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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シールド付き勾配アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240220BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01R 33/385 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61B5/055 340
A61B5/055 360
G01N24/00 600Y
G01R33/385 ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552497
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022055124
(87)【国際公開番号】W WO2022184698
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160206.5
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21190560.9
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘスト アウグスティヌス ベルトゥス ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】コナイン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】オーヴァーウェグ ヨハネス アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】テルメール マルタイン クレリス
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB06
4C096AB44
4C096AD08
4C096AD09
4C096CA02
4C096CA15
4C096CA17
4C096CA51
4C096CB05
(57)【要約】
勾配磁場を生成するシールド付き勾配コイルアセンブリが提供され、前記アセンブリは、複数の半径方向内側及び外側の同軸円筒面上に、半径方向内側の円筒面上の勾配磁場コイル装置を有し、前記勾配磁場コイル装置は、より小さい横断方向断面を有する1つ又は複数の軸周り円周方向の導電性の中空z磁場巻線を有する長手方向勾配磁場コイルシステムと、より小さい横断方向断面を有し及び前記内側円筒面の表面上にサドルコイルとして配置される中空(x,y)磁場導電体を有する横断方向勾配磁場コイルシステムと、を有する。勾配シールドコイル装置は、半径方向外側の円筒表面上に設けられ、より大きな横断方向断面を有する1又は複数の軸周り円周方向の導電性中空zシールド巻線を有する長手方向勾配シールドコイルシステムと、外側円筒表面の表面上にサドルコイルとして配置される中実導電体を有する横断方向勾配シールドコイルシステムと、を有する。このようにして、渦電流効果を低いレベルに保ちながら、導体の効率的な直接的及び間接的な冷却の最適な組み合わせが達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配磁場を生成するシールド付き勾配磁場コイルアセンブリであって、
複数の半径方向内側及び半径方向外側の同軸の円筒面と、
前記半径方向内側の円筒面上の勾配磁場コイル装置であって、
より小さい横断方向断面を有する1又は複数の軸周り円周方向の導電性の中空z磁場巻線を有する、長手方向勾配磁場コイルシステムと、
より小さい横断方向断面を有する中空(x,y)磁場導電体を有し、前記内側の円筒面の表面上にサドルコイルとして配置される横断方向勾配磁場コイルシステムと、
を有する勾配磁場コイル装置と、
前記半径方向外側の円筒面上の勾配シールドコイル装置であって、
より大きい横断方向断面を有する1又は複数の軸周り円周方向の導電性中空zシールド巻線を有する長手方向勾配シールドコイルシステムと、
前記半径方向外側の円筒面の表面上にサドルコイルとして配置される中実導電体を有する横断方向勾配シールドコイルシステムと、
を有する勾配シールドコイル装置と、
を有するシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項2】
勾配磁場を生成するシールド付き勾配磁場コイルアセンブリであって、
複数の半径方向内側及び半径方向外側の同軸の円筒面と、
前記半径方向内側の円筒面上の勾配磁場コイル装置であって、
より小さい横断方向断面を有する1又は複数の軸周り円周方向の導電性の中実z磁場巻線を有する長手方向勾配磁場コイルシステムと、
より小さい横断方向断面を有し、前記半径方向内側の円筒面の表面上にサドルコイルとして配置される中実(x,y)磁場導電体を有する横断方向勾配磁場コイルシステと、
前記中実z磁場巻線と前記中実(x,y)磁場巻線との間、又は前記中実z磁場巻線を担持するそれぞれの前記内側の円筒面と前記中実(x,y)磁場巻線を担持する前記内側の円筒面との間、に配置される電気絶縁冷却チャネルと、
を有する勾配磁場コイル装置と、
前記半径方向外側の円筒面上の勾配シールドコイル装置であって、
より大きな横断方向断面を有する1又は複数の軸周り円周方向の導電性の中空zシールド巻線を有する長手方向勾配シールドコイルシステムと、
前記半径方向外側の円筒面の表面上にサドルコイルとして配置される中実導電体を有する横断方向勾配シールドコイルシステムと、
を有する勾配シールドコイル装置と、
を有するシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項3】
前記長手方向勾配シールドコイルシステムの導電体は、前記横断方向勾配シールドコイルシステムの表面領域導電体と熱的に対応する、請求項1に記載のシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項4】
前記横断方向勾配シールドコイルシステムが、前記長手方向勾配シールドコイルシステムに対して半径方向外側に配置された、横断方向にシールド勾配磁場をそれぞれ生成する2つの半径方向にオフセットされた表面領域導電体の組を有する、請求項1又は2に記載のシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項5】
前記勾配磁場コイルシステムの前記z磁場巻線が、前記横断方向勾配磁場コイルシステムの前記表面領域導電体に対して半径方向内側に位置する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の横断方向の向きにシールド勾配磁場を生成する前記表面領域導電体は、前記第2の横断方向の向きにシールド勾配磁場を生成する表面領域導電体より半径方向外側にあり、
前記長手方向勾配磁場コイルシステムは、半径方向にオフセットされた2つの中空(x,y)磁場導電体の組を有し、第2の横断方向の向きに勾配磁場を生成する前記中空(x,y)磁場導電体の組は、第1の横断方向の向きに勾配磁場を生成する前記中空(x、y)磁場導電体の組より半径方向外側に配置される、請求項3に記載のシールド付き勾配磁場コイルアセンブリ。
【請求項7】
前記磁石システムの検査ゾーン内に一様な静磁場を生成する磁場コイルの組と、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシールド付き勾配磁場コイルアセンブリと、を有する、磁石システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査ゾーン内の様々な方向に勾配磁場を生成するように構成されたシールド付き勾配磁場アセンブリに関する。シールド付き勾配磁場システムは、勾配磁場を生成する勾配磁場コイル装置と、シールド付き勾配磁場アセンブリから外向きに勾配磁場を補償する勾配シールドコイル装置とを有する。
【背景技術】
【0002】
そのようなシールド付き勾配磁場アセンブリは、国際公開第2005/0431185号パンフレットから知られている。
【0003】
既知のシールド付き勾配磁場システムは、直接冷却の目的のための中空導体を有するzコイルを具備したシールドコイルを有し、中空導体を通って水が流れる。zコイルは、シールドコイルのxコイルとyコイルとの間に挟まれている。これらのxコイル及びyコイルは、zコイルによって間接的に冷却される。更に、米国特許出願第2008/259560号公報は、冷却流体を輸送するためのターン間チャネルを有する、コイルの導体の巻線間に配置される勾配コイルアセンブリを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知のシールド付き勾配アセンブリと比較して最適化された性能を有するシールド付き勾配アセンブリを提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載のシールド付き勾配アセンブリによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド付き勾配コイルアセンブリは、内側と外側の同軸表面にそれぞれ配置される勾配磁場コイル装置の導電体と勾配シールドコイル装置の導電体とを有する。同軸円筒表面は、例えばコイルフォーマによって形成された物理的表面であってもよく、又はそれらは、自己搬送円周又はサドルコイル導体の形状によって形成される仮想表面であってもよい。本発明によれば、勾配磁場コイル装置は、長手方向(z)及び2つの横断方向(x,y)に勾配磁場を生成する導電体の組を有する。勾配磁場コイル装置は、導電体の長さ方向に直交する向きに、より小さい断面の中空導電体を有する。例えば、これらの中空導電体は、9~50mm2の断面及び6~40mmのルーメン断面を有し、6×6mmの矩形断面のルーメンについて良好な結果が達成された。より小さい中空導電体は、2.5~3.0~3.0×4.0mmの小ささの矩形断面を有することができる。流体冷却剤は、電流が導電体を通過するときに直接冷却するように中空導電体を通過することができる。断面積が小さいほど、勾配コイルにおける渦電流の発生が抑制される。加えて、電流のスイッチングに起因する勾配コイルの外側のコンポーネントにおける渦電流の発生は、特に、シールド付き勾配磁場アセンブリが、磁石システム、例えば、超伝導磁石システムにおいて動作されるときに生じる。長手勾配シールドコイルシステムの軸周り円周方向の導電性中空zシールド巻線は、約100、120又は200~500mmのより大きな断面を有する。実際には、勾配シールドコイルシステムの軸周り円周方向の導電性中空zシールド巻線は、勾配磁場コイルシステムの軸周り円周方向の導電性中空zシールド巻線の横断面の2倍を超える横断面を有する。
【0007】
本発明の洞察は、磁束密度がより高いので、勾配磁場コイル装置において、より小さい断面を有する直接流体冷却を有する中空の導電体を使用することである。特に、勾配磁場コイル装置の全ての導電体は、中空の導電体として形成される。シールドコイル装置の場合、横断方向サドルコイルは、表面領域コイルとして形成されてもよく、又は、プレート上に配置された、もしくはプレートから作製された忠実導電体、又はサドルコイルによって形成されてもよい。表面領域導電体という語は、(単一の)表面領域にその導電体(「巻線」)を有する勾配コイル構造又はシールドコイル構造を表す。表面は、曲面上の導電体がサドル型領域に配置されるように曲げられることができる(それゆえ、「サドルコイル」という用語がある)。表面領域導体は、長手勾配方向の導電体のソレノイド幾何学的配置とは異なり、横断方向の勾配方向に用いられる。シールドコイル装置の円周方向コイルは、表面領域コイルを間接的に冷却するのに十分な冷却能力を備えた、より大容量の直接流体冷却を有する。シールドコイル装置の中空円周コイルの断面が大きいほど、渦電流発生に対する感受性が大きくなるが、勾配シールドコイル装置では、磁束が低くなり、渦電流発生が低減される。このようにして、渦電流効果を低いレベルに保ちながら、導電体の効率的な直接的及び間接的な冷却の最適な組み合わせが達成される。本発明の洞察は、特にそれらの断面に関する限り、異なる寸法の導電体を使用することである。一方では、本発明のシールド付き勾配コイルの渦電流挙動は、磁束がより高い勾配コイル装置において、より小さい断面を有する導電体を使用することによって改善される。他方では、円周方向シールドコイルによる表面領域コイルの間接冷却能力は、より高い冷却能力を提供するより大きな断面を有する中空導体を採用することによって改善され、本発明のシールド付き勾配コイルは、より小さい磁化率渦電流を本質的に有するより狭い断面の導電体と、隣接する導電体の間接冷却を可能にするより高い冷却能力を有する導電体、特に中空流体冷却との組み合わせを採用する。本発明のシールド付き勾配磁場コイルは、シールド付き勾配磁場コイルのそれぞれの部分におけるこれらの異なる断面の導電体に基づいて、既知の従来のシールド付き勾配磁場コイルと区別される。少なくともある程度の渦電流感受性は、断面積の減少に伴って減少し、冷却能力は、中空導電体のルーメンの断面積に伴って増加する。磁束が低いシールド付き勾配コイルの部分では、冷却能力を高めるために断面積を広くすることが許容され、磁束が高いシールド付き勾配コイルの部分では、渦電流感受性が低いことが重要である。
【0008】
代替構成によれば、本発明の目的は、請求項2に記載のシールド付き勾配コイルアセンブリによって達成される。この代替構成では、勾配磁場コイル装置において、長手方向磁場コイル装置にも勾配シールドコイル装置にも、忠実導体が採用される。この装置では、勾配磁場コイル装置の冷却は、中実z磁場巻線と中実(x,y)磁場サドルコイル巻線の間に配置される非導電性の冷却チャンネル、例えばプラスチックチューブによって行われる。
【0009】
本発明のシールド勾配コイルアセンブリの代替構成は、勾配コイル装置及び勾配磁場シールドコイル装置のための異なる冷却原理がそれぞれ使用されるという点で共通している。特に、勾配磁場コイルでは、長手方向勾配磁場コイルと横断方向勾配磁場コイルが、例えば、中空導体を介した直接流体冷却か、あるいは、電気的に非導通の冷却チャネルを介在させることにより、個別に冷却され、一方、勾配シールドコイル装置では、横断方向勾配シールドコイルシステムが、より大きなサイズの中空導体を有する長手方向シールドコイルシステムを介して間接的に冷却される。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に定義される実施形態を参照して更に詳述される。
【0011】
本発明のシールド付き勾配コイルアセンブリの一実施形態では、長手方向勾配シールドコイルシステムの電気導体は、横断方向勾配シールドコイルシステムの表面領域導電体と熱的に対応している。これにより、サドルコイルとして形成され得る表面領域電気導体は、長手方向勾配シールドコイルシステムの電気導体の冷却能力によって間接的に冷却される。これらの後者の導電体は中空の導電体であり、流体冷却剤、例えば水(デミウォーター)が、勾配シールドコイル装置から積極的に熱を運び去る。
【0012】
シールド付き勾配コイルアセンブリの一実施形態では、(x,y)勾配磁場及び(x,y)シールド勾配磁場を発生させるための導電体の組は、等しい向きの磁場及びシールド導電体の組がほぼ等しい半径方向距離に配置されるように構成される。従って、両方の横断方向(x,y)において、勾配磁界と、前記勾配磁界に対する同じ横断方向のシールド磁界とを発生させるそれぞれの導電体のセット、又はコイル装置にについて、ほぼ等しい半径方向の離隔が達成される。すなわち、シールドコイル装置と磁場コイル装置との間の互いの半径方向距離は、x勾配及びy勾配についてほぼ等しい。これは、磁場及びシールド磁場を発生させる導電体の効率のシールド付き勾配コイルアセンブリ内で、より同等又はほぼ同等の性能を達成する。
【0013】
シールド付き勾配コイルアセンブリの別の実施形態では、横断方向勾配シールドコイルシステムは、長手方向勾配磁場シールドコイルシステムに対して半径方向外側に位置付けられる個々の横断方向にシールド勾配磁場を生成する2つの半径方向にオフセットされた表面領域導電体の組を有する。すなわち、横断方向のX方向とY方向にそれぞれ勾配磁場を発生させるための一組の導電体は、例えばサドルコイルとして、平行に隣接する円筒面に配置される。横断方向勾配磁場コイルシステムは、中空導電体から構築された半径方向にオフセットされた2つのサドルコイルを有する。これらの中空導電体は、勾配スイッチングによる渦電流が抑制されるようにサイズが小さくされている。渦電流の抑制は、渦電流による勾配スイッチングの速度と効率の低下、誤差磁場、画像アーチファクトの発生などの技術的欠点を回避又は低減することができる。渦電流の抑制はまた、磁石システムのクライオスタットへの熱放散を低減させ、その結果、非シールド超伝導磁石にかかる、磁石システムの超伝導磁場コイルの超伝導冷却剤(液体He)のボイルオフが低減される。
【0014】
シールド付き勾配コイルアセンブリの別の実施例では、横断方向勾配磁場コイルシステムの中空導電体は、長手方向勾配磁場コイルシステムの周方向導電体よりも、検査される患者が配置される可能性のある検査ゾーンの近くに配置される。この空間構成は、横断方向磁場コイルシステムが検査ゾーンに近く(サドルコイルは本質的に効率が低い)、一方、より効率的な長手方向磁場コイル装置が検査ゾーンから大きな距離にあるという点で、勾配磁場コイル装置の効率を最適化する。勾配磁場コイル装置の効率は、印加電流強度に対する勾配振幅の比によって表される。
【0015】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照し、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術の勾配コイルの側断面の一部を示す図。
図2】内側メインコイル上に専用冷却チャネルを備えた本発明の勾配コイルの側断面の一部を示す図。
図3】全中空導体設計の勾配コイルの側断面の一部を示す図。
図4】ハイブリッド冷却レイアウトを有する本発明の勾配コイルの側断面の一部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
勾配コイルは通常、コイルが過熱する可能性があるため、その性能が制限されている。この熱はオーミック損失と渦電流損失によって発生する。コイルを液体冷却により冷却することが一般的に行われている。これはいくつかの方法によって行われる。
【0018】
勾配コイル装置構成に専用冷却層を追加する。これらの層は、伝導を介してコイル巻線から熱を抽出する冷却チャネルを有する。
【0019】
円周方向に走るコイルを中空にして冷却チャネルとして利用し、そのようにコイルを冷却する。円筒コイルでは、これらのコイルは、軸方向に勾配磁場を形成する役割を果たす。サドルコイルは、冷却される円周方向コイルへの伝導を介して間接的に冷却される。
【0020】
中空円周コイル及び中空サドルコイルを用いて全ての導体を直接冷却する。
【0021】
本発明によれば、本発明者らは、独特の装置構成を有する高効率の勾配コイルを作製した。既存の勾配磁場コイルは、円周方向に中空導体のみを有しているか、すべて中空導体を有しているか、又は別個の冷却層による間接冷却を有する。これらの従来の設計にはすべて重大な欠点があるが、これらは本発明の設計で克服される。これにより、TR又は大量のスキャン間の待機時間が短縮され、より高いデューティサイクルが可能になり、患者のスループットが向上する。また、より高い勾配強度の使用が可能になり、TEが短くなり、SNRが向上する。
【0022】
従来の勾配磁場コイルの冷却概念は次の3つの概念に分類可能である。
【0023】
国際公開第2005/0431185号パンフレットから知られているように、一方の軸は直接冷却され、他方の軸は間接的に冷却される。
【0024】
長所
【0025】
製造が容易である。円周方向導体の曲率が小さく、巻回が容易である。
【0026】
短所
【0027】
直接冷却は、円周コイルが所定の位置にある場合にのみ行われる。
【0028】
サドルコイルの熱を円周コイルに伝えるために、封入材料には高い熱伝導率が必要です。
【0029】
冷却される円周コイルとサドルコイルとの間の層は、薄くする必要があり、これは電気的絶縁性能と矛盾する。
【0030】
1つの軸は、3つすべてのための冷却能力を作り出す必要があり、したがって、この導体のサイズは、その自身の熱を放散するためにのみ必要とされる場合よりもはるかに大きい。導体が大きいため、渦電流損失が著しく増加する。
【0031】
図2は、従来技術の勾配コイル10の側断面の一部を示す。実際には、図1は、円筒構成の長手方向断面の半分のみを示している。内側及び外側の円筒面は、11及び12として示される。表面領域(サドル)磁場コイル装置132は、横断方向勾配磁場コイル及びソレノイド型長手方向磁場コイル(zコイル)131が、横断方向及び長手方向に勾配磁場を生成することを示す。表面領域(サドル)シールドコイル装置132は、横断方向勾配コイル及びソレノイド型長手方向磁場コイル(zコイル)131が、横断方向及び長手方向にシールド勾配磁場を生成することを示す。長手方向の磁場コイル及びシールドコイルは、中空導体から形成される。これらの中空導体のルーメン136を通って冷却流体を通過させて、長手方向シールドコイルを直接冷却し、次いで、横断方向の磁場コイル及びシールド勾配コイル13、14を間接的に冷却する。
【0032】
発明の詳細な態様
【0033】
導体の外側で冷却チャネルを分離する。この例では、内側コイルのみが別個の冷却チャネルを有するが、外側コイル上で、又は外側コイル及び内側コイルの両方で冷却コイルが使用されることもできる。
【0034】
長所
製造が容易である。
必要な箇所で冷却密度が調整できる。
導体の断面積が小さく、渦電流による損失が少ない。
【0035】
短所
冷却層が分離しているため、メインコイルとシールドコイルの距離が短くなる。また、より内側にあるコイルは患者から遠くなる。これは電磁気的性能の低下につながる。
導電層を使用する場合、部分放電のリスクも増加する。
付加的な層は、製品に追加のコストをもたらす。サドルコイルを冷却するために、外側に円周コイルが必要とされない場所でダミーターンが必要とされる。
【0036】
図2は、内側メインコイル上に専用冷却チャネル23を有する本発明の勾配コイル20の側断面の一部を示す。具体的には、専用冷却チャネルは、横断方向勾配磁場コイルシステムのサドルコイルの円筒層間に設けられる。
【0037】
内側コイルと外側コイルについてすべての中空導体を使用する。
【0038】
図3は、全中空導体設計を有する勾配コイル30の側断面の一部を示す。長手方向磁場コイル装置131及び横断方向磁場コイル装置132は、中空導体31、32及び33を有する。長手方向141及び横断方向のシールドコイル装置132は、中空導体34、35及び36を含む。これらの中空導体はそれぞれ、それぞれの中空導体を個別に冷却するために冷却流体が通されるルーメン37を有する。
【0039】
長所
導体の近くのまさに必要な場所での冷却が可能。
筐体への熱伝導率要件なし。
導体が小さいので渦電流による損失が少ない。
【0040】
短所
中空導体は高価であるため、費用対効果が低い。
メインコイルとシールドコイル間の距離が小さくなるため(シールドコイルのスタックが厚くなるため)、効率の低下につながる。
内側コイルが外方へいくほど患者から遠くなる。これも効率低下につながる。
電磁性能が損なわれ、シールドコイルが必要以上に冷却される。
【0041】
ハイブリッド冷却
本発明のコンセプトであるハイブリッド冷却は、全ての内側メインコイルが中空であり、直接冷却され、外側シールドコイル上では、円周コイルのみが中空であり、伝導を介してサドルコイルを直接冷却する。
【0042】
図4は、ハイブリッド冷却レイアウトを有する本発明の勾配コイルの勾配コイル40の側断面の一部を示す。この構成では、長手方向シールドコイル及び横断方向シールドコイルは、図1の従来技術の構成のように構成され、横断方向シールドコイルは、長手方向シールドコイル141によって間接的に冷却される表面領域(サドル)コイル142であり、長手方向シールドコイル141は、冷却流体がそれらのルーメン136を通過する中空導体を有する。
【0043】
このアプローチは、電界密度及び発熱密度を見ることによって、性能に関する多くの問題を解決し、性能を最適化する。
【0044】
以下では、従来の設計の短所と、本提案による解決策について、より詳しく説明する:
【0045】
コンセプト1:中空円周導体
【0046】
冷却が行われるのは円周方向コイルがある場所だけである。
勾配コイルでは電流密度が均一ではないため、円周方向導体は場所によってはまばらに巻回される。冷却要件は、ダミーターンによって緩和されなければならない。水を運ぶが電流を通さないコイルは、磁場に寄与しない。
【0047】
サドルコイルから円周コイルに熱を伝えるため、封入材料は高い熱伝導率を必要とする。
特別なフィラーは必要ないが、高い熱伝導率が内側コイルに必要とされ、これは発熱が桁違いに大きいからである。シールドコイル上では、それほど重要ではない。
【0048】
1つの軸が、3つすべてのための冷却能力を作り出す必要があり、したがって、この導体のサイズは、それ自体の熱を放散するためにのみ必要とされる場合よりもはるかに大きい。導体が大きいため、渦電流損失が大幅に増加する。
内側には小さな導体だけが使用され、外側には大きな導体が使用される。しかしながら、シールドコイルは、メイン勾配磁場を打ち消すように配置されている。そのため、シールドコイル付近の磁束密度はメインコイルより低くなる。
【0049】
コンセプト2:導体の外側の別個の冷却チャネル
【0050】
別個の冷却層は、メインコイルとシールドコイルとの間の距離を低減させる。これは、より低い電磁性能をもたらす。
ハイブリッド冷却では、別個の冷却層は存在しない。
【0051】
導電層を使用する場合、部分放電のリスクが増大する。
別個の冷却層を使用していないため、該当しない。
【0052】
付加的な層は、製品に追加のコストをもたらす。
別個の冷却層を使用していないため、該当しない。
【0053】
コンセプト3:全中空導体
【0054】
中空導体はより高価であるため、費用効果が低い。
ハイブリッド冷却レイアウトでは、高価な中空サドル導体は必要な部分にのみ使用される。これは、メインコイルの内部発熱が外側コイルよりもはるかに大きいためである。
【0055】
シールドコイルの厚さを厚くするので、メインコイルとシールドコイルの間の距離が減少される。これは、より低い電磁性能につながる。
ハイブリッド冷却は、外側コイル上にプレート導体を使用しこれを可能な限り平坦にすることによって、これを緩和している。
【0056】
シールドコイルは必要以上に冷却される。
冷却に関して外側コイルに過容量(overcapacity)はない。
【0057】
メインコイルに大きな導体を入れることの欠点をより深く理解することで、新しいハイブリッド冷却が設計された。従来の方法は、オーミック抵抗を低減するために、大きな導体に入れることであった。このため、低周波では抵抗率が低くなるが、高周波では渦電流による発熱が大きくなる。ハイブリッド設計では、メインコイルに断面積の小さい導体を使用することができ、磁束密度が高くなるため有利である。シールドコイルでは磁束密度が低いため、過大な渦電流と発熱を発生させるリスクなしに、より大きなプレート導体が使用されることができる。
【0058】
これは、必要な場所にはメインコイルの高い冷却能力を、冷却が問題とならない場所には省スペースのプレート導体を採用する組み合わせである。勾配コイルのための高性能の冷却装置構成が設計される。これは、冷却が必要な場所に最も多くの冷却が適用されるようにすると同時に、電磁気設計を改善するために行われる。
【0059】
この例では、矩形導体が使用される。これは、必ずしも必要ではなく、導体の形状及び冷却チャネルの形状は両方とも変更可能である。設計組み立ての最中は、導体をよじらせないための最小曲線半径などの制約を考慮する必要がある。
【0060】
技術的な利点は、渦電流の影響を最小化するために、小さな導体と組み合わせて内部で冷却を行うことにより供給される冷却性能によって達成される。そのため、メイン層のひとつを間接冷却にすると、多くの欠点が戻ってくることになる。同様の効率的な設計の1つの方法は、冷却剤を導体の外側に配置し、それでも接触を実現させることである。これは、国際公開第2018/206370号パンフレットから知られている。
【0061】
勾配コイルのデューティサイクルによって制限されるスキャンは、このタイプの冷却から恩恵を受ける。これは、例えば、高周波数、高デューティサイクルEPIを用いたfMRIスキャンの場合である。他の用途は、高い拡散勾配を使用する拡散強調MRIスキャンである。このハイブリッド設計からの効率利得は、これらのスキャンに有益である(同じ勾配アンプ電力を用いて、より高い勾配磁場を作ることができる)。また、大電流は多くの熱を発生するが、ハイブリッド設計はこれを効率的に冷却することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】