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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ヒトにおける悪性胸水に対する治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P43/00 105
A61K9/127
A61K47/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553201
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022018504
(87)【国際公開番号】W WO2022187351
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,090
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514306065
【氏名又は名称】サインパス ファルマ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SIGNPATH PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ホッキング アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ソーディロ ピーター ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファレル アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クレーベ ソニア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB21
4C076CC26
4C076DD63
4C206AA01
4C206CB14
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA44
4C206MA76
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZB21
(57)【要約】
本発明は、ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドをヒト患者に胸膜内投与することを含み、治療有効量が、悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを前記ヒト患者に胸膜内投与することを含み、前記治療有効量が、前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法。
【請求項2】
胸膜腔又は胸腔が、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントの前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化1】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
【化2】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物が、
【化3】

のうちの1又は2以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
悪性胸水に対する治療を必要とするヒト患者を特定すること;及び
前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する胸膜腔又は胸腔において前記ヒト患者に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項19】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化4】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
【化5】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
請求項18に記載の方法。
【請求項30】
式Iの化合物が、
【化6】

のうちの1又は2以上から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日出願の米国仮特許出願第63/156,090号に対する優先権を主張し、そのそれぞれの内容は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に、悪性胸水を治療する分野に関し、より詳細には、ヒトにおける悪性胸水の治療のための組成物及び方法に関する。
【0003】
連邦政府により助成された研究の記述
なし。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定することなく、その背景が、悪性胸水に関連して説明される。
【0005】
胸水は、一般に、2つのカテゴリーに分類することができる:漏出性胸水及び滲出性胸水。漏出性胸水は、一般的に、全身性疾患又は心不全、肝硬変若しくは腎不全などの特定の臓器疾患により引き起こされる。典型的に、胸水は、胸部の両側に対して同時に生じる。滲出性胸水は、通常、肺炎、肺結核等などの肺疾患により、又は肺がん、乳がん等などのがんにより引き起こされ;胸水は、大部分は胸部の片側に対して生じる。胸水の一般的な症状としては、咳、呼吸困難、胸痛、呼吸喪失、及び/又は呼吸の弱まりが挙げられる。重症症例は、気管の反対側変位、又は呼吸の補助のための酸素発生器の必要性を伴う。
【0006】
良性胸水を有する患者は、多くの場合、体液を排出し、原発疾患を同時に治療することにより治療される。悪性胸水を有する患者では、腫瘍を治癒することは困難である。ドレナージ(drainage)が胸部内の体液を排出させるための一般的な方法であり、これは体液を迅速に排出する目的を達成することができるが、しかしながら、ドレナージ単独では基礎にある悪性腫瘍を治療しない。それゆえ、患者は胸部内で体液を継続的に生成するので、ドレナージは単に補助療法に過ぎない。さらに、継続的なドレナージは、多くの場合、患者に対する不可逆的なダメージを生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、悪性胸水を有する患者に関して、より安全又は長期的な治療を用いて胸水を治療することが望ましい。悪性胸水を治療及び/又は低減するための新規組成物及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、ヒト患者に胸膜内に治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを投与することを含み、治療有効量が、悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法を含む。一態様では、胸膜腔又は胸腔は、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接している。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~6時間にわたって、100~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~4時間にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2時間以下にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって、300mg/m超の用量で投与される。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである。別の態様では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される。別の態様では、リポソームは、式Iの脂質を含み:
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
別の態様では、治療有効量は、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む。別の態様では、組成物は、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、Ar-ツメロン(Ar-tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、悪性胸水に対する治療を必要とするヒト患者を特定すること;及び悪性胸水を低減又は治療するために十分である治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する胸膜腔又は胸腔においてヒト患者に投与することを含む、方法を含む。一態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~6時間にわたって、100~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~4時間にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2時間以下にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって、300mg/m超の用量で投与される。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである。別の態様では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される。別の態様では、リポソームは、式Iの脂質を含み:
【0014】
【化4】
【0015】
式中、Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又はその組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
別の態様では、治療有効量は、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む。別の態様では、組成物は、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用が以下で詳細に議論されるが、本発明は、広範囲の様々な具体的な文脈において具現化することができる多数の適用可能な発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書中で議論される具体的な実施形態は、本発明を作製及び使用するための具体的な様式の単なる例示であり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0020】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下で定義される。本明細書中で定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者により通常理解される通りの意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数形の実体のみを意味することは意図されず、その具体例を例示のために使用することができる一般的な分類を含む。本明細書中で使用される専門用語は、本発明の具体的な実施形態を説明するために使用されるが、その使用法は、特許請求の範囲において輪郭が示される場合を除いて、本発明の範囲を定めるものではない。
【0021】
本研究は、悪性胸水の診断を有する個体において腫瘍部位に直接的に、既存のトンネル留置胸膜カテーテル(TIPC;tunnelled indwelling pleural catheter)を介して投与される、リポソーム性クルクミンの単回用量の忍容性及び薬物動態プロフィールを評価する。最大耐量は、この方法を介して投与されるリポソーム性クルクミンに対して決定される。
【0022】
本明細書中で使用する場合、用語「インビボ」とは、身体内部であることを意味する。本出願で使用される通りに使用される用語「インビトロ」とは、無生物系において行われる操作を示すものと理解されるべきである。
【0023】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」とは、特に、疾患又は障害の症状を示す患者において、本明細書中で言及される状態の治療を意味する。
【0024】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」又は「治療すること」とは、本発明の化合物のいずれかの投与を意味し、(i)疾患の病理学若しくは症候学を経験若しくは提示している動物において疾患を阻害すること(すなわち、病理学及び/又は症候学のさらなる発達を停止させること);又は(ii)疾患の病理学若しくは症候学を経験若しくは提示している動物において疾患を改善すること(すなわち、病理学及び/又は症候学を逆転させること)を含む。用語「制御すること」は、制御対象の状態を予防、治療、除去、改善又はそれ以外にその重症度を低減することを含む。
【0025】
本明細書中で使用する場合、本明細書中に記載される用語「有効量」又は「治療有効量」とは、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家により求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を生起するであろう対象化合物の量を意味する。
【0026】
本明細書中で使用する場合、本明細書中で使用される通りの化合物の用語「投与」又は「投与すること」とは、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤、クリーム剤、ゼリー剤、散剤、又は胸膜内投与に対して適応若しくは製剤化されたパッチ剤をはじめとする、治療的に有用な形態及び治療的に有用な量で個体の身体に導入することができる形態で、治療を必要とする個体に本発明の化合物を提供することを意味するものと理解されるべきである。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「胸膜内投与」は、注入及び他の様式の胸膜内投与を含み、胸膜領域は、肺、腎臓、肝臓、及び心臓に隣接する胸膜腔又は胸腔を含む。
【0028】
本明細書中で使用する場合、担体、希釈剤又は賦形剤を説明するために本明細書中で使用される通りの用語「薬学的に許容される」は、製剤の他の成分と適合性でなければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならない。
【0029】
脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せを含む。
【0030】
式(I)の脂質:
【0031】
【化7】
【0032】
式中、Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
【0033】
は、
【0034】
【化8】
【0035】
であり;Rは、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは塩を生じ;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである。脂質は、典型的には、意図される投与の形態に基づいて選択され、従来の調剤実務に合致する好適な塩、緩衝剤、希釈剤、増量剤、賦形剤及び/又は担体(本明細書中で薬学的に許容される担体又は担体材料と集合的に称される)と混合して投与される。投与に対して最良な位置に応じて、脂質は、例えば、胸膜内投与に対して最大の及び/又は一定の投薬を提供するために製剤化することができる。脂質は単独で投与することができるが、一般的には、薬学的に許容される担体と混合された安定な塩の形態で提供されるであろう。担体は、選択される投与のタイプ及び/又は位置に応じて、固体又は液体であり得る。
【0036】
本発明を使用して有用な剤形を作製するための技術及び組成物は、以下の参考文献のうちの1又は2以上に記載される:Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 2007;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000、及びそれに対する改訂;Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999);それらのすべてが、参照により組み入れられ、同様に、関連する部分が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0037】
脂質は、リポソーム、例えば、荷電か非荷電かにかかわらず、小型単層ベシクル、大型単層ベシクル、及び多層ベシクルの形態で投与することができる。リポソームは、1又は2以上のリン脂質(例えば、コレステロール)、ステアリルアミン及び/又はホスファチジルコリン、その混合物などを含むことができる。
【0038】
方法及び分析。所定の用量漸増レベルに対するか、又は用量制限毒性の所定の回数に達するまでの3+3拡大コホート。参加者には、以下の用量コホートを用いて、逐次的登録症例系列として、その既存のTIPCを介して、単回用量のリポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標)、SignPath Pharma社)が投与される:100、200及び300mg/m、しかし50、100、150、200、250、300又は350mg/mで投与することもできる。主要評価項目は、所定の用量範囲内の最大耐量の決定及び既存のTIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与の実行可能性の決定である。副次評価項目は、リポソーム性クルクミンの胸膜内投与の安全性及び忍容性、全生存期間中央値、生活の質及び息切れの感覚に対する作用、並びに血漿及び胸膜液からのクルクミンの薬物動態及び濃度の決定を含む。重要な組入れ基準は、年齢18歳以上、既存のTIPC、悪性胸水の診断を示す胸膜生検又は胸膜液細胞学、及び対象に対して利益が証明されている抗腫瘍療法が利用可能でないか又は以前に拒否している、米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス2未満を含む。倫理学及び普及:研究プロトコールは、南アデレード地域健康ネットワークHRECにより承認されている(承認番号:HREC/20/SAC/11)。研究結果は、内科的腫瘍学及び呼吸器医学の分野において、査読付き雑誌で発表され、学会発表される。治験登録及び登録番号:オーストラリア及びニュージーランド臨床試験登録、ACTRN12620001216909。
【0039】
本研究は、いずれかの製剤のクルクミンがヒトの胸腔に直接的に送達される最初の研究である。クルクミンの薬物動態特性、すなわち、低いバイオアベイラビリティ及び迅速な分解に起因して、リポソーム封入型クルクミンの直接的な胸膜内送達は、この部位での腫瘍に対する臨床的に重要なクルクミン濃度をよりよく提供することができる。研究設計は、リポソーム性クルクミンの複数用量の安全性の評価を可能にしない。複数用量は、持続的症状軽減、又は考えられる抗新生物作用に対して提供することができる。
【0040】
悪性胸水。悪性胸水(MPE;malignant pleural effusion)は、原発性又は二次性胸膜悪性腫瘍の結果としての、胸腔中の液体貯留である。MPEの最も一般的な原因は、胸膜又は縦隔リンパ節に転移している末期乳がん及び肺がんである(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016)。MPEを提示する患者は、予後不良であり、基礎にある悪性腫瘍のタイプ及びステージに応じて、1~12カ月間の生存期間中央値を有する(Zamboni MM, da Silva CT, Jr., Baretta R, et al. Important prognostic factors for survival in patients with malignant pleural effusion. BMC Pulm Med 2015;15:29. doi: 10.1186/s12890-015-0025-z、Porcel JM, Gasol A, Bielsa S, et al. Clinical features and survival of lung cancer patients with pleural effusions. Respirology 2015;20(4):654-9. doi: 10.1111/resp.12496、Clive AO, Kahan BC, Hooper CE, et al. Predicting survival in malignant pleural effusion: development and validation of the LENT prognostic score. Thorax 2014;69(12):1098-104. doi: 10.1136/thoraxjnl-2014-205285)。MPEは、著しい不快感、呼吸困難を引き起こし、一般的に最初の治療的ドレナージの後に再発するので、胸水の制御は、患者の症状の管理の不可欠な部分である(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016)。再発胸水は、タルク胸膜癒着術又はトンネル留置胸膜カテーテル(TIPC)の挿入のいずれかにより管理することができる(Davies HE, Mishra EK, Kahan BC, et al. Effect of an indwelling pleural catheter vs chest tube and talc pleurodesis for relieving dyspnea in patients with malignant pleural effusion: the TIME2 randomized controlled trial. JAMA 2012;307(22):2383-9. doi: 10.1001/jama.2012.5535、Bibby AC, Dorn P, Psallidas I, et al. ERS/EACTS statement on the management of malignant pleural effusions. Eur J Cardiothorac Surg 2019;55(1):116-32. doi: 10.1093/ejcts/ezy258、Feller-Kopman DJ, Reddy CB, DeCamp MM, et al. Management of Malignant Pleural Effusions. An Official ATS/STS/STR Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med 2018;198(7):839-49. doi: 10.1164/rccm.201807-1415ST)。現在、MPEドレナージに対する代替としての抗がん療法の使用を支持する証拠はなく(Bibby AC, Dorn P, Psallidas I, et al. ERS/EACTS statement on the management of malignant pleural effusions. Eur J Cardiothorac Surg 2019;55(1):116-32. doi: 10.1093/ejcts/ezy258)、したがって、初期介入から緩和ステージまでの全体を通して、MPEに対する新規の考えられる治療、又は補助療法の選択肢及びアプローチの探求は、公の課題として残っている。
【0041】
クルクミン及びがん。クルクミンは、香辛料であるウコンから誘導されるポリフェノールであり、炎症、細胞周期進行、血管新生及び細胞生存を制御するものをはじめとする、発がんに関与する多数の経路を調節することができる。クルクミンはまた、血管内皮増殖因子A、インターロイキン6、転写のシグナル伝達因子及び活性化因子3、スフィンゴシンリン酸、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ及び腫瘍壊死因子-アルファをはじめとする液体貯留に関与する多数の因子を低減することができるので、胸膜液生成を低減することを補助する潜在能力も有する(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016、Yeh HH, Lai WW, Chen HH, et al. Autocrine IL-6-induced Stat3 activation contributes to the pathogenesis of lung adenocarcinoma and malignant pleural effusion. Oncogene 2006;25(31):4300-9. doi: 10.1038/sj.onc.1209464、Stathopoulos GT, Kollintza A, Moschos C, et al. Tumor necrosis factor-alpha promotes malignant pleural effusion. Cancer Res 2007;67(20):9825-34. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-07-1064、Shanmugam MK, Rane G, Kanchi MM, et al. The multifaceted role of curcumin in cancer prevention and treatment. Molecules 2015;20(2):2728-69. doi: 10.3390/molecules20022728)。これらの抗がん作用の臨床設定への転換は、クルクミンの低い溶解度、生理的pHでの不安定性、低いバイオアベイラビリティ並びに血中での迅速な分子変換及び分解により妨げられてきた(Heger M, van Golen RF, Broekgaarden M, et al. The molecular basis for the pharmacokinetics and pharmacodynamics of curcumin and its metabolites in relation to cancer. Pharmacol Rev 2014;66(1):222-307. doi: 10.1124/pr.110.004044)。これを克服するために、クルクミンを担持したミセル及びリポソームなどの脂質に基づく媒体をはじめとする様々なクルクミン製剤及び薬物送達系が、インビボでのその安定性、溶解度及びバイオアベイラビリティを改善するために開発されてきた(Liu L, Sun L, Wu Q, et al. Curcumin loaded polymeric micelles inhibit breast tumor growth and spontaneous pulmonary metastasis. Int J Pharm 2013;443(1-2):175-82. doi: 10.1016/j.ijpharm.2012.12.032)。
【0042】
リポソーム性クルクミン。リポソームは、早期分解を低減し、安定性、生体分布及び細胞取り込みを改善するために、薬物に対する送達系として使用されるリン脂質ベシクルである(Feng T, Wei Y, Lee RJ, et al. Liposomal curcumin and its application in cancer. Int J Nanomedicine 2017;12:6027-44. doi: 10.2147/IJN.S132434、Sercombe L, Veerati T, Moheimani F, et al. Advances and challenges of liposome assisted drug delivery. Front Pharmacol 2015;6:286. doi: 10.3389/fphar.2015.00286)。「LipoCurc(商標)」と称される医薬グレードのリポソーム封入型合成クルクミンが、現在では、健康なヒト及び進行型がん患者の両方において、ヒトで静脈内投与されている唯一のリポソーム性クルクミン製剤である。がん患者において、リポソーム性クルクミン(100~300mg/m)が、8週間又は疾患進行若しくは許容されない毒性が観察されるまで、週1回、6~8時間にわたって静脈内投与された。300mg/mのリポソーム性クルクミンの投与後の2名の患者において、顕著な腫瘍マーカー応答及び一時的な臨床的利益が観察された(Greil R, Greil-Ressler S, Weiss L, et al. A phase 1 dose-escalation study on the safety, tolerability and activity of liposomal curcumin (LipocurcTM) in patients with locally advanced or metastatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2018;82(4):695-706. doi: 10.1007/s00280-018-3654-0)。しかしながら、静脈内薬物送達後、薬物は臓器組織、及び体液(Matabudul D, Pucaj K, Bolger G, et al. Tissue distribution of (Lipocurc) liposomal curcumin and tetrahydrocurcumin following two- and eight-hour infusions in Beagle dogs. Anticancer Res 2012;32(10):4359-64)に不均一に再分配する可能性があり、したがって、投与された用量のうちの小さな割合しか胸腔に到達できない。
【0043】
リポソーム性クルクミンの胸膜内投与の第1相試験に対する論理的根拠。胸腔に隣接した腫瘍細胞の位置は、腫瘍部位に直接的に治療剤を投与する固有の機会を提供する。胸膜内リポソーム性クルクミン療法は、胸膜の原発性及び二次性悪性腫瘍を有する患者において、静脈内療法と比較していくつかの考えられる利点を提示する。最も重要なことに、胸膜内リポソーム性クルクミン療法は、腫瘍部位への直接的な高用量のクルクミンの送達を可能にし、実際には;これは、潜在的な全身毒性を最小化しながら、胸腔に臨床的に重要な濃度のクルクミンを送達するための唯一の方法であり得る。リポソーム封入型化学療法薬は、悪性胸膜中皮腫を有するヒトでの第I相及び第II相の両方の臨床試験において胸腔に以前に投与され、幾分かの効果を示してきた(Lu C, Perez-Soler R, Piperdi B, et al. Phase II study of a liposome-entrapped cisplatin analog (L-NDDP) administered intrapleurally and pathologic response rates in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol 2005;23(15):3495-501. doi: 10.1200/JCO.2005.00.802、Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9)。既存のTIPCを介する治療剤送達は、患者が、胸膜のいかなる追加の器具使用手技も回避し、したがって手技によるリスクを低減しながら、腫瘍部位に標的化された療法を受けることができるであろうことを意味する。
【0044】
胸膜内クルクミン用量及び漸増スケジュールの正当化。リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の3種類の予め決定された単回漸増用量レベルの安全性レベルを決定する。投与量レベルは、100mg/m、200mg/m及び300mg/mに体表面積調整される。これらの用量濃度は、健康成人において決定されたリポソーム性クルクミンの以前に確立された安全な全身投与量レベル未満であり(最大耐量(MTD;maximum tolerated dose)400mg/m)(Storka A, Vcelar B, Klickovic U, et al. Safety, tolerability and pharmacokinetics of liposomal curcumin in healthy humans. Int J Clin Pharmacol Ther 2015;53(1):54-65. doi: 10.5414/CP202076)、第II相臨床試験において転移性がんの治療に対するリポソーム性クルクミン有効性を評価する静脈内投与量レベルに合致する(Greil R, Greil-Ressler S, Weiss L, et al. A phase 1 dose-escalation study on the safety, tolerability and activity of liposomal curcumin (LipocurcTM) in patients with locally advanced or metastatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2018;82(4):695-706. doi: 10.1007/s00280-018-3654-0)。体表面積調整用量は、リポソーム捕捉型抗新生物療法をはじめとする、ヒトにおける胸腔及び腹腔に投与される薬剤の安全性及び有効性を評価した臨床試験で使用されてきた(Lu C, Perez-Soler R, Piperdi B, et al. Phase II study of a liposome-entrapped cisplatin analog (L-NDDP) administered intrapleurally and pathologic response rates in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol 2005;23(15):3495-501. doi: 10.1200/JCO.2005.00.802、Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9、Vatandoust S, Bright T, Roy AC, et al. Phase I open-label trial of intraperitoneal paclitaxel in combination with intravenous cisplatin and oral capecitabine in patients with advanced gastric cancer and peritoneal metastases (IPGP study): study protocol. BMJ Open 2019;9(5):e026732. doi: 10.1136/bmjopen-2018-026732、Delgado G, Potkul RK, Treat JA, et al. A phase I/II study of intraperitoneally administered doxorubicin entrapped in cardiolipin liposomes in patients with ovarian cancer. Am J Obstet Gynecol 1989;160(4):812-7; discussion 17-9. doi: 10.1016/0002-9378(89)90296-2 [published Online First: 1989/04/01])。
【0045】
健康ラットにおける前臨床研究はまた、リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の胸膜内投与後の低い全身性クルクミン吸収も実証した。さらに、ラット研究は、ヒトにおける300mg/mと同等なリポソーム性クルクミンの胸膜内用量はいかなる胸膜病理も引き起こさなかったことを示した(Hocking A, Tommasi S, Sordillo P, et al. The Safety and Exploration of the Pharmacokinetics of Intrapleural Liposomal Curcumin. Int J Nanomedicine 2020;15:943-52. doi: 10.2147/IJN.S237536)。
【0046】
対照的に、ヒトにおいて胸腔に送達されるリポソーム捕捉型化学療法剤に対するMTDは、同じ用量の静脈内投与後のMTDよりも50%高かった(Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9)。これらの研究に鑑みて、MTDが最高予定投与量レベルに到達するとは予測されない。代わりに、リポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、若しくは600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2、3、4、5、6、若しくは7時間にわたって投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2、3、4、5、6、7、若しくは8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される。
【0047】
本プロトコールを準備する際には、標準的プロトコール項目:介入試験のための推奨(SPIRIT;The Standard Protocol Items: Recommendations for Interventional Trials)チェックリストを使用した(Chan A-W, Tetzlaff JM, Gotzsche PC, et al. SPIRIT 2013 explanation and elaboration: guidance for protocols of clinical trials. BMJ : British Medical Journal 2013;346:e7586. doi: 10.1136/bmj.e7586)。悪性胸水を有する患者における胸膜内リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の単回用量の安全性及び実行可能性を、患者の既存のTIPCを介してリポソーム性クルクミンを投与することにより決定する。以下の項目が決定される:主要目的:(1)胸膜内リポソーム性クルクミンのMTDが進行型MPEを有する人での予め決定された漸増用量範囲内に達するか否か;(2)既存のTIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与の実行可能性。
【0048】
副次目的:(1)以下の項目を決定することにより、安全性及び忍容性を評価すること:米国国立がん研究所有害事象共通用語規準v5.0(NCI CTCAE v5.0;the National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v5.0)に基づく毒性の比率;欧州がん治療研究機構による生活の質に関する質問票(C)(EORTC-QLQ(C);the European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of life Questionnaire(C))により評価される場合の平均スコアに基づく生活の質に対する研究介入の影響;息切れに関する目視アナログスケールサーベイ(VASBサーベイ;the Visual Analogue Scale for Breathlessness survey)により評価される場合の平均スコアに基づく息切れの感覚に対する研究介入の影響;及び/又は全生存期間中央値。(2)血漿及び、可能な場合、胸膜液中でのクルクミン及びその代謝産物の濃度を測定することにより、胸膜内腔へのリポソーム性クルクミンの単回用量の投与後のすべての参加者におけるクルクミンの薬物動態を評価すること。(3)診断目的のために採取された参加者の生物検体及び診断での必要性に対する余剰分の細胞及び分子分析と併せて、臨床転帰により示される場合の抗腫瘍活性のいずれかの証拠を評価すること。
【0049】
研究設計。標準的3+3用量漸増設計をモデルとした非盲検単一施設第1相試験。
【0050】
対象集団。標的集団。細胞病理学的又は組織病理学的に証明されたMPEの診断を有し、担当医師によりTIPCの挿入が適応とされている、緩和ケア中の人。
【0051】
組入れ基準:年齢18歳以上;典型的な放射線学及び臨床的知見と併せて、胸膜生検、又は胸膜液細胞学のいずれかにより証明された悪性胸水の既存の診断;承認された全身性治療(化学療法、免疫療法又は分子標的化療法)に応答しなかったか、又はこれらの療法に対する当初の応答後にがん進行を有し、研究登録の時点で利益が証明された抗腫瘍療法が利用可能でないか、又は全身性療法を拒否しているか若しくは腫瘍内科医との協議後に全身性療法に好適でないと判断される個体;TIPCの挿入が臨床的に適応である再発性症候性胸水;0~2の米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス;及び署名したインフォームドコンセントを提出することができる。
【0052】
除外基準:治験担当医が、患者は本研究に参加すべきでないと判断するいずれかの併存疾患又は状態は、以下のものを含む:活動性肝炎の証拠、リンパ腫若しくは血液学的がんの診断を有する人、溶血性貧血の既往歴を有する人、先行する全身性抗がん療法からの毒性が消散していない人、又は治験担当医により判定される場合に不安定心臓状態を有する人;妊娠中及び/若しくは授乳中、並びに/又は妊娠を回避するための避妊手段を取ることができない出産可能年齢の女性;精神障害、又はインフォームドコンセントを提出する能力若しくは研究に協力及び参加するための能力を妨げ得るがん以外の不安定な医学的状態を有する人;第一言語が英語でない人;ワルファリン、クレキサン及び/又は直接経口抗凝固薬をはじめとする抗凝固薬投薬を受けている人。
【0053】
参加者スクリーニング及び登録。すべての包含及び除外基準が、標準的なケア実務の一部分として、及び/又はTIPC挿入前に評価される。例外なく、すべての組入れ基準を満たし、かつ除外基準のうちのいずれにも当てはまらない参加予定者は、参加に対して適格であり、臨床試験に参加する機会を提案される。いかなる研究特異的手順又は活動にも先立って、書面によるインフォームドコンセントが、参加者及び治験担当医により署名及び日付を記入されなければならない。
【0054】
参加者登録及び治療計画。参加者は治験に入り、表1に概要を示される通りの連続的登録症例系列として治療される。
【0055】
【表1】
【0056】
TIPCの挿入。TIPC挿入は、いずれかの可能性のある手技後合併症のモニタリング及び治療を可能にするために、リポソーム性クルクミンの投与の少なくとも1週間前に行われる。患者はTIPC挿入(本発明者らの現場プロトコールの通り)後の24~48時間は病院に留まり、医師により退院に適すると医学的に判断されるまで、医療/看護スタッフが患者をモニタリングする。胸膜液ドレナージは、真空ボトルシステム(PleurX(商標)ドレナージシステム)を介して行う。ドレナージの体積及び頻度を決定し、医師チームにより管理する。滲出液から得られた排出胸膜液を採取し、病理学的モニタリング及び検査のために、遠心分離により細胞を分離する。ベースライン研究を、表2に概要を示される通りに、TIPC挿入後に行う。静脈内造影剤を用いるCTを行うことができるか否かを決定するために、コンピューター断層撮影(CT;computed tomography)スキャンに先立って、体重及び尿及び電解質(UEC)を使用して推算糸球体濾過量(eGFR;Estimated Glomerular Filtration Rate)により参加者の腎機能を推定する。30mL/分/1.73mを超えるeGFRを有する参加者は、王立オーストラリア・ニュージーランド放射線科医大学からの2011ヨード造影剤ガイドラインに従って、静脈内造影剤を受けることができる。30mL/分/1.73m未満のeGFRを有する参加者は、CTスキャンのための静脈内造影剤を受けない。
【0057】
【表2】
【0058】
TIPC挿入に対する慣用の標準治療及び臨床ケアに対して必要とされる活動及び手順。TIPC、トンネル留置カテーテル;IPA-Lipocurc(商標)、Lipocurc(商標)の胸膜内投与;血液検査は、FBC、UEC、LFT、CRPを含む;バイタルモニタリングは、血圧、心拍、酸素(O)飽和を含む;VASB、息切れに関する目視アナログスケール;EORTC QLQ-C30、欧州がん治療研究機構による生活の質に関する質問票-C30;CT、コンピューター断層撮影像。
【0059】
既存TIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与。TIPC挿入から1週間後、参加者は、抜糸及び真空ボトルドレナージのために外来患者として受診する。ベースライン研究が、表2に概要を示される通りに行われる。続いて、参加者は、胸膜内リポソーム性クルクミン投与のために入院患者として入院する。リポソーム性クルクミンの胸膜内投与前に、真空ドレナージボトルシステムを使用して、TIPCを介して胸膜液が排出される。リポソーム性クルクミンは、担当医療チームにより無菌条件下で準備され、アダプターポート(PleurX(商標)カテーテルアクセスキット)を介して、TIPCを通じて室温で投与される。薬物送達には10~15分間かかり、その後、黄色のリポソーム性クルクミン溶液が目視によりTIPCから除去されるまで、室温滅菌0.9%生理食塩液を逐次的に10mL流す。参加者は、いずれかの可能性のある重症有害事象に関してモニタリングする時間を与えるために、48時間入院患者として入院する。参加者は、15分間毎1時間、続いて1時間毎4時間、続いて4時間間隔で合計48時間まで、血圧、心拍、酸素飽和及び体温の観察を伴って、医療及び看護スタッフによりモニタリングされる。追加の手技後評価を、表2のスケジュールに従って行う。
【0060】
いかなる有害反応も、米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI CTC)により評価され、呼吸器内科医による自由裁量で適切に治療される。退院時、参加者は、自宅での滲出液のドレナージを任せられる。
【0061】
毒性又は重症有害事象に関してチェックするために、リポソーム性クルクミンの投与と参加者の連続的登録との間に少なくとも1週間の最小限の期間が設けられる。この時間枠は、胸水に対する胸膜内治療後のモニタリングに関する通常の臨床実務に合致する。さらに、前臨床研究において、本発明者らは、リポソーム性クルクミンの胸膜内投与(300mg/mに同等な用量)の1週間後のラットの血漿中でいかなるクルクミンも検出しなかった(Hocking A, Tommasi S, Sordillo P, et al. The Safety and Exploration of the Pharmacokinetics of Intrapleural Liposomal Curcumin. Int J Nanomedicine 2020;15:943-52. doi: 10.2147/IJN.S237536)。コホート参加者のうちの3分の1以上(33%以上)が用量制限毒性を経験する場合には、次の投与量レベルへの漸増は停止される。MTDレベルに達した場合、後続の相の臨床試験での忍容性を確実にするために、別の3名の患者が以前の用量レベルで獲得される。
【0062】
胸膜内リポソーム性クルクミンの単回用量後追跡。リポソーム性クルクミンの単回用量の胸膜内投与の1週間後、参加者は、フリンダース・メディカル・センターの呼吸器クリニックで外来患者として評価され、表2に概要を示される通りにモニタリングされる。外来患者モニタリングは、胸膜内リポソーム性クルクミン投与の4、8、12及び24週間後に繰り返される。可能である場合、追跡受診で排出されたいずれかの胸膜液を、分析のために採取する。
【0063】
併用投薬及び報告。禁止投薬、及び研究参加から除外される対象:抗凝固薬投薬;ワルファリン、クレキサン及び/又は直接経口抗凝固薬を含む。研究中に治験参加者に対する食餌制限はない。食物中で又はサプリメントとして、経口摂取される食物クルクミンは、腸粘膜と超えてほとんど吸収されず、血清又は尿中で測定されるクルクミンの検出不可能又は無視できるレベルのいずれかを伴うことを、多数の研究が示している(Cheng AL, Hsu CH, Lin JK, et al. Phase I clinical trial of curcumin, a chemopreventive agent, in patients with high-risk or pre-malignant lesions. Anticancer Res 2001;21(4B):2895-900、Sharma RA, Euden SA, Platton SL, et al. Phase I clinical trial of oral curcumin: biomarkers of systemic activity and compliance. Clin Cancer Res 2004;10(20):6847-54. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-04-0744、Carroll RE, Benya RV, Turgeon DK, et al. Phase IIa clinical trial of curcumin for the prevention of colorectal neoplasia. Cancer Prev Res (Phila) 2011;4(3):354-64. doi: 10.1158/1940-6207.CAPR-10-0098)。大部分の摂取されたクルクミンが、変化せずに糞便中に排泄される(Ravindranath V, Chandrasekhara N. Absorption and tissue distribution of curcumin in rats. Toxicology 1980;16(3):259-65、Wahlstrom B, Blennow G. A study on the fate of curcumin in the rat. Acta Pharmacol Toxicol (Copenh) 1978;43(2):86-92)。併用投薬は、研究中に記録されない。
【0064】
転帰エンドポイント及び他の指標。参加者は、リポソーム性クルクミンの投与後最大24週間まで評価される。研究参加の完了前に参加者が死亡する事象では、死亡日が記録され、死亡前に収集されたデータが、研究解析に含められる。
【0065】
転帰は、以下の項目に関して、リポソーム性クルクミンの投与後0、4、8、12及び24週目に測定される:
【0066】
最大耐量(MTD)。最大耐量(MTD)は、参加者のうちの33%以下が用量制限毒性(DLT;dose-liming toxicity)を経験する最高用量レベルと定義される(Le Tourneau C, Lee JJ, Siu LL. Dose escalation methods in phase I cancer clinical trials. Journal of the National Cancer Institute 2009;101(10):708-20. doi: 10.1093/jnci/djp079 [published Online First: 05/12])。DLTは、米国国立がん研究所共通毒性評価規準第5版(NCI-CTCAE v5.0;the Common Toxicity Evaluation Criteria according to the National Cancer Institute version 5、2017年)ガイドラインに従って評価される(Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v5.0. published online on The National Cancer Institute website at https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/ctc.htm#ctc_50, 2018)。DLTは、治験介入を受けてから1週間以内に発症する場合の、胸膜内Lipocurc(商標)に対する合理的に疑われる因果関係を有する、以下の有害事象として定義される。
【0067】
DLTは、以下のものを含む:
【0068】
溶血。NCI-CTCグレード2の溶血の証拠及び2グラム以上のヘモグロビンの減少、治験担当医による研究投薬に対する因果関係の確認。
【0069】
非血液学的毒性。(1)制吐剤治療に反応する吐き気及び嘔吐、並びに脱毛を除く、いずれかのNCI-CTCグレード3以上の非血液学的毒性。(2)神経-小脳:企図振戦、不明瞭発語、眼振、推尺障害。
【0070】
他の血液学的毒性。(1)NCI-CTCグレード3貧血、(2)NCI-CTCグレード4血小板毒性、(3)7日間以上のNCI-CTCグレード4顆粒球毒性、(4)発熱性好中球減少:500/mm未満の好中球数絶対値及び1時間間隔での38℃を超える口腔温の2回の上昇又は38.5℃を超える単回口腔温のいずれかとしての発熱として定義され、但し、この単一エピソードは他の事象に明らかに関連しない。
【0071】
有害事象(AE;Adverse events)(NCI-CTCAE v5.0に従う最悪グレード)。いかなる有害反応事象も、治験参加中のAEを分類し、その強度をグレード付けするために、NCI-CTCAE v5.0ガイドラインにより評価される。AEの定義及びSAEの報告に関して、安全性報告を参照されたい。
【0072】
生活の質に対する治療介入の影響。VASBサーベイ(補足図1)及びEORTC QLQ-C30(C)質問票に対する参加者の回答から与えられる平均スコアに基づく。
【0073】
全生存期間。全生存期間は、研究登録日から、いずれかの原因による死亡、又は研究参加の中止(生存中の最後の既知の研究追跡通院及び/又は最終研究追跡通院の日付)のどちらか先に訪れた日までの期間として定義される。
【0074】
安全性報告。定義。有害事象(AE)は、医薬製剤を投与された治験参加者における、本治療とは必ずしも因果関係を有しないいずれかの医療上の出来事である。
【0075】
AEは、以下のものを含む:断続的又は一過性状態を含む、既存の状態(調査中の悪性胸水状態以外)の増悪、又は強度若しくは頻度の予期せぬ増加;悪性胸水の顕著な若しくは予期せぬ悪化又は増悪;疑わしい薬物相互作用;併発疾患;臨床介入又はさらなる調査(臨床検査の発注を超える)を必要とするいずれかの臨床的に顕著な検査値異常、外傷又は事故。
【0076】
AEは、以下のものを含まない:悪性胸水及び/又は基礎となる悪性腫瘍をはじめとするいずれかの既存の状態の予測される日間変動。顕著な悪化又は増悪を表さない研究中の疾患の兆候及び症状。悪性胸水又は基礎となる悪性腫瘍の予期される進行。NCI-CTCAE v5.0ガイドラインにおいて定義される通りの重症度グレード1又は2を有するAEは、主任治験担当医に報告され、記録されなければならない。
【0077】
重症AEは、以下のものを含む:AEの定義(上記を参照されたい)を満たすいずれかの有害な医療上の出来事及び追加的に:致死的である;生命を脅かす;入院をもたらすか又は入院期間を延長する;日常生活に支障を来す/身体機能を奪う;先天性異常;治験担当医が適切な医学的判断に基づいて重症であると判断するいずれかの重要な医療上の出来事。
【0078】
これもまた緊急の報告を必要とする、安全性評価に対して極めて重要であると特定される検査値異常は、以下のものを含む:低赤血球数、又は溶血性障害を示す他の項目。
【0079】
グレード3、4又は5の重症度を有する重症AE(SAE;Serious AE)は、事象に気付いた治験担当医の1就業日以内に主任治験担当医に直ちに報告し、記録しなければならない。主任治験担当医は、治験依頼者及び、必要な場合、地域のヒト研究倫理委員会に知らせなければならない。
【0080】
治験担当医は、事象が弱まるか、安定化するか、それ以外に説明されるか、又は参加者が追跡から外れるまで、SAEを有するすべての参加者のモニタリングを継続しなければならない。
【0081】
薬物有害反応(ADR;Adverse Drug Reactions)、SAE、又は重症薬物有害反応(重症ADR)をはじめとするすべてのAEは、安全性審査/用量漸増委員会、SAC HRECに対する年次報告、及び最終研究報告により、進行中の安全性及び毒性モニタリングについて知らせるために、治験の継続期間にわたって、予測的に一覧にされる。
【0082】
妊娠。胎児及び新生児に対するリポソーム性クルクミンの作用は未知である。男性及び女性参加者の両方には、本研究プロジェクトに能動的に参加している期間、及び試験薬の単回用量を投与されてから90日間の期間にわたって、効果的な避妊法を使用することが強く助言される。予防措置として、参加者が研究参加中に妊娠した場合には、参加者は研究から離脱する。研究プロジェクトへの参加中及び/又はリポソーム性クルクミンの投与の90日間後までに子供の父親になった男性参加者は、治験担当医に報告しなければならない。研究医は、必要な場合、妊娠パートナーに対して必要とされるいずれかの医学的注意事項に関して助言する。
【0083】
統計学的考察及びデータ解析計画。本研究は、主に標準的な3+3用量漸増設計を使用する安全性の評価に関する第1相非対照非盲検用量漸増研究であり(Le Tourneau C, Lee JJ, Siu LL. Dose escalation methods in phase I cancer clinical trials. Journal of the National Cancer Institute 2009;101(10):708-20. doi: 10.1093/jnci/djp079 [published Online First: 05/12])、したがって、サンプルサイズ正当化を必要としない。用量漸増は、予め決定された用量レベル及び/又はMTDに達するまで継続される。解析は、DLT、及び奏効率を特定するために主に記述的及び観測的なものである。
【0084】
試験薬情報-LipoCurc(商標)。リポソーム性クルクミン試験薬であるLipoCurc(商標)は、SignPath Pharma社(US)により製造され、製造管理及び品質管理の基準(GMP;Good Manufacturing Practice)を順守して、Polymun Scientific社(オーストリア)により試験、包装及びラベルされた。クルクミンは、99.2%純度までGMP条件下で合成される。本第1相治験に対するLipoCurc(商標)の使用は、治験届出方式の下での、治験依頼者であるフリンダース大学によるオーストラリア薬品・医薬品行政局へのその登録を条件とする。
【0085】
研究投与。倫理学及び普及。本単一施設研究は、南アデレード地域健康ネットワークヒト研究倫理委員会により承認された(承認番号:HREC/20/SAC/11)。研究完了時に、発表のための原稿が準備される。本研究は、ICH E6(R1)に対する補遺:臨床試験の実施に関するガイドラインICH E6(R2)((C)医薬品規制調和国際会議(ICH;International Council For Harmonisation Of Technical Requirements For Pharmaceuticals For Human Use)、2016年)、TGAコメント注釈付き医薬品の臨床試験の実施に関する基準(the Note for Guidance on Good Clinical Practice)(CPMP/ICH/135/95)(薬品・医薬品行政局、2000年7月)に従って、適用可能な法律及び規則を順守して行われる。本研究は、ヒト研究における倫理規則に関するオーストラリア国家声明(2018年改訂、(C)オーストラリア連邦、2007年)、及びNHMRCオーストラリアの責任ある研究活動のための行動規範((C)オーストラリア連邦、2007年)、並びに世界医師会によるヘルシンキ宣言(2008年)において定められる原則(principal)に従って行われる。
【0086】
参加者の募集。参加予定者は、その悪性胸水の管理のために、南オーストラリア州フリンダース・メディカル・センターで状態が見出された患者のプールから募集される。可能な限り常に、FMCで働く独立した呼吸器臨床医は、標準的TIPC挿入が患者に説明される時点で、研究参加に関し、予め特定された(予備スクリーニングされた)候補に直接的に接触し、研究に対する考えられる募集について話し合う。患者が研究への興味を示した場合、患者は、調査研究への自発的な参加に患者を誘っている調査チームのメンバーにより、研究参加者情報及び同意書式のコピーを提供される。参加予定者は、同意を与える前に、その家族及びかかりつけ医をはじめとする他者、並びに研究チームと治験参加について話し合うように促される。参加予定者は、同意を与えるかどうかを約1~2週間検討する。参加を決心した人物は、治験担当医と会い、同意書式に署名する。
【0087】
同意。参加予定者の予備スクリーニングは、このプロセスに対して与えられた同意の放棄に基づいて行われる。各参加者の研究に参加するという自発的な決断は、参加者情報に文書化された書面によるインフォームドコンセント並びに参加者及び立ち合いに同意する臨床医、又は治験チームのメンバーにより署名及び日付を記入される同意書式により確立される。すべての参加者は、そのインフォームドコンセントの署名及び日付が記入されたコピーを提供される。書面によるインフォームドコンセントは、いかなる研究の具体的手順又は活動にも先立って得られなければならない。
【0088】
守秘義務。本研究において生成されるすべてのデータは、適用可能なプライバシー保護法及び規則に従って、機密とされる。すべてのデータは、安全に保管され、研究調査チームのメンバー及び秘密保持契約に署名した人物のみに利用可能にされる。研究データは、大規模に集合された様式で解析及び報告され、治験参加者は、本研究から生じるいかなる発表及び刊行物中でも匿名である。
【0089】
プロトコール改訂。プロトコールに対するいかなる変更及び改訂も、主任治験担当医によってのみ為されることができる。プロトコール変更は、施設のヒト研究倫理委員会(HREC;Human Research Ethics Committee)によって承認された場合にのみ履行される。
【0090】
データ取り扱い及び記録保管。研究の監察及び解析に対して必要とされる治験データは、症例報告書並びに室内実験及び転帰の関連する文書に記録される。完成した症例報告書の正確性は、治験担当医により署名されることにより示される。すべての研究データが、オーストラリアの責任ある研究活動のための行動規範に従って、研究の完了後、最低15年間維持される(Australian Code for the Responsible Conduct of Research Camberra: National Health and Medical Research Council, 2018)。
【0091】
研究監察。安全性審査/用量漸増委員会。安全性審査/用量漸増委員会は、新たに生じた安全性及び薬物動態データを審査するため、及び治験に関する重要な決定を行うために、独立した呼吸器内科医との相談において機能する。特に、安全性審査/用量漸増委員会は、用量漸増が進められることが適切である場合、及び研究を終了すべきである場合、参加者募集での前進に関して協議する。
【0092】
監査及び査察。監察は、データ収集及びプロトコール順守に関する他の研究書類、データ正確性及び完全性の集中審査を含む。すべての研究書類は、監察及び監査目的のために、治験依頼者、及び規制機関の代表者に対して利用可能にされる。
【0093】
本明細書中で議論されるいかなる実施形態も、本発明のいずれかの方法、キット、試薬、又は組成物に関して遂行することができ、逆もまた同じであることが考慮される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0094】
本明細書中に記載される特定の実施形態は、例示として示され、本発明の限定として示されるものではないことが理解されるであろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において利用することができる。当業者は、慣用の実験を超えるものを使用せずに、本明細書中に記載される具体的手順に対する多数の等価物を理解するか、又はそれを確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内に入ると考えられ、特許請求の範囲により網羅される。
【0095】
本明細書中で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願が、それぞれの刊行物又は特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度まで、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0096】
特許請求の範囲及び/又は明細書中で用語「含むこと」と共に用いる場合の単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1」を意味することができるが、「1又は2つう以上」、「少なくとも1つ」、及び「1又は1つを超える」の意味とも合致する。特許請求の範囲での用語「又は」の使用は、選択肢のみを意味することが明示的に示されているか又は選択肢が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、用語「約」は、値が、デバイス、値を決定するために利用される方法に関する誤差の固有の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0097】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単語「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの「含むこと」のいずれかの形態)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの「有すること」のいずれかの形態)、「はじめとする(including)」(並びに「挙げられる(includes)」及び「挙げられる(include)」などの「はじめとする」のいずれかの形態)又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの「含有すること」のいずれかの形態)は、包含的又はオープンエンドであり、追加の明記されない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書中に提供される組成物及び方法のうちのいずれかの実施形態では、「含むこと」は、「から本質的になる」又は「からなる」を用いて置き換えることができる。本明細書中で使用する場合、語句「から本質的になる」は、特定される整数又はステップ並びに特許請求される発明の特性又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書中で使用する場合、用語「からなる」は、明記される1つの整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は限定)又は整数の群(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は限定)のみの存在を示すために使用される。
【0098】
用語「又はそれらの組合せ」とは、本明細書中で使用する場合、この用語に先行して列記される項目のすべての順列及び組合せを意味する。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図される。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等などの1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含む組合せが明白に含まれる。当業者は、そうでないことが文脈から明らかでない限り、いずれかの組合せ中の項目又は用語の数に対する制限は典型的にはないことを理解するであろう。
【0099】
本明細書中で使用する場合、限定するものではないが、「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似の単語は、そのように修飾される場合に、必ずしも絶対的又は完璧でないことが理解される状態を意味するが、状態が存在すると指定する根拠に対して当業者にとって十分に近接していると考えられるであろう。記載が変動し得る程度は、いかに大きい変化を設けることができるかに依存し、変更された特徴が必要とされる特性及び変更されていない特徴の能力を未だ有するものと当業者が未だ認識するであろう。一般に、先行する議論に支配されるが、「約」などの近似の単語により修飾される本明細書中の数値は、明記される値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動し得る。
【0100】
加えて、本明細書中のセクション見出しは、米国特許規則1.77(37 CFR 1.77)の下での提案との整合性に関して、又はそれ以外に組織化のきっかけを与えるために提供される。これらの見出しは、本開示から生じる可能性があるいずれかの請求項に記載される本発明を限定又は特徴付けするものではない。具体的にかつ例として、見出しは「発明の分野」を指すが、いわゆる技術分野を説明するためのこの見出しの下の言葉により、そのような特許請求の範囲が限定されるべきではない。さらに、「発明の背景」セクション中の技術の説明は、技術が本開示中のいずれかの発明に対する先行技術であるという了解として解釈されるべきではない。「概要」もまた、発行される特許請求の範囲に示される発明の特徴と考えられるべきではない。さらに、単数形での「本発明」に対する本開示中のいかなる参照も、本開示中に単一の点の新規性のみがあることを主張するために使用されるべきではない。複数の発明が、本開示から生じる複数の請求項の限定に従って示すことができ、したがって、そのような請求項が、それにより保護される本発明、及びその等価物を定義する。すべての例において、そのような請求項の範囲は、本開示に照らして利点であると自然に考えられるであろうが、本明細書中に示される見出しにより拘束されるべきではない。
【0101】
本明細書中に開示及び特許請求される組成物及び/又は方法のすべてが、本開示に鑑みて過度な実験を伴わずに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載される組成物及び/又は方法に対して、及び方法のステップにおいて又はステップの順序において変更を適用することができることが、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置換及び改変は、添付の特許請求の範囲により規定される通りの本発明の精神、範囲及び概念の範囲内に入ると考えられる。
【0102】
特許庁、及び本出願に対して発行されるいずれかの特許のいずれかの読者が本明細書に添付される特許請求の範囲を理解することを助けるために、本出願人らは、単語「~のための手段」又は「~のためのステップ」が特定の請求項中で明示的に使用されない限り、添付の請求項のうちのいずれかが、本出願の出願日に存在する通りの米国特許法第112条の第6段落、米国特許法第112条段落(f)、又はその等価物を発動させることを意図しないことを注記することを望む。
【0103】
請求項のうちのそれぞれに関して、各従属請求項は、先行する請求項が請求項中の用語及び要素に対する適正な先行詞を提供する限り、それぞれ及びすべての請求項に関して、独立請求項、及び先行する従属請求項のうちのそれぞれの両方に従属することができる。
【0104】
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【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを前記ヒト患者に胸膜内投与することを含み、前記治療有効量が、前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法。
【請求項2】
胸膜腔又は胸腔が、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントの前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化1】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、
【化2】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物が、
【化3】

のうちの1又は2以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
悪性胸水に対する治療を必要とするヒト患者を特定すること;及び
前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する胸膜腔又は胸腔において前記ヒト患者に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項19】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化4】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、
【化5】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
請求項18に記載の方法。
【請求項30】
式Iの化合物が、
【化6】

のうちの1又は2以上から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項18に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日出願の米国仮特許出願第63/156,090号に対する優先権を主張し、そのそれぞれの内容は参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に、悪性胸水を治療する分野に関し、より詳細には、ヒトにおける悪性胸水の治療のための組成物及び方法に関する。
【0003】
連邦政府により助成された研究の記述
なし。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定することなく、その背景が、悪性胸水に関連して説明される。
【0005】
胸水は、一般に、2つのカテゴリーに分類することができる:漏出性胸水及び滲出性胸水。漏出性胸水は、一般的に、全身性疾患又は心不全、肝硬変若しくは腎不全などの特定の臓器疾患により引き起こされる。典型的に、胸水は、胸部の両側に対して同時に生じる。滲出性胸水は、通常、肺炎、肺結核等などの肺疾患により、又は肺がん、乳がん等などのがんにより引き起こされ;胸水は、大部分は胸部の片側に対して生じる。胸水の一般的な症状としては、咳、呼吸困難、胸痛、呼吸喪失、及び/又は呼吸の弱まりが挙げられる。重症症例は、気管の反対側変位、又は呼吸の補助のための酸素発生器の必要性を伴う。
【0006】
良性胸水を有する患者は、多くの場合、体液を排出し、原発疾患を同時に治療することにより治療される。悪性胸水を有する患者では、腫瘍を治癒することは困難である。ドレナージ(drainage)が胸部内の体液を排出させるための一般的な方法であり、これは体液を迅速に排出する目的を達成することができるが、しかしながら、ドレナージ単独では基礎にある悪性腫瘍を治療しない。それゆえ、患者は胸部内で体液を継続的に生成するので、ドレナージは単に補助療法に過ぎない。さらに、継続的なドレナージは、多くの場合、患者に対する不可逆的なダメージを生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、悪性胸水を有する患者に関して、より安全又は長期的な治療を用いて胸水を治療することが望ましい。悪性胸水を治療及び/又は低減するための新規組成物及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、ヒト患者に胸膜内に治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを投与することを含み、治療有効量が、悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法を含む。一態様では、胸膜腔又は胸腔は、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接している。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~6時間にわたって、100~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~4時間にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2時間以下にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって、300mg/m超の用量で投与される。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである。別の態様では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される。別の態様では、リポソームは、式Iの脂質を含み:
【0009】
【化1】
【0010】
式中、R は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、
【0011】
【化2】

【0012】
であり;R は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;R は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;Xは、直接結合、CH 、O又はNHであり;Yは、直接結合、CH 、O又はNHであり;各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである。別の態様では、式Iの化合物は、以下のうちの1又は2以上から選択される:
【0013】
【化3】
【0014】
別の態様では、治療有効量は、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む。別の態様では、組成物は、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、Ar-ツメロン(Ar-tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、悪性胸水に対する治療を必要とするヒト患者を特定すること;及び悪性胸水を低減又は治療するために十分である治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する胸膜腔又は胸腔においてヒト患者に投与することを含む、方法を含む。一態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/mで投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~6時間にわたって、100~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2~4時間にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2時間以下にわたって、300超~600mg/mの用量で投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドは、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって、300mg/m超の用量で投与される。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである。別の態様では、リポソームは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む。別の態様では、リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドは、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、クルクミンは、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、クルクミンは、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体は、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せは、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される。別の態様では、リポソームは、式Iの脂質を含み:
【0016】
【化4】
【0017】
式中、Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又はその組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり; は、
【0018】
【化5】
【0019】
であり;R は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;R は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;R は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;Xは、直接結合、CH 、O又はNHであり;Yは、直接結合、CH 、O又はNHであり;各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである。別の態様では、式Iの化合物は、以下のうちの1又は2以上から選択される:
【0020】
【化6】
【0021】
別の態様では、治療有効量は、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む。別の態様では、組成物は、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む。別の態様では、クルクミン又はクルクミノイドは、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用が以下で詳細に議論されるが、本発明は、広範囲の様々な具体的な文脈において具現化することができる多数の適用可能な発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書中で議論される具体的な実施形態は、本発明を作製及び使用するための具体的な様式の単なる例示であり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0023】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下で定義される。本明細書中で定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者により通常理解される通りの意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数形の実体のみを意味することは意図されず、その具体例を例示のために使用することができる一般的な分類を含む。本明細書中で使用される専門用語は、本発明の具体的な実施形態を説明するために使用されるが、その使用法は、特許請求の範囲において輪郭が示される場合を除いて、本発明の範囲を定めるものではない。
【0024】
本研究は、悪性胸水の診断を有する個体において腫瘍部位に直接的に、既存のトンネル留置胸膜カテーテル(TIPC;tunnelled indwelling pleural catheter)を介して投与される、リポソーム性クルクミンの単回用量の忍容性及び薬物動態プロフィールを評価する。最大耐量は、この方法を介して投与されるリポソーム性クルクミンに対して決定される。
【0025】
本明細書中で使用する場合、用語「インビボ」とは、身体内部であることを意味する。本出願で使用される通りに使用される用語「インビトロ」とは、無生物系において行われる操作を示すものと理解されるべきである。
【0026】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」とは、特に、疾患又は障害の症状を示す患者において、本明細書中で言及される状態の治療を意味する。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」又は「治療すること」とは、本発明の化合物のいずれかの投与を意味し、(i)疾患の病理学若しくは症候学を経験若しくは提示している動物において疾患を阻害すること(すなわち、病理学及び/又は症候学のさらなる発達を停止させること);又は(ii)疾患の病理学若しくは症候学を経験若しくは提示している動物において疾患を改善すること(すなわち、病理学及び/又は症候学を逆転させること)を含む。用語「制御すること」は、制御対象の状態を予防、治療、除去、改善又はそれ以外にその重症度を低減することを含む。
【0028】
本明細書中で使用する場合、本明細書中に記載される用語「有効量」又は「治療有効量」とは、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家により求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を生起するであろう対象化合物の量を意味する。
【0029】
本明細書中で使用する場合、本明細書中で使用される通りの化合物の用語「投与」又は「投与すること」とは、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤、クリーム剤、ゼリー剤、散剤、又は胸膜内投与に対して適応若しくは製剤化されたパッチ剤をはじめとする、治療的に有用な形態及び治療的に有用な量で個体の身体に導入することができる形態で、治療を必要とする個体に本発明の化合物を提供することを意味するものと理解されるべきである。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「胸膜内投与」は、注入及び他の様式の胸膜内投与を含み、胸膜領域は、肺、腎臓、肝臓、及び心臓に隣接する胸膜腔又は胸腔を含む。
【0031】
本明細書中で使用する場合、担体、希釈剤又は賦形剤を説明するために本明細書中で使用される通りの用語「薬学的に許容される」は、製剤の他の成分と適合性でなければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならない。
【0032】
脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せを含む。
【0033】
式(I)の脂質:
【0034】
【化7】
【0035】
式中、Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
【0036】
は、
【0037】
【化8】
【0038】
であり;Rは、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは塩を生じ;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Rは、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである。脂質は、典型的には、意図される投与の形態に基づいて選択され、従来の調剤実務に合致する好適な塩、緩衝剤、希釈剤、増量剤、賦形剤及び/又は担体(本明細書中で薬学的に許容される担体又は担体材料と集合的に称される)と混合して投与される。投与に対して最良な位置に応じて、脂質は、例えば、胸膜内投与に対して最大の及び/又は一定の投薬を提供するために製剤化することができる。脂質は単独で投与することができるが、一般的には、薬学的に許容される担体と混合された安定な塩の形態で提供されるであろう。担体は、選択される投与のタイプ及び/又は位置に応じて、固体又は液体であり得る。
【0039】
本発明を使用して有用な剤形を作製するための技術及び組成物は、以下の参考文献のうちの1又は2以上に記載される:Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 2007;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000、及びそれに対する改訂;Martindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999);それらのすべてが、参照により組み入れられ、同様に、関連する部分が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0040】
脂質は、リポソーム、例えば、荷電か非荷電かにかかわらず、小型単層ベシクル、大型単層ベシクル、及び多層ベシクルの形態で投与することができる。リポソームは、1又は2以上のリン脂質(例えば、コレステロール)、ステアリルアミン及び/又はホスファチジルコリン、その混合物などを含むことができる。
【0041】
方法及び分析。所定の用量漸増レベルに対するか、又は用量制限毒性の所定の回数に達するまでの3+3拡大コホート。参加者には、以下の用量コホートを用いて、逐次的登録症例系列として、その既存のTIPCを介して、単回用量のリポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標)、SignPath Pharma社)が投与される:100、200及び300mg/m、しかし50、100、150、200、250、300又は350mg/mで投与することもできる。主要評価項目は、所定の用量範囲内の最大耐量の決定及び既存のTIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与の実行可能性の決定である。副次評価項目は、リポソーム性クルクミンの胸膜内投与の安全性及び忍容性、全生存期間中央値、生活の質及び息切れの感覚に対する作用、並びに血漿及び胸膜液からのクルクミンの薬物動態及び濃度の決定を含む。重要な組入れ基準は、年齢18歳以上、既存のTIPC、悪性胸水の診断を示す胸膜生検又は胸膜液細胞学、及び対象に対して利益が証明されている抗腫瘍療法が利用可能でないか又は以前に拒否している、米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス2未満を含む。倫理学及び普及:研究プロトコールは、南アデレード地域健康ネットワークHRECにより承認されている(承認番号:HREC/20/SAC/11)。研究結果は、内科的腫瘍学及び呼吸器医学の分野において、査読付き雑誌で発表され、学会発表される。治験登録及び登録番号:オーストラリア及びニュージーランド臨床試験登録、ACTRN12620001216909。
【0042】
本研究は、いずれかの製剤のクルクミンがヒトの胸腔に直接的に送達される最初の研究である。クルクミンの薬物動態特性、すなわち、低いバイオアベイラビリティ及び迅速な分解に起因して、リポソーム封入型クルクミンの直接的な胸膜内送達は、この部位での腫瘍に対する臨床的に重要なクルクミン濃度をよりよく提供することができる。研究設計は、リポソーム性クルクミンの複数用量の安全性の評価を可能にしない。複数用量は、持続的症状軽減、又は考えられる抗新生物作用に対して提供することができる。
【0043】
悪性胸水。悪性胸水(MPE;malignant pleural effusion)は、原発性又は二次性胸膜悪性腫瘍の結果としての、胸腔中の液体貯留である。MPEの最も一般的な原因は、胸膜又は縦隔リンパ節に転移している末期乳がん及び肺がんである(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016)。MPEを提示する患者は、予後不良であり、基礎にある悪性腫瘍のタイプ及びステージに応じて、1~12カ月間の生存期間中央値を有する(Zamboni MM, da Silva CT, Jr., Baretta R, et al. Important prognostic factors for survival in patients with malignant pleural effusion. BMC Pulm Med 2015;15:29. doi: 10.1186/s12890-015-0025-z、Porcel JM, Gasol A, Bielsa S, et al. Clinical features and survival of lung cancer patients with pleural effusions. Respirology 2015;20(4):654-9. doi: 10.1111/resp.12496、Clive AO, Kahan BC, Hooper CE, et al. Predicting survival in malignant pleural effusion: development and validation of the LENT prognostic score. Thorax 2014;69(12):1098-104. doi: 10.1136/thoraxjnl-2014-205285)。MPEは、著しい不快感、呼吸困難を引き起こし、一般的に最初の治療的ドレナージの後に再発するので、胸水の制御は、患者の症状の管理の不可欠な部分である(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016)。再発胸水は、タルク胸膜癒着術又はトンネル留置胸膜カテーテル(TIPC)の挿入のいずれかにより管理することができる(Davies HE, Mishra EK, Kahan BC, et al. Effect of an indwelling pleural catheter vs chest tube and talc pleurodesis for relieving dyspnea in patients with malignant pleural effusion: the TIME2 randomized controlled trial. JAMA 2012;307(22):2383-9. doi: 10.1001/jama.2012.5535、Bibby AC, Dorn P, Psallidas I, et al. ERS/EACTS statement on the management of malignant pleural effusions. Eur J Cardiothorac Surg 2019;55(1):116-32. doi: 10.1093/ejcts/ezy258、Feller-Kopman DJ, Reddy CB, DeCamp MM, et al. Management of Malignant Pleural Effusions. An Official ATS/STS/STR Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med 2018;198(7):839-49. doi: 10.1164/rccm.201807-1415ST)。現在、MPEドレナージに対する代替としての抗がん療法の使用を支持する証拠はなく(Bibby AC, Dorn P, Psallidas I, et al. ERS/EACTS statement on the management of malignant pleural effusions. Eur J Cardiothorac Surg 2019;55(1):116-32. doi: 10.1093/ejcts/ezy258)、したがって、初期介入から緩和ステージまでの全体を通して、MPEに対する新規の考えられる治療、又は補助療法の選択肢及びアプローチの探求は、公の課題として残っている。
【0044】
クルクミン及びがん。クルクミンは、香辛料であるウコンから誘導されるポリフェノールであり、炎症、細胞周期進行、血管新生及び細胞生存を制御するものをはじめとする、発がんに関与する多数の経路を調節することができる。クルクミンはまた、血管内皮増殖因子A、インターロイキン6、転写のシグナル伝達因子及び活性化因子3、スフィンゴシンリン酸、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ及び腫瘍壊死因子-アルファをはじめとする液体貯留に関与する多数の因子を低減することができるので、胸膜液生成を低減することを補助する潜在能力も有する(Psallidas I, Kalomenidis I, Porcel JM, et al. Malignant pleural effusion: from bench to bedside. Eur Respir Rev 2016;25(140):189-98. doi: 10.1183/16000617.0019-2016、Yeh HH, Lai WW, Chen HH, et al. Autocrine IL-6-induced Stat3 activation contributes to the pathogenesis of lung adenocarcinoma and malignant pleural effusion. Oncogene 2006;25(31):4300-9. doi: 10.1038/sj.onc.1209464、Stathopoulos GT, Kollintza A, Moschos C, et al. Tumor necrosis factor-alpha promotes malignant pleural effusion. Cancer Res 2007;67(20):9825-34. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-07-1064、Shanmugam MK, Rane G, Kanchi MM, et al. The multifaceted role of curcumin in cancer prevention and treatment. Molecules 2015;20(2):2728-69. doi: 10.3390/molecules20022728)。これらの抗がん作用の臨床設定への転換は、クルクミンの低い溶解度、生理的pHでの不安定性、低いバイオアベイラビリティ並びに血中での迅速な分子変換及び分解により妨げられてきた(Heger M, van Golen RF, Broekgaarden M, et al. The molecular basis for the pharmacokinetics and pharmacodynamics of curcumin and its metabolites in relation to cancer. Pharmacol Rev 2014;66(1):222-307. doi: 10.1124/pr.110.004044)。これを克服するために、クルクミンを担持したミセル及びリポソームなどの脂質に基づく媒体をはじめとする様々なクルクミン製剤及び薬物送達系が、インビボでのその安定性、溶解度及びバイオアベイラビリティを改善するために開発されてきた(Liu L, Sun L, Wu Q, et al. Curcumin loaded polymeric micelles inhibit breast tumor growth and spontaneous pulmonary metastasis. Int J Pharm 2013;443(1-2):175-82. doi: 10.1016/j.ijpharm.2012.12.032)。
【0045】
リポソーム性クルクミン。リポソームは、早期分解を低減し、安定性、生体分布及び細胞取り込みを改善するために、薬物に対する送達系として使用されるリン脂質ベシクルである(Feng T, Wei Y, Lee RJ, et al. Liposomal curcumin and its application in cancer. Int J Nanomedicine 2017;12:6027-44. doi: 10.2147/IJN.S132434、Sercombe L, Veerati T, Moheimani F, et al. Advances and challenges of liposome assisted drug delivery. Front Pharmacol 2015;6:286. doi: 10.3389/fphar.2015.00286)。「LipoCurc(商標)」と称される医薬グレードのリポソーム封入型合成クルクミンが、現在では、健康なヒト及び進行型がん患者の両方において、ヒトで静脈内投与されている唯一のリポソーム性クルクミン製剤である。がん患者において、リポソーム性クルクミン(100~300mg/m)が、8週間又は疾患進行若しくは許容されない毒性が観察されるまで、週1回、6~8時間にわたって静脈内投与された。300mg/mのリポソーム性クルクミンの投与後の2名の患者において、顕著な腫瘍マーカー応答及び一時的な臨床的利益が観察された(Greil R, Greil-Ressler S, Weiss L, et al. A phase 1 dose-escalation study on the safety, tolerability and activity of liposomal curcumin (LipocurcTM) in patients with locally advanced or metastatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2018;82(4):695-706. doi: 10.1007/s00280-018-3654-0)。しかしながら、静脈内薬物送達後、薬物は臓器組織、及び体液(Matabudul D, Pucaj K, Bolger G, et al. Tissue distribution of (Lipocurc) liposomal curcumin and tetrahydrocurcumin following two- and eight-hour infusions in Beagle dogs. Anticancer Res 2012;32(10):4359-64)に不均一に再分配する可能性があり、したがって、投与された用量のうちの小さな割合しか胸腔に到達できない。
【0046】
リポソーム性クルクミンの胸膜内投与の第1相試験に対する論理的根拠。胸腔に隣接した腫瘍細胞の位置は、腫瘍部位に直接的に治療剤を投与する固有の機会を提供する。胸膜内リポソーム性クルクミン療法は、胸膜の原発性及び二次性悪性腫瘍を有する患者において、静脈内療法と比較していくつかの考えられる利点を提示する。最も重要なことに、胸膜内リポソーム性クルクミン療法は、腫瘍部位への直接的な高用量のクルクミンの送達を可能にし、実際には;これは、潜在的な全身毒性を最小化しながら、胸腔に臨床的に重要な濃度のクルクミンを送達するための唯一の方法であり得る。リポソーム封入型化学療法薬は、悪性胸膜中皮腫を有するヒトでの第I相及び第II相の両方の臨床試験において胸腔に以前に投与され、幾分かの効果を示してきた(Lu C, Perez-Soler R, Piperdi B, et al. Phase II study of a liposome-entrapped cisplatin analog (L-NDDP) administered intrapleurally and pathologic response rates in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol 2005;23(15):3495-501. doi: 10.1200/JCO.2005.00.802、Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9)。既存のTIPCを介する治療剤送達は、患者が、胸膜のいかなる追加の器具使用手技も回避し、したがって手技によるリスクを低減しながら、腫瘍部位に標的化された療法を受けることができるであろうことを意味する。
【0047】
胸膜内クルクミン用量及び漸増スケジュールの正当化。リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の3種類の予め決定された単回漸増用量レベルの安全性レベルを決定する。投与量レベルは、100mg/m、200mg/m及び300mg/mに体表面積調整される。これらの用量濃度は、健康成人において決定されたリポソーム性クルクミンの以前に確立された安全な全身投与量レベル未満であり(最大耐量(MTD;maximum tolerated dose)400mg/m)(Storka A, Vcelar B, Klickovic U, et al. Safety, tolerability and pharmacokinetics of liposomal curcumin in healthy humans. Int J Clin Pharmacol Ther 2015;53(1):54-65. doi: 10.5414/CP202076)、第II相臨床試験において転移性がんの治療に対するリポソーム性クルクミン有効性を評価する静脈内投与量レベルに合致する(Greil R, Greil-Ressler S, Weiss L, et al. A phase 1 dose-escalation study on the safety, tolerability and activity of liposomal curcumin (LipocurcTM) in patients with locally advanced or metastatic cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2018;82(4):695-706. doi: 10.1007/s00280-018-3654-0)。体表面積調整用量は、リポソーム捕捉型抗新生物療法をはじめとする、ヒトにおける胸腔及び腹腔に投与される薬剤の安全性及び有効性を評価した臨床試験で使用されてきた(Lu C, Perez-Soler R, Piperdi B, et al. Phase II study of a liposome-entrapped cisplatin analog (L-NDDP) administered intrapleurally and pathologic response rates in patients with malignant pleural mesothelioma. J Clin Oncol 2005;23(15):3495-501. doi: 10.1200/JCO.2005.00.802、Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9、Vatandoust S, Bright T, Roy AC, et al. Phase I open-label trial of intraperitoneal paclitaxel in combination with intravenous cisplatin and oral capecitabine in patients with advanced gastric cancer and peritoneal metastases (IPGP study): study protocol. BMJ Open 2019;9(5):e026732. doi: 10.1136/bmjopen-2018-026732、Delgado G, Potkul RK, Treat JA, et al. A phase I/II study of intraperitoneally administered doxorubicin entrapped in cardiolipin liposomes in patients with ovarian cancer. Am J Obstet Gynecol 1989;160(4):812-7; discussion 17-9. doi: 10.1016/0002-9378(89)90296-2 [published Online First: 1989/04/01])。
【0048】
健康ラットにおける前臨床研究はまた、リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の胸膜内投与後の低い全身性クルクミン吸収も実証した。さらに、ラット研究は、ヒトにおける300mg/mと同等なリポソーム性クルクミンの胸膜内用量はいかなる胸膜病理も引き起こさなかったことを示した(Hocking A, Tommasi S, Sordillo P, et al. The Safety and Exploration of the Pharmacokinetics of Intrapleural Liposomal Curcumin. Int J Nanomedicine 2020;15:943-52. doi: 10.2147/IJN.S237536)。
【0049】
対照的に、ヒトにおいて胸腔に送達されるリポソーム捕捉型化学療法剤に対するMTDは、同じ用量の静脈内投与後のMTDよりも50%高かった(Perez-Soler R, Shin DM, Siddik ZH, et al. Phase I clinical and pharmacological study of liposome-entrapped NDDP administered intrapleurally in patients with malignant pleural effusions. Clin Cancer Res 1997;3(3):373-9)。これらの研究に鑑みて、MTDが最高予定投与量レベルに到達するとは予測されない。代わりに、リポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、若しくは600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2~6時間にわたって100~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2~4時間にわたって300超~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2時間以下にわたって300超~600mg/mの用量で投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2、3、4、5、6、若しくは7時間にわたって投与されるか;又はリポソーム性クルクミン若しくはリポソーム性クルクミノイドは2、3、4、5、6、7、若しくは8時間にわたって300mg/m超の用量で投与される。
【0050】
本プロトコールを準備する際には、標準的プロトコール項目:介入試験のための推奨(SPIRIT;The Standard Protocol Items: Recommendations for Interventional Trials)チェックリストを使用した(Chan A-W, Tetzlaff JM, Gotzsche PC, et al. SPIRIT 2013 explanation and elaboration: guidance for protocols of clinical trials. BMJ : British Medical Journal 2013;346:e7586. doi: 10.1136/bmj.e7586)。悪性胸水を有する患者における胸膜内リポソーム性クルクミン(LipoCurc(商標))の単回用量の安全性及び実行可能性を、患者の既存のTIPCを介してリポソーム性クルクミンを投与することにより決定する。以下の項目が決定される:主要目的:(1)胸膜内リポソーム性クルクミンのMTDが進行型MPEを有する人での予め決定された漸増用量範囲内に達するか否か;(2)既存のTIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与の実行可能性。
【0051】
副次目的:(1)以下の項目を決定することにより、安全性及び忍容性を評価すること:米国国立がん研究所有害事象共通用語規準v5.0(NCI CTCAE v5.0;the National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v5.0)に基づく毒性の比率;欧州がん治療研究機構による生活の質に関する質問票(C)(EORTC-QLQ(C);the European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of life Questionnaire(C))により評価される場合の平均スコアに基づく生活の質に対する研究介入の影響;息切れに関する目視アナログスケールサーベイ(VASBサーベイ;the Visual Analogue Scale for Breathlessness survey)により評価される場合の平均スコアに基づく息切れの感覚に対する研究介入の影響;及び/又は全生存期間中央値。(2)血漿及び、可能な場合、胸膜液中でのクルクミン及びその代謝産物の濃度を測定することにより、胸膜内腔へのリポソーム性クルクミンの単回用量の投与後のすべての参加者におけるクルクミンの薬物動態を評価すること。(3)診断目的のために採取された参加者の生物検体及び診断での必要性に対する余剰分の細胞及び分子分析と併せて、臨床転帰により示される場合の抗腫瘍活性のいずれかの証拠を評価すること。
【0052】
研究設計。標準的3+3用量漸増設計をモデルとした非盲検単一施設第1相試験。
【0053】
対象集団。標的集団。細胞病理学的又は組織病理学的に証明されたMPEの診断を有し、担当医師によりTIPCの挿入が適応とされている、緩和ケア中の人。
【0054】
組入れ基準:年齢18歳以上;典型的な放射線学及び臨床的知見と併せて、胸膜生検、又は胸膜液細胞学のいずれかにより証明された悪性胸水の既存の診断;承認された全身性治療(化学療法、免疫療法又は分子標的化療法)に応答しなかったか、又はこれらの療法に対する当初の応答後にがん進行を有し、研究登録の時点で利益が証明された抗腫瘍療法が利用可能でないか、又は全身性療法を拒否しているか若しくは腫瘍内科医との協議後に全身性療法に好適でないと判断される個体;TIPCの挿入が臨床的に適応である再発性症候性胸水;0~2の米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステータス;及び署名したインフォームドコンセントを提出することができる。
【0055】
除外基準:治験担当医が、患者は本研究に参加すべきでないと判断するいずれかの併存疾患又は状態は、以下のものを含む:活動性肝炎の証拠、リンパ腫若しくは血液学的がんの診断を有する人、溶血性貧血の既往歴を有する人、先行する全身性抗がん療法からの毒性が消散していない人、又は治験担当医により判定される場合に不安定心臓状態を有する人;妊娠中及び/若しくは授乳中、並びに/又は妊娠を回避するための避妊手段を取ることができない出産可能年齢の女性;精神障害、又はインフォームドコンセントを提出する能力若しくは研究に協力及び参加するための能力を妨げ得るがん以外の不安定な医学的状態を有する人;第一言語が英語でない人;ワルファリン、クレキサン及び/又は直接経口抗凝固薬をはじめとする抗凝固薬投薬を受けている人。
【0056】
参加者スクリーニング及び登録。すべての包含及び除外基準が、標準的なケア実務の一部分として、及び/又はTIPC挿入前に評価される。例外なく、すべての組入れ基準を満たし、かつ除外基準のうちのいずれにも当てはまらない参加予定者は、参加に対して適格であり、臨床試験に参加する機会を提案される。いかなる研究特異的手順又は活動にも先立って、書面によるインフォームドコンセントが、参加者及び治験担当医により署名及び日付を記入されなければならない。
【0057】
参加者登録及び治療計画。参加者は治験に入り、表1に概要を示される通りの連続的登録症例系列として治療される。
【0058】
【表1】
【0059】
TIPCの挿入。TIPC挿入は、いずれかの可能性のある手技後合併症のモニタリング及び治療を可能にするために、リポソーム性クルクミンの投与の少なくとも1週間前に行われる。患者はTIPC挿入(本発明者らの現場プロトコールの通り)後の24~48時間は病院に留まり、医師により退院に適すると医学的に判断されるまで、医療/看護スタッフが患者をモニタリングする。胸膜液ドレナージは、真空ボトルシステム(PleurX(商標)ドレナージシステム)を介して行う。ドレナージの体積及び頻度を決定し、医師チームにより管理する。滲出液から得られた排出胸膜液を採取し、病理学的モニタリング及び検査のために、遠心分離により細胞を分離する。ベースライン研究を、表2に概要を示される通りに、TIPC挿入後に行う。静脈内造影剤を用いるCTを行うことができるか否かを決定するために、コンピューター断層撮影(CT;computed tomography)スキャンに先立って、体重及び尿及び電解質(UEC)を使用して推算糸球体濾過量(eGFR;Estimated Glomerular Filtration Rate)により参加者の腎機能を推定する。30mL/分/1.73mを超えるeGFRを有する参加者は、王立オーストラリア・ニュージーランド放射線科医大学からの2011ヨード造影剤ガイドラインに従って、静脈内造影剤を受けることができる。30mL/分/1.73m未満のeGFRを有する参加者は、CTスキャンのための静脈内造影剤を受けない。
【0060】
【表2】

【0061】
TIPC挿入に対する慣用の標準治療及び臨床ケアに対して必要とされる活動及び手順。TIPC、トンネル留置カテーテル;IPA-Lipocurc(商標)、Lipocurc(商標)の胸膜内投与;血液検査は、FBC、UEC、LFT、CRPを含む;バイタルモニタリングは、血圧、心拍、酸素(O)飽和を含む;VASB、息切れに関する目視アナログスケール;EORTC QLQ-C30、欧州がん治療研究機構による生活の質に関する質問票-C30;CT、コンピューター断層撮影像。
【0062】
既存TIPCを介するリポソーム性クルクミンの胸膜内投与。TIPC挿入から1週間後、参加者は、抜糸及び真空ボトルドレナージのために外来患者として受診する。ベースライン研究が、表2に概要を示される通りに行われる。続いて、参加者は、胸膜内リポソーム性クルクミン投与のために入院患者として入院する。リポソーム性クルクミンの胸膜内投与前に、真空ドレナージボトルシステムを使用して、TIPCを介して胸膜液が排出される。リポソーム性クルクミンは、担当医療チームにより無菌条件下で準備され、アダプターポート(PleurX(商標)カテーテルアクセスキット)を介して、TIPCを通じて室温で投与される。薬物送達には10~15分間かかり、その後、黄色のリポソーム性クルクミン溶液が目視によりTIPCから除去されるまで、室温滅菌0.9%生理食塩液を逐次的に10mL流す。参加者は、いずれかの可能性のある重症有害事象に関してモニタリングする時間を与えるために、48時間入院患者として入院する。参加者は、15分間毎1時間、続いて1時間毎4時間、続いて4時間間隔で合計48時間まで、血圧、心拍、酸素飽和及び体温の観察を伴って、医療及び看護スタッフによりモニタリングされる。追加の手技後評価を、表2のスケジュールに従って行う。
【0063】
いかなる有害反応も、米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI CTC)により評価され、呼吸器内科医による自由裁量で適切に治療される。退院時、参加者は、自宅での滲出液のドレナージを任せられる。
【0064】
毒性又は重症有害事象に関してチェックするために、リポソーム性クルクミンの投与と参加者の連続的登録との間に少なくとも1週間の最小限の期間が設けられる。この時間枠は、胸水に対する胸膜内治療後のモニタリングに関する通常の臨床実務に合致する。さらに、前臨床研究において、本発明者らは、リポソーム性クルクミンの胸膜内投与(300mg/mに同等な用量)の1週間後のラットの血漿中でいかなるクルクミンも検出しなかった(Hocking A, Tommasi S, Sordillo P, et al. The Safety and Exploration of the Pharmacokinetics of Intrapleural Liposomal Curcumin. Int J Nanomedicine 2020;15:943-52. doi: 10.2147/IJN.S237536)。コホート参加者のうちの3分の1以上(33%以上)が用量制限毒性を経験する場合には、次の投与量レベルへの漸増は停止される。MTDレベルに達した場合、後続の相の臨床試験での忍容性を確実にするために、別の3名の患者が以前の用量レベルで獲得される。
【0065】
胸膜内リポソーム性クルクミンの単回用量後追跡。リポソーム性クルクミンの単回用量の胸膜内投与の1週間後、参加者は、フリンダース・メディカル・センターの呼吸器クリニックで外来患者として評価され、表2に概要を示される通りにモニタリングされる。外来患者モニタリングは、胸膜内リポソーム性クルクミン投与の4、8、12及び24週間後に繰り返される。可能である場合、追跡受診で排出されたいずれかの胸膜液を、分析のために採取する。
【0066】
併用投薬及び報告。禁止投薬、及び研究参加から除外される対象:抗凝固薬投薬;ワルファリン、クレキサン及び/又は直接経口抗凝固薬を含む。研究中に治験参加者に対する食餌制限はない。食物中で又はサプリメントとして、経口摂取される食物クルクミンは、腸粘膜と超えてほとんど吸収されず、血清又は尿中で測定されるクルクミンの検出不可能又は無視できるレベルのいずれかを伴うことを、多数の研究が示している(Cheng AL, Hsu CH, Lin JK, et al. Phase I clinical trial of curcumin, a chemopreventive agent, in patients with high-risk or pre-malignant lesions. Anticancer Res 2001;21(4B):2895-900、Sharma RA, Euden SA, Platton SL, et al. Phase I clinical trial of oral curcumin: biomarkers of systemic activity and compliance. Clin Cancer Res 2004;10(20):6847-54. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-04-0744、Carroll RE, Benya RV, Turgeon DK, et al. Phase IIa clinical trial of curcumin for the prevention of colorectal neoplasia. Cancer Prev Res (Phila) 2011;4(3):354-64. doi: 10.1158/1940-6207.CAPR-10-0098)。大部分の摂取されたクルクミンが、変化せずに糞便中に排泄される(Ravindranath V, Chandrasekhara N. Absorption and tissue distribution of curcumin in rats. Toxicology 1980;16(3):259-65、Wahlstrom B, Blennow G. A study on the fate of curcumin in the rat. Acta Pharmacol Toxicol (Copenh) 1978;43(2):86-92)。併用投薬は、研究中に記録されない。
【0067】
転帰エンドポイント及び他の指標。参加者は、リポソーム性クルクミンの投与後最大24週間まで評価される。研究参加の完了前に参加者が死亡する事象では、死亡日が記録され、死亡前に収集されたデータが、研究解析に含められる。
【0068】
転帰は、以下の項目に関して、リポソーム性クルクミンの投与後0、4、8、12及び24週目に測定される:
【0069】
最大耐量(MTD)。最大耐量(MTD)は、参加者のうちの33%以下が用量制限毒性(DLT;dose-liming toxicity)を経験する最高用量レベルと定義される(Le Tourneau C, Lee JJ, Siu LL. Dose escalation methods in phase I cancer clinical trials. Journal of the National Cancer Institute 2009;101(10):708-20. doi: 10.1093/jnci/djp079 [published Online First: 05/12])。DLTは、米国国立がん研究所共通毒性評価規準第5版(NCI-CTCAE v5.0;the Common Toxicity Evaluation Criteria according to the National Cancer Institute version 5、2017年)ガイドラインに従って評価される(Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v5.0. published online on The National Cancer Institute website at https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/ctc.htm#ctc_50, 2018)。DLTは、治験介入を受けてから1週間以内に発症する場合の、胸膜内Lipocurc(商標)に対する合理的に疑われる因果関係を有する、以下の有害事象として定義される。
【0070】
DLTは、以下のものを含む:
【0071】
溶血。NCI-CTCグレード2の溶血の証拠及び2グラム以上のヘモグロビンの減少、治験担当医による研究投薬に対する因果関係の確認。
【0072】
非血液学的毒性。(1)制吐剤治療に反応する吐き気及び嘔吐、並びに脱毛を除く、いずれかのNCI-CTCグレード3以上の非血液学的毒性。(2)神経-小脳:企図振戦、不明瞭発語、眼振、推尺障害。
【0073】
他の血液学的毒性。(1)NCI-CTCグレード3貧血、(2)NCI-CTCグレード4血小板毒性、(3)7日間以上のNCI-CTCグレード4顆粒球毒性、(4)発熱性好中球減少:500/mm未満の好中球数絶対値及び1時間間隔での38℃を超える口腔温の2回の上昇又は38.5℃を超える単回口腔温のいずれかとしての発熱として定義され、但し、この単一エピソードは他の事象に明らかに関連しない。
【0074】
有害事象(AE;Adverse events)(NCI-CTCAE v5.0に従う最悪グレード)。いかなる有害反応事象も、治験参加中のAEを分類し、その強度をグレード付けするために、NCI-CTCAE v5.0ガイドラインにより評価される。AEの定義及びSAEの報告に関して、安全性報告を参照されたい。
【0075】
生活の質に対する治療介入の影響。VASBサーベイ(補足図1)及びEORTC QLQ-C30(C)質問票に対する参加者の回答から与えられる平均スコアに基づく。
【0076】
全生存期間。全生存期間は、研究登録日から、いずれかの原因による死亡、又は研究参加の中止(生存中の最後の既知の研究追跡通院及び/又は最終研究追跡通院の日付)のどちらか先に訪れた日までの期間として定義される。
【0077】
安全性報告。定義。有害事象(AE)は、医薬製剤を投与された治験参加者における、本治療とは必ずしも因果関係を有しないいずれかの医療上の出来事である。
【0078】
AEは、以下のものを含む:断続的又は一過性状態を含む、既存の状態(調査中の悪性胸水状態以外)の増悪、又は強度若しくは頻度の予期せぬ増加;悪性胸水の顕著な若しくは予期せぬ悪化又は増悪;疑わしい薬物相互作用;併発疾患;臨床介入又はさらなる調査(臨床検査の発注を超える)を必要とするいずれかの臨床的に顕著な検査値異常、外傷又は事故。
【0079】
AEは、以下のものを含まない:悪性胸水及び/又は基礎となる悪性腫瘍をはじめとするいずれかの既存の状態の予測される日間変動。顕著な悪化又は増悪を表さない研究中の疾患の兆候及び症状。悪性胸水又は基礎となる悪性腫瘍の予期される進行。NCI-CTCAE v5.0ガイドラインにおいて定義される通りの重症度グレード1又は2を有するAEは、主任治験担当医に報告され、記録されなければならない。
【0080】
重症AEは、以下のものを含む:AEの定義(上記を参照されたい)を満たすいずれかの有害な医療上の出来事及び追加的に:致死的である;生命を脅かす;入院をもたらすか又は入院期間を延長する;日常生活に支障を来す/身体機能を奪う;先天性異常;治験担当医が適切な医学的判断に基づいて重症であると判断するいずれかの重要な医療上の出来事。
【0081】
これもまた緊急の報告を必要とする、安全性評価に対して極めて重要であると特定される検査値異常は、以下のものを含む:低赤血球数、又は溶血性障害を示す他の項目。
【0082】
グレード3、4又は5の重症度を有する重症AE(SAE;Serious AE)は、事象に気付いた治験担当医の1就業日以内に主任治験担当医に直ちに報告し、記録しなければならない。主任治験担当医は、治験依頼者及び、必要な場合、地域のヒト研究倫理委員会に知らせなければならない。
【0083】
治験担当医は、事象が弱まるか、安定化するか、それ以外に説明されるか、又は参加者が追跡から外れるまで、SAEを有するすべての参加者のモニタリングを継続しなければならない。
【0084】
薬物有害反応(ADR;Adverse Drug Reactions)、SAE、又は重症薬物有害反応(重症ADR)をはじめとするすべてのAEは、安全性審査/用量漸増委員会、SAC HRECに対する年次報告、及び最終研究報告により、進行中の安全性及び毒性モニタリングについて知らせるために、治験の継続期間にわたって、予測的に一覧にされる。
【0085】
妊娠。胎児及び新生児に対するリポソーム性クルクミンの作用は未知である。男性及び女性参加者の両方には、本研究プロジェクトに能動的に参加している期間、及び試験薬の単回用量を投与されてから90日間の期間にわたって、効果的な避妊法を使用することが強く助言される。予防措置として、参加者が研究参加中に妊娠した場合には、参加者は研究から離脱する。研究プロジェクトへの参加中及び/又はリポソーム性クルクミンの投与の90日間後までに子供の父親になった男性参加者は、治験担当医に報告しなければならない。研究医は、必要な場合、妊娠パートナーに対して必要とされるいずれかの医学的注意事項に関して助言する。
【0086】
統計学的考察及びデータ解析計画。本研究は、主に標準的な3+3用量漸増設計を使用する安全性の評価に関する第1相非対照非盲検用量漸増研究であり(Le Tourneau C, Lee JJ, Siu LL. Dose escalation methods in phase I cancer clinical trials. Journal of the National Cancer Institute 2009;101(10):708-20. doi: 10.1093/jnci/djp079 [published Online First: 05/12])、したがって、サンプルサイズ正当化を必要としない。用量漸増は、予め決定された用量レベル及び/又はMTDに達するまで継続される。解析は、DLT、及び奏効率を特定するために主に記述的及び観測的なものである。
【0087】
試験薬情報-LipoCurc(商標)。リポソーム性クルクミン試験薬であるLipoCurc(商標)は、SignPath Pharma社(US)により製造され、製造管理及び品質管理の基準(GMP;Good Manufacturing Practice)を順守して、Polymun Scientific社(オーストリア)により試験、包装及びラベルされた。クルクミンは、99.2%純度までGMP条件下で合成される。本第1相治験に対するLipoCurc(商標)の使用は、治験届出方式の下での、治験依頼者であるフリンダース大学によるオーストラリア薬品・医薬品行政局へのその登録を条件とする。
【0088】
研究投与。倫理学及び普及。本単一施設研究は、南アデレード地域健康ネットワークヒト研究倫理委員会により承認された(承認番号:HREC/20/SAC/11)。研究完了時に、発表のための原稿が準備される。本研究は、ICH E6(R1)に対する補遺:臨床試験の実施に関するガイドラインICH E6(R2)((C)医薬品規制調和国際会議(ICH;International Council For Harmonisation Of Technical Requirements For Pharmaceuticals For Human Use)、2016年)、TGAコメント注釈付き医薬品の臨床試験の実施に関する基準(the Note for Guidance on Good Clinical Practice)(CPMP/ICH/135/95)(薬品・医薬品行政局、2000年7月)に従って、適用可能な法律及び規則を順守して行われる。本研究は、ヒト研究における倫理規則に関するオーストラリア国家声明(2018年改訂、(C)オーストラリア連邦、2007年)、及びNHMRCオーストラリアの責任ある研究活動のための行動規範((C)オーストラリア連邦、2007年)、並びに世界医師会によるヘルシンキ宣言(2008年)において定められる原則(principal)に従って行われる。
【0089】
参加者の募集。参加予定者は、その悪性胸水の管理のために、南オーストラリア州フリンダース・メディカル・センターで状態が見出された患者のプールから募集される。可能な限り常に、FMCで働く独立した呼吸器臨床医は、標準的TIPC挿入が患者に説明される時点で、研究参加に関し、予め特定された(予備スクリーニングされた)候補に直接的に接触し、研究に対する考えられる募集について話し合う。患者が研究への興味を示した場合、患者は、調査研究への自発的な参加に患者を誘っている調査チームのメンバーにより、研究参加者情報及び同意書式のコピーを提供される。参加予定者は、同意を与える前に、その家族及びかかりつけ医をはじめとする他者、並びに研究チームと治験参加について話し合うように促される。参加予定者は、同意を与えるかどうかを約1~2週間検討する。参加を決心した人物は、治験担当医と会い、同意書式に署名する。
【0090】
同意。参加予定者の予備スクリーニングは、このプロセスに対して与えられた同意の放棄に基づいて行われる。各参加者の研究に参加するという自発的な決断は、参加者情報に文書化された書面によるインフォームドコンセント並びに参加者及び立ち合いに同意する臨床医、又は治験チームのメンバーにより署名及び日付を記入される同意書式により確立される。すべての参加者は、そのインフォームドコンセントの署名及び日付が記入されたコピーを提供される。書面によるインフォームドコンセントは、いかなる研究の具体的手順又は活動にも先立って得られなければならない。
【0091】
守秘義務。本研究において生成されるすべてのデータは、適用可能なプライバシー保護法及び規則に従って、機密とされる。すべてのデータは、安全に保管され、研究調査チームのメンバー及び秘密保持契約に署名した人物のみに利用可能にされる。研究データは、大規模に集合された様式で解析及び報告され、治験参加者は、本研究から生じるいかなる発表及び刊行物中でも匿名である。
【0092】
プロトコール改訂。プロトコールに対するいかなる変更及び改訂も、主任治験担当医によってのみ為されることができる。プロトコール変更は、施設のヒト研究倫理委員会(HREC;Human Research Ethics Committee)によって承認された場合にのみ履行される。
【0093】
データ取り扱い及び記録保管。研究の監察及び解析に対して必要とされる治験データは、症例報告書並びに室内実験及び転帰の関連する文書に記録される。完成した症例報告書の正確性は、治験担当医により署名されることにより示される。すべての研究データが、オーストラリアの責任ある研究活動のための行動規範に従って、研究の完了後、最低15年間維持される(Australian Code for the Responsible Conduct of Research Camberra: National Health and Medical Research Council, 2018)。
【0094】
研究監察。安全性審査/用量漸増委員会。安全性審査/用量漸増委員会は、新たに生じた安全性及び薬物動態データを審査するため、及び治験に関する重要な決定を行うために、独立した呼吸器内科医との相談において機能する。特に、安全性審査/用量漸増委員会は、用量漸増が進められることが適切である場合、及び研究を終了すべきである場合、参加者募集での前進に関して協議する。
【0095】
監査及び査察。監察は、データ収集及びプロトコール順守に関する他の研究書類、データ正確性及び完全性の集中審査を含む。すべての研究書類は、監察及び監査目的のために、治験依頼者、及び規制機関の代表者に対して利用可能にされる。
【0096】
本明細書中で議論されるいかなる実施形態も、本発明のいずれかの方法、キット、試薬、又は組成物に関して遂行することができ、逆もまた同じであることが考慮される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0097】
本明細書中に記載される特定の実施形態は、例示として示され、本発明の限定として示されるものではないことが理解されるであろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において利用することができる。当業者は、慣用の実験を超えるものを使用せずに、本明細書中に記載される具体的手順に対する多数の等価物を理解するか、又はそれを確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内に入ると考えられ、特許請求の範囲により網羅される。
【0098】
本明細書中で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願が、それぞれの刊行物又は特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度まで、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0099】
特許請求の範囲及び/又は明細書中で用語「含むこと」と共に用いる場合の単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1」を意味することができるが、「1又は2つう以上」、「少なくとも1つ」、及び「1又は1つを超える」の意味とも合致する。特許請求の範囲での用語「又は」の使用は、選択肢のみを意味することが明示的に示されているか又は選択肢が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。本出願全体を通して、用語「約」は、値が、デバイス、値を決定するために利用される方法に関する誤差の固有の変動、又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0100】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単語「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの「含むこと」のいずれかの形態)、「有すること(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの「有すること」のいずれかの形態)、「はじめとする(including)」(並びに「挙げられる(includes)」及び「挙げられる(include)」などの「はじめとする」のいずれかの形態)又は「含有すること(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの「含有すること」のいずれかの形態)は、包含的又はオープンエンドであり、追加の明記されない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書中に提供される組成物及び方法のうちのいずれかの実施形態では、「含むこと」は、「から本質的になる」又は「からなる」を用いて置き換えることができる。本明細書中で使用する場合、語句「から本質的になる」は、特定される整数又はステップ並びに特許請求される発明の特性又は機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書中で使用する場合、用語「からなる」は、明記される1つの整数(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は限定)又は整数の群(例えば、特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は限定)のみの存在を示すために使用される。
【0101】
用語「又はそれらの組合せ」とは、本明細書中で使用する場合、この用語に先行して列記される項目のすべての順列及び組合せを意味する。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図される。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等などの1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含む組合せが明白に含まれる。当業者は、そうでないことが文脈から明らかでない限り、いずれかの組合せ中の項目又は用語の数に対する制限は典型的にはないことを理解するであろう。
【0102】
本明細書中で使用する場合、限定するものではないが、「約」、「実質的な」又は「実質的に」などの近似の単語は、そのように修飾される場合に、必ずしも絶対的又は完璧でないことが理解される状態を意味するが、状態が存在すると指定する根拠に対して当業者にとって十分に近接していると考えられるであろう。記載が変動し得る程度は、いかに大きい変化を設けることができるかに依存し、変更された特徴が必要とされる特性及び変更されていない特徴の能力を未だ有するものと当業者が未だ認識するであろう。一般に、先行する議論に支配されるが、「約」などの近似の単語により修飾される本明細書中の数値は、明記される値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動し得る。
【0103】
加えて、本明細書中のセクション見出しは、米国特許規則1.77(37 CFR 1.77)の下での提案との整合性に関して、又はそれ以外に組織化のきっかけを与えるために提供される。これらの見出しは、本開示から生じる可能性があるいずれかの請求項に記載される本発明を限定又は特徴付けするものではない。具体的にかつ例として、見出しは「発明の分野」を指すが、いわゆる技術分野を説明するためのこの見出しの下の言葉により、そのような特許請求の範囲が限定されるべきではない。さらに、「発明の背景」セクション中の技術の説明は、技術が本開示中のいずれかの発明に対する先行技術であるという了解として解釈されるべきではない。「概要」もまた、発行される特許請求の範囲に示される発明の特徴と考えられるべきではない。さらに、単数形での「本発明」に対する本開示中のいかなる参照も、本開示中に単一の点の新規性のみがあることを主張するために使用されるべきではない。複数の発明が、本開示から生じる複数の請求項の限定に従って示すことができ、したがって、そのような請求項が、それにより保護される本発明、及びその等価物を定義する。すべての例において、そのような請求項の範囲は、本開示に照らして利点であると自然に考えられるであろうが、本明細書中に示される見出しにより拘束されるべきではない。
【0104】
本明細書中に開示及び特許請求される組成物及び/又は方法のすべてが、本開示に鑑みて過度な実験を伴わずに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載される組成物及び/又は方法に対して、及び方法のステップにおいて又はステップの順序において変更を適用することができることが、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置換及び改変は、添付の特許請求の範囲により規定される通りの本発明の精神、範囲及び概念の範囲内に入ると考えられる。
【0105】
特許庁、及び本出願に対して発行されるいずれかの特許のいずれかの読者が本明細書に添付される特許請求の範囲を理解することを助けるために、本出願人らは、単語「~のための手段」又は「~のためのステップ」が特定の請求項中で明示的に使用されない限り、添付の請求項のうちのいずれかが、本出願の出願日に存在する通りの米国特許法第112条の第6段落、米国特許法第112条段落(f)、又はその等価物を発動させることを意図しないことを注記することを望む。
【0106】
請求項のうちのそれぞれに関して、各従属請求項は、先行する請求項が請求項中の用語及び要素に対する適正な先行詞を提供する限り、それぞれ及びすべての請求項に関して、独立請求項、及び先行する従属請求項のうちのそれぞれの両方に従属することができる。
【0107】
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【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを含む、ヒトにおける悪性胸水の治療剤であって、
前記治療有効量が、前記悪性胸水を低減又は治療するために十分であり、かつ、胸膜内投与して用いる、前記治療剤
【請求項2】
胸膜腔又は胸腔が、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する、請求項1に記載の治療剤
【請求項3】
前記治療剤の用量が、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイド換算で50、100、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、若しくは600mg/m であり、前記治療剤が、2時間、2~4時間、2~6時間にわたって投与されるか、又は2、3、4、5、6、若しくは7時間にわたって投与されるか;或いは
前記治療剤の用量が、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイド換算で300、325、350、400、450、500、若しくは600mg/m であり、前記治療剤が、2時間、2~4時間、2~6時間にわたって投与されるか、又は2、3、4、5、6、若しくは7時間にわたって投与されるか;或いは
前記治療剤の用量が、リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイド換算で350mg/m 超であり、前記治療剤が、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって投与される、
請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、請求項1に記載の治療剤
【請求項5】
リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の治療剤
【請求項6】
リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、請求項1に記載の治療剤
【請求項7】
リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化1】

式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、
【化2】

であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH、NHAc、NHMe、N(Me)、SH、CN、COOH、CONH、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC-C10分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC-C20分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
請求項1に記載の治療剤
【請求項8】
式Iの化合物が、
【化3】

のうちの1又は2以上から選択される、請求項に記載の治療剤
【請求項9】
リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドの治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、請求項1に記載の治療剤
【請求項10】
組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、請求項1に記載の治療剤
【請求項11】
クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の治療剤
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
請求項のうちのそれぞれに関して、各従属請求項は、先行する請求項が請求項中の用語及び要素に対する適正な先行詞を提供する限り、それぞれ及びすべての請求項に関して、独立請求項、及び先行する従属請求項のうちのそれぞれの両方に従属することができる。
[1]ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを前記ヒト患者に胸膜内投与することを含み、前記治療有効量が、前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である、前記方法。
[2]胸膜腔又は胸腔が、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する、上記[1]に記載の方法。
[3]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/m で投与される、上記[1]に記載の方法。
[4]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/m の用量で投与される、上記[1]に記載の方法。
[5]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/m の用量で投与される、上記[1]に記載の方法。
[6]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/m の用量で投与される、上記[1]に記載の方法。
[7]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/m の用量で投与される、上記[1]に記載の方法。
[8]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、上記[1]に記載の方法。
[9]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m 超の用量で投与される、上記[1]に記載の方法。
[10]クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、上記[1]に記載の方法。
[11]リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、上記[1]に記載の方法。
[12]リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントの前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、上記[1]に記載の方法。
[13]リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化9】
式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、
【化10】
であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH 、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH 、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
上記[1]に記載の方法。
[14]式Iの化合物が、
【化11】
のうちの1又は2以上から選択される、上記[13]に記載の方法。
[15]治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、上記[1]に記載の方法。
[16]組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、上記[1]に記載の方法。
[17]クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、上記[1]に記載の方法。
[18]ヒト患者における悪性胸水を治療するための方法であって、
悪性胸水に対する治療を必要とするヒト患者を特定すること;及び
前記悪性胸水を低減又は治療するために十分である治療有効量のリポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドを、肺、心臓、腎臓、又は肝臓のうちの少なくとも1つに隣接する胸膜腔又は胸腔において前記ヒト患者に投与すること
を含む、前記方法。
[19]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、50、100、150、200、250、300、325又は350mg/m で投与される、上記[18]に記載の方法。
[20]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、125、150、200、250、300、325、350、400、450、500、又は600mg/m の用量で投与される、上記[18]に記載の方法。
[21]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~6時間にわたって100~600mg/m の用量で投与される、上記[18]に記載の方法。
[22]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2~4時間にわたって300超~600mg/m の用量で投与される、上記[18]に記載の方法。
[23]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2時間以下にわたって300超~600mg/m の用量で投与される、上記[18]に記載の方法。
[24]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、又は7時間にわたって投与される、上記[18]に記載の方法。
[25]リポソーム性クルクミン又はリポソーム性クルクミノイドが、2、3、4、5、6、7、又は8時間にわたって300mg/m 超の用量で投与される、上記[18]に記載の方法。
[26]クルクミン又はクルクミノイドが、化学合成されたクルクミン又はクルクミノイドである、上記[18]に記載の方法。
[27]リポソームが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン若しくはエルコイル-リゾホスファチジルコリン、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、上記[18]に記載の方法。
[28]リポソーム性クルクミン又はクルクミノイドが、クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体であり、前記クルクミンが、2~9重量パーセントのクルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体を含み、前記クルクミンが、天然又は合成クルクミンのうちの少なくとも1つであり、前記クルクミン/クルクミノイド:リポソーム複合体が、1:7.5~1:10のクルクミン対脂質の比(重量対重量)を有し、脂質の組合せが、DMPC;DMPC:Chol 9:1;DMPC:DMPG 9:1;DMPC:Chol:DMPG 8:1:1;DPPC:DMPG 9:1;DPPC:Chol:DMPG 8:1:1;DMPC:DSPE-PEG-2000 95:5;DMPC:Chol:DSPE-PEG-2000 90:10:05;DMPC/DMPG 7:3;DPPC/DMPG 7:3;又はDPPC/DMPG 9:1から選択される、上記[18]に記載の方法。
[29]リポソームが、式Iの脂質を含み:
【化12】
式中、
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、
【化13】
であり;
は、H又は薬学的に許容されるカチオンであり、前記薬学的に許容されるカチオンの組み込みは、塩、例えば、単量体塩、二量体塩、三量体塩、又は多量体塩を生じ;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、OH、OAc、OMe、NH 、NHAc、NHMe、N(Me) 、SH、CN、COOH、CONH 、Cl、Br及びIから選択される1又は2以上の基によって置換されていてもよいC -C 10 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
は、H又は0~10個の二重結合、0~10個の三重結合又は0~10個の二重結合と三重結合との組合せを保有するC -C 20 分岐又は非分岐炭化水素であり;
Xは、直接結合、CH 、O又はNHであり;
Yは、直接結合、CH 、O又はNHであり;
各立体中心は、独立に、R、S又はラセミである、
上記[18]に記載の方法。
[30]式Iの化合物が、
【化14】
のうちの1又は2以上から選択される、上記[29]に記載の方法。
[31]治療有効量が、50nM/kg、10~100nM/kg、25~75nM/kg、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100nM/kg対象体重を含む、上記[18]に記載の方法。
[32]組成物が、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95又は96%純粋なジフェルロイルメタンであるクルクミン、又は合成クルクミンをさらに含む、上記[18]に記載の方法。
[33]クルクミン又はクルクミノイドが、Ar-ツメロン、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、クルクミン酸ナトリウム、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス(2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシルナフチルクルクミン)及び1,1-ビス(フェニル)-1,3,8,10ウンデカテトラエン-5,7-ジオンのうちの少なくとも1つから選択される、上記[18]に記載の方法。
【国際調査報告】