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特表2024-508883亜鉛・二酸化マンガン・水酸化ニッケル二次電気化学発電体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】亜鉛・二酸化マンガン・水酸化ニッケル二次電気化学発電体
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20240220BHJP
   H01M 10/26 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 4/32 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20240220BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20240220BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M10/26
H01M4/32
H01M4/50
H01M4/52
H01M4/62 C
H01M4/24 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553184
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2022051880
(87)【国際公開番号】W WO2022185245
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2102083
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520294228
【氏名又は名称】サナジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォージョ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ミルハシェミハギギ, シャディ
(72)【発明者】
【氏名】タン, セリーヌ
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028FF02
5H028HH01
5H028HH03
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA11
5H050CA03
5H050CA05
5H050CB13
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA01
5H050EA14
5H050HA01
5H050HA10
(57)【要約】
本発明は、以下を含む点で特別な特徴を有する亜鉛・二酸化マンガン二次電気化学発電体に関する。:
a)二酸化マンガン(MnO)と水酸化ニッケル(Ni(OH))の混合物を含むハイブリッド正極であって、Ni(OH)の質量がNi(OH)とMnOの質量合計の5%より大きく、かつ
b)ヒドロキシルアニオンのモル濃度が4M~15Mのアルカリ性水溶液である電解質。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むことを特徴とする亜鉛・二酸化マンガンハイブリッド二次電気化学発電体:
a)二酸化マンガン(MnO)と水酸化ニッケル(Ni(OH))の混合物を含むハイブリッド正極であって、Ni(OH)の質量がNi(OH)とMnOの質量合計の5%より大きく、かつ
b)ヒドロキシルアニオンのモル濃度が4M~15Mのアルカリ性水溶液である電解質。
【請求項2】
Ni(OH)の質量が、Ni(OH)とMnOの質量合計の20%より大きい、請求項1に記載の二次電気化学発電体。
【請求項3】
亜鉛負極が導電性セラミックスを含む、請求項1または2に記載の二次電気化学発電体。
【請求項4】
亜鉛負極が窒化チタンを含む、請求項3に記載の二次電気化学発電体。
【請求項5】
アルカリ溶液のモル濃度が7~13Mである、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電気化学発電体。
【請求項6】
電解質溶液のアルカリ度が、水酸化リチウムおよび/または水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムによってもたらされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電気化学発電体。
【請求項7】
電解質が、さらに亜鉛酸イオンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電気化学発電体。
【請求項8】
電解質が、さらにホウ酸塩、ケイ酸塩および/またはアルミン酸塩を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二次電気化学発電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の分野に関連し、より詳細にはアルカリ性電気化学発電体の分野に関する。特に、充放電サイクル数が多い二次亜鉛・二酸化マンガン発電体に関する。
【背景技術】
【0002】
Zn/MnO一次電池は広く使用されているが、当該Zn/MnOシステムの二次電池は依然課題が残る。当該システムの可逆性は非常に限定的とみなされている。正極側のMnOカソードで、放電中にハウスマナイト(Mn)やヘテロライト(ZnMn)などの不可逆化合物が生成され、容量が急速かつ大幅な損失につながる。負極側のZnアノードでは、形状の変化、不動態化、樹枝状結晶の形成などの現象により、特に亜鉛アノードが高電流密度で充放電され、また、理論容量利用率が10%(非特許文献2、3)を超える場合、可逆性を制限する。
【0003】
アルカリ性媒体中のMnOの還元は2段階で行われる。
第一還元段階:MnO+HO+e -> MnOOH+OH (1)
第二還元段階:MnOOH+HO+e -> Mn(OH)+OH (2)
第一還元段階は、1.5Vから0.9Vへの電圧降下により特徴付けられる。MnO電極の電位は、MnOへの電子・プロトンの固体状態の均一な挿入に従って連続的に低下し、Mn原子の酸化状態が4+から3+に減り、MnOOHが形成される。しかし、このプロセスは、プロトン(H)の挿入およびMn陽イオンのイオン放射の増加(Mn3+対Mn4+)に関連する、立体的制約の結果として、ホスト結晶構造の部分的な非晶質化のメカニズムとも関連している。この挿入は、Patrice(非特許文献5)によれば最大H0.7MnO(1.1-1 V)、またはGallaway(非特許文献6)によればH0.79MnOまでの限定的非晶質化プロセスと一致する限定的なH挿入範囲内で可逆的である。
【0004】
さらに、MnOOHは、いわゆる第2段階電子において、溶解(MnOOHからMn3+)-還元(Mn3+からMn2+)-析出(Mn2+からMn(OH))の不均一プロセスを経て、0.9V未満で、Mn(OH)に還元され得る。複数の研究によると、MnOOHの不安定性および電解液中のMn3+の溶解により、第1段階(最初の電子の挿入)の完了前に第2段階が生じる可能性がある。反応(2)で生成されるMn(OH)は、可逆的な放電生成物であると考えられるが、実際の場合および Zn電極に対して生成される唯一の生成物ではない。MnOOHは、電気化学的に不活性な反応生成物であるヘテロライト(ZnMn)およびハウスマナイト(Mn)の生成を伴う化学反応(3)および(4)で説明されるメカニズムに従い、電解液中のイオンと反応すると考えられる。
2MnOOH+Zn(OH) 2- -> ZnMn+2OH+2HO (3)
2MnOOH+Mn(OH) 2- -> Mn+2OH+2HO (4)
【0005】
したがって、MnOの不可逆的な還元は、MnとZnMnの化合物の生成と強く相関している。最初の放電中にMnが生成されると、当該化合物は部分的にのみMn(OH)に還元される一方、ZnMnはMn(OH)に全く還元されない。MnO電極の充放電回数を増やすため、さまざまなアプローチが試みられた。Kordesch et al.(非特許文献1、7、8、9)は、放電が第一段階の還元の35%未満に制限される場合に限り、γ-MnOがより多くのサイクル数で再充電可能であることを示している。より最近、Ingale et al.(非特許文献10)は、DoD(放電深度)を5%~20%に制限した容量でサイクル数の向上を目指す当該戦略を続けた。前述の者らは、あまり高価ではないバッテリー材料を使用し、10%DoDで3000サイクル、20%DoDで500サイクルの安定した容量を示した。他のいくつかの研究は、CeO、MgO、TiS、Biなどの添加剤、またはBaおよびSrを基礎とする化合物の使用により、サイクル中の酸化マンガンの不活性相の制限とγ-MnO相の維持を可能とし、MnO電極の寿命が向上することを示している(非特許文献11、12、13、14、15、16)。
【0006】
Kannan et al.(非特許文献13)は、Biを伴うMnが100サイクル以上で400mAh/gを超えるまで容量が増加することを示し、Biの添加により通常は不活性なMn化合物を再活性化できることを示した。しかし、MnOカソードの二次電子放出過程中に、溶解した亜鉛酸イオンがマンガンイオンと結合し、不活性のZnMnを生成するため、当該カソードは亜鉛アノードがあると20または30サイクルを超えて充放電ができないことに注意することが望ましい。
【0007】
他の例として、BaSOを添加して改変したMnOを伴うZn/MnOの平板セルがStani et al.(非特許文献17)によって開発され、当該セルは容量の損失を最小限にするが、得られたのは25~30サイクルのみであった。
【0008】
最近、Yadav et al.(非特許文献18)は、2段階の完全な放電プロセスで1000~6000サイクルを達成した。当該結果は、ビスマスおよび銅添加剤の挿入およびカーボンナノチューブの添加によるδ-MnOバーネサイト構造の安定化と相関する。しかし、当該結果は、ニッケル電極がある場合、すなわち亜鉛酸イオンの存在なしに得られた。これは注目に値する成果だが、MnO電極は依然Zn被毒の影響を受けやすく(不可逆的にZnMnを生成する)、またZn/MnOバッテリーを構成すべくZnアノードと組み合わせる前に電極を「生成」するためNi(OH)電極に対する初期手順も必要であった。比較すると、亜鉛電極が存在すると900サイクルのみが得られた(非特許文献19)。さらに、後者の結果は、亜鉛酸イオンの捕捉、およびZnMnの生成の制限を可能にするCa(OH)膜の添加により得られる。
【0009】
Maria Kelly et al.(非特許文献21)は、放電を10%に制限したZn/MnOに添加剤としてのトリエタノールアミン(TEA)について、TEA無添加で191サイクル、TEA添加で568サイクルと、安定性が著しく向上したことを示した。
【0010】
本発明の目的は、MnO電極に基づく蓄電池の能力の、多サイクルの提供限界に対する新たな回答をもたらすことである。そのため、MnOを基礎とする正極の組成にNi(OH)化合物を添加する試みが実施され、当該電極は、MnOとNi(OH)が全体で電気化学的に活性な、事実上のハイブリッドとなった。着想は、アルカリ電解液中に安定したNi(OH)/NiOOH微結晶が存在することにより、MnOOH/MnO化合物に結晶成長基板を提供することである。前述の結晶成長の支持体は、当該化合物のコヒーレンスドメインの増加により、MnOOH/MnO電気化学対の可逆性を増加させ、MnOOHの電解質のイオンとの反応性、そして、事実上、(3)のヘテロライト(ZnMn)の生成および(4)のハウスマナイト(Mn)の生成における寄生的反応の生成を制限すると考えられる。
【0011】
Zn/MnOシステムの最新技術の調査により、MnO電極でのNi(OH)の使用に言及する特許および研究が複数存在することが示された。MnOとNiOOHの混合物を特徴とするカソードを備える電気化学セルを引用する特許の一部は、一次システムに関連し、すなわち再充電ができない。MnO電極にNi(OH)を装填した状態のNiOOHを添加することで、ZnMnO電池は、より高い電圧でより高いレートで放電することができ、より大きな電力を必要とする、あるいはより高電圧で動作する機器により多くのエネルギーを供給できることが明らかである。
【0012】
例えば、WO2006/026232号として公開された国際出願では、亜鉛アノードを備えるアルカリバッテリー用に、NiOOHと二酸化マンガンの両方を含むカソードについて報告している。前述出願では、MnO/NiOOH混合物を使用すると、より高い放電密度で、より優れた容量維持が可能であると記載している。しかし、この特許は一次乾電池に関するものであり、充電式システムに関するものではない。Zn/MnOバッテリーのサイクル能力の改善に対する効果は一切報告されていない。
【0013】
本発明に関する結果とは対照的に、T.N.Ramesh et al.は、MnOとNi(OH)の混合材料が電気化学的貯蔵用途に使用できる状態にないことを報告している。一方、Ni2+イオンとMn2+イオンの共同沈殿により得られるNiO(OH)/MnO複合相は、650mAh/gに相当する金属原子あたり最大2.25電子まで容量を大幅に増加できると記述されている。実証されているのは20サイクルのみである。
【0014】
MnO電極へのNi(OH)の添加に言及する別の特許のいくつかは、充電可能なZnMnO蓄電池に関係する。前述の特許においては、Ni(OH)の添加は少量に留めなければならず、充電終了時の酸素の生成を制限することで、MnO電極の再充電の問題が軽減できると記述されている。特許US5011752では、使用されるMnOは、MnOの製法に適合するよう、マンガン原子の酸化度を低くするよう前処理がされ、xを1.70~1.90の間としている。二酸化マンガンカソードの早期消耗の結果である、二酸化マンガンの過負荷および酸素生成を制限するため、MnOカソード組成物に1.68%Ni(OH)を添加することが報告されている。Ni(OH)の添加は、MnOカソードの過負荷の影響を減じることができる材料についての留保である。Ni(OH)の添加による有益な作用を裏付ける値の表は一切提供されていない。Ni(OH)含有量は非常に低く、2%未満である実証されたサイクル数は5回のみである。
【0015】
特許CN104 701 521 Aでは、MnO正極の組成に5質量パーセントのNi(OH)を添加することが記述されているが、当該質量パーセントはMnOの正極の活物質の質量に対するものである。充電は1.65Vの定電圧を上限とし、これにより酸素の生成が制限される。1.65Vの電圧はNiZnシステムの静止電圧に相当する。したがって、最大電圧1.65VではNi(OH)化合物がNiOOHで充電できないため、Ni(OH)化合物はMnO電極形成において電気化学反応に関与しないはずである。Ni(OH)の作用は記載されていないが、求められる作用は、二酸化マンガンの過負荷と酸素の生成を制限する、特許US5011752と同様と考えるのが合理的である。
【0016】
特許JPH10 74511 Aでは、MnOの充電式電極に水酸化ニッケルと酸化ニッケルを添加することが記述されている。MnO電極の組成は、Mn原子に対するNi原子の原子比が2%~35%の範囲に相当するようなものである。繰り返すと、本発明は、酸素の発生を制限し、アルカリ溶液中のMnO電極を再充電することに関する。本特許では、Ni(OH)を添加する場合としない場合の充電時の電圧が比較できる図を示す。Ni(OH)添加後の充電曲線は、二重の水平部の後、酸素の推移に相関し、最終的に増加することを特徴としている。2番目の水平部は、1.85Vを超え、Ni(OH)の充電に対応する。1番目の水平部と2番目の水平部の間に非常に顕著な電圧差があり、充電終了をより適切に検出し、酸素の推移が抑えられる。
【0017】
MnO電極にNi(OH)を添加しない場合、サイクル数は18である。Ni(OH)を添加し、Ni/(Mn+Ni)比が9.1%および10%となる場合、サイクル数はそれぞれ54と62に増加可能である。比率が10%を超える場合、Ni/(Mn+Ni)比が45%のとき、サイクル数は37に減少する。また、MnO化合物の放電量を維持するため、ニッケルの量を低く保たなければならないことも指摘されている。
【0018】
再充電可能なMnO電極へのNi(OH)の添加に言及する最新の研究は、すべて充電終了時の酸素生成の減少に関連する。さらに、MnO化合物の放電量を維持するため、ニッケルの量を低く抑えなければならないとも記述されている。前述の文献は、いずれもMnOOH/MnO構造のより良いコヒーレンスを可能とするNi(OH)/NiOOH化合物の基質作用と結びつく、MnOOH/MnO電気化学対の可逆性を高めることを可能にするNi(OH)とMnOの混合化合物から生じるバッテリーの安定性とサイクル寿命の改善への言及および追求をするものではない。
【0019】
したがって、本発明はMnOとNi(OH)の混合物からなる電極の放電容量の安定化を可能とする、特別かつ新規の効果の追求に基づくものであり、MnO電極へのNi(OH)の添加に言及した特許および研究は本特許に記載する発明を予想できないと考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】K.Kordesch, J. Gsellmann, M. Peri, K. Tomantschger, and R. Chemelli, Electrochim.Acta, 26, 1495 (1981)
【非特許文献2】F. R. McLarnon and E. J. Cairns, J. Electrochem.Soc., 138, 645 (1991)
【非特許文献3】T. C. Adler, F. R. Mclarnon, and E. J. Cairns, J. Electrochem. Soc., 140, 289 (1993)
【非特許文献4】A. Kozawa and J. F. Yeager, J. Electrochem.Soc., 112, 959 (1965)
【非特許文献5】R. Patrice, B. Gerand, J. B. Leriche, L. Seguin, E. Wang, R. Moses, K. Brandt, and J. M. Tarascon, J. Electrochem.Soc., 148, A448 (2001)
【非特許文献6】J. W. Gallaway, B. J. Hertzberg, Z.Zhong, M. Croft, D. E. Turney, G. G. Yadav, D. A. Steingart, C. K. Erdonmez, and S. Banerjee, J. Power Sources, 321, 135 (2016)
【非特許文献7】K. Kordesch and J. Gsellmann, U.S. Pat.4,384,029 (1983)
【非特許文献8】K. Kordesch, J. Daniel-Ivad, E. Kahraman, R. Mussnig, and W. Toriser, in The ASME 26th Intersociety Energy Conversion Engineering Conference, Paper 910052, Boston, MA, Aug 4-9 (1991)
【非特許文献9】L. Binder, K. Kordesch, and P. Urdl, J. Electrochem.Soc., 143, 13 (1996)
【非特許文献10】N. D. Ingale, J. W. Gallaway, M. Nyce, A. Couzis, and S. Banerjee, J. Power Sources, 276, 7 (2015)
【非特許文献11】M. Minakshi, P. Singh, J. Solid State Electrochem.16 (2012) 2227
【非特許文献12】D. Im, A. Manthiram, B. Coffey, J. Electrochem.Soc.150 (2003) A1651
【非特許文献13】A.M.Kannan, S. Bhavaraju, F. Prado, M.M.Raja, A. Manthiram, J. Electrochem.Soc.149 (2002) A483
【非特許文献14】J. Daniel-Ivad, E. Daniel-Ivad, R.J.Book, Additives for Rechargeable Alkaline Manganese Dioxide Cells, US 6,361,899 B1, 2002
【非特許文献15】J. Daniel-Ivad, Rechargeable Alkaline Manganese Cell Having Reduced Capacity Fade and Improved Cycle Life, WO2007059627A1, 2007
【非特許文献16】M.R.Bailey, S.W.Donne, J. Electrochem.Soc.159 (2012) A999
【非特許文献17】A. Stani, W. Taucher-Mautner, K. Kordesch, J. Daniel- Ivad, J. Power Sources 153 (2006) 405
【非特許文献18】G. G. Yadav, J. W. Gallaway, D. E. Turney, M. Nyce, J. Huang, X. Wei, and S. Banerjee, Nat.Commun., 8, 14424 (2017)
【非特許文献19】G. G. Yadav, X. Wei, J. Huang, J. W. Gallaway, D. E. Turney, M. Nyce, J. Secor, and S. Banerjee, J. Mater.Chem.A, 5, 15845 (2017)
【非特許文献20】J. Huang, G. G. Yadav, J. W. Gallaway, X. Wei, M. Nyce, and S. Banerjee, Electrochem.Commun., 81, 136 (2017)
【非特許文献21】M. Kelly, J. Duay, T. N. Lambert and R. Aidun.J. Electrochem.Soc.164 (14) A3684 (2017)
【非特許文献22】T.N.Ramesh, P. Vishnu Kamath, Journal of Power Sources 175 (2008) 625-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、二次電気化学発電体のサイクル寿命を延ばすことである。したがって、本発明は、第一還元段階の35%を超える放電によって多くのサイクル数を提供し、MnO電極の能力の限界に対する新たな回答をもたらすことを目的するものであり、当該回答を電気化学的に不活性な結晶構造の形成を制限することで、MnO電極の容量損失の条件を修正することにより提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
より具体的には、本発明は、以下の記述1に従う亜鉛-二酸化マンガン二次電気化学発電体に関する。
1.以下を含むことを特徴とする亜鉛・二酸化マンガンハイブリッド二次電気化学発電体:
a)二酸化マンガン(MnO)と水酸化ニッケル(Ni(OH))の混合物を含むハイブリッド正極であって、Ni(OH)の質量がNi(OH)とMnOの質量合計の5%より大きく、かつ
b)ヒドロキシルアニオンのモル濃度が4M~15Mのアルカリ性水溶液である電解質。
二酸化マンガンと水酸化ニッケルを組み合わせた正極の形成による当該ハイブリッド化によって、Ni(OH)とNiOOHの間の優れた可逆性により、および良好なサイクル能力をするMnOの低コストの利点により、経済的な二次システムの製造が可能となる。
当該サイクル性は、特許FR2 788 887に記載されているように、亜鉛の負極に、導電性セラミック粉末、特に窒化チタンの粉末を組み込むとさらに向上する。
【0023】
前述の記述1のハイブリッド二次電気化学発電体の有利な特徴を、以下の記述2から10に示す。
2.Ni(OH)の質量が、Ni(OH)とMnOの質量合計の20%より大きい、記述1に記載の二次電気化学発電体。
【0024】
3.亜鉛負極が導電性セラミックスを含む、記述1または2に記載の二次電気化学発電体。
【0025】
4.亜鉛負極が窒化チタンを含む、記述3に記載の二次電気化学発電体。
【0026】
5.アルカリ溶液のモル濃度が7~13Mである、記述1から4のいずれか一つに記載の二次電気化学発電体。
【0027】
6.電解質溶液のアルカリ度が、水酸化リチウムおよび/または水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムによってもたらされる、記述1から5のいずれか一つに記載の二次電気化学発電体。
【0028】
7.電解質が、さらに亜鉛酸イオンを含む、記述1から6のいずれか一つに記載の二次電気化学発電体。
【0029】
8.電解質が、さらにホウ酸塩、ケイ酸塩および/またはアルミン酸塩を含む、記述1から7のいずれか一つに記載の二次電気化学発電体。
【発明の効果】
【0030】
本発明の他の特徴および利点について、概略的に表す添付図を参考とし、以下の説明で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例1および2の電気化学セルのサイクル数に応じた容量の変化。
図2】例2、3、4の電気化学セルのサイクル数に応じた容量の変化。
図3】例1、2、5の電気化学セルのサイクル数に応じた容量の変化。
図4】例2、6、7の電気化学セルのサイクル数に応じた容量の変化。
図5】例2から7の電気化学セルのサイクルno.5における電圧-容量のグラフ。
図6】例2から7の電気化学セルのサイクルno.50における電圧-容量のグラフ。
図7】例1~6の電気化学セルのX線回折ダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<発明の詳細な説明>
本発明の発明者らは、カソード活物質にNi(OH)を添加することで、MnO相に関連する容量損失が減少し、MnO/Ni(OH)のハイブリッド電極の容量が大幅に増加することを示した。
【0033】
本発明によれば、以下の証明および実施形態の非限定的な例で示されるように、正極の活物質は、二酸化マンガンと水酸化ニッケルとの混合物を含み、Ni(OH)の質量はNi(OH)とMnOの質量の和の5%より大きく、また、好ましくは、Ni(OH)とMnOとの質量の和の20%より大きい。
【0034】
二酸化マンガンとして、あらゆる化学的および電気化学的種類のMnOがカソードの調製に使用できる。同様に、水酸化ニッケルとして、通常の結晶や添加剤をすべて含む、あらゆる種類のNi(OH)が使用できる。
【0035】
本発明に従って使用される電解質は、ヒドロキシルアニオンのモル濃度が4~15M、好ましくは7~13Mであるアルカリ水溶液である。前述の電解質は単独または混合物の水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムで構成することができる。
また、電解質は亜鉛酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩および/またはアルミン酸塩を様々な割合で含むことができる。
【0036】
亜鉛電極には、好ましくは導電性セラミック粉末が組み込まれ、当該粉末が、ハフニウム、マグネシウム、ニオブ、チタン、バナジウムなど様々な金属のホウ化物、炭化物、窒化物、ケイ化物から選択できる。前述の粉末は、有利には、ハフニウム窒化物および/または炭化物、および/またはマグネシウム炭化物および/または窒化物および/またはケイ化物、および/またはニオブ炭化物および/または窒化物、および/またはチタン炭化物および/または窒化物および/またはケイ化物、および/またはバナジウム窒化物である。また、一般式Ti2n-1(nは4~10)の亜酸化チタンのようなセラミック材料を使用することも可能である。いずれの場合も、セラミックが、導電性であり、蓄電池内で化学的に不活性であり、また高い水素過電圧を有する場合、当該セラミックを本発明の文脈で使用するため、採用することができる。さらに、役割を最適に果たすため、使用される当該導電性粉末は微細であり、活性物質中に可能な限り均一に分散されていることが望ましい。
【0037】
例1(従来技術)
角柱型の電気化学セル1個が、MnO電極を囲む2つの亜鉛電極で構成される。各亜鉛電極の活性表面積が26cmで、容量は1.5Ahである。したがって、活性表面積が24cmで、MnOとMnOOHの間の第1還元段階に相当する交換された1電子の当量として計算された容量が0.588Ah、あるいは308mAh/gのMnO電極はZn/MnO電気化学セルの容量を制限する容量を持つ。
【0038】
亜鉛とMnOの各電極は、ZnとMn両方の可溶性イオンを電極表面の境界に封じ込むために膜で覆われている。各電極の間には、セパレーター兼電解質リザーバーとしてフェルトも配置される。
【0039】
亜鉛電極の活物質の組成は、亜鉛電極のサイクル性の問題を解消するために、特許FR2 788 887に記載するような、導電性セラミックスTiNを含む。MnO電極の活物質の組成は、質量で表すと、MnO-EMD(電解二酸化マンガン)60%、Bi6%、炭素30%、バインダー-可塑剤(PTFE)4%の構成である。前述の成分の混合物にアルコールを加え、コンパクトなペーストを得て、次に当該ペーストを短冊状に調製し、これを集電装置の両側に置き、全体を圧縮してMnO電極を得る。
【0040】
電解質はNaOHとKOHの混合物から得られるモル濃度10Mのアルカリ水溶液である。電解質は、ZnOを添加して得られた0.25Mの亜鉛酸イオンも含む。
【0041】
レートC/20の最初の2サイクルをトレーニング段階として使用する。前述の通りに製造されたZnMnO蓄電池は、まずレートC/20で、1V、つまり容量の20%相当まで放電が行われる。C/20で充電が行われ、容量の21%相当までは電圧制限がない。2サイクル後、例1の要素は最初の2サイクルと同じ条件でサイクルを行うが、電流レートは C/10と同等とする。
【0042】
サイクル数に応じた例1の容量を図1に示す。MnOの使用率は308mAh/gに対して20%で、最初の150サイクルの表面容量は平均5mAh/cmであった。寿命は初期容量30%損失で786サイクルと推定できる。最初の150サイクルで容量は特に安定している。
【0043】
例2(従来技術)
例2のセルは例1のセルと同一である。MnO電極の容量は0.644Ahである。MnO電極の使用率が増加し、表面容量は10mAh/cmを超える。前述の通り作製した例2の蓄電池をまずレートC/20で1Vまで、または交換電子1個またはMnOの308mAh/gを考慮して計算される容量の43%相当まで放電する。C/20で、容量の45%相当まで電圧制限なく充電が行われる。2サイクル後、例2の要素は最初の2サイクルと同じ条件でサイクルを行うが、電流レートはC/10と同等とする。
【0044】
例2の容量を図1に示す。MnO43%の放電により、初期表面容量11.6mAh/cmが得られる。最初の150サイクルの平均表面容量は10.3mAh/cmである。初期容量30%を超える減衰前に、例1の786サイクルに対して、155サイクルのみであった。20サイクルの間、容量は安定していた。例2は、10mAh/cmを超える表面容量には、例1および2の実験条件下でSMnOの放電43%が必要であることを示す。表面容量を例1の5mAh/cmから例2の10mAh/cmの2倍にすると寿命は大幅に低下する。寿命は786サイクルから155サイクルと5分の1になる。MnO化合物の放電の増加に伴うこの寿命の低下は、反応(3)および(4)の後に寄生成分MnおよびZnMnが生成されることを報告した以前の観察と一致している。
【0045】
サイクル数に応じた例1および2の容量を図1に示す。
【0046】
例3(比較)
例3は、例2と同様だが、MnO電極に3.75%のNi(OH)を添加して正極を改変している。MnOの一部を置き換え、水酸化ニッケルを添加して改変した正極活物質の組成は、質量比で、MnO-EMD56.25%、Ni(OH)3.75%、Bi6%、炭素30%、バインダー-可塑剤4%である。
【0047】
正極は、1V~2.3Vの電圧範囲で、2つの電気化学的活性物質を含むハイブリッドとなる。容量は、この電圧範囲で各活性物質に対し交換された1電子として計算し、すなわちMnOで308mAh/g、Ni(OH)で289mAh/gである。例3のハイブリッド電極の容量は0.690Ahである。
【0048】
例3は、例2と同じ条件の生成およびサイクルで、放電は43%である。前述の43%の放電で、水酸化ニッケルの放電を100%とみなすと、MnOの最小放電は40%である。例3の容量を図2に示す。当該例の寿命は226サイクルで、例2の155サイクルより長い。例3の最初の150サイクルの平均体積容量は12.1mAh/cm2で、例2の10.3mAh/cm2より大きい。Ni(OH)3.75%を添加する例3では、例2と比較し、表面容量が17%増加、寿命が46%増加する。
【0049】
例4(比較)
例4は、例3と同様だが、MnO電極に7.5%のNi(OH)を添加して正極を改変している。MnOの正極の組成は、質量比で、MnO-EMD52.5%、Ni(OH)7.5%、Bi6%、炭素30%、バインダー-可塑剤4%である。例4のハイブリッド電極の容量は0.654Ahである。
【0050】
例4は、例2と同じ条件の生成およびサイクルだが、放電(47%)がより多く、例2および3と同様のMnOの最小放電40%が可能である。水酸化ニッケルの放電は100%とみなされる。例4の容量を図2に示す。当該例の寿命は224サイクルで、例3のサイクルと同様である。例4の最初の150サイクルの平均体積容量は12.1mAh/cmで、例3と同様である。Ni(OH)7.5%を添加した例4では、例3と同様の結果が得られ、例2と比較して表面積容量が17%増加し、寿命が45%増加した。例4のこの同一の結果は、例3の43%よりも大きい47%の放電で得られたが、これは、MnO電極の組成にNi(OH)が存在することで、このMnO化合物の容量損失が制限されることを示唆する。
【0051】
例5(比較)
例5は、例3と同様だが、MnO電極に15%のNi(OH)を添加して正極を改変している。MnOの正極の組成は、質量比で、MnO-EMD45%、Ni(OH)15%、Bi6%、炭素30%、バインダー-可塑剤4%である。例5の電極の容量は0.616Ahである。
【0052】
例5は、例2と同じ条件でのサイクルである。43%の前述同様の放電では、水酸化ニッケルの放電を100%とみなすと、MnOの最小放電は例5では26%である。例5の容量を図3に示す。当該例の寿命は673サイクルで、例2の155サイクルより長い。例5の最初の150サイクルの平均体積容量は11.1mAh/cmで、例2の10.3mAh/cmより大きい。Ni(OH)15%を添加する例5では、例2と比較し、表面容量が8%増加、寿命が334%増加する。例3および4の測定値に対する前述の7倍の増加は、例3および4のMnO放電40%より低い26%に関係する。例5において、初期容量が完全に安定したサイクル数は243サイクルと、例1の139サイクルより多かった。MnO電極に15%のNi(OH)を添加すると、MnO化合物の最小放電量が20%から26%、30%と増加する一方、正極の完全な安定範囲が75%増加する。15%のNi(OH)を添加すると、MnO相の放電率が増加しても、MnO電極の安定性が著しく向上する。同じ電極放電率の場合、表面容量が10mAh/cmを超えると、寿命は300%以上延びる。
【0053】
例6(従来技術)
例6は、例2と同様に、正極にNi(OH)を添加し改変し、MnO化合物をNi(OH)に完全に置き換えている。正極の組成は、質量比でNi(OH)60%、Bi6%、炭素30%、バインダー可塑剤4%である。例6のハイブリッド電極の容量は0.533Ahである。例6は例2と同じ電流レートのサイクルで、C/10で容量の102%を電圧制限なしで充電し、C/10で1Vまで放電する。これらのサイクル条件は、例3、4、5と同様の水酸化ニッケルの完全な充放電を再現する。例6で得られた放電容量は、最初の150サイクルの平均値が95%であり、例3、4、5で想定された100%より低いことを特徴とする。例6の最初の150サイクルの平均表面容量は22.1mAh/cmである。例6の容量を図4に示す。
【0054】
例7(比較)
例7は、例3と同様だが、MnO2電極に30%のNi(OH)を添加して正極を改変している。MnOの正極の組成は、質量比で、MnO-EMD30%、Ni(OH)30%、Bi6%、炭素30%、バインダー-可塑剤4%である。例7のハイブリッド電極の容量は0.529Ahである。例7は、例2と同じ条件の生成およびサイクルで、放電は66%である。前述の66%の放電では、水酸化ニッケルの放電を100%とみなすと、MnO2の最小放電は37%である。しかし、例6は、Ni(OH)100%の放電の場合、得られる容量を100%ではなく95%と示しており、これはMnOの最小放電量が41%であることを意味しており、例2の43%に非常に近い。例7の容量を図4に示す。この例7の寿命は457サイクルで、例2の155サイクルより長い。例7の最初の150サイクルの平均体積容量は14.6mAh/cmで、例2の10.3mAh/cmより大きい。例2および7のMnO化合物の41~43%相当の放電の場合、例7における30%のNi(OH)の添加は、例2と比較して表面容量を42%増加させ、寿命を195%増加させた。
【0055】
以下の表1では、前述の7つの例に関する、正極の組成にNi(OH)を添加した後の、正極の放電率、MnO化合物の最小放電率、最初の150サイクルの平均表面容量、寿命および例2と比較した寿命ならびに表面容量の増加をまとめている。Ni(OH)の添加量が多いほど、例えば41~43%など同じMnO使用率でも寿命が長くなる。26%のような低率の場合、寿命は著しく延びる。寿命の増加は、MnとZnMnの寄生相の生成の減少と一致する。
【表1】
【0056】
例2~7の放電容量に応じたサイクルno.5の放電電圧を図5に示す。
【0057】
MnOを含まない例6は、水酸化ニッケルのみの放電のグラフデータを有し、純粋なMnOである例2の放電のグラフデータとは大きく異なる。Ni(OH)の添加率は、例3では3.75%、例4では7.5%であるが、例2の放電のグラフデータに変化はない。
【0058】
例5の通り15%のNi(OH)を添加した場合、放電開始時にわずかなショルダーが見られるが、放電のグラフデータは例2の純粋なMnOと非常によく似ている。前述の結果は、例3、4、5のサイクルno.5では、Ni(OH)は放電容量にほとんど寄与しないことを示唆するものである。実際、当該試験条件下でのNi(OH)放電が95%(例6で証明)であることを考慮すると、例5の43%放電は、Ni(OH)21%、MnO22%に分けられるはずである。例5のショルダーは、Ni(OH)の放電への寄与が3%未満であることと一致している。最大寄与率(21%)と放電曲線から推定できる計算値(3%)とのこの差は、適用されるサイクル条件下でNi(OH)が完全には充電されないという事実によって説明できる。
【0059】
実際、充電曲線では電圧が十分に増加せず、Ni(OH)の充電に対応する電圧に達しない。例7は、MnOとNi(OH)の2つの活性電気化学相が同量であることを特徴としており、放電のグラフデータはハイブリッドであり、Ni(OH)の放電電圧の特徴である30%までの広いショルダー、その後、 MnOの放電に対応するかなりゆるやかな降下がある。当該例7では、Ni(OH)の95%放電を考慮すると、例7の66%放電は、Ni(OH)44%、MnO22%と分配されるはずである。例7のサイクルNo.5における放電のショルダーは、44%未満のNi(OH)の放電の寄与に相当し、この例ではNi(OH)最大ではない方法で関与しているが、例3、4、5よりは大きく、その放電は図5に見られるように部分的に残っている。
ここでもまた、計算上の最大寄与率(44%)と放電曲線からの推定との違いが、前述同様説明される。
【0060】
例2~7の放電容量に応じたサイクルno.50の放電電圧を図6に示す。例3、4、5、7の放電電圧のグラフデータは、Ni(OH)含有量とともにショルダーが大きくなり、非常に変化している。前述のショルダーはNi(OH)放電と相関している。例5と7のショルダーはそれぞれ約25%および約45%で、最大Ni(OH)寄与率21%と44%の計算値に近似している。Ni(OH)の最大寄与率の計算値と、曲線からの推定値が非常に一致する理由は、MnOがサイクル中に徐々にその性能を失うため、Ni(OH)がサイクル開始時に比べより充電されるという事実によって説明できる。ショルダー後の放電の継続はMnO放電の寄与と相関しているが、電圧はサイクル5よりも高く、当該のMnO相の放電挙動の大きな変化を示している。
【0061】
当該結果は、MnO相とNi(OH)相に関する最初の50サイクル中の状況に応じた変化を示している。最後に、二酸化マンガンのサイクル性の向上は、MnとZnMnの寄生相の生成に伴う容量の損失が限定的であることを示唆している。図 7は、以下のX線回折ダイアグラムを示す。
1:MnO50%、Ni(OH)50%、Bi6%の組成の混合物で、例7で使用した当該3相の混合物と同一。
2:5サイクル後の例7と同一の電極の活物質。
3:20サイクル後の例7と同じ電極の活物質。
4:5サイクル後の例2と同一の電極の活物質。
5:26サイクル後の例2と同じ電極の活物質。
【0062】
調製1のX線回折ダイアグラムは、β-Ni(OH)相およびBi相の回折ピークにより特徴付けられる。MnO相の回折ピークは確認されていないが、これは当該MnO相の結晶化が不十分であり、他のβ-Ni(OH)相およびBi相の存在下で視認できないことを示している。活物質中にNi(OH)を含まない例2、調製例4と5に関し、回折ダイアグラムは類似しており、回折ピークは非常に少なく、初期のMnO相と一致する弱い結晶化が証明される。前述のダイアグラムでは、ZnMnの寄生相は確認されていない。例7について、X線回折ダイグラムは、調製1と比較して、約11~13度の小さな角度にピークが存在する顕著な結晶学的変化を示し、挿入を伴うラメラ結晶相を示唆している。ダイアグラム3は、構造的変化を示す最初のピークにショルダーが形成されていることで、ダイアグラム2と区別できる。この物理化学的分析から、容量の安定化が、MnO/β-Ni(OH)の初期活性相間の、状況に応じた結晶変態と関連づけられる。
【0063】
特許H10 74511 Aとは逆に、例7のように、MnOに対して50%などNi(OH)を大量に添加すると、ハイブリッド電極の容量を安定化させる結晶学的結果と、5サイクルから50サイクルの間で増加する放電電圧の顕著な変化は、MnOOH/MnOおよびNi(OH)/NiOOH化合物の、状況に応じた、また、サイクル数に伴う漸進的な変態を示す。前述の、状況に応じた変化は、この新しいハイブリッドMnO/Ni(OH)電極の放電容量がより安定化することを示す。アルカリ性電解質中に安定したNi(OH)/NiOOH微結晶が存在し、MnOOH/MnO化合物の結晶成長基板となり、当該基板が、当該化合物がコヒーレンス・ドメインを増加させることで、電気化学対MnOOH/MnOの可逆性を増加させると考えられるが、完全には実証されていない。しかし、容量の安定化は、化合物 Ni(OH)/NiOOHとMnOOH/MnOの間の状況に応じた変化を示唆する新しい現象と相関している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】