(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】BTK阻害剤を含むミクロスフェア製剤ならびにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240220BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K9/50
A61K47/34
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552544
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 US2022070910
(87)【国際公開番号】W WO2022187822
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511135835
【氏名又は名称】オークウッド ラボラトリーズ,エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギルトナー、ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】ガラスカ、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】リッチー、トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】スミス、マーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076AA94
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076EE24M
4C076FF21
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4C084AA17
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4C084NA10
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4C084ZB261
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4C084ZC201
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4C086AA01
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4C086CB06
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4C086MA05
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4C086NA10
4C086NA12
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
BTK阻害剤を含む延長放出ミクロスフェア製剤が提供される。一態様では、ミクロスフェア製剤は、BTK阻害剤が約7~約28日間の期間にわたってヒトにおいてインビボで放出されることを特徴とする。製剤を製造および使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロスフェア製剤であって、
ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、
(i)BTK阻害剤と、
(ii)生分解性ポリマーと、
を含み、
各ポリマーミクロスフェアは、前記ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、
前記ポリマーミクロスフェアは、110μm(D
50)未満の平均粒径を有する、上記ミクロスフェア製剤。
【請求項2】
前記BTK阻害剤がイブルチニブを含む、請求項1に記載のミクロスフェア製剤。
【請求項3】
前記生分解性ポリマーがポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項1または2に記載のミクロスフェア製剤。
【請求項4】
前記生分解性ポリマーが、50:50のラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項1から3のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項5】
前記生分解性ポリマーが、75:25のラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項1から3のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項6】
前記生分解性ポリマーが、85:15のラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項1から3のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項7】
前記生分解性ポリマーがポリ(D,L-ラクチド)を含む、請求項1または2に記載のミクロスフェア製剤。
【請求項8】
前記生分解性ポリマーが酸末端である、請求項1から7のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーがエステル末端である、請求項1から7のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項10】
前記生分解性ポリマーが、約0.2dL/g~0.6dL/gの固有粘度を有する、請求項1から6、8、または9のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項11】
前記生分解性ポリマーが、約0.1dL/g~0.4dL/gの固有粘度を有する、請求項1、2、7、8、または9のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項12】
各ポリマーミクロスフェアが、前記ポリマーミクロスフェアの約45重量%~約65重量%の前記BTK阻害剤の薬物負荷を含む、請求項1から11のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項13】
前記ポリマーミクロスフェアが、約30μm(D
50)~約60μm(D
50)の平均粒径を有する、請求項1から12のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項14】
前記BTK阻害剤の約75%~100%が、対象への注射の約7~28日間の期間にわたって放出されるが、前記BTK阻害剤の約20%以下が、前記対象への注射の約24時間以内に放出されていることを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のミクロスフェア製剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
B細胞悪性腫瘍の処置に使用するための、請求項1から15のいずれかに記載のミクロスフェア製剤。
【請求項17】
ミクロスフェア製剤を製造する方法であって、
(i)BTK阻害剤を、約50:50~85:15のコモノマー比および約0.2dL/g~0.6dL/gの固有粘度を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む生分解性ポリマーと有機溶媒系の存在下で接触させて、分散相を形成する工程と、
(ii)前記分散相を、水および界面活性剤を含む連続相とホモジナイザ内で合わせて、エマルジョンを形成する工程と、
(iii)前記エマルジョンから前記有機溶媒を除去して、有機溶媒を本質的に含まないミクロスフェア製剤を形成する工程と、
(iv)前記実質的に有機溶媒を含まないミクロスフェア製剤を乾燥プロセスに供する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項18】
前記界面活性剤がポリビニルアルコールを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤がポリビニルアルコールを含み、前記合わせることの前の前記水相中のポリビニルアルコール濃度が約0.35重量%である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ミクロスフェア製剤を製造する方法であって、
(i)BTK阻害剤を、約0.1dL/g~0.4dL/gの固有粘度を有するポリ(D,L-ラクチド)を含む生分解性ポリマーと有機溶媒系の存在下で接触させて、分散相を形成する工程と、
(ii)前記分散相を、水および界面活性剤を含む連続相とホモジナイザ内で合わせて、エマルジョンを形成する工程と、
(iii)前記エマルジョンから前記有機溶媒を除去して、有機溶媒を本質的に含まないミクロスフェア製剤を形成する工程と、
(iv)前記実質的に有機溶媒を含まないミクロスフェア製剤を乾燥プロセスに供する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項21】
前記界面活性剤がポリビニルアルコールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記界面活性剤がポリビニルアルコールを含み、前記合わせることの前の前記水相中のポリビニルアルコール濃度が約0.35重量%である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
キットであって、
ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、
(i)イブルチニブと、
(ii)約0.2dL/g~0.6dL/gの固有粘度を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む生分解性ポリマーと、
を含み、
各ポリマーミクロスフェアは、前記ポリマーミクロスフェアの約45重量%~約65重量%のイブルチニブの薬物負荷を含み、前記ポリマーミクロスフェアは、約30μm(D
50)~約60μm(D
50)の平均粒径を有する、上記キット。
【請求項24】
B細胞悪性腫瘍を処置する方法であって、
約7日ごと~約28日ごとの投与スケジュールで、ミクロスフェア製剤を前記対象に筋肉内または皮下注射によって投与することを含み、前記ミクロスフェア製剤は、
(i)イブルチニブと、
(ii)約0.2dL/g~0.6dL/gの固有粘度を有するポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)を含む生分解性ポリマーと、
を含み、
各ポリマーミクロスフェアは、前記ポリマーミクロスフェアの約45重量%~約65重量%のイブルチニブの薬物負荷を含み、前記ポリマーミクロスフェアは、約30μm(D
50)~約60μm(D
50)の平均粒径を有する、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/156,020号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
B細胞は、一部のがんにおける全細胞の最大25%を占める。BTK阻害剤は、B細胞受容体シグナル伝達に関与するブルトン型チロシンキナーゼ(「BTK」)酵素を阻害することにより、がん部位から血液中への悪性B細胞の剥離を引き起こし、細胞死をもたらす。BTK阻害は、悪性B細胞の増殖を減少させ、悪性B細胞の生存を減少させる。
【0003】
一般構造:
【化1】
を特徴とするイブルチニブ(化学式C
25H
24N
6O
2、CAS番号936563-96-1)は、BTK阻害剤である。イブルチニブは、単独で、および他の薬物と組み合わせて、他の疾患の中でも、マントル細胞リンパ腫(「MCL」)、慢性リンパ性白血病(「CLL」)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、小リンパ球性リンパ腫(「SLL」)、全身療法を必要とし、少なくとも1つの以前の抗CD20ベースの療法を受けたことがある患者における再発性/難治性辺縁帯リンパ腫、および移植片対宿主病の処置のために、米国食品医薬品局(「FDA」)によって承認されている。
【0004】
他の2つのBTK阻害剤がFDAによって承認されている:アカラブルチニブ(再発性MCLの処置のために承認)およびザヌブルチニブ(MCLの処置のために承認)。BTKを阻害するいくつかの他の薬物が臨床試験中であり、その中には、多発性硬化症に対するエボブルチニブ、全身性エリテマトーデスに対するABBV-105、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、および慢性自発性蕁麻疹に対するフェネブルチニブ、非ホジキンリンパ腫および/またはCLLに対するGS-4059、スペブルチニブ(AVL-292、CC-292)、自己免疫疾患に対するHM71224が含まれる。
【0005】
現在承認されているBTK阻害剤はすべて経口製剤である。経口製剤はいくつかの欠点を有する場合がある。例えば、経口製剤は、医師の監督の下で、厳密に時間設定された連続投与量を必要とする場合がある。さらに、いくつかのBTK阻害剤は、低い可変的な経口バイオアベイラビリティを有する場合がある。例えば、イブルチニブは、絶食状態でわずか2.9%の経口バイオアベイラビリティを有する場合があるが、これは患者によって異なり得る。
【0006】
医師の監督の下で厳密に時間設定された連続投与量を投与することが患者にとって必要なしに、長時間作用型持続放出注射によって投与されてもよいBTK阻害剤を含む高バイオアベイラビリティ製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
BTK阻害剤を含むミクロスフェア製剤が提供される。ミクロスフェア製剤は、ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する。別の態様では、ミクロスフェア製剤は、低い初期バースト放出を有すること、すなわち、対象への注射の約4時間以内にBTK阻害剤の50%以下が放出されることを特徴とする。
【0008】
一態様では、ミクロスフェア製剤は、(A)(i)生分解性ポリマー、(ii)一次溶媒、および(iii)BTK阻害剤を混合して、分散相を形成することと、(B)(i)水、および(ii)界面活性剤を混合して、連続相を形成することと、(C)分散相を連続相とホモジナイザ内で合わせることと、を含む方法によって製造されてもよい。
【0009】
一態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんを処置する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載される方法に従って製造されたミクロスフェア製剤を、それを必要とする患者に筋肉内または皮下注射によって投与することを含んでもよい。
【0010】
別の態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんの処置のための医薬品の製造における、ポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア製剤であって、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する、上記ミクロスフェア製剤の使用が開示される。
【0011】
別の態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんの処置のための医薬品として使用するために、ポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア製剤であって、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する、上記ミクロスフェア製剤が提供される。
【0012】
別の態様では、キットが提供され、キットは、ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】BTK阻害剤封入ポリマーミクロスフェアを製造する方法を示す概略図である。
【0014】
【
図2】生分解性ポリマーとして50:50のポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(「PLGA」)を含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0015】
【
図3】生分解性ポリマーとして0.26dL/gの固有粘度(「IV」)を有する75:25のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0016】
【
図4】生分解性ポリマーとして0.41dL/g~0.70dL/gのIVを有する75:25のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0017】
【
図5】生分解性ポリマーとして85:15のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0018】
【
図6】生分解性ポリマーとしてポリ(D,L-ラクチド)(「PLA」)を含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
BTK阻害剤を含むミクロスフェア製剤が提供される。ミクロスフェア製剤は、ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する。別の態様では、ミクロスフェア製剤は、低い初期バースト放出を有すること、すなわち、対象への注射の約24時間以内にBTK阻害剤の20%以下が放出されることを特徴とする。
【0020】
一態様では、ミクロスフェア製剤は、(A)(i)生分解性ポリマー、(ii)一次溶媒、および(iii)BTK阻害剤を混合して、分散相を形成することと、(B)(i)水、および(ii)界面活性剤を混合して、連続相を形成することと、(C)分散相を連続相とホモジナイザ内で合わせることと、を含む方法によって製造されてもよい。
【0021】
BTK阻害剤
一態様では、BTK阻害剤は、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ、エボブルチニブ、ABBV-105、フェネブルチニブ、GS-4059、もしくはスペブルチニブ、またはそれらの組合せを含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる群から選択される。
【0022】
一態様では、組成物はイブルチニブから本質的になる。一態様では、イブルチニブは、ScinoPharmまたはMSNによって供給される。一態様では、イブルチニブは疎水性である。一態様では、イブルチニブは遊離塩基として供給される。別の態様では、イブルチニブは、薬学的に許容される塩として供給される。一態様では、イブルチニブは、2.5mg/g未満の水溶解度を特徴とする。一態様では、イブルチニブは、300mg/g超のジクロロメタン(「DCM」)における溶解度を特徴とする。一態様では、イブルチニブは、約3.74のpKaを特徴とする。
【0023】
BTK阻害剤は、様々な多形体であってもよい。多形体には、半水和物、一水和物、二水和物、および当技術分野で公知の他の多形体が含まれてもよい。塩には、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、塩化物、マレイン酸塩、クエン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、または当技術分野で公知の他の塩が含まれてもよい。一態様では、BTK阻害剤は非晶質形態である。
【0024】
BTK阻害剤がイブルチニブまたは同様の溶解度特性を有する別のBTK阻害剤を含む態様では、錯塩、例えばパルミチン酸塩、安息香酸、トシル酸、カンファースルホン酸、または当業者が容易に想定することができる他の塩錯体を使用して溶解度を低下させてもよい。
【0025】
生分解性ポリマー
一態様では、分散相は、PLGAまたはPLAなどの生分解性ポリマーを含んでもよいが、他の好適な生分解性ポリマーを使用してもよいことが企図される。生分解性ポリマーは、疎水性または親水性であってもよい。
【0026】
いくつかの態様では、生分解性ポリマーはPLGAを含む。一態様では、PLGAは、50:50、75:25、または85:15のラクチド:グリコリド比を含む。一態様では、PLGAは酸末端である。一態様では、PLGAはエステル末端である。一態様では、PLGAは、約0.1dL/g~約0.3dL/g、約0.16dL/g~約0.24dL/g、約0.2dL/g~約0.4dL/g、約0.4dL/g~約0.6dL/g、約0.6dL/g~約0.8dL/g、約0.20dL/g、0.26dL/g、0.41dL/g、0.56dL/g、0.66dL/g、0.7dL/g、およびこれらのIV値の任意の2つの間の任意の値または範囲を含む、約0.1dL/g~約0.8dL/gのIVを有する。
【0027】
一態様では、PLGAは、IV=0.20を有する、Evonik製のResomer(登録商標)502H、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、酸末端、ラクチド:グリコリド50:50(「502H」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.20を有する、Evonik製のResomer(登録商標)502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、エステル末端、ラクチド:グリコリド50:50(「502」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.26を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7503A、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、酸末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7503A」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.26を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7503E、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、エステル末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7503E」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.56を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7505A、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、酸末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7505A」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.41を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7505E、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、エステル末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7505E」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.70を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7507A、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、酸末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7507A」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.66を有する、Ashland製のViatel(商標)DLG7507E、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、エステル末端、ラクチド:グリコリド75:25(「7507E」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.24を有する、Ashland製のViatel(商標)DL8503A、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、酸末端、ラクチド:グリコリド85:15(「8503A」)を含む。一態様では、PLGAは、IV=0.25を有する、Ashland製のViatel(商標)DL8503E、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、エステル末端、ラクチド:グリコリド85:15(「8503E」)を含む。
【0028】
いくつかの態様では、生分解性ポリマーはPLAである。一態様では、PLAは酸末端である。一態様では、PLAはエステル末端である。一態様では、PLAは、約0.16dL/g、約0.18dL/g、および約0.32dL/g、ならびにこれらのIV値のいずれか2つの間の任意の値または範囲を含む、約0.1dL/g~約0.4dL/gのIVを有する。
【0029】
一態様では、PLAは、IV=0.16を有する、Ashland製のViatel(商標)DL02A、ポリ(D,L-ラクチド)、酸末端(「DL02A」)を含む。一態様では、PLAは、IV=0.18を有する、Ashland製のViatel(商標)DL02E、ポリ(L-ラクチド)、エステル末端(「DL02E」)を含む。一態様では、PLAは、IV=0.32を有する、Ashland製のViatel(商標)DL03A、ポリ(L-ラクチド)、酸末端(「DL03A」)を含む。
【0030】
一態様では、生分解性ポリマーは、BTK阻害剤と混合されてミクロスフェアを形成し、ミクロスフェアは、注射可能であり、意図された放出持続時間にわたってBTK阻害剤を患者に放出するように製剤化される。別の態様では、生分解性ポリマーは、BTK阻害剤をミクロスフェアに封入するために使用され、ミクロスフェアは、注射可能であり、意図された放出持続時間にわたって、球からの制御された放出速度によって、または粒径、BTK阻害剤を封入する生分解性ポリマーの厚さ、生分解性ポリマーの分子量、ポリマー組成、例えばコモノマー比、エンドキャップ、および薬物負荷、もしくはそのような放出影響因子の組合せに基づいた異なる時間での異なる球からの放出によって、BTK阻害剤を患者に放出するように製剤化される。
【0031】
分散相
一態様では、分散相は一次溶媒を含む。一態様では、一次溶媒はDCMを含む。分散相はまた、一次溶媒中のBTK阻害剤の溶解度を最適化することができる最大約50重量%の共溶媒を含んでもよい。一態様では、共溶媒は、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、エタノール、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、またはDCMを含有する分散相中のBTK阻害剤の溶解度を増加させる任意の他の溶媒であってもよい。ミクロスフェアが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「ICH Harmonised Guideline,Impurities:Guideline for Residual Solvents Q3C(R8),Current Step 4 version 2021年4月22日付」に記載されている基準を満たす場合、ミクロスフェアは有機溶媒を「本質的に含まない」。
【0032】
連続相
分散相は、水と、場合により緩衝液、界面活性剤、またはその両方とを含む水性連続相と合わせてもよい。
【0033】
一態様では、緩衝液を連続相に添加して、溶液のpHを約7.0~約8.0に維持してもよい。一態様では、緩衝液は、リン酸緩衝液または炭酸緩衝液であってもよい。一態様では、緩衝液は、10mMリン酸または炭酸緩衝液であってもよく、約7.6の系のpHレベルを作成および維持するために使用されてもよい。
【0034】
界面活性剤成分は、水中で約0.35重量%~約1.0重量%の量で連続相中に存在してもよい。一態様では、界面活性剤成分は、水中で0.35重量%の濃度のポリビニルアルコール(「PVA」)を含む。
【0035】
いくつかの態様では、ホモジナイザへの分散相流量は、約20mL/分および約25mL/分を含む約10mL/分~約30mL/分であってもよい。いくつかの態様では、ホモジナイザへの連続相流量は、約2L/分であってもよい。したがって、一態様では、連続相:分散相比は、約100:1および約80:1を含む約66:1~約200:1であってもよい。より大規模なバッチは、より高い流量を必要とする場合がある。
【0036】
連続相は、室温または室温より上もしくは下で提供されてもよい。いくつかの態様では、連続相は、約40℃、約37℃、約35℃、約30℃、約25℃、約20℃、約15℃、約10℃、約5℃、約0℃、およびこれらの温度値のいずれか2つの間の任意の値または範囲で提供されてもよい。
【0037】
ホモジナイザ
簡潔にするために、および本方法はいずれにも等しく適用可能であるので、「ホモジナイザ」という語句は、分散相および連続相を均質化することができる、分散相および連続相を乳化することができる、またはその両方を行うことができるシステムまたは装置を企図しており、このシステムおよび装置は当技術分野で公知である。例えば、一態様では、ホモジナイザは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第11,167,256号に記載されているように使用されるインラインSilversonホモジナイザ(英国ウォーターサイドのSilverson Machinesから市販されている)またはLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムである。一態様では、ホモジナイザは、膜乳化剤またはスタティックミキサである。一態様では、ホモジナイザは、約2,000RPM、約3,000RPM、およびこれらのRPM値の任意の2つの間の任意の値または範囲を含む、約1,000~約4,000回転/分(「RPM」)のインペラ速度で動作する。
【0038】
薬物負荷
百分率として表される、薬物対ポリマー比における各ポリマーミクロスフェアの薬物負荷は、約40wt/wt%~約70wt/wt%、約45wt/wt%~約70wt/wt%、約45wt/wt%~約65wt/wt%、約50wt/wt%~約65wt/wt%、50wt/wt%超、およびそれらの薬物負荷の任意の2つの間の任意の値または範囲を含む、40wt/wt%超であってもよい。
【0039】
いくつかの特定の態様では、薬物負荷は20wt/wt%程度の低さであってもよいことが企図される。
【0040】
粒径
一態様では、ポリマーミクロスフェアは、約30μm(D50)~約60μm(D50)、約30μm(D50)~約50μm(D50)、約35μm(D50)~約60μm(D50)、約45μm(D50)~約60μm(D50)、約30μm(D50)、約35μm(D50)、約40μm(D50)、約45μm(D50)、約50μm(D50)、約55μm(D50)、約60μm(D50)、約60μm(D50)未満、およびこれらの平均粒径の任意の2つの間の任意の値または範囲を含む、110μm(D50)未満の平均粒径を有してもよい。
【0041】
いくつかの特定の態様では、平均粒径は150~200μm程度の大きさであってもよいことが企図される。
【0042】
延長放出
一態様では、ミクロスフェア製剤は、ヒトにおいて約7日間未満のインビボ放出持続時間を有することを特徴とする。一態様では、ミクロスフェア製剤は、ヒトにおいて約7日間~約14日間のインビボ放出持続時間を有することを特徴とする。一態様では、ミクロスフェア製剤は、ヒトにおいて約14日間~約28日間のインビボ放出持続時間を有することを特徴とする。一態様では、ミクロスフェア製剤は、ヒトにおいて約28日間のインビボ放出持続時間を有することを特徴とする。一態様では、ミクロスフェア製剤は、ヒトにおいて約28日間超のインビボ放出持続時間を有することを特徴とする。
【0043】
一態様では、ミクロスフェア製剤は、対象への注射の(前の段落に記載されるように)<7、7~14、14~28、または>28日以内に、BTK阻害剤の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または100%、およびこれらの値のいずれかの間の任意の範囲が放出されることを特徴とする。例えば、一態様では、ミクロスフェア製剤は、対象への注射後指定された期間にわたって、BTK阻害剤の約75%~100%が放出されることを特徴とする。別の態様では、ミクロスフェア製剤は、低い初期バースト放出を有すること、すなわち、対象への注射の約24時間以内にBTK阻害剤の約20%以下が放出されることを特徴とする。
【0044】
さらなる態様は、およそ7、14、21、または28日間にわたって放出する持続放出注射可能製剤における70mg、140mg、280mg、420mg、および560mgの経口用量に薬理学的に同等なイブルチニブの持続放出注射可能製剤を含む。
【0045】
別の態様は、MCL、CLL/SLL、およびBTK阻害剤によって処置されてもよい他の疾患または状態についてヒト患者を処置する方法を含む。本方法は、イブルチニブの注射可能な形態を、経口的に1日あたり70mg、140mg、280mg、420mg、および560mgに薬理学的に同等な投与強度で提供することを含んでもよく、注射可能な形態は、患者のコンプライアンスが保証され、1つまたは複数の用量を欠くことによる医学的帰結が回避され、薬物動態プロファイルが経口投与形態と比較して改善されるような連続放出持続時間を有する。
【0046】
治療上の利益
BTK阻害剤を含むミクロスフェア製剤を使用して処置されてもよい可能性のある状態には、MCL、CCL、およびSLLを含むB細胞悪性腫瘍を含むがんが含まれる。一態様では、B細胞悪性腫瘍は、BTK阻害剤を含むミクロスフェア製剤を使用して処置されてもよく、ミクロスフェア製剤は、約<7、7~14、14~28、または>28日ごとに投与される。
【0047】
一態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんを処置する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載される方法に従って製造されたミクロスフェア製剤を、それを必要とする患者に筋肉内または皮下注射によって投与することを含んでもよい。
【0048】
別の態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんの処置のための医薬品の製造における、ポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア製剤であって、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する、上記ミクロスフェア製剤の使用が開示される。
【0049】
別の態様では、B細胞悪性腫瘍を含むがんの処置のための医薬品として使用するために、ポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア製剤であって、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する、上記ミクロスフェア製剤が提供される。
【0050】
別の態様では、キットが提供され、キットは、ポリマーミクロスフェアを含み、各ポリマーミクロスフェアは、(i)BTK阻害剤と、(ii)生分解性ポリマーと、を含み、各ポリマーミクロスフェアは、ポリマーミクロスフェアの40重量%超のBTK阻害剤の薬物負荷を含み、ポリマーミクロスフェアは、110μm(D50)未満の平均粒径を有する。
【0051】
例
例1-BTK阻害剤を含むポリマーミクロスフェアの一般的調製
ミクロスフェア形成相。
図1を参照し、ポリマーマトリックス(PLGAまたはPLAポリマーなど)を有機溶媒系(DCMなど)に溶解し、続いてBTK阻害剤を添加し、完全に溶解するまで混合することによって、分散相(「DP」)10を形成する。DP10を、0.2μmの滅菌PTFEまたはPVDFメンブレンフィルタ(例えば、PallまたはSartoriousAGから市販されているEMFLON)を用いて濾過し、規定の流量でホモジナイザ30にポンプ輸送する。水、界面活性剤、および場合により緩衝液を含む連続相(「CP」)20もまた、規定の流量でホモジナイザ30にポンプ輸送する。ホモジナイザ30の速度は、一般に、所望のポリマーミクロスフェアサイズ分布を達成するために固定される。代表的な連続「上流」ミクロスフェア形成相は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,945,126号に記載されている。
【0052】
ミクロスフェア処理相。形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザ30を出て、溶媒除去容器(「SRV」)40に入る。水性媒体中の溶媒レベルを最小限に抑えるために、ミクロスフェア形成中にSRV40に水を添加してもよい。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,017,715号も参照されたい。DP10が排出された後、CP20および水流量を停止し、洗浄工程を開始する。溶媒除去は、水洗および中空糸フィルタ(CytivaからHFFとして市販されている)50を使用して達成される。代表的な「下流」ミクロスフェア処理相は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,270,802号に記載されている。
【0053】
洗浄したミクロスフェアを回収し、凍結乾燥機(Virtis)で凍結乾燥してあらゆる水分を除去する。得られたミクロスフェアは、自由流動性の灰白色バルク粉末である。
【0054】
例2-50:50のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアの調製-バッチ番号1および2(「グループA」)
例1に記載され、
図1に例示される一般的な手順に従って、DPを、2.5gの502Hポリマー(バッチ番号1)または502ポリマー(バッチ番号2)(IV=0.20dL/g)のいずれかを11.67gのDCMに溶解し、その後、イブルチニブ(2.5g)を添加し、完全に溶解するまで混合することによって形成した。DPを濾過し、25mL/分の流量で、3,000RPMで動作するLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムにポンプ輸送した。0.35%PVAを含むCPもまた、2L/分(CP:DP=80:1)の流量でホモジナイザにポンプ輸送した。
【0055】
形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザを出て、SRVに入った。脱イオン水をSRVに添加した。溶媒除去を、水洗および中空糸フィルタを使用して達成した。バルク懸濁液を濾過によって回収し、凍結乾燥させて、自由流動性粉末を得た。
【0056】
バッチ番号1は、36μm(D
50)の平均粒径、47.6wt%の薬物負荷、および17.6kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、3.0%の残留DCMを含有していた。バッチ番号2は、44μm(D
50)の平均粒径、47.8wt%の薬物負荷、および17.7kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、3.0%の残留DCMを含有していた。パラメータおよび結果を表1に表で示す。
【表1】
【0057】
図2は、グループAのイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0058】
例3-低ポリマーIVを有する75:25のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアの調製-バッチ番号3、4、6、7、および11(「グループB」)
例1に記載され、
図1に例示される一般的な手順に従って、DPを、2.5g(バッチ番号3、4、および11)、2.0g(バッチ番号6)、または1.5g(バッチ番号7)の7503Aポリマー(バッチ番号3、6、7、および11)または7502Eポリマー(バッチ番号6)(IV=0.26dL/g)のいずれかを11.67gのDCMに溶解し、その後、イブルチニブ(16.67gのDP重量を提供するのに十分な、すなわち、バッチ番号3、4、および11については2.5g、バッチ番号6については3.0g、バッチ番号7については3.5g)を添加し、完全に溶解するまで混合することによって形成した。DPを濾過し、25mL/分の流量で、3,000RPM(バッチ番号3、4、6、および7)または2,000RPM(バッチ番号11)で動作するLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムにポンプ輸送した。0.35%PVAを含むCPもまた、2L/分(CP:DP=80:1)の流量でホモジナイザにポンプ輸送した。
【0059】
形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザを出て、SRVに入った。脱イオン水をSRVに添加した。溶媒除去を、水洗および中空糸フィルタを使用して達成した。バルク懸濁液を濾過によって回収し、凍結乾燥させて、自由流動性粉末を得た。
【0060】
バッチ番号3は、39μm(D
50)の平均粒径、48.2wt%の薬物負荷、および29.4kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、3.1%の残留DCMを含有していた。バッチ番号4は、35μm(D
50)の平均粒径、48.9wt%の薬物負荷、および25.5kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、2.1%の残留DCMを含有していた。バッチ番号6は、34μm(D
50)の平均粒径、60.6wt%の薬物負荷、および31.0kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、2.7%の残留DCMを含有していた。バッチ番号7は、30μm(D
50)の平均粒径、65.6wt%の薬物負荷、および30.1kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、1.5%の残留DCMを含有していた。バッチ番号11は、61μm(D
50)の平均粒径、51wt%の薬物負荷、および28.9kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、1.4%の残留DCMを含有していた。パラメータおよび結果を表2に表で示す。
【表2】
【0061】
図3は、グループBのイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0062】
例4-高ポリマーIVを有する75:25のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアの調製-バッチ番号5、12、13、および14(「グループC」)
例1に記載され、
図1に例示される一般的な手順に従って、DPを、2.5g(バッチ番号5および12)または2.0g(バッチ番号13および14)の7505Aポリマー(バッチ番号5)(IV=0.56dL/g)、7505Eポリマー(バッチ番号12)(IV=0.41dL/g)、7507Aポリマー(バッチ番号13)(IV=0.7dL/g)、または7507Eポリマー(バッチ番号14)(IV=0.66dL/g)のいずれかを11.67gのDCMに溶解し、その後、イブルチニブ(16.67gのDP重量を提供するのに十分な、すなわち、バッチ番号5および12については2.5g、バッチ番号13および14については3.0g)を添加し、完全に溶解するまで混合することによって形成した。DPを濾過し、25mL/分の流量で、3,000RPMで動作するLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムにポンプ輸送した。0.35%PVAを含むCPもまた、2L/分(CP:DP=80:1)の流量でホモジナイザにポンプ輸送した。
【0063】
形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザを出て、SRVに入った。脱イオン水をSRVに添加した。溶媒除去を、水洗および中空糸フィルタを使用して達成した。バルク懸濁液を濾過によって回収し、凍結乾燥させて、自由流動性粉末を得た。
【0064】
バッチ番号5は、53μm(D
50)の平均粒径、47.5wt%の薬物負荷、および66.4kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、4.1%の残留DCMを含有していた。バッチ番号12は、47μm(D
50)の平均粒径、51.2wt%の薬物負荷、および49.8kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.8%の残留DCMを含有していた。バッチ番号13は、52μm(D
50)の平均粒径、62.2wt%の薬物負荷、および87.7kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、1.3%の残留DCMを含有していた。バッチ番号14は、53μm(D
50)の平均粒径、61.0wt%の薬物負荷、および90.8kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、1.3%の残留DCMを含有していた。パラメータおよび結果を表3に表で示す。
【表3】
【0065】
図4は、グループCのイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0066】
例5-85:15のPLGAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアの調製-バッチ番号18および19(「グループD」)
例1に記載され、
図1に例示される一般的な手順に従って、DPを、2.5gの8503Aポリマー(バッチ番号18)(IV=0.24dL/g)または8503Eポリマー(バッチ番号19)(IV=0.25dL/g)のいずれかを11.67gのDCMに溶解し、その後、イブルチニブ(2.5g)を添加し、完全に溶解するまで混合することによって形成した。DPを濾過し、25mL/分の流量で、3,000RPMで動作するLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムにポンプ輸送した。0.35%PVAを含むCPもまた、2L/分(CP:DP=80:1)の流量でホモジナイザにポンプ輸送した。
【0067】
形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザを出て、SRVに入った。脱イオン水をSRVに添加した。溶媒除去を、水洗および中空糸フィルタを使用して達成した。バルク懸濁液を濾過によって回収し、凍結乾燥させて、自由流動性粉末を得た。
【0068】
バッチ番号18は、36μm(D
50)の平均粒径、49.8wt%の薬物負荷、および22.7kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.5%の残留DCMを含有していた。バッチ番号19は、35μm(D
50)の平均粒径、49.2wt%の薬物負荷、および25.8kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.3%の残留DCMを含有していた。パラメータおよび結果を表4に表で示す。
【表4】
【0069】
図5は、グループDのイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0070】
例6-PLAを含むイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアの調製-バッチ番号8、9、10、16、および17(「グループE」)
例1に記載され、
図1に例示される一般的な手順に従って、DPを、2.5g(バッチ番号8、9、16、および17)または2.0g(バッチ番号10)のDL02Aポリマー(バッチ番号8および17)(IV=0.16dL/g)、DL02Eポリマー(バッチ番号9および10)(IV=0.18dL/g)、またはDL03Aポリマー(バッチ番号16)(IV=0.32dL/g)のいずれかを11.67gのDCMに溶解し、その後、イブルチニブ(16.67gのDP重量を提供するのに十分な、すなわち、バッチ番号8、9、16、および17については2.5g、バッチ番号10については3.0g)を添加し、完全に溶解するまで混合することによって形成した。DPを濾過し、25mL/分の流量で、3,000RPM(バッチ番号8、9、10、および16)または2,000RPM(バッチ番号17)のいずれかで動作するLevitronix(登録商標)BPS-i100一体型ポンプシステムにポンプ輸送した。0.35%PVAを含むCPもまた、2L/分(CP:DP=80:1)の流量でホモジナイザにポンプ輸送した。
【0071】
形成されたまたは形成中のミクロスフェアは、ホモジナイザを出て、SRVに入った。脱イオン水をSRVに添加した。溶媒除去を、水洗および中空糸フィルタを使用して達成した。バルク懸濁液を濾過によって回収し、凍結乾燥させて、自由流動性粉末を得た。
【0072】
バッチ番号8は、32μm(D
50)の平均粒径、51.7wt%の薬物負荷、および12.0kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.4%の残留DCMを含有していた。バッチ番号9は、29μm(D
50)の平均粒径、51.8wt%の薬物負荷、および11.7kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.1%の残留DCMを含有していた。バッチ番号10は、29μm(D
50)の平均粒径、64.2wt%の薬物負荷、および11.7kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.2%の残留DCMを含有していた。バッチ番号16は、40μm(D
50)の平均粒径、48.9wt%の薬物負荷、および30.1kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.6%の残留DCMを含有していた。バッチ番号17は、49μm(D
50)の平均粒径、50.2wt%の薬物負荷、および12.4kDaの分子量を有していた。ミクロスフェアは、0.8%の残留DCMを含有していた。パラメータおよび結果を表5に表で示す。
【表5】
【0073】
図6は、グループEのイブルチニブ封入ポリマーミクロスフェアからの経時的なインビトロ累積イブルチニブ放出を示すグラフである。
【0074】
使用の際に、ミクロスフェアを、投与(注射)のために希釈剤に懸濁してもよい。希釈剤は、一般に、増粘剤、等張化剤、および湿潤剤を含んでもよい。増粘剤は、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム(CMC-Na)または他の好適な化合物を含んでもよい。希釈剤の粘度が3cps以上になるように、適切な粘度グレードおよび好適な濃度のCMC-Naを選択してもよい。一般に、約10cpsの粘度が好適である。しかし、懸濁液中のミクロスフェアの沈降を最小限に抑えるために、より大きなミクロスフェアにはより高い粘度の希釈剤が好ましい場合がある。
【0075】
粒子沈降のない均一なミクロスフェア懸濁液は、注射による薬物投与中に一貫した送達用量をもたらす。生物系により近い希釈剤の等張性、約290ミリオスモル(mOsm)を有するために、溶質、例えばマンニトール、塩化ナトリウム、または任意の他の許容される塩を使用してもよい。希釈剤はまた、組成物のpHを維持するための緩衝塩を含有してもよい。典型的には、pHは、必要に応じて緩衝液含有量を調整することによって、生理学的に適切なpH付近に維持される(pH約7~約8)。
【0076】
本明細書に開示される態様は、網羅的であること、または限定的であることを意図するものではない。当業者であれば、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の態様または本態様に対する修正を行うことができることを認識するであろう。本開示の態様は、本明細書に一般的に記載され、図に示されているように、多種多様な異なる構成で配置、置換、組合せ、分離、および設計することができ、それらはすべて本明細書で企図される。
【0077】
特に指定されない限り、「a」、「an」、「the」、「1つ以上の(one or more of)」、および「少なくとも1つ(at least one)」は、区別なく使用される。単数形「a」、「an」および「the」は、それらの複数形を含む。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、同等でオープンエンドであることを意図している。「から本質的になる」という語句は、組成物または方法が追加の成分および/または工程を含んでもよいが、追加の成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。「からなる群から選択される」という語句は、列挙された群の混合物を含むことを意味する。
【0078】
「各」という用語に言及する場合、「すべて、例外なく」を意味するものではない。例えば、ポリマーミクロスフェアを含むミクロスフェア製剤に言及し、「各ポリマーミクロスフェア」が特定のBTK阻害剤含有量を有すると言われる場合、10個のポリマーミクロスフェアが存在し、2つ以上のポリマーミクロスフェアが特定のBTK阻害剤含有量を有する場合、その2つ以上のポリマーミクロスフェアのサブセットは限定を満たすことを意図している。
【0079】
数字に関連する「約」という用語は、単に略記であり、数字の±10%を含むことを意図している。これは、「約」が、独立した数字を修飾しているか、または数字の範囲の端のいずれかもしくは両方で数字を修飾しているかにかかわらず当てはまる。言い換えると、「約10」は、9~11を意味する。同様に、「約10~約20」は、9~22および11~18を企図する。「約」という用語がない場合、正確な数字が意図される。言い換えると、「10」は10を意味する。
【国際調査報告】