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特表2024-508870複合材料を強化するための熱可塑性ポリアミド粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】複合材料を強化するための熱可塑性ポリアミド粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20240220BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20240220BHJP
   B29B 15/08 20060101ALI20240220BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240220BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240220BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240220BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C08J3/16 CFG
B29B11/16
B29B15/08
C08G69/26
C08K7/02
C08L77/06
C08L101/00
B29K105:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553021
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022055017
(87)【国際公開番号】W WO2022184656
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/154,937
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21305540.3
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミション, マリー-ロール
(72)【発明者】
【氏名】オッセン, ヘイゼル-アン
(72)【発明者】
【氏名】ラーリー, ピエール-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】アルグー, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】アーツ, ヴィンセント
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AB23
4F070AC84
4F070AE14
4F070AE28
4F070DA37
4F070DC07
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB22
4F072AD23
4F072AD44
4F072AE01
4F072AG03
4F072AH44
4F072AH49
4F072AJ22
4F072AL02
4F072AL17
4J001DA01
4J001DB04
4J001DC13
4J001EB09
4J001EC08
4J001EC15
4J001FB03
4J001FC06
4J001GA14
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB11
4J001JA15
4J001JC02
4J002AA00W
4J002AA02W
4J002BB03Y
4J002CF16Y
4J002CL03X
4J002DA016
4J002DL006
4J002FA046
4J002FA04Y
4J002FD016
4J002FD01Y
4J002GT00
(57)【要約】
本開示は、複合材料の強化及び/又は微小亀裂の低減のための、所定の粒子分布を有する熱可塑性コポリアミド粒子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性コポリアミド粒子の集合体であって、前記コポリアミドが、繰り返し単位RPA1及びRPA2又はRPA3及びRPA2を含み、RPA1が、以下の構造
【化1】
(Rは、C~C18脂肪族基、典型的にはC~C18アルキレン基であり;
は、C~C16脂肪族基、典型的にはC~C16アルキレン基であり;
は、C~C18アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C16アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C14アルキレンである)
によって表され;
前記コポリアミド粒子の集合体が、
100℃以下のガラス転移温度と;
融解エンタルピーピーク温度及び結晶化エンタルピーピーク温度とを有し、前記融解エンタルピーピーク温度及び前記結晶化エンタルピーピーク温度が、それぞれ、そのような乾燥コポリマーのサンプルの最初の加熱中に変調示差走査熱量測定によって決定され、前記融解エンタルピーピーク温度が150~260℃であり、前記結晶化エンタルピーピーク温度と前記融解エンタルピーピーク温度との差が30℃以下である、熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項2】
前記粒子が、45μm以下、典型的には25μm以下、より典型的には20μm以下の粒子分布(D50)を有する、請求項1に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項3】
前記粒子が、少なくとも1μm、典型的には少なくとも2.5μm、より典型的には少なくとも5μmの粒子分布(D10)を有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項4】
前記粒子が、少なくとも5μm~50μmの範囲の(D10)~D90の粒子分布範囲を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項5】
前記コポリアミドコポリマーが、
少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミン、
少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、及び
少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、
の少なくとも1種の重縮合生成物の繰り返し単位;
又は
少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミン、
少なくとも1種のジカルボン酸、及び
少なくとも1種のC~C15アミノ酸若しくはC~C15ラクタム、
の少なくとも1種の重縮合生成物の繰り返し単位
を含むか、又はそれらからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項6】
繰り返し単位RPA1がヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成され、繰り返し単位RPA2がイソホロンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項7】
前記コポリアミドが、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)及びポリ(イソホロンセバカミド)を含むか、又はそれらからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項8】
前記コポリアミドが繰り返し単位RPA1及びRPA2を含み、繰り返し単位RPA2に対する繰り返し単位RPA1の相対モル濃度が少なくとも60/40、典型的には70/30である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項9】
前記コポリアミドが、
70~95モル%の式
【化2】
の繰り返し単位と、
5~30モル%の式
【化3】
の繰り返し単位とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項10】
前記コポリアミドが、180℃~240℃、典型的には190℃~210℃の融解温度(「Tm」)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項11】
とRのうちの一方がアルキル基であり、RとRの両方がアルキル基というわけではない、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項12】
前記コポリアミドが繰り返し単位RPA3及びRPA2を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体。
【請求項13】
熱可塑性ポリアミドコポリマーを含む熱可塑性コポリアミド粒子の製造方法であって、
(a)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b)少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミンと、(c)少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸とを反応させて、前記熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、又は
(a’)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b’)少なくとも1種のジカルボン酸と、(c’)少なくとも1種のC~C15アミノ酸又はC~C15ラクタムとを反応させて、前記熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、及び
前記熱可塑性ポリアミドコポリマーを粒子の形態へと加工すること、
を含み、
前記粒子が、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する、方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリアミドコポリマーを粒子の形態へと加工する工程が溶融乳化を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複合材料であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体、又は請求項13若しくは14に記載の方法に従って製造された熱可塑性コポリアミド粒子の集合体と;
強化繊維と;
マトリックス樹脂と
を含む複合材料。
【請求項16】
プリプレグの形態である、請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の複合材料から製造される複合材料物品。
【請求項18】
少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも45、又は少なくとも47KSIのCAIを有する、請求項17に記載の複合材料物品。
【請求項19】
少なくとも50、少なくとも60、少なくとも67、少なくとも69、又は少なくとも70KSIのOHT*を有する、請求項17又は18に記載の複合材料物品。
【請求項20】
少なくとも63、少なくとも65、又は少なくとも66KSIのOHT*-75°Fを有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の複合材料物品。
【請求項21】
少なくとも43、少なくとも44、又は少なくとも46KSIのOHCを有する、請求項17~20のいずれか一項に記載の複合材料物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月1日出願の米国仮特許出願第63/154,937号、及び2021年4月27日出願の欧州特許出願第21305540.3号に基づく優先権を主張するものであり、これらの両方は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、複合材料を強化するための熱可塑性ポリアミド粒子に関する。より具体的には、本発明は、複合材料を強化するための、所定の粒子分布を有する熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維強化ポリマー(「FRP」)複合材料は、航空宇宙、自動車、船舶、工業、及びインフラ/建築分野などの様々な用途で、より伝統的な材料に代わる最新の代替材料として推進されている。具体的には、FRP複合材料は、鋼やアルミニウムなどの金属及び合金の代替として、及びコンクリートの代替として、利用分野に応じて使用することができる。
【0004】
FRP複合材料が推進されていることは、金属に代わる代替品や、靱性及び耐薬品性を含み得る望ましい特性のバランスを備えた軽量材料が求められていることなど、様々な要因によると考えられる。より具体的には、FRP複合材料の望ましい特性を維持する更には高めると同時に、総重量を低減することで、金属疲労や腐食に関連する問題が解消され、その結果、性能を犠牲にせずに、より燃費が優れた航空宇宙航空機、自動車、輸送車両、及び船舶、並びにそれらの部品を製造することが可能になる。更に、航空機、車両、船舶の部品及び構成要素をFRP複合材料を用いて製造することにより、航空機、車両、船舶の総重量を軽量化できるのみならず、部品及び構成要素の製造や加工に要する時間も短縮することができる。同様に、建設及びインフラの用途に関しても、FRP複合材料は、構造全体のコスト、重量(及び関連する応力及び負荷)、及び構築に必要な時間を(すなわちプレハブ加工プロセスにより)削減及び維持しながらも、従来の建築及び建設材料の代替材料を提供することができる。
【0005】
FRP複合材料を製造するためには、マトリックス樹脂で予め含浸した繊維(「プリプレグ」)を使用することができる。具体的には、プリプレグを金型の中に入れるか、又は複数のプリプレグを金型内で積層し、その後所定の温度及び圧力で金型内で硬化させて、最終的なFRP複合材料を形成することができる。しかしながら、プリプレグを使用した場合であっても、得られるFRP複合材料が特定の用途、特に航空宇宙用途に必要とされる強度及び靱性を欠いている場合がある。
【0006】
FRP複合材料などの複合材料部品は、温度が変化すると、プライの配向に依存する熱膨張係数(CTE)に応じて異なる方向に膨張又は収縮する。独立しており応力がないプライで膨張又は収縮が注意深く行われると、プライの配向に関わらず応力は発生しない。しかし、プライを異なる配向に回転させて一緒に積層すると、隣接するプライの応力により、各プライはそれ自体のCTEに従って膨張又は収縮ができなくなる。この結果、プライに高い応力が生じる。マトリックスは繊維よりも系内破壊応力が小さいため、マトリックスに微小亀裂が生じる。微小亀裂は、剛性などの特性に重大な変化を引き起こす可能性がある。複合材料部品は、熱サイクルや湿気の多い時期にさらされると、収縮及び膨張応力を受け、微小亀裂が発生する可能性がある。
【0007】
したがって、FRP複合材料を含む複合材料の強化及び/又は微小亀裂の低減が当該技術分野において依然として必要とされている。更に、及びより具体的には、航空宇宙、自動車、船舶、及びインフラ/建築用途向けのFRP複合材料を含む複合材料の強化及び/又は微小亀裂の低減が当該技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本開示は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性コポリアミド粒子の集合体であって、
コポリアミドが、繰り返し単位RPA1及びRPA2又はRPA3及びRPA2を含み、RPA1が、以下の構造
【化1】
によって表され、
RPA2が、以下の構造
【化2】
によって表され、
RPA3が、以下の構造
【化3】
によって表され、
式中、
は、C~C18脂肪族基、典型的にはC~C18アルキレン基であり;
は、C~C16脂肪族基、典型的にはC~C16アルキレン基であり;
は、C~C18アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C16アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C14アルキレンである;
熱可塑性コポリアミド粒子の集合体に関し、
コポリアミド粒子の集合体は、
100℃以下のガラス転移温度と;
融解エンタルピーピーク温度及び結晶化エンタルピーピーク温度とを有し、融解エンタルピーピーク温度及び結晶化エンタルピーピーク温度は、それぞれ、そのような乾燥コポリマーのサンプルの最初の加熱中に変調示差走査熱量測定によって決定され、融解エンタルピーピーク温度は150~260℃であり、結晶化エンタルピーピーク温度と融解エンタルピーピーク温度との差は30℃以下である。
【0009】
第2の態様では、本開示は、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子の製造方法に関し、この方法は、
(a)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b)少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミンと、(c)少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸とを反応させて、熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、又は
(a’)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b’)少なくとも1種のジカルボン酸と、(c’)少なくとも1種のC~C15アミノ酸又はC~C15ラクタムとを反応させて、熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、及び
熱可塑性ポリアミドコポリマーを粒子の形態へと加工すること、
を含み、
粒子は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する。
【0010】
第3の態様においては、本開示は、本明細書に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体又は本明細書に記載の方法に従って製造された熱可塑性コポリアミド粒子と、強化繊維と、マトリックス樹脂とを含む複合材料に関する。
【0011】
第4の態様では、本開示は、本明細書に記載の複合材料から製造される複合材料物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」は、特に明記しない限り、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味し、互いに交換して使用することができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」の形態の句で使用される用語「及び/又は」は、Aだけ、Bだけ、又はAとBを一緒に、を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」は、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「からなる(consists of)」を含む。用語「含む(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を含む。「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又は非限定的であることを意図し、追加的な、列挙されない要素又は工程を除外しない。移行句「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、指定された材料又は工程の他、記載された組成物、プロセス、方法、又は製品の基本的特徴又は機能に本質的に影響を与えないものを包括する。移行句「からなる」は、特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。
【0015】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術的な用語及び科学的な用語の全ては、本明細書が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0016】
本明細書で使用される場合、特に指示がない限り、用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3、又は4標準偏差内を意味する。特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0017】
また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、そこに包含される全ての部分的な範囲を含むことを意図することが理解されよう。例えば、範囲「1~10」は、列挙された最小値である1と、列挙された最大値である10との間及びそれを含む全ての部分的な範囲を含むことを意図する、即ち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する。開示されている数値範囲は連続しているため、最小値と最大値との間の全ての値が含まれる。特に明記しない限り、本出願で指定された様々な数値範囲は概算値である。
【0018】
本明細書で使用される用語及び語句「発明」、「本発明(present invention)」、「本発明(instant invention)」、並びに同様の用語及び語句は、非限定的であり、本発明の主題をいずれかの単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、記載されている可能な全ての実施形態を包含する。
【0019】
濃度、重量比又は量の任意の範囲の指定において、任意の具体的な上側の濃度、重量比又は量は、それぞれ任意の具体的な下側の濃度、重量比又は量と関連付けられ得ることに留意すべきである。
【0020】
本明細書で使用される有機基に関連する専門用語「(C~C)」(式中、n及びmはそれぞれ整数である)は、基が、1つの基当たりn個の炭素原子~m個の炭素原子を含み得ることを示す。
【0021】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、用語「脂肪族」は、有機化合物が直鎖又は分岐鎖構造を有し、任意のアリール又は脂環式環部位を欠くことを意味し、この場合に、鎖は、それぞれの単、二重、又は三重結合によって結合された炭素原子を含み、典型的には、酸素、窒素、及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意選択的に中断されることができ、鎖の炭素原子員は、典型的には、アルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキルから選択される任意のアリール又は脂環式環部位を欠く1つ以上の有機基でそれぞれ任意選択的に置換されることができる。
【0022】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、用語「脂環式」は、化合物が1つ以上の非芳香族環部位を含み、アリール環部位を欠き、この場合に、1つ以上の非芳香族環部位の員は、炭素原子を含み、1つ以上の非芳香族環部位のそれぞれは、典型的には酸素、窒素、及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によって任意選択的に中断されることができ、1つ以上の非芳香族環部位の炭素原子員は、典型的にはアルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキルから選択される1つ以上の非アリール有機基でそれぞれ任意選択的に置換されることができることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、不飽和の直鎖、分岐、又は環式の炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、エテニル、n-プロペニル、イソ-プロペニル、及びシクロペンテニルなどの、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、不飽和の直鎖、分岐、又は環式の(C~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、飽和の直鎖又は分岐アルキルエーテルラジカル、より典型的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、及びノノキシなどの、(C~C22)アルキルエーテルラジカルを意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシアルキル」は、1つ以上のアルコキシ置換基、より典型的には、メトキシメチルやエトキシブチルなどの、(C~C22)アルキルオキシ(C~C)アルキルラジカルで置換されているアルキルラジカルを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、及びn-ヘキサデシルなどの、一価の直鎖又は分岐の飽和(C~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、エチニル及びプロパルギルなどの、ラジカル当たり1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する、不飽和の直鎖又は分岐の(C~C22)炭化水素ラジカルを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「アラルキル」は、1つ以上のアリール基で置換されたアルキル基、より典型的には、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、及びトリフェニルメチルなどの1つ以上の(C~C14)アリール置換基で置換された(C~C18)アルキルを意味する。
【0029】
有機化合物に関して本明細書で使用される場合、用語「芳香族」は、1つ以上のアリール部位を含む有機化合物が、典型的には、酸素、窒素及び硫黄のヘテロ原子から選択される1つ以上のヘテロ原子によってそれぞれ任意選択的に中断され得、1つ以上のアリール部位の1つ以上の炭素原子が、典型的には、アルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキルから選択される1つ以上の有機基で任意選択的に置換され得ることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、非局在化共役π系を有し、nが0又は正の整数である4n+2に等しいいくつかのπ電子を有する環式の共平面5又は6員有機基を意味し、環員のそれぞれがベンゼンなどの炭素原子である化合物、1つ以上の環員が、典型的には、例えば、フラン、ピリジン、イミダゾール、及びチオフェン、並びにナフタレン、アントラセン、及びフルオレンなどの縮合環系などの、酸素、窒素及び硫黄原子から選択される、ヘテロ原子である化合物を含み、この場合に、環炭素の1つ以上は、典型的には、アルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アリール、アルカリール、ハロ基、例えば、フェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、ノニルフェニル、クロロフェニル、又はトリクロロメチルフェニルなどから選択される1つ以上の有機基で置換されることができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルケニル」は、単一の環式環、及び環炭素の間の少なくとも炭素-炭素二重結合を有する環式(C~C22)アルケニルラジカルを指し、これは、例えば、シクロペント-3-エニル、シクロヘキサ-2-エニル、及びシクロオクト-3-エニルなどの1~3個のアルキル基で任意選択的に置換されることができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、例えば、シクロペンチル、シクロオクチル、及びアダマンタニルなどの1つ以上の環式アルキル環を含む飽和(C~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「エポキシド基」は、隣接エポキシ基、即ち1,2-エポキシ基を意味する。
【0034】
本明細書に記載の置換基は二価であってよい。すなわち、2つの水素原子が化学結合によって置換されていてもよい。そのような置換基は、本明細書では「-エン」で終わることによって修飾されていることが多い。例えば、用語「アルキレン」は、追加の水素が化学結合で置き換えられたアルキルラジカルを意味する。同様に、用語「アリーレン」は、追加の水素が化学結合で置き換えられたアリールラジカルを意味する。
【0035】
第1の態様では、本開示は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性コポリアミド粒子の集合体であって、
コポリアミドが、繰り返し単位RPA1及びRPA2又はRPA3及びRPA2を含み、RPA1が、以下の構造
【化4】
によって表され、
RPA2が、以下の構造
【化5】
によって表され、
RPA3が、以下の構造
【化6】
によって表され、
式中、
は、C~C18脂肪族基、典型的にはC~C18アルキレン基であり;
は、C~C16脂肪族基、典型的にはC~C16アルキレン基であり;
は、C~C18アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C16アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択され;
は、C~C14アルキレンである;
熱可塑性コポリアミド粒子の集合体に関し、
コポリアミド粒子の集合体は、
100℃以下のガラス転移温度と;
融解エンタルピーピーク温度及び結晶化エンタルピーピーク温度とを有し、融解エンタルピーピーク温度及び結晶化エンタルピーピーク温度は、それぞれ、そのような乾燥コポリマーのサンプルの最初の加熱中に変調示差走査熱量測定によって決定され、融解エンタルピーピーク温度は150~260℃であり、結晶化エンタルピーピーク温度と融解エンタルピーピーク温度との差は30℃以下である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性コポリアミド粒子の集合体」という語句は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90などの本開示従う粒子分布が存在するのに十分な複数の熱可塑性コポリアミド粒子を指す。
【0037】
いくつかの実施形態では、RとRのうちの一方はアルキル基であり、RとRの両方がアルキル基というわけではない。
【0038】
一実施形態では、(a)RがC~C18脂環式基であり、RがC~C16アルキル基であるか、又は(b)RがC~C18アルキル基であり、RがC~C18脂環式基である。典型的には、RはC~C18脂環式基であり、RはC~C16アルキル基である。
【0039】
繰り返し単位RPA1は、C~C18脂肪族ジアミンとC~C20脂肪族ジカルボン酸との重縮合から形成される。
【0040】
一実施形態では、C~C18脂肪族ジアミンは、次の式で表される:
N-R-NH
(式中、Rは、C~C18アルキレン基である)。
【0041】
いくつかの実施形態では、C~C18脂肪族ジアミンは、次の式で表される:HN-(C(R)(R))n1-NH(式中、R及びRは、各位置において独立して選択されるアルキル基であり、n1は2~18の整数である)。いくつかのそのような実施形態では、R及びRは、各位置においてHである。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、n1は、4~16、4~12、4~10、又は6~10の整数である。典型的には、n1は6である。
【0042】
望ましいC~C18脂肪族ジアミンの例としては、限定するものではないが、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(すなわち1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、及び1,13-ジアミノトリデカンが挙げられる。一実施形態では、C~C18脂肪族ジアミンはヘキサメチレンジアミンである。
【0043】
一実施形態では、C~C20脂肪族ジカルボン酸は、次の式で表される:
【化7】
(式中、Rは、C~C16アルキレン基である)。
【0044】
いくつかの実施形態では、C~C20脂肪族ジカルボン酸は、次の式で表される:(HO)(O=)C-(C(R)(R))n2-C(=O)(OH)(式中、R及びRは、各位置において独立して選択されるアルキル基であり、n2は2~18の整数である)。いくつかのそのような実施形態では、各位置において、R及びRはHである。追加的に又は代わりに、いくつかの実施形態では、n2は、4~16、6~16、6~12、又は8~12の整数である。典型的には、n2は10である。
【0045】
例示的なC~C20脂肪族ジカルボン酸としては、限定するものではないが、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2,2ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2,4,4トリメチル-アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸[HOOC-(CH13-COOH]、ヘキサデカン二酸、及びオクタデカン二酸が挙げられる。一実施形態では、C~C20脂肪族ジカルボン酸はセバシン酸である。
【0046】
繰り返し単位RPA2は、ジアミンとジカルボン酸との重縮合から形成される。
【0047】
ジアミンは、C~C18脂肪族ジアミン、C~C18芳香族ジアミン、及びC~C18脂環式ジアミンからなる群から選択され、ジカルボン酸は、C~C20脂肪族ジカルボン酸、C~C20芳香族ジカルボン酸、及びC~C20脂環式ジカルボン酸からなる群から選択される。但し、典型的には、C~C18脂肪族ジアミン及びC~C20脂肪族ジカルボン酸は、繰り返し単位RPA1に関して上述した通りである。
【0048】
一実施形態では、ジアミンは以下の式で表される:
N-R-NH
(式中、Rは、C~C18アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択される)。
【0049】
いくつかの実施形態では、C~C18芳香族ジアミンは以下の式で表される:HN-Ar-NH(式中、Arは、C~C18アリール基である)。適切なC~C18芳香族ジアミンの例としては、限定するものではないが、m-フェニレンジアミン(「MPD」)、p-フェニレンジアミン(「PPD」)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、p-キシリレンジアミン(「PXDA」)及びm-キシリレンジアミン(「MXDA」)が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、C~C18脂環式ジアミンは、以下の式で表される:HN-T-NH(式中、TはC~C18脂環式基である)。望ましいC~C18脂環式ジアミンの例としては、限定するものではないが、イソホロンジアミン(3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン;「IPD」)、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0051】
一実施形態では、ジカルボン酸は以下の式で表される:
【化8】
(Rは、C~C16アルキレン基、C~C18アリーレン基、及びC~C18脂環式基からなる群から選択される)。
【0052】
いくつかの実施形態では、C~C20芳香族ジカルボン酸は以下の式で表される:(HO)(O=)C-Ar-C(=O)(OH)(式中、ArはC~C18アリール基である)。望ましいC~C20芳香族ジカルボン酸の例としては、限定するものではないが、イソフタル酸(「IA」)、テレフタル酸(「TA」)、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2ビス(4カルボキシフェニル)プロパン、2,2ビス(4カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2ビス(4カルボキシフェニル)ケトン、4,4’ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2ビス(3カルボキシフェニル)ケトン、及びビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、C~C20脂環式ジカルボン酸は以下の式で表される:(HO)(O=)C-T-C(=O)(OH)(式中、TはC~C18脂環式基である)。望ましいC~C20脂環式ジカルボン酸の例としては、限定するものではないが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)が挙げられる。
【0054】
繰り返し単位RPA3は、アミノ酸又はラクタムの重縮合から形成される。典型的には、アミノ酸は、アミノカルボン酸骨格中に少なくとも6個の炭素原子、例えば6~15個の炭素原子、又は7~13個の炭素原子を有する。望ましいアミノ酸の例としては、限定するものではないが、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸が挙げられる。典型的には、ラクタムは、ラクタム環に少なくとも6個の炭素原子、例えばラクタム環に6~15個の炭素原子又は7~13個の炭素原子を有する。望ましいラクタムの例としては、限定するものではないが、カプロラクタム及びラウロラクタムが挙げられる。
【0055】
一実施形態では、コポリアミドコポリマーは:
少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミン、
少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、及び
少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、
の少なくとも1種の重縮合生成物の繰り返し単位;
又は
少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミン、
少なくとも1種のジカルボン酸、及び
少なくとも1種のC~C15アミノ酸若しくはC~C15ラクタム、
の少なくとも1種の重縮合生成物の繰り返し単位;
を含むか、又はそれらからなる。
【0056】
いくつかの実施形態では、コポリアミドは繰り返し単位RPA1及びRPA2を含む。
【0057】
一実施形態では、コポリアミドコポリマーは:
少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミン、
少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、及び
少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、
の少なくとも1種の重縮合生成物の繰り返し単位を含むか、又はそれらからなる。
【0058】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1は、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成される。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA2は、IPDとセバシン酸との重縮合から形成される。
【0059】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1はヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成され、繰り返し単位RPA2はIPDとセバシン酸との重縮合から形成される。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)及びポリ(イソホロンセバカミド)を含むか、又はそれらからなる。そのような実施形態では、繰り返し単位RPA1及びRPA2は、それぞれ以下の式で表される:
【化9】
【0060】
繰り返し単位RPA1及びRPA2の合計濃度は少なくとも51モル%である。本明細書で使用される場合、モル%は、別途明記しない限り、コポリアミド中の繰り返し単位の総モル数に対するものである。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1及びRPA2の合計濃度は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.5モル%である。
【0061】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1の濃度は、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、又は少なくとも70モル%である。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1の濃度は95モル%以下である。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA1の濃度は、55モル%~95モル%、60モル%~95モル%、又は70モル%~95モル%である。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA2の濃度は少なくとも5モル%である。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA2の濃度は、45モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、又は30モル%以下である。いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA2の濃度は、5モル%~45モル%、5モル%~40モル%、5モル%~35モル%、又は5モル%~30モル%である。
【0062】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位RPA2に対するRPA1の相対モル濃度、すなわち[RPA1]/[RPA2]は、少なくとも60/40、少なくとも70/30、少なくとも75/25、又は少なくとも80/20である。いくつかの実施形態では、[RPA1]/[RPA2]は90/10以下である。いくつかの実施形態では、[RPA1]/[RPA2]は、70/30~90/10、75/25~90/10、又は80/20~90/10である。典型的には、繰り返し単位RPA1とRPA2の合計濃度は、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.5モル%である。
【0063】
一実施形態では、繰り返し単位RPA2に対する繰り返し単位RPA1の相対モル濃度は少なくとも70/30である。一実施形態では、[RPA1]/[RPA2]は75/25である。
【0064】
別の実施形態では、コポリアミドは、
70~95モル%の式
【化10】
の繰り返し単位と、
5~30モル%の式
【化11】
の繰り返し単位とを含む。
【0065】
コポリアミドは半結晶性ポリアミドである。本明細書で使用される場合、半結晶性ポリアミドは、20℃/分の加熱速度で1グラム当たり少なくとも5ジュール(「J/g」)の融解熱(「ΔH」)を有する。ΔHは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、コポリアミドは、100℃以下のガラス転移温度(「T」)を有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、少なくとも40℃のTを有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、90℃以下又は80℃以下のTを有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、40℃~100℃、40℃~90℃、40℃~80℃、又は50℃~80℃のTgを有する。Tは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる。DSCは、Perkin Elmer8000などの当業者に知られている装置を使用して、粒子形態のコポリアミドに適用される。典型的には、約10mgの典型的には粒子形態のサンプルがアルミニウムキャップに入れられ、次いで蓋で閉じられる(密閉ではない)。サンプルは窒素の流れの中で(50ml/分)で実行される。40℃で1分間の安定化ステップの後、最初の加熱勾配が10℃/分で270℃まで適用され、続いて270℃で5分間の安定化ステップが行われる。その後、10℃/分で0℃までの冷却勾配が適用される。0℃で5分後、2回目の加熱勾配が10℃/分で270℃まで適用される。Tgは、10℃/分でのこの2回目の加熱勾配中に得られたシグナルで測定される(中点)。
【0067】
いくつかの実施形態では、コポリアミドは、少なくとも150℃、少なくとも180℃、又は少なくとも190℃の融解温度(「T」)を有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、又は215℃以下のTを有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは180℃~260℃、190℃~250℃、190℃~240℃、190℃~230℃、190℃~220℃、190℃~215℃、195℃~260℃、195℃~250℃、195℃~240℃、195℃~230℃、195℃~220℃、又は195℃~215℃のTを有する。Tは、本明細書で記載される変調DSCを使用して決定される。
【0068】
いくつかの実施形態では、コポリアミドは、少なくとも120℃、少なくとも150℃、又は少なくとも180℃の結晶化温度(「T」)を有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、又は215℃以下のTを有する。いくつかの実施形態では、コポリアミドは、150℃~260℃、190℃~250℃、190℃~240℃、190℃~230℃、190℃~220℃、190℃~215℃のTを有する。Tcは変調DSCで測定される。
【0069】
コポリアミド及びその粒子のT及びTは、当業者に知られている装置を使用する変調示差走査熱量測定法(MDSC)によって測定される。例えば、TA Instrumentから入手可能なQ2000装置が適切であろう。各測定では、約10mgのサンプルがアルミニウムキャップに入れられ、次いで蓋で閉じられ(密閉ではない)、次いで閉じられたキャップ内でサンプルを真空(典型的には<5mbar)オーブン内で90℃で16時間乾燥される。その後、乾燥ステップ後に正確な重量が測定される。MDSC測定は、乾燥ステップの直後、又は湿気の吸収を避けるために密封バッグに保管した後に、窒素流(50ml/分)の中で加熱のみモードを使用して実行される。測定は、5分間の等温ステップ後の最初の加熱勾配で行われ、次の条件が適用される:35℃で平衡、40秒ごとに+/-0.53℃の変調、5分間の等温放置、その後5℃/分の加熱勾配を300℃まで適用。対象のシグナルは、可逆熱流と不可逆熱流である。結晶化挙動は発熱ピークとして観察される。融解は吸熱ピークとして観察される。T及びTの値は、それぞれのピークの最大値とされる。
【0070】
本明細書に記載のコポリアミドのTとTの差、すなわちT-Tは30℃以下である。いくつかの実施形態では、コポリアミドの(T-T)は20℃以下、15℃以下、又は10℃以下である。いくつかの実施形態では、(T-T)は5℃以上である。いくつかの実施形態では、(T-T)は5℃~30℃、5℃~20℃、5℃~15℃、又は5℃~10℃である。驚くべきことに、比較的小さなT-Tの値は、粒子を含む複合材料の亀裂、特に微小亀裂のレベルを低下させることが見出された。
【0071】
いくつかの実施形態では、コポリアミドは、1,000g/mol~40,000g/mol、例えば2,000g/mol~35,000g/mol、4,000~30,000g/mol、又は5,000g/mol~20,000g/molの数平均分子量(「M」)を有する。Mは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296に準拠したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0072】
第2の態様では、本開示は、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子の製造方法に関し、この方法は、
(a)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b)少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミンと、(c)少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸とを反応させて、熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、又は
(a’)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b’)少なくとも1種のジカルボン酸と、(c’)少なくとも1種のC~C15アミノ酸又はC~C15ラクタムとを反応させて、熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成すること、及び
熱可塑性ポリアミドコポリマーを粒子の形態へと加工すること、
を含み、
粒子は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する。
【0073】
本開示によるポリアミドコポリマー又はコポリアミドは、当業者に公知の任意の方法に従って、特に本明細書に記載の様々なモノマーを反応させて本発明のコポリアミドを製造することによって調製することができる。例えば、コポリアミドは、カルボン酸とアミンから、エステルとアミンから、又は酸ハロゲン化物とアミンから製造することができる。
【0074】
例えば、適切な方法では、モノマーは、塩混合物を形成するために反応器内で100℃未満の温度で水に溶解される。次いで、塩溶液は、大気圧又は減圧下での蒸留によって濃縮され、続いて更に加熱されることで加圧下での重縮合が行われ、それと同時に媒体中に添加及び/又は形成された水が蒸留によって連続的に除去される。その後、圧力が下げられてポリマーの融解温度を超える温度で重縮合が完了した後、反応器が開けられ溶融状態のポリマーが得られる。その後、溶融ポリマーは押出機を使用して加工されることでペレットを形成することができ、これは更に粒子へと加工することができる。
【0075】
特定の実施形態では、熱可塑性コポリアミドは、(a)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b)少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミンと、(c)少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸とを反応させて熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成することによって製造される。
【0076】
特定の実施形態では、熱可塑性コポリアミドは、(a)少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b)少なくとも1種のC~C10の直鎖又は分岐の脂肪族ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~Cの直鎖又は分岐の脂肪族ジアミンと、(c)少なくとも1種のC10~C14の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、典型的には少なくとも1種のC10~C12の直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸とを反応器内で反応させて熱可塑性ポリアミドコポリマーを形成することによって製造される。
【0077】
一実施形態では、熱可塑性コポリアミドは、(a)少なくともイソホロンジアミンと、(b)少なくともヘキサメチレンジアミンと、(c)少なくともセバシン酸とを反応器内で反応させて熱可塑性コポリアミドを生成することによって製造される。
【0078】
いくつかの実施形態では、熱可塑性コポリアミドは、(a’)少なくとも1種のC~C16脂環式ジアミン、典型的には少なくとも1種のC~C12脂環式ジアミンと、(b’)少なくとも1種のジカルボン酸と、(c’)少なくとも1種のC~C15アミノ酸又はC~C15ラクタムとを反応させることによって製造される。
【0079】
熱可塑性ポリアミドコポリマーは、典型的にはペレットの形態であり、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する粒子へと加工される。当業者に公知の任意の手段を使用することができる。適切な方法としては、限定するものではないが、ミリング、細断、粉砕、溶融乳化などが挙げられる。
【0080】
例えば、ペレットは、通常ドライアイス温度から液体窒素温度までの範囲の低温で粉砕することができる。このタイプの粉砕プロセスは、一般的に極低温粉砕又は極低温ミリングとして知られている。そのような低温に到達させるために、熱可塑性ポリアミドコポリマーのペレットを、液体窒素、液体二酸化炭素、又はその両方にさらすことができる。その後、ペレットは、粉砕又はミリングされることで、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を生成することができる。
【0081】
一実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子は溶融乳化プロセスによって製造される。そのような方法では、熱可塑性ポリアミドコポリマーは、乳化系にその融解温度を超える温度で分散されることで、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を形成する。熱可塑性ポリアミドコポリマーは、様々な方法で乳化系中に溶融状態で分散させることができる。特定の実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマーは、熱可塑性ポリアミドコポリマーと乳化系の両方を、融解温度を超える温度で押出機に又は撹拌機を備えた反応器に添加し、次いで熱可塑性ポリアミドコポリマーと乳化系とを含む分散液を押出機又は反応器内で形成することによって、乳化系の中に分散させることができる。そのような実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子は、分散液の一部として熱可塑性ポリアミドコポリマーから形成することができる。分散液が乳化系と、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子の両方を含むと、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を分散液から分離することができる。この点に関し、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子と乳化系の両方を有する分散液を洗浄することにより、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を分散液から分離することができる。いくつかの実施形態では、分散液は、乳化系が完全に又は部分的に可溶である任意の液体溶媒及び/又は水性媒体で洗浄することができる。洗浄は2回以上行うことができる。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子と乳化系の両方を有する分散液は、2~7回、典型的には3~7回、より典型的には5~7回洗浄することができる。乳化系を十分に除去することを含めて、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を分散液から分離した後、粒子は、典型的には80~90℃の範囲、より典型的には90℃で加熱することによって乾燥される。乾燥後、熱可塑性コポリアミド粒子は、典型的には、0.1~0.4重量%の含水率を有する。熱可塑性コポリアミド粒子は、一定期間保存することができ、その後、水を取り込ませることで、典型的には約2重量%の水分を含む高含水量(HMC)の粒子が得られる。
【0082】
溶融乳化プロセスで使用される乳化系は、少なくとも1種の乳化剤から形成することができる。特定の好ましい実施形態では、乳化系は、限定するものではないが、ポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)/ポリ(プロピレンオキシド)(「PPO」)ブロック及びランダムコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)ポリマー、及びPEO/PETブロック及びランダムコポリマーなどのPEOポリマー、PPOポリマー、PEO/PPOコポリマーから選択される少なくとも1種の乳化剤を有することができる。更に、乳化系は、少なくとも1種の結合した及び/又はグラフト化された乳化剤を有することができる。例えば、乳化系における少なくとも1種の乳化剤は、C~C脂肪族基を有するジアミン基と結合した少なくとも1種のPEO/PPOコポリマーであってよく、典型的には、ジアミン基はC~C脂肪族基を有する。
【0083】
本明細書に記載の粒子は、D90又はD(v,0.9)値、D50若しくはD(v,0.5)値、及び/又はD10若しくはD(v,0.1)値によって示される粒度分布によって特徴付けられる。本明細書において、粒度分布は、別段の明記がない限り体積分布を指す。粒度分布は、当業者に公知の任意の方法又は装置を使用して測定することができる。例えば、Malvernから入手可能なMasterSizer2000又は3000などのレーザー回折技術を使用する装置を、製造業者の指示又は公知の方法に従って使用することができる。当業者には理解されるように、D90又はD(v,0.9)は、サンプルの90%がそれよりも下に存在する粒子のサイズである。D50又はD(v,0.5)は、サンプルの50%がそれよりも小さく、50%がそれよりも大きいミクロン単位でのサイズである。同様に、D10又はD(v,0.1)は、サンプルの10%がそれよりも下に存在する粒子のサイズである。本明細書に記載のD10、D50、及びD90範囲の任意の組み合わせが、本開示により想定される。
【0084】
一実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマーを100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下の粒子分布D90を有する粒子形態へと加工することは、溶融乳化によって実現される。
【0085】
サイズに関し、粒子は、100μm以下、典型的には65μm以下、より典型的には50μm以下、最も典型的には30μm以下の粒度分布D90を有する。
【0086】
別の実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子は、45μm以下、典型的には25μm以下、より典型的には20μm以下の粒子分布D50を有することができる。
【0087】
更に、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子は、少なくとも1μm、典型的には少なくとも2.5μm、より典型的には少なくとも5μmの粒子分布D10を有することができる。
【0088】
特定の実施形態では、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子は、少なくとも5μm~50μm以下、典型的には少なくとも5μm~30μm以下の範囲のD10~D90の粒子分布範囲を有することができる。
【0089】
本発明の粒子の融解及び再結晶化転移は、変調示差走査熱量測定法(「MDSC」)を使用して観察することができる。MDSCは従来のDSCを改良したものであり、例えば結晶化などの時間に依存するプロセスから生じるサンプルの熱流と、例えばサンプルの熱容量に起因するサンプルの熱流量などの時間に依存しないプロセスから生じるサンプルの熱流と、を分離する能力が付加されている(例えばDaley,Robert L.,Thermochimica Acta,Volume 402,Issues 1-2,3 June 2003,Pages 91-98,New modulated DSC measurement techniqueを参照)。
【0090】
本発明の粒子は、そのようなポリアミドコポリマーのサンプルの最初の加熱中にMDSCによって決定したときに、MDSCの可逆熱流シグナルにおいて0℃より上で生じる吸熱融解エンタルピー(「ΔH」)曲線と、MDSCの不可逆シグナルにおいて0℃より上で生じる発熱結晶化エンタルピー(「ΔH」)とを示すポリアミドコポリマーを含む。ΔH曲線のピークにおける結晶化温度(「T」)は、ΔH曲線のピークにおける融解温度(「T」)よりも低く、そのようなポリアミドコポリマーのTとTの差は、30℃以下、より典型的には20℃以下、更に典型的には10℃以下である。
【0091】
本発明の粒子は、概して球形又は細長い形状であり、これは、繊維として成形され得る材料又は不規則な形状を有し得る材料とは対照的である。いくつかの実施形態では、コポリアミドが半結晶性であることに起因して、粒子は、粒子の結晶相の下にある結晶格子に対応するファセットも有し得る。
【0092】
本発明の熱可塑性ポリアミド粒子は、様々な複合材料の特性を改善するために使用することができる。例えば、本発明の熱可塑性ポリアミド粒子は、FRP複合材料を強化するために使用することができ、並びに/又は航空宇宙、自動車、船舶、工業、及びインフラ/建築分野などの様々な用途で有用なそのような複合材料における微小亀裂の発生を低減することができる。
【0093】
したがって、第3の態様においては、本開示は、本明細書に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の集合体又は本明細書に記載の方法に従って製造された熱可塑性コポリアミド粒子と、強化繊維と、マトリックス樹脂とを含む複合材料に関する。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「繊維」は、当業者に知られているその通常の意味を有し、粒子、フレーク、ウィスカー、短繊維、連続繊維、シート、撚糸、及びこれらの組み合わせのいずれかの形態をとることができる複合材料の強化に適合した1つ以上の繊維材料を含み得る。
【0095】
プリプレグは、特に航空宇宙、自動車、船舶、工業、及びインフラ/建築用途などの特定の分野でFRP複合材料物品を製造する際に使用される。一般的には、プリプレグは、熱硬化性ポリマーや熱可塑性ポリマーなどの所定のマトリックス樹脂で含浸された強化繊維を有する。プリプレグ内の強化繊維は一般的に様々な形状をとることができ、様々な形式で配向して、織物、布地、ベール、及びその他の構造を含む様々な構造を形成することができる。プリプレグレイアップを形成するためには、プリプレグが加熱されてから最終複合材料物品に仕上げられたときに複合材料物品が強化繊維とマトリックス樹脂とから形成された内層を有するように、複数のプリプレグを積層することができる。一実施形態では、複合材料はプリプレグの形態である。
【0096】
この点において、強化繊維の層の間の領域である複合材料物品の層間領域は、マトリックス樹脂から形成される。具体的には、プリプレグが加熱されて最終複合材料物品に仕上げられると、プリプレグはマトリックス樹脂によって一緒に積層され、複合材料物品中の強化繊維の層の間に層間領域も形成される。本発明の熱可塑性ポリアミド粒子は、粒子を層間領域に添加することによって、最終複合材料物品を強化するために、及び/又は複合材料物品の微小亀裂を低減するために、使用することができる。熱可塑性コポリアミド粒子は、複合材料の層間領域のマトリックス樹脂中に分散させることができる。複合材料が最終複合材料物品へと製造されると、マトリックス樹脂と熱可塑性コポリアミド粒子が結合して、層間領域内の層間剥離や破壊を防止することができる。
【0097】
本発明では、様々なタイプのプリプレグを使用することができる。本明細書において使用される用語「プリプレグ」は、マトリックス樹脂で含浸された又はこれが注入された強化繊維の層を指す。用語「含浸する」、「注入する」、及びプリプレグに関して本開示で使用される同様の用語は、強化繊維がマトリックス樹脂で部分的若しくは完全にコーティング又は封入されるように、強化繊維をマトリックス樹脂と接触させることを指す。
【0098】
通常、プリプレグは、プリプレグの総重量%を基準として25重量%~50重量%、典型的には30重量%~40重量%、最も典型的には32重量%~38重量%のマトリックス樹脂を含むことができる。更に、通常、プリプレグは、プリプレグの総重量%を基準として50重量%~75重量%、通常は60重量%~70重量%、最も典型的には62重量%~68重量%の強化繊維を含むことができる。
【0099】
本発明に有用なプリプレグ中の強化繊維は、様々な形状及び形態をとることができ、様々な形式で配向することができる。例えば、強化繊維は、チョップドファイバー、連続繊維、フィラメント、トウ、束、及びそれらの組み合わせであってよい。更に、強化繊維は、一方向配向(すなわち一方向に整列)又は多方向配向(すなわち異なる方向に整列)することができ、強化繊維は、限定するものではないが、シート、プライ、織物、布地、不織の、織られた、編まれた、縫われた、巻かれた、及び編組された構造、並びにスワールマット、ベール、フェルトマット、及びチョップドマット構造などの様々な構造を形成することができる。強化繊維を有する織物構造は、複数の織られたトウを含んでいてもよく、各トウは、限定するものではないが数千のフィラメントなどの複数のフィラメントから構成される。特定の実施形態では、強化繊維は、強化繊維密度が100gsm~1000gsm、典型的には200gsm~500gsm、更に典型的には250gsm~450gsmになるような構造を形成することができる。更なる実施形態では、トウは、クロストウステッチ、横糸挿入編みステッチ、又は熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂などの少量の樹脂バインダーによって所定の位置に保持され得る。
【0100】
本発明に有用なプリプレグ中の強化繊維は、様々な材料から、限定するものではないが、ガラス(ガラス繊維を形成するため)、炭素、黒鉛、アラミド、ポリアミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾオキサゾール(PBO)、ホウ素、石英、玄武岩、セラミック、有機合成材料(Kevlar(登録商標)など)、セラミック、金属(銅など)、熱可塑性ポリマー、及びこれらの組み合わせなどの対応する繊維を形成するために製造することができる。特定の好ましい実施形態では、強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、熱可塑性ポリマー繊維、ガラス繊維布地、炭素繊維布地、及びそれらの組み合わせである。更に、ガラス繊維は、限定するものではないが、電気若しくはE-ガラス繊維、A-ガラス繊維、C-ガラス繊維、E-CR-ガラス繊維、D-ガラス繊維、R-ガラス繊維、S-ガラス繊維、又はそれらの組み合わせから選択されるガラス繊維などの任意のガラス繊維であってよい。炭素繊維は、限定するものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリマーから形成される炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、及びそれらの組み合わせなどの任意の炭素繊維であってもよい。
【0101】
高強度複合材料の製造のためなどの特定の実施形態では、強化繊維は、典型的には、3500MPa(ASTM D4018試験法に準拠)を超える引張強さを有することができる。
【0102】
本発明に有用なマトリックス樹脂は、様々なポリマー樹脂から選択することができる。例えば、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はそれらの組み合わせであってよい。更に、マトリックス樹脂は、2種以上の熱可塑性樹脂、2種以上の熱硬化性樹脂、又は2種以上の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との組み合わせを含むことができる。
【0103】
特定の実施形態では、マトリックス樹脂は、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)類(限定するものではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン/ポリエーテルエーテルスルホンコポリマー、及びポリフェニルスルホンを含む)、ポリ(アリールエーテルケトン)類(限定するものではないが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンを含む)、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、フルオロポリマー(ポリフッ化ビニリデンを含む)、及びこれらの組み合わせから選択される熱可塑性樹脂であってよい。特定の好ましい実施形態では、熱可塑性マトリックス樹脂は、ポリアミド、ポリ(アリールエーテルスルホン)類(限定するものではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン/ポリエーテルエーテルスルホンコポリマー、及びポリフェニルスルホンを含む)、ポリ(アリールエーテルケトン)類(限定するものではないが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンを含む)、ポリフェニレンスルフィド、及びこれらの組み合わせから選択される熱可塑性樹脂であってよい。
【0104】
別の実施形態では、マトリックス樹脂は、エポキシ、フェノール系、フェノール、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサゾン、及びそれらの組み合わせ、並びにそれらの前駆体から選択される熱硬化性樹脂であってよい。特定の好ましい実施形態では、マトリックス樹脂は、1分子あたり複数のエポキシド官能基を有する多官能性エポキシ樹脂(又はポリエポキシド)であってよい。ポリエポキシドは、飽和、不飽和、環状、非環状、脂肪族、芳香族、又は複素環であってよい。ポリエポキシドの例としては、限定するものではないが、アルカリの存在下でエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって調製されるポリグリシジルエーテルが挙げられる。ポリグリシジルエーテルの製造に有用なポリフェノールの例としては、限定するものではないが、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、フッ素4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールZ(4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール)、及び1,5-ヒドロキシナフタレンが挙げられる。ポリグリシジルエーテルの製造に適した他のポリフェノールは、ノボラック樹脂型の、フェノールとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとの公知の縮合生成物である。
【0105】
好適なエポキシ樹脂の非限定的な例としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル、例えば、Dow Chemical Co.から入手可能なEPON(商標)828(液体エポキシ樹脂)、D.E.R.331、D.E.R.661(固体エポキシ樹脂);及びアミノフェノールのトリグリシジルエーテルなどの三官能性エポキシ樹脂、例えば、Huntsman Corp.製のARALDITE(登録商標)MY 0510、MY 0500、MY 0600、MY 0610、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。追加の例としては、限定するものではないが、D.E.N.(商標)428、D.E.N.(商標)431、D.E.N.(商標)438、D.E.N.(商標)439、及びD.E.N.(商標)485としてDow Chemical Coから市販されているフェノール系ノボラックエポキシ樹脂;ECN1235、ECN1273、及びECN1299としてCiba-Geigy Corp.から市販されているクレゾール系ノボラックエポキシ樹脂;TACTIX(登録商標)71756、TACTIX(登録商標)556、及びTACTIX(登録商標)756としてHuntsman Corp.から市販されている炭化水素ノボラックエポキシ樹脂、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
熱硬化性樹脂を硬化するために有用な硬化剤は、例えば芳香族若しくは脂肪族アミン、又はグアニジン誘導体などの公知の硬化剤から選択することができる。特定の好ましい実施形態では、硬化剤は芳香族アミンとすることができ、典型的には、1分子あたり少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族アミンであってよく、特に好ましいものは、例えばアミノ基がスルホン基に対してメタ位又はパラ位にあるジアミノジフェニルスルホンである。具体的な非限定的な例は、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン;4,4’メチレンビス-(2,6-ジエチル)-アニリン(LonzaのMDEA);4,4’メチレンビス-(3-クロロ,2,6-ジエチル)-アニリン(LonzaのMCDEA);4,4’メチレンビス-(2,6-ジイソプロピル)-アニリン(LonzaのM-DIPA);3,5-ジエチルトルエン-2,4/2,6-ジアミン(LonzaのD-ETDA80);4,4’メチレンビス-(2-イソプロピル-6-メチル)-アニリン(LonzaのM-MIPA);4-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(例えばMonuron);3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(例えばDiuron(商標))及びジシアノジアミド(例えばPacific Anchor ChemicalのAmicure(登録商標)CG1200)、並びにこれらの組み合わせである。
【0107】
別の実施形態では、硬化剤は、無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えばナド酸無水物、メチルナド酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0108】
本明細書に記載の熱可塑性ポリアミド粒子は、当業者に公知の方法を使用して複合材料に配合することができる。適切な方法では、粒子は、マトリックス樹脂中にブレンド又は分散させることによってマトリックス樹脂に添加される。そのような実施形態では、プリプレグを積層又は積み重ねてプリプレグレイアップを形成する際に、熱可塑性ポリアミド粒子は、最終複合材料物品の強化繊維の層間の層間領域に最終的に入る。
【0109】
一実施形態では、プリプレグは、プリプレグの総重量を基準として、
25重量%~50重量%、より典型的には30重量%~40重量%、更に典型的には32重量%~38重量%のマトリックス樹脂と、
50重量%~75重量%、より典型的には60重量%~70重量%、更に典型的には62重量%~68重量%の強化繊維と、
0重量%~25重量%、より典型的には5重量%~20重量%、更に典型的には10重量%~15重量%のポリアミドコポリマー粒子と、
を含む。
【0110】
第4の態様では、本開示は、本明細書に記載の複合材料から製造される複合材料物品に関する。複合材料物品は、通常、複合材料を硬化させることによって、典型的には複合材料を加熱することによって製造される。
【0111】
いくつかの実施形態では、複合材料物品は、複数のプリプレグを一緒に配置又は積み重ねてスタック又はプリプレグレイアップを形成することによって製造され、これはその後、典型的には当業者に公知の任意の手段を使用して加熱することによって硬化される。プリプレグレイアップ内のプリプレグは、プリプレグ及び/又はプリプレグレイアップ内の強化繊維又は他の強化構造の配向に基づいて、互いに対して選択された配向で配置又は積層され得る。例えば、プリプレグレイアップ内のプリプレグは、互いにほぼ同じ方向(例えば0°)に配置されて又は積み重ねられていてもよく、或いはプリプレグレイアップ内のプリプレグは、互いに様々な方向(例えば±45°、90°など)に配置されて又は積み重ねられていてもよい。プリプレグレイアップ内のプリプレグの配置及び方向は、得られる複合材料物品の望まれる強度及び特性に基づいて配向させることができる。非限定的な例として、プリプレグレイアップ内でプリプレグをほぼ同じ方向に積み重ねるか又は積層することにより、ある方向には(すなわち補強材の屈曲に対して)非常に強い一方で、他の方向には(すなわち補強材と同じ方向且つ補強材の屈曲がない方向)比較的弱い複合材料物品を得ることができる。或いは、プリプレグの方向を±45°で交互にするなど、プリプレグレイアップ内で様々な向きにプリプレグを積み重ねるか又は積層することにより、概して全方向に強い複合材料物品を得ることができる。
【0112】
本開示の複合材料物品は、低速衝撃後圧縮(CAI;室温でBSS7260、タイプII、クラス2に従って決定、単位KSI)、開孔張力(OHT*;室温でD6-83079-62、タイプ1に従って決定、単位KSI)、-75°Fにおける開孔張力(OHT*-75°F;-75°FでD6-83079-62、タイプ1に従って決定、単位KSI)、及び開孔圧縮(OHC、室温でD6-83079-71、タイプ2、CL11に従って決定、単位KSI)を含む機械的特性によって特徴付けることができる。
【0113】
一実施形態では、複合材料は、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも45、又は少なくとも47KSIのCAIを有する。
【0114】
別の実施形態では、複合材料は、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも67、少なくとも69、又は少なくとも70KSIのOHT*を有する。
【0115】
更に別の実施形態では、複合材料は、少なくとも63、少なくとも65、又は少なくとも66KSIのOHT*-75°Fを有する。
【0116】
一実施形態では、複合材料は、少なくとも43、少なくとも44、又は少なくとも46KSIのOHCを有する。
【0117】
以下の非限定的な実施例によって更に説明されるように、本発明の熱可塑性コポリアミド粒子の特性は、複合材料物品に対して公知のコポリアミドと同等以上の靱性を付与すると同時に、そのような複合材料物品における微小亀裂の大幅且つ予想外の低減を与える。
【実施例
【0118】
実施例1.本発明のコポリアミドの合成
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成される繰り返し単位(RPA1)と、イソホロンジアミンとセバシン酸との重縮合から形成される別の繰り返し単位(RPA2)とを有する熱可塑性ポリアミドコポリマーを合成した。以下の基本手順に従って熱可塑性ポリアミドコポリマーを製造し、イソホロンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、及び1,10-デカン二酸の量を変化させて、繰り返し単位(RPA2)に対する繰り返し単位(RPA1)の相対モル濃度が90/10、80/20、及び75/25の熱可塑性ポリアミドコポリマーを得た。
【0119】
1,10-デカン二酸(別名セバシン酸、Arkemaから入手可能)、1,6-ジアミノヘキサンの59.6%溶液(別名ヘキサメチレンジアミン、Domoから入手可能)、イソホロンジアミン(Merckから入手可能)、脱塩水、及び次亜リン酸ナトリウム溶液(4%のリン化合物)、及び消泡剤(Elkemから入手可能なSilcolapse5020)をステンレス鋼製オートクレーブに入れた。オートクレーブ雰囲気を窒素で4回パージし、次いで撹拌した。温度を103℃まで徐々に上昇させて均一な塩溶液を得てから、これをその後蒸留によって65%まで濃縮した。その後、圧力が3.5bar(144℃)に到達するまで撹拌を続けながら温度を上昇させ、濃度75%まで水の蒸留を継続した(圧力解放弁は3.5barに固定した)。その後、蒸気圧が18.5barに到達するまで反応器を急速に加熱した。その時点から温度を徐々に上昇させ、媒体温度が250℃に達するまで18.5barを維持するために圧力制御弁から水を放出した。続いて、反応媒体を272℃に加熱しながら、反応器を750mbarの真空まで減圧した。次いで、反応混合物を0.750mbar、272℃で30分間維持した。重合反応の終了時に、ポリマー溶融物を反応器から流し(窒素加圧下)、その後ペレット化した。
【0120】
実施例2.コポリアミドの溶融乳化
実施例1に従って製造した熱可塑性ポリアミドコポリマーのペレットを、Clextral同方向回転二軸押出機(D=32mm;L/D=40)を用いて以下の基本溶融乳化プロセスを使用して粒子へと成形した。使用した乳化剤は、1)エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Synperonic T908;Crodaから入手可能)、2)末端第一級ヒドロキシル基を有する非イオン性二官能性ブロックPEO/PPOコポリマー界面活性剤(Pluronic(登録商標)F-108;BASFから入手可能)、及びポリエチレングリコール、Mw約20000g/mol(PEG20000、Clariantから入手可能)であった。
【0121】
実施例1で製造したポリマーペレットと様々な乳化剤(重量比50/50)の両方を押出機の最初のゾーンに添加し、ゾーン番号9では脱気のためにオープンバレルを使用し、10個の加熱ゾーンを使用した。1番目のものは25℃で加熱、2番目のものは50℃、3番目は200℃、4番目は250℃で加熱した。最後のゾーンまで250℃を適用した。適用されたスクリュー速度は約600rpmであった。スループットは10kg/hr、フィーダー当たり5kg/hrであった。溶融した乳化剤に囲まれた得られた溶融粒子を冷水が入ったフラスコの中に回収し、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子を含むスラリーを得た。粒子を遠心分離により回収した。洗浄及び遠心分離工程(0回、5回、又は7回)を適用して乳化剤を除去した。その後、粒子を90℃で乾燥した。
【0122】
ポリアミドPA610ポリマーペレット(Stabamid(登録商標)としてDomoから入手可能)を同様の方法で溶融乳化し、参照として使用した。製造した粒子は下の表1にまとめられている。
【0123】
【表1】
【0124】
粒子のTは、Perkin Elmer8000装置を備えた示差走査熱量測定(DSC)を使用して分析した。各測定では、約10mgのサンプルをアルミニウムキャップに入れ、次いで蓋で閉じた(密閉ではない)。サンプルは窒素流(50ml/分)の中で実行した。40℃で1分間の安定化ステップの後、最初の加熱勾配を10℃/分で270℃まで適用し、続いて270℃で5分間の安定化ステップを行った。その後、10℃/分で0℃までの冷却勾配を適用した。0℃で5分後、2回目の加熱勾配を10℃/分で270℃まで適用した。Tは、10℃/分でのこの2回目の加熱勾配中に得られたシグナルで測定した(中点)。
【0125】
本発明の粒子のT及びTは、TA Instrumentから入手可能なQ2000装置を用いた変調示差走査熱量測定(MDSC)によって測定した。各測定では、約10mgのサンプルをアルミニウムキャップに入れ、次いで蓋で閉じ(密閉ではない)、次いで閉じられたキャップ内でサンプルを真空(<5mbar)オーブン内で90℃で16時間乾燥した。その後、乾燥ステップ後に正確な重量を測定した。
【0126】
MDSC測定は、乾燥ステップの直後、又は湿気の吸収を避けるために密封バッグに保管した後に、窒素流(50ml/分)の中で加熱のみモードを使用して実行した。測定は、5分間の等温ステップ後の最初の加熱勾配で行い、次の条件を適用した:35℃で平衡、40秒ごとに+/-0.53℃の変調、5分間の等温放置、その後5℃/分で300℃まで加熱勾配を適用。
【0127】
対象のシグナルは、可逆熱流と不可逆熱流である。結晶化挙動は発熱ピークとして観察した。融解は吸熱ピークとして観察した。T及びTの値は、それぞれのピークの最大値とした。
【0128】
粒子の粒度分布は、Hydro LV分散ユニットを備えたMalvern Mastersizer 3000を使用する湿式法によって決定した。脱イオン水での予備希釈を使用して粒子を分散し、均一な懸濁液を得た。60mlのガラス瓶中で、約2gの粒子と58gの脱イオン水とを混合し、得られた懸濁液をマグネチックスターラーを使用して30分間撹拌した。得られた懸濁液を超音波浴中で30分間超音波処理して、水中での粒子の分散を完了させた。ピペットで約1.5mlの懸濁液をHydro LVユニットに入れ、Mastersizer 3000のウェットセルを通してサンプルを循環させた。
【0129】
製造した粒子の特性は下の表2にまとめられている。
【0130】
【表2】
【0131】
表2に示されているように、乳化剤としてPEG20kを使用することによって得られた粒子は、Synperonic又はPluronicのいずれかを使用して得られた粒子よりも大幅に小さかった。
【0132】
実施例3.複合材料物品の製造
実施例2に従って製造した熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子をエポキシマトリックス樹脂及び硬化剤に添加して樹脂混合物を形成することによって、複合材料試験パネルを製造した。熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子と、エポキシマトリックス樹脂と、硬化剤との混合物を混合容器に入れ、加熱した。完全に混合した後、熱可塑性ポリアミドコポリマー粒子とエポキシマトリックス樹脂との混合物を、ロールコーターを使用して、コーティングされたシリコーン剥離紙上に積層し、フィルムを製造した。強化繊維トウを広げ、2層のフィルムと積層することにより、それぞれ同じ種類の熱可塑性コポリアミド粒子を有するプリプレグを製造した。得られたプリプレグを重ねて((+45/0/-45/90)3sで24プライ)14インチ×14インチのパネルを製造し、オートクレーブ内で望みの温度及び圧力で硬化した。硬化したパネルを熱サイクル及び微小亀裂分析用にクーポン(各パネルからの6枚の5インチ×3インチのクーポン)へと機械加工した。
【0133】
実施例4.複合材料の熱サイクル及び微小亀裂解析
実施例3に従って製造した複合パネルを評価するために、同じパネルからのクーポンを5つの400サイクルブロックで2000回熱サイクルにかけた。各400サイクルのブロックの前に、クーポンに対して120°F(±5°F)及び相対湿度95%(±5%)で12時間(±0.5時間)プレコンディショニングを行い、続いて-65°Fで1時間行った。コンディショニング後、クーポンをすぐに熱サイクルチャンバーに移し、160°F(±5°F)で3分間と-65°F(±5°F)で3分間のサイクルを400回行った。400、800、1200、1600、及び2000サイクルで1つのクーポンを取り出した。各クーポンの1インチ×2インチの部分をクーポンの右上隅から機械で切り出し、その後光学顕微鏡で観察して、この領域で確認された微小亀裂の総数を記録した。1つのクーポンには熱サイクルを行わず、これは参照として使用した。特定の複合材料パネルの微小亀裂解析の結果が下の表3にまとめられている。
【0134】
【表3】
【0135】
表3に示されているように、本発明の熱可塑性コポリアミド粒子を有するクーポン(実施例C、D、E、G、I、及びJ)は、全て市販のPA610ポリアミドから製造されたクーポン(実施例A)よりも少ない微小亀裂を示した。しかしながら、[RPA1]/[RPA2]が80/20(実施例G及びI)又は75/25(実施例C、D、及びE)である熱可塑性コポリアミド粒子から製造されたクーポンは、[RPA1]/[RPA2]が90/10(実施例J)のものよりはるかに優れた性能を示した(すなわちより少ない微小亀裂を示した)。理論に拘束されるものではないが、イソホロンジアミンに例示されるような一定量の脂環式ジアミンを配合すること、及び粒度分布が、それらを含む複合材料物品の微小亀裂の低減に寄与し得ると考えられる。
【0136】
実施例5.複合材料における強化剤としての本発明の粒子の使用
強化剤としての本明細書に記載の熱可塑性コポリアミド粒子の有効性を、実施例3に従って製造した多数の複合パネルで評価した。強化の指標としての低速衝撃後圧縮(CAI;室温でBSS7260、タイプII、クラス2に従って決定、単位KSI)、開孔張力(OHT*;室温でD6-83079-62、タイプ1に従って決定、単位KSI)、及び-75°Fにおける開孔張力(OHT*-75°F;-75°FでD6-83079-62、タイプ1に従って決定、単位KSI)を含む複数の特性を評価した。結果は下の表4にまとめられている。
【0137】
【表4】
【0138】
表4に示されているように、本発明の熱可塑性コポリアミド粒子を用いて製造された複合材料のCAI値は、実施例Aと比較してわずかに低いCAI値を示した実施例Lを除いて、全般的に参照の複合材料(実施例A)よりも高かったが、OHCは参照実施例Aよりも高かった。
【0139】
表3及び表4にまとめた結果に基づくと、本明細書に記載の本発明の熱可塑性コポリアミド粒子は、複合材料物品の強化及び/又はそのような物品の微小亀裂の低減に有効であることが分かる。
【0140】
以上本発明の主題を説明してきたが、これは多数の方法で修正又は変更され得ることが明らかであろう。そのような修正及び変形は、本発明の主題の趣旨及び範囲から逸脱するとみなされるべきではなく、そのような修正及び変形は、全て特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】