(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ヒト臍帯由来組成物及び神経障害の治療のためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20240220BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240220BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240220BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240220BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240220BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20240220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K35/51
A61K9/10
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/32
A61P25/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553116
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022015256
(87)【国際公開番号】W WO2022186946
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517415528
【氏名又は名称】アクソジェン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ハマカー、キリ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラブ、トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン、アレック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA22
4C076AA32
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4C087AA01
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4C087BB59
4C087MA02
4C087MA05
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4C087MA66
4C087NA05
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA20
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、ヒト臍帯(hUC)材料から抽出された改良された生体材料を提供する。前記材料は、機械的に粉砕されることで微粉化粒子を生成し、さらにプロテアーゼで処理され、任意選択でゲル形成剤と混合される。これらの材料は、改善された炎症性/抗炎症性プロファイルを有し得、hUC抽出物の局所投与による末梢神経障害の治療において特に有用性を提供し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECM分解プロテアーゼで処理されたヒト臍帯(hUC)組織の微粉化粒子を含む、生理学的に緩衝化されたhUC抽出物組成物。
【請求項2】
前記hUCは、hUC膜、hUC間質、又はhUC膜とhUC間質の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゲル形成剤、例えば、in situ重合ゲル形成剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ゲル形成剤は、約0.1~8mg/mlで存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ゲニピン又はトランスグルタミナーゼなどの架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ゲル形成剤は、フィブリン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVIII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXXIV、又はコラーゲンXXVII、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸-グリコール酸)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、ゼラチンメタクリロイル、及びメタクリル化ヒアルロン酸のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記ECM分解プロテアーゼで処理されたhUC組織はhUC膜を含み、かつ前記ゲル形成剤はフィブリンではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、約pH7.2~7.4に緩衝化された生理食塩水ベースの懸濁液であるか、又は前記組成物はヒドロゲルなどのゲルとして製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、PEG、コラーゲンVI、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXII、コラーゲンXIII、コラーゲンXIV、コラーゲンXV、コラーゲンXVI、コラーゲンXVII、コラーゲンXVIII、コラーゲンXIX、コラーゲンXX、コラーゲンXXI、コラーゲンXXII、コラーゲンXXIII、コラーゲンXXV、コラーゲンXXVI及び/又はコラーゲンXXVIIIのうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記微粉化粒子の大部分は、約80nmから約180nmの間の直径、例えば約140nmから約160nmの間の直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ヒト臍帯(hUC)抽出物を製造する方法であって、
(a)hUC膜及び/又はhUC間質を提供するステップと、
(b)前記hUC膜及び/又はhUC間質を機械的に衝突させることで微粉化粒子を生成するステップと、
(c)ECM分解プロテアーゼで、(i)機械的衝突の前の前記ステップ(a)の組成物;(ii)機械的衝突中の前記ステップ(b)の組成物;及び(iii)前記ステップ(b)から得られる微粉化粒子のうちの1つ以上を処理するステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記プロテアーゼを不活性化することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ECM分解プロテアーゼを不活性化した後、ゲル形成剤、例えば、in situ重合ゲル形成剤を添加が添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記in situ重合ゲル形成剤を重合させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重合は架橋剤の存在下で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋剤はゲニピン又はトランスグルタミナーゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ゲル形成剤は、フィブリン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVIII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXXIV、又はコラーゲンXXVII、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸-グリコール酸)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート、ゼラチンメタクリロイル、及びメタクリル化ヒアルロン酸のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ゲル形成剤は、約0.1~8mg/mlで存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
0.5~1.0cm
2のhUC膜及び/又はhUC間質がステップ(a)で提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(a)で提供される前記hUC膜及び/又はhUC間質は、約pH6.0~8.0に緩衝化された生理食塩水ベースの懸濁液中に分散される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記機械的衝突は、約3400RPMから約3700RPMの範囲の速度で、1サイクル当たり約60秒の継続時間で1サイクルから約5サイクル実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
ECM分解プロテアーゼ処理の前に前記微粉化粒子を遠心分離することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ECM分解プロテアーゼは、コラゲナーゼ又はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記プロテアーゼは、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIII、コラゲナーゼIV、コラゲナーゼV、コラゲナーゼVI、コラゲナーゼVII、MMP-2、MMP-3、及びMMP-7のうちの1つ以上である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コラゲナーゼは、コラゲナーゼI及びコラゲナーゼIIIのうちの1つ以上である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、PEG、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVI、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXII、コラーゲンXIII、コラーゲンXIV、コラーゲンXV、コラーゲンXVI、コラーゲンXVII、コラーゲンXVIII、コラーゲンXIX、コラーゲンXX、コラーゲンXXI、コラーゲンXXII、コラーゲンXXIII、コラーゲンXXVI及びコラーゲンXXVIIIのうちの1つ以上が、前記ECM分解プロテアーゼの不活性化後に前記組成物に添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記機械的衝突は、約80nmから約180nmの間の直径、例えば約140nmから約160nmの間の直径を有する微粉化粒子の大部分を提供する、請求項11に記載の方法。
【請求項28】
末梢神経障害を治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を対象の末梢神経障害の部位に注射することを含む方法。
【請求項29】
末梢神経障害を治療する方法であって、請求項11に記載の方法によって作製された組成物を対象の末梢神経障害の部位に注射することを含む方法。
【請求項30】
前記対象がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
鎮痛療法、NSAID治療、又は抗けいれん薬などの第2の療法で前記対象を治療することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物を前記部位に二度目に注射することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
ヒト臍帯(hUC)組織の微粉化粒子及び緩衝液を含む組成物であって、対象への注射用に製剤化されている、組成物。
【請求項34】
ゲルとして製剤化されている、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記hUC組織はプロテアーゼで処理されたものである、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
1.0μg/mL未満のデコリンを含む、請求項33に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、神経生物学、医学、及び医療処置の分野に関する。より具体的には、改善された炎症性/抗炎症性プロファイルを有するヒト臍帯(hUC)材料から抽出された改善された生体材料、及び神経障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
痛みを伴う神経障害は主に非外科的に治療され、多くの場合、痛みを治療するために鎮痛剤又はNSAIDの全身投与が行われる。損傷の種類によっては、防御の第一線として、鎮痛薬及びNSAIDが神経因性疼痛を解決し得る。しかし、鎮痛剤やNSAID治療で痛みが解消しない場合、二次治療の選択肢は、抗炎症ステロイド薬(例えば、コルチコステロイド)、抗けいれん薬(例えば、プレガバリン)による治療、あるいは手術など、侵襲性又は危険性が高くなる。
【0003】
残念ながら、鎮痛剤やNSAIDなどの現在の第一選択治療の限界は、多くの患者の痛みを伴う神経障害の解決には効果的ではないということである。多くの患者は、副作用のリスクがより高い手術や投薬(すなわち、ステロイド又は抗けいれん薬)などの二次治療選択肢を受けることになる。これらのより危険な薬で治療されるほとんどの患者が一般的に経験する副作用には、体液貯留、体重増加、頭痛、胃痛、腫れなどがある。したがって、神経障害を治療するための改善された組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
少なくとも1つの態様において、本開示は、ECM分解プロテアーゼで処理されたヒト臍帯(hUC)組織の微粉化粒子を含む、生理学的に緩衝化されたhUC抽出物組成物を提供する。hUC組織は、hUC膜、hUC間質、又はhUC膜とhUC間質の組み合わせを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなるものであり得る。組成物は、1つ以上のゲル形成剤、架橋剤、生体分子、酵素、及び/又は緩衝液をさらに含み得る。例えば、組成物は、in situ重合ゲル形成剤を含み得る。in situ重合ゲル形成剤は、約0.1~8mg/mlで存在し得る。
【0005】
組成物は、適切な架橋剤の中でも特に、ゲニピンやトランスグルタミナーゼなどの架橋剤をさらに含み得る。ゲル形成剤、例えば、重合ゲル形成剤、例えば、熱重合ゲル形成剤は、フィブリン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVIII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXXIV、又はコラーゲンXXVIIのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。いくつかの例では、ECM分解プロテアーゼで処理されたhUC組織はhUC膜を含み、熱重合ゲル形成剤はフィブリンではない。組成物は、約pH7.2~7.4に緩衝化された生理食塩水ベースの懸濁液であり得る。
【0006】
組成物は、1つ以上の生体分子、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、PEG、コラーゲンVI、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXII、コラーゲンXIII、コラーゲンXIV、コラーゲンXV、コラーゲンXVI、コラーゲンXVII、コラーゲンXVIII、コラーゲンXIX、コラーゲンXX、コラーゲンXXI、コラーゲンXXII、コラーゲンXXIII、コラーゲンXXVI及び/又はコラーゲンXXVIIIをさらに含み得る。少なくとも1つの例では、組成物はコンドロイチン硫酸を含まない。組成物は微粉化粒子を含み得る。例えば、微粉化粒子の大部分は、約140nmから約160nmの間の直径を有し得る。
【0007】
そのような組成物の製造方法も提供される。例えば、この方法は、ヒト臍帯(hUC)抽出物を生成することができ、この方法は、(a)hUC膜及び/又は間質を提供するステップと、(b)前記hUC膜及び/又は間質を機械的に衝突させることで微粉化粒子を生成するステップと、(c)ECM分解プロテアーゼで、(i)機械的衝突の前のステップ(a)の組成物;(ii)機械的衝突中のステップ(b)の組成物;及び(iii)ステップ(b)から得られる微粉化粒子のうちの1つ以上を処理するステップとを含む。
【0008】
本明細書の方法は、プロテアーゼを不活性化することをさらに含み得る。ECM分解プロテアーゼを不活性化した後、in situゲル形成剤、例えば、重合ゲル形成剤を添加してもよい。この方法は、ゲル形成剤を重合させることをさらに含み得る。重合は、ゲニピンやトランスグルタミナーゼなどの架橋剤の存在下で行われ得る。
【0009】
ゲル形成剤は、フィブリン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVIII、コラーゲンX、コラーゲンXI、コラーゲンXXIV、又はコラーゲンXXVIIのうちの1つ以上であり得るか、又はそれらを含み得る。in situゲル形成剤、例えば重合ゲル形成剤は、約0.1mg/ml~8mg/mlで存在し得る。hUC膜及び/又は間質を含む約0.5~1.0cm2のhUC組織がステップ(a)で提供され得る。ステップ(a)で提供されるhUC膜及び/又は間質は、約pH6.0~8.0に緩衝化された生理食塩水ベースの懸濁液中に分散され得る。
【0010】
機械的衝突は、1サイクルから約5サイクル実施され得る。さらに、例えば、機械的衝突は、例えば約3400RPMから約3700RPMの範囲の速度で、1サイクル当たり約60秒の継続時間で実施され得る。本明細書の方法は、ECM分解プロテアーゼ処理の前に、例えば約5000×gの速度で微粉化粒子を遠心分離することをさらに含み得る。
【0011】
プロテアーゼ、例えばECM分解プロテアーゼは、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIII、MMP-2、MMP-3、又はMMP-7などのコラゲナーゼ又はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)であり得る。ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、PEG、コラーゲンVI、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXII、コラーゲンXIII、コラーゲンXIV、コラーゲンXV、コラーゲンXVI、コラーゲンXVII、コラーゲンXVIII、コラーゲンXIX、コラーゲンXX、コラーゲンXXI、コラーゲンXXII、コラーゲンXXIII、コラーゲンXXVI及び/又はコラーゲンXXVIIIのうちの1つ以上が、例えばECM分解プロテアーゼの不活性化後に組成物に添加され得る。機械的衝突は、約140nm~約160nmの直径を有する微粉化粒子の大部分、例えば、約140nm~約150nmの範囲の平均直径を有する粒度分布を提供し得る。
【0012】
本開示はまた、本明細書に記載の組成物を対象の末梢神経障害部位又はその近傍に投与する、例えば注射することを含む、末梢神経障害を治療する方法も含む。例えば、末梢神経障害を治療する方法は、本明細書に定義される方法によって作製された組成物を対象の末梢神経障害部位又はその近傍に注射することを含み得る。対象はヒト、霊長類、非ヒト哺乳動物、又は他の脊椎動物又は動物であり得る。この方法は、鎮痛療法、NSAID治療、及び/又は抗けいれん薬などの第2の療法で前記対象を治療することをさらに含み得る。本明細書における方法は、前記組成物を前記対象に少なくとも2回、3回、4回もしくは5回、又は継続的もしくは永久的、慢性的に投与、例えば注射することをさらに含み得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「1つ」は、1つ又は複数を意味する。本明細書で使用される場合、「含む」という単語と組み合わせて使用される場合、「1つ」という単語は、1つ又は複数を意味する。
【0014】
「又は」という用語の使用は、代替案のみを指すか、又は代替案が相互に排他的であることが明示的に示されていない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は代替案及び「及び/又は」のみを指す定義をサポートしている。本明細書で使用される場合、「別の」とは、少なくとも第2の又は2つ以上を意味する。
【0015】
本出願全体を通じて、「約」という用語は、値が、デバイスに固有の誤差の変動、その値を決定するために使用される方法に固有の誤差の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。特に断りのない限り、「約」という用語は、特定の量又は値の±5%を包含すると理解されるべきである。
【0016】
本開示の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、この詳細な説明から、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が当業者には明らかであるため、例示のみを目的として提供されていることが理解されるべきである。特定の化合物が1つの特定の一般式に属しているという理由だけで、それが別の一般式に属し得ないことを意味するわけではないことに注意されたい。
【0017】
以下の図面は、本願の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本開示は、本明細書に提示される例示的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、よりよく理解され得る。
【0018】
特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許又は特許出願の公開公報のコピーは、請求と必要な手数料の支払いに応じて、庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1A~1Bは、実施例1で述べるhUC膜抽出物の調製を示す。(
図1A)700μLの1×PBSとともに約0.7cm
2の創面切除したhUCを装填したチューブ中の前処理hUC。
【
図1B】実施例1で述べるhUC膜抽出物の調製を示す。CoolPrep(商標)サンプルホルダー内で6m/秒の速度設定で60秒間3サイクルホモジナイズし、続いて5000×Gで10分間遠心分離した場合の均質化hUC。
【
図2】実施例2で述べる、26G針でシリンジから排出されたhUC膜抽出物を示す。
【
図3】円形型内で37℃で30分間インキュベートすることを含む、実施例2で述べるコラーゲンゲル及びhUC膜抽出物の重合を示す。
【
図4】実施例2で述べるコラーゲンゲルとhUC膜抽出物の重合を示す。予備重合ゲル抽出混合物を26G針でシリンジから排出し、続いて37℃で60分間インキュベートした。
【
図5】
図5~6は、実施例3で述べる重合プロファイルを示す。hUC抽出物をロードしたゲルは、ゲル架橋剤を添加せずに37℃で10分以内に重合し、架橋剤を添加すると8分以内に重合し、即効性のin situゲル重合を示した。
【
図7】実施例2で述べるゲル分解プロファイルを示す。重合ゲルは、架橋剤を添加せずに生理的条件下で1日間、ゲル架橋剤を添加すると最大36日間、その質量の50%以上を保持した。
【
図8A】
図8A~8Bは、実施例3で述べる粒度分布を示す。(
図8A)hUC抽出物は、大部分の粒子が直径160~180nmの範囲である単分散粒子懸濁液を含んでいた。
【
図8B】抽出物は、調製条件に応じて変動する粒子分散度及び粒度分布プロファイルを含んでいた。
【
図9】実施例4で述べる免疫調節アッセイの結果を示す。hUC抽出物は、免疫バイオマーカー:IL-1b、IL-10、及びMMP-9の分泌反応を変化させることによって、炎症誘発中にin vitroでヒト末梢血単核細胞の免疫応答を調節することが観察された。
【
図10A】
図10A~10Bは、実施例4で述べるヒトU-937細胞株由来マクロファージ様細胞における免疫応答調節を示す。hUC抽出物は、免疫バイオマーカー:IL-1β及びIL-10の分泌反応を変化させることによって、炎症誘発中にin vitroでヒトU937細胞株由来マクロファージ様細胞の免疫応答を調節した。
【
図11】実施例5で述べるコラーゲンポリマー形成のコラゲナーゼ破壊を示す。破壊されたコラーゲンポリマー断片の濃度は、コラゲナーゼでの処理により減少した。
【
図12】hUCゲル組成物を調製するための例示的な概略図を示す。hUC組成物は、抽出物を得るためにhUC組織を機械的に処理すること、抽出物を精製する(例えば、細胞破片を除去する)こと、精製抽出物をプロテアーゼで処理して炎症性成分を低減すること、及び処理/精製されたhUC抽出物を、注射に適したヒドロゲルとして製剤化することによって調製され得る。
【
図13】実施例6で述べるデコリンの発現の減少を示す。MMP-7で処理したhUC組成物は、未処理の対照と比較してデコリン(DCN)の発現の低下を示した。
【
図14A】実施例7で述べるヒトU-937細胞株由来マクロファージ様細胞における免疫応答調節を示す。
【
図14B】実施例7で述べる処理及び未処理のhUC抽出物の総タンパク質含量を報告する。
【
図15】実施例7で述べる免疫調節アッセイを実施するための例示的な概略図を示す。
【
図16A】
図16A~16Bは、実施例7で述べるプロテアーゼ処理したhUC抽出物の免疫調節アッセイの結果を示す。
【
図17】実施例7で述べるプロテアーゼ処理したhUC抽出物におけるデコリンの発現の低下を示す。
【
図18A】
図18A~18Bは、実施例7で述べるプロテアーゼ処理したhUC抽出物の別の免疫調節アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
上記で述べたように、羊膜/出産材料の使用は、神経障害の領域を含む組織再生の治療に有望な手段である。本開示は、改善された生体材料を生成する方法及びその使用方法を提供する。概して、本開示は、ヒト臍帯(hUC)膜及びhUC間質切片の機械的衝突(例えば、ビーズビーティング(bead-beating)均質化)によって生成される、hUC材料由来の生理食塩水ベースの懸濁液を対象とする。この製造技術は、炎症の調節及び健康な組織の回復に関連する可溶性生理活性成分を生理食塩水ベースの懸濁液へ豊富に放出しつつ、同じ懸濁液中のDNA、サイトゾルDAMP(損傷関連分子パターン)、及びECMタンパク質断片などのhUC膜及び間質の炎症性成分の可溶性の内容物を減少させるように設計される。この懸濁液は、ECM-プロテアーゼ酵素(例えば、コラゲナーゼ又はMMP-7などのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP))とのインキュベーションによって炎症性タンパク質断片を減少させるためにさらに処理され得る。この懸濁液には、局所組織への治療薬の持続送達を促進するために、様々な濃度のコラーゲンゲルを補充することもできる。このhUC膜及び間質由来の生理食塩水ベースの懸濁液は、注射などによって組織損傷(例えば、神経障害)部位に送達され得る。本開示のこれら及び他の特徴は、以下で詳細に説明される。
【0021】
I.神経障害
神経障害とは、一般に神経損傷を指す。末梢神経障害とは、中枢神経系以外の神経の損傷、つまり脳と脊髄以外の神経の損傷を指す。例えば、末梢神経障害には、脳及び脊髄を体の他の部分につなげる感覚神経及び運動神経の損傷が含まれる。(末梢神経の損傷は、損傷の程度と影響を受ける末梢神経に応じて、感覚、運動、及び機能を損なう可能性がある。末梢神経障害には可逆的又は永続的な損傷が含まれ、その影響には突然発症する急性のもの、急速に進行するもの、又は微妙に始まり時間の経過とともに進行する症状を伴う慢性的なものがある。末梢神経障害の原因は、遺伝性又は特発性(原因不明)である可能性があり、他の病状や処方薬を伴う場合もある。
【0022】
II.臍帯材料及びその抽出方法
本明細書の組成物は、膜及び/又は間質を含む臍帯組織に由来する。臍帯抽出物は、他の種類の組織に由来する物質よりも神経障害の治療に利点があり得る。理論に束縛されるものではないが、例えば、臍帯組織はヒト白血球抗原(HLA)を欠損しているため、臍帯組織に由来する本明細書の組成物は免疫応答の低下をもたらす可能性があると考えられる。さらに、臍帯組織は、神経修復の促進に有益であり得る生物活性成長因子、幹細胞、浮遊タンパク質、及びグルコサミンを高レベルで含む。
【0023】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のヒト臍帯材料から調製することができる。これらの材料は、任意の適切な供給源から入手できる。例えば、構成成分の少なくとも1つはヒトの組織から得ることができる。構成成分は商業的供給源から入手することもできる。構成成分は、精製されたもの、実質的に精製されたもの、部分的に精製されたもの、又は非精製のものであり得る。
【0024】
ヒト臍帯組織は、例えば、商業的供給源から、又は病院もしくは外科/出産センターから入手することができる。組織は通常、新鮮な状態又は凍結した状態で取得される。過剰な保存緩衝液、血液、又は汚染物質を除去するために、組織を洗浄することができる。過剰な液体は、例えば簡単な遠心分離ステップを使用して、又は他の手段によって除去することができる。組織は、後の均質化を容易にするために、例えば液体窒素又は他の冷却手段を使用して凍結することができる。臍帯組織の供給源は、ヒト臍帯(hUC)であり得る。hUC材料全体は、例えば、外科用切断ツール、手動式切断機、又は自動切断機の使用を通じて、膜及び/又は間質に無関係な材料を除去するために創面切除され得る。
【0025】
hUCはまた、「ビーズビーティング」技術などの機械的衝突を使用して抽出物を生成するために処理され得る。このような処理により、細胞デブリが除去され得る。ビーズビーティングは、水性媒体に懸濁した試料と混合したガラス、セラミック、又はスチールビーズなどを使用して生物学的試料を処理するための実験室規模の機械的方法である。試料とビーズの混合物は、例えば、スターラー又は振とうによって撹拌される。ビーズは組織材料と衝突し、組織を機械的に破壊することで治療用の生物活性分子を放出する。これは、他の機械的処理方法に比べて、生物活性分子と小さい粒子が独自に分布した微粉化抽出物を生成でき、相互汚染の心配なく一度に多くの試料を処理でき、潜在的に有害なエアロゾルをプロセス中に放出しないという利点がある。
【0026】
この方法の一例では、ある量のビーズ、例えば、組織の量と比較して等量のビーズを容器内の組織懸濁液に添加し、試料を実験室用ボルテックスミキサーで激しく混合する。処理時間は比較的遅く、特殊な振とう機よりも3~10倍の時間がかかるが、組織を効果的に処理でき、安価である。より大きい体積かつより速い処理時間によるスケールアップ手順が検討されている。
【0027】
ビーズビーティングが成功するかどうかは、振とう機の設計機能(1分あたりの振とう振動数、シェーキングスロー又は距離、振とうの向き、及びバイアルの向きを勘案して)だけでなく、正しいビーズサイズ、ビーズの組成(ガラス、セラミック、スチール)、及びバイアル内のビーズ負荷の選択にも依存し得る。
【0028】
高エネルギービーズビーティング装置は通常、均質化中のビーズの摩擦衝突により試料を加温する。酵素などの熱に弱いタンパク質の損傷を防ぐために、ビーズビーティング中又はその後の試料の冷却が必要な場合がある。試料の加温は、短い時間間隔でビーズビーティングすること、及び/又は各間隔の間に氷/ドライアイス上で冷却すること、予め冷却したアルミニウムバイアルホルダー内で試料を処理すること、ビーズビーティング中に装置内にガス状冷却剤を循環させることによって制御できる。本明細書のいくつかの例では、処理チャンバ内の試料は、例えばMP Biomedicals製の装置を使用して、ドライアイスで冷却される。
【0029】
より大きい試料体積に適した別のビーズビーター構成では、15、50、又は200mlチャンバー内で回転するフルオロカーボンローターを使用してビーズを撹拌する。この構成では、チャンバーを静的冷却ジャケットで囲むことができる。これと同じローター/チャンバー構成を使用して、何リットルもの細胞懸濁液を処理するのに大型の市販機械を使用することができる。現在、これらの機械は酵母、藻類、細菌などの単細胞生物の処理に限定されている。
【0030】
この最初の処理により、hUC組織の微粉化粒子が生成され得る。例えば、hUC抽出物は、処理条件に応じて、単峰性又は二峰性の粒度分布を有する粒子を含み得る。本明細書のいくつかの例では、組成物(以下でさらに述べるプロテアーゼによる処理の前及び/又は後)は、約50nm~約500nm、例えば約70nm~約250nm、約80nm~約180nm、約120nm~約350nm、約150nm~約300nm、約165nm~約200nm、約140nm~約160nm、約200nm~約275nm、約175nm~約325nm、又は約250nm~約450nmの範囲の平均直径を有し得る。いくつかの例では、所与の閾値を超える粒子は除去されてもよく(例えば、均質化中に放出される大きいプロテオグリカン及び/又は大きい組織断片などを除去する)、その結果、所望の単峰性又は二峰性の粒度分布が得られる。粒径は、例えば、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)又は多角度動的光散乱法(MADLS)によって測定され得る。
【0031】
任意選択で、衝突プロセスの前に組織を凍結することができる。凍結ステップは、任意の適切な冷却プロセスによって行うことができる。例えば、液体窒素を使用して組織を急速冷凍することができる。あるいは、材料をイソプロパノール/ドライアイス槽の中に入れること、又は他の冷却剤で急速冷凍することもできる。市販の急速冷凍プロセスを使用することができる。さらに、材料を急速冷凍するのではなく、冷凍庫に入れて、よりゆっくりと保管温度に平衡化させることができる。組織は任意の温度で保存できる。例えば、-20℃、-80℃、又はその他の温度を保管に使用できる。凍結前ではなく凍結中に組織を破壊することは、組織を調製するための1つの任意選択的な方法である。
【0032】
hUC調製物は、液体、懸濁液、又は乾燥(凍結乾燥を含むがこれに限定されない)形態であり得る。抗生物質や抗真菌剤などの抗菌剤を添加してもよい。材料は、使用前に包装して、例えば室温、又は例えば-20℃又は-80℃で保管することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物、例えばゲル組成物を調製するために使用されるhUC材料は、乾燥製剤として存在する。乾燥製剤はより小さい体積で保存でき、時間の経過による製剤の劣化を防ぐために同じ低温保存要件を必要としない場合がある。乾燥製剤は保存しておいて、使用前に再構成することができる。乾燥製剤は、例えば、本明細書に記載されるように凍結細片化hUCを調製し、次いで組成物中の水の少なくとも一部を除去することによって調製することができる。水は、任意の適切な手段によって調製物から除去することができる。水を除去する例示的な方法は、市販の凍結乾燥機を使用する凍結乾燥の使用による。適切な装置は、例えば、ニューヨーク州ガーディナーのVirtis、ニューヨーク州ストーンリッジのFTS Systems、及びSpeed Vac(ニューヨーク州ファーミングデールのSavant Instruments Inc.)を通じて見つけることができる。特定の実施形態では、乾燥製剤の水分含有量は、製剤の約20重量%未満、約10重量%まで、約5重量%まで、又は約1重量%までとなる。いくつかの実施形態では、実質的にすべての水分が除去される。次いで、凍結乾燥した組成物を保存することができる。保管温度は、約-196℃未満、-80℃未満、-50℃未満、又は-20℃未満から約23℃超まで様々であり得る。必要に応じて、保存前に組成物を特性評価することができる(重量、タンパク質含量など)。
【0034】
凍結乾燥組成物は、使用前に適切な溶液又は緩衝液で再構成することができる。例示的な溶液には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、及び平衡塩類溶液(BSS)が含まれるが、これらに限定されない。溶液のpHは必要に応じて調整できる。hUCの濃度は必要に応じて様々であり得る。本明細書のいくつかの例では、より濃縮されたhUC溶液が有用であるが、他の例では、低濃度のhUCを含む溶液が有用である。追加の化合物を溶液に添加することができる。再構成製剤に添加できる例示的な化合物には、pH調整剤、緩衝液、コラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、抗生物質、界面活性剤、安定剤、タンパク質などが含まれるが、これらに限定されない(以下でさらに説明する)。
【0035】
II.臍帯抽出物組成物
本開示によれば、上記のようなhUC組成物が提供される。これらの組成物に、1つ以上のゲル形成剤、架橋剤、生体分子、酵素、及び/又は緩衝液を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の他の材料をさらに処理又は補充してもよい。本明細書の組成物は、溶液又はゲルの形態などで、対象に投与するために製剤化され得る。
【0036】
A.ゲル形成剤
本明細書の組成物は、1つ以上のゲル形成剤を含み得る。適切なゲル形成剤は、人体の温度、約37℃(98~99°F)で熱重合可能であり得る。例示的なゲル形成剤としては、コラーゲンI、II、III、IV、V、VIII、X、XI、XXIV、及びXXVII;ポリエチレングリコール(PEG);ポリ(乳酸-グリコール酸)(PLGA);ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート(PEGDA);ゼラチンメタクリロイル(GelMA);メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA);及びフィブリンが挙げられるが、これらに限定されない。フィブリンは、第Ia因子とも呼ばれ、血液凝固に関与する繊維状の非球状タンパク質である。
【0037】
ゲル形成剤の量は通常、約0.1g/mL~約8mg/mL、例えば約0.5g/mL~約5mg/mL、約1mg/mL~約4mg/mL、又は約3.5mg/mL~約4.5mg/mLの範囲であり得る。
【0038】
コラーゲン
少なくとも1つの態様では、hUC抽出物を含む組成物は、1つ以上のコラーゲンタイプを含み得る。I、II、III、IV、V、VIII、X、XI、XXIV、又はXXVII型を含むフィブリル形成又はネットワーク形成コラーゲンは、in situ重合ゲル形成剤として使用され得る(後述)。他のコラーゲンも同様に組成物に含まれ得る。
【0039】
別の態様では、hUC抽出物を含む組成物は、いずれもフィブリル形成性又はネットワーク形成性ではない1つ以上のコラーゲンタイプを含み得る。
コラーゲンは、体内の様々な結合組織の細胞外マトリックスにある主要な構造タンパク質である。結合組織の主成分として、これは哺乳類に最も豊富に含まれるタンパク質であり、体タンパク質含有量全体のうち25%~35%を占める。コラーゲンは、コラーゲンヘリックスとして知られる細長いフィブリルの三重らせんを形成するように結合したアミノ酸できている。それは主に腱、靱帯、皮膚などの線維組織に見られる。
【0040】
以下のいずれか1つ以上がhUC抽出物の組成に含まれ得る:
線維性(I、II、III、V、XI、XXIV、XXVII型)
非線維性
FACIT(三重らせんが中断されたフィブリル関連コラーゲン(Fibril Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(IX、XII、XIV、XVI、XIX、XX、XXI、XXII型)
ネットワーク形成コラーゲン(VIII、IV、X型)
マルチプレキシン(中断のある複数の三重らせんドメイン)(XV、XVIII型)
MACIT(三重らせんが中断された膜関連コラーゲン(Membrane Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(XIII、XVII型)
膜貫通型コラーゲン(XXIII)
その他(VI、VII、XXVI、XXVIII型)
最も一般的な5つのタイプは、I型(皮膚、腱、血管系、器官、骨(骨の有機部分の主成分)、II型(軟骨、軟骨の主なコラーゲン成分)、III型(網状、細網線維の主成分、I型と並んで一般的に見られる)、IV型(基底膜の上皮分泌層である基底層を形成)、及びV型(細胞表面、毛髪、胎盤)である。
【0041】
創傷治癒の4つの段階を通して、コラーゲンは創傷治癒において次の機能の一部又はすべてを担うと理解されている:
誘導機能:コラーゲン線維は線維芽細胞を誘導する役割を果たす。線維芽細胞は結合組織マトリックスに沿って移動する。
【0042】
走化性特性:コラーゲン線維上で利用できる大きい表面積は、線維形成細胞を引き付けることができ、これは治癒に役立つ。
核形成:コラーゲンは、特定の中性塩分子の存在下で、原線維構造の形成を引き起こす核形成剤として作用することができる。コラーゲン創傷包帯は、新しいコラーゲンの沈着と毛細血管の成長を方向付けるためのガイドとして機能し得る。
【0043】
止血特性:血小板はコラーゲンと相互作用して止血栓を形成する。
B.架橋剤
本明細書の組成物は、追加的又は代替的に架橋剤を含み得る。架橋剤は総じて、あるポリマー鎖を別のポリマー鎖に連結する結合を提供する。これらの結合は共有結合又はイオン結合の形をとることがあり、ポリマーは合成ポリマー又は天然ポリマー(タンパク質など)のいずれかであり得る。ポリマー化学において、「架橋」は通常、ポリマーの物理的特性の変化を促進するために架橋を使用することを指す。生物学で「架橋」が使用される場合、それは通常、タンパク質間相互作用をチェックするか、又は生物学的材料全体の強化を生み出すために、タンパク質同士を結合する薬剤の使用を指す。
【0044】
本開示に有用な架橋剤の例としては、ゲニピン、トランスグルタミナーゼ、イミドエステル架橋剤のジメチルスベリミダート、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル架橋剤BS3、及びホルムアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、例えば、本明細書の組成物は、1つ以上の光架橋性成分を含んでもよく、例えば、架橋を開始するためにUV光が使用されてもよい。
【0045】
架橋剤のジメチルスベリミダート、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル架橋剤BS3、及びホルムアルデヒドは通常、リジンのアミノ基の求核攻撃とその後の架橋剤を介した共有結合を誘導することによって結合を形成する。長さゼロのカルボジイミド架橋剤EDCは、カルボキシルを、リジン残基又は他の利用可能な第一級アミンに結合するアミン反応性イソ尿素中間体に変換することによって機能する。SMCC又はその水溶性アナログであるSulfo-SMCCは、抗体開発用の抗体-ハプテンコンジュゲートの調製に使用され得る。
【0046】
ゲニピンは、クチナシ果実抽出物に含まれる化合物である。これは、クチナシ(Gardenia jasminoides)の果実に含まれるゲニポシドと呼ばれるイリドイド配糖体に由来するアグリコンである。ゲニピンは、タンパク質、コラーゲン、ゼラチン、及びキトサンの架橋のための天然の架橋剤である。急性毒性は低く、マウスでのLD50i.v.は382mg/kgであり、したがって、グルタルアルデヒドや他の多くの一般的に使用される合成架橋試薬よりもはるかに毒性が低い。さらに、ゲニピンは薬物送達の調節剤として、またアルカロイド合成の中間体として使用できる。In vitro実験では、ゲニピンが酵素脱共役タンパク質2の作用をブロックすることが示されている。
【0047】
架橋剤の別のクラスはトランスグルタミナーゼである。これは、本来、グルタミン残基側鎖のγ-カルボキサミド基(-(C=O)NH2)とリジン残基側鎖のε-アミノ基(-NH3)との間のイソペプチド結合の形成と、それに続くアンモニア(NH3)の放出を主に触媒する酵素である。この架橋(別々の分子間)又は分子内(同じ分子内)反応が起こるように、リジン及びグルタミン残基はペプチド又はタンパク質に結合される必要がある。トランスグルタミナーゼによって形成される結合は、タンパク質分解に対して高い耐性を示す。これらの酵素は、水の存在下でグルタミン残基を脱アミド化してグルタミン酸残基にすることもできる。例えば、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)細菌から単離されたトランスグルタミナーゼは、カルシウム非依存性酵素である。トランスグルタミナーゼの中でも、哺乳類のトランスグルタミナーゼは補因子としてCa2+イオンを必要とする。
【0048】
トランスグルタミナーゼは、広範囲に架橋された、通常は不溶性のタンパク質ポリマーを形成する。これらの生体ポリマーは、生物がバリアや安定した構造を形成するために不可欠である。例としては、血栓(凝固第XIII因子)、及び皮膚や毛髪である。触媒反応は通常は不可逆的であると考えられており、制御機構を通じて注意深く監視する必要がある。
【0049】
架橋剤の量は、約0.1mM~約5mM、例えば約0.5mM~約3mM、約3mM~約4mM、約1.5mM~約2.5mM、又は約1mM~約2mMの範囲であり得る。
C.他の生体分子
すでに述べた作用剤に加えて、hUC組成物は、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの1つ以上の成分をさらに含み得る。
【0050】
ヒアルロン酸はヒアルロナンとも呼ばれ、結合組織、上皮組織、及び神経組織全体に広く分布するアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンである。これは、硫酸化されていないこと、ゴルジ体の代わりに原形質膜で形成されること、及び非常に大きくなり得るという点で、グリコサミノグリカンの中でも独特である。ヒト滑膜HAは、1分子あたり平均約700万Da、又は二糖モノマー約20,000個である。他の情報源では300万から400万Daと言及されている。ヒアルロナンは、細胞外マトリックスの主成分の1つとして、細胞の増殖と移動に大きく寄与しており、一部の悪性腫瘍の進行にも関与している可能性がある。
【0051】
コンドロイチン硫酸は、交互の糖(N-アセチルガラクトサミンとグルクロン酸)の鎖を含む硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)である。これは通常、プロテオグリカンの一部としてタンパク質に結合している。コンドロイチン鎖には100を超える個別の糖が含まれることがあり、それぞれの糖が硫酸化される位置や量は様々である。
【0052】
本明細書のいくつかの例では、組成物は、減少した量の1種以上のプロテオグリカン(例えば、ビグリカン、デコリン、バーシカンなど)及び/又は天然hUC組織に関連する硫酸化GAGを含む。いくつかの例では、組成物は、1種以上のプロテオグリカン及び/又は天然hUC組織に関連する硫酸化GAGを含まない。例えば、本明細書の組成物は、天然のhUC組織と比較して、ビグリカン、デコリン、及び/又はバーシカンの量が減少していてもよい。いくつかの例では、本明細書の組成物は、天然のhUC組織に存在する1つ以上のプロテオグリカン、例えば、ビグリカン、デコリン、及び/又はバーシカンを含まない(例えば、検出以下のレベルを有する)。
【0053】
キトサンは、キチンから得られるランダムに分布したβ-(1→4)-結合D-グルコサミン(脱アセチル化ユニット)とN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化ユニット)から構成される直鎖多糖である。これは、エビや他の甲殻類のキチン質の殻を水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質で処理することにより作られる。
【0054】
ポリエチレングリコール(PEG)は、分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても知られるポリエーテル化合物である。PEGの構造は一般的にH-(O-CH2-CH2)n-OHとして表される。PEGを軸索融合に使用できる可能性は、末梢神経及び脊髄損傷を研究している研究者によって調査されている最中である。
【0055】
D.酵素処理
hUC組織の1つ以上の処理ステップ(例えば、ビーズビーティングによる機械的衝突)の後、得られるhUC抽出物は、タンパク質モノマー及びECM断片などの破壊されたタンパク質断片を含み得る。このような成分は、患者に投与すると副作用を引き起こしたり、悪影響をもたらす可能性がある。例えば、hUC抽出物の特定の成分は、神経損傷部位に注射された場合、炎症反応及び/又は免疫応答を誘発するか、又は炎症反応及び/又は免疫応答に関連する可能性がある。本明細書の組成物は、神経修復の促進に有用な生物活性成分を同時に保持しながら、特定の成分を選択的に除去、減少、又は不活性化するプロテアーゼでの処理によって調製され得る。少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去され得る成分には、例えば、デコリン、ビグリカン、及び/又はバーシカンなどの天然プロテオグリカンが含まれ得る。
【0056】
理論に束縛されるものではないが、プロテアーゼ処理は、TLR4経路を介した炎症に関連するECMに存在するデコリンなどのプロテオグリカンの分解又は発現の低下を引き起こす可能性があると考えられる。例えば、デコリンは炎症細胞によってDAMPとして認識され、炎症性シグナル伝達事象に影響を与えると考えられる。デコリンのようなプロテオグリカンを除去又はその量を減少させることにより、本明細書の組成物を投与した場合の対象による炎症反応のリスクを低減することができる。本開示の実施形態は、免疫応答の潜在的に有害な側面を軽減又は防止しながら、治癒を促進するように免疫系を効果的に誘導することができる。
【0057】
例えば、本明細書におけるhUC組成物の作製は、1つ以上のECM分解プロテアーゼで処理することを含み得る。プロテアーゼは、コラゲナーゼI、II、III、IV、V、VIもしくはVIIなどのコラゲナーゼ、又は、MMP-2、MMP-3もしくはMMP-7などのMMPを含むがこれらに限定されない他の適切なプロテアーゼであり得る。酵素処理は、ゲル形成剤(上述)の導入に先立って行うことができ、及び/又は上述の種類のコラーゲン及び/又は他のゲル形成剤を含む1つ以上の他の成分のさらなる導入に先立って行うことができる。
【0058】
コラゲナーゼは、コラーゲン内のペプチド結合を切断する酵素である。それらは、クロストリジウムなどの細菌の病因における細胞外構造の破壊を助ける。それらはガス壊疽の蔓延を促進する病原性因子と考えられている。通常、それらは筋肉細胞や他の身体器官における結合組織を標的とする。動物の細胞外マトリックスの重要な成分であるコラーゲンは、細胞から分泌された後、コラゲナーゼによるプロコラーゲンの切断によって形成される。これにより、細胞自体の内部に大きい構造が形成されるのが阻止される。コラゲナーゼは、一部の細菌によって生成されるだけでなく、通常の免疫応答の一部として体によっても生成される。この生成は、線維芽細胞や骨芽細胞などの細胞を刺激するサイトカインによって誘導され、間接的な組織損傷を引き起こす可能性がある。
【0059】
プロテアーゼの濃度は、約0.1μg/mL~約25μg/mL、例えば約0.5μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約15μg/mL、約0.5μg/mL~約5μg/mL、約1μg/mL~約2μg/mL、約2.5μg/mL~約5μg/mL、約3μg/mL~約8μg/mL、約5μg/mL~約15μg/mL、約10μg/mL~約18μg/mL、約15μg/mL~約22μg/mLの範囲であり得る。さらに、例えば、hUC抽出物は、約5分~約18時間、例えば、約1時間~約16時間、約4時間~約12時間、約8時間~約16時間、約12時間~約16時間、約2時間~約8時間、約30分~約5時間、又は約5分~約2時間の範囲の時間、プロテアーゼで処理され得る。非限定的な例において、hUC抽出物は、約0.5μg/mL~約5μg/mLのプロテアーゼで、約1時間~約16時間の範囲の時間処理され得る。
【0060】
本明細書のいくつかの例によれば、組成物を調製する方法は、プロテアーゼを少なくとも部分的に不活性化することを含む。例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イロマスタット(例えば、GM-6001又はGalardin(商標))、又はTIMPメタロペプチダーゼ阻害剤1(TIMP-1)などの作用剤を添加して酵素を不動態化することができる。そのような作用剤は、hUC抽出物中の生物活性成分に損傷を与えることなく、又は損傷を最小限に抑えながら、酵素を標的とするように選択され得る。
【0061】
E.緩衝液
本明細書の組成物、例えば修飾抽出物は、目標pHを維持するために緩衝液と有利に組み合わせることができる。通常、緩衝液(例えば、pH緩衝液や水素イオン緩衝液)は、弱酸とその共役塩基又はその逆の混合物の水溶液である。緩衝液のpHは、少量の強酸又は強塩基を加えてもほとんど変化しない。緩衝液は、様々な化学用途でpHをほぼ一定の値に保つために使用される。
【0062】
緩衝剤を含む溶液のpHは、通常、溶液中に他に何が存在するかに関係なく、限られた範囲内で変化する。生体系では、これにより酵素が意図した機能を果たすことができる。溶液のpH値が上昇又は低下しすぎると、変性として知られるプロセスで酵素の有効性が低下し、これは不可逆的な場合がある。研究で使用される生体試料の大部分は、約pH7.4の緩衝液、多くの場合リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で保管される。
【0063】
生理学的pHに関連するいくつかの例示的な緩衝剤には、クエン酸及びKH2PO4が含まれる。pKa値の差が2以下である物質同士を組み合わせ、pHを調整することにより、幅広い緩衝液を得ることができる。クエン酸は、2未満の間隔で3つのpKa値を有するため、緩衝混合物の有用な成分である。他の緩衝剤を添加することにより、緩衝範囲を広げることができる。Na2HPO4とクエン酸から構成される様々なマッキルベイン(Mcilvaine)緩衝液は、pH3~8の緩衝液範囲を有する。本開示に適した生体系に有用な他の緩衝液としては、乳酸リンゲル液(LRS)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ゲイ平衡塩類溶液(GBSS)、TAPSO、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、カコジル酸塩、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が挙げられる。
【0064】
図12は、上記の議論及び以下の実施例に従ってhUCゲル組成物を調製するための例示的な概略図を示す。示されるように、組成物は、hUC組織の抽出物を得るための機械的処理(例えば、ビーズビーティング又は他の適切な技術)、抽出物の精製(例えば、細胞デブリを除去することを含み得る)、精製した抽出物をプロテアーゼで処理して炎症性成分を低減すること、及び処理/精製したhUC抽出物を注射に適したヒドロゲルとして製剤化することによって調製され得る。
【0065】
IV.治療方法
本開示によれば、対象における組織損傷(筋肉、腱、靱帯などを含むがこれらに限定されない)を治療する方法、特に神経障害を治療する方法も提供される。この方法は、鎮痛治療や現在利用可能な羊膜/出生組織由来の流動性製品(例えば、Mimedx社のOrthoFloなど)と比較して、末梢神経障害などの疼痛部位の優れた治療を提供し、局所組織を正常な機能を備えた健康な状態に戻すように設計されている。これは、外科的介入を受ける可能性のある患者、及びそうでない患者について症状を軽減することを目的としている。注射療法として、この方法は侵襲性が最小限になるように設計されている。注射療法としてのこの治療の低侵襲性と多用途性により、体内の痛みを伴う神経障害に対する様々な解剖学的領域の治療へのアクセスが可能になる。
【0066】
したがって、少なくとも1つの態様では、この方法は、損傷部位へのhUC由来材料の注射を伴う。医療専門家は、足、手、及び関節(肩、肘、手首、膝など)の症状と診断に基づいて適切な部位を評価することができる。同様に、医師は、注射と画像誘導送達や患部の外科的切除を組み合わせるなど、作用剤の送達に適切な外科的処置を決定できる。
【0067】
上述したように、本明細書の組成物は、損傷部位又は治療が必要な部位又はその近傍に注射するためのゲル、例えばヒドロゲルとして製剤化することができる。組成物をゲルとして製剤化すると、より長い期間の治療が可能となり、例えば、ゲルは、その粘度、凝集性などの要因により、意図された標的部位により長く留まり得る。したがって、ゲル組成物を使用することによって徐放が達成され得る。ゲルは、分解速度、密度、剛性、及び/又はカーゴ充填量などの所望の特性を提供するように製剤化することができる。
【0068】
この方法は、一定期間にわたる複数の治療、例えば、継続的又は永続的、慢性的な治療を含み得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25回以上の治療を含む任意の数の治療が行われ得る。そのような治療は、数日、数週間、数か月、さらには数年の間隔を置くこともある。
【0069】
この方法はまた、食事の変更及び/又はNSAID、鎮痛剤又は抗けいれん剤の投与などの、神経障害に対する1つ又は複数の認知された治療法と併せて、本明細書に記載のhUC組成物の投与を使用する併用療法を含み得る(上記で詳細に説明されており、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0070】
V.実施例
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を実証するために含まれるが、本質的に限定するものではない。本開示は、前述の説明及び以下の実施例と一致する追加の実施形態を包含することが理解される。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において良好に機能することが本発明者らによって発見された技術を表しており、従って、その実施のための例示的なモードを構成すると考えることができることを当業者は理解するはずである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えても、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0071】
実施例1
hUC抽出物の調製
組成物を、以下のようにhUC抽出物から調製した。hUC膜組織の試料をチューブに充填し、700μLの1×PBSを添加した(
図1A)。次いで、試料を、CoolPrep(商標)サンプルホルダー内で6m/秒の速度設定で60秒間3サイクルホモジナイズし、続いて5000×gの速度で10分間遠心分離した(
図1B)。
【0072】
実施例2
hUCゲルの調製
hUC抽出物とゲル形成剤によるゲルの形成を評価する研究を行った。実施例1に従って調製したhUC抽出物を注射器に充填し、26G針を通して押し出し(
図2)、ゲル形成剤としてのコラーゲンとともに37℃で重合させてゲル(例えば、低侵襲性注射療法としての使用に適した製剤)にした。
図3は、円形型内で37℃で30分間インキュベートした後のコラーゲンゲルとhUC膜抽出物の重合を示す。
図4は、コラーゲンゲルとhUC膜抽出物の重合を示しており、予備重合したゲル抽出混合物を26G針でシリンジから排出し、その後37℃で60分間インキュベートした。
【0073】
試料を、ゲル形成剤として様々な量のコラーゲン(1mg/mL、2mg/mL、及び4mg/mL)を使用し、架橋剤としてゲニピン(2mM)を使用した場合と使用しない場合の両方で30分間のインキュベーション期間をかけて調製することで、重合時間への影響を決定した。410nmにおける吸光度を重合度の指標として使用した。結果を
図5及び6に示す。hUC抽出物をロードしたゲルは、ゲル架橋剤を添加しない場合は37℃で8分以内、架橋剤を添加すると10分以内に重合することが観察され、即効性のin situゲル重合が示された。架橋剤の非存在下でゲル形成剤の量を増やすと、より速い重合が観察された。4mg/mLのコラーゲンを使用し、ゲニピンを使用せずに調製した試料は最も速い重合時間を示し、次に2mg/mLのコラーゲンを使用し、ゲニピンを使用せずに調製した試料が続いた。4mg/mL及び2mg/mLのコラーゲン、2mMゲニピンを使用して調製した試料は、同様の重合時間を示した。最も遅い重合は、1mg/mLのコラーゲンと2mMゲニピンで調製された試料によって示された。
【0074】
ゲル形成剤として4mg/mLのコラーゲンと、架橋剤として様々な量のゲニピン(0、0.5mM、1mM、2mM、及び5mM)を組み合わせたhUC抽出物で調製した試料を使用して、時間の経過(合計64日)に伴う重合ゲルの分解を調べるためにさらなる研究を行った。試料を1mLの消化コラゲナーゼ酵素溶液中で37℃、30分間、6週間にわたってインキュベートした。研究は、重合及び過剰な液体の除去後に実施され、その後毎週重量を測定することで出発質量を決定し、分解に抵抗する能力を評価した。各秤量後に新鮮な酵素溶液を使用した。重合ゲルは、架橋剤を添加しない場合は生理的条件で1日間、ゲル架橋剤を添加すると最大36日間、その質量の50%を超える量を保持することが観察された(
図7)。
【0075】
実施例3
hUC抽出物粒径の特性評価
実施例1に従って調製したhUC抽出物を分析して、粒度分布を決定した。Malvern Zetasizer Ultraアナライザーを使用して、多角度動的光散乱法(MADLS)による平均直径を測定した。
図8Aは、hUC膜組織(臍帯膜(UCM))を4m/秒、1サイクル当たり60秒で1サイクル、2サイクル、及び3サイクルホモジナイズした試料の結果を示し、均質化時間が長くなるにつれて、粒度分布がわずかに広くなることを示している。これらのデータは、試料調製における一貫性、例えば、均質化されたhUC膜組織からの成分の一貫した混合を裏付けている。試料は、直径160~180nmの範囲の粒子の大部分を有する単分散粒子懸濁液を含んでいた(
図8A)。粒径への影響を調べるために、さらなる研究を、速度(4m/秒、5m/秒、又は6m/秒)とサイクル数(1、3、又は5サイクル、1サイクルあたり60秒)の両方を変化させて行った。抽出物は、調製条件に応じて変化する粒子分散度及び粒度分布プロファイルを含んでいた(
図8B)。
【0076】
実施例4
hUC抽出物による免疫調節
ヒトU937細胞株由来のヒト末梢血単核球の免疫応答を調節するhUC抽出物の能力を、以下の免疫バイオマーカー:IL-1β、IL-10、及びMMP-9の分泌反応を変化させることにより、2つの炎症誘発中にin vitroで調査した(
図9及び10A~10B)。最初の研究(
図9)では、4000rpmで1サイクル当たり3分間のhUC膜組織の均質化、合計4~5サイクルでhUC抽出物を調製した。第2の研究(
図10A~10B)では、6m/秒で1サイクル当たり60秒間のhUC膜組織の均質化、合計3サイクルでhUC抽出物を調製した。免疫調節アッセイでは、U937細胞培養物を20ng/mLのホルボール12-ミリスチン酸13-アセタート(PMA)で48時間処理してマクロファージ様細胞を生成し、その後M1分化刺激(50ng/mL LPS+10ng/mL IFN-γ)を与えたか(「Stim」)又は刺激を与えなかった(「Unstim」)。比較のために、M1培養物をそれぞれのhUC抽出物(「UC」)で処理した。結果は、hUC抽出物が、免疫バイオマーカーIL-1β及びIL-10の分泌反応を変化させることによって、炎症誘発中のヒトU937細胞株由来マクロファージ様細胞の免疫応答をin vitroで調節することを示している。
図9は、48時間の時点での結果を示す。
図10A~10Bは、24、48、72、及び96時間の時点での結果を示す。
【0077】
実施例5
hUC抽出物のプロテアーゼ(コラゲナーゼ)処理
対照との比較のためにコラゲナーゼ処理(25μg/mL)を用いて研究を行い、結果を
図11に示す。示されているように、破壊されたコラーゲンポリマー断片の濃度は、未処理の対照と比較して、コラゲナーゼでの処理により減少した。コラゲナーゼ処理した試料と対照試料を、4m/秒(60分を1サイクル)及び6m/秒(60分を3サイクル)の速度設定で均質化し、両方の速度設定において、コラゲナーゼ群では対照群と比較してコラーゲンポリマー断片が減少した。
【0078】
実施例6
hUC抽出物のプロテアーゼ(MMP-7)処理
MMP-7プロテアーゼによる処理を研究するために、修飾/処理されたhUC抽出物を調製した。hUC組織を、6m/秒で1サイクル当たり1分間のホモジナイズにより、合計3サイクル機械的に処理し、その後、MMP-7(0.8μg/mL)で16時間処理した(「処理UC」)。これは、
図12のプロセスに概略的に示されている。MMP-7処理を行わない別の対照(「UC」)を調製した。
図13に示すように、MMP-7で処理した抽出物は、未処理の対照と比較して、デコリン(DCN)の発現の減少を示した。デコリンはELISAキット(ThermoFisher Scientific)を用いて測定した。
【0079】
追加のhUC抽出物を調製し、
図13と同じ条件下でMMP-7で処理した。
図14Aに示されるデコリン発現レベルから、プロテアーゼ処理によるデコリンの約45%の減少が確認される。デコリンの相対量の違いは、例えば異なるドナーから得られた組織又は同じ組織源内で得られた組織間の変動に関連している可能性がある。
図14Bは、処理試料及び対照試料について測定された総タンパク質含有量(μg/mL)を示しており、同様のレベルを示している。BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイキット(ThrmoFisher Scientific)を使用して総タンパク質含有量を測定し、600種類の異なるタンパク質を試験し、そのうち448個のタンパク質バイオマーカーを同定した。これは、MMP-7処理が、潜在的に有益な成分を含む他のタンパク質に重大な損傷を与えることなく、デコリン内容物を除去することに成功したことを示唆している。
【0080】
実施例7
プロテアーゼ処理したhUC抽出物による免疫調節
実施例6に従って調製した
図14A~14Bの試料を、免疫調節アッセイでさらに調査することで、免疫バイオマーカーIL-1β及びIL-10に対するそれらの効果を決定した。U937細胞培養物を20ng/mLのホルボール12-ミリスチン酸13-アセタート(PMA)で48時間処理してマクロファージ様細胞を生成し、次いでM1分化刺激(50ng/mL LPS+10ng/mL IFN-γ)を与えるか(「Stim」)、又は刺激を与えなかった(「Unstim」)。また、M1培養物を未処理hUC抽出物(「UC」)及びMMP-7処理hUC抽出物(「処理UC」)で処理した。このアッセイを
図15に概略的に示す。
図16A及び16Bの結果は、プロテアーゼ処理がIL-1β及びIL-10の分泌反応の低下をもたらしたことを示す。理論に束縛されるものではないが、処理hUC抽出物中のデコリンの量が少ないと、炎症反応が減少すると考えられる。
【0081】
処理hUC抽出物からの残留プロテアーゼのIL-1β及びIL-10に対する影響を調査するために、追加の研究を行った。実施例6に記載されているように、hUC抽出物を調製し、MMP-7で処理した。未処理hUC抽出物対照(「UC」)及びMMP-7処理hUC抽出物(「処理UC」)のデコリンレベルを、実施例6に記載のように測定した。
図17に示される結果から、処理hUC抽出物ではデコリンの減少が確認される。
【0082】
処理及び未処理のhUC抽出物試料を、上記のように免疫調節アッセイに供した。
図18A及び18Bは、それぞれ、hUC抽出物を含まない未刺激培養物(「Unstim」)、hUC抽出物を含まない模擬(simulated)培養物(「Stim」)、未処理hUC抽出物を含む模擬(simulated)培養物(「UC」)、MMP-7処理hUC抽出物を含む模擬(simulated)培養物(「処理UC」)、及びhUC抽出物を含まずMMP-7(0.8μg/mL)を含む刺激培養物(「MMP-7」)についてのIL-1β及びIL-10のレベルを報告している。これらの結果は、
図16A~16Bの結果と一致して、hUC抽出物のプロテアーゼ処理がIL-1β及びIL-10の有意な減少をもたらしたことを示している。MMP-7単独では、「Stim」対照と比較してIL-1βに影響を与えることは観察されず(
図18A)、対照と比較してIL-10のわずかな(統計的に有意ではない)減少を引き起こした(
図18B)。これは、炎症反応の低下が残留プロテアーゼによるものではないことを示唆しており、プロテアーゼ処理によるデコリンの除去が免疫応答を低下させるという結論を裏付けている。
【0083】
本明細書に開示され特許請求されるすべての方法は、本開示及び当業者の知識に照らして、過度の実験を行うことなく作成及び実施することができる。本開示の組成物及び方法を例示的な実施形態に関して説明してきたが、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本方法及び記載された方法のステップ又はステップの順序にバリエーションを適用できることは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的に関連する特定の作用剤を本明細書に記載の作用剤の代わりに使用しても、同じ又は類似の結果が得られる可能性があることは明らかである。当業者には明らかなそのような類似の代替物及び修正はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の趣旨、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【国際調査報告】