IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

特表2024-508853電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム
<>
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図1
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図2
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図3
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図4
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図5
  • 特表-電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/1761 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B60T8/1761
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552275
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 IB2022051826
(87)【国際公開番号】W WO2022185226
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021000004784
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ティオーネ, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】グラッソ, アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ピッチオーネ, パオロ ピエトロ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA17
3D246BA03
3D246DA01
3D246GB01
3D246HA35A
3D246HA48A
3D246HA64A
3D246JA12
3D246JB05
3D246JB11
3D246JB26
3D246JB43
3D246LA12Z
(57)【要約】
本発明は、電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムに関する。少なくとも1つの車輪を含む少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムは、所定のアンチ・スキッド機能を実行するように構成されたアンチ・スキッドモジュール(402)と、アンチ・スキッドモジュール(402)を監視するように構成された監視モジュール(421、521)とを備え、監視モジュール(421、521)は制動力適用要求調整モジュール(403、503)を含み、監視モジュール(421、521)およびアンチ・スキッドモジュール(402)は互いに別個のモジュールであり、制動力適用要求調整モジュール(403、503)は、アンチ・スキッドモジュール(402)によるアンチ・スキッド機能(402)の実行とは無関係に制動力適用要求信号(307)を調整するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの車輪を含む少なくとも1つの車両、特に少なくとも1つの鉄道車両の電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムであって、前記アンチ・スキッドシステムは、
所定のアンチ・スキッド機能を実行し、その値が前記所定のアンチ・スキッド機能によって決定される出力を提供するように構成されるアンチ・スキッドモジュール(402)と、
前記アンチ・スキッドモジュール(402)を監視し、前記アンチ・スキッドモジュール(402)の出力と、制動力適用要求信号(307)とを受信するように配置された監視モジュール(421、521)であって、その値が制動力適用要求値を示す監視モジュールと、を備え、
前記監視モジュール(421、521)は、アンチ・スキッドモジュール(402)の前記出力に従って前記制動力適用要求信号(307)の値を調整するように配置された制動力適用要求調整モジュール(403、503)を含み、
前記監視モジュール(421、521)および前記アンチ・スキッドモジュール(402)は、互いに別個のモジュールであり、前記制動力適用要求調整モジュール(403、503)は、前記アンチ・スキッドモジュール(402)による前記アンチ・スキッド機能(402)の実行とは無関係に、前記制動力適用要求信号(307)を調整するように構成されていることを特徴とするアンチ・スキッドシステム。
【請求項2】
前記アンチ・スキッドモジュール(402)は、前記出力において、その値が制動力低減値を示す制動力低減信号(404)を生成するように配置され、前記アンチ・スキッドモジュール(402)は、前記所定のアンチ・スキッド機能に従って、前記少なくとも1つの車両の少なくとも1つの車輪(304)の少なくとも1つの滑り条件の存在下で、前記制動力低減値が非ゼロであるように制動力低減信号(404)の値を調整するように配置され、
前記監視モジュール(421)は、前記制動力適用要求信号(307)と、前記アンチ・スキッドモジュール(402)によって生成された前記制動力低減信号(404)とを受信し、調整された制動力値を示す調整された制動力信号(407)を生成するように構成される請求項1に記載のアンチ・スキッドシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のアンチ・スキッドシステムにおいて、
前記監視モジュール(421)は、前記制動力適用要求信号(307)と、前記アンチ・スキッドモジュール(402)によって生成された前記制動力低減信号(404)とを受信し、その値が時限制動力低減値を示す時限制動力低減信号(406)を生成するように配置されたタイムアウトモジュール(405)を含み、
前記タイムアウトモジュール(405)は、前記時限制動力低減値が以下のようになるように、前記時限制動力低減信号(406)の値を調整する:
前記時限制動力低減値は、以下の(1)または(2)の場合、前記アンチ・スキッドモジュール(402)によって生成される前記制動力低減信号(404)が示す制動力低減値に対応する:
(1)第1の時間間隔よりも短い時間では、前記制動力低減信号(404)が示す前記制動力低減値が連続的に非ゼロであるが、前記制動力適用要求信号(307)が示す制動力適用要求値よりも低い場合、または
(2)第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔よりも短い時間では、前記制動力低減信号(404)が示す制動力低減値が前記制動力適用要求信号(307)が示す制動力適用要求値よりも連続的に高いか等しい場合;
あるいは、前記時限制動力低減値は、以下の(1)または(2)の場合、ゼロである:
(1)前記第1の時間間隔よりも長い時間にわたり、前記制動力低減信号(404)によって示される制動力低減値が連続して非ゼロであるが、前記制動力適用要求信号(307)によって示される制動力適用要求値よりも低い場合、または
(2)前記第2の時間間隔よりも長いか等しい時間にわたって、制動力低減信号(404)によって示される制動力低減値が連続して、前記制動力適用要求信号(307)によって示される制動力適用要求値よりも高いか等しい場合;
前記監視モジュール(421)の前記制動力適用要求調整モジュール(403)は、調整された制動力値が、前記制動力適用要求信号(307)によって示される制動力適用要求値と、前記時限制動力低減信号(406)によって示される時限制動力低減値との間の差の値と一致するように、前記調整された制動力信号(407)の値を調整するように構成される。
【請求項4】
前記アンチ・スキッドモジュール(402)は、前記出力において、前記所定のアンチ・スキッド機能に従って、前記少なくとも1つの車両の少なくとも1つの車輪(304)の少なくとも1つの滑り状態の存在下で、制動力保持信号(504)および制動力低減信号(506)を生成するように配置され、
前記監視モジュール(521)は、前記制動力適用要求信号(307)、前記制動力保持信号(504)、および前記制動力低減信号(506)を受信し、調整された制動力値を示す調整された制動力信号(507)を生成するように構成される請求項1に記載のアンチ・スキッドシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のアンチ・スキッドシステムであって、
前記監視モジュール(521)は、前記制動力保持信号(504)および前記制動力低減信号(506)を受信し、時限制動力保持信号(514)および時限制動力低減信号(516)を生成するように配置されたタイムアウトモジュール(505)をさらに含み、
前記配置された前記タイムアウトモジュール(505)は、
-前記制動力保持信号(504)が第1の所定の時間間隔よりもより短い時間にわたって連続的に第1の所定の値を取るとき、前記時限制動力保持信号(514)に、前記制動力保持信号(504)の値に対応する値をとらせ;
-前記制動力保持信号(504)が第1の所定の時間間隔よりも長い時間の間第1の所定の値を連続的にとるとき、前記時限制動力保持信号(514)に第1の所定のデフォルト値をとらせ;
-前記制動力低減信号(506)が前記第1の時間間隔よりもより短い第2の時間間隔よりもより短い時間にわたって第2の所定の値を連続的にとるとき、前記時限制動力低減信号(516)に、前記制動力低減信号(506)の値に対応する値をとらせ;
-前記制動力低減信号(506)が第2の時間間隔以上の時間にわたって第1の所定値を連続的にとるとき、前記時限制動力低減信号(516)に第2の所定のデフォルト値をとらせ;
前記監視モジュール(521)の前記制動力適用要求調整モジュール(503)は、前記制動力適用要求信号(307)、前記時限制動力保持信号(514)および前記時限制動力低減信号(516)を受信し、前記調整された制動力信号(507)を出力するように構成され、
前記制動力適用要求調整モジュール(503)は、以下のように構成される:
-前記時限制動力保持信号(514)で想定される値が前記制動力保持信号(504)の値に対応し、前記時限制動力低減信号(516)で想定される値が前記制動力低減信号(506)の値に対応する場合、前記調整された制動力信号(507)に経時的に変化する値をとらせ、前記調整された制動力信号(507)がゼロ調整された制動力値を示す値をとるまで、前記調整された制動力信号(507)で示される調整された制動力値が所定の制動力低減時間曲線(520)に従って経時的に低減された前記制動力適用要求信号(307)で示される制動力適用要求値に対応するようにする;
-前記時限制動力保持信号(514)によって想定される値が前記制動力保持信号(504)の値に対応し、前記時限制動力低減信号(516)によって想定される値が前記第2の所定のデフォルト値に対応する場合、前記時限制動力保持信号(514)が前記制動力保持信号(504)の値に対応する値を有し、前記時限制動力低減信号(516)が前記第2の所定のデフォルト値を有する状況の直前の瞬間に、前記調整された制動力信号(507)によって想定される値を、前記調整された制動力信号(507)に経時的に維持させる;
-前記時限制動力保持信号(514)によって想定される値が前記第1の所定のデフォルト値に対応し、前記時限制動力低減信号(516)によって想定される値が前記第2の所定のデフォルト値に対応する場合、前記調整された制動力信号(507)によって示される調整された制動力値が前記制動力適用要求信号(307)によって示される制動力適用要求値と一致するまで、前記調整された制動力信号(507)によって示される調整された制動力値が所定の制動力増加曲線(522)に従って経時的に増加するように、前記調整された制動力信号(507)に経時的に変化する値をとらせる。
【請求項6】
前記第1の時間間隔は第1のタイマ手段によって監視され、前記第2の時間間隔は第2のタイマ手段によって監視される請求項3または5に記載のアンチ・スキッドシステム。
【請求項7】
前記タイムアウトモジュール(405、505)および前記制動力適用要求調節モジュール(403、503)は、安全水準SIL≧3に従って実装される請求項3、5または6のいずれか1項に記載のアンチ・スキッドシステム。
【請求項8】
前記タイムアウトモジュール(405、505)および前記制動力適用要求調整モジュール(403、503)は、1つのモジュールに統合される請求項3、5、6または7のいずれか1項に記載のアンチ・スキッドシステム。
【請求項9】
複数の監視モジュール(621I、621II、621III、621IV)を備える請求項2~8のいずれか1項に記載のアンチ・スキッドシステムにおいて、
前記複数の監視モジュール(621I、621II、621III、621IV)の各々は、それぞれの調整された制動力信号(607I、607II、607III、607IV)を生成するように配置され、
前記複数の監視モジュール(621I、621II、621III、621IV)は、単一のモジュール(620)に統合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、車両用ブレーキシステムの分野に属する。特に、本発明は、少なくとも1つの車両、特に少なくとも1つの鉄道車両の電気機械式ブレーキシステム(electromechanical braking system)のためのアンチ・スキッドシステム(anti-skid system)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、特に鉄道車両の分野を参照して以下に説明される。それにもかかわらず、以下に記載されるものは、可能であれば、他の分野の車両にも適用され得る。
【0003】
鉄道輸送システムでは、車輪と軌道との間の瞬間グリップ値(instantaneous grip value)は、車軸の車輪が徐々に滑り始めることなく当該車軸に加えられる最大制動力限界(maximum braking force limit)を表す。
【0004】
車軸が滑り位相(skidding phase)に入るとき、加えられた制動力が迅速かつ適切に低減されない場合、車軸は完全に停止するまで次第に角速度を失い、車輪と軌道との間の接触点における前記車軸の車輪の表面の過熱によって引き起こされる即座の過熱および損傷をもたらす。この状況は、摩擦係数のさらなる低減の結果として停止距離を著しく増大させるだけでなく、鉄道車両を高い動作速度で脱線させる可能性もあることが知られている。
【0005】
上述の欠点を克服するために、公知の空気圧式鉄道ブレーキシステム(pneumatic railway braking system)は、アンチ・スキッドシステムとして知られる保護システムを備えている。
【0006】
図1には、一例として、公知のアンチ・スキッドシステムが示されている。一例では、このアンチ・スキッドシステムが4つの車軸102、103、104、105を有する鉄道車両に使用される。制動圧力または制動力(図1には図示せず)の要求に基づいて、制動システム110は空気圧式制動圧力を生成し、それぞれのブレーキシリンダ111、112、113、114に供給する。これらのブレーキシリンダは、それぞれ、空気圧供給ダクト115、116によってそれぞれの車軸102、103、104、105を制動する役割を果たす。4つのアンチ・スキッド弁モジュール117、118、119、120は、アンチ・スキッド装置101によって制御され、空気圧供給ダクト115、116とそれぞれのブレーキシリンダ111、122、113、114との間に配置される。角速度センサ106、107、108、109は、それぞれ、車軸102、103、104、105のそれぞれの角速度を検出する。前記角速度センサ106、107、108、109は、アンチ・スキッド装置101に電気的に接続され、各車軸102、103、104、105の瞬間角速度情報を表す電気信号を連続的に提供する。アンチ・スキッド装置101は、車軸102、103、104、105の瞬間角速度情報に関する動作により、車両の瞬間線速度を連続的に推定する。
【0007】
車軸の前記瞬間角速度から得られる単一の車軸の瞬間線速度と、車両の推定瞬間線速度との間の差ΔVを連続的に評価することによって、アンチ・スキッド装置101は、1つ以上の車軸が滑り始めたかどうかを検出する。1つまたは複数の車軸が滑り位相(skidding phase)を開始した場合、アンチ・スキッド装置は滑り車軸に対するブレーキシリンダの圧力を低減し、適切に調整することによって、前記車軸の滑りを制御し、例えばEP3393873およびWO2017175108に記載されているような既知のアルゴリズムによって、前記滑り車軸に関する弁のグループに作用し、前記車軸が動かなくなるのを防止し、滑り位相に留まりながら最良の制動力を得ようと試みる。
【0008】
前記アンチ・スキッド弁モジュール117、118、119、120は、それぞれ、図2に示される一対の空気圧電磁弁(pneumatic solenoid valves)220、221によって表される詳細な形態をとる。(以下、「空気圧電磁弁」は、「電空弁」とも称される。)
【0009】
空気圧電磁弁220、221は、それぞれのスイッチング素子202、203により、アンチ・スキッド装置201によって励磁される。これらのスイッチング素子202、203は、典型的には固体電子部品である。
【0010】
説明を簡単にするために、図2は、ソレノイド、すなわち電気コイル204、205のアースへの接続を示していない。
【0011】
アンチ・スキッド弁モジュール117、118、119、120は、合計4つの状態をとることができる。
【0012】
第1の状態は「充填状態(filling state)」として定義され、図2に示すように、両方の電空弁(electropneumatic valve)は非励磁となり、電空弁220は、図1の空気ダクト115、116に対応する空気ダクト215内に存在する圧力が図1のブレーキシリンダ111、112、113、114に対応するブレーキシリンダ211にアクセスすることを可能にし、その一方で電空弁221は、ブレーキシリンダ211および空気ダクト215が大気中に開放されるのを防止する。この状態は、アンチ・スキッド装置の静止状態または非介入状態を表し、ブレーキシリンダ211と空気ダクト215との間の直接接続を構成し、この接続を介して、ブレーキシステムがブレーキシリンダ211における圧力をゼロ値から最大値に直接制御する。
【0013】
第2の状態は、「保持状態(hold state)」と定義され、電空弁220が励磁された状態に対応する。この場合、ブレーキシリンダ211内の圧力は、空気ダクト215内の圧力の変動によって変更されなくてもよい。空気圧電磁弁221は、ブレーキシリンダ211を大気から隔離された状態に保ち続ける。ブレーキシリンダ211における圧力は一般に、ブレーキシリンダ内に漏れがない限り、その値を無期限に保持する。
【0014】
第3の状態は、「排出状態(discharge state)」として定義され、空気圧電磁弁220、221の両方が励磁されている状態に対応する。この場合、ブレーキシリンダ211内の圧力は、空気ダクト215内の圧力の変動によって変更されなくてもよい。励磁された空気圧電磁弁221は、ブレーキシリンダ211を大気に接続し、したがって、ブレーキシリンダにおける圧力を、任意選択的にゼロの値まで低減する。
【0015】
第4の状態は、「禁止状態(prohibited state)」と定義され、空気圧電磁弁221のみが励磁されている状態に相当する。この場合、空気圧電磁弁はブレーキシリンダ211と空気式ダクト215の両方を大気に直接接続し、ブレーキシステムによって生成された圧力を過度に(unduly)大気に放出させる。
【0016】
「禁止状態」をシステム的に防止するために、スイッチング素子203は、スイッチング素子202の下流のノード206に接続される。このように、上流の回路からの不適切な指令によって、または前記回路の短絡の結果として、スイッチング素子203が閉じられるとき、スイッチング素子202も閉じられない限り、空気圧電磁弁221を励磁することはできない。その場合、空気圧電磁弁220もまた励磁され、ブレーキシリンダ211を効果的に「排出状態」にするが、空気式ダクト215が大気に排出することを防止する。
【0017】
従来技術は、供給に関連してまたは接地に関連して、空気圧電磁弁を制御するための様々な回路を開示しており、それらは「禁止状態」がシステム的に防止されることを可能にする。
【0018】
その機能的作用において、アンチ・スキッドシステムは一般的に、制動力を必然的に減少させる。特定のハードウェアまたはソフトウェア故障モードにおいて、アンチ・スキッド装置が空気圧電磁弁220、221を永久的に励磁状態に保つことができ、その結果、制動力の全体的な損失となることは明らかである。永久的に励磁された弁が使用されるケースを制限するために、欧州鉄道規格EN15595:2018「鉄道用途-ブレーキ-ホイールスライド保護(wheel slid protection)」§5.1.4、2018年12月12日には、以下のように記載されている。
-安全上の理由から、制動力の過度の減少を回避するために監視機能が提供される。ホイールスライド保護(WSP)装置のこのウォッチドッグ機能(watchdog function)は、緊急ブレーキ時に作動することができるWSPシステムのために提供されるものとし、WSP制御アルゴリズムおよびプロセッサから独立しているものとする。WSPによって要求される連続制動力の解放は、10秒を超えてはならない。この時間の後、ウォッチドッグはWSP介入を禁止する。WSPウォッチドッグは、15秒を超えない期間、制動力が一定に維持されるか、または制動力が上昇することなく要求レベルを下回って連続的に減少される場合、WSP介入を禁止するものとする。
【0019】
言い換えれば、規格は、3つの重要な点を指示する:
-制動力の連続的かつ一定の減少は15秒を超えてはならない;
-制動力の総減少は10秒を超えてはならない;
-アンチ・スキッドWSP「ホイールスライド保護」装置を計測および禁止するために使用されるタイマ装置やタイマ装置類は、WSPアンチ・スキッド装置を実装するために使用されるソフトウェアコンポーネントおよびマイクロプロセッサから完全に独立していなければならない。
【0020】
これらの1つ以上のタイマ装置は、空気圧電磁弁210、212の連続的な作動を一時的に制限するために導入される。
【0021】
図2は、アンチ・スキッドシステムの制御システムの可能な機能的実施形態を示す。制御手段、例えばマイクロプロセッサ207は、スイッチング素子202、203のためのそれぞれのコマンド信号208、209を生成することによって、例えば、限定するものではないが、EP3393873およびWO2017175108に記載されているように、車軸の滑り(skidding)を認識しかつ制御するための機能/アルゴリズムを実行する。
【0022】
制御手段207がコマンド信号208を論理レベル「1」、すなわち、スイッチング素子202をアクティブ化することを意図するものにするとき、コマンド信号208の「0」から「1」への移行はタイマ装置210をアクティブ化し、それは次に、その出力213を、例えば、必ずしも限られないが、10秒に等しい期間T1の間、論理レベル「1」にする。論理ゲート216はコマンド信号208と出力信号213との間のAND機能を実行し、それにより信号214がスイッチング素子202の閉鎖を効果的に指令し、続いて空気圧電磁弁220を励磁する。
【0023】
空気圧電磁弁220を非励磁にするために、マイクロプロセッサ207は時間T1が満了する前に、コマンド信号208を論理レベル「0」にすると、タイマデバイス210をそのアクティブロー入力R(active low input R)を介してリセット状態にし、その後の「0」から「1」への遷移のために準備する。
【0024】
マイクロプロセッサ207のハードウェア故障の結果として、またはアンチ・スキッド制御アルゴリズムのソフトウェアエラーの結果として、コマンド信号208が論理レベル「1」で永久的にブロックされたままである場合、タイマデバイス210によってカウントされた時間T1は、次いで満了し、信号213、214を論理レベル「0」に戻し、空気圧電磁弁220の永久的な非励磁をもたらす。
【0025】
電空弁221に関するタイマ装置212についても同様である。
【0026】
場合によっては、接続部224を介して空気圧電磁弁220の上流の圧力を制御手段207に示す圧力変換器222が存在し、接続部225を介してブレーキシリンダ211の圧力を制御手段207に示す圧力変換器223が存在する。
【0027】
従来技術は、電空弁220、221を励磁するためのコマンドをタイミング調整および抑制する機能を実施するための回路変形例を開示している。
【0028】
図2に示されるタイミング回路は、各アンチ・スキッド弁グループ111、112、113、114について複製される。
【0029】
いずれの場合も、従来技術によれば、タイマ装置210、212は、引用された規格に従った制御手段207から独立したハードウェア回路である。
【0030】
上述の解決策は、ハードウェアの故障またはソフトウェアの問題が制動段階中に空気圧の永続的な過度の低下を引き起こす可能性があるというリスクを低減するための方法として、すべての鉄道事業者および鉄道安全機関によって識別された従来技術を表す。
【0031】
不都合なことに、上記の解決策を電気機械式ブレーキシステムに適用することは、空気式ブレーキシステムと比較した場合、重要な構造的差異のために不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの車両、例えば少なくとも1つの鉄道車両の電気機械式ブレーキシステムにおいてアンチ・スキッド機能を安全に実行することを可能にする解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記および他の目的および利点は、本発明の態様によれば、請求項1に定義された特徴を有する電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項において定義され、その内容は本明細書の不可欠な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
次に、本発明による電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムのいくつかの好ましい実施形態の機能的および構造的特徴について、添付の図面を参照して説明する。
図1図1は、アンチ・スキッドシステムの公知例を示している。
図2図2は、アンチ・スキッドシステムのための既知の制御システムの例示的な実施形態を示している。
図3図3Aおよび3Bは、電気機械式ブレーキシステムの例示的なブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態によるアンチ・スキッドシステムを含む電気機械式ブレーキシステムの例示的なアーキテクチャを示している。
図5図5は、本発明のさらなる実施形態によるアンチ・スキッドシステムを含む電気機械式ブレーキシステムのさらなる例示的アーキテクチャを示している。
図6図6は、少なくとも4つの車軸を有し、本発明によるアンチ・スキッドシステムを含む、例示的な電気機械式ブレーキシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、本出願において、以下の説明に提示されるか、または図面に示される構成要素の構成の詳細および構成に限定されないことを明らかにする。本発明は、他の実施形態を想定することができ、異なる方法で実際に実施または構築されることができる。また、表現および用語は記述的な目的を有し、限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。「含む(include)」および「備える(comprise)」の使用およびその変形は、以下に記載される要素およびそれらの均等物、ならびに追加の要素およびそれらの均等物を包含することを意図する。
【0036】
メカトロニクス技術を含む新しい技術が、ブレーキシステム、例えば鉄道ブレーキシステムの分野に導入されている。
【0037】
情報の完全性のために、以下の記述は、電気機械ブレーキシステムの一部である様々なモジュール/ブロックの説明を提供する。例えば、図3Aおよび3Bは、電気機械ブレーキシステムの可能性のある限定的でないブロック図を示す。
【0038】
制動制御部308は、車両または隊列、例えば鉄道車両または隊列の制御系とインターフェースするために設けられており、信号311を介して、サービス制動要求(the service braking requests)を受信し、および/または緊急制動要求(emergency braking request)321を受信してもよい。
【0039】
この制動制御モジュール308は、車両または隊列(例えば、鉄道車両または隊列)から来るサービス制動要求または緊急制動要求を制動力適用要求307に変換することができる。本発明の目的は、制動制御モジュール308がどのように実装されるか、これが1つ以上の独立した制御手段を有するかどうか、および前記制動制御モジュール308を形成する個々の要素にどのような安全レベルSILを割り当てなければならないかを示すことではない。
【0040】
従来技術によれば、電気機械モジュール301は、少なくとも1つの電気モータおよび機械構成要素を備えており、回転運動および前記少なくとも1つの電気モータによって生成されるトルクをそれぞれ線形運動および線形力に変換するようになっており、これらは、車輪304に制動力を生成するために、アーム302またはブレーキシュー303に伝達される。
【0041】
従来技術から、アーム302およびブレーキシュー303は、ブレーキディスクに作用するブレーキレバーおよびパッドのシステムを、ブレーキの代替手段として有することが知られている。
【0042】
制動力を制御するための電子力制御モジュール305は、電気供給306および制動制御モジュール308によって生成される制動力適用要求(braking force application request)307を受信するように構成されてもよく、電気機械モジュール301の内部の少なくとも1つの電気モータのための少なくとも1つの供給信号309を生成し、前記電気機械モジュール301によって生成される少なくとも1つの適用制動力信号(applied braking force signal)310を受信するように構成され、前記適用制動力信号310は、前記電気機械モジュール301によって車輪304に適用される制動力の瞬時値に対応する瞬時値を推測する(assuming)。
【0043】
電子力制御モジュール(electronic force control module)305は、少なくとも1つの供給信号309を適切に変調することによって、制御アルゴリズムを実行して、電気機械モジュール301が制動力適用要求値307に対応する適用制動力信号310を連続的に生成するようにしてもよい。
【0044】
電子力制御モジュール305および制動制御モジュール308が別々の物理的ユニットである場合、制動力適用要求307は図3Aに示されるようなポイントツーポイントネットワークコネクション(point-to-point network connection)から物理的に構成されてもよく、または図3Bに示されるように、より多くの電子力制御モジュール305I、305II、・・・、305が接続される通信ネットワーク317から物理的に構成されてもよく、これらのモジュールには、それぞれの車輪304を制動するためのそれぞれの電気機械モジュール301が関連付けられる。電気機械モジュール301および車輪304は、図3Bには示されていない。
【0045】
制動力を伝達する手段の流れに、すなわちブレーキシリンダに向かう加圧空気の流れに、アンチ・スキッド装置が直接作用する空気式制動システムとは異なり、図3Aおよび3Bに記載されたシステムは、制動力を伝達するための手段に直接作用するアンチ・スキッドシステムの組み込みには適していない。逆に、本発明は、制動力適用要求の論理フローに作用する解決策を提案する。
【0046】
ここで本発明に戻って、本発明は、少なくとも1つの車両の電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムに関する。
【0047】
例えば、前記少なくとも1つの車両は、少なくとも1つの鉄道車両であってもよい。
【0048】
この車両は、少なくとも1つの車輪を含む。
【0049】
一実施形態では、アンチ・スキッドシステムが所定のアンチ・スキッド機能を実行し、前記所定のアンチ・スキッド機能によって決定される値の出力を提供するように構成されたアンチ・スキッドモジュール402を備える。
【0050】
本発明の目的のために、アンチ・スキッド機能402は、当該分野で現在知られている任意のアンチ・スキッド機能であってもよい。
【0051】
また、アンチ・スキッドシステムは、前記アンチ・スキッドモジュール402を監視するように構成された監視モジュール(supervisor module)421、521を備える。また、監視モジュール421、521は、アンチ・スキッドモジュール402の出力と、その値が制動力適用要求値を示す制動力適用要求信号307とを受信するように構成される。
【0052】
監視モジュール421、521は、アンチ・スキッドモジュール402の前記出力に従って前記制動力適用要求信号307の値を調整するように構成された制動力適用要求調整モジュール(braking force application request adjustment module)403、503を含む。
【0053】
監視モジュール421、521およびアンチ・スキッドモジュール402は、互いに異なるモジュールである。
【0054】
監視モジュール421、521は、明らかに、ハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールであってもよく、アンチ・スキッド機能を実行するためのアンチ・スキッドモジュール402は、ハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールであってもよい。区別は、とりわけ、以下の事例の少なくともすべてを意味すると理解される:
-監視モジュール421、521はハードウェアモジュールであり、アンチ・スキッド機能を実行するためのモジュール402はハードウェアモジュールであり、監視モジュール421、521はアンチ・スキッド機能を実行するためのモジュールと共通のハードウェア構成要素を有していない;
-監視モジュール421、521はハードウェアモジュールであり、アンチ・スキッド機能を実行するためのモジュール402はソフトウェアモジュールであり、アンチ・スキッド機能を実行するためのモジュールは監視モジュール421、521のハードウェア構成要素によって実行されない;
-監視モジュール421、521はソフトウェアモジュールであり、アンチ・スキッド機能を実行するためのモジュール402はハードウェアモジュールであり、監視モジュール421、521はアンチ・スキッド機能を実行するためのモジュールのハードウェア構成要素によって実行されない;
-監視モジュール421、521はソフトウェアモジュールであり、アンチ・スキッド機能を実行するためのモジュール402はソフトウェアモジュールであり、ソフトウェアモジュールは、共通の命令を有さず、共通のハードウェア構成要素上で実行されない。
【0055】
したがって、制動力適用要求調整モジュール403、503は、アンチ・スキッドモジュール402によるアンチ・スキッド機能402の実行とは無関係に、制動力適用要求信号307を調整するように構成される。
【0056】
図4を参照すると、一実施形態では、アンチ・スキッドモジュール402がその出力において、制動力低減信号(braking force reduction signal)404を生成するように構成される。この制動力低減信号の値は、制動力低減値を示す。アンチ・スキッドモジュール402は、前記所定のアンチ・スキッド機能に従って、少なくとも1つの車両の少なくとも1つの車輪304の少なくとも1つの滑り止め状態(skidding condition)の存在下で、制動力低減値が非ゼロであるように制動力低減信号404の値を調整するように構成されてもよい。
【0057】
例えば、アンチ・スキッドモジュール402は、車両の瞬間速度信号409と、車輪304に関連する速度センサ401によって生成される車輪304の少なくとも1つの瞬間速度信号408と、任意選択で、さらなる車輪に関連する他の速度センサからのさらなる速度信号408I...408とを受信するように構成されてもよい。アンチ・スキッドモジュールは、限定はされないが、EP3393873およびWO2017175108に記載されているアンチ・スキッドアルゴリズムを実行し、車輪304が滑っている場合に制動力低減値404を計算するように構成されてもよい。
【0058】
監視モジュール421は、制動力適用要求信号307と、アンチ・スキッドモジュール402によって生成された制動力低減信号404とを受信するように構成される。また、監視モジュール421は、調整された制動力値(adjusted braking force signal)を示す調整された制動力信号407を生成するように構成される。
【0059】
また、監視モジュール421は、制動力適用要求信号307と、アンチ・スキッドモジュール402によって生成された制動力低減信号404とを受信するように構成されたタイムアウトモジュール(time-out module)405を含むことができる。また、監視モジュール421は、時限制動力低減信号(timed braking force reduction signal)406を生成するように構成されてもよい。この時限制動力低減信号406の値は、時限制動力低減値を示す。
【0060】
タイムアウトモジュール405は、時限制動力低減信号406の値を調整するように配置されてもよい。その場合、時限制動力低減値は、以下のようになる:
以下の(1)または(2)の場合、アンチ・スキッドモジュール402によって生成される制動力低減信号404が示す制動力低減値に対応する:
(1)第1の時間間隔よりも短い時間では、制動力低減信号404が示す制動力低減値が連続的に非ゼロであるが、制動力低減信号307が示す制動力適用要求値よりも低い場合、または
(2)第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔よりも短い時間では、制動力低減信号404が示す制動力低減値が前記制動力適用要求信号307が示す制動力適用要求値よりも連続的に高いか等しい場合;
あるいは、時限制動力低減値は、以下の(1)または(2)の場合、ゼロである。
(1)前記第1の時間間隔よりも長い時間にわたり、制動力低減信号404によって示される制動力低減値が連続して非ゼロであるが、前記制動力適用要求信号307によって示される制動力適用要求値よりも低い場合、または
(2)前記第2の時間間隔よりも長いか等しい時間にわたって、制動力低減信号404によって示される制動力低減値が連続して、前記制動力適用要求信号307によって示される制動力適用要求値よりも高いか等しい場合。
【0061】
監視モジュール421は、調整された制動力値が制動力適用要求信号307によって示される制動力適用要求値と、時限制動力低減信号406によって示される時限制動力低減値との間の差の値と一致するように、調整された制動力信号407の値を調整するように構成される制動力適用要求調整モジュール(braking force application request adjustment module)403を含んでもよい。
【0062】
例えば、監視モジュール421は、電気的制動力適用要求信号307の値から電気的時限制動力低減信号406の値を減算するように構成された加算ノード(summing node)403を含むことができる。加算ノード403は、調整された制動力値407の形態の減算の結果を、電気機械式ブレーキシステムの可能な電子力制御モジュール305に伝播することができる。
【0063】
好ましくは、第1の時間間隔が第1のタイマ手段 410によって監視することができ、第2の時間間隔は第2のタイマ手段411によって監視することができる。
【0064】
例えば、タイムアウトモジュール405は:
-制動力低減要求値404が制動力適用要求値307よりも小さい非ゼロ値を連続的にとる期間を計数するために、例えば「部分力低減タイマ(partial force reduction timer)」と呼ばれる第1のタイマ手段 410を使用する;
-制動力低減要求値404が制動力適用要求値307以上の値を継続的にとる時間を計数するために、例えば「全力低減タイマ(total force reduction timer)」と呼ばれる第2のタイマ手段411を使用する。
【0065】
言い換えれば、タイムアウトモジュール405は、第1のタイマ手段410、すなわち部分制動力低減タイマ410が所定の最大部分制動力低減時間、すなわち第1の時間間隔に達するまで、時限制動力低減値を制動力低減値404に等しくなるように設定することができる。
【0066】
第1のタイマ手段410、すなわち、部分制動力低減タイマが所定の最大部分制動力低減時間、すなわち、第1の時間間隔に達すると、タイムアウトモジュール405は制動力低減値を0に等しく設定し、維持することができる。この値は、例えば、車両の速度値409が非ゼロ値をとるまで、ゼロに保持されてもよい。
【0067】
規格EN15595:2018§5.1.4に引用されている値に従うと、第1の時間間隔は15秒の値をとることができ、第2の時間間隔は10秒の値をとることができる。
【0068】
図5を参照すると、アンチ・スキッドモジュール402が、その出力において、前記所定のアンチ・スキッド機能に従って、前記少なくとも1つの車両の少なくとも1つの車輪304の少なくとも1つのスキッディング状態の存在下で、制動力保持信号(braking force hold signal)504および制動力低減信号(braking force reduction signal)506を生成するように構成される代替実施形態が示されている。
【0069】
例えば、アンチ・スキッドモジュール502は、車両の瞬間速度信号(instantaneous velocity signal) 509、車輪304に関連する速度センサ501によって生成される車輪304の少なくとも1つの瞬間速度信号508、および任意選択で、他の車輪に関連する他の速度センサからのさらなる速度信号508I...508を受信するように構成されてもよい。
【0070】
アンチ・スキッドモジュールは例えば、EP3393873およびWO2017175108に記載されたものに限られないが、アンチ・スキッドアルゴリズムを実行するように構成されてもよい。図2に示されるような空気式アンチ・スキッドシステムと同様に、監視モジュール521は、図2の信号208に類似する制動力保持信号504と、図2の信号209に類似する制動力低減信号506とを生成することができる。
【0071】
監視モジュール521は制動力適用要求信号307、制動力保持信号504、および制動力低減信号506を受信し、調整された制動力値を示す調整された制動力信号507を生成するように構成される。図2に示されているような空気式アンチ・スキッドシステムと同様に、監視モジュール521は、図2の信号208に類似する制動力保持信号504と、図2の信号209に類似する制動力低減信号506とを生成することができる。
【0072】
また、監視モジュール521は、制動力保持信号504および制動力低減信号506を受信し、時限制動力保持信号514および時限制動力低減信号516を生成するように構成されたタイムアウトモジュール505を含んでもよい。
【0073】
タイムアウトモジュール505は、以下のように構成してもよい:
-制動力保持信号504が第1の時間間隔よりも短い時間にわたって第1の所定値を連続的にとるとき、時限制動力保持信号514に、制動力保持信号504の値に対応する値をとらせる;
-制動力保持信号504が第1の時間間隔よりも長い時間にわたって第1の所定値を連続的にとるとき、時限制動力保持信号514に、第1の所定のデフォルト値をとらせる;
-制動力低減信号506が前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔よりも短い時間にわたって第2の所定値を連続的にとるとき、時限制動力低減信号516に、制動力低減信号506の値に対応する値をとらせる;
-制動力低減信号506が第2の時間間隔以上長い時間にわたって、第1の所定値を連続的にとるとき、時限制動力低減信号516に、第2の所定のデフォルト値をとらせる。
【0074】
例えば、第1の所定値および第2の所定値はともに論理条件「1」であってもよく、第1の所定デフォルト値および第2の所定デフォルト値はともに論理条件「0」であってもよい。異なる実施形態では、第1の所定値および第2の所定値は異なっていてもよく、第1の所定デフォルト値および第2の所定デフォルト値は異なっていてもよい。
【0075】
また、監視モジュール521は、制動力適用要求信号307、前記時限制動力保持信号514、および前記時限制動力低減信号516を受信し、調整された制動力信号507を出力するように構成された制動力適用要求調整モジュール503を含む。
【0076】
前記制動力適用要求調整モジュール503は、以下のように構成される:
-前記時限制動力保持信号514で想定される値が制動力保持信号504の値に対応し、時限制動力低減信号516で想定される値が制動力低減信号506の値に対応する場合、調整制動力信号507に経時的に変化する値をとらせ、調整制動力信号507がゼロ調整制動力値(zero adjusted braking force value)を示す値をとるまで、調整制動力信号507で示される調整制動力値が所定制動力低減時間曲線520で経時的に低減された制動力適用要求信号307で示される制動力適用要求値に対応するようにする;
-前記時限制動力保持信号514によって想定される値が制動力保持信号504の値に対応し、前記時限制動力低減信号516によって想定される値が前記第2の所定のデフォルト値に対応するとき、前記時限制動力保持信号514が制動力保持信号504の値に対応する値を有し、時限制動力低減信号516が前記第2の所定のデフォルト値を有する状況の直前の瞬間に、前記調整制動力信号507によって想定される値を、前記調整制動力信号507に経時的に維持させる;
-前記時限制動力保持信号514によって想定される値が前記第1の所定のデフォルト値に対応し、前記時限制動力低減信号516によって想定される値が前記第2の所定のデフォルト値に対応する場合、調整された制動力信号507によって示される調整された制動力値が制動力適用要求信号307によって示される制動力適用要求値と一致するまで、調整された制動力信号507によって示される調整された制動力値が所定の制動力増加曲線522に従って経時的に増加するように、調整された制動力信号507に経時的に変化する値をとらせる。
【0077】
好ましくは、この実施形態においても、第1の時間間隔は第1のタイマ手段510によって監視することができ、第2の時間間隔は第2のタイマ手段 511によって監視することができる。
【0078】
例えば、ホールド信号504に関連する「フォースホールドタイマ(force hold timer)」とも呼ばれる第1のタイマ手段510は、ホールド信号504の値が論理値「1」、すなわち第1の所定値を連続的にとる時間をカウントするように構成され、制動力低減信号506に関連する「フォース低減タイマ(force reduction timer)511」とも呼ばれる第2のタイマ手段511は、制動力低減信号506が論理値「1」、すなわち第1の所定値を連続的にとる時間をカウントするように構成される。
【0079】
この実施形態においても、規格EN15595:2018§5.1.4に引用されている値に関して、第1の時間間隔は15秒の値を仮定し、第2の時間間隔は10秒の値をとることができる。
【0080】
従来技術によれば、空気式ブレーキシステムのタイムアウトデバイス210、213は、安全レベルSIL3に従って開発され、通常、マイクロプロセッサ207の機能的独立性を保証するようにハードウェアデバイスを使用して実装される。
【0081】
さらに、切換装置202、203および電空弁220、221によって形成される電空アーキテクチャは、その設計および定義された「実績のあるサービス(service proven)」、すなわち「長くて信頼できるサービスによって証明された安全レベル(level of safety proven by long and reliable service)」のために、SIL≧3の安全レベルを有すると考えられる。
【0082】
好ましくは、電気機械ブレーキシステムについて同じ安全レベルに達するために、安全レベルSIL≧3に従ったソフトウェア機能によって、切換装置202、203および電空弁220、221に機能的に類似した制動力適用要求調節モジュール403、503、ならびにタイムアウト装置210、212に機能的に類似したタイムアウトモジュール405、505を開発することができる。それらのソフトウェア機能は、例えば、安全レベルSIL≧3に従ってそれ自身が開発されるマイクロプロセッサアーキテクチャによって実行される。
【0083】
上述の実施形態のいずれについても、タイムアウトモジュール405、505および制動力適用要求調整モジュール403、503は、好ましくは1つのモジュールに統合することができる。
【0084】
また、上述の実施形態のいずれについても、制動制御モジュール308およびアンチ・スキッドモジュール402は、好ましくは1つのモジュールに統合することができる。
【0085】
図6を参照すると、車両、例えば少なくとも1つの鉄道車両のための電気機械式ブレーキシステムの実施形態が示されており、このシステムは、図1に示された空気式ブレーキシステムに類似し、上述の図4および図5に示された解決策を使用する、アンチ・スキッドシステムを含む。
【0086】
4つの力制御モジュール305I、305II、・・・は特定の車輪304I、304II、・・・を制動するために、特定の電気機械モジュール301I、302II、・・・をそれぞれ制御してもよい。ブレーキ制御システム、例えば鉄道ブレーキシステムの当業者には明らかなように、実際には、図6に示される各車輪304I、304II、・・・について、同じ車軸に関連する2つの車輪が存在し、各車軸について、一対の電気機械モジュール301I、301II、・・・が存在する。
【0087】
制動制御モジュール308は、図4の監視モジュール421または図5の監視モジュール521にそれぞれ対応する監視モジュール621I、621II、・・・に送信される制動力適用要求307を生成することができる。監視モジュール621I、621II、・・・はそれぞれ、特定の制動力制御モジュール305I、305II、・・・に関連付けられてもよい。
【0088】
アンチ・スキッドモジュール602は、車両の瞬間速度信号609と、それぞれの車両輪304I、304II、・・・にそれぞれ関連付けられた速度センサ611I、611II、・・・によってそれぞれ生成されるそれぞれの車両輪304I、304II、・・・の瞬間速度信号608I、608II、・・・とを受信するように構成される。
【0089】
アンチ・スキッドモジュールは、アンチ・スキッドアルゴリズムを実行し、力調整信号(force adjustment signal)601I、601II、・・・のグループを生成するように構成されてもよく、力調整信号601I、601II、・・・は対応する車輪304I、304II、・・・の滑りに依存し、力調整信号601I、601II、・・・は、それぞれの監視モジュール621I、621II、・・・に送信される。
【0090】
力調整信号601のグループのそれぞれは、機能的には図4の時限制動力低減値406、または図5の制動力保持信号504および制動力低減信号506に対応する。
【0091】
図6の物理的な実施はある程度の自由度を有するが、監視モジュール621I、621II、・・・、およびアンチ・スキッドモジュール602の間の物理的な独立性の必要性を尊重しなければならない。
【0092】
したがって、アンチ・スキッドシステムは、好ましくは複数の監視モジュール621I、621II、621III、621IVを備えることができる。監視モジュール621I、621II、621III、621IVのそれぞれは、適切に調整された制動力信号607I、607II、607III、607IVを生成するように構成されてもよい。このケースでは複数の監視モジュール621I、621II、621III、621IVは単一のモジュール620に統合してもよい。
【0093】
言い換えれば、1つの考えられる実施形態は、監視モジュール621I、621II、・・・を、アンチ・スキッドモジュール602から独立した1つのモジュール620に統合する。単一モジュール620は、好ましくは安全レベルSIL≧3で実装される。単一のモジュール620は、1つ以上の制御手段、例えばマイクロプロセッサを有するか、または1つ以上のプログラマブル論理ユニットを有するシステムによって、または混合マイクロプロセッサおよびプログラマブル論理ユニットシステムを使用して、実装されてもよい。
【0094】
次に、単一モジュール620は制動制御モジュール308と一体化されてもよく、新しい一体化はアンチ・スキッドモジュール602から独立したままであり、好ましくは単一モジュール620に関与する少なくとも一部分が安全レベルSIL≧3で実装される。
【0095】
力調整信号601I、601II...が図2の信号208に対応する保持信号504と、図2の信号209に対応する制動力低減信号506とを含む対の各々を含む上述した統合ケースの両方において、アンチ・スキッドモジュール602は、有利にはアンチ・スキッド装置201に対応する従来技術による空気式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッド装置を含むことができる。
【0096】
本明細書において、信号の値は例えば、その振幅またはその周波数、または調整および測定され得る信号の任意の他の値を意味すると明確に理解される。
【0097】
上述のように、本発明は、鉄道線路を走行する鉄道車両/隊列の分野に特に適用可能である。例えば、本明細書で言及される車両は機関車またはキャリッジであってもよく、コース/ルートは機関車の車輪が乗っているトラックを含んでもよい。本明細書に記載の実施形態は、軌道上の車両に限定されるものではない。例えば、車両は自動車、トラック(例えば、高速道路セミトレーラトラック、鉱山トラック、木材を運搬するためのトラック等)等であってもよく、経路は、道路または軌道であってもよい。例えば、隊列は、互いに接続または関連付けられた複数のこれらの車両を含むことができる。
【0098】
本発明による電気機械式ブレーキシステムのためのアンチ・スキッドシステムの様々な態様および実施形態が説明された。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内で変更されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】