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特表2024-508880コンフォメーション拘束型ソマトスタチン受容体3ペプチドリガンド及びそのコンジュゲート並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】コンフォメーション拘束型ソマトスタチン受容体3ペプチドリガンド及びそのコンジュゲート並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240220BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240220BHJP
   A61P 5/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240220BHJP
【FI】
C07K7/06
C07K7/08 ZNA
A61K38/08
A61P5/02
A61P3/10
A61K51/08 200
A61K51/08 100
A61P35/00
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553138
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 IL2022050238
(87)【国際公開番号】W WO2022185315
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,374
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523328566
【氏名又は名称】スターゲット ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】アファルガン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ブルーム,エリアフ
(72)【発明者】
【氏名】サリトラ,ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA12
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA24
4C084BA32
4C084BA33
4C084BA38
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC03
4C084ZC35
4C085HH03
4C085HH13
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB07
4C085KB08
4C085KB09
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB18
4C085KB20
4C085KB56
4C085KB78
4C085KB95
4C085LL15
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA01
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA35
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA33
(57)【要約】
本発明の実施形態は、ソマトスタチン受容体3に対するソマトスタチン受容体選択的ペプチド、該ソマトスタチンアナログの合成方法、及びソマトスタチン受容体3アナログを含む医薬組成物及び放射性医薬組成物に関し、並びにそのような組成物を使用する方法が、治療及び診断のために開示される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長ホルモン放出に関連する疾患の治療又は診断における使用のためのソマトスタチンアナログであって、前記アナログは、一般式:
-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-R
を有し、式中、
は、活性剤であるか、又は存在せず;
は、リンカー又は活性剤であるか、又は存在せず;
は、Arg、Lys、又はOrnのいずれかであるか;あるいは任意に、3個又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、ここでRは、Arg、Lys、又はOrnであり;
は、Phe又はTyrのいずれかであり;かつ
は、構造としてN-チオアルキル-グリシン(N-ThioAlkyl-Glycine)
【化1】
を有するNTAGであり(nは、1~5のメチレン基の数である)、
は、Phe又はTyrのいずれかであり、
任意に、Rとシステイン残基との間にジスルフィド結合が形成される:又はその薬学的に許容される塩である、
前記ソマトスタチンアナログ。
【請求項2】
は、1つ又は複数の活性剤を含む、請求項1に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項3】
前記活性剤は:画像化部分、治療的部分、色素、蛍光部分、毒素、キレート剤、金属原子部分、放射性原子部分、ナノ粒子、エチレングリコールポリマー、光増感剤、リポソーム構成成分、ミセル構成成分、及び脂質若しくはRGDなどの腫瘍標的部分からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項4】
は、キレート剤部分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項5】
は、γ-アミノ酪酸、1個~3個のアミノ酸、アミノオクタン酸、4-アミノメチル安息香酸、及びグルタル酸からなる群から選択されるリンカーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項6】
又はRは、アミノ酸配列Arg-Gly-Aspを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項7】
前記活性剤部分は:DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)、及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)からなる群から選択されるキレート剤部分である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項8】
前記活性剤部分は、ガリウム、銅、及びルテチウムからなる群から選択される金属原子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項9】
前記活性剤部分は:ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、トリチウム、窒素-13、酸素-15及びリン-32、テクネチウム-99m、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、エルビウム-169、ガリウム-67、ガリウム-68、銅-64、インジウム-111、鉄-59、ルテチウム-175、ルテチウム-177、ラジウム-223、ルビジウム-82、サマリウム-153、セレン-75、ストロンチウム-89、タリウム-201、及びイットリウム-90、アクチニウム225からなる群から選択される原子を含む放射性原子含有部分である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項10】
前記活性剤部分は、フェノチアジン、キサンテン、及びポルフィリンからなる群から選択される光増感剤である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項11】
前記活性剤部分は、ニラパリブ、アクチノマイシン、カンプトテシン、ドキソルビシン、及びゲンタマイシンからなる群から選択される毒素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項12】
は、Arg、Lys、又はOrnのいずれかである、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項13】
は、Pheである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項14】
は、Pheである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項15】
nは、2である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項16】
前記成長ホルモン放出に関連する疾患は、先端巨大症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、又はダウン症候群である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項17】
配列番号1~28のいずれか1つの構造を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項18】
前記ソマトスタチンアナログは、1回の投与あたり40~800マイクログラムの量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項19】
一般式:R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-R
を有し、式中、
は、活性剤であるか、又は存在せず;
は、リンカー又は活性剤であるか、又は存在せず;
は、Arg、Lys、又はOrnのいずれかであるか;あるいは任意に、3個又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、ここでRはArg、Lys、又はOrnであり;
は、Phe又はTyrのいずれかであり;かつ
は、以下の構造としてN-チオアルキル-グリシンを有するNTAGであり、
【化2】
式中、任意にRとシステイン残基との間にジスルフィド結合が形成され、かつ
nは、1~5のメチレン基の数であり;
は、Phe又はTyrのいずれかであり;
がArgである場合、R又はRのいずれかは、Tyである;又はその薬学的に許容される塩である、
ソマトスタチンアナログ。
【請求項20】
は、Lysである、請求項19に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項21】
及びRは、Pheである、請求項19又は20に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項22】
は、Argであり、かつR又はRのいずれかは、Tyrである、請求項19~21のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項23】
は、1つ又は複数の活性剤を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項24】
前記活性剤は:画像化部分、治療的部分、色素、蛍光部分、毒素、キレート剤、金属原子部分、放射性原子部分、ナノ粒子、エチレングリコールポリマー、光増感剤、リポソーム構成成分、ミセル構成成分、及び脂質若しくはRGDなどの腫瘍標的部分からなる群から選択される、請求項19~23のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項25】
は、キレート剤部分である、請求項19~24のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項26】
は、γ-アミノ酪酸、1個~3個のアミノ酸、アミノオクタン酸、4-アミノメチル安息香酸、及びグルタル酸からなる群から選択されるリンカーである、請求項19~25のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項27】
又はRは、アミノ酸配列Arg-Gly-Aspを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項28】
前記活性剤部分は:DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)、及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)からなる群から選択されるキレート剤部分である、請求項24に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項29】
前記活性剤部分は、ガリウム、銅、及びルテチウムからなる群から選択される金属原子を含む、請求項19~23又は28のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項30】
前記活性剤部分は:ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、トリチウム、窒素-13、酸素-15及びリン-32、テクネチウム-99m、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、エルビウム-169、ガリウム-67、ガリウム-68、銅-64、インジウム-111、鉄-59、ルテチウム-175、ルテチウム-177、ラジウム-223、ルビジウム-82、サマリウム-153、セレン-75、ストロンチウム-89、タリウム-201、及びイットリウム-90、アクチニウム225からなる群から選択される原子を含む放射性原子含有部分である、請求項29に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項31】
前記活性剤部分は、フェノチアジン、キサンテン、及びポルフィリンからなる群から選択される光増感剤である、請求項19~30のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項32】
前記活性剤部分は、ニラパリブ、アクチノマイシン、カンプトテシン、ドキソルビシン、及びゲンタマイシンからなる群から選択される毒素である、請求項19~31のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項33】
は、Lys、又はOrnである、請求項19~32のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項34】
は、Pheである、請求項19~33のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項35】
nは、2である、請求項19~34のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項36】
配列番号2、9、10、17、21、22、23、又は24の構造を有する、請求項19に記載のソマトスタチンアナログ。
【請求項37】
少なくとも1つのソマトスタチンアナログ、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項19~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
SSTR3に関連する疾患の治療又は診断における使用のための、請求項19~36のいずれか一項に記載のソマトスタチンアナログ又は請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記疾患は:がん、腫瘍、先端巨大症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症又はダウン症候群、クッシング病、炎症、免疫障害、細胞老化、及び男性不妊症からなる群から選択される、請求項38に記載のソマトスタチンアナログ又は医薬組成物。
【請求項40】
前記がんは:白血病、急性白血病、リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、及び骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤血球性白血病、慢性白血病、骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度型及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖症、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病及び骨髄異形成症、固形腫瘍、肉腫、がん腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、リンパ系悪性腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌など)、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、メラノーマ、中枢神経系腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、音響神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経内分泌がん、副腎がん、カルチノイド腫瘍、メルケル細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫、小細胞癌、大細胞カルチノイド腫瘍、血管腫瘍、血管肉腫、小児血管腫、先天性血管腫、カポジ型血管内皮腫(Kaposiform hemangioendothelioma:KHE)、及び化膿性肉芽腫からなる群から選択される、請求項39に記載のソマトスタチンアナログ又は医薬組成物。
【請求項41】
SSTR3の過剰発現に関連するがんに関連する疾患の治療又は診断における使用のためのソマトスタチンアナログであって、前記アナログは、一般式:
a. R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-R
を有し、式中、
は、活性剤であるか、又は存在せず;
は、リンカー又は活性剤であるか、又は存在せず;
は、Arg、Lys、又はOrnのいずれかであるか;あるいは任意に、3個又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、ここでRは、Arg、Lys、又はOrnであり;
は、Phe又はTyrのいずれかであり;かつ
は、構造としてN-チオアルキル-グリシン
【化3】
を有するNTAGであり(nは、1~5のメチレン基の数である)、
は、Phe又はTyrのいずれかであり、ここで任意にRとシステイン残基との間にジスルフィド結合が形成される;又はその薬学的に許容される塩である、
前記ソマトスタチンアナログ。
【請求項42】
前記がんは、肉腫である、請求項41に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【請求項43】
前記肉腫は、線維形成性小円形細胞腫瘍である、請求項42に記載の使用のためのソマトスタチンアナログ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2021年3月4日に出願された米国仮特許出願第63/156,374号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明の実施形態は、新規ソマトスタチン受容体3アナログを含む組成物、及びそのような組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ソマトスタチンは、成長ホルモン阻害ホルモン(growth hormone-inhibiting hormone:GHIH)又は成長ホルモン放出阻害ホルモン(growth hormone release-inhibiting hormone:GHRIH)又はソマトトロピン放出阻害因子(somatotropin release-inhibiting factor:SRIF)としても知られ、内分泌系を調節する14個又は28個のアミノ酸残基の天然に存在する阻害性ペプチドホルモンである。これは膵島のデルタ細胞から分泌され、インスリン及びグルカゴンの放出を阻害し、また視床下部でも生成され、ここでは下垂体前葉からの成長ホルモン(growth hormone:GH)、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)、プロラクチン、及び甲状腺刺激ホルモンの放出を阻害する。ソマトスタチンは最初、116のアミノ酸前駆体であるプレプロソマトスタチンとして分泌され、このプレプロソマトスタチンはエンドプロテアーゼ切断を受けてプロソマスタチンとなる。プロソマスタチンは、ソマトスタチン-14(SST-14)と、ソマトスタチン-14配列をN末端に1つ拡張したものであるソマトスタチン-28(SST-28)との2つの活性型にさらにプロセシングされる(Bloom,S.R.,及びPolak,J.N.1987)。ソマトスタチンの作用は、Gタンパク質共役型ソマトスタチン受容体(G protein-coupled somatostatin receptor:GPCR)のシグナル伝達経路を介して媒介される。ソマトスタチン受容体(SSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4、SSTR5)はGタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、正常組織と疾患組織との両方で幅広い発現パターンを有するか、或は様々な状態で過剰発現する(Theodoropoulou Mら,2013;Moller LNら,2003)。
【0004】
下垂体腺腫、GEP-NET(Gastroenteropancreatic neuroendocrine tumor)(消化管膵神経内分泌腫瘍)、傍神経節腫、カルチノイド、乳がん、悪性リンパ腫、及び小細胞肺がんなどの様々な腫瘍に対するソマトスタチンの抗腫瘍効果及び可能性のある用途が広く研究されている。ソマトスタチンは、先端巨大症及び消化管腫瘍の緩和治療(過剰なホルモン放出の阻害)及び診断のために臨床現場で使用されてきた。現在入手可能なソマトスタチンアナログであるオクトレオチド及びランレオチドは、アゴニストとしてソマトスタチン受容体-2(SSTR2)に主に親和性を有する(Sun L、及びCoy D.H.,2016;Reubi,J.C.,ら、2001;Hofiand,L.J.ら,1994)。パシレオチドは、SSTR1、SSTR2、SSTR3、及びSSTR5に親和性のあるソマトスタチン多受容体リガンドであり、この幅広い結合プロファイルは、特定の腫瘍におけるホルモン放出及び細胞増殖の抑制に関して、より高いアゴニスト効果をもたらす可能性がある(Anat Ben-Shlomo.ら、2009)。これらのアナログは、ホルモンの過剰分泌に関連する内分泌障害、並びに食道静脈瘤による上部消化管出血などの急性及び慢性の疾患の管理に効率的に使用するためのより好ましい動態を達成するために開発されてきた。最初に承認されたソマトスタチンアナログであるオクトレオチドは、いくつかのホルモンの放出を阻害するSSTR2に対してナノモルの親和性と受容体特異性とを示し、カルチノイドなどのまれな胃腸膵内分泌腫瘍の症状を軽減するために、並びに成長ホルモンの過剰分泌に関連する先端巨大症を治療するために使用される。利用可能なナノモルのSSTR2特異的アゴニストであるオクトレオチド及びランレオチドが内分泌学におけるソマトスタチンのSSTR2の役割を解明することを可能にしたことは注目に値する。これらの臨床的に利用可能なSSTR2アゴニストは、SSTR2がGH、ACTH、プロラクチン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、血管作動性腸管ペプチドの強力なソマトスタチン阻害、並びに膵リパーゼ及びアミラーゼの外分泌放出を媒介する特異的な受容体サブタイプであることを実証している(Qian Z.R.ら、2016)。
【0005】
1990年代初期に、SSTR2特異的アゴニストであるオクトレオチドをDTPAにコンジュゲートさせ、インジウム111で放射性標識したものが[111In]In-DTPA-オクトレオチド(111In-Pentetreotide(商標))であり、シンチグラフィSPECTイメージングの診断薬として使用された最初のペプチドベースの放射性医薬品である(Mikolajczak R、及びMaecke H.R.,2016)。次いで、[111In]In-pentetreotideを用いた臨床経験が数年続いた後、放射性金属でより簡単に標識できるDOTAキレート化ペプチドがSPECT及びPETイメージング・モダリティで使用できるようになった(Kwekkeboom,D.ら、2000)。この10年間で、主にNETを対象とした診断用及び治療用のγ、β、及びα放射性核種で標識されたDOTAコンジュゲート型ソマトスタチンアナログの開発が急増している(Ansquer Cら,2009;Paganelli Gら,2001;Eychenne R.ら,2020)。最も一般的に使用されている2つの放射性標識SSTR2特異的アナログ、[90Y]Y-DOTA-TOC及び[177Lu]Lu-DOTA-TATEは、症状の緩和、生存期間の延長、及び患者のQOLの向上という良好な臨床結果を示している(Cives M.ら,2017;Haider M.ら,2020)。これにより、SSTR2陽性(ペプチド受容体放射性核種療法-PRRT)胃腸膵神経内分泌腫瘍-GEP-NETの治療における[177Lu]Lu-DOTA-TATE(Lutathera(商標))の承認につながった(Strosberg J.ら,2021;Maqsood M.H.ら,2019)。SSTRベースのセラノスティクス(theranostics)な放射性核種アプローチは、腫瘍学的応用に導入されている。現在、セラノスティクス(診断的に確立した治療)は、個別化医療及び精密医療の時代において急速に進化している手法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bloom S.R.,Polak J.M.Somatostatin.Br Med J(Clin Res Ed).1987;295(6593):288-290
【非特許文献2】Theodoropoulou M&Stalla G.K.,Somatostatin receptors:from signaling to clinical practice. Frontiers in Neuroendocrinology;2013;34:228-252.
【非特許文献3】Moller LN,Stidsen CE,Hartmann B,Holst JJ.Somatostatin receptors.Biochim Biophys Acta.2003;22;1616(1):1-84
【非特許文献4】Sun L,Coy DH.Somatostatin and its Analogs.Curr Drug Targets.2016;17(5):529-37
【非特許文献5】Reubi JC,Waser B,Schaer JC,Laissue JA.Somatostatin receptor sst1-sst5 expression in normal and neoplastic human tissues using receptor autoradiography with subtype-selective ligands.Eur J Nucl Med.,2001,28:836-46
【非特許文献6】Hofiand LJ,van Koetsveid PM,Waaijers M,Zuyderwijk J,Lamberts SWJ.Relative potencies of the somatostatin analogs octreotide.BIM 23014 and RC- 160 on the inhibition of hormone release by cultured human endocrine tumor cells and normal rat anterior pituitary cells.Endocrinology,1994,134:301-6
【非特許文献7】Qian ZR,Li T,Ter-Minassian M,Yang J,Chan JA,Brais LK,Masugi Y,Thiaglingam A,Brooks N,Nishihara R,Bonnemarie M,Masuda A,Inamura K,Kim SA,Mima K,Sukawa Y,Dou R,Lin X,Christiani DC,Schmidlin F,Fuchs CS,Mahmood U,Ogino S,Kulke MH. Association Between Somatostatin Receptor Expression and Clinical Outcomes in Neuroendocrine Tumors. Pancreas. 2016;45(10):1386-1393
【非特許文献8】Mikolajczak R,Maecke HR. Radiopharmaceuticals for somatostatin receptor imaging. Nucl Med Rev Cent East Eur. 2016;19(2):126-32
【非特許文献9】Kwekkeboom D,Krenning EP,de Jong M. Peptide receptor imaging and therapy. J Nucl Med.,2000,41:1704-13
【非特許文献10】Ansquer C,Kraeber-Bodere F,Chatal JF.,Current status and perspectives in peptide receptor radiation therapy. Curr Pharm Des.,2009,15:2453-62
【非特許文献11】Paganelli G,Zoboli S,Cremonesi M,Bodei L,Ferrari M,Grana C,et al. Receptor-mediated radiotherapy with 90Y-DOTA-D-Phe1-Tyr3-octreotide. Eur J Nucl Med Mol Imaging,2001,28:426-34
【非特許文献12】Eychenne R.,Bouvry C.,Bourgeois M.,Loyer P.,Benoist E.,Lepareur N. Overview of Radiolabeled Somatostatin Analogs for Cancer Imaging and Therapy. Molecules. 2020;25(17):4012
【非特許文献13】Cives M,Strosberg J.Radionuclide Therapy for Neuroendocrine Tumors. Curr Oncol Rep. 2017;19(2):9
【非特許文献14】Haider M,Al-Toubah T,El-Haddad G,Strosberg J. Molecular imaging and radionuclide therapy of neuroendocrine tumors. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2020;27(1):16-21
【非特許文献15】Strosberg J,Leeuwenkamp O,Siddiqui MK. Peptide receptor radiotherapy re-treatment in patients with progressive neuroendocrine tumors:A systematic review and meta-analysis. Cancer Treat Rev. 2021 Feb;93:102141
【非特許文献16】Maqsood MH,Tameez Ud Din A,Khan AH. Neuroendocrine Tumor Therapy with Lutetium-177:A Literature Review. Cureus. 2019 30;11(1):e3986
【非特許文献17】Chin RI,Wu FS,Menda Y,Kim H. Radiopharmaceuticals for Neuroendocrine Tumors. Semin Radiat Oncol. 2021;31(1):60-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肺がん、乳がん、及び前立腺がんを含む非神経内分泌起源のいくつかのヒト悪性腫瘍も、1つ又は複数のSSTRを過剰発現する傾向があることが示されている(Chin R.I.ら,2021;Reubi J.C.ら,2001)。それゆえ、異なるSSTRサブタイプに対してナノモルの親和性及び特異性を有する新規のSSTアナログの開発に焦点が当てられてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本明細書に記載されるのは、一般式:R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-Rを有するソマトスタチンアナログであり;式中、Rは活性剤であるか、又は存在せず;Rはリンカーであるか、活性剤であるか、又は存在せず;RはArg、Lys、又はOrnのいずれかであるか;又は任意に、3又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、ここでRは、Arg、Lys、又はOrnであり;Rは、Phe又はTyrのいずれかであり;かつRは、構造としてN-チオアルキル-グリシン(N-ThioAlkyl-Glycine)を有するNTAGであり、
【化1】
ここで、任意に、Rとシステイン残基との間にジスルフィド結合が形成され、nは1~5のメチレン基の数であり;RはPhe又はTyrのいずれかであり;ここで、RはArgである場合、R又はRのいずれかはTyrである、又はその薬学的に許容される塩である。
【0009】
さらに本明細書には、記載の疾患及び病態の治療及び診断のための、記載のソマトスタチンアナログの診断用途及び治療用途が記載され、特に配列番号2、及びそのアナログの診断用途及び治療用途が記載される。
【0010】
さらに本明細書には、成長ホルモンに関連する疾患の診断及び治療の方法が記載され、前記方法は、配列番号1又は配列番号2、及び活性剤を含むその様々な誘導体を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0011】
上記及びその他の目的、特徴、及び利点は、添付図を参照しながら進む以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、マウスの腎臓における68Ga標識化配列番号1(Arg)及び68Ga標識化配列番号1(Lys)の比較分布プロファイルである。
図2図2は、マウスの膀胱における68Ga標識化配列番号1(Arg)及び68Ga標識化配列番号1(Lys)の比較分布プロファイルである。
図3図3は、マウスの心臓における68Ga標識化配列番号1(Arg)及び68Ga標識化配列番号1(Lys)の比較分布プロファイルである。
図4図4は、配列番号1(Arg)対オクトレオチドのGH分泌の比較内分泌プロファイルである。
図5図5は、配列番号2(Lys)対オクトレオチドのGH分泌の比較内分泌プロファイルである。
図6図6は、配列番号1(Arg)対オクトレオチドのグルカゴン分泌の比較内分泌プロファイルである。
図7図7は、配列番号2(Lys)対オクトレオチドのグルカゴン分泌の比較内分泌プロファイルである。
図8図8は、配列番号1(Arg)及び配列番号2(Lys)対オクトレオチドのインスリン分泌の比較内分泌プロファイルである。
図9図9は、ヒトにおける68Ga標識化配列番号1(Arg)の分布プロファイルを示す。
図10図10は、配列番号1の構造式を示す。
図11図11は、配列番号2の構造式を示す。
図12図12は、配列番号3の構造式を示す。
図13図13は、配列番号15の構造式を示す。
図14図14は、配列番号16の構造式を示す。
図15図15は、配列番号17の構造式を示す。
図16図16は、配列番号18の構造式を示す。
図17図17は、配列番号27の構造式を示す。
図18図18は、配列番号28の構造式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
記載の配列の簡単な説明
本明細書で提供される核酸配列及び/又はアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822に定義されているとおり、ヌクレオチド塩基については標準的な文字の略号を用いて、アミノ酸については3文字のコードを用いて示されている。各核酸配列の片方の鎖のみが示されているが、相補鎖は表示された鎖の参照によって含まれるものと理解される。配列のリストは、3296 1 2 SEQ LISTING_ST25 final-V001.txt(2022年3月2日作成、約13.8KB)というASCIIテキストファイルとして提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
詳細な説明
I.用語
特に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、「the」は、文脈で明確に別段の指示がない限り、複数形の参照語を含む。同様に、「又は(or)」という言葉は、文脈で明確に別段の指示がない限り、「及び」を含むことを意図している。さらに、核酸又はポリペプチドについて与えられたすべての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及びすべての分子量又は分子質量値は概算であり、説明のために提供されていることを理解されたい。本開示の実施又は試験には、本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を用いることができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。「含む(comprise)」という用語は「含む(include)」を意味する。「から本質的になる(Consisting essentially of)」とは、活性要素又は必須要素として列挙された特徴のみを含む組成物、方法、又は工程を示すが、これに加えて非活性要素を含むこともできる。略語「例えば(e.g.)」はラテン語の「exempli gratia」に由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
【0015】
矛盾が生じた場合は、用語の説明を含む本明細書が優先される。さらに、すべての材料、方法、例は例示であり、限定を意図するものではない。
【0016】
異常:正常な特徴からの逸脱。正常な特徴は、対照、集団の標準などに見出すことができる。例えば、異常病態が先端巨大症などの疾患病態である場合、正常な特徴の適切な供給源としては、疾患(例えば、早老症)に罹患していない個体、疾患に罹患していないと考えられる個体の集団標準が挙げられる。
【0017】
投与:選択した経路によって対象に組成物を導入すること。活性化合物又は組成物の投与は、当業者に知られている任意の経路により実施することができる。投与は局所的又は全身的であり得る。局所投与の例としては、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、髄腔内投与、心膜内投与、眼内投与、眼局所投与、又は吸入投与による鼻粘膜若しくは肺への投与が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、局所投与には、例えば血管内投与を特定の臓器の動脈供給に向けるなど、全身投与に通常用いられる投与経路が含まれる。したがって、特定の実施形態において、局所投与は、そのような投与が特定の臓器を供給する血管系に標的化される場合の静脈内投与及び動脈内投与を含む。局所投与にはまた、活性化合物及び薬剤を、血管ステント又はその他のリザーバーなどの埋め込み可能な装置又は構造物に組み込むことも含まれ、これらの装置又は構造物は、持続的な治療効果を得るために、活性剤及び化合物を長い時間間隔にわたって放出する。
【0018】
全身投与には、活性化合物又は組成物を循環系を介して体全体へ広く分布させるように設計されたあらゆる投与経路が含まれる。したがって、全身投与には動脈内投与及び静脈内投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。全身投与にはまた、このような投与が、循環系による体全体の吸収及び分布を目的とする場合、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、又は吸入による投与も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
アゴニスト:標的に結合し、かつ通常その標的に結合する天然の物質の生物学的応答と同様の生物学的応答を刺激する分子又は化合物。その応答とは、細胞シグナルの阻害又は誘導であり得る。定量的なアゴニスト応答は、EC50と呼ばれる最大応答の50%を引き出す有効濃度の値によって定義される。アゴニストは、天然の物質と比較して、より低い又はより高いEC50を示し得る。標的は受容体、タンパク質、イオンチャネル又は栄養素チャネルなどのトランスポーター、又は酵素であり得る。アゴニストは特定のタイプの化合物に限定されず、様々な実施形態において、ペプチド、及びその断片、並びに他の有機化合物又は無機化合物(例えば、ペプチド模倣物及び小分子)を含み得る。アゴニストは、内因性、外因性、完全性、部分性、逆性、不可逆性、又は選択性であってもよい。アゴニストはスーパーアゴニストであってもよい。スーパーアゴニストは、天然の物質と比較して、類似、より高い、又はより低いEC50値を示すことがあるが、スーパーアゴニストによって引き 起こされる応答の強度は、天然の物質よりも有意に高い。
【0020】
アナログ、誘導体、模倣体:アナログとは、親化合物と化学構造が異なる分子のことで、例えばホモログ(アルキル鎖の長さの違いなど、化学構造の増分だけ異なる)、分子断片、1つ又は複数の官能基だけ異なる構造体、イオン化の変化体などがある。構造アナログは、Remington(The Science and Practice of Pharmacology,第19編(1995),chapter 28)に開示されているとおりの定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationships:QSAR)を用いて見出されることが多い。誘導体は、基本構造から誘導される生物学的に活性な分子である。模倣体は、生物学的に活性な分子などの別の分子の活性を模倣する分子である。生物学的に活性な分子には、化合物の生物学的活性を模倣する化学構造を含むことができる。これらの用語がある状況によっては重複する可能性があることは理解されている。
【0021】
アンタゴニスト:他の分子又は化合物の作用を無効にする傾向があるか、又は場合によっては、特定の化学物質がその受容体又は他の相互作用分子に結合する能力をブロックして生物学的応答を妨げる、分子又は化合物。アンタゴニストは、特定のタイプの化合物に限定されず、種々の実施形態において、ペプチド、抗体及びその断片、並びに他の有機化合物又は無機化合物(例えば、ペプチド模倣物及び小分子)を含み得る。
【0022】
自己免疫疾患:自己抗原又は被検者自身の細胞若しくは組織に特異的な抗体又は細胞傷害性T細胞の産生など、異常な免疫応答に起因する疾患。自己免疫疾患には、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、チャーグ・ストラウス症候群、多発性硬化症、バセドウ病、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、橋本病自己免疫性甲状腺炎、セリアック病、白斑、リウマチ熱、悪性貧血/萎縮性胃炎、アジソン病、皮膚筋炎、悪性貧血、及び乾癬が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
結合親和性:ある分子と別の分子が分子上のある部位で結合する強さを指す用語。特定の分子が別の特定の分子と結合するか、又は特異的に会合する場合、これら2つの分子は互いに結合親和性を示すと言われる。結合親和性は、分子対の会合定数と解離定数とに関係するが、本明細書の方法にとって、これらの定数を測定又は決定することは重要ではない。むしろ、記載の方法の分子間の相互作用を記述するために本明細書で使用される親和性は、一般に、(特に指定がない限り)経験的研究で観察された見かけの親和性であり、これは、1つの分子(例えば、抗体又は他の特異的結合パートナー)が2つの他の分子(例えば、ペプチドの2種のバージョン又はバリアント)と結合する場合のその相対的な強さを比較するために使用することができる。リガンドと受容体との結合は、標識リガンドと受容体との直接相互作用によって、あるいは代替的に、標識天然物質が試験リガンドによって置換されることによって決定することができる。本明細書に開示された結合研究は置換アプローチであり、これは天然物質とその受容体との相互作用を阻害するリガンドの濃度を決定する。定量的には、これらの変位測定に使用される値は、天然物質とその受容体との間の相互作用を50%低下させるのに必要な試験リガンドの阻害濃度であり、これはIC50と呼ばれる。結合親和力、会合定数、及び解離定数の概念はよく知られている。
【0024】
結合ドメイン:リガンドと結合する受容体の部分に関連する分子構造。より特に、結合ドメインは、天然若しくは合成のポリペプチド、又はそのようなポリペプチドをコードする核酸を指すことができ、そのアミノ酸配列は、単独で、又は他のドメインと組み合わせて、結合特性を示すタンパク質の特定の領域(結合ドメイン)を表す。結合活性が示されている限り、このようなドメインの特定の配列又は特定の境界のいずれも重要ではない。同様に、この文脈で使用される結合特性には、結合活性が示されている限り、親和性(affinity、avidity)及び特異性の範囲、及びそれらの組み合わせが必然的に含まれる。
【0025】
がん:新形成の生成物は新生物(腫瘍又はがん)であり、過剰な細胞分裂の結果生じる組織の異常増殖である。転移しない腫瘍は「良性」と呼ばれる。周囲の組織に浸潤し、及び/又は転移することが可能な腫瘍は「悪性」と呼ばれる。新形成は増殖性疾患の一例である。「がん細胞」とは、腫瘍から分離された細胞又は細胞株など、新生物性の細胞である。
【0026】
血液腫瘍の例には、急性白血病(急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、及び骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤血球性の白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行型及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、及び骨髄異形成が挙げられる。
【0027】
肉腫及び癌腫などの固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵がん、乳がん、肺がん(小細胞肺がん、及び非小細胞肺がんなど)、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、メラノーマ、及び中枢神経系腫瘍(神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、音響神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫など)が挙げられる。
【0028】
神経内分泌がんの例としては、副腎がん、カルチノイド腫瘍、メルケル細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫、小細胞癌、及び大細胞カルチノイド腫瘍などが挙げられる。
【0029】
血管腫瘍の例としては、血管肉腫、小児血管腫、先天性血管腫、カポジ型血管内皮腫(kaposiform hemangioendothelioma:KHE)、及び化膿性肉芽腫などの血管腫瘍などが挙げられる。
【0030】
キレート剤:キレート化によって金属イオンに結合する細胞内への金属の送達に有用な薬剤。本明細書の教示を実施する際には、任意の適切なキレート剤を使用することができ、例えば、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4、7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)又はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなるキレート剤については、国際公開(WO)第03/006070号に記載されている。請求される発明のいくつかの実施形態において、キレート剤は抗がん化合物である。
【0031】
化学療法剤:異常な細胞増殖又は過形成を特徴とする疾患の治療において治療上有用な薬剤。このような疾患には、がん、自己免疫疾患、並びに乾癬などの過形成を特徴とする疾患が含まれる。当業者であれば、化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、以下を参照:Slapak及びKufe,Principles of Cancer Therapy,Chapter 86,Harrison’s Principles of Internal Medicine,第14編;Perryら,Chemotherapy,Ch.17 Abeloff,Clinical Oncology 第2編,(著作権)2000 Churchill Livingstone,Inc;Baltzer L,Berkery R(編):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy,第2編 St.Louis,Mosby-Year Book,1995;Fischer DS,Knobf MF,Durivage HJ(編):The Cancer Chemotherapy Handbook,第4編 St.Louis,Mosby-Year Book,1993)。化学療法剤の例としては、メルファラン(Alkeran商標)、シクロホスファミド(Cytoxan商標)、シスプラチン(Platinol商標)、及びブスルファン(Busilvex商標、Myleran商標)などのICL誘導剤が挙げられる。化学療法剤は、記載の配列と組み合わせて使用することができる。
【0032】
有効性(efficacy):望ましい治療効果を引き出す薬剤の能力を指す。有効性とはまた、化合物の強さ又は有効性(effectiveness)も指す。本明細書で用いる「有効性の増強」とは、薬剤の治療作用を高めることを意味する。例えば、薬剤が本記載の新規化合物である場合、「有効性を高める」とは、一般的に、ホルモン分泌を阻害する薬剤の能力を高めることを指す。
【0033】
化合物の有効量:治療対象において所望の効果を得るのに十分な化合物の量。化合物の有効量を単回投与で投与することもでき、又は治療期間中に数回に分けて、例えば毎日投与することもできる。しかしながら、化合物の有効量は、適用される化合物、治療される対象、苦痛の重症度及び種類、及び化合物の投与様式に依存するであろう。
【0034】
ポリペプチドの機能的断片及び変異体:親ポリペプチドの1つ又は複数の機能を維持する断片及び変異体が含まれる。ポリペプチドをコードする遺伝子又はcDNAは、1つ又は複数のポリペプチドの機能を実質的に変化することなく、大幅に変異させることができることが認識されている。第一に、遺伝子コードは縮重することがよく知られており、したがって、異なるコドンが同じアミノ酸をコードする。第二に、アミノ酸置換が導入されたとしても、その変異は保存的であり得、タンパク質の本質的な機能に重大な影響を与えないことがあり得る。Stryer,Biochemistry第3編,(c)1988を参照。第三に、ポリペプチド鎖の一部を、その機能のすべてを損なったり、又は除去したりすることなく欠失させることができる。第四に、例えばエピトープタグの付加など、ポリペプチド鎖への挿入又は付加は、その機能を損なったり、又は除去したりすることなく行うことができる(Ausubelら,Short Protocols in Molecular Biology,第4編,John Wiley&Sons,Inc.,1999)。ポリペプチドの1つ又は複数の機能を実質的に損なうことなく行うことができる他の修飾には、例えば、in vivo又はin vitroでの化学的及び生化学的な修飾、又は異常アミノ酸の組み込みが含まれる。このような修飾には、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、放射性核種などによる標識、及び様々な酵素的修飾が含まれ、当業者には容易に理解されるであろう。ポリペプチドを標識するための様々な方法及びそのような目的に有用な標識は当技術分野でよく知られており、32Pなどの放射性同位体、リガンド(標識された特異的結合パートナー(例えば、抗体)に結合するか又は結合される)、発蛍光団、化学発光剤、酵素、及び抗リガンドが含まれる。機能的断片及び変異体の長さは可変であり得る。例えば、いくつかの断片は少なくとも10、25、50、75、100、又は200のアミノ酸残基を持つ。
【0035】
成長因子:細胞の成長(増殖)、生存、及び/又は分化を促進する物質。成長因子には、成長刺激因子として機能する分子(マイトジェン)、成長阻害剤として機能する分子(例えば、負の成長因子)、細胞遊走を刺激する因子、走化性物質として機能する因子、又は腫瘍細胞の細胞遊走又は浸潤を阻害する因子、細胞の分化した機能を調節因子、アポトーシスに関与する因子、又は増殖及び分化に影響を与えることなく細胞の生存を促進する因子が含まれる。成長因子の例としては、bFGF、EGF、CNTF、HGF、NGF、及びアクチビンAが挙げられる。
【0036】
成長ホルモン:ソマトトロピンとしても知られるタンパク同化ホルモン(anabolic hormone)であり、増殖、細胞複製、及び細胞再生を刺激する。これは、下垂体の前葉によって分泌され、組織細胞で発現される表面受容体を介して増殖作用を誘導する。肝臓では、成長ホルモンはインスリン様成長因子1(IGF-1)の放出を刺激し、IGF-1は、組織細胞内で成長ホルモンによって引き出される増殖作用の主要なメディエーターである。
【0037】
タンパク質活性の阻害:タンパク質の作用、機能、又は発現を低減、制限、又はブロックすること。タンパク質の活性を阻害するという表現は、絶対的な用語であることを意図しているわけではない。その代わりに、この表現は、様々な薬剤が正常な(例えば、阻害されていない、あるいは制御されている)タンパク質活性に対して持ち得る幅広い阻害作用を言うことを意図している。タンパク質活性の阻害は、タンパク質の活性の指標物質のレベル又は活性の増加をもたらし得るが必要はない。一例として、目的のタンパク質が下流の指標物質の阻害剤又は抑制剤として作用している場合にこれが起こり得る。したがって、タンパク質の活性の直接的又は間接的のいずれの指標物質のレベル又は活性が、同じ指標物質の対照測定値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、又は少なくとも250%以上変化(例えば、増加又は減少)している場合、タンパク質の活性が阻害される可能性がある。
【0038】
炎症:組織の損傷によって引き起こされる局所的な防御応答で、炎症性物質を隔離する役割を果たす。炎症は、白血球の任意のクラスのいずれの組織空間、ユニット、又は領域への、通常(健康な)環境下で組織のそのような領域内に見られるそのような細胞の数を超える数での出現又は移動によって特徴付けられる。炎症は、病原体、損傷した細胞、又は刺激物などの有害な刺激に対する血管組織の複雑な生物学的応答によって調整されている。これは、有害な刺激を取り除くと同時に、組織の治癒プロセスを開始する生体による保護的な試みである。炎症応答とは、全身的あるいは炎症部位の局所的のいずれかの白血球の蓄積である。炎症応答は、白血球の数、多形核好中球(polymorphonuclear neutrophil:PMN)の数、管腔増強化学発光などのPMN活性化の程度の測定、又は存在するサイトカインの量の測定など当技術分野でよく知られている多くの方法によって測定することができる。炎症は、アテローム性動脈硬化症、歯周炎、関節リウマチ、脂肪肝、子宮内膜症、炎症性腸疾患、糸球体腎炎などの多くの炎症性疾患を引き起こし得るが、これらに限定されるものではない。炎症は急性又は慢性のいずれかに分類することができる。急性炎症は、有害な刺激に対する身体の初期応答であり、血漿及び白血球の血液から傷害を受けた組織への移動の増大により達成される。生化学的事象のカスケードが伝播し、炎症応答を成熟させ、局所の血管系、免疫系、及び損傷組織内の様々な細胞が関与する。炎症の長期化は、慢性炎症として知られ、炎症部位に存在する細胞の種類が徐々に変化し、炎症プロセスによる組織の破壊と治癒とが同時に起こることにより特徴付けられる。
【0039】
標識:検出可能な標識又はレポーター分子に共有結合又は非共有結合で結合した生体分子。典型的な標識には、ガリウム-68(68Ga)、ルテチウム-177(177Lu)、銅-64(64Cu)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-125(125I)、アクチニウム-225(225Ac)、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン、及び酵素などの放射性同位体が含まれるが、これらに限定されない。標識の方法及び様々な目的に適した標識の選択におけるガイダンスは、例えば、Sambrookら(編),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2編,vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989、及びAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology,第4編,John Wiley&Sons,Inc.,1999に論じられている。例えば、ATPはその3つのリン酸基のいずれか1つを32P又は33Pなどの放射性同位元素で、あるいは糖部分を35Sなどの放射性同位元素で標識することができる。
【0040】
リンカー:2つの分子間、例えば2つの核酸分子間、又は2つのペプチド間、あるいはキレート剤などの薬剤又は活性剤とペプチドとの間のスペーサーとして機能する1つ又は複数の直鎖脂肪族鎖又は芳香族分子、又はアミノ酸。スペーサーとしてのリンカーは、ペプチドリガンドの標的受容体への結合に対するキレート剤の立体効果を低減することにより、キレート剤-ペプチドコンジュゲートの結合を改善することができる。リンカーは、腎クリアランス、血漿タンパク質結合、人体内でのコンジュゲートの分布の促進剤又は減少剤による薬物動態学的作用物質として、又は腫瘍取り込みの促進剤として作用することができる。リンカーの非限定的な例は、フェニルアラニンなどの芳香族疎水性分子、又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸のアミノ酸又はアミノメチル安息香酸などのアニオン性アミノ酸、脂肪酸、エバンブルー又はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの近赤外色素、又はアセトアミノフェン、イブプロフェン、ワルファリンなどの薬物、又はガンマアミノ酪酸(GABA)などの他のスペーサー分子;3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES);ジフェニルカーボネート、ジアリールカーボネート、ジイソシアネート、無水ピロメリット酸、カルボニルジイミダゾール、エピクロリドリン、グルタルアルデヒド、カルボン酸二無水物、2,2-ビス(アクリルアミド)酢酸、及びジクロロメタンなど架橋剤が挙げられる。本明細書の教示を実施する際には、任意の適切なリンカーを使用することができ、例えば、刊行物AU729225、US2004/0166499、US5854194、US6303555、WO2017/066668、US6297191、US6020301、又はUS2010/0240773に記載されているようなリンカーを使用することができる。
【0041】
マーカー:タンパク質、又はタンパク質をコードする遺伝子であり、それらのシステムがそのタンパク質を産生する細胞を同定するのに利用できるもの。選択可能なマーカーの特に非限定的な一例としては、蛍光特性又は酵素特性に基づいて細胞内で同定できるタンパク質、又はタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。特に非限定的な例としては、蛍光マーカーであるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、アルカリホスファターゼ、又は西洋ワサビペルオキシダーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。マーカーはまた、ポリペプチド又はその抗原エピトープであることもでき、ポリペプチド又は抗原エピトープを発現する細胞を同定するためにポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いることができる。使用するポリペプチドの特に非限定的な一例は、ヒト成長ホルモン(hGH)である。マーカーのさらに特に非限定的な例としては、G148又はハイグロマイシンなどの薬剤耐性マーカーが挙げられる。さらに、マーカーは、マーカーを発現する細胞を同定するために陰性選択を使用することができるタンパク質又はタンパク質をコードする遺伝子であり得る。陰性選択マーカーの特に非限定的な例としては、HSV-tk遺伝子が挙げられるが、これに限定されるものではない。この遺伝子により、細胞はアシクロビル及びガンシクロビルなどの薬剤に感受性を示すようになる。選択可能マーカーの別の特に非限定的な例としては、選択が、例えば、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting:FACS)によってマーカーの過剰発現を選択するように細胞表面マーカーを用いることによって行うことができるタンパク質、又はタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0042】
薬学的に許容される担体:本開示で有用な薬学的に許容される担体は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,第15編(1975)には、本明細書で開示する化合物の薬学的送達に適した組成物及び製剤が記載されている。
【0043】
一般に、担体の性質は、使用される特定の投与方法によって異なるであろう。例えば、非経口製剤は通常、水、生理食塩水、平衡塩溶液、ブドウ糖水溶液、グリセロールなどの薬学的及び生理学的に許容される流体をビヒクルとして含む注射可能な流体を含む。固形組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、又はカプセル剤)の場合、従来の無毒性固形担体としては、例えば、医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、保存剤、及びpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートなどの少量の非毒性補助物質を含有することができる。
【0044】
医薬品:対象又は細胞に適切に投与される場合に、所望の治療効果又は予防効果を誘導することができる化合物又は組成物。インキュベートには、薬剤が細胞と相互作用するのに十分な時間、標的を薬剤にさらすことが含まれる。接触には、固形又は液状の薬剤を細胞とインキュベートすることが含まれる。
【0045】
ポリペプチド:モノマーがアミド結合を介して共に結合したアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体又はD-光学異性体のいずれかを使用することができるが、L-異性体が好ましい。本明細書で使用するポリペプチド又はタンパク質という用語は、あらゆるアミノ酸配列を包含し、糖タンパク質などの修飾配列を含む。ポリペプチドという用語は、天然に存在するタンパク質、及び組換え的又は合成的に生産されたタンパク質に及ぶことを特に意図している。
【0046】
ポリペプチド断片という用語は、少なくとも1つの有用なエピトープを示しているポリペプチドの一部を指す。「ポリペプチドの機能的断片」という語句は、断片が誘導されるポリペプチドの活性、又は活性の測定可能な部分を有するポリペプチドのすべての断片を指す。例えば、抗体分子に結合できるエピトープのような小さなポリペプチド断片から、細胞内の表現型変化の特徴的な誘導又はプログラミングに関与できる大きなポリペプチドまで、断片の大きさは異なることが可能である。エピトープとは、抗原との接触に応答して生成される免疫グロブリンと結合できるポリペプチドの領域である。
【0047】
疾患の予防又は治療:疾患の予防とは、例えば、冠動脈疾患を有する人の心筋梗塞の発症を抑制すること、又は新生物を有する対象の腫瘍の進行又は転移を抑制することなど、疾患の完全発症を抑制することを指す。治療とは、疾患又は病的状態が発症し始めた後に、その徴候又は症状を改善する治療的介入を指す。
【0048】
放射線療法(Radiation Therapy、Radiotherapy):放射性物質への対象又はその組織の曝露による疾患(例えば、がん又は別の増殖亢進性の疾患又は病態)の治療。放射線療法とは、悪性細胞を制御するために、がん治療の一環として電離放射線を医学的に使用することである。放射線療法は、がんの根治療法又はアジュバント療法に用いられてもよい。これは治癒が不可能で、かつ局所的な疾患のコントロール又は症状軽減を目的とした待機的治療(palliative treatment)として用いられる。放射線療法は、記載の配列と組み合わせて使用してもよい。
【0049】
老化(senescence):増殖可能な細胞が分裂を停止する際に起こる、本質的に不可逆的な増殖停止を指し、単に「老化」と呼ばれることが多い。細胞老化は、培養中の正常なヒト細胞の増殖(成長)を低下させるプロセスとして以前は説明されていた。老化誘発性刺激は数多く存在する。さらに、多くの老化細胞は非テロメア部位にゲノム傷害を有しており、これにより老化の増殖停止に必要なDNA傷害シグナル伝達の持続性も生み出される。DNAの二本鎖切断は特に強力な老化誘導因子である。老化の増殖停止は、単に細胞増殖の停止ではない。老化細胞は、遺伝子発現パターンに顕著で明確な変化を示す。
【0050】
加齢の生物学的過程は、加齢の影響を示す。一実施形態では、老化細胞は分裂しないか、及び/又は分裂する能力が低下しており、これは男性不妊の原因となり得る。
【0051】
配列同一性:2つの核酸配列間又は2つのアミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表わされ、配列同一性とも呼ばれる。配列同一性は、しばしば同一性(又は類似性若しくは相同性)のパーセンテージとして測定され、パーセンテージが高いほど2つの配列はより類似している。Yファミリーポリメラーゼタンパク質のホモログ又はオルソログ、及び対応するcDNA配列は、標準的な方法を用いて整列させると、比較的高い程度の配列同一性を持つ。この相同性は、オルソログタンパク質又はcDNAが、より近縁の種(例えばヒトとチンパンジーとの配列)に由来する場合、より遠縁の種(例えばヒトと線虫との配列)に由来する場合と比較して、より有意になるであろう。
【0052】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら,J.Mol.Biol.215:403-10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、及びtblastxと接続して使用するために、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI、ベセスダ、メリーランド州)を含むいくつかの供給元から、インターネット上で利用可能である。これは、このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明と共に、NCBIのウェブサイトでアクセスできる。
【0053】
2つの核酸分子が密接に関連していることを示す別の指標は、ストリンジェントな条件下で2つの分子が互いにハイブリダイズすることである。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる環境パラメーター下では異なる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度及びpHにおいて、特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃~20℃低い温度となるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に一致したプローブ又は相補鎖にハイブリダイズしたままである(定義されたイオン強度及びpHの下での)温度である。核酸のハイブリダイゼーションの条件及びストリンジェンシーの計算は、Sambrookら(編),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2編,vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989、及びTijssen Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I,Chapter 2,Elsevier,New York,1993で見ることができる。
【0054】
特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、選択したハイブリダイゼーション方法の性質、及びハイブリダイズする核酸配列の組成及び長さによって異なるであろう。一般に、ハイブリダイゼーションの温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特にNa+濃度)がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定するであろうが、浪費時間もストリンジェンシーに影響する。特定の程度のストリンジェンシーを達成するために必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrookら(編)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989、第9章及び第11章に記載されており、本明細書中に参照として援用される。以下にハイブリダイゼーション条件の一連の例を示す:
非常に高いストリンジェンシー(90%の同一性を持つ配列を検出)
ハイブリダイゼーション:5×SSC、65℃で16時間
2回洗浄:2×SSC、室温(RT)で各15分間
2回洗浄:0.5×SSC、65℃で各20分間
高いストリンジェンシー(80%以上の同一性を持つ配列を検出)
ハイブリダイゼーション:5×~6×SSC、65℃~70℃、16~20時間
2回洗浄:2×SSC、RTで各5~20分間
2回洗浄:1×SSC、55℃~70℃で各30分間
低ストリンジェンシー(50%以上の同一性を持つ配列を検出)
ハイブリダイゼーション:6×SSC、RT~55℃、16~20時間
少なくとも2回の洗浄:2×~3×SSC、RT~55℃、各20~30分間
【0055】
高程度の同一性を示さない核酸配列であっても、遺伝子コードの縮重(degeneracy)により、類似のアミノ酸配列をコードすることができる。この縮重を利用して核酸配列の変更を行うことができ、実質的に同じタンパク質をすべてコードする複数の核酸分子を作製できることが理解される。
【0056】
特に、ハイブリダイズ可能及び特異的相補性という用語は、オリゴヌクレオチド(又はそのアナログ)とDNA標的又はRNA標的との間に安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な程度の相補性を指す。オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアナログは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、標的配列と100%相補的である必要はない。特異的結合が望まれる条件下、例えば、in vivoでのアッセイ又はシステムの場合の生理学的条件下で、オリゴヌクレオチド又はアナログの標的DNA分子又は標的RNA分子への結合がこの標的DNA又は標的RNAの正常な機能を干渉し、かつオリゴヌクレオチド又はアナログの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある場合、オリゴヌクレオチド又はアナログは特異的にハイブリダイズ可能である。このような結合は特異的ハイブリダイゼーションと呼ばれる。
【0057】
ソマトスタチン:主に神経内分泌抑制作用を持つ阻害ホルモン。
【0058】
ソマトスタチン受容体:ソマトスタチン受容体には主にSSTR1~SSTR5の5種類がある。これらのSSTRの発現は身体を通して様々であることが指摘されている:SSTR1は、空腸及び胃で最高レベルに発現し;SSTR2は大脳、下垂体、膵臓、腸、及び腎臓で最高レベルに発現し;SSTR3は脳及び精巣で最高レベルに発現し;SSTR4は胎児及び成人の脳と肺で最高レベルに発現し;SSTR5は脳、下垂体、膵臓(α細胞及びγ細胞)及び消化管で最高レベルに発現する。これらのSSTRはまた、多くの異なる種類のがん細胞を含むいくつかの病的細胞で過剰発現されるか、又は先端巨大症などの病態を引き起こす。
【0059】
対象:脊椎動物を含む生きた多細胞生物であり、ヒト及び非ヒトの哺乳類の両方を含むカテゴリー。
【0060】
スーパーアゴニスト:内因性アゴニストよりも大きな最大応答を標的受容体にもたらすことができるリガンド。この応答は、例えば、これらに限定されないが、酵素活性、イオンチャンネル、トランスポーター、タンパク質、細胞ホルモン又は酵素の分泌などの細胞シグナルの活性化又は阻害であり得る。
【0061】
治療有効量:治療対象において所望の効果を達成するのに十分な化合物の量。化合物の有効量を単回投与で投与することもでき、又は治療期間中に数回に分けて、例えば毎日投与することもできる。しかしながら、有効量は、適用される化合物、治療される対象、苦痛の重症度及び種類、及び化合物の投与様式に依存するであろう。例えば、治療有効量の有効成分は、効果をもたらす血液中(in vivo)又は緩衝液中(in vitro)の有効成分(例えば、小分子、ペプチド、タンパク質、又は抗体など)の濃度(モル/リットル又はモーラーM)として測定することができる。
【0062】
II.複数の実施形態の概要
ソマトスタチン薬理学におけるSSTR2及びその利用可能なナノモルの特異的リガンドの臨床的役割は十分に確立されているにもかかわらず、他のSSTRサブタイプSSTR1、SSTR3、SSTR4、及びSSTR5の特異的内分泌学的役割は未知のままであった。SSTR3はソマトスタチン受容体のサブタイプで、他のSSTRの中で、分子サイズが最も大きく、インターナリゼーションの強度が最も高く、唯一細胞周期の停止及びアポトーシスにおいての重要な役割に関連する受容体である。SSTR3のこのような差異のある特性により、この受容体サブタイプは内分泌学及びがんにおける魅力的な対象となる。最近の研究で、ペプチドベースのSSTR3アゴニストの開発に初めて成功したことが報告されたが、報告されたアナログはSSTR3に対して十分なナノモル親和性を示さず、非機能性下垂体腺腫に対する抗増殖効果を示すが、ホルモン放出の内分泌作用は解明されなかった(Vazquez-Borregoら、2019)
【0063】
本明細書では、SSTR3の受容体特異的スーパーアゴニスト及びその使用方法、特にGH放出に対するin vivoでの内分泌作用について記載する。さらに、これらのSSTR3アゴニストは、下垂体のGH放出に対して高い選択性をもたらすが、膵臓からのインスリン及びグルカゴンの放出に対してはもたらさない。これらの新規かつ予想外の発見は、SSTR3特異的アゴニストがSSTR3を介してソマトスタチンのGH放出阻害を媒介することを初めて示した。例えば、167以上のヒトクローン化GPCR及び44のヒトクローン化薬理学的標的に対するオフターゲット相互作用について、SSTR3スーパーアゴニストの配列番号4を評価した。このデータにより、ヒトSSTR3に対する高い親和性及び超選択性が確認された一方、他のすべてのヒト標的(n=211)については臨床的に有意な結合は示されなかった。このデータは、in vivoでのGH放出の阻害という予想外の結果がSSTR3のみを介していることを裏付けるものである。さらに、これらの新規SSTR3アゴニストをDOTAなどのキレート剤にコンジュゲートさせても、SSTR3に対する結合親和性及び選択性は干渉されなかったことから、SSTR3はGHの過剰分泌に関連する下垂体腺腫である先端巨大症、並びにSSTR3の過剰発現に関連する可能性のある様々な悪性腫瘍などの内分泌症候群の放射性診断及び治療のための可能性のあるスーパーアゴニスト及び超選択的候補となりうる。
【0064】
活性剤
本特許請求の発明の特定の実施形態において、ソマトスタチンは活性剤を含んでいてもよい。活性剤は、配列番号1及び配列番号2に記載のとおり環状ペプチドに共有結合していてもよい。活性剤は、画像化部分、治療的部分、色素、蛍光部分、毒素、キレート剤、リジンアミノ酸で連結された二重キレート剤、金属原子を有する部分、放射性原子を有する部分、ナノ粒子、エチレングリコールポリマー、光増感剤、リポソーム構成成分及びミセル構成成分、疎水性を高める部分に共有結合されるキレート剤、色素エバンスブルーなどのペプチドコンジュゲートの血漿タンパク質結合、又は薬物イブプロフェンが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態において、単一の活性剤部分は、上記群の2つ以上の要素の規定に該当し、例えば:いくつかの実施形態において、活性剤部分は、ナノ粒子及びエチレングリコールポリマー、並びに治療/画像化部分のいずれか又は両方であり;いくつかの実施形態において、活性剤部分は、色素、及び/又は蛍光部分、及び/又は光増感剤、並びに治療/画像化部分のいずれか又は両方であり;いくつかの実施形態において、活性剤部分は、放射性原子を含み、かつ1つ又は複数のその他の規定に該当する。
【0065】
いくつかの実施形態では、このような活性剤部分はN末端アミノ酸に直接結合している。いくつかの実施形態において、このような活性剤部分は、例えば、リンカー(例えば、GABA(γ-アミノ酪酸)、アミノ酸、ペプチド鎖)を介して、N末端アミノ酸に間接的に結合される。
【0066】
活性剤部分の大きさ
活性剤部分の大きさは任意の適切な大きさである。つまり、いくつかの実施形態では、活性剤部分は、250以上、500以上、750以上、1000以上、2000以上、4000以上、8000以上、さらには16000以上の分子量を有する。
【0067】
画像化部分
いくつかの実施形態において、活性剤部分は画像化部分であり、これは、すなわち、適切な条件下で細胞内に濃縮された場合、及び/又は適切な画像化モダリティを用いた場合に、明瞭に観察可能である薬剤である。
【0068】
本明細書の教示を実施する際には、任意の適切な画像化部分を使用することができる。一般的な画像化部分には、視覚的識別を可能にする明瞭な色を有する部分、適切な照明条件下で視覚的識別を可能にする明瞭な蛍光を有する部分、又はポジトロン断層撮影法による画像化を可能にするポジトロン放出物質が含まれる。
【0069】
いくつかのこのような実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、画像化部分は、ソマトスタチン受容体を発現する細胞の表面及び細胞内に、他の細胞よりも高い程度に濃縮するようになり、このような細胞の同定が可能になる。このような実施形態の一般的な有用性は、ソマトスタチン受容体を過剰発現している正常細胞と病的細胞との間を区別することである。
【0070】
治療的部分
いくつかの実施形態では、活性剤部分は治療的部分であり、細胞内に濃縮されると、活性剤部分は何らかの所望の薬理学的効果を有し、薬理学的効果には、一般的には、標的細胞の発達を助けたり、又は例えば標的細胞が病的である場合に、標的細胞の増殖を抑制したり、若しくは標的細胞を死滅させたりすることを含む。
【0071】
任意の適切な治療的部分は、本明細書の教示を実施する際に使用され得、例えば、毒素、ビタミン、及び光増感剤が挙げられる。一般的な治療的部分には、細胞内に濃縮されると、例えば細胞プロセス又はフリーラジカル若しくは放射線の障害に影響を与えることによって、細胞毒性を示す部分が含まれる。
【0072】
いくつかのそのような実施形態において、細胞へのソマトスタチン受容体リガンドの投与後、治療的部分は、ソマトスタチン受容体を発現していない細胞又は低レベルのソマトスタチン受容体を発現している細胞よりも高い程度に、ソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特にソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)の表面及び細胞内に濃縮するようになり、そのような細胞の特異的標的化及び治療を可能にする。このような実施形態の一般的な有用性は、正常細胞にはほとんどあるいは全く損傷を与えずに、ソマトスタチン受容体を過剰発現している病的細胞(例えば、いくつかのがん)に対して殺細胞活性剤を投与することである。
【0073】
色素
いくつかの実施形態では、活性剤部分は色素であり、十分な濃度で観察できる明瞭な色を有する発色団を含む活性剤部分である。
【0074】
任意の適切な発色団を有する任意の適切な色素は、本明細書の教示を実施する際に使用することができ、例えばメチルバイオレットの誘導体が挙げられる。
【0075】
いくつかのそのような実施形態では、(in vivo又はin vitroで)細胞にソマトスタチン受容体リガンドを投与した後、色素は他の細胞よりもソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特にソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)においてよりも高い程度に濃縮されるようになり、目視又は顕微鏡検査によるそのような細胞の同定が可能になる。いくつかの実施形態において、色素は、ペプチドコンジュゲートの疎水性及び血漿タンパク質結合性を増加させるために使用することができる。
【0076】
蛍光剤
いくつかの実施形態では、活性薬剤部分は蛍光性であり、第1の光の波長でエネルギーを吸収し、その後、第1の波長よりも大きい光の第2の波長でエネルギーの少なくとも一部を放出する発蛍光団(fluorophore)を含む活性薬剤部分である。
【0077】
任意の適切な発蛍光団を有する任意の適切な蛍光剤は、本明細書の教示を実施する際に使用することができ、例えば、フルオレセイン又はローダミンの誘導体が挙げられる。
【0078】
いくつかのこのような実施形態では、(in vivo又は in vitroで)細胞にソマトスタチン受容体リガンドを投与した後、蛍光剤は他の細胞よりもソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特にソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)において高い程度に濃縮されるようになり、発蛍光団の明瞭な蛍光によりこのような細胞の同定が可能になる。
【0079】
毒素
いくつかの実施形態において、活性剤部分は毒素であり、例えば、細胞における生物学的プロセスを破壊することによって、例えば、細胞の発達を減衰若しくは停止させる(例えば、静細胞性)こと、あるいはさらに細胞を死滅させる(例えば、細胞毒性)ことによって細胞に対して有害な作用を及ぼす活性剤である。
【0080】
いくつかのそのような実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、毒素は、他の細胞よりも高い程度にソマトスタチン受容体を発現する細胞、例えば、特にソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞で濃縮され、それによって細胞に有害な作用を及ぼす。
【0081】
任意の適切な毒素は、本明細書の教示を実施する際に使用することができ、例えば、アクチノマイシン、カンプトテシン、ドキソルビシン、ゲンタマイシンの誘導体が挙げられる。このようないくつかの実施形態は、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞を損傷又は死滅させるために、in vivoで使用することができる。
【0082】
キレート剤
いくつかの実施形態では、活性剤部分はキレート剤であり、キレート化によって金属イオンに結合するように構成された活性剤である。本明細書の教示を実施する際には、任意の適切なキレート剤を使用することができ、例えば、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)、又はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)が挙げられる。いくつかのそのような実施形態では、活性剤部分は、金属をキレート化するキレート剤であり、いくつかの実施形態では、以下に記載するように、放射性金属又はMRI検出可能金属である。キレート剤は、金属イオンが結合していてもいなくてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、キレート剤(実施形態によっては、キレート化金属の有無によらない)は、他の細胞よりも高い程度に、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現する細胞、例えば、特にソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞において濃縮されるようになる。
【0084】
このようないくつかの実施形態は、例えば、画像化及び/又は治療目的のために、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞において金属イオン(いくつかの実施形態では、MRI検出可能な金属、又は/及び放射性金属イオン)を濃縮するために使用することができる。
【0085】
金属原子を有する部分
いくつかの実施形態では、活性剤部分は金属原子を有する部分である。いくつかのこのような実施形態は、ソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞に金属原子を濃縮させるために使用され得る。
【0086】
例えば、いくつかの実施形態において、金属原子は放射性金属原子であり、かつソマトスタチンは、核医学の分野における放射性医薬品として使用するためのものであり、例えば、以下に記載するように、治療及び/又は画像化の目的のためのものである。
【0087】
例えば、いくつかの実施形態において、金属原子は、例えば画像化の目的で、磁気共鳴撮像の分野におけるMRI造影剤として使用するための、MRI検出可能な金属原子(例えば、ガドリニウム、Fe2+)である。
【0088】
放射性原子を有する部分
いくつかの実施形態では、活性剤部分は放射性原子を有する部分である。このようないくつかの実施形態は、例えば、治療及び/又は画像化の目的などで、核医学分野における放射性医薬品として使用するために、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞において放射性原子を濃縮するために使用することができる。
【0089】
いくつかのそのような実施形態では、細胞へのソマトスタチン受容体リガンドの投与後、放射性原子は、他の細胞よりも高い程度に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)において濃縮するようになり、放射線検出部分(例えば、PET/SPECT)を有するそのような細胞の同定を可能にし、及び/又は放出された放射線による治療(例えば、毒性)作用を有する。
【0090】
本明細書の教示を実施する際には、任意の適切な放射性薬剤を有する任意の適切な部分を使用することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、放射性原子は活性剤部分の他の部分と共有結合している。一般的なそのような実施形態は、1つ又は複数の放射性原子、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-125、イオベングアン残基中のヨウ素-131、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、トリチウム、窒素-13、酸素-15、及びリン-32からなる群から選択される原子を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、放射性薬剤は、活性薬剤部分の他の部分にイオン結合(例えば、キレート化)した放射性金属原子である。一般的なそのような実施形態には、1つ又は複数の放射性原子、例えば、アクチニウム-225、ビスマス-213、テクネチウム-99m、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、銅-64、エルビウム-169、ガリウム-67、ガリウム-68、インジウム-111、鉄-59、ルテチウム-177、ラジウム-223、ルビジウム-82、サマリウム-153、セレン-75、ストロンチウム-89、タリウム-201、及びイットリウム-90からなる群から選択される原子が含まれる。
【0093】
ナノ粒子
いくつかの実施形態では、活性剤部分はナノ粒子を含み、いくつかの実施形態ではナノ粒子である。当業者は、「ナノ粒子」という用語の定義に精通しており、例えば、Murthy SK,Int J Nanomedicine 2007,2(2)129-141を参照されたく、これは参照により本明細書に完全に規定されているように含まれ、本明細書の教示を実施する際に使用され得る特定のナノ粒子の例も含む。つまり、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、サイズが1ナノメートル以上1000ナノメートル以下の粒子であり、いくつかの実施形態では、サイズが100ナノメートル以下の粒子である。
【0094】
いくつかのそのような実施形態では、細胞へのソマトスタチン受容体リガンドの投与後、ナノ粒子部分は、他の細胞よりも高い程度に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現する細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞)に濃縮されるようになり、そのような細胞の同定が可能になる。
【0095】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、二次活性剤(例えば、治療剤又は画像化剤)を収容(含有)する内部容積部を画定する。いくつかのこのような実施形態では、ナノ粒子は、その中に収容される二次活性剤を細胞内に送達するための容器として使用される。いくつかのこのような実施形態は、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞に多量の二次活性剤を送達するために使用される:ナノ粒子が細胞内に内在化(インターナリゼーション)されると、二次活性剤が細胞内で放出される。いくつかのそのような実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、ナノ粒子部分は、他の細胞よりも1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)においてより高い程度に濃縮されるようになり、次いで細胞内で二次活性剤を放出する。
【0096】
本明細書の教示を実施する際には、任意の適切なナノ粒子を使用することができ、例えば、PCT公開のWO2012/054923、WO2012/166923、WO2014/04361及びWO2014/043625(これらは参照により本明細書に完全に規定されているように含まれる)に記載されているとおりのナノ粒子、並びに実質的にアルブミンクラスターであるナノ粒子を使用することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子はカーボンナノチューブ、特に単層カーボンナノチューブを含む。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、(任意にフッ素化され、その後)分岐ポリエチレンイミンで修飾され、それを介して環状ペプチド部分が共有結合される。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、例えば分岐ポリエチレンイミンを介してカーボンナノチューブに結合した治療的活性剤をさらに含む。このような実施形態は、当業者であれば、Andreoli Eら、J.Mater.Chem.B 2014,2,4740-4747(これは完全に本明細書に記載されているように参照により組み込まれる)の教示と組み合わせて本明細書を熟読して実施することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、「ナノフラワー」を含み、これは、例えば、開環重合(ring open polymerization:ROP)を介してポリ(エチレングリコール)(PEG)ベースの主鎖の複数の部分上でγ-カンプトテシン-グルタミン酸N-カルボキシアンヒドリド(gamma-camptothecin-glutamate N-carboxyanhydride)(Glu(CPT)-NCA)を直接重合することによって構築されたグラフトコポリマーから形成される。このような実施形態は、Tai Wら,J.Biomaterials 2014,35(25),7194-7203(本明細書に完全に記載されているように参照により含まれる)の教示と組み合わせて本明細書を熟読することにより、当業者によって実施され得る。
【0099】
エチレングリコールポリマー
いくつかの実施形態において、活性剤部分はエチレングリコールポリマー(ポリエチレングリコール)を含む。いくつかの実施形態では、エチレングリコールポリマーはナノ粒子の成分である。
【0100】
いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載のとおりのソマトスタチン受容体リガンドのペプチド部分は、エチレングリコールポリマーによってペグ化される。実施形態によっては、ペグ化は、溶解性の(in vivo及び/又はin vitroでの)増加、in vivoでの免疫原性及び抗原性の減少、並びにソマトスタチン受容体リガンドの腎クリアランス速度の減少を含む、1つ又は複数の有用な特性を有し得る。
【0101】
感光剤
いくつかの実施形態において、活性剤部分は光増感剤である。光増感剤は、光からエネルギーを吸収して励起状態になり、励起状態で三重項酸素種と相互作用して化学的に活性な一重項酸素種を生成する分子である。知られている光増感剤には、メチレンブルーなどのフェノチアジン、ローズベンガルなどのキサンテン、及びポルフィリンが含まれる。
【0102】
いくつかのそのような実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、光増感剤部分は、他の細胞よりも高い程度にソマトスタチン受容体を発現している細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞)に濃縮するようになる。光増感剤が細胞内に入ると、細胞に放射線が照射され、光増感剤が細胞内に存在する酸素分子から細胞内で活性酸素種を発生させ、この活性酸素種は潜在的な細胞毒性作用を有する。
【0103】
リポソーム成分
いくつかの実施形態において、活性剤部分はリポソーム成分であり、例えばリン脂質又はエチレングリコールポリマーである。このようないくつかの実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドは、上記のナノ粒子を参照して説明したのと同様に、任意にリポソーム内部に収容される二次活性剤と共に、(当技術分野で知られている)他のリポソーム構成成分と共にリポソームを形成するために使用される。このような実施形態では、リポソーム構成活性剤部分はリポソームの一部となり、一方で、ペプチド部分の少なくとも一部は、ソマトスタチン受容体を発現又は過剰発現する細胞にリポソームを優先的に、あるいはさらに選択的に結合させるガイド部分として機能する。このようないくつかの実施形態は、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞にリポソーム(及びいくつかの実施形態ではその中に収容される二次活性剤)を送達するために使用される。
【0104】
このようないくつかの実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、リポソームは、他の細胞よりも1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現する細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞)において高い程度に濃縮され、その後、細胞内で二次活性剤を放出する。
【0105】
ミセル成分
いくつかの実施形態では、活性剤部分はミセル成分であり、例えば界面活性剤である。いくつかのそのような実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドは、上記のナノ粒子及びリポソームを参照して記載したのと同様に、任意にミセル内部に収容される二次活性剤と共に、他のミセル構成成分(当技術分野で知られているもの)と共にミセルを形成するために使用される。このような実施形態では、ミセル構成活性薬剤部分はミセルの一部となり、一方、ペプチド部分の少なくとも一部は、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現又は過剰発現する細胞にミセルを優先的に、あるいはさらに選択的に結合させるガイド部分として作用する。このようないくつかの実施形態は、1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現している細胞にミセル(及びいくつかの実施形態では、その中に収容される二次活性剤)を送達するために使用される。
【0106】
このようないくつかの実施形態では、ソマトスタチン受容体リガンドの細胞への投与後、ミセルは、他の細胞よりも1つ又は複数のソマトスタチン受容体を発現する細胞(例えば、特に1つ又は複数のソマトスタチン受容体を過剰発現する細胞)において高い程度に濃縮され、その後、細胞内で二次活性剤を放出する。
【0107】
腫瘍標的剤
いくつかの実施形態において、活性剤部分は腫瘍標的剤である。特定の実施形態では、コンジュゲートは、ソマトスタチンではないが、ソマトスタチンの腫瘍への結合を増強するように他の標的を標的とするアミノ酸配列へのコンジュゲートであり、例えば、腫瘍接着モチーフとして使用されるインテグリンファミリーに属するトリペプチドArg-Gly-Asp(RGD)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態において、ソマトスタチン配列のコンジュゲーションは、腫瘍などの特定の組織へのペプチドの生物学的利用能を増大させるために、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、デカン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂質部分へのコンジュゲーションである。いくつかの実施形態において、Rは、少なくとも1つの腫瘍標的剤である。
【0109】
リンカー
いくつかの実施形態において、Rはリンカーである。リンカーの非限定的な例は、フェニルアラニンなどの芳香族疎水性分子、又はアスパラギン酸若しくはグルタミン酸のアミノ酸又はアミノメチル安息香酸などのアニオン性アミノ酸、脂肪酸、エバンブルー若しくはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの近赤外染料、又はアセトアミノフェン、イブプロフェン、ワルファリンなどの薬物、又はガンマアミノ酪酸(GABA)などの他のスペーサー分子;パラアミノ安息香酸(PABA)、4-アミノメチル安息香酸、8-アミノオクタン酸、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES);ジフェニルカーボネート、ジアリールカーボネート、ジイソシアネート、無水ピロメリット酸、カルボニルジイミダゾール、エピクロリドリン、グルタルアルデヒド、カルボン酸二無水物、2,2-ビス(アクリルアミド)酢酸、ジクロロメタンなどの架橋剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、リンカーは、ヘキサン酸又はアミノヘキサン酸、ヘプタン酸又はアミノヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)又はアミノオクタン酸、デカン酸又はアミノデカン酸、ミリスチン酸又はアミノミリスチン酸、ラウリン酸又はアミノラウリン酸、パルミチン酸又はアミノパルミチン酸、オレイン酸又はアミノオレイン酸、リノール酸又はアミノリノール酸などの脂質又はアミノ脂質部分であり、これはDOTAのようなキレート剤との結合を改善し、又は腫瘍のような特定の組織へのペプチドの生物学的利用能を増大させることが可能である。
【0110】
リンカーはアミノ酸又はポリペプチドであり得、好ましくは1~7アミノ酸長であり、最も好ましくは1~3アミノ酸長である。リンカーとして好ましいアミノ酸は、Gly、Ala、Lys、及びPheの1種又は2種以上の群から選択される。
【0111】
本明細書の教示を実施する際には、任意の適切なリンカーを使用することができ、例えば、公開AU729225、US2004/0166499、US5854194、US6303555、WO2017/066668、US6297191、US6020301、又はUS2010/0240773に記載されているようなリンカーを使用することができる。
【0112】
他の特定の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は塩をさらに含み得、これらはすべて、当技術分野において標準的であり知られている。
【0113】
例示的組成物
本明細書に記載の組成物(ソマトスタチンアナログ)のいくつかは、以下の一般式、R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-Rを有し、式中、R、R、R、R及びRは、以下の表1のとおり定義され、Rは、N-チオアルキル-グリシン構造
【化2】
を有するNTAGであり、式中、ジスルフィド結合は、Rと(RとRとの間に位置する)システイン残基との間に形成される;又はその薬学的に許容される塩である(nは2である)。(-)は置換基がないことを示す。「4-Amb」は4-アミノメチル安息香酸の略である。「Orn」はオルニチン(ornitihine)の略である。「CPT」はカンプトテシンの略である。「GABA」はガンマアミノ酪酸(CNO)の略である。
【0114】
【表1】
【0115】
配列番号1は、米国特許第10,266,579号に開示されており、化学構造はH-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)であり、分子式:C61811510;正確な分子量:1248.53g/molである。配列番号1の化学構造を図10に示す。ペプチド配列番号1は、骨格環状ソマトスタチンアナログである。配列番号1のアミノ酸CysとNTEGとの間の環化は、Phe-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Pheの配列によってPhe-Phe-D-Trp-Lys-Thr10-Phe11である天然ホルモンSRIF-14の対応するファーマコフォアのコンフォメーションを拘束することがわかった。環化されるファーマコフォアはジスルフィド結合で架橋される。NTEGのアルキル側鎖は、エチル(n=2)であり、N-チオエチル-グリシン又は(2-2-((メルカプトエチル)アミノ)アセトアミド)又は「GlyS2」ビルディングブロックである。
【0116】
米国特許第10,266,579号に開示されたin-vitroデータ(米国特許第10,266,579号の配列番号1)は、リンカーであるガンマアミノ酪酸(GABA)を介するN末端のペプチドと蛍光マーカーであるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)との共有結合が、SSTR-1、2、3、4及び5であるすべてのソマトスタチン受容体に対して等しい(非特異的な)結合及びインターナリゼーション(内在化)特性を表すことを示した。これらの分析は、細胞の読み取り値の総蛍光の蛍光活性化細胞選別(FACS)検出のフローサイトメトリーの利用に基づくことを強調しなければならない。したがって、FACSの読み出し値は、細胞表面に付着(結合)したFITC-GABAペプチドに由来する蛍光の読み出し値と、細胞内取り込みに(内在化)に由来する蛍光の読み出し値とを測定した。したがって、FACSは間接的な方法論としてリガンドの結合を示す。本明細書において、配列番号1は、ナノモル範囲でヒトクローン化SSTR3に対して高い親和性及び選択性を示すが、他のSSTR1、2、4及び5に対しては著しく低い親和性を示す。驚くべきことに、それは天然ホルモンSRIF-14を上回るSSTR3のスーパーアゴニスト活性プロファイルを示す(表4)。さらに、これは成長ホルモン分泌の強力な抗分泌促進物質として、新規かつ予想外のin vivoの内分泌プロファイルを示す。これは、GH放出の阻害におけるSSTR3の正確な役割と、SSTR3の過剰発現に関連する疾患及び病態におけるSSTR3選択的アゴニストの治療的使用の可能性とを初めて示すものである。
【0117】
配列番号2は、H-D-Phe-Lys-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である:分子式:C61811310;及び正確な分子量:1220.52g/mol。配列番号2の化学構造を図11に示す。
【0118】
配列番号2は、配列番号1のLys-2アナログである。配列番号1に関して記載したとおり、2位のアミノ酸Argの位置は、SSTR3に対する配列番号1の親和性及び選択性の役割を有する。しかし、アミノ酸Argを持つ両親媒性ペプチドの物理化学的及び薬学的特性は、非特異的結合としての可能な表面活性、及び持続的な腎クリアランスのために、その使用を制限し得る。実際、陽電子放出断層撮影法(Positron Emitting Tomography:PET)のin-vivoでの画像化研究により、配列番号1のアナログであるガリウム-68放射性標識配列の全身投与は、マウス及びラットにおいて持続的な腎クリアランスを示すことがわかった。アミノ酸ArgをLysに置換して配列番号2を作製したところ、驚くべきことに、ArgをLysに置換してもSSTR3に対する結合親和性と選択性とはなお維持された。これらの結果は、配列番号1のPhe-Arg及び新たな配列の配列番号2のPhe-LysのN末端の固有の配列が、SSTR3への新規な特異的結合に寄与していることを示している。配列番号1と配列番号2との両方が、SSTR3に対して同じナノモル親和性を示し、GH放出の予想外の強力なin vivo阻害を示すことを強調する。さらに、物理化学的研究により、配列番号2は、SSTR3に対する放射性医薬品リガンドとしてより良い候補となり得る非特異的結合の減少による良好な表面活性プロファイルを有することが示された。
【0119】
配列番号3は、DOTA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C771071917;及び正確な分子量:1634.94g/mol。配列番号3の化学構造を図12に示す。
【0120】
DOTAは分子量約400ダルトンの嵩高い部分であり、三酢酸(triactic acid)のような遊離アニオン残基を持っているため、このコンジュゲートは配列の結合親和性に影響を与える可能性があることを強調しておく。結合データは、DOTAのコンジュゲートが配列番号1の結合親和性及び選択性を干渉しなかったことを示す。したがって、配列番号1のDOTAコンジュゲートは、機能性(GH分泌性)下垂体腺腫などのSSTR3を発現する腫瘍の診断又は治療を可能にするために、同位体による放射性標識に使用することができる。
【0121】
配列番号4は、ガリウム標識したGa-DOTA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C77104GGaN1917;及び正確な分子量:1701.64g/mol。
【0122】
配列番号4はRの一例であり、ここでRは配列番号1のN末端にコンジュゲートしたガリウム標識DOTAである。DOTAによるガリウムなどの同位体のキレート化が、DOTA-ペプチドコンジュゲートの結合親和性に影響を与える可能性があることを強調しておく。結合データは、ガリウム標識DOTA-ペプチドコンジュゲートが配列番号1及び3の結合親和性及び選択性を干渉しなかったことを示している。したがって、配列番号1のガリウム放射性標識DOTAコンジュゲートは、機能性(GH分泌性)下垂体腺腫などのSSTR3を発現する腫瘍の診断に使用できる。銅で標識した配列番号5及びルテチウムで標識した配列番号6でも同様の結果がみられた。
【0123】
配列番号5は、銅標識Cu-DOTA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C77105CuN1917;及び正確な分子量:1696.47g/mol。
【0124】
配列番号6は、ルテチウム標識Lu-DOTA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C77104LuN1917;及び正確な分子量:1806.88g/mol。
【0125】
配列番号7は、DOTA-GABA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C811142018;及び正確な分子量:1720.05g/mol。
【0126】
配列番号7において、RはDOTAであり、Rは配列番号1のN末端でコンジュゲートしたリンカーとして使用されるGABAである。リンカーとしてのGABAの目的は、DOTAキレート剤とペプチド配列との間の距離を増大することである。GABAはスペーサーとして使用され、ペプチドリガンドとSSTR3との相互作用に対するDOTAキレート剤の潜在的立体的な影響を軽減する。結合データは、ペプチドリガンドのN末端に共有結合しているGABAを介したDOTAのコンジュゲートが、親和性及び選択性を増加し、配列番号1の結合親和性及び選択性を干渉しなかったことを示しており、このことは、配列番号7が、SSTR3下垂体腺腫及びSSTR3を発現する腫瘍の診断又は治療を可能にする同位体による放射性標識に使用できることを示している。
【0127】
配列番号8は、ガリウム標識DOTA-GABA-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C81111GaN2018;正確な分子量:1786,74g/mol。
【0128】
配列番号8は、配列番号7を同位体標識した一例である。配列番号8の場合、ガリウムによる標識は、配列番号1、及び配列番号3~7と同様に、SSTR3に対する親和性及び選択性を維持する。したがって、配列番号8のDOTAコンジュゲート及びその同位体標識アナログは、SSTR3下垂体腺腫及びSSTR3を発現する腫瘍の診断又は治療を可能にするための同位体による放射性標識に使用することができる。
【0129】
配列番号9は、化学式DOTA-D-Phe-Lys-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C771071717;及び正確な分子量:1606.93g/mol。
【0130】
配列番号9では、N末端にDOTAがコンジュゲートし、RはLysである。この結合データは、DOTAのコンジュゲートが配列番号2の結合親和性及び選択性を干渉しなかったことを示しており、これは配列番号2のDOTAコンジュゲートが、機能性(GH分泌性)下垂体腺腫などのSSTRを発現する腫瘍の診断又は治療を可能にする同位体による放射性標識に使用できることを示している。
【0131】
配列番号10は、ガリウム標識DOTA-D-Phe-Lys-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)の化学式を有する新規化合物である。分子式:C77104GaN1717;正確な分子量:1673.62g/mol。
【0132】
配列番号10では、Rは、配列番号2のN末端にコンジュゲートしたガリウム標識DOTAである。以下に示すとおり、ガリウム標識配列番号9の結合親和性は、リガンドの受容体への結合に影響を与え得る。ガリウムによる標識は、0.73nMのIC50値(親配列番号2)及び約1nMの配列番号9のIC50値を2.4nMのIC50値に減少させた。結合データから、ガリウム標識DOTA-ペプチドコンジュゲートの親和性は依然としてIC50値2.4nM(これは薬剤オクトレオチドのSSTR2に対するIC50と同じ)のナノモル範囲内にとどまり、他のSSTRと比較してSSTR3に対する選択性を残した。したがって、配列番号2のガリウム放射性標識DOTAコンジュゲートは、SSTR3を発現している腫瘍の診断に用いることができる。
【0133】
配列番号11は、化学式DOTA-Gly-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG10-NH2(シクロ4-10)を有する新規化合物である。分子式:C791102018、及び正確な分子量:1691.99。この配列は配列番号3に類似しているが、Rとしてアミノ酸スペーサーが導入されている。
【0134】
配列番号12は、化学式DOTA-Ala-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG10-NH2(シクロ4-10)を有する新規化合物である。分子式:C801122018、及び正確な分子量:1706.02。この配列は配列番号3に類似しているが、Rとしてアミノ酸スペーサーが導入されている。この配列及び配列番号11では、配列番号1と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を有する。
【0135】
配列番号13は、化学式H-Arg-Gly-Asp-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr10-Phe11-NTEG12-NH2(シクロ6-12)を有する新規化合物である。分子式:C731012115、及び正確な分子量:1576.86。この配列は配列番号1に類似しているが、腫瘍接着モチーフとして使用されるインテグリンファミリーに属するトリペプチドArg-Gly-Asp(RGD)がN末端に付加されている。
【0136】
配列番号14は、化学式:DOTA-Arg-Gly-Asp-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr10-Phe11-NTEG12-NH2(シクロ6-12)を有する新規化合物である。分子式:C891272522及び正確な分子量:1963.27。この配列は配列番号13に類似しているが、N末端にDOTA部分が付加されている。この配列及び配列番号13の両方において、RGD部分の付加は配列番号3のSSTR3に対する親和性及び選択性を干渉しなかったため、腫瘍浸透を増強するために使用することができる。
【0137】
配列番号15は、化学式:DOTA-8-アミノオクタン酸-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C851222018、正確な分子量:1776.15。配列番号15の化学構造を図13に示す。この配列は配列番号3に類似しているが、Rとして8-アミノオクタン酸スペーサーが導入されている。この配列及び配列番号11~14は、配列番号1と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。さらに、8-アミノオクタン酸リンカーはDOTA-ペプチドコンジュゲートの疎水性を高め、腫瘍取り込みを促進することができる。
【0138】
配列番号16は、化学式:(DOTA)2-Lys-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG10-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C991452525;正確な分子量:2149.52。配列番号16の化学構造を図14に示す。
【0139】
配列番号3の化学構造を図12に示す。この配列は配列番号3に類似しているが、追加のDOTAキレート剤が、n末端の追加のリジンアミノ酸を介して配列にコンジュゲートしている。配列番号3に別のDOTAを付加しても、SSTR3に対する親和性及び選択性は干渉されず、したがって、追加のDOTAによりトレーサーの比放射能の増大を可能にした。比放射能の増大は、このトレーサーの画像化性能、及び機能性(GH分泌性)下垂体腺腫などのSSTR3を発現している腫瘍に対する標的放射線治療の効果を増強できる。
【0140】
配列番号17は、構造式:DOTA-Lys-D-Phe-Arg-Gly-Asp-Glu-GABA-D-Phe-Lys-Cys-Phe10-D-Trp11-Lys12-Thr13-Phe14-NTEG15-NH2(シクロ1-6;シクロ9-15)を有する新規化合物である。分子式:C991342420;正確な分子量:2020.41。配列番号17の化学構造を図15に示す。
【0141】
配列番号17は、配列番号2の二環式アナログである。この配列は、配列番号2のn末端にGABAを介して連結した追加のRGDのDOTAコンジュゲート環状配列を有する。配列番号17は、配列番号2と同様のSSTR3親和性及び選択性を示し、したがって、追加のRGD部分は腫瘍浸透を増強するために使用することができる。
【0142】
配列番号18は、化学式:DOTA-4-Amb-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C851142018;正確な分子量:1768.09。配列番号18の化学構造を図16に示す。この配列は配列番号3に類似しているが、Rとしてアミノ安息香酸(4-Amb)スペーサーが導入されている。この配列は、配列番号1及び3と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。さらに、4-AmbリンカーはDOTA-ペプチドコンジュゲートの疎水性を高め、それ故、腫瘍取り込みを増強することができる。
【0143】
配列番号19は、化学式:DOTA-Phe-Phe-D-Phe-Arg-(Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe10-NTEG11)-NH2(シクロ5-11)を有する新規化合物である。分子式:C951252119;正確な分子量:1929.29。この配列は配列番号3に類似しているが、追加のジ(di-Phe配列がRにスペーサーとして導入されている。この配列は、配列番号3と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。さらに、ジ-PheスペーサーはDOTA-ペプチドコンジュゲートの疎水性を高め、それ故、腫瘍取り込みを増強することができる。
【0144】
配列番号20は、化学式:DOTA-Phe-D-Phe-Arg-(Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG10)-NH2(シクロ4-10)を有する新規化合物である。分子式:C70901611正確な分子量:1395.71。この配列は配列番号3に類似しているが、追加の1個のPheがRにスペーサーとして導入されている。この配列は、配列番号3及び20と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。さらに、このPheスペーサーはDOTA-ペプチドコンジュゲートの疎水性を高め、それ故、腫瘍取り込みを増強することができる。
【0145】
配列番号21は、化学式:DOTA-D-Phe-Orn-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2 シクロ3-9を有する新規化合物である。分子式:C50791310;正確な分子量:1206.49g/mol。配列番号21は、配列番号1のOrn-2アナログである。配列番号1に関して記載したとおり、2位のアミノ酸Argの位置は、配列番号1のSSTR3に対する親和性及び選択性の役割を有する。しかし、アミノ酸Argを持つ両親媒性ペプチドの物理化学的及び薬学的特性は、非特異的結合としての可能な表面活性、及び持続的な腎クリアランスのために、その使用が制限され得る。ArgからOrnへの置換は、SSTR3に対する親和性と選択性を干渉しなかった。これらの結果は、配列番号1のPhe-Arg、配列番号2のPhe-Lys、及び配列番号21のPhe-OrnのN末端の固有な配列が、SSTR3に対する新規な特異的結合及び選択性に寄与していることを示している。ArgからLys又はOrnへのイオン電荷の減少は、腎クリアランスに影響を及ぼすことができ、腫瘍の画像化及び治療における治療プロファイルを改善することができる。
【0146】
配列番号22は、化学式:DOTA-D-Phe-Glu-Glu-Orn-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe10-NTEG11-NH2(シクロ5-11)を有する新規化合物である。分子式:C861191923;正確な分子量:1851.13g/mol。配列番号21は配列番号22に類似しているが、追加のジ-Glu配列がRとして導入されている。配列番号1に関して記載したとおり、2位のアミノ酸のカチオン性側鎖としてのアミノ酸Argの位置は、SSTR3に対する配列番号1の親和性及び選択性の役割を有する。しかし、アミノ酸Argを持つ両親媒性ペプチドの物理化学的及び薬学的特性は、非特異的結合としての可能な表面活性、及び持続的な腎クリアランスのために、その使用が制限され得る。ArgのOrnへの置換と2つのアニオン性アミノ酸の付加は、SSTR3に対する親和性と選択性を干渉しなかった。これらの結果は、配列番号1のPhe-Arg、配列番号2のPhe-Lys、配列番号21のPhe-Orn、及び配列番号22のPhe-Glu-Glu-OrnのN末端における固有の配列は、SSTR3に対するこれらのDOTAペプチドの新規な特異的結合性及び選択性に寄与することを示す。ArgからLys又はOrnへのイオン電荷の減少、及びアニオン部分の追加の逆電荷により、親水性が増加し、腫瘍の画像化及び治療における腎クリアランス及び治療プロファイルを改善することができる。
【0147】
配列番号23は、化学式:DOTA-D-Phe-Glu-Orn-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG10-NH2(シクロ4-10)を有する新規化合物である。分子式:C861191923;正確な分子量:1722.01g/mol。この配列は配列番号22に類似しているが、Rにてスペーサーとして(ジ-Gluの代わりに)さらに1個のGluが導入されている。この配列は、配列番号22と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。ジ-Gluを1個のGluにすることで、腫瘍取り込みに対する腎クリアランスを改善することができる。
【0148】
配列番号24は、化学式:DOTA-D-Phe-Lys-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C61811311;正確な分子量:1236.52g/mol。この配列は配列番号2及び9に類似しているが、4位のPheはRとしてTyrに置き換えられている。この配列は、配列番号2と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。PheをTyrで置換することにより、DOTA-ペプチドコンジュゲートの親水性が増強するため、放射性標識トレーサーの腎クリアランス及び治療指数を改善することができる。これはまた、ペプチドの放射性標識の追加部位として、例えば125Iを使用することもできるが、これに限定されるものではない。追加の放射性標識部位(DOTA及びTyr)により、トレーサーの比放射能が増加し、より優れた画像処理性能及び腫瘍の放射線治療が可能になるであろう。
【0149】
配列番号25は、化学式:DOTA-D-Phe-Arg-Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C61811511;正確な分子量:1264.53g/mol。この配列は配列番号1及び3に類似しているが、4位のPheはRとしてTyrに置き換えられている。この配列は、配列番号1と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。PheをTyrで置換することにより、DOTA-ペプチドコンジュゲートの親水性が増強するため、放射性標識トレーサーの腎クリアランス及び治療指数を改善することができる。これはまた、ペプチドの追加的な放射性標識部位として、例えば125Iを使用することもできるが、これに限定されるものではない。追加の放射性標識部位(DOTA及びTyr)により、トレーサーの比放射能が増加し、より優れた画像処理性能及び腫瘍の放射線治療が可能になるであろう。
【0150】
配列番号26は、化学式:H-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Tyr-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C61811511;正確な分子量:1264.53g/mol。この配列は配列番号1及び3と類似しているが、8位のPheはTyrに置換された。この配列は、配列番号1と同様のSSTR3に対する親和性及び選択性を示す。PheをTyrで置換することにより、DOTA-ペプチドコンジュゲートの親水性が増強するため、放射性標識トレーサーの腎クリアランス及び治療指数を改善することができる。これはまた、ペプチドの追加的な放射性標識部位として、例えば125Iを使用することもできるが、これに限定されるものではない。追加の放射性標識部位(DOTA及びTyr)により、トレーサーの比放射能が増加し、より優れた画像処理性能及び腫瘍の放射線治療が可能になるであろう。
【0151】
配列番号27は、化学式:CPT-8-アミノオクタン酸-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2(シクロ3-9)を有する新規化合物である。分子式:C901101816;正確な分子量:1764.1。配列番号27の化学構造を図17に示す。この配列は配列番号1に類似しているが、Rとして細胞毒性で嵩高い部分であるカンプトテシン(CPT)が、Rとして8-アミノオクタン酸のスペーサーであるリンカーを介して、ペプチドのN末端で配列番号1に共有結合している。配列番号27は、配列番号1と同じSSTR3に対する選択性を示す。SSTR3に対する親和性は低下したが、10nMの範囲内にとどまった。この配列でスペーサーを使用すると、CPTと配列番号1のファーマコフォアとの間の距離が長くなることでCPTの立体的効果が減少した。このアナログは、細胞毒性ペイロードの腫瘍への送達及び標的化に使用できる。
【0152】
配列番号28は、化学式:ニラパリブ-CO(CHCO-D-Phe-Arg-Cys-Phe-D-Trp-Lys-Thr-Phe-NTEG-NH2 シクロ3-9を有する新規化合物である。分子式:C851051913;正確な分子量:1665.02。配列番号28の化学構造を図18に示す。
【0153】
この配列は配列番号1に類似しているが、Rとして細胞毒性があり嵩高い部分である抗がんPARP阻害剤が、ペプチドのn末端にてRとしてグルタル酸のスペーサーであるリンカーを介して配列番号1に共有結合している。配列番号28は、配列番号1と同様のSSTR3に対する選択性を示す。SSTR3に対する親和性は低下したが、10nMの範囲内にとどまった。この配列でスペーサーを使用すると、ニラパリブと配列番号1のファーマコフォアとの間の距離が長くなることにより、CPTの立体的効果が減少した。このアナログは、細胞毒性ペイロードの腫瘍への送達及び標的化に使用できる。
【0154】
ソマトスタチンアナログ
GEP-NETにおけるソマトスタチン受容体の過剰発現の実質的な証拠は、GEP-NETの診断及び治療(セラグノスティクス(theragnostics))のためのいくつかの放射性標識ソマトスタチンアナログの開発及び承認の重要な理論的根拠であった。
【0155】
これらの放射性リガンドの開発は、薬物オクトレオチドのファーマコフォア(生理活性を示す最小のアミノ酸配列)に基づいて行われた。これらはすべて、オクトレオチドの3位のPheアミノ酸がTyrと特異的に置換されている点で共通しており、スレオニンc末端がアルコール(オクトレオチド又はTOCの場合はスレオニノール)又はカルボン酸c末端(オクトレオテートTATEの場合はスレオニン)である点で互いに異なっている。この特異的置換によって、SSTR2に対する高い親和性と特異性が増強された。これらのN末端での金属キレート剤DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)とのコンジュゲートにより、承認済みのガリウム-68又はルテチウム-177の放射性リガンドなどの様々な放射性同位体による放射性標識を可能にした。ガリウム-68による放射性標識は、陽電子放出断層撮影法(PET)によるGEP-NETの診断のための68Ga-DOTA-TOC(SomaKit(登録商標))及び68Ga-DOTA-TATE(NetSpot(登録商標))の開発及び承認を可能にした。GEP-NETの診断にDOTAキレート剤を介した放射性標識の実施が成功したことで、ルテチウム-177を用いた最初のペプチド受容体放射性治療(peptide receptor radioactive therapy:PRRT)の開発及び承認が可能となった。この放射性標識ペプチドベースの薬物は177Lu-DOTA-TATEであり、GEP-NETの治療薬として承認されたLutathera(登録商標)として知られている。Lutathera(登録商標)の薬物作用の理論的根拠及びメカニズムは、リガンドがソマトスタチン受容体に結合した後、エンドサイトーシスによる受容体ーペプチド複合体のインターナリゼーションが観察されたことに起因する。このインターナリゼーションにより、放射性ペプチドは受容体を発現している腫瘍細胞に保持されることが可能であり、かつ分子量が比較的低いため、血液から速やかに排出されることが可能になる。
【0156】
治療への応用
利用可能なソマトスタチン放射性リガンドの臨床使用に伴う主な制限は、それらのSSTR-2のみに対する特異性であることに注意されたい。SSTR-2以外の受容体を発現する腫瘍が存在し、SSTR-2の発現パターンは、腫瘍増殖の過程と、SSTR-3などの他のソマトスタチン受容体の動的過剰発現とによって変化する可能性がある。正常状態と疾患状態との両方で多くの臓器で発現しているSSTR-2とは異なり、SSTR-3は正常な脳、下垂体、血管系、胸腺、及び精巣で過剰発現している。しかしながら、SSTR-3はがんなどの疾患状態で過剰発現するようになる。さらに、SSTR3は、p53誘導アポトーシスと細胞周期停止を介したシグナル伝達の活性化に関連する唯一のソマトスタチン受容体であり、他のソマトスタチン受容体の中で有意に高いインターナリゼーションを誘導することが報告されている唯一の受容体である。これらの分化プロファイルから、SSTR-3はがんにおける可能性のある診断及び治療標的となる。より特に、配列番号1及び配列番号2の両者のGH放出の阻害という予想外のin vivoでの結果に基づいて、これら2つの配列及びそのアナログは、先端巨大症の診断及び治療のための薬剤候補となり得る。先端巨大症は、下垂体の非がん性(良性)腫瘍(腺腫)によって引き起こされる。この腫瘍は成長ホルモンを過剰に産生し、先端巨大症の徴候及び症状の多くを引き起こす。したがって、SSTR3に特異的な配列番号1及び配列番号2並びにそれらのアナログは、遊離(コンジュゲートしていない)ペプチド配列として、あるいはコンジュゲートしたペプチドとして、例えば、ガリウム又は銅の標識DOTAキレート剤などの放射性診断のためのDOTAに、あるいはルテチウム又はアクチニウムの標識DOTAによる治療のためのDOTAのいずれかについて、成長ホルモン放出の阻害のために使用することができる。
【0157】
本明細書で開示するのは、SSTR-3に対して高い親和性及び特異性を有する新規のソマトスタチンアナログの合成及び識別である。in-vitroでの結合及び生物活性試験により、これらの新規SSTR-3はスーパーアゴニストとして作用し、SSTR-3の細胞内への有意なインターナリゼーションを誘導することが示された。したがって、これらの新規ソマトスタチンアナログは、(様々な放射性同位元素及びキレート剤とのコンジュゲートされる)放射性リガンドとして、セラグノスティクスなもの(theragnostic)に使用することができる。これらの可能性のある用途には、SSTR3を特異的に過剰発現する腫瘍の診断及びPRRTへの利用が含まれる。SSTR-3の発現は、GEP-NET及び下垂体腺腫などの他の腫瘍;これらに限定されないが肉腫、骨髄腫、リンパ腫、及び白血病などの血液悪性腫瘍;これらに限定されないが膵臓、結腸、乳房、前立腺、卵巣、肝臓、腎臓、及び肺を含む固形腫瘍、を含む様々な悪性腫瘍で示された(ヒト腫瘍におけるSSTR3発現の経験的データは未公開であり、データは示していない)。
【0158】
開示された新規SSTR-3リガンドのセラグノスティクス放射性リガンドとしての可能性のある使用は、SSTR-2又は非選択的アナログでは有効性に限界がある様々な異常の診断及び治療に使用できることを強調しておきたい。
【0159】
記載の新規SSTR-3アナログの別の可能な適応は、がん治療における可能な使用である。SSTR-3及びアポトーシスの特異的なシグナル伝達により、これらのリガンドを様々な腫瘍の細胞毒性化学療法及び放射線療法の単独療法又は共力剤のいずれかとして使用できる可能性がある。記載の新規スーパーアゴニストによるSSTR-3の活性化により、臨床的に利用可能な細胞毒性治療薬に対するがん細胞の感受性が高められる可能性がある。
【0160】
記載の新規SSTR-3アナログの別の適応は、腫瘍の血管新生におけるSSTR-3の役割を示すことである。スーパーアゴニストによるSSTR-3の相互作用及び活性化は、抗血管新生作用をもたらす可能性があり、これは腫瘍の抑制又は寛解につながる可能性がある。
【0161】
記載の新規SSTR-3アナログのさらなる適応には、成長ホルモンと、IGF-1の放出及び合成とを阻害する治療的可能性が含まれる。この内分泌作用は、先端巨大症、及びGH-IGF-1軸の活性化に関連するその他の異常(これらに限定されないが2型糖尿病、糖尿病性腎症、及び網膜症、及びダウン症候群(dawn syndrome)など)において、成長ホルモンレベルを低下させる可能性がある。
【0162】
記載の新規SSTR-3アナログの別の適応は、クッシング病における治療の可能性である。皮質副腎におけるSSTR-3の発現が示されることにより、コルチゾール放出の阻害剤としてのソマトスタチンの役割、及び下垂体からのACTH放出の阻害が示され得る。
【0163】
記載の新規SSTR-3アナログのさらなる適応には、炎症及び免疫疾患における治療の可能性が含まれる。Bリンパ球及びTリンパ球、単球、及びヒト胸腺などのヒト免疫細胞におけるSSTR-3の発現の適応は、血管透過性の阻害剤として使用することができ、かつリンパ球の増殖及び炎症性サイトカインの分泌を阻害することによって炎症を抑えるために使用することができる。胸腺におけるSSTR-3の過剰発現は、Bリンパ球の産生抑制を介した免疫抑制のためのSSTR-3の活性化として使用することができる。
【0164】
記載の新規SSTR-3アナログの別の適応は、男性の精子形成における治療可能性である。精巣におけるSSTR-3の過剰発現は、男性不妊に関連する様々な異常におけるSSTR-3活性化の治療可能性を示すことが可能である。
【0165】
本出願の実施例で実証されたとおり、配列番号1及び配列番号2並びにそれらのアナログは、SSTR-3に対して高い結合親和性及び選択性を示した。このデータは、これらの配列が成長ホルモン分泌の調節不全に関連する分泌過多の機能性下垂体腺腫の治療薬として使用できることを示している。例えば、配列番号1及び配列番号2並びにそれらのアナログは、オクトレオチド、ランレオチド及びパシレオチドなどの一般的に使用される薬物で生じるような、SSTR-2に関連するインスリン及びグルカゴンの膵臓ホルモンの有害な阻害を伴わずに、先端巨大症患者の(下垂体からの)成長ホルモンの放出を選択的に低減させるのに有益であり得る。
【0166】
キレート剤がDOTAであってもよい、配列番号1及び配列番号2のキレート剤ベースの誘導体及びそれらのアナログは、特許請求される本発明の可能な実施形態である。配列番号1及び配列番号2にコンジュゲートしたDOTAの放射性医薬品及びそれらのアナログは、SSTR-3が過剰発現している腫瘍を有するがん患者の診断及び治療に使用することができる。がんの診断に使用するためには、配列番号1及び配列番号2にコンジュゲートしたDOTA及びそれらのアナログは、これらに限定されないが銅-64又はガリウム-68などの陽電子放出放射性同位元素で放射性標識される。がん治療の使用のためには、配列番号1及び配列番号2にコンジュゲートしたDOTA、並びにそれらのアナログは、ルテチウム177、インジウム111、又はアクチナム225などの陽電子放出放射性同位体で放射性標識される。
【0167】
特定の実施形態において、記載の配列は、先端巨大症、クッシング症候群、ダウン症候群(Dawn Syndrome)、腎症、網膜症、炎症、免疫障害及び細胞老化に関連する男性不妊症の治療に使用される。
【0168】
特定の実施形態では、記載の配列はがんの治療に使用される。いくつかの例では、がんは、白血病、急性白血病(急性リンパ性白血病、骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、及び骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤血球性の白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行性及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病及び骨髄異形成などを含む血液腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、以下を含む肉腫及び癌腫などの固形腫瘍である:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵がん、乳がん、肺がん(小細胞肺がん、及び非小細胞肺がんなど)、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、メラノーマ、及び中枢神経系腫瘍(神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、音響神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫など)。いくつかの実施形態において、がんは、副腎がん、カルチノイド腫瘍、メルケル細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫、小細胞癌、及び大細胞カルチノイド腫瘍などの神経内分泌がんである。いくつかの実施形態では、がんは、血管肉腫、乳児血管腫、先天性血管腫、カポジ型血管内皮腫(kaposiform hemangioendothelioma:KHE)、及び化膿性肉芽腫などの血管腫瘍などの血管腫瘍である。
【0169】
本明細書に記載の配列の1つを診断的に使用する場合、好ましい用量は、体重60kgあたり40マイクログラム(μg)~200μgの量である。本明細書に記載の配列の1つを治療的に使用する場合、好ましい用量は、体重60kgあたり200マイクログラム(μg)~800μgの量である。
【0170】
本明細書に記載の実施形態は、以下に関する:一般式:R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-Rを有するソマトスタチンアナログであって、式中、Rは活性剤であるか、又は存在せず;Rはリンカーであるか、活性剤であるか、又は存在せず;RはArg、Lys、又はOrnのいずれかであり;又は任意に3個又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、式中、RはArg、Lys又はOrnであり;RはPhe又はTyrのいずれかであり;かつ;Rは構造としてN-チオアルキル-グリシン、
【化3】
を有するNTAGであり、式中、任意に、ジスルフィド結合がRとシステイン残基との間に形成される;又はその薬学的に許容される塩である(nは1~5のメチレン基の数である);RはPhe又はTyrのいずれかであり;ここで、RがArgである場合、R又はRのいずれかはTyrである。任意に、RはLysである。任意に、R及びRはPheである。任意に、RはArgであり、R又はRのいずれかはTyrである。任意に、Rは1つ又は複数の活性剤を含む。任意に、前記活性剤は、以下からなる群から選択される:画像化部分、治療的部分、色素、蛍光部分、毒素、キレート剤、金属原子部分、放射性原子部分、ナノ粒子、エチレングリコールポリマー、光増感剤、リポソーム構成成分、ミセル構成成分、及び脂質又はRGDなどの腫瘍標的部分。任意に、Rはキレート剤部分である。任意に、Rは、γ-アミノ酪酸、1~3個のアミノ酸、アミノオクタン酸、4-アミノメチル安息香酸、及びグルタル酸からなる群から選択されるリンカーである。任意に、R又はRは、アミノ酸配列、Arg-Gly-Aspを含む。任意に、活性剤部分は、以下からなる群から選択されるキレート剤部分である:DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)。任意に、活性剤部分は、ガリウム、銅、及びルテチウムからなる群から選択される金属原子を含む。任意に、活性剤部分は、以下からなる群から選択される原子を含む放射性原子含有部分である:ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、トリチウム、窒素-13、酸素-15及びリン-32、テクネチウム-99m、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、エルビウム-169、ガリウム-67、ガリウム-68、銅-64、インジウム-111、鉄-59、ルテチウム-175、ルテチウム-177、ラジウム-223、ルビジウム-82、サマリウム-153、セレン-75、ストロンチウム-89、タリウム-201、及びイットリウム-90、アクチニウム225。任意に、活性剤部分は、フェノチアジン、キサンテン及びポルフィリンからなる群から選択される光増感剤である。任意に、活性剤部分は、ニラパリブ、アクチノマイシン、カンプトテシン、ドキソルビシン、及びゲンタマイシンからなる群から選択される毒素である。任意に、RはLys又はOrnである。任意に、RはPheである。任意に、nは2である。任意に、前記ソマトスタチンアナログは、配列番号2、9、10、17、21、22、23又は24の構造を有する。さらに、少なくとも1つのソマトスタチンアナログと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が記載されている。任意に、前記ソマトスタチンアナログ又は医薬組成物は、SSTR3に関連する疾患の治療又は診断に使用される。任意に、疾患は以下からなる群から選択される:がん、腫瘍、先端巨大症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症又はダウン症候群、クッシング病、炎症、免疫障害、細胞老化、及び男性不妊症。前記がんは、以下からなる群から選択される:白血病、急性白血病、リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、及び骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤血球性白血病、慢性白血病、骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(緩徐進行性及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖症、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病及び骨髄異形成症、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸がん、リンパ系悪性腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がんなど)、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、メラノーマ、中枢神経系腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、音響神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経内分泌がん、副腎がん、カルチノイド腫瘍、メルケル細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、傍神経節腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様がん、副腎褐色細胞腫、小細胞癌、大細胞カルチノイド腫瘍、血管腫瘍、血管肉腫、小児血管腫、先天性血管腫、カポジ型血管内皮腫(kaposiform hemangioendothelioma:KHE)、及び化膿性肉芽腫。
【0171】
一実施形態によれば、本明細書に記載されるのは、成長ホルモン放出に関連する疾患、又はSSTR3の過剰発現に関連するがんに関連する疾患の治療又は診断に使用するためのソマトスタチンアナログであり;前記アナログは、一般式:R-R-DPhe-R-Cys-R-DTrp-Lys-Thr-R-Rを有し、式中、Rは活性剤であるか、又は存在せず;Rはリンカーであるか、活性剤であるか、又は存在せず;RはArg、Lys、又はOrnのいずれかであり;又は任意に3個又は2個のアミノ酸Glu-Glu-R又はGlu-Rのポリペプチドであり、式中、RはArg、Lys又はOrnであり;RはPhe又はTyrのいずれかであり;かつ;Rは構造としてN-チオアルキル-グリシンを有するNTAGであり、
【化4】
nは、1~5のメチレン基の数であり;かつRは、Phe又はTyrのいずれかであり、任意に、Rとシステイン残基との間にジスルフィド結合が形成される;又はその薬学的に許容される塩である。任意に、Rは1つ又は複数の活性剤を含む。任意に、活性剤は、以下からなる群から選択される:画像化部分、治療的部分、色素、蛍光部分、毒素、キレート剤、金属原子部分、放射性原子部分、ナノ粒子、エチレングリコールポリマー、光増感剤、リポソーム構成成分、ミセル構成成分、及び脂質又はRGDなどの腫瘍標的部分。任意に、R1はキレート剤部分である。任意に、Rは、γ-アミノ酪酸、1~3個のアミノ酸、アミノオクタン酸、4-アミノメチル安息香酸、及びグルタル酸からなる群から選択されるリンカーである。任意に、R又はRは、アミノ酸配列、Arg-Gly-Aspを含む。任意に、活性剤部分は、以下からなる群から選択されるキレート剤部分である:DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(2-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)酢酸)、NODA(4-(4,7-ビス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1-イル)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸)及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)。任意に、活性剤部分は、ガリウム、銅、及びルテチウムからなる群から選択される金属原子を含む。任意に、活性剤部分は、以下からなる群から選択される原子を含む放射性原子含有部分である:ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、トリチウム、窒素-13、酸素-15及びリン-32、テクネチウム-99m、クロム-51、コバルト-57、コバルト-58、エルビウム-169、ガリウム-67、ガリウム-68、銅-64、インジウム-111、鉄-59、ルテチウム-175、ルテチウム-177、ラジウム-223、ルビジウム-82、サマリウム-153、セレン-75、ストロンチウム-89、タリウム-201、及びイットリウム-90、アクチニウム225。任意に、活性剤部分は、フェノチアジン、キサンテン及びポルフィリンからなる群から選択される光増感剤である。任意に、活性剤部分は、ニラパリブ、アクチノマイシン、カンプトテシン、ドキソルビシン、及びゲンタマイシンからなる群から選択される毒素である。任意に、RはArg、Lys又はOrnのいずれかである。任意に、RはPheである。任意に、RはPheである。任意に、nは2である。任意に、成長ホルモン分泌に関連する疾患は、先端巨大症、2型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、又はダウン症候群である。任意に、使用のためのソマトスタチンアナログは、配列番号1~28のいずれか1つの構造を有する。任意に、ソマトスタチンアナログは、1回の投与あたり40~800マイクログラムの量で投与される。
【0172】
以下の実施例は、特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を記載の特定の特徴又は実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0173】
実施例1:ヒト組み換えソマトスタチン受容体に対するソマトスタチンアナログの結合プロファイル
この実施例では、ヒトクローン化ソマトスタチン受容体1、2、3、4、及び5に対する試験化合物の親和性を評価した。
【0174】
得られた結果の妥当性を保証するために、各アッセイに不可欠な部分として標準物質により実行した。膜貫通型ソマトスタチン受容体を発現するトランスフェクト細胞の膜調製物への125I-Tyr11-SRIF-14の結合を阻害する効力を測定することにより、ソマトスタチンアナログを親和性及び効力について試験した。ヒトクローン受容体SSTR-1、又はSSTR-2、又はSSTR-3への結合を、安定かつ選択的にトランスフェクトしたCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞で評価し、STSR-4及びSSTR-5への結合は、安定かつ選択的にトランスフェクトしたChem-1(Rat ChemiSCREEN)細胞で評価した。細胞膜は、プロテアーゼ阻害剤の存在下で、Tris緩衝液中でホモジナイズし、濃度の異なる試験ペプチドで放射性標識リガンド125I-Tyr11-SRIF-14と2時間(SSTR-1、3、4、5)及び4時間(SSTR-2)インキュベートした。結合反応液を濾過し、フィルターを洗浄し、結合した放射能をガンマカウンターで計測した。非特異的結合は、1.0μMの非標識SRIF-14の存在下で規定した。
【0175】
骨格環状ソマトスタチン受容体3ペプチドの固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis:SPPS):
配列番号1の合成-リンクアミドMBHA樹脂(100~200メッシュ、1% DVB、0.77meq/g、Lot:#3228「Chem-Impex」)。リンクアミドMBHA樹脂(1.5g、総量1.155mmol)をDMF中で一晩予備膨潤させた。焼結ガラス底を備えた反応容器で振とうしながら行った。Fmoc保護基は、DMF中20%ピペリジンとの反応(15mL、2×15分)、次いでDMF洗浄(15mL×7×2分)により樹脂から除去した。Fmocの除去はニンヒドリン試験でモニターした(陽性)。Fmoc-NTEG(Acm)-OHビルディングユニット(1.484g、3.465mmol、3当量)、HOBt一水和物(531mg、3.465mmol)、DIC(536.5mL,3.465mmol)をDMF(16mL)中、室温で2時間かけてカップリングサイクルを行った。反応完了は、定性的ニンヒドリン試験を用いてモニターした(カイザー試験、陰性)。カップリング後、ペプチジル樹脂をDMFで洗浄した(15mL、7×1分)。このビルディングユニットのFmoc除去及び洗浄工程は上記のとおりに行った。Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Thr(t-Bu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-D-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Cys(Acm)-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OHのカップリング工程は上記のとおり行い(Fmoc-AA-OH 3.465mmol,HOBt一水和物 3.465mmol,DIC 3.465mmolを16mL DMF中で,1.5時間、室温にて)、ニンヒドリン試験でモニターした。Fmoc-Arg(Pbf)-OH(2.248g、3.465mmol)、PyBroP(1.615g、3.465mmol)、DIEA(1.21mL、6.93mmol)の混合物を15mLのDMFに加え、室温で一晩の反応時間により、Fmoc-Arg(Pbf)-OHのカップリングを繰り返した。Fmoc-D-Phe-OHのカップリングは、Fmoc-Arg(Pbf)-OHについての記載と同じ反応条件下で、反応時間1.5時間、室温(rt)でPyBroPを用いて実施した。
【0176】
環化(S-S架橋形成):ペプチジル樹脂をDMF/HO 4:1(15mL×2×2分)で洗浄した後、DMF/HO 4:1(30mL)中のI(2.93g、11.55mmol、10当量)を40分間室温で添加した。ペプチジル樹脂を洗浄した(DMF/H0 4:1、8×1.5分、DMF 5×1.5分、DCM 3×1.5分、CHCl 3×1.5分、DMF中の2%アスコルビン酸5×2分、DMF 5×1.5分)。
【0177】
環化後、該樹脂を4:1の割合で2つの画分に分けた。ペプチジル樹脂(0.231mmol)の1/5の最終的なFmoc除去は、DMF中20%ピペリジン(15mL、2×15min)で行い、その後DMF洗浄(7×2分)を行った。Fmoc除去後、ペプチジル樹脂をDCMで洗浄し(5×1分)、減圧下で乾燥させた。該ペプチドは、94%TFA、3%HO、3%TISの7mL冷混合物との、0℃で15分、及び室温で1.5時間の反応により樹脂から切断した。該樹脂は濾過により除去した。濾液を窒素下で蒸発させ、得られた油状産物を冷ジエチルエーテルでトリチュレーション(triturate)し、次いでエーテル画分をデカンテーションした。沈殿を冷ジエチルエーテルで数回洗浄し、減圧下で乾燥させて白色粉末を得た(粗ペプチド182mg、LC-MS:YS-001-010-B)。
【0178】
配列番号2の合成-上記の詳細な説明に記載のとおり、各配列の位置を置換して、上記の方法に従って合成した。
【0179】
がDOTAである配列の合成:保護したペプチジル樹脂(0.154mmol)の最終的なFmoc脱保護は、DMF中20%ピペリジン(2.5mL、2×15分)、次いでDMF洗浄(2.5mL、7×2分)を用いて行った。Fmoc脱保護後、DOTA(OtBu)(265mg、0.462mmol)、PyBroP(215mg、0.462mmol)、DIEA(161μL、0.924mmol)をDMF(2mL)中で用いて、DOTA(OtBu)とペプチジル樹脂(0.154mmol)とのカップリングを2回行った。この混合物を室温で一晩撹拌した。カップリング後、該樹脂をDMFで洗浄した(2.5mL、5×1.5分)。
【0180】
がCPTである配列の合成:DIEA(724μL、4.16mmol)を、DMF(25mL)中の予め調製したCPTの4-ニトロフェニルカーボネート誘導体(1.067g、2.079mmol)の懸濁液に添加した。この懸濁液を30分間撹拌した。DMF中の触媒量のDMAP(1mL)を懸濁液に加えた。この懸濁液を、保護されたペプチジル樹脂(0.693mmol)の露出した第一級アミンに加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。カップリング後、該樹脂をDMFで洗浄した(10mL、5×1.5分)。
【0181】
がニラパリブである配列の合成:保護されたペプチジル樹脂(0.0624mmol)の最終的なFmoc-脱保護は、DMF中20%ピペリジン(1mL、2×15分)で実施し、次いでDMF洗浄(1mL、7×2分)を行った。このペプチジル樹脂をDMF(3.5mL)中の無水グルタル酸(107mg,0.936mmol)、DIEA(326 μL、1.872mmol)と40分間、室温で反応させた。該樹脂をDMFで洗浄した(1mL、5×1.5分)。カルボキシル部分の予備活性化を、DMF(2.7mL)中、PyBrop(291mg、0.624mmol)、DIEA(217μL、1.248mmol)を用いて、室温で20分間行った。該樹脂をDMFで洗浄した(1mL、5×1.5分)。ニラパリブ(50mg、0.156mmol)、DIEA(65μL、0.3744mmol)、触媒量のDMAPをDMF(1mL)中で用いて、ニラパリブとペプチジル樹脂(0.0624mmol)のカップリングを行った。混合物を50℃で3時間撹拌した。カップリング後、該樹脂をDMFで洗浄した(1mL,5×1.5分)。
【0182】
さらなる配列は、配列に応じてRとRを適切に適合させながら、上記と同じ手順で合成した。
【0183】
以下の表は、試験ペプチドの結合親和性の評価に使用した各々のソマトスタチン受容体に対する結合アッセイの条件を示している。すべてのアッセイは、25℃下で放射性リガンド結合の定量法で行った。ビヒクルは1% DMSOであり、インキュベーションバッファーは25mM HEPES、pH 7.4、5mM MgCl、1mM CaCl、0.1% BSAであった。非特異的結合リガンドは1.0μM SRIF-14であった。有意性の基準は、最大阻害率の50%以上とした。表2は、天然ホルモンSRIF14のヒトクローン化SSTR1~5への特異的結合を示している。結果は、特異的結合をIC50及びKi値として示す。これらの結果は、「冷」SRIF-14の濃度範囲での放射性標識[125I]Tyr11-SRIF-14の置換により得られた。この特異的結合データを、発現した各クローン化受容体のトランスフェクト細胞系における濃度であるBmax値の算出に使用した。
【表2】
【0184】
IC50値の結果は、MathIQTM(ID Business Solutions Ltd.,英国)を用いた非線形最小二乗回帰分析により決定した。阻害定数(Ki)の値は、Cheng及びPrusoffの式(Cheng,Y.,Prusoff,W.H.,Biochem.Pharmacol.22:3099-3108,1973)を使用し、試験化合物の観察されたIC50、アッセイで使用した放射性リガンドの濃度、及びリガンドのKDの履歴値(Eurofins Panlabs,Inc.で実験的に得られたもの)を使用して計算した。競合結合曲線の傾きを定義するヒル係数(nH)は、MathIQTMを用いて計算した。
【0185】
以下の表3は、試験ペプチド配列番号1~6のヒト組換え型ソマトスタチン受容体1~5に対するIC50、Ki値及びHill係数値を、天然ホルモンSRIF-14と比較して示す。以下の表4の結果は、スクリーニングモードにおける配列番号7~28の結合親和性の値を示す。データは、クローン化受容体SSTR1~5のそれぞれについて、試験化合物配列番号7~28による放射性標識[125I]Tyr11-SRIF-14の1nM及び10nMでの置換率(%パーセンテージ)を示す。
【表3】
【0186】
表3のデータから、配列番号1~6はヒトSSTR3のナノモルリガンドであり、他のSSTRに対して親和性が著しく低いのに対して、非常に選択的であるソマトスタチン受容体3アナログであることがわかる。

【表4】
【0187】
表3のデータから、配列番号7~28は、他のSSTRに対する顕著に低い親和性と比較して、ヒトクローン化SSTR3に対して高い親和性及び選択性を示し、これはSSTR-3の過剰発現に関連する疾患又は病態に対して多くの治療上の利点を有する可能性があることがわかる。
【0188】
実施例2:放射性標識した骨格環状SSTR-3アナログでのin vivo動態比較試験
このin vivoでの実施例では、配列番号4の腫瘍対腎臓の取り込み、及び配列番号1の2位のアルギニンの配列番号2のリジンへの置換の効果を評価した。
【0189】
この置換の根拠は、アルギニンを塩基性の低いリジンに置き換えることで、ペプチドの電荷を減らすことにあった。承認された放射性リガンドであるソマトスタチンアナログ-Lutathera(登録商標)は、両親媒性かつ陽イオン性のため、腎毒性を引き起こすことが知られている。したがって、ソマトスタチンの配列へのアルギニンの付加は、表面活性の増加、非特異的結合、オフターゲットの有害薬物反応、及び腎臓での滞留の増加をもたらし、これにより、がんの放射性リガンド療法としての使用が妨げられるであろう。
【0190】
上記の実施例1の記載のとおり、SSTR-3に対する配列番号2の高い親和性の選択性を維持するアルギニンのリジンへの置換の成功により(表3に示す)、このアナログは放射性リガンド治療及び診断のためのより良い候補として改善することができる。配列番号4及び配列番号10は、それぞれ配列番号1及び配列番号2のガリウム標識アナログである。放射性標識の後、放射性リガンドを麻酔したナイーブマウスに静脈内投与により注入した。マウスは、放射性リガンドの体内動態プロファイルを評価するためにPET-CTイメージングを受けた。この研究の比較データは、腎臓(図1)で描かれ、膀胱イメージング(図2)で検証されるとおり、放射性標識した配列番号2は、放射性標識した配列番号1と比較して、腎臓からのペプチドのクリアランスが有意に高いことを示した。同じ実験条件下で、どちらのペプチドも、心臓のPET動態イメージングで描かれたとおり、同様の血液からの排泄プロファイルを示した(図3)。
【0191】
これらのデータは、配列番号2の体内動態及び安全性における配列番号1のアルギニンの配列番号2のリジンへの置換の潜在的な効果に対する主張を支持するものである。このPETデータにより、両ペプチドの血液中からの排泄プロファイルは類似しているが、これらの腎臓での体内動態及び尿中へのクリアランスは有意に異なることが確認された。
【0192】
実施例3:成長ホルモン、インスリン、及びグルカゴンの放出に対するソマトスタチンアナログの比較効果
研究の根拠:承認された薬物オクトレオチドは、SSTR-2に対する高い選択性を持つソマトスタチンアナログである。オクトレオチドは、グルカゴン及びインスリンと同様に成長ホルモン放出の強力な阻害剤である。したがって、SSTR2選択的アナログが利用可能になったことで、GH、グルカゴン、及びインスリンのソマトスタチンの内分泌抑制におけるSSTR2の役割を解明することが可能になった。オクトレオチド及び承認されている他のSSTR2アナログは、先端巨大症(GHの過剰分泌)の治療に適応されているが、インスリン及びグルカゴンのオフターゲット作用を伴う。GH、グルカゴン、及びインスリンの内分泌作用におけるSSTR-3の役割は、配列番号1及び2、並びに本明細書に開示されるそれらのアナログなどのナノモルのSSTR3選択的アナログの欠如に起因して不明である。
【0193】
SSTR3アナログの薬力学的特性のin vivo測定は、知られている手順(Afargan M.ら,2001、Pless J.ら,1986)に従い、ラットで実施した。
【0194】
ペプチド投与の結果としてのGH放出の阻害をWistar雄性ラットで測定した。この研究では、各治療群で5~8匹のラットを使用して、アナログ活性をSSTR2承認薬物オクトレオチドと比較した。
【0195】
体重200~220gのWistar雄性成体ラットを、一定の明暗サイクル(8:00~20:00時間点灯)、温度(21±3℃)、相対湿度(55±10%)で飼育した。実験用飼料及び水道水は不断に利用可能であった。試験動物はすべて一晩絶食させ、食糞を防ぐために金属メッシュのついたケージに入れ、自由に水にアクセスできるようにした。実験当日、ラットをネンブタール(IP、60mg/kg)で麻酔した。麻酔10分後、薬物を100~1000マイクログラム/kgの用量にて皮下注射(S.C.)により投与した。薬物投与の10分後に、GH及びグルカゴン放出の刺激は、0.5g/kgのL-アルギニンの静脈内(i.v.)ボーラス投与により実施し、インスリン放出の刺激は、0.5g/kgのグルコースの静脈内(i.v.)ボーラス投与を受けた別々の動物群で実施した。刺激の5分後にEDTA中に末端血液試料を採取した。血液試料を直ちに遠心分離した。血漿を分離し、測定まで-20℃で凍結保存した。
【0196】
ラット成長ホルモン(rGH)、グルカゴン及びインスリンレベルは、Millipore ELISAキット(Billerica、マサチューセッツ州、米国)を用いて市販のELISAキットにより測定した。ラット血漿GH用ELISAキット、Millipore、カタログ番号:EZRMGH-45Kは、検証済みの検出法である比色サンドイッチELISAプロトコル(Supriya S.ら,2013)にしたがって実施した。ラット血漿インスリン用ELISAキットMilliporeカタログ番号:MMEZRMI13K(Merck)を、検証された検出方法である蛍光比色法プロトコル(Xu,P.Z.ら,2012)にしたがって実施した。ラット血漿グルカゴン用ELISAキットMillipore,カタログ番号:EZGLU-35は、検証された検出法である化学発光サンドイッチELISAプロトコル(Soyeon Y.ら,2021)にしたがって実施した。
【0197】
ラットの血漿中GH、グルカゴン、及びインスリンレベルのデータ解析は、各群の血漿中ホルモンレベルの平均をとることで評価した。3つ以上の群間の統計的比較は、GraphPad Prism 9により、一元配置分散分析(one-way ANOVA)とTukeyの正直有意差(honestly significant difference:HSD)ポストホック検定を用いて行った。Tukeyの多重比較検定は信頼区間95%で実施した。結果は平均値±SEMで表した。
【0198】
結果:L-アルギニン誘導性のGH及びグルカゴン放出に関する内分泌研究の結果を図4、5、6及び7に示す。このデータは、ナノモルSSTR3特異的アゴニストである配列番号1及び配列番号2の両方が、下垂体GH放出の強力な阻害剤であるが、膵臓グルカゴン放出の阻害剤ではないことを示している。配列番号1及び配列番号2は、承認されているSSTR2選択的ソマトスタチン作動薬オクトレオチドと比較して、有意なGH放出阻害効果を示す。これらの結果は、SSTR3が下垂体GH放出の抗分泌促進作用を表すことを示している。グルカゴン放出の結果に基づくと、オクトレオチド、ランレオチド、及びルタセラ(lutathera)について報告されているとおり、膵臓における主要なソマトスタチン受容体はSSTR3ではなくSSTR2であることが強調されるべきである。さらに、グルコース誘導性インスリン放出の内分泌研究の結果は、グルカゴン内分泌プロファイルで観察されたのと同じ傾向を示した。このデータにより、配列番号1及び配列番号2の両方がインスリン放出に影響を及ぼさないが、オクトレオチドは、SSTR2選択的アゴニストについて他で報告されているとおり、インスリンの膵臓放出の抗分泌促進作用を示すことがわかる(図8)。要約すると、これらの内分泌研究は、SSTR3選択的アゴニストが下垂体GH放出の有意な抗分泌促進活性を引き出すが、膵グルカゴン又はインスリン放出の抗分泌促進活性は引き起こさないことを明らかにした。これらの所見は、先端巨大症及び下垂体腺腫におけるSSTR3選択的アゴニストの治療可能性を支持するものである。SSTR3の選択的アゴニストは、SSTR2選択的アゴニストと比較してオンターゲット活性に優れる可能性があり、膵臓に対するオフターゲットの副作用が少ない可能性がある。
【0199】
実施例4:二次薬理学(Secondary pharmacology)-配列番号4のオフターゲット相互作用。168のヒトクローンGPCRに対する細胞作動性及び拮抗性
ペプチドが相対的に柔軟な分子であると考えられていることは、医薬品化学ではよく知られている。α骨格の炭素のキラリティが広範囲に及ぶため、ほとんどのペプチドは、その生物空間において複数のコンフォメーションをとる。この比較的高い分子柔軟性により、内因性と合成との両方のペプチドベースの薬剤が、オンターゲットの受容体とは異なるGPCRなどのオフターゲット受容体との相互作用を受けやすくなる。この非特異的GPCRとのよく知られたクロストークは、多くのホルモン合成アナログについて報告され、特にソマトスタチンリガンドについて報告されている。この潜在的な非特異的クロストークは、予期せぬ副作用を引き起こす可能性があり、それゆえ、医薬品開発のための最適なリード化合物を選択する際の主要な薬理学的懸念の一つとなっている。注目すべきは、ホルモンソマトスタチン及びその承認された合成アナログが、ナノモル範囲内でオフターゲットGPCRと有意な(ナノモルの)相互作用を示すことである。例えば、ヒトホルモンコルチスタチンはすべてのSSTRと相互作用し、ヒトSSTR1~5と同様のナノモルの親和性を示す(Avron D.S.ら,2000、Thomas G.ら,2018)。承認されているソマトスタチン薬物オクトレオチドは、オピエート受容体及びニューロメジン受容体に非特異的な結合性を示すことが報告されている(Afarganら,2001)。ホルモンソマトスタチン及びその承認されたSSTR2選択的アナログであるオクトレオチド(octreotide)、オクトレオテート(octreotate)(これは承認されたセラノスティクス(teranogstics)のDOTATATE、DOTATETOC及びlutathateraの薬理学的配列である)及びランレオチド(lanreaotide)は、血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide:VIP)受容体に対してナノモル親和性を示す(Irene V.ら、1994、Orbuch M.ら、1993)。以下に、168のヒトクローン化GPCRに対するSSTR3選択的アナログのプロトタイプとして、配列番号4の可能なオフターゲット相互作用の評価を記載する。
【0200】
この例では、168のhGPCRに対するhSSTR3選択的アナログのプロトタイプとしての配列番号4の作動的(agnostic)モードと拮抗的(antagonstic)モードとの両方の細胞オフターゲット相互作用を、Eurofinsの創薬パネルDiscoveRxを用いて評価した。さらに、SSTR3に対するオンターゲット親和性結合を1000超過で上回る1マイクロモル過剰投与での配列番号4のオフターゲット相互作用を測定した。
【0201】
このアッセイは、Eurofins(カリフォルニア州、米国)によるPathHunter β-アレスチン酵素断片相補性(enzyme fragment complementation:EFC)技術を用いて行った。PathHunter(登録商標)β-アレスチンアッセイは、DiscoveRxが開発した酵素断片相補性(EFC)と呼ばれる技術を用い、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を機能的レポーターとして用いて、GPCRの活性化を均一な非画像化アッセイフォーマットでモニターする。この酵素は、細胞内で融合タンパク質として発現する2つの不活性相補部分(EAは酵素受容体(Enzyme Acceptor)、EDは酵素供与体(Enzyme Donor))に分割される。EAはβ-アレスチンに融合し、EDは目的のGPCRに融合する。GPCRが活性化され、β-アレスチンが受容体に取り込まれると、EDとEAとの相補が起こり、β-Gal活性が復活し、これは化学発光PathHunter(登録商標)検出試薬を用いて測定される。
【0202】
細胞の取り扱い:1. PathHunter細胞株を、標準的な手順に従って冷凍ストックから増殖した。2. 白壁の384ウェルマイクロプレートに総容量20μLで細胞を播種し、試験前に37℃で適切な時間インキュベートした。アゴニストの構成:1. アゴニストの決定には、細胞を試料とインキュベートして反応を誘導した。2. 試料ストックの中間希釈を実行して、アッセイバッファー中で5×の試料を生成した。3. 5μLの5×試料を細胞に加え、37℃又は室温で90分間又は180分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。アンタゴニストの構成:1. アンタゴニストを決定するために、細胞をアンタゴニストとプレインキュベートし、続いてEC80濃度でアゴニストを投与した。2. 試料ストックの中間希釈を実行して、アッセイバッファー中で5×試料を生成した。3. 5μLの5×試料を細胞に加え、37℃又は室温で30分間インキュベートした。ビヒクル濃度は1%であった。4. アッセイバッファー中の6×EC80アゴニスト5μLを細胞に加え、37℃又は室温で90分間又は180分間インキュベートした。シグナル検出:1. アッセイシグナルは、PathHunter検出試薬カクテル12.5μL又は15μL(50%v/v)を単回添加し、その後室温で1時間インキュベートすることにより生成した。2. マイクロプレートは、化学発光シグナル検出のため、PerkinElmer Envision(商標)装置でシグナル発生後に読み取った。データ分析:化合物活性はCBISデータ解析スイート(ChemInnovation,カリフォルニア州)を用いて解析した。1. アゴニスト(作動的)モードのアッセイでは、以下の式を用いて活性率を算出した:活性率%=100%×(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(MAX対照リガンドの平均-ビヒクル対照の平均RLU)。2. アンタゴニスト(拮抗的)モードのアッセイでは、阻害率は以下の式で計算した:阻害率%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU))。50%超過の阻害(又は基礎条件下でのアッセイでは刺激)を示す結果は、試験化合物の有意な効果を表すと考えられる。50%は、さらなる調査(濃度反応曲線からIC50値又はEC50値を決定する)のための最も一般的なカットオフ値であり、本発明者らも推奨したい。
【0203】
25%~50%の阻害(又は刺激)を示す結果は、弱~中程度の効果を示している(ほとんどのアッセイでは、実験間のより大きな変動が発生する可能性がある範囲内にあるため、さらなる試験で確認する必要がある)。25%未満の阻害(又は刺激)を示す結果は有意ではないと考えられ、ほとんどが対照レベル付近のシグナルの変動に起因すると考えられる。
【0204】
低~中程度の負の値には実質的な意味はなく、対照レベル周辺のシグナルの変動に起因する。高濃度の試験化合物で得られることがある高い負の値(50%以上)は、一般にアッセイにおける試験化合物の非特異的作用に起因する。まれに、これらは試験化合物のアロステリック効果を示唆することもある。
【0205】
In vitro細胞スクリーニング研究において、配列番号4はヒトSSTR3に対してのみ有意な選択性を示し、167のオフターゲットhGPCRのアゴニスト的又はアンタゴニスト的な相互作用は認められなかった。このデータは、超選択的ソマトスタチンSSTR3アゴニストリガンドとして知られているソマトスタチンリガンドの中で、配列番号4及び本明細書で開示されるそのアナログの新規性及び可能性のある治療上の優位性を示している。
【表5】
【0206】
実施例5:二次薬理学(Secondary pharmacology)- ヒトクローン化GPCRパネルにおける配列番号3のオフターゲット相互作用。オフターゲットの44ヒトクローンGPCRに対する結合及び酵素活性
この実施例では、hSSTR3選択的アナログのプロトタイプとしての配列番号3についての44のヒトクローン化GPCRに対するオフターゲット相互作用、及びSSTR3に対するオンターゲット親和性結合を1000超過で上回る1マイクロモルの過剰投与でのGPCR媒介細胞酵素活性を評価した。
【0207】
アッセイはEurofins Cerep(Celle l’Evescault、フランス)で行った。化合物の結合は、各標的に特異的な放射能標識リガンドの結合阻害率%として計算した。化合物の酵素阻害効果は、対照酵素活性の阻害率%として計算した。各実験で、該当する場合、それぞれの参照化合物を配列番号3と同時に試験し、データをEurofinsにて測定された過去の値と比較した。実験は、Eurofinsの検証標準操作手順に従って認められた。50%超過の阻害(又は基礎条件下でのアッセイでは刺激)を示す結果は、試験化合物の有意な効果を表すと考えられる。50%は、さらなる調査(濃度反応曲線からIC50値又はEC50値を決定)のための最も一般的なカットオフ値であり、本発明者らも推奨したい。
【0208】
25%~50%の阻害(又は刺激)を示す結果は、弱~中程度の効果を示している(ほとんどのアッセイでは、実験間のばらつきが大きくなる可能性がある範囲内にあるため、さらなる試験で確認する必要がある)。
【0209】
25%未満の阻害(又は刺激)を示す結果は有意ではないと考えられ、ほとんどが対照レベル付近のシグナルの変動に起因すると考えられる。
【0210】
低~中程度の負の値には実質的な意味はなく、対照レベル周辺のシグナルの変動に起因する。高濃度の試験化合物で得られることがある高い負の値(50%以上)は、一般にアッセイにおける試験化合物の非特異的作用に起因する。まれに、これらは試験化合物のアロステリック効果を示唆することもある。結果は、対照の特異的結合測定値に対するパーセンテージで表し、
【数1】
かつ配列番号3の存在下で得られた対照の特異的活性の阻害率として示した。
【0211】
IC50値(対照の特異的活性の最大半数阻害を引き起こす濃度)、EC50値(対照の基礎活性の最大半数増加をもたらす濃度)、及びヒル係数(nH)は、ヒル方程式曲線フィッティングを使用して平均反復値で生成した阻害/濃度反応曲線の非線形回帰分析によって決定した。
【数2】
式中、Y=特異的活性、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50又はEC50、及びnH=傾斜係数。
【0212】
この解析は、Cerepで開発されたソフトウェア(Hill software)を用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 Windows(登録商標)用((著作権)1997 SPSS Inc.)で生成されたデータとの比較によって検証された。
【数3】
式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、KD=受容体に対する放射性リガンドの親和性。KDの決定にはスキャッチャードプロットが用いられる。
【0213】
配列番号3の安全性薬理学パネルは、臨床的に重要なヒトクローン化GPCRとの相互作用を示さない。さらに、このデータから承認薬オクトレオチドなどのソマトスタチンアナログのアヘン剤受容体との既知のオフターゲット相互作用は、hSSTR3のオンターゲットIC50の約1000倍で超える1マイクロモルの過剰投与でも配列番号3については示されないことがわかった。
【表6】
【0214】
実施例6:一次薬理学- SSTR3選択的配列番号4と、ホルモンソマトスタチン(SRIF-14)及び承認されたSSTR2選択的薬物DOTATATEとのオンターゲット細胞アゴニスト活性の比較
この実施例では、SSTR3及びSSTR2をそれぞれトランスフェクトしたCHO細胞において、ヒトソマトスタチンホルモンSRIF-14と、SSTR2特異的薬物DOTATATEとの比較において、SSTR3特異的リガンドとしての配列番号4の細胞アゴニスト活性を以下の方法により評価した:比較特異的アゴニスト活性は、各試験化合物についてEC50値の濃度応答によって決定した。アゴニスト活性は、実施例4に記載のとおり、リガンドのβ-アレスチン媒介性受容体のインターナリゼーションの誘導により評価した。
【0215】
hSSTR3をトランスフェクトしたCHO細胞での比較試験により、配列番号4は、β-アレスチン媒介性のSSTR3インターナリゼーションの有意な細胞アゴニスト活性を示すことがわかった。配列番号4と天然ホルモンSRIF-14は、どちらも同等のEC50を示した。驚くべきことに、配列番号4のβ-アレスチン応答強度は、天然ホルモンSRIF-14の2倍で上回った。このアゴニストシグナルの増加により、配列番号4はhSSTR3のスーパーアゴニストと決定される。同じ実験条件下で、SRIF-28とDOTATATEとの両方のhSSTR2のアゴニストインターナリゼーションの最大応答は、hSTSR3の配列番号4で観察された最大応答の約半分であった。これらの比較細胞応答は、配列番号4がhSSTR3の新規(初めて知られる)スーパーアゴニストであることを示している。結果は以下の表7に示されている。
【表7】
【0216】
実施例7:放射性標識化合物のオンターゲット細胞インターナリゼーションの比較
放射性標識化合物の腫瘍取り込みを予測するために、SSTR3をトランスフェクトしたヒトがん細胞株において、177Lu放射性標識した配列番号6の細胞内インターナリゼーションを配列番号19と比較して評価するために、以下の例を実施した。さらに、この例は、細胞内取り込みがSSTR3中のSSTR3を介した受容体媒介性のインターナリゼーションであり、修飾したジ-Pheが腫瘍取り込みを増強することを示している。
【0217】
SSTR3受容体媒介性インターナリゼーションの比較は、培養がん細胞を177Lu放射性標識化合物とインキュベートし、細胞培養物の洗浄後に細胞内取り込みを決定することによって決定した。受容体媒介性プロセスとしてのインターナリゼーションを評価するために、同じ実験を高濃度の冷SSTR3リガンドの存在下で行った。
【0218】
U2OS細胞は、加湿雰囲気(5%CO、95%空気)下、+37℃で単層として増殖する。U2OSがん細胞はプラスチックフラスコに接着している。実験的に使用するために、これらのがん細胞は、カルシウム又はマグネシウムを含まないハンクス培地中で、トリプシン-バーセンで5分間処理することによって培養フラスコから剥離され、完全培地の添加によって中和される。
【0219】
このアッセイは以下のとおり行った:トランスフェクトしたヒト骨肉腫細胞SSTR3-tGFP-U2OSを6ウェルプレートに、アッセイ前24時間に、アッセイ当日に80~90%のコンフルエントになるようにプレーティングした。アッセイ前30分に培地を除去し、調整したダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Sigma)で細胞を洗浄し、新しい培地(250μL)を加えた。総細胞内取り込みについては、20nMの放射性リガンド配列番号6又は配列番号19を細胞培地(250μL)中で希釈し、各ウェルに3重に添加した(最終放射性リガンド濃度:10nM)。非特異的結合については、20μM(1000過剰)の冷配列番号4又は冷配列番号6又は配列番号1、及び20nMの177Lu-DOTA-PTR-58放射性リガンド溶液を細胞培地(250μL)中に、各ウェルに3重に添加した(最終冷ペプチド濃度:10μM;最終放射性リガンド濃度:10nM)。プレートを+37℃(5%COを含む空気、加湿雰囲気)で4時間インキュベートした。インキュベーション終了後、プレートを氷上に置き、インターナリゼーションプロセスを停止させた。遊離放射性リガンド画分を含む培地を回収し、細胞を氷冷DPBSで2回洗浄した(2×750μL)。培地及びPBS洗浄液を、各ウェルから同じバイアル瓶に回収した(最終容量1500μL)。細胞ペレットの放射能をガンマカウンターで計数し、投与された放射能の細胞の取り込みをパーセントで表した。洗浄媒質の放射能測定値をマスバランスに使用した。
【0220】
ヒトSSTR3をトランスフェクトした骨肉腫U2OS細胞での比較試験により、177Lu放射性標識した配列番号6及び19は、それぞれ22%及び30%の有意な細胞インターナリゼーションを示すことがわかった。これらの細胞インターナリゼーション値の有意性は、米国食品医薬品局が公表したNDAファイル(NDA 207800)で開示されている、承認薬Lutathera(登録商標)(177Lu-DOTATATE)の報告された細胞インターナリゼーション(4時間で約30%)に匹敵する。有意なブロッキングの結果は、放射性リガンド-SSTR3複合体の受容体媒介性のメカニズムの特異性を支持するものであることを強調しておく。さらに、ブロッキング実験では、非標識DOTAコンジュゲート配列番号3、又は冷69/71Ga標識した配列番号4、又は冷175Lu標識した配列番号6のいずれが、すべてインターナリゼーションをブロック可能であったことを示し、これは本明細書に開示されるすべてのSSTR3選択的リガンドがSSTR3受容体インターナリゼーション反応のスーパーアゴニストであり、かつ選択的であるという主張を支持している。配列番号19と配列番号6との比較のインターナリゼーションデータは、腫瘍取り込みを増強するためのRとしての追加のジ-Pheの仮定を支持する。ジ-Pheアナログ配列番号19のインターナリゼーション値は、配列番号6のインターナリゼーションを約50%上回った。その結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0221】
実施例8:一次薬理学(Primary pharmacology)-トランスフェクトしたSSTR3 HEK293細胞の異種移植片を保持するげっ歯類におけるin vivoでの生体内分布及び腫瘍取り込み
この実施例では、トランスフェクトしたSSTR3細胞の異種移植片を有するげっ歯類におけるSSTR3選択的放射性リガンドの画像化性能、生体内分布及び腫瘍取り込みを以下の方法を使用して測定した:動物の取り扱いは、欧州理事会指令2010/63/UEに従って行った。すべての実験手順は、施設倫理委員会及び地元当局により承認された。生体内分布研究には、雌性ヌードnu/nu Balb/cマウス又はヌードnu/nuラット(Charles River)を用いた。動的PET-CTイメージング実験は、放射性標識トレーサーの静脈内注入後、イソフルラン麻酔下で、マウスでは240分まで、ラットでは270分まで実施した。実験はすべて明暗サイクルの明期に行った。生体内分布は、PET-CTスキャンの定量分析によって決定し、総注入量のcmの割合 %(%ID/g)として計算するか、又は画像から得られた放射能濃度Cimgと注入された放射能と全身濃度Cinjとの比率であるSUVの値によって計算した。
【0222】
表9は、68Ga放射性標識した配列番号4の生体分布の定量的PET-CT解析を要約したものである。データはマウスとラットとの両方でのトレーサーの有意な腫瘍取り込みを示す。ラットにおける腫瘍の腎臓に対する比率(腫瘍/腎臓)は、陽性であり、腎臓より約50%上回る腫瘍取り込みであった。このデータは、SSTR3陽性腫瘍の診断及び治療のための可能性のあるセラグノスティクス剤としてのSSTR3リガンドのin vitroでの結合性及び選択性を支持するものである。
【表9】
【0223】
実施例9:ヒト対象における放射性標識した68Ga-配列番号4を用いたPET-CTスキャン。線維形成性小円形細胞腫瘍-Desmoplastic Small Round Cell Tumor(DSRCT)(肉腫型の腫瘍)の患者における代表的な画像化性能、生体内分布、及び腫瘍取り込み
この実施例では、肉腫型DSRCT腫瘍陽性SSTR3発現を有する患者における安全性、生体内分布、画像化性能及び腫瘍取り込みを評価した。標題の化合物の放射性標識の後、放射性標識トレーサーの溶出溶液を無菌のために濾過し、等張溶液で静脈内注入した。PET-CTスキャンは、約600Mbqの放射性標識トレーサーの注入後30分と120分とに実施した。体温、心拍数、及び血圧を、安全性評価のためにPET-CT検査前、検査中、検査後にモニターした。患者は37歳の男性で、8年前にDSRCTと診断された。今回の実施例前の過去8年間、患者は外部照射療法(External beam radiation therapy:EBRT)、化学療法(イリノテカン/テモゾロミド、メルファラン/トレオスフラン、ゲムシタビン/ドセタキセル、パゾパニブ、トポテカン/シクロホスファミド、カボザンチニブ、デンスマブ)、及び椎弓切除術(脊椎-腫瘍焦点切除)の治療を受けた。PET-CT前3ヵ月に生検分析を実施し、SSTR3のmRNA高発現が示された。
【0224】
放射性標識した68Ga-配列番号4のPET-CTスキャンの結果を図9に示す。68Ga-配列番号4の静脈内注射後、血液から腎臓へのトレーサーの急速な排泄を観察した。この条件下で、肺、頸部、及び骨盤部にいくつかの放射性焦点が検出された。放射性焦点によって示される、観察された陽性の腫瘍取り込みは、腫瘍の予後及び疾患の予後を裏付けるものである。トレーサーの生体内分布は、SSTR3に対する高い選択性と相関しており、オフターゲットの臓器には取り込まれなかった。これらの結果は、本明細書の実施例4に記載のGPCRパネルに示されているとおり、超選択的SSTR3リガンドの請求と相関している。安全性評価では、トレーサーに異常な毒性徴候は認められず、配列番号3の高いオンターゲット選択性が裏付けられた。
【0225】
実施例10:本明細書で開示の配列番号3、7、9、11、12、14、15、16、18~24とコンジュゲートしたDOTA-ペプチドの68Ga又は177Luの放射性標識手順
本実施例では、放射性同位体68Ga又は177LuとのDOTAペプチドコンジュゲートを調製し、適合性、効率、純度、トレーサー生成物の分析的同定、及び放射性標識手順の再現性を決定した。
【0226】
本明細書に記載した方法は、配列番号3及び9の放射性標識化の例であるが、本明細書に開示したすべてのDOTA-ペプチドコンジュゲートについての放射性標識化の標準操作手順として使用した。[68Ga]Ga-DOTA-ペプチドを、iTM68Ge/68Ga生成装置(GMP;Isotope Technologies Munich、GmBH、ミュンヘン、ドイツ)及び自動モジュール(iQS-TS、Isotope Technologies Munich、GmBH、ミュンヘン、ドイツ)を用いて、GMPに準拠したプロセスで放射性標識した。簡潔には、68Ga3+(半減期68分、β+89%、Eβ+最大1.9MeV)を68Ge/68Ga核種生成装置(1850GBq)から5mLの塩酸(0.05M)を用いて反応容器に溶出した。反応容器には25マイクログラムのDOTA-ペプチド前駆体(Starget Pharma、ラマト・ハシャロン、イスラエルから供給)を入れ、1mLの酢酸ナトリウム緩衝液(0.25M)に溶解し、85℃に予熱した。放射性標識は、使い捨てカセット及び標識キット(Isotope Technologies Munich、GmBH、ミュンヘン、ドイツ)を用いて、生成装置の溶出の終了まで5分かけて実施した。次いで、反応混合物をC18 SPE Sep-Pakカートリッジに充填した(1.5mLのエタノール溶液、続いて4mLの0.9% NaCl溶液を用いて予備活性化)。その後、SPEカートリッジを0.9% NaCl 3mLで洗浄した。最終生成物である[68Ga]Ga-DOTA-ペプチドを、超純水中の50%(v/v)エタノール1.2mL、続いて0.9%NaCl 9mLを用いて溶出し、最終生成物(5.8%エタノール)中10.5~11.5mLの最終体積溶液を得た。最終生成物は、0.22μmフィルター(Cathivex-GV、ダルムシュタット、ドイツ)を用いてフィルター滅菌し、欧州薬局方に準拠した品質管理分析にかけた。[68Ga]Ga-DOTA-ペプチド最終生成物溶液は、無色透明であることを目視で確認し、pH範囲4.0~8.0で得られた。生成物の同一性は分析用HPLCを用いて確認し、非放射線標識の[68Ga]Ga-DOTA-ペプチド参照標準物質(piCHEM、ラーバグランバッハ(Raaba-Grambach)、オーストリア)と比較した。放射化学的純度はHPLCで確認し、常に93%超過であった。放射性核種の同一性は、半減期の決定及びメインピークのガンマスペクトルを用いて確認した。さらに、フィルター完全性試験、エンドトキシン測定、及び無菌性試験を実施した。分析用HPLCは、分析用カラム(Jupiter 4μm proteo、4.6×150mm、Phenomenex、トーランス、カリフォルニア州、米国)、214nm及び240nmで作動するUV検出器、及びラジオ検出器、Bioscan B-FC 3200(Eckert&Ziegler Radiopharma、マサチューセッツ州、米国)を備えた島津製作所の分析用HPLCシステム(「HPLC 3」)を用いて実施した。HPLC水(A)とアセトニトリル(B)との両方に0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を添加した溶離液混合物を、流速2mL/min、40°Cで次のように使用した:(t=0)21%のB、(t=8)25%のB、(t=12)25%のB、(t=16)21%のB、(t=20)21%のB。最終生成物(保持時間8.1分)は、非放射能標識した参照標準物質69/71Ga-DOTA-ペプチドとの共溶出を用いて確認した。HPLC溶出法は、Ga-DOTA-ペプチド参照標準物質とDOTA-ペプチド前駆体とを分離できるように設計した。保持試料を採取し、48時間を超えて保存し、元の試料中の[68Ga]含有量の0.001%未満であることを確認した。分析用HPLC条件は以下であった。カラム:Xselect CSH130 C-18 5μ 4.6×100mm(ID:AN44)。流量:1.5mL/min。移動相:0.1% TFA/水及び0.1% TFA/アセトニトリル。放射能検出器:Gabi(Raytest)。検出器:UV λ=254nm。[177Lu]-DOTA-ペプチドの保持時間:19-20分。
【0227】
177Luによる放射性標識化については、以下の手順に従った:DOTAペプチド:50μgをマイクロチューブ中で凍結乾燥。Water Trace Select緩衝液:酢酸アンモニウム0.4Mとゲンチジン酸0.325M pH 4(一晩キレート化)。HCl 0.05M中の177LuCl3。EDTA 0.1M。エッペンドルフマイクロチューブ 1.5mL低結合性。Thermomixerシステム。Radio-HPLCシステム:UV検出器及びBioscan Flow-Count放射能検出器ITLC-SA(Agilent)に連結したJASCO HPLCシステムLC-2000分析シリーズ。Radio-TLCシステム:AR-2000 Radio-TLCイメージングスキャナー(Bioscan)。目標の特異的活性を達成するために、マイクロチューブ内で、HCl 0.05M中のルテチウム-177([177Lu]LuCl3)を放射性標識緩衝液(ゲンチシン酸0.325Mを含む酢酸アンモニウム0.4M、pH 4.1[ルテチウム177溶液の2.8倍容量])及びDOTAペプチド(水に1mMで溶解)と混合した。反応混合物を、Thermomixerシステムを用い、+90℃で30分間インキュベートした。インキュベーション期間終了後、反応バイアルを遠心分離した。放射性標識の取り込みは、逆相液体クロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーで評価し:o HPLC-C18分析法は以下であった:カラム:Kinetex C18(2.6μm、50x2.1mm、Phenomenex)。移動相:相A:水0.1% TFA。相B:MeCN 0.1% TFA。勾配:5分間で5%移動相Bから95%移動相Bへ、完全に平衡化するまで30秒間で5%(B)へ戻す(5.5分)。流量:0.5mL/分。検出:放射能。
【0228】
開示された本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、示された実施形態は本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではないことを認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって本発明者らは、これらの請求項の範囲及び精神に含まれるすべてのものを本発明者らの発明として主張する。
【0229】
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【配列表】
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【国際調査報告】