(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】生物由来ポリマースキャホールドへの二酸化炭素の組込み
(51)【国際特許分類】
C08G 63/08 20060101AFI20240220BHJP
C08G 63/82 20060101ALI20240220BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C08G63/08 ZBP
C08G63/82
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553229
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 US2022018713
(87)【国際公開番号】W WO2022187490
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンクス,イアン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラパニャーニ,ラケーレ マリア
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB04
4J029AC01
4J029AD01
4J029AD05
4J029EG00
4J029EG08
4J029JB131
4J029JC121
4J029JC131
4J029JC361
4J029JC431
4J029KB25
4J029KE03
4J200AA01
4J200AA02
4J200AA07
4J200BA17
4J200CA01
4J200EA02
(57)【要約】
ラクトンを開環重合して、様々な骨格構造を有する生物由来ポリエステルを生成する方法が本明細書において提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを合成する方法であって、
第1の1,3-ジエン、第2の1,3-ジエン、及び二酸化炭素のテロマー化によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、並びに
触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成すること
を含む、方法。
【請求項2】
第1の1,3-ジエンと第2の1,3-ジエンが同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の1,3-ジエン及び第2の1,3-ジエンが独立してブタジエン、イソプレン、又はピペリレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素化ラクトンが部分的に水素化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリエステルがペンダントオレフィンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ペンダントオレフィンを介してポリエステルを架橋して、修飾ポリエステルを生成することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ペンダントオレフィンを介してポリマーを架橋することが、ペンダントオレフィンを多価メルカプトカップリング剤と反応させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することが、カルボン酸でポリエステルを官能化することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することが、第三級アミンでポリエステルを官能化することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アミンを四級化して、抗菌性を有する修飾ポリエステルを生成することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒が酸触媒又は有機触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
触媒が、リン酸ジフェニル、ナトリウムメトキシド、トリアザビシクロデセン、ビストリフルイミド、メタンスルホン酸、及びジアザビシクロウンデセンのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
重合が約0℃~約166℃の温度で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ラクトンを合成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ラクトンを合成することが、大気から二酸化炭素を取り込むことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載のポリエステル。
【請求項18】
以下の構造:
【化1】
[式中、nは整数である]
のうちの1つで表される、請求項17に記載のポリエステル。
【請求項19】
nが約2~約200の範囲内である、請求項17に記載のポリエステル。
【請求項20】
請求項6に記載の修飾ポリエステル。
【請求項21】
ラクトンを合成する方法であって、
ピペリレンを二酸化炭素とテロマー化して、ラクトンを生成すること
を含む、方法。
【請求項22】
ラクトンが以下の構造:
【化2】
のうちの1つで表される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項21に記載のラクトン。
【請求項24】
ポリエステルを合成する方法であって、
請求項21に記載の方法によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、及び
触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成すること
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載のポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日に出願された「INCORPORATION OF CARBON DIOXIDE INTO BIODERIVED POLYMER SCAFFOLDS」と題する米国特許出願第63/156,135号に基づく利益を主張するものであり、当該出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の資金支援による研究又は開発
本発明は、米国科学財団の一部であるCenter for Sustainable Polymersにより与えられた契約CHE-1901635の下、部分的に米国政府支援で行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、ラクトンを開環重合して、様々な骨格構造を有する生物由来ポリエステルを生成することに関する。
【背景技術】
【0004】
二酸化炭素は安価で豊富であり、廃棄物として広く行きわたっているため、持続可能な化学原料として魅力的である。CO2と高エネルギーモノマーとの共重合の例はあるが、CO2とオレフィンとの直接共重合は報告されていない。CO2のポリエステルへの直接転化が難題であることを考慮すると、安価な重合性中間体へのCO2の転化を含む代替戦略が極めて重要である。CO2及びオレフィンのみから誘導され、新規原料の利用を拡大する明確なポリエステルが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、加水分解的に切断可能なエステル結合を有する生分解性ポリマーを合成するための再生可能原料(例えば、大気からの二酸化炭素、ブタンジオールからのブタジエン、及びゴムからのイソプレン)の使用を記載する。ポリマーは、ペンダントアルキル基に少なくとも部分的に起因して、非晶質/エラストマー挙動を示し得る。本明細書に記載される反応は、二酸化炭素とオレフィンとの重合に典型的に伴う障壁を回避して、最も広く使用されるポリマークラスの1種であるポリエステルを作製するのに役立つ。機構は、二酸化炭素と1,3-ジエン(例えば、ブタジエン及びイソプレンのうちの1つ又は両方)から合成された中間体のラクトンモノマーの開環重合を含み、これにより、生物由来骨格を有し、生分解性の可能性があるポリエステルを入手することが可能になる。これらの材料を合成するために再生可能原料を使用することは、プラスチック廃棄物を減らすのに役立ち得る。得られるポリエステルは、様々な用途、例えば薬物送達及び持続可能な熱可塑性エラストマーの弾性のあるミッドブロック(midblock)に使用することができる。
【0006】
開示される本発明の概念は、添付された特許請求の範囲において規定されるものを含むが、本発明の概念は、以下の実施形態によっても規定され得ることを理解すべきである。
【0007】
添付された特許請求の範囲の実施形態及び下記の実施形態に加え、以下の番号付けされた実施形態も革新的なものである。
【0008】
実施形態1は、ポリエステルを合成する方法であって、第1の1,3-ジエン、第2の1,3-ジエン、及び二酸化炭素のテロマー化によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、並びに触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成することを含む、方法である。実施形態1は、本明細書に記載される技術的利点のうちの1つ以上を提供することができる。
【0009】
実施形態2は、第1の1,3-ジエンと第2の1,3-ジエンが同じである、実施形態1に記載の方法である。
【0010】
実施形態3は、第1の1,3-ジエン及び第2の1,3-ジエンが独立してブタジエン、イソプレン、又はピペリレンである、実施形態1又は2に記載の方法である。
【0011】
実施形態4は、水素化ラクトンが部分的に水素化される、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法である。
【0012】
実施形態5は、ポリエステルがペンダントオレフィンを含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法である。
【0013】
実施形態6は、ペンダントオレフィンを介してポリエステルを架橋して、修飾ポリエステルを生成することをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0014】
実施形態7は、ペンダントオレフィンを介してポリマーを架橋することが、ペンダントオレフィンを多価メルカプトカップリング剤と反応させることを含む、実施形態6に記載の方法である。
【0015】
実施形態8は、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することをさらに含む、実施形態5に記載の方法である。
【0016】
実施形態9は、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することが、カルボン酸でポリエステルを官能化することを含む、実施形態8に記載の方法である。
【0017】
実施形態10は、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することが、第三級アミンでポリエステルを官能化することを含む、実施形態8に記載の方法である。
【0018】
実施形態11は、アミンを四級化して、抗菌性を有する修飾ポリエステルを生成することをさらに含む、実施形態10に記載の方法である。
【0019】
実施形態12は、触媒が酸触媒又は有機触媒である、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法である。
【0020】
実施形態13は、触媒が、リン酸ジフェニル、ナトリウムメトキシド、トリアザビシクロデセン、ビストリフルイミド、メタンスルホン酸、及びジアザビシクロウンデセンのうちの1つ以上を含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法である。
【0021】
実施形態14は、重合が約0℃~約166℃の温度で起こる、実施形態1から13のいずれか1つに記載の方法である。
【0022】
実施形態15は、ラクトンを合成することをさらに含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法である。
【0023】
実施形態16は、ラクトンを合成することが、大気から二酸化炭素を取り込むことを含む、実施形態15に記載の方法である。
【0024】
実施形態17は、実施形態1から16のいずれか1つに記載のポリエステルである。
【0025】
実施形態18は、以下の構造:
【0026】
【化1】
[式中、nは整数である]
のうちの1つで表される、実施形態17に記載のポリエステルである。
【0027】
実施形態19は、nが約2~約200の範囲内である、実施形態18に記載のポリエステルである。
【0028】
実施形態20は、実施形態6から16のいずれか1つに記載の修飾ポリエステルである。
【0029】
実施形態21は、ラクトンを合成する方法であって、ピペリレンを二酸化炭素とテロマー化して、ラクトンを生成することを含む、方法である。
【0030】
実施形態22は、ラクトンが以下の構造:
【0031】
【化2】
のうちの1つで表される、実施形態21に記載の方法である。
【0032】
実施形態23は、実施形態21又は22に記載のラクトンである。
【0033】
実施形態24は、ポリエステルを合成する方法であって、実施形態21に記載の方法によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、及び触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成することを含む、方法である。
【0034】
本発明の主題の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び本明細書において記載する。主題の他の特徴、態様、及び利点は、本明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】二酸化炭素と1,3-ジエン(例えば、ブタジエン及びイソプレン)をパラジウム触媒でテロマー化してラクトンモノマーを生成し、続いてラクトンモノマーを有機又は酸触媒で開環重合して、様々な骨格構造を有する生物由来の生分解性ポリエステル、例えばさらに官能化することができるペンダントオレフィンを有するポリエステルを生成する反応経路を示す図である。
【
図2】ブタジエン/ピペリレン/CO
2の共テロマー化を含む、ポリマーの反応経路を示す図である。
【
図3】ピペリレンとCO
2のテロマー化を示す図である。
【
図4】リン酸ジフェニルで触媒した
図1に示す重合でのCDCl
3中の
1H NMRスペクトルである。
【
図5】
図1のポリマーP-1へのカルボン酸基の付加の反応経路を示す図である。
【
図6】
図1のポリマーP-1への第四級アミンの付加を示す図である。
【
図7A】
図1のポリマーP-1の光開始架橋を示す図である。
【
図7B】多価メルカプトカップリング剤を使用した
図1のポリマーP-1の架橋を示す図である。
【
図8】3-エチル-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(EtVP)、1mol%のフェニルプロパノール(PPA)開始剤、及び5mol%の触媒を含む、様々な触媒を使用した72時間にわたる反応の重合結果を示す図である。
【
図9A】ポリ(3-エチル-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン)(ポリ(EtVP))のサイズ排除クロマトグラフィー示差屈折率のグラフである。
【
図9B】ポリ(EtVP)の熱重量分析のグラフである。
【
図9C】ポリ(EtVP)の示差走査熱量測定のグラフである。
【
図10A】ポリ(3,6-ジエチル-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン)(ポリ(DEP))のサイズ排除クロマトグラフィー示差屈折率のグラフである。
【
図10B】ポリ(DEP)の熱重量分析のグラフである。
【
図10C】ポリ(DEP)の示差走査熱量測定のグラフである。
【
図11】EtVP及びDEPでのR*ln(n
m/n
0)対1000/T(ファントホッフ解析)のグラフであり、n
mは平衡状態でのモノマーのモル数であり、n
0はモノマーの初期モル数である。
【
図12A】5mol%の1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)触媒を用いたEtVP重合の速度論的プロットである。
【
図12B】5mol%のジケトピロロピロール(DPP)触媒を用いたEtVP重合の速度論的プロットである。
【
図12C】10mol%のNaOMe触媒を用いたEtVP重合の速度論的プロットである。
【
図12D】重ね合わせた全3つのEtVP重合の速度論的プロットである。
【
図13A】ポリ(EtVP-b-PLA)のサイズ排除クロマトグラフィー示差屈折率のグラフであり、PLAはポリ乳酸である。
【
図13B】ポリ(EtVP-b-PLA)の熱重量分析のグラフである。
【
図13C】ポリ(EtVP-b-PLA)の示差走査熱量測定のグラフである。
【
図14A】臭化ベンジルでのポリ(EtVP-DAT)の四級化の熱重量分析のグラフであり、DATは2-ジエチルアミノエタンチオールである。
【
図14B】臭化ベンジルでのポリ(EtVP-DAT)の四級化の示差走査熱量測定のグラフである。
【
図15A】ポリ(EtVP-BMP)のサイズ排除クロマトグラフィー示差屈折率のグラフであり、BMPはブチル-3-メルカプトプロピオネートである。
【
図15B】ポリ(EtVP-BMP)の熱重量分析のグラフである。
【
図15C】ポリ(EtVP-BMP)の示差走査熱量測定のグラフである。
【
図16A】0.1M NaOH中でのポリ(EtVP)の分解のグラフである。
【
図16B】0.1M HCl中でのポリ(EtVP)の分解のグラフである。
【
図16C】0.01Mリン酸緩衝生理食塩水中でのポリ(EtVP)の分解のグラフである。
【
図17A】ポリ(EtVP)の加水分解のグラフである。
【
図17B】水性好気性条件下でのポリ(EtVP)の生分解を示す、CO
2呼吸測定データのグラフである。
【
図18】ポリ(EtVP)の様々な重合後修飾を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書において、ポリエステルを合成する方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、第1の1,3-ジエン、第2の1,3-ジエン、及び二酸化炭素のテロマー化によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、並びに触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成することを含む。
【0037】
一部の実施形態において、第1の1,3-ジエンと第2の1,3-ジエンは同じである。一部の実施形態において、第1の1,3-ジエンと第2の1,3-ジエンは異なる。一部の実施形態において、第1の1,3-ジエンと第2の1,3-ジエンは独立してブタジエン、イソプレン、又はピペリレンである。
【0038】
一部の実施形態において、水素化ラクトンは部分的に水素化される。例えば、部分水素化ラクトンは、3-エチル-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(EtVP)である。一部の実施形態において、水素化ラクトンは完全に水素化される。例えば、完全水素化ラクトンは、3,6-ジエチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(DEP)である。
【0039】
一部の実施形態において、ポリエステルはペンダントオレフィンを含む。例えば、ポリエステルはポリ(EtVP)である。一部の実施形態において、ペンダントオレフィンはポリエステルを架橋するのに使用される。一部の実施形態において、ペンダントオレフィンはポリエステルを修飾するのに使用される。
【0040】
一部の実施形態において、方法は、ペンダントオレフィンを介してポリエステルを架橋して、修飾ポリエステルを生成することをさらに含む。一部の実施形態において、ペンダントオレフィンを介してポリマーを架橋することは、ペンダントオレフィンを多価メルカプトカップリング剤と反応させることを含む。
【0041】
一部の実施形態において、方法は、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することをさらに含む。一部の実施形態において、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することは、カルボン酸でポリエステルを官能化することを含む。一部の実施形態において、チオール-エンクリック反応でペンダントオレフィンを修飾することは、第三級アミンでポリエステルを官能化することを含む。
【0042】
一部の実施形態において、方法は、アミンを四級化して、抗菌性を有する修飾ポリエステルを生成することをさらに含む。
【0043】
一部の実施形態において、触媒は酸触媒又は有機触媒である。一部の実施形態において、触媒は酸触媒である。一部の実施形態において、触媒は有機触媒である。一部の実施形態において、触媒は、リン酸ジフェニル、ナトリウムメトキシド、トリアザビシクロデセン、ビストリフルイミド、メタンスルホン酸、及びジアザビシクロウンデセンのうちの1つ以上を含む。一部の実施形態において、触媒はトリアザビシクロデセンを含む。一部の実施形態において、触媒はジアザビシクロウンデセンを含む。
【0044】
一部の実施形態において、重合は、約0℃~約166℃、又は約0℃~約100℃、又は約0℃~約80℃、又は約10℃~約50℃、又はおよそ室温の温度で起こる。一部の実施形態において、重合は室温で起こる。
【0045】
一部の実施形態において、方法はラクトンを合成することをさらに含む。一部の実施形態において、ラクトンを合成することは、大気から二酸化炭素を取り込むことを含む。
【0046】
一部の実施形態において、ポリエステルは以下の構造:
【0047】
【化3】
[式中、nは整数である]
のうちの1つで表される。一部の実施形態において、nは、約2~約200、又は約10~約200、又は約50~200、又は約100~約200の範囲内の整数である。
【0048】
本明細書において、ラクトンを合成する方法も提供する。方法は、ピペリレンを二酸化炭素とテロマー化して、ラクトンを生成することを含む。一部の実施形態において、ラクトンは以下の構造:
【0049】
【0050】
本明細書において、ポリエステルを合成する方法であって、上で開示されたラクトンを合成する方法によって形成されたラクトンを水素化して、水素化ラクトンを生成すること、及び触媒の存在下、開環プロセスで水素化ラクトンを重合して、ポリエステルを生成することを含む、方法も提供される。
【0051】
図1は、二酸化炭素と1,3-ジエン(例えば、ブタジエン及びイソプレン)をパラジウム触媒でテロマー化して、ラクトンモノマーを合成する反応経路を示している。メチル基Mを有する2つのイソプレン分子が二酸化炭素と反応して1を生成する場合、得られるラクトンはメチル基M1及びM2を含む。イソプレン分子及びブタジエン分子が二酸化炭素と反応して1を生成する場合、得られるラクトンはメチル基M1及びM2のうちの1つを含む。2つのブタジエン分子が二酸化炭素と反応して1を生成する場合、得られるラクトンはメチル基M1及びM2を含まない。
【0052】
一実施例において、ブタジエンとCO2のテロマー化を300mL Parr反応器で行った。Pd(dba)2及びP(o-OMePh)3のアセトニトリル中の溶液を反応器に装入し、その後、新たに凝縮させたブタジエンを添加した。次に反応器を密閉し、窒素で3回パージし、450psiのCO2を装入した。これを80℃で約22時間撹拌し、次に容器を室温に冷却し、開放した。得られた黄色液体をシリカで濾過し、次に減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー及び蒸留を行ってラクトンを精製した。
【0053】
ラクトン1を水素化して(例えば、トリクロロシラン(Cl3SiH)及びヘキサメチルホスホロアミド(HMPA)中で)、選択的に水素化されたモノマー2を生成する。
【0054】
一実施例において、ラクトン1の水素化をシュレンクラインで行った。まず、ラクトン1及びHMPAを乾燥DCM中に溶解した。次に反応混合物を0℃に冷却し、Cl3SiHをゆっくり添加した。これを終夜撹拌し、次に反応を飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチして、酢酸エチルで希釈した。これをセライトで濾過し、次に分液漏斗に移し、水で3回及び塩水で1回洗浄し、次に有機相を減圧下で濃縮した。
【0055】
次に、ラクトンモノマーを続いて有機又は酸触媒で開環重合して、生物由来の生分解性ポリエステルを生成する。一部の実施において、選択的に水素化されたモノマー2を酸触媒又は有機触媒の存在下で開環重合して、ポリエステルP-1を生成する。ポリエステルP-1はペンダントオレフィンを含み、ペンダントオレフィンは修飾ポリエステルを生成するためのさらなる反応、例えば官能化(例えば、チオール-エンクリック反応で)及び架橋(例えば、多価メルカプトカップリング剤と)のためのものとすることができる。官能化及び架橋は、特定の特性を有する修飾ポリエステルを生成するように選択することができる。一部の実施において、ラクトン1をさらに水素化して(例えば、炭素担持パラジウムの存在下で水素ガスを用いて)、完全水素化モノマー3を生成する。モノマー3を酸触媒又は有機触媒の存在下で開環重合して、ポリエステルP-2を生成することができる。
【0056】
開環重合用の好適な触媒としては、リン酸ジフェニル、ナトリウムメトキシド、トリアザビシクロデセン、ビストリフルイミド、メタンスルホン酸、及びジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0057】
ラクトンへのピペリレンの組込み
図1に関して記載した反応と同様の反応で、他の1,3-ジエンを使用してラクトンモノマーを合成することができる。好適なジエンの例としては、ピペリレン、1,3-ヘキサジエン、及びミルセンが挙げられる。
図2に示すように、ピペリレンをラクトンモノマーに、ゆえに得られるポリエステルに組み込むことができる。ピペリレンメチル基はM1として識別されている。それぞれ選択的に及び完全に水素化されたラクトンモノマー5及び6を、
図1の選択的に及び完全に水素化されたラクトンモノマー2及び3に関して記載した反応と同様の反応で形成する。
図3は、ピペリレンとCO
2をテロマー化してラクトンモノマー7~10を生成することを示しており、これらは
図1に関して記載した反応と同様の反応で水素化及び重合することができる。
【実施例】
【0058】
材料及び方法
溶媒及び試薬は、Sigma-Aldrich、STREM、Oakwood Chemicals、Matheson、及びAirgasより購入し、別途の注記がない限り、さらなる精製なしで使用した。重水素化クロロホルム(CDCl3)はCambridge Isotope Laboratoriesから購入し、さらなる精製なしで使用した。全ての重合は、別途の明記がない限り、窒素充填したグローブボックス(VAC)で行った。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、40gのシリカRediSep(登録商標)順相シリカフラッシュカラムを用いてTeledyne ISCO Combiflash NextGen 300+(登録商標)で行った。高分解能エレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)は、Bruker BioTOF II ESI/TOF-MSを使用し、内部質量標準としてPEG 200を用いて、全ての単離した試料で行った。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、Wyatt OPTILAB T-rEX屈折率検出器を装着し、直列に接続した3つのWaters Styragelカラム(HR6、HR4、HR1、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)の5μm粒子)を備えたAgilent 1260 Infinity LCシステムを使用し、25℃、流量1mL/分でテトラヒドロフラン(THF)中で行った。モル質量及び分散度の決定は、ポリスチレン標準に対する較正により行った。熱重量分析(TGA)は、TA Instruments Q500において、窒素雰囲気下、加熱速度10℃/分で行った。示差走査熱量測定(DSC)分析は、TA Instruments Discovery DSCにおいて、密封したアルミニウムT-zeroパンを使用して行った。走査は別途の注記がない限り、窒素雰囲気下、加熱/冷却速度5℃/分で行った。1H NMR及び13C NMRスペクトルは、Bruker Avance III HD 400MHz及びBruker Avance III 500MHz分光計で記録した。全てのポリマーの1H NMRスペクトルは別途の注記がない限り、緩和遅延時間10秒で実行した。化学シフトはテトラメチルシラン(TMS)を基準にして報告する。OECD-301B生分解試験はSitu Biosciencesが行った。
【0059】
[実施例1]
3-エチリデン-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(EVP)の合成
Sharifら ChemCatChem 2017、9、542-546から改変した手順。ブタジエンとCO2のテロマー化を300mLオートクレーブで行った。反応器にPd(dba)2(163.3mg、0.284mmol、0.0005当量)及びP(o-OMePh)3(300.57mg、0.853mmol、0.0015当量)のアセトニトリル(130mL)中の溶液並びに撹拌子を装入し、その後これに、新たに凝縮させたブタジエン(50mL、568.5mmol、1当量)を添加した。次に反応器を密閉し、およそ-10又は-20℃に冷却し、窒素で2回パージし、室温まで温め、450psiのCO2を装入した。次に反応器を80℃に加熱し、22時間撹拌した。反応器を氷浴で冷却し、開放した。得られた液体をシリカで濾過し、次に減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(5:1 ヘキサン:酢酸エチル)及び蒸留を行って、透明液体11.05g(収率25.5%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.18-7.11 (m, 1H), 5.89 (m, 1H), 5.23-5.38 (dd, 2H), 4.78 (m, 1H), 2.64-2.39 (m, 2H), 2.10-2.03 (m, 1H), 1.82-1.75 (m, 4H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 166.26, 141.16, 135.87, 125.98, 116.89, 78.94, 27.64, 21.99, 14.12.
【0060】
[実施例2]
3-エチル-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(EtVP)の合成
Sugiuraら、Chem. Commun. 2008、2、4309-4311から改変した手順。火力乾燥した500mLシュレンクフラスコにEVP(4.52g、27.2mmol、1当量)及びヘキサメチルホスホロアミド(HMPA)(1.05mL、5.94mmol、0.2当量)を加え、無水ジクロロメタン(DCM)(Pure Process Technology溶媒精製システムの活性アルミナカラムに通すことにより乾燥)(60mL、0.5M)に溶解した。次に反応混合物を0℃に冷却し、Cl3SiH(6mL、59.4mmol、2当量)を滴下添加した。反応混合物を4~16時間撹拌し、次に反応を飽和炭酸水素ナトリウム(100mL)でゆっくりクエンチし、酢酸エチル(100mL)で希釈した。これをセライトで濾過し、次に分液漏斗に移した。有機相をH2Oで3回及び塩水で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、次に減圧下で濃縮して、液体3.93g(収率86%)を得た。必要であれば真空蒸留を行って、残留するブタジエンダイマー(EVP合成由来)を除去した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.91-5.81 (m, 1H), 5.33 (d, 1H), 5.22 (t, 1H), 4.84-4.73 (m, 1H), 2.44-2.33 (m, 1H), 2.10-1.46 (m, 6H), 1.00-0.95 (m, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 174.69, 173.36, 136.62, 136.09, 117.01, 116.70, 81.10, 78.29, 42.02, 40.37, 28.91, 27.13, 24.94, 24.61, 24.13, 22.51, 11.53, 11.19. ESI-HRMS (m/z): C9H14O2Na+の計算値, 177.0886; 実測値, 177.0885 (差0.0001).
【0061】
[実施例3]
3,6-ジエチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(DEP)の合成
Mango及びLenz、Die Makromol. Chemie 1973、163、13-36から改変した手順。撹拌子及び還流凝縮器を備えた250mLの三つ口フラスコにEtVP(4.0g、25.6mmol、1当量)、その後にo-キシレン(75mL、0.34M)を加えた。これを150℃に加熱し、還流開始時にp-トルエンスルホニルヒドラジド(9.7g、52mmol、2当量)を加えた。4時間後、溶液はオレンジ色になった。次に溶液を冷却し、セライトを詰めた微細フリットで真空濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、次に真空蒸留によってさらに精製して、液体3.12g(収率77%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.20-4.13 (m, 1H), 2.39-2.27 (m, 1H), 2.08-1.37 (m, 8H), 0.98-0.91 (m, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 175.79, 173.93, 82.60, 79.34, 42.14, 39.73, 29.18, 28.32, 26.28, 24.90, 23.89, 22.92, 11.63, 11.09, 9.61, 9.27.
【0062】
[実施例4]
3-エチル-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(EtVP)からのポリエステルの合成
N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムバイアルにラクトン2(203.6mg、1.32mmol)を加えた。その後、これにリン酸ジフェニル(12.3mg、0.05mmol)及び3-フェニル-1-プロパノール(5μL、0.037mmol)を加えた。密閉したバイアルをグローブボックスから取り出し、室温で55日間撹拌し、NMR用の一定分量を4、11、23、及び37日目に取り出した。55日目にトリエチルアミン数滴を用いて重合をクエンチし、次にトルエンを使用して材料を新しいバイアルに移した。減圧下で濃縮後、粘性のある無色油状物質170mgが得られた。
1H NMRにより転化率は84.7%と決定され、末端基分析によりM
nはおよそ4,000g/molと計算された。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz):
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz): 5.92-5.83 (m, 1H, モノマー), 5.77-5.67 (m, 1H, ポリマー), 5.34 (dt, 1H, モノマー), 5.26-5.14 (m, 1H, モノマー及びポリマー), 4.86-4.73 (m, 1H, モノマー), 2.69 (t, 2H, 開始剤), 2.44-2.34 (m, 1H, モノマー), 2.27 (広幅m, 1H, ポリマー), 2.05-1.41 (m, 6H, モノマー及びポリマー), 1.01-0.96 (m, 3H, モノマー), 0.88 (t, 3H, ポリマー).
図4はDPP触媒反応1についてのCDCl
3中の
1H NMRスペクトルを示す。
【0063】
【0064】
空気中で、撹拌子を備えた1ドラムバイアルにラクトン2(206.8mg、1.341mmol)を加えた。その後、これにメタンスルホン酸(2μL、0.031mmol)及び3-フェニル-1-プロパノール(4μL、0.029mmol)を加えた。バイアルを室温で36日間撹拌し、NMR用の一定分量を1、5、9、及び20日目に取り出した。36日目にトリエチルアミン数滴を用いて重合をクエンチし、次に過剰のトルエンを使用して材料を新しいバイアルに移した。減圧下で濃縮後、粘性のあるわずかに黄色の油状物質160mgが得られた。1H NMRにより転化率は82%と決定され、末端基分析によりMnはおよそ2,600g/molと計算された。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): 5.92-5.82 (m, 1H, モノマー), 5.77-5.69 (m, 1H, ポリマー), 5.34 (dt, 1H, モノマー), 5.25-5.14 (m, 1H, モノマー及びポリマー), 4.86-4.73 (m, 1H, モノマー), 2.69 (t, 2H, 開始剤), 2.44-2.34 (m, 1H, モノマー), 2.27 (広幅m, 1H, ポリマー), 2.09-1.41 (m, 6H, モノマー及びポリマー), 1.01-0.96 (m, 3H, モノマー), 0.89 (t, 3H, ポリマー)
【0065】
【0066】
N2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムバイアルにラクトン2(204.7mg、1.327mmol)を加えた。その後、これに1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(6mg、0.043mmol)及び3-フェニル-1-プロパノール(5μL、0.037mmol)を加えた。密閉したバイアルをグローブボックスから取り出し、室温で51日間撹拌し、NMR用の一定分量を3、6、12、20、及び34日目に取り出した。51日目にトルエン中の6M酢酸数滴を用いて重合をクエンチし、次に過剰のトルエンを使用して材料を新しいバイアルに移した。減圧下で濃縮後、粘性のある無色油状物質190mgが得られた。1H NMRにより転化率は85%と決定され、末端基分析によりMnはおよそ3,500g/molと計算された。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): 5.92-5.83 (m, 1H, モノマー), 5.77-5.67 (m, 1H, ポリマー), 5.34 (dt, 1H, モノマー), 5.26-5.14 (m, 1H, モノマー及びポリマー), 4.86-4.73 (m, 1H, モノマー), 2.69 (t, 2H, 開始剤), 2.44-2.34 (m, 1H, モノマー), 2.27 (広幅m, 1H, ポリマー), 2.06-1.41 (m, 6H, モノマー及びポリマー), 1.01-0.96 (m, 3H, モノマー), 0.89 (t, 3H, ポリマー).
【0067】
【0068】
触媒作用のための温度範囲:選択的に水素化されたブタジエン/CO2由来ラクトンの重合についてファントホッフ解析を行うことにより、熱力学的パラメータについての情報が得られた。この解析により、ΔHpは-3.07kcal/molと決定され、ΔSpは-7cal/K・molと決定された。これらの値を用い、ΔHpをΔSpで割ることによって天井温度(平衡状態で重合が起こらない温度)を計算した。この重合では天井温度は166℃であり、これはポリ(δ-デカラクトン)とポリ(δ-ヘキサラクトン)の天井温度の間にある。平衡温度(モノマー転化率が50%に達する温度)も計算したところ、この重合では94℃である。良好な(>80~90%)転化率に到達させるため、重合をその天井温度/平衡温度よりもかなり下(例えば、5℃という低さ)で行うことができる。
【0069】
この重合が行われた最も低い温度は、開始剤/触媒としてナトリウムメトキシドを用いた5℃である。重合を50日後にクエンチし、得られた材料は転化率84.6%及びおよそ3,750g/molのMnに達したことが1H NMRによって示された。
【0070】
[実施例5]
重合後修飾
重合後修飾にはチオール-エンクリック化学を使用することができる。使用するチオールに応じてポリマーに異なる特性及び用途を与えることができる。この種の多用性は、特に生物由来モノマーから魅力的な特徴である。以下の実施例は、ポリマーP-1の特性及びゆえに用途を制御するのに使用することのできる多くのペンダント基のうちの2つである。
【0071】
図5に示すように、カルボン酸はポリマーP-1と反応して、溶液のpHに少なくとも部分的に基づいて、得られるポリマーの水溶性を増加させることができる。この反応を有利に使用して、生物医学用途の、又は水中環境で分解するためのポリエステルを生成することができる。
【0072】
図6に示されるポリマーP-1の別の修飾は、第三級アミン部分を有するチオールの付加と、その後のアミンの四級化であり、得られる第四級アミンは得られるポリエステルに抗菌性を与える。アミン官能基の割合は、細菌の細胞膜と相互作用できる、水に不溶のポリマーを生成するように調節することができる。
【0073】
このタイプの重合後修飾の追跡において、1-ブタンチオール、DMPA、及びUV光を使用してラクトン2で試験反応を行った。30分後、1H NMRでペンダントアルケンのピークが消え、この反応がこのポリマーの修飾に応用される可能性を有することを示した。
【0074】
架橋はペンダントアルケンを利用する別の修飾である。
図7Aに示すように、DMPAとUV光の組合せを使用して、そのオレフィンを直接介したポリマーP-1の架橋を開始することができる。さらに、
図7Bに示すように、チオール-エンクリック化学を使用して、多価メルカプトカップリンク剤のトリ(エチレングリコール)ジチオール及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMPT)を用いてネットワークを形成することができる。使用するTMPTの量を増加し、さらにネットワークを金属イオンで錯体化することにより、T
g値が増加した。
【0075】
[実施例6]
EtVP重合のための触媒スクリーニング
N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムバイアルに3-フェニル-1-プロパノール(2.7mg、0.02mmol、0.01当量)、EtVP(300mg、1.95mmol、1当量)、及び所望の触媒(0.1mmol、0.05 eq)を加えた。グローブボックス内で室温で3日間、重合物を撹拌した。この時点で
1H NMRスペクトルをCDCl
3中で取り、5.86ppmのモノマーのピークを5.72ppmのポリマーのピークと比較することによって転化率を決定し、5.72ppmのピーク及び2.68ppmの開始剤のピークを使用して末端基分析を行った。
図8を参照のこと。
【0076】
これらの結果に基づき、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)がEtVPに対する良好な開環重合(ROP)触媒であると決定された。0.5%のPPA開始剤を用いて室温で高モル質量のポリ(EtVP)(13.6kg/mol、D=1.36)を合成することができる。ポリ(EtVP)のガラス転移温度(Tg)は-38.8℃であり、これによりポリ(EtVP)は熱可塑性エラストマー中の軟質ブロックとして好適な可能性がある。この値は同等の一置換δ-ラクトン(例えば、δ-ヘキサラクトン及びδ-ヘプタラクトン)よりもおよそ10℃高く、おそらく追加の置換基から鎖回転が妨害されることによる。
【0077】
【0078】
[実施例7]
EtVP重合のための代替手順
N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルに1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(0.05当量)を加え、その後、EtVP(典型的に1、2、又は5g、1当量)及び3-フェニル-1-プロパノール(0.005当量)を加えた。グローブボックス内で室温で2又は3日間、重合物を撹拌した。この時点で
1H NMRを取って、およそ80%の転化が起こったことを確認し、次にバイアルをグローブボックスから取り出し、触媒を過剰の安息香酸でクエンチした。精製法A:混合物を最小限のCHCl
3に溶解した後、-78℃で激しく撹拌しているヘキサン中にゆっくりピペットで移した。ヘキサンをデカンテーションで除き、次にポリマーをCHCl
3に溶解し、水で1回及び塩水で2回洗浄した。次に有機相を減圧下、80℃で少なくとも6時間濃縮した。精製法B:重合混合物をMeCNに溶解した後、シリカプラグで真空濾過し、減圧下で濃縮し、次に真空蒸留して残留モノマーを除去した。反応は転化率78%及び10,700g/molのM
n(末端基分析により測定)に至り、速度論的分析により、重合の初期速度は対応するDPP触媒重合よりも有意に速い(k
obs=1.4M/h)ことが明らかとなった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 5.77-5.67 (m, 1H), 5.26-5.14 (m, 1H), 2.69 (t, 2H, 開始剤), 2.27 (広幅m, 1H), 0.89 (t, 3H);
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 175.12, 136.42, 117.19, 74.53, 74.04, 47.09, 32.05, 27.58, 25.50, 11.84.
図9A~9Cを参照のこと。
【0079】
[実施例8]
DEP重合のための一般的手順
半水素化EtVPを用いて成功したことにより、ROPの候補としてDEPを評価するに至った。条件をEtVPのROP条件からわずかに改変(1%のベンジルアルコール/5%のTBD/-15℃)すると、2日後のDEPの転化率わずか18%となった。しかしながら、触媒及び条件をさらに探索及び最適化すると、NaOMe/1-シクロヘキシル-3-フェニル尿素触媒系がDEPのROPに効果的であり、室温で1日後に転化率70%に至る(Mn=9.7kg/mol、D=1.27)という発見につながった。
【0080】
N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムシンチレーションバイアルにNaOMe(6mg、0.11mmol、0.03当量)、1-シクロヘキシル-3-フェニル尿素(7.2mg、0.03mmol、0.01当量)、及びDEP(507.2mg、3.25mmol、1当量)を加えた。グローブボックス内で室温でおよそ1日間、反応混合物を撹拌し、この時点でこれをボックスから取り出し、過剰の安息香酸でクエンチした。混合物を最小限のCHCl
3に溶解した後、-46℃のメタノール中で2回沈殿させた。メタノールをデカンテーションで除き、次にポリ(DEP)を真空下、80℃で16時間乾燥させて、ポリ(DEP)94.1mg(収率18.6%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.85-4.75 (m, 1H), 3.66 (s, 3H), 2.23 (広幅s, 1H), 1.68-1.37 (m, 8H), 0.87 (重複t, 6H);
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 175.68, 75.17, 74.69, 47.82, 47.47, 47.38, 47.06, 31.64, 31.49, 31.20, 27.93, 27.52, 26.98, 25.67, 25.63, 25.56, 11.84, 9.65, 9.53.
図10A~10Cを参照のこと。
【0081】
【0082】
[実施例9]
EtVP重合の熱力学及び速度論の測定
熱力学:N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムシンチレーションバイアルにトリアザビシクロデセン(TBD)(11.3mg、0.08mmol、0.05当量)、EtVP(250mg、1.6mmol、1当量)、及び3-フェニル-1-プロパノール(12mg、0.05mmol、0.05当量)を加えた。バイアルをグローブボックスから取り出した後、様々な温度(25~100℃)の湯浴に入れ、各温度で反復試験を行った。ある期間の日数にわたり重合を
1H NMRによってモニターし、転化率が各時点の間で一定である(3%以内)と見出されたときに反応が平衡であると決定した。5.86ppmのモノマーのピークを5.72ppmのポリマーのピークと比較することによって転化率を決定した。関連の熱力学的パラメータは、Olsen、Odelius、及びAlbertsson、Biomacromolecules 2016、17、699-709に概説された方法を使用して決定した。DEPの重合の熱力学的パラメータは、10%のNaOMe及び5%の1-シクロヘキシル-3-フェニル尿素を使用して類似の手法で(DEP 200mgのスケールにて)見出した。
図11を参照のこと。
【0083】
EtVPのTBD触媒重合のファントホッフ解析により、熱力学パラメータのΔHp=-2.26±0.23kcal/mol及びΔSp=-5.48±0.70cal/mol・Kがわかり、結果として天井温度(Tc)は138℃(表1)であった。同様に、DEPの1-シクロヘキシル-3-フェニル尿素触媒での重合のファントホッフ解析により、ΔHp=-2.82±0.23kcal/mol及びΔSp=-7.34±0.68cal/mol・Kがわかり、結果として天井温度(Tc)は110℃であった。これらの低いTc値により、容易な化学リサイクル(下記参照)の可能性が開かれる。これらの値の非置換ポリ(δ-バレロラクトン)(ΔHp=-2.92kcal/mol、ΔSp=-2.27cal/mol・K)及びポリ(δ-ヘキサラクトン)(ΔHp=-3.3kcal/mol、ΔSp=-5.5cal/mol・K)との比較。EtVPとDEPの重合結果を組み合わせると、速度論的に実行しやすい重合を生じさせるための適切な触媒の選択は未だ予測できないが、二置換バレロラクトンのROPが熱力学的に可能であることが示される。
【0084】
速度論:N
2グローブボックス内で、撹拌子を備えた20mLシンチレーションバイアルにTBD(33.3mg、0.24mmol、0.05当量)、EtVP(733mg、4.8mmol、1当量)、及び3-フェニル-1-プロパノール(6.2mg、0.05mmol、0.01当量)を加えた。10分間隔で1時間まで一定分量を取り出して、CDCl
3中で安息香酸でクエンチし、その後は、80、100、120、及び150分に取った。モノマー濃度を時間に対してプロットし、直線領域の傾きをk
obsとして見出した。DPP及びNaOMeを用いた重合は、それぞれ5%及び10%で行った。
図12A~
図12Dを参照のこと。
【0085】
[実施例10]
TBD触媒でのEtVPのエピマー化
オートカラムによるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、trans:cisの比 5.5:1でジアステレオマーを富化させたEtVPを得た。25g固体充填カートリッジを備えたカラムに蒸留したEtVP(500mg、3.2mmol)を入れ、重ねた2本の40g RediSep(登録商標)順相シリカフラッシュカラムに通した。ヘキサン対イソプロピルアルコールが95:5の混合物の溶離液により、40mL/分でおよそ5カラム容量後に最も幅広いEtVPピークが得られることがわかった。EtVPは波長200nmで最もはっきりと見えた。カラム後、EtVPピークの後半(試験管15より)を初めの半分から分離し、比5.5:1のジアステレオマーとして単離した。
【0086】
N2グローブボックス内で、撹拌子を備えた1ドラムバイアルにTBD(8.5mg、0.06mmol、0.05当量)、5.5:1でジアステレオマーを富化させたEtVP(196mg、1.3mmol、1当量)、及び3-フェニル-1-プロパノール(1.5mg、0.01mmol、0.01当量)を加えた。20、40、80、120、240、及び1440分において一定分量を取り出し、NMRスペクトルを取った。20分以内にモノマーは熱力学的なtrans:cisの比 2:1にエピマー化して戻った。
【0087】
[実施例11]
L-ラクチドを用いたポリ(EtVP)の鎖延長の一般的手順
N
2を満たしたグローブボックスに、20mLシンチレーションバイアル中の単離したポリ(EtVP)(210.9mg、9kg/mol)を入れた。次にL-ラクチド(198.4mg、1.4mmol、1当量)、無水DCM(0.9mL)、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(3.8mg、0.02mmol、ラクチドに対して0.02当量)を加え、重合物を室温で1時間撹拌した。次に触媒を過剰の安息香酸でクエンチした。-46℃で激しく撹拌しているMeOH中に重合溶液をゆっくりピペットで移し、真空濾過した。DCMを用いて沈殿をフリットから洗い落とし、次に減圧下、80℃で終夜濃縮して、ポリマー116.6mg(収率28.5%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 5.76-5.68 (m, 1H), 5.25-5.13 (重複d及びq, 4H), 2.25 (広幅m, 1H), 1.66-1.48 (m, 9H), 0.87 (t, 3H) ;
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 174.88, 169.66, 136.36, 117.28, 74.47, 73.99, 69.08, 47.36, 47.04, 32.15, 31.98, 27.52, 27.21, 25.57, 25.44, 16.71, 11.77.
図13A~13C及び
図18を参照のこと。
【0088】
【0089】
[実施例12]
ポリ(EtVP)の2-ジエチルアミノエタンチオールでのチオール-エン官能化
CHCl
3を用いて、ポリ(EtVP)(228.1mg、9kg/mol、1当量)及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(37.5mg、0.15mmol、0.1当量)を2ドラムバイアルに移し、次にCHCl
3を蒸発させた。次に2-ジエチルアミノエタンチオール・HCl(472.5mg、3.3mmol、2.3当量)及び撹拌子をバイアルに加えた。次に3時間20分の撹拌及び9Wの385~400nmのUV光への曝露を開始した。反応混合物をCHCl
3に溶解し、飽和NaHCO
3で2回洗浄した。有機層を濃縮し、最小限のCHCl
3に溶解し、次に1:1のH
2O:MeOH中で3回沈殿させた。沈殿を真空下、40℃で終夜乾燥させて、ポリマー69.9mg(収率16.4%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.96-4.90 (m, 1H), 2.63-2.47 (m, 10H), 2.20 (広幅m, 1H), 1.81 (広幅m, 2H), 1.65-1.52 (m, 6H), 1.03-0.99 (重複t, 6H), 0.88 (t, 3H);
13C NMR (101 MHz, CD
3OD) δ 176.60, 79.50, 74.13, 53.94, 47.96, 35.33, 33.03, 29.50, 29.09, 28.86, 26.59, 12.56, 11.93.
図18を参照のこと。
【0090】
【0091】
[実施例13]
ポリ(EtVP-DAT)の臭化ベンジルでの四級化
1ドラムバイアルにポリ(EtVP-DAT)(279.6mg、1当量)を加え、その後、臭化ベンジル(0.44mL、3.7mmol、3.8当量)を加えた。これを室温で19時間撹拌し、その後、反応混合物をヘキサン中で3回沈殿させた。沈殿を真空下、100℃で終夜乾燥させて、ザクザクとした固体材料144.8mg(収率19.7%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.66-7.50 (m, 5H), 5.03 (広幅m, 1H), 4.66-4.59 (m, 2H), 3.61-3.37 (m, 6H), 3.11 (広幅t, 2H), 2.71 (広幅t, 2H), 2.34 (広幅m, 1H), 1.93 (広幅m, 2H), 1.64-1.45 (m, 12H), 0.93 (広幅t, 3H);
13C NMR (101 MHz, CD
3OD) δ 177.02, 133.89, 131.89, 130.46, 128.74, 128.53, 79.63, 73.94, 62.51, 58.25, 57.90, 54.59, 35.02, 32.85, 31.42, 29.14, 28.66, 26.70, 26.35, 24.90, 12.42, 9.43, 8.78.
図14A及び14Bを参照のこと。
【0092】
【0093】
[実施例14]
ポリ(EtVP)のブチル-3-メルカプトプロピオネートでのチオール-エン官能化
CHCl
3を用いて、ポリ(EtVP)(99mg、9.5kg/mol、1当量)及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(45.2mg、0.18mmol、0.27当量)を2ドラムバイアルに移し、次にCHCl
3を蒸発させて薄膜を調製した。ブチル-3-メルカプトプロピオネート(0.22mL、1.4mmol、2.1当量)及び撹拌子を同じバイアルに加えた。5時間20分の撹拌及び9Wの385~400nmのUV光への曝露を開始した。反応混合物を最小限のCHCl
3に溶解し、次に0℃で激しく撹拌しているヘキサン中にピペットで移した。デカンテーション後、ポリマーを追加のヘキサンで2~3回洗浄し、次に真空下、80℃で数時間乾燥させて、92.6mgのポリマー(収率45.6%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 4.96-4.91 (m, 1H), 4.08 (t, 2H), 2.75 (t, 2H), 2.59-2.43 (m, 4H), 2.21 (広幅s, 1H), 1.81 (広幅s, 2H), 1.64-1.32 (m, 10H), 0.94-0.86 (重複t, 6H);
13C NMR (101 MHz, CDCl
3) δ 175.46, 172.00, 73.02, 64.69, 47.08, 34.88, 34.18, 32.18, 30.75, 28.07, 27.11, 25.53, 19.25, 13.84, 11.84.
図15A~15C及び
図18を参照のこと。
【0094】
【0095】
[実施例15]
ポリ(EtVP)の架橋の一般的手順
20mLシンチレーションバイアルにポリ(EtVP)(およそ280mg、7.3kg/mol、1当量)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(5.7mg、0.02mmol、2重量%)、及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(0.03、0.02、又は0.01当量)を加え、その後、混合物を均質化するのに使用したCHCl
3を加え、次に蒸発させた。混合物を9Wの385~400nmのUV光に10分間曝した。およそ50mgの各網状材料をさらなる特性評価のために取っておき、残りを4つの試料に分け、2つを膨潤実験用、2つをゲル分率実験用にした。
図18を参照のこと。
【0096】
膨潤を測定するため、材料を水2mLに72時間浸し、その後、濾過して秤量した。膨潤率は以下の式を使用して決定し、式中、Wsは膨潤したポリマーの重量であり、Wdは乾燥ポリマーの重量である(Dasguptaら、Mol. Pharm. 2015、12、3479-3489)。
【0097】
【0098】
ゲル分率を測定するため、材料をCHCl3 2mLに48時間浸し、その後、濾過して秤量した。ゲル分率は以下の式を使用して決定し、式中、Wd1は初期の乾燥ポリマーの重量であり、Wd2はCHCl3に浸した後の重量である。
【0099】
【0100】
[実施例16]
ポリ(EtVP)の加水分解
異なる6個の20mLシンチレーションバイアルにおよそ100mgのポリ(EtVP)(11kg/mol)を入れた。各バイアルに10mLの0.1M NaOH、0.1M HCl、又は0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えた。NaOH及びHClを含むバイアルは50℃で撹拌し、PBSを含むバイアルは37℃で撹拌して生物学的条件の模擬実験をした。示された各時点において溶液をデカンテーションし、残ったポリマーを水で3回洗浄し、次に真空下で一定重量になるまで乾燥させた。
図16A~
図16Cを参照のこと。
【0101】
[実施例17]
ポリ(EtVP)のモノマーへの化学リサイクル
単純な真空蒸留装置を備えた5mL梨型フラスコにポリ(EtVP)(1.0g、9kg/mol、1当量)及びSn(Oct)2(80.5mg、0.20mmol、0.03当量)を加えた。これを真空下に置き、165℃に加熱し、1時間40分後、純粋な0.84gのEtVP (回収率84%)を得た。留出物の1H NMRスペクトルはEtVPのスペクトルと一致した。
【0102】
[実施例18]
混合ポリマー原料を用いたポリ(EtVP)の化学リサイクル
撹拌子を備えた25mL丸底フラスコに、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ナイロン、高密度ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(EtVP)(0.75g、9.8kg/mol)、及びSn(Oct)2(106mg、0.26mmol、およそ3重量%)を加えた(表1を参照のこと)。丸底フラスコに短経路真空蒸留装置を備え付け、次に油浴中で165℃に加熱した。6時間後に、EtVP、ラクチド、カプロラクトン、及びSn(Oct)2を含有した0.24gの透明な留出物を得た。
【0103】
【0104】
材料の全体的な持続可能性を考慮する際、化学リサイクル性は重要な特徴である。真空蒸留装置を使用して、単離ポリマーを3%のSn(Oct)
2に165℃で曝し、これより84%の純粋なモノマーを2時間未満で得た。混合ポリマー原料からのポリ(EtVP)の化学リサイクルも試み、ポリ(EtVP)を多くの汎用ポリマー製品から分離することに成功したが、大方予想通りにラクチド及びε-カプロラクトンと共蒸留され、これらもエステル交換反応を受けやすい。さらに、塩基性(0.1M NaOH)及び酸性(0.1M HCl)溶液中50℃で、並びに0.01Mリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)中37℃で経時の質量損失をモニターすることによってポリ(EtVP)の加水分解可能性を測定した(
図17A)。ポリマーは、塩基性溶液中で13週の期間にわたってほぼ完全に分解し、対してHClとPBS溶液の両方では同じ量の時間で約4%の損失のみであった。最後に、OECD-301BB(易生分解性)プロトコル(OECD (1992)、Test No. 301: Ready Biodegradability、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals、セクション3、OECD Publishing、Paris)に従って、このポリマーの生分解試験を好気性水性環境で行った。この試験により、固有の生分解性の要件が満たされたことが示され、ポリ(EtVP)は60日の期間内で除去された67.4%の理論CO
2に達した(
図17B)。これらの試験により、CO
2由来ポリエステル、例えばポリ(EtVP)が持続可能な閉ループリサイクルの可能性を有し、同時に、リサイクルが可能でない事例では環境中で分解可能でもあることが示された。
【0105】
本発明は多くの特定の実施形態の詳細を含むが、これらは主題の範囲又は特許請求され得るものの範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本発明に記載されているある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴は、複数の実施形態で別々に又は任意の好適なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、前に記載した特徴をある特定の組合せで作用するものとして記載し、さらにはそのように最初に特許請求することがあるが、特許請求する組合せからの1つ以上の特徴は、一部の場合において組合せから削除することができ、特許請求する組合せは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形を対象とすることがある。
【0106】
主題の特定の実施形態を記載した。記載された実施形態の他の実施形態、改変、及び変更は、当業者には明らかなように、以下の特許請求の範囲内である。図面又は特許請求の範囲において操作が特定の順序で示されているが、これは望ましい結果を達成するためにそのような操作が示された特定の順序で若しくは連続した順序で行われること、又は全ての例示された操作が行われることを要求するものとして理解すべきではない(一部の操作は任意選択と考えることができる)。
【0107】
したがって、前に記載された実施例の実施形態は、本発明を規定も束縛もしない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の変化、置換、及び改変も可能である。
【国際調査報告】