば、Mol Cell Proteomics.2005 Dec;4(12):1920-32、http://www.proteinatlas.orgのヒトタンパク質アトラスを参照されたい)。ある実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、乳房CSC、例えば、TNBC CSC(例えば、トリプルネガティブIDC CSC)である。別の実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、泌尿生殖器CSCである。更なる実施形態において、泌尿生殖器CSCは、卵巣CSCである。別の実施形態において、泌尿生殖器CSCは、前立腺CSCである。別の実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、肺CSCである。別の実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、膵臓CSCである。別の実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、大腸CSCである。別の実施形態において、ソルチリン陽性CSCは、皮膚CSC、例えば、黒色腫CSCである。
【0115】
したがって、実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、乳がん(例えば、浸潤性乳管がん(IDC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、泌尿生殖器がん(例えば、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、精巣がん、尿路上皮がん、子宮頸がん)、頭頸部がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、腎臓がん(例えば、腎細胞がん(RCC))、胃腸管がん(例えば、大腸がん、胃がん)、神経内分泌腫瘍(カルチノイドなどのNET)、皮膚がん(黒色腫)、脳がん(例えば、神経膠腫)、神経芽腫、及び白血病(例えば、B細胞慢性リンパ性白血病、B-CLL)である(例えば、Mol Cell Proteomics.2005 Dec;4(12):1920-32、http://www.proteinatlas.orgのヒトタンパク質アトラスを参照されたい)。ある実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、乳がん、例えば、TNBC(例えば、トリプルネガティブIDC)である。別の実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、泌尿生殖器がんである。更なる実施形態において、泌尿生殖器がんは、卵巣がんである。別の実施形態において、泌尿生殖器がんは、前立腺がんである。別の実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、肺がんである。別の実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、膵臓がんである。別の実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、大腸がんである。別の実施形態において、ソルチリン発現CSCを含むがんは、皮膚がん、例えば、黒色腫である。
【0116】
ある実施形態において、がんは、再発がんである。「がん再発(cancer recurrence)」及び「がん再発(cancer relapse)」という用語は、本明細書において互換的に使用され得、治療後及びがんが検出され得ない期間後のがんの再発を指す。別の言い方をすれば、疾患のない期間後にがんが再発することを意味する。
【0117】
本明細書で使用される「予後不良のがん」という用語は、同じがんの他のサブタイプと比較して、より低い生存率(例えば、5年又は10年生存率)に関連する所与のがんのサブタイプを指す。予後不良のがんは、一般に、がんサブタイプの特定の特徴、例えば、特定の変異の存在、染色体異常などに関連しており、それらは治療に対してより耐性をもたらす。予後不良は、後の段階で診断されたがん(例えば、遠隔転移)にも関連する。また、上記のように、CSCの頻度が高いことは、いくつかのがんにおいて治療への応答が乏しく、生存率がより低いことと相関していることが示されている。例えば、乳がんの場合、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、他の乳がんサブタイプと比較して、より低い5年相対生存率に関連するため、予後不良の乳がんとみなされる。また、高レベルの循環がん幹細胞様細胞(cCSC)は、化学療法に対するより低い腫瘍応答率、及び乳がん患者におけるより低い全生存率及び無増悪生存率と関連している(Lee,CH et al.,BMC Cancer 19,1167(2019))。卵巣がんについては、浸潤性上皮性卵巣がん及び卵管がんは、概して、卵巣間質腫瘍及び生殖細胞腫瘍と比較して、より低い5年相対生存率に関連している。膵臓がんの5年全生存率は非常に低い(約3%)。これは、患者の半数以上が進行期で診断されているためである。ステージIII/IV(遠隔転移を伴う)での膵臓がんの診断は、非常な予後不良に関連している。同様に、前立腺がんについては、ステージIVでの診断(遠隔転移を伴う)は、予後不良に関連している(5年相対生存率が、ステージI~IIIでの診断での少なくとも80~85%と比較して、30%未満である)。肺がんの場合、小細胞肺がんは、特に後の段階で診断された場合(例えば、局所的又は遠隔転移を伴う場合)、特に予後不良に関連している。後期(例えば、遠隔転移を伴う)に診断された非小細胞肺がんもまた、予後不良に関連している。大腸がんにおいて、粘液性腺がん(細胞外ムチンが豊富に存在することを特徴とする)は、化学療法に対する応答の低下及び予後不良に関連している。腹腔への関与及びBRAF変異もまた、大腸がんの予後不良マーカーを構成する。腎臓がんの場合、明細胞RCCは、乳頭状RCCよりも悪い転帰(例えば、より低い5年相対生存率)に関連する。皮膚がんでは、より厚い腫瘍、リンパ節転移、及び後期での診断(例えば、局所転移又は遠隔転移を伴う)は、黒色腫におけるより低い生存率に関連する。Nestin及びCD133の発現は、黒色腫及び神経膠腫における転帰不良に関連している。
【0118】
ある実施形態において、予後不良のがんは、ステージIII/IVのがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、ステージIIIのがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、ステージIVのがんである。別の実施形態において、予後不良のがんは、CSCの数又は頻度が高いがん、すなわち、同じタイプのがん(例えば、卵巣がん、乳がん)におけるCSCの平均数又は頻度よりも高いCSCの数又は頻度である。ある実施形態において、CSCの数又は頻度は、同じタイプのがんにおけるCSCの平均数又は頻度よりも少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%(2倍)、200%(3倍)、300%(4倍)、又は400%(5倍)である。
【0119】
ある実施形態において、予後不良のがんは、60%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、50%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、40%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、30%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、20%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、10%未満の5年相対生存率を有するがんである。ある実施形態において、予後不良のがんは、5%未満の5年相対生存率を有するがんである。
【0120】
本明細書に開示される方法及び使用に好適なコンジュゲートは、ソルチリンに結合することができ、CSCに抗腫瘍剤を送達するようにCSCによって内在化される薬剤にコンジュゲートされた抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)を含むコンジュゲートである。ある実施形態において、コンジュゲート(又はコンジュゲート化合物)は、PCT公開第2017/088058号、同第2018/213928号、及び同第2020/037434号に記載されている抗腫瘍剤-ペプチド化合物コンジュゲートである。
【0121】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、式A-(B)
nの化合物であり、式中、
Aは、式(I)~(XIII)の配列のうちの1つと少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチド化合物であり、
【表4】
式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
18、及びX
19が、独立して、任意のアミノ酸から選択され、X
16、X
17、X
20、及びX
21が、独立して、Q、P、Y、I、及びLから選択され、nが、1~10の整数(例えば、1、2、3、4、又は5)であり、X
9が2回以上存在する場合、当該X
9の各々が、独立して、任意のアミノ酸から選択され、X
19が2回以上存在する場合、当該X
9の各々が、独立して、任意のアミノ酸から選択され、任意選択的に、ペプチド化合物が、環状であり、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0122】
Bは、少なくとも1つの抗がん剤又はその薬学的に許容される塩であり、Bが、直接又はリンカーを介してのいずれかで、任意選択的に、当該ペプチド化合物の遊離アミンにおいて、当該ペプチド化合物のN末端位置において、当該ペプチド化合物の遊離-SHにおいて、又は当該ペプチド化合物の遊離カルボキシルにおいて、Aに接続されている。
【0123】
「アミノ酸」という用語は、当業者に既知の一般的な天然(遺伝子コードされた)アミノ酸又は合成アミノ酸、及びそれらの一般的な誘導体を指す。アミノ酸に適用される場合、「標準」又は「タンパク質原性」とは、それらの天然の構成で遺伝子コードされた20個のアミノ酸を指す。同様に、アミノ酸に適用される場合、「非標準」、「非天然」又は「異常」とは、非天然、希少又は合成アミノ酸の幅広い選択、例えば、Hunt,S.in Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids,Barrett,G.C.ed.,Chapman and Hall:New York,1985に記載されるものを指す。非標準アミノ酸のいくつかの例としては、非アルファ-アミノ酸及びD-アミノ酸が挙げられる。ある実施形態において、ペプチド化合物は、天然アミノ酸のみ含む。別の実施形態において、ペプチド化合物は、D-アミノ酸などの1つ以上の非天然又は合成アミノ酸を含む。
【0124】
本明細書で使用される「配列同一性」という表現は、2つのポリペプチド配列間又は2つの核酸配列間の配列同一性のパーセンテージを指す。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列が、最適比較目的のためにアラインメントされる(例えば、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適アラインメントのために第1のアミノ酸の配列又は核酸配列にギャップが導入され得る)。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置において、アミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、それらの分子は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の重複した位置の数/総位置数×100%)である。一実施形態において、2つの配列は、同じ長さである。2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用しても達成され得る。BLASTタンパク質検索は、本開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、例えば、スコア-50、ワード長=3に設定されたXBLASTプログラムパラメータを用いて行われ得る。比較目的のためにギャップありアラインメントを得るために、Gapped BLASTが利用され得る。代替的に、PSI-BLASTを使用して、分子間の距離関係を検出する反復検索を行うことができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る(例えば、NCBIウェブサイトを参照されたい)。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,1988,CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4が使用され得る。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容して、又はギャップを許容することなく、上述の技術と同様の技術を使用して決定され得る。同一性パーセントを計算する際、典型的には、正確な一致のみが計測される。
【0125】
「薬学的に許容される」という表現は、動物又はヒトなどの対象の治療に適合することを意味する。本明細書に記載されるコンジュゲート化合物の薬学的に許容される塩もまた、本明細書に提供される。「薬学的に許容される塩」という表現は、動物又はヒトなどの対象の治療に好適であるか、又は適合する酸付加塩又は塩基付加塩を意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容される酸付加塩」という表現は、本開示の任意の化合物、又はその中間体のいずれかの任意の非毒性の有機塩又は無機塩を意味する。好適な塩を形成する例示的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸、並びにオルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムなどの金属塩が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な有機酸としては、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸及びサリチル酸などのモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸、並びにp-トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸などのスルホン酸が挙げられる。一塩基酸塩又は二塩基酸塩のいずれかを形成することができ、かかる塩は、水和形態、溶媒和形態、又は実質的に無水形態のいずれかで存在し得る。一般に、本開示の化合物の酸付加塩は、それらの遊離塩基形態と比較して、水及び種々の親水性有機溶媒において、より可溶性であり、一般に、より高い融点を示す。適切な塩の選択は、当業者に既知であろう。他の薬学的に許容されない塩、例えば、シュウ酸塩は、例えば、本開示の化合物の単離において、実験室での使用のために、又は薬学的に許容される酸付加塩へのその後の変換のために使用され得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩基付加塩」という表現は、本開示の任意の酸化合物、又はその中間体のいずれかの任意の非毒性の有機塩基付加塩又は無機塩基付加塩を意味する。塩基付加塩を形成し得る本開示の酸性化合物としては、例えば、CO2Hが官能基である場合が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な無機塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムの水酸化物が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な有機塩基としては、メチルアミン、トリメチルアミン、及びピコリン又はアンモニアなどの脂肪族、脂環式又は芳香族有機アミンが挙げられる。適切な塩の選択は、当業者に既知であろう。他の薬学的に許容されない塩基付加塩は、例えば、本開示の化合物又はコンジュゲート化合物の単離において、実験室での使用のために、又は薬学的に許容される酸付加塩へのその後の変換のために使用され得る。
【0126】
ある実施形態において、ペプチド化合物は、式(I)~(XIII)のうちのいずれか1つの配列を含むか又はそれからなる。実施形態において、ペプチド化合物は、50、45、40、35、30、25、又は20個以下のアミノ酸を含む。
【0127】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(I)又は配列番号1によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0128】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(II)又は配列番号2によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0129】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(III)又は配列番号3によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0130】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(IV)又は配列番号4によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0131】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(V)又は配列番号5によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0132】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(VI)又は配列番号6によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0133】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(VII)又は配列番号7によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0134】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(VIII)又は配列番号8によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0135】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(IX)又は配列番号9によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0136】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(X)又は配列番号10によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0137】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(XI)又は配列番号11によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0138】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(XII)又は配列番号12によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0139】
実施形態において、ペプチド化合物は、式(XIII)又は配列番号13によって表されるペプチド化合物と少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、ペプチド化合物が、ソルチリンに結合する。
【0140】
ある実施形態において、ペプチド化合物は、30、25、又は20個以下の残基を含み、配列GVRAKAGVRN(Nle)FKSESY(配列番号10)を含む。別の実施形態において、ペプチド化合物は、30、25、又は20個以下の残基を含み、配列GVRAKAGVRN(Nle)FKSESYC(配列番号31)を含む。
【0141】
ある実施形態において、少なくとも1つの修飾基は、N末端及び/又はC末端で当該ペプチド化合物に接続される。ある実施形態において、ペプチド化合物は、N末端に修飾基を含む。ある実施形態において、ペプチド化合物は、C末端に修飾基を含む。そのような修飾基は、修飾又は分解(例えば、プロテアーゼ分解)からペプチド化合物を保護するのに有用であり得る。ある実施形態において、アミノ末端修飾基は、C1~C16又はC3~C16アシル基(直鎖又は分岐、飽和又は不飽和)であり、更なる実施形態において、飽和C1~C6アシル基(直鎖又は分岐)又は不飽和C3~C6アシル基(直鎖又は分岐)である。更なる実施形態において、アミノ末端修飾基は、アセチル基(CH3-CO-、Ac)又はスクシニル基(CO-CH2-CH2-CO-)である。カルボキシ末端修飾基は、例えば、カルボキシル基に結合したヒドロキシルアミン基(NHOH)(-C(=O)-NHOH)、又はカルボキシル基に結合したアミン(-C(=O)-NRR’)であり得、アミンが、一級、二級、又は三級アミンであり、好ましくは、アミンが、好ましくは1~10個の炭素の脂肪族アミン(例えば、メチルアミン、イソ-ブチルアミン、イソ-バレリルアミン、又はシクロヘキシルアミン)、芳香族アミン若しくはアリールアルキルアミン(例えば、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、シンナミルアミン、又はフェニルエチルアミン)であり、好ましいアミンは-NH2である。
【0142】
ある実施形態において、スクシニル基は、ペプチド化合物に接続される。例えば、ペプチド化合物は、配列番号6に対応し、それに対してN末端で接続するスクシニル基を有する、スクシニル-IKLSGGVQAKAGVINMFKSESYの配列を有する。
【0143】
ある実施形態において、アセチル基は、ペプチド化合物に接続される。例えば、ペプチド化合物は、アセチル-GVRAKAGVRNMFKSESY(配列番号14)の配列を有する。例えば、ペプチド化合物は、アセチル-GVRAKAGVRN(Nle)FKSESY(配列番号15)の配列を有する。例えば、ペプチド化合物は、アセチル-YKSLRRKAPRWDAPLRDPALRQLL(配列番号16)の配列を有する。例えば、ペプチド化合物は、アセチル-YKSLRRKAPRWDAYLRDPALRQLL(配列番号17)の配列を有する。例えば、ペプチド化合物は、アセチル-YKSLRRKAPRWDAYLRDPALRPLL(配列番号18)の配列を有する。
【0144】
ある実施形態において、ペプチド化合物は、ペプチド末端での優先的な結合部位を得る又は増加させるために、1つ以上(例えば、1~5又は1~3)のアミノ酸残基を付加することによって、C末端及び/又はN末端で修飾され得る。例えば、アミノ酸は、システインであり得る。例えば、アミノ酸は、リジンであり得る。例えば、アミノ酸は、ペプチドのC末端にシステインを付加することができる。一実施形態において、ペプチド化合物は、C末端にシステインを付加することによって修飾される。特定の実施形態において、ペプチド化合物は、それぞれ配列番号10及び配列番号15に対応し、C末端でのシステイン残基の付加によって修飾される、GVRAKAGVRN(Nle)FKSESYC(配列番号31)又はアセチル-GVRAKAGVRN(Nle)FKSESYC(配列番号32)の配列を有する。
【0145】
コンジュゲート化合物は、例えば、それに接続する1~10又は1~5(例えば、1、2、3、又は4)分子の抗腫瘍剤を含み得る。これらの抗がん剤の分子は、同じであってもよく、又は異なっていてもよく、例えば、2、3、4、又はそれ以上の異なる抗腫瘍剤を、ペプチド化合物に接続することができる。抗腫瘍剤は、少なくとも1つの共有結合、少なくとも1つの原子、又は少なくとも1つのリンカーを介して、ペプチド化合物に接続される。ある実施形態において、少なくとも2分子の抗腫瘍剤がAに結合している。ある実施形態において、少なくとも2分子は、同じ抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)の分子である。
【0146】
抗腫瘍剤は、増殖を阻害する及び/又は腫瘍細胞を死滅させる能力を有する任意の化合物であってもよく、例えば、小分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA、shRNA)、放射性核種剤、抗体、並びに治療用抗腫瘍剤を装填したナノ粒子、リポソーム、ナノチューブ、グラフェン粒子を含む薬物送達系を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、抗腫瘍剤は、化学療法剤である。「化学療法剤」という用語は、腫瘍細胞を殺傷する及び/又はそれらの繁殖/増殖を阻害する薬剤を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、ダカルバジン、ニトロソウレア、テモゾロミド、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、プロカルバジン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、タキソテール、カバジタキセルなどのタキサン)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット、ロミデプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、タフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ、ダサチニブ、ニロチニブ、オシメルチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、トラメチニブ、イブルチニブ)、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン(チオグアニン))、ペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシン、アクチノマイシン)、白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、レチノイド(トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテン)、ビンカアルカロイド及び誘導体などの有糸分裂阻害剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、毒素(例えば、マイタンシノイド、アウリスタチン、カリケアマイシン、アマトキシン、又はアマニチン)、並びに抗腫瘍特性を有する天然の植物化学物質(例えば、クルクミン)、アルカロイド(例えば、クロロゲン酸、テオブロミン、テオフィリン)、アントシアニン(例えば、シアニジン、マルビジン、カロテノイド(ベータ-カロテン、ルテイン、リコピン)、クメスタン、フラバン-3-オール、フラボノイド(例えば、エピカテキン、ヘスペリジン、イソラムネチン、ケンフェロール、ミリセチン、ナリンギン、ノビレチン、プロアントシアニジン、ケルセチン、ルチン、タンゲレチン)、ヒドロキシ桂皮酸(例えば、チコリ酸、クマリン、フェルラ酸、スコポレチン)、イソフラボン(例えば、ダイゼイン,ゲニステイン)、リグナン(例えば、シリマリン)、モノテルペン(例えば、ゲラニオール、リモネン)、有機硫化物(例えば、アリシン、グルタチオン、インドール-3-カルビノール、イソチオシアネート、スルフォラファン)、ダムナカンタール、ジゴキシン、フィチン酸、フェノール酸(例えば、カプサイシン、エラグ酸、没食子酸、ロスマリン酸、タンニン酸)、植物ステロール(例えば、ベータ-シトステロール)、サポニン、スチルベン(例えば、プテロスチルベン、レスベラトロール)、トリテルペノイド(例えば、ウルソール酸)、キサントフィル(例えば、アスタキサンチン、ベータ-クリプトキサンチン)、及びモノフェノール(例えば、ヒドロキシチロソール))が挙げられる。
【0148】
別の実施形態において、抗腫瘍剤は、腫瘍細胞、より具体的にはCSCによって発現される抗原を認識する抗体又はその抗原結合断片である。
【0149】
ある実施形態において、Bは、当該ペプチド化合物のリジン残基の遊離アミンにおいて、任意選択的にリンカーを介してAに接続されているか、又は当該ペプチド化合物のN末端位置において、任意選択的にリンカーを介してAに接続されている。
【0150】
ある実施形態において、Bは、リンカーを介して、任意選択的に切断可能なリンカーを介して、Aに接続される。
【0151】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、本明細書に開示されるペプチド化合物を少なくとも1つの療法剤に接続する化学構造を意味する。リンカーは、ペプチド化合物上の異なる官能基でペプチド化合物に接続することができる。例えば、リンカーは、一級アミン(アミン(-NH2)で、ペプチド化合物に接続され得る。この基は、各ポリペプチド鎖のN末端に存在し(アルファ-アミンと呼ばれる)、また、リジン(Lys、K)残基の側鎖に存在する(ε-アミンと呼ばれる)。例えば、リンカーは、カルボキシル(-COOH)でペプチド化合物に接続し得る。この基は、各ポリペプチド鎖のC末端に存在し、アスパラギン酸(Asp、D)及びグルタミン酸(Glu、E)の側鎖に存在する。例えば、リンカーは、スルフヒドリル(-SH)でペプチド化合物に接続し得る。この基は、システイン(Cys、C)の側鎖に存在する。多くの場合、タンパク質の二次構造又は三次構造の一部として、システインは、ジスルフィド結合(-S-S-)を介して、それらの側鎖の間で一緒に連結される。ほとんどの種類の反応性基による架橋に利用可能にするためには、これらをスルフヒドリルに還元しなければならない。例えば、リンカーは、カルボニル(-CHO)でペプチド化合物に接続し得る。ケトン基又はアルデヒド基は、多糖の翻訳後修飾(グリコシル化)をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することによって、糖タンパク質中に作製することができる。
【0152】
以下の表は、標準的な化学コンジュゲート化のためのいくつかの主要リンカーの反応性クラス及び化学基をまとめたものである。
【表5】
【0153】
例えば、ホモ二官能性架橋剤及びヘテロ二官能性架橋剤を使用することができる。例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)は、短いスペーサーアームの両方の末端に同一のアミン反応性NHSエステル基を有するホモ二官能性架橋剤である。例えば、スルホスクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)は、シクロヘキサンスペーサーアームの一方にアミン反応性スルホ-NHS-エステル基と、反対側の末端にスルフヒドリル反応性マレイミド基とを有するヘテロ二官能性架橋剤である。これにより、連続した2工程のコンジュゲート化手順が可能になる。市販のホモ二官能性架橋剤の中で、特に、BSOCOES(ビス(2-[スクシンイミドオキシカルボニルオキシ]エチル)スルホン、DPDPB(1,4-ジ(3’-[2ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ブタン)、DSS(スベリン酸ジスクシンイミジル)、DST(酒石酸ジスクシンイミジル)、スルホDST(酒石酸ジスルホジスクシンイミジル)、DSP(ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)、DTSSP(3,3’-ジチオビス(プロピオン酸スルホスクシンイミジル)、EGS(エチレングリコールビス(コハク酸スクシンイミジル))、及びBASED(ビス(β-[4-アジドサリチルアミド]-エチル)ジスルフィドヨウ素化可能物)である。
【0154】
ペプチド化合物は、様々なリンカー、例えば、スルフヒドリル基、アミノ基(アミン)、又は任意の適切な反応性基を介してコンジュゲートされ得る。リンカーは、共有結合であり得る。リンカー基は、可撓性アーム、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の炭素原子を含み得る。
【0155】
例示的なリンカーとしては、これに限定されないが、ピリジンジスルフィド、チオスルホネート、ビニルスルホネート、イソシアネート、イミドエステル、ジアジン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、マルチペプチドリンカー、及びアセチレンが挙げられる。代替的に、使用可能な他のリンカーとしては、BS3[ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート](接近可能な一級アミンを標的とするホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである)、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミド及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(NHS/EDCは、一級アミン基をカルボキシル基とコンジュゲート化させることを可能にする))、スルホ-EMCS([N-ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド(スルホ-EMCSは、スルフヒドリル及びアミノ基に対して反応性であるヘテロ二官能性反応性基である))、ヒドラジド(ほとんどのタンパク質は、露出した炭水化物を含有し、ヒドラジドは、カルボキシル基を一級アミンに連結するための有用な試薬である)が挙げられる。
【0156】
共有結合を形成するために、ヒドロキシル部分がペプチド化合物を修飾するのに必要なレベルで生理学的に許容される多種多様な活性カルボキシル基(例えば、エステル)を化学反応性基として使用することができる。具体的な薬剤としては、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-ヒドロキシ-スルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、ガンマ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、マレイミドプロピオン酸(MPA)、マレイミドヘキサン酸(MHA)、及びマレイミドウンデカン酸(MUA)が挙げられる。
【0157】
一級アミンは、NHSエステルの主な標的であり、NHSエステルは、一級アミンと反応して共有結合性アミド結合を形成する。タンパク質のN末端に存在する接近可能なα-アミン基及びリジンのε-アミンは、NHSエステルと反応する。したがって、本明細書に開示されるコンジュゲート化化合物は、ペプチド化合物のN末端アミノ、又はリジンのε-アミンにコンジュゲート化されたNHSエステルを有するリンカーを含むことができる。NHSエステルが一級アミンと反応してN-ヒドロキシスクシンイミドを放出すると、アミド結合が形成される。反応性基を含有するスクシンイミドは、より単純にスクシンイミジル基と呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態において、ペプチド化合物上の官能基は、チオール基であり、化学反応性基は、ガンマ-マレイミド-ブチルアミド(GMBA又はMPA)などのマレイミド含有基である。そのようなマレイミド含有基は、本明細書では、マレイド基と呼ばれてもよい。
【0158】
アミン-アミンリンカーとしては、NHSエステル、イミドエステルなどが挙げられ、その例を以下に列挙する。
【表6】
【0159】
リンカーはまた、以下に列挙されるマレイミド及びピリジルジチオールなどのスルフヒドリル-スルフヒドリルリンカーであってもよい。
【表7】
【0160】
リンカーは、NHSエステル/マレイミド化合物を含むアミン-スルフヒドリルリンカーであってもよい。これらの化合物の例を以下に提供する。
【表8】
【0161】
リンカーは、アミノ基及び非選択的エンティティと反応することができる。かかるリンカーとしては、NHSエステル/アリールアジド及びNHSエステル/ジアジリンリンカーが挙げられ、その例を以下に列挙する。
【表9】
【0162】
例示的なアミン-カルボキシルリンカーとしては、カルボジイミド化合物(例えば、DCC(N,N-ジシクロヘキシルカルボジミド)及びEDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド))が挙げられる。例示的なスルフヒドリル非選択的リンカーとしては、ピリジルジチオール/アリールアジド化合物(例えば、APDP((N-[4-(p-アジドサリシルアミド)ブチル]-3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミド))が挙げられる。例示的なスルフヒドリル-炭水化物リンカーとしては、マレイミド/ヒドラジド化合物(例えば、BMPH(N-[β-マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド)、EMCH([N-ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)、MPBH4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド)、及びKMUH(N-[κ-マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド))、及びピリジルジチオール/ヒドラジド化合物(例えば、PDPH(3-(2-ピリジルジオ)プロピオニルヒドラジド))が挙げられる。例示的な炭水化物-非選択的リンカーとしては、ヒドラジド/アリールアジド化合物(例えば、ABH(p-アジドベンゾイルヒドラジド))が挙げられる。例示的なヒドロキシル-スルフヒドリルリンカーとしては、イソシアネート/マレイミド化合物(例えば、(N-[p-マレイミドフェニル]イソシアネート))が挙げられる。例示的なアミン-DNAリンカーとしては、NHSエステル/ソラレン化合物(例えば、SPB(スクシンイミジル-[4-(ソラレン-8-イルオキシ)-ブチレート))が挙げられる。
【0163】
コンジュゲートペプチド化合物中に様々な複雑性の分岐点を生成するために、リンカーは、3~7個のエンティティを連結することができる。
【表10】
【0164】
TMEA及びTSATは、スルフヒドリル基を有するマレイミド基を通じて到達する。THPPのヒドロキシル基及びカルボキシ基は、一級アミン又は二級アミンと反応することができる。他の有用なリンカーは、式Y=C=N-Q-A-C(O)-Zに適合し、式中、Qは、ホモ芳香族又はヘテロ芳香族環系であり、Aは、単結合、又は非置換若しくは置換二価C1~30架橋基であり、Yは、O又はSであり、Zは、Cl、Br、I、N3、N-スクシンイミジルオキシ、イミダゾリル、1-ベンゾトリアゾリルオキシ、OAr(式中、Arは、電子欠乏活性化アリール基である)、又はOC(O)R(式中、Rは、-A-Q-N=C=Y若しくはC4~20三級アルキルである(米国特許第4,680,338号を参照されたい)。
【0165】
他の有用なリンカーは、式
【化1】
を有し、式中、R
1は、H、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
6-12アリール若しくはアラルキニル、又は二価有機-O-、-S-、若しくは
【化2】
とカップリングしたこれらのものであり、式中、R’は、C
1-6アルキル、連結部分であり、R
2は、H、C
1-12アルキル、C
6-12アリール、又はC
6-12アラルキルであり、R
3は、
【化3】
又は隣接窒素の孤立電子対を非局在化することが可能な別の化学構造であり、R
4は、R
3をペプチド化合物に連結することが可能なペンダント反応性基である(例えば、米国特許第5,306,809号を参照されたい)。
【0166】
リンカーは、少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよく、少なくとも又は約2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、40、又は50個のアミノ酸残基のペプチドであり得る。リンカーが、単一アミノ酸残基である場合、リンカーは、任意の天然に存在するアミノ酸又は天然に存在しないアミノ酸(例えば、Gly又はCys)であり得る。リンカーが、短いペプチドである場合、リンカーは、配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(式中、nは、端点を含む1~6の整数である)を有するペプチドなどのグリシンリッチペプチド(可撓性である傾向がある)(米国特許第7,271,149号を参照されたい)又はセリンリッチペプチドリンカー(米国特許第5,525,491号を参照されたい)であり得る。セリンリッチペプチドリンカーとしては、式[X-X-X-X-Gly]y(配列番号19)のものが挙げられ、式中、Xのうちの最大2個はThrであり、残りのXはSerであり、yは、端点を含む1より大きい整数、例えば、1~5である(例えば、[Ser-Ser-Ser-Ser-Gly]y(配列番号20)であり、yは1より大きい整数、例えば、1~5である)。他のリンカーとしては、剛性リンカー(例えば、PAPAP(配列番号21)及び(PT)nP、式中、nは、2、3、4、5、6、又は7である)及びα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA(配列番号22)、式中、nは、1、2、3、4、又は5である)が挙げられる。
【0167】
リンカーは、脂肪族リンカーであり得る(例えば、ポリペプチドへのアミド結合及び療法剤へのエステル結合を有する)。脂肪族リンカーが使用される場合、脂肪族リンカーは、長さ(例えば、C1~C20、C1~C12、C1~C6)及びそれが含む化学部分(例えば、アミノ基又はカルバメート)に関して様々であり得る。
【0168】
好適なアミノ酸リンカーの例は、コハク酸、Lys、Glu、及びAsp、又はGly-Lysなどのジペプチドである。リンカーがコハク酸である場合、その一方のカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してもよく、その他方のカルボキシル基は、例えば、ペプチド又は置換基のアミノ基とアミド結合を形成してもよい。リンカーが、Lys、Glu、又はAspである場合、そのカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してもよく、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成してもよい。Lysがリンカーとして使用される場合、更なるリンカーが、Lysのε-アミノ基と置換基との間に挿入されてもよい。更なるリンカーは、Lysのε-アミノ基及び置換基中に存在するアミノ基とアミド結合を形成することができる、コハク酸であってよい。一実施形態において、更なるリンカーは、Glu又はAsp(例えば、Lysのε-アミノ基とアミド結合を形成し、置換基中に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成する)であり、すなわち、置換基は、Nε-アシル化リジン残基である。
【0169】
リンカーはまた、分岐ポリペプチドであり得る。例示的な分岐ペプチドリンカーは、米国特許第6,759,509号に記載されている。
【0170】
リンカーは、切断可能な結合(例えば、チオエステル結合)又は切断不可能な結合(例えば、マレイミド結合)を提供することができる。例えば、細胞傷害性タンパク質は、ポリペプチド内のリジン残基及びポリペプチドのアミノ末端に存在する修飾遊離アミンと反応するリンカーに結合し得る。したがって、本コンジュゲート化合物で有用なリンカーは、療法剤部分がコンジュゲート化されるポリペプチド又は修飾ポリペプチド上の一級アミンと反応性である基を含み得る。より具体的には、リンカーは、モノフルオロシクロオクチン(MFCO)、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオプロピオネート(SATP)、マレイミド及びジベンゾシクロオクチンエステル(DBCOエステル)から選択され得る。所与のリンカー内の有用なシクロオクチンとしては、OCT、ALO、MOFO、DIFO、DIBO、BARAC、DIBAC、及びDIMACが挙げられる。
【0171】
リンカーは、例えば、短いアーム(2個未満の炭素鎖)、中程度のサイズのアーム(2~5個の炭素鎖)、又は長いアーム(3~6個の炭素鎖)などの可撓性アームを含み得る。
【0172】
クリック化学は、ペプチド(DBCO、TCO、テトラジン、アジド及びアルキンリンカー)上のコンジュゲート化にも使用され得る。これらのリンカーファミリーは、アミン、カルボキシル及びスルフヒドリル基に対して反応性であり得る。加えて、これらのリンカーは、ビオチン化され、ペグ化され、蛍光撮像色素で修飾され、又はオリゴヌクレオチド配列に組み込むためにホスホラミド化され得る。
【0173】
ある実施形態において、抗腫瘍剤-ペプチド化合物コンジュゲートは、式(LIII)又は(LIV)によって表される。
GVRAK(Z1)AGVRN(Nle)FK(Z2)SESY(LIII)(配列番号 23)、
アセチル-GVRAK(Z1)AGVRN(Nle)FK(Z2)SESY(LIV)( 配列番号24)
式中、Z1及びZ2は、各々独立して、リジン(K)残基に結合した抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)である。
【0174】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号10を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したクルクミン分子を有する、GVRAK(クルクミン)AGVRN(Nle)FK(クルクミン)SESY-式(XIV)(配列番号25)、又は配列番号11を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したクルクミン分子を有する、YK(クルクミン)SLRRK(クルクミン)APRWDAPLRDPALRQLL-式(XV)(配列番号26)である。
【0175】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号15を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したクルクミン分子を有する、アセチル-GVRAK(クルクミン)AGVRN(Nle)FK(クルクミン)SESY-式(XVI)(配列番号27)、又は配列番号16を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したクルクミン分子を有する、アセチル-YK(クルクミン)SLRRK(クルクミン)APRWDAPLRDPALRQLL-式(XVII)(配列番号28)である。
【0176】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号10を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したクルクミン分子を有する、GVRAK(ドセタキセル)AGVRN(Nle)FK(ドセタキセル)SESY-式(XIX)(配列番号29)である。
【0177】
別の実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号15を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したドセタキセル分子を有する、アセチル-GVRAK(ドセタキセル)AGVRN(Nle)FK(ドセタキセル)SESY-式(XXIII)(配列番号30)である。
【0178】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号10を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したドキソルビシン分子を有する、GVRAK(ドキソルビシン)AGVRN(Nle)FK(ドキソルビシン)SESY-式(XXVI)(配列番号33)である。
【0179】
別の実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号15を有するペプチド化合物を含み、各リジン残基が、それに接続したドキソルビシン分子を有する、アセチル-GVRAK(ドキソルビシン)AGVRN(Nle)FK(ドキソルビシン)SESY-式(XXVIII)(配列番号34)である。
【0180】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号31を有するペプチド化合物を含み、システイン残基が、それに接続したアルドキソルビシン分子を有するか、又は配列番号10を有するペプチド化合物を含み、システイン残基が、当該ペプチド化合物のC末端に付加され、システイン残基が、それに接続したアルドキソルビシン分子を有する、GVRAKAGVRN(Nle)FKSESYC(アルドキソルビシン)-式(LI)(配列番号35)である。
【0181】
ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、配列番号32を有するペプチド化合物を含み、システイン残基が、それに接続したアルドキソルビシン分子を有するか、又は配列番号15を有するペプチド化合物を含み、システイン残基が、当該ペプチド化合物のC末端に付加され、システイン残基が、それに接続したアルドキソルビシン分子を有する、アセチル-GVRAKAGVRN(Nle)FKSESYC(アルドキソルビシン)-式(LII)(配列番号36)である。
【0182】
ある実施形態において、コンジュゲートは、プロドラッグの形態で投与される。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、既知の化合物又は組成物の活性形態の誘導体を指し、その誘導体は、対象に投与されると、より良い治療応答及び/又は低減された毒性レベルをもたらすために、活性形態に徐々に変換される。一般に、プロドラッグは、インビボで、概念的にその由来となる化合物へと容易に変換することが可能な、本明細書で開示される化合物の機能的誘導体である。プロドラッグは、アシルエステル、カーボネート、ホスフェート、及びウレタンを含むが、これらに限定されない。これらの群は、例示的であり、網羅的ではなく、当業者であれば、他の既知の種類のプロドラッグを調製することができる。プロドラッグは、例えば、利用可能なヒドロキシ基、チオール基、アミノ基又はカルボキシル基で形成され得る。例えば、本開示のコンジュゲート中の利用可能なOH又はNH2は、塩基の存在下、及び任意選択的に、不活性溶媒中で(例えば、ピリジン中の酸塩化物)、活性化された酸を使用してアシル化されてもよい。プロドラッグとして利用されているいくつかの一般的なエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C1~C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カルバメート、及びアミノ酸エステルである。特定の場合において、本開示の化合物のプロドラッグは、化合物中のヒドロキシ基及び/又はアミノ基が、インビボでヒドロキシ基及び/又はアミノ基に変換され得る基としてマスキングされるものである。好適なプロドラッグの選択及び調製のための従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」H.Bundgaard編,Elsevier,1985に記載されている。
【0183】
コンジュゲートの共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。共有結合修飾は、コンジュゲートの標的化アミノ酸残基を、選択された側鎖又はコンジュゲートのN末端残基若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることを含む。他の修飾としては、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化が挙げられる(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79-86(1983))。本開示の範囲内に含まれるコンジュゲートの他のタイプの共有結合修飾は、コンジュゲートをタンパク質(例えば、アルブミン)又は非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレン)に連結することを含み、これは、例えば、コンジュゲートのインビボ半減期を増加させ得る。
【0184】
ある実施形態において、本明細書に開示されるコンジュゲート化合物又はその薬学的に許容される塩は、医薬組成物に製剤化される。ある実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を更に含む。そのような組成物は、好適な純度を有するコンジュゲート化合物を、1つ以上の任意選択的な薬学的に許容される担体又は賦形剤と混合することによって、医薬分野で周知の様式で調製されてもよい(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,by Loyd V Allen,Jr,2012,22nd edition, Pharmaceutical Press、Handbook of Pharmaceutical Excipients,by Rowe et al.,2012,7th edition,Pharmaceutical Pressを参照されたい)。担体/賦形剤は、任意の従来の投与経路、例えば、経口、静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼科、脳室内、嚢内、脊髄内、髄腔内、硬膜外、大槽内、腹腔内、鼻腔内、又は肺(例えば、エアロゾル)投与によるコンジュゲート化合物の投与に好適であり得る。ある実施形態において、担体/賦形剤は、静脈内又は皮下経路によるコンジュゲート化合物又はその塩の投与に適合される。ある実施形態において、担体/賦形剤は、静脈内経路によるコンジュゲート化合物の投与に適合される。別の実施形態において、担体/賦形剤は、皮下経路によるコンジュゲート化合物又はその塩の投与に適合される。別の実施形態において、担体/賦形剤は、経口経路によるコンジュゲート化合物又はその塩の投与に適合される。
【0185】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、有効成分(薬物)自体ではない任意の成分である。賦形剤には、例えば結合剤、潤滑剤、希釈剤、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層製剤、潤滑剤、安定化剤、放出遅延剤、及びその他の成分を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」とは、有効成分の生物学的活性の有効性を妨げず、対象に対して毒性がない賦形剤、すなわち、賦形剤の一種であり、及び/又は対象に対して毒性がない量で使用するための任意の賦形剤を指す。賦形剤は当技術分野でよく知られており、本システムはこれらの点で限定されるものではない。特定の実施形態において、組成物は、1つ以上のバインダー(結合剤)、増粘剤、界面活性剤、希釈剤、放出遅延剤、着色剤、香味剤、充填剤、崩壊剤/溶解促進剤、潤滑剤、可塑剤、シリカ流動調整剤、滑剤、ケーキング防止剤、付着防止剤、安定化剤、帯電防止剤、膨潤剤、及びこれらの任意の組み合わせなどの賦形剤を含み得る。当業者であれば認識するように、単一の賦形剤は一度に2つ以上の機能を果たすことができ、例えば、結合剤と増粘剤の両方として作用することができる。また、当業者であれば認識するように、これらの用語は必ずしも相互に排他的ではない。注射用製剤に一般的に使用される賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。薬学的に許容される物質の追加の例は、湿潤剤又は補助物質、例えば、保存期間又は有効性を増加させる、乳化剤、防腐剤、又は緩衝剤である。
【0186】
投与されるコンジュゲートの正確な量/投薬量は、関与する特定のがん細胞及び特定のがん疾患などの要因、がん疾患の程度、関与、若しくは重症度、がん患者のサイズ、年齢、及び全般的な健康状態、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与される調製物の生物学的利用能特性、選択される用量レジメン、コンジュゲートが単独で又は他の薬剤と組み合わせて投与されるか、コンジュゲートの薬力学的特性及び投与様式及び投与経路、並びに医師又は当業者が既知の技術を使用することによって及び同様の状況下で得られる結果を観察することによって容易に決定されるであろう他の関連する特性に応じて変化する。コンジュゲート/組成物は、1回の治療で又は一連の治療にわたって患者に好適に投与される。好ましくは、ヒトで試験する前に、インビトロで、次いで、有用な動物モデルで用量応答曲線を決定することが望ましい。本開示は、コンジュゲート及びそれを含む組成物の投薬量を提供する。例えば、疾患の種類及び重症度に応じて、1日当たり体重1kg当たり約1μg/kg~1000mg/kg(mg/kg)である。更に、有効用量は、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg/25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kgであってもよく、最大1000mg/kgまで25mg/kg増分で増加させてもよく、又は前述の値のうちのいずれか2つの間の範囲であってもよい。典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。数日間又はそれ以上にわたる反復投与については、病状に応じて、病徴の所望の抑制が生じるまで治療は継続される。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0187】
本明細書に記載のコンジュゲート化合物若しくはその塩、又はそれを含む組成物は、標的化疾患/状態の治療、又は標的化疾患/状態のうちの1つ以上の症状の管理(例えば、鎮痛剤、制吐剤など)のために、1つ以上の追加の活性剤又は治療(放射線療法、手術、ワクチンなど)と組み合わせて使用され得る。ある実施形態において、本明細書に記載のコンジュゲート化合物は、1つ以上の化学療法剤、免疫療法、チェックポイント阻害剤、細胞ベースの療法などと組み合わせて使用される。本明細書に記載のコンジュゲートと組み合わせて使用するのに好適な化学療法剤の例としては、限定されないが、ビンカアルカロイド、微小管形成を阻害する薬剤(コルヒチン及びその誘導体など)、抗血管新生剤、治療用抗体、EGFR標的化剤、チロシンキナーゼ標的化剤(チロシンキナーゼ阻害剤など)、遷移金属錯体、プロテアソーム阻害剤、代謝拮抗剤(ヌクレオシド類似体など)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、レチノイド(オールトランスレチノイン酸又はその誘導体など)、ゲルダナマイシン又はその誘導体(17-AAGなど)、及び当該技術分野で認識されている他のがん治療剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のコンジュゲートと組み合わせて使用するための化学療法剤は、アドリアマイシン、コルヒチン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ミトキサントロン、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル-CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシン及びその誘導体、フェネステリン、タキサン及びその誘導体(例えば、タキソール、パクリタキセル及びその誘導体、タキソテール及びその誘導体など)、トペテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、ピポスルファン、nab-5404、nab-5800、nab-5801、イリノテカン、HKP、オルタタキセル、ゲムシタビン、オキサリプラチン、Herceptin(登録商標)、ビノレルビン、Doxil(登録商標)、カペシタビン、Alimta(登録商標)、Avastin(登録商標)、Velcade(登録商標)、Tarceva(登録商標)、Neulasta(登録商標)、ラパチニブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、エルビタックス、その誘導体のうちの1つ以上を含む。ある実施形態において、本明細書に記載のコンジュゲート化合物又はそれを含む組成物は、EGFR又はチロシンキナーゼ標的化剤、例えば、EGFR阻害剤(RTK阻害剤)と組み合わせて使用される。本明細書に記載のコンジュゲート化合物若しくはその塩、又はそれを含む組成物はまた、1つ以上の治療用抗体又は抗体断片(例えば、腫瘍の治療に使用される治療用抗体又は抗体断片)と組み合わせて使用され得る。がんの治療に使用される抗体の例としては、CD52を標的とする抗体(例えば、アレムツズマブ)、VEGF/VEGFR(例えば、ベバシズマブ、ラムシルマブ)、EGFR(例えば、セツキシマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ)、CD38(例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ)、RANKL(例えば、デノスマブ)、GD2(例えば、ジヌツキシマブ、ナキシタマブ-gqgk)、SLAMF7(例えば、エロツズマブ)、HER2(例えば、マルジェツキシマブ-cmkb、ペルツズマブ)、CCR4(例えば、モガムリズマブ)、CD20(オビヌツズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ)、BCMA(例えば、テクリスタマブ)、CD19(例えば、タファシタマブ)、CTLA-4(例えば、トレメリムマブ)、LAG-3(例えば、レラトリマブ)、PD-1(例えば、チスレリズマブ、ペンプリマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、レチファンリマブ、ドスタルリマブ)、PD-L1(例えば、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ)、EpCAM(例えば、オポルツズマブ、エドレコロマブ)、Nectin-4(例えば、エンホルツマブ)、CD79b(例えば、ポラツズマブ)が挙げられる。
【0188】
活性剤の組み合わせ及び/又はそれを含む組成物は、任意の従来の剤形で投与され得るか、又は(例えば、連続的に、同時に、異なる時間に)同時投与され得る。本発明の文脈における同時投与は、改善された臨床転帰を達成するように調整された治療の過程における、2つ以上の治療薬の投与を指す。そのような同時投与は、同じ時間範囲内(coextensive)であり得、すなわち、重複する期間中に起こり得る。例えば、第1の薬剤(例えば、本明細書に記載のコンジュゲート化合物)は、第2の活性剤(例えば、化学療法剤又は免疫療法剤)が投与される前に、同時に、前後に、又は後に、患者に投与され得る。薬剤は、ある実施形態において、単一の組成物中で組み合わされ/製剤化されてもよく、したがって、同時に投与され得る。
【0189】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という用語は、げっ歯類、ネコ、イヌ、及び霊長類などの哺乳動物を示す。好ましくは、本開示による対象又は患者は、ヒトである。
【実施例】
【0190】
本開示は、以下の非限定的な例によって更に詳細に例示される。
【0191】
実施例1:材料及び方法
試薬。TH19P01(GVRAKAGVRN(Nle)FKSESY、配列番号10)及びTH1902(アセチル-GVRAK(ドセタキセル)AGVRN(Nle)FK(ドセタキセル)SESY、配列番号30)を、以前に記載されているように合成した(PCT公開第2017/088058号)。TH19P01-Alexa Fluor(商標)488は、C末端残基にシステインを付加すること(TH19P01-C末端Cys)によってTH19P01ペプチドを修飾することによって合成して、Alexa Fluor(商標)488タグを結合させた。TH19P01-C末端Cysを、2.5mg/mlの濃度で15%のアセトニトリル/ギ酸(0.1%)に溶解した。10mg/mlの濃度でDMSO中に溶解させたAlexa Fluor(商標)488C5-マレイミド(Invitrogen,#A10254)を、TH19P01-C末端Cys溶液(比率:ペプチド5mg当たり1mgの蛍光プローブ)に付加した。この比率は、蛍光プローブを溶液中で完全にコンジュゲートするために、過剰のペプチドを含有する。混合物のpHを、0.1N NaOHで5に調整した。反応を、UPLC-MS(pH5で約5~10分)によって完了させ、次いで、Alexa Fluor488(商標)標識TH19P01ペプチド(TH19P01-Alexa Fluor(商標)488)を、A)水中0.1%のギ酸及びB)ACN中0.1%のギ酸を用いて30RPC樹脂を使用してAKTA精製器上の分取スケールHPLCによって精製した。良好な画分を試験し、プールし、凍結乾燥した。TH19P01-Alexa488は、黄色の粉末であり、使用するまで-20℃で暗所に保存した。ドセタキセルは、Tecoland Inc.から購入した。
【0192】
腫瘍細胞株。トリプルネガティブヒト乳がん幹細胞(hBCSC)は、Celprogen(San Pedro,カタログ#36102-29)から購入した。ヒトトリプルネガティブ乳がん(TNBC)由来のMDA-MB-231/Luc(上皮性乳房腺がん)細胞は、Cell Biolabs Inc.(San Diego,CA,#AKR-231)から得た。イヌ腎上皮MDCK-MDR1細胞は、Dr.Amanda Yancy(AstraZeneca Pharmaceuticals,LP,Wilmington DE,USA)(Cancer Chemother Pharmacol(2005)56:173-181)によって提供された。
【0193】
細胞株及び細胞培養。血清(#M36102-29S)を含むヒト乳がん幹細胞完全増殖培地(#M36102-29S)及び未分化培地(#M36102-29US)、並びにそれらに対応するヒト乳がん幹細胞培養細胞外増殖マトリックス(#E36102-29-T75)又は未分化マトリックス(#U36102-29-T75)でプレコーティングされたT75フラスコを、Celprogenから入手した。MDA-MB-231/luc細胞を培養するために、DMEM培地(Wisent,#319-005-CL)、100×非必須アミノ酸(NEAA;Hyclone(商標)Laboratories;GE Healthcare Life Sciences,#30238.01)、及びウシ胎児血清(FBS;Thermo Fisher Scientific,Inc.;#12483-020)を使用した。高グルコースDMEMは、Wisent(St-BrunoQC,#319-020-CL)から得た。ヒトトリプルネガティブヒト乳がん幹細胞(hBCSC,カタログ#36102-29、マーカーCD133、CD44、SSEA3/4及びOct4が陽性)、ヒト卵巣がん幹細胞(hOvCSC,カタログ番号#36113-40、マーカーCD44、CD133、SSEA3/4、Oct4、Sox2、Nanog、cKit、Nestin、Lin28が陽性)、並びにヒト膵臓がん幹細胞(hPCSC,カタログ番号#36115-42、マーカーCD133、CD44、SSEA3/4、Oct4、及びNestinが陽性)は、Celprogen(Torrance,CA)から購入した。細胞を、接着単層として、加湿雰囲気(5% CO2)中、37℃で増殖させた。MDA-MB-231/luc細胞を、1×NEAAを含む10%のFBSを補充したDMEM中で培養した。MDCK-MDR1細胞を、1×NEAA溶液及び10%のFBSを補充した高グルコースDMEM中で増殖させた。hBCSC、hOvCSC、及びhPCSCSを、プロバイダの指示(Celprogen)に従って、対応する増殖及び未分化マトリックスでプレコーティングされたT75フラスコを使用して、血清を含む適切な増殖及び未分化培地で増殖させた。
【0194】
実験的使用のために、細胞を、トリプシン(Wisent、番号325-042-CL)で5~10分間処理することによって培養フラスコから切り離し、次いで、10倍希釈し、完全培養培地を添加することによって中和した。細胞数は、細胞のトリパンブルー(0.4%、ThermoFisherScientific、#15250061)排除染色後、血球計(Hausser Scientific、#3200)によって手動で評価した。
【0195】
TH19P01-Alexa Fluor(商標)488による細胞内蛍光の評価では、hBCSCを、完全培地中、12ウェルプレートで24時間増殖させた。いくつかの実験では、細胞を、HBSS(フェノールを含まない)で洗浄し、過剰な非標識TH19P01(50μM)、ニューロテンシン(10μM)(Ambiopharm;North Augusta、SC;#APi1260)、又はプログラニュリン(1nM)(Sigma-Aldrich;Oakville,ON;#K110517-L1)とともに、200nMのAlexa Fluor(商標)488標識TH19P01の存在下又は不在下で、HBSS中でインキュベートした。別の実験では、siScrambled-又はsiSORT1トランスフェクト細胞を、HBSSで洗浄し、200nMのAlexa Fluor(商標)488標識TH19P01の存在下又は不在下で、HBSS中でインキュベートした。両方のタイプの実験について、37℃で2時間インキュベーションした後、細胞を、HBSSで洗浄し、トリプシン処理し、再び洗浄し、C6 Accuri(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して、FL1チャネルで蛍光を評価した。
【0196】
ソルチリンサイレンシング。hBCSCを、100nMのスクランブルされたsiRNA配列(AllStar陰性対照siRNA,1027281)又はSORT1 mRNAに対して生成されたヒトsiRNA(Hs_SORT_5 FlexiTube siRNA:SI03115168;Qiagen,Valencia,CA)で、Lipofectamine(商標)2000(ThermoFisher Scientific,Burlington,ON)を使用して、24時間一過的にトランスフェクトした。
【0197】
試験物品によるhBCSCの遊走の阻害。スクラッチ(創傷治癒)アッセイを使用して、細胞遊走実験を行った。細胞(2.8×105細胞/ウェル)を、6ウェルプレートに播種し、24時間後、滅菌p200ピペットチップを使用してスクラッチした。細胞を、無血清培地で洗浄して、剥離された細胞を取り出し、次いで、ビヒクル(DMSO)、2μMドセタキセル、又は1μMTH1902を含有する無血清培地で2時間処理した。細胞を、完全培地ですすぎ、新鮮な完全培地中で48時間インキュベートした。スクラッチの0、24、及び48時間後、倒立顕微鏡を使用して画像を取得した。
【0198】
フローサイトメトリーによるhBCSCアポトーシスの評価。アネキシンV/PI染色は、製造元の指示に従って、アポトーシス検出キット(BD Pharmingen,Mississauga,ON)を使用して行った。簡潔には、hBCSC(1.3×105細胞/ウェル)を12ウェルプレートに24時間播種した。細胞を、ビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902を含む無血清培地中で2時間処理した。細胞を、完全培地で洗浄し、新鮮な完全培地中で22、48、及び72時間インキュベートした。細胞を、最終的に回収し、5μLのアネキシンV-FITC及び5μLのPIを含有する100μlの1×結合緩衝液の染色溶液に再懸濁した。細胞を、暗所で、室温で15分間インキュベートした後、フローサイトメトリーによって分析した。アポトーシスの程度を測定し、次いで、BD Accuri(商標)C6ソフトウェアを使用して分析した。
【0199】
チューブリン重合に対するドセタキセル及びTH1902の効果。hBCSCを、プレコーティングされた18mm顕微鏡カバースリップ(Celprogen,#E36102-29-CS18)上で80%コンフルエンスまで増殖させ、PBSですすぎ、37℃で、ビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902を含有する無血清培地に曝露した。2時間インキュベーションした後、細胞を、完全培養培地ですすぎ、新鮮な完全培地中で48時間インキュベーションした。次いで、細胞を、PHEM緩衝液(60mMのPipes、25mMのHEPES、10mMのEGTA、及び2mMのMgCl2、pH6.9)で洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドで15分間固定し、次いで、PHEM緩衝液中1%のTriton(商標)X-100で5分間透過処理し、PHEM緩衝液で再び洗浄した。細胞を、10%の正常ヤギ血清及び0.05%のTriton(商標)を含有するPBS(2.6mMのKCl、1.4mMのKH2PO4、136.9mMのNaCl、及び6.5mMのNa2HPO4・7H2O;pH7.2)中でブロッキングし、次いで、洗浄緩衝液(5%の正常ヤギ血清及び0.025%のTritonを含有するPBS)に希釈した1:2000の抗α-チューブリン一次モノクローナル抗体(クローンB-5-1-2,Sigma-Aldrich;#T5168)と1時間インキュベートした。細胞を、洗浄緩衝液で洗浄し、Alexa Fluor(商標)488コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体(1:1000;Invitrogen;#A-11001)で1時間インキュベートし、希釈したブロッキング緩衝液で洗浄し、DAPI(PBS中2μg/ml、Invitrogen;#D1306)で3分間染色し、再び洗浄ブロッキング緩衝液で洗浄し、Prolong(商標)Goldアンチフェイド試薬(Invitrogen,P36934)を使用してスライド上にマウントした。細胞の画像を、共焦点顕微鏡(Nikon A1)によって最終的にデジタル化し、NIH ImageJ(商標)バージョン1.4.21ソフトウェアを使用して分析した。Alexa Fluor(商標)488に使用した励起波長及び発光波長は、それぞれ488nm及び525nmであり、DAPIに使用した励起波長及び発光波長は、それぞれ404nm及び450nmであった。
【0200】
試験物品によるhBCSCの処理後の細胞周期分析。hBCSC(2.8×105細胞/ウェル)及びMDA-MB-231/luc細胞(2.3×105細胞/ウェル)を、処理の1日前に6ウェルプレートに播種した。細胞周期に対するドセタキセル及びTH1902の効果を試験するために、hBCSC及びMDA-MB-231/luc細胞を、ビヒクル(DMSO)、4μMのドセタキセル、又は2μMのTH1902(等モルのドセタキセル)を含む無血清培地中で2時間処理し、完全培地ですすぎ、新鮮な完全培地中で22時間及び48時間インキュベートした。P-gp阻害剤を用いた実験の場合、hBCSCを、ビヒクル(DMSO)、又は10μMのシクロスポリンA若しくはPSC-833(P-gp阻害剤)を含む無血清培地中で30分間前処理した。次に、細胞を、P-gp阻害剤の継続的な存在又は不在下、4μMのドセタキセル又は2μMのTH1902で2時間処理した後、すすぎ、P-gp阻害剤の継続的な存在又は不在下、新鮮な完全培地中でインキュベートした。次いで、細胞を、22及び48時間インキュベートした。両方のアッセイにおいて、インキュベーション後、細胞を、トリプシンで剥離し、氷冷70%のEtOHで固定し、4℃で一晩維持した。細胞を、PBSで1回洗浄し、その後、FxCycle(商標)PI/RNase染色溶液(Thermo Scientific,Waltham,MA;#F10797)で、室温で30分間染色した。細胞を、最終的に、BD Accuri(商標)C6フローサイトメーターを使用して細胞周期の分析に供した。
【0201】
ウエスタンブロッティングによるMDRタンパク質の検出。細胞を、Calbiochem(San Diego,CA)からの完全なプロテアーゼ阻害剤カクテルを補充した溶解緩衝液(1%のSDS)中でホモジナイズした。細胞を、室温で30分間インキュベートし、5分ごとにボルテックスした。次いで、細胞を、超音波処理器(Sonics、モデル:Vibra Cell(商標)VC130)で、80%の振幅で、各3秒間を3サイクル超音波処理し、15,000gで、4℃で10分間遠心分離した。マイクロBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific,#23235)を使用して、タンパク質を定量化した。等量のタンパク質(20μg)を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)によって分離した。次いで、タンパク質をフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に電気転写し、0.1%のTween(商標)-20を含有するTris緩衝生理食塩水(150mMのNaCl、20mMのTris-HCl、pH7.5)(TBST)中5%の脱脂粉乳を使用して、室温で1時間ブロッキングした。膜を、TBSTで洗浄し、3%のBSA及び0.05%のNaN3を含むTBSTに希釈したα-Pgp(1μg/ml,Thermo Fisher Scientific #MA1-26528)、ABCB5(1:1,000,Novus Biologicals Centennial,CO,#NBP1-77687)、ソルチリン(マウスmAb(1:1,000,BD Biosciences、San Jose,CA)、又はウサギポリクローナルAb(1μg/ml,Abcam,Cambridge,MA))に対する一次抗体と一晩インキュベートした。膜をTBST中で洗浄し、5%無脂肪ドライミルクを含有するTBST中のホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウス又は抗ウサギIgG(1/5000希釈,Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)と室温で1時間インキュベーションした。膜を、TBSTで再び洗浄し、増強型化学発光(Amersham Biosciences,Baie d’Urfe,QC)を使用してシグナルを検出した。
【0202】
ドセタキセル及びTH1902抗腫瘍有効性のインビボ評価。腫瘍異種移植片を、50%のMatrigel(商標)を含有する100μLのHBSS中に再懸濁した103個のhBCSC細胞、hOvCSC、及びhPCSCを、軽いイソフルラン麻酔下でNCGトリプル免疫不全雌マウス(Charles River,Saint-Constant,QC)の右脇腹に皮下接種することによって確立した。hBCSC又はhOvCSCSのいずれかの移植の3日後、マウスは、ビヒクル(10%のポリソルベート-80、5%のデキストロース、0.04%のギ酸、pH4.3)、ドセタキセル(15mg/kg(この薬剤のMTD)又は3.75mg/kg(この薬剤の1/4MTD);5%のデキストロース、3.3%のエタノール、1.7%のTween(商標)-80に溶解したもの)、又はTH1902(35mg/kg又は8.75mg/kg;ビヒクルに溶解したもの)の毎週の静脈内ボーラス注射による処置を受け始めた。TH1902及びドセタキセルの2つの濃度は、1分子のTH1902当たりの2分子のドセタキセル部分に起因して、等モル量のドセタキセルを含むことに留意されたい。電子キャリパーを用いて行われた二次元測定値を使用して、腫瘍増殖を測定し、腫瘍体積を、以下の式:腫瘍体積(mm3)=π/6×長さ×幅2に従って計算した。動物の体重を、10mgの精度で、週3回測定した。
【0203】
統計解析.使用した個々の統計検定は、図の凡例及びそれぞれのテキストに記載されている。Prismソフトウェアバージョン8.3.1(GraphPad,San Diego,CA)を使用して、全ての統計分析を行った。
【0204】
実施例2:hBCSCによる蛍光標識TH19P01の内在化
hBCSC及びMDA-MB-231/luc細胞におけるソルチリンの発現を、ウエスタンブロット分析によって評価した(
図1Aを参照)。結果は、両方の細胞株が測定可能なレベルのソルチリンを含有することを示した。hBCSCを、ビヒクル単独又は200nMの蛍光ペプチドTH19P01-Alexa Fluor(商標)488を含むビヒクルのいずれかに2時間曝露した。ビヒクル処理細胞で見られる蛍光のレベルは、使用される装置で測定された細胞のバックグラウンド蛍光のみの推定値である。TH19P01-Alexa Fluor(商標)488への細胞の曝露は、バックグラウンド蛍光よりも1桁大きく、したがって、容易に見える蛍光シグナルを生成した(
図1Bを参照)。
【0205】
実施例3:ソルチリンリガンドによる及びソルチリンサイレンシング時のTH19P01内在化の阻害
TH19P01-Alexa Fluor(商標)488のhBCSC内在化がソルチリンによって媒介されることを実証するために、蛍光ペプチドへの細胞の曝露を、過剰量のいくつかの既知のソルチリンリガンドの存在下又は不在下で繰り返して、これらの物質が内在化に対してペプチドと競合することができるかどうかを決定した。
図2Aは、hBCSCへの蛍光ペプチドの内在化に対するニューロテンシン(NT)、TH19P01、及びプログラニュリン(PGRN)の効果を示す。競合する3つの薬剤の全てが、細胞内蛍光を有意に減少させた(p<0.01)。これは、蛍光ペプチドの内在化が急激に減少したことを示す。その後、この所見の確認は、スクランブルされたsiRNA(siScr)又はヒトソルチリンに特異的なsiRNA(siSORT1)のいずれかの存在下で、hBCSCをプレインキュベートすることによって提供された。後者は、TH19P01-Alexa Fluor(商標)488への曝露後、細胞内蛍光の量を77%減少させた。これは、ソルチリンがhBCSCにおけるこの蛍光ペプチドの内在化に関与することを再度示す。hOvCSCでも同様の結果が得られた(
図2C及び
図2D)が、ヒトソルチリンに特異的なsiRNA(siSORT1)とのhOvCSCのプレインキュベーションに続くTH19P01-Alexa Fluor488への曝露後の細胞内蛍光の量の減少は、それほど顕著ではなかった(37%)(
図2D)。これは、卵巣CSCにおけるTH19P01-Alexa Fluor(商標)488の可能な代替的なソルチリン非依存的内在化機構を示唆する。
【0206】
実施例4:ドセタキセル又はTH1902によるhBCSCの遊走の阻害
細胞遊走の1つの標準的な測定は、スクラッチアッセイであり、培養腫瘍細胞を有するスライドのある領域から細胞を掻き取り、その後の腫瘍細胞によるその領域の再定着を監視する。
図3に示されるように、最初の細胞除去により、特定の領域の細胞が除去された。細胞除去の24時間後までに、ビヒクルを含有する培地で処理された除去された領域、並びに2μMのドセタキセルを含有する培地で処理された領域は、完全に再定着し、除去された領域を、もはや区別することができなかった。対照的に、TH1902で処置された領域は、少なくとも48時間、hBCSCが実質的に不毛のままであった。これは、TH1902がhBCSCの遊走を阻害することを示す。
【0207】
実施例5:ドセタキセル又はTH1902によるhBCSCのアポトーシスの誘導
hBCSCをTH1902又はドセタキセルに曝露して、アポトーシスを誘導することができるかどうかを調べた。TH1902が、早くも処理の22時間後、これらの細胞においてアポトーシスの大幅な増加をもたらし、それが次の50時間にわたって増加し続けたのに対し、ドセタキセル処理細胞におけるアポトーシスは、対照細胞において見られるものと区別できないことは、
図4Aにおいて明らかである。この発見は、処理の48時間後にTH1902で処理された多くの細胞において断片化された核の出現によって確認され(
図4Bを参照)、これは、ビヒクルで処理された細胞又はドセタキセルで処理された細胞には見られない。また、処理の48時間後、細胞形態も調べた。
図4C及び
図4Cからわかるように、TH1902又はドセタキセルのいずれかによるhBCSCの処理は、ビヒクル処理細胞とは対照的に、目に見える形態変化を引き起こす。更に、チューブリン標識によって観察される細胞の増殖及び微小管の再編成は、一部のドセタキセル処理細胞に存在するが、TH1902処理細胞においてより顕著である。ドセタキセルなどの細胞傷害性剤による微小管の撹乱が、細胞アポトーシスを導くことが知られている。
【0208】
実施例6:hBCSC対MDA-MB-231/luc細胞におけるドセタキセル及びTH1902によるG2/M期停止の誘導の比較
図5A~
図5Bに報告された結果は、ドセタキセルではなくTH1902が、hBCSCにおけるG2/M細胞周期停止の有意な増加を誘導することを示す。MDA-MB-231細胞において、TH1902及びドセタキセルは、増加した効果が顕著になる時間に違いがあるものの、同様のG2/M細胞周期停止の増加を誘発し、TH1902で処理したMDA-MB-231細胞において、一部のG2/M細胞周期停止が22時間で検出される(ただし、ドセタキセルでは検出されない)(
図5D、左パネル)。これらの結果は、実施例5に報告されたアポトーシス誘導実験の結果と一致し、TH1902が、ドセタキセルなどの標準的な細胞傷害性剤による処理に耐性であることが知られているhBCSCにおいて、細胞周期停止及びアポトーシスを誘導する能力を有するという説得力のある証拠を提供する。
【0209】
実施例7:多剤耐性(MDR)阻害剤の存在下でのhBCSCにおけるドセタキセル及びTH1902によるG2/M期停止の誘導の比較
ドセタキセル及びTH1902によるアポトーシスの誘導を更に調査するために、これらの化合物を使用して、MDRタンパク質の阻害剤の存在下でhBCSCを処理した。多種多様な薬物の腫瘍細胞からの除去を媒介する(及びドセタキセルの蓄積を制限することが知られている)MDRタンパク質は、化学療法に対する耐性の基礎となる主な要因の1つである。
図6Aに示されるように、hBCSCは、ヒトタンパク質がトランスフェクションを介して過剰発現されたイヌ細胞株MDCK-MDR1よりも高いレベルのMDR1(P-gp)を発現する。加えて、hBCSCは、MDR1に関連する多剤排出タンパク質であるタンパク質ABCB5を高レベルで発現することも示された(
図6A)。結果として、これらの細胞は、ドセタキセルによるアポトーシスの誘導に対するそれらの耐性におけるMDRタンパク質の関与を調べるための優れたモデルを提供する。
【0210】
G2/M期におけるhBCSC細胞の割合を、ドセタキセルによる処理とTH1902による処理との間で比較すると(
図6C及び
図6D)、注目される最初の違いは、ドセタキセルではなく、TH1902が、G2/M期における細胞の割合の強い増加を引き起こすことである(
図5A~
図5Dに報告された結果と一致する)。2つの多剤排出タンパク質の阻害剤であるCsA及びPCC-831は、hBCSCにおけるG2/M細胞周期停止を誘導するTH1902の能力に影響を与えなかった。対照的に、CsA又はPCC-831の存在下では、ドセタキセルは、G2/M細胞周期停止に影響を与え、これは、TH1902で見られたものと同様であった。これらの結果は、hBCSCによって発現されたMDRタンパク質の排出活性が、ドセタキセルに対する耐性を付与するが、TH1902の細胞毒性は、これらのタンパク質の存在によって影響されないことを示し、したがって、TH1902及びソルチリンを標的とする他のペプチドベースのコンジュゲートが、MDRタンパク質を発現又は過剰発現するCSCの増殖を阻害するのに有用であり得るという証拠を提供する。
【0211】
実施例8:TH1902の投与は、MDA-MB-231/ルシフェラーゼ異種移植片マウスモデルにおけるがんの再発を予防する
次いで、TNBCのMDA-MB-231/ルシフェラーゼ異種移植片マウスモデルを使用して、ドセタキセル又はTH1902による処置が、がんの再発を予防することができるかどうかを評価した。MDA-MB-231腫瘍細胞は、がん幹細胞(CSC)様の特性を有する細胞を有することが報告されている(Sleeboom et al.,Int J Mol Sci.2018 Oct;19(10):3047、Ghanbari et al.,Int.J.Morphol.,34(4):1197-1202,2016)。MDA-MB-231/ルシフェラーゼ腫瘍異種移植片を有するマウスを、0、7、14、及び21日目に、ビヒクル(対照)、ドセタキセル、又はTH1902のいずれかで処置し、腫瘍の増殖を74日目まで評価した。ドセタキセルとTH1902との両方による処置は、投与中及び投与直後に腫瘍増殖の減少をもたらしたが、TH1902のみによる処置は、後の時点でがんの再発を予防したことが見出された。TH1902処置群では、74日目に残存する腫瘍は検出されなかったが、ドセタキセル処置群では、腫瘍の再発が観察された。これらの結果は、ドセタキセルではなく、TH1902が、MDA-MB-231腫瘍異種移植片におけるCSCを含む全ての腫瘍細胞の除去をもたらし、したがって、これらの細胞の持続性に起因するがんの再発を予防したという証拠を提供する。
【0212】
実施例9:TH1902の投与は、異種移植マウスモデルにおいて乳房、卵巣、及び膵臓CSC腫瘍の増殖を減少させる
次に、TH1902がインビボでCSCに由来するヒト腫瘍の増殖を阻害することができるかどうかを試験した。
図7A~
図7Cに示される結果は、ヒトTNBC(HBCSC、
図7A)、卵巣(HOvCSC、
図7B)、及び膵臓(HPCSC、
図7C)がんからのがん幹細胞様細胞の皮下注射が、免疫不全マウスにおける腫瘍の増殖をもたらすことを示す。
図7D及び
図7Eに示されるように、HBCSC、HOvCSC、及びHPCSCは全て、多剤タンパク質ABCB5及びP-gp(MDR1)、並びにソルチリンを発現する。
【0213】
図8A~
図8B、
図9A~
図9B、及び
図10A~
図10Bに示される結果は、1、1.25、又は1.5MTDのドセタキセルに等しい用量で投与されたTH1902が、乳房、卵巣、及び膵臓のCSCに由来する腫瘍の増殖の有意な阻害をもたらすことを示す。対照的に、MTDのドセタキセル(15mg/kg)の投与後、腫瘍増殖の有意な減少は測定されなかった。また、TH1902の投与は、ドセタキセルの投与とは対照的に、これらのマウスにおける腫瘍塊の増加にもかかわらず(典型的には5~10%の体重減少に関連付けられる)、動物の体重に何ら影響しなかったか又は影響が最小限であった(
図8C、
図9C、及び
図10C)。
【0214】
実施例10:併用化学療法を用いた処置による卵巣CSC腫瘍増殖の阻害
卵巣hOCSC異種移植片を有するマウスを、ビヒクル、ドセタキセル、パクリタキセル、TH1902、又はカルボプラチンで処置し、マウスの他の群には、カルボプラチンを、ドセタキセル、パクリタキセル、又はTH1902のいずれかと組み合わせて投与した。併用治療に起因する副作用のリスクを最小限に抑えるために、各薬物に使用される投薬量を以下に減少させた:ドセタキセル10mg/kg;TH1902 23mg/kg(ドセタキセル投薬量に等しい);パクリタキセル10mg/kg;カルボプラチン40mg/kg(不変)。
【0215】
ドセタキセルによる腫瘍増殖の阻害は、再びTH1902の阻害よりも明らかに劣っていた(
図11A及び
図11Bを参照されたい)。パクリタキセル及びカルボプラチンは、各々、ドセタキセルで見られるものと実質的に同等のレベルの腫瘍増殖阻害を示した。いずれかのタキサンをカルボプラチンと組み合わせて投与すると、腫瘍増殖の阻害がわずかに増加した。TH1902による阻害は、(カルボプラチンあり又はなしで)いずれかのタキサンよりもはるかに大きく、カルボプラチンとの併用投与によってわずかに増加した。TH1902単独による腫瘍増殖の阻害の程度は、非常に重要であり、カルボプラチンとの併用投与の効果を測定することは困難であった。
【0216】
本発明は、本明細書に上記の特定の実施形態によって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される主題発明の趣旨及び性質から逸脱することなく、変更され得る。特許請求の範囲では、「含む」という単語は、「限定されないが、含む」という語句と実質的に等価である、オープンエンド用語として使用される。「a」、「an」、及び「the」という単数形は、別段文脈が明らかに指示しない限り、対応する複数の対象物を含む。
【配列表】
【国際調査報告】